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アトランティス大汚染(比喩でなく)

#ヒーローズアース #猟書家の侵攻 #クリティアス #ミュータントヒーロー #ヒーローチーム #アトランティス #猟書家

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●すべて(のシリアス成分)を喰らうもの
 それは夏の夜の夢にも等しき、悪夢の情景だった。
 ヒーローズアース海底都市群、アトランティス。
 海中に適応した人々の暮らす街を、泥濁った汚染水が覆い尽くす。

 否、あれこそはクリティアス。
 骸の月に与する巨大亀は嘗て、侵略者の時代に海神の尖兵として戦い、
 急速に発展した地上文明の負の遺産――海洋汚染によって息絶えた。
 海底文明の為に戦ったクリティアスにとり、
 この都市は本来ならば護るべき側であったろう。

 だが、蘇ってみればどうか。
 憎き地上との交流は復活し、人々はのうのうと生きて笑い声を響かせる。

 あるまじき光景。あってはならぬ、偽善者どもの平穏。
 教えてやらねばなるまい。母なる海が、彼奴等に何をされたのかを。
「……思い出せ」
 怒れる海亀は眼を開き、今こそ呼びかける。
「今こそ思い出せ、地上文明への怒りを。さもなくば『ちゅんちゅんちゅんちゅん』あっちょっ」

 ――誠に遺憾ではあるが。
 ただ迷いなく破壊活動に勤しむ事においては、ちゅんちゅんさまの方が上であった。
 グッバイ、シリアス。

●ゴミ箱の中身をちゅんちゅんすれば
 グリモア猟兵のリグ・アシュリーズに集まる視線は同情を通り越し、いっそこの流れを楽しむ人すら出ていそうだ。
「うん、まあ、迷いなく殴りに行けそうね!」
 気付かぬフリして先を続けるリグ。仕事人の顔になってきたではないか、よきかな。でも一応説明はしなければならないので聞くだけ聞いてもらおう。
「今回皆に向かってもらうのはヒーローズアースの海底都市よ! 珊瑚の台座に乗った遊歩道、整然と立ち並ぶ街並み、それはそれは綺麗な場所だけど」
 観光とはいかないのがつらいトコよね、とリグが肩を落とす。
 そう、今回呼ばれたのも猟書家案件なのである。一応は。
「海底都市、アトランティス。ここをね、スズメの大群が襲うの。ちゅんちゅんちゅんって」
 なんだ、のどかじゃないか。
「あ、すずめってもちゅんちゅんさまっていう、れっきとしたオブリビオンよ! 硬いくちばしや翼で街を荒らしに来るの! ……主にゴミ箱のハンバーガーとかを」
 やっぱりのどかじゃないか。猟兵たちが思わずほわんと和んだ目つきをする。
「でもね、よーく考えて! 私たち含め、人間は皆海中適応光線で暮らせるけれど、やっぱりアトランティスは海中なのよ」
 つまりはね、と前置きして一語一語区切り、できるだけ具体的にイメージさせるよう語りかけるリグ曰く。
「食べ物、ものすごい勢いで荒らされる。海中だから水の流れ、ある。汚染水、一気に広がって街中に生ゴミぶわわの大惨事……オーケー?」
 トンデモ不衛生なパンデミックを想像した猟兵が思わずうぷ、と手で口を押さえた。
 思ったよりも大惨事じゃないですか、やだーー!!
 ちなみにこれ、海洋汚染を広げて『スナークトライアングル』を生み出そうという猟書家幹部の作戦らしいが、人選が的確過ぎるのはたぶん偶然の産物である。

 猟兵たちが駆けつければすぐさまちゅんちゅんさまとの戦いになるが、如何せん数が多いのが悩みどころ。
「でも安心して! 現地ではミュータントヒーローのチームと合流できるわ! 彼らに街を案内してもらえば、すず……ちゅんちゅんさまが集まりそうな所も分かると思うの!」
 借りられる手は借りて、効率よく倒して欲しいとの事だった。

 なお、ヒーローチームがどんな集団かと聞かれたリグは一瞬、目を泳がせて。
「えー、その、街のハンバーガー捨ててるところに詳しい人……」
 なんて??
「ゴミ拾いのボランティアとかしてて」
 うんうん。
「……いま、絶賛、職探し中みたい??」
 ……。…………世知辛いにも程があろう。
「ついでにクリティアスも忘れず倒してね! 皆ならやれるわ、行ってらっしゃい!!」
 かつてこのように雑な扱いを受けた猟書家幹部が、いたであろうか。
 海亀さん、泣いていいですからね――なんて事を思いながら、
 あなた達はまだ汚されていない綺麗な海底都市へと送られていくのでした。


晴海悠
 ヒーローズアース猟書家戦線、今回はカオスモード。
 時折ギャグ的な意味で情け容赦のない晴海悠です。
 ご準備は、いいですか。ファイッ!!

 今回はサポート様の力も積極的にお借りして『書ける時に書く!!』方式で運営する予定です。
 もちろん、当シナリオ宛てにプレイングを頂けた場合は他シナリオとの兼ね合いを見つつ、可能な限り優先させて頂きます!(キャパオーバーしたら流れるかもしれません)
 『ライト版』感覚でお気軽にどうぞ!

『プレイングの受付』
 オープニング公開と共に受付開始します! 断章もプレイングに影響が出ないものとなりますので、いつ送って頂いても大丈夫です。
 採用数については完結優先で、少なめになると思われます。

『1章 集団戦』
 ちゅんちゅんさま。ちゅんちゅんします。ゴミを。とても可愛らしいですが海の中なので皆様の息してる海の中にゴミがぶわわってします。
 全力で止めて下さい。頼むから。描写する側がつらいので早めに対処お願いします。

『2章 ボス戦』
 クリティアスです。うっかりギャグ展開に巻き込まれました。
 本来はマジメで故郷の海思いの亀さんです。ですがこのシナリオではんなこたぁ知らん。出番食われ気味ですが二章で頑張ってもらうので頑張って倒して下さい!

 プレイングボーナス(1・2章共通)……ミュータントヒーローと共闘する

 ミュータントヒーロー(求職中)の皆さんはサバイバルスキルに卓越してるのでいろいろ詳しいです。おトクな場所、いろいろ知ってます。いろいろ。
 街が汚染されて経済活動が破壊されるともうちょっとだけヒーロー期間が延びます。皆様の手で街を綺麗にして二足の草鞋を履かせてあげて下さい。

 ちなみに海中ですが、海中適応光線で息できます。不利は生じません。でもゴミは散乱します。ハリアップ。

 それではリプレイでお会いしましょう! まちはキレイに!
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第1章 集団戦 『ちゅんちゅんさま』

POW   :    頑丈なくちばし
単純で重い【くちばし】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    鋭い翼
【翼】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    羽根ガトリング
レベル分の1秒で【翼から羽根】を発射できる。

イラスト:橡こりす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 つぶらな瞳、まあるい嘴。
 見目こそ可愛いちゅんちゅんさまは今、
 アトランティスにとんだ災難を引き起こしていた。

 ゴミ箱をほじくり返してちゅんちゅんちゅんちゅん!
 単に餌を漁るだけなのだが、場所が大問題だ。
 缶詰、コーラ、お弁当の残り。
 流されぬようフタをしていたあらゆる残飯が海中にぶわっと広がり漂い始める。

 如何に技術に優れたアトランティスでも、
 このままでは街の浄化処理能力を超えてしまう!
 さあ猟兵達よ、求人誌片手にしたヒーローと力を合わせ、疾く元凶を倒すのだ!
ベルゼ・アール
(アドリブ・共闘歓迎)
カラスとかネコが原因のゴミの散乱被害ってよく聞くけど…今回スズメなの?
というかスナーク云々以前にヤバいわこれ!

(ヒーローチームと合流して)
秘密結社スナークのエージェント・アールよ
アトランティスの地理に詳しい貴方がたの力を借りたいの、荒らされやすいゴミの集積場とか教えてくれるかしら

戦闘では周囲の建築物なんかを利用して立体的に動きながら効率的に敵にグラップルを仕掛けるわ
ミュータントヒーロー達が何か武器を持ってたら都度借りるのもいいわね

で…求職中なんですって?
…後で住所教えて頂戴、うちの会社の中途採用要項送るわ
この世界のシリコンバレーにも現地法人があるから、そこで働けるかも…


天王寺・七海
えっと、すずめ??
あ、丸っこくてデカいから、オブリビオンじゃないかしらね??
今回は海中都市だし、こんな、鳥モドキには集団で狩りさせていただくのね。
海の中だし、群れを呼び出すと同時に、別の群れも呼び出して、晩餐会のように、スズメを口でぱっくんちょさせてもらうのね。

あ、ヒーローの皆さんには、ゴミが散らばるゴミ箱周辺を片してもらいたいのね。

シャチホコファンネルも使って、遠近全てでスズメを狩る大舞台整えたのね。
アドリブ歓迎



 美しい海底都市にもたらされた、騒乱の種。
 転移を経て降り立ったベルゼ・アール(怪盗"R"・f32590)は周囲をくまなく見回し、アトランティスの景観に僅かな間見とれていた。
「ゴミがどうとか、一見無縁そうな都市よね。カラスとかネコが原因のゴミの散乱被害ってよく聞くけど……今回スズメなの?」
 各個体のもたらす被害ではカラスの方が上だろうが、時折飛び交うちゅんちゅんさまは明らかにカラスよりもデカい。
 彼らの異様な図体には天王寺・七海(大海の覇者・f26687)もつぶらな瞳をいっぱいに開き、すべすべとした顔に驚きの感情を露わにする。
「えっと、すずめ……っていうか。丸っこくてデカいから、そういうオブリビオンじゃないかしらね??」
 大体、ここは海中だ。2メートル超の体で尾びれを揺らす七海、シャチの体を得た彼女が泳ぐ姿はまだ分かる。
 だが海底都市に生身の鳥が素潜りしてくるとは考えづらく、件のすずめは習性の面でも鳥モドキと呼んで差し支えなかろう。
「まあ、そうよね……頭ではわかってるんだけど」
 見守るアールのはるか前方、群れなすちゅんちゅんさまが流星のようにゴミ捨て場へとダイブするのが見え。
「というかスナーク云々以前にヤバいわこれ!」
 反動でぽぽぽーいと放り出されるゴミを見て、アールたちは大慌てでそちらへと向かった。

 ゴミ荒らしの現場に駆け付けたアールと七海は、早速現地のヒーローチームとの邂逅を果たす。
「秘密結社スナークのエージェント・アールよ。この街の地理に詳しい貴方がたの力を借りたいの、お願いできるかしら」
「猟兵さんッスね、願ってもないッス! もちろん喜んで!」
 呼びかければ交戦中のヒーローの一人が気付き、マスク下の笑顔思わせる気のいい返事を返した。
「まずはこの現場を片付けて次の場所へ向かうわ! 荒らされやすいゴミの集積場とか教えてくれるかしら」
 アールの言葉に頷いたミュータントヒーローの彼は、変異して細く尖った指先で遠くを指差す。
「この先にもいくつかテナントのゴミ捨て場があるッス。普通は散らばらないようまとめてるッスけど、襲撃されたらどうなるか分からないッス!」
 狙われそうな箇所の検討はついた。教わった場所へ向かう為にも、まずは眼前の敵を何とかせねばならない。
「海の中だし、七海ちゃんたちの独壇場なのね」
 得意げに告げた七海は大きく口を開き、喉の奥から辺りの海域にクリック音を響かせる。
 深海の水をかき分け現れたのは、仲間の群れ。シャチの見分けに詳しい者がいれば、七海の属するのとは別の群れも混ざっていると気付けただろう。
 クリティアスに深海適応の力を宛がわれたとはいえ、ちゅんちゅんさまにとってはアウェイの戦場。水中では逃げ惑う動きも緩やかなまま、羽をばたつかせた先で体よく口へと運ばれる。
「全力で協力して狩り尽くすぜ!」
 七海自身も荒ぶる語気で敵を追い回し、片っ端から咥えて飲み込んでいく。シャチたちの繰り出す容赦のない猛攻、これは戦いでなく晩餐と呼ぶのが相応しかろう。
 群れるシャチの敢闘ぶりにアールは驚いた表情を見せるも、すぐにその眼は闘志に満ちたものとなる。
「皆やるじゃない、負けてられないわね!」
 壁を蹴り、浮力を活かしての三角跳び。途中シャチの背も借りながら、アールは上方へもがいて逃れるちゅんちゅんさまへと浮上しながら迫る。
「あなたの武器、借りるわよ!」
「あっ、それはオレっちの……!」
 拾って拝借したヒーローのスパナを手に最後の壁を蹴り、縦回転の勢いを乗せての脳天撃ち。綺麗に決まった一撃に、ちゅんちゅんさまは目から星を散らせて海底へと沈んでいく。
 眼下の戦場では七海の二対の砲が交互に火を噴き、有象無象となったちゅんちゅんさまを撃ち落としていく。
 残りは七海に任せて良さそうだと判断したアールは、一時ヒーローの元へと舞い降りる。 
「で……求職中なんですって? うちの会社の現地法人でよければアテはあるけど、どうする?」
「……姐さん、んな事言うと女神に見えるッス」
 アールの温情に咽び泣いた、この彼が。
 彼女の裏の顔を知った日にどんな顔をするか、今から見ものである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・日明
【アドリブ連携歓迎】
うーん世知辛い。
僕の所属している組織が割と人手不足ですので、求人のご案内自体はできますよ。試験はハードですけどそれでもよろしければ……もちろん、この案件を片付けてからですけど。

ゴミを海中に溢れさせるとは決して許し難い行為、例えすずめと言えども容赦するワケにはいきません。
ヒーローチームからの情報を元に(【情報収集】)【指定UC】で【索敵】、動向を探りつつ先回りできるなら先回り。
特に衛生的にヤバそうなゴミは回収し、比較的被害が浅そうなのを【おびき寄せ】の材料としてその場に残し罠を仕掛けましょう(【罠使い】)。
罠にかかったら後は《蠱毒》で一発で仕留めましょう(【毒使い】)。


バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎!

HAHAHA! 清掃活動デスネー!
求職中のヒーローの皆様も、掃除スキルを上げてメイドになりマスカ?

ふむ……。
このスズメたち、倒すのはできそうデスガ、数が多いのと範囲が広いのが厄介デース!
ならば誘き寄せて一網打尽にしマショー!
水中で匂いが届くのか存じマセンガ、ちゅんちゅんさまも飛び回ってるし大丈夫デショー!
彼らの好みそうな料理を作って、ヒーローたちに誘き寄せポジションを教えてもらってスタンバーイ!

ハーイ、ちゅんちゅんさま! 美味しいデスヨー!
と、まんまと群がってきて奪い合っているところを、皆で袋叩きと行きマショー!
戦えるメイドであるワタシも、武装を展開して攻撃しマース!



 社会の荒波に行く手を阻まれるヒーローの現実。彼らの実情を前に、終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)は苦い思いを口にせずにはいられない。
「うーん、世知辛い」
 ヒーローも人間であり、マスクを外せば社会人。専業の者ばかりではないと聞けば事情は分かるが、如何せん夢の砕かれる心地が耐え難い。
 出逢ったミュータントヒーローの女性は猟兵と知れば、即座に口元を綻ばせた。
「僕の所属している組織が割と人手不足ですので、求人のご案内自体はできますよ。試験はハードですけどそれでもよろしければ……」
「ほ、ほんとですかっ? ぜひお願いしたいです」
 ヒーローを務めるだけあってチャレンジ精神は持ち合わせているのか、彼女は日明の提案に早速乗り気だ。
「もちろん、この案件を片付けてからですけど」
 眼前でゴミ袋に高速ダイブを決める一羽のちゅんちゅんさま。破けた袋の中からポップコーンがぶわっと飛散した。
「HAHAHA! 休む間もなく清掃活動デスネー!」
 ゴミと共にちゅんちゅんさまを瞬時に片し、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は余裕のある高笑いを響かせる。流石は天下の武闘派メイド、海中であっても洗練された動きに翳りはなく、モップにゴミを絡めとって回収していく。
「求職中のヒーローの皆様も、掃除スキルを上げてメイドになりマスカ?」
 バルタンが呼びかければ、メイド服姿かわいいですよね、と女性は好意的な反応をよせた。
「しかし、ゴミを海中に溢れさせるとは許し難い行為。先回りして対処したいところですが」
「倒すのはできそうデスガ、数が多いのと捜索範囲の広さが厄介デース」
 ただでさえ見知らぬ街。目印になる建物や商業施設ならいざ知らず、ゴミ捨て場など街に暮らす人でも意識して見なければ把握すらしまい。
「この辺りのゴミ捨て場を一通り教えてもらえますか」
「はい、もちろん」
 日明の要請を女性は快く承諾し、効率よく回れるよう回収業者が辿るルートを教えてくれた。
「仕事してた時から読んでたコミックの続きが気になって、雑誌が出てたら回収される前に集めてたんです~」
「なるほど……」
 こみ上げる感想を一旦喉の奥にしまい、日明はサイバースコープのゴーグルを装着する。
「では、始めましょう。真実追躡――些細であれ、災いの芽は摘むべきです」
 得られた情報を元に索敵用の小型ドローンを無数に街へと放ち、送られる映像に意識を集中する。衛生的によろしくない生ゴミは複数体のドローンで前もって回収し、逆にばらまかれても被害の浅いものは『餌』としてキープしておく。
 周辺一区画をドローンが飛び交った後には、漁れるゴミの数はまばらになっていた。残されたゴミへとちゅんちゅんさまが群がるが――当然、罠だ。
「ハーイ、ちゅんちゅんさま! こちらの朝餉をお納めくだサーイ!」
 群れの鳴き声を手がかりに駆けつけたバルタンが、特製のアドボを振る舞った。勢いよく投げた香ばしい肉、水中であっても届く香りは敵の気を確かに惹いた。
「ちゅんちゅんちゅん! 美味しそうな肉でちゅん!」
 まんまと引き寄せられたちゅんちゅんさまは料理に夢中なあまり同士討ちを始める始末。なお、実は鶏肉料理なので共食いに近いのだが深くは触れないでおこう。
「HAHA、まんまと群がってきまシタネ! まんまダケニ!」
 ガシャリ、と異音に振り向いた時にはもう遅い。バルタンの体内から覗くグレネードランチャーの照準は既に、ちゅんちゅんさまを捕捉していた。
「それでは、お掃除と行きマース!」
「ぢゅん!?」
 続け様に放たれるグレネード弾、硝煙の合間に覗く気持ちの良いバルタンの笑顔。それら全てを見届ける事なく、オブリビオンのすずめたちは次々と昇天していく。
 逃げ惑うちゅんちゅんさまが最後に行きつく先――しかしそこは銃弾飛び交う戦場よりも苛烈極まる地獄だった。
「さて、集まりましたね」
 微塵も表情を変えず淡々と告げる日明。翳した指先から超常の電脳魔術が迸り、周囲を洗脳する思念波を波打たせていく。
 其れは生命を侵食する蟲毒、生きようと藻掻く程に強く蝕み侵すモノ。生存本能を根本からへし折る負の思念波に、野生生物を元としたちゅんちゅんさまが敵う筈もなく。
「ちゅ……」
 尻すぼみな声と共に落鳥し、消えゆく彼らの亡骸を道路脇に寝かせ。敵である内は決して向けなかった情けを、日明は祈りの形にして手向けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

パルピ・ペルポル
いやね。わたしやってきてから気がついたのよ。
せっかくよいもふもふがいるのに、海中じゃもふもふできないって。
…これはさっさとすませてさっさと帰る案件ね。

ミュータントヒーロー達に出てきそうな場所まで案内してもらいましょ。
ついでにその近くで網を張れそうな場所も聞いておいて。
雨紡ぎの風糸で網をしかけて待ち伏せするわ。
この徳用折り紙を適当なサイズに切って折ったピラニア達を放ってちゅんちゅんさまを追い込んで火事場のなんとやらでぎゅっとまとめて一網打尽にするわ。
もふれない悲しみをたっぷりこめました。

あ、ピラニア達は散らばったゴミ食べといてね。



 次第に数を減らすちゅんちゅんさま。或いは飛び交う彼らをもふろうとしたのか、フェアリーの淑女が一人、怪しげな手つきのまま固まっていた。
 もふりすとを自称するパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)。これまで犬に猫にごいのひさま、数々のもふもふアニマルの毛並みをもふってきた歴戦の猛者だが、今日は何故か浮かない顔だ。
「いやね、わたしやってきてから気がついたのよ」
 はあ、と短く溜息をするその理由は。
「せっかくよいもふもふがいるのに、海中じゃもふもふできないって」
 なるほど、案ずる事はない致命傷だ。如何に海中適応したって水の中、毛はぺっちゃりしてて手触り楽しもうって気になれやしない。
 ちなみにご存知の方もいそうだが、毛を取っ払った鳥って相当見た目変わってアレだったりする。ので、濡れた彼らの姿をよくよく見ると……。
「……これはさっさとすませてさっさと帰る案件ね」
 ちっ、とサブリミナル舌打ちが聞こえた気もするが気のせいだろうか。気のせいですよね、きっと。

 早速現地合流したヒーローをタクシー代わりに急行したパルピは、メインの商店が並ぶ通りの外れまで来た。すぐ傍には群生珊瑚の谷にかかる大橋がかかり、観光地である事を思わせる。
「肩、まあまあいい座り心地だったわ。ところでこの辺で網を張れそうな場所あったら教えてくれる?」
「あいさ、そこの遊歩道に降りるトコなら支柱やら手すりやらで架けるトコ多いんじゃないかね?」
 肉感の程よい中年ヒーローが指差す先には、綺麗な遊歩道。景観のいい場所でもゴミは出るもの、荒らされてはたまったものではない。
 頷き、パルピは鞄から不可視の糸をそっと垂らす。蜘蛛糸より細く、鉄糸並の強度を誇る雨紡ぎの風糸。糸端を器用に手すりに引っかけ、小さい体を活かして飛び回りながら網を縫う。
「はーい、後はこれをこうして」
 なぜか一片15メートルもある耐水性の折り紙でピラニアを折れば、命を得た肉食魚の群れは瞬く間にちゅんちゅんさまを追い回し始めた。
「ぢゅん!?」
「はがっ!!」
 はぐれピラニアが一匹ヒーローの尻に食いついたが必要な犠牲なのでさておき、追い込み漁はスピードが大事。よって以下ダイジェストでお送りしよう。
 ピラニアから逃れんとして放置罠に次々とかかるちゅんちゅんさまを火事場のなんとやらでむぎゅっとまとめて圧縮圧壊小さく折りたたんで網の中に包み一件落着である!!
 なんという冷徹、流れ作業。オブリビオン相手とはいえ情けは一つもないのか!
「ふう……もふれない悲しみをたっぷりこめたわ」
 あ、悲しさ故の投げやりモードでしたか。それは失礼。
 残ったピラニア達が散らばったゴミ(とヒーローの尻ポケット)を食べきるのを見届け、一仕事終えたパルピは中年ヒーローと共に町の中央、時計塔を眺める。
 あの高所でならクリティアスとの対決も叶おう、決戦の時は近い。
 さあ行くのだパルピ&ヒーロー、目指すべき未来はすぐそこだ!

 なお後ろでサイレンが鳴り響いてるのでそこなヒーローは職質を受けてからな!!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『クリティアス』

POW   :    深海激怒ティマイオス
【海を汚染した地上文明に対する怒り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    海洋憤懣ヘルモクラテス
自身の【頑健な甲羅】から【大津波と共に汚染に蝕まれた海洋生物たち】を放出し、戦場内全ての【敵を海に沈め、海洋生物以外の水中活動能力】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
WIZ   :    侵略蔵書「ガベッジ・オーシャン」
【猛毒と化した汚染水を垂れ流す姿】に変身する。変身の度に自身の【体から溢れる汚染廃棄物】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。

イラスト:須田デジタル

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はマローネ・ティーフゼーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 海洋を汚染し突き進む、濁った水塊。
 その中核にあるのは海神に連なるものだ。
 かつて地上文明と戦い敗北した海亀型のオブリビオン、クリティアス。
 彼は怒りと共に再来し、今ひとたび深海都市に嘗ての惨劇を呼び覚ます。
「……思い出せ」
 老いた喉で声を震わせ、海中の高みより市民に呼びかける。
「地上文明への怒りを思い出せ。さもなくば」
 老亀は思索する。戦争の災禍と彼奴等の惨たらしさを忘れつつあるこの文明に、
 今こそ知らしめるのが己が役目、と。そう――。

「……なんじゃったかいの」
 はい。えーと?
「さっきからちゅんちゅんちゅんちゅん、耳元で煩うてかなわんけぇ」
 うん。
「ところで婆さんや、飯はまだかぇ」
 つまり、すずめを相手する気疲れで。

 ……ボケた。
終夜・日明
【アドリブ連携歓迎】
うーん、オブリビオンもまさか痴呆するとは恐るべし騒音パワー……
でもこの手のタイプってボケてても本能でやばい動きするんですよね。油断はできません。
とはいえあの海洋生物の波は生身で戦うには危険すぎますね。『オルトロス』に搭乗して戦闘しましょう。

【指定UC】を武装に使用。
汚染されていれど生物は生物、生存本能を揺さぶり【恐怖を与える】ことができるハズ。
怯んだら『アストラル・ビットVer.C』を使い【制圧射撃】で【なぎ払い】ましょう。
道が開いた後は【レーザー射撃】でクリティアスの口目掛けて【砲撃】を試みます。
おじいちゃん、ご飯ができましたよ。
……毒入りですけど(ボソッ)



 厳かな宣告の後に空しく響く、間の抜けた声。
 猟書家がこうなっているとは予想外だったらしく、終夜・日明はゴーグル型のデバイス越しに幾度も目を瞬かせた。
「うーん、オブリビオンもまさか呆けてしまうとは恐るべし騒音パワー……」
 先のちゅんちゅんさまは確かに喧ましかった、と在りし日の彼らを思い返す。
「でもこの手のタイプってボケてても本能でやばい動きするんですよね」
 日明の中では恐らく『徘徊するほど元気なご年配の方』という扱いなのだろう。襲来した目的こそ忘れているが、言動と違ってクリティアスの動作には緩慢さが見られない。
「婆さんや……飯はまだかいのぅ……?」
 泳ぎ切るだけで乱水流を巻き起こす老亀の巨体。深海適応光線がまだ効いているといえ、傍を通るだけで呼吸が水圧に塞がれそうに感じた。
「……海洋生物の起こす波は大きいでしょうし、油断はできませんね」
 そう言うと日明は情報端末を操作し、愛機『オルトロス』を招聘する。
『S・S・S・Standby Orthrus! Get ready,set,now...Go!』
 謎の電子音声と共に飛来したキャバリアに跨り、日明は一瞬そんな機能つけたっけと疑問符を浮かべる。だが今は戦いに専念すべきと割り切り、黒騎士思わせる機体付属のガンランスを敵に差し向けた。
「逃れようとしてもムダですよ。≪蠱毒≫は何者も決して逃がさない」
 生命侵食の思念波を何倍にも増幅し、自身の生命すら溶かしながら敵へと放つ。こちらへ向かっていた海洋生物の波は早くも負の思念に囚われ、細胞が次々と自死を始めて瞬く間に深海圧に押し負け圧壊する。
 適応光線の恩恵を無効化する厄介な力も、届かねば対岸の荒波に過ぎぬ。続けて星形のビットを召喚し、敵の群れへと鋭く放って制圧射撃を見舞う。
「おお、おぉ……! 婆さんや、熱烈キッスがちと痛いでなぁ」
「生前はおアツかったようで」
 巨亀が怯んだ隙に武装を展開、海中にガンランスとビームライフル、二機の砲塔が姿を見せる。
 片やガンランスが牽制砲を見舞う傍ら、対となるビームライフルにレーザーの光が収束する。
「おじいちゃん、ご飯ができましたよ。……毒入りですけど」
 ぼそりと口の中で告げた言葉は日明のみぞ知る。強力な蠱毒の魔力が集い、クリティアスの口腔めがけて鋭く射出された。

大成功 🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
「色々な世界でたくさんの猟書家と戦ってきましたけど、今回のような相手は初めてですね。」(攻撃する時は、ミュータントヒーローさん達を巻き込まないように気を付けます。)
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【属性攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【新・ウィザード・ミサイル】を【範囲攻撃】にして、『クリティアス』と汚染廃棄物を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【毒耐性】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。


ベルゼ・アール
猟書家がボケてしまわれたァァァァァ!?
地上文明への怒りを思い出す前に目的忘れて所在なげに徘徊してらっしゃいますがこのおじいちゃん!?
お、おじいちゃん、大丈夫?
…違っ、私は孫じゃない!

(一瞬でもいいから思い出させるのに2時間経過)
ぜーっ、ぜーっ、OK? 大丈夫?
じゃあ、改めて…

ユーベルコードで撥水フィールド発生装置を作成、自分と共闘している猟兵、ヒーローをフィールドの範囲内に含めて発動
この空間の中は「水がない状態」、つまり水中活動能力が無力化されても関係ないわ
VALAFARで甲羅の薄い所目掛けて拳銃を撃つわよ!
汚染は確かにいけないけど、貴方も人のことがいえn…またボケたーっ!?



 思い出せと告げた側が最たる目的を忘れる醜態に、ベルゼ・アールは悲鳴を上げずにはいられなかった。
「猟書家がボケてしまわれたァァァァァ!?」
 最初の威厳はどこへやら。あまりの展開に、さしものアールも狼狽を隠せない。
「地上文明への怒りを思い出す前に目的忘れて所在なげに徘徊してらっしゃいますがこのおじいちゃん!?」
「色々な世界でたくさんの猟書家と戦ってきましたけど、今回のような相手は初めてですね」
 増援に駆けつけたばかりの火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)はクリティアスを相手取るのが初めてのようで、彼の生態に興味深げに視線を注ぐ。
 一応、彼の名誉のためにも言っておかねばなるまい――今回のこれ、かなりイレギュラーですからね??
「婆さんや……朝飯はまだかいの。さっきからすずめがちゅんちゅん、朝を告げとるでなぁ」
 耳元にまだ鳴き声が残響しているのか、老亀はまるでちゅんちゅんさまが近くに居るように胡乱な視線をあちこちへと向ける。
「お、おじいちゃん、大丈夫? 余程さっきのがトラウマだったのかしら?」
 ぼーっと虚空を見つめる目線の先を遮り、アールは手を振り翳してみる。
「……先月嫁いだお妙さんじゃったかいの」
「違っ、私はお嫁さんでも孫でもないから!」
 妙な勘違いをされかけたアールはあまりのやり辛さに、ひとつ明へと提案する。
「このままだと戦い辛いから、お時間貰えるかしら? 何とかして思い出させてみるわ!」
「わかりました。戦いに専念できないと言うなら、それは問題ですね」
 斯くして二人と居合わせたヒーローは、時間稼ぎに奔走する事となった。

 そして十分あまりの格闘の後。
「……地上文明にされた事を忘れ生きる者共よ、最早お前達は海の民に非ず」
「ぜーっ、ぜーっ」
 ようやく元の厳かな態度を取り戻したクリティアスへ、攻撃を躱し続けて息も切れ切れながらにアールは呼びかける。
「OK? 今度こそ大丈夫? じゃあ、改めて……行くわよ!」
「来い、小童。纏めて飲み込んでくれよう」
 言葉と同時、甲羅の中から湧き出す濁った巨大な水塊。その正体は汚染に蝕まれ死した海洋生物の亡骸だ。アシカ、海鳥、生ける屍と化した彼らは怨嗟を振り撒きながら、あらゆる加護を打ち砕く憤懣の呪いとなって襲来する。
 海洋憤懣、ヘルモクラテス。あれに触れれば深海適応光線の恩恵など瞬く間に消え、瞬時に深海圧に押し潰されるだろう。
「こういう時こそ、秘密道具の出番ね!」
 アールの呼び出した箱型のスパイガジェットは膨大なエネルギーを内に秘めバチバチと今にも爆ぜそうだ。使い切り型のようだが、必ずやこの場を切り抜ける力を秘めていよう。
 叩いた瞬間装置は爆ぜ、二人とヒーロー達の周囲に撥水フィールドを展開する。
「こ、これは……本物の空気! 息ができるッス」
 付き従っていたヒーローが驚きの声をあげる。
「その通りよ! この空間の中は『水がない状態』、水中活動能力が無力化されても関係ないわ」
 魔力を付与された撥水フィールドは防護膜の役割も兼ねた。海洋生物の群れが過ぎるのを感じながら、明は稼いでもらった時間に礼を告げる。
「ありがとうございます、おかげで落ち着いて唱えられました」
 ウィザードの持てる魔力をありったけ注ぎ、明は魔力の矢を紡ぎ出す。
 炎、水、土。木属性の矢を除くあらゆる属性の魔法の矢が、明の握る七色の杖の先に束ねられる。
「魔術とは応用してこそです。全属性の矢、見せてあげましょう……!」
 新・ウィザード・ミサイル、ウィザードの基本魔術を明流にアレンジした術は、魔力の矢に複雑な軌道を描いて乱れ飛ぶ事をも可能にした。
 フェイントを交え、立て続けに放たれる矢は次々と飛来し、クリティアスの纏う汚染水の護りを剥ぎとっていく。
「許すものか……毒を垂れ流し同胞を殺めし憎き彼奴等を、一人残らず駆逐する迄は……!」
 再び侵略蔵書の力が強まり、クリティアスの目から不法投棄された化学物質が涙のように垂れ流された。汚染水の奔流がこちらを襲うも、明の防護魔術がそれを阻み、味方を厚く包み込む。
「汚染は確かにいけないけど……!」
 アールはスポーツサングラス型のデバイスをかけ下ろし、敵の情報を分析する。盗賊に知恵授ける悪魔を名に冠するデバイスは、名に違わず甲羅の弱点を盗み見、アールへと示す。
 続け様に放たれる二丁拳銃の銃撃。大口径より叩き込まれる特大の鉛弾に、クリティアスの喉から怒りとも悲鳴ともつかぬ声が深海へ轟く。
「貴方も人のこといえな……」
「婆さんや、按摩がちと強すぎるでなぁ」
「またボケたーーっ!?」
 アールの努力も空しくまたもや記憶の混濁。打ち所が、ちょっとどころでなく、悪かったようである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎

ハーイ、介護に来マシター!
老人ホーム(骸の海)に還る時間デスヨー。
ヒーローのエブリワン、ご協力お願いしマース!

介護の基本はコミュニケーション!
しっかり話しかけて、話を聞いて、否定せずに受け入れる!
ゆっくり時間をかけて、ご老人の不安を解消しながら誘導するのデース!
……と、インストールしたデータにありマシタ。

さて、汚染が拡大しないように都市から距離を取ったら、指圧してお眠りいただきマショー!
お爺さん、少し強くしマスヨー。
ゆっくり急所を探って、と。……おや、正気に戻られマシタ?
デスガ、ワンテンポ手遅れデース!
「六式武装展開、煙の番!」
パイルバンカーの一撃を強く打ち込みマース!


パルピ・ペルポル
えぇ…そこでボケるの…?
これはもふれないからどーでもいいけど。倒すだけだし。

まぁヒーローに適当におじいちゃんの気を惹いてもらってる間にこっそり接近して。
汚染水はオーラ防御で防ぎつつさっきのピラニアずの残りに飲ませて回避しましょ。
甲羅から出てる部分に雨紡ぎの風糸を巻きつけて締め上げ、隙間には穢れを知らぬ薔薇の蕾を投げ込んでおきましょ。
ともあれ攻撃さえ当たればこっちのものよ。さっきの非じゃないうるささだと思うけどまぁ付き合ってあげて。刺激与えたらちょっとはまともに戻るかしらね。
その間に雨紡ぎの風糸でさらにがんじがらめにするのも忘れないわ。

骸の海に還っておばあさんと仲良くしてらっしゃいな。



 運命とは皮肉なもの。気を使ってまともな方へ戻そうとすればするほどこんがらがるとは、これ如何に。
「えぇ……そこでまたボケるの……?」
 駆け付ける最中見てしまったやりとりに、パルピ・ペルポルはげんなりと嫌気がさした表情を浮かべる。だがそれも、一瞬の事。
「ま、これはもふれないからどーでもいいけど」
 と即座に折り紙ピラニアズを呼び出す姿勢には、付け入る隙などありはしない。
「ハーイ、介護しに来マシター!」
 一方こちらはノリノリメイドのバルタン・ノーヴェ。自慢の給仕服の紐を結び直してクリティアスと目の高さを合わせ、大きく手を振る。
「老人ホームへ還る時間デスヨー。ヒーローのエブリワンも、ご協力お願いしマース!」
 後方で控えていた女性ヒーローが「は、はいっ!」と横に並べば、お尻にワッペン、腕に手錠の残骸を巻き付けた中年ヒーローも遅れをとるまいとパルピのバックアップに入る。
「はぁ……飯も碌に食うとらんで、気が滅入るのぉ……」
 恐らく食べた事を忘れているのだろう、老亀が水中で溜息をつけば、汚染水が下降水流となって押し寄せる。ちょっと待て、この水まさかのモーニングブレスか。
「ヒーローの皆さんよろしく、適当に気を惹いといてー」
 投げやりにピラニアを向かわせたパルピ、何をするかと思えばピラニアにがぶがぶと汚染水を吸わせているではないか。なるほど、折り紙のピラニアなら汚染水も……あ、涙目。平気じゃなさそう。
 兎も角、矛先がヒーロー達に向かうのを確かめたパルピは小さな体を活かして気取られぬよう接敵する。甲羅からはみ出たヒレの付け根に雨紡ぎの風糸をきりりと巻き付けて縛り上げ、開いた傷口には薔薇を一本ぶすりと突き刺す。
「はいなっと。これで多少は効くでしょ」
 穢れを知らぬ白薔薇は、傷から血液を吸い上げて瞬く間に紅に染まる。
 だが如何せん、薔薇は敵の巨体に対して小さい。敵の図体の規模感を前に、パルピは「むー」と次に打つ手を考え始めた。

 一方のバルタンはミュータントヒーローを引き連れ、クリティアスのつぶらな瞳の前までを一気に泳ぎ切る。
「介護の基本はコミュニケイション! しっかり話しかけて話を聞いて、否定せずに受け入れる!」
 迷わず行動する姿勢もさすがは経験豊富なメイドならでは、介護を任された経験までおありでしたか!
「ご年配の方の不安を解消しながら、焦らず誘導するのデース!」
「おお……!」
「……と、インストールしたデータにありマシタ」
 ああっと実践はまだだった。がくっと来てる女性にも構わず、バルタンはクリティアスの耳元へと泳いで近寄る。
「もしもーし、お爺サン! ご飯の支度ができマシター!」
「おお……やっと飯か……どれ、どちらにあるんじゃ」
「アチラの海底岩盤にテーブルがございマスユエ、ついてきてくだサーイ!」
 さりげなく誘導して都市から距離を取らせ、何もなくなった辺りで声をかける。
「さあ、まずは食前のマッサージと行きまショー!」
「待て、飯はいったい……」
「食欲増進のマッサージデース!」
 会話の流れをうやむやにしつつ、バルタンは密やかに急所を探る……とここで、クリティアスの側に動きがあった。
「があっ……何じゃこれは、煩そうて敵わんぞい……!」
 一体何事かと異変の出所を辿れば、巨体に比べはるかに小さな亀の耳元にパルピの施した印章が輝いていた。
『あーっはっは! それでアタシ達はこう言ってやったのさ、この薄らでっかちのトーヘンボクってね! そいでまた旦那と来たら……』
 耳障りなお喋りを延々と聞かせるのはおしゃべり妖精。パルピすらも敬遠する妖精のノンストップ・トークは、いかに巨体の亀であろうと確実に効く有効打だ。
「攻撃さえ当たればこっちのものよ。さっきの非じゃないうるささだと思うけど、まぁ付き合ってあげて?」
 案外元に戻るかもだし、と体よく厄介払いしたパルピは距離を取ってほくそ笑む。
「おのれ……! 老いぼれを虐待した罪で訴えてやるわい……!」
 そこの部分の理性は働くのか。遂に怒りを露わにしたクリティアスは、魂に刻まれた地上文明への激情に任せ、身体サイズを一気に肥大させる。
「おや、正気に戻られマシタ? デスガ、ワンテンポ手遅れデース!」
「がっ……!?」
 襲おうとした相手が甲羅の上に立っていると気付き、亀の老獪な眼が真上を見る。海水にエプロンをたなびかせるメイドは、既に急所を探り当て、武装の発現までを終えていた。
「六式武装、展開……煙の番!」
 激しい水煙と共に突き立つ、杭打機のインパクト。至近距離から撃ち出された杭は城門に打ちつける槌の如く巨体を揺らし、頭蓋を深く貫いていた。

●立つ鳥、跡を
 物言わぬ身となった亀の巨体が都市部を離れ、海流に押し流されていく。
 汚染された水塊も彼に起因するものだったのだろう。
 都市を襲った騒動は去り、濁流の消えた後には美しき元の都市群が姿を現した。

 海中深く根差したアトランティスの美貌に、戦いを終えたキミ達は息をのむ。
 そうして暫くの間、ヒーロー達の歓待を受け、
 彼らの誇りとする街を引きずり回されるように案内された事だろう。

 未だ無職のヒーロー達は結局、自力で職を探すのだと笑顔で言った。
 決して温情を無下にするつもりはなく、
 寧ろ遠路遥々駆けつけて戦うキミ達に感化されたのだ。

「ま、仕事がナイなら作りゃいいッス!」
 と、或る男は笑い。
「私も見習って、就職活動の場を広げてみたいと思うんです」
 と、或る女性は夢を語る。

 彼らがどんな所で新たな人生に漕ぎ出し、活躍するのか、今はまだ分からない。
 だが、この美しき都市の中でなら生きていける、
 そんな予感がキミ達の胸にはあった。

 彼らの笑顔に見送られ、海底都市を後にする。
 グリモアの転送光が再びキミ達を出迎える、その時に。

 ――しょっぴかれた中年ヒーローだけが未練がましく泳いでキミ達を追いかけ、
 結局がぼごぼと溺れながらすべての印象を破壊していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月09日


挿絵イラスト