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雲は嵐の壁を破って

#グリードオーシャン #猟書家の侵攻 #猟書家 #すきゅりん #鮫魔術士 #彩雲丸 #忘れられた島(N28W11) #宿敵撃破 #輝縁

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「きゃはははははっ! 何だこれ面白い!」
 頭から大きな2本の角を生やした長い白髪の鬼が、竜の腕と白狼の腕を天に掲げて、狂気の笑みを響かせる。
 偶然手に入れたメガリス『電光の羽衣』を興味だけで纏ってみれば。
 島ひとつを覆う、激しい嵐が吹き荒れたのだ。
「いいね! もっと、もっとだよ! ぜーんぶ潰して飛ばして壊すんだ!」
 荒れ狂う風の中心で、鬼は嗤う。
 破壊を、滅びを、愉しむように。
「壊してあげる。殺してあげる。
 全部全部、何もかも! 望み通りにね! きゃはははははっ!」
 鬼は、その心を映したかのような全てを壊す嵐の中で、嗤い続ける。

「グリードオーシャンの島の1つが、突如嵐に覆われた」
 集まった猟兵達を前に、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は、広げた海図の一点を示して話し出した。
 急に吹き荒れた嵐が壁のようになり、1つの島が閉じ込められたのだと。
 その嵐の威力はすさまじく、鉄甲船すら吹き飛ばし、なんとグリモア猟兵のテレポートさえ入り込むのを防いでしまうのだという。
「そこは、サムライエンパイアを思わせる、山と小さな集落があった島でね。
 何かがあって全滅したのか、それとも島を放棄したのか、今は誰も住んでいない。
 近くを統治しているとある海賊がたまに立ち寄る程度の『忘れられた島』だ」
 ゆえに、人的被害は全くなく。その島に行けなくなって困ることもないのだが。
 嵐の原因はメガリスで。レディ・オーシャンの目論む『グリモアベース侵略』を実現させるために、幹部『すきゅりん』が使っていたものと同じものらしい。
 世界を侵略せんとする勢力に、前線基地として拠点を与えるのは防ぎたいし。
 しかも、メガリスで嵐を起こしている相手は、破壊の権化とも言うべき、質の悪い思想の持ち主のようだから。
「……被害がこの島だけで終わるとは到底思えなくてね」
 島民の避難とか住居の防衛とか余計なことを何も気にせず相手取れる今のうちに、倒しておいた方がいいだろう、と夏梅は考えを告げる。
 その作戦に賛同しつつ、だが、鉄甲船もテレポートも使えない島にどうやって行けばいいのかと、当然の疑問が猟兵達の間に生まれ。
 それを察した夏梅は、にやりと笑った。
「この世界には、こんな嵐にも負けない『最古の魔法使い達』がいるだろう?」
 それは、グリードオーシャンの根源的な力を扱う鮫魔術士。
 猟兵達と同じように、夏梅の作戦に賛同してくれた偉大なる鮫魔術士の一団が、改造サメ軍団を、嵐を越えるべく飛ばしてくれるのだという。
 もちろん、嵐の中は暴風だけでなく、吹き飛んだ岩や家屋が飛び交う危険地帯となっているし。さらに『ライトニングタイガー』の群れが飛び交い、雷を放っている。
 ゆえに、サメに乗れば辿り着ける、といった簡単な状況ではなく。
 障害や戦いを越えて、島に辿り着かなければならない。
 それでも、島へ向かう手立てがあるのだから。
「行ってくれるかい?」
 夏梅の問いかけに、猟兵達の頷きが返り。
 鮫魔術士の一団と落ち合う場所へ向かう鉄甲船『彩雲丸』への道が開かれる。
 嵐へと立ち向かっていく猟兵達の背中を見送りながら。
 そうだ、と夏梅は情報を付け加えた。
「メガリスを手にして嵐を起こしているオブリビオンの名は、『滅芽』というよ」


佐和
 こんにちは。サワです。
 嵐の中をサメとエビが飛びます。なんのこっちゃ。

 鉄甲船『彩雲丸』からサメ軍団に乗り移り、嵐の中へと向かっていきます。
 サメに乗る前の描写予定はありません。
 サメは、放っておいても障害物を避けて嵐の壁の向こうへ進もうとしてくれます。
 乗せた人の指示にも従ってくれますので、戦法に合わせて操ってください。

 第1章は、嵐の中での『ライトニングタイガー』との空中戦です。
 サメに乗った状態で、障害物と雷が飛び交う中での戦いとなります。

 第2章は、島に降り立って『滅芽』とのボス戦です。
 メガリス『電光の羽衣』を破壊するまで、辺りは嵐のままです。
 嵐の中を飛べるのはサメだけですので、必要ならここでも利用してください。

 それでは、全ての破壊を望む嵐を、どうぞ。
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第1章 集団戦 『ライトニングタイガー』

POW   :    雷の槍
【雷光を纏った大角】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    天使の抱擁
【帯電した羽根の竜巻】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    雷の絆
全身を【痛覚情報を共有する電磁波】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【負傷】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

木霊・ウタ
心情
良からぬ企みを止めてやる
破壊なんてさせないぜ

戦闘
空飛ぶサメライダーか
カッコいいぜ
頼んだぜ、相棒
嵐をぶっちぎっていこうぜ

こんな舞台だとワイルドウィンドは
更に盛り上がるってもんだぜ
嵐に合わせるかのように演奏

ご機嫌な音楽が響き渡ると共に障害物、海老が炎に包まれる
雷に対しても爆炎が迎撃する

大角を炎纏ったギターや大剣で受ける
鮫への攻撃も庇う

こいつらも嵐に巻き込まれた犠牲海老かもしんないけど
オブリビオンだ
行きがけの駄賃に海へ還してやる

更に弦をかき鳴らし最高潮に
一気に視界内に獄炎が充ちて焼き海老に
…この世界じゃあオブリビオンは喰えなかったよな

事後
鎮魂曲を奏でながら島へ
もう一息だ、ありがとな>鮫



 改造サメ軍団の1匹の背に乗った木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は、傍から見て想像していた以上の安定感と力強さ、そしてそのスピードを文字通り肌で感じて、にやりと笑った。
「空飛ぶサメライダーか。カッコいいぜ」
 鮫魔術により改造されたことで、どこか機械的な要素を見せながらも、凶暴な顔つきや鋭い歯はサメ本来の凄みを維持していたから。その見た目は、敵として遭遇していたら結構恐ろしいのではと思う。
 しかしそれは、味方となれば頼もしいの一言に変わるから。
「頼んだぜ、相棒。嵐をぶっちぎっていこうぜ」
 ウタがかけた声に応えるように、サメは嵐へと飛び込んでいった。
 鉄甲船『彩雲丸』でも進めない程の酷い暴風の中を、少し波が荒い海程度の苦難さで、力強くぐんぐん進んでいくサメ。
 グリモア猟兵の話だと、通常の飛翔も妨げる上に、グリモアによるテレポートすら弾いてしまう威力の嵐だというのに。
(「さすがだな」)
 時折、飛んでくる障害物をもしっかり避けながら、サメは着実に前へと進んでいく。
 その能力を目の当たりにし、信頼を寄せたウタは、しっかりと行く先を見据え。
 サメが送り届けようとしてくれている、嵐の先の島を思う。
 そこには、この嵐を生み出した相手がいるはずだから。
(「破壊なんてさせないぜ」)
 良からぬ企みを、周囲へも及びそうな嵐を、止めると決意を胸に。
 ウタは進んでいく。
 と、足元のサメが、何かに注意を促すかのように微かに身をよじった。
 同時にウタも、その視界に飛び込んで来た存在に気付く。
 顔の先に一角獣のような大角を伸ばし、鳥のような白い羽根を生やした、エビの群れ。
 コンキスタドール『ライトニングタイガー』。
 サメ同様に嵐の中を自在に泳ぐエビは、雷を纏いながらウタへと迫り。
「こんな舞台だと、更に盛り上がるってもんだぜ」
 そこにギターの音が響き渡った。
 陽気でご機嫌な音楽が、嵐以上に荒々しく、そして力強く奏でられ。その音色と共に、近づいてきたエビが炎に包まれる。
「こいつらも嵐に巻き込まれた犠牲海老かもしんないけど、オブリビオンだ」
 風の轟音すらも曲に組み込むようにして、より大きくワイルドウィンドを響かせると。
 その旋律と共に次々と、地獄の炎が放たれていった。
「行きがけの駄賃に海へ還してやる」
 燃え盛る炎のが嵐の中に1つ、また1つと灯り。エビが放つ雷すらも燃やし尽くすように迎撃して。さらにまたエビを獄炎で包み込んでいけば。
 視界内が一気に地獄の炎で充ちて、暗かった景色が煌々と照らし出される。
 その中でエビの姿が燃え尽きたように次々と消えてゆき。
「……この世界じゃあオブリビオンは喰えなかったよな」
 ふと、そんなことも思いながら。
 ウタは嵐の中を、ギターの音色と紅蓮の炎を広げながら、飛ぶ。
 もちろん、飛んでくれているのは足元のサメだから。
 演奏を邪魔しないように、というよりむしろ曲に合わせてノリノリで、獄炎の攻撃にも合わせながら島へと向かってくれているサメに、ウタはふっと微笑んで。
「もう一息だ」
 感謝の気持ちを込め、あと少しよろしくと呟くように告げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェフィーネス・ダイアクロイト
【溟海】アドリブ歓迎
嵐を起こすメガリスは必ず私の手中に収めたい
ほう、自ら囮を引き受けるとは
…誰に云っている?態と貴様に当てぬ限り外さん
私は利用出来る”物”は総て使う
貴様の船長より無駄は無い

鮫を乗りこなし空中戦
メガリスの眼鏡で敵の位置を把握
暴風には一旦距離取る
敵退治に専念
UC使用
魚雷を積んだ潜水艦を海の中に出す
水面下から魚雷飛ばし、敵が放った雷で爆発させ敵を散らす
アンカーの死角を潰す

アンカー、北東方向に2だ
助けた?勘違いも甚だしい
この途が最短故の一手だ
…使える駒は早々に殺らせるには惜しい
The end

何だかんだ息が合う
大角含め敵の体を傷抉る
二丁拳銃で弱った所を綺麗に制圧射撃・蹂躙
賞賛の言に一睨み


ガイ・アンカー
【溟海】アドリブ◎

俺が餌になってやっからお前が上手に仕留めな
なあに、俺は全員無事で嵐を超える…航海士の仕事をするまでさ
…態と、ね
それは俺も狙ってるってことか?えらい情熱的だな
ま、無駄かどうかを決めるのは物《俺》だ
お分かり?

【嵐海の航海者】
空だろうと風を予測し
竜巻を躱しながら
最短路への風を探る
こっちだとあいつを導くように航海術で乗ろう
…っと
飛んできた声通りに敵を躱す
手助けとは優しいねえ
じゃ、礼に…
8時の方向、上だ

やる事は派手な上に息も合わせて…
くつりと喉奥で笑う
障害物に鎖を絡ませ怪力で敵にぶつけ
帯電する前に鎖で捕縛
あいつが上手に仕留めたら褒めてやるとも
Good boy.
上出来だぜ、シェフィーネス



 グリードオーシャン最古の魔術体系である鮫魔術により改造され、地上水中の区別なく自在に飛翔することができるサメ。
 そのサメをもってしても、荒波に乗るかのように大きく揺さぶられ、到底真っ直ぐに島へ向かえない程の嵐を体感して。だが、シェフィーネス・ダイアクロイト(孤高のアイオライト・f26369)はスクエア型眼鏡の下で不敵に笑った。
「嵐を起こすメガリスは、必ず私の手中に収める」
 目指すは、島にいる者が持つメガリス『電光の羽衣』のみ。相手がコンキスタドールだろうと破壊の権化だろうと関係ないと言わんばかりに、いかにも海賊らしく、シェフィーネスはお宝だけを見ているようだったから。
 ガイ・アンカー(Weigh Anchor!・f26515)は、面白い、と左頬の傷ごと笑うと。
「俺が餌になってやっからお前が上手に仕留めな」
 サメを乗りこなしてシェフィーネスの前へ出た。
「ほう、自ら囮を引き受けるとは」
「なあに、俺は全員無事で嵐を超える……航海士の仕事をするまでさ」
 海賊船の錨のヤドリガミとしても、シェフィーネスが流されないように。そして、どんな海も嵐も超えていけるように。
 ガイは経験と観察眼から、海流だけでなく風も予測し、島への最短路を示し進む。
 そうすれば、侵入者を迎撃せんと現れる、白い翼と鋭い大角を持ち雷を纏うエビ『ライトニングタイガー』。
「さあ。こっちだ」
 エビに言ったのかシェフィーネスに言ったのか分からないくらいの適当な気安さで笑ったガイは、予測にエビの動きも追加して。エビの狙いを自身に引き付けつつ、シェフィーネスの射程内へと誘導すると。
「嵐が酷いからって外すなよ?」
「……誰に云っている?」
 少しむっとしたような、心外と言いたげな呟きと共に、古びた小銃と銀の海賊銃が、エビの赤く硬い外殻を的確に撃ち抜いた。
「態と貴様に当てぬ限り外さん」
「わざと、ね……」
 此方を視ずに言い放つシェフィーネスに、ガイは喉の奥でくくっと笑い。
「それは俺も狙ってるってことか? えらい情熱的だな」
 楽しそうに続ければ、今度は菫青の瞳がちらりとガイを捉える。
「私は利用出来る『物』は総て使う。貴様の船長より無駄は無い」
 淡々としたそれは、ヤドリガミであるガイを錨として使うかのような言い様だが。
 利用できると評価はされたからなのか、ガイの笑みには一点の曇りも生まれず。
「ま、無駄かどうかを決めるのは『物』だ。お分かり?」
 むしろ役立つところを見せつけるかのように、さらに嵐の中を行く。
 エビが迎撃のために生み出した竜巻が、風をより複雑なものにし、嵐が激しくなったかのように感じさせる中で。この程度で航路を読み違えることはないと示すように、ガイの海色の瞳は風を探り、読み切って、シェフィーネスを導いていった。
 難解な航路を着実に攻略していく、その最中。
「アンカー、北東方向に2だ」
 不意にかけられた声に、ガイは咄嗟に回避行動を取る。
 直後、指摘通りにガイの死角だったその方向からエビが現れ。狙いを外され、その大角を空振りさせたところに。
 眼下の海中から魚雷が飛び出し、エビを爆発させた。
 それは、ユーベルコード『空想の現』でシェフィーネスが想像から創造した潜水艦による攻撃。水面下からの、完全に不意打ちとなった爆撃に、ガイを狙っていたエビはたまらず吹き飛ばされて。
 外殻に傷を負いながら離れていく姿に、ガイはにやりと笑う。
「手助けとは優しいねえ」
「助けた? 勘違いも甚だしい。この途が最短故の一手だ」
 返ってきたのは、心外と言わんばかりの突き放すような口調だけれども。
「……使える駒は早々に殺らせる訳なかろう」
 やはり信頼が滲み出ているものだったから。
「じゃ、礼に……8時の方向、上だ」
 言ってガイはひらりとサメを駆りつつ、飛来してきた元は家だったらしき折れた木材の障害物を、碇を繋ぎ止める鎖を操って絡めとる。そのまま鎖を怪力で引き、振り回せば、木材は先ほど負傷したエビに直撃して。白い羽を散らし、赤く硬い外殻を凹ませた。
 直後、障害物を解放した鎖で、今度はエビ自身を捕縛し、ぐいと引き寄せる。
 そしてエビが、シェフィーネスへ告げたその通りの位置に来るなり。
 二丁拳銃が、その姿を見て照準を合わせるより格段に早く、華麗な制圧射撃を魅せ、エビを撃ち落とした。
「The end」
 銃をおさめ、静かに告げるシェフィーネス。
 何だかんだ息の合った見事な連携に、ガイは満足そうに笑う。
「Good boy. 上出来だぜ、シェフィーネス」
 贈った賞賛の言葉には、しかし、鋭い菫青の一睨みが返ってきて。
 ガイの海色の笑みがさらに深まった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セシル・バーナード
さあ、プラチナちゃん、嵐を乗り越えてバカンスと行こう。
ぼくはトランクス風の水着で、プラチナちゃんはマイクロビキニね。

ぼくにあてがわれた鮫はきみか。古強者な気配を感じる。メガリス『ソロモンの指輪』(動物と話す)で意思疎通出来るかな?

さあ、嵐に向かってリフトオフ! 「空中戦」だってお手の物さ。きみもよろしく頼むよ。

「全力魔法」の「範囲攻撃」で空間裁断を広域展開。不可視の空間断裂に引っかかったら、エビは「鎧無視攻撃」で輪切りになる。
どう、プラチナちゃん? いつもきみで遊んでるわけじゃないんだよ。
空間の断裂は、進行方向は薄め、側面や後ろは厚めに。前方に設置した断裂に自分で突っ込む馬鹿はしたくない。



「さあ、嵐に向かってリフトオフ!」
 背に乗ったセシル・バーナード(サイレーン・f01207)の声に従うように、サメはぐいっと力強く、嵐の壁に囲まれた島を目指して泳ぎ出した。
 鮫魔術により強化されたそのサメは、身体の一部がどこか機械的になっていて、戦闘用といった印象があり。また、生体部分には、古い傷が幾つも刻まれていたから。
(「古強者な気配を感じるね」)
「よろしく頼むよ」
 その存在に敬意を払いながらも、動物との意思疎通を可能にするメガリス『ソロモンの指輪』で意思疎通を、と試みてみる。
 しかしサメから何か言葉が伝わってくることはなく。セシルは肩を竦めるけれど。
 サメはしっかりとセシルを乗せ、嵐の中を進み。瓦礫や木の枝など、嵐に飛ばされてきた障害物を着実に回避しつつ、セシルが望む通りに島へと向かっていた。
 もしかしたら、サメは無口なのかもしれない。
 とりあえず、メガリスの効果か、元々能力があったのかはともかく、こちらの意図は伝えられていそうだと判断したセシルは。
「さあ、プラチナちゃん。嵐を乗り越えてバカンスといこう」
 白銀色の長髪の少女をぐいっと抱き寄せて、にっこり笑う。
「まずは嵐を乗り越える、んですよね? もう既にバカンスじゃないですよね!?」
 腕の中で、少女がどこか必死に、慌てたような声をかけた。
 それもそのはず。少女は、艶やかな肌をほぼ露出しているマイクロビキニ姿で。セシル自身も、上着を引っかけてはいるものの、前を開けてどこかドキリとする素肌を魅せる、トランクス風の水着姿。
 遊びに来ましたと体現するような格好な上に、少女を抱き寄せた腕が、サメの上から落ちないようにするため以外の動きも見せ、肌を撫でていたから。
 大丈夫かと心配する少女の困ったような恥ずかしそうな顔は当然なのだけれども。
「バカンスの前にちゃんとやることをやらないと、って?」
 セシルはそんな様子を気にもせず、むしろ心外そうに笑いかけ。
 少女を抱いたのとは逆の腕で辺りを示す。
 そこには『ライトニングタイガー』が小さな群れを成して迫っていた。
 慌てる少女を宥める様に、ついでにその艶やかな肌を楽しむ様に、セシルは手を滑らせながら。不可視無音の空間断裂を周囲に広域展開する。
 いつもなら全方位に展開して防御を固めるところだが、今回、セシル達はサメに乗って移動中。ゆえに、進行方向は薄めにして、自分から自分の罠に突っ込むような馬鹿なことにはならないように配慮した。
 その分を側面や後ろに、サメとしては弱く見える方向に回せば。
 近づいてきたエビの硬く赤い外殻が、次々と切断されていく。
「どう? いつもきみで遊んでるわけじゃないんだよ」
 不可視の攻撃ゆえ、エビが自ら食べやすくなっていくかのようにも見える光景。それを示してセシルが笑えば、少女はぽかんとそれを眺めていて。
 飛来した障害物までもがついでに切り刻まれていくのに、目を瞬かせる。
 サメも、相変わらず無言のまま、しかしセシルの空間断裂の守りに頼り切らないよう、しっかりと障害物を避けた航路を選択し、着実に島へ向かってくれていたから。
 荒天ながらも順調な航海に、セシルは満足そうに頷いて見せた。
「ちゃんと嵐を止めないと、ゆっくりプラチナちゃんを楽しめないからね」
 この後のお楽しみをしっかり考えながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「虎じゃなくて海老…えっ?」
飛虎と戦うつもりで飛海老相手で思わず二度見

「この海老もブルーアルカディアの魔獣のように、美味しく食べられたりするのでしょうか…」
ちょっぴり興味が湧いた

「ちょっと周辺の海老を叩き落としてきますけど…帰りの足が必要なので、貴方も島には来て下さいね」
鮫に頼んでからUC「精霊覚醒・桜」使用
マッハ9超えで飛行し敵の羽や大角を根本から桜鋼扇で叩き折る
接敵する飛行ルートは第六感で選択
敵の攻撃はや障害物も第六感や見切りで躱す

周囲の飛海老を排除したらまた鮫に乗せて貰い目的地目指す
制圧射撃の足止めや盾受けで騎乗する鮫へのダメージを減らす
可能なら撃破した飛海老の胴体を少し拾っていきたい…



 落ち着いた雰囲気を醸し出すサメの背に乗ったのは、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)。おっとりした雰囲気の桜花を丁寧にエスコートするかのように、サメは背中を気遣いつつも力強く嵐の中を進んでいく。
 だからこそ、始めはおっかなびっくりだった桜花も、信頼してその背に身を預け。でも心配をかけぬようにとしっかり掴まりながら、進む先を見ていた。
 天候が悪いために薄暗く、荒れ狂う風の中では、視界は決して良好とは言えない。
 でも、嵐の中でも、明らかにこちらを目指して飛んでくる幾つもの赤い色彩は、しっかりと見えたから。
 事前に聞いていたコンキスタドール『ライトニングタイガー』の接近を察して、桜花はぎゅっと両手を握りしめた。
「来ましたね、海老……えっ? 海老?」
 しかしその真剣な表情は、すぐさま驚きと困惑に変わる。
「虎じゃなくて?」
 ……どうやら桜花は、ライトニング『タイガー』の名から誤解していたようです。
 想像していた黒縞の四足獣ではなく。舟を象った木の器によく乗っている印象のある、赤く硬い頭部と見事な尾に、目を瞬かせて。
「この海老も美味しく食べられたりするのでしょうか……」
 ぷりっぷりの身が盛られているところまで思い描いてしまったか。ブルーアルカディアの魔獣と同じだったら、なんて現実逃避気味に考えていた。
 しかし、エビはまだお造りにはなっていないどころか、頭部から伸びた鋭い大角を桜花に向け。背から生えた白い翼で嵐を乗りこなして、こちらに迫ってきていたから。
 ぶんぶんと首を振って、気を取り直した桜花は、エビに立ち向かおうと立ち上がる。
「我は精霊、桜花精。呼び覚まされし力もて、我らが敵を討ち滅ぼさん!」
 ユーベルコード『精霊覚醒・桜』で、頭部に咲くのと同じ桜の花弁を多数生み出し、全身を桜吹雪で覆う。そのままエビを迎撃しに飛び立とうとして。
 桜花はふと、サメを見下ろした。
「ちょっと周辺の海老を叩き落としてきますけど……」
 嵐の中をサメの背の上でとはいえ飛んでみて、改めて分かる。近距離・短時間ならともかく、この嵐の壁を桜花自身が飛んで超えることは難しいと。だからこそ、サメは桜花をその背に乗せてくれていたのだと。
 でも、桜花は、戦うためとはいえその背を一度離れようとしていたから。戦いを終えて戻ってきたら、また乗せてもらえるものかと、心配になったのだけれども。
 サメは桜花へと頷くような動きを見せ。ちゃんと迎えにいくと示してくれたから。
「行ってきます」
 ふわりと花のように微笑んで、桜花は嵐の中へ飛び立った。
 高速の飛翔は風の影響を受けやすいから、スピードをギリギリまで落として何とか調整して。エビに近付くとすれ違いざまに桜鋼扇を振るい、その白い翼を根本から叩き折る。
 舞い散る白い羽根が、桜花の纏う花弁と一緒に、嵐に飲み込まれていった。
 翼を失い、落ちていくエビを見送る間もなく、別の海老が大角に雷を纏って桜花を狙い迫り。それを、風の影響を考慮して大きく躱した桜花は、今度はその大角へと鋼扇を叩きつける。
 桜花が纏う花弁が、鉄扇にある桜の花びらの刻印から舞い上がるように見え。その可憐さとは裏腹に力強く、大角をへし折れば。
 折れた大角は先ほど落ちたエビを偶然にも貫き、そして折られたエビはバランスを崩してふらふらしていたから。桜花はもう一度突撃し、桜鋼扇で止めを刺した。
 可能なら、エビの胴体を、硬い外殻の中にあるはずのぷりっぷりの身を、少し拾っていきたいと思っていたけれども。この嵐の中で寄り道する余裕はなく。また、倒されたエビはその姿を嵐の中に消してしまっていたから。
 ちょっと残念に思いながらも、桜花は次々とエビを叩き落とし続けて。
「戻りました」
 周囲の赤い姿を排除した桜花は、お願いした通りに出迎えてくれたサメにふわりと笑いかけて。その背に戻ると、また島を目指して進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シリン・カービン
【かんにき】

『彩雲丸』、久しぶりですね。
竜に乗ったことはありますが、サメは初めてです。
ふふ、よろしくね、ネード。(名前をつけた)
……なにか?(少し頬染めジロリ)

ダメージを与えれば与えるほど、
残った敵が強化されると言うことですか。
それならそれで手はあります。
さあ、漁に行きましょう。

精霊猟銃に眠りの精霊を宿した投網弾を装填。
ネードには障害物の回避に専念するよう指示。
自分はエビを狙います。
投網弾で纏めて捕獲。寝かせてしまえば、
傷もつかずに落ちて行きます。

真琴の様子がおかしい……?
小太刀も力が入り過ぎているようです。
ガーネットに目で合図し、子供たちをフォローします。
『滅芽』に何か関係が……?


ガーネット・グレイローズ
【かんにき】

さて、空飛ぶ鮫に乗って伝説の島まで出掛けよう。ふむ、乗り心地は悪くないな。

嵐の中で輝いて…か。ん、真琴どうしたんだ?(様子を気にかけながら)よし、まずはエビ退治だ!この鮫はある程度命令に従うみたいだな。キャバリア戦闘の要領で鮫を《操縦》し、《空中戦》。羽の竜巻は【イデア覚醒】で研ぎ澄ませた《第六感》で攻撃のタイミングを予測して回避に集中、反撃はクロスグレイブによる《レーザー射撃》と、ヴァンパイアバットによる《吸血》噛みつき攻撃で。私は攻撃に集中して、敵の数を迅速に減らすことに専念しよう。
…私も感じるぞ、この嵐の先に強力なコンキスタドールが待ち構えているのを。気を引き締めていこう。


琶咲・真琴
【かんにき】

また傍迷惑な鬼が出てきたね
って、あれ?

お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが
すごい怖い様子なんだけど

―――まさか……
(過去に2度あった2体の人形の異変の時を思い出す

…滅芽
破壊の権化……

この景色を
状況を
生み出した張本人

やだ
認めたくない
あの事と関係あるなんて
思いたくない


――確かめる為にも
エビたちを倒そう

UCで避雷針にもなる光弾を使い敵を追い詰めて攻撃
電磁波で情報を共有するなら
それを奪って一撃で倒せばいい

向かってくる敵は
お祖母ちゃんの光線
白鷹
白炎で迎撃

あ、お祖母ちゃんはお祖父ちゃんやボクと一緒に
鮫さんに乗ってて

なんせ嵐の中は色んなもので滅茶苦茶
使える技能フル稼働で攻撃も飛来物も避けるよ


アドリブ歓迎


木元・杏
【かんにき】
お久しぶり、『彩雲丸』
よろしくね、サメの…サメ子(名付ける
挨拶してから嵐へ突入
いざ、鬼退治

落ちないようにぎゅっとサメ子につかまって
いた、エビ軍団
サメ子、全力前進お願い
布槍の卯月を手に体勢を低くして突撃!
今迄の戦闘知識をフル回転し
第六感で竜巻を放とうとする個体を感じ取り
皆と連携しながら卯月で巻き切ったり突いたりして羽根を引きちぎる

間に合わない場合はUC【あたたかな光】
皆とサメ達を攻撃から守る
ん、エビはエビらしく海へ還ろう?

さ、まだまだこれから
皆の無事を確認し、残りのエビも取りこぼさず倒し…
真琴?
小太刀、真琴が少し様子おかしい
そう言えば夏梅が言ってたね
名前は「滅芽」、以前会った鬼


鈍・小太刀
【かんにき】

サメ子…いい名前じゃない
こっちも負けてはいられないわね
サメ吉、行くわよ!(命名

滅芽の名を聞き蘇るのは
刀で斬った感触と嘲る様な笑い声
また会いましょうと遺された言葉の通り
奴が蘇ったのだと悟る
被害者がいないのは幸いね
でも…母と同じ顔の敵に真琴は何を思うだろう

何があっても真琴を護る
だって私は姉なんだから
その為に、前へ
雨よ海よ手伝って!

雨が帯電した羽を叩き落とし
また雨が仲間の傷を癒す

サメ吉、海の仲間達に嵐の飛び方のコツを教えて
大丈夫、皆やる気満々よ!

サメ達を師匠と仰ぎ
彼らに習い空を飛ぶ海の仲間達
意気揚々とエビを食らう

でも何でエビ?
ライトニングタイガー、まさか寅年!
…やるわね、滅芽(シリアス?



「お久しぶり『彩雲丸』」
「ええ、久しぶりですね」
 幾度か乗ったことのある馴染みの鉄甲船に、木元・杏(焼肉処・杏・f16565)とシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は再会の挨拶をするけれども。
 今回の『彩雲丸』の役割は合流地点。嵐の壁に阻まれて、これ以上は進めないから。
「さて、空飛ぶ鮫に乗って伝説の島まで、か」
 鮫魔術士の一団が用意してくれた改造サメ軍団へ、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)はひらりと甲板から乗り移り。
「ふむ、乗り心地は悪くないな」
 その感覚を確かめると、臨時の相棒のサメ肌をざらりと撫でた。
「竜に乗ったことはありますが、サメは初めてです」
 シリンも続いて『彩雲丸』から移ると。
「ふふ。よろしくね、ネード」
 聞こえた名に、ガーネットは、おや、と赤い瞳をシリンへ向ける。
 鮫魔術士達からはサメに名があると聞かなかったから、恐らく、シリンが即席で自身の乗るサメに名付けたのだろう。
 何となく物珍しく、シリンを見つめていたガーネットだが。
「……なにか?」
「いいや、何も」
 少し頬を染め、気まずさを隠すかのようにジロリと緑色の瞳を向けたシリンに、ガーネットは好意的な笑みを浮かべて。さらににやけそうになる口元を隠すように、サメを操りシリンに背を向けた。
「よろしくね、サメの……サメ子」
 丁度振り向くような格好になったガーネットの前で、杏も、サメに乗るなり名前をつけていて。
「サメ子? いい名前じゃない。こっちも負けてはいられないわね」
 それを聞いた鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)も、どこか対抗するかのように飛び乗ったサメに命名する。
「サメ吉、行くわよ!」
「どっちもどっち……」
 そんな2人の単純さに、そっとサメの上に乗っていた琶咲・真琴(1つの真実に惑う継承者・f08611)が、ぼそりと呟いていました。
 ちなみに、サメ子が雄でサメ吉が雌だったりするのですが……それこそどうでもいいことなので、鮫魔術士もサメ当人も何も言いません……そんな事実を知る由もなく、杏は落ちないように、ぎゅっとサメ子に掴まって。
「いた、エビ軍団」
 進んだ嵐の中に、赤い外殻を幾つも見つける。
 コンキスタドール『ライトニングタイガー』。
 鋭い大角に雷を纏い、白い翼で空を飛んで、島を守るエビの群れ。
「でも、何でエビ?」
 その姿に、ふと、小太刀は首を傾げた。
 海が広がる場所ゆえに、エビがいてもおかしくはないのだけれども。わざわざ配下に選んだ理由が、何かある気がして。
 真剣に考えこんだ小太刀は、ぶつぶつと呟く。
「ライトニングタイガー……タイガー……まさか寅年!?
 ……やるわね、滅芽」
 そして思い当たった答えに、ぎりりと口惜しそうな表情を見せ。どこかシリアスにエビを睨んで見せる。けれども。
「トラがどうしたのですか?」
「ん、今年の干支」
「ああ、年に動物を当ててるんだったか」
 シリンの純粋な疑問へ、杏が答え、ガーネットがぽんっと手を打つ。
 さらに杏は、こくりと頷くと。
「多分、島にいる敵が鬼だから。
 鬼のいるサムライエンパイアつながりで出てきた、と思う」
「ちょっと杏。解説しないでよ」
 淡々と説明されて、さすがに小太刀の頬が紅潮した。
「いざ、鬼退治」
 しかし杏は、そんな小太刀の慌てた様子を気にもせず、キリッと言い放つから。
「また傍迷惑な鬼が出てきたね」
 真琴はくすくすと微笑んで。
 それじゃ退治に向かおうと、嵐の先へと紫瞳を向けると。
「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん。ボクと一緒に鮫さんに乗ってて」
 寄り添うように漂う2体の男女の片翼人形に、抱き寄せようと手を伸ばす。
 何しろ嵐は、鉄甲船が進めない程の威力で。その中には、風で巻き上げられ、吹き飛ばされた様々なもので滅茶苦茶になっているのだから。飛べるとはいえ小柄な人形が、風に攫われたり、飛来物を避けきれずにぶつかったりしないように。嵐対策で用意されたサメの恩恵を与えるべく、真琴は人形を抱きしめた。
(「……って、あれ?」)
 そうして2体がより近くなったことで、真琴は気付く。
(「お祖父ちゃんもお祖母ちゃんも、すごい怖い……」)
 真琴の腕の中で嵐の先を見つめる男女の人形が、酷く緊張しているような、警戒心をむき出しにしているような、そんな怖い雰囲気を纏っていることに。
 もちろん人形ゆえに、その表情は変わらない。でも、それでも、ピリピリと伝わって来るものが確かにあって。
 いつも寄り添ってくれる穏やかな空気とは違いすぎる気配に真琴は戸惑う。
 人形達がこんな風になるのは初めてだから……
 いや、違う。雰囲気は違うけれども、いつもと違う感じになるのは3回目だ。
 あの時は、妙に浮かない様子だった。
 あの時は、どこか強張っている感じがした。
(「まさか……」)
 かつての邂逅を思い出し、真琴は人形を抱く手にぎゅっと力を込める。
 でも、浮かび上がって来る嫌な想像を打ち消すように首をぶんぶんと左右に振って。
(「今は、エビたちを倒さないと」)
 キッと向かって来る赤い姿を睨み据えた。
「よし、まずはエビ退治だ!」
 そんな真琴の思考を知らぬまま、しかし動揺しかけていた真琴を引き上げるかのように力強く、ガーネットの凛とした声が辺りに響く。
 杏と小太刀が応えるように、おー、と声を上げて。
「サメ子、全力前進お願い」
 声をかけると、桜模様の見事な反物をひらりとなびかせて杏が前へ出る。
 どうやらサメは、ある程度こちらの思いを汲んで動いてくれるらしい。
 杏とサメ子のやり取りを見たガーネットは、そう理解して。
 キャバリア戦闘の要領で……つまりは自身が一番意図を伝えやすいやり方で、サメを動かし空を翔る。
 サメの接近にエビは纏う雷を強め。その白い翼を広げると。羽ばたくような動きから舞い散った羽根が、ぐるぐると回り、竜巻を生み出した。
 嵐の中にできた別の風の動き。しかもそれは帯電し、無差別に辺りへ雷を放ってもいたから。さらに複雑に風は荒れ狂い、雷電で羽根がより凶悪な美しさを見せる。
 だが、危険度の増したエビの嵐へと、ガーネットは躊躇うことなく飛び込んで。
「今の私には、この戦場のすべてが視える!」
 ユーベルコードで瞬時に先行きを、そして嵐の本質を知り。
 知るがゆえに、竜巻を、羽根を、雷を、回避していく。
 そして研ぎ澄まされた感覚は、もちろん攻撃にも生かされて。
 サメの上で構えたクロスグレイブが放つレーザー射撃の反撃が。
 ガーネットの漆黒の外套から出てきたかのように飛び立ったヴァンパイアバットが。
 正確無比にエビの外殻を撃ち抜き。
 風を利用すらしてエビに群がり噛みついて。
 その動きを抑えたところに。
 サメ子に伏せるようにして速度と安定感を増した杏が、槍を突き出し突撃する。
 その槍は、先ほど美しい桜模様を見せていた布。杏の念で鋭い槍と化した『卯月』は、エビの背中、広がる白い翼を狙い、その羽根を引き千切っていく。
 竜巻を放てる部位を失くし。
 欠損そのものにより、嵐の中での自身の制御すら失い。
 墜ちていくライトニングタイガー。
「ん、エビはエビらしく海へ還ろう?」
 杏は消えゆく赤い姿を見送ってから。
 顔を上げて次のエビに狙いを定め、杏はちらりと視線を流す。それに応えるように頷いたガーネットと動きを合わせると、今度は竜巻を生み出す前にエビを墜としていった。
 迅速に敵の数を減らしていく先発隊の活躍に、感心していた小太刀は。
 それならこっちは、と声を張り上げる。
「みんな、来て!」
 戦場に不思議な雨を降らせれば、喚ばれ出ずるは、数多の魚にイカ、タコ、クラゲとクジラまで、多種多様な海の仲間達。ただしもれなくウサミミつき。
「サメ吉、この子達に嵐の飛び方のコツを教えて」
 空は飛べるが嵐は未体験な彼らを、サメに指し示せば。
「大丈夫、皆やる気満々よ!」
 海の仲間達は、小太刀の乗るサメを師匠と仰ぎ、ぴょこぴょこと揺れるウサミミでやる気を示しながら。サメ吉から何かを学び取っていって。
 気付けば嵐の中を自在に飛び、エビへと向かっていくようになったから。
「雨よ海よ手伝って!」
 小太刀は雨に星のような輝きを混ぜ、エビの帯電した羽根を叩き落として援護する。
 さらに、温かな温もりで、海の仲間達が嵐に慣れるまでに負った小さな傷を癒せば。
 目の前に広がるのは、まるで海の中での生物相関図。
 意気揚々と、魚達やイカタコが、エビを食らっていく。
「なるほど。エビは必ずしも捕食者ではないのですね」
 何となく感心した声で頷くのは、猟師でもあるシリン。
 真っ先に戦いの先陣を切りそうな強面のネードの背で、しかし狩人の緑色の瞳は冷静に獲物たるエビを、そして狩場を観察して。
 ガーネットの放つレーザーに抉られたエビが。杏に翼を引きちぎられたエビが。小太刀の仲間達に齧られたエビが。雷の絆を放つと。
 痛覚情報を電磁波で共有した他の無事なエビが、より強力な雷を纏い、より多くの竜巻を生み出さんとする。
「ダメージを与えれば与えるほど、残った敵が強化されると言うことですか」
 その能力を的確に見極めたシリンは、厄介な性質に、だが表情の1つも変えず。
「それならそれで手はあります」
 そっとネードの背に手を触れ、指示を伝えると、精霊猟銃を構えた。
「さあ、漁に行きましょう」
 飛来物もエビも竜巻も、全ての障害物を回避していくネードの背で、シリンは静かに1匹のエビに狙いを定めると。撃ち放ったのは、投網弾。
「眠りの精霊よ、彼奴を縛れ」
 エビを捕えた網に宿った精霊が眠りを誘えば、傷もつかずに堕ちていく。
 これならば仲間を強化させずに数を減らせると、効果の程を見て頷くシリン。
 しかし、皆が皆、シリンのように無傷でエビを墜とせるわけではないから。
 別の方向からアプローチしたのは真琴だった。
「電磁波で情報を共有するなら……」
 強化に使われる情報伝達手段に目を付けて。
「神羅畏楼・縋牙燕陣!」
 放つのは複雑に飛翔する光弾。
 それは避雷針の働きも見せて、雷を、そして電磁波を反らしていき。さらに、幾何学模様を描くその難解な軌跡でエビを追い詰め、負傷させる間もなく一撃で撃墜していく。
 美しき光の乱舞に、杏はほうっと金瞳を煌めかせ。
「ん、ライトニング」
 敵の名前の半分を、小太刀のように誤った意味に理解し頷けば。
 違いますよ、と笑みを含んだ真琴の指摘の声が……聞こえず。
「真琴?」
 杏は不思議そうに振り向いて。
 そして真琴が、杏を全然見ていないことに気付いた。
「ん? 真琴どうしたんだ?」
 ガーネットも、クロスグレイブを構えたまま、気遣うような視線をちらりと向けるけれども。真琴はそれにすら気付かぬまま。
 思いつめたような、怯えたような、複雑な表情で、嵐の先を睨むように見つめ。考え込んでいるのか、ぼそぼそと聞き取りにくい声で独り言のように何かを呟いていて。
「……鬼?」
 その言葉の一部を何とか拾った杏が、繰り返して首を傾げる。
 現状でその単語が示すのは、目指す島に居ると言われた破壊の権化。
 オブリビオン……いや、グリードオーシャンではコンキスタドールと呼ばれる、骸の海から滲出した過去の怪物。 
「ああ、私も感じるぞ。この嵐の先に待ち構えている強力な力を」
 エビではなくその黒幕を、島でメガリスを手にして嵐を引き起こしている存在を、真琴が既に見据えていると思い、ガーネットが同意するように頷いて。
 気を引き締めていこう、と皆に声をかければ、こくりと頷く杏。
 そう、エビを倒すのはある意味で前哨戦。
 嵐を治めるために倒すべき相手は、嵐の向こうに、島にいるのだから。
 サメ子が導いてくれる先を、改めて見つめた杏は。
「そう言えば夏梅が言ってたね。島にいる、メガリスを持つ鬼の名前」
 ふと、思い出してそれを口に乗せる。
「……『滅芽』」
(「滅芽」)
 その響きが、真琴の思考にも染み渡っていった。
(「破壊の権化……この景色を、状況を、生み出した張本人」)
 ここへ来る前に聞いた説明が、蘇ってくる。
 聞いた時は別にどうと思うこともなかった。
 グリードオーシャンに来てからも。『彩雲丸』に乗っていても。
 少年少女の片翼の人形の様子が、いつもと違うことに気付くまでは。
(「やだ」)
 赤黒い血の色に染まったボロボロの鬼に会った時は、妙に浮かない様子だった。
 桜舞う脇差を手に優しく微笑む鬼に会った時は、どこか強張っている感じがした。
 そして今向かう島にも、鬼がいる。人形達が怖いくらいに警戒する、鬼が、いる。
 ……認めたくない。
 真琴は必死に、エビを狙う光弾を操作する。
 戸惑い揺れる心を保つために。目の前の敵に集中しようとして。
 それが現実逃避に近いものだと分かっていても。
 真琴は、どこか縋りつくように、エビを倒し続ける。
 ……認めたくない、から。
 泣きながら世界を呪い、自分を呪っていたボロボロの女の子の鬼が。
 真琴に会えたことを喜び、幸せを願って脇差を託してくれた女性の鬼が。
 そして全てを破壊しようと、メガリスを手にした鬼が。
(「あの事と関係あるなんて、思いたくない」)
 腕の中の人形達を強く抱きしめて、気遣う仲間に見向きもできず。
 真琴は、嵐を駆け抜ける。
「小太刀、真琴が少し様子おかしい」
 心配した杏が、真琴の姉に……自分よりも真琴を知り、真琴に近い存在に、相談するように声をかけるけれども。
「小太刀?」
 その小太刀にも、杏の声は届かぬようで。
 滅芽の名にぐっと唇を噛み、険しい表情を見せていた。
 小太刀が思い出すのは、嘲るような甲高い笑い声と、刀で滅芽を斬った時の感触。
 私はまだ滅びない、と滅芽は言った。
 また会いましょう、と滅芽は遺した。
 その言葉の通り、また骸の海から滲み出して、蘇ってきたのだと悟る。
(「被害者がいないのは幸いね」)
 あの時とは違い、今の滅芽がいるのは無人島。
 殺された人も、支配されている人も、誰もいない場所。
 だから、あの時と違って、何の気兼ねもなく滅芽と戦うことができて。
 でも、あの時と違って、小太刀と一緒に弟がいるから。
(「……母と同じ顔の敵に、真琴は何を思うだろう」)
 弟の知らない母の過去。この場では小太刀だけが知る鬼達の悲劇。
 既に呪いの鬼と慈しみの鬼と邂逅し。
 そして、知らぬがゆえに心を揺らし、痛める弟は。
 破壊の鬼を相手に、どうなってしまうのか。
 それは小太刀にも分からないけれども。
(「何があっても真琴を護る」)
 それだけは変わらない。譲れない、小太刀の矜持。
(「だって私は姉なんだから」)
 だから小太刀は前を向く。
 大切な弟の為に。
 強く強く、手を握りしめる。
(「小太刀も力が入り過ぎているようです」)
 決意を込めたその横顔を見て、シリンは静かに判断する。
 気負い過ぎては良い狩りはできない。心の乱れは銃弾の乱れに繋がる。
 狩人としてそれをよく知るシリンは、だからこそ姉弟を心配し。
「ガーネット」
「分かってるよ、シリン」
 年長組同士で目を合わせ、子供達をフォローしようと頷き合う。
 まずは無事に嵐とエビを越え、島に辿り着くために。ガーネットがまたクロスグレイブを構えるのを見ながら、シリンも精霊猟銃の狙いを定めていく。
(「真琴と小太刀……『滅芽』に何か関係が……?」)
 嵐の向こうから、甲高い嘲笑が聞こえた気が、した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、鮫さんよろしくおねが・・・。
あ、えっと、甘嚙みとか鮫肌ですり寄るのは結構ですのでよろしくお願いします。
なぜでしょう?アヒルさんと一緒にいるからかこの先の展開が読めてしまった気がしました。

ふええ、すごい嵐です。この嵐を突破するんですか?
アヒルさん、前が見えないですよ。
ふえ?嵐の中を進むのは鮫さんだから、私が前を見えなくても問題ないって確かにそうですけど。
それに?周りはあまり見ない方がいいって・・・。
そうですね、わざわざ怖い思いをする必要はありませんね。

ふわあ、島にたどり着いたみたいですね。
そういえば、嵐の中で何かに襲われると聞いていたような?
きっと運がよかったんですね。



「ふええ、鮫さんよろしくお願いします……」
 おどおどビクビクした様子で、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、鮫魔術士に示された改造サメ軍団の1匹へと近づく。
 その様子は、フリルが極度の人見知りだから、という理由だけでなく。
「あ、えっと、甘嚙みとか鮫肌ですり寄るのは結構ですので……」
 大きな口にびっしり生えた鋭い歯やギョロリとこちらを見る目、威圧的に機械っぽく改造された部分もある古傷だらけの身体など、大抵は戦うために召喚される強面のサメと相対すれば、誰だってある程度は怖いと思うから。
 だってこの見た目で『甘噛み』って、重傷必須ですよ。
 ゆえに、当のサメはフリルの態度を全然気にしていない様で。大人しく、むしろフリルを気遣うような動きすら見せ、その背に乗せてくれる。
 フリルは、真正面から見るよりはまだ怖くない背の上に乗り、意外に安定するその乗り心地も合わせて、少しだけホッとして。
 その手の中で、アヒルちゃん型のガジェットが、堂々と鳴いた。
 時に力強く頼もしい、聞き慣れた声が響く中で。
 ふと、フリルの脳裏を過る予感。
(「なぜでしょう? この先の展開が読めてしまった気がしました」)
 真っ白なガジェットがサメの背の上にいるのを見下ろして。
 アヒルちゃんの姿形を模したガジェットとサメが同時に視界に映るのに目を瞬かせて。
 不安気に首を傾げるけれども。
「ふええ!?」
 急にサメが鉄甲船『彩雲丸』から出立し、いきなり嵐の中へ突っ込んでいったから。
 もはやそれどころではなくなったフリルは、必死にサメにしがみつく。
 雷雲のせいか薄暗い中を荒れ狂う強風。
 フリルだけだったらあっさり吹き飛ばされていそうな、実際鉄甲船の進行すら阻むほどの大嵐だけれども。サメは目指す島に向けて、しっかりと飛んで行った。
 とはいえ、風の影響を全く受けていないわけではないし。
 背に乗るフリルが嵐から守られているというわけでもないから。
「アヒルさん、前が見えないですよ」
 薄暗さに、身体を起こせないほど強い風に、全てを壊し飛ばすかのような威力に。
 フリルは前を視続けられず、反射的に赤い瞳を閉じてしまったり、大きな帽子のつばを押さえながら顔を背けてしまったり。
 しかしその様子に、ガジェットは怒ることなく一鳴きして。
「ふえ? 嵐の中を進むのは鮫さんだから、私が前を見えなくても問題ない、ですか」
 そのガアとしか聞こえない声を、唯一、正確に聞き取れるフリルは、確かにそうですけど、と少し不安そうに同意を見せる。
 実際、フリルが何をするでもなく、サメは嵐の中を進んでくれている。
 このまま任せておくだけでフリルは島に辿り着けるだろう。
 まあ、この嵐をどうにかしに来たはずの猟兵としては、サメ任せでいいのか、と思う部分があったりするのが当然なのですが。
「それに? 周りはあまり見ない方がいい、ですか……
 そうですね、わざわざ怖い思いをする必要はありませんね」
 しかしフリルは続くガジェットの声に納得して。
 サメに乗ることだけに集中する。
 実は、その『フリルが非戦闘行為に没頭する』ことでユーベルコードが発動し、フリルの行動を妨げる攻撃が遮断されていたのだけれども。
 直撃コースで飛んできていた、元は家の柱だったらしい太く頑丈な木材が、他の飛来物と上手くぶつかってその軌道を変えたことも。嵐の中を襲い来ていた『ライトニングタイガー』がフリルへ攻撃する前に、別の猟兵にあっさり活け造りにされていたことも。
 没頭しているがゆえに、フリルは全く気付かないまま。
 ただただ、サメの背にしがみつき続けるうちに。
 ガジェットが鳴いてフリルを促した。
「ふわあ、島にたどり着いたみたいですね」
 ようやく顔を上げて、周囲の様子を認識したフリルは、目指す地を見つけて微笑み。
 そういえば、嵐の中にも敵がいて襲われると聞いていたような、と今更ながらに思い出して、きょろきょろと辺りを見回す。
 まだまだ嵐は吹き荒れてはいるけれども、赤く硬いエビの姿はなく。フリルへと襲い掛かってくるような物も相手も見えなかったから。
「戦わずに辿り着けるなんて、きっと運がよかったんですね」
 呑気に喜ぶフリルの下で、サメが何とも言えない顔をしている気が、した。
 ガア。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『滅芽』

POW   :    壊させてくれるの?優しいね!
【鬼神の力で強化した龍の腕】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    きゃはははははっ!潰れろ、潰れろー!
【鬼神と白狼の力で強化した龍と狼の両腕】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    逃すわけ、ないよねぇっ!!
【白狼の力で強化した狼の腕】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【姿や血、特性】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は琶咲・真琴です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「きゃはははははっ! 何だこれ面白い!」
 メガリス『電光の羽衣』が生み出した嵐の中に、狂ったような高い嗤い声が響く。
 長い長い白髪を、荒れる風に乱されながら。
 両側頭部から生えた2本の角すら風に煽られているかのように振り乱して。
「いいね! もっと、もっとだよ! ぜーんぶ潰して飛ばして壊すんだ!」
 元は十二単のような、色とりどりの布を重ねた美しい和装であったのだろう。ボロボロに破けて血に汚れた着物は、完全に袖がなくなっていて。
 鬼神の力で巨大化した竜の右腕と、白狼の力で強化した狼の左腕を、歓喜の心を示すかのように空へ掲げて。
「壊してあげる。殺してあげる。
 全部全部、何もかも! 望み通りにね! きゃはははははっ!」
 全てを破壊するという思想を持つ鬼拳士『滅芽』は、纏う羽衣から得た新たな破壊の力に悦び、嗤い続けていた。
 しかし、延々続くかに思えた嗤い声が、ぴたりと止まる。
「……あれ? 何かエビ、減った?」
 それは島周辺の嵐の中で起きた異変。
 首を傾げた滅芽は、だがすぐにその原因を知り。
「何だっけ、アイツら……そうだ、猟兵。猟兵だ!
 嫌い嫌い。邪魔するから大嫌い!」
 サメに乗り島に向かって来る者達の気配に、怒気というよりも嫌悪に近い表情を見せると、不機嫌そうに暴れる。
 だがすぐに、思い付いたように、大きな傷跡のある右目を輝かせると。
「でも猟兵も、壊せばいいんだ。殺せばいいんだ。
 そうだよ、壊すんだ。何もかも全部!
 望み通りに! 壊して壊して、殺し尽くせばいいんだ!」
 また狂喜に表情を歪ませて、嵐を見上げて。
「おいでよ! 壊してあげる! 殺してあげる!
 みんなみんな、殺し尽くしてあげる! きゃはははははっ!」
 メガリスが巻き起こす嵐に覆われた島で、嗤い声を響かせる。
 
セシル・バーナード
なんというか、ぼくの伴侶たちと違った意味で元気な人だなぁ。
相手するのに疲れそう。

じゃあ、今回はプラチナちゃんメインで行こうか。
レアメタル・フィールド展開。
さあ、プラチナちゃん、帝竜顕現だよ。レアメタルで覆った大地から超硬装甲を作り出して。
頑張ったら、いつもより一杯愛してあげるから。

さあ、並のオブリビオンの力で、帝竜の装甲を破れるかな?
プラチナ、装甲射出。飛翔剣で追い詰めて。ぼくも空間断裂で支援するよ。
あとは帝竜の巨体で叩き潰すだけ。

やあ、終わった終わった。メガリスは何かの役に立つかもしれないから持って帰ろう。
それじゃプラチナちゃん、中へ入れて。ご褒美だよ。一晩中愛してあげるからね。



 嵐の生み出す轟音の中でも、その嗤い声は甲高く響いていた。
 島に降り立ち、その声の主を見たセシル・バーナード(f01207)は、嵐だからという以上に白い髪を振り乱す『滅芽』に肩を竦めて。
「なんというか、ぼくの伴侶たちと違った意味で元気な人だなぁ」
 ふう、と深いため息を1つ。
「相手するのに疲れそう」
 何だか話も通じそうにないし、と面倒臭そうに眉をひそめたセシルは。
「じゃあ、今回はプラチナちゃんメインで行こうか」
「あっ、分かりました。めっちゃ頑張りますよ!」
 対応を押し付け……もとい、適材適所とばかりに、銀髪の少女に場を譲る。
 華奢で線の細い少女は、もはや着ていると表現するのもはばかられる程のマイクロビキニ姿で。敵どころか嵐にすら立ち向かえるのか不安になりそうな見た目だけれど。
「レアメタル・フィールド展開」
 セシルの声に応えるように、少女は周囲にその能力を広げる。
「さあ、プラチナちゃん、いくよ。
 大地に眠りし大いなる力よ。目覚めて帝竜の力となれ」
 少女を中心にして、その場にあった無機物が次々と希少金属へと変換され。
 そしてそれは次第に集まり、少女の身体を覆っていく。
 煌めく金属質な姿は、小さく華奢な少女であったと信じられない程に、膨れ上がり。
 大きな首をもたげた竜の姿をとったから。
「帝竜顕現」
 その傍らでにやりと笑ったセシルは、繊手を滅芽に向け示す。
「さあ、並のオブリビオンの力で、帝竜の装甲を破れるかな?」
 超硬装甲を纏った巨大な竜は、セシルの指示のままに、滅芽へと向き合うと。
「きゃはははははっ! そんなでっかくなっても変わらないよ!
 壊してあげる! 殺してあげる! みんな、みんなね!」
 聳え立つ巨体にさすがに気付いた滅芽が、左腕を白狼の力で強化すると、無造作とも言える仕草で殴り掛かってくる。
 違い過ぎるサイズに、最初は滅芽の拳は弾かれていたけれども。
 何度も、何度も、何度も。執拗に繰り出され、どんどん威力を増していく攻撃に、金属竜の装甲が、ほんの少しずつ、しかし確実に歪んでいった。
 へぇ、とそれを面白そうに眺めたセシルが。
「頑張ってね、プラチナちゃん。
 頑張ったら、いつもより一杯愛してあげるから」
 妖艶な笑みを金属竜へ流し向けると。
 その装甲が射出され、剣を象ると滅芽へ向かって飛翔する。
 希少金属独特の輝きを放ちながら、鋭い飛翔剣が飛び行くけれども。最初の勢いはものすごいものの、嵐に押し負け狙いを反らされてしまうから。滅芽は避けるでもなく躱してどんどん拳を叩き込んでくる。
「あー、これだったら叩き潰した方がいいかな?」
 飄々と指示を出すセシルに、わかりましたと答えるように、竜はその太い腕を振るい。
 巨木のような腕で、そして見上げるような巨体で。滅芽を潰そうとするかのように迫り襲い掛かっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
「私達は、望みを叶えるために存在する。望みが相反すれば潰し合うのもまた必然。それでも…叶うならば、多くの望みと共存したい。貴女の望みが闘争だけなら、私達は共存出来ると思うのです」

UC「幻朧の徒花」使用
高速・多重詠唱で桜鋼扇に破魔と浄化の属性付与し吶喊
敵の攻撃を第六感や見切りで躱し、カウンターや盾受けからのシールドバッシュに繋げながら、最前線で一歩も退かず乱打戦

「壊さなくても、殺さなくてもっ…闘争は楽しいと、思えませんかっ…貴女がそう思えるようになるまでっ…何度だって、付き合って差し上げますっ」

「骸の海に還ったら、又願いを胸にお戻りを…そして何時か、共存出来る存在になれますよう…」
鎮魂歌で送る



 白金の金属竜が顕現したのを見た御園・桜花(f23155)は、そこに目指す相手がいるのだと悟り、サメを駆って嵐の中を向かい行く。
「ここまでで」
 荒れ狂う風で制限された視界に、何とか『滅芽』の姿を見つけた桜花は、ひらりとサメの背から降り。戦いには巻き込まないと笑って見せる。
 じっとこちらを見ているサメは、どこか心配してくれているようにも見えたから。
「行ってきます」
 エビに立ち向かった時と同じように告げてみれば。
 サメもまた頷くような仕草を見せてから。ひらりと踵を返した。
 それを見送ることなく、全てが終わったら迎えに来てくれることを疑うことなく、桜花は戦場へと走り出す。
 白狼の力で強化し、膨れ上がった左腕で、巨大な金属竜を狂ったように殴り続けていた滅芽は、接近する桜花に気付いて。
「また来たよ! 猟兵! 猟兵!」
 金属竜の剛腕を無造作に払いのけると、桜花へとその腕を振りかぶる。
「壊してあげる。殺してあげる。
 全部全部、何もかも! 望み通りにね! きゃはははははっ!」
 放たれる拳を、桜花は破魔と浄化の属性を付与した桜鋼扇で受け弾くけれども。
 幾度も幾度も重ねられる殴打は、次第に威力と精度を増してきていたから、防御をかいくぐるものが出てくる。
「……私達は、望みを叶えるために存在する。
 望みが相反すれば潰し合うのもまた必然」
 それに耐え、そしてただ喰らうだけでなくカウンターを狙いながら。
 桜の精であり、影朧を癒やし転生させる能力を持つ桜花は、緑色の瞳に強い力を込め、破壊の鬼と化した滅芽へ語りかける。
「それでも……叶うならば、多くの望みと共存したい。
 貴女の望みが闘争だけなら、私達は共存出来ると思うのです」
 白狼の拳がその身に突き刺さっても。
 吹き荒れる嵐に体勢を崩されても。
 それでも桜花は、一歩も引かずに滅芽との乱打戦を繰り広げ。
「咲き誇れ徒花。敵の力を我が糧に!」
 まるで桜鋼扇に刻まれた刻印が舞い広がるかのように、桜吹雪が桜花の身を覆う。
 ユーベルコード『幻朧の徒花』。
 自身の負傷に比例して、戦闘力を増強し、また、生命力吸収能力を得る力。
 ゆえに、桜花の桜鋼扇が次第に滅芽を捉え始め。
 その思いが突き刺さっていく。
「壊さなくても、殺さなくてもっ……闘争は楽しいと、思えませんかっ……」
 闘い争うだけならば、いつでも相手になると伝え。
 壊すことに、殺すことに、執着し続けなくてもいいのだと語り。
「貴女がそう思えるようになるまでっ……何度だって、付き合って差し上げますっ」
 滅芽の白狼の腕を搔い潜ると、完全に不意をついた一撃を繰り出す。
 たまらず桜花から下がった滅芽だけれども。
 すぐにメガリスによる嵐が、桜花に襲い掛かって。
 追撃を封じられた桜花は、吹き飛ばされないように膝をつく。
「きゃはははははっ! 駄目だよ。壊さなきゃ。殺さなきゃ。
 だってそう望んだんだから! そうしたんだから!」
 そして嵐の向こうから響いてくる狂ったような嗤い声に顔を上げると。
 金属竜がその腕を動かしているのが見えて。他の猟兵達が集ってくる気配を察して。
 戦いが……いや、破壊が続けられているのだと感じる。
(「何時か……」)
 嵐の中で顔を上げ、桜花は願う。
 きっと骸の海に還る滅芽が、桜花の願いを持っていってくれることを。
 そして何時か。
(「何時か、共存出来る存在になれますよう……」)
 嵐の向こうをじっと見据え、桜花はぎゅっと桜鋼扇を握りしめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェフィーネス・ダイアクロイト
【溟海】
(嵐の威力を顧みればやはりあのメガリスは欲しい
が、持ち主に反し勝手に発動してる様に思える
意図して使えなければ意味が無い)

先ずは阻害する輩から海の藻屑に
一緒?笑えぬ冗談だ(鼻で嗤い一蹴
仲良しごっこは貴様らの船員とやっていろ、アンカー

島付近なら島、海なら自分の船を小瓶から出して乗る
アンカーを壁にし合間からUC使用
当てるのは何処でも可
敵に無駄に喋らせダメージ効果付与
メガリスの眼鏡で敵の位置把握し、
自身のオウガの蒼炎で作った呪殺弾で敵の龍の腕へ貫通攻撃

…余計な真似を
私は貴様の”もの”でも無い

略奪、騙し討ちは十八番
的確に最後は敵の核へ銃弾を一発
海賊らしく豪傑に鮮やかに
羽衣の利用価値が薄ければ破壊


ガイ・アンカー
【溟海】アドリブ◎

折角だ、今度は一緒にやろうぜ。シェフィーネス
おっと、俺ではお気に召さない?損はさせないのは知ってるだろ
(…一人でやるとは言わないんだな)

三叉槍と錨を手に再び鮫を駆り
派手に惹きつけてやるか
龍の腕は見切って風を利用して回避
シェフィーネスに意識が向かうなら錨を叩き込もう
…あまり海賊の“もの”に手ぇ出そうとするんじゃねえぞ?
三叉槍を怪力で投擲…それを囮に鎖で羽衣を絡め取ろう

ははっ。まだ“えもの”だったな
ま、今はどっちでもいい
…さて、我が船長が欲しがるくらいの共同作業と行こうか
銃弾に合わせ【波濤の号砲】
砲弾の嵐だ

羽衣は確保してえが…嵐が止まなそうなら壊すか
晴れれば何かしら見つかるもんさ



 島の外周を余裕で覆いつくせる程広範囲に広がる嵐。しかもその範囲のほぼ全域で、嵐は暴力的な威力をふるっていた。さすがに外側の端では幾分弱まってはいたけれども、それも僅か。嵐の中に飛び込んでから、元凶たるメガリス『電光の羽衣』の元まで、風は変わらぬ酷さで荒れ狂っていたから。
「やはりあのメガリスは欲しい」
 サメの背の上から改めてその威力を感じたシェフィーネス・ダイアクロイト(f26369)は、眼鏡越しに菫青の瞳を煌めかせる。
 だが、実際に目にしてみて、ふと過る不安が1つ。
(「持ち主に反し勝手に発動してる様に思えるな。
 意図して使えなければ、意味が無い」)
 今メガリスを持つのは、龍と白狼の巨腕を持つ2つ角の鬼『滅芽』。ボロボロに破れ汚れた服の上で、纏っている『電光の羽衣』だけが美しく綺麗に靡いていたけれども。
「おいでよ! 壊してあげる! 殺してあげる!
 みんなみんな、殺し尽くしてあげる! きゃはははははっ!」
 敵対する猟兵が現れても、金属質な巨大竜が聳え立っても、嵐は変わらぬ威力で荒れ狂い続けていて。滅芽は、嵐を意図的に攻撃に使ったりしていなかったから。
 嵐をどこまで制御できるものなのか、現状からは分からない。
(「手に入れてみれば分かる事か」)
 だからシェフィーネスは、まずはメガリスの奪取だけを考える。
「折角だ、今度は一緒にやろうぜ。シェフィーネス」
 そこに、サメを操り傍に寄ってきたガイ・アンカー(f26515)が、にっと左頬の傷と共に笑いかけてきた。
 シェフィーネスの目的のために力を貸そうと剛毅に告げてきた友は。
「一緒? 笑えぬ冗談だ」
 その提案を、鼻で笑われ一蹴されるけれども。
「仲良しごっこは貴様らの船員とやっていろ、アンカー」
「おっと、俺ではお気に召さない? 損はさせないのは知ってるだろ」
 肩を竦めて見せつつも、その冷たい物言いを気にした風もなく。
(「1人でやるとは言わないんだな」)
 むしろその点に気付いて、さらに笑みを深める。
 その笑顔から、シェフィーネスはふいと視線を反らすけれども。その不機嫌そうに見える仕草すら、ガイの笑みを晴れやかな海色にしていったから。
「派手に惹きつけてやるぜ」
 ルーンの刻まれた蒼銀のトライデント『レイダー』と巨大な戦闘用錨『リヴァイヴ』を手にしたガイは、サメと共に滅芽へと、嵐の中を突っ込んでいく。
 桜色の少女と打撃の応酬をしていた滅芽が、殴り飛ばされ、2つの影が離れたところへトライデントを突き出せば。咄嗟に反撃してくる巨大な龍の腕。しかしそれも見切って、伝えた動き通りにサメが回避をみせてくれて。通り過ぎた先でくるりと反転した。
「猟兵! 猟兵! 猟兵!」
 再び向き合う形になった滅芽が、ガイを指差し、狂ったように叫ぶ。
 そうして宣言通り、意識を惹き付けたそこへ。
「五月蠅い。分かっていることを繰り返すな。無駄だ」
 美しい装飾が施された銀の海賊銃の銃声と共に、静かなシェフィーネスの声が響いた。
 視界の悪い嵐の中でも、スクエア型の眼鏡・メガリス『glasscope』は、お洒落な見た目だけではないその能力を存分に発揮していたから。シェフィーネスの銃弾は、見事に滅芽の肩口を捉えていたけれども。
「きゃはははははっ! うるさいって! ムダだって!」
 滅芽は負傷のダメージを感じさせないほどに酷く甲高い笑い声を上げて。
「大丈夫、すぐに静かになるよ。
 だってみんなみんな壊すんだから! そう望んだんだから!」
 べらべらと喋りながら、龍の腕を鬼神の力で強化する。
 そしてシェフィーネスの元へ向かおうと、和装のような服の下から足を踏み出し。
「あまり海賊の『もの』に手ぇ出そうとするんじゃねえぞ?」
 そこへガイが怪力でトライデントを投擲した。
「きゃはははははっ! ムダだって! 猟兵の方がムダなんだって!」
 しかし滅芽はそれを察してひらりと回避。嵐の影響で槍の威力が幾分落ちてしまっていたのも一因かもしれないが、蒼銀の軌跡は滅芽を掠ることすらできず。
 それでもその足を止めさせていたから。
 再び、銃声が響く。
 今度の銃弾は呪殺弾。シェフィーネス自身のオウガブラッドたる蒼炎で作られたそれは強化されたはずの腕を貫通し。
「……きゃはっ!?」
 滅芽の笑みを歪ませる。
 動きが止まったそこへ、ガイは錨に繋がる『結びの鎖』を手足の如く操って。滅芽の次の動きを牽制する……と見せかけて『電光の羽衣』を絡め取った。
「余計な真似を」
 手にしたメガリスをこちらに向けて掲げ、にやりと笑ってくるガイを見上げたシェフィーネスは、苦々しい顔で呟く。
「私は貴様の『もの』でも無い」
「ははっ。まだ『えもの』だったな」
 その呟きはちゃんとガイの言葉を拾っていて。そしてガイの動きに合わせて狙ってくれていたから。ガイは冷たい言い様にも笑って応え。
「さて、我が船長が欲しがるくらいの共同作業と行こうか」
「Loose lips sink ships.」
 信頼を滲ませた笑顔に、シェフィーネスはユーベルコードを発動させる。
 それは、最初の銃弾を撃ち込んだ時から狙っていたもの。
 シェフィーネスの銃弾が命中した相手がこれまでに口にした言葉の数に応じてダメージを与える棘を生み出す『金葩の禍』。
 クールなシェフィーネスが滅芽に無駄に話しかけ、反応を引き出していたのはこの時のためだったから。
「な……んだよこれっ! なに……っ!?」
「雉も鳴かずば撃たれまい、だよな?」
 棘に慌てる姿に、ガイはにやりと笑うと、大きく手を掲げるように振りかぶった。
「全砲門、開け!」
 その号令に合わせてガイの周囲に出現するのは、海賊船にあるような大砲。空中にその砲門だけが見える不自然な状態だが、その威力は欠けるものではない。ゆえに。
「さあ、派手にぶっ放してやろうぜ!」
 撃て! と告げると同時に撃ち込まれる『波濤の号砲』。
 海賊らしい豪傑な攻撃に、滅芽の姿が沈んでいき。
 それでも油断なくシェフィーネスは『glasscope』で滅芽の姿を捉えると。
 最後だ、と言わんばかりにもう一発、砲弾の嵐の中へ、銃弾を撃ち込んだ。
 その横にひらりと戻って来るガイとサメ。
 差し出してきた武骨な手には、儚げな羽衣が握られていたから。
 シェフィーネスはそれを奪い取るように受け取って、制御できるか試してみる。
「嵐、止みそうか?」
 腕を組んだガイが、興味津々、様子を伺ってくるけれども。
 嵐は変わらず島を覆っていて。シェフィーネスが治めようとしても、逆に滅芽を狙って威力を上げようとしても、荒れ狂う風は何も変わらなかった。
 元々、嵐を生み出したらあとは維持し続けるだけのものだったのか。それとも滅芽が適当に使っていたせいで、暴走でもしているのか。原因については分からないけれど。
「制御は無理か」
 諦めたようなガイの言葉が、現状の全てだったから。
「なら、壊すか」
 さらりと告げたガイに、ふん、とシェフィーネスは『電光の羽衣』を放り出し。
 そこに降り注ぐ海賊銃の銃撃。
 ボロボロに穴の開いた羽衣へ、さらにガイは巨大な錨を素早く閃かせて、ズタズタに切り裂き、完全に破壊する。
 途端、島を覆っていた嵐が、嘘のように消え去っていって。
 さあっと散っていく暗雲を見上げたシェフィーネスの肩に、ガイがもたれかかるようにその腕を乗せた。
「晴れればまた何かしら見つかるもんさ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふえ、あの人の左腕ってもしかして・・・。
あの、サメさんとアヒルさん、8秒したら私を助けに来てくれませんか。
それとアヒルさん、私の帽子を預かっててくださいね。
それまではあの人の攻撃範囲に近づかないでくださいね。

さて、サメさんから飛び降りて8秒で目的は達せられますか?
あの人は3回攻撃してきます。
それを掻い潜って・・・あの左腕を切り落とす。
私じゃ無理ですけど、同じオブリビオンなら可能ですよね。
それに呼び起こしていいのかって訊ねられても、あなたがあの白狼さんを解放したいと願っているんじゃ、しょうがないじゃないですか。



 サメの背にしがみ付き、目を瞑ってすらいたフリル・インレアン(f19557)は、ようやく晴れた嵐に恐る恐る赤い瞳を開けた。
 やっと目にした『滅芽』の姿は、長い長い白髪と、両側頭部から生えた大きく武骨な2本の角。十二単を思わせる、しかしボロボロに破けて、赤黒い古い血と真っ赤な鮮血とに汚れた着物は、完全に袖から先が引きちぎられたかのようになくなっていて。右目にかかる大きな傷跡と共に、かなり暴れ回ってきたのだろうと思わせる様相。
 そして何より目を惹くのが、巨大化した2本の腕。
 右の腕は龍のように鱗に覆われ。
 そして。
「ふえ、あの人の左腕ってもしかして……」
 白狼の力で強化された左の腕に、フリルの視線が注がれる。
 もう何も隠す必要のない頭を覆う、つばの広い大きな帽子をぎゅっと握りしめて。
「あの……8秒で目的は達せられますか?」
『ふふふ、いいのかしら? 私を呼び起こしたりして』
 独り言のように小さく語りかけるフリルの声に応えるのは、骸魂。
 艶やかな、面白がるようなそれは、銀狼の魂で。
「そんな、訊ねられても……あなたがあの白狼さんを解放したいと願っているんじゃ、しょうがないじゃないですか」
 その思いをフリルが感じ取れてしまう『失われていた過去の断片』だから。
 フリルは気弱な赤瞳に精一杯の力を込めて、滅芽を見据えた。
「あの、サメさんとアヒルさん、8秒したら私を助けに来てくれませんか」
 そして、フリルを乗せてくれているサメと、手に抱えたアヒルちゃん型ガジェットに、おどおどしつつも笑みを向けて。
「アヒルさん、私の帽子を預かっててくださいね」
 そっと、ガジェットと一緒に、被っていた帽子をサメの背に置いた。
 大きな帽子の下から現れたのは、さらりとした銀色の髪。嵐が治まり、緩やかになった海風に、少しウェーブのかかった長い銀髪が揺られて広がると。
 とんっとサメの背からフリルは飛び降りて。
 落下による強風で銀髪が舞い上がる。
 それと同時に、フリルは銀狼の魂と合体して、一時的にオブリビオンと化した。
 8秒。
 それはフリルがオブリビオン化の狂気に耐えられると判断した時間。
 髪色と同じ銀の狼耳を頭部に生やしたフリルは、風の中でにやりと艶やかに笑い。
「やってみせましょう」
 気付いた滅芽が無造作に振り回した巨大な両の腕を掻い潜り。
 ふっさりした銀色の狼尾で体勢を制御すると。
 鋭い銀色の爪を振り下ろす。
「同胞の力をこんな風に使われるのは、気に食わないのよ」
 オブリビオンとなったフリルの一閃は、その狙い通り、白狼の力を宿した滅芽の左腕をばっさりと、深く深く斬り裂いて。
「お前……っ!」
 ものすごい形相で睨んで来る滅芽に笑みを向けながら、すぐに離脱すると。
 ユーベルコードの反動で崩れ落ちたフリルを、そこに泳ぐように飛び込んできたサメが受け止め、そのまま逃げ去っていく。
 サメの背の上で眠るフリルに、狼耳のなくなった銀色の頭に、ガジェットがそっと大きな帽子を被せていた。

 ガア。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 痛みで一瞬途切れかけた意識。
(「なんだ、これ。夢?」)
 緑深い山の中に、滅芽は1人立っていた。
 いや、1人ではない。
 目の前には幼い女の子の背中が見える。隣にはもう1人の漆黒の髪の鬼。
 そして女の子の駆け行く先には、彼女の父親が立っていた。
 悲劇の幕が上がる。
 滅芽の胸に歓喜が広がっていく。
(「そう、そうだよ。壊すんだ! 殺すんだ!」)
 狂喜の歓声は1つも声になっていない。女の子へは届いていない。
 しかしその声に導かれたかのように、鮮血が眼前を染めて。
 儚き命へと手をかけたのは、父親の闇か、幼子の光か。
 混乱と困惑と恐怖と悲哀の中で。
 血だまりに倒れ、動かない父親を見下ろして。
 右目に傷を負った血塗れの女の子は、絶望を知る。
(「きゃはははははっ! いいね、いいよ!
 もっと壊すんだ! 全部全部、何もかも!」)
 滅芽は、自分が生み出された瞬間に、狂ったような嗤い声を響かせて。
 もう1人の鬼が、悲し気に目を伏せるのを、嬉しそうに見た。
(「望んだ通りに、壊してあげるよ!」)
 
シリン・カービン
【かんにき】

「小太刀、話してもらえますか。」
以前に喪輝と出会った時も真琴の様子がおかしかった。
ミコトとの間にもなにかあったようですしね。

母、なのですね。
滅芽も、ミコトも、喪輝も。
過去になった、有り得たかもしれない母の姿。

二人の背負った重荷はわかりました。
なら、やることは決まっています。
緊張に強張った二人の頭を抱き寄せて、
「大丈夫。私たちがいます」

滅芽の攻撃が広範囲でも、振るえる腕は二本のみ。
「追いつけますか、私の影に」
【シャドウ・ステップ】発動。
残像をフェイントに使い、影を残してすり抜けます。
翻弄しつつ精霊猟銃を連射。
ガーネットの動きに合わせて牽制・狙撃と撃ち分けます。

「!」
真琴が強力な一撃を受けた瞬間、真の姿が覚醒。
精霊護衣のみを身に纏い、額に第三の目が開くと、
比べ物にならない加速で掻き消えます。

姿を現すのは杏の傍。
抱きかかえた真琴を降ろし、回復を任せます。

ミコトが現れたら射撃で援護。
攻撃を合わせる小太刀も支援します。

いつもの台詞はいらない。
決着をつけるのはあの子たちなのだから。


鈍・小太刀
【かんにき】

仲間に事情を話す

シリンとガーネットは覚えてるかな
鬼やらい島で倒したコンキスタドールの事
ミコトが真琴と私の母の姿をしてたのは
彼女が元々は、お母さんの一部だったから
嘗て母が幼かった頃に母の中に生まれた別人格
グロウ・ブルーで会った喪輝も
そして今日戦う滅芽も

真琴もきっと気付いてる
私達の手で止めなきゃいけない相手だって
もしかしたら無茶をするかも
だから力を貸して欲しいの
真琴を護って、お願い

ありがとう杏、皆、サメ吉も

仲間の背中が頼もしい
大丈夫、私も戦える
真琴も皆も壊させはしない

父から受け継いだ刀を構え滅芽に対峙
傍らには母から受け継いだ獅吼影牙の影の獅子

攻撃を見切り回避しカウンターで剣刃一閃
無理でも勿忘草色のオーラ防御で破壊は防ぎつつ
刀で武器受けして凌ぐ

真琴!
危険時はオーラ防御と影獅子で庇いダメージ軽減

貴女がミコト…
厳しいけどどこか優しい声
見守ってくれていたの?(知らず零れる涙
うん、合わせるよ
剣刃一閃!

滅芽、貴女には何も壊せない、壊させない
骸の海へ送るよ
おやすみなさい、お母さん

※アドリブ歓迎


琶咲・真琴
【かんにき】
……本当に、間違っててほしかった

お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが
シリンさんに抱えられたボクや姉さんの前に飛び出て
今までにない険しい様子で目の前の鬼と対峙してる

壊す?
殺す?

その顔で
その声で

そんな事を言うな!!

ボロボロになった服
片目の傷痕

前に鬼やらい島で対峙したあの人と
―――お母さんと同じだなんて
認めない

そんなの……そんなの絶対にさせない!!

薙刀と星夜桜花を使い分けて
滅芽に接近戦

自分が傷だらけになりながら闘う中

本当なら聞こえない筈の声が聞こえた
『させぬぞ、滅芽
(UC発動

声の主は
かつて対峙した鬼―――ミコト


ミコト出現後は
薙刀のみで戦う

……もう、わからないよ


ミコト
星夜桜花を用いた刀術で闘う

『我らは異なる悲劇により生まれたが
貴様(滅芽)と我は表裏一体

それは貴様もよく身に染みているだろう


『あぁ、小太刀
黒き指輪の中から
表に出れずともずっと


『貴様の始末は我が責務
その血で汚れるのは我だけで良い
(滅芽の首を落とそうとする


喪輝は輝乃の心が壊れ
我と滅芽も生まれなかった先の
あり得た姿


アドリブ歓迎


ガーネット・グレイローズ
【かんにき】

すさまじい嵐だ、皆無事か?あれが滅芽か…。これまでの道中、真琴と小太刀から彼女についての話を聞いている。そうか、二人のお母さん。オブリビオンとは様々な形で現世に現れるのだね。

戦闘
アカツキと骸丸の二刀流でいこう。小太刀と連携、《フェイント》を駆使しながらの《2回攻撃》で攻めつつ、敵のユーベルコードを誘う。敵はおそらく真琴と小太刀に執着するだろうから、二人を庇うように刀二本で《武器受け》、ブレイドウイングで《ジャストガード》して防御役を。まだ食い下がるようなら【サイキックブラスト】で動きを止めて、《念動力》で剣を投擲する!嵐よ、鎮まれ…。私の大事な仲間は、やらせない。杏、真琴の回復を!


木元・杏
【かんにき】
あそこにいるのは、白髪の女の子?
小太刀の話を聞いたら再度じっと見て
ん…、くわしい事はわからないけど、わたしはわたしの友だちを、真琴をしっかり守る

真琴、落ち着いて
真琴に駆け寄り【あたたかな光】を発動
真琴への回復を主に、周りの皆への防御と回復も施そう
うさみん☆、滅芽の攻撃を見切り体の小ささを活かして逃げ足、そのまま滅芽に近づき気を引いていて?
わたしも幅広の大剣にした灯る陽光で武器受けして攻撃を相殺していく

んむ…、壊したいと言われてものーさんきゅう
壊れるというのはこの先美味しいお肉を食べられな……(こほん)、まつりんと会えなくなるということ
それは許容出来ぬお話



「すさまじい嵐だ。皆、無事か?」
 荒れ狂う風を越えてようやく島に辿り着いたガーネット・グレイローズ(f01964)は、同行していた仲間の様子を確認しながら問いかける。
「ええ、ネードのおかげですね」
「サメ子も、頑張った」
 すぐにシリン・カービン(f04146)と木元・杏(f16565)が、島まで運んでくれたそれぞれのサメを労わりながら頷き返して。ガーネットも、同意するように、自身が乗っていたサメにそっと手を添え労った。
 だがしかし、返ってきた答えは2つだけ。
 鈍・小太刀(f12224)と琶咲・真琴(f08611)の姉弟は、ガーネット達の声が聞こえているのかいないのか、こちらを振り返りもせずに、じっと敵を見据えている。
 先ほどから様子のおかしい2人に、杏が困惑したように眉を顰め。
 ガーネットは、姉弟の視線を追い、2本角の鬼『滅芽』を見て赤い瞳を細めた。
「あれが滅芽か……」
 少し距離が遠く、また、吹き荒れる嵐で視界が悪いため、その姿は不鮮明だけれども。
(「どこかで見たことがあるような……」)
 不思議な感覚にガーネットは少し首を傾げる。
「小太刀、話してもらえますか」
 切り込んでいったのはシリンだった。
「以前に喪輝と出会った時も真琴の様子がおかしかった」
 それは青い灯りを抱く島で、この場の皆が出会ったコンキスタドール『琵蕾・喪輝』。ボロボロに破れ血に汚れた和服を着て、壊れたように嗤いながら泣き続け、真琴が名乗った『琶咲』の姓に過剰に反応していた、傷だらけの女の子。
「ミコトとの間にもなにかあったようですしね」 
 そして、その時とは別の島で、シリンも豆をまいたコンキスタドール『ミコト』。十二単を思わせる美しき和装を纏い、漆黒の髪と角を持ち、真琴に討ちとられた、穏やかだがどこか哀し気な女性。
(「話してもいいと思えたなら、とは言いましたが」)
 かつて小太刀にかけた言葉も思い出しながら、その時の態度を一転させたような要求をしている自分に苦笑しつつ。それでも、2つの『過去』が、今この時の戦いに必要なのだと感じるから。シリンはじっと小太刀を見据える。
 ガーネットも促すように視線を戻し、杏も聞き漏らさないようにと構えていたから。
 ふう、と諦めたように小太刀は息を吐いて。
「……ガーネットも覚えてるかな。鬼やらい島で倒したコンキスタドールのこと」
 そう、口火を切った。
「ああ。ミコト、だったな」
「あれは真琴と私のお母さん」
 頷いたガーネットは、思わぬ言葉に目を見開く。
「正しくは、お母さんの一部だったもの。
 嘗て……母が幼かった頃に、母の中に生まれた別人格。
 だから、お母さんの姿をしてたの」
 嵐の向こうの滅芽を見ながら、小太刀は訥々と、信じられないような話を語った。
「グロウ・ブルーで会った喪輝も、そう。
 喪輝は幼かった頃のお母さんの姿だったけど」
 父親に殺されかけ、父親を殺してしまい、心を壊した傷だらけの女の子。
 そんな喪輝を気にかけ、そして真琴の頭を優しく撫でて消えていった女性。
 それらは元は同じ存在だったのだと、小太刀は告げる。
「ということは、滅芽も?」
 気付いたシリンの問いかけに、小太刀はゆっくりと頷いた。
 これから戦う相手も『お母さん』なのだと。
「過去になった、有り得たかもしれない母の姿……」
「そうか……オブリビオンとは様々な形で現世に現れるのだね」
 考え込むように呟くシリンの隣で、ガーネットも難しい顔で話をかみ砕く。
「真琴もきっと気付いてる。私達の手で止めなきゃいけない相手だって。
 もしかしたら無茶をするかも……
 だから力を貸して欲しいの」
 そして小太刀は、仲間に懇願する。
「真琴を護って、お願い」
「ん……」
 頷いたのは、じっと話を聞いていた杏だった。
 別人格が生みだされた詳しい事情は分からないけれど、大切なことは分かったから。
「わたしはわたしの友だちを、真琴をしっかり守る」
 ぐっと拳を握りしめて見せる杏に、首肯が続く。
「当然だ」
「ええ。2人の背負った重荷はわかりました。なら、やることは決まっています」
「ありがとう杏、ガーネット、シリン」
 頼もしい仲間の言葉に、小太刀がどこかほっとしたような表情を見せると。
 下から揺らすような小さな揺れが伝わってきたから。
「サメ吉も、ありがとう」
 くすりと見下ろした小太刀は、そっと鮫肌を撫でた。
 しかし、小太刀の話の間も、皆からの協力の言葉にも、真琴は何の言葉もないどころか振り向きすらせず。じっと滅芽を見つめているままだったから。
 シリンは、姉弟に近付き、その繊手を伸ばすと。
「大丈夫。私たちがいます」
 2人の頭をそっと優しく抱き寄せた。
 腕から、言葉から、温もりが伝わって。ふっと真琴の緊張が緩むけれども。
 吹き荒れていた嵐が、唐突に、消え去った。
 急な風の変化にサメ達が戸惑い、けれども乗せた者を誰1人として落とさず、不時着のはずなのにさすがの安定した動きで島に降りる。
 嵐がなければ、サメ達を戦いに巻き込むことはない。
 皆は、特にシリンは真琴から離れないように気遣いながら、サメの背から降り。
「きゃはははははっ! 壊れたの? メガリス、壊したの!?」
 そこに、嵐が消えたことでよりクリアに、滅芽の嗤い声が響き渡った。
「いいね! もっと、もっとだよ! ぜーんぶ壊して殺すんだ!」
 風が止んで尚、白く長い髪を振り乱して。
 武骨な角を2本、大きく生やして。
 ボロボロに破れて汚れた和装に、新たな鮮血を滲ませて。
 袖が引きちぎられたような肩口から、傷ついた龍と白狼の巨大な腕を掲げて。
 滅芽は、嗤う。
 少年と少女、2体の片翼人形が飛び出して、今までにない険しい様子を見せる前で。
 真琴の母の顔で、真琴の母の声で。
「壊してあげる。殺してあげる。
 全部全部、何もかも! 望み通りにね! きゃはははははっ!」
 嗤う。
「その顔で、その声で、そんな事を言うな!」
 真琴は、シリンの腕を振りほどいて、滅芽へと駆け出した。
 破れて汚れているけれど、十二単だったと思わせる服。
 漆黒ではないけれど、長い長い髪と両側頭部の角。
 そして何より、右目に大きく刻まれた傷跡。
 その全てが、鬼やらい島で対峙した、真琴の頭を優しく撫でてくれたあの人と同じで。
 和装を好み、長い髪を揺らして、傷跡が残る右目で優しく笑う母と同じ、だけど。
「同じだなんて、認めない!」
 真琴は頑なに叫び、薙刀を滅芽へと振るう。
 鋭い牙を思わせる蒼き刃が、嚙み砕かんとするように襲い掛かるけれども。滅芽は、それを弾き、躱し、時には受け止めて、すぐさま巨腕を振るい。受けた傷以上の打撃を真琴に打ち込んできた。
 それはコンキスタドールとしての滅芽の実力でもあったけれども。
 実際の実力差以上に、真琴の心の動揺が、薙刀に現れていたからでもあり。
(「……本当に、間違っててほしかった」)
 姉の話が。人形達の様子が。自身が感じたものが。
 全て間違いや錯覚であればと思ってしまうから。
 大きな薙刀の合間を埋めるように振るわれる、星と桜と兎の意匠が凝らされた小さな脇差も、本来の真琴のそれよりも精彩を欠き。
 真琴の傷が、増えていく。
「小太刀!」
「うん」
 だからガーネットはすぐさま小太刀に声をかけ、真っ赤なアカツキと真っ白な骸丸をそれぞれの手に握りしめると、二刀流で斬りかかった。
 古びた日本刀で、だがしっかりと手入れはされていることを示すかのように鋭い切り口を見せる『片時雨』で、弟を護るべく小太刀も斬りつけ。
 赤い髪と灰色の髪とが、動きを合わせて滅芽を狙っていく。
 さらにそこにシリンが踏み込んだ。
「追いつけますか、私の影に」
 時の精霊の加護を得て、素早く動けば、残像がその場に残り。それを囮に滅芽の動きを誘い出すと、精霊猟銃を連射する。
(「滅芽の攻撃は、腕2本のみ」)
 広範囲への攻撃も可能だとしても、振るわれる数は変わらないと。腕を引き付けるように、また、腕が他を狙った隙を撃ち抜けるように。
 ガーネットの斬撃をサポートするように牽制し、真琴に向かった攻撃を撃ち抜き、小太刀の日本刀と狙いを揃えて連撃を作り出す。
 それまでの打撃戦や銃撃戦でも、滅芽にダメージは重なっていたけれども。
 それでもまだまだ滅芽は腕を振るい続け、余裕の笑みが浮かべられていたから。
「きゃはははははっ! 猟兵! 猟兵だよ!
 どれから壊そうか! どれから殺そうか!」
 ちらりと小太刀に意味ありげな視線を向けた滅芽の龍の腕が強化され。
「そんなの……そんなの絶対にさせない!」
 咄嗟に、怒りの声と共に真琴が薙刀を突き出し突っ込めば。
「壊させてくれるの? 優しいね!」
 それを待っていたかのように、鬼神の力で強化した龍の巨腕が真琴を捉え、カウンターとなってまともに殴り飛ばした。
「真琴!」
 悲鳴のような声で弟の名を呼び、そちらへ踏み出そうとした小太刀だが。
 その目前で、にっと滅芽の笑みが歪む。
 ぞわり、と背筋に冷たいものが走ったと思うと、小太刀へも迫る龍の腕。
 咄嗟に勿忘草色のオーラを張りながら片時雨を引き上げ無理矢理受け凌ごうとすれば、影の獅子が飛び込んできて。何とか直撃を防ぐと、勢いに逆らわず後ろに吹っ飛ばされてダメージを軽減した。
 すぐさまガーネットがフォローに動き、小太刀への追撃を防ぐべく、マントの中に秘蔵していた液体金属の翼も広げながら庇い立つと。
 ちらり、と真琴の方へも視線を流す。
 真琴の方には、シリンが向かっていた。
 強力な一撃が真琴を捉えた瞬間、シリンは真の姿に覚醒。額に第3の瞳が開き、色白だった肌が一気に褐色に変わり、ダークエルフへと姿を変えたシリンは、必要最低限の部位のみを保護する精霊護衣の身軽な格好で更なる加速を得ると、真琴を抱えて大きく後ろへ下がる。
 そこにいたのは、戦況を見て動くタイミングを計っていた杏。
 その傍に、シリンが抱きかかえていた真琴をそっと降ろすと。
「杏、真琴の回復を!」
 ガーネットの気遣う声が飛んできたから。
 ん、と頷いた杏は、あたたかな光を真琴へむけた。
 真琴のダメージは大きいけれども、回復のオーラに一安心したところに。
「シリン!」
 鋭く響いたガーネットの警戒の声。
 はっとして振り向いたシリンの眼前に、歪んだ笑みが現れる。
 小太刀へ追撃をかけていたはずの滅芽が、その動きをフェイントにして、真琴を追いかけるように飛び込んできていた。
 真琴を庇う位置にいたシリンに、滅芽は、片っ端から壊せばいいと言わんばかりに、鋭く大きな爪がギラリと光る巨腕を振り上げて。
『させぬぞ、滅芽』
 その手を、星と桜と兎の意匠が凝らされた脇差が受け弾いていた。
 持ち主である真琴ではない。構えているのは、その前の持ち主。
 唐突に現れた漆黒の長髪に。両側頭部から生えた漆黒の角に。幾重にも布を重ねた美しい和装に。後ろ姿ながらも見覚えのあったシリンは驚きに目を見開き。
「……ミコト?」
 その姿を見たことのなかった杏が、確認するように名を呟く。
 そしてもう1人、予知ではなく実際には初めて会う小太刀も。
「貴女がミコト……」
 どこか見惚れるように、慈しみの鬼を、見た。
 完全に不意をつけたと思った必殺の攻撃を防がれ、むっとした顔をしていた滅芽は。
「あれ? 見たことあるよ。さっきの夢? 違う、もっと前から知ってる?」
 困惑した様子で、自身と同じ姿の鬼を見て、首を傾げる。
 そんな滅芽に、ミコトは冷たい眼差しを向け。
『我らは異なる悲劇により生まれたが、貴様と我は表裏一体。
 それは貴様もよく身に染みているだろう』
 突き放すように言うと、振り返り、倒れたままの真琴を見て。杏が回復の手を向け、シリンが庇うように居るのを確認すると、ふっと優しく微笑む。
 すぐ傍に浮く、少年と少女の片翼人形には、静かに目礼を送って。
 そして、ガーネットに庇われた姉へと視線を向ける。
『あぁ、小太刀』
 こちらを見つめている紫の瞳に。真琴と同じ、母譲りの色にミコトは相好を崩す。
『黒き指輪の中から、表に出れずともずっと……』
「見守ってくれていたの?」
 言葉を継ぎながら、小太刀は思い出す。撫子と龍鱗の模様が刻まれた黒き指輪を。かつて母からお守りとして渡され、今は真琴がペンダントにして持っている、目の前の黒髪の鬼と同じ名の『命』を。
 そこにミコトの意識があって。
 こうして真琴のユーベルコードで現れずとも、自分達を気にかけていてくれたのか。
『もちろんだ。小太刀も真琴も、輝乃の大切な子。我にとっても同じ』
 小太刀の考えを肯定するように、ミコトは微笑む。
 母と同じ、優しく慈しむ笑顔に、小太刀の頬を、知らぬ間に涙が零れていた。
「輝乃? それも聞いたことある。何だっけ?
 すごくすごく大事で、重要で……何よりも壊したいものだ!」
 しかしそこに、滅芽の狂喜に満ちた声が響く。
 どうやらミコトと違い、過去の記憶の全てを持ってはいないようだけれど。嫌な部分だけはしっかり思い出せているようで。
「輝乃の大切? 輝乃の子供? それじゃ、逃すわけ、ないよねぇっ!」
 小太刀に、そして何より真琴に、その破壊の手を向けようとするから。
「滅芽。貴女には何も壊せない、壊させない」
 小太刀は、母を守り抜いた父から受け継いだ日本刀『片時雨』を構え、母と共に戦い抜いた影の獅子『獅吼影牙』を伴い、改めて滅芽と対峙した。
「うさみん☆ 滅芽の気を引いていて?」
 真琴の回復に専念する杏は、せめてとうさみみメイド人形を向かわせて。その小ささを生かして攻撃を躱しつつ、逃げたり近づいたりと、滅芽の周囲を五月蠅く飛び回らせ。
 精霊猟銃を構えるシリンの援護も受けながら。
「私の大事な仲間は、やらせない」
 両掌から高圧電流を放ったガーネットは、感電によって滅芽の動きを一時的に止める。
 そこに空から、突然、銀色の狼が降ってきた。
 銀髪を靡かせ、狼耳と狼尾を揺らした少女は、狼の力を宿した腕と爪とで滅芽を急襲して。完全に想定外からの一撃が、深く深く白狼の腕を斬り裂く。
「お前……っ!」
 ものすごい形相を見せる滅芽から、一撃離脱とばかりに少女はすぐさま離れていったけれども。腕を斬り落とすかのような傷から、真っ赤な血が溢れ出して。
 見る間にその動きが鈍くなっていく。
 ……この一撃は、きっかけだったのだろう。
 巨大な金属竜の殴打が。桜鋼扇との乱打戦が。その身を蝕む棘が。豪快な砲撃が。
 じわりじわりと滅芽を削っていたのは確かだったし。
 真琴の拳も、ガーネットの妖刀『アカツキ』と屍骨呪剣『躯丸』も、シリンの銃弾も、小太刀の片時雨も。破壊に抗い続けていたのだから。
 重なる攻撃と想いとに、不機嫌に滅芽は叫び狂って。
「みんなみんな、壊すんだ! 殺すんだ! だってそう望んだんだから!」
「んむ……壊したいと言われても、のーさんきゅう」
 そこに、回復に徹していてノーマークだった杏が飛び込む。
「壊れるというのは、この先、美味しいお肉を食べられな……」
 こほん。言い直し。
「まつりんと会えなくなるということ。それは許容出来ぬお話」
 大事な肉……ではなく、双子の兄のお日さま笑顔を思い浮かべながら、幅広の大剣を象った灯る陽光を振り抜けば。
 傷を負いつつ下がったそこに、ガーネットが剣を投げ放ち、シリンの狙撃が襲う。
(「いつもの台詞はいりませんね」)
 油断なく照準器を覗きながら、次々と撃ち込む弾丸は仲間を援護するもので。
 シリンが獲物を仕留めるものではなかったから。
 ……あなたは私の獲物。
 この台詞は今回だけは相応しくないと口を閉ざして。
(「決着をつけるのは、あの子たちなのだから」)
 そして、皆が切り開いた道を、小太刀とミコトが走る。
 父が使った片時雨と、母が使った星夜桜花。
 その切先を揃えた小太刀は、母と共に戦った父の気持ちをふと思いながら。片時雨を一閃し、白狼の腕に刻まれた深い傷をなぞって斬り上げ。
 同時にミコトの星夜桜花が、星と桜と兎の意匠が凝らされた脇差が、滅芽の首を狙う。
『貴様の始末は我が責務。その血で汚れるのは我だけで良い』
 しかし、滅芽は星夜桜花を辛うじて龍の腕で受け止めて。刃を食いこませながらも、首を取られなかったことに、にやりと笑う。
 そしてまた、あの甲高い哄笑を響かせようと、大きく口を開けたところで。
 その首から、蒼き刃が、生えた。
「……もう、わからないよ」
 傷だらけで、泣きながら、薙刀を振るった真琴は。ぽつりとそう呟いたところで、反射的に振り回された巨腕から逃れるべく、再びシリンに抱えられて下がり。
「壊す……輝乃っ、望みどお……何も、かも……っ」
 尚も叫ぶ滅芽の声が、次第に途絶えていくのを呆然と見つめ。
 最期に、声を紡げずに動かされた唇に、紫瞳を大きく見開いた。
 だがそこに小太刀が、脇差で巨腕を抑えるミコトに応えるように飛び込んでいくと、介錯するように日本刀を振り下ろし。
「おやすみなさい、お母さん」
 にいっと笑って滅びの芽を撒いた鬼を、骸の海へと、送った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 ……ねえ、真琴。
 知ってる? 輝乃はその手で父親を殺したんだ。
 だから、心が壊れた輝乃は、琵蕾・喪輝は、父親とその子供を殺そうとしていた。
 そして、君はその手で私と対の鬼を殺した。
 輝乃から生まれた滅芽とミコトを。輝乃と同じ存在を。
 輝乃の息子の君が。
 分かってる? 真琴はその手で母親を殺したんだ。
 最期にそれを教えてあげる。分かるように、伝えてあげる。
 だってそうすれば、望みは叶えられる。
 私はきっと、全てを壊すことができるから……

 最期に滅芽は声なく告げた。


 ――君も、輝乃と同じ――
 

最終結果:成功

完成日:2022年02月05日
宿敵 『滅芽』 を撃破!


挿絵イラスト