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アポカリプス・ランページ④~肉のバプティスマ

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#『聖母』マッスルマリア
#夕狩こあら


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 終末の景色が広がるデス・バレー要塞の一区画。
 赤黒い暗色を点滅させる一室に、その影は在った。
「武器を棄てなさい。それは他者を傷付けるだけでなく、自身をも貶めるものです」
 剣も銃も穢れたものだと、清らかなソプラノボイスが響く。
 佳声の主は、深紅の修道服に身を包んだ聖女。名を「マッスルマリア」。
 遠近感が歪んでいると錯覚を起こすほど大きな図体をした彼女は、レクターンに広げた経典を碧色の瞳になぞりながら、穏やかに伸びやかに教義を説く。
「筋肉が言っています。武装するから内なる力が弱まるのだと……」
 曰く、美しい肉体を武器防具で覆うは罪。
 曰く、筋肉こそ聖にして善。
 彼女自身も丸太の様な両腕を広げて掲げ、開いた掌に何も持っていない事を示しつつ、万物が斯くあるべしとニッコリ笑顔を湛えた。
「さぁ、あなた方も『侵蝕プログラム弾』を浴び、今こそ目覚めるのです!」
 聖女が大きく声を張り上げた瞬間、室内に整然と並んでいたモノリス型コンピューターが、其々にマニピュレーターを展開し、一斉に赤色レーザーを射出する。
 其こそ『侵蝕プログラム弾』――撃ち抜いた相手の如何なる武器でも一時的に使用不能にする兵器にて、聖女の前には完全に無力化した者が差し出される。
「……そう、これが貴方の本当の姿なのです」
 生まれたままの姿となった敵対者達を双眸に映した聖女は、これぞ究極の美であると、陶然とした表情を浮かべるのだった。


「危険な手合いが出現した。直ぐに死の谷に向かって欲しい」
 カルト教団の教祖だと言を添えるは、枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)。
 アポカリプスヘルは人類の大半が死滅した終末の世界にて、訳の分からない教義が生まれる事があるが、此度、マッスルマリアが掲げる「筋肉こそ全て」という教義は、ヴォーテックス一族が開発した「侵蝕プログラム弾」と頗る相性が良いと、翠眉が顰められる。
 帷は詳述して、
「緋色の修道女『マッスルマリア』は、先ず、内部に侵入した者達に『侵蝕プログラム弾』を撃ち出してくるので、君達は何とかこれを防ぐか、武装無しで戦って欲しい」
 仄暗い室内にて、レーザーの射線は目視出来るが、何せ数が多い。
 加えて『侵蝕プログラム弾』は敵対者の武器の形状や構造を一切問わず、如何なるものでも使用不能にしてくるので、機能不全となった武器を携えて戦うより、寧ろ武器の無い状態で戦った方が良いかもしれない、と帷は言う。
「だが、それこそマッスルマリアが望んだ『至高の形態』……彼女は強靭な筋肉から凄まじい打突蹴撃を繰り出し、君達を“勧誘”してくるから、全力で断って来るように」
 彼女は己の筋肉に魅了される入信者を待っている。
 力と力、筋肉と筋肉で語らって布教を退けるか、抑も彼女の土俵で戦うのを避け、敢えて武器を使って勝利するか――いずれにせよ、負けてはならない。
 どの道、熾烈な戦いになるだろうと緋瞳を鋭くした帷は、ぱちんと弾指してグリモアを召喚し、
「目に見えるものも、見えないもの。君達の武器は様々にあるだろうが、それが無力化された時、どうするか。無力化されないように、どうするか。……なに、君達なら幾らでも闘りようがあるよ」
 と、瞳を細めて見送るのだった。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 このシナリオは、『アポカリプス・ランページ』第四の戦場、「デス・バレー要塞」で「禁断のコンピュータウイルス」を攻略する、一章のみで完結するボス戦シナリオ(難易度:普通)です。

●戦場の情報
 アポカリプスヘル、過酷な高温と乾燥に包まれた「死の谷」デス・バレーに築かれた、ヴォーテックス一族の機械要塞兼コンピュータ研究所。
 赤黒く発光するモノリス型コンピュータが通路の左右に立ち並び、最奥部に設置されたメインコンピューターを支えている、薄暗い聖堂風の部屋での戦いになります。

●敵の情報:『聖母』マッスルマリア(ボス戦)
 筋肉こそ全てが教義なカルト教団の教祖。
 言動は聖職者のそれであり、筋肉と信者に対しては正に聖母のよう。その一方、信仰しない者に対しては非常に冷酷。
 その見事な肉体美は、一種の洗脳効果すら発揮します。
 緋色の経典を所持していますが、これを鈍器として用いる事はありません。

●プレイングボーナス:『武装の無力化への対策を行う』
 このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
 これに基づく行動をすると、戦闘が有利になります。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
 団体様は【グループ名】を冒頭に記載願います。
 また、このシナリオに導入の文章はなく、公開後は直ぐにプレイングをお送り頂けます。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 ボス戦 『『聖母』マッスルマリア』

POW   :    入信への誘い
【肉体美を見せつけるポージングと入信の誘い】を披露した指定の全対象に【入信したいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    筋肉の聖戦
【自身を信仰する信者達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[自身を信仰する信者達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
WIZ   :    聖なる筋肉開放
対象の攻撃を軽減する【極限まで筋肉が強化された肉体】に変身しつつ、【鍛え抜かれた肉体】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:すねいる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルミナ・セシールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

九十九・静香
アドリブ連携歓迎

ああ、なんて……なんて素晴らしい教えと信念の方なのでしょう!
貴方とは是非共に鍛練したい
てすが私達は此処で足を止めるには参りません
この先で人々を助けないと
ええ、腹筋の如く平行線となったなら後は筋肉で語り押し通るのみ!

筋肉令嬢に変身
UCを発動しポージング◆パフォーマンス
ああ、マリア様の強化した筋肉も素晴らしい…涙が出ます
そしてマリア様も同じ筈
視線が注がれる程に強化した筋肉でお相手致します
当然無手で

◆グラップルで格闘戦
マリア様の攻撃は超筋肉で◆盾受け
拳と蹴りは◆鎧砕きで筋肉を貫く程の◆怪力で
生命力吸収で肉弾しながらマリア様の体力を奪い
最後は◆力溜めからの怪力正拳

貴方の教えは私が必ず…



 仄光る通路奥で、両掌を広げて猟兵を迎える『聖母』マッスルマリア。
 赫黑い照明に浮かび上がる影は巨きく、逞しく、修道服の上からも切り出される筋肉のカットの美しさは、九十九・静香(怪奇!筋肉令嬢・f22751)の麗瞳を飴色に輝かせた。
「ああ、なんて……なんて素晴らしい教えと信念の方なのでしょう!」
 貴方とは是非共に鍛練したい、と金絲雀の聲が精彩を帯びる。
 嘗ては病弱な車椅子令嬢だった静香は、『健康な肉体』への強い憧れを持っていたが、数奇な運命を辿って其を獲得した今も、筋肉美を説く聖女に釘付けられる。
 両の脚で聢と床を踏み締めた静香は、而して凛然と進み出て、
「貴方と筋肉の練磨に励みたいところですが、私達は此處で足を止めるには参りません」
 死の谷を踏み越え、絶望に喘ぐ人々を助けないといけない。
 強大な搾取に瘦せ細る人々に、健康な肉体を届けたい。
 猟兵として、健康を得た者として使命があると強い意志を示した佳人は、己と融合した黑粘液謎生物『クロ様』が全身を包み覆うに併せ、麗しき筋肉令嬢に變身したッ!
『まぁ、まぁ……! 藝術の域を超えた、何と神々しい筋肉でしょう!』
 聖女も呻るは、【筋肉拝礼・披露の型】!
 万人が注目必至の超筋肉は、其を更に引き立てるマッスルポージングによって神域へ、敵も思わずダブルバイセップスポーズで應えてしまうほど。
 二人はそれから華麗なマッスルパフォーマンスで熱く對話し、
「ああ、マリア樣の強化した筋肉も素晴らしい……自然と涙が出てしまいます……」
『私もです。貴方は筋肉を理解っていらっしゃる。そして其が途轍も無く美しい!』
 目下、『侵蝕プログラム弾』がばんばん照射されているが何のその。
 寧ろ赤色レーザーが隆々たる筋肉を捺擦るのが「演出」にも見えるほど、互いの筋肉を魅せ合った二人は、運命に結ばれるように両掌を摑み合い、筋肉の質を確かめた!
『私達は出逢った瞬間、こうなる事が決まっていたのでしょう!』
「ええ、腹筋の如く平行線となったなら、後は筋肉で語り押し通るのみ!」
 ぐわっと手指を締め合い、純然たる怪力勝負に出る。
 格闘戰こそ筋肉が饒舌となると知る二人は、それから熾烈な拳打蹴撃で語り始めた!
『フォォオオオ!! ここまで優秀な貴方には、必ず信者になって頂きます!』
「フゥウウンッ!! 貴方の教えを肉とし、私は、前に進みます!」
 轟と呻る脚撃を筋肉の盾で受け止め、生命力を吸収すると同時、聖女の体力を奪う。
 彼女の筋肉パワーも加えながら閃いた正拳突きは、静香の真直ぐな想いを込めて腹へ、ズドンッと鋭く重い波動を衝き上げると、筋肉の巨壁を折り曲げたッ!
『ッッ……これが、筋肉の耀き……!』
 聖女は全身に駆け走る電撃の樣な衝撃に、稀人現れりと歓喜するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャーロット・キャロル
ヒーローらしく相手の前に派手にまずは登場です!

見て分かるように武器は持たず、使うは我が肉体のみ!
●アルティメットマッスルモードを発動し対抗するようにマッスルさをアピール。

私も鍛えている身、相手の筋肉を素直に誉めつつパワーとパワーによる真っ向勝負を提案、相手が乗ってきたらお互い真正面から掴みあって力比べです!

その最中でも飛んでくる勧誘の言葉。そのパワーと入信への誘いに押され思わず従いそうになるのをヒーローの矜持で持ちこたえますよ!

貴女の教えには正義が足りません!それでは誰も救えない!
と吠えると持てるだけの【怪力】をフルパワーで発揮し一気に投げ飛ばしてやりますよ!

(アドリブ大歓迎です)



 猟兵が閃かせた正拳突きに、筋肉の巨壁を搖らす『聖母』マッスルマリア。
 修道女が陶然としながら麗顔を上げた、その時、赫黑い照明に照らされる身廊の先に、視線を引き付けて離さぬ極上のシルエットが差し入った。
「正義の心胸に秘め、マイティガール只今参上!」
 而して玻璃の如く透徹ったソプラノも淸澄としていよう。
 佳聲の主は、シャーロット・キャロル(マイティガール・f16392)。
 ヒーローらしくマントを翻して現れた彼女は、「MG」と記された胸を張ってポーズ!
 この時、無数のマニピュレーターが『侵蝕プログラム弾』を斉射するが、少女は何も持たぬ両手を広げた儘、正々堂々と身廊を歩きつつ、聖女の元へ近付く。
「見ての通り武器は持たず、使うは我が肉体のみ!」
『! まぁ……なんと気高く崇高な意志! これこそ命のあるべき姿です!』
 幾丈の赤色レーザーがマイティガールの全身を捺擦るが、彼女は毅然とした儘。
 寧ろ昏闇より浮かび上がる筋肉のカットを美しく引き立てよう、
「鍛え上げた肉体美……これが正義の爲に磨かれたマッスルボディです!」
 聖女の双眸に映れるは、【アルティメットマッスルモード】ッ!
 世界のオリンピアン、ボディビルチャンピオンを凌駕する筋骨隆々の姿を解放すれば、マッスルマリアも興奮を露わに、フロントラットスプレッドで超筋肉を見せつけた!
『ッッ神々しい! 貴女の鍛錬の程を、輝かしい筋肉が偽りなく表していますね!』
「シスターも教義を立証する爲に、相当なトレーニングをしたのでしょう。分かります」
 ふぅぅうううっ、と力強い呼吸を伴って急接近する二人。
 而して筋肉と筋肉の競演、對話をしたマイティガールは、マッスル猛々しい腕を見せながら好戰的に咲み、パワーとパワーによる真っ向勝負を提案した。
「私も鍛えている身、あなたの筋肉を認めましょう。ですが本当の語らいはここから!」
『勿論です! 私達は問答の中で筋肉の真理へと近付いていくのです!』
 澎湃と漲る闘氣が真正面から衝突かり、互いに手を摑み合う。
 力と力を純粋に較べるにはこうするしかないと、惹かれ合うように手を結び押し合った二人は、立ち昇る気炎にマントやヴェールを波打たせて角逐した。
『このポテンシャル……貴女は私の教團に必要な存在です! 洗礼を受けなさい!』
「ッ……ッッ……教義を否定しようにも、私は餘りに鍛え過ぎました……」
 間近に触れる超パワーと入信の誘い、從ってしまいそうな自分が居る事は認める。
 然し、病弱だった己が何を以て救われたか、ヒーローの姿を思い起こした少女は何とか持ち堪えると、全身の筋肉を振り絞って聖女を摑み、怪力いっぱい投げ飛ばしたッ!
「貴女の教えには正義が足りません! それでは誰も救えない!」
『――ッ!』
 噫、美しい――と。
 聖女は法悦を浮かべながら巨躯を浮かした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藤・美雨
ひゃあ、何だあれ!
顔立ちは美人だと思うけど……
と、とにかくやっつけよう!

徒手空拳なら私だって得意さ
でもその変な宗教には入らない!
私は私の身体を気に入ってるんだ
ムキムキになんかならないよ!

ヴォルテックエンジンを稼働させ、身体に力を籠めつつ接近戦だ
【野生の勘】を発揮して迫る攻撃を捌きつつ戦おう
集まる信者は片っ端から【怪力】で殴って退場してもらう
倒すまで行くのが難しいならどっか離れた所まで投げちゃお

チャンスを見つけたらすかさずマリアにも攻撃
魂の衝動を力に変えて
殴ったり蹴ったりの【暴力】だ!
ムキムキにならなくたって凄いパワーは出せるのさ!

仲間は傷付けないからちょっとしんどいけど
敵を倒せるなら安い安い!



『噫、隆々たる筋肉の美しきこと! これこそが生命そのものの耀きなのです!』
 投げ飛ばされた巨躯を宙で翩翻(ヒラリ)と飜し、華麗に着地するマッスルマリア。
 貌を上げた時の恍惚とした表情を、赫黑い照明の下で見た藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)は、不覚えず灰色の麗瞳をぱちくりとさせた。
「ひゃあ、何だあれ! 顔立ちは美人だと思うけど……優しそうで、怖そうな……」
 慈愛の相を浮かべた筋肉の巨塊は、何處か歪で奇妙で。
 美雨が直視を躊躇う中、聖女が太い腕を掲げれば、身廊の左右に竝ぶモノリスの蔭から続々とマッチョな信者が現われ、少女を入信させるべくモストマスキュラーを揃える。
 彼等の極上の咲みに狂気めいたものを感じた美雨は、ここで即座に爪先を彈いた。
「と、とにかくやっつけよう!」
 気圧されるより速疾く、踵を蹴って主廊を駆ける。
 瞬刻、異質なる者に反應したマニピュレーターが『侵蝕プログラム弾』を射掛けるが、美雨は俊敏を活かして之を躱すと、ヴォルテックエンジンを出力全開! 体内に励起する電光を双眸に帯と引きつつ、薄暗い室内を一気に疾った。
 少女を待ち受けた聖女は、我が身に結ばれる閃爍を塊麗の微笑に迎え、
『何の武器も持たずに單騎駆けするフィジカル……私の教團に相應しい御方です!』
「徒手空拳なら慣れたものさ。でもその変な宗教には入らない!」
 而して判然(キッパリ)と断る凛々しさも気に入ったか。
 視線ひとつで信者を動かした聖女は、彼等に美雨を捕えるよう飛び掛からせる――!
『武器に穢れぬ淸らかな魂を教團に! かの者に筋肉の究極美を説くのです!』
「私は私の身体を気に入ってるんだ。ムキムキになんかならないよ!」
 無茶はさせているが、蘇生された躰には愛着がある。
 不躾に伸び出る精悍な腕を烱々たる灰瞳に捉えた美雨は、片っ端から殴り倒し、或いはモノリスの向こうへと投げ飛ばし、更に大跳躍して人集りを飛び越えるや、眼下に敷いた修道女めがけて力強く踵を振り下ろしたッ!
「それに、ムキムキにならなくたって凄いパワーは出せるのさ!」
『……ッ……美麗しい……!』
 宙より燦々と閃くは【九の舞】(ノナプル)!
 魂の衝動を力に變えて放たれる殴打と蹴撃は、重力に乗算されて更に加速し、繊麗の躯が地に着く迄に九つの衝撃を叩き付け、聖女の筋肉の巨壁を搖るがす――!
「ちょっとしんどいけど……筋肉饅頭を倒せるなら安い安い!」
 九連撃を全て肉壁に叩き込めば、躯にも相應の襞襀(ひずみ)が出るが構わない。
 仲間を傷付けて「心まで死ぬ」よりマシだと口角を持ち上げた美雨の前には、舞の如き凄撃に臓腑を搖すられた聖女が、口の端より真紅の血を零していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
武器封じとは面倒な事をやってくれる
一応格闘術は収めているから、剣士が刀を持たなければ唯の人……って訳じゃないが、流石に不利は否めない
だが、不利だからといって戦わない訳にもいかないよな
今は俺に出来る限りの事をやってみよう……と、徒手空拳で弐の型【朧月】の構えを取る

この筋肉だし、相手の得意分野で正面からマトモに殴り合う気はない
俺はあくまで落ち着いて敵の攻撃を見切り、受け流し、捌きながら闘気を載せた拳によるカウンター攻撃を叩き込んでいく

しかし……俺だって身体を鍛えている身だし、筋肉の必要性は否定しないけど
世の中それだけが全てじゃないし、俺はあんた達の教義を受け入れるつもりはないよ



『私が、血を……? ……内臓の筋肉はまだまだ修練する必要があるのですね……』
 口の端を伝う鮮血を手の甲に拭い、そと呟く『聖母』マッスルマリア。
 蓋しその美貌より、麗顔に翳する丸太の如き腕が強烈な印象を與えよう。
「向こうの得意が無手で、此方の武器を封じて來るとは……面倒な事をやってくれる」
 溜息交じりに滑り出る、涼やかなテノール・バリトン。
 佳聲の主は夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)。
 聖堂風の暗室に入るなり、着慣れたロングコートが冷涼の風に飜るが、其處に覗く刀は間もなく放射される『侵蝕プログラム弾』によって無力化されてしまうだろう。
 かの手に馴染む感触を思い起こした彼は、同時に過る皮肉を咽喉に押し込めた。
(「劍士が刀を持たなければ唯の人……って訳じゃないが、流石に不利は否めない」)
 一應、格闘術は収める身だ。
 常人に遅れは取らぬが、聖女のあれだけの筋量を前に、マトモに殴り合う気にはなれず――扨て如何したものかと、己の内に培ったものを反芻する。
「死の谷は通過点……不利だからといって戰わない訳にもいかないよな」
 出来る限りの事をやってみようと、拇指球を踏み込め、腰を落とす。
 心眼明鏡として構えるは、弐の型【朧月】――研ぎ澄まされた視力を以て敵の太刀筋を見切り、返しに刀を呉れる「守り」の技を、徒手空拳にて整えた鏡介は、間もなく全身に射掛けられる幾丈の光条を甘んじた。
『侵蝕プログラムを、武器の放棄を受け容れると……見事な心構えです!』
「無刀の劍士が何處までやれるか……この道の先、乗り越えてみせる」
 轟然と肉薄する聖女を前にも沈着たる儘、挙措を見極める。
 武器を持たざる者も、仕掛ける時は同じく発氣すると黑瞳に烱々と光を湛えた鏡介は、嚙み付かんばかりに迫った正拳突きを、僅か半身をずらして受け流した。
『ッ、抜けた……!?』
「刀も拳も、身体の使い方は同じだ」
 平素柄を握る掌は、虚を握ったとて變わらず精強。
 聖女の隆々たる筋肉より繰り出た剛拳を眼尻の際に掠めた鏡介は、間近から踏み込んでカウンターを一撃ッ! 彼女の勢いも使った強烈な反動をボディに衝突ける――ッ!
『ッ、ッッ……噫……私の腹直筋をこれほどまで搖るがすとは……!』
 闘氣を纏った拳が耀いて見えたのは、聖女の錯覚ではあるまい。
 撞ッと背後のメインコンピューターに叩き付けられた彼女は、神氣溢るる光を仰いで、
「俺だって身体を鍛えている身だし、筋肉の必要性は否定しないけど。世の中それだけが全てじゃないし、俺はあんた達の教義を受け入れるつもりはないよ」
 と、閃爍に白皙を照らす麗人に、陶然とした表情を浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
帰りてぇ……ダメ?あっそ
まぁ言ってることは分からなくもない
フィジカルってのはどんな時でも頼りになるし、弱いよりかは屈強な方が良い
だがそれだけが重要じゃない
「戦い」ってやつを分かってねーな

ナイフと仕込み武器は置いてきた
この腕はマジにただの義手だし、サイバネの出力も並に落としてる
アーマーすら無い
付き合ってやるよ、ファイトにな

『Obsession』
身一つでも勝ちに執着するのさ
知ってるか?どんだけやっても鍛えられない部分があるんだぜ
一つは脛だ

執拗に脛に攻撃して、に注意を割かせる
頃合いを見てフェイントを仕掛けて
顔面、それも顎と鼻と目を狙う

顔面は鍛えられねえ
特に目はなァ
装備がありゃ、防げたかもな?



 無手の猟兵が繰り出す凄撃に、極上の法悦を浮かべる『聖母』マッスルマリア。
 彼等こそ我が教團に入信させるべしと、聖女の筋肉がビンビンに歓喜する中、ほつり、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)が倦厭を示した。
「帰りてぇ……ダメ?」
『仔羊よ、迷ってはなりません。武器は裏切ろうとも、筋肉が偽る事は無いのです』
 柔かく穩やかなソプラノボイスを「あっそ」と手に払った彼は、然し彼女のこれまでの教義をよく聽いており、同時に攻略の鑰も見出している。
 故に佳脣を滑るテノールは何處か輕妙で、主廊を歩く足取りも飄然たるもの。
 青年は己に射線を結ぶレーザーを気にも留めず踏み進み、
「……まぁ、言ってることは分からなくもないぜ。フィジカルってのはどんな時でも頼りになるし、弱いよりかは屈強な方が良い。其は否定しないさ」
 と、幾丈の光線が全身を滑る儘に言を続ける。
 翩翻(ヒラリ)と虚空を游ぐ腕は唯の義手だし、ナイフと仕込み武器は既に置いて來たヴィクティムは、サイバネの出力も並に落とし、無効化プログラムが適用される以前に、ありのままの姿を晒していた。
 而して彼は、聖女の筋量を認めた上で告げよう。
「だが、それだけが重要じゃない。尼さんは『戰い』ってやつを分かってねーようだ」
『それは、如何云う……』
「付き合ってやるよ、ファイトにな」
 アーマーすら取り払ったヴィクティムは、然し鋭い艶笑(えみ)を崩さず。
 青き瞳に光を湛えた彼は、Extend Code【Obsession】(オマエニオレハコエラレナイ)――身一つでも勝ちに執着する狂氣を漲らせると、一気に肉壁に接近したッ!
「知ってるか? どんだけやっても鍛えられない部分があるんだぜ」
『ッ――!』
 一瞬で距離を詰めた男の、恐ろしく色気ある低音に喫驚する。
 否、それ以上に息を呑んだのは彼の科白に動搖したのだろう。
「噫、そうだ。一つは脛だ」
『ぐッッ!』
 巧みな脚捌きで執拗に脛に攻撃した彼は、聖女が足許に視線を移した隙にフェイントを仕掛けて顔面――ッ! より痛撃を感じやすい顎と鼻、そして目へ連打を突き入れる!
「それに、顔面は鍛えられねえ。特に目はなァ?」
 唯の義手、鋼鐵の塊は容赦なく教義の弱点を衝こう。
「装備がありゃ、防げたかもな?」
 悲鳴ごと潰すように閃いた拳撃に、冷然と語尾を持ち上げる科白が被せられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜
「なるほど。つまりは筋肉の歯応えと血の味を同時に味わえる敵さんって事だね?」
うん、殺る気が出るねぇ。

UCで吸血鬼化して戦う。
使えなくなった武器は邪魔だから、そこら辺に放り投げときます。

というか、肉体で攻撃してくるなら噛み付き放題じゃない?
敵さんの攻撃を見切り、瞬時に噛み付く場所を判断。んでもって、怪力込みの超全力吸血でカウンターって事で。
血を奪って肉を食うってことわざの通りにしてみようか。

あ、敵さんの生命力もしっかり奪い続けて、自身の回復と強化に充てるのを忘れずに。

「ぶっちゃけ、僕って大鎌で斬るよりも噛み付く方が強いんだよね。」



 ――時に。
 過酷な高温と乾燥に包まれた「死の谷」に、また一人、渇き餓えた者が現れる。
 赫黑く明滅する照明に輪郭を暴いた須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)こそ、漸う滲み始めた血の匂いに、奥底に秘める吸血衝動を解き放とうとしていた。
 蓋し語調は變わらず淡然としていよう。
 佳脣を滑るハイ・バリトンは緩々と語尾を持ち上げて、
「なるほど。つまりは筋肉の歯応えと血の味を同時に味わえる敵さんって事だね?」
 強靭な筋肉には嚙み應えがあり、これだけの筋肉を動かす血量も嘸や多かろう。
 半ばまで伏せた睫の間、ぼんやりとした星眸に『聖母』マッスルマリアを映した彼は、修道服の上からでも判然る肉質を見定めると、冷艶の紫瞳を黄金色に輝かせた。
 聲音が變わったのは、この時の事。
「――うん、殺る気が出るねぇ」
 而して覚醒めるは、【不死者の血統】(イモータル・ブラッド)――烱々たる金の瞳の吸血鬼に變貌した莉亜は、極上の「肉」を前に健啖を示すと、六翅の翼を羽搏かせる。
 彼の悪魔の如き姿影には、聖女も凛乎と両腕を振り翳そう。
『今こそ「侵蝕プログラム弾」を彼に! 悪しき力を纏ってはなりません!』
「ありのままの姿だから、削ぐとか落とすとか出来ないんじゃない?」
 幾丈の赤色レーザーが全身を捺擦(なぞ)るが構わない。
 途中、両手に持てる大鎌と、我が身を囲める銀の槍が効能を失うが、無力化された武器は落ちる儘に、また手に餘れば「邪魔」と放り投げ、気にせず進む。
 身廊を無手で翔ける莉亜には、聖女もヴェールを翻して迎撃し、
『武器を失くしてまだ怯まない……? 貴方には筋肉で問い掛ける必要があります!』
「肉体で攻撃してくるなら、噛み付き放題って事だよね」
『嚙み付き……放題……!?』
 聖女にとって筋肉は尊ぶもの。莉亜にとっては食むもの。
 この観点の違いが隙を生んだか、莉亜は丸太のような腕を迫り出して接近する修道女の動きを見切ると、彼女が掌打を突き入れた瞬間に黑翼を叩いて懐へ侵入!
『ッ――!』
「怪力仕込みの超全力吸血でカウンターって事でいい?」
 恐ろしく冷たく艶やかな低音が喉元に触れる。
 血を奪って肉を食う――聽き憶えある諺の通りにしようと鋭牙を覗かせた莉亜は、聖女の喉笛に嚙み付くや、濤と流るる血潮を啜り、生命力を鹵掠(うば)った。
 無手なればこそ両腕は聖女を摑んで離すまい。
「ぶっちゃけ、僕って大鎌で斬るよりも嚙み付く方が強いんだよね」
 莉亜は麗しき口元を真っ赤に染めつつ、其を實証して見せるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…敵の武器を無力化する事で、自らの強みを最大まで活かせる闘い方をしているのね

…その戦法にケチをつける気はない。卑怯汚いなんて敗者の戯れ言だもの


…だけど肌を晒すのはお断りするわ

武器の類を手放し『侵蝕プログラム弾』を撃たれないように立ち回る
「写し身の呪詛」の残像でレーザーを陽動した隙に敵の懐に切り込みUCを発動
積み上げてきた戦闘知識と反響定位を用いた索敵で敵の行動を暗視して攻撃を見切り、
怪力を受け流した勢いを利用したカウンターの早業で敵の体勢を崩し、
体内に超音波振動を流し込み音属性攻撃のオーラで防御を無視して破壊する追撃を放つ

…私の御業は無手であっても吸血鬼を狩る
非力な小娘の拳と侮ったお前の未熟よ



 聖堂を想わせる、然し聖堂にしては赫黑い暗室で幾人かの猟兵が立ち回る。
 その一人一人に照準を定めたマニピュレーターが、続々と紅い光条を撃ち出す景を見たリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、凛と紫瞳を鋭くした。
「……敵対者の武器を無力化する事で、自らの強みを最大まで活かしているのね」
 相手に武器を棄てさせてから、己の土俵に招き入れる。
 己の間合いを侵す者を劣勢に強いてから戰うとは、修道女にしては随分と狡猾な遣り口だが、リーヴァルディは柳葉の眉を顰めもしない。
「……その戦法にケチをつける気はない。卑怯汚いなんて敗者の戯れ言だもの」
 佳脣を滑るソプラノは聲音をその儘、手に馴染む漆黑の大鎌を足許に置く。
 幾度と吸血鬼共に死彈を沈めたマスケット銃も、無力化したなら両手を塞ぐだけにて、特に惜しみもせず手放した佳人は、白銀に耀く睫を持ち上げ、身廊を見据えた。
「……だけど肌を晒すのはお断りするわ」
 訣別の言を置き、須臾に踵を蹴り出す。
 奥部へ向かった刹那、左右に竝ぶモノリスから『侵蝕プログラム弾』が照射されるが、これを写し身に代わらせたリーヴァルディは、幾丈の光線が離れた隙に切り込んだ。
「……晦冥の海だろうと、熱砂の大地だろうと。狩人からは逃れられない」
 発動するは、【吸血鬼狩りの業・天響の型】(カーライル)。
 宛らイルカの如く、目には視えぬ超音波を發して周囲の物体の配置や質量等を探知したリーヴァルディは、聖母の立ち位置や体格、挙措を五感で把握する。
 視覚以上に情報を得た少女の反應は迅速で、餘程捉えられまい。
『自ら武器を棄てて來るとは優秀です! ありのままの姿の何と美しき事でしょう!』
「……お前の戰術にケチはつけない。でも教義にまで從うつもりはないわ」
 轟然と迫る筋肉の巨塊、丸太のような腕から繰り出る拳を躱す。
 次いで閃く左右の連撃をスウェーして引き付けた少女は、緋色の肉壁が勢いに乗る儘、超然たるマッスルパンチを仕掛けたタイミングで腰を落とし、空振りさせた!
『ッ! 小さな躯を活かしての、垂直移動……!』
「……筋肉が無くても、武器が無くても。お前程度は狩れる」
 而して超音波は索敵するのみに非ず。
 瞬刻、聖女の体内に超音波振動を流し込んだリーヴァルディは、分厚い筋肉を搖るがす音属性のオーラで臓腑にダメージを與えた!
「……私の御業は無手であっても吸血鬼を狩る」
『!! ぐッ……うッッ……!』
「非力な小娘の拳と侮ったお前の未熟よ」
 聖女が苦悶を引き絞る中、竟ぞ音色を變えぬソプラノが染みた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
正直、レーザーを見切る自信はないわけじゃないが
数が多いぶん確実じゃない
危ない橋をわざわざ渡る必要もないしな
……まあ、“猟兵”らしくいくとするさ

通常の銃器は用いない
【無形の影】で精製した武器を使用するよ
自分の裡にある“影”からなる武装は瞬時に精製できるし
無効化されたところで、新しく別の武装を精製すればいい
いちいち形状が変わるのだけは面倒だけど、どれも使い慣れた銃だ
その時その時で最適な形で射撃を行うよ

協働者がいるのなら、腕や足を狙って妨害主体
単身で戦うなら、足、特に爪先を狙ってバランスを崩させてから本命の狙撃
十分当てられるタイミングなら、眼を通して頭を射抜く
あの筋肉じゃ、心臓まで届かなさそうだしな



 赫黑く仄光る空間に、幾丈のレーザーが明滅を繰り返している。
 教祖が「悪」と断じる武器を無力化せんと動いているのだろうと、涅色の麗瞳に室内の状況を確認した鳴宮・匡(凪の海・f01612)は、扉口より入った前室で小さく呟いた。
「正直、レーザーを見切る自信はないわけじゃないが、数が多いぶん確実じゃない」
 奥部へ向かうには身廊と側廊があるが、死角は殆ど無かろう。
 教義を体現するかのように侵入者の動線を殺したマニピュレーターの配置を見た匡は、態々危ない橋を渡る必要も無いと、手に馴染む銃器を仕舞う。
「……まあ、“猟兵”らしくいくとするさ」
 使い慣れた拳銃はホルスターへ、亡き師に贈られた愛銃も手には持たず。
 聖女が拒む銃の類は用いまいと身廊へ烱眼を結んだ匡は、踵を蹴るや音無き颯となり、立ち竝ぶモノリスの間を疾った。
『ッ!? その手に有るは……貴方は自身のありのままの耀きを信じないのですか』
「これは俺の内から模られた影。心が潰えぬ限り、影も潰えない」
 握れるは【無形の影】(ミリオンアームズ)。
 破滅を宿す“こころ”の影が模る銃器は、匡の中から生じるものにて、如何な形状とて主の手に収まる。
 故に――、
『いいえ、其は他者を傷付け、己を穢すものです。侵蝕プログラム彈よ――!』
「撃てばいい。無効化されたところで、新しく別の武装を精製すればいいんだ」
『ッ、それは如何云う……』
 紅き光条が匡の躯を捺擦(なぞ)り、拳銃を霧散させた瞬間、再び模られたライフルが両手に収まる。その尋常ならぬ仕儀には聖女も目を瞠ったろう。
 喫驚に時を止める聖女を前に、匡は涼しげなテノール・バリトンを囀って、
「いちいち形状が変わるのだけは面倒だけど、どれも使い慣れた銃だ」
 然う、凄腕の撃手は得物を問わぬ。
 形成される銃器に合わせ、最適な射撃体勢を整えた彼は、先ずは筋肉の巨壁の足許へ、更に的を絞って前踵部に冱彈を撃ち込んだッ!
「教義に從って随分と鍛えている樣だが、爪先は如何だろう」
『ッ、ッッ……!!』
 螺旋旋廻して飛び込んだ黑彈が赫い靴を射抜き、右足を縫い留める。
 激痛にバランスを崩した時こそ本命と、麗瞳に光彩を湛えた匡は、呼吸さえ聽こえる程靜かに銃爪を引き、狙撃した。
「あの筋肉じゃ、心臓まで届かなさそうだしな」
 美し彈道が結ばれる先は頭部、眼球を通じて脳を掻き混ぜる心算。
 而して刻下、朱々とした血潮が勢い良く繁噴いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
…己が鍛え上げた有り様こそ誇り。
私個人としてはその教義には同意出来る部分も御座いますが…、
そこに迎合せぬ者を見放し排すとあらば、それは所詮自らの虚栄心を満たす虚言に過ぎません。

鍛えた力を有すれど、そこに溺れる事無く律す心の有り様こそ我が武の真髄。
ヴォーテックスに与するその信仰、我が武を以て討たせて頂きます。


UC発動、怪力、グラップルでの武器を一切用いない格闘戦にて戦闘展開
残像にて肉薄し、攻撃に対しては野生の勘、見切りにて察知予測しカウンター
落ち着き技能の限界突破、無我の至りにて極限まで技を練り
最大速度、最大威力の一撃を叩き込む


そも、筋肉を戦に用いるならばそのように膨れ上がらせてはなりません。



 片眼に黑彈を沈められ、勢い良く血を繁噴く『聖母』マッスルマリア。
 赫黑く仄光る異樣な空間に朱を躍らせた聖女は、然し痛撃を陶然として受け取った。
『これもまた、ありのままの躰から放たれたもの……ならば甘んじましょう!』
 畢竟、彼女は狂っていたに違いない。
 血色の牡丹を鮮々と咲かせる聖女の正面に至った月白・雪音(月輪氷華・f29413)は、淡く色付いた花脣より涼しげなソプラノを紡いだ。
「……己が鍛え上げた有り様こそ誇り、と」
 椿の如き紅瞳に、聖女の精悍な肢体を眺める。
 筋肉こそ全てと一心に修練を積んだのであろう、修道服の上からでも判然る超筋肉の美を見た雪音は、昂奮した相手にも伝わるよう靜やかに云った。
「私個人としては、その教義に同意出来る部分も御座いますが……、そこに迎合せぬ者を見放し排すとあらば、それは所詮、自らの虚栄心を満たす虚言に過ぎません」
『虚栄心……ッ? いいえ、いいえ、筋肉に虚言はありません』
 筋肉以外に顕示するものは無いと、マリアは丸太のような巨腕から拳打を繰り出すが、これを研ぎ澄ませた勘で見切った雪音は、躯を僅かにずらして眼尻に流した。
 凄まじい拳圧を風と受け取った佳人は、ここに凛然を萌して、
「鍛えた力を有すれど、そこに溺れる事無く律す心の有り様こそ我が武の真髄」
『心の有り様……貴女こそ私の教團に入信する素質があるようですね……!』
 熱烈な勧誘は拳と共に躱す。
 更に聖女の猛撃を残像に代わらせた佳人は、心眼明鏡の疆に至りて【拳武】(ヒトナルイクサ)――積み上げた『人間業の極地』を以て格闘戰を挑んだ。
「ヴォーテックスに与するその信仰、我が武を以て討たせて頂きます」
『こ、れは――ッ!』
 目下、室内に聳立するモノリスがマニピュレーターより『侵蝕プログラム弾』を一斉に照射するが、何ひとつ武器を持たぬ雪音は止められまい。
 幾丈の光条が繊麗の躯を捺擦(なぞ)る儘にさせた佳人は、心靜かに、無我の至りにて極限まで技を練って躍進ッ! 僅か一足で聖女の懐へ侵襲した!!
『ッ、ッッ……この花車にどれだけのバルク(筋量)があると……!』
 脅威の瞬発力に瞠目したのも一瞬、咄嗟に動いた膝は間に合わぬ。
 人外の身なれど、異能を操る才は無し。武具や爪牙、闘気すらも用いぬ「徒手空拳」を極限まで練り上げた純粋武術は、ここに雪白の拳へ収斂・昇華され、最大速度、最大威力の一撃を叩き込んだ――ッ!
「そも、筋肉を戦に用いるならば。そのように膨れ上がらせてはなりません」
『く……ッ……嗚呼……ッッ!!』
 悲鳴が絞られる中、玻璃の如く澄める佳聲が穩やかに忠告を置いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
この世界の過酷な環境が、筋肉――すなわち純粋な生命としてのパワーへの信仰を芽生えさせたのでしょうか……?
しかしそれは弱き者は生きる事さえできない教義
弱者は間違いなく存在する、それを救えないようでは教義として未熟もいいところです
自身を克己するものとしてはいいかもしれませんがね

徒手のシスター服で立ち向かう
しかし純粋なパワーにおいては勝ち目なし
故に技巧を凝らす

まずは嗾けられる信者の技を、強化された【視力】で【見切る】
教義として肉弾戦を説くならば、それを受けた彼らの中にマッスルマリアの片鱗が見える筈(情報収集)

信者を切り抜けて相対すれば、極限の【集中力】で最善のタイミングに【カウンター】の【鉄拳聖裁】



 赫黑く仄光る空間の造りは聖堂そのものだが、漾う空気に神聖は無い。
 跪き台の代わりに聳立するモノリスの威容を、黄金色の麗瞳に映しながら身廊を進んだオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、目下、緋色の修道服を血斑に染める求道者――『聖母』マッスルマリアの教義に疑問を抱いていた。
「この世界の過酷な環境が、筋肉――すなわち純粋な生命としてのパワーへの信仰を芽生えさせたのでしょうか……?」
 呟いて直ぐ、頭(かぶり)を振る。
 既に人類の大半が死滅した世紀末の地では、強者が弱者を踏み躙るが世の常であったとしても、人々の支えとなる信仰がそうであってはならぬと、内に燃える正義が訴えよう。
 慎ましき黑のシスター服に身を包んだ彼女は、徒手にて聖女に相對し、
「筋肉が全てとは可怪しなこと。それは弱き者は生きる事さえできない教義です」
『いいえ、シスター。他に力を求める事こそが弱さなのです』
 而して聖女は狂信を認めず。
 筋肉の巨塊は塊麗の微笑を零すと、モノリスの陰で筋トレをしていた信者達を召集し、彼等にも福音を告げるべく高らかに云った。
『彼等を御覧なさい。武器に縋っていた弱さを取り払い、筋肉の道に近付いています』
 見よ、とは「感じろ」という事に他ならぬ。
 マッスルマリアが剛腕を振り上げれば、マッスルガイ達が一斉に押し寄せ、教義を立証すべく肉彈戰を仕掛けてきた――ッ!
『さぁ、かのシスターにも筋肉の洗礼を!』
 然しオリヴィアにとって、この展開は想定済み。
 斯くも筋肉美を説くならば、彼女の教義を信奉する信者の中に其の片鱗が見える筈だと眼を凝らしていたオリヴィアは、その初動を見極めて風と疾る。
「弱者は間違いなく存在する、それを救えないようでは教義として未熟もいいところ……自身を克己するものとしては良いかもしれませんが、普遍の真理には成り得ません」
 凛乎と嚴然と異議を唱えつつ、マッスルガイによる肉彈戰を巧みに切り抜けた佳人は、幾丈のレーザーが全身を照射する中、ありのままの拳を握って前へ踏み込んだ!
「純粋なパワーにおいては勝ち目なし。故に、技巧を凝らす――!」
『ッ、ッッ!!』
 五感を極限まで研ぎ澄ませ、我が身に培った戰闘勘を以て懐に入る。
 聖女も丸太のような怪腕から拳撃を合わせるが、優れた視力に軌道を見切った凄艶は、敵が邪悪であるほど破壊力を増す【鉄拳聖裁】を一閃! 逸早く衝撃を届けた!
「狂信を以て弱者を惑わす者よ、今ここに悔い改めよッ!」
 窮地において猶も輝く拳が、正に須臾、筋肉の巨壁を折り曲げた――ッ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
魔術や銃とは異なり、素手や得物での戦いには筋肉が大切ですからね
私も日々鍛錬している身ではありますので分かります

しかし戦いは得手不得手や相性というものがあります
如何に鍛えていようとも、身動きが取れないような術や
接近する前に銃で撃たれるようなことになれば無力

……ですが私も拳を以て応えましょう

愛刀を納刀し、地面へ置けば構える
相手へ立ち向かう勇気と覚悟、如何なる戦法であれ冷静に挑む威厳
鎧さえも砕いてしまうような怪力を拳に乗せる

駆け込んで倫太郎と連携しながら接近、2回攻撃の手数重視
攻撃は見切りと残像にて回避
確実に距離を詰めた所で灰燼拳

仰る通り……如何なる状況、手段であろうと貫き通すのが私達の矜持


篝・倫太郎
【華禱】
確かに『筋肉は裏切らない』とは言うけどな
うん、言うけどな(夜彦見遣ってうんうん)

でも、武装する事が罪だとは思わないんだよな、俺
まぁ?脳筋なオネェさんには理解出来ねぇかもだけど

武装を無力化されんのは想定内
でも、華焔刀に斬撃乗せた先制攻撃は入れられるとイイナー
無理なら生身のぶつかり合いと往こうか

盾誓使用
真の姿を更に強化してく
こいつは俺の在り方だ……
武装みたいに無力化出来ないぜ

勇気と覚悟を持って怪力で拳を振るう
部位破壊も狙って確実に一撃入れる

攻撃は見切りで回避
回避不能時は急所を外すように意識して受け
以降の攻撃には生命力吸収を乗せてく

どんなに誇ったって
矜持が無きゃ……ただの肉だよ
そうだろ?夜彦



 猟兵の拳打によって筋肉の巨壁を折り曲げる『聖母』マッスルマリア。
 全身に痛烈な激痛が疾るが、独自の呼吸法で筋肉を巡る血流を整えた聖女は、血管を露わにパンプアップ! 華麗なるダブルバイセップスのポーズで痛撃を払った。
『噫、筋肉が言っています……! 私は誰をも見捨てぬと……!』
 筋肉無き片眼は血を流すばかりだが、腹筋が衝撃を乗り越えたのが其の証拠と。
 陶然とした表情で福音を告げる狂信を前に、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は流眄をひとつ、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)を見遣って云った。
「……確かに『筋肉は裏切らない』とは言うけどな」
 少し含みのある言は夜彦が預って、
「ええ、魔術や銃とは異なり、素手や得物での戰いには筋肉が必要ですからね。私も日々鍛錬している身ではありますので、筋肉が大切である事は分かります」
 身体の資本となり、靭やかな姿勢と太刀筋を保つ筋肉。
 地道な習練によって磨かれる筋肉は、其に應じた成果を呉れると経験で知っていれば、聖女の教義を頭ごなしに否定する気は無い。
「……うん、言うけどなー」
 夜彦の言にうんうん頷いた倫太郎は、睫を持ち上げた先、真紅の修道服を血斑に染めた聖女を暫し見つめると、更に添えられる科白に賛同を示しながら聽いた。
「しかし、戰いには得手不得手や相性というものがあります。如何に鍛えていようとも、身動きが取れないような術や、接近する前に銃で撃たれるようなことになれば無力」
 刀劍や火銃が全てで無いように、筋肉も全てでは無かろう。
 その爲に武器があり、戰術が練られるのだと、己が知り得る歴史と経験則を振り返って夜彦が云えば、倫太郎は手に馴染む華焔刀 [ 凪 ]の石突に床を叩いて言を継いだ。
「ああ、俺も武装する事が罪だとは思わないんだよな」
 其は「盾」として生きる事を誓った彼ならではの科白。
 夜彦を護るに、己は幾らでも刀を振おうと拇指球を踏み込めた倫太郎は、その場で華焔刀を一閃ッ、刃の如き斬撃波を身廊に疾らせる――!
「まぁ? 脳筋なオネェさんには理解出来ねぇかもだけど!」
 衝撃そのものは「武器」で無ければ、『侵蝕プログラム弾』では無力化出来ないが、聖女は丸太のような両腕を盾と構えると、超筋肉の壁を以て受け切った!
『いいえ、身体は淸らかでなくてはなりません。武器に縋れば、内なるものは弱ります』
 あくまで武器は悪であると、青藍の瞳に冷酷を湛えるマッスルマリア。
 搖るがぬ教義と筋肉に「仕上がってる」と、喫驚か溜息のような息を吐いた倫太郎は、夜彦と瞥見を交えると、二人、赫黑く仄光る空間に堂々と立った。
「そんじゃご所望通り、生身のぶつかり合いと往こうか」
「はい。劍の道に在る身ですが、私も拳を以て應えましょう」
 片や納刀した愛刀を地に、片や扉口に立てかけ。
 マニピュレーターが撃つ『侵蝕プログラム弾』に無力化されるのは想定済み、幾らでも照射すれば良いと爪先を蹴った二人は、端整なる鼻筋を真直ぐ前へ――嚴然と立ち開かる筋肉の巨塊へと差し入った。
 この勇姿こそマッスルマリアが望んだもの。
『噫、何も持たぬ……ありのままの姿で來る姿の美しきこと!』
 法悦の表情を浮かべた聖女は剛腕一発ッ! 空気を呻らせながら拳打を衝き入れるが、間合いに入った夜彦は優れた視力に軌道を見切り、怜悧に冷靜に受け流す。
 彼は熱き拳圧の中で凛乎と告げよう、
「全き無手ではありません。この拳撃には如何なる相手にも立ち向かう勇気と、如何なる戰法を前にしても挑む覚悟が宿っています」
『……な、んと……筋肉ではない力が、これだけのパワーを生んでいる……!?』
 一撃一打が威嚴に滿ちた、活殺の拳。
 鍛錬の賜物もあろう、鎧さえ砕き得る怪力を乗せた【灰燼拳】は、まるで楔を打つ如く筋肉の盾の上から衝撃を突き入れ、漸うガードを抉じ開けていく――!
『ッッ、そんな……豈夫(まさか)……ッ!!』
 きつく両腕を締めていた聖女が、驚愕して時を止める。
 城門より堅牢なガードが彈かれた瞬間、その間から見えたのは、夜彦の精悍な表情と、【盾誓】にて真の姿を暴いた倫太郎だ。
 黑曜石の鬼角を長く鋭利く、翡翠色に艶めく髪を伸ばした麗姿にもレーザーが疾るが、彼は幾丈の赫光が全身を捺擦(なぞ)る儘、膂力いっぱい腕を振り被った。
「こいつは俺の在り方だ……武装みたいに無力化出来ないぜ」
 其は己の正義であり、命であり、在り方そのもの。
 唯一無二、愛しき花簪の爲に獲得したユーベルコードは「武器」に非ず、矜持に基づき行動する者の盾と成った倫太郎は、勇気と覚悟を力と變えて拳を衝き入れる――ッ!
『これが、貴方のありのままの姿……! 何と美麗(うつく)しい……ッ!』
 鳩尾にメリ込む痛撃を甘受しながら、恍惚の聲を漏らすマッスルマリア。
 圧倒的バルク(筋量)を纏う巨躯、その重量を浮き上らせた聖女が大きく後退すれば、眼前には倫太郎と夜彦が精悍の表情を揃えており――、
「どんなに誇ったって、矜持が無きゃ……ただの肉だよ。そうだろ? 夜彦」
「仰る通り……如何なる状況、手段であろうと貫き通すのが私達の矜持」
 其處に在るは、見紛うこと無き「盾」と「刃」。
 目下、無手ながら如何なる武器にも勝る力を示した二人の男が、嚴然たる山の如く屹立するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九頭竜・聖
………確かに肉体美とは良きもの、だとは思いますが
それがすべてではないかと、ましてやそれを以て悪しきに加担することなどあってはならぬ、とわたくしめは思います

武器の無力化、でございますか
なれば、わたくしめには丁度良いでございましょうか
……この身を偉大なる龍神様に捧げる贄なれば
武器なぞには程遠いタダの物でございます
おいでませ、おいでませ……【祈り】と共に御呼び致しますは高龗様
彼女の見せる誘いもわたくしめには届きません、そのような自由もすべて、この御方に捧げているのですから
如何に鍛えた肉体であれど、生身の命であるならばこの黒い闇には抗うことなどできません
過去は闇の中へとお戻りくださいませ……



 筋肉の壁では禦げぬ部位を攻められ、或いは筋肉の壁を抉じ開けられ。
 度重なる凄撃に予期せぬダメージを負った『聖母』マッスルマリアは、真理の扉を前にした樣な――何處か畏怖した表情を浮かべていた。
『筋肉よ……貴方を凌駕し得る何かが、彼等猟兵に在ると云うのですか……!』
 銃も劍も持たぬ淸らかな躯に纏える筋肉、其を超える何か。
 ありのままの姿に勝るものが果たして在ろうかと、両腕を上げてアブドミナル&サイ、キレのあるポーズを取れば、ここに美し金絲雀の聲が聖女の鼓膜を震わせた。
「…………確かに肉体美とは良きもの、だとは思いますが。それがすべてではないかと、況やそれを以て悪しきに加担することなどあってはならぬ、とわたくしめは思います」
 玻璃の如く繊麗な音色の主は、九頭竜・聖(九頭龍の贄・f28061)。
 赫黑く仄光る空間に、匂い立つほどの麗姿を現した佳人は、左右に竝び立つモノリスの異様にも怯まず、こうろりとぽっくり下駄を鳴らして歩く。
 無論、聖にも『侵蝕プログラム弾』が――幾丈の赤色レーザーが花車の躯を捺擦るが、彼女は光条が全身をくまなく滑る儘に、奥部に据わる聖女の元へ進み行く。
「……武器の無力化、でございますか」
 無論、気付いてはいよう。
 贄の装束に差し込む赫光を流眄に追った黑瞳は彩を映し、艶やかに花脣を開いた。
「何も持たぬわたくしめには丁度良いでございましょう」
 然う、聖は「偉大なる龍神樣」に捧げられた贄。
 彼女が纏うものは龍神の所有物である事を示す祝福、或いは呪いにて、無力化されても何ら變わらぬ――曰く、「武器なぞには程遠いタダの物」。
 故に、無手のまま敵に近付いた聖は、筋肉など餘程無さそうな繊手を胸元で広げると、降臨【肆之龍・高龗】――残忍酷薄なる暗黑の龍、タカオカミを降ろした。
「おいでませ、おいでませ、偉大なる黑の龍神様。彼の者を御身の権能にて覆い給え」
 極上の贄、美し花嫁の前に黑き大蛇は影を顕現そう。
 その光すら通さぬ身は、聖女の筋肉美も魅惑的なポージングも聖には見せまい。
「如何な誘惑もわたくしめには届きません、そのような自由もすべて、この御方に捧げているのですから」
『な、んと……私の教義が、超筋肉への誘いが響かないなんて……!』
 驚愕する聖女の前、澎湃と溢るる闇の向こうから聖は語り掛け、
「……如何に鍛えた肉体であれど、生身の命であるならば、この黑い闇には抗うことなどできません。過去は闇の中へとお戻りくださいませ……」
 其こそ当然の因果と云うように。
 深く、冷たい昏闇が、聖女を囲繞して締め上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鎹・たから
確かに、戦いにおいて肉体は鍛えておくべきでしょう
たからはちいさいですが、運動は欠かしませんよ

ですがそれだけでは足りません
たからには、こども達を守る為の力が必要なのです

ダッシュで素早く駆け抜け、残像で浸蝕弾を躱し
オーラの膜で防ぎつつ全力でマリアへと接近

入信の誘いには鼓舞と勇気で振り払います

あなたの信仰は必要ありません
たからは、たからの知る力で
守るべき人達を守ります

手裏剣を投げ彼女の体を二度引き裂き【2回攻撃
レーザーを受けたなら、手元に戻った手裏剣を放り投げ囮に

使えない、なんてことはありません
このように、たからの身を隠してくれるのですから
【暗殺、残像、忍び足

そうして氷の拳を彼女めがけて放ちましょう



 澎湃なる昏闇に溺れた『聖母』マッスルマリアが、ここでパンプアップ! 風船の樣に筋肉を膨張させるや、蜷局を卷く闇竜を払って生還する。
『フゥゥゥウッ! 鍛錬を共にした筋肉は裏切りません、この樣にッ!』
 己が教義の正しさを示さんと取られるサイドトライセップスは、圧倒的バルク、キレのあるカット、そして極上のプロポーションを猟兵の前に差し出す。
 其を交睫ひとつ、銀瞳をぱちくり瞬いて受け取った鎹・たから(雪氣硝・f01148)は、淡く色づく花脣をすこうし開くと、玻璃と澄める佳聲を滑らせた。
「――確かに、戰いにおいて肉体は鍛えておくべきでしょう。たからはちいさいですが、運動は欠かしませんよ」
 雪の樣に白い麗顔は無表情ながら、拒絶を示さぬ佳人に聖女は色めこう。
 マッスルマリアが更に筋肉美を強調せんとポーズを取れば、間もなく言は継がれる。
「ですが、それだけでは足りません」
『鍛錬だけでは……ありのままの筋肉だけでは、充分でないと……?』
「はい。たからには、こども達を守る爲の力が必要なのです」
 而して語るより行動で示すが迅い。
 拇指球を踏み込むや、赫黑く仄光る空間に躍り出た佳人は、間もなく射線を集め始めるマニピュレーターを潜るように駆け疾る。
 幾丈のレーザーが繊麗の躯を捺擦(なぞ)るが、侵蝕プログラム彈を残像に代わらせた佳人は、眼路に迫る赫光の雨を『玉屑』に屈折させて禦ぎつつ、身廊を趨る、走る。
『ッ、なんというフィジカル! 私の教團には貴女のような御方が必要なのです!』
 目下、銀雪の彩には超筋肉が膨れ上がって誘い掛けるが、勇気は搖るがず。
「たからには、あなたの信仰は必要ありません。たからは、たからの知る力で、守るべき人達を守ります」
 己が佳脣を滑る言の葉に信念を確かめた佳人は、むつの結晶をかたどる『不香の花』を繊指に摘むや投擲ッ! 咄嗟にガードする左右の前腕伸筋群を繊維に沿って引き裂く!
『――ッ! 悪しき武器は棄てなさい! 淸き心には相應しくないのです!』
「そんなことはありません。このように、たからの身を隠してくれるのですから」
 手元に戻らんとする六華にもレーザーが迫るが、其こそ囮。
 はらりと散る雪花の代わり、音を殺して跳ねた佳人は、【冰雪】(コオリユキ)!
 聖女に肉薄するや、氷を纏って冷凍化された拳をガードの上から叩き付け、先に迸った血滴ごと凍らせるように貫穿――ッ! 創痍を鋭く凍結させて灼く!
「筋肉も、教義も。砕け散りなさい」
 振るう拳は、愛するこども達のために。
 悪を挫き、弱きを救う「たからぱんち」が、白銀の閃爍(きらめ)きを舞い散らせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
はっはっは、たしかに筋肉は素晴らしい!
強さの象徴としてビジュアル的に分かりやすいからのう
とはいえ武装など必要とせん妾だが、力の源泉は筋肉ではない!
つまりお主とは相容れぬということだ!
そもそも妾は鍛えても筋肉がつかん!

右手を上げ、指を鳴らし、さあ来たれ純白の薔薇よ!
はーっはっはっは! 神が御座すに相応しい場を整えてやったぞ!
う~む、実にエモい! まあ、お主にとって気分が良いかどうかは分からんがな?

その上で、お主のように力を誇る者と真っ向殴り合う! まさに最高のシチュエーションよ!
さあ、素敵なバトルを繰り広げようではないか!
食らって思い知るがよい、歓喜を生み出す権能を持つ、邪神の左腕の一撃を!



 片眼を失い、筋肉を削がれ。真紅の修道服を血斑に染めた『聖母』マッスルマリアは、「筋肉こそ全て」という教義を説く裡、真理の扉の前に立たされる。
 悖反する存在、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)と邂逅したからだ。
「はーっはっはっは! たしかに筋肉は素晴らしい! 強さの象徴としてビジュアル的に分かりやすいからのう。妾も筋肉を貶める心算(つもり)はない」
『ッ、貴女は……!』
 赫黑く仄光る空間に朗々と響く高笑い。
 巨躯を折り曲げた状態からサイドチェスト気味に振り返った聖女は、無数のレーザーが赫光を滑らせる身廊を、一縷と怯むことなく蛇行して來る蛇神、いや邪神に瞠目した。
「妾は武装など必要とせんし、妾の力の源泉は筋肉ではないがな!」
『何も持たずしてこの覇氣、この波動……筋肉が鼓舞しているのではないと……?』
「はっはっは! そもそも妾は鍛えても筋肉がつかん!」
『!? ッッ!?』
 澎湃と迸發(ほとばし)る氣合いは幾丈の懸瀑の如く、灼輝する雷光の如く。
 無論、左右に竝べるモノリスが菘めがけて『侵蝕プログラム弾』を照射するが、彼女は赤色光が半人半蛇の身を捺擦る儘にずんずん進むと、堂々、右の繊指を聖女に向けた。
「畢竟(つまり)、妾とお主は相容れぬということだ!」
 突き付けた人差し指をスッと天へ掲げ、訣別を告ぐよう彈指する。
 ぱちんと彈けて降臨するは、【漸近展開・至高天】(クロース・エンピレオ)――天上に溢れた純白の薔薇が光を注ぐや、幽暗の空間いっぱいに弥陀の浄刹が広がった。
「はーっはっはっは! 神が御座すに相應しい場を整えてやったぞ!」
 万彩は玲瓏と、芳馨さえ匂える世界に菘は邪神の風格を際立てよう。
 一切の武器を持たぬ彼女は、然し如何な筋肉を纏うより雄渾と咲ってみせる。
「う~む、實にエモい! まあ、お主にとって気分が良いかどうかは解らんがな?」
 天上の白薔薇を仰いで感嘆をひとつ、而して交睫した金の瞳を流眄に、筋肉の巨壁へと注いだ菘は、蛇の尾に床を叩くや一気に突貫した――ッ!
「さあ! 血肉湧き躍る、熾烈で素敵なバトルを繰り広げようではないか!」
 丫の舌をチラと覗かせながら、塊麗の微笑に添えられる剛拳一打!
 餘りに美麗しい拳閃には、マッスルマリアも惹き付けられるように打突を繰り出して、
『それだけのフィジカル、メンタルを、私の教團に捧げて呉れないのですか……ッ!』
「断る! 力を誇る者と真ッ向殴り合う、最高のシチュエーションは逃さぬよ!」
 ズンッと凄まじい波動が両者の肌膚を震わせた瞬間、菘が更なる燦光を差し入れる。
「食らって思い知るがよい、歓喜を生み出す権能を持つ、邪神の左腕の一撃を!」
 世界が白み、真理の扉が開く。
 筋肉の求道者は、筋肉以外の力で抉じ開けられる扉の前に巨躯を吹っ飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)。

今回は素手で【真柄砕き】を使用します。
そういえば素手は初めなので上手く当てられるか不安です。
なのでロベルタさんとの連携を特に重視し丁寧に攻めます。

相手の動きを見切りつつ野生の勘や第六感で攻撃を回避。
リミッター解除後に限界突破して威力を上げた拳を腹部に。
一番堅い部位ですが一番狙いやすいところでもあるので。
…あ。鎧無視攻撃と鎧砕きに重量攻撃を付与しておきます。

私の拳は当てられなくとも問題はありません。
腹部…と見せかけ足元の地面を殴ってみるのもいいかもです。
破壊した時の土煙などが目晦ましになって連携を繋げますしね。
体術を使う戦いはロベルタさんの方が得意なはずですから。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)。
おー。おっきいねーちゃんだじぇ♪なんだか似合わない!

パフォーマンス上げて封印解いてから多重詠唱するよ。
それから【雷神の大槌】を発動。一気にねーちゃんの懐へ。
相手がパワーならこっちは速度で攪乱しつつ戦う!
脚に重量攻撃と鎧無視攻撃に鎧砕きを付与しておこうかな。
筋肉で簡単に蹴りの衝撃吸収されちゃう気がするからねぃ!
シスターねーちゃんに会う前になるべく完成させたいね。

いつも武器使ってた墨ねーちゃんは今回はやり難そうだね。
間合いの取り方でそーとー苦労してるって感じかな。
だから僕が率先して前に出てシスターねーちゃんと戦うよ。
墨ねーにフォロー入れながらいつもより更に連携をするじぇ♪



 丸太のような巨腕を伸ばし、真理の扉を摑まんとする。
 然し秘鑰を解いたのは己で無し、己が信じる筋肉でも無し、『聖母』マッスルマリアは後退するほど遠退く門に、青藍の瞳を震わせながら絶叫した。
『噫、筋肉よ! これほどの信奉を、鍛錬を捧げた私を裏切るのですか……!』
 撞ッと床に倒れ込み、己が咲かせた血色の牡丹を掻き亂す聖女。
 最早、正気には戻れまいか――狂信の終焉を目の当たりにした猟兵が続々と集まる中、可憐なる二輪の花もまた、その場に立ち合おうとしていた。
 一人は、ロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)。
 赫黑く仄光る身廊の先、天へ両腕を広げる筋肉の巨塊を、額に手を翳して見た少女は、澄み渡る穹色の瞳をぱちくりと瞬いて、
「おー。おっきいねーちゃんだじぇ♪ 僕が追いかけっこしてたオウガくらいかも?」
 此方の遠近感を歪めるのだと呟く隣、視線を揃えた浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)も、聖女が纏う圧倒的筋量を凝ッと見つめる。
「……武器を、棄てて……鍛錬を積んだ……成果が……あの姿だと……」
 魔力の類は感じられず、純然と剛力を磨いてきたのだろう。
 求道者として鍛え上げた肉体は、バルク、ディフィニッション、プロポーションのどれもが素晴らしく、三位一体の神々しさを放つばかり。
 蓋し其が異樣で歪形(いびつ)である事は、ロベルタがズバリ言ってのけよう。
「お顔は優しそうで、身体はムキムキで……なんだか似合わない!」
 無垢に滑り出る佳聲には、墨も合點(こっくり)と首肯いて、
「武装する代わり、武器も防具も躰に纏えば……必ず何處かに歪みが生じるかと……」
 狂信には穴がある。故に其處を衝く。
 二人で連携すれば抉じ開けられようかと、切揃えの黑髪の奥、蘇芳色の麗眸がロベルタを見れば、彼女もヤル気充分、出力を上げるべく超感覚を練り上げる。
「相手がパワーなら、こっちは速度で攪亂しつつ戰うじぇ♪」
「はい……武器が、無力化されるなら……今回は素手で……」
 云って、はたと我が手を見る。
 手に馴染んだ大刀は此度は『刀袋』に収めた儘で――。
「……そういえば……徒手空拳は、初めてですね……上手く、当てられるか……」
「う! いつも武器使ってた墨ねーちゃんは、今回はやり難そうだね……」
 相手の土俵で戰う不利は否めず。
 然し「死の谷」は通過点にて、畢竟、進むしかあるまい。
「……連携を重視して……丁寧に、攻めましょう……」
「もっちろん♪ 墨ねーをフォローして、いつもより更に連携するじぇ♪」
 二人なら大丈夫。
 幽暗の身廊を前に「感」と「勘」を鋭く、花車に秘める埒外の力を限界を超えて引き出した墨とロベルタは、同時に踵を蹴るや、一気に聖女の元へ駆け走った!
『ッ!! 一陣の風が、吹き抜ける……! 侵蝕プログラム彈よ――!』
 聖女が怪腕を振り上げれば、左右に竝ぶモノリスがマニピュレーターを動かす。
 目下、幾丈の赤色レーザーが墨とロベルタを捉えるが、武器を用いぬ二人は赫光が躰を滑る儘に前進し、身廊を駆ける間に急加速した。
「シスターねーちゃんの所に辿り着く前に、なるべく仕上げておきたいねい!」
 Uccidi i nemici in orbita con l'aiuto del ruggito――!
 花脣に秘呪を詠唱しながら神速に至ったロベルタは、墨に先行する形で【雷神の大槌】(ミョルニル・ハンマァー)ッ! 最大505mの直線上に閃爍を疾らせる!!
 可憐は白皙を白ませながら輕やかに朗らかに云って、
「厚みのある筋肉に衝撃を吸収されちゃう気がするからねぃ! 一点集中だじょ♪」
 閃雷――ッ!!
 力で勝る相手に叩き付けた超高速の蹴撃は、宛ら巨壁を穿つ楔の如く筋肉の鎧に沈み、繊維の切り裂かれるような激痛を味わった聖女が、野太い雄叫びを上げた。
『ッッ……ぐあああああ嗚呼嗚呼!!!』
 全身を巡る痛撃を払うように怪腕が繰り出るが、花は摘めず。
 超スピードの疆に至ったロベルタは、巨拳の軌道を見切りながら巧みに躱し、間もなく肉薄する墨に次撃を、最後の一撃を託した。
「墨ねー、後はよろしくっ!」
「……預ります……」
 間合いの取り方に苦労した墨も、ロベルタの動きを見た後なら大丈夫。
 須臾すら凌駕して敵懐に侵襲した佳人は、そのまま腹部へ、と見せかけて更に身を低く「地面」を殴り、衝撃に撒き上がる破片と土煙を目晦ましに影を隠す。
「……初撃は、当てられなくとも……問題はありません……」
『くッ……一体、何處に……!?』
 聖女が烱眼を絞って二人の影を探るが、ロベルタが陽動に退く代わり、敵懐に留まった墨が、【真柄砕き】――! 漆黑に染まる拳を今度こそ腹部に叩き込んだッ!!
「一番堅い部位ですが……、一番狙いやすい……ところでも、あります……」
『ッ、ッッぜぇぁあああアア亜亜亜亜――ッッ!!』
 其の一撃は涅色。魂すら砕く錘。
 何も持たなかった訳では無い、筋肉の巨壁を崩すに最適な「戰術」を用意した二人は、絶妙なる「連携」を以て狂信を打ち崩す。
 それらの「筋肉を超える力」に淘汰された求道者は、仰向けに倒れるや最奥部のメインコンピューターに巨躯を打ち付け、システムごと破壊して終焉を迎えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月05日


挿絵イラスト