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アポカリプス・ランページ④〜死と禁断

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●『死の谷』デス・バレー
 そこは過酷な大地であった。
『死の谷』と呼ばれるだけの由来が在った。
 高温と乾燥。
 ひび割れた土地は作物が育たつことはない。川すら流れぬ大地は、まさに『死の谷』と呼ぶにふさわしい土地であった。
 けれど、そこには『ヴォーテックス一族の機械要塞兼コンピュータ研究所が存在している。何故とは、簡単なことだ。
『フィールド・オブ・ナイン』の一柱、『スーパー戦車』のスーパーウェポンすらも狂わせる『禁断のコンピュータウィルス』が保存されているからだ。

 要塞化されているのは、これを護るためである。
 もしも、この戦場が占領されることになってしまえば、オブリビオン側にとっては痛手となるだろう。
 なにせ『スーパー戦車』のスーパーウェポンが狂えば、オブリビオン・フォーミュラの一角を突き崩す大きな足がかりとなるであろうから。
 しかし、それをさせぬのがオブリビオンである。

「――……うぅ、ァァ……」
 呻くような声と共に改造屍人『インテグラルアーム』たちが乾いた大地を闊歩している。
 その身にまとっているのは重厚な機械鎧である。
 それは装着者の戦闘能力を大幅にブーストする反面、一度着用すると死ぬまで脱げぬ禁断の武装であった。
 けれど、改造屍人『インテグラルアーム』はアポカリプスヘルの研究施設で生み出された、ゾンビであり、改造手術に寄って強化された存在だ。
 元より、死んだものと同じ。
 ならば、この『死の谷』と呼ばれる大地でも活動に支障はないだろうし、死ぬまで脱げぬことにデメリットはない。

「オオォォ、ア、うう、ア――」
 大地に響く恨めしき声。
 それは果たして嘗ての生に執着するものであっただろうか。それとも、たた徒に破壊と死を齎す舞台装置でしかないのか。
 その答えは誰にも出せない。
 あるのは、彼等が猟兵たちを阻む強力な兵器として機能しているということだけであろう――。

●アポカリプス・ランページ
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。アポカリプスヘルにおける戦いは、序盤と言えど未だ気を抜くことはできません。『フィールド・オブ・ナイン』……それぞれがオブリビオン・フォーミュラともまで言われるオブリビオンが6体もこの戦いでは存在が確認されています。これらを全て打倒するか、もしくは速やかに『フルスロットル・ヴォーテックス』を討つかで、今後のアポカリプスヘルの情勢は変わるでしょう」
 ナイアルテの言葉通り、今回の戦いにおいては、どの敵を残し、どの敵を打倒するかが猟兵達に委ねられている。

 多く残しては、後々に災厄の種を撒くことになるであろう。だが、時間が長引けば『フィールド・オブ・ナイン』たちが世界に対して齎す計画が用意周到になる。
 時間を与えぬか、それとも敵を多く残すか。
 それはとてもむずかしい問題であった。
「しかし、『死の谷』デス・バレーにはヴォーテックス一族の『機械要塞兼コンピュータ研究所』があります。そこに保存されている『禁断のコンピュータウィルス』があれば、『フィールド・オブ・ナイン』の一柱、『スーパー戦車』のスーパーウェポンを狂わせることができるのです」

 その『禁断のコンピュータウィルス』が如何にして『スーパー戦車』を脅かし、効果を放つのかは未だ判明していない。
 それ以前に『スーパー戦車』の詳細すら猟兵達はつかめてない。詳細つかめぬ相手のために今時間を割くべきなのかどうかという考えもあるだろう。
 けれど、猟兵達の歩みはいつだって繋いでいくものである。
 この戦いの意味はきっと後々の戦いを優位にすすめるに値するものであるはずだ。
「この『機械要塞兼コンピュータ研究所』の防備についているオブリビオン、改造屍人『インテグラルアーム』は厄介なことに、機械鎧で強化されているのです」

 戦闘能力を大幅にブーストする機能をもった機械鎧は厄介な存在であるが、それは同時にデメリットにも成り得るのだと彼女はいう。
「一度着用すると死ぬまで脱ぐことはできず、さらにブースト機能を破壊されてしまえば、たんなるデッドウェイト……重りと化してしまうのです」
 ならば、そのブースト機能を破壊、もしくは阻害さえしてしまえば、どれだけ強靭な肉体をもった改造屍人『インテグラルアーム』であっても、動きが鈍くなるのだ。

「数が数でありますから、ブースト機能の無力化から狙っていくのが上策かと。それ以上に『死の谷』デス・バレーは過酷な大地。乾燥と高温が襲い来る環境は、皆さんの身体を蝕むでしょう。どうかお気をつけて……」
 ナイアルテは猟兵たちを送り出す。
 死地から死地へ。
 度重なる危険な戦場。彼等の無事を祈ることしか己はできない。けれど、それでも送り出す彼女の微笑みは、猟兵達の勝利を信じているからであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『アポカリプス・ランページ』の戦争シナリオとなります。

『死の谷』デス・バレーに存在する『機械要塞兼コンピュータ研究所』へと攻め込み、『スーパー戦車』のスーパーウェポンすらも狂わせるという『禁断のコンピュータウィルス』を確保すべく、大地に闊歩するオブリビオンを打倒するシナリオになります。

 この高温と乾燥によって凄まじい悪環境を機械鎧によって戦闘能力をブーストされた改造屍人『インテグラルアーム』の集団を撃破し、アポカリプス・ランベージを戦い抜きましょう。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……敵の機械鎧を無力化する。

 それでは、『フィールド・オブ・ナイン』の齎すカタストロフを阻止する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『改造屍人『インテグラルアーム』』

POW   :    暴虐たる捕縛者
【巨大化能力】を使用する事で、【全身に触手】を生やした、自身の身長の3倍の【第二形態】に変身する。
SPD   :    マルチプルインテグラル
【無数】【の】【触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    ポイズンテンタクルス
【触手】から【粘液】を放ち、【それに含まれる麻痺毒】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:V-7

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シアステラ・ティルティス
幾星霜、世界を見守り続けてきた私でも出来ることがある
そう思ったから、私は今この地に立っています
私に出来ることは少ないけれど…それでも、私は良き結果を導きます

芭蕉扇で風を呼び、雲を呼び、広範囲に雨を降らせましょう
機械は水、そして雷に弱いと本から学びました
敵の粘液は避け、麻痺毒を受けないように細心の注意を払います
避けながら避雷針の準備を

裁きの雷の範囲内に敵を引き付けたら、ディバインデバイス、お願いします
鳴り響かせて
彼等へと降らせた雨の量も充分
まとめて感電させて差し上げます

出来ることをひとつずつ、一歩ずつ前へ
これが今の私に出来る最大のこと



『死の谷』と呼ばれるデス・バレーには川はない。
 あまりの乾燥に水は消え失せ、植物は育たない。一度入り込めば、そこは死の世界と呼ぶにふさわしい光景が広がっていることだろう。
 其処に座すのは『ヴォーテックス一族』が構える『機械要塞兼コンピュータ研究所』である。
 揺らめく大気の向こう側にそびえる機械要塞は、そこに保存された『禁断のコンピュータウィルス』を守るための城塞であった。
 何故ならば、『フィールド・オブ・ナイン』と呼ばれるオブリビオン・フォーミュラの一柱である『スーパー戦車』のスーパーウェポンをも狂わせるからだ。
「幾星霜、世界を見守り続けてきた私でも出来ることがある。そう思ったから、私は今この地に立っています」
 シアステラ・ティルティス(Canopus・f34763)は乾燥した大気の中、淡い白藤色の髪を揺らして立っていた。
 自分に出来ることは少ない。
 けれど、それでも。それでも彼女は善き結果を導くために戦場に降り立つ。

 高温は殺人的なまでの上昇を見せ、『機械要塞兼コンピュータ研究所』へと至らんとする猟兵を拒む自然の猛威ともとれた。
「ウ、ォ、ァアアア――」
 呻く声が聞こえる。
 それは生在る声ではないとシアステラは理解している。
 オブリビオン、レイダー、元はゾンビを改造した存在がうめき声を挙げながら、猟兵であるシアステラへと迫ってくる。
 改造屍人『インテグラルアーム』は、その身に機械鎧を纏い、ゾンビならざる速度で持ってシアステラに迫るのだ。
「嘆きの声ではない。生に執着しているわけでもない……ならば、このひとを拒む自然の中で、風を呼びましょう。雲を呼びましょう」
 手にした芭蕉扇がひと撫でした瞬間、小さな風が舞い上がっていく。
 それは徐々に大きな風へと変わっていき、そして雲を呼ぶ。雲は雨を呼ぶだろう。

 まさに奇跡と呼ぶにふさわしい力であった。
 雨の降らぬ大地に雨を降らす猟兵が為し得る天候操作の力。
「機械は水、そして雷に弱いと本から学びました」
 彼女の瞳が、『インテグラルアーム』より伸びる触手、そこから噴出する粘液を躱し、大地に避雷針を打ち込む。
 敵を攻撃するためのものではない。
 これはあくまで下準備である。

「逃げるまでもない。誘い込むまでもなく、あなたたちは素早い……けれど。デバインデバイス、お願いします。鳴り響かせて」
 囲う避雷針はすでに仕込みを終えている。
 シアステラの手にしたデイバインデバイスが奏でられた瞬間、極大なる裁きの雷が『インテグラルアーム』たちを飲み込む。
 雨天であったことなど忘れるような轟音。
 それは乾いた大地を濡らした瞬間、天より飛来する豪雷の一撃でもって『インテグラルアーム』たちの機械鎧共々彼等を霧散させる。

 まとめて感電させるまでもない。
 例え、裁きの雷に耐えたものがいたのだとしても、傷ついた体に最早鈍重なおもりと化した。
 そこに放たれる芭蕉扇の風の刃が屍人の体を切り捨て、霧散させる。

「出来ることをひとつずつ、一歩ずつ前へ」
 シアステラにとって世界を救うということはそういうことなのだ。
 大きな一歩でなくてもいい。
 小さな一歩でもいい。
 その一歩が確実に世界を良くしていく。それを知っているから、シアステラは未だ戦場に立つ。

「これが今の私に出来る最大のこと」
 奏でられるデバインデバイスの旋律が轟雷を呼び、『インテグラルアーム』たちを雷の中に飲み込んでいくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
機械ということですし、一度文明が崩壊されたというこの世界ならまだ金属部分の絶縁性がきちんとなされていない事に期待しましょうか。
それにこの土地は年間降水量も少ないと聞きますし……。

青月をかかげUC雷公天絶陣を撃ちます。先の理由の通り絶縁性が低いと信じ機械鎧をめがけて雷を放ちます。一度で通らずとも二度三度を繰り返せば物理的な耐性劣化も起こせると思います。
相手の攻撃は直感(第六感)で回避します。
この土地の気候を考えれば、直接外気に触れている触手も常時水分が奪われていると思われますから動きはそこまでなめらかではないと推察します。
粘液も同様に、直撃を避ければあとは乾燥してただの砂礫となるのではないかと。



 機械鎧はオブリビオン、改造『インテグラルアーム』の戦闘能力をブーストする力を持つ。
 それが集団で現れたのであれば、猟兵といえど数の猛威の前に敗北を喫することになるだろう。
 けれど、ここはアポカリプスヘルである。
 人類が黒き竜巻オブリビオンストームによって文明を崩壊させられ、荒廃した世界。此処にあって完全なる絶縁性を保つことのできる機械が残っている可能性は少なかっただろう。
 こと、『インテグラルアーム』たちがまとう機械鎧もまたそうであった。
「ウ、ォ、ァアアア、ア、オ、ア――」
 呻く彼等の声は、ただの生理反応でしかない。
 そこに悲嘆も怨嗟もなにもない。あるのは、目の前の存在に破滅を齎すという意志だけである。

 それが改造屍人『インテグラルアーム』というオブリビオンであった。
「やはり絶縁性を保つことは出来ていませんでしたか」
 猟兵の放った裁きの雷、その轟雷を聞き、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は頷く。
 彼女もまた『インテグラルアーム』たちが身にまとう機械鎧をどうにかすべく、戦場に立っていた。
 手にした雷公鞭から紫電が迸る。
 この『死の谷』デス・バレーは降水量が少なく、最も高温となる乾燥した大地である。
 雷の通り道となる空気中の塵は風に舞うだろう。

「宝貝「雷公天絶陣」……一度で倒れぬのならば、二度三度と繰り返すのみ」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 手にした雷公鞭が天に掲げられ、降り注ぐ雷が『インテグラルアーム』たちへと落ちる。
 空気を震わせる雷撃の一撃は、彼等の機械鎧のブースト機能を破壊するだろう。
 帯電するように彼等の身体が動けないのは、機械鎧が破壊されたからだけではない。彼女の放ったユーベルコードの雷撃が『インテグラルアーム』たちの体に感電し、身動きを封じているのだ。

「やはりどれだけブーストされていたのだとしても、この攻撃を避けられないのであれば……この気候です。私達と同じ様に体の水分が乾燥で奪われていく……」
 藍の見る『インテグラルアーム』たちは、その触手もまた外気に触れている。
 常時水分が奪われているような状態であるからこそ、彼等の攻撃もまたなめらかなものではない。
 どこかぎこちない動きが、さらに彼等の特性を殺していくのだ。
「ブースト機能がついた機械鎧を過信しましたね。どれだけ戦闘力を強化されようとも、本来の能力を発揮できないのであれば、それは意味がない」

 再び振り下ろされた雷撃の一撃が『インテグラルアーム』たちを霧散させる。
 この荒野にありて、彼等の存在は消えていくしかない儚いもの。
 どれだけ触手を伸ばそうとしても、うめき声だけが残るのみである。
「あ、ゥ、ォ、ア――」
 生にしがみつくこともできない死した後も動く屍。
 その姿に憐れみを覚えることはあれど、放置することはできない。
 この荒廃した世界だからこそ、人の希望に陰りを見せるものは残してはならないのだ。例え、それが嘗ての生命であったものだったのだとしても。

「せめて、儚く消えなさい。その手が生命を摘み取る前に」
 藍の瞳が再びユーベルコードに輝く。
 生命が生命を奪うのは、生きるため。けれど、死せる屍が生命を摘むことは罪過にほかならない。
 ならばこそ、藍は己の雷撃で持って、その行いを諌めるように轟音を轟かせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「この過酷な環境と蠢く屍人。正に死の谷と言うに
相応しい光景だね。
しかし、それで歩みを止める様ではこの先に待つ
さらなる戦いに挑む事は出来ない。」

真羅天掌を発動し冷却属性の大波を発生。
進路を大波で冷却した後、効果が切れない内に
駆け抜ける。
敵には冷却効果で動きが鈍った隙にファントムレギオンの死霊。
デモニックロッドの闇の魔弾(【誘導弾】)で機械鎧を
狙い攻撃。
攻撃しながら敵の攻撃を【見切り】躱す為に
【残像】を発生させながら移動。
機械鎧の機能を停止させたらその敵を集中攻撃し仕留める。
冷却効果が途切れた場合は
敵への攻撃を兼ね真羅天掌を再発動。
「此処が本当の意味で死の谷になるのは。
其方にとっての様だね。」



 改造屍人『インテグラルアーム』のうめき声がデス・バレーに響き渡る。
 彼等のうめき声は生理反応でしかない。
 生きているわけでもなければ、苦しんでいるわけでもない。
 悲嘆に暮れているわけでもないのだ。
 そこにあるのは唯、存在しているというだけの意義しかない。身にまとった機械鎧は、そんな彼等の戦闘力をブーストさせ、尋常ならざる力でもって、この荒野を疾走る。

 巨大な腕が振るわれると同時に触手となって猟兵たちを襲う。
 飛び散る粘液、その麻痺毒は猟兵達に触れれば、彼等の動きを止めるだろう。
「この過酷な環境とうごめく屍人。まさに『死の谷』と言うにふさわしい光景だね」
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は転移して見るデス・バレーの光景に息を呑む。
 荒涼とした大地。
 乾燥し、水分の欠片もない。さらに襲い来る高温。
 あまりにも過酷。人の生存圏ですらない『死の谷』、そう呼ぶにふさわしいと彼はフードの奥に隠れた表情を曇らせる。
「しかし、それで歩みを止める様では、この先に待つさらなる戦いに挑むことはできない」

 その言葉通りである。
 此処で足を止めては『フィールド・オブ・ナイン』と呼ばれるオブリビオン・フォーミュラたちが齎すカタストロフを防ぐことなどできようはずもない。
 ゆえに、彼の瞳は輝くのだ。
「大海の渦。天空の槌。琥珀の轟き。平原の騒響。宵闇の灯。人の世に在りし万象尽く、十指に集いて道行きを拓く一杖となれ」
 彼のユーベルコードは自然現象と属性を合成した現象を引き起こす。
 真羅天掌(シンラテンショウ)と呼ばれ制御の難しいユーベルコードであったが、高温と乾燥が襲い来るこの自然の猛威の前に立ち向かうためには、成さねばならぬことがある。

 生み出された輝きは、冷却の属性を持った大波。
 フォルクに迫った『インテグラルアーム』たちを押し流す。だが、ブースト機能で戦闘力を増加した彼等は、大波に耐えきり、その場に職種を突き立て立っていた。
「ウ、ァオアアア――」
 咆哮と共に彼等の身体が動き出す。
 けれど、それは精彩に欠いた動きであった。

「やはり冷却されれば動きも鈍るか。屍人と言えど、生物……その名残とでも言うべきか」
 フォルクは大波で冷却された道を一気に駆け抜ける。
 デモニックロッドから放たれた闇の魔弾が機械鎧を貫き、一気に重石を課せられた『インテグラルアーム』たちの触手を彼は既のところで躱して疾走る。
 残像を伴う彼の速度は、機械鎧のブースト機能を喪った彼等に捉えることはできない。
「ァお、オオオオッ!!!」
 振るわれる触手の一撃を黒杖で受け止める。
 術者の魔力を喰らい、魔弾が至近距離で爆ぜるように打ち出され、『インテグラルアーム』の体に大穴を開ける。

 霧散していく『インテグラルアーム』を尻目に、フォルクは疾走る。
 まだ数は多い。これらの全てを打倒し『機械要塞兼コンピュータ研究所』へと至らねば、『スーパー戦車』のスーパーウェポンすらも狂わせる『禁断のコンピュータウィルス』を手に入れることはできない。
「此処が本当の意味での『死の谷』になるのは――」
 フォルクのユーベルコードが輝き、迫る『インテグラルアーム』たちに大波が襲いかかる。

 高温の大地において、冷却の属性帯びた大波は堪えるだろう。
 フォルクは、己の魔力に寄って打ち出される闇の魔弾と共に、哀れなる屍人たちを見下ろす。
「――其方にとっての様だね」
 もはや、死した後も動くこともあるまいと、フォルクは嘗て生命であったモノに手向けとするように闇の魔弾を降り注がせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:灰遠雷、漆黒風

ではー、参りましょうか。
できるだけ距離をとりたいですしー、遠目の間合いで。
触手避けは…陰海月に乗りまして。頼みましたよー。

機械ならば、雷に弱いという相場がありますからねー。【四天境地・雷】にて、無数の矢を放ち、貫いてしまいましょう。
ええ、性質上、ブースト機能だけは壊れますねー?
そこに漆黒風を投擲して、貫いて参りましょう。


陰海月、義透乗せつつ頑張って触手よける。ぷきゅぅ!



「ウォオ、ァオァア――!!」
 改造屍人『インテグラルアーム』たちの咆哮が『死の谷』デス・バレーに響き渡る。
 彼等は機械鎧を身にまとい、本来では出せぬ出力で持って触手を手繰る。
 その勢いは凄まじいものであり、猟兵達の『機械要塞兼コンピュータ研究所』に近寄らせまいとするものであった。
 何かを考えているわけではない。
 振るう触手も動くものがいるからこそ放たれるものであって、明確な意志があるのではないのだ。

 すでに死した存在。
 屍を改造したゾンビ。その触手が求めるのは、生者であり猟兵の血肉だけであったことだろう。
 うめき声は悲痛なる声に聞こえたかもしれない。
 けれど、そこには感情は乗っていなかったのだ。
「ではー、参りましょうか」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は複合型悪霊であり、四柱の中の一柱を表層に顕し戦う猟兵である。
『疾き者』は巨大な海月である『陰海月』に乗り、放たれる触手を躱す。

「頼もしいですね、『陰海月』。その調子で頼みますよ」
 其の瞳に悲哀の感情はない。
 屍人は屍人。生きている者ではない。すでに生を終え、悪霊として、そして猟兵として戦う『疾き者』にとって『インテグラルアーム』たちは同情に値する存在ではなかった。
 機械鎧に身をまとう彼等を手にした『灰遠雷』――その黒塗りの長弓を引き絞り、放たれる雷の矢で貫く。

 輝くユーベルコードは雷の矢を空中で分裂させ、それぞれが『インテグラルアーム』を追尾し、機械鎧のブースト機能を司る部位を瞬時に貫く。
「ええ、性質上、ブースト機能はショートしますよねー?」
『疾き者』のはなった雷の矢によって機械鎧が本来のブースト機能を喪って、『インテグラルアーム』たちのまとう鎧をただの重石へと変える。
「ウ、ァオアアア!」
 彼等は突如として切れたブースト機能に苛立つように触手を振るうが、ブーストされていない触手の動きなど『陰海月』を捉えることはできないだろう。

「ぷきゅぅ!」
 勢いよく空を飛び、『疾き者』と共に『インテグラルアーム』たちを翻弄する。
「それ、そこです!」
 放たれる漆黒の棒手裏剣が的確に『インテグラルアーム』たちの眉間を貫き、その歪な存在を消滅させていく。
 動かぬ存在など的以外のなにものでもない。
 どれだけの数がいようとも、『陰海月』との連携に寄って触手は彼等を捉えられない。

 ただ、『陰海月』にとっては、この高温、乾燥の大地はひどく堪えることだろう。
 水分を奪っていく乾燥。
 じりじりと照りつける太陽。
 それらを前に体の水分が抜けていくのを感じながら、それでも健気にがんばる姿は、『疾き者』に力を与えるだろう。
「もうすこしの辛抱ですよー。ほら、あそこに他の猟兵が天候操作で作ってくれた水があります。あちらに向かって敵をひきつけつつ――」
 四天境地・雷(シテンキョウチ・カミナリ)。
 ユーベルコードの輝きを解き放ち、『インテグラルアーム』たちの機械鎧を雷のやが貫く。

 思わぬ計算違いもあれど、それでも状況を利用し、『疾き者』と『陰海月』は『インテグラルアーム』たちを退け、『禁断のコンピュータウィルス』を手に入れるため、『死の谷』を越えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
『禁断のコンピュータウィルス』……なんて素敵な響き……。

こんなラブリーなものをげっとできるうえに、
『スーパー戦車』の戦力までダウンさせられるなんて、これはもう全力でやるしかないね。

相手は戦闘能力をブーストされてるみたいだけど、それが機械由来なら全然怖くないよ。
触手っぽいのがちょーっと気になるところだけど、近づかれる前に動かなくしちゃえばいいんだからね!

【E.C.M】で電気系を破壊して、鎧を使用不能にして、
相手の動きが止まったら【M.P.M.S】を斉射して、道を開こう。

わたしのウイルスげっとを邪魔するというなら、容赦はしない、よー!
さぁ、吹き飛べ、道を空けろ! ウイルスはわたしのものだー!



『死の谷』デス・バレー。
 そこに存在する『機械要塞兼コンピュータ研究所』には『禁断のコンピュータウィルス』が保存されているのだという。
 言葉の字面だけ聞けば、それがどれだけ危険なものであるのかは検討がつくだろう。
 けれど、猟兵たちはそれを必要とし、そして同時にオブリビオンたちは、それが奪われることによって齎される被害を知るからこそ、機械鎧によるブースト機能を用いてもなお、この地を防衛しようとしている。

『フィールド・オブ・ナイン』と呼ばれるオブリビオン・フォーミュラの一柱『スーパー戦車』の持つスーパーウェポンさえも狂わすという『禁断のコンピュータウィルス』は猟兵たちにとって切り札と成り得るものである。
 だからこそ、猟兵たちはこの地を攻略するために荒野を往くのだ。
「『禁断のコンピュータウィルス』……なんて素敵な響き」
 だが、そんな事情があれど菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は一人うっとりとした瞳を輝かせていた。

 電脳魔術を手繰る彼女にとって、ウィルスとは不倶戴天の敵であると思えるのだが、彼女にとってそれは『ラブリーなもの』であるようであった。
 それがゲットできる上に『スーパー戦車』の戦力までダウンすることができるのであれば、これはもう全力でいくしかないと彼女は意気込んでいたのだ。
「ふむふむ。あの触手ゾンビさんたちは戦闘能力をブーストされているみたいだけど、それが機械由来なら全然怖くないよ!」
 理緒は改造屍人『インテグラルアーム』たちの姿を見て、ちょっとだけいやな顔をした。
 触手のうねりが、微妙に気持ち悪い。
 というか、普通にゾンビが嫌だ。

「ウ、ォ、ァアアア――!」
 唸り声のような、うめき声のような、そんな咆哮が轟き理緒を見つけた『インテグラルアーム』たちが退去として彼女に襲いかかる。
 だが、理緒が慌てることはなかった。
「近づかれる前に動かなくしちゃえばいいんだからね!」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝き、電波妨害装置からノイズジャミングとディセプションを解き放つ。
 それは、E.C.M(イー・シー・エム)によって電子機器を使用不能にするユーベルコードであった。

『インテグラルアーム』たちがまとう機械鎧が電子制御されているのであれば、彼女の放つジャミングでもって信号は途絶し、ブースト機能を司る部分は機能を停止させるだろう。
 彼女に迫る『インテグラルアーム』たちの動きが途端に重くなる。
 一歩踏み出すことも難しい様相を見て、理緒はやっぱりね、と微笑む。彼等の触手だけが厄介であったが、連動して展開したミサイルランチャーが砲口を拓く。

「わたしのウィルスげっとを邪魔するというなら、容赦はしない、よー!」
 搭載された弾頭は容赦のない火力量であった。
 動きを止めた『インテグラルアーム』たちが抵抗する様に触手を理緒に伸ばすが、それらが彼女の身に降り注ぐことはなかった。
「さぁ、吹き飛べ、道を空けろ! ウィルスはわたしのものだー!」
 物騒な事を叫びながら、理緒のはなったミサイルが『インテグラルアーム』たちをまとめて殲滅していく。
『死の谷』デス・バレーにいつもよりもテンションの高い理緒の笑い声が木霊する。

 人は何かを欲するときにこそ力を発揮するものである。
 今の理緒は『禁断のコンピュータウィルス』を手に入れるため、どんなことでもやってのけるだろう。
 もはや彼女を止められる『インテグラルアーム』は存在していない。
 欲望丸出しの理緒の顔は、機械要塞にしか向けられていない。
「愛しのウィルス、待っていてね! すぐにかわいがってあげるからー!」
 それは一体どういうことなのだろうと誰もが思ったかも知れない。
 けれど、悪いようにはならないだろうなと祈るしかない。

 理緒は、そんな心配など杞憂だというようにミサイルの爆風と共に機械要塞へと突き進むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

柊・はとり
苦しいんだろうな、あんた達も
そんな姿にされて…人の事は言えないが

UC【第五の殺人】
コキュートス
俺達の嘆きを喰らっていけ

部位破壊で鎧のブースト機能を狙う
どこかを庇う知能は無いだろうから
無数の触手を偽神兵器で切断しつつ
第六感で怪しいと感じた箇所を
片っ端から叩いて弱点を特定

傷つけて傷つけられて
いつまでも死ねずに生き永らえ
ただ役割を与えられたからここにいる
俺だってずっと苦しいままだ

偽神細胞の拒絶反応
高温と乾燥による苦痛
同類を斬る事による苦痛
全ての苦しみを糧にし封印を解除

今救ってやる
鎧ごと一息に切断

破壊と死を齎すだけの舞台装置に
なってやるつもりは無いんだ
例え世紀末だろうが
探偵は死者の声を聞き取る為に居る



 うめき声が聞こえる。
 それはただの生理反応でしかなかったのかもしれない。
 けれど、そこに悲哀を、悲嘆を見るのであれば、改造屍人『インテグラルアーム』たちのうめき声は、たしかに救いを求めるものであったことだろう。
 死して、屍を弄られ怪物へと成り果てた体。
 誰がそれを喜ぶだろうか。
 塗りつぶしていくのは死と恐怖ばかり。
 向けられる視線は奇異と恐怖だけ。
 彼等の生命に如何なる価値があったのか。それら全てを踏みにじるのがオブリビオンであるというのならば、死を超越したデッドマンは何を思うか。

「苦しんだろうな、あんた達も。そんな姿にされて……人のことは言えないが」
 柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)の瞳は彼等の悲哀を見た。
 彼の言葉は彼等の悲嘆如きうめき声に理解を示した。
 己もまたそうであるように、彼等との違いは何処になるのだろうかなどと考えている暇はない。

 己もまた嘆く者であるのならばこそ、彼は第五の殺人『吉報岬』(キッポウミサキノサツジン)を思い出す。
 弄ばれた生命。
 それを救えなかった悔恨。嘆き。あらゆるものが偽神兵器『コキュートス』を輝かせる。
「『コキュートス』、俺達の嘆きを喰らっていけ」
 戦場を疾走る。
 じりじりと体を焼く高温など気にも止まらない。
 肌がひび割れていく乾燥など今は捨て置けばいい。手にした氷の大剣『コキュートス』が与える負荷がはとりの意識を保つ。

 デッドマンゆえに死ぬことはない。
 すでに死は超越したのだから。
「傷つけて、傷つけられて」
 迫る触手を切り裂く氷の刃。ブーストされている『インテグラルアーム』たちの触手の群れを物ともせずに切り裂き、道をゆく。
 はとりの体にかかる苦痛という負荷、それをエネルギーに変換した『コキュートス』の刃はあまりにも鋭い。
「いつまでも死ねずに生き永らえ、ただ役割を与えられたからここにいる」
 ずっと苦しいままだ。

 それを己は知っている。
 目の前の『インテグラルアーム』たちだってそうだ。彼等の幸いは、考える力がないことだ。
 己を知ることができない。ただ生理反応のままに猟兵を殺すことだけを命じられている。
 己のように世界を見て、己の体質故に事件を引きつける意味を考えることはない。
 放たれた氷の刃が彼等の身をブーストさせる機械鎧の機能を切り裂く。
「今救ってやる」
 偽神細胞の拒絶反応が体を苛んでいく。

 痛みはもう理由にはならない。
 この足を止める理由には十分ではない。目の前にあるのは破壊と死を齎すだけの舞台装置。
 あのようになってやるつもりはないのだ。
 どれだけこの世界が終末を超えた黄昏に在るのだとしても。
「探偵は死者の声を聞き取る為に居る」
 疾走る剣閃の一撃が『インテグラルアーム』たちを一刀のもとに両断する。

 せめて、其の苦しみから開放するために。
 痛みを背負うのは己だけでいいのだというように、『コキュートス』が煌めく。
 今は見よ。
 その氷の大剣が齎す冷たき光を。その先にこそ、救いがあるのだと言うように、はとりは己の痛みを力に変えて斬撃を解き放つ。

 ユーベルコードの煌めきだけが『死の谷』に輝く。
 生命を許さぬ過酷な環境。
 故に、存在する屍人たち。それらの全てを弔う氷獄の剣閃が、彼等の墓標であるというように、はとりは目指す真実へと駆け抜けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
機械も風邪を引いちゃうんだ
マザーも引くことあるのん?
【アンチウイルスアプリ『Rabbit Bless』を活用しましょう】
そんな凄いウイルスなららぶ達のショーバイに役立つかも!
よしマザー
早速病原菌を仕入れにいこー!
【ネットワークに接続出来ません】

暑い環境はなんともないけど
あの鎧のせーでウネウネ凄い
ちょっと近づけないぞ
【高温の為パフォーマンスが低下中です】
そうだ!
ラビットブレスの炎でもっと暑くしちゃえば機械が熱くて動かなくなるかもなん
そしたららぶがカラースプレーでお目々を可愛くアートしてあげる

そんなにウネウネばたばたしたら
味方同士当たっちゃうぞ
味方同士当たっちゃったら
皆絡まって動けなくなっちゃうぞ



『禁断のコンピュータウィルス』――それはオブリビオン・フォーミュラである『フィールド・オブ・ナイン』の一柱『スーパー戦車』の持つスーパーウェポンをも狂わせる猟兵たちにとって得難き存在である。
『スーパー戦車』が如何なる存在であるか、未だ判明はしていない。
 けれど、オブリビオン・フォーミュラである以上、猟兵たちにとってそれを弱体化できる術があるのだとすれば、この『死の谷』たるデス・バレーに攻め込む理由は十二分にあったのだ。
「機械も風邪引いちゃうんだ。マザーも引くことあるのん?」
【アンチウイルスアプリ『Rabbit Bless』を活用しましょう】

 そんなやり取りをしていたのは、ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)であった。
 目の前にそびえるは『機械要塞兼コンピュータ研究所』である。
 しかし、そこにラブリーが求める商材にして商機があるのならば、その道行きを阻むのもまたオブリビオンである。
「ウォオ、ァオァア――」
 うめき声を挙げながら迫る改造屍人『インテグラルアーム』たちの触手が無数にラブリーへと宙を疾走るようにして伸びる。

 あの触手に捕まっては如何に猟兵と言えど身動きが取れなくなってしまうだろう。
 そうなっては、せっかくの商機も喪われるというものだ。
「そんな凄いウィルスなららぶ達のショーバイに役立つかも! よしマザー、早速病原菌を仕入れにいこー!」
 まったくもって物騒な言葉を紡ぐラブリーであったが、『マザー』から帰ってきた言葉は、いつもの定型文であり、そっけないものであった。
【ネットワークに接続できません】

 その言葉をラブリーは聞きながら、迫る触手を見据える。
 彼女は一回見たら忘れない。忘れたくない。だって、勿体ないのだと彼女は言っていた。彼女の瞳に映る世界はみんなすごく綺麗なものだ。すごいものだと思えるのだ。
 だから、彼女は世界が好きだと叫ぶ事ができる。
 それはいわば、頭の中のセカイの全て(ピュアデックス)が、彼女の思うままであることを示していただろう。
「あの鎧のせーでウネウネ凄い。ちょっと近づけないぞ!」
【高温の為パフォーマンスが低下中です】
 その言葉にラブリーはひらめく。

 ぴこんと頭の上に豆電球が灯るようでもあった。
 手にした火炎放射器『ラビットブレス』から炎を解き放つ。それは触手たちを燃やすだけに飽き足らず、彼等の機械鎧を高熱でもってオーバーヒートさせるのだ。
 ブースト機能だって機械だ。
 これだけ『マザー』もパフォーマンスが落ちているのならば、ブースト機能なんてものはとっくに壊れしまうだろう。
「ほらね、やっぱりらぶの思ったとおり! それそれカラースプレーでお目々を可愛くアートしちゃったしょくしゅちゃん!」

 輝くユーベルコードと共に現れるのは作りの荒い触手達であった。
 ラブリーは見たものをコピーし、偽物を作り上げることができる。その触手たちが『インテグラルアーム』たちへと迫り、彼等の触手と絡まって、その動きを止める。
 ただでさえ、ブースト機能を破壊されて重石となった鎧で動けなくなった彼等は呻くしかできなかったことだおる。
「ほらほら、そんなにうねうねばたばたしたら、こんがらがって、絡まって、動けなくなってしまうん!」
 ラブリーはそこまで考えて行動したのだろう。
 絡まった触手達に塗れた『インテグラルアーム』を見やり、カラースプレーを荒野に投げ捨てる。

 ここからはもう恐れるものなんてない。
「病原菌はあっち! きっとあのどでかい建物の中にあるなんな!」
 ラブリーは火炎放射器を手に、身動きの取れなくなった『インテグラルアーム』たちを焼き払いながら突き進む。
 そこに商機があるのならば、地の果てまで商材を求めるのが商人である。
 彼女の進撃を止められる者などいるわけがないのだ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

メレディア・クラックロック
オーライ、それじゃあ派手に行こう。
反撃開始の篝火は盛大な方がいいもんね!

陣取るのは戦場を見渡せる崖の上。
オブリビオンに見つかるのは最初から織り込み済み。
だって、手が届く前に終わらせればいいものね?
【Fire agate】――イグニッション。

先行させるのはレーザービット。
細くとも精密なレーザーでブースト機能部を撃ち抜いて停止。
動きがトロくなったらミサイルポッド達の出番だよ。
重石になった鎧ごとぶつけて纏めて焼却処分しちゃおうか。

いくらここが『死の谷』でも、さすがにオブリビオンの灰なんか撒くわけにはいかないもんね。
だから灰も残してあげない。
骸の海への直帰便、しっかり味わって逝くといいよ!



『死の谷』と呼ばれるデス・バレー。
 そこは生物が生存するにはあまりにも過酷な環境であった。
 乾燥と高温。
 それらはあらゆる水分を奪い去り、ひび割り、干からびさせていく。故に『死の谷』。そんな光景をインタビュー記事を掲載するブログ主であるメレディア・クラックロック(インタビュア・f31094)は見下ろす。
 アポカリプスヘルにおけるオブリビオン・フォーミュラの出現。
 それは猟兵にとっても捨て置けぬものであったが、それ以上に荒廃した世界に生きる人々にとっては、希望の光であったことだろう。
 なぜなら、猟兵たちがやってくる。

 知っていようと、知っていまいと、世界は動いていく。
 そこに生きる人々のために何ができるだろうかと考えた時、メレディアはウィンクして明るく言うのだ。
「オーライ、それじゃあ派手に行こう」
 彼女が陣取るのは戦場を見渡すことのできる崖の上。
 あえて目立つ場所に陣取ったのは、オブリビオンである改造屍人『インテグラルアーム』たちに見つけてもらうためだ。

 それは織り込み済みであるし、彼等の機械鎧によってブーストされた触手は凄まじい勢いでメレディアに迫る。
「ウ、ォ、ァアアア、オア、アアア――!」
 うめき声のような、唸り声のような咆哮が轟き、メレディアに迫る触手達。
 その切っ先から放たれる麻痺毒の粘液が彼女の肌にかかることはなかった。
「Fire agate(スターマイン)――イグニッション」
 その言葉と同時にメレディアの緑の瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女に降り注ぐ粘液全てが一瞬で蒸発した。

「反撃開始の篝火は盛大な方がいいもんね!」
 それはレーザービットによる射撃であった。
 彼女に迫った粘液の尽くを蒸発させ、ミサイルポッドと共に無数に展開したレーザービットが中を舞う。
 複雑な幾何学模様を描いて飛ぶ、千に近い数の攻撃ポッドたち。
 レーザービットが宙を乱舞し、『インテグラルアーム』たちの身にまとう機械鎧のブースト機能を貫く。

「グ、ァ、オ!?」
 その速度はどれだけブーストされていたとしても正確無比なる射撃と相まって躱すことなどできはしないだろう。
 途端に機械鎧は重石となって彼等の動きを止める。
 そこにミサイルポッドが展開し、放たれるミサイルが降り注ぎ『インテグラルアーム』たちを一瞬で爆発でもって消し飛ばすのだ。
「いくら此処が『死の谷』でも、さすがにオブリビオンの灰なんか撒くわけにはいかないもんね――だから灰も残してあげない」
 メレディアの瞳はユーベルコードに輝いたままだ。

『機械要塞兼コンピュータ研究所』には、『スーパー戦車』のスーパーウェポンさえも狂わせる『禁断のコンピュータウィルス』が存在している。
 その確保さえできれば、この戦いもまた優位に運ぶことができるだろう。
 そのための第一歩。
 こんなところで立ち止まっているわけにはいかないのだ。彼女は崖を滑るように下りながら、レーザービットとミサイルポッドと共に進撃する。
 レーザーとミサイルの乱舞は『インテグラルアーム』たちを尽く消滅させていく。

「骸の海への直行便、しっかり味わって逝くといいよ!」
 爆炎の中を進むメレディアを止められる者はいない。
 彼女のユーベルコードは『死の谷』にあって、破壊の権化と呼ぶべき正確無比なる射撃と強力なミサイルの砲撃に寄って機械要塞へと一直線に縦断していく。
 その一本道は、始まったばかりのアポカリプス・ランページ、その初戦を飾るには十二分な戦果であったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マオ・ブロークン
……あたしに、できる、ことは。
この、身体のうちに、流れる、電撃で……
機械の、鎧を。中にいる、奴らごと。
ぶち抜いて、やるだけ。

俊敏に、動いて、弱点を狙う、ことは……あたしには、難しい。ので、
まずは、真正面から、丸鋸で、挑みかかる。
触手を、絡めて……攻撃して、くる。なので。

十分に、「接続数」を、集めたら。
絡まれてる、腕を、エネルギーへ、変えて……
一気に。高圧の、電撃を、通す。
あれだけ、みずみずしい、生体組織、なら。
よく、通電する、はず。

死体に、なっても。安らかに、いられないで、踏み躙られる、世界。
せめて、あなたたちは……ここで、眠りなさい。



 戦いに際して涙を流しながら戦う者がいる。
 迸る雷電は、電流花火か。
 マオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)は涙を流しながら戦う猟兵であった。
 止まらぬ涙は彼女の抱えた記憶故であろう。
 甘い日々はもう戻らない。
 今がどん底であることはわかっている。この鈍く重たい身体が、如実に語っている。
 己ができることはそう多くはないのだと。
「……あたしに、できるこ、ことは」
 その身に宿したヴォルテックエンジン、『魂の衝動』を膨大な電流に変換する動力装置が唸りを上げている。

 嘆く声とは程遠い唸り声。
 されど、彼女の足は止まらない。『死の谷』と呼ばれたデス・バレーの高温、乾燥さえも彼女を止めるに値しないのだ。
「ウ、ァオアアア、ヴオッッ、オオオ――!」
 咆哮が聞こえる。
 鈍く動く身体をもってマオは顔を向ける。そこにあったのは、巨大な触手を纏った改造屍人『インテグラルアーム』たちであった。
 ブースト機能を持つ機械鎧と共に巨大化した『インテグラルアーム』の腕が彼女の身体を叩き潰さんと振るわれる。

 だが、その一撃をマオは真正面から丸鋸で受け止める。
 きしむ腕の音なんて聞き飽きただろう。マオは己のヴォルテックエンジンから直結された電力を供給するバズソーの刃が振るわれた触手の塊の如き腕を切り裂きながら、一歩前に踏み出す。
「あたしには、難しい……ただ、一歩前に踏み出すことさえも。俊敏に、動くことさえも」
 だから、一歩を前に踏み出すのだ。
『インテグラルアーム』が放つ触手が体に絡みつくのだとしても、関係ない。

 数多いる『インテグラルアーム』たちがマオの体を絡め取らんと触手を伸ばす。
 埋もれるようにしてマオの体は触手に飲まれていく。
 だが、その中にありながらマオは、それら全てが狙い通りであった。彼女が狙っていたのは『接続数』。
 そう、放たれた触手が多ければ多いほど、彼女の体に繋がった『インテグラルアーム』は数が多いのだ。
「……失うもの、大きければ大きいほど、いい……」
 彼女の瞳に輝くのはユーベルコード。

 彼女がデッドマン、死を超越した存在であり、未だ胸に抱える人生最悪の記憶を持って、『魂の衝動』と為す力。
 デッドマンズ・スパークの煌めきは、彼女のこぼれた涙とともに放たれる。
 悲嘆の涙は止まらない。
 誰かが拭ってくれるわけでもない。
 彼女はただの女の子だ。けれど、彼女は前に進む。丸鋸が回転し、迸り『インテグラルアーム』の体液。
 それは瑞々しいものであった。

 故に、己の放つデッドマンズ・スパークの膨大な電流は、彼等の触手を伝って機械鎧にまで及び、そのブースト機能を失わせる。
「それだけ、みずみずしい、生体組織、なら。よく、通電する、はず」
 その一撃は一瞬で機械鎧のブースト機能を焼き切るだけではなく、巨大化した『インテグラルアーム』たちすらも焼き滅ぼす。
 凄まじい一撃は彼女の片腕を失わせるほどの代償を必要としたけれど、彼女は涙をたたえたままの瞳で『インテグラルアーム』たちが崩れ去っていく姿を見つめる。

「死体に、なっても。安らかに、いられないで、踏みにじられる、世界」
 このアポカリプスヘルはそういう世界だ。
 死体だって動く。
 あらゆるものが、生命の尊厳が、踏みにじられ、それを愉悦とするオブリビオンがいる。
 安息は何処にもない。
 だからこそ、マオは呟くように、少女のままの心で告げる。

「せめて、あなたたちは……ここで、眠りなさい」
 死を超越しても尚、己の心に宿る少女性を捨てない。捨てる必要など何処にもない。マオは、静かに呟き足をすすめる。
 まだ戦いは終わらない。
 ならば、いつの日かを夢見て、彼女は一歩を進めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
死してなお安息を得られず、亡骸を利用されるなんて…酷い事を

…待っていて。今、貴方達を操る呪縛を断ち切ってあげる

陽光や高温を「影精霊装」の闇に紛れるオーラで防御して消耗を防ぎ、
空中機動を行う「血の翼」を広げ敵の粘液を「写し身の呪詛」の残像で受け流しながら敵陣に切り込み、
吸血鬼化した自身の生命力を吸収して血の魔力を溜めUCを発動

自身の周囲に雷属性攻撃を乱れ撃ちする"雷の渦"を放って敵陣をなぎ払い、
機械鎧を無力化した後、再度UCを発動する2回攻撃で追撃を行い祈りを捧げる

…異世界の稀人である私の弔いの言葉が、此方の流儀に則っているか分からないけど、
勝手に祈らせてもらうわ。眠りなさい。安らかに…



 屍は荼毘に付されるべきである。
 それは如何なる世界にあっても共通の認識であり、亡骸を弄ぶ行いは、生前の生命を冒涜するものに代わりはなかった。
 誰もが怒りを覚えるものである。
 それが人間性というものだ。
 だからこそ、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、その瞳に映る改造屍人『インテグラルアーム』たちの姿に憐憫の情をもって、対峙する。
「死してなお安息を得られず、亡骸を利用されるなんて……酷いことを」
 彼女は息を吐き出す。

「ウォオ、ァオァア、ァオ、ア――」
 意味のないうめき声。
 それは生理反応でしかなかっただろう。憎悪も怨嗟も悔恨も悲嘆も其処にはなかった。 
 あるのは電気反応ばかり。
 魂すら宿らず、残滓のみで動く屍。
 それを弄び、手駒とする。人の尊厳を踏みにじる行いを前に、リーヴァルディは、『影精霊装』の闇に紛れるオーラを纏い、照りつける陽光と高温を避ける。

 ただこの場にいるだけで消耗する過酷な自然環境に適応するために、『血の翼』を広げ、己に向かって放つ『インテグラルアーム』たちの禰寝機を躱す。
 残像を持って躱す姿は、一陣の風のようでもあった。
「……待っていて。今、貴方達を操る呪縛を断ち切ってあげる」
 言うや否や、彼女は一瞬で吸血鬼化した己自身の生命力を吸収し、血の魔力を貯める。

 輝くユーベルコードは燦然と輝く太陽すらもかげらせるものであったことだろう。
「……限定解放。テンカウント。吸血鬼のオドと精霊のマナ。それを今、一つに……!」
 限定解放・血の教義(リミテッド・ブラッドドグマ)。
 それは彼女の魔力で持って練り上げられた雷。それらが乱れ打たれ、『雷の渦』のようになって迫る『インテグラルアーム』たちを薙ぎ払っていく。
 その雷撃は尽く『インテグラルアーム』たちの身にまとう機械鎧のブースト機能を無効化し、一瞬でリーヴァルディが大鎌を構え、切り込む。

「異世界の稀人である私の弔いの言葉が、此方の流儀に則っているかわからないけれど」
 振り下ろす斬撃が『インテグラルアーム』を切り裂く。
 一刀元に切り裂かれた彼等の身体がぼろぼろになって崩れて、消え去っていく。亡骸すらももてあそばれた体に、尊厳はもはや無い。
 弔いの言葉も意味があるのかさえわからない。
 けれど、それでも祈らずには居られないのだ。
「勝手に祈らせてもらうわ」

 それで救われるものがあるとは思えなかった。
 けれど、それでもリーヴァルディは祈る。数多の生命があったことを忘れない。ただそれだけで、人の心は守られる。
 この荒廃した文明、世界の中で、人びとが如何なる思いで明日を望んでいるのかを彼女は知っただろう。
「眠りなさい。安らかに……」
 より良い明日を望む。

 それはもはや『インテグラルアーム』たちには訪れないだろう。
 ならば、リーヴァルディが与えられるのは安らかなる眠りだけだ。静かな怒りと悲しみさえも置き去りにするようにリーヴァルディは『血の翼』を広げ、扇状を飛ぶ。
 少しでも彼等が痛み無く安らかに眠れるように。
 祈りの刃は、ここに雷の渦と共に舞う――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
特殊なコンピュータウイルスねぇ。後生大事に保管なんてせずに、抹消しておけばいいのに。
まあいいわ。今日のオーダーは改造屍人ね。お相手しましょ。

「結界術」「全力魔法」「範囲攻撃」刃の「属性攻撃」「なぎ払い」「衝撃波」「仙術」「道術」で風吼陣。
装甲を半減して攻撃力を五倍に。

的は大きいほどいいわ。無数の刀剣で、頭も首も胴も手足も触手も、斬り捨ててあげる。

風吼陣と共にゆっくり前進。ああ、道は空けなくていいわよ。こじ開けるから。

コンピュータのことはよく分からないけど、要塞そのものを制圧したら、得意な誰かがどうにかしてくれるのよね。
それなら、要塞に直行するより、遠回りして改造屍人を削る方を優先しましょうか。



『死の谷』デス・バレー。
 それは高温にして水の一滴すら存在しない乾燥した大地。
 あまりに過酷な自然環境の中にあって、生命は生存を許されていないかのようにさえ思えてしまう。
 そんな中、猟兵たちは戦場を疾走る。
 このアポカリプス・ランページにおいて猟兵たちが倒すべきオブリビオン・フォーミュラは一体ではない。
『フィールド・オブ・ナイン』と呼ばれるオブリビオン・フォーミュラが6体も確認され、その中の一柱である『スーパー戦車』に対する切り札が『機械要塞兼コンピュータ研究所』に保存されているのだという。

「特殊なコンピュータウィルスねぇ。後生大事に保管なんてせずに、抹消しておけばいいのに」
 そう呟いたのは、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)であった。
 彼女自身は、その方面に明るいわけではない。
 保存しておく意味がわからないし、そんなことだから自分たちに付け入られるのだと思っていただろう。こちらにとっては僥倖そのものであったが。
「まあ、いいわ。今日のオーダーは改造屍人ね。お相手しましょ」

 彼女の目の前にはうめき声のような咆哮と共に巨大な姿へと変貌する触手に塗れた改造屍人『インテグラルアーム』たちであった。
 数も多ければ図体も大きくなる。
 それは圧倒的な存在として、機械鎧によるブースト機能で戦闘力を高められていた。
「的は大きいほどいいわ」
 しかし、ゆかりは怯むことはなかった。
 彼女にとって大きさは問題ではないのだ。これまで戦ってきたオブリビオンたちは、これよりも大きな存在だっていたのだ。数キロ単位の巨大な敵と渡り合ってきた彼女にとって、高々数メートル巨大に成ったところで驚くに値はしない。

「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。天上までも響き渡る破壊の風よ。その身に宿せし無限の剣刃により触れるもの悉くを裁断せよ。疾!」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 己の全力を持って展開された風吼陣(フウコウジン)は巨大化した『インテグラルアーム』たちを飲み込む。
 暴風の中に引きずり込まれ、逃げることも出来ない彼等にとって、そこは無数の刀剣による斬撃の嵐の渦中でしかない。

「ああ、道は空けなくていいわよ」
 ゆかりは暴風でもって『インテグラルアーム』たちを引きずり込み、その巨体を解体するように切り刻んでいく。
「――こじ開けるから」
 ブースト機能があろうとなかろうと、自身が歩むたびに周囲を巻き込んで無数の刀剣が彼等を刻むのだ。
 むしろ、彼女としてはコンピュータの類がよくわからないがゆえに、要塞そのものを制圧するよりも、そういうったものを得意とする猟兵に任せた方が良いと思ったのだ。

「ウ、ァオアアア、ア、オゥ、ァ――!!」
『インテグラルアーム』たちのうめき声が聞こえる。生理反応だと分かっていても、あまり気分のよいものではない。
 これらを他の誰かに聞かせるのもまた気が引ける。
 ならばこそ、ゆかりは敢えて要塞に直行はしない。
「餅は餅屋ね。あたしは彼等の殲滅を優先しましょうか。こんなこと、誰でも好んでやることじゃない」
 ゆかりは、風吼陣によって生み出された暴風と共に荒野を進む。

 すでに屍となった存在。
『インテグラルアーム』たちを塵一つ残さず切り刻み、その歪んだ存在を抹消していく。
 彼等のうめき声が世界を呪うものでなかったことだけが唯一の救いであったのかもしれない。
 ゆかりは暴風の向こう側に、この大きな戦いの行く末を見るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ

敵はインテグラルアームか…依然戦った時にも厄介な相手だと思ったが、今回は機械鎧によって強化されている、と
ナイアルテさんの言う通り、まずは機械鎧の無力化を目指した方がいいか

命無き物(無機物)である飴を媒体に固有結界・黄昏の間を発動
風・水の疑似精霊を【多重詠唱】にて同時召喚

風の力で自身の周囲一定領域に風の防壁を形成
その防壁内部に水の力で冷気を循環させ周囲の環境を一時的に活動しやすい状況へ
風の防壁は冷気を囲うだけじゃなく外敵からの攻撃も防ぐ
相手の攻撃は防壁で遮断

敵の機械鎧には雷【属性攻撃】を付与した護符を投擲し感電させて無力化試みる
無力化したら刀で【鎧砕き】【貫通攻撃】を叩き込む



 改造屍人『インテグラルアーム』は、ゾンビである。
 その屍を改造し怪物へと変貌させた者が如何なるものであるかはわからない。けれど、そこには確かな悪意があったのだろう。
 人の亡骸を弄ぶ行いは、どんな文化においても忌避されるものである。
 ゆえに、例え世界が異なる出身の猟兵であっても、その行いを受け入れる者はいなかったであろう。
「以前戦った時にも厄介な相手だと思ったが……!」
 鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は機械鎧を纏った『インテグラルアーム』の力が以前戦った者とは格段に違うことを認識していた。

 放たれる触手は元より、そのさきから放たれる粘性を帯びた麻痺毒は浴びれば、ひりょであっても身体が動けなくなってしまうだろう。
 そうなってしまえば、後は数で圧されてしまう。
「機械鎧によって強化されているのなら、まずは!」
 ひりょは迫る触手を躱しながら、己の手にした飴玉を媒体にユーベルコードを発現させる。
 それは風と水の疑似精霊を呼ぶユーベルコード。
 固有結界・黄昏の間(コユウケッカイ・タソガレノマ)に招かれる疑似精霊たちが、風のちからを持って、ひりょの周囲に風の防壁を形成する。
 さらに防壁として生み出した風の中を水の精霊の力で大気を冷却する。

 この『死の谷』と呼ばれる過酷な環境において、高温は人間の体力を奪っていくし、それ以上に乾燥が人の肌から水分を奪っていく。
「確かにこれならば、動きやすい!」
 放たれる触手が風の防壁に寄って防がれ、噴出した粘性の麻痺毒すらも弾き返す。
「その機械鎧は、ここで止めさせてもらう」
 手にした護符が飛び、付与された雷の力が迸り、『インテグラルアーム』たちの機械鎧に備えられたブースト機能をショートさせるのだ。
「ウォオ、ァオァア―――!」

 うめき声のようでもあり、唸り声のようでもある『インテグラルアーム』たちの声。
 それは意味のある言葉でもなかったし、意志を感じさせるものでもなかった。
 亡骸をいじった改造屍人は、考えることをしない。
 ただ、この『機械要塞兼コンピュータ研究所』を防衛せよという命令にのみ従い、猟兵たちに襲いかかるのだ。
「かつては、人の生命が宿っていたものだろうに……それを……!」
 弄ぶことは、ひりょにとって許せぬことであった。

 かつての生命の形すらも歪める行い。
 例え、この戦場である『死の谷』にある『機械要塞兼コンピュータ研究所』にある『禁断のコンピュータウィルス』が必要でなかったのだとしても、ひりょはきっと駆けつけたことだろう。
 彼等はもう休んでいいはずだ。
 死んだ後も亡骸を弄ばれ、その肉体が消えることなく残り続ける。
 悪意を振りまき、破壊と死だけを振りまく装置と化した彼等に罪がないとは言わない。

 けれど、こんな最期を迎えていい理由なんて何処にもないはずなのだ
「だから、せめて此処で終わらせる。みんなの笑顔を見るためには!」
 機械鎧のブースト機能を無力化された『インテグラルアーム』たちの動きが鈍る。護符をばら撒き、雷撃が迸る中、ひりょは駆け抜ける。
 手にした刀が一瞬で『インテグラルアーム』たちの首を両断し、その身体を霧散させていく。

 もう本来の名前も、如何なる者たちであったのかも思い出せないだろうし、知ることは叶わないだろう。
 けれど、それでもひりょは願わずにはいられないのだ。
「せめて、もう誰も傷つけなくていいように。ここで俺が止める……!」
 その視線の先には機械要塞。
 そこに自分たちが求め、オブリビオン・フォーミュラの一柱『スーパー戦車』を弱体化させる切り札がある。

 それを求め、ひりょは『インテグラルアーム』たちを蹴散らしながら、一直線に戦場を切り開くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒髪・名捨
【心境】
「着ると死ぬまで脱げない強化装備…か。難敵だな」(寧々「屍人ならすでに死んでおろう。」名捨「そーいやそーだな。」)

【行動】
まずはあの鎧の無力化…か。
寧々頼む(寧々「うむ、妾に任せるがよい旦那様。」)
寧々の『仙術』で機械鎧の機構に『ハッキング』機械鎧の『情報収集』してもらい、機械鎧の動作を司る制御部の位置を探してもらう。
情報感謝。
長い髪の毛を伸ばして『なぎ払い』『体勢を崩す』とアーラーワルで制御部へ『串刺し』して『部位破壊』する最小の労力で最大の効果って奴だな。
機能低下した奴らはまとめて神無の『地形破壊』に巻き込む形で『範囲攻撃』でまとめて潰す。
来世は機械じゃなくて功夫で強化するんだな。



 改造屍人『インテグラルアーム』が着込んだ鎧は、死ぬまで脱ぐことのできぬ禁忌なる技術で作り出された機械鎧である。
 その戦闘力をブーストする力は、彼等の身体を巨大化させ本来の巨躯をさらに三倍にも増大させる。
 触手がうねり、その集合体のような有様となった『インテグラルアーム』が咆哮する。
「ウォオ、ァオァア、オア、アアアア――!!!」
 それは意味のない咆哮であった。
 ただの生に対する反応でしかなかったのかもしれない。
 悲哀も悲嘆もない。
 尊厳もなにもあったものではない。あれは屍である。

「着ると死ぬまで脱げない強化装備……か。難敵だな」
 黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は巨大化した『インテグラルアーム』を見上げ、呟く。
 あの巨躯で戦闘力が底上げされているのであれば、この『死の谷』デス・バレーと呼ばれる大地であっても猟兵たちを数と共に圧倒することができるだろう。
 けれど、彼の頭の上に乗った喋る蛙『寧々』が言う。
「屍人ならすでに死んでおろう」
「そーいやそーだな」
 ならば、恐れる物などなにもないというように名捨は戦場となった荒涼たる大地を駆け抜ける。

 振り下ろされる巨腕を躱し、名捨は見上げる。
 巨躯似合わせてサイズが巨大化した機械鎧。あれを無力化するためには、ブースト機能を壊すしかないだろう。
「まずはあの鎧の無力化……か。『寧々』、頼む」
「うむ、妾に任せるが良い旦那様」
 ぴょんこと名捨の頭の上で『寧々』が跳ねるようにして印を結べば、その仙術によって機械鎧の機構を透視する。
 仙術にかかれば、機械といえど物体であることには変わりなく。
 その人身を以てすれば、ブースト機能が集約された場所など簡単に分かるのだ。

「旦那様よ、ブースト機能とやらがあるのは、背面右、斜めの場所!」
「情報感謝」
 名捨はその言葉を聞き、長い黒髪の毛を伸ばし、『インテグラルアーム』たちの巨躯、その足を払う。
 体制を崩させ、一気に回り込む。
 手にした短槍『アーラーワル』が投げ放たれ、支持された制御中枢を一気に貫くのだ。
「これが最小の労力で最大の効果って奴だな」
 いや、手柄は妾のものだろうと寧々が額をピシャリと叩いてくるが、名捨は構わなかった。

「ア、ォアウウウウウア――!!!」
 もはや機械鎧はデッドウェイトにしかならず。
 呻く声は、未だ意味を見いだせない。
 けれど、名捨は構わず進む。その瞳に輝くユーベルコードは、必殺の一撃でもって放たれる拳である。
 飛び上がり、『インテグラルアーム』たちを眼下に見る。
 あれは哀れなる屍である。
 生命の残滓を弄ばれ、土に帰ることもできぬ存在。ならばこそ、名捨は拳を振るう。
「必殺を超えた必殺の一撃。これがオレの奥の手だーッ」

 神無(カンナ)――。

 それは神すら『フィールド・オブ・ナイン』と呼ばれる存在。
 されど、その神すら殺す拳でもって、名捨は乾燥した大地すら穿ち、砕く。
 それに巻き込まれるようにして『インテグラルアーム』たちが衝撃波の一撃でもって消滅していくのだ。
「来世は機械じゃなくて功夫で強化するんだな」
 彼等が如何なる運命を辿ってきた者であるのかはわからない。

 けれど、せめて悪辣なる所業から開放され、来世というものがあるのであれば、健全なる肉体でもって生命として正しく終われるように。
 彼はそう願わずには居られないのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
むう…スーパー戦車
すーぱーせんしゃ…
凄く…頭悪い感がして逆に斬新
まあ、いずれ出会うであろう時を考えて予防措置を取るのは悪くないか
目指せ研究所、ついでに面白いデータがあると良いな
しかしあっつい…


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
機械の鎧だからって電気で対抗だなんて安直な事…
うーん…変わったやり方が思い浮かばないからやります…
【Code:M.S】起動
多目的小型マシン、112体発進!
機械鎧の制御システムを『ハッキング』させて鎧の動きを止めて最後に雷で回路を焼き切る!
これで鎧はただの拘束具だね
そうして動きを鈍らせたところで、私も接近して『串刺し』にして1体ずつ仕留めていこう



『禁断のコンピュータウィルス』を猟兵たちが求める理由は一つである。
『フィールド・オブ・ナイン』と呼ばれる『オブリビオン・フォーミュラ』の一柱『スーパー戦車』の持つスーパーウェポンを狂わせるほどの力を持つからだ。
 未だ『スーパー戦車』の詳細はわかっていない。
 けれど、その機械兵器がアポカリプスヘルにおいて、甚大なる破壊を齎すのはかは、わからずとも脅威であることは間違いない。
 その『スーパー戦車』のワイルドカードと成り得る物があるのであれば、それを確保しようと動くのは当然であったことだろう。

 別に正道にして王道を疾走ることを義務付けられたわけではない。
 けれど、それでも猟兵たちはアポカリプス・ランページをひた走るしかないのだ。
「むぅ……」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は思わずうめいていた。
『死の谷』デス・バレー。
 その高温と乾燥という過酷な環境にうめいていた…わけではない。
「『スーパー戦車』……すーぱーせんしゃ……」
 彼女ほどの猟兵とも成れば、『スーパー戦車』の脅威は推して測ることができるだろう。
 なればこそ、その驚異に対して唸っているのかも知れない。

「すごく……頭悪い感がして逆に斬新」
 いや違った。なんかものすごくシリアスな空気出しておいて申し訳ない気分になるほど玲は『スーパー戦車』のネーミングに唸っていたのだ。一周回ってというやつであるのかもしれない。
 そんな彼女の唸りとは別の唸り声が改造屍人『インテグラルアーム』たちから発せられる。

 彼女の周囲に集まり、襲いかかるのは触手によって巨大化した異形なるオブリビオン。機械鎧を身にまとい、尋常ならざる力を発露させる『インテグラルアーム』の振り下ろした巨腕である。
「まあ、いずれ出逢うであろう時を考えて、予防措置をとるのは悪くないか」
 だが、その巨腕は振り抜かれた二刀の模造神器の放つ青い残光によって切り裂かれ、大地に落ちる。
「目指せ研究所、ついでに面白いデータがあると良いな」
 玲は『インテグラルアーム』たちを見上げる。
 如何に巨大化していたとしても彼女には問題にならない。

 機械鎧でもってブーストされているのならば、それを壊せばいい。だた、彼女の場合、機械だからといって電気で対抗するだなんて安直なことは……と言い掛けてやめた。
 他に変わったやり方が思い浮かばなかったことは此処だけの秘密である。
「Code:M.S(コード・マシン・クラフト)、起動」
 玲のユーベルコードが輝き、多目的小型マシンが百を超える数でもって顕現する。発進! と勢いよく号令を出せば、多目的小型マシンたちが一斉に『インテグラルアーム』たちに襲いかかる。

 いや、襲いかかるというよりも、その機械鎧の制御システムをハッキングし、その動きを止めるのだ。
「ふんふん、やっぱりブースト機能の制御に集約されているわけだ。それじゃまあ、いっといで」
 ぽちっとな、と玲が指で指揮し、何かエンターキーをッターン! とするように奮った瞬間『インテグラルアーム』たちの機械鎧のブースト機能がシャットダウンされる。
 それはハッキングによって掌握されたシステムを多目的小型マシンたちが放つ雷撃の一撃で物理的にも焼き切ってしまう荒業であった。

 重たい音を立てて『インテグラルアーム』たちが膝をつく。
 如何に巨大化しているのだとしても、こうなっては機械鎧はただのデッドウェイト、拘束具でしかない。
「後は簡単。ずんばらりんってね」
 玲が駆け抜けた後に残るのは、首を両断され霧散していく『インテグラルアーム』たちだけである。

 彼女は額に浮かんだ汗を拭う。
 この『死の谷』とも呼ばれるデス・バレーの大地は、どうにも慣れない。どうせ戦うのならば、バカンスができそうな風光明媚な都市の方がよかったのかもしれない。
 けれど、そうも言っていられない。
「しかしあっつい……せめて研究所は冷房ガンガンでキーンってなるくらいに冷えておいて欲しい……」
 研究所だから、それくらいの施設はあってほしいと玲は希望的観測を呟きながら、敵陣を多目的小型マシンたちとともに蹂躙していくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
『スーパー戦車』に『禁断のコンピュータウィルス』か。
何とも素晴らしいネーミングセンスだね。
まあ、研究所の見学に行かせてもらおうか。

それを妨げるのは機械鎧に身を包んだ屍人の群れだったね。
ふむ、ではこうしよう。
空中(空中浮遊×念動力)から屍人の群れに『創造の魔力』で創り出した疑似太陽を落とします。(属性攻撃:超高温×破魔×範囲攻撃×全力魔法)

超高温により機械鎧を溶かし、そのまま中の屍人も溶かしましょう。
地面も溶けだした辺りで太陽を消失させて後始末を。
(気温の正常化、地面の復元をやはり創造の魔力で)



『機械要塞兼コンピュータ研究所』を巡る戦いは佳境に入っていた。
 多くの猟兵たちが改造屍人『インテグラルアーム』たちを葬り去り、その血路を拓く。
 目指すのは『禁断のコンピュータウィルス』である。
 それを求める理由は簡単だ。
『フィールド・オブ・ナイン』と呼ばれる『オブリビオン・フォーミュラ』、『スーパー戦車』の持つ武装、スーパーウェポンを狂わせるほどの力を持っているゆえに、それが猟兵たちんワイルドカードになることは明確であったからだ。

 しかし、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)はいつものように微笑を絶やさずに高温と乾燥が支配する荒涼たる大地『死の谷』デス・バレーに降り立つ。
「『スーパー戦車』に『禁断のコンピュータウィルス』か。なんとも素晴らしいネーミングセンスだね」
 シーザーの心の琴線に触れたネーミングセンス。
 それは常人から見れば、少し安直な感じがしないでもないなと思うものであったが、触れる者からすれば、一周回って逆に斬新であったことは言うまでもない。

「まあ、研究所の見学に行かせてもらおうか」
 涼しい顔のまま、紅のスーツに身を包んだ美丈夫が目の前に聳えるようにして呻く改造屍人『インテグラルアーム』たちを見上げる。
「ウ、ォ、ァアアア――!!」
 振り下ろされる巨腕が影となってシーザーを覆う。
 しかし、それをするりと躱して彼は宙に浮かぶ。念動力によって浮かぶ彼を巨大化した『インテグラルアーム』たちが追う。
 触手を伸ばし、生に対する反射とも言える行動でもって彼を追うのだ。

「ふむ、ではこうしよう」
 目の前には機械鎧に身を包み、戦闘能力をブーストされたオブリビオンの群れ。
 さらに巨大化し、リーチと膂力を増した触手の巨腕は大地を叩き割るほどの力を有している。
 ならば、と彼の瞳がユーベルコードに輝く。
「創造の魔力――君等には眩しいかもしれないが」
 シーザーが生み出したのはシドンの栄華(デウス・アニマ)が誇る疑似太陽。
 その極大なる魔力の塊とも言うべき力は、この『死の谷』デス・バレーの高温以上であり、触れれば溶解するほどの熱量で持って『インテグラルアーム』たちを襲う。

 その巨大な熱量は機械鎧を溶かし、さらに勢いを余らせるようにして着込んだ中の『インテグラルアーム』たちを溶かしていく。
「機械鎧は防御能力にまで長けていたわけではないようだね……これだけ過酷な環境だ、それ相応の備えがあると思っていたが……」
 期待はずれであったようだとシーザーが呟く。
 生み出した疑似太陽は、地表すらも溶解させていく。
 それまで熱砂の如き大地であったが、それさえも上回る魔力の奔流が生み出した疑似太陽は、大地すらも崩壊させかねない。

「おっと、まずいな。後始末を忘れるところであった」
 疑似太陽を消滅させ、シーザーのユーベルコードによって甚大なる被害を被った地表を創造の魔力で持って補填したシーザーは、息を吐き出す。
 少し本気を出すだけでこれである。
 致し方のないことであるとは言え、少し加減を覚えるべきであったとシーザーは自嘲する。

 彼の瞳が見据えるのは『機械要塞』。
 そこに求めるものがあるのならば、やはり見学がてらということになる。此処よりは過ごしやすい場所であればいい、そんな風に思いながら彼は一路、研究所へと飛ぶのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
禁断のコンピュータウィルス……破棄すればいいものを、と思いますがわざわざ保存しているということは何かしらに使うつもりがあるのでしょうね。
それの阻止のためにも、ここは落としておきましょう。

暑いのも苦手ではありませんが、今はこちらの方がやりやすそうですね。
【シェイプ・オブ・フリーズ】を使用し、戦場全体に氷雨を降らせます。
機械鎧が密閉されていなければ雨で内部が濡れ、密閉されているなら急激な冷却による結露で機械鎧内部に水が発生する。
どちらにせよショートさせることができる……はずです。

敵の動きを止めたら触手や視界の死角に入り込むように動きながら「フィンブルヴェト」からの氷の弾丸で敵を狙います。



『フィールド・オブ・ナイン』の一柱たる『スーパー戦車』への切り札に成り得る『禁断のコンピュータウィルス』。
 それを保存している研究施設が存在する『死の谷』デス・バレーは、今や猟兵とオブリビオンの激闘の地となっていた。
 無数の改造屍人『インテグラルアーム』たちは戦闘能力をブーストさせる機械鎧を身にまとい、猟兵たちを研究施設へとたどり着かせてはならぬと抵抗を続けている。
 彼等は屍人ゆえに、意志はない。
 あるのは生に対する反射行動のみである。
 それはあまりにも悪辣なる所業に寄って生み出された怪物であると言わざるを得ないだろう。

 けれど、それでも戦い、勝ち取らねばならぬものが在る時、猟兵はその力を発揮するのだ。
「『禁断のコンピュータウィルス』……破棄すればいいものを、と思いますがわざわざ保存しているということは何かしらに使うつもりがあるのでしょうね」
 セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は、オブリビオンが己達の不利になるものを敢えて残し、保存していたという事実に着目していた。
 確かに彼女の言う通り、自身たちにとって不利となる材料をわざわざ保存しておく理由はない。
 ならば、その保存するだけの理由があるはずなのだ。
 それはきっと猟兵達の思いもよらぬところで活用され、アポカリプスヘルに生きる人々を苦しめる要因になる。

「ならば、それの阻止のためにも、ここは落としておきましょう」
 セルマは瞳をユーベルコードに輝かせ、一歩を踏み出す。
 そう、すでに此処は荒廃した大地ではない。
 高温と乾燥だけが支配する戦場。それが『死の谷』デス・バレーの所以であった。だが、彼女のユーベルコード、シェイプ・オブ・フリーズによって、本来降り注ぐことのない氷雨が大地に濯ぐのだ。

「暑いのも苦手ではありませんが、今はこちらの方がやりやすそうですね――ここは、私の領域です」
 戦場に降り注ぐ氷雨は、触れたものを凍らせる。
 すでに『死の谷』は氷点下にまで気温が下がっていた。それに適応することが『インテグラルアーム』たちには出来なかったことだろう。
 セルマを襲おうとしていた触手が凍りつく。
 これまで高温の中で適応していた屍人の身体は、瞬時に凍りつき、どれだけ機械鎧でもってブーストさせられていたとしても、無理に動けば其処から砕けていくのだ。

 さらに機械鎧の中の水分が急激な空気の冷却に寄って結露を生じさせる。
 その水分が機械鎧の中にあるブースト機能の中枢でショートを引き起こし、彼等の体にまとった機械がただの重石になってしまう。
「ウ、ォ、ァアアア――!」
 その唸り声は、ままならぬ己達の体に対する苛立ちであっただろうか。
 それとも、大地を氷結させながら進むセルマに対する畏怖であっただろうか。どちらにせよ、彼等は此処で滅びる。

 すでに死した屍。
 それを弄んだ所業の犠牲者であれど、セルマは己の手にしたマスケット銃を構える。
「すぐに終わらせましょう。こんなこと」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝き続ける。
 降りしきる氷雨の中、セルマは氷の弾丸を撃ち放ち、『インテグラルアーム』たちを凍結させていく。

 あらゆるものに平等に訪れる終末の冬。
 それは時に優しさとして彼等に齎されたものだろう。
 終わりなき魂の牢獄たる屍。
 その中で朽ちていくよりも、今氷の弾丸に貫かれ霧散するのが、せめてもの手向け。
 セルマは大地を氷結させながら一直線に『機械要塞兼コンピュータ研究所』へと疾走る。

 少しでも早く、少しでも多くの人々を救うために。
 彼女のアポカリプス・ランページは始まったばかりである。けれど、それでも多くを貫き、穿つことこそが敵の喉元に至る最善であると知るからこそ、彼女は引き金を引くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
酷い環境だなぁ
この時期に過ごす場所じゃないね
という訳で早く目的を果たせるように頑張ろうか

ドローンを使って周囲を偵察
出来るだけ少ない戦闘で近付けるルートを探るよ

ルートを定めたら迅速に行動しないとね
立ちふさがる敵を倒して進もう

機械鎧が厄介らしいから対策を考えないとね
まともな思考力が無くても使えるという事は
電子制御のシステムがありそうだね

麻痺毒持ちの触手には触れたくもないから
距離を取ってUCを使用
大電流で機械鎧を短絡させてしまおうか
中身も麻痺させられるから丁度良いね

敵の動きが止まったら
機械鎧の装甲の薄い関節部分を狙って
切断用ワイヤーで切り落とそう

…ゾンビだからってバラバラになっても動いたりしないよね



『死の谷』デス・バレー。
 その環境は過酷と呼ぶに相応しい高温と乾燥であった。佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は辟易したように呟く。
「この時期に過ごす場所じゃないね」
 猟兵であっても、この高温は耐え難いものであったことだろう。
 滴る汗さえも乾燥していく。
 大地には、多くの改造屍人『インテグラルアーム』たちがひしめいている。彼等の触手が猟兵を見れば、即座に放たれ、その体を絡め取り麻痺毒でもって行動を不能にさせんと迫るのだ。

 多くの猟兵たちが『機械要塞兼コンピュータ研究所』への血路を開いている。
 この分では十二分な余裕を持って『禁断のコンピュータウィルス』を手にすることができるだろう。
 その様子を晶はドローンを使って偵察しつつ、可能な限り戦闘を少なくして近づくルートを算出する。
「他のみんなのお陰だな。このルートで行けば……!」
 晶が駆け出す。
 猟兵達の戦いによって開かれた道。
 多くの『インテグラルアーム』たちがひしめいてはいるが、晶であれば問題はない。

「問題は機械鎧だね……ブースト機能が厄介だけれど……」
『インテグラルアーム』たちは屍人を改造したオブリビオンである。
 思考能力は皆無であり、生理的反応でもって猟兵を襲ういわば装置のような存在だ。
 ならば、まともな思考力がなくとも使える電子制御によってコントロール出来るはずだ。
「ウォオ、ァオァア……!」
 迫る『インテグラルアーム』を見て、晶は生理的に麻痺毒持ちの触手に触れたくないと思っただろう。
 それは触れれば粘液に仕込まれた毒で動きを止めるユーベルコード。
 触れられぬようにと試製電撃索発射銃(エレクトリック・パラライザー)から放たれたワイヤーが『インテグラルアーム』の体を絡め取る。

 しかし、ブースト機能によって底上げされた『インテグラルアーム』の戦闘能力は凄まじいものである。
 ワイヤーだけであれば引きちぎられそうでもあった。
「そう簡単にはちぎれないよ――なぜならね」
 瞬間、ワイヤーを伝うのは電撃。
 そう、彼女が放ったのはただのワイヤーではない。試作と言えど電撃索。『インテグラルアーム』たちが引きちぎろうとした瞬間に電撃が走り、その機械鎧の中にあるブースト機能さえもショートさせるのだ。

「こうなったら、もうそれはただのデッドウェイト。動かぬ屍になってもらうよ」
 重石となった機械鎧の上に電撃による麻痺、そこへ絡まったワイヤーが絡まれば、『インテグラルアーム』達の首が飛ぶ。
 一瞬で寸断された彼等の身体が大地に落ちるよりも早く霧散していく。
「……よかった。ゾンビだからってばらばらになっても動かないんだ……」

 晶は胸をなでおろす。
 最近のゾンビ映画は首を落としても普通に動いてくる厄介なやつが多いのだ。いや、映画と一緒にするものどうかと思ったのだが、それでも警戒しておくに越したことはない。
 晶はワイヤーガンを構え、最短のルートをひた走る。
 あの『機械要塞兼コンピュータ研究所』さえ、制圧してしまえば、『フィールド・オブ・ナイン』の一柱『スーパー戦車』に対する切り札が手に入る。

 このアポカリプス・ランページはスピードが勝負の戦いだ。
 多くを倒し、多くの『フィールド・オブ・ナイン』の計画をくじく。そのために晶は最短最速の道を選んだのだ。
「さ、早い所『禁断のコンピュータウィルス』とやらを確保しよう。あんな物騒な敵なんだ。どうせろくな計画を立てないだろうし……」
 晶は『スーパー戦車』の計画を阻止すべく、戦場を疾走る。

 目の前に立ちふさがる『インテグラルアーム』たちを蹴散らし、その最奥に至る。
 この戦場での戦いももうすぐ終わりを迎える。少しで早く到着するために晶は電撃索を撃ち放ち、道なき道を踏破するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
オブリビオン・フォーミュラすら狂わせ得るコンピュータウィルス…私のような種族にとっては致死毒と呼べる存在です
ですが、それがアポカリプスヘルに住まう人々の安寧に繋がるのであれば、騎士として命を賭して求めましょう

巨大化した相手の触手を脚部スラスターの推力移動も交えた疾走で回避しつつ鎧の構造を観察
メンテナンスポートを発見次第、機を見て懐に飛び込みワイヤーアンカーを射出し強制有線ハッキングで情報収集

ブースト機能の要の箇所が判れば…もはや勝機は此方の物です

見切った箇所へUCを込めた弾頭を格納銃器で敵全体に乱れ撃ちスナイパー射撃
鎧に停止と関節ロックコマンドを入力
膝を付いた敵を片端から怪力で振るう剣で両断



『フィールド・オブ・ナイン』の一柱、『スーパー戦車』。
 その詳細は未だ判明していないが、彼等すべてが『オブリビオン・フォーミュラ』であるという事実を省みた時、この『死の谷』デス・バレーを制圧することは、猟兵たちにとって急務であったことだろう。
『フィールド・オブ・ナイン』たちに時間を与えるということは、例えアポカリプス・ランページに勝利したとしても、その後に控える戦いの趨勢を大きく彼等に傾けることになる。

 なればこそ、今回の戦いに求められるのは迅速果断なる戦いであろう。
『禁断のコンピュータウィルス』が保存されているという『機械要塞兼コンピュータ研究所』は、まさに猟兵たちにとって、その急先鋒となる戦いであった。
「オブリビオン・フォーミュラすら狂わせ得るコンピュータウィルス……私のような種族にとっては、致死毒と呼べる存在です」
 機械騎士、ウォーマシンであるトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)にとって、それはまさに言葉通りの存在であった。
 彼の電脳さえもおそらく狂わせるであろうウィルス。
 それは危険極まりないものであったが、物は使いようである。使い方さえ誤ることがないのであれば、『禁断のコンピュータウィルス』は『スーパー戦車』に対するワイルドカードにさえ成り得るのだ。

「アポカリプスヘルに住まう人々の安寧に繋がるのであれば、騎士として生命を賭して求めましょう」
 彼の前の前にあるのは巨人の如き改造屍人『インテグラルアーム』たちであった。
 巨大化した身体に備えられた機械鎧がブースト機能によって、彼等の戦闘能力を底上げしている。
 触手が絡まりあった巨腕の如き一撃がトリテレイアに振り下ろされるが、その一撃を彼は躱しながら、鎧の構造を観察する。

 機体の脚部スラスターを噴出させ、土煙の中を飛ぶトリテレイアのアイセンサーが揺らめく。
 確かに恐るべき力である。
 これを侮っては、やられるのは己の方であると自覚させるには十分であった。
 しかし、同時に機械鎧の様子をつぶさにマルチセンサーで解析した彼は、メンテナンスポートを発見する。

「やはり。一度着用すれば脱ぐことの出来ぬ鎧と言えど、内部の構造をメンテナンスするポートがあると踏んだのは正解であったようですね!」
 トリテレイアの放つワイヤーアンカーが巨大化した『インテグラルアーム』のまとう機械鎧のメンテナンスポートに突き刺さり、有線ワイヤーによる矯正ハッキングで、機械鎧の中身を走査する。
 ブースト機能の要となる回路を見つけた彼は、一気にナノマシンを内部に流し込む。

「ブースト機能の要が判れば……もはや勝機は此方の物です」
 トリテレイアのアイセンサーが輝き、銀河帝国特殊工作作業用微細機械(ハックオアブラスト)が作動する。
 流し込まれたナノマシンが活性化し、機械鎧を即座に停止し、その関節をロックするコマンドを入力する。
「デッドウェイトにする以上に、その動きは止めさせていただきます」
 乱れ撃つワイヤーアンカーと特殊弾頭が無数の『インテグラルアーム』たちを捉え、その機械鎧を停止させる。

 最早、戦場の趨勢は完全に猟兵に傾いていた。
「レプリカとはいえ銀河帝国製が最も機能的に相性が良いのは複雑ですが……」
 膝をつく『インテグラルアーム』たちを前にトリテレイアは剣を構える。
 彼等は改造屍人。
 元は屍であり、生ける者たちの残滓であったのだろう。
「ウ、ォ、ァアアア――」
 呻く声は生理反応。
 そこに意志はない。もはや、ただの操り人形にも近い身体。魂はとうに離れているだろう。

 その悪辣なる所業を、効率的であるとか、理詰めで語るつもりはトリテレイアにはない。
 己が剣を振るうのは今を生きる者たちのために。
 そして、死せる者たちの安寧を取り戻すためでもある。それが徒労であったのだとしても、トリテレイアはその矛盾こそを尊ぶだろう。
「せめて安らかにお眠りください」
 振るう斬撃は一瞬。
 霧散して消えていく『インテグラルアーム』たちを前にトリテレイアは剣でもって礼を尽くす。

 高温と乾燥。
『死の谷』と呼ばれたデス・バレーに最早、死と破壊の気配はない。
 
 この戦場に居た皆の戦いのおかげで、猟兵たちはオブリビオン・フォーミュラたる『スーパー戦車』、その強大なる力に対するワイルドカードを今、手したのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月04日


挿絵イラスト