アポカリプス・ランページ⑦〜軍人と狐
●ロンメル機動陸軍基地
「私は、偉大なるロンメル元帥の名を持つ男。その名に恥じず、私の戦車軍団を最強にしなければならない」
その演説の如き声は戦車ひしめく旧ロズウェル、『ロンメル機動陸軍基地』にあって彼が従える軍人オブリビオンたちすべてに届くものであった。
彼等の規律は見事なものであった。
一糸乱れぬ行軍。軍服の襟元まですべてが規格化されており、鉄の規律で持って己達が軍隊であることに誇りを持っていた。
誰もが口をつぐんでいる。
傾聴していると言ってもいいだろう。
彼等の上官である軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』は言う。
「しかし……無能な兄妹共は、禄に嘘もつけないのか」
『ロンメル・ヴォーテックス』が嘆くように頭を振る。
己こそが現実主義者であり、物事を俯瞰して見ていると言わんばかりの言葉。彼にとって、自分の視界だけが世界であり、自分の言葉だけが真実であった。
彼に従う軍人オブリビオンたちの答えは『イエス』しかない。
「異世界から来た猟兵? そんな奴、いる訳がなかろう。『フィールド・オブ・ナイン』の復活? そんな事、できるわけがない。どちらも十中八九、奴らが私に差し向けた刺客と考えて間違いない」
その言葉に軍人オブリビオンたちが頷く。
彼等はオブリビオンであるからこそ知っているはずだ。己達の敵の名を。けれど、上官である『ロンメル・ヴォーテックス』が否というのならば、白でっても黒である。
ゆえに、彼等黙して語らず。されど、己の上官の言葉だけを信じる者たちである。
軍人とは即ち歯車である。
歯車は語らない。
歯車は歯向かわない。
「まあ、見ていろ。兄妹共が差し向けた刺客は、戦車軍団で完膚なきまでに粉砕してくれる。そして――」
『ロンメル・ヴォーテックス』がぎりぎりと拳を握りしめ、天に衝き上げる。
「そして兄妹の争いを制した私が、世界の王として君臨するのだ――!」
●アポカリプス・ランページ
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。ついに『ヴォーテックス一族』の一角、軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』の所在地、旧ロズウェルにおいて彼の指揮する『戦車軍団』が発見されました」
ナイアルテが語る『ヴォーテックス一族』、軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』は、特定の拠点を保たず『戦車軍団』を動く拠点としている。
彼の所在を掴んだ今こそが、このアポカリプス・ランページの戦いを優位に進めるためのきっかけになるだろう。
「彼は大量の戦車を乗り換えながら、戦車軍団の中心で指揮を執っています。当然、彼の乗る戦車を仕留めたとしても、彼本人を打倒しない限り、いつまでも大量の戦車を乗り継ぎ、圧倒的な数である『戦車軍団』と軍人オブリビオンたちを操り、皆さんを苦しめることになります」
要するに厄介な相手であるということだ。
優れた戦術家である彼の指揮は敵ながら的確である。戦車軍団の砲弾や、歩兵の軍人オブリビオン、それらの多重攻撃に対応しなければ、『ロンメル・ヴォーテックス』に近づくことすらできないだろう。
「この場で彼を打倒しなければ、のらりくらりと躱され続けてしまいます。偉大な軍人の遺伝子から造られた人造人間とも、蘇った本人とも言われている由来、『砂漠の狐』に相応しい立ち回りであると言えるでしょう」
猟兵たちは大量に存在する『戦車軍団』、そして軍人オブリビオンたちの連携を突破し、中心で戦車を駆り、指揮を執る『ロンメル・ヴォーテックス』にどうにかして近づき、打撃を与えなければならない。
これが難しい戦いであることは言うまでもない。
けれど、これらの敵を打倒しなければ、アポカリプスヘルに住まう人びとが苦しめられることは火を見るより明らかである。
それに、彼等のこれまでの行いがどれだけ人々を打ちのめしてきたのか。
「言うまでもありません。どうか、お願いいたします。アポカリプスヘルの人びとが明日を望み、より良いものを明日をつかめるように、軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』を打倒してください」
ナイアルテは頭を再び下げ、猟兵たちを見送る。
此処に『砂漠の狐』ならぬ、戦団の狐狩りが始まるのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『アポカリプス・ランページ』の戦争シナリオとなります。
旧ロズウェル、ロンメル機動陸軍基地にて『戦車軍団』と軍人オブリビオンたちを手繰る軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』を打倒するシナリオになります。
今回の舞台は戦車ひしめく『戦車軍団』です。
その中心で指揮を執る『ロンメル・ヴォーテックス』を打倒するために、『戦車軍団』を突破し、打撃を与えましょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……戦車軍団に対処する。
それでは、『フィールド・オブ・ナイン』の齎すカタストロフを阻止する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『ロンメル・ヴォーテックス』
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POW : 軍人宰相の指揮
自身が操縦する【戦車軍団】の【反応速度】と【耐久力】を増強する。
SPD : アンブッシュ・タクティクス
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【ロンメル率いる戦車軍団の搭載火器】の威力と攻撃回数が3倍になる。
WIZ : 戦場の掟
敵より【指揮する配下の数が多い】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
イラスト:秋原 実
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
ちと、見えている範囲が狭いのう…。
ま、そこを突くのも悪くない。
霹靂に騎乗し空中機動。行くとしよう。
さて、反応速度やらを強化するようだが…【四悪霊・『怪』】は見えぬ攻撃。
どうやって避ける?しかも、雷属性帯びておるから、通電したりするのよなぁ。
うむ…要するに、お主のいう『非現実的な物事』なのよ。これは、悪霊の性であるからな!
ほんに。もう少し情報を精査すればの…その『非現実的』が『現実』だとわかったろうに。
※
霹靂「クエッ」
張り切ってる霹靂である。悪霊だと知っている。
『ロンメル機動陸軍基地』は、膨大な数の戦車によって構成される一大拠点であった。
土煙を挙げて進む戦車の威容は、それだけで見るものに畏怖を与えることだろう。
軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』はこれこそが、敵に与える心理的な脅威として活用しているに過ぎなかった。
規律正しく、昆虫の如き正確な動きを前に人は、言いようのない恐怖を覚えるものである。
理解できないのだ。
個として存在する人間は、目の前で個として存在を捨て、群となる瞬間を直視できない。
「さあ、征け。我が『戦車軍団』よ。我が名の元に、最強たらしめる戦果を持って答えよ!」
『ロンメル・ヴォーテックス』の号令と共に砲弾が己達に迫る猟兵達に降り注ぐ。
あらゆる敵を打倒し、殲滅し、灰燼に帰す。
それが『ロンメル・ヴォーテックス』と『戦車軍団』のやり方であり、それができるだけの物量を持っていたのだ。
しかし、そんな『ロンメル・ヴォーテックス』を前に馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の中の一柱、『侵す者』は呟く。
「ちと、見えている範囲が狭いのう……」
武の天才として戦場を駆け抜けた己と『ロンメル・ヴォーテックス』に違いがあるのだとすれば、それは視野である。
確かに軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』は優秀な軍人なのだろう。
数を持って敵を威圧する術を持っているし、それを如何にして効果的に扱うかにも長けている。だが、己達猟兵を兄妹たちの差し向けた存在としか認識していない。
「ならば、そこを突くのも悪くない」
金色混じりの焦げ茶色の羽毛を持つヒポグリフを駆り『侵す者』が空へと舞い上がる。
しかし、その姿を見て『ロンメル・ヴォーテックス』は即座に対空砲火を敢行する。
「空より来襲するか。ならば対空砲火で撃ち落せ、近づけさせるな」
その言葉通りに『戦車軍団』は動く。
戦車の砲塔が持ち上がり、凄まじい砲撃で持って『侵す者』たちを攻め立てる。集中砲火の如き砲撃を『侵す者』は『霹靂』と呼ぶヒポグリフと共に駆け抜け、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「反応は上々……だが、こちらからの攻撃はどうかな。ポルターガイスト、とも言えるのかもしれんが……」
彼のユーベルコードが発現し、生命力を吸収する、四悪霊の呪詛が解き放たれる。
それは目に見えぬ呪詛であり、『戦車軍団』を雷撃でもって破壊していくのだ。
「砲身がネジ曲がるだと……!? ありえん、何が起こっている!」
「うむ……要するに、お主の言う『非現実的な物事』なのよ。これは、悪霊の性であるからな!」
『侵す者』は混乱に至る『戦車軍団』を尻目に『霹靂』と共に砲火の雨をかい潜って『ロンメル・ヴォーテックス』へと迫る。
「クエッ!」
張り切るように『霹靂』が鳴き、凄まじい勢いで『戦車軍団』の中心に座す『ロンメル・ヴォーテックス』へと迫るのだ。
「ほんに。もう少し情報を精査すればの……」
「何を言うか! 非現実的な! 貴様のような兵種が在ってたまるものか!」
「……その『非現実的』が『現実』だとわかったろうに」
『侵す者』から放たれた呪詛が『ロンメル・ヴォーテックス』を掴み上げ、その生命力を奪っていく。
そのまま大地に叩きつける『侵す者』は『霹靂』と共に空より彼を見下ろす。
例え、どれだけ理不尽なことであっても、目の前で起こる以上現実。
それから目を背け、己の言葉だけを真実とするのならば、その虚実によって打ちのめされるのが軍人である。
武の天才たる彼だからこそ、それは真に迫る言葉であったことだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
スピカ・ネビュラスター
戦車の軍団かあ
これはやりがいがあるね
ラスボスとして、キミに絶望を見せてあげるよ
正面から戦車軍団に突っ込んでいくよ
当然砲撃を受けてやられちゃうだろうけど
その度に『無限に再臨せし災厄』で復活して進んでいくよ
何度倒そうとも復活するボクに対して、
ロンメルはともかく軍団は冷静さを保てるかな?
(恐怖を与える3、悪のカリスマ2)
砲撃にも、機銃にも、体当たりにも耐性が付いて
相手の攻撃がみんな効かなくなったら、あとは蹂躙の時間だよ
あははははは
これがラスボスの恐ろしさだよ!
●デビルキングワールド出身のラスボスで魔女
●変身する姿はお任せ。宇宙とか星のイメージ?
●アドリブ歓迎
軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』の体が宙に舞い上げられ、大地に叩きつけられる瞬間を軍人オブリビオンたちは見逃さなかった。
彼等は即座に彼の身体を抱え、新たなる戦車へと担ぎ上げる。
「うむ! 大事無い! 未だ私は最強である。諸君らの奮闘に期待する!」
猟兵に寄って手痛い打撃を受けたはずの『ロンメル・ヴォーテックス』であったが、未だ健在であることは言うまでもない。
即座に別の車両に乗り込んだ彼が指示を飛ばせば『戦車軍団』の動きはたちまちに獅子奮迅の働きでもって、迫る猟兵たちを寄せ付けんと砲火の雨を降らすのだ。
「戦車の軍団かあ。これはやりがいがあるね」
そう呟いたのはラスボスたるスピカ・ネビュラスター(銀河の魔女・f31393)であった。
彼女は天に輝く星を司る魔女である。
星の力すら支配するラスボスたる彼女は、星の如き球体に乗ってアポカリプスヘルより舞い降りた。
「ラスボスとして、キミに絶望を見せてあげるよ」
彼女は浮遊する星と共に真正面から『戦車軍団』へと突っ込んでいく。
それはあまりにも無謀であり、『ロンメル・ヴォーテックス』もまた、彼女の意図を探りあぐねていた。
これだけの物量を前に単身突撃など自殺と同義である。
放たれた砲撃がスピカを撃ち、爆風の中に彼女を消し飛ばしていく。
だが、爆炎の中より現れたのは、以前と変わらぬスピカの姿であった。彼女は爆炎の中から星と共に飛び出し、高らかに笑う。
「残念だったね。その攻撃はもう効かないよ」
再び直撃弾。
けれど、スピカは笑って飛ぶのだ。
「な、なんなのだ、あれは!? 確かに直撃しているはずだ!」
困惑する『戦車軍団』を尻目にスピカは二度の直撃からも変わらぬ姿で突進してくる。
それは悪夢のような光景であったことだろう。
彼女が絶望を見せると言った言葉は間違いなどではなかったのだ。言う成れば、それは無限に再臨せし災厄(ムゲンニサイリンセシサイヤク)そのもの。
ラスボスたる彼女が見せるユーベルコードの輝きは、たしかに砲撃に寄って倒された自身を、再び復活させる。
しかも、同じ攻撃に対する耐性を持つ姿になることによって、その進撃の速度は徐々に上がっていくのだ。
ジリジリと迫るスピカは、まさに災厄である。
「『ロンメル』はともかく、軍団は冷静さを保てるかな? 例え鉄の規律があったとしても、人は理解できぬものには恐怖を抱くものだ」
スピカの言葉は真実であった。
どれだけ軍人オブリビオンたちが鉄の規律でもって『ロンメル・ヴォーテックス』に従っていたのだとしても、心までは鎧うことはできないのだ。
「あはははは。これがラサ雨ボスの恐ろしさだよ!」
銃撃が、砲撃が、直撃する。
確かに直撃しているのに、スピカは笑って砲火の中から現れる。
徐々に砲撃も銃撃も効かなくなる姿は、『戦車軍団』に恐慌を齎すことだろう。混乱に陥った中、ただ一つの車両だけが機敏に動くのをスピカは見逃さなかった。
「一両だけ、この恐慌の飲まれていない……そこだね、『ロンメル・ヴォーテックス』!」
スピカが飛ぶ。
その身にあるのはウィッチクラフト、『星杖ギャラクシア』の輝き。
銀河の輝きを模した杖は、その身に宿した力を示すよにスピカの姿を持って、宇宙を示す。
暗天の中に煌めく星々の一つ一つが、あらゆる存在よりも巨大な存在であることを示す恐怖。
それをもってスピカは、そのカリスマ性を発露し、穿つウィッチクラフトの一撃で持って『ロンメル・ヴォーテックス』の駆る車両へと一撃を見舞う。
「こ、こんなデタラメがあっていいわけがない! なんなのだ、貴様は!」
撃破された車両から這い出す『ロンメル・ヴォーテックス』が呻き、スピカを見上げる。
其処に在ったのは星を支配するウィッチクラフトによって浮かぶ全天の支配者。
「言ったはずだよ、ボクの名はスピカ・ネビュラスター! ラスボスだってね――!」
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
『砂漠の狐』ロンメル、ね。さすがに聞いたことくらいはあるわ。
本物ならともかく、ただの紛い物ならどうとでも出来る。
取り出しましたるこの大量の折紙、「式神使い」の手にかかれば、人を喰らえるほどの禽獣となりて、厳つい戦車の中の戦車兵に襲いかかりましてございます。
狐配下の個体数カウントが戦車一台ごとか戦車兵一人ごとなのかは知らないけど、能力値三倍効果はこれで潰す。
いい、式たち。装甲を破る必要は無いわ。折紙の身体を使って、装甲の隙間から操縦所へ入り込みなさい。
手下はこれで良し。
「結界術」酸の「属性攻撃」「全力魔法」「範囲攻撃」「呪詛」「仙術」「道術」で紅水陣。
効果範囲は、視界に入る戦車軍団全て!
軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』が駆る戦車の一両が破壊され、這々の体で彼が脱出する。
これしきのことで彼はひるまない。
例え、どれだけ猟兵という存在が規格外の戦力であったのだとしても、数と規律、戦術で持って打倒できると未だに彼は信じていた。
「陣形を立て直せ。すべてがあんなでたらめな存在ばかりではないはずだ。私こそが、最強であるはず。我が血潮には偉大なる軍人の遺伝子が組み込まれているはずだ!」
『ロンメル・ヴォーテックス』にとって、その名は確かに大きな意味を持っているのだろう。
「『砂漠の狐』ロンメル、ね。流石に聞いたことくらいはあるわ」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、その名、その二つ名がどれだけの意味を持つのかを知っている。
けれど、彼女にとって目の前の『戦車軍団』を指揮する軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』はそれではない。
「本物ならともかく、ただの紛い物ならどうとでもできる」
過去は過去に。
今は今に。
過去がどれだけ優れていたのだとしても、過去になった時点で今に踏破される存在であることには代わりはない。
彼女の手から大量の折り紙がばら撒かれる。
「取り出しましたるこの大量の折紙、「式神使い」の手にかかれば、人を喰らえるほどの禽獣となりて、厳つい戦車の中の戦車兵に襲いかかりましてございます」
うやうやしく一礼するゆかりの姿は奇術師そのものであったことだろう。
彼女の力は式神を手繰る力。
折り紙であったとしても式神としての力を与えられたのであれば、『ロンメル・ヴォーテックス』の手繰る『戦車軍団』と互角になろうかという禽獣となって数の猛威、その劣勢を覆すのだ。
「怯むな! 焦げ脅しに過ぎん! 砲撃を加えろ!」
『ロンメル・ヴォーテックス』自身は怯むことはなかった。
それは見事であると言う他無い。けれど、それでもどうにもならぬのが集団戦というものである。
数の猛威が震える『戦車軍団』と軍人オブリビオンたちは、意気揚揚とまではいかない。
彼等と激突するゆかりの式神達。
それを尻目にゆかりは、式神たちに指示を出す。
「そう、撃破する必要はない。元は折り紙の身体。ならば、その薄さでもって装甲の隙間へと入ればいい。
そうして迫る操縦席へと至れば、敵を無力化することなど造作もない。
「『戦車軍団』が、行動不能? どういうことだ!」
喚く『ロンメル・ヴォーテックス』を前にゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
これが彼女の本命である。
彼女の結界術に寄って囲われた『戦車軍団』は紅水陣(コウスイジン)に沈む。
あらゆるものを腐食させる赤い靄の中に取り込まれた『戦車軍団』はすべてを蝕む強酸性の雨によって装甲を腐食させていく。
「雨……紅い雨!? 装甲が腐食する……! 馬鹿な、私の、最強の戦車軍団がこれしきのことで瓦解するなど……!」
信じられない光景であったことだろう。
けれど、これが現実である。
ゆかりの敷いた紅水陣によって一気に『戦車軍団』の一角が崩れていく。
「どうとでもなるとは言ったけど、ここまで見事にハマってくれるとはね。やはり紛い物ね、あなた。名前だけなぞっただけなら、名乗るのをやめておきなさい」
それは過去の人物の名にも泥を塗る行いだとゆかりは言う。
それを『ロンメル・ヴォーテックス』は認められないだろう。
紅い雨に打たれ、腐食していく戦車の中で聞くに耐えない怒号をゆかりは無視し、『戦車軍団』を赤い靄の中へと沈ませるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
えー…めっちゃ兄弟仲悪いじゃんこいつら…
びっくりするくらい連携が取れてない…
まあだからこそ、付け入る隙が多いんだけどさ
悪いね、こっちは時間が限られてるんだ
一気に突破させて貰うよ!
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
数が多いなら、こっちも数で対抗するだけ
【断章・不死鳥召喚〈超越進化〉】起動
召喚した不死鳥達で戦車軍団にアタック
それぞれ1台ずつ、まずは翼で砲塔を切り裂き炎で機体を『焼却』!
手当たり次第やっちゃって!
私は『オーラ防御』でシールドを貼り、更に敵の攻撃を『武器受け』しながら動きの良い奴を探して『斬撃波』で攻撃
さあてと、軍人宰相様は何処かな?
きっと動きの良い奴がそれだね
「えー……めっちゃ兄弟仲悪いじゃんこいつら……びっくりするくらい連携がとれてない……」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)はあまりの『ヴォーテックス一族』間における兄弟仲の悪さにドン引きしていた。
正直に行って、玲は自分が『ヴォーテックス一族』を少々高く買いかぶっていたことを知る。
本来であれば、『ヴォーテックス一族』が一枚岩で行動しているのならば、相当に難敵であり攻略の糸口を見つけるのにも難儀をしたことだろう。
けれど、軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』は、猟兵の存在さえも兄妹たちの策略の一つでしかないと言い放っていた。
あまりにも視野が狭すぎる。
周囲にイエスマンしかいなければこうなってしまうのだという良い例であった。
「まあだからこそ、付け入る隙が多いんだけどさ」
玲は二振りの模造神器を抜き払う。
青い残光が戦場に煌めき、『戦車軍団』と軍人オブリビオンたちに相対する。
数の圧倒的不利は今更である。
されど、玲にはユーベルコードがある。
擬似的であれUDCの力を再現することのできる彼女にとって、数とは意味を成さないものである。
「悪いね、こっちは時間が限られているんだ」
煌めくユーベルコードの名は断章・不死鳥召喚〈超越進化〉(フラグメント・フェニックスドライブ・エクステンド)。
「偽書・焔神起動。断章・不死鳥召喚の章、深層領域閲覧。システム起動」
彼女の周囲を飛ぶのは蒼炎。
否、蒼炎で構成された不死鳥である。その翼はすべてを切り裂く蒼炎。
あらゆるものが不死鳥の前では紙くずと同然である。
「一気に突破させてもらうよ!」
玲の号令によって蒼炎の不死鳥が『戦車軍団』と真っ向から激突する。
砲火の雨は不死鳥にとっては無意味である。砲弾も銃弾もすべてが蒼炎の中に消えていく。
あらゆるものを切り裂く蒼炎の翼は、戦車の砲塔さえも切り裂き、内部から尽きることのない蒼炎でもって焼き尽くすのだ。
「手当たり次第やっちゃって!」
「怯むな! 敵の数は少ない! 我が方の損害を省みるな。取り囲み、奴らを殲滅しろ!」
『ロンメル・ヴォーテックス』の手腕もまた確かなものであった。
これまで猟兵達に翻弄されてこそいたが、それでも指揮を取り続けることは並大抵のものではない。
並のし機関であれば、このまま彼等を放置して逃げ出していても仕方のないくらい、この戦場は猟兵達によってコントロールされている。
「チィッ! これが兄妹たちの雇った刺客だとでもいうのか! 良い奴隷でも手に入れたか!」
『ロンメル・ヴォーテックス』が戦車の中の照準を玲に向ける。
砲弾が放たれ、玲へと激突するが、その一撃は玲の張り巡らされたオーラの障壁に寄って防がれてしまう。
爆風が遊ぶ中、玲の瞳が照準器越しに『ロンメル・ヴォーテックス』とかち合う。
怖気が走った瞬間だった。
「見つけた」
この混乱の最中にあって己に砲撃を当ててくる手腕。
それが車両に身を隠した『ロンメル・ヴォーテックス』であると玲は看破したのだ。
一瞬で標的を見定めた彼女は不死鳥たちと共に妨害しようとする『戦車軍団』を蹴散らし、凄まじ勢いで『ロンメル・ヴォーテックス』の駆る戦車に模造神器の斬撃を放つ。
「ほら、軍人宰相様。弾幕薄いよ、何やってんのってヤツだよ」
玲の斬撃の一撃が車両を両断し、爆炎を巻き上がらせる。
刹那に彼女は見た。
軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』の姿を。驚愕に見開かれた瞳。
これだけの現実を見せつけられても尚、非現実的であると信じて疑わない。
己の敗北すら察することのできぬ軍人に明日など来ない。
そういうように玲のはなった模造神器の青い残光が『ロンメル・ヴォーテックス』を袈裟懸けに斬りつけるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
レイ・アイオライト
つまり後ろで踏ん反り返ってる指揮官を殺れば良いってことね。
迅速に、的確に寝首を掻きにいきましょうか。
とりあえず戦車軍団一つ一つに対処してたら面倒よね。UCを発動させて、相手の戦車の砲撃一撃をわざと食らったように見せかけて、『早業・見切り』影憑きの力で『オーラ防御』、死んだように見せかけて、UCの力で環境に潜伏、隠蔽、『目立たない・闇に紛れる』ように立ち回るわ。
後は、戦車の間を隠蔽したまますり抜けてロンメルへ。真後ろから刀を突きつけて『暗殺』よ。
戦車の攻撃の威力高すぎるのよ。死んだかどうかも確認できないなんて、それこそ指揮官失格じゃないかしら?
で、どう?非現実を目にした感想は?
猟兵による軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』へ与えられた打撃は、すでに彼に敗北を悟らせるものであった。
けれど、彼にとって敗北とは存在意義を失うことと同義であった。
彼の言葉だけが真実であるというのならば、それは受け入れがたき敗北であったことだろう。
「馬鹿な……! 私はどの兄妹よりも優秀なはずだ。我が『戦車軍団』こそが最強のはず……! だというのに!」
袈裟懸けに刻まれた斬撃の痕が、彼の敗北を如実に示していた。
彼は敗北を是としない。
認めるわけにはいかないのだ。己こそがアポカリプスヘルの支配者に相応しいと信じて疑わぬからこそ、彼は敗北を認めない。
「『戦車軍団』よ、我が指揮に従え。旧市街地の残骸を利用しろ。散会し、奴らを挟撃せよ!」
『ロンメル・ヴォーテックス』の瞳に意志が宿る。
いや、それは闘志と呼ぶべきものであったかもしれない。どちらにせよ、彼に後退の二文字がないのであればこそ、ここで猟兵たちを殲滅することを遅かれ早かれ選んでいたことだろう。
「とは言え、あまりにも判断が遅かったわね」
レイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)は、『ロンメル・ヴォーテックス』が旧ロズウェルの市街地の残骸を利用して猟兵たちを誘い込み挟撃することを読み切っていた。
彼等は己たちが猟兵を誘い込んだと思っているだろう。
だが、事実は違う。
レイたち猟兵の行動により、彼等は誘い込まれたのだ。
「迅速に、的確に寝首を掻きにいきましょうか」
彼女は市街地の中を疾走る。
その影は『ロンメル・ヴォーテックス』の照準器に映る。瞬時に砲塔が彼女へと向けられ、砲弾が飛ぶ。
凄まじい爆風が吹き荒れ、レイの影は消し飛ぶ。
「ふ、フハハ! やはりな! 私は優秀だ! やれる! やれるはずなのだ! 続け!」
一人の猟兵を撃破したという高揚が扇状に広がっていく。
進むは意気揚々と。
されど、それがレイの齎した幻影であることを彼はまだ知らない。
「解・影憑跳梁(シャドウ・アダプト)……『影憑き』の力、此処で使わせてもらうわ」
レイは砲弾の爆風に消えたと見せかけ、如何なる環境に潜伏する力によって、闇に紛れていた。
市街地のあちこちで残骸が影を落としている。
その中へ溶け込むことなど、彼女にとっては造作もないことであった。
『ロンメル・ヴォーテックス』は彼女を撃破したと思っている。今の砲撃でレイは確信していた。
確かに指揮官というものは戦団の後ろでふんぞり返っていればいい。
けれど、それは逆に『ロンメル・ヴォーテックス』が操縦する車両を特定するのに十分な材料を与えていた。
「そうだ、行け! 奴らを殲滅するのだ!」
高揚した『ロンメル・ヴォーテックス』が車両から身を乗り出し叫ぶ。
その背後に音もなく忍び寄るのはレイであった。
彼女の瞳はユーベルコードに輝いていた。
「戦車の攻撃の威力高すぎるのよ。死んだかどうかも確認できないなんて、それこそ指揮官失格じゃないかしら?」
「――!?」
それは突然の一撃であった。
放たれた一撃は『ロンメル・ヴォーテックス』の首を刎ねようとして既のところで躱される。
しかし、不意の一撃に彼の背中には確かに一撃が加えられていた。
鮮血が舞う。
その血飛沫の一滴すら身に落とすことなくレイは影へと飛ぶ。
不可視なる暗殺者。
それはこれだけの『戦車軍団』に囲まれていながら、いつでも『ロンメル・ヴォーテックス』の首を刎ねることなど造作も無いことを示していた。
「で、どう? 非現実を目にした感想は?」
レイの言葉が姿無く聞こえてくる。
その言葉に『ロンメル・ヴォーテックス』は、言葉に出来ぬ恐怖に絶叫するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
猟兵の存在を信じないオブリビオンなんて初めて見た気がしますよ、せんせー
(「そうね。でも油断も慢心もない強敵よ。注意なさい」と頭の中の教導虫が話しかける)
はい!
(「さて、どうする?」)
戦車軍団の攻撃は『衝撃波』を使った『ダッシュ』で回避し『オーラ防御』で作ったオーラバリアで着弾の衝撃波を防ぎます!
そしてUC【影蝕虫】で運転兵さんに戦車の影を操っていただき、真下から攻撃!
それを繰り返して敵の動きに乱れが生じたらオーラバリアに『迷彩』効果を付与し『目立たない』ようにしたあと敵司令官を強襲します!
(「なるほどいけるかもね...ただとても危険よ?大丈夫?」)
大丈夫!絶対に勝ちます!
オブリビオンと猟兵とは滅ぼし、滅ぼされる関係しかない。
それは猟兵として生きる者にとっては当然ことであり、オブリビオンにとってもまた同じ理である。
だからこそ、『ヴォーテックス一族』である軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』が猟兵の存在を信じていないことに黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は首を傾げていた。
「猟兵の存在を信じないオブリビオンなんて初めて気がしますよ、せんせー」
そう呼びかけるのは、教導虫である黒影である。
確かに兵庫の言う通りであった。
『ロンメル・ヴォーテックス』は、猟兵の存在を信じていない。
それどころか、猟兵の存在や『フィールド・オブ・ナイン』の存在さえも兄妹たちが自分を謀るためのまやかしであるとさえ思っていたのだ。
あまりに愚かであると言うほかない。
視野狭窄。言葉にすれば散々な物言いになってしまう。
「そうね。でも油断も慢心もない強敵よ。注意なさい」
頭の中の教導虫、黒影が言う。確かに彼女の言う通りだと兵庫は頷く。自身が最強であることを疑わぬ存在は、たしかに揺らぐことのない強みである。
「はい!」
とは言え、どうするべきであろうか。
『戦車軍団』は未だ健在。
『ロンメル・ヴォーテックス』は痛手を負っているものの、旧ロズウェルの市街地の残骸を盾に『戦車軍団』と共に遮蔽物を利用した戦いに猟兵たちを引きずり込んでいる。
砲撃の雨が兵庫たちを寄せ付けぬと降り注ぐ。
「こうします!」
兵庫の身を覆うのはオーラの防御。
軍人オブリビオンたちが放つ銃撃や、砲撃の砲弾を衝撃波を纏いながら駆け抜け躱し、砲弾が着弾したときの衝撃波をオーラで防ぎながら疾走る。
「運転兵さんの神業の影乗りテクニックとくと見やがれ!」
さらにユーベルコードが彼の瞳に輝きを灯す。
それは、影蝕虫(エイショクチュウ)。影を物質化する触覚を生やし、『戦車軍団』の足元から影による攻撃で勢いよく跳ね上げるのだ。
重たい戦車であっても難なく吹き飛ばす影蝕虫の一撃は、次々と『戦車軍団』の車両を吹き飛ばしていくのだ。
「敵を混乱させるのね。良い手だわ。となれば、敵の指揮官は次に……」
「――はい! 必ず後退して体勢を整えようとします! だから、そいつを!」
兵庫は戦場の動きをつぶさに観察していた。
『戦車軍団』の車両はどれも同じものであり、見分けが付かない。
昆虫の群れのような精密さでもって整然と行動している。それは本来人にとっては不気味ささえ覚えるものであったが、兵庫にとっては違う。
その整然さ故に、その群れの長を直感的に理解するのだ。
「なるほどね……でもとても危険よ? 大丈夫?」
黒影がささやく。
けれど、兵庫の瞳はユーベルコードに輝いている。
確かに危険な行動かもしれない。単身、敵指揮官を狙って、軍団の中をかい潜っていくのだから。
「でも一人じゃないですから!」
その言葉と共に兵庫が駆ける。
『戦車軍団』から放たれる砲弾の雨を躱しながら、一気に進む。敵は最後尾。ならばこそ、オーラのバリアに迷彩を施し、爆風の中を目立たぬように突き進む。
「捉えた! 影蝕虫さん!」
その言葉と共にユーベルコードが発現する。
あの車両だという確信が持てる。あれだ、あの車両! と強い思いに応えるように影より触覚が突き立てられるように飛び出し、最後尾の車両を吹き飛ばす。
「――! ピンポイントで私を狙うだと!?」
そこに兵庫が飛び込み、脱出する『ロンメル・ヴォーテックス』を捉える。
放たれる拳の一撃が『ロンメル・ヴォーテックス』へと叩き込まれ、その体が大地に打ち付けられる。
「やりましたよ、先生!」
ガッツポーズを決め、兵庫は危険な戦いを制したことを誇らしげに笑顔になるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
陸郷・める
☆める(戦車乗りの少女)
★7号(偽神兵器の生体コアにされた元ヒャッハー)
★戦車同士だが、数と耐久力じゃ負けてるわけだ。
なら足回りで挑むしかねぇよなぁ?
☆……V.E.接続、《リミッター解除、限界突破》…いくよ……【タンクアサルト】!
★どうせ本命は奴一人、強化した機動力で《ジャンプ》しては戦車共に《重量》載せた《踏みつけ》をかまし、障害物は『ドリルアーム』で穴を開け、道中『特製グレネード』の煙幕弾の目潰しも使う。歩兵相手には機銃だな
寄り道はなし、本命めざし一直線で行くぞ。
奴までたどり着ければ乗ってる戦車を勢い付けて蹴り飛ばし、
出てきた奴本人にガトリング砲塔の掃射ぶち込むか思い切り“踏む”ぜ
戦車同士の戦いで優劣を決めるのは技量であることは一つの要因に過ぎない。
ならば、性能差であろうか。
それもまた要因の一つだ。
どれもが勝利の方程式を汲み上げる要素にほかならず、けれど決定的なものには成りえない。
「これが猟兵だとでも言うのか! こんな非現実的な存在が!」
軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』はうめいていた。
己の『戦車軍団』が尽く打ち破られていることも、猟兵と呼ばれる存在が己に迫り、痛手を叩き込んでくることも、全てが現実とは思えなかった。
すでに敗北は決定しているようなものであった。
けれど、彼は敗北を認められない。認めるわけがない。
「私が最強のはずだ! もっとも兄妹たちの中で優秀なのだ! だからこそ、アポカリプスヘルを納めるに値するはずなのだ! なのに何故!」
その言葉はまるで現実を見ていない言葉であった。
それを遮るように猟兵の駆る六脚を持つ『実験兵器6号改』のはなった砲撃が爆炎を上げる。
『戦車同士だが、数と耐久力じゃ負けてるわけだ』
その言葉は『実験兵器6号改』の生体コアである7号より放たれた言葉であった。確かに『戦車軍団』と自分たちでは数でも負けている。
あまつさえは耐久力でも差がある。
それはあくまで『ロンメル・ヴォーテックス』が駆る車両だけに限定した話だ。それでも不利は承知の上である。
此処で退く理由など何処にもない。
ならばどうするか?
『なら足回りで挑むしかねぇよなぁ?』
7号の言葉に陸郷・める(死念動力実験成功体6号・f26600)は応える。
彼女はデッドマンであり、保護殻の機能を持つ『実験兵器6号改』の中で、己の身体を突き動かす『魂の衝動』を電力に変えるヴォルテックスエンジンを接続する。
「……ヴォルテックエンジン接続、リミッター解除、限界突破……いくよ……7号、アーム、よろしく……!」
『応よ! 戦車が愚鈍で砲撃しか無いと思ったら大間違いだコラァ!』
ヒャッハー! と声が響きそうなほどのテンションでめると7号が戦場を突き進む。
彼等は多脚戦車である。
キャタピラによる走破能力を更に向上させた、戦場の高低差すら無視するように跳ねる姿は、戦場の蜘蛛そのものであった。
「――!? なんだあの車両は!? いや、車両なのか……!?」
『ロンメル・ヴォーテックス』は目をむいたことだろう。
めると7号、そして『実験兵器6号改』は人機一体である。
雲が滑るように凄まじい速度を得て跳躍した多脚の一撃が『戦車軍団』の車両を一撃の元貫き、沈黙させる。
どれだけ旧ロズウェル市街地の瓦礫を利用しようとしたても意味がない。
六脚はただ悪路を走破するためだけではない。多彩な武装を扱うためにあるのだ。ドリルアームが唸りを上げ、障害物の残骸さえも穿ち、吹き飛ばしながら『戦車軍団』を蹴散らして進む。
『そら! 特製グレネードをもらっときな!』
奇妙な手榴弾が放たれ、煙幕でもって歩兵である軍人オブリビオンたちを翻弄し、機銃の掃射で一掃する。
『寄り道はなし、本命目指して一直線で行くぞ!』
叫ぶ7号の咆哮と共にめるは己の中にあるヴォルテックエンジンを唸らせる。例え、数と装甲で負けていたとしても、自分たちには機動力が在る。
それが在る限り自分たちは負けるつもりなんてない。
「こんな、こんなことが――!」
『ロンメル・ヴォーテックス』の駆る車両を捉えた7号が勢いをつけた多脚の一脚で車両を蹴り飛ばし、吹き飛ばされるようにして飛び出した『ロンメル・ヴォーテックス』へとガトリング砲塔を向け、弾丸を見舞う。
さらに、迫る多脚戦車は『ロンメル・ヴォーテックス』を逃さない。
普通の車両であれば、こんな柔軟な動きなどできようはずがない。そう、何をスルかなど決まっている。
「いけ……!」
『ああ、“踏む”ぜ!』
振り下ろされた脚部の一撃が『ロンメル・ヴォーテックス』を大地へと穿つ。
それは耐え難い屈辱と共に彼を大地へと沈ませるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
相手は戦車軍団か。
拠点を持たないってことだけど、整備とか補給とかどうなってるんだろう?
そこもちょっと気にはなるけど、まずは戦車だね。
戦車は陸上なら無敵に近い強さだけど、天敵もいるよね
それは、攻撃ヘリ! 空からの攻撃がいちばん効果的だよね。
VTOL機の【リオ・セレステ】ならヘリと同じような動きで、戦車を攻撃できるよね。
対空砲火はもちろんあると思うけど、そこは【等価具現】で無効化。
こっちは【M.P.M.S】を対地モードにして、ロケットランチャーと対地ミサイルで攻撃。
セレステからも30mmバルカンそ掃射して戦車と歩兵を倒していこうかな。
ロンメルさん、戦車軍団の長として戦車といっしょに沈めてあげるよ。
軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』が率いる『ロンメル機動陸軍』は拠点を保たぬ軍団である。
であれば、如何にして車両の燃料や整備を行っているのだろうかと考えるのは当然の帰結であったことだろう。
整備は軍人オブリビオンたちが行うのだとしても、燃料の調達はどうするのだろうか。答えは簡単である。
「ちょっと気にはなっていたけれど……」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は理解した。
いや、理解したくなかったのかもしれない。
そう、『ロンメル機動陸軍』は略奪しながら拠点を移動していたのだ。アポカリプスヘルに生きる人々が紡いできた拠点。強襲しては略奪を繰り返し、絶えず移動する。
それが『ロンメル・ヴォーテックス』の為したことである。
どれだけの拠点が滅ぼされたのかなんて理緒は今考えることはできなかった。
「まずは貴方達から、だよ!」
戦車は陸上において無敵に近い強さを持つ。
けれど、同時に天敵も存在しているのだ。それは――。
「『リオ・セレステ』!」
彼女が駆るガンシップはVTOL機。即ち、垂直離着陸機である。滑走路を必要とせずに発進し、空中を自由自在に起動するガンシップは戦車の天敵である攻撃ヘリと同じ役割を果たすことができる。
彼女は『リオ・セレステ』を駆り、空から一方的に『戦車軍団』を襲う。
対空砲火があれど、理緒の前にはあまりにも無意味であった。
「同位、検索……具現化シークエンス起動」
等価具現(トウカグゲン)。
それは電脳世界の情報を元に具現化した等価存在である砲撃を放ち、相殺する。
敵からすれば自由自在に対空砲火を躱し、無効化し、一方的に攻撃を加えてくる悪夢のような存在であったことだろう。
「でも、それは貴方達がしてきたことと同じでしょう! 人から奪う必要もないものを奪って!」
どれだけの人々が生命を喪っただろうか。
オブリビオンは生存のための食料を必要としない。奪う必要がないのだ。けれど、奪うという根源的な欲求を満たすためだけにオブリビオンは人々からあらゆるものを奪う。
それがアポカリプスヘルの理だというのならば、理緒はそれを否定するだろう。
「馬鹿な! あんな兵器が存在しているだと!? 我々の天敵そのものではないか! あり得ない! あり得ない! こんなことなど!」
『ロンメル・ヴォーテックス』が喚くのが聞こえる。
理緒はガンシップである『リオ・セレステ』と共に戦場を駆け抜け、ミサイルランチャーから放たれる対地ミサイルで車両を蹂躙しながら、機銃で持って歩兵である軍人オブリビオンたちを掃討していく。
「ロンメウさん、戦車軍団の長として、戦車と一緒に沈めてあげるよ」
理緒はターゲットスコープに『ロンメル・ヴォーテックス』を見た。
これま奪ってきたもの全ての報いを受けてもらわなければならない。
喪われる必要のなかった生命。
それら全てを取り戻すことができないのであれば、せめて、手向けとして『ロンメル・ヴォーテックス』を滅ぼさなければならない。
引き金を引いた瞬間、対地ミサイルが走り、『ロンメル・ヴォーテックス』を乗せた車両ごと爆発に飲み込む。
理緒は、その爆炎が篝火となることを祈らずにはいられなかっただろう。
人々が明日を望むように。
理緒もまたアポカリプスヘルの安寧を望み、『リオ・セレステ』と共に残存する『戦車軍団』を追撃するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
まあ、信じるも信じないも自由だけど。
あたしが居ることは別に変わったりしないしね。
さて、戦車軍団が数が多くてたどり着くのが面倒なら、
空を飛んでいくのが手っ取り早いかねえ。
【雷身飛翔】を使って空を飛ぶと同時に、
戦場の敵全てへの電撃で生身の敵には痺れによるマヒ、
機械には生体パルスによる不調を与えるよ。
痺れた手と狂った計器じゃあそうそう当たらないだろうし、
後は空からロンメルの居場所に向かって飛んでいけばいいかな。
たどり着いたらそのまま全速力で体当たりを仕掛けようか。
理解の外の怪物と扱われることはそれなりにあったけど、
まあアンタ相手ならそう思われても気にはならないかな。
「馬鹿な……私が敗れる……? こんな非現実的なことがあっていいのか? いや、いわけがない! ありえないのだ!」
燃え盛る戦車車両から這い出し、『ロンメル・ヴォーテックス』は新たなる戦車へと乗り込む。
まだ己は負けていない。
負けていないのだと敗北を認めない。その心の強さは、己の中にある偉大な軍人の遺伝子を知るからであろう。
彼にとって、それこそが己の存在意義であったことだろう。
優秀な者が支配する世界こそ正しいと信じるのならば、己こそがアポカリプスヘルの支配者であるというのだ。
「まあ、信じるも信じないも自由だけど。あたしが居ることは別に変わったりしないしね」
異形なるキマイラたるペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は『戦車軍団』を前にして言い放つ。
確かに非現実的だと思うのだろう。
けれど、ペトニアロトゥシカは此処に居る。存在している。
それは誰にも消し去ることのできない真実だ。
だからこそ、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
全身が雷光に覆われた姿へと変貌したペトニアロトゥシカは、雷身飛翔(エレクトロ・ドライブ)と呼ばれるユーベルコードを発現させる。
それは凄まじい速度で戦場を舞い飛ぶ力であり、常に身体に纏った雷光より放たれる雷撃でもって『戦車軍団』を翻弄していく。
歩兵である軍人オブリビオンたちは雷撃によって麻痺し、歩兵としての役割を果たせなくなる。
「飛ばして行くよ!」
戦闘車両と言えど、その中身は機械による制御が行われているだろう。ならばこそ、迸る生体パルスによって、その機械に不調を与える。
連携が途切れた軍団ほど脆いものはない。
蹂躙するように非現実の象徴とも言うべき異形を奮ってペトニアロトゥシカは、現実を謳う。
「別にいいんだよ。非現実的な存在だって認めなくたって」
ペトニアロトゥシカは疾走る。
電撃に寄って麻痺した軍人オブリビオンたちをなぎ倒し、戦車をひっくり返しては吹き飛ばしていく。
それはまさに非現実そのものであったことだろう。
理不尽の権化とも言うべき戦う姿であった。
だからこそ、今彼女は此処に居る。誰もが彼女を否定などできやしないのだ。
「こ、こんな、怪物が、いるわけが!」
『ロンメル・ヴォーテックス』が呻く。
彼が駆る戦車を拳の一撃で持って装甲を引き剥がし、砲塔を投げ捨てる。
雷光まとう獣の如き姿は、恐怖を齎すことだろう。
理解の及ばぬ怪物。
それはこれまでペトニアロトゥシカが辿ってきた道と同じものであったことだろう。
それに傷つくこともあっただろう。
人里に近づくこともできなかった過去があった。けれど、彼女は知っている。己と同じ様に戦う存在がいることを。
それは一人ではないということであろう。
同じ猟兵たちがいる。戦場に、世界に、あらゆる場所に居るのだ。
だからこそ、彼女は『ロンメル・ヴォーテックス』に怪物と呼ばれてもなんら構うことなどなかったのだ。
「まあ、アンタ相手ならそう思われても気にはならないかな」
振るわれる雷撃纏った打撃の一撃が『ロンメル・ヴォーテックス』を打ち据え、吹き飛ばす。
もう彼女は世界に己の存在を問うことはないだろう。
誰からも否定されることもない。
今此処に彼女は居る。それを世界が知る。人が知る。猟兵が知る。
そこに生ある限り、彼女は彼女自身の生を謳うのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
百海・胡麦
おや、軍人さん?
此処らは未だ知らぬが、好きな人らが護りたいそうでね
そりゃあいい処、荒らされちゃね
「虎尾」に乗って大将に近づくよ
片手にゃ「機算」悪魔の国ゆかりの仕込み傘さね
砲弾は速くまっすぐ、ようく見な
ちゃんと躱して、爆風の勢いで懐に入り込むんだ
「機算」今だよ! キャタピラにそこらの岩と弾き飛ばして
呪殺弾と共に絡ませたいね、鈍るだろ?
周りも狙うなら……ああ、覗き穴
狙い撃て、塞いでやりな!
音を立て大将を盾に……と思うたが厄介だね、先に全部戴こうか
「息名」で砲弾を丸と包み、食えるだけ
『謡牙』——ああ、おいしいね。魔犬とバイク、共に走れそうだ
さ。味は覚えた。手足から削ごうか。……其方はどんな味だろね?
旧ロズウェルの市街地は廃墟であった。
すでに文明の痕しか残っておらず、そこに人の営みはどこにもなかった。
全ては暗黒の竜巻、オブリビオンストームによるものであった。オブリビオンは奪う。何もかも奪うのだ。
人が望んだ明日さえも飲み込んでいく。
その先鋒たる『ヴォーテックス一族』、軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』はあまりの非現実的な光景にうめいていた。
猟兵達による攻撃は彼の身体を著しく痛めつけていた。
けれど、未だ現実を認めぬ、敗北を認めぬ強靭なる精神力だけは評価してもよかったのかもしれない。
「まだだ! まだ『戦車軍団』が健在であるというのならば、私は、負けてなど、いない!」
吠える『ロンメル・ヴォーテックス』の駆る戦車が凄まじ勢いで猟兵たちに砲火の雨を降らせる。
爆風が吹き荒れ、市街地の痕すら消し飛ばすように炎で染め上げていくのだ。
そんな爆発の音に紛れて響く声があった。
「おや、軍人さん?」
それはあまりにも場違いな声であったことだろう。
百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)がモンスターバイクを駆り、『ロンメル・ヴォーテックス』の駆る戦車に対峙する。
いつの間にと、『ロンメル・ヴォーテックス』はたじろいだ。
それもそのはずだ。何故、自分がこの車両に乗っているとわかったのだ。
それに戦場に似つわ香椎大きな和傘。何もかもが場違いであった。
「なんだ、貴様は!」
砲塔が向き、砲弾が放たれる。その砲撃の速度は目を回すようなものであったが、胡麦は笑みを絶やさずに、その瞳で弾頭が己に迫るのを見た。
ようく見たのだ。
どれだけ早いのだとしても砲撃は真っ直ぐにしか飛ばない。
ならばこそ、よく見てかわせばいい。衝撃波が頬を掠め、爆風が背中を押す。それに抗うことなく、爆風の勢いに身を任せて飛ぶ。
彼女が戦う理由はシンプルだ。
この世界、アポカリプスヘルは未だ知らぬ事が多い。けれど、彼女が好きな人らが護りたいと願ったのだ。
ならば、そこは良い場所なのだろう。それを荒らされるのはちょっと、と彼女は少し散歩に出かけるくらいの気楽さでもって戦場に立つ。
それは『ロンメル・ヴォーテックス』にとって理解の外であったことだろう。
「『機算』今だよ!」
和傘が一瞬で仕込んでいた呪殺弾と共に『ロンメル・ヴォーテックス』の駆る車両のキャタピラに岩ごと吹き飛ばす。
如何に強固なキャタピラと言えど、岩が挟まればわずかに動きは鈍るし、止まる。
さらに彼女は目ざとく見つけていたのだ。
こちらをにらみつける『ロンメル・ヴォーテックス』の視線、その在りかを。
「ああ、覗き穴。狙い撃て、塞いでやりな!」
放たれた呪殺弾と瓦礫が『ロンメル・ヴォーテックス』が覗く視界を塞ぐ。
一瞬の攻防であった。
だが、その一瞬は永遠にも等しい。
彼女のユーベルコードが瞳に輝く。
「戴こうか」
呟く一言で万物を操る、極彩の光輪を背負い空舞う魔犬へと姿を変える。
それこそが謡牙(ウタイキバ)。
「――ああ、おいしいね」
剥ぎ取られた『戦車軍団』の車両の装甲。
それを平らげ、彼女は微笑んだ。味は覚えた。ならばこそ、すでに彼女にとって『戦車軍団』の車両は敵ですらない。
魔犬とモンスターバイクが共に駆ける姿は、『戦車軍団』にとっては悪夢そのものであったことだろう。
蹂躙するように捕食され、食い破られ、霧散していくオブリビオンたち。
それらは彼女が護りたいと願った好きな人達に報いることができる唯一であったのかもしれない。
『ロンメル・ヴォーテックス』を討ち、世界に人々が望んだ明日を掴む。
そのために彼女は極彩の光輪を輝かせ、『ロンメル・ヴォーテックス』に非現実という現実を突きつけるのだ。
「……其方はどんな味だろうね――?」
大成功
🔵🔵🔵
ナイ・デス
教えてあげましょうか
過去からの侵略者は、骸の海へ還るべきだって
還すのが、私達猟兵だって
みんなで、今を守りましょう……!
彫像約千体を変形合体させたキャバリア擬き「ダイウルゴス」から光を放ち、大気、大地に呼びかけます
ここに、フロンティア・ラインを!
大地大気が一時的に、黒竜ダイウルゴスの群れとなって「ダイウルゴス」と合体していく
キャバリア擬きの5mだったのが、10mに
連続発動で更に更に大きく
戦車軍団の砲撃も、歩兵の攻撃もものともしない怪獣のような、巨大な竜に
ただ歩くだけでも【蹂躙、重量攻撃】蹴散らし
【念動力】を束ねた、不可視のブレスでオブリビオンだけを消滅させていきましょう
軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』が手繰る『戦車軍団』は猟兵達によって蹂躙されていた。
それは想定外の事態であったし、到底受け入れがたい現実であった。
彼にとって、非現実そのもの。
これが『ヴォーテックス一族』、己の兄妹たちの差し向けた刺客であるというのならば、なおさら許しがたい光景であったことだろう。
「私は受け入れない。これが現実なのだと。私は負けていない。負けるはずがない。何故、こんなことが――!」
猟兵達による打撃に寄って身は痛手を負っている。
けれど、それでも、現実を認めぬ精神力が『ロンメル・ヴォーテックス』を支えているのだ。
彼は敗北を是としない。
その身が敗北を認めるのは消滅した時だけであろう。故に、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は呟くように言うのだ。
「教えてあげましょうか。過去からのの侵略者は、骸の海に還るべきだって。還すのが、私達猟兵だって」
その言葉はナイの偽らざる思いであったことだろう。
皆で未来を守る。
アポカリプスヘルの人々が望む明日を掴み取る。今を守ることが、それに繋がるのであれば、ナイはためらうことはないだろう。
彼の頭上には彫像約千体を変形合体させたキャバリア擬き『ダイウルゴス』から光を放ち、大気、大地に呼びかける。
それは文明守護竜(フロンティア・ライン)。
「今を守る力を、みんなに。世界を、守りましょう。私達は、文明を守護する竜、ダイウルゴスです……!」
ここにフロンティア・ラインが形成される。
徐々に巨大に成っていく巨竜の如き彫像。
それは如何なる攻撃を受けたとしても、瞬時に念動力によって倍の体長へと変わっていく。
巨大であることは如何なる攻撃をも矮小化するということである。
『戦車軍団』の砲撃など、物ともしない。
歩兵の攻撃も当然のように意にも介さない。
「まるで、怪獣……だとでも言うのか! これが!」
『ロンメル・ヴォーテックス』が呻く。
目の前には非現実の塊が存在している。形成される巨竜の姿は、徐々に質量すら増して天を衝く巨大さへと変わる。
足を踏み出すだけで質量兵器と化した一撃が『戦車軍団』に振るわれるだろう。
「どれだけあなたが優秀なのだとしても、支配する理由には成っていません。人が望む明日を得るためには」
巨竜『ダイウルゴス』が咆哮する。
息を吸い込むような動作の後、放たれるは念動力を束ねた不可視なるブレスの一撃。
それはオブリビオンだけを消滅させる一撃。
凄まじい衝撃共に軍人オブリビオンたちが消し飛ぶ。
その光景を『ロンメル・ヴォーテックス』は呆然と見つめるしかなかっただろう。
精神力でもって敗北を認めぬというのであれば、その意志をへし折る。
それができるのが『ダイウルゴス』という力である。
ナイは、その力を示し、己の名を持ってオブリビオンを骸の海へと還すように、束ねた念動力の一撃を再び『戦車軍団』へと解き放つのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ラブリー・ラビットクロー
戦車が来る前に沢山のハリボテをつくるぞ
ぶらっどるびーのハリボテはじゃらじゃらギラギラたくさん身に着けてるんだ
その周りには疲れた顔のヒト達…
あんまり描きたくないな
くらいすとのハリボテは白いシャツのひげもじゃおやじ
その周りには白いシャツ着たシンジャ達
モヒカン達もたっくさん描いて
ほら完成
ヴォーテックスの悪い奴ら!
これを見たろんめるはきっと兄妹の襲撃だと思う筈なんな
だから慌ててる内にラビットギアで潜入するのん
運転手達をぼこぼこにして
ついでに一部の戦車も盗んじゃえ
マザー!盗んだ戦車を操作できるんだ?
【有線でのハッキングが可能です】
それじゃその戦車操って
地形を生かして3倍砲火をろんめる達に浴びせちゃえ!
旧ロズウェルの市街地は、文明の荒廃を示すように荒れ果てていた。
そこには最早文明の残滓すら認められなかった。人の営みすら許されていなかった。あったのは徹底的な略奪の痕だけであった。
ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)は、その地に無数のハリボテを生み出していた。
頭の中のセカイの全て(ピュアデックス)を持って、彼女の記憶の中にある『ヴォーテックス一族』の姿を思い描く。
カラースプレーで生み出された偽物は、見たことがる故に極めて精巧なハリボテと化し、ラブリーの記憶の中にある『ヴォーテックス一族』、『クライスト・ヴォーテックス』と『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を生み出す。
「うぅ、あんまり描きたくないな……」
ひげもじゃ白シャツおやじ。
じゃらじゃらギラギラのまんまるおばさん。
まわりには疲れた顔のヒト達。思い出すだけで胸が締め付けられるような思いだった。こんなこと描く為にカラースプレーがあるわけじゃないのに。
けれど、それでもラブリーはやらねばならない。
あんまり気がすすまないけれど、モヒカンレイダーたちもたくさん描いて、ハリボテを完成させるのだ。
「これで完成、ヴォーテックスの悪い奴ら!」
それは本来であれば、『ロンメル・ヴォーテックス』は引っかかることはなかっただろう。
けれど、彼は敗北を認めない。
猟兵という非現実を認めない。だからこそ、そこに『理由』を用意してやればいい。
それだけで彼は、『理由』に飛びつくだろう。
そう、この戦いは『ヴォーテックス一族』間の抗争であるという甘美なる理由。非現実を否定する材料。
それを求めた彼の眼は曇っていると言ってよかった。
「やはりな……! 兄も妹もいる! やはり私をたばかり、欺くための方策! ならばこそ、私達は負ける理由がない! 今はただ体勢が悪いだけだ、そうなのだ!」
『ロンメル・ヴォーテックス』は偉大なる軍人の遺伝子を持って造り出された人造人間であるという。
ラブリーはとてもそうは思えなかった。
「こんな簡単なことも見抜けないんなんて、余程追い詰められているなんな」
彼女はハリボテにすっかり騙された『ロンメル・ヴォーテックス』を尻目に、『戦車軍団』に紛れ込み、車両の運転手たちを迅速に倒し、戦車の一部を奪い取ることに成功していた。
「マザー!」
【有線でのハッキングが可能です】
その言葉にラブリーはうなずく。
手癖が悪いとか言っていられないのだ。猟兵たちもがんばっている。勿論、ラブリーだってがんばっている。
けれど、一番頑張っているのはアポカリプスヘルに生きる人々だ。明日を望んで、より良い明日を夢見て。
そんな何者にも屈しない、くじけることのない人間たちであるからこそ、ラブリーは助けたいと思ったのだ。
『マザー』による有線ハッキングで操作された戦車たちが『ロンメル・ヴォーテックス』の駆る戦車を囲む。
防衛しているようにも思えたことだろう。
けれど、違う。ラブリーと『マザー』による計略に寄って、奪い取られた車両が一斉に『ロンメル・ヴォーテックス』に砲塔を向ける。
「な、何――!? 何故、私を狙う!? やめ――」
その言葉をラブリーと『マザー』は待つことはなかった。
なぜなら『ヴォーテックス一族』は悪い奴らだ。ラブリーにとっては許せない存在だ。
「三倍砲火を浴びせちゃえ、『マザー』!」
彼等が居る限り人々は苦しむだろう。
疲れた顔をするだろう。それを癒やしたくて、笑顔にしたくて彼女は商人を志している。
ならばこそ、彼女は笑顔を売る商人として容赦はしないのだ。
十字砲火にさらされた『ロンメル・ヴォーテックス』の怨嗟の声が聞こえる。
それをラブリーは背により良い明日へと歩みを進めるのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
メレディア・クラックロック
そんなに視野狭くてよくここまで生きてこれたね。
…いや、それでも勝てるだけの物量と知略があるって評すべき?
どちらにしろ逃がす訳にはいかない訳だ。
じゃ、突破しに行こうか。
セット、【Tuequoise】。機動戦だ。
必ず軍団の中心にいるならむしろ座標は割り出しやすい。
手始めに適当な戦車を踏んで空から一発お見舞いだ。
もちろんこれで倒せるなんて思っちゃいない。
けど一度「空を行ける」って見せれば注意は分散されるでしょ?
どんな兵器にだって死角は存在するんだもの。
リアルタイムで移り変わる隙間を縫ってロンメルの下へ。
たった一人に対して同士討ちするかもしれない火器をどこまで使える?
迷った時点で、ボクの勝ちだよ。
己の敗北という受け入れがたき現実を前に軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』は、戦略的撤退を選択することはできなかった。
「私は依然最強のはずだ。なのに、何故、私は、ここまで敗走を喫する……!」
彼自身の身体にも刻まれた敗北の痛手。
それは痛みと共に彼に屈辱を与えるものであったが、それでも尚、彼は己の敗北を是としない。
「いいや、未だ『戦車軍団』は健在。ならば、私は敗れてなどない!」
その現実から目を背けても何も事態は好転しないことを知りながら、それでも『ロンメル・ヴォーテックス』は己の身体を構成する偉大なる軍人の遺伝子にすがった。
逆に言えば、もはやそれしかすがるところがなかったのかもしれない。
「そんなに視野狭くてよく此処まで生きてこれたね……いや、それでも勝てるだけの物量と知略があるって評すべき?」
メレディア・クラックロック(インタビュア・f31094)は、『ロンメル・ヴォーテックス』の将としての器を、評価した。
この文明が荒廃した世界であるからこそ、物量は正義であったことだろう。
まともな戦術、戦略がなくとも、略奪を繰り返せばいいのだから。
メレディアの言葉に『ロンメル・ヴォーテックス』は侮辱されたことに気がつく。それこそ視野狭窄である。
「貴様……!」
「どちらにしろ逃がすわけにはいかない訳だ。セット――Turquoise(ステップス)」
彼女の瞳が輝くと同時に、ソーシャルドローンが空中を疾走る。
地にあって確かに戦車は脅威そのものであろう。けれど、それは戦場が地上という平面にあってこその話である。
「“道は平面だけ”なんて誰が決めたの? さあ、どこまでも走ってっちゃおう!」
彼女は空中を蹴って飛ぶ。
それは非現実的な光景であったことだろう。
人間の身でありながら、まるで見えぬ階段をけるようにしてメレディアは砲火の雨の中をかいくぐるようにして空を疾走る。
「そこ、隙だらけだよね」
メレディアが示した先にある『戦車軍団』の車両の一台をソーシャルドローンが放つレーザーが貫く。
爆風を受けてメレディアはさらに加速する。
戦車の砲塔を蹴って、さらに高く舞い上がる。風が心地よいと思うよりも早く、彼女は空を駆け抜けるのだ。
「空中を疾走るなどと! そんなリアリティの欠片もない! 私の前で、非現実的な振る舞いなど許されて言い訳がない!」
『ロンメル・ヴォーテックス』が喚き散らす。
そこには優秀な軍人としての素養の欠片もなかった。
それもそのはずであろう。彼は今まで『ヴォーテックス一族』の中の内輪もめでしか苦戦というものをしてこなかった。
格下か同格としか戦ってこなかったのだ。
ここに規格外、生命の埒外である存在と戦う経験をこれまでしてこなかったことこそが、彼の敗因の一つであろう。
「どんな兵器にだって死角は存在するんだもの」
彼女が空中を走ったかと思えば、大地を蹴る。
三次元的な動きで持って迫る彼女に照準を合わせても、同士討ちの可能性を捨てきれない『戦車軍団』は砲撃を加えることもできず、『ロンメル・ヴォーテックス』へとメレディアが迫ることを止められなかった。
「ぬぅ――! こちらの死角を……!」
「迷った時点で、ボクの勝ちだよ」
チェスの盤面を詰めるように、メレディアのソーシャルドローンのターゲットサイトが『ロンメル・ヴォーテックス』を捉える。
放たれたレーザービットの一撃が『ロンメル・ヴォーテックス』を捉え、一瞬で貫く。
「キミの生き方(スタイル)を教えて、なんて聞くまでもないね。視野狭窄。現実を見れないお坊ちゃん。それがキミだよ」
メレディアは、『ロンメル・ヴォーテックス』に痛烈なる一撃を加え、音声収集デバイスを向けることをしなかった。
インタビューするまでもない。
その程度の存在だと知らしめるように、彼女は華麗に空をステップするように飛ぶのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
マキナ・エクス
アドリブ・他猟兵との連携歓迎
仮にも元帥の称号を持つ人物だというのならもう少し情報収集に力を出してもよかったんじゃないかな?さすがに非科学的だの一言で片づけられるほど単純な世界じゃないだろうに。
それじゃあUC発動。ああいった手合いは自分の常識外の出来事に弱いからね。驚かせてやろう。自らの肉体を邪竜に変えて超高速で敵軍団上空を飛翔しながら赤雷を降らせ続ける。
相手が混乱してるところにそのままの速度で突っ込みながら変身を解除。
あとはパイルバンカーや対物拳銃で【串刺し】【貫通攻撃】【2回攻撃】【零距離射撃】で攻撃。
敵の攻撃は防御からくり人形や【オーラ防御】で防ぐ。
レーザーの一撃が軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』の身体を撃ち貫く。
その光景をもってしても、鉄の規律を持つ『戦車軍団』の動きに乱れはない。
それは確かに称賛すべきことであったのかもしれない。
これまで『ロンメル・ヴォーテックス』が積み上げてきた『ロンメル機動陸軍』の力の集大成でもあったからだ。
けれど、猟兵たちは、そこに価値を見いださない。
彼等の存在は、誰の物語にもハッピーエンドを齎さない。
マキナ・エクス(物語の観客にしてハッピーエンド主義者・f33726)は、物語の最期にこそ幸福な終末が必要であると知る。
だからこそ、アポカリプスヘルという世界の終末は、こんなものでいいはずがないと思ったことだろう。
「仮にも元帥の称号を持つ人物だというのなら、もう少し情報収集に力を出してもよかったんじゃないかな?」
このアポカリプスヘルという世界一つとっても、非科学的だという言葉で片付けられるほど単純な世界ではないだろう。
だというのに、己の不都合を前にして非現実的だと喚く姿に、マキナは呆れを通り越して落胆すら覚えただろう。
「偽典閲覧、伝承認識、邪竜降誕。冥界にて世界樹に仇なさんとする邪竜よ、終末を越えしその力その権能我に与えたまえ」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
それはこの終末を迎えた世界にあって、相応しき姿へと彼女を変える力である。
終末を越える邪竜。
偽典神話・冥界の怒れし邪竜(オルタナティブファーブラ・ニーズヘッグ)は、終末さえも越える存在である。
齎すのではなく、共に乗り越えるための存在として顕現した彼女は赤雷を解き放つ。
それはまるで神話の再来であったことだろう。
『戦車軍団』たちが如何に鉄の規律を持っているのだとしても、目の前に現れた幻想の象徴は一瞬で彼等の規律の鉄を砕き去る。
「常識外だと思うかい? いいや、これが現実というやつさ」
翼を羽ばたかせ、赤雷と共に空を舞うマキナの姿はまさにラグナロクそのもの。放たれる赤雷が『戦車軍団』の車両を討滅し、軍人オブリビオンたちを骸の海へと帰していく。
凄まじい速度で戦場を蹂躙する邪竜を前に『ロンメル・ヴォーテックス』は、しかしてその瞳で非現実を見据える。
「ありえない……! あれが竜などと! ただの羽生えるトカゲではないか! 撃ち落せ! あれを!」
叫ぶ言葉は幻想を認めるようなものであった。
砲撃の音が響き渡り、砲弾の雨がマキナに迫る。しかし、その尽くは赤雷の前に撃ち落とされ、爆散していく。
迫る邪竜の顎がもたげられ、凄まじ咆哮が『ロンメル・ヴォーテックス』の肌を震わせた。
ここに来てもまだ現実を見ようとしない。
だから敗れる。
敗北の原因など一つしか無い。赤雷の一撃が戦場に降り注ぎ、あらゆる戦車車両を穿つ。
『ロンメル・ヴォーテックス』が大破した戦車から這い出すのを見たマキナは己の姿を元の姿へと変え、駆け出す。
手には対物拳銃『フィニッシャー』。
例え、再び無事な戦車に乗り込んだとしても関係ない。銃口が戦車の重装甲にふれる。
「これには関係がない。そんな狭いところに引きこもるから、世界が見えない。人々が見えない。生命のきらめきも、最期に訪れる幸福も理解できない」
引き金を引いた瞬間、轟音が轟き、戦車の装甲すらも物ともせず放たれた銃弾が戦車ごと『ロンメル・ヴォーテックス』の身体を貫くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フレスベルク・メリアグレース
ロンメルはあの二名と違って視野狭窄な面が強いですね……
ですが、誅罰します
ノインツェーンに乗り込んでレールガンを放ちながら牽制
そこにユーベルコードを起動させていきます
それは周囲の建造物や地形ごと戦車軍団を搭載火器とその攻撃ごと飲み込んでいく——『無』
万象を無に帰し飲み込んでいく『Ain』の前には戦車などが数万台群を成そうが、それこそ『無意味』
エントロピー消失事象の前に、万有飲み込まれていきなさい
瞬時に『無』故に五感やセンサーなどに映らない、だが確かに戦車軍団を無に帰して飲み込んでいく『無』という現象がロンメルごと戦車軍団に迫り来る――
軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』は穿たれた肩を抑えながら、流血夥しいままに戦場を疾走る。
まだ己は死ねない。
己が優秀であるという証。
その偉大なる軍人の名を冠するが故に、彼はこの現状を受け入れることができない。
敗北など許されるわけがない。
このアポカリプスヘルの世界にあって、己こそが支配者に相応しいのであればこそ、絶対的な勝者として存在しなければならないのだから。
「非現実だ。こんなもの、あっていいはずがない――!」
彼は新たな戦車に乗り込み、『戦車軍団』を手繰る。即座に陣形が敷かれ、歩兵たちが哨戒に飛び出す。
ここまでの練度を維持することは並大抵のことではないだろう。
それは評価すべきことであったかもしれないが、この力がもし、アポカリプスヘルに生きる者たちにあったのならばと惜しむしかない。
「『ロンメル』はあの二つ名と違って、視野狭窄な面が強いですね……ですが、誅罰します」
フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)は軍人宰相の名を持つ存在が相手であっても一切の容赦をするつもりがなかった。
虚空より現れるサイキックキャバリア『ノインツェーン』に乗り込み、レールガンより放たれる弾丸を以て『戦車軍団』を蹴散らす。
「無よ、其れは万有を残らず貪る全ての終わり。無よ、万象を礼賛する私は汝を征服する。無よ、全てを飲み込む汝を以て礼賛を証明しよう」
輝くユーベルコードは、貪欲なる無限に己食らう世界蛇の如き帰滅の無(ウロボロス・アイン・カタストロフ)。
万物全てを消滅させる一にして『無』のちからを解き放つ。
『無』の侵食は止められない。
かつての旧ロズウェルであった市街地の残骸すらも飲み込んでいく。
砲火の雨にさらされようとも、『無』の前には弾丸が届くことはないだろう。
「『無』の前には戦車など数万台群れを無そうが、それこそ『無意味』」
フレスベルクにとって、そのユーベルコードの輝きこそが絶対であったことだろう。
万有全てを飲み込む『無』の前に軍人オブリビオンや戦車が霧散して消えていく。
嘗て在りし栄華も等しく無意味である。
盛者必衰というのでればこそ、あらゆるものが無意味になっていく。
其処に悲哀はない。哀愁も、悲嘆もない。
何もかもがフレスベルクの齎す『無』の中に飲み込まれていくのだ。
「どれだけ優秀な軍人であろうと『過去』になる。如何にその有用性を説いたところで、終わる存在にあっては『無』であると知りなさい」
『名前』に意味など無い。
何を為したかかこそが重要なのであって、『ロンメル』という名前に意味は存在しないのだ。
故に、人は幻想を見るだろう。
在りもしない価値を求め、『名』に手を伸ばす。
それこそが誤りであると知らしめるようにフレスベルグは『ノインツェーン』の齎す『帰天』の異能と共に戦場を分断する。
「全てを『無』に帰しなさい。それがオブリビオンのたどる道。『過去』は骸の海へ。今という可能性を侵食する名前など必要ないのだと知りなさい」
フレスベルグの放つユーベルコードの輝きは、『戦車軍団』を『無』に飲み込み、決して戻ることのない道へと追いやるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
稷沈・リプス
さて、行くっすよ!
【夜の舟】出航。操舵は俺っすよ。
船員カウントが上回れば、おそらく能力三倍は避けられるっすね。
で、まあ…防御は太陽属性の結界で。太陽の温度を耐えられる金属とかあったら貫けるかもしれねぇっすけど。無理っすね!
では、空からの太陽光。つまり太陽属性の攻撃を、一斉発射っすよ!
戦車とか、太陽熱に耐えられるんすかね?
まあ、おそらくロンメルはこの世界しか知らないはずっすし、異世界というのが実感持てないのはわかるっすけどね。こうなった以上、認める方が楽っすよー。
ま、集団の頭が迷う姿を見せられないのも理解はしてるっすよ。
「さて、行くっすよ!」
その言葉は砲火の轟音が鳴り響く旧ロズウェルの市街地にあっても、軽快に響き渡る声であった。
稷沈・リプス(明を食らう者・f27495)の、のんべんだらりとした気質を表すかのような言葉と態度であったが、彼は夜の舟(ウイア・メセケテト)と共に戦場の空を飛ぶ。
弓と剣、そして魔法杖で武装した頭部が動物に成っている人間の幽霊たちと共に陸空海で航行スルことが可能な大型の木造船。
それが『夜の舟』である。
彼にとって、これは借りものの権能であれど、彼のユーベルコードに他ならない。
その光景を軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』は見上げたことだろう。
どこまでも非現実的な光景。
さらには『戦車軍団』は猟兵たちの攻撃に寄って、その数を半数にまで減らしている。すでに戦いの趨勢は決したと言ってもいいであろうし、『ロンメル・ヴォーテックス』の敗北は覆らない。
けれど、その敗北という非現実を『ロンメル・ヴォーテックス』は認められない。
「舟が空に浮かぶ……!? そんなことが、あっていいいものか!」
『夜の舟』から飛び出す幽霊たち。
そのどれもが人間の体を持ちながら、頭部だけは動物。
まるで御伽噺か神話かと見紛う光景に軍人オブリビオンたちはたじろいだことだろう。
どうしたって、この光景を前に現実的に対処できる者など猟兵をおいて他には存在しなかった。
『ロンメル・ヴォーテックス』も例外ではないのだ。
「これで戦力は五分かそれ以上。そして、どれだけ砲撃の精度と威力があったとしても!」
リプスの言葉と同時に張り巡らされるのは太陽の力を帯びた結界である。
太陽の温度に耐えられる金属など存在しない。
砲弾が放たれたとしても、直撃することはない。あらゆる砲弾が『夜の舟』に至る前に融解して溶け落ちていくのだから。
「では、空からの太陽光。お返しっすよ」
彼の言葉と共に魔法杖を持つ幽霊たちが呪文を詠唱していく。
その言葉は神聖な祝詞でありながら、どこか禍々しさを感じさせたことだろう。底知れぬ存在を前に軍人オブリビオンたちは慄く。
紡がれた呪言が太陽の輝きでもって彼等に降り注ぎ、全てを溶かして霧散させていくのだ。
それは戦車であっても例外ではない。
装甲が溶け落ち、破壊されていく。
「こんな、こんなことが……!」
「こうなった以上、認める方が楽っすよー」
リプスは『ロンメル・ヴォーテックス』へと『夜の舟』の上から肩肘付いた体勢で告げる。
『ロンメル・ヴォーテックス』は、このアポカリプスヘルという世界しか知らない。
世界は一つではないことを知らないどころか、己以上の存在がいることすら理解しようとしない。
現実を見ないということは、非現実を信じることではない。
目の前に現れる現実を見据え、その輪郭を理解することだ。世界とは個人によって造られるが、同時に個人を形作るのもまた世界である。
それを知らぬ者に、猟兵は倒すことはできない。
「ま、集団の頭が迷う姿を見せられないのも理解はしているっすよ」
そこだけには同情するっす、とリプスは笑う。
いつだって、指揮官は自信たっぷりにふんぞり返っていなければならない。成功すれば意気揚々と。失敗してもなんとかなるさと笑っていなければならない。
それがどんなに困難なことであるかは、有史以来を紐解けばわかることだろう。
だからこそ、今ここで『ロンメル・ヴォーテックス』は打倒する。
非現実に打ちのめされて、非現実すらも現実として踏破される前に。リプスは己の借り物という権能を大いに振るい、『戦車軍団』を壊滅に導くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
……ロンメルかー…本物じゃないという話だけど…どのぐらい本物に近いのだろう
まあ現実的なのは結構なのだけどそれだけじゃ片手落ちだと思うんだよな…
…相手の手を予想するような想像力とかがないと、ね…
…相手は地形を生かす…となればそれを崩すとするか…
…【支え能わぬ絆の手】を戦車隊周囲の地面や壁、建造物に向けて発動…摩擦がゼロに近くなるということは…ただ滑りやすくなることを意味しない…
…文字通り支える力が失われる…すなわち…壁は倒れ遮蔽にならず、地面は砂となり戦車は飲み込まれ…
…そして、組みあがった『戦車』は崩れ、機能を停止する…
…ちなみに建造物も崩れるから…お前の傍のビルも危ないかね…もう遅いけど…
かつて『砂漠の狐』と呼ばれた将がいた。
その名が『ロンメル』であることは他世界を知る猟兵にとっては、周知の事実であったのかもしれない。
軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』は『ヴォーテックス一族』である。
偉大なる軍人の遺伝子を持って造られた人造人間であるとも、蘇った本人であるとも言われているが、真相は闇の中である。
しかし、その名を冠するが故に、彼の戦術や戦略、そして軍人オブリビオンたちを律する鉄の規律は、評価に値するものであったことだろう。
これだけの損害、被害を被ってもまだ潰走することがないのは、軍団にあっては得難きものであると言わざるを得ない。
「……ロンメルかー……本物じゃないという話だけど……どのぐらい本物に近いのだろう」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の興味は今やそこにあった。
オブリビオンは『過去』が歪んだ存在である。
骸の海と呼ばれるたゆたう『過去』の集積地より染み出した欲望の化身、それがオブリビオンであるというのならば、『ロンメル・ヴォーテックス』はたしかに嘗ての『ロンメル』の名を冠するだけに値する存在であったのかもしれない。
「ありえない……! 我が『戦車軍団』が此処まで滅ぼされるなどと……! 戦車だぞ! どれだけの資材を持って此処まで築き上げたと思っている……! あの愚鈍なる兄妹たちを打倒し、このアポカリプスヘルを支配するのは私しか居ないというのに……!」
『ロンメル・ヴォーテックス』は痛烈なる痛手をおいながらも、未だ現実を認めない意志でもって、非現実と相対していた。
即ち敗北という非現実である。
彼にとっての非現実は、敗北そのものである。
「……まあ、現実的なのは結構なのだけど、それじゃあ片手落ちだと思うんだよな……」
メンカルは大地に降り立つ。
彼女の瞳はユーベルコードに輝く。確かに現実を認めぬ不屈の精神は評価できる。
けれど、それ以上に必要なものが『ロンメル・ヴォーテックス』には掛けている。
「即ち……相手の手を予想するような想像力とかがないと、ね……」
メンカルのユーベルコードは、支え能わぬ絆の手(フリクション・ゼロ)である。
物理情報を改竄する力は、詠唱と共に紡がれ、その力を発露させる。
彼女の視界に捉える『戦車軍団』の地面や壁、建造物全てが摩擦抵抗を極限まで減らしていく。
それはただ滑りやすくなるということを意味しない。
文字通り支える力が喪われるということだ。
「この旧ロズウェル市街地の残骸にあっては……そう、全ての壁は倒れ、遮蔽に成らず。文字通り砂となり戦車は飲み込まれる」
メンカルの手繰る手は、魔力を伴って戦場にある全ての摩擦を奪い去る。
壁が崩れ、砂上に存在する『戦車軍団』が為す術もなく飲み込まれていく。それを『ロンメル・ヴォーテックス』は呆然と見つめるしかなかった。
「こ、こんなことが、一体、いつまで……」
メンカルの瞳はあらゆるものを突き崩していく。
そう、『ロンメル・ヴォーテックス』たちが隠れ潜む瓦礫の影ですら、そこは最早安寧の場所ではないのだ。
崩れる壁が『ロンメル・ヴォーテックス』の頭上から降り注ぐ。
「気がついた時にはもう遅い……どれだけ優れた戦術眼を持っていたのだとしても、類まれなる戦略を有しているのだとしても……想像力が欠落した瞬間、無用の長物へと成り果てる」
メンカルの瞳からユーベルコードの輝きが失せた時、そこには瓦礫と崩れた圧倒的な質量によって押しつぶされた『戦車軍団』の姿があった。
「こちらの手を想像するべきだった……とは言わないよ。敵の種類が千差万別にして、個でもって違うのが猟兵という存在の強みなのだから。規則性も何もない存在を前にした時、すでにお前たちの勝敗は決していたんだよ」
メンカルは告げる。
どれだけ優れた『過去』であったとしても、現在という可能性が未来に繋がるのであればこそ、過去より滲み出たオブリビオンを打倒することができる。
それを知らしめるようにメンカルは、己の力でもって嘗ての『ロンメル』の名を打倒するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
寺内・美月
アドリブ・連携歓迎
「第三亡霊軍防御準備」
・指定UCにて歩兵四個軍団(自動車化歩兵、対戦車火器・対戦車部隊大規模増員)及び砲兵軍団(指定兵科軍団、四個砲兵師団と二個ロケット砲師団を配備)を召喚(通称第三軍)。
・方針としては歩兵軍団にて砲兵軍団を防護する対戦車陣地を設営。この際歩兵軍団が保有する戦車火力、砲迫火力、予備隊を効果的に運用すべく留意。
・砲兵軍団は敵軍団に砲弾の雨を降らせ続け敵軍団に攻撃を強要させ、それを歩兵軍団は対機甲戦闘で徹底的に磨り潰す。
・ロンメル本人の討伐は別の猟兵に任せ、自らは部下の第三軍司令官(画像参照)と共に敵軍団の撃滅に専念する。
(総論:現実的な砲煙弾雨で消し飛ばす)
「第三亡霊軍防御準備」
寺内・美月(霊軍統べし黒衣の帥・f02790)は短く呟いた。
その言葉はあまりにも端的であり、短く、そしてその場に居た全ての存在にあまねく届く通る声であった。
「総員傾注、『驕敵殲滅、神機齎し真鋭示すべし』…征け」
彼の言葉こそ、彼の手繰る亡霊歩兵軍団を統御する力である。
霊軍隷下《突撃戦力》亡霊将兵投入(ライテイバンキン)によって解き放たれた亡霊歩兵軍団は、歩兵四個軍団、及び砲兵軍団によって構成される。
それぞれに対戦車火器や、ロケット砲を装備し、戦場を闊歩する。
対する『ロンメル・ヴォーテックス』の手繰る『戦車軍団』はすでに多くの猟兵に寄って、その数を著しく壊滅させられていた。
そこにあったのは非現実そのものであったことだろう。
『ロンメル・ヴォーテックス』は己の敗北を認められない。
すでに大勢は決したことだろう。
己を優秀な軍人であるというのならば、この時点で引き際を誤っていると言う他ナイだろう。
だが、美月は構うことはなかった。
己が為すべきことはそう多くはない。
歩兵軍団にて砲兵軍団を防護する対戦sンは陣地を設営し、彼等の保有する戦車火力や、砲迫火力、予備隊を効果的に運用することを留意する。
「まるで素人だな」
美月は『ロンメル・ヴォーテックス』の戦略をそう評価した。
どれだけ偉大なる軍人の遺伝子を要していようとも、その経験まで受け継がれることはない。
何を見て、何を感じ、何を学んできたのか。
それが軍人としての素養を高めるのであって、生まれ持ったものを保証するものではない。
戦禍の前ではどんな生命でも価値を変えぬ。
高潔なるものも、卑しきものも、砲弾の前では無力だ。意味を成さない。滅ぼされるべきものと、滅ぼすものがいる。
それが争いであるというのならば、美月は『ロンメル・ヴォーテックス』の存在を否定するだろう。
「こんな、こんなはずでは――」
『ロンメル・ヴォーテックス』は降り注ぐ砲弾の雨から『戦車軍団』を率いて逃れようとしていた。
だが、それを許さぬのが歩兵軍団である。対機甲戦闘で徹底的にすりつぶすように亡霊たちが戦場を駆け抜ける。
もはや美月の興味は『ロンメル・ヴォーテックス』にはない。
それは他の猟兵に任せておけばいいことだ。
己がやるべきことは多くない。
そう、『戦車軍団』を徹底的にすりつぶす。自らは部下の第三軍司令官と共に敵軍団を撃滅することに専念すればいい。
猟兵の戦いは個としての戦いではない。
ましてや、個人で敵将を討ち滅ぼすことなど、到底難しいことだ。そのために猟兵たちは繋ぐ戦いをする。
己が打倒できなかったのだとしても、あとに続く者達のために敵を消耗させる。
「ならばこそ」
短く美月は呟く。
疾く敵を撃滅し、『ロンメル・ヴォーテックス』へと至る障害を討ち滅ぼすのみ。
砲火の雨が降り注ぐ中、美月は火の粉を振り払うこともせず、亡霊将兵たちの進軍を見つめる。
そこには現実と非現実の違いなど何処にもなかった。
あるのは『ロンメル・ヴォーテックス』の手繰る『戦車軍団』の敗北という現実だけが、美月の手腕によって、確実になるという事実のみが、燦然と輝くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
マオ・ブロークン
……大勢が、移動する、ものすごい、地響き。
あそこに、あるのは。戦車軍団に、軍人たちの、大群。
たった一人、身一つで、挑むのは……たぶん、命がけ。
……でも。あれだけの、大質量、なら。
うまくやれば。あたしたちの、武器としても。使えるね。
この世界に、生きていたころ。戦車、見てたから。知ってるよ。
重戦車の、大きいものでも……70トン、くらい。
今の、あたしの……呪いの、いえ。意志の力、でなら。
あれくらい、持ち上げて、振り回してみせる。
戦車同士、ぶつけて。軍人たちを、鉄塊で、薙ぎ払って。
ひどい、破壊行為、だけれど……迷わない。
先に進む。道を、拓いて、みせる。
数多の猟兵たちと軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』が手繰る『戦車軍団』が激突する音が旧ロズウェルの破壊された市街地に鳴り響く。
それは地鳴りのようにマオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)の体に響く。
一介の女子でしかなかった彼女にとって、目の前の光景は非現実的なものであったことだろう。
きっと自分は命を懸けなければならないと思っただろう。
「ものすごい、地響き……」
呆然と呟く。
彼女にとって、こんな大群を前にしてたった一人、身一つで挑むのは、到底考えられることではなかった。
けれど、数多の猟兵たちが紡いできた戦いを此処で途切れさせるわけにはいかない。
自分がどんな存在であれ、戦うことはやめない。
どうして戦い続けるのかと問われることもあるだろう。溢れる涙は止まらない。この涙はきっと、自分以外の誰かが流した涙であり、拭われることのなかった涙なのだろう。
その涙を止めるために、自分は涙を溢れさせる。
拭ってくれる人がいない。けれど、自分のデッドマンの身体が、だれかの涙を拭うことができたのならば。
「……でも。あれだけの、大質量、なら」
その涙で溢れた瞳がユーベルコードに輝く。
彼女は知っている。
このアポカリプスヘルに生きていた頃、戦車を見ていたからよく知っている。重戦車の大きなものは70トンもの質量を持つ。
以前の彼女であれば、どうしようもない質量差であったことだろう。目の前にして何ができるわけでもなかったことだろう。
けれど、今は違う。
ポルターガイストの敵意(ポルターガイストノテキイ)が溢れる涙と共に輝きを持って、念動力を発露させる。
それは目に見えぬ力であり、マオの力であれば、重戦車であろうと軽々と持ち上げる事ができた。
「……壊して、やる。全部、めちゃくちゃ、に!」
世界は戻らない。
生命は戻らない。
けれど、己は死を超越したデッドマンである。ならばこそ、己は力を振るうのだ。呪いの力ではなく、意志の力がそれを為すことができると彼女は知っている。
目に見えぬ力が重戦車を空中へと放り上げ、そのまま『戦車軍団』に叩きつけられる。
巨大な質量同士がぶつかり、ひしゃげ、爆風が吹き荒れる戦場の中をマオは涙を流しながら進む。
鉄塊を持って軍人オブリビオンを薙ぎ払い、破壊していく。
「ひどい、破壊行為、だけれど……迷わない」
どれだけ涙に頬が濡れても立ち止まることはしない。
己以外のだれかの涙を拭うと決めたのならば、マオは何処までも己の意志の力を高めるだろう。
呪われた力だなどと誰にも言わせない。
己の意志で戦うと決めたマオに敵はいない。
「先に進む」
過去より溢れたオブリビオンなんかに負けるつもりはない。喪ってしまったものの大きさを彼女は知るからこそ、その胸に抱いたヴォルテックエンジンが唸りを上げる。
「道を、拓いて、みせる」
「――き、貴様、きさま――!」
『ロンメル・ヴォーテックス』が狼狽えているのが涙ににじむ視界でもはっきりとわかった。
あれが自分の打倒すべき敵だとマオは理解した瞬間、念動力によって掴まれた重戦車の残骸を『ロンメル・ヴォーテックス』へとむけて投げ放つ。
そう、道は塞がせない。
今を生きる人々が渇望し、望む明日を、きっと自分が切り拓くのだと決意した涙に溢れた瞳が燦然と輝くのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…例えどれだけお前達の戦車が強力で連携が優れていたとしても、
相手の姿も見ず、幻の敵に拘泥している将が率いる軍勢に負ける気はないわ
「闇の精霊結晶」を上空に銃撃して戦場を闇で覆い敵の集団戦術を乱して索敵を逃れ、
闇に紛れて空中機動を行う「血の翼」を広げて上空に飛翔してUCを二重発動
来たれ、赫炎の理。我が手に宿りて、天地を焼き尽くす星となれ…!
吸血鬼化した自身の生命力を吸収して両掌に火の魔力を溜め両手を繋ぎ、
武器改造を施して限界突破した"火の結晶"槍を形成して怪力任せに投擲し、
火属性攻撃のオーラで防御ごと広域をなぎ払う"炎の流星"を放つ
…衆が寡を圧するなどという道理は無い。消えなさい、永遠に…
もはや軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』が手繰る『戦車軍団』は壊滅の憂き目にあっていた。
猟兵たちが数多現れ、旧ロズウェルの市街地で『戦車軍団』を打倒していく。
戦線は崩壊し、自軍の損害は最早半数を超えている。
本来であれば、戦いの趨勢は決したと言ってもいいだろう。
戦略的撤退を選ぶことも当然であった。だが、『ロンメル・ヴォーテックス』は決断しない。
否、違う。
この敗北という現実を認めない。
「こんな非現実的なことがあってたまるか。私の『戦車軍団』が、こうも容易く敗れることなど……! 在ってはならない!」
彼自身も猟兵達の攻撃で痛手を負っている。
それでも構わず戦うことを選んだのは、彼が現実を見ることが出来なかったからだろう。
「……例え、どれだけお前たちの戦車が強力で連携が優れていたとしても、相手の姿も見ず、幻の敵に拘泥している将が率いる軍勢に負ける気はないわ」
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、目の前の『ロンメル・ヴォーテックス』が手繰る『戦車軍団』を前にして、そう言い放った。
無数の軍人オブリビオンたちが歩兵として未だ健在である。
戦車車両また半数は破壊されているが、それでも将たる『ロンメル・ヴォーテックス』が退かぬのであれば、鉄の規律でもって戦い続けるだろう。
それをリーヴァルディは哀れだと思ったことだろう。
『闇の精霊結晶』を『戦車軍団』の上空に撃ち放ち、戦場を闇に覆う。
それはダークセイヴァーという常闇の世界で戦う彼女にとっては、日常であった。けれど、『戦車軍団』にとっては違う。
夜間戦闘の準備もなく、只々撹乱されるしかない。
リーヴァルディは闇に紛れて血の翼を広げ、闇に包まれた『戦車軍団』を睥睨する。
「……限定解放。テンカウント。吸血鬼のオドと精霊のマナ。それを今、一つに……!」
限定解放・血の教義(リミテッド・ブラッドドグマ)。
輝くユーベルコード、その瞳に在るのは吸血鬼のオドと精霊のマナを手繰るリーヴァルディの力の発露であった。
「来たれ、赫炎の理。我が手に宿りて、天地を焼き尽くす星となれ……!」
吸血鬼化した己自身の生命力を吸収して両掌に日の魔力を溜め込む。溢れる魔力の奔流が、己の腕をきしませる。
ぎりぎりと力を込め、両手のひらが合わさった瞬間、限界を超えた『火の結晶』ともいうべき槍が顕現する。
「穿ちなさい」
放たれる煌めく火の槍の投擲は、天より降り注ぐ流星の如き一撃となって闇を切り裂いて『戦車軍団』を消滅させる。
凄まじい爆風が旧ロズウェルの市街地を吹き飛ばしながら、炎の流星となった一撃の凄まじさを物語る。
「隕石……! いや、馬鹿な! 流星を手繰ることができるはずなど……!」
これまでも圧倒的な物量で持って猟兵たちを打倒できると考えていた『ロンメル・ヴォーテックス』は呻くしかない。
これほどの広域に渡って敵を殲滅できるだけの兵器があるわけながいのだと彼は思っていたことだろう。
彼は現実を見ない。非現実を認めない。
これが己の敗北であると認めない。だからこそ、ここで終わりなのだとリーヴァルディは呟く。
「……衆が寡を圧するなどという道理は無い」
その言葉の通りであろう。
数だけが頼みの者に、己達猟兵をだとすることなどできようはずもない。
そこにあるのは敗北の二文字だけである。
「消えなさい、永遠に……」
二重に発動された炎の流星が再び『ロンメル・ヴォーテックス』の視界を埋め尽くす。
呆然と呟く言葉は、リーヴァルディによって放たれた一撃に寄って消し飛ぶだろう。
敗北を糧に出来ぬものに明日は来ない。
敗北を得てこそ、勝利があることを理解出来ぬものは、きっと害悪を齎すだけだ。
リーヴァルディは爆炎上がる戦場を見下ろし、『ロンメル・ヴォーテックス』の『戦車軍団』が滅びゆく様から背を向けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒髪・名捨
【心境】
「無能…だな。」
情報を精査も確認もせずに、自分の都合のいい思い込みで行動する宰相なんぞただの無能。(寧々「むしろ無脳。」)誰がうまいことを…。
【行動】
戦車なんか平原や荒野のような障害物がない場所が本領なんだろ?
なら…神無で『地形破壊』地面を破壊して車両が通れない穴と瓦礫だらけの地形に改造してやる。ついでに寧々の『仙術』による『天候操作』で濃霧を発生。ホワイトアウトで地形は穴だらけ。進めねぇよなぁ。車両は。
こいよ。戦車なんか捨てて素手でかかってこい。
無脳司令官には『怪力』で持ち上げた戦車を『投擲』してやるよ。
「無能……だな」
その言葉は辛辣なものであったが、真実でもあったことだろう。
情報を精査も確認もせずに、自分の都合のいい思い込みで行動する宰相なんぞただの無能であると黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は吐き捨てた。
己の敗北を認めず。
己の前に現れる現実を非現実と言って受け入れない。
その何処に嘗ての偉大なる軍人の片鱗があるであろうか。いや、あるはずがない。
「むしろ無脳」
彼の言葉に頭上で喋る蛙『寧々』が呟く。
誰が上手いことをいえと、と名捨は肩を震わせる。
なんだかんだ言って、二人は仲良しである。
旧ロズウェルの市街地は、今や数多の猟兵達によって破壊された『戦車軍団』の車両の残骸で埋め尽くされていた。
あれだけ膨大な数が存在していた戦車も、今や半数以上が撃破されるという異常事態である。
だというのに『ロンメル・ヴォーテックス』は撤退しない。
いや、できないのだ。
「ありえない。ありえない。私の『戦車軍団』が歯が立たないなどと……!」
圧倒的な理不尽。
猟兵という存在を差し引いたとしても、こんなことは到底受け入れられないのだろう。
現実を見ない者が戦いを制することなどできようはずもない。
「本来戦車なんか、平原や荒野のような障害物がない場所が本領なんだろ?」
市街地戦などと言うのは、ただの足かせに過ぎない。
ならば、と名捨は瞳をユーベルコードに輝かせ、その拳に集まる一撃必殺の力を旧ロズウェルの市街地へと解き放つ。
その拳の一撃は凄まじいというものどころではなかった。
ただの拳が地形を変える。
その光景を様々と見せつけられ、『ロンメル・ヴォーテックス』は息を呑むしかなかった。
「ば、ばかな……!」
「ハッ、まだ言うかよ。これだけ穴ぼこにしてやれば、戦車のお得意の機動力も其処なれるだろう。ついでに『寧々』!」
「任された旦那様!」
さらに破壊され尽くしたロズウェルの市街地に濃霧が発生する。
それは見通しの効かぬ濃霧を生み出す『寧々』の仙術による天候走査であった。ホワイトアウトと地上に穿たれた穴。
『戦車軍団』は進むことも砲撃を加えることもできずに、立ち往生している。
「進めねぇよなぁ。車両は」
ならば、と名捨は姿を表す。
この状況にあって、『ロンメル・ヴォーテックス』ができることはない。
故に、敢えて彼は挑発するのだ。
「こいよ。戦車なんか捨てて素手でかかってこい」
その言葉に『ロンメル・ヴォーテックス』は冷静さを欠いたことだろう。姿を顕した名捨に砲塔を向ける。
それはただの自殺行為だ。
この距離、この濃霧の中でまともに動く物体に対して照準を合わせることなど、神がかりでもなければできようはずもない。
高く跳躍した名捨の頭上に在ったのは、猟兵たちが散々に破壊した重戦車の残骸。それを彼は有り余る膂力でもって持ち上げ、跳躍していたのだ。
それこそあり得ない光景であったことだろう。
「ほらよ、無脳司令官には、これをお見舞いしてやるよ」
放たれた戦車の残骸は巨大な質量砲弾と化して、『ロンメル・ヴォーテックス』へと撃ち込まれる。
凄まじい轟音が鳴り響き、戦場にある者たち全てが、その音を聞いただろう。
戦車の残骸に押しつぶされた車両が爆炎を上げる。
「これで一丁上がりってやつだ。あばよッ!」
名捨は、『ロンメル・ヴォーテックス』に興味を失う。
戦う価値もない。
もう彼は戦場を振り返ることはないだろう。戦う意義すら見いだせぬ相手に構う時間はアポカリプス・ランページには残されていない。
彼は次なる戦場へと駆け出し、新たなる強敵と拳を交えるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
こちらを兄弟の刺客と考えているなら
この世界の技術からかけ離れたものには対応遅そうだね
という訳で使い魔に助けて貰おう
竜の群れを従えた巨竜を見てどうするかな
さあ、がんばるのですよー
上空から接近し金属の塊をばら撒こう
航空戦力の少ないこの世界で
制空権を取られた後の備えなんて
無駄な事はしてないんじゃないかな
隊列が乱れた所に竜型使い魔を解き放つよ
倒されても駆動部に挟まるように戦って貰おう
敵が遮蔽を取り始めたら鉑帝竜の出番だね
とつげきするのですー
地表付近を超音速で飛び
衝撃波で障害物ごと薙ぎ払おう
神気と超硬装甲に任せて体当たりしても良いね
こんな敵を想定して準備してたら狂気だと思うな
残敵は竜型使い魔に任せようか
軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』は、爆炎上げる戦車車両の中から這々の体で這い出し、新たなる戦車を求める。
彼の瞳にあったのは、不屈の精神ではない。
あるのは、現実を認められぬ非現実を否定する狂気に満ちた輝きだけであった。
「私が敗北を喫するなどあり得ない。私の道行きには勝利だけがあるはずだ。そうだ、まだ負けてない。敗北を認めるまで私の敗北は確定しない」
その言葉は最早正気すら感じさせるものではなかった。
破綻した論理。
鉄の規律を持つ『戦車軍団』だからこそ、軍人オブリビオンたちが逃げ出すことがなかっただけで、戦いの趨勢はすでに決して居たのだ。
「こちらを兄妹の刺客と考えているなら、この世界の技術からかけ離れたものには対応が遅そうだね、とは思ったけれど……」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は数多の猟兵たちが駆けつけた戦場の有様を見て、そう呟いた。
あれだけの数を誇っていた『戦車軍団』は最早見る影もない。
半数以上が破壊され、残骸を顕にしているだけだ。
晶が喚び出した使い魔たちは、帝竜の軍勢(エアリアル・アーセナル)によって、鉑帝竜が神気の防護膜を纏った巨竜形態から生み出された存在である。
その巨大なる威容を前に『ロンメル・ヴォーテックス』や軍人オブリビオンたちは動きを止める。
そう、これが現実だと認められないからだ。
巨竜の如き姿は、見るものの足を止めさせる。
自らよりも巨大な者に人間は必ず見上げ、足を止めてしまうのだ。どれだけ生命の危機に瀕していたのだとしても、見上げずにはいられない。
そういうものなのだ。
「さあ、がんばるのですよー」
使い魔達の声がやけに軽く響いた。
航空戦力の少ないこの世界で、制空権を取らせた後の備えなんてあるわけがない。
『ロンメル・ヴォーテックス』にとって戦車こそが至高にして最高の兵器なのだ。まさか空を制する兵器があるとは思わなかっただろうし、あったとしても、己達の戦車でいかようにもできるとさえ思っていたことだろう。
それを慢心と呼ばずにしてなんと呼ぶだろうか。
「やっぱり、それを無駄と思っていたんだね。なら、付け入る隙はいくらでもあるってものだね」
晶の言葉と共に鉑帝竜が金属の塊をばらまく。
圧倒的な物量ですり潰せるほどの竜型の使い魔たちが解き放たれ、次々と『戦車軍団』を行動不能へと追い込んでいく。
「おっと、遮蔽物を利用して身を守ろうっての? ならさ!」
鉑帝竜の出番である。
巨竜の如き威容となった鉑帝竜が咆哮する。
「とつげきするのですー」
地表を超音速で飛び、衝撃波であらゆる残骸、障害物を薙ぎ払いながら一気に『ロンメル・ヴォーテックス』たちが隠れ潜もうとした障害物に激突する。
それは神気と超硬装甲に任せた砲弾の如き一撃であった。
「こんな敵を想定なんてしていないだろう?」
「できるものか、こんな、こんなデタラメな……!」
吹き飛ばされる『ロンメル・ヴォーテックス』の呻く顔を晶は見た。凄まじい衝撃に、身体は散々に打ちのめされていることだろう。
破壊され、打ちのめされ、それでも現実を見ていない。
晶は、だからこそ敗れるのだと告げる。
「敗北を認めぬ限り、敗れることはない? 違うよ。それは敗北を是として、乗り越える者にこそ値する言葉だよ。君は違う。己の都合の良いものだけを信じていただけなんだ」
その言葉と共に鉑帝竜が再び突撃し、特大なる質量兵器として『戦車軍団』を壊滅させ、その非現実の咆哮を轟かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
O・ストームによる文明崩壊
もし、かの将がそれ以後に蘇ったなら…視野狭窄を矯正する機会となる対等な戦闘を経験出来なかったのか…
ですが、容赦をする気はありません
UCを装着し飛翔し接近
反応速度が向上している敵の砲撃を躱し続けるのは困難ですね
最大速度で戦車主砲群の夾角外の高度へ位置取り、急速降下し強襲
慣性制御で急停止し、戦車へ照準レーザーを乱れ撃ちロックオン
重力波を叩き付け砲身を圧し折り、車体を圧壊
アポカリプスヘルに住まう人々の為
その王への野心、阻ませて頂きます
マルチセンサーでの情報収集と瞬間思考力で指揮車両を発見
降下接近し怪力で大盾殴打
将の機動力を奪い敵軍の態勢が整う前に離脱
潰える時は間近、ですよ
『砂漠の狐』――それは嘗て在りし偉大なる軍人の二つ名であった。
『ロンメル・ヴォーテックス』は、その名を冠し、その遺伝子でもって造られた人造人間であるとも言われ、同時に蘇った本人であるとも言われていた。
ならば、オブリビオン・ストームによる文明崩壊により、兵器の技術は断絶したことは、彼にとって幸いではなかったことだろう。
「もし、かの将がそれ以後に蘇ったのなら……視野狭窄を矯正する機会となる対等な戦闘を経験できなかったのか……」
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』の人物をそう評した。
彼は猟兵の存在も、『フィールド・オブ・ナイン』の存在さえも兄妹が己を謀るための刺客であると断定していた。
そんなものがあるわけがないと。
そんな非現実があるわけがないと。
「ですが、容赦をする気はありません」
これがその結果である。
トリテレイアは、戦機猟兵用重力制御兵装装備型強化ユニット(エクステンションパーツ・タイプ・グラビティ)を背に負い、騎士と名乗るのも最早おこがましいと自嘲する姿でもって、戦場を見下ろす。
『ロンメル・ヴォーテックス』が手繰る『戦車軍団』は数多の猟兵達によって、尽くが撃破され壊滅の憂き目にあっている。
この惨状を見てもなお、『ロンメル・ヴォーテックス』は敗北を認めない。
そこにあるのは、ただの非現実であると頭を振るのだ。
「あり得ない。負けるわけがないのだ! そうだ、敵は寡兵ではないか! 戦力差はまだこちらに分があるはずだ……!」
数を頼みにしておきながら、ここまで消耗した事実に目を背ける者のどこに将としての器があるだろうか。
トリテレイアは数を喪った砲火の雨を最大速度で砲塔が傾けることの出来ぬ上空まで飛び上がり、位置を保つ。
そこから急降下で強襲する姿は、もはや巨大なる猛禽の如き姿であったことだろう。
「レーザー照準、良し。キャノン型グラビティガン、トリガー」
トリテレイアは慣性制御システムをフル動員し、一瞬で空中に急停止し、『戦車軍団』へとレーザーを解き放つ。
撃ち込まれたレーザーは『戦車軍団』の装甲すら容易く貫き、溢れる重力波でもって、その装甲を圧潰させるのだ。
「アポカリプスヘルに住まう人々の為、その王への野心、阻ませていただきます」
トリテレイアは認めることができない。
もしも、『ロンメル・ヴォーテックス』が、このアポカリプスヘルの支配者になったことを演算すれば、この文明が荒廃した世界に在って人の命は駒となるだろう。
自分が思い通りに現実を塗りつぶすための駒。
要らなく成れば捨てる。
壊れても捨てればいい。そんな為政者の何処に正しさがあるというのだろう。
故にトリテレイアは、『ロンメル・ヴォーテックス』を討つと決めたのだ。
マルチセンサーが『ロンメル・ヴォーテックス』の駆る車両を見つける。一瞬の判断であった。
『ロンメル・ヴォーテックス』はこれまでも、何度も車両を捨て、その都度『戦車軍団』を指揮してきた。
その卓越したフィジカルと切り替えの速さは確かに評価するに値するだろう。けれど、それとこれとは話が別である。
優秀であればあるほどに、その動きは如実に周囲との格差を生む。
それをトリテレイアは見逃さなかったのだ。
「其処です!」
急降下したトリテレイアの二門のキャノン型グラビティガンから放たれる一撃が『ロンメル・ヴォーテックス』の駆る車両を破壊し、吹き飛ばされ大地を転がる『ロンメル・ヴォーテックス』を見つける。
急降下し、再び車両を変えようとする『ロンメル・ヴォーテックス』の目の前で、トリテレイアは大盾の殴打でもって、それをひしゃげさせ爆炎を上げる。
「……ッ!!」
「潰える時は間近、ですよ」
トリテレイアは告げる。アイセンサーがゆらめき、『ロンメル・ヴォーテックス』の瞳が絶望に染まっていく。
そんな彼を救おうと『戦車軍団』たちが放つ十字砲火を躱し、トリテレイアは再び空へと舞い上がる。
敵将の意志はへし折った。
あれならば、もはや問題にすらならない。トリテレイアは、残された軍人オブリビオンたちを残らず殲滅するために、スラスターを吹かせ、重力波と共に戦線を圧潰し続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
ろんめる?
なんとか大戦略!とかなんかそんなゲームで見た!
つまり彼はショーグンなんだね!
●戦術的不利は戦闘でひっくり返す
つまり彼の乗った戦車を見つけてドッカーン!!ってすればいいんだね!
じゃあ戦車軍団くんたちの相手は[球体]くんたちにしれもらおう!
超特大の球体くんたちにゴロゴロ~っと戦場を転がってもらって跳ね飛ばしたり押し潰したり盾になったりしてもらいながらその間に戦場を駆け抜けるよ!
彼を探す方法はー…勘【第六感】!!
見つけたらUCで彼を戦車ごとドーーンッ!!
なるほどなるほど
その妄想と願望の中ににあるのがキミのリアルってわけ?
でも残念!現実ーっ!これが現実だよーっと!!
「ろんめる? なんとか大戦略! とかなんかそんなゲームで見た! つまり彼はショーグンなんだね!」
戦場にありて、明るい声が響いていた。
それは、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の朗らかな声であり、あまりにも場違いな声であった。
その名に興味はない。
例え、ゲームに興味があったとしても、それはただのデータの羅列でしかない。
そんなものに己が恐怖を抱くことも、ましてや畏敬の念を抱くことはないと、ロニは己の神性でもって戦場に降り立つ。
たとえ、数で勝る『戦車軍団』があったのだとしても、今や数多の猟兵達によって数的不利は尽くが覆されている。
戦術的不利は承知の上。
されど、それを覆すのが猟兵であるというのならば、ロニは笑っていうのだ。
「つまり彼の乗った戦車を見つけてドッカーン!! ってすればいいだね!」
端的に言えばそのとおりであろう。
けれど、あまりにも端的そものであった。じゃあね、と言うようにロニの周囲に浮かぶのは超重浮遊鉄球の群れであった。
あらゆる球が彼の権能であり、武装であるというのならば、戦場を蹂躙する球体たちは『戦車軍団』の疲弊した車両など物ともしないだろう。
砲撃が撃ち込まれたとしても球体であるがゆえに弾き飛ばし、あらぬ方角へとめり込むだけであった。
「球体……あんなものが、兵器であるわけがない!」
あまりの光景に『ロンメル・ヴォーテックス』が呻く。
ここまで敗北を喫しながら、未だ彼が戦えていたのは、彼が現実を認めぬからである。
この光景を非現実であると断定するからこそ、彼は未だ戦えていたのだ。
「あはは、やっぱり其処だ! 勘が良く当たるんだよねー」
ロニは、この混沌たる戦場にあって、神性が齎す勘でもって『ロンメル・ヴォーテックス』の所在を突き止めていた。
球体たちをたぐり、あらゆる砲撃を弾き飛ばし、すりつぶすように球体が『戦車軍団』を蹂躙していく。
最早数は全盛の半数以上をすり潰され、数的優位はもはや何処にもない。
歩兵たちも球体によってあえなく潰されていく。
そんな阿鼻叫喚たる戦場にあって、ロニは笑っていた。
「はい、どーんっ!」
放たれる神撃(ゴッドブロー)が周囲の地形を破壊しながら、『ロンメル・ヴォーテックス』の駆る戦車ごと、彼を叩き潰す。
吹き飛ばされ、爆炎の中から『ロンメル・ヴォーテックス』が這い出すのをロニは面白がるように歩み寄る。
「こんなことが、あるわけがない。これは夢だ、幻想だ、非現実だ。こんなことがあるわけないのだ。私の敗北は現実的ではない……!」
「なるほどなるほど。その妄想と願望の中にあるのがキミのリアルってわけ?」
ロニは笑っていた。
どこまでも笑顔であった。
惨憺たる戦場の中で、這いつくばる『ロンメル・ヴォーテックス』の姿を認めながら、その現実を見ようとしない瞳に己の姿がないことをロニは悟る。
それは神性を宿す神たる身にとっては侮辱以外の何者でもなかったことだろう。
故に神罰は此処に。
「でも残念! 現実ーっ! これが現実だよーっと!!」
放たれる拳の一撃が『ロンメル・ヴォーテックス』を打ち据える。
血反吐を撒き散らしながら吹き飛ぶ姿を見やり、ロニはまたケラケラと笑うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シーザー・ゴールドマン
ロンメル元帥も戦術的手腕はともかく戦略的視野は疑問視されているが……あのロンメル君はそれ以前の問題のようだ。
現実を直視できない者が最終的な勝者になるのは至難だよ。
『アーリマンの降臨』を発動。
戦場上空をぐるっと超音速で翔けて、真紅の波動、災厄を戦車軍団に降り注ぎましょう。
その上でロンメル・ヴォーテックスとご対面。
やあ、こんにちは。
まだ私が君の兄妹が差し向けた刺客だと信じているのかな?
まあ、どちらでもいいか。君はここで滅びるのだしね。
深紅の斬撃波をロンメルに放ちます。
猟兵と『戦車軍団』の激突は苛烈を極めた。
その戦いは寡兵でありながら、質を上回る進撃によって分断され、撃滅され、凄まじい物量で持ってこれまで敵を蹂躙してきた『ロンメル機動陸軍』を崩壊させるには十分なものであった。
すでに半数以上が破壊され、その殆どが戦力として数えることができなくなったとしても、軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』は己の敗北を認められなかった。
「ありえぬ……私が、この私が、『ロンメル』が敗れる……? そんなわけが、あっていいわけが、ない――!」
咆哮する『ロンメル・ヴォーテックス』を前に仕立ての良い紅のスーツを身にまとった美丈夫が降り立つ。
「ロンメル元帥も戦術的手腕はともかく戦略的視野は疑問視されているが……君はそれ以前の問題のようだ」
紅の美丈夫、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は、その金色の瞳を輝かせ、アーリマンの降臨(デウス・マールム)が放つ真紅のオーラを纏い、最後の猟兵として相まみえる。
彼を見つめる『ロンメル・ヴォーテックス』の瞳にあったのは、不屈の精神ではない。
あったのは狂気にも似た現実を直視しない瞳でしかない。
そんな者に将たる器などあろうはずもない。
すでにシーザーは、戦場上空を超音速で駆け抜け、真紅の波動を持って災厄を降り注いできた後であった。
『戦車軍団』は竜や神以上の力を持ち得ない。
例え、軍人オブリビオンであったとしても同様である。
真紅のオーラは、それらを尽く瞬殺し、圧倒したまま未だ一欠片とて喪われることなくシーザーの身に纏われ続けていた。
「やあ、こんにちは」
その言葉は日常的なものであった。
おおよそ戦場では聞くことのできない単語であったがゆえに『ロンメル・ヴォーテックス』は面食らったように言葉を紡ぐ。
「なんだと?」
意味がわからなかっただろう。
それ以前に、これを現実として受け入れることすらできなかった。
己は優秀な軍人である。兄妹とは違う。彼等のように愚昧ではないのだ。ならばこそ、目の前の幻影の如き男はなんだ。
こんな戦場にあって、戦いに赴く姿ですらない。
まるでビジネスマンが約束された商談に望むかのような優雅さでもって、己の前に立っているのだ。
「まだ私が君の兄妹が差し向けた刺客だと信じているのかな? まあ、どちらでもいいか」
微笑む姿はあまりにも穏やかなものであった。
このまま午後のお茶を楽しむような余韻さえある言葉であった。
だが、その身にまとうオーラだけが違う。対峙して初めて分かる圧倒的な存在。これが己の兄妹が放った刺客であるとは思えなかった。
「お、お前は一体……神だとでも言うつもりか!」
認められない。
自分が負ける。自分が劣っている。到底受け入れることができない。
己は一廉の存在である。
特別な存在なのだ。そうあるべきと己の遺伝子が言っている。偉大なる軍人、その名を持つ己だからこそ、これまでやってこれたのだ。
ならばこそ、敗北は許されない。己が認めてはならないのだ。
「君には関係のないことだよ。ここで滅びるのだしね」
にこやかに。
あくまで微笑むように。たおやかな微笑と共に放たれた真紅の斬撃波が『ロンメル・ヴォーテックス』という存在を両断する。
それは、これまで猟兵たちが紡いだ戦いの結実。
最後まで『ロンメル・ヴォーテックス』は己の敗北を意味止められず、そして己が直面した現実さえも非現実だと罵りながら、その身を散らす。
もはや、此処に彼の存在は一片たりとて許されない。
旧ロズウェルの市街地に、破壊された戦車たちが燃えていく。
蹂躙と略奪、その残滓の一欠片も許されることはないというように、猟兵達の手によって全てを骸の海へと押し返すのであった――。
大成功
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