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満たされないはずの君へ

#UDCアース

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#UDCアース


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●美しの朝
 獣はいつ以来か、目蓋を押し上げる。
 どれだけ眠っていたのだろうか。木々の合間から差し込む陽光が目に痛い。
 だが、とても心地よい。
 このままぼんやりと浴びているのもいいとは思ったが、獣はどうにも腹が減っていて。なにかを食べたい。食べるものを探しにいかねばと立ち上がろうとする。
 が、動かない。
 後ろ脚も前脚も、全く力が入らない。どうしようもなくて、獣はその場にぺたりと伏せて、口元にあった花を食んだ。
 口に何かがあると落ち着くのか、そのままうつらうつらと食み続ける。

 周囲に、獣を見つめる数多の視線があるとも知らずに。

●はらぺこさん
「えーっと、そう、しかさん?がおそわれてるわ」

 第一声から戸惑わせてくるくらげの娘はゆらんと首を傾けた。
 そもそもしかさんとは?質問してみても此度の事件を察知した娘、メドラ・メメポルド(フロウ・f00731)はマイペースに見た予知を語るのみ。

「おそわれてる……というより、群れられてる?とにかくね、しかさんもこもこしてたわ」

 もこもこのしかさん。

「もこもこはね、とりさんなの。たくさんひっついててね、ぬくぬくしてるの。……あ、でもみんながいくとね、みんなの方に寄ってくるみたい」

 とりさんが、たくさん。

「だからみんなで行って、かえしてきてほしいの」

 全く状況が読めない。
 猟兵達が頭を悩ませ首を傾げていると、通りすがりの親切な人が丁寧に解読してくれたので、訳された内容をここに残しておく。

 話はこうだ。
 邪心教団が新たな邪神「緑の王」の召喚に成功した。しかさんと呼んでいるのがこれである。
 しかし、呼び出した邪神は一側面のみを強く表した存在でどうにも制御することができず、その上鳥型眷属を大量に呼び寄せて、教団員を追い出し拠点を奪ってしまったのだという。
 教団員は既にひとりもおらず、拠点だった場所には緑の王と鳥たちのみ。
 幸い邪神が呼び出された場所は町から少し離れた場所にある、既に閉鎖された植物園。すぐに被害が出ることはないのだが、放置することもできない。
 そこで猟兵達には邪神とその眷属におかえりいただくよう頑張ってほしい……ということらしい。

「あと、そう、みんなはらぺこさんなのよ」

 空腹、そう、鳥型眷属も呼び出された邪神も皆一様に腹を空かせており、食べ物に目がない。
 戦闘するにしても何かしら食事を与えることに成功すれば、戦闘で有利になるかもしれない。

「そんな、ところ?それじゃ、ええと、ゆーでぃーしーあーす?までつれてってあげるね」

 ぽわり、身体が薄緑の燐光に包まれればメドラの周囲がゆらり揺らいで世界を繋ぐ海を呼ぶ。

「あ、そうそう。全部終わったらね、近くの町まで来てちょうだい。ねこさんがね、みんなを待ってるわ」

 おたのしみにね。と聖女の微笑みを向けた。


日照
 ごきげんよう。日照です。
 四作目は心情優先気味ほのぼのせつない系を目指していきます。基本的にゆるいです。

●シナリオの流れ
 一章ではセキセイさまの群れと戯れていただきます。個体ごとに好きな食べ物と嫌いな食べ物があるようです。
 二章では緑の王と謁見していただきます。今回、王は「穏やかな自然」としての側面を強く体現しているため、気持ちのんびりやさんとなっております。
 とにかくはらぺこです。ごはんを与えるとかなり隙を生むことになります。
 三章では猫カフェに行けます。もふりたりないのならお越しください。くらげはこの店でねこまみれになりながら皆様を待ってます。

●特殊事項
 今回、戦闘の発生する章におきまして、特殊ルール『ごはんぽいんと』がございます。
 相手に与えたごはんにより、隙が生まれたりなついたり遊んだりすることができます。逆に嫌われることもあります。
 戦闘で相手へ確実に接近したい場合、より自分に有利な状況に持ち込みたい場合は好みそうなごはんを持っていくといいでしょう。
 ちなみに持ってかないから不利とかはありません。

 また、おひとりさま参加の方でも他の方と2~3人をまとめて描写する事もございます。
 おひとりさま希望の場合は文字数削減も兼ねて†を最初に記入を。†孤独に闇と戦う戦士†となっていただきます。

●あわせプレイングについて
 ご検討の場合は迷子防止のため、お手数ではございますが【グループ名】か(お相手様のID)を明記くださいますようお願い申し上げます。

 では、良き猟兵ライフを。
 皆様のプレイング、お待ちしております!
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第1章 集団戦 『セキセイさま』

POW   :    ガブリジャス
【嘴で噛み付くこと】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    あわだまおいしい
戦闘中に食べた【あわだま】の量と質に応じて【全身の羽毛】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    セキセイまみれ
【沢山のセキセイインコ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●冬の大地に、はなざかり
 壊れた門をくぐり、中へ。
 UDCアースへと移動してきた猟兵達は、指定された植物園に足を踏み込んだ。既に随分と雑草の増した園内は静かで、人の気配など己達以外にはない。ゆっくりと、敵が潜むはずの園内を進む。
 しかし、いくら探してみても全く現れない。どういうことだ、話が違うじゃないか。そんな疑問の過ったころ。

――どろり。

 園内を流れる水路の一つがひどく澱んでいることに気付く。腐臭にも似た酸っぱさが鼻を衝くが、同時にひとりが気付く。これは、オブリビオンのいる場所まで続いているのでは?
 口と鼻を押さえ、進んでいった先。ガラス張りの巨大な建物が見えた。近付けば聞こえる、小鳥のさえずり。間違いない、ここだ。
 重たい扉を押し開ければ、そこは緑の宝庫。どれともわからぬ花の芳しさがあの異臭を中和してくれているようで、進んでいくにも戦うにも困らないようだった。
 ここから先は別行動、猟兵達はそれぞれに得物を握り締め、敵の姿を探し始めた。
寧宮・澪
もふもふ、ときいてー……。
腹ぺこは、辛い、ですよねー……。
ご飯はいっぱい、持ってきますよー……。

とりさん……セキセイさん……おー……かわいい。
じゃーん……雑穀ごはん、炊く前の、やつー……と、炊いた、やつー……。
あわとか、ひえとかー……豆、とかー……麦に、米ー……。
おいしー、です、よねー……。
ささ、どうぞー……食べてー……。
たくさん、あります、よー……。

私も、食べましょー……。
うん、生、はー……懐かしー……味ー。
炊いた、のはー……おいしい、ですねー……。

お腹いっぱい、でしょかー……。
そしたら、綿津見にー……帰りま、しょうねー……【霞草の舞風】ー……。
おやすみ、なさいー……。

アドリブ、連携歓迎ー。



●ほかほかごはんとお昼寝
 ふよんふよんと浮いたまま、寧宮・澪(澪標・f04690)敵が来るのを待っていた……のだが、花の香りにガラス張りの天井から差し込む穏やかな陽光。なんとも、お昼寝日和。

「はー……とってもー……ねむたくなりますねー……」

 既に言葉がぽやっぽやになってしまっているが、膝の上には今回の敵専用の獲物が鎮座している。その名も――雑穀米。そして雑穀ごはん(炊き立て一時間後)の二種。そう、お米である。粟に稗に麦に豆……非常に健康的なそれらをわざわざ炊く前と炊いた後に分けて持ってきたあたり、見た目のぽやぽや具合に反して用意周到。
 さあ、澪が眠るが早いか、敵がやって来るが早いか。すでに半分目蓋が落ちかけの澪だが本当に戦う事は出来るのか。と思ったその時だ。

『ちちち!』
「あ、とりさん……」

 そう、とりさんもといセキセイさまご降臨である。おーかわいい。
まるまるもこもこのおっきいセキセイインコそのものなオブリビオンは澪の膝の上、テーブルクロスのように広げたブランケットにころころと留まると、じっと澪の目を見た。あまりにもまん丸、あまりにもキューティクル。吸い込まれそうな黒いお目目は澪とほんのりお揃いだ。
そして肝心のごはんだが、やはりどんなに存在が変質しようと鳥は鳥。お米の誘惑にはかなわない。鋭さの欠片も見当たらないくちばしでついばみついばみ。

『ちち!ゴハン!ゴハン!』
「しゃべれるの、ですか……」
『ちちちち!ゴハン!ボクゴハン!ウマウマ!!』

ちょっぴりやかましいものの、満足そうな顔でついばむセキセイさま。するとどうだろう、おいしいおいしいと食べるその声を聴いてか、他のセキセイさまが団体様でご案内されて来たではないか!

『ちちち!ゴハン!』
『ヒャッハァー!メシダァ!アリッタケクワセロォ!!』
『バァサンメシハマダカノォ』
「んー……おばあさんではないです、ねー……」

 でもごはんはありますよー、と炊き立てごはんも差し出せば、セキセイさま大フィーバー。おひざの上にリアル羽毛布団が完成してしまい、澪もちょっぴりおねむモードに突入しかけだ。
 眠気覚ましには何がいいか、悩む澪の手元にはお弁当箱。そう、セキセイさまが食べる分とは別に自分用もちゃっかり用意していたのだ。可愛いお箸もセットである。これが眠気覚ましになるかと言えば、別段そうではないのだが、食べないのは勿体ない。

「では私も、ちょっぴりいただきましょー……」

 お箸を取り出し、手を合わせて、いただきます。
 少し時間は経ったものの雑穀ごはんはまだまだ温かく、様々な食感が一度に口内で踊り出すこの状況、まさに穀物と豆のカーニバル。一方生のままではというと、硬さはあるものの、こりこりぽりぽりと食べていればどこか懐かしい感覚。お腹が空いて、でもすぐ食べられるものは何もなくて、こっそりと米袋から一握り頂戴してそのままおやつ代わりに食べるあの感覚をもそもそ思い出す。

「ん、どっちもおいしい、ですねー……」
『ウマウマ!』
『バァサン、ユウハンマダカノォ』
「今食べてますよー……」

 平和で平穏なおひるごはん、ややうるさいもののごはんを前に完全無力化状態のセキセイさま。もうただのでかいセキセイインコと化していた。
 そうして完食。満腹になり満足したのか、セキセイさまたちはそのまま膝上でころころと眠り始める。その様子を薄目になりながらも見つめた澪は、ふわり。やさしく謳う絡繰の匣をカスミソウへと変えて鳥たちへと舞わせた。小さな花がふわふわとセキセイさまたちを埋めていけば、痛みひとつなく穏やかなまま骸の海へと還されていく。

「お腹いっぱいに、なったでしょかー……なら、綿津見にー……帰りま、しょうねー……」

 子守唄のような穏やかな声色が、優しく終の眠りを包んでいく。
 膝の上から重みがなくなる頃、澪は食後の居眠りタイムへとゆったり落ちていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイーネ・フェアドラク
空腹なとりさんとしかさん、ですか
……参ったな、斃すべき敵だというのに、これは

ところで狐である故ですかね、私はあまり、動物に好かれない性質なのですが
邪神の眷属であれば平気でしょうかねえ
鳥の好む餌はさほど詳しくないので、適当に向かう途中のコンビニで果物でも仕入れます
ああ、リンゴが安い
少し日が経っているからか…
まあ、問題ないでしょう、恐らく

うーん、暖かな日が疲れた体に沁みますね
そろそろ休暇が必要だと思うんですが、これが中々難しい

多少鳥さんと戯れ、社畜の疲労が癒されたところで
頃合いをみて触手でぺちんと
…なんでしょうね、この罪悪感

……
今夜は鶏肉でも食べにいこうか
いえ、何でもないです
狐ゆえですよ、狐ゆえ



●りんごととりにく
「……空腹なとりさんとしかさん、ですか」

 澪とは別エリアへと踏み込んだルイーネ・フェアドラク(糺の獣・f01038)はというと、笑みへわずかに困惑を混ぜながら林檎一つを片手に悠々と小径を進む。
 この周辺はどうやら常緑植物の集まる一角のようだ。ルイーネの進む道の両側には12月に大活躍したモミの木や、まだ花咲かぬヤマモモの木などが並んで植えられており、枝葉を小路の頭上にまで伸ばしている。赤錆色の髪と耳、はためく白衣が緑に映えた。
 さて、自然の中でも非常に絵になる男にも一つの懸念がある。
 食うものと食われるもの、自然界において必ずや分かたれる哀しき存在。鳥からすれば捕食者である狐の自分に、果たして奴らは寄って来てはくれるのか。コンビニで買ってきた安売り林檎の行く末も気になるところだ。
 と、見上げた視線の先に大きな塊が見えた。それは一本の樹の影、半身はみ出してこちらを覗くまんまるブラック。足を止めてよくよく見てみれば、いた。とても警戒はしているが間違いなくセキセイさまだ。
 やはり邪神の眷属とはいえど本能的に危険と察しているのか、じり、じり、と木の影を出たり入ったり。一歩踏み込めば一気に隠れ、林檎を差し出してみればそそそそそ、と出てくる。ちょっと面白い。
 とはいえ、近寄り過ぎれば逃げられるかもしれない。ルイーネが取った戦法は程よい距離で目を合わせず、何もしない事。
 道を外れ、ひとつ隣の木陰へと入り座り込むと林檎を傍らへ。此方へと向けられる視線を気にしないふりして天を仰げば、透き通る冬の青空と、やわらかな太陽。凝り固まった肩をぐーっと伸ばしてみると、日頃の疲れがじわりと染み出してきた。

(そろそろ休暇が必要だと思うんだがなぁ……)

 この状況で思い浮かべたのは仕事の山。UDC機関の研究員に有休消化の四文字はないに等しい。もう少しおやすみいただきたい心はきっと、彼の同僚にもあるのだろう。しかしそんな彼らもまた社畜。自分の休暇も消化できないというのに他人にとやかく言う資格はない。もっとクリーンな職場になってほしいところだが、その願いは邪神が呼び出されるたびに塵と消えてしまう。
 と、現実のあまりの虚しさに黄昏かけていた彼の視界の端にもこもこの刺客。見上げてみれば先程までいたはずの鳥の姿はなく、視線を下ろせば――林檎を狙うまんまるの姿。どうやら敵(林檎)の姿をロックオンしたようで、侍が間合いを計るがごとくにじり寄っている。その目に、最早ルイーネの姿は映っていない。

 見守るルイーネ。迫るセキセイさま。そろそろ食べてもらわねば危険な林檎。

――どこからともなく吹いた風が葉擦れを呼べば、一瞬。
 セキセイさまの丸っこいくちばしが、林檎をガブリシャス!!思ってたより美味!!

『ウマーイ』
「えっ、喋った……」

 これには耳もピンと立つお狐様、眼鏡越しにじぃっと見つめるも、はらぺこセキセイさまは林檎に夢中。すこここここここと林檎を突き回しては美味しくいただいている。あまりに此方の事を気にしないものだから、そっと、気紛れに伸ばした手を敵を食い荒らす鳥の頭へ置いてみた。
 ふわ、と羽毛の柔らかさが掌を撫でる。鳥は全く気にしていない。そのままやわやわと頭の形をなぞってみるも、セキセイさま完全に林檎の虜となっている。ある種の奇跡、林檎を食べ切るまでの時間ではあるが、狐と鳥の間に穏やかな一時が流れていった。

 芯だけが残った林檎の転がるその横で、元より丸かった身体をよりまん丸くさせたセキセイさま。撫でまわし続けていたルイーネも、日頃の疲れが幾分か、少なくとも精神的には拭えただろう。頃合いか、と刻印を巡る己の血液を対価に、ぞぷんと呼び出すは醜悪な触手。ころころ転がる小鳥へとゆっくりと這い寄って……ぺちん。

『ぴゃっ』

 ソフトにタッチさせたつもりだったが、満腹セキセイさまには大ダメージ。悲しいかな、たった一撃で骸の海へ強制帰還となってしまった。これにはルイーネのもっふり尻尾もしょんもり。

「……なんでしょうね、この罪悪感」

 しかしまるまる肥えた小鳥を前にしていたせいか、ほんの少しお腹の空いたルイーネ。

「……今夜は鶏肉でも食べにいこうか」

 心の中に留めておくはずの呟きは、木々に吸い込まれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花邨・八千代
おぉ、鳥だ!まるっこいなー、なんだコレ!
ポン菓子食うか?食うだろ?
こういう系統の菓子の一度食べ始めると止まらなくなる現象ってなんなんだろうな!
まぁいいや、食おうぜ食おうぜ。

◆対セキセイ
大量に買ってきたポン菓子パーンしてセキセイさまと一緒に食うぞ。
ついでに空躁で飛びながら一緒に遊ぶぜ!
ほーれポン菓子を「なぎ払い」だ!俺についてこれるかな?
駄菓子って良いよなー、チープで素朴な味わいが永遠を約束してくれる。
ほれ喰えもっと喰え、太れ。
……うん、良い肉付きになりそうだな!いいぞいいぞ!
いっぱい喰って動いて肉にしろよー。
小鳥は骨も細いから良いよなぁ。

ところでお前らどこまでが羽毛でどこまでが身?



●ぽんがしトラップ
 また別のエリア。生い茂る木々の合間には人工的に作られた川。先の異臭が放つものとは別に作られたものらしく、水は清らに澄みきっている。どこからか迷い込んだか或いは元から放されていたか、小魚たちがゆったりと群れていた。
 そんな穏やかな川辺をイメージしたのであろう場所に、花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)は立っていた。得物を手に、呼吸を止め、神経を研ぎ澄まして。
 既に会敵済み、眼前にはざっと5羽ほどのセキセイさまがじっと八千代の様子をうかがっている。睨み合う両者、凍る空気。先に動いたのは――八千代だった。

「そぉーれい!!ほーらポン菓子だぞーポン菓子!!!」
『ウオオオオオオオ!!ポンガシィィィィィィ!!!』
『ワーイ!アマイヤツダー!!ヤッター!!』
「あっははははははは!!食え食えー!!」

 だっぱーと盛大にばら撒いたのは、ポン菓子。そう、ポン菓子だ。今回ご用意したのは米のポン菓子。なんだかニンジンっぽい袋に詰まってたり、公園に屋台用意してるおっさんにお米を持っていったらたくさん作ってもらえるあの駄菓子だ。知らない?世代の事は気にするな。平成もじき終わる。

「駄菓子って良いよなー、チープで素朴な味わいが永遠を約束してくれる」
『ワカルー』
『ウマッ、ポンガシウマッ』
「こういう系統の菓子の一度食べ始めると止まらなくなる現象ってなんなんだろうな!」
『シラナーイ』
『ヤメラレナイ、トマラナイ!!ウマイ!!!』
「ま、美味けりゃいっかー!!」
『イイナー!!』
『イイヨネー!!!』

 既に意気投合し始めているあたり、実はビーストテイマーの才能があるのではなかろうかという八千代嬢。飛び上がるセキセイさまに合わせて空躁で跳び上がり連続ジャンプし、共にポン菓子をご堪能。さくさくと一粒ずつを味わってみたり、掌を皿代わりにざらりと載せて一気に口の中へ流し込んでみたり。
 楽しみ方はそれぞれだが、どうやらセキセイさまたちは八千代にばら撒いてもらうのがお気に入り。『キャー!ナゲテナゲテー!』とぴょんこらする姿はこいつが世界の敵なのかと疑いたくなるレベルである。敵です。そう敵なんです。

「ほれ喰えもっと喰え、太れー」
『ヨッ、フトッパラー!』
「……うん、良い肉付きになりそうだな!いいぞいいぞ!」
『フゥゥゥゥゥ!!!タンスイカブツサイコー!!!』
「いっぱい喰って動いて肉にしろよー」

 時に、八千代嬢の言動が少しずつ怪しいものへと変わってきているのはお気付きだろうか。その餌の投げっぷりはまるでフォアグラを育てるが如く。たらふく食わせ、とにかく食わせ、更に追いポン菓子を食らわせる。時々自分も食らう事により一方的な行為ではないことを示し、且つともに飛ぶことで友好的であることを見せつければ順調に丸みを帯びていくセキセイさまたち。八千代はお菓子の家の魔女のように優しく見守っている。
 そして丸っこい鳥がぷくぷくさらに丸くなれば、満足げに見つめた八千代は鳥たちに笑顔で質問した。

「ところでお前らさー」
『ナニナニー?』
『ドッタノヤッチャーン』
「聞きたいことがあるんだけどさー」
『イイヨイイヨー!』
『ドンドンキイチャッテー!』
「どこまでが羽毛でどこまでが身?」

 その笑みは、食物連鎖的に彼らより上位の色をしていた。
凍り付くセキセイさまズ。わきわきと手を動かして迫る八千代。逃げ出そうとするもポン菓子の食べ過ぎでうまく飛べないセキセイさまズ。迫る八千代。逃げられないセキセイさまズ。

『ぴ、ぴぃぃぃぃぃぃぃ!!!!』

 ガラスの牢獄に、小鳥たちの悲鳴がこだました。
 その後、必死にふるもっふモードもといあわだま強化モードに入ってみたものの、八千代は圧倒的般若の形相で毟っては投げ毟っては投げ。千手観音も驚きの作業スピードで一匹残らず葬り去った。

「小鳥は骨も細いから良いよなぁ」

 ええ、葬り去りました。何処へとは言いませんが。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルフトゥ・カメリア
……なんか最近、ちらほらこういう感じの気が抜ける依頼見んなぁ……。流行ってんの?

何、テメェら腹減ってんのかよ。……あー……群れんなよじ登んな羽引っ張んなみつあみ咥えんな。
なんか食えるもん持って来いっつーから果物とパンくらいは持って来たけどよ。
……あ?なんで服引っ張っ、……あー……これも食うのテメェら雑食かおい。
服のポケットから、飴玉やクッキーがばらばらと。

大人しいのを良いことに、餌を与えながら一羽捕獲してもふってみる。
動物は嫌いじゃない。
普段は戦ってばかりだが、たまにはこういうのも悪くない。

最後は丁重に燃やしてさよならしよう。まあほら、オブリビオンだしな。やっぱり。



●みつあみおいしい
「……あー……」

 膝の上と肩を占拠するもふもふ生物。セキセイさまと呼ばれるオブリビオンは、青年の薄藤色の髪をはむはむしながら眠っていた。
 隙を見てそっと嘴から三つ編みを引き剥がしたルフトゥ・カメリア(Cry for the moon.・f12649)は自身の置かれた状況を整理する。どうして、こうなった。

 他のメンバーと別れて歩くことどれほどか。敵の情報を思い出しながら周囲を警戒していたルフトゥは、昨今増え始めたゆるオブリビオン依頼についてぼやーっと考えた。どんな世界にも必ず一匹はこの手のもこかわ系動物オブリビオンがいる気がしてくる、なんだ、流行なのか。ボスリビオン達も配下に癒しを求め始めているのか。
 などと思考を巡らせていたわけなのだが、ふと立ち止まる。周囲から複数の気配を感じる。思っていたよりも鋭い気配、ゆるいのは見た目だけでやはり邪神の眷属らしく悍ましい敵であったか。と、ダガー状に変化させた流動金属生物を身構え……

『ヒトダアアアアアアアア!!!』
『ヒャッハアノリコメー!!!』
『イエーイ!ニイチャンゲンキシテルゥ!!?』

 気の抜ける声と台詞に武器を落す。落っこちた先で流動金属生物が銀の身体に星の煌きを零した。と同時に、迫り来るまんまる生物。戦闘経験は相応にあるはずのルフトゥが容易に背後を取られる。このままでは、まずい!

「ってこらこらこらこら群れんなよじ登んな羽引っ張んな!!!あーみつあみ咥えんなよ!!!」

 意外にも、セキセイさまの目的はこのお兄さんと遊ぶ事だった模様。えいこらよっこいと背中を登って来たり、三つ編みを食まれたりと人間アスレチック状態。遊具もびっくりの人気具合だ。意外と重かったのかふらふらと道の端まで寄って座り込めば、セキセイさまたちも肩やら頭やらに落ち着いてほくほくとご満悦。

『ネエネエオニイサーン、ゴハンモッテルゥ?』
「あー……果物とパンくらいは持って来たけど」
『アタシタチィ、オナカヘッテルノォ。チョウダイチョウダーイ』
「……はあ」

 なんだこのインコども、変な口調。てかなんでこういうのが寄って来るんだよ。
 溜息だって漏れ出すが、動物は嫌いではない心優しき男ルフトゥ。持ってきたパンをちぎって目の前に放れば、鳥たちは大喜びでパン屑に飛びつく。ついでに用意した蜜柑を剥いて一房一房丁寧にむしっておくと、これにもセキセイさまたちはテンション爆上げ。やや奇声染みた声を上げてみかんを突っつき回した。
 なんだかこのテンションに疲れてしまって項垂れるルフトゥ。が、そんな彼によじ登る一羽の影。視線を少しだけ上げると、視界の半分を占めるまるもこ生命体。

「……なんだよ」
『ニイチャン、ニイチャン。アマイノホシイ』
「はぁ?甘いのって……」

 ちょうだい、と服をくいくい嘴で咥えて引っ張って来る一羽。何かあったかとポケットの中を漁ると、出てくる出てくるあまいもの。砕けてしまったクッキーをさらに砕いて掌に乗せ、セキセイさまの嘴へ近づけてみると……つんつく突っつく。

「……うまい?」
『アマーイ、オイシーイ』
「……こんなんも食うんだな」
『タベルー。オイシイノハナンデモタベルー』
「……そうかぁ」

 空いていた片手で、掌のクッキーに夢中な一羽をもふっと撫でてみる。『クスグッターイ』とは言ったがそれ以上の抵抗はなく、そのままふわふわ。冬だからなのか元々なのか、ふっくらと柔らかい羽毛は手触りもよく、あたたかい。

(普段は戦ってばかりだが、たまにはこういうのも悪くないか)

 全部の食糧がなくなるまで、あと少し。陽光差し込む温室でルフトゥは変な小鳥たちと戯れ、戦いに明け暮れる日々を一時忘却の彼方へと押し込めた。
……もちろん、後始末は忘れずに。

「まあほら、オブリビオンだしな。やっぱり」

 食べ終わってぐっすり眠った小鳥のまるまるとした体を、ネモフィラの鮮やかな青が焼いていった。熱を感じたのだろうか、炎に包まれて尚、鳥たちはあどけない寝顔を浮かべたまま消えていく。
 きっと夢見は極上のまま、どこか美しい森の中で。さようなら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユア・アラマート
これは……うん。確かにもこもこだ
オブリビオンではあるが、見た目は一応セキセイインコ、っぽい何かだし。通常のインコが好みそうなものを持っていけば喜ばれるかな?

とりあえず、ここに来る前に購入してきたナッツの詰め合わせをあげてみるよ。ちゃんと無塩だぞ
空腹は辛いものだからな。せめて最期は美味しいものを、お腹いっぱい食べてほしいから。できれば私が持ってきた食料を好んでくれる子がいると嬉しい

満腹になったようなら、一匹一匹を艶災で焼き払う
大人しい子は撫でて、抱きしめて。暴れん坊は攻撃をいなしながら
お前達が見た再びの現世に、美味しかったという記憶が残ればいい
その満たされた気持ちのまま、もう目覚めないことを祈る



●ナッツのみりょく
 所変わって。ルイーネのいた場所からそう遠くはない常緑樹の小路。
 ユア・アラマート(セルフケージ・f00261)は絶賛通せんぼを食らっていた。
 目の前にいるのはセキセイさま、それも一羽だの二羽だのそんなレベルではない。その数、まさかの十五。目の前でピラミッドの如くそびえるセキセイさま(一番上のやつ)はユアをやや見下ろし胸毛をもっふりと張る。

『ククク……ココヲトオリタクバダスモノダシナァ』
「あー……」

 たしかに、もふもふだ。
 眼前のそれらは間違いなくオブリビオン、失われたはずの過去の化身であり世界にとって敵たる存在なのだが、正直驚異の欠片も感じない。セキセイインコをぬいぐるみ化したような、抱き心地の良さそうなフォルム。睨み付けてきているであろう目玉など、まん丸で真っ黒で大きくて、実に愛くるしい。
 そんな敵だからだろうか、ユアの持ち込んだものは実際のインコが食べられるような……

「ナッツの詰め合わせだよ。ちゃんと無塩のやつ」
『ナッツー!』
『マジカヨナッツトカフトッパラー!』
『オ、オスナヨォ』
『キクバリジョーズ!オネエサンスキー!』
「あ、あっははは……ありがと……」

 ぐらんぐらんのセキセイさまピラミッド。既に全員かなりの前のめりでユアの持つナッツの入れ物を見つめている。このまま喧嘩させてもいけないだろうと少し後ろに下がってセキセイさまたちの目の前に、なるべく広い範囲にいろんな種類が散るようにナッツを撒いた。

『ヤッター!!ナッツダイスキー!!!』
『ピーナッツアル?ピーナッツ!』
『マーカダーミアー!』
『カキノタネナイデスカネーサン』
「それはないかなぁ」

 あっという間に崩れ去るピラミッド、わらわらっとナッツに群がるセキセイさま達はオイシイウマイサイコウと言葉を連ねてむっしゃり食べる。まるもっふいお尻とちっちゃな尾羽がぴっこぴこ。本当なら、焼き払うためにそうしようと思っていたところだったが。ユアはしゃがみ込むとそっと一羽を膝の上、きゅっと抱きしめてみる。
 ふわほわ……と胸元に伝わる、鳥の密集した羽毛の柔らかさに、ユアも耳をへたーんと伏せて頬を寄せた。

「あー、これはふかふか……」
『オネエサンモフカフカー、イイカオリー』
「そうかい?っふふ、お気に召したようで何よりだよ」

 ご飯も食べて上機嫌なのか、おひざのセキセイさまはまったりのんびり目を細めて足を丸める。完全に緩み切っているが、彼女が狐であることに気付いていないのだろうか。それとも「いい香りのおねえさん」という認識の強さが捕食者の香りを消してしまっているのだろうか。お腹を撫でるユアの指先に『ホア~~~』と情けない声を上げている。

「……お腹いっぱいかな?」
『ンー、オナカモホカニモイッパーイ……』
「それなら、良かった」

 ユアの、橄欖石の眼が柔らかく細められると、ふわり。艶やかに軽やかに焼いていく翅のような炎の群れが太腿の上で眠り始めた鳥を覆い隠す。未明の空に取り残された夜のような紫色が、温かく鳥だけを燃やして消していく。

――その満たされた気持ちのまま、もう目覚めないことを祈るよ。

 そうして一羽、また一羽とその膝元へと誘われれば、しあわせな記憶を最後に刻んだ鳥たちは陽炎の中に呑まれていく。
 紫の羽に似た炎が、還り逝く彼らの羽と共に緑の道へと散っていった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジズ・レオリー
空腹。
成る程、ドールの身であるジズにはあまり馴染みのない感覚だ
どのような心地なのかは想像しかねるが
眷属たちの欲求を満たし
戦闘に活かせるのであれば試みよう

試行。先日のセツブンというイベントの折
ジズは福豆とやらを入手している
鳥型の眷属の好みに合致すればいいが
…そうあれかしと[祈って]おこう

ジズは脆い故に突かれては拙い
距離を取りつつ豆を撒き[範囲攻撃][時間稼ぎ]
好む個体がいれば[学習]し豆を追加
隙を見て【不待ノ礫】…否。豆を啄ばむ姿に敵意は向けられん
【不避ノ雨】でなるべく多数を仕留めていこう
好まぬ個体には取り囲まれぬよう[見切り]をつけて退避

万一懐かれたら……そうだな
1度くらい、撫でてみたいものだ



●せつぶんのおきみやげ
 別所別刻。八千代の大暴れがあった川の近く、ジズ・レオリー(加護有れかしと事有れかしと・f13355)は小さな橋に座って流れていく水を眺めていた。
 くらげの少女曰く、今回の敵は皆空腹に支配されている。人形たる彼にとってなじみのない感覚ではあるが、集まったほかの猟兵達が敵であるにもかかわらず餌の用意をしている辺りかなりの苦痛であると判断した。
 の、だが。此処までの道のり、一羽も見つからない。寄ってくると聞いていたのだがもしや既にほかの面々に倒されてしまっただろうか。などと心配事をしつつ手元を見る。
 想像しがたいなりに、ジズも用意はしてきたのだ。先日参加した節分イベントで偶然にも手に入れた福豆。好みと合致してくれれば……と小さく祈りを込めたときだ。
 いつの間にいただろうか、隣から覗き込むつぶらな黒いまなざしは、まごうことなき標的(ターゲット)。他のセキセイさまと比べて気持ち小柄なことは、比較対象を確認していないジズにはわからない。ぷるぷる震える黄色と枝豆色のハーフ&ハーフ。視線が合ったまま、お互いが沈黙してしまう。
 先に口を開いたのはセキセイさまだ。

『ア、アノ』
「なんだ」
『ゴ、ゴハン……』

 ちびセキセイさまがぷるぷるしたまま、両方の翼を前へ。ジズの持つ福豆が欲しいのだろう、ちょうだいと見つめてくる小鳥にジズは半瞬考える。否、祈りを込めなおす。そうあれかし、と。
 この眷属の欲求を満たせるのなら、と求められるがままに福豆を乗せた手をセキセイさまへと差し出せば、ぴゃぁぁぁと輝くお目目。気弱にちょん、と豆を突いては一つずつ、味わって食べていく。
 思っていたよりも掌へついばみダメージも入らず、もしやいけるのでは?と感じたジズは試しに空いた手を伸ばす。自分の掌とそう変わらない頭蓋の大きさ、それを守るように包む肉と黄色い羽毛。すすすと動かしてみれば食べていた小鳥が不思議そうにジズの方を見た。

『ナァニ?』
「う、うむ……1度くらい、撫でてみたいとおもって、な」
『イイヨォ』

 言うと、小鳥は自らうりうりと頭をジズの掌に擦り付けてくる。お豆のお礼くらいの気軽で頭を預けてくれているのだろう。何もせずとも撫でつけてくるふわふわの感触に思考が停止した。この内からせり上がる計算外が、心地よいと感じるのはなぜか。
 理解の及ばぬまま小鳥の好きなようにさせていると、羽ばたきの音が迫って来た。敵か、と条件反射で敵意を撒きそうになるも、集まって来たそれらがどれもこれも手元にいることりと同じくらいのサイズのセキセイさまと察すれば瞬時に消す。手元で怯えている小さな鳥がぷるぷるを増していたが、これも宥めて。やってきた面々を見据える。
 迫って来る乱入鳥たちはというと、どうやらただお豆をたかりに来ただけの模様。

『ゴハンクレル?』
『クレル、クレル?』
『チョーダイチョーダイチョーダイ!』

 予想以上の集まり具合に人形少年は一度目を閉じる。僅かな時間で脳内情報を整理すると、学習結果より最も効率よく敵を撃破する手順を算出――完了。

「普段は五つの属性より最適解を見出すが、今回は違う」

 すっと膝立ちになれば懐から袋を取り出す。……追い豆だ。

「豆。これが貴殿らへの最適解だろう?」
『オマメ!』
『オマメクレル?クレル?』
「ああ、たくさんある。たくさん食べるといい」
『ヤッタアアアアアアアアアアアア!!!』

 跳び上がって喜ぶ小鳥たちへ、ジズは広範囲にわたるばら撒き。お豆の雨にあいたたた、うまうまと啄み回すセキセイさま達は、ころころ転がりながらも撒かれた豆を完食した。その後、最初の一羽が言いふらしたこともあり、ジズは小鳥たちによるふるもっふ攻撃(寄って来るだけ)を食らい謎のエラーを感知したが、強制取消、もふもふへの反撃を続行した。
 ひとしきり遊びあって、しばらく。遊び疲れた小鳥たちへとジズは正しき不避ノ雨を降らす。浚うは風、降り頻る鏃が小鳥たちの胸へすとんと落ちれば、そよ風が皆を還るべき場所まで運んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

火狸・さつま
コノf03130と参加

お腹、空いてんの?
愛らしさに負け
持っていた福豆取り出す
コレで、良い?
撒いて数え年分食べた、残り
勿体ないから、食べようと持っていたもの
食べやすいように軽く砕いて
どうぞ


ふと横見れば
………コノ…コノちゃん…?
其れ、あげちゃう、の…?
相方が差し出した物に目が釘付け
コノちゃんの、お手製……
美味しい事間違いなしの一品
思わずお腹が、鳴る
ん?俺にも、くれるん?
ぱぁっと目輝かせ受け取る



お腹、いっぱい?なった?
腹が減っては、と、言うからな
なんて…
じゃあ、コノちゃんの残りのをかけて…いざ、勝負?
もふもふ戯れる

満足したら、おかえり
戦闘するしか方法がなければ戦う
痛めつけたりはせず、苦しまないように


コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

腹ペコサンはいただけないよねぇ
だって空腹は悲しいもの
寂しくて寒くて、嫌な事しか考えられなくなっちゃうでしょう

紙袋にいっぱいの一口パンケーキ
コレでも『料理』がオシゴトだからネ、食べれる味のハズ
黄色は南瓜、緑は小松菜、他に人参、紫芋、苺……色毎にひとつずつ配ってく
慌てずドウゾ
と、隣で鳴る腹の虫に笑い半分、袋ごと差し出し
お腹一杯になれば、幸せな気持ちになれる?
仲良く分けっこしなさいな
オレは美味しく食べてる笑顔を見るのが好きなンだから

幸せになれたら、少しだけお裾分けして頂戴と
ふかふか羽毛をもふもふ

満足して帰ってもらえればいいンだけど
どうしてもなら、【虹渡】で送るわね



●おまめとぱんけーき
 場所は移り、椿園。種類豊富な椿の樹が道なりに並ぶこのエリアにやって来たのはコノハ・ライゼ(空々・f03130)と省エネモードの火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)だ。コノハがさつまを小脇に抱えてエリア入り。そう、抱えられている。
 さつまの容姿は最早ただのたぬき……否、きつね?である。無気力に抱えられた冬毛もこもこボディーが、コノハが歩みを進めるたびにわさっわさっと揺れ、省エネしすぎて投げ出されている脚もぷらんぷらんに揺れておられたが小さなお目目はちゃんと仕事をしている。索敵だ。

「たぬちゃん、どう?」

 コノハが問えば尻尾でお返事。ぺすんぺすんと二回振るのは見つからないの合図だ。元々園内が広いことも含め各エリアで撃破が進んでいることもあり、幾分か敵が見つけにくくなっている現状。目立つ大きさとはいえ見聞きした情報だけの鳥を探し出すのは困難となっていた。
そろそろ人に戻って二手に分かれた方が良いかとさつまが提案しようとした。が、その時だった。視界に映る鳥の姿に声に出すより早くぶぶぶぶぶぶぶと震える尻尾。さつま、敵もといセキセイさまを発見できた模様。しかしながら、

『ア、ニンゲンダー』
『ニンゲンー?』
『オイシソーナニオイスルー』

 日向ぼっこまったりモードのセキセイさま達は来訪者にのほほん視線を向けるだけで動かない。集まってほこほこ暖を取ったまま、視線だけをふたりへと向けている。非常にもふい空間がそこにある。
 と、思い立ったコノハ、そっとさつまをセキセイさまの傍に寝かせてみる。するとあっという間にセキセイさまが近寄り寄り添いのもふもふ毛玉団子が完成。もふもふは倍増だ。

「あったかそうだねぇ」
『アッタカー……』
『ヌクヌクー……』

 非常に微笑ましい光景、ぱしゃりと一枚写真に収めるコノハに反し、もふもふは心地よいもののたぬきつね殿はこたつ扱いにご不満の様子。いい加減狐姿も解除してこの敵と戯れ……倒さねばと思うも、このタイミングでコノハの最終兵器が火を噴いた。
「コレでも『料理』がオシゴトだからネ、食べられる味のハズ」
『コ、ココココレハー!』
『ジョ、ジョシリョクー!』

 紙袋一杯の、パンケーキ!
 食べやすいよう一口サイズに焼かれたそれらは彩り豊か、なんと色ごとに味が異なるという。南瓜の黄色に小松菜グリーン、人参オレンジの他にも紫芋に苺にエトセトラ。とりさんどころかもふもふに囲まれていた悪友まで尻尾をゆらゆら大喜び。

「さ、お好きな味をお食べ」
『ワーイ!ジャアニンジンチョウダーイ!』
『コマツナ!コマツナ!』
『イチゴー』

 分けっこしてあげれば、微睡んでいたとりさんもしゃっきり目を覚ます。はむはむちょんちょんとパンケーキを突っつき始めた。それを見つめるさつま、ややショックを受ける。そう、このパンケーキは鳥さんのために用意されたもの。鳥さんがおいしく食べてくれればいいと思って、コノハが用意したものだ。しかし。
――このちゃんのおてせい……ぜったいおいしいやつ……
 ぷるぷるの毛玉、へっとりするお耳に気付いてコノハがひょいとさつまを抱え、自分の隣にぽすん。すると、瞬く間。今までもふもふの具現化であったたぬきつねが身長190cmの色黒男性へと変化する。もとい元の姿に戻る。その腹がくるると鳴いた。

「コノ……コノちゃん……」
「はい、食べたそうな顔してたから」

 言って、コノハが袋ごと残りのパンケーキを渡す。まだ半分ほど残っているそれに、青の目が丸く輝く。いいの!?と視線が訴えつつも袋の中に手が伸びている辺り、余程食べたかったのだろう。さつまは返事も待たずに紫芋味をはむり。サツマイモとは少し異なる紫芋特有のほのかな甘味がやさしく口の中に広がる。あったかいミルクが欲しくなる。

「おいひ……もう、俺の豆いらないんじゃないか……」
「食感に差があるしいけるんじゃないかなぁ」
「んー、じゃあ」

 言って、預けていたものをコノハから受け取るさつま。その手にはお豆、そう福豆だ。やはり節分シーズンが過ぎるとお豆が余りまくるのか、今度はこっちの袋に手を突っ込んで福豆を一握り、少し砕いてからパンケーキを啄む鳥たちへとぱらぱらり。
 セキセイさま達、思わぬ追撃に啄む嘴が足りなくなる。やわらかほわほわとカリコリお豆の食感に嵌ってしまって交互に食べては『ウメー!』を繰り返す。

『オマメカリカリー!』
『パンケキフカフカー!』

 目を細めてがっつり食べる鳥達、尾を揺らしながらパンケーキを頬張るさつま。ひだまりのおやつタイムにコノハもまた満足そうに笑みを零す。やはり、美味しく食べてくれる顔は作り手最高の贅沢だ。
 時々『モットー』『モットヨコセパンケキー……』と群がるセキセイさまに、さつまがきしゃって対抗する場面もあったが、戦いは穏やかなじゃれ合いで終わり食料も無事完食。
 最後、満腹ほかほかのセキセイさま達を、ふたりは葬る。空へと掛ける虹色と、青い仔狐の焔が、ほわりと鳥達を連れていき、椿園の戦いは幕を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雷陣・通
トリだーーーーーー!!
インコだーーーーー!!
(スカイステッパーで周囲を飛び回って大はしゃぎ)

おい、トリ?
何食べる?
トリか?鶏肉か?
イタイイタイ、そんなに突っつくなよ、オッケーオッケー
ホラ、じゃあ俺の大好物「かつスティック!」(駄菓子屋で売ってる揚げ物のお菓子)
これなら、ウマイだろほら食べろよ
よーしよしよし、うまいかー?

……で、こいつら殴るんだっけ?
殴るなら……殴るけど……うん


ノア・コーウェン
おなかがすいている…とりさん…ですか…
なんだか可愛そうな気もしますが…倒さなければいけない…ん…ですよね…?

…ですが倒す前にご飯をあげてお腹いっぱいにしてあげることくらいは…してあげてもいいですよね…?
好きそうなものは…穀物と…青菜系もそうですかね…
デザートに果物も…
これだけ持っていけばお腹いっぱいになってくれますよね?

あっ、いかがですか…?お腹いっぱいになりましたか?
なったのなら良かったです!

さて…こちらもやるべきことをやらないといけないですよね…
【だまし討ち】のようになってしまって少し心苦しいですが…
油断してる隙にそっと【忍び足】で近づいて【暗殺】していきましょう

申し訳ありません…それでは



●やっぱこれだね、おべんとう
 ふらり、ふらり。弱弱しい足取りで奥へと進むのはノア・コーウェン(がんばるもふもふ尻尾・f02485)だ。フェレット特有の長いふんわり尻尾を揺らし、探すはセキセイさま……の、はずだが。

(なんだか可愛そうな気もしますが…倒さなければいけない…ん…ですよね…?)

 いつもは元気で心優しき少年、手を掛けることに少々の抵抗があるようで、表情は暗い。尻尾の先もややへなんとしている。思い悩む彼にほかの面々がどのようにセキセイさまを撃破したのかを見せてあげたいところだが、残念ながらここには彼一人しかいない。
――否、もうひとりいた。というよりも目の前を飛んでいった。

「トリだーーーーーー!!」
『ギャー!!ダ、ダレダー!!!』
「インコだーーーーー!!」
『ナンダコイツハヤイゾ!!ニンゲンナノニトブシ!!!』

 スカイステッパーを駆使してひとりでハイテンションにセキセイさまを包囲する雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)少年。セキセイさまもやや引き気味の瞬発力である。
 空飛ぶライトニングキッドを前に唖然のノア、小さく開いた口が塞がらぬまま見上げていれば、跳躍回数の限界が来た通が一度地面に降りて来て気付く。見覚えのある顔だ、と記憶をあれやこれや手繰って思い出す。

「あっれ、ノアじゃん!なんだー来てたのか!」
「え、ええ……その、インコさんを……た、たおしに……」

 倒す、という言葉にも未だ違和感がぬぐえないのだろう。言い淀みもごもごと視線を逸らすノアに、なんとなく気持ちを察した通があー、と同じく視線を逸らした。必死に話題を逸らそうと作戦概要を思い出してみれば、ひとつの重要事項を思い出す。

「でもあれだろ、こいつら腹減ってんだろ?」
「あ、そうなんですよね。その……僕も持ってきたのですが」

 と、荷物から取り出したのはお弁当箱。ぱかりと開くと何とも豪華なとりさんごはんセットがきっちり詰め込まれていた。穀物はもちろんだが青菜系もバランスよくデザートに果物まで。

「すっげーじゃん!俺かつスティックしか持ってきてねぇぞ!」
「かつスティック!?……は、食べるんでしょうか……」
「腹減ってたら食うって!ほら、餌やってみようぜ!」

 豪華弁当とかつスティック、二つを手に少年たちはセキセイさまを見る。既に追い回されて疲れ切っていたセキセイさま達、ぜーはーしながら道の真ん中にころころしている。完全に隙だらけだ。二人がすぐそばにしゃがみ込むと逃げ出すことはできないようで、仰向けをうつ伏せにするくらいの抵抗を見せるのみ。
 その口元へ、たべものを置いてみる。先程までの死にかけてた真っ黒お目目が途端にきらきらと輝いた。

『……ゴハン、モッテル?』
「え、ええ……持ってますよ。はい」
『ヒャッハー!!!ゴハーン!!!!』
『オナカペコペコー!!!』
「俺も持ってるぜー!かつスティック!!!」
『アブラッコイノハチョットー』
「そんなぁ!!」

 あっという間に群がられるノア弁当。やはりバリエーションの豊かさが吸引力の秘訣か。何処からやって来たのか追加のセキセイさままでもがどんどん弁当に群がっていく、
 一方通はというと、カロリーを気にする乙女のような断られ方にがっくりと手をついて落ち込む。美味しいじゃんかつ、大好物なのにかつ。そんなしょげ気味少年に近寄る一羽の影。
 ふっと顔を上げるとそこにはなんとなく他のセキセイさまより体の大きな個体。落ちたかつスティックを啄むと通の顔を見る。ちょっとダンディな気がする顔だ。

「……お前」
『オレハスキダゼ、カツ』
「お、お前ぇぇぇぇぇぇ!!」
『ぷぎゃっ』

 男前セキセイさまを力いっぱい抱き締めれば音の鳴るぬいぐるみのような鳴き声を出してむぎゅられる。辛うじて生きているが、セキセイさまに大ダメージが入ったことは言わずもがなである。
 密かに友情的な何かも感じながら食事が進み、ノア弁もデザートを残すのみとなる頃だ。現実を思い出した通はまるっこころころしている鳥たちを見つつノアにこそこそと耳打ちした。

「……でさ、その」
「はい」
「こいつら、殴らなきゃダメかな……」
「……ですね」

 互いの目に、何とも言えない感情が宿る。哀切か、憐憫か、ともかくこの年で味わうには早すぎる無情感溢れる現実を前に、二人はそっと拳と武器を握り――完食して眠ったタイミングで鳥たちを丁寧に空手&暗殺。
 悲しみを背負い、少年たちはまた一つ大人になっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

銀座・みよし
んまぁ!鳥さんにございますね!
…なんか結構見た目にそぐわぬ凶暴さを秘めているようでございますけども

ともあれ、食べ物を与えてみればよろしいのですね?
鳥なのでビスケットを砕いたやつでも良いのかしら
動物型な相手に対する【コミュ力】はそれなりでございますけど、食べてもらえるのかしら…?

いえ、相手方のお食事を心配してる場合でもございませんね!
鳥が相手ならばこちらも鳥です!
ユーベルコードを使用して巨大隼のホルスさんを呼んで攻撃にございますー!
視界を共有して防御力をあげて挑みましょう

さて
いかに巨大な隼1羽でも群れなす鳥相手は大変でございましょう
わたくしは彼の背にて弓で【援護射撃】をいたします

(アドリブ歓迎!



●砕けたビスケット
「あらあら、皆様食いしん坊でございますね」
『ダッテハラペコダッタシー』
『ちちちちちちち!オイシイ!オイシイ!!!』

 休憩所のベンチにちょこんと座った銀座・みよし(おやしきのみならいメイド・f00360)は目の前でころころつんつくビスケットを食べるセキセイさま達を見守っていた。近くに芳香の強い花が咲いているのか、休憩所には甘く鼻に残る香りに満ちている。この世の平和という概念がここに詰め込まれた。
 ローズピンクのかんばせが更に淡く色づけば、嘴を持つもの同士だからかセキセイさま達もちょっと照れ気味。

『ホドヨイアマサガイニシミマスナァ』
「そうでございますか?お口に合ったのならわたくしも嬉しゅうございます!」
『ンー、タベヤスククダイテアルノモイイデス』
「まぁ!そんなにお褒めになってもビスケットしか出てきませんことよ」
『イヤイヤァ、ソノビスケットガオイシインダヨォ』

 すっかりみよしの虜となっているとりさんたち、デレデレしながら啄んでいる。これもまたみよしのコミュ力が冴え渡った結果ではあるのだが、陥落というレベルではない。落ちすぎて陥没している。沼だ。完全に沼に落ちている。
 一方みよしはというと微笑ましく笑いながらも冷静、朗らかさの中に鋭い爪を隠していた。満腹、満足、満たされた瞬間には隙が生まれる。これは戦いだとわかっていた、だからこそ油断しない。たとえどんなにまるまるもこもこに肥えていくことりさんを前にしようと、出来るメイドは屈しない。

『ミヨシチャンダッケ?イイオヨメサンニナルネー』
『ワレワレミヨシチャンファンクラブニュウカイシマス』
『コレカラモガンバッテクダサイ、オウエンシテマス!!』

――屈しない!
 結構なやさしさとラブに包まれかけているが、お腹を満たしたセキセイさまがころんと転がり眠り始めるまでどうにか耐えきった。やりましたマダム、わたしは耐え抜きました。心の中でそっとこの場にいない主へ語り掛けたその後、みよしは片手を高く上げた。

「さて……ではホルスさん、おいでくださいませ!」

 セキセイさま達を万が一にも怖がらせないよう、遠方の樹上からこちらを見張らせていた鷹がみよしの傍らへ。そして巨大化すれば羽搏きだけでセキセイさま達を吹き飛ばす。その背にみよしを乗せれば抵抗ひとつできないまま満足そうに浮き上がるとりたちを体当たりで追撃した。
 何も知らぬまま骸の海へと還されるセキセイさまを見送れば、高く、区切られた空の中を上昇する。

(これでセキセイさま達は倒しきったのでしょうか……)

 共有した視覚をもって空から索敵する。あちらこちらでセキセイさまを撃破したのであろう猟兵達が、植物園の散歩を堪能している姿を見つめながら、隅々まで。太陽と月、そしてみよし自身の晴天色で見つめる限り、もうセキセイさまと交戦している猟兵はいなさそうだ。自分たちが最後だったのだろうか、と視線をあげる。
 そしてみよしは見つけた。――いや、見つけてしまったものはセキセイさまの姿ではなく。

「!……これは」

 ガラス張りの高い天井、接触ぎりぎりの高さにまで飛び上がり、ようやく把握した現実。話を聞く限りは穏やかなそれが「すぐに被害は出ないが放置できない」理由がそこにあった。
 鷹と少女の双眸が捉えた現実を総ての猟兵へと知らせねばならない。みよしはホルスさんを旋回させた。

「はやく、早く皆様へお伝えしなければ!」

 全てのセキセイさまを倒した今、皆が向かうべき場所。
 そこへ至る道を、彼女は伝えて飛んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『緑の王』

POW   :    暴食
【決して満たされぬ飢餓 】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【辺り一帯を黒く煮え滾る消化液の泥沼】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    巡り
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【消化液 】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    慈悲深く
【激しい咆哮 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は多々羅・赤銅です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●なれのはて
 眼前に広がる情景は、先程まで自分たちが歩いてきた場所と同じ空間にあるのかと目を疑うほどだった。否、どこかでそうではないかと感じてはいたが、目の当たりにするまで自覚することを止めていた、という方が正しいかもしれない。
 歩を進めるごとに増す異臭、外部に続く川にまで流れ込み、溢れるほどのそれ――黒く煮えたぎる液体はかの王の腹より染み出しており、王の周囲を無差別に食い荒らしている。草も木も元の形は奪い去られ、散らかされた残骸以外に最早何もない。
 ただ、此方を見下ろす王の眼だけが、濁りきりながらもこれ以上は穢されない唯一の緑だった。

 この植物園へと向かう前、街に残ったくらげの娘が言っていた。「しかさんは、あなたたちを攻撃してこないわ」と。
 違う、違った。この王は自分達を攻撃しないのではない。何もしていないけれどそうなってしまうのだ。嵐が全てを呑み込むように、津波が均しく押し流すように、ただそこに在るだけで命を脅かすだけの存在。過去より染み出した、自然律のなれのはて。それが、「この緑の王」だ。
 王は崩れた玉座より猟兵達のいる辺りを見下ろす。そのまなざしはひどく優しく、けれどこちらを見ていない。腹が減っている。だからと言って喚きも暴れもしない。脚はほとんどの機能を失い、立ち上がる事さえもままならない。それでも、だ。
 眼差しが言う。このまま朽ちてしまうのだろうか、と。
 臓腑から黒が溢れる。まだもう少し生きていたい、と。

 ゆえに、猟兵達よ。かの王の前に歩み出でよ。
 万物を受け入れ拒むそれへ、まことの安らぎを。
ユア・アラマート
なんだか、悲しい光景だ。育むものが、壊す世界…か
生が惜しいだろう。それは生き物として当然のことだ。けれど、お前はもう既に死んだものなんだよ
…りんごをどうぞ? 王様。これはまだ収穫したてで呼吸をしてる。生きている果実だ
命を食んで、命を呑み込んで、最後にそれはどこに行くんだろうな

少しでも満ち足りたなら、少し遊んでもらうよ
獣狩に武器なんて、それこそ短剣一本でいいだろう
懐かしいな、子供の頃に訓練で鹿を狩ったよ
もし、空腹が心にまで忍び寄っているのなら、少しくらいは傷ついてやる
全部はくれてやれないが、私を少しお前の中に溶かしてやろう
ほら、これで少しは寂しくないんじゃないか?
後は大人しく、首を狩らせておくれ



●花の褥
 悲しい光景だ。
 呼吸を忘れてしまうほど美しいのに、胸の奥を木枯らしが吹きつける。抉り抜かれた穴の奥へと突き抜けて悴むような冷たさと荘厳さ。

(育むものが、壊す世界……か)

 王の焦点定まらぬ眼差しを見つめ返して、ユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)は声に出さず脳裏で呟く。
 産み落とされていくことが自然というならば、壊れ朽ちていくこともまた同様。命の流転、それを体現しながらも王は孤独だった。愛おしむべきものが朽ちることを把握さえしていない表情は、ユアにどう映ったのだろうか。
 ただ、彼女はそこにあるものが何かを知っている。それを教えるためにここにいる。

――お前は、もう既に死んだものなんだよ。

 ユアはゆっくりと王の下へ歩む。王の胃液は万遍無く周囲を食い荒らしてはいるが、決して歩けないわけではない。高い踵で澱んだ大地を踏みつけて、王の前へと至れば視線を合わすようにしゃがみ込む。眼前にまで来ればそれが何かを認識する心が生まれたのだろう、王は橄欖石の眼へ視線を移した。

「ごきげんよう、王様。りんごをどうぞ?」

 差し出した果実は瑞々しく、王の眼の中で赤く燃え上がった。

「これはまだ収穫したてで呼吸をしてる。生きている果実だ」

 すん、と鼻を鳴らした王は一度ユアを見上げた。何を言うでもなく微笑みで返せば、王は肉の薄い唇を赤い果実へ寄せて、齧った。
 顎の力はまだあった。しゃくり、しゃくりと食む音が続いて、呑み込む。表情は変わらず、ただ延々。病床で粥を食む老人のようにゆっくりと、王は与えられた林檎を食らった。
 呑み込んだものは総て喉を通った後、胸の先から落ちていった。咀嚼された果実が漏れ落ちた消化液にべちゃんと叩きつけられ、跡形もなく溶けていく。収める腹がない以上、永劫その身は満たされない。それでも、唇は動く。皮も身も種も噛み砕き呑み込む。
 そうして、芯一つ残さず食い切れば、ぼんやりとまたユアを見上げた。もの言いたげな唇が薄く開いて、吐息だけを漏らす。
 じっと、ただじっと見つめ返していた。何をするでもなく、浅い呼吸だけが繰り返される。
 本当に何一つ抵抗する気配のない王の姿に、狩りの戯れをと考えていたユアの心が少しぶれる。幼い日の狩りとは違う、これは、もっと別のものだ。
 あえて例えるのなら獣の形を取っただけの、おだやかなもの。少女たちが手折り、踏み荒らすことさえも許す花畑にも似た寛容さと無垢さ。首筋を狙う刃に躊躇いが生まれる。
 ふいに、王は娘へと腕を伸ばす。触れた先、左胸より伸びる月下美人の描かれたユアの手に握られていたのは短剣一本。その鋭い切っ先へと指を当て、つうと撫でる。血潮に似た黒い液体が傷口から線を引き、滴った。
その手を包む。命などとうにどこかに置いていった、息吹なき冷たさがユアに伝わるとともに、甘い香りに惹かれるがまま、剣持つ手を淡く食む。刃の当たった頬にもまた一筋、傷が生まれる。ああ、まだ腹が減っているのだ。その心までも溶かされてしまっているのだと分かれば、ユアは柔らかに触れる唇から手を引き抜いた。

「――全部はくれてやれないが、私を少しお前の中に溶かしてやろう」

ほら、これで少しは寂しくないんじゃないか?
酸い香りの中で、女の甘さが一際薫り立つ。近寄り、触れて、熱を分け与えるように頬へ添えた両の手が、子猫を撫でるように輪郭をなぞる。香を移すその行動を、王はわからぬという顔で受け入れた。理解などできようはずがない。人の道理から切り離されたものにとって、その行為の意味はついぞ知ることはなかろう。

――ああ、でも。

 王が眠たげに目を細める。心地よさに微睡めば好きにせよと言わんばかりに腕を差し出すと、ユアはその肩口へと短剣を押し当てた。術式を展開すれば短剣であろうと妖刀の鋭さへ。後は軽く力を籠めるだけ。
 花薫る娘へ、王はその右腕を呉れてやった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花邨・八千代
あーぁ、こりゃひっでぇなァ。なんもかんも飲み込んでやがる。
どこまで食えば気が済むのやら…いや、それ以前の問題かね。
なぁ王様、さびしそうな王様よ。
もう終わりにしようや。

◆戦闘(POW)
攻撃してこねーなら好都合だな。
南天に血を吸わせて金棒に変化させるぜ、「怪力」でぶん回しつつ限界まで力を溜めこんでから【羅刹旋風】だ。
「第六感」でどこに攻撃ぶち込めば一撃で終わらせられるか探るぞ。
こっちの血肉を黒いのがいくら焼こうが構いやしねェよ、「捨て身の一撃」だ。
叩いてつぶして、それて終いだ。

おやすみ王様。
アンタの目だけは嫌いじゃなかったぜ。


ルイーネ・フェアドラク
……ああ、だから私は邪神教団が嫌いです
信仰を盾に、祀ろうものを容易く穢し、堕とす
眠れるものたちを、身勝手に揺り起こす
本来の骸の海とは、そのようなものではないはずなのに
この世界の理がいかに歪んでしまっているかを、思い知る
沸き上がる怒りは、冷えて腹の底の滓のように

何となく、そう、何となく
彼のものも確かにかつては、尊きいのちのひとつだったと
死したものに、ただ眠る権利すら許さないのか

それでも私は、生者として此処にいる
ならばせめて、冷酷に、迷いなく
その瞳から、その命から目を逸らさず

あなたがいるべきは死者の胎、海の底です
仮初に与えてしまったその命は、ここで摘み取ります
――それが、生きている者の責任ですから



●紅燃ゆる
 ユアが皆の元へと戻ってくると、どこか物悲しげな眼差しで微笑んだ。彼女の背後で王は猟兵達を――蠢く何かを見つめていたがすぐに視線は中空へ。落とした片腕は既に消化液に沈み、己であった物体も溶かしてしまっている。
 彼女と入れ替わり歩み出たのはふたり、ルイーネ・フェアドラク(糺の獣・f01038)と花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)だ。
靴底が灼ける感触は遠く、白衣の裾や己の尾が地に着かぬようにと気を配りながら進むルイーネは眼鏡のレンズ越しに王の姿を見遣る。

(……ああ、だから邪神教団が嫌いだ)

 高めに括った長い髪が背で弱く跳ねる。その心中は怒りに煮えていたが火はとうに消し去られ、底に煮凝りを残すのみ。
 冷えながらも消しきれない感情は王へと向けられず、呼び出した邪教の徒へと向けられている。身勝手な信仰によって深き眠りを妨げる者、祀り上げながら神々を穢し堕としていく者。世界自体が歪んでしまったのだろうかと、音を立てて融けていく足元を見つめた。
 対して、八千代は大股で濁り切った大地を歩く。ほぐすように片腕を回しながら堂々と、赤黒入り混じる長い三つ編みが歩みと共に激しく揺れて、王まで真っ直ぐ。

「あーぁ、こりゃひっでぇなァ。なんもかんも飲み込んでやがる」

 溢れた消化液は無差別に、王の意思に関係なくただ大地を埋め尽くしている。溶けた草木が時折見えるも、ぺきり、音を立てて命が終わりを迎えていく。それでも王は何もしない。溢れる酸い臭いが己の空腹を満たすために漏れ出ていることさえも認識していない。

――どこまで食えば気が済むのやら……

 否、最早それ以前の問題か。と何もかもを呑み込んでいく黒の汚泥を見て、八千代は少し後ろを歩く男へと問いを投げた。

「なぁ、なんかメシ持ってきた?」
「いえ。先程全部あげてきてしまったのでもう何も」
「ならアンタも俺もただこの王様をぶん殴るだけか」
「そうなりますね」

 王の前、ふたつの赤が立つ。

「終わりにしてやらねぇとな」
「ええ、それが――この世に生きるものとしての、我々の責任でしょう」

 飢餓に耐えかねて、王の身体は消化液を生成し垂れ流す。気泡の弾ける音と、残り滓さえ食いつくさんと大地を侵食するそれに王自身は気づいていないのだろう。ただ眼前に立つ二つの赤を、暗闇を裂く猩々緋と、温かみのある赤錆色を見上げていた。
 
「あなたがいるべきは死者の胎、海の底です。仮初に与えてしまったその命は、ここで摘み取ります」

 刻印を血液が循環してゆく。巡り、巡って、ぞぷり。この世在らざる醜悪が呼び起こされる。泥沼が嵩を増していく中でも融けることなく、うねる触手は王の半身――肉の残る後脚を絡めとった。締め上げれば骨の軋む音が痛々しく二人の耳に届く。
 王はそれにさえ動じない。触手を一瞥した後こちらを見据える男の、硝子の奥に潜む白銀を見つめ返す。男は決して逸らさない。かつて尊き命であったそれが、再び眠りにつくその時を最後まで見届けると声無く告げていた。
 届いたのだろうか。気にも留めていないのだろうか。おとなしの王はただ静かに、半身が砕かれることを許容する。
 傍ら、道中腕を振り回し続けていた八千代が動きを止めた。噛み切った手首から滴る己の血を、懐から取り出した印籠へ塗り付ける。描かれた南天が赤く溶けだせば見る見るうちに印籠が身の丈の半分を超える大金棒に。力は溜め込んだ。あとはただ、一撃。
 遠目に見えた翠色が、男を見上げる王の横顔が、どこか寂しげに見えた。八千代がこの王を屠る理由はそんなものだったのかもしれない。
 踏み込む靴の底が泥濘に融ける。知ったことかと女は金棒を振り翳す。

「ちっと早いけど、おやすみ王様。アンタの目だけは嫌いじゃなかったぜ」

 白檀を仄かに薫らせて、女は接ぎ接いだ鹿の肉を叩き潰した。骨が砕け、ただでさえ立てなかった王は僅かに体勢を崩し、大樹の残骸へと背を預ける。
 王は、二人へ後脚を呉れてやった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雷陣・通
父ちゃんが言っていたよ、例え針の山の上でも人は歩かないと行けないって

スニーカーが溶けちまうけど、構わない、元々空手は裸足でやるもんだ
何処まで歩けばいいのだろうか、分からないけど歩くよ
そして声が届くところ、目の届くところまで歩いて声をかけるさ
「おーい! 腹へってねえか?」
持ってきたおにぎりを投げ渡す
「どうだー、美味いか? 母ちゃんが作ってくれたんだ多分上手いはずだ」

拳を握る
決意を固める
出来ることはした
他に出来ることは浮かばなかった
だから
「ライトニングに行くぜ!」
空を蹴り、全力を以て、拳を叩きこむ


寧宮・澪
うん、良く、寝ましたー……。
しかさん、ですかー……。

おなか、空いてますよねー……からっぽ、ですものー……。
包帯、巻いておきますー……?

あ、ご飯、あるんですよー……。
はい、どうぞー……お好きなら、いいんですがー……。
葉物たくさんのサラダー……うさリンゴ、入り、ですよー……。
ベーコンと温玉も、ありますー……。
ドレッシング、いりますー……?
たくさん、ありますよー……。
(うさリンゴ一個しゃくり)

ちょっと抱きついたり、もふっても、いいでしょ、かー……?

戦闘、するなら、【謳函】をー……。
少しでも、満たされます、よにー……。
少しでも満ちて、綿津見に、帰りますようにー……。
【祈り】、【歌唱】しましょー……。



●遅すぎた朝食
 ルイーネと八千代と入れ違い、王の謁見へ臨むのは雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)と寧宮・澪(澪標・f04690)だ。
 うとうとと重たい瞼を押し上げる澪はつい先ほどようやく目を覚ましたばかり。眠ったままいつの間にか誰かに運ばれていた彼女は、なんとなく状況を把握すると黒い泥沼の上をふわふわと浮かんだまま王の下へと飛んでいく。
 通はお気に入りのスニーカーが汚れることも融けることも構わず進む。父も言っていたのだ。『例え針の山の上でも人は歩かないと行けない』と。元気よく踏み出した足に散って飛ぶ溶解液が素足を焼いても食い縛り、笑みを浮かべて大きく手を振った。
 
「おーい! 腹へってねえか?」

 返事はない。けれど王は巨木の亡骸に背を預けたまま声のした方へ視線だけを向ける。
 黒の汚濁を踏み越えて眼前へ。少年が取り出したのは綺麗な三角形を作る白と添えられた黒のアクセント。そう、おにぎり。片腕を授けた後の王はそれをじっと見つめると、どうやら食べ物として認識したようだ。あ、と口を開いて喰らおうと体を起こす。
 が、どうにもうまく起き上がれない。少し背が浮いたと思えばすぐに同じ位置。しょうがねぇなあと通が口元まで運んでやると、弱弱しく口に含む。程よい塩辛さが味覚を刺激したのか、二口目からはやや口へ含む量が増えている。その様子を生き物係になった小学生のように通は笑顔で見守る。

「どうだー、美味いか?」
「わあー……おいしそうですねー……」

 のんびりと追い付いた澪が後ろから覗き込む。

「それは……手作りですかー……?」
「ああ!母ちゃんのな!多分美味いぜ!!」
「それはー……いいですねー……あ、おかず、いりますかー……」

 落とさないようにとブランケットをストール代わりに巻けば、やや前のめりにひとつの箱を取り出す。ぱかり、開いた箱の中には彩り豊かに揃えられたおかず類。

「葉物たくさんのサラダー……うさリンゴー……」
「おお」
「ベーコンに……温玉もありますし……」
「おお!」
「お好みでドレッシングもー……」
「母ちゃんよりすげぇ!!!」

 思わず隣にいた少年の目が輝いた。味見と称してひとつ、ベーコンを摘まんで食べれば育ち盛りの舌も満足の味。つられて澪もうさぎ林檎をしゃくり。
 ふたりの表情が食欲を誘ったのか、まだ温かさが残る食糧群が鼻腔を擽ったのか。王は再び起き上がろうとするもどうにも起き上がれず、咀嚼し終えた塊を破れた胃から零しつつ二人をじっと見つめた。
 一度通と澪は互いを見合わせ、王へと向き直れば口元へ弁当箱を近づける。近付けた鼻がひくりと鳴ると、サラダではなく卵を一口。草木を食むのとは異なる味わい。熱が加えられ、調理された品々をゆっくりと、けれど次々に食む。
 騒がしい少年とマイペースな娘の前、完食した王は目を閉じた。呑み込んだものを次々に喉奥から落としては地に溜まる消化液で反芻する。

「……お腹いっぱいに、なってくれたんで、しょうかー……」
「なってねぇんじゃないかな。なんか、そんな気がする」

 澪がそろりと伸ばした手に、王が鼻を近づける。そこに何もないというのに、先に摘まんだ林檎の香りが移っていたか、細い指先に甘く噛み付く。痛みが強くなる前に引き離せば、王の翠が澪を捉えた。見上げてくる眼差しは上に立つものとしての慈悲を湛えども同時に物欲しそうに見つめる子供にも似て、手を伸ばさずにはいられなくなる。

(少しでも、満たされます、ように……少しでも満ちて、綿津見に、帰りますように……)

 澪が一度、王の身体を抱きしめた。突然与えられた温もりの意味を理解することなく、けれど王は心地よさそうに目を細める。なされるが儘、微睡みと熱を分かち合う。
 その背後、今差し出せるものを差し出しきって、少年は覚悟を決めた。
通は父の言葉を再び思い出していた。その言葉は此処に至るまでの汚泥に濡れた道や、進むに険しい場所を歩むということではないのだろう。知ってか知らずか立ってしまった針山で、少年は拳へ力を籠める。
 澪が離れれば代わりに前へ。それでも王の顔面からは逸らし、狙ったのは枝のように、両手のように雄々しく伸び広がる角。正しい型で、真っ直ぐと突き出す拳が細い根元に命中し、小気味のいい音を立てて大きな角が地に落ちる。
 王は拳握る少年へ己が片角を呉れてやった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴラディラウス・アルデバラン
嗚呼、王よ
己も支配階級が如き佇まいであれど。自ら前に進み出で、その眼をじっと見詰めよう
あくまで対等な者として

何と緑の眩いことか

私も内はほぼ炎
親近感と、それ故憐憫の情を抱くだろう
幸い飢餓は感じず済んでいるが、何時か突然そうなるやもしれぬ。お前の様な成れの果てとなったやもしれぬ

だが始末せねばならぬ
動揺躊躇は一切あらず、憐憫も数瞬
表情声色も何時も通り。冷酷にすら見えるやもな
嘗て共に戦場を駆けた瀕死の仲間を逝かせる様に、今楽にしよう
王への土産は稀少なワイン
食い物でなくすまんな。だが旨いぞ?とっておきだ
効くかは分からぬが痛み止めにもなるやもしれん
もう休め、朽ち果てはさせぬ
命(はる)を摘むのには慣れている



●貴腐
 澪と通が王に背を向けたとき、その頭を撫でたのはヴラディラウス・アルデバラン(冬来たる・f13849)だった。雪割草の眼をやわり細めて、若き戦士たちが去りゆくのを見送れば、見つめる先は座した王。

(嗚呼、王よ)

 不思議と、初めて合見えたそれに感じたのは親近感とひと掬いの憐憫。容姿と相反し、女が内に秘めるは業火に似た衝動。
今こそ餓えることはないがいずれ己を焼き尽くしてしまえば、或いは。などと未来の枝葉に王の姿を重ねてみれば鼻で嗤い、直ぐ様抱いた感情を切り捨てた。今、この感情は邪魔なものだ。
 対等に、支配者としての立ち位置でヴラディラウスは王の前に立つ。
 迷いはなかった。この眼前のけものを屠る事への躊躇はなかった。
 だが屠る前に、それでも葬る前に与えるべきものがあるのだと、剣より先に取り出したのは一本の瓶だった。

「食い物でなくすまんな。だが旨いぞ?とっておきだ」

 年代物のワインは手持ちの中でも稀少なものを選んできた。腹を空かしたこの王がこの手の嗜好品は気に入るのか不安ではあったが。小さな器へ注ぐとその香りに反応して眉が動く。
 ひとりでは起き上がれぬ王を、女が背を支え優しく起こしてやると口元へ。揺れる黄金色に唇を寄せて、ちろり。舌先を浸して舐めとると、蜜のような甘さに得体のしれない眩み。
二度、三度、舌を浸してみる。甘さは好ましかったのだろうが、奇妙な眩みがを阻害する。慣れぬ眩みに舌先は止まる。王は朧気な視界で、それでも冴えて見える冬色の女の姿を見上げた。薄い唇が物欲しそうに開かれる。
 ヴラディラウスは静かに王の姿を見遣った。残ったワインは己が代わりに飲み干して、瓶と器を片付ければ引き抜く極度の低温。美しき細身の刃。

「もう休め、朽ち果てはさせぬ。命(はる)を摘むのには慣れている」

 戦場で深手を負った仲間へ剣を向けるように、その死によって痛みと恐怖に震える生を終わらせるように。ヴラディラウスは一見冷酷に、その内に冬の日差しにも似た熱を持って眼前の命へと終わりの時を示した。
 それも共に送ってやろうと剣の先で膝上の骨を突く。が、何故だか王はその膝の上のものだけは譲らぬと言わんばかりにわずか肉の残った胸に抱く。これはだめだと眼差しが訴える。

――ああ、眩い。なんと緑の眩いことか。

 捨てきったはずの想いが、女の切っ先を迷わせた。
 女は片手剣をその喉へ……少し悩み、肩へと宛がい見下ろした。ここならどうだ、と。王は腕を下ろし、膝上に再び骨を寝かしつける。そこならば、と言ったような気がした。
 切っ先の触れた箇所、ひ弱な肩が見る見るうちに冷却され、故に焼かれ。醜く黒ずんでしまう前にとヴラディラウスは振り下ろす。
 王は冬統べる女騎士へ残る左腕を呉れてやった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジズ・レオリー
悠然たる雰囲気は確かに王のそれ
しかし、その姿は醜悪…否。憐れ…否……否。
謝意。ジズは王に手向ける言葉を持たない
故に、行動に移ろう

これはお気に召すだろうか
福豆とは異なる豆から生えてきたのだが
切れども切れども伸びてくるのが面倒で…ごほん

泥沼に入るのは危険だ
豆苗の束を【不避ノ雨】の一本に括り傍に射る
[時間稼ぎ]になればいいが

隙を見てロッドの[封印を解]き弓に変形
[高速詠唱]で幾重にも束ねた矢を番え
王への敬意を込め[全力魔法]を放とう
…雨もまた、万人に等しく降るもの

食べることは生きることと同義だと誰かが言った
貴殿の苦しみをジズは体感し得ないが
あの眷属らのごと、幾許かでも満たされ逝けるよう…[祈]ろう



●徒長
 ヴラディラウスが剣を納め戻ってくる姿を、腐敗臭をも漂わせ始めた黒の沼から離れて王を眺めるジズ・レオリー(加護有れかしと事有れかしと・f13355)。王の下へと行かぬまま、手にした杖の封印をなぞり解けばしなやかに弦を張る。
 小鳥たちへと豆を与えどやはり己は飢えを知らず。体感できないからこそ王の抱く感覚をも共有できず。ただ遠く、ぼやけた視界の先に襤褸の玉座と、座す悠然なるものを見つめていた。両の腕さえも失ってなお、在り続ける王の姿を。

(醜悪…否。憐れ…否……否)

 謝意(すまない)と、相応しい言葉を見つけられないことへ誰にとも言わず謝った。王の前へと行けなかったのはただ広がる消化液の沼が危ういからだけではなかったのかもしれない。交える言葉さえも見つからぬなら、代わりに。ジズは矢を番えた。
 その矢へ籠めるのは祈りともうひとつ、懐からそっと取り出したのは豆苗だ。かの王の空腹を満たすためにと選んだものではあるが、傍から見ればやや奇妙な光景ではある。それもまた、飢餓を理解しえぬが故なのだろう。
 決して、切っても切っても伸びてくるのが面倒だからなのではないと言い聞かせながら、巻きつけた矢を一本、王の下へと放つ。

 王は、というと。女の支えと片腕を失い再び倒れた巨木を背にして空を仰いでいた。両腕を失えど、両脚を失えど、その瞳の色は変わらない。見つめる先も、腹から漏れる酸い臭いも、何一つ変わらない。
 そんな王の頭上に降り注ぐものがあった。水属性を付与したジズの矢は王の頭上高く出弾けて雨となり、数多の雫と巻き付けた豆苗を降り注ぐ。それを王はただ受けた。痛みは先程口にした酒が和らげてくれていたのか、元より何も感じていないのか、濡れそぼったまま顔面に貼り付くそれらを受け止めた。
 舌が届く位置に、一本の豆苗が落ちてきた。長い茎を舌先で器用に手繰り寄せてみれば、少しずつ。咀嚼と共に口の中へと消えていく豆苗。
 ほう、と息が漏れる。満腹とは別の感情が王の舌先を満たしていく。

 ジズにその表情は見えなかった。距離が離れすぎてジズの目では王の表情は捉えられない。しかし、遠くともかの王へと矢が届いたことだけはわかった。ただ万人へと等しく注ぐもの、不避ノ雨と彼が呼ぶその矢は文字通りの雨となり、王へと命の欠片を与えた。
 届いたのなら。次は正しき眠りを。食べることは生きることと同義だと、誰ぞに聞いたことを思い出す。今、この場所で生きているそれへ、この場にい続けてはならないそれへ、ジズは新たに矢を番える。

(貴殿が、あの小鳥らと共に幾許かでも満たされ逝けるよう、祈ろう)

 放つ。次いで番えた矢には小鳥たちと同じ風の祈りを。穏やか眠りを誘う、微風の溜息を。弧を描き、王の下へと届くころには微風は旋風に。幾重にも分かたれた風の刃は王の長い鬣を幾何かを奪い、残った肉へ微かな傷を与えた。
 王は受け入れる。奪われることさえも自然であると言わんばかりに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

ああ、こんな時はどうしたらいい
微かに目を伏せ己の中に問い掛ける

そうだね、君はかえらなくてはいけない
でも満たされぬままの誰かを、どうして送れるだろう

流れる黒に触れても気にせず『激痛耐性』で凌ぐ
その手は使えるかい
手が使えぬのなら口まで運ぶよ
根菜と豆を煮込んだスープを保温ポットから注いでスプーンと差し出す
飢えているなら、温かな食べ物がいい
空腹が齎した寂しさを満たしてくれる
悲しみには少しの甘いモノを
どうか少しでも楽しい時間であるように、君が笑えるように

大丈夫
もっと食べていいンだよ
満たされたら、幸せだと思えたら、
ちゃんと送り届けるから

最期は【虹渡】で


火狸・さつま
コノf03130と参加


鼻は良い方な獣だけれども
今日は気にならなくて
とたとた歩み寄り

また、腹ペコさん…?
しかさん、と聞いたから
用意してたのはお煎餅(但し普通の醤油味)
けれど、こっちの方が良いかなと
さくさくラスクを差し出す
ん?お煎餅も、食べてみる?

自ら触れてしまうのは邪魔出来ないけれども
流れ出た黒がかかるならば見切りにて察知し
す…っと手を差し伸べかばう
コノの手は…命を繋ぐ笑顔を紡ぎ出す、大事な手だから
なんて軽く笑って
帰ったら、俺にも作って其のスープ

コノちゃんの料理、美味しいよ
食べたら止まらないから
そう緑の王へ声掛けて促して



さぁ満足したら、おくろうか
寂しさを忘れれるように…君に【安息を】
『おやすみ』



●心のこもったスープ
(ああ、こんな時はどうしたらいい)

 コノハ・ライゼ(空々・f03130)は王の姿を見て惑う。ああ、これを倒すのかと。あれだけの猟兵達が食わせ飲ませているというのに、王の飢餓は止まらない。今なおその腹から流れ出している。
 かえしてやらねばならない。それは確かなのだ、かの王を正しき寝床へと送り届けねばならない。けれど、まだ王は満たされぬままそこにいる。本当にこのまま送り返していいのだろうか。
 が、悩むコノハの横をするりと抜けて火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)はとっとこ進む。たぬきつね状態だと足が短く、たどり着くのに時間がかかるからと解除済み。満ちる臭いに嫌な顔一つせず、先へと進む。
 その途中で振り返れば悪友へ向けて笑み。

「用意したんならさ、行こ。コノちゃん」

 たった、それだけ。その一言がコノハの迷いを打ち消した。

「……そうだな」

 柔らかく微笑み返し、汚泥に塗れた道を進む。不思議と足は痛くなかった。来るのを待っていたさつまに小さく礼を言い、隣に並べばそこから先は同じ歩調で。コノハとさつまは王の前へとやって来た。王は未だ戻らぬ視界の揺らぎの中に新たな影が差しこまれれば目を細めたまま首を傾ける。
 コノハは王のその姿を改めて見遣る。両腕は落とされ、後ろ脚は潰され、片方の角は折られ、鬣は乱れて残る肉には傷痕が幾重、酩酊。あまりに痛々しいというのに、王の眼差しは色を変えない。

「手は……使えないか。じゃあ食べさせてあげよう」

 取り出した保温ポットの蓋を外すと、そこへとくとくと流し込むのは手作りスープ。根菜と豆を丁寧に煮込んだ特製の品はあたたかく、うっすらと白い湯気が立ち上っていた。
 新たな匂いに王の耳がぴくりと反応すれば、隣で煎餅を割っていたさつまが満面を見せる。

「コノちゃんの料理、美味しいよ。食べたら止まらないから」

 俺が保証する、とさつまが自信満々に胸を張れば、隣でコノハは苦笑い。両腕を失った王の唇に、スープを掬って近づける。
 唇に触れたぬくもりに、王は薄く口を開いた。ゆっくり差し込めばはむりと弱く食み、傾ければ舌を撫で喉奥に流し込まれるスープ、口内をあたためられて王はとろりと目蓋を落す。
 その様子に今度は俺がとさつまが差し出したのは、割っていた煎餅ではなくラスク。スープにはこちらが合うだろうと持ち替えていたそれを口元へと近づければ、王は同じようにぴとりと唇を付けて、食む。が、唇だけではどうにもならぬと分かれば歯を立てて、ざくり。噛めば噛むほどに麦の味が広がって、そこへコノハのスープが追撃。やわらかくなったラスクが喉奥へと滑りこむ。

「大丈夫、もっと食べていいンだよ」
「好きなものを食べて……ん?お煎餅も、食べてみる?」

 割っていたのを聞き逃さなかったのだろう、少し揺らぎが薄まった視界に煎餅を捉えれば、さつまをじっと見つめる。興味を示したのなら、と割った煎餅も口に運ぶ。ばり、ぼりと大きく音を立てて噛み砕けば今度はコノハを見てスープの催促。望む儘、王は二人によって差し出された全てを食べ切った。
 その温かさは、一匙でもかの王を満たしてくれたのだろうか。食料がなくなれば、立ち上がり別れの言葉を。

「――じゃあネ」
「おやすみ」

 コノハの描く虹の帯が、さつまの温度なき浄化の炎が揺らぐ。湯船へ浸かるように目を閉じた王はそれらをただ受け入れた。
 やさしき狐にひきへと、王は首から下に残った肉を与えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九琉・りんね
う、酷い臭い……頭もくらくらしちゃう………
原因はあのオブリビオン。わかってる。わかってるけど……
なんていうか………
王、って、
あんなに、寂しそうなものかな

大丈夫だよ、『ハル』。
いざとなったらお願いね

あの、ええと、王様さん!
その、羊羹とか……食べます?
特別高いってものってほどじゃあないんですけど……どうでしょう、か

なんだか、私王様のことを悪い人だと思えなくて……
初めて会ったのに、敵なのに、変ですよね……あはは…………
………
……倒すとか、考えられないの、って
子どもだと思いますか?

…………『ハル』、ありがとう。



●巡れ、巡れ
 分からなかった。
 胸の下へと零れていく感触が何を満たしてくれているのか。喉を通ったそれらが血肉を作ることもなく排泄物へと変わり果てることの意味が。
 満たされるとはどういうことなのか。

 分からなかった。
 眼前に在る敵の姿が、こんなにも心を苦しめる理由が。大地をも食らう溶解液の酸い臭いが寂しさも孕んでいるように思えた意味が。
 満たしてあげるためには、何をすればいいのか。

 だからこそだ。王の前へ立つ九琉・りんね(おてんばまりおねっと・f00448)は戸惑いと不安と、自身でも制御できない何かを抑えきれないまま、黒の双眸に王の姿を映す。このひとを、と。
 苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべていると、傍らから人形『ハル』が物言わず服の裾を引く。己の無意識がそう操作してしまったのだろうか、はっとしたりんねは『ハル』の桜色の髪を、消化液に浸り両脚を焦がしながらも主人と共に立つ姿を見て、一度気を引き締める。

――そうだ、私たちはこのオブリビオンを、元凶ともいえるこの王さまを、倒しに来たんだ。

 それでもひとつだけ、形にしたやさしさを食べてもらおうとりんねは王へと一歩、近付いた。

「あの、ええと、王様さん!」

 りんねが気丈に、笑顔を作った。

「その、羊羹とか……食べます?」

 袂から取り出したのは決して高いものではない。少女の小遣いで買える程度のちいさなものだ。練り固められたそれを微かに震える手で王へと突き出す。
 王は『ハル』の助けも借り、身体を起こしてりんねの差し出す羊羹を淡く食む。口内を小豆の甘さが広がり一口一口と食べ勧めれば、小さな羊羹ひとつなど平らげるのに時間などかからず。もうないのかと、王は少女を見上げた。

「あの、その、ご、ごめんなさい……」

 持ってきたのはそのたったひとつだけ。
 今思えば、このたったひとつで満たしてあげられるはずもないのに、どうしてもっとたくさん持ってこなかったんだろう。とりんねは後悔した。何か代わりになるものはあっただろうか、混乱して頭の中が真っ白になっている。
 その間も、王はりんねの着物の袖を食んでは催促するように引っ張っている。

「ごめんなさい……その、もうないの。なにも、持ってないんです」

 笑っているはずの頬にひとしずく、伝っていく。
 心中の堤防は王の眼差しに耐えかねて決壊し、押さえていたはずの衝動が両目から、鼻から、口から溢れ出していく。
 脆い少女の心はぽろぽろと本当をさらけ出していく。

「なんだか、私王様のことを悪い人だと思えなくて……初めて会ったのに、敵なのに、変ですよね……あはは……倒すとか、考えられないの、って子どもだと思いますか?」

 彼女の声は王以外の誰にも聞こえないほどに弱く、幼く、無垢だった。

 分からなかった。
 そのけものに優しさなどなかった。慈悲を見出したのは他者であり、王自身がそれを持ちうると言葉にしたこともなかった。そもそも言葉自体発せなかった。
 猛る怒りも、押し潰す悲しみも、綻ぶ喜びも、すべてが永遠の水底に沈んだまま。ただひとつ、兎にも角にも満たされぬ飢餓だけが持ち出せた。

 そうだ、煌く紅玉に塗れた少女の涙を舌先で掬い取ったのも、腹が減っていたからだ。甘い羊羹を口にしたから、塩っぽいものが欲しくなってしまったんだ。
 ざらりとした舌の感触に目を見開いたりんねは王を見る。

 その翠が、慈しみを拾い上げた。
 もう両の腕も、後ろ脚も、角も鬣も、肉さえも呉れてやった。最後にこの少女へと呉れてやるものなど――王自身がそう思っていなくとも、一つきりしかなかったのだ。
 身を委ねる少女にすり寄り、言葉吐かぬ唇に何かを乗せた。誰にも聞こえない、誰にも理解できない言の葉は、りんねの耳にだけ届いた。
 言葉は形を成していなかった。だから、解ってしまった。
 敵対者ではなく、向かい合ったひとりのいきものとしてこの場にやって来た少女は涙を拭った。最期に飾るに相応しき言葉を、心からの笑顔でりんねは告げる。

「ありがとう……おかえりなさい」

 言葉の終わり。とうに、限界を迎えていた。
 壊された脚先から少しずつ、王の身体は大地へと還っていく。己が食い尽くしたそれらのために、王は己を養分とする。
 少女の細い腕に抱かれ、重たくなった目蓋を落とす。暗くなっていくはずの景色で、少女の紅玉の髪が眩く煌いていた。それを愛おしむように口元を微かに緩め、冬の終わりを告げるが如く陽光に融けていく。

 ようやっと眠りについた王は次の季節へと流れていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『猫カフェで猫をかわいがろう!』

POW   :    猫を撫でて可愛がります

SPD   :    猫と道具で遊んで可愛がります

WIZ   :    猫におやつを与えて可愛がります

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ねこねこねこねこ
 戦いを終えた後、町まで戻って来た猟兵達は事前に渡されていた住所を頼りにその店にやって来ていた。煉瓦風のシックな壁に、室内の様子が分かる大きな硝子窓。覗けばお疲れモードの猫やらおもちゃで遊ぶ猫やら、猫やら猫やら猫。

――そう、この店の名は『にゃんこカフェ♪しゃっとしゃっと』

 最早店名に対しての突っ込みを入れる気力もない。
 戸惑いながらも扉を開けて、店員に案内されるがまま二階へと連れていかれれば……

「あ、みんなおつかれさま」

 延々猫と戯れて待っていたくらげの娘は頭に膝にとねこを乗せ、片方の手で猫を撫で、もう片方の手と髪に混じったくらげの触腕で複数の猫たちをじゃらす猫マスターっぷりを見せている。
 先程までの戦いとの落差の激しさに、猟兵諸君も感情が追い付かないだろう。それが普通だ。問題ない。
 しかし猟兵達の心中など一欠片も察しないくらげ娘は淡々と今後についてを説明し始める。

「えっとね、今日はおみせ、貸切にしてもらったの」

 思ってたより豪勢だ。

「それでね、みんなすきにご飯も食べていいの。メドのおごりよ」

 太っ腹すぎやしないかこのくらげ。
 突っ込みたい心を耐えてくらげの揺れる首と視線を追う。

「帰るのは、えっと、三時間後くらいでいいかしら?みんなが満足したら帰るわ。
 あ、ねこさんたちと遊ぶのは、自由よ。おもちゃを使ってじゃらしてあげてもいいし、いっしょにご飯を食べてもいいの。あ、でもお昼寝してる子を起こすような、ひどいことはしちゃだめよ」

 つまり、猫が嫌がる事をしなければそれでいいのだ。もし見かねる行為をしようものなら、強制的に店から追い出されることだろう。

「もちろん、ねこさんは食べちゃだめね」

 いやそれはしないから、という突っ込みを呑み込んだ面々に差し出されたのは食事メニューだ。
 コーヒーやジュース、種類豊富な紅茶にと飲み物メニューも幅が広いが、食事メニューもなかなかの品揃い。猫モチーフのケーキセットから軽食、猫ちゃんへのおやつもご用意されている。名前のあれさに反して実は名店なのかもしれない。

 王の帰還の後、与えられた休憩時間。
 猫と戯れるもよし、のんびりと食事を楽しむもよし。満たされるまでの時間をどうぞごゆっくり。
火狸・さつま
コノf03130と

いつもと変わらぬ様子を装う相方見て
でも、これは。と。お耳ぴこぴこ
これでもビーストマスター
ちょいちょいと手招きすればわらわら集まる猫を
せっせとコノちゃんの上へ乗せ乗せ
もっふもふに埋もれさせたら
にこっと笑顔だけ返して
ほんの少しの間だけ
沢山の猫達の力借りて
そうしたら、コノちゃんお気に入りの仔を2匹残し
ありがとさんと他の方々への営業へと猫達を見送る

…コノちゃんが来てくれて、良かった
俺には、あんな美味しい物用意出来なかったから
それに…

ふにゃっと笑顔向け自分も猫をもふる
何か、あったかいモノ
貰いに行こっか


俺達は、心もお腹も満たして
前へ…




(それに…一緒に居てくれると、とても心強くて、安心する


コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

あらまあ、メドラちゃん太っ腹ー
ふふ、なら遠慮なく食事と、猫ちゃんのおやつもネ

手近な子の前におやつ転がしながら、心此処に非ず
例えばこの子なら、このおやつ
テーブルの上の食事はきっと美味しいし
自分にとっては目の前の子だって食事となり得る
そう、腹を満たすだけならナンだって
ケドそれだけでは満たせない事もあると、知っていた
なのに

手先に触れた温もりで気付く膝上の猫だまり
訝しげに見ればただ返る笑顔に、息をひとつ吐いて
……思い知らされた、って所かしらネ

迷惑顔の子を抱き上げて喉を擽り
馴染みの声に耳傾ければ一度まばたき

ばあか、当然デショ
そういう笑顔を増やす為に、アタシの手はあるンだから



●こうふくの理由
 コノハ・ライゼ(空々・f03130)と火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)はふれあいスペースの片隅、自分たちの食事と猫のおやつを注文してまったりと癒しの時間を満喫……しているはずだった。
 しかし、コノハの顔はどこか浮かないまま。おやつを与え、猫にじゃれつかれ、それでも心に閊えた針が抜けない。少し離れた彼らの席へと食事が運ばれても目で追うだけで動く気力はなく、ただ思い浮かべるのはほんの数十分前まで眼前にいた王の姿。

 食べれば自ずと腹は満たされる。
 例えば、運ばれて来たあの料理。個別に顔が描かれた猫型のオムライスはきっと美味しい。目にも楽しく、口に運べば卵とライスとケチャップによる調和のとれた味わいが口内に広がるだろう。例えば、植物園へ持ち込んだ一口パンケーキ。食べ切ればあの小鳥たちのように穏やかに眠れるほど満たされるだろう。
 言ってしまえば、手元でおやつを食んでいる猫の子だって食べようと思えば食べられる。自分は――いや、人の容を取る生き物はこの世で最も雑食で貪婪だ。喰らえるものなら未知さえ喰らう生物だ。腹に物を詰め込めば、どんなものでも満たしてくれる。

(そう、腹を満たすだけならナンだって――)

 その筈だった。しかし、あの王はそうではなかった。何をもって満たされたのか。否、満たせるなどという考え自体が傲慢であったのか。コノハには理解できていない。

(あれだけでは満たせない事もあると、知っていた。なのに――)

 思考が堂々巡りを続ける中で、ふと、手元のふわふわが増しているような感覚に気付く。
 ぴこ、ぴここ。
 忙しなく動く耳二つ。その周りには、わんさか集う猫の群れ。手招き手招き呼び込めば、ビーストマスターたるさつまの下へと猫たちが集まっていく。ねこまみれになっていた膝上、ふわもこパラダイスにようやっと気づいたコノハは困惑を隠してさつまを見た。

「えっへっへー、どうどう?コノちゃんはどの子がお好み?」

 気を抜いてもいい状況ではあるが、なんせここは猫カフェ。狐の姿でいると猫が怯えてしまうかもしれない。そんなこんなで獣の匂いも薄まる人姿、さつまはわらわらと膝やら背中やらを登られ始めているコノハへとにっこり問いかけた。

「そ、そうネ……あ、この子とこの子、ええ、可愛いわネ」
「おっけー、ほらほら、他の子はお客さんのところへ行っといでー」

 コノハが選んだのは薄茶と濃い茶の毛並み、二匹の女の子猫。壁の写真には「しなもんちゃん」「ここあちゃん」と書かれていたその子らを膝に残せば、他の猫達はにゃおんと鳴いて他の猟兵のもとへ。
 どうにもまだ戸惑いが消えないコノハはさつまの笑顔を目で追った。隣に座って、ここあちゃんを撫でる彼を見つめていると、

「……コノちゃんが来てくれて、良かった」

 さつまの、零れ落ちるような呟きが聞こえる。
 コノハは手元で困り顔をしているしなもんちゃんを膝に置き、瞬き。言葉を聞き逃さないように受け止めて、

「俺には、あんな美味しい物用意出来なかったから。それに……」
「ばあか」

 こん、と小突いたその手で頭をくしゃりと撫でた。素直に感情を吐き出すさつまの前でこれ以上あれこれ悩むのは止めようと、コノハは沈みかけた思考を掬い上げて相手の頭を撫でる自分の手を見る。あの王がどうであったかなど、結局のところあの王にしか分からない。自分にできる事は、この両の手ができることは。

「当然デショ。そういう笑顔を増やす為に、アタシの手はあるンだから」

 美味しい料理を作る事。料理だけでなくとも、己の手が届く範囲の中で満たせる限りを満たすこと。
 少なからず隣の悪友の腹は、笑顔は、自分の手で満たせるのだ。これは何よりの自信となる。さつまがふにゃりと笑めば、つられてコノハも笑って、仲良く猫達を撫でまわした。ふわふわの毛並みに顔を崩して、ふと思い出す自分たちの腹の具合。

「あ!そうだ!冷める前に俺達も食べよ!」
「いけない……せっかくのお料理だもの、美味しい内にいただきマショ!」

 膝の猫様達を一度下ろして、立ち上がる。
 元気が出たコノハの姿を一歩後ろから見つめて、さつまはゆるりと目を細めた。決して、今回料理だけがさつまを助けたわけではない。あの温かい料理以上に、心を温めてくれるもの。ひとりきりでは進めなかったかもしれないあの汚泥の上を、共に歩んでくれた友。割り込まれてしまった言葉の続きは、今は己の中だけ。

(それに……一緒に居てくれると、とても心強くて、安心するんだ!)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花邨・八千代
お、飯喰っていーのか。
いいねいいね、やっぱ遊んだ後は飯だよな!
いっぱい喰うぞー!

◆ねことたわむれる(WIZ)
飯は喰うけど猫に奪われないよう注意を払うぜ。
ダメだっつーの、猫に食わせらんねーんだよ!
あーもう仕方ねーな、カツオブシくらいなら分けてやるよ。

ったく、猫って現金な生き物だよなァ。可愛くねーの。
……なんだよ、もふもふしてんじゃねーか…。
ゴロゴロ咽喉鳴らしやがって……擦り寄ってくんなし…。
………もふもふだな…。

なんつーか腹もいっぱいになったら眠くなってきたなァ。
オイこら猫、ちっと湯たんぽ代わりになれよ。
はー……もふもふ…ふわふわ……。
……ぬくいのは悪くねーもんだ、なァ…。
ふわ……ねむ…。


鎹・たから
POW

今回お仕事はしていませんが、たからは受験生です
受験生には息抜きが必要です
息抜きといえば動物とのふれあい、猫です

ジュースと猫のおやつを頼みます
座って向こうから来てくれるのを待ちましょう
猫はきまぐれですから

ねこちゃん、ねこちゃん
かわいいですね(なでなで
ふわふわの子も、つやつやの子も
皆おいしい食事を食べて遊んでもらって
とても幸せなのでしょうね、良いことです(もふる

おもちゃでも遊びましょうか
先に羽のついた竿がありますね
なるほど、わかりました
猫釣りですね(ばひゅんばひゅん竿を揺らす

だっこはしてもいいのですか?
…向こうから来てくれました
ごろごろ鳴いていますが、うれしいのですか?
たからもうれしいですよ



●いきぬきの時間
「お」
「あっ」

 狭い店内、見知った顔など容易に見つかるもので。
 鰹節の詰まった袋を手にした花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)は、りんごジュースをくぴくぴ飲んでいた鎹・たから(雪氣硝・f01148)とばったりと鉢合わせた。同じ団地に住む者同士、誕生日が近い者同士、そして共に戦場を駆けたこともある鬼の娘同士でもある。

「なぁんだー、たから来てたの?」
「ええ、受験生には息抜きが必要です」
「受験かー、勉強やら色々面倒なんだってな、あれ」

 そのまま八千代がたからの正面に座ったところで、彼女が注文した料理が届く。頼んだのは特製☆パワフルねこちゃんカレー。名前はあれだがボリューム感たっぷりの品なのだと聞き、通りすがりの店員に注文だけ済ませていた。実際、結構のボリュームだ。
 カレーは白米の盛り方を猫の形にしているだけの普通の中辛カレーだが、普通の店で出す皿と比べて明らかに深い。白米の孤島がカレーの海に沈んでいる、と表現すればわかるだろうか。長居し過ぎては勉強机に戻る事を惜しみそうだと思い、ジュースと猫のおやつだけを注文したたからはそれらを雪映す硝子のような両目を更に輝かせながら見つめた。

「ふぉぉ、すごいお料理ですね」
「思ってたよりはマシだな。たからも食う?」
「いいんですかいただきます!」
「はやっ」

 美味しい匂いを前に、食べないという方が失礼というもの。店員に学校ですら見せないほど綺麗な挙手をしゅばっとし、追加のスプーンと小皿を貰った。猫の形を変えないように白米とカレーをもらうと、二人仲良く「いただきます」と合掌。
 頬張るカレーはまさに中辛。舌を焼くほどではないが心地よい辛さが程よい刺激を与えてくれる。物足りなさがあるとしたら、少々具が小さめなことぐらいだ。
 と、食事を楽しむ二人の足元に小さくぬくい来訪者。恐らくはヒマラヤンであろう子猫はじっと机の上を見つめていた。

「んあ?なんだァこいつら。こっちまで来ちまって」
「ねこちゃんたちもご飯欲しいんでしょうか」
「残念だがこの机には二人分しかねーよ。ほら、カツオブシ食ってろ」

 袋から一掴み、それをばらっと撒けば子猫は大喜び。あっちこっちに散らばる鰹節を追いかけては跳び、追いかけては食べ。そんな様子を満足そうに見てから八千代はカレー制覇へと向き直る。
 が、撒いた鰹節が他の猫達も呼び寄せていた。鰹節に群がりにゃんにゃかころころする猫達。そこだけ毛玉の水たまりのようなものが出来上がっていた。そのうち何匹かは匂いにつられてか椅子や二人の膝の上まで登って来たりもしていた。

「おー、大漁大漁」
「ですね、まさに大漁……はっ、これは今こそこの秘密兵器の出番!」

 思い出したようにたからは釣り竿型のおもちゃを手にした。糸の先端には針ではなく羽の飾りがついている。そう、これはいうなればルアー。この足元に集い始めた猫達を誘うための食べられない餌。それを一振りすれば猫達の視線を奪い、二振りすれば猫達は一斉に跳び上がる。

――そう、ねこちゃん釣り放題!

「ふぃーっしゅ!……いえ、ねこちゃんを前にフィッシュは違いますね。きゃっと、きゃっとがいいですか?ほらほら、きゃーっと、きゃーっと!」

 ばひゅんばひゅん、玩具の動きにつられて猫達がうみゃーみにゃーと飛んでいく。楽しくなってきたたからは一旦食事を中断し、猫達の沼へと足を進める。テンションの上がった猫達は釣り竿の先の羽だけではなく、たからの胸元に靡くひらひらにさえも跳び付いていった。

「わ、あわわわ、スカーフは!そっちはだめですよ!さ、こっちにおいでー!」

 思わずおもちゃも放って抱きかかえてしまった黒白のぶち猫はぷくぷく鼻を鳴らす。その隙をついてたからの膝に、背中に、どんどん猫達がのっかって来る。やや重い。いや重い!だが結構なぬくぬくとふわふわが肩先から頬を掠めてとっても気持ちいい!その毛並みと人懐っこさに、大切にされているのだと密かに胸の奥を温めながら、たからはやや背中を丸めて猫の襲撃を受ける。
 平和な少女の姿を座ったまま見つめ、からんとカレーを完食した八千代はいつの間にやら落ち着いてしまった膝の上のヒマラヤンを撫でる。長毛種特有のふんわりした感触は掌をやわらかに包み込んでくれた。満腹感と重なって、子猫のあたたかさがどうにも目蓋を重くする。追加で寄って来たもう一匹も抱え込めば、湯たんぽ代わりに。

――ったく、猫って現金な生き物だよなァ。

 などと、思いつつも。ごろごろと喉を鳴らす猫達を撫でる手は優しく、少しずつ動きを緩めて。

「ふ、ふふふ……これはかなりハードですよ八千代さん……八千代さん?」

 猫に潰されかけながらもどうにか振り返ったたからが見たのは……膝に二匹の猫を乗せたまま、すっかり眠ってしまった赤黒鬼の姿だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルフトゥ・カメリア
……ねこ。
猫好きの手がちょっとうずうずする。
とはいえ、何をするでもなく床に座れるスペースで座って、壁に寄りかかってぼんやり時間を過ごす。

目の前を猫が通って行くのが至福。かわいい生き物は好きだった。もふもふしていたらなお良い。セキセイさまも、どうやらその範疇だったようだ。
それが人に属するのならどんなにもふくてももふる気なんてないが、オブリビオンや普通の小動物なら話は別だ。

のんびりしている内に、ぬくさに惹かれた猫が寄ってきてくれたら、膝に肩に翼の影にと猫まみれにでもなっていよう。
長いみつあみをちょいちょいと前脚で遊ぶ猫も、羽毛に包まれた翼にじゃれる猫も、止めずに好きに遊ばせておく。
癒された。



●やまもりの温度
 一階は食事スペースのない、猫とのふれあいを大切にするための空間となっている。入り口横では積み重ねた透明のケースを昇り降りする猫の姿や、お気に入りのクッションで丸くなる猫の姿、実に自由で、見るだけでも癒される和みの場。おもちゃの貸し出しも主にこちらで行われていた。
 そんな一階の壁際、クッションのひとつに座りぼんやりと店内の状況を眺めているルフトゥ・カメリア(Cry for the moon.・f12649)は、猟兵達と戯れる猫の姿に目を細めていた。両手は握ったり開いたりを繰り返し、目は通り過ぎていく猫を自然と追っている。
 そう、彼は猫は好きだった。
 正確に言うのならば猫だけでなく、ふわふわもふもふの可愛い生き物が好きだ。セキセイさまだって彼からしてみればかわいいふわもこ生物としての感覚が強かったほどだ。実際あのまるまる具合は敵として認識しにくい。

(……ねこ)

 また一匹、目の前を通り過ぎていくトラ猫。壁に貼られた写真と照合すれば、あの子はみたらしくんなのだそうだ。なんでその名前になった。とは思うがどうやらこの店の猫、店長の趣味なのかとにかく美味しそうな名前を付けられている。
 出来る事なら触れてみたい。が、猫の気儘に身を任せるのもまたよし。熟練の猫好きは自ら寄っていくことはなく、おやつも玩具も持たずただ猫達の自由な姿を見つめ続けていた。

 と、一匹の黒猫がルフトゥににゃおんと近づいてくる。一度壁へと目を向ければ、寄って来た彼が「くろごまくん」であると分かった。なんせ、店の中に黒猫は彼しかいないのだと壁の哨戒に書いてある。じっと目と目が合うと黒猫は距離を詰めていき、足にゆるんと身体を摺り寄せる。ルフトゥの頬がちょっと緩んだ。
 黒猫は再びじっとルフトゥを見つめてくる。試しに「ほら」と太腿を叩いてみればすとんと収まった。そのまま我が物顔で丸くなると、くろごまくんは微動だにしなくなった。
 その背をやわやわ撫でてみる。首の後ろから背中のラインを掌でなぞれば気持ち平たくなる猫。二度、三度と続けていくうちにルフトゥからは見えずとも猫の目は心地よさそうに細められていった。

(ふわっふわ……)

 天鵞絨の手触りに心から癒され、思わず夢中で背中を撫で続ける。見る見るうちに融けていく猫の姿すらも愛おしそうに見つめていた。
 と、好き勝手させているとあっという間に翼の中やら膝上やらに他の猫達も集まってきて、猫まみれ。セキセイさまにも群がられていた彼には、もしかしなくともふわもふ生物に群がられる才能があるのかもしれない。
 肩に登ってこられても、翼に埋もれようとしても、今回限りはノータッチ。三つ編みにじゃれつかれながらも、その表情は柔らかなものだった。ただされるがまま猫達に囲まれて、そのぬくもりに陽だまりを思い出す。

(やっぱ、いいなねこ……癒される)

 膝上の黒猫の大あくびにつられて欠伸を漏らしたら、帰還までの間、ルフトゥも少しだけ目を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユア・アラマート
(猫じゃらしをふりふりする)(尻尾もふりふりする)(二段構えで猫をおびき寄せて遊ぶ)
今日は一日なにかともふもふしたものと関わってきたな……
私の店周辺にも野良猫はいるが、警戒心が高いのが多くてあんまり触らせてくれないし、たまには思い切り楽しむのも悪くない

さて、せっかくだし何か食べるかな(猫を膝に乗せてケーキセットを注文)
ほんと可愛いなこのセット。食べるのが少しもったいない。先にスマホで撮影しておこう
……食べたら血となり肉となり。あとは朽ちるまでその繰り返しが自然の摂理だ
代わりに、なんて言えば烏滸がましいが。腹ペコだった王様の分も食べておかないと、きっと怒られてしまうね
それじゃ、頂きます



●はるいろの至福
 トラ猫が歩いて行く先にひとりの女が待ち構えていた。
 両手に猫じゃらし、背面に尻尾、今日のユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)は一味違う。完全じゃらしモード搭載だ。なんせ普段、自身の営む店の周囲にやって来る野良猫たちときたら警戒心がやけに高い癖に餌だけは素早く取っていく。撫でるだの愛でるなどはそうそう出来ない。

(たまには思い切り楽しむのも悪くないかな)

 童心に帰る心地で猫じゃらしをふりふり、尻尾もふりふり。するとトラ猫――もといみたらしくんは三つのふりふりに目を丸くしてぴたりと止まる。狙いを定めたのは、右手の猫じゃらし。みたらしくんの狙いがユアもわかったのだろう、素早く右手の猫じゃらしを横切らせてみればトラ猫は機敏に反応。が、残念ながらトラ猫の手は床に、猫じゃらしは通過した後だった。
 ちょっと自慢気なユア。無表情に見上げるトラ猫。
 今度は左の猫じゃらしを目の前で素早く一往復、視線が完全に左の猫じゃらしを追う。そして猫パンチを食らわせようとするもぎりぎりユアの速度に追いつけない。
 可愛いなあ、と頬を緩めるユア。無表情のトラ猫。
 さあさあ届くか、と今度は両手で振り始めるとトラ猫は先手必勝と言わんばかりの腕跳び付き。こいつ、学習している!と密かに驚くもちょっと高い位置に腕をあげればやはり届かず。表情こそわからないが悔しいのだろう、みたらしくんはしょんぼり鳴いた。
 と、楽しんでいるところで女性店員がにこやかにユアへと声を掛ける。

「お客様!にゃんだふるケーキセットご用意できましたよ」
「そうか。ありがとう。直ぐ二階に向かうよ」

 人の好い蘭の微笑は同性だろうと関係なく魅了する。女性店員はやや上ずった声でちょっと噛みつつ返事するとケーキセットを二階に運ぶ。その後ろをユアがついて歩けば、どうやら揺れる尻尾をまだ狙っているらしいみたらしくんがついてくる。
 尻尾の先に掠る感触に振り返ればユアは微笑み、ちょっと高い位置に尻尾をあげてから二階席へ。

 空いていた窓際の席へと連れられれば、テーブルに置かれたケーキに声も漏れだす。
 苺に囲まれた薄ピンクのドーム状のケーキにはホイップクリームの耳、チョコレートで描かれた顔はにっこりと笑んでおり、耳の間に乗せた苺はまるでリボンのよう。
 しかもこれだけではない、なんていったってケーキセット。セットなのだ。ケーキと共に運ばれて来たティーカップは取っ手がねこの尻尾を模した可愛らしい品。揺れる紅茶の水底には魚がぽつんと描かれている。添えられたミルクポットには猫の足跡がぽつぽつり。シュガーポットなんて蓋の持ち手がネズミの形をしている。

「ほんと可愛いなこのセット」

 思わず声に出してしまうほどだった。席について早々、スマホを取り出すと一枚、二枚と角度を変えながらパシャリ。さて、反応はどうだろう。と友人の顔を思い浮かべながら一枚の写真を送信すれば、いただきます。どんなに可愛くとも、この苺色の猫にフォークを入れねばならないのだ。なんといっても働き過ぎて小腹が減っている。
 腹が減ったら食べる事、それを朽ちるまで繰り返すことが自然の摂理。ユアは摂理の枠組みから外れてしまったかの王の姿をふと浮かべた。消えていったかの王は、満たされていったのだろうか。それとも今もまだ腹が空いているのだろうか。
 食まれた片手を見つめて、落とした片腕を思い返して、ああだからこそ自分は食べねばならないとフォークを手にする。

(腹ペコだった王様の分も食べておかないと、きっと怒られてしまうね)

 かの王の代わりに、などと烏滸がましいだろうか。苦笑するユアの膝に空気も読まずと飛び乗るものひとつ。なんだかんだここまでついて上がって来たみたらしくんだ。じゃれ疲れたのか弱い声でにゃあんと鳴いた膝上の猫に、またあとで遊ぼうと声だけ掛けて。ユアはケーキへフォークを落した。
 今日という日を、血肉とするために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

寧宮・澪
おおおー……猫さん、ですよー……。

うん、とりあえずー……メドラさんのほっぺをつついてからー……遊んでくれる、猫さんに、遊んでもらいましょー……。

メドラさんー、ありがとーございますー……。
ついでに、ほっぺ、ぷにぷにさせてくださいー……。
つつこうとする理由、ですかー……?
ぷにぷに、してそう、だったのでー……。
お嫌なら、つつきません、のでー。

猫さんにはー……ビニールと、紐でー……ふりふりー……。
遊んで、くれません、かー……?

いいですねー……かわいいですー……。
猫さん、かわいいー……。
寝てる子もいいですねー……一緒に、寝たくなりま

すやぁー……。

アドリブとか、歓迎ですよー……。



●まどろみの毛布
「あー……メドラさーん」
「あら?」

 猫をじゃらしまくっているくらげ娘の下に、眠たげな少女が近寄って来た。寧宮・澪(澪標・f04690)は出会い頭に吸い込まれるような滑らかさでメドラの頬をつつく。無抵抗のくらげは大きく瞬きはしつつも触腕で猫をじゃらし続けている。最早じゃらしのプロの風格だ。

「ぷに、ぷに……おお、これはなんとも、しっとりすべすべ……」
「?」
「あ、すみませんー……あまりにも、ぷにぷにしてそう、でしたからー……」
「べつにいいけれど。ええと、みほさん」
「みおですよー……」

 真っ先につつきに来られたことにこてり、首を傾けて澪を見つめると、特に気にする様子もなくさらっと間違われた名前を訂正する。だいじょうぶ、おぼえたわ。と震えるくらげの頬をもちもちしつつ、澪の視線は猫達の方へ。
 皆が植物園で戦闘している間も遊び続け、おやつをあげていた影響もあるのだろう。メドラの周囲の猫は自然体そのもの、じゃれて遊び、膝の上で眠り、しかし小さな登り甲斐のない身体にはよじ登らず。触腕の先をぺっぺす猫パンチしながら床を転がっているものもいる。

「私もー……この子たちと遊んで、いいでしょうかー……」
「もちろんよ。ねこさんたちだって、店員よ。おもてなしのプロだもの。心配いらないわ」

 どうやらメドラの感性ではここはホストクラブと同義の存在のようだ。猫達にもてなしてもらい、遊んでもらう。チップという名のおやつを与えて、酒の代わりに食事を頼む。言われてみればそんな気もしてきた澪がほほーと納得した。
 ならばと取り出したのは、つい先ほど借りてきたビニール袋と紐。ふりふり、頭上で揺らしてみると触腕で遊んでいた猫が二匹ほど澪の紐へと跳び付いた。が、袋はやや反応は薄めだ。

「おやー……」
「えっとね、ビニールの袋は、置いてあげた方がよろこぶわ」

 ふむ、と助言に従い床にビニール袋を置くと、メドラにじゃれついていた一匹が音に反応した。白猫は警戒しながらも近づいて、鼻をひくひく。そこが安全だと分かればするんと入り込んだ。かさがさごそかさ、新たな邪神よろしく動きまくるビニール袋から白い足が生えてくるとすっくと立ちあがる。頭にビニールを被った状態で、猫は澪を見た。

「おぉー……これは、気にいってもらえた?の、でしょうかー……」
「ええ、これは大満足のようよ。しらたきさんもうれしいみたい」
「しらたきさん……」

 若干シュールな状況ではあるが、澪は持ち前のマイペースでこの状況をスルーした。ビニールをかさつかせながらこちらにやって来る白猫しらたきさんへと紐をちらつかせる。床に垂らす紐を反応されるタイミングで引っ張り、引っ張り、まるで生きているかのように。そうすれば、たしりたしりと紐を叩きつつ、澪の方へと寄ってくるしらたきさん。ややふらついてはいたが膝まで導いた。

「おじょうずね」
「いえいえー……」

 太腿の上で座ったままのしらたきさんからビニール袋を取ると喉をうりうり。剥ぎ取られた事に目を見開いたしらたきさんではあるが、喉を撫でられあっという間におねむモード。どうやらメドラと遊んでいた分の疲れもあったようだ。そのまま澪の膝上で香箱座り、人の温もりの中で静かに微睡み始めた。

(いいですねー……かわいいですー……寝てる子もいいですねー……)

 そんなしらたきさんを見てか、それとも平常通りか、澪の目蓋もずんずん重たくなっていく。伝染した眠気にあらがうはずもなく思考は浮遊し、大きく舟を漕ぎ始める頭。さりげなく澪の方へと猫を誘導していたメドラが気付いたころには、夢の世界で猫と遊ぶ澪の姿があった。
 くらげの娘が澪のブランケットをかけ直すと、ぬくい布に反応した猫達が寄り付き始める。集まる猫達に胴の上を占拠される天使の娘へ、くらげは小さく微笑んだ。

「おやすみなさい、おつかれさまね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジズ・レオリー
にゃんこカフェ。…ジズは初めて訪れる場所だ
知らず心が躍るのは
生物に触れたときの、あの計算外の感情が蘇るからか

…しかし、ジズの体力は限界のようだ
手近な椅子に腰をおろし一息
足元を見回すも猫の姿は無い
目を細めて少し離れた場所を見やれば猫らしき姿が

………遠いな

そういえばと思い出し猫のおやつを手に乗せ
ずいと前に突き出す
あの個体は此方を見ているようだ
これで寄ってくるのでは、と期待を込めて

数拍待てば
ひょいと背後から肩に乗る猫

…む。不覚。
其方から来るとは予想していなかった。

見つめていたものは猫ではなかったようだが
こうして触れあえたのだから問題は無い
「満たされる」という事象の意味を
ジズは少しばかり理解したようだ



●ぬくもりの真実
 帰還の時間が迫る中、今だ猫達に触れあえないままの者がいた。一人掛けのソファーに身を沈めているジズ・レオリー(加護有れかしと事有れかしと・f13355)だ。彼の体力は先程までの戦いで消耗しきっており、高揚した精神に追いつかない肉体がふかふかのソファーにジズを縛り付けていた。
 猫カフェ。それはジズにとっては未開の地。目の前で猫と遊ぶもの達を見ながら、猫と眠る者達を見ながら、戯れる猫達を見ながら、ジズは己に搭載された人心というものがこうも激しく穏やかに機能できたのかと驚いた。

(きっと思い出すからだ)

 力なく投げ出していた片腕を肘置きに乗せ、開いた掌を蓮華色の瞳でじっと見る。あの時、そう、やけに小さなセキセイさまがこの掌に己の身体をすり寄らせてきたあの時。跳ね上がったようで、じわりと温かいような衝撃が胸の奥にあった。計算外のそれを心地よいと認識したあの感触を思い出してしまう。
 またもう一度、そう思うのだがどうにも疲れて動けない。そのうえ猫達はというと遊んでくれるもの達の方へと寄っていきがち。座して動かぬ人形の近くは通り過ぎていくのみだ。

(……遠いな)

 こうして眺めているだけというのはどうにも寂しい。そういえば、あの王の下にも最初は襲われていると間違えんばかりの鳥が群がっていたらしい。自分たち猟兵が縄張りに踏み込んだことで離れていった鳥たちの事を、あの場所でどう思っていただろう。

――今のジズと同じだったろうか。

 と、目を細めていたその時だ。
 ずっと入り口近くで遊んでいた一匹の子猫がジズの近くまで寄って来る。白キジトラの子猫は尻尾をぴんと立ててジズの近くをうろうろ。もう少しこっちに寄って来てくれはしないか。視線での訴えではどうにもできない。うまくピントが合わない視界に白くぼんやりとした何かを見つめていたジズだが、ふとソファー横の机に置いていたものを思い出す。店員に注文し、持ってきてもらったまでは良かったがすっかり放置していた、にぼしだ。
 重い身体を起こして、座った姿勢のままやや前のめりに。にぼしをふりふり小さく揺らして子猫の意識が向くことを願う。
 すると、子猫は気付いてジズの方へと寄って来た。少しずつ、少しずつ体勢を変えれば視界にはっきりと猫の姿が映り……と前方にばかり気を配っていたジズの背に、すとんと降りてくる重たさ。何が!と状況を把握しようとした瞬間には重さはするりと肩を流れ落ちて膝上へ。延々アスレチックで遊んでいた三毛猫が新たなアスレチック――すなわちジズへと飛び乗って来たのだった。

「……不覚。其方から来るとは予想していなかった」

 想定外であるにも関わらず、不思議と嫌な感覚はない。
 すると膝の上に先程の子猫も追加される。あっという間に満員御礼の懐にジズは見つめていた時とは異なる高揚を感じていた。
 その感覚は飲み物にも似ていた。空っぽの器になみなみと注がれる温めたミルクのように、器に熱を移しながら包む両の手さえも優しくぬくめていく。

――ああ、こういうことなのだろう。

 無邪気に煮干しを齧る猫達を撫でた。己の中にも空の器があって、あの小鳥たちが、この子猫たちが、そこにすっぽりと収まりに来る。熱がじんわりと器を超えて、己の中へと広がっていく。こういうことか。ふわふわの毛並みと生き物の熱に、ジズが小さな笑みを零す。
 聖夜の贈り物であった彼は、「満たされる」という事象について少し理解した。


●みたされないはずの
 猟兵達は去り、その後。
 静寂を取り戻した植物園に、生物の気配はなくなっていた。

 街中から外れた、それも廃れた植物園にわざわざ訪れるものはそういないだろう。
 人の手を離れたこの場所は、人により設計された楽園はいずれ骨まで朽ちる。
 残るものは、ただ満ちてゆく命の緑。

 神の姿をしたさびしいものはそこにいない。
 残ったのは食い尽くされた大地、王の亡骸を食らった庭園のみ。

 だがいずれ、命が巡りこの枯れた玉座に再び緑が根付くとき。
 王が宝石の少女へ囁いたはずの言葉が音を持つだろう。
 その身を融かし、最期に掬い上げた慈悲で、王が何を望んだのかを。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月22日
宿敵 『緑の王』 を撃破!


挿絵イラスト