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ああ、残酷!町はブーメランパンツの楽園と化した

#キマイラフューチャー

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#キマイラフューチャー


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 ~プロローグ~ 

 ああ、残酷!町はブーメランパンツの楽園と化した。
 ここはキマイラフューチャー。人類が滅亡した世界であり、キマイラなどの種族が自由気ままに楽しく暮らしている。
 しかし、自由気ままに暮らすと言っても限度というものがあるのではないか。何故なら、パンクな雰囲気の町中では、ブーメランパンツを穿いた男性が闊歩しているのだからだ。しかも、一人や二人ではない。この町に住む全ての男性が、ブーメランパンツを穿いている。子供から大人、果ては老人まで、年齢は関係無い。しかも、それを見た女性陣は「きゃー、すてきー!」と叫びながら写真を撮りまくり、ネットにアップしている。しかも、その写真には『いいね』がうなぎ上りの勢いで付いていく。
 一体何が起きたのかと思わずにはいられないこの町には、巨大な電光掲示板が幾つもある。その電光掲示板は、ネット上にて人気のある写真が逐一提示されるよう設定されていた。そしてここ数日、ある人物が投稿する写真の数々が連日連夜提示されていたのである。その写真とは、筋骨隆々の肉体にブーメランパンツを穿いた人物がポージングしている姿であった。ところが、頭はアルパカなのである。ちなみにその写真には、投稿者である先述の人物がコメントを付けていた。以下、それを抜粋する。
『はーい、諸君!君達はブーメランパンツを穿いているかい?布面積が殆ど無いこのブーメランパンツを穿けば、君達の肉体を存分に表現する事ができるのさ!そうして肉体を解放すれば、新しい自分と出会う事ができる!さぁみんな、ブーメランパンツを穿いて、町へ出よう!』
 あぁ……何と言う事だ。きっと、この町の住人達は、この恐るべき怪人による喧伝によって、ブーメランパンツを穿くことが格好良い事だと思ってしまったに違いない。しかも、誰もそれに気付かないどころか、ブームにさえなってしまっている。
 その光景を、町のどこかで眺めている怪人は、思わずほくそ笑んだ。
(ふふふ……。これでブームの火付け役となった私は人気者。これを足掛かりに、旧人類による侵略を着々と進めていくとしましょう。そして、私の”崇高なる目的”も達成される事になるのです……)
 怪人の視界に、一人の女性が映った。彼女はうっとりとした表情で、思わず呟いた。
「あぁ、凄く綺麗……。私も、ブーメランパンツを穿いてみようかしら?」
 ああ、残酷!

 場所は変わってグリモアベース。ここに、和服を着た一人の女性が居た。名は、竹城・落葉(一般的な剣客……の筈だった・f00809)。グリモア猟兵である。
 先日、ネット検索で『ブーメランパンツ』なるものがある事を知り、アパレルショップへ足を運んでいた。そしてブーメランパンツを手に取り眺めていたところ、近くを歩いていた他の女性客に冷めた目で見られた経験を持っている。
 だが、そんな事はどうでもいい。
 なんやかんやあって集まった猟兵達に、予知した内容を話していく。
「――という予知を見た。うぬ、我は今夜、悪夢にうなされるだろうな。纏めると、だ。このアルパカ……、まぁオブリビオンなのだが、ブーメランパンツを穿いた自分の肉体を写真に撮ってネット上に投稿している。そうして人気を上昇させる事で、味方を増やそうという算段らしい。結果、その町ではブーメランパンツを穿く事がブームになってしまった、という訳だ」
 やれやれ……。そう頭を振った竹城は、どうすれば良いのかを説明する。
「さて、そうして人気を勝ち取ろうとしているオブリビオンの企みを阻止して貰う事が、目的となる。だが、その為には3つの手順を踏む必要がある」
 そう言い、竹城は握った右手を突き出し、人差し指を立てる。
「まず1つ目は、怪人の人気を下げる必要がある。というのも、怪人の作戦は『怪人への人気を利用して、侵略の足掛かりを築く』というものだ。もし猟兵達が単に怪人を倒してしまえば、『ブームへ反発した猟兵達が、武力行使でブームを終わらせた』という事で、怪人へ同情が集まって目的が達成されてしまう。なので、ブームを過去のものにしてしまい、怪人が倒されても住人達が同情しないようにする必要がある」
 そう言いつつ、更に言葉を紡いでいく。
「この第一段階に関するやり方は、諸君に一任する。だが、丸投げされても困るという方が居るかもしれないから、例を挙げておこう。例えば……。(1)自分達も写真を撮って、怪人よりも人気者になる。(2)とにかく写真を投稿して、怪人よりも有名人になる。(3)その写真が本当に素敵なのか、その写真を見て感化された住人に指摘をする。……といったところか」
 次に中指を立てる。
「そして2つ目は、怪人を炙り出す必要がある。残念ながら、怪人の居場所までは分からなかった。そこで、ブーメランパンツに対する異様なこだわりを逆手にとって、おびき出して欲しい。諸君が思い思いのファッションを披露すれば、それに憤って怪人は姿を現すだろう。やり方の例は……、まぁ、こればかりは完全に丸投げしよう」
 最後に、薬指を立てる。
「3つ目。こんなふざけた計画を立てたオブリビオンをボコボコにする。以上だ」
 そうして、猟兵達が行うべき事を語り終えた。だが、竹城の顔つきは曇ったままだ。
「……だが、何故このような作戦を立てたのかは分からない。それに、予知で怪人の言っていた”崇高なる計画”の詳細も、見当がつかない。だから、充分に注意して欲しい」
 こうして全ての説明を終えた竹城は、グリモアを取り出した。
「では、これからキマイラフューチャーの世界へ転送する。このブームを終わらし、怪人の企みを打ち砕く事ができるのは、諸君猟兵だけだ!宜しく頼むぞ」


フライドポテト
 お目に留めて頂き、有難う御座います。
 どうも、MSのフライドポテトです。
 ちなみに、私はブーメランパンツを穿いた事がありません。ブーメランパンツの履き心地って、どんな感じなのでしょう?ちょっと気になりますね。
 さて、今回のシナリオも、ちょっと荒唐無稽な内容にしてみました。けれど、頂いたプレイングは素敵なリプレイに仕上げたいと考えております。リプレイの書き方は確立していませんが、楽しんで頂けるよう尽力する次第です。
 皆さんの熱いプレイングを、お待ちしております。

 *このシナリオはフィクションです。実在の人物や団体とは関係ありません
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第1章 冒険 『それめっちゃフォトジェニック!』

POW   :    怪人に負けないくらい盛れてるフォトジェニックな写真を撮ってキマイラ達の人気をかっさらう

SPD   :    とにかく沢山写真をアップロードしまくって知名度で怪人と勝負!

WIZ   :    写真なんかにムキになっちゃってどうするの? と言った感じで冷静に指摘する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クトゥルティア・ドラグノフ
ぶ、ブーメランパンツで動き回るなんて恥ずかしくないの!?
そんなものよりもっといいものがあることを教えないと!

写真は撮ったこと無いけど、色んな服を着た写真を、早着替えしながらたくさん撮るよ!
どれか一つくらい、キマイラのみんなの趣向に刺さるのがあるはず!質より量で勝負だよ!

「私のいつもの服、次に暖かいもふもふ!続いて春コーデ!どれでもいいから性癖に刺さって!!」


華上・ユーディ
回りがブーメランパンツ!何と素敵な…(じゅるり)ではなく。

子供達に
良い影響はありません。

【Pow】 勝負!

パソコンで【ハッキング】
しながら見所ある場所を探し。

そこでブーメランパンツさん達に集まって貰い。パワフルダイナミックなフォト写真をじゃんじゃんとるのです。

撮れる時に撮れなきゃ
勿体な…ではなく…(手伝いの生徒を恐れ)怪人に負けてはいけないのです。


イヴ・ハルゼンヌ
うぃっす!はじめましてだ。

キマイラフューチャーで、躍動する筋肉が撮れると暴走したユーディ先生を捕獲する為に参加させて貰うぜ…。

町中はブーメランパンツだらけだな。ある意味すごいぜ(苦笑)

ユーディ先生、
よだれ垂らさないようにな…。

怪人の企みなら止めないとな。

【SPD】を活用し。
写真をとりながらエキサイトな写真を更新続けるぞ。怪人サイトの【破壊工作】も入念し。

知名度を上げるぜ。

ブーメランパンツは履き心地は
いいけど…食い込みが気になるよな。


リンダ・ヴォルト
はじめまして、
リンダと言います。

宜しくね♪

キマイラフューチャーで
商売…ではなく。

面白い事があると…友達のイヴに聞いて来たんだよ❤️

早速、解決にあたりますじょ。

ボクは【WiZ 】の能力を
活かすよ♪


どんな指摘がいいかな。
写真でむきになっちゃダメだよ~。今は…古風な表現がナウな時代なんじゃ~~!(劇画風に)

フォト…知るか~!
先人は写真、動画がない時代は全ては絵画、後は同人誌で
禁断の世界(BL&百合)を開拓したんだぞ。

躍動の肉体、兄貴とウケのシチュエーション…ハイジンなオタクをナメるな。

ふふ、知らないなら
見せてやろう。

スキル【誘惑】を活用し
ペンを持ち漫画を書き 説得します。

(後でイヴに殴られ退場)



 ~第一章~

 ゾンビ映画などでは、パンデミックという用語がよく登場する。この言葉は、感染症が世界的な規模で流行する事を意味している。それで言うならば、今回の事態は、パンデミックとは程遠い。だが、脅威という観点から見れば、然程変わらない。
 町中では、ゾンビの代わりにブーメランパンツを穿いた男性達が闊歩しており、その光景は異常とさえ思えてしまう。しかし、その異常さを際立たせるのは、誰も気に留めていないという点だった。
 町中では、住人達の朗らかな声が響き渡っている。
「ふっ、君のそのブーメランパンツ、中々似合っているじゃないか」
「何を言うか。そういう君も、美しい肉体を存分に表現しているだろう」
「きゃー、カッコいいー!!私もブーメランパンツを穿きたいわー!!」
 そんな調子で、町はブーメランパンツで溢れかえってしまった。
 今はまだ、町の中だけで済んでいる。しかし、時間が経つにつれ、このパンデミックは町の外へ漏れ出してしまうだろう。
 事態は一刻を争う。何とかしなければならない……。
「ところで、どこに行けばブーメランパンツが見つかるのかしら?」
「あっ、ここをコンコンしたら、ブーメランパンツが出てきたわ!」
「えっ、どこどこ!?ちょ、押さないで、私が先に穿くのよ!」
 事態は一刻を争う!何とかしなければならない!!

●先生と生徒の投稿写真
 ブーメランパンツ。それは、肉体を存分に引き出す為に作られたのではないかとさえ思える程、布面積が少ない。故に、それを穿いた男性は、肉体を存分に披露する事となる。すなわち、男性の肉体美が好きな人にとって、ブーメランパンツを穿いて貰う事は、正に極上の喜びと言えるだろう。
 だが、今回の事態は、そうした欲望を満たすには些か異様な状態だ。その為に、猟兵達が事件の鎮静化を図ろうと試みる!ブーメランパンツを穿いた男性が町中を闊歩する状況を見て、一人の猟兵の脳裏に、強い思いがよぎった!
 ――回りがブーメランパンツ!何と素敵な…(じゅるり)
 ……ああ、何と言う事だ。ブーメランパンツの魔力が、猟兵までをも怪人の思惑に嵌めようとしているのだろうか!?
 思わず、そのような思考を巡らしたのは、華上・ユーディ(冥土贈り・f02310)。騎士道精神を持つ彼女でも、町中を行き交う無数の肉体美に抗うのは難しいようだ。
「…ではなく」
 何とか、自身の役目を思い出し、町中で起きている異常現象を見据える。
 一時は魔力に嵌められそうになったが、華上は学校の教師。このような教育に宜しくない光景を放置する訳にはいかない。そう、華上は事件の解決を考えて駆けつけた、頼もしい猟兵……の筈である。
 華上は早速、持参したパソコンを用いて、見所のある場所を探していく。怪人の写真よりもインパクトの強い写真を投稿すれば、このブームに終止符を打つ一助となる。カタカタと音を鳴らしながらタイピングしていき、画面に多種多様な画像を表示させていく。どうやら、この町には様々な場所があるようだ。広大な公園、憩いの場となるカフェ、多くの住人達が行きかう交差点、町を見下ろせるビルの屋上……。
 ふと、華上の目に、ある場所が留まった。
 その場所は、田んぼであった。どうやら、労働の必要性が無くなった世界とはいえ、こうした田んぼは一種の絶景として、住人達に好かれているという。しかも、まだ冬だというのに、小麦色の稲穂が頭を垂れている。恐らく、キマイラフューチャーならではの最先端技術が使われているに違いない。
 ここで突然、化学反応の如き閃光が、華上の脳内を駆け巡った。
 華上は、米と鏡餅が好きである。それは、武器である大剣に紅白餅を乗せている事からも伺える。だから、想像してしまったのだ。
 ブーメランパンツを穿いた男性達が、田んぼで稲刈りをする光景を――。
 善は急げとばかりに、華上はこの場を後にする――。

 一方その頃、町の交差点に、一人の少女が居た。背が小さい彼女は、ブーメランパンツを穿いた高身長の男性達に埋もれてしまいかねなかった。辛うじて、交差点から距離を置いていた為、もみくちゃにされる事は無かった。とはいえ、目の前を無数の男性が半裸で歩き回っている光景は、もはや圧巻と言わなければならないだろう。
「町中はブーメランパンツだらけだな。ある意味すごいぜ」
 思わずそう呟き、苦笑いを浮かべるのは、イヴ・ハルゼンヌ(エルフのスナイパー・f06540)だ。しかし、ブーメランパンツが嫌いな訳ではない。確かに、履き心地は良い。とはいえ、食い込みが気になるところではあるが。
 彼女の胸の内には、このブームを巻き起こした怪人の野望を阻止するというものもある。しかし、事件解決に関わろうと思ったのには、他にも理由があった。
 それは……。
(しかし、ユーディ先生はどこへ行ったんだ……?)
 イヴによると、華上は躍動する筋肉を撮影できると思い、暴走しているのだという。ああ、何と言う事だ。やはりブーメランパンツは事件を解決せんとする筈の猟兵を惑わす、恐ろしい道具、否、兵器だったに違いない。
 そうした事情もあり、生徒であるイヴはお目付け役のように、先生である華上を捕獲しようとするのであった。
 しかし、本来の目的を疎かにするのも良くない。イヴはスマートフォンを手に持ち、周囲を見回す。そして、住人の心を震わしそうな光景を見つけ次第、写真に収めてネットへアップしていく!
 彼女は小さい身長を活かし、背の高い男性達の視界には映りにくいようなものを見つけていく。交差点を猛ダッシュで走り回る猫、塀の上から勢いよく飛び降りる猫、縄張り争いの為に毛を逆立てる猫……。猫の比重が高いのは、イヴが猫好きなのも関係しているのだろう。
 それらの写真を次々に撮りながら、ネットへ逐一アップしていく。同時に写真のアップとは別の、“ある事”も同時進行で行う
 すると……。
『うおおおお、猫ちゃああああん!!!!』
『えっ、猫ってこんなにカッコいいのか!すげー!!』
『おっ、喧嘩しているのか、三毛猫、頑張れ!!!!』
 次々に反響が巻き起こる。写真が投稿される度に膨大な『いいね』が付いてくる。ふと町中の電光掲示板を見ると、そこにイヴの撮った写真が登場していた!膨大な量の猫写真が、怪人の写真を凌駕したのだった!すると……。
『そういえば、この写真を撮った人は誰なんだろう?凄くセンスあるじゃん!』
 イヴの目論見通り、怪人よりも知名度を上げる事ができた。もし、投稿主が猟兵であると知ったならば、思わず卒倒してしまう事だろう。
 と、更に写真をアップしようとネットを見た時だった。
 イヴの動きが止まった。
 ただ、目を丸くし、口を開ける事しかできなかった。
 何故なら、そこに表示されていたのは。
 ブーメランパンツを穿いた男性達が稲刈りをしている写真だったからだ。

 数刻前、華上はネット上に、ある文章を投稿していた。
 内容を要約すると、稲刈りしてくれる男性達を募集する、というものだ。
 すると、続々と男性達が集まって来たのである。当然、全員がブーメランパンツを穿いている。
 彼らはそのまま、稲刈りを始めた。筋骨隆々の男性が稲刈りをする光景は、正にパワフルダイナミック!その様子を、華上は嬉々としてスマートフォンで撮り、ネット上にアップしていく。すると……。
『おお、すげーー!!これぞ、筋肉の躍動だ!』
『筋骨隆々の男性達が稲刈りだなんて、素敵!!』
『男達が汗水垂らしながら稲刈りをするだなんて、カッコいいわぁ!』
 瞬く間に『いいね』が付き、一躍人気のある写真と化したのであった。しかし、華上は手を止める事は無い。そのまま、次々にフォト写真を撮っていく。もう、怪人のブームを止める為に撮っているのか、自身の趣味で撮っているのかが分からない!
(撮れる時に撮れなきゃ勿体な…)
 しかし、ハタと気付く。田んぼの反対側に、イヴの姿がある事を!
 イヴは写真を見て、すぐに投稿者が華上である事に気付いた。そして、田んぼの周囲の景色などから場所を探り出し、急行したのである。
 イヴは、華上を冷めた目で見ていた。
「…ではなく…怪人に負けてはいけないのです」
(ユーディ先生、よだれ垂らさないようにな…)
 そうした目線に晒されながら、華上は写真を撮り続けたのであった。

●ブーメランパンツから、新たなる世界へ
 そうして怪人の写真が目立たなくなってくる頃、町の某所にて、一人の妖狐が居た。彼女の名は、リンダ・ヴォルト(駄狐剣士・f05111)と言う。
周囲には、これまたブーメランパンツを穿いた男性達が居り、町中を闊歩している。 しかし、彼らはどこか、ギスギスした雰囲気を出していた。
「見ろ、俺のブーメランパンツの方が立派だろう?」
「はぁ?君のものよりも私のブーメランパンツの方が光沢で輝いて美しいじゃないか」
「ねぇ、そんなくだらない事で喧嘩なんてしないでよぉ」
 どうやら交差点に居た住人達とは違い、彼らはお互いのブーメランパンツをけなし合い、自身こそが最もブーメランパンツの似合う男である事を証明しようとしている。競い合う物が物である為に、どこかしら頭痛が起きかねないような異様さがにじみ出ている。放っておけば、やがて暴動に発展してしまうかもしれない。
「ねぇねぇ、お兄さん達。写真でむきになっちゃダメだよ~」
 リンダはにこやかに、彼らへ話しかける。明るく人見知りしないリンダは、ギスギスした空気の中でも臆せずに話しかける。男性達は超ロングヘアの少女が話しかけてきた事に驚いて喧嘩を中断するものの、まだ険悪な空気は残っている。
「何を言うんだい、お嬢ちゃん。今は大切な話をしているんだよ」
「そうさ。どちらが優れたブーメランパンツニストか、競う必要があるのさ!」
 しかして、リンダは怯まない。今こそ、彼女の情熱をぶつける時だ!
――今は…古風な表現がナウな時代なんじゃ~~!
 その迫力ある主張に、二人は思わず、息を飲んだ。まるで、劇画風の展開に、体が強張ってしまう。この少女、一体、何を主張する気なんだ……?
「フォトなんて知るか~!先人は写真、動画がない時代は全ては絵画、後は同人誌で禁断の世界(BL&百合)を開拓したんだぞ」
 BL……百合……。
 その単語に、思わず二人は唾を飲む。その言葉が持つ凄みに、心臓が高まっていく。何か、新しいものが開かれるような気がするような……。
「な、何だ、その、BL……とやらは」
「ふふ、知らないなら見せてやろう」
 そう言うや否や、リンダは筆を手に取り、持ってきていた原稿用紙などに素早く漫画を描いていく!その筆さばきもさることながら、その技量は正にプロレベル!以前から実益を兼ねて同人誌を描いているのだ、その実力は折り紙付き。そうした制作のオーラは、やがて周囲に居た男性達、果ては女性達をも呼び寄せた!
 そうして完成したのは、筋肉質の美男子が互いに体を絡ませ合う、素晴らしい漫画であった!
 その時、喧嘩をしていた二人の男性の中で、新しいものが芽生えた。
 二人は、顔を見合わせる。
「す、すまねえ、あんなひどい事を言っちまって」
「何、いいのさ。寧ろ、先程の無礼を誤らせて欲しい……」
 二人の顔は朱を散らしたかのように赤くなり、俯いている。
 それを見て、リンダはほくそ笑む。
(躍動の肉体、兄貴とウケのシチュエーション…ハイジンなオタクをナメるな)
 だが、これだけでは終わらない。
「あの、すみません……。その漫画、宜しければ売って頂けませんか?」
 何と、それを購入したという住人が現れ始めた。
 実は、リンダは面白そうだからという事で事件解決に挑んでいた。しかし、若干、金儲けをしたいと考えたいたのも事実である。
 そのまま、仕事から即売会へ急遽変更!リンダの描く漫画は、飛ぶように売れていく。残念ながら、この世界の特徴故に物々交換といった体になったものの、それを転売すれば幾らかお金になるだろう。また、チョココロネと交換して貰えた際は、嬉しさのあまり尻尾が思わず揺れてしまった。
 リンダは、楽してニート生活を送るという野望へ、一歩近づいた気がした。
 余談だが、この後イヴにバレてしまい、殴られて連れ去られたという事である。

●煌めく多種多様なコーディネート
 場所は戻って、先程の交差点。その電光掲示板には躍動感ある猫の写真が掲載され、住人達の視線を一身に浴びていた。しかし、彼らは皆、ブーメランパンツのみを身に纏っている。その光景は、まさしく異様としか言いようが無かった。そう、彼らは怪人の写真に興味を示さなくなったというだけで、未だにブーメランパンツを穿く事を止めた訳ではなかったのだ。
 そうして、写真を一通り見終えた住人達は、再び移動を開始する。その光景はまるで、水に透明なシロップを混ぜたかのようなうねりであった。
(ぶ、ブーメランパンツで動き回るなんて恥ずかしくないの!?)
 その光景を愕然とした様子で見ていたのは、クトゥルティア・ドラグノフ(無垢なる月光・f14438)だ。彼女はかつて、自分の居た村を蹂躙され、奇跡的に生き残った経験を有している。だが、それとは全く違う恐るべき光景が、眼前に広がっている!
 彼らの目は狂信者めいたように、ブーメランパンツへのこだわりでたぎっている。
 ――そんなものよりもっといいものがあることを教えないと!
 その想いに駆られ、早速行動しようとする。しかし、彼らの目を覚ますには、どうすればいいのか?必死に頭を働かせ、模索する。
そして見えた、一筋の光――。
「ふふ、君のブーメランパンツ、黒光りしているのがチャーミングだね」
「何を言うか。貴殿のブーメランパンツこそ、その筋肉を引き立てているではないか」
「ああん、素敵!今にも失神しちゃいそう!」
 そんな朗らかな会話が響く交差点に、異変が起きた。行きかう人々が、電光掲示板を見上げたのだ。しかし、そこに映っているのは、猫の写真ではなかった。何と、クトゥルティアの写真であった。長い髪などが特徴の彼女は、瞬く間に男性達を虜にしていく。
 すると、新しい写真がアップされた!今度は、フワフワしたウールのコートを身に纏った姿だった。頭にはニット帽、手には手袋と、温かそうで触り心地が気持ちよさそうなファッションだ!
 それを見た男性陣は、今が冬である事を思い出し、体を震わせる。
 更に、新しい写真がアップされる!今度は、春のコーデ!白いブラウスにピンク色のスカートが、柔らかな温かみを醸し出している。住人達は、そうして一枚一枚アップされている写真を、ただ見つめていた。
 その一方で、クトゥルティアは必至に服を着替えつつ、写真を撮ってはアップしていた。それは、モデルさながらである。モデルは華やかな職業と思われがちだが、実は体力が必要なハードな仕事である。短時間に膨大な服を着て写真撮影をするのだから、時間との勝負でもある。体力と時間制限、この二つをこなす事ができて、モデルたりえるのだ。クトゥルティアは、正にモデルと同じ苦労を味わっていた。
「私のいつもの服、次に暖かいもふもふ!続いて春コーデ!どれでもいいから性癖に刺さって!!」
 このブームを終わらせたいという思いと、次々に服を着替えていく大変さに、思わず声を出してしまう。
 ……すると。
「ねぇ、あのコーデ、何だか可愛くない?」
「言われてみれば……。しかも、何だか温かそうだ……」
「確かにな。布地の多い服に着替えた方がいいかもしれない」
 そう口々に言って、認識を改めていく住民達。その様子を見ていたクトゥルティアは、思わず安堵のため息をつく。
 ……しかし。
「けど、あの少女、とっても可愛いわね!」
「そうだな。あんなに可愛い少女から、チョコとか欲しかったなぁ……」
「ああ、チャイナ服やメイド服を着た写真とか、アップされなかなぁ……」
 性癖に刺さる事を目的に写真をアップした結果、クトゥルティア本人に対しても、魅力を感じてしまったようである。



●そして、怪人はというと……
 一方、とあるビルの中。ここで、怪人が自撮りを行っていた。
(ふふふ、猟兵達も頑張っているようですが、所詮いたちごっこ。私の執念に屈するが良いのです!)
 そして、写真を上げようとネットを開いた時だ。不意に、画面が真っ黒になった。
(えっ、ちょ、一体どうしたというのです!?)
 刹那、パソコンは黒煙を噴き上げてショートした!怪人は思わず咳き込みながら、後ずさる。
 実は少し前、イヴが写真を撮りつつ、怪人のサイトにウイルスを挿入していたのだった。怪人はウイルス対策ソフトを入れていなかったが為に、すぐさま壊されてしまった。
(お、おのれ、猟兵達め……)
 怪人は悔しさに震え、思わず歯を噛み締めた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『ファッションチェック、してください!』

POW   :    正統派も新しいチャレンジも良い。豪快で自由な発想のコーディネート。

SPD   :    流行を取り入れたり、洗練された技術が光るコーディネート。

WIZ   :    独自の世界観や、配色や組み合わせを熟知したコーディネート。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ~第二章~

 町中では、ブーメランパンツブームが収束に向かっていた。猟兵達の活躍により、住人達は怪人の喧伝を忘れつつあるのだ。住人達はいそいそと家に戻ったり、近くの壁などをコンコンして衣類を取り出したりしている。やがて、町からブーメランパンツを穿いて歩き回る男性達は消えていくだろう。
 だが、まだ脅威が去った訳では無い。怪人が居る限り、いつ何時、再びブーメランパンツを穿いた自撮り画像をアップするか分からない。そうなれば、再びこの町は、ブーメランパンツを穿いた男性で溢れかえるに違いない。そして、このまま長期戦に持ち込まれてしまっては、やがて猟兵達の方が疲弊する可能性がある。そもそも、猟兵達も、この事件に対して無限に時間を裂ける訳でもないだろう。
 となると、怪人を倒すしか、この事件を解決する手段は残されていない。最も、それは猟兵という者であれば共通認識になっている、ごく当たり前の事である。
 しかし、厄介な事に、この事件を企んだ怪人がどこに居るのか、全く分からない。
 だが、方法はある。
 相手は、ブーメランパンツに異様なこだわりを持っている。ならば、それを逆手に取り、おびき寄せれば良い。 
 つまり、猟兵自身が何らかのファッションを喧伝する事で、怪人を挑発すれば良いのである。こうしてブームを引き起こした程の執着心を持つ怪人の事だ。きっと、そうしたファッションを見せびらかせば、耐えきれずに自ら姿を現す事だろう。
 だが、その方法は猟兵達に一任されている。
 さぁ、猟兵諸君!思う存分、自分が望むファッションを披露して欲しい!
トリガー・シックス
【WIZ】
※アドリブ、他の猟兵との絡みOK

覆面、『鬼神の闘着』と『クローク』と目のライン以外全身を隠す服装。
そして色は黒と紅の二色という闇夜に紛れるダークヒーロー風に見えが戦闘用の衣装なので仕方ない。
闘着などの装束がアジア特有の雰囲気を出す。クロークは武器を隠すため。
(さて、うまくおびき出すには一押しする必要があるな)
エルーゼに花火玉を空に投げさせ、それを『ジョーカー5s』による【早業】と【クイックドロウ】による射撃で発破させ、ガンスピンをして脚のホルスターに収める。
撮影などを頼まれても断らずに応じたりする。


エルーゼ・フーシェン
【WIZ】
※アドリブ、他の猟兵との絡みOK

久々に帰ってきたら大変なことになってるわね。
ファッションで怪人を誘い出せばいいのよね。やりましょう!
「トリガー、やるわよ!」
私は普段から着てる黒の『ハイレグアーマー』で勝負してみる。露出高いし、ラインも出るけど、動きやすくていいわよ。
黒は女を美しく見せるっていうから、こういうのがいいかもよ。
トリガーのことを紹介をするわ。
「覆面で顔を隠して行動するのは、正体を知られることなく動くため。極東の隠密であるニンジャに騎士であるサムライの魂、ガンマンの技量を合せた兵士!」
言われて花火玉を宙に投げたあとは、撮影とかしようかな。



●突如、町に現れし者達
 猟兵達の出身地は様々である。そして、このキマイラフューチャーが故郷の者も少なくない。同様に、故郷がオブリビオンによる危機へ瀕しているとなれば、放っておけない猟兵も少なくは無いのではないだろうか。
 エルーゼ・フーシェン(双刃使い・f13445)も、それは同じだろう。しかも、異変の内容が、ブーメランパンツブームとなれば尚更だ。幸いにして、徐々にブーメランパンツブームは収束しつつある。現時点で、町中に居る男性達の内半分は、ブーメランパンツから普通の衣服に着替えている。残っている男性達も、いずれ元の服装に戻る事だろう。しかし、例えそうだとしても、その光景は目に余る。
 ――久々に帰ってきたら大変なことになってるわね。
 そう思わずにはいられなかった。否、恐らく、故郷がブーメランパンツ一丁の男性で溢れかえっていたら、誰だってそう感じる事だろう。
 しかして、まだ問題は終わっていない。この黒幕を倒さねば、再び町はブーメランパンツで溢れかえってしまう。話に聞いたところによれば、どうやらファッションを披露して、怪人を挑発する事により誘き出せば良いという。
 それなら、と。エルーゼは作戦の内容に乗り気であった。そして、隣に居た男性に言葉を投げかける。
「トリガー、やるわよ!」
 言葉を掛けられた男性、トリガー・シックス(黒衣の銃剣士・f13153)は頷く。
 スタイルの良い女性キマイラと素顔を隠した人間、二人のファッションが今、披露される……!

 ここは、町の交差点。既にブーメランパンツを穿いた男性の姿は殆ど無く、今は普通の恰好をしている者が多数だ。彼らは先程のブームを忘れ、楽しい事をしようとする。ネットを開いて動画を見たり、ダンスを踊ったり、歌を歌ってみたり、美味しい料理を食べたり……。
 だが、どうやら楽しい事は向こうからやって来たみたいだ。
 ふと、一人の住人が、遠くを見る。どうやら、誰かががやってくるようだ。だが、その姿を見て、思わず目を見張った。
「おい、あの恰好、凄くない!?」
 この場所を訪れたのは、二人組である。その先頭に立つのは、トリガーだ。
 トリガーの身長は約190cmと、かなり大きい。それだけでも目立つというのに、その恰好もまた際立っていた。着ている服は鬼神の闘着であり、四魂印と四色のベルトと装飾が施されている。戦闘装束だけあって、その衣服は見る物に恐怖を与えてしまいそうな程の迫力を有している。そして、それを覆い隠すかのようにクロークを身に纏っている。三本線の引っかき傷と爪を合せた紋章と銃を咥えた狼の紋章、二つの紋章が描かれた黒いクロークだ。極めつけに覆面を装着し、目元以外は全て覆う形となっている。黒と紅の二色がトレードマークと言わんばかりの服装は、正にダークヒーロー風である。
 最も、トリガーとしては、ダークヒーローを演出するのが狙いだった訳では無い。単に、この服装をした結果、そう見えてしまうのである。けどまぁ、仕方ないだろう、……と思いつつも、そのまま歩みを進めていく。
 アジア特有の雰囲気を醸し出しながら歩く姿は、プロレスの入場シーンを彷彿とさせる。
それを見た住人達は……。
「な、何だろうあの人、怖いよお……」
「おおー、ダークヒーローじゃん!カッケー!!」
「けど、何であんな恰好をしているんだろう……?」
 怖がる者、格好良さに目を輝かせる者、その外見に不信感を持つ者の三つに分かれてしまった。だが、トリガーは、そのまま堂々と住人達の方へ歩いて行く。
 そうして住人達がトリガーを見ていた時だった。
「おい、あの後ろに居る姉ちゃん、凄くセクシーじゃねえか!?」
 そう言われたのは、トリガーの後ろに居たエルーゼだった。身長が約170cmと、女性にしては高身長な為に同じく目立っていた。だが、それを更に際立たせるのが、その服装である。何と、露出度の高い、ハイレグアーマーだったのであった!体のラインを強調するその服は、エルーゼのスタイルの良さを存分に発揮している。そして、黒色である事がファッションとしての効果を生み出している。白狐の耳と尻尾、蒼い翼、魅力的な唇、纏めた髪……。それらをミステリアスな雰囲気で包み込み、より女性としての魅力を高めていたのである。
 それを見た住人達は……。
「す、すげえ、セクシーだ……!」
「けど、露出が少し多すぎないかな?」
「それにしても、あの二人組、一体何をしに来たんだ……?」
 セクシーさに魅了される者、露出が多すぎるなぁと思う者、そうした衣装を着る目的が分からぬ者の三つに分かれてしまった。だが、それを意に介せず、長い脚をクロスさせるように歩いて行く。動きやすい服の為、その一挙一動が美しい。
 こうして、二人の猟兵が住人達へと歩いてきた。その服装が与える印象は正反対と呼べるだろう。だが、黒色をトレードマークのように使っている事と、ミステリアスな点は共通している。だからこそ、住人達は視線を逸らせない。やがて、不審は期待へと変わっていく。一体、あの二人組は何者なんだ?何をしようと言うんだ……と。
 その視線の意味を感じ取ったエルーゼは、トリガーへ目配せをする。
(さて、うまくおびき出すには一押しする必要があるな)
 その意味を込めて、トリガーもエルーゼへ目配せをする。
 刹那、エルーゼは何かを取り出した。一体何なんだ、と住人達はそれを見る。そして、それが何か分かった時、恐怖に凍り付いた。何と、それは花火玉だったのだ。もしや、二人組は恐るべきテロリストだったのだろうか。そうして、私達住人を爆殺しようというのか……。
 すると、エルーゼは天高く、その花火玉を投げた。まるで、結婚式で花嫁がブーケトスをするかのように。
 そして、連係が始まった。瞬間、トリガーの手にはいつの間にかNAタイプHC『ジョーカー5s』という大型拳銃が握られていた。要人殺害などの非正規部隊に入っていた経験から身に着けた戦闘技術を用い、素早く取り出したのだ。それを目にもとまらぬ速さで構えた瞬間、銃声が鳴り響く!
 ――刹那、空に大きな一輪の花が咲いた。
 ……銃口から、灰色の硝煙が漂い、町中へと広がっていく。だが、それも束の間。黒と紅のフレームが残像を描くようクルクル回転させながらホルスターへ納めた。
 交差点は、突然の事に静まり返る。ただ、二人組と、天高くに炸裂した花火を、じっと見つめる事しかできなかった。
 そして……。
「す、すげええええええええええええええ!!!!」
 大きな歓声が、交差点を包み込んだ。今やエルーゼとトリガーを見る目つきは、怪しい二人組から、素敵なパフォーマーへと変貌したのである。
 その歓声に応えるように、エルーゼは周囲に居る住人達に向き直る。そして、掌を上にして、トリガーへ向ける。
「覆面で顔を隠して行動するのは、正体を知られることなく動くため。極東の隠密であるニンジャに騎士であるサムライの魂、ガンマンの技量を合せた兵士!」
 その巧みな解説により、更に交差点が沸き上がる!それは、正に有名バンドが登場した会場さながらだ!
すると、トリガーの姿を怖がっていた住人がおずおずと声を掛けてきた。
「あの、もしかして、猟兵さんですか!?」
「そうだ」
 それを聞いた住人は目を輝かせる。
「あの、しゃ、写真を一緒に撮って貰っても、い、いいですか!?」
「ああ、構わない」
「じゃあ、私が撮影しようかしら?」
 こうして始まった、猟兵との撮影会。先程まで二人の事を怪訝に見ていた空気はどこへやら。一人一人、順番にトリガーとツーショットを撮っていく。トリガーと住人が並んで立てば、エルーゼがカメラマンとなって写真を撮る。
 クールでドライなトリガーも、写真撮影会となれば優しさを垣間見せる。一人一人に丁寧に接し、写真に納まっていく。そうした光景を見て、僕も、私も、と、住人達が次々に押し掛ける。露出の多い服を着たエルーゼカメラマンを見ながらも、このトリガーさんという方に華を持たせるとは良い方だ、少し露出が多い服を着ていても咎める必要など無いでしょう、と寛容になり、笑顔で写真に納まっていく。
 ブーメランパンツで溢れかえっていた交差点は、今や、住人達の笑顔で溢れかえっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リンダ・ヴォルト
【WiZ】
⚫絡み、連携、アドリブ
お好きに駄狐を調理して下さい

足りない…足りないよ!
このまちには
退廃的な美とチラリズムが!?

いかん…慌て過ぎて鼻血が。
簡単に言えばファッションて
身近に出来るんよ。


男はシャツがはだけチラリと覗く胸板!女子は、スカートから覗くチラリとくる絶対 領域からの誘惑~~!?

分からないか…なら
チラリズムを実践しよう!

これもファッションだ。


クトゥルティア・ドラグノフ
※SPD行動

コーディネートか、自信ないけどやるだけやってみる。
最初は黒でかためるよ。
黒いトレンチコートに黒いシルクハットで固めて、いかにも怪しげに仕上げて、注目が集まってきたらコートとハットを脱ぎ捨てる。
そしたらコートの下に隠してあったビビッド色合いのパーカーとダメージジーンズがお出迎え!
フードを被って今時の若者に流行りそうな小悪魔を演じてみるよ!

「ふふ、こんなのはどうかな?え、アホ毛がはみ出てる?気にしない気にしない!」



●元ブーメランパンツの町に、アイドル誕生!?
 数時間前まで、この町には、ブーメランパンツを穿いた住人で溢れかえっていた。けれど、今やそうした住人は少なくなっており、元の様相に戻りつつあった。けれど、この事件を仕組んだ黒幕を倒さない限り、根本的な解決とはならないだろう。ならば、ブーメランパンツに対抗して、ファッションで対抗するしかない。
 とはいえ、いきなり「何かファッションを披露して下さい」と言われても、戸惑ってしまう者は居るだろう。
 クトゥルティア・ドラグノフ(無垢なる月光・f14438)も同じであった。先程、沢山のファッションを披露して、住人達を釘付けにした彼女でさえ、どうすれば良いか悩んでいた。あの時は、ただ必死に、とにかく色んな服を着て写真に納まったのである。だが、今回は違う。ファッションというものをイメージして、内容にて勝負を仕掛ける必要があった。
 ――コーディネートか……。
 思わず、そう呟いてしまった。自信は無い。けれど、自分にできる事を、やれるだけやってみようと決意した。そして、彼女は早速、行動を開始した。

 ここは、町の一角にある小さな広場。そこでは、普段着を着た者や、未だにブーメランパンツに固執している者が楽しく過ごしていた。ある者は絵画を描き、ある者は生放送を行っていたりする。先程まで、ブーメランパンツ一色になっていたとは思えないような、牧歌的な光景である。
だが、そこへ、クトゥルティアが現れた事で、場の空気は変わった。
「……ねぇ、あの方、ちょっと、怪しく無いか?」
 先程までブーメランパンツ一丁で町中を闊歩していた男性が言う。その言葉に呼応するかのように、住人達はクトゥルティアを見つめては、怪しい奴だな、といったように、陰口を言う。
 人の身なりを見て、そういう風に言うのは失礼かもしれない。しかし、実際、クトゥルティアの恰好は、ちょっと怪しかった。最も、初めから、怪しく見えるよう、工夫を凝らしての恰好だったのだが。
 クトゥルティアは、全身黒ずくめであった。黒いトレンチコートに、黒いシルクハットを被っている。その姿は、マジシャンのような、スパイのような、教授のような、喜劇の戯曲に登場するような舞台役者のような……、そんな、何とも形容し辛く、しかして怪しい恰好に違いなかった。
 黒一色。それが、住人達の脳に焼き付いた印象であった。
 そして、広場に居た住人全員の視線がクトゥルティアに向いた事を察知すると、突然、コートとハットを脱ぎ捨てた!
 ――おお、おおおおおおおおおお!!!!
 刹那、住人達は歓声を上げる。
 何と、コートの下から出てきたのは、ビビッド色合いのパーカーにダメージジーンズと出で立ちであった。色彩と衣類の組み合わせは、住人達の視線を釘付けにする。
 そんな中、クトゥルティアはフードを被り、ウインクをして舌を出す。そんな小悪魔的な所作に、何人かの男性はハートを射抜かれ、そのまま倒れてしまった。
 即席のファッションショーに、広場は色めき立つ。若者に流行りそうな服装と動作に、住人達は、「俺も真似してみようかな」と思わず呟く。クトゥルティアの明るい人柄がファッションの魅力を更に際立たせ、住人達は夢中になる。そして、彼女が、あの電光掲示板に出ていた人物である事に気付くと、更なる歓声が上がった。
 そして、一人の住人が。
「あ、あの、さ、サインして貰ってもいいですか?」
「うん、いいよ!」
「あ、有難う御座います!」
 そうして始まるサイン会。住人達は長蛇の列を作り、一人一人、サインをして貰う。彼らは皆、とても嬉しそうな顔をしていた。
 そんな中、住人の一人がクトゥルティアの髪の毛を見て、おずおずと言った。
「あの、大変、恐縮なのですが、髪の毛、はねていますよ?」
「ふふ、こんなのはどうかな?え、アホ毛がはみ出てる?気にしない気にしない!」
 その、朗らかな声に、尋ねた住人も、あまり気にする事はないのだと、楽観的になった。
 当初の不安はどこへやら、クトゥルティアの作戦は見事、成功を収めたのである。

●新しいファッションの形、その名はチラリズム
 ブーメランパンツを穿いた男性達が、町中を闊歩する。それは異様な光景であると同時に、インパクトの強い光景でもあった。世の中に退屈している人から見れば、それは些かの刺激にはなったであろう。しかし、それが無くなりつつあるという事は、正に、刺激が無くなりつつある事と同義であった。
 そして、住人達が普通の衣類を纏いつつまる状況に、嘆く影が一つ。
「足りない…足りないよ!このまちには退廃的な美とチラリズムが!?」
 町の中心で嘆きの声を上げていたのは、リンダ・ヴォルト(駄狐剣士・f05111)である。先程まで同人誌を売り捌いて成果を上げていたものの、それが終わって町中を見回すと、何故だろうか、心の中にポッカリと穴が開いたかのような、そんな悲しさが沸き上がっていた。この光景は、創作意欲に寄与しないのかもしれない。
 リンダが今、求めるものは一つ、チラリズムである。その魅惑的なカタカナ五文字を口にして、その情景を脳裏に描き出す。
 赤い液体が鼻から地面へポタポタと、ツララが溶けて滴るかのように落ちていく。
 ――いかん…慌て過ぎて鼻血が。
 ティッシュを鼻に詰め、次なる行動を模索する。黒幕を誘き出すには、ファッションをする必要があるという。ファッション、と聞くと、衣類の組み合わせであったり、色彩の工夫であったり等、色々な要素が複雑に絡み合うものかもしれない。
 しかし、これからリンダが行おうとするファッションは、そうした考えとは一線を隔していた。
 ――簡単に言えばファッションて身近に出来るんよ。
 そう呟き、早速、人々の居る場所へ足を進めて行った。

 町の某所にて。ここでは、住人達がある物を熱心に読んでいた。それは、先程リンダが売った、同人誌である。そこに描かれた深淵なる描写に息を飲み、住人達は、新しい世界へと旅立っていく。しかし、まだまだ、そうした未知の世界に染まらない者達も居た。彼らは彼らで、スケボーで遊んだり、ベンチに腰かけて軽食を食べていたりする。
 と、そこへ歩いてきたのは、一人の妖狐。リンダだ。彼女は別の衣類に着替えており、ちょっとサイズが一回り大きいシャツと、丈の短いスカートを履いていた。
 その姿を見た住人達は、リンダの顔を見ると、明るい笑みで挨拶をする。彼女の同人誌は、どうやら人気を博しているらしい。
 ……そして、リンダは行動に移す。
「うん、さっきぶりやね!」
 リンダも朗らかな笑みを浮かべ、声を掛けてきた住人に対し、軽くお辞儀をする。
 その時、シャツがちょっとはだけ、ちょっぴりだけ胸板が見えた。
「えっ、ちょ!?」
 声を掛けた男性のキマイラは、思わず顔を赤らめ、そっぽを向く。ウブな彼は、心臓の鼓動が高まるのを感じずにはいられなかった。
「あっ、リンダさん。さっき頂いた同人誌、面白かったです!」
 そう後ろから女性のバーチャルキャラクターが声を掛けてくると。
「おお、ありがとう!」
 そう言って、リンダは振り返る。その時、フワッとスカートが軽く舞い上がり、陶器のような白い太ももがチラリと見える。
「え、あっ……」
 バーチャルキャラクターの女性は、チラリと見えた絶対領域が目に入り、頬に朱を散らす。一旦は目を反らすものの、また、チラッと、盗み見るように、リンダの太ももを見つめてしまう。
 そう、リンダの言うファッションとは、チラリズムであった。チラリズムは現代の言い回しであるが、それは遥か昔から、情緒として感じられる事もあった。例えば、川で選択をする女性が、着物を捲し上げた際に見える白い脚であったり、踊りを踊っている時に見える白いうなじであったり……。しかし、その美しさが分からない方も居るかもしれない。だからこそ、この場を借りて、実演してみたのであった。
 そうして、リンダが振り撒く誘惑に、住人達はドキドキしつつ、新しいファッションの形を学んだのである。それは、新しいブームの兆しだったのかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

佐藤・和鏡子
【WIZ】で行動します。
※アドリブや他の方とのとの絡みOKです。
変に着飾るのもかえって不自然なので、ユニフォームとしていつも着ているセーラー服とスクール水着に看護帽のスタイルで行きます。
(製造時からこの格好なので、本人はこれが普通だと思ってます)
大人しい性格なので、こういう場は苦手なのですが、頑張ってみます。
元々看護用モデルのミレナリィドールなので、救急箱も持ってその辺もアピールしてみます。



●町に舞い降りた、不思議な服装の看護婦さん
 人は時として、相手の事を、「まるで天使のような人だ」と言う事がある。戦場で重傷を負って治療を受けている時、看護をする医療関係者に対し、そう言う事もあるかもしれない。また、心が深く傷ついている時に優しく声を掛けてきてくれた相手に対し、そう言う事もあるかもしれない。ただ、それら全てに共通しているであろう事は、相手の優しい心と、労わりの献身に対し、深い感謝の言葉を表明したという事である。
 そして、町の中にある公園にて。ここでは、子供達が遊具を使って遊んでいたりしている。けれど、彼らの顔は、まるで林檎のように赤い。先程、ブーメランパンツを穿いていた事によって、ちょっと体調を崩してしまったのだろうか。
「へっくしゅん!」
 そうして、寒そうに体を震わせている時であった。
「あの……、大丈夫ですか?」
 ふと、誰かが声を掛けてきた。振り向くと、そこには、不思議な恰好をした少女が立っていた。セーラー服とスクール水着を着ていて、看護帽を被っていたのだった。子供達は、不思議なものを見るような目つきをしていたが、本人は、元々この服装だった為に、気にしていないようだった。けれど、それよりも、別の事が気になってしまっているようだった。
(こういうのは苦手なのですが……、頑張ります)
 そう、心の中で呟いた彼女は、佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)である。佐藤も、オブリビオンを誘い出す為に、微力ながらお手伝いをしようと考えたのであった。けれど、元々大人しい性格である為、果たして上手くいくのか、ちょっと心配でもあった。
 そんな心配をよそに、子供達は、興味津々な眼差しで佐藤を見つめている。その瞳は万華鏡のように輝いていて、水晶のように美しい。
「お姉ちゃん、どうしてそんな恰好をしているの?」
「えっ。いえ、元々、このような恰好をしていたんです」
「ふーん」
 オブリビオンは、ブーメランパンツに執着しているという。その為、ファッションを披露する事で刺激を与える必要があるのであった。とはいえ、変に着飾るっても効果は薄い。ならば、普段通りのユニフォームで挑んだ方が、幾らか効果がある。けれど、佐藤のユニフォームは明らかに目立つ為、子供達の視線は釘付けとなっている。十分、オブリビオンに刺激を与えている事だろう。
 しかし、こうして子供達を見ていると、どこか心が温かくなってくる気がした。佐藤は他にも事件解決に挑んだ事があったが、その中では、子供達が無残な死を遂げたケースもあった。そうした経験がある為に、今、子供達が笑顔でこの場に居るという事に、ちょっとだけ、心の片隅に感じずにはいられない。
 さて、子供達の姿を見ていると、どうやら体調を崩してしまっているようだ。このままでは、風邪が悪化してしまうかもしれない。
 けれど、佐藤は元々、看護用モデルのミレナリィドールだ。こうした治療は、お手の物である。
 すると、佐藤はどこからか、救急箱のようなものを取り出した。これは、佐藤専用に作られた、特別なガシェットなのである。それを見た子供達は、「あ、ナースさんだ」「確かに、恰好は看護婦さんっぽいよね~」と、次々に言う。子供達は、そうした職業に興味津々らしい。
 そして、そのガシェットから、何かが出てきた。それは、小さな白い錠剤である。佐藤はそれを小さな掌に載せると、そっと、子供達に差し出す。
「え、これ、くれるの?」
「はい、差し上げますよ。体調には、お大事にして下さいね」
 その言葉を聞くや否や、子供達は「ありがと~」と口々に言い、錠剤を受け取って口に放り込む。水は無かったが、唾で呑み込んでしまう。すると、子供達の林檎のように真っ赤な顔から、赤色が引き潮のように引いて行き、顔に光が戻っていた。
「何だか、体が軽くなってきた!」
「ふふ、それは良かったです」
 子供達の笑顔を見て、佐藤も思わず微笑んだ。
 やる事はちょっと変わってしまった。けれど、子供達は佐藤の心温まるケアに感謝し、その服装を大人になっても克明に記憶し続けたのであった。

 ~幕間~

 猟兵達は、それぞれが工夫を凝らす事によって、ファッションなどを披露していく。そうして活躍する猟兵達を見たキマイラ達はお祭り気分で盛り上がり、やがて、ブーメランパンツの事を忘れてしまっていくだろう。
 そして、日が暮れて、空が茜色に染まった時には、ブーメランパンツを穿いている男性は一人残らず消え去っていた。今や、町は赤い光に照らされ、カラスの鳴き声が木霊している。そう、元の町の姿へ戻ったのであった。
 ……だが、その時だった。
 突如、町中にある全ての電光掲示板が、突然、雑音を共にノイズを走らせる。そして、画面が灰色の波から鮮明な映像へと戻っていく。
 そこに映っていたのは、そう、あのオブリビオンであった。
 筋骨隆々の体にブーメランパンツを穿き、アルパカの頭部を持っている。その円らな黒い瞳は、画面の向こうに居る猟兵達を睨みつけるかのようであった。
「猟兵諸君!せっかく、町をブーメランパンツの楽園にしようとしていたのに、それを邪魔するとは、許せないね!」
 目には怒りの炎が宿り、口から迸る言葉の一つ一つには怒気が混じっていた。だが、その怒りは不条理なものでは無く、何か、自身の大切な価値観が汚された事による屈辱に近いものがあった。
 そして、彼は肩を震わせながら、ゆっくりと、言葉を紡いでいったのだ。
「猟兵諸君には、私の“崇高な目的”が理解できないのかもしれないね。否、違う。君達は、私の“崇高な目的”が何なのかさえ、分からないに違いない」
 ――だから。
「これから、君達に教えてあげよう。何故、私が町を、ブーメランパンツの楽園にしようとしていたのかを!!!」
 そして、オブリビオンは静かに、自身の理念を語り始めたのであった……。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『怪人アルパカマッスル』

POW   :    ポージング
自身の【肉体美の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    鋼の筋肉
全身を【力ませて筋肉を鋼の如き硬度】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ   :    つぶらな瞳
【つぶらな瞳で見つめること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【瞳から放たれるビーム】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はニィ・ハンブルビーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ~第三章~

 突然だが、読者諸君はコンプレックスを抱いていたりするだろうか?
 頭髪が剥げている。
 腹に贅肉が付いている。
 股の形がO字型である。
 十円玉大の黒子がある。
 団子鼻である。
 赤面である。
 分厚いたらこ唇である。
 頬が痩せこけている。
 身長が子供のように低い。
 声が甲高い。
 呂律が回らずしゃべり方が拙い。
 ……。
 数え上げれば、キリが無いだろう。
 そうしたコンプレックスを抱いていると、人の行動はどうなってしまうのだろう。
 もしかすると、人と交流する事を躊躇うようになってしまい、社会生活に悪影響が出て来るかもしれない。例え、気にしないでおこうと思っていても、意識から外す事は難しい。精神論で解決するのは、困難かもしれない。
 だが、その問題は当人にだけあるのではない。そのコンプレックスに対し、周囲の人々が過剰に反応したり、視線を向けたりする事で、余計に本人を苦しめてしまう事もあるだろう。
 その為、人々はコンプレックスを隠して生きて行こうとする。
 ……だが、怪人アルパカマッスルは、それに違和感を覚えていた。
 そうしてコンプレックスを隠し、恥ずかしながら社会で生きていく。それが、果たして正常な社会なのか?コンプレックスを殊更に取り上げて、話題にしたりする社会が、果たして普通と言えるのだろうか?
 ――否、違う!
 真の正常で普通な社会とは、そうしたコンプレックスとなりうる身体的特徴を晒しても、恥ずかしがらず、笑わず、お互いが笑顔で暮らせる社会の事ではないか!
 その為には、自身の肉体、生まれ持った体をあるがまま受け入れ、そして晒す事が必要だと考えた。
 だから、怪人アルパカマッスルは、ブーメランパンツを流行させたのだ。
 殆ど布面積が無いこの衣装は、自身の体を曝け出すのにもってこいの服装である。これだけを着て町中を闊歩し、笑顔で暮らせるようになれば、きっと、コンプレックスの無い社会を実現できる筈だ。
 怪人アルパカマッスルは、世界と敵対するオブリビオンだ。しかし、そんな彼にも、理念や信念といったものを持っていたのだった……。

 その事を、画面越しに猟兵達へと語り掛ける。辺りは茜色の空に包まれており、木枯らしが静かに吹きすさんでいる。いつの間にかカラスの鳴き声は止み、猟兵達と住人達の息遣い、加え怪人アルパカマッスルの演説だけが、この町に音を奏でていた。
 そして、彼は指を突きつける。
「私は、この世界からコンプレックスによる苦しみを一つでも多く消し去りたい。しかし、君達猟兵は、オブリビオンである私を骸の海へ返そうとするだろう。ならば、お互いの信念を掛けた闘いをしようではないか。もし、私が負ければ、例え信念が崩れようとも、潔く負けを認め、骸の海へ帰ろう。しかし、もし猟兵達が負けたなら、私はこれからも、コンプレックスの苦痛を消し去る為に、世界をブーメランパンツの楽園にしてみせる」
 そして、画面はプツンと切れ、真っ暗になる。
 暫しの静寂が訪れた。町中にある円形の公共広場に、猟兵達は集ったまま、映像の途絶えた無数の電光掲示板を見つめていた。
 ……刹那、何かが落ちてくる音が聞こえる。それは速度を増しているようで、徐々に此方側へ近付いてきている。猟兵達は空を見上げる。あれは――。
 そして、その影が広場の中央に激突する。もうもうと立ち込める土埃の中、その影は、ポージングを取ったまま立ち上がる。
 視界が完全に晴れた時、そこに、怪人アルパカマッスルの姿を見た。あれだけの高所から落下したというのに、体にはかすり傷一つ負っていない。その筋骨隆々の体は、沈みゆく夕日に照らされて赤く輝いていた。その強靭な体は、鉄筋コンクリートでさえマッチ棒のようにへし折ってしまうだろう。
 彼らを取り囲むように、遠くから、何百人もの住人達が見つめている。皆、この戦いがどうなるのか、固唾を飲んで見守っているようだ。
 ――そして、怪人アルパカマッスルは、静かに告げた。
「……さぁ、猟兵諸君。ここからはお互いの肉体、お互いの信念、お互いの意志を掛けた闘いだ。遠慮はいらん、全力で掛かって来なさい!」
 木枯らしは、強く吹いていた。
リンダ・ヴォルト
【冥土猟兵団】で参加

敵が信念持って来るなら
本気でいくで!?


◎怪人にも漢がいたんやね。
コンプレックスを無くすため敢えて奇策を演じていた。

男やないかい。
でも、ボクらも負ける分けにはいきまへん。

--戦闘--【WiZ】
真の力を解放!
尻尾が一本増えるだけやけど。

後方支援中心に動く。

UC【狐の嫁入り】で
猟兵の皆の戦闘力を
底上げするよ。

瞳からビームはモーション来てから【残像】のバックステップで回避を試みるよ。

攻撃は、護符を備え
血文字で護符に力を与え
【マヒ攻撃】で
足止めアシスト。

それでも耐えるなら
妖刀で【殺気】【破魔】の
斬撃で支援をする。

アルカパマッスル、志し高き怪人に敬意を持って戦うよ。


有馬・ナオ
【冥土猟兵団】参加

⬛怪人とガチンコ対決でしゅ。

キマイラフューチャーで
お騒がせの怪人と
対決しましょゅよ。

宿主の桜さんも気合い入って…
(宿主がおもむろにブーメランパンツを履こうとして止める)

駄目でしゅ!
女の子がそんなものを着たら
お嫁にイケナイでしょ。

ぜぇぜぇ…

戦いは【Pow】メイン
にいきます。

🌑味方の盾役で動きましゅ。
【挑発】【かばう】を使い
攻撃をこちらに向けます。

攻撃は隙を与えず手早くアームドフォードを転送し【一斉射撃】で集中放火。

アルカパ怪人が無敵防御や
ビームが来るなら飛び出して敢えて組み合い。

【怪力】で力比べをしてUC【アルティメットボディ】発動し被害を押さえます。


イヴ・ハルゼンヌ
【冥土猟兵団】で参加だぞ

ブーメランパンツ騒動が
終わって黒幕登場。

やってやるぜ!?

【SPD】で戦闘

おれは後方で
射撃を担当するぜ。

怪人は無敵防御のUCあるからな…

初手の射撃は弓をつがえ
ホーミングを込めた【誘導弾】で確実な【 援護射撃】をするぞ。

仲間と連携し。
チャンスが到来したら…
本領発揮だ!

拳銃に持ち変え早撃ち
モードにいくぜ。

アルカパマッスル
「あんたはカッコよかったぜ」
だが勝負は貰う!?

射撃に集中し【スナイパー】と
してUC【ジャックフロスト】発動!?勝機の活路を切り開く。


華上・ユーディ
【冥土猟兵団】で参加

ブーメランパンツ事件…
いよいよ佳境。

頑張りましょう!
青少年の為に…

--戦闘ですよ--

⬛WiZ中心

戦闘は前衛に立ち、生徒を
守りますよ。

仲間と連携し。
怪人と白兵戦でガチ 勝負を
挑みます。

攻撃は、敵の攻撃を
カウンター狙いごしで捌きながら【残像】で回避。

隙が出来たら半歩、踏み込み
右正拳逆突きの【鎧砕き】を敢行。

強固な守りにひびを入れられたならイヴの射撃を有利に保ったせる為、追撃をする!

水の魔力を高めて掌打に
よるニ度打ち【二回攻撃】

誇りを持つ敵に敬意を込めて全力を出します。


味方が疲弊してきたら
迷わずUC【ヒーリングウェーブ】を使いまする。


クトゥルティア・ドラグノフ
まさかそんな壮大な計画だったなんて!迫害されてきた私としては共感をちょっと感じちゃうけど、それはそれ、これはこれ!
オブリビオンである以上、倒させてもらうよ!

フォースセイバーを構えて接近戦を挑むよ。
袈裟懸け唐竹薙ぎ払い、色々な剣筋を織り混ぜながら攻撃していって、隙を見せたら『月光華』で一気に終わらせるよ!

「月光よ、この勇敢なる一人の戦士に慈悲を送れ!ムーンライト・バースト!!」


トリガー・シックス
「……お前の言いたいことは分かった。だが、コンプレックスはなくなることはない」
さらけ出したところで人の心は弱いということに変わりはない。移ろい易ければ、見た目をどうのと言ったところで無意味なのだ。

素顔をさらけ出す。美形と言える顔立ちだ。
『ジョーカー5s』を抜き、アルパカマッスルに向ける。
「俺には、護るべきものがある。兵士として、一人の人として」
共に行動をしてきたキマイラの女戦士を少し見てから視線を戻す。
【クイックドロウ】による早撃ちで【援護射撃】を行いつつ、『黒死蝶』で【毒使い】の技能による毒矢を撃つ。
『最後の願望』でリヴェンを呼び出し、連携攻撃を行う。

※アドリブ、他の猟兵との絡みOK


エルーゼ・フーシェン
「言いたいことは分かったけど、それの必要性がないような」
ファッションでコンプレックス云々は関係ないと思うのよね。声とか特に。
ま、さっさと倒しましょ!
も、もう何なのよ!トリガーったらこっち見て……想いに気づかれてる?

『花鳥風月』を抜いて『トリニティ・エンハンス』を発動させて攻撃力を上げる。
攻撃を行うタイミングはトリガーの攻撃で出来た隙を突く形で。
【フェイント】で隙を作ったりして、自身も隙を作ったりする。
【ジャンプ】から蒼い翼で飛び、【空中戦】で滞空しつつ急降下で【衝撃波】による攻撃を行う。
【野生の勘】と【見切り】で攻撃を回避する。

※アドリブ、他の猟兵との絡みOK



●ブーメランパンツを穿きし筋肉に対する想い
 ――ブーメランパンツ騒動が終わって黒幕登場。
 イヴ・ハルゼンヌ(エルフのスナイパー・f06540)は、淡々と、頭へその言葉を思い浮かべていた。その一方、これまでの活動を振り返りながら、その胸に闘志を燃やしていたのである。
 そう、ここまでの道のりは、決して平坦なものでは無かったのだ。
 その日の朝は、町中がブーメランパンツを穿いた男性で溢れかえるという現象で満ち溢れていた。それは、並みの人間であれば、解決するのに幾月も掛かるような、恐ろしい異常現象であった。だが、猟兵達がそれぞれの頭脳と行動力を駆使して、遂に、その現象を食い止める事ができた。イヴもまた、猫の写真をアップしていった苦労を思い返していた。
 その次は、異常現象の元凶たる黒幕を誘き出さなければならなかった。ここでもまた、猟兵達が各々の知恵と工夫をフル活用して、誘い出そうと試みた。
 ……そして、今、目の前に、倒すべき敵がいる。
 気付けば、水色に澄みわたった空は茜色へ染まり、長い時間を掛けて作戦を実行していたのだという事を実感する。だからこそ、こうして敵を目の前にできた事に、少しばかり、感慨深くなってしまう。
 相手は筋骨隆々の肉体を見せつけている。夕日に照らされた筋肉は赤く輝き、まるで金剛石のようにすら思われる。もし、あの丸太のような肉体がぶつかれば、重傷は免れないだろう。ブーメランパンツ一丁という恰好であるが、そこから滲み出る覇気は、本物だ。
 だから、此方も、戦いの意志を強く、強く持つ。
「やってやるぜ!?」
 相手が演説をするなら、此方も啖呵を切ってやろうじゃないか。
 イヴもまた、相手へ宣戦布告をしたのであった。

 ――キマイラフューチャーで、お騒がせの怪人と対決しましゅよ。
 有馬・ナオ(チョコファイター・f10768)もまた、闘志を滲ませていた。
 この世界では、よく怪人たるオブリビオンが、様々なトラブルを引き起こしている。そして、今回は、町中を、ブーメランパンツを穿いた男性達で溢れ返させるという、とんでもない騒動を引き起こしたのだった。怪人アルパカマッスルの言い分はともかくとして、この騒動を引き起こした相手へ、引導を渡さなければならない。
 ――宿主の桜さんも気合い入って…。
 リボンの姿をしたヒーローマスクの有馬は、宿主である桜を見る。どうやら、彼女も気合が入っているようだ。この闘志を抱いたまま、夕日に照らされた怪人を成敗してやろうではないか!
 ……と、なる筈だった。
 しかし、現実は違った。どうやらブーメランパンツは、猟兵達へ一矢報いんとばかりに、最後の抵抗を試みたようだ。
 何と、宿主の桜が、ブーメランパンツを穿こうとしているではないか!
 広場の周囲で見学をしていた住人達は、その光景に「おおー!!」と、思わず大きな声を上げ、息を飲んだ。そして、怪人アルパカマッスルも、その円らな黒い瞳を輝かせる。
「おお、猟兵の女の子、君だけは分かってくれるのか!?」
「駄目でしゅ!女の子がそんなものを着たら、お嫁にイケナイでしょ」
 有馬は必至に声を上げ、ブーメランパンツを穿くのを阻止した。
 ――ぜぇぜぇ…。
 有馬は、戦いに備えて息を整えようとする。
 一方の怪人アルパカマッスルは、ブーメランパンツを穿くのを止めたと見えて、どこか、ションボリしたかのような表情になる。
 その様子を見ていたカラスは、茜色の空を飛び回り、「カァー」と大きく鳴いた。

 ――ブーメランパンツ事件…、いよいよ佳境。
 華上・ユーディ(冥土贈り・f02310)は白衣を着たまま、冷静沈着に、眼前のオブリビオンを見やる。
 思えば、この事件も佳境に入ったのだ。最初は、ブーメランパンツを穿いた男性達を止める作業であった。その次は、ファッションを披露して怪人を挑発する作業であった。これらの作業を行っている間に、日は暮れてしまった。学生なら、下校をする時間である。そうして時間を掛けた作戦が功を奏し、最後の段階へと入っている。
 怪人アルパカマッスルが演説で唱えたコンプレックス云々の内容は、学校の教師なら、共感する部分もあるのかもしれない。コンプレックスを抱いた生徒がいじめられたり、不登校になって学校生活を楽しく遅れないという事も往々にしてあるだろう。
 だが、華上は静かに、紫の瞳を眼前の敵へ向ける。冥土は妥協を許さない。戦場に於いても、掃除に於いても、塵一つ残す事は無い。ならばこそ、目の前に居るオブリビオンを倒し、この世界からまた一つ、脅威を取り除かねばならない。
 広場の周囲には、住人達が集まっていて、遠くから見つめている。この位の距離であれば、恐らく、戦闘やユーベルコードの巻き添えにならずに済む事だろう。けれど、その住人の中には、小さな男の子や女の子も居たりする。授業参観では、親が子供の様子を見に来る。それに似たように、まるで学生が教師の様子を見ているかのように感じられもする。
 だからこそ、思わずにはいられない。
(頑張りましょう!青少年の為に…)
 凛と、強く想う。ここで猟兵達が倒されてしまえば、相手は再び、同じ騒動を繰り返してしまう。それだけは、何としても避けなければならない。
 木枯らしが強く吹き、白衣をはためかせる……。

 広場にて、堂々と立つオブリビオンが居た。そのオブリビオンは、ブーメランパンツ一丁という姿で、夕日に照らされた筋肉を見せつけ、麗しいポージングをしていた。その、一見すると奇妙にも思える姿をした相手に対して、ただ、静かに見つめる妖狐の猟兵が、ここに居た。
 ――怪人にも漢がいたんやね。
 リンダ・ヴォルト(駄狐剣士・f05111)は、赤い光に包まれた怪人アルパカマッスルの姿を見て、そう、感じずにはいられなかった。
 彼の恐るべき作戦によって、町はブーメランパンツの楽園と化した。それは、奇怪極まるものであった。何故、そんな事を?
 しかし、その裏には、切実な願いがあった。世の中から、コンプレックスを消し去りたいという、強い想いが……。それが、ブーメランパンツの楽園という、奇抜な作戦に結び付いたというのだ。
 だから……。
 ――コンプレックスを無くすため敢えて奇策を演じていた。男やないかい。
 オブリビオンと猟兵は、相反する存在。オブリビオンは世界に脅威をもたらし、猟兵はオブリビオンを倒して世界の平和を守る。そこは恐らく、絶対に相いれないであろう関係。
 しかし、コンプレックスの苦痛、それに対する社会の矛盾への強い想い。そこに、オブリビオンと猟兵との差は、どこにも無かった。
 だが、そうした意味では、この戦いは残酷だ。結局はこうして戦わざるを得ない。
 ――でも、ボクらも負ける分けにはいきまへん。
 何故なら、リンダもまた、世界の平和を守る、猟兵なのだから。
 彼女は、譲れぬ信念を胸に、声高々に叫んだ。
「敵が信念持って来るなら、本気でいくで!?」
 怪人アルパカマッスルは、それに応えるかのように、力こぶを作った。
 茜色の光が、広場へ煌々と差し込んでいる……。

 ――まさかそんな壮大な計画だったなんて!
 クトゥルティア・ドラグノフ(無垢なる月光・f14438)は、怪人の演説を聴いて驚いた。ブーメランパンツを穿いて町中を歩き回る。その行為が恥ずかしく無いのか、と、かつては驚かずにはいられなかった。
 しかし、怪人の演説を聴いて、確かに、と思った。ブーメランパンツを穿いて歩き回っていた彼らの殆どが、その体に恥ずかしさを感じていなかった。
 一見すると奇妙に思える、この作戦。町中を、ブーメランパンツを穿いた男性で溢れかえらせるという、恐るべき作戦。けれど、そこには、世の中からコンプレックスの苦痛を無くそうという計画が練り込まれていた。その、想像を遥か斜め上へ飛んだような、壮大な計画に、ただただ、感服するしかなかった。
 そして、心のどこかで、その理念に共感する部分があった。そう、かつて自分も、迫害を受けて生きてきた。その苦痛はもしかすると、身体的な特徴によっていじめられたり、差別を受けてきた人達が味わったものと酷似しているのかもしれない。そうした経験があるからこそ、怪人の唱える、コンプレックスの苦しみから解放する、という主張に納得しそうになる。確かに、怪人の言う通りかもしれない。そして、その考えは、決して間違ったものではないのかもしれない。
 けれど……。
(迫害されてきた私としては共感をちょっと感じちゃうけど、それはそれ、これはこれ!)
 クトゥルティアは、自分が猟兵である事、そして、自身の成すべき事を明確に思い出していた。そう、猟兵である以上、例え相手がどのような理想を語ろうと、倒さなければならない。そこに、一切の私情を持ち込んではいけないのかもしれない。
 だから、心の中で宣言する。
(オブリビオンである以上、倒させてもらうよ!)

 怪人アルパカマッスルは、己の肉体を見せつけるかのように、ポージングを続けている。地平線へ沈みゆく太陽が、その体を赤く染め上げている。
 彼の言う、“崇高な目的”。それは、世の中からコンプレックスを無くす為に、ブーメランパンツを穿くというものだ。布面積の少ないブーメランパンツなら、思う存分、肉体を披露できる……と。
 しかし。
「言いたいことは分かったけど、それの必要性がないような」
 エルーゼ・フーシェン(双刃使い・f13445)は、疑問を口にした。
 その言葉を耳にした怪人アルパカマッスルは、まるで異端者を見る裁判官のような目つきで、彼女を睨みつけた。その激しい剣幕は、詰問しているかのようであった。一体、私の“崇高な目的”のどこに、問題点があるのだ。そう、言わんばかりに。夕日に照らされたアルパカの頭部が真っ赤に染まっており、それが、怒りを象徴するかのようであった。
 しかし、そんな様子を意に介す事も無く、エルーゼは、自分の考えを述べた。
 ――ファッションでコンプレックス云々は関係ないと思うのよね。声とか特に。
 その言葉が、寒空の下、広場に木霊する。刹那、緊迫感に包まれていた空気は、どこかしら、ゼリーのように軟化し、まるで豆腐のように崩れて行ったかに思えた。
 それを聞いた彼の顔は、夕日に照らされているにも関わらず、真っ青に染まっていた。筋肉の艶が無くなり、狼狽している様子が人目見て分かった。
 私は、間違っていたのか?そう、言いたげな顔をしている。それは、自分の信念が揺らいでいる事を何よりも証明していた。
 ――ま、さっさと倒しましょ!
 エルーゼは深く気にする事なく、戦闘態勢を整え始める……。
「……お前の言いたいことは分かった。だが、コンプレックスはなくなることはない」
 その様子を見て、冷徹な事で告げるのは、トリガー・シックス(黒衣の銃剣士・f13153)だ。彼は素顔を隠しており、夕日の逆光によって、その顔が影に覆われ、より見えなくなっている。服装と逆光の影は、カラスの体毛よりも濃かった。
 怪人アルパカマッスルは、トリガーの方を見る。一体、何故なんだ?そう、問いたいと言わんばかりの顔をして……。
 ――さらけ出したところで人の心は弱いということに変わりはない。移ろい易ければ、見た目をどうのと言ったところで無意味なのだ。
 その言葉を聞いた怪人アルパカマッスルは、何も言えなかった。
 確かに、ブーメランパンツを穿く事で、自分の肉体をさらけ出せる。しかし、コンプレックスとは本来、心に関係があるものだ。その心をどうにかしない事には、例え自分の姿をさらしても、根本的な解決にはならない。
 その言葉の一つ一つに、重みがあった。
 ここで、トリガーは、顔を覆っていた衣類を、ゆっくりと取り外した。逆光でよく見えない最中、怪人アルパカマッスルは、手で夕日の光を隠しつつ、その顔を見た。
 だが、言葉が出なくなった。
 トリガーの素顔に、おかしな点は無い。
 美形と言える、顔立ちだった。
 そこで改めて、トリガーの言っていた言葉の意味を反芻した。
 移ろい易ければ、見た目をどうのと言ったところで無意味なのだ……。
 そして、トリガーは懐から、ジョーカー5sという大型拳銃を抜き、眼前のオブリビオンへ向ける。
「俺には、護るべきものがある。兵士として、一人の人として」
 静かに告げながら、トリガーはそのまま、隣に立っていたエルーゼを見る。行動を共にしてきたキマイラの女戦士に、少しだけ視線を向けた後、再び、倒すべき相手へと戻した。
 ――も、もう何なのよ!トリガーったらこっち見て……。
 相棒の突然の動作に、エルーゼはちょっと顔を赤らめた。
 ――想いに気づかれてる?
 そうした疑問を浮かべるが、もうすぐ闘いが始まる。真偽は気になるところだが、今はただ、戦闘に集中する事とした。

 キマイラフューチャーの、とある町にある、とある広場。茜色の空には黒いカラスが舞い、地平線の彼方には太陽が沈みつつある。木枯らしが吹きつけており、神経を逆なでして緊迫感を刺激する。その様子を見守るように、広場の周囲に何百名という住人達が見守っている。皆、猟兵達の活躍に触れ、ブーメランパンツを穿くのを止めたり、交流したりした方々だ。
 猟兵達は、息を飲みつつ、相手の出方を見守る。怪人アルパカマッスルの鍛え抜かれた肉体は、鋼の如き強靭さを兼ね備えている。その体を見るだけで、骨の髄が凍らされたかのように震えあがる。それはまるで、横断歩道を渡っている時に、甲高いクラクションが鳴り響き、振り向くと、自身の何倍も大きいダンプカーが突進して来ているかのような圧迫感を持っていた。いや、その比喩は正しいだろう。微動だにしない筋肉を見つめている内に、恐怖が芽生えそうになる。あの太い肉体で打ち据えられれば、骨がビスケットのように砕け、脳味噌がゼリーのようにはじけ飛んでしまう気がしてくる……。
 二分、三分……と、膠着状態が続いた。
 そして、上空を旋回していたカラスが、一声。
「カァーーーーーーーー!!!!」
 不気味な叫び声を上げた。
 それは、闘いのコングであった――。

●決戦!~ブーメランパンツVS猟兵~
 突如、怪人アルパカマッスルが凄まじい砂煙を挙げて突っ込んで来る。短距離走の構えで突撃するその姿は、正にバッファローの如き勢いだ。その黒く円らな瞳はギラギラと輝き、殺意を放っている。
 刹那、それを見たリンダの様子が変化していった。その大きくフワフワした尻尾が一つ増えたのである。そう、リンダは真の姿を解放したのだった。相手が信念を持って戦うというのなら、此方も本気を出さなければならないだろう……。真の姿を解放した事によって、内なる力が沸き上がってくるのを感じていた。そのまま、猟兵達の後ろへスッと下がる。
 そして……。
 
 ――とんと御覧あれ~

 そう言ったかと思うや否や、リンダは目を瞑った。そして、澄み切った声をハープのように響かせて歌い、その場で体を優雅に動かした。
 その歌声と演舞は、同人誌とはまた違った魅力を放っていた。夕日に照らされた広場で歌い踊るその姿は幽玄のように美しく、まるで天女が降り立ったかのようだった。それは怪人アルパカマッスルの盗人猛々しい走りと比べ、静かで幻想的だった。
 すると、猟兵達の体に、力が沸き上がってくるかのような感覚が芽生えた。ユーベルコード『狐の嫁入り(キツネノヨメイリ)』により、彼らの身体能力は上昇したのだ。それは、オブリビオンを討ち取る力を化す!
 そして、怪人アルパカマッスルは飛び上がろうとする。攻撃の予備動作だ!
「筋肉達磨さん、こっちへ来るでしゅ!」
 有馬が小馬鹿にするような口調で挑発する。その言葉に、ピクリと耳が動く。
 刹那、怪人アルパカマッスルは走り幅跳びのように飛び上がった。そして、左膝を曲げ、右脚を伸ばす。その鍛え抜かれた体は、金属の杭を打ち込むかのように突き進んでいく。狙うは先程、自分の肉体を小馬鹿にした小娘だ!その固い爪先が彼女に当たれば、骨は砕けて臓器が破裂する。即死は免れない。広場の住人達は、悲惨な光景が脳裏によぎり、顔を手で覆う!
 そして、爪先が少女の喉元にぶつかる。
 住人の誰かが赤い悲鳴を上げる。
 ……。
 だが、一番驚いたのは、他でもない、怪人アルパカマッスル自身だった!
「な、何だこれは!?」
 確かに、その爪先は桜の喉に食い込んだ……筈だった。
 しかし、桜は小さな手で、その強靭な肉体を抑え込んでいたのだった。その場に居た多くの者が、その光景に目を丸くしたに違いない。
 勢いが無くなった怪人アルパカマッスルは、物理法則の関係で、そのまま地面へ落ちる。ブーメランパンツに覆われた尻をぶつけるが、すぐに飛び上がって両足で着地する。そして、自らの筋肉を誇示するかのように、ポージングを始める。
 一体、何をしようと言うのか。
 刹那、彼の肉体が脈打ち、体から熱気が溢れ出してきた。ユーベルコード『ポージング』だ!一通りのポージングが終わると、彼はヨガをするかのように、直立不動の態勢を取る。その体から放たれる運動エネルギーの熱量が、まだ寒い時期にも関わらず、周囲をサバンナのような暑さへ包み込む。
 そして、彼はグルリと、前方に居る猟兵達を、黒い小さな瞳で見回す。その姿は、不気味にさえ感じられた。
「さぁ、私の攻撃を喰らいなさい!」
 刹那、その黒真珠のような瞳が、一等星のように輝いた。
 そして、大量のビームが流星群のように、猟兵達へと降り注ぐ――!
 だが、その直後、有馬と桜が飛び掛かった!
 多くのビームが、有馬と桜へ突き進む――。

 ――正義は不変なのです!

 そう叫んだ瞬間、彼女の体へ降り注いだビームが、鏡に反射するかのように周囲へ拡散していく。それらは地面へ照射されて消えていく。更に、その内の何本かは真正面に反射され、そのまま怪人アルパカマッスルへと帰ってくる。彼の体にビームが当たった途端、その鍛え上げた肉体が黒く焼け焦げる!
「ぐぬう……!?」
 ユーベルコード『アルティメットボディ(アルティメットボディ)』により超防御型の肉体と化した桜は、仲間を守る盾と化したのだ。その前には、いかなる攻撃だろうと通す事は無い。怪人アルパカマッスルは、小さな戦士を侮っていた事を、心の中で謝罪しつつ、再び起き上がる。
 その間にも、有馬と桜の小さな体では防ぎきれなかったビームが飛来する。それは流れ星のように尾を描き、弾道ミサイルのように突っ込んで来る。そして、その一群が、ある猟兵を集中砲火するかのように突き進む。
 リンダだ。
 そう、彼女のユーベルコードにより、猟兵達全員の身体能力が向上している。ならば、支援している人物を狙って戦力を落とすのは、当然の理。
 その一陣がリンダの胸を貫いた!
 ――かに思えたが、リンダの姿は掻き消え、ビームは地面へと突き進んで消える。地面は真っ黒になり、焦げた臭いを放っていた……。
「おっとっと……」
 そう言いながら、リンダは内心ヒヤヒヤしつつ、着地点より数メートル後方で安堵のため息をついていた。当たる直前、残像を出す程の素早さを持ってして、後方へバックステップをする事により回避したのである。
「ぐぬぬ、猟兵も中々にやりますね……」
 と、その時だ。猟兵達の方から、一人の女性が颯爽と歩いて来た。白衣をはためかせ、プロレスラーの入場を思わせるように歩いてくる。
 華上だ。
 彼女は凛とした佇まいのまま、白衣の袖を捲りながら前進を続ける。その瞳の先に、倒すべき相手を見据えながら……。
 その姿を見た怪人アルパカマッスルは、攻撃の手を止めた。そして、彼女がやって来るのを、じっと待つ。その瞳に、華上の意志を感じ取りながら……。
 華上は、息を整えながら、有馬と桜、怪人アルパカマッスルの間に立つ。そして、彼の目の前へと歩みを進める。
 赤く染まった広場に、一人の女性と、一人のオブリビオンが向かい合って立つ。
 改めて近寄ると、相手が巨体である事がよく分かる。自分よりも大きな筋肉と、太い体を持ち、その威圧感に押し潰されかねない。
 しかし、それに意を介さぬかのように、淡々と告げる。
「怪人アルパカマッスル様、その誇りに敬意を込め、全力を出させて頂きます」
「なら、私も正々堂々と戦うとしよう」
 互いの腕が交錯した!
 何と、あの筋骨隆々のオブリビオンに対し、白兵戦を挑んだのだ!
 太い腕と白衣に包まれた腕が宙を飛び交っている。
 丸太のような腕が、華上の顔を潰さんとばかりに、次々に突き出されていく。
 それを冷静に、細い腕で巧みに捌いていく。
 次々に繰り出される剛腕の攻撃が、小さな衝撃波を放っていく。
 その風圧に華上の赤髪が掻き上げられるが、的確に避けていく。
 そして、その太い腕が華上の顔に当たる!
 住民は悲鳴を上げた!
 しかし、その顔は空中に掻き消えるかのように無くなる。
 華上の顔は、その砲丸のような握り拳の右側にあった。
 残像を思わせる速さで、避けきったのだ。
 そうして、再び攻防が繰り広げられていく。
 華上は、怪人アルパカマッスルの攻撃を捌きながら、好機を伺っていた。
 それは、一撃必殺のカウンター。恐らく相手は、何度も攻撃を受ける程のアマチュアでは無い。当然、白兵戦の攻撃を受ける回数は極めて少ない。しかし、この猛攻の最中に攻撃を繰り出しながら避ける、といった芸当は難しい。ならば、隙を突き、強力な一撃を加えるしかない……。
 その様子を後方で見ていたイヴは、ある物を取り出す。それは、銀色をした巨大な弓矢であった。この弓矢は、動物の狩猟にも用いられる武器であった。銀色の弓が、夕日の光によって、宝石のように輝いていた。
 それを構え、弓に矢を当てて引く。弦が強く引き絞られる。そして、心を静かにして、精神統一を図る。
 遠くに、狙うべき相手が居る。筋骨隆々のオブリビオンは、その巨体で華上先生と拳を交わし合っている。その後ろには、闘いを近い距離から見つめている有馬と桜の姿があった。そして、その奥には、その闘いを見つめている住人達が並んでいた。
 普通の弓道家なら、こう考えるだろう。矢が対象から逸れてしまえば、相手は警戒するに違いない。そして、その軌道上に華上や有馬と桜を置くような位置で、そのまま戦闘を続行するに違いない。けれど、それだけなら、まだマシな方かもしれない。もし、矢が華上や、有馬と桜や、住人に当たった場合、どうなるか……。
 けれど、イヴは、全くその心配をしていなかった。
 そして、大きく深呼吸をし、そのまま手を離した。
 刹那、それは風を切って突き進んでいく。
 徐々に、狙うべき相手へと接近していく。
 しかし……。
 怪人アルパカマッスルが鍛え上げた肉体による本能で気付き、そのまま華上を盾にするかのように陣取る。
 ――だが。
 突如、その矢は弧を描くように軌道を曲げ、そのまま怪人アルパカマッスルの脇腹へ突撃する!
「何ッ!?」
 そう、この矢は単なる矢では無い。ホーミングを込めた誘導弾であったのだ。戦闘に長けた怪人アルパカマッスルでさえも、その意表を突く狙撃には息を飲んだ。その鏃が、脇腹へ食い込んでいく。
 ……だが、鏃が僅か数センチ食い込んだだけで、それは止まった。
 怪人アルパカマッスルは即座に、ユーベルコード『鋼の筋肉』を発動し、矢による攻撃を防いだのだった。致命傷の一歩手前で防ぎ、冷や汗を垂らす。
 しかし、それはその場しのぎにしかならない。
 眼前には、華上が居る!
 華上は赤い靴を地面にめり込ませるように、半歩踏み込んだ。
 刹那、拳を握りしめ、右正拳逆突きを繰り出す。
 それが当たった途端、怪人アルパカマッスルの体に、大きなヒビが入った。
「ぐぬうぅぅ……」
 それと同時、脇腹へ刺さっていた矢が追撃を開始する。誘導はまだ続いている。
 それを見た華上は、イヴの攻撃が決定打になるよう、更なる追撃を試みる。
 今度は、握り拳を大きく開き、掌に水の魔力を込める。そして、それを怪人アルパカマッスルの固い肉体へ殴打する。
 パァン!!
 激しい音を打ち鳴らすと同時に、怪人アルパカマッスルの体内に、衝撃が反響する。こうした鞭打ちの如き打撃は、数回で相手をショックさせる程の激痛を伴う!
「ぐあぁぁぁ……」
 そして、駄目押しにもう一発。
 パァン!!
「ぐおぉぉぉ……」
 あまりの激痛に、とうとう『鋼の筋肉』を解除する。刹那、矢が寄生虫のように体内へ深く食い込んだ!
 怪人アルパカマッスルは後方へ飛び上がりながら、華上との戦闘射程距離から脱しつつ、刺さっている矢を握りしめる。
「ふんっ!!」
 その怒号と共に、矢を力強く引っこ抜き、地面へ放り投げる。鏃は赤黒く染まっており、丸い傷口からは赤い液体が噴き出る。だが、彼は毅然とした態度を崩さない。
 しかし、猟兵達は相手に休む隙すら与えない。
 その一種の隙を見たリンダは、すぐさま懐から護符を取り出す。そして、歯で指を噛んで血を滲ませ、御札に血文字を描いていく。刹那、そこに籠められた強い呪力や真言が増していくのが感じられた。
 その一枚一枚を指に挟んで構えた後、それを勢いよく敵へ向けて飛ばした。
 矢のように早く突き進むそれは、目にも止まらぬ速さで怪人アルパカマッスルの体に張り付く。刹那、体がしびれて、四肢を動かしづらくなっていく。
 直後、有馬と桜は、アームドフォードを転送する。
 怪人アルパカマッスルは、その銃口が自分に向けられているのを知覚した。
 刹那、アームドフォードが一斉に火を噴いた。それらは花火のように煌めき、夕暮れの広場を白く染め上げていく。その音は町中に轟いており、その威力を物語っているかのようだった。
 そして、イヴもそれに続く。チャンス到来とばかりに意気込み、巨大な弓矢を収納し、銀色の小型拳銃を握りしめる。銃口を相手へ向けた瞬間、銀鷲を彫り込んだ銃身がギラリと光る。その先には、信念を貫いて戦った一人のオブリビオン。
 ――アルパカマッスル。
「あんたはカッコよかったぜ」
 そう、静かに呟くと、目を鋭く光らせる。
 
 ――これが切り札だ!

 イヴは、声高々に叫び、目にも止まらぬ速さで引き金を次々に引いていく。そして空間には、矢継ぎ早に撃たれた光線が流れ星のように尾を引いて突き進んでいく。
 怪人アルパカマッスルは、リンダによるマヒ攻撃と有馬による集中砲火によって動けない。そして、遠くにある的を、スナイパーとしての力量を持ってして、一つも外す事なく撃ち抜いていく!
 そして、光線が当たった瞬間、彼の体から熱気が消えていく。イヴのユーベルコード『ジャックフロスト(ジャックフロスト)』によって放たれる光線は、命中した敵の熱を奪う凍結光線だ。幾ら強靭な肉体を持った相手でも、体から熱を奪われてしまっては、碌に運動する事もままならないだろう!
「ぐぬぅぅぅ……」
 苦悶の表情を浮かべつつ、尚も抵抗の意志を示す。体が動かなかろうと、集中砲火の攻撃に晒されようと、体から熱を奪われようと、闘志という炎はゴウゴウと燃え上がっていたのである。
 ここからは、両者の意地と意地の比べ合いである。リンダ・イヴ・有馬は攻撃を続け、怪人アルパカマッスルはそれに耐え続ける……。
 しかし、敵の体力は並大抵ではない。ここまで戦ってきた実力を推し量っても、ちょっとやそっとでは倒れる事が無いだろう。彼は苦痛の表情を上げているものの、その持久力故に、猟兵達の方が根を上げてしまうかもしれない……。
 その事に気付いている為か、怪人アルパカマッスルは、どこか心の中で、余裕のようなものを感じていた。激痛の最中、その勝機を伺っていたのである。今は、ジッと耐える時間だ。相手が疲れて攻撃の手が緩んだ瞬間、すぐさま飛び掛かってやろうではないか。
 そして、その読みは当たった。夕日が地平線へ隠れつつある中、三人は少し、息を荒げ始めた。思わずほくそ笑んだ。
(どうだね。私の鍛え上げた肉体の前では、猟兵と言えど太刀打ちできまい。持久戦で言えば、私の方に分があるのだよ)
 そして、攻撃が緩もうとした、その時であった!

 ――癒しの時です。

 華上の言葉が、聞こえた。
 刹那、この広場に、ある音波が響き渡った。その音波は、闘いに疲弊した者達を癒す、『ヒーリングウェーブ(ヒーリングウェーブ)』であった。この音を聞いたリンダ・イヴ・有馬の三人は、継続的な攻撃で疲弊した体が、みるみる内に回復していくのを実感した。それは、目の前のオブリビオンを倒す意志や力へと繋がっていく!
 三人は、更に力を込めていく。
 そして、三者三様の攻撃が行われる中、広場に再び、砂煙が立ち上った。それは砂 嵐のように立ち込め、一種のスクリーンと化す。
 そして、猟兵達は、攻撃の手を止めた。
 辺りには、砂煙のくぐもった音と、木枯らしが吹く音、猟兵達の息遣いと鼓動の音しか聞こえない。住人達も、どうなったのだろうと、固唾を飲んで見守っている。
そして、風が砂の幕を吹き飛ばしていき、視界を晴らしていく。
 ……そこに、怪人アルパカマッスルは立っていた。しかし、その体はボロボロであり、少しふらついているようでもあった。夕焼けに照らされたその姿は、正に、最後まで戦いを止めない戦士そのものだった。
 彼は、凛とした態度を崩さないように立っている。
「……猟兵諸君、君達は中々にやるようだね。私は少し、君達を見くびっていたのかもしれない。しかし、まだ……私は戦える。さぁ、第二ラウンドと行こうじゃないか!」
 そして、クラウチングスタートの構えをしたかと思うと、脱兎の如く駆けだした。猟兵達は息を飲んだかもしれない。あれだけの猛攻を受けながら、まだ、そこまでの体力を残していたのか、と。
 けれど、怪人アルパカマッスルの体は限界に近付いているようだった。そのフォームはどこかふらついており、目も若干、輝きを失っているように思えた。
 だが、油断してはならない。あれだけの動きができるという事は、猟兵達へ致命傷を与えるだけの力が残っているという事だ。ならば、此方も再び、全力で立ち向かわなければならない!
 刹那、二つの影が飛び出した。トリガーとエルーゼだ。
 トリガーは黒光りする大型拳銃を手に、此方へ突き進むオブリビオンへ銃口を向けて素早く打ち据えていく。銃声が広場に轟き、硝煙が立ち込める。
 しかし、怪人アルパカマッスルも負けてはいられない。腕を前方でクロスさせ、その銃撃を防ごうと試みる。しかし、いかに強固な筋肉とはいえ、鉛玉を防ぎきる事はできない。丸太のような腕に風穴が開き、血が迸る。けれど、アドレナリンが放出されている為か、痛みを感じた様子も無く、そのまま突き進んでいく。
 それと同時、エルーゼは大型の双剣を抜いて構える。峰の部分に装飾された花鳥風月が、もうすぐ地平線の彼方へ消えていりそうな夕日に照らされ、赤く輝いていた。すぐに『トリニティ・エンハンス』を発動、魔力を刃に籠めて攻撃力を高めていく。
 そして、相手と同じく、彼女自身もまた、敵へ向かって突撃する。相棒の軌道上に入らぬよう、弧を描くようにして、側面へと回り込むように走り続ける。上体を低くして肘を曲げて構えたまま突き進む姿は、梅雨の時期に平原を滑空する燕のようであった。
 怪人アルパカマッスルは、接近して来るエルーゼの姿を瞳に捉える。だが、脚を止める事は無く、更に速度を増していく。迫り来る彼女を見つめながら、肩に大きな力こぶを作り出し、肉体美を誇示する。血に濡れて尚、夕日に照らされし筋肉は艶があり美しい。そうして防御の構えを解いた為に、銃弾の雨嵐が彼の元へと降り注ぐ。だが、それを意に介した様子は無い。トリガーの銃撃を受ける事を代償に『ポージング』を発動して、身体能力を補おうとしているのだった。そしてそれは、エルーゼの攻撃を迎え撃つという意志表示に他ならなかった。
 エルーゼも、敵の思惑を察知し、緊張が高まった。自ら傷を負う事を代償として身体能力を高めるなど、常人のする事では無いからだ。だからこそ、万全の注意を払って挑まねばならない。彼女は神経を研ぎ澄ませながら走り続ける。
 刹那、トリガーが再び銃撃を繰り出した。怪人アルパカマッスルは、その攻撃を防ごうと腕をクロスさせる。
 その隙を突き、エルーゼが接敵した。双剣の射程距離に入るや否や、巨大な刃を相手に素早く振り下ろす。相手は体を捻り、間一髪それを避ける。広場に、頭部の白い体毛が舞い散る。相手へ休む暇も与えず、二回、三回と続けざまに刃を振るう。
 そして、そこを突くようにして、再度銃撃が行われていく。
 二人の連携は完璧とも言えた。どちらかに対処すれば、どちらかが攻撃を仕掛けてくる。そして、防御を取れば、その隙を突いてもう片方が攻撃を仕掛けてくる。その連携は、幾多もの戦いを乗り越えてきたからこそ発揮できるものであった。
 これには、怪人アルパカマッスルも顔をしかめずにはいられなかった。
 しかし、安心してはいけない。そうしている間も尚、オブリビオンは猟兵達の方へ近付いてきているのであった。このまま闘いが長引けば、後方支援に重点を置く猟兵達が白兵戦へ持ち込まれてしまう。
 トリガーとエルーゼは目配せをする。
 ここからは、短期決戦だ。
 刹那、エルーゼは蒼い翼を大きく広げた。バサリ、と大きな音を立てたかと思うと、そのまま空高く飛び上がった。
「何ッ!?」
 薄暗くなっていく茜色の空へ舞い上がり、カラスと共に上空を旋回していく。背中の翼をはためかせながら、上へ、上へと、風を切ってぐんぐん突き進んでいく。
 怪人アルパカマッスルがエルーゼの動作に目を奪われている隙を突き、トリガーは大型拳銃を仕舞い、代わりに別の飛び道具を取り出した。
 それは、四つの滑車を持つ、戦闘用化合弓であった。黒と紅という色彩を持ち、滑車には黒い蝶の紋章がある。その芸術品と呼べるような美しい弓矢を携え、目の前の相手へ向けて構える。しかし、素人目に見ても分かる通り、この弓は、扱いが難しい。だが、トリガーは度重なる戦闘経験をフルに活用して、この武器を使いこなして見せる。
 怪人アルパカマッスルが、此方を向く。
 刹那、弓の弦を引き絞って矢を放った。
 相手は、蝿を叩き落すかのように、巨大な掌で矢を殴り飛ばした。
 だが、トリガーはそれを冷徹な目で見据える。
 すると、オブリビオンの体に異変が起きた。彼の顔はみるみる内に青ざめていき、苦痛に満ちた表情を浮かべていく。
 そう、これは只の矢では無い。毒矢である。種類によっては、かすっただけで相手を絶命に至らしめる道具だ。例え体を鍛え上げたオブリビオンと言えども、それで無事な筈は無い。
 けれど、それに負けじと突き進んでいく。
 その時、エルーゼはピタリと上昇するのを止め、遥か彼方にある地上を見下ろしていた。蒼い翼を大きく動かしながら滞空し、地上に居る敵を見つめる。その大きさは、米粒よりも、BB弾よりも小さかった。そして、スナイパーが数キロ先に居る標的を狙撃するかのように態勢を整え、狙いを定める……。
刹那、コンドルさながらの急降下で相手へ接近した!
 相手は、自身へ向かってくるエルーゼの姿を視界に捉える。その迫力は正に野球ボールが時速150kmという速さで自分の顔面に投げつけられるかのようなものであった。……まずい!すぐさま『つぶらな瞳』にて、次々とビームを放っていく。それは戦闘機を撃ち落とそうとする機関銃さながらであった。
 だが、エルーゼは、それらの軌道を勘で察知して見切り、ビームの間を縫うようにして向かっていく。オブリビオンの攻撃は髪の毛一本、掠りもしない。
 そして、相手の眼前に迫った瞬間。
 広場に、衝撃波が発生した……。
 猟兵と住人は、風に吹き飛ばされないよう、その場で足に力を込めて耐えていた。
 やがて、その衝撃が和らいだ。彼らは、衝撃波の発生地点を見据える。
 そこに、エルーゼと怪人アルパカマッスルが居た。
 しかし、エルーゼは無傷なのに対して、怪人アルパカマッスルの体には、無数の血が流れていた。それでも、彼は、ゆっくり、と、猟兵達の方へ歩いて来る。足取りはふらつきながらも、その瞳は眼前の相手、トリガーへ向いている。
 エルーゼは、静かに横へ移動した。
 トリガーは、冷徹な眼差しのまま、静かに、亡き恋人の名を呼んだ。

 ――リヴェン

 その問いかけに呼応するかのように、トリガーの隣へ、一人の女性が現れた。『最後の願望(サイゴノネガイ)』を発動し、今は亡き恋人、リヴェンの霊を呼び出したのであった。二人は赤い夕日をバックにして、未だ闘志冷めやらぬオブリビオンを見つめる。
 トリガーは、再び弓を弾き絞り、矢を放とうとする。
 相手は、同じ手は二度と喰らわぬと言わんばかりに、反復横跳びの要領で真横へ飛ぼうとする。
 だが、突如、彼の体は宙に浮かび上がったからだ。一瞬、何が起きたのか理解できなかった。
 しかし、オブリビオンとしての本能が、その原因を探り当てる。リヴェンが、サイキックによって宙へ浮かせているのであった。
 脚をバタバタと動かすが、虚しい抵抗に過ぎなかった。
 そして、トリガーは、動けなくなった的に向け、矢を放つ。その毒が付与された鏃が、怪人アルパカマッスルの喉元に突き刺さる。刹那、体中に回る毒故に、顔が青ざめ、再び手足をバタバタと動かす。続けざまに、二発、三発と打ち込み、彼の体を蝕んでいく。何本もの矢が突き刺さり、その一本一本が致命傷と化していく。
 そして、怪人アルパカマッスルは、その動きを止めた。
 その様子を見て、亡き恋人リヴェンがサイキックを止める。怪人アルパカマッスルは、コンクリート片を投げ落としたかのように、ドスン、と、地面へ落下する。トリガーは、これで終わったとばかりに目を瞑る。恋人の霊は、夕暮れの中へ溶けるかのように、姿を消していく。
 ……だが。
 オブリビオンは、その筋肉質な手で、広場の土を掴むようにして握りしめる。
 その様子に、猟兵達と住人は、目を見開く。
 彼は、まるで声を発するかのようにして荒く呼吸をしながら、腕を地面に付き、上体を上げる。膝をつき、脚に力を籠め、そのまま立ち上がる。あれだけの攻撃を喰らい、毒が体中を蝕んだというのに、まだ立ち上がるというのか……。
 しかし、勝負は既についていたのかもしれない。その肉体は満身創痍そのものであり、もはや、猟兵達を再起不能にするだけの力は残されていないだろう。しかし、誰か一人の脊髄を叩き割り、半身不随にする事くらいはできるのかもしれない。
 怪人アルパカマッスルは、一歩、一歩、また一歩と、歩みを進める。その歩きは、死人のようである。夕日は残酷にも、その悲惨な姿をくっきりと映し出していた。
 彼は、猟兵達を倒す為の力を得るべく、『ポージング』を発動しようとする……。
「そうはさせない!」
 クトゥルティアは懐からフォースセイバーを取り出し、倒すべき敵へと突進する。そして刀身を振り下ろすや否や、怪人もまた、力を振り絞って腕を振り抜く。強靭な肉体とサイキックエナジーの刀身がぶつかり、エネルギー同士が激しく衝突する。
 丸太のように太い腕が突き出され、実体を持たない剣が振り下ろされる。その姿はさながら、ボクシングと剣道の異種格闘。汗が飛び散り、呼吸が荒くなる。心臓が破裂しそうな程に脈打つ中、神経をとがらせて相手の攻撃を見て、躱し、そして相手へ攻撃を加える。どちらも、相手の武器が自分の体を滅ぼす事を本能で知っていた。故に、一撃たりとも当たる訳にはいかない。クトゥルティアの長髪が宙を舞い、怪人アルパカマッスルの筋肉から血と汗が飛び散る。筋肉が頬を掠め、剣が腕を掠める。
 すると、その闘いに乱入せんと、一つの影が飛び出した。
 リンダだ。
 その手には頑丈に鍛えられた大太刀。黒い刀身を鈍く光らせ、その乱闘へ突撃する。彼女はクトゥルティアと協力し、これまでの攻撃を耐えきり、それでも尚倒れない相手を討ち取るべく加勢する。
 リンダは的確に刃を振るって、相手の肉体に傷を付けていく。その度に、敵は苦悶の表情を浮かべていく。この刃は只の刃では無い。殺気と破魔の籠められた、妖狐専用の刃物である。着実に、オビリビオンは弱っていくのが、目に見えて分かった。
 そんな中、クトゥルティアは一瞬の油断もできない中で、驚きを隠せなかった。相手は満身創痍の筈。しかし、まだ、これだけの力が残っていたなんて……。
 けれど、当然と言うべきか、怪人アルパカマッスルの方が押されていた。彼は単調な突きを繰り出しているだけだが、クトゥルティアの剣術は多彩である。袈裟懸け唐竹薙ぎ払い、多種多様な剣筋が織り交ぜられており、その多様な攻撃に、怪人アルパカマッスルは付いていけていない。暫くすると、その体に赤い線が、二本、三本と次々に切り込まれていく。
 夕日が猟兵とオブリビオンの真剣勝負を照らし出す。茜色の空をバックに、二つの黒い影が闘いを続けている。しかし、太陽は殆ど地平線の彼方へ沈んでおり、空は青黒く染まりつつある。
「私は、決して、決して諦める訳にはいかないのだ……コンプレックスで苦しんでいる者達の為にも、決して、ここで、倒れる訳にはいかぬ!!」
 しかし、相手が信念の為に負けられないのなら、クトゥルティアもまた、英雄の血を継ぐ者として負けられない。剣を目にも止まらぬ速さで振って行き、その切っ先で相手の命を奪い取らんと斬り付けていく。動体視力を駆使して素早い打撃を巧みによけ、即座に返す刃で相手の肉体を斬り付けていく。
 そして、拳と刃がぶつかり合う事、数分。長い、長い数分が過ぎた頃だ。
 怪人アルパカマッスルに、限界が来たのだろう。彼はグラリと、体を大きく揺らした。拳の軌道が大きく逸れる。
 ――今だ、ここで一気に終わらせる。
 その想いを胸に、構えを取る。

 ――月明かりに咲く華のように、可憐に咲き誇れ!

 凛とした叫びと共に、サイキックの弾が放たれる。本来なら虫の息も同然の相手は、それを躱す事ができない。彼の体に、弾が命中する。刹那、体がその弾、サイキック拘束弾によって、動きが封じられる。彼は、驚愕の表情を浮かべた。そして、眼前の戦士を、小さな黒い瞳に焼き付けた。
 クトゥルティアは、フォースセイバーを大きく振りかざしていた。
 ……その表情は、猟兵としての使命と、相手への敬意に満ちていた。
「月光よ、この勇敢なる一人の戦士に慈悲を送れ!ムーンライト・バースト!!」
 その言葉は、広場に、いや、町全体に轟いた。
 その言葉が放たれた直後、フォースセイバーから極大光波が放たれる。それは太陽にように輝き、町中を閃光で包み込む。その眩しさに目を閉じ、ただ、その威力を肉体の五感で知るしかなかった。
 その眩しさの最中にあっても、クトゥルティアは、理念を持ち続けた相手の最期を見るべく、目を細めながらも眼前の敵を見つめていた。
 彼女が見た怪人アルパカマッスルの、死に際の表情は、何故だか、無念に満ち溢れながらも、どこか、満足気な表情をしていたように思えた。
 その顔は恐らく、クトゥルティアしか知らないものとなるだろう。
 そして、『月光華(ムーンライト・バースト)』を発動してから、数刻後。その激しい光は止んだ……。
 他の猟兵達と、住人達は、恐る恐る、目を開ける。
 そこには、クトゥルティアとリンダが立っていた。
 そして、怪人アルパカマッスルの姿は、どこにも無かった……。
 ――刹那。
 住人達は、歓声を上げ、猟兵達の活躍を称えたのだった。

●そして、ブーメランパンツのブームは幕を閉じた
 夕日が地平線に沈み、空には満天の星が輝いていた。
 猟兵達が闘いを終えた時、その激闘からか、ドッと疲れが出たように感じられた。
 恐らくこの後、住人達は猟兵達の元へ詰めかけ、握手やサインを求める事になるのだろう。
 けれど、それに対してどのような行動を取ったかは、敢えて記さないでおこう。
 ある者は、住人達に握手やサインをしたりするのかもしれない。
 ある者は、疲れたからといって早々に立ち去ってしまうのかもしれない。
 ある者は、怪人の言っていた言葉に想いを馳せるのかもしれない。
 ただ一つ言えるのは、ブーメランパンツの楽園と化すところを、猟兵達が防ぎ、オブリビオンの脅威から世界を守ったという事である。
 木枯らしが吹く中、黒い夜空が、町を優しく包み込んでいた……。

●ちょっとした後日談
 そして、町は再び平和へと戻った。交差点には多くの住人が行き交い、幾つもある電光掲示板には、ネットで話題になっている写真が逐一アップされては映し出されている。そう、いつもの平和な光景だ。
 そんな中、ある写真がアップされた。それは、裾の短いフリフリのスカートを着た女性の、自撮り写真であった。ちなみに、このスカートは、この町のある場所をコンコンすれば出て来るものだと言う。
 そして、それを見ていた一人の女性キマイラが居た。彼女は、そのスカートを履きたいと、強い憧れを持った。
 ……しかし。
 彼女は、自分の脚を見る。むっちりしていて、O字型の脚をしている。彼女自身、その脚が気になっており、その為に、いつも長ズボンを穿いているのだった。
「凄く可愛いけど……」
 彼女はションボリしたまま、町の雑踏へと消えていった。
 
 怪人アルパカマッスルは言った。コンプレックスの苦痛を無くしたい、そうしたコンプレックスを取り上げて笑う社会はおかしい、と。
 けれども、そうした社会を実現できるのは、果たして、いつの事となるだろうか。
 今日もネットには、大量の写真や情報が溢れかえっている……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月09日


挿絵イラスト