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アポカリプス・ランページ②〜尊厳と生命

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●人間牧場
 言い放った言葉は、受け取るものがいなければ、それ自身に返ってくるものである。
 けれど、言葉は棘となって人の心を蝕むものであるからこそ楔となるのだと肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は理解していた。
 彼女が支配する『ブラッドルビーランド』は嘗てのアメリカのカルフォルニア州の都市『アナハイム』を丸々一つ『人間牧場』へと変えた。

 支配される前は遊園地であった名残はあれど、そこはもう『夢の国』ではなかった。
 豪華絢爛なる遊園地であることは変わりない。
 煌々と焚かれた明かりは、昼間であろうと夜間であろうとお構いなしに電力を消費し続ける。
 誰も乗るものの居ないメリーゴーランドが虚しく音楽を奏で、まわり、ジェットコースターは悪辣なる『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を楽しめるためだけに人間の拷問器具へと変わり果てていた。

 そこには人間の悪性の全てが詰まっているようでもあった。
「ハッ! クライストの野郎、ザマあないねぇ! 人間なんて言う、奴隷にでもするしか価値の無いゴミムシにやられちまうとは!」
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は『クライスト・ヴォーテックス』が猟兵に敗れたことを知っている。
 彼女にとって『クライスト・ヴォーテックス』は兄弟と呼ぶ関係性であったが、互いにいがみ合い、如何にして潰し合うか抗争をとめどなく続けている目の上のたんこぶのような存在でしかなかったのだ。

「奴は躾がなってないのさ。恐怖だとか薬物とかで、ちまちま縄張りを増やしてさ。人間なんてものはね、つがいでサカらせて産ませたガキの目玉でもくりぬきゃ、黙って死ぬまで働くモンさ。わかっちゃいないねぇ!」
 そう言って彼女は、まるでスナック菓子を頬張るように『目玉』を口の中に放り込み咀嚼していく。
 それが如何にして生み出された駄菓子であるかを彼女は語らない。
 語る理由すら無い。
 彼女にとって、それは消費するだけモノにしか過ぎず、敢えて語ることなど無意味であったからだ。

 彼女は確かに人間というものをよく理解していた。
 性質を、本質を、如何に脆弱で支配される事に適した生物であるかを。だからこそ、彼女は省みない。
 己の行い、己の非道さえも王道であると嘲笑うだろう。
「どれ、その猟兵とやらも、アタイがちょちょいと片付けてやろうかねぇ。『フィールド・オブ・ナイン』まで呼ぶ必要なんかねえだろ、アタイがいれば……!」
 彼女がふんぞり返るようにして座っていた椅子がうめいた。
 いや、椅子ではない。彼女が座っている椅子は、人間であった。この『人間牧場』で生まれ、育てられ、家畜のごとく虐げられてきた人々の集合体であった。

 うめいた奴隷を『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は、その巨大な手でつまみ上げると、まるで雑草でも引き抜いて大地に打ち据えるようにして投げつけた。
 まるでトマトをひしゃげ點せたかのように大地に真っ赤な血潮が溢れていく。
「ったく使えないねぇ。これだからゴミムシは。おら、とっとと、補充の奴隷共を連れてきな。人間てのはこういうことにしか有用に使えない存在だってことを教えてやるのさ!」
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の哄笑が、嘗ての『夢の国』に響き渡り、奴隷に堕した人々のうめき声をかき消すのであった――。

●アポカリプス・ランページ
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。アポカリプスヘルにおいて確認された戦いの予兆、ヴォーテックス一族によって、かつてオブリビオン・ストームを齎し文明社会を破壊した『フィールド・オブ・ナイン』が復活しました」
 彼女の瞳は揺れていた。
 これが大きな戦いであることは言うまでもない。
 しかし『フィールド・オブ・ナイン』は『全員がオブリビオン・フォーミュラ』である。これは、この戦いがこれまでにないほどに厳しいものになることを示している。

『カタストロフ』までの時間も猶予がない。
 限られた中で救わなければならない。そんな中、彼女が見た予兆がある。
 それは肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』と呼ばれるヴォーテックス一族の一人の座す『ブラッドルビーランド』、その『人間牧場』の存在である。
「『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は、嘗て『アナハイム』と呼ばれた都市を本拠地とし、豪華絢爛なる遊園地の跡に『人間牧場』を作り出しています」
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は体長5mをあろうかという巨漢である。
 その『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が奴隷として生み出された人間たちを椅子として座し、『肉の盾』として扱っているのだ。

 彼等は当然生きている。
 奴隷であれど、生きているのだ。
「……彼女は彼等を武器として扱ってきます。生命ですらない。ただのモノとして。それは……皆さんに犠牲を強いることになると私は理解してながらも、願うしかありません」
 どうかと、彼女は瞳を伏せた。
 震える拳を握りしめたまま、彼女は猟兵達に願うのだ。
「どうか、彼等を傷つけずに、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を打倒してください。無理は承知、不利も承知、しかし、それでも……!」
 彼女の瞳に猟兵達は何を見ただろうか。

 人を、生命を、何とも思わず、ゴミムシとさえ呼んだ『ブラッドルビー・ヴォーテックス』。
 彼女との戦いは猟兵たちにとって不利な戦いとなろう。
 けれど、それでも猟兵達はやるだろう。どれだけ世界の終末が来るのだとしても、最後まであがくことこそが、生命の煌めきであると知るのだから――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『アポカリプス・ランページ』の戦争シナリオとなります。

『ヴォーテックス一族』の一人、肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』との戦いのシナリオになります。

 旧アナハイム、『ブラッドルビーランド』と化した遊園地跡地、『人間牧場』となっている場所を部隊に『ブラッドルビー・ヴォーテックス』と戦わなければなりません。
 彼女は無数の奴隷の人間たちを『人間椅子』や『肉の盾』として猟兵達に見せつけ、戦意を消失させながら、時に人間を犠牲にして攻撃してきます。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……奴隷を傷つけないように戦う。

 それでは、『フィールド・オブ・ナイン』の齎すカタストロフを阻止する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『ブラッドルビー・ヴォーテックス・奴隷使』

POW   :    アタイこそが最高の女帝!
【奴隷にした人間達 】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[奴隷にした人間達 ]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    行きな、アタイの椅子ども!
自身の【移動速度 】を代償に、1〜12体の【戦闘用の肉体改造を施した椅子担ぎ奴隷】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    肉の壁になりな!
全身を【奴隷の壁 】で覆い、自身が敵から受けた【敵意】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:桜木バンビ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

須藤・莉亜
「こりゃまた噛みごたえがありそうな敵さんだねぇ。」
ちと脂っこそうだけど。

UCで狼化して戦う。
一緒にいる狼たちには奴隷の人らが敵さんの方へ行かないように牽制して貰う事にしようかな。
敵さんと僕を囲む様に周囲に狼達を配置。狼で出来た闘技場って感じ?
「間違っても奴隷の人らは殺さないでよ、狼たち?交代でこっちに混じっても良いからさ。」

んでもって、二振りの大鎌を持たせた悪魔の見えざる手と一緒に僕は敵さんに突っ込む。
敵の動きを見切って攻撃する場所を即座に判断しながら、おっきな牙で存分に噛み砕いてやろう。



 全長5mはあろうかという巨魁が『ブラッドルビーランド』の敷地を闊歩する。
 否、それは闊歩というにはあまりにも怠惰なる姿であった。確かに『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の体は巨大であった。
 傍から見れば肉塊が動いているかのようであり、見るものは畏怖するだろう。
 けれど、彼女の足は大地につくことはなく、ただの一度たりとて歩むことはなかった。
「そうそう、そうさね。しっかり私の玉座を支えるんだ。どうせお前達人間など、この程度のことしか能のないゴミムシ程度の価値しかないのだから。ほら、さっさとしな。そうでなければ、お前の子供の目玉は今日の私のスナックに決定だよ」
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は笑っていた。
 彼女は人々を隷属させることこそ、己の存在意義であるとしていた。

 人々は彼女に強いられた隷属を甘んじて受け入れる。
 なぜなら、そのように生まれてきたからだ。自分がもしも逆らえば、己の親しい存在が傷つく。
 血を分けた存在であればなおさらだ。
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』はそれを理科していたからこそ、奴隷たちが自身に歯向かうことをいしないと知っている。

「こりゃまた噛みごたえのありそうな敵さんだねぇ」
 ちと脂っこそうだけど、と須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は巨魁の如き肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を見上げ、呟く。
 しかし、彼の速度は目にも留まらぬものであった。
 どれだけ奴隷たちの数が多かろうが、莉亜の瞳に輝くユーベルコードは、彼等の視界に自身を捕らえさせることはない。

 血追い群狼(チオイグンロウ)。

 それは彼のユーベルコードに寄って生み出された狼の群れである。
 己自身もまた狼の姿に変身し、圧倒的な速度で大地を飛ぶようにして駆けるのだ。
「狼の群れ……? なんだい、こんなところで、食いでのないやつが来たものだね……いいや、違うね、猟兵か!」
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は漸くにして気がついた。
 だが、それはあまりに遅きに失するものであったことを彼女は知らない。

 莉亜は即座に共に大地を駆ける狼たちに、これ以上『ブラッドルビーランド』から奴隷たちが集結することを防ぐように指示を出し、彼等の唸り声でもって牽制する。
 奴隷の数が『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の力に直結するのであれば、これを牽制することは十分な意味を持つだろう。
「間違っても奴隷の人らは殺さないでよ、狼たち?」
 ぐるりと『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を取り囲む狼たちの姿は、まさに狼に寄って生み出された闘技場とでも言えばよかっただろうか。

「それじゃ、さっさと噛み砕いてやろう。存分にね! 君の血の味はどんなだろうね! 噛みごたえがあればまだマシかな!」
「言ったね! 私の肉を! 噛み砕くと!」
 迫る巨魁の腕が莉亜へと迫る。
 それは巨躯に似合わぬ速度でもって、莉亜を襲うが狼の姿に変じた彼を捉えるには値しない。
 凄まじい速度で飛ぶように走る彼は、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の巨大な腕であっても捉えることはできない。

『悪魔の見えざる手』が構える二振りの白と黒の大鎌が一瞬で交錯し、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の野太い腕を切り裂く。
 鮮血が走り、その血潮が吸収されていく。
「はっ、そんな鈍重な成りして、やっぱり遅いんだね。でも、血の味は……贅沢な味だなぁ……好みじゃあないよ。しつこい味だ」
 莉亜は、大鎌によって吸い上げられた血の味をそう評価する。

 悪くはないのだが、くどい。
「私の腕を! 玉のお肌を! 許せない……!」
 そこに駆け抜ける狼の姿に変じた莉亜が再び、飛びかかる。血の味はくどい。ならば、噛みごたえくらいはあってくれないと、と彼の牙が『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の喉元に食らいつく。
「ぐぎゃぁぁぁぁ――ッ!?」
 鮮血が再び戦場を染め、莉亜の牙が『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の喉元を噛みちぎる。
 それは、莉亜にとって、初めて口にした歯ごたえというものであったことだろう。けれど、ぶよりとした皮一枚。

 ぺっ、と吐き出し莉亜は言うのだ。
「味も悪くないけど、凡庸。噛みごたえは……正直好きじゃないな――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…なるほど……人間牧場に肉の盾……ね……
…たぶん、こちらに対する戦術とかでも無くてそうすることが『当り前』なのだろうな…
救出と討伐と同時に行うことになるのが面倒だけど……やるとするか…

飛行式箒【リンドブルム】に乗って機動力を確保…まずは近寄りながら…奴隷達の周囲に当てないように爆破術式を撃って目をくらませつつ…
現影投射術式【ファンタズマゴリア】で自分の幻影を作るよ…
…幻影に奴隷への攻撃を戸惑うような動きをさせて回避に専念させて…
こちらは遊園地内の建物の影から接近…【慈悲深き死神の手】でブラッドルビーをピンポイントに抉るとしよう…
…どんなに奴隷を使っても自分が動けなければ世話無いね…



 狼の牙でもって肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の喉元は食い破られ、鮮血が迸る。
 その名の通り『ブラッドルビーランド』は今、鮮血に染まる。
 これまでは人間の奴隷たちの血によって染まっていた。
 今からは人間の血は一滴も流れないだろう。それを為すために猟兵達は、この地に転移したのだ。
「くそったれが……! ゴミムシのくせにアタイの……! 私の肌に傷を負わせるどころか……! 血を……!」
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は怒り心頭であった。
 彼女は侮っていたのだ。
 猟兵を、人間を。決して己に牙をむく存在などいないと思っていたし、もし仮に自身を襲う存在があったとしても、己が負けるわけがないとさえ思っていたのだ。

 なにせ、自分には『肉の盾』がある。
 そのためにこの『人間牧場』で人間どもを奴隷として生きながらえさせてきたのだ。
 彼女の巨躯を支える『人間椅子』が重たい音を立てて、大地に沈む。
 その『人間椅子』を支えいていた奴隷たちが、その重責から開放される。
「行きな、アタイの椅子ども。アタイを護るんだよ!」
 彼女の号令と共に『人間椅子』として彼女を支えていた奴隷たちが、『肉の盾』となって、ばらばらばと周囲に広がっていく。

「……なるほど……『人間牧場』に『肉の盾』……ね」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、その様子を飛行式箒『リンドブルム』にまたがって見下ろしていた。
 彼女は冷静に『ブラッドルビー・ヴォーテックス』というオブリビオンを分析していた。
『肉の盾』は、こちらを意図して組み立てた戦術ではないのだろう。
 そうすることが『当たり前』なのだ。
 人間とは消耗するもの。死して当然のもの。そういう風に『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は考えているのだろう。

 だからこそ、こんな非道を行うことができるし、己の行いに何の疑問も持っていないのだ。
「……救出と討伐と同時に行うことになるのが面倒だけど……やるとするか……」
 奴隷の人間を傷つけないで欲しい。
 その願いが難しいことをメンカル自身が知っている。けれど、それをやらなければならない。
 人の生命は容易には戻らないのだ。
 だからこそ、メンカルは『リンドブルム』を駆り、爆破術式を撃って、爆発を手繰る。当てるために放ったわけではない。

 奴隷の人々の目を、そして『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の目をくらませるための術策であった。
「――ッ! なんだい、この光は!」
 閃光のように爆破術式が炸裂する中をメンカルは飛ぶ。
 その一瞬の隙に幻影投射術式『ファンタズマゴリア』で自身の幻影を作り出す。

「――!」
 幻影の彼女は『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を護るように布陣した奴隷たちの姿に戸惑っていた。
 攻撃をためらうように、怯んでいた。それを『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は見逃さなかった。
「ハッ! なんだかんだと言いながら、猟兵もその程度かい! おら! お前達、あのオンナを地面に引き摺り下ろせ!」
 その言葉に奴隷たちが、メンカルに殺到する。
 けれど、それは幻影だ。

 彼女は時間を稼ぎたかったし、敵の視認する敵――己の姿を彼女から隠したかった。
 それはなぜか。
「空なる孔よ、開け、閉じよ。汝は切削、汝は虚現。魔女が望むは世界切り取る虚空の手」
 そう、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 慈悲深き死神の手(クー・デ・グラース)。それこそ、まさに巨魁の如き肉塊女帝を穿つ一撃。

 自身を認識させぬことで発動する指定地点のみを削り取る空間術式。その一撃は、奴隷の人間たちを巻き込むことなく、ピンポイントで削り取る。
 そこに防御も装甲もあったものではない。
「な、何が起こったっていうんだい!? アタイの、足、足が……!」
「……どんなに奴隷を使っても、自分が動かなければ世話ないね……」
 メンカルの瞳に映っていたのは、ユーベルコードの一撃により片足を喪った『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の姿であった。

 彼女のユーベルコードは奴隷の誰をも傷つけること無く、そして、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』に認識されることなく、その身を削り取る痛烈なる一撃を見舞うのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎

ヒャッハー!(挨拶)
ヴォーテックス家のブラッドルビー殿、アナタの首をいただきに参りマシタ!
いざ、尋常に勝負!

と言って、人々を隷属させる卑劣漢が応じる訳もなく。
それではこちらも、人質であるエブリワンを略奪させていただきマース!

「骸式兵装展開、朱の番!」
メリーさんの技をお借りしマース!
放った大津波にエブリワンも飲み込まれマスガ、これで奪われるのはやる気や欲望といった積極性のみ!
ブラッドルビーの気力を奪いつつ、エブリワンの戦闘意欲を奪って大人しくしてもらいマース!

あとは、皆様を連れて避難する訳だ。
アンタの奴隷、いただいていくぜ! であります!
首? ああ。合理的虚偽であります!



 肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は喉元を切り裂かれ、片足を喪っても尚、『人間椅子』を手放すことなく、その5mはあろうかという体躯を沈める。
 重たい音が周囲に響き渡り、奴隷の人間たちが苦悶の声を上げるが、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は意に介することはなかった。
 どれだけ奴隷たちがうめこうが、苦しもうが彼女には関係なかったのだ。
「アタイの足が……! クソッタレが! 猟兵! どうしてくれるってんだい!」
 ビキビキとその表情筋がこわばっていく。
 怒りに震え、しかし喪った血の量は膨大なものであった。
 けれど、それでもなお強大なオブリビオンである彼女を倒すにはたりないことを猟兵達は知っていた。

「ヒャッハー!」
 まるで挨拶であるというように、それこそ、レイダーたちが上げる雄叫びをバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は迸らせながら、集まってきた奴隷たちを背に彼女は立つ。
「ヴォーテックス家のブラッドルビー殿、アナタの首を頂きに参りマシタ! いざ、尋常に勝負!」
「何を言ってんだい、アンタは。頭イカれてんのかい!」
 咆哮する『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の声に『ブラッドルビーランド』の奴隷たちが恐怖に寄って支配されるままにバルタンへと迫る。

 そう、最初から彼女は知っていたのだ。
 人々を隷属させる卑劣漢が正々堂々たる勝負に応じるわけがないのだと。だからこそ、バルタンは高く跳躍し、集まってきた奴隷たちを『肉の盾』として活用する『ブラッドルビー・ヴォーテックス』から距離を取る。
 その瞳に輝いていたのはユーベルコードであった。
「骸式兵装展開、朱の番!」

 彼女の姿が『メリー・バーミリオン』を模した姿へと変わる。手にしたファルシオンからは気合が迸り、放つ一撃は大津波となって集まった『肉の盾』である奴隷たちを押し流していく。
 それは肉体を傷つけず、彼等のやる気や欲望といった積極性を奪うものであった。
 濁流の如き津波では『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を押し流すことはできないだろう。
 けれど、奴隷たちは違う。
「メリーさんの技をお借りして、エブリワンを大人しくさせマス! アナタの力の源は奴隷のエブリワン! ならば、それを削ぐことこそが、一番の痛手でショウ!」
 模倣様式・木阿弥大津波(イミテーションスタイル・バーミリオン)、それは大津波の一撃でありながら、奴隷の人々をかっ攫う略奪の一撃。

「クソ……それはアタイのもんだ! アタイから奪うつもりか!」
 彼女の咆哮は身勝手なものであった。
 人の生命はなんとも思っていないくせに、自分の所有物であるからと奪われることを嫌う。
 そんな欲望を根こそぎ洗い流すようにバルタンのはなったユーベルコードの津波は、彼女の戦意を奪っていく。

「アンタの奴隷、頂いていくぜ! であります!」
 ヒャッハーとバルタンが笑いながら大津波と共に奴隷たちを攫っていく。これで『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の戦力は大きく削がれたことだろう。
 それでも此処は『人間牧場』だ。
 またどこからともなく奴隷の人々を呼びつけるだろう。けれど、それでもバルタンは信じている。

 此処に駆けつけるのが自分だけではないことを。
 猟兵とはそういう存在であると知るからこそ、バルタンは高らかに笑い、己の言葉を思い返す。
「アンタの狙いはアタイの首だろうが! それを……!」
「首? ああ。合理的虚偽であります!」
 良い笑顔でバルタンは『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を翻弄し、やってきた時と同じ様に、良い笑顔のまま大津波と共に奴隷たち大量に確保し、まんまと逃げおおせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

さてさてー、参りましょうか。私たちは生きる人々の味方なれば。

私が貴女に向けるは殺意ですからねー。敵意とは少し違いますねー?
さらに指定UC発動。この鬼蓮が切り刻むのは貴女のみにしていますからねー?
ああ、戯れにも生命力吸収もつけておきましょうかー?

私はね、貴女のような方が嫌いなんですよー。
全ては、この世界に生きる人々のために。負けませんよー。



 猟兵達の攻撃に寄って『ブラッドルビーランド』の奴隷たちは多くが波にさらわれていった。
 けれど、此処は『人間牧場』である。
 肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は未だ健在だ。
 しかしながら、その肉体は喉元を食い破られ、片足を喪っている。けれども、未だに消滅しないのは、強大なオブリビオンであるからというほかない。
 呻く『人間椅子』として彼女を担いでいる奴隷たちは逃げることなく、呻くばかりであった。

 逃げ出してもいいはずだ。
 逃げられるはずだ。
 けれど、逃げない。何故か。
「ふぅー……! アタイの体に傷をつけるだけでなく、アタイ自身をおちょくってくるとは! 猟兵、なんとも許しがたいねぇ!」
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の怒りは収まらない。
 かくなる上は、あらゆる手段を講じて猟兵たちを打ちのめさなければならない。彼女が指を鳴らすと何処からともなく奴隷たちが集まってくる。

 それは『肉の盾』というよりも『肉の壁』とも言うべき存在であった。
「さてさてー参りましょうか。私達は生きる人々の味方なれば」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の四柱の内、一柱『疾き者』はのほほんとした口調とは裏腹に、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』に向けるものは敵意ではなく、殺意であった。
 静かな殺意は、鋭い支線となって『ブラッドルビー・ヴォーテックス』に向けられるが、それは関係のないことであるようにさえ思えただろう。

 彼女は殺意を向けられ慣れていた。
 同じ『ヴォーテックス一族』であっても関係なく骨肉の争いを繰り広げる彼女にとって、殺意など考える必要のないものであったのだろう。
「だからそれがどうしたっていうんだい! アタイの腕を、首を、足を! 奪ったお前らは、生きたまま解体したって飽き足らないんだよ!」
 怒号が響き、奴隷たちが『疾き者』と『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の間に壁を作り上げる。
 
 それは『疾き者』の瞳に輝くユーベルコードを遮るものであったが、『疾き者』は構わなかった。
「これは『鬼』である私が、至った場所――この鬼蓮が切り刻むのは貴女のみ」
 輝くユーベルコードは、四天境地・風(シテンキョウチ・カゼ)。

 己の手にした武器を鬼蓮の花びらに変えて解き放つユーベルコードは、彼女の殺意を向けた者にしか触れることはない。
 たとえ、肉の壁が存在していたのだとしても関係ない。
「なんだいこの花弁は……! 鬱陶しい!」
 確かに強靭な肉体を持つ『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の体皮、その分厚い脂肪に包まれた肉体を傷つけることはできなかったかもしれない。
 けれど、その花弁には悪霊たる彼等の怨念が籠もっている。

 触れただけで生命を吸収する力は戯れであったけれど、有効であった。
「私はね、貴女のような方が嫌いなんですよー」
 だから向けるは敵意ですらない。
 そう、殺意だ。
 この存在が世界に存在していることすら許さぬ殺意。それを『疾き者』は向けていた。
 
 どれだけ強固な皮膚を持っていたとしても関係ない。
 その他者の生命をすすって肥え太った生命を、全て吸い切るまで許さぬとばかりに花弁が舞う。
「全ては、この世界に生きる人々のために。負けませんよー」
 あくまで口調はのんびりとしたものであったが、それでも『疾き者』の心の中に決意ある光は他の三柱と同様であったことだろう。

 煌めくユーベルコードが『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を追い詰め、その膝を付かせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
おーおー、見た目通りに悪趣味!
ここまで来るといっそ清々しいね!
悪いけど、悪趣味なのにはさっさと退場して貰おうかな!


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
本体の移動速度が遅くなるなら、こっちのもんってね
けど肉体改造された彼らは…気の毒に
さて【Code:C.S】起動
時間加速開始、ぶっちぎってブラッドルビーだけを叩く!
速度差を活かして戦闘用の奴隷達は基本スルーして接近
避けきれない奴隷は蹴りで『吹き飛ばし』て道を開く
吹き飛ばした奴隷は『念動力』でそっと地面に落とそう

後は近付いて滅多切りにするのみ
封印全解除、『なぎ払い』『串刺し』にして連続攻撃を浴びせよう
人を盾にするとか、セコイよ



 肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が膝をつく。
 膝をつくといっても、『人間椅子』に座ったままである。彼女はこれまで猟兵の工芸に寄って喉元を食い破られ、片足を消し飛ばされている。
 血潮に塗れながらも、未だ健在であるが、生命力を奪われ、疲弊している。
「チィ……! このアタイに小賢しい真似を! どのみち死ぬ生命だからこそ、ゴミムシを有効活用してやってるっていうのに! お前達、アタイを守りな!」
 怒号のように叫びながら『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の『人間椅子』を務めていた奴隷たちが立ち上がる。

 彼等は戦闘に絶えられるように改造された奴隷たちであった。
 迫る猟兵の前に虚ろな瞳のまま立ち、迎え撃とうとしていた。猟兵は一般人を傷つけない。『ブラッドルビー・ヴォーテックス』にとって、それは理解できないものであったが、付け入る隙でしかないことを理解していた。
「そら、お前たち、しっかり戦えば少しの恩赦はくれてやる。しっかり奴らに同情してもらうんだね!」
 そう叫ぶ彼女は、彼等を盾に己の身を守ろうとしていた。

 どこまでも保身しかない。
 自分だけが助かればいい。自分だけが生命であるというような傲慢さを持って、彼女は猟兵達に相対する。
「おーおー、見た目通りに悪趣味!」
 ここまで来るといっそ清々しいとさえ、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は感じていたが、別に長々と見ていたいというわけではないのだと、二振りの模造神器を抜刀する。

「敢えて、『人間椅子』をばらしてまで自分の身を守ろうっていうのなら、こっちのもんってね――」
 肉体改造を施された奴隷たちは気の毒でしか無い。
 けれど、己のやることは何一つ変わっていないのだ。彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「封印解除、時間加速開始」
 Code:C.S(コード・クロノシール)――それは模造神器に施された時間加速の封印を解除するユーベルコードである。
 時間を加速させると言っても、それは敵には知覚すらできないだろう。

 彼女が開発し、鍛え上げた模造神器は青い刀身の残影だけを残して、肉体改造を施された奴隷たちの間を縫うようにして走り抜けていた。
 瞳に映る青い残光は、あまりの速さに糸を引くようであり、奴隷たちは何が起こったのかさえわからなかったことだろう。
「おっと、危ない!」
 時間加速に寄って得られた速度で吹き飛ばされた奴隷たちを玲は念動力でもってそっと大地に下ろす。

 別に無差別で攻撃しようとしたわけではない。
 加速に寄って得られた移動は、それだけで空気を押し、奴隷たちを吹き飛ばしてしまう。
 彼等を念動力でもって助ける余力すら彼女には在ったのだ。
「はッ――!? な、なんだ、アンタは!? なんで、アタイの前に!?」
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が気がついた時にはもう遅い。
 すでに眼前に迫る玲を、彼女は異常なるものを見る目でみていただろう。誰も傷つけず、けれど、己が斬らねばならぬ者だけを見つめる玲の瞳。
 そこにあったユーベルコードの輝きを彼女は見た。

 これより待ち受けるは、弄ばれた生命への冒涜、その代償であった。
「人を盾にするとか、セコイよ」
 瞬間、彼女の放った斬撃が一瞬で『ブラッドルビー・ヴォーテックス』に刻まれる。
 瞬間に放たれた斬撃はゆうに二重を越える。薙ぎ払い、串刺し、凄まじい青い残光と共に『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は、その報いを刻み込まれるのであったラ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蛇塚・レモン
技能活用◎

奴隷のみんなを差し向けて、自分だけ高みの見物なんて許せないっ!
あたいが、そのふんぞり返った椅子から転がり落としちゃうよっ!

ライム、力を貸してっ!
奴隷の壁は人体なので有機物
でも女帝が纏う装飾品や椅子は無機物
つまり、あたいとライムのUCの効果対象!

奴隷の壁を貫通して、女帝の肉体を火達磨にしちゃえっ!
更に女帝を魔法の辞典で発生させた結界術で閉じ込めちゃうよっ!

奴隷のみんなは、首から下げた勾玉で顕現させた蛇神様の反転呪力(浄化+視力+呪い+催眠術)で正気に戻して逃がすね
みんな、早くこっちへ!

奴隷を失った女帝へ、蛇腹剣を伸ばしてトドメ!
人間の尊厳を蔑ろにした報いだよっ!
炎の斬撃波で微塵切り!



 無数の青い残光の如き斬撃が肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の体を刻む。
 血潮が噴出し、その傷の深さを思い知らされる『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は指を鳴らし、奴隷たちを呼び寄せる。
 痛みにあえぐ暇などない。
 十二分に致命傷に至る斬撃を受けては、さすがの彼女も守りに入らざるを得ないのだ。
「クソッタレが……! よくも、よくもアタイをここまで!」
 その言葉を聞き、集まった奴隷たちを肉の壁としてそそり立たせながら、彼女は猟兵たちをにらみつける。
 
 けれど、その眼光を前にしてもひるまぬのが猟兵である。
「奴隷のみんなを差し向けて、自分だけ高みの見物なんて許せないっ! あたいが、そのふんぞり返った椅子から転がり落としちゃうよっ!」
 ライム! と蛇塚・レモン(白き蛇神憑きの金色巫女・f05152)は叫ぶ。
 同時にユーベルコードの輝きが放たれる。
 彼女が見たのは『ブラッドルビー・ヴォーテックス』のまわりに存在している装飾品や椅子であった。
 それは無機物であり、彼女のユーベルコードの効果の範囲に入るだろう。

 憑装・蛇塚ホムラオロチ神楽(ソウルユニゾン・ヘビヅカホムラオロチカグラ)と呼ばれるユーベルコードは無機物を裁きの神火へと変え、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を包み込んでいく。
「これぞ、憑装(ソウルユニゾン)! 蛇塚ホムラオロチ神楽!」
 手にした力は誰かのために使うものである。
 彼女の放った神火は、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を包み込み、さらに魔法の辞典で生み出された結界の中に閉じ込める。
 蒸し焼き状態になった『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の咆哮が轟く中、レモンは集まってきていた奴隷たちへと駆け寄る。

 彼等はこの『ブラッドルビーランド』で育ち、生命を生命とも思わぬように洗脳されているようなものであった。
 自分たちが人間であったということさえ忘れてしまったような瞳を見て、レモンは苦々しい気持ちになったことだろう。
「容易に消えるものだって思ってはいなけれど……でも、みんなの明日はこっちだよ。おいで、早くこっちへ!」
 胸に下げた勾玉から顕現させた蛇神の反転呪力によって彼等の心を縛る恐怖という名の『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の戒めから解き放つのだ。

 彼等は人間だ。
 間違っても消費される消耗品なんかでもないし、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の椅子でもない。
 だからこそ、レモンは彼等を助けるのだ。
 人間らしい心を取り戻してほしいと。
「アタイの所有物を勝手に――!」
 咆哮し、炎に塗れながら『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が結界を破って飛び出してくる。

 それをレモンは見上げる。
 許してはおけない。その気持に偽りなんてない。
「人間の尊厳をないがしろにした報いだよっ!」
 手にした蛇腹剣が鞭のようにしなって、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』へと疾走る。
 その斬撃は炎の斬撃波を伴って、鋸のように彼女の肉体へと疾走る。刻まれた斬撃はさらに『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を追い詰め、彼女にこれまでの行いの報いを受けさせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
これはまた、オブリビオンに堕ちるとしてもこういうものにだけは成り果てたくないって代物ね。

奴隷を呼び寄せることで力を高めるのなら。
「結界術」「範囲攻撃」「浄化」「破魔」「仙術」「道術」で浄玻璃紫微宮陣をあたしとブラッドルビーを中心に展開。今回は複雑な迷路にしたから、奴隷達はここへ辿り着けないわ。
更に、陣の中を彷徨う間にその心を「浄化」する。

さあ、舞台は出来たわ。勝負といきましょう、ブラッドルビー・ヴォーテックス!
巫覡載霊の舞で地力を底上げし、椅子になってる人たちを傷つけないよう、三角跳びで相手の上を取って「衝撃波」をまとう「なぎ払い」。
奴隷を盾にする暇なんて与えない。
出来れば首を取りたいけれど。



 炎によって、その身を焼かれる全長5mはあろうかという肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の怨嗟の咆哮が轟く。
 それは痛みにあえぐというよりも、己の所有物、奴隷を猟兵達に奪われた怒りに任せたものであった。
「アタイのものを! そいつらはアタイのものだ! お前たちのものじゃあない!」
 叫ぶ言葉は、どこにも正統性を見出すことはできないものであった。
 たとえ、ここが人類の終末、アポカリプスヘルであったのだとしても、許される言葉ではない。

「これはまた、オブリビオンに堕ちるにしてもこういうのにだけは成り果てたくはないって代物ね」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)はゆっくりと、肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の姿を見つめる。
 彼女が己の肉体を癒やす暇を得るために奴隷たちを呼び集め、肉の壁とするのならば、彼女は結界術と仙術、道術を駆使してユーベルコードを解き放つ。

 それは玄妙な霊気の漂う政情な星空の破魔結界。
 浄玻璃紫微宮陣(ジョウハリシビキュウジン)という。
「急急如律令! 天に坐す北辰と傅く二十八の星宿を今この大地に降ろし、星界の彷徨のいや果てに、不浄を清め天の高みへと昇らしめん!」
 その迷宮は、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を中心に形成され、奴隷たちを集合させることを許さなかった。
 奴隷たちを傷つけることを猟兵は嫌う。

 それを理解するからこそ『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は奴隷たちを前面にし、時に盾に、ときに武器として扱ってきた。
 けれど、多くの猟兵たちがそうであったように、彼等を戦場から遠ざける、もしくは傷つけぬように戦うことは『ブラッドルビー・ヴォーテックス』にとっては誤算でしかなかったのだ。
「なんで、なんでアタイの奴隷たちが集まってこない! なんだい、これは!」
 邪魔くさい、と迷宮へと変わった戦場の壁を打ちのめす『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は、徐々に肉体を癒やしながら、それでも思い通りにならぬ光景に苛立だって居た。

「此処へ彼等は辿り着けないわ。彼等の心を縛るあなたという闇は此処で浄化される。さあ、舞台は整ったわ。勝負と行きましょう、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』!」
 ゆかりが薙刀を構え、迷宮の中を疾走る。
 見据える敵はただ一人。
 その巨魁の如き肉体を持つ女帝だけだ。

 あの存在がこの場にいるだけで、人々は植え付けられた恐怖によって隷属を強いられるだろう。
 だからこそ、自分たちがアレを討たねばならぬと彼女は知る。
「やかましい! そんなみみっちい成りでアタイに歯向かおうなど!」
 振り下ろされる拳をゆかりは、飛翔し躱す。
 衝撃波で身体が打ち据えられるが気にも掛けては居られない。三角跳びの要領で迷宮を飛び跳ね、翻弄し、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の頭上を彼女は取った。
「奴隷を盾にする暇なんて与えない!」

 彼女が迷宮を飛ぶ姿は、華麗なる舞のようでもあった。
 振るわれる薙刀の一撃が『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の首を捕らえる。鋭い斬撃はぶよぶよとした皮を切り裂き、鮮血を迸らせる。
 しかし、その強靭なる肉体は、両断まではできない。
 それでも振り下ろされた斬撃は、滑るようにして『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の胸元まで袈裟懸けに振るわれる。

「できれば首を取りたいとは思ったけれど! それでも知るがいいわ。あなたがこれまで虐げてきた生命の、その尊厳の、痛みを――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
人を盾に……いちばん嫌いなタイプだね。
有効な手段だとは認めるけど、なんでもありで戦うって言うならこちらもそうさせてもらおう。

あなたがそうくるなら、わたしは【ストラクチュアル・イロージョン】を使わせてもらうよ。
あまり生き物に使いたくはないんだけど、
これなら傷つけたくない人たちに影響を与えなくて済むからね。

ウイルスは浸食製の溶解ウイルスにさせてもらうね。
あなたがどんなに人を使っても、あなたにしか影響は及ぼさないよ。

身体の中から溶かされていくといいんじゃないかな。(けっこう怒ってます)

あ、でも、みんな復讐とかはしなくていいからね。
そんなのはわたしたちが背負うから、みんなは逃げちゃっていいから、ねー。



 袈裟懸けに刻まれた斬撃の痕から血が噴出し、肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が呻く。
 それは地鳴りのように『ブラッドルビーランド』を震撼させる。
 大地が震えるような怒り。
 それは己の体に傷を刻まれただけではない。
 多くの猟兵に寄って大量の奴隷たちが開放され、自身の財産を簒奪せしめられたことに対する怒りでもあったのだ。
「どいつもこいつも役立たずばかりで! アタイを怒らせたいのかい!」
 彼女の椅子となっていた人間たちが、ぞろぞろと開放され、その肉体改造された力でもって、迫る猟兵達へと疾走る。

 それは攻撃の手段であると同時に防御の手段でもあったのだ。
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は動けなくなる代わりに、肉体改造された奴隷たちが猟兵を襲う。
 猟兵は彼等を傷つけられない。
 それを見越した上での行いであったのだろう。
 その光景を見て、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は歯噛みする思いであった。
「人を盾に……いちばん嫌いなタイプだね」
 有効な手段で在るとは認める。

 なぜなら、自分たち猟兵は確かにためらうからだ。
 彼等の犠牲を厭わなければ、それは盾にもならぬ手段であった。けれど、自分たちはそれをできないでいる。
 それはこちらをよく理解しているからだ。それを愚かだと嘲笑うのが『ブラッドルビー・ヴォーテックス』というオブリビオンであった。
「なんでもありで戦うっていうなら、こちらもそうさせてもらうよ! ストラクチュアル・イロージョン――!」

 彼女のデバイスから、ウィルスが解き放たれる。
 それは侵食性を持つ溶解ウィルスであった。己が敵であるとみなした存在にしか影響を与えぬ特性を齎されたウィルスは、目に捉えることはできない。
 どれだけの神眼を持ってしても、その存在は目に映ることはないだろう。
「――……! なんだい、アタイの身体が……!?」
 効果は如実に現れることだろう。
 音もなく、姿もなく、すり寄ることもせずに理緒の生み出したウィルスは、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の体内に侵入を果たし、その異常を知らしめるのだ。

 力を入れようとすると、身体の内側から肉が溶けていく。
 凄まじい痛みが身体を襲うだろう。
「身体の中から溶かされていくといいんじゃないかな」
 彼女の声はいつもどおりであったが、内心は腸が煮えくり返るような思いであったことだろう。
 人は確かに何かの奴隷であろう。
 けれど、それは決して他者から強いられていいものではないのだ。
 理緒は、己の敵を『ブラッドルビー・ヴォーテックス』だけと示した。決して肉体改造された奴隷たちではない。

 彼等の体に施された改造。
 それさえもウィルスは溶かしていく。本来の肉体に、嘗て在るべき尊厳を取り戻せるようにと彼女は力を振るうのだ。
「みんな復讐とかはしなくていいからね。そんなのはわたしたち背負うから、みんなは逃げちゃっていいからねー」
 そう言葉を己に向かってきた奴隷たちにかける。
 彼等は戦う存在じゃない。自分が戦うべき存在ではないからこそ、救わねばならない。
 膝をつく彼等を前に理緒は優しく語りかけ、戻らぬと思われていた肉体改造の残滓すらもウィルスで溶かし、戻していく理緒の言葉に涙して頷く。

 それを見て、理緒はホッとした顔をして、背後でウィルスによる肉体の内側から来る痛みにあえぐ『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を、そのままに彼等を保護して、この場を離脱するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクシア・アークライト
私達人間だって家畜を飼っている。
だから、あまり大きいことは言わないわ。
ただ、今まさに貴方がしていることと同じような目に遭ってもらうだけよ。

・UCを使用して念動力の制限を解除
・力場で敵の周囲の空間に干渉し、その動きを制限しつつ、念動力で奴隷を繋いでいる鎖を解除又は破壊。
・解除した、又は余っている鎖で敵の身体を縛り上げつつ、椅子ごとひっくり返し、地面とのサンドイッチで潰す。

そういえば、光る珠が好物のようね?
私も幾つか持っているから、その口に放り込んであげるわ。
しっかり味わって死になさい。



 ウィルスによる肉体の内側から溶かすような痛みにあえぐ肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は怨嗟の咆哮は轟かせる。
「ああああッ! アタイの肉体が! 溶ける! 溶けてしまう! この痛み、この苦しみ! なんでアタイが!」
 的はずれな憎しみであると言わざるを得ないだろう。
 これまで彼女がしてきた行いの報いであると言わざるを得ないだろう。
 何をいまさらと言うしか無いだろう。

 けれど、彼女はそれを疑っていない。
 何故自分がここまで追い詰められないといけないのだと、本気で怒っているのだ。
「奴隷共! 何をしてんだい! アタイの元に集いな! 奴らを、猟兵を! ぶち殺せ!」
 その言葉に『奴隷牧場』である『ブラッドルビーランド』から奴隷たちが幾らでも集まってくる。
 その光景だけで、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』、オブリビオンたちが如何に悪辣であるかを知らしめるには十分であった。

「私達人間だって家畜を飼っている」
 それは疑いようのない事実であると、アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)は、赤い髪をなびかせ、その瞳に宿る輝きと共に『ブラッドルビーランド』の光景をみつめる。
 自分たちと何が違うのか。
 家畜を屠殺し、糧を得ることと、『人間牧場』とで何が違うのか。
 大きいことは言えない。

 けれど、赦してはおけぬという感情が彼女の中に渦巻く。
 自然とサイボーグである彼女の肉体に課せられた、制限解除(1)(リミッターカット)が作動するのを感じた。
 無意識であったのかもしれない。
「私の全力、見せてあげるわ」
 解放された機能により、念動力は通常の十倍にまで引き上げられる。迸る念動力の奔流が空間にさえ干渉し、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の動きを制限するのだ。

「この、力は……! 見えない、腕!? こんなものにアタイが止められるわけが――!」
 憤怒の形相でアレクシアの念動力に抵抗する『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を尻目に、彼女は涼しい顔のまま念動力でもって『人間牧場』に繋がれた奴隷たちの鎖を断ち切っていく。
「ええ、そうね。だけど、今まさに貴方がしてきたことと、彼等に強いていることをその身を持って知ってもらうだけよ」
 破壊された鎖が念動力によって操作され、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の体をがんじがらめに拘束する。

 強固な鎖と念動力によって縛られた『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は身動きできない。
 宙に浮かぶ椅子の台座と『ブラッドルビー・ヴォーテックス』。彼女の瞳は、それを捉えている。
 人の尊厳を踏みにじり、生命を生命とも思わぬ所業。
「はじめまして『ブラッドルビー・ヴォーテックス』。そして、さようならよ」
 アレクシアは、その手にした光珠を掲げる。
 叩きつけられ、轟音を響かせる『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の半開きに成った口を念動力でもってこじ開け、アレクシアは迫る。

 眼前に迫った彼女の赤い髪、瞳を見た『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は驚愕に目を見開く。
 何か罵声を投げつけようとして彼女は己の舌が動かぬことを理解する。
 強靭な念動力に寄って、言葉一つすら自由にならぬ恐怖に染まる顔をアレクシアは見下ろし、その手にある念動力よって生み出された超高温・超高密度の光の珠を無数に打ち込む。

 そこに慈悲はなかった。
「光る珠が好物のようね?」
 しっかり味わって死になさい。
 その言葉は冷酷そのものであったが、これまで虐げられてきた生命の代価と思えば、易いものであっただろう。
 放たれた光珠が口内に撃ち込まれ、爆炎を上げる。
 それを背にアレクシアは己が断ち切った鎖、其処に繋がれていた奴隷たちを伴って、解放するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
非道な行いではありますが……
人を素体にしてオブリビオンと混ぜ、紋章を作る吸血鬼と比べれば幾分はマシですね。
もっともどちらも人が生きるためには有害、撃つことに違いはありませんが。

威力の低い足止め用の技ならいくつかありますが……弱っている奴隷にされている人たちへはそれも使えませんね。

こちらからは手を出さず、『敵を盾にする』立ち回りと銃剣による『武器受け』で召喚された奴隷たちの攻撃を凌ぎます。

奴隷たちの攻撃を凌いでいるうちにブラッドルビー・ヴォーテックスへの射線が開いたら脱力し敢えて奴隷の攻撃を受けることで【柳弾】を発動。

「フィンブルヴェト」からの氷の弾丸をブラッドルビー・ヴォーテックスに返します。



 大地に叩きつけられ、口内に撃ち込まれた念動力の塊によって爆炎を上げる肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の肉体は惨憺たる有様であった。
 片足は喪われ、喉元は食い破られている。
 体に刻まれた斬撃の痕は無数。数を数えるまでもない。
 その身の内側もまた同様である。
「クソが……! ゴミムシのくせに……! よくもアタイに歯向かいやがって……!」
 彼女の怒号はそれどころではない。
 それ以上に己の財産である奴隷を開放していく猟兵たちが許せなかったのだ。

「全員ぶち殺してやる! 生きていたくないという目に合わせてから、じっくり嬲って殺してやる……!」
 傷だらけの姿に成りながら『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は未だ、その悪辣さの鳴りが収まることはなかった。
 むしろ、逆に燃えがる憤怒によって立っているというのが正解であろう。

 そんな彼女を見やりセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は息を吐き出す。
 彼女の出身世界であるダークセイヴァーにおいて行われている人を素体にしtオブリビオンと混ぜ、紋章を作る吸血鬼に比べれば幾分かマシであるとさえ思ったのだ。
「もっとも、どちらも人が生きるためには有害」
 ゆえに撃つことに違いはないのだと、セルマは疾走る。
 どんな理由があろうとも非道な行いをするものに容赦はいらない。そして、同時に彼女の敵ですらない。

 そう、目の前のあれは『獲物』でしかないのだ。
「はっ! そんなことを言ってお前達猟兵は、こいつらを殺せないんだろう! 知っているんだよ! 行きな、アタイの椅子たち!」
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は己の椅子を構成していた、肉体改造された奴隷たちを引っこ抜き、セルマに投げ放つ。
 彼等はうつろな瞳のままセルマを見る。
 そこには意志はなかった。あったのは反射だけだった。ああ、とセルマは息を吐き出したことだろう。

 あの瞳の色を彼女は知っている。
 あの瞳の色は絶望というのだ。それを嫌というほど知る彼女は、足止めの威力が低い攻撃をすることさえやめたのだ。
「やっぱりね! なんだかんだと言いながら、お前たちはそいつらを殺せない!」
 その隙に自身は快復しようとする『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は目を見開くことになる。
 彼女は見ただろう。
 セルマが銃剣でもって、肉体改造された奴隷たちをいなし、立ち回っているのを。

 けれど、それも長くは続かない。
 彼女を取り囲むようにして迫る肉体改造された奴隷たちが彼女の体に拳を振るう。
 瞬間、彼女の体から力が抜けたのを見た。
 敢えて受けに行った。何故? と『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が訝しんだ瞬間、彼女の眼前には氷の弾丸が飛来していた。
「――は?」
 氷の弾丸が眼球に激突し、視界が半分喪われる。血に染まった視界を前に『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は己が何をされたのかさえ理解できなかったことだろう。

 セルマは完全に奴隷たちに囲まれ、攻撃を受けていた。
 なのに気がつけばこちらが弾丸を撃ち込まれている。それは、彼女の瞳に輝くユーベルコード、柳弾(リュウダン)によるものでった。
 完全に脱力することによって奴隷たちの攻撃を無効化し、弾丸へと変え、瞬時に氷の弾丸を『ブラッドルビー・ヴォーテックス』へと撃ち放ったのだ。
「あなたがこれまでしてきたことの報い、それをお返しします」
 セルマの周囲には既に無効化された奴隷たちが倒れ伏していた。

 その中心でマスケット銃『フィンブルヴェト』を構えるセルマの瞳に映るのは、やはり敵ではない。
 そう『獲物』である。
 放たれた氷の弾丸が、再び狙い過たず『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の氷の弾丸を受けて潰れた眼球へと迫り、血に塗れた氷結の花を咲き誇らせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレスベルク・メリアグレース
クライストといい、この一族はわたくしを苛立たせますね……
塵となり、灰と成り逝くのが相応しいのですよ……

指を鳴らした瞬間、戦闘力増加と生命力吸収を『発動した過去を切り刻んで』解除
神敵がわたくしの力をバフ解除だと誤認させたまま『エンジェリックSSA・ガイオウガ』を取り出し、水爆の数千倍以上の熱量を内包する弾丸を放って対応していきます
そして、ここぞという時に奴隷の壁を無視して肉塊女帝に放たれた『敵の過去から発生する故回避不能の虚空から現れる空間に刻まれた斬撃』が肉塊女帝の肉体に浮かび上がり、四肢を切り刻んでいきます

罪深き罪人よ、ただ己の罰によって過去より浮かび上がる斬撃に切り刻まれて斬滅しなさい



 痛みによる絶叫が『ブラッドルビーランド』に迸る。
 猟兵達の攻撃に寄って追い詰められた肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』はついに隻眼へと成り果てた。
「アタイの目が! 目が! アアアアッ!!!! クソムシどもが! 塵のくせに! アタイを守れぬとはどういうことだい!」
『人間牧場』たる『ブラッドルビーランド』から鎖によって引き寄せられた奴隷たちが苦悶の声を上げながら、かき集められ、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を護る『肉の壁』へと変えられていく。

 嘆き、呻く声など聞こえぬとばかりに『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は、その壁の内側で身を癒そうとうずくまる。
 元より椅子より一歩も動くことをせぬ彼女にとって、この苦痛は耐え難いものであった。
 多くの奴隷を喪ったこともそうであるし、己が誇る美貌すらも損なわれたと在っては、怒り心頭どころではないのだ。
「クライストといい、この一族はわたくしを苛立たせますね……」
 フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)は、嫌悪感を隠しもしなかった。

 指を鳴らす。
 それはユーベルコードの合図であり、同時に輝く瞳が決して『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を許さぬという決意の現れでもあった。
「塵となり、灰と成り逝くのが相応しいのですよ」
 教皇級帰天・消えざる過去の刃(ノワールアンジュ・アンシャンラム)。
 それは敵の過去より発生するゆえに、すでに結果が決定した回避不可能なる過去の斬撃。

 それは虚空より現れる空間に刻まれた斬撃であった。
「現在と言う幹に未来と言う枝を伸ばす時間という名の世界樹は根たる過去があってこそ。故に消えざる過去にこそ救いと裁きは体現されるべし」
 放たれる過去よりの斬撃は、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の肉体を回復させる力を切り裂く。
「この力……! アタイの身体が、また……!」
 血潮が吹き出し、過去よりの斬撃は『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の肉体にふさがったはずの傷跡を開かせる。

「罪深き罪人よ、ただ己の罰によって過去より迂回上がる斬撃に切り刻まれて斬滅しなさい」
 構えた天使核より供給される熱量が、弾丸となって放たれる。
 奴隷の壁など意に解することなく曲射される弾丸は、曲がる弾道のまま『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を穿つ。
 熱によって焼かれる肌は、未だ強大さを残す『ブラッドルビー・ヴォーテックス』にとっては、これまで猟兵に寄って刻まれた攻撃の痕であろう。

 しかし、それは『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の持つ肉体再生や、回復する力を削ぎ落とすものではない。
 フレスベルクはそれを誤認させたまま、己のユーベルコードによって光り輝く。
「アタイに罪在りなどと! あるわきゃねえだろ! そんなものが! アタイは生まれ流れにして強者なのだから! 奴隷もまた同じだろうが!」
 その言葉にフレスベルクはかぶりを振る。
「それこそが罪。その証拠に」
 貴方の体を刻むのは過去よりの斬撃であるに相応しいと打ち鳴らされた指の音が、合図となって『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の肉体を切り刻む。

 噴出する血潮は、これまでに理不尽に奪われた生命の代価。
 決して戻らぬ生命。
 どれだけ敵を穿つことができたのだとしても、これまでに喪われた生命は戻すことはできない。
 ときが逆巻くことがないように、喪われた生命は戻ってこない。
 それを憂いながら、フレスベルクは過去よりの斬撃で持って『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の四肢を刻み、その贖罪とするのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
……んー、まあ、何か言うだけ無駄か。
さっさと終わらせた方が奴隷になってる人たちの為にもなるし。

さて、奴隷たちに怪我をさせないようにまずは動きを止めようか。
【轟閃縛封】を使って閃光と轟音で奴隷たちの目と耳を少しの間使えなくして、
その隙に両足を蜘蛛の糸で縛って歩けなくしよう。
これで戦えなくするついでに椅子も動かせなくなるだろうし。

奴隷たちが椅子を動かせなくなったら、
椅子の上に飛び乗って一発思い切りぶん殴ろうか。

人間は弱いし脆いけどね、アンタほど無価値ではないよ。



 四肢を刻む斬撃が血潮を迸らせ、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の肉体をさらなる窮地へと追い込んでいく。
 すでに多くの猟兵に寄って打撃が与えられ、消耗の度合いも凄まじい。
 けれど、未だ『人間牧場』と呼ばれた『ブラッドルビーランド』には多くの奴隷たちが存在している。
 同時に彼女が己の椅子としていた『人間椅子』も変わらないだろう。
 肉体改造された奴隷たちがうめき声を上げながら、椅子の下から這い出してくる。
「クソが! ゴミムシのくせに、アタイに傷をつけ、あまつさえは罪だと? ふざけんじゃないよ!」
 咆哮は憎悪と怨嗟でもって彩られ、猟兵達の肌をビリビリと焼く。

「……んー、まあ、何か言うだけ無駄か」
 ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は相対する全長5mはあろうかという肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を前にそう呟いた。
 別に改心するだろうとか、そんなことを期待していたわけじゃない。
 どのみち倒すことに変わりはないし、その感情を逆なでするような咆哮は、ペトニアロトゥシカにとっては、正直どうでもいいとさえ思わせるものであった。
「さっさと終わらせたほうが、奴隷になってる人たちのためにもなるし」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。

「近寄って殴るばかりが能じゃないのさ」
 彼女の体より放たれる放電が閃光となって肉体改造された奴隷たちの視界を塗りつぶす。
 彼等が人間である以上、閃光を受けては目を瞑るしか無いし、閃光をまともに受けては暫く動けないだろう。
「このっ、役立たずどもが! ゴミムシなら、ゴミムシらしく、せめて壁にならないのかい!」
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が忌々しげに選考によってうずくまる肉体改造された奴隷を投げ放つ。
 それをペトニアロトゥシカは、己の手から放たれた蜘蛛の糸でより上げられた網で受け止め、そのまま大地に転がす。

「壁になんてさせないよ。ついでに、その椅子。移動されると面倒くさいからね」
 放つ糸が『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の椅子をがんじがらめに絡め取り、その動きを止める。
 肉体改造された奴隷たちであっても、その鋼鉄の如き強度を持つ蜘蛛の糸を引きちぎることは難しいだろう。
 それ以上に『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の動きは完全に止められている。行くのならば、今しかない。

 ペトニアロトゥシカの肺が膨らむ。
 それは息を吸い込むという動作以上に、溜め込まれた酸素と共に己の咆哮を轟かせるものであった。
 凄まじい轟音。
 今まで喪われてきた生命、血潮。
 その怒りの代弁者たるペトニアロトゥシカの咆哮は『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の動きを完全に止める。
 たとえ、肉体改造された奴隷たちが動き出そうとしても、その轟音によって動きを完全に止められたことだろう。
「なんっていう、バカでかい声を……! アタイの耳を潰す気かい!」
「いいや、その顔面を潰す」
 ペトニアロトゥシカの握りしめられた拳が音を鳴らすほど力強く振り上げられる。

 迫るその拳を『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は如何なる思いで見ただろうか。
「ゴミムシども! アタイを守れ! なんで守らない! こんな時にしか役に立たないくせ――」
「――人間は弱いし脆いけどね」
 ペトニアロトゥシカの拳が振り抜かれる。
 放たれた拳の一撃は『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の顔面を捉え、凄まじい音を立てて椅子ごと大地へと叩きつけられる。

 それは怒りというものではなかったのかもしれない。 
 ペトニアロトゥシカにとって人間とは確かに脆弱である。触れれば壊れてしまいそうである。
 けれど、彼女は知っている。人の営みが生み出すものの尊さを。だからこそ、言うのだ。
「アンタほど無価値ではないよ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒髪・名捨
【心境】
「…人間牧場…はあ、なんつーか。名前だけで胸糞悪りぃ」
現実で見ると醜悪すぎるわ。
さっさとつぶそーぜ。

【行動】
奴隷を傷つけずに…ってか。
スタングレネードを奴隷周辺に『投擲』して閃光と衝撃の範囲攻撃で『目潰し』『気絶攻撃』で無力化。
あと寧々よろしく。『結界術』で無力化した奴隷をこのくそオブビリオンから保護する。

あとは肉会野郎、てめぇだけだ。

敵の動きを『見切り』オブビリオンに命中するように、アーラーワルを『槍投げ』して『串刺し』にする。
あばよ。てめぇは本気で醜悪だった!1幻爆で汚物は『焼却』だ。



 放たれた拳の轟音が『ブラッドルビーランド』の敷地内に盛大に鳴り響く。
 しかし、その拳の音は奴隷たちを引き寄せる形になっただろう。主人の窮地に奴隷たちが駆け寄ったわけではない。
 彼等の首に繋がれた鎖が、彼等を引き立てるのだ。
 望んでいるわけではない。
 けれど、生まれてからずっと彼等には希望なんてものはなかった。
 あったのは、どうかこの生命が喪われるのが先延ばしになりますようにと願うことだけだった。

 それを希望と呼ぶだろうか――否である。

「人間牧場……はあ、なんつーか。名前だけで」
 黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は真っ黒な髪と装束を揺らし、『ブラッドルビーランド』の惨憺たる状況を見やる。
『人間牧場』――それが、この『ブラッドルビーランド』の実体だ。
 肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』のためだけに存在する奴隷の貯蔵庫とでも言うべき場所に彼の心は波を立たせる。
「胸糞悪りぃ」
 現実を見れば、あまりの醜悪さ。
 肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は、猟兵達によって追い込まれている。
 だが、その生きることへの執着、醜さは度を越していると言わざるを得ないだろう。
 名捨は駆け出す。

「クソが……! 猟兵共がなんだっていうんだい! アタイを守れ! 守らないとぶっ殺すぞ!」
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の怒号が響き渡る。
 彼女にとって奴隷とは無価値なものであった。己を護るか、楽しませるか、それでしかないのだ。
 猟兵はそれを価値あるモノだという。
 意味がわからないとさえ思っただろう。さらに、それを傷つけまいと戦う猟兵は理解の範疇の外にしかない存在だった。

「さっさとつぶそーぜ、こんな場所」
 放たれるスタングレネードを集まる奴隷たちに投擲し、彼等の視界と聴覚を奪う。
 それを名捨はしゃべる蛙『寧々』にまかせて、一直線に『ブラッドルビー・ヴォーテックス』へと迫るのだ。
『任せておけ、旦那様。こっちは結界で彼等を守ろう。思いっきりぶっ飛ばしてやれ』
 その言葉に名捨は頷く。
 彼の気持ちは同じだった。ずっと心の中で渦巻いているのだ。この悪感情の出どころは言うまでもない。
 目の前にそびえ立つ肉塊。

『ブラッドルビー・ヴォーテックス』にほかならない。
「あとは肉塊野郎、てめぇだけだ」
「その程度のガタイでアタイと張り合おうなどと!」
 振り下ろされる岩石の如き拳を名捨は見切り、一瞬で短槍を投擲する。それは動かぬ『ブラッドルビー・ヴォーテックス』に当てることは容易でしかなかった。
 突き刺さる短槍の一撃は、彼女にとっては取るに足らないものであったことだろう。

 だが、これより放たれるユーベルコードの一撃だけは違う。
「とっておきだ。とりあえず喰らっていけ」
 幻爆(ゲンヴァク)。
 それは名捨の拳の中でも極大なる一撃であったことだろう。環境に安全な小規模核融合爆発とでも言うべき拳の一撃。
 放たれた一撃は肉塊を包む鋼の如き体皮すらも容易に貫き、その身を焼く。
 凄まじい爆風が吹き荒れ『ブラッドルビーランド』を破壊しながら、名捨が大地に降り立つ。

「あばよ。てめぇは本気で醜悪だった!」
 名捨は己の胸のうちにある胸クソの悪さを吐き捨てるように、そう呟き、己のユーベルコードが為した爆風を背に保護した奴隷たちを『寧々』と共に安全な場所まで運ぶのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…どこの世界にもいるものね。お前のような人間を見下している輩は…

…お前達の口上を聞く度に私はいつもこう返しているの

その使えない人間に敗れるお前は、存在する価値すら無さそうね…と

敵を挑発して奴隷を最大まで引き付け大鎌の刃に時の魔力を溜めUCを発動
自身の周囲を時間停滞のオーラで防御して奴隷達の集団戦術を受け流し、
弾丸のような早業で敵本体に「黄金の楔」を投擲して捕縛型拷問具に武器改造を施し、
体勢を崩した敵陣を突破して切り込み大鎌で怪力任せに乱れ撃ち追撃する

…この施設をみた限り拷問具が好きなのでしょう?
折角だからとくと味わいなさい。私の世界の拷問具を…

…と言っても、お前には聞こえていないでしょうけどね



 小規模な核融合爆発の如き一撃が『ブラッドルビーランド』を半壊させていく。
 ここに栄華を誇った嘗ての肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の『人間牧場』は、例え、この戦いに勝ったのだとしても、最早機能することさえ難しかったことだろう。
「うぅぅ……! まだ、まだ! アタイが入ればいい! 世界なんてそれだけいいんだよ! 猟兵! お前たちは!」
 必ず殺す。
 その殺意をみなぎらせながら、満身創痍の肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が立ち上がる。

 その姿は醜悪そのものであったことだろう。
 隻眼となり、片足を喪って尚、焼き焦げた体を引きずるようにして『人間椅子』に登る。
 己の足で立つことを拒否するような醜悪な台座の如き椅子は、そこから椅子を構成する肉体改造された奴隷たちを放ち、猟兵達に差し向けるのだ。
「あいつらを少しでも長く足止めしときな! アタイに近づけさせるんじゃないよ!」
 その言葉に肉体改造された奴隷たちが呻くように足を動かす。
 どれだけ改造されたと言っても、ろくな栄養を与えられていないのだろう。

 それを哀れであり、同時に許せぬとリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は戦場に駆け込む。
「……お前たちの口上を聞く旅に私はいつもこう返しているの」
 何処の世界にもいるのだ。
 この手の輩というものは。人間を見下し、隷属し、モノのように扱うオブリビオン。
 それを彼女は知っている。
 だからこそ、言うのだ。

「その使えない人間に敗れるお前は、存在する価値すら無そうね……と」
「貴様! あいつだ! あいつから縊り殺してやる! あいつをアタイの前に捕らえて連れてこい!」
 その怒号と共に奴隷たちがリーヴァルディへと駆ける。
 それを彼女は待っていたのだ。敢えて挑発し、奴隷たちを差し向け、引きつけようとしていたのだ。
 大鎌に時の魔力が満ちていく。
「……吸血鬼狩りの業を馳走してあげる」

 吸血鬼狩りの業・時澄の型(カーライル)。

 そのユーベルコードの輝きは吸血鬼狩りの奥義。その刃は戦場に降り立ち、自身の周囲を時間停滞のオーラでもって奴隷たちの突撃を受け流す。
 黄金の煌めきが一瞬で奴隷たちを捕縛型拷問具に変形し、彼等を捕らえる。いや、保護したと言えばいいだろうか。
「お前たちはいつだって自分の力を誇示する。この力があるからこそ、己は頂点に立つのが相応しいのだと」
 それによって足をすくわれることなど考えもしないのだと。
 奴隷たちを『黄金の楔』でもって捕らえ、一直線にリーヴァルディは駆け抜ける。

 目指すは肉塊の如き巨魁。
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』だけである。
「……この施設をみた限り、拷問具が好きなのでしょう? せっかくだからとくと味わいなさい。私の世界の拷問具を……」
 放たれる大鎌の斬撃。
 それは『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を切り刻む。けれど、彼女の言葉は『ブラッドルビー・ヴォーテックス』には届いていない。

 何故ならば、その吸血鬼狩りの奥義、その刃は停滞の力に寄って、彼女の動きを五分の一如何に貶めている。
 リーヴァルディの言葉は届かない。
 けれど、斬撃だけは刻まれていくという不条理。彼女の刃こそが拷問具そのもの。
「停滞した時の中で、切り刻まれる恐怖……と言っても、お前には聞こえて居ないのでしょうけどね」

 リーヴァルディは停滞した斬撃の檻の中で刻まれ続ける『ブラッドルビー・ヴォーテックス』に背を向ける。
 どれだけ栄華を誇った者も滅びるしか無い。
 それはこのアポカリプスヘルにおいて、示された現実。けれど、リーヴァルディは己が背を向けた醜悪なる存在を許さない。
 程なくして、斬撃の檻という拷問具より上がる絶叫を聞き、リーヴァルディは新たなる戦場へと飛び立つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
絶対に許さないぞブラットルビー
お前はヒトの事を全然まったくわかってない
ヒトはとっても強くて逞しくて頼もしーなん
こんなセカイがユメの国なもんか
ヒトのユメはお前の何百倍も輝いてんだ
行くぞマザー
このセカイを救い出すんだ!
【世界を救って下さい】


恐くて逆らえないよな
でもだいじょーぶだ
らぶのとっておきを見せてあげる
キラキラ光ってきれーでしょ?
知らないセカイ?
懐かしいセカイ?
こんなセカイを見てみたい?
ならちょっと目を瞑ってみるといーのん
瞼の裏にきっと映るから
悪いユメから覚めたら
地獄はもーお終い!

いまだ!閃光爆弾を敵に投げつけて目潰ししちゃえ!
逃さないぞ
駆け寄ってラビットファングでガリガリさせるんだ!



 無数の斬撃が愚問の如く肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の肉体を切り刻んでいく。
 その鮮血の凄まじさは言うまでもなく、その体長5mはあろうかという巨躯であっても大地に沈ませるものであった。
 けれど、未だ彼女は消えない。
 それどころか、周囲に呼びつけた奴隷たちを使って『肉の壁』となし、彼等の生命力を吸って体を癒そうとさえしていたのだ。
「猟兵のクソどもが……! アタイを此処までコケにしやがって……!」
 彼等は結局の所、奴隷であり、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の体を癒やす肉の盾でしかないのだ。

 そんな彼等は苦悶の表情を浮かべながらも、従うしかない。
 己の生命が喪われても尚、従うしかないのだ。すでに瞳に希望の光はない。あるのはどこまでも沈んでいくような闇色の輝きしかない。
 それを、ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)は許せないと思った。
「絶対に許さないぞ、ブラッドルビー。お前はヒトの事を全然まったくわかってない」
 彼女の言葉は肉の壁となった人々を通り抜けて『ブラッドルビー・ヴォーテックス』に届いたことだろう。
 
 彼女は知っている。ヒトというものを。
 とっても強くて、たくましくて、頼もしい存在であると。
 確かにこれまでラブリーは彼等を助けてきただろう。商人の真似事でしかなかったのかもしれないけれど、たしかに彼等を助けてきた。
 その結果の積み重ねが今という彼女の足元を作っているの。
「こんなセカイがユメの国なもんか」
 ラブリーは知っている。どれだけ打ちのめされても立ち上がる人の強さを。
 どれだけ理不尽にさらされてもたくましく生きる人の強さを。
 こんなにも半人前な自分を助けてくれる頼もしい人の強さを。

 知っているのだ。
「だからなんだっていうんだ! 此処はアタイの国! アタイだけが楽しめればいいんだよ!」
 その声にラブリーは声を上げる。
 違うと。そんなもの国であっていいはずがない。ユメを蹂躙されていい理由なんてならない。
「ヒトのユメはお前の何百倍も輝いてんだ。行くぞマザー」
 オフライン非通信端末である『マザー』に呼びかける。
 きっと返ってくる言葉を彼女は知っていただろう。セカイを救い出す。そのためにラブリーは駆け出した。
【世界を救ってください】

 その言葉にラブリーは背中を押される。
 肉の壁を前にしても立ち止まることはなかった。それどころか彼女は手にした綺麗なビー玉や昔のお金を掲げる。
 今はもう意味のないものばかりだ。
 けれど、ラブリーは知っている。これが人の欲望であり、原動力であり、未来を求めるユメの力なのだと。
「皆、怖くて逆らえないよな。でもだいじょーぶだ。らぶのとっておき。キラキラ光ってキレーでしょ?」
 それは人々にとってわからないものばかりであったことだろう。
 この『人間牧場』において、それは意味がないものであったし、育った者達はそんなものがあることさえ知らない。

 けれど、本能的に分かるのだ。
 それがどんなものであるのかを。それを手にすることがどんなことであるのかを。
「こんなセカイ見てみたい? ならちょっと目を瞑ってみるといーのん。まぶたの裏にきっと映るから」
 投げ放つ閃光爆弾が『肉の壁』となった奴隷たちの瞼によって遮られ、それをまともに見た『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が呻く。
「また光! こんな光でゴミムシどもがなびくものか! 恐怖に勝るものがこの世にあるわけがないんだ!」
「そんなことないなん! 絶対に! 悪いユメは覚める。地獄だっておしまいになるのん!」
 だから、とラブリーは叫び、肉の壁を飛び越えて『ブラッドルビー・ヴォーテックス』へと飛びかかる。

 絶対に逃さない。
 手にしたチェーンソー剣がうなりをあげる。
 それはこれまで虐げられてきた奴隷たちの咆哮でもあったことだろう。声を上げられぬ者のために声を上げる。
 ラブリーが出来ることだった。凄まじいエンジン音と共に放たれる一撃は、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』のぶよぶよとした体皮を削るようにして切り裂き、防ごうとした巨大な腕を寸断させる。

 そう、うさぎにも牙は在る。
 きっとそれはハッピーな未来を切り開く一撃。
「みんなにはハッピーなセカイを見せたいのん! だから! ブラッドルビー、その悪夢はここでおしまいにするのん!」
 血飛沫を挙げて、寸断された『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の腕が大地に落ちる。
 それを見て、ラブリーはきっと奴隷たちがこれ以上悪夢を見ぬようにと、再びチェーンソー剣の轟音を轟かせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
囚われた皆さんに対するあまりにも非道な行い。
ブタッドルビー、貴女を倒します。
正直言えば激おこです💢

人々の解放が最優先なので、即座に天候操作で雨を降らしてUC発動。

彼女に「囚われた人々全員を解放し、攻撃手段と生命力吸収を解除し、座して処罰を受けなさい。」と厳命。
人々には「早くお逃げなさい。」と指示。

反撃に備えて第六感を働かせ、盾受けで人々をかばえるように天耀鏡を移動し、自分はオーラ防御を纏う。

人々が退避後に、多重詠唱による風と火の属性攻撃・全力魔法・神罰・高速詠唱で、風の刃を伴う炎の奔流を放ち、貫通攻撃・鎧無視攻撃・料理にて燃やして切る。

焼きブタ、いえブタさんに失礼ですね。
ともあれ調理完了です



「『ブラッドルビー・ヴォーテックス』、貴女を倒します」
 その声は静かな声色であり、普段の彼女、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)を知るものであれば、彼女が如何に腹に据えかねる思いでいるのかを知っただろう。
 詩乃の瞳は静かに燃えていた。
 決して激情を漏らすことなく、目の前でこれまで行われてきた非道の数々に胸を炒めていた。

 肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の所業は目に余るものであった。 
 人の悪性を理解していたとしても、ここまでの非道ができるとは思いたくはなかった。
『人間牧場』たる『ブラッドルビーランド』はたしかに、かつての夢の国、遊園地そのものであったが、最早残骸でしかない。
 人の夢は此処にはない。
 希望もない。
 あるのは絶望という暗い未来だけだ。
 だからこそ、詩乃は立つ。
「正直に言えば、激おこです」
「だからなんだっていうんだ、猟兵! アタイの体を此処まで痛めつけておきながら!」
 彼女の体は度重なる猟兵の攻撃に寄って満身創痍であった。

 片腕は喪われ、隻眼となり、片足も喪っている。
 あらゆる体に傷があり、その痛ましさは言うまでもない。けれど、それはこれまでの彼女の所業の報いであると言う他無い。
 彼女がこれまで如何なることをしてきたのかを詩乃は知っている。
 同情する余地な何処にもないと断ずるのだ。
「囚われた人々全員を開放し、攻撃手段と生命吸収を解除し、座して処罰を受けなさい」
 その言葉は植物を潤す慈雨と共に放たれた。

 神域創造(シンイキソウゾウ)たるユーベルコードに寄って詩乃の本来の神としての権能を持って絶対支配権を持つ神域に変える。
 けれど、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は喚くようにして叫ぶのだ。
「アタイからまた奪おうっていうのかい! そんなことに誰が――」
 だが、その言葉は途切れる。
 彼女を守っていた肉の壁たる奴隷たちが、よろめくように詩乃の方へと歩むのだ。
「早くお逃げなさい」
 そのやせ細った体では逃げることも困難だろう。

 だからこそ詩乃は己の力を使って彼等を護るオーラの結界を張り巡らせる。
 どれだけ鎖で繋がれていようとも、神の権能の前には無意味である。
「貴様! アタイのモノを――!」
「いいえ、違います。あれらは貴女のものではない。生命です。その生命に所有者が居るのならば、本人以外にはあり得ない。決して、生命とはだれかの手に委ねていいものではないのです」
 放つ炎と風が刃となって『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を切り裂く。
 燃やして斬る一撃は、その傷跡を塞ぐことさえ許さない。

 絶叫する『ブラッドルビー・ヴォーテックス』に詩乃は歩み寄る。
「もしも、あなたに人の心が、人を慈しむ心があったのならば、こうはならなかったでしょう。ですが、あなたは人を傷つけ、己のモノとすることを望んだ」
 ならば、これこそが神罰である。
 厳かなる神としてのオーラを放ちながら、風舞う中に吹き荒れる炎の刃が『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を絶え間なき罰となって、その身を断罪していく。

「焼ブタ……いえ、ブタさんに失礼ですね」
 反省の色のない『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の絶叫を詩乃は聞き、口汚く罵る彼女をさらなる炎と風でもって痛めつける。
 これで調理完了だというように、風と炎が消え去った後、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は、その身を焼けただれさせながら、立ちすくむしかなかったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
ハハハ、絵に描いたような悪役だ。
人間を下に見ながらそれを苦しめて悦んでいる己の矮小さ、滑稽さに気付いていないことも含めてね。
拍手をしてあげよう。(パチパチ)

さて、それでは挨拶もしたことだし、消えたまえ。
『ヤーヌスの双顔』を発動。不可視の魔力が周囲を覆います。
その魔力はブラッドルビーのみを破壊消滅させるもの。
奴隷の壁があるとして原子の隙間レベルで浸透して彼女の身を襲います。
ちなみに敵意はありません。ゲームに参加してクリアに必要だから倒す、そんな感覚でそこに敵意や悪意といった思い入れはない。
奴隷の壁を含めた範囲内の奴隷は敵を破壊するのと同時進行で欠損復元レベルで回復させましょう。



 炎と風が肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を許さぬとばかりに、その体を焼き尽くす。
 しかし、炎から飛び出す姿は未だ醜悪ながら人の形を保っていた。
 以前のような姿ではない。
 隻眼、隻腕、片足という満身創痍になりながらも『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は叫ぶ。
 猟兵を睨めつけ、憎悪の声でもって威嚇するように叫ぶのだ。
「クソムシどもを庇い立てやがって! アタイの持ち物の中でもっとも無価値なものを、よく庇い建てることができるもんだ。人間なんてものは、テキトーにサカらせて産ませておけば、勝手に増えるモンだろうが!」

 その言葉に紅のスーツに身を包んだ美丈夫が笑った。
「ハハハ、絵に書いたような悪役だ。人間を下に見ながら、それを苦しめて悦んでいる己の矮小さ、滑稽さに気づいていないことも含めてね」
 拍手を贈ろうと、シーザーは手を叩いていた。
 それは『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を挑発するものであったし、事実、彼女は怒り心頭であった。
 そうでなくても、彼女は猟兵を見れば殺さずにはいられないだろう。
「どいつもこいつも! アタイを馬鹿にしさくって! おらっ、人間ども、アタイを守れ! そして傷を癒やす力をよこせ!」
 そう言って彼女は奴隷たちを引き立て、肉の壁として猟兵達の間に並べ立てるのだ。

「やることなすこと全てが矮小そのものだな。さて、挨拶もすんだことだだし、消え給え」
 その瞬間、不可視の魔力による破壊消滅が引き起こされる。
 何がと思う時間もなかったことだろう。
 まるで肉の壁などないかのように紅の美丈夫、シーザーは、その瞳をユーベルコードに輝かせていた。
 不可視なる魔力は、瞬時に『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を捕らえ、その傷口を塞ごうと生命吸収を行おうした力の経路を消滅させた。

「なんだ、何をした!?」
「なに、かんたんなことさ。君が傷口を塞ぐ為に生命吸収を行うのであれば、その経路を断てばいい。かんたんな話さ」
 ぱちんと指を鳴らすと、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の肉の壁となっていた人びとの体の何処其処かに必ずあった欠損を復元していく。
 それは魔力による完全復元と呼ぶに相応しいレベルの再生であり、人々は己の目や腕、足といったものが再び完全な状態で、五体満足になったことに奇跡を見ただろう。

「そんな馬鹿なことが……! だが、アタイに敵意があるかぎり……」
「いいや、敵意など君には向けるまでもないよ。これはゲームあからね。クリアに必要だから倒す。その程度の感覚は敵意と呼ぶに値するだろうか? いやしないね」
 微笑むシーザーの顔は、底知れぬ闇を感じさせたことだろう。
 ぞわりと体中の皮膚という皮膚が泡立つのを『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は感じただろう。
 どうしようもない存在。
 それが目の前にいるという事実。

 放たれる魔力は消滅を引き起こし、自分のユーベルコードすら粉砕していく。
 対するシーザーは己に敵意というものすら抱かぬ。
 目の前に潰すべきものがあるから潰している。ただの義務感にも満たぬ感覚でしかないのだ。
「ハハハ。何、そこまで怖がる必要はない。君は必ず滅びるのだから」
 方や滅びを、方や再生を。
 それを齎す、ヤーヌスの双顔(デウス・アルビテル)は、さんざんと輝くように『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の行く末を照らす。

 そう、破滅という末路を――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
やれやれ…奴隷を椅子とか悪趣味だな
「ご主人サマもメルシーを椅子にしてもいいんだぞ♥」(きりっと銀髪少女
よし首を落としてやろうか
「いやーん☆」

【戦闘知識・情報収集・視力】
女帝と奴隷の立ち位置と動きから奴隷を傷つけずに突破する立ち位置やルートを把握

【属性攻撃・迷彩】
光属性を己達に付与して存在を隠蔽し捕捉させない

UC発動
【空中戦・念動力・弾幕・スナイパー】
念動障壁を纏って超高速かつ複雑な動きで空を飛び回りながら
念動捕縛弾を奴隷に打ち込み動きを止めに止め傷つけず

【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
お前さー
もう少し自分で動いた方がいいですよ?
BMI幾つだよ?(精神蹂躙
鎌剣と短剣で切り刻み
金目の物強奪強奪!



「やれやれ……奴隷を椅子とか悪趣味だな」
 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の趣味の悪さに辟易していた。
 この『ブラッドルビーランド』は嘗て夢の国とでも言うべき遊園地であった。
 人々が幸せを謳歌するための場所であり、今のように絶望に塗れた場所ではなかったはずだった。

『人間牧場』とまで言われた、この悪夢の国は、今や猟兵達によって追い込まれている。
 主である『ブラッドルビー・ヴォーテックス』もそうだ。
 満身創痍でありながら、未だ消滅を拒むように奴隷たちを引き立て、椅子として使っていた肉体改造された奴隷たちを前に引き立たせ、壁として己を守らせている。
「ご主人サマもメルシーを椅子にしてもいいんだぞ♥」
 きりっと銀髪の少女『メルクリウス』が笑っている。それをカシムは嫌な顔をして見て、ぼそっと言うのだ。
「よし首を落としてやろうか」
「いやーん☆」

 こんなやり取りをしていたが、二人は『ブラッドルビー・ヴォーテックス』と奴隷の立ち位置を見極め、奴隷たちを傷つけずに突破するルートを把握。
 彼等の姿は光学迷彩に寄って隠蔽され、感知されることはなかった。
 これまで猟兵たちが盛大に『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を攻撃し、気を引いてくれたことも原因として挙げられるだろう。
 それ以前に……。
「あの肉塊がにぶすぎるっていうのもあるんだろうけどな……けど、それでもやりやすいってもんだ。いくぞメルシー! 魔力と思考をリンクさせろ!」
「ラジャったよ、ご主人サマ♪」
 その言葉とともにカシムとメルシーは凄まじい速度で飛ぶ。
 念動障壁を張り巡らせた二人は、超高速かつ複雑な動きで空を飛ぶ。

「次から次へと! 猟兵ってのは、見境がないのかい!」
 隻眼、隻腕、片足という満身創痍となった『ブラッドルビー・ヴォーテックス』にとって、二人の動きを同時に追うことなどできようはずもなかった。
 どれだけ肉体改造された奴隷たちを並べ立てていたとしても、隻眼となってしまった『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が二人同時に捕らえることはできないだろう。
 だからこそ、撹乱するように二人は飛ぶのだ。
「お前さー、もう少し自分で動いた方がいいですよ?」

 言ってもどうせ聞かないだろうけど、とカシムは呟きながら念動捕縛弾を奴隷たちに打ち込み、その動きを止めて傷つけないように周囲を凄まじい速度で飛びながら、カシムはいう。
「BMI幾つだよ?」
 その言葉の意味を『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は理解しなかっただろう。
 なぜなら、そんな言葉など意味を成さないからだ。その結果が肉塊女帝たる彼女の今の姿だからだ。

「ご主人サマ、言っても無駄無駄☆」
 メルシー&カシム『ロバーズランペイジ』(キシントトウゾクノダイジュウリン)は終わらない。
 短剣と鎌剣による乱舞の如き斬撃は『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の肉体を切り刻み、その体に着飾られた宝石や装飾品の類を根こそぎ奪っていく。

「まあ、よい稼ぎにはなったよ。女帝ってとこだけは、同意してやるよ。身につけている宝飾品の数々って意味でな!」
 これは頂いていくと、カシムは奪い取った金品を手に空へと舞い上がる。
 ろくなことをしないで手に入れたものだ。奪われたって文句は言えないだろうというように、カシムは笑いながら、きっと開放された奴隷たちに金品をばらまくのだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
胸糞悪い話だね
虐げられた人達を傷つけない様に戦うよ

そして悔しいけど
この方法が一番確実なんだよ
他人の命と意地を天秤にはかけられないからね

ガトリングガンを投げ捨て
祈る様に石化するよ
こういうのは好きじゃないだろ、後は頼んだ

仕方がありませんの
ええ、あの方はあまりにも美しくありませんの
私に任せて下さいまし

奴隷の方々を保存の権能で
石像に変えて傷つかないように保存しますの
そして周囲の空気の動きを固定して
保存したくないあの方に窒息と凍傷を与えますの
晶が言うには分子の動きを停めているらしいですの
壁で防げるものではありませんわ

一応聞くけど奴隷の人達は後でちゃんと元に戻すよな

ええ、永遠にすべき状態ではありませんもの



 肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の体は今や、満身創痍であった。
 けれど、その瞳に宿る狂気と憎悪だけが未だ輝き続けていた。
「クソどもが、よってたかってアタイを、よくも此処まで……!」
 ギラつく瞳は未だ消滅する気配すら感じさせない。
 どれだけ肉体を打ちのめしたとしても、その瞳に在る狂気が在る限り、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は立ち上がってくるだろう。

 いや、己の座した『人間椅子』にふんぞり返り続けるだろう。
 彼女がいるだけで人々は苦悶と苦痛に塗れたままの表情を浮かべる。
 それを佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は胸糞が悪いと言い放った。
「せめて、虐げられた人たちを傷つけないようにしないと……悔しいけど、この方法が一番確実なんだよ」
 本来であれば、あまり自身が好んで使う手段ではない。
 けれど、他人の生命と意地を天秤には掛けられない。晶とはそういう猟兵であったのだ。

 肉の壁をそそり立たせる『ブラッドルビー・ヴォーテックス』はにんまりと笑っていた。
 やはり猟兵と言えど、人間には手を出せないのだ。
 これまで多くの猟兵がそうであったように、彼等のウィークポイントは人間だ。
「こんなゴミムシのためによくもまあ」
 晶がガトリングガンを投げ捨て、祈るような体勢を取ったのを、彼女は懇願しているのだろうとさえ思ったのだ。
 それをお気楽なものだと晶は蔑んだ。
「こういうのは好きじゃないだろ、後は頼んだ」

 その言葉とともに晶の体が石化していく。
 それは邪神の恩寵(ガッデス・グレイス)。
 邪神の力を解き放つ代償により己は石化する。されど、晶を中心とした全てに邪神の分霊が行使する固定の権能を解き放つのだ。
「仕方がありませんの。ええ、あの方はあまりにも美しくありませんの。私にまかせてくださいまし」
 邪神の分霊が顕現する。

 目の前の『ブラッドルビー・ヴォーテックス』は彼女の美的感覚からあまりにもかけ離れた存在であった。
 見目がどうとかではない。
 内面、存在、それらの全てが彼女の美しさとは対極にあるのだ。
 肉の壁となった奴隷たちを全て石像に変えてしまう。それは『ブラッドルビー・ヴォーテックス』にとっては、青天の霹靂であったことだろう。
「な、お前たちは、人間を傷つけないんじゃ――」
「ええ、ですから、傷つかぬように石像に変えてあげているのです。ですが、あなたはいりませんの」

 たおやかに微笑む邪神の分霊が指先を向ける。
 それは周囲の空気の動きを固定し、その空間に居る『ブラッドルビー・ヴォーテックス』に窒息と空気を固定することに寄って分子の動きまで停めて、その肉体に凍傷を与えるのだ。
「壁で防げるものでなし。そのまま凍りついて朽ち果てるのならば、それがよいのです。それ以上醜くなる前に」
 その言葉を残し、邪神の分霊は石像と化した奴隷たちを連れて、離れていく。

 ユーベルコードの効果が途切れ、晶の意識が戻った時、改めて晶は彼女に問いかける。
「一応聞くけど、奴隷の人たちは後でちゃんと戻すよな?」
「ええ、永遠にすべき状態ではありませんもの」
 その言葉に晶はまたわからなくなるだろう。全てを固定し、そのままにすることができる権能を持つ邪神。
 けれど、其処には分別がある。
 時折わからない線をもっているのはわかる。けれど、それはわかってしまう。

 奴隷たちは確かに美しくない。
 心の有り様、それが傷ついている。だから、永遠にすべきではない。
 それはきっと優しさにも似たようなものであった。似て非なるものであったかもしれないけれど、それでも晶はため息を返事の代わりにして、未だぎこちなく動く体をほぐし、新たなる戦いに眼差しを向けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェルト・フィルファーデン
まさに醜悪とは、この事ね。本当に、人の命を、なんだと……!
――させないわ。これ以上アナタの好きにはさせない。
皆の命も、世界も全て、アナタに壊させはしないわ!!

出来るだけ速攻で沈めましょう。UC発動。さあ、障壁蝶よ!罪なき人々を守って!
奴隷にされた皆様を障壁蝶の護りで敵から保護し避難させつつ、わたしは騎士人形と共に高速で空を舞い、斬りかかる。
まずは腕、次に目。更に足。攻撃手段と視界、移動手段を潰し万が一にでも皆様に危害が加えられる可能性を潰していくわ。

どう?痛いかしら。痛いわよね?……その痛みを皆も味わったのよ。
今更謝罪も後悔もいらないわ。さあ、騎士人形アーサーよ。その者を斬り伏せなさい!!



「まさに醜悪とは、この事ね。本当に、人の命を、なんだと……!」
 それは、フェルト・フィルファーデン(糸遣いの煌燿戦姫・f01031)の心からの叫びであった。
 フェアリーの体は体長5mはあろうかという肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』からすれば、米粒のような存在でしかなかっただろう。
 けれど、今『ブラッドルビーランド』で繰り広げられていた『人間牧場』の後継を目の当たりにし、その身に抱えきれぬほどの怒りを灯しながら、フェルトは空に舞い上がる。

「――させないわ。これ以上アナタの好きにはさせない」
 見下ろす先にはわらわらと奴隷たちが満身創痍たる『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の元に集う光景。
 彼等は何も理解できないのだろう。
 恐怖と絶望で心が麻痺してしまっている。だから、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の悪逆なる振る舞いを受け入れるしかないのだと思っているのだ。
 そんなのは、フェルトの思う世界なんかではない。
「皆の生命も、世界も全て、アナタに壊させはしないわ!!」

 それは、希望を願う誓いの守護者(ガーディアン・プリンセス)としての想いの発露であったことだろう。
 無数に浮かぶ光の障壁蝶たちが、集まってくる奴隷たちを阻む。
 これ以上、彼等の生命を、尊厳を『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の好きにさせてはならぬとフェルトは障壁蝶たちでもって、彼等の歩みを阻むのだ。
「もう、何も心配しなくっていいの。あんな者に従わなくっていいの」
 フェルトは騎士人形と共に高速で空を舞い、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』へと斬りかかる。

「なんだい、いきなり! この小さいのは! 羽根虫みたいなのがアタイにたかって!」
 振り払うように隻腕の『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の腕が薙ぎ払う。
 しかし、それを障壁蝶が受け止め、フェルトは叫ぶのだ。
「アナタは、人の命をなんとも思っていないのね。そんなことだから、自分のことしか大事にできないのでしょう!」
 高速で舞う騎士人形が、凄まじい速度で持って『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の肉体を切り刻む。
 隻腕となった腕の健を切り裂き、片足となりながらも人間椅子に座る彼女の太ももに剣を突き立てる。

 それはフェルトが奴隷たちに万が一危害を加えぬようにと思っての行動だった。
「ぐっ、このっ! この!」
 羽虫を払うように『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が腕をふるおうとするが、すでにだらりと腕が落ちている。
 まともに動かすことはもうできないだろう。
「どう? 痛いかしら。痛いわよね?」
 フェルトはきっと自分の姿を『ブラッドルビー・ヴォーテックス』が捉えることはないだろうとさえ思っていた。

 彼女は自分だけしか見ていない。
 他の何者をも見ていないのだ。そんなものに自分の姿が捉えられるわけがない。
「……その痛みを皆も味わったのよ」
 今更謝罪も後悔もいらない。
 そんなものをフェルトは望んでいない。彼女が望んでいたのは、喪われた生命の回帰のみ。
 それが叶えられることはないと知りながら、それでもフェルトは命じるのだ。
「さあ、騎士人形アーサーよ。その者を斬り伏せなさい!」

 命じる指がたおやかに。
 されど、激情を乗せた指は、如実に騎士人形アーサーに伝わり、その剣の鋭さへと変わる。
 放たれた斬撃は肉塊女帝の胴に再び袈裟懸けの一撃を刻み、罰せられた者の明かしたる十字を深々と与えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
最早、語る口すら持ちません
貴女を討ち、その悪逆を終わらせる事こそ騎士としての責務
その非道の対価、命で贖って頂きます

使用用途…戦闘への強制参加が認められる対象の保護を申請…例外承認
電脳禁忌剣を励起しUC起動

超高速連続空間転移で女帝や奴隷達に視認もさせず戦場を移動
右、左、背後、正面、頭上
常に移動し奴隷達を翻弄
女帝を剣の斬撃で繰り返し攻撃

何時までも座っていると血流が悪くなる物
空の旅へご招待いたしましょう

正面転移からの騙し討ち大盾殴打で脳を揺らし
首を掴んで戦場の上空へ女帝と共に空間転移
落下する敵を更に切り刻み

奴隷達が受け止めれば被害は甚大ですね…

●推力移動での脚撃で吹き飛ばし落下地点をずらし



 十字に刻まれた罪ありき者。
 それが肉塊女帝『ブラッドルビー・ヴォーテックス』であった。
「クソが……クソが……! 人間がアタイをここまで追い詰める……!? こんな現実があっていいわけがない! あっていいわけがない!!」
 その怒号は『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の偽らざる想いであったことだろう。
 自分が此処まで追い詰められ、クライスト・ヴォーテックスと同じ末路をたどるなどと思うこともなかったのだ。

 他者は嘲り、蔑む対象でしかなかった。
 自分だけが世界にあれば良いとさえ思ったのだ。
 他者の痛みなど感じることもない。人の生命の尊厳など在ってないようなものであったからこそ、ここまでの悪逆非道を行えたのだ。
 だからこそ、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、満身創痍たる『ブラッドルビー・ヴォーテックス』に語る言葉を持ち合わせては居なかった。

「最早、語る口すら持ちません。貴女を討ち、その悪逆を終わらせることこそ、騎士としての責務」
 トリテレイアの電脳が銀河帝国未配備A式連続空間転移兵装(アレクシアウェポン・テレポートアタック)の使用の認可を申請する。
 すでに多くの奴隷たちが猟兵達によって救われ、開放されている。
 けれど、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を放っておけば、再び奴隷に身をやつす者たちが出てくるだろう。
 ゆえに、ここに己の剣を扱うことの承認を求めたのだ。

 ――例外承認。

 それを持ってトリテレイアは電脳禁忌剣を抜き払う。
 励起した力が迸り、一瞬で彼の身体が虚空に消える。
 いや、違う。
 空間転移でもって彼の認識範囲に己自身を移動させたのだ。認識すらできぬ速度。
 それは戦場を瞬く間に駆け抜ける。
 何処にでも届き、余さず救う手。
 それこそが騎士の理想であるというのならば、ここに限定的であれど、トリテレイアは理想を現実に変えていたのだ。
「あなた達は、隷属を強いられるために生まれてきたのではありません。決して」
 トリテレイアは、凄まじい速度で次々と転移し、『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を翻弄する。

 剣戟が『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を打ち据える。
「何時までもそわっていると、血流が悪くなるもの。空の旅へご招待いたしましょう」
 瞬間、トリテレイアは正面から転移し『ブラッドルビー・ヴォーテックス』を大盾の一撃で持って空へと打ち上げる。
 脳を揺らす強打の一撃は『ブラッドルビー・ヴォーテックス』に抵抗を許さない。
「ぐ、ぉっ!? この、っ、アタイを! 機械人形風情が!」

 揺らされた脳であっても、憎まれ口は変わらない。悪辣であることは変わらない。悪逆であることは変わらない。
 ならば、騎士たらんとする己が為すべきことは唯一。
『ブラッドルビー・ヴォーテックス』の首をつかみ、さらなる上空へと転移する。
「ここならば、奴隷も関係ありますまい。あの方たちを巻き込むことは我々の本意ではないゆえ……二度と大地を踏むこと叶わぬと知って頂きます」
 空中で体勢を整えることの出来ない『ブラッドルビー・ヴォーテックス』をトリテレイアは空間転移で縦横無尽に斬りつける。

 終わらぬ連撃。
 それはまるで悪夢であったことだろう。
「こんな、こんな! アタイが此処で終わる!? そんなわけ、が――!」
 伸ばした手すらトリテレイアは切り捨て、『ブラッドルビーランド』の象徴たる巨大なる肉塊女帝のモニュメントへと、その巨体を蹴り飛ばす。
 その一撃は、モニュメントを砕き、へし折って大地へと沈む。
「……貴女の悪意は此処で終わりを告げる。人々は希望を取り戻すでしょう。それが例え、長きにわたる苦しみに満ちた戦いであったとしても、悪意がないのであれば、人の善性がそれを為す」

 それを猟兵達は知っている。
 トリテレイアは己の剣に誓い、そして、他の猟兵たちも知るだろう。
 開けぬ夜はない。
 終末の黄昏があるのならば、夜明けもあるのだ。それを知らしめるように、猟兵達は暗闇齎す『ヴォーテックス一族』の一角を突き崩したのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月02日


挿絵イラスト