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灼滅トライエンブレム -左-

#ダークセイヴァー #第五の貴族

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#ダークセイヴァー
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#第五の貴族


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●鳥籠の化身ヴェリオラ
「貴方達に最後の仕事をあげる」
 地底都市はカターニア邸、その敷地たる左方庭園。
 薔薇と鳥籠で彩られた庭に一人立つ少女の姿、彼女の名はヴェリオラ。
 人間ではない、けれどヴァンパイアでもない。その本性は鳥籠、その姿は果たして誰の似姿か。
「使い捨てでも素材としては高級だもの」
『ア……アァ……アアァ……』
 そこに立つのは一人、けれどそこに居るのは大勢――倒れ悶える少女達。
 不運にもヴァンパイアによって実験台とされ、ただでさえ短い命を更にすり減らされた人狼。狂気に呑まれ理性を失った死にかけの兵隊。
 それでもまだ使えると、余さず役に立つのだと鳥籠は言った。聖者や人狼は高級素材、そこらの人間などよりも何倍も価値があると。
 ゆえに彼女達は生贄にされるのだ。
「誰もが早死にするこの世界で、役目を全うできるのだもの。幸せよね?」
 じゃあ後で――そう言い残して鳥籠の化身は去っていった。

 ここは庭園にして製造所。紋章を生み出す祭壇である。

●三つの祭壇を破壊せよ
 『紋章』、それは猟兵達の前に度々現れてきた謎のオブリビオンだ。
 寄生した相手を超強化するそれは、『第五の貴族』と呼ばれる者達が地底都市から地上へ与えていたことが分かっている。
 猟兵達はいくつもの地底都市を探索し、時には第五の貴族とも戦ってきた。結果として多くの紋章を回収することが出来たが、大元については分からずじまいだった。
「だけど、とうとうその場所が分かったよ!」
 それも今まではの話である。

 グリモア猟兵のイデア・ファンタジア(空想の描き手・f04404)によれば、とある地底都市の一角に建つ屋敷、そこが紋章製造の一大拠点であることを予知できたようだ。
「紋章の製造所……祭壇って言うんだけどね、そこにはなんと三つもあるらしいの」
 三つ。三つである。今一実感し辛いかもしれないが、これは大変なことだ。
 今までの経緯からも分かる通り、祭壇は第五の貴族ならば誰でも所持している訳では無い。彼らの中でも限られた一部の者だけの特権だ。
 一つで十分に特別。それが複数ともなれば――当然、その分だけ戦力も多い。
「屋敷の主に、それと特別な配下が二体。合わせて三体も紋章持ちがいるわ……正面突破は不可能ね」
 紋章という弱点以外はほとんど傷つけられない相手が三体。もしも合流されてしまえば万に一つも勝ち目は無い。
 だからこそ、各個撃破の策を練る必要がある。

●庭園へ
「敷地はシンメトリーになってるわ。屋敷の左右にある二つの庭園、良く分からないけど薔薇と鳥籠が特徴みたい? とにかくこの庭園が祭壇にもなってるようね。管理してる紋章持ちが近くにいるはずよ」
 手順はこうだ。まず二手に別れて、敷地をとり囲む森を抜けることで庭園に潜入する。そして今まさに行われている紋章製造を妨害し、庭園――祭壇を破壊。騒ぎを聞きつけた配下を素早く撃破し屋敷の中へ。そのような流れとなる。
「この森だけど、地底都市だからなのか中は真っ暗なの。罠とかは無いみたいだけど気を付けてね」
「それと、生贄にされた人達の救出は無理。オブリビオン化しちゃってるからね」
 ただ、誰も助けられないかと言うとそうでもないようだ。
 この紋章、製造には大量の生贄が必要らしい。今回は彼らが言う所の高級素材が多く捧げられており、その分普通の素材、つまり人間の奴隷が残されている可能性が高い。
 もし見つけたらどうするかは任せるわ――そう言ってイデアは猟兵達を送り出した。


渡来あん
 初めまして、あるいはお久しぶりです、渡来あんです。
 こちらは3部作の内の1本となります。
 もう片方と時系列はほぼ同時ですが、特に制限はありません。

●第1章
 真っ暗な森の中を進んでもらいます。
 転ばないよう、迷わないようお気を付けて。

●第2章
 紋章になりかけているオブリビオンとの戦いです。
 なりかけのため触手が生えていますが見た目だけです。

●第3章
 第五の貴族(の配下)との戦いです。
 断章でも描写しますが、紋章は『左手の甲』です。
 そこ以外はほぼ無敵なのでご注意を。

●その後
 左右共に成功完結した場合、そのまま屋敷に突入する続編を運営します。
 演出上のものであり、繰り返しますが制限を課すものではありません。

 それでは、ご参加をお待ちしています。
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第1章 冒険 『迷い森の夜鳴き』

POW   :    灯りをともして進む。

SPD   :    暗闇をみとおし進む。

WIZ   :    耳をすまして進む。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フォルク・リア
「あの紋章の製造。
どうやって作るにしろこの中でろくでもない事が
行われているのは確かか。」
今まで対峙した紋章を思い出しながら。
「それでも、それを止められるなら
進まない訳にはいかない。」

アンノウンブレスを発動。
幽霊達に先行させて、その超感覚により周囲を確認。
自身はフレイムテイルの炎を灯りとする。
時に屋敷の位置を確認して迷わない様に注意。
出来るだけ先を急ぐが暗がりに隠れた障害物等
は見逃さないように、
更に、不要に物音を立てたり獣に見つかり騒がれる
等して敵に悟られない様に警戒しながら進む。
障害物等あった場合は幽霊の念動力で排除、回避。
「此処で時間や体力、魔力を消耗するのは悪手だが。
確実に進まないと…。」



 黒い森の前でフォルク・リア(黄泉への導・f05375)は回顧する。
「あの紋章の製造。どうやって作っているのか……何にせよ、この先でろくでもない事が行われているのは確かか」
 『辺境伯』『番犬』『殺戮者』『悪竜』『影蛇』『黒花』『愛』……最近の事件の裏には紋章の姿があった。
 それらがどのように凄惨な儀式で作られていたのか、想像するだに悍ましい。直視したくないとさえ思える。
「それでも、それを止められるなら進まない訳にはいかない」
 最近の事件ではない、最初からそうだったのだ。この世界にヴァンパイアが蘇ってからずっと、命を弄ぶ儀式は続けられてきた。
 猟兵はその端に指をかけられるようになったに過ぎない。ここで引くようならそもそも猟兵などやっていない。
 一歩、踏み出す。

 呪文を唱え棺を召喚してからしばらく経つ。幽霊達を先行させ、自身は足元を注視するフォルク。
 黒手袋の上に浮かぶ炎は良く地面を照らし出すが、同時に濃い影も作り出す。一メートルも先になれば、でこぼこした木の根がその先を隠していた。
 森の大地は凹凸が激しい。迂闊に踏み込めば足首を挫いてしまうかもしれない。
「此処であまり魔力を使いたくは無いが。時間や体力を消耗する方が悪手か」
 右手を上にかざす。そして、合わせて頭上に移動した炎の勢いが増した。手のひらサイズからバレーボール大へ、有効視界もぐんと伸びる。
 これで移動は大丈夫、うっかり木の枝を踏み割ることもない。懸念は獣に騒がれることだが――。
 そこは彼の呪術の出番。地の底の更に底より呼び出されし幽霊達は、フォルクに仇なす獣を人知れず遠ざけ、時に排除していった。
 急ごう、けれど慎重に。地底都市は元より敵地、何があってもおかしくは無いのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チヒローズ・イッシー(サポート)
自由都市を故郷に持ち、本人も自由を愛する女性です。
戦闘では指定したユーベルコードを状況に応じて使い、人々の自由を取り戻す為に皆さんと力を合わせて戦います。
オラトリオの聖者×プリンセスということで、もしよければキラキラっとした華やかな戦闘演出を描写していただけると嬉しいです。

口調はステータスシートの通り、「なの、よ、なのね、なのよね?」という感じの優しく人当たりのいい女の子といった感じの喋り方です。
一人称は「私」、二人称は基本的に年齢や男女を問わず「さん」付けの呼び方です。
あとはマスターさんにお任せします。よろしくお願いします!



 人は自由でなければならない。自由都市に生まれたチヒローズ・イッシー(オラトリオの聖者・f20852)は強くそう思う。
 人は一人では生きられない。他人と関わり、群れて、やがて家族となっていく。
 だから、自由とは誰とも関わらないということではない。意志を縛られないということだ。
 何をしたいと思うか。誰と共にいたいと思うか。それこそが重要だ。
 チヒローズが猟兵をしているのも聖者として生まれた義務感ではなく、世界に選ばれた使命感でもなく、真に彼女がそうしたいと思ったからなのだ。
 その切っ掛けは――今は置いておくとして。

 翻って彼女達はどうだろう。捕まり奴隷とされた人間達。命を捨てさせられた人狼達。あるいは反対側にいるという、異端の神を継ぎ接ぎされた少女達。
 ――全く自由ではない。死に場所さえ選べないなんて最低だ。そんな人達を助けるためにチヒローズは猟兵をしているのだ。
「どうか、あと少しだけ耐えて。すぐにそこへ行くから……」
 けれどこの世界はいつも残酷だ。間に合いはする、しかし手遅れでもある。グリモア、猟兵を助けるはずのそれが悲劇を保証してしまう。キラキラとした未来はまだはるか遠く、その光は夜空に瞬く星より儚い。
 分かっている。それでも立ち止まることは許されない。何より彼女自身が許さない。
「私、諦めないよ。こうやって戦うの、絶対無駄なんかじゃないもの」
 彼女は助けられないことを悲しむ。彼女は虐げる者へ憤る。それらは彼女が優しい証。闇を知ってなお輝く光の徴。

 彼女の足取りが鈍くなることはない。その心は決して負けないから。その体から溢れ出す生まれながらの光が、暗黒の森を照らしているから。
 彼女の名はチヒローズ・イッシー。この絶望の世界に生まれた、希望の化身である。

成功 🔵​🔵​🔴​

リチャード・ライナス
「紋章製造は阻止したいよな(お供え物と生贄は違う、と考えてる神の端くれ
「これ(自アイテム)が祭壇布ってのも因縁を感じるし

方針)SPD暗闇をみとおし進む
絡み・アドリブ歓迎

祭壇布に乗り【空中浮遊】し転倒を避け、【道案内】で迷わぬよう移動
【暗視】で障害物との衝突も回避

以前の自分なら『移動』なんてまどろっこしい、と思っていたが、過程もだいじなんだと思うようになっている

「なぁハカセ、この状況ってどうなの?
(UCで知性強化人間を作成、周囲の状況から『紋章』や第五の貴族(の配下)について考察させる
秘密の扉?とかあれば【鍵開け】で中を覗く

敵に見つからぬよう会話等は小声で
安全重視で進む



「生贄かぁ。生贄は……違うよなぁ」
 リチャード・ライナス(merchant・f29694)は宙に浮かぶ布に乗りながら唸った。
 何を奉っているのか知らないが、神に何かを捧げること自体にはリチャードも異論はない。けれどそれはあくまで自発的な物に限る。
 願いを叶えてもらったお礼としてお供え物をするのは良い。だが、願いを叶えてもらうために対価を捧げるのは全く違う。
 それは取引、契約だ。神の端くれとしてそれは認められない。
「紋章製造は阻止したいよな。これが祭壇布ってのも因縁を感じるし」
 ぽんぽん、と自身を運ぶ布を叩くリチャード。思えば以前の自分ならこんな物に頼ることもなかった。過程を大事にする人の心、自分がそれに近づけたようで無性に嬉しい。
 そして、そんな人々を虐げるオブリビオンが許せない。

「なぁハカセ、この状況ってどうなの? 紋章って結局何なのかな?」
 祭壇布の同乗者、自身が創り出した小人にリチャードは問う。与えられた叡智で道案内をしていた小人は振り返って答えた。
『さてな。いずれは分かるかもしれないが、こちらのやることは変わらないだろう』
 それとも使えるなら使いたいか? 冗談めかした問いに肩をすくめるリチャード。
「全然。そっか……じゃあ第五の貴族は? 祭壇について考えられることは?」
『ふむ……主と配下という関係は明確に上下が存在する。屋敷の間取りや祭壇の状態には主の趣味嗜好が反映されていると思われる』
 これから向かう祭壇に大きな特徴があれば、他の祭壇も同じだと見ていいだろうな――そのような助言がされたのだった。

「そうだ、これも聞いておかないと。生贄の人達はどこを探したら見つかるかな?」
『……おそらく探す必要はない。食料庫は調理場のそばに作るものだ、祭壇とやらと同じ場所に閉じ込められているだろうさ』

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『狂化人狼兵』

POW   :    群狼死重奏
【集団で一斉に人狼咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    群狼狂爪牙
自身の【狂気に身を委ねた兵達が魔獣化し、天に月】が輝く間、【魔獣化した人狼達全員】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    群狼月光陣
【月の光】が命中した対象を治療し、肉体改造によって一時的に戦闘力を増強する。

イラスト:月代サラ

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●祭壇:左方庭園
 森を抜けた猟兵達がそれを知覚した時、顔をしかめずにいるのは難しかっただろう。
 目に入ったのは、庭園の至る所にこびり付いた血。肉片。臓物。ぶちまけられたかつて命だった物。だが何よりも悍ましいのはその匂いだ。
 吐き気を催すほどの死臭――ではない。むしろ逆だ、良い香りがしているのだ。
 咲き誇る薔薇の香りが、むせ返るような濃密な芳香が悪臭を押し隠している。
 まるでこの光景が素晴らしいものであると言わんばかりに。

 そしてここには薔薇の他にも存在する物がある。それは、多数の鳥籠。
 グリモア猟兵から話を聞いた時、猟兵達は庭園の芸術的な装飾品を想像しただろうか。だが一目見れば、実態は全く違うと分かる。
 これは牢だ。
 大小様々な鳥籠の中には、人間が何人も閉じ込められているではないか!
 生存者だ! 可能性は示唆されていたが、まさかこれほど近くだったとは!

 逡巡の時間はない。伏していたオブリビオンが一体また一体と起き上がり、猟兵達へと襲いかかってきた!
フォルク・リア
「…そうか、此処が。なら話は速い。
とっとと壊して人々も助ける。」
庭園の様子に一瞬顔を顰めるも素早く
グラビティテンペストを発動。
周囲の物体を媒介に重力嵐を発生させ祭壇を破壊。
閉じ込められている人々は状態を確認しながら
救出は敵を倒しきってからとする。
「生贄になると言う人々なら逃げない限りは
敵としても利用価値がある。なら、無闇に傷つけない筈。」
破壊した祭壇の物質で更に重力波を拡大。
敵に対しても引き裂くように重力波を発生させてたり
瓦礫を撃ち込んで内部から発生させた重力波で
肉体を破壊すると同時に
祭壇を破壊した瓦礫で月の光を遮り
治療、肉体改造を妨害しながら
斥力で敵同士の連携も妨害して一体ずつ確実に倒す。


紬雁・紅葉(サポート)
『業邪…御鎮めします』
基本戦闘場面に参加

破魔、属性攻撃、衝撃波、薙ぎ払い等とUCを適宜組み合わせて攻撃

見切り、残像、オーラ防御、武器受け等とUCで防御や回避

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

範囲攻撃と2回攻撃での雑魚払いが得意だが
ボスとの戦闘も遜色なく行えるし行う


羅刹紋を顕わに戦笑み
傷負っても笑みを崩さず
何処までも羅刹の血と"剣神"の導きに従い
災魔業邪を打ち倒す

敵の最期に
去り罷りませい!
の言葉を

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「……そうか、此処が。なら話は早い、とっとと壊して人々も助ける」
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は庭園の惨状に一瞬顔をしかめたが、すぐに気を取り直して詠唱する。
「押し潰せ、引き千切れ、黒砂の陣風を以て。其の凄絶なる狂嵐の前には何者も逃れる事能わず。ただ屍を晒すのみ。吹き荒れよ、滅びの衝撃」
 次の瞬間、発狂したかのような重力変動が庭園を襲った。
 薔薇が横に落ち、空の鳥籠が平面になる。噴水の水が空へと身を投げ、噴水自身も後を追う。敷き詰められた大理石のタイルが一斉に反乱を起こし、彫刻の掘られた装飾柱は弾け飛ぶ。
 何がこの庭園を祭壇たらしめているかは分からない、ならば全て壊せばいい。万が一にも祭壇としての機能が残らないよう念入りに破壊していくフォルク。
 心苦しいが人々の救出は後回しだ。戦闘の傍らで行うには荷が重いし、それに――。
『ガアアアアア――!!』
 響く咆哮。人狼咆哮によく似たそれはしかし兵同士を傷つけることなく、指向性をもって猟兵達に襲いかかる。
 そして耐えきったフォルクが奴隷達の様子を横目で確認すれば、どうやら被害は出ていないようだった。
「やはり。生贄だというのなら、それまでは無暗に傷つけないか」
 主がそう命じたのだろう。ろくに理性も残っていないだろうに、それでも下された命令に従い続ける人狼の姿はとても哀れだ。

 夜空に月が輝く。
 無論、ここが地の底である以上は擬似的に再現された物なのだろうが、人狼兵には分からず、また不都合も無いようだ。
 なけなしの理性さえ投げ捨てて狂気の魔獣と化していく人狼達。彼女達の前には一人の戦巫女が立つ。
「業邪……御鎮めします」
 紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)。鎮守の山森より世に降りてきた巫女は邪を鎮め封じるために今日も戦う。
「一二三四五六七八九十 ふるべゆらゆらとふるべ」
 薙刀を手に、月下、秘伝の神楽舞を舞う紅葉。漆黒の髪と巫女装束をたなびかせ、笑みを浮かべてくるくると。まるで神性がこの場に降りてきたかのよう。
「剣神のお導きのままに……」
 紋様を顕わにした羅刹の女はそのまま、飛び掛かってきた魔獣を切り伏せた!

 ぐるりぐるりと、舞が続いてるかのような薙刀の軌跡。
 それを作り出す紅葉は、しかし決して無傷ではない。魔獣達の後先考えないがむしゃらな突撃は、巫女の肌を容赦なく引き裂いていく。
 けれど、それでも紅葉の笑みは崩れない。いくら外面が穏やかに見えようと彼女はどこまでも羅刹なのだ。その身に流れる血と剣神の導きが、彼女の内を昂ぶらせる。
「勾玉にて気を廻し、剣音にて貫く! ――ェエイッ!!」
 裂帛の気迫と共に突き出された薙刀は音速を超え、音の壁を相手へと叩きつける。直撃を受けた魔獣は大きな風穴を空けられて地に倒れた。
 破魔の力の通りがいい。それは人狼達が完全に魔道に堕ちている証である。本来彼女達は犠牲者のはずなのに――どれだけの業を背負わされればこのように成り果ててしまうというのか。
 最後の魔獣が飛び掛かる。巫女の迎撃――首の皮一枚逃したか!
 恐るべきは魔獣の生命力、月光を取り込んで即座に賦活、より強靭に――。

 ――その瞬間、月の光が弱まった。
『ガウ?』
 魔獣が見上げた空には月を隠す大きな雲が。
 ありえない。地底の月はヴァンパイアのための物だ、陰ることなど――もし彼女に理性が残っていればそう考えただろうか。
「さあ、とどめを」
 それの正体はフォルクの切り札、要所要所で仲間を支援しつつも進めていた大仕掛け。祭壇を細かく砕いた微粒子を空に浮かべ、戦場全体を覆う影を作りだしたのだ!
「災魔業邪、去り罷りませい!」
 そして、最後の魔が打ち倒される――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月影・左京(サポート)
アドリブ・連携・苦戦描写・UC詠唱改変・その他OK!

「はわっ!?……大丈夫。私も手伝うから♪」

一人称:私
口調:女性的でラフ(〜よね、なの?、あら〜等)
口癖:はわっ!?
性格:おっとりのんびり。「わぁ!頼りにな……る、の?(笑)」な印象

基本戦法:【忍び足】で敵の死角に入りメイスによる【気絶攻撃】を【2回攻撃】。【鎧砕き】も狙う。

敵の攻撃は【聞き耳】を立てて【第六感】も使い、【見切り】ます。
※不意打ちを受けた時など、「はわーっ!?」と叫ぶ傾向あり。

指定したUCを何でも使用。
但し負傷した猟兵がいれば戦況次第で攻撃より【祈り】の力と【医術】及び【救助活動】で治療。

後はお任せします。よろしくお願いします。



『ガアアアアア――!!』
「はわーっ!?」
 人狼兵の咆哮に負けずとも劣らない悲鳴をあげる月影・左京(夫婦ゲーマーのはわっ担当・f06388)。幸か不幸か注目は集めなかったようだ。
 気を取り直してリテイク。

 忍び足で相手の死角に潜り込んだ月影・左京(夫婦ゲーマーのはわっ担当・f06388)は機会を伺っていた。
 無防備な後頭部を強打されれば昏倒は免れまい。すかさず第二撃をお見舞いすれば確実に倒せるという素晴らしい作戦だ。
 何度か咆哮が庭園に響いているが、左京は素知らぬ顔で聞き流す。人狼咆哮に指向性を持たせたがゆえの弱点だ。

 と、人狼達が変身しだした。どうやら月光を利用しているらしい。
 そこで思いついた左京は呪文を唱えてプラモデルを召喚した。敵に気付かれた。
「これは飛空戦艦ワンダレイのプラモデル、ミニワンダレイよ。しかも今回はドローン機能を組み込んだ特別タイプ。これで月の光を遮ってあげられたらいいわね」
 出来たらいいよね。
『ガウ』
「はわーっ!? なんてことするのよ!?」
 何だこんなもの、そう言わんばかりの雑な凶爪によってミニワンダレイは墜落した。悲しい。
 本物だったらワンチャンあった。本物だったら月光を遮っていたのは粒子雲じゃなくて飛行戦艦だったかもしれない。でもレプリカだから仕方ない。
 ともあれ彼(あるいは彼女)の死は無駄にはならない、悲しみのあまり左京のメイスがパワーアップした。正確にはメイスを握るパワーがアップした。
「これはミニワンダレイの分! これは私の分! そしてこれが泰花の分よー!」
 ガシッ、ボカッ。(※残虐な光景のため音声を編集してあります)
 麗しい金の髪をたなびかせてメイスを振るう狂気的<ルナティック>な姿は月の女神と称しても過言ではないのではなかろうか。
 なお彼女の地毛は黒髪である。

成功 🔵​🔵​🔴​

鳳凰院・ひりょ
【陽だまり】
リチャードさん、助太刀に来ましたよ!
って、こんな所に囚われの人達が!

戦闘には巻込みたくないな
鳥籠を守るように立ち位置を調整し戦闘に臨む
この場にいる人達を誰一人死なせるもんか!
UC『絶対死守の誓い』を発動させる

自身やリチャードさん含め、鳥籠内の人々が負傷した場合には光の波動で回復し、こちらへ間合いを詰めて来る敵に対しては闇の波動で迎撃を
闇の波動に【マヒ攻撃】を付与しておき、相手の動きが鈍くなった所を【破魔】付与した刀で一閃

リチャードさんの取りこぼしを優先で倒し、数を減らしていく
相手の回復&強化を警戒し、手負いは素早く対処
UC間合い外の敵へは刀より【斬撃波】を放ちダメージを与えていく


リチャード・ライナス
【陽だまり】

荒事は好まないが「生存者が居るなら戦うしかないな
ひりょへ「来てくれてありがとう。頼もしいよ
惨状にも動じず「やれる事をやるだけだ

WIZ
【迷彩】で狙われにくくして不測の攻撃から身を守り【空中浮遊】で移動
ひりょの立ち位置を確認し、敵の死角になりそうな場所からUCで包囲攻撃「還れ、在るべき場所へ(神の命令
【動物と話す】(話を聞き取るのみ)や【読心術】で敵の行動を予測し先回りする
ひりょの支援を生かし、可能な限り多くの敵を倒し生存者の数を確認する

1章の情報によれば傍に祭壇もある筈
生存者は【結界術】で保護
「安心して。…と言えないのが辛いけど、まぁどうにかするから(苦笑



「リチャードさん、助太刀に来ましたよ! ……って、こんな所に囚われの人達が!」
 友人の元へ駆けつけた鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は鳥籠の中身を見て驚愕した。
 項垂れて反応の鈍い一般人達。彼らを助けたいとひりょは強く思う。これまで虐げられ続けてきた彼らだが、生きてさえいればまだ取り返せるのだから。
「誰一人死なせるもんか! 絶対に、命を懸けて守ってみせる! 光と闇の疑似精霊、力を貸してくれ!」

「来てくれてありがとう、頼もしいよ。だけど君も自分を大切にね」
 荒事は好まないリチャード・ライナス(merchant・f29694)だったが、生存者がいるなら戦うしかないと腹を括る。友人の支援は渡りに船だった。
「やれることをやるだけだ」
 神の権能を使い宙へと上がったリチャードは、眼下の敵――今にも死にそうな人狼達を見つめる。
 いや、実際に死んでいるのだ。死んで、即座にオブリビオンとして蘇った。だから彼女達が本当に死ぬことはもうない――永遠に苦しみ続ける。
 動物にさえ通じる読心術が効かない。歪みきった精神が、おおよそ生物からかけ離れてしまっているのだ。
「還れ、在るべき場所へ」
 ゆえに導く神は命を下す。魔法剣という形で顕現した天啓が迷える狼達に降り注ぐ。

 神が全てを救えるのなら、この世に悲劇は存在しなかっただろう。
 剣の雨が止んだ後には傷つきながらも未だ立つ兵が何体かいた。
 ――では、それらは人が救おう。天命は示された、今度は人事を尽くす番だ。
『ガアアアア――!!』
「おおおおおっ!!」
 人狼の咆哮に負けじとひりょも叫び返す。凄まじい音圧を押し返すべく、闇の波動を増幅する。
 光の波動で自身を回復しながらの持久戦は、最終的にひりょに軍配が上がった。敵へと到達した波動が相手の動きを鈍らせる。
 好機、退魔刀『迅雷』を抜き放つ。振るわれた白刃は秘めた破魔の力もあって魔を一太刀に斬り捨てていく。

 だが最後の一体が月光を取り込み魔獣と化した。ぎりぎり間に合わなかったと見るか、警戒し急いだがゆえに一体で済んだと見るか。
 ともあれ窮地である。月の狂気、捨て身の九連撃が聖者に迫る。
 退きはしない。必ず守るとそう決めた。
 一撃目、右袈裟。二撃目、左から横薙ぎ。三撃目、四撃目――。
 一瞬ごとに加速度的に追い詰められる。雷鳴の如き怒涛の攻めが聖者の命を狙う。
 そして――五撃目が頬を深く切り裂いた瞬間、刀から白いオーラが立ち昇った!
 朱い鞘持つその銘は『迅雷』。邪を断ち切ること雷の如く。
 六撃目は永遠に来ない。雷鳴に先駆けて雷光が閃き――全てが終わった。

 戦いが一段落した後。リチャードは他の猟兵から話を聞いていた。
 どうもこの場に特別な物はなかったらしい。なので庭園全てを破壊したとのこと。それを聞いてリチャードの頭脳にある推測が浮かぶ。
「まさか、この庭園自体が『祭壇』なのか。じゃあ三つ目も……いや、確か屋敷の中だったはず。共通点はそこじゃないか」
 所在不明な最後の祭壇について考えていたリチャードだったが、生存者達の不安そうな眼差しに気付いて考察を打ち切った。
 囚われていた人間達。この件が片付いた後は彼らを安全な場所まで送ってやらないと。グリモアは一般人を転送できないし、地底都市は吸血鬼の支配下。地上へ手引きすることになるだろうが、受け入れ先がすぐに見つかるとは限らない。
 全くもって前途多難だ、けれどリチャードは優しく微笑む。
「安心して。……と言えないのが辛いけど、まぁどうにかするから」
 助けた者として、導く者として、頼りない姿は見せられないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ヴェリオラ』

POW   :    嘘鳥の導き
【虚空から突き出す鉄杭】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を鉄杭が織り成す鳥籠で封鎖し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    狂わしき箱庭
戦場に、自分や仲間が取得した🔴と同数の【猟兵を捕らえる鳥籠】を召喚し、その【鳥籠につけた条件を満たさないと出られぬ錠】によって敵全員の戦闘力を減らす。
WIZ   :    空ろ
自身が装備する【どこに合うか分からない黒い紐に繋がれた鍵】から【触れられたくない過去や記憶をこじ開ける力】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【放心】の状態異常を与える。

イラスト:ち4

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は奇鳥・カイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●BIRDCAGE 『VELIORA』
「勝手に逃がすなんて悪い人達ね。人の物を取ったらいけないのよ」
 猟兵達が祭壇を破壊し、生存者を避難させた少し後。姿を現したヴェリオラは状況を理解してそう言った。
「貴方達は私を満たしてくれるかしら? 出来なかったら素材行きよ」
 化身の少女、その左手の甲には紋章が。やがて虚空より現れた鉄籠に乗り、その場の全てを見下ろし喋る。
「私はいつもがらんどう。人の希望も絶望も、私の胸には響かない」
 その視線は品定め。人を求める人でなしは悪意なく害を振りまき続ける。
「囀ってね、猟兵さん。私の虚ろを満たせたら、ずうっと飼ってあげるから」
モース・レフレクソン(サポート)
ボスは強力な攻撃が必要だ。アイアンフェザーを構えて、強力な牽制射撃をしつつ一気に近づく。そして近距離で装甲突破型アンチマテリアルライフルを撃つ…が、これも牽制射撃だ。
後ろか側面に回り込んでユーベルコード掌底発破(パームバーンを叩き込んでやる。
肉片にするつもりで行くぞ。



 虚空から突如としていくつもの鉄杭が突き出る。対象を捉え損ねたそれらはしかし消えることなく、伸び、曲がり、閉鎖空間を形成する。
 そうして出来上がった鳥籠は時に地に転がり、時に固定されているかのように宙に浮き、鳥籠の化身ヴェリオラの足場となるのだ。
「私は鳥籠、虚ろな器。さあ、いらっしゃい」
 空中の鳥籠の上に立ち、ヴェリオラは戦場を見下ろす。

「ちっ、どんどん場が狭くなってきやがる……どうあっても逃がさないつもりか」
 鳥籠包囲網の隙間をくぐり続けるモース・レフレクソン(サイボーグの戦場傭兵・f06734)は、このままでは逃げ場が完全に無くなってしまうことに気が付いた。
「やるしかないな。隠し芸の時間だ!」
 駆け出すモース。構えた二丁の大型拳銃が連続して火を吹いた。放たれた弾丸は鳥籠を一息に食い破り、銃声が響く度に敵の足場が消えていく。
 十二の弾丸が撃ち尽くされる頃には、敵は既に大地に引きずり降ろされていた。
「次はこれだ、食らえ!」
 まさに隠し芸、モースの武装は既に特製のアンチ待ていあるライフルに変わっている。本来長距離用のそれをオブリビオンは間近で食らう。
「っあ、こんな、もの、効かないわ……」
 紋章の防護はダメージをシャットアウトする。だが衝撃はそのままなのだろう、頭に手を当てて首を振る鳥籠の化身。
 その手、頭に当てていた左手をモースの手が掴んだ。
「――風通しを良くしてやろう」
 次の瞬間、モースの掌が爆ぜた! その正体は内蔵された散弾銃だ!
 紋章の砕ける音。やった――そう思った瞬間、寒気を感じて飛び退くモース。
 次の瞬間、たった今モースがいた場所を一瞬で鳥籠が囲ってしまったではないか!
「一度くらいで紋章は滅びないわ。まだ抵抗するの、傭兵さん」
「……上等だ。軍隊を侮るなよ」
 戦いは続く――。

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルク・リア
「先に人を奪ったのはお前の方だろう。
その腐った性根。叩き直すのは諦めて、
黄泉へと送らせて貰うよ。」

敵の先手を取る【早業】の
【高速詠唱】で真羅天掌を発動。
発火属性の竜巻を発生させて攻撃。
敵が装備する鍵の破壊を試み
「空ろ」の発動を妨害。

それでも攻撃を受けて放心状態となってしまったら
(過去や記憶の描写は特に必要ありません)
真羅天掌の制御が乱れて竜巻が暴走し周囲が炎上。
自身もそれに巻き込まれる事で正気を取り戻し
再度真羅天掌を制御して敵の周囲に竜巻を集中。
二度と敵の攻撃を受けない様に
敵の攻撃タイミングを【見切り】
その発動を妨害する様にデモニックロッドから
闇の魔弾を撃って妨害しつつ竜巻で敵を仕留める。



「何を言う。先に奪ったのはお前の方だろう」
 人の幸福。人の未来。人の命。救いがたい簒奪者の物言いに対し、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)はそう吐き捨てた。
「その腐った性根。叩き直すのは諦めて、黄泉へと送らせて貰うよ」
 相手の望み通りに囀る必要なんてない。代わりに呪文を素早く唱えたフォルクは敵に先んじて炎の竜巻をけしかける。
「その下らない鍵は破壊しよう」
 燃え上がる竜巻は炎であって炎にあらず。燃えているのは空気そのものだ。物体を発火点まで瞬間加熱するそれは、発火という概念そのもの。いかな材質のものとて耐えられる道理なし。
「――あら」
 竜巻が過ぎ去った後、ヴェリオラの右手にあったはずの黒い鍵は消えていた。よし、このまま追撃を――竜巻を制御して再び敵へぶつけようとするが、けれども。

 化身が身を屈めて左手を伸ばし、飛ばされた黒い鍵を拾う。
「紋章は持ち物も護るのよ。さあ、貴方の記憶を見せて」
 鍵先が捻られて。

「――う、くっ」
 傍目には一瞬。その時間で何を見たか、二人だけが知っている。
「そう、そんなことがあったの。けれどやっぱり私には響かないわ――?」
 無感動を崩さないヴェリオラだったが、ふと後ろに不穏な感じて振り返った。
 そこには今まさに破裂せんと膨れ上がる炎の竜巻が。術者の手を離れて安定し続けるほど真羅天掌は易くない。
 破裂。轟音と熱波が戦場を舐めまわし――それでフォルクは我に返る。
「……もう一度だ」
 再びの真羅天掌、精神を集中するフォルク。敵も再び鍵を捻ろうと突き出す、が。
 二度も食らうものか。予期していたフォルクは杖から闇の魔弾を放ち、無防備に突き出された左手――その甲にある紋章を撃ち抜いた!
「人の世に在りし万象尽く、十指に集いて道行きを拓く一杖となれ」
 炎の竜巻が今度こそ鳥籠の化身を焦がしていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リチャード・ライナス
【陽だまり】

「相手に満たしてもらうだけなら、それは単なる搾取だ(肩竦め

WIZ
トラウマ:唯一の理解者だった姉を、見守ることしか出来なかった

「『商人』になったら傍に居る事も手助けする事も出来ないと分かっていた。
なのに俺は姉さんに甘えてばかりで、何も返してあげられなかった(苦悶する強がりの寂しがり屋
【オーラ防御】で懸命に耐える

「でも俺は商人の定めを引き受けると決めた。そして力を取り戻すためには、ここで倒れるわけにはいかない(ひりょの励ましに応える
「天の光よ、かの者を満たせ(UCで左手の甲を狙い、光で穿つ

ひりょへ
「君が居てくれて、本当に有り難く思うよ。おかげでまた僅かに力が戻った気がする(嬉しそうに笑


鳳凰院・ひりょ
【陽だまり】
WIZ

君達にとっては物、かもしれないが…俺達猟兵にとっては救うべき人達なんだっ!
くっ、これは…
幼少期、聖者としての力を無意識に使っていた為、悪魔憑きと周りから蔑まれていた頃の事を思い出す

【精神攻撃】に対し必死に歯を食いしばって耐える
確かにそう言う事はあった
だけど、その後義父によってその状況から救い出された
そして今は仲間達がいる、俺は一人じゃない!

【精神攻撃】に必死に抗い手に持った護符を媒体に『破邪顕正』を発動
一瞬でもいい、相手を行動不能に!
その隙を突き、刀に波動を纏わせ【武器改造】
槍状武器と成して左手の甲へ【破魔】付与した【串刺し】攻撃

リチャードさんが翻弄されていたら必死に励ます



「相手に満たしてもらうだけなら、それは単なる搾取だ」
「君達にとっては物、かもしれないが……俺達にとっては救うべき人達なんだっ!」
 リチャード・ライナス(merchant・f29694)は肩を竦め、鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は憤る。
 鳥籠のヴェリオラ、彼女は決定的に間違えている。相手を物扱いして一方的に奪うなんて手段で幸せを得られるはずが無い。
 けれど人ならざる少女は彼らの言葉を理解せず、鍵持つ右手を突き出して。
「さあ、貴方達の中身を見せてちょうだい」
 がちゃり、記憶の扉が開く。

●ひりょの扉
『近寄るな』『悪魔憑きめ』『ああ恐ろしい』
 気付けばひりょの姿は子供となり、周りを大きな影が取り囲み口々に罵っていた。
 それは刹那の回想、こじ開けられた過去の再現。
「くっ、これは……あの頃の記憶か」
 聖者、生まれながらに光を放つ存在。希望の化身。本来諸手を挙げて歓迎されるはずの彼はしかし、かつて真逆の立場に追いやられていた。
 疑心は暗がりに鬼を見る。大人達は光にも鬼を見るほど追い詰められていたのだ。
 彼らにも同情すべき点はあったかもしれないが、子供には関係のないこと。あのまま一人だったら耐え切れなかっただろう。

「だけど、一人じゃなかった」
 そうだ、手を差し伸べてくれた人がいた。引き取り育ててくれた養父のおかげでひりょは救われたのだ。彼が亡くなった後も助けて貰えるくらいに居場所ができた。
 人は一人では生きていけないくせに、時に疑い傷つけあう。けれど全てに絶望する必要はないのだ。
 人の心にはいつだって、優しい光が宿っているのだから。
「幾多の精霊よ、かの者に裁きを……破邪顕正!」
 いつの間にか手中にあった護符を握りしめ、かつての子供は闇を祓う。

●聖者の光
 目を開けた瞬間飛び込んできたのは、少女のきょとんとした表情。ひりょは迷わず刀を突き出して――纏いし波動が魔の紋章を貫いた!

「リチャードさん! 大丈夫ですか!?」
 敵がふらつく隙に仲間の元へ駆け寄るひりょ。当のリチャードはまだ回想に囚われているのだろうか、苦しそうに呻いている。
「しっかりして下さい! 頑張って、俺がついていますから!」

●リチャードの扉
 見守ることしかできなかった。
「唯一の理解者だったのに……姉さん……」
 与えられてばかりで、それに甘えてばかりだったあの頃のリチャード。再現された過去の光景を今のリチャードは外から眺めていた。
 『商人』。それになればもう傍に居ることは出来ないと分かっていただろうに。だったらその前に少しでも返しておけば、手助けしておけば良かっただろうに。
 姉以外の者がリチャードに理解を示さなかったのも、その選択自体の否定はもちろん、何も出来ない自分への呆れも含まれていたのではないか。そんな風にさえ思えてくる。
 過去の映像は変わらない。あの頃の過ちを直視させられ続けるリチャードは強がろうとして上手くいかず苦悶し続ける。
 手遅れだろうか、それともまだ間に合うだろうか。商人の定めを引き受けると決めた、けれどかつての力の大半を失って、取り戻す道も未だ明確には見えてこない。

『頑張って、俺がついていますから!』
 ああ、けれども。
「これだけは分かる。力を取り戻すためには、ここで倒れるわけにはいかない」
 声が聞こえる。友の声だ。ああ、この声を聞いたならば回想はもう終わりだ。
 未来への道は見えずとも、今を共に歩む仲間が待っているのだから。

●神の光
「天の光よ、かの者を満たせ」
 吸血鬼の偽りの月とは違う、真なる天よりの光が闇夜を貫き地の底へ届く。それを為した男は友へと振り返って嬉しそうに笑った。
「君が居てくれて、本当に有り難く思うよ。おかげでまた僅かに力が戻った気がする」
 千里だろうと万里だろうと、一歩ずつ進んでいこう――。

●籠の鳥は放たれて
 紋章を貫かれること幾度目か。とうとう化身の命運も尽きたようだ。
 ぶつりと糸が切れたように崩れ落ち、がらんがらんと鳴る躯。
「――ああ、乾くの、飢えるの。誰か私を満たして頂戴……」
 空を向き横たわる鳥籠少女。その姿はあちこち焼け焦げ、拉げ、胸の扉が開いていて、そしてそこから。

 パタタ、と青い鳥が飛び出していった。

「あ……鳥さん。まって、いかないで、私の幸せ――」
 空っぽ、虚ろ、がらんどう。何も響かないなんて嘘っぱち。
 ただ気付かなかっただけなのに。

 ――そして、鳥籠は朽ちる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月19日


挿絵イラスト