センター争奪! 魔法少女の宴
●どうぞどうぞ……って、え、言わないの?
「いち、にーのー、さんっ!」
可愛い掛け声と共に背後からボクッと撲殺しにやってきたのは魔法少女セラフィムハート。目の前の番人は何が何だか理解する間もなく天に召されてしまう。
「はい、かんりょー! じゃあ、強くなりたい人、てー上げてっ!」
くるりと向き直ったセラフィムハートが黒い人山に向かって叫ぶと、我先にと黒スーツの手がうじゃうじゃ上がる。
「俺が先だ!」
「いやオレが!」
「ここはおれだろっ!?」
譲り合いの精神など微塵もない。不死の怪物の力を手にするためになりふり構っていられない戦闘員達がセラフィムハートに詰め寄る光景は――物議を招きそうでもあった。
「みんなの分はちゃーんとあるから大丈夫! だーかーらー、お利口なみんなは、せーいれーつっ!」
「「「うおおぉぉぉ!!!」」」
多分、戦闘員達は大の大人である。それが少女一人にあっさりと動かされようとは。
しかしそれが、戦闘員の性……なのかもしれない。
●ヒーローズアース・14thラウンド
「なんだか『センターオブジアース』に良くない動きを感じます! 悪夢にもばっちり出てきていましたから!」
ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)はヒーローズアースの異変を告げに今日もグリモアベースへ。夏の賑わいもある中で、ロザリアは火急の事件を声高に叫ぶ。
「何のことかと言いますと、センターオブジアースには神々の時代に討伐した不死の怪物達が居て、それを見張っている神々がいるわけですね! しかしですよ! 幹部猟書家『アズマ』の意志を継ぐオブリビオンが動き出し、番人のひとりが殺害されてしまったんです!」
事件の一報、根幹はこれまでに起こっている事件と然して変わらないようだが。
「その主犯は『魔法少女』セラフィムハートという……恐ろしいことに、また魔法少女です! 見てしまったので私自身が現場に向かえないのが非常に悔やまれますが、これはきっと試練なのでしょう! ですから皆さん! どうかセラフィムハートを討伐してきてください!」
熱の籠った演説であった。その熱意に打たれた猟兵は……果てさて、いたかどうか。
さておき、話はもう少し続く。
「ただですね、セラフィムハートは『戦闘員』に『象の鼻』のようなビジュアルの怪物パーツを融合させて超強化し、センターオブジアースの神々を襲わせています! まずはこちらを止めないと神々の皆さんが危険ですので、戦闘員の掃討からお願いします! 超強化については、その弱点を知っている神々がおられるようですので、それを聞いて掃討に当たるのがよいかと思います! セラフィムハートの野望を打ち砕くために、皆さん、張り切っていきましょう!」
沙雪海都
沙雪海都(さゆきかいと)です。
センターオブジアースで魔法少女サミット開幕しました。
●フラグメント詳細
第1章:集団戦『戦闘員』
片腕に象の鼻を融合して、鞭のように使ってくることがあるようです。
弱点は「跳び蹴り」と「爆発」です。この辺の要素がある攻撃だとよく通ります。
この話は現場の神々から聞くことができるのでモーマンタイ。
第2章:ボス戦『『魔法少女』セラフィムハート』
OPでは殴ってますが、ユーベルコード的には割と純粋な魔法系です。
でもステッキ持ってたらさぁ……殴らせたくなるじゃんよ。
魔法少女必須アイテムですかね。
第1章 集団戦
『戦闘員』
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POW : 戦闘員アタック!
【全速力の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他の戦闘員】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : 逃がさねえ!
【沢山の戦闘員への呼び掛け】から【沢山の戦闘員と共に敵に向かって体当たり】を放ち、【たくさんの戦闘員による拘束】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 仲間を呼ぶ
【甲高い声で叫ぶと近くのもう一人の戦闘員】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
イラスト:柴一子
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
叢雲・凪
POW
「イヤッー‐‐!!」(接敵と同時に決断的アンブッシュ飛び蹴り!!)
そのまま軽やかに高速回転し崖上に腕組み着地! そのままオジギ!(礼儀作法)
「ドーモ 戦闘員の皆さん ジンライ・フォックスです。ボクの故郷であるヒーローズアースで暴れる事が【何を意味するか】今から教えてあげよう」(殺意に満ちた放電眼光! コワイ!)
「イヤっーーー!!」(ダッシュ+残像+リミッター解除を用いたトップスピードの踏み込み!)
高速移動で戦闘員を翻弄しつつ隙を見つけたら
「アノヨに送ってやる。奥義! キツネ・トビゲリ!! イヤァァッ‐‐‐!」(属性攻撃+キツネトビゲリ! 機関銃めいたガトリング蹴りである!)
●戦闘員の流儀
「うぉぉぉぉおお俺達はああぁぁぁ!! 百人力ぃぃぃぃ!!」
片腕がみっちりとした象の鼻となり、体の底から湧き上がるパワーを感じた戦闘員達がセンターオブジアースを縦横無尽に進軍する。一つ腕を振り下ろすだけで大地を割り開き、その先の宇宙まで拝めそうな暴力。増長しないわけがなかった。
神々も戦闘員集団を止めに掛かるが、10人掛かりでも1人止められるかどうか。力の差は歴然。神々の苦戦の様子が、火に油を注ぐように戦闘員達をなお勢いづかせている。
「オラオラどしたどしたぁ!! どっからでもかかってこいやぁ!!」
「イヤッーーー!!」
どっからでもと言ったな貴様。よかろうならば空からだ。いち早くセンターオブジアースへと転送されていた叢雲・凪(断罪の黒き雷【ジンライ・フォックス】・f27072)は暗雲漂う空の彼方より飛来して、右足を伸ばし左足を畳む様式美の飛び蹴りを敢行。レールの上を走るように滑らかな軌道に乗った蹴りが戦闘員の1人の頭上に落ちていく。
「来やがったぁぁ――ぶべろっ!?」
正面への飛び込みはリスクのある決断的一蹴。件の戦闘員も凪の到来には気づいていたが、象鼻の腕をしならせるより一瞬早く、凪の飛び蹴りが戦闘員の顔面へ着弾していた。
凪は戦闘員を踏み台に跳んだ。空より来たる蹴りはスナーク化した戦闘員への数少ない特攻打。黒覆面における露出部たる鼻を挫かれ、仰け反り飛んだ戦闘員は大の字になって地に落ちていった。
つまらぬ1人を蹴り倒した凪は錐揉み高速回転からの腕組み着地を崖上に決めると、すかさず頭を垂れて敵への礼儀を忘れない。
「ドーモ、戦闘員の皆さん。ジンライ・フォックスです。ボクの故郷であるヒーローズアースで暴れる事が『何を意味するか』今から教えてあげよう」
面の奥で雷光閃くが如く見開かれた双眸。外に現れてくるのはほんの一部でありながら、赤銅の刃となって戦闘員達の喉元を狙う。
「へ、へへ……いいぜいいぜ、オレたちにゃ、こいつがあるからなぁーーっ!!」
「イヤッーーー!!」
気圧されて虚勢を張る戦闘員達にはきついお灸が必要だ。凪は岩壁を直滑降で駆け下りる。足の回転量をぶち破るトップスピードの踏み込みは脅威。凪を追従する残像が恐怖を倍化させている。
だが、戦闘員達も震えあがってばかりではいられない。敵は凪一人――であるはずなのに、凪が描く円周には何人もの残像が駆けて圧力が増していた。そのまま陣を縮められて潰されるのはゴメンだ――戦闘員には戦闘員なりのプライドがあった。
「俺は……行くぜ!」
「どうぞどうぞ」
「おまっ――そこは援護だろよぉ!!」
ギャグか。ここぞという場面で飛び出した譲り合いの精神に鋭いツッコミが入り、ようやく戦闘員達は団結する。背中合わせの円を作って死角を消し、高速過ぎて擦り切れる像へ鼻腕を放つ。叩きつければ重い一撃。しかしどれもが土を喰らうばかりで、肝心の凪は喰らえない。
「ダメじゃねぇかやっぱり!」
勇無き者が音を上げて、戦闘員達の円陣が形を乱す。それを好機と見て凪は内側へ入り込んできた。
「アノヨに送ってやる。奥義! キツネ・トビゲリ!! イヤァァッーーー!」
前方へ跳んで一回転、からの強蹴を飛ばす凪。
「来れる奴だけついてこい! うぉぉらあぁぁ!!」
反逆の戦闘員は僅かながら抵抗の力を残した戦闘員達を引き連れ凪の飛び蹴りに立ち向かった。走り出せばたちまち全速力へ到達するのは弱さ故だが、それでも固まればいくらかマシにはなる。
全速力の応酬。額を自ら凪の蹴りへぶつけにいった戦闘員。仲間達の後押しを受けて倍増した頭突きと凪の蹴りがかち合う時。
戦闘員の喉元でスーツがべりと裂けていた。
喉が割り裂けそうな程に首が後方へ折り曲げられて、足元が軽くなる。凪の飛び蹴りをまともに食らった最前の戦闘員に明日はなく、背後を支える他の戦闘員達には未来を閉ざすマシンガンキックの嵐が吹いた。
軍配は凪に上がる。一蹴一殺、集った戦闘員達は立ちどころに蹴り飛ばされ、
「おがあさーーん!!」
憐れ、母を呼び宙に爆発四散。後には煙玉を散らしたような灰色の雲海が出来上がっていた。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
魔法少女かぁ昔研究所のテレビで見たことあるけど戦闘員は魔法少女の敵じゃないの?
まあそれはいいけど、戦闘員と言えばまとめてやられるザコのイメージだけど数はいるから囲まれないように気をつけないと
重力で動けなくしてあ、そういえばここを守ってる神様達が飛び蹴りが弱点だって言ってたねよし
無重力ジャンプからの超重力キック、ヒーローみたいにカッコよく決めるよ!
●10人寄っても雑魚は雑魚
「魔法少女かぁ……昔、研究所のテレビで見たことあるけど」
ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は過去の記憶を遡る。大体中学生くらいの女の子が街で暴れ回る怪物に立ち向かう姿が印象的だった。
その中には、目の前に集まる戦闘員よりはもう少しデフォルメされた雑魚キャラ達もわんさかいた気がするが。
「戦闘員は魔法少女の敵じゃないの?」
それらと魔法少女が手を組んでどうこう、という展開はなかったはずであった。しかし目の前の構図、どちらかと言えば魔法少女が敵に寝返った感もある。
何故そうなってしまったのかは謎だが、それを解決することは此度の戦いに於いては然して重要ではない。戦闘員を倒し、魔法少女も倒す。それが肝要だ。
「あいつはなんだか行けそうだなぁオイ!!」
ニクロムを前に戦闘員達は俄かに活気づく。何事も見た目で判断――雑魚敵の典型であった。
「誰か、来てくれー!!」
「っしゃ、行くぜー!!」
戦闘員の1人が甲高い声で叫ぶと、近くの戦闘員達が合流して2人になる。その戦闘員がまた呼べば3人、そして4人と集団はじわじわ膨れ上がっていた。
「やっぱり、たくさんいるね……囲まれないように気をつけないと」
戦闘員の声が飛べば、仲間はどこからでもやってくる。左右や背後から来る戦闘員達に挟まれないようニクロムは集う者達の動きを見極めながら戦場を駆け回っていた。
「こんだけいりゃ何とかなるだろ!」
10人ほど集まっただろうか。戦闘員達は象鼻の腕を武器にして、短い弧を描くように並び立ち腕を振り回してきた。
ニクロムの頭上に降ってくる腕、跳んで躱してみたが、その怪力はニクロムが立っていた地面に埋まるほど深い溝を作る。
「当たるとまずいね……重力をかけて、動けなくして……」
ニクロム得意の重力操作を掛ける。場は先の詰まった注射器の押し子を無理矢理押し付けたような圧迫感に包まれた。
「ふぉ……なんの、これしき……!」
戦闘員達が重力操作に抵抗する。スナーク化の影響もあって、補助系統の能力も些か通りにくくなっているらしい。摺り足ながら戦闘員達はニクロムに接近し、鼻腕の射程に捉えようとする。
「っらぁっ!!」
そしてついには反撃まで。やはり鼻腕は強力な武器で、真上から振り下ろしてくる。重力の支配から抜け切れてはいないためニクロムは容易く回避するが、重力での動き封じの効果があまり出ていないとなると、戦い方も考えなければならない。
「……そういえばここを守ってる神様達が、飛び蹴りが弱点だって言ってたね。よし」
ニクロムは現場へ到着するまでに何人かの神々とすれ違い、スナーク化した戦闘員達の弱点を聞いていた。
ニクロムは自分にかかっている重力を限りなく無に近づける。そして地を蹴る瞬間に重力を0に到達させ、ロケットの如くその身を跳ね上げた。
全く衰えない推進力でニクロムは戦闘員達の遥か頭上に到達する。そして今度は重力を目一杯かけ、急降下。目指すは戦闘員達の塊だ。
「こっちへ来るぜ! 一斉攻撃だ!」
戦闘員達も応戦し、鼻腕を束にして振るってきた。衝突する蹴りと鼻腕。どちらが勝るか――。
「……こういう時、ヒーローなら、カッコよく、決める!!」
猟兵とはヒーローにとってもヒーロー。しかしヒーローズアースのヒーローから学ぶ部分も多く、決して諦めない姿勢はその一つ。
ニクロムは蹴りに力を蓄える。戦闘員達が持つ鼻腕が捻じれ纏められて作られた極太の鞭を徐々に押し返し始めていた。
「くそぉぉぉ!! 飛び蹴りじゃなきゃ、こんなちっぽけな攻撃程度――もう駄目だっ!」
耐えるのにも個人差があった。体力の低い戦闘員が一足先に離脱し、極太の鞭に綻びができる。ニクロムはそこへ蹴りを捻じ込むことで強引に道を拓いていた。
「てめ――一人で逃げやが――うぎゃああぁ!!」
ついにニクロムの蹴りが鞭をばらばらに分解し突き破った。勢いのまま戦闘員の群れに飛び込み蹴りを浴びせる。一直線に纏まっていたところを串刺しにするように蹴り飛ばし、破壊力を全てぶつけたニクロムはその場に着地する。
逃げようとしていた戦闘員の背中にニクロムの蹴りで飛ばされた戦闘員達が飛んでいった。結局、逃れられぬ運命なのだ。
「ぐあっ!!」
戦闘員達は小山を作って動かなくなる。気絶したか、絶命したか。どちらにせよニクロムの超重力キックが華麗に決まり、戦闘員の一集団を殲滅することに成功したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アキラ・マサカズ
【二人のヒーロー】
焦るな黒田。ちっ、やばいな。
ここは俺がサポートしないと
暴れている黒田が囲まれないように、後方から射撃支援
遮蔽物から隠れながら[TAboru21premium]で戦闘員を銃撃
>> 他の戦闘員への呼び掛け前に、狙撃/拘束を行う敵を先に狙う
技能は武器を巧みに隠す技能[物を隠す]と、銃器の扱いを[戦闘知識]で補い、後方で温存する事による[継戦能力]を高めることを目指す
あとは兎に角走って[悪路走破]、ヤバイと思ったら[咄嗟の一撃]で反撃
おい、冷静になれ。あの戦闘員たちはお前の過去じゃない
ただの……魔法少女ファンの集まりだ
だから……落ち着け…らしくねぇぞ………黒田……
黒田・一成
【二人のヒーロー】
アドリブ歓迎します
子供たちに優しいヒーローになりたい青年ですが、少々今日は荒れています。
戦闘員にはトラウマがあるからです。
口調→本性を出す(俺、てめぇ、だ、だぜ、だな、だよな?)
俺はかつて悪の組織に改造された戦闘員だ。おまえ達と同じ。だがおまえ達と俺は違う!少女の姿ににやつき一体何をしているんだ。情けないな!セラフィムハートの野望を打ち砕くためイグニッションヒーローいくぞ!
Install NG! Danger! overheat!
「こいつらをブチのめすチカラを!」
Danger! Danger! Danger!
「くそッ!……いう事を聞きやがれ!」
[念動力]とUC全開で突撃します
●道半ばのヒーロー
黒の全身スーツが戦闘員のお決まりのコスチューム。それはどこの組織でも変わらないのだろう。戦場へと到着したアキラ・マサカズ(「リトルガイド」小さな案内人・f33392)と黒田・一成(『イグニッションヒーロー』・f33437)だが、一成は戦闘員の姿を見るや否や、
「あいつら……好き勝手やりやがって!」
「……!? おい、黒田! 焦るな!」
アキラが呼び止めるのも聞かず、頭に血を上らせて走り出していた。
声が届かないほどに冷静さを欠いている。どうすればいい――アキラは思考を急回転させていくが、頭が熱を帯びるのに気付いて急停止させた。
自分までも焦ってしまえば二人ともやられるのがオチ。一成を止めるより自分が冷静を保つことが重要と判断し、前線で暴れようとしている一成の援護に回ることを決める。岩陰に飛び込んでアサルトライフル「TAboru21premium」を構え、一成の状況を確認した。
「てめぇら! よく聞け!!」
一成は戦闘員達の前に躍り出て叫んでいた。神々へ象の鼻を振り回して襲い掛かっていた戦闘員達が一瞬止まり、一成へと顔を向ける。
「なんだなんだ、お前はよぉ!!」
生意気な奴が現れた――気を大きくしている戦闘員達は大手を振って蟹股で詰め寄ってくる。まるでヤンキーのカツアゲ風景のようだ。
だが一成は気弱な男子生徒ではない。怒り心頭のヒーロー――しかしその怒り、優しいヒーローを志す一成にしては荒々しく危険な香りがする。
「俺はかつて悪の組織に改造された戦闘員だ。おまえ達と同じ。だがおまえ達と俺は違う! 少女の姿ににやつき一体何をしているんだ。情けないな!」
「だからどうした! お前が元戦闘員だってんならわかりやがれ! たとえ幹部に成り上がれなくてもなぁ……力は欲しいんだよ! んで力くれるってんなら、ついていくだろうがよぉ!!」
戦闘員の悲痛な叫びが木霊する。下っ端故の宿命に、下っ端なりに抗おうとしているらしいのだが――神々に働いた暴虐の数々を許していいわけではない。一成が抱く当たり前の感情に、ヒーローの魂は着火するのか――。
「セラフィムハートの野望を打ち砕くため、イグニッションヒーローいくぞ!」
手を掛けた装置は潜在能力を強制開放するもの。その1段階、一成はスイッチを入れる――が。
“Install NG! Danger! Overheat!”
「こいつらをブチのめすチカラを!」
“Danger! Danger! Danger!”
「くそッ! ……いう事を聞きやがれ!」
一成は装置と格闘するが、いつものように動いてくれない。ただ警告を発するばかり。
(アレがまともに動いてないのか!?)
異変は見守っていたアキラも察するところとなる。すぐさま銃口を戦闘員に向け、狙撃準備を整えた。
寄ってたかられてはアキラとて支えきれない。戦闘員の中で最も重要な、他の戦闘員を集める役目を果たす者を見つけるべく目を配る。
誰だ、誰だ、誰だ――!?
「おい! こっち――」
「お前かっ!!」
戦闘員達の中に混じる呼び掛け役が言葉を発した瞬間を捉え、アキラがトリガーを引く。弾丸は黒い眉間に吸い込まれていき、銃弾の命中でがくんと戦闘員の頭が跳ね上がった。
「……いってー!!! なんだよおい!!!」
眉間に銃弾を撃ち込まれた戦闘員は、なんと額を擦って怒り出した。普通なら命を落としているが、スナーク化により超強化された肉体は銃弾さえも通さないと言うのか。
「誰か居やがるが……わかんねぇ! とりあえず目の前のコイツをやっちまえ!」
「ぅおおおおらああぁぁぁ!!!」
銃口を上手くカモフラージュしながら狙撃したことでアキラは気づかれずに済んだが、そのツケが一成へと回ってきてしまっていた。
戦闘員達が大挙して一成に迫る。だが当然背を見せて逃げることなどしない。
「だったら……雷神転身ッ! イグニッションインストール「エレキ」! 発動……! エレクトロンチェイサー!」
正面から跳ね返すのみ。雷を帯びた一成は自ら戦闘員達の間合いに踏み込むと、拳を目一杯握り込んで正拳を撃ち出した。目の前にいる相手だ。衝撃波でなくとも――拳が直接届く。
「うごっ――!?」
先頭を走っていた戦闘員へ一発、綺麗に入った。仰け反った戦闘員――だが、一歩、二歩後退っただけで踏み止まる。他の戦闘員達も一瞬固まったが、一成の攻撃が大したものではないと見るや、叫び声を上げて突進を勢いづけた。
「やっちまえぇぇぇぇ!!」
「ぅらあああぁぁぁぁ!!」
それは大きな黒山だ。戦闘員達の全質量が一成にぶち当たってきた。
「ぐぁっ!?」
トラックに激突されたような衝撃で一成の体が吹き飛ぶ。宙が一瞬反転した後、背中に落下の衝撃が走った。戦闘員達の攻撃はまだ終わらない。一成を追い討つべくさらに殺到する。
「止まれえぇぇっっ!!」
一成をこのまま袋叩きにされるわけにはいかなかった。もう限界だ。アキラは飛び出し銃撃を続けながら一成の元まで走っていく。
戦闘員は銃弾を受け「痛い」と叫んでいた。つまり全く効かないというわけではない。銃弾を一人に集中させ、倒せれば儲けもの――。
「ぅぐっ! ぉ……がぁ!!?」
黒山の中の一人を執拗に撃ち続け、一成の元へ割り込むアキラ。全身銃弾の雨に打たれた戦闘員はようやく膝をがくんと折って倒れ、後方から押し寄せる戦闘員達に踏みつけられていった。
倒せたのか――倒せたと考えるしかない。確認するより逃げるが先。プライドで身は守れない。アキラは一成を強引に立ち上がらせ、腕を引っ張り連れていく。
「まだ……まだだ、俺は……」
「いったん出直しだ! くそっ!」
ヒーローは不屈。再起を誓うと共に、スナーク化の恐ろしさを味わった二人だった。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
斉賀・悠
「…え?魔法少女?」
筋骨粒々なマッチョな人とか、変態とかじゃない、本物の魔法少女が相手…?
「許しちゃいけないんだけど、ちょっとだけ感動…!」(ちょっとだけ)
と、とりあえず、僕も参戦だ!(変身バンクはプレイングでは割愛)
変身したら、●恥ずかしさ耐性と●オーラ防御は常に展開、敵の攻撃は可能な限り●見切って、●ジャンプで回避。
そのまま●空中浮遊と●空中機動を駆使して●空中戦だ!
ましんがんから雷●属性攻撃の●誘導弾をばら巻いて、ある程度1ヵ所に集めたら、起動させていたUC:帯電放出 を足に纏わせて…飛び蹴り(●踏みつけ)だーっ!
※おまけに●気合いと●切り込みと無意識の●全力魔法
●彼は正しく魔法少年
「……え? 魔法少女?」
グリモアベースで話を聞いた時は耳を疑った。
魔法少女。もう一度言おう。魔法少女。
それが今回、斉賀・悠(魔法少年 エクレール・f17889)が戦うべき敵であった。
「許しちゃいけないんだけど、ちょっとだけ感動……!」
「うぉっ!? 何だお前!?」
目を潤ませる悠に戦闘員達も若干引いた。グリモア猟兵の話に嘘偽りがないことが、戦闘員の存在によって証明されたのだ。筋骨隆々なマッチョマンだとか、その他諸々な変態だとかではない、本物の魔法少女が先に待ち受けている――。
しかし感動の御対面はもう少し先になる。今はまず目の前の戦闘員をどうにかしなければならなかった。他の猟兵達も奮闘を繰り広げているが、まだ数が残っている。
「と、とりあえず、僕も参戦だ!」
悠の正体は魔法少女ならぬ魔法少年。まじかる☆でばいすを片手にポーズを取れば、まじかるな光がぶわっと溢れてあっと言う間に魔法少年エクレール!
「お、やんのか? だったら俺達だって……いくぜええぇぇ!!」
変身したことで敵意ありと判断した戦闘員はファイティングポーズを取って気合いを入れると、ぐんと地を蹴って走り出した。そうして乗った最高速度はお察しだが、仲間の戦闘員達の支えもあって威力は倍増。そしてスナーク化により超強化されれば魔法少年だってやられかねない。
戦闘員達は魔法少年エクレールを見ても何も言わないが、内心笑っているのかも――そんな疑心暗鬼を恥ずかしさに耐える心の強さで振り払い、オーラを展開して悠は跳ぶ。
突進する戦闘員達は伸ばした手が僅かに及ばず、悠を空中に逃がしてしまう。空中は戦闘員達も管轄外。Uターンしたところで手が届きはしないのだ。
「卑怯だぞ! 降りてきやがれ!」
「えぇ? そんなこと言われても……」
完全な言い掛かりであり、当然敵の誘いに乗って地上に降りるわけがない。浮遊状態を維持する悠の下では戦闘員達が地を這う蟻のようにわらわらと動き回っている。
もう一声、という感じの微妙に纏まりの悪い連中だった。そこで悠はまじっく☆ましんがんを構えると、雷の力を与えた誘導弾をずだだだだと地上にばら撒いていく。
「いででっ、ででっ!?」
雷の弾丸が戦闘員達の頭にぼこぼこ当たっていく。それだけでは大したダメージにもならないが、戦闘員達の怒りを買うには十分だった。
「ぜってー許さねぇ!!」
こうなりゃ意地でも引きずり下ろしてやる、と戦闘員達は人間ピラミッドを作って高さを稼ぎ始めた。今日日拝むことのない代物だが、安全性がどうのこうのと言っていては戦闘員などやっていられない。
「よーし、集まってきたね……」
悠の思惑通り、戦闘員達は人間ピラミッドという形で集まっている。
先程撒き散らした誘導弾、スナーク化による超強化を考えれば雷属性を追加したことでダメージ変化は雀の涙程度だが、悠は同時に帯電状態を開始させていた。戦闘員達は少しずつだが空に手が伸び始めている。頃合いを見計らい、悠は雷を足へと流し込んだ。
「これが僕の――全力っ、だーっ!」
一瞬高度を上げて助走距離を取ると、気合いの入った咆哮と共に鋭く切り込む全力の雷撃飛び蹴りが放たれた。もう間もなく完成かという人間ピラミッドの頂点に立つ戦闘員が見たのはビカッと輝く靴底だ。
「ぎゃー!!!」
降りるなどもう遅い。頂点に炸裂した飛び蹴りはそのまま二次元的に空へ昇っていた人間ピラミッドの最下層まで一気に割った。その通り道に居た戦闘員達は当然のことながら蹴り潰され、同じく人間ピラミッドを構成していた周囲の戦闘員達には連結部から雷が流れて広がっていく。全身が痺れて連結が維持できなくなると、戦闘員達はドミノ倒しのようにバラバラと崩れ落ちる。
「わっ!? 危ない危ない……」
しゅたっと着地を決めた所へ降ってくる戦闘員達に気付き、悠は慌ててその場を離れた。
戦闘員が落下した上へまた別の戦闘員が落ちてきて、人間ピラミッドは完全に崩壊。戦闘員達はぴくりとも動かなくなり、魔法少年エクレールは見事に魔法少女との邂逅権をその手に手繰り寄せるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『『魔法少女』セラフィムハート』
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POW : 霊子収束式攻撃魔法・プリズムブレイク
【手にしたステッキが所謂最強フォーム】に変形し、自身の【莫大な魔力】を代償に、自身の【次に放つ、最大最強の攻撃魔法】を強化する。
SPD : 誘導追尾型攻撃魔法・シャイニングチェイサー
レベル分の1秒で【相手をどこまでも追尾する、魔力の光弾】を発射できる。
WIZ : 超高速飛行魔法・エリアルウィング
【背と踵に高速飛行を可能とする光翼を生やす】事で【高機動モード、エリアルハート】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:はるひ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アルル・アークライト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●やられちゃったのでごほうびはナシ!
猟兵達はスナーク化した戦闘員達を片付けて、いよいよセラフィムハートが待ち構える場所へ向かう。そこは不死の怪物を見張る番人が立ち、そしてセラフィムハートが奪っていった場所だ。
「戦闘員さん達、どうなってるかなー?」
「フィンフィンフィーン!」
セラフィムハートはフィンフィン鳴く魔法生物にしゃがんで語り掛けながら戦果報告を待っていた。しかしやってきたのは戦闘員ではなく、彼らを倒した猟兵達。足音に気付いて顔を向けると、そのまま無言で立ち上がる。
「ざーんねーん。ちゃーんとお仕事してきたら、ごほうびあげようと思ってたのにねー」
「フィーン!」
足元を一周、くるりと回る魔法生物に合わせてセラフィムハートは猟兵達へ向き直る。
「じゃあフィン君、私達で猟兵さん、やっつけちゃおっか!」
「フィーーーン!!」
そしてにこりと微笑むと、ステッキを高々と掲げて決意表明するのだった。
火土金水・明
明「私は猟兵組織『秘密結社スナーク』の一員、『魔法少女ブラックマルス』。」明「神々を襲うような魔法少女は許せません。」クロ「使い魔も、主の行動を止める事も大事な役目にゃ。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【対空戦闘】と【制圧射撃】を付け【弾幕】と【フェイント】を絡めた【新・ウィザード・ミサイルを】を【範囲攻撃】にして、『『魔法少女』セラフィムハート』を攻撃します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。
●魔法少女と使い魔は対等か?
「私は猟兵組織『秘密結社スナーク』の一員、『魔法少女ブラックマルス』」
「えーっ!? あなたも魔法少女!? それに……秘密結社スナーク、って……」
火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)が口にした「秘密結社スナーク」という言葉に、セラフィムハートの子供らしく可愛げのある声が一段トーンを落とす。戦闘員を撃破され、さらにスナークの名を正義の組織のように使われては神々の間に恐怖を伝播させることができなくなる。
「神々を襲うような魔法少女は許せません」
「こっちだって、スナークの名前を勝手に使われたら許せないもん! あの猟兵をやっつけるよ、フィン君!」
「フィンフィーン!!」
「全く……使い魔は主の行動を止めることも大事な役目にゃ」
明の傍らにいる黒猫の使い魔、クロはフィン君と呼ばれるセラフィムハートの使い魔が片棒を担いでいることを嘆き、ため息をつく。使い魔は決して主に付き従うだけの道具ではないのだ。
「高機動モード――エリアルハートッ!!」
セラフィムハートは背と踵に光翼を生やしてエリアルハートへフォームチェンジ。寿命を削るためあまり長くは維持できないが、それでも使ってきたというところに明を絶対に倒すという意志が感じられる。
セラフィムハートは飛翔するように地を駆けた。ステッキを振り回す速さは軌跡に残像を残していくが、明もまた残像を引き起こす速さでステッキの射程から逃れていく。両脇に生えたステッキの翼が刃のように空を引き裂く中、明はオーラ防御でいなしつつ決定打を食らわぬよう注意する。
数度地上での攻防を繰り広げた後、セラフィムハートは宙へ飛翔する。空中機動に活路を見出そうとしたか。高速で明の周囲を飛び回って隙を探すが、明は対空の備えあり、と地上に魔力を展開する。
『全ての属性を収束して、今、放つ!』
スポットライトのような光弾が矢に変化する。明が操る全ての属性の力が揃ったカラフルな魔法の矢がセラフィムハートの周回軌道へ射掛けられた。
「……! そんなのっ……!」
宙を突き抜けてくる魔法の矢の弾幕にセラフィムハートは周回を止めて回避行動に入った。翼を傾けて直線的に飛翔しながら時折急角度で折れ曲がって弾幕を翻弄しようとするが、これまた明も仕掛けを施している。セラフィムハートのいなくなった空間を突き抜けようとしていた矢が急に速度を落とし、セラフィムハートが方向転換するのを待ったかのように飛翔方向を変えていた。
ホーミングとは異なる挙動――フェイントだ。逃れたように見えて、真の着地点におびき出されたセラフィムハート。反応速度は高くとも、全てを読み切ることはできなかった。
「きゃああぁぁ!!!」
魔法の矢はセラフィムハートの四肢に突き刺さり、燃やし、凍らせ、痺れさせ、毒に冒す。ダメージを受けてなお寿命を削っていくのは危険と本能が判断したか、エリアルハートを維持することができなくなったセラフィムハートは狩られた小鳥のように力無く地面に墜落した。
大成功
🔵🔵🔵
高階・茉莉(サポート)
『貴方も読書、いかがですか?』
スペースノイドのウィザード×フォースナイトの女性です。
普段の口調は「司書さん(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、時々「眠い(私、キミ、ですぅ、ますぅ、でしょ~、でしょお?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
読書と掃除が趣味で、おっとりとした性格の女性です。
戦闘では主に魔導書やロッドなど、魔法を使って戦う事が多いです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●危ないモノを飛ばしちゃダメですよ?
「私も魔法は嗜みますから……悪い魔法少女さんにはお仕置き……致しましょうか?」
「んむぅ……私、悪い魔法少女じゃ……ないもん……!」
魔法侵食に魔力を注いで食い止めながらセラフィムハートは立ち上がる。バッドステータスがビリビリジンジンと頭に響いてくるが、今は一旦見ないフリ。
高階・茉莉(秘密の司書さん・f01985)が――敵がいる。弱音を吐いてなどいられない。
口喧嘩ではセラフィムハートに分がありそうだ。年齢的には明らかに茉莉が上だろうが、おっとりした性格、のんびりした口調が災いして口論向きではない。とは言え、口喧嘩で勝った負けたを決めたところで意味はないのだが。
「光の魔法だって、使えるし……! 行って! シャイニングチェイサー!!」
セラフィムハートは翼の生えたステッキを茉莉目掛けて突き出した。その先端に現れた光球が紐状に伸びて誘導弾へと変わる。
「あら、困りました……けど」
茉莉はぱらぱらと魔導書をめくりながら、左足を軸に後方へターンして光弾を躱す。光弾とて急には止まれない。当たるかどうかの際どいタイミングで体を動かされれば、何もない空間をそのまま突き抜けてしまう。
しかし光弾も諦めが悪い。すぐにUターンして茉莉をどこまでも追いかけてくる。奇跡は二度は起きないか――と思われたが、茉莉はまたもギリギリの一瞬を狙って体を回し、回転扉が人をするりと通過させるように光弾を流していく。
「なんで当たらないのー!?」
「あなたの行動パターンは聞いてきましたから……誘導型の攻撃魔法は『こちらを追いかけてくる』と動きが決まっている分、対処しやすいんです」
開いた魔導書には光弾の軌跡が立体的に浮かび上がる。茉莉はその軌跡を見つめながら、自分が動くべきタイミングを見計らっていた。
「……ここですね」
回避に徹していた茉莉がタンと駆け出した。逃げるように駆けたところで追いかけ回されるのがオチ――だから最小の動きで回避する方法を取っていたのだが。
当然、茉莉の足より光弾の速度が圧倒的に速い。躱された反動で遠く離れていた光弾が一気に茉莉の背中へ追いついてくる。
茉莉は魔導書に浮かべた空間図から自分と光弾の距離、そして速度を見誤ることなく測る。もうじき直撃する――その瞬間に、
「……んっ」
膝を思い切り曲げて身を屈めた。あとコンマ1秒遅れれば頭を撃ち抜かれていたところだが、茉莉は刹那を見極めていた。
光弾は目標を失い直進する。これまでと同じならまた茉莉の元へ舞い戻ってくるところだが、そこには障害物があった。
「きゃあっ!?」
茉莉はただ逃げていたのではない。セラフィムハートと茉莉自身を結ぶ直線を光弾の進行方向に重ね、回避の後に光弾がセラフィムハートへ命中するように仕組んだのだ。茉莉が頭を下げたことで突然現れた光弾にセラフィムハートは満足な防御姿勢が取れず、ステッキ越しに体を弾かれ宙を舞った。
「――んぐっ!?」
うなじの辺りでバウンドし、後方回転して地面に転げ落ちる。ピンクのドレスが擦り切れて、腰のリボンが外れてしまった。
「フィンフィーン!?」
「ん……まだ、大丈夫……でも、私の攻撃を利用するなんて、許せない……!」
取り落としたステッキに手を掛け、セラフィムハートはゆっくりと立ち上がってくる。頬に土埃を残したその表情は、およそ魔法少女らしからぬ怒気に満ちていた。
成功
🔵🔵🔴
叢雲・凪
SPD
「どうも カラテ系魔法少女 ジンライ☆フォックスです」(礼儀作法を用いた奥ゆかしいアイサツをしつつ 真顔&殺意に見た放電眼光! コワイ!)
「悪いがボクは女・子供でも容赦はしない」(過去に美少女の顔面を蹴り飛ばした経験在り)
ダッシュ+残像+リミッター解除を用いて初動から一気に畳みかける。
黒雷を付与した属性攻撃+マヒ攻撃を繰り出しつつ 決断的【断頭延髄蹴り!】
ただ この程度では終わらないだろう。
「なるほど じゃあ【速さ比べ】と行こうじゃないか キミも『速い』んだろ? 90秒だけ付き合ってあげるよ」(マフラーを破り捨て)
夜天九尾発動
尻尾1本につき10秒 『光を超えた速度』で動き畳みかける
●黒き迅雷の怒り
怒るのは魔法少女の特権ではない。
「どうも、カラテ系魔法少女。ジンライ☆フォックスです」
口調も動作も穏やかに見えて、凪は真顔で殺意の眼光を飛ばす。バチバチと発せられる放電現象が怒りの激しさを物語っていた。
「悪いがボクは女・子供でも容赦はしない」
「別にそんなの、されなくても……!」
敵ならば美少女だろうと何だろうと蹴り飛ばしてきた凪が、今更魔法少女に手心を加えるなど有り得ない。故郷を汚されたのなら尚更である。
「行けっ! シャイニングチェイサー!!」
セラフィムハートのステッキから光弾が発射されるのと同時に凪は正面へと俊足を飛ばしていた。光弾と凪、互いに近づく方向へ進んでいるので体感速度は倍化している。
(動け、ボクの足――限界を超えろ!)
凪は次の一歩で体重を斜に預けた。それで体の軸をずらし、光弾をすり抜ける――リミッター解除したからこそ成せる業だ。
光弾は凪の顔の間近を突っ切っていくが、誘導弾の性質で最小限の弧を描き返ってくる。今度は互いの速さ比べになったが、凪がセラフィムハートを攻撃の射程に入れるほうが早かった。
黒雷が飛び、拳がセラフィムハートの左頬に突き刺さる。
「――!?」
何が起こったのかわからず、気づいた時には宙を舞っていた。錐揉み回転で地面に落ちると鉛筆のように転がった。
そして凪は拳を叩き込んだ瞬間に90度角度を変えてその場を離れ、光弾の追跡をさらに逃れていく。セラフィムハートも殴り飛ばされて動いているため光弾がセラフィムハートに命中することはないが、素早すぎる凪の動きに光弾も翻弄されていた。
凪の拳から流し込まれた黒雷がセラフィムハートの体を縛る。痛みと顔の変形で泣き出しそうになるのを堪えて立ち上がるが、ステッキを構えるのが辛く感じるほどにその体は痺れていた。
「負ける……もんか……っ!」
弱音は吐かない。戦う意思を全身で示すセラフィムハートだが、見据えた視界に凪の姿は映らない。凪を追う光弾もどこへ行ったか――。
ひゅっ、と風が鳴った。その瞬間にセラフィムハートの視界は90度回転――いや、セラフィムハートの首が90度横に折れたのだ。ゴンと脳天に響く衝撃で、セラフィムハートの体は抜き捨てられる雑草のように吹き飛んでいく。
不意の一撃には声など出ない。凪が真横から決めた断頭延髄蹴りで宙を水平飛行し落下するセラフィムハートは粗雑に扱われた着せ替え人形だった。スカートには不要なスリットがいくつも出来上がり、ロングソックスはビリビリに破けて足輪のような状態だ。
「げほっ……うぇぇ……」
口の中がじゃりじゃりして頗る不味い。砂を吐き出すセラフィムハートへ、凪はなお高速で接近する。
決めにいった一撃だが、オブリビオンのタフさも身を以って知っている。だからこそ完膚なきまでに叩きのめす必要があった。
「光弾に頼っているけど、キミも『速い』んだろう? だったら『速さ比べ』といこうじゃないか。90秒だけ付き合ってあげるよ」
マフラーを破り捨てる凪の気迫は槍となってセラフィムハートの心臓を貫く。それで心臓が物理的にどうなるわけでもないが、胸の圧迫感、呼吸困難に精神は一瞬死を予感して、
「――! エリアルウィング!」
セラフィムハートの咄嗟の叫びと同時に時空が変化した。光弾がゆっくりと流れる中、凪とセラフィムハートが超高速の戦いを繰り広げる。
黒雷外装【鳴雷】を解き、黒雷の尻尾を生やした夜天九尾形態をとる凪。ステッキを刀のように扱い斬り込んでくるセラフィムハートを前に、さらに速くその軌道から逃れ、腹へ突き上げる拳を叩き込んだ。
「ご……っ!?」
「まだだよ」
浮き上がった体を撃ち落とす上段回し蹴りが喉元に急角度で入り、セラフィムハートの体は地面で大きくバウンドした。別段弾力のある体型をしているわけではないが、叩きつけられる速度が速過ぎたのだ。
凪は跳び上がり、今度は細い体に踵を落とす。そしてまた跳ね返ってきたところを蹴りで捉えて――黒雷の尻尾が9本、全て消費されるまで凪は攻撃を緩めない。
最早光弾も彼方へ置き去りにされ、凪はひたすらセラフィムハートを叩き伏せた。浴びせた拳や蹴りの数は指を折るだけでは数えきれない。
やがて時の流れが戻ってきた時、セラフィムハートからの魔力供給切れで光弾も失われ、立っていたのは凪ただ一人だけだった。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
うーん陽キャは苦手なんだけどなーボク引きこもりだからああいうキラキラしてるヒト
でもこのまま放っておけないし、よしやるよ!
ボクの真の名紅明日香の名を以て
このスピードなるほどフォームチェンジってやつだねでもその姿長時間は使えないと見たよ、八つの蒼焔の盾を全方位に展開、守りに撤して相手の疲弊を狙うよ
しまった、盾が防いでない真上から・・・なんてね
防御の死角には重力槍をちゃんと配置していたのさ、空中じゃ身動き取れないよね重力槍一斉発射
ボクには反抗の加護があるのさ
●陽の者、骸に帰す
セラフィムハートはキラキラしていた。それは彼女が振り撒く魔力のせいでもあるし、彼女自身が快活な性格、振る舞いをしていたからだ。
(うーん……陽キャは苦手なんだけどなー……。ボク引きこもりだから……でも)
ニクロムは倒れているセラフィムハートに目を向ける。少なくとも今の彼女は掃き溜めに捨てられた人形のようにボロボロで、見た目のキラキラ具合は最早無いに等しい。
「ぅ……ぐ……」
「フィン……」
魔法生物が小さな体でステッキを咥え、セラフィムハートの元へ持って行こうとしていた。手袋が裂けて露出した指を地面に這わせ、セラフィムハートは落としたステッキを、顔を伏せたまま探している。
(このまま放っておけないし……よし、やるよ!)
もう一押し。ニクロムは決意して自身の内に語り掛けた。
『ボクの名、紅明日香の名を以て』
ニクロムの体に宿るのはチタノヤタテの霊。霊体がふわりとニクロムの体から離れて浮き上がってくると、それは八つの蒼焔の盾を成した。
八方位に配置し、側面からのあらゆる攻撃を防ぐ算段。守勢に回ることでセラフィムハートの疲弊を誘う作戦だった。
セラフィムハートの手にステッキが戻る。ステッキに残されていた魔力がセラフィムハートの体へと還ることでほんの少しだけ体が動くようになった。ステッキをまさに杖代わりにして足を震わせながら立ち上がり、ニクロムの姿を確認する。
目の前の相手を倒すチャンスはこの一度きり。セラフィムハートは寿命を削ってでも渾身の一撃に賭けた。
魔力により生み出される光翼はいつでも真新しく、今のセラフィムハートには不釣り合いだ。違和感のある姿でセラフィムハートは疾駆する。
声を出すだけの力も惜しい。腕はステッキを振れば、そのまま抜けて飛んでいくかもしれないくらいに頼りない。鏡など当然見たくもなくて、この場が水辺でないことが有難かった。
視界の輪郭がぐにゃぐにゃだ。目の周りが腫れるか崩れるかして眼球を支えきれていない気がする。ゾンビのような自分――セラフィムハートは考えるのをやめて一振りに集中した。
ニクロムはしっかりガードを固めている。どこから斬り込んでも盾に防がれるだけ――だが、一か所だけ空間があった。
ニクロムの頭上、そこだけは盾がない。見つけだした九方位目にセラフィムハートは飛び込んだ。
「しまった……なんてね」
ニクロムの頭上に浮いたセラフィムハートの背を、さらに上から八つの超重力槍が狙っていた。ニクロムがわざと作った隙に、セラフィムハートはまんまと嵌まってしまったのだ。
槍が落ちる。次の瞬間には先端がセラフィムハートの胸や腹に突き抜けて、飛び出した勢いのままにセラフィムハートはニクロムの後方へ転がっていく。
「フィン!」
魔法生物が鳴いて駆け出していたが、その体は光の粉となって消えた。セラフィムハートも追うように光の粉へと変わり、刺さっていた槍が落ちてがしゃんと音を立てた。
大成功
🔵🔵🔵