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其の名は『セラフィム』

#スペースシップワールド #猟書家 #猟書家の侵攻 #葬列の長サイファー #ACE戦記 #ACE戦記外典 #熾盛

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●熾え盛る
 銀河の海航る星の船の残骸が暗闇の中に浮かぶ。
 星々の瞬きさえも、それを照らすことはない。
 スペースシップワールドにおいて、過去、大規模な宇宙船同士の争いが行われた宙域に一隻の宇宙船が進む。
 その宇宙船は奇妙な形をしていた。
 言う成れば『方舟』とでも言えばよいだろうか。
「血を束ね骨を束ね、因果を轍とする……やはり此処に在ったか」
 その奇妙な『方舟』の主である猟書家『葬列の長サイファー』が前方に見える残骸を見て微笑んだ。

「『セラフィム』……古の戦術兵器。どれも十全の状態であるものはないが、全て回収すれば一機くらいはオブリビオン化に成功するやもしれぬな」
『葬列の長サイファー』は、『プリンセス・エメラルド』の目論む『帝国継承軍の誕生』のために、銀河中のかつての戦場を『方舟』で回っていた。
 彼の目的は、宇宙の戦場で散った生命、その者たちをまるごとオブリビオン化させる大儀式のための材料を集めることになる。

 古代銀河の猛者たちであれば、銀河継承軍の良い戦力になることは間違いない。
 しかし、そのためには多くの残骸が必要となる。彼が目をつけたのが、この宙域で嘗て起こった争いの残滓である。
『セラフィム』と呼ばれる機動兵器。
 人型をしており、騎士の鎧のような外観が特徴的な兵器である。それらは機体を操る者の技量を増幅させ、複数の機体同士で経験値を共有させる力を持っていた。
「オブリビオン化した者たちが、これを駆れば一騎当千なるオブリビオンが生まれよう。さて、最早此処に用はない。さあ、『方舟』よ、次なる古戦場へと向かえ。より多くの残骸、残滓、無念、怨念、それら全てが必要なのだ――」

●サルベージ船
 銀河の海は、何処までも広がっている。
 上下左右、天と地。あらゆる方角に暗闇と星々が包み込む。漂う残骸は、遥か昔に起こった戦闘の名残であることがわかっているのだとしても、サルベージ船で作業をすすめる者達は薄ら寒い気持ちになるものだ。
「なあ、此処ってさ……昔の戦場痕ってのはわかっているんだけど、どうにも薄気味悪くないか?」
「今更だろ、そんなこと。いいから早く作業マニピュレーターの動作確認しろよ。薄気味悪いんなら、とっとと終わらせて離れようぜ」」
「わかってるんだけどさ……なんか、ぞわーってするんだよ、ここ」
 嫌だな、とサルベージ船の作業員の一人が悪寒がするのか、宇宙服の上から体を擦っている。

 彼等の乗るサルベージ船は、こうした宇宙デブリを回収し、その中から活用できそうなものをその場でピックアップしていくというものだった。
 そんな作業をしていると一人の作業員が声を上げる。
「お、おい! なんだこれ……! 大物だぞ……!」
「……なんだ、炉心? いや、何かの機関か?」
 作業用マニピュレーターに掴まれたのは、球状の機械であった。戦いによって損失したものなのだろう、槍のようなものが球状の機械を貫き、何かから引きちぎられたような痕跡がある。
 もう少し注意深く彼等が、その残骸を調べようとした時、警報が鳴り響く。
 それはサルベージ船に迫る脅威を示すものであり、緊急事態であることを示していた。

「なんだよ、次は!」
「船……? あんな形の船、見たことあるか? ……っておい! あれ!『コズモメーバ』じゃないか!」
 にわかに走る緊迫感。
『方舟』から解き放たれたのは、緑と黄色、紫や青といったアメーバ状の物体であった。それは不定形の原始生物。
 人工物であればなんでも貪り、成長し分裂しては増えていく生物であり、宇宙船であっても一度繁殖してしまえば、手がつけられなくなり食らい付くされてしまう。

 要は宇宙船の天敵だ。
 その来襲に彼等は慌てふためき、慌ててサルベージ船に戻る。回収しかけた炉心の如き機関を放り捨て、迫る『コズモメーバ』を振り切ろうとする中、星の輝に照らされた損壊した炉心の表面に刻まれた文字が煌めく。

 ―――『V』。

 それは勝利を意味するか。それとも――。

●骸蒐方舟
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はスペースシップワールドに現れた猟書家『葬列の長サイファー』による事件の予知……彼はスペースシップワールドの銀河、その嘗ての戦場跡を次々とまわり、その残骸を集めてまわっています」
 その残骸を集めて何をしようとしているのか。
 それは宇宙の戦場で散った者たちをまるごとオブリビオン化さえる大儀式である。その大儀式によって大量にオブリビオンとなった者たちを集め、『帝国継承軍』の戦力としてあてるつもりなのだ。

 すでに多くの戦場跡をまわり、多くの残骸を回収している『葬列の長サイファー』は幸いなことに儀式に必要な分だけの残骸を回収しきっていないようだった。
 ナイアルテは、次なる回収に現れる場所を予知していた。しかし、不幸なことに、その場にはサルベージ船が存在しており、転移した直後にオブリビオンに襲われているのだという。
「はい……とても不幸なことですが、私達にとっては幸運であるのかもしれません」
『方舟』と呼ばれる『葬列の長サイファー』の宇宙船から放たれた『コズモメーバ』からサルベージ船を護る。
 そして、『方舟』の中へと突入し、猟書家である『葬列の長サイファー』を打倒しなければならない。

 けれど、『葬列の長サイファー』はすでに、再生された『古代兵器』たる『セラフィム』と共に襲いかかってくる。
「ですが、サルベージ船の皆さんは『古代兵器』を無効化するための手段を知っているようなのです。それには、どうしても『コズモメーバ』から彼等を守らねばなりません。彼等を守りながら、心当たりがないか訪ねてみることも必要でしょうし、協力を願い出でなければならないでしょう」
 ナイアルテは、今回猟兵たちが守らねばならぬものと、対処しなければならないことが多いのを心配していたが、それはいつものことだ。

 彼女の信じる猟兵たちならば、サルベージ船を救い、『古代兵器』を無力化して『葬列の長サイファー』の目論見を打破することが出来ると疑わなかった。
 最後に一礼をして送り出す彼女は、いつものように微笑んでいた――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はスペースシップワールドにおける猟書家との戦いになります。
 舞台は銀河の古戦場跡地。多くのデブリが浮遊している宙域に、再生された『古代兵器』と猟書家『葬列の長サイファー』と戦うシナリオになります。

 ※このシナリオは二章構成のシナリオです。

●第一章
 集団戦です。
『方舟』から現れるオブリビオン『コズモメーバ』との戦いとなります。
 無論、サルベージ船も襲われていますので、護ってあげなければなりません。
 彼等を助けながら、『古代兵器』に思い当たる節がないか訪ねてみるのも良いでしょう。第二章で現れる『古代兵器』を無力化する術を教えてもらえるように協力を要請することも必要になるはずです。

●第二章
 ボス戦です。
 皆さんが突入した『方舟』の中で『葬列の長サイファー』との戦いになります。
 その戦いの中では再生された『古代兵器』、『セラフィム』と呼ばれる巨人兵器もまた皆さんに襲いかかってkます。
 第一章でサルベージ船の作業員から協力を得られていれば、無力化する手段を知ることができます。

 ※プレイングボーナス(全章共通)…………サルベージ船を守る/協力する。

 それでは、銀河の古戦場跡地に残る古代兵器と、それを蒐集する猟書家との戦い。それに巻き込まれるサルベージ船を救い、『帝国継承軍』の目論見を打破するために銀河を駆ける皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『コズモメーバ』

POW   :    コズモゾア増殖
【分裂によって自身と同じサイズの別個体】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD   :    暴食性シスト
戦闘中に食べた【人工物】の量と質に応じて【急激に成長し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    ヴェノマ器官
自身の肉体を【体内で生成した猛毒で覆って紫色】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。

イラスト:オペラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『方舟』より来襲する不定形の怪物。
 それは『コズモメーバ』と呼ばれる原始生物であった。しかし、サルベージ船の作業員たちは、その恐ろしさを知っている。
 人工物を好んで捕食し、凄まじい繁殖力でもって一度発生してしまえば、宇宙船であろうと貪り尽くしてしまうほどの旺盛な食欲をもつ『コズモメーバ』は、宇宙船の天敵そのもの。
 あの『コズモメーバ』に取り付かれてしまえば、どれだけ堅牢な装甲を持つ宇宙船であってもひとたまりもない。
「はやく、早く逃げるんだよ! 戻れ!」
 作業員たちはパニックになっている。
 まさか、こんなところで『コズモメーバ』に出くわすとは思わなかったのだ。

 降って湧いた災難に彼等は慌てふためき、撤収に手間取ってしまう。
 その間にも、その獰猛なる食欲を満たすために『コズモメーバ』はサルベージ船を捕食せんと、無数に分裂し包囲していく。
「だ、だめだ……! 完全に包囲されていやがる……!:
 絶望に染まる作業員達の表情。
 けれど、まだ絶望するには早い。この世界には、オブリビオンの脅威を察知すれば駆けつける存在が居る。

 そう猟兵だ――!
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第四『不動なる者』盾&まとめ役な武士
一人称:わし 質実剛健古風
武器:黒曜山(剣形態)

守りは我が領分なれば。人工物を補食させるといかぬのだな。
では、四天霊障の範囲を拡大し、それを守りの結界としよう。
これ、天然だしの。我らの念動力でもあるし。

指定UCにて切り刻もう。分裂しようが関係はない。
そして、わしの重力属性+『侵す者』からの助力:炎属性攻撃もつける。
潰れ、焼け、跡形もなくなくなるとよい。

しかしな、『古代兵器』。それについて、何か知らぬかの?
この後、おそらくその知識が必要になるからな。



『方舟』より射出されたオブリビオン、『コズモメーバ』はその身体を分裂させていく。
 無数に分裂を繰り返して、その個体数を増やし、不定形の原始生物であるからこそ宇宙空間であっても適応する。
 そして、人工物を好んで捕食し、時には宇宙船であっても貪り尽くしてしまうほどの旺盛な食欲。
 この居住可能惑星を尽く喪った生命たちの揺り籠たる宇宙船にとっては天敵そのもの。本来であれば、宇宙空間を漂っているだけであり、接敵する前に宇宙船が移動を開始すれば振り切ることなど容易な存在なのだ。

 けれど『方舟』から射出されることに寄って速度を得た『コズモメーバ』はサルベージ船へと迫る。
「守りは我が領分なれば」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その四柱の内が一柱である『不動なる者』は『コズモメーバ』に取り囲まれたサルベージ船の前に立ち、己たちの霊障をもって守りの結界とする。

 人工物を貪り食らうというのならば、如何に堅牢なる装甲であっても『コズモメーバ』の前には無意味であろう。
 けれど、実体を持たぬオーラの霊障であれば話は別である。
「これ、天然出しの。我らの念動力でもあるゆえ。とはいえ、防ぐばかりでは飲み込まれるだけであるのもまた必定であるのならば」
 手にした漆黒の剣を手に『不動なる者』が宇宙空間に走る。
 その漆黒の剣『黒曜山』は未来を映す刀身を持つ。
 ゆえに、煌めくユーベルコードの輝きで持って、『今』ではなく『未来』へ放つ不可視なる斬撃を放つのだ。

「父の技を、ここに再現せん」
 四天境地・山(シテンキョウチ・ヤマ)。それがユーベルコードの名であり、かつての己の父の技である。
 不可視なる未来に放たれる斬撃を躱すことなど能わず。
 己のもつ重さを手繰る力と『侵す者』の持つ炎の力を束ねた斬撃は『コズモメーバ』の身体を切断し、その傷跡を焼く。
 どれだけ分裂し、増えていくのだとしても傷口から焼き切っていくのであれば、それらはもはや分裂したとは言えないだろう。

「潰れ、焼け、跡形もなくなるとよい」
 かくしてサルベージ船の包囲の一角を食い破った『不動なる者』は逃げ遅れた作業員たちの元に近づく。
 彼等は猟兵の存在を認識している。
「た、助かったよ。あんたたちのおかげで……!」
「いやなに。大事無いようで何より。しかしな、『古代兵器』というものに心あたりはないだろうか? おそらくこの後、その知識が必要となるゆえ」
『不動なる者』の尋ねに作業員が首をかしげる。

 確かに彼等はこの宙域に浮かぶデブリを回収するためにサルベージ船を持ってやってきていた。
『古代兵器』と言っても、この宙域が年代を重ねたものであるのならば、心当たりが多すぎるのだ。
 けれど、彼等は最初取りこぼした回収品の中にあった炉心の残骸を思い出した。
「『セラフィム』っていう人型の機動兵器のことなら……一機ではただの機動兵器なんだが、復数集まることで経験値を共有して機能をアップグレードしていくっていう機能がある『古代兵器』なら……」
 作業員が言うには、『古代兵器』、『セラフィム』は複数機あることで真価を発揮するようであった。

 一機では経験を共有することができず、本来の力を発揮できることはないのだという。
『不動なる者』は頷く。
 もしも、『方舟』に突入した後に『セラフィム』が復数出てきたのならば、手強いことこの上ないだろう。
 けれど、数が多くないのであれば、真価を発揮する前に叩けばいい。
 そのことを念頭において、彼等はまず『コズモメーバ』の殲滅に注力するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
宇宙にもスライムっぽいのはいるんだね、なんて言ってる場合じゃないか。
オブリビオンを倒すっていうのもあるけど、サルベージ船を護らないと!

【ネルトリンゲン】で出撃して、かばう感じでサルベージ船に横付けしたら、

少しだけ、力を貸して……!

大好きな親友の力を借りて【ツインドライブ】を発動、
『コズモメーバ』に全周囲攻撃をかけて内部から沸騰させちゃうね。

ツインドライブで包囲が薄くなったところができたら、主砲と【M.P.M.S】を全力斉射。突破口を開いて脱出しよう。

安全なところについたら、サルベージ船のみなさんにあらためてご挨拶。
船の修理を手伝いながら、『古代兵器』を無効化の手がかりとか聞いてみたいな。



 スペースシップワールドの歴史は長いものである。
 なにせ生まれた星より飛び立ち、銀河の海を征く宇宙船を作り出すほどの科学力の発展があるからだ。
 しかも、その銀河を征く時代を経てもなお、古代という時代が存在する。
 宇宙船同士が争い、その残骸をちらした宙域はすでい喪われた技術の宝庫でもあった。それゆえにサルベージ船でもって、残骸を回収し、どうにかして、かつての技術を取り戻すことができないかと模索しているのだ。

 取り戻せなくても、組み合わせることで何か別のものに活用できるかもしれない。
 そんな希望の詰まったサルベージ船を襲うのがオブリビオン『コズモメーバ』であった。
 その不定形の原始生物は、人工物を貪り宇宙船すらも食い潰してしまうことがあるのだという。
 銀河の海を征く宇宙船にとっては天敵そのものであった。
「くそ……! 振り切れない……まだ外に出てる作業員だっているってのに!」
 サルベージ船は未だ外で作業していた作業員たちを見捨てて飛び立つことができないでいた。
 そこに襲い来る『コズモメーバ』たちが身体を紫色に変え、毒性のある身体で持って迫るのだ。

「接続完了。全プロセッサフルドライブ! アイさんの全てをわたしの中に……わたしたちの全力は現実だって変えるよ。電磁波砲、照射っ!」
 その言葉とともに煌めくユーベルコードの輝きが、戦闘空母『ネルトリンゲン』に備えられたツインドライブより供給された電力で持って電磁波砲より放つ分子振動でもって『コズモメーバ』を粉砕する。
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は『ネルトリンゲン』の艦橋からサルベージ船を囲いこんでいた『コズモメーバ』たちを打ち破りながら横付けする。

「作業員の収容を急いで。その間にわたしが護るから!」
 理緒は宇宙にも『コズモメーバ』のようなスライムが存在していることに驚きつつ、オブリビオンを倒すことよりもサルベージ船を護ることに専念する。
 未だサルベージ船は損傷はないようであったが、長い時間銀河を航行していたダメージはつきものである。
 この際、出力の落ちているバーニアや、スラスターといった部分を修理しておこうと『ネルトリンゲン』を盾にしながら、電脳世界より喚び出したナノマシンで修復していく。

「バーニア出力が上がっていく……! これ、あんたが?」
「うん、少しの間の急場しのぎだけどね。改めて挨拶させてもらうよ。助けに来た猟兵。それで、少し聞きたいことがあるんだけれど……」
 理緒は艦橋でつながった通信からサルベージ船の作業員たちに『古代兵器』について何か知らないかと尋ねる。
 グリモア猟兵の言葉では、無力化する術があるはずなのだ。
「『古代兵器』……といっても、この宙域にはそんなものの残骸が多いんだよ。でも、さっき通信で言っていたよな? 炉心が見つかったとかなんとか……」

 それはオブリビオンの来襲よりも早く見つかった残骸の一つであった。
 炉心の形をし、破壊されたもの。
 そのデブリは嘗て、『セラフィム』と呼ばれる人型の機動兵器に備えられていたものである。
「パイロットの技量を増幅させて、その経験値を同じ機体同士で共有するのが強みの量産機だったか……でも、一機じゃあまり特性を活かせないはずであるし……何かネットワークで繋がるような機器を破壊することができればあるいは……」
 もしも、復数現れていたら、厄介な相手であるようだった。
 理緒は考える。

 電脳魔術のようにネットワークで繋がるということは、それを阻害すれば連携が絶たれる。
 ジャミングが弱点であるかもしれないし、それ以外にもまだ弱点があるのかもしれない。『古代兵器』という言葉に踊らされて、過剰に恐れる必要はないのかもしれないと理緒は感じつつ、礼を告げる。
「……あの『方舟』にどれだけの数の『セラフィム』がオブリビオン化されているのかっていうのが問題なんだね……」
 そう、問題はそこだ。
 復数であることに強みを持つ『古代兵器』。
 猟兵たちが立ち向かうのは、それだけではなく猟書家の存在もある。これを打倒するための糸口を理緒は見つけ出し、必ずや猟書家の目論見を打ち破らねばならないのだと、決意を新たにするのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
葬列のサイファーか。最近、あちこちで
古戦場荒らしが出没しているらしいが、
もしかするとそいつのことかな。

キャバリア「夜の女王」を駆り出撃、《推力移動》で
サルベージ船へ接近しつつ通信回線で警告を。
「聞こえるか!奴らは銀河帝国の残党勢力だ。すぐに退避しなさい!」
【パイロキネシス・α】を発動し、発生させた火球を
《念動力》で操作、設置しつつ前衛に進む。
サルベージ船が安全圏に到達するまでの時間を稼ぐぞ。

《空中戦》の技を活かして宇宙空間を飛び回り、
火球とPSDホーネットの《レーザー射撃》を駆使して
全方位からアメーバを殲滅するぞ。
古代兵器の制御方法は、自身の《世界知識》をもとに
いくつか質問を投げてみようかな。



 猟書家『葬列のサイファー』――その名はガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)もまた最近よく耳にするようになった存在の名である。
「最近、あちこちで古戦場荒らしが出没しているらしいが、もしかすると、そいつのことかな」
 彼女の言葉通り、『葬列の長サイファー』こそが事件の中心にいる存在である。
『方舟』と呼ばれる宇宙船で古戦場にあらわれては、古代の残骸を根こそぎ回収していくのだという。
 それが大規模なオブリビオン化の大儀式であることが判明したとあれば、猟兵としても捨て置くことはできなかったことだろう。

 ガーネットは己のキャバリア『夜の女王』と共に宙域に急行し、オブリビオン『コズモメーバ』に囲われ、襲われているサルベージ船へと向かう。
 すでに猟兵達によって囲いは穿たれているが、不定形の原始生物である『コズモメーバ』は分裂に寄って形を自在に変え、サルベージ船を喰らおうと今も尚増殖し続けている。
「この手の原始生物の厄介さは、一片でも残すだけで後々に響くものだからな……!」
 ガーネットは、この厄介さをよく知るのだろう。
『コズモメーバ』の身体が緑色から紫に変色していく。それは身体を毒性に変え、あらゆる金属や装甲を腐食させる警戒の色でもあった。

 それを見やり、サルベージ船に通信を入れる。
「聞こえるか! 奴らは銀河帝国の残党勢力だ。すぐに退避しなさい!」
「――……銀河帝国……! 最近になって、また現れたっていう……! 済まない、こっちはまだ作業員の収容が終わっていないんだ」
「ならば、時間を稼ぐ!」 
 その言葉にガーネットはユーベルコードに瞳を輝かせる。
 あのサルベージ船には同胞を打ち捨てて逃げるという考えを持つものはいないようである。それがなんともこそばゆい感じをうけながら、ガーネットは彼等を護るためにユーベルコードの輝きでもって『夜の女王』の精神感応の力でもって、サイキックエナジーを増幅させていく。

 それは火球の如き力。
 パイロキネシス・α(パイロキネシス・アルファ)――あらゆる環境で燃えるサイキックエナジー。例え、それが酸素のない宇宙空間であっても燃焼しつづける炎は、『コズモメーバ』のよな不定形の原始生物にとっては天敵そのものであったことだろう。
 膨れ上がる火球が放たれ、『コズモメーバ』の身体を焼き尽くしていく。

 宇宙っ空間を自由自在に飛び、『夜の女王』が輪舞曲と共に舞う。
 華麗にして壮麗。
 その戦術機動と共に腰部から射出されたサイキック制御式レーザー射撃デバイスが舞う。
 放たれるビームの光条とサイキックの炎が『コズモメーバ』を消滅させ、囲いを食い破る。その光景に歓声を上げるサルベージ船の作業員たち。
「助かる……! 俺たち助かるぞ……!」
「いいから、早く退避しなさい。次が来る」
 ガーネットはコクピットの中でコンソールをいじり、己の持つスペースシップワールドの知識と照らし合わせながら『古代兵器』の情報を手繰り寄せていく。

「この古戦場跡の年代を見ればわかるが、宇宙船同士の争いが在った場所だな……? あなた達は此処で何を回収していたんだ?」
「デブリだよ。何かの資源に使えないかと思っていたんだ……さっきも尋ねられたが『古代兵器』というなら、『セラフィム』という人型の機動兵器の残骸の一部が見つかっている」
『セラフィム』――その名前にガーネットは心当たりはなかった。
 けれど、パイロットの技量を底上げし、経験値を共有することによって、機体同士の連携を増していく成長する学習型のAIが搭載されていた可能性がある。

 その機能がどこに集約されていたのかがわかれば、その連携を分断することも可能であろう。
「……該当データ……は、これか」
 ガーネットが導き出したデータは詳細は見つからなかったが、撃破レポートのようなものが残されていた。
 堅牢な装甲で並大抵の攻撃では破壊できない。
 けれど、首と胴体を繋ぐ部分が一番脆いようであり、そこを攻撃することで撃破される例が一件だけ残っているようであった。

「無力化するためには、連携ネットワークを断ち切るか無効化する……もしくは首の根元を狙う、か……」
 ガーネットは『方舟』を見やる。
『葬列の長サイファー』がどれだけの数の『セラフィム』をオブリビオン化したのかはわからない。
 けれど、それを倒しようがあるというのならば、話は別だ。

 彼女と『夜の女王』は燃えるサイキックエナジーの炎と共に『コズモメーバ』を、迫る敵の脅威を振り払うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーイ・コスモナッツ
コズモメーバの恐ろしさは良く知っています
だけどそのぶん、対処する方法も分かっています
火器も持たずにどうするかって?
それはですね……こうですよ、こう!

言うが早いか
漂うデブリをシールドバッシュで弾き飛ばす
それを捕食しようとコズモメーバが隙をみせた瞬間を突き、
ユーベルコードで突撃して撃破します

そのまま私自身が囮になって、
コズモメーバの群れをサルベージ船から引き離します

このとき可能であれば、
件の「炉心の如き機関」を捜索したいです
さいわい、視力には自信があるんです

発見できたなら、映像をとって船へと送る
残骸に残された傷痕を、落ちついた状況で改めて見てもらうことで、
なにか気付くこともあるのではないでしょうか



 不定形の原始生物にしてオブリビオン『コズモメーバ』の恐ろしさは、その増殖率もさることながら、人工物であれば何であれ捕食し食らい付くしていくところにある。
 物理的な切断では、分裂を助けるだけに過ぎず、熱量で焼き切るにはエネルギー効率が悪すぎる。
 ゆえに『コズモメーバ』は、宇宙船でもって銀河を征く者達にとっては天敵そのものである。
 例え、超巨大な宇宙船であっても例外なく飲み込まれてしまうだろう。
「『コズモメーバ』の恐ろしさは良く知っています。だけど、その分――!」
 ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)は、その身に宿した騎士の誇りと共に宇宙空間を駆け抜ける。

 彼女もまた銀河の海を征く者である。
 ならばこそ、『コズモメーバ』がどれだけ忌み嫌われているのかを知っているのだ。
 火器がなければどうしようもない相手であることも。
 けれど、ユーイは己の瞳に輝くユーベルコードこそが、『コズモメーバ』を殲滅する鍵である。
 自身の周囲を乳白色のバリアが包み込む。
 凄まじい速度で宇宙空間を飛翔する彼女は、漂っていたデブリを『コズモメーバ』へと吹き飛ばす。

 放たれたデブリは乳白色のバリアによって弾き飛ばされ、『コズモメーバ』の囲いへと撃ち込まれてしまう。
 それは彼等に餌を与えるようなものであったけれど、同時に捕食という最大の隙を生み出す方策であった。
「人工物であれば、なんでも捕食するというのなら、その間にこそ隙が生まれますよね!」
 その言葉通りに『コズモメーバ』たちは我先にというように撃ち込まれたデブリを取り込もうと殺到し、サルベージ船を囲んでいた囲いが解けてしまう。

 そこにユーイは突進する。
 彼女の身を守る乳白色のバリアは、柔らかな光を放ち、天の川の流体力学(ミルキーウェイエクスプレス)とも呼ばれるユーベルコードの力を示すのだ。
 捕食行動に寄って食欲と本能を刺激された『コズモメーバ』が彼女に殺到する。
 原始生物である『コズモメーバ』は一度引き離してしまえば、単体で宇宙を漂うことしかできなくなる。
「そうすれば、『コズモメーバ』は二度とサルベージ船には近づけない」
 一部の『コズモメーバ』をひきつけながら、ユーイは周囲に浮かぶデブリの中から『炉心如き機関』を探す。

 幸いにして彼女には類まれなる視力がある。
 おそらくあれであろうと思うもの目掛けて彼女は飛び、槍のような武装に貫かれた球体の機関を発見する。
「これが……『V』って書いてある……型式?」
 ユーイにはそれがなんであるかはわからなかった。けれど、映像だけは撮っておき、それを船へと送る。
「なにかこれについて知りませんか?。少しのことでもいいんです」
「おそらく『セラフィム』の中にある経験値を共有するシステムの類だと思うんだが……ネットワークの基礎になっている部品なんじゃないか?」

『セラフィム』と呼ばれる人型の『古代兵器』にとって、かなめとなるシステムなのだろう。
 パイロットの技量を増幅させ、蓄積させて、ネットワークで同じ『セラフィム』と共有する。
 成長する兵器だとでも言えばいいだろうか。
「やっぱり、一機だけなら脅威ではない。けれど、もしもオブリビオン化している機体が復数あるのなら……」
 それは脅威そのものであろう。

 その場合、この機関が備えられている胴の部分を狙うのがよいのかもしれない。
 堅牢なる装甲は首の根元が薄いことがわかっている。
 ここからユーイは『セラフィム』を無力化するための方策を見つけ出し猟書家『葬列の長サイファー』を打倒する糸口を見つけ出さなければならないのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイミィ・ブラッディバック
【アドリブ等歓迎】

セラフィム、人型巨大兵器…まさか、そんなはずは
(同じ名前を冠する配下のキャバリアを見て)

TYPE[JM-E]に搭乗し、サルベージ船付近に急行

SERAPHIM LEGION、出撃
サルベージ船に接近する敵を優先してください
接近戦、及び実体弾の使用は厳禁です、人工物を捕食し強化を図ります
ビットによるレーザー射撃で撃破を

私は伊邪那岐で攻撃を仕掛けます
接近されないように、推力移動で距離を取りましょう

サルベージ船の皆さん、現時点で判明している「セラフィム」のデータをください

私が運用する無人機のデータと比較しつつ、対応策を検討します
セラフィム・リッパーがこんな所にいる訳ないですよねぇ…



『セラフィム』――それはスペースシップワールドにおける『古代兵器』の名称である。
 その名が意味する所を知るのであれば、他世界であっても耳にすることがあったであろう。
 天使の階級。
 それが『セラフィム』であり、ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697)は己の配下たるキャバリアにもまた同じ『セラフィム』の名があることに訝しんでいた。

「セラフィム、人型兵器……まさか、そんなはずは」
 彼の配下である無人機のAI制御キャバリア『セラフィム・リッパー』の一個中隊は、彼の命令を待つように整然と居並ぶ。
 自身のキャバリアに搭乗し、彼はオブリビオン『コズモメーバ』が包囲するサルベージ船に急行する。
 あれこれと考えることは多い。
 けれど、今はサルベージ船を救うことだけを考えなければならない。

「SERAPHIM LEGION(セラフィムレギオン)――出撃」
 彼が『セラフィム・リッパー』達に下した命令は端的なものであった。
 サルベージ船に近づくものの排除である。
 AI制御に寄って機動する『セラフィム・リッパー』たちが宇宙空間を走る。不定形の原始生物である『コズモメーバ』にとって接近戦や実体弾による攻撃は無意味である。

 人工物の全てを捕食する『コズモメーバ』にとって、それは餌でしかない。熱量で持って捕食される前に焼き切る以外に接近戦での有効な手段は見受けられない。
 だからこそ、ジェイミィはビットによるレーザー射撃での撃破を徹底させたのだ。
「人工物を捕食し、強化を図りますか……ですが!」
 ジェイミィはバルスマシンガンの銃口を向け、迫る『コズモメーバ』を討ち貫いていく。
 常に推力移動で『コズモメーバ』を翻弄し、AI制御の『セラフィム・リッパー』と共に戦場を駆け抜ける。
 放たれるレーザーの火線が『コズモメーバ』の不定形の体を焼き切っては消滅させていく。

「他愛ない。距離さえ保てるのならば、熱攻撃で滅することができる……問題はその熱量こそが大量に必要ということですが……」
「すまない。助かった。外に出ていた作業員たちの収容までまだかかる……すまないが、それまで保たせてくれ!」
 サルベージ船から通信が入り、ジェイミィは快諾する。
 もとよりそのつもりで駆けつけたのだから。そして、ジェイミィは逆に通信を終える前に返すのだ。

「現時点で判明している『セラフィム』のデータをください。どうやら、この後の戦いに必要になるようなのです」
 その言葉にサルベージ船からデータが送られてくる。
 他の猟兵達の得た情報と統合していくと『セラフィム』と呼ばれる『古代兵器』は、パイロットの技量を底上げし、経験値を同一機体で共有することによって成長、学習する兵器であるようだった。

 撃破例はあるにはあるが、単体での撃破がほとんどのようである。無数に存在していた場合、経験値を共有するネットワークを寸断させるなどして孤立させてからではないと撃破が難しいようである。
 ただ、首元の装甲が薄いようで、撃破例は殆どがそこへの被弾によってのみなされているようだった。

「……私が運用する無人機のデータと比べてみても……やはり、性能差は歴然。『セラフィム・リッパー』の方が上のように感じるのは、カタログスペック上だけのこと。机上の空論にすぎませんが……」
 見比べてみても『セラフィム・リッパー』と『セラフィム』は似ているのは名前だけであるようだった。
 どちらがより洗練されているかと言えば、『セラフィム・リッパー』の方であろう。
 扱いやすさやOSといった類の面を見ても、扱いやすさや兵器として優れているのは『セラフィム・リッパー』なのだ。
「『セラフィム・リッパー』がこんなところにいる訳がないですよねぇ……」

 ジェイミィは何度検証してみても、そう結論づけるしかなかった。
 如何なる経緯でもって古代兵器『セラフィム』が滅びたのか。どうして同じ天使名を持つ機動兵器が存在しているのか。
 謎は深まるばかりであったが、成すべきことは変わっていない。
『葬列の長サイファー』を打倒する。
 そのためにジェイミィは『方舟』へと突入するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
グリモアベースから転送されたら、飛鉢法でサルベージ船の側まで。
『セラフィム』、ね。聞き覚えがあるけど。それは後。

猟兵よりサルベージ船へ。至急の待避を要請するわ。後はあたしたちが遮る。

宇宙船を背に、迫る『コズモメーバ』と対峙。
天地がない空間戦で、使える絶陣は限られるのよね。やっぱり他にはないか。
「結界術」「全力魔法」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」「呪詛」「仙術」「道術」で、紅水陣を広域展開。
赤い酸の靄で、『コズモメーバ』の大群を取り込み、赤い酸で溶かし尽くす。
結界を張っているから、逃げ出そうなんて無駄よ。

あたしの受持範囲はこれで良し。
サルベージ船、『古代兵器』『セラフィム』の主武装は何かしら?



 グリモアベースから転移してきた村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)が鉄鉢に乗って見たのは不定形の原始生物『コズモメーバ』がサルベージ船を囲う光景であった。
 無限に増殖分裂を続け、数を増やしていく『コズモメーバ』はたしかに宇宙船しか生命の拠り所のないスペースシップワールドにおいては恐ろしい怪物であった。

 人工物を好んで捕食し、宇宙船であっても貪り尽くしてしまうほどの旺盛な食欲を持つ存在。
 それに囲まれたサルベージ船の運命は決したようなものであったが、それを覆すのが猟兵という存在である。
「それにしても『セラフィム』、ね。聞き覚えがあるけど。それは後」
 彼女には今なさねばならぬことがある。
 サルベージ船を救うこと。何をおいても、それを為してからでないと猟書家『葬列の長サイファー』を打倒するどころではないからだ。

「猟兵よりサルベージ船へ。至急の待避を要請するわ。後はあたしたちが遮る」
「すまない! だが、まだ作業員たちの収容が済んでないんだ……!」
「なら、下手に動かないこと。いいわね」
 ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
 天地、そして前後左右がない空間において彼女の扱うユーベルコードは限られるようであった。
 天と地がある場所において効果を発揮するのは、やはり立体的な戦術が要求されるスペースシップと相性が悪いのかもしれない。

 しかし、それでもやらねばならぬ。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
 展開される紅水陣(コウスイジン)は、真っ赤な血のような全てを蝕む強酸性の雨をふらさえる。
 赤い酸の靄が『コズモメーバ』たちを取り囲んでいく。結界術によって取りこぼすことはない。
 それでも『コズモメーバ』の数は多い。
「とりあえず、あたしの受け持ち範囲はこれで」
 輝くユーベルコード。

 それに応えるように結界術で取り込んだ『コズモメーバ』たちが溶け落ちていく。あらゆるものを腐食させる赤い靄の中にあって人工物を捕食するだけの存在は容易く溶け落ち、霧散していくことだろう。
「逃げ出そうたって無駄よ。その結界術は人工物なんかじゃないのだから。溶け落ちていきなさい」
 彼女の目の前で『コズモメーバ』たちが声を発すること無く消えていく。

 それを見送ってゆかりはサルベージ船の作業員に通信を入れる。
 彼女は『古代兵器』について尋ねなければならなかった。これまで猟兵達の集めた情報では、複数機での運用が確認されたパイロットの技量を底上げし、経験値を共有する兵器であることがわかっている。
 経験値を共有するネットワークを寸断するか、もしくはなんらかの方法で一機ずつ分断しなければならない。

 唯一の撃破例は首と胴を繋ぐ首元の装甲が薄く、そこに被弾した場合である。ほとんどの機体がそうやって破壊されているようでも在った。
「それで、『セラフィム』の主武装は何かしら?」
 ゆかりの疑問は尤もであった。
 兵器であり、人型である以上、戦術的に運用される武装があったはずだ。
 けれど、サルベージ船から帰ってきた答えは、固定の武装が無い、という答えであった。

 どのデータを見ても、『セラフィム』の武装は一定していないようだった。
 砲撃を行う機体もいれば、接近戦にシフトした機体もあるし、防衛用の装甲をまとう機体も存在していたようである。
 具体的には、6種類の武装が確認されているようだった。
 汎用型、砲撃型、近接型、指揮型、妨害型、これらを備えた最終型。
「……どれがオブリビオン化しているかわからない以上、ぶっつけ本番ってわけね」
 ゆかりは、とりあえず『セラフィム』を無力化する算段を考えながら、送られてきたデータを見る。

 無力化するには、やはりネットワークをどうにかするか、孤立させて撃破するのが容易いようであった。
 幸いにして首元の装甲が薄いというのは、容易にオブリビオン化した単体の『セラフィム』を撃破できる要因にはなるだろう。
 ゆかりは『方舟』を目指す。
 其処に倒さなければならない猟書家『葬列の長サイファー』、そして古代兵器が存在しているのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
げ、コズモメーバかよ…
こいつに取り付かれると手遅れになりかねないから厄介だ
そうなる前に早く船を助け出さないとな

[SPD]
クロム・スティールに【騎乗】して出撃
【先制攻撃】を仕掛けつつサルベージ船に接触して通信を送るぞ
おい聞こえるか?今のうちに離脱しろ、なんとかする!(コミュ力

UCを発動、CBRとDHBを構えたら
【乱れ撃ち、弾幕】を形成して包囲を突破するぜ
炎属性攻撃による熱量はひとたまりもねえだろ!
更に【衝撃波、吹き飛ばし】で船には指一本触れさせない

無事に切り抜けられたら船の状態を確認しつつ
『古代兵器』について何か思い当たりがないか訪ねよう
どんな些細な事でも心当たりがあれば助かるんだが

アドリブ歓迎



 オブリビオン『コズモメーバ』は不定形の原始生物である。
 その粘体の如き体は物理攻撃では分裂増殖を助けることにしか成らず、かといって熱で焼き切るには膨大な熱量が必要になる。
 接近されるまでに処理できれば脅威にはなりえないが、もしも宇宙船や周囲に浮かぶ宇宙デブリを取り込まれたのならば、それは最早手のつけられようのない怪物へと変貌する。

『コズモメーバ』によって滅ぼされた宇宙船の話はスペースシップワールドに生きる者たちにとって、猛威にほかならない。
「げ、『コズモメーバ』かよ……こいつに取り着かれると手遅れになりかねないから厄介だ」
 星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は、宇宙船を生まれ故郷に持つ猟兵である。
 即ち、スペースシップワールド出身のスペースノイドだ。そんな彼が『コズモメーバ』の脅威を正しく理解しているのは当然のことであっただろう。
 猟兵たちが駆けつけ、包囲されているサルベージ船は今はまだ安全かもしれないが、外で作業していた作業員たちの収容にまごついている。

 わからないでもない。
 こんな逼迫した状況では普段どおりに動けない方が普通だ。だからこそ、祐一はキャバリア『クロムスティール』を駆り、宇宙空間を征く。
「取り着かれる前に早く船を助け出さないとな――先制で行くぜ!」
 手にしたビームライフルと肩に取り付けれれた無反動砲より放たれたビームの光条と砲弾が『コズモメーバ』へとぶつかり、その粘性の体を焼く。
「おい、聞こえるか? 今のうちに離脱しろ」
「もう少し収容が終わる。それまで保たせてくれ!」
「――なんとかする!」
 そんなやり取りは僅かな時間であった。けれど、祐一は彼等の助けが必要なことを理解している。

 ユーベルコードに輝く瞳が『コズモメーバ』を捉える。
 モニターに映るロックオン表示が年生の体を捉え、放たれる一撃は冬雷(トウライ)の如く宇宙空間に迸る。
「弾幕と燃焼、この熱量ならひとたまりもねえだろ! 船には指一本触れさせない!」
 祐一はスペースノイドだからこそ、宇宙の脅威を知る。
 その脅威がどれだけ生命に対して過酷な環境を強いるかも知っている。だからこそ、助け合わなくてはならない。
 どれだけ技術が発展し、進歩したとしても人間は一人では生きていけないのだから。

 だからこそ、祐一は『クロムスティール』の鉛色の機体を爆発の赤に染めながら飛ぶのだ。
「っし! これで!」
 機体を反転させ、サルベージ船の外壁に『クロムスティール』の掌が触れる。
「『古代兵器』ってのに何か思い当たることがないか? 些細なことでも心当たりがあれば助かるんだが」
「あんたも、それか。『古代兵器』ってのは、おそらく『セラフィム』と呼ばれた人型兵器だよ。これは間違いない。船外作業していた連中が、それらしく残骸を見たと言っている」
 サルベージ船からの通信で祐一は『古代兵器』の名を知る。
『セラフィム』――人型兵器であり、キャバリアと同じ大きさをした戦術兵器。

 パイロットの能力を底上げし、同一機体同士で経験値を共有していく成長する兵器。
 それが猟書家『葬列の長サイファー』によってオブリビオン化されているのならば。
 単体であればそれほど脅威ではない。
 首元の装甲が薄く、そこを付けば容易に機能停止に追い込める。だが、復数存在していた時、その機体の特性により手強い相手になるだろう。

 連携を断絶し、単体撃破を狙えばいいようであることがわかる。
「……成長する兵器。学習型のAIかなにかを積んでるってことか」
 祐一は、己の駆るキャバリアと同じサイズの機動兵器が猟書家の手に落ちたこと、そして、それを再び停めるために『方舟』へと『クロムスティール』とともに飛ぶのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
これより貴船の護衛に付かせて頂きます
そちらは退避作業に専念頂ければ。コズモメーバはお任せを!

機械馬に騎乗し推力移動で宙を駆け、敵群を迎撃
馬上槍機関砲からUCを乱れ撃ち
真空にて燃え盛る炎で焼却

マルチセンサーでの戦域をサーチし情報収集
船に迫る別の群れの接近を把握

天地無き空間戦闘…空戦よりも余程慣れておりますとも

周囲のデブリを馬で●踏みつけ三角移動、減速せず推力方向転換
急行し殲滅

セラフィム…
士気高揚の為、大仰な名を兵器が戴くのは世界を問いません、が…

Bアルカディアの帝国魔道士の言葉が電脳によぎり

発見した古代兵器で気づかれた事はありますか?
帝国、或いは旧解放軍系、或いは別の技術体系の産物であったとか…



 どこまでも広がっていく宇宙。
 銀河の星々の瞬きを懐かしく思うことはあれど、そこに恐怖はない。
 前後左右、天と地の区別なく空間を認識しなければならない宇宙の戦場は、この世界を出身とする者にとっては日常であった。
 サルベージ船を取り囲むオブリビオン『コズモメーバ』たちは猟兵達の活躍に寄って数を減らしている。
 しかし、不定形の原始生物である『コズモメーバ』は一片でも残っていれば、そこから増殖を繰り返し、分裂しては個体を増やして再び宇宙船を襲うだろう。

 そうなってしまえば、元の木阿弥である。
「これより貴船の護衛に付かせて頂きます。そちらは待避作業に専念いただければ」
 サルベージ船はもう少しで船外活動をしていた作業員たちの収容を終えるようであった。
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)はそれを理解した上で、呼びかけ機械馬『ロシナンテⅡ』と共に宇宙空間を駆け抜ける。
「もう少しで終わる。どうか、保たせてくれ!」
 サルベージ船の船長からの通信にトリテレイアは頷く。是非もない。
「『コズモメーバ』はおまかせを!」
 ここであの不定形の原始生物は排除していく。一片たりとて残してはならない。後にのこる不安など、無いほうが良いからだ。

 機械馬『ロシナンテⅡ』のスラスターは大出力であり、宇宙空間でこそ、その本来の性能を発揮するであろう。
 構えた馬上機関砲から弾丸が放たれる。
 しかし、物理的なだんがんであっては『コズモメーバ』に餌を与えるようなものであった。
 けれど、それを考えぬトリテレイアではない。
 彼の手にした馬上槍から放たれる弾丸は、超高温化学燃焼弾頭(消火用薬剤封入弾と併用推奨)(ヘルファイア・バレット)が装填されている。

 それは水中、真空での燃焼を実現する薬剤を封入された弾丸であり、その炸裂は一瞬で対象物を炭化させ、その内部を融解させるのだ。
「この世界出身に私が何も対策を講じていぬとは思わぬことです」
 マルチセンサーで宇宙空間に漂う『コズモメーバ』たちを全てロックオンしたトリテレイアの『ロシナンテⅡ』が天地無き空間戦闘を華麗に行う。
 デブリを蹴っては跳ねるようにして飛ぶ姿は、地上に在っては天馬の如き活躍ぶりであったことだろう。
 炸裂する特殊弾頭は、宇宙空間であっても炎を撒き散らし、『コズモメーバ』の尽くを殲滅してのけるのだ。

 センサーで周囲にある『コズモメーバ』の存在、その消失を確認したトリテレイアは、サルベージ船に近づく。
「『セラフィム』……士気高揚のため、大仰な名を兵器が戴くのは世界を問いません、が……」
 トリテレイアは多くの世界を見てきた猟兵である。
 いくつかの国で似た名前、似た姿をした機動兵器の存在を確認している。

 ブルーアルカディアで対峙した帝国魔道士の言葉が電脳によぎる。
 やはり同じ『セラフィム』。
 人型の機動兵器。それが『古代兵器』としてスペースシップワールドに存在する『セラフィム』と同一であるかはまだわからない。
 けれど、似ていると言わざるを得ないだろう。
「発見した『古代兵器』で気づかれたことはありますか? 帝国、或いは旧解放軍系、別の技術体系の産物であったとか……」
「帝国でも解放軍のものでもないよ、『セラフィム』は。あれはおそらく嘗て帝国に抵抗していた組織のものだろう。もう滅ぼされてしまったが……」

 残っているのは、撃破例と『セラフィム』という機動兵器の特性である。
 頭部と胴を繋ぐ首元の装甲がもろく、そこを付けば単体であれど撃破できるようである。というより、単体での撃破しか例がないようだった。
 パイロットの技量を底上げし、その経験値を同一機体で共有して蓄積し学習する。
 いわば、成長する兵器とでも言えばいいのだろう。
 その真価はやはり単一ではなく復数存在することに寄って発揮される。タイムラグなしの連携。
 対峙する敵の情報を的確に読み取り、対処を組み上げていく。

 もしも、『葬列の長サイファー』が復数の『セラフィム』をオブリビオン化していたのだとしたら、猟兵にとっては脅威である。
 対処するには、機体を繋ぐネットワークを寸断するか、一対一の状況に持ち込み、首の装甲を貫くしかないようだ。
「……」
 トリテレイアは考える。
 ブルーアルカディアで確認した同じ『セラフィム』の名を持つ人型兵器。あれは単体だった。
 あれと同等、もしくはそれ以上の力を発揮するのならば、『方舟』での戦いは苛烈を極めることになるだろう。

 けれど、そこで退くことはない。
 自分たちが退けば、それだけ帝国継承軍の力を増大させることになる。それをさせぬために自分たちは駆けつけたのだ。
 どんな困難であろうとトリテレイアは騎士として退くことはないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『葬列の長サイファー』

POW   :    存分に暴れることだ。死の獣よ
【外套に潜む異形が巨大な獣】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    生者よ、恐れたまえよ
【葬列の瞳】に覚醒して【ヴァンパイア】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    これぞ人の淀み。生者よ、贄となれ
自身が装備する【死者の鳥籠】から【召喚した死者の群れ】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【毒】の状態異常を与える。

イラスト:しおみず

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リオ・フェンブローです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟書家『葬列の長サイファー』は鳥籠の中に燃える緑色の炎を見やり『方舟』の中に座す。
 彼にとって、必要なのは滅びたる過去。
 その残滓ばかりであった。そこから彼はあらゆるものをオブリビオン化する儀式でもって、『帝国継承軍』の戦力に拡充を齎してきた。
「『セラフィム』……かつて『銀河帝国』に仇為した者たち。名を変えても尚、我らに仇を為すとは、やはりその中枢たる魂が我らを拒絶しているのであろうな」
『葬列の長サイファー』は笑う。
 それも全てが徒労であると。どれだけオブリビオンを拒絶しようとも、過去は過去。全ては骸の海に流れ着き、歪められていくのだ。

 どれだけ高潔な魂であっても、それは変わらない。
「故に『セラフィム』よ。おまえたちは蘇ったのだ。新たなる『帝国継承軍』の一員として。喜べ、お前たちの求めた戦場は此処に在る!」
『方舟』の広い格納庫。
 そこにて執り行われた儀式でもって再編された『古代兵器』、『セラフィム』が居並ぶ。

 その数は嘗ての数よりは減って居るものの、『葬列の長サイファー』を中枢に展開する。
 学習し、蓄積した経験値を共有することに寄って部隊全体を強化する力を持つ『セラフィム』。

 その青い鎧の如き、5m級の戦術人型兵器が歪な過去の光を瞳に宿し、起動する。
 ビームブレイドとライフルを装備した標準型ばかりであったが、それでも共有された経験値は時間を経る毎に強化されていくだろう。
 これを停めるためには機体同士をつなぐネットワークを寸断するか、もしくは単騎に分断して首の根元を狙うしかない。
「さあ、猟兵よ。やってくるがいい。かつて我らを苦しめた『セラフィム』の力でもって、今度こそお前たちが駆逐される側であることを知るがいい――!」
ガーネット・グレイローズ
あの人型兵器が『セラフィム』か。
戦闘データを共有して部隊をスピード強化するシステム、
実に効率の良い運用方法だ。
だが、先程の戦闘で解決策は見いだせた。
今度はこちらから仕掛けるぞ!

突入したらすぐ【グラビティマスター】発動、
重力エリアを飛行して進むぞ。
スラッシュストリングを《念動力》で操り、セラフィムの
首を狙って《斬撃波》を乗せた《鎧無視攻撃》を飛ばす。
サイファーは亡者を召喚してくるだろうから、
回避を重視して立ち回る。
《空中戦》《滑空》で二段ジャンプや空中ダッシュを使い、
敵の頭を踏んで飛び越えていこう。
素早く距離を詰めて、《功夫》《二回攻撃》で突き蹴りの連打を
サイファーに叩き込む。歯ぁ食いしばれっ!



 猟書家『葬列の長サイファー』の座す『方舟』の格納庫は今や『セラフィム』たちの戦場になっていた。
 迫る猟兵を打倒するために用意した囲い。
 例え、『セラフィム』が敗れようとも『葬列の長サイファー』が最後に立っていればいいのだ。
 どれだけ破壊されたとしても、また再び残骸を集め大儀式を執り行なえばオブリビオンの補充は可能である。
「今は敵、猟兵の数を減らすことが肝要であろうよ。我らの目的を看破し、即座に対応する彼等の数を減らしていけば、自ずとこちらの戦力が上回る。なにせ、時は我らの味方だからな」

『葬列の長サイファー』の手にした鳥籠から死者の魂が緑井の炎となって噴出する。
 彼の言葉通り、たしかに時はオブリビオンの味方かもしれない。
 けれど、世界の悲鳴を聞き届ける猟兵にとって、それは些細なことであった。
「あの人型兵器が『セラフィム』か」
 ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は飛び込んだ『方舟』の格納庫を見やる。
 確かに『セラフィム』と呼ばれる『古代兵器』は脅威そのものであった。
 戦闘データを共有し、部隊をスピード強化するシステム。
 それは『銀河帝国』に対抗するために、数、質ともに劣る組織が生み出した技術なのだろう。

 それが皮肉にも『帝国継承軍』の戦力として組み込まれようとしていることは皮肉以外のなにものでもなかった。
「実に効率の良い運用方法だ」
 ガーネットは頷く。
 生身単身で飛び込んだ彼女を有に越える体躯。
 やはり『葬列の長サイファー』は『セラフィム』の数を揃えてきた。けれど、ガーネットは恐れない。

 何故なら、すでに彼女は解決策を見出しているのだ。
「今度はこちらから仕掛けるぞ!」
 グラビティマスターたる彼女の身体が、異界の仙人の如き地面を蹴って飛ぶ凄まじい速度で持って『セラフィム』たちの放つライフルの弾丸を躱す。
「封神武侠界で修行をした成果を見せてやろう!」
 彼女の身にまとう重力は在ってないようなものであった。重力区であったとしても、彼女には関係ない。
 これこそが、仙界で学んだ歩法。
 跳ねるようにして飛ぶ彼女を追って『セラフィム』たちが殺到する。けれど、それこそが彼女の罠であった。

 彼女を負った『セラフィム』の一機の首が一瞬で両断され、地面に重たい音を立てて落ちる。
「――!」
 その光景に『セラフィム』は即座に足を止める。
 それもそのはずであろう。突如として僚機の首が落ちたのだ。経験値を共有する彼等にとって、それがなんであるかわからなくても、足を止める要因に成りえるのだ。
 同時に、それは決定的な隙となる。

 未開の惑星に潜む凶暴な宇宙怪獣の肉体さえ切り裂くブレードワイヤーが、そこには張り巡らされていた。
「スラッシュストリング……! 問題なく首の装甲を両断できるようだな!」
「だが、一度見たのならば――『セラフィム』!」
『葬列の長サイファー』が叫ぶ。
 けれど、ガーネットを止めるには値しない。彼女の放ったスラッシュストリングの斬撃波の一撃が『セラフィム』の首を次々と落とし、『葬列の長サイファー』へと突き進む。

 喚び出した亡者たちの魂を差し向けるも、ガーネットはそれらの尽くを舞い踊るようにして蹴り飛ばし、迫るのだ。
「何もかもが遅いな、ネクロマンサー気取り!」
 ガーネットが距離を詰める。
 瞳に輝くユーベルコードが、彼女の意志を、死者を冒涜する存在を許さぬと煌めくのだ。

「歯ぁ食いしばれっ!」
 放たれる鋭い突きが『葬列の長サイファー』の胸を打つ。
 鈍い音が響くが、それも刹那である。放たれた蹴りの連撃が頭部と胴を捉え、その体を吹き飛ばし、『方舟』の格納庫の壁面へとめり込ませる。
「徒に眠る死者を起こすばかりか、己の手駒にする所業。その身に穿たれた傷が代償としれ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
『セラフィム』か……。
『希』ちゃん、あの機体の解析データをスキャンして。

やっぱり……前にクロムやブルアカで見た機体に酷似してるね。
どういうことなのかはわからないけど、機体データがあれば対策もたてやすいかな。

船員さんたちのお話だと『連携遮断』が有効ってことだから、やらせてもらっちゃおうかな。
【E.C.M】をフルパワーで発動させて、相手の通信・連携を阻害。
できれば動きまで止められたらいちばんかな。
さらに【D.U.S.S】もスイープスルーモードで照射して、徹底的に連携を乱そう。

あ、そだ。相手の機体データ、取っておかないと。
あとサルベージ船に帰ったら『セラフィム』の残骸ももらえないか交渉してみよう。



「『セラフィム』か……」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、その名を呟き、やはり自分の中にある違和感、既視感というものに未だ確信を得ることができないでいた。
『セラフィム』という名前は、ある意味でよくある名前であるのかもしれない。
 天使名。
 その位階を現す名であり、多くの異世界を見てきた彼女にも、幾度か耳にした単語であろう。

 彼女はクロムキャバリアやブルーアルカディアといった異世界で似通った人型兵器の存在を見てきている。
『セラフィム・リッパー』、『セラフィムV』。
 この名が示すのが偶然なのか、それとも必然であるのか。ともあれ、彼女は他の猟兵達のためにE.C.M(イー・シー・エム)を最大出力で解き放つ。
 電波妨害装置よりノイズジャミングとディセプションを放ち、電子機器の使用を不能にする。
『セラフィム』という機動兵器の最大の特徴として同一機体同士の連携がある。
 機体を介し、経験値を共有することによって加速度的に練度を上げていく学習する兵器は、単体であれば脅威ではない。

 そのネットワークで繋がっている機体のつながりを断てば、経験値は共有されず、時間を味方につけた猟書家『葬列の長サイファー』の目論見を打破することに繋がる。
「潰させてもらっちゃうね」
 これはサルベージ船の船員たちから聞いた話だ。
 どこまで信憑性があるかわからない。けれど、理緒の瞳に迷いはなかった。
 ユーベルコードに寄って強化されたジャミングは『セラフィム』たちの連携を寸断させ、動きを止める。
 さらに彼女の手にした超音波を放つ音響攻撃装置が、徹底的に機体に負荷を掛けていくのだ。
「おのれ猟兵! 我が『セラフィム』の連携を断つか。だが、それが命取りよ!」
『葬列の長サイファー』が格納庫の壁に叩きつけられていた身体を起こし、手にした鳥籠から亡霊たちを解き放つ。

 それを理緒はさらに複雑に負荷のレートを変えた音響攻撃で持って黙らせるのだ。
「『希』ちゃん、あの機体の解析データをスキャンして――今は邪魔しないで!」
 解き放たれた音響攻撃に殺傷性はない。
 けれど、複雑にレートを変えて波と化した音響は、寸断されたネットワークでまともに動けない『セラフィム』や『葬列の長サイファー』を吹き飛ばす。
 凄まじい衝撃波は、それだけで彼等の連携を乱すだろう。

 サポートAIによる『セラフィム』のスキャンデータが送られてくる。
 あとで残骸をもらって解析してみるのも手であるが、そもそも消滅してしまうかもしれない。この『方舟』ごと消えてしまっては、検証する暇もない。
 だからこそ、理緒は此処で得られるだけのデータを吸い上げようとするのだ。
「……やっぱり、六つの型……汎用型、砲撃型、近接型、指揮型、妨害型、最終型に別れてるんだ」
 それが学習した結果による派生であるのかどうかはわからない。
 けれど以前彼女が見た『熾盛』と呼ばれる機体のバリエーションと数は一致している。

 それが偶然なのか。
 彼女は『セラフィム』のデータを吸い上げていく。確かにブルーアルカディアで見た『セラフィムV』とのデータは類似する点が多い。
 けれど、スペック的に見ても、同一であるとは思えない。
 一体何がどうなっているのか、未だデータ不足であると言わざるを得ないだろう。奇妙な類似点、その多くを見出すことが出来るが、三つの世界にまたがって存在している『セラフィム』という人型兵器。

「似ている点は多いけれど、やっぱり別物、かぁ……でも、それはそれとして! 眠っている人たちを叩き起こすようなやり方! わたしは好きじゃないな!」
 そのつながりを理緒はわずかに垣間見、そして、それらを利用するオブリビオンの目論見を打破するように壮絶なる音響兵器は『葬列の長サイファー』の身体を強かに打ち据え、その邪悪を打ち砕くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
『セラフィム』……世界を越えて共通する名前に何の意味があるか知らないけど、今はオブリビオンを叩くのみ。

「結界術」「全力魔法」「範囲攻撃」影の「属性攻撃」「集団戦術」「呪詛」「仙術」「道術」で、金光陣!
敵の数が有限なほど、この絶陣は効果を上げる。めざめし影達よ。本体を打ち倒しなさい。
『GPD331迦利』、顕現。「ジャミング」で『古代兵器』の情報リンクを阻害しつつ、猟書家に「レーザー射撃」を集中して。
このまま「弾幕」を「制圧射撃」にして、最後はあたしが薙刀で切り込む!

過去の遺物を拾い回るとは、正しくオブリビオンね、あなた。討滅のし甲斐があるわ。
薙刀で鳥籠持つ手を「薙ぎ払い」「串刺し」にしてあげる。



 他世界を知る猟兵であるからこそ、その『古代兵器』、『セラフィム』の名に意味を見出すことのなるのかもしれない。
 例え、偶然であったのだとして、一つでは確信に至らず。
 けれど、二つ、三つと重なっていくことに寄って偶然は必然へと変わっていくのかもしれない。
「『セラフィム』……世界を越えて共通する名前に何の意味があるのか知らないけど……今はオブリビオンを叩くのみ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は己の直感に従って『方舟』の中を走る。

 すでに先行した猟兵が戦う姿が見えている。
 猟書家『葬列の長サイファー』は打撃と音響攻撃に寄って格納庫の壁面へと叩きつけられている。
 しかし、未だ消滅をしないということは、曲がりなりにもオブリビオンであるということだ。
『葬列の長サイファー』の瞳がユーベルコードに輝き、その肉体に刻まれた傷跡を癒やすように復元させていく。
 それはヴァンパイアそのものであった。
「無駄だよ。言っただろう、時間こそが我らの味方だと。どれだけお前たちが未来を見ているのだとしても、追いすがる過去という影があることを知っておくのだな!」

 迫る『葬列の長サイファー』が走る。
 すでに猟兵に寄って寸断されたネットワークに寄って『セラフィム』は混乱に陥り、その動きを止めている。
 だが、その動きを更に止める存在が『方舟』の格納庫に舞う。
「『迦利』――!」
 ゆかりの式神使いとしての力によって飛ぶのは無人機なるキャバリア。
 そのキャバリアが解き放つジャミング能力でもって『セラフィム』たちの連携はさらに分断されていく。

 これで『葬列の長サイファー』の指示は受け付けられず、いたずらにときが消費されていくだけだ。
「ちっ……肝心な時に……! いや、お前たちはすでに『セラフィム』の弱点を知ってるようだな。だが!」
 狭る『葬列の長サイファー』の爪がゆかりへと伸びる。
 けれど、ゆかりの瞳はユーベルコードに輝く。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。光り輝くほどに影はより深く。濁気に沈む愚人の影よ、克己せよ。汝らの現し身に牙を剥け。疾!」
 それは、金光陣(キンコウジン)が生み出した金光より出る影。
 その影がゆかりを護るように『葬列の長サイファー』との間に割って入った瞬間、貫かれた影の傷が、まるで転写されたかのように『葬列の長サイファー』へと刻まれる。

「――ッ、何!?」
「引っかかったわね。なまじ本体の力を過信するからそういうことになる!」
 ゆかりは転写された傷より噴出する血潮をかいくぐり、薙刀の一撃を『葬列の長サイファー』へと叩き込む。
 その一撃は自身の一撃と共に袈裟懸けに放たれ、『葬列の長サイファー』を追い詰めていく。
「過去の遺物を拾いまわるとは、まさしくオブリビオンね、あなた。討滅のし甲斐があるわ」
 返す刃で放たれた薙刀の一撃が鳥籠を持つ手を薙ぎ払い、さらなる一撃を見舞う。

「時間があなたたちオブリビオンの味方だと言ったわね。けれど、どれだけ過去を集めても未来という可能性には到達できない。何のために時間が過去に排出されていくのかを考えなさい」
 影は確かに光によりそい隣り合うものだ。
 けれど、光より先に向かうことはできない。
 故に、ゆかりは己たちが負ける道理はないと、金光まばゆく輝く陣の中で、『葬列の長サイファー』を圧倒するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『不動なる者』にて

セラフィムなぁ。聞き覚えはあるが、はて?

さて、未来への置き斬撃を、避けることは出来るか?
まあ、避けられてもよいのだよ。わざと『高速移動したら避けられる』位置に置いたからの。

うむ、つまりは同士討ち誘発じゃて。
そういうのは無差別と見えたからの。
移動せねば、普通に内部から斬られるしの。装甲なぞ関係ない。

こちらはまあ、陰海月が張りきって結界張ってくれておるからの…任せた。


陰海月、目があったらキラキラしてそうなくらいに張りきってる。「ぷきゅ(宇宙)!!」
セラフィム見ると、首(?)を傾げる。「ぷきゅ?」



『古代兵器』――『セラフィム』、その名を聞いた時、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の四柱の悪霊たちは聞き馴染んだ名前であると思ったことだろう。
 このスペースシップワールドで聞いた名ではない。
 他世界で聞いた名である。
 あちらも同じ『セラフィム』の名を冠した人型の兵器であった。
 違うのは、あちらには意志のようなものを感じさせるが、こちらの『古代兵器』には意志というものを感じさせない。

 それもそうかと『不動なる者』は首肯する。
「そもそもが兵器。兵器に意志は必要ないとなれば、それもそうであろうな」
 聞き覚えがあっても、違う存在であるという確信はある。
 けれど、どこか繋がりがあると思ってしまうのは無理なからぬことであった。外観もにているし、未だ知らぬことがあるからこそ、確信には至らないのだ。

 けれど、今は為すべきことがある。
 猟書家『葬列の長サイファー』の身は猟兵の攻撃に寄って痛手を負っている。彼の外套から異形なる存在がまるで手招きするように這い出してくる。
「獣よ、我の代わりに奴らを討て。構わぬ、存分に喰い滅ぼせ!」
 血まみれになりながら、『葬列の長サイファー』が叫ぶ。
 同時にこれまでネットワークを猟兵の手によって寸断されていた『セラフィム』たちが動き出す。
 漸くにして、復帰した彼等を操る『葬列の長サイファー』の顔が勝利を確信する。
 なぜなら、未だ猟兵達は十分な『セラフィム』たちを撃破出来ていない。数こそが彼等の強みであれば、そのアドバンテージを喪っていないからだ。

「となれば、そうくるさな。だが、未来への置き斬撃を避けることは出来るか?」
 輝くはユーベルコード。
 それは、四天境地・山(シテンキョウチ・ヤマ)によって漆黒の剣より放たれた斬撃が未来への視認不可なる斬撃を放つ。
 されど、その斬撃を持ってして『セラフィム』は躱すだろう。しかし、それもまた『不動なる者』の一計であった。
 あえて、高速機動でならば避けられる斬撃、その位置に斬撃を配置したのだ。

 躱す『セラフィム』たちはしかして、その高速移動故に、互いに激突し、無力化されるように地面に倒れ伏す。
 そこに『不動なる者』が駆け込む。
 目指すは『葬列の長サイファー』のみ。その瞳に輝くユーベルコードは未だ健在である。
 どれだけ異形の獣が襲いかかるのだとしても――。
「無駄である。すでにそこには我が斬撃は解き放っているがゆえに」
 放たれる斬撃が一瞬で異形なる獣を切り裂く。

「その程度で、我が獣が!」
 斬撃を受けて尚、異形なる獣の牙が『不動なる者』を襲う。しかし、その牙が届くことはなかった。
「ぷきゅ!」
『陰海月』が、宇宙に感動しつつ、張り切った結果であった。結界術の強度はこれまで以上のものであったし、似ている兵器を知っているために、ロボット然とした『セラフィム』に首を傾げつつも、大興奮しているのだ。

「任せておるのでの。何の問題もない。後は『葬列の長サイファー』、切り捨てさせて頂く」
 放たれる不可視なる斬撃。
 それはすでに配置された未来への斬撃。異形なる獣がそれをかばおうとするがもう遅い。
 内部より切り裂く斬撃の一撃が、容赦なく『葬列の長サイファー』を切り裂き、その血潮を噴出させる。

 数と、古代兵器に頼り切る者に負ける道理はないと、『不動なる者』は、己の剣技が練磨されていくのを感じていたことだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイミィ・ブラッディバック
(キャバリアに搭乗、セラフィム・リッパー隊も引き続き出撃)

パッと見キャバリアですね…というか、クロムキャバリアにおけるセラフィム・リッパーの原型機でしょうか
各国で運用されているようですし…現に私も運用していますし

どちらの「セラフィム」が上か、勝負と行きましょう

セラフィム・リッパー隊各機へ通信障害対策を命じます
私が先行して接近、フィールドバリアを爆発させて構成粒子を散布
この攻撃で死者の群れを一掃しつつ敵の通信回線に対するジャミングを行います
各機は出来る限り多対1の状況を作り、弱点をビットで狙うように
ある程度セラフィムを片付けたら、サイファーに攻撃を集中

我々こそが真の「機械仕掛けの熾天使」です



 猟書家『葬列の長サイファー』の『方舟』の中は、巨大な格納庫であった。
 それもそのはずであろう。
 彼はスペースシップワールドのあらゆる古戦場跡において、多くの残骸を集めるために動いていた。
 集めた残骸を持って、宿る残留思念から亡者たちをオブリビオン化するための大儀式を行うことこそが彼の最大の目的であるからだ。
 果たして彼の目的は確かにかなったのだろう。
 居並ぶ『古代兵器』、『セラフィム』はオブリビオン化を果たし、猟兵達へと迫る。しかし、多くの猟兵たちがそうであったように、すでに対抗策は打ち出されている。

「パッと見キャバリアですね……というか、クロムキャバリアにおける『セラフィム・リッパー』の原型機でしょうか」
 ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697)は己もまたキャバリアを駆り、『方舟』の格納庫を往く。
 クロムキャバリアで見た『セラフィムリッパー』と同じ型のように思えるが細部が違うようであった。
 装備が違うのはもとより、原型機と呼ぶには共通しているのは装甲の色や全高くらいといったものであった。

 各国で運用されているようでもあったし、現に自身もAI制御の無人機としてジェイミィも運用している。
「とは言え、今それは些細な問題。どちらの『セラフィム』が上か、勝負と行きましょう」
 ジェイミィは無人AI機である『セラフィム・リッパー』隊各機へ通信障害対策を命じ、己は先行して格納庫に飛び込む。
 すでに猟兵達によって一度はネットワークを寸断された『セラフィム』は鈍重ながら、それらに対する対抗策を共有される経験値から見出しているようでも在った。

「来たか、猟兵。だが、まだ終わらせんよ」
『葬列の長サイファー』が持つ鳥籠より放たれた亡霊たちがジェイミィを襲う。
 しかし、ジェイミィは構うことはなかった。今、彼がすべきことは『葬列の長サイファー』にかかりきりになることではない。
「READY TO BURST FIELD PARTICLE...COMPLETED.」
 自身の機体を覆うフィールドバリアが爆発し、高濃度圧縮粒子と衝撃波が放たれる。
 それは広域に渡って索敵、通信妨害、粒子汚染による『方舟』を侵食を行うユーベルコードであった。

『セラフィム』の強みが機体同士による経験値の共有であるというのならば、ネットワークを寸断すれば、その強みは消える。
 多少動ける人型兵器に成り下がるのであれば、あとは『セラフィムリッパー』にまかせてしまえばいい。
 次々と多対一の状況に引きずり込まれ『セラフィム』は首の根本の装甲を貫かれ、機能を停止していく。
 浮遊するビットが格納庫を飛び、迫る亡霊たちを穿ちながら『葬列の長サイファー』への道を拓くのだ。

「ばかな、こんな簡単に我らを苦しめた『セラフィム』が敗れるだと……!」
『葬列の長サイファー』が呻く。
 オブリビオン化した『セラフィム』によって、猟兵たちを苦しめるはずが、容易に対策を取られ無力化していく。
 これまで猟兵たちが紡いできたものが結実した瞬間、彼の勝利は最早なかったのだろう。
 ジェイミィは己のキャバリアと共に飛ぶ。
 ビットの群れが『葬列の長サイファー』を取り囲み、その砲身が狙う。
「我々こそが真の『機械じかけの熾天使』です」

 ジェイミィは、オブリビオン化した『セラフィム』たちに如何なる感情を抱いていたことだろうか。
 憐憫か、それとも。
 放たれるビットよりの光条が『葬列の長サイファー』を貫き、ジェイミィは機械天使たちと共に飛ぶのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーイ・コスモナッツ
きっと、ここまでの猟兵との戦闘からも、
かなりの経験値を蓄積しているのでしょうね

だけど、借り物の経験になんて負けるもんか
猟兵になってから今日この日まで、
磨きに磨き続けてきた技で勝負!

反重力シールドに飛び乗って、
「空中機動」で縦横無尽に撹乱します
私はこの技には絶対の自信がある
UCも使って、早く速くもっと疾く!

いくら経験値を蓄えたとしても、
マシンの基本スペックまではかわらない
私の機動に追い付こうとしても、
駆動系が高速運動の負荷に耐えられないはず

セラフィムの動きが止まったら、
さらに加速をつけてサイファーに突き掛ります
正々堂々戦い散った者を盾にして
自身は高みの見物とは、言語道断の卑怯者!
恥を知りなさい!



『葬列の瞳』がユーベルコードに輝く。
 猟書家『葬列の長サイファー』の肉体は猟兵達によって消耗させられている。けれど、その肉体がヴァンパイアへと変貌し、傷を癒やしていく。
 彼にとっては、ここまで追い込まれるとは思っていなかったのだろう。
 猟兵たちを『古代兵器』、『セラフィム』で追い込み、自身は悠々と彼等を打倒すればいい。そのようにさえ思っていたはずだ。
「だと言うのに……此処まで追い込むか……!」
 忌々しげに呟く彼の瞳に輝くユーベルコードは弱々しいものであった。
 どれだけ強大な力を持っていようとも、繋ぐ戦いをする猟兵にとっては無意味である。

 例え、己が打倒できなくても続く者たちが必ず仕留めてくれると信じているからこそ、猟兵達は戦うことができる。
『セラフィム』も嘗てはそうであったのだろう。
 自身が倒れても自身が経験したことは共有される。後に続く者達がきっと、この敗北を糧にしてくれると信じて戦っていたはずだ。
 それをユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)は理解していたからこそ、反重力シールドに飛び乗り、『方舟』の格納庫へと飛び込む。

 彼女は侮ってはいなかった。
『セラフィム』は、起動してからこれまで猟兵たちと戦った経験値を共有し、強化されているはずだと思っていた。
 けれど、それは成されていない。
 猟兵たちが戦い、ネットワークを寸断させて、本来の強みを引き出せぬまま撃破されているのだ。
 彼女は思っていた。
 借り物の経験になど負けるわけがないと。彼女自身が培ってきた今日この日までの経験。それを磨きかけてきたからこそなせる技があると知っているからだ。
「ブースト・オン!」

 彼女自身が体現するのは、流星の運動方程式(フルアクセルシューティングスター)。
 反重力シールドに乗って凄まじい速度で格納庫を縦横無尽に駆け抜ける姿は、例えどれだけ『セラフィム』が経験値を共有していたとしても追いつくことはできなかったことだろう。
「この技には絶対の自信がある……早く、速く、もっと疾く!」
 例え、経験値を蓄えたのだとしても、兵器である以上基本スペックまではかわらないだろう。
 それに他の猟兵たちが蓄積し、与えたネットワークへの損害は容易に復旧できるものではなかった。

 鈍重な動きしかできぬ『セラフィム』を躱し、ユーイは格納庫という囲われた空に舞う。
「正々堂々戦い散った者を盾にして!」
「何が悪い。兵器とはそういうものだ。盾なることを望み、そうあるべきと造られた存在だ!」
 迫るユーイに『葬列の長サイファー』が叫ぶ。
 亡者を弄び、己の目的のために利用する者。そんなものをユーイの騎士道は許さないだろう。

 加速をつけた反重力シールドの切っ先が鋭くなっていく。
「自身は高みの見物とは、言語道断の卑怯者! 恥を知りなさい!」
 放たれる加速の一撃は『葬列の長サイファー』の体を打つ。切っ先が肉体を捉え、切り裂く。
 吹き飛ばされた腹部はえぐられ、鮮血が格納庫に散るだろう。ユーイは、その青と白の騎士服に一片の返り血すら浴びぬ、圧倒的な速度で持って『葬列の長サイファー』を打倒する。

 彼女が願った疾く、速く、早くという願いは、ここに果たされる。
 誰よりも早く駆けつけ、誰よりも早く救いあげていく。それこそが彼女の騎士としての誇り。
 その誇りに『葬列の長サイファー』の血は似合わない。
 怨嗟も、怨恨も、何もかも置き去りにするようにユーイは、己の速度で持って猟書家を凌駕するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
『過去』故に、機械には明確な欠点があります
セキュリティが未更新、という点です

妖精ロボを起点にネットワークに侵入
ハッキング破壊工作
寸断どころか敵味方識別コードを反転
同士討ちを企図

今を生きる人々が運用していれば、こうも易々とはいかなかったでしょう

獣の攻撃を大盾で防御
怪力で弾き飛ばし
レーザーを放つ妖精ロボを囮として高速で操縦し分断
機体群が乱戦であれば其方へ誘導

サイファーへ歩み寄り

(もし『神隠し』が時をも超える現象なら…三つの世界の熾天使達、卵が先か鶏が先か…)

『過去』を礎に『未来』を目指す意思無き貴方に勝てる道理無し
嘗ての戦士達を弄んだ報いを受けて頂きます

ワイヤーアンカーを射出し拘束
引き寄せ剣を一閃



『古代兵器』、『セラフィム』はたしかに強力な兵器であったことだろう。
 数が揃い、学習する兵器としての機能を十全に発揮するのであれば『帝国継承軍』の凄まじい戦力となるのは疑いようがない。
 けれど、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、己もまたウォーマシン、兵器であるがゆえに、その欠点に気がついていた。
「『過去』ゆえに機械には明確な欠点があります」
 彼の前にはネットワークを寸断された『セラフィム』たちの鈍重な動き。
 猟兵たちが繋ぎ、紡いできたからこそ、今がある。

 何を、と『葬列の長サイファー』は忌々しげに呟く。
 その胴は薄皮一枚でつながっているかのように猟兵の一撃でえぐられていた。それでも絶命していないのはヴァンパイアとしての力があるからであろう。
 外套より放たれた異形の獣がトリテレイアへと襲いかかる。
「セキュリティが未更新、という点です」
 自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード(スティールフェアリーズ・アタックモード)が飛び立ち、その針を『セラフィム』の装甲に突き立てる。
 それを機転としてネットワークに侵入し、トリテレイアは寸断させるのではなく敵味方識別コードを反転させる。

 打ち込む速度など戦機たる己にとっては造作もないことであった。
「今を生きる人々が運用していれば、こうも容易くとはいかなかったでしょう」
 次々と敵味方の認識を裏返された『セラフィム』同士の同士討ちが始まる。どれもが首の根本に拳を突き立て、崩れ去っていく。
 哀れとは言わない。
 それが兵器の末路である。
 役目を喪った兵器はくちていく。ただそれだけでいいのだと言うようにトリテレイアは迫る異形の獣の牙を大盾で受け止め、己の炉心が唸るのを感じながら、有り余る出力で押し返すのだ。

「馬鹿な……! ハッキング、だと……!」
 妖精ロボたちが乱舞するようにレーザーの射撃を放ち、異形の獣を貫いていく。トリテレイアは悠然と足をすすめる。
 もしも、彼の考えが正しいのであれば、『神隠し』は時を越えるのではないかとさえ思えてならないのだ。
 三つの世界を考える。
 その世界には、熾天使の名を冠する機体が在った。

 卵が先か、鶏が先か。

 答えはでない。己の推察が正しいのか、それとも誤っているのかさえ、確認するすべはない。
 けれど、たった一つだけ確かなことがある。
「『過去』を礎に『未来』を目指す意志無き貴方に勝てる道理無し」
 アイセンサーが煌めく。
 己の中にあった『騎士道物語』はたしかに『過去』のものであったことだろう。
 けれど、それが礎と成って今も愛すべき矛盾を己の中に抱えさせる。それが炉心を燃やし、足を進めさせるのであれば。

「嘗ての戦士たちを弄んだ報いを受けていただきます」
「戦士! あれが戦士だと! ただの兵器だ。摩耗され、使い潰されることこそが本懐であろうが!」
『葬列の長サイファー』の言葉が迸る。
 彼にとって、オブリビオンとは、兵器とはそういう存在なのだ。見解の相違。兵器を兵器たらしめるものを知るからこそ、『葬列の長サイファー』はそういうのだろう。

 けれど、トリテレイアは否定する。
 彼は見てきたのだ。同じ兵器でありながら心を通わせる者たちを。
 そこには有機、無機を問わず、感じる何かがあったのだ。だからこそ、トリテレイアは、『セラフィム』たちを戦士と呼んだ。
 戦い、戦いの果にこそ滅びを待つ身でありながら、それでも己の責務を全うし眠っていた者達を徒に起こし、戦いに駆り立てた存在を彼は許さないだろう。

 放たれたワイヤーアンカーが『葬列の長サイファー』を捉え引き寄せる。
「貴方は見ていないから、そう言えるのです。未来を」
 放たれる剣閃の一撃が、その体を引き裂く。
 理解しろとは言わない。
 けれど、確かな未来を彼は見てきたのだ。だからこそ、己の中にあるものを持って、彼は未来に繋がるであろう線を護る。
 放たれた一撃でもって、猟書家『葬列の長サイファー』は、不可逆なる斬撃を身に刻まれるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
あれが『セラフィム』か…
似た名前のヤツとはクロムの世界で戦った事があるけど
偶然で片付けるにしては共通点多いよなぁ…

[SPD]
ともあれ、何とかしないとな
要は連携も共有もさせなければいいってね
Esは【ジャミング】で通信の阻害を頼む
俺はUCで連中の動きを阻害して連携を妨害するぜ
こうすれば満足に対応もできねーだろ!

あとはリミッター解除で限界突破した【推力移動】で翻弄しながら
【瞬間思考力、見切り】で首元の弱点を狙い撃つか
【空中戦】で巧みに近づいてすり抜けざまに斬り捨てゴメンだ!

さあ、後はあんただけだぜ!
この推力全開のダッシュから繰り出したキックを食らって
銀河の彼方へ吹き飛びやがれ!

アドリブ歓迎



 ネットワークを寸断され、敵味方の識別コードを反転させられた『古代兵器』、『セラフィム』たちが同士討ちを繰り広げ、破壊されながら霧散していく姿を星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は見ていた。
「あれが『セラフィム』か……似た名前のヤツとはクロムキャバリアの世界で戦った事があるけど、偶然で片付けるにしては共通点多いよなぁ……」
 クロムキャバリアにおける小国家の争乱、そこで見たキャバリアと呼ばれる機動兵器。
 その機動兵器の名に『セラフィム』の名が冠されていることを彼は知っていた。
 猟兵の中にも同じ名を冠する機体を所持しているものがいるように、どうしても彼は、これがこじつけではなく、ましてや偶然であるとも思えなかったのだ。
 それは多くの猟兵が感じていることであり、同時に説明が未だできない事実でもあった。

「ともあれ、なんとかしないとな……連携も共有もさせない。Es、引き続きジャミングでハッキングされたという経験値の共有を阻んでいてくれよ」
 そういって祐一は己のサポートAIにジャミングによる通信阻害を頼む。
 猟兵達によるネットワークの寸断は最早修復不可能な領域にまで達していたが、学習する兵器である『セラフィム』が、いつそれを克服するかわからない。
 ならばこそ、そんな時間を与えずに全てを破壊すべきだと彼は考えたのだ。

「させるものか……!」
 胴を穿たれ、剣閃の一撃で持って致命傷に近い消耗を受けた『葬列の長サイファー』が叫ぶ。
 その瞳は未だ己の敗北を認めてはいなかった。
 ヴァンパイアの力によって傷を癒やし、祐一に迫る『葬列の長サイファー』の鬼気迫る姿を見やり、祐一は言う。
「諦めな、ここまでやったのなら、あの『セラフィム』はもう使い物にはならんぜ!」
 祐一の放つユーベルコード、サンダークラップが雷球となって格納庫に迸る。
 それは一瞬で発生し、音速すらも越えて広がる雷撃となって、絶えず帯電するスパークでもって『セラフィム』を穿つ。

「おのれッ! だが、私が勝てばいい! 貴様は此処で!」
 迫る『葬列の長サイファー』の爪。
 けれど、それを祐一はリミッターを解除したスラスターの限界以上の挙動でもって躱し、一瞬で『セラフィム』たちの首の根元をブラスターの熱線で穿ち、破壊していく。
 役目を終えたように『セラフィム』たちが全て破壊され尽くした後、祐一は『葬列の長サイファー』の前に立つ。
「さあ、後はあんただけだぜ!」
 スラスターの限界はすでに来ている。そう長くは戦えない。
 けれど、それで十分だった。『葬列の長サイファー』にとっては悪夢の如き時間。これまで猟兵たちが紡いできた戦いは、彼に消耗を強いている。

 そこに凄まじい速度で迫る祐一の一撃を受け止める余裕などなかった。
「ぐ、は――ッ!?」
 祐一のスラスターの推力全てを乗せた一撃は、『方舟』の格納庫の壁面をぶち破り、宇宙空間へと『葬列の長サイファー』を蹴り飛ばす。
 さらにサンダークラップの雷撃が一瞬で彼の体を雷撃で穿つのだ。
 再生すら間に合わせぬ超高速の雷撃は、その宇宙の吸血鬼、亡者を手繰るネクロマンサーたる『葬列の長サイファー』を、その葬列に加えさせる。

「聞こえた時には、手遅れだ! それが俺のユーベルコード! 諦めな!」
 次々と放たれるスパークが『葬列の長サイファー』の体を散々に穿ち、その肉体を消滅させていく。
 怨嗟の声すら届かぬ宇宙空間において、祐一は己の背後ある『方舟』が霧散していくのを見やる。
『葬列の長サイファー』によって齎された者全てが消滅していく。

 灰は灰へ。
 塵は塵へ。
 そして、熾天使は空に。『セラフィム』が如何なる経緯でもって他世界に名を残すことになったのかは未だわからず。
 けれど、祐一は戸惑うことはなかった。
 今目の前にある現実を一つ一つ対処していく。そうすれば見えるものだってあるだろう。

 此処に嘗ての『古代兵器』、『セラフィム』は本来の残骸へと戻る。
 それが定めであるというように、黙して語らず。
 再び宇宙に争乱の火種が撒かれぬようにと、その役目を終えた遺骸は思い出されることを拒否するように、再び銀河の塵へと変わるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月31日


挿絵イラスト