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あいしんぐ・にゃんこ

#カクリヨファンタズム #お祭り2021 #夏休み #夏休み2021

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#夏休み
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●はじめました
 燦々と照り付ける太陽!
 青く煌めく母なる海!
 踏み締めればきゅきゅっと鳴く砂浜!
 浜辺に立つ屋台ののぼり旗!
 空色に染め抜かれた布に、赤く印字されていたのは!

『冷やしにゃんこ、はじめました』

 なんだって?

●冷やしにゃんこ
 常夏のカクリヨファンタズム。水着コンテストも行われたビーチは、今日も賑わっている。
「……冷やし、にゃんこ、なる、屋台が、あるそう、です」
 開口一番、普段の無表情は何処へやら、何処かきらきらした表情を浮かべながら神宮時・蒼(追懐の花雨・f03681)は唇を開いた。
「……其の名の通り、ひんやりと、した、体躯を、持つ、にゃんこさんと、遊べる、屋台、だそう、です」

 なんて?

 冷やしにゃんこ、正式には、雪猫、と呼ばれる雪女のにゃんこ版。
 全身から冷気を発していて、触るともふもふひんやり、此の暑い夏でも、動物と触れ合いたい人に人気の妖怪である。
「……ひえひえの、猫さん…」
 IQ駄々下がりの会話であるが、蒼本人は至って真剣である。
 冷やしにゃんこ―雪猫と戯れる屋台は幾つかあり、屋台でお買い物をすると、1時間雪猫と一緒に遊べる、との事。
 購入する物は特に決まっておらず、店主へ”冷やしにゃんこお願いします”と言えばいい、らしい。
 基本的に、海の家と呼ばれる施設に置いてあるものは何でも売っている。
 しかし、当然ながら未成年の飲酒は禁止である。
「…ちなみに、妖怪親分の、皆様が、妖怪花火を、持ってきて、くださいました、が」
 妖怪花火とは、妖怪親分たちが齎した、熱を持たず、されど人が乗っても問題無いという、不思議花火。
 一本の手持ち花火を、ふりふりと振りながら、蒼は其の花火の名を告げる。
「…此れは、マタタビ花火、と言う、らしい、です」
 熱を放たぬ妖怪花火。火を付ければ、ふわりと漂うマタタビのあまい香り。
 つまり。
「…ひえひえの、ねこさんを、めろめろに、出来る、花火、です」
 ぱちぱち弾ける花火は、雪猫のお気に入りなのだそう。
 此れも屋台に売っているので、お気軽にお買い求め出来る。

 暑い夏にぴったりの、冷やしにゃんこ。
 ひえひえもふもふ、しませんか?


幽灯
 幽灯(ゆうひ)と申します。
 今回はカクリヨファンタズム夏休みシナリオ第2弾をお届けします。
 あったまわるいシナリオが浮かんだんです。

 マスターページの雑記部分とOPのタグにプレイング受付日と締め切り日を記載させていただきます。
 お手数ですが、一度ご確認をお願いいたします。

●過ごし方
 屋台で買い物して、冷やしにゃんこで涼を取りましょう。
 基本、屋台には海の家にありそうなものは何でも売っています。
 ご自由にお過ごしください。
 尚、未成年の飲酒は禁止です。
 また、蒼に何かありましたらご用命ください。
 多分、日陰で雪猫と遊んだり観察してます。
 お気軽にどうぞ。

 複数名様でのご参加は3名まで。
 ご一緒する方は「お名前」か「グループ名」を記載してください。
 其れでは、善き夏休みを!
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み2021』

POW   :    妖怪花火で空へGO!

SPD   :    妖怪花火の上で空中散歩

WIZ   :    静かに花火を楽しもう

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フリル・インレアン
冷やしにゃんこさんお願いします。
ふわぁ、抱っこしてみても大丈夫ですか?
ヒンヤリしていて、冷た・・・。
ふええ、おでこに猫パンチされてしまいました。
でも、肉球のヒンヤリプニプニした感触でとろけてしまいそうですぅ。
アヒルさんにもツンツン突くだけじゃなくてヒンヤリ機能もあるといいですよね。
夢心地に固まってしまいましたが、このマタタビ花火で遊びましょうね。
雪猫さんが花火にじゃれつく度にヒンヤリとした風は吹いて涼しいんですよね。



●ひえぺち
 燦々と照り付ける太陽の光が、瞼を焦がす。あまりにも眩しくて、思わず瞳を閉じる。
 寄せては返す波の音を聞きながら、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)の足は、ただ一点を目指す。
「えっと、マタタビ花火と、冷やしにゃんこさんお願いします」
 あいよー。と元気の良い返事と共に差し出されたのは、一本の手持ち花火と、灰色の斑模様を持つ白猫。
 雪猫も、分かっているのかとてとて歩いてフリルの足元へと近付く。
「ふわぁ、抱っこしてみても大丈夫ですか?」
 果たして、人の体温で融けたりはしないだろうか、と言う一縷の不安を抱きながら、マタタビ花火を受け取ったフリルが店主へと問いかければ。
『え、ああ。大丈夫だよ。余程の事が無ければ嫌がらないから』
 と言う事で、しっかりと店主のお墨付きも頂いたので。そっと砂浜で背筋を伸ばす雪猫の前に、フリルはしゃがみ込む。
「それでは、失礼します」 
 触れた瞬間に、ひんやりとした冷気が掌を包んだ。
「ヒンヤリしていて、冷た…っ」
 そら雪猫だもん、当たり前でしょ!と言わんばかりの視線が、フリルへと向く。
 ―てし。
 掌でひんやりとした冷気を楽しんでいたフリルの額に、ぺちり、と肉球パンチ。
「ふええ、おでこに猫パンチされてしまいました。……あ、ひんやり柔ら…」
 肉球を通して、額から熱が逃げていく。太陽に焦がされていた熱が、ゆるりと拡散する。
 ぺちぺちと額を叩く肉球は、体躯よりもほんの少し、温度が低いらしい。
「さあ、移動しましょうか」
 何時までも、お店の前で雪猫に感動している訳にもいかぬと、アヒルさんを伴って、フリルは椰子の木陰へと移動する。
 さり、という音と共に砂浜に座れば、雪猫も其の傍らに。
 物珍しそうに、雪猫を見つめるアヒルさんの嘴が、恐る恐る雪猫の白と灰の斑模様の背中を突く。
 ―ぺちり。
 何処か煩わしそうに、雪猫の尻尾が揺れて、軽い音を立ててアヒルさんの額を叩く。
 ぐわ、と予想していたよりもひんやりとした感触と衝撃に、アヒルさんから驚きの声が上がった。
「ああ、だめですよ、アヒルさん」
 アヒルさんを諫める様に触れれば、じんわりと熱を持つブリキの体躯。
「……アヒルさんにもツンツン突くだけじゃなくて、ヒンヤリ機能もあるといいですよね」
 夏は暖かく、冬はひんやり。真逆であれば、何処でも涼も暖も取れるのに、と浮かんだ思考は一度沈めて。
「さて、時間も限られていますし、このマタタビ花火で遊びましょうか」
 マタタビ花火の単語を聞いた瞬間、ゆったりと雪猫が身体を起こす。其の瞳は、爛々と輝いていて、まるで此れから起こる事を知っているよう。
 そっと、花火に火を付ければ、ぱちぱちと儚い音を立てて、炎の雫が零れる。
 ふわり、と鼻腔を掠める甘い香り。普通の手持ち花火と違うのは、弾ける火花が大きい事と、地面に落ちた火花がころり、と丸くなって、ぱちぱちと弾け続けている点だろうか。
 興味本位で落ちた火花に触れてみれば、弾ける泡のような、軽い刺激。
 ―しゅばっ!
「ふわぁ…、…ふえ?」
 面白い花火、と意識が持っていかれていたフリルの持つ花火に向かって、雪猫が勢いよく突進する。
 零れる火花に向かって、両手を振って、叩こうとしているよう。
 ふわり、ふわりと、雪猫が俊敏に動く度に、ひんやりとした風が周囲へと巻き起こる。
 未だ炎を零すマタタビ花火を雪猫の前で降りながら、其の心地良さに、フリルとアヒルさんはそっと瞳を閉じるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
冷やし……にゃんこ……!
もふもふしてるのにひんやりとはこの季節にとてもいいですね。
マタタビ花火を売ってるお店でも冷やしにゃんこできるのかしら?もしできるならずっと同じお店でもふひえできるって事ですよね?でも他のにゃんこでももふひえしたい……。
いえ迷うぐらいならまずはやってみましょう。
かわいい白の雪猫さんがいるお店に行って冷やしにゃんこをお願いします。
もちろん購入するのはマタタビ花火。ないならフルーツフレーバーのお茶を。あまり食べる事が量的な意味でできないので。
購入したての花火に火をつけてしばし花火自体を楽しんでから猫さんの前でふりふり。
ほどほど遊んだらお膝に乗って貰えないかしら。



●ひえもふ
 太陽の光が反射して、海面がきらりと輝く。
 普段の静かな装いからは信じられぬ熱量を、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は宙色の瞳に宿して。
 きらきらした瞳は、ただ一点”冷やしにゃんこ、はじめました”ののぼり旗に釘付けである。
(冷やし……にゃんこ……!)
 もふもふしているのにひんやり、尚且つ店頭の隅で寛ぐ雪猫たちの涼しい白の体躯。それぞれ模様があったりと違いがあって、其れもまた楽しい。
 屋台が出ている周囲をそっと見回せば、冷やしにゃんこののぼり旗は、一つではなくちらほらと見えた。
 つまり!
「同じ屋台で何度も買い物すれば、ずっともふひえ出来るって、事ですよね」
 ―あ、でも、他のにゃんこでもひえもふしたい……。
 うーんと、店の前で葛藤する事、数分。
「……いえ、迷うぐらいなら…!」
 視線を上に向ければ、にこやかに笑う店主の姿。
『いらっしゃい。お決まりかな?』
 今までの葛藤を見られていたことに、ほんのりと頬を染める。
「……ま、マタタビ花火と、その真っ白な冷やしにゃんこ、お願いします」
 あいよー、と元気な声が響いて、まずは手持ち花火が渡される。一見すると、何の変哲も無い花火。
 此れが、雪猫のお気に入り。一体、どんな姿が見られるのか、藍は待ち遠しくなる。
『ほい、うちの店でも一等美人な雪猫だ』
 たし、と目の前に現れたのは、一点の曇りもない見事な白の毛皮に身を包んだ雪猫。
 其の佇まいは、凛としていて、何処か気高さすら感じる。
 思わず、藍が見惚れていると、ゆったりと、優雅に雪猫は歩き出す。店主に小さくお辞儀をしてから、藍は雪猫の後を追った。
 雪猫が歩いて行った先は、あまり人のいない、静かな浜辺。
 人々の喧騒が、何処か遠くに聞こえる。 椰子の木陰に辿り着くと、ぺたり、と雪猫が腰を下ろす。
 釣られるように、藍も腰を下ろせば、潮の香りを含んだ風がふわりと吹き抜けた。
 そっと、手を伸ばせば、特に抵抗される事無く。そのままそっと白い背を撫でれば、ひんやりとした、柔らかな感触が掌全体に伝わる。
「もふもふ、ひんやり……」
 ゆっくりと毛並みに沿って手を動かす。種族故か、藍も体温は低い方であるけれど、掌に伝わる温度は心地いい。
 もっと触れていたい気持ちは在れど、時間は有限。
 先ほどの屋台で購入したマタタビ花火に、そっと火をつける。
 ぱち、ぱちと、火薬の爆ぜる音が響いて、白や青、緑などの、涼し気な色の火花が降り注ぐ。
 落ちた火花はすぐには消えず、ころころとした球体となって浜を転がる。独立して、ぱち、ぱちと火花を散らす姿は、また珍しい。
 ふんわりと漂う煙は、何処か甘さを含んで。ぴくり、と小さく白の雪猫の耳が動いた。
 普通の手持ち花火では見れぬ、不思議な光景。
「これが、妖怪花火……」
 のそり、と視界の端で、雪猫が身体を起こす。其の目は、何処か獲物を狙うかのように鋭い。
 ―ぺちぃ。
 大地に落ちて尚、弾ける火花に、小さな前足を降り下ろす。
 突然の事に、藍の瞳も思わず丸くなる。
 ぱちぱち爆ぜる火花が気になるのか、頻りに前足をふりふり。
(…可愛い…)
 未だ火を灯す花火を、雪猫の前でふりふり。
 ぺし、ぺし。
 やがて、花火も勢いを落として。静寂が場を包む。程よく遊んで疲れたのか、雪猫がくぁ、と大きく口を開いて欠伸を零す。
 さりげなく、膝の上にスペースを開ければ、ひんやりとした冷気が藍の膝の上に漂う。
 くるり、と丸まった雪猫が、身体を寛がせるのを見て、藍の胸中は冷やしにゃんこへの愛らしさでいっぱいになるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
晴夜お兄さんf00145と
※動物には激しく嫌われます。好かれることはまあありません

……良し(決意に満ちた戦いに赴く表情
またたび花火を貰って、準備万端
”冷やしにゃんこお願いします”
これでひやしにゃ…(めっちゃ逃げられる
……(麻酔銃を準備
止めるなお兄さん
俺たちは今、戦場にいる……!


……ほう?
そう言うなら、お兄さんが試しにやって見せてよ
ほらほら
(お兄さんが失敗したらめっちゃせせら笑う
口ほどにもない!

まあほら。俺の方が素早いから。たとえ嫌われてるとは言ってもきっと捕まえられ…
……
なにあの子めっちゃ早い
お兄さんそっち、回り込んで!

……
………やっぱり生き物なんてダメだね
(不貞腐れてアイスを買ったという


夏目・晴夜
リュカさんf02586と

それでは猫で涼むとしますか
冷やしにゃんこお願いします
これが噂のひや…(逃げられる
って、撃ってはダメですよ!

あのですね、リュカさん
猫は麻酔では無くマタタビで手懐けられます
そして生物の大多数はハレルヤの事が好きです
つまり私がマタタビ花火を使えば猫なんざ余裕

よろしい!
私が猫にモテモテの様を指を咥えて眺める傍らで褒め称えるがいいです―痛ってえ!(全力で噛まれる
リュカさん、こいつら可愛いからってお高くとまってますよ!
くそ、実際可愛い…!なんとか捕まえて撫でたいものですね

…早っ
了解です、回り込んで…いやマジで早い!

ええ、美味しく食べられる物が一番ですね(アイスとカキ氷も買ってきた



●にゃんこ戦争
 空は澄み渡る青。海は深い深い天色。
 太陽の光を反射して輝く砂浜は白く、一点の曇りも無い。人々の賑わう声が、周囲に木霊して。
 つまり、滅茶苦茶平和な光景が其処には広がっていた。―広がっていたけれど。
 まるで、此れから戦地に赴くような、真剣な表情をした二人組の姿があった。
 じっと”冷やしにゃんこ、はじめました”ののぼり旗を、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)は睨みつける様に見つめていた。
 其の手には、先程既に購入したマタタビ花火が、束になって握られていた。
 空を写し取ったリュカの青色の瞳は、闘志に満ち満ちていた。
「……良し」
 そんなリュカの様子を夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は無表情なれど、好奇の彩が混じった瞳で見つめていた。
 たかが猫一匹。何を構える必要があるというのだろうか。話に聞く限り、マタタビ花火がお気に入りだという、雪猫。
 つまり、花火で釣っておけば、雪猫など恐れるに足りんと。―此の時は、そう思っていたのだ。
 其れが、あんな出来事を生むだなんて、果たして誰が思っただろうか。
 さり、と一歩踏み出せば、足元の砂が小さく鳴る。
「「冷やしにゃんこお願いします」」
『お、おう』
 そう店主へ告げたリュカの声は、多大な熱量を含んでいて。
 そう店主へ告げた晴夜の声は、多大な自身に溢れていて。
 対応した店主曰く。
『冷やしにゃんこ頼むのに、あんな真剣なオーラ纏ったお客さんは初めて見たよ』
 との話があったとか無かったとか。
 照り付ける太陽の下、雪猫も此の日差しは辛かろうと、椰子の木陰へ移動する。
 前を歩く二人の後ろを、とてとてと軽い足取りで 白い体躯に茶色の靴下雪猫と、同じく白い体躯に灰の縞模様の雪猫二匹が着いていく。
 木陰に辿り着けば、温い風が二人の間を吹き抜ける。じわり、と背中に汗が滲んだ。
 此れは、暑さ故か、其れとも―。
 改めて、リュカは雪猫たちの方へと向き合う。
「これで、ひやしにゃ……」
 そっと触れようとした手は、軽やかな足取りで避けられる。
「ひやしにゃん……」
 避けられる。
「ひやし」
 触れさせてなるものか、と言う熱い決意がリュカの手を逃げ回る靴下雪猫から感じられる。
「これが噂のひや……」
 逃げ回る雪猫を前に、思わず晴夜も二藍色の瞳を瞬かせる。
「なんとまあ……」
 何とも徹底した其の動きに、晴夜の口から無意識に呟きが零れる。
 同時に、ガシャリ、と不穏な音を、灰白の耳が拾う。
「……………」
 浮かぶ表情は、影になって見えぬけれど、リュカの手には一丁の麻酔銃が握られていた。
「って、撃ってはダメですよ!」
 銃口が、雪猫へと向けられ―、る前に、晴夜が慌てて銃身を掴み、空へと逸らす。
「止めるなお兄さん…」
 ―俺たちは今、戦場にいる……!
「いやいや、冷やしにゃんこはそもそも借り物ですし、ここは戦場ではありません!」
「止めてくれるなお兄さん…!ここで、ここでやらないと…」
 そんな問答を繰り返す二人を、雪猫は少し離れた場所で呆れたように見つめていた。

「あのですね、リュカさん」
 麻酔銃を没収されたリュカの顔には、ありありと不服の文字が浮かんでいるよう。何処か拗ねたように唇を尖らせていた。
 大きく溜息を吐きながら、晴夜はふりふりと先程の露店で購入したマタタビ花火を小さく振る。
「猫は麻酔ではなくマタタビで手懐けられます。どこぞの世界には猫にマタタビなんて言葉もあるくらいです」
 其の言葉にぴくり、とリュカの肩が小さく揺れる。
「そして、生物の大多数はハレルヤの事が好きです」
 ―つまり、私がマタタビ花火を使えば猫なんざ余裕余裕!
 自信に満ちた晴夜の言葉を聞いていると、本当か?と思えてくるから不思議である。
「……そう言うなら、お兄さんが試しにやって見せてよ」
 ほらほら、と束で購入したマタタビ花火と火種を晴夜に押し付ける。
 にぃ、と口角が持ち上がる。自身に満ち溢れた己が、まさか猫如きに嫌われるなんて。そんなことは万が一にも在り得ない。
「よろしい!私が猫にモテモテの様を指を咥えて眺める傍らで褒め称えるがいいですって痛ってぇ!」
 自信満々に、晴夜がマタタビ花火に火を付けるけれど、雪猫は花火に興味を示すどころか、花火を持った手に、思い切り噛みついた。
 ぽとり、と火のついたマタタビ花火が砂浜へと落ちて、ぱちぱち弾ける火花がころり、と次々に小さな球体となって転がり溢れる。
「……ふ、ふふふ…」
 一連の様子を眺めていたリュカの口元が、ほれ見ろ言わんこっちゃないざまぁ!と言わんばかりに歪んで。
「口ほどにもない……」
 此れで、雪猫が晴夜に懐いたら懐いたら面白くないのだけれど、其れは其れ。
 噛まれた手をさすりながら、ぎ、と晴夜は雪猫を睨みつける。
「リュカさん、こいつ可愛いからってお高くとまってますよ!」
 けれど、当の雪猫たちは、そんな事知らないとばかりに小さく首を傾げて可愛さアピール。
「くそ、実際可愛い……!」
 故に、其の可愛さに陥落するのも早かった。
「なんとか捕まえて撫でたいものですね」
 じぃ、とジト目で雪猫を睨みつける晴夜の横で、両手をわきわきと握ったり閉じたりしながら、リュカも雪猫から視線を外さず。
「まあほら、俺の方が素早いから。たとえ嫌われてるとは言ってもきっと―」
 くぁ、と欠伸を零す雪猫に、そっと二人が手を伸ばすけれど、其れは光の如き素早さで逃げられた。
「……」
 行き場の無いリュカの手が、虚しく空を切った。
「…え、早っ!」
 普段、雪猫以上に素早いオブリビオンを日々相手にしている筈なのに。
「なにあの子めっちゃ早い…」
 ざり、ざり、と砂を踏み締める音が鳴り続ける。
「お兄さんそっち、回り込んで!」
「了解です、回り込んで…、いやマジで早い!」
 動き回る、白い残像が見えた、と浜辺に居た誰かは後に語った。

『あれは、伝説に謳われる一対の白き流星にゃんこ…!まさか実在したとは』

 ざざーん、と浜辺に、波が寄せては返して。
 気付けば、雪猫を借り受ける一時間は過ぎていて。何事も無かったかのように、二匹の雪猫は元居た屋台へと戻っていった。
 後に残されたのは、肩で大きく息をするリュカと晴夜の二人のみ。
「………やっぱり生き物なんてダメだね」
 しゃり、とアイスを一齧り。ひんやりとした甘さが口腔内に広がる。―甘い筈だけれど、冷やしにゃんこに敗北したからか、リュカの口内にはほんのり苦さも混じって。
「ええ、美味しく食べられる物が一番ですね……」
 ざくざくとかき氷を混ぜながら、晴夜も遠い地平線へと視線を向けて。
「…アイス、美味しいですねえ…」
 そう語る二人の背中には、哀愁が漂っていた。
 此度の、動物触れ合い戦争。

 ―結果は、惨敗。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
折角だから親睦も兼ねて神宮寺さんに話しかけたいな

猫ちゃんと聞いたら黙ってられないよねぇ
冷やしにゃんこお願いします!
マタタビ花火と…一応、飲み物だけ買おうかな?
あればアイスミルクティーで
神宮寺さんも何か飲む?

いつもお世話になってるし
今回は奢らせてもらえると嬉しいな
僕からの気持ちって事で

日陰で雪猫さんをもふもふ
えへへ、冷たくて気持ちい♪
濡れて冷たくなった猫ちゃんは触ったことあるけど
もふもふ保ったまま冷たい猫ちゃんは初めてだよ
はぁ〜癒されるぅ〜♪

もふっと猫ちゃんに顔を埋め幸せそうに
1時間なんてあっという間だからね
やりたい事は全部やらないと
神宮寺さんもどう?
冷たくてふわふわで気持ちいいよ〜(もふっ



●冷やし猫吸い
 じりじりと照り付ける太陽が、肌を焦がす。澄み渡る晴天。雲一つない空は、何処までも果てしなく。
 雪猫、と言う種類は初めて聞いたけれど、猫と聞いたら、可愛いものが好きな身としては黙っていられない。
 幾つか冷やしにゃんこののぼり旗が立つ屋台はあるけれど、特に中身に違いはない様子。
 ならば、何処でも同じか、と栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は屋台の品揃えに目を通す。
 屋台には、焼きもろこしやフランクフルトやアイスなど、片手間に食べれる物や飲み物が多く置いてあった。
 店の一角には、どさりとたくさんの花火の束が置かれていて、冷やしにゃんこを求める人は意外に多いようだと澪は当たりを付ける。
「ん-と、マタタビ花火と、…一応、飲み物だけ買おうかな?」
 店頭には、色彩鮮やかな飲み物のディスプレイが置いてあったけれど、其の中でも無難にミルクティーを選択する。
「あ、神宮時さんも何か飲む?」
 そっと店頭を覗いていた、今回の夏休みを提案したグリモア猟兵たる少女。
 じっと真剣に雪猫を観察していたので、一緒に雪猫と遊ばないか、と思わず澪は声を掛けていたのだ。
『…あ、えと、ボクは、その……』
 何処か、遠慮がちな其の声に。
「いつもお世話になってるし、今回は奢らせてもらえると嬉しいな」
 ―僕からの気持ちって事で!
 とにっこり笑顔で告げたなら、蒼はぱちくりと双眸色彩異なる瞳を瞬かせた後、そっとほうじ茶ラテを指さした。
「あ、勿論、冷やしにゃんこお願いします!」
『はいはーい』
 飲み物の準備をしているのか、屋台の奥から大きな声が響く。
 屋台の影では、白い体躯にいろんな模様を描いた雪猫たちが思い思い寛いでいるのが見えた。
 其の、のんびりとした様子に、澪の表情も思わず緩む。
 怒涛の一か月だった。戦争だけではない、此度行われた水着コンテストも、大盛り上がりで。たくさんの猟兵に、妖怪たち。
 素敵な水着はたくさんあった。けれど、日々の自分磨きを怠らぬ澪の努力の賜物か。今年も念願叶って入賞する事が出来た。
 此れが、例え一時の平穏だとしても。ゆったりと過ごせる時間を愛おしく思う。
『はい、どうぞ』
 まず、マタタビ花火を手渡されて、次いで飲み物二つ。
『そして、此方が当店自慢の冷やしにゃんこですー』
 そうして歩み寄ってきたのは、真白な体躯に片耳が灰色に染まった雪猫。ゆったり歩く姿は気品が漂う様で、美しい。
「ありがとうございます!」
 後ろの方で小さく、ねこさん…!と聞こえた声に、小さく笑って。
「さあ、行こうか神宮時さん」
『え、あ、は、はい。…ありがとう、ござい、ます』
 屋台から澪が歩き出せば、其れに続くように雪猫も歩き出す。
 そうして、辿り着いた椰子の木陰。かさかさと、椰子の葉が揺れる音と、波のさざめき周囲に響く。吹き抜ける風は生温く、知らず汗が額に滲む。
 水分補給は大事だと、ミルクティーをちびちび飲みながら、空いた手で澪は雪猫の背をそっと撫でる。
 ひんやりとした、それでいて柔らかな感触が手に伝わり、思わず頬が緩む。
「えへへ、冷たくて気持ちい♪」
 人に慣れているのか、雪猫は動く事無く澪の手を受け入れている。撫でられるのが好きなのか、其の表情は何処か柔らかい。
「濡れて冷たくなった猫ちゃんは触ったことあるけど」
 しっとり濡れた猫も悪くはないのだけれど、このままでは風邪をひいてしまうのでは、という心配の方が強かった。
「もふもふ保ったまま冷たい猫ちゃんは初めてだよ」
 ひんやり、もふもふ。もっちり、もふもふ。
「はぁ~、癒されるぅ~♪」
 ついでに肉球をつんつんと突いては、ぷにぷにとした堪らない感触に大きく感嘆の息を吐いて。
 そんな戯れの様子を、じぃ、と好奇の彩を宿して蒼はガン見していた。普段の無表情は何処へやら、其の表情は輝いている。
 其の心中は、ねこさんかわいい、ねこさんさいこう、である。
 気付けば、飲み物は全て無くなって。空いた容器を傍らに置いて、澪は雪猫へ話しかける。
「雪猫さん、ちょっとお腹を失礼します!」
 其の言葉の意図を組んだのか、ころり、と雪猫がお腹を見せて待機。緩む頬を抑えきれず、そのお腹に目掛けて澪は―。
 ―もふっ!
 顔を沈める。
 ひんやりとした感触が、夏の熱気で火照った頬を優しく冷やす。とく、とくと雪猫の鼓動が伝わって。身体は冷たいのに、其の体躯からは、太陽の薫りが漂う。
 控えめに言って最高だった。
 ―てし、と澪の髪に咲く金蓮花に興味を示したのか、雪猫がてしてしと花を突く。
 ひとしきり、冷やし猫吸いを堪能した澪が、そっと蒼に雪猫を差し出す。
「神宮時さんもどう?冷たくてふわふわで気持ちいいよ~」
 なんて言いながら、蒼の頬に肉球をぺたり。瞬間、固まるグリモア猟兵の少女。
 白い頬が、珍しく朱に染まるのを目の前にして、思わず澪の口から笑い声が零れる。
「ふ、ふふふ」
『ひえひえの、ねこさん…!』
 そっと澪から雪猫を受け取った蒼が、恐る恐る雪猫を撫でて、そっと顔を埋める。動作一つ一つに感動する其の様は、見ていて面白い。
 その笑い声を聞いてか、我に返った少女はそっと頬を染めたまま、澪へと雪猫を差し出す。
「時間もあとちょっとだし、マタタビ花火、点けようか」
 そう告げれば、雪猫の瞳がキラキラと輝く。花火の先端に火を灯せば、ぱちぱち弾ける、白、水色、紫の雫たち。
 漂う煙は、甘い香りを僅かに放つ。其の煙に惹かれて、雪猫が零れる雫に手を伸ばして。
 ―ぺしぃ!
 熱さはないと分かっていても、火花で遊ぶ雪猫の不思議な光景に、思わず澪は驚いてしまう。けれど、雪猫が真剣に火花を叩き落す姿を見て、思わず笑みが咲く。
『……栗花落様。…今日は、ありがとう、ございます』
 ぽつり、とグリモア猟兵の少女が言葉を零す。ふりふり、と花火を振りながら。
「楽しんでもらえたなら、良かった」
 と澪は優しい笑みを零す。きっと、此れからまた激しい戦いが始まるのだろう。
 ならば、今此の時だけは、癒しの一時を。

 にゃぁー!と浜辺に雪猫の楽しそうな鳴き声が木霊して、空へと消えていった。
 澪の夏休みは、まだまだ終わらない―。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】

冷やしにゃんこ?
おや、雪猫さんですか
夏にぴったりにゃんこさんですねぇ

彼女の小さな手が僕を握り屋台へと導く
はい、かき氷ですね。
僕も同じのに
冷やしにゃんこお願いします。

ふふっ、本当に可愛いらしいですね
もふもふ感は同じ、でも冷たい
不思議ですねぇ
そわそわしてる彼女に首を傾げながら彼女の言葉にそちらを向いて
おや?

後ろに回る娘に何かするのだろうと気づかれないようにくすりと笑って

冷たい、背中ににゃんこさんですか?おやおや悪戯な子ですね
お返しにと気づかれないように
頬に肉球をぺたり

ふふっ、遊んでくれたにゃんこのご褒美に
わたたび花火をしましょうか?


ルーシー・ブルーベル
【月光】

冷やし、にゃんこ…?
冷やし、にゃんこ…!遊びたい!!

ゆぇパパの手を引き屋台へ
これ、これ!とのぼり旗を指差して
何にしよう?かき氷がいいな
パパは?いっしょね!
忘れずこのオーダーも
冷やしにゃんこおねがいします!

ふわふわ、ひえひえ
フシギね
とても気持ちいい
そわ、もたげるイタズラ心
わーあっちに黒ヒナさんとララそっくりの浮き輪があるー!(棒読み)
パパが指さした方を向いて下さったなら

にゃんこさんを抱えて、後ろに回って
お背中に直接にゃんこさんをインしてみるわ!
ふふー、ひんやりビックリして下さるかな

あら?むう
あまりビックリなさらな…にゃーー!!

うう、ルーシーがひんやりビックリしちゃった
またたび花火、する!



●冷やしにゃんこ旋風
 ゆったりと一握りの白い雲が流れる。空は何処までも澄み渡って、果てを知らぬよう。
 さくさくと砂を踏み締めれば、軽い感触と共に、鳴くような音が小さく響く。
 吹き抜ける風は、生温いけれど、からりとした天気の所為か、不快感は全く感じない。
 ゆっくりと浜辺を歩くルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)が、其れを見つけたのは必然なのかもしれない。
 秘色の瞳が、のぼり旗に書かれた文字をじっと追う。
 ”冷やしにゃんこ、はじめました”
 青色に染め抜かれた布地に、赤い文字が目を引く。
「…冷やし、にゃんこ…?」
 きゅ、とイルカのぬいぐるみを胸に抱きながら、目の前の文字列をもう一度追う。
「冷やし、にゃんこ…!」
 何とも魅力的な文字列が目の前にあった物である。
「冷やしにゃんこ?」
 愛しき娘の零した言葉を拾い、朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)が思わず首を傾げる。
 そっとルーシーの視線の先を辿れば、冷やしにゃんこ、と書かれたのぼり旗に辿り着く。
「おや、雪猫さんですか」
 夏にぴったりにゃんこさんですねぇ、と己の知識の奥底にある雪猫の姿を思い浮かべながら、ユェーが呟けば。
 控えめに、けれどしっかりとユェーの手を引き、きらきらとした瞳をルーシーは向ける。
「…遊びたい!!」
「おやおや」
 そんな素敵なお願いを無下に出来る物などこの世にいる筈も無く。小さな手に引かれるまま、二人は屋台へと近付いていく。
 屋台の影になっている部分では、様々な猫たちが思い思い寛いでいた。共通しているのは、皆白い体躯を持っている事だろうか。
 のぼり旗を指さしながら、瞳に映った無数の猫に姿に、ルーシーの瞳が輝きを増す。
『おや、いらっしゃい。商品お買い上げしてくれたら雪猫一時間貸し出すよ』
 二人の姿に気が付いた店主がにこやかに応対する。其の言葉に、ルーシーの頬が朱に染まる。
 其の姿を見て、ユェーの頬にも小さく笑みが浮かぶ。
 店頭には、色とりどり飲み物の他に、片手で食べれる軽食や冷菓が幾つか並んでいた。
 じっと店頭を見つめながら、ルーシーはそっと一つのディスプレイを指さす。
「何にしよう?…かき氷がいいな」
 じりじりと照り付ける太陽が、じりじりと砂に熱を孕ませて。じとり、と滲む汗が一筋、背中を流れ落ちた。
「はい、かき氷ですね」
「パパは?いっしょね!」
 暑さに火照った身体を冷やすのにはちょうどいい、とユェーは小さく頷いて。早く、早く、と急かす様にルーシーが再びユェーの黒猫パーカーの袖を引く。
 其の様子に笑いながら、店頭で注文を待つ店員へと注文を告げる。マタタビ花火も忘れずに。
 あ、と小さな呟きが零れ落ちて。そっと背伸びして、ルーシーは溢れる期待を胸に、一つの言葉を口にする。
「冷やしにゃんこおねがいします!」
 其の言葉を聞いた雪猫が、ぴくり、と耳を動かすのが視界の端に見えた。
「ふふ、冷やしにゃんこもお願いします」
『はーい、少々お待ちくださいねー』
 しゃりしゃり、と氷を削る音が周囲に響いて。氷の天頂に、鮮やかな糖蜜が掛かれば、じわり、と拡がる黄色。
『お待たせしましたー。まずはかき氷お二つとマタタビ花火ですね』
 綺麗に盛られた檸檬のかき氷二つとマタタビ花火をユェーが受け取って。
『はい、此方、冷やしにゃんこになります』
 そうして差し出された雪猫は、目の周りが薄い茶色に覆われていた。そっとルーシーが抱き留めれば、刹那伝わるひんやりとした感触。
「ふわふわ、ひえひえ…」
 柔らかな感触が手に伝われば、思わずそんな言葉が零れた。イルカのぬいぐるみとは違う、不思議な感触。
 頬を染めるルーシーを見て、ユェーの頬も思わず緩む。
(ああ、何て平和で愛おしい光景だろうか)
「木陰の方に移動しましょうか、ルーシーちゃん」
「ええ、ええ。そうね、ゆぇパパ。ここだとにゃんこさんも暑いものね」
 太陽は頭上真上。降り注ぐ陽光は、先程よりも少し強くなっているように感じる。
 くるりと周囲を見回せば、椰子の樹が群生している場所が目に映る。日陰も多く、休むには最適に見える。
「あちらに向かいましょうか」
「うん!」
 日陰へと向かう足取りは、弾んでいて軽い。

 そうして辿り着いた木陰に、腰を下ろして。雪猫も地面へと降ろせば、くぁ、と身体を大きく伸ばして、お休みの態勢。
 先ずはかき氷で火照った身体を冷やして。果たして、猟兵が熱中症に罹るのかはともかくとして、冷やしにゃんこと遊ぶのならば、体調は万全にしておくことに越したことはないので。
 イルカのぬいぐるみは傍らにそっと添えて。そっとルーシーが雪猫の背中を撫でれば、掌に伝わるひんやりとした感触。
「とても気持ちいい」
 ユェーも雪猫の頭を撫でれば、ふかふかとした毛皮の感触。ひんやりと冷たい温度が手に伝わる。
「ふふっ、本当に可愛らしいですね」
 優しく細められる瞳は、雪猫を愛でるルーシーを映している。
 ふわふわしているのに、ひんやりしている、不思議な感覚。そっとお腹を撫でれば、とく、と小さな鼓動が掌を通して。
 撫でられるのが気持ちいいのか、雪猫の喉が小さく鳴った。
 どれだけ触れても、雪猫の身体が温まる事は無く、程よい冷気が心地いい。
 ―そわ。
 ふと、浮かぶイタズラ心。秘色の瞳が、きょろ、きょろと落ち着きなく彷徨う。
 小さく首を傾げたユェーの背後を、ルーシーが指さす。
「わーあっちに黒ヒナさんとララそっくりのうきわがあるー!」
 何処か感情の伴わぬ声をあげたルーシーが指さしたのは、屋台立ち並ぶ一角。
「おや?」
 ユェーの肩の上で、黒ヒナも小さく首を傾げて。そっと指さされた方を向けば、かさり、と砂を踏み締める音が小さく鳴った。
 慎重に、何かを狙う娘の姿に敢えて気付かぬふりをして。其の時を待てば。
 そっと雪猫を抱えたルーシーがユェーの背中へと回って、音を立てぬように雪猫を持ち上げて。
 ユェーの無防備な背中に、雪猫を、インした。
(ふふー、ひんやりビックリして下さるかな……)
 ひんやりとした温度が、背中を通り抜ける。
「背中ににゃんこさんですか?」
 悪戯な子ですね、と笑うユェーの表情は、ルーシーが思っていた驚きの彩は無い。
「あら?むう……」
 ゆぇパパの吃驚した姿が見られると思ったのに―、とルーシーが視線を下げた瞬間。
「にゃーーーーー!」
 お返しとばかりに、ひえひえの肉球をルーシーの頬に押し当てれば、何とも可愛らしい悲鳴が浜辺に響き渡った。

 ぷぅ、と頬を膨れさせたルーシーの姿に、笑いを嚙み殺しながら、ユェーはマタタビ花火をふりふりと降る。
「ふふっ、遊んでくれたにゃんこのご褒美に、マタタビ花火をしましょうか?」
 遊ぶの?遊ぶの?と期待の彩を浮かべる雪猫の姿。其の姿を見て、先程の膨れっ面は何処へやら。
「またたび花火、する!」
 元気な声が、浜辺に響き渡った。
 ぱちぱちと弾けるマタタビ花火にじゃれつく雪猫の姿に、ルーシーが頬を緩ませる。
 何とも平和な一時。此の、優しい時間をくれた愛娘を何時までも守らねば、とユェーは決意新たに抱いて。
 夏の想い出がまた一頁、増えていく―。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可

肉まんとフルーツジュースを買って…冷やしにゃんこお願いしますっ!
もぐもぐと飲み食いし終わった後に冷やしにゃんこを抱き寄せて・・・
冷やしにゃんこ…とてもかわいいのですよ~♪

そうそう!マタタビ花火もあるので火を付けてみましょう!
わわわっ!良い香りなのです♪
…ってにゃんこさん!?な…何だか冷気が渦巻いてて…
あ…足が凍って…るどころか身体も凍り付いて…
もしかして…にゃんこさんまたたびで興奮して冷気を…
わわわ!?周りが吹雪の渦に…だ…誰か―――
(吹雪が収まった後には氷像と化したテフラとそれに身を寄せてすやすやと眠るひやしにゃんこが…)



●ひえひえ注意報
 ざくざくと、砂を踏み締めて歩くけれど、軽い砂は足跡を掻き消して。
 るんるん、とした気分でテフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)は浜辺を歩く。
 今日はなんだか新たな(状態異常の)出会いの予感がするのである。
(いやいや、まさかそんな。愛らしい雪猫がそんな、まさか!)
 胸中では否定しつつも、期待は膨らむばかり。
 冷やしにゃんこ、はじめました―。
 そんなのぼり旗が立つ屋台へと近付けば、鼻腔を擽る良い香り。時刻はちょうどお昼を過ぎたあたり。
 小腹も空くというものである。幾つか並ぶ軽食の中からテフラが選んだのは、ほかほかと湯気を立てる、海鮮入りの肉まん。
 黄色と橙のグラデーションが目に鮮やかなフルーツジュース。
「あ、冷やしにゃんこもお願いしますっ!」
『少々お待ちくださいませー』
 そうして、商品を受け取って。少し離れた位置で、ぱくりと肉まんを一齧り。
 溢れる肉汁と、海鮮の旨味が双方の良さを邪魔する事無く絡み合って。屋台の食べ物など、と思っていたけれど、此れは美味しい。
 フルーツジュースも、オレンジの酸味とマンゴーの甘さが際立って。肉まんの塩味とジュースの甘みがちょうどいい。
「ふぅ」
 お腹も膨れれば、お待ちかねの冷やしにゃんこタイム。
 ゆっくりと雪猫をもふる為、邪魔されぬように人気の無い場所へと足を運ぶ。
 何処か目つきの悪い雪猫を抱き寄せれば、ひんやりとした感触がテフラに伝わる。
「冷やしにゃんこ…、とても可愛いのですよ~♪」
 そっと頬擦りしてみれば、ひえひえした感触が火照った頬をひんやりと冷やしてくれる。
 ひとしきり、撫で撫でもふもふしていたテフラだけど、先程の屋台でマタタビ花火を買った事をふと思い出す。
「そうそう!マタタビ花火もあるので火を付けてみましょう!」
 グリモア猟兵の話によれば、マタタビ花火は雪猫のお気に入りとの事。
 けれど、此の花火が波乱を呼ぼうとは…。
 一本では面白くないだろう、とテフラが買ったマタタビ花火全てに火を付ければ、轟、と大きな火花が浜辺へと降り注ぐ。
 ふわり、と濃い甘い香りが周囲を満たす。
「わわわっ!良い香りなのです♪」
 ひやり―。
 突如、テフラの足元にひんやり―、ではなく、冷え冷えとした冷気が漂う。
 其の感触に、ふと首を傾げて、借り受けた雪猫の方へと視線を映せば。
 雪猫を中心に、冷気が渦を巻いて。ぱち、ぱちと、空気が凍るような音が爆ぜた。
 ぱきり、と不思議な音がして、思わずテフラが自分の足元を見れば―。
「あ、足が凍って、る…?あ、いや、それどころか、身体も、凍り、つい、て…」
(もしかして、にゃんこさんまたたびで興奮して冷気を…?)
 ぶわり、とテフラの周囲に冷気が吹き荒れる。
「わ、わわわ!周りが、吹雪の、渦に……」
 ―だ、誰、か―
 ぱきん、と助けを求める声は、氷と共に閉じ込められる。
 
 ―のちに残ったのは、一体の氷像と、其の傍で優雅にお昼寝に勤しむ雪猫の姿。
 次にテフラが気付いたのは、二時間後の事だった。
 何事もほどほどに―、と言う教訓を抱いた日だった。
 けれど、其れが生かされるかは、また別の話。

大成功 🔵​🔵​🔵​

国栖ヶ谷・鈴鹿
【ワイハン】
(白斑・物九郎f04631)猟団長と一緒!

【冷やしにゃんこ】
雪猫!冷やしにゃんこだって! すいませーん!またたび花火たっぷり抱えられるくらいください! 冷やしにゃんこ涼しい〜。 猟団長も触ってみて、すごく涼しくてかわいいよ!

【実験】
……そういえば、またたび花火で雪猫はメロメロになるみたいだけど……。(じーっと隣の猟団長を見つめて)
……猟団長、ぼくは今から花火をめいっぱい楽しもうと思うんだ。 ぼくは猟団長のことを信じてるから、花火をすることで起こる結果を楽しみにしてるんだ。
わかるよね?

(まさかの結果に)
……ここまで効くんだ……。
でも、みんなとっても幸せそうだし良いよね!


白斑・物九郎
【ワイハン】
(国栖ヶ谷・鈴鹿f23254と)


【冷やしにゃんこ】
触ってみろだァ?
ははぁ、コイツが冷やしにゃんことやらっスか
変わった化け猫も居たモンですわな……
おう、ネコ助
なんなら家来にしてやってもいっスよ
その気があんなら一人立ち出来た暁にゃ『動物の星』で『ワイルドハントの王』を探しに来なさいや(スカウトしつつも1時間後ちゃんと返す)


【実験】
マタタビ花火だァ?
ココにゃそんなモンもあったんですかよ

――って、なんスかそのフリ

言っときますけどもな
『猫キマイラにマタタビ』とかいうネタにノッかるのはいいとこ道化の仕事っスよ
王たる俺めがそんなゴロゴロゴロニャフーンZzz(ベロベロに酔っ払って幸せそうに寝る)



●猫に木天蓼
 はたはたと、青く染め抜かれた布が風に靡く。
 其ののぼり旗には、冷やしにゃんこ、はじめました、の文字が堂々と印字されて。
 きらきらとした表情を浮かべて国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)はのぼり旗を指さす。
「雪猫!冷やしにゃんこだって!」
 輝かんばかりの好奇心に触れる鈴鹿とは対照的に、ぐいぐいと手を引かれる白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)は、さしたる興味もない様子。
 けれど、引かれる手は振り払われる事無く、二人は一つの屋台の前に辿り着く。
「すいませーん!またたび花火たっぷり抱えられるくらいください!」
 其の注文にぎょっとしたのは、物九郎である。抱えられるほどの花火を、果たして彼女はどうすると言うのだろうか。
「冷やしにゃんこもお願いします!」
 そんな鈴鹿の注文に、苦笑い浮かべながら、店主が一抱えもあるまたたび花火を手渡す。
『一気に火を付けると、雪猫も驚くからね』
 と一言告げて。次いで、一匹の冷やしにゃんこ、基、雪猫を差し出す。
 ぱちくり、とした表情が可愛らしい、白い身体に、鼻周りが灰色に染まった雪猫だった。
 花火を付け取った手とは逆の手で、抱える様に鈴鹿が雪猫を抱きかかえれば、手に伝わるひんやりとした感覚。
 照り付ける太陽に火照った身体が、じんわりと冷やされていく様が心地いい。
「冷やしにゃんこ涼しい~」
 伝わる涼しさに、思わず鈴鹿の頬が緩む。
「ほらほら。猟団長も触ってみて、すごく涼しくてかわいいよ!」
 はい、と雪猫を差し出せば、怪訝な表情を浮かべながらも物九郎はそっと雪猫を受け取る。
「触ってみろだァ?」
 じぃとジト目で雪猫を抱き上げる其の手は、予想に反して意外に優しい。
「ははぁ、コイツが冷やしにゃんことやらっスか」
 雪猫を抱き上げたまま、じろじろと観察する物九郎に思わず鈴鹿が笑い声を零す。
「あはは!」
「何笑ってるんスか」
 何とも世界には不思議な猫がいたものである。
 大量のマタタビ花火を抱えたまま、鈴鹿がなるべく人の少ない方へ向かっていく其の隣で。
「おう、ネコ助。なんなら家来にしてやってもいっスよ」
 なんて、真剣に語り掛ける物九郎の姿に、また一つ鈴鹿に笑みが零れる。
「その気があんなら一人立ち出来た暁にゃ『動物の星』で『ワイルドハントの王』を探しに来なさいや」
 対する雪猫は、きょとんとした表情を浮かべるばかり。とは言え、雪猫は妖怪なれど、其処までの力はないので、辿り着くのは難しいのだけれど。
「ここでいいかなー!」
 屋台から少し歩いて。賑わう喧騒も遠のいた場所は、岩場が影になった、隠れ家のような浜辺。
 此処ならば、たくさん花火を楽しんだとしても、他の雪猫や海で遊ぶ人々に影響はないだろう。
 どさり、と重い音を立てて花火を砂浜に置いた鈴鹿が、ふと、夏休みを提案したグリモア猟兵の少女の言葉を思い出す。
 ―ひえひえの、ねこさんを、めろめろに、出来る、花火、です。
 そっと、隣を物九郎へと視線を移す。正確には、其の頭頂で揺れる、黒い猫耳を。
(……そういえば、またたび花火で雪猫はメロメロになるみたいだけど…)
 果たしてこれは、雪猫限定何だろうか。其れとも、猫種であれば、何でもメロメロになってしまうのだろうか。
 むくむくと沸き上がった疑問は、鈴鹿の好奇心を甚く刺激する。
 ちらり、と浜辺へと視線と落とせば、先程買った大量のマタタビ花火。
「……猟団長、ぼくは今から花火をめいっぱい楽しもうと思うんだ」
「お、おぅ?」
 突如振られた話に、物九郎の頭には疑問符が舞い踊る。そもそも、其の為に花火を買ったのではなかったのだろうか。
「ぼくは猟団長のことを信じてるから、花火をすることで起こる結果を楽しみにしてるんだ」
 ―わ か る よ ね ?
 にこり、と圧を感じさせる笑みを浮かべて、じり、と鈴鹿は物九郎へと詰め寄る。
「な、なんスかそのフリ」
 其れでは、まるで己がマタタビ花火に負けるのが前提のようではないか。
 大変面白くないその実験に、むぅ、と物九郎が唇を尖らせる。
「そんな、花火如きでどうにかなる俺めではないっスよ!」
 むん、と胸を張って宣言したのが15分前―。

「言っときますけどもなぁ~」
 一本、二本、三本。もういっそまとめて火を付けちゃえーとノリノリで実験を始めた鈴鹿も、思わず目を丸くする。
「……ここまで効くんだ……」
 鈴鹿の隣では、雪猫がふにゃふにゃになって砂浜を転がっている。
 更に、其の隣で―。
「そもそも、『猫キマイラにマタタビ」とかいうネタのノッかるのはいいとこ道化の仕事っスよ」
 言っている事は尊大であるけれど、呂律は回っておらず、べろんべろんである。
「というか、王たる俺めがそんなぁ……。…ごろごろごろにゃふーん」
 ぐわんぐわんと頭を回しながら、猫に木天蓼に対する自身の定義を語っていた物九郎がべしゃり、と砂浜に崩れ落ちるのも、きっと時間の問題だったのだろう。
 目を回しながら、けれども、其の頬は真っ赤に染まって。
 つまり。―全力で酔っ払っていた。
「…まさか、こんな結果になるなんて…」
 全くもって期待を裏切らない猟団長である。
 そっと、隣に転がる雪猫の背を撫でれば、ひんやりとした感触が掌を伝う。
「でも、まあ。みんなとっても幸せそうだし良いよね!」
 こうなってしまったら仕方ない。鈴鹿はいっそ、開き直る事にした。
 雪猫も、物九郎も其の表情は幸せに蕩けているのだし!
「幸せならきっと問題ない!きっと、そう!」
 其の呟きは、遠くに広がる地平線だけが聞いていた。

 この後、どうなったったのかは、当人たちだけのみが知る―。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
冷やしにゃんこ……ひえひえの猫さん……はっ
(うずうずしている猫好きの怪奇人間)
(――の肩でめちゃくちゃジェラってる猫の使い魔ラトナ)
ラ、ラトナお願いします、一時間だけですから……!
あなたのもふが一番なのは承知してます!
後で存分にあなたをもふりますから……!!
(己のもふもふをこれでもかーと頬に押し付けるねこさん)

(※説得に大分かかりました)

えぇっと、ラムネとマタタビ花火をお願いします、あと冷やしにゃんこも
わぁ……すごい、本当にひえひえの猫さんなのですね
気持ちいい……っと、そうだ(ラムネ飲みつつ花火に点火)

(花火にラトナも反応している)
Oh……so cute……(思わず二匹をスマホでパシャリ)



●にゃんこじぇらしー
 さわさわと、椰子の葉が擦れ合い、軽やかな音を奏でる。
 同じように、はたはたと揺れるのぼり旗を見て、スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は胸の高鳴りを抑えきれずにいた、
「冷やしにゃんこ……、ひえひえの猫さん……」
 そわそわ、うずうずと落ち着きなくのぼり旗を見つめるスキアファール。―の、肩で物凄いジト目で彼を見つめる、もわもわの毛並みを持つ猫妖精・ラトナ。
 其の視線は、近くにこんな神掛かったもふもふの自分がいるというのに、他の猫に現を抜かすのか?という意味合いが込められている。
 痛い、滅茶苦茶視線が痛い。
「ラ、ラトナお願いします。一時間、一時間だけですから……!」
 たし、たしと、ふわっふわの尻尾が手を伸ばしたスキアファールの腕を叩き落とす。
「あ、あなたのもふが一番なのは承知してます!」
 ふい、と不満の彩を宿した黄金の瞳が、スキアファールから逸らされる。
「後で存分にあなたをもふりますから……!!!!」
 けれど、此方も譲れない。猫好きとしては、此の珍しい雪猫と触れ合う機会を逃す訳には。
 ぷにぃ―。柔らかな肉球が、頬に当たる。暖かな、けれどもっちりとした肉球が。
 そんなに他の猫がいいのか、いいのか!と抗議するようにぐりぐりとふわふわの頭を押し付ける。
「ああああ、ラトナの、ラトナのデレが…!」
 引きはがすに引きはがせないスキアファールと、他の猫に浮気駄目絶対のラキアの攻防は、太陽が緩く傾くまで続いた。

 何とか、最上のもふ猫妖精を宥め賺して、ようやくスキアファールは屋台の前に立つ。
『いらっしゃいませー』
 にこやかに店員が笑顔で挨拶する中、スキアファールの視線は屋台の影で微睡む雪猫の姿に釘付けだった。
(いろんな、冷やしにゃんこが…)
 内心では、猫好きの血が騒いでいるけれど、そんな様子は全く見せず。
「えぇっと、ラムネとマタタビ花火をお願いします」
 ―あと、冷やしにゃんこも。
 そうして手渡されたラムネはキンキンに冷えていて、外気に晒された瓶には水滴が生じて、たらりと一筋流れて落ちた。
『にゃー』
 マタタビ花火を受け取れば、お待ちかねの冷やしにゃんこ、―雪猫が奥からとてとてと歩いてくる。
 白い体躯に、黒の靴下猫。つぶらな瞳がなんとも愛らしい。
 雪猫を引き連れて、スキアファールが先程の椰子の木陰へと戻れば、たしーん、たしーんと不機嫌そうに尻尾で地面を叩くラトナの姿。
 ちょっぴり罪悪感に苛まれながら、そっと雪猫に触れれば、瞬間伝わるひんやりとした感触。
「わぁ……、すごい。本当にひえひえの猫さんなのですね…」
 初めての感触に、雪猫を撫でる手は止まらない。猫好き故か、猫が喜ぶポイントを心得ているスキアファールの手に、雪猫も満足そうに喉を鳴らす。
「気持ちいい……」
 からん、とラムネのビー玉が瓶に当たって、軽やかな音を立てた。じりじりと肌を焦がす熱が、雪猫の発する冷気で静まっていく。
「あ。……っと、そうだ」
 雪猫から手を離し、先程購入したマタタビ花火にそっと火を灯す。
 ―ぱち。
 小さく火花が瞬いて、しゅわ、と白や青、紫などの涼し気な色彩の花が咲いた、
 ふんわりと、仄かに漂う甘い香りに、雪猫も、不貞腐れていたラトナもぴくり、と小さく身体が跳ねる。
 ゆっくりとマタタビ花火に近付く二匹。
 降り注ぐ火花を捕まえようと、両手で空を叩く雪猫。
 落ちて尚、弾ける火花を叩こうと、ぺちぺちと砂を叩くラトナ。
 控えめに言って、猫好きにとって天国だった。
「Oh……」
 思わず、スキアファールが両手で顔を覆って天を仰いでしまったのも、きっと仕方の無い事。
 ―パシャパシャパシャ。
 連続で切られる、シャッター音。
「So Cute……!」
 マタタビ花火に戯れる、二匹の様子を逃してなるものかと、しばしスマホのシャッター音は鳴り止む事は無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
f33637/杜環子さん

方々から聞こえ来る
しあわせのねこ合唱

誠に魅力的ですねぇ

笑みはふくふく
愛らしいねこ達がじゃれ合う姿に
喜びが隠し切れないのは私も一緒

私もまたたび酒…ではなく
檸檬曹達の冷酒を頂こうかしら
それと勿論――冷やしにゃんこ、くださいな

杜環子さんの懸命な様子も可愛らしくて
ついつい吹き出しそうになるのだけれど
冷やしサバトラさんに顔を埋めて
肩を震わせるに留めましょ

…ひんやりですねぇ(ねこ吸う)

擽ったそうに
たしたしと猫ぱんちをされるのさえ
しあわせ気分

ころころふわふわ
腕の中で毛並みを撫でたなら
嬉しそうに擦り寄ってくる子が愛おしい

おや、花火――

ですか、と答える前に
不意打ちねこアタック

…天国ですね


壽春・杜環子
都槻様(絲遊・f01786)とご一緒

「冷やしにゃんこ……なんと魅力的な響きでございましょうか」

猫の鳴く屋台を見てそわそわ
何を買ったら良いかしら……?
都槻様は何に……わ、わ、たいへん、
あっちに猫が、猫がおりまするっ都槻様……!

悩んだ果てに意を決して

「またたび花火と、……冷たいお茶と、えっと、その、ひ、冷やしにゃんこを下さいませ!」

言えましたわ
ちゃんと言えました、都槻様……!

ふわ……もふ……ひえ……
可愛い……なんと可愛い
都槻様の猫も可愛いこと

「ふふ、都槻様は撫でるのがお上手ですのね」

手持ちのまたたび花火をくるくる
「都槻様も花火なさいますか?」

と、差し出す傍ら弾ける花火に惹かれた猫が迫っていたなんて



●アグレッシブにゃんこ
 青く透き通る空は、翳りを知らず。太陽光を反射する大海は、穢れを知らず、何処までも広がっている。
 浜で、海で遊ぶのも一つの醍醐味なのであろう。
 けれど、今目指すのは其れに非ず。そう、此の世界、此の場所で、今しか触れ合えぬ物があるのならば。
 人も妖怪も、其れ以外も、きっと期間限定の文字には弱い。
 ぱたぱたと波風に揺らめく、青いのぼり旗。染め抜かれた布に描かれた、冷やしにゃんこ、はじめましたの文字と、隅っこに可愛くデフォルメされた猫のイラスト。
「冷やしにゃんこ……。なんと魅力的な響きでございましょうか」
 揺らめくのぼり旗を見つめながら、壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)と言葉を零す。
 耳を澄ませば、にゃんにゃん、と響く猫の合唱に都槻・綾(絲遊・f01786)の口元はゆるりと緩む。
 何とも平和な、夏の風景が其処には在った。
 猫の鳴き声に惹かれるように、二人の足は屋台へと向かう。
 ちりん、ちりんと軒先に吊るされた風鈴が軽やかな音色を奏でる。其の音を聞くだけで、肌を焦がすような熱が、少し冷める様な気がした。
 屋台には、飲み物や軽食のディスプレイが飾られており、種類は多岐にわたる。
 けれど、杜環子の視線は、屋台の奥で寛ぐ雪猫たちに釘付け。そっと傍らに立つ綾の腕を引く。
「あっちに猫が、猫がおりまするっ!都槻様……!」
 興奮冷めやらぬ様子で、雪猫が寛ぐ一角を指さして。
「ふふ、本当ですね」
 ふくふくと笑みを浮かべて、杜環子が指さした方へ視線を向ければ、御呼ばれするまでは暇なのだろうか、雪猫同士のじゃれ合いが目に入って。
 ぱっと、綾の周囲に花が咲くような気色の彩が満ち溢れる。
 雪猫たちに熱い眼差しを送る二人を見て、屋台の店主の笑みが深いものに変わる。
『さてさて。お客さんたち、何にしますか?』
 ふとかけられた店主の声に、はっと綾も杜環子も意識を引き戻して。改めて、屋台の商品へと目を移す。
「何を買ったら良いかしら……?」
 こういった屋台で買い物をする事自体が初めての杜環子が、困ったように綾へと視線を向ける。
「そうですね。こういった場合は、気になるものを買ってみるのもいいかもしれませんね」
 其の言葉を聞き、じっと店頭を見つめる杜環子が選んだものは―。
「すみません、またたび花火と、……冷たいお茶と、えっと、その、ひ、冷やしにゃんこをくださいませ!」
 冷やしにゃんこ、の部分だけ込める熱量が違うけれど、朗らかに笑いながら店主があいよー、と応答の返事を告げる。
「私もまたたび酒…、ではなく、檸檬曹達の冷酒を頂こうかしら」
 勿論、冷やしにゃんこ、くださいな、と告げる事は忘れずに。
 わくわく、そわそわ。きちんと注文を告げられた事を、頬を染めて報告する杜環子の姿に、綾の顔には笑顔零れる。
 そうしてお待ちかねの飲み物と、冷やしにゃんこ―雪猫を受け取れば、ひんやりとした感覚が腕に伝わる。
 程良い冷気が、外気で火照った身体には心地いい。
 店の前では人の往来も有るだろう、と、ゆったりと寛げる場所を探せば、椰子の木陰が連なる場所があると、店主が告げる。
 雪猫を携えて、告げられた場所へと向かってみれば、確かに日差しは遮られ、風は温い。
 そっと腰を下ろせば、しゃらり、と砂が小さく鳴く音が響く。
 屋台で買った飲み物で喉を潤して、いざ、雪猫を愛でんと、杜環子はそっと其の背に手を這わせる。
 思っていた以上の冷たさに、思わず手を離し、紺碧の瞳を瞬かせる。
 もう一度、雪猫の背中に掌を乗せれば、ひんやりとした柔らかな感触が全体に伝わった。
「ふわ……、もふ……、ひえ……」
 語彙力の消失―。触れた瞬間に伝わる、ふわふわとした毛並み。ごわごわしておらずに柔らかなもっふもふが掌を包んで。
 暖かさではなく冷たさが、けれど其れすらも優しい冷たさに、感極まった杜環子が頬を上気させる。
「可愛い…。…なんと、可愛い……」
 きらきらと瞳を輝かせて雪猫を愛でる杜環子の姿に、綾は笑いを堪えきれず。
「……ふっ…」
 小さな其の声を耳に止めたか、ちらり、と杜環子の視線が綾に向くけれど。
 ―もちぃ。
 其れはサバトラの雪猫を抱き上げて、柔らかで豊かなお腹に顔を埋める事で誤魔化した。肩が震えているので完全には誤魔化し切れてはいないけれど、雪猫に夢中の杜環子はきっと気付いていない。
「……ひんやりですねぇ」
 雪猫のおなかに顔を埋めたまま、くぐもった声で綾がひんやりとした感触を楽しむ。
 ひえひえの体躯の雪猫であるけれど、其の身体からは太陽の温かい香りが漂う。
 突然の事に、ぺちぺちと雪猫が綾の頭を叩くけれど、叩かれる度に触れる肉球の柔らかさがなんともたまらず。
 ふは、と猫吸いから顔を離して。未だたしたしと綾の手を叩く雪猫を腕に抱いて優しく撫でたなら。
 機嫌が直ったのか、ごろごろと甘えたような声が喉元から響く。
「ふふ、都槻様は撫でるのがお上手ですのね」
 恐る恐る、猫を撫でる杜環子とは違って、綾の手つきは慣れているように迷いが無い。
 ふわふわ、ひんやりと、冷やしにゃんこを堪能したのならば。
 そっと杜環子が取り出した花火を見た、雪猫たちの瞳がきらっと輝きを増す。
 ぱちん、と花火に火を灯せば、ぱちぱちと炎の華が咲き零れる。
 ころころと、落ちた火花は球体となりて、小さく弾ける。
 触れても熱くない、不思議な花火。漂う煙は、ほんのりと甘い香りを漂わせて。
「都槻様も花火なさいますか?」
「そういえば、そんな花火もありま―」
 ぽす、と綾のお腹にダイレクトねこアタックが決まる。
「きゃ…」
 花火を持つ杜環子の手に、雪猫がじゃれつくように飛びついて。
 本当に、なんとも―。
「…天国ですね」
 楽園のような、平穏な一時が、ゆったりと、ゆっくりと流れるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月09日


挿絵イラスト