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残響(作者 しばざめ
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#UDCアース  #受付:5/27(金)8:31~5/30(月)22:00 


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#UDCアース
#受付:5/27(金)8:31~5/30(月)22:00


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 硝煙のにおいがする。
 手をかけた引鉄は、随分長く引かれていないような気がした。親しみのある焦げた空気が鼻腔に染み込む。
 もう幾度となく嗅いできた、濃密な死の香りだ。
 いつからここにいるとも知れない。長いこと歩いたような気もするが、それも戦場が見せる錯覚の一つにすぎないのかもしれない。ただ、死を齎すための手が、長いことその役割を果たしていないことは確かだった。
 女は――。
 女の形をした死神は、蹂躙され尽くした街の中に、刈るべき命を見い出せていない。
 それなのに、女の足は未だ瓦礫の山を彷徨している。速やかなる死が全てを覆ったのであれば用はないはずだった。自問に答えは返らず、親しんだ習性のように、彼女は幾度目とも分からぬ仕草を繰り返す。
 瓦礫の向こう。
 押し潰され息絶えた骸の中に、誰かが取り残されているような気がした。聞こえるはずのない幽かな息遣いを、途方もなく広がる燎原の中に探している。
 永劫に続く道を歩くうちに錆びたのは、或いは銃口のみに留まらなかったのかもしれない。
 女にはもう分からないのだ。最初に武器を握った理由も、何のために引鉄を引いてきたのかも、心裡に灯した火の消えた理由も。
 それでも性懲りもなく、あるはずの命を探すのが――。
 それを刈り取るためなのか。
 ――そうでないのかさえ。


 事件だ。
 そうとだけ告げて、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(伐竜・f01811)は目を眇めた。
「どこぞの教団が何らかの儀式を行ったようだが、どうやら失敗したらしいな。中途半端に時空が捻じ曲がって、鳥籠のような空間を作っちまった」
 数多の祭具を使用して行われた、大規模なそれの目的は分からない。何らかの強大な邪神を召喚するつもりだったのか、或いはもっと別の方法で願いを叶えようとしたのか――。
「まァ、顛末は良いんだ。どうにせよ全部失敗したのだし、奴らはもう二度と企てを起こせんような目に遭っている」
 本題はその先だと、竜の翼が揺れた。
 歪んだ鳥籠の扉は放たれている。周囲に殆ど何もない場所とはいえ、そこがどこかと地続きになっている以上、物好きが迷い込む可能性は常に付帯する。一度入れば容易に開かぬ鉄格子の向こうへ誰かが捉えられるより前に、籠そのものを破壊せねばならない。
 ――それだけならば、ただの哨戒任務であったかもしれないが。
「何の因果か、UDCが紛れ込んだ」
 黒き戦禍と称された、死神のような女である。
 死神が女のかたちを取ったという方が正しいか。手にした銃で命を狩るために彷徨う亡霊だ。彼女の目に映った全ての生ある者は、その時点で標的となる。
 そして。
 彼女の通った後には、文字通り何も残らない。
 放置すれば甚大な被害を生み続けることは間違いがない。そういう意味で、状況としては悪いものではない――。
 言い聞かせるように声を紡いだ竜は、複雑そうに顔を歪めた。
「面倒事が重なったと思うことも出来ようが、ここは好機と捉えるべきであろう。祭具を破壊すれば、歪んだ空間は一つに繋がる。そうすれば――」
 生を滅ぼすため、彼女は必ず猟兵たちの前に現れる。
 そのためにはまず、祭具を破壊する必要がある。自ら歪んだそれの中に飛び込めば、不自然な祭具はすぐに目に付くだろう。
 そこにあるのは、ただの日常である。
 日常――という言葉から、各々が連想するものであると言っても良い。過去の平穏であるかもしれないし、今の日常かも分からないが、そこでは投影されたたった一日が永劫に続いている。
 手段を持たぬ一般人は兎も角、抗うすべを持つ猟兵たちにとっては、そこから抜け出すのは難しいことではないだろうと竜は言う。祭具の大半が破壊されれば、歪みは霧散する。
 だから――。
 破壊するまでの間をどう過ごすかは自由だと、竜は呟いた。
「戻って来られりゃあ、何でも構わんさ」
 ――どうにせよ、日暮れは訪れる。
 夕暮れが終われば、『一日』もまた消えていくだろう。その先にある、ひと気のない平原で、女はきっと待っている。
 引鉄に手をかけて。
 殺すべき命が現れることを――。
「少々厄介なことになったが、なに、貴様らなら何とでもなるであろうさ。健闘を祈るよ」
 息を吐いて笑った竜の手の中で、グリモアが揺れる。溜息のように零す声は、独り言めいて響いた。
「――しかし、何を求めて、こんなところまで来たのだかなァ」





第3章 ボス戦 『黒き戦禍『鳴宮・響』』

POW ●血華響鳴(コール・イン・ザ・ブラッド)
自身の【瞳の奥に赤い光】が輝く間、【半径Lv二乗mの範囲内にいる生命体全てへ】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD ●千篇万禍(ゼロ・ミリオン)
【全知覚を用いた観察によって得た行動予測】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【精確に急所を射抜く銃撃】で攻撃する。
WIZ ●確定予測(カリキュレーション)
【相手の動きを注視し、癖を読み取ることで】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は鳴宮・匡です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――そして、鳥籠の扉は放たれる。
 瑠璃色が空を覆い尽くし、星が瞬く刹那のことである。気が遠くなるほどの時間、或いは瞬きの間に、足の地に着かぬ感覚を覚えるだろう。
 ようやく正しく地面に立っているのだと認識した頃に、視界は一気に開ける。
 落ちた陽の代わりに月が昇っている。空には幽かに雲がかかっていた。それがまず目に入るくらいには何もない、郊外の平野だ。遥か過去に朽ちた人工物だけが、そこに嘗て人が生活していた証を残している。
 人影はない。
 ――たった一つを除いて。
 引鉄に指をかけた女の眸が猟兵たちを一瞥する。それだけでおおよその数と顔を覚えたらしい。
 彼女は――。
 喜んではいなかった。
 悲しんでもいない。猟兵たちに向ける眸は分厚く張った氷の如く冷えていて、しかしその奥には幽かに炎が揺らぐようでもあった。
「ようやく、見付けた」
 その声は何に向けてのものだったか。何の色を帯びたか。ひどく掠れた呟きは、生温い夜気に攫われる。
 女の手が握った銃を持ち上げた。僅かに眇められた目は瞬きもしない。獲物を定める獣の如くも、指令に忠実な機械の如くも見えるだろう。
「お前たちが、『あれ』を破ったわけか。それには感謝する」
 だが――女は揺れぬ声で続ける。
「お前たちを逃がす理由にはならない」
 深い水底の如き眼差しと声に、何らの感慨も浮かぶことはなかった。長く彷徨い続けた女の見た情景が、その心に齎したものさえも、その奥底に沈んだように。
 ただ。
 ――黒き戦禍と呼ばれた女の残響が、揺れるばかりだ。
「任務を遂行する」
 月を背に、銃口が咆える。

※プレイング受付は『5/27(金)8:31~5/30(月)22:00』ごろまでとさせて頂きます。