6
【旅団】夢みるメリリー・プラネット

#キマイラフューチャー #【Q】 #旅団

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー
🔒
#【Q】
🔒
#旅団


0




 これは旅団シナリオです。
 旅団「XXX dogma」の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです。

●陽気なポッピンタウン
「テーマパークへ遊びに行かないか」
 見知った面々の貌を眺める鐵の男――ジャック・スペード(J♠️・f16475)が溢した誘いは、聊か唐突なものだった。
 彼曰く、キマイラフューチャーでいま、或るテーマパークが話題になっているらしい。その名も「メリリー・プラネット」。なんでも、オーソドックスな遊園地とバーチャルアミューズメント施設が混合した、画期的なテーマパークなのだとか。
「ジェットコースターや、メリーゴーランドなんかは勿論。VRでガンシューを楽しめたり、大画面で音ゲーを遊べたりもするらしい」
 案内をする本人は余りそういう遊びに縁がないらしく、パンフレットを見ながら時折頸を傾げて居た。けれども聞いてる面々には既知の物のようなので、ジャックは更に説明を重ねて往く。
「敷地内でコンコンコンすれば、軽食が飲物が出て来るみたいだな。色々と種類があるようなので、食べ歩きも楽しめるんじゃないか」
 どうやらノックする場所によって、遊具やゲームをモチーフにした様々な菓子や軽食が楽しめるようだ。皆で色々な場所をコンコンコンして、コンプリートを目指すのも楽しいかも知れない。
「……あと、ショップには動物の耳を模したカチューシャがあるそうだ」
 恐らくはテーマパークのマスコットたちをモデルにした、一種の装飾なのだろう。こんなのどうするんだ? なんて不思議そうに頸を捻る男は、テーマパークの魔力を知らないのだ。そう、一歩足を踏み入れたら最後、多くの者が動物耳の装飾に何故か惹かれてしまうことを。
「未来都市のテーマパークだ。きっと刺激的な1日になるんじゃないか」
 楽しい想い出が造れると良いな――。
 粗方の説明を終えてパタンとパンフレットを閉じたジャックは、改めて面々の貌を見回して、マスクの奥で小さく笑った。
「それじゃ、行こう」
 鐵の掌中で剣を模したグリモアが、くるくると回り始める。導く先はポップでパンクなサイバータウン――キマイラフューチャー。


華房圓
 OPをご覧くださり有り難う御座います。
 こんにちは、華房圓です。
 キマイラフューチャーより、旅団シナリオをお届けに参りました。

『シナリオについて』
 旅団シナリオなので、アドリブ多めになる予定です。
 また本章のPOW,SPD,WIZについてはあくまで一例です。
 気にせず自由にお楽しみください。

 お声がけ頂いたら団長のジャックも登場します。
 以下はテーマパークの詳細です、ご参考までに。

『メリリー・プラネット』
●普通の遊園地にありそうな遊具は何でもあります。
 OPに登場した遊具以外で遊んで戴くことも可能です。

●バーチャルゲームについて。
 VRガンシューや、プロジェクションマッピングな音ゲーなどを想定しています。
 他にしたいことありましたら、プレイングにどうぞ。
 また、版権に抵触しないようご注意ください。

●小腹が減ったら敷地内をコンコンコン。
 ノックした場所に応じて様々な映え系の軽食が出てきます。
 食べ歩きを存分にお楽しみください。

●ショップでは動物モチーフの付け耳カチューシャ(帽子も含む)が買えます。
 装備したい人は、何の動物の物を付けるかご記載ください。
 (猫、犬、などなど一言のみの記載でもOKです!)

『その他』
 オーバーロードの有無は其々のご判断にお任せします。
 (※統一しなくても大丈夫です)
 リプレイは付け耳を買って装備する辺りからスタートの予定です。
 旅団シナリオなので、合言葉等の記載は不要です。
 それでは、ごゆっくりお楽しみください。
165




第1章 冒険 『ライブ!ライブ!ライブ!』

POW   :    肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!

SPD   :    器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!

WIZ   :    知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!

👑1
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エドガー・ブライトマン
すごいな、とても賑やかだよ
手記を見るに、テーマパークに来たコトはあるみたい
あっはは、耳をつけているのかい?よく似合うねえ!

私も付けてみようかな
手に取ったのは、金の毛並みの犬の耳
髪と同じ色だし、なんか馴染む気がする…

コンコンと叩いてみれば、出てきたものは…えっなにこれ?
タピオカミルクティー!
すごい、もちもちしている。不思議な食感だ…

VRガンシュー、私もやってみようかな
ジャック君もやってみようよ
こういうゲームは初めてだ。どうやるんだろう?
興味津々にチュートリアルを眺め

あっ私アレに乗りたい!ジェットコースター!
見るからに面白そうだよ。是非乗ろう
あっはは、速い!楽しい!
楽しそうなもの、全部乗りたいなあ


レッテ・メルヴェイユ
耳があるのでカチューシャは皆さんのを見て楽しみます!
その代わりにこちらの帽子を被りますね!
犬の耳がこの耳と被ってもふもふましましですよ!

早速のコンコンですね!
わあっ!チュロスですか?!おいしそうです!
コンコン 出てきました!ポテトです!
しかも作りたてのポテトですよ!
とってもはしゃいじゃいます。

VRガンシューが気になっていたのですが
どなたかやりませんか?勝負です!
夢中になって遊びます!

ジェットコースターはドキドキします
思いっきり叫んで楽しみたいです!

足が震えますがとても楽しかったです!
次は何に乗りますか?メリーゴーランドや観覧車にも乗りたいです!


琴平・琴子
こういう所ではこれを付けるのでしょう?(熊
こそばゆい気持ちも皆が付けてれば気にせず
ジャックさんは付けないんですか?お耳

そういえばコンコンコンすれば食べ物が出てくるとか聞きますが…
わっ本当に出てきました…
チュロス、美味しいです!

ゲームは見て応援するだけ
皆さん頑張ってください
楽しそうな皆さんのお顔に此方も楽しくなって
当てるの御上手ですねと拍手

あれに、乗るのですか…ジェットコースター…
えっ別に怖くないですけど…いや大丈夫ですが!
あ、思ったより大丈…夫じゃないです!ひゃあ!

とても楽しかったですが
…人間はやっぱり地に足付いていなきゃ駄目だと思うんです
観覧車やメリーゴーランドなら平気ですよ
ゆっくりですもん


泡沫・うらら
まぁ、とても賑やかで楽しそうな所
賑やかな装飾と音楽の数々に周囲を見渡して

既に綻ぶ面々のかんばせに釣られ浮かぶはゆるやかな笑み
ふふ、かぁいらし
皆さんとても良くお似合いですよ
勿論、ジャックさんも

噂のコンコンを体験するのは初めて
見様見真似で指を打てば此方はアイスのよう
清涼感のあるフレーバーに舌鼓を打ち
他にもどんなお味があるやろかと

アトラクションは他の方にお任せ
皆さんのお荷物を預かって
御手前と感想に疑似体験を楽しませて貰いましょう

一日過ごしても疲れより充足感が勝るのは
それだけ充実しとった証拠やろか

ゆるやかに移ろう観覧車からの景色に今日一日を振り返って
手に残る想い出の品に、改めての感謝を


コッペリウス・ソムヌス
夢のように賑やかなところだねぇ
皆の愉しむ声がよく聴こえるように、
なんて嘯きながら兎耳を被って
案内人のジャックも
どんな動物になってるのか楽しみだよ
似合う、似合う

コンコン叩いて食べものが出るなら
チュロスやポップコーンも
叩いた場所で違った味とか出てきそうだね
あちらこちらと何の味が楽しめそうかな

色々あるから迷ってしまうけど
ジェットコースターには
乗ってみたかったんだよね
すごく高かったり速かったり
うーん……楽しみを理解するには
何回か乗った方が良さそうかも
連続で行くのは遠慮しておくんだけど

メリーゴーランドや観覧車で
のんびり景色を眺めるのもいいなぁ
珍しいものは積極的に楽しんで
刺激的な1日を覚えておこうか


コノハ・ライゼ
やっぱ形からよねぇとノリノリで
ジャックちゃんも着けるデショ?犬猫兎……熊で琴子ちゃんと親子熊?
狐キャラっていたっけ、アタシそれにするー

コンコンはしだすと絶対ハマる気しかしない
季節限定モノ出てくるまで諦めないわ
ミンナ合わせればコンプリートいける?
ちょっと一口、と写真撮らせて!ナンて職人気質ものぞかせて

絶叫系大好き!
撮影ポイントでは両手あげてイイ笑顔
あと高いトコから落ちるヤツと空中ブランコ乗りたぁい
……ガンシュー?ジャックちゃん得意よね、どーぞ!
射撃も音楽もニガテと後ずさりつつも、見てるのは楽しいから応援するわ

観覧車、空に近付けるから好きよ
あ、アソコに記念撮影コーナー!
集合写真撮ってもらいましょ!


グィー・フォーサイス
わあ、皆に素敵な耳がついているね!
僕は耳よりも角がメインなんだけど、羊
ぐるんとした角が僕の三角耳の下に嵌るんだ

風船くれるの?
わ、飛んでっちゃう!

皆の美味しそうなお菓子を出したら一口頂戴ってするよ
僕もコンコン
チョコスプレーがカラフルなチェロスだ
味は…あ、イチゴ味!
食べ物を持っている状態で写真を撮りたいなぁ
遊園地って感じがする

乗り物は全部好きだよ
…え、身長制限がある?
誰かと一緒なら乗ってOKなら
ジャック、抱えてくれないかい?
君の腕は頑丈だからどのベルトよりも安心できるよ

ガンシューティング!
実は僕、銃がとても得意なのさ

のんびりな乗り物はね
乗ると少ししんみり
楽しい所から切り抜かれた感じがするんだ


ロキ・バロックヒート
すごーいきらきらしてる
猫のカチューシャ付けたーい
ジャックくんにはぴかぴか光るやつどう?
どれ付けても似合いそうだよね
全部盛る?
琴子ちゃんが熊なの可愛いな

チュロスもポテトもおいしそう
こっちのコンコンは何かなっと
あっ、タピオカドリンクだ
うららちゃん飲む?とか勧めてみたりして

ねぇねぇジェットコースター乗ろう
乗った時の皆の反応が楽しみだからとかじゃないよ
レッテちゃんいい悲鳴~
コノハくんとだときっと何周もできちゃうね
えっコッペくんもっと乗らない?
両手離して足も浮かせたらスリル満点だよ
ガンシューは応援してようっと

集合写真もいいよね
グィーくんはジャックくんに抱えてもらうとかどう?
他にもめいっぱい楽しんじゃおう



●Merrily Planet
 サイバーポップなネオン煌めくゲートを潜り抜け、ひとたび足を踏み入れた其処は、近未来の趣溢れる夢のように陽気な世界だった。
 未来都市の遊園地らしく、妙に無機質な造形の建物はどれもピカピカと蛍光色に煌いているし、遊具も真昼間からネオンカラーの彩を放ち、訪れるキマイラたちの楽し気な様子を明々と照らしていた。そのなかでも最も目を惹かれるのは、園内をぐるりと一周するように走っている巨大なジェットコースターだ。
「まぁ、とても賑やかで楽しそう」
「テーマパークには前にも来たことが有る筈だけど、やっぱりすごい所みたいだ」
 パチパチと目の前で弾ける賑やかな彩の装飾と、気分を高揚させるように響き渡る明るい音楽。深海には無いそのふたつを前に、興味深げに周囲を見渡す泡沫・うらら(混泡エトランゼ・f11361)。エドガー・ブライトマン(“運命“・f21503)もまた手記を捲って記録を確認しながら、久々に触れる遊園地の空気に感嘆の聲を溢していた。
「すごーいきらきらしてる」
「お昼なのにネオンが凄いです!」
 煌びやかな光景にゆるい歓声を上げる、ロキ・バロックヒート(暁夜・f25190)。レッテ・メルヴェイユ(ねこねこ印の郵便屋さん・f33284)もまた、キラキラピカピカの光景に目を爛々とさせていた。
「わあ、キマイラフューチャーの遊園地って、こんな感じなんだね」
「夢のように賑やかなところだねぇ」
 グィー・フォーサイス(風のあしおと・f00789)が興味津々と云った様子で耳をピコピコと動かす傍ら、コッペリウス・ソムヌス(Sandmann・f30787)はのんびりと周囲を観察して居た。
「聊か賑やか過ぎる気もしますけど……」
「ふふ、アレはストレス発散の悲鳴だからヘーキよ」
 不意に頭上から響き渡るジェットコースターの轟音と悲鳴に、琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)は少しそわそわ。そんな彼女を落ち着かせるように、優しく笑い掛けるコノハ・ライゼ(空々・f03130)。他の面々も大なり小なり気になって居た様子で、ちらちらと頭上を仰いでいた。
 とはいえ、遊園地を楽しむには順番があるのだ。降り注ぐ楽し気な悲鳴に僅か気を取られながらも、先ず一同が向かったのは園内のショップだった。お目当ては「メリリー・プラネット」のマスコットキャラクターを模した、可愛い付け耳カチューシャである。
 何せ行き交うキマイラたちは皆、かわいい飾り耳を揺らしていたし、ゲートの側で可愛く手を振って迎えてくれるマスコットたちを見ていたら、何だか買いに行かずにはいられなかったのだ。わいわい店の中に入って行った一行が、それぞれの頭に飾る装飾耳を吟味すること凡そ四判時。会計を済ませた面々は、店の外で選んだ付け耳を見せ合いっこ。

「……こういう所ではこれを付けるのでしょう?」
 琴子が選んだのは、ココアブラウンな熊耳のカチューシャ。ふわふわで小さな其れは、まるでテディベアのような愛らしさ。少しこそばゆい気持ちもするけれど、今日は皆も一緒だから気にならない。
「琴子ちゃんは熊なんだ、ちょっと意外で可愛いね」
「そういうロキさんは、猫のお耳ですね!」
 気紛れな黒猫の耳を揺らして、微笑ましそうに笑うロキ。そんな彼を「お揃いです」と、耳を揺らして嬉しそうに見上げるレッテ。
「こういうのはやっぱ、形からよねぇ」
 続々と耳を飾って往く仲間達を眺めて頷きながら、コノハもノリノリでカチューシャを装着。ピン、と立った綺麗な銀彩の毛並みの耳は――。
「それは……狐のマスコットの耳かな。似合ってるね」
「ふふ、アリガト。コッペリウスちゃんのは、兎さんかしら?」
 問うコノハに、ゆるりと首肯するコッペリウス。琥珀彩のロップイヤーを抑えながら、そうっと囁くのはこんな科白。
「皆の愉しむ声がよく聴こえるように――」
 素敵ね、と双眸を弛ませて相槌を打つコノハ。兎の耳なら喧騒のなかでも、皆の聲をきっとよく拾ってくれる筈だ。
「あっはは、皆よく似合うねえ!」
 明るい笑聲を響かせるエドガーの耳に揺れるのは、髪と同じ黄金に煌めく艶やかな――……。
「あ、イヌくんだ!」
 いち早く正解を言い当てたのは、ビーストマスターのグィーである。ああ、と納得したように聲を漏らす一行。自身の狐耳に触れながら、コノハは頸を傾けて。
「エドガーちゃんは犬耳なのね、一瞬お揃いかと想っちゃったわ」
「この色が何だか馴染んでね。言われてみると、少し似てるかな」
「キツネくんは金色のイメージがあるからね」
 ふたりの耳を交互に見比べて、「狐は猫にも似てるなあ」なんて思うグィー。そんな彼を見下ろすエドガーは、はたと何かに気付いた様子。
「そういえば、既に耳が生えてるふたりは何を被るんだい?」
 確かにどうするんだろう、と一行の眼差しが既にふわふわの獣耳を持つレッテとグィーに注目する。
「私は帽子を被りました!」
 どやっと胸を張りながら、頭にかぶった帽子に触れるレッテ。そう、彼女が今日被っている帽子は、いつもの郵便屋の帽子ではない。黒を基調とした、上品なキャスケットなのだ。そこから揺れるのは、ブラウン彩のもふもふな獣耳。
「エドガーさんと同じ犬の耳です。本当の耳と被って、もふもふましましですよ!」
「ほんとうです、凄くもふもふ……」
「ふふ、ちょっと触って見たくなっちゃうね」
 帽子からはみ出したレッテの地耳もふわふわ揺れるものだから、琴子の眸はつい釘付けに。ロキも「わあ」と緩い歓声を上げながら、和んだ眼差しをふたつの耳に注いで居る。
「僕は耳よりも角がメインなんだ」
 一方のグィーは、柔らかな三角形のお耳辺りを指差して「分かる?」とそわそわ。燥ぐ皆を静かに見守って居たうららが、ふと双眸を瞬かせる。
「あら、其方は何処かで見覚えが……」
「此処のメインマスコット、メリリーさんの角ですね!」
 そう、グィーが選んだカチューシャは、羊の巻き角タイプ。レッテが云った通り、メリリー・プラネットのメインキャラクター「メリリーちゃん」とお揃いの装飾だ。
「このぐるんとした角がね、ちょうど耳の下に嵌るんだ」
 意外と収まりの良い角に触れながら、グィーは満足気な貌。確かに羊角は彼の可愛さを引き立てて居るので、面々も釣られて微笑まし気な眼差しに成る。
「ふふ、かぁいらし」
「グィーちゃんも充分、此処のマスコットに成れそうねぇ」
 そんなこんなで其々の耳の見せ合いっ子がひと段落したあと、最後に注目を集めるのはこの男――。
「ジャックさんは付けないんですか?」
「え、勿論着けるデショ?」
「ジャックくんは、どれ付けても似合いそうだよね」
「どんな動物になったのかな、楽しみだよ」
 今回の案内人、ジャック・スペード(J♠️・f16475)である。
 機械にしては異様に身形に気を使う男は、皆と色々見て回るのが楽しかったらしく、意外とすんなり獣耳を購入した。その結果が、
「……こうなった」
 頭部の構造上、カチューシャは無理だったので。代わりに熊の耳が揺れる、フェドーラハットを被ったようだ。因みに此の耳、中心部分がピカピカと光っていて、自棄にご機嫌である。
「似合う、似合う」
「あら、琴子ちゃんと親子熊ね?」
「お揃いですね、ジャックさん」
 可愛いものとは無縁である故に、照れているのだろう。ああ、と相槌を打ちながらも、視線をそわそわと泳がせるジャック。
「ぴかぴか光るやつ、やっぱり似合うね。いっそ全部盛れば良かったのに」
「ラーメンじゃないんだぞ」
 緩い調子で戯れるロキとジャックを楽し気に眺め、それから既に綻んでいる面々を見回したなら、うららのかんばせにも釣られて緩やかな笑みが咲く。
「皆さんとても良くお似合いですよ」
 付け耳は辞した彼女だけれど、楽しそうな皆の姿を眺めているだけで、こころは充分満たされるよう。うららもまた、賑やかな此の場の雰囲気を楽しんで居た。
「勿論、ジャックさんも」
 おっとりと微笑めば、鐵の男はぶっきらぼうに礼を紡いで、帽子を目深に被り直した。其の様を見れば益々、人魚の乙女の笑みは深くなる。
 斯くしてばっちり装備を整えた面々は、アトラクションに挑む為にぞろぞろと歩き出した。然し、彼らに近づく影がひとつ――。
「あら、あのコ……」
「ここのマスコットキャラだね」
 最初に気配に気付いたコノハとコッペリウスが、ふと足を止める。
 羊のマスコットキャラクター『メリリーちゃん』(着ぐるみ)が、風船片手に此方に歩み寄って来ているのだ。どうやら彼女は、サービスをしに来てくれたらしい。一同の中で唯一の“子ども”である琴子に「はい」と風船を差し出してくれた。
「……いいんですか、有難う御座います」
 子ども扱いされるのは余り好きじゃない。けれど、折角の持て成しなので断るのも気が引けたから、素直に風船を受け取って礼を云う琴子。次に着ぐるみが風船を差し出すのは、彼女と揃いの角を付けたグィーの方だ。多分、彼女なりのファンサービスなのだろう。
「あ、風船くれるの?」
 既に大人だけれどそんなこと気にせずに、嬉しそうに風船を受け取れば、跳ねるような足取りで歩き始めるグィー。けれどもその瞬間、強い風が吹いた。
「……わ、飛んでっちゃう!」
 風船を掴んだ小柄なケットシーの躰が、ふわり、宙に浮く。そのまま風に吹かれて、童話よろしく何処かへ誘われていくグィー。
「まぁ、大変」
「わあ……ああいう御伽噺なかったっけ」
「アタシが知ってるのは鴨と傘ねぇ」
 うららが驚いた様に双眸を瞬かせる傍ら、呑気な会話を交わすロキとコノハ。実際、ちょっと微笑ましい光景だ。とはいえ、迷子になっては大変と一同は後を追う。
「おっと――」
 グィーの後を追うこと少し。
 風船を手繰り寄せたのは、人助けを生きがいとする王子様、エドガーだった。丁重に片手でグィーを受け止めれば、そうっと地面に降ろしてやる。
「怪我はないかい、グィー君」
「ありがとう、エドガー。少しびっくりしたけど平気さ」
 後を追いかけて来た一同の間に、安堵の空気が流れる。こういうハプニングも、きっと良い想い出の一つになる筈だ。――ところで、此処は何処だろうか。一行の眼前には、遊園地らしくない無骨なドームがぽつんと佇んで居る。
「あっ、ここ!」
 聲に喜色を滲ませたレッテが、ぱたぱたと猫の耳を振った。跳ねるこころを表わす様に、尻尾もぴょこぴょこ揺れて居る。
「バーチャルゲームが楽しめるみたいですよ! 入ってみましょう!」
 どうやらこの施設は、ジャックの説明にも出て来た“目玉”のひとつらしい。彼女の提案に否がある筈も無く。近未来のゲームに期待を弾ませながら、一行は中へと入って往く。

●Cyber Games
 施設のなかは、所謂『ゲームセンター』によく似ていた。何方かというと、近年流行りのVR専門ゲーム施設に近い印象だろうか。プロジェクションマッピングで遊べる音ゲーで遊んで居るキマイラの姿や、VRゴーグルを付けてバイク型の筐体を操縦しているキマイラの姿もある。そのなかでも、特に猟兵たちの目を惹き付けたのは――。
「ガンシューが気になっているのですが、どなたかやりませんか?」
 そう、プレイヤーが襲い来る怪人たちを銃で撃退する、ガンシューティングゲーム。VRゴーグルを装着することで、臨場感たっぷりの戦いが楽しめるのだとか。
「ガンシューティング!」
 レッテの誘いに真先に反応したのは、グィーであった。たたっと筐体に駆け寄れば、備え付けの銃に手を伸ばし、どやっと構えて見せる。
「実は僕、銃がとても得意なのさ」
「銃で戦うゲーム、面白そうだね。私もやってみようかな」
 普段は流麗なレイピアで戦場に立つエドガーも、珍しい得物には興味津々な様子。斯くして3人のプレイヤーが揃った訳だが、奇数だと収まりが悪い。あと1名、誰が遊ぼうかという空気が漂った所で。
「……ジャックちゃんも得意よね、どーぞ!」
 コノハがドンっと、ジャックの背を押した。実は彼、射撃が苦手なのである。序に、音楽の類も。そろそろと後退るコノハに、鐵はかくりと頸を傾ける。
「最後の1枠だろう。俺が貰ってもいいのか?」
「うん、ジャック君もやってみようよ。きっと楽しいハズさ」
「じゃあ、ヨロシク頼む」
 エドガーにも誘われて、ジャックものっそりと位置に着く。これで、プレイヤーは全員揃った。銘々それぞれのサイズに合うVRゴーグルを装着し、プレイヤー1のレッテがスタートボタンを押せば、OPムービーのスタート。
「お荷物は私がお預かりしますよ。グィーさんは特に、其方を持った侭だと遊びにくいでしょう」
「ありがとう、うらら!」
 其の隙に銃を手に取る皆の所までそっと歩み寄り、気遣いを見せるうらら。寧ろ帰るまで此れは預かって貰おうかな――なんて思いながら、グィーは彼女へ風船を手渡すのだった。
「こういうゲームは初めてだ。どうやるんだろう?」
「的に狙いを合わせてトリガーを引く、それだけさ」
 興味津々にチュートリアルと銃を交互に眺めるエドガー。傍らのジャックは、カチカチとトリガーを引いて銃をゆびに馴染ませていた。
「なるほど、上手く当てられると良いなあ」
「あ、ジャック。肩借りるね」
「ドウゾ、あんたの特等席だ」
 小柄な体躯のため画面との距離が遠いグィーが、ぴょんとジャックの方に飛び乗れば、今度こそ準備完了。
「さあ、誰が一番敵を倒せるか――勝負です!」
 レッテの号令で、4人の銃が一斉に火を噴いた。

「こうして見てるだけでも、楽しいわねえ」
 大人数で遊びに来た客が退屈しないように、との配慮からだろうか。筐体の傍には見学者用のモニターがあり、其処から4人のプレイを見学できるらしかった。
 戦場に身を置くものとして、仲間の戦いぶりは興味深い。コノハはまじまじとモニターを覗き込む。
「実践と違って結構むずかしそうだねぇ」
「皆さん、頑張ってくださいね」
 袖で口許を隠しながら、じぃ、と画面を眺めるロキは付け耳も相まって猫のよう。琴子はモニターのなかで繰り広げられる激戦に、真剣な貌で応援の言葉を紡いでいる。

「やった、また一体倒しましたよ!」
「僕も何体かやっつけたよ!」
「レッテ君もグィー君も凄いね、私も頑張らないと」
「敵が増えて来たな、また爆弾を投げよう」
 ガジェットの心得があるレッテは、慣れた調子で索敵し素早く引鉄を引く。グィーは息を止めて意識を集中させることで、正確無比な射撃の腕を披露していた。エドガーも器用な性分なので、狙った獲物は必ず撃ち落として居る。ジャックと云えば、宵越し銭は持たぬ主義らしく――拾った端から爆破アイテムを使いまくっていた。
「わあ、爆弾の勢い凄いなあ」
「アイテム活用数なら今の所、一番なんだが」
「勝負は撃破数でのカウントですからね!」
「ジャック頑張れ――……あ、中ボスやっつけたよ!」

「勝負事となると、皆さん矢張り熱くなるんですねぇ……」
「得意と云ってただけあって、グィーはなかなか上手いね」
 ゲームに熱中する4人を、和やかに見守るうらら。自身も射撃が得意とするコッペリウスは、興味深げに彼らの射撃の腕前を眺めていた。
「皆さん当てるの御上手ですね」
 放たれた弾丸が敵を打ち取れば、ぱちぱちと拍手を溢す琴子。楽しそうな4人の聲を聴いている内に、何だか此方まで楽しくなってきて、気付けば愛らしいかんばせに笑みを咲かせていた。

 ――かれこれ30分ほど経った頃。
 4人は漸くラスボスを斃して、ゲームは一先ずの終幕を迎えた。普段から戦いに身を置いているだけあって、誰ひとり欠けた者のない完勝だったと云う。

●Pleasant Gourmet
「激戦だったね、お疲れ様」
「うんうん、みんな上手だったねぇ」
「ふふ、張り切り過ぎてしまったよ」
「頑張ったので、ちょっとお腹が空いてしまいましたね」
 労ってくれる見学組へ王子様らしく、にこやかに手を振るエドガー。一方のレッテは、何処かに軽食が無いかときょろきょろ視線を巡らせていた。
「そういえば、コンコンコンすれば食べ物が出てくるとか聞きますが……」
 半信半疑ながら、筐体近くの壁をトントントンとノックしてみる琴子。すると、虚空にぽんっと顕現する、芳ばしい馨のチュロス。
「わあっ! チュロスですか?! おいしそうです!」
「わっ、本当に出てきました……」
 慌ててキャッチした琴子は、まじまじと其れを眺め遣る。サイバーパンクをイメージしているのか、チュロスは七彩に彩色されていた。勇気を出して、ひと口。
「――美味しいです!」
 ぱあ、と少女のかんばせに笑みが咲く。空腹と琴子の笑顔に背中を押されたレッテも、その辺の壁をコンコンコン。食欲をそそる馨と共に現れたのは――。
「あ、ポテトです!」
 ほかほかと湯気を立てる、フライドポテトである。
 銃弾をイメージしているのか、少々丸い形をしている。またディップ用に、ケチャップとマヨネーズもちゃんと添えられていた。
「しかも作りたてですよ!」
「わあ、チュロスもポテトもおいしそう」
 やった、と燥ぐレッテの耳と尻尾が、嬉しそうにぴょこぴょこ跳ねる。それを和んだように眺めつつ、良かったねと相槌を打つロキ。
「ねえねえ、僕にも一口頂戴」
「アタシにも! 序に写真も撮らせて!」
「ええ、どうぞ」
「あつあつですから気を付けて下さいね!」
 スンスンと鼻を鳴らしたグィーは、食欲をそそる馨に誘われて。コノハも物珍しい色合いや容の料理に惹かれて、ふたりの許へ。
 カラフルなチュロスはまったりとした甘さで、少し溜った疲れを癒してくれる。ほかほかのポテトはバターと塩気が効いていて、食べ応えも十分だ。
「楽しそうだね、私もやってみよう」
 エドガーも賑わう皆に釣られて、コンコンコンと壁を叩いてみる。すると、目の前に現れたのは――。
「……えっ、なにこれ?」
「あ、エドガー君のは『タピオカミルクティー』だね」
 そう、琥珀彩の中に黒い球体を沈めた飲物。近年売れに売れているドリンク、タピオカミルクティーであった。ゲームのエンブレムが描かれたカップに入ったそれを、不思議そうにのぞき込むエドガー。取りあえず飲物に違いないらしいので、ストローから飲んでみる。
「すごい、もちもちしている。不思議な食感だ……」
「ふふ、陸では流行りのようですよ」
 神妙な貌でタピオカを噛み締めるエドガーに、おっとりと双眸を弛ませながら、うららも皆に倣って、見様見真似でコンコンコン。噂には聞いていたけれど、これを体験するのは初めてだ。果たして、どんなものが出て来るのだろうか。
「……まあ、アイス?」
 ひんやりとした其れを掌にそっと受け止めて、静かに観察する。蓋には「Smoke」とだけ書かれていた。恐る恐る蓋を開けてみれば、灰彩の中身が貌を出す。爽やかな馨に導かれる侭、一緒に出て来たスプーンでそうっとひと掬い。
「さっぱりとしたお味ですねぇ」
 口に入れた瞬間、最初に感じたのはミントの清涼感だった。鼻に抜ける僅かに甘い馨から察するに、ラベンダーも混ぜてあるのだろう。意外な味わいのフレーバーに口許を弛ませながら、うららはぽつりと独り言ちる。
「他にもどんなお味があるやろか」
「チュロスもアイスも、叩いた場所で違った味が出てきそうだね」
 コンコンコンで顕現させたポップコーンに舌鼓を打ちながら、コッペリウスは此の世界の不思議な事象に僅かな好奇を滲ませ笑う。
「全部確かめて見たくなっちゃうわねぇ、よし」
 皆が次々と色々な軽食を出すものだから、コノハの料理人魂にも俄然火が付いた様子。彼はガンシューの周辺だけでは飽き足らず、施設中の壁をコンコンコンとノックし始めた。
「季節限定モノが出てくるまで諦めないわ」
「俺も手伝おう。パンフレットによると『マロン』が限定品らしいぞ」
 触発されたジャックもまた、コンコンコンと壁をノックして回る。こういう宝探しのような趣向は、鐵のこころを擽るのである。
 そうして、皆がそれぞれの軽食を食べ終わった頃――。ふたりは漸く、ゲーム施設コンコンコンの旅から帰って来た。遣り切った様子の彼らの腕には、限定品のマロンアイスと、様々な軽食が抱かれていたと云う。

 ふたりが持ってきた軽食を食べ歩きしながら、一行はバーチャルゲームの施設を後にする。次は遊園地を楽しむ番。でも、その前に――。
「あちらこちらと、何の味が楽しめそうかな」
「こっちのゾーンにも色々なお菓子があるといいですね!」
 果たして、遊園地の方でコンコンコンすると何が出て来るか。大なり小なり皆、興味を抱いて居た。一同は食べ歩きしながら、アトラクションを巡ることにする。
「案の定ハマったわ……。ねえ、ミンナ合わせればコンプリートいける?」
「きっといけるさ、次は私も手伝ってあげる」
「協力すればきっと、総て集められますよ」
 職人魂を震わせながらそんなことを溢すコノハを、優しく激励するエドガーと琴子。勿論、皆が食べれなかった分は、大食いのコノハと満腹の概念がないジャックが美味しく戴くので、何も心配はない。
「そろそろこの辺で、僕もコンコンしてみようかな?」
 ふとグィーが立ち止まったのは、ゴーカート乗り場の傍。コンコンコンと、周辺をノックしてみれば、現れるのはハンドルの容をしたチュロス。チョコスプレーが塗されていて、とてもカラフルである。
「わあ、車をモチーフにしてるのかな」
「どんなお味か気になりますねぇ」
「……あ、イチゴ味!」
 ロキとうららが見守る中、チュロスに齧りついたグィーの眸に星が瞬く。ゲームセンターで食べたチュロスとはまた違い、ほのかに酸味が在って美味しい。
 興味を抱いた他の面々もノックすれば、ハンドルの容をした、チョコレートやシナモンを始めとした、様々なフレーバーのチュロスが出て来る。
「食べ物を持っている状態で写真を撮りたいなぁ」
 片手に、或いは両手にチュロスを持って食べ歩く皆を見ながら、グィーはそわそわとそんな呟きを溢す。「ほら、遊園地って感じがするからさ」なんて笑えば、ジャックが懐から携帯端末を取り出した。
「よし、撮りながら行こう」
「あ、あとでアタシにもデータ送って頂戴」
「あっ、宜しければ私にも……!」
 スマホや携帯を持ってる面々とのアドレス交換を終えて、チュロス片手にいざ、次の目的地へ――。

●Roller Coaster
「あっ、私アレに乗りたい!」
 次に楽しむアトラクションの決め手と成ったのは、不意に脚を止めたエドガーの口から零れた、そんな科白だった。天を仰ぐ彼の煌めく眸には、轟音と共にレールを走るジェットコースターが映っている。
「見るからに面白そうだよ、是非乗ろう」
「あ、いいわね。絶叫系大好き!」
「ねぇねぇ、皆で乗ろうよ。――あ、皆の反応が楽しみだからとかじゃないよ」
「オレもジェットコースターには一度、乗ってみたかったんだよね」
「僕も、乗り物は全部好きだよ」
「俺もジェットコースター乗りたい」
 絶叫マシンに、たいへん乗り気な男性陣たち。レッテも「ドキドキですね!」なんて、かんばせに笑みを浮かべて居る。
「あれに、乗るのですか……」
 頭上から響く悲鳴に、ただひとり、琴子の貌が僅か引き攣った。それに気付いたうららが、嫋やかに頸を傾ける。
「琴子さんは、うちとお留守番しておきます?」
「そうだな、高所が怖いなら無理しない方が良い」
「えっ、別に怖くないですけど……」
 鐵の男がそんなことを言って来るものだから、思わず強がって仕舞う琴子。ジャックは不思議そうに「そうなのか」と双眸を明滅させた。
「では、うちは皆さんのお荷物と一緒にお留守番を」
 くすり、と微笑まし気な笑みを溢しながら、うららは皆の荷物を預かって往く。人魚の繊細な躰に、絶叫マシンの圧は重い。
「いいの? じゃあ、何か差し入れをっと」
 此処コンコンコンはどうかな、と。僅かに興味を滲ませながら、周辺の壁をノックするロキ。すると、現れたのは――。
「あっ、タピオカドリンクだ」
 それは、しゅわしゅわと細やかな泡が弾けるライチソーダの中。丸いタピオカがくたりと沈む、涼しげな一杯。蜂蜜彩の眸を瞬かせたのち、ロキはかくりと頸を傾ける。彼女はこういうの、飲めるんだろうか。
「うららちゃん、飲む?」
「有難う御座います。ほな、お言葉に甘えて……」
「じゃあ、このチュロスもあげるわ」
「良ければこのロリポップも摘まんでくれ」
「あ、では此方のひと口ドーナツもどうぞ」
「ポン菓子もありますよ!」
「うらら君に差し入れかい? 私が見つけたキャンディもあげよう」
「オレのポップコーンも摘まんで良いよ、キャラメル味だけれど」
「あっ、未だポテトも残ってるみたいだよ、うらら」
 うららが白い腕を伸ばせば最後、次々に差し入れが手渡されて。うららは双眸をぱちぱちと瞬かせたのち、ふ、と赤い唇を優しく弛ませた。

 斯くして、ジェットコースター乗り場へと向かった一行。
 此処まで来たら後は覚悟を決めるだけ、次々と案内されていくが――。
「……え、身長制限がある?」
 ケットシーゆえ、身長が100㎝に満たないグィーは係員に止められていた。身長の基準を満たしている誰かと一緒に乗るのは構わないと云われ、彼の眼差しは鐵の男に注がれる。
「ジャック、抱えてくれないかい?」
「お安い御用だ、ドウゾ。固い膝で済まないが……」
 先に座席に乗り込んだジャックは両手を広げ、どこか申し訳なさそうに彼を迎え入れる。そんな鐵に、グィーは「大丈夫」と穏やかに頸を振ってみせた。
「君の腕は頑丈だから、どのベルトよりも安心できるよ」
「ああ、確り捕まえておくさ」

 一方、同じ頃。
 レッテは偶々隣り合わせた琴子の貌を、心配そうにのぞき込んで居た。なんだか、此れに乗り込んだ時からずっと俯いて居るような――。
「琴子さん、さっきから元気ありませんが、大丈夫ですか?」
「いえ、大丈夫です!」
「それなら良かったです。ジェットコースター、楽しみですね!」
 にっこりと笑い掛けて来るレッテを見れば、もはや自棄気味に肯くしかない。ちゃんとベルトも嵌めてるし、確りと安全バーを握っておけば大丈夫。そう内心で自分を納得させていたら、――がたん。遂に、ジェットコースターが発進した。
 ガタンゴトン、ガタンゴトン。ゆっくりとレールの上を進んで往くジェットコースター。ドキドキはするけれど、まだ周囲を見渡す余裕はある。
「あ、思ったより大丈、夫」
 ――ぎゅんっ。
 油断した瞬間、視界が急転直下した。轟音と共にジェットコースターが、レールの上をもスピードで落ちて往く。
「……じゃないです! ひゃあ!」
 思わず悲鳴を上げる琴子、隣に座ったレッテも楽し気にきゃーきゃーと悲鳴を上げているので、目立たないのが幸いだろうか。
「レッテちゃんいい悲鳴~」
 神であるロキはこういう時でものんびりと、周囲を観察して居た。斯ういう楽し気な絶叫は、聴いて居て楽しいものだ。
「すごく高かったり速かったり……なんだか忙しない乗り物だね」
 同じく神であるコッペリウスもまた、平然とした貌をしている。この遊具の何がそんなにひとを惹きつけるのか、彼は心底不思議がっていた。
「あっはは、速い! 楽しい!」
「そろそろ撮影ポイントよ、両手上げちゃいましょ」
 ジェットコースターの爽快感に無邪気に燥ぐエドガー。そんな彼に、更なるやんちゃを吹き込むコノハ。
「いいねえ、こうかい?」
「上出来! 笑顔も忘れずにネ」
 ――カシャッ。
 とびきりの笑顔を浮かべて万歳したふたりの前で、フラッシュが光る。重力に導かれながら、「あとで写真買いに行こう」と彼らはこころに誓ったと云う。
 楽しい想い出が、またひとつ。

「まだ足が震えますが、とても楽しかったです!」
「レッテさんのお聲、地上まで届いていましたよ」
 ジェットコースターが止まった後、一同はうららの許へ集まっていた。
「とても楽しかったですが……。人間はやっぱり、地に足付いていなきゃ駄目だと思うんです、ええ」
 きゃあきゃあと燥いで居たレッテだけでなく、琴子にとっても刺激的な時間だったようで。少しグロッキーな彼女は、悟ったようにそんなことを訥々と呟いて居た。
「うーん……楽しみを理解するには、何回か乗った方が良さそうかも」
 コッペリウスは、最後まで楽しさが理解できなかった様子。或いは、何回も乗ろうと想う時点で、気に入ってるのかも知れないが。
「まあ流石に、連続で行くのは遠慮しておくんだけど」
「えっ、コッペくんもっと乗らない?」
 そんな彼の科白を聴いたロキは、きょとん。平気なら続けて乗れば良いのに、と言いたげな貌である。
「両手離して足も浮かせたらスリル満点だよ」
「それって楽しいのかなぁ」
 嗾けるロキと納得いかない貌のコッペリウスの傍らで、いたくジェットコースターを気に入ったらしい鐵はぽつり。
「……俺もあと2周位したいな」
「あ、高いトコから落ちるヤツとか、空中ブランコにも乗りたぁい」
 そんなジャックの呟きを知ってか知らずか、コノハは眸を煌めかせながら、遠くの方でグラグラゆれたり、上下に激しく移動したりする絶叫マシンを眺め遣る。
「お、あのマシンも楽しそうだな」
「楽しそうなもの、全部乗りたいなあ」
「ふふ、コノハくんとだときっと何周もできちゃうね」
 ジャックとエドガーもまた、彼の視線を追い掛けて雰囲気をそわつかせる。そんな3人を見遣るロキは、ふふりと微笑まし気に双眸を弛ませるのだった。流石に女性陣の身が持たないので、絶叫マシン巡りは後ほど有志で巡る約束をして――。

「メリーゴーランドや、観覧車にも乗りたいです!」
 人生は緩急が大事なので、次の乗り物は穏やかなものを。
「ええ、それなら平気ですよ。ゆっくりですもん」
「のんびり景色を眺めるのもいいなぁ」
 珍しいものは色々と積極的に楽しみたいので、コッペリウスもレッテの提案に首肯する。コースターの激しさと、ゆったりとした眺めを同じ日に楽しめるなんて、刺激的な想い出に成りそうだ。
「まぁ、それならお供させて下さいな」
 見学や留守番に回っていたうららも色好い返事を溢せば、否など出る筈も無い。一行は一先ず、観覧車の方へと向かったのだった。

●Twilight
 ネオンの煌めきを放つ巨大な観覧車は、ゴンドラもまた大きい。楕円形の其れに、なんとか全員で乗り込んだ一行は、黄昏に染まり始めた園内を硝子越しに眺め遣る。
「やっぱり、観覧車は落ち着きますね」
「眺めも凄くきれいですね!」
 漸く訪れた安寧に、琴子はほっとした貌。レッテも煌めく園内を見回して、歓声を溢している。
「観覧車、空に近付けるから好きよ」
「ほんとだ、夕陽が近いね」
 愉しげに口許弛ませて空を見上げるコノハ、釣られてロキも天を仰ぐ。赤赤と照り付ける夕陽は未だ眩しくて、つぅと彼は蜂蜜彩の双眸を細めた。
「充実した一日でしたねぇ」
 夕陽に照らされ、ゆるやかに移ろう景色を眺めながら、うららは静かに今日のことを振り返る。疲れよりも充足感が勝るのは、それだけ此のひと時が楽しかったから。
 未だ食べきれていない差し入れの菓子を食みながら、彼女は佳き時間を共に過ごしてくれた仲間へ、改めての感謝を抱くのだった。
「のんびりな乗り物はね、少ししんみりしちゃうな」
「グィー君はこういう乗り物、苦手なのかい?」
 硝子越しに夕陽を見つめながら、グィーがぽつりと呟きを溢す。そんな彼に、不思議そうに頸を傾けるエドガー。
「なんだか、楽しい所から切り抜かれた感じがするんだ」
「言われてみると、遊園地から随分と遠ざかってしまったね」
「ちょっと分る気がするな……」
 ゆるりと下界を眺め、彼の言葉に納得を示すコッペリウス。ジャックもまた、釣られて少ししんみりしていた。

「……あ!」

 夕暮れが連れて来た僅かな寂しさを振り払ったのは、コノハの聲。皆の視線が一斉に彼に――否、彼の視線の先へと集中する。
「アソコに記念撮影コーナー!」
「まぁ、本当。陸に居る時は気づきませんでした」
「意外と近くにあるみたいですね」
 コノハの視線の先を覗き込み、僅かに眸を円くするうらら。琴子は冷静に観覧車との距離を測っていた。
「集合写真、撮って貰いましょうよ!」
「記念撮影かあ、楽しそうだね」
「きっといい思い出になりますね!」
「そうだね、今日の記念に」
 紡がれた提案には次々と、是の聲が上がって往く。ロキは悪戯な眼差しで、グィーとジャックを見比べて笑う。
「いいね、グィーくんはジャックくんに抱えてもらうとかどう?」
「お願い出来るかい、ジャック」
「ああ、勿論だ」
「じゃあ、降りたら早速撮って貰いましょ」
 先程までのしんみりとした空気は何処へやら、一気にゴンドラの中は賑やかに。そう、お日様は大部沈んで仕舞ったけれど。今日はまだ、終わって居ないのだ。

「その後はメリーゴーランドにも乗りたいです!」
「一緒に乗りましょうか、レッテさん。宜しければ、うららさんも」
「そうですねぇ、ご一緒させて貰いましょか」
 乙女たちは、ゆるりと廻るファンシーなひと時に思いを馳せて。過行く時を、とびきりの宝物に変えようとする。

「私はやっぱり、あの激しく揺れるゴンドラが気になるなあ」
「アタシも気になるー、乗りに行きましょうね!」
「あ、僕も乗りたいな」
「その後は落下する塔の方にも行かないか」
「皆ああいう乗物が好きなんだね」
「コッペ君も行こうよー」
 一方の男性陣は、刺激的なひと時に思いを馳せて。残りのひと時をめいっぱい愉しむ心づもり。

 皆でもっともっと、楽しい時を過ごそう。
 カルーセルを楽しんで。絶叫マシンで燥ぎ倒して。食べ歩きに勤しんで。序にメニューのコンプリートにこころを燃やして……。
 そうしたらゲートを潜った後もきっと、寂しく無いから。
 それに、想い出の品だってちゃんとある。
 金の犬に、茶色の犬、ココアの熊に、青い人魚、ロップイヤーに、銀の狐、可愛い羊に、黒い猫。あと、大きな熊一匹。
 皆で撮った集合写真は見返す度に、今日の「楽しさ」を想いださせてくれるだろう。きっと、何年経とうとも。

 まだ、夜は始まったばかり。閉園の時は遠い。
 メリリー・プラネットは、これから更に煌めきを放ち、もっと素敵な想い出を紡いで往く――。

≪End≫

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月27日


挿絵イラスト