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天渡る虹の彼方へ

#スペースシップワールド #猟書家の侵攻 #猟書家 #ドクトル・アメジスト #電脳魔術士

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●夢に堕ちる者
 警報とは如何なる時にも船員に危機を知らせなければならないわけで、快眠を妨げるにはもってこいのビリビリと空気を震わせる重低音が響くと同時に、電脳魔術士アルセンはベッドからひっくり返る勢いで叩き起こされた。
「な、なんだなんだ!?」
 アルセンはまだ瞼が開ききっていない状況ながら手探りで眼鏡を探す。寝る前に置いたのは確か――あぁ、あったあった。
 眼鏡をかけて視界をクリアにすると、すぐさま宇宙船の中央制御室へ駆け込んだ。そこに吐き出されたエラーを見れば、何が起こっているかわかるはず、と。
「……! ハッキング!? この船で、一体何を――」
 コンピューターの制御を奪い取っていく主の思惑を解明する暇もなく、アルセンは深い眠りに落ちる。奇妙なゲームのインストーラーが100%を弾き出したのと同時だった。

●伝説の旅人
 ヴィッタールという村があった。
 連日、40度近い酷暑に見舞われたその村は大地が乾き、水源が途絶え、作物は軒並み枯れ果てた。
 雨乞いという風習はあるが、それは村の片隅にある祠に供え物をせねばならぬと伝えられている。それが日照りで不作なのだから最早村民には打つ手がなかった。
「あぁ……どんな大地でも生命を息吹かせる『伝説の旅人』に縋るしかないのでしょうか……」
 村の巫女、シエラは嘆く。他人任せも甚だしいが、生き残るためなら手段を選べない。
 待ちて来たるは旅人か死か。シエラは天に祈りを捧げるしかなかった。

●スペースシップワールド・12thラウンド
「ほんわか農業体験と思っていると大変な目に合うかもしれません!」
 ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)が視た風景は苛酷を極めていた。それがゲームの世界であっても、あまりにも難易度が高そうで。
「ということで、スペースシップワールドにて呪いのオンラインゲームの事件が発生しましたので、解決に行きましょう!」
 しかし人の命が懸かっていては黙ってもいられないので、ロザリアは猟兵達へ向けて案内を出すのだ。
「呪いのオンラインゲームとは、『ゲーム世界で死ぬと現実世界でも本当に死亡する』という厄介なゲームで、ある宇宙船がハッキングを受けてそのゲームをインストールされてしまったことがわかりました! そしてすでに、宇宙船の電脳魔術士アルセンさんという方の魂がゲーム世界に連れ去られてしまっています!」
 ゲームの舞台はヴィッタールという小さな村。そこはある時から雨が全く降らなくなり、村人達は酷暑と飢餓に襲われている。伝説の旅人なる救世主が村を救うそうだが、アルセンは残念ながら救世主たり得ない。
「なので皆さんにはゲームの世界に飛び込んでもらい、困難を乗り越えゲームをクリアして頂きたいんです! ただし注意して頂きたいのは、ゲーム内ではユーベルコードが使えなくなっているという点です! これを解決するにはゲーム内にいるアルセンさんにチートコードを打ち込んでもらわなければなりませんが、アルセンさん自身がゲーム舞台の過酷な環境で死んでしまいかねませんので、その辺にも注意しつつ、ミッションコンプリートを目指してください!」
 雨を降らせることがゲームクリアの本線だが、猟兵達の知恵と力があれば近道や裏道を突っ走っていくこともできるだろう。どう立ち向かうかは猟兵次第だ。
「そしてゲーム内には、宇宙船をハッキングした張本人『虹輪銃のクランベリー』も魂をインストールしています! 呪いのオンラインゲームとは、そうしないと使えないほどに強力な効果を持っていますので――勘のいい方ならお分かりかと思いますが、ゲーム内で彼女を倒せば現実世界でも倒したことになる、というわけですね! ですので皆さん、頑張ってゲームクリアを目指しましょう!」


沙雪海都
 沙雪海都(さゆきかいと)です。
 暑い暑いと思っていたら天気がやべーんですよ。

●フラグメント詳細
 第1章:冒険『呪いのオンラインゲームをクリアせよ』
 ヴィッタールの村に雨を降らせる、というのが目的です。
 そのために祠に供え物(作物とされています)をして雨乞いをする、というのが正攻法となっていますが……チートコードやらその他なんやかんやすればフラグの一つや二つぶっ壊せるのではないですかね。
 猟兵の皆さんはゲーム内では「伝説の旅人」との扱いを受けますが、状況は見ての通り。ゲーム内での案内役は巫女のシエラが務めます。彼女に頼めばゲームシステムを超えない範疇で手助けしてくれることでしょう。

 第2章:ボス戦『虹輪銃のクランベリー』
 日照りの後の雨は虹の橋を作り、天の島へと辿り着ける――そんな言い伝えがあるようです。
 つまり1章で雨を降らせておくと、虹の橋を渡って天の島にいる虹輪銃(こうりんじゅう)のクランベリーを倒しに行ける、と思っておいてください。
 雨を降らせずにクリアしたらそれはもうゲームがバグっているんでバグ抜けとかすればやっぱり行けるんじゃないんですかね。
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第1章 冒険 『呪いのオンラインゲームをクリアせよ』

POW   :    困難な状況に対して正面から挑戦し、その困難を打ち砕きゲームをクリアに導く

SPD   :    裏技や抜け道を駆使する事で、ゲームの最速クリアを目指す

WIZ   :    多くのデータを検証して、ゲーム攻略の必勝法を編み出す

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鳶沢・成美
とりあえずユーベルコードが使えれば、今日生きていくくらいの水は何とかなりますね
シエラさんにアルセンさんのところまで案内してもらってチートコードを頼みましょう

建物を壊さない様に、村の外れあたりに【氷塊撃】を打ち込めばいい
そう、巨大な氷の塊です。
後はこれを〔嵐と慈雨の神の加護を持つもの〕でガツガツ削って溶かせば
とりあえずの水分補給は出来るでしょう
これだけで村を救う事はできないでしょうが、村の人たちが元気にならないと
雨乞いの準備も進められませんからね

アルセンさん冷たい氷ですよ、気張ってください。
僕たち猟兵もあなたが頼りです



●人の身も茹る炎天下
 カッと照り付ける日差しに鳶沢・成美(探索者の陰陽師・f03142)は目が眩みそうになった。焼けてしまいそうなほどの暑さに俯くと、地面にはすでに頭から垂れた汗の跡がポタポタとつき始めている。
「これは……とりあえず、ユーベルコードをどうにかして、今日を生きていくくらいは何とかしないと……」
 体力というものがゲージで可視化されていれば、今この瞬間もじわじわと短くなっていることだろう。成美は命を守る術を主眼に置いて行動を開始する。
 まずは案内役である巫女のシエラの発見だ。先に連れ込まれたアルセンの居場所も、彼女ならおそらく知っているはず――。
「あの……もしや、旅のお方では……?」
 一歩、踏み出したところに後ろからかかる声はやや弱々しく。労力は惜しいが無視もできず、成美は声に振り返る。そこには空色の装束を身に纏った金髪の少女が立っていた。
「……えぇ、まぁ、そんなような……気がしますが」
「まぁ! では貴方様はやはり、伝説の! ……いえ、あのっ……すみません、私ばかり、先走ってしまって……」
 少女はバツが悪そうに苦笑いを見せる。そしてスッと表情を消すように真顔になって、少女は成美を正面に見つめる。
「私はここ、ヴィッタールで巫女を務めております、シエラと申します。初対面である貴方様に不躾であることは重々承知の上ですが……どうか、この村を救って頂けませんでしょうか……!」
 シエラと名乗った少女は背が見えそうな程に頭を深く下げる。現実では有り得なさそうな展開の速さだが、それもゲームなればこそ。
「分かっていますよ……ただ、この暑さでは明日の朝日が拝めるかすら怪しい。ですから、まずは今日を生きる為に教えて頂きたいことがあります。アルセンさんという方がこの村のどこかにいるはずなんですが、心当たりありませんか?」
「……! その方でしたら、今、私の家で休んでもらっています! ご案内致します!」
 猟兵、もとい伝説の旅人という存在は村にとって大きな希望なのだろう。にわかに表情の明るくなったシエラに連れられ、成美は彼女の家に行くことになった。


「うぅ……」
 暑さからくる脱力感に力無く呻くアルセンは、休んでいるというより病床に伏していると言ったほうが近かった。シエラによれば、道に倒れていたところを介抱したとのこと。ただ、屋内でも暑さが緩和されている感じはなく、閉め切った部屋は逆に蒸し暑ささえ覚える。
「アルセンさん、はじめまして。僕は鳶沢成美――猟兵です。こんな状況ですから用件は手短に。僕がユーベルコードを使えるように、チートコードを打ち込んでくれませんか? そうすればこの状況も少しは好転させられるはずです」
「猟兵……さん……? わかり、ました……」
 アルセンはくらくらする頭をゆっくりと起こすと、覚束ない手つきながら電脳キーボードを呼び出しタッチしていく。無意識的に見えるゆったりとした動きだが、着実にチートコードを完成させていった。
「これで……どうにか、なるはず、です……」
 最後のキーを叩くと、アルセンは起こした体をまたぐったりと布団に横たえる。少ない体力を絞り出して作られたチートコードは成美の手には触れられるものではないが、体にふわっと力が戻ってくるのを感じた。
「ありがとうございます」
 善は急げ、とばかりに成美は礼だけを述べて外に飛び出す。使いたい力は威力が強すぎるため、ある程度広い空き地が必要だった。幸いシエラの家は村の中央部から外れており、求める空き地も程なく見つかった。
「さて、ここらで一発――」
 成美は両手で天を支えるように構える。籠められたる力は氷――氷塊の一撃だ。掌の上に生成された、マンモスすら閉じ込めそうな程に巨大な氷は存在するだけでひんやりとした空気を生み出す。
 成美はその氷塊を思い切り地面に叩き込んだ。大地を揺らす衝撃で地面に蜘蛛の巣のようなひび割れが入る。突如として現れた窪地に鎮座する氷。これこそが明日へと生きる糧になる。
 成美は早速表面から氷を削り出す。手にするのは、一言で言えばバール――のようなもの。しかし神の加護か何か、不可思議な力を秘めている『嵐と慈雨の神の加護を持つもの』をがりがりと氷上に走らせると、降り注ぐ熱線が間もなく溶かしてくれた。
「この水を村の皆さんに配ってくれませんか? もちろん、シエラさんも」
「まさか、このようなことが……ありがとうございます! ありがとうございます……!」
 シエラは容器に入った水を受け取ると、すぐさま村に走り出す。自分のことは後回し、それが巫女たる所以なのだろう。
「さて……アルセンさんのところにも持って行かないと」
 酷い寝込み方だった。成美は溶け行く氷塊からブロックを切り出し、両手に抱えて来た道を戻る。両腕をびちゃびちゃと濡らしながら駆け込んだシエラの家には、出た時と変わらずの格好でアルセンが伏している。
「アルセンさん冷たい氷ですよ、気張ってください。僕たち猟兵もあなたが頼りです」
 成美はそっと枕元に氷を置いた。空気の層を介して伝わる涼しさに、アルセンの顔の火照りが少しずつ抜けていく。
「ぅあ……これ……氷……? どうして、ここに……」
「アルセンさんのチートコードのお陰ですよ。僕はこれからまだまだ氷を削っていかないといけないので戻りますが、きっと他の猟兵もアルセンさんを頼ってくるはずです。その時にはまたチートコードを作ってもらわないといけないですから、今はこの氷で体を休めてください」
「そう……ですか。確かに、少し元気が出てきました……。ありがとう、ございます……」
 一秒でも惜しい成美はアルセンの言葉に軽く頷き返してまた外に飛び出した。削り出す氷は人の命に等しい。成美が得物を握り締める力は一段と強くなっていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

チートコードお願いしましょうかねー。
ただ、かなり暑いですからねー。陰海月と霹靂に任せましてー。ついでに今の天候操作でそよ風発生させましてー。
風あるなしで変わりますからねー…。

チートコード完成後は、強化した天候操作で充分な雨を降らせましょうかー。
何せ、私たちの中で雨を司る人はいませんからねー、こうした方が確実でいいのですー。


陰海月、ぷよぷよ保冷剤になる。ぷ…。
霹靂、翼で影作ってる。クーエー…。
二匹は友だち。あつい。


マリン・フィニス
げーむやおんらいんというのは良く分からないが、
水絡みで困っていると聞いた、手を貸そう

UCは使えないそうだが、メガリスの力なら……
『蒼海の鎧』の力で《天候操作》を行い、雨を降らせるのを試みる

む、いつもの様にはいかないか
ではやはりアルセン殿にちーとこーどを使ってもらおう
暑さ対策に氷属性バブルを村の各地に出し、
『アクアシールド』を氷結させ氷壁にし部屋に置き暑さの緩和をしよう。

アルセン殿の協力を得られれば村から離れた場所で【フラッドオブオーシャン】を使い、周囲の土や石を海に変換する。飲料には使えないし所詮は一時のものだが、大量の水分さえ得られれば……もう一度『蒼海の鎧』の力を使い、《天候操作》を行うぞ



●雨の声を聞くまでは
 村を駆け回る巫女シエラからアルセンの居場所を聞いた馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)とマリン・フィニス(蒼海の騎士・f26997)は、早速シエラの家へと向かっていた。
 巫女と言う役職はあれど、他の村人達と同じような質素な作りの家だった。引き戸を開けて中に入ると、服を濡らした少年が体を起こして座っている。
「貴殿がアルセン殿か?」
「えぇ、はい……もしかして、猟兵の方々ですか?」
「そうですねー。知っていらっしゃるなら話が早そうです。早速ですが、チートコードをお願いできますかー?」
「我々も他の策が通じないか手は打つつもりだが、やはりユーベルコードがあれば早いのでな」
「わかりました。今から準備しますので、少し待っていてください」
 アルセンは義透とマリンの頼みに二つ返事で了承すると、電脳キーボードを呼び出して作業を開始する。義透とマリンもただそれをじっと見ているわけではなく、各々できる限りのことを開始した。
「少し風通しをよくしましょうかー」
 義透は部屋を横断すると雨戸を開いた。ぎらつく日差しが部屋に入ってくるため閉め切られていたものだが、義透は外にミズクラゲの陰海月とヒポグリフの霹靂を送り出していた。
「翼で影を作っておいてくださいねー」
 義透の指示で大きく翼を広げて庇の役割を果たす霹靂の上に陰海月が冷却材代わりに乗っていた。だがそこは日光の直射を受ける。如何に瑞々しくとも、時が経てばやがて干からびてしまうことだろう。
 だがアルセンの作業を勝手知らぬ義透が急かすわけにもいかず、ここは二匹の熱い友情に任せることになった。
「天候の操作など、できますかねー?」
「私も同じことを考えていたところだ」
 作業へ集中させる意味も兼ねて、義透は屋内にアルセンを一人残してマリンと合流する。猟兵は多種多様な技能を持ち、その中には環境を一変させるほどの大きな力にもなるが。
「メガリスの力が通じるのであれば……蒼海の鎧よ!」
 マリンは天に願い叫ぶ。通常ならばそれで事足りるはずなのだが……空はカンカンの日照りを維持するばかりで雲一つ現れてこない。
「……む、いつもの様にはいかないか」
 雨を降らせる雲を生成するには十分な量の水分が必要だ。通常は大気中に存在する水蒸気がその役目を果たすが、今はそれすら失われた世界。一時しのぎで別の猟兵が持ち込んだ水分ではやはり不十分で、やはりここは異常な世界なのだと悟らされる。そこをどうやってこじ開けるのか――オンラインもゲームもなんだかよくわからぬまま水絡みの困りごとと聞いて飛び込んできたマリンには手が出せそうになく。
「仕方ない……私は村人達の保護に回る。また後程落ち合おう」
「了解ですー」
 義透は全身鎧のマリンの背中を見送ると、陰を求めて家の中へと戻る。アルセンは目下作業中で、両手が忙しなく往復している。
「……少し風でも送っておきましょうかー。濡れた服なら、乾くまでは涼しくなると思いますよー」
「あぁ、じゃあ、お願いします」
 少しでも効率よく作業を進めてもらうために、義透は自ら風を送る侍従となってアルセンを支えるのだった。


 一方、村の各地を回るマリン。いきなり全身鎧の男とも女とも分からぬ人物が集落に乗り込んできて村人達は始め面食らっていたが、マリンのバブルを出す業を見るや、
「やはり、伝説の旅人様じゃった……!」
 手を擦り合わせて拝み倒す。村の子供達は氷のバブルに抱き付くやらかじりつくやら。ともあれ先に振舞われていた水と合わせて、村の者達は活気を少しずつ取り戻し始める。
「さて、あとは雨を降らせるだけだが……」
 身に付けた全身鎧は強く加熱され、氷のバブルを手にしてみれば、口の中に入れたアイスクリームのようにとろりと溶けて水になる。マリン自身も余裕があるわけではなく、おおよそ村を一周したところでまたシエラの家へと帰ってきた。
「……む、これは……風か」
 部屋では電脳キーボードを叩き続けるアルセンの傍らで、じっと座禅を組み瞑想する義透がいた。持てる力を出し切って、世界の構造に隙間風を送り続けている。
「……できました!」
 そこへ、アルセンが電脳キーボードのエンターキーを叩くと同時に叫んだ。チートコードが完成し、義透とマリンへユーベルコードの力が送り届けられる。
「お疲れ様ですー。……陰海月も、霹靂も」
 義透は立ち上がってアルセンへ笑みを返すと、雨戸の外でずっと庇の役を果たしていた霹靂とそれを支える陰海月を労った。自らの水分を犠牲にして霹靂を冷やし続けていた陰海月は最早スルメのような状態だ。
「さて……ユーベルコードが使えるようになったようなので、私は外に出る。ここを『海』に変えるわけにはいかないからな」
「海、ですか……なるほど、考えていることは同じですねー。私もお供しましょうかー」
「僕も……ついていったほうが良いでしょうね」
 マリンの後には義透、そして立ち上がれるほどには回復したアルセンが続く。シエラの家を出て村の外れの広大な大地に出た。
『来たれ、母なる海よ』
 生命の全てを育んできた海――それを大地という無機物から呼び起こすのだ。三人の足場を残して巨大な円形の海が生まれると、空から降り注ぐ熱を受けて白い湯気が立ち昇り始めた。
「これで大量の水分が空を舞う……この状態で天候操作を行えば……!」
「ですねー。私も、天候操作の力を増幅しましてー」
 ユーベルコードを直接的に作用させたマリンとは対照的に、義透は自らの力を高めて間接的に世界へ作用させる。少しばかりの風しか作り出せなかった力が水の支援を受けて、もわもわと昇る水蒸気が凝縮し白雲を作り始めていた。
「蒼海の鎧よ――もう一度、この手に力を!」
 マリンが右手を高く天に突く。二人の天候操作の力は世界の構造を変え始め、我が物顔で空にのさばっていた太陽が雲の彼方に隠されていく。
 海を蒸発させる熱量は大気が十二分に含んでいた。雲はいつの間にか空を完全に支配して、ついにはポツポツと雨音が響き出した。
「降ってきた……やりましたね!」
 村念願の雨だ。勢いを増していく雨音が村を潤し、人々を歓喜させる。
 そして雲間に光の切れ込みが入る時――天の島へと渡る道が出来上がるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『虹輪銃のクランベリー』

POW   :    ヘキサ・マレディクタ
【虹輪銃】から【六発の弾丸】を放ち、【宙に描く六芒星の呪い】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    プレビディエント・デリージ
【狙撃対象を宣言すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【一点集中六連射弾】で攻撃する。
WIZ   :    ファラピ・デリージ
【銃口】を向けた対象に、【即座に放たれる虹色の弾丸】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:Nekoma

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はロザリア・ムーンドロップです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●虹の橋を渡れ
「あぁ、雨乞いの効果が……!」
 シエラは村で水を配り走る最中に降雨に出会い、そんなことを口走っていた。実際は猟兵の天候操作によるものだが、ゲーム内のフラグ管理的には雨乞いが実行されたことになっているのだろう。
 そうして十分な雨を齎した雲はやがて薄まり日差しが勢いを取り戻す。その間の僅かな時間、本来は空の彼方に見えるだけの虹が猟兵達の足元から高く天へと伸びていくのだ。
 辿ればそこは天の島。待つは狙撃の名手……とは自称だが。
「飛んで火にいる夏の虫とはまさにあなた達のことを言うわけですね。この世界ナンバーワン狙撃手の私が、直々にお相手しましょう!」
鳶沢・成美
狙撃……狙撃……
念のため村の人たちは建物の中に、窓にも近づかない様にしてもらいましょう
後は僕らはどうするかですが、じゃあこうしましょうか
アルセンさんにまた頼むことになりますが、別のユーベルコードが使えるようにチートコードを頼まないと
目立たないところから【欺ク光ノ術】で姿を消して敵に近づいて
〔嵐と慈雨の神の加護を持つもの〕で殴り倒すのがシンプルでいいかな
狙撃手は近づけば脅威度は下がりますから、どうにかなるでしょう
倒せなくても、相手の銃を武器落としで叩き落せばいいわけだし



●天の島の狙撃手
「万が一のこともありますから、村の皆さんには家の中に居てもらって、窓にも近づかないようにしてもらってください」
「わかりました。どうか、ご武運を」
 成美は天の島へ行く前にシエラに指示を出していた。相手は狙撃手。戦闘中に村人達が狙われることのないように、ゲームの中でも細心の注意を払っていた。
 村から人気が消え失せて、静寂だけが残る。これでもう憂いはない。

「後は、僕らはどうするか、ですが……」
 成美はアルセンと共に虹の上を駆けていた。光沢があるように見えて、しかし足元は大地を踏んでいるような安定感。だんだんと地上が遠のいていく中で成美は策を考える。
「アルセンさん、もう一つチートコードをお願いします」
「わかりました。走りながら、というのはなかなか慣れませんが……」
 状況が状況、とアルセンは呑み込みチートコードの作成を始める。電脳ディスプレイ上に走るコンピュータ言語は、成美にとっては何が何やら。大人しく前を見据えて走っていると、徐々に虹の先、空に浮かぶ島が見えてきた。
 上陸、の前に成美は一旦停止し、チートコードの完成を待つ。
「……できました。これでどうでしょう」
 アルセンがチートコードを成美に送ると、また一つユーベルコードの力が戻ってきた。成美は手を握って感触を確かめると、
「大丈夫です、ありがとうございます。では、行ってきます」
 感謝を述べて、それから心を落ち着かせる。
「光よ、敵を欺き我が身を隠せ」
 天上は日の光の差すままに。成美の姿がその場から消え、足音だけが先へと進んでいた。
(狙撃手なら、近づいて殴り倒すのがシンプル……)
 成美の得物とクランベリーの銃は得意とする間合いが正反対。互いに得意の間合いへ持ち込もうとする駆け引きが発生する。成美は透明化したことで利を得ることに繋がったように見えたが、クランベリーとて全くの無能ではない。
「……誰かが近づいてきますね」
 クランベリーは銃を構えて辺りを探る。姿は見えぬが――音がする。
 牽制段階。成美は正面突破か裏を取るかの二択を迫られていたが、クランベリーは足音に合わせて器用に反応してくる。完全に裏を取るのは不可能と見て正面突破を敢行した。
 腕を振る。風が鳴る。足を踏む。大地が響く。
「そこ――ですかっ!」
 やはりクランベリーは成美の動きについてきた。無の空間の透明に成美という輪郭を見て、銃口を水平に向ける。
 刹那、放たれたる弾丸は虹色の輝きを放ち飛翔する。弾道には一筋の虹が掛かるが――それが途切れることはなく。
「――ぁうっ!?」
 突如、クランベリーが手にする虹輪銃に横殴りの衝撃が走り、撃ち終わりで握りの甘くなっていた手から弾き飛ばされた。
 捉えていたはずだが、間一髪。成美の身体操作が勝り、弾丸を避けた成美は神の加護を得た得物を叩きつけて虹輪銃を叩き落とすと、そのまま今度は薙ぎの一撃を腹に見舞う。
「うぐっ!?」
 何か細いもので殴られたことだけはわかった。内臓を圧迫する衝撃は刃を滑り込ませたかのように鋭く刺さり、クランベリーの体を宙に打ち上げる。
 空中回転する間に帽子が分離したクランベリーは背中から地面に叩きつけられ、その横を帽子がコインのように転がり倒れた。
「く……私と、したことが……」
 初見で相対するには分の悪い相手だった。クランベリーは土を食むように歯噛みした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

陰海月と霹靂は影の中で休憩ですよー。(ぷ…きゅ…)
なるほどなるほどー。対象宣言ですかー。まあ、それはチートコードできるまでは結界と四天結縄の私対応厄災『大風』解放で対応して。
ええ、対象はあくまでも『私』ですよね?

※チートコード完成後、即座に呼び出す
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林

あなたも無理をなさる。己の身と結界で視線遮りなど。
氷雪属性矢を、相手に射かけましょう。
ついでに、四天結縄の対応厄災『大雪』も解放してしまいましょうか。
害あるの、相手だけですから。
…この雪、簡単には融けないので、先程は使えなかったんですよね。あくまでも厄災ですし。



●狙撃は正々堂々と
「うぅ……虹輪銃は……」
 虹輪銃がなければクランベリーはただの少女に過ぎない。戦場に於いてそれはあまりにも致命的で、クランベリーは血眼になって虹輪銃を探していた。
「……あっ」
 見つけた。褐色の大地に夜闇の色をした銃身が突き出ていた。クランベリーは敵の前にも関わらず一心不乱に走り、虹輪銃へと飛びついた。
 隙だらけだったクランベリー。しかし攻撃を受けなかったのは、義透もまた攻撃態勢に入ることができずにいたため。ユーベルコードの使用を可能にするチートコードの作成には些か時間がかかる。本来なら結界や厄災により防御態勢を整えるつもりだったが、先に交戦していた猟兵がクランベリーの虹輪銃を弾いていたため猶予が生まれていた。
「先程は不覚を取りましたが……次は外しません。『あなた』を狙撃します」
 人差し指をぴんと伸ばして突き出した先には義透が穏やかに笑んでいる。
「なるほどなるほどー。対象宣言ですかー。……ええ、対象はあくまでも『私』ですよね?」
 義透とクランベリーのやり取りの裏ではアルセンがチートコード作成に励んでいた。それがまさにこの瞬間、完了して義透に送り届けられる。
 義透と背中合わせに現れたもう一人の「義透」。それが自我を持つのは、「義透」という存在が4つの人格の複合した存在であるが故。
「弾丸装填! プレビディエント・デリージ!」
 ほとんど線のような連射音に合わせて放たれたのは実に六発の弾丸。それが縦に連なりただ一点を狙うことで破壊力を増している。狙われた「義透」は司る大風を解放し、勢いを僅かでも抑えた上で結界にて防御の姿勢を見せた。
 初弾が結界に命中すると槍の如く小さく穿ち、そこへ二発、三発と後続が撃ち込まれる。
「ふぅっ……!」
 義透は腹に力を籠めて結界を支えていた。貫かれてはならない。クランベリーが「義透」を対象にしたからこそ、背を託す「義透」の前に倒れるわけにはいかなかった。
 それでもクランベリーの六連射は強力で、最後の弾丸でついに結界は崩壊する――が、そこまで。
 六発の弾丸は結界を破壊した――もとい、結界しか破壊できなかった。
「あなたも無理をなさる。己の身と結界で視線遮りなど」
 現れた「義透」は呼び出した「義透」の庇護の下、弓取り矢を引いていた。振り向き様に狙いは一点、氷雪の矢を射掛けていった。
 風切る矢は水分を氷結させ陽の煌めきを引きながら飛翔する。クランベリーは結界を突き破るに留まった自身の射撃も然ることながら、突如出現した二人目の「義透」に面食らう。
 矢が飛んでくる。ほんの一、二秒の認識だ。宣言外の対象から打ち出された矢のため六連射弾の再装填は利かない。直進し続ければ心臓を射抜かれる――咄嗟の防衛反応だった。
「――あうっ!!」
 左腕を犠牲にして矢を受けた。ぶすりと貫通し、矢と腕の接点から氷河が生えて熱を奪う。
「ついでに、四天結縄の対応厄災『大雪』も解放してしまいましょうか」
 雪はどこより降るか。天の島は雲の上。ならば竜巻の如く巻き起こる雪嵐が島を包み、クランベリーを凍てつかせる。
「う……くぅぅ……」
 矢を受けた左腕の感覚が消え始めていた。右腕のみでも虹輪銃は扱えるが、やはり精度は落ちてしまう。クランベリーは銃床を左腕に広がる氷河へ叩きつけて砕き、痛みに顔を歪ませながら矢を引き抜いて地面へ捨てた。
 だがそれでも感覚の麻痺は消えず、さらには震えも走り始める。カチカチと歯を鳴らす様は涙も凍ってしまいそうだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリン・フィニス
この世界のNo1……ん?“この世界”?
今のところこの地で他に銃を扱う者を見た記憶がないのだが……え、いやまさか、そういう……?

だが、敵は銃を持ち、かつ向こうが待ち構える場所へ向かう事に変わりはない。油断はしないで行くぞ

私の知っている銃器と同じであれば、どの道対象を視認できなければ意味がない。
伝承を台無しにしかねないが……囮としてバブルを複数浮かべ、加えて《天候操作》による局所的な雨と嵐を発生させ目くらましに使う。

だが、本命はこちらだ。
メガリス『ステュクスの指輪』の力、見せてやる
……UC【レテの波濤】!
その武器の使い方も「己が持っているものは何なのか」も、
全て、忘れてしまうがいい



●「我」を忘れて
 マリンはクランベリーと邂逅した時に彼女が口走っていた言葉を思い出す。
「この世界のNo.1……ん? 『この世界』?」
 農耕文化に秀でた村は、反面、戦闘文化に乏しかったのをマリンはその目で確認していた。
 せいぜい狩猟用の弓矢や漁獲用の銛などがあるくらいで、銃火器など一切お目にかかっていない。
(いやまさか、そういう……?)
 辿り着いた結論。真実だとしたらクランベリーとはとんだピエロだ。
 しかしそれは、クランベリーという存在の絶対的な立ち位置が不明であるとも言える。比較すべきものがなく、相対したことのない相手。銃を持っていることも油断ならない要因の一つだ。

「丁度いい、便乗させてもらおう」
 天候は雪が周囲の雲から立ち昇って吹き荒れる雪嵐。奇妙な光景だが、目眩ましを狙っていたマリンにとっては渡りに船だった。
 バブルワンドを薙ぎ払うように振って一面にバブルを流していく。雪嵐に揉まれて分裂したバブルは密度濃く戦場全体に行き渡り、クランベリーの視界からマリンを遠ざける。
「今度は、『あなた』を……うぅ、寒いぃ……それ、に……この、嵐……」
 マリンが風雨を加えたことで周囲は霙の嵐となり、クランベリーの凍てを加速させていく。べったりと濡れた衣服がパキパキと凍り付き始めている。
 虹輪銃を向けるにも、その銃身がカタカタと震えてしまう。そして漂う無数のバブルに傷ついたクランベリーの姿が映り込む様は、まるで鏡の国にでも迷い込んだかのようだ。
「狙うのは……あぅ……『あれ』と、『あれ』と、『あれ』っ!」
 クランベリーは虹輪銃に火を噴かせてバブルを吹き飛ばしにかかる。そうしないと視界も射線もとれたものではなかった。弾けたバブルの先にマリンがいる――と、祈るような気持ちでクランベリーは撃ち続ける。
 ボン、と大きなバブルが割れて、先に見えたのはメガリスの鎧に身を包むマリン。はめた指輪を高く空に掲げていた。
「メガリスの力を見せてやる……己が武器の扱い方も、そもそも自分が何を持っているのかも、全て、忘れてしまえ!」
 マリンが叫ぶと同時に、メガリス「ステュクスの水環」を中心に景色が屈折するほどの波動が迸る。
「――はぅっ!」
 環を切るように波動が命中した瞬間は、脳をミキサーにかけられているようだった。強烈な吐き気を催す不快感と痛みに襲われ、全身から力が抜けていく。虹輪銃を手放し大の字に倒れたクランベリーの瞳は焦点が合っていない。
「あれ、私……なんで、ここに……ここ、どこ? 私、誰だっけ……?」
 何もかもが忘却の波に浚われて、クランベリーはただ嵐の空を見上げているだけ。猟書家の意志など当然微塵も覚えていなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クリュウ・リヴィエ(サポート)
記憶喪失のダンピールだよ。
名前も年齢も本当かどうか、僕にも判らない。
ま、気にしてないけどね。

自分の過去は判らなくても、色々考えるのは好きだよ。
他人の行動とか状況とかに違和感があると、それに何か意味がないのか考えちゃうよね。
まあ、それで僕が有利になるかどうかは別問題だけど。

あとは食べることも好き。
食わず嫌いはしないし、残さないよ。

戦うときは、突っ込んで力任せに殴り掛かることが多いかな。
一応、剣も魔法も使えるんだけど、結局シンプルなのが性に合うね。



●忘れた頃にやってきた
「君も記憶喪失? 奇遇だね、僕もだよ」
 気が付いたら空に浮かぶ島にいた――そんな雰囲気を醸し出すクランベリーに、クリュウ・リヴィエ(よろず呑み・f03518)は気さくに話しかける。クリュウ自身、クリュウ・リヴィエという名前も、23歳と自称している年齢も本当かどうか判っていない。しかしながら、周りの皆がクリュウと呼んでくれるなら彼はクリュウだし、23歳で違和感無いように見えるなら23歳で何ら不都合は無く、人に一々理由を説明するより何倍も楽なのだ。
「その銃は君のなのかな? 綺麗な銃だね」
「こ、れ……私、の……? わか……らない……」
 何故か腹部はズキズキ痛むし、何故か左腕には穴が開いているし、何故か衣服は凍り付いているし、と過去を全て失ったクランベリーには虹輪銃が何をするためのものかもわからず、ただ傍らに落ちていたものを拾っただけという風で、銃身の真ん中を握っていた。
「そっか……ま、覚えてないんだったらきっとその程度のことだったんだよ」
 クリュウは忘れてしまったことに対して未練は持たない生き方をしている。今覚えていることがクリュウをクリュウたらしめている全てであり、この先もきっと同じ生き方を貫いていくことだろう。
「ただ……銃を持っているのはなんでかな? って考えちゃうんだよね、僕はさ」
 自分に対してはさっぱりとした割り切り方をしているが、他人の行動には興味を示すのがクリュウ。銃を持っている者がただの村娘なわけがなく――クリュウは当然知っている。
 ちょっとした余興は思いの外楽しめた。クリュウは短く息を吸い込むと、地を蹴り瞬時にクランベリーとの間を詰めた。
 両手をだらりと下げて、ほぼ棒立ちのクランベリー。ハの字に傾いた眉に哀愁を感じさせるが、彼女は電脳魔術士の命を奪おうとしたオブリビオンだ。クリュウには一片の迷いもない。
 振りかぶった拳は最短距離で飛び、クランベリーの顔面に垂直に突き刺さった。クリュウは吹っ飛ばしたクランベリーがその後どうなったかは見ずに顔を伏せる。それがせめてもの慈悲だった。
 バリバリと氷が砕けるような音が数秒聞こえ、それから足元がモザイク状に崩壊していくのを見た。ゲームクリアではなく、ゲームの終わり。それが意味するところは――言うまでもなく、クランベリーの消滅だった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年08月26日


挿絵イラスト