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アポカリプス・ランページ②~その夢の真の名は

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「悪夢か。……現実の悪夢は、正しくこれだろうな。まあ、歴史を振り返れば、人同士の間でも行われている、胸糞悪い話でもあるが」
 眉間に皺を寄せながら。
 グリモアベースの片隅で双眸を閉ざしていた北条・優希斗が瞼を開いて溜息を1つ。
 蒼穹に輝くその瞳で集まった猟兵達を見回しつつ、皆、と静かに言の葉を紡いだ。
「アポカリプス・ランページが始まったね。俺の方でもヴォーテックス一族の1人、肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の戦場の1つを見つける事が出来たよ」
 淡々と紡がれる優希斗の言葉だったが、其処に籠められているものは苦い。
「場所は、ブラッドルビーランド……そうだな。分かり易く言うならば、『人間牧場』と言うものだ」
 そこは嘗てこの地に存在した、巨大遊園地を改造して作り上げられた人間を奴隷として飼い慣らすために作られた牧場である。
「予兆で皆も見ていると思うけれどね。要するに人間を『肉の盾』、『人間椅子』として利用して攻撃してくる相手だ。無論、其の人間達は、肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』に隷従させられている。恐慌政治というやつだね。内容については悪趣味が過ぎて、正直あまり触れたくないんだが」
 いずれにせよ、恐怖によって隷属させた人間奴隷達を使って攻撃を仕掛けてくる相手と認識しておけば間違いないだろう。
 尚、奴隷として飼育された人々を解放する事も不可能では無いが。
「少なくとも、肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を倒すまで隷属させられた人々を解放することは出来ないね。まあ、その武器として扱われる人間奴隷達を、如何に多く傷つけずに救う事が出来るかどうか、が今回の戦いの肝になるわけだが」
 とは言え、流石に全てを救える様な、そんな手段は早々思い浮かばないだろう。
 だからといって、奴隷として飼い慣らされている人々を救わない理由は無い。
「最悪、犠牲を問わずに総攻撃を仕掛けて力任せに『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を押し潰す事も出来るけれどね。だが、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を倒しさえすれば其の人達を解放することが出来るのだから、1人でも多くの人達を助けることを考えながら戦った方が良いだろう。とは言え、それで負けてしまえば元も子もないから、いざという時の覚悟はしておいて貰って構わない。其の罪は俺も一緒に背負うから」
 戦場は、豪華絢爛な『遊園地』とでも呼ぶべき場所。
 そして、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は身長5m程だ。
 いずれにせよ、彼女は人を家畜……従順な奴隷程度にしか思っていない。
「人々を解放しながら、彼女も倒す。其れが出来て今回の戦いは本当の意味での勝利となるだろう。厳しい戦いになるとは思うけれども、どうか皆、宜しく頼む」
 優希斗のその言の葉と共に。
 蒼穹の風が吹き荒れ、気がつけば猟兵達はグリモアベースを後にしていた。


長野聖夜
 ――これは悪夢にも等しい、正夢……否。非情なる現実なり。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 今回は有力敵肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』戦をお送りします。
 内容的に描写が一部大変なことになる可能性がある点、予めご了承下さいませ。
 このシナリオのプレイングボーナスは下記です。
 ============================
 プレイングボーナス……奴隷を傷つけないように戦う。
 ============================
 プレイング受付期間及びリプレイ執筆期間は下記となります。
 変更ありましたらマスターページやタグでお知らせ致しますのでご確認下さいませ。
 プレイング受付期間:9月3日(金)8:31分以降~9月4日(土)15:00頃迄。
 リプレイ執筆期間:9月4日(土)16:00以降~9月6日(月)一杯迄。
 このシナリオでは戦場を、普通の荒野、或いは牧場の様な場所が豪華絢爛な柵等で飾られていると言う雰囲気となります。
 場所としては其れなりに広い場所である点、予めご了承下さい。

 ――それでは、最善の選択を。
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第1章 ボス戦 『ブラッドルビー・ヴォーテックス・奴隷使』

POW   :    アタイこそが最高の女帝!
【奴隷にした人間達 】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[奴隷にした人間達 ]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    行きな、アタイの椅子ども!
自身の【移動速度 】を代償に、1〜12体の【戦闘用の肉体改造を施した椅子担ぎ奴隷】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    肉の壁になりな!
全身を【奴隷の壁 】で覆い、自身が敵から受けた【敵意】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:桜木バンビ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

七那原・望
アマービレでねこさんをたくさん召喚。
ねこさん達との全力魔法多重詠唱結界術を大量に展開します。
もっともこれは防御用ではなく、奴隷達の拘束用。或いは隔離用のものです。
追加で奴隷が出ても対処は変わらず。必要に応じて更にねこさんを増量し、オラトリオの影やねこさん達の結界術以外の魔法も駆使して奴隷達の自由を奪いましょう。

少しの辛抱です。もうあの下衆はただの腐肉に変わりますから、それまで待っていてくださいね。

第六感と野生の勘も駆使して、しっかり対象をただ一人に絞って全力魔法の世界で飲み込みます。

お前にわたしは納得させられない。彼らの存在がその証明です。
だから今度はお前が彼ら全員の苦しみを味わい続けなさい。


泉・星流
…そういう訳で僕が出向きました…
(奴隷解放+女帝撃破)

戦闘
色々と申し訳ない表情で
…割と(無傷云々を)出来る猟兵っているんだよね…(自分もその一人だと…)


肉の壁~を使用してきたら、『BR』を構えて指定UCを使用…女帝を中心に粘着魔力弾の雨を降らして【捕縛】(特に女帝は念入り…集中豪雨)
【全力魔法・制圧射撃・弾幕】

殺傷能力のないUCで女帝が倒せるか?…と、問われれば…
このUC…使い方次第では相手を殺す事だって出来るんだよ…
(身動きの出来なくなった女帝の顔に粘着魔力弾を放つ…窒息狙い)

…で、別にこれしか出来ない訳でもない…
(追撃とばかりに『BSS』を構えて魔力による狙撃【スナイパー】)


白石・明日香
ふ~ん、豚か。屠殺場送り決定だな!
 奴隷たちを傷つけないで行く技を持ってないから急いで豚の元へ急行するしかない!
 ダッシュで敵目掛けて接近、集結する奴隷たちを踏み台にして空中戦の要領で飛び石よろしく豚へ接近する。
嫌なのか?ならば豚らしく豚小屋へ送ってやるよ。
 奴隷たちの動きを見切って掴まれないように細心の注意を払いながら豚の間合いに入る。もし奴隷に捕まれそうなら死なない程度にぶっ飛ばす。めんどくさい
(一気に殲滅できれば楽なものを)
煩いな、豚と話す気はないんだよ!!
 間合いに入ったら怪力、属性攻撃(炎)、2回攻撃、鎧無視攻撃で叩き切る!
それは悲鳴なのか?面白いからもう少し聞かせろ。


空桐・清導
POWで挑む
協力も大歓迎だ

ブラッドルビー…、
アンタはオレがあってきた中でも最悪と言えるヴィランだ。
人の尊厳を奪い、苦しめる悪行、
このブレイザインが許さねえ!

己の内から湧き出る光焔がUCにより燦燦と煌めく
奴隷にされた人達の攻撃を[オーラで防御]しながら、[限界突破]
光焔を広域に発生させる
肉体は傷つけず、心の傷のみを焼き払う
苦しかったろう、怖かっただろう
それがどれ程のものか、オレには思い図ることしかできない
それでも、どうか言わせてくれ
よく頑張った、よく生き抜いてくれた
もう大丈夫、助けに来た!

今の光焔は邪悪のみを焼き尽くす
ならばこそ!ブラッドルビー、アンタの天敵だ!
全力の拳をブラッドルビーに叩き込む


結・縁貴
【金縁】

人は人として扱われるべきだと思うよ
まァ、宠物(ペット)扱いより趣味悪いものをみるとは思わなかったねェ?
顔は笑って、でも目には嫌悪を宿して
隣を見れば戦意に燃える聖者様
はいはい、仕事はするよ
でも、俺は搦手しか使えないからね!
斬り終わるまで任せたよォ?

バチン!と振るうは異能で呼び出した鋏
輝く眼が映した「御縁」
この御縁は、無かった!
女帝様とやらと、奴隷の御縁はこれにて断絶!
繋がる御縁の途絶えた内に、逃げればいい!
…人に戻る意思があるならね
俺はね、意思ある目が好ましいよ
そう、マナセみたいなね

謝謝、マナセ!これはおまけ!
マナセと女帝様の御縁も、未だ無い!
マナセを認識する前に、殴り飛ばしてやってよ!


マナセ・ブランチフラワー
【金縁】

人間牧場、だなんて。聖者として見逃すわけにはいきません
罪なき人々を傷つける気も、当然ありませんとも
ですから力を貸してくださいね、縁

まずは前へ出て、【オーラ防御】を展開
奴隷達に攻撃はせず、防御に徹します
任せてください。縁がユーベルコードを使うまで、指一本触れさせませんからね
自分の怪我は許容範囲。だって僕が引きつけている間に、ほら
振るわれる鋏が女帝の目から奴隷達を隠すでしょう

そうなれば後はシンプルです
守りを解いて、背後で響く鋏の音に、ありがとうございますと返して走る
紅い瞳の力を覚醒させ、女帝の認識が戻る前に、思い切りぶん殴ってやります
僕は聖者ですけど、おまえにかける慈悲はありませんので!


鞍馬・景正
私も武家の生まれ、百姓たちの上に豊かな生活をしている事は否定せぬ。
しかし彼らを盾にするなど、恥知らずな真似は考えた事も無し。

断言しましょう。汝に人の上に立つ資格なし。


ブラッドルビーの元に結集した奴隷たちをまず対処します。

【神変鬼毒剣】で肉体を透過し、ブラッドルビーへの"恐怖心"を無効化させつつ、拘束具などが取り付けられていればそれを切断。

二刀を駆使しての【早業】でひとりでも多く束縛を解き放ちつつ、守りが薄くなればブラッドルビーに向けて【斬撃波】を。

彼奴には、『奴隷が集まるほど強化される』という能力を反転させる効果を乗せて、弱体化が確認されれば一気に接近し【怪力】込めた一刀を食らわせましょう。


司・千尋
連携、アドリブ可

本当イイ趣味してるよな…


奴隷は殺さずに対応
難しければ攻撃は仲間に任せ
援護や防御に専念

基本的に攻防ともに『錬成カミヤドリ』で全方位から攻撃
複数の紐を網状にしたり引っ掻けたり
絡めてたりして行動の阻害や捕縛を狙う
装備武器や早業、範囲攻撃、2回攻撃、乱れ撃ちなど手数で補う

女帝と奴隷を引き離すよう行動
奴隷を片っ端から紐で縛り上げ女帝から引っ剥がし
猟兵の後方や比較的安全そうな場所に積んでおく


敵の攻撃は結界術と細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
オーラ防御を鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
割れてもすぐ次を展開
回避や防御する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用

奴隷に攻撃が当たりそうな時は鳥威で防御


ウィリアム・バークリー
『醜い』という言葉しか浮かんできませんね。容姿ではなくその心根に。
ネズミだのゴミクズだの、散々言ってくれます。ヴォーテックス一族の心は、オブリビオンになる前から腐り果てていたとしか思えません。
この場で討滅あるのみ。

「全力魔法」氷の「属性攻撃」「範囲攻撃」で、広範囲にSlip!
これで奴隷達は立っていることもままならなくなるはず。

『ビーク』! いくよ、「空中戦」だ!
嘴と鉤爪の「2回攻撃」に、体当たりからの「吹き飛ばし」をブラッドルビーにしかけます。
これだけ的が大きいと、目を瞑ってていても当たりそうだ。

椅子を担いでいた奴隷の人たちが潰れていないかだけが心配ですね。速攻で肉塊を討滅しましょう。


館野・敬輔
【POW】
アドリブ連携大歓迎

この状況で奴隷解放、なかなか無理難題だな
どうにか助けたいところだが…
…いざという時は、優希斗だけじゃなく俺も罪を背負うさ

…ん?
この女帝、図体でかすぎるから、足元が死角では?
だから足元を奴隷で埋めてカバーしているんじゃないか?
それなら奴隷を一時的に無力化すれば、足元が穴になりそうだな

「ダッシュ、地形の利用」で速攻足元に潜り込み
集まって来た奴隷に片っ端から「早業、範囲攻撃」+指定UC
黒剣で戦意だけをぶった切り、一時的に無力化しよう
解放はできないだろうが無力化できればよし

足元がお留守になったら、すかさず「2回攻撃、殺気、衝撃波」で女帝攻撃
家畜に足元を掬われる気分はどうだ?


森宮・陽太
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

この女帝とやら、見た目的にもツッコミどころ満載だが
それ以上に巨大遊園地で人間牧場…最悪だな!!

あー、胸糞わりぃ
こんな肉塊にしか見えねぇ悪趣味女帝はさっさと骸の海に叩き込んでやりてぇ
といっても奴隷をどうにかしねぇといけねぇんだよな

ここは先手必勝とばかりに
「高速詠唱」+指定UCでブネと悪霊と精霊まとめて召喚
「闇に紛れる、目立たない」ように地面を這わせつつ女帝に接近させ
足元から全身に一気に纏わりつかせて奴隷召喚阻止だ
そらそら、足元がお留守だぜ!!

阻止出来たら二槍伸長、心臓を「ランスチャージ、串刺し」だ!
脂肪が分厚くて槍が押し込めねぇなら「怪力」で強引に押し込んでやらあ!


クロム・エルフェルト
『ハッ、有象無象のお守りなんざまだるっこしくて欠伸が出らア。
俺様に代われ、一纏めに膾にしてやろうじゃアねぇか』

――黙れ
返り血浴びたいだけの剣鬼に身体は渡せない
精々、裡から黙って見てるといい

妖笛・奴延鳥を吹く
ブラッドルビーを熊に幻視する▲催眠術をかけつつ
"無害な焔に守られ逃げ帰る"白昼夢を見せる

敵もろとも奴隷たちを巻き込むようにUCを発動
勿論敵は帰らないだろうけど――彼等は、どうかな
ほら、熊が吼えてるよ。早く帰ろ、安全な場所へ。

逃げ遅れに危機が迫れば縮地の▲ダッシュで駆け寄り庇い
▲焼却の焔纏う▲カウンターの一太刀で▲切断する
その際、多少の危険は顧みない
焦らずとも。素っ首、疾く刎ね飛ばしてあげる。


馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎

嫌いじゃよ、お主のような者は。わしらは、生きる者らを助く者なれば。

さて、わしができることは【四天境地・火】にて炎で出来た狼をけしかけること。
実はな、この狼。オブリビオンしか燃やせぬのよ。つまり、奴隷となっている人間は傷つかぬ。
燃えるのは女帝、ただ一人よ。盾にしようが何にしようがかわらぬのだ。

それに、炎である。ある程度は小さくもなれるからの、隙間を通り抜けることも可能じゃて。

屠られるのはお主じゃと、思い知るが良い。
槍は刺突できる隙間があればやる。
防御は…まあ、四天霊障による結界術で行おう。


神宮時・蒼
…いろんな、オブリビオンを、見て、きましたが…
…これは、なんとも…。…虐げられる、辛さは、痛みは。
……よく、わかり、ます。…この身が、裂かれようと、奴隷の方は、助けな、ければ…。
…本体さえ、無事なら、ボクは、どうなっても…。

【WIZ】
【魔力溜め】で強化した【結界術】を奴隷の方々に展開しましょう
【目立たない】ように、奴隷の方と女帝を引き離せれば

相手の攻撃は【第六感】と【見切り】で回避
奴隷の方を盾とするならば、【呪詛】で動けぬようにするのも有りでしょうか

奴隷の方の防衛を優先に
戦闘を長引かせるのも悪手なのでしょう
ならば、【宿花廻天ノ舞】で皆様の支援を致しましょう

…此の身は、ヒトの盾と、ならん為に


ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

あっはっはっはっはっ!
そうだねえ人間を奴隷にしたり家畜にしたりするのは簡単だ
簡単に折れるねじ曲がるへりくだるひざまずく
神のもたらす奇跡を信じても神なんか信じやしない
どーぶつといっしょだね!

●血祭
攻撃は【第六感】に任せて回避して、UC『神罰』を使用する
光も含めた彼女以外の全てをすり抜けるように設定した特大[餓鬼球]くんを放つよ!
彼女の足元から地面も奴隷くんも通り抜けておーっきく開けた口を彼女を捕まえて空高ーく彼女を持ち上げて…バクン!モシャモチャ!ゴリゴリ!ゴックン!

でもボクのおもちゃだよ!
キミや神さまもどきなんかにあげたりしないよ!
これからみーんな血祭りにしてあげる!


ユーフィ・バウム
私は蛮人で戦士です、が
――あのような外道と同じにはなりはしません

オーラを纏い、風の【属性攻撃】を宿す武器で
【空中浮遊】。【ダッシュ】して空から
女帝に近付きます

こちらです、肥満女帝さんっ!
空から【挑発】して目立つように動く
椅子からだと私は倒せませんよ!

人々からなるべく女帝の注意を反らして
隙を伺いてめいっぱい!【オーラ防御】を纏う体を
ぶつける【衝撃波】です!
人々を盾にさせないよう、女帝だけを穿つように
椅子から落としましょう

奴隷の人から離したなら…容赦しませんからッ
【功夫】でめいっぱい殴り込み、
【グラップル】で巨体を投げて

あとは、《トランスクラッシュ》!
お尻に全開のオーラでその悪行ごと潰しましょうッ




 戦場と化した豪奢な人間牧場。
 そこで豪華なソファーに座り、優雅にキセルをくゆらせる女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を見て。
「あっはっはっはっはっ!」
 と壊れた笑い声を、ロニ・グィーがあげた。
 突然の嘲笑に女帝が、だらしのないたれ目で嘗め回す様にロニを見る。
「そうだねぇ、人間を奴隷にしたり、家畜にしたりするのは簡単だよ!」
 鷹揚なロニの、その叫びに。
『おや、猟兵とか言う奴の中にも話の分かる奴がいるじゃないか』
 と満足げに頷く女帝。
 交わされる会話の応酬に皮肉めいた様子で司・千尋が軽く肩を竦め溜息をついた。
「全く、本当にイイ趣味をしているな……ロニも、お前も」
「……おっ、そうかい? いやぁ~、分かってくれる人がいるっていうのはありがたい話だねぇ!」
 壊れた子供の様に甲高い笑い声をあげるロニの其れに館野・敬輔が怪訝そうに眉を顰めながら、女帝を見つめると。
『じゃぁ、猟兵。何でアンタはアタイとこうやって向き合っているんだぃ?』
 何処かつまらなそうに、面倒そうに。
 気怠げな表情で問うブラッドルビーの其れに、よくできました! と言わんばかりに雨あられと拍手をするロニ。
「それはねぇ……人間をキミや神さまもどきなんかにあげたりしないためだよ! ボクの齎す奇跡を信じても、神なんか信じやしない、どーぶつと一緒だけれど、大事なボクのおもちゃを、壊されたくはないからね!」
 そんな、ロニの言の葉に。
「やれやれ、人は人として扱われるべきだとは思うけれどね。まァ、そこのロニだっけ? 君の人間の宠物(ペット)扱いよりも、趣味悪いものをみるとは思わなかったけれどねェ?」
 顔には笑みを張り付けて。
 飄々とふざけた調子で語りながらも目には明らかな嫌悪を宿した少年、結・縁貴が何処か道化めいた様子で肩を竦める。
 その縁貴の隣には。
「……人間牧場、だなんて。人々の尊厳を、心を踏み躙りあまつさえ支配しようとするそんな場所……聖者として、見逃すわけには参りません……」
 抑揚のない、静かな口調で。
 けれどもその中に籠るそれを口に出しながら。
 マナセ・ブランチフラワー……『聖者』を名乗る青年が粛々と語った。
 その胸中を彩るは、兄弟に疎まれながらも、精一杯愛そうとしてくれた母の想いと、生まれつき備わった『聖者』の力だろうか。
 そのマナセの体から発される光に導かれていくかの様に。
「ブラッドルビー……」
 その腰にブレイヴ・ドライバーを巻いた空桐・清導がマグマの様に煮え滾る力を孕んだ声でその名を呼ぶ。
「アンタは、オレが会ってきた中でも最悪と言えるヴィランであり、オブリビオンだ……!」
 清導の全身を駆け巡る燃える炎の様な怒りを感じながら。
「そうですね。ぼくにも、『醜い』と言う言葉しか思い浮かびません」
 “ホーリーウィッシュ”/氷聖と呼ばれし、ウィリアム・バークリーが静かにそう呟いた。
『あぁん? アタイが『醜い』だぁ? はんっ、何言っているんだい、このゴミクズどもが! ネズミどもに『醜い』と言われる程、アタイは不美人じゃぁないよ』
 けっ、と今にも唾を吐きかけてきそうなブラッドルビーにいいえ、とウィリアムがきっぱりと首を横に振る。
「醜いのは、容姿ではありません。その心根ですよ。ネズミだのゴミクズだの、ぼく達に言ってくれるあなたのね」
 ウィリアムの応えを肯定するかの様に。
「……そう、ですね。……バークリー様……」
 小さく囁く様なか細い声と共に、その傍に姿を現したのは……。
「……神宮時か? ……へぇ」
 赤と琥珀色の色彩異なる双眸を彷徨わせつつ、芯の通ったか細い声に千尋が思わず愉快そうに口元を綻ばせた。
 そのヤドリガミの少女……神宮時・蒼がはい、と微かに口元を緩めて頷いて見せる。
「……お久しぶり、です、ね、司様……。……漸く、ボクにも、ボクが、なにで、あるのか、……ありたい、のか、分かって、きました」
 微かに頬を赤らめてそう答える蒼の其れに、千尋が愉快そうにそうか、と軽く首肯を返す。
 蒼と千尋のやり取りを聞きながら。
(「そっか……変われたんだね、蒼」)
 そっと胸を撫で下ろしながら胸中でそう言の葉を紡ぐのは、クロム・エルフェルト。
 そのクロムとしての心が抱く安堵とは別に。
(「……ハッ。有象無象のお守りなんざまだるっこしくて欠伸が出らァ。俺様に代われ、一纏めに膾にしてやろうじゃアねぇか」)
 蒼が、狐の松明の花々――真実と、情熱の花言葉持つ其れを通して対面させてくれた、『剣鬼』、もう1人の自分が疼く。
『剣鬼』が目前の敵を食らいたい、全ての者達の返り血を浴びたいと獰猛な感情を『クロム』に叩きつけるのを感じるその間に。
「この女帝とやら、見た目的にもツッコミどころ満載だが……それ以上に巨大遊園地で人間牧場とか……最悪だなっ……たく!」
 ちっ、と忌々しげに舌打ちを鳴らしつつ、翡翠の瞳を細める森宮・陽太に。
「ああ、そうじゃな。わしも……わしらも嫌いじゃよ、ああいう者はな」
「えっ?」
 馬県・義透を構成する四悪霊が1人、『侵す者』……馬舘・景雅が漆黒の槍、黒燭炎を握る姿に陽太が思わず戸惑いの声を上げた。
「アンタ……何かいつもと雰囲気違わねぇか? 俺の気のせいか?」
「そうじゃのう。確かにお主等とは、わしは初対面かも知れぬな」
 義透の其れに、ガシガシと髪を掻き上げる陽太に、ユーフィ・バウムが微笑を零す。
 其の手は素早く腰に帯びた勇気の実へと伸びていて、そのままパクリとそれを一摘まみ。
 瞬間、全身に勇気が漲るのに確と頷き、ユーフィが誓いを籠めて青い瞳を鋭く細めた。
『んっ? 反抗的な目だねぇ。何だい、忌々しいねぇ』
 虚仮にするかの様な女帝の挑発に、小さく呼吸を1つしてから、私は、とユーフィが静かに言の葉を紡ぐ。
「私は、蛮人で、戦士です。故に狩猟を行い、肉を食らい、時に生きるために戦います」
『はっ! 野蛮なことこの上ないじゃ無いか。そんな屑如きがこのアタイに刃向かうってのかい』
 その女帝の心底下らなそうな問いかけに。
 ユーフィが其の背のディアボロスのエンジンを吹かせ、静かに女帝を睨め付けた。
「はい。――私は、あなたの様な外道と同じにはなりませんからっ……!」
「そうですね、ユーフィ殿。私も、武家の生まれです」
 そのユーフィの言葉に応える様に。
 鞍切正宗と鬼包丁の濃口を切りながら、粛々と首肯するのは、鞍馬・景正。
「故に、百姓達の上に豊かな生活をしている事……此を否定はしません」
『ふん。分かっているじゃないか。そうだよ、人なんてものは、所詮ゴミムシだよ。奪われることで満たされる価値のないものだよ。そう思わないかい? 其処の鬼』
 くゆり、と。
 煙管を噛み締める様にゆっくりと吹かし、自らの周りに集まる服従した奴隷達を見つめながらの女帝の舐める様な其れに。
「……否。人は、百姓達は守られるべきもの。私達が守ると信じてくれているからこそ、彼等は私達に豊かな生活を託すのだ。彼等を盾にするなど恥知らずな真似も甚だしい。故に、私は断言する。汝の如き外道に、人の上に立つ資格無し」
「だからなのです」
 ――バサリ。
 其の背の白無垢の双翼を、天使の如く広げて空中へと浮上しながら。
 七那原・望が、漆黒の目隠し……自らの視覚を封印するそれ……の奥の金の瞳に静かに断罪の光を称えつつ。
「あなたの様な下衆は、わたし達が腐肉へと変えます。だから、皆さん、もう少しだけ、待っていて下さい、なのです」
 そう告げて。
 共達・アマービレを右手に握り、さっ、と持ち上げる望。
 望の其れに応える様に凛、と涼やかな鈴の音が鳴り響き、地上に降り立つ様に無数のねこさん達が現れるのを見つめて。
「――黙れ」
 クロムが戦場に響き渡る様な鋭い声を自らの裡にいるもう1人の自分……返り血を浴びたいだけの『剣鬼』に告げた。
「貴様の様な返り血を浴びたいだけの剣鬼に私の身体は渡さない。……それが、私の剣が、ヒトを生かすための剣になるのだから」
 ふさり、ふさり。
 狐の尻尾を激しく左右に振り、其の耳をピクリ、と動かして。
 無表情に、けれども確かな意志と共に、刻祇刀・憑紅摸の濃口を切り、その柄に手を乗せ、居合の構えを取り。
 陽炎を纏い、その足から紫電を迸らせるクロムの鬼気迫る気配を感じながら。
「人の尊厳を奪い、苦しめる悪行……」
 その腰部のベルトに嵌められたブレイヴ・ドライバーを起動させて。
 同時に己の裡から湧き出る光焔にその身を委ねる様に炎を象った深紅の機械鎧を全身に纏う、清導の思いに呼応する様に。
「このオレ……ヒーロー“ブレイザイン”が、絶対に許さねぇぜ!」
 赤茶色の逆立った髪が風に靡いて炎の様相を、戦場に表すのとほぼ同時に。
『ふんっ! 弱い犬は良く吠えるっていうが、所詮ゴミムシはゴミムシかい。まあ、いいさ。一人残らずちょいちょいと、このアタイが痛めつけて、奴隷達に好きに回させて、従順な家畜の仲間入りをさせてやろうじゃぁないか』
 数多の奴隷を集結させ、その奴隷達に自らの椅子を担がせ、更に肉壁とした女帝がふぅ、と吸った煙を吐き出した。


「へっ、只の豚かぁ。まっ、取り敢えず屠殺場送りは決定だな!」
 口元に歪んだ笑みを浮かべた、金と青のヘテロクロミアの娘、白石・明日香がさらりと吐き捨てながら腰に帯びた双剣を抜刀。
 全てを食らうクルースニクの鮮血の如き刀身の輝きと、呪剣ルーンブレイドの禍々しき宵闇が戦場の中で妖しく輝く。
 その双剣の血の様に禍々しき輝きなど目にも入らぬ、そんな様子で。
 虚ろな表情で、黙々と女帝に付き従う奴隷達を見て、敬輔がそっと溜息をついた。
「この状況で奴隷解放とは、中々無理難題だな。まあ、どうにか助けたいのは事実だが……」
 それでも、いざという時は。
(「……優希斗だけじゃない。その時は俺も罪を背負うさ」)
 グリモア猟兵の言葉を思い出した敬輔の胸中の誓いと、口から紡がれた言葉を先読みするかの様に。
「……そういう訳で、僕が出向きました……」
 と妙に色々と申し訳なさそうな表情で、赤い瞳を女帝に向け、魔法使いの帽子をちょいちょいと弄り直すのは、泉・星流。
 現れ始めた肉の壁……奴隷達が姿を現すその様子を見て、BroomRod(通称:BR)を女帝へと突き付けて。
「……壊したり、傷つけたりするばかりじゃ駄目だって言う事、教えてあげる」
 呟きと共に、『BR』の先端から475発の粘着糸の様な弾丸を解き放った。
 先手を切って放たれた其れが、豪奢な椅子に座っている女帝とその取り巻きの様に神輿を担ぐ奴隷達へと向かっていく。
 放たれた無数の弾丸が、ベチャリ、ベチャリ、と言う音を立てて女帝達に貼り付きその動きを阻害した瞬間。
「ねこさん……わたしの沢山のお友達。宜しくお願いします、なのです!」
 ひゅん、と4分の3拍子を空中で振る望。
 リン、リン、リン、と鈴の鳴る音と共に現れた無数のねこさん達が、女帝の椅子を持ち上げていた奴隷達に殺到。
 そのまま椅子を担ぐ奴隷達を取り押さえさせようとするが。
『行きな、アタイの椅子ども!』
 粘着する白弾を、煙管を振って風を呼んで吹き飛ばし、更に周囲に漂う紫煙でねこさん達を振り払った女帝が声を張り上げた。
 其の女帝の命令に従い、瞬く間に12人の椅子担ぎ奴隷達が椅子を下ろして、突進。
 命令で女帝の前に展開された、奴隷による肉壁を盾にしているのを見ながら。
 鋭く其れを目を細めて見ていたウィリアムがルーンソード『スプラッシュ』を抜剣する。
「人を人として扱わない、この在り方……。ヴォーテックス一族の心は、オブリビオンになる前から腐り果てていたとしか思えませんね……!」
 呻きながら『スプラッシュ』の剣先で魔法陣を描き出すウィリアム。
 描き出された青と緑から紅葉色へと変わりゆくそれの綯い交ぜになったそれが、まるで蜘蛛の糸の様に広がり……。
「Slip!」
 叫びと共に、ウィリアムが『スプラッシュ』の剣先で魔法陣を大地へと誘導、戦闘用奴隷達の足元を凍結させる。
『っ?!』
 広範囲に広がった霜の下りた大地に足を取られた幾人かの戦闘用奴隷達が思わず転倒、ジタバタと藻掻く其の有様に。
『何をちんたらやっているんだい! このゴミクズ共!』
 文字通り、雷を叩き落として其の奴隷達を薪の様に焼き尽くし、戦場一帯を炎の海へと変えようとする女帝。
 其の女帝の奴隷達への憤怒の雷に。
「おいおい、本当にイイ趣味してやがるな」
 思い切り冷然と皮肉を叩き付けてやりながら、千尋が素早く其の手の結詞から無数の鳥威を展開し、転倒した奴隷達を守るのに合わせて。
「……これは、なんとも……。……例え、この身が、裂かれ、ようと……」
 蒼が色彩異なる双眸を見開き、限りある短き時の中で、懸命に咲く儚き幻想花の名を抱きし白杖を天に掲げる。
 かの白杖……雨に薫る金木犀の先端に取り付けられた緋色の宝珠が輝くと同時に、其処から生まれ落ちたのは緋の憂い抱きし幽世蝶。
 緋の憂い……幽霊花の名を冠する幽世蝶が羽ばたき緋色の鱗粉を羽から落とし、千尋の鳥威に振りかける。
 振りかけられた其れが緋の結界と化して鳥威を強化、頽れた奴隷達に降り注ごうとした女帝の雷から辛うじて彼等を守り。
「あっはっはっはっは! ダメじゃ無いかぁ! 幾らペットだからって虐待はいけないよ~、虐待は! おもちゃは大事に扱わなくちゃねぇ~!」
 ロニがからかう様な笑い声を上げながら、千尋と蒼の結界から飛び出す様に横っ飛びに飛び、そのまま両手を重ね合わせる。
 ロニが両手を重ね合わせると空中に超巨大な、漆黒の浮遊球体群が現れた。
 それは、ロニの装備たる『餓鬼球』くん達の群れ。
「あのゴミクズさんをがっつり食べちゃえ~! 安心して、血達磨になってね!」
 と胸を張る様に叫ぶロニに合わせる様に解き放たれた『餓鬼球』くんの群。
 其の群がガチガチと歯を鳴らしながら肉薄してくるのを見た女帝は。
『盾になるんだよ、肉壁共!』
 狼狽を見せた様子も無く鼻であしらう様に叫ぶと共に、自らの周囲に集っていた肉の盾……奴隷達を身代わりにしようとする。
 だが餓鬼球くん達は、光と化して奴隷達を擦り抜け女帝の足元に潜り込み、其処から巨大な口を開いて女帝を今にも食らわんと……。
『ふん』
 焦らず、赤いハイヒールで餓鬼玉くんを踏みにじる女帝『ブラッドルビー』
 只それだけの仕草にも関わらず凄まじい衝撃が迸り、餓鬼球くんが明後日の方向に弾かれるのに、ロニがびくりと思わず肩を竦ませた。
 その隙をついて、ひゅん、と吹かしていた煙管を女帝『ブラッドルビー』が横一文字に振るおうとした、其の刹那。
「あなたの相手は此方ですよっ! 肥満女帝さんっ!」
 ディアボロスエンジンを稼働させ、飛翔したユーフィが上空から鋭い叫びを上げ。
 同時に背中に背負った鎌の様な原始的な巨大武器ディアボロスを抜き打ちと共に横薙ぎに振り払う。
 大気を叩き壊すかの如き暴風が同時に上空から吹き荒れ衝撃波と化して女帝の体を叩かんと。
『……ふん。たかが蛆虫が粋がっているねぇ』
 返す刃で煙管を上空へと跳ね上げる様に振る女帝『ブラッドルビー』
 瞬間、その名に恥じぬ、血の様に赤い光が其の軌道に合わせる様にして飛ぶ刃と化してユーフィに迫った。
「っ!」
 咄嗟に蒼穹のオーラを前面に展開、辛うじて受け止めるユーフィだったが、其の衝撃の強さからか苦痛に其の顔を歪め。
『さてと、五月蠅い小蠅には落ちて貰わないとねぇ』
 其の唇に醜い笑みを刻んだ女帝が呟きと共に、指先から魔力の弾を発射。
 其れが今、正にユーフィを捕らえようとした其の刹那。
「こんな肉塊にしか見えねぇ悪趣味女帝の癖に、単体でこんな力を持ってやがるのかよ! しかも奴隷を肉壁や戦闘要員として操るとか、最低以外の何者でもねぇぜ!」
 陽太が淡紅のアリスグレイヴを伸長しユーフィを狙う弾を切り払って威力を削ぎ。
 一方で左手のダイモン・デバイスの銃口を、しっかりと地面に向けていた。
(「頼むぜ、ブネ! あの巨体だ! 多分、コイツの弱点は……!」)
 胸中で呟きながら此処にはいない誰かに祈る様に、その引金を引く陽太。
 地面に向けて射出された小竜姿の悪魔が姿を現し、精霊と悪霊を引き連れてそのまま凍結した地面に潜行し進軍開始。
 その間に奴隷達は女帝の操り人形の如く動き出し、転ばず前進していた6人の椅子担ぎ奴隷に追随、拳を振り上げ肉薄してくる。
「やらせませんよ」
「皆! もう大丈夫だ! このブレイザインが皆を救う為に参上したからな!」
 その奴隷達の攻撃に割り込む様に戦場の最前線に飛び出したのは、マナセと清導。
 蒼の緋の憂いの結界と、千尋の鳥威の盾の後ろに立ちはだかり、マナセが黄金の結界を、清導が深紅の結界を前面に展開する。
 四重にもわたる其の結界で、奴隷達からの猛攻を凌ぐその間に。
「さて、わしらも動き始めるとしようかのう、クロム殿、景正殿」
 義透が呟きと共に其の手の黒燭炎……成長電流の影響で一度は砕け、再び再生し成長する炎を纏った愛槍を中段に構えるのに。
「……ん、分かった」
 クロムが小さく応える様に首肯して、狐の耳を左右に揺り動かしながら……。
 ――ピュイッ!
 と妖笛・奴延鳥を吹き鳴らし。
「承知しました」
 短く頷いた景正が、濃口を切っていた鞍切正宗と鬼包丁を抜刀、前傾姿勢で踏み込みと共に跳躍する。
 その時、クロムが鳴らした妖笛の音色を聞いた肉壁達は白昼夢を見始めていた。
 その内容は……。
「では、ゆくかのう。わしに流れていた力よ、形になれ」
 呟きと共に、黒燭炎を突き出す義透。
 中段に構えられた緋色の槍の先端から解き放たれたのは全部で113匹の赤く輝く魔を断つ狼の群。
 紅蓮の焔の群れ達の一部が、肉壁とされた奴隷達を守る様に其の周囲を取り囲み。
 更に一部の紅蓮の狼達が、赤輝と喉笛を鳴らす様な咆哮と共に、女帝へと襲いかかった。
『なにっ?!』
 義透が生み出した炎狼達が自らの身を焼き尽くさん事を欲するのに流石に驚愕の叫びを上げる女帝『ブラッドルビー』
 そのまま炎狼達を撃ち倒すべく罵声と共に煙管を振るい、狼達を薙ぎ倒すが。
「……ほら。皆を守る無害な焔達に、熊が今、囓られているよ」
 クロムの甘く、優しい、鈴が鳴るかの様な呼びかけに。
 “無害な焔に守られながら、その場から逃げ帰る”白昼夢を見る奴隷達の顔に、微かな安堵が浮かびあがった。
(「この好機を見逃すわけには参りませぬ……!」)
 クロムの笛の音による白昼夢。
 そして、義透の解き放ったオブリビオンのみを焼き払う炎狼達。
 其の力を借り受けて、微かな光を其の目に取り戻しつつある奴隷達の姿を認めた景正が、双刀を翼の様に広げて疾駆。
 そのままクロムの白昼夢と義透の炎狼達を見ても尚、奴隷達の心に巣食う恐怖という名の夢魔を断つべく翼の様に広げた双刀を一閃。
 双閃とも呼ぶべき銀の刀閃が目にも留まらぬ早さで颶風の如く戦場を駆け巡り、奴隷達の心の中の恐怖のみを切り払った。
 その二閃とほぼ同時に、奴隷達の中に、徐々に、徐々に兆していくのは……。
「……ヒトの心の光でしょう。縁、力を貸して下さいね」
「あー、はいはい、勿論、仕事はするよ? でも、俺は搦手しか使えないから、其れまでは任せたよぉ?!」
 ――パチン!
 マナセの言葉に応じる様に笑った顔の儘に頷いて。
 縁貴が指を鳴らす音と同時に、其の手に巨大な鋏を召喚。
 それは縁貴が自らの異能の力で呼び出した、2つの対象を繋ぐ『縁』を断ち切る刃持つ鋏。
 嫌悪と真剣さの折り重なった縁貴の翡翠色の瞳が、奴隷達と女帝を繋ぐ、『恐怖』と言う名の『絆』を映し出す。
「けれども、この御縁は、無かった! 女帝様とやらと、奴隷の御縁は此にて断絶!」
『ふん、愚かなゴミクズ共が。そんな浅はかな考えでアタイを倒そうなんてお笑いぐさも良いところだね』
 その御縁を切る鋏を、縁貴が振る其の直前。
 まるでその動きを読んでいたかの様に、悠々と女帝が左手を振り上げ、縁貴の側面から、漸く起き上がった6人の奴隷を嗾けようとした、その瞬間。
「『ビーク』! 行くよ! あの敵の自由になんてさせてたまるか!」
 氷結の魔法陣で6人の奴隷達を一時的に無力化していたウィリアムが召喚したグリフォン『ビーク』に跨がり空中から強襲し。
「そんな事……絶対にやらせませんからっ!」
 陽太の淡紅の一閃で致命傷を避けたユーフィがディアボロスエンジンでトンボ返りを打ちながら滑空し。
 全身を覆う蒼穹の闘気を自らの肉感的に激しく震える臀部に纏わせた強烈なヒップアタックを解放した。
 上空からの『ビーク』の鉤爪が、女帝が煙管で張り巡らした黄金の結界を斬り裂き力任せに其れをこじ開けて。
「めいっぱい、叩き込みますっ!」
 そこにユーフィの全身全霊の力の籠められたヒップアタックの一撃が入って結界を突き抜け、女帝の胸に叩き付けられた。
 強烈なヒップアタックの一撃が衝撃と共に女帝の体を大きく傾がせ、その胸を大きく陥没させる。
『ゴミクズの分際で……! コイツはたっぷりお仕置きしてやらないといけないねぇ』
 即座にその場を離脱しようとするユーフィの足を捕まえて、でっぷり肥えた唇に残虐な笑みを女帝が浮かべたその瞬間。
「今ですよ、縁」
「隙ありだねェ」
 マナセに呼ばれた縁貴が頷きと同時に青髪を風に靡かせながら、その手の御縁を断ち切る鋏をパチン! と振るう。
 振るわれた鋏が、目に見えない奴隷達の女帝への『恐怖』を、まるで樹木を切り落とすが如き音と共に断ち切った。
 其の衝撃に奴隷達が驚いた様によろめき、其の恐怖の念から解き放たれたことに驚愕の表情を浮かべている。
「えっ、お、俺達……」
「私達は、何を……?!」
 景正によって齎された自分達の中に宿る其れ。
 更に自分達を守る様に取り巻く紅蓮の狼。
 そしてユーフィを捕らえ、今にも食らわんとしている女帝と思しき熊。
 戸惑い、慌てふためく奴隷達の様子を見て。
「……ん。頃合い、だね」
 クロムが静かに頷き、其の手を添えていた刻祇刀・憑紅摸を抜刀し、一閃。
 その一閃と共に解き放たれたのは、伽藍飲み込む、白狐を思わせる刧火。
 その意味は……。
「ほら、熊が吠えているよ。早く帰ろ、安全な場所へ」
 そのクロムの呼びかけに応じる様に。
 義透の炎狼が白狼へと変わって其の背に奴隷達を乗せ、その殆どを元の世界……彼等が還るべき場所へと連れ去っていく。
『なっ……バカなっ?! 奴隷達! 何を勝手な真似をしているの? さっさとこっちに戻ってきて、此のゴミクズ共を可愛がっておやり!』
 ハイヒールで椅子を踏みしめて、奴隷達を強制的に従属させようとする女帝。
 けれども既にその胸に希望を抱き始め、縁を断ち切られた肉壁であった奴隷達は、次々に白狼に運ばれる様に戦場から去っている。
 その様子を、満足げに見やりながら。
「……ん。焦らなくていいよ。素っ首、疾く刎ね飛ばしてあげるから」
 紫電を撒き散らし、水飛沫を上げながら前傾姿勢で尻尾を振るって女帝に肉薄するクロムに頷いて。
「そうじゃな、女帝。わしの炎は、狼達はオブリビオンしか燃やすことが出来ぬ。女帝よ、屠られるのはお主だけじゃと思い知るが良い」
 冷徹な義透の言の葉に、ギリ、と女帝が唇を噛み締める音が、戦場に響き渡った。


「……君達と女帝様とやらと、奴隷の御縁は既に断絶! さあ皆、逃げれば良い!」
 自分に向かって肉薄してきていた6人の戦闘用に改造された奴隷達。
 其の奴隷達の攻撃から、黄金の結界を張ったマナセに庇われた縁貴が呼びかける。
 それでも尚、踏み込み攻撃を仕掛けようとしてきた6人の戦闘用奴隷達の様子を見て、縁貴があちゃ~、と軽く頭を横に振った。
「こりゃぁ、人間止めちゃっている感じかな? ねぇ、マナセはどう思う?」
 その縁貴の呼びかけに。
「彼等に人間に戻る意思がないとは、僕には思えませんが……」
「そうなのです。だから、これ以上の罪を重ねてはいけないのです」
 マナセがそう答えるのに同意して、鋭く研ぎ澄まされた五感……聴覚で彼等の心音を捕らえた望が頷きと同時にアマービレを振る。
 リン、リン、と鳴り続ける鈴の音とその指揮に応じた沢山のねこさん達が、一斉に6人の奴隷達に群がり、彼等を拘束する結界を展開。
「彼等は戦闘用として肉体改造を施されているのです。其の分、洗脳……いいえ、調教もより酷かったと思われるのです。ですから、まだ足りないのだと思うのです」
 その望の言の葉に。
「ああ……そうだな」
 其れまで燦然と煌めく深紅のオーラで潮の様に引きつつある奴隷達の攻撃を受け止めていた清導が静かに首肯した。
「でもオレには、調教によるその傷が、どれ程のものか、思い図る事しかできない」
 ――苦しかったろう。
 ――怖かっただろう。
 其の心の瑕疵の深さは、ヒーローとして戦い続けてきたブレイザインには推し量る事しか出来ないもの。
 その想像でも覚束ない程に、彼等が負うた心の瑕疵は深いのだろう。
 でも。
 ……否、だからこそ。
「言わせてくれ。よく頑張った、良く生き抜いてくれた。もう大丈夫、オレ達がアンタ達のことを必ず助けるんだって! だから!」
 その願いと誓いを籠めた雄叫びと共に。
 ――カッ!
 清導の全身から今までとは比べものにならない程に、眩く光輝く光焔が迸る。
 それは"超鋼真紅" ブレイザインに増幅された、清導の熱く優しき正義の心。
神々しき光焔と化して解放された其れが、6人の戦闘用奴隷達の中に埋め込まれた『邪悪』のみを焼き尽くした。
 肉体という名の檻の心の奥深くにまで根付いた『邪悪』が焔に焼き尽くされ改造奴隷達が動きを止めたその瞬間。
「……先に此方の戦意を断つべきだな」
 よろめく6人の戦闘用奴隷達に向けて、赤黒く光り輝く刀身を持ちし黒剣を横薙ぎに振るう敬輔。
 赤黒い光の一閃が、邪悪を焼き尽くされても尚、戦おうとする其の意志を叩き斬り、戦闘用奴隷達を無力化する。
 そのままその場に膝を突いた彼等を見ながら、縁貴が俺はね、と呼びかける。
「意志ある目が、好ましいよ。そう、マナセみたいなね」
 その言の葉と、ほぼ同時に。
 縁貴の鋏が、戦闘用奴隷達が女帝から認識されることを、遮断した其の刹那。
『ゴミクズ共め。正義のヒーローごっこは、もうお仕舞いだよ』
 ユーフィを投げ飛ばして『ビーク』とウィリアムとぶつからせて牽制した女帝が、ハイヒールで空中を蹴り飛ばした。
 空を切る様に逆上げに振り上げられた足によって空間が割れたか、凄まじい斬撃の衝撃波が敬輔達を滅せんと迫った時。
「……奴隷の方も、皆様も、守る、こと。それが、ボクの、役割、です……!」
 訥々と、けれども確固たる意志の籠められた声音と共に、緋の憂いを纏いし鱗粉が吹き荒れ、其れが緋の結界と化し衝撃波を相殺し。
「おいおい、あんまり離れてくれるなよ、お前達?」
 その言葉と共に、101個の結詞が緋の憂いを結びつけて巨大な網の盾を編み上げて、衝撃波とぶつかり合い。
 爆ぜて消失していくそれらを見届けた敬輔が其方に目をやると、其処には皮肉げな笑みを浮かべた千尋と。
『……粛々と、燃える、希望の、炎』
 雨に薫る金木犀を両手で握りしめ、祈る様に双眸を瞑る、蒼の姿。
 蒼の全身からは、淡色の光が、静かに漏れ始めている。
『……困難に、負けず、運命に、抗え』
 紡がれる蒼の言の葉。
 其の言の葉の中に含まれし、其の応えは……。
「――灯せ、不屈の……『希望』の光」
 この、廻天する世界ノ中で。
 蒼の慈愛の籠められた祈りと共に放たれるは、淡色の花影。
 その宿りし花は……白き花、アネモネ。
『希望』の花言葉持ちし、花信風。
 溢れ出す花影が風に靡いて、敬輔達の体を後押しする。
 ……それは。
「……今、です、皆様……!」
 『モノ』として、ヒトの心を理解せんことを欲した、幼き少女のヤドリガミの、祈りと願いの籠められし風。
 『モノ』で在る其の少女の願いと祈りが……。
「ありがとうございます、縁。行きましょう、皆さん」
 金の瞳を血の様に紅い瞳へと変え、『ヴァンパイア』と化したマナセに届くと。
「謝謝、マナセ! これはおまけ!」
 叫びと共に花信風を浴びた縁貴が、『縁』を断ち切る鋏をパチン! と振るう。
 振るわれた鋏から放たれた切断の刃によって……。
「マナセと女帝様の御縁も無くなった! だからマナセを認識する前に、殴り飛ばしてやってよ!」
「はい、勿論です!」
 断ち切った『縁』を輝く翡翠の瞳で見つめた縁貴の後押しに力強く頷き、地面が陥没しそうな程の勢いで大地を蹴り飛ばすマナセ。
 其のマナセの背を追う様に。
「漸く大分視界が開けたぜ。ならば、後は只、ぶちのめすのみ!」
 クロム達の力の及ばぬ範囲で傷を負ってその場に頽れた奴隷達を踏み台にした明日香がその場を一気に踏み切った。
 双剣を打ち鳴らす様に重ね合わせ、刃と刃が擦れる耳障りな音に、楽しそうな笑みを浮かべながら肉薄。
 気付けば、呪剣ルーンブレイドの漆黒の刀身から芽吹いた鮮血の炎が、全てを食らうクルースニクにも伝播、血焔の光を放っている。
 鮮烈な灼熱の焔を纏った其の炎に気がついた女帝が其方に向けて煙管を叩き付けようとした、其の直前に。
「先ずは一発……思いっきり行きます!」
 明日香の目前にいるにも関わらず、女帝に『認識』され無かった、マナセのポジティブオーラを纏った正拳の一撃が解き放たれた。
 陥没していた胸に突然入ったその一撃に。
『なにっ?!』
 と体を傾がせる女帝の隙を見逃さず。
「そらそら、足元がお留守だぜ!」
「今がチャンスだね! いっけぇ~、餓鬼球くん!」
 漆黒の闇に隠れる様に身を潜めていた陽太と、蒼の花信風で傷を癒されたロニの声が戦場に轟いた。
 同時に、其の足元に潜む様に姿を隠していたブネが、自らの配下の精霊、悪霊達と共に地表へと飛び出し、そして。
『がぁっ?!』
 女帝の体を締め上げる様に纏わり付いてその動きを阻害して。
 更に超巨大化した餓鬼球くんがおーっきく開いた口で女帝の足に噛み付いた。
 ――バリボリバリボリバリボリ、バリボリ……!
 餓鬼球くんが肉を食らい咀嚼する嫌な音が辺り一帯に響き渡り、女帝の足の贅肉を奪っている。
『アタイの足を食らう……っ?! 此の化物!』
 もう片足のハイヒールで餓鬼球くんを蹴り落とす女帝の懐に、二刀から一刀へと構え直した景正が飛び込み。
 ――そして。
「人は神に、鬼は微塵に――酒呑が首奪いし秘術、太刀にて示さん――!」
 地を轟かさんばかりの勢いで、其の手の鞍切正宗を撥ね上げた。
 振り上げられた刃に斬り裂かれた大気から生み出された鎌鼬……斬撃の波が容赦なく女帝を襲い、其の体を打ち据えた直後。
『えっ……?!』
 ――ガクン、と。
 不意に女帝の全身に凄まじい勢いで其の力が根こそぎ剥ぎ取られる感覚が駆け巡り、女帝の其の目をひん剥かせた。
『あ、アンタ、今、何を……?!』
 その女帝の問いかけに。
「……貴様に与えてやろう。私が八幡菩薩から授けられ、鬼の力を弱めた神変鬼毒酒――美味にして猛毒たるその神酒を」
 そう静かに応えを返して。
 返す刃で大上段に持ち替えた鞍切正宗を唐竹割りに振り下ろす景正。
 大上段から振り下ろされたその一撃は、奴隷がいなくなればいなくなる程、其の力が弱体化されていく女帝の体を深々と切り裂いた。
『ガハァッ!』
 吐瀉物をぶちまけながら、紫炎の煙に、景正を襲わせんと其の力を解放する女帝。
 けれども、既にその時には。
「ボクは聖者です。だからこそ、お前に掛ける慈悲はありません!」
 マナセが今度は炎の精霊が宿る金色の長杖を振るい、其の先端から炎を解き放つ。
 其の炎は、陽炎の様に揺らめき、炙り尽くす様に女帝の体を焼き払い。
「虚無に……」
 そこにマナセの影から飛び出した明日香が血焔纏いし全てを食らうクルースニクを振り下ろした。
 血色の線を引いた一撃が、女帝の体を焼き尽くさんと襲いかかり、マナセの炎と共に其の体を獄炎に包み込み。
「還るが良い!」
 言の葉と同時に放たれた呪剣ルーンブレイドの横薙ぎの一撃が、血色の焔でその全身を焼きながら、胸を横一文字に斬り裂いている。
『アガァァァァァァァァァッ?!』
 全身を焼き尽くされ、煙に咽せ屠殺場で屠られる豚の如き悲鳴を上げる女帝の其れに明日香が口元に歪んだ笑みを浮かべ。
「其れが悲鳴か? 面白いからもう少し聞かせてくれよ!」
 そう挑発した、正にその時。
「そうですね、その程度の苦痛では、彼等全員の味わった苦しみを、絶望を味わい尽くした等とは言えません」
 応えた望が、左手で翼望・シンフォニアを構え、其の杖先を女帝に突きつけた。
 その先端に戦場を震撼させんばかりの魔力を収束させ、『世界』に共鳴し、『せかい』へと変える演奏器へと変化させながら。
 視覚を閉ざすことで、鋭く研ぎ澄まされた聴覚で『せかい』の音を聞き取って。
 慎重に狙いを定め、其の魔力の塊を解き放つ。
『これがわたしの知る世界の在り方。お前に問います。世界に希望はあるか。それは、どのような物か。答えられる物なら、答えてみなさい!』
 その詠唱と、共に。
 解き放たれた望の魔法弾が、女帝の体へと突き刺さったその瞬間。
 ――女帝の世界が、深遠なる闇に放り込まれた。
 それはあまりにも残酷で無慈悲なる世界。
 全てを飲み込む悪意と絶望に満ちた疑似世界。
 其の疑似世界の中心で。
『あっ! がぁっ! ひぎぃっ! ぐぎゃぁ?! あー、あー、あー!』
 ありとあらゆる絶望と苦痛を体に刻み込まれ、其れに囚われた女帝が悲鳴の様な喘ぎの様な声を漏らし始めた。
 その声と共に、全身からありとあらゆる体液が放出され、同時に止め止め無く溢れ出す涙と、体の引きつりに悲鳴を上げる女帝に向けて。
「さあ、どうしましたか? わたしの質問にあなたは答えられるのですか? 世界に希望はあるのですか? どの様なものですか?」
 淡々と望が問いかけるその間にもひぎぃ、ひぎぃ、と止め止め無く涙を溢れ出させ、息つく暇も無く喘ぐ女帝。
 見るも無惨なその姿に更に畳みかける様に星流が、魔導式スナイパーライフル・BroomShootingStar(BSS)を構えていた。
「……さてと、行くよ……」
 其の呟きと、共に。
 星流が、BSSの引金を引き、その銃口に詰め込まれた魔力弾を発射。
 十分以上に狙撃のタイミングと狙いを定めていた一発の銃弾が、女帝の額を撃ち抜き、更なる苦痛の呻きを上げさせた其の直後。
「ブラッドルビー! オレは、アンタの天敵だ!」
 清導が其の手のブレイヴ・ガントレットに自らの勇気と正義の心の全てを籠める。
 籠められた正義と熱きその魂が、不死鳥の炎の如く神々しき輝きを宿し。
「うおおおおおおっ!」
 その太陽の如き熱を伴った強烈な炎の殴打を、女帝の体へと叩き込んだ。
『ガァァァァァッ?! 熱い、熱い、熱いぃぃぃぃぃぃっ!』
 太陽の中に投げ込まれたかの様な灼熱の苦しみに体を焼かれ、絶叫する女帝。
 それは彼女が奴隷達を従わせるために時に行ったであろう凄惨な拷問……焼鏝の苦痛を彼女に齎す。
「……ん。隙あり、だね」
 望の力で擬似的に味わっているであろう其れを想起し、微かに其の尻尾と耳を震わせながら、クロムが刻祇刀・憑紅摸を振り抜いた。
 其の刀身から放たれた伽藍呑む刧火による全てを滅する一撃が、女帝の全身を回った炎を更に加速。
 炎に締め上げられる様に焼却される女帝がこの世のものとは思えぬ悲鳴を上げる。
 その間にも女帝の肉が削げ、体が砕かれ、全身から液が溢れ出していた。
(「これは……」)
 その絶望を感じ取りつつも、それ以上の事に関心を払う様子も無く、敬輔が黒剣を振るう。
 振り下ろした赤黒く光り輝く刃が、袈裟にその身を斬り裂くその間に。
「今まで皆さんに味合わせてきた其の苦しみ、其の痛みの全てを……思いっきり叩きつけますっ!」
 態勢を立て直したユーフィが全身に闘気の力を張り巡らせ、体当たりを叩き込む。
 強烈な一撃に体をくの字に曲げて、無様に椅子から転げ落ちる女帝に向けて。
「こういうのを、因果応報って言うんだろうな」
 千尋が皮肉げに肩を竦めて軽くそう呟き、黒塗りの短刀、烏喙を投擲。
 肉塊に変わりつつある女帝の体に其の短刀を突き立て、全身に毒を巡らせて、その内側から女帝を腐らせながら。
「『宵』、『暁』」
と青白く光り輝く刀身を持つ小太刀を握る『宵』と、鈍器『鴗鳥』を握る『暁』を嗾けた。
 『宵』による斬撃と、『暁』の鈍器による乱打に、土気色の肉塊となり始めていた女帝の体が更に無様に解体されていく。
 ――そこに。
「……虐げられる、辛さ、は、痛み、は。ボクには、よく、わかる、こと、です。……では、あなた、にも、少し、は、分かり、ました、で、しょうか……?」
 蒼が問いながら、雨に香る金木犀の先端から呪詛を解放、女帝の体を締め上げる。
 その赤と琥珀色の双眸に、逃げ遅れている奴隷達への気掛かりの光を宿しながら。
「……此の身は、ヒトの、盾と、ならん、為に……」
 祈る様に言の葉を紡いだ蒼が、左手を持ち上げ、ふぅと吐息を漏らす。
 漏らされた吐息が、優美に周囲を舞う、彼岸の如く哀しく、儚く、美しき幽世蝶達の背を後押しすると。
 パタパタと飛び立つ蝶達から発された緋色の鱗粉が、逃げ遅れた奴隷達を守った。
 その様子を確認して。
「お主の様に、生きる者から奪うだけであった者には、これは当然の末路なのじゃろうな」
 義透が淡々と言の葉を紡ぎながら奴隷達を飛び越える様に肉薄し、黒燭炎の槍で、女帝の傷だらけの体を貫いた。
 其の刺突の一撃が、肉を裂き、骨を貫くその間に。
「逃げ切れていない皆さんが潰される可能性は無さそうですね。ならば……此処で終わらせますよ、陽太さん!」
 上空から状況を監視していたウィリアムが『ビーク』を滑空させ、『スプラッシュ』を横薙ぎに構え。
「ああ……終わらせるぜ!」
 天からの声に陽太が応じると同時に、濃紺のアリスランスと淡紅のアリスグレイヴを交差させつつ伸長する。
 螺旋状の軌道を描いた濃紺と淡紅の光が空中を奔り、吸い込まれる様に義透に穿たれた傷を抉り取ると。
『あが……あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ、いやぁ、いやいやいやぁぁぁぁぁぁぁっ!』
 全身を苛む其の痛みと絶望を更に深く抉られて、女帝は見るも無惨な叫びと嘆きを上げて、只只管に涙を零す。
 ……けれども。
「例えどれ程苦しもうとも、あなたの罪は消えません。だから此処で討滅します!」
 呟き『ビーク』の背の上で横薙ぎに構えていた『スプラッシュ』を振り抜き、腐り落ちる女帝の体を横薙ぎに切り払うウィリアム。
『ああ……いやぁ、いやぁ、いやぁぁぁぁぁっ! あがぁ、げふぇっ、おごほ、がふぅっ!』
 体中を焼き払われ、ズタズタに体を切り裂かれ、地獄の様なありとあらゆる責め苦を精神に直に受ける女帝が血涙と涎を流している。
 血生臭い地獄の責め苦を味わう女帝の悲嘆と絶望の叫びを聞いた明日香は嗤い。
「貴様の悲鳴、最期までとくと堪能させて貰ったぜ。終わりだ!」
 叫びと共に、蒼の花信風の追風と共に、再び血焔を纏った全てを食らうクルースニクを振り下ろした。
 緋色の炎の線を曳いた斬撃が、過たず肉塊に姿を変えつつある女帝の虚ろな表情から腰に掛けてまでを斬り裂いて。
 そして、呪剣ルーンブレイドが横一文字に襲いかかる
 ――緋燕十字斬。
 全てを焼き払う致命の一撃を齎す一閃に、女帝が文字通り微塵も残さず焼き尽くされ、灰と化して消えていった。
 自らの悪行の、因果応報の報いと共に。
 ――こうして。
 猟兵達と女帝との戦いは、奴隷達に被害を出すこと無く、終幕を迎えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月06日


挿絵イラスト