アポカリプス・ランページ④〜死者の行進
「やだやだやだやだやだ。高温も乾燥も嵐もコンピュータウイルスも私はぜーったい、ぜったいごめんだわ!」
花降・かなた(雨上がりに見た幻・f12235)は若干泣きそうな声でそう叫んだ。うー。だか、あー。だか。だらしなくうめき声を漏らしているのは彼女が人ではなく機械から生まれた存在だからかもしれない。
若干泣きそうな、というか最早半泣きになりながら、かなたは一つ、咳払いをする。「そういうわけで」と、ちょっと気を取り直したような間の後で、
「死の谷……過酷な高温と乾燥に包まれたデス・バレーに、ヴォーテックス一族の機械要塞兼コンピュータ研究所が築かれているの。今回は、そこを攻略するお話ね。どうやらそのコンピュータウイルスは、「禁断のコンピュータウイルス」と呼ばれているらしくって……」
言いながら、かなたはほんの少し、声を潜める。スーパー戦車のスーパーウェポンすら狂わせるウイルスらしい、と。
「勿論、ただそこにあるわけではないわ。機械鎧で強化されたレイダー軍団が待ち構えてるわ。彼らを倒して、その研究所を制圧してほしいのよ。……ただ、どうにも一筋縄ではいかないみたいで」
曰く、その機械鎧とやらは装着者の戦闘能力を大幅にブーストする反面、一度着用すると死ぬまで脱げないという代物らしい。ブースト機能を破壊されてしまえば単なる重りと化すらしいので、
「つまり、まずはその鎧を破壊してから敵を倒すのが、スマートな攻略……かしら? と、思うんだけど」
もちろん、そうすると楽だがそうしなければいけないわけでもない、とかなたはまず前提として口にした。
「兎に角数が多いから、気を付けてね。敵は……」
それから、かなたはほんの少し言いよどむ。
「生者を狙う、死体の群れ。ゾンビに殺された人や、死体となって放置された人たち……。死んでからも、そんな風にして働かせるなんて、ごめんよね」
解放してあげて、と。かなたは最後に祈るように呟いて、話を締めくくった。
ふじもりみきや
いつもお世話になり、ありがとうございます。
ふじもりみきやです。
状況はかなたが言った通り。
純戦・無双系です。敵はそこまで多くはありませんが、数が多いです。
断章はありません。
場所は研究所内です。何となく研究所っぽいのを想像してくれればいいです。廊下と部屋がたくさんある系。
OP公開時からプレイングを募集し、いっぱいになったらタグで閉めを宣言します。
うっかりし目が遅くなってしまったらプレイングをお返しすることになります。すみません。
戦争時という事もあり、あんまり採用できないと思います。ご理解・ご了承いただければ幸いです。
第1章 集団戦
『ゾンビの群れ』
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POW : ゾンビの行進
【掴みかかる無数の手】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛みつき】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 突然のゾンビ襲来
【敵の背後から新たなゾンビ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 這い寄るゾンビ
【小柄な地を這うゾンビ】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
イラスト:カス
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
メレディア・クラックロック
──解析完了。
鎧のブースト機能を司ってる箇所は……ココだね?
レーザービットの照準優先箇所をその部分に規定。
攻撃開始。
動きの遅いゾンビの急所なんて、空飛ぶビットなら簡単に捉えられる。
あとは先頭から順番に撃ち抜いてけばいいだけ。
手足1点、胴体3点、頭は5点、みたいな?
彼らは生存競争の敗北者。
負ければ勝った相手にいいように貪られるだけ。
そういう世界だって生まれた時から知っているボクだから、負けたゾンビに同情なんて出来はしないけど。
無理矢理延ばされたロスタイムを終わらせてあげるくらいは出来るからさ。
さぁさぁ鬼さんこちら、手の鳴る方へ!
生きているモンがこっちにいるよ!
楽になりたい人からかかっておいで!
不思議なくらい静かな場所であった。
訪れた研究所には、生きているものの気配が感じられない。
メレディア・クラックロック(インタビュア・f31094)は訪れたときにそう思い、通路の奥から現れたその影に僅かに間を細めてやはり同じ感情を得た。
「──解析完了」
目の前にいたのは、死体の群れだ。大人、子供。男、女。形は違えどどれも最早生きてはいない。腐乱した姿でメレディア向かって歩いている。みすぼらしい姿に不自然なくらい真新しい鎧を付けていて、それが妙に目立っていた。
「鎧のブースト機能を司ってる箇所は……ココだね?」
息を一つ、吸い込んで。問いかけるようにメレディアは言う。……特に答えは求めていない。求めても帰ってこないであろうことは一目で理解していた。映像撮影・変換のためのデバイスをレーザービットに変形させようとする……その、瞬間、
死体たちも行動を開始した。はるか遠くにいる、と思っていたのに、いつの間にか目の前にいた。
「おおっと、危ないなぁ! それが鎧の力なのかな!?」
ありえない動きで肉薄するゾンビたちの爪を紙一重でよける。そのまま即座に数歩後退。掴みかかってくる腕はかろうじて肉がついている程度で腐臭がしていた。それを鼻に感じる前にメレディアもまた動き出す。
「仕返しさせてもらうよ。Microphone、Cinema-Camera、戦闘モード起動!」
電脳を解して、改めて自身の持つデバイス類を変形させた。荷電粒子砲を構え、即座に解析した鎧の弱点を照準優先箇所に規定する。
「それでは……」
攻撃開始。という前に、メレディアの荷電粒子砲が動き出していた。
「手足1点、胴体3点、頭は5点、みたいな?」
予想外の動きをしたとはいえ、所詮はゾンビだ。動きの遅いゾンビの急所なんて、空飛ぶビットなら簡単に捉えられる。
「あとは先頭から順番に撃ち抜いてけばいいだけ……っと」
それは処理だ。通路の端から端へ。時に背後から現れた敵へ。ぐるりと体を回し、視界にとらえ、捉えた瞬間から粉砕していく。
鎧を撃ち抜く。撃ちぬいた瞬間に動きの鈍るゾンビに即座にとどめを刺す。肉片が飛び散り、その死体を踏み越えるようにして別のゾンビがやってくる。
「……」
それを、メレディアはただ、静かに見つめる。
「彼らは生存競争の敗北者。……負ければ勝った相手にいいように貪られるだけ」
彼らは負けた。ただそれだけだ。そういう世界だと、メレディアは生まれたときから知っている。……それを否定することは、できない。その世界で生きている人がいる限り、それを否定することはできない。けれど……、
「……同情なんて、出来はしないけど。……それでも、それでもね。無理矢理延ばされたロスタイムを終わらせてあげるくらいは出来るからさ」
呟いた、メレディアの声の音を知る者は誰もいない。ただそこには動き突き進む肉片があるだけだ。……知っている。メレディアは一度、深呼吸して、
「さぁさぁ鬼さんこちら、手の鳴る方へ! 生きているモンがこっちにいるよ! 楽になりたい人からかかっておいで!」
ことさら明るく、声を上げるのだった。少しでも声が届くように……。
大成功
🔵🔵🔵
ルドラ・ヴォルテクス
●アドリブOKです
【メーガナーダ】
発雷……!
装置の破壊か……これだけの数をこしらえるのに、どれだけ苦労したかは知らないが、俺の雷は加減はしない、装置ごと破壊するまでだ。
限界突破で、雷の領域を拡大する、おっと……背後から襲おうなんて思うなよ?そこはもう領域だ。
とにかく、装置をイカれさせていけば、暫時やりやすくなるだろう。
少しばかり手は掛かるが、それだけ楽しめる時間が増えるんだ、悪くない。
攻略後はウィルスをどうにか使えるか解析してみるか。
後々に使えそうだからな。
そこは、不思議なくらい静かだった。
狭い廊下は無機質な光に照らされて、塵一つ落ちていない廊下は長く長く伸びている。……その奥で、
ただひたひたと、足音がする。
時折うめき声のような音が混じる。
それを確認した瞬間、ルドラ・ヴォルテクス(終末の剣“嵐闘雷武“・f25181)は自身に暴れ狂う猛獣の如き紫電をまとわせた。
「……そこか」
通路の奥。角を曲がった先。ルドラが思考したのは一瞬であった。彼は躊躇いなく角を曲がり、
「哮り、吼えろ! ……発雷……!」
彷徨のような声とともに、敵を喰らう破壊力を伴った震電を吐き出した。
「!」
声にならない声がする。角を曲がった先にいたのは数多の死者の群れ。みすぼらしい格好に、真新しい鎧をつけた意思なき木偶人形。
「は……」
笑う。おかしかったのか。それとも馬鹿らしかったのかははたから見て計ることはできなかった。笑ったままルドラは飛んだ。角を曲がった先にいた、死者の群れに向かって一瞬の躊躇も持たずに雷をたたきつけた。
びしぃ、と空気が震撼する。死者に悲鳴はない。けたたましい音を立てて鎧と震電がぶつかり合い、そして鎧がはじける。そのまま返すようにルドラは己の刃で敵を切り裂く。……悲鳴はない。肉を裂く音が周囲に響いた。
「装置の破壊か……これだけの数をこしらえるのに、どれだけ苦労したかは知らないが、俺の雷は加減はしない、装置ごと破壊するまでだ」
もったいないことだな、と、軽く腕を振って返り血を落としながらルドラは呟く。ちっとも惜しそうに聞こえないその口ぶりだが、かまわずルドラは震電を展開させていた。雷の領域を拡大させ、四方八方から……、
「おっと……背後から襲おうなんて思うなよ? そこはもう領域だ」
対応する。背後から襲い掛かろうとしていたゾンビをたやすく撃ち抜き、ルドラは刃を振るう。
「とにかく、装置をイカれさせていけば、暫時やりやすくなるだろう。少しばかり手は掛かるが、それだけ楽しめる時間が増えるんだ、悪くない」
戦いは、楽しい。たとえそれが一方的な殺戮であったとしても。
「は……」
漏れるのはやっぱり笑うような声。笑うような声でルドラは視界の端から端へ。収まる死体たちに雷を叩きつけ……そして切り伏せて行った。
「後はウィルスをどうにか使えるか解析してみるか。……後々に使えそうだからな」
それはまた別の話だけれども、楽しみが増えるのは悪くない。
そう思いながら上げた声は何処か……咆哮のようであったという。
大成功
🔵🔵🔵
霧崎・紫苑
強化ゾンビの群れが相手か
だが、オブリビオンである以上、俺のナノマシンの前では全て無力だ
OAシステム起動
とにかく、1体にだけでも攻撃を命中させられれば、それでいい
【武装医療鞄】に仕込んだ機関砲、【メカニカル・フィスト】からの破壊弾、中距離の相手には【飛斬帽】を投げ、近づいて来たやつは【万能医療義手】で殴り飛ばす
攻撃さえ命中させれば、後はUC由来のナノマシンがオブリビオンにのみ生じる感染症を引き起こし弱体化させる
身を隠そうと何をしようと、放っておけば感染はゾンビ全体に広がるからな
最後は【武装医療鞄】に仕込んだグレネード弾で、弱体化したゾンビを一掃しよう
「弱ったやつから残らず消毒してやる。……消えろ
研究所にはすでに死が満ちていた。
否、そこには死しかないのかもしれなかった。
何もない廊下。冷たい灯りに照らされた、埃ひとつない研究所。そこを守っているのは、もはや命のない生き物たちだ。……他の者の姿は、見えない。
霧崎・紫苑(機械仕掛けの闇医者・f32327)はそんな有様を一瞥する。無機質な研究所。個性のない箱にはびっしりとゾンビが詰まっていたのだ。
「強化ゾンビの群れが相手か……だが、オブリビオンである以上、俺のナノマシンの前では全て無力だ」
けれども紫苑は動じることなく武装医療鞄を構える。鞄のように見えてこれは機関砲だ。狙いをつける必要もない。これは一体でも命中させればよく、そして的はボーリングのピンのように通路の向こう側にひしめいているからだ。
「毒を以て毒を制する……それが俺のやり方だ」
充分に距離を取って、紫苑は撃った。オブリビオンにのみ生じる感染症と拒絶反応を引き起こす対オブリビオン抗体を持つナノマシンが付与されたそれが、戦闘のゾンビに命中する。
ナノマシンはそのまま感染症を引き起こし弱体化させる……らしい。オブビリオンにしか作用しないので、紫苑はそれを体験することはできないが、明らかにゾンビたちの動きが弱まっていくのを感じ、待つだけでいい。
「身を隠そうと何をしようと、放っておけば感染はゾンビ全体に広がるからな……」
丁度彼らは密集していたから、広がるのも早いであろう。ゆっくりこちらに歩み寄ってくるゾンビたちと静かに距離を取る紫苑。武装医療鞄に仕込んでであったグレネード弾を準備して、充分に敵が弱体化するまで時間をおいて……、
「弱ったやつから残らず消毒してやる。……消えろ」
そうして投げた。弱体化されたゾンビたちを、鎧ごと破壊していく。それを淡々と見送って、次だ、と紫苑は歩き出す。仕留め切れていないゾンビを仕留める。あくまで的確な「処理」をする。そんな動きで、
「世界の病巣を切除する……それが俺の仕事だ」
そんな、呟きとともに。
大成功
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夜刀神・鏡介
鎧を纏ったゾンビの大群とは、まるでタチの悪い映画みたいだ……なんて事を言ってる場合でもないか
とはいえ、そんな冗談も言いたくなる光景っていうか……とにかく、終わらせに行くとしよう
鉄刀を抜き、囲まれないように注意しながら壁際辺りで立ち回るように意識
掴みかかってくる手を刀で切り払い防御、返す刀でブースト機構を破壊できないか狙う
とはいえ、手足を切断してしまえば脅威度は自然と下げられる
無理に追撃は狙わず、攻撃を受けない事を優先しながら落ち着いて立ち回ろう
一箇所に敵が集まりすぎたなら、一旦周りの敵を薙ぎ払って距離を取りつつその場からの突破を試す
突破後は別の場所に移動、同じような立ち回りで片付けていく
「うわ……」
夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)の口から思わずそんな言葉がついて出た。柔和な表情に僅かに困惑のようなものを浮かべながら、鏡介は廊下の先を凝視する。
ずる……ずる。と、何かを引きずるような音がする。廊下の向こう側から漏れ聞こえてくるそれは明らかに肉を引きずるような音だ、己の腐った体を引きずりながら、鏡介の方に向かってくるのは死体たち。腐り落ちた体に、真新しい鎧だけがやけに目立っていた。
「鎧を纏ったゾンビの大群とは、まるでタチの悪い映画みたいだ……なんて事を言ってる場合でもないか」
別に恐ろしくもなんともないが、若干その趣味の悪さに鏡介は遠い目をしてしまう。
「いや、そんな冗談も言いたくなる光景っていうか……」
ゾンビたちはゆっくりと、確実にこちらに向かっている。男もいれば、女もいる。老人もいれば、子供もいる。須らく石の感じられないその動きに、鏡介は息を吐き……、
「……とにかく、終わらせに行くとしよう」
無銘の「鉄刀」を構えて、その廊下に足を踏み入れた。
一閃。死体の一部が切り取られて舞う。
「剛刃一閃――参の型【天火】」
刃は鎧に当たって止まる……ように見えたその瞬間、すかさずその鎧を粉砕した。返す刃で首を切り落とし、そして即座に首を巡らせる。
「……!」
別のゾンビが目の前まで迫っていた。素早く鏡介は掴みかかってくる手を己の手で受け止める。刀を握る手は別方向に。反対側から来るゾンビの鎧を破壊していた。
「なかなか……盛況なことだな……!」
次から次へと湧いてくるゾンビの中を進む。壁際に立ち、背に回り込まれないよう意識をしながら刃を振るう。的確に鎧を破壊し、破壊できないものはぎりぎりに対処する。そして、
「……」
落ち着いて。囲まれた瞬間、鏡介は右側のゾンビたちの足を粉砕していた。倒してはいないが、無理には追いかけずにそれらが体勢を崩した隙に左側を対処する。
「集まってきたな……」
そうやって着実に、倒されないように。鏡介は進む。囲まれてきたら時々敵を薙ぎ払いながら距離を取り、そうしてまた同じやり方に戻り……と、確実に片づけて行った。
派手にはならないが、徐々に徐々にゾンビたちは数を減らしていく。鏡介の周囲が制圧されるのも、時間の問題であろう。
大成功
🔵🔵🔵
荒谷・ひかる
ふと思ったんですけど、ここで言うゾンビっていわゆる「動く死体」ですよね?
死体に「死ぬまで脱げない鎧」を着せても既に死んでるなら脱がせるのでは……あんまり考えない方がよさそうですかね。
機械鎧、と言うからには間違いなく無機物の塊でしょう
ですのである程度近寄ったら【本気の闇の精霊さん】発動
対象は範囲内全ての機械鎧、重力の倍率は一万倍に設定
一万倍の超重力を跳ねのけるだけのスペックが機械鎧に無ければ、この時点で中身ごとぺしゃんこです
見つけずらいとしても、範囲に捉えれば地中だとしても問答無用でぺしゃんこですから問題ありませんね
あとはこのまま群れの方へ接近して順番に退治していきましょう
「ふと思ったんですけど……、ここで言うゾンビっていわゆる「動く死体」ですよね?」
むむむ、と荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)はそんなことを考えた。考えている顔面にはまさにそのゾンビが迫っているのだが、ひかるはあんまり気にしない様子である。
「死体に「死ぬまで脱げない鎧」を着せても既に死んでるなら脱がせるのでは……あんまり考えない方がよさそうですかね」
そんなことを言いながらも、ひかるは一歩下がる。鼻先をかすめて、ゾンビの爪が通過していった。
見た目よりも一段早い動きは鎧のためだろうか。数は多いがさほど脅威ではない、とは思っていたけれど、少しだけ認識を改めましょう。
ひかるは銃を撃って僅かに後退する。即時発動ができないひかるの精霊術の弱点を補う銃は、倒しきるまではいかないが衝撃で敵が体勢を崩していく。そのままひかるは距離を取りながら、……そして、とりすぎないようにしながら、
「闇の精霊さん……お願い、あなたの本気を見せてあげてっ!」
機械鎧、と言うからには間違いなく無機物の塊であると判断した。故にひかるは闇の精霊さんを召喚する。
「えいっ!!」
対象は範囲内全ての機械鎧で、重力の倍率は一万倍に設定した。これで、機械鎧が一万倍の超重力を跳ねのけるだけのスペックが機械鎧に無ければ、この時点で中身ごとぺしゃんこだろう……という計画だ。
「あ、良かった。問題ありませんね」
果たして。ひかるの闇の精霊さんにより圧し潰されて行く鎧とゾンビたち。
範囲内であれば間違いなく作用する闇の妖精に、ひかるは安心安心です。と一息ついて銃を下げる。
あとはただ、群れのほうに歩いていけばいい。範囲内に入ったゾンビたちは、それだけで潰れてくれるだろう。
「では、お散歩と行きますか」
言いながら、ひかるはゆっくり歩きだす。その歩みに沿うように潰れていくゾンビたちに軽く視線をやりながらも、ひかるは研究所を端から端へ、行進を開始した……。
大成功
🔵🔵🔵
唐桃・リコ
菊(f 29554)と一緒
菊、喉しんどくねえか?
…よし、行くか
手を繋ぐ
…さっさと終わらせる
今決めた
動き止めるまでそんな暑いもん脱げねえとか
最悪の気持ちだろうな
良いよ、オレらで止めてやるよ
さあ、オレの方に集まって来やがれ!
駆け回ってナイフで傷つけて回ってオレの周りに敵を集める
敵が集まって来たところで
【Howling】!!
菊、ここから頼めるか!
…綺麗なもんだな
おー、かっけえな、菊
可愛いだけじゃねえなあ
…帰り、おぶってやろうか
菊・菊
リコ(f29570)と一緒
小さく咳をしながら、頷いた
空気も気分もクソ
それでも、リコの手が触れている間は、
気が楽だった
死んでも利用されるなんざ、
ほんと、クソだよな
ん、リコの手は貸してやんねえけど、
てめえらには、眠りをやるよ
リコが走って先に行くなら、
俺は花を咲かせてやる
任せろ、リコ
ちっとはかっけえとこ、見せてやんねーとな
ひひ、あったりまえだろ。
かわいくて、かっこいーわけ。
『最悪』
とにかく、うじゃうじゃ、数が多いなら
花びらは多い方がいーな
リコが集めたたち奴らを、
浮かんだ花びらが切って刻んで
もう動かなくても、良いように
これが、俺らの餞
もう、眠っていいよ
けほ、と菊・菊(Code:pot mum・f29554)は小さく咳をした。
「菊、喉しんどくねえか?」
菊が何か言う前に、唐桃・リコ(Code:Apricot・f29570)がそう言った。その声があんまりに心配そうだったから、菊は僅かに眉根を寄せる。不機嫌そうな顔を作って、
「空気も気分もクソ」
かすれた声でそう言った。そっか、と、リコは頷いて、
「……よし、行くか」
さっと、菊の手をつないだ。
「さっさと終わらせる。……今決めた」
「……」
つないだ手を、菊は握り返す。
深呼吸をする。どうしてだか幾分か、気持ちが楽になった気がした。
「……言われなくても、わかってる」
「だな……」
強がるような菊の言葉に、当たり前のようにリコは頷いて歩きだした。
すでに部屋はゾンビで満ちていた。右から。左から。腐乱した死体が、二人に手を伸ばしてくる。体はみすぼらしくて、今にも腐り落ちそうで、それでも鎧だけはピカピカな、何ともちぐはぐは死体たち。
「動き止めるまでそんな暑いもん脱げねえとか、最悪の気持ちだろうな」
リコが声を上げる。その声に反応するように、ゾンビたちはリコの方を向く。……さほどもう、知能も残っていないのだろうと、リコもまた判断した。
「良いよ、オレらで止めてやるよ。……さあ、オレの方に集まって来やがれ!」
リコは声をあげて走り出す。こっちに来い、とばかりに駆け回る。ゾンビが腕を上げる。その体を捕まえようと手を伸ばせば、それを紙一重でよけてナイフで鎧に傷をつけながらさらにリコは速度を上げていった。
「……」
知能はない。ただ反射的にリコを追いかけているだけ。そんな様子に、菊はほんの少し、唇をかむ。
「死んでも利用されるなんざ、ほんと、クソだよな……」
救われない。吐き捨てるように言ったところで、視線を感じて菊は顔を上げた。少し離れたところでリコがこちらを見ていたので、菊は頷いた。
奪われない力を、オレに。
リコがその動作を合図にしていたかのように咆哮を上げる。人ではない、それは人狼のものであった。敵味方を識別し、敵を麻痺させるためのもの。
「菊、ここから頼めるか!」
あらかたの敵の動きを止め、リコが声を上げる。一瞬。動きを止めた敵を菊は見逃さない。莉子の人ならざる方向にひるむこともなく、ついでの言葉にうなずいた。
「ん、リコの手は貸してやんねえけど……、てめえらには、眠りをやるよ」
ふわりと、菊の周囲に舞うのは菊の花びらだ。一斉に風のように、動きを止めたゾンビたちを取り囲む。花びらは魔力を帯びていて、一斉にその体を切り刻む。鎧ごと粉砕していく光景に、
「……綺麗なもんだな」
思わず、リコが呟くので。菊は頷いた。
「ひひ、あったりまえだろ。かわいくて、かっこいーわけ。……ちっとはかっけえとこ、見せてやんねーとな。ここは任せろ、リコ」
どこか自信たっぷりに言う菊に、リコは素直に目を輝かせ、頷く。
「おー、かっけえな、菊。可愛いだけじゃねえなあ」
「だろう?」
言いながらも、再びリコは走り出している。敵を集めて、傷をつけて。
「とにかく、うじゃうじゃ、数が多いなら、花びらは多い方がいーな」
憎まれ口をたたきながらも、もう動かなくとも、苦しまなくていいように、菊がその花びらでとどめを刺す。
「これが、俺らの餞。……もう、眠っていいよ」
その花びらを見送りながら、菊が小さく呟いて……そして、せき込むので。
「……帰り、おぶってやろうか」
小さな声でリコは言って。
「……ばっか」
そんな気遣うような言葉に、菊はほんの少し、笑うのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
柊・はとり
死んでからも働かせられるなんて酷い…か
俺も生き返った当初はそう思ってたよ
生ける屍で溢れかえったこんな世界に
探偵のやる事なんてもう何もないとも
だが死者をあるべき形へ還すことも
きっと探偵の持つ役割なのだと今は思う
待ってろ
その悪趣味な鎧ぶち壊してやる
UC【第三の殺人】使用
こういう怪しげな館は好きじゃなくてね
鎧と言わず建物ごと破壊したい所だが
目的が目的だしそうも行かないな
多少威力を抑え鎧の部位破壊を狙う
鎧ごといけそうならそのままぶった斬る
近寄る奴は全て凍らせ切断
心は痛むといえば痛むが
俺達に立ち止まってる暇はないんだ
目にした全てを手掛かりとし
瞬間思考と第六感でウィルスの在処を探る
これが俺の存在意義だから
一歩、歩を進める。乾いた音が立つ。
「……」
その、研究所とやらには生き物の気配が全く感じられなかった。
無機質な廊下と、部屋。たくさんの機械。そして蠢いているのは死体だけ。
「ああ……」
本当に。生きているものはいないんだな。なんて。
そんな当たり前のことを、柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は口の中で呟いた。
廊下の奥も。角を曲がった先も。小部屋の中も。
腐った肉の。死体がある。もはや誰とも知れぬ腐乱しかかった死体に、ピカピカの鎧が着せられている。歩くたびに、肉の潰れる音と鎧が擦れる音がして、
「死んでからも働かせられるなんて酷い……か」
その有様に。はとりは何となくそんな言葉がついて出たのであった。
「俺も、生き返った当初はそう思ってたよ。生ける屍で溢れかえったこんな世界に、探偵のやる事なんてもう何もないとも……」
言葉を発するのははとりだけだ。死体は彼の言葉を解さない。ただ、彼の方に手を伸ばして歩いてくる。……想定より、少し早い。それが、鎧の力だろうか。
動かないものを、無理やり動かしているからか。動くたびに肉片が飛び散っていて、
「俺は、でも……こんなに腐ってなかったよな」
思わず。そんなことを言ってしまうぐらい、酷い有様だった。……そういう、有様だった。冗談のつもりか、それとも真面目な感想だったかは、ちょっとわからない。
「……待ってろ。その悪趣味な鎧ぶち壊してやる」
その有様に、はとりは一息ついて目を細める。……そう、あの時は。なんでこんなところで生き返ったのかと思ってた。できることは何もないと思っていたけれど……、
「死者をあるべき形へ還すことも、きっと探偵の持つ役割なのだと今は思うから……」
今は、意味を感じられる。すぅ、とはとりが手を掲げると、その手に蒼い炎が宿った。握りしめていた氷の大剣へと炎がうつる。殺気と接触者を凍らせるための青い炎は、建造物すら粉砕する力を持っていた。
「……こういう怪しげな館は好きじゃなくてね」
そのままホームランでも打つように、薙ぎ払えたらきっと楽だろうとはとりは大剣を構える。きっと爽快に違いない。この研究所を作り出した何者かの……この鎧の制作者の意図を粉砕できるのだから。けれど……、
「目的が目的だしそうも行かないな。時々思うが……真面目なのも考えものか」
自分で言ってみた。自分で言って真剣にそれは良くないことだな、なんて顔をしていた。顔をしながら大剣を右に凪いだ。炎が走る。蒼い炎は言葉通り、建物は傷つけずに迫り来るゾンビたちの胴体を薙ぎ払った。……胴体には、着せられた鎧がある。綺麗にその体だけを狙い、はとりはそれを粉砕した。……同時に、力を込める。鎧ごと、その体も真っ二つに切り伏せられるかと……。
「……行けそうだな」
見事に粉砕されたゾンビたちに、はとりは一つ頷いて歩きだした。歩きながら剣を振るう。時折、背後の扉が開いてはゾンビが出てきてとりとりに襲い掛かろうとするも凍らせると同時に切断された。
鎧と一緒にばらばらになった体が落ちる。
凍ってしまえば、腐敗はきっと遅くなるだろう。
「それが……いいことなのかは、俺にはわからないが」
心は痛むといえば痛むが、俺達に立ち止まってる暇はないんだと。
心の中で軽く手を合わせてはとりは屍を超えて進む。
すぐにでも、ウィルスの在処を探る。そして可能なら……ウイルスを確保したうえでこの場所を破壊する。
「これが俺の存在意義だから……」
やるしかないと。心の中で呟いてはとりは氷の大剣を振るい続けるのであった……。
大成功
🔵🔵🔵
レスティア・ヴァーユ
……ダークセイヴァーの生まれであるから、多少の理不尽も、死に対する冒涜も、見てきたつもりではあった。だが…初めて自らの足で降り立ったこの世界はあまりにも、――あまりにも非道い。
敵のゾンビの群れを前に、胸に湧き上がる『報われなさと、不愉快と不快感』を露わにして。
――私には、機械鎧のブースト機能を的確に破壊できるだけの狙い澄ました能力は持ち合わせていない。…せめて、味方への足止めとして。叶うのであれば…どれか一体でも、その群れの『誰かであったモノ』に安らぎがもたらせるように。
相手が自分からこちらに追跡するならば
壁を背にして、自分の足元を攻撃すれば良い
…歌う敵への葬送曲と共に、己の足元へと自UCを。
レスティア・ヴァーユ(約束に瞑目する歌声・f16853)は、ゆっくりと目を伏せた。
深呼吸をする。そうすると血が体中に巡っていく気がする。温度が上がっていた頭が冷えてくる。……冷えてきて、もう一度現実を直視する。
研究所は、箱、という印象をレスティアは受けた。綺麗な箱。廊下と、部屋だけの。無機質な灯りの。埃ひとつない。生きていくためのものが何一つない、空虚な箱。
部屋の中には、沢山のゾンビが詰め込まれていて、レスティアが訪れると音もなく開いてゾンビが吐き出された。腐乱した肉体を引きずり、不釣り合いな鎧を着せられ、どこか救いを求めるように、両手を胸の前まで上げてレスティアに向かって歩いてくる、その姿。
「……」
言葉も、ない。
「……ああ」
見てきたつもりであった。彼の生まれはダークセイヴァーだ。多少の理不尽も、死に対する冒涜も、日常だった。……勿論、そこには苦しみも悲しみも数多あった。それは本物だった。けれども、それ以上に、
「――あまりにも非道い」
思わず、そんな言葉が口を突いて出たのだ。初めて自らの足で降り立ったこの世界はあまりにも、そう。非道い。非道かった。
「……」
よろめきながらも、ゾンビたちはレスティアに向かって手を伸ばす。大人もいれば子供もいる。顔かたちがはっきりしているものもいれば、もはや顔の判別すらつかないものもいる。
「…………」
叫びだすような気持は持っていない。レスティアは己の胸を抑える。湧き上がってくるのは『報われなさと、不愉快と不快感』だ。戦闘のゾンビの手が、レスティアに触れようとした……。その、瞬間。
「――私には、機械鎧のブースト機能を的確に破壊できるだけの狙い澄ました能力は持ち合わせていない。その鎧から、開放することもできない。だが……」
レスティアはその指先を、目の前に迫るゾンビへと向けた。
「未だ我を見放していなければ。今指し示せ、その威光を! 未だ救えるものがあるというのなら、救ってみせろ!」
レスティアが指先を向けた瞬間、天から無数の聖光が降り注いだ。光は槍のようにゾンビたちに降り注ぐ。その圧倒的な量が結果的には槍を粉砕し、死者たちの体を叩き壊していく。
「……」
効率的ではない。せめて味方への足止めとなればいい、くらいのものだ。降り注ぐ光はゾンビたちを砕いていく。呻き声と、飛び散る肉片と。意思も知性もないそれが、救われたかどうかなんて最後までわからない。
「それでも……叶うのであれば……どれか一体でも、その群れの『誰かであったモノ』に安らぎがもたらせるように……」
実際にその光に救いがあったかなんて、レスティアにはわからないのだ。……それでも祈った。一人でも、そういう存在があればいいと祈らずにはいられなかった。
光の掃射が途切れる。すかさずレスティアは再び指を向ける。通路の奥からこちらに向かってくる死体たちは、どこか救いを求めているように見えた。
「ああ……こちらだ。こちらに来い」
レスティアは逃げない。自分を追ってきたいのなら、くればいい。壁を背に向け、背後を取られないようにする。そうして死体の一つ一つに目を向ける。
しらず、唇から歌が漏れる。
そこに救いがあるかはわからないけれど……。
「送ろう。葬送曲と共に」
どうか少しでもその光に救いがありますようにと。
縋るように忍び寄る死体たちに、レスティアは光を浴びせるのであった……。
大成功
🔵🔵🔵
マオ・ブロークン
……ああ、あ。
帰ってきた、んだ。乾いた、風の、吹き荒れる、大地。
ただの、物みたいに、放置されてる……死体、たち。
あたしが、あたしの身体が。棄てられていた、場所。
……かわいそう、な。ひとたち。
この、世界は。死んだって、簡単には。
安らかに、なんて。眠らせて、くれない、もの、ね。
……全部、あたしが。
過去の者<オブリビオン>が、飲み込んで、壊して、あげる。
機械の、鎧も。つめたい、身体も。ぜんぶ、引きずりこんでやる。
聞かせて。悲しみ、を。くやしさを。無念を。
あたしに、肩代わり、させてよ。
この、嵐を。突き破って、ずうっと、向こうの
あたしたちの、敵の、首魁……まで。
連れて、いって、あげる。から。
「……ああ、あ」
マオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)は思わず声に出して呟いた。その声を聴く者はいない。その涙を見る者はいない。……今はただ、何もない。生きているものの気配すらないその施設の中で、
「帰ってきた、んだ。乾いた、風の、吹き荒れる、大地。ただの、物みたいに、放置されてる……死体、たち」
あたしが、あたしの身体が。棄てられていた、場所。と。声にならない悲鳴をマオは上げる。
施設はすでに、死体で溢れていた。男も、女も。大人も、子供も。ピカピカの鎧を着せられて、死ぬまで働かされる……いいや死んでも働かされる、その研究所。
ゴミのように、積まれるのと、どちらがましだろう。そんなことを思っても意味がない。意味がないことをマオは思う。……だって。
「……かわいそう、な。ひとたち。この、世界は。死んだって、簡単には……。安らかに、なんて。眠らせて、くれない、もの、ね」
だって。マオだって。
「誰が、こんなことを、したの。……きっと、誰も、知らない。知らないよ、ね」
まだ生きていたかったのにしんで。死んでいたはずなのに働かされて。死体たちは真央の姿を見つけて、緩慢に彼女の方へと歩いていく。そこに知性のひとかけらも感じられない。ただ、唸り声をあげて腐乱した体をすり減らしながら迫ってくる姿は……、
「……全部、あたしが。過去の者<オブリビオン>が、飲み込んで、壊して、あげる」
その、姿は、見るに堪えない。……悲しすぎて直視できない。生前より鈍重な動きしかしない身体も、錆びついて動かなくなった脳も、
「機械の、鎧も。つめたい、身体も。ぜんぶ、引きずりこんでやる。……さあ。……あたし、も、きっと、同じ……あの日……過去、で、止まった、まま……」
両手を広げて、マオはゆっくり、ゆっくり、歩く。ゾンビたちも、ゆっくり、ゆっくり、通路を向かってくる。真央に向かって死者の爪が降りあげられる。マオは、ゾンビたちの仲間とは認めてもらえないらしい。只管に噛みついてくる。その姿はしかし、
「聞かせて。悲しみ、を。くやしさを。無念を。あたしに、肩代わり、させてよ」
マオの手に触れた瞬間、其の姿が崩れた。……いや、正確には、マオにゾンビたちは取りこまれたのだ。
ゾンビたちにかろうじて残った、しがみついた、死者の念をマオは取り込む。取りこみながらオブビリオン化していく。もはや搾りかすだけになったゾンビたちの体を、もう二度と利用されることのないよう粉砕する。
「この、嵐を。突き破って、ずうっと、向こうの……あたしたちの、敵の、首魁……まで。連れて、いって、あげる。から」
ゾンビたちに言葉は通じない。そんなマオの様子にかまわずゾンビたちは彼女に殺到し、そして粉砕される。蹴散らされて行く。
……はたから、見れば。ゾンビがその手を伸ばすさまは。
どこか救いを求めているように、見えただろう……。
その日、研究所のゾンビは一掃された。
救われたものがいたのか、いなかったのか。それはもはや誰にもわからない。
けれどもそれは確かな……この世界を取り戻すための戦いの、一歩であった……。
大成功
🔵🔵🔵