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アポカリプス・ランページ③〜CYBER CAVE

#アポカリプスヘル #アポカリプス・ランページ

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●上は大火事、下は大水
 旧カリフォルニア州エルドラド郡。州の中央部に連なるシェラネバタ山脈の麓にあり、かつてはその名の通り巨大な黄金鉱脈を擁する森と湖に囲まれた都市が存在していた。だが今はかつて世界を襲ったオブリビオン・ストームの影響により、その地表は燃え盛る炎に包まれた土地となった。
 人が到底住める環境ではないが、シェラネバタ山脈の麓にはゴールドラッシュ期に掘られた坑道が今もぽっかりと口を開けている。時を遡ることオブリビオン・ストームが起きる前に、この坑道を再利用する計画が持ち上がった。頑丈な岩盤によって核ミサイルの直撃と電磁パルスにも耐えうる天然の地下シェルターである。軍はここに大規模通信サーバーを設置して有事の際の地下通信基地にしようとしていたのであるが、坑道を補強して掘り進め終えた時に世界を襲った黒い嵐に呑みこまれたのであった。
 そしてそれを『フィールド・オブ・ナイン』の1体であり、最強のソーシャルディーヴァである『プレジデント』が再利用し、かつての地下通信基地は今は迷宮じみたデータセンターとして再製を果たしたのである。軍が設置したであろうゲートは風化の一途を辿って錆び腐り果て、その気になれば探索も可能な状態であるが、そこから生還を果たした者は誰ひとりとして居ない。
 何故ならば、侵入者を排除する死の罠が幾多にも張り巡らされてるからである。


●グリモアベースにて
「そういう経緯があるデータセンターってところね」
 忍びとは世を忍ぶもの。アポカリプスヘルに合わせてか、ウェスタンなカウガール姿となっているレイチェル・ノースロップ(ニンジャネーム「スワローテイル」・f16433)が事の顛末を語り終える。

「データセンターって聞くとハイテクなイメージだけど、その裏を掻くように偽装が施されていたわ。軍が計画していた内容だと、坑道から絶えず湧き出てくる地下水を利用した水没コンピュータを設置しようとしていたけど、プレジデントも同様に同じ手法を取ったようね」
 地下に設ける大規模通信サーバーとなると排熱と排気が課題となる。その問題を解決したのが、熱を逃がすが電気を通さず、かつ高い耐久性を保つコーティングが施され、水の中に沈めても壊れることないコンピュータの実用化であった。坑道では冷たい地下水が貯まり、それを地上まで排出しなければならない。それを生かした水冷システムが坑道を利用して構成されているのだ。

「勿論、プレジデントはオブリビオン・ストームが起きる前に掘り進め終わっただけの坑道跡地に大規模通信サーバーを設置しただけじゃないわ。それらを侵入者からサーバーを守る、ハイテクからローテクまで様々な対侵入者装置が設置されているの」
 曰く、レーザートラップのようなものもあれば、足場の中に紛れ込んだスイッチを踏めば串刺しになったり、はたまた通路の隙間ギリギリな巨石が転がってくるようなものもあるとレイチェルは語る。

「サーバーに電力を送るためと、たまに配下のオブリビオンに保守点検を任せているのか照明は点いてるみたい。だけど、道中真っ暗なところもあるから注意よ? それらのトラップを掻い潜って、坑道最奥部にある大規模通信サーバーの破壊すればミッション・コンプリートね♪」
 そう伝えると、レイチェルは意気揚々とサムズアップしてみせる。普段は素顔を隠してニンジャヒーローの猟兵として活動している彼女であるので簡単に言ってくれるが、そうそう容易いなものではない。だが、件の地下大規模通信サーバーは最強格のソーシャルディーヴァ『プレジデント』の重要拠点である。ならば、ここまで執拗に侵入者の命を奪うトラップが張り巡らされているのも肯ける。

「Nothing venture,nothing win……危険を冒して乗り越えないと何も勝ち取れない。大丈夫、これまでどんな世界も救ってきたんですもの。こんなトラップなんてちょちょいのちょいよ、お姉さんが保障するわ」
 レイチェルは猟兵たちの意思確認を終えると、深く呼吸を整え精神統一するように両手を組んだ。そして九字を切ると辺りはグリモアの光に包まれ、猟兵たちを坑道の入口へと転送するのであった。


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 侵入者を待ち受ける罠を掻い潜って奥を目指すと聞くと、古き良き冒険活劇映画を連想してしまいます。最近はめっきり減ってしまいましたが、ブームが再燃して復活してくれないかと密かに思っております。

 ●シナリオ概要
 カリフォルニア州エルドラド郡。かつてはその名の通り巨大な黄金鉱脈を擁する都市が存在していましたが、今やその地表は燃え盛る炎に包まれ、最強格のソーシャルディーヴァ『プレジデント』の大規模通信サーバを隠匿しています。都市跡地下に作られたプレジデントのデータセンター迷宮に乗り込み、対侵入者装置をかわしながら最奥を目指し流れとなります。

 よってプレイングボーナスは、『対侵入者装置を回避または解除する』、となります。
 トラップの種類はOPでも語られていますが、ハイテクな物から古典的な物まで幅広くあります。プレイングにどういった物かを記載して頂ければそれが登場しますし、お任せさればダイスチェックによるランダムトラップで判定を行います。

 それでは、エキサイティングなクールで熱いプレイングをお待ちします。
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第1章 冒険 『データセンター・ラビリンス』

POW   :    罠を力ずくで破壊する

SPD   :    罠を目ざとく発見し、避けて通る

WIZ   :    クラッキングで罠を無力化する

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

神代・凶津
様々な罠をくぐり抜けて大規模通信サーバーを破壊、正に冒険活劇ってやつだなッ!腕が鳴るぜッ!

式神【ヤタ】を明かり代わりにして進むぜ。
にしても、たいした罠がなくて拍子抜けだな。
「……あまり油断しないで。」
心配性だなぁ、相棒。
しかし、もっと映画みたいなやつを期待してたんだがな。例えば(カチッ)巨大な岩が転がって(ゴゴゴゴッ)くるとか…よ……。
って、本当に転がってきたああああッ!!?
ダッシュで逃げるぜッ!だがこのままじゃ、ぺちゃんこだッ!結界霊符を壁に貼っていって結界を展開して時間を稼いで逃げきるッ!

水底に沈んでるサーバーを見つけたら水神霊装を纏って水に潜り妖刀を突き刺して破壊するぜ。


【アドリブ歓迎】



「様々な罠をくぐり抜けて大規模通信サーバーを破壊、正に冒険活劇ってやつだなッ! 腕が鳴るぜッ!」
「……あまり油断しないで」
 自身の相棒である神代・桜に携えられながら、鬼面のヒーローマスクである神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)はやる気に満ちていた。なにせプレジデントが金鉱山の跡地を利用した大規模地下サーバー施設であるとは言え、彫り抜かれた洞窟はまさにその奥で秘宝が眠るという冒険活劇の王道そのものだからだ。幼かった頃の桜に神社の蔵から見つけ出されて以来、凶津は彼女と共に生活を送っていた。
 桜にとっては極々当たり前なものも凶津にとっては興味を唆られるものばかりで、その中でも箱の中で能や芸能が繰り広がれれているテレビの衝撃は一番大きかったのかもしれない。毎週金曜日の夜、夕陽を浴びて黄金色に輝く海の映像から始まる洋画劇場で観た考古学者が悪人の手から秘宝を護るために遺跡の謎に挑むというのが特に気に入っており、それを彼は今この状況と重ね合わせているのかもしれない。
 坑道の崩落を防ぐため所々で設けられている坑木の上に籠状の覆いを被せられた裸電球が点いているが、それでも坑内はうす暗かった。だが、破魔の力を宿す八咫烏の式神『ヤタ』によって霊光が彼らの周辺を明るくしている。これならば穴に落ちたりすることも罠の兆候を見逃さないだろう。
 
「おおっと、相棒。入ってすぐに二手に分かれてるぜ。俺の感だと……右だ!」
「……じゃ、こっち」
「あ、あらぁ? おい、相棒。そっちじゃなくこっちだってよぉ!」
 手にしている凶津が示した分岐とは別の道を桜は進む。そんなやり取りをしつつ小一時間が経ったが、侵入者を排除する罠らしい罠は今の所襲っては来ていない。

「しかし、もっと映画みたいなやつを期待してたんだがな」
 期待していたのとは違うことに拍子抜けしながら、桜の手から凶津は離れて周囲を浮遊して周った。

「もしかして、俺たちの運の方がすごいってか? それなら罠にも引っかからねぇぜ……あだっ!?」
 調子に乗ってぐるぐると凶津が周っていたが、そのはずみに思わず岩壁に面をぶつけてしまう。その時カチリと小さい音が鳴ったが、凶津はそれに気づかぬまま桜の手元に戻ってくる。

「いつつ……俺としたことがうっかりしていたぜ。話を続けるが、例えば巨大な岩が転がってくるとか…よ……」
 ようやく凶津は気づいた。背後から重い何かが転がってくるような音を。
 ふたりが振り向き、ヤタの霊光がその先を照らせば正体が明らかになる。巨大な岩の塊がこちらに転がって来ているのだ。

「って、本当に転がってきたああああッ!!?」
「凶津のせい」
「俺!? 面の俺がなにをしたってんだ! ……あっ、アレか」
 桜は禍津を被ると結界霊符を放ち。坑道の壁に霊符が吸い寄せられるように貼られていく。

 ──ゴンッ!
 張り巡らされた結界により、岩の塊は止まった。だが、それは一時的な物でしかなく岩の塊の重みでいずれ破れてしまうだろう。ふたりは奥へ奥へと走った。だが、分岐点らしいものはなく一本道が続き、その終点は行き止まりであった。

「おま、行き止まりかよ!? 何か仕掛けとかねぇのかよ!」
「ここ、水はあって深そう」
 桜が示した先には深みのある穴に地下水が満ちていた。そうこうしている内に、背後からまた岩が転がってくる音が聞こえてくる。このまま止まっていては、岩に押しつぶされてぺしゃんこになるだけだ。

「しゃあねぇ! 水の中ならコイツで決まりだ、相棒ッ!!」
「転身ッ!!」
 水中、深海に適応し縦横無尽に動ける霊装姿になると、水で満たされた穴に逃れると、その上が暗く閉ざされた。これでもう後戻りはできない。だが、水の中はさらに洞窟が広がっていて、どうやら奥へと進めそうである。ヤタの霊光を明かりにしながら泳ぎ進んでいくと、何やら人工物があった。

(アレが、例のサーバーか?)
 近寄れば、チカチカとアクセスランプが絶えず点灯している。無数のケーブルが周囲に張り巡らされている点も鑑みれば、これが水没型大規模通信サーバーとみていいだろう。妖刀を妖しく光らせて破壊すれば、程なくして点っていた光が消えていきサーバーは活動を停止させた。

「ぷはぁ! やったぜ、相棒。プレジデントの大規模通信サーバーを、俺たちの手でぶっ壊してやったぜ!!」
「凶津……あれ」
 地下水脈に秘匿されていた大規模通信サーバーの上に光が差し込んでいたので、彼らはそこから坑道内にへと戻った。自分たちの手でサーバーを破壊したことにはしゃぐ凶津であったが、桜が指を指した場所には『大規模地下サーバーNo.2』と書かれた注意書きが張られている。

「……まだあるってのかよ、おぉおおいッ!?」
 そう。彼らが破壊したのは分散設置されている水没型大規模通信サーバーの数機ある内のひとつであったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニクロム・チタノ
アハハ地下水を利用するシステムですか懐かしいボクのいた研究所でも似たようなシステムありましたよ、ここよりはハイテクでしたが
見え透いたトラップはヘドロを投げて遠距離から安全に破壊して怪しい場所にはヨダレを流して壁や地面をヘドロ化させて剥き出しになったトラップをヘドロで処理して行きましょうか
監視カメラなんかも物陰からヘドロで狙い撃ちして発見前に壊してから周りをヘドロ化して安全を確保して進みましょう
通信サーバーはこの奥ですね、たっぷりヘドロを塗りたくってどろどろに溶かしてあげますよ
地下水がヘドロ臭くなったらすいませんねぇなにぶん悪臭が取れないのでしかしヘドロ風呂は最高ですよ?アハハハ



「アハハ。地下水を利用するシステムですか、懐かしい。ボクのいた研究所でも似たようなシステムありましたよ、ここよりはハイテクでしたが」
 ニクロム・チタノ(反抗を忘れた悪堕ちヘドロ・f32208)。いやかつてはチタノであったが、今は悪堕ちの末に悪臭を放つ悪堕ちヘドロ怪人と成り果てたソレは、かつて自身がナンバー2966と呼ばれて管理されていたおぼろげな記憶を懐かしむ。ここも地下水を利用しているシステムであれば、いくらか共通点があるはずである。
 彼女が奥に進んでいくが、通った道にはヘドロの残滓が落とされている。狂気に染められていても正気は僅かに残っているのか、帰り道の道標を遺しながら進んでいく。

「随分と見え透いた監視カメラ型のトラップがありますねぇ……ヘドロを投げてしまいましょう」
 チタノは身体から溢れ出る酸性の汚泥を投げつけると、直撃を受けた監視カメラは煙を立ち上らせながらボロボロに崩れ去っていく。UCの影響なのか、天井も壁も地面もヘドロが広がっていき、充満していく腐臭混じりの毒性ガスをチタノ胸いっぱいに吸い込むと恍惚な笑みを浮かべる。
 掘り抜かれていた岩盤に隠されていた罠の隙間にもヘドロは侵食し、仕掛けを動かすためのカラクリにも容赦なく汚泥が絡みついていく。らんらんとニクロムは雨上がりの水たまりではしゃいでいるかのように弾むステップでスイッチを踏んだとしても、侵食したヘドロにより罠の発動を不発と化したのだ。

「ここですかねぇ、大規模地下サーバーがあるという地下水の溜まり場は」
 坑道にヘドロを塗りたくりながら進んだチタノの目の前に、滲み出た地下水で水没している坑道が行く手を遮っている。だが、よく見ると水の中へとケーブルが這っているのが分かり、その先には何やら大きな箱状の機械構造物が見えてくる。冷たく澄んだ地下水溜まりにチタノが足を入れると、体皮から滲み出るヘドロで水が濁ってくる。一歩、もう一歩と進むと更に汚濁は広がり、大規模地下サーバーが発している熱でか最初は冷たかった水はほんのりと温かくなってくる。

「アハハハ! サーバーの熱でお風呂のようになっています。そうです、お風呂! ヘドロ風呂にしちゃいましょうか!!」
 今までは地下水を濁らせる程度だった汚れが、チタノの身体からどろりと溢れ出るヘドロによって粘度を高めていく。水没型サーバーは高負荷の処理から発する熱を水に逃して排熱する機構であるのだが、それも不純物がない場合にのみ限る。サーバーの匣体にチタノがヘドロを塗りたくると、逃げ場を失った熱は一気に高まって熱暴走を起こしてサーバーがショートした。そうしてヘドロで覆われた大規模通信サーバーであったものは機能を停止させた。だが、ベトベトに付着したヘドロによって未だ高熱を帯びており、本来冷却を担うまでに冷たい地下水も温泉さながらにまで温まっている。人の侵入を遮るほどの猛毒ガスが溜まった坑道の奥深くから、ポコポコと泡が浮かんでくるヘドロ風呂に浸かっているチタノの無邪気な笑い声が響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

海藻場・猶予
はとりさん(f25213)と

わたくし殺人鬼は開店休業しておりますが
クローズドサークルに残る組み合わせとしては説得力がありますね
この環境に適応できない理由がない
そして誰もいなくなったりしないとよいのですけど

はとりさんが安全確認して下さった道を慎重に渡り
彼に何事か起こる度UCで傷を治療し、ついでに強化を施しましょう
膂力、耐久力を重視して改造すれば、対応できる罠も増えていく筈

じっとしていてくださいね
死体は自由度が高いので、丁寧に施術しないと哺乳類離れさせてしまいかねません

この海水が機械に効けば楽でしたのに
あら
不吉なことを口にすると真実になりますよ?

頼もしい
もし法秩序が回復したら
告発してみせて下さいな


柊・はとり
もば子f24413と
トラップの種類お任せ

攻略前にUC発動
急に入口が封鎖…これも罠か
クローズドサークルに取り残された
探偵と殺人鬼とは洒落にならないな
まあ俺が先に行くんで何とか生還するぞ

厭な気配は第六感で解るが
具体的に何かは解らない
直前で見切って破壊は試みるが
多少の傷は覚悟
どうせ不死の体だ
もば子を庇いつつ進む

殺人鬼に身を預けるのは不安だが
深い傷を負ったら治療を受ける
何に改造する気だ…魚類?
確かに力が漲る感じはするが…
これ以上人間離れしたくないんで
大人しくしとく

しかしここ耐水性高いのな
水没時限定の罠とかありそう
今更何言ってる
探偵と殺人鬼が協力する以上に
不吉な展開もないだろ
俺は犯人を死なせてやらないね



「急に入口が封鎖……これも罠か」
 享年16歳の高校生探偵こと『白雪坂のホームズ』とも呼ばれる柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は、怪訝な表情を浮かべながら舞い上がる粉塵が収まりつつある坑道内で顔を上げた。後ろを振り返れば先ほど通ってきた道が落盤によって崩れて埋まってしまっている。果たしてこれも侵入者を排除するための罠であったのか?

「まったく、はとりさんと行動を共にすれば何時もこうですわ」
 はとりと共に伏せて落盤より難を逃れた海藻場・猶予(衒学恋愛脳のグラン・ギニョル・f24413)は、せっかくのお洋服が汚れてしまったと服についた塵を払いながら立ち上がった。

「しかし、クローズドサークルに取り残された探偵と殺人鬼とは洒落にならないな」
「お生憎様、わたくし殺人鬼稼業は開店休業しております。ですけど、クローズドサークルに残る組み合わせとしては、確かに説得力がありますわね」
 彼女が言うように、アリス適合者の猶予は殺人鬼である。とは言えそれはもう過去の話で、今現在は殺人にはまったく手を染めてはいない。だが、この崩落した坑道という密閉空間において探偵と殺人鬼のみが取り残されたという数奇な事実は確かなものであり、後戻りできない以上はふたりで協力しなければならないのだ。

「それで、どうされます探偵さん。このまま進むか、それともギブアップしてゲートから回収されるか?」
「いや、進もう。分岐点から別れていた入口は塞がれてしまった。この先に大規模通信サーバーがあったとしたら、探偵として死んでも死にきれない」
「あら、もうとうの昔に一度は死んでる身でございませんこと?」
「……まあ、俺が先に行くんで何とか生還するぞ」
 そんなやり取りをしつつ、はとりが猶予の先導をする形でふたりはまだ照明が生きている坑道の奥へと進んでいく。だが、地雷原の中を進んでいるかのように目に見えない罠の存在と極度の緊張感から、岩盤から滲み出た水滴の音がはっきり聞こえてしまう。そんな張り詰めた糸も猶予との他愛もない雑談話をしているだけでも幾らかは緩んでくるものでもある。
 だが、一瞬の気の緩みがはとりに襲いかかることとなる。足場の感触を確かめつつ歩いていたが、坑道特有の水滴で濡れた段差に足をかけると思わず滑ってしまう。その先で感じた感触はガチャっと何かを踏んで沈んだ感触だったのだ。

「ッ! 危ない!!」

 ──ヒュン!
 壁から出てきた何かが坑道内の冷ややかな空気を切った。はとりに庇われる形で猶予は押し倒されてしまうが、彼の体温とはまた別の、懐かしさを覚える温かみが彼女の身体に伝わった。それに手をやると、猶予の掌は赤くべっとりとしたもので染まっていた。
 血だ。血である。苦悶の表情を浮かべるはとりから目をそらして彼が居た場所を見やると、壁から鎌状の刃物が飛び出している。その鋭利な切っ先には、はとりが着ている服の一部が同様に血で染まりつつあった。

「ははは……大丈夫さ。心配ない、一度は死んで蘇った身だ」
 猶予の身体から退くようにはとりは身を捩らせ、どさりと仰向けになる。心配ないと言ったものの、どうやら傷口は浅くはないようだ。生ける屍ことデッドマンと言えども、大量の出血が続けばその生命は危うくなる。

「あなたはそうであったとしても、私としては借りを貸したまま死なれて貰っては困りましてよ」
 猶予は倒れているはとりの腹部にできた裂傷に手をやると、UCを発現させる。ごぽりと彼の身体が海水が満たされると、それは血と混ざりあって赤く染まっていく。だが、何処からともなく現れた海月によってそれらは吸われていき、チクチクと触手を伸ばして刺胞をはとりの身体を刺していく。どこかくすぐられているようなむず痒さを覚えながら、彼は思わず身を捩らせようとしたが、猶予はそれを制しようとした。

「じっとしていてくださいね。死体は自由度が高いので、丁寧に施術しないと哺乳類離れさせてしまいかねません」
 ……何に改造する気だ。もしかして魚類?
 こいつならやりかねないと、おとなしく彼女の言うことに従って堪えながら耐えていくと、猶予による応急処置が完了した。はとりの身体を包んでいた海水は坑道の傾斜に沿って奥へと流れ落ちていった。

「これで良いですわよ。ついでに、また罠に掛かってもいいよう、身体も幾らか強化させて頂きましたわ」
「まるで人を盾として思っていないような言いようだな。だが、礼は言っておく。しかしだ、こうも水滴が滴り落ちるとなると、地下水脈で溺れさせるような罠もありそうだ」
「不吉なことを口にすると真実になりますよ? それでしたら半魚人のようなエラもお付けになります?」
「いや、遠慮しておこう。これ以上人間離れしたくないし、それに今更何言ってる。探偵と殺人鬼が協力する以上に不吉な展開もないだろ。俺は犯人を死なせてやらないね」
「あら、頼もしいこと。もし法秩序が回復したら告発してみせて下さいな?」
 そんなやりとりをまた始めつつ、探偵と殺人鬼は坑道の奥底へと進んでいくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カーバンクル・スカルン
地下水による強制冷却ねー、文明崩壊したとはいえ実現させるのはさすがフィールド・オブ・ナイン、と言ったところかしら。

一番楽なのは地下水を止めちゃう方法だけど、さすがに地形をどうこうする力は私にはないから、ここはコツコツ罠を解除していく方針で。

【クリスタライズ】でとりあえず姿を隠して、「防具改造」「武器改造」の応用で罠を発動する前に無力化していく。姿を見えなくするだけで、熱も実体も残っちゃうから、慎重に進めていくよー。

どうしようもない時は周囲から人を遠ざけて、車輪突っ込ませて相殺させて無力化させよう。解除した罠とかの残骸で作ればいくらでも増やせるしね?



「地下水による強制冷却ねー。文明崩壊したとはいえ実現させるのはさすがフィールド・オブ・ナイン、と言ったところかしら」
 クリスタライズで赤褐色の自身の身体を透明な水晶のように変えながら、カーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)感嘆の言葉を漏らす。古今東西、いかなる世界においても情報処理端末が発する熱処理の課題は付きものである。ファンが送る空気で熱を奪って排熱する空冷、ホースに繋がれたポンプで水を循環させて冷却させる水冷、絶縁油を利用した油冷などなど様々な方法があるが、そのまま水没させて冷却させる形式は、環境に依存するものである。
 例えば水没式と言えども、海に沈めようならば海藻やフジツボといった微生物が付着したり、かと言って淡水でやろうとしても苔がこびりついてしまうという問題がある。対してここは炭鉱である。鉱山と言えば滲み出た鉱物成分による問題点もあるが、ここは金の含有率が非常に多い金鉱床だ。金はいかなる金属の中でも非常に安定した物質のひとつであり、それが水に滲み出るということはまず無い。となれば、ここの水は多少のミネラル成分はあっても純水に近く、水没型大規模サーバーを設置するにはうってつけの立地だったのだろう。それに既に旧時代の人類が下準備をしていたのも非常におおきく、あとは細々とした設備投機をすればいいだけの話である。それがスクラップビルダーの視線で考えた彼女なりの見識であった。

「一番楽なのは地下水を止めちゃう方法だけど、私には地形をどうこうする力はないからねー……よいしょ」
 首を振っている監視カメラの動きの規則性を確認し終えると、急いでその場から離れて監視の目を掻い潜りながら進んでいく。クリスタリアンであるカーバンクルであるが、鉱物生命体である以上は人と同じく体温というものがある。だが、熱を発しなけれんば良いのであれば対策のしようはいくらでもある。事前にフレグラント・スタイルにそのような加工を施して機械による監視の目を誤魔化し、奥へ奥へと進むとあるものが彼女の目の前に現れる。

「これは……先客かしら? 白骨具合からみて、随分前のね」
 それは地面と天井、それと両壁から飛び出た長いトゲで串刺しになった亡骸であった。身なりを見る限りだと、この坑道に何かあると睨んで忍び込んだ奪還者の哀れな顛末であろう。カーバンクルは周囲を見渡すが、解除装置らしきものは見当たらない。

「仕方ない。こうなれば物理的に解除ね」
 ひとまず手を合わせて勇気ある先達に向けて合掌し、その亡骸を引っ張り出す。そして彼女自慢の車輪を力いっぱい突っ込ませると、トゲの罠を砕いて前に突き進む。同時に、またトゲが生えては砕かれ生えては砕かれの応酬が目の前で繰り広げられた。どうやらこの罠はひとつだけではなく、幾多にも仕掛けられていたようである。ここまで厳重に仕掛けられているとすれば……。車輪が砕いた罠の跡をすり抜けながら進むと、その答えは目の前に広がった。

「ビンゴね。ここが旧時代の軍部が作り出した人工地底湖ってところかしら?」
 坑道から抜けると開けた空間となり、ぽっかりと開けられた穴には壁から湧き出る地下水によって湛えられている。水の中では綺羅びやかに光っているそれは、まさしくコンピュータ構造物そのもので水没型大規模情報サーバー群である。壁にかけられた1の数字を見ると、ここがメインサーバールームなのかもしれない。

「勿体ない気がするけど、よいしょぉ!」
 先ほどなぎ倒したトゲトゲ串刺しトラップの残骸で車輪を強化させると、カーバンクルは大きく振りかぶって痛々しいまでにトゲトゲが生える車輪を水中のサーバーめがけて投げつける。着水した衝撃で増設されたトゲは水中銃のモリさながら放たれ、次々とサーバーの匣体が串刺しとなっていく。

「最後の仕上げは、こうでなくちゃね!」
 元の姿となった車輪を今度は天井めがけて投げると、車輪のトゲは強固な岩盤砕きながらぐるぐると空間上部を周っていく。そして程なくすると、落盤が始まった。岩が水しぶきをあげながら地底湖へと落ちると、その重みで大規模情報サーバーが押しつぶされていく。そしてカーバンクルが落盤に巻き込まれないよう坑道へと逃れると、堰を切ったようにより一層激しい落石が立て続けに起こり始めた。こうして地下サーバールームであった空間は落盤により完全に埋まり、プレジデントの大規模情報サーバーシステムは完全に沈黙したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月08日


挿絵イラスト