キマイラフューチャーの地下に、悪の笑いが木霊する。
「ブレブレブレブレ(笑い声)!」
「さすがはキング・ブレイン様。笑い方もフリーダムな感じで素敵ですわ」
「いやはやそれほどでも!」
中身の透けた頭蓋を撫で擦り、照れ笑いを浮かべる。
それこそがオウガ・フォーミュラ『キング・ブレイン』であり、彼をおだてたのはかつてのフォーミュラ『ドン・フリーダム』……の動くCGであった。
悪の二大巨頭、此処に結集という訳である。
そりゃあ笑いも絶えないというもの。
「ブレブレブレブレ!」
「ふふふふふ……ところで、キング・ブレイン様?」
「はて、如何されましたかな?」
「わたくし、猟兵を呼んでほしいと頼んだような気がするのですけど?」
「頼まれましたな!」
「一体全体、いつ呼びに向かってくださるので?」
「なぁに、ご安心くだされ!」
キング・ブレインは大して厚くもない胸板を叩くと、自信満々に宣う。
「紛うことなき大天才のあなたと、数多の怪人束ねる吾輩が此処に居るのです!」
「……で?」
「呼ばずともそのうちやってくるでしょう! 巨悪は猟兵を引きつけるものですからな!」
「そういうものですか」
「そういものです! ブレブレブレブレ!!」
キマイラフューチャーの地下に、悪の笑いが木霊する……。
●解説
「――という訳で、お望み通り乗り込んでやろうではないですか」
テュティエティス・イルニスティア(искатель・f05353)が、猟兵たちに語りかける。
「舞台はキマイラフューチャーの地下に存在する巨大な『バーチャル遺跡』です。かつてのオブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』の動くCGは、其処で『バーチャルキャラクター形状開放プログラム』なるものを作成していたとか」
その作業はそれなりに進んでいたようだが、どうやら装置を始動させる為のパワーが不足していたらしい。
「其処にひょっこり現れた間の悪い奴が、オウガ・フォーミュラとしてキマイラフューチャーを侵略していた大首領キング・ブレインです。ドン・フリーダムの誘いにまんまと乗ったキングは、装置の始動に必要な激しいバトルのエネルギーを集めるべく、猟兵の前に立ちはだかるボスキャラとして待ち構えているようですね」
自分の仕事を棚上げして他人の手伝いとは、随分なお人好しであるが……さておき。
「企みが露見した以上、放っておくわけにもいかないでしょう。我々猟兵を装置起動の踏み台にしようなどと思った事を後悔するくらい、こてんぱんにして差し上げなければ」
だが、キング・ブレイン(本物)はともかくとして……ドン・フリーダム(CG)と戦うことなど出来るのだろうか?
そんな疑念を見透かしたように、テュティエティスは言葉を継ぐ。
「癪に障る事実ではありますが、ドン・フリーダムは『ちょうてんさい』です。何やらすごい技術で生成されたCGは実体同様らしく、殴ってきますし、殴れます」
しかし幸いなことに、所詮はCGなので本物ほど強くない。
「さっくりと殴り倒して、ついでにキング・ブレインも張っ倒してしまいましょう」
テュティエティスは握り拳を突き出し、遺跡への道を開いた。
天枷由良
あまかせです。よろしくお願いします。
●シナリオ構成
1章:ボス戦『ドン・フリーダムのCG』
かつてのオブリビオン・フォーミュラ、ドン・フリーダムの動くCGです。
CGですが、凄い技術なので実体のように殴ってきますし殴れます。
2章:ボス戦『猟書家『キング・ブレイン』』
キマイラフューチャーを狙う猟書家(本人)です。
背中に背負った「スーパー怪人大全集(全687巻)」と、脳から出るビームで戦います。
敵方の先制攻撃など、特殊な要素はありません。
ボス二人との純戦です。
プレイングの受付等々は、シナリオタグやマスターページにてご確認いただければ幸いです。
ご参加、お待ちしております。
第1章 ボス戦
『ドン・フリーダムのCG』
|
POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
一面に広がる花型の足場と、其処彼処に浮かぶ立体映像。
先端技術の産物でありながらも遺跡であるという、その空間に響くは悪の笑い声。
「ブレブレブレ! やはり来たな、猟兵ども!」
胸を張るキング・ブレイン。
その傍ら、腹にくっきりと『CG』の二文字を刻んだかつての強敵が進み出た。
「いらっしゃいませですわ、猟兵の皆様。わたくしは――え? 知ってる?」
それなら話は早い。
「ではでは、まずはわたくしがお相手を。……オール・フォー・フリーダム!!」
アリエル・ポラリス
そういうものなのよ!
ところでお姉さん誰?? ドンちゃん??? 私ヒーローズアースで戦争起こった辺りで猟兵始めたのよ。
まあ、こんな丸腰裸族に負ける私では、あーれー……(風に飛ばされていく)
つ、強い……まるでオブリビオン・フォーミュラと戦っているよう……!
まずいわ、私近づいて燃やすか近づいてぶん殴るかしないと勝てないのに!
えーと……吹き飛べー。(爆弾を投げ始める)
──これで倒すつもりはないの、ドンちゃんの背後から、吹き飛ばし特化の爆風を当てるわ!
私が近づけないならそちらから来てもらうまでよ! さあ、フリースタイルげんこつバトルの時間を始めるわ!
●アリエル・ポラリス(焼きついた想いの名は・f20265)
「オール・フォー・フリーダム!!」
「ところでお姉さん誰?」
「……なんということですの……」
のっけから断ち切られる流れ。
けれど、知らないというなら仕方ない。
「オブリビオン・フォーミュラを模したCGのわたくしが、名前も知られずモブキャラAで処理されていくなど耐えられませんもの。ですから、お耳かっぽじってよくお聞きくださいませ。わたくしはこの遺跡のバーチャルナビゲーター、ちょうてんさいドン・フリーダム! ……のCGですの。ちなみに『ちょうてんさい』は『物凄くかしこい』と『物凄く迷惑』のダブルミーニングでして――」
「ドンちゃん???」
「太鼓みたいに略さないでくださらない?」
意外やムキになって抗議するCG。その遥か後方で骸骨頭が大笑いする最中、アリエルは「まあ落ち着いて」と言わんばかりに両手を揺らして、言葉を継ぐ。
「私ヒーローズアースで戦争起こった辺りで猟兵始めたのよ」
「知りませんわそんな事」
にべもない。ドンちゃん呼びがお気に召さなかったのだろうか。
「フリーダムとか言う割には心が狭いのね。まあ、別にいいけど」
どうせ倒さなければならない相手だ。
主義主張に理解を示したり、打ち解けたりする必要などない。
「それじゃあ、さくっと倒しちゃうわよ! あなたみたいな丸腰裸族に負ける私では――あ、あれ?」
突如、アリエルを襲ったのは奇妙な浮遊感。
まるで下から風に巻き上げられるような――。
「あれ、あれれ!? あーーーーーれーーーーー!?」
「またのご来場はお待ち申し上げておりませんわーーー!!」
吹き荒れる暴風。慇懃無礼な見送りの言葉と共に、ドン・フリーダムCGの姿が遠ざかっていく。
かくして、アリエルは遺跡の足場ごと彼方へ飛ばされてしまうのだった。
めでたくなし。めでたくなし。
――と、勿論それで終わるはずがない。
「つ、強い……!」
遺跡の端の方にしがみついて退場を免れたアリエルは、丸腰裸族を見据えながら呟く。
「まるでオブリビオン・フォーミュラと戦っているようね……!!」
「だからオブリビオン・フォーミュラ(のCG)だと言ったはずですわ!!」
ちょうすごい技術で作られたCGはユーベルコードを使いこなすばかりか、地獄耳機能まで備えているらしい。
「まずいわ……」
気楽な独り言すら零せないから、ではなく。
アリエルは二通りの戦い方しか用意してこなかったからだ。
即ち、近づいて燃やすか、近づいてぶん殴るか。
(「要するに近づかないと勝てないのよ! えーと、えーっと……」)
2秒ほど必死に思考を巡らせて、閃く。
「ふ、吹き飛べー!」
ぽぽいのぽいと空き缶の如く放り投げられる爆弾。
そうだ。ここは用意してきたもので何とか切り抜けるしかないのだ!
「えい! えい! えーい!」
「ぶれぶれぶれ! 無駄なあがきですわ!」
優位に立って調子に乗ったか、骸骨頭の笑い方を真似たドン・フリーダムCGの元から再び嵐が吹き荒れる。
足場すら軽く引っ剥がすその力に、アリエルは場外負けを逃れるべく必死に抗って。
程なく。
「ど、どういうことですのこれは……!」
ちょうてんさいらしからぬ焦燥を含んだ声を漏らし、ドン・フリーダムCGが両腕を頻りに動かす。
勿論、忽然と裸踊りを始めた訳ではない。
潮目、いや風向きが変わったのだ。一つ、二つ、三つ。爆発音が響く度、戦場に吹き荒れる風は複雑怪奇に乱れ乱れて、もはやドン・フリーダムCGにさえ予想し難い乱流に変わっていく。
「小賢しい真似をいたしますわね……ですが、どうやら威力の方は皆無のご様子。このドン・フリーダム(CG)を倒すには、そんな爆弾もどきでは――」
「これで倒すつもりなんか、最初からないのよ!」
渾身の一投に合わせて、アリエルは子供のように笑う。
その真意をドン・フリーダムCGは測りかねた……が、すぐ理解させられるとも思っていなかっただろう。
曝け出していた背中を爆風が煽る。実体持つCGは、大きく吹き飛ばされて。
制御できない着地点は、アリエルの腕が届く距離。
「近づけないなら来てもらうまで、よね!」
「あらあらいけませんわ。わたくし大首領様に遺跡のご案内をするお約束が」
下手な言い訳で逃げようとするドン・フリーダムCGの胸元、僅かに身を飾る装身具を伸びてきた手がむんずと掴む。CGの癖に実体なんて持っていたのが運の尽きだ。
「さあ、フリースタイルげんこつバトルの時間を始めるわ!」
「ただの殴り合いじゃありませんの!」
全力で拒否を示すCG。
しかし悲しいかな、所詮は劣化コピーの身でアリエルのパワーに敵うはずもなく。
まるで隕石の如き強烈な一発が炸裂すれば――丸腰裸族は錐揉みして、頭から花型の足場に墜ちた。
巨悪が猟兵を引きつけると、それが道理であるのなら。
現れた猟兵が巨悪を叩きのめすのも、また然り。
「そういうものなのよ!」
ぐっと拳を握ったままで、アリエルは勝ち誇る。
大成功
🔵🔵🔵
ユーシア・ロクス
そこまでです!なんだかお久しぶりな気がするキング・ブレインさん!
2P(小)『そしてVC開放を目論んでるそこの痴女!その格好と言動から不安しか浮かばないっすよ!』
3P(小)『…情報量が多くてツッコミが間に合いません(メガネ光らない)』
相手はCGといってもフォーミュラ、つまりラスボス級です!
下手に小細工するより、一気に仕掛けた方がいいですよね?
『おはなしのカギ』を「レースゲーム」に繋ぎ、『駆け抜ける疾風のカギ』にチェンジ、そのまま《騎乗突撃》です!
相手のUCは兆候を《見切っ》て離脱して避け、足元が崩れても《空中機動》で空を駆け抜けてそのままUCの効果を受けての防護無視の突撃を当てに行きます!
●ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)
「そこまでです! なんだかお久しぶりな気がするキング・ブレインさん!」
「ムムッ!」
「そしてバーチャルキャラクター開放を目論んでるそこの痴女! その格好と言動から不安しか浮かばないっすよ!」
「……ムムッ?」
「……情報量が多くてツッコミが間に合いません」
「ムムムッ!? はい! はいストップ! 大首領キング・ブレインの名において、この戦い少々中断!」
「なんですか! キング・ブレインさんは次のステージのボスキャラじゃないんですか!?」
「仰るとおりですとも! しかし、さすがの吾輩も疑問をしまい込む胸が容量オーバーではち切れてしまいそうなのでな!」
故に、一つだけ質問する事を許して欲しい。
そう前置きしてから、キング・ブレインはユーシアに問う。
「……お嬢さん、双子でなく四姉妹だったのであるか……?」
「だから違いますー!!」「違うっすよー!」「……はぁ」
この鈍感骸骨が本当にオウガ・フォーミュラなのだろうか。
通常2Pと2P(小)を別カウントする察しの悪さで世界侵略など出来るのだろうか。
抗議する1Pと2P(小)を横目に、効率主義の3P(小)がメガネを曇らせた。
話題に入れないドン・フリーダムCGも(恐らく)仮面の下で笑顔を曇らせていた。
さておき。
お間抜けな大首領の相手は、ユーシア自身が言った通り次のステージまでお預け。
まずはドン・フリーダムCGとの戦いだ。
「ブオン! ブオン!」
出現時の擬音を態々繰り返して存在をアピールする辺り、向こうもやる気は十分だ。
「相手はCGと言ってもフォーミュラ、つまりラスボス級です!」
「攻略情報は?」
「ほとんどありません!」
1Pが元気に答えれば3P(小)が溜息をつく。
3Pは効率主義者であるからして、能力値やら弱点やらデバフの有効無効やらが明らかでない戦いなど出来得る限り避けたいところなのだろう。
しかし、選択権とは概ね1Pに委ねられているものだ。
1Pのわたしが戦うと言うならば、2P3Pは協力プレイをするのがベスト。
「……で、どうするんです?」
「下手に小細工するより、一気に仕掛けた方がいいですよね?」
「わたしは異議なしっすー」
2Pの回答は、恐らく思考という手順を踏んでいない。
しかし、此処に投票権は3つしか存在しないのだ。
1Pと2Pが同一意見ならば、3Pは協力プレイをするのがベター。
「半端はダメですよ。一撃で倒すのが最高効率です」
「任せてください!」
3Pのわたしに自信満々で答えて、1Pのわたしが取り出したるは馴染みの鍵。
ゲームと現実を繋ぎ導く『おはなしのカギ』だ。
その能力で以て、此度繋ぎ、引き出す力は。
「――しっかり掴まっててくださいね、わたし!」
「しがみつき完了っす」「加速も最高効率の手順ですよ!」
「分かってます! ……さあ、かっ飛ばしますよー!!」
漲る気合をエンジン音が掻き消していく。
その響きに相応しい形とは、言わずもがな、レーシングカート。
侮るなかれ。それは地を駆け、海を渡り、空を飛ぶ。宇宙すらも駆け抜ける。
「行きます!」
「やっと来ますのね!」
オブリビオン・フォーミュラを模した身であればと、ボスらしくどっしり待ち構えていたドン・フリーダムCGが腕を振る。
途端、バーチャル遺跡には何処からともなく嵐が吹き荒れたが――。
「このくらい!」「右っす!」「ここでヒール&トゥ!」
敵の仕掛けを見切った『わたし』たちは、見事な連携と華麗なハンドルさばきと驚きのペダルワークで暴風を乗り越えるばかりか、崩れた足場すら物ともせずに宙を疾走って。
「――突っ込みます!」
それはアクセルベタ踏みのまま、お祈り車線変更の如く猛然と突っ込んだ。
衝撃に揺さぶられるハンドル。ぐしゃりと耳障りな音がする。
レーシングカートは無事だ。
無事でないのは……当然、ドン・フリーダムCGの方だ。
悲鳴すらあげる事も出来ずにもんどり打って転げ回る。
レースゲームにあるまじき惨状――否、ゲームの世界も意外や広いものであるから、暴走運転や器物破損でスコアを競うものもあるだろう。
そんな視点で見たならば、この惨状もアンタッチャブルレコードとして刻まれるに違いない。そして――。
「レースはまだ終わってませんよね?」
ぶおんぶおんとエンジンが唸る。
カートは壊れていないし、チェッカーフラッグだって振られていない。
「完走するまでがレースっす」
2Pの無情な台詞と共に、未だ立ち上がる気配もないドン・フリーダムCGに向かって、レーシングカートが走り出す。
目指すはゴールの向こう側だ――!!
大成功
🔵🔵🔵
エル・クーゴー
●POW
ドン・フリーダムを2年3ヶ月ぶりに目視で捕捉しました
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します
当該敵性はCG
往時のドン・フリーダム程の先制能力は無いものと判断されます
敵ユーベルコードへの対処、適解の算出を完了_実行します
・【ファイアワークス・ドライブ(命中率重視)】発動
・取り回しが軽くて速い武装、拳銃の『L95式サイドアーム』を抜き放ち、絶対無敵バリアの「展開前」に渾身の早撃ち(リミッター解除+クイックドロウ)を放つ
・狙う先は頭部と胸部、ダブルタップ(2回攻撃)
・バリア展開後はバトルスーツより飛行用バーニア展開
・キャノンの射線を警戒しつつ【空中機動+推力移動】で退避
●エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)
「ドン・フリーダムを2年3ヶ月ぶりに目視で捕捉しました」
CGの敵よりも遥かに機械的な呟き。
記録された記憶を呼び起こしつつ、エルは淡々と言葉を重ねる。
「これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します」
「ムムッ! ワイルドハント! 何やら格好良い響きですな!」
外野からブレブレブレと奇妙な笑いが聞こえる。おかげで雰囲気が台無しだ。
しかし、エルは微動だにしない。
目標敵性体はドン・フリーダムCG。そう定めたならブレる事はない。
「敵ユーベルコードへの対処、適解の算出を完了_実行します」
「ちょうてんさいのわたくしに演算能力で挑むつもりですの?」
曲がりなりにもオブリビオン・フォーミュラを模したCGであるというのに。
「舐められたものですわ。何をするつもりか知りませんけど、このわたくしには何をされても構わない無敵のバリアが――」
刹那。
ドン・フリーダムCGの認識は時を遡った。
最初に痛み。つれて衝撃。その後で視覚が猟兵の動きを捉える。
エルが何かを抜き放ち、攻撃を仕掛けてきたのだ。
「あれは……!」
「やはり往時の能力は無いものと推定」
無情の呟きを零したエルの手元から硝煙が流れていく。
取り回しの良い拳銃による渾身の早撃ち。
それも頭部と胸部を2発ずつ正確に射抜く、恐ろしい程の精密さを兼ね備えた射撃。
ようやく全てを理解したところで――ドン・フリーダムCGの思考は、再び時の流れに沿う。
「あり得ませんわ……!」
絶対無敵の防御壁を持つちょうてんさい、オブリビオン・フォーミュラを元にした己が。
まさか『弾を浴びるまで、撃たれた事は疎か、相手が武器を構えた事にすら気付かない』など。
「あり得ませんわ! わたくしは、ドン・フリーダムのCGですのに!」
それは殆ど悲鳴に近い声を上げながら絶対無敵バリアを展開して、赤べこキャノンで狙い定める。
だが、此度の戦場における主導権はエルが分捕った。
「バーニア展開。急速離脱」
一つずつ手順を確かめる余裕すらあると、そう示すような独言を残しつつ退避していく。
その姿を追って幾度も赤べこキャノンが撃ち放たれたが、癇癪じみたそれはバーチャル遺跡を削り取るばかり。
「損傷率0パーセント。被弾確率0パーセント。命中率……算出の必要無し」
人はこのような時に溜息を吐くのだろう。
けれど、エルはアルダワ世界の深部で昏々と眠っていた機械人形。
落胆よりも、嘲笑よりも、さらに残酷で冷酷な反応を示すのだ。
「訂正。敵の性能は往時と比較不能な程に劣化したものと断定」
「あらあらあらあらそんなにぶっ殺されたいのですわね!?」
CGの方がよっぽど血の通った反応を見せる。
だが、そんなものは戦況に何ら寄与しない。
怒り荒れ狂う赤べこキャノンが神速の射手を捉える事は、終ぞ叶わなかった。
大成功
🔵🔵🔵
神宮時・蒼
…なんだか、夢に、出てきそうな、笑い声、ですね
…ところで、昨今の、しーじーは、凄いの、ですね
…凄い才能、ですのに、何か、勿体ない…
【WIZ】
しーじーの、文字が、なんとも、哀愁を、誘い―
ませんね
相手が死角から攻撃するのならば
死角を作らなければいいのでは…?
四方を【結界術】で覆って全方位防御
此れでひとまず不意打ちには合わないでしょう
結界展開後は
【全力魔法】【高速詠唱】で【翠花魅惑ノ陣】を描きます
凄い技術って、本当に、凄いの、ですね
平和的な、使い方が、たくさん、在りそうな、気もしますが
流石は、キマイラフューチャー、と言った、ところ、でしょうか
とりあえず、しーじーには、ご退場、いただき、ましょう
●神宮時・蒼(追懐の花雨・f03681)
遺跡に反響する笑い声。
ブレブレ、ブレブレ、ブレブレブレ……。
(「……なんだか、夢に、出てきそう、ですね」)
蒼は纏わりつくようなそれを払うべく、僅かに頭を振ってから敵を見据えた。
笑い続ける骸骨頭でなく。目を向けたのは、顔隠して後隠さずな遺物の方だ。
(「……昨今の、しーじーは、凄いの、ですね」)
ドン・フリーダム。疾うの昔に葬り去られたはずのオブリビオン・フォーミュラだが、蒼の目に映るそれはとても立体映像とは思えないほど精巧で、殴り殴られが出来るだろう存在感が確かにある。
それほどのものを作り上げ、バーチャル遺跡に配置していたとは。
(「……凄い才能、ですのに」)
平和的な使い方だって沢山ありそうな気がする。
そう思うくらい凄い。さすがはキマイラフューチャーと唸るくらい、本当に凄い技術だ。なのに、もったいないというか、惜しいというか。それとも宝の持ち腐れというべきなのか。
そんな想いが過るのは、相手の腹にくっきりと刻まれた『CG』の文字を見つめてしまったからだろうか。
(「あの文字が、なんとも、哀愁を、誘い……誘…………誘いません、ね」)
「何をジロジロ見て――あら、あらあら? さてはあれですのね?」
ドライな蒼の内心を余所に、ドン・フリーダムCGは己を見せつけるようなポーズをとった。
「このちょうてんさいのパーフェクトフリーダムバディに見惚れてしまったと、そういうことですのね?」
「……」
「それならそうと早く言ってくださればよろしいですのに。冥土の土産に網膜が焦げ付くまで見せて差し上げますわ」
「……」
ここまで応対に困る状況も中々無いだろう。
蒼が口数少なく表情に乏しいのを良いことに、ドン・フリーダムCGは何とまあ好き放題言いなさる。
(「見た目に、拘る、あまり、中身を、少し、入れ損ねた、とか……」)
あるかな? いや、ない。
あまりにも自由な敵に少しばかり思考を乱されたかと、蒼はもう一度だけ頭を振った。
それから、戦いに備える。
CGにはオリジナルのような先制力こそないが、用いる攻撃手段は(威力はさておき)変わらないらしい。
(「此方の、ユーベルコードに、対して、死角から、反撃、してくる、と……」)
……ならば、死角を作らなければいいのでは?
思いついたら即実行と、蒼は四方八方全方位に結界を張り巡らせる。
それはユーベルコードでないから、ドン・フリーダムCGの反撃センサー(仮称)も反応しない。
(「此れで、ひとまず、不意打ちには、合わない、でしょう」)
そして攻防の防を整えたなら、次は攻撃に転じる番だ。
どうやら向こうもカウンターの構えを崩すつもりはないらしく、積極的に仕掛けてくる気配は感じられない。
(「でしたら、しーじーには、遠慮なく、ご退場、いただき、ましょう」)
全力で、高速で、杖用いて描くは陣術。神代より語り継がれし翠の花。
(「大地へ、無限の如く、咲き誇れ――」)
「その瞬間を待っていたのですわ!」
ドン・フリーダムCGが声高に言って反撃マシンを放つ。
狙いは蒼、ではなく蒼が放つユーベルコードの相殺。
防御を固めたとは言え、攻撃が通じないのであれば戦いも進まない。
ともすれば、このバーチャル遺跡において千日手じみた状況も已む無しとなるのか。
そうして時間を使い、バーチャルキャラクター開放プログラム始動に必要なエネルギーを稼ぐのが、ドン・フリーダムCGの真の狙いか――。
……と、心配するような自体には全くなり得なかった。
なぜならば。蒼は日々、着実に強くなっていて。
立ち塞がるドン・フリーダムCGの能力は、敗れ去ったオリジナルにも及ばないからだ。
「っ、そんなまさかですの!」
マシン攻撃の空振りに狼狽えるドン・フリーダムCG。
そのパーフェクトフリーダムバディ(自称)に、蒼の全力が打ち当たる。
結果は言わずもがなだが、敢えて言おう。
相殺の目論見外れたCGは吹き飛ばされた。
そして、とてもCGと思えないくらい辛そうに悶え、蹲ったのだった。
成功
🔵🔵🔴
霧島・絶奈
◆心情
愉しみましょう、存分に
◆行動
『暗キ獣』を使用
【集団戦術】を駆使し圧殺します
私は軍勢に紛れ【目立たない】様に行動
さて…、私を見つけられなければ死角からの反撃も叶いませんよ?
まあ【聞き耳】を立てて警戒は怠りませんから、私を捕捉するだけでは片手落ちですが…
【罠使い】の技を活かし「魔法で敵を識別するサーメート」を複数設置
攻撃用途だけでなく、死角を補うのにも活用しましょう
設置しつつ【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
負傷は【各種耐性】と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復
どんな死角から襲い来たろうとも…
ユーベルコードとオーラ防御の護りを突破出来なければ相殺も叶わないでしょう
●霧島・絶奈(暗き獣・f20096)
既に潰えたオブリビオン・フォーミュラ。
その模造品じみたものだとしても、相見える機会が得られたのだ。
これを僥倖と言わずして何と言おう。
(「愉しみましょう、存分に」)
今この時を愛でるように想えば、衝動が、絶奈の本質が溢れ出る。
「ブレブレ……ブレ……来ますぞ!」
遠間から見守るキング・ブレインも思わず声を震わせる程の気配。
それは瞬く間に屍獣と屍者の軍勢を作り上げ、絶奈を蒼白き燐光の霧纏う異端の神々の似姿へと変えた。
「まるで止めどない欲望のようですわね。実に自由で素敵ですわ」
堂々とした態度で宣うドン・フリーダムCG。
けれど、その言葉に額面ほどの余裕などない事を絶奈は察する。
今の彼女は人ならざる姿であるが、何か特別な力を使った訳ではない。
単に注意深く聞いていただけだ。それで感じ取れるくらいに相手は狼狽えている。
遺跡諸共、圧殺せんと言わんばかりの大軍と相対すれば無理もない。
(「さて……私を見つけられなければ、反撃も叶いませんよ?」)
軍勢に紛れて嘲笑を零し、絶奈は相手の様子を窺う。
無論、その最中にも仕掛けをばら撒く事は忘れずに――。
「ああもう、なんて数ですの!?」
牙剥く屍獣を蹴り飛ばし、屍者が突き出して構える槍を折って吼える。
大軍に対して単身で対抗し得るのは、さすがドン・フリーダムのCGと言うべきか。
もっとも、このままではジリ貧でしかないのは明らか。
打開策は一つだろう。大将首を刎ねる、即ち絶奈を討ち取るのみ。
「わたくしを甘く見ないほうがいいですわよ……!」
そう絞り出すように呟き、丸腰のまま軍勢を捌き続けること暫く。
「……! 居ましたわね!」
薄暗さ感じる軍勢の中に仄か、灯る蒼白き燐光。
その正統から外れた形は屍者でも屍獣でもない。
「ここからがわたくしのターンですわ!」
嬉々として呼び出すマニアックマシンが絶奈の死角から攻め掛かれば、鬱陶しい大軍も相殺されるだろう。
「覚悟なさいまし、忌まわしい猟――」
声を飲み干して爆ぜる炎。
ドン・フリーダムCGを『魔法で敵を識別するサーメート』が焼き払う最中、コントロールを失ったマニアックマシンがふらふらと絶奈の元に流れ着き、神秘に拒まれて墜ちる。
「たとえ死角から襲い来ようとも、これでは……」
絶奈を傷つけるには至らなかっただろう。
ユーベルコードの軍勢も相殺出来ていないのだから、それ以前の話ではあるのだが。
「超技術の産物、実体持つCG、オブリビオン・フォーミュラの写し身……どれほどのものかと思いましたが」
所詮は劣化コピー、遺跡に放置される程度のもの。
落胆が冷酷な響きに変わる中、絶奈の振るう刃と屍者たちの槍が、燻るCGを幾重にも裂いた。
大成功
🔵🔵🔵
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ・改変大歓迎】
あ、なんか前に会った変態と面白いのだ
とりあえずお呼ばれしなくてもやってきたよ。やっほー
それにしてもCGが実態。芋煮の材料とかも出せて、料理したら普通に食べられるのかな?気になる…!
というわけで、礼儀正しく挨拶した後はバトルバトル
変態の人の攻略法はもうわかってるからね!オラー、芋煮のためにCGの技術をちょうびしょうじょの私に渡してどこまで再現できるか教えるんだよー!
芋煮に使えそうな技術は頂きだー!
前に戦ったようにメカ・シャークに乗って足場を確保!色々諸々を回避防御しつつ暴風に乗って【アインス】!これで勝利は頂きブレブレブレー!
ちゃーんと服着ろー!でっかいのはズルいぞー!
●ルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)
「あ、やっぱり前に会った変態と面白いのだ」
遺跡に到着したルエリラは、敵の顔を確認するなり小走りで近寄っていく。
「やっほー。呼ばれたか呼ばれてないか分からないけどとりあえずきたよー」
「これはこれは! ようこそいらっしゃいました!」
バサリと外套広げて胸を張り、悪ぶったポーズで丁重に迎えるキング・ブレイン。
ドン・フリーダムCGは沈黙で応対して――すぐに首を傾げた。
「なんですのこの匂い」
「芋煮だよ」
それ以外に何があるんだと芋煮を見せつけたルエリラに対して、相手方からもまさかの反応が返る。
「芋煮であるな」
「あ、覚えてた? さすがキング、すけすけのうみそも伊達じゃないね」
「いやはやそれほどでは。その節はどうもごちそうさまでした!」
ブレブレブレ! と笑う大首領にルエリラも満足げな頷きを返す。
芋煮は初対面の挨拶にも、久方ぶりの再会にも使えるスーパーアイテムなのだ。
すごいぜ、芋煮!
「わけがわかりませんわ……」
「それはこっちのせりふだよ!!」
血中の芋煮濃度が薄れたのか、ルエリラは突如声を荒らげた。
「CGなのに実体がある? どういうこと? じゃあ調理したら食べられる芋煮の材料とかも出せるの?」
「出せるわけありませんわ」
「うそをつくんじゃないよ!!」
今日のルエリラは出掛けに芋煮を食べなかったのだろうか。
芋煮の摂取感覚を空けすぎてはいけないとあれほど言ったのに(言ってない)
「芋煮は実在するんだ! CGに実体があるってんなら芋煮にも実体があるんだぞ! ……ん? つまりCGは芋煮で芋煮はCGで……まさか、おまえ……」
「な、なんですの?」
明らかに会話を避けたがっているCG。
それを確と見つめて、ルエリラは真実を知り得たとばかりに呟く。
「おまえ……芋煮だったのか……?」
「ちょっとこの娘おかしいんじゃありませんの?」
「ブレブレブレ! 他人を気安くアレな人扱いしてはいけませんぞ! 怪人だって十人十色、みんな違ってみんないい! でありますからな! ブレブレブレ!」
「そういう道徳的な話をしているんじゃありませんの!」
「そうだぞいまは芋煮の話をしているんだぞ!!」
「それも違いますわ!!」
まさかツッコミ役に回るとは思わなかっただろうドン・フリーダムCGを挟んで、異様なやり取りは暫し続く。
そして。
「もう埒が明かないですわね!」
先に痺れを切らしたのはドン・フリーダムCG。
必殺の強制退場アタック、改めレボリューション・ストームが吹き荒れる。
遺跡の足場すらも巻き上げる暴風だ。如何に猟兵といえど、ひとたまりもない。
――が、しかし。
「変態の人の攻略法はもうわかってるからね!」
自信満々に宣うルエリラが飛び乗ったのはメカ・シャーク号。
ひしとしがみついていれば、それは波間で揺れる浮き輪のごとく空を泳ぎだす。
「……なんか前よりも揺れが優しいぞ! 手抜きか!?」
「ほんとになんなんですのこの娘!」
作り物であるが故の出力低下を知ってか知らずか、煽るルエリラを懲らしめようとドン・フリーダムCGは力を振り絞る。
にわかに嵐が強くなり、しかし渦巻く暴風に乗るルエリラは余裕の表情で。
「これぞまさしくシャークネ――」
「言わせませんの!」
さらにさらに強まる嵐がルエリラから言葉を奪う。
だが、それも束の間。
メカ・シャークの上で弓を構えたルエリラは、狙い定めた敵を『貫ける』ものだと思うべく、魂の咆哮を上げる。
「オラー!! 芋煮のためにCGの技術をちょうびしょうじょの私に渡してどこまで再現できるか教えるんだよー!!」
「なにがちょうびしょうじょですのこのぺたんこ娘!」
「うるさいおまえこそちゃんとちゃーんと服着ろー! でっかいのはズルいぞー!」
「文句を言う前に偏食を直したらいかがですの!?」
「なにをいう芋煮は万能食なんだぞ! 体調不良には芋煮! 食欲不振には芋煮! 食べざかりの子供にも芋煮! 飲みすぎた次の日にも芋煮! なにをいれてもおいしい芋煮! おいしい芋煮ばんざい! 芋煮ばんざーい!!」
「芋煮芋煮芋煮ってもういい加減にしてくださいですの!!」
「それはこっちのせりふだー!! 教えるつもりがないなら、芋煮に使えそうな技術は力づくで頂くぞー!! おりゃー!!」
勢い余ってメカ・シャークから飛び出すルエリラ。
その海賊じみた様相から慌てて逃げようにも、ドン・フリーダムCGは自身の周囲の足場さえ悉く吹き飛ばしていた。
「あっ、これ2年前にみたやつだ!」
「オリジナルと同じ失敗とか知りたくありませんでしたわ!」
そんな嘆きの声も虚しく。
撃ち放たれた魔力の矢が、暴風すらも裂いてドン・フリーダムCGを貫く。
「これで勝利とCG技術は頂きブレブレブレー!」
「ああっ……! それは吾輩のアイデンティティ……!」
特徴的な笑い方を真似されたキング・ブレインが、情けなく狼狽えた。
大成功
🔵🔵🔵
卜一・アンリ
世界単位で初めまして。(サクラミラージュ出身並感)
…顔より先に隠すとこあるでしょーが!(キャバリアの牡丹から響く【大声】)
UC【頼れる相棒】。
牡丹の【推力移動】【重量攻撃】、真正面からのボディプレスで圧し潰し!敵UCだって望むところ、キャバリアとしての【怪力】で押し返せ!
ま、私は横槍入れるのですけれど。
敵が牡丹への対抗に気を割いている間に別方向、死角の【闇に紛れる】位置から敵UCの暴風の流れを【情報収集】。
【見切り】次第退魔刀の居合【斬撃波】で【切断】、暴風に出来た隙間を通すよう悪魔憑きの拳銃の【クイックドロウ】【スナイパー】で【騙し討ち】。
貴女の自由運動はお終いよ、『ちょうてんさい』さん。
●卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)
「世界単位で初めまして」
サクラミラージュからの刺客は愛機『牡丹』より大声を浴びせる。
「……顔より先に隠すとこあるでしょーが!!」
「これもオール・フォー・フリーダムの一環ですわ」
悪びれる様子もなく答えるドン・フリーダムCG。
やはり相容れない。
言葉を尽くしても、その先に相互理解という成果は待ち受けていないだろう。
ドン・フリーダムCGが服を着る未来だって存在しないはずだ。
よって、用いるのは言語でなく武力。
「行くわよ、牡丹!」「ヴォ!!」
主の呼び掛けに応じて推力全開。
霊力機関搭載古代キャバリア『牡丹』が、真正面からドン・フリーダムCGへと挑む。
5mの巨躯は胴も四肢もがっしりとしていて力強そうだ。
ちょうすごい技術で実体持つCGだろうと、見てくれは人と変わらないサイズのドン・フリーダムCGなど、ボディプレスで容易く圧し潰してしまえるはず――と、勿論それほど簡単な戦いではなく。
「オブリビオン・フォーミュラ(のCG)を甘く見ないでほしいですわ!」
吼えるドン・フリーダムCGが片腕上げれば、バーチャル遺跡には嵐が吹き荒れる。
花型の足場が捲れ上がる程の暴風だ。それはキャバリアの落下をも堰き止めて、牡丹の巨躯は宙ぶらりん。
「まだまだ! 牡丹、押し返せ!」「ヴォ!!」
たかだか嵐程度に負けてはキャバリアの矜持に傷がつく。
意志持つ牡丹はアンリの声を聞くやいなや、見えない壁を押すように両腕を突き出した。
既に推力全開などと言ったが、あれは嘘だ。まだ行ける。まだ絞り出せる。
「ヴォ!!!」
遺跡に響き渡る牡丹の声。
押し込まれずとも押し返せないその脅威に、ドン・フリーダムCGだって一瞬たりとも気は抜けない。
「なんと凄まじい勝負であろうか……!」
外野のキング・ブレインが、横槍入れる事も出来ずに呟く。
「……ま、私は横槍入れるのですけれど」
力と力の攻防が繰り広げられる最中、アンリはそろりと動き出す。
牡丹から声がしたものだから、てっきりその中に乗り込んでいるものかと思いきや。
自律行動出来る愛機を囮として、彼女自身が狙うは不意打ち闇討ち。
厄介なのは無差別攻撃の暴風だが――。
(「足場ごと吹き飛ばしてくれるおかげで、隠れる場所に困らなくて助かるよ」)
骨をも軋ませる程の強風に苦悶の声さえ混ぜなければ、ドン・フリーダムCGを欺く事も夢ではない。
その為には風の流れを読み違えてはならない。
飛び交う足場の向き、牡丹の四肢の動き。決して十分ではない情報から乱流を見切って。
視界に敵の背を捉えたならば――。
「貴女の自由運動はお終いよ、『ちょうてんさい』さん」
言うが早いか退魔の霊刀抜いて、その一太刀で切り捨てた風の合間に銃弾を送り出す。
目にも留まらぬ居合と早撃ち。
所詮は真のドン・フリーダムでないCGに、その速さは異次元であった。
「っ、く、は……!!」
真後ろから浴びせられた銃弾にCGが揺らぐ。
刹那、勢いの緩んだ風ごと圧し潰して、牡丹の巨躯が迫る。
バーチャル遺跡を衝撃が駆け抜けた。
牡丹の退いた後にはドン・フリーダムCGの名残。
消滅間際のそれは、掠れた機械音声で恨み言を呟く。
「……あなた様からは見えていたはずですのに。何故、奇襲を教えて下さらなかったんですの、キング・ブレイン様……」
「それは卑怯と言うものでしょう! 吾輩、戦いに参加していないのですから!」
「ええ……」
悪の大首領とは思えぬ倫理観。
それに困惑しつつ、ドン・フリーダムのCGは消滅していった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『猟書家『キング・ブレイン』』
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POW : 侵略蔵書「スーパー怪人大全集(全687巻)」
【スーパー怪人大全集の好きな巻】を使用する事で、【そこに載ってる怪人誰かの特徴ひとつ】を生やした、自身の身長の3倍の【スーパーキング・ブレイン】に変身する。
SPD : 本棚をバーン!
【突然、背中のでかい本棚を投げつけること】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【リアクションをよく見て身体特徴】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 脳ビーム
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【脳(かしこさを暴走させる)】属性の【ビーム】を、レベル×5mの直線上に放つ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
遺跡の案内役は消え、残るは大首領ただ一人。
「ブレブレブレ! ここからは吾輩がお相手しよう!」
高らかに叫んだキング・ブレインが巨大な本棚を背負い込む。
戦闘準備完了という訳だ。ならば遠慮はいらない。
このバーチャル遺跡を彼奴の墓場にしてやるのだ――!
アリエル・ポラリス
残念だったわね、だいしゅりょー
最早貴方に勝ち目はないわ!
私はすでに別の場所の貴方に勝ち、あなたとの戦いがバーチャルキャラクターさん達の為と知ってしまったの……
そう、貴方はもはや手遅れ
――恩返しを受けてもらうわ!!!!!
今まではおっきなだいしゅりょーの背後を取ったり体勢を崩したりしたけど、今回はそれをするつもりはないのよ!
バーチャルキャラクターの新たな未来を開いてくれた貴方に対する、恩返しパゥワーが私の背を押してくれる!
今! 最大最高火力のタックルをぶちかまし!
お空まで飛ばしてあげるわ!! またねだいしゅりょー!!!!
●アリエル・ポラリス(焼きついた想いの名は・f20265)
「残念だったわね、だいしゅりょー! 最早貴方に勝ち目はないわ!」
「ムムッ!?」
ずびしと真実を突きつける探偵のように、アリエルは声高らかに宣う。
対するキング・ブレインは、骸骨頭なりの驚愕っぽい表情を作って。
「……そういうフラグっぽい台詞は、何方かと言えば吾輩が言うべきなのでは……」
割と真剣に悩み始め、うーんうーんと唸りだした。
けれど、キングの困惑は未だ序の口。
「私はすでに別の場所の貴方に勝ち、あなたとの戦いがバーチャルキャラクターさん達の為と知ってしまったの……そう、貴方はもはや手遅れ――恩返しを受けてもらうわ!!!!!」
つらつらと捲し立てるアリエル。
「別の場所の吾輩……手遅れ……うごごご」
悩みすぎて変な震えを起こすキング。
「まあ、細かいことは良いのである!」
頭蓋から透けて見える脳みそが焼き切れそうになった頃、キング・ブレインは開き直った。
「何時の何処で何が起きていようとも、此処で吾輩が敗北して良いわけがないのだ!」
「……そう。もうどうにもならないと知っても、止める気はないって訳ね」
一瞬ばかり悲しげな雰囲気を捻り出して、アリエルは再び叫ぶ。
「やっぱり恩返しを受けてもらうわ!!」
「うーん、吾輩に拒否権なし!」
キングの威厳も形無しである。
「ならば力づくで吾輩の凄さを見せつけるしかあるまい!」
言うが早いか、背負う書庫から一冊の本を取り出したキング・ブレインは吼えた。
「確とその目に焼き付けよ! これがキング・ブレイン――否、スーパーキング・ブレインの力である!」
途端に大首領の身体は膨れ上がり、本来の三倍の巨躯に何やら盾らしきものを備えた姿となった。
もしや拒否権を具現化した特徴であるのかもしれない。
「さあ来るが良い、吾輩の真なる力で全て跳ね返して差し上げましょう!」
「……いいわ、やってあげる!」
「えっ」
そんなにあっさり、と大首領が思ったのも束の間。
アリエルは真正面からスーパーキング・ブレインの巨躯に向かっていく。
「聞こえていらっしゃらなかったのですかな!? 吾輩の真なる力で――」
「恩返しよ!」
「は?」
「恩返しはやっぱり正面から堂々とするものだわ! 今まではおっきなだいしゅりょーの背後を取ったり体勢を崩したりしたけど、今回は別! バーチャルキャラクターの新たな未来を開いてくれた貴方に対する、恩返しパゥワーが私の背を押してくれる!」
「吾輩恩返しされるような覚えは」
「恩返しされる人はそうやって殊勝な事を言うものよ!」
成立しているようでしていない会話の応酬。
それが時間を奪っている事に大首領が気付いた時、スーパーキング・ブレインへの恩返しを目論むスーパー恩返しウーマンの姿は、もはや目前まで迫っていた。
「しまった!」
「今! 最大最高火力のタックルをぶちかまし! お空まで飛ばしてあげるわ!!」
竜を模した炎纏って飛びついて、力の限りに繰り出すは、恩返しという名の――投げっぱなしジャーマン!
「うおおおおおおお!」
投げ技が相手では盾など何の役にも立たない。
「投げ抜けが得意な怪人を選んでおくべきであった――!」
「またね、だいしゅりょー!!!!」
陽気に手を振るアリエルの向こうで、流星の如く飛んでいった大首領は、地下遺跡の天井に凄まじい勢いで頭を打ち付けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
白斑・物九郎
●WIZ
ワイルドハント、白斑物九郎
キマイラフューチャーの『魔王』が相手になってやろうじゃニャーですか
拝謁を許す
俺めのコトは猟団長と呼べ
・【♯ワイルドハント】発動
・「知られざる地下巨大バーチャル遺跡」とかいう、風景映すだけでもバズ必至だろうスポットを舞台に生配信開始
・敵のビームの射出タイミングと射線とを【狩猟】動物本能全開の【野生の勘】で予期
・遺跡を巧みに駆け(ダッシュ+軽業)、遮蔽を利用し敵の視線を切りつつ接近(地形の利用)
・コードの力でフォースオーラ『モザイク状の空間』を広域展開(迷彩+限界突破)
・モザイク模様で敵の照準力を乱しつつ更に接近
・透けて見える脳味噌を魔鍵で殴り付ける(怪力+暴力)
●白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)
キング・ブレイン。キング。王。
王とは支配者である。王とは統べる者である。
未だキマイラフューチャーの侵略こそ成し遂げていないが。
幾人もの猟書家と数多の怪人統べるキング・ブレインは間違いなく王である。
「ならキマイラフューチャーの『魔王』が相手になってやろうじゃニャーですか」
ワイルドハント、白斑物九郎。
猟団長たる彼が自らを魔王と呼ぶのであれば、其処には当然の如く『民』が在る。
その民に此度、拝謁を許すのは、異族の王との邂逅であればこそ。
「キング・ブレイン。お前さんの王たる資質、見せて貰わニャ困るっすよ」
そうでなければ。
そうでなければ――『いいね!』も再生数も稼げない!
「通知だ」「生配信だ」「猟団長だ!」
所変わってキマイラフューチャーの街中。
のんべんだらりと今日を過ごしていたキマイラたちが沸き立つ。
「やべーよゲリラ配信きたよ!」「今日は何するのかな」「配信たすかる」
キマイラたちの興奮や疑問はそのままコメントと化して、電脳世界を駆け巡る。
「同接やばない!?」「猟団長最強!」「キマフュ配信界は猟団長しか勝たん!」
早くも過激派じみたキマイラたちが溢れてくる中、彼らの端末には見知らぬ風景が映った。
物九郎とキング・ブレインが相対する地下巨大バーチャル遺跡だ。
地下の、巨大な、バーチャルの、遺跡。ロマンしかない。ロマンの塊でしかない。
そんなロケーションに興奮するキマイラ(主に男子)と、そんな所で何事か為そうとする物九郎に興奮するキマイラ(主に女子)によって、生配信には開始直後から『いいね!』と応援コメントが殺到していく。
「ずるいですな!」
キング・ブレインが自前のスマホを覗きながら僻んだ。
ならばチャット欄を荒らしたり、やたらめったらBADボタンを押すのかと思いきや、ちゃっかり『いいね!』を押している辺りに大首領のネットリテラシーやネチケット(死語)が垣間見えたが、さておき。
「配信者として敵わぬならば、大首領としての吾輩の力をお見せしよう!」
外套翻したキング・ブレインが身構える。
「人気配信者を力づくで退けてしまえば、吾輩が配信界最強になる未来も!」
「ないっすね」
撃ち放たれたビームをあっさりと見切って呟く物九郎。
光の速さで襲い来る攻撃も、彼の前では亀やナマケモノ程度。キング・ブレインの構えや手足の動きを目で捉え、向けられる敵意や殺気を肌で感じて、考えるのでなく己の闘争心や生存本能に身を委ねれば、何千何万と浴びせかけられようと尻尾の先にすら掠らない。
そんな光景が映る度、生配信のチャット欄にはキマイラたちの称賛が押し寄せてくる。
彼らへのアピールを考えれば、ここらでアクセントを加えたいところ。圧勝するだけでも十分なエンターテインメントだが、其処に意図的な盛り上がりどころを仕込んでやれば、視聴者の途中離脱を防ぎながら切り抜きしか見ない勢だって巻き込める。
「っつーこって、見せてやりまさァ」
配信用ドローン『茶斑の三毛』越しに御覧じろ。
先の戦いで捲れ上がった遺跡の足場を盾としてビームを避け、忽然と広げた『モザイク状の空間』で色彩輪郭を狂わせながら、敵に猛進するこの猟団長の姿!
「何だか分からんけどスゲー!!」
大体そんな感じのコメントが滝のように流れていく。
それを流し見る度に、物九郎の力も高まって。
左手に確と握り締めた魔鍵を振り上げ、キング・ブレインの頭蓋へと叩き込めば!
「ブレブレブべッ!」
せめて情けないところは見せまいと虚勢を張っていたキング・ブレインが、笑い声をバグらせながら弾んで、明後日の方向に飛んでいく。
それをばっちりと収めたドローンが再び物九郎の姿を映すと。
殺到したコメントは通信網の限界を超えて、映像内で静止した物九郎の凛々しい顔には、暫しの間、読込中を示す円がぐるぐるぐるりと回り続けていた。
大成功
🔵🔵🔵
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ・改変大歓迎】
ふっ、ブレブレとは気が合いそうだけど私たちは敵同士。悲しいけど私、猟兵だからね
ブレブレは本棚。私は芋煮。そこになんの違いもありはしないよ!私も芋煮を背負って…あっつ!!やめとこ
お互いこの芋煮を食べ終わったらいざ勝負!
それにしても脳ビーム…なんておもしろ…じゃない恐ろしいんだ
超天才の私に直撃したらいったいどうなってしまうんだろう…ゴクリ
ブレブレは強いからなー強いから当たってもしかたないよねー…グワー!
当たって大ピンチな私。暴走しちゃった美少女にブレブレはなにしちゃうんだろ…
でも実は当たる前から【芋煮ィッシュ作戦】を発動しておいたのさ
ブレブレのその透けてる頭、忘れないよ
●ルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)
戦場であるバーチャル遺跡を不思議な静寂が支配していた。
相対する大首領キング・ブレインと、猟兵ルエリラ・ルエラ。
二人は何も語らない。まるでこの先に訪れる結末を予期して、其処に至る事を惜しんでいるかのようだった。
それでも、時は無情に過ぎていく。
「悲しいけど私、猟兵だからね」
バーガー風芋煮を口に放り込んで「あっつ!」と悶えた後、何でもなかったような雰囲気を無理やり作ったルエリラが芋煮の鍋を持つ。
「キング・ブレイン! 下からぶちかますよ!」
「芋煮を下から!?」
そんな事をしたら大火傷する以外にない。
然しもの大首領も諸手を突き出して全力拒否。
「それを投げるだなんてとんでもない!」
「なんでだよ! ブレブレは本棚。私は芋煮。そこになんの違いもありはしないよ!」
「違うのだ!!」
断固として反対の意志を示すキング・ブレイン。
その強情を叩き潰すには言葉でなく態度で示さなければなるまい。
ルエリラ曰く「なんの違いもありはしないよ!」を実践しなければなるまい。
「私も芋煮を背負って……だからあっつ!!!」
いつでも作りたての芋煮たっぷりなのが裏目に出た。これはよろしくない。
「やめとこ」
「うむ! それが賢明な判断である! ブレブレブレ!」
安堵の笑いを零す大首領に、ルエリラは一杯の芋煮を差し出した。
投げられないからと芋煮を放置しておくのはもったいない。
スタッフがおいしくいただきました、というやつだ。
「では遠慮なくいただこう、ブレブレブレ!」
「それ食べ終わったら勝負ね」
「いいですとも!」
芋煮鍋を挟んでの誓いが絶対だとは古事記にもそう書かれている。
かくして戦いは未だ始まらず、遺跡には芋煮をすする音が響いた。
戦場とは思えない不思議な静寂がまた満ちようとしていた。
けれども、時は無情に過ぎていく。
「悲しいけど私、猟兵――」
「そのくだりはもう済んだのである!」
TAKE2を回避したキング・ブレインは身構え、何事か呟き始めた。
「詠唱時間に応じて無限に威力を上昇させ、直撃した相手の『かしこさ』を暴走させる脳ビームってやつだね」
ルエリラは台本丸読みの大根役者のように言って、しかし逃げるでもなく仕掛けるでもなく、ただブツブツ独り言を呟く不審者と化したキング・ブレインを生温かい眼差しで見つめるだけ。
理由は至極単純。
「超天才の私に脳ビームが直撃したらいったいどうなってしまうんだろう……」
まるで出来たてホヤホヤの芋煮を前にした時のように、ゴクリと喉が鳴る。
猫をも殺す好奇心とは全く救い難いものだ。けれど、致し方ない。
「ブレブレは強いからな……強いんじゃ当たってもしかたないよね……」
誰に向けるでもなく言い訳して待つルエリラ。
その様子を見て再びの戦闘中断を言い出すほど大首領もお人好しではなく、中身の透けた頭蓋がキラリと光れば、放たれたビームがルエリラを直撃した。
「グワー!!」
お手本のような悲鳴が響く。
――そして。
ルエリラは全てを知った。全てを理解した。
宇宙の歴史と誕生。生命の神秘。戦争と平和。
頭の中に浮かび上がっては過ぎていく様々な光景。
「そうか……世界とは……芋煮とは……」
未だ誰も知り得ぬ真理、誰も辿り着けぬ頂に手をかけた感覚。
常人ならば耐えきれず壊れてしまうだろう、トランセンデンス。
それを受け止められたのは、ルエリラがちょうてんさいである証明なのだろうか。
それとも芋煮のおかげなのだろうか。
「――ム、ムムッ!?」
忽然と響く間抜けな声がルエリラを現実に引き戻す。
何かとんでもない事を考えていたような気がするが、何も思い出せない。
「ブレブレ、今なにかした?」
「何もしてませんとも! それより」
「何もしてない!? 隙だらけのびしょうじょに何もしなかったのかおまえ!」
勢いよく叩きつけられた芋煮用おたまが軽い音を鳴らす。
「それでも悪の大首領か! 芋煮が泣いてるぞ!!」
「その芋煮が落ちてきているんですが!?」
ボケる余裕もないキング・ブレインが上を指差せば、其処にはバーチャル遺跡の天井から生えてきたように迫る巨大な質量の芋煮が。
「……気付いてしまったんだね。実はとっくの昔に『芋煮ィッシュ作戦』を発動しておいたのさ」
「なんですと! ……まさか南極条約違反も辞さぬとは!」
キング・ブレインが慄き叫ぶ最中にも迫る巨大芋煮。
逃れる術はなく――哀れ、大首領の姿は芋煮の下に消えていく。
「……ブレブレのその透けてる頭、忘れないよ」
衝撃が遺跡を駆け抜ける中。
新たによそった一杯の芋煮を手に、ルエリラは呟くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ユーシア・ロクス
ドン・フリーダムは倒されました!後はあなただけですよキング・ブレインさん!
3P(小)『(……装置を扱える筈のドンが既に倒れ、
実質負け戦なのになんであの人やる気なんでしょうか)』
既にわたしが複数いる事もバレちゃってますし、
きっと前と同じ手は使え……って、あれ、投げてこないで変身しましたよ!?
で、でも巨大化するなら好都合です!
『カギ』を対戦格闘ゲームに繋いで……相手の攻撃は《見切り》とオマケ程度の《迷彩》効果、避けきれなくても《ジャストガード》と気合の《オーラ》でやり過ごして、距離さえ詰めれば……手甲での一撃からUCです!
どれだけ大きくたって、浮くなら……墜として見せます!!
※アドリブ他歓迎です
●ユーシア・ロクス(まっさらゆうしゃ・f26126)
「ドン・フリーダムは倒されました! 後はあなただけですよ、キング・ブレインさん!」
「ブレブレブレ! うむ、吾輩を追い詰めた感があって良い台詞であるな!」
意外や楽観的姿勢で答える大首領。
その姿を見つめて、3P(小)は小さく唸る。
(「……あの人、なんでまだやる気なんでしょうか……?」)
キング・ブレインが此処に居るのは恐らく偶然であり、この戦いに加わったのもドン・フリーダムCGからの要請を受けたからに過ぎない。
ならば依頼主であるドンが敗れた以上、彼が留まる理由などないはずだ。ドンが稼働させようとしていた謎の装置についても、キング・ブレインが特別な価値を見出しているようには思えない。
(「……うーん、うーん……」)
効率主義的思考では理解できない。
3P(小)の唸り声が強まる一方、1Pユーシアは警戒を強める。
何せ、以前の邂逅では巨大本棚を使ってビックリドッキリさせられたのだ。
「あの時はわたしとの協力プレイで撃退しましたけど、わたしが複数いることはもうバレちゃってますし……」
「前と同じ作戦は通用しないはずっす。どうするっすか、わたし」
キング・ブレインの動向には気を払いつつも、ごにょごにょと繰り広げられる作戦会議。
その最中、悩み唸り続けていた3P(小)が声を上げた。
「な、なんですかあれは!」
驚きのあまりズレたメガネをクイッと直して、そのまま向こうを指差す3P(小)に従い、視線を動かせば。
其処に立っていたのは、平時の3倍の体躯と何某かの怪人の特徴を得たスーパーキング・ブレイン。
「……あれ、変身しましたよ!?」
「今日は本棚投げてこないっすか!?」
「ブレブレブレ! 同じことをやっても芸がないのでな!」
ユーシアたちの反応に満足げな大首領は、胸を張って堂々と宣言する。
「本日は久方ぶりの再会を祝して、スーパーキング・ブレイン・パーティ怪人モードでお相手しよう!」
「パーティ怪人……!?」
「どんな強力な技を仕掛けてくるっすか……!?」
「うむ! まずは――歓迎のパーティグッズアタックだ!」
言うが早いか、大首領は取り出した大きなクラッカーの紐を引く。
ぱん! と凄まじい破裂音が響いて、勢いよく飛び出した紙片やカラーテープがゆらゆらと揺れながら床に落ちてきた。
「……あ、あれ?」
「まだまだいくぞ、次は巨大くす玉と騒がしいラッパ、さらに大量のバルーンだ!」
意気揚々と振る舞う大首領の方から「パフパフ」と間の抜けた音がなってカラフルな風船の群れが飛び立ち、金色の大玉がぱかっと割れて紙吹雪が散ったが――それ以外には、特に、何も。
「どうだ、賑やかだろう!」
「確かに賑やかでしたけど……」
「もしかしてこれだけっすか……?」
困惑しきりのユーシアたちに向けて、大首領は堂々と宣った。
「うむ! まさか賑やかしに殺傷能力がついているはずもあるまい! ブレブレ!!」
「……きょ、巨大化したなら好都合です!」
無害な芸の意味など考えるだけ無駄と悟り、気を取り直しておはなしのカギを対戦格闘ゲームへと繋ぐ。
途端に変じたカギは覇気纏う手甲の姿となって、両拳を打ち鳴らしたユーシアは大首領に向かって猛然と駆けた。
「ムムッ!? まだ出し物が終わっていないのですが!?」
「そんなの待ってたら日が暮れちゃいます!」
「むぅ、ならば致し方あるまい! あの日からどれほど力を高めたか、この吾輩が直々に確かめてやろう!」
意気込む大首領は拳を握り、迫るユーシアに向かって構え……目をこする。
「何か、お嬢さんがぼやけて……もしや、老眼……?」
「違います!」
ユーシアが気休め程度に用いた迷彩効果だ。
ならばと範囲重視の平手打ちに変えた大首領に、ユーシアは真っ向から打ち当たる。
体格差を考えれば、勝敗は明らかであるように思えたが――。
「わたしの闘志は鉄をも砕く!」
「なんですと!」
攻撃に合わせてがっちりと防御の構えに組まれた手甲、そしてユーシア自身の漲る気合が衝撃を相殺して、むしろ体勢を崩したのは大首領の方。
その不安定で隙だらけの一瞬に、ユーシアが下からすくい上げるようなパンチを打てば。
「どれだけ大きくたって、浮くなら……墜として見せます!!」
ふわりと浮いた大首領に叩き込まれる拳打の嵐。
「これで、トドメです!」
華麗な空中コンボを締めくくる一撃を打ち込めば、スーパーキング・ブレインの巨躯は空中で爆発する!
「ぬわぁ、ぬわぁ、ぬわぁー……!」
元のサイズに戻りながら落ちてきた大首領の身体が床を弾む。
その情けない姿を背景にユーシアは勝利の決めポーズを取って。
「……あの舐めプっぷり……結局、何がしたかったのでしょうか……」
キング・ブレインの振る舞いが腑に落ちない3P(小)は、またメガネを曇らせるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
霧島・絶奈
◆心情
『迷宮災厄戦』以来ですね
今回も存分に愉しみましょう
◆行動
先制攻撃出来たなら結果は違ったでしょうに…
【罠使い】として持ち込んだ「白燐発煙弾」を【衝撃波】で周囲一帯に散布
自身の視界は白燐を透過する赤外線センサと【環境耐性】で確保
散布後『暗キ獣』を使用
【集団戦術】を駆使し敵を包囲殲滅
私は煙幕と軍勢に紛れ【目立たない】様に行動
直線攻撃は不便ですね
視界の利かない環境で四方八方から襲い来る軍勢…
貴方は私を見つけられますか?
私自身も【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
攻撃範囲ギリギリで当てる事で捕捉され難くしておきましょう
負傷は【各種耐性】と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復
●霧島・絶奈(暗き獣・f20096)
「お久し振りですね」
「うむ、其方もご壮健で何よりである! ブレブレブレ! ……じゃ、吾輩はこれで」
お疲れさまでした、などと小声で呟き去ろうとした大首領を衝撃波が襲う。
「ドン・フリーダムのCGから装置の稼働を頼まれたのでは?」
「まあ、そうではあるのだが……」
やけに及び腰の大首領。
その理由を推察して……機先を制する力がないからか、と絶奈は結論づける。
「万全の状態ではないという事ですか」
「いやいや、吾輩は今日も絶好調、すこぶる元気である!」
「では何故?」
「いや、まぁ、その、な?」
全く要領を得ない。話したくないのか話せないのか話すつもりがないのか。
しかし、何れにせよ。
「話す気になって頂ければ良い話ですね」
「だからそういうのは悪役側の振る舞いではないのか!」
どうしようもなく情けない叫びが響く。
けれど、そんな事で絶奈は動じない。淡々と大量の白燐発煙弾を衝撃波に乗せて撒く。
「これはいつぞやも見た目眩まし……ならば!」
不明瞭を不明瞭と思わぬ、神の眼を持つ怪人の力を借りればよい。
「吾輩は反省の出来る大首領であるからな! ブレブレ……ブレ……ムムッ!?」
計略を看破したとばかりに笑いかけた大首領であったが、その余裕はすぐさま消失した。
彼は一つ、大事な事を見落としていたのだ。
「本が……吾輩のスーパー怪人大全集が、見えん!!」
何せ全687巻を収めた書庫である。
「いやしかしアレはこの辺りに……なぜこの巻がここに!?」
どうやら整理整頓もろくにしていなかったようだ。
日頃の備えが如何に大切であるか、大首領は身を以て教えてくれた。
しかし、反面教師になったくらいで見逃されるはずもなく。
白煙を物ともしない絶奈は間抜けな大首領の姿を赤外線センサ越しに眺めると、異形の姿に変じながら屍兵の軍隊を喚び出した。
それらが放つ殺気、この世ならざる所の雰囲気は白煙程度で封じられるものではない。
「ムムッ……こうなったら致し方ない!」
変身を諦めた大首領が遮二無二ビームを撃ち放つ。
「この戦場の何処かに潜んでいるのは間違いないのですからな! こうして四方八方に攻撃し続ければ、いつかは大将首にも……」
「果たして届くでしょうか?」
姿は見えずとも聞こえた声の方に向けて、大首領がビームを撃てば倒れたのは屍兵一人。
「残念でしたね。さて、時間切れとなる前に私を見つけられますか?」
「ええい、貴様はもっとヒロイックに戦えんのか! 大首領が相手なのだぞ!」
抗議は虚しく白煙の中に消えて、姿を現すのは屍兵と屍獣ばかり。
おまけに彼方此方から衝撃波が襲い来る。
「これは……これは、無理ゲーではないか!!」
もはや半狂乱の大首領はビームを撃ち続けるけれども、ろくに詠唱も出来ない状態での乱射ではジリ貧一直線。包囲の円が次第に狭まっていって――。
「ぐわー!!」
屍兵の狭間で、実に標準的な叫声が上がる。
ただ一人の猛者が万の大軍に打ち勝つなどフィクションに過ぎないのだと、大首領は身を以て教えてくれたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
卜一・アンリ
さっきの戦いを観戦している以上、コソコソ動いても見咎められる。
で、あらばやるべきは今度こそ正面対決!
牡丹の肩に乗り、私が銃撃の【弾幕】で牽制しつつ【騎乗突撃】よ!
ここで肝要なのは敵UCへの対処。
初手は私自身は対応できない【演技】をしつつ牡丹が【かばう】状態で防ぎそのまま【推力移動】。
敵は当然私自身が弱点だと狙って攻撃を繰り返すでしょう。
十分に接敵したところでUC【悪魔憑依「アスタロト」】!
飛んできた本棚を【見切り】UCを宿した腕の超【怪力】でキャッチ!
そのまま牡丹から【ジャンプ】し敵に叩きつける【カウンター】【重量攻撃】!
真直ぐ近づいてパワーで殴る、これが古来伝統のかしこい戦法ってことよ!
●卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)
「さっきの戦いを観られている以上、不意打ちは通用しないわね」
ならば正々堂々と、今度こそ正面切ってやり合う以外にない。
「行くわよ牡丹!」「ヴォ!!」
主人の呼び声に応じて古代キャバリア『牡丹』が態勢を整え、その肩に颯爽と乗り上げたアンリが拳銃を構える。
「ブレブレブレ! そんな豆鉄砲が吾輩に効くとでも?」
「見てくれだけで判断するなんて大首領としてどうなのよ?」
「ムムッ!」
確かに、それは上に立つ者として相応しくない姿勢かもしれない。
「お嬢さんの言うとおりであるな! 大首領としては襟をただっとぉ危ないっ!!」
感心していた所に雨あられと降り注ぐ弾丸。
身を捩り、紙一重で避けて逃げ回るキング・ブレインだが、何しろアンリの拳銃は悪魔憑き。
撃ったそばから弾倉に弾が召喚されてくる。よってアンリは引き金を引くだけで、拳銃とは思えぬ速度の連射を浴びせかける事が出来るのだ。
「このまま突撃よ!」「ヴォ!!」
「ええい、お嬢さんがそう来るのであれば……吾輩は本棚をバーン!!」
「っ!?」
突如として足を止め、大首領は背負い込んでいた巨大本棚を放り投げた。
攻防の切り替えの早さに加えて、行為そのものの大胆さが不意をつく。イケイケドンドンで全力突撃を掛けていたアンリが反応できた頃には、もはや巨大本棚の角っこが必中の軌道。
「さらばだ、お嬢さん! ブレブレブレ!!」
「――ヴォ!!!」
「ゔぉ!?」
ガツンと衝撃音が響き、牡丹の片腕に跳ね返された本棚はキング・ブレインの元へ。
「ありがとう、牡丹。私が振り落とされていたら万事休すだったわ」「ヴォ!!」
「……なるほど、大首領は良いことを思いつきましたぞ!」
耳聡いキング・ブレインは重大情報を逃さない。
「お嬢さんをバーン! すれば、そのお助けロボットは無用の長物、独活の大木! そこでぶんどってしまえば、吾輩のモノという訳ですな!」
「っ、牡丹はあげないわよ!」「ヴォ!!」
「あげないと言われたら余計欲しくなるものです! 吾輩、悪の大首領ですからな! それ、そぉい! そぉい! そぉい!」
当然ながら悪びれる様子などなく、大首領は地道に前進する牡丹の肩へと本棚を投げまくる。
恐るべき膂力だ。やはり大首領は只者ではない。
「く……まずいわ牡丹、このままじゃ……」「ヴォ……!」
「ブレブレブレ!! 果たしていつまで凌いでいられますかな!」
此処が好機と前のめりに攻めかかる大首領。
それこそが狙いであると気付いた頃には、もはやアンリの掌の上。
「アスタロト!!」
悪魔の名を呼んで飛び上がれば、全身に力が漲り、痛みが走る。
(「望み通りその身に与えよう、愚かなアリス。我が毒をよく味わい苦しみ、そして使うがいい」)
「ええ、存分に使わせてもらうわよ……っと!」
「ブレブレ! そぉい! ……お、おお、おおお!?」
あんぐりと口を開いて固まる大首領の目前。
放り投げられた本棚の軌道を見切り、片手で難なく受け止めたアンリはそのまま大首領へと迫る。
「真直ぐ近づいてパワーで殴る、これが古来伝統のかしこい戦法ってことよ!」
「お、ちょ、お待ちなさい! ストップ! そんなもの投げては危ない!」
「あなたはこれでもかってくらい投げてたわよね!」
「ごもっとも!!」
言い逃れこそしないが、キング・ブレインは脱兎のごとく逃げ出す。
だが、何もかも遅すぎた。
「そぉい!!」
ダンクシュートのように、或いは羽虫でも叩き落とすかのように振るわれる本棚。
それが作る黒い影の下に大首領の姿は消えて、バーチャル遺跡が衝撃で揺れ動く。
「ヴォ!!」「……大丈夫よ、牡丹」
すかさず駆けつけた古代キャバリアに再び身を預けて。
遠ざかっていくアンリの視界で、倒れたままの本棚はピクリとも動かなかった。
大成功
🔵🔵🔵
神宮時・蒼
…笑い方は、独特、ですが、強敵、の、よう、ですね
…油断せずに、行きましょう
…それに、しても、背中の、大全集。…何が、書いて、ある、のでしょう
脳属性って一体どういう属性なのでしょう…
よくわかりませんが、当たれば厄介そうです
念のため【目立たない】ように様子を見つつ
【結界術】で防御態勢を取ります
相手の詠唱時間に応じて威力が変動するのであれば
詠唱の邪魔をしてしまえば、ビームの威力も落ちるのでしょうか
相手が詠唱に入ったら【弾幕】を放ち続けて妨害しながら隙をみて
【UC】発動
ビームが放たれたなら【衝撃波】で相殺
多少のダメージは【激痛耐性】で耐えれましょう
無事に、巨悪は去った、と言う事、でいい、のでしょうか
●神宮時・蒼(追懐の花雨・f03681)
ブレブレと独特な笑いに気を取られがちだが。
ドン・フリーダムCGの敗北を目の当たりにして、それでも堂々とした態度を保っていられるのは、やはりキング・ブレインがオウガ・フォーミュラにして大首領であるからだろう。
「……強敵、の、よう、ですね」
奇妙な言動に騙されてはいけない。油断してはならない。
今一度、蒼は気を引き締めて……大首領が背負い込む本棚をちらりと見やった。
「ムムッ! この書物が気になるのですかな、お嬢さん!!」
「っ……」
ほんの些細な視線の動きも逃さない、という事か。
蒼の身体が僅かに強ばる。
その緊張すらも感じ取ったかのように、大首領はブレブレと笑って。
「いやはや実にお目が高い! 吾輩が背負っているこれは『スーパー怪人大全集』と申しまして全687巻からなる貴重な文献なのですがこれらを読むことによって吾輩は一時的に怪人の皆さんの力をお借り出来ると言うわけなのですな! ちなみに吾輩が気に入っているのはいや怪人の皆さんは悉く素晴らしい故に順位やランクをつけるというつもりではないのでその辺りは誤解なきように願いたいのですが最近は特にこの82巻や193巻辺りに載っている怪人などがちょっとしたマイブームでして――」
「…………」
大首領は好きな事の話だと饒舌になるタイプだったようだ。
蒼は本棚に少しばかり興味を持った事を後悔しつつ、大首領のよく回る口には少しばかりの称賛を送りつつ。
(「……今のうちに、備えて、おくと、しましょう、か」)
目ざとい大首領に気付かれないよう細心の注意を払って、防御の為の結界を張る。
大全集とやらの効果も脅威ではあるし、あの本棚を武器にされるのも恐ろしい。
だが、キング・ブレインにはさらなる攻撃技があるのだ。詠唱時間に応じて威力が無限大に上昇し、直撃させた相手のかしこさを暴走させるという、その名も脳ビーム……!
(「脳属性、とは、いったい、どのような、属性、なのでしょう、か」)
気にはなるが、まさか興味本位で浴びるわけにもいくまい。
かくして、蒼が念入りに防御を固め終えた頃。
「――であるからして……ム、ムムッ!?」
未だ語り続けていた大首領は、とうとうそれに気づく。
「吾輩、もしや時間稼ぎに協力してしまったのですかな!?」
蒼は答えない。
いや、答えられなかった、もしくは答えたくなかった、が正しいのだろう。
何かの策略と言う訳ではなく。
単純に、あの熱量の存在と会話を試みるのは、著しい疲労を伴いそうだからだ。
より平易な言葉で表せば……つまるところ、しんどいと思う。
「ムムム……大人しそうな見かけによらず策略家!」
さすがに内心まで読むには至らず、大首領はひとり語りを続ける。
「悪の大首領としてはぜひともスカウトしたいところでありますが、しかし! 猟兵であるならばどうにもなりませんので……此処は潔く、その結界ごと散っていただきましょう!」
言うが早いか身構えて、何やら呟くのは恐らく脳ビーム発動の詠唱。
「……見過ごす、訳には、参りません、ね」
蒼はすかさず弾幕を撃ち放つ。
一撃は大した威力でなくとも、絶えず攻撃に晒される状況ならば。
「ムムムッ! ……気が!! 散る!!!」
目論見通り、詠唱の合間合間に回避を要求される大首領は上手く力を溜める事が出来ない。
「いやいや、大首領たるもの豆鉄砲に怯えてなるものですか! ええい、もう一度、一から唱え直して――」
「……それも、見過ごす、訳には」
防御、妨害を経て、いざ本格攻勢と蒼が仕掛ける。
その源は茉莉花の花と蔦が絡んだ、不思議な色彩の光虚ろう嘆きの刃。
甘い芳香と共に罪を断つ。罪を断つには呪詛纏う。
「――蝕め、身を窶せ」
乱れ舞い踊りながら刃振るえば、大首領は斬られずとも呪い侵されていく。
「ぬおおおっ! これは、何だかよく分かりませんが、よろしくない!」
骸骨頭も心做しか青ざめて。
遮二無二、脳ビームを放ってみれば、それは蒼の撃ち出した衝撃波を掻い潜り、固く築いた結界をも穿った。
ろくな詠唱も出来ていないというのに恐ろしい威力。
驚き、そして未知の攻撃に不安が過る――が、しかし。
蒼の身体に訪れたのは、気のせいかと思うくらいの小さな頭痛。
「ムムムムッ!! やはり詠唱が! 集中力が! 足りていない!」
相対する相手の様子から効果の程を察したのだろう。
キング・ブレインは悔しがり、呪いに悶えて。
そして。
「吾輩、急用を思い出したので! 本日のところはこれで失礼する!」
忽然と宣うや否や、何処からともなく出現した『自転車』に跨った。
「……自転、車……?」
「自転車ではない! これぞ吾輩特製『ブレインバイシクル1号』である!」
チリンチリン。
安っぽい鈴の音を鳴らして叫ぶと、大首領は片手を挙げた。
「では、さらばだ! ブレブレブレ!!」
そうして笑い声を響かせながら、尋常ならざる勢いで走り出したブレインバイシクル1号は――空間に溶け込むような形で、何処かへと消えていってしまった。
「……ええと……」
巨悪は去った、という事で良いのだろうか。
しかし、最後の最後でとんでもない道具を出してきたものだ。
仔細は分からないが、今しがた起きた出来事をどうにか言い表すならば……自転車が『次元の壁を超えて自力でテレポートしていった』とでも表現すべきか。
ならば、いずれ訪れるであろう大首領との決戦の時には。
「あの、自転車を、どうにかする、必要が、ある、でしょう、か……」
跡形もなく消え去った大首領の背を思い返しつつ、蒼はぽつりと呟くのだった。
大成功
🔵🔵🔵