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アポカリプス・ランページ⑩〜甘いお菓子はいかがでしょう

#アポカリプスヘル #アポカリプス・ランページ #アポカリプス・ランページ⑩

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 不眠不休の奴隷研究員たちは、目をギラつかせて研究に励んでいる。
「研究の成果は邪神のために!」
「サーイエッサー!」
「研究こそ我らが使命!」
「サーイエッサー!」
「働け!」
「イエッサー!」
「休むな! 食べるな! 目を閉じるな!」
「イエッサー!」
「我らは働くために息をしている!」
「オオオオオオー!」
 眠ることも忘れて研究にとりつかれた彼らの目には、狂気の光が浮かんでいた。

●依頼
「みんなー! 聞いて。新しい予知があったんだよ」
 ルビナ・ベイビーブルー(スペースノイドの電脳魔術士・f01646)が猟兵たちに呼びかけを行った。
「アポカリプス・ランページについてはもう知っているかな」
 アポカリプスヘルでは、全員がオブリビオン・フォーミュラであるフィールド・オブ・ナインが復活。その中のフルスロットル・ヴォーテックスが、カタストロフを発生させようとしているという。
「今回私が予知したのはヒューストン宇宙センター跡。そこでは、宇宙センターの奴隷研究員たちが不眠不休で研究を続けているんだよ」
 宇宙センターの跡地は、現在邪神「ポーシュボス」が支配している。
 そして、オブリビオンを「超宇宙の恐怖」によって変異強化させる、おぞましい施設に変貌しているというのだ。
 奴隷研究員たちも当然のごとくポーシュボスに精神を支配されている。
「オブリビオンを変異強化させる研究なんて……考えただけでも怖いものだよ。何とかこの研究をこれ以上進めないようにしなくちゃね」
 研究員たちは狂気に取り憑かれており、文字通り不眠不休で研究を続けているようだ。
「そこで、研究員の皆さんの狂気を取り除いてほしいの。今回の作戦では、お菓子を作って差し入れをするのはどうかなって思っているよ」
 いくら狂気に取り憑かれているとはいえ、甘いお菓子の誘惑に勝てる者などいない。
 お菓子を差し入れて安らぎを与えることができれば、きっと研究員たちも休みを取るだろう。
「お菓子をその場で作ったりすると、匂いも届けることができるよね。幸い、研究室だからお菓子を作る場所もたくさんあるよ。とにかく研究員さんたちに、心安らぐようなお菓子を届けてあげてね」
 どのようなお菓子を作るかはお任せするとのこと。
 ごく一般的なキッチンに準じる環境は整っているので、安心してお菓子を作ってほしい。
「不眠不休で研究なんて……辛そう。研究員さんたちに休みをとって欲しいし、何より研究をこれ以上進めさせちゃ駄目だよね。だから美味しいお菓子を差し入れて、研究員さんたちに休んでもらおうよ!」
 不眠不休で働き続ける研究員にやすらぎを。
 おぞましい研究を進行させないように。
 ルビナはそう言って説明を締めくくった。


陵かなめ
 こんにちは、よろしくお願いします。
 『アポカリプス・ランページ』の戦争シナリオ⑩『ヒューストン宇宙センター跡』シナリオです。
 このシナリオには特別なプレイングボーナスがありますので利用してください。
 特別なプレイングボーナスは『研究員の狂気を取り除く』です。

 美味しいお菓子を作って差し入れてあげましょう。

 オープニング公開と同時にプレイングを受け付けます。
 プレイングお待ちしておりますので、よろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『楽しいお菓子つくり』

POW   :    生地をこねたり伸ばしたり、オーブンの火加減を調節するなど下拵えや準備を担当する

SPD   :    正確に材料を計ったり、綺麗に角がたつくらいにホイップするなど、技術面で活躍する

WIZ   :    可愛い飾りつけや、トッピングで、お菓子を美味しそうにデコレーションする

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

藤・美雨
楽しいことをやらずに頑張るのってとっても苦しいと思うなぁ
それが狂気によるものなら尚更だ
研究を止めるためにもここは頑張っちゃうぞ!

この世界だと沢山物資を持ち込むのは怖いな
だから用意するのはチョコレートと薄力粉だけ
でもこの2つを混ぜて形を整えて焼くだけで簡単クッキーになるんだよね!
オーブンで焼いてる最中にチョコの甘い香りもするし、研究員さん達も気付くかな?

いざクッキーが完成したらコーヒーやお茶と一緒に差し入れだ
ほらほら、水分取らないと身体壊すよ?
リフレッシュのための糖分だって大切だ
こうやってお茶してリラックスしたら……なんだか眠くならない?
よしよし、そのままお休みしちゃおう!
これにて一件落着だね!


栗花落・澪
お菓子作りなら得意だよ!
【料理】スキルを活かして頑張っちゃう

プリンでも作ろうかな
敢えてカスタードじゃなく、いちごジャムを使ったもの
勿論ジャムも手作りするよ

プリン作りに必要なものは、簡易なものなら牛乳と砂糖と卵だけ
加熱と冷却どちらも炎、氷魔法をそれぞれ用いて時短

まずはプリン作りを優先
透明な器で複数作り
蒸す段階までいったら苺と砂糖を使ってジャム作りを同時進行
どちらも温まり待ちになったら苺を切って動物作ったりハート作ったり
フルーツアート作ってみます
飾る用

完成したらプリンの上にジャムをかけていって
器ごとに違うデザインのいちごアートと生クリームを飾ってみます
違いも楽しんでもらえれば

スプーンで召し上がれ


ルパート・ブラックスミス
夏のアイス売りとしての当方の出番だな。夏は過ぎたが。

携帯用小型特殊冷蔵庫を持参、アイスやチョコを差し入れ
【優しさ】や【心配り】を意識し【落ち着き】を取り戻させる。
UDC組織監修の安心品質、オススメはシガレットチョコだ。この世界の嗜好品といえば煙草、真似事だが童心に返って楽しもうではないか。
後は職員たちの話を聞き(流し)つつUC【理異ならす凍炎】(極弱バージョン)で冷やした籠手を目元に当てる。過労の目から視界と熱を奪えば、睡魔が狂気にのぼせた意識を捕まえるだろう。

頭は冷えたな?心休まったか?
貴殿らがするべきは?此処から生きて出ることだ。いいな?


研究はどうすると?
ふむ。

せいっ(当身の【気絶攻撃】)


御園・桜花
「テキサスの方が食べなれたお菓子や飲み物が良いですよね…」
ファネルケーキ
チョコチャンククッキー
スモア
マシュマロ入ココア
を作る

UC「ノームの召喚」使用
料理の手伝いして貰う

牛乳

バニラエッセンス
中力粉
砂糖

ベーキングパウダー
溶かしバター
混ぜ漏斗で熱したサラダオイルに渦巻き描き揚げ終わったら粉砂糖かけ皿に
トッピングの生クリームとフルーツは研究員が席に着いてから

サラダ油
砂糖
はちみつ
バニラエッセンス
薄力粉
ベーキングパウダー
牛乳
チョコレート混ぜ整形したらオーブンへ

焼き上がって冷めたクッキーの半分は焼きマシュマロサンド

甘くて熱いココアにもたっぷりマシュマロ投入

「疲れた時こそ食べ慣れた甘いおやつをどうぞ」


ヘルガ・リープフラウ
不眠不休で無理やり研究に従事させられるなんて
さぞやお疲れでしょう
わたくしも助力いたしますわ

所内に厨房があって助かったわ
さて、何を作りましょうか……
栄養価が高くて、糖分の吸収が早いのは勿論だけど、
精神をすり減らした日々への潤いともなれば、見た目の楽しさも考えたいし

そういえば他の世界では今
「マリトッツォ」というイタリア発祥のお菓子が人気らしいですわね
丸いパンにたっぷりの生クリームを挟んだ
それはそれは甘いお菓子だとか
わたくしも少し食べてみたい……かも

まともに作れば時間のかかるメニューだけど
UCの助けがあれば100人分があっという間
焼き立てのパンとクリームの香りも甘やかに
さあ、どうぞ召し上がれ


クレア・オルティス
アドリブOK

不眠不休で研究させられてるなんてかわいそうに…
人を何だと思っているんだろう…これじゃぁいつか倒れてしまうよ
なんとしてもこの狂気は取り除いてあげないと!

向かうはキッチン
料理不得手な私でも出来るお菓子を作ろう
チョコを湯煎で溶かし、甘酸っぱいフルーツを付けるだけ
そう、これはチョコフォンデュ!

さあさあ召し上がれ
イチゴにブルーベリー、バナナやキウイとフルーツいっぱい用意したよ
疲れた体には酸っぱいものがいいって聞くし
甘いものは心も落ち着かせるとかなんとか…
これで狂気がなくなればいいのだけれど

あとは元凶を倒すだけ
それまでまだ時間が掛かるかもしれないけど、必ず倒すからね


ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK


んー、お菓子ねえ。
甘い香りと眠気を誘いそうなもの……
ココア風味のパウンドケーキでも作ろうかな。
バター、砂糖、卵、小麦粉、ココアの粉を順番に入れて混ぜて、
ついでに刻んだオレンジピールも入れて更に混ぜる。
できた生地を型に流し込んだら、砕いたナッツもパラパラ乗せて、
オーブンで焼けば完成かな。
適当な大きさに切り分けたら、研究員の人たちの所に持っていこうか。

眠いのに寝れないのは辛いよねえ。
まったく酷いことをするものだよ。
これで正気を取り戻せるといいんだけど。

後はついでに、【誘眠綿閨】で寝床を作ってあげよう。
食べ終わって眠くなったら、ゆっくり眠るといいよ。


神宮時・蒼
…オブリビオンも、人員不足、だったり、する、のでしょうか
…ともかく、研究員の、方たちを、休ませなければ、なりません、ね

【WIZ】
簡単かつ、可愛らしい、お菓子を、作り、ましょうか

ほっとけぇきみっくす、と、電子レンジ、って、すごい、ですね
作るのはチョコぶらうにぃ
チョコとバター、牛乳を合わせたものをレンジにかけて
混ぜ混ぜしたら、ほっとけぇきみっくすと牛乳を混ぜ、型に入れてレンジに

すてぃっく状にカットして、上にチョコをこーてぃんぐ
果物や、なっつ、チョコペンなどで可愛く飾りつけしましょう

狂気を【浄化】するように願いを込めて
…少し、休憩、しません、か?
お腹が膨れたら、きっと眠気も訪れる筈です



●料理開始
 不眠不休で働き続ける奴隷研究員たち。
 彼らが研究するすぐ近くの部屋から甘い匂いが漂ってきた。
「不眠不休で無理やり研究に従事させられるなんて、さぞやお疲れでしょう。わたくしも助力いたしますわ」
 ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は厨房を見ながら微笑む。
 ある程度の道具は揃っていることが分かったので、安心してお菓子を作ることができるだろう。広さも申し分ない。
 猟兵たちはさっそくお菓子作りを始めることにした。
「お菓子作りなら得意だよ!」
 そう言って、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は卵に牛乳・砂糖の準備を始める。
「プリンでも作ろうかな」
 そう言いながら卵を割り、砂糖と丁寧に混ぜた。
 簡単なプリンであれば、3つの材料だけでできるという点もポイントだ。
 卵液に牛乳を入れて混ぜると、ほんのり甘い香りが鼻腔をくすぐる。
 澪は茶こしを使って透明の容器に卵液を注いだ。蒸し器に容器を並べ、頷く。
「プリンは、あとは蒸すだけだね。それじゃあいちごジャムも作り始めようかな」
 プリンを蒸し始めたら、次はジャムだ。
 今回はプリンに添えるジャムも手作りする。
 下準備しておいたジャムを鍋に入れ、弱火で少しずつ加熱していった。
 いちごと砂糖の甘酸っぱい香りが厨房に広がっていく。
 全体の様子を見ながら火を加減し、追加で砂糖を加えて味を調節した。
「プリンにも砂糖が入っているから、少し甘さ控えめでも良いかもね」
 あとは、とろみが付いたところでレモン果汁を入れると完成だ。
 時短できるところは魔法を活用して時短する。
 澪は手際良く手順を踏んだ。
 さて、厨房では他にも沢山の香りが漂い始めている。
「テキサスの方が食べなれたお菓子や飲み物が良いですよね……」
 そういって、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は持参した材料を広げた。
 まずはファンネルケーキだ。
 中力粉や卵、砂糖・牛乳を混ぜ合わせる。
 バニラエッセンスを少々垂らせば、ふわりとバニラの香りが広がるのが分かった。
「これを漏斗に入れましょう」
 桜花の周辺では、召喚されたノームたちがせっせと材料を運ぶ手伝いをしている。
 揚げ用のサラダオイルを十分に熱して準備は整った。
 サラダオイルの温度を確認して、漏斗から生地を垂らしていく。
 細い生地をぐるぐると渦巻きを描くように重ねるのがポイントだ。
 細長い生地が重なったケーキは、サクサクと口当たりの良いものに仕上がるだろう。
 あとは焼色が着くまで揚げ焼きにするだけだ。
 粉砂糖をかけて皿に乗せる。香ばしい香りが何とも食欲をそそった。
 トッピングは実際に食べる時に乗せる予定だ。
「他にはチョコチャンククッキーにスモアも良いですよね」
 桜花は次の準備に取り掛かった。こちらは薄力粉を使って作っていく。
 ヘルガが考えたのは栄養価と糖分、そして見た目の楽しさだ。精神をすり減らした日々への潤いともなれば、見た目も重要というわけだ。
「そういえば他の世界では今『マリトッツォ』というお菓子が人気らしいですわね」
 丸いパンにたっぷりの生クリームを挟んだ、見た目にもインパクトのあるお菓子。
 それはそれは、甘いらしい。
「わたくしも少し食べてみたい……かも」
 とはいえ、パンを焼くところからまともに作業をするとかなり時間がかかるだろう。
 ヘルガはユーベルコード『夕餉の祈り』を発動させて、料理に取り掛かった。
「大地の恵み、海の恵み、命の巡りに感謝して。健やかなる日々のために、さあ召し上がれ」
 用意してきた食材を使って、かなりの速度でマリトッツォを仕上げていく。
 焼きたてのパンの香りが香ばしい。
 程よく冷まして生クリームをたっぷり挟み込めば、甘い香りが厨房に広がった。
 ユーベルコードの助けもあり、あっという間に見た目も可愛らしいマリトッツォが並んでいく。
 お菓子作りは着々と進んでいた。

●お菓子は続々と
 藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)が用意したのはチョコレートと小麦粉だ。
「楽しいことをやらずに頑張るのってとっても苦しいと思うなぁ」
 そう言いながら2つの材料をよく混ぜてクッキーの生地にしていく。
 この施設の研究員たちは、不眠不休で研究を続けているらしい。楽しいこともせず頑張ることは苦しいと思う。それが狂気によるものならなおさらだ。
 研究を止めるためにも頑張っちゃうぞ、というわけで、オーブンの天板に形を整えたクッキー生地を並べた。
 これをオーブンで焼けばチョコレートの甘い香りが研究員に届くに違いない。
 クレア・オルティス(宵闇・f20600)が作るのはチョコフォンデュだ。
 これなら少々料理が不得手でもうまくいくだろう。
「不眠不休で研究させられてるなんてかわいそうに……」
 湯煎にかけたチョコレートがとろとろと溶けていく。
「人を何だと思っているんだろう……そんなことを続けたらいつか倒れてしまうよ」
 今この瞬間も、働き続けている研究員たちのことを考えた。
 何としても狂気を取り除いてあげないといけないと思う。
「研究を続けている人たち、辛いよね」
「そうだよね。絶対に助けてあげようね!」
 美雨とクレアは頷きあった。
 クレアの手元には、沢山のフルーツも用意されている。
 これらをチョコレートのソースで食べれば、さっぱりとした甘さが味わえるだろう。
 甘いお菓子を差し入れてあげれば、きっと狂気も取り除かれるはずだと、猟兵たちはお菓子をせっせと作り続ける。
 ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)が考えたお菓子は、ココア風味のパウンドケーキだ。
「甘い香りと眠気を誘いそうなもの……オレンジピールも使えばいいよねぇ」
 バターと砂糖、卵に小麦粉と順番に入れて混ぜ合わせる。
 ココアの粉を入れるとふわりと甘いショコラの香りが広がっていく。生地は程よくココアの色合いに。
 刻んだオレンジピールを入れて型に流し込む。
 オーブンに入れる前に砕いたナッツをパラパラと乗せれば完璧だ。
 神宮時・蒼(追懐の花雨・f03681)もチョコレートを使ったお菓子を作ろうとしていた。
「ほっとけぇきみっくす、と、電子レンジ、って、すごい、ですね」
 チョコレートとバターを溶かして合わせ、牛乳を混ぜて型に流し込む。
 あとは電子レンジで加熱すれば良いだけだ。
 電子レンジのスイッチを押して暫く待つと、とろけるような甘い香りが漂ってきた。
 焼き加減を確認しながら蒼は考える。
 オブリビオンも人員不足だったりするのだろうか? やや気になるところではある。
 いやしかし、だ。
「……ともかく、研究員の、方たちを、休ませなければ、なりません、ね」
 出来上がりを知らせる電子音を確認してレンジの扉を開ければ、熱々のチョコブラウニーが完成していた。

●甘いお菓子はいかがでしょう
 ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は携帯用小型特殊冷蔵庫を持参して、さっそく研究員のもとへと向かった。
 冷蔵庫の中は、アイスやチョコレートでいっぱいだ。
「夏のアイス売りとしての当方の出番だな」
 と、いうわけ。
 研究員たちのいる部屋はすぐに見つかった。
「働き詰めの研究員は貴殿達かな?」
 できるだけの優しさを以て、研究員たちに話しかける。すると1人の研究員が振り向いた。
「誰だ? 研究の仲間か?」
「そういうわけではないのだが、アイスはいかがだろうか」
 研究員は首を傾げる。
「研究を続けるにしても、糖分を取る必要があるだろう。オススメはタバコ風のチョコレートだ」
「む……」
 研究のことを引き合いに出されては、話を聞かざるを得ない。
 研究員は狂気をはらんだ目をしつつも、フラフラとタバコを模したチョコに手を伸ばす。
「この世界の嗜好品といえば煙草、真似事だが童心に返って楽しもうではないか」
「ふむ」
 ルパートに勧められるまま、研究員はチョコレートを口に含んだ。
 どこか遠い目をした彼が、しばし無言でチョコレートを味わう。
 その間も、ルパートは彼の瞳を冷やしたり温めてやったりした。
 すると……。
「うっ……」
 研究員がポタリと涙を流したのだ。
「研究……しなければ……でも、限界が……しかし……」
 人間は極限の精神状態が続くと、泣くこともあるだろう。
 ルパートは研究員にそっと寄り添い、諭すようにこう言った。
「心休まったか? 貴殿らがするべきは? 此処から生きて出ることだ。いいな?」
「はい……はい……」
 チョコレートを胸に抱きながら研究員が何度も頷く。
 さて、そうしているうちに研究室に美味しい匂いが漂ってきた。

「ほらほら、水分取らないと身体壊すよ?」
 美雨がコーヒーやお茶とともにクッキーを運んできたようだ。
「リフレッシュのための糖分だって大切だ」
 そう言って、クッキーを配ってみる。
「これは……甘い匂い?」
「どこから……?」
 研究することに集中していた者たちも、漂ってくる匂いに反応し始めたようだ。厨房から美味しそうな匂いが漂ってきていることに気づいた者もいる。
「プリンはスプーンで召し上がれ」
 澪は美しく飾り付けられたプリンを持ってきた。カッティングしてハートや動物になったイチゴがジャムとともに添えられている。
「疲れた時こそ食べ慣れた甘いおやつをどうぞ」
 桜花はファンネルケーキやチョコチャンククッキーの他にスモア・マシュマロサンドも。ココアも一緒にいただけば、とてもリラックスできるだろう。
 ファンネルケーキは皆の前で生クリームとフルーツを添える。
 沢山のマリトッツォを抱えてきたのはヘルガだ。
「さあ、どうぞ召し上がれ」
 これだけの量があれば、皆が満足するまで食べることができるはず。
 研究に集中していた者も、甘い匂いに誘われてソワソワとし始める。
「さあさあ召し上がれ。イチゴにブルーベリー、バナナやキウイとフルーツいっぱい用意したよ」
 クレアが持ってきたのはたっぷりのチョコレートと甘酸っぱいフルーツだ。チョコレートフォンデュとしていただくのが良いだろう。
「疲れた体には酸っぱいものがいいって聞くし、甘いものは心も落ち着かせるとかなんとか……」
 とろとろと溶けたチョコレートをかき混ぜる。
 特にチョコレートフォンデュは、一旦研究を止めなければ食べることができないものだ。
 研究員たちは、一人二人と手を止めて美味しいお菓子に集まってきた。
「ファンネルケーキ? 初めて食べるが……。生クリームをトッピングしてくれるのか? ありがとう」
「こっちのクッキーも、ココアも最高だ!」
 クッキーをかじって崩れ落ちる者。
「チョコレートをつけて食べるベリーが、こんなに美味しいとは!!」
 チョコレートを舌で転がしじっくりと味わう者。
「これは……プリンに生クリームが! こっちはいちごが乗っているぞ!」
 プリンを口に運びながら感涙にむせぶ者。
「マリトッツォ……。初めて食べたな。見た目はインパクトがあるが、これは素朴な味わいが感じられる。素晴らしい」
「うっ、うっ、このチョコブラウニーは甘くて、美味いぞ……」
「おれは、いまここで、なにをしていたのか……」
 研究員たちは一心不乱にお菓子を貪り食べる。
 彼らの様子から、非常に危機的な状態に追い込まれていたということが分かった。
「……少し、休憩、しません、か?」
 蒼は気遣うように研究員たちに声をかけた。
 ちなみに蒼の持ってきたチョコブラウニーはスティック状にカットされている。果物やナッツなどで可愛らしく飾り付けされており、見た目にも楽しい。
 見て癒やされ、食べて癒やされ、研究員たちは目を細めた。
「眠いのに寝れないのは辛いよねえ。まったく酷いことをするものだよ」
 ペトニアロトゥシカが運んできたのはココア風味のパウンドケーキだ。
 綺麗に切り分けられており、簡単に食べることができるのもありがたい。
 研究員たちがパウンドケーキに手を伸ばした。
 ペトニアロトゥシカは順番にパウンドケーキを手渡してやる。
「これで正気を取り戻せるといいんだけど」
 そう言いながら、快適な温度を保つふかふかの綿毛を降らせる。ふわっふわで、いかにも飛び込んだら気持ちよさそう。
 これは、この場が眠りを誘う快適な寝床になるということ。ペトニアロトゥシカの作り出した『誘眠綿閨』だ。
「食べ終わって眠くなったら、ゆっくり眠るといいよ」
「そう、です、ね。お腹が膨れたら、きっと眠気も訪れる筈です」
 蒼も何度か頷いた。
 研究員たちは、次々に差し入れられたお菓子を食べている。
 その表情には安らぎが浮かんできていた。
「うまい……」
「ああ……甘いのは……良いな。この濃厚なチョコレートクッキー、生き返るようだ」
「はい、お茶もどうぞ! あなたは紅茶のほうが良いかい?」
 美雨は良いタイミングでお茶を差し出し、研究員たちを落ち着かせる。
「こうやってお茶してリラックスしたら……なんだか眠くならない?」
「……それは……たしかに……」
 狂気を孕んでいるうちは気づかないものだけれど、不眠不休で働いた身体は悲鳴を上げていた。研究員たちは自分の体の状態を思い知る。
 お菓子の差し入れにより正気が戻ってきたのだ。
 彼らは揃って瞼をとろんと落とし始めた。
「よしよし、そのままお休みしちゃおう!」
 美雨は笑顔で休憩場所を指差す。
「むむ……しかし……ふぁ……」
 もはや研究員たちの瞳に狂気はない。
 甘いものを食べて落ち着いた彼らは、ふらふらと『誘眠綿閨』に足を向ける。
「寝床は快適だよ。さあ、心配しないで目を閉じると良いよ」
 ペトニアロトゥシカがそうして誘ってやれば、正気を取り戻した研究員たちが倒れ込むように眠りに落ちた。
「それにしても、あっという間に、食べました、ね」
 言葉通り、猟兵の用意したお菓子はすぐになくなってしまった。相当な量だったのだけれど、それほどまでに彼らは疲れていたのだろう。蒼は感心したように空になったお皿を回収する。
「相当疲れていたのかな」
「そのようですね」
 澪と桜花は顔を見合わせた。
「ここで眠れば、心身ともに回復するでしょう」
 ヘルガの言葉に、仲間たちは頷く。

 研究者たちの寝息が聞こえている。
 この研究室で、研究を続けている者はもういない。
「あとは元凶を倒すだけ。それまでまだ時間が掛かるかもしれないけど、必ず倒すからね」
 すやすやと眠る研究員たちに誓うように、クレアが呟いた。
「これにて一件落着だね!」
 美雨がニコリと微笑む。
 皆が頷いた。
 甘い匂いが漂う研究室では、研究員たちがゆったりとした表情で眠りに落ちている。
 この研究室での研究は食い止められたのだ。
 猟兵たちは研究室の扉をそっと閉じて帰還した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月08日


挿絵イラスト