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不思議な迷宮のフィロソフィアさん

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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 グリモアベースの窓際でルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)が頭を下げる。傍らにはキノコ図鑑があった。
「よくぞいらしてくださいました」
 ルベルは床に膝を付き、説明を始める。

「アルダワ魔法学園の迷宮に災魔が出現いたします。名は、フィロソフィア。錬金術により劣化版"賢者の石"を素材として造られたメイドさんなのですが」
 ルベルは困ったように耳を垂らす。
「際限なく世話を焼こうとするためご主人様を次々と堕落させる危険なメイドさんです。もちろん、人を襲う災魔でもあります。そのため、迷宮の外に出て来る前にそのメイドさんの退治をお願いしたいのです」
 ルベルは魔導式天球儀の仕掛けを作動させた。壁に投影されたのは迷宮の構造図だ。
「僕は皆様を迷宮の1層に転移いたします。1層は、巨大なキノコの森となっています。個性豊かなキノコが群生する森です……」
 ルベルはキノコ図鑑を開く。
「水を吸って雲を貫くまで伸びるキノコ。これは、水を吸わせすぎると天井を破壊してしまい、危険でしょうね。
 火に翳すと凍るキノコ。これは、無害でしょうか。
 鹿肉の味がするキノコ。何故でしょうね。
 ソウハダケ。これは、競争をするのだそうです。。
 ゲンワクダケ。幻覚を見せるようです」
 説明する瞳はとても真面目な色を浮かべていた。

「そして、2層ですが、2層は古の魔法使いが大図書館を真似ようとして失敗したのだそうで、巻く本棚が作る道や橋、壁に階段。
 読むことが出来ないほど巨大な本。あるいは小さな本が大量に積まれているのです。そして、本は全て白紙のようです」
 ルベルは頭を下げた。
「と、そんな2層を突破し、3層にてフィロソフィア討伐となります。
 どうぞよろしくお願いいたします」


remo
 おはようございます。remoです。
 初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
 今回はアルダワ魔法学園での冒険です。

 1層はキノコの森迷宮での冒険。
 2層は図書館迷宮での冒険。
 3層はメイドさんとバトルです。

 キャラクター様の個性を発揮する機会になれば、幸いでございます。
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第1章 冒険 『キノコの森で大冒険』

POW   :    キノコの木を殴り壊せる,硬いキノコを折れる,キノコの木を登れる,

SPD   :    火を起こせる,キノコで簡易小屋を組める,ソウハダケに競争で勝てる

WIZ   :    キノコの毒性を理解,方向感覚を失わない,キノコを調理可,図鑑を作成可,

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シェーラ・ミレディ
【WIZ】
賢者の石!
劣化とはいえその価値は確かなものだろう。どうにかオブリビオンから回収できないだろうか……(ぶつぶつ)
ともあれ、このキノコの森を突破せねばどうにもならんな。
賢者の石が僕を待っている。手早く行こう。

学習力で道を見失わないよう気を付けつつ、世界知識と情報収集で危ないキノコとそうでないものを見分け、他の猟兵にも情報を共有しておこう。
ついでに鹿肉のキノコがあれば懐に入れておく。食材ならば持ち運びもしやすいし売れるだろう。他は保管が難しそうだからなぁ……。
僕は料理は苦手だが、できる者がいればキノコを渡して調理してもらっても良いかもしれない。


ナイ・デス
……キノコ
キノコ
……全部を食べるのは、時間かかりそう、ですね
色々なキノコ、楽しんで進みましょうか。ソラ(f05892)

楽しそうなソラの後に続く形で、森を探索します
ソラが楽しそうだと、私も楽しい
ですけど……ソラが拾ったあの毒キノコ、どうしましょう……
とりあえず、キノコパワーを上手く使って
生きてるように動くキノコさんと仲良くなったりもしつつ
ソラのいる高いところまで、水を吸って伸びるキノコに乗って追いついたりします
キノコに触れて、生命力吸収で私回復、キノコ消滅させたりもして

キノコバーベキュー
……勇気と無謀は違う、ですね
ソラ、大丈夫です?今、解毒しますね

生まれながらの光で、治療(解毒)
そんな休憩時間


ソラスティベル・グラスラン
アドリブ歓迎

わぁ…ここがキノコの森ですか!
右を見ても左を見ても、上まで見ても立派なキノコさんが!
ふふふ、此度の冒険もきっと楽しいものになりますよ、ナイくん(f05727)っ!

童話のような不思議な世界
キラキラ目を輝かせて、この世は珍しいモノばかり!
やはり冒険は楽しい!隣に頼れるパートナーさんがいれば、猶更ですねっ♪
ついでに見た目美味しそうなキノコを拾い
ひょいひょいと高いキノコの上に登ってみたり
おーい!こっちですよーナイくーん!

道中に二人で小休止
拾ったキノコを串に刺して、たき火で焼いていただきます!
大丈夫ですよナイくんっ、【勇気】は毒を凌駕するのです!

ウッ……ゆ、【勇者理論】…!(状態異常力重視)


蛇塚・レモン
ホント、色んな世界に色んな食材があるんだね~っ!
面白いキノコがあったら、あたいの農園で育ててみたいな~っ?

まずはマッピングしないとだねっ!
『魔法の辞典』を用いて、このフロアの地図を作成
(学習力+地形の利用+第六感+野生の勘)
迷ったら空を飛んで地上を見下ろしてみるよっ
(念動力+空中戦+視力+情報収集)
途中で見つけたキノコは食用かどうか、毒があるか否かを辞典に問い掛けて答えてもらおうっと
辞典さん辞典さん、このキノコは安全でおいしい?
キノコ図鑑があるのなら、それを一読しておきたいなっ!
(世界知識+学習力)

誰かが誤って毒キノコを食べたら救命救急リュックから薬を出して応急手当てをするよ
(医術+激痛耐性)


トリテレイア・ゼロナイン
キノコの森で冒険ですか…
食事機能が無いので誤って危険なキノコを食べることは無いと思われますが、幻覚系の胞子を放つキノコには注意しなければなりませんね
なぜか機械の身でも幻覚を引き起こしますし……

「怪力」で立ち塞がるキノコを破壊しつつ奥に進んでいきましょう
ん? この足元にあるのは…ゲンワクダケでは……


私の盾が話しかけてきました
なに?
自分を蛮用しすぎ? 敵を殴る鈍器につかったり、投げ捨てたり、担架替わりに地面を引きずったり、挙句の果てにサーフボード替わり、少しは労わってくれ?

いや、便利なんですから使いますよ…
…実家に帰らせていただきます?
待ってください!まだ色々と試したいことがー!

……幻覚か


宮落・ライア
うむ。うむ?うぬ?
きのこいっぱいわさわさうごいたりなんだりかんだり
む?むー?
絵本の世界かな!ファンタジーだな!ファンタジーだったな!

とりあえず斬れば良いって言ってたし斬ればいっか!

どれだけ太かろうがバットを振るように剣刃一閃
まるで達磨落としの様にスコーンと一閃
多分やってる間に楽しくなって層攻略とか忘れてやってる。

使える技能は【怪力】ぐらい


アイリス・スノーキャッスル
【SPD】をメインに行動いたします
サバイバル的な事をしますから、『オルタナティブ・ダブル』で人手を増やしたい所存です。

簡単な設営や見張りは任せられるはずですから祝福人形【彩陽】を渡して起き警戒してもらい、私は絡繰蝋人形【百零美人】をお供にキノコを探して見ようかと思います

スキル自体まだまだですが、咄嗟に襲われたりした際は見切りを使ったり、複数いるなら敵を盾にいたします

ソウハダケなるものがある様なので、私でも勝てるのか挑戦してみたいものです。運良く見つかればいいのですが


カチュア・バグースノウ
ふぅん…やりすぎなメイドさんね
一応、止めておきましょうか

そんなことよりキノコね!
あたしが気になるのは、火をかざすと凍るの!
どれくらい凍るのかしら?
キノコで釘が打てるくらい?
血花応報で焚き火して試したい!(めらめら
食用かは試す勇気がないわね…

あと鹿肉の味がするキノコ、これは食べてみたいわ
醤油持参よ
ついでだから焚き火で焼いて、まずは一口
……(生焼けだわ)
焼ける具合もキノコなのね…
じっくり火を通して醤油をかけて再び!
……(普通だわ)
美味しくないけど不味くもない…って感じね…

アドリブ、共闘歓迎




 迷宮1層を猟兵たちが歩いていた。
 周囲には巨大なキノコが聳え立ち、キノコの森となっている。迷宮内には風はない。迷宮天井には魔法仕掛けの不思議な照明がある。

「わぁ…ここがキノコの森ですか!
 右を見ても左を見ても、上まで見ても立派なキノコさんが!」
 明るい声が響いた。
 2人連れの猟兵ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)とソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)が姉弟のように言葉を交わしている。
「ふふふ、此度の冒険もきっと楽しいものになりますよ、ナイくんっ!」
 ソラスティベルがカーネリアンの髪を意気揚々と揺らして『小さなパートナーさん』を見れば、深紅の瞳がいつものように見つめ返してくる。
「色々なキノコ、楽しんで進みましょうか。ソラ」
 大切なパートナーへと首を傾ければ白髪がさらりと流れる。

 隙間なく生えているのは2人が両手をつないでも抱えきれないほどの太さの柄を持つ大きなキノコ。柄は白すぎない自然の色で、押すとふにゃりと曲がる。手を離せばへにゃりと元に戻った。
 キノコは高さも太さもまちまちでカサの色や模様も様々だ。
「ナイくん! このキノコさん美味しそうですよっ♪」
 ソラスティベルが摘まみ上げたのは手のひらに収まるサイズの艶やかな赤い宝石のようなカサのキノコだ。
「ナイくんの眼の色と同じで、とってもキレイです!」
 毒のあるキノコだ。ナイはそう思ったが、花が満開に割いたような笑顔でそう言われれば、毒があるとは言いにくくなってしまった。
 ソラスティベルは大切な宝物を見つけたような顔でキノコを仕舞うとキラキラ目を輝かせて足首の高さに綿雲のようなカサを広げていた大きなキノコに跳び乗った。
 ぽよん、とカサが揺れてソラスティベルの体がぽよんと宙に跳ぶ。
「わぁーっ♪」
 足を着き、再びぽよんと跳び。まるでトランポリンのようにキノコジャンプを楽しむソラスティベルはそのままキノコからキノコへとジャンプしていく。

「おーい! こっちですよーナイくーん!」
 高いキノコの上からぶんぶんと手を振ればナイが真下に生えていたキノコに乗り、ザバザバと水をかける。
「わ」
 ぐんぐんにょきにょきとキノコは伸びた。同じくらいの高さに伸びればナイは手を差し伸べる。ソラスティベルが手を取り同じキノコへと飛び乗ると、ナイは足元のキノコから生命力を吸収する。少しずつ、少しずつ。
 キノコはぐんぐんと縮み、地面が近くなり……やがてへたりと萎むようにして消滅した。
「すごい! 不思議です。
 やはり冒険は楽しい!
 隣に頼れるパートナーさんがいれば、猶更ですねっ♪」
 トン、と地面に足を降ろしてソラスティベルが再びキノコの森を走り出す。
(「ソラが楽しそうだと、私も楽しい」)
 パートナーの楽しそうな姿を見てナイはやわらかに頬を緩める。
(「ですけど……ソラが拾ったあの毒キノコ、どうしましょう……」)
 悩みはそれだった。

 道中、2人は拾ったキノコを串にさしてたき火で焼いてみることにした。
「大丈夫ですよナイくんっ、勇気は毒を凌駕するのです!」
 そう言って勇気を見せたソラスティベルは、しかし。
「……ウッ、……ゆ、勇気っくしゅ」
「ソラ!」
「っくしゅん! っくしゅ!」
 食べるとくしゃみを連発し始めた。くしゃみが止まらなくなるキノコ毒だ。
「……勇気と無謀は違う、ですね。
 ソラ、大丈夫です? 今、解毒しますね」
 治療をして一息つくと、2人の耳に賑やかな声と足音が聞こえて来た。

「協力して攻略しよっか!」
「ええ、そうですね」 
 そんなやりとりだ。

「他の猟兵がいるみたい、ですね」
 ナイが呟くと、ソラスティベルが立ち上がり、元気に手を振る。
「こんにちはー! こっち、2人組で参加ですー!」
 他の猟兵たちと合流し、賑やかな猟兵チームとなって一行はキノコの森の探索を開始することになった。

●冒険の仲間
「賢者の石! 劣化とはいえその価値は確かなものだろう。
 どうにかオブリビオンから回収できないだろうか……」
 ぶつぶつと呟くのは美貌の少年シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)だ。希少なミレナチィドールの躰の維持には金がかかる。その為に、と考えているのだ。艶やかな黒髪の下、紫水晶の瞳が周囲を探る。

「ふぅん……やりすぎなメイドさんね。一応、止めておきましょうか」
 と決意しつつ、そんなことよりとキノコの森を眺めているのはカチュア・バグースノウ(蒼天のドラグナー・f00628)だ。
 雪白の髪をかきあげれば長いエルフ耳と蒼い瞳のような宝石がついたピアスが見える。その容貌は野に咲く白い花にも似て可憐。少し話せば端正な容姿から予想されるのとは異なり豪放でおおらかな気風と判る。

 宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)がキノコの森をきょろきょろと見ていた。
「うむ。うむ? うぬ?」
 キノコが蠢いていた。それに目を丸くして、そっと小指でつつく。
 キノコににょきっと足が生えた。
「む? むー?」
「えっ!」
 傍にいた蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)が寄ってきた。2人で覗き込むとキノコは恥ずかしがって逃げていく。
 それを見送り、2人は顔を合わせた。
「絵本の世界かな! ファンタジーだな! ファンタジーだったな!」
 シェーラがそんな2人に情報を共有する。それはハズカシイタケというとてもシャイな性質を持つシイタケだ、と。
「ハズカシイタケは足の部分に毒があるんだ」
「ホント、色んな世界に色んな食材があるんだね~っ!
 面白いキノコがあったら、あたいの農園で育ててみたいな~っ?」
 UDCアースの山奥の廃村を開墾して農園を作っているレモンはワクワクと2メートルほどの丈のキノコをつっついた。ぷるんと揺れる薄茶のキノコは揺れるのみで足を生やす気配はない。
 ライアは大剣を無造作に振る。スパッとキノコが斬られて倒れてくるのを受け止めると、キノコは柔らかくふるるんとしていた。
「とりあえず斬れば良いって言ってたし斬ればいっか!」
 言うとバットを振るようにブンブンと剣を振り、振るごとに周囲のキノコが倒れていく。と、轟音が響いた。
「ん」
 視線を向ける。するとそこには進行方向に立ち塞がるキノコを怪力で次々と粉砕し、薙ぎ倒し、時には引っこ抜いている身の丈3メートルに届こうかという白きウォーマシン、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の姿があるではないか。
「よし、競争だ!」
 ライアは赤い瞳を炎の如く燃やした。
 トリテレイアとライアのキノコ薙ぎ倒し競争が今、始まる。

「競争ですか」
 春咲の花に舞い降りる淡雪の如き儚げな白の戦巫女がぼんやりとそれを見ていた。名は、アイリス・スノーキャッスル(囁く者・f03970)。静かな青の瞳が瞬き、細指が思案気に頬にかかる髪を払えば袖の振りがゆるりと揺れる。アイリスは精密な絡繰蝋人形の百零美人を連れていた。
「……?」
 ふと彼女が気付くとキノコが足を生やして彼女を見上げていた。これは。
(「ソウハダケ? でしょうか」)
 事前に図鑑で見た姿と酷似しているキノコを前にアイリスは息を呑む。
「……」
 見つめているとキノコはイッチニーイッチニーと準備体操をする。そして、クイクイとキノコの全身を挑発的に揺らした。
 競争するのだろう? と全身で誘っているのだ。
 コクリ、とアイリスは頷いた。
 アイリスとソウハダケのスピード勝負が今、始まる。

 ソウハダケは腕がない。だが、まるで地面に腕をつけるかのようにグッと前に体を倒した。
 スタートの合図と共に走り出す。ソウハダケも生やした足を懸命に動かしてキノコとは思えない走行を見せた! その速度はサラマンダーより速い!
 しかし、アイリスも負けていない。淑やかに、しかし恐るべき速さでソウハダケと並び走っていく……。

「これは鹿肉のキノコだな」
 シェーラは競争する猟兵たちの後を歩き、鹿肉のキノコを発見して懐に入れた。珍しいキノコだ。持ち運びもしやすいし売れるだろう。
「他は保管が難しそうだからなぁ……」
 その隣ではレモンが魔法の辞典を使いフロアの地図を作製しているのだが。
「あの2人、真っ直ぐ道を作ってるけどそっちで合ってるのかな」
 シェーラが懸念するのはトリテレイアとライアだ。
 視線を向けた先は広々と拓け、薙ぎ倒されたキノコの山となっている。かなり遠くにもはや米粒のようになった2人の姿が見えた。
「迷宮中のキノコを全部薙ぎ倒してくれそうだよね~っ!」
 レモンが楽しそうに笑った。そしてまるで羽が生えたかのようにふわりと宙に浮かび上がる。
「あたい、ちょっと上から見てみるよっ」
 レモンが上からキノコの森を見ると、どんどん薙ぎ倒されていくキノコの森の端に次の層につながると思しき扉が見えた。
「あっちでいいみたい。たぶん、あの2人ほっといたら道作ってくれそう~!」
 それはなにより、と言いながらカチュアはキノコを探している様子。
「何を探してるんだ?」
 シェーラが尋ねるとエルフ耳の先をひくりと揺らしてカチュアが応える。
「あたしが気になるのは、火をかざすと凍るの!
 どれくらい凍るのかしら? キノコで釘が打てるくらい?
 血花応報で焚き火して試したい!」
 その瞳が好奇心で煌めいているのを見て仲間たちは一緒になってキノコを探した。
「あ! あったよ!」
 キノコはすぐに見つかった。
「実験タイム!」

 レモンがワクワクと言う。シェーラがたき火を準備する。
「たき火を起こそうか」
「焼くわよ!」
 カチュアは指先から薪へと血を垂らし、ユーベルコードを発動させた。めらめらと赤い炎が上がる。
「それ~っ!」
 レモンが串に刺したキノコを炙る。
「わぁ!」
 ソラスティベルが声をあげた。隣でナイが目を丸くしている。
 彼らの見守る中、キノコがパリパリと凍っていき。
「ほんとうに凍った」
 知識でしか知らなかった現象を目の当たりにしてシェーラも見入っていた。
 串に刺さった凍ったキノコを持ち、カンカンと釘を打つ。
「「おおー」」
 仲間たちの見守る中、キノコは立派に釘打ちの役目を果たした。カチコチだ。
「こ、これは食べられるのでしょうか!」
 ソラスティベルがワクワクと尋ねる。シェーラは毒がないが食用としては流通していないと情報を教えた。
「火を通しての料理はできそうにないわね?」
「アイスにするとか?」
 仲間たちは料理方法を考える。料理方法は決まらず、保留となった。
「とりあえず保管して持っていこう。料理方法思いついたら食べればいいし、何かの役に立つかもだし」
 レモンが提案し、キノコは保管して持っていくことになった。

●少し時間が経ち
「これは珍しいクリスタルキノコ! 売れるキノコだ」
 シェーラはキノコの山を前にキノコの選り分けをしていた。
 仲間たちが採ってきたキノコや薙ぎ倒して運んだキノコは多い。
 もはや彼の周囲が森ではなく広々と拓かれた空間となっていた。見渡す限り薙ぎ倒されたキノコの残骸。
「いい勝負でしたね」
「うむ!」
 2層へとつながる扉までの道を拓き、戻ってきて互いの健闘を称え合っていたトリテレイアとライアが揃って南に視線を向ければ、アイリスとソウハダケが猛烈な速度で走り戻ってくるところだ。

「戻ってきましたよ、アイリス様が一歩リードしています」
 再び、今度は仲間全員でキノコを楽しもうとたき火を起こしていたソラスティベルとナイも視線を向けた。
「がんばれー」
「がんばってください!」
 仲間たちが応援する中、アイリスとソウハダケはぐんぐんと近づいてくる。

 アイリスは応援に少し驚きながらも着物を乱すこともなく涼やかに走る。ソウハダケをちらりと見れば、あれがゴールだ、と全身で訴えかけて来た。ソウハダケには、口がない。だが、長く肩を並べて走ったアイリスにはなんとなく言いたいことが伝わるようになっていた。ソウハダケに促されて見る先には。
「いつの間にかゴールテープが用意されて……」
 ソラスティベルとナイが両端を持つ白いゴールテープが用意されていた。
 ソウハダケがグンッと速度を上げた。ラストスパートだ。その足が高速で動いている。キノコの体は地に付きそうなほどに前傾していた。
(「……こちらも!」)
 アイリスも速度を上げ、駆ける。2人が並んで走り、風が前から後ろへと流れていく。最後は跳んだ。
「ゴール!」
 ライアが明るく言った。
「アイリスさんの勝ちー!」
 ふと見るとゴールテープの手前でソウハダケが転んでいた。悔しそうに身を起こすソウハダケにアイリスは優しく手を差し伸べ……ソウハダケには、手がなかった。
 少し迷い、アイリスは両手でソウハダケを抱えて起き上がらせた。
「よい勝負でした」
 言うとソウハダケも同意を示し、くるりとその場で一回転するとまたどこかへと走っていった。
「あれも好事家に売れそうだな」
 ぽつりとシェーラが呟いた。

●野営
「今日はもう遅いから明日次のフロアに進もうか」
 仲間たちは野営の支度をした。
 アイリスはユーベルコードでもうひとりの自分を呼ぶ。呼び出した自分に祝福人形の彩陽を持たせて周囲の警戒に当たらせる。
「キノコハウスをつくろう!」
 薙ぎ倒した巨大キノコを運び、凍らせたキノコで釘を打ち、簡易的な家のようなものが造られた。ぶよぶよとした弾力性のあるハウスだ。少し歪だが、出来は良い。猟兵たちはハウスに出たり入ったりして喜んだ。

 その後、ハウスの前で全員が集まり、料理慣れしているライアとレモンがメインになって、シェーラが選別した安全なキノコを料理をした。
「このキノコは毒があるのだが、ゆでて毒抜きをすれば食べられる」
「そうなの? 図鑑には食べてはならないってあったような」
 シェーラは頷く。そういえば、とトリテレイアも自身の世界知識のデータを参照する。
「データにも有毒で食用ではないとありますね」
「水に浸して2度ゆでる。この時、蒸気に気を付けるんだ。中毒になるからな。
 キノコは細かく洗う。ゆでている最中も取り出して水に晒し、湯も新しい水に変え……」
 シェーラの唱える手順に再びトリテレイアがデータを参照し、分析して応える。
「なるほど。確かにその手順を踏めば毒抜きが可能ですね」
 レモンも魔法の辞典を引いて調べた。
「辞典さん辞典さん、このキノコは安全でおいしい?」
 辞典もシェーラの知識を裏付けし、調理後のキノコの安全性を保証した。

「「できた!」」
 料理すること数分。
 一行は苦労した末にキノコを料理することができた。
 仲間たちは火を囲み、様々なキノコ料理に手を伸ばす。料理は大量にあった。
「大丈夫! いざという時は薬をもってきてるからね~っ!」
 レモンが救命救急リュックを見せると仲間たちは笑う。

「いただきます」
 アイリスは手を合わせ、箸を巧みに使って煮キノコを口に運ぶ。温かくつるりとした歯ざわり。噛めばやわらかな感触と共に旨味の濃厚な汁が美味しい。
 レモンはライアが作った卵入りキノコスープを啜り、目を細める。
「このスープ! 美味しい~っ! ライアさん料理うまいね!」
 一方でライアもレモンが作ったキノコ餃子を頬張り、サムズアップ。
「んっま! レモンさんこれウッマ!」
「……全部を食べるのは、時間かかりそう、ですね」
 ナイはキノコのホイルチーズ焼きを口に運ぶ。湯気が食欲を刺激する香りだ。とろりとしたチーズのかかったキノコはほくほくと旨味をつたえ。そして、温かい。
 隣を見るとソラスティベルは串に刺さった大キノコを齧っていた。串の下からタレが垂れそうになっているのを見て、ナイはそっとハンカチを差し出した。

 カチュアは鹿肉の味がするキノコを焼き醤油を漬ける。
「まずは一口」
 ニコニコと端っこを齧る。キノコはふにゃふにゃとしており、大変野生的な、
「……」
 生焼けだった。カチュアは眉を下げてもう一度キノコを焼く。
「焼ける具合もキノコなのね……」
 今度はじっくりと火を通す。見守る先でキノコが熱に炙られ、ぽたりと一滴、汁を垂らす。落ちた汁がじゅうっと音を立てて蒸発した。カチュアはキノコをひっくり返した。カサに美味しそうな焦げ色がついていた。
(「もう少し、もう少し」)
 すぐにでも食べてみたいが、念のために、とじりじりと焦げるキノコの端を見つめ。
「今ね!」
 頃合いを見てカチュアはキノコを掬い上げて醤油に漬けた。持ち上げれば醤油が垂れ、軽く湯気もたち。
(「美味しそうじゃない!」)
 カチュアはキノコをパクリと口に入れた。口の中でアツアツのキノコがつるりとしている。噛めば鹿と醤油の味が――、

 ……。

「……」
 味は普通だった。
「どうだった?」
 仲間の問いかけにカチュアは「少し期待しすぎた」、という顔をした。
「美味しくないけど不味くもない……って感じね……」
 微妙なのか、とシェーラは残念そうな顔をした。美味であれば高値で売れると思ったのだ。
「ま、まあ、珍しいキノコだからな」
 それだけでも売れるのではないだろうか。シェーラは気を取り直した。

「諸君、改めてになるが、これからの道中よしなに。力を合わせて迷宮攻略を成功させよう」
 シェーラの模造虹彩はたき火に照らされる仲間たちの顔をひとりひとり見る。味方の戦力を確認しつつ、先のフロアでは使う機会も出て来るだろうか? とシェーラは精霊銃の残弾を気にする。弾丸もタダではないのだ。勿論、治療費や衣服の修繕費だって馬鹿にならない。
 そして、ふと気付く。1人挙動の怪しい者がいる。
「おい。どうした?」
 仲間たちが視線を向ければ、ウォーマシンのトリテレイアがぶつぶつと自分の盾を見ながら独り言を言っている。
「変な薬を塗るのはもうやめてくれ? あれは役に立ったじゃないですか」
「トリテレイアさん?」
「どした、バグった?」
 仲間たちが声をかけるとトリテレイアはふと仲間を見て言う。
「盾が話しかけてきたのです」
 声は真剣な響きを伴っていた。
「あ」
 足元にゲンワクダケがある。仄かに紫の煙を吐くそれが幻惑しているのか。

(「ウォーマシンって幻覚にかかったりするの?」)
 そんな疑問が仲間たちの頭に湧くが、そんな中をトリテレイアはぶつぶつと盾と会話し続ける。

「なに?
 自分を蛮用しすぎ? 敵を殴る鈍器につかったり、投げ捨てたり、担架替わりに地面を引きずったり、挙句の果てにサーフボード替わり、少しは労わってくれ?」

 このウォーマシンは普段自分の盾をそんな風に使っているのか。シェーラは宝石めいた目に戸惑いを浮かべた。
「モノは……大切にしないといけないぞ。修繕するにも金がかかるのだし」
 思わず口にするが、視線の先ではさらに幻覚との話が盛り上がっているようだった。

「いや、便利なんですから使いますよ……
 ……実家に帰らせていただきます?
 待ってください! まだ色々と試したいことがー!」

 仲間が見守る中、トリテレイアは盾を自らの手で遠くに投擲した。そして自分で投擲した盾を追いかけていく。仲間たちはそっと視線を交わした。
「……解毒、します?」
 ナイが問う。
「面白いからもうちょっと見てみたい」
 レモンとライアが笑っていた。
 その後30分ほど彼らは料理を食べながら機械騎士の幻惑ショーを楽しんだ。

●2層へ
 翌朝、一行は2層へと繋がる扉の前にいた。
「さあ、次のフロアへ進みましょうか」

 そんな一行の前に、足を生やしたキノコが現れた。
「ソウハダケ!」
 ソウハダケは、1人の猟兵に2体ずつやってきて体を揺らす。
 一緒に行きたい、と、そう言っているようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『叡智なき書の迷宮』

POW   :    体力に物を言わせて踏破する。

SPD   :    蔦を使ったり、本を引き出し足場を増やす等の工夫で攻略する。

WIZ   :    本の並び等に規則性を見出し、出口を探す。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●2層
 2層に進んだ彼らの前には、大きな図書館のような空間が広がっていた。本棚がずらりと並んでいる。隙間から階段が見えた。階段は上に続いているものと下に続いているものがあった。階は吹き抜けになっており、上の階には橋がかかっているのが見えた。
「本がいっぱいあるね」
 フロアには巨大な本や小さな本が大量にあった。そして、どれも中身は白紙だが。
「らくがきしてる学生がいますね」
 よく見ると、フロアを過去に訪れたと思われる学生のらくがきが至るところにあった。
「出口はどこに?」
 それは、全くわからないのであった。
カチュア・バグースノウ
POW
んー。
とりあえず次の階層に向かう道を探しましょう!

とりあえず上に向かう階段を目指すか(ぽつり
あー猟兵の仕事でまで本に囲まれるなんて
まぁ勉強は嫌いじゃないから構わないんだけど…

ジャンプしたりしていけそうならいくわ
登ったりするのはおてのもんよ
任せて〜
本棚を傷めないようによじ登るのもあり
あと気をつけるのは、抜け道があるかどうか、ね!
上下左右キョロキョロして、抜け道や先に進む道がないかチェックよ
落ちないように気をつけて、と…

アドリブ、絡み歓迎


蛇塚・レモン
<WIZ>
う~ん、この落書き、もしかしてヒントじゃないかな~っ?
単なる落書きもあるけど、実はこういう中に重要な手掛かりがあるのは常套手段だよね、きっとっ!

ちょっと時間は掛かるけど、あたいは落書きがある書籍を集めるよ
念動力で空を飛んで(念動力+空中戦)高速移動して(ダッシュ)どんどん落書き本を集めてゆくよっ!
ユーベルコードを活用すれば沢山運搬できそうだよねっ

魔法の辞典さんと蛇神様の知識もフル活用してヒントを見出すよ
(世界知識+学習力+情報収集)
落書きの絵は出口の場所付近を示してるっぽい?
この絵の場所、見憶えないかなっ?
何気ない数式は出口の扉の開錠番号かな~っ?
第六感+野生の勘の閃きを大切にするよ


ナイ・デス
非常食、ゲット……なんて。冗談、です
キノコさん達、よろしく、です

はぐれないよう、頭にキノコをのせて、探索です
ソラも……ん。はぐれないように、気をつけて、進みます

しかし……白紙の本ばかり。残念、ですね
白紙で、好きなように書き込めるなら、夢とか、未来があるようにも、思います、けど
自由帳。なんにでも使える、なんにでもなれる本……

……ここを訪れた、学生の記録(落書き)をみるのも、楽しい、でしょうか
ここを先に探索した人の記録、ですから。何かいい情報も、あるかも、ですし

探索中、生まれながらの光で道を明るく
怪我した人がいれば治療して
橋や梯子などが必要な時は、レプリカクラフトで見た目悪くても頑丈なの、作ります


トリテレイア・ゼロナイン
これほどの本がありながら全て白紙とは…
各地の御伽噺や騎士道物語の収集が楽しみな私にとっては残念ですね

気を取り直して出口の探索と参りましょう
隠し腕を高所に撃ちこみワイヤーを巻きとって登りつつ、高所からフロアの構造を把握し探索に役立てましょう

「怪力」で大きな本を退かしたり、移動させたりして進路を確保できればよいのですが

手がかりが少ないので学生の落書きにそれを求めることになりそうですが、有益な情報が見つかるかどうか…相合傘とかありますね…
ここはソウハダケ達に協力してもらいましょう。迷宮攻略に役立つ情報を誰が先に見つけるか競争です。
(結果はMS様におまかせ、勝者には惜しみない称賛を)


宮落・ライア
ソウハダケが仲間になりたそうにこちらを見ている!
仲間にしま、する!

2層に着いたけど…うーんここってソウハダケには動き辛い場所だねー。手無いし。
とは言えボクの辞書にゆっくり進むとか言う言葉は!時と場所を選んだときにしか存在しない!
ゆえに! 片手でソウハダケ2つを抱えて、もう片方の腕だけでこのアスレチック(?)を攻略してやろうではないか!

いつもどおりの全速前進【ダッシュ】&【ジャンプ】!
たとえ高さが届かなくとも取っ掛かりがあれば【グラップル】【怪力】で片腕だけで登っちゃうぞ! きのこ抱いてるほうの腕に力入れすぎないように【かばう】ように意識するぞ。
距離が足りないなら【空蹴】だな!


ソラスティベル・グラスラン
いざ更なる迷宮の奥地へ!
ふふふ、楽しい旅のお供さんもできて賑やかになりましたね?
キノコさんはナイくん(f05727)のも合わせて4体
はぐれず進みましょうっ、はぐれても探しに行きますが♪

こ、これはもしや…『馬鹿には読めない本』!
あ、普通に白紙なのですね、ハイ
むぅ、どれもこれも白紙ですねえ
…好きなように書き込めるなら、わたしたちも落書きしちゃいましょうか?
ふふふ、キノコさん乗せたナイくんの絵ですよー♪

【怪力】で邪魔な物を退かしたり巨大な本を開いてみたり
冒険小説でもあれば喜んで読み耽るのですが…キノコの森と違い何とも退屈ですっ
キノコさんキノコさんっ、このフロアの事何か知りませんか?

アドリブ歓迎


シェーラ・ミレディ
【WIZ】
見渡すほどの本の山とは、圧巻だな!
……白紙では金にはならなそうなのが残念だが。

適当な一冊をメモ代わりに拝借して、「双宿双飛」で跳ね回って情報収集だ。本の配置や落書き等から、ヒントになるようなものがないか探すぞ。
情報を集めているうちに出口が見つかれば儲けものだが、そう上手く事は運ばんだろう。

なにか、こう、本棚が動いたような、こすれた跡等が残っていないものか……。
視力や暗視、第六感等も駆使し、些細な事も見逃さずに情報をかき集めよう。



●白紙の本に書置きがある
「とりあえず上に向かう階段を目指すか」
 カチュア・バグースノウ(蒼天のドラグナー・f00628)がぽつりと呟く。
「あー猟兵の仕事でまで本に囲まれるなんて。
 まぁ勉強は嫌いじゃないから構わないんだけど……」

 蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)が本の落書きをチェックする。
「う~ん、この落書き、もしかしてヒントじゃないかな~っ?
 単なる落書きもあるけど、実はこういう中に重要な手掛かりがあるのは常套手段だよね、きっとっ!」

「いざ更なる迷宮の奥地へ!
 ふふふ、楽しい旅のお供さんもできて賑やかになりましたね?」
 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)が陽気に声をあげる。

「非常食、ゲット……」
 ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)はソウハダケに悪戯めいて微笑む。ソウハダケは一瞬ビクッとした様子だったが。
「なんて。冗談、です」
 ナイが言うと安心したように体を揺らした。
「キノコさん達、よろしく、です」
 ナイはちょこんとしゃがむと、ソウハダケを持ち上げて頭に乗せた。はぐれないようにだ。
「ソラも……」
 見るとソラスティベルもニコニコとソウハダケを抱っこしている。
「はぐれず進みましょうっ、はぐれても探しに行きますが♪」
「ん」
 コクリ、とナイは頷いた。絶対にはぐれない。そして、はぐれた時は絶対に見つけ出す。そう決意して。

「見渡すほどの本の山とは、圧巻だな!
 ……白紙では金にはならなそうなのが残念だが」
 傍でシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)が本の山に視線をやっていた。
「白紙の本ばかり。残念、ですね」
 ナイがシェーラにそっと同意した。そして、思う。好きなように描きこめるなら夢がある、と。なんにでも使える自由帳は、なんにでもなれる本だ。

「ああ」
シェーラは入り口のすぐ横にページを開きっぱなしで置いてあった一冊を拝借する。メモ代わりに、と思って手に取ったのだったが、そのページには書置きがあった。

『ご主人様、3層までの道をお忘れですか?
 ソフィはお帰りをお待ちしています。
 3層入り口は階段をのぼって橋を渡った先の桃色の本棚にある絵本の5ページに書かれた合言葉を読み上げれば開きます。
 フィロソフィアより』

「……」

 シェーラは戸惑った。

(「3層への道……? いや、これは罠か? しかし」)
 沈黙するシェーラの周囲で仲間たちがワイワイと行動し始めている。仲間たちは偶然集まったメンバーたちであり、目的は同じではあるがとても自由に行動しているのだ。
「キノコさんキノコさんっ、このフロアの事何か知りませんか?」
 悩む耳にはソラスティベルがソウハダケに問う声がきこえる。ソウハダケはふるふると体を横に揺らした。

「ソウハダケが仲間になりたそうにこちらを見ている!
 仲間にしま、する!」
 宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)が楽しそうにソウハダケを抱えて図書館を走り出していた。
「ボクの辞書にゆっくり進むとか言う言葉は! 時と場所を選んだときにしか存在しない!」
(「時と場所を選んだら存在するんですね」)
 その背を見送りゆっくりと本を眺めているのはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)だ。
「これほどの本がありながら全て白紙とは……。
 各地の御伽噺や騎士道物語の収集が楽しみな私にとっては残念ですね」
 ぺらぺらと巨大な本をめくるトリテレイアの腰あたりからひょこっとソラスティベルが顔を覗かせた。
「こ、これはもしや! 『馬鹿には読めない本』!」
 ソラスティベルが大真面目に言うのでトリテレイアは真に受けた。
「な、なんですと」
 衝撃を受ける。自分は馬鹿だったのか! と。
「ただの、白紙です。ソラ」
 ナイが静かに訂正する。
「あ、普通に白紙なのですね」
 ソラスティベルが笑いながらペンを取り出した。色とりどりのカラーペンはどれも明るい発色のインクだ。
「好きなように書き込めるなら、わたしたちも落書きしちゃいましょうか?」
 言いながら白紙へとペンを滑らせる。
 ペンは迷いなくのびのびと紙の上を踊る。ソラスティベルはご機嫌に鼻歌を歌った。
「ふんふんふーん♪ まっしろい紙って気持ちよいですね!
 いっぱいいっぱい、描きましょうー♪ 好きなものを描くのは楽しいです♪」
 水色のペンで雲を描き。緑のペンで草を描き。
 ピンクのペンと黄色いペンで花を描く。
 そして、やわらかな曲線をやさしくはしらせて描くのは、人のかたち。
「ふふふ、キノコさん乗せたナイくんの絵ですよー♪」
 ナイは擽ったそうに笑った。
「私も。私も、ソラを描きます」
 大きな白いページがカラフルな絵で埋まっていく。

「おや、どうなさいましたかシェーラ様」
 なんともいえない表情のシェーラに気付き、トリテレイアは問いかけた。
 シェーラは無言で手に持っていた本を渡す。トリテレイアは本のページを見た。視線の先に、
「……相合傘とかありますね……」
「そこではない」
 促されて隣のページを見れば、問題の落書きがあった。
「これは」
 トリテレイアは悩む。
「本人の手によるものか判別がつきませんね。悪戯の可能性も」
「そう、だよな」
 2人は落書きを前に悩んだ。そして、近くにいた他の仲間へも呼びかけて一緒になって考える。

 一方、トリテレイアが連れて来たソウハダケ2匹は競争を始めていた。2匹はぐるりと1階を走って戻ってくると、他のソウハダケも誘うようにぴょんぴょんと跳ね、猟兵に連れられていないソウハダケたち8体が一緒になってフロア中を走り始めた。

 レモンは落書きのある書籍を集めていた。ふわふわと念動力で空を飛び、本棚を巡ってはページをめくり。

「えっと……『引退しても、ズッ友だよ』」
 関係がなさそうな本だ。レモンは本を元の場所に戻した。
「『ダイくんが好きです ユミ』」
 あっ、甘酸っぱい。レモンは本を元の場所に戻した。
「『大魔王にオレはなる!』」
 関係がなさそうな本だ。レモンは本を元の場所に戻した。
「『いじめをうけています。エツコ』」
 魔法学園の先生に渡しておこうかな? レモンは本をキープした。
「『引退してユミと結婚します。ダイ』」
 ユミが両想いになった! レモンは先ほどの本の隣にこの本を並べた。
「『大魔王になったぞ!』」
「うそでしょ!」
 レモンは思わずツッコミながら本を元の場所に戻した。
「『タカハシセンセイ、カツラだった』」
 タカハシセンセイ、誰だか知らないけどカツラだったのか。レモンは本を元の場所に戻した。
 何冊か気になる本をキープし、レモンは息をつく。本の配置と蛇神様の知識、そして魔法の辞典を活用し情報を整理すると、どうも3層入り口は階段をのぼって橋を渡った先の桃色の本棚にある絵本の5ページに書かれた合言葉を読み上げれば開くようだ。

「ふう~」
 眼下ではなぜかソウハダケが熱いレースを繰り広げている。
「あたいが調べ事をしている間に一体何がっ!?」
 そういえば、とレモンは2階を見た。2階には飛んでいけるのだろうか、と試してみると、ふよふよと見えない透明の膜が1階と2階の宙空に広がっている。
「結構触り心地いい」
 レモンはふよふよした膜の感触をしばし楽しんだ。
 そして、仲間のもとへ戻る。
「なんでレースしてるのかわかんないけど、みんなきいてっ! 3層の行き方がわかったよ~っ!」
 レモンが合流して情報を伝えると仲間たちは一斉に驚いた顔をした。
「やはり本物!」
「情報は本物でも、フィロソフィアさんが書いたとはまだわからないかも」
 頭をひねりつつ、仲間たちは出口へと向かうことにした。

●階段を上り
 階段は薄暗い。ナイが生まれながらの光で明るく照らす中を一行は慎重に階段を上る。会話するのは道中で見かけた学生の記録についてであった。
「でね、いじめをうけていますって書いてあるんだよ」
 持ってきた本の落書きが話題にのぼれば、
「その学生がいつ落書きしたのかがわからないからなあ」
 シェーラは首をひねる。
 カチュアは呟く。
「あたしは大魔王っていうのが気になるわね。まあ、落書きは悪戯っ子の戯言にしても、オブリビオンフォーミュラ、いつか戦ってみたいわ」
 階段をのぼると、上の階の入り口は本棚が全て倒れていた。
「本が零れています、ね」
 ナイが近くの本を一冊手に取る。中身はやはり真っ白だ。少し歩けば本棚が5つ6つ折り重なるように倒れている。
「足場が悪いね!」
 ライアがソウハダケを抱えて本棚をひょいひょいと跳び越える。

「これは大分前に倒されたようだな」
 シェーラが本棚の周囲を調べる。
「橋はどこにあるんだ? 下の階で見た時はあっちの方に見えたけど」
 首をかしげながらシェーラはユーベルコードを活用し空中を蹴りながら進む。
「やっぱり上から見てみるしか」
 レモンがふわりと宙に浮く。
「探索と参りましょう」
 トリテレイアも隠し腕を壁に撃ち込みワイヤーを巻き取って本棚を足場に高所に登る。
「梯子、作りましょうか」
 ナイがレプリカクラフトで頑丈な梯子を作る。高く折り重なった本棚へと梯子をかけ、先に登り。
「なんだか迷宮っていうより瓦礫の山みたいですねえ」
 隣にはいつの間に登ったのかソラスティベルがいた。おでこに手をつけるようにして遠くを見ようと身を乗り出す。
「あっちに橋があるわ!」
 カチュアが声をあげた。
「登ったりするのはおてのもんよ」
 カチュアが本棚をよじ登り、本棚から本棚へとジャンプしながら橋を目指す。体重を感じさせないエルフの動きはまるで木々の枝を飛び交うリスのごとく軽やかだ。
 仲間たちは倒れている本棚の隙間をくぐり、跳び越え、時には怪力でどかして道を作った。そして、橋へと辿り着いた。この橋は1階にいた時に見えていた橋だ。当然、下は1階だと思っていた仲間たちだが。
「橋の下が別次元になってる……?」
 ソラスティベルが不思議そうな顔をした。橋の下には水が広がっているように見えた。
「……?」
 試しに、とカラーペンを1本落として見れば。カラーペンは真っ直ぐに水に落ちていき、
「わっ」
 コトリ、と。
 カラーペンが真っ直ぐに天井から落ちて来た。落ちて来たカラーペンを慌ててキャッチし、ソラスティベルがナイを見る。
「ナイくん、このお水は魔法のお水みたいですよー!」
 自分で落ちたらどうなるんだろう、と試しそうな顔をしているソラスティベルをナイはそっと引き留めた。
「気を付けて、渡りましょう」
 仲間たちは恐る恐る橋を渡る。そして、向こう岸に着いた。着いた先には扉があった。扉の先には、すっきりとした小部屋があった。家具はすべて木製で温かみがある。そして、桃色の塗装をされた本棚が彼らを待っていた。

●絵本
「これが絵本ね」
 カチュアが絵本を手に取る。ぱらぱらとめくり、眉を寄せる。
「合言葉、わからないけどいっそ全部朗読する?」
 仲間たちは顔を見合わせた。
「1人1行ずついく?」
 仲間たちは順に絵本を声に出して読んだ。

 カチュアがゆっくりと読む。
「赤鬼さんと青鬼さんが仲良く暮らしていました。」

 ソラスティベルは楽しそうに読む。
「赤鬼さんは人間と仲良くしたくて、でも、人間は鬼を怖がってしまいます」

 ナイがしっとりと読む。 
「青鬼さんが言いました。僕が、悪役をしよう」

 ライアは笑顔でハキハキと読む。
「青鬼さんは人間の村で大暴れ」

 シェーラが滑らかに抑揚をつけて読む。
「赤鬼さんが青鬼さんを追い払うと、人間たちは赤鬼さんにお礼を言います」

 レモンが読み、
「赤鬼さんは人間たちと仲良くなることができました」

 ピカッと絵本が光る。
「「!!」」

 そして、何もなかった壁へと扉が現れた。
「扉だ」

 そして、彼らが先へ進もうとしたとき。
「あ」
 トリテレイアが声をあげた。橋を越え彼の足もとへとレースをしていたソウハダケ8体が走ってきたのだ。
(「そういえば、レースをしていましたね」)
 すっかり放置していたが、ソウハダケたちはずっと走り回っていたのだった。微妙な表情になる仲間たちの元、8体のソウハダケは猟兵たちに抱えられた仲間の6体にぴょんぴょんとアピールする。
 皆、自分が一位になったのだと主張しているようだった。
「全員、一位です」
 ナイはくすっと笑った。
 そして、彼らは3層へと足を踏み入れた。

●道が拓かれ
 3層には美しい庭園が広がっていた。足元は少し柔らかい土だ。
 多様な彩りの花が咲き誇っている中を猟兵たちは進んでいく。

「ふんふん♪ ふん♪」
 やがて鼻歌が聞こえて猟兵たちは足を止め茂みに隠れるようにして覗き込んだ。

 庭園の中、広くぽっかりと拓けたスペースに純白のテーブルセット。テーブルの周りを箒で掃いている1人のメイドさん――フィロソフィアだ。
「ご奉仕♪ ご奉仕♪ 今日も明日も♪」
 フィロソフィアはうきうきと箒を動かしている。

「あれが、フィロソフィア?」
 誰かが呟くとフィロソフィアはおっとりと首をかしげた。
「侵入者の気配がいたします」

 その瞳はきょろきょろと周囲を窺う。

「侵入者がいるなら、ソフィはメイドして排除しなければなりません」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『安寧』のフィロソフィア』

POW   :    錬金メイドフィロソフィア
自身の【メイドとしての矜持】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    ソフィはメイドとして必要なことはなんでもできます
対象のユーベルコードを防御すると、それを【劣化版"賢者の石"に記録し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    ソフぃさんのお掃除タイム
いま戦っている対象に有効な【呪いが付与された弾丸を撃てる銃】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は錬金天使・サバティエルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

宮落・ライア
何で泣いた赤鬼………。
何とも言えぬ苦虫を噛み潰したような顔
む~~~~…。
仲良くなれそうな気配出されると殴りにくい…。
だってボクってヒーローだし!

でもなー、限度を知らない世話焼きってほんとになー、人をダメにするしなー。
と言うかー…人襲うの?

なんと言うか本当に脅威と判断できるまで
【ダッシュ】【かばう】【見切り】で味方を守ることに徹する。
仲間がやるぶんには別に止めもしない矛盾思考

脅威と認識したなら、
んーやっぱ敵かー。うーむー。
なら仕方ない。せめてあんまり汚さないようにやるか。
(刀一本で戦う)
【覚悟】【見切り】【剣刃一閃】
で、力任せではなく速さを重視して戦う。


シェーラ・ミレディ
落書きと発言から察するに、主人の帰りを待つメイドといった風だが……さて。
今から客だと言い張っても信じてもらえそうにないし、実力行使も致し方ない所か。
……劣化賢者の石を壊さぬようにせねばな!

先ずは礼儀作法で挨拶を。
「事前の連絡もなしに失礼する。此方には賢者の石があると聞いて尋ねたのだが、何か心当たりはあるだろうか?」
返答があれば情報収集したのち、災魔の退治も請け負っていると言って敵対。
問答無用で殴りかかってくるようなら反撃だ。

先制攻撃、クイックドロウ、早業、2回攻撃、援護射撃を乗せた【純情一途】で敵の動きを阻害するぞ。
敵の攻撃は見切りや視力で自分に当たるものを見極め、ダッシュやジャンプ等で回避。


トリテレイア・ゼロナイン
あれが錬金メイドのフィロソフィア…
…自分の仕事に熱心なだけで自らの主を堕落させてしまうというのは悲しいですね…
メイドと騎士、『仕える者』としてシンパシーを感じてしまいますが、彼女は災魔、倒さなければなりません

近接攻撃は「怪力」による「武器受け」、後衛に放たれる弾丸には「盾受け」で「かばい」ます

…彼女の仕事ぶりが偲ばれるこの庭園を荒らすのは忍びないので不利を承知でスラスターや銃器、焼夷弾などは使わずに「礼儀作法」に則った騎士として戦いましょう

彼女はメイドとしての誇りであるエプロンドレスやヘッドドレスの破損や汚れを嫌うかもしれません。もしその行動パターンなら逆に動きを「見切り」やすくなるでしょうね


ソラスティベル・グラスラン
むう、侵入者なのは間違いないので何とも言い返せませんね…
少し彼女とお茶したかったのですが、仕方ありません!
キノコさん、わたしたちの後ろに!今から此処は戦場になりますよ!
ナイくん(f05727)、息を合わせましょう!

【オーラ防御・盾受け・見切り・怪力】を全て併用しがっちり防御
味方を守り、ナイくんの攻撃チャンスを作り出す

荒っぽいお世話のお返しは、わたしからも【力溜め】をした大斧の一撃
敵と言えどまずは挨拶から!全力の【勇気】を籠めて!
勇気は万国共通語、勇気があれば大体のことは何とかなるとはわたしの言!

こんにちは、勇者ですッ!!
初めまして!!
素敵な庭園ですね―――ッ!!!(【勇者理論(攻撃重視)】)


蛇塚・レモン
連携大歓迎!

う~ん、人畜無害なメイドさんだよね~っ?
戦いづらいなぁ……
(でも仲間に銃を向けて乱射する姿に考えを改める)
前言撤回~っ!
めっちゃ危険人物だっ!
絶対やっつけようっ!

蛇神様~っ!
弾除けの結界生成をおねがいっ!
猟兵たちを包み込む結界を張って全員の防御と戦闘力を向上させるよ
(範囲攻撃+呪詛耐性+オーラ防御+拠点防御)
蛇神様っ、合わせるよっ!(他の猟兵との連携も可)
せーのっ! どーんっ!!
あたいは超霊力オーラガンでソフィさんに目潰し攻撃
(目潰し+クイックドロウ+援護射撃+衝撃波)
同時に蛇神様が念動力でソフィさんが召喚した銃を破壊してもらうよっ
(念動力+武器落とし)
みんな、今がチャンスだよっ!


ナイ・デス
お茶はオブリビオン以外と、ですね。ソラ(f05892)

キノコさん達を頭からおろして、離れてもらい

ん。息を、合わせる、ですね。わかりました

【地形の利用】私は茂みに隠れたまま【忍び足】で位置調整したりしつつ
ソラが攻撃チャンス作るの、待ちます
【戦闘知識、第六感】で、合図なしで攻撃チャンス察し
忍び足のまま【ダッシュ】で飛び出し【勇気、覚悟、激痛耐性、生まれながらの光】で咄嗟に銃で撃たれたりしても痛みも呪いも耐えて、即座に解除して、気にしない【捨て身の一撃】
短剣で【暗殺、鎧無視攻撃】し【生命力吸収】で、命を奪う、です

倒せても倒せなくても、その後は【生まれながらの光】で自身と味方を包み
解呪と回復で動きます



●不思議な迷宮のフィロソフィア
「あら? あらあら?」
 フィロソフィアは箒を片手に首をかしげた。
 彼女の前に美しい少年が姿を見せたのだ。
 上流階級にある者特有の気品と自信に満ちた気配。他者が傅くのが当然に育ってきたかのような瞳は芸術家が描く天使にも似て。足先から頭まで全身が至高の芸術品のようで、存在自体に希少価値のあると思われる特別な存在。絢爛な衣装がその魅力を引き立ててている。
 シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)だ。
 フィロソフィアは箒を置き、ホワイトブリムの乱れを直した。純白のエプロンの埃を払い、濃紺のワンピースドレスの裾を優雅に持ち上げて軽く腰を折る。
「お客様、いらっしゃいませ。ソフィはメイドでございます。
 主人はあいにく留守にしておりますが、本日はどのようなご用件でいらっしゃいますでしょうか?」
 丁寧な礼にシェーラは尊大な瞳で応えた。遇されるのが当然であるという態度。
「事前の連絡もなしに失礼する」

 仲間たちはそのやりとりを茂みの中で見守っている。打ち合わせはしていない。いざという時には直ぐに助けに入ろうと準備をしている。
「む~~~~…。
 仲良くなれそうな気配出されると殴りにくい……。
 だってボクってヒーローだし!」
 茂みに潜む宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)が何とも言えぬ苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「でもなー、限度を知らない世話焼きってほんとになー、人をダメにするしなー」
 その隣では巨躯を隠すために地に這いつくばるようにしているトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)がいる。
「あれが錬金メイドのフィロソフィア……。
 ……自分の仕事に熱心なだけで自らの主を堕落させてしまうというのは悲しいですね……」
 メイドと騎士、『仕える者』としてシンパシーを感じてしまいます、と呟く機械騎士。蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)も同意を示した。
「う~ん、人畜無害なメイドさんだよね~っ? 戦いづらいなぁ……」

「ナイくん、息を合わせましょう!」
 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)が隣に潜むナイに囁く。
「ん。息を、合わせる、ですね。わかりました」
 ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)はソウハダケを頭からおろし、離れてもらう。そして、ふと気づいた。
「あ。他のキノコさんたちが……」
 彼らの連れていたソウハダケは大人しくしていたが、他のソウハダケは庭園を走り回って再びレースに興じていた。

 そんな茂みの中でのやりとりを知らず、シェーラはフィロソフィアと会話を続けていた。
「此方には賢者の石があると聞いて尋ねたのだが、何か心当たりはあるだろうか?」
 賢者の石。名から多くの者が連想するのは、錬金術師が夢見て止まない霊薬だ。卑金属を金に変える際の触媒になる、そう信じている術師もいれば、人間に不老不死の永遠の生命を与えるという民間伝承もある。
 フィロソフィアはニコリとほほ笑んだ。
「まあ。賢者の石、でございますか。
 お客様、ソフィは劣化版ではございますが、賢者の石を素材に造られたメイドでございます」
 言いながらフィロソフィアは客へと紅茶を淹れる。
 香りの高い紅茶は透き通る色をしていた。白のティーカップの中であたたかな湯気が立ち上る。
「……さあお客様、お座りくださいませ」
「んっ!?」
 ひょいっ、と。
 言うとフィロソフィアは容貌に見合わぬ怪力で突然シェーラを両手で抱えあげた。世間一般に言うお姫様抱っこである。
「な、なにをする?」
 戸惑うシェーラ。そして見守っている仲間たちも助けに入るかどうかを迷う。その視線の先でフィロソフィアはまるで赤子に対するかのように客人に笑顔を向ける。丁寧に優しく、けれど無理やり椅子に座らせ。
 優雅に流れるような所作でナプキンをつけ有無を言わせずティーカップをもたせ。
 と、

 タタタッ

 視界の隅に躍り出たのはソウハダケだ。
 ソウハダケは庭園を楽しそうに走り回っていた。
 シェーラの目の前でソフィがすっと目を眇めるのが見えた。その瞳に宿す色は冷たい。
「まあ。お庭に侵入者が。
 お客様、少々お待ちください。ソフィが排除してまいります」
 言うとフィロソフィアはスカートをぺらりとめくり、禍々しい黒鉄の塊のような銃を取り出した。
「お掃除タイムでございます」
 フィロソフィアは止める間もなく淡々と銃を撃つ。撃つ瞬間銃口には薄っすらと髑髏の紋様が浮かんだ。黒いオーラに覆われた凶弾がソウハダケを襲いかかり。

「危ないっ」
 トリテレイアが大盾を構えて飛び出す。ライアも刀を手に飛び出した。
「こんにちは、勇者ですッ!! 初めまして!! 素敵な庭園ですね―――ッ!!!」
 巨大斧で銃弾を斬り伏せ、大声で挨拶するのはソラスティベルだった。
「キノコさん、わたしたちの後ろに!今から此処は戦場になりますよ!」
 言えばソウハダケも素直に従い、猟兵たちの背後で身を隠す。

「まあ、侵入者がこんなに」
 困りました、とフィロソフィアは頬に手を添えて首をかしげた。
「ソフィは全て排除いたします」
 フィロソフィアはほうっと困ったようにため息をつき、銃をくるりと回転させる。回転するうちに元々の銃は薄く掻き消え、代わりに白色の銃を生成した。
「えいっ」
 フィロソフィアが目を閉じて銃を撃つと、銃から大量の綿飴が飛び出した。

「っ?」
 全員をまとめて包み身を埋めてしまうほどの質量の綿飴。
「食べるとちゃんと甘くてびっくりしてしまう、という呪いの籠められた弾です」
 フィロソフィアは誇らしげに解説する。

「すごい、食べるとちゃんと甘いです……っ」
 味見したソラスティベルはびっくりしたように目をぱちくりさせる。
「食べ物を粗末にしたらだめなんだぞ!」
 ライアが刀で綿飴を切り払う。
「装甲がべたべたします」
 トリテレイアは不満を漏らした。
「それは、攻撃なのか?」
 シェーラが冷静につっこみを入れた。

「まあ。侵入者に侮られています。ソフィは心外です」
 フィロソフィアは頬をふくらませながら、もう一撃を撃つ。
「ただ甘いだけではありません。ソフィの技はちゃんと三段構えになっています」
 放たれたのは全員を包みこむような真っ白なとりもちだ。とりもちは綿飴の上から覆い重なるように身に絡み、とてもねばねばしている。
「ねばねばする、という呪いの篭った弾です」
 フィロソフィアが胸を張る。

「うっ、虫用の罠にかかった虫の気分」
 ライアが呟く。
「綿飴だけのほうがよかったです!」
 ソラスティベルが残念そうに言った。
「装甲がべたべたします」
 トリテレイアは不満を漏らした。
「それは、攻撃なのか?」
 シェーラが椅子に座ったまま冷静につっこみを入れた。

「うーん、危険人物……うーん」
 レモンは茂みに隠れたまま悩む。動揺に隠れたままのナイがそっと味方に解呪の光を注ぐ。
「三撃目は何を、するのでしょうね」
 赤い瞳が不思議そうに戦い(?)を見守っていた。
「なんだろうね」
 レモンは考えた。
「綿飴。とりもち……食べ物ばっかりだね」
 レモンは考えた。
「ライアさんも言っていたけど食べ物を粗末に扱うのはよくないね」
 呟きには同意の頷きが返ってきた。
 見守る彼らの視線の先で、フィロソフィアが三撃目を準備していた。

「少々、お待ちください。ただいまソフィは支度をしております」
「次は何するの?」
 猟兵たちはねばねばから脱出しながら問う。
「……まあ。……ひどいです……」
 フィロソフィアはショックを受けたように目を瞬かせた。
「どうした、フィロソフィア」
 シェーラが聞いてあげた。椅子に座ったままのその声はまるでフィロソフィアの主のように響き、フィロソフィアはシェーラへと従順に頭を下げる。
「取り乱してしまい、失礼いたしました。
 せっかく捉えた獲物が準備中に脱出してしまったものですから」
 ふう、と悩まし気にフィロソフィアはため息をつく。礼儀作法のなっていない客を咎めるかのように腰に手をあて、侵入者たちへと言葉を向けた。
「皆様は困った方々ですね。勝手に脱出されては困ります」
「ええ……」
 なんとも微妙な表情の猟兵たちへ、フィロソフィアの三撃目が放たれた。三撃目は……。
「「お、おお、おう……」」
 猟兵たちは戸惑う。
 彼らの身を包むのはふかふかのお布団だった。
「さあ、お布団のぬくぬくに身を委ねておしまいなさい」
 フィロソフィアが勝ち誇ったように言う。
「装甲がべたべたします」
 ふわふわ、ぬくぬくのお布団の中から不満そうな声がした。

「な、なあフィロソフィア。それは、攻撃なのか」
 シェーラが思わずツッコミをいれる。
 もちろんです、とフィロソフィアは胸を張る。
「ソフィの攻撃は幻の4撃目があります。3撃しかないと思わせて、もう1撃……こういうのを騙し討ち、というのです」
 そして、くるりと銃を回転させると赤い銃を生成した。

「これは、呪いのかかった炎の弾を撃つ銃です。
 お布団ごと燃え上がり、二度と目覚めることのない終焉をプレゼントするのです」
 炎の弾が放たれる。
「全員、死んでいただきます」
 フィロソフィアはにっこりとほほ笑み。

「蛇神様~っ! 弾除けの結界生成をおねがいっ!」
 レモンが蛇神に声をかける。
 白き蛇神オロチヒメが愛し子の声に応え、淡い真珠のような光を放つ結果を形成した。
 炎の弾が全て弾かれ、その隙にと猟兵たちはえっちらおっちらとお布団から脱出した。
「装甲がべたべたします」
 トリテレイアが不満そうにしている。

「解呪、しますね」
 茂みに隠れたままのナイが敵に気取られないようにこっそりと解呪の光を送る。猟兵たちはべたべたから解放され、元のすっきりした状態になった。

「綿飴はおいしかったです! ごちそうさまでした……っ、今度はこちらからいきますよ!」
 ソラスティベルが大斧を手に走る。フィロソフィアが慌てたように黒い銃を乱射するが、ソラスティベルは全てを軽やかなステップで避け。
「蛇神様っ、合わせるよっ!」
 レモンがブレスレッドの形状をした霊力増幅器に力を籠め、指鉄砲のように敵を狙撃した。
「せーのっ! どーんっ!!」
 眩い光がフィロソフィアの眼を奪う。

「きゃあっ」
 フィロソフィアは眩しそうに目を覆った。そして、手に持っていた銃がパキリと割れる。蛇神様が念動力で破壊したのだ。
「みんな、今がチャンスだよっ!」
 ソラスティベルが頷き、大斧を振りかざす。フィロソフィアは両腕をクロスさせ、大斧を防御しようとする。
「これがわたしからの挨拶です……!」
 合図なしで同時に茂みから飛び出しソラスティベルと共に短剣を叩きこむのはナイだ。
 トリテレイアも騎士の長剣を閃かせ、横に斬りはらう。ライアも素早く走り寄り剣刃を一閃させた。

「アアッ」
 血飛沫があがる。
 ぽたぽたと鮮血を滴らせ、しかしフィロソフィアは人間離れした動きで横へ『跳んだ』。機敏な動きで箒を手に取る。

「いけないいけない、ソフィったら。
 お客様の前なのに、粗相をしてしまいます……」
 フィロソフィアは半身を血に染めながら呟いた。トドメを差さんと走り寄るライア。背後には彼女が管理する庭の花があった。
「いけない、ソフィの後ろにお花が。……ソフィは、避けません」
 悲劇のヒロインのような健気な口ぶりで言ってのけ、キッと花を護るように身構えるフィロソフィア。決意に伴い、身体能力が増す。
 ライアは戸惑い、急停止した。
「ええ~? や、やりにくいなあ」
「こっちが悪役みたいじゃん!」
 レモンもブーイングをする。
「そう思わせて、撃退するのがメイド流。ソフィはメイドとして手段は選びません」
 フィロソフィアは血に塗れた指を頬にあてる。そして、恐るべき膂力で箒を振った。鋭い箒が風を切り衝撃となってライアを襲う。
「箒風一閃とでも名付けましょうか」
 トリテレイアが盾でそれを防ぎ、分析する。
「今のはユーベルコードを模倣なさったのですね」
 フィロソフィアは血に濡れたスカートの裾を摘まみ、優雅に一礼した。
「ソフィのご主人様がソフィを強く造ってくださいました。
 ソフィはメイドとして必要なことはなんでもできます」

 味方の傷を癒しながらナイがふと頭を傾げる。
「それは、メイドとして必要なこと、でしょうか」
「ご主人様は必要だと思われたようです」
 フィロソフィアが神妙な面持ちで言う。そして、黄金に輝く巨大な銃を召喚した。それは銃というよりは大砲のようでもある。全員を撃ち、生命を奪うとその瞳が物語っていた。

「フィロソフィア」
 シェーラが声をかける。そして4丁の銃から矢継ぎ早に弾丸を放つ。四季の自然を讃える声が聞こえるような雪月風花。天地の雅を愛でる心を誘うような花鳥風月。春を寿ぐ精霊の囀りが聴こえるような花紅柳緑。万華鏡のように万花の彩り閃く千紫万紅。迸る鮮やかな光の精霊弾がフィロソフィアに迫り、フィロソフィアは箒でガードしようとする。が、使用主が常人ならざる存在であっても箒はそうでない。箒はパッキリと折れてしまい、

「少しお茶したい気持ちもあったのですが、仕方ありません!」
 駆け寄ったソラスティベルが斧を全力で振り、ナイが先ほどと同じく息を合わせて短剣を入れる。同時に生命力を吸収し、それがトドメとなった。

「あ……」
「僕たちは災魔の退治をするために来た猟兵なんだ」
 メイドの全身が細かな光の粒子となり、消滅していく。

●未来へ
「なんか、やりにくい敵だったね」
 ライアとレモンがぽつりと呟く。
 仲間たちは戦闘で乱れた庭園の跡片付けをしていた。
 トリテレイアがぽっきりと折れた箒をテープで繋ぎ合わせながら言う。
「しかし、オブリビオンです」
 ナイが頷く。
「オブリビオンは、過去の、存在です」
 仲間たちも一様に頷く。

 過ぎ去りし過去。それが何らかの異常で染み出し、受肉し、オブリビオンとなった。それはかつて存在した者の姿を持ち、染み出した過去で世界を埋め尽くすようにと活動するのだ。

 後片付けを終え、仲間たちは別れを告げて迷宮を後にする。

「もともとのメイドさんは、ご主人さまとどんな生涯を送ったんだろうね」
「戦闘メイドを作る人だから、敵が多かったのかなー?」
 ライアとレモンがそんなやりとりをしていた。
 零れた紅茶を拭いながら、ライアは眉を寄せる。
「残ってる紅茶、もったいないけど」
 レモンがうーん、と唸る。
「倒したオブリビオンが淹れた紅茶は、ちょっと飲む気になれないかな~っ」
「だよね」

「図書館で調べたら文献とか、見つかりませんでしょうか? 気になりますね」
 過去の彼女となら、お茶を楽しむこともできたのだろうか。ソラスティベルがそんなことを考えていると、くいくい、とナイが服の端を引く。
 ん? と目を向けると、ナイが赤い瞳で首をかしげて見ていた。
「お茶はオブリビオン以外と、ですね。ソラ」
「そうですね」
 ソラスティベルは笑顔になる。手を差し伸べ、誘う。
「ナイくん、この世界のお店に寄ってお茶して帰りませんか? 美味しい紅茶と、ケーキと、パフェとか……」
 コクリ、頷いてナイは手を取った。繋いだ手はいつも温かい。
 顔を見合わせ笑顔を浮かべ、2人は歩き出す。

 少し離れた場所ではシェーラが庭園の花を愛でていた。足元でソウハダケたちが遊んでいる。
 トリテレイアが折れた木にどこからか持ってきた板を当て縄を巻いていた。
(「添木か」)
 シェーラは庭園を見渡す。
 手入れしていた者がいなくなっても、庭園は残っていた。

「この庭園はどうなるのだろう」

 呟きながら、ソウハダケを見る。ソウハダケはのびのびと跳びまわっていた。
「まあ、迷宮ですからね」
 トリテレイアが言う。
 自然の力のみではなく、魔法の力と機械の力で造られ、維持され、変化する不思議な迷宮。
「次に来た時はフロア中が綿飴の森になっていたり、とりもちのプールになっている可能性だってありますよ」
 ふ、と声に笑いを滲ませて。

 こうして、彼らの不思議な冒険が幕を下ろした。

●結

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月13日


挿絵イラスト