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すくわれぬものを誘う祭壇とは

#ダークセイヴァー #第五の貴族 #レグルス村

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#ダークセイヴァー
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#第五の貴族
#レグルス村


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●ダークセイヴァー・レグルス村近郊
 ――山岳地帯の一角にそびえる、豪勢な屋敷の一室にて。

 紅のイブニングドレスに身を包んだ女性が、紅瞳で窓の外を見つめながら忌々しく吐き捨てる。
「猟兵と『闇の救済者』……実に忌々しい存在ね」
 昨今、人類の抵抗が激しさを増し、吸血鬼の支配から解放される地が増えているとの情報は、女性も耳にしている。
 一刻も早く、吸血鬼を強化する『紋章』を与えねばならないが、手元にあるのは己が身に宿した『紋章』だけ。
「急ぎ『紋章』の製造に取り掛かりましょう……今回はどの村にしようかしら」
 イブニングドレスの女性は顎に手を当て少し思案し、面白い玩具を見つけたかのように歪んだ笑みを浮かべる。
「そうね……長年養って来たあの村にも、そろそろ『素体』になってもらいましょう」
 女性は、紅を引いた唇を愉悦で歪めながら配下を呼び、二言三言指示を与えた。

 ――数日後。
「舞踏会、ですか――領主様」
 女性の部屋を訪れた壮年男性の言に、『領主』と呼ばれたイブニングドレスの女性は微笑みながら頷いた。
「ええ、日々農作物を献上して下さる皆様を是非労いたいので、近々この館で開かれる舞踏会に全員招待させていただくわ」
「ありがとうございます! 早速村人に知らせてきます!!」
 壮年男性は、喜び勇みながら村に戻ってゆく。
 そんな男性の背を見つめる領主の目は……歪んだ愉悦に輝いていた。

「ふふふ、今までよく仕えてくれましたわ……レグルス村の皆様」
 血のような瞳を輝かせながら、領主は去った男性を嘲るように嗤う。
「さあ、長年磨いてきたいのちの輝き、我々のために役立てて?」
 己が手に村人のいのちを握った優越感に浸りながら、領主はぞっとするような笑みを浮かべていた。

●グリモアベース
「また『紋章』の製造場所を発見した……これで3つ目だな」
 集まった猟兵たちを前にグリモア猟兵館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)が怒りを籠めつつ告げたのは、新たな『紋章の祭壇』の存在。
 ダークセイヴァーのオブリビオンを強化する『紋章』の製造場所『紋章の祭壇』が次々と発見されているのは、猟兵達の間でも周知の事実と化しつつある。
「以前も伝えたが、『紋章』は人族奴隷や下級オブリビオン等、おびただしい数の命を材料に創り出されているから、グリモアの予知にかかった『紋章の祭壇』は片っ端から潰していきたい。今回も手を貸してもらえないだろうか」
 頭を下げる敬輔に、猟兵達は各々の想いを胸に頷いた。

「今回、俺が把握した『紋章の祭壇』の在処なんだが、2年以上前に赴いてもらった『レグルス村』の近郊だ」
 山岳地帯に位置するレグルス村は、洞窟を温室に見立てて農耕を営みつつ、ある領主の庇護の下でヴァンパイアの脅威から長年逃れ続けてきた、穏やかな村。
「先日、レグルス村を庇護する領主とやらが、村人全員を『舞踏会』とやらに招待したらしい」
 何の疑いも持たず招待に応じた村人たちは、舞踏会にて供された食事に舌鼓を打ちつつ、歌い踊り、楽しむだろう。
「だが、この『領主』が――『紋章』を製造している『第五の貴族』ヴァンパイアだ」
 舞踏会は素体集めの理由付けに過ぎない、と断言する敬輔。
 このままでは、招待された村人全員が『紋章』の素体として惨殺されてしまうだろう。
「そこで皆には、村人と一緒に舞踏会に参加した上で彼らを守り、『第五の貴族』を討ってほしい」
 猟兵達には村人に変装して潜入してもらうことになるが、歌や踊りを披露したり、料理に舌鼓を打ったりして村人と交流を深めていれば、疑いの目を持たれることはない。
 舞踏会が終わると村人たちは別の部屋へ移されるが、その部屋で待つのは――。
「――自ら望んで『紋章』に「なりかけ」ている、無数の触手を全身から生やした破滅の使徒たちだな」
 大量の生贄の血と死骸が散乱し、悪臭を美しい薔薇の香りで押し隠した悍ましい儀式の場でもある部屋に村人たちを閉じ込め行われるのは――救済という名の虐殺行為。
「村人たちを守りながら破滅の使徒を全て倒すと、異変を感じた領主が必ず現れる……この領主も討ってくれ」
『第五の貴族』たる領主は、自ら製造した『番犬の紋章』を身体のどこかに宿しているため、力押しでは分が悪いが、『紋章』そのもの直接攻撃すれば弱体化できるはずだ。
「『第五の貴族』を討ったら、その場で確実に『紋章の祭壇』も破壊してくれ」
 頼んだぞ、と告げる敬輔に、猟兵達は一様に頷いた。

「『第五の貴族』を討つことで、レグルス村に如何なる影響が出るか……俺にはわからない」
 ――だが、グリモアが村人の虐殺を予知した以上、放っておけないから。
「今は『第五の貴族』を討ち、『紋章の祭壇』を破壊してくれ。頼んだ」
 敬輔は深々と頭を下げると、丸盾のグリモアを大きく展開し転送ゲートに変えて。

 ――猟兵達を、山岳地帯にそびえる豪勢な館へと誘った。


北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 ダークセイヴァーにおいて、またも『紋章』の製造場所『紋章の祭壇』が発見されました。
 猟兵の皆様、ひとつでも多くの『紋章の祭壇』を破壊すべく、助力を願います。

 本シナリオに関わる「レグルス村」は、拙著「すくわれるものたち、すくわれぬものたち」の舞台となった村です。
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=5759
 こちら、未読でも支障ございません。

●本シナリオの構造
 冒険→集団戦→ボス戦となります。

 第1章は冒険『退廃舞踏会』。
 レグルス村の村人が招待された、領主主催の「舞踏会」に潜入していただきます。
 潜入自体は容易ですので、プレイングは舞踏会中の行動に字数を使って頂いて構いません。
 舞踏会で供される食事に舌鼓を打ったり、歌や踊りを披露したり、村人たちと話したり……楽しんでいただければそれで大丈夫です。
 舞踏会の華やかさが苦手な方は、領主の目を盗んで館に潜入し、こっそり館の構造を調べたり『紋章の祭壇』の在処を探したりすれば、後々何らかの益を齎すかもしれません。
 POW/SPD/WIZは参考程度でOKです。ご自由に行動なさってください。

 第2章は集団戦『破滅の使徒』。
『紋章』になりかけの下級オブリビオンを全て倒すとともに、「素体」とされかけている村人の安全を確保してください。
 なお、この章では『紋章の祭壇』の破壊はできません。

 第3章はボス戦『老獪なヴァンパイア』。
『紋章』を製造していた「番犬の紋章」を宿す『第五の貴族』たる吸血鬼を撃破するとともに、『紋章の祭壇』も破壊してください。
 ※『紋章』の位置は第3章の断章で開示します。

●プレイング受付について
 全章、冒頭の断章を追加した後からプレイング受付を開始。
 締め切りはマスターページとTwitter、タグで告知致します。
 なお、本シナリオはサポートをお呼びしつつ早めの進行を心がけますので、プレイングの採用は必要最小限となる見込みです。

 全章通しての参加も、気になる章だけの参加も大歓迎です。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『退廃舞踏会』

POW   :    脚が動かなく成るまで踊る

SPD   :    華麗なダンスを披露する

WIZ   :    美しさで周囲を魅了する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●レグルス村近郊・領主の館前
 転送された猟兵達は、ちょうど到着したレグルス村の人々と遭遇する。
 村人のほとんどが突然目の前に現れた猟兵達に驚く中、一部の村人が猟兵を指差しつつ声を上げた。
「あ、あなたたちは……!」
「ああ、あんたたち、以前助けてくれた人たちの仲間だろ?」
 どうやら、かつて村に謎の疫病が流行った際、猟兵たちに助けられた経験があるからか、村人たちは総じて猟兵には好意的なようだ。
 猟兵達がその場で村人に舞踏会への同行を申し出ると、「貴方達は恩人ですから」と快く了承してくれた。

 今回、領主の招待に応じ館を訪れた村人は、村の人口の約半数、50名程度。働き手たる若者や壮年がほとんどだ。
「村人全員が招待されましたが、小さな子がいる家庭や寝たきりの人、そして介護にあたる方は流石に無理でした」
 それでも領主様はきっと満足して下さるだろう、と呟いた村長らしき壮年の男性に先導され、村人と猟兵達は館の入り口を潜った。

「ようこそ、お越しくださいました」
 村人と猟兵達を出迎えたメイドは、丁寧に一礼し来客を歓迎する。
「では皆様、本日はどうぞ、寛いでいってくださいませ」
 館に入った村人と猟兵達は、メイドに連れられ、会場のホールに案内された。

●絢爛豪華な『退廃舞踏会』
 ――豪勢な館の中央に位置する、絢爛豪華なホールの一角で。

「それでは、今日は日々の労働を忘れて、心行くまでお楽しみください」
 ホール2階のバルコニーから顔をのぞかせた紅のイブニングドレス姿の領主が村人らに一礼すると、隅に控えるメイドたちが銘々に楽器を手にし、クラシカルな舞踊曲を奏で始める。
 軽やかな弦楽器の音色がホールに広がると、歌や踊り好きと思われる村人たちが率先して踊り出し、演奏に合わせるよう歌い始めた。

 一方、部屋の隅には野菜をふんだんに用いた料理が並び、小腹を満たしたい村人たちが手を伸ばし、舌鼓を打っていた。
 おそらく、この野菜を領主に献上し続けているのが、レグルス村の人々なのだろう。

 それは、一見すると、ごく普通の領主主催の舞踏会。
 だが、その真の目的が『素体』の確保であると、猟兵達は皆知っている。

 猟兵が配膳係や楽団員、そしてメイドを見れば、全員女性ヴァンパイアであることは一目瞭然。
 バルコニーから舞踏会を眺める領主――『第五の貴族』は、時折メイドに料理を持ってこさせつつ静かに村人たちの舞踏を眺めているが、見方を変えれば、村人たちが外へ出ない様睨みを利かせているようにも見えた。
 下手に騒ぎを起こさない限りは領主やメイドに見咎められることはないだろうが、一方でホールの外には出られないと考えてよいだろう。

 気がかりなことは多いが、今は目いっぱい舞踏会を楽しみ、領主に目をつけられないようにすべきだろう。
 猟兵達は、村人たちと共に舞踏会を楽しみながら、来るべき時を待つことにした。

※マスターより補足
 第1章はレグルス村の村人たちと一緒に「舞踏会」に参加していただきます。
 POW/SPD/WIZは一例ですので、村人と踊ったり歌ったり、料理に舌鼓を打ったり、静かに会話したり……思い思いにお楽しみください。

 ただし、レグルス村は隔絶された地にありますので、村人たちは総じて村外の事情に疎いです。
 よって、闇の救済者や人類砦など、ダークセイヴァーの近況は一切知りませんので、会話の際はご注意ください。
 また、村人たちは、領主やメイドたちがヴァンパイアであることには気がついていません。(特に領主は「肌が色白で綺麗で優しい女性」という認識)

 MSコメントでも記した通り、舞踏会の雰囲気が苦手な方は、独自に館に潜入し、館の間取りや『紋章の祭壇』の在処を探っていただいても構いません。
 ただし、メイドが館内を周回しておりますので、若干厳し目に判定致します。

 ちなみに、2階にいる領主こと『第五の貴族』には、この章では一切接触できません。

 ――それでは、よき舞踏会を。
護堂・結城
またこの村に縁ができるとは思わんかったな
ま、知った以上何もせんというのも後味が悪いし協力させてもらおうか。

【POW】
交友を深めるのは嫌いじゃないが、戦う前に華やかなのは落ち着かねぇ
とりあえず、一階と地下になにかないか偵察するぞ

迷彩・結界術で隠れつつUCを発動、さっさと地中に潜って隠れる。
足音や気配を頼りにメイドの巡回を避け、定期的に床から顔を出して周囲を観察

何か利用できるものはないか…?
竜装越しとはいえ姿を見られると面倒ごとになりそうだ、手早く済ませねぇと

発見された場合も声を聴かれないように黙って地中や壁を通り抜けさっさと逃走
敵だらけなのに倒して騒ぎを起こせねぇっていうのは気を遣うぜまったく…



●かつての縁から外道を辿って
「またこの村に縁ができるとは思わんかったな……交友を深めるのは嫌いじゃないが」
 館内から流れるクラシカルな舞踊曲と、レグルス村の人々が歓談する声が外に漏れ出す中。
 今はこうするしかねぇな、と館の外壁に張り付き身を隠しながら入り口を探していた護堂・結城(雪見九尾・f00944)は、奇妙な縁のつながりに思わず苦笑を零していた。
 2年前、結城が初めてレグルス村に訪れた時、彼の村には働き手を中心に疫病が広まっていた。
 その時は、疫病を広めていた元凶たる喰われた神々を討ち、鎮めたのだけど。
 まさか、あの時の縁が、今になって繋がるとは思ってもいなかった。
「ま、知った以上何もせんというのも後味が悪いし、協力させてもらおうか」
 とはいえ、戦う前に華やかな舞踏会を楽しむのも落ち着かない。
 そこで結城は、館の一階と地下に何かないか偵察すべく、外壁によく似た柄の結界を張り己が気配を遮断しながら、小声で竜装を召喚した。
「此よりは我が領域。全てを喰らう大海の顎」
 結城の呼び声に応じ現れたのは、水地空中を泳ぐ強襲用海竜装。
 水中、空中だけにとどまらず、地中への潜行能力を持つ竜装を纏い、結城は地中へ潜った。

 地中を潜行する結城の耳に入ったのは、館内を巡回しているメイドの気配。
(「メイドたちは誰を警戒しているんだ……?」)
 明らかに外部からの侵入を警戒しているようなメイドの挙動に首を傾げつつ、足音と気配を頼りにメイドを避けつつ、時折床から顔を出して居場所確認。
 調理場から漂う匂いがたまたま鼻につくと、結城の空腹が刺激され、お腹が軽く鳴る。
(「竜装越しとはいえ、姿を見られると面倒ごとになりそうだ」)
 手早く済ませねぇと腹も持たねぇな、と呟きつつ再び地中を潜行すると、やがて真上から村人たちの声と舞踏曲が聞こえてきた。
 おそらく、この真上が、舞踏会の会場であり、領主がいるホールだろう。
 ……この館の主たる領主がヴァンパイア――外道であることは、重々承知。
 だが、何も知らぬ村人がいる以上、強引な手は慎まねばならないこともまた、重々承知。
 まるで村人全員が人質に取られているように錯覚してしまうが、今はぐっと堪えるしかないことも、結城はよくわかっていた。
(「騒ぎを起こせねぇってのは気を遣うぜ全く……」)
 暴れたくなる感情を抑えながら結城が引き続きホールの真下を潜行していると、突然目の前が開けた。
 驚いて周囲を見渡すと、岩盤をくり抜き整えられた階段が、上下に伸びているのが目に入る。
 上に伸びた階段の先は扉で閉ざされ、その向こうから聞こえるのは舞踏曲と村人の声。
 一方、下に伸びた階段の先にあるのは、大きな閂が下ろされた扉のみだったが、結城の鼻は、その扉の先から微かに鉄と腐肉と薔薇の臭いを捉えていた。
 階段を降り、閂の扉を通り抜けると、目の前に岩盤をくりぬいて作られた大きな地下室が広がる。
 何があるかは暗くてよく見えないが、臭いはますます強くなっていた。
(「大当たり、だろうな」)
 おそらく、この部屋のどこかに『紋章の祭壇』があるのだろうが、暗がりで位置の確認は難しい。
 だが、それ以上に結城が引っ掛かったのは、地下室の出入り口が、大きな閂のある扉ひとつだけであること。
 気になっていったんホールまで引き返し、ホールの隅に軽く顔を出して周囲を見渡すと、ホールはホールで天井付近にしか窓がないことに気がついてしまう。
 しかもホールの出入り口は、結城が顔を出している隠し階段に通じる隠し扉と、村人たちが入って来たであろう扉だけ。
(「……やべぇな。装飾で誤魔化されてはいるが、ホールも徹底的に外へ逃がさない構造になっている」)
 思わずチッ、と舌打ちしてしまう、結城。
 ――村人たちが既に籠の鳥となっていることに、気づいてしまったから。
 護るだけならまだしも、避難させながら戦うのであれば、何らかの策は必要となりそうだ。

(「さて、どうするかね……」)
 結城は地下室付近の地中に身を隠し、次の一手を考え始める。
 ホールから聞こえる舞踏曲は、終盤を迎えようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アハト・アリスズナンバー(サポート)
「私の手が必要ならば、お貸しします」

無表情、無感情に見える、死んでも次の自分が即座に故郷から転送される量産型フラスコチャイルドです。

一人称は「私」、口調は誰に対しても「です、ます、でしょうか」といった感じのあまり堅苦しくない丁寧語です。

基本的には手が必要なら貸す、といったスタイルでユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず突撃します。
ただ、アリスが関連してる場合は積極的に手を貸します。

その他の部分はマスターさんにお任せします



●館の住人に覚える違和感と視線
 他の猟兵が竜装で地中先行しつつ、館の概要を詳らかにしていた頃。
 村人たちが楽しく舞い踊り、歓談を楽しむホールの片隅に、アハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)の姿があった。
「私の手が必要ならば……え、酒と料理を楽しむだけでよろしいのですか」
 本性が酒飲みたるアハトにとって、ワインが置かれているのはありがたい。
 だが今は、舞踏会を楽しみつつ、ある程度の調査も行う必要がある。
 ゆえに、アハトはワインを嗜みながら料理にも口をつけつつ、楽しく踊る村人を眺めながら、さりげなく楽団員やメイドの顔を観察していた。

 ホール内の全員の顔に1度目を通したところで、アハトはハテ、と首を傾げる。
(「メイドはともかく、楽団員まで全員女性なのは妙です」)
 メイドたちが全員ヴァンパイアであることは、アハトの目にも一目瞭然。
 しかし、クラシカルなメイド服に身を包んだメイドたちはともかく、スーツを隙なく着込んでいる弦楽器やフルートを奏でる楽団員の中にも、男性はひとりもいない。
 調理場にいるシェフの性別まではさすがにわからないが、ここまで徹底していると、シェフも全員女性だと考えるのが妥当だろう。
 しかもメイドたちの年齢は、若者から壮年までバラバラで統一感がない。
 単純に領主の趣味で女性だけで統一されている可能性もあるが、統一感のなさは妙にアハトの意識に引っ掛かった。

 そして、もうひとつ、アハトが引っ掛かったのは、村人が楽団員やメイドに向ける視線。
 純粋にメイドへの興味や色目使いもそれなりにあるのだが、中には微かに怯えや驚きが含まれているのが気になった。
 しかも、怯えや驚きの視線を向けているのは、皆、男性。
 メイドたちがヴァンパイアであると知らぬはずの村人たちが、なぜ……?
(「今は考えても答えは出ませんが、意識の片隅に留めておきましょう」)
 おそらく、村人に聞いても、怯えの正体は教えてもらえないだろうから。

 舞踏会の間、領主はワイン片手にバルコニーから見下ろし、時折微笑むだけ。
 アハトや他猟兵の存在に気が付いた様子は、一切ない。
 ここには絶対に猟兵が来ないと確信しているのか。
 それとも……気づいていてなお、アハトたちが動くのを待っているのか。
 もし後者であれば、なおさらアハトから動くわけにはいかない。
(「目の前に『第五の貴族』がいる以上、討ち取ってしまう方が楽なのですが」)
 もし、アハトや他の猟兵が騒ぎを起こそうとしたら、領主やメイドたちに見咎められる前に村人たちが制止するのは、火を見るより明らかなのだから。
(「今は自重しつつ、この情報を他の猟兵と共有すべきですね」)
 問題はいつ、他の猟兵に伝えるか。
 アハトは一緒に踊らないかと誘う青年男性の手を取り、静かに踊りながら、他の猟兵がいないか軽く視線を泳がせ、探し始めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

文月・統哉
領主である第五の貴族が
まさか人間に扮しているとは
そして紋章の祭壇
村人達を犠牲になんてさせない

目立たぬよう【変装】
【コミュ力】で村人達の輪に溶け込む

食事に舌鼓
流石みんなの作った農産物、美味しいね

誘われればダンスも
ちょっと…かなり気恥しいけども

村人達と楽しく会話しつつ
これまでの村の様子や
領主との関係性を確認する

領主が吸血鬼だと村人達は知らないなら
戦闘になれば驚き混乱も生じるだろう
避難誘導をスムーズに進めるためにも
緊急時に落ち着いて行動可能な
村のまとめ役を把握しておきたい

また無理ない範囲で『黒猫の影』使用
館の構造や祭壇の位置、メイド吸血鬼達の人数や配置を【情報収集】
避難経路を考えておく

※アドリブ歓迎



●探偵、避けられる犠牲を避けるために奔走す
(「領主である『第五の貴族』が、まさか人間に扮しているとは」)
 目立たぬ様村人と同じ装いに変装し、持ち前の社交力を活用して村人たちの歓談の輪に溶け込んだ文月・統哉(着ぐるみ探偵・f08510)は、新鮮な野菜をふんだんに用いた料理に舌鼓を打ちつつ、目を丸くした。
「流石みんなの作った農産物、美味しいね」
「おう、俺らの自慢の作物だからよ、たっぷり味わってくれ!」
 統哉に農産物を褒められた青年の男性は、心の底から喜んでいるよう。
(「そして紋章の祭壇……村人達を犠牲になんてさせない」)
「そこのお兄さん、踊らない?」
「慣れない踊りでもよければね」
 心の裡で固めた決意を悟られぬ様笑顔の奥に押し込めながら、統哉は誘った女性の手を取った。

 慣れぬ踊りに四苦八苦しながら、統哉は村人と交流を深めていく。
 踊りの合間に、統哉は村人たちから少しずつ、村の様子や領主との関係性を聞きだしていた。
 猟兵が疫病問題を解決してから2年の間、レグルス村はヴァンパイアの襲撃にも遭わず、穏やかな生活を送っているそうだ。
 そして、彼の領主は村人にとっては村を護ってくれている存在のようだが、普段から謁見できるのは代々の村長のみで、村人のほとんどは初めて領主の顔を見た、とのこと。
 一方、村長に村の様子を聞いたところ、気になる話を耳にした。
「どうやら、我々の先祖に、洞窟を大量の松明で温めて作物を育てる農耕技術を伝授したのは、前の領主らしいです」
「らしい、とは?」
「何分、領主様がいつ代替わりしたか、我々の記憶では定かではなくて」
「代替わりしたのかどうかが、わからない?」
「ええ、私は2代前の村長だった祖父に連れられて前の領主様とお会いしたことがあるのですが……今の領主様は前の領主様と瓜二つでして」
 その村長の言を聞いた、探偵たる統哉の顔が微かに強張った。
 ヒトは一定のサイクルで代替わりする。
 だが、骸の海に還されぬ限り生き続ける吸血鬼……オブリビオンの生は、永遠。
 村長が口にする「前の領主様」と「今の領主様」が同一人物であってもおかしくないが、真実を知るのはおそらく領主本人のみだろう。
(「怪しいが、村長以外が知らないのでは、裏の取りようがない……」)
 領主についてそれ以上追及するのは諦めた統哉は、他の村人と他愛ない会話に興じつつ、村長以外にまとめ役となりそうな村人の顔を数名程覚えておく。
 戦闘が起これば、平穏に慣れていた村人たちは驚き、混乱するだろう。
 緊急時に落ち着いて行動し、他の村人に指示ができる村人を把握しておくことは、避難が必要となった際に決して無駄にはならないはず。

 ――にゃー。
 ――にゃふっ。

 耳元で黒猫の鳴き声がしたのを機に、統哉はいったん村人の輪から離れ、館内に散開させておいた黒猫の影の目を通して館の構造を把握する。
 ホールが館の中央にあることを除き、館の1階に特段変わった箇所は存在しなかったが、黒猫の影の1匹が、ホールの奥に隠された扉とその先に延びる階段を発見していた。
 黒猫の影を扉と壁の僅かな隙間から潜らせ、階段を降りさせると。

 ――にゃーっ!!

 黒猫の影が、毛を逆立てながら怯え始めた。
 怯える影と五感を共有した統哉が見たのは、大きな閂のある扉と、奥から漂う耐えがたい悪臭と薔薇が入り交じった臭い。
 その臭いは、先日『紋章の祭壇』が備えられていた湖底城の中庭で嗅いだ臭いと同じだった。
(「ビンゴだね。『紋章の祭壇』は地下か」)
 黒猫の影を閂が下ろされた扉の隙間から潜らせ、地下室を見渡してみるが、明かりがないため全容は把握できない。
 わかったのは、黒猫の影が潜った扉からしか、部屋の外には出られそうにないということだけ。
(「これは……避難させるには少々骨が折れるかもな」)
 できれば事前に村人たちを避難させてから『紋章の祭壇』を破壊したかったが、同時並行は厳しいかもしれない。
 統哉が思索をめぐらしている間に、舞踏曲は終わっていた。

●宴の終焉
「それでは、今宵はこれにてお開きとしますわ」
 バルコニーから去ろうとした領主が、「そういえば」と口を開きつつ身体を翻す。
「忘れておりましたわ。今宵は貴方達に是非見せたいものがありますの」
 領主がメイドに命じ、ホールの奥にある扉を開けさせる。
「この奥に、私の『とっておき』がございますの。今日は皆様に特別にお見せしますわ」
『おおおおおおおお』
 隠し扉と『とっておき』というもったいぶった言葉に興味を持った村人たちは、メイドたちに先導されながら、地下室に続く階段へ導いてゆく。
 統哉もまた、素直にそれに従いながら、地下室へと足を踏み入れた。

 ――籠の中の鳥たちに惨劇の前触れが迫る予感を、ひしひしと感じながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『破滅の使徒』

POW   :    死の抱擁
【魂狩の鎌】が命中した対象を切断する。
SPD   :    滅の壊刃
【魂狩の鎌】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    獣の行進
召喚したレベル×1体の【飢えた狼】に【鬼火】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:キイル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●レグルス村近郊・領主の館地下――『紋章の祭壇』前
 ――カツン。
 ――カツン。

 メイドや楽団員たちと共に地下室に入った村人たちの鼻についたのは、悪臭を濃密な薔薇の香りで覆い隠したような臭い。
「おい……何だ、この臭い」
 暗闇に包まれた地下室と、耐えがたい悪臭に不安に襲われた村人たちが動揺しだすと。

 ――ボオオッ!!

 突然、室内が無数の松明に照らされ、明るくなる。
 全容が明らかになった、岩盤をくり抜いた無骨な地下室に広がっているのは、大量にぶちまけられた血と肉片。
 そして、部屋の中央に佇むのは、5人の聖職者のような少女だった。

「レグルス村の皆様、ようこそおいでくださいました」
「今宵、我が主からお見せするよう言付かっておりますのは――いのちの煌めき」
「さあ、貴方方は此方へ」

 漆黒の鎌を手にした元聖職者らしき少女が手招きすると、村人たちを案内したメイドと楽団員が少女たちの前に集まる。
 村人たちが固唾を飲んでみていると。

 ――ザシュッ!!

 少女たちの鎌が一斉にメイドたちに振り下ろされ、首がはね飛ばされた。
 一瞬の静寂の後、首がごとん、と床に落下する音が響き。

「あああああああ!!」
「アンタ、アンタ、アンタアアアアアア!!」
「なぜ、なぜキミが、キミガ……!!」
「あんた、なんてことを……!!」

 落下音に弾かれたように、村人たちが恐怖と怒りで喚き出す。
 その叫びは恐怖にかられたものがほとんどだが、不思議なことに見知った顔が殺された時のような反応もわずかに含まれていた。

 恐慌に駆られた何人かが入って来た扉まで走り、開けようとするが、びくともしない。
 どうやら、何者かが外から閂を下ろしてしまったようだ。

 その間にも、使徒の全身から生えた触手が、首のなくなったメイドと楽団員のいのちを喰らい、脈動する。
 突然の惨劇に混乱を極める村人たちに、聖職者らしき少女たち――『破滅の使徒』は、淡々と語り掛け始めた。

「これも我が主からの指令」
「より強い『紋章』をつくりだすため、そして忠実な部下を手に入れるため」
「あとは貴方方のいのちがあれば、完成する」
「貴方方は今日、このために生かされてきたのだから」
「安心なさい。村に残った人々も、いずれ素体となる運命」

 突然突き付けられた運命に、村人たちは戸惑い、怒り、苦しみ、諦める。
 その運命とは――『紋章』の糧となるべく生かされてきたという、残酷なもの。

「さあ、堕とされしいのちの最後の煌めきを見せて下さい」
「男のいのちは我々の為に、女のいのちは我が主の為に」
「どうぞ――お覚悟を」

 破滅の使徒たちが鎌を持ち、村人たちに迫る中。
 猟兵達は其々の得物を手に、村人と破滅の使徒との間に割り込んだ。

「村人ではない者が、邪魔をするのですか」
「彼らは我が主の所有物。何者にも邪魔はさせません」
「それでも、邪魔をするならば」

 ――貴方方にも『紋章』の糧となってもらいます。

 猟兵を敵とみなした破滅の使徒たちは、魂狩の鎌を手に襲い掛かった。

 さあ、猟兵達よ。
 目の前にて数多のいのちを狙いしは、慈愛ではなく死を救済と信じる『破滅の使徒』。
 慈愛の聖職者ではなく黒衣の殉教者と化し、己が主の命のまま『紋章』としてそのいのちを捧げんと欲する使徒たちを討ち取り、村人たちを護って『紋章』の完成を阻止せよ。

 ――健闘を、祈る。

※マスターより補足
 第2章は、全身から触手を生やし『紋章』に「なりかけ」ている、『破滅の使徒』たちとの集団戦です。

 第1章の判定の結果、一部の猟兵が館の構造を把握し、『紋章の祭壇』の在処たるこの地下室の存在を事前に突き止めましたので、避難計画を考える時間的な余裕が生まれ、村人をこの地下室から避難させられるようになりました。
 ただし、地下室の扉には外側(ホール側)から閂が下ろされておりますので、村人たちを避難させるためには、まず扉を開ける必要がございます。
 先程までホールや廊下にいたメイドと楽団員(つまり館にいた女性ヴァンパイア)は全員『紋章』の素体となりましたので、ホールまで村人たちを避難させれば当座の安全は確保できます。
 ちなみに、この場にいる村人の人数は、男性が40人、女性が10人ですが、『破滅の使徒』たちは理由あって男性を優先して殺めようとします。

 1章である猟兵が確認した「まとめ役」の数は、男性が4+村長、女性が1です。
 全員惨劇を目にし冷静ではいられなくなっておりますが、それでも他の村人よりは冷静ですので、彼らの手助けを得られれば避難活動はスムーズに行えるでしょう。
 ただし、村長だけは理由があって避難しようとしません。

 第2章は、以下のいずれかの行動をとった場合、プレイングボーナスが与えられます。

 ・村人たちを守りながら、破滅の使徒と戦う。
 ・村人たちをホールまで避難させながら、破滅の使徒と戦う。

 ――それでは、最善の選択を。
護堂・結城
…女性は手下に男は紋章の生贄に、ってところか?

まぁいい、もう十分我慢したし、ここからは存分に骸の海へ叩き込んでやる

【POW】

戦闘開始と同時にUC発動、最速の突撃で扉越しに閂目掛けて怪力キックによる衝撃波・貫通攻撃だ
村人は結界術で保護しつつ、全ての敵に雷羽根で麻痺属性攻撃を仕掛ける

痺れて鈍る中で追いつかせはしねぇよ
それに村人を狙ってよそ見しようもんなら…格好の餌食だぜ

瞬間思考力を使って村人を狙った奴から武装の投擲か、雷爪を使った急降下キックで撃破を狙う

「死ぬなよ、助けた意味がなくなったとか笑えねぇ」

救えなかった苦い経験はもうこりごりだ
盛大に血祭を始めようや外道ども、今宵血を流すのはてめぇらだがな


西条・朱莉
優希斗(f02283)と
他の方との連携・アドOK☆
いやはや男好きさんなんだねぇ
って事は若い男が突っ込めば、普通はそっちに靡くよね~(悪戯っぽい笑み)?
ねぇねぇ、そこのお嬢さん達!
そっちに生きの良いいい男(ゆー君)が行くから、存分に吸血しちゃえと挑発
扉が閂で閉められているんだっけ?
まっ、そっちは無問題!
ぶっ壊せば良いんだよ☆
と言う訳で、扉に向かって全力パーンチ(UC+怪力+鎧無視攻撃+こじ開け+地形破壊)☆
扉壊したら纏め役に協力して貰って皆を守りつつ避難
大丈夫☆
あの女達はゆー君達が何とかするよ☆
(コミュ力+存在感+拠点防御+救助活動+庇う)
ところで、村長のお爺ちゃん?
何であなたは逃げないのかな?


北条・優希斗
朱莉(f16556)と
他の方との連携も可
まあ、朱莉さんだからそんな事だろうとは思ったが…
…村人の避難は朱莉に任せる
先制攻撃+UC
地形の利用で周囲に隠れ、朱莉の挑発に合わせてダッシュ+軽業+見切り+残像+第六感+戦闘知識で戦場に突進
双刀抜刀、2回攻撃+範囲攻撃+薙ぎ払い+鎧無視攻撃+串刺し
まあ、望むなら俺の血を飲ませてやるよ
零れた血、だけれどね(UC代償+覚悟+騙し討ち+フェイント)
逃げ遅れた村人がいたら
オーラ防御+斬撃波で周囲の地形を抉り即席のオーラ壁を
範囲攻撃だからな、十分狙われる可能性はありうるしね
村長は逃げないのか
この先にいる第5の貴族の事も有るし
情報収集で少しでも情報を集めておくよ


文月・統哉
仲間と連携
敵の動き見切り
村人守る盾として
避難の【時間稼ぎ】として
【オーラ防御・結界術】展開

諦めるものか
運命が閉ざされたならその扉を打ち破る
それこそが俺達猟兵の、闇の救済者の役割だ!

着ぐるみの空発動
示すのは必ず護るという意思と覚悟
高速飛行で扉をぶち破り
響く声で村人達の混乱を鎮める

今の内に退避を、早く!
纏め役に声をかけ避難の誘導を頼み
彼等を庇い護る形で破滅の使徒を抑え撃つ

敵の攻撃見切り武器受けし
カウンターの斬撃と衝撃波で押し返す

村長の心境も読心術で確認
説得し避難させたい
領主と直接面識がある分信じられぬ思いだろう
或は好意もあったかも
責任も感じているだろうか
それでも
あなたの役割は村を守る事、違うかい?



●期先制した奇襲は村人たちを救うため
「はいそうですか……何て言う訳ねぇだろ!」
 使徒たちが各々手にする黒銀の鎌・魂狩の鎌を構えた直後、地中から姿を現した護堂・結城が、突然扉に向かってジャンプする。
 先程まで纏っていた強襲用海竜装は、いつの間にか雷爪と雷翼を持つ蹴り主体の空中戦用鳳奏に換装されていた。
「どっせええええええええい!!」
 雷翼の力も借り、あっという間に飛翔速度を上げた結城は、速度を緩めず雷爪のついた蹴りを頑丈な扉に叩き込んだ。

 ――メキメキメキメキッ!!

 怪力とマッハを超える飛翔速度の双方が乗った飛び蹴りは、一撃で扉の向こうの閂を破壊し、周囲のソニックブームが扉の表面に無数の傷痕を穿ちながら扉を外に押し込み、開かせる。
 だが、渾身の飛び蹴りで閂を破壊されたにも関わらず、扉は半開き程度にとどまった。
「ってぇ~、この扉、どれだけ頑丈なんだ」
 軽く舌打ちしながら、結城は雷翼を大きく羽ばたかせて雷羽根を破滅の使徒たちに撃ち出し、羽根に帯電した雷で麻痺させ時間を稼ぎつつ、村人を包むよう結界を施す。
 ふと、結城の脳裏に疑問が霞めた。
 ――なぜ、男性を優先して殺めようとするのか?
 ――なぜ、女性は生かそうとするのか?
(「……大方、女性は手下に男は紋章の生贄に、ってところか?」)
 メイドだけでなく、破滅の使徒も全員女性ならば、在りえない可能性ではない。
 その破滅の使徒たちは、半開きの扉に希望を見出し始めた村人たちの心を挫こうと、次々に口を開いていた。
「貴方方は、決して逃げられない」
「この世のどこにも、逃げられる場所は存在ない」
「ここで贄となり、尽くすことこそ、貴方方に残された道」
 使徒たちが紡ぐ勝手な呪縛を、しかし結城は鋭き決意の言の葉で一刀両断する。
「んなことはねぇよ! 俺らが全員逃がしてやる!」
 破滅の使徒たちに啖呵を切りながら、結城は再度空中に飛びあがり、手近な使徒に急降下キックを浴びせていた。

●二刀流剣士とヒーローと黒猫
「いやはや、みんなそろって男好きさんなんだねぇ」
 突然、響いた快活な西条・朱莉(天真爛漫お気楽ヒーロー・f16556)の挑発めいた茶化す声に、破滅の使徒たちの怒りが膨れ上がる。
 だが、朱莉は天真爛漫な笑顔のまま、ちら、と横目で同行者を眺めた。
「って事は、若い男が突っ込めば、普通はそっちに靡くよね~?」
 朱莉に視線を向けられた北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は、朱莉の挑発の意図を悟りため息ひとつ。
「まあ、朱莉さんだからそんな事だろうとは思ったが……」
「ねぇねぇ、そこのお嬢さん達! そっちに生きの良いいい男が行くから、存分に吸血しちゃえ☆」
 というわけで、ゆー君よろしく! とウインク込みで投げる朱莉に、優希斗はがっくりと肩を落としそうになる。
「……朱莉さん、村人の避難は任せたよ」
「ラジャー☆」
 両肩にのしかかる気苦労を表情に出さぬ様努めながら、優希斗はすらり、と鏡花水月と蒼月・零式を抜く。
 そんな朱莉と優希斗のやり取りを見ながら、くすりと笑みをこぼした文月・統哉もまた、直ぐに表情を引き締め直し、いつもの学生服姿からクロネコ着ぐるみ『クロネコ・レッド』姿に変身。
「村人たちは必ず護る。そのためにも……!」
 確固たる意志と覚悟を胸にクロネコ・レッドは宙へ浮きあがり、半開きの扉へ飛翔しながら突撃。
 先程まで歓談していた少年が、突然黒猫姿に変身して扉に飛ぶ光景に、村人たちが唖然とするが、それは破滅の使徒たちも同じ。
「いやぁ~、さすが若い男の子は違うねぇ~」
 まっ、扉が閉められているならぶっ壊せば良いんだよ☆ と朱莉もバトルアックスを手に扉に走り、思いっきり振りかぶる。
「ああ、道を開くためにこの扉を壊す!」
「いっけええええええ!」
 統哉が飛翔速度を落とさず扉に突撃するのと同時に、朱莉も全力でバトルアックスを扉に振り下ろした。

 ――ドガアアアアアアアン!!

 統哉の突撃と朱莉の地形すら破壊する斧の振り下ろしを受けた扉は、木っ端みじんに破壊された。
「正気ですか、貴方達は」
「贄を逃がそうとするとは、愚かにも程がある」
 絶えず雷撃を浴びせられ、動きを制約されている破滅の使徒たちが、扉を跡形もなく破壊した結城と統哉、朱莉の行為を愚行と糾弾しつつ、村人たちの心を束縛せんと心無い言葉を投げかけ続ける。
「ここから貴方方が逃げても、未来はありません」
「逃げたところで、領主様が必ず追いかけるでしょう」
「逃げずにこの場でいのちを捧げなさい。それが貴方方の運命なのですから」
 使徒の口から紡ぎ出されるのは、運命と意思を呪縛する言の葉。
 それを打ち消すかのように、統哉が叫んだ。
「それでも俺たちは諦めるものか。運命が閉ざされたならその扉を打ち破る。それこ そが俺達猟兵の、闇の救済者の役割だ!」
 統哉の決意に満ちた叫びは、村人の運命の糸を断ち切るかのように、地下室に木霊した。

●階段の先に未来を見いだせ
「今のうちに階段からホールへ退避を、早く!」
 纏め役と思しき村人に届くよう声をかけながら、統哉は宵を両手で構え、扉を背に立ちはだかる。
「ああ、ここにいても命がなくなるだけだ。逃げるぞ!」
「さあ、走って!」
 統哉の叫びと態度に触発され、いち早く混乱状態から立ち直った纏め役らしき村人たちが、周囲の村人たちに声をかけ、階段へと誘導し始めた。
 纏め役に促され、村人たちは次々と階段を登り、ホールへ向かう。
「でも、あの……あの人たちに後ろから斬られたら」
 それでも不安を隠せない女性たちには、朱莉が盾となりつつフォローを入れた。
「大丈夫☆ あの女(ひと)たちはゆー君がなんとかしてくれるから☆」
 その「ゆー君」こと優希斗は、既に闇に溶け込むように姿を隠しているが、おそらくこの地下室のどこかで機を伺っているのだろう。
 納得した女性たちもまた、朱莉に促され、階段を登った。
「ひ、ひぃぃぃぃ……っ!!」
「まずは貴方からです」
 一方、腰を抜かし逃げ遅れ気味の男性に、死の抱擁を抱かせるような大鎌が振り下ろされるが。
「おっと、追いつかせやしねえぜ!」
 瞬間思考力で村人を狙う使徒を予測していた結城が、雷装纏ったまま背中目がけて飛び蹴りを浴びせた。
 ――ドゴォッ!!
 村人に気を取られ無防備に飛び蹴りを受けた使徒は、突っ伏すように転倒した。
(「今まで無用の騒ぎを起こさぬ様ぐっと我慢して来たが、もう十分だな」)
 結城は耐え続けた怒りをぶつけるかのように、転倒した使徒に雷羽根を集中して浴びせ、その命を狩り取った。
「はっ、外道に捧げる命なんて、何一つねぇ!」
「さっすが~☆ さささ、こっちこっち」
 腰を抜かした男性は朱莉の肩を借りて立ち上がり、扉に向かい歩き出した。
 破滅の使徒たちも追おうとするが、我慢に我慢を重ねた結城の突撃に浮足立ったところに雷羽根で麻痺を重ねられ続けられれば、簡単には追いかけられない。
 それでも、使徒のひとりが強引に雷羽根を払いながら逃げる村人を背から両断せんと鎌を振り下ろすが。
「危ない!」
 統哉がクロネコ着ぐるみ姿のまま、宵の刃に滑らせるように魂狩の鎌を受け止めながら、刃先を逸らした。
 鎌を逸らされよろめいた使徒が体勢を立て直すより早く、統哉の宵がその背から使徒を斬り裂く。
「急いで!」
「はい、はいぃっ!!」
 統哉に急かされ悲鳴を上げながら急ぎ階段を登る村人の背に、結城がそっと言の葉を投げかけた。
「死ぬなよ、助けた意味がなくなったとか笑えねぇ」
 無事を祈りながら新たに村人に迫る使徒を見極めた結城は、再び高速飛翔からの飛び蹴りを、今度は鎌を持つ手に叩き込む。
「――――!!」
 雷撃と痛打を同時に受けた使徒が、思わず鎌を手放す。
 すかさず、結城が至近距離から武装を投げつけ、使徒の首を切り裂き止めを刺した。
 外道を1体1体確実に仕留めつつも、結城の胸に去来するのは――苦い記憶。
(「救えなかった苦い経験はもうこりごりだ」)
 救えるいのちを救うためなら、結城は外道を決して見逃さない。
「盛大に血祭を始めようや外道ども、今宵血を流すのはてめぇらだがな!」
 結城は血に染まった雷爪を見せつけ使徒たちを挑発しながら、高速飛翔で村人と使徒との間に割り込み、蹴り飛ばしていった。

●剣王は現世に顕現す
 村人が次々と地下室から脱出するのを阻止できず、破滅の使徒たちは焦っていた。
 集まった村人を全員ここに誘い閉じ込めた後、男は素体として殺め、女は領主に献上し吸血鬼へと変える手はずだったが、村人に紛れていた猟兵の度肝を抜くような扉の破壊劇で全てご破算に。
 その後も猟兵達は避難する村人を守りながらも、次々と使徒を蹴り飛ばし、斬り捨てていっている。
 ゆえに、猟兵を闇に葬るべき、と使徒たちが意を一致させるのは、当然の帰結だった。
「猟兵の数は多くありません。今なら――」
「――させないよ」
 改めて鎌を構えた使徒たちの集団に、蒼穹の光を纏った二刀流の青年が切りこんだ。
 ――契約せし剣王の魂。
 ――剣王の導き手、蒼き月の光。
 ――そして、多元世界に存在する魔剣・魔刀の呪詛。
 それらを同時に身に宿し、瞳を蒼穹に変えた優希斗が、巨大化した大鎌を持つ使徒の懐に飛び込み、鏡花水月と蒼月・零式を振り抜いた。
「くっ……!!」
「いつの間に迫っていたのですか!?」
 朱莉の挑発に乗せられた使徒に対し、闇に紛れながら迫った優希斗の二撃は、結果的に奇襲となり、瞬く間に使徒を1体斬り伏せる。
「まあ、望むなら俺の血を飲ませてやるよ……零れた血、だけれどね」
 加護も呪詛もまとめて身に宿している優希斗の耳や鼻からは、絶えず血が零れ落ちている。
 人の身に余る力を同時に複数憑依させているため、常に身体には莫大な負荷がかかり続けているが、優希斗は表情一つ変えることなく、地面を鏡花水月で無理やり削り取り巻き上げながら蒼穹のオーラを展開し、逃げる村人と使徒との間に壁をつくった。
 使徒たちも魂狩の鎌を巨大化し、一気に多くの逃げ惑う村人たちのいのちを狩り取ろうと振り回すが、巻き上げられた礫が刃に当たって僅かに逸れ、さらに弾力のある布団のような蒼穹のオーラに刃を受け止められ、狩り取れない。
 使徒がオーラから鎌を引き抜こうとした一瞬、蒼月・零式を逆手に構えた優希斗が、使徒の左わき腹から右肩まで逆袈裟に斬り上げるように振り抜き、止めを刺した。

●『破滅の使徒』と村との関係は
 結城と優希斗が使徒たちを片っ端から倒している間に、村人の避難はほぼ完了していた。
 残るは村長だけなのだが、なぜか村長は逃げようとしない。
「ところで、村長のお爺ちゃん? 何であなたは逃げないのかな?」
「ははは、お爺ちゃんに見えるか……私は逃げませんよ」
 朱莉の質問に場にそぐわぬ苦笑を浮かべながら、首を横に振る村長。
 そんな村長の心境を、統哉は読心術で読み取ろうとするが、今一つ判然としない。
(「何とか説得して避難させたいが……」)
 村長は領主と直接面識がある分、信じられぬ思いだろう。
 あるいは、村を豊かにする知恵や技術を授けてくれた領主に好意を抱いていたかもしれない。
 もしくは、彼の事態を招いた責任も感じているのだろうか?
 いずれの想いなのか、それともいずれでもないのか。
 今一つ、村長の想いが読み切れずに悩む統哉に代わり、朱莉が口を開いた。
「だったら、逃げない理由、教えてほしいなぁ」
 一直線に切りこんだ朱莉に、わかりました、と村長は軽くため息をつき、理由を明かす。
「あの使徒と称する方々の顔は――我が一族の女たちに非常に似ておりまして」
「えっ!?」
「何!?」
 驚く朱莉と統哉に、村長は若干震える声で話し始める。
「そこの少年にはお話ししましたが、我々の先祖は領主から農耕技術を授けられ、豊かに暮らしてまいりました」
 しかも領主から授かった技術は、牧畜や建築など、多岐にわたるらしい。
「その見返りとして、数年に1度、私の家の女性をひとり、領主様の家に住み込みで働かせるために送り出しておりました」
「送り出された女性は、その後戻って来たのか?」
「いえ、領主様に数年仕え知識と教養を身に着けた後、他の領主様にお仕えするために出立した……と聞いておったのですが」
 まさか、破滅の使徒となっているとは……と目を伏せる村長を前に、統哉は動揺を抑え込みながら思案する。
(「そういえば、舞踏会中にメイドを見て驚いている村人がいたな」)
 首を落とされた時、顔見知りが殺されたかのような反応をしていた村人もいた。
 おそらく、村人にも何らかの事情があるのかもしれないが、今はそこまで調べる時間はないだろう。
 村人たちが全員避難した今、統哉は村の未来を護るため、村長自身の命を護るため、願う。
「あなたの役割は村を守る事、違うかい?」
「…………」
「もし、少しでも責任を感じているのであれば、今は避難してほしい」
 真摯に訴える統哉に、それでも村長は首を振った。
「もし私の先祖が……家があの領主が伝えた技術を受け入れたことが今の事態を招いているのであれば、私にはそれを見届ける責任があるでしょう」
 長年の盟約……ないしは呪縛は、説得だけでは解けそうにない。

●もつれる糸は解くか斬るか
(「どうやら、村の背後に潜む事情はまだまだ根深そうだな」)
 統哉と朱莉、村長の話を小耳にはさみつつ、真正面から巨大化した鎌を振るい、猟兵ごと村長を巻き込もうとする使徒を鏡花水月で斬り伏せながら、優希斗はふと考える。
 朱莉と統哉がホールへの階段を塞ぎつつ村長を説得している間、結城と優希斗で協力し倒した使徒の数は十を超え、残りは片手で数えられるほど。
 村長の言が真実ならば、使徒たちは皆、代々村長の家から「送り出された」女性ということになるが。
(「だとすると、領主とやらはいつからこの地を……?」)
 脳裏に過った疑問が集中を削ごうとするのを、優希斗は首を振って無理やり打ち消し、使徒が鎌を持つ手を鏡花水月で薙ぎ払うよう斬った後、蒼月・零式で斬り伏せる。
「そろそろ血を流し尽くした頃だろうがよ、まだ終わらねぇぜ!」
 よろめいた使徒の頭に、何度目かの結城の飛び蹴りがめり込み、雷爪で頭を地面に叩きつけるように押さえ込む。
 頭を押さえられもがく使徒の背に、優希斗が鏡花水月を突き立て、止めを刺した。

『紋章』になりかけていた使徒は、鏡花水月を突き立てられた個体が最後のひとり。
 かくして、素体とされかけた村人が全て脱出し、使徒が全て撃破された地下室は、再び静寂を取り戻した。

●現れし領主は『第五の貴族』
 破滅の使徒が全て倒された後、地下室に残るのは、統哉たち猟兵と村長のみ。
 地下室の最奥部に目を向けると、醜悪なオブジェのような『紋章の祭壇』が鎮座していた。
 村人たちを全員逃がした今、領主との対決は避けられないだろう。
 ゆえに統哉は、もう1度だけ村長に頭を下げ、頼み込む。
「村長、もう1度だけお願いだ。村を護るのが役割だと思うなら、直ぐに……」
「いえ、私は残ります」

 ――事の全てを見届けた上で、今後の村の在り方を考えねばならないのでしょうから。

 首を振りつつ拒否する村長の呟きは弱々しく、言の葉は戸惑いに揺れている。
 だが、言の葉に潜む、村の過去と未来に対する責任感は、本物だ。
 その想いを読み取った統哉は、軽く首を振り説得を諦めた。
「それなら、俺たちと一緒に最後まで見届けよう――この結末を」
「なーに、村長さんは全力で守るから☆」
「朱莉さん、簡単に言うが……」
 おそらく容易な道ではないよ、と憑依を解き漆黒の瞳に戻した優希斗が諭そうとした、その時。

 ――カツン、カツン。

 部屋の奥から響く足音の先を見つめた結城が、吐き捨てるように一言。
「外道の親玉がおいでなすったか」
「あらあら、全部台無しにしてくださった報いは受けて頂かないと」
 結城たち猟兵と村長ににこりと笑いかけながら『紋章の祭壇』らしき醜悪なオブジェの前に立ちはだかったのは。

 ――バルコニーから舞踏会を眺めていた、あの領主だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『老獪なヴァンパイア』

POW   :    変わりなさい、我が短剣よ
【自身の血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【真紅の長剣】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    護りなさい、我が命の源よ
全身を【自身の血液】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ   :    立ち上がりなさい、我が僕よ
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【レッサーヴァンパイア】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。

イラスト:イツクシ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠館野・敬輔です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●【重要】第3章プレイング受付開始日変更のお知らせ
 他シナリオ運営の都合上、第3章のプレイング受付期間を以下のようにさせていただきます。
 ※マスターコメントから変更となっております。ご注意願います。

 【9月27日(月)8:31~9月29日(水)8:29】

 受付開始前にお預かりしたプレイングは1度お返し致しますので、受付期間内に再送をお願い致します。
 
●レグルス村近郊・領主の館地下――『紋章の祭壇』前
 ――松明が煌々と燃え盛る、岩盤を無骨にくり抜いた血肉に染まる地下室にて。

「あらあら、全部台無しにして下さった報いは受けて頂かないと」
『紋章の祭壇』を背に猟兵達やレグルス村の村長の前に現れた領主を見て、村長が震える声で領主に問いただす。
「領主様、これはどういうことでしょうか!?」
「見ての通りよ。もうあなたにもわかっているのでしょう?」

 ――レグルス村は、この時のためにずっと庇護されてきていたのだ、と。

「最初から、悍ましい儀式の生贄とするために、我々は……!」
「ええ、何十年もの間、ずっとずっと飼いならしてきたのよ――この日の為にね」
『領主』はにべもなく言ってのけ、瞳に絶望を浮かべる村長を見ながらカラコロと嗤う。
 数十年前、険しい山岳地帯に逃れた村長の先祖たちに技術を伝授し定住させたのも、それ以後ずっと他の吸血鬼の魔の手から守ってきたのも、全てはこの日のためだったのだ。
「後はずっと飼いならされてきたあなた方の純粋な血肉を『紋章』の素体として捧げ、あなたの血族の『破滅の使徒』たちに喰わせて完成させるだけだったわ」
「ああ、ああ……!!」
 数年に一度遣わせていた血族の女性たちは、信仰心厚く育てられた後、領主の手で吸血鬼に堕とされ、『紋章』に変えられていたのだ。
 真実を知った村長は、悲嘆の叫びとともにがくりと膝を落とし、項垂れた。

 沈黙した村長に代わり、猟兵のひとりが問い正す。
「この床の血と肉は、誰のものだ?」
「レグルス村と同じような村は、この山岳地帯にいくつもあるわ。ほとんど『紋章』の素体にしたけどね」
 おそらく、別の村で領主が飼いならされた人々が、素体として破滅の使徒たちに捧げられていたのだろう。
 床の血肉がまだ新しいことを猟兵が指摘すると、領主は忌々し気に言い捨てた。
「我々吸血鬼の支配から逃れるため立ち上がった『闇の救済者』たち、そして『紋章』の製造場に迫る猟兵達……『第五の貴族』としてはこれ以上人類の横暴を見過ごせないのよ」
 ゆえに、『第五の貴族』たる領主は、吸血鬼を強化する『紋章』の製造を急ぐべく、山岳地帯の各村から人々を徴用し、素体として捧げた。
 その一環でレグルス村の人々も素体にしようとしたが、まさかグリモアに把握され、猟兵が村人に紛れているとは思ってもいなかったのだろう。
「これ以上の邪魔はさせないわ。第4層からの乱入者如きに、我々の支配を崩されるわけにはいかないもの」
 手にした銀の刃のナイフと、握る右手の甲に宿す『番犬の紋章』をキラリ、と煌めかせながら、領主は猟兵たちに憎々しげに言い放った。
「この『番犬の紋章』と『紋章の祭壇』があれば、いくらでもやり直せる。壊させるわけにはいかないわ」
 忌々し気に歪める領主の表情は、もはや手厚く人々を保護して来た領主の顔ではなく、人類を幸福から絶望に突き落とし這いつくばらせようとする吸血鬼の顔だった。

「さあ、この場を護るために、邪魔をする猟兵と、真実を知った村長は始末させていただくわ」
 銀のナイフで手首を傷つけ、流れ出る血を真紅の長剣に変えながら。
 人の好い領主のふりをしていた吸血鬼――『第五の貴族』は、猟兵達に襲い掛かった。

 さあ、猟兵達よ。
 目の前に現れし領主は、恐らく数十年前からこの地に住まうであろう『第五の貴族』のひとり。
『紋章』製造のために人類を飼いならし、そして贄として供して来た『第五の貴族』を討ち、『紋章の祭壇』を破壊してこれ以上の惨劇を防げ。

 ――健闘を、祈る。


※マスターより補足
 第3章は領主こと『老獪なヴァンパイア』とのボス戦です。

 領主の弱点は、【(銀のナイフを握る)右手の甲】に宿す『番犬の紋章』そのものです。
 まともにやり合っては勝ち目はありませんが、紋章を傷つければ徐々に弱体化しますので、積極的に狙ってみてください。

 第2章の判定の結果、戦場にはレグルス村の村長が残っています。
 村長は村人らを巻き込んだ責を負い、事の次第を全て見届けるために残りましたので、促されても避難しません。
 一方、領主は村長も容赦なく狙い、殺そうとしますので、村長の生存を狙う場合は護衛が必要となります。

 第3章のプレイングボーナスは以下の2点です。

 ・領主の『紋章』を狙って攻撃する
 ・レグルス村の村長を護る

 ちなみに、2章の判定の結果、地下室からホールに繋がる扉は木っ端みじんに破壊されておりますが、領主は猟兵と村長を始末してからホールに残る村人を狙いますので、特別な対処は必要ありません。
 また、『紋章の祭壇』の破壊は、プレイングのどこかに「破壊する」とだけ書いていただければ大丈夫です。

 ――それでは、最善の戦いを。
護堂・結城
祭壇は破壊する、人命は守る、貴様は殺す、猟兵ってのは忙しいな全く
まぁいい、外道は殺すべし。覚悟しろよ、その首狩り取ってやるからよ

ここには虐殺された奴らの恐怖が溢れている、それが貴様の命取りだ
指定UCを発動、生命力吸収で自分の激昂しそうな怒りと周囲の恐怖を食らって劫火の剣群を召喚

「これまでの外道の報い、たっぷり受けさせてやらぁ」

村長を狙わせないよう手数勝負だ、剣群を操り、紋章目掛けて一斉発射
当たればよし、武器で弾くなら触れる瞬間に爆破して衝撃波・焼却・範囲攻撃を食らわせてやる
隙ができたら自身も刀で切り込み、怪力の一閃で紋章を狙う

「さぁ貴族様?今宵は斬首の刃が貴様の名を呼んでるぜ?」


北条・優希斗
エリスさん(f10650)と
…人類の横暴は見過ごせない第五層の存在か
第四層の存在が俺達や現人類の事ならば
それよりも下層の者は旧世代、或いは上流階級扱いか?
他に何か手がかりが無いかを情報収集で探りつつ
先制攻撃+早業+地形の利用+軽業+ダッシュ+見切り+残像+戦闘知識+第六感
敵の動きを把握、敵の紋章を狙って空中から強襲するよ
エリスさんに守りは任せ
俺は攻撃に専念
その上で
これの前ではお前が幾ら血液を流そうと関係ない
(四撃当たればその先に待つのは死のみ故)
UC+早業+2回攻撃+薙ぎ払い+串刺し+鎧無視攻撃+傷口を抉る+騙し討ち+追撃
死の抱擁と共に、永遠に骸の海で眠りに落ちよ
自衛は見切り+残像+オーラ防御


エリス・フリーウインド
優希斗(f02283)殿と
他の方との連携・アド可(共通)
…ふむ
一仕事が終わって来てみればこの状況でございますか
畏まりました優希斗殿
村長様の守りは私が承りましょう
第五の貴族が何故、私達を第四層の者と呼ぶのかは気になりますがね
真紅の長剣でございますか
しかしどんなに殺傷力があろうと、私の無敵の結界と鎧の前には無力でございます
UC+拠点防御+盾受け+武器受け+かばう+オーラ防御+覚悟+結界術
村長様を庇う無敵の破邪の結界を張り
自らを漆黒の鎧で纏い攻撃を無効化
優希斗殿、皆様、攻撃はお任せ致しますよ
集団戦術+破魔+援護射撃+念動力+呪詛を重ねた槍と剣で援護攻撃を
私は盾であり、矛なる者でもありますので


文月・統哉
仲間と連携
村長を護り戦う【オーラ防御・かばう】

紋章の為に奪われた沢山の命
吸血鬼の領主が人々の命を搾取する当たり前の様な構図に
悲しみも憤りも絶えないけど
それでも今一番重要な事は
『レグルス村は滅びていない』という事実
必ず護るよ、村長

素早く戦場を確認【視力・情報収集】
気付かれぬ様に【念動力】でワイヤー放ち
【罠使い】で目立たぬ罠を仕掛けておく

【見切り・武器受け】剣に大鎌で斬り結び
衝撃で隙の生じた【演技】で追撃を誘い罠へ誘導
逆に【体勢を崩】させ【カウンター】
宵月夜のUCで紋章を貫く【部位破壊】

老獪なる吸血鬼
この祭壇でどれだけの間どれだけの血が流れたのだろう
悲しき歴史に終止符を
祭壇を破壊する

村長には闇の救済者達との連携を勧めるよ
彼等ならきっと庇護を失った村の支えになってくれるから
村の持つ技術もまた、人々の希望の光になるだろうから

第4層は地上ではないとも聞いたけど
この世界が地底都市なら日が昇らないのも頷ける
本当の地上はどうなっているのだろう
何処かの世界と繋がっている可能性もあるのだろうか

※アドリブ歓迎



●村の滅亡を阻止するために
 吸血鬼としての本性を露わにした『老獪なヴァンパイア』の領主が、己が血を糧に創造した真紅の長剣の切っ先を向けているのは、真実を知り項垂れているレグルス村の村長。
 そんな村長を護るよう立ちはだかった文月・統哉は、ある思いをはせていた。
 ――『紋章』製造のために奪われた沢山の命。
 ――吸血鬼の領主が人々の命を搾取する、当たり前の様な構図。
 この世界を包む闇に、悲しみも憤りも絶えることはない。
 その悲しみや憤りが、長年穏やかに過ごしてきた村を包み込もうとしていたなら、尚更だ。
「ああ、ああ……もう村は……」
 統哉に護られながらも村の未来を憂う村長の声は、絶望の色を帯びつつある。
 だが、統哉は領主から目を離さず、静かな声で村長に告げた。
「村長、『レグルス村はまだ滅びていない』そうだろ?」
「!!」
 村長の身体が電撃で撃たれたかのように跳ね、瞳に少しだけ希望が戻る。
 ――おそらく、ここに領主がいる限り、村は無事だと察したのだろう。
「村に帰るまで、必ず護るよ、村長」
 黒猫柄のオーラを展開しながら漆黒の大鎌・宵を構える統哉に、村長は「お願いします」と頭を下げた。

 ――一方。
 北条・優希斗は統哉と村長のやり取りを耳にしつつ、領主が軽く零した言の葉の意味を考えていた。
(「……人類の横暴は見過ごせない第5層の存在か?」)
 それを領主に問いただそうとしたその時、ホールに続く扉の奥からアルトの女性の声が響く。
「……ふむ。一仕事が終わって連絡を受けて来てみれば、この状況でございますか」
「エリスさんか」
 地下室に姿を見せたのは、エリス・フリーウインド(夜影の銀騎士・f10650)。
 優希斗が簡単に状況を説明すると、エリスはただ1度だけ頷いた。
「というわけだから、エリスさん、村長の護衛を頼んだよ」
「畏まりました優希斗殿。村長様の守りは私が承りましょう」
 破邪の大盾の名を持つ、中央に白銀の十字架があしらわれた漆黒のタワーシールドを手に優雅に一礼した漆黒の翼持つオラトリオの騎士は、統哉と並ぶように村長の前に立ちはだかる。
 村長の護りを固めるエリス等を横目に、護堂・結城はやれやれと呟きながら軽く肩をすくめるが、その瞳に宿る炎は怒りで激しく燃え盛っていた。
「祭壇は破壊する、人命は守る、貴様は殺す。猟兵ってのは忙しいな全く」
 しかし、その何れが欠けても、領主はいずれとも知らぬ地で『紋章』製造を再開し、同様の惨劇を引き起こし続けるだろう。
 まあいい、と結城は腕を軽く振って肩の力を抜き、霊刀【白狐】を抜いて突き付ける。
 使用者の想いに反応し様々な属性を纏う霊刀の刀身には、怒りの炎が宿っていた。
「外道は殺すべし。覚悟しろよ、その首狩り取ってやるからよ」
「できるものならなさってはいかが?」
 己が血液を固めた真紅の長剣を軽く振りながら、結城たちを挑発するよう発せられた領主の言の葉に反応するように、統哉や優希斗、エリスがそれぞれの得物を構え。

 ――村の存亡を賭けた戦いの火蓋が、切って落とされた。

●地下室に満ちる怨嗟の声をすくうため
 素早く地下室全体に視線を巡らし、松明の明かりが届かぬ場所を確認した統哉が、そっとクロネコワイヤーを暗がりに伸ばしながら、先陣を切るように宵を縦に振り下ろす。
「あらあら、誓いを立てておきながら軽い一撃ね?」
 初撃を軽々と真紅の長剣でいなした領主は、統哉の影から伸びるクロネコワイヤーの存在に気づかない。
 その動きを観察しつつ、優希斗は秘技を発動する言の葉を呟きながら、空中に足を踏み出す。
「其は、生でもなく、影でもなく、只、虚空の死を与えし蒼穹の舞踊」
 言の葉は蒼穹の影と化しながら優希斗の全身を覆い、彼の身体を重力から解き放ったかのように空中に誘った。

 一方、結城は地下室全体の気配に耳を澄まし、声なき声を拾っていた。
 妖狐の耳に届く声なき声は――すくわれなかった者たちの憎悪と憤怒、そして怨嗟の塊。
 ――アアアアアア。
 ――ニクイ、ニクイィィィィィ!!
 ――あの女狐め、我等を謀って……!!
 ――地の果てまで追い詰めて、地獄へ叩き込んでやる!!
 純粋な怒りと憎悪が凝縮された無数の声は、レグルス村同様、此の山岳地帯のどこかで領主の庇護を受け、紋章の素体として村ごと供された人々の怨嗟の声なのだろう。
 長年幽閉され、決してすくわれることのなかった魂の嘆きを、結城は腸煮えくりかえるような己が怒りと共に受け止めていた。
(「ここには虐殺された奴らの恐怖が溢れている、それが貴様の命取りだ」)
「――頭を垂れよ、死はお前の名を呼んでいる」
 かつて手厚い庇護を受けながら吸血鬼に贄として捧げられた人々と、己自身の外道への怒りを喰らいながら、結城は復讐の劫火の剣群を召喚する。
 領主に対する憤怒と怨嗟の感情は、結城の言の葉に導かれて僅かに黒ずんだ紅色の精神エネルギーの剣へと変化し、結城の周囲に無数に浮かび上がった。
 その数、ざっと見積もって千は超えるだろうか。
 予想を遥かに超える数の剣が召喚されたことに、結城も驚きと戦慄を隠せない。
(「どれだけの命を紋章にくべてきやがったんだ、この外道は……!!」)
 数十年に渡り澱んだ怨嗟の残滓から、ほんの数日前にくべられたであろう哀しみまで。
 時代も年齢も千差万別ながら、領主への恨みつらみに溢れた無数の魂の怒りが今、結城の導きに従って無数のエネルギー剣となりて虚空に浮かんでいた。
 手始めに、結城は牽制も兼ねてエネルギー剣を数本ほど手の甲の紋章目がけて発射するが、領主は真紅の長剣であっさりとエネルギー剣を切り払いながら村長に接近する。
「素体の怒りなど、もう聞き飽きましたの」
「精神エネルギーの剣すら斬るのかよ!」
 反則じゃねぇ? と呆れる結城を横目に、領主は絶望と希望が綯い交ぜになった表情を浮かべる村長に真紅の長剣を振り上げた。
「あ、ああ……」
「うふふ、すぐあの使徒たちの下へ送って差し上げますわ」
 村長の脳天に、領主が歪んだ笑みを浮かべながら真紅の長剣を振り下ろす刹那。
「それはさせませぬ……我は闇にして影なる騎士。故に守るべき者は心得ている」
 エリスが漆黒の聖鎧を纏い、村長の周囲に破邪の結界を展開しながら村長と領主の間に割り込み、村長には致命的となる一撃を受け止めた。
「どんなに殺傷力があろうと、私の無敵の結界と鎧の前には無力でございます」
 結界に護られた村長はもちろん、エリスの破邪の大盾にも傷ひとつついていない。
 おそらく、領主にはエリスの漆黒の鎧に傷をつけることすら、かなわないだろう。
「あら、あなたは初対面のその者を守る価値を見出しているのかしら?」
「これが私の役割ゆえ、守るのみです」
 嘲るような領主の呟きを軽く流しながら、エリスはランスオブダークに念を送り、虚空に浮かべていた。

●真相は闇に包まれたままか
 統哉が暗闇に紛れるようこっそりと何かを伸ばし続けるのをちら、と見やりながら、エリスはランスオブダークを操りながら領主を牽制しつつ、拭えぬ疑問を脳裏に浮かべる。
(「第五の貴族が何故、私達を第4層の者と呼ぶのかは気になりますがね」)
 そして、かけられた言葉に何らかの引っ掛かりを覚えているのは、エリスの主たる優希斗も同じ。
 ――『第4層』の情報自体は、別の『第五の貴族』を討滅した猟兵が持ち帰ってきているのだから。
 優希斗は蒼穹の残影を纏いつつ空中から強襲、蒼月・零式と鏡花水月で紋章にバツ印を穿ちながら、抱いていた疑問を口にする。
「第4層の存在が俺達や現人類の事ならば、それよりも下層の者は旧世代、或いは上流階級扱いか?」
「さあて、それはどうかしらね?」
 優希斗は二刀を逆手に持ち替え、さらに紋章を抉らんと振り上げるが、領主は二刀を口にした疑問ごと真紅の長剣で受け止めつつ、全身を己が血液で覆いながら主の隙を埋めるべく突き出されたランスオブダークを受け止めた。
「そもそも、第4層からの乱入者如きに、私がペラペラとこの世界の真実を話すとでもお思いで?」
 問答は無用とばかりに、領主は真紅の長剣を地面と水平に薙いで二刀を弾き飛ばし、切り戻しながら優希斗の胴を狙う。
 胴を両断せんと鋭く切り戻された真紅の長剣を、残像と蒼穹のオーラで逸らしつつ空中へ逃れながら、優希斗は内心ため息をついていた。
 ――これ以上は如何なる聞き方をしても、領主の口を割らせられないだろう。
 故に優希斗はこれ以上の質問を諦め、蒼穹の残影と共に蒼月・零式を振り抜いて真紅の長剣を弾き飛ばしつつ、さらに踏み込み鏡花水月で胴を薙ぐ。
「……ならば、後は討つだけだ」
 鏡花水月持つ左手に手ごたえを感じながら、優希斗は静かに領主に告げた。

●山岳地帯の支配者たる吸血鬼に終焉を
 猟兵と領主との戦いは、熾烈を極めた。
 エリスが村長の護りを一手に引き受けたため、結城と優希斗、そして統哉は攻撃のみに専念できるが、斬りつけた者の生命力を奪う血液の護りはなかなか崩せない。
 それでも、結城がエネルギー剣の一部を時間差をつけて立て続けに発射し、領主の気を逸らした直後、優希斗が蒼穹の残影を纏いながら空中から領主を狙い二刀を縦に振り下ろし、ようやく両腕に傷を穿つことができた。
(「これで、3回」)
 刀を通し生命力を奪われながらも命中した回数を確認した優希斗は、領主の隙を見出そうと目を凝らす。
 残影を纏った攻撃が4回全て命中すれば、たとえかすり傷であっても、血液の護りを無視して確実に仕留めることができるからだ。
 既に何度も紋章を傷つけている以上、確実に弱体化はしているはずなのだが、『第五の貴族』たる領主はその気配を微塵も見せない。
 優希斗や結城の攻撃の隙を埋めるよう連携しながら、統哉も宵を振るい続けているのだが、領主に軽くいなされ続けていた。
「あと一撃、入れる隙があれば」
「それじゃ、そろそろ派手に行かせてもらうぜ」
 結城が優希斗に頷きながら、残りの紅のエネルギー剣を操り、全方位から領主を剣山にせんと撃ち出した。
「くっ……!!」
 一瞬で逃げ場を失い怨念に満ちた紅の檻に閉じ込められた領主の全身に、無数のエネルギー剣が迫る。
 それでも、顔面に突き立とうとしたエネルギー剣の直撃だけでも避けるべく、領主が真紅の長剣で真正面のエネルギー剣を数本切り払った、その時。

 ―――ドドッドドドドドド!!

 切り払ったエネルギー剣を起点に、全てのエネルギー剣が連鎖して次々に爆発し、領主の全身を爆炎と爆風で包み込んだ。
「ぎゃあああああああ! こんな、こんな……!」
 爆風晴れて露わになった領主は、全身を覆っていた血液を全て吹き飛ばされ、腕や紅のイブニングドレスもズタズタに引き裂かれていたが、真紅の長剣は手放していない。
 爆風に紛れるように迫った統哉が、宵を地面と水平に薙ぐように振るい、紋章を狙うが、領主は宵を真紅の長剣で受け止め、一気に押し返した。
「人間如きが、考えが甘いのよ!」
「うわっ!!」
 領主の膂力に押し負けた統哉が、バランスを崩しよろめきながら大きく後退する。
 好機と見たか、領主は結城と優希斗、エリスを無視し、統哉を追った。
「さあ、その命を我々に捧げて、村長の絶望の糧となってもらおうかしら?」
 統哉は体勢を立て直せず、次の一振りを繰り出せない。
 確実に命を絶つべく、領主が真紅の長剣片手にさらに大きく踏み込んだ、その時。

 ――ピンッ!!

「なっ……!」
 足元に張り巡らされたワイヤーに足を取られ、領主がバランスを崩して大きく前によろめいたのを見た統哉が、にまっと笑う。
 ――わざと体勢を崩した振りをして、罠があるこの場に誘い込んだ。
 領主が統哉の笑みからそう悟るより、早く。
「斬る!」
 素早く体勢を立て直した統哉が鎌の左右を持ち替え、裂帛の気合と共に右側面から紋章狙って振り下ろし、切断した。
「ああああああああ!!」
 鎌で両断された紋章は一気にどす黒く染まって力を失い、領主への力の供給を断つ。
 追い付いたエリスが、破魔の魔力を乗せたランスオブダークと呪詛剣黒羽で追撃した。
「騎士が弱っている女性に追撃を入れるなんて!」
「私は盾であり、矛なる者でもありますので」
 己が結界への信を隠すことなく、攻勢に転じるエリスに続き、結城が怒りの炎が宿る霊刀を手に一気に斬り込んだ。
「さぁ貴族様? 今宵は斬首の刃が貴様の名を呼んでるぜ?」
 力まかせに振り下ろされた霊刀の狙いは、紋章宿す手首。
 紋章から得ていた力を全て失い、爆炎に炙られ体力を奪われていた領主の手首は、怪力任せの乱雑な一撃に耐えきれない。
 ――ゴトッ。
 真紅の長剣が、握られていた手首ごと地面に落ちた。
「っぐあぁぁぁぁぁぁ!! 第4層からの乱入者如きが『第五の貴族』たる私を追いつめるとは!」
 得物を失い錯乱したか、領主が喚きながら結城に掴みかかろうとするが、その背後に蒼穹の残影を纏った優希斗が迫っていた。
「終わりだ。……死の抱擁と共に、永遠に骸の海で眠りに落ちよ」
「長年村を飼いならし贄とした外道、死すべし!!」
 優希斗の鏡花水月が背中から心の臓に吸い込まれると同時に、結城が霊刀を力まかせに振り上げ、領主の首を断った。

 ――ドスッ!!
 ――ゴトッ……!

 優希斗の蒼穹纏った4回目の攻撃は、確実に領主の心の臓の動きを止め。
 結城の力まかせの一振りは、領主の首を一気に落としていた。

●陰ながら支配されし歴史に終止符を
 領主を撃破した猟兵達は、醜悪なる『紋章の祭壇』の前に立つ。
「老獪なる吸血鬼。この祭壇でどれだけの間どれだけの血が流れたのだろう」
「ざっと数十年、じゃねぇの?」
 呼び寄せられた復讐の劫火の多さに、一瞬戦慄を抱いていた結城が口添えすると、統哉はそうか、と得心得たように頷いた。
「さあ、さっさと壊して終わらせようぜ?」
「ああ、この悲しき歴史に終止符を」
 統哉の宵と結城の霊刀が、『紋章の祭壇』に振り下ろされた。

 ――ガラガラガラ……。

 長年、山岳地帯に住まう人々の血潮を喰らって来た祭壇は、その二撃で完膚無きまでに破壊される。
「これでもう、この地に住む人たちが『紋章』にされることはないな」
 祭壇が力を失い、ただの瓦礫と化すのを見届けた統哉は、ほっと一息ついていた。

 かくして、山岳地帯を陰ながら支配していた吸血鬼と『紋章の祭壇』は、地下室の露となり消えた。

●日の当たらぬ世界に日は当たるのか
 その後、猟兵達は全員でホールに退避していた村人をレグルス村に送り届ける。
 だが、隠されていた真実を断片的に知ってしまった村人たちは、困惑と恐怖を隠せていなかった。
「この村は長年……知らず知らずに支配されていたのか」
 壮年男性の村人がぽつり、と呟いた言の葉が、結城の耳に入る。
 今は現実を受け止め切れなくても、何れ考えねばならないことだろう。
(「今は命があっただけよしとしとこうや。村の今後はまた考えりゃいいさ」)
 村長も村人も、忙しくなるのはこれからだ。
 だが、今だけはゆっくり休んでくれ、と、結城は村人の背に向け小さく呟いていた。

 村人がそれぞれの家に帰りついた頃には、すっかり夜も更けていた。
 だが、村の広場に残った村長は、猟兵達を前に困惑を隠さない。
「これからどうすれば……」
 道を示したのは統哉。
「村長、闇の救済者と連携してはどうだろうか」
「闇の救済者、ですか?」
「ああ、彼らならきっと、この村の力になってくれる」
 吸血鬼の支配からの解放を目指し、ダークセイヴァー各地で立ち上がっている『闇の救済者』達ならば、レグルス村の支えになってくれるだろう。
 その時はきっと、この村が持つ技術が、人々の希望の光になるに違いない。

 村長が場を辞した後、広場の中心で統哉が闇に包まれた空を見上げる。
「第4層は地上ではないとも聞いたけど、この世界が地底都市なら日が昇らないのも頷ける」
「ああ……そうだね」
 いつの間にか統哉の横に並んでいた優希斗が、空を見上げ同意しながら、心の中でため息ひとつ。
(「結局、さらに上層があるか下層があるか、下層の人々が階級的に上なのかは謎のままか……」)
 領主が頑なに口を割らなかったため、情報は得られなかったが、果たして明らかにされる日は来るのだろうか。
 気難しい顔をする優希斗に、統哉はにゃははと笑いかけながら目を細め、主の側を離れぬエリスとともに闇に覆われた空を再度見上げた。
「なあ、本当の地上はどうなっているのだろう」
「地上、かぁ? ……さあて、どうなんだろうな」
 いつの間にか、結城も軽く肩をすくめながら天井見えぬ薄闇を見上げていた。
「地上なるものがございましたら、私も妹と共に一目見たいかもしれませぬ」
 この世界の住人たるエリスの願いに、傍らの優希斗もそうだね、と相槌を打ちながら頷いていた。

 地上に辿り着く日が来るのか否か、そもそも地上なるものが存在するのか、闇に包まれたダークセイヴァーの空は何も語らない。
 だが、世界の真実という名の情報の欠片は、確かに猟兵達の手に齎されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月01日


挿絵イラスト