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血汐湾岸・聖洗禮儀

#アポカリプスヘル #クライスト・ヴォーテックス #ヴォーテックス一族

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#クライスト・ヴォーテックス
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#ヴォーテックス一族


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●狂人教祖
 暗黒の竜巻『オブリビオン・ストーム』に人類が敗北した世界、アポカリプスヘル――かつてのメキシコ合衆国『アカプルコ・デ・フアレス』は海岸リゾートとしてしられていたが、今は『クライストシティ』と成り果てた。
 風光明媚であった海岸線は今やバリケードと有刺鉄線が張り巡らされ、その内側で麻薬や機械兵器の生産による黒煙ばかりが上がる薄汚れた土地に変わっている。
 もはや軍事拠点と呼ぶに相応しい。
「兄妹たちは誰も気がついていないのか? 俺たちの抗争は仕組まれている」
 狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』は、日に日に激化していく兄妹同士の抗争に違和感を覚えていた。

 もとより血の繋がりで結ばれた結束ではない『ヴォーテックス一族』であったが、一枚岩ではないということ以外は概ねうまく付き合ってきたつもりであった。
 だが、此処最近の抗争は小競り合いと呼ぶにはあまりにも大仰しいものばかりである。
「ヴォーテックス・シティに忍び込み、俺たちの対立を煽るネズミ共……その数は十や二十ではきかず、しかも行動力や戦闘力は雑魚のそれじゃない」
『クライスト・ヴォーテックス』は気がついていた。
 これは己達を分断し弱体化させようとしている何者たちかの思惑が働いていることを。
 しかし、そのネズミと称した存在は尻尾は見せても、それを捉えることを許さない。神出鬼没が如く現れては、こちらの内輪をかき乱していくのだ。

「冗談じゃない、死ぬのは御免だ」
 彼は驕りもしなければ、侮ることもなかった。
 ネズミと嘲っても、事実己達は内側から対立に寄って戦力を悪戯に消耗させられている。即ち、自分たちを追い込むネズミたちは、ネズミのような何か別物の存在である。
 それを正しく理解するからこそ、『クライスト・ヴォーテックス』は危機感を募らせる。
 他の兄妹たち全てを犠牲にしても己だけは助かる算段を計算していく。

「だが、奴らが本当に神出鬼没であり、突如として襲ってくるのなら、この『白の城塞』で迎え撃つしかない」
『クライストシティ』は白塗りの城壁に囲まれている。増産している機械兵器と麻薬漬けにした信者たちの力があれば、これまでの抗争で消耗した戦力であっても十分に敵対者を叩くことができるはずだ。
 だが、それでも懸念は払拭できない。
 これまでネズミと称した存在達はヴォーテックスシティに度々侵入しては逃げおおせている。
 ならば、その力を己の暗殺に用いたとしたら。

「……オブリビオン・ストームを齎した偉大なる神々『フィールド・オブ・ナイン』よ。俺はお前達を信仰し、お前達を蘇らせる為、オブリビオン教団も造り上げた。その恩を、今こそ返す時じゃないのか?」
『クライスト・ヴォーテックス』は何が見えているのか虚空に言葉を投げかける。
 しかし、彼の言葉は届かないようであった。
「まだ何かが不足しているとでも? とっとと蘇り、この俺に力を貸せ!」
 投げかける言葉と信仰は果たして正しき神に届くのか。
 それとも、偽りの神でしかないのか――。

●聖洗禮儀
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
 彼女の瞳が爛々と輝いている。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件の舞台はアポカリプスヘル――かつてメキシコ合衆国と呼ばれた国が存在し、アカプルコ・デ・フレアス……かつて海岸リゾート地として知られた『クライストシティ』です」
 これまでアポカリプスヘルにおいて『ヴォーテックス一族』と呼ばれるレイダーキングの中のキングとも呼ばれた一族の一人『クライスト・ヴォーテックス』の所在が判明したのだという。

「狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』は、白塗りの城塞である『クライストシティ』にて私達猟兵の蹴撃に備えています。オブリビオン教団を興し、隷属させた人々を使って麻薬や機械兵器を生産させています」
 この城塞都市が本拠地であり、軍事拠点であるのだ。
 これを壊滅させれば、いずれ来るアポカリプスヘルでの大規模な戦いに有効であるはずなのだ。
 言うまでもなく『ヴォーテックス一族』の戦力は強大である。
 ここで『クライスト・ヴォーテックス』を襲撃し、一気に戦力を削ぐのだ。

「為すべきことはシンプルです。これまで『ヴォーテックスシティ』に皆さんは潜入し、混乱に乗じて脱出してきました。ですが、今回は違います。真正面から戦い、これを叩き潰さねばなりません」
 だが、敵であるオブリビオン教団の信者たちは全員が近接攻撃を弾く白い服に身を包み、特製の銃器で武装しているのだ。
 こちらの近接攻撃は無効化し、されど近づけさせぬとばかりに凄まじい火力でもって猟兵達苦しめるだろう。
「こちらも遠距離で対応したほうが有利でしょう。ですが、防護を無視して無理やり攻撃をねじ込む方法があるのならば、それも有効であると言えるでしょう」
 例えば、己の拳のようにとナイアルテはいつもの微笑みを浮かべる。

 市街地に溢れるオブリビオン教団を撃破し、『白の城塞』と呼ばれる『クライスト・ヴォーテックス』の住まう巨大な屋敷へと突入すれば、やはりオブリビオン教団の信者たちで此処も溢れかえっている。
「この屋敷は、屋敷とようにはあまりにも巨大な屋敷なのです。戦車すらも悠々と入れるほどの敷地であり、軍事的な防御力にも優れた南国の木々やプールがあちこちに点在しています。いわゆるマフィアの屋敷を『ヴォーテックスシティ』のように大きくした、と言えばわかりやすいでしょうか」
 それを突破すれば『クライスト・ヴォーテックス』に至ることができるだろう。

 もはやアポカリプスヘルにおける大規模な戦い、オブリビオン・フォーミュラが現れる戦争の如き戦いは差し迫った事態だ。
 勃発するのはもう時間の問題であれど、それまでに猟兵達はやれることがあるのならば、それを成さねばならない。
「どうかお願いいたします。来たるべき戦い、それは確かに多大な犠牲を伴うものかもしれません。ですが、それをわずかでも減らすことができるのならば」
 喪われるはずだった生命に手を差し伸べて欲しい。
 そう願うようにナイアルテは爛々と輝く瞳を伏せて、猟兵たちを送り出すのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はアポカリプスヘルにおける『ヴォーテックス一族』の一人である『クライスト・ヴォーテックス』の本拠地を襲撃し、これを打倒するシナリオになります。
 来たるべき戦争において敵戦力を少しでも削ることが目的となっております。

●第一章
 集団戦です。
 太陽照りつけるアカプルコの市街地でオブリビオン教団の信者である『クローン将校部隊』との戦いになります。
 彼女たちは全員が白い服に身を包み、特製の銃器で武装しています。
 近接攻撃を弾く白い服は、防護を貫くような有効的な手段を用いない限りは皆さんの近接攻撃を弾きます。
 遠距離で攻撃することが有利な対応となるでしょう。

●第二章
 集団戦です。
『クライスト・ヴォーテックス』が住まう『白の城塞』と呼ばれる超巨大な屋敷に突入し、前章と同じ白い服に身を包んだオブリビオン教団の信者たちである『フレイムアーミー』たちとの戦いになります。
 前章と同じよう攻略法が有効です。

 また教団員は容赦なき死を与える者を『死の笛(シルバト・デ・ラ・ムエルテ)』……笛の音とともに死を告げる者として畏敬の念を覚え、思わず反撃の手を停めて魅入ってしまいます。
 アカプルコの太陽の下、華麗なアクションで次々と敵を仕留めましょう。

●第三章
 ボス戦です。
『クライスト・ヴォーテックス』との決戦になります。
『白の城塞』の中の『白一色の大広間』、あるいは広大な庭園での決戦を繰り広げます。
 対話不可能なほどに圧倒的な暴力で迫る『クライスト・ヴォーテックス』は、レイダーキングの中のキングと呼ばれるに値するほどの容赦のなさです。
 これを撃破し、来たる戦争での敵戦力を少しでも削り取りましょう。

 それでは、アポカリプスヘルにおける死の連鎖を断ち切るため、オブリビオン教団の教祖を打倒する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『クローン将校部隊』

POW   :    将校級軍隊格闘術
【将校級の軍隊格闘術】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    暴走したクローン製造機
レベル×5体の、小型の戦闘用【の自身の劣化コピーの増援】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ   :    将校級制圧術
【死角からの自身もしくは味方からの不意打ち】が命中した対象に対し、高威力高命中の【同一思考による味方からの連撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。

イラスト:慧那

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 その街が風光明媚な観光リゾート地であったのは、最早見る影もない。
 あるのは嘗ての街並みの瓦礫と、そこら中に転がる死体の山であった。この街では、死こそが日常茶飯事である。
 彼等の罪はない。
 徒に消費される娯楽の如き死であった。
「我らが教祖に仇為すネズミ共に死を!」
『クローン将校部隊』がアカプルコの街に展開する。
 彼女たちは優秀な軍人の遺伝子をかけ合わせ、人工的に将校級の人材を作り上げることを目的とした研究施設から生まれた存在であった。
 しかし、暗黒の竜巻、オブリビオンストームに巻き込まれたことによりオブリビオンへと変貌した。
 すでに彼女たちの倫理観は、オブリビオンそのものであり、オブリビオン教団の教義こそが己達の存在意義であると隷属させた人々の手によって作られた銃器を手に近接攻撃を弾く白い服に身を包んでいる。

「我らは教義を実行する。あまねく全ての生命に死を。全てが違う生命など生命に非ず。単一の唯一無二たる生命こそが至上。それ以外の生命など二束三文であると知れ」
 彼女たちは己達の存在こそが次代の人類の形であると豪語する。
 そのために徒に犠牲になった人々の数は数えることもできないだろう。

 だが、猟兵たちが来た以上、もはやただの一人の犠牲者を出すことはない。
 彼女たちは知らないのだ。
 猟兵達のユーベルコードが輝くのは、いつだって誰かを護る時であることを。
 そして、その時こそ、もっとも強く輝くのだということを――。
村崎・ゆかり
いよいよヴォーテックス一族との直接対決ね。この世界での最終決戦、近そうだわ。
それじゃ、市街地へ乗り込みましょ。

あたしは派手に敵の目を引いて、他の猟兵の負担を減らすように動く。

黒鴉の式を周囲に飛ばして死角を無くし、不意打ちされないようにして。
「結界術」「全力魔法」重力の「属性攻撃」「範囲攻撃」「衝撃波」「道術」「仙術」で、天絶陣。
隕石落とし以上の遠距離攻撃はないでしょう?
ただ、隕石が落ちるまでタイムラグがあるのも確か。
「オーラ防御」を張った上で、『鎧装豪腕』に「盾受け」させて、銃撃から身を守る。
付近住民は、轟音を聞いて逃げてくれてたらいいんだけど。

向かってくる敵がいなくなったら、目標地点へ前進。



 かつてのリゾート地であるアカプルコは燦然と輝く太陽と煌めく海が今も尚残っている。
 けれど、そこには自然の恵みを感受する人々の喜びはない。
 あるのは隷属の日々と隣り合わせの死だけである。
『クライストシティ』へと変貌を遂げた街の中には至るところに死骸が山積している。人々は次の瞬間には自分がその山積した死骸の一部になることさえ受容している者たちばかりであった。
 あまりにも多くの死の臭いは、人々の嗅覚や意識さえ麻痺させていく。

 ゆえに彼等は天を飛ぶ黒鴉の式神の姿を見ても何の感慨も起こることはなかった。
「いよいよ『ヴォーテックス一族』との直接対決ね。この世界での最終決戦、近そうだわ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は式神から送られてくる情報を持って、敵の目を引くことにした。
 派手に暴れて他の猟兵たちが戦いやすくなればいいと考えたのだ。
 有刺鉄線に囲まれた市街地は至るところにバギーや他の車両といった残骸によってバリケードが組み上げられ、遠距離攻撃以外の近接攻撃を弾く白の服装に身を包んだ『クローン将校部隊』を守っていた。

「不意打ちされないようにと思っていたけれど……これは流石に」
『クライストシティ』で生産された銃器から、認識された式神を穿つ弾丸がばら撒かれるようにして放たれる。
 無尽蔵の火器にクローンであるがゆえの同一思考。
 瞬時に連携を組み上げ、情報伝達の速度まで異常。近接攻撃を向こうは弾いてくるのに、敵は近接攻撃すら可能としている。

 一方的すぎる地の利。
「けれど、やらないといけないのなら」
 ゆかりは戦場に躍り出る。
 彼女の姿はひと目で猟兵であると『クローン将校部隊』たちに知れ渡るだろう。派手に敵の目を引くという意味では、ゆかりは成功していた。
 けれど、敵の数を減らす攻撃という意味ではどうであったことだろうか。
 手にした薙刀はどうあっても白の服に弾かれてしまう。ならばどうするか。

「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。天より降り注ぐ先触れのかそけき光よ。滅びの遣いを導き、地上をなぎ払え。疾!」
 輝くユーベルコードの瞳。
 戦場に降り注ぐ光の流星雨が『クローン将校部隊』を打つ。
「光の星……! これはユーベルコードか」
「だが、この程度の目くらまし程度の光で」
『クローン将校部隊』は、ゆかりがユーベルコードによる目眩ましでもって己たちの意識をそらそうとしているのだと理解していた。

 事実そのとおりであるが、彼女の天絶陣(テンゼツジン)の本領はここからである。
 放たれる銃弾をゆかりは『鎧装豪腕』とオーラの防御で弾く。
 この戦場の音で隷属させられている住民たちが逃げてくれていたのならばいいと思った。
 けれど、それは難しいだろう。
 死の臭いの充満した市街地。そこで明日にすら絶望した者たちが生半可なことで生命を守ろうとはしないだろう。
「無駄だ。この程度の――!?」
『クローン将校部隊』たちは異変に気がつく。
 ゆかりが何故姿を表したのか。己達の攻撃を前に何故防戦一方でいるのか。

「私達をこの場に留めている……理由は」
 彼女たちは漸くにして気がついたのだ。
「それで優秀な将校のクローンだなんて笑わせるわ」
 ゆかりの瞳は今だユーベルコードに輝いている。そう、降り注ぐ流星雨はただのマーキングに過ぎない。
 本命は天より降り注ぐ燃え盛る巨大隕石である。
 太陽照りつける『クライストシティ』に墜ちるは、天の鉄槌。

 巨大隕石が『クライストシティ』に点在する『クローン将校部隊』めがけて降り注ぎ、凄まじい衝撃波でもって彼女たちを吹き飛ばしていく。
 風が土煙を吹き荒れさせ、人々は見上げただろう。
 あれだけ忌々しくも死の臭いを充満させていた『クライストシティ』に刻まれたクレーター。
 それは奇しくも嘗てのアカプルコの街を思わせる潮風の匂いを、今ここに流れ込ませるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎

ヴォ―テックス一族の戦力を大きく削ぐ絶好の機会か
この地で起こる悲劇を一つでも少なくするために!

相手はクローン将校達か
以前に戦った事がある相手だが、今回は特殊な装備で身を固めているようだな

接近戦が効かないというのならこっちも遠距離戦を行うだけだ!
風の疑似精霊・力を貸してくれ!
携帯した飴を媒体に固有結界・黄昏の間を発動、風の疑似精霊を召喚
自身の周囲へ風の防御結界を形成する+【オーラ防御】でさらに強化を

これで近付く敵はたとえ不意打ちや死角からの攻撃であっても俺までは届かない

風の力を一部利用し刀に纏わせ、【斬撃波】の【乱れ撃ち】で敵の銃弾ごと切り払う
防御結界に綻び出来たら瞬時に修復



 巨大な隕石の一撃が『クライストシティ』の市街地を穿つ。
 爆風が荒び、バリケードを吹き飛ばしていく光景を見ながら、鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は市街地を走る。
 彼の瞳にあったのは、『クローン将校部隊』であった。
 彼女たちは白い服を身にまとい、近接攻撃を弾く特殊な力を有している。普段から破魔刀を用いる彼にとっては致命的であったのかもしれない。
「相手はクローン将校達か。以前に戦った事がある相手だが……」
 アポカリプスヘルでの戦いにおいて、彼は一度、『クライストシティ』に存在する『クローン将校部隊』と似たレイダーたちと戦ったことがあるのだろう。

 しかし、今回の彼女たちは近接攻撃を弾く。
 ならば己がすべきことは一つである。
「ならこっちも遠距離戦を行うだけだ。風の疑似精霊、力を貸してくれ!」
 ひりょは手にした飴を媒体にユーベルコードを発現させる。
 周囲に在った無機物が風の疑似精霊に変換され、己の身に纏う風の防御結界へと形成されていく。

 それこそが固有結界・黄昏の間(コユウケッカイ・タソガレノマ)である。
「射撃が弾かれる……あの猟兵も我らの持つ白き服と似たものを有しているのか」
『クローン将校部隊』は、即座に火器から放たれる弾丸を風の結界でもって弾くひりょの姿を認める。
 ゆえに彼女たちは近接攻撃に切り替えたのだ。
 火器が効かぬのならば、接近して叩く。
 それも死角からの不意打ちであれば、猟兵と言えど躱すことはできないだろう。

 何せ彼女たちは近接攻撃に対して耐性を持ち、こちらの近接攻撃はそのとおりではないのだ。
 ならばこそ、彼女たちは一方的に猟兵に対してのアドバンテージを得ていることになる。
「『ヴォーテックス一族』の戦力を大きく削ぐ絶好の機会……! それを見逃すわけにはいかない」
 ひりょの瞳がユーベルコードに輝いていた。

 それはいかに不意打ちを放つのだとしても、風の疑似精霊によって張り巡らされた防御結界が『クローン将校部隊』たちを寄せ付けないのだ。
「見えない壁に、圧される! なんだ、これは!?」
 不意を討とうとひりょの背後から迫っていた『クローン将校部隊』の一人が呻く。彼女たちはクローン同士であるがゆえの強力な連携戦術でもって、ひりょを叩こうとした。けれど、ひりょのユーベルコードによって呼び出された風の疑似精霊は死角すら無くす。

 障壁に阻まれた『クローン将校部隊』の動きが止まったのを、ひりょは振り返りざまに斬撃を振り下ろす。
 だが、距離が離れている。
 破魔刀の間合いからは程遠い。
 けれど、風の疑似精霊のちからが宿った破魔刀のいち撃破、斬撃波となって『クローン将校部隊』の一人を一刀のもとに両断するのだ。
「この地で起こる悲劇を一つでも少なくするために!」
 ひりょは、返す刃で未だ不意打ちを狙っていた『クローン将校部隊』たちをバリケードごと斬撃波でもって切り裂く。

 それは太陽の光が降り注ぐアカプルコにおいて、長きにわたる死の臭いを断ち切るには十分なものであったことだろう。
 どれだけこの地に死が染み付いていたのだとしても、猟兵であるひりょは、二度とこの大地で無辜の生命が散らされることのないようにと力を振るう。
「みんなの笑顔を守りたい」
 そのためには、と疑似精霊の風の刃が乱れ放たれる。

 凄まじい斬撃は嵐のように『クローン将校部隊』たちを切り裂き、血風遊ぶ光景を『クライストシティ』、そのオブリビオン教団の信者たちが着る白い服を真赤に染め上げていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェット・アームストロング
アポカリプスヘル……何という荒廃した世界だ。
異世界とは言え見るに耐えない。ヒーローとして、この世界に正義を示さねば。

市街地に潜入する。
仲間が陽動してくれている。ならばそれに乗じて敵の密度の少ない箇所を選び突入。見つからないのは難しいだろうが、敵の分散は出来るだろう。
全身を【ヘビーフォース】で覆い【オーラ防御】。銃弾を防ぐ。接近戦を挑まれたら強化された【スーパーマッスル】の【怪力】による【グラップル】で受けて投げ飛ばす。
包囲されたら【Energy Geyser】使用。大地を殴り、敵各々の足元から吹き上がるエネルギーで纏めてなぎ払う。
私の名はヘビーセット!君達の歪んだ支配からこの地を解放する!



 他世界を知る猟兵にとって、アポカリプスヘルはオブリビオン支配の影響を強く受ける世界に映ったことだろう。
 文明は荒廃し、人々は明日を生きる糧だけを求めて生きている。
 隷属を敷いられた人々に生命の保証はなにもない。
 徒に奪われ、死せる者たちの遺骸がそこかしこに山積しているのが『クライストシティ』の惨憺たる現状であった。
「アポカリプスヘル……何という荒廃した世界だ。異世界とは言え見るに耐えない」
 ジェット・アームストロング(ヘビーセット・f32990)は猟兵である以前にヒーローである。

 ここまで人の身も心も荒廃した光景を見せられていては、彼の心にともした正義の心が黙っていられるはずもなかったのだ。
「ヒーローとして、この世界に正義を示さねば」
 彼は『クライストシティ』の市街地に潜入し、他の猟兵達の行動によって『クローン将校部隊』たちがひきつけられているのを横目に敵の道都度の少ない箇所を選んで突入する。

 しかし、それは『クローン将校部隊』たちにとっては想定内の行動であったのだろう。
 即座に『ヘビーセット』を取り囲む『クローン将校部隊』たち。
「愚かな。その程度の行動、私が見抜けぬとでも思ったか」
「然り。敵の陽動があるのならば、本命があることもまた当然。ならばこそ、こうして猟兵が釣れる」
 彼女たちは特製の銃火器でもって『ヘビーセット』に弾丸を見舞う。
 それは雨のように降り注ぎ、『ヘビーセット』を蜂の巣にするはずであった。けれど、硝煙に曇るアカプルコに風が吹き荒れる。
 ヘビーフォース――それは『ヘビーセット』の持つミュータントパワーによるエネルギーのオーラである。
 
 それが『ヘビーセット』の身体を弾丸から守り、次々と大地に落ちていく。
「それは此方のセリフだ。この程度で私を停められると――!」
『ヘビーセット』はその有り余る膂力でもって瓦礫を持ち上げ、『クローン将校部隊』たちへと投げつける。
 近接攻撃を弾く白い服をまとったオブリビオン教団の信者である『クローン将校部隊』たちには『ヘビーセット』の拳は通用しない。
 されど、瓦礫を投げつけるのであれば話は別である。
 銃火器が役に立たぬと判断した『クローン将校部隊』たちが一斉に『ヘビーセット』を取り囲み、襲いかかる。

「それは悪手であると言っておこうか! Energy Geyser(エナジーガイザー)!」
 その瞳がユーベルコードに輝き、彼の拳が大地を殴りつける。
 瞬間、その拳のエネルギーが大地から吹き上がり、『クローン将校部隊』たちに襲いかかる。
「何――!?」
『クローン将校部隊』たちにとって、それは想定外であったのだろう。
 敵は近接攻撃主体とするミュータントヒーロー。
 されど、『クローン将校部隊』たちには近接攻撃を防ぐ白い服がある。ならばこそ、致命打にならぬ攻撃しか『ヘビーセット』は放てぬはずであった。

 しかし、『ヘビーセット』のミュータントパワーはユーベルコードの輝きと共に地面から噴出し、『クローン将校部隊』たちを天高く吹き飛ばすのだ。
 それこそが彼のユーベルコードの力。
 彼の正義の心が具現化したかのようなすさまじい力は、『クローン将校部隊』たちであっても予測などできなかった。

 この荒廃した世界であるからこそ、『ヘビーセット』が示すことができるものがある。
 今も市街地のあちこちから視線を感じる。
 レイダーではない隷属を強いられた人々、明日の生命すらもわからぬ者たちの視線であった。
 オブリビオン教団の者たちに徒に、それこそ気まぐれに奪われるだけであった生命。

 それを『ヘビーセット』は見据え言うのだ。
「私の名は『ヘビーセット』! 君たちを歪んだ支配から開放する! そのために私は、いや――私達はやってきたのだ!」
 彼の宣言は人々の耳に届いただろう。
 支配され、奪われるだけであった人々は、確かにユーベルコードに輝く双眸、そこに希望を見出すことが出来ただろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堆沙坑・娘娘
近距離攻撃を無効化する服…しかしまずは近距離でパイルバンカーによる一撃を敵に叩き込みます。
その攻撃が弾かれるのか、完全に衝撃を吸収されるのか、攻撃のエネルギーで吹き飛ばすことはできても無傷というパターンなのか…どのように無効化するのか見極めます。
そしてそんなことをしていれば不意打ちをされるはずなので死角に振り返ってパイルバンカーから杭をニードルガンのように射出し迎撃します。私のパイルバンカーは遠距離にも対応できますし、その射出は射線上の全てを貫く【貫通攻撃】です。

雑兵にはこのまま遠距離攻撃だけで問題ないでしょうが…狂人教祖は近距離で仕留める方が確実でしょうね。方法を考えておかなくては。



 悪徳の都市、かつての『アカプルコ・デ・フレアス』は跡形もない。
 あるのは変わらぬ燦然と輝く太陽だけであり、大地には『クライストシティ』と成り果てた証とも言うべき有刺鉄線とバリケードに覆われ、いくつもの死体の山が積み上げられた地獄そのものであった。
 レイダー以外の隷属を強いられる人間たちは、ただの生産力に過ぎず、気まぐれに生命を弄ばれる存在でしかなかった。
 そこにあったのは、生命の尊厳などではない。
 あるのはレイダー、オブリビオンの享楽のための生贄。

 ゆえに人々は明日を望む気力すらなかった。
 しかし、そんな彼等の瞳に明日を夢見る希望の灯火が燈されようとしていた。
 巨大なる隕石が『クライストシティ』を穿ち、風が死臭を吹き飛ばす。次々と転移してきた猟兵たちが人々に呼びかける。
 もう、明日を望むこともできな日々を過ごす必要はないのだと。
「猟兵たち……やはりアレが我らの邪魔をするもの」
『クローン将校部隊』たちが徐々に猟兵達によって蹴散らされていくのを人々は如何なる思いで見ただろうか。

 一人の猟兵がパイルバンカーの一撃を白い服を着た『クローン将校部隊』へと放つ。
 其の一撃は弾かれ、軽く『クローン将校部隊』の身体が吹き飛ぶ。しかし無傷である。
「……攻撃を弾き、そしてダメージを追わない。しかし、ヒットの衝撃は受けている……」
 堆沙坑・娘娘(堆沙坑娘娘・f32856)は、パイルバンカーの杭が音を立てて再び装填されるのを確認しながら、今しがた己の一撃が『クローン将校部隊』の身体を吹き飛ばしたの目視した。
 事前に白い服を着た『クローン将校部隊』は猟兵の近接攻撃を弾くことを知っていた。しかし、実際に見て見るまで彼女は納得がいかなかった。

 その特性を知ることができれば、攻略の緒が見えるのではないかと感じていたのだ。
 そう、攻撃が弾かれる。
 しかし、杭打ちの一撃のエネルギーは弾かれるのだが衝撃だけは『クローン将校部隊』を吹き飛ばした。
 無傷であることから彼女は理解したのだ。
「理解したのならば、後は簡単です」
「無駄だ! どれだけ近接攻撃を仕掛けてこようとも!」
 一斉に『クローン将校部隊』たちが娘娘へと襲いかかる。
 不意打ちの一撃であったが、彼女にとっては意味がない。彼女に死角はないのだ。目覚めた時からずっとしていることだ。

『パイルバンカーを極めろ』

 ただそれだけのために彼女は実に六十年以上もパイルバンカーだけで武勇伝を築き上げてきた。
 それと同じだけの悪漢を打ちのめしてきた。
 ゆえに彼女の名を『堆沙坑娘娘』――パイルバンカー神仙拳開祖として轟かせるのだ。
 振り返った彼女のパイルバンカーから放たれるのはニードルガンのように杭を射出し、『クローン将校部隊』の白装束ごと身体を貫く。
「馬鹿な……そんなパイルバンカーが、あって、たまるか……!」
 彼女たちは驚愕しただろう。
 パイルバンカーと言えば近距離攻撃の代名詞である。だというのに娘娘は遠距離にも対応してきた。

 そう、六十年という月日は彼女のパイルバンカー神仙拳をさらなる境地へと至らしめるのだ。
「貫く」
 ぎし、と空気すらきしむような圧力を持って彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
『極めろ』と言われたパイルバンカーを彼女は実直に、愚直に研鑽してきた。
 その一撃が貫けぬものなどないというように『クローン将校部隊』を一撃のもとに射出(シゥーチゥー)されたパイルバンカーの一撃が白い服ごと『クローン将校部隊』を貫き、バリゲードごと全てを貫いていく。

 ただ、それだけである。
 彼女の意志とユーベルコードが輝く限り、パイルバンカーに貫けぬものなど何一つないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
『ヴォーテックス一族』の一人と決戦だぜ。
さあ、俺の妖刀の錆になりたいヤツは何処だッ!?
「…今回の敵に近接攻撃は有効じゃないって説明されたでしょ。」
…あぁ~、そうだったな。んじゃ破魔弓の出番だぜ。
遠距離武器であの数を真正面から相手は流石に骨が折れるからな。先ずはゲリラ戦だな。

市街地内で身を隠しながら
「…式、召喚【捜し鼠】」
式神で敵の位置を索敵、偵察するぜ。鼠の力ってヤツを敵さんに教えてやるよ。
後は、敵の死角から破魔弓で狙い射っていくぜ。

大暴れするのは、まだ先だ。今はネズミらしくコソコソ行くとするかね。


【技能・式神使い、索敵、偵察、スナイパー】
【アドリブ歓迎】



『ヴォーテックス一族』とはアポカリプスヘルにおいて猟兵が打倒すべきレイダー一族の名である。
 その一角である『クライスト・ヴォーテックス』の本拠地である『クライストシティ』を猟兵達はこれまでの散発的な潜入からの内部破壊ではなく、真正面から転移し乗り込み踏破していた。
 ユーベルコードが煌めく時、この『クライストシティ』に存在するレイダーたちは尽くがこれまでの悪逆の応報を受けていた。
『ヴォーテックス一族の一人と決戦だぜ。さあ、俺の妖刀の錆になりたヤツは何処だッ!?』
 神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)の鬼面がカタカタと揺れる。
 ヒーローマスクである彼は相棒である桜と共に『クライスト・シティ』に乗り込み、身を隠していた。

 今回のオブリビオン教団の信者達であるレイダーはもれなく近距離攻撃を弾く効果を持つ白い服を身にまとっている。
 よほどの手段が無い限り、この効果を貫くことはできないだろう。
 即ち、普段妖刀を得物とする凶津にとって、今回の事件は非常に相性の悪いものであった。
「……今回の的に近接攻撃は有効じゃないって説明されたでしょ」
 桜が嘆息しながら妖刀を納める。
 彼女たちが市街地に身を隠しているのは、そのためである。敵は特性の銃火器でもって近接攻撃ができない此方を一方的に攻撃できるというアドバンテージを持っている。

 これを如何にしてかいくぐるかが、今回の戦いの趨勢を決めるだろう。
『……あぁ~、そうだったな。んじゃ破魔弓の出番だぜ』
 凶津は仕方ねぇというように破魔弓を構え直す。
 しかし、如何に遠距離攻撃ができると言っても、真正面から『クローン将校部隊』の数を相手取るのは流石に骨が折れる。
 ならば、とゲリラ戦に趣向を変えて、彼等は市街地に身を潜める。
 
 それだけでは敵の所在などわかろはずもない。
 ならば、と桜のユーベルコード、式神【捜し鼠】(シキガミ・サガシネズミ)によって式神の鼠達が溢れるように一斉に飛び出していく。
 彼等の探索の技能でもって『クローン将校部隊』の位置を索敵し、偵察をしてもらってくるのだ。
 皮肉にも『クライスト・ヴォーテックス』が猟兵のことをネズミと称したのだ。
 ならばこそ、凶津の鬼面がカタカタと笑う。
『ネズミの力ってやつを敵さんに教えてやるよ』

 桜が破魔弓を構える。
 式神の鼠たちによって位置を割り出された『クローン将校部隊』は他の猟兵達との戦いで注意がそれている。
 ならばこそ、その背後を取ることなど容易であった。
「――射ます」
 桜の一射が違わず『クローン将校部隊』たちの背中を次々と貫いていく。
 式神の鼠たちの情報は正しかった。
 
 それ以上の他の猟兵たちが派手に目を引きつけていてくれるお陰で、破魔弓を射掛けるのを邪魔されること無く、桜は次々と集中して矢を放つ。
『大暴れするのは、まだ先だ。今はネズミらしくコソコソ行くとするかね』
 これより待ち受けるはさらなるオブリビオン教団の信者たちと、その教祖である『クライスト・ヴォーテックス』である。
 無駄に消耗する必要もない。
 まだまだ敵は多いのだ。なればこそ、桜は破魔弓を手に市街地を走る。すでに式神の鼠たちによって『クライスト・ヴォーテックス』の屋敷の位置、その警戒網が薄い場所は割り出している。

 一刻も早くこの街で隷属を強いられている人々を救わねばならない。
 桜と凶津、二人の心にある正義の灯火は今、アカプルコの空に浮かぶ太陽よりも燃え上がるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミレア・ソリティス
任務を受諾しました。
ミレア・ソリティス、出撃します

第一目標は敵は「同一性の強い集団」…ですか
都市区画への突入前にUC【コール・レギオン:α】を使用、
「私」を中継サーバーとし
全く同じ「ミレア」9機を現地へ転送
装甲・構造等簡易化した「ミレア」485機を現地で生成
9機それぞれに50機の簡易機を付け、残りはサーバー機の護衛とし、
完全同期した459機のミレアを投入します

攻撃時は常に各機のブラスターライフルで制圧射撃や援護射撃を行い、
複数巻き込めるのであればランチャーでの範囲砲撃を。
不意打ちを狙う敵は別の機体の援護射撃で迎撃し、回避困難ならば簡易機が盾となりかばい、そのまま反撃を行います

※アドリブ歓迎です



『クライストシティ』の市街地に張り巡らされたバリゲードと有刺鉄線の内側で猟兵達の蹴撃を迎え撃っていたのは『クローン将校部隊』と呼ばれるオブリビオン教団の信者たちであった。
 彼女たちは奇しくも、ミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)と同じであった。
 いや、厳密には違うのだ。
 優秀な軍人であるクローンと自身を複製し戦い続ける自律兵器を目指した試験体であるウォーマシン、ミレアとでは生い立ちも、その理念も違ったものであった。
「不意を撃たれるとは……私としたことが」
 猟兵たちが次々と『クライストシティ』に転移し、正面から戦う者や、それに意識をもっていかれた『クローン将校部隊』を背後から撃ち貫く者とに別れていく。

 あまりにも見事な連携によって猟兵達は市街地戦を有利に進めていた。
 ミレアもまた、その一人である。
『クローン将校部隊』が同一存在による集団の質の工場を狙っているのならば、ミレアは数でもって敵を圧するのだ。
『データ送信、同型機転送……』
『同時に簡易型の生成を開始』
『以降、中継サーバモードへ移行します』
『全行程完了、全機……行動開始』

 ――コール・レギオン:α(コールレギオンアルファ)。
 それは己と同じ『ミレア』を現地へと転送し、装甲、構造などを簡易化した『ミレア』を四百機以上を現地で生成していく。
 物資は現地調達でいいのだ。
 何せ、ここは『クライストシティ』である。あらゆる場所にバギーや車両の残骸があり、材料には事欠かない。
 さらに転移した『ミレア』と同型の性能を有した機体に簡易化した『ミレア』を護衛に着け、さらにサーバー機である己自身にも護衛を施す。

 たった一人で『軍団』と称すべき存在となった彼女と『クローン将校部隊』とでは規模が違う。
 例え、どれだけ質が向上した集団であったとしても、圧倒的な数を前にした時、その質は瓦解するだろう。
「馬鹿な……これだけの数が何故突如として現れる!?」
 如何に優秀な軍人であったとしても、一瞬で大群が前に現れればこうもなるだろう。
 ブラスターライフルの制圧射撃。
 ランチャーで広範囲に殲滅。そこには不意打ちを狙うことすら不可能な断続的な砲撃の雨が降り注ぐ。
「こんな、こんな馬鹿げたことがあっていいはずがない! 我らの戦略に、こんな――!」

『クローン将校部隊』たちの悲鳴すらも爆風にかき消されていく。
 後に残るのは、『ミレア』という『軍団』に蹂躙されたオブリビオン教団の残滓だけだ。
「まったくもって私……いえ、私達の敵ではありませんでしたね」
『ミレア』は市街地を悠々と『軍団』でもって進んでいく。
『クライスト・ヴォーテックス』の住まう屋敷は既に見えている。『白の城塞』とも呼ばれる教団本部。
 
 そこを叩かねば『アカプルコ』と呼ばれた嘗てのリゾート地は取り戻せないだろう。
 しかし、今まさに『クライストシティ』は壊滅の憂き目を見ている。どれだけレイダーの数を揃えようとも、一瞬でそれを越える『軍団』を生み出し続ける『ミレア』の前には、物量作戦や籠城と言った手段は意味をなさない。
 それこそが彼女を生み出した研究の到達点であったことだろう。

 長き時を経て、『ミレア』という存在は、異なる世界でもって、その有用性を十二分に証明するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スリジエ・シエルリュンヌ
これは一角を崩すのにいい機会ですね。文豪探偵、推して参ります!

とはいえ、私は超前衛型バリツ探偵…相性が最悪なんですよね。
ですが、やりようはあるんです!

桜のガンシップに乗りまして。【探偵の突撃】です!
ついでにバリケードも壊しちゃいましょう。地形ですし。
素早く動くので攻撃は当たらず、しかも相手は一撃で消える。

たしかに突撃は近接攻撃でしょう。ですが、その防護を過信したのが命取りです。
この突撃は、いかなる防護も無視をする。
つまり、突撃ダメージがもろに入るんですよ…!

いかなるものにも、例外はあるのです。それをつきとめるのも、探偵の仕事ですよ。



 オブリビオンストームを齎したと言われる神々『フィールド・オブ・ナイン』を信奉するオブリビオン教団の教祖である『クライスト・ヴォーテックス』は、かつてのリゾート地『アカプルコ・デ・フレアス』を人々にとっての生き地獄へと変貌させた。
 そこかしこに死の臭いが充満している。
 山積した遺骸は、明日の己の身であることを隷属強いられた人々は知っている。

 昨日まで隣りにいた者が生命なき亡骸へと変わることなど、日常茶飯事であった。
 彼等の生命は、彼等のものではない。
 オブリビオン教団の信者たるレイダーたちの享楽の生贄そのものであった。恐怖と呼ぶのもはばかられるような、むごたらしい死があちこちに転がっている。
 それをスリジエ・シエルリュンヌ(桜色の文豪探偵・f27365)は桜色のガンシップを駆り、見下ろす。
「これは『ヴォーテックス一族』の一角を崩すにいい機会ですね。文豪探偵、推して参ります!」

 彼女とて猟兵である。
 かつてのリゾート地が見るも無残な地獄へと成り果てた光景を見て怒りを覚えないわけがない。
 とは言え、彼女は前衛型のバリツ探偵である。
 安楽椅子探偵には未だ遠く。ゆえにオブリビオン教団のレイダーたち纏う近接攻撃を弾く白い服は相性が最悪であると言えた。

 基本的に彼女は探偵を名乗っていながらも、己の窮地をバリツと呼ばれる体術で乗り切ってきていた。
 ゆえに、それを封じられた現状は手も足も出ない状態である。
 だからこそ、彼女は桜のガンシップを駆り、探偵の突撃(トゥシェ・ラ・シブル)を敢行するのだ。
「いきます!」
 ユーベルコードに輝く瞳が見たのは、有刺鉄線や瓦礫に寄って形成された『クローン将校部隊』たちの陣地であるバリゲードであった。

 彼女が駆るガンシップは地形すらも吹き飛ばし、『クローン将校部隊』たちのあらゆる防護を無視する突撃となって、質量攻撃でもって打ちのめすのだ。
 それはあまりにも唐突な一撃であったことだろう。
 何せ、空を飛ぶ機動兵器が陣地に突っ込んでくるなど自殺行為そのものである。特性の銃火器でさえ、スリジエは巧みなガンシップの操縦でもって躱し、バリゲードを吹き飛ばすのだ。
「いかなるものにも、例外はあるものです。それを突き止めるのも、探偵の仕事ですよ」

 あまりにも強引な突撃攻撃に『クローン将校部隊』は開いた口が塞がらない。
 いや、言葉を発するまでもなく初撃の一撃で陣地に居た『クローン将校部隊』の尽くが絶命していた。
「近接攻撃だと思って、その白い服の防護を過信したのが命取りでしたね」
 スリジエはガンシップと共に再び空へと舞い上がる。
『クローン将校部隊』たちは、一つの陣地が一機のガンシップによって壊滅させられたことに驚愕し、彼女を撃ち落とさんと銃火器でもって牽制する。

 しかし、空を自在に飛ぶ彼女に銃火器だけでは対抗しきれない。
 対空防御など、このアポカリプスヘルにおいてはロストテクノロジーそのものであった。
 ゆえにスリジエの駆るガンシップは『クローン将校部隊』たちの天敵と呼ぶ存在でもあったのだ。
 攻撃は届かず、されど強みである防護を尽く無効化しては質量攻撃で叩きのめす。
 悪夢のようなスリジエの特攻突撃は『クローン将校部隊』たちの戦術を根本から覆し、彼女たちの戦線を瓦解させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
前哨戦が始まったね
確実に戦果を挙げていこうか

近接攻撃を弾く服か
僕には影響は少ないね
ガトリングガンで攻撃すれば大丈夫そうだし

死角からの攻撃も神気を纏っていれば
どこから攻撃されても固定して防げると思うよ
攻撃を凌いだら反撃といこうか

こんなに可愛らしいのに野暮ったい服ですの
もう少し着飾るべきだと思いますの
邪神の慈悲を使用して球体関節のお人形に変えますの
神気でしたら服の影響を受けないと思いますの

さて、どんな服を着て貰うか悩ましいですの
お揃いにするのも良さそうですの

駄目だこいつ…早く何とかしないと…

うん、まあ、行為の是非はともかく
チャンスではあるから混乱に乗じて突破しよう
分霊は放っておいても大丈夫だろうし



『クライストシティ』を巡る猟兵たちの戦いは、すでに多くの者たちの手によって戦線を押し上げつつあった。
 猟兵達は確かに、オブリビオン教団の信者である『クローン将校部隊』たちが纏う白い服、その近接攻撃を無効化する力にこそ遅れを取ることもあった。
 けれど、ユーベルコードと彼等の知恵でもって、それらを踏破せしめているからこそ、『白の城塞』と呼ばれる『クライスト・ヴォーテックス』が座す屋敷へと迫っていたのだ。
「前哨戦が始まったね。確実に戦果をあげていこうか」
 来たるべきオブリビオン・フォーミュラが現れ、戦争と呼ぶべき大きな戦いがアポカリプスヘルで勃発する前に佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は『ヴォーテックス一族』の一角を削ぐべく、この地に降り立った猟兵の一人だった。

 近接攻撃を弾く白い服。
 それは確かに猟兵達にとって脅威そのものであったが、晶に限って言えば、それは脅威とは成りえない。
 彼女の得物は携行ガトリングガンである。近接戦闘を行うことは稀である晶にとって、それは普段と変わらぬ戦いであったことだろう。
「普段とは変わらない。僕には影響が少ないね」
 ガトリングガンによる斉射でもって『クローン将校部隊』が展開するバリゲードからの銃火器と晶は打ち合う。

 弾丸が周囲に飛び交い、瓦礫を突き崩しながら晶は打ち合いが小康状態に陥ることを知る。
 確かに遠距離攻撃同士の戦いである。
 決定打がないのだ。しかし、『クローン将校部隊』たちは違う。接近さえしてしまえば、晶の攻撃は彼女たちには通じず、晶には近接攻撃が叩き込める。
 一方的なアドバンテージを得ている『クローン将校部隊』たちが晶の死角を狙って銃撃戦の最中、移動し始める。
「それはもう読めているよ」
 晶は死角からの攻撃を行おうとしていた『クローン将校部隊』たちの攻撃を張り巡らせた神気のオーラによって固定し、ガトリングガンの銃口を向ける。

 放たれた弾丸が死角より迫っていた『クローン将校部隊』たちを討ち貫いていく。
「こんなに可愛らしいのに野暮ったい服ですの。もう少し着飾るべきだと思いますの」
 そんなふうに憤慨しているのは融合した邪神であった。
 彼女の言葉に晶はいつものことだと無視をきめこむ。どうせ言ったところで止まらないのである。
「永遠を差し上げますの」
「な、何を――」
『クローン将校部隊』たちは邪神の慈悲(マーシフル・サイレンス)とも言うべきユーベルコードの輝きの前にたじろぐ。

 それは彼女が纏う宵闇の衣より放たれる万物に停滞をもたらす神気であり、『クローン将校部隊』たちの身体を人形化させるのだ。
 いつのまにか彼女たちの身体は球体関節へと成り果て、驚愕に顔が歪む。
「さて、どんな服を着て貰うか悩ましいですの。お揃いにするのも良さそうですの」
「ひっ――」
 悲鳴を上げる『クローン将校部隊』たち。
 邪神にとって『クローン将校部隊』たちは敵ですらない。ただのきせかえ人形でしかないのだ。

 その圧倒的な力の差に恐れおののくのは生物として正しい反応であったのかもしれない。
 けれど、戦いにおいてはそうではない。
「駄目だこいつ……早くなんとかしないと……」
 晶はガトリングガンを構える。
 邪神の行動の是非は問うまい。なぜなら、今目の前に動きを止めた『クローン将校部隊』の姿がある。
 チャンスであるのならば、これを使わない手はない。放たれるガトリングガンによって倒れていく『クローン将校部隊』はすっかり意気消沈している。

 このまま突破し、晶は『白の城塞』たる屋敷へとガトリングガンの弾丸と共に銃撃戦の最中を、そして背後できせかえ人形に興じる邪神の分霊を他所にひた走るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
奴らの言いなりはもー終わり
みんな!一緒に反撃だ
セカイを取り戻そー
【警告。多数の熱源反応を引き寄せてます】
やば
逃げ逃げマザー
【はい。ルート計算中】

引きつけたら手薄になる所もある?
出来ればドレイさんのいる家を見つけ出そー
らぶは鉄砲持ってないから
ドレイさんが作った機械兵器を借りたいな
ついでに謎の白い粉も
勿論ただとは言わねーのん
こー見えてもショーニンのハシクレ
らぶの金貨を全部あげる
今は役に立たないけどいつか絶対輝く時が来るのん
みんなが作らされてた物で
今度は奴らをやっつけるんだ

兵器の銃で参戦だ!
麻薬は敵に振り撒くぞ
らぶはマスクあるからヘーキだもんね
マザー
今度はらぶが追い掛ける番なんな!?
【攻守交代です】



 嘗ての『アカプルコ・デ・フレアス』はすでに悪徳の都市『クライストシティ』へと名と姿を変えていた。
 そこかしこに転がる死骸は、無辜なる隷属を強いられた人々のものである。
 世界各地から奴隷狩りによって、生命ではなくただの生産力として集められた彼等に生命の尊厳はない。あるのは、奴隷以下の扱いである。
 人々は明日を望まない。
 なぜなら、明日には……いや、次なる瞬間には己もまた転がる死骸へと成り果ててしまうかもしれないからだ。

 それほどまでに『クライストシティ』には死の臭いが充満していた。
 けれど、それは今日でおしまいである。
「奴らの言いなりはもー終わり。みんな! 一緒に反撃だ。セカイを取り戻そー」
『クライストシティ』に舞い降りたのは、ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)であった。フラスコチャイルドたる彼女にとって、セカイとは取り戻すためのものである。
 オブリビオンストームによって汚染されたセカイ、その最たるものが『クライストシティ』であった。

「猟兵! 何処からでも湧いて出てくるものだ!」
 オブリビオン教団の信者である白い服をまとった『クローン将校部隊』たちが殺到する。
 ラブリーの声に反応したのであろうし、同じく転移してきた猟兵達の行動に寄って彼女たちは戦力を分断させられつつあった。
 そこにラブリーの宣言が聞こえれば敵を引き寄せてしまうのは無理なからぬこと。
『警告。多数の熱反応を引き寄せてます』
 スマートフォンの形をした非通信端末である『ビックマザー』が告げる。
「やば。逃げ逃げマザー」
『はい。ルート計算中』
『クローン将校部隊』たちは己を劣化コピーしてラブリーを包囲せんと迫っている。その数は尋常なものではなかった。

「いくらなんでもらぶのこと好きすぎ」
 大挙して押し寄せる『クローン将校部隊』たち。
 その姿にラブリーは辟易したように『ビックマザー』から提示された逃走経路をひた走る。
 彼女はただいたずらに逃げ回っているだけではない。一つの瓦礫が集まったような家屋の中に入り込めば、そこには怯えたような瞳がいくつもあった。
 奴隷として、生命ではない何かとして扱われ続けた人々の姿。それらをみてラブリーは首をかしげる。
 そう、ここは武器生産施設でもあり、同時に麻薬を生成する場所でもあったのだ。

「あ、あんたは……!」
 一体何者だと問いかける奴隷の人々。彼等の瞳には怯えしか無い。これまでどんなに陰惨な境遇に在ったのかをラブリーは知らない。
 けれど、確かなことがある。
 彼等を救わなければならない。そのために彼女ができることはたった一つである。

 ゴーイング・マイウェイ。

 己の道をひた走るために。己が思うセカイを見るために。いつかきっとヒトのユメを叶えるショーニンになるために。
 そのために彼女は金貨を人々に手渡す。
「こー見えてもショーニンのハシクレ。らぶの金貨を全部上げる。今は役に立たないけどいつか絶対輝く時が来るのん」
 じゃらじゃらと落ちる金貨。嘗てであれば、それは人々の瞳に輝くものであっただろう。
 今は意味をなさない。けれど、いつかきっと荒廃した世界にあっても芽吹くものがあるはずだ。
 だからこそ、ラブリーは生産されていた銃を手に取る。ついでに謎の白い粉も。いや、麻薬であるが敢えて、こう言わせて頂く。

「みんなが作らされてたもので、今度は奴らをやっつけるんだ」
 ラブリーは『ビックマザー』の警告を聞き、銃火器を手にして家屋の外に飛び出す。
 目の前には『クローン将校部隊』たちが彼女を追いたて包囲せんとしていた。けれど、ラブリーは手にした謎の白い粉を振りまく。
「――! 貴様!」
 それは目潰しのような効果も在ったのだろう。けれど、それ以上に貴重な生産物を無駄にされたという怒りが『クローン将校部隊』たちの中に渦巻く。

「マザー、今度はらぶが追いかける番なんな!?」
『攻守交代です』
 手にした銃火器の引き金を引く。ばら撒かれる弾丸。それが引き金になったようにラブリーの背後から奴隷であった人びとが生産していた銃火器を手に次々と『クローン将校部隊』たちを撃ち貫いていく。
 彼等は未だ奴隷から、生命以下の何者かから脱することできていないだろう。
 けれど、ラブリーの姿に、彼女の言葉に、そして何よりも文明を失う前、人の欲望の象徴であった金貨を見て思い出したのだ。

「生きるってことはどうしたって欲しいってことなんな」
 それをラブリーの金貨が思い出せた。人々は己たちが生きていることを思い出し、そして、今こそ立ち上がるために明日への一歩を踏み出したのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:灰遠雷

ふむ、このような好機を逃す手はなし。なればこそ、わしらの全力を尽くすのみ。

近接は弾くのであったな。わしにとっては天敵といえるものだが。
まあ、先にそれがわかっておれば、打てる手はいくつかあるというもの。

さて、この範囲からは逃れられぬよ。【四天境地・雷】、この範囲と悪霊からはな。
まごうことなき射撃であり、だからこそすぐにあちらも数を少なくするであろう。

これ以上、人々を虐げることは許さぬよ。わしらは、それを止める者である。



『ヴォーテックス一族』はたしかに強大なレイダー集団である。
『ヴォーテックスシティ』の強大さを知る猟兵たちにとって、それは周知の事実だ。だからこそ、これまで猟兵達は散発的ながら、潜入し破壊工作を続け、そして『ヴォーテックス一族』の抗争を利用して彼等の戦力を削り続けていた。
 その結実が今である。
『クライストシティ』と呼ばれる『クライスト・ヴォーテックス』の本拠地。
 有刺鉄線とバリゲードによって囲われた嘗ての『アカプルコ・デ・フレアス』を猟兵たちが駆け抜ける。

「ふむ、このような好機を逃す手はなし。なればこそ、わしらの全力を尽くすのみ」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は複合型悪霊である。四柱の悪霊によって構成される身体は、今、『侵す者』が表層に現れている。
 武の天才たる彼にとって如何に優れた軍人のクローンである『クローン将校部隊』は、将であったとしても問題に為ることはなかった。

 白い服を纏う彼女たちは一様に近接攻撃を弾く力を有している。
 接近戦はこちらの不利。
 されど、一方的に銃火器による遠距離攻撃を叩き込むことができるという圧倒的なアドバンテージを有している。
「わしにとっては天敵といえるものだが。まあ、先にそれがわかっておれば、打てる手はいくつかあるというもの」
「ほざけ。我らが負けるものか。この程度の、散発的な……! 組織もなにもない、個人で戦術もクソもない者たちに我らが!」
『クローン将校部隊』たちは、己の劣化コピーを生み出し、ユーベルコードによって数を増殖させていく。

 嘗てのリゾート地は燦然と太陽が輝く元、無数の『クローン将校部隊』たちで埋め尽くされる。
 それを前にしても『侵す者』は冷静であった。
 どれだけ己の数を増やし、数を頼みにしたところで、それは結局の所烏合の衆に他ならない。
「悪霊からは逃げられない」
 手にした雷の力を込められた強弓が引き絞られる。
 呪詛を込められ黒く変色した弓は、つがえた矢を放つ。それは空中で分裂し、『クローン将校部隊』へと殺到する。

 四天境地・雷(シテンキョウチ・カミナリ)。
 それが彼の瞳に輝くユーベルコードであった。如何なる存在も彼の視線に射すくめられたのならば、その矢が貫くまで何処までも追いかける。
「まごうことなき射撃である。これ以上、人々を虐げることは許さぬよ」
 彼等にとって、この死の臭いが充満する都市こそが怨念、呪詛の源である。
 このような光景を彼等は見てきた。
 自分たちの故郷はオブリビオンによって滅ぼされた。

 忘れがたき屈辱と怨嗟。
 その呪詛が己たちを今、一つにしている。ゆえに消えることのない怨嗟は、まさに果てのない逃亡すらも許さぬとばかりに『クローン将校部隊』たちを貫いては次々に霧散させていく。
 白い服もまるで意味をなさない。
 銃火器で持って矢を撃ち落とそうとしても、呪詛の雷を込められた矢は即座に分裂して彼女たちを襲うのだ。
「馬鹿なことがあっていいわけがない! こんな! こんな出鱈目で!」
 彼女たちはうめいただろう。
 今まで奪う側であった者が奪われる側になったことに。

 されど、知るのだ。
 今己たちが対峙し、己たちを射抜く呪詛と怨嗟の権化が如何なる存在であるかを。
「わしらは、お主らの横暴を止める者である」
 けっして許さぬ存在を前にして滾る呪詛は雷の矢となって『クローン将校部隊』を襲い、『クライストシティ』を嘗ての大地へと戻すべく怨念の雨を降らせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
長きに渡るオブリビオンの支配によって荒廃したこの世界
此度の作戦を反撃の狼煙といたしましょう

近接攻撃を防ぐ特性…
銃器の安定供給難しいこの世界の住人を虐げる為やもしれません

ですが私の故郷はブラスターが一般的な武装
当然、こちらの心得も御座いますよ

剣と盾は簡易電脳魔術の電脳空間に収納(物を隠す)
頭部、両肩部、両腕部の格納銃器展開
乱れ撃ちスナイパー射撃で敵の銃器を武器落とし
そのまま敵集団一掃

武器を失い接近戦を挑みますか
ですが、もうその服の構造は把握しております
(マルチセンサーでの情報収集)

瞬間思考力で格闘術見切り回避

白の繊維が薄い視界確保用の覗き穴目掛けUC
貫いた敵を怪力で振り払い牽制投擲
来た端から撃破



 アポカリプスヘルは暗黒の竜巻『オブリビオンストーム』によって人類が敗北した世界である。
 人の尊厳は喪われ、明日の生命すらも危うい世界にあっても尚、人は希望を喪わなかった。
 けれど、この『クライストシティ』は違う。
 ウォーマシンである己であっても感じる死の気配。充満した死の臭いにトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)のアイセンサーが揺らめく。
「長きにわたるオブリビオンの支配によって荒廃したこの世界。此度の作戦の反撃の狼煙といたしましょう」
 戦場を駆け抜けるは機械騎士。
 あちこちで数多の猟兵たちが転移しては、『クローン将校部隊』たちを相手取って市街地戦を繰り広げている。

 目指す先は『白の城塞』である。
 そこにこの『クライストシティ』の首魁であり、『ヴォーテックス一族』の一人である『クライスト・ヴォーテックス』が存在している。
 かの者を取り除かねば、アポカリプスヘルにおける大きな戦いはさらなる激化を見せるだろう。
「居たぞ、猟兵!」
『クローン将校部隊』たちが白い服を纏い、銃火器でもってトリテレイアを破壊しようと突撃を敢行する。

 彼女たちにとって己の生命は度外視されたものである。
 全てが同一であるのならば、ただ一人が生き残ればいい。クローンであるがゆえの生命に対する倫理の欠如。
 それこそが彼女たちの強みの一つでもあった。恐れを知らぬがゆえに、死すらも乗り越えた存在。
「近接攻撃を防ぐ特性……銃器の安定供給が難しいこの世界の住人たちを虐げる為……例え奮起したとしても武装無き人々を鎮圧するも自由というわけですが」
 だが、トリテレイアはこの世界の出身者ではない。
 銀河の海を征く者たちによって生み出された存在である。ブラスターと呼ばれる熱線銃が一般的な武装である世界においてトリテレイアは、当然その心得を持っているのだ。

 普段は騎士として大盾と剣を振るうトリテレイアであるが、今の彼はウォーマシン。
 格納された銃器を展開し、ハリネズミの如き銃火器の乱舞でもって『クローン将校部隊』たちの手にした銃火器を叩き落とす。
 放たれた弾丸は『クローン将校部隊』たちが放ったものよりも、さらに数を増す。技術の差が違うのだ。
 圧倒的過ぎる速射能力。
「なんだ、あの速射は……! 技術力の差だとでもいうのか!」
 物量で圧するはずだった『クローン将校部隊』たちは慄く。機械騎士であるトリテレイアにとって、この程度は造作もないことである。

「唯一つの世界しか知らぬ者には」
 己の姿は脅威にしか映らぬだろう。しかし、それはトリテレイアにとっても同じである。
 武器を叩き落された『クローン将校部隊』たちが熟練の格闘術でもってトリテレイアに接近戦を挑む。
 その選択は正しいと言えるだろう。
 彼女たちの纏う白い服は近接攻撃を弾く。されど、トリテレイアの射撃能力はあまりにも脅威。
 あの弾丸の雨は、彼女たちにとって対処しきれないものであった。ならば間合いを詰めるという判断になるのもうなずける。

「ですが、もうその服の構造は把握しております」
 トリテレイアの機体が揺らめくようにして動く。
 そのモーションはすでに数多の世界を渡り、数多の敵を屠り去ってきたトリテレイアであるからこそ編み出されたものであったことだろう。
「その白い服が繊維物であるというのならば、極小であろうと隙間があるというもの」
 まとった白い服。
 その理屈はたしかに正しい。
 けれど、その精密なる人の業ならざる攻撃を誰が放つことができるというのだろう。否、できるのだ。
 機械騎士であるトリテレイアであるからこそ、放つことのできる業がある。

 鋼の手槍(スピアハンド・オブ・スティール)とも言うべき前腕部伸縮機構が打ち出されるようにして繊維の隙間を縫うようにして『クローン将校部隊』の身体を貫く。
 攻防一体の力場は貫手となって繊維をこじ開け、凄まじい一撃でもって『クローン将校部隊』の身体を貫く。
「ばか、な――この白い、服が……つらぬかれ、る!?」
 血反吐によって白い服は赤く鮮血に染まる。

 それは彼女たちが弄んできた人々の生命に変わるものではなかったけれど、それでもトリテレイアは貫いた『クローン将校部隊』の身体を投げつけ、さらに貫手でもって彼女たちを葬り去る。
「喪われた生命を贖う術など、どこにもありはしないのです」
 生命は巡らない。戻らない。
 それを知るからこそ、トリテレイアのアイセンサーは燦然と輝く太陽にも敗けぬように煌めき、その軌跡を戦場に刻むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
クローン将校部隊のさらにコピーも混じっているのでしょうか。夥しい数になっていますね。
潜入してクライストを暗殺するのも手ですが、さらに先まで考えるとこの地ごと制圧したほうがよさそうですし……可能な限りこの機に仕留めておきましょうか。

敢えてクローン将校部隊の前に姿を晒し、「フィンブルヴェト」を手に市街で銃撃戦をしながら進みます。
彼女たちは一つの個ということですし、きっと的確に私を包囲してくれるでしょう。
あちらが私を包囲したら【絶対氷域】を。何人いようと、無駄なことです。

あなたたちが自身を特別な生命だと言うのはいいでしょう。ですが、他の生命を排除すると言うなら、こちらも抗うまでです。



 猟兵たちが転移してから僅かな時間で、電撃戦とでも言える迅速果断なる攻勢は、『クライストシティ』の市街地に展開していた『クローン将校部隊』たちを圧倒していた。
 彼女たちは優秀な軍人のクローンである。
 そのことに誇りを持っていたし、己達以上に優れた存在はいないと自負していた。その驕り、傲慢さは人々の生命を生命とも思わぬ所業に駆り立てた。
 それがこの街のあちこちで山積されている無辜なる人々の生命の亡骸であることは言うまでもない。
 セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は己の姿を『クローン将校部隊』たちの前に晒す。

 彼女にとって、『クローン将校部隊』たちは優秀な軍人であれど、臆するに値しない存在であった。
「馬鹿め、わざわざ我らの前に姿を現すなど!」
 包囲した『クローン将校部隊』たちは猟兵達の手によってその数を減らしているはずだった。
 けれど、セルマを取り囲む彼女たちの数は未だ、些かの陰りも見られないものであった。
 何故ならば、彼女たちは己自身をユーベルコードに寄って増やすことができる。如何に劣化コピーした存在であれど、数を揃え近接攻撃を弾く白い服に身を包めば、猟兵の攻撃といえどたやすく破られることはないのだ。

 セルマはその手にマスケット銃『フィンブルヴェト』を手に市街地での銃撃戦を繰り広げる。
 彼女たちは一つの個。
 どれだけ数がいようとも思考は同じ。だからこそ、凄まじい連携を持って得物を追い詰めるのだ。さらに数が増えていくのをセルマは感じ取っていた。
 本来、夥しい数に辟易するところであるが、セルマの思考は別にあった。
『クライスト・ヴォーテックス』――この街の首魁である。これを暗殺することも考えたのだが、さらに先のことを考えると暗殺だけでは『クライストシティ』は変わらない。
「かつての『アカプルコ・デ・フレアス』に戻す……ならば、レイダーたるオブリビオンは可能な限りこの機に仕留めるが上策」

 ゆえにセルマは己の身をさらし、『クローン将校部隊』たちの目を引きつけている。
 彼女は信じていたのだ。『クローン将校部隊』たちが己を優秀であると自負するのならば、的確に自分を追い詰めるために包囲してくれるであろうと。
「追い込んだ! 撃て!」
『クローン将校部隊』たちは勝ち誇っていた。
 如何に猟兵と言えど多勢に無勢である。取り囲んで弾丸を打ち込んでしまえば、躱すことなどできない。勝負は決したようなものであった。

 けれど、彼女たちは引き金を引くことはできなかった。
 指がかじかみ、凍りついたように動かないのだ。いや、違う。すでに全身が凍りついている。
 それすら自覚できぬまま、『クローン将校部隊』は己達の勝利の幻影を今も尚見ているのだ。
「この領域では全てが凍り、停止する……逃がしません」
 そう、煌めくは瞳。
 絶対氷域(ゼッタイヒョウイキ)たるセルマを中心にした領域において、彼女以外の全ては凍り付く。
 凍てつかせる絶対零度の冷気は、どれだけ『クローン将校部隊』の数が多かろうが無駄なことである。

「あなたたちが自身を特別な生命だと言うのはいいでしょう。ですが、他の生命を排除すると言うのなら」
 セルマの瞳が輝き続ける。
 オブリビオンによる支配。それをセルマは許さないだろう。隷属は生命を擦り切らせる。尊厳も何もかも削り取ってしまう。
 生命ですらない何者かに堕とされた者は、もはや這い上がることも許されない。

 だからこそ、セルマのユーベルコードは燦然と輝く太陽の元に煌めくのだ。
「こちらも抗うまでです」
 その意志は固く。
 今日に至るまで折れることなくオブリビオンを貫く弾丸となって、今も尚支配という強大な存在を撃つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【勇者パーティ】

これアカプルコだなんて……!

え?師匠アカプルコしらないんですか!?
アカプルコと言えばルチャリブレの本場ですよ!

戦うとなればプロレスしかないでしょう!

ちがう?近接無効?遠距離から?
なるほどさすがルチャの本場。空中殺法で戦えということですね!

さぁ、師匠!遠慮なくわたしをふっとばしてください!
華麗な空中殺法で相手をKOしてみせますよ!

魔法の爆風に乗って、【ベーゼンドルファー】ごと、
ラ・ケブラーダスタイルで【カンパネラ】を敢行、相手を粉砕です!

師匠は……あれは幻の技ぺったんスプラッシュ!
クッションないから痛いんですよね、あれ。

ステラさんは、キャット空中●回転的な技がでるのでしょうか!?


フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「借金取りから逃げて南の国のリゾート地まで来たはいいものの……
荒廃した軍事拠点になってるとか、我、聞いてないのだが?」(言われました

さらに白い服着た奴らが襲ってくるし。
我、襲われる心当たりなんてないぞ!?

奴らは借金取りの手先か?
我が壊滅させちゃった街の生き残りの復讐者か?

ああ、ステラへの支払いが先だな(目逸らし棒読み

「ルクスよ、我とタッグを組んで奴らを追い払うぞ!」

ルクスを【竜滅陣】で吹き飛ばし、空中殺法を使わせよう。

「さらにそこに登場する、美少女覆面レスラー、すなわち我!」

背後の街に向かって【竜滅陣】を放ち、その勢いでボディプレスだ!

「誰だ、胸がないなどと言ったものは!?」


ステラ・タタリクス
【勇者パーティ】
※今日も今日とて後方メイド面

今日も平和ですね、というか
フィア様、私も確か踏み倒されているのですが?
いつになったらお支払い…とりあえず私が先ですので
迫りくる方はお引き取り願いましょう

遠距離攻撃が有効、ということなら…
…ルクス様?それは遠距離…みたいですね効いてますし
ルチャ万能説は正しかった、ということでしょうか

いえ、まぁ遠距離しますね
【シーカ・サギッタ】
メイドの投げナイフから逃れられる術など無いと…
というより私、真面目すぎて浮いてません?
え、真面目にやって浮いてるってどういうことですか?
ここ、そういう戦場でしたっけ?
仕方ありません
ネコミミつけて誤魔化しておきますね
にゃーん



「これが『アカプルコ』だなんて……!」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)は目の前に広がる陰惨たる市街地を見て、愕然とつぶやいた。
 彼女の目に映るのは、太陽まばゆいリゾート地ではなく、無辜の人々の死骸が積み重なるバリケードと有刺鉄線が彩る悪徳の都市であった。
 そこは『クライストシティ』と呼ばれる『ヴォーテックス一族』、『クライスト・ヴォーテックス』の本拠地だ。

 あまりに事に絶句していたルクスの横でフィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は、ふむ、と特に感慨なく首を傾げた。
「借金取りから逃げて南の国のリゾート地まで来たはいいものの……荒廃した軍事拠点になってるとか、我、聞いてないのだが?」
 いや、言った。
 ちゃんと転移する前に事前に言った。けれど、フィアはすっかり頭から抜け落ちていたし、ルクスがあんまりにもがっかりしているものだから、それ以上言うことはできなかった。
「え? 師匠アカプルコ知らないんですか!? アカプルコと言えばルチャリブレの本場ですよ!」
 ルクスは何故かやる気満々である。
 もしかして、そういうのお好きなのだろうか。そんなふうにステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は後方メイド面で佇む。

「今日も平和ですね、というかフィア様、私も確か踏み倒されているのですが? いつになったらお支払い……とりあえず、私が先ですので」
 だから今まさに猟兵である三人めがけて迫る『クローン将校部隊』たちをステラは見やる。
「我、襲われる心当たりなんてないぞ!? 奴らは借金取りの手先か? 我が壊滅させちゃった街の生き残りの復讐者か? ああ、ステラへの支払いが先だな」
 目をそらしながら棒読みになってしまうフィア。
 しっかりステラに帳簿的なアレを握られているのである。というか、今全部さらっと自白したな。
 これは余罪が有り余るほどありそうな気配がビンビンしている。

 しかし、『クローン将校部隊』たちは待ってはくれないのだ。
 彼女たちは白い服に身をまとい、近接攻撃を弾く特性を持っている。ゆえにフィアは一計を講じるのだ。
「ルクスよ、我とタッグを組んで奴らを追い払うぞ!」
 前門の虎、後門の狼ならぬ、前門のオブリビオン、後門のステラである。
「戦うとなればプロレスしかないでしょう! 近接無効で遠距離から攻撃しないと駄目なのならば! なるほどさすがルチャの本場。空中殺法で戦えということですね!」
 あ、駄目だ今日の勇者、大分来ている。

「さあ、ルクスよ、ぶっ飛ぶのだ!」
 煌めくユーベルコード。
 竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)、それは竜すら滅する極大なる魔術であるが、それによってルクスを吹き飛ばし、La Campanella(ラ・カンパネラ)を奏でるが如くグランドピアノを振りかぶるルクスの姿をフィアは見送る。
 いや、ちょっとまって欲しい。
 色々絵面が。絵面がすごいことになっているのではないだろうか。吹き飛ばす前に竜滅陣で『クローン将校部隊』を吹き飛ばしたほうが早かったのでは? とか思わないでもなかったが、ともかくルクスが空中を舞い、グランドピアノを振り下ろす。

 その一撃は隕石か何かが落ちてきたのかな? と思わせるには十分すぎるほどの威力で持って『クローン将校部隊』たちを吹き飛ばしていく。
 いや、あれで遠距離攻撃と言っていいのでしょうかとステラはちょっと思った。
「いや、それは流石に……あ、聞いてますね。ルチャ万能説は正しかった、ということでしょうか」
 ステラさん、ちょっとこれもう面倒くさくなってんな。
 そんなステラを他所にさらなる物体が『クローン将校部隊』たちへと降り注ぐ。
 アレは誰だ! え、なんだ? ん? マジで何?

「さらにそこに登場する、美少女覆面レスラー、即ち我!」
 ルクスを吹き飛ばした極大魔術をさらに街にブッパして、盛大に生産施設をぶち壊しながらフィアが空へと舞い上がり、その勢いのまま『クローン将校部隊』たちへと鉄板のボディプレスをぶちかますのだ。
 その威力たるや凄まじいものが在る。
「師匠の……あれは!」
 知っているのかルクス電!
「あれは幻の業ぺったんスプラッシュ! クッションないから痛いんですよね、あれ」
 ルクスはあー、痛そうーでもぺったんだから痛くないか? いやでもぺったんだから痛いのかなぁと思いながら凄まじい威力の人間砲弾と化したフィアの活躍に感心する。

「誰だ、胸がないなどと言ったものは!?」
 いや、誰も言ってない。言ってないけど、言外にそうだろなぁって思ってはいる。
 そんなふうにルクスとフィアが冗談みたいな戦いを繰り広げている中、ステラだけが真面目に戦っている。
「メイドの投げナイフから逃れられる術などないと……というより私、真面目すぎて浮いてません?」
 シーカ・サギッタのあらゆる防護を貫通する投げナイフによってステラはバッタバタ『クローン将校部隊』を打倒しているのだが、真面目にやればやるほどフィアとルクスのやり取りが目立つ。
 あんなに真面目にやっているのに。
 少年が絡まないメイドは、こんなにも真面目なのに。なのに、真面目にやればやるほど、ステラのほうが空気呼んでない感じ為るのである。

「ここそういう戦場でしたっけ?」
 仕方ありませんね、とステラは猫耳を着けてごまかす。いや、そういう意味じゃないんだけど。
 にゃーん。
 いや、うん、まあ、その。なんだ……。
「ステラさんは、キャット空中●回転的な技が出るのでしょうね! さあ、師匠バンバン行きますよ! 華麗な空中殺法で相手をノックアウトです!」
 どーんどーんと嘘みたいな轟音響かせながら、勇者パーティは『クライストシティ』を蹂躙していくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
リゾート地ももはやこの有様か…無骨が過ぎるな…
…近接攻撃を弾くとは厄介…いやそうでもないな………私の場合はどうせ近接攻撃はしないし…
…死角への攻撃に対する対策は仕込んでおこう…
(現影投射術式【ファンタズマゴリア】により自身の位置を1歩分ずれて誤認させる幻影を作り出しておく)

…同一の思考による連撃…一見脅威だけど…揺らぎが全くないから対処しやすいね…初撃を防げば簡単に凌げる…
…凌いだら【連鎖する戒めの雷】を発動…クローンであれば同一の性質…この雷鎖がまとめて縛り上げる…
…あとは術式装填銃【アヌエヌエ】による射撃で生き残っているクローンを1人ずつ仕留めていくとしよう



 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は嘗てのリゾート地である『アカプルコ・デ・フレアス』の変わり果てた光景を見た。
 有刺鉄線が張り巡らされ、車両の残骸や瓦礫でもってバリケードで囲われた海岸。市街地は人々の死骸が山積し、そこかしこに死の臭いが充満している。
 どこをみても荒廃していると言う言葉が馴染むような光景は、オブリビオンに敗北した人類の末路を暗示させるようでもあった。

「リゾート地も最早この有様か……無骨が過ぎるな……」
 彼女の感想はまさにそれであった。
 しかし、この地を支配している『クライスト・ヴォーテックス』が興したオブリビオン教団の信者たちは、近接攻撃を弾く特性を持つ白い服を身にまとい、猟兵たちと激しい市街地戦を繰り広げている。
『クローン将校部隊』と呼ばれるレイダーは、己の存在をコピーし続け、圧倒的な物量と近接攻撃へのアドバンテージでもって、これまで鉄壁の防衛を繰り返してきた。

 けれど、それは猟兵が来るまでの話である。
 猟兵たちが、この地に降り立った以上、最早喪われる生命は一つたりとてあってはならない。
 確かに白い服の効果は脅威であったが、メンカルにとってはそうではない。
 そもそも近接で攻撃をするという機会のないメンカルは、対処すべきは死角からの攻撃であると判断し、幻影投射術式『ファンタズマゴリア』により、己の位置を一歩ずれた場所に誤認させていた。

 こうすれば、『クローン将校部隊』がメンカルの死角を狙って攻撃してきても、彼女を捉えることはできない。
「……なるほど。同一の思考による連撃……」
 今まさにメンカルの真横を『クローン将校部隊』が襲う。
 だが、『ファンタズマゴリア』によって誤認された位置は、宙を切る。
「――!? どういうことだ、私が、外した!?」
 驚愕するのも当然であろう。
 メンカルはたしかにそれを脅威だと判断した。けれど、単一の思考であるがゆえにゆらぎがないことが、単調であるとメンカルは理解している。

「対処しやすいね……初撃を防げば簡単に防げる」
 それに自分から向かっていかなくていいのが、省エネでいいのだとメンカルは周囲に展開した魔法陣から伸びる雷の鎖を放つ。
「紡がれし迅雷よ、奔れ、縛れ。汝は電光、汝は縛鎖。魔女が望むは魔狼封じる天の枷」
 輝くユーベルコードは、連鎖する戒めの雷(ライトニング・チェイン)。
 それは同じ性質の存在に伝播する雷の鎖である。
 高水準の同じ存在、クローンによる連携と戦術。数と質でもって敵を圧する目的で作られた『クローン将校部隊』たちは、その性質によって瞬時に雷の鎖によって捕縛され、一瞬で周囲に点在していた彼女たちを捉えて縛り上げるのだ。

「……後は簡単」
 メンカルは術式装填銃『アヌエヌエ』を構える。
 銃口が狙うは、雷の鎖に捉えられた『クローン将校部隊』たち。
 彼女たちはクローンである。ある意味、この荒廃した世界をどうにかしなければならない……もしくは、荒廃する以前から続く忌まわしき研究であったのかもしれない。
 けれど、その存在がオブリビオンとなって今に牙を剥き、無辜なる人々を襲っては、生命を徒に弄ぶのならば話は別である。

「……同一存在は確かに一枚岩。頑強なんだろうけれど……それを食い物に出来る者がいるということも、頭に入れておくべきだったね」
 メンカルの放った弾丸が『クローン将校部隊』を打ち抜き、その呪われた研究に幕を下ろすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
魔銃のレプリカを使用して戦闘する

どれだけ白い服が丈夫なのか知らないがこれを防げるものなら防いでみろ
違う生命は生命じゃないか、単一の生命が至高。色々な意味で終わっているな

POWで判定
孔雀輪で【空中機動】【空中浮遊】を使って飛行しながら戦闘
魔銃のレプリカでUCを発動
義眼の藍の災い:圧壊【重量攻撃】や橙の災い:爆破【爆撃】の力を弾丸に付与し、【スナイパー】【範囲攻撃】【全力魔法】を使って敵を攻撃する

攻撃されたら【早業】【見切り】で回避したり、風の【結界術】で防御する



『ヴォーテックス一族』の一人『クライスト・ヴォーテックス』の本拠地である嘗ての『アカプルコ・デ・フレアス』の市街地は、リゾート地であった名残など何一つ残されていなかった。
 在るのは瓦礫と有刺鉄線とバリケード。
 そして、無辜の人々の死骸だけである。山積したそれは、この悪徳の都市にて行われたオブリビオン教団の信者たちによる狂信的な行いの全てを物語るには十分であったことだろう。

 大量に作られた銃火器。
 奴隷として扱われる人々の心身を削って作られた大量の麻薬。
 それら全てが『ヴォーテックス一族』の繁栄のために消費されている。生命とは何であるのか。
 その意味を問うことすら無意味な行いを前にルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は魔銃のレプリカを持って市街地を走る。
 己を『生者の盾』とするルイスにとって、その行いは許せるものではなかった。
「どれだけ白い服が丈夫なのか知らないが、これを防げるものなら防いでみろ」
 義眼のメガリスとリンクした魔銃の銃口が藍色に輝く。

 孔雀輪によって空を飛ぶルイスからは『クローン将校部隊』の動きは丸わかりであった。
 燦然と輝く太陽のもと、彼女たちは多くの猟兵に寄って分断させられ、その強みである数を削り取られていた。
 彼女たちは言った。
「単一の生命こそが至高である。同一であれば、諍いも起こらない。無益な時間を過ごさずに有益なることだけをすることができる。ならばこそ、異なる生命など、争いを生む軋轢にしかならない」
 そのとおりであるのかも知れない。
 人は互いに違うからこそ争う。自分と違うところに焦がれ、引かれながらも違うことに耐えられない。 
 理解することもできない。

 完全なる相互理解が無き世界に絶望するのも理解できることであったが、ルイスは頭を振る。
「色々な意味で終わっているな」
 輝く災いの色。
 それが放つのは圧潰の力。続けざまに銃口が橙に輝き、爆撃の力で持って一気に『クローン将校部隊』たちを殲滅していく。

 どれだけ白い服が近接攻撃を弾くのだとしても空を飛ぶ砲台と化したルイスには意味をなさない。
 特性の銃火器も、白い服もルイスには関係のないことであった。
「そうやって他人を見下すことしかできないから、簡単に生命を奪える。お前達が積み上げてきた生命は、お前達を生きながらえさせるために生まれてきた生命じゃあない!」
 振り絞るようにしてルイスの義眼が煌めく。

 デッドマンである己であるからこそ分かる。
 きっとこのメガリスの力は、今ある生命を護るためにうまれてきたのだと。そして、己が死を乗り越えた存在として今も世界に在るのは、そのためだと。
 無辜なる生命を護るために。
 そのためにこそ、ルイスは己の力を振るうことに躊躇しない。
 そこにあるのは、純然たる決意だけだ。

 己が成さねばならぬことを為す。
 ただ、その一つのためだけにルイスは大空を駆け、まばゆい太陽の光をもって猛禽の如き影を『クローン将校部隊』に落とし、その尽くを打倒せしめるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『フレイムアーミー』

POW   :    ファイアスターター
【火炎放射器の炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【ゲル状の燃料を燃やすことで生じる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    トリプルファイア
【火炎放射器】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    ヘルファイア
【火炎放射器の炎】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を炎で包み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:松宗ヨウ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達は市街地戦を制し、『クライスト・ヴォーテックス』の居城たる『白の城塞』へと迫る。
 それは屋敷と呼ぶには広大な敷地を持ち、戦車すらも容易に入り込むことの出来るほどの庭園を備えていた。
 かつてのリゾート地『アカプルコ・デ・フレアス』の情景が、ここだけには残っていた。

 しかし、この情景を保つために消費された生命は数えることもできないほどに膨大であろう。流れた血と涙によって、この素晴らしき風光明媚なる情景は維持されていたのだ。
 しかし、オブリビオン教団の信者たちは、それすらも頓着しない。
 生命を奪うことは当然のことである。
 容赦なき死を与える者。
 それこそがオブリビオン教団の信者たちにある共通の理念であった。救済など関係ない。
 あるのは己の欲望のままに振る舞い、ただ徒にしを振りまくこと。
『死の笛(シルバト・デ・ムエルテ)』のごとく、『フレイムアーミー』たちは手にした火炎放射器で持って侵入者である猟兵たちを迎え撃つ。

 凄まじい炎が大地を焼き、鼠の一匹の侵入を許さぬと炎の壁となって猟兵達に立ちふさがる。
 近接攻撃を弾く白い服を纏い、紅蓮の炎によって今、『白の城塞』の攻略戦が始まろうとしていた――。
神代・凶津
このまま『クライスト・ヴォーテックス』の屋敷に突入だぜッ!
と、敵さんのお出ましか。コイツらも近接攻撃を弾く白い服を着ていやがる。面倒くせえなッ!
「…何とか突破しますよ。」

どわちちちちちッ!?火炎放射の炎を遠慮なく放ってきやがるなッ!
火炎放射のタイミングを見切って避けながら破魔弓で応戦だぜ。

にしても景気良く火炎放射をぶっぱなしてくるな。地形が炎で包まれていきやがる。
「…なら、それを利用します。」
いいアイデアだな、相棒ッ!
先ずは、結界射ちで敵の動きを止めるぜ。そして周りの炎で破魔弓の矢に火を付けて、敵の背中のタンクに射ってやる。
引火してぶっ飛びやがれッ!


【技能・見切り、スナイパー】
【アドリブ歓迎】



『クライストシティ』の市街地を抜けた猟兵達は、一気に『白の城塞』と呼ばれる超巨大な屋敷へと突入していく。
 あまりにも巨大すぎて、それが屋敷であると認識できたのは事前に情報を知るからであろう。
 そうでなければ、豊かな自然の恵みが、荒廃した世界であるアポカリプスヘルにおいて残っている事実に驚愕したであろう。
 これほどまでに嘗ての『アカプルコ・デ・フレアス』のリゾート地本来の光景が残っているのは、隷属させられた人々の血潮あってである。

 それを省みた時、正義の心を宿すヒーローマスクである神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は怒りに燃え上がるばかりであった
 相棒である桜も同様であろう。
『このまま『クライスト・ヴォーテックス』の屋敷に突入だぜッ! 野郎をぶっ飛ばさなければ、この怒りが鎮まるわけがねーぜッ!』
 怒り心頭である凶津の鬼面がカタカタと振るえた瞬間、彼等を襲ったのは、地を滑るような炎であった。

 オブリビオン教団の信者であるレイダー『フレイムアーミー』たちの持つ火炎放射器から放たれた炎が凶津たちを襲ったのだ。
 けれど、その炎を既のところで躱した凶津たちは驚愕する。
 嘗てのリゾート地を思わせる豊かな自然に彼等は頓着していなかった。噴出する炎は大地を焼き、豊かな自然すら焼き払っていく。
「炎こそ我らの信条。炎こそ『死の笛』に相応しい。全てに破壊を。全てに根絶を」
『フレイムアーミー』たちは彼等が信奉する神々への賛辞を述べながら火炎放射器を放ち続ける。
 白い服に身を包んだ姿は、これまで戦ってきた市街地の『クローン将校部隊』たちと同様の効果を持つのであろう。

『どわちちちッ!? 火炎放射の炎を遠慮なく放って来やがるなッ!』
 凶津は面倒なことこの上ないと敵の火炎放射の炎を躱す桜と共に飛び退る。
 近接攻撃を封じられた彼等にとって、破魔弓だけが敵に致命傷を与えることができる得物であった。
 しかし、『フレイムアーミー』たちは自陣の損壊などお構いなしに炎を振りまき続ける。
 それはあまりにも厄介である。
「……なんとか突破しますよ」
 景気よく振りまく火炎放射の炎で周囲は火炎に包まれ、熱波が二人を襲う。凄まじい熱量は、喉すら焼く勢いであり、このままでは二人はジリ貧であった。
 けれど、彼等の瞳に諦めという文字はなかったのだ。

 代わりに輝くのはユーベルコードである。
「……捕らえた」
 桜の言葉とともに結界霊符を結んだ矢が破魔弓より放たれる。
 それは地形が炎に包まれているのならば、それを利用するものであった。周囲には火種。そして、『フレイムアーミー』たちが背負う火炎放射器の中には可燃燃料が詰め込まれている。
 放つ結界霊符の結ばれた矢は、『フレイムアーミー』たちの動きを止める呪縛結界となって、たちどころに彼等を釘付けにする。

「動きを止めたのなら……こちらのものです」
 鬼面の奥で桜が息を吸い込む。
 一意専心。
 一射必中。彼女の心は穏やかでありながら、烈火の如き怒りに満ちていた。人々を虐げ、その生命で持って維持されていた『アカプルコ』のリゾート地としての自然。
 何の考えもなく燃やしてしまう愚かさ。
 それを許すことはできなかったのだ。

『引火してぶっ飛びやがれッ!』
 放たれた結界霊符を結んだ矢が炎と共に『フレイムアーミー』の背に追った燃料タンクに突き立てられた瞬間、凄まじ炎と共に彼等を飲み込む。
 しかし、それ以上炎は広がらない。
 結界射ち(ケッカイウチ)と呼ばれるユーベルコードによって、延焼した炎は結界の中に閉じ込められ、『フレイムアーミー』だけを焼き続けるのだ。
 怨嗟の声もここまでは届かない。
 凶津は赤い鬼面をカタカタ震わせ、正義の心の灯火を燃やす。

 相棒である桜と共に敵の武装を利用した戦術。そしてユーベルコードによる燃焼を拡大させぬ戦い方は、いつかきっと、このアポカリプスヘルが開放された時、人々の憩いの場所となるであろう。
 それが遠くない未来であることを祈りながら、二人は『白の城塞』のさらなる奥へと駆けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェット・アームストロング
他者に死を与える事を当然とするか。ならば命を奪われる覚悟もあるのだろうな。
いいだろう。司法の秩序を拒むのならば私は悪を断ずる処罰者となる。

火炎は【ヘビーフォース】による【オーラ防御】で防ぐ。酸素欠乏がまずいか。速攻で倒す。
【Punisher Mode】。全身を包むオーラの封印を解き、刃のごとき殺傷力を持たせる。
【ヘビーフィスト】を鋭く振るい【衝撃波】を飛ばして敵を【なぎ払う】。物質を透過し【鎧無視攻撃】となる刃のオーラの込められた拳圧は【斬撃波】となり、容赦なく敵を切り裂いていく。
これが君達が望んだ世界の法だ!あくまでも悪を貫く者達に、正義は一切の容赦をしないと知れ!



 オブリビオン教団の信者であるレイダー『フレイムアーミー』たちの炎はあらゆるものを燃やす。
 それが例え、己達の居城である『白の城塞』と呼ばれる白塗りの城壁に囲まれた巨大な屋敷の中、嘗てのリゾート地の面影を残す情景であっても関係はない。
 放たれた炎は、僅かに残っていた緑すらも燃やし尽くしていく。
 彼等の信奉するオブリビオンの神々は、容赦なく死を強要する存在である。
 その言葉を信じ、心酔し、『フレイムアーミー』たちは己の炎で疾く生命を燃やし尽くさんと、火炎放射器を振るうのだ。
「我らの神が求めるは、死。あらゆる生命に死を。燃やし、灰に返す。これこそが我らの神の教え」

 奉ずる言葉は狂信的そのものであった。
 この『クライストシティ』はまさに彼等のためにあり、彼等が積み上げた無辜なる人々の死骸から染み出す死の臭いよって満たされている。
 誰も彼もが正気ではいられない。
「他者に死を与えることを当然とするか。ならば、生命を奪われる覚悟もあるのだろうな」
 ジェット・アームストロング(ヘビーセット・f32990)こと『ヘビーセット』の心には正義の心、義憤に燃えるものがあった。
 到底許されていい行いではない。

 死が日常茶飯事など在っていいはずがない。
 荒廃した世界に生きる人々は明日すらも望むことができないでいる。ここには司法も悪法もなにもない。
 あるのは混沌とした死だけだ。
「我らが求めるは死のみ。あらゆるものを燃やし尽くし、我らが神に捧げるものなり」
 ゲル状の燃料が噴出し、『ヘビーセット』を襲う。
 それらは一瞬で着火し、彼を炎に包み込む。しかし、『ヘビーセット』の身にまとう『ヘビーフォース』が炎に巻かれることを防ぐのだ。
「――いいだろう。司法の秩序を拒むのならば、私は悪を断ずる処罰者となる」
 身にまとったミュータントパワーが噴出し、炎を吹き飛ばしながら『ヘビーセット』は戦場となった『白の城塞』を駆け抜ける。

 距離を詰める。
 接近戦は未だ白い服によって阻まれてしまうのならば、己が為すべきことは一つである。
 己の身に溜め込んだ脂肪の半分を燃焼させ、そのオーラの封印を解く。
「Punisher Mode(パニッシャーモード)!」
 オーラが刃の形へと変わっていく。
 鋭く、何者をも切り裂く刃となったヘビーフォースは、『ヘビーセット』が拳を振るった瞬間、拳圧と共に宙を舞い、『フレイムアーミー』たちが放った火炎放射器の炎すらも切り裂いて、一気に容赦なく彼等を両断する。

 その断面は荒々しくもなめらかであった。
 けれど『フレイムアーミー』たちが、それを見ることはできなかった。
 放たれた刃のオーラは拳圧と共に一瞬で『フレイムアーミー』たちを切り裂き、己達の最後すら知覚できぬままに倒されていくのだ。
「これが君たちが望んだ世界の法だ!」
『死の笛』の如き振る舞いを。
 それがオブリビオン教団信者たちの求めるものであった。

 容赦なく、死をもたらす者。
 言葉にすればどれほど陳腐であろうか。そんなものに意味を見出すことなど『ヘビーセット』にはできなかっただろう。
「あくまでも悪を貫く者達に、正義は一切の容赦をしないと知れ!」
 拳を振るうたびに『フレイムアーミー』たちの炎が切り裂かれ、その体が両断されていく。
 正義の拳の後に残るのは、むさんし消えていくオブリビオン教団の信者たちのみ。

 正義とは何か。
 それを問うのは愚問であろう。
 生命を悪戯に奪うものには、己が鉄槌を下す。
 その意志と共に『ヘビーセット』は断罪者となった拳を振るい、『白の城塞』の中を走り抜け、『クライスト・ヴォーテックス』を目指すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
みんなのお陰で市街地は取り戻したなん
でも喜ぶのはまだまだまだ
あのお城が残ってる
だからみんなはお留守番
後で缶詰沢山持ってくるからね

敵は火炎放射器を使っていーけど
らぶもラビットブレスを使っていー!
炎の大きさは負けないぞ
あれ?
なんなんな?お城の中なのに沢山雨が降ってきた
おいマザー
今日の天気は雨だった?
【ネットワークに接続できませんでした。館内は火災が発生し、スプリンクラー装置が作動しています。直ちに避難を開始して下さい】
熱で水蒸気がモクモク
それに砂漠の蜃気楼みたいにセカイはユラユラ
でもそれは敵もおんなじ
らぶには聴こえるの
敵の息遣いと足音が
視界がなくてもお見通し
さっきの鉄砲構えて
明日に向かって
撃つんだ



『クライストシティ』の市街地に展開していたオブリビオン教団の信者、『クローン将校部隊』は猟兵達の戦いによって尽くが撃滅されていた。
 その様子に隠れ潜んでいた隷属を強いられた人びとが顔を出す。
 共に戦った者もいるが、誰もが信じられないものを見るような目の色をしていることにラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)は満足げにうなずいた。
「みんなのお陰で市街地は取り戻したなん」
 彼女は、この都市の奴隷として扱われていた人々を奮起させ、銃を取らせた。
 それは確かに僅かな一歩であったのかも知れない。

 明日を望むことすらできなかった人々にとっては、大いなる一歩だ。
 彼等の手にはラブリーが渡した金貨が握りしめられている。今は何の意味も持たない無用の長物だ。
 けれど、知っている。人の欲望はいつだって何もかもをも推し進めていくことを。「でも喜ぶのはまだまだまだ。あのお城が残ってる。だからみんはお留守番。後で缶詰たくさんもってくるからね」
 そういってラブリーは人々と別れ白塗りの城壁に囲まれた『白の城塞』へと走るのだ。

 そう、未だあの『白の城塞』にはオブリビオン教団の信者と教祖である『クライスト・ヴォーテックス』がいるのだ。
 あれらを取り除かぬ限り、この『クライストシティ』は真に『アカプルコ・デ・フレアス』に戻ったとは言えない。
 すでに猟兵たちが突入し、周囲は炎が煌々と燃え盛っている。
 かつてのリゾート地の名残であろう緑が、この『白の城塞』の中には残っているにも関わらず『フレイムアーミー』たちは火炎放射器でもってあらゆるものを燃やし尽くすとしているのだ。
「我らの神に炎を捧げる。薪を焚べよ、生命を焚べよ。我らの神は死を望んで居られる」

 信奉する神に捧げる炎を噴出させる火炎放射器は巨大化し、吹き荒れる炎は嵐のようになってラブリーを襲う。
「炎の大きさは敗けないぞ!」
 手にした火炎放射器は嘗て瘴気の街で発掘されたものだ。それをラブリーは構えるが、突如として雨が降りしきる。
 いや、太陽は今も尚燦然と輝く。
「おいマザー、今日の天気は雨だった? 狐の嫁入りってわけじゃないなんな?」
 端末である『ビックマザー』に問いかける。
 答えは簡潔なものであった。というより、いつもの文言であったように思えたが、続く言葉は違った。
『ネットワークに接続できませんでした。館内は火災が発生し、スプリンクラーが作動してします。直ちに避難を開始してください』

 その言葉が示すように火炎放射器の炎を鎮火しようとあちこちからスプリンクラーが作動し、雨を降らせている。
 もうもうとした水蒸気があちらこちらから煙まじりに上がっていく。
「砂漠の蜃気楼みたいにセカイはユラユラ。でもそれは敵もおんなじ」
 ラブリーの耳がウサミミの偽神兵器へと変異する。
 それは視界が塞がれた、この現状にあってあらゆる音を聞き分けるキュリオスラビットの耳そのものであった。

 大地を踏みしめる音、息遣い。
 防毒マスクのフィルターがかすれる音。あらゆる音がウサミミに集約され、ラブリの聴覚を刺激する。
 どれだけ水蒸気が視界を覆ったのだとしてもラブリーには関係ない。
「あっちからはたのしそーな音。こっちからはフクザツな音。んー。あっちにするなん」
 それは一瞬の判断であった。
 視界がなくても引き金は引ける。引き金を弾けば、市街地で手に入れた銃からは弾丸が放たれる。

 それは『フレイムアーミー』を貫き、次々と水蒸気の中を突き抜けて彼等を打倒していく。
「お見通しなんな。どれだけひっそりしていたとしても、ウサミミには聞こえるなんね」
 明日を望むことさえできなかった人々の瞳をラブリーは知っている。見ていたのだ。だからこそ、彼女は彼等に示したのだ。
 明日を求めていいのだと。

 自分たちの引き金を引くからこそ、明日に向かっていけるのだと。
「誰だって明日に向かって撃つんだ」
 どうしようもない明日であっても、生きているのならばどうとでもできる。
 それを証明するためにラブリーは水蒸気煙る『白の城塞』を走る。
 だって約束したのだ。

「缶詰沢山ゲットしないとなん」
 彼等の笑顔を見るために。そのためにこそ彼女は跳ねるようにして己のユメに向かって走るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎

WIZ

今度は火炎放射器使いか…相変わらず遠距離戦の方が良さそうだけど
問題は相手の攻撃を回避しても地形効果で強化されちゃう事か…

自身の周りに【結界術】にて結界を生成
この結界は【火炎耐性】を付与して少しでもダメージを軽減するもの
そしてこっちからの攻撃は護符に水の力を付与した【属性攻撃】の【乱れ撃ち】だ!

そして敵の火炎放射攻撃を相殺試みつつ、【乱れ撃ち】した護符の一部を相手の四方へさりげなく設置

敵を囲うように設置した札の準備が出来たら一気に攻勢だ!
水の疑似精霊、全力で行くよ!エレメンタル・バースト!
UC『疑似精霊・最大火力』で超巨大な氷柱を作り出し、落し潰すように射出!



 白塗りの城壁が取り囲む『白の城塞』――それは『ヴォーテックス一族』の『クライスト・ヴォーテックス』の居城であった。
 そう呼ぶに相応しいほどの超巨大なる屋敷は、戦車が入り込んだとしても何の問題もないほどの敷地を有していた。
 しかし、城壁と市街地を一枚の壁が隔てた『白の城塞』の中は、別世界であった。
 荒廃した世界であるアポカリプスヘルにおいて、自然が残っている。
 それは嘗てのリゾート地である『アカプルコ・デ・フレアス』の名残。
 これだけの自然を維持するために喪われた無辜なる人々の血潮はどれだけのものであったことだろうか。

 されど、オブリビオン教団の信者である『フレイムアーミー』たちは頓着していなかった。
 構えた火炎放射器によって炎を噴出させながら、隊列を組んで迫る猟兵たちを追い返そうとしている。
「我らの炎は浄化の炎。破壊と死によって我らの神に奉ずるのだ」
 彼等は己たちが信奉する神々に信仰を捧げるために数多の犠牲の上に成り立つ貴重な自然すらも燃やすことに躊躇がないのだ。
「自然すら頓着しないのなら!」
 鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は精霊の護符を放ちながら『白の城塞』の中を駆け抜ける。

 炎を消火しようとしたのだろう。
 自身の周囲に結界術でもって結界を生成し、炎を防ぎながらこれ以上延焼しないようにと努めた。
 徒に奪われた生命の上に成り立つのが、この屋敷の自然であるのならば、燃やされてはならないと考えたのだ。
「人の生命も、自分の生命も大事にできないから、簡単に奪える! 燃やせる!」
「それが『死の笛』たる生き様。我らはあらゆるものを灰燼に帰すための炎。全てを燃やし、全てに死をもたらす炎なれば」
 彼等の言葉は狂信的すぎた。
 ひりょは、レイダーである彼等を説得しようと思ったわけではない。

 対話が可能であるとも思わなかった。
 けれど、彼等が奪ってきたものの重さを知っている。この自然がどれだけ荒廃した世界であるアポカリプスヘルにおいて大切なものであるかをひりょは知っている。
 だからこそ、その瞳がユーベルコードに輝くのだ。
「呼びかけに応じよ疑似精霊、かの者に大いなる鉄槌を…、エレメンタル・バースト!」
 ひりょの手が振り下ろされる。
 それはさり気なく配置された精霊の護符でもって形成される極大なる契約済みの疑似精霊による大火力の一撃。

 疑似精霊・最大火力(エレメンタル・バースト)と呼ばれるユーベルコードの輝きであった。
 相手が炎を手繰るのであれば、ひりょは水を操る。
 燃やさせてはならない。
 もしも、『クライスト・ヴォーテックス』を倒し、この街からオブリビオンを一掃することが出来た時、この『白の城塞』の自然はかけがえのない財産になるだろう。

 それこそ、明日を望むことすら忘れてしまった隷属の人々の心に希望を灯すことだってできるはずだ。
「できるはずだ! 水の疑似精霊なら!」
 放たれる巨大なる水の柱。
 それはまるで天より振り下ろされた鉄槌のように『フレイムアーミー』たちの放った火を打ち消し、さらには彼等の頭蓋を一撃のもとに叩き割る凄まじき水圧でもって打倒する。

 このために精霊の護符でもって彼等を取り囲んでいたのだ。
 押しつぶされた『フレイムアーミー』の残骸がひりょの足元に流れてくる。
「――炎は消した……なら、後は」
 そう、残すは『クライスト・ヴォーテックス』だけである。
 かのオブリビオン教団を興した狂人教祖を打倒して初めて見える希望があるというのならば、ひりょは戦うだろう。
 それが彼の戦う理由。
 希望があるからこそ笑顔が生まれるのならば、そうすることで自分の願いを叶えることができるのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
ここは外とは別天地ね。よくもまあ。
オブリビオンのくせに、物欲や自己顕示欲は人間並みか。救えないわ。

ここで出てくるのは、火炎放射器か。「火炎耐性」で防ぎながら、討滅していく。

「結界術」「全力魔法」氷の「属性攻撃」「範囲攻撃」「串刺し」「仙術」「道術」で、寒氷陣。
敵の足下から細く鋭い氷柱を生やし、早贄よろしく身体を穿つ。
この範囲内はあたしの領域。地面を這う炎は、霊気が喰らって冷まさせてもらう。
更に、氷柱の出し入れも自由でね。初撃を回避出来た奴らに第二波、第三波。
抗うなら好きになさい。だけど、この絶陣からは逃れられない。

終わりのようね。死の笛どうこうなんて知らない。あたしはただ、この力を使うだけ。



「ここは外とは別天地ね」
 そうつぶやいたのは、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)であった。
『クライストシティ』の市街地は酷い有様であった。
 人々の瞳に希望はなく、明日を望むことさえしていなかった。
 死んでいるように生きているようなものだった。隷属を強いる段階で摘み取られた希望と生命、そして血潮がどれほどのものであったことだろう。

 その生命を積み上げた先にあったのが、『白の城塞』の中にある庭園とでも呼ぶべき豊かな自然であった。
 荒廃した世界にあって、これだけの自然を維持するために必要なものを思えば、奪われた生命の数は膨大そのもの。
「よくもまあ。オブリビオンのくせに、物欲や自己顕示欲は人間並か。救えないわ」
 彼女の瞳に映る庭園は、美しい光景とは裏腹なものだった。
 奪う必要のない食料を奪い、殺す必要のない生命を奪う。
 それがレイダー、オブリビオンの為すことだ。だからこそ、赦してはおけない

『フレイムアーミー』たちが放つ火炎放射器の炎が大地を舐めるようにして吹き荒れる。
 背に負った火炎放射器が巨大化し、手のつけられないような炎でもって猟兵たちを襲うのだ。
「我らの炎は浄化の炎。すべてを灰に変え、すべてをかの神に捧げるのだ」
 彼等の狂信的なまでの炎は、いつだって命あるものを燃やし尽くしてきたのだろう。おぞましさにゆかりは一歩を踏み出す。
 己の持つ火炎耐性によって、炎の中を進む。

「抗うなら好きになさい」
 その言葉は彼女の怒りであったのかもしれない。
 きらめくユーベルコードが紡がれる。彼女の言葉の端々から冷気がほとばしるように。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。冷たく凍えし絶望の爪牙よ。地の底より目覚めて、大地を闊歩する傲慢なる衆愚を穿ち貫け。疾!」
 寒氷陣(カンピョウジン)。
 それは彼女のユーベルコードであり、同時に大地より穿たれる氷の柱となって顕現する。
 炎さえも凍てつかせるほどの冷気と共に『フレイムアーミー』たちが氷柱によって貫かれて絶命する。

「だけど、この絶陣からは逃れられない」
 だが、それで彼女のユーベルコードは終わらない。
 放たれた氷柱は再び大地に消え、そしてまた再び大地を引き裂きながら競り上がるようにして氷柱を『フレイムアーミー』に撃ち放つのだ。
 彼女にとって『死の笛』など関係ない。
 そんな言葉に意味はない。どれだけ『フレイムアーミー』たちが、オブリビオン教団たちが、その『死の笛』の如き容赦のない暴力に見惚れるのだとしても。

「あたしには関係ない。ただ、この力を使うだけ」
 次々と氷柱が大地より『フレイムアーミー』たちを貫いていく。
 彼女は容赦のない死をもたらす『死の笛』など知ったことではないと言った。
 けれど、彼女の行いそのものはオブリビオン教団の信者たちにとって回避不能為る『死の笛』そのものであった。
 白い服が散々に引き裂かれ、血潮に染まっていく。

 それはこれまで流された数多の人々の無辜なる魂を贖うかのように、ゆかりの放つ絶陣でもって『フレイムアーミー』を尽く貫き、打倒していくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
炎は我が領域であるが…諸々を考えると、交代した方がよいであろ。

人格交代
『侵す者』→『静かなる者』
一人称:私
冷静沈着な霊力使いの武士
武器:白雪林

まあ、たしかにそうですよね。
あなた方が炎で拒むというのならば、この地形を湖に変えるまで。足元にむかって、先制攻撃の【四天境地・水】を。
簡単には燃えませんし、蒸発もしませんよ。
私自身は水上歩行しますね。

そして、どうであれ霊力矢を射かけますね。生命力を吸収するとはいえ、時間をかけるものでもありませんからね。

我らの誓いは一緒なのです。ですから、私も全力を尽くしましょう。



 オブリビオン教団の信者である白い服をまとった『フレイムアーミー』たちが持つ火炎放射器から放たれる炎は豊かな自然を持つ庭園の如き『白の城塞』の中を紅蓮に染め上げていた。
 周囲に撒き散らされる炎のことなど、彼等は頓着していなかった。
 燃やすことができるのならば、それでいいというように盛大に炎を放ち、全てを灰燼に帰すまで止まらないだろう。
 例え、この豊かな自然、かつての『アカプルコ・デ・フレアス』の名残を唯一残す馬車であったとしても関係ないのだ。
「我らの神に灰を奉じよ。かの神は破壊を求めて居られる。死を積み重ね、必ずやかの神の元に」
 彼等は狂信的であった。
 どうしようもなく、破壊と死をもたらすことしかしなかった。

 それがあの市街地の光景を生み出した原因でもあろう。
 ただ殺す。意味もなく殺す。戯れに殺す。それがオブリビオン教団の教義であるというように気まぐれに炎を撒き散らす。
 その光景に馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱である『侵す者』は頷く。
「炎は我が領域であるが……諸々を考えると、交代したほうがよいであろ」
 彼等は四人で一つの複合型悪霊である。
 表層に現れる人格に寄って扱う武器も違えば、力も違う。『侵す者』から『静かなる者』へと主体と為る魂を切り替えた彼等は炎の中をゆっくりと歩く。

「まあ、たしかにそうですよね」
『静かなる者』の瞳がユーベルコードに輝く。
 炎が渦巻く中、『静かなる者』の力は確かに有効なものであったことだろう。
「六出の血にて、これをなしましょう」
 四天境地・水(シテンキョウチ・ミズ)。
 それは白い雪のような長弓よりはなたれた氷雪の霊力を宿した矢。

 だが、その矢は『フレイムアーミー』たちを射抜くものではなかった。
「あなた方が炎で拒むというのならば、この地形を湖に変えるまで」
 放たれた矢は庭園の大地に尽きさり、瞬時に雪解け水の湖に変化させる。燃え上がる炎が雪解け水によってたちまちに消えて行く。
 周辺に撒き散らされた炎も同様である。
 多くの猟兵が、この『白の城塞』の中にある自然を守ろうとしている。その理由を『静かなる者』は知っている。

「この自然の豊かさ。維持するためにどれだけの生命を吸い上げたかわからないでしょう。ですが、この自然は、あなた方のためにあるためでもなければ、燃やされる言われもない」
 ゆえに、『静かなる者』は霊力でもって形成された矢を番え、引き絞る。
 狂信者であるオブリビオン教団の『フレイムアーミー』たちの愚かな振る舞いをこれ以上させぬために、己のユーベルコードに輝く瞳と共に彼等を射抜く。
「我らの誓いは一緒なのです」
 だからこそ、四人が感じることもまた同じである。

 これ以上奪われないように。
 人の生命が。過去に食いつぶされないように。皮肉にもこの庭園の自然は、無辜なる人々の命によって維持されている。
 ならばこそ、過去の遺物たるオブリビオンに自由にさせていい道理などないのだ。
 放たれた矢が、湖に変化した地形が、あらゆる力で持って『フレイムアーミー』たちを消し去っていく。
「ですから、私も全力を尽くしましょう」
 誰かのために戦うことこそ。

 奪われた者が、己たちのような存在がこれ以上生まれぬようにと『静かなる者』は長弓を構え、放たれる矢でもって『フレイムアーミー』たちを射抜く。
 もう奪われたくない。
 これ以上何も。ただの一人の生命すら。そのための戦い。この一戦が微々たるものであったとしても確実に未来に繋がるものであると信じて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
容赦なき死を与える者に畏敬の念を覚える、ね
正直理解しかねる感覚ではあるけど
利用できるものは利用させて貰おうか

理解しかねるといえば
分霊は人形を手に聖域に篭ってるよ
本人的には慈悲らしい

ワイヤーガンを利用して高所を移動しつつ
頭上からガトリングガンの弾をお見舞いするよ
燃料を飛ばす以上重力の影響は受けるだろうし
炎の上を歩きたくはないからね

背後のタンクを優先して狙いつつ
掃射で倒していこうか
服も含めて良く燃えるんじゃないかなぁ

数が減ってきたら
移動しつつばら撒いていた煙幕発生装置を起動して
一体一体確実に仕留めていこうか

近距離攻撃になるのか悩ましいところだけど
必要なら服の隙間からワイヤーを通すとか工夫をしようか



『死の笛』と呼ばれるのは、容赦なき死をもたらすオブリビオン教団の信者たちが信奉する教義そのものであったのだろう。
 あらゆる理由さえも容易に踏み越えて生命を奪う。
 いつだって『フレイムアーミー』たちには、それが出来たのだ。
 手にした火炎放射器が庭園の全てを燃やすように炎を撒き散らす。豊かな庭園すらも燃やし尽くして、それでも生命を奪うことに、燃やすことに酔いしれてしまう。
「我らの神に灰を。祝杯の如き灰を捧げよ。燃やし、燃やし、全てを燃やしてしまおう。生命すら、全て」
 彼等の行いは、オブリビオン教団にとっては善行そのものであるのだろう。

 市街地に山積した無辜なる人々の死骸は、まさにそれである。
 まるで己の徳の高さを誇示するように山積した遺骸。それを佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は見ていた。知っていた。
「容赦なき死を与える者に畏敬の念を覚える、ね。正直理解しかねる感覚ではあるけど」
 けれど、利用できるものは全て利用させて貰うと、晶は戦場となった『白の城塞』を走る。
 炎が晶の行く先を阻む。
 けれど、理解しかねる存在を前にして、己の身体の中に融合した邪神についても同じであった。
 市街地で得た着せかえ人形と成り果てた『クローン将校部隊』と共に聖域にこもっている。
 本人的には慈悲であろうが、晶にとってはそうではない。

「我らの教義を理解せぬとは!」
 火炎放射器から炎が噴出し、晶へと迫る。
 けれど、晶はワイヤーガンを利用して高所を移動していく。手にした携行型ガトリングガンの弾丸がばら撒かれ、白い服を貫いていく。
「炎の上を歩きたくはないからね」
 ガトリングガンの弾丸が『フレイムアーミー』たちの背に追った可燃燃料のタンクを狙い、斉射でもって彼等の行軍を阻む。
 これ以上炎でもって庭園を焼かれてしまうことは、『クライストシティ』が『アカプルコ・デ・フレアス』に戻った時、損失以外の何者でもない。

「そして、仕込みはもう終わったよ。君たちの数も減ってきたようだしね」
 その言葉と共にすでに仕掛けられていた復数の発煙装置から煙幕が展開され、『フレイムアーミー』を取り囲んでいく。
「――!? 煙幕! 今更視界を防いだところで――」
 その言葉は最後まで紡がれることはなかった。
 ごとりと重たい音が戦場に響く。何が、と思った瞬間に、次々と重たい音が煙幕の向こう側から聞こえてくる。
 それは試製発煙攪乱装置(スモーク・ジェネレーター)によって放たれた切断用ワイヤーによる斬撃の一撃であった。

 煙幕はいわばブラフである。
 視界を奪いつつ、切断用ワイヤーの不可視の一撃で持って首を両断せしめる。恐ろしき手段でもって晶は一体一体を確実に仕留めていく。
 重たい音は『フレイムアーミー』の首が切断され、大地に落ちた音だ。
「遠隔操作であることが決め手だったかな。ちょっと姑息な気もするけど、こっちも命懸けだからね」
 晶は次々とワイヤーでもって『フレイムアーミー』たちを駆逐していく。
 その容赦のない死を振りまく不可視の斬撃は、彼等に狂乱をもたらすものではなく、己達の信奉する神に捧げられる供物として、忘我の境地の中に打倒されていくのだ。

 その光景を見やり、晶は嘆息する。
 何一つ理解することができない。彼等の教義も、彼等が『死の笛』と呼ばれる容赦のない死を振りまく存在に畏敬の念を抱くのかも。
 何一つ。
 けれど、それでいいのだ。理解できぬということを晶は理解した。けっして相容れぬと。猟兵とオブリビオンがそうであったように、晶もまた理解できぬものの首をまた一つ、大地へと切り落とすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
クライスト・ヴォーテックスの居城に参りましょう

生きるため何かの命を奪うこともあるでしょう
けれど、己の欲望のままに人の命を奪う者を、
猟兵は許しません

《戦士の手》と共に!

水の【属性攻撃】を纏う武器での【なぎ払い】を
浴びせ、敵の炎攻撃への対処とします

囲まれないよう絶えず【ダッシュ】で動き
集中砲火を避け、敵には【吹き飛ばし】て
炎の巻き込みを利して、同士討ちも狙いましょう

水のなぎ払いでも消しきれない攻撃は
【オーラ防御】で凌ぎつつ接近戦!
【鎧砕き】の重い打撃をねじ込みますよ。

ダメージがあっても止まらず拳を、蹴りを打ち込む
苦しめられた人々の痛みはこんなものじゃないから!

敵陣を沈黙させたら、
クライストのもとへ



『クライスト・ヴォーテックス』と呼ばれる『ヴォーテックス一族』の一人の居城たる『白の城塞』は今や猟兵たちとオブリビオン教団の信者である『フレイムアーミー』たちが巻き起こす炎と戦いの音を響かせている。
 豊かな庭園は、市街地の有様とは一変していた。
 荒廃した世界であっても自然が残っている。これを維持するためだけに、どれだけの無辜なる人々の血が流れたか知れない。
 ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)にとって生きるために何かの生命を奪うことはあるものであった。

 己がどのようにして生き、糧を得てきたのか。
 それを自覚するからこそ、生命の在り方は他者を喰らい、生命を奪うことによって成立する。けれど、生命維持のために糧を得る必要のないオブリビオンには当てはまらない理である。
「けれど、己の欲望のままに人の生命を奪う者を猟兵は赦しません」
 ユーフィは、戦士の手(センシノテ)と共にある戦士である。

 水の属性を纏う創世の大剣を叩き直し造り上げられた『ディアボロス』に備えられたウェポンエンジンが唸りを上げる。
 ユーフィの心に呼応するように『フレイムアーミー』の放つ炎を薙ぎ払い、大地を蹴った足が凄まじい速度でもって距離を詰める。
「我らの浄化の炎を払うか。全ては我らの神のための供物であるというのに」
 狂信的なまでに炎を振りまき、あらゆるものを燃やし尽くさんとする『フレイムアーミー』にユーフィは肉薄する。

 それが彼等の生命を奪う理由なのだ。
「そんな理由で生命を奪っていい理由にはなりません!」
 放たれた一撃が『フレイムアーミー』の炎を鎮火しながら、吹き飛ばす。
 彼女の怒りはディアボロスエンジンに伝わる。こんなものじゃなかったはずだ。これまで彼女が『白の城塞』に至る道中で見た市街地の惨状。
 無辜なる人々の死骸が山積し、数多の生命で持ってオブリビオン教団の信者たちの盲信に消えていった光景を見たのだ。

 それは許せない。
 ユーフィが『戦士の手』であるからえはない。猟兵であるからでもない。
 彼女が彼女自身であるがために、その凶行を赦してはおけないのだ。
「苦しめられた人々の痛みは、こんなものじゃないから!」
 拳で、蹴撃で、振り抜かれる『ディアボロス』の纏う水のオーラが『フレイムアーミー』たちの炎すら消し去っていく。
 彼等は知らないのだ。
 生きる意味を。どうして人びとが明日を臨めないのに生きているのかを。

 そこには希望があるからだ。
 どれだけ喪っても、喪っても、どうしても明日がほしいと願うのだ。
 殺されてしまうかも知れない。けれど、人は負けるようには出来ていないのだ。オブリビオンは得意げに人びとの生命を奪っただろう。
「けれど、敗けてなんかない。それがあの人達がこれまで生きてきた理由なのだから
!」
 裂帛の気合と共にユーフィは『フレイムアーミー』へと拳を叩き込む。

 明日を望む。
 ただそれだけのために生きている。そんな彼等を誰が貶めることができるだろう。そんなことをユーフィは許さない。
 荒れ狂う嵐のように炎の全てを消し去って、彼女は『白の城塞』の奥に視線を向ける。
『フレイムアーミー』の尽くを沈黙さえ、次なるは『クライスト・ヴォーテックス』だけだ。
 かの狂人教祖を打ちのめし、人びとの瞳に真なる希望を取り戻す。
 そのために彼女は駆け出すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
躊躇なく火を放ちましたね……この世界でこれだけの景観を維持するのは大変でしょうに。
それだけクライストはこちらを警戒しているのでしょうか?
まぁ、この信者たちの信仰でもありそうですが。

いずれにせよ、邪魔です。
【大いなる冬】を使用、敵の持つ火炎放射器の炎及びすでに放たれ、地形を包んでいた炎を無力化します。
今の私がこれを維持できるのは100秒とちょっと。手短に済ませましょうか。
「フィンブルヴェト」を手に遠距離からの氷の弾丸の射撃で敵を倒しながら敵集団の中に切り込みます。
敵集団の真ん中に乗り込んだなら射程よりも連射を重視し二丁「デリンジャー」に持ち替え、周囲の敵を撃ち抜いていきます。



『白の城塞』と呼ばれる『クライストシティ』の要、その超巨大な屋敷とも言うべき白塗りの城壁の中は、豊かな自然が広がっていた。
 市街地の荒れ果てた大地とは違う。
 オブリビオンストームによって荒廃した荒野とはまるで違う。燦然と輝く太陽が照りつけ、緑が映える屋敷の中を彩るのは『フレイムアーミー』の放つ炎であった。
 彼等は己達の信奉する神に捧げるために、全てを燃やし、殺しつくそうとする。それがオブリビオン教団の教義であり、彼等の正義である。
「燃やせ、燃やせ、我らの炎が生み出す狼煙が天に居られる神に届くように」
 彼等の言葉は盲信そのものであった。
 狂信者となった『フレイムアーミー』たちは、この庭園の緑が如何なる犠牲の元に成り立っているのかを知りながら、まるで駆けいないというように炎でもって猟兵ごと燃やそうとするのだ。

「躊躇なく火を放ちましたね……この世界でこれだけの景観を維持するのは大変でしょうに」
 セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は、『白の城塞』の中に突入しながら、放たれた炎の紅蓮が緑を侵食していくさまを見つめる。
 人びとの生命が、この緑を維持するためだけに使われたいたのだとしたら、あの市街地に積み上げられた死骸の山は、全てが無意味な死であったというほか無いないだろう。

 いや、それだけ『クライスト・ヴォーテックス』が猟兵を警戒しているという線もあるだろう。
 それ以上に『フレイムアーミー』たちの狂信が勝っているとも言えるのであるが。
「いずれにせよ、邪魔です」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 一切の容赦などしない。そこにあるのは、己の身体より放たれた敵を凍てつかせる冷気である。
 あらゆる炎や高熱を無力化する力は、この『クライストシティ』に大いなる冬(フィンブルヴェト)の到来を知らせるものであった。
 放たれた火炎放射器の炎さえも凍てつかせ、セルマの瞳が見開かれる。
 悠長に構えている時間はない。

「手短に済ませましょう」
 絶大なる力の代償は凄まじいものである。
 この状態を維持できるのは、今の彼女とて100秒を越える程度である。ならばこそ、一瞬で彼女は手にしたマスケット銃『フィンブルヴェト』を構える。
 白い服によって近接攻撃防ぐというのならば、セルマこそが、この戦いにおいて先手を取ることが出来ただろう。

 炎すら凍てつかせる冷気は凍り付くままに『フレイムアーミー』の身体を凍りつかせ、『フィンブルヴェト』より放たれた氷の弾丸は、たやすく彼等の眉間を貫き瓦解させていく。
「我らの炎が――」
 消える、凍てつく、と『フレイムアーミー』たちがたじろぐも全てが遅きに失する。
 セルマは一瞬で『フレイムアーミー』たちの中心に乗り込み、『フィンブルヴェト』の銃剣装着された銃身を大地に突き立て、早業にて引き抜かれた二丁のデリンジャーより凄まじい速射でもって次々と彼等を撃ち抜いていく。

 銃声すらも遅れてくるような神速の銃弾は、彼等の畏敬を抱かせるには十分であったことだろう。
 デリンジャーを持ち替え、代わる代わる撃ち放たれていく氷の弾丸はまるで乱舞するように。
 100秒の後、その場に立っているのはセルマだけであった。
「次は、あなたです」
 彼女以外の全てが凍りついた戦場にあって、セルマは『フィンブルヴェト』を大地より引き抜き、その氷の視線で持って『クライスト・ヴォーテックス』をねめつけるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
この区画の敵は『死の笛』と呼ばれる存在を信仰しているとの情報がありましたね
そのように振舞うのは騎士として少々不本意ではありますが…

マルチセンサーでの情報収集で屋敷の敷地内をサーチ
足場に出来る壁面に構造物、庭園の木々を把握(踏みつけ、地形の利用)
脚部スラスターの推力移動も合わせた跳躍とワイヤーアンカーを射出してのロープワークを駆使し敷地内部を三次元的に移動

お望みとあらばご覧に入れましょう
笛で無く、噴射炎と銃声なのはご容赦を

巨体を宙に躍らせ火炎を躱し敵集団を翻弄
頭上より格納銃器の乱れ撃ちスナイパー射撃
眉間撃ち抜き数を減らし

道を開けて頂きます

立ち竦む敵を一掃
大盾取り出し屋敷の扉を破壊
内部へ突入



『死の笛』とは、『クライスト・ヴォーテックス』が興したオブリビオン教団に流れる一つの概念であった。
 容赦なく死を振りまく者。
 笛の音が流れるように、圧倒的な暴力でもって死をもたらす存在にこそオブリビオン教団の信者たちは畏敬の念をいだき見惚れる。
「そのように振る舞うのは騎士として少々不本意ではありますが……」
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、それを致し方無しと飲み込んだ。
 彼の中に在る騎士道精神とはかけ離れた概念。

 それを理解したとしても、そのように振る舞うことに抵抗を覚える。
 矛盾を抱える電脳であるからこそ、導き出された答え。今は、それを誇らしくも思えるだろう。
 マルチセンサーによって『白の城塞』の中、その庭園の如き見事な景観が『フレイムアーミー』たちによって燃やされているのを見やる。
 これが狂信的でなくてなんであるというのだろう。
 緑を維持するために数多の無辜なる人びとの生命が流れたことだろう。それを灰燼に帰すのもためらわぬ炎。
「我らの神に奉じよ。炎を、灰を、生命を。悉く燃やし尽くして、神に!」
 彼等の炎は全てを焼き尽くすまで止まらないだろう。
 どれだけの生命の結果に維持された緑であるのかを知ったとしても。

「お望みとあらばご覧に入れましょう。笛ではなく、噴射炎と銃声なのはご容赦を」
 トリテレイアのウォーマシンとしての巨躯が空へ舞う。
 脚部スラスターが噴射し、跳躍する。ワイヤーアンカーが放たれ周囲に点在する建造物や樹木に絡みつき、見事なロープワークで持って敷地内を三次元的に跳躍して『フレイムアーミー』へと迫るのだ。
「――! あれは!」
 火炎放射器をトリテレイアに向けるが、もう遅い。

 すでにトリテレイアのアイセンサーは敵性集団を全てロックオンする。
 機械騎士の戦場輪舞曲(マシンナイツ・バトルロンド)とも称されたトリテレイアの戦術機動。
 その機体に内蔵された銃火器が展開し、それら全てが展開する『フレイムアーミー』たちを捕らえているのだ。
 乱れ撃つ弾丸が一発も違えず、彼等の眉間を貫く。
「肝要なのは現状を俯瞰的に捉える事、走らずとも止まらぬ事、射線から外れる事、その繰り返しの他は…騎士として危地に踏み入る覚悟です」
 そう、覚悟だけが彼を今走らせている。

 炉心に燃える騎士道精神が言うのだ。
 全てを燃やし尽くす破壊の炎を赦してはならぬと。そのために己は剣を振るうのだと。首魁たる『クライスト・ヴォーテックス』を討ち、必ずや、この緑の大地を荒廃した世界しか知らぬ人々にもたらすのだ。
「道を開けて頂きます」
 一瞬の銃撃。
 そのトリテレイアの鮮やかささえ感じさせる銃撃に『フレイムアーミー』たちは見惚れたことだろう。

 あれこそが己達の目指す『死の笛』の音であると。
 けれど、彼等はそれ以上何も感じることは出来なかった。数敵優位さえも覆す機械騎士の輪舞曲は、立ちすくむ『フレイムアーミー』たちを撃ち抜き、疾駆する。
 そう、目指すは『クライスト・ヴォーテックス』の座す屋敷。
 見える扉を大盾でもって吹き飛ばし、トリテレイアは内部へと突入する。目指す首魁の首はすぐ其処に。

 その悪しき性根を叩き伏せ、トリテレイアは己の騎士道を持って、かの狂人教祖を打ち倒すだろう。
 煌めく剣の刀身に映る『クライスト・ヴォーテックス』の瞳は、狂気に満ちていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スリジエ・シエルリュンヌ
さて、突破しました。今度はあの方々ですね!

ううん、桜のガンシップには不利な相手ですから…私は乗りつつ、指定UC【桜火乱舞】発動しますね!
これはれっきとした遠距離攻撃になるでしょうし!(レベル半径内なので、どうしても突っ込むが)

そう、地形が炎になれど、桜のガンシップに乗ったままの私に被害はなく。さらに火炎耐性の結界術もしてますからね。
砲撃も交えて…その背にある燃料タンク、爆発させますね!

そう、ここで止まるわけにはいかないのですから。
私は文豪探偵であり猟兵。最後は事件解決に向かうんですから!



 死の臭いが充満する『クライストシティ』の市街地を桜色のガンシップが駆け抜ける。
 見下ろした先に山積する無辜なる人々の死骸は、この悪徳の都市にあってレイダーたちの悪辣さを思い知らされるには十分なものであった。
 同時に『クライスト・ヴォーテックス』の興したオブリビオン教団の狂った教義にもてあそばれた人々の生命の多さを知る。
 スリジエ・シエルリュンヌ(桜色の文豪探偵・f27365)はガンシップと共に白塗りの城壁に取り囲まれた超巨大な屋敷『白の城塞』へと突入する。

 そこは市街地とは一変した世界であった。
 荒廃した世界、アポカリプスヘルにおいては荒野ばかりが広がるものである。なのに、この『白の城塞』である『クライスト・ヴォーテックス』の住まう屋敷の敷地は広大であり、かつての『アカプルコ・デ・フレアス』のリゾート地であったことを想起させるような豊かな自然が広がっているではないか。
「これが人々の生命を吸い上げて維持しているということは……」
 スリジエでなくても理解出来たであろう。
 各地から奴隷狩りによって連れてこられた人々は、隷属させられ、この豊かな自然を維持するためだけに生命をすり潰されてきたのだ。

 けれど、オブリビオン教団の信者たち『フレイムアーミー』は違う。
 彼等は己の奉ずる神に破壊と死を捧げるように火炎放射器を構え、木々が燃えるのもお構いなしに炎を撒き散らすのだ。
「我らの神に炎を。灰を。死を。遍く全ては燃え落ち、灰となって召されるであろう」
 彼等には関係などない。
 どれだけの多くの生命が、この緑を維持するために使われてきたのかなど、意味をなさない。あるのは破壊を己達の神に捧げるだけである。

 炎が周囲を包み込み、スリジエは白い服をまとった『フレイムアーミー』たちをガンシップから見下ろす。
 バリツ探偵である彼女にとって、近接攻撃を弾く白い服は脅威そのものであったが、不利と知りながらも退けぬ戦いがあることを彼女は知っている。
「ここに、私の力を!」
 彼女の瞳が炎に煌めく。
 ユーベルコードの輝きが桜の花びらの形をした炎剣となって顕現し、空を埋め尽くす。

 大地から燃え上がる炎など意に介しないような炎剣がスリジエの駆るガンシップと共に飛ぶ。
 炎が地形を変えようとも、結界術によって炎を防ぎながらガンシップが一直線に『フレイムアーミー』たちの放つ炎に向かっていく。
 炎剣が桜火乱舞(オウカランブ)の如く咲き乱れ、炎を切り裂いて突き進んでいく。
 彼女は此処で止まるわけにはいかない。

 何故ならば、市街地を見てきたから。
 あの山積した死骸を見た。此処で立ち止まるということは、あの山の上にさらなる生命であったものを積み上げるということにほかならない。
 ゆえに、彼女は突き進むのだ。
「そう、ここで止まるわけにはいかないのですから」
 彼女の放った炎剣の一撃が幾何学模様を描き複雑に飛翔しては、『フレイムアーミー』たちの持つ火炎放射器の燃料タンクを切り裂いて爆発させていく。

 爆炎が上がる『白の城塞』の中をガンシップが疾走る。
「私は文豪探偵であり、猟兵。最後は必ず事件解決に向かうんですから!」
 邁進する。
 ただひたすらに謎に立ち向かう。
 それが世界の謎であろうと、一時のもつれのような事件であろうと、スリジエにとって貴賤などない。
 あるのは、己が探偵であるという誇りのみ。

 それゆえに彼女は炎さえも恐れずに『クライスト・ヴォーテックス』の座す屋敷へと飛び込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堆沙坑・娘娘
自らの領土で炎を使うとは白痴なのでしょうか。
…いえ、後先を考える必要のないオブリビオンだからこその戦法でしょうか。それに焼けたものはまた生者の命をすり潰せば元に戻せるとでも思っているのでしょうね…戯れている。必ず貫き、滅ぼす。

そんな風に思いを馳せながら今回も敵に一度パイルバンカーで近接攻撃。今回は服に覆われていない顔を狙います。しかし、白い服を着ているという状態ではあるので成果に期待はしませんが。

実験を終えたらクローン部隊を倒した時同様にパイルバンカーからパイルを射出して敵集団を攻撃します。炎ごと貫く【貫通攻撃】です。

さて、攻略案を3つまでは絞れましたが…。
狂人教祖、どう貫いてやりましょうか。



 豊かな自然が広がる光景は、荒廃した世界であるアポカリプスヘルにおいては、あまりにも不似合いなる情景であったことだろう。
 ここ『クライストシティ』は嘗て、リゾート地であった『アカプルコ・デ・フレアス』と呼ばれた風光明媚な土地。
 しかし、文明が崩壊した事により荒野ばかりが広がる世界へと成り果てた。
 そこにあったのは有刺鉄線と瓦礫、抑圧と支配だけが横行する死の臭いが充満する市街地でしかなかったのだ。

 けれど、白塗りの城壁に囲まれた『白の城塞』と呼ばれる『クライスト・ヴォーテックス』の居城だけは違う。
 そこは巨大な屋敷と呼ぶにはあまりにも自然豊かであり、嘗てのリゾート地を彷彿とさせるものであった。
 この緑を維持するためだけに世界各地から奴隷狩りによって集められた人々の命によって成り立つのが、この『白の城塞』であったことだろう。 
 それを『フレイムアーミー』たちは手にした火炎放射器から放たれる炎を撒き散らし、灰燼に帰す。
「自らの領土で炎を使うとは白痴なのでしょうか」
 堆沙坑・娘娘(堆沙坑娘娘・f32856)がそうつぶやいたのも無理なからぬことであった。

 彼等の行いは何処にも理がない。
 あるのは自暴自棄でもなんでもない、無秩序な破壊のみ。
「我らの神に炎を。灰を。死を」
 ただ、礼賛するように『フレイムアーミー』は炎を手繰る。
 放たれる炎は次々と緑を焼いていく。意味のない破壊行為。ただそれだけのために存在しているかのように彼等は猟兵諸共に、緑を焼き尽くさんとするのだ。

「……いえ、後先を考える必要のないオブリビオンだからこその戦法でしょうか。それに焼けたものはまた生者の生命をすりつぶせば元に戻せるとでも思っているのでしょうね……」
 戯れている。
 娘娘は呟いた。それはあまりにも無軌道な破壊。そのために生者が犠牲になっていい理由などない。

 彼女は飛び出し、火炎放射器を持った『フレイムアーミー』へと迫る。放たれたパイルバンカーの一撃は白い服のちからに寄って弾かれる。
 顔を狙った一撃。
 それは彼女なりの実験であった。己のパイルバンカー神仙拳が何処まで通用するのか、如何にしてこれを打倒するのか。そのための布石でもった。

 白い服に覆われた部分だけが弾かれるのかと思ったが、覆われていない顔さえも弾かれる。
 近接攻撃をした、という事実、その概念のみでもって攻撃が弾かれるようでも在った。
 ゆえに彼女は期待していなかった成果を持って、己のパイルバンカーから放たれる杭を射出(シゥーチゥー)する。
 全てを貫く杭は、やはり白い服であっても貫いて、炎さえも打ち消して『フレイムアーミー』たちの体を穿つのだ。
「必ず貫き、滅ぼす」
 言う成れば、彼女自身が杭そのものである。

 概念によって構成された『近接攻撃を弾く』という効果。
 それを貫くためには『全てを貫く杭』が必要である。彼女は庭園の中を疾走る。目についた『フレイムアーミー』たちを悉く貫き、滅ぼしながら考えていたのだ。
 このオブリビオン教団の首魁、狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』――その彼を如何にして貫くべきかと。
 人の生命を、生命とも思わぬ所業。
 それは彼女にとって許しがたいことであった。

 彼女がこれまで積み上げてきた悪人たちの屍の上に、さらなる屍を積み上げるべく、彼女の手にしたパイルバンカーが熱を帯びていく。
 ただひたすらに貫くことだけを至上命題としてきた彼女だからこそ到れる境地。そのパイルバンカー神仙拳の極地へと彼女は至らんとするのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【勇者パーティ】

火炎放射器!?
凶器としてもひどすぎないですか!

でもしかーし!
勇者のオーラの前には、炎なんて無力です!

【光の勇者、ここに来臨!】でオーラを纏いつつ、空中殺法を繰り出そうとしますが……。

熱っ! 熱っっ! やっぱりそれ熱いですよ!?
し、師匠、氷の魔法で冷やしてくださいー!

と、逃げ帰ってきたら……。

ステラさんが飛んで……って、なんですか、あのゴツイの!
凶器には凶器とか、勇者の戦い方じゃないですよ!?(おまいう)

え?師匠、スープですか?わかりました。
あ、ちょっとその火、貸してくださいね。

と、相手の火炎放射器を奪い取ったところを
ステラさんのランチャーに師匠といっしょになぎ払われるのでした。


フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「風光明媚な街を破壊したのは、この火炎放射器軍団か。
我のリゾート地を破壊するとは許せん!」(おまいう)

ならば、こちらは【極寒地獄】で対抗してくれるわ!
周囲の建物ごと氷に閉ざしていき、火炎など使えぬようにしてくれよう。

「ルクスよ、炎ごときに屈するとは、まだ修行が足りぬな」

氷でルクスを冷やしてやりつつ、我は自分の全身に氷を纏うとしよう。
そして凍った身体で再びボディプレスだ!

「受けてみよ、ぺったんアイスクラッシャー!」

ふっ、この技の唯一の弱点……
それは、我も凍えることだっ!

「ルクス、温かいスープを早く用意せよっ!」

って、ステラよ、我とルクスを巻き込んで攻撃するでなーい!


ステラ・タタリクス
【勇者パーティー】
(『鼠の一匹の侵入を許さぬ、とはすなわち今の私と同じ気持ちということですね』という想いを込めて)

にゃーん(ネコミミ装着したまま

……通じませんでしたか(ネコミミ仕舞う
仕方ありません
では破壊の天使のごとく、全てをなぎ払いましょう

アンゲールス・アラース装着
天使の翼でそのまま真上に上昇です
そして【テールム・アルカ】を使って
人型にまでダウンサイズしたハイペリオンランチャーを2つ召喚
「ツインハイペリオンランチャー、いきます!」
眼下にあるもの、全てを吹き飛ばす勢いで
……あ(フィア様とルクス様を巻き込むとこの時点で気付いた)

まぁ死なないでしょう、勇者とその師匠ですし
ええ、発射です(遠慮なし



「火炎放射器!? 凶器としてもひどすぎないですか!」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)は、思わずうめいていた。
 今まで『クライストシティ』の市街地で繰り広げられていた本場のルチャリブレめいたプロレスの延長線上とはとても思えない光景。その『白の城塞』の中で放たれる『フレイムアーミー』の炎は、庭園の緑すらも焼き尽くす勢いで吹き荒れていた。
 ルクスはあまりのことにちょっとドン引きしていた。
 なんでドン引きしてんだよと思わないでもなかったが、彼女が未だ本場のルチャリブレを体験している最中であるからだ。
 せめて、口から火を噴くとか、そこらへんまでならルクスも許容できたのであろう。

「風光明媚な街を破壊したのは、この火炎放射器軍団か。我のリゾート地を破壊するとは許せん!」
 さっきまで竜滅陣でもって盛大に市街地を破壊しまくっていた人とは思えない発現であるが、フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)の怒りはごもっともであろう。
 この『白の城塞』の中は、かつてのリゾート地である『アカプルコ・デ・フレアス』の過去の残影を未だ保っている。
 これは荒廃した世界であるアポカリプスヘルにおいては奇跡的なことである。
 例え、それが無辜なる人々の生命の犠牲に成り立つものであっても、だ。しかし、その貴重な自然すらも『フレイムアーミー』たちは関係ないとばかりに火炎放射器の炎で持って燃やし尽くしながら、迫るのだ。

「我らの神に炎を奉じよ。破壊を奉じよ。死を奉じよ。我らの死すら神は欲して居られる」
 オブリビオン教団の信者たちは、狂信的な瞳を炎に染め上げながらルクスたち勇者パーティに迫る。
「でもしかーし! 勇者オーラの前には、炎なんて無力です!」
 まばゆい光と共にルクスが、光の勇者、ここに来臨!(ユウシャトウジョウ)と言わんばかりにユーベルコードに輝きながら飛び出していく。

 炎など無意味。
 本場のルチャリブレを体験したルクスにとって、恐れるものなど何一つないのだというように、彼女は飛び出す。
 しかし、炎は思った以上に熱かった。
「熱っ! 熱っっ! やっぱりそれ熱いですよ!?」
 駄目であった。割りと勇者オーラならば大丈夫なんじゃないかなという思いもあったのだが、それは見事に御破算になる。
「し、師匠、氷の魔法で冷やしてくださいー!」
「ルクスよ、炎ごときに屈するとは、まだ修行が足りぬな」
 後方師匠面していたフィアの瞳がユーベルコードに輝く。もしかして、極寒地獄(コキュートス)ですか? いえすいえすいえすってやつである。
 フィアが放つユーベルコードが氷壁を生み出し、炎を巻き上げる『フレイムアーミー』たちの火炎放射器ごと氷漬けにして彼等の進撃を食い止めるのだ。

 ちゃっかり逃げ帰ってきたルクスを氷で冷やしてあげながら、フィアは自身の全身を氷で覆って凍りついた体で再びボディプレスを的に浴びせかけるのだ。
 凄まじい音を建てて『フレイムアーミー』たちが砕け散っていく。
 すごいぞ、ぺったんぼでぃ。
「これが、ぺったんアイスクラッシャー!」
 嫌な名前である。というか、自分でぺったんって言っていていいのだろうかと思わないでもなかったがフィアが自分で言っているのだから止めるべくもない。
「さすが師匠! ってなんですかあのごついの!?」
 ルクスは師匠の活躍を見つつ、しかし、その更に上を征く存在が空を飛ぶのを見た。

 そう、今まで何をしてたのかステラ・タタリクス(紫苑・f33899)である。
 何故か猫耳装備しっぱなしであるが、それは彼女が鼠の一匹の侵入すら許さぬという今の彼女の心境とマッチングしているからである。
「にゃーん」
 一応言ってみたくらいの呈である。
 微妙にこう、なんていうか、あれである。やってみた感しかない。いや、コスプレ感つよすぎて、お金を払って女の子とお話するお店的な感じが拭えない気がする。
「……通じませんでしたか」
 ちょっとしょんぼりしたかな、と言うくらいの顔でステラがねこみみをしまう。『フレイムアーミー』たちにとっても、猫耳は結構いい感じになるのではないかと思ったのだが、狂信的な瞳には響かなかったのだ。

「……仕方ありません。では、破壊の天使のごとく、全てを薙ぎ払いましょう」
 テールム・アルカ。
 それは彼女のユーベルコードであり、リサイズされた巨大なる天使核を動力とし飛行推進機である『アンゲールス・アラース』が翼を広げた瞬間であった。
 はるか上空まで飛び上がったステラの姿は、まさに燦然と輝く太陽を受けて煌めく天からの御使いそのもの。
 さらに天使の翼を広げた彼女が手にするのはダウンサイズされたハイペリオンランチャーである。
「ハイペリオンランチャー、いきます!」
 二門構えた砲口が地上で炎を撒き散らす『フレイムアーミー』たちを捉える。

「……あ」
 そこまで決めておいてステラは気がつく。
 このままだとフィアとルクスを巻き込む。一瞬考えた。巻き込むようにハイペリオンランチャーぶっぱしたら、フィアと同じではないかと。
 いやそっちかと思わないでもない。
 巻き込んだらフィアとルクスが危ないとは思わなかったのだ。
「まあ、死なないでしょう。勇者とその師匠ですし」
 なんとかなるさ。その精神は大いに尊重すべきことであるが、そういうものかなー?

 そんな一瞬の躊躇いをつゆ知らず、師匠と弟子は『フレイムアーミー』から奪い取った火炎放射器でもってスープ作りであった。
 ステラの大仰な天使の翼にびっくりしたものの、フィアが寒いから早くスープを用意しろと駄々をこねたのだ。
 そんでもって、師匠のお料理番であるルクスは火炎放射器をちょっと貸してくださいなというように奪い取ってからスープを作るべく火を着けた瞬間であった。
「……え」
「……あ」
「ええ、発射です」
 三者三様であった。放たれたハイペリオンランチャーの凄まじい砲撃がフィアとルクス諸共に『フレイムアーミー』たちを薙ぎ払っていく。

「って、ステラよ、我とルクスを巻き込んで攻撃するでなーい!」
 けれど、その言葉は爆風にかき消される。
 情け容赦ない暴力。
 それは『死の天使』としてステラが悪徳の都市に輝いた瞬間でもあったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
さて…このままクライストまで行きたいけどそう上手くも行かないと…
…同じく近接攻撃を弾く服を着ているか…あれの仕組みも気になるから残ってたらあとで回収するかな…

…【空より降りたる静謐の魔剣】を発動…自分の周囲に555本の大小様々な氷の魔剣を展開…
…炎に対しては大きな魔剣を盾にして防御…
…地形の炎もその場所に魔剣を撃ち込んで地面を氷結させることで消してしまうよ…
…あとは氷の魔剣を飛ばして燃料タンクに刺したり…
…横薙ぎに飛ばしてまとめて薙ぎ払ったりでフレイムアーミーを倒していこうとしようか…
…残弾(剣)がなくなりはじめたら再度発動……剣を補充して倒して行くとしよう…



『白の城塞』は猟兵とオブリビオン教団の信者たちである『フレイムアーミー』との戦いによって炎と煙に包まれていた。
 猟兵たちにとって、この『白の城塞』に残る自然は嘗てのリゾート地である『アカプルコ・デ・フレアス』の名残だ。
 戦いに寄って人びとが開放された後、この地の資源は貴重なものになるだろう。そのため『フレイムアーミー』が振るう炎は少しでも早く消火する必要があった。
「さて……このままクライストまで生きたいけど、そう上手くも行かないと……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の電子解析型眼鏡『アルゴスの眼』が敵戦力を分析していく。

『フレイムアーミー』たちもまた市街地で戦った『クローン将校部隊』たちと同じように白い服を身にまとっている。
 あれもまた同じものであり、それが近接攻撃を弾く効果を持っているのは一目瞭然であった。
 メンカルが気になったのは、あの白い服の効果の仕組みである。
 如何なる原理でもって、近接攻撃を判別し防護として扱っているのか。今は解析型眼鏡でもっても解析することはできない。
 残っていたら後で回収しようとメンカルは心に決め、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」

 紡がれる詠唱。
 それは、空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)の招来であり、実に五百本を越える魔剣の群れとなって燦然と輝く太陽のもと煌めく。
 圧倒的な物量。
 そして、その物量が向く先は言わずもがな『フレイムアーミー』たちである。
 如何に炎で持って地形を変え、炎によって自身達の有利に働かせようとしても、それを塗りつぶすことのできるのがメンカルのユーベルコードである。
「我らの炎をかき消さんとするか、魔女め!」
『フレイムアーミー』たちは魔剣の群れを統べるメンカルに向けて火炎放射器の炎を放つ。
 しかし、魔剣が盾になるように空中に居並び、炎はメンカルまで届くことはなかった。

「それは確かに厄介だ。せっかく此処まで自然が残っているのだから……有効活用させてもらう……」
 放たれた魔剣が次々と炎立ち上る大地に突き刺さり、凍結させていく。
 氷の属性を帯びた魔剣は、メンカルによってコントロールされ、寸分違わず『フレイムアーミー』達の持つ火炎放射器の燃料タンクを切り裂き、横薙ぎに吹き飛ばしてなぎ倒していく。
 如何に近接攻撃を防ぐ手立てを持っていたとしても、メンカルの操る魔剣は弾丸のように素早く飛び、されど弧を描くように柔軟なる機動で持って彼等を包囲し打倒していく。

「我らの炎が消える! 我らの信仰が! 我らの神に捧げる炎が!」
 かき消えていく炎を『フレイムアーミー』たちは愕然と見つめていただろう。
 けれど、それ以上に彼等を愕然とさせたのは天に浮かぶ魔剣の群れである。あれだけの攻勢をかけておきながら、メンカルの力は再び魔剣を補充するのだ。
 単純な物量が違う。
 いや、それ以前に猟兵たちと対峙した時、己達の火炎放射器と数を頼みにしたことが間違いであった。

「白い服に頼り切るわけでもなく、ただの物量に任せた炎など恐れるに足りない……もっと考えるべきだったね。そもそも相手にしていたのが、ただの一般人……奴隷を狩るだけなら、それで十分だったのかもしれないけれど」
 今此処にある猟兵達は、敵のアドバンテージをひっくり返して尚有り余る知恵と実力を兼ね備えた存在だ。
 魔剣の群れがメンカルの指示に従って宙を舞う。

「……この緑は、人びとの生命が積み上げたものだ。けっしてお前達の好きにしていいものじゃあない……」
 そこに一切の容赦はなく、振り下ろされる魔剣の軌跡、それを『フレイムアーミー』たちは、見惚れるように見つめるしかなかったのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
魔銃のレプリカを持って出撃

ここが元々は観光地だったとは思えないな
死を与える物に魅入るか、歪んでいるが利用できるなら利用しよう

SPDで判定
孔雀輪で【空中機動】【空中浮遊】を使い【空中戦】を行う
UCを使って藍色の災い:圧壊【重量攻撃】や橙の災い:爆破【爆撃】の力を弾丸に付与、【スナイパー】【全力魔法】【属性攻撃】【貫通攻撃】を使って撃ち攻撃

攻撃されたら【見切り】【早業】で回避したり、風の【結界術】で炎の軌道を反らし防ぐ



『クライストシティ』の市街地を抜け、『白の城塞』にたどり着いたルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は、魔銃のレプリカを手に白塗りの城壁の中を疾走る。
 そこは市街地とは一線を画する場所であった。
 緑が生い茂り、荒廃した世界であるアポカリプスヘルらしからぬ光景。
 何処を見ても汚染された土地はなく、見事な庭園と呼ぶに相応しい自然が残っていた。
 それが嘗てのリゾート地『アカプルコ・デ・フレアス』の名残であることを彼は知る。この緑を維持するために流された血潮がどれほどのものであろうか。
 市街地に積み上げられた死骸。
 答えはそれである。

 あれだけの人びとの生命が消費されて、今の『白の城塞』の自然は保たれているのだ。
 夥しい数の生命。
 それを思えば、ルイスは歯が為るほどに噛み締めても尚、溢れる怒りがこみ上げてくるのを感じただろう。
「人の生命を」
 なんだと思っているのだと。目の前には、その生命の上に成り立つ緑を燃やす『フレイムアーミー』たちの姿がある。
 燃料を撒き散らし、悉くを燃やし尽くして己達の信奉する神に捧げようとする狂信的な瞳がガスマスクの向こうからルイスを見つめている。

「我らの神は欲して居られるのだ。死を、破壊を! ならば捧げてこそ信者たる我らの救いとなろう!」
 支離滅裂なる言葉。
 狂信者と呼ぶに相応しい行い。そのどれもが生命を冒涜するものであることをルイスは知る。
 とてもここがもともとは観光地であったとは思えない市街地を見てきたからこそ、ルイスは怒りを顕にする。
「死を与える者に見入るか、歪んでいるが――」
 利用させて貰うと、彼はメガリスでもって空中に飛び立つ。
 義眼のメガリスが輝き、魔銃のレプリカに装填された弾丸に属性付与(エンチャント)された災の輝きが銃口から煌めかせる。

「お前達のやっていることは、何も生み出さない。何も与えない。何も意味をなさない」
 引き金を引く。
 藍色の災いは圧潰。乱れ打たれる弾丸は橙の輝きとともに弾丸から爆撃の力をもって炸裂し、身動きの取れなくなった『フレイムアーミー』たちを一掃していく。
 そこに容赦という文字はない。
 あってはならないとさえ、ルイスは思っていた。
 彼等がこれまでしてきた理不尽なる行い、それを彼は赦したわけではなかった。

 炎が吹き荒れ、空に在るルイスを襲うが、風の結界術がそれをそらし、阻む。
「何一つ届かないと知れ。俺はお前達を赦しはしない」
 煌めく義眼のメガリスは、まさに災いの象徴であったことだろう。
 放たれる弾丸が煌めくたびに、『フレイムアーミー』達に容赦のない災いが降り注ぐ。
 それは彼等が奉じる神から賜るものではなく、敵である猟兵より齎されるもの。
 しかし、彼等は見上げた。
 見惚れるように。

 眩しいものをみるように、それこそ『死の笛』の音色が奏でられ、聞き入るように。
 隙だらけの彼等を穿つのは用意であった。
 ルイスは頭を振る。己が『死を与える』のは『生者』の敵だけだ。盾であると規定した己。
 されど、それを違えるつもりはない。
 引き金を引く。
 重たいとも軽いとも思えぬ引き金。あるのは怒りだけだ。

 理不尽に奪う存在、オブリビオン。
 彼等の存在がルイスに怒りを募らせる。如何にしても排除しなければならない。
 その煌めく義眼が見据えるのは、首魁である狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』』

POW   :    この俺が「聖書(バイブル)」だ
【クライスト・マシンガンの連射】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    ロンギヌスが槍だと、誰が決めた?
【痛みを感じないかの如き狂信的突撃】で敵の間合いに踏み込み、【ハンマーを利用したアクロバット】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ   :    知ってたか? テキーラはこう使うんだ
レベル×1個の【テキーラと火薬を混ぜた純白】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:鹿人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『白の城塞』の中で吹き荒れていた炎は、尽くが鎮火させられていた。
 見事な庭園は炎に焼かれていたが、未だ残されている。それは、もしも、この『クライストシティ』が開放され、元の『アカプルコ・デ・フレアス』に戻った時、人びとの手によってまた蘇ることだろう。
 しかし、未だそれを成せると決まったわけではない。

「ついに姿を現したか、鼠どもめ。我が神の前に群れ為す者たち。お前達の存在、お前達の意味、俺は知っているぞ」
 姿を表した狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』が笑う。
 その瞳にあるのは狂気だけであった。
 爛々と輝く瞳が猟兵たちを見つめる。正しく己の敵であると知っているのだろう。
 今まで己の欲望のままに振る舞い、己の欲望こそが真理であると説いてきた彼にとって、猟兵達の行ったことは、生きる意味には思えなかったのだろう。

「わけのわからぬことばかりをする奴らだとは思っていたが、まさかあんな塵芥共のために、こんなところまでやってくるとはな。あれは生命ですらない。欲望のひとかけらもない、ただ明日を迎えるために生きている者を生命とは俺は呼ばない。我が神は言った」
『クライスト・ヴォーテックス』は追い詰められていたはずだ。
 だが、嘲笑っている。
 己以外の生命の全てを冒涜しているのだ。

 自分だけが生命の意味を知るのだと豪語し、己の欲望だけが正しいものであると言う。
「――欲するのならば奪え。さすれば与えられん。何者を俺を邪魔することは出来ない。俺の欲望を遮ることはできない。例え、我が神であってもだ! お前達を殺し、神に捧げよう。そうすれば、我が神は応えてくれる」
 永遠に生きるために。
 己の欲望を完遂するために。あらゆるものを欲し、あらゆるものに死を振りまく存在、その教義の体現者たる狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』は、高らかに全ての猟兵たちを嘲笑い、彼等を滅ぼさんと白き装束を翻すのだった――。
村崎・ゆかり
それで無一物のつもりかしら? 仏に逢うては仏を殺せ。いくらでも都合よく解釈出来るわよね。

さあ、狂人教祖。この街の開放を始めるわ。
「結界術」「全力魔法」砂の「属性攻撃」「範囲攻撃」「呪詛」「仙術」「道術」で、紅砂陣。

大広間の空間全体を流砂と砂嵐に変換する。この流砂に触れていると、身体がボロボロになって風化していくのよ。
テキーラの炎だって、砂嵐に遮られて届かない。届いたところで、「火炎耐性」があるから無駄よ。

他人の生命を安易に奪う狂人には、これから裁きが下される。クライスト・ヴォーテックス、この街を人々の手に返してもらうわ!

紅砂が元に戻る。あたしはここまでね。反撃される前にバトンタッチ。



 狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』は言った。
 己の欲望だけが正しい生命であると。
 ゆえに、己の欲望を満たすことここそが至上であり、唯一のものであると。
 されど、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は相対しつつ、鼻で笑う。
「それで無一物のつもりかしら? 仏に逢うては仏を殺せ。いくらでも都合よく解釈出来るわよね」
「知るものかよ、そんなことなぞ。俺の邪魔をするものは、何であろうと殺す。それが我が神に楯突く猟兵であってもだ!」
 手にした酒瓶から白い炎が噴出し、振りまかれた瞬間から純白の炎となって戦場に吹き荒れる。

『クライスト・ヴォーテックス』は嘲笑っている。
 狂気に苛まれた瞳のまま、ゆかりこそを殺すべき存在であると認めていたのだ。
 存在する物は、本来すべて空である。だからこそ、執着するものなど何一つない。それが『無一物』の考えであるのならば、『クライスト・ヴォーテックス』は対局に位置するものであったことだろう。
 全ては己のもの。だからこそ、全てに執着する。
 己の生命だけに執着し、醜く他者を虐げる。
 それこそが彼の噴出させた白い炎であった。
「さあ、狂人教祖。この街の解放を始めるわ――古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。貪欲なる紅砂よ、万物全ての繋がりを絶ち、触れるもの悉くを等しく紅砂へと至らしめん。疾!」

 白い炎がゆかりを取り囲んだ瞬間、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 紅砂陣(コウサジン)と呼ばれる彼女の周囲にある無機物を全て急速に風化させる紅い流砂と砂嵐に変換し、屋敷の中を埋め尽くしていく。
 白い炎が一斉にゆかりを襲うが紅い流砂と激突し、その力が火花を散らせる。
「はっはっは! これがお前のユーベルコードかよ! 砂遊びをするんなら、他所でやれよ! 俺の邪魔をするな! 我が神の前にお前の首を差し出せ!」
 迫る白色の炎と砂嵐がぶつかりながら、割って入るように狂人教祖たる『クライスト・ヴォーテックス』が突っ込んでくる。

 それをゆかりは無謀であると笑った。
 けれど、その白い炎が全てを風化させる力を持つ流砂すらも遮ってくるのだ。
「他人の生命を安易に奪う狂人には、これから裁きが下される。『クライスト・ヴォーテックス』、この街を人々の手に還してもらうわ!」
「誰が返すものかよ! これは俺のものだ! この街も、この街に存在する全ても! 全部だよ!」
 ゆかりの絶陣と白い炎がぶつかりあい、せめぎ合う。
 凄まじい力の奔流が激突し、されど砂嵐が炎をかき消すように吹き荒れる。流砂の一粒でも『クライスト・ヴォーテックス』に触れれば、彼の肉体は風化していく。

 白い炎は、それらを巧みに防ぎながら、ゆかりに迫らんとしている。
「自分の生命が大事ってやつに、他の何が守れるものですか。あたしは――!」
 何一つ奪われることはしない。
 これまで彼が奪ってきた生命が、どれだけのものであるのかをゆかりは見てきた。
 市街地に山積していた骸。
 あれは『クライスト・ヴォーテックス』の欲望の犠牲者だ。積み上げられた遺骸。その末路が、この男の欲望だとは思いたくはない。

 いや、そうさせてはならない。
 彼等の生命の果てに、この『白の城塞』の中には自然が今も生きている。
 ならばこそ、この緑をこそ人々の手に取り戻さなければならない。ゆかりの足が『クライスト・ヴォーテックス』の顎を蹴り上げる。
 その瞬間、白い炎が立ち消え、絶陣の流砂が『クライスト・ヴォーテックス』の体に風化のひび割れを引き起こさせる。
「ぐ、お――!? 俺の身体が、ひび割れ、る!? なんだ、これは! おい! これは! 俺の体に、何をした――!!」

 雄叫びのような絶叫を上げる『クライスト・ヴォーテックス』を尻目にゆかりは体を退く。
 ユーベルコードの効果が切れる直前で一矢報いることができた。
 それだけで今は十分だと言うように、ゆかりは言うのだ。
「言ったでしょう。『クライスト・ヴォーテックス』! 裁きが下されると――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……(呆れて声も出ないと言う表情)……
…ただ己の非道の言い訳に神を使ってるだけじゃないか…
…まあ歴史上そう言った例がないとは言わないけど…ここまで建前もないとは恐れ入る…

…それが信条ならこちらもシンプルに言おう…奪われても文句言うなよ…
…【尽きる事なき暴食の大火】を発動……こちらも白色の炎を放つとしよう…
…そして敵の純白の炎に合わせることでその炎を存在ごと燃料として「喰らう」事でその勢いをして行くよ…
…幾ら放っても無駄…この炎は全てを喰らう…充分に大きくなった暴食の大火を操ってクライストにぶつけるとしよう…
…その装束と同じ白に包まれて…燃えると良い…



 尽きることのない欲望。
 その体現者とも呼ぶべき狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』の言葉にメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は呆れ果てていた。
 論理的な思考の欠片もない。
 あるのは己の欲望のみ。他者を慮ることもなければ、他者を生命とすら認識していない。
「俺のために死ぬことができるのならば、我が神もお喜びになるだろう。我が炎が、白き炎がお前達を滅ぼす!」
『クライスト・ヴォーテックス』の体は風化し、ひび割れていた。
 それでも尚、高らかに猟兵たちを嘲笑う。
 彼等が守ろうとした人々を無価値と切り捨て、塵芥と罵ったのだ。

「……ただ己の非道の言い訳に神を使ってるだけじゃないか……」
 メンカルの言葉は真実であったことだろう。
 確かに歴史上そういった例がないとは言わない。『クライスト・ヴォーテックス』もまた過去の存在。オブリビオンであるのならば、その例に漏れることはない。
 あれこそが人の悪性を煮詰めた存在であるというのならば、そこには一応の建前が存在するものである。
 メンカルは、それを取り繕うこともなく、ただ己の我欲のためだけに死を振りまく教義でもってオブリビオン教団という狂信に魅入られた存在を築いた『クライスト・ヴォーテックス』を見つめる。

 彼の信条は、彼にしか理解できぬものであった。
 何故ならば、己だけが存在したものであるから。他者の存在を認めず、利用し、すりつぶし、甘味だけを貪る行為のどこに他者が介在する余地があるというのだ。
「俺こそが、唯一つの生命。我が神が恩恵を与えるに値する存在だ! 俺だけが全てを奪うんだ!」
 白い炎が噴出し、メンカルを襲う。
 けれど、メンカルの瞳は見据えていた。恐れもなければ、怯えもない。
 あるのはたった一つのものだけだ。

「それが信条なら、こちらもシンプルに言おう……奪われても文句言うなよ……」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 それは奇しくも『クライスト・ヴォーテックス』が放った白い炎と同じ色をしていた。
 周囲に現出する白色の炎。
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
 紡がれた詠唱によって尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)は、『クライスト・ヴォーテックス』の炎すらも侵食し、貪り、巨大化していく。
「俺の炎が喰われる!? 奪われるだと!?」
 そう、彼女の手繰る白い炎は、如何なる存在をも燃料にする炎である。
 例え、それが同じ白色の炎であったのだとしても、関係ない。貪り食らうように白色の炎は勢いを増していく。

「このっ! この! 俺の炎を!!」
 混ぜ合わされ、噴出する『クライスト・ヴォーテックス』の炎さえもメンカルの炎は飲み込んでいく。
 勢いを増し、大火そのものへと変貌した炎をメンカルは操る。
「幾ら放っても無駄……この炎は全てを食らう……」
 彼女はだから言ったのだ。
 奪うのならば、奪われても文句は言うなと。されど、みっともなくすがりつくように炎を噴出させ続ける『クライスト・ヴォーテックス』が、どれだけ炎を放つのだとしても、こちらの燃料にしか成りえないことを理解できないのを嘆息し、彼女は指先を向ける。

 あれを喰らえ、と。

 その暴食の大火は極大なる炎、空に燦然と輝く太陽の如く、屋敷の天井を吹き飛ばしながら『クライスト・ヴォーテックス』を撃つ。
「……その装束と同じ白に包まれて……燃えると良い……」
 彼の絶叫だけがこだまする。
 しかし、その絶叫すらも大火は飲み込み、成長して悪徳の限りを尽くした『クライスト・ヴォーテックス』の体を凄まじき炎で持って焼き尽くさんと天を衝くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎

WIZ

まさに狂気の沙汰だな…
その狂気に思わず背筋がゾクッとし防衛衝動を発動させる
お前を野放しにしておけばこの地の人々の害悪になる事は間違いない
ここで確実に止める!

相手は先程までと同様白服を着ているという事から近接攻撃より遠距離攻撃の方がいいだろう
各自遠距離攻撃で弾幕を張るよ!

護符に水【属性攻撃】を付与し【乱れ撃ち】
相手は手数で勝負してくるなら、それを上回る手数で圧倒するのみ!
相手の炎をこっちの護符で相殺しつつ、相手にもダメージを与えて行こう
複数合体して火力をあげても、それに合わせてこちらも一斉攻撃すれば相殺する事は可能なはずだ!

クライスト!お前を倒しこの地を取り戻す、覚悟しろ!



 天涯孤独の生まれを持つ鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)にとって、彼が育った街の人々は優しかった。
 彼を支え、彼が健やかに成長できるようにと見守ってくれていた。
 悲しいことは多い現実だけれど、それでも人の優しさを知るからこそ、己の持つものを誰かに分け与えることに何の忌避もなかった彼にとって、全てを欲し、己以外の生命を塵芥と罵る『クライスト・ヴォーテックス』の生き様は、思わず背筋が寒くなるものであった。

 防衛衝動(ボウエイショウドウ)が、自分の身を疾走る。
 狂気そのものである『クライスト・ヴォーテックス』が白い炎の中から、ひび割れた体と共に一歩を踏み出し、ひりょの前に姿を現す。
 燃える体は火傷の痛みで動けぬはずであったけれど、それでも狂人教祖たる『クライスト・ヴォーテックス』は足を踏み出した。
「まさに狂気の沙汰だな……」
「俺を見て狂気だと言ったか、猟兵! 俺の生き方を見て! いいや、違うさ。これこそが欲望そのものだ! 己以外の何者をも犠牲にしても生き続ける。それが生命の正しさだ! 俺は生きるぞ。お前達を縊り殺し、我が神の前に捧げ、さらなる力を得てな!」

 噴出する白い炎がひりょを襲う。
 纏う白い装束をひりょは見やる。これまでの信者たちが身にまとっていたものと同じものであるかもしれない。
 近接攻撃を弾かれてしまっては、強敵であろう『クライスト・ヴォーテックス』に付け入る隙を与えるだけになってしまうかもしれない。
 だからこそ、ひりょは彼のユーベルコードに寄って発露された猜疑心や恐怖心と言ったものを武装した自身の分身として顕現させるのだ。
「お前を野放しにしておけば、この地の人々の害悪になることは間違いない。ここで確実に止める!」
 護符に水の属性を付与し、百を超えるひりょたちが乱れ撃つ。

 その水の護符は白色の炎をかき消していくが、即座に『クライスト・ヴォーテックス』がテキーラと火薬を混ぜた純白の炎を噴出させ、ひりょを取り囲ませる。
「手数でなぁ! 俺を圧倒できると思ってんのか!」
 確かに強敵である。
 これまで猟兵たちが攻撃を加えていても尚、ありあまる狂気でもって『クライスト・ヴォーテックス』は立ち上がってきている。
 その力量差を知っていながら、ひりょは立つ。

 何故立つのか。
 恐怖を感じながらも、その根源たる存在に何故立ち向かえるのか。
 それはひとえに勇気である。
 彼の心に感じる恐怖と、現実。そして己の力。
 その差異を埋めるものこそが勇気である。どれだけのちからの差であったとしてもひりょはめげない。下を向かない。明日を望む誰かが彼の背にいるのならば、彼は絶対に折れたりはしないのだ。
「クライスト! お前を倒し、この地を取り戻す――」
「やってみせろよ! できるわけがない! この俺が! 神に祝福された俺が! 負けるわけがないんだからな!」
 しかし、それでもひりょは立ち向かう。束ねた護符を合わせ、水の護符でもって呼び出された力をもって『クライスト・ヴォーテックス』の純白の炎を押しつぶす。

 相殺されていた炎が、水の勢いに敗けて押し戻されていく。
「覚悟しろ!」
 圧倒的な水の奔流と共にひりょは力押しで持って『クライスト・ヴォーテックス』へと迫る。
 もう水の護符は切れた。
 けれど、もしかしたのならば、白い装束でもって近接攻撃は弾かれてしまうかも知れない。
 けれど、知ったことではない。

 己が守ろうとした笑顔のために。
 明日を夢見ることさえ忘れた人々の笑顔を守るためには。
「お前は此処にいてはならない! お前のようなやつがいるから、人の悲しみは消えない。笑顔が灯らない」
 ならば、なんとする。
 握りしめた拳。
 復数の分身たちが純白の炎の中に消えて行く。彼等の力の残り火が純白の炎さえ切り裂いて、道を作るのだ。

 そこを駆け抜け、ひりょは渾身の拳でもって『クライスト・ヴォーテックス』の顔面へと一撃を見舞う。
 吹き飛ぶ『クライスト・ヴォーテックス』を見やり、ひりょは言う。
 己が欲するところのものを。
 だれかの笑顔のために戦えるものにこそ、確かな力が宿るのだと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
【動物使い】でリンクアイを付近に隠れさせておく【迷彩】【忍び足】

お前が信じるのならそれでいい、何を言っても無駄だろうし改心させようと思わない
ただ倒す、生きている者の明日を奪うお前に賛同する事は決してない
卑怯というなよ、特殊な戦法を使っているのは同じだ

SPDで判定
まずは銀腕を【武器改造】で盾の形にして【怪力】【盾受け】で防御しながら戦う
あまり攻撃を喰らわないように【瞬間思考力】で【見切り】回避したり、風の【結界術】で防ぐ

本命はリンクアイからの攻撃、義眼と視界を共有しUCを使用
橙の災い:爆破【爆撃】を【暗殺】【スナイパー】【全力魔法】で放ち攻撃する



 何か巨大なものが大地を這う音がする。
 それは巨大なハンマーを引きずりながら、白炎に焼かれ、ひび割れた体を同じように引きずる狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』であった。
 猟兵達の攻撃は確かに彼の体に癒えぬ傷を与え続けていた。
 けれど、まるで痛みを感じていないかのように『クライスト・ヴォーテックス』は立ち上がってくるのだ。
 強大なオブリビオンであればこそであろう。
 その光景を猟兵達は何度も見てきた。
 致命傷であろうと思われる一撃を何度繰り出しても、立ち上がってくる強大なオブリビオン。けっして滅ぼし切るまで一つの油断もならぬ相手であるからこそ、これまでの巨悪を為してきたのだ。
「何処だ、猟兵。俺はまだ生きている。お前達に滅ぼされてたまるものか。たかだか猟犬風情にこの俺が!」

 その言葉をルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は静かに聞く。
 リンクアイによって、『クライスト・ヴォーテックス』の姿を認識しながら、彼は駆け出していた。
 メガリスである銀腕を盾の形状に変えて『クライスト・ヴォーテックス』の放つハンマーの一撃を受け止めるのだ。
「お前が信じるのならそれでいい。何を言っても無駄だろうし、改心させようと思わない」
「この俺を改心する腹積もりなどするだけ無駄よ! 俺がお前達の心変わりを期待するようにな!」
 放たれたハンマーを受け止めた銀腕の盾がきしむ。だが、この程度ならば己の怪力で持って防御できる。
 そう思った瞬間、ルイスの身体が吹き飛ぶ。

 一瞬意識が遠のくほどの衝撃がルイスを襲う。
「ぐっ――!」
「俺は俺だ。俺のままでいい。我が神が力を授けるのは、今と変わらぬ俺自身。『フィールド・オブ・ナイン』がもたらす力の素晴らしさを知れば、如何にお前達と言えど屈服する他無くなる!」
 大地をハンマーが叩き、宙に翻る。
 これまでの傷がまるでなかったかのような動きである。

 撃ち込まれた一撃をルイスは身体を転がすように大地を蹴って躱し、その瞳で見つめる。
「ただ倒す、生きている者の明日を奪うお前に賛同することも、屈服することもけっしてない」
 ルイスの瞳は輝いていた。
 圧倒的な力量差を前にしても、些かも陰ることはなかった。
 その輝きを見て、『クライスト・ヴォーテックス』は苛立つ。何者にも心折れぬ者。それが猟兵であるというのならば、ルイスの姿は彼にとってあまりにも不愉快なものであったからだ。

「死ぬ間際になっても同じことが言えるか!」
 放たれた一撃を風の結界術で防ぐ。けれど、瞬時に打ち破られ、ハンマーの一撃が盾の銀腕ごとルイスを吹き飛ばす。
 重たい一撃。
 腕がきしみ、既に二発の打撃を受け止めている。だが、四発受け止めれば、問答無用の死が襲い来るであろう。
 死を超越したデッドマンであれ、蘇生するまで動けなくなることは避けるべきであった。

「ああ、言えるさ。お前に屈服することはない」
 空中に舞う『クライスト・ヴォーテックス』が放つハンマーの一撃がルイスの脳天を叩き潰さんと迫り、銀腕で受け止める。
 足が大地に沈み込む。
 防戦一方であった。普段の彼らしからぬ戦い方であったことだろう。けれど、彼の本命はそれではない。
「卑怯というなよ、特殊な戦法を使っているのは同じだ」
 瞳がユーベルコードに輝く。

 彼のメガリスを介したリンクアイが不可視の狙撃手(リンクスナイパー)となって義眼の視界と共有した『クライスト・ヴォーテックス』の胸を弾丸が穿つ。
 橙色の災いの輝きを放つ弾丸は、彼のひび割れた身体を内側から焼き、その一撃を持ってルイスは致死の四連撃の最後を放つことを許さず、『クライスト・ヴォーテックス』を吹き飛ばすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
塵芥共、必死に生きる者をそう言うのですね
――ならば教えましょう、明日に進む命を輝きを!

《ファスト・トランス》を発動し、
輝くオーラを体に纏わせます
相手が狂信的突撃で迫るなら
こちらも【ダッシュ】で間合いを詰め、
先んじて拳の一撃!

ハンマーを振るうクライストに、
通常よりも鋭くなった反射神経で【見切り】、
【カウンター】の【功夫】でダメージを見舞います

【グラップル】で組み付き、自慢の【オーラ防御】を
むしろ自分が抑えるクライストに直接オーラを浴びせるように
叩き込み、消耗させていきましょう

【力溜め】た【怪力】で投げ飛ばし、
オーラをめいっぱい込めた
臀部、もしくは肩口から飛び込んでの【踏みつけ】で
仕留めに行きます



「クソ塵どもがよぉ! 俺を、俺の身体をこんなにしちまいやがって!」
 猛る咆哮は、狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』より放たれていた。
 彼の身体は猟兵達の攻撃に寄ってひび割れ、白炎に焼かれている。
 穿たれた弾丸が放つ、その身を内側から焼く火が絶え間ない痛みを彼に与え続けている。
 常人であれば、発狂死するほどの痛みの中、『クライスト・ヴォーテックス』は未だ立っていた。
 何故ならば、彼は狂人教祖。
 もとより狂っている。それにこの『クライストシティ』おいて生成された麻薬でも痛覚など最早麻痺しているのだろう。
 痛みをまるで感じないかのように、彼は手にした銀の鉄槌を引きずりながら猟兵達に迫るのだ。

「塵芥のくせに、俺を此処まで手こずらせるなどあっていいものか。俺は『クライスト・ヴォーテックス』だ! 俺の欲望こそが唯一にして絶対! 俺の欲望を叶えるために、塵芥は消費されて然るべきものだろうが!」
 その怨嗟の咆哮を前にしてユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は立ちふさがり言うのだ。
「塵芥共、必死に生きる者をそう言うのですね」
 彼女の瞳にはユーベルコードが輝いていた。
 気合十分に響き渡る叫びが、ファスト・トランス(ファスト)のユーベルコードを彼女の身に宿らせるのだ。

「――ならば教えましょう、明日に進む生命の輝きを!」
 輝くオーラが身に纏う。
 身体がきしむ。彼女の鍛え上げられた肉体であって限界以上の力を捻出すれば、その力に身体が保たないのだ。
 輝く瞳が残光となって戦場に疾走る。
 凄まじい速度で踏み込んだユーフィの拳の一撃が『クライスト・ヴォーテックス』の胴へと迫る。
 しかし、その先制の一撃を彼は銀の鉄槌でもって受け止める。柄で受け止めたがゆえにたわむ重たい金属の音がユーフィの拳がから響き渡る。
「知るかよ! その程度で俺に楯突くなど!」

 放たれたハンマーの一撃をユーフィは見ていた。
 ユーベルコードの輝きで鋭くなった反射神経は、爆発的に増大していた。
 一瞬で見切り、放たれたハンマーを横薙ぎに蹴り払い、ユーフィはさらに一歩を踏み出し、『クライスト・ヴォーテックス』の懐に入り込むのだ。
「これが勝利を掴むということです!」
 掴みかかり、その白装束を彼女は掴んで離さない。
 しかし、それだけでは『クライスト・ヴォーテックス』は倒せない。痛みを感じさせない彼の動きは、それだけで凄まじい膂力を発するだろう。

 だからこそ、ユーフィは己の普段は防御に展示させているオーラ全開にして、それを叩き込むのだ。
 浴びせるようにして放たれたオーラが『クライスト・ヴォーテックス』の肉体をしたたかに打ち据え、体勢を崩させる。
「体勢が崩れたのなら! 受け身など取らせはしません!」
 このために組み付き、彼女は力を貯めていたのだ。裂帛の気合と共にユーフィは『クライスト・ヴォーテックス』の身体を大地に投げ飛ばす。
 しかし、未だ組み付いたままの彼女の全体重、そしてオーラの全てを乗せた肩の一撃は『クライスト・ヴォーテックス』の鳩尾へと叩き込められる。

「人の心がわからず、ただ徒に奪うことしかできないのなら、それもまた生命とは言えないでしょうに!」
 それは巨象に踏み潰されるような痛みを『クライスト・ヴォーテックス』に与えたことだろう。
 血反吐を履きながら投げ飛ばされ、大地とユーフィのオーラの板挟みにあった彼は肺が潰れたような音を立てながら、大地に沈むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
生命ですらない塵芥、ねぇ。
まあ、問答しにきたわけじゃねえからてめえの価値観なんて俺はどうでもいいんだが……ウチの相棒は御冠のようだぜ。
「……クライスト・ヴォーテックス、お前のような生命の冒涜者を決して野放しにはできません。」
だそうだ。覚悟するんだなッ!

「……破邪・霊光弓ッ!」
破魔弓の真の力を解放して戦闘開始だ。
霊光弓で弾幕の如き矢の連射をぶちこんでやる。
ご自慢の白装束で耐えられるかッ!?

敵が狂信的突撃をしてきたら、攻撃を見切り回避、無理そうなら結界霊符を使い防御だ。
んで、お返しに零距離射撃を叩き込んでやるよッ!


【技能・弾幕、見切り、結界術、カウンター、零距離射撃】
【アドリブ歓迎】



 肺を潰された狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』は血反吐を撒き散らしながら、沈んだ大地から立ち上がる。
 恐るべき耐久力。
 しかし、それは無尽蔵ではない。痛みを感じないような動きを見せるのは、彼がこの街で生成された麻薬を恒常的に摂取し続けているからであろう。
 ならばこそ、限界はあるのだ。
「ぺっ――! クソどもが。俺を否定するな。俺は祝福を受けたんだ! 我が神に! それゆえに俺は痛みを感じねぇ! 痛みを感じないってことは、選ばれたってことだろうがよ!」
 手にした鉄塊の如きハンマーを振り上げ、『クライスト・ヴォーテックス』の瞳が爛々と狂気に輝く。

 悪魔のような形相となった狂人教祖を前にして、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)はその鬼面をカタカタ揺らす。
『生命ですらない塵芥、ねぇ。まあ、問答しに来たわけじゃねえから、てめえの価値観なんて俺はどうでもいいんだが……』
 そのとおりであった。
 嘯くように凶津が言ったのは、彼は、という注釈がつくからである。
 けれど、彼の相棒である桜は違う。
 彼女の瞳は、彼が言うように相当に御冠のようであった。

 煌めくユーベルコードは彼女の瞳を介して、世界を照らす。
『クライスト・ヴォーテックス』が、この荒廃した世界を包む闇であるのならば、それを切り裂く輝きを湛えていた。
「……『クライスト・ヴォーテックス』、お前のような生命の冒涜者をけっして野放しにはできません」
『だそうだ。覚悟するんだなッ!』
「しゃらくせえんだよ! クソどもが!」
『クライスト・ヴォーテックス』が駆ける。満身創痍の血反吐に染まった白装束をなびかせながら、凶津達に迫るのだ。

 あのハンマーを受け止めてはならない。
 四連撃を受けてしまえば、如何なる猟兵であれど絶命してしまう。さらにあの鉄塊の如きハンマーを利用した変幻自在なるアクロバティックな挙動も侮ることはできなかった。
 けれど、怒り心頭に発する桜は違う。
 その瞳の輝きがもたらすのは、破邪・霊光弓(ハジャ・レイコウキュウ)であった。
 手にした破魔弓の力を開放して放たれる弾幕の如き矢の連射は、如何に空中を華麗に舞うような『クライスト・ヴォーテックス』の動きであっても全てを躱すことなどできなかった。
「ぐぉ!? これは……! マシンガンか何かだって言うのかよ!」
 そう見紛うほどの桜の引き放つ矢は、彼の視界を埋め尽くす。

『ご自慢の白装束で耐えられるかッ!?』
 凶津が鬼面の奥で輝く桜の瞳を放ちながら、ユーベルコードによる猛攻は『クライスト・ヴォーテックス』を追い詰めていく。
 しかし、狂信的なまでにオブリビオンの神への信奉を持つ彼は、構わず進むのだ。 
 身を穿つ矢も何もかも関係ないとばかりに突き進んでくる。
「言っただろうが! しゃらくせえんだよってなぁ! おい!」
 放たれるハンマーの一撃を凶津達は結界霊符でもって防ぐ。けれど、重たい一撃は用意に結界の霊符を燃やし尽くし、彼女に振るわれる。
 既のところで一撃を躱した桜の巫女服の袖が引きちぎれる。

 あの一撃を躱すことができたのは霊符を先に張り巡らせ、軌道をそらしたからであろう。
 もしも、それがなかったのならば、彼女は鉄槌の一撃に寄って大地に付していた。
 窮地に追い込まれた桜は、されどその瞳でもって真正面を捉える。鬼面の凶津も同じである。
 確かに恐ろしい強敵なのだろう。
 けれど、彼等は知っている。あの市街地に山積した嘗ての生命を。その生命を冒涜した首魁を。
 ゆえに、彼等のユーベルコードは正義の心を受けて、強く、強く、輝くのだ。
『お返しに零距離射撃を叩き込んでやるよッ! 桜ッ!!』
「……退魔師の奥義が一つ、御見せします」
 引き絞った霊光弓が放った一矢が『クライスト・ヴォーテックス』の胸を穿ち、閃光が『クライスト・シティ』の空に迸る。

 それこそが彼等二人の喪われた生命への手向けであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『静かなる者』

あなたが言う塵芥を守るのが、『我ら四悪霊』なれば。

早業の先制攻撃にて【四天境地・水】を使用後、四天結縄にある私に対応した厄災『大雪』を解放。
天候操作でここを一時『雪原の湖』にします。

大雪よ、吹雪きなさい。ここに炎の存在を許してはなりません。
ちなみにこの大雪に、私の行動は阻害されませんので。
ですから、白雪林による霊力矢を射かけましょう。
…この白き場所にて、この青白い霊力矢を視認できるものなら、してみなさい。

ええ、あなたは四悪霊に目をつけられた。なれば…そのまま無事に終わるはずはないのですよ。
そう、呪詛を込めた言葉も送りましょうか。



 一条の閃光の如き矢の一撃が『クライスト・ヴォーテックス』を撃ち貫く。
 猟兵達の戦いはいつだって紡ぐ戦いである。一人では敵わぬ強敵であったとしても、次に繋がるように戦い、連綿と紡いで敵を逃さないのだ。
 必ず滅ぼす。
 その意志のもとに出自も意志も異なる猟兵達は共通の敵へと立ち向かう。
「あなたが言う塵芥を守るのが、『我ら四悪霊』なれば」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の四柱の中の一柱『静かなる者』が言う。
 彼等は悪霊である。

 けれど、彼等の生き方は悪霊そのものではなかったことだろう。
 彼等が怨嗟と呪詛で持って呪うのはオブリビオンのみである。それは疑いようのない事実であり、変えようのないことである。
 許すこともまた必要であるのかも知れない。
 それはオブリビオンには当てはまることはない。どれだけの事情があろうとも、どれだけの教義、信仰があるのだとしても、オブリビオンは滅ぼす。必ず滅ぼす。
 彼等が守ろうとした生命のためにこそ、オブリビオンは存在してはならないのだ。
「だからどうした。あの塵芥共は生きてすらいない。いや、生きていたとしても、ただ漫然と時間を浪費するだけのクソじゃねーか。なあ、ならよお! 俺のように欲望のために邁進する者こそが、生きる価値があるんだろうが!」

 テキーラと火薬を混ぜて生み出された純白の炎が『クライスト・ヴォーテックス』を取り囲み、『静かなる者』を襲う。
 それは凄まじい火力であった。
「六出の血にて、これをなしましょう」
 りんとした空気が周囲に立ち込める。
 長弓より放たれた矢が大地へと穿たれ、周囲を雪解け水の湖に変化させる。けれど、純白の炎が消えることはない。
 どれだけ湖で火を消そうとしても、狂人教祖の放つ炎は嘲笑うかのように、彼の周囲に渦巻きけっして消えないのだ。

「大雪よ、吹雪きなさい。ここに炎の存在を赦してはなりません」
 彼等、四柱を束ねる祟り縄の結び目の一つが解け、厄災『大雪』が開放される。天候操作によって周辺を燦然と太陽が照りつける大地から、雪原の湖へと姿を変えさせる。
 これこそが『静かなる者』が解放した結び目の力である。
「……この白き場所にて、この矢を視認できるものなら、してみなさい」
 放つ霊力矢が放たれる。
 白く染まる世界にあって、炎は立ち消えていく。
 風を切る音しか聞こえない世界。いや、その風を切る音さえも雪に吸収されて消えて行く。
 音無き矢の一撃は『クライスト・ヴォーテックス』を貫く。

「ッ――! クソが! 炎が、炎が消える! 我の神の炎が何故消える!」
 忌々しげに雪原の中で炎が小さくなっていくのを彼は苛立つように受けた矢の傷痕を抑える。
「こんなはずじゃあないはずだ。俺はまだ死なない。死ねるわけがない。神のために俺は信仰を捧げてきたはずだ。猟兵に目をつけられても、これだけ神のために働いているというのに!」
 己を見捨てるつもりかと天に唾する『クライスト・ヴォーテックス』。その姿を『静かなる者』は見つめる。
 例え神に見捨てられていないのだとしても。

「ええ、あなたは四悪霊に目をつけられた。なれば……そのまま無事に終わるはずはないのですよ」
 呪詛のこもった言葉が、雪原の中を飛ぶ。
 雪に消えることのない呪詛は、『クライスト・ヴォーテックス』の心に一滴の染みを作り出したことだろう。
 それは恐怖という名の染み。
 じわりと広がっていく染みを前に、それを消し去ることなどできようはずもない。

 雪原の向こうで薄く笑う顔がある。
「――ッ!」
『クライスト・ヴォーテックス』は思い知っただろう。
 己が今何と対峙しているのかを。そして、己を追い詰めようとしている猟兵たちが、これだけではないことを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
そうですか。
あなたがそう思い、そう生きてきたことなど今更言われずとも分かっています。
ですが私たちはあなたを説得しにきたのでも更生させにきたのでもない。
故に返せる言葉はこれだけです。
あなたは、ここで殺す。

突撃してくる相手に対し、「フィンブルヴェト」からの射撃で迎撃します。
痛みを感じないのか、耐えているだけなのか……
いずれにせよ、物理的に止めればいいだけです。

【狼の冬】を使用、身長3mの氷の狼を12体召喚し、クライスト・ヴォーテックスの道を阻み、その牙と爪で攻撃します。
敵が狼を排除するために攻撃を始めたら、気を取られている隙に私は立ち位置を変え、「フィンブルヴェト」からの氷の弾丸で敵を狙います。



 狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』を取り囲んでいた雪原が消える。
 しかし、彼の心に染みのように落ちた恐怖は、未だ一滴の雫でしかない。今はまだオブリビオン教団の教義によって、狂信と共に拭う事ができただろう。
「冗談じゃあねえ! なんで俺が死ななければならない。俺が死なないとならない理由など何処にもないはずだ。そうだ、俺は死なない。あんな塵共とは俺は違うんだ。俺は生きる。他のなにものを犠牲にしても生き残らなければ! 我が神よ!」
 そう咆哮する。
 彼の心には今、猟兵に寄って穿たれた恐怖という染みが徐々に広がっている。

 今まで狂信でもって支えられてきた何者をも省みぬ心は、ついに追い詰められ始めていたのだ。
 雪原が消えゆく中、一人の猟兵の瞳は、その雪原よりも冷たいものであった。
「あなたがそう思い、そう生きてきたことなど今更言われずともわかっています」
 セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)の瞳が『クライスト・ヴォーテックス』を射抜く。
 それは彼にとって、恐怖そのものであったことだろう。

 じくじくと胸を苛む一滴の染みがどうしても拭えないのだ。
「クソが! クソが!ならどけよ!」
 手にした鉄塊の如きハンマーを振り回しながらセルマに迫る『クライスト・ヴォーテックス』は半狂乱になっていた。
 狂信だけが彼の寄す処。
 ならばこそ、彼は突き進まなければならない。猟兵の尽くを排除し、再びこの『クライストシティ』において信奉する神に供物を捧げなければならないのだ。
 他のオブリビオンとは違う。
 自分だけは特別だと思う心が、その幻影でもって他者を害するのだ。
「ですが、私達はあなたを説得しにきたのでも、更生させにきたものでもない」
 セルマの瞳は冷静そのものであった。

 スコープを覗く青色の瞳が射抜くのと同時にマスケット銃『フィンブルヴェト』から氷の弾丸が撃ち込まれる。
 狙い過たず、確かに『クライスト・ヴォーテックス』へと着弾し、血しぶきが白装束を染め上げていく。けれど、止まらない。狂信に支えられた身体は、突進をやめないのだ。
「だったらなんだよ! なあ! おい! 死ねよ! 我が神の前でなあ!」
 振り下ろされたハンマーは、されどセルマを捉えることはできなかった。
「――あ?」

『クライスト・ヴォーテックス』の間の抜けた声が聞こえた。
 振り下ろされたはずのハンマーは彼の背後に落ちていた。
 何が、と思っただろう。己の手は確かにハンマーの柄を握っていたはずなのに。けれど、ハンマーは彼の背後に落ちた。
「ゆえに返せる言葉はこれだけです」
 セルマの声が聞こえた。絶対零度の如き言葉。

 しかし、裏腹に彼女の心は怒りが渦巻いていたことだろう。
「―――あなたは、ここで殺す」
『クライスト・ヴォーテックス』は聞いた。狼の唸り声を。聞いたことのない身体の奥底から恐怖をかきむしるような遠吠えを。
 瞬間理解したのだ。痛みを感じないはずの己の身体。しかし、それは同時に己の身に何が起こったのかさえ理解できない鈍感であることと同義である。

 そう、彼の腕は狼の冬(オオカミノフユ)の牙によって引きちぎられていたのだ。
「お、俺の腕が! 腕が!」
 体長3mにも及ぶ氷狼が、狼狽する『クライスト・ヴォーテックス』を取り囲む。喪った腕が握りしめるハンマーを無事な手で握り直し、振り回す。
 来るな、と叫ぶ声が聞こえるがセルマは意に介することはない。

 すでに宣言したとおりである。
 どれだけ痛みを感じないのだとしても、片腕をもぎとってやったのだ。ならばこそ、セルマは己の戦闘可能時間を犠牲にしたのだ。
 それも限界の12体同時に使役するという離れ業である。時間はかけられない。だからこそ、氷狼たちを排除せんと無我夢中でハンマーを振り回す『クライスト・ヴォーテックス』をスコープ越しに見つめる。

「あなたはもう敵ですらない」
 そう、獲物である。此処で殺すと宣言したからこそ、彼女の引き金を引く指に躊躇いはなかった。
 奪われた生命は戻らない。
 けれど、贖うことはできるだろう。濯ぐ罪の一撃は氷の弾丸となって、氷狼たちの間隙を縫い、『クライスト・ヴォーテックス』の身を穿つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミレア・ソリティス
作戦目標「クライスト・ヴォーテックス」を確認、交戦を開始します

『ジャミングミサイル』へ換装、一斉発射。
命中せずとも目的は粒子散布による《ジャミング》です。

更にUC【コード・モルフェウス:LD】を起動
周辺環境を半ば電脳化、電脳魔術による「世界そのものへの」直接干渉を可能とし、
対象及び世界ヘの《ハッキング》改竄を開始。
「対象装甲等の構造改竄」「敵遠隔攻撃軌道の強制変更」、同時に私自身、あるいは味方や邸内環境の「欠損書き換えによる修復補填」を実行します。

また、敵が接近戦を狙うならば『ペインレス・セイバー』で反撃、斬撃は無効化されてもナノマシンを付着侵食させ、敵装備の弱化を狙います

※アドリブ他歓迎です



 氷狼の牙によって狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』の片腕はもぎ取られた。
 血飛沫が白装束を染め上げ、放たれた弾丸が、さらに彼を追い詰めていく。
 悲鳴をあげず、悪態を衝く言葉ばかりが紡がれるのは、彼が真に悪辣なる人物であるからだろう。
 如何に常習し続けたがゆえに麻薬によって痛覚を喪っていたのだとしても、腕を喪ったという事実は彼に精神的な打撃を与えたことであろう。
「クソが! クソどもが! 俺の、俺の腕を! よくも!」
 手にしたテキーラと火薬によって純白の炎が、彼を守るようにして障壁を生み出す。

 純白の炎は『クライスト・ヴォーテックス』の姿をかき消しただろう。
 けれど、ミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)の瞳は、正しく『クライスト・ヴォーテックス』を認識していた。
「作戦目標『クライスト・ヴォーテックス』を確認、交戦を開始します」
 ウォーマシンである彼女は即座に弾頭にジャミング粒子を充填されたミサイルを撃ち放つ。
 一斉射によって放たれたミサイルが純白の炎によって守られた『クライスト・ヴォーテックス』へと迫る。

 当たらなくてもいいと彼女は考えていた。
『ジャミングミサイル』に兵装を換装したのは、粒子散布によるジャミングであるからだ。
 己の姿を捉え、こちらに攻撃を与える隙を無くすためだ。
 これより行う周囲を半電脳領域化と電脳干渉を行うための時間を稼ぐ必要があった。
「コード・モルフェウス、アクティブ。半電脳領域を限定構築。領域内対象への直接干渉を開始します」
 コード・モルフェウス:LD(コードモルフェウス・ルシッドドリーム)と呼ばれるユーベルコードは、彼女の周囲にあるもの全ての構造を改ざんし、遠隔攻撃軌道の嬌声変更を行うことができる。

 いわば、電脳魔術による『世界そのものへの』直接干渉である。
 世界へのハッキングを開始したミレアは、純白の炎の構造を改ざんする。即座に解析、改ざんされた炎は『クライスト・ヴォーテックス』の姿を示すように開かれる。
「俺の炎が、切り開かれる……?! どういうことだ、我が神よ! 何故、炎が……――!」
『クライスト・ヴォーテックス』にとって純白の炎は自由自在に扱うことのできる奇跡そのものであった。

 けれど、ミレアのユーベルコードに寄って改竄された構造は彼のコントロールを奪い、主導権をこちらへと書き換える。
 同時にミレアは己自身の身体を走らせる。
 手にしたのは実体剣である。名を『ペインレス・セイバー』という。斬撃を与え、傷口から機能阻害をもたらすナノマシンを付与する刃。
 それを一気に跳躍し、純白の炎を乗り越えてミレアは振るうのだ。
「無駄です」
 ミレアは己を遮ろうとする純白の炎すらも切り裂き、その刃を『クライスト・ヴォーテックス』に振るう。

 放たれた斬撃は彼の胸を袈裟懸けに切り裂き、さらに返す刃で持って斜め十字に傷を刻む。
「ぐ、お――!? な、に、痛みが、痛みがある、だと!?」
 本来であれば、刻まれた傷痕から機能阻害をもたらすナノマシン。それは痛みを感じぬ『クライスト・ヴォーテックス』の痛覚を蘇らせた。
 正しく彼がオブリビオンであるというのならば、それこそ機能阻害である。
 痛みを感じぬからこそ、その身体はこれまで狂信を齎し、それを寄す処としてあらゆる暴虐を振るってきたのだから。
 それが喪われるということはどういうことか。

「――痛みなどあるから、恐れが生まれる。あなたはもはや作戦目標『クライスト・ヴォーテックス』ではない。ただの狂信者」
 その言葉と共にミレアは『クライスト・ヴォーテックス』に痛みという痛撃を持って、彼を打ちのめすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スリジエ・シエルリュンヌ
あれがクライスト・ヴォーテックス…!油断なりませんね。
でも、撃破(事件解決)するためにも。ここで止まるわけには!

桜のガンシップから降りて、『桜色の文豪探偵』を名乗りましょう。
ええ、目立つように、誘うように。

…かかりましたね?遠隔操作の桜のガンシップから、砲撃です!
その力、私に絶対に近づきますからね。突撃の方向、私が立つ位置…それを計算すれば、着弾地点にあなたを導くのは容易いんです!

ふふ、あなたの攻撃は結界術、それに石榴剣でさばいてますから。とくに結界では…命中したとは言えませんね?
お養父さまから受け継いだ、誰かを守るという誓いも違えません!



「おお、我が神よ! 俺の痛みを知るか! 俺のこの喪った腕の! 胸に穿たれた傷痕の! その痛みを知るのならば、今一度俺に奇跡を与えろ!」
 咆哮の如き叫びが戦場に響き渡る。
 数多の猟兵達の攻撃は確かに狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』の体に傷痕を刻み、その痛みを知らぬ体に痛覚を呼び起こさせた。
 一滴の染みの如き恐怖が、彼の狂信を揺るがし始めていることは誰の目にも明らかであったことだろう。

 隻腕となった彼の片腕には未だ銀の鉄塊の如きハンマーが握られ、白装束は血潮に染まっている。
「あれが『クライスト・ヴォーテックス』……! 油断なりませんね」
 ギラギラと輝く狂信の瞳を見て、スリジエ・シエルリュンヌ(桜色の文豪探偵・f27365)は身震いする思いであった。
 この悪徳の都市『クライストシティ』の惨状を彼女は見てきた。
 山積した死骸。
 あの光景を生み出したのが、『クライスト・ヴォーテックス』の狂信であるのならば、彼女は自分が何者であるかを信じるのみである。

 そう、事件を解決するためにも、此処で立ち止まるという選択肢は彼女にはないのだ。
 桜のガンシップから飛び降りたスリジエの瞳が桜流雲(レ・ニュアージュ・クール)に煌めく。
「『桜色の文豪探偵』、参ります!」
「――あ? 何、なんだって? 探偵風情が我が神との交信を妨げるか!」
『クライスト・ヴォーテックス』の瞳の色が変わる。
 彼にとって神とは信奉する存在であり、同時に力という祝福を授けて然るべき存在である。

 その神との交信を阻んだスリジエの姿は、憤怒の対象となったことだろう。
 何も名乗る必要はなかったのかもしれない。スリジエは不意打ちでもなんでもして、戦えばよかったのだ。
 けれど、彼女はそうしなかった。
 目立つように、誘うように、己の名を叫んだのだ。文豪探偵であることを知らしめるために。何のために己が戦場に立つのかを知らしめるように。
「邪魔をするな――!」
 狂信的な突進によってスリジエに迫る『クライスト・ヴォーテックス』が振るうハンマーが振り下ろされる。

 隻腕となったがゆえに、全盛のような速度と威力はないだろう。
 けれど、それでもスリジエを打ちのめすには十分なものであった。
「……かかりましたね?」
 振り下ろされんとしたハンマーを横合いから何かが吹き飛ばす。それは一瞬の出来事であった。
『クライスト・ヴォーテックス』のハンマーの一撃を邪魔したのは、桜のガンシップから放たれた砲撃であった。

「何……? 何故、無人のアレが動く!?」
「その力、私に絶対近づきますからね。突撃の方向、私が立つ一……それを計算すれば、着弾地点にあなたを導くのは容易いんです!」
 スリジエは疾走る。
 彼女は文豪探偵である以上にバリツ探偵である。己の身に降りかかる謎を解かせぬとばかりに迫る暴力をいなして踏み越えていくことが自身で出来る探偵である。
 誰かを、相棒を必要としない。
 守られるのではなく、守ることのできる探偵。
 それがスリジエ・シエルリュンヌ。そして、その名を宿す、養父・グルナードの形見である細身の黒剣『石榴剣』の刀身が煌めく。

「お養父さまから受け継いだ、誰かを守るという誓いも違えません!」
 そう、彼女の胸には何物にも譲れぬ誓いがある。
 己が振るう剣、その剣閃でもって贖わせることができるのならば、振るうことに躊躇いはない。

 煌めく斬撃の一撃が『クライスト・ヴォーテックス』の胸に斬撃の傷痕をさらに刻み込む。
 前に、前に、もっと前に。
 スリジエは立ち止まらぬことこそを示すように、巨悪へと己の信念を持って立ち向かうのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェット・アームストロング
最も危険な悪とは、所謂ローフルイービル…秩序を持った邪悪だ。
奴を倒しても、その歪んだ欲望と狂気は邪教の教義となって世界に浸透しかねない。そうなる前に全てを終わらせなければ。

脂肪を消耗している。大技を出しても威力が弱い。ならば敵の力を利用する。因果応報という秩序を教えてやろう。
来い!この『ヘビーセット』が相手だ!
今まで外部に放出していたパワーを全て自身の体内に込め身体能力を強化。
ハンマーの攻撃を紙一重で【見切り】、【怪力】の拳での【カウンター】パンチを打ち込んでいく。
四発目は懐に飛び込み【グラップル】でハンマーを持つ腕を掴みジュー・ドーの奥義イポンゼオイ。奴の勢いに己の力を加え大地に叩き付ける。



 鮮血が白装束を染め上げていく。
 嘗てのリゾート地である『アカプルコ・デ・フレアス』を悪徳の都市『クライストシティ』へと変貌させた圧制者たる狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』はたしかに悪そのものであったことだろう。
 だが、最も危険な邪悪というのは、計画的に秩序立てて悪を行うものである。
「所謂ローフルイービル……奴を倒しても、その歪んだ欲望と狂気は邪教の教義となって世界に浸透しかねない」
『ヘビーセット』ことジェット・アームストロング(ヘビーセット・f32990)は、この悪徳の都市を見てきた。

 市街地では無辜なる人々の死骸が積み上げられ、隷属を強いられた人々は明日は我が身であると諦観に沈んでいた。
 この『白の城塞』と呼ばれる超巨大な屋敷の中は、欲望を煮詰め、生命を生命とも思わぬ行いに寄って維持されている自然さえもはばかることなく燃やそうとする存在が跋扈していた。
 オブリビオンはいつだって、その歪んだ欲望を叶えるために如何なる手段でも講じるだろう。
「例えば、この敗北すらも彼等は己達の都合の良いように解釈するのだろうな」
 目の前で痛みにあえぐ『クライスト・ヴォーテックス』は隻腕へと成り果てたが、未だその手には銀の鉄塊の如きハンマーを握りしめ、ギラついた瞳でもって猟兵たちをにらみつけるのだ。

「クソどもが……俺を! 俺をよくもこんな目に合わせてくれたな! 痛みが消えない。痛みが続く! 我が神からの恩寵を! よくも!」
 ハンマーが大地を叩き、その衝撃で『クライスト・ヴォーテックス』が空中に舞い上がる。
 アクロバティックな動きで振るうハンマーの一撃を『ヘビーセット』は受けきれないと判断し、かわそうとしたが、これまでの連戦で彼の力の源である『脂肪』を消耗しすぎている。
 大技で相殺しようとしても、威力が弱いのだ。

「くっ! だが、そうなる前に全てを終わらせなければ――来い! この『ヘビーセット』が相手だ!」
「お前の名前なんざ知ったことかよ! この痛みが! 我が神の恩寵が! お前達の命を持って贖えと言っているんだよ!」
 放たれるハンマーの一撃が『ヘビーセット』の脳天を砕かんと放たれる。
 しかし、その一撃は『ヘビーセット』に当たることはなかった。虚しく宙を斬った打撃の一撃が大地を割る。

「――!?」
『クライスト・ヴォーテックス』は理解できなかっただろう。例え片手しか使えない状況であったとしても、『ヘビーセット』は己の打撃を躱せなかった。
 確かにそれは事実であった。
 だが、それは今までは、であった。
「Caloric Boost(カロリックブースト)!!」
『ヘビーセット』は残った己の脂肪の全てを消費し、ハンマーの一撃を見切る。代償は大きい。
 この戦いが終わったら、『ヘビーセット』は動けなくなるだろう。
 けれど、関係などない。彼の心に正義の心が灯火のように燃えている。あるのは、巨悪を許せぬという心のみ。

 放たれる拳がカウンターのように『クライスト・ヴォーテックス』の胴をしたたかに撃つ。
 骨が砕ける音が響き渡り、それでもなお銀の鉄塊が振るわれるのだ。
「ぐぼっ、おっ!? て、めぇ――!」
 さらにそこに追撃の打撃が振るわれる。
『ヘビーセット』にはもう見えていた。ハンマーの軌跡も、何もかも。『クライスト・ヴォーテックス』という巨悪の底を見た。

 数多の猟兵たちが紡いだ戦いは、今彼の心に恐怖を思い出させていた。
 けっして消えぬ痛みと恐怖。
 それを前にして今までのように戦うことなど出来はしない。これまで人の命を弄んできた因果応報を、そして真の意味での秩序を『ヘビーセット』は教えるように振るわれたハンマーを持つ腕を掴む。
「これぞジュー・ドーの奥義イポンゼオイ。お前が神を味方にするのならば、私は大地を味方にする」
 ずん! とすさまじい音を立てて『ヘビーセット』の足が大地に沈む。否、大地が彼の体を支え、相手の力を利用した円の動きで持って『クライスト・ヴォーテックス』を背中から大地へと叩きつけられる。

 大地が反発する力が、大地に変える時、その一撃は如何なる防護すらも貫く一撃となって『クライスト・ヴォーテックス』の体へと叩き込まれるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【勇者パーティ】

ランチャーのダメージからはしれっと復活。

なんだかすごい悪役っぽいのがでてきましたね。
あれを倒せばルチャが守られると見ました!

って、師匠ー。だいじょぶですか?
いきなり氷なんて纏うからお腹壊したりするんで……ええ!?

師匠の籠もってたトイレがありません!?

ステラさん、ステラさーん!
師匠どこに行ったか知りませんか!

え? 調子悪いから先に行っていてくれって?
それはしかたないですね。

ではステラさん、勇者的にベビーとして、ヒールは倒しましょう!

みんなのために悪を倒すの勇者の勤め!
ここは久しぶりの【世界調律】で、さくっと倒して、はやく師匠を探しに行かないと!
音叉のいちげきをくらえー!


ステラ・タタリクス
【勇者パーティー】
(ものすごくショックを受けている)
まさか…私がフィア様と一緒のパターンを…
それも言われるまで気づかないなんて
これはいけません、反省しなくては
とりあえずフィアさまを様を投棄して
影響を断ちましょう

え?ルクス様どうしました?
フィア様ですか?
えっと、その、かくかくしかじかでして
ええ、私たちで未来を切り開きましょう(しれっとしてる

勇者の前で道を開くのがメイドの役目なれば
【スクロペトゥム・フォルマ】でいきます
ダッシュで接近
マシンガン程度、銃で受け止められなくては
メイドを名乗ることなど
至近距離まで踏み込んだら銃撃で足を止めます
ルクス様、今のうちに準備を
トドメはお任せしますね


フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「むむう、氷で腹を冷やしたのが良くなかったか……」

トイレから戻ったところで見たのは、肉を柔らかくするハンマーを持った……料理人だな、あれ。

「ふむ、永遠を生きるために欲しいものを手に入れる、か。
うんうん、我の若い頃を思い出すなー」

いや、今も若いけど!

「かつての我も、永遠の命のために、己以外の生命を実験材料にしたり、邪悪な悪魔と契約したりと、色々とやってきたものよ。
あんな若造、まだまだ欲望が足りぬな!」

この我が、本当の欲望というものを見せてやろう!

「その肉叩きで料理した飯を食わせろー!」

【竜滅陣】をぶっぱして、力尽くで言うことを聞かせよう。

「あ、街を消し飛ばしてしまった……」



 ハイペリオンランチャーぶっぱ事件。
 なんで事件にしているのかと言えば、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は己のしてしまったことに対して酷く悔いているからである。
 そう、これまでフィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)にぶっぱ魔女とかペタン魔女とか、ぶっぱぶっぱ言ってたしなめていた側なのだ。
 まさか自分が同じパターンに嵌ってしまっていたとは気がつくことができなかったのだ。
「まさか……私がフィア様と一緒のパターンを……それも言われるまで気が付かないなんて。これはいけません、反省しなくては」
 あ、フィアと弟子のルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)を巻き込んだことに対しては別に何も後悔していないところから察するに、フィアと一緒だったというところにダメージを受けているようであった。

 とりあえず、とお腹を冷やしてとてもとてもゴロゴロ雷様がお腹で鳴っているフィアを投棄……もとい、投擲してお手洗いに直行させる。
 これで影響を断ち切れたと彼女は良い顔で額を拭った。
 そんな彼女の元にハイペリオンランチャーのぶっぱのダメージからしれっと復活してきたルクスは、お、と狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』の姿を目ざとく見つける。
 今の彼女は勇者であるが、ルチャリブレ体験コースの真っ只中である。
「なんだかすごい悪役っぽいのが出てきましたね。あれを倒せばルチャが守られると見ました! って師匠ー大丈夫ですか? いきなり氷なんて纏うからお腹壊したりするんで……」
「あ、フィア様ならばかくかくしかじかでして。ええ、私達で未来を切り開きましょう」

 ステラはルクスに雑な説明をした。
 かくかくしかじかで伝わる説明はフィクションの中だけである。けれどもまあ、この話はそういう感じのあれであるので、大丈夫である。
「師匠の籠もっているお手洗いを守りましょう! 調子が悪い師匠の代わりに戦うのまた弟子の努めですからね! ステラさん!」
 むん! とルクスが気合十分に瞳をユーベルコードに輝かせる。

「勇者的にベビーとして、ヒールは倒しましょう!」
 世界調律(セカイチョウリツ)するは勇者の務めである。しかし、相対する狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』とてただやられるわけではない。
 これまで数多の猟兵たちが紡いできた戦いの軌跡、それを無駄にはできない。
「しゃらくせえんだよ! 何がベビーだガキのくせして俺をコケにしやがって!」
 手にしたマシンガンが火を噴き、ルクスとステラを襲う。
 凄まじい連射速度、弾幕のように張り巡らされる弾丸を前にステラは駆け出す。
 その手にあるのはスクロペトゥム・フォルマ――2丁拳銃を構えたメイドプリムが揺れる。

 如何に『クライスト・ヴォーテックス』の放つマシンガンの威力が高かろうが、当たらなければ無意味である。
「撃つだけが銃の使い方では無い、そのことを教えてあげましょう」
 ステラの瞳がユーベルコードに輝く。
 それは彼女の構える2丁拳銃によって、マシンガンの放つ弾丸を受け止めるという絶技。
「この程度造作もなくできなければ、メイドを名乗ることなど! ルクス様!」
 一瞬で距離を詰めたステラが2丁拳銃を駆使した体術でもって『クライスト・ヴォーテックス』との距離を詰め、一気に形勢を逆転させる。

「メイドだと!? ふざけやがって! どいつもこいつも俺の邪魔ばかりを!」
 怒りに震える『クライスト・ヴォーテックス』は、見落としていたのだ。
 何故メイドであるステラが、ここまで接近してくるのか。
 そして何故、今の今まで弾丸を放たないのか。それは簡単なことである。ステラ自身がメイドであり、メイドである以上主人を目立たせることを至上とするからである。
 踏み込んだステラが微笑む。
「トドメはおまかせしますね」
 そう呟いた瞬間、彼女の銃から弾丸が放たれ、『クライスト・ヴォーテックス』の足を穿つ。

「ぐっ――!」
 痛みが疾走る。『クライスト・ヴォーテックス』にとって痛みとは無縁なものであった。
 けれど、これまでの猟兵との戦いで彼は痛みを取り戻させられていたのだ。
 そこにルクスのユーベルコードが輝く。
「みんなのために悪を倒すのは勇者の務め! さくっとたおして、早く師匠を探しに行かないと! 音叉の一撃をくらえー!」
 それは世界を調律する音叉の衝撃波。
『クライスト・ヴォーテックス』が築き上げきた巨悪を世界から取り除く一撃は、凄まじい衝撃波となって彼を吹き飛ばす。

 そして、吹き飛ばされた『クライスト・ヴォーテックス』は見た。
 いや、見上げた。
 そこにあったのは、今まで不在であったフィアであった。
 お腹の調子が戻ったのをいいことに非常にお腹を好かせているのだ。
「ふむ、永遠を生きるために欲しい物を手に入れる、か。うんうん、我の若い頃を思い出すなー」
 目の前の『クライスト・ヴォーテックス』の生き方にフィアは共感していた。思い出すのだ。あの若かりし頃を。いや、今でも若いけども!

「な、なにを……お前は!」
 銀の鉄塊の如きハンマーを手にした『クライスト・ヴォーテックス』が立ち上がる。それを見て、フィアはまたお腹をぐるぐるっと鳴らす。
 お腹の冷えが戻ったらすぐにこれである。
「かつての我も永遠の生命のために、己以外の生命を実験材料にしたり、邪悪な悪魔と契約したりと、色々なことをやってきたものよ」
 わかる。とても分かるフィア。
 けれど、彼女は頭を振った。
「だが、若造。まだまだ欲望が足りぬな!」
 彼女の瞳が輝く。そう、もしかして:竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)である。

 これが本物の欲望というものである。
 食欲にまさる欲望などあろうはずがないと言うかのように、食欲の権化としてフィアの瞳がユーベルコードの輝きを放つ。
 またしてもぶっぱである。
 もう勇者パーティはぶっぱによって支えられ、ぶっぱによって追われる身となるのだ。
「その肉叩きで料理した飯を食わせろー!」
 ぶっぱされる巨躯大魔術の一撃は『白の城塞』の一部を吹き飛ばさい、その盛大なる狼煙でもってルクスとステラに己の所在を知らせる。

 しかし、フィアはまたしても世界を追われる身となるのだ。
 何せ、今回もまた盛大に街の一部を消し飛ばしたのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
この世界にも嘗てはUDCE等と同じ伝承があったようですね
円卓の騎士達の伝説にも登場する聖槍、それを振るうとは…

ですが、ここは私の距離です!

此方の最大の得手の接近戦に踏み込んだ敵を迎撃
己の微細な挙動で相手のアクロバットからの攻撃行動を密かに誘導
勝利の確信に勢いづく攻撃を完璧に見切り、怪力で振るう剣と盾で四連撃を完全に弾き体勢崩し

盲人を癒す奇跡…かの槍が信仰を集めた理由は敵を倒す力のみに非ず
慈しみを持たぬ貴方が騙って振るうなど、滑稽にも程があります

脚部スラスター推力移動を乗せた脚撃でハンマーを取り落とさせ

これ以上、この地の人々を苦しませぬ為に…
その歪んだ教義と欲望、打ち砕かせてもらいます

剣を一閃



『ロンギヌスの槍』と呼ばれた銀の鉄塊を隻腕の狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』が杖のようにして立ち上がる。
 凄まじい巨躯大魔術に寄って吹き飛ばされてはいたものの、未だその体は健在である。強大なオブリビオンである証であろうか、これだけの猟兵の攻撃を受けても尚、彼は立ち上がってくるのだ。
「我が神よ! まだ足りないというのか! この俺の献身を! どれだけの供物を捧げたと思っているのだ!」
 みなぎる力。 
 それはこれまで彼が犠牲にしてきた無辜なる生命の代価であろうか。
 痛みを感じないかのような狂信。
 その突撃は、猟兵たちにとって脅威となるものであったが、それでもトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、迎撃するように己もまた一歩を踏み出すのだ。

「円卓の騎士たちの伝説にも登場する聖槍、その名を持つ武装を振るうとは……ですが、ここは私の距離です!」
 トリテレイアは、かつてUDCアースにも存在していた伝承の一つに列挙される槍の名を知る。
 これがアポカリプスヘルにも存在しているというのならば、世界には如何なるつがありがあるというのだろうか。
 それを考える暇は今はない。目の前の『クライスト・ヴォーテックス』を打倒する。そのためにこそ己の剣は振るわれるのだから。

 振り下ろされたハンマーの一撃。
 それは四連撃を受けた瞬間に、相手を絶命させる凄まじき力である。まさに聖槍の名を冠するに値する力であろう。
「もっとだ! もっとだ! もっと俺に力をよこせ、我が神よ! お前の敵を俺が討ってやるのだから!」
 ギラつく狂信的な瞳を前にトリテレイアは怯むことはなかった。
 あの『クライスト・ヴォーテックス』の瞳には、未だ恐怖はあれど己が最後には勝つという絶対的な確信を捨てきれずに居た。
 もしも、彼が完全に恐怖を取り戻していたのならば、この場から逃げることを優先すればよかったのだ。
 けれど、それをしない。

 いや、出来ないとでも言えばいいのだろうか。
「盲人を癒す軌跡……かの槍が信仰を集めた理由は敵を倒す力のみに非ず。慈しみを持たぬ貴方が騙って振るうなど、滑稽にもほどがあります」
 トリテレイアの動きがまるで機械騎士の舞踏先導(リード・オブ・マシンナイツ)のように『クライスト・ヴォーテックス』の攻撃を誘導する。
 空中をアクロバティックに舞う『クライスト・ヴォーテックス』は一見すると彼の有利に事が運んでいるように思えただろう。
 大盾で防ぐハンマーの一撃は重く、盾がひしゃげ、砕けるほどであった。

 けれど、トリテレイアは確信していた。
 隻腕と成り果てた『クライスト・ヴォーテックス』は、こちらの挙動に慢心している。
「どうしたどうした! なあ、おい! さっきまでの威勢はどうしたよ!」
 振るわれるハンマーの挙動を完璧に視きったトリテレイアは脚部スラスターを噴出させ、ハンマーの柄を握る『クライスト・ヴォーテックス』の腕を蹴り払う。
「何――!?」
「これ以上、この地の人々を苦しませぬ為に……」
 アイセンサーが煌めく。
 それはこれまでの舞踏先導の如き優雅さを感じさせぬ荒々しい一撃であった。

 如何に優れた力を持つのだとしても、トリテレイアの心にある騎士道が言うのだ。それは本当の強さではないと。
 狂人教祖の悪辣を誅すべく、剣が振り上げられた。
「その歪んだ教義と欲望、打ち砕かさせてもらいます!」
 放たれた剣閃が、これまで彼が積み上げてきた悪辣を一閃の元に切り捨てる。

 白装束を新たな鮮血が染め上げていく。
 そこには最早、狂人教祖の威厳はなかった。
 あるのは唯一つ。
 正しきを行い、弱き人々を守る誓い、騎士道のあるべき姿。その剣閃の一撃が刻まれた哀れなる狂人の末路だけであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堆沙坑・娘娘
脱がすことも考えたのですが、はしたない女と思われるのは恥ずかしいので…命を懸けてその服を貫くと決めました。

敵の体が多少吹き飛ぶ以上、攻撃のエネルギー自体は発生している。エネルギーを弾かれ受け流されるせいでダメージを与えられないだけです。攻撃で発生したエネルギーは無効化されていない。

なら、力の逃げ場をなくせばいい。

近距離で貫くという方針と敵UCによる制約と負傷で際限なく上昇する身体能力を頼りに敵を白の城塞の壁際まで追い込み、最後は壁に叩きつけるようにパイルバンカーで【貫通攻撃】。強化された脚力で地に足をめり込ませれば押さえつけによりエネルギーの逃げ場がなくなります。

その瞬間が『白』を貫く時です。



 狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』が興したオブリビオン教団の信者たちが纏う白い装束は近接攻撃を弾く力を持っていた。
 それは猟兵たちの戦いにおいて不利に働くものであったし、事実多くの猟兵達は近接攻撃ではなく、遠距離攻撃でこれに対処してきた。
 堆沙坑・娘娘(堆沙坑娘娘・f32856)もまた、その一人である。
 彼女はパイルバンカー神仙拳の開祖。
 手にしたパイルバンカーで全てを貫くことこそを求める求道者でもある。しかし、近接攻撃を弾く白装束は、その力でもっても未だ貫くことはできなかった。

 市街地での戦い。
『白の城塞』での戦い。
 この二つを経て彼女が得た解は、ただ一つ。
 近接攻撃が弾かれたとしても敵が吹き飛ぶ以上、攻撃のエネルギー事態は発生している。
 エネルギーを弾かれ、受け流させるせいでダメージが与えられないだけであるのならば、攻撃で発生したエネルギー事態は無効化されていない。
「ならば、力の逃げ場を無くせばいい」
 きっと娘娘はこれからも、同じ窮地に立たされることだろう。多種多様なオブリビオンを相手取る以上、これ以上の存在とだって彼女は戦わなければならない。

 そんな時、彼女はどうするだろうか?
 パイルバンカーを捨てるだろうか? 否、答えは断じて否である。彼女にはそれしかない。それだけでいい。
 だからこそ、彼女の瞳は、信念(シィンニィェン)という名のユーベルコードに輝くのだ。
「クソどもがよぉ! どこまでも俺を邪魔する! 我が神への信奉を邪魔するか! もっと、もっと、弾丸を――!」
『クライスト・ヴォーテックス』がマシンガンを乱れ撃つ。
 けれど、娘娘はひるまなかった。

 彼女の瞳に信念が宿るのならば、その時こそ彼女の体は限界を超えていく。
 これまでもそうであったように、たった一つのパイルバンカーであらゆる悪行を積み重ねる悪人たちを討滅してきたのだ。
 その骸がまた一つ今日、頂きに積み上げられるだけの話だ。
「貫く」
 短く発した言葉を『クライスト・ヴォーテックス』は聞くことはなかっただろう。
 踏み込み足は、一気に彼との間合いを詰める。
 目と目が合う。
 けれど、けっして相容れぬ存在である。

 相互理解など無意味。
 マシンガンの弾丸が娘娘を撃つ。けれど、構いやしなかった。痛みも何もかも制約が己の体を底上げしていく。
 不利な行動をすればするほどに彼女の力はましていくのだ。
 何かがきしむ音が聞こえた。
「な、なんだ、この音は……はっ――!?」
『クライスト・ヴォーテックス』は気がついた。
 世界をきしませるほどの、大気を震わせるほどの凄まじい握力で持って握りしめられた娘娘のパイルバンカーが唸りをあげていることに。

 そう、悪を穿け。
 全てを貫け。
 彼女の魂に刻みつけられた『パイルバンカーを極めろ』という単一の命令、いや……彼女の矜持が世界を震わせるのだ。
「ごっ――!?」
 凄まじい身体能力で持って『クライスト・ヴォーテックス』は白塗りの城壁まで追い詰められていた。 
 背には城壁、逃げ場などない。放たれたパイルバンカーの一撃が彼の体を壁にめり込ませる。

「命を懸けて、その服を貫くと決めました」
 娘娘が呟く。
 ただそれだけでよかったのだ。己の身に刻まれた原初の命令。今は矜持に昇華した、その言葉を受けて彼女のユーベルコードが輝く。
 めり込ませ、エネルギーの逃げ場をなくした『クライスト・ヴォーテックス』に振り上げられたパイルの切っ先が向けられる。
 その瞬間こそが『白』を貫く時であった。

 薬莢が飛び出す。
 それはパイルを打ち出す杭打機の咆哮。
 放たれた一撃は凄まじい勢いで『クライスト・ヴォーテックス』の鮮血に染まった白装束を貫き、城壁すらも散々に打ち砕いて求道者の一撃を叩き込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
まあ、どんな神を信じようが自由ではあると思うよ
ただ、理由が何であれ暴力に訴える以上は
暴力で解決されても仕方ないよね

と言ったところでまともな問答にはならないだろうし
ガトリングガンの弾をご馳走しようか

ワイヤーガンを利用した回避や
神気による防御で相手の攻撃を凌ぎつつ攻撃しよう

炎による攻撃がきたら邪神の施しを使用
この状態なら熱や窒息は怖くないからね

あの問答の後で邪神の力を使うのは非常に遺憾だけど
クライストを倒す事が優先だからね
利用してるだけで信仰している訳ではないよ

…うん、言ってて虚しくなったのでとりあえず戦おう

炎で熱くなった体を利用して
拳や組み付きで攻撃しよう
白い服を着ていないのは信念か何かなのかな



 放たれたパイルの一撃が『クライスト・ヴォーテックス』の身にまとう白装束を撃ち貫く。
 不可能と言われた一撃をもって狂人教祖は白塗りの城壁ごと貫かれ、血反吐を撒き散らす。
 けれど、未だ終わらぬ。終われぬとばかりに爛々と輝く瞳がユーベルコードに輝き、テキーラと火薬を混ぜ合わせ生み出された純白の炎が周囲に撒き散らされる。
「ふざけんなよぉ……! 我が神よ。おお! 我に試練を与えし神よ! こんなことがあっていいはずがない! こんなにも俺はお前に尽くしたというのに! このまま俺を見捨てるつもりか!」
 怨嗟の如き咆哮。
 されど、そこには狂信の光しかない。
 彼はこんな状態に追い込まれても尚、『フィールド・オブ・ナイン』への信仰を捨てられない。

「まあ、どんな神を信じようが自由ではあると思うよ。ただ、理由が何であれ暴力に訴える以上は、暴力で解決されても仕方ないよね」
 その言葉と共にガトリングガンの弾丸が『クライスト・ヴォーテックス』に撃ち込まれる。
 純白の炎に防がれて入るが、それでも構わなかった。
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は走った。ガトリングガンの弾丸をばら撒き、純白の炎を防御に使わせることで『クライスト・ヴォーテックス』を逃さぬように立ち回る。
「暴力が全部解決するだろうが! 説法も何もかも無視できる! 暴力だけが確かなものだ! 俺が振るう暴力がな!」
 血走る瞳は、やはり狂気。
 放たれる純白の炎が晶をおそうが、ワイヤーガンで崩れた城壁を利用しながら躱す。

「飛び回るばかりで!」
 しかし、それでも無数に飛ぶ純白の炎を全て躱すことはできない。
 だからこそ、晶は己のユーベルコード、邪神の施し(リビング・スタチュー)を受け入れる。
 彫刻家の魔法陣によって己の体を彫刻へと変え、純白の炎を防ぐのだ。
「少しばかり気が退けたけれどね」
 そう、あの問答にもならぬ問答の後で邪神の力を使うのは非常に遺憾であった。後で邪神に何を言われるかわかったものではない。
 けれど、今は『クライスト・ヴォーテックス』を打倒することのほうが鮮血である。

「お前も! お前も神の力を使うのか! 俺と異なる神! 邪神の力を!」
「違う違う。利用しているだけで信仰しているわけではないよ」
 言っていて晶は虚しくなる。
 敵から見れば、どちらも変わりないことであったことだろう。邪神の力を取り込んだ体と、神の力の恩寵を受ける者。
 そのどちらに差異があるのかは、本人たちにしかわからぬことであったから。
 だからこそ、晶は炎で熱せられた彫像化したからを利用し、己の熱せられた拳を『クライスト・ヴォーテックス』に叩き込む。
「その白装束、もう白くないね。真っ赤だ。これまで流してきた犠牲の血潮……それを覚えてはいないのだろうけれど」

 晶は詮無きことであることは百も承知であった。
『クライスト・ヴォーテックス』は省みることをしない。
 己の欲望のままに振る舞い、死を撒き散らすだけの存在だ。どうあがいても、正しき教義を持つことはない。
 だからこそ、倒すしかない。
「もとよりそのつもりだけれど」
 哀れであるとさえ思うことすらしてはならないように思えたのだ。

 あの市街地の死の臭いに充満した光景を知っている。
 犠牲の果てに維持されていた緑を焼く炎を見た。ならばこそ、晶は赦してはならないのだと理解し、その燃えたぎる拳を振るい上げ、『クライスト・ヴォーテックス』を追い詰める一撃を持って、死者への手向けとするのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
こーんなに缶詰を抱えてていけないんだ

これトマトの缶詰
凄くレアってししょーが言ってた
でも知ってる?外では本物のトマトを作ってるんだぞ
それはとっても甘くて瑞々しくてぷりぷりしてるのん
そういえば見た事あるなん?
外は荒野が広がってるけど
頑張って道を敷いてるヒトがいるって
その道はね
どこまでも明日に向かって延びてるんだ!

ニンゲンは!

らぶはバットを振るい

とっても凄いチカラを秘めてるんだ!

バットがダメならチェーンソーで

どんなに大変でも諦めないで!

チェーンソーが切れればラビットブレス

いつかユメを叶える為に明日を目指すんだ!

それもダメなら爆弾を

お前なんかよりもずっと

全部ダメなら銃を構えて!

ヒトは強く輝いてん!!



 放たれた拳の一撃が狂人教祖『クライスト・ヴォーテックス』の顔面を焼き焦がす。
 これまで猟兵たちが紡いできた戦いの軌跡は、十二分に彼を追い詰めた。
 けれど、それだけではこの街で流された無辜なる人々の血汐を贖うには、到底足りないものであったことだろう。
「俺が、死ぬ……!? この俺が!? 何故だ、何故我が神は応えない! 力を齎さない! お前の敬虔為る存在が、窮地に立たされているのだぞ!」
 咆哮する『クライスト・ヴォーテックス』が放つ純白の炎が、己の身を守るために張り巡らされる。

 明らかに怯えていた。
 痛みを持たぬ存在、他者の生命すら弄ぶことに躊躇いを持たぬ者が、己の生命を脅かされた瞬間、その炎を攻撃ではなく身を守るために使ったのだ。
 歯の根が合わない。
 猟兵を相手にしたのが間違いであったのか。それとも、鼠であると過小評価したのが過ちであったのか。
 否。
 断じて否である。

「こーんなに缶詰抱えていけないんだあ」
 その言葉は間延びしたものであったし、『クライスト・ヴォーテックス』にとっては場違いな言葉であったことだろう。
 そう、ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)は、沢山の缶詰を抱えて純白の炎の前に立つ。
 彼女は約束していたのだ。
 市街地に残された明日すら望めぬ人々に、明日を望めるだけのものをもたらそうと。
 オブリビオンは生命維持のための食料を必要としない。
 けれど、彼等は奪うのだ。何故とは問うまい。彼等は奪うことこそを喜びとし、その欲望を満たしてきたのだ。

 だからこそ、無意味な缶詰が大量に残されている。
 トマトの缶詰を一つ手にとってラブリーは言う。
「すごくレアってししょーが言ってた。でも知ってる?  外では本物のトマトを作ってるんだぞ」
 それはとても甘くてみずみずしくて……荒野に生きる人びとが懸命に明日を願って作り上げたものだ。
 奪うだけでは、奪還するだけでは為し得ない奇跡のような結実をラブリーは知っている。
 彼女は見てきたのだ。
 この荒廃した世界を。なにもない、荒れ果てた大地しかないと思っていた。
 けれど違うのだ。
「頑張って、頑張って、どんなに辛くても、道がなくても道を敷いてるヒトがいるって」

 ラブリーの声はガスマスクの中でくぐもっていたけれど、それでも彼女は言うのだ。
 純白の炎に守られ、己の生命だけを守らんとしている卑劣なる狂人教祖に。
「その道はね、何処までも明日に向かって伸びてるんだ!」
 アルジャーノンエフェクトは、ラブリーに何も教えてはくれない。
 脳の演算速度がどれだけ上がろうとも、彼女の心のなかに在るものを増やしてはくれない。

 彼女が心に蓄積した経験はいつだって誰かとともに与えられるものである。
 商人を夢見た。人の笑顔が見たい。苦しくても歯を食いしばる誰かのために成りたい。
 その思いが、彼女の腕を震わせる。
 バットの一撃が純白の炎の壁を割る。けれど、バットがひしゃげ折れ曲がる。放り投げた。
「ニンゲンは!」
 ラブリーは思い出すのだ。いつだって彼女が見てきたものを。少しも忘れることのできない光景を。
 チェーンソーが唸りを上げて、ラブリーの道行きを阻む炎を切り裂く。
 けれど、『クライスト・ヴォーテックス』が迫る。手にしたハンマーを振り下ろし、ラブリーのチェーンソーがバラバラに砕けていく。

「塵芥だろうが! 踏み潰され、血汐を持って俺を楽しませる事以外に価値のないものだ! クソみてえな力もない連中だ!」
「とっても凄いチカラを秘めてるんだ!」
 ラブリーは真っ向から否定する。純白の炎を撒き散らし、身を焼きながらも彼女は突き進む。
 アルジャーノンエフェクトは、彼女の頭の中でいくつもの人々の顔を高速で再生していく。
 まるで走馬灯のようであったけれど、それでもラブリーは彼等のためにこそ、己の力を振るうと決めたのだ。

 ばらばらになったチェーンソーを投げ放ち、火炎放射器でもって純白の炎を蹴散らす。
「どんなに大変でも諦めないで!」
 炎がぶつかり、消えて行く。それでも純白の炎がラブリーの炎を押し戻していく。肌がジリジリと焼けて涙が溢れそうに為る。
 にじむ視界。
 けれど、それでもと誰かが――いや、自分が言うのだ。
「お前なんかよりもずっと!」
 爆弾を投げ放つ。炸裂した爆発が二人を包んでいく。それでも前に進む。爆風がなんだ。こんなものがなんだと彼女は懸命に腕を伸ばす。
 何もかもが駄目だった。

『クライスト・ヴォーテックス』には届かない。
 銀の鉄塊の如きハンマーが爆風で飛んだのを、ラブリーは見た。今しかない。もうこれ以上どうなってもいい。
 あの輝く笑顔をもう一度見るためには、己が一歩を踏み出さないといけない。
 皮肉にも最後に手にしたのは、『クライスト・ヴォーテックス』が奴隷たる人々に作らせた銃火器……最初に彼女が手にした銃であった。

「ヒトは強く輝いてん!!」
 引き金を引く。
 その弾丸は、これまで喪われた生命の代価。
 眉間を貫かれた『クライスト・ヴォーテックス』が大地に血汐を返す。それまるで禊のように。
 霧散し、消えていくオブリビオンの姿を見下ろし、荒い息を吐き出しながらラブリーは額の汗を拭う。

 体の痛みはもう忘れた。
 今彼女の心にあるのは、みんなの笑顔だけであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月13日


挿絵イラスト