●神の胎動
ヒーローズアース、そのマンハッタンに存在する地下秘密工場は猟兵達に気取られることなく、一点の染みのように徐々に勢力を拡大していた。
それもただの染みではない。
一滴であったとしても、それは現在を侵食する染みとなって広がっていく。
「長かった……ようやくここまでたどり着いた。本体を喪った後も、アタシはこの時をずっと待っていた!」
見開いた瞳は爛々と輝き、声の主『戦神アシュラ』――の分身体である『アシュラレディ』は、地道に積み上げてきた計画を実行に移す。
「起動しな、『量産型クライング・ジェネシス軍団』……!」
その言葉と同時に『アシュラレディ』の背後に巨大なるヴィラン……胸に砲口を備えた嘗ての『クライング・ジェネシス』の量産型が次々と咆哮を上げる。
「GAOOOOOH!」
「BAOOOOOM!」
「THEEEEEEND!」
彼等の怨嗟の咆哮は、その胸に備えられた簡易型の『骸の海射出装置』を震わせる。
『アシュラレディ』の背後で次々と起動していく『量産型クライング・ジェネシス』たちは、十や二十では効かない数である。
もはや軍団と呼ぶに相応しい数でもってマンハッタンの地下工場の天井を突き破って地上へと飛び出していく。
「オマエ達は、今から世界中の大都市に飛べ! 簡易型『骸の海発射装置』で『過去』を撃ちまくり、大都市を『神々の時代』に引き摺り戻すんだ」
『アシュラレディ』の命令に『量産型クライング・ジェネシス』たちが応え、飛び立っていく。
それは世界を滅ぼすのではなく過去に塗りつぶす行い。
何故そんなことをするのか。言うまでもなく、彼女の本来の力を取り戻すためである。
「……アタシ達神々は、アタシ達の姿に似せて人類を想像した。だけどね、超古代のアタシ達は、人の姿だけじゃなかった。ジャガーにも、いかづちにも、コンドルにもなれた!」
超古代の時代。神々の時代。
『戦神アシュラ』がそうであったように、彼女の姿の形は人の姿に寄ってはいるものの、多腕は間違いなく人外のもの。
ならばこそ、本来の力を取り戻すということは即ち、今の己を縛る枠組みを破壊することにほかならない。
その手段が過去を引き摺り戻すということだ。
「太古の力を取り戻し、アタシは再び『戦神アシュラ』に戻る! さあ行け! 行って世界に神々の混沌をもたらすんだ!」
『戦神アシュラ』は笑う。
しかし、懸念がある。彼女の笑う空は曇天。
瞬間、稲光が空を染め上げ、雷鳴が轟く。それを『アシュラレディ』は忌々しげに聞く。
また邪魔をされる。
あの雷鳴に、あの輝きに。
「――……猟兵! またアタシを滅ぼすか!」
●雹雷
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
彼女の瞳が爛々と輝いている。それは明滅する雷光のようでもあった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はヒーローズアースにおける事件です。『アースクライシス2019』において現れた『クライング・ジェネシス』……その『量産型クライング・ジェネシス』とも言うべきオブリビオンが突如としてマンハッタンより飛び立ち、世界各地の大都市へと簡易型『骸の海射出装置』でもって、世界を『神々の時代』まで戻そうとしています」
ナイアルテの言葉に猟兵達は息を呑んだことだろう。
それは世界のルールを書き換えるということと同義であったからだ。
『骸の海射出装置』より放たれた骸の海は、着弾した場所を『センターオブジアース』のような『絶え間なき炎と生命力に溢れた場所』へと変えてしまう。
そうなってしまえば、一部分だけとは言え世界は『神々の時代』の世界法則を蘇らせてしまう。
「それによって『アシュラレディ』――生き延びていた『戦神アシュラ』の分身体は嘗ての神性を取り戻そうとしているのです」
本来の姿を取り戻した『戦神アシュラ』がヒーローズアースに再び災厄を齎さんとすることは火を見るより明らかであった。
ゆえにこれを止めなければならない。
「しかし、皆さんの中に神性を宿す方がいらっしゃるのであれば、お気をつけください。戦場となる『神々の時代』が戻された箇所は『過去』が溢れ出し、『神』の皆さんを『暴走時』のような姿に変え、能力も一時的に増大してしまいます」
それは戦いにおいては猟兵にとって歓迎すべきことであろうが、暴走に近い状態になることは如何なる危険が及ぶのか誰も予測できない。
「『量産型クライング・ジェネシス』軍団を打倒し、一時的ですが『戦神アシュラ』となった『アシュラレディ』を撃破しましょう」
どうやら戦争時のような、猟兵達に必ず先制攻撃を仕掛けてくるような力はないようである。
それでも尚、ほぼ戦争時と変わらぬ能力を持っている。
だがナイアルテは頭を振る。
「あの頃の皆さんとはひと味もふた味も違うことは言うまでもありません。これまでもそうであったように。これからもオブリビオンの企みは、尽くが皆さんが雷光のごとく瞬く間に打破すると私は信じています」
爛々と輝いていた瞳は光を落ち着かせ、その細められた瞳で猟兵たちを見送るのだ。
そう、何度も見送ってきた。
どれだけ危険な戦いであっても自分が送り出してきた猟兵達は勝利してきた。彼女は自分を信じるのではなく、彼女が見送ってきた背中を信じるのだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はヒーローズアースにおける『戦神アシュラ』としての本来の神性を取り戻さんとする『アシュラレディ』の目論見を打破するシナリオになります。
※このシナリオは二章で構成されたシナリオになります。
●第一章
集団戦です。
かつてのオブリビオン・フォーミュラ『クライング・ジェネシス』に似た形状と能力を持つ『量産型クライング・ジェネシス』の大群との戦いになります。
すでに街中で『骸の海発射装置』を発射しています。
着弾した場所は『過去』によって、センターオブジアースのような『絶え間なき炎と生命力に溢れた場所』に変わろうとしています。
もしも、皆さんの種族が『神』であったのならば、皆さんの姿は『暴走時』のようなものに代わり、能力も一時的に増大します。
●第二章
ボス戦です。
溢れ出した『過去』によって『神々の時代』に変貌した『絶え間なき炎と生命力に溢れた場所』で、一時的に『戦神アシュラ』となった『アシュラレディ』が襲いかかってきます。
戦争時と変わらぬ能力を誇りますが、先制攻撃はしてきません。
それでも強敵である事に変わりはありません。
それでは、ヒーローズアースにおける『神々の時代』という『過去』が溢れた世界で、『アシュラレディ』の目論見を打破し、再び平穏を取り戻すために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『量産型クライング・ジェネシス』
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POW : GAOOOOOH!
全身を【原初の炎に包まれた姿】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : BAOOOOOM!
【簡易型骸の海発射装置】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【相手と同じ姿と能力の幻影】で攻撃する。
WIZ : THEEEEEEND!
【簡易型骸の海発射装置から放つ『過去』】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を『神々の時代』の火で包み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:yuga
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
密かに『アシュラレディ』が構築したマンハッタンの地下秘密工場から飛び出した『量産型クライング・ジェネシス』たちは地下天井を突き破り、瓦礫と共に都市を睥睨する。
彼等は量産型とは言えど、かつてのオブリビオン・フォーミュラの似姿。
ヒーローズアースの人々にとって恐怖の象徴と呼ぶに相応しい存在であったことだろう。
「GAOOOOOH!」
その咆哮は怨嗟。
その咆哮は破壊。
その咆哮は憎悪。
あらゆるものを『過去』という染みでもって侵食する『骸の海発射装置』より放たれた弾丸の如き『過去』が世界を塗りつぶしていく。
かつて『神々の時代』と呼ばれた世界のルールへと塗りつぶしていくのだ。
周囲は絶え間なき炎と生命力に溢れた場へと変わっていく。これが『神々の時代』、神を模して作られた人類が存在する前の世界。その世界すらも憎むように『量産型クライング・ジェネシス』たちは咆哮する。
「BAOOOOOM!」
次々と『骸の海射出装置』から『過去』が放たれ、世界を侵食していく。
世界への怨嗟と憎悪によって破壊をもたらす恐怖の象徴は、ヒーローズアースを再び恐怖のどん底へと叩き落とす。
人々は逃げ惑うしかない。生半可なヒーローでは『量産型クライング・ジェネシス』に打倒できない。それでも立ち向かわなければならいのがヒーローであるのならば、その瞳に見ただろう。
雷鳴の様に轟き、雷光のように煌めくユーベルコードの輝きを。
次々と転移してくる人々の良くしるヒーローたち。在るときは『ヒーロー・フォーティナイナーズ』とも呼ばれた者たちを。
「THEEEEEEND!」
『量産型クライング・ジェネシス』たちは一斉に空を見上げる。
そこに在ったのは、嘗て己を打倒した存在。
そう、猟兵達の姿があったのだった――。
ニノマエ・アラタ
終わった過去を振り返って、もしもを求めた時点で負けだと思う。
……それで勝てると思うなら、やってみるがいい。
俺は『今』の炎で立ち向かい、再びおまえ達を葬る。
向かい合う敵ですら俺の過去、その姿をとるか。
そうだな、動きも思考も同じだとして。
強敵と戦ってきた経験と共に、
先に進む歩みを止めなった今の俺と。
どちらが世界に存在する権利を得る?
あなどらねぇし、わからねェ。
俺は、おまえに俺を見る。
どうやって生き延びてきたかを、見る。
刹那、一瞬、隙をついて捨て身で。
否、堂々と見切って。
……ああ、いろいろ試した、やったな。
どの戦いも楽しかったぜ。
一閃。
炎海の津波を敵に向け走らせ、骸の海発射装置ごと呑み込ませる。
「BAOOOOOM!」
マンハッタンの空より飛来し、アスファルトを砕いた巨体『量産型クライング・ジェネシス』の姿は『アースクライシス2019』の頃と変わらぬものであった。
胸に、腕に備えられた『骸の海射出装置』は『過去』を放ち、周囲を『絶え間なき炎と生命力に溢れた場所』へと変えていく。
即ち『神々の時代』そのものに世界を塗りつぶしていくのだ。
人々は天を仰ぎ見た。
これが嘗ての世界の有り様。そのルールであると。逃げ惑う足がもつれはて、倒れたとして人々は自分のことで手一杯である。
誰も彼もが自分の生命以外に意識を避けるほどの余裕などなかったのだ。
「立って、まっすぐに走れ」
もつれ倒れた人々の前に一人の男が膝を折り、彼等を立ち上がらせる。人々は見ただろう。いや、知っている。
彼が如何なる存在であるかを知っている。
誰もが知るだろう。かつて在りし『アースクライシス2019』のおりにて現れ、世界を救ったヒーロー、猟兵の姿を。
ニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)は倒れた人々を助け起こし、自身は人々の流れと逆行して『量産型クライング・ジェネシス』の前に立つ。
「終わった過去を振り返って、もしもを求めた時点で敗けだと思う」
それは今まさにヒーローズアースに降りかからんとしているオブリビオンが成さんとしている目論見であろう。
確かに『量産型クライング・ジェネシス』は脅威そのものであった。
あの『骸の海射出装置』でもって世界を塗り替えていけば、たしかに『神々の時代』へと逆行するものであった。
「……それで勝てると思うなら、やってみるがいい。俺は『今』の歩ので立ち向かい、再びお前達を葬る」
構える妖刀が煌めく。
それはユーベルコードの輝き。されど、『量産型クライング・ジェネシス』の腕の砲口より放たれるのは、アラタの幻影であった。
「BAOOOOOM!」
それは精巧な幻影であった。互いに構える構えは同じ。
向かい合う幻影ですら己の過去を模し、その姿を取る。動きも、思考も何もかも同じである。
だが、それでもアラタはその瞳をユーベルコードに輝かせた。
「強敵と戦ってきた経験と共に、先に進む歩みを止めなかった今の俺と」
例え己と寸分違わぬ幻影が相手であったとしても、彼の歩みは止まらない。彼が得ようとした世界は、己がそこに在ろうとした世界は、どちらの手に渡るのかは明白であった。
「あなどらえねぇし、わからねェ」
幻影であれど、互いの剣技に違いは見当たらなかった。
けれど、刀身より放たれる荒ぶる怒涛の炎海が噴出し、互いを焼く。鏡写しの如き戦い。
剣戟が打ち鳴らされることはなかった。
炎の海で対峙する己が為すべきことはただの一つ。
己の剣閃で持って敵を切り裂くことのみ。相対する己の影であっても、それはかわらないのだ。
「……ああ、色々試した、やったな。どの戦いも楽しかったぜ」
アラタの中にあったのは、強敵との戦い。その邂逅。剣を交えた記憶であった。
そのどれもが得難きものであったことだろう。
それを模した幻影にも同様である。宙をひらめく刀身の一撃。それはどちらのものであったのかは言うまでもない。
炎の海が埋め尽くす中、業火剣乱(ゴウカケンラン)たる剣戟の音は鳴り響かず。
されど、最後に立つ者こそが勝者であるというのならば、アラタの瞳に輝く炎こそが、彼の生き様であったことだろう。
「――ッ!?」
荒ぶる怒涛の炎は、消えない炎となって『量産型クライング・ジェネシス』を飲み込んでいく。
まとわりつく炎に怨嗟の咆哮は飲み込まれ、『過去』をもたらす存在を切り裂く刹那の如き『今』でもって、アラタは己の剣閃を走らせる。
「『過去』はもう踏み越えた。『クライング・ジェネシス』、お前の出る幕は最早ねェよ」
彼の剣閃は、『量産型クライング・ジェネシス』を一刀の元に切り捨て、『過去』を振り払うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
夜鳥・藍
あの姿はたしか、かつてこの世界であった戦争での首領でしたか。
でもそれもこのように量産されるとなると脅威ととったら良いのか、それとも零落した姿に嘆けばいいのか……。
幻影、いわば実体のない姿と能力のコピーなんですね。では相手の能力の発動を先に誘いましょう。
青月で攻撃を仕掛ける風を装い接近しつつ、幻影の私の姿を確認したらすぐさま白銀を呼び出し騎乗します。
少なくともこれで2対1でこちらに分がありますし、青月プラス白銀の爪や牙の攻撃も可能になりますから。相手が同じものを出してくるならこちらはそれを変える、もしくは上回ればいいだけの事です。
向こうの攻撃は白銀の機動力と私の第六感によって回避します。
『量産型クライング・ジェネシス』――それは嘗てヒーローズアースにおいて勃発した『アースクライシス2019』において現れたオブリビオン・フォーミュラの姿と同じものであった。
「BAOOOOOM!」
咆哮と共に放たれる『過去』、それは周囲に撃ち込まれ『現在』を『過去』に塗り替える恐るべき『骸の海射出装置』によって成された脅威。
それを前にして夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は冷静であった。
彼女の瞳に映るのは、『量産型クライング・ジェネシス』であったが、彼女はその姿に複雑な感情を抱いていた。
「あの姿はたしか、かつてこの世界であった戦争での首領でしたか。でも、それも此の様に量産されるとなると脅威ととったら良いのか、それとも零落した姿を嘆けばいいのか……」
彼女にとってオブリビオンであったとしても、強大なる存在に対しては畏敬の念があったのかもしれない。
けれど、それで手が止まることはない。
己の足が止まることによって奪われる『現在』があるのならば、彼女は力を振るうことに躊躇いを持たぬ猟兵である。
「BAOOOOOM!」
『骸の海射出装置』より放たれた幻影が藍の前に姿を現す。
それは自身と同一の影。されど、実体のない姿と能力の影であるというのならば、藍は互いに鏡写しであることを知っている。
自分ならばどうするか。
「『白銀』!」
彼女は打刀を抜き払った己の幻影を見た瞬間、銀狼招来(ギンロウショウライ)によって喚び出した翼を持つ銀狼にまたがる。
今までの自分ならば、必ず打刀を抜き払う。ならば、その裏をかけばいい。これで召喚された銀狼と共に二対一である。
数で押すことができるのならば、幻影など敵ではない。
「さあ、行きましょう。敵が同じものを出してくるのならば、こちらはそれを変える、もしくは上回ればいいだけのことです」
翼を羽ばたかせ、銀狼が空へと舞い上がる。
藍は一瞬で幻影を青白い残光残す打刀の一撃で切り裂き、銀狼と共に大地を蹴る。周囲には嘗ての『神々の時代』そのものである炎と生命力に溢れ出している。
この光景を生み出している『量産型クライング・ジェネシス』を打倒しなければ、世界は過去に染め上げられてしまう。
「そうなっては、『アシュラレディ』は嘗ての神性を取り戻すというのであれば」
放たれる弾丸の如き『過去』を躱し、藍は『量産型クライング・ジェネシス』に迫る。
あの巨体、あの能力。
どれもが量産型とは言え、遜色のないものである。あれだけの軍団を用意した『アシュラレディ』の執念がどれほどのものであったのかを藍は知る。
「けれど、その目論見も終わりであると知りなさい。例えどれだけの『過去』で『今』を塗りつぶそうとしても」
人の願いはいつだって未来にこそある。
藍はそれを知っている。だから占う。人の行き先を、先の見えぬ暗闇の中に灯火を灯すように。
ひとかけらでもいい。
指針になればいい。その想いを持って彼女は、『過去』を振り払うように打刀の一撃を『量産型クライング・ジェネシス』に叩き込み、そして銀狼の牙と爪でもって、『アシュラレディ』の妄執、その願いを切り裂く。
「GAAAAAAA!」
哀れなる『クライング・ジェネシス』、その嘗て在りし幻影。
そして、自身の幻影すらも彼女は問題にすることなく、打倒せしめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
まったく……。
『過去』も『神』も、この世界には必要ではないって まだ解らないかな。
もう人の世界なんだよ。
わたしたちだって、後片付けみたいなものなんだから。
だいたい『また滅ぼす』んじゃないよ。
『もう滅びてる』んだからね。
【ストラクチュアル・イロージョン】で骸の海に生み出された『過去』を侵食するウイルスを撒いて、消していこう。
ん? わたしの幻影?
同じ能力を使うんだ。
それって手伝ってくれるってことかな?
過去があって今がある。
そのことは否定しないけれど、過去に戻ることはないんだよ。
それがどんなものになるとしても、これからあるのは『未来』だけなんだからね。
過去にはおとなしくしていてもらうよ!
ヒーローズアースはすでに人の時代である。
『神々の時代』は終焉を迎え、移りゆく時間の流れは残酷であれど、たしかに前に向かって進んでいる。
過去を排出して時間は進む。
どうやっても逆巻くことはない。だからこそ、『アシュラレディ』が望む『神々の時代』の再現は、叶うことはない。
世界が過去に染まり悲鳴を上げる。それを猟兵たちが聞き逃すことはない。
転移し、雷光の如き輝きを放つユーベルコードで持って猟兵たちはオブリビオンを打倒し続ける。
「まったく……『過去』も『神』も、この世界には必要ないって、まだ解らないかな」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、手にした電脳魔術を行使するためのコンバーチブルのパソコン、そのタブレットモードで操作しながら、絶え間なき炎と生命力に溢れた『過去』に染まったマンハッタンの街に降り立つ。
大挙した『量産型クライング・ジェネシス』たちの姿は、たしかに嘗てのオブリビオン・フォーミュラそのものであった。
けれど、彼女は臆することはない。
「THEEEEEEND!」
『量産型クライング・ジェネシス』の『骸の海射出装置』より放たれた弾丸が大地を染め上げ、『神々の時代』という過去に世界を塗り替えていく。
それを許せないと思ったのだ。
「もう人の世界なんだよ。わたしたちだって、後片付けみたいなものなんだから。それにだいたい『また滅ぼす』んじゃないよ」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
ストラクチュアル・イロージョン――それは彼女の手にしたタブレットモードのパソコンから放たれるウィルスでもって、射出された『骸の海』そのものを侵食する。
『骸の海』という『過去』が世界を塗りつぶし、過去として世界を侵食するというのならば、理緒は、その『過去』を侵食するウィルスでもって消し去っていく。
「まるでいたちごっこみたいだけれどね」
例え、ウィルスで書きかえても、さらにそれを上回る『過去』が噴出する。
塗りつぶし、塗り重ね、そして消していく。
世界というテクスチャを持って陣取り合戦をするように理緒と『量産型クライング・ジェネシス』の攻防は続く。
「過去があって今がある。そのことは否定しないけれど、過去に戻ることはないだよ」
時間が逆巻くことはないように。
けっして過去に戻ることはない。今、まさにマンハッタンが『神々の時代』へと戻ろうとしているのだとしても、それはただ枠組みを破壊しようとする『アシュラレディ』の目論見に過ぎない。
時間を戻すのではなく、世界のルールを変える。
「盤面をひっくり返す子供みたいなやり方だって、気が付かない。どれだけ未来が不安であったとしても、どんな結末に至るのだとしても!」
理緒の瞳がユーベルコードに輝き、『今』という光でもって、炎をかき消していく。
彼女は知っているのだ。
例え、現在がどんなものになるのだとしても、これからあるのは『未来』だけなのだから。
それを脅かす『過去』は要らない。
『神』も必要ない。
この世界を生きる人々にとって、『今』こそが大切なものであると知るからこそ、理緒は己の力を行使し、『過去』というテクスチャを一掃するのだ。
「『過去』にはおとなしくしていてもらうよ!」
彼女の『今』を見据える瞳は、輝きをともし続ける。
どれだけ人びとが『過去』という幻影に因われ、絶望するのだとしても。
篝火のように輝き続け、人々の『未来』への指針を作り出してみせる。それこそが、猟兵として、そして、このヒーローズアースおいてヒーローとなっった者たちの成さねばならぬことであるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎!
オー!
かつて繰り広げられたという、アースクライシス2019のオブリビオンと戦えるとは!
ワクワクしマース!
挑ませていただきマショー、伝説に!
ワタシはゴッドではありマセンガ、意気揚々と参戦しマース!
なるほど、強敵でありますな。
熱い炎に包まれて攻撃が通用しない。下手に近づけば燃えてしまいマスネー。
であれば。まずは足元を崩しマース!
「六式武装展開、鉄の番!」
動けないことをいいことに、ジェネシスの立つ地面を崩落させマース!
そして地下に転落していくジェネシスへ、追撃の射撃攻撃を浴びせマース!
無敵を維持したまま落下するか、炎を解いて一斉射撃を受けるのか!
お選びくだサイ、量産ゴッド!
『アースクライシス2019』――それは猟兵たちにとって忘れがたき戦いであり、オブリビオン・フォーミュラ『クライング・ジェネシス』との戦いの記憶であったことだろう。
その胸、手のひらに備えられた『骸の海射出装置』は、文字通り『骸の海』を弾丸として射出する。
『過去』そのものとなった弾丸は猟兵に当たらずとも、大地を侵食し世界というテクスチャに『過去』を上塗りする。
「GAOOOOOH!」
咆哮する『量産型クライング・ジェネシス』がしていることがそれだ。
世界の大都市に飛び、彼等は『過去』によって『現在』を塗りつぶす。絶え間なき炎と生命力に溢れた場。
それは嘗て在りし『神々の時代』における世界のルール。
「オー! かつて繰り広げられたという、『アースクライシス2019』のオブリビオンと戦えるとは!」
その圧倒的な光景を前にしてもバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は胸の高鳴りを抑えることができなかった。
彼女にとってオブリビオンは打倒すべき敵であるが、サイボーグである己の性能を試すという点においては違う。
十二分に性能を活かす。
それは己の存在意義と彼女が掲げる、戦場に費やした人生そのもの、即ち戦いの場でこそ発揮されるものだ。
「挑ませて頂きまショー、伝説に!」
彼女は神ではない。サイボーグだ。けれど、それでも意気揚々と戦いの場に繰り出す。
『量産型クライング・ジェネシス』が原初の炎に体を包み込む。
それは移動ができなくなるが、如何なる攻撃をも通さぬ無敵なる体へと変貌するユーベルコードであった。
まさにオブリビオン・フォーミュラに相応しき力であり、これが量産されたという事実が『アシュラレディ』の妄執の凄まじさを物語っているだろう。
「なるほど、強敵でありますな。下手に近づけば燃えてしまいマスネー。であれば!」
彼女の瞳が輝く。
「六式武装展開、鉄の番!」
告げる言葉はユーベルコードの解錠。
手にしたチェインハンマーは、鉄拳制裁(アイアンフィスト)とばかりに『量産型クライング・ジェネシス』へと叩きつけられ――なかった。
バルタンの一撃は狙いを大きくはなれて地面を叩き割る。
凄まじい力は『量産型クライング・ジェネシス』の足場を崩す。ぐらりと揺れる巨体。
そう、一歩も動けなくなる代償に『量産型クライング・ジェネシス』はその絶対無敵為る原初の炎に包まれており、攻撃を受け付けない。
「ならば、無敵を維持したまま落下するか、炎を解いて――!」
バルタンがウェポンラックからグレネードランチャーやガトリングガンを展開する。
チェインハンマーによって叩き割られた大地は、『量産型クライング・ジェネシス』の体を穿たれた大穴へと叩き落とす布石でしかなかったのだ。
巨体が沈む。
動くことはできないが、それでも大穴に落とされては這い上がるためにユーベルコードを解除しなければならないだろう。
けれど、それを狙うのはバルタンの全部そうであった。
「一斉射撃を受けるか! お選びくだサイ、量産ゴッド!」
選択肢などなかったのだ。
放たれた弾丸、グレネードが火線を引いて大穴へと放たれる。絶え間なき爆風が大穴の中で吹き荒れ、『量産型クライング・ジェネシス』の怨嗟の咆哮が響き渡る。
それは消滅というあっけない結末。
迫る二択に寄って為し得たバルタンの勝利の爆炎であった――。
大成功
🔵🔵🔵
穂村・理恵
私はちょうどあの戦いの頃にこの体になったし、
あの頃はそれどころじゃなかったから直接は知りませんけれど
それでも、先輩のヒーローたちが立ち向かった敵を前に、引くわけにはいきません!
相手の狙いを考えると、あの炎をそのままにしておくのはまずい気がします……
だから、お願い、【吸熱炎霊】!
相手の攻撃に対しては私本人は竜の翼を出して回避を試みて、
燃えている炎は炎霊達に無力化をしてもらいます
確かにすごい炎ですけれど、私と炎霊達だってこのぐらいで退いてなんかいられません……!
例え神代の炎であっても、抑え込んで見せます……!!
(気が付いていないが、胸元の宝石、古き魔術の込められし『炎霊の紅玉』が紅く輝いている)
戦いの歴史は紡がれていく。
人類の歴史はそういうものである。現在が過去になる時、時間は進む。時が逆巻くことはない。
それは例え神なる者の力をもってしても為し得ることのできないことであった。
けれど、『量産型クライング・ジェネシス』は違う。
マンハッタンの地下工場より飛び立ち、空より睥睨する『量産型クライング・ジェネシス』の虚の如き憎悪は闇を深くし、胸や手のひらに備えられた『骸の海射出装置』より放たれた弾丸が、大地を塗り替えていく。
そう、射出されるのは『骸の海』そのもの。即ち『過去』である。
放たれた『過去』は現在を侵食し、染みのように世界を染め上げていく。
「THEEEEEEND!」
咆哮と共に世界が塗り替わる。
絶え間なき炎。溢れる生命力。それは『神々の時代』と呼ばれた過去の地球であった。
時は逆巻くことはない。
けれど、世界のルールは染め上げることができる。世界というテクスチャの上にルールを重ね、今ヒーローズアースは『神々の時代』の世界の理を現実のものにしていた。
「させません! 私でも、できることをやります!」
炎が染め上げる世界に飛び出したのは、穂村・理恵(普通の武装変身魔法少女・f26637)であった。
魔獣の体を持つ少女。
かつて悪の科学者が生み出した魔獣に取り込まれ、バイオモンスターへと成り果て、されど正義の心に寄って人を助けることを選んだ少女だ。
彼女は確かに『アースクライシス2019』のおりに、その体へと変わった。当時はそれどころではなかったし、直接は知らないことばかりだった。
けれど、と彼女は思うのだ。
今自分の足を突き動かしているのは、あの時自分を助け出してくれた先輩ヒーローたちが在るからだ。
ならば、己が彼等の立ち向かった敵を前に退くことはしてはならない。
「あの炎……! あれが『過去』の世界のルール!」
周囲を染め上げていく炎は、かつてのヒーローズアースの世界そのものなのだろう。けれど『過去』だ。
今は『神々の時代』ではなく、人の生きる時代だ。
ならばこそ、それをほうってはおけない。
「だから、お願い! 吸熱炎霊(フレイムイーター)!!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
放たれる動物型の炎たち。それは理恵の願いを受けて、神代の炎すらも吸収していく。
「THEEEEEEND!」
『量産型クライング・ジェネシス』の怨嗟の咆哮が世界に轟く。理恵は身を竦ませようとして、けれど心を奮い立たせる。
どれだけ強大な敵であっても、と彼女は一歩を踏み出したのであれば、彼女もまたヒーローである。
巨大な竜翼を体より現出させ、理恵は世界を見下ろす。そこには動物型の炎たちが『量産型クライング・ジェネシス』の放つ『神々の時代』の炎を吸収していく光景があった。
「確かにすごい炎ですけれど、私と炎霊達だって、このぐらいで退いてなんかいられません! 例え神代の炎であっても、抑え込んで見せます……!」
彼女自身は気がつくことはなかった、彼女の胸元の宝石が煌めく。
古代の魔術が込められた遺物。謎の紅い結晶体が、彼女の思いに応えるようにして輝きを増していくのだ。
炎の動物たちが神代の炎を吸収して巨大化し、その身を一つにしていく。
『量産型クライング・ジェネシス』が『過去』を射出するというのならば、その神代の炎をもって強化された炎霊は巨大な腕となって、理恵の輝く瞳と紅玉に従うように振り下ろされる。
神代の炎を凝縮した一撃は、『量産型クライング・ジェネシス』を一撃のもとに蒸発させ、凄まじい爆風を吹き荒れさせる。
それは過去との決別。
理恵自身が至ることのできた境地。
いつか見たヒーローたちの背中を追い、そして彼等の軌跡をなぞる道の到達点……いや、スタートラインに今立ったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
陽向・理玖
再生怪人の上量産型って
…雑魚じゃん
龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身っ!
衝撃波撒き散らし残像纏い手近な敵にダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る
そのまま近くの敵に吹き飛ばし
後追い廻し蹴りでなぎ払い
一気に倒す
…やっぱ雑魚じゃん
もっと強かったけどな
全然コピー出来てねぇ
フェイントでしゃがみ足払い
発射装置目掛けて限界突破し力の限り蹴り入れて部位破壊
ほらこんな簡単に破壊できるし
大体あれからもうじき2年だぜ
あの頃の俺じゃねぇ
どんだけ強くなったと思ってる
そんな幻影でやれるか
攻撃見切りUC
暗殺用い目に見えぬスピードで背後から一気に加速
衝撃波と共に蹴りの乱れ撃ち
見えなきゃ攻撃出来ねぇだろ
永遠に過去漂ってろ
「再生怪人の上、量産型って……雑魚じゃん」
陽向・理玖(夏疾風・f22773)は、マンハッタンの街でそう呟いた。
彼にとって『クライング・ジェネシス』はすでに乗り越えた敵であるのだろう。それが今更現れたところで、あの時の激戦を思い出すわけではない。
手にした龍珠を弾き、竜の横顔を模したバックルに装着する。それこそが、アームドヒーローたる彼の力の発露であった。
「変身っ!」
全身を覆う装甲。
煌めく青と黄の姿は、衝撃波を纏い『量産型クライング・ジェネシス』へと突っ込む。
「BAOOOOOM!」
しかし、『量産型クライング・ジェネシス』は迎撃するように『骸の海射出装置』より弾丸である『過去』と幻影を放つ。
それは相対する理玖をコピーしたものであり、同一の力を持つ存在であった。
けれど、彼は怯むこと無く拳を叩きつける。衝撃波を伴った残像と共に幻影を殴り倒し、追い打ちするように回し蹴りを放ち、一気に打倒するのだ。
「……やっぱ雑魚じゃん」
そのままの勢いでユーベルコード、閃光烈破(アクセラレート・エリミネーター)の力でもって飛翔し、超高速の衝撃波と凄まじい拳と蹴撃でもって『量産型クライング・ジェネシス』を圧倒する。
あれから二年。
『アースクライシス2019』と呼ばれた大きな戦いから、それだけの時間が立っているのだ。
あのときはもっと強大な敵であるように感じられたのだ。
オブリビオン・フォーミュラ。その言葉の意味するところと、己の力の差を知った戦いであったことだろう。
けれど、それでも『量産型クライング・ジェネシス』は大群として現れても、彼の心に恐怖は染み出すことはなかった。
「もっと強かったけどな! 全然コピーできてねぇ!」
放たれる『過去』の弾丸を躱し、理玖の足払いが『量産型クライング・ジェネシス』の体を大きく傾がせる。
巨体がよろめき、そこへ理玖の蹴撃が飛ぶ。
渾身の力を持って放たれた一撃が『骸の海射出装置』を粉砕し、その腕を破壊する。
「ほらこんなに簡単に破壊できるし……大体あれからもうじき二年だぜ。あの頃の俺じゃねぇ。どれだけ強くなったと思ってる」
再び理玖をコピーした幻影が彼を襲う。
しかし、その蹴撃を拳の放つ衝撃波でいなし宣言するのだ。
「そんな幻影でやれるか」
一瞬で幻影の背後に回り込み、目にも終えぬスピードでもって一気に加速し、衝撃波を伴いながら蹴撃でもって幻影を貫く。
さらにそのままの勢いで彼は『骸の海射出装置』を喪った『量産型クライング・ジェネシス』へと迫る。
衝撃波で囲い込み、蹴撃でもってジリジリと削り取っていく。
「見えなきゃ攻撃出来ねぇだろ」
一撃で倒れないのであれば、二撃。二撃で倒れないのであれば、倒れるまで蹴撃を繰り返すのみ。
今の彼ならば、それができるのだ。
凄まじい速度で放たれる蹴撃はまるで砂嵐のように『量産型クライング・ジェネシス』を取り囲み、ジリジリと体を削り取るのだ。
そんな彼の身体が宙高く舞い上がる。
みなぎるユーベルコードの力。それは過去に因われ、過去に執着し、過去を再現しようとするオブリビオンの妄執を断ち切る一撃。
「永遠に過去に漂ってろ」
自身は前を向く。
一歩一歩確実に未来に進んでいく。その決意を現すように理玖の放った蹴撃が『量産型クライング・ジェネシス』の巨体を切り裂き、霧散させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
稷沈・リプス
種族『神』なので大蛇姿になる「自称:人間だった男」(エジプト系。モデルはアポピス)
愚かな。神代回帰させるとは愚かな。我を戒める鎖も縄もなく、我は自由の身なれば。
【夜の舟】よ、作り主(※故神)によって付与された力により自動航行せよ。ただあの愚か者への太陽属性の攻撃を。
そして、我はその攻撃のあとに噛みつこう。
神々の炎がどうした。我は蝕神■■■■。神である、惑うことなし。
その火は太陽に負けよう。【夜の舟】の攻撃がそれを吹き飛ばそう。
愚か者よの。ここは既に人の世であり、神がどうこうするものではないのだ。
どのような企みがあれ、それを阻止するは猟兵としてここを訪れているからだ。
世界を塗りつぶす絶え間なき炎は、その理を持って『神々の時代』へと引き摺り戻す。
生命力に溢れ、世界はルールを変える。
あらゆる場所に生命の源が充満している。それが神が生まれた土壌であるというのならば、『神』という存在は人の時代を生きるための枠組みを捨て去ることになるだろう。
『アシュラレディ』が本来の神性を取り戻し『戦神アシュラ』としての姿を取り戻すことを望んだように、稷沈・リプス(明を食らう者・f27495)もまた神たる身であれば、本来の姿を取り戻してしまう。
曰く、『日食』と『月食』を意味する神。
太陽の運行を阻み、人の生を噛み殺す。
大蛇の姿となったリプスは『呪われた神』そのもの。
「愚かな。神代回帰させるとは愚かな」
その言葉は本来の神としてのものであろう。解き放たれ、凄まじい力の発露をもって、『アシュラレディ』の行いを愚かだと彼は断じた。
『量産型クライング・ジェネシス』の『骸の海射出装置』から放たれる『過去』の弾丸がマンハッタンの街を染め上げていく。
至るところが『神々の時代』と同じ光景へと変わっていく。
人びとが積み上げた技術や歴史、そうしたもの全てを塗りつぶす行いは、リプスにとっては愚行そのものであった。
「THEEEEEEND!」
『量産型クライング・ジェネシス』の放つ大量の過去がリプスを襲い、周囲を炎で包み込むが、それはあまりにも無意味であった。
「我を戒める鎖も縄もなく、我は自由の身なれば」
その大蛇の瞳がユーベルコードに輝く。
「夜の舟(ウイア・メセケテト)よ、作り主によって付与された力により自動航行せよ。ただあの愚か者への太陽の輝きを」
巨大な木造船が召喚される。
その上に並び立つのは弓や剣、魔法杖で武装された動物の頭部を持つ人間たちの姿があった。
その数は凄まじいものであり、リプスの言葉どおり、掲げた剣の刀身が、放つ弓矢の鏃が、詠唱に寄って魔法杖より紡がれた太陽の輝きが『量産型クライング・ジェネシス』の身体を焼く。
例え、世界というテクスチャを塗りつぶす炎があったのだとしても、今のリプスには関係のないことであった。
大蛇の身体が蠢き、太陽すらも飲み込む巨大なる顎が開かれる。
「神々の炎がどうした。我は蝕神■■■■。神である、惑うことなし」
輝ける太陽の光は、神代の炎とてかき消す。
夜の舟より放たれ続けるユーベルコードの輝きは、『神々の時代』という『過去』によって侵食された大地を吹き飛ばしていく。
「愚か者よの。此処は既に人の世であり、神がどうこうするものではないのだ」
言葉が響く。
巨大な顎は今にも『量産型クライング・ジェネシス』を飲み込まんとしている。
リプスにとってオブリビオンは打倒すべき敵である。情状酌量の余地などこにもない。
すでにヒーローズアースは人の時代である。
一つの時代が終わりを告げ、新たなる時代を紡いでいく。
それは時が逆巻くことのないように、決して後戻りなどしないものだ。例え、後退したのだとしても、『過去』と同じになることはない。
それを目論むことこそ、リプスは愚かだと断じる。
「GAAAA!!」
『量産型クライング・ジェネシス』が咆哮する。
怨嗟であり、憎悪であったが、それすらも蝕む神は一呑みにしてしまう。あらゆるものを飲み込み、滅ぼす。
それがリプスという本来の神としての力を発露させた者の強大さであった。
彼の顎の中で『量産型クライング・ジェネシス』が砕けて霧散していく。
「どのような企みがあれ、それを阻止するのは猟兵としてここを訪れているからだ」
そう、どれだけ『アシュラレディ』が世界を『神々の時代』に戻そうとしたとしても、全てを打破する存在がいる。
かつて太陽を飲み込み、人のそばにありて恐れられた大蛇。
嘗ての名を呼ぶことは能わず。されど、その姿を見て恐怖せよ。如何なる大群であろうとも、喰尽の名を持つ者の前には等しく無力であると――。
大成功
🔵🔵🔵
月白・雪音
…この世界においても、先の戦に現れた大戦力の残滓の量産が始まりましたか。
ヒトの祖であらばこそ、太古の神にも嘗て生きた自らの世への渇望、郷愁がありましょう。
されど今この時はヒトの生きる未来、それを否定し過去へ染めんとすならば。
――今の世において培った武を以て、貴方がたを討ちましょう。
UC発動にて、怪力、残像、グラップルでの高速格闘戦にて戦闘展開
生み出された自らの幻影の動きを野生の勘と見切り、そして積み上げた武の理を以て
察知、予測、最適な動作にてカウンター
残像にて本体に肉薄、部位破壊、怪力にて骸の海発射装置を破壊する
私の力を最も知るは私自身に他ならず。
なればこそ今この場にて、先の己を上回るまで。
ヒーローズアースは様々な時代を経て、今日に至った世界である。
嘗て在りし猟兵たちがオブリビオン・フォーミュラに立ち向かった戦いも過去のことである。
『アースクライシス2019』――それは猟兵とオブリビオンの決戦であった。
首魁たる『クライング・ジェネシス』は『骸の海射出装置』と呼ばれる『過去』を弾丸として敵に放ち、『過去』でもって世界を染め上げようとしていた。
そして、今日マンハッタンの空より大地を睥睨し、『過去』によって『神々の時代』へと引き摺り戻さんとしているのは、『量産型クライング・ジェネシス』である。
その大群とも呼ぶべき数は、次々と世界を塗り替えていく。
世界のルールを塗りつぶし、絶え間なき炎と溢れる生命力に寄って世界を神代の頃へと戻す。
そうやって嘗ての神性を取り戻そうとしているのが『アシュラレディ』である。
「……この世界においても、先の戦に現れた大戦力の残滓の量産が始まりましたか」
月白・雪音(月輪氷華・f29413)は、絶え間なき炎に塗れた地上を見やる。
この光景こそが太古の地球。
嘗て在りし『神々の時代』の再現である。しかし、雪音はそれを肯定することはなかった。
「ヒトの祖ならばこそ、太古の神にも嘗て生きた自らの世への渇望、郷愁がありましょう。されど」
彼女は構える。
己の研鑽をヒトが紡いできた研鑽の縒り糸となった拳武(ヒトナルイクサ)を以てこれに相対するのだ。
「今此のときはヒトの生きる未来、それを否定し、過去に染めんとするならば」
放たれた『過去』の弾丸を残像を生み出すほどの速度でもって踏み込み、紙一重で躱す。
されど、弾丸となった『過去』は、それだけで世界を塗り替えていく。
絶え間なき炎は上がり、生命力が溢れていく。悠長に躱している暇はない。雪音は踏み出す。
己のユーベルコードが瞳に輝く限り、これこそが弱きヒトが至りし闘争の極地であると、己の戦の粋であることを示すのだ。
「幻影……」
打ち出された『過去』は何も原初の地球の光景だけではない。
相対する猟兵すらもコピーし、彼等へと対峙させる。されど、雪音は息を吐き出す。
呼吸を整える。
同一の己の幻影であれど、何も恐れることはない。
武の理を以て幻影が拳を、蹴撃をもって互いを打ち据える。躱し、掠め、それでもなお雪音は思ったのだ。
知っていると。
「――今の世において培った武を以て、貴方がたを討ちましょう」
踏み込む。
もはや知っているのだ。己のことは己が一番知っている。限界も何もかも。だからこそ、雪音は前に進む。
後退は衰退と同じである。弛まない練磨こそが己の四肢を構成しているのならば、己が越えられぬ道理などないのだ。
幻影が放った拳が頬をかすめる。
己の限界を今此処で越えていく踏み込みは、幻影へと至近距離での肘打ちでもって貫く。
大地を蹴る。もうわかっていることだ。今の己を超えた。ならば、対する『量産型クライング・ジェネシス』は、此処で打倒される存在であると。
「これこそが我が戦の粋。今よりも先へ。限界を超えた――」
残像伴い肉薄する雪音の拳が『量産型クライング・ジェネシス』の『骸の海射出装置』を打ち砕く。
胸よりひび割れ、その穴を、虚を日々割らせ『量産型クライング・ジェネシス』の怨嗟の咆哮が世界に溢れる。
されど、その怨嗟すらも薙ぎ払って雪音は前に進む。
それこそが、ヒトの戦いであると知るからこそ、彼女は立ち止まることをせず、連綿と紡がれた先を己もまた紡ぐのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
これまでもそうであったように。
これからも未来は、猟兵が守り抜きますとも
《戦士の手》と共に!
同じ能力の幻影ですか
実体を持たぬ存在が脅威になると思わないことです
私の培ったものはただの能力だけではありませんから!
【勇気】と【覚悟】を胸に、いざ!
幻影とクライング・ジェネシス両者に囲まれるのを避け、
【力溜め】た【なぎ払い】【衝撃波】で
幻影を先に消す
私の【野生の勘】【戦闘知識】までは
幻影も模倣できないでしょう
クライング・ジェネシスに【ダッシュ】で向かい
【怪力】【功夫】を生かした打撃を叩き込んでいきましょう
相手からの攻撃も【オーラ防御】で受けと共に体勢を崩し
【グラップル】の投げを打つ
未来は、私達で拓きます!
猟兵にとって戦いは日常である。
世界の悲鳴に応える選ばれた戦士であるからこそ、それは否応なく彼等に降り注ぐ。けれど、その降り注ぐ争いは、本来であれば無辜の生命を脅かすものであった。
ゆえに彼等はためらわない。
どれだけ危険が待ち受けようとも、どれだけ強大な敵が目の前に立ちふさがろうとも。
決して、後退することはない。
「これまでもそうであったように。これからも未来は猟兵が守り抜きますとも、戦士の手(センシノテ)と共に!」
ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)のユーベルコードが輝く。
その輝きは、絶え間なき炎と生命力に溢れる場にあって、ひときわ輝くものであった。
『量産型クライング・ジェネシス』の咆哮が轟く。
「BAOOOOOM!」
『骸の海射出装置』より放たれた幻影がユーフィを襲う。
けれど、それは『過去』に過ぎない。今目の前に対峙している猟兵の幻影を生み出し、すり潰さんとするユーベルコードに過ぎない。
己と同じ姿、同じ能力を持つ幻影にユーフィは怯むことはなかった。
「同じ能力の幻影ですか。実体を持たぬ存在が脅威なるとは思わないことです」
彼女は駆け出す。
躊躇いも、怯みも、彼女の中には必要のないことだった。
いつだって彼女の心にあるのは勇気だけだった。
何度も経験してきたことだ。オブリビオンはいつだって人の心の闇を、弱い部分をついてくる。
けれど、彼女が連綿と紡いだ鍛錬の結実は、実践においてこそ花開くものなのだから。
「私の培ったものはただの能力だけではありませんから! 勇気と覚悟を胸に、いざ!」
幻影とユーフィが拳を打ち出す。
まったくの同時。同じ力、同じ速度。放たれた一撃は衝撃波を周囲に撒き散らし、絶え間なき炎を揺らす。
それでもユーフィは幻影を前に手強いと感じることはなかった。
何故ならば。
「私の野生の勘を、そして、これまで培ってきた戦闘知識までは幻影も模倣できないでしょう。これが今まで私が歩んできた道程!」
放たれた拳が野生の勘所を捉えて幻影の頭部を撃ち貫く。
霧散し消えて行く幻影を振り払って、ユーフィが飛ぶ。己の怪力は功夫によって紡がれた力。
ならばこそ、振り下ろされた『量産型クライング・ジェネシス』の一撃をオーラのちからでもって受け止め、受け流す。
「BAOOOOM!」
咆哮が轟き、その巨体が傾いだ瞬間、ユーフィが一歩を踏み出す。
「殴りっこなら負けません。勝負っ!」
その言葉と共に放たれるユーベルコードの一撃は、凄まじい拳となって巨体の胸に備えられた『骸の海射出装置』を砕く。
さらにユーフィは『量産型クライング・ジェネシス』の腕部をつかみ、一本背負いの要領で背中から大地に叩きつけ、宙に舞う。
「未来は、私達で拓きます!」
裂帛の気合と共に宙に舞うユーフィの鍛え上げられた鋼鉄の如き肉体が飛来し、フライングプレスのように『量産型クライング・ジェネシス』の頭部を一撃のもとに粉砕する。
大地が割れ、炎が揺らめく。
その中にユーフィは立つ。
今は『神々の時代』ではない。人の時代だ。未来を切り開くのに、神は必要ない。必要なのは、いつだって勇気と覚悟だけ。
一寸先も見えぬ闇の中を覚悟という灯火で照らし、勇気を持って一歩を踏み出す。
そのためのものを人々はすでに持っている。
ユーフィは、ただその先導を買って出るだけだ。そのために彼女は戦士として戦い続けてきたのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
今になってこういった光景を見ることになるとは……
(量産型クライング・ジェネシスの集団を見てため息)
あの戦争で戦ったクローンは皆本体と同じ思考や意思を持っていましたが、そうではない様子……仮にそうだったら彼の性質からして大人しく従うはずもありませんしね。
であれば、脅威ではありませんね。
「フィンブルヴェト」を手に量産型クライング・ジェネシスが骸の海発射装置から『過去』を放とうとするのに合わせて【イージスの弾丸】を撃ち込み相殺し、出来た隙に氷の弾丸を撃ち込んでいきます。
かつての戦いでも見た技です。仮に本体と同様の狡猾さがあれば厄介でしたが……ただ振るわれるだけの力など、全て撃ち落とすまでです。
マンハッタンの地下工場より次々と『量産型クライング・ジェネシス』が飛び立つ。
それは人々にとって絶望の光景であったことだろう。
かつて『アースクライシス2019』において、オブリビオン・フォーミュラとして姿を顕した『クライング・ジェネシス』はあらゆるものを怨嗟の咆哮で持って塗りつぶした。
胸に、腕に備えられた『骸の海射出装置』は『過去』を弾丸として放ち、ヒーローズアースを骸の海に鎮めようとしていた。
「THEEEEEEND!」
放たれる『過去』は弾丸となって大地に着弾すれば、絶え間なき炎と生命力に溢れた場と変えていく。
それは世界の理を塗り替えていく行いと同様であった。
『神々の時代』――そう呼ばれた太古の地球へと世界のテクスチャを塗り替える。それが神性を取り戻さんとしている『アシュラレディ』の目的であった。
「今になってこういった光景を見ることになるとは……」
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は大挙として現れた『量産型クライング・ジェネシス』の姿にため息をついた。
彼女にとって『クライング・ジェネシス』とは、あの戦争で戦ったクローンと同じ様に共通の思考や意志を持っていた。
即ち全てを憎む怨嗟の権化。
それが『クライング・ジェネシス』であり、何かに従うということは一切なかった。けれど、『量産型クライング・ジェネシス』は違う。
『アシュラレディ』の駒の一つとして、従っているのならばセルマは恐れるに足りないと判断したのだ。
「彼の性質からいて大人しく従うはずもありません。その怨嗟も、憎しみも、理解すら拒絶するものも、全てないというのならば、脅威ではありません」
手にしたマスケット銃『フィンブルヴェト』とを手に構える。
彼女の瞳にユーベルコードが輝く。
『量産型クライング・ジェネシス』が『過去』を弾丸として放ち、世界を塗り替えようとしているのならば、それをさせぬのが猟兵である。
すでに世界は多くが『神々の時代』という過去に引き摺り戻されている。
けれど、これ以上はない。
此処に在るのはイージスの弾丸(イージスノダンガン)である。
「――今です」
引き金を引いた瞬間、まるでその瞬間決定していたかのように『量産型クライング・ジェネシス』より放たれた『過去』の弾丸をセルマの放った弾丸が真っ向から衝突し、消滅する。
それは『過去』が消滅したという凄まじき光景であった。
「――!?!?」
引き金を引く。
『量産型クライング・ジェネシス』が弾丸を放つ傍から凄まじい速度の早打ちでもってセルマは『過去』の弾丸を相殺し続けるのだ。
「かつての戦いでも見た技です。仮に本体と同様の狡猾さがあれば厄介でしたが……ただ振るわれるだけの力など、全て撃ち落とすまでです」
もはや『量産型クライング・ジェネシス』の……いや、『アシュラレディ』の目論見は叶うことはないだろう。
『神々の時代』はすでに終焉を迎えている。
ときが逆巻くことはないように、過ぎ去りし過去は未来の前に敗北するしかない。
セルマの放つ弾丸は、狙い過たず確実に放たれる『過去』を貫き、打ち消していく。
「最早終わった存在。その理解拒む憎悪もまた消え去る運命……此処にはもうあなたの居場所はないのです」
放たれた氷の弾丸が『量産型クライング・ジェネシス』の胸に空いた『骸の海射出装置』を貫き、内側から氷結させ、砕かれて霧散していく。
その光景をセルマは見送り、神代の炎溢れるヒーローズアース、マンハッタンの街を駆け抜けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸が目立ちすぎて忍べないとかそんなことないもんっ!!(お約束
あれですよね次作になると前作のラスボスが雑魚で出てくるっていう
あの強敵が…!的な
でもこーゆー時に空気を読まないのがクノイチでーす
というわけで!
かもんっ!『ファントムシリカ』!!
そそくさとまとめてぶっ飛ばしましょう!
【快刀乱麻】で広範囲を纏めて一掃しますよ!
「にゃんとなにゃんとかにゃんにゃんにゃん♪深淵より来りし蒼き剣よ、いっけー!」(詠唱です)
簡易型からの過去射撃はPシリカの機動力で残像を残す勢いで回避!
久しぶりにまともなキャバリア戦闘している気が!
ヒロアスですけど!
※アドリブ連携OK
大軍団の如き様相でもってマンハッタンの街中を闊歩する『量産型クライング・ジェネシス』たち。
その姿はまさに恐怖そのものであったことだろう。
嘗て『アースクライシス2019』の首魁であった『クライング・ジェネシス』の似姿でもって、『過去』を弾丸として放ち、『神々の時代』へと引き摺り戻さんとする力は、世界の理すらも塗り替えていくのだ。
絶え間なき炎と生命力に溢れた場所。
それはまさに神代の再現である。
だが、そんな絶望の最中にあっても響く前口上がある。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜み……胸が目立ちすぎて忍べないとかそんなことないもんっ!!」
お約束の前口上と共に現れたのは、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)であった。
こんな緊迫した事態であっても、彼女の明るさは人々にとっては救いそのものであったことだろう。
前口上がちょっとよくわからなくても、明るい声色はそれだけで人々の不安を払拭するものであったからだ。
「あれですよね次作になると前作のラスボスが雑魚で出てくるっていう。あの強敵が……! 的な」
さすがはバーチャルキャラクターである。
一般人にはよくわからないロマンめいたことを呟きながら、こういう時に空気を全く読まないクノイチたるサージェは、腕を掲げ指を鳴らす。
「かもんっ!『ファントムシリカ』!!」
瞬間現れたのは、『ファントムシリカ』であった。白と紫を貴重としたキャバリアがサージェの背後に降り立ち、彼女は、とうっ! とひと声かけてコクピットに収まる。
敵である『量産型クライング・ジェネシス』が巨大であるのならば、こちらも5m級の戦術兵器で対抗しようというのである。
「THEEEEEEND!」
放たれる『過去』の弾丸をサージェは『ファントムシリカ』と共に躱し、宙を舞う。
「そそくさとまとめてぶっ飛ばしましょう! そうるぶれいかーっ!!」
それはまさに快刀乱麻(ブレイクアサシン)と呼ぶに相応しき戦術軌道であった。
「にゃんとなにゃんとかにゃんにゃんにゃん♪ 深淵より来たりし蒼き剣よ、いっけー!」
いや、それ以上に気になるのが、なんかよくわからない詠唱であった。
此の場の誰もが理解することの難しいものであったが、サージェにとっては関係ないのであるにゃん。
にゃんと語尾に映るたぐいのあれである。
「そういうんじゃないですけど! しかし、久しぶりにまともなキャバリア戦闘している気が! ヒーローズアースですけど!」
サージェは鋼鉄の巨人であるキャバリア『ファントムシリカ』と共に巨大な三日月状のエネルギーはを解き放つ。
それは一直線に突き進み『量産型クライング・ジェネシス』たちを巻き込んで一刀のもとに両断していく。
凄まじい衝撃波が大地に刻まれ、絶え間なき炎をかき消し、『過去』に滲んだ世界のテクスチャすらも切り裂いて『ファントムシリカ』が飛ぶのだ。
「BAOOOOM!」
怨嗟の咆哮などなんのそのである。
サージェにとって、その怨嗟が何であるかをしることはないだろう。どれだけ『過去』の弾丸を放つのだとしても、サージェと『ファントムシリカ』を捉えることはできない。
それは彼女が何物にも囚われぬものであるからかもしれない。
枠組みはあれど、それでも自由なる姿形を持つバーチャルキャラクター。その可能性を体現するようにサージェは『量産型クライング・ジェネシス』を翻弄し、振るったエネルギー波でもって、『過去』を切り裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
現場の影響で神の姿となり、増大した力による結界術で近くにいる人々を護る巨大で堅牢な防御結界を形成。
同時に巨大化した天耀鏡を人々の前面に配置し、盾受けでかばえるようにする。
「今を生きる人々と世界を護る為、私は神として力を振るいます!」と宣言し、UC発動。
身体にオーラ防御を纏い、空中浮遊で宙に浮かび、念動力で自分を動かしつつ空中戦能力で空を自在に翔け、UC効果+第六感・見切りで相手の攻撃を舞うように躱しつつ接近。
煌月に光の属性攻撃・神罰を籠めてのUC効果+なぎ払い・鎧無視攻撃で、相手を次々と斬り倒します!
尚、増大した力で攻撃して人々や建物に被害を出さないよう、攻撃範囲は煌月の届く範囲に限定します。
揺らめく炎。
溢れる生命力。
それは太古の地球そのものであり、『神々の時代』と呼ばれた『過去』に相違ないものであった。
懐かしさを感じる暇すらなかったであろう。
なぜなら、このテクスチャの如き『過去』によって覆われているのはオブリビオンである『量産型クライング・ジェネシス』の『骸の海射出装置』より放たれた結果であるからだ。
今は人の時代。
『神々の時代』は終わりを告げ、人の足で歩む時代であるのだ。
だからこそ、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は天女の羽衣を身にまとった嘗ての神性を全開にした姿でもってヒーローズアースに降り立つ。
その姿は、まさに神性の発露そのものであった。
「今を生きる人々と世界を護る為、私は神として力を振るいます!」
神威発出(シンイハッシュツ)。
それは皮肉にも、『量産型クライング・ジェネシス』の齎したテクスチャ、『神々の時代』の再現たる此の地においてこそ、最大の力を発揮することだろう。
神の威を示すユーベルコードの輝きに包まれた詩乃の放つ結界は、堅牢なる防御結果いとなって戦いに巻き込まれかねない人々全てに施される。
巨大な天耀鏡が人々の全面に降り立ち、猟兵とオブリビオンとの戦いに人びとが巻き込まれぬようにと、彼女本来の優しさでもって守護するのだ。
彼女の宣言は人々の心に響き渡ったことだろう。
神ならぬ身であったとしても、詩乃の神性は人々の心を不安や来うふより解き放つ。
「神の威を此処に知らしめましょう」
揺らめく炎の最中、『量産型クライング・ジェネシス』の咆哮が響き渡る。あらゆるものを拒絶する怨嗟。理解すらも拒む悪性を前にして、詩乃ができることは疾く打ち倒すことだけである。
全身を覆ったオーラが若草色に輝き、『過去』の弾丸を躱しながら宙を舞う。
それはまるで天女が踊るような幻想的な光景であった。
手にした薙刀が振り上げられる。
その刀身に映った『量産型クライング・ジェネシス』の姿は、あまりにも歪なものであったことだろう。
何もかもをも憎しみでもって相対する歪んだ生命。その複製された存在が、また人々を脅かすというのであれば、詩乃に躊躇いはなかった。
「神罰を受けなさい。その生命が脅かす未来は、あってはならないのです」
「BAOOOOM!」
放たれた神罰込められし、薙刀の刀身が煌めく。
薙ぎ払われた『量産型クライング・ジェネシス』たちが次々と霧散していく。彼女が舞った後に、一体たりとて討ち漏らされた敵は存在しない。
凄まじい力の発露。
されど、その攻撃の余波は人々に及ぶことはなかった。建物すら傷つけることはなかったのだ。
本来であれば、不可能な芸当。
されど、今此処に立つのは『神々の時代』という世界のルール。
であればこそ、詩乃という神は、此処に在りて絶大なる力を振るう。彼女の手にした薙刀の刀身が、その名の通り煌めく月のように人々に安寧の光として降り注ぎ、この戦いの終息を思わせた――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
さて、束の間とはいえ封印から解き放たれて自由ですの
神々の時代で世界を停滞させる
というのも悪くないのですけれど
あまり美しいとは感じませんの
少々騒がしいですし
もはや永遠とすべき今ではありませんの
邪神でも一応神ではあるんだね…
不安が無い訳ではないけれど
主義に反する事はしないだろうから大丈夫だと思うよ
この世界でヒーローとして得られる信仰も必要っぽいしね
ちなみに呪縛のない邪神降臨のような状態だよ
まずは騒がしい方々に静かにして頂きますの
過去を弾丸にしているようですので
いくらか頂いて力に換えさせて貰いますの
その後は周囲の炎ごと凍らせましょう
UDC組織の方々に教えて頂きましたの
再生された敵役は弱くなっていると
邪神の慈悲(マーシフル・サイレンス)とは如何なるものであったことだろうか。
「永遠を差し上げますの」
その問に佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の身に融合した邪神が応える。
彼女にとって、停滞の権能を司ることこそが存在意義そのものであったのかもしれない。
邪神であれど『神々の時代』のテクスチャは体によく馴染むものであったのかもしれない。
晶の体に融合する形で封じられてはいるものの、世界のルールを塗り替えた『量産型クライング・ジェネシス』の『骸の海射出装置』よりはなたれた『過去』は、彼女の力をユーベルコードとして発現させるのだ。
宵闇の衣より万物に停滞をもたらす神気。
それが周囲に点在する『量産型クライング・ジェネシス』たちの動きを止める。
「さて、束の間とは言え封印から解き放たれて自由ですの。神々の時代で世界を停滞させるというのも悪くはないのですけれど」
それはあまり美しいとは言えない。
邪神にとってのこだわりは人には理解し難いものであったことだろう。
「BAOOOOM!」
怨嗟の咆哮が轟く。
それも一つや二つではない。猟兵達によって駆逐され始めているとはいえ、未だ『量産型クライング・ジェネシス』の脅威は拭い去られたわけではない。
停滞とは即ち静謐そのものであろう。
音のない静寂の世界。それこそが彼女が求め、美しいと感じるもの。
なればこそ、この『神々の時代』というテクスチャにまみれ、怨嗟の咆哮を轟かされ続けているマンハッタンは美しいとは言えるものではなかった。
「もはや永遠とすべき今ではありませんの」
晶は邪神によって体の主導権を奪われた状態で、冷静に分析する。
邪神であれど神であることには変わりないのか。不安がないわけではないけれど、これまでの経験上、邪神が主義に反することはしないだろうと思ったのだ。
この世界でヒーローとして得られる信仰をも必要としているのは、間違いない。
ならば、この『神々の時代』と呼ばれる世界のルールは、晶たちにとって能力を増す土台でしかないのだ。
「まずは騒がしい方々に静かにしていただきますの」
邪神が手をかざし、放たれた『過去』の弾丸を空中で固定する。それは停滞をもたらす神気によってこそなされる技であり、固定された『過去』はそのまま力となって取り込まれてしまう。
「ふぅ……あまり好みではありませんが。永久凍結の力、その身を持って知るがよいですの。それに」
くすりと邪神が笑う。
放たれた永久凍結の力をもたらす万物に停滞もたらす神気が『量産型クライング・ジェネシス』たちを包み込み、周囲の炎ごと凍らせていく。
炎すら凍らせる停滞の権能。
その力の凄まじさ、それは『神々の時代』にあってこそ最大の力を発揮するものであったことだろう。
何もかもが停滞し、音すらしない世界。
それを邪神は愛しているのだろう。美しいものを美しいままに。傲慢とも取れるたった一つの目的。そのためにこそ邪神は力を振るう。
「UDC組織の方々に教えて頂きましたの。再生された敵役は弱くなっていると」
「それはアニメだとかマンガだけの話だろ!」
晶の言葉が響き渡り、されど、この停滞の権能、その神気がもたらす世界には誰の耳にも届くことはなかっただろう。
そう、『量産型クライング・ジェネシス』たちであっても、その言葉は響くことなく、凍結した体を砕かれ、霧散し消えて行くしかなかったのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
嘗て激戦を繰り広げた敵の首魁
似姿とはいえ、それが知性を奪われ暴れる様はいっそ哀れですらあります
…嘗てのあのフォーミュラは『哀れみ』こそ憎んでおりましたか…
原初の時代は人々にとって過酷その物
騎士として、かの戦いを潜り抜けた者の一人として
嘗ての戦神の企てを打ち砕きましょう
炎に包まれたあの状態…対策はありますが先ずはひと当てと参りましょう
放たれる炎を脚部スラスターの推力移動織り交ぜた疾走で躱し、時に盾で受け剣で切り裂きつつ格納銃器を発砲
…やはり、届く前に炎に焼き尽くされますか
ですが熱量の計測は終わりました
後は、それを上回る熱量で打ち破るまで!
今まで充填していたUC解放
動けぬ敵群を巨大光剣で撫で斬り
「GAOOOOOH!」
怨嗟の咆哮が世界に轟く。
『量産型クライング・ジェネシス』――それは嘗て『アースクライシス22019』と呼ばれるオブリビオンと猟兵との大きな戦いにおいて現れたオブリビオン・フォーミュラの似姿である。
身を覆う原初の炎は、あらゆる攻撃に対して無敵となるユーベルコード。
されど、大群として存在する姿は、いっそ哀れであるとトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は嘗ての戦いを想起し、アイセンサーを揺らめかせた。
知性を奪われ、ただ怨嗟を撒き散らす『骸の海射出装置』としての役割だけをまっとうする姿。
それを哀れむ心がトリテレイアにはあった。
けれど、それは口には出すまいと思っていた。
「……嘗てのあのフォーミュラは『哀れみ』こそ憎んでおりましたか……」
他者の理解すら拒む憎しみ。
それがあったからこそオブリビオン・フォーミュラと呼ばれた所以であろう。
だからこそ、トリテレイアは『神々の時代』と呼ばれる太古の地球のテクスチャ、そのルールに塗れた絶え間なき炎の戦場を脚部スラスターの噴射光と共に駆け抜ける。
「原初の時代は人々にとって過酷そのもの。騎士として、かの戦いをくぐり抜けた者の一人として。嘗ての戦神の企てを打ち砕きましょう」
格納銃器が展開され、弾丸を持って『量産型クライング・ジェネシス』へと放たれる。
しかし、その弾丸は原初の炎によって焼かれてしまう。少しも貫通すること無く、『量産型クライング・ジェネシス』に傷を与えることができないのだ。
「……やはり、届く前に炎に焼き尽くされますか」
トリテレイアは冷静に分析する。
あの原初の炎はいわば『量産型クライング・ジェネシス』の鎧そのものである。
だが、鎧ではない。
炎なのだ。
「ですが、熱量の計測は終わりました。後は、それを上回る熱量で打ち破るまで!」
そう、ほぼ無敵と呼ばれた原初の炎。
されど炎であるのならば、それを上回る熱量で持って押し切ればいい。己の胴体から伸びたケーブルに接続されたコアユニット直結式極大出力擬似フォースセイバー(ダイレクトコネクトセイバー・イミテイト)の柄から白い粒子が漏れ出る。
すでに充填は終えている。
後は放つだけである。目の前の『量産型クライング・ジェネシス』が咆哮する。
再びまた滅ぼされることに対する怨嗟か。
それとも、あらゆるものにたいして憎しみを放ち続けなければならなかった理解拒むヴィランとしての本能か。
どちらにせよ、トリテレイアは己が剣を振るう理由を違えることはなかった。
そう、自分は騎士である。すでにそうあるべきと己で持って決めたのならば、例え理解を拒む存在を前にしても、振るう剣にゆらぎなどなし。
「……充填中断、刀身解放!」
開放された巨大剣はエネルギーの刀身を顕現させる。
天を衝くかのような巨大なエネルギーの奔流。それは原初の炎すらも焼き尽くす一撃となって振り下ろされる。
「すでに神々の時代は終わりを告げ、そして人の時代へと移り変わりました。ならばこそ、強大な炎は、生命すら焼くのです」
それをさせぬと振るわれた一撃が『量産型クライング・ジェネシス』を飲み込んでいく。
それは嘗ての『過去』すらも塗りつぶす『今』というユーベルコードの輝きであったことだろう。
人は超えていける。
どれだけ強大な存在であったとしても、それを乗り越えていくことができるだけの可能性を持っている。
その可能性を護るために己は騎士として剣を振るうのだと決めたトリテレイアはやはり、『誰かのため』と炉心を燃やすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジャム・ジアム
地下でこんな……やるじゃない、アシュラレディ?
その力、誰かの為
良い事に使わないんでしょ。させない
まず先陣ね
いい武器があるのっ!『疾影』!
『朱雷枝』の大鉈を振るってもらうわ
過去を放つ?避けてっ
……火、原初の炎ってこと?強化されるのね、厄介
攻撃は最大の防御、なるたけ打たせない
攻めて、攻めて!ジアムが援護する!
炎も頂くわ
『落差の坩堝』で熱を念動力に転化。私もパワーアップよ
羽を広げ空中戦・念動力と援護射撃『波花』の弾は飴玉よ
熱で溶けてひっつくわ
いっぱいくっついた?
迫る敵には『謎のレモン』のツタで足をすくい
避けて迫って、念動力で操る『楔なる鋼』の炎球で
飴玉を撃ち抜く
その薬は爆発するの、ねえ、お味はどう?
『アシュラレディ』の目論見は唯一つである。
嘗ての神性を取り戻すこと。ただそのためだけに世界を塗りつぶすのだ。
太古の地球『神々の時代』と呼ばれた『過去』によって現在を塗りつぶし、その上でもって己の神性を取り戻すことを望む。
それは今を生きる人々にとって絶望でしかない。
『量産型クライング・ジェネシス』の『骸の海射出装置』より放たれる『過去』の弾丸は、次々と大地を絶え間なき炎と生命力に溢れた場へと変えていく。
その揺らめく炎を見て、ジャム・ジアム(はりの子・f26053)は呟く。
「地下でこんな……やるじゃない、『アシュラレディ』?」
彼女の瞳が炎に揺らめく。
たとえ、嘗ての戦神であれ、その神性を取り戻したとして、彼女がきっと誰かのために使うことはないだろうとジアムは知っていた。
良いことには決して使われることはない。
必ず己の欲望のために世界を滅ぼすだろう。それがオブリビオンという存在であることをジアムはよく知っていた。
「だからさせない……『疾影』!」
彼女の言葉に応えるように虚空より現れるのはサイキックキャバリアの『疾影」であった。
彼女を手のひらに乗せ、コクピットに納める。
凶々しい巨大なつばあを広げ、その手にあったのは白銀の大鎌であった。ジアムの武装を貸し与え、振るってもらうのだ。
「BAOOOOM!」
迸る怨嗟の咆哮。
それは『量産型クライング・ジェネシス』の放つ世界を憎しみで満たす咆哮であった。『骸の海射出装置』より放たれる『過去』の弾丸が『疾影』を狙う。
「『過去』を放つ? 避けてっ!」
放たれた『過去』の弾丸を躱し、『疾影』が大地を疾走する。躱した『過去』の弾丸が大地に着弾し、炎を噴出させる。
それは世界をテクスチャでもって塗りつぶす力であり、周囲を『神々の時代』へと変貌させていく。
「……火、原初の炎ってこと? 厄介」
ジアムはだからこそ、攻めるのだ。守っていては負ける。必ず押し負けてしまう。
ならばこそ、『疾影』に言うのだ。
自分が援護するからと、歩みを止めず、弛まず攻め立てろと。放たれる一撃は凄まじいものであったが、それでも大群として存在している『量産型クライング・ジェネシス』の波は止められない。
「素敵ね、戴くわ」
そのつぶやきとともにジアムの瞳がユーベルコードと覚悟に輝く。その視線は、落差の坩堝(アジタート)。
炎の熱を念動力に転化させる力。
それらは周囲を炎で取り囲まれていたからこそ、その熱量を全てジアムの力と為す。
得た力の全てを『疾影』に送り込む。
凶々しい翼が巨大に広がり、その羽撃きは原初の炎すらもかき消して、大空へと舞い上がる。
広げた翼の巨大さは天を覆うほど。
されどジアムは見下ろす。あの悪意を、憎悪を振りまく存在を赦してはならぬと。広げた翼からバラバラと波花と呼ばれた飴玉鉄砲より放たれた花火弾が『量産型クライング・ジェネシス』へと降り注ぐ。
弾丸は飴玉。
ならば熱にこそ弱く、溶けては『量産型クライング・ジェネシス』たちに張り付いていく。
「いっぱいくっついた?」
ジアムが微笑む。空にある『疾影』を捉えんとする『量産型クライング・ジェネシス』たちを蔦が絡め取り、大地へと貼り付ける。
「そのお薬は爆発するの――」
ジアムが『疾影』のコクピットから姿を顕し、精霊銃を構える。楔石と鋼玉意志が輝いた瞬間、水と炎の獣が咆哮を轟かせるようにして巨大な火球を生み出す。
「ねえ、お味はどう?」
放たれた火球が飴玉が溶けた張り付いた『量産型クライング・ジェネシス』たちへと落ちた瞬間、連鎖反応するように飴玉弾丸に誘爆し彼等を炎の中へと飲み込んでいく。
『過去』は炎の中に。水は世界を覆うテクスチャを押し流すように。
今は『神々の時代』ではないことを知らしめるようにジアムは『疾影』と共に戦場へと舞い降りるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…再生怪人はお約束…とはいえ……よりによってクライングジェネシスを蘇らせるか…
…怨嗟の声は上げてるけど…量産じゃそれだけだね…
【尽きる事なき暴食の大火】を発動…
…簡易型骸の海発射装置から放たれている『過去』に向けて暴食の炎を奔らせ喰らわせるとしよう…
…『神々の時代』の火であろうとも…この大火の前ではただの燃料だ…
…そして大きくなった大火を量産型共に放ってしまおう…
…クライングジェネシスの恐ろしさは…その執念と狡猾さ…
…知性が失われ誰かの道具となっているなら…骸の海発射装置があろうとも恐ろしさは激減する…
…あいつは敬意すら感じる『敵』だったがお前らはそれには届かない…炎に包まれて燃えると良い…
「……再生怪人はお約束……とはいえ……よりによって『クライング・ジェネシス』を蘇らせるか……」
怨嗟の咆哮ばかりが世界に充満している。
それは嘗てのオブリビオン・フォーミュラ『クライング・ジェネシス』の持つ世界に対する憎悪とは程遠いものであるようにメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)には感じられていたかも知れない。
理解すらも拒む憎悪。
哀れみすらも嫌うヴィラン。
救いすらも必要としない敵を前にして、できることは唯一つしかない。それが救いであると思うことすら傲慢であると『クライング・ジェネシス』は嘲笑うだろう。
だからこそ、今マンハッタンの街を埋め尽くす『量産型クライング・ジェネシス』の咆哮は空虚そのものであった。
「BAOOOOM!」
轟く咆哮と共に『骸の海射出装置』より『過去』が弾丸として放たれる。
着弾した大地は揺らめく炎と溢れる生命力に寄って『神々の時代』へと塗りつぶされている。
これが太古の地球。
神々が人の形以外でも存在した時代。これを求めるのが『アシュラレディ』である。かつての神性を取り戻すためだけに此処まで用意周到に準備を進めてきていたのだろう。
「怨嗟の声は上げてるけど……量産じゃ、それだけだね……貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
メンカルの瞳がユーベルコードに輝き、詠唱を紡ぐ。
例え、量産型とは言えど『骸の海射出装置』だけは捨て置くことは出来ない。メンカルの周囲に浮かぶ白色の炎が次々と周囲に在った原初の炎を燃料にして強大になっていく。
そう、尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)はあらゆるものを燃料に変えて燃え盛る。
「……『神々の時代』の火であろうとも……この大火の前ではただの燃料だ……」
そして、それは『量産型クライング・ジェネシス』に対しても同様である。
放たれた白色炎が『量産型クライング・ジェネシス』たちを取り囲んで、燃やし尽くしていく。
炎の中で怨嗟の咆哮だけが轟く。
それはあまりにも心に響かぬものであった。
嘗ての『クライング・ジェネシス』を知るメンカルにおいては、特に顕著であったことだろう。
「……『クライング・ジェネシス』の恐ろしさは……その執念と狡猾さ……」
白い炎が『量産型クライング・ジェネシス』たちを飲み込んでいく。
どれだけ精巧に似せて作り上げたのだとしても、かつての『クライング・ジェネシス』の持つ執念や目的のためならば手段を選ばぬ狡猾さはない。
在るのは『骸の海射出装置』という、まさに役割だけの存在。
そこにメンカルは恐ろしさを感じないのだ。
「……あいつは敬意すら感じる『敵』だったが、お前らはそれには届かない……」
メンカルは頭を振って背を向ける。
白い炎が立ち上り、かつての『敵』に似た装置でしかない存在を振り返ることはもうなかった。
ただの装置。
そんなものは猟兵の敵には値しない。
だからこそ、メンカルは背を向け呟くのだ。
「炎に包まれて燃えると良い……」
嘗ての敵の姿はもはやなく。あるのは残骸の如き装置のみ。ゆえに白い炎は、あらゆるものを燃やし尽くし、『過去』という存在を尽く燃料にしていくのであった――
。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
初対面なのに随分と恨まれてんな…
まあ個人と言うよりは猟兵という存在に憎悪を向けてんだろうが
ともあれこれ以上侵食させる訳にはいかねーな!
雷鳴を抜き放ち【部位破壊、貫通攻撃】で
骸の海発射装置にダメージを与えてこれ以上の汚染を阻止するぜ
おっと俺の幻影かい?過去の行動を真似してくるのか…
それなら熱線銃はバイクの機動力で避けて
バイクは流星の【誘導弾】で追尾し
流星は宇宙服とFZの二重のバリアで防ぎ
バリアに対しては雷鳴の貫通攻撃でそれぞれ対処するぞ
【第六感、瞬間思考力】も活用な
過去にやった事だから対応するのも存外楽ってね
最後は最大出力のBRTで発射装置諸共吹き飛ばしてやるぜ
観念して往生しやがれ!
アドリブ歓迎
「BAOOOOOM!」
その咆哮は怨嗟に塗れていた。
あらゆるものを憎み、あらゆるものからの理解を拒む咆哮。
哀れみすらも、相互理解すらも必要としない。あるのは憎悪のみ。それが『クライング・ジェネシス』と呼ばれたヴィランであった。
かつてのオブリビオン・フォーミュラであったとしても、その残滓とも言うべき『量産型クライング・ジェネシス』には、空っぽな憎悪だけが残っていた。
胸と腕に備えられた『骸の海射出装置』より放たれる『過去』の弾丸が、大地を染め上げ、嘗ての太古の地球――『神々の時代』へと引き摺り戻さんとする。
絶え間なき炎と生命力に溢れた場は、その上に立つことによって神性を取り戻すことができる。
それは猟兵であっても例外ではない。そして、『アシュラレディ』の目論見こそが、そこにあったのだ。
「初対面なのに随分と恨まれてんな……まあ、個人というよりは猟兵という存在に憎悪を向けてんだろうが……ともあれこれ以上侵食させるわけにはいかねーな!」
リボルバー型熱線銃を抜き払い、星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は、その銃口を『量産型クライング・ジェネシス』へと向ける。
放たれた熱線が『量産型クライング・ジェネシス』の『過去』を放つ『骸の海射出装置』へと撃ち込まれ、その内部から射出装置を破壊する。
「『過去』の弾丸はこれ以上使わせない……おっと!」
だが、祐一の直ぐ側を駆け抜ける幻影があった。
それは己と同一の姿をした幻影。『過去』という弾丸を放つ『骸の海射出装置であれば、相対する猟兵の姿をコピーすることなど容易いのだろう。
放たれる熱線銃の熱線を祐一は真紅の二輪バイクとでもって躱す。
「俺の幻影かい? こっちを真似してきてもな!」
即座にバイクと共に戦場を疾駆する祐一。同じ経験、同じ力を持つ幻影は祐一に迫らんと次々と弾丸を放ち、誘導弾で持って追尾してくる。
それを振り向きざまに放った弾丸で相殺し、一瞬で思考する。
あの幻影が己と同一であるのならば、持つ力、装備も同一。
実力差はない。ならば勝負の明暗を合わけるのは何か。そう、まったく自分と同じであるのならば、己が苦手とするものも同じである。
「この一撃雷で終わりにしようぜ…! 力押しになるが!」
ユーベルコードに瞳が輝く。
見据えるのは幻影だけではない。
『量産型クライング・ジェネシス』も同様である。『骸の海射出装置』は破壊できたとしても、あの本体が残っているだけで、マンハッタンの街に生きる人々にとっては脅威そのものである。
ならばこそ、己の幻影共々打ち払わなければならない。
「冬雷(トウライ)!」
極大の熱線を放つ大型ビーム砲が輝く。
充填されたエネルギーカートリッジが排出され、放たれた熱線が祐一の幻影共々『量産型クライング・ジェネシス』を飲み込んでいく。
その一撃は大地にテクスチャとしてはられた『神々の時代』すらも焼き払いながら、大群の如き『量産型クライング・ジェネシス』を滅ぼす。
霧散し消えて行く姿を見やり、祐一は呟く。
「過去にやった事だから対応するのも存外楽ってね。観念して往生しやがれ――」
そう、『過去』は染み出してはならない。
世界が前に、未来に進むためには神の力であっても必要ではないのだ。
後戻りできないからこそ、人は懸命に生きる。
人の雛形として存在していた神にはない定命の者だからこそ得た可能性を祐一は護るために、己の熱線銃の銃口を神性取り戻した『アシュラレディ』へと向けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『戦神アシュラ』
|
POW : 戦女神光臨
【悪の『戦女神』としての神性 】に覚醒して【戦いのためだけに造られた武器への無敵状態】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 阿修羅三眼装
【額の第三の眼を開く 】事で【目にした者の戦闘行動を封じる『終戦神』】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 阿修羅破界撃
対象の攻撃を軽減する【神気を纏った『戦勝神』形態 】に変身しつつ、【六刀本来の姿たる全てを断つ『破壊神』の刃】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:otomo
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「忌々しい限りだ。どんな企てを密やかに実行していても、オマエ達は必ずやってくる。それが摂理であるかのように」
『アシュラレディ』は『神々の時代』というテクスチャによって成り立つ世界のルール、古代の地球であったころの理をもって己の『神性』を取り戻していた。
その姿は、これまで猟兵たちが見てきた『アシュラレディ』とは一線を画するものであったことだろう。
マンハッタンの空は曇天。稲光が空に閃き、轟音を響かせる。
すでに『量産型クライング・ジェネシス』たちは尽くが打倒された。染みのように侵食された『過去』も時期に取り除かれるだろう。
雷光が空を引き裂き、大粒の雨が降りしきる。
「太古の力を持ってオマエたちを滅ぼそう。アタシは『戦神アシュラ』! 最早神をも屠る拳なき世界にあって、お前達を滅ぼす者! 混沌たる神代を此処に再現するあために」
絶え間なき炎と溢れる生命力。
太古の地球が再現されしマンハッタンの街中に豪雨が襲う。
されど、猟兵達は立ち向かわねばならない。
雷光が伝えるように。
雷鳴が教えるように。
今、このときは神のものではなく、人のものに取り戻すために猟兵達は『アシュラレディ』、否、『戦神アシュラ』を打倒するの――!
夜鳥・藍
貴女とは初めてお会いしますが、猟兵というだけで対象なのでしょうね。
私達猟兵がオブリビオンであるというだけで倒すべき対象にするのと同じように。
でも戦神という存在を相手できるのは少し楽しみです。心の奥からそういう感情が湧き上がるの。
鳴神を投擲しかつ念動力で操作して確実に命中させます。
掠る程度でも命中は命中。それに三鈷剣は武器ではなく法具、かつ鳴神は神器。
命中さえすれば竜王を召喚できますし、その竜王さんが操る雷も武器ではなく稲光という名の通り田に水を与えるもの。
どれも戦いの為の武器には非ず。無敵状態となってもダメージは通せるはずです。
相手の攻撃は直感(第六感)で回避します。
『戦神アシュラ』、その姿は威容と呼ぶに相応しいものであった。
三対の腕を持ち、そのどれもが武装を持つ。まさに生まれながらにして戦うためだけの存在であることを知らしめるには十分過ぎる姿であった。
「これこそがワタシの神性。戦の権化。あらゆる戦うための武装はワタシには効かない。オマエたちの振るう武器はそうであろう。全てが他者を傷つけるために生まれたものだ」
『戦神アシュラ』の言葉は正しいものであったことだろう。
猟兵達の武装はどれも戦うためのもの。
戦うために生み出されたものでは『戦神アシュラ』は傷一つ付かない。ゆえに彼女は勝ち誇る。
彼女が恐れたのは拳のみ。
神を模し生まれたヒト。されど、その神を屠殺せしめる拳を持つのもまたヒトであった。ゆえに雷鳴轟く雨降りしきる中、『戦神アシュラ』と猟兵は相まみえる。
「貴女とは初めてお会いしますが、猟兵というだけで対象なのでしょうね」
滅ぼし、滅ぼされる関係。
夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は手にした神器『鳴神』を手に、『戦神アシュラ』と相対する。
彼女の瞳に映る『戦神アシュラ』の姿は、たしかに猟兵としての感覚が否応なしに滅ぼさなければならないという運命を感じさせる。
『戦神アシュラ』も自分も同じなのだと藍は気がつく。
だが、それでも藍は変わらぬ表情の奥底、心のなかで『戦神』を相手にできるということに少しの楽しさを見出していた。
「戦いを楽しむか、猟兵。この『戦神』たるワタシを前にして」
凄まじい踏み込み。
一瞬で藍の懐に入り込む『戦神アシュラ』――その剣閃の鋭さは言うに及ばず。
放たれた斬撃を鳴神でもって受け止めながら、雨の中でさえ刃が激突する火花を散らせる。
「ええ、心の奥からそういう感情が湧き上がるの」
重たい斬撃が続けざまに六つ。
確かに『戦神アシュラ』と名乗るだけはある。放たれた斬撃をいなし、躱すことで精一杯だ。
しかし、それでも藍は『鳴神』を弾かれたと見せかけて念動力で操作し、その背後から『戦神アシュラ』に迫る。
切っ先が当たればこちらのものである。しかし、まるで背後にも目がついている家のように『戦神アシュラ』は『鳴神』の一撃を躱す。
「死角をつこうが!」
その一撃は彼女の頬をかすめる。
致命傷にも至らぬ一撃。
けれど、藍にはそれだけでよかった。
「これで――!」
いや、『戦神アシュラ』は考えた。何故己は躱さなければならないと感じたのだろうか。
戦うためだけに作られたものであれば、己を傷つけるに値しない。だというのに己は躱した。本能的に。
「オマエ、それは神器――!」
「ええ、鈷剣は武器ではなく法具、かつ鳴神は神器。貴女は本能的にこれが己に傷をつけると知ったのですね。ですが、もう遅い! 竜王招来(リュウオウショウライ)」
藍のユーベルコードが輝く。
それは放たれた神器の一撃をマーカーにして召喚される嵐の王たる竜王の放つ雷撃のきっかけにすぎない。
確かに『戦神アシュラ』は戦うためだけに作られた武器では傷つけられない。
けれど、法具であり神器である『鳴神』は対象の外。
そして、竜王の放つ雷撃は――。
「これは稲光。その名の通り、田に水を呼び与えるもの。ならばこそ、貴女は恐れたのでしょう。雷光を、その名を」
藍は見た。
己のユーベルコードが招来せしめた竜王の雷撃の一撃が『戦神アシュラ』を穿ち、その膨大な恵みの力でもって彼女を打ちのめすのを。
いつだって戦うことだけが理由ではない。
生きる理由はいつだって戦いの後先にある。だからこそ、藍は願うのだ。
人々の安寧を。人の時代が今であるのならば、その歩みに神は寄り添っても、導いてはならぬと――。
大成功
🔵🔵🔵
稷沈・リプス
(まだまだ大蛇蝕神『■■■■』形態)
初対面ではあるが、まあまあその意気はよし。
しかし愚か者め。この場の恩恵を受けるは、汝だけにあらず。
戦勝神か。さて、聞くが。戦神さえも手こずらせた我に敵うか?
我は蝕神。大蛇姿をとっておるが、幻のようなもの。断つこと叶わず。
UCにて作り出したるは我と同じ姿の大蛇。
さて、この蛇を断とうとしても無駄である。今回ばかりは、生命力を強化しておるからな。しぶといのだ。
それに…我を忘れてはならぬぞ?
幻のような我を断てれば、の話であるが。
そしてその状態。長くは続かぬであろう?
そこを、尻尾にて強打しよう。
もう人の世である。神代回帰は望まれておらぬ。
太陽は既に曇天に隠れた。
マンハッタンの空は豪雨が降りしきり、空に浮かぶ太陽の輝きすらも覆い隠す。それはかつて大蛇の蝕神『■■■■』と呼ばれた稷沈・リプス(明を食らう者・f27495)にとって、好都合なものであったことだろう。
太陽すら飲み込む蝕。
リプスは、揺らめく炎と生命力に溢れた場において、本来の神としての力を全開にしている。全盛と変わらぬ力を放っていると言っても過言ではないだろう。
「ワタシの邪魔を……!」
そんな彼の前で雷に撃たれた『戦神アシュラ』が立ち上がる。
その体は焼き焦げていたが、溢れるユーベルコードの輝きに寄って本来の神性、そして『戦勝神アシュラ』たる由来をもって猟兵達に相対するのだ。
手にした六本刀は本来の『破壊神』としての力を発露させる。
あらゆるものを両断せしめ、彼女自身に勝利をもたらす絶対たる力であり切り札であった。
「神々の次代の再現を。混沌たる原初に全てを戻す。そのためにワタシは!」
リプスは、その意気を良しと認めた。
だが、同時に愚かであると断ずるのだ。
「この場の恩恵を受けるは、汝だけに非ず。『戦勝神』か。さて聞くだけ無駄であろうが我が名を『■■■■』の名を知るのならば、我に敵う道理があると思うたか」
リプスの大蛇の顎が開かれる。
彼は蝕神。
大蛇の姿をしているが、幻のようなもの。ヒトの隣にありて、神の恩恵すらも届かぬ闇。悪の神としての存在。
ならばこそ、彼が生み出したのは神の創造物にほかならない。
ゴッド・クリエイション。そのユーベルコードで生み出されたのは、神の手によって生み出された『人間以上』の何者か。
そう、己と同じ大蛇である。
「知れたこと! 己を蝕と呼ぶのならばこそ、それを断ち切るのがワタシの力!」
放たれた六本刀がリプスの生み出した大蛇を切り裂く。
しかし、切断せしめた胴が切り裂かれる端から結合し、再生していく。
「――ッ!? 大蛇が再生していく……!?」
「ああ、どれだけ断とうとしても無駄である。今回ばかりは、生命力を強化している故な。しぶといのだ。それに……我を忘れてはならぬぞ?」
豪雨、水、それは竜の代名詞でも知られる。
雨に寄って齎された水は、川をのたうつ大蛇のように見せただろう。ゆえに水流の付近では大蛇やそれに類する者が神として認識される。
水が生命の源であるというのならば、恵みと滅びは同質のものである。
「戦にどれだけ勝つことができようとも、生命は戦の勝利だけでは生きられまい。それは、そちらも知るところであろう。ゆえに」
ゆえに神は寄り添い、見守るだけでいい。
リプスの生み出した大蛇に翻弄される『戦神アシュラ』は意識が疎かになっていた。彼女は目の前の敵を打倒し、勝利することこそが己の神性であると知っている。
ゆえに、目の前の敵から逃げることはできない。
戦い、勝つ。
その神性が勝利以外を許さないのだ。
「神々の時代を取り戻そうというのだ、ワタシが! あの混沌たる生命の煌めきばかりが世界を覆う時代に! ワタシたち神を鏖殺せしめる者の存在しない世界を!」
「もう人の世である。神代回帰は望まれておらぬ。望まれぬ神がヒトに何ができよう。ヒトは神に祈らずとも、己の二本の足で歩み、二本の腕で道を拓くことができる」
リプスの尾が『戦神アシュラ』の体をしたたかに打ち据える。
どれだけ過去を望むのだとしてもリプスは頭を振る。
彼にとって、過ぎ去りし過去は郷愁の念を抱かせるものであったかもしれないけれど、それは懐かしむだけのものだ。
決してまた同じ時をめぐりたいと思うものではない。
ゆえに、過去よりにじみ出るオブリビオンを嫌う。
今生を生きる者たちをこそ愛するのだ。例え、己が『呪われた神』であったとしても、救える者は救いたい。
その一念のみが彼を今や喪われた信仰すらも必要とせず、されどオブリビオンを許さぬと戦いに駆り立てるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
穂村・理恵
確かに私じゃあなたを倒せないかもしれない
……けれど、“負けません”、例え神様が相手だって。
私は、この体で、この力で、みんなを護るって、決めたんです
続けてになっちゃうけど、みんな、お願い……【吸熱炎霊】!
少しでもいい、あの炎を打ち消して!
相手の攻撃には紅玉から咄嗟に『紫焔』をぶつけます
これは、ただの炎じゃない、強い思いを糧に、精神を焼く炎
どれだけ軽減しても、どれだけ断ち切っても、あなた自身の執着を糧に、この火は燃え続ける……!!
多分私は長くはもたないけれど、炎霊達にも同じ『紫焔』の力を帯びさせて、後に続く人の為にも、少しでも削って見せます…!
炎は、焼くだけじゃなく、照らすものでもあるんです……!
尾の一撃に寄って強かに打ち据えられた『戦神アシュラ』が立ち上がる。
その肌は雷撃の一撃に寄って焼き焦げているが、それでもなお体から放たれる重圧は凄まじいの一言に尽きるものであった。
「あくまでワタシの邪魔をするのなら、それが例え同じ神であろうと容赦はしない。ワタシは混沌の神代を望む。ワタシは、そのためだけに雌伏の時を過ごしたんだからな!」
吹き荒れる重圧と共に『戦神アシュラ』は『戦勝神』たる権能を解き放つ。
この絶え間なき炎と生命力の溢れる『神々の時代』と同じになったマンハッタンの街おいて、彼女の神性は本来のものである。
豪雨が降りしきる中、穂村・理恵(普通の武装変身魔法少女・f26637)は立つ。
確かに恐ろしい力を感じる。重圧が身を、足を竦ませる。
けれど、彼女の中にあるものが、その震えを抑えるのだ。
「震えているのか、猟兵。ワタシとお前の力の差の前に震えるか。それが正しい反応だ。オマエではワタシには勝てない」
『戦神アシュラ』の言葉が理恵の耳にこびりつく。
「確かに私じゃあなたを倒せないかもしれない」
認識としては正しい。圧倒的な力の差を感じる。勝てない。勝つことができない。だから身体が震えたのだ。
けれど、その瞳は敗北の絶望には染まっていない。
「……けれど、“負けません”、例え神様が相手だって」
理恵は言う。
どれだけ敵が強大であったとしても立ち向かう勇気を知っている。自分を助けてくれたヒーローが言うように。
自分の体が他とは異なるのならば。
「私は、この身体で、この力で、みんなを護るって、決めたんです!」
煌めく瞳がユーベルコードの輝きを放ち、吸熱炎霊(フレイムイーター)を呼び出す。
神代の炎を吸収し、巨大な菅田となった動物の形をした炎霊たちが『戦神アシュラ』へと襲いかかる。
けれど、全てを断ち切る六本刀が次々と炎霊たちを切り去っていく。
勝てない。
敗北の二文字が頭の中をかすめる。されど、理恵の瞳に宿るユーベルコードは未だ輝きを喪わず。
「無駄だと分かっていながら抗うとはね! 無駄なんだよ! その抵抗も、何もかもが!」
放たれる六本刀の斬撃が理恵を護る炎霊ごと振り切られる。
けれど、その斬撃が理恵を捉えることはなかった。彼女の目の前に炎霊の紅玉が光を放ち、紫焔となって『戦神アシュラ』へと放たれる。
それを切り裂かんとして『戦神アシュラ』は気がついたのだ。紫焔は実体を持つものを焼くものではない。
己の精神を焼くものであると。
「これは――! 原初の炎でもない!」
切り裂かれた炎は即座に形を伴って炎霊たちに注がれる。理恵は気がついたのだ。己の力がどのようなものであるのかを。
どんな力があるのかを。
例え、勝てなくてもいい。
自分が敗北したとしてもいい。猟兵の戦いはいつだって繋ぐ戦いだ。次に続く者たちへ、少しでも強大なオブリビオンの力を削ぎ落として繋ぐ。
そういう戦いをしてきたからこそ、猟兵達はこれまで自分たちよりも強大な存在に打ち勝ってきたのだ。
それを知るからこそ、理恵は叫ぶ。
「私は長く保たないけれど! それでも後に続く人の為にも、少しでも削って見せます!」
「しゃらくさい! この程度の炎で!」
「いいえ、その炎はどれだけ軽減しても、どれだけ断ち切っても、あなた自身の執着を糧に、この火は燃え続ける……!!」
紫焔が『戦神アシュラ』の身体を焼く。
どれだけ刀で振り払っても振り払えぬ。それは当然であろう。その炎は彼女が言う通り、神代への執着を持つ『戦神アシュラ』だからこそ、燃え尽きぬのだ。
猟兵に打倒されても、潜伏し、今回の事件を計画したように。
されど、理恵は言う。
「炎は、焼くだけじゃなく、照らすものでも在るんです……!」
そう、そのとおりだ。
彼女の炎は豪雨の中も輝く。それはまるで、後に続く猟兵達に対する篝火である。此処に続けと。
倒すべき敵は此処にいると知らしめるように理恵は、己の限界を超えて、『戦神アシュラ』を尽きぬ妄執を糧とする炎でもって消耗せしめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
造られた武器への無敵ということですね
ええ、武器など不要です!
心に灯す【勇気】があれば、この肉体1つ
《蒼翼の闘魂》!
真の姿:蒼き鷹でお相手いたしますわ。
爆発的に相手も戦闘力を増大させているのでしょうが、
この姿はレスラー!【見切り】、その上で
回避せずに受けきるスタイル
【オーラ防御】【激痛体勢】【覚悟】、
これまで培ったものがこもる肉体で受け切ってみせますわ
そうして受けきった後は、【グラップル】で組み
豪快な投げでマットならぬ地面にたたきつけます
ヒップドロップの【踏みつけ】で追撃も忘れずに
さぁ盛り上げてまいりましょう!
身を起こす相手を【挑発】し大技を誘ったところで、
【力溜め】た【カウンター】の一撃です!
紫の炎が立ち上る。
それはまるで篝火のように豪雨降りしきるマンハッタンの街に『戦神アシュラ』の姿を知らしめる。
六本刀を振りかざす姿は、猟兵達の攻撃に寄って焼き焦げている。
「おのれ……! どこまでワタシの邪魔をする! だが、オマエたちが如何に力をつけていようとも、戦うために技量を高めたのならばこそ、武器はワタシには通用しない」
『戦神』としての神性に目覚めた『戦神アシュラ』にとって、戦うために造られた武器は、彼女を傷つけるに値しない。
それこそが『戦神アシュラ』たる本来の神性。
戦いの神、戦いにあって勝利をもたらす神性。その顕現した力こそが猟兵たちを追い詰めるのだ。
「造られた武器への無敵というわけですね。ええ、武器など不要です!」
ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)が豪雨のカーテンを突き抜けるようにして戦場へと飛び出す。
確かに武器に対する無敵を誇る『戦神アシュラ』の力は侮りがたいものであった。けれど、それでもユーフィは無手。
ここに例外がある。
人間の手は道具を手繰るためのものである。
地球上に置いて、人間が勝ち得た爪と牙に変わるもの。ゆえに、『戦神アシュラ』を脅かすものは、過去、現在、未来においても無手なる者だけである。
その拳は彼女の生命を奪うに値するものであった。
「心に灯す勇気があれば、この肉体一つで!」
ユーフィの瞳がユーベルコードに輝く。
灯す輝きは、蒼翼の闘魂(ソウヨクノトウコン)。人々を守り抜くという近い。それは彼女の姿を真の姿へと変貌させる。
「お相手いたしますわ。この『蒼き鷹』が!」
それは猟兵ですら知らぬ真なる姿。増大した力でもって、ユーフィと『戦神アシュラ』が激突する。
互いに戦うために生まれた存在。
されど、敵を滅ぼすための神性となにかを護るための存在であっては、同じ力であっても見ている方向が違う。
六本刀がユーフィを襲うが、その刀をユーフィは躱すのではなく、受け止める。打ち下ろされた一撃がユーフィの肉を断つ。
けれど、骨までは断つことができない。
「――ッ! 確かにあなたの刃は鋭いのでしょう。ですが!」
「コイツ! ワタシの攻撃をわざと受け止めたのか!」
放たれた斬撃は確かに肉を断つ。けれど、その刃は鍛え上げられた肉体、その筋繊維でもって白刃取りのように刀身を締め上げ、引き抜くことも押し切ることもできずにユーフィの腕にとどまっている。
覚悟があっても受けきれるものではない。
その練磨の果てにある鋼鉄の如き肉体があったからこそ、為せる技であった。
「ええ、あなたが逃げられないように!」
掴みかかり、ユーフィが『戦神アシュラ』を豪快に投げ飛ばす。ここはリングのマットの上ではない。投げ放たれた『戦神アシュラ』は背中から大地に叩きつけられるが、即座に立ち上がっていた。
追撃のヒップドロップを『戦神アシュラ』は躱し、六本刀を振るう。肉しか断てぬのだとしても、ユーフィの肉という肉を切り刻めば、出血で動けなくなる。
それを『戦神アシュラ』は狙ったのだろう。
けれど、放たれた斬撃、その刀身をユーフィは己の肘と膝でもって白刃取りのように受け止め、完全に砕く。
「何ッ!?」
「さぁ盛り上げてまいりましょう!」
大ぶりを狙わせたユーフィの誘いの技術に『戦神アシュラ』はまんまとのせられ、その一刀を失う。
砕けた破片が豪雨と雷光に煌めく中、ユーフィは己の拳に力を籠める。
振り下ろされた一撃。
相手の身体がこちらへと向かっている力。それを利用して放たれる最小にして最速の一撃。重さと速さが掛け合わさることによってユーフィのカウンターの一撃は凄まじき威力を伴って『戦神アシュラ』の顔面を捉える。
撃ち込まれた拳が轟音を響かせ、かつて彼女が敗れたように、それを再現するかのごとく、『戦神アシュラ』を盛大に吹き飛ばすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
今は人の世界。それをどうしても認めたくないんだね。
でもあなた、わたしたちを倒し、人を滅ぼして、何もなくなった世界で、なにをしたいの?
もう一度世界を作りたいとかいうなら、誰もいないところでひとりでやってくれないかな。
なにも、ここを壊してしなくても『神』だとかいうならできるでしょう?
そんなこともできないなら仰々しく『神』とか言わないで欲しいね。
『戦神アシュラ』の攻撃は【等価具現】で無効化。
わたしに打ち消される程度なら、『神』にはまだまだ遠いんじゃないかな。
そちらが神の雷なら、こちらは人の雷でいかせてもらうよ!
【M.P.M.S】を対地ミサイルモードで一斉斉射。
過去と現在、どちらの雷が強いか、勝負っ!
マンハッタンの街に豪雨の雨音以上に響き渡る轟音は、放たれた拳と『戦神アシュラ』の顔面がぶつかった音であった。
吹き飛ばされた『戦神アシュラ』がよろめきながら立ち上がる。
その瞳は憤怒に溢れていた。
過去にもこのようにして彼女は敗れたのだろう。ただ神屠る拳によって。
だからこそ許せない。
「ヒトがワタシたちを、神を越えることなどあってはならない! 神殺しなど! あってはならないのだ!」
吹き荒れる神性。
それは豪雨の中で在っても消えることのない神代の炎が揺らめく中、『戦勝神』としての神性を発露させた『戦神アシュラ』の六本刀、その一刀は砕け喪われているが、それでもなお破壊神としての力を発現させ、猟兵達の前に重圧をもって一歩を踏み出す。
「今は人の世界。それをどうしても認めたくないんだね。でもあなた、わたしたちを倒し、人を滅ぼして、何もなくなった世界で、なにをしたいの?」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は重圧に押し負けることなく言う。
彼女にとって他者とは、世界を作る要因そのものだ。
電脳空間であってもそれは変わらない。
他者がいるから自分がいる。自分の輪郭を作っているのは、自分ではない。他人が自分という形を作るのだ。
だからこそ、『戦神アシュラ』が生み出そうとしている『神々の時代』、その混沌たる世界を彼女は望まないだろう。
「決まっている。混沌だ。混沌こそが新たなる世界の生まれ出る起因。ならば、ワタシがその始まりになろうというのだ!」
迫る『戦神アシュラ』の刀。
あらゆるものを断ち切る破壊の力を前にして、理緒は等価具現(トウカグゲン)も力でもって相対する。
何もかもを断ち切る破壊の力を持つ刀。
しかし、電脳世界の情報を元に具現化した等価存在をぶつけたらどうなるだろうか。
「もう一度世界を作りたいというなら、誰も居ないところで一人でやってくれないかな。なにも、ここを破壊しなくても『神』だとかいうならできるでしょう?」
神なる身。
そうではない己にとって、神とは如何なる存在であろうか。
理緒は等価具現によって生み出された電脳魔術によるユーベルコードの刃でもって振り下ろされた破壊の力宿す刀を受け止める。
それは受け止めた瞬間、破壊の力を相殺する。
豪雨の中、ユーベルコードの煌めきだけが雷光のようにきらめいていた。
「ワタシの神性を、再現した!? そんんばかなことがあって……!」
「そんなこともできないなら仰々しく『神』とか言わないでほしいね。わたしに打ち消される程度なら、『神』にはまだまだ遠いんじゃないかな?」
理緒の言葉に『戦神アシュラ』は怒りに瞳を曇らせる。
人の力を過小評価し、己を超えられぬと思っていたからこそ、彼女は敗北を喫したのだ。
嘗ても、そして今も。
「そちらが神の雷なら、こちらは人の雷でいかせてもらうよ!」
理緒が電脳空間から喚び出したミサイルランチャーが一斉に火線を引いてミサイルを『戦神アシュラ』へと打ち込む。
一斉に放たれたミサイルは、豪雨の中を飛び、『戦神アシュラ』を爆炎の中に消し去る。
過去と現在。
どちらの雷が強いのかは明白であった。
理緒にとって、過去は過去だ。にじみ出ることによって得られるものなど何一つない。
彼女は今という世界を愛しているだろう。神に頼らなくてもいい。見守るだけでいい。
ただそれだけで、人の歩みは止まらないのだと知っているのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
陽向・理玖
変身状態維持
二年ぶり
ってあんたは別の分身なんだっけ
でも俺は忘れてねぇ
腕1本ぶった切られた借り
返させて貰うぜ
衝撃波目晦ましにし
残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る
やっぱ強ぇ
けど
あの頃の弱い俺とは違う
全部見切ってるぜ
戦闘知識用い過去に戦った時の動きや癖を分析し見切り
刃掻い潜り姿勢低くしフェイントで足払いし
中段蹴りで吹き飛ばし
避け切れぬ時は直前まで引き付け武器でジャストガード
折る様に弾き部位破壊で武器壊し
カウンターで殴る
あの頃の俺は
自分が戦う為だけに居ると思ってた
今は違う
俺も
師匠から授かったドライバーも
守る為に在る
だからあんたは無敵じゃねぇ
UC起動し加速
拳の乱れ撃ち
今更お呼びじゃねぇんだよ
竜の横顔を模したバックルの中で珠が煌めく。
それは陽向・理玖(夏疾風・f22773)が変身した青と黄の全身装甲の姿を維持している証拠でもあった。
かつて二年前、『アースクライシス2019』において、彼は『戦神アシュラ』、『アシュラレディ』と戦った。
あのときは腕を一本ぶった切られた。
「二年ぶり。ってあんたは別の分身なんだっけ。でも俺は忘れてねぇ」
オブリビオンは過去よりにじみ出る者。
現在に染み出した姿は、過去と同じものであっても、同一の存在であるとは言い難い。
けれど、それでも理玖は覚えている。
爆炎の中、立ち上がりその瞳にユーベルコードの輝きを宿し、『戦神アシュラ』としての神性を発露させた存在を。
「忌々しいものだな。ヒトというものは。どこまでもワタシの邪魔をする。ヒトの意志で、ヒトの時代を存続させると。神の時代を、神性を忘れて生きていくという。それが浅ましい。それが傲慢。何故わからない!」
迫る六本刀は、一刀は砕かれ喪われている。だが、それでも発露させた神性から与えられる重圧に陰りはない。
理玖は拳から放たれる衝撃波でもって目くらましのようにフェイントを交えて残像まとう速度で戦場となった豪雨降りしきる街中を走り抜ける。
拳を叩きつけるたびに六本刀の刀身と激突し、火花が散り、拳が砕ける。
「やっぱ強ぇ……けど! あの頃の弱い俺とは違う!」
彼にとって、『戦神アシュラ』はやはり二年前の強敵なのだ。
放たれる斬撃を彼は躱す。あのときは腕を奪われた。けれど、頭の中には過去の戦いの経験が残っている。
その動きの癖や速度は神性を取り戻したとしても変わることはない。
ゆえに体勢を低くし、足を払う。けれど、それを躱されることまで織り込み済みである。
放たれる中段の蹴撃が『戦神アシュラ』の胴を捉える。
「ぐっ――ッ! 貴様!」
造られた武器に対して無敵を誇るユーベルコードであれ、無手であればその限りではない。
放たれた蹴撃の衝撃で『戦神アシュラ』が吹き飛ぶ。
「あの頃の俺は、自分が戦う為だけに居ると思っていた。今は違う。俺も、師匠から授かったドライバーも守るために在る」
そう、彼は二年前の彼ではない。
そこに在るのは、覚悟の力をともした瞳であった。輝くのは七色。眩い龍のオーラが全身を覆っていく。
「フォームチェンジ! 龍神翔(ライジングドラグーン)!!」
だから、『戦神アシュラ』は無敵ではないと告げる。一歩踏み出した大地がひび割れる。虹色の輝きは、豪雨の中であっても煌めく。
この後に訪れるであろう虹のかかる光景を想起させるように、彼は凄まじい速度で『戦神アシュラ』へと飛び込む。
放たれる拳の連打は、煌めくオーラを撒き散らしながら『戦神アシュラ』を捉え続ける。
腕を奪われた、拳を砕かれた。
けれど、今の自分は違うのだ。
戦うためじゃない。
「守るために戦うと決めた覚悟があるのならば!」
放たれた拳が『戦神アシュラ』の骨を砕く。超高速の連打は、六本刀であってもさばききれることはない。
振りかぶった拳が、彼の意志を宿すように極大の輝きを放つ。
「今更お呼びじゃねぇんだよ」
振り下ろされた一撃は、まるで天から地に虹を掛けるように『戦神アシュラ』を大地に沈ませるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニノマエ・アラタ
…そうだな。
以前の俺ならおまえを倒すことだけ、考えただろう。
だが俺が助けた連中の、あの眼はヒーローを見ていた。
自分達と、この世界を救う者を信じる瞳だった。
それに応えたいと想う。
強く、想った。
『絶対に死者を出さない』
おまえの刃は、誰も殺せない。
なぜなら、俺が全刃をここで止めるからだ!
全身全霊ブッ倒れるほどの剣舞を! 戦いを!
しようじゃないか、なあ!
どこまでが無敵状態か知らんが、その刃をへし折って一撃をくれてやる。
アシュラが攻撃を防ぎ受け止める動きを見きり、
刃の同じ場所に攻撃を当て続け、時間をかけて弱らせようとする。
さあ命を削れ。
俺も限界を超えて……
この世界を守るための輪廻宿業でぶった斬りに行く!
己の生き方が過ちであったというわけではない。
けれど、ニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)は豪雨降りしきるマンハッタンの街中、その戦場に立ち、『戦神アシュラ』と相対する。
撃ち込まれた拳の衝撃で持って全身の骨という骨に亀裂を走らせながらも『戦神アシュラ』は立ち上がってみせた。
その凄まじ神性、重圧は言うまでもない。
倒すべき敵であることに変わりはない。されど、アラタは告げる。
「……そうだな。以前の俺ならお前を倒すことだけ、考えただろう」
己の過去を思う。
殺し合いのは手に逃げ伸びた己。記憶は曖昧。
けれど、己の手にした妖刀でもって戦場を征く日々は今も変わらない。けれど、確実に変わっているのだ。
「だが、俺が助けた連中の、あの眼はヒーローを見ていた」
己がそうであると名乗れるわけもない。
けれど、それでもアラタは応えたいと想ったのだ。強く、強く想ったのだ。
自分が救った者たちの、自分たちを救い、世界を救う者であると信じ切った瞳を彼は裏切れない。例え、己がそうでなかったのだとしても。
それでも、彼は心に思うのだ。
『絶対に死者を出さない』
その願いが己をヒーローにする。誰が言ったわけでもない。誰からか言われたわけでもない。
己が己であるために、己の胸の内側から発露したものをこそ彼は信じるのだ。
「だから、それがどうした。ヒーローを名乗れば誰でも世界を救えると! ワタシの刃から何者をも守れると嘯くか猟兵!」
神性の発露、その重圧を真っ向からアラタは受け止める。
彼には誓いがあった。
誓約拘束(セイヤクコウソク)と呼ばれるユーベルコード。
されど、それは願いと思いが織りなす力そのものであった。
その誓いは真に正義であったことだろう。
戦うために造られた武器では傷つけられないと知りながらも、それでもアラタは戦う。
刃を振るうのだ。妖刀しか己にはない。ならばこそ、彼は刃をふるい続けるだろう。それを愚直と笑うのならば笑えばいい。
「おまえの刃は、誰も殺せない。なぜなら――」
「そういうことはな、やってから言うんだな、猟兵!」
刃と刃がぶつかる。
豪雨の中、火花が散って明滅する。それでも放たれた斬撃は互いを傷つけることはなかった。
「俺が全刃をここで止めるからだ! 全身全霊ブッ倒れるほどの剣舞を! 戦いを! しようじゃないか、なあ!」
放たれる斬撃。
打ち合うこと数百。剣戟の音は、雷鳴よりも鋭くマンハッタンの街に響き渡る。
どこまでが無敵状態であるのかなどアラタには関係がなかった。
斬撃を放つ。ただそのためだけの一意専心。
己の身体など二の次であった。
「さあ、生命を削れ。俺も限界を超えて……――!」
妖刀と破壊の力を宿した六本刀――、その一本は喪われている。猟兵に寄って砕かれたのだ。
ならば、己がそれを出来ぬ理由などない。
そう、『戦神アシュラ』を打倒することのできるものは、人の無手。
しかし、アラタは妖刀を振るう。何故、とは問うまい。
彼にとって、己の手にした妖刀のみが、あの日、彼を見つめる瞳に写ったヒーローそのものであるからだ。
身体が限界を超える。知ったことではない。
放たれる斬撃は、じりじりと『戦神アシュラ』を圧していく。そう、無敵なのは『戦神アシュラ』の身体のみ。
「――貴様っ……! 命を削るなど、こんな、ことで!」
「それが! この世界を守るための輪廻宿業! 俺にできることはぶった斬ることだけだ!」
放たれた斬撃が『戦神アシュラ』の六本刀、その喪われた一刀を二刀に変える。一刀両断のもとに切断された刀身が豪雨の中、回転しながら大地に穿たれる。
それは、アラタというヒーローが、あの己を見上げた瞳、その想いに応えた瞬間であった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
引き続き神の姿で。
「太古の力は貴女だけのものではありません。私の名はアシカビヒメ。人々と世界を護る為に、太古の、神の力を振るいましょう!」
天候操作で豪雨を穏やかな雨に変えてUC発動条件達成。
相手の攻撃は第六感と見切りでタイミングを掴み、念動力で『破壊神』の刃を側面から力を加えて軌道を逸らし、氷のオーラ防御を纏った天耀鏡で刃を受け流し、アシュラの足元に衝撃波を放って吹き飛ばして対応し、UC発動。
「世界の変遷を拒む愚か者よ。武器を捨て、神気を解き、頭を垂れなさい。」とアシュラに命じる。
同時に神罰・雷の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱で生み出した極大の雷を、スナイパー・貫通攻撃で天空より撃ち降ろします!
放たれた斬撃が『戦神アシュラ』の手に持つ六本刀の内、二刀までをへし折った。
豪雨の中、雷鳴が轟く。
戦いの推移は確実に猟兵へと傾きつつ在った。
どれだけ嘗ての神性を取り戻したとしても、相対するのは猟兵である。油断はしていなかった。侮ることもしていなかった。
けれど、現実に『戦神アシュラ』は追い込まれている。
「何故だ、何故ワタシが追い込まれている? この地を『神々の時代』に引き摺り戻し、力を取り戻しているワタシが何故!」
彼女は訝しむ。
いや、わかているのだ。
猟兵の中にも神はいる。
この『神々の時代』というテクスチャに塗れた戦場にあって、本来の神性を持つ猟兵が、まさに降臨する。
豪雨の後に芽吹くは生命。
ならば、この戦場にあって生命を司る女神の名を知るがいい。
「太古の力は貴女だけのものではありません。私の名は『アシカビヒメ』。人々と世界を守る為に、太古の、神の力を振るいましょう!」
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)の神性が豪雨を穏やかな雨に変えていく。
天候すら自在に操作せしめるのが神の力であるというのならば、詩乃はまさしく神たる存在であったことだろう。
「干天の慈雨を以って私はこの地を治めましょう。従う者には恵みを、抗う者には滅びを、それがこの地の定めとなる」
祝詞の如き詠唱の後、神々の時代というテクスチャは、神域創造(シンイキソウゾウ)せしめた詩乃。
彼女はこの地を一時的に己が絶対支配権を持つ『アシカビヒメ』の神域へと作り変えたのだ。
「――……! この神域。ワタシの神性を上塗りするつもりか!」
「そのとおりです。貴女が『戦勝神』であるというのならば、私は生命をもたらす神性をもって貴女と相対しましょう」」
振り下ろされる六本刀は数を減らしているとは言え、破壊の力を宿した斬撃は無視できるものではなかった。
氷のオーラをまとわせた天耀鏡でもって刃を受け流し、詩乃は衝撃波を解き放ち『戦神アシュラ』の足を止める。
それは『アシカビヒメ』の権能を持ち、この地の絶対支配権を持った詩乃にとっては容易いことであった。
「貴様――! ワタシを!」
「世界の変遷を拒む愚か者よ」
「何故とどまっておけない! 何もかも変わろうとする! 不変たる存在である我らが、絶対たる証拠ではないか、それを何故『神性』持つ貴様が是とするか!」
「武器を捨て、神気を解き」
詩乃の言葉絶対であった。
彼女の言葉は神の言葉。この地にあっては、同じ神性を発露させる者であったとしても、関係はない。
それが『神々の時代』、その世界のルールである。
確かに世界は変わっていく。けれど、詩乃自身にも言えることだ。『戦神アシュラ』は不変たることこそが神の最たるものであると言った。
けれど、それは過ちであることを詩乃はもう知っている。
生命を司り、成長を持って世界を反映させていく神であるのならばこそ。
「――頭を垂れなさい」
抵抗する『戦神アシュラ』の身体がきしむ。
完全に抵抗できたわけではないが、膝を付き、刃を突き立て、詩乃をねめつける。
それを見下ろし、詩乃は天に手をかざす。
「世界は変わる。生命も変わる。例え、我らが神であったとしても、成長という名の可能性を残すのであれば、それを良しとしなければなりません。私達を模してヒトが生まれ、ヒトが私達の手をはなれて歩んでいくのならば」
己達はそれを見守るだけでいい。
数多の世界を見て、数多の可能性を見てきた。
ならばこそ、その可能性を潰す過去などあってはならないのだと、詩乃は振り下ろした手より放たれた極大の雷でもって『戦神アシュラ』を、その過ちを打ちのめすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
故郷の邪神といい、あなた達はいつもそうですね。人より上位の存在として振る舞う。
人を滅ぼす神など人にとっては敵でしかありません。その前に私たちがあなた達を滅ぼします。
「デリンジャー」を『クイックドロウ』し、【氷枷】で敵のUCを封じます。
あの時よりも反応が鈍い……まだ完全には力は取り戻せてないようですね。
UCを封じた相手が直接攻撃を仕掛けてきたなら「デリンジャー」を捨て「フィンブルヴェト」を手に銃剣で応戦します。攻撃力が下がっている相手であれば受けきれるでしょう。
近接戦闘中に隙を見つけ氷枷の追撃で更に動きを阻害し、銃剣での『串刺し』からの氷の弾丸の『零距離射撃』を。
極大なる雷の一撃が『戦神アシュラ』を穿つ。
それはかつて在りし過去を思い知らされるような光景であったことだろう。『戦神アシュラ』は己の神性を発露させる。
第三の目。
その瞳に見入られたものは、動くことができなくなる。
まさに『終戦神』としての神性である。
戦いに勝利する神性を持つのであれば、その戦いの終わりを告げるのもまた己である。ゆえに、『戦神アシュラ』は、如何に猟兵たちが己を凌駕しようとも、この第三の目さえあれば、脅威を払う事が可能であると考えていた。
だが。
「故郷の邪神といい、あなた達はいつもそうですよね。人より上位の存在として振る舞う」
その言葉は冷ややかなものであった。
氷よりも凍てつくような凍える声色であった。
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は言葉を紡ぐより早く、凄まじい速度の早打ちでもって、氷枷(ヒョウカ)の弾丸を『戦神アシュラ』へと打ち込んでいた。
それは手枷、足枷、首枷へと変化する銃弾であり、都合三発の弾丸を打ち込まねばならぬユーベルコードであった。
けれど、セルマの早打ちは神速の域にまで到達してる。
そんな彼女にとって『終戦神』の権能を発露させんとしている『戦神アシュラ』を穿つことなど造作も無いことであった。
「あの時よりも反応が鈍い……まだ完全には力は取り戻せていないようですね」
「これは……! ワタシに枷をはめるか! どこまでも、どこまでも――!」
己を愚弄するのかと『戦神アシュラ』が咆哮する。
猟兵の天候操作によって豪雨はやんでいたが、彼女の方向によって再びマンハッタンの街は豪雨に包まれていく。
絶え間なき炎が揺らめく神代のテクスチャ。
その戦場にあって、セルマは駆け出す。手にしたデリンジャーを投げ放ち、彼女の瞳は『戦神アシュラ』を見据える。
「人を滅ぼす神など人にとっては敵でしかありません」
「ワタシたちが己を模して作り出したものだ! ワタシたちが滅ぼして何がおかしい! お前達だって同じはずだ。滅ぼし、滅ぼされるだけの存在でしかない!」
放たれる六本刀はすでに二本喪われている。
それでも残った四刀がセルマを襲う。
「その前に私達があなた達を滅ぼします」
手にしたマスケット銃に装着された『銃剣アルマス』でもって斬撃を振り払う。
本来であれば、『戦神アシュラ』の斬撃を受け止めることはできなかっただろう。けれど、ユーベルコードに寄って攻撃力を減ぜられた『戦神アシュラ』の斬撃はセルマを斬り伏せるだけの力を喪っていた。
「ワタシを滅ぼすというか! あの神屠る拳を持つ者と同じことばかりを、ほざいて!」
怒り心頭のあまり、『戦神アシュラ』は見誤っていたのだ。
彼女が見ているのは、己を滅ぼした者ではない。これより己を滅ぼす者達であることを。
再び放たれる枷へと変化する氷の弾丸が『戦神アシュラ』の体を封じていく。
がんじがらめに体へと枷が撃ち込まれ、その動きが鈍る。
「ワタシを! この『戦神アシュラ』を!」
「ええ、滅ぼします。敵でしかないのなら。私と貴女が猟兵とオブリビオンである以上、そうするしかない」
そこに躊躇いなどないのだというようにセルマは銃剣を『戦神アシュラ』へと突き立てる。
引き金を引く。
零距離で放たれた氷の弾丸が『戦神アシュラ』の体を貫き、内側から凍りつかせていく。
それはまるで一輪の氷華のように咲き乱れ、『戦神アシュラ』をその場に釘付けにするのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ歓迎
ほほう! これが戦神アシュラ……!
バトルの甲斐がありそうな、強い風格であります!
この世界をハチャメチャにはさせマセーン、ワタシたちがお相手しマース!
いざ参ると、武器を展開しようとしマシタガ。
先制攻撃がないとはいえ、相手は戦女神。
不用意な攻撃で隙を見せてはなりマセーン。
そこで! 武器を使わずに戦いマース!
「カクリヨメモリ、ロゴスイグニッション!」
カクリヨの新し親分から力をお借りして、変身!
アシュラ殿と同じく、古に流行ったバズり力をここに!
>アドリブ歓迎<
ハリセンを構え、真剣勝負!
アシュラ殿の攻撃を右から左へ受け流し、欧米か! とカウンター!
これが、混沌でありますよアシュラ殿!
氷の華となった『戦神アシュラ』は、しかしその枷を全て砕いて己の神性を発露させた。
如何に彼女のユーベルコードが強力なものであったとしても、発動するたびに己の寿命を削っていく。
それは不完全なる復活の弊害であると言わざるを得ないだろう。
しかし、この場を切り抜けさえすれば、本来の神性を取り戻すことが出来る。完全なる神となった彼女は、ヒーローズアースを混沌の時代へと叩き落とすだろう。
「ゆえに、ワタシはまったのだ。準備を、計画を、全てを!」
だが、その全ては猟兵達によって阻まれた。
『量産型クライング・ジェネシス』の大群も、打ち払われるようにして撃滅させられた。
それは計算外であったとは言わない。
あれらは所詮、量産型だ。簡易型とは言え『骸の海射出装置』をまた作り出して世界を上塗りすればいい。
「オマエたちもまた結局の所、戦うためだけの存在。その手にした武器は、ワタシを傷つけることさえできない! だからこそ!」
凄まじい重圧を持って威嚇する。無駄だと、己の存在を認めぬ世界など滅ぼすと、その体から発露する神性が言う。
「ほほう! これが『戦神アシュラ』……! バトルの甲斐がありそうな、強い風格であります!」
けれど、それを物ともせずバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は笑っていた。
いざ参ると、戦いに挑む姿は、どこか不思議なおかしみをもっていた。世界をめちゃくちゃにはさせぬと猟兵が立ち上がるのであれば、バルタンもまた、その一人であった。
武装を展開し、一気に攻め立てる。
そう思ったが、彼女は思い直す。相手は戦女神である。敵に武器が通用しないのであれば、それは不用意な攻撃にほかならない。
不用意な攻撃は隙を生み出し、その隙を捉えて『戦神アシュラ』が何をするかわかったものではない。
ならば、と彼女が取り出したのは、四つのメモリであった。
「カクリヨメモリ、ロゴスイグニッション!」
バルタンの手には一つのメモリがあった。
そう、それは『新し親分』のメモリである。
――模倣様式・幽世幻想(イミテーション・アヤカシオヤブン)。それは『新し親分の姿を模した姿へと変身することで己の力を増すユーベルコードである。
「何の輝きだ……!?」
『戦神アシュラ』は驚愕しただろう。
光が晴れた後、そこにあったのはバルタンであったが、様子が異なる。
あらゆる流行り廃りを乗り越えてきた『過去』を身にまとう『新し親分』、バズリトレンディの姿へと変化したバルタンの手にあったのは、ハリセンにピコハンにロボットハンド。
ついでに修学旅行のお土産で男子が絶対買う木刀など!
意味がわからない。
そう、神なる『戦神アシュラ』であっても理解が追いつかなかった。どれもが武器ですならない。
けれど、それは間違いである。
「な、なんだ、それは、その武器は――!?」
「ノー! これは武器ではありまセン! 言う成れば、古に流行ったバズり力デース!」
ハリセンを構えたバルタンが『戦神アシュラ』と鍔迫り合いを行う。
いや、できるものなのか、それは!?
けれど、実際に出来ているのだ。ユーベルコードにおって『新し親分』の力を宿したバルタンは、なんかよくわからんがすごい力でもって、『戦神アシュラ』を圧倒するのだ。
「欧米か!」
いや、なんでそのツッコミをするのかもわからない。けれど、ハリセンの一撃は『戦神アシュラ』の頭部を打ちのめし、大地へと沈み込ませる。
そこにピコハンのピコっとした一撃が叩き込まれる。
大地に沈み込む『戦神アシュラ』をロボットハンド』がつまみ上げ、宙に放り投げるのだ。
「これが、混沌でありますよアシュラ殿!」
マジでわけわからん。何がどうなっているのかさえ、猟兵にさえも解説できなかった光景である。
けれど、修学旅行のお土産である木刀を構えたバルタンは、放り投げられた『戦神アシュラ』めがけて飛ぶ!
「こんな、こんな巫山戯た力で……!」
「いや、真面目か!」
バルタンのツッコミの一撃は『戦神アシュラ』を捉え、その胴を木刀でもって打ちのめすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
あんたが太古の力で持って滅ぼそうとするってんなら
こっちは今を生きる力で持って対抗してやるぜ
と、啖呵を切ったはいいものの、何故か攻撃できないな…
Esの情報収集で原因を調べて貰うとして
その間は、敵の攻撃を【第六感、見切り】で避けて対処な
…なるほど、あの第三の眼のせいか、面倒だな
それなら、FZの迷彩機能で相手の視界から消えつつ
Esに俺のホロ残像を多重展開させて撹乱させるぞ
これならそうそう目で捉えられないだろ!
UCと流星のマヒ攻撃で相手の行動を妨害しながら
雷鳴で少しでも多く体力を削る持久戦を仕掛けるぜ
こう見えて意外と根気には自信があってね!
どっちが先に音を上げるか、勝負と行こうじゃないか!
アドリブ歓迎
血反吐を撒き散らしながら、『戦神アシュラ』が立ち上がる。
打ちのめされた体は、満身創痍。
されど、その神性は未だ陰ることはなかった。目の前に猟兵がいる。ただそれだけで彼女は意識を保っていた。
彼女は『戦神』である。
戦いの神であればこそ、勝利をもたらす存在である。
「ワタシが負ける? そんなことあってはならない。ワタシは『戦神アシュラ』! この神性を持って、必ず『神々の時代』を、あの混沌でありながら生命に溢れた世界を必ず、この地球にもたらすのだ……!」
第三の目が開眼する。
それは己の寿命を削るものであったが、凄まじきユーベルコードであることは言うまでもない。
対処するには、これまで発動する前に潰すしかなかったのだ。
「あんたが太古の力でもって滅ぼそうとするってんなら、こっちは今を生きる力でもって対処してやるぜ!」
そう勢いよく啖呵を切った星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は、どうしてか自分が攻撃をすることができないことに訝しむ。
サポートAIから、その原因をと思ったが、開眼した第三の目を見てしっくりくる。あのユーベルコードのせいかと彼の第六感が告げているのだ。
凄まじい速度で迫る『戦神アシュラ』の攻撃は二刀を失い、満身創痍であったとしても、祐一にとっては脅威そのものであった。
先ずは手数が違う。
それに放たれる斬撃は、全てを断ち切る破壊の力を宿している。
その一撃を受けるだけで致命傷に鳴ることは容易に想像することができた。
「……なるほど、あの第三の眼、面倒だな……」
しかし、己を視界に納めているというのが発動条件であるのならばこそ、祐一は己の姿を迷彩機能で持って姿をくらます。
フィールドジッパーの迷彩機能を全開にし、サポートAIに自身のホロ残像を多重展開させ、撹乱するのだ。
「幻でワタシを撹乱するつもりか……!」
「ああ、これならそうそう眼で捉えられないだろ!」
さらに祐一は手から雷球を投げ放つ。
それは、サンダークラップと呼ばれる一瞬で発生し、破裂音よりも早く広がる電撃で持って『戦神アシュラ』を捉えるユーベルコードであった。
「ぐっ……!」
これまでの猟兵たちとの戦いで消耗した『戦神アシュラ』にとって、その電撃は躱すことはできなかったことだろう。
しかも、絶えず帯電するスパークが彼女の体を捉えて離さないのだ。
「こう見えて意外と根気にには自身があってね! どっちが先に音を上げるか、勝負と行こうじゃないか!」
熱線銃を構える。
そう、例え倒し切ることができなくても、体力を削ることは出来るのだ。後に続く猟兵のために、少しでも『戦神アシュラ』の力を削ぎ落とす。
それが祐一に今できることだった。
「聞こえたときには、手遅れだ! ってな!」
放たれるサンダークラップの電撃が、次々と『戦神アシュラ』の体にまとわりつき、その動きを止める。
ホロ映像が彼女の第三の眼であっても、祐一の姿を正しく捉えさせない以上、そのユーベルコードの力は彼には作用しないだろう。
それを見越して放たれる熱線銃の一撃は確実に『戦神アシュラ』を追い詰め、疲弊させていく。
「こ、の――!」
破れかぶれの斬撃など、雄一には届かない。
放たれる流星の如き弾丸は『戦神アシュラ』の体を貫き、豪雨の中、彼のユーベルコードが雷光のように煌めき、鮮血を迸らせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
人に与えられた時間はあまりに短く
留めようとしなければ
瞬く間に消えてしまいますのに
何故そう急ごうとしますの?
あなた様も神ならば永い時を生きられるはず
一眠りするなり一時の戯れを楽しむなり
あるいは状況が整うまで待つなりすれば
よろしいでしょうに
でも、そうやって流れに抗う姿は
それはそれで美しいと思いますの
滅びゆく前にその姿を留めて差し上げますの
普段は強化に応じ封印の石化が進みますけれど
今は関係なく力を揮えますの
アシュラ様に停滞を齎し石像として留めましょう
これは武器でなければ戦闘行動でもなく
神としての愛ですの
この炎が消えれば私も石化するでしょうし
少しの間ですが一緒に眠って差し上げますの
それ、僕も巻き添え…
撃ち込まれた弾丸により穿たれた傷痕から『戦神アシュラ』の鮮血が迸る。
豪雨は降り止まず、雷光と雷鳴が世界を震撼させる。
されど、未だ『戦神アシュラ』は倒れない。その神性は『神々の時代』においてこそ発露されるものであり、『骸の海射出装置』によって『過去』というテクスチャを張り巡らされたマンハッタンの街中でこそ、発揮されるものであった。
「ここまで、ワタシが追い込まれる……? あり得ない。太古の時代、『神々の時代』の力を取り戻したワタシが……! 『戦勝神』たるワタシが敗れることがあるなど!」
あってはならないことだと、『戦神アシュラ』が喚く。
そう、かつての『神性』さえ取り戻すことができたのなら、猟兵など一顧だにすることはなかったのだ。
けれど、現実は違う。
「人に与えられた時間はあまりにも短く、留めようとしなければ瞬く間に消えてしまいますのに。何故そう急ごうとしますの?」
その言葉は絶え間なき炎の合間から聞こえてきた。
同じ神性を宿した『神』、猟兵であることは『戦神アシュラ』にも感じ取る事ができただろう。
「ヒトなど不要だからだ。ワタシたちを模して作ったヒト、それが過ちであったのだ」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の中にある邪神が『神々の時代』たるテクスチャの上に立ち、頭を振る。
「あなた様も神ならば永い時を生きられるはず。一眠りするなり、一時の戯れを楽しむなり、あるいは状況が整うまで待つなりすればよろしいでしょうに」
確かのそのとおりであった。
悠久なれど、有限なのだ。
ときは何もかも過去にしてしまう。同じ神性を持つ者であっても考え方は違う。変わっていくのが素晴らしいのだという神もあれば、美しいまま留めることが素晴らしいと言う神もいる。
『戦神アシュラ』もまた同様である。
「悠長なことを。流れに身を任せるだけの怠惰など!」
振るわれる六本刀は二刀を猟兵に寄って砕かれてもなお、その力は健在であった。
しかし、その斬撃はいつまでたっても晶と融合した邪神には届くことはなかった。
「でも、そうやって流れに抗う姿は、それはそれで美しいと思いますの。滅びゆく前にその姿を留めて差し上げますの」
邪神の領域(スタグナント・フィールド)。
それは彼女の周囲を停滞、固定させる神気で多い、己の身体が石化によって封印されていくユーベルコードである。
しかし、今は『神々の時代』というテクスチャの上に立つ。
ゆえに封印に関係なく力を振るうことができるのだ。
「――貴様ッ!」
ぴしり、と振るわれた刀を持つ腕が石化していく。
邪神は『戦神アシュラ』をも石像として留めようとしているのだ。これは戦う行いですらない。
戦う神である己に対して、戦いすら取り上げようとしているのだ。
「これは神としての愛ですの。この炎が消えれば、私も石化するでしょうし、少しの間ですが、一緒に眠って差し上げますの」
にこりと微笑む姿に『戦神アシュラ』は激昂する。
「ふざけるな! 愛など不要!」
神代の炎が消えれば、テクスチャの上でこそ成り立つ力は消えるだけであろう。だからこそ、同じ神性を持つ身として『戦神アシュラ』とともにと願った邪神の愛は、拒絶される。
晶はそれを見やり、だろうなとさえ思った。
戦いとは他者が居なければ成り立たない。共に在るということを『戦神アシュラ』が許容するわけがないのだ。
彼女は石化していく腕を引きちぎり、鮮血に溢れさせながら神気よりはなれていく。
それを惜しむように見やりながら邪神は微笑む。
それもまた愛であると。
愛なき神などいないのだというように、己の姿を何故模してヒトを作ったのか、その理由とともに邪神は再び晶の中で眠るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジャム・ジアム
ステキな刀ね。それが貴女の真の姿
いいわ、戦の女神。神代を望むなら、ジアムも精一杯
——応えるわ
『朱白緞』で念動力を高め
『疾影』あの刃、普通じゃないってわかるでしょう
二人……いえ、3人で戦うわよ
『夢の御伽話』で古の戦士を召喚
神を宿し、人の為に戦った。貴方を信じてる
戦士には、正面から槍と刃で猛攻してもらう
ジアムは戦士に力を注ぎつつ
『アナプノエ』で護りの結界を展開、僅かでも速さと威力を阻みたい
疾影は
戦士と逆方向から『朱雷枝』で挟撃
素早く撹乱を、足や手元を狙ってみて
戦士に、気を割いて万全ではない筈
特に足は2本だもの
刀、腕、足、ひとつでも削げば、隙は広がる
狙って!二人を信じて、私は全力で注ぐ、結界で阻む!
石化した腕を自身で引きちぎり、投げ捨てる『戦神アシュラ』の姿は血に塗れていた。
全身満身創痍。
喪われた二刀の六本刀は、未だ健在であれど手数を喪った状態であることは言うまでもない。
此処まで猟兵が追い詰めて尚、『戦神アシュラ』は己の神性たる『戦神』を捨て去ることができなかった。
もしも、万全を期すのであれば、このまま逃げてしまえばいい。
けれど、彼女の神としてのプライドがそれを許さない。嘗て『戦勝神』とさえ呼ばれた彼女にとって戦いとは勝利するものであって、敗北するものではなかったからだ。
「ステキな刀ね。それが貴女の真の姿」
ジャム・ジアム(はりの子・f26053)はゆっくりと豪雨の中を歩む。
彼女の瞳に映るのは『戦神アシュラ』であった。
血塗れになりながらも、戦う事に意義を見出す姿は、荒ぶる神と呼ぶに相応しい様相であった。
「そうだ。これこそがワタシの神性。嘗て在りし姿。これをワタシは取り戻す。世界を混沌に変え、再び『神々の時代』の到来を望む!」
「いいわ、戦の女神。神代を望むなら、ジアムも精一杯――応えるわ」
紅血を思わせる朱の地金に浮かぶ白き魔眼が煌めく。
念動力が体の内側からこみ上げてくる。
引き上げられた力と『疾影』であったとしても、『戦神アシュラ』の満身創痍に追い込むことはできても倒すことはできないだろう。
だからこそ、ジアムは言葉を紡ぐ。御伽噺を紡ぐように、ユーベルコードを繋ぐのだ。
「二人……いえ、三人で戦うわよ」
それは、夢の御伽話(グリッサンド)。
かつて在りし神と融合した古の戦士の霊を召喚せしめるユーベルコード。テニスルは力を逆転させる念動の刃。そして、精神に干渉し形を変える穂先を持つ槍。
かつて幼き日に聞いた童話。
それが実在したかどうかなど些細な問題である。
今、ジアムの心のなかに存在した戦士の姿は、煌めくユーベルコード。
その輝きとともに三人は駆け出す。
「神と融合した戦士、ヒトなど!」
振り下ろされる六本刀は三本にまで減らされている。けれど、戦士の攻撃を真正面から受け止め、火花を散らす。
『戦神アシュラ』は凄まじい技量を持っていた。
これまで猟兵たちが仕留めきれなかったこともうなずける。ジアムは戦士の霊に力を注ぎ込み続け、『疾影』が『戦神アシュラ』の背後から大鎌の一撃を振り下ろす。
けれど、その一撃ですら『戦神アシュラ』は受け止める。
血飛沫が噴出しているのは、受け止めた衝撃で傷が開いたからだろう。
「アハハハハッ! これだ! これこそがワタシの求めた戦い! ワタシは勝つ! 勝つぞ! あの神屠る拳を持つ者がいないのであれば、ワタシは!」
哄笑の如き笑い声がマンハッタンの街中に響き渡る。けれど、それでもジアムは諦めていなかった。
例え、どれだけ凄まじい技量を持っていたのだとしても、ジアムのように諦めることのない心まであるとは限らないのだ。
心は柔らかいものだ。鎧うことなどできない。
だから、人は他者を遠ざける。時に手で、時に剣で、時に槍で、時に弓矢で。そうして人は他者から遠くに位置しても、遠ざける手段を得たのだろう。
けれど、ジアムは思うのだ。
遠ざけるのが他者なのならば、近づくのもまた人の足なのだ。
「腕が多くっても、足は二本だもの!」
その言葉に応じるように戦士と『疾影』が『戦神アシュラ』の足を同時に払う。
「――っ、足払い!?」
『戦神アシュラ』にとって、それは小手先の技であったことだろう。けれど、同時に払われた足は、彼女の身体を宙に舞い上がらせる。
「刀、腕、足、ひとつでも削げば、隙は広がる! 狙って!」
ジアムは信じた。
自分の力は確かにか細いものかもしれない。けれど、あの二人を信じる心だけは誰にも負けない。
それが念動力となって彼等に注ぎ込まれる。
煌めく凶々しい翼が羽撃き、最上段から大鎌の一撃が振り下ろされる。槍の一撃を『戦神アシュラ』が振り払い、宙に薙ぎ払われるも、戦士の剣が横薙ぎに振るわれた。
十字に刻まれた斬撃の痕をジアムは見ただろう。
戦士と『疾影』の斬撃は確かに『戦神アシュラ』に言えぬ傷を刻み込む。
己ができることで応える。その言葉に偽り無く、ジアムは己の持てる力で持って、『戦神アシュラ』を追い詰めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
……ふむ、これは流石の神気だね……
…オブリビオンが何かを企めば猟兵がやってくる…と言うのは何か、というよりは自然の摂理だったりするのかもね…
…その額の第三の目の厄介さは知っているよ…だから…
現影投射術式【ファンタズマゴリア】で幻の濃霧を発生させて豪雨と共に姿を隠すために利用しよう…
…話しかけるその言葉さえも幻から発することで位置を掴ませず…たまに幻の人影を見せることで幻惑しよう…
…そして姿を見失ってるうちに【慈悲深く死神の手】を発動…
…急所を抉ることでダメージを与えるとしようか…
…再現された神の時代ももう終わり…戦神よ…その時代と共に骸の海に還るといい…
十文字に放たれた大鎌と剣の斬撃が『戦神アシュラ』の身体に癒えぬ傷痕を刻み込む。
すでに六本刀の半数は喪われ、石化を食い止めるために引きちぎられたために腕は一本喪われている。
さらに身体は焼き焦げ、穿たれた弾丸の痕からは絶え間なく血潮が溢れ出している。そえでもなお『戦神アシュラ』は、立ち上がっている。
「負ける、ものか。ワタシが負けることは許されない。ワタシこそが『戦勝神』。敗北の二文字など、最早二度と追うものか――!」
彼女は雷鳴に抗うように咆哮する。
溢れる神性が、重圧となって世界に発露され、マンハッタンの街中を襲うだろう。
「……ふむ、これはさすがの神気だね……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、未だ立ち上がる『戦神アシュラ』の満身創痍たる姿を前にしても侮ることはなかった。
彼女には未だ額に浮かぶ第三の目が在ることを知っているし、その厄介さは言うまでもない。
だからこそ、彼女は皮肉であると思ったのだ。
「……オブリビオンが何かを企めば猟兵がやってくる……というのは何か、というよりは自然の摂理だったりするのかもね」
世界の悲鳴を聞き届けるのが猟兵である。
ならばこそ、それは必然であるのかも知れない。
彼女は、幻影投射術式『ファンタズマゴリア』でもって幻の濃霧を発生させ、豪雨を利用して己の姿を隠す。
音で感知しようとしても、この豪雨である。
如何に優れた聴覚を持っていたとしても、己の姿を捉えることはできないだろう。
「――でも、それでも。再現された『神々の時代』ももう終わり……」
メンカルの言葉は、幻から発せられていた。
如何に『戦神アシュラ』が捉えようとしても、無意味なことであった。
「いいや、終わらぬさ。混沌の時代にさえ戻れば、生命であったとしても!」
燃え尽きぬ神代の炎。
溢れる生命力。
それは確かに太古の地球。神々が存在し、生まれた時代そのものテクスチャであったことだろう。
神性を発露させる『戦神アシュラ』にとって、この地こそ、自身の力を発揮するのに適した場所はなかった。
けれど、肝心のメンカルの姿を捉えることができなければ、開眼させた第三の目も宝の持ち腐れであろう。
「戦神よ……その時代と共に骸の海へ還るといい……」
そう、ときは逆巻くことはない。
戻ることは決してないのだ。過去が現在ににじみ出るということは、世界の崩壊につながる。
だから、猟兵が来るのだ。
如何に神と言えど、『死』は逃れられぬ運命であるというのならば、慈悲深き死神の手(クー・デ・グラース)によって、彼女は骸の海へと還らねばなるまい。
詠唱が世界に響き渡る。
幻影より紡がれた言葉は、『戦神アシュラ』にとって宣告そのものであった。
「空なる孔よ、開け、閉じよ。汝は切削、汝は虚現。魔女が望むは世界切り取る虚空の手」
メンカルは見ていた。
幻影の彼方より、その『戦神アシュラ』の姿を。
放たれた空間を削り取る術式は、狙い過たず『戦神アシュラ』の半身を抉る。
空間ごと削る術式を躱す術はない。
鮮血を迸らせ、絶叫が雷鳴にかき消される。
それは、一つの神性が終わりを告げる、その瞬間であったのかもしれない――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
いつの世で在ろうとも、多くの命を脅かす企てを阻む者は現れます
電脳剣と盾を電脳空間に収納し徒手空拳の構え
そして、今この瞬間は騎士として私が相手です
…『アシュラレディ』
瞬間思考力で刃の軌道見切り
6振りの刃で攻撃仕掛ける相手を摺り足で回避
時に刃の腹を怪力で振るう拳で打ち払う武器受けで弾き、連撃のペースを崩すことで回避の猶予作り防戦
嘗ての戦争の折、かの戦神はその溢れる殺戮衝動の儘に多くの無辜の命を己が神殿で殺めました
血でぬかるむ床の感触は記憶野に今も確かに
防戦の中で見出した相手の隙に乗じ一転攻勢の連撃
拳で6剣握る手を打ち抜き
故に、貴女の復活を許しはしません!
脚部スラスターの推力移動乗せた脚撃
空間ごと削り取る術式は『戦神アシュラ』の半身を根こそぎ刈り取るように損失させていた。
すでに満身創痍であり、何故消滅しないのだと思うほどに『戦神アシュラ』の身体は消耗しきっていた。
しかし、周囲に溢れた生命力が彼女の神性を失わせることはなかった。
生命力を手繰るように――いや、その神としての枠組みを壊すように『戦神アシュラ』は己の喪った半身をテクスチャの如き染み渡る『過去』から奪い取り、靄の如き半身を生み出していた。
「これが『神々の時代』にありし、我が神性。決して敗北することのない『戦勝神』たるワタシの真の姿! 敗北するものか。二度と! 二度とだ!」
咆哮する姿は、荒ぶる神そのもの。
己の企みを阻止せんとする猟兵を迎え討ち、その目論見で持って世界を混沌に陥らせようとする。
「何時の世であろうとも、多くの生命を脅かす企てを阻む者は現れます」
『戦神アシュラ』の前に現れたのは、機械騎士であった。
その揺らめくアイセンサーは、その鋼鉄の四肢は、全てが戦うために生み出されたものであったことだろう。
己の存在意義をトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は正しく認識していた。
けれど、今の彼は違う。
誰かのための騎士であらんとする彼にとって、己の四肢は大地に立ち、未来という扉を押し開くためのものである。
電脳剣と盾を電脳空間に収納し、徒手空拳の構えでもって『戦神アシュラ』と相対するのだ。
「愚かな。貴様に神屠る拳が宿るわけでもあるまい。それでワタシを打倒するだと?」
笑う『戦神アシュラ』。
そう、彼女にとって最も恐ろしいのはヒトの業たる拳と蹴撃のみ。
されど、機械騎士の構えは恐れるに足りるものではなかった。
「ええ、今この瞬間は騎士として私が相手です……『アシュラレディ』」
その言葉に『戦神アシュラ』は激昂する。
それは己の名ではない。
今の己の名は『戦神アシュラ』である。神性を取り戻しても尚、猟兵達は己をただの敵として相対する。
そこに畏れは何一つないとでも言うかのように果敢に立ち向かってくるのだ。それが気に入らない。
「ワタシは『戦神アシュラ』! 勝利を得る神性であると知れ!」
靄の如き生命力に溢れた半身がトリテレイアを襲う。
六本刀は不完全であれど、神性と生命力によって贖われている。その六振りの縦横無尽たる斬撃をトリテレイアはアイセンサーでもって見切って躱す。
これまで猟兵たちが紡ぎ、消耗させてきた『戦神アシュラ』の攻撃は、見切ることができた。
こぶしで打ち払い、弾き、『戦神アシュラ』の連撃のペース、そのリズムを突き崩すのだ。
「この程度でワタシの攻撃を阻むなど! オマエたちは何一つ足りていないのだ! あの神屠る拳に!」
「ええ、たしかにそのとおりでしょう。ですが……!」
トリテレイアは想起する。
戦いのさなかに記憶を想起するなど、嘗ての電脳では在りえなかっただろう。けれど、彼の電脳の中には嘗ての戦いの記憶が再生される。
溢れる殺戮衝動のままに多くの無辜の生命を己の神殿で殺めた。
己が突入した時、血でぬかるむ床の感触を今でも電脳の中に残している。
「どれだけ言葉で取り繕うのだとしても、力なき者は屠られて当然!」
放たれる六刀を握る『戦神アシュラ』の手にトリテレイアは拳を振るう。
それはいつか見た神屠る拳持つ存在の動きをトレースしたものであったのかもしれない。
彼の電脳はヒトと違い、忘れない。間違えない。ゆえに、その動きに足りないのは業だけである。
されど、動きは精密に再現していたのだ。
己が相対し、数多の猟兵たちと打倒した存在の拳を。
「貴様、その拳、その動き――!」
「貴女は知らぬのでしょうが――それでもあの日、あの時の、慚愧に堪えない思いは今此処に結実さえて頂きます!」
『戦神アシュラ』の復活は許さぬ。
その一念が手繰り寄せたトリテレイアの電脳よりの解答。
拳の連撃が『戦神アシュラ』の手を砕き、スラスターの推力で持って威力を補填された蹴撃が彼女の頭部を捉える。
放つ一撃は雷のごとく。
かつて在りし日の残影は、トリテレイアによって紡がれ、鋼鉄の蹴撃でもって、振り抜かれるのであった――。
大成功
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月白・雪音
…確かに嘗てこの星は、貴女がたの生きた故郷であったのでしょう。
されど、今の世界は今の命が生きるべき未来。
故に過去の威にて今を滅ぼすとあらば。
我が武を以て、神をも屠りましょう。
野生の勘にて第三の目の脅威を感知、
UC発動、残像、怪力、部位破壊にて権能が発動する前に目を潰す
残像で相手の速度に対応しつつ怪力、グラップルでの格闘戦、
野生の勘、見切りで敵の攻撃を予測し
怪力、カウンター、部位破壊にて振るわれる刃を白刃取りの後全てへし折る
貴女がたの生み出したヒトが紡ぎ上げた未来。
その中で、神を屠る拳…、其れが本当に潰えたものであるかどうか。
弱きヒトの業が、ただ弱いままであるか。
――此処にてご覧に入れましょう。
雷鳴の如き蹴撃の一撃が『戦神アシュラ』の頭部を振り抜く。
その威力は凄まじいものであり、半身を周囲に満ちる生命力でもって補填していた彼女の身体は再び半身を失う。
されど、彼女は立ち上がるのだ。
その額に権限した第三の目。
その眼が見つめる先にこそ、己の敵が居ると理解しているのだ。
「負けるものか。如何にして、ワタシの前に、その拳を再現したのかは知らぬ。だが、それでも世界は混沌に染め上げる。必ずだ!」
咆哮する『戦神アシュラ』の姿を前に月白・雪音(月輪氷華・f29413)は駆け出していた。
野生の勘であったと言えばよいだろうか。
彼女は本能で理解していたのだ。あの第三の目に見られてしまえば、己は戦うことができなくなると。
だからこそ、第三の目に止まらぬ速度で持って戦場を疾走らねばならぬと。
「……確かに嘗てこの星は、貴女がたの生きた故郷であったのでしょう。されど、今の世界は今の生命が生きるべき未来」
彼女の残像を『戦神アシュラ』は捉えた。
しかし、半身を喪った彼女には、雪音を捉えることはできなかった。
これまで数多の猟兵たちが紡いできた戦いの軌跡。
その延長線上に己がいることを雪音は知っている。過去があるからこそ未来がある。現在と言う点に立ちながら、過去と未来を結ぶ力があるからこそ、人は歩んでいくことができる。
「故に過去の威にて今を滅ぼすとあらば。我が武を以て、神をも屠りましょう」
「――ッ!『また』それか! オマエは! オマエたちは!!」
激高する『戦神アシュラ』が六本刀を振るう。
縦横無尽に斬撃が振り回され、あらゆる角度から斬撃が雪音を襲う。しかし、彼女の瞳は落ち着いていた。
そう、たしかに恐れはある。
強大な敵。神と呼ばれる存在。『戦勝神』にして『終戦神』。その神性は荒ぶる神をしても倒し切ることは出来なかったのだろう。
造られた武器では傷つけることのできぬ無敵の身体。
あらゆるものを断ち切る破壊の刃。
それら全てが己を凌駕していると言ってもいいだろう。
けれど、雪音は弱きヒトが至りし闘争の極地こそ、己が戦の粋であると知っている。
「拳武(ヒトナルイクサ)――貴女が恐れた拳を振るいましょう」
残像解き放ち、第三の目が己を捉えるより早く放たれた貫手の一撃が『戦神アシュラ』の額を割る。
血が噴出し、その血飛沫が雪音の白い髪を染めるよりも早く彼女は身を昼ゲエしていた。
「ぐっ、ぎっ――!?」
呻く『戦神アシュラ』をよそに雪音は残像の如き白い姿から蹴撃を放ち、その頭部へと一撃を見舞う。
よろめく『戦神アシュラ』の背を蹴って、雪音は宙に舞う。
見下ろす。
そこに在ったのは、たしかに神性。
されど、己の拳に宿る業は、闘争の極地である。
「貴女がたの生み出したヒトが紡ぎ上げた未来。その中で神を屠る拳……、其れが本当に潰えたものであるかどうか」
『戦神アシュラ』が見上げた。
雪音は豪雨降りしきり地に立ち、構える。
「――違う。なんだ、その構えは! ワタシは知らない! 何故だ! あの男と違う拳を振るいながら、何故ワタシを殺せると信じる!」
そう、彼女が敗れた拳ではない。
雪音の手繰る拳は違うものであった。けれど、紛れもない事実である。彼女が託され、紡いできた拳は、たしかに神にすら届く領域にまで高められているのだ。
「弱きヒトの業が、ただ弱いままであるか」
己の身に宿る獣の殺戮衝動すらも武は納める。己が律したものは、何も無駄ではなかった。
本能の前に理性が瓦解するというのであれば、雪音が己を律する武は堅牢堅固なるものである。
故に握りしめた拳の硬さは言うまでもないだろう。
あらゆる業を宿してもなお、弱いヒトのままで、神すらも屠る強靭さを得る。
「来るな! ワタシは! まだ!」
ああ、と雪音は息を吐き出す。
神であろうとも『死』は恐ろしいものであるのだろう。
されど、彼女は言う。
「――此処にてご覧入れましょう」
一歩踏み出した瞬間、襲い来る六本刀の斬撃。
それらは一瞬の内に全てが白刃取りの後に全てが砕かれていた。六閃の後に砕けて消える刀身は雷光に照らされ。
「……この身は、今と未来に生きるものなれば。この拳は望む未来を掴むのみ」
そして、踏み込む雪音の紅い瞳が残光を刻む。
放たれたるヒトの業。
その一撃は『神々の時代』へと戻らんとしたがゆえに、神殺しに至りし拳に寄って貫かれ潰えるのであった――。
大成功
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