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パワーイズジャスティスだァァァァアアア!!!

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●パワーイズジャスティス!
 草木が生い茂る深い森の中、二人のゴブリンが走っていた。
 草を掻き分け根っこを飛び越え、時には躓きそうにながら走る。
 やがて二人は、森の中にぽっかりと空いた草原へと辿りついた。
 暖かい日差しが降り注ぎ、そよ風が吹く心地よい場所だ。ピクニックや昼寝をするのにはとても良い場所だろう。
 ……目の前の光景が無ければ、だが。
 そこには多種多様なモンスター達が、ピシッと綺麗に並んでいた。統率の取れた軍隊にも比肩するほどの、見事な整列だ。
 こんな状態では、草原に風情も何もない。
「整列ッ! キチッと並べい!」
「サー! イエッサー!」
 心地よい風を吹き飛ばすかの如く、モンスター達の野太い怒号が鳴り響く。
 最早こうなってしまえば草原は昼寝場所ではない。軍の訓練場だ。
 一番前でモンスター達を見渡すのは、ひと際身体の大きなミノタウルスだ。見事に鍛え上げられた筋肉が、太陽の光を浴びてキラキラと眩しい。鼻息荒く前を歩き回り、時折リズムをとる様に大斧の柄で地面を叩いている。
 ミノタウルスの視線を全身に浴びる最前列に居るのは、黒々と鈍色に輝く鎧を着た騎士たちだ。見事な装備品を身につけており、遠目から見たらしっかりした騎士団にしか見えないだろう……首より上が無い事を除けば、だが。
 そして騎士たちの後ろには有象無象の小型モンスター共が並んでいる。遅れてやってきたゴブリン二人は、こそこそっと最後尾へと身を潜めた。
「……ふむ! 遅れた奴がいるらしいがまあ構わん、別によろしい!」
 何がよろしいのか、ミノタウルスは大斧を地面へ叩きつけながら怒鳴る。
 物凄い力のせいで、哀れな草原は見事に抉れてしまった。大穴が空いている。
「我々は弱肉強食の世界に生きている。そこを支配するのは何だ、アルバートッ!?」
 ミノタウルスが騎士の一人に大斧を向け、詰問する。
 騎士アルバートはピシっと姿勢を正し、臆する事なく答えた。
「力です、サー!」
 頭が無いのにどこから出ているのやら、歴戦の勇士といった渋い声で騎士アルバートは答えた。
「よろしい! 弱肉強食の世界では力こそが掟。では力とは何だ、ベイガーッ!?」
 隣に居た騎士に、ミノタウルスの矛先が向く……向けられているのは大斧だが。
 騎士アルバートとは違い、騎士ベイガーは暫し反応が遅れた。
「……筋肉であります、サー!」
「ぶぁかもん! 答えが足りんッ! それでも騎士か貴様はァッ!」
「グウッ! 申し訳ありませんッ、サー!」
 ミノタウルスが大斧を振り回し、面の方で騎士ベイガーの鎧を殴り飛ばした!
 無茶苦茶な使い方である。空気抵抗もあるので、余程の力がないと出来ない。
 哀れなのは騎士ベイガーの鎧である。見事な装飾が潰れてへこみ、急にボロっちく見えるようになってしまった。
「いいか貴様ら、確かに筋肉はこの世で最も大切な物の一つだ! だが、力とは筋肉によってのみ得られるモノではない。他に何がある、チャーリーッ!?」
「ハッ! 技と知恵であります、サー!」
 騎士チャーリーが即答し、ミノタウルスは満足そうに大斧の柄で地面を叩いた。
「よろしい! その通り、筋肉と、技術と、知恵! この三つが兼ね合う事で、我々はより上質な、より強い力を手に入れる事が出来るのだッ! 何か質問はないかッ!?」
 ミノタウルスが大声を張り上げ、整列したモンスター達を見渡す。
 そこで、おずおずと最後尾から、遅れてやってきたゴブリンの一人が手を挙げた。
「むっ! そこの小さなゴブリン、何かね!」
「チカラ……チカラハナニニナル……?」
 ゴブリンはたどたどしく言葉を紡ぐ。その質問を聞いたミノタウルスは、興奮したように鼻息を荒げた。
「見事な質問だ! 力があれば何が出来る? なんでもできる! 力こそ正義、パワーイズジャスティス! 故に我々は力を求めるのだ! 強者を求めるのだァ!」
 興奮したように叫ぶと、ミノタウルスはそのまま大斧をブンブンと振り始めた。
「故に今から貴様らの強化訓練を行うッ! 行くぞォォォォォォォオオオオ!!!」
「サー! イエッサー!」
 草原どころか森中にモンスターの怒号が響き渡る。
 それは風に乗って、近くの集落にまで届くほどだったという。
 ……哀れなのは、強化訓練に用いられる予定となる、その一般の集落であった。

●グリモアベース
「いえーい! 依頼だぞ猟兵諸君、みんな集まれー!」
 グリモアベースにて、一人の少女がぴょんぴょん跳ねながら騒ぎ立てていた。
 彼女はソラ・ツキノ。サイボーグ兵士のグリモア猟兵だ。
「力って素敵だよねー、大火力! 超スピード! 大魔術! 君達猟兵諸君も、ユーベルコードなんていう、多種多様な素敵パワーがある! 勿論アタシもだよ!」
 ソラは満面の笑みを浮かべ、くるくると回る。
「え? 何でこんな話するかって? 今から依頼に行ってもらうからだよ! 聞きたいよねー、聞いちゃおう! 君も君も君もみーんな!」
 ソラは凄まじくハイテンションに喋りたて、ばーん、とホログラムを映し出した。

「それじゃあブリーフィング! 今から行ってもらうのはアックス&ウィザーズにある、村の一つだ!」
 ホログラムに表示されているのは、実に小さくつつましやかな村だった。
「アタシが予知しちゃったんだけど、今からこの村、モンスター達に蹂躙されちゃうの! 蹂躙って言うとちょっと変かな? まあいいや、とりあえずテレポートして、どうにか猟兵諸君の力で対応しちゃおうってわけ!」
 ぽん、とソラがホログラムを弾くと、表示されている映像が変化した。
 映し出されているのは、赤い身体のミノタウルスだ。
「モンスターを率いてるのは、このミノタウルス! ちょ~脳筋だけど、脳筋だからこそ力を求めてるみたい。率いてるモンスター達の訓練と称して、村を襲おうとしてるの!」
 ぱちん、とソラが手を叩くと、ホログラムが消えた。
「という訳で、依頼の流れはこんな感じ。有象無象のモンスター達をなぎ倒す、中堅のモンスター達をなぎ倒す、そしてリーダーのミノタウルスをボコボコにする! どう、超分かりやすいシンプルな依頼でしょ!」
 にぱっと満面の笑みを見せて、ソラは言った。

●シンプルイズベスト?
「まー、モンスター達をなぎ倒してボコボコにする……って言うだけ言うと、超シンプルな依頼だけど、結構重要なんだよ、これ!」
 ソラはくるくると回り、猟兵たちの顔を覗き込んだ。
「これはモンスター達の強化訓練。だから、これに成功しちゃうとモンスター達が強くなって、どんどん手に負えなくなっちゃうの。そんで、それを食い止められるのは、なんと猟兵だけ! つまり諸君らの手に、アックス&ウィザーズの未来がかかってるんだ!」
 そう言うと、パチンとソラはウインクした。
「レッツゴーイェーガー、君たちが集落を守るヒーローだ! そしてアックス&ウィザーズの救世主だ! 頑張ってきてね!」


苅間 望
 戦うのは好きですか? それとも色んな策を練るのがお好き? 素早さと身のこなしで、敵の攻撃を掻い潜るのは?
 全部お好き? ならば、是非参加してみて下さい……この脳筋依頼に!
 そうでもない? たまには戦いまくるのも楽しいですヨ!
 ……戦争の真っ最中なのに通常依頼で戦いばっか? 多分大丈夫、世界が違うので!

 どうも、初めまして or こんにちわ。苅間望と申します。

 オープニングを読んで「戦ってばっかじゃねーか!」と思いましたか。
 まさにご明察の通りです。
 今回は戦って戦って戦いまくる脳筋依頼です。
 ギャグもネタもシリアスもなんでもござれ、とにかくモンスターを倒せばOK!
 ヒーラーも大歓迎、支援も最高にクールだ!

 ……エッ? オープニングが長すぎて一バイトも読んでない?
 大丈夫です。今回は戦いまくるだけです。最初から最後まで戦闘たっぷりです。
 そんな脳筋依頼ですが、皆さんの参加を心からお待ちしております!
 是非気軽に挑戦してみて下さいね!

 さて、以下はアドリブや絡みについてです。一読しておいて貰えると助かります。
『アドリブについて』
 ※OKとあれば、アドリブが多めに入ります。
 ※NGとあれば、プレイングに従い、出来る限りアドリブを排します。
 何も無ければ少しアドリブが入ります。
『絡みについて』
 ※絡みOKとあれば、私の一存で他の猟兵さんと絡ませたりします。
 ※絡みNGとあれば、一人で対処してもらいます。
 協力してプレイする! という場合は、「この旅団の人とやる!」とか、「この猟兵さんとやる!」というのをプレイングに書いてもらえると助かります。
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第1章 冒険 『会戦』

POW   :    モンスターの群れに突撃をして前線を維持する。

SPD   :    モンスターの群れに突撃をして撹乱などをする。

WIZ   :    モンスターの群れに魔法などで攻撃する。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セシリア・サヴェージ
【WIZ】

はぁ…モンスターたちの会話を聞いていると頭が痛くなりますね。
私も筋力には自信がありますが、あまり一緒にされたくはないですね…その…脳筋とやらには…。

という訳で、たまには後方からの攻撃に徹するとしましょう。
自信があるのは筋力だけではありません。【全力魔法】【高速詠唱】を使い、ユーベルコード【ダークスピラー】で【範囲攻撃】を行います。
村を、人々を護るのが暗黒騎士たる私の使命です。モンスターたちにはここで全滅してもらいます。


アドリブ・絡みOK


レド・ダークライト
【他の方との絡み歓迎】【アドリブ歓迎】
かつて俺の師匠言った。「力こそパワー」と。
···勘弁してもらいたい。何故こうも脳筋ばかりなんだ。
だがこれは俺の力を師匠に示す良いチャンスなんじゃないか?
そうと決まれば実行だ。本気で叩き潰してやろう!

まずは「先制攻撃」で群れに特攻、先手を打つぞ。
「殺気」を飛ばして挑発し、寄ってきた敵を【殲滅の血肉】で「範囲攻撃」をしたうえで動きを止めさせてもらおうか。

そうなったらあとは片っ端からぶった斬る!
ふっ···はは、血を浴びたらもっと気持ちが昂ってきた···!!


フィン・スターニス
モンスターの強化訓練ですか?
無秩序に暴れるだけかと思っていましたが、
指揮をとるモノがいるとこうも変わるのですね。
訓練は成功させられませんし、
阻止させて頂きましょうか。

私は支援を重視して行動しましょう。
七彩の灯火で、他者の治療と、
WIZメインで行動する人の強化を行います。

負傷した方は無理せず、後方に下がって治療をお願いします。

後は、弓での援護射撃も行いますね。
活性化中のユーベルコードも
使えそうな場面があれば使って行きましょう。

※アドリブ、絡み、共にOKです。


奈々詩・空
アドリブOK
POW

力こそが正義……いいセリフだ感動すら覚える
力とはつまり重さであり重さは破壊力だ
つまるところ破壊力とは重量に他ならない
とまあ謎のりろん? を説明したところで実際にご覧いただきたい

【超巨大機械城ダモクレス】を使用しよう
腕組んだ状態で召喚しようそうしよう
そして腕を振りかぶってからの超重量での叩きつけ
これが力だ

……懐に入られるのは勘弁願いたいね!
懐に潜られたらコードは待機モードで、本人は対生命体シャベルでデカいやつの動きを鈍らせるために削っていこう


ネイ・シェルド
モンスターも訓練するのであるか、自身を高めようとするのは立派である。だが、村を襲う以上貴様等を一匹たりとも生かしておくわけにはいかないのである。

我はスピードがあるわけでもなく、頭がいいわけでもないのである。
故に、我がボディの頑丈さとパワーを活かして戦うのである。
スピードによる回避はできぬ故、攻撃をできる限り両手に持った剣で受けつつ受けられない攻撃は頑丈さを活かして無視し敵に接近、こちらの剣の間合いに入ったら力の限りのグラウンドクラッシャーで攻撃である。
この接近→攻撃をひたすら繰り返すのである。

アドリブOK、絡みOK


ユーイ・コスモナッツ
ソラさんの話によれば、
モンスター達の狙いは小さな村
となれば、できるだけ、
村から離れた位置で迎え撃ちたい

そんなわけで
盾のカタチをした宇宙バイク「反重力シールド」の出番
ボードのように乗って、
騎乗とダッシュの技能を駆使して先制攻撃を仕掛けます

宇宙騎士ユーイ、ただいま見参!

最高速度で一直線に突っ込んで、
勢い任せに倒せるだけ倒したら、
そのまま上空に離脱
空中でくるりと反転して、
ユーベルコード「彗星の重力加速度」で急降下!
ずどんと一撃!

……お前も脳筋じゃないかって?
なんてことを言うんです、
これはですねえ、
まずは敵の出鼻を挫いて、
進軍を止めようという立派な戦術でっ……!

アドリブ・絡み、
ともに歓迎です


アニカ・エドフェルト
アドリブ絡みOK

みなさんが勝手に、あの村を訓練の、相手にするなら…
わたしは勝手に、みなさんを訓練の、相手にしますっ!

【サウンド・オブ・パワー】で自身&周囲を強化しつつ、
群れに飛び込んで、いきますっ
そして、相手を蹴り飛ばしたり、投げ飛ばしたり、しますっ
まだユーベルコードとして完成は、していませんが…
この“訓練”の機会、ありがたく使わせて、もらいますっ

1体ずつしか、処理できません、ですから、時々背後から捕まったり、そのまま被撃したりするかも、しれません…?
でも、そんなときは(翼能力も含めて)大きく飛んで、相手を背中で押しつぶし、ます。
猟兵の力、あなどらないで、くださいっ…!


アンジェリカ・ヘインズビー
お仕事です、頑張りましょう。
[POW]
敵前線に突っ込んで【グラウンドクラッシャー】を放ちます。
相手が防ごうが避けようが構いません、全力で振り抜きます。反撃が来ても構いません、全力で打ち付けます。
「(全力)全開です」

【アドリブ・絡み歓迎】


コモフォ・グリード
●グリード
わしの主戦場には欲喰らいの行群を展開するよぉ。
足を止めた者から呑みこまれて行くからぁ~突破するには力を示さないとねぇ~
ふふっ…唯の力押しでない真の力というものを見せて欲しいねぇ。
もし超えられたなら…わしがこの<手>で戦ってあげるよぉ?
…お腹が減ってくるねぇ…わしが戦うに相応しい美味しい敵が居るといいなぁ。
●コモフォ
私は遅延戦術に勤めよう…相手の足並みを出来るだけ乱し各個撃破だ。
…真正面からのぶつかり合いか…昔を思い出すようだ。
戦場は弱肉強食だ…糧を得られるのはより強い者のみと知れ。
防衛陣地を構築し<死神の火線>というものを教えてやろう…。
…どのような手を使おうと敵を討つ…それだけだ。



●大群の襲来!
 アックス&ウィザーズの片田舎に、一つの小さな集落があった。
 住民は二十数人。家屋も二桁にはいかず、実につつましやかな集落だ。
 住民は互いに助け合い、農作物を作ったり近くの森から木々を伐採したりして、日々を暮らしていた。
 天候には左右されるが、暮らしに大きな問題は無く、この暮らしがずっと続くと誰もが思っていた……。

 ある時の事だ。
 集落の付近で伐採をしていた住人が、ふと何か奇妙なモノに気付いた。
 遠くの方から、凄まじい煙があがっているのだ。茶色の塵煙だが、その量は尋常ではない。何か火事でもあったのかと思うくらいのものだ。
 気になった男はすぐに集落に帰り、見張り用の双眼鏡をひったくった。
 双眼鏡を覗いて、彼が見たものは……・。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 ドドドドドドドド……と物凄い勢いで向かってくる、モンスターの大群ではないか!!
 物凄い量の煙は、モンスターの大群の進軍による土煙だった。
 耳を澄ませば、風に乗って彼らの怒号も聞こえてくる。
 異変を感じたのか、森からは鳥たちが一斉にざあっと飛び立った。
 やがて、土煙と怒号のせいで住民全員が異変に気づき……みんな揃って右往左往し始めた。
「なんで!? 一体何があったの!?」
「儂らを襲っても何にもならんちゅうに……こんな小さな村じゃぞ!?」
「やべえよ、早く避難しなきゃ……」
「何もせずにやられるもんか、俺は行く!」「あの量の敵だぞ!? 無理に決まってる!」
 おろおろ、おろおろ……住民たちは困り果て、絶望した。村長の髪は急激にぱらぱらと落ちてその数を減らし、女性たちは祈り、男たちは(もういっそのこと酒でも飲むか)などと考え始めた。
 慎ましやかな生活にさよならを! そして人生にお別れを!
 皆がそう思っていた……しかしその瞬間だった。

 集落の入り口に、急に光が現れた。
 幾何学模様で構成された青白い光。それは余りにも場違いで、それゆえに神々しさが感じられる。そんな不思議な光だ。
 そして光からは……何人もの人が現れた。見たまんま人間もいれば、獣の耳や尾を持つ者、角を持つ者、羽を持つ者、下半身が蛇にしか見えない者……などなど、実に多彩な人々だ。
 余りの事に、住民たちは皆唖然とした。混乱し過ぎて卒倒する者も居た。逆に目の前の状況がヤバすぎて平然とし始める者もいた。
 住民たちは考えた。新たに現れたこの者たちはモンスターか? 百鬼夜行か? あるいは神の御使いか? 大魔術を使える冒険者パーティか?
 ……いや違う。
 彼らこそは、この集落を助けにテレポートしてきた猟兵たちだ!

●訓練開始? 戦闘開始!
「パワーイズジャスティスだァァァァァァァァァァアアアアア!!!」
 モンスター達の叫び声が、集落まで届いてくる。
 そろそろ彼我の距離が縮まり、肉眼でも十分数を確認できるほどだ。しかしまだ接敵してぶつかり合うまでには時間がかかる。如何せん元々の距離が遠すぎたのだ。
 先陣を切るモンスター達は、どれもこれも小さな奴らばかり。有象無象の軍、雑魚の集団と言ってもいいだろう。しかし何故か統率だけはとれていた。
 そう、彼らは皆、力を希求していた。その大いなる目的のため、心から一致団結していたのだ……!

●白き彗星と紅き閃光
 集落から、かなりの速度で二つの人影が飛び出した。
 一人は地面から少し浮いたスノーボード……に見える大盾に乗った少女だ。
 彼女が乗っているのは、大型の盾のような形状をした特殊な宇宙バイク、『反重力シールド』。道の起伏に合わせて、それを見事に操っている。
 彼女はユーイ・コスモナッツ。スペースシップワールド出身の人間……即ちスペースノイドだ。
 白を基調とした宇宙騎士服が、アックス&ウィザーズの自然の中で光を受けて眩しく輝いている。
(接敵するまではまだある……できるだけ、村から離れた位置で迎え撃ちたい)
 目の前のモンスターの大群を睨み、ユーイは走る。
 ユーイの後ろには、追随する形で全力疾走するキマイラの男が居た。
 血のように深い紅の髪と、血塗れのコートが風になびく。
 彼はレド・ダークライト。バイオレンスな赤い色合いの服が、緑溢れるアックス&ウィザーズの自然の中に良く映える。
(これは俺の力を師匠に示す良いチャンスだ!)
 かつてレドは師匠から「力こそパワー!」という脳筋な教えを受けた。
 ゆえに脳筋に辟易していたのだが、自分の力を示す機会となれば話は別だ。
 有象無象のモンスターなれど、本気で叩き潰すつもりでいた。
「よーし突っ込みますよ! 大丈夫ですか!」
「問題ない、行くぞ!」
 敵が身構えるよりも早く先制攻撃をぶちかますため、ユーイとレドは物凄い速度で敵陣へと突っ込んでいった。
 まず先陣を切り開いたのはユーイだ。
「宇宙騎士ユーイ、ただいま見参!」
 明朗快活に宣言しながら、ユーイは最大速度で一直線に突っ込んでいく。
 音速を超えた大質量の『反重力シールド』……そんなものに耐えられるのは早々いない。
「グワアアアアアアアアアアア!!!」
「ハヤイ!! ハヤスギル!!」
 音速の質量兵器と化したユーイに弾き飛ばされて、モンスター達が宙に弾き飛ばされる。
 ユーイはそのまま舵を切り、一旦上空へと退避した。鮮やかなターンだ。
 そして切り開かれた道を走り、レドがモンスター達の群れの中へと突撃した。
 生存本能を刺激するほどの殺気が、レドから放たれる。
 ユーイの速度に見惚れていたモンスター達も、流石にこれを無視する事は出来なった。
(対応しなければ死ぬ! 相手は一人だ、数で押せば今なら勝てる!)
 レドの殺気は、モンスター達にそう思わせた。
「キシャアアアアアアアアア!!」
「シネエエエエエエエ!!」
 モンスター達は進軍を止めてまでも、レドへと人員を割いた。
 ……そしてそれこそが、レドの狙っていたことだった。
「我が障害を殲滅せよ!」
 にやりと笑ってレドがユーベルコードを展開した。
 瞬間、彼を中心にして衝撃波が放たれた! 空気どころか空間を揺らすほどの、物凄い勢いの衝撃波だ。
 【殲滅の血肉】……衝撃波によって周囲20mの敵を攻撃する、レドのユーベルコードだ。
 対抗策のないモンスター達は、衝撃波で全身を揺らされ、よろめいた。三半規管や内臓が揺れ動き、立っているのがやっと、と言ったところだ。
 そしてそこに……天から盾が降ってきた。
「突撃ィー!!」
 ユーイのユーベルコード、【彗星の重力加速度】だ!
 上空へと退避していた彼女は、空中でくるりと反転し……地面に向かって超高速の一撃を叩き込んだ!
 轟! 地面が抉れ砕けて、爆発にも似た勢いで砂埃が舞い上がる!
 彼女の着弾地点に、突如として隕石でも落ちたかのようなクレーターが出来上がった。
 哀れモンスター達は吹き飛ばされていく……最前列部隊が実質消滅し、これでは進軍どころではない。
「うおー……単純だが凄まじい一撃だな。お前も脳筋じゃないのか?」
 至近距離で威力を目の当たりにしたレドが、思わずそう言った。
 ユーイは反重力シールドに乗ったまま、レドの方を向き直る。
「なんてことを言うんです! これはですねえ、まずは敵の出鼻をくじいて、進軍を止めようという立派な戦術でっ……!」
「確かに、進軍は止まったな……でもまだまだ後続が居るぞ!」
 クレーターの向こう側には、まだ大量のモンスターが残っていた。
 レドはそこへ突っ込み、片っ端からモンスター達をぶった斬っていく。
 こんな有象無象部隊では、彼の鋭い剣を防げるようなモンスターはいない。剣が一閃されるごとに、宙に鮮血の花が咲く。
「ふっ……はは!!」
 鮮血を浴び、レドの心は昂った。
 グールドライバーである彼は、生存に鮮血が必要だ。ゆえに鮮血が、彼を満たし、昂らせていく。
 その様子を見て、思わずモンスター達は怯んだ。しかしそれでも、数では大幅に有利だ。これも訓練、勝てば力の証明になると思い直し、モンスター達はなおも進軍していった。
 ……しかしモンスター達は知らなかったのだ。
 猟兵たちもまだ居るという事を……単純な数の有利など、簡単にひっくり返るという事を。

●唄と共に振り下ろせ、地形を書き換え打ち砕け
 先陣を切ったユーイとレドに続くように、四人の猟兵が道を走っていた。
「ふぅ、あ奴らは速すぎるのである」
 しゅるしゅると蛇のような下半身を這わせながら言うのは、ネイ・シェルド。
 角を持ち、蛇のような下半身を持つネイは、何も知らなければキマイラと勘違いするかもしれない。しかしその中身は機械で出来ていた。
 そう、ネイはウォーマシンなのだ。
 生物的な像をもとにして作ったため、外見に機械らしさはない……しかしそのボディは見た目以上の高い耐久性とパワーを持っている。
「彼らは先陣を切ってくれた。適材適所だ」
 前を見据えてそう言うのは、コモフォ・グリード。
 緑の瞳に赤い髪のドワーフ……その姿はアックス&ウィザーズには良く似合っている。
 そしてコモフォに纏わりつくように、ぽにょぽにょと黒いスライムが現れた。
「美味しい敵が居ると良いなあ」
 スライムはぽにょぽにょと蠢き、そう言った。
 コモフォ・グリード……コモフォは一人では無い。コモフォという名のドワーフと、グリードという名のブラックタールが共生しているのだ。
「わたしたちも、急ぎましょうっ」
 ネイを見やりながらそう言うのは、アニカ・エドフェルト。
 蒼い瞳にピンクの髪、動きやすそうな軽装の彼女は……特徴的な、綺麗な翼を持っていた。
 アニカはオラトリオである。それを示す翼は、雲のように自由な純白だった。
「……わかりました」
 アニカの言葉に頷くのは、アンジェリカ・ヘインズビー。
 赤い瞳と金髪に黒いゴスロリという、可愛らしい人形のような見た目のアンジェリカは、その見た目からは想像つかないほどの凄まじい力を内に秘めていた。
 その証拠に、武骨な巨大槌を軽々と持ち運んでいる。そして至って普通に走っているものの、彼女の足は一歩一歩が地面に沈み込み、足跡を深く刻みつけるほどに重い。
 見た目では分からないが、アンジェリカはサイボーグだった。そして彼女の着るロリータ服もブーツも、見た目では分からないが物凄く重い合金で作られているのだ。体内には、筋力を増強するための補助装置がいくつも組み込まれている。

「……ふう、ようやく戦場である」
「真正面からのぶつかり合いか……昔を思い出すようだ」
「敵が、沢山、ですねっ……!」
「……お仕事です、頑張りましょう」
 四人の猟兵は走り走って、ようやくユーイが作ったクレーターに辿りついた。
 彼女たちの目の前では、ユーイとレドがモンスター達を押しとどめるように戦っている。
 しかし、流石に数が多すぎるようで、少しずつモンスター達は前進していた。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「コレモ、クンレン! ツヨクナルタメノ、クンレン!!」
「ぱわー、いず、じゃすてぃす!!」
 モンスター達は口々に叫び、必死に戦っている。
 これもひとえに力を希求するがゆえの事なのだ。言葉を変えれば、ただただ脳筋なだけともいうが。
 とは言え、モンスター達の言葉を聞いて、ネイは少々感心した。
「モンスターも訓練するのであるか、自身を高めようとするのは立派である。
 だが、村を襲う以上貴様等を一匹たりとも生かしておくわけにはいかないのである」
 感心すれどそれはそれ、これはこれ。
 人を襲う事を決めたモンスター達に、慈悲をかける理由はない。
 そしてそもそも、訓練と称してはいるものの、その実態はただの集落蹂躙だ。
 それゆえに、アニカは怒った。
「みなさんが勝手に、あの村を訓練の、相手にするなら……
 わたしは勝手に、みなさんを訓練の、相手にしますっ!」
 アニカはそう言い放つと、大きく息を吸い込み……歌を歌い始めた。
 柔らかな声が戦場に響き渡る。しかしその歌は子守歌や童謡といったものでは無く……しっかりとした旋律で味方を鼓舞するものだった。
 軍歌ほど厳めしく仰々しいものではなく、さりとてポップスというほど軽快なものではない。
 その歌は剣戟や怒号といった戦場の騒乱の中で、しっかりと猟兵たちへと浸透していった。
 これは【サウンド・オブ・パワー】。アニカのユーベルコードだ。
 歌とは旋律に思いを乗せる。そして猟兵の歌は、味方に大きな力を与えるのだ。
「いきましょうっ!」
 アニカの言葉を合図に、猟兵たちはモンスター達へと突撃していった。
 まず最初に突っ込んだのは、コモフォ・グリード……そのグリードの方だった。コモフォの身体から、黒いスライムが現れ……撃ちだされる。
「さあ、始めよう! ただの力押しでない真の力というものを見せて欲しいねぇ」
 黒いスライムは地形に着弾し……轟、とそのまま地形を侵食した。アックス&ウィザーズの地面が黒く侵食され、グリードの支配下へと変化していく。
 【欲喰らいの行群】。グリードのユーベルコードだ。
 侵食した地形の上では、グリードの戦闘力が高められる……一方的に自分の陣地を作り上げるのだ。
 モンスター達は何事か分からず、地形の上で足を止めてしまう……と、ずぶずぶと沼に引きずり込まれるように沈んでいく。
「足を止めた者から呑み込まれて行くから~突破するには力を示さないとねぇ~」
 グリードは実に楽しそうに言う。
 モンスター達は死に物狂いで前進するが、そこに銃弾が叩き込まれ、同時に小さな人影が突っ込んできた。
 コモフォの銃弾とアニカの攻撃だ。
「早々簡単に突破はさせない」
「猟兵の力、あなどらないで、くださいっ……!」
 コモフォは相手の足止めをするように制圧射撃を行う。グリードの土地の上に居るモンスター達にとっては、それだけで十分致命的となる。
 コモフォが止めきれない敵には、アニカが突っ込んで、蹴ったり殴ったりしていく。単純な攻撃だが、アニカの身体能力は高まっているため十分な火力となる。

「ヤバイ、ココハヤバイ!」
「ウカイシロ! ウカイスルンダ! シヌゾ!」
 モンスター達はそれほど頭が良くない……が、それでもグリードの土地の恐ろしさは染み渡った。
 まだ土地に足を取られていないモンスター達は、土地を迂回しながら、猟兵たちへと向かっていく。
 しかしそこに、ネイとアンジェリカが立ちはだかった。
「ここは通さぬ!」
「全力全開です」
 ドォン! と急に物凄い音が二つ、戦場に鳴り響いた。
 ネイのバスタードソードと、アンジェリカのウォーハンマーが振り下ろされ、地面を穿ち砕いたのだ!
 土が飛び爆発にも似た勢いで煙が上がり、モンスター達は人形のようにぽいぽいと宙を舞う。
 ユーベルコード【グラウンドクラッシャー】……周囲地形を破壊するほどの重い一撃を叩きつけるものだ。
「ナ、ナンダ!?」
「オンナナノニ、ナンデコンナチカラガ!」
 モンスター達は思わず狼狽える……が、進まなければどうしようもない。
「ヤレ! コッチノホウガカズガオオイ!!」
 一匹がそう言うと、その声に合わせて「オオオオオオ!!」と怒号が飛び、モンスター達は二人に襲い掛かった。
 ……が。
「我は頑丈である!」
「……関係ないです」
 二人共攻撃をもろともせずに、再び武器を構えた。
 元よりウォーマシンのネイにとっては、モンスター達の攻撃など平気へっちゃらである。蚊が刺すほど……とは言わないが、殆どダメージは入らない。
 そしてサイボーグのアンジェリカも、身につけた金属のロリータ服が、モンスター達の攻撃を受け止めてくれる。
「せーのっ!」
「全開っ!」
 ドォン!! と再びグラウンドクラッシャーの一撃が放たれた!

 クレーターにグリードの土地、グラウンドクラッシャーで砕けた地面……こうなってしまえば、進軍がどうのこうの、などと言っている場合ではない。
 そもそも進めないのである。
 しかし、それに気付かない後続部隊は進み続け、一旦引こうとする前線部隊とぶつかり合い、膠着状態に陥った。
「ヤバイ! マワリコメッテ!」
「ぱわー、いず、じゃすてぃす!!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
 てんでばらばらに離散しそうなモンスター達を、しかし、猟兵たちは見逃す事も無かった。

●筋肉以外にも力はあるんだぞ!
 戦場の真っただ中から少し離れた、集落の入り口付近に三人の猟兵が立っていた。
 彼らのもとにまで、モンスター達の叫び声は聞こえてくる。
「はぁ……モンスター達の会話を聞いていると頭が痛くなりますね……」
 頭を押さえながら、セシリア・サヴェージは呟いた。
 『暗黒』と呼ばれる力を操る、黒い鎧に身を包んだ女騎士であるセシリアは、黒々とした大剣を携えていた。
 そんな彼女は膂力に優れ、力があると言える猟兵だったが……。
「私も筋力には自信がありますが、あまり一緒にされたくはないですね……その……脳筋とやらには……」
「良いじゃないか。力こそが正義……いいセリフだ、感動すら覚える」
 モンスター達に肯定的な意見を言うのは、奈々詩・空だ。
 対生命体シャベルなる兵器を担ぐ、銀色の耳と尾を持つ妖狐の空は、ぺろぺろとキャンディーを舐めていた。
「無秩序に暴れるだけかと思っていましたが、指揮をとるモノがいるとこうも変わるのですね」
 一方、モンスター達の動きを観察しながら、フィン・スターニスは言った。
 顔を特殊な眼帯で覆われ、視界は無いと思われるがそんな事はない。フィンの身につける眼帯は、着用しても視界を妨げないのだ。
「今では猟兵に押し返され、混乱状態に陥ってはいますが……それでも相手を見て迂回したり数で押したり、臨機応変な対応をしています」
「しかし、力押しには変わらないぞ」
 空がそう言うが、フィンは首を振った。
「これは彼らにとって訓練なのでしょう? 今は力押しだけかもしれませんが、その内より有効な手段を手に入れる可能性が有ります」
「それはいけませんね……元より人を襲うモンスター達を見逃す事は出来ません」
「はい。ですからここで止めなくては」
 セシリアの言葉に頷いて、フィンはぽうっと灯火を召喚した。
 昼間のアックス&ウィザーズの中でも、宙に浮いて光り輝くその灯火は、ゆっくりと七色に変化していく。
「七色の炎は、心を震わす光を灯す……!」
 その灯火は、ふわふわと浮かび、猟兵たちへと飛んでいった。
 【七彩の灯火】……フィンのユーベルコードだ。七色に変化する灯火を放ち、対象の知力などを大幅に強化する事が出来る。
 その灯火は、隣に居るセシリアにも届き、力を与えた。
「これは……良いですね。感謝します」
「いえいえ。それでは、前線を援護しましょう」
「私は暫しユーベルコードを展開するまで時間がかかる。待っていてくれ」
 空はそう言うと、ユーベルコードを展開し始めた。
 その間に、フィンは弓を取り出して敵陣を撃ち始め、セシリアは、高速詠唱を乗せて素早くユーベルコードを展開した。
「無数の剣に貫かれ、無残な屍を晒すがいい!」
 セシリアの周りに、無数の黒い魔法の剣が現れる。
 セシリアが手を振り下ろすと、その剣はモンスター達まで飛んでいき、降り注いだ。
「ナンカ、ナンカトンデキタ!!!???」
「マエモ、ウエモヤバイ!!」
 モンスター達は剣を見て騒ぐが、しかし身動き出来るような状態ではなかった。回避行動など夢の又夢だ。
「グアアアアアアアアアアアア!?」
「アァァァァァァァァァァ!!」
 セシリアのユーベルコード、【死翔の黒剣】に貫かれ、モンスター達は倒れていく。
 その上にフィンの放った矢が降り、モンスター達は確実に数を減らしていた。
 しかし未だ後続はいる。士気も完全に消えたという訳では無さそうだ。
「さて、ようやく準備が整った。中々見れるものじゃないから是非味わってくれ」
 空がそう言って腕を組んだ。
 すると、ゴゴゴゴゴ……と空気を震わせ、巨大な人型の機械が出てきた。空と同じく腕を組んだその人型機械は……物凄く大きかった。
 空のユーベルコード、【超巨大機械城ダモクレス】。なんと自身の百倍の大きさを持つ、人型の機械の城を召喚するのだ。
 空の身長が105cmなので、百倍にして105メートル……アックス&ウィザーズではまずお目にかかれない、余りにも巨大な機械の城だ。
 これには流石のモンスター達も驚いた。
「ナ、ナンダ……アレ……」
「デカイ……デカスギル……バケモノダ……」
 今まで彼らの中には数の上では有利、という考えがあった。
 しかし大きくて2メートル程度のモンスター達にとって、105メートルの巨人はもう、相手にしていいような物では無かった。
 たとえ数の上では1対100だとしても、戦力的には10000対100というような状態ではどう足掻いても勝ち目がない。
 巨大機械城ダモクレスは、モンスター達にその圧倒的な戦力差を知らしめた。
 こうなっては士気がどうのこうのと言っている場合ではない。進軍もやめ、訓練も終わりだ。
 武器を取り落として逃げようとする者もいれば、泡を吹いて卒倒する者もいた。
「力とはつまり重さであり、重さは破壊力だ。つまるところ破壊力とは重量に他ならない!」
 空は謎の理論を説明し、腕を振り上げた。追随してダモクレスも腕を振り上げた。
「では実際にご覧いただこう!」
 しゅっと空が腕を振り下ろすと……追随してダモクレスも腕を振り下ろした。
 ボゴオオン!!
 超重量の恐るべき質量が地面に叩きつけられた!
 地面は大地震が起きたかのように揺れ、大爆発といっていいほどの煙や破片が飛び散った!
 モンスター達は哀れ散り散りに吹き飛ばされていった。ぺしゃんこになったのもいるだろう。
 ……気付けば、有象無象のモンスター達は、全滅していた。
 見渡す限りボコボコの地面に倒れたモンスターばかり……まるで大戦争跡のようだった。

●訓練は続くよどこまでも
「オイオイオイ、死んだぞアイツら」
「奴らはモンスター業界でも最弱……」
 がちゃがちゃがちゃり、と鎧を鳴らしながら歩いてくるのは、首無しの騎士団だった。
 遠目から見ればしっかりした騎士団なのだが、如何せん首から上が無いため、どう繕おうともモンスターである。
「しかしかなりの数をそろえたはずだが、見事に全滅したなあ」
「見ろよ、地面がボコボコだぜ。お前の鎧みたいだなベイガー」
「は?? へこんだだけなんだが?? ここまで抉れてないんだが??」
「喧嘩するなよお前ら。あの目の前のヤバイ人型機械見えないのか」
 一人の騎士がそう言うと、他の騎士たちは口を噤んだ。
「我らは元より力をある程度持つ……が、相手はそれ以上かもしれん。見ればそれくらいわかるだろう。分かるか、訓練といって済ませられる敵ではないのだ」
 騎士は立ち止まり、整列した。
 ピシッと見事に並ぶその姿は、間違いなく上等な騎士団のそれだった。
「しかし我らは力を求める。力を心から希求する。パワー、イズ、ジャスティス!!」
「「「パワー、イズ、ジャスティス!!」」」
 騎士たちは綺麗に唱和した。
「故に我らは強者を求める。パワー、イズ、ジャスティス!!」
「「「パワー、イズ、ジャスティス!!」」」
 そして彼らは武器を構え、猟兵たちを見据えた。
「行くぞ! 我ら騎士団の力を見せてやれ!」
「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」

 そして猟兵たちの第二ラウンドが始まった……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『宵闇の騎士団』

POW   :    闇討ち
【自身以外に意識】を向けた対象に、【死角からの不意打ち】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    追討ち
【周囲に潜ませていた多数の伏兵】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ   :    返討ち
いま戦っている対象に有効な【武器を持った多数の援軍】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●部隊は三つ!
 騎士団の部隊は大きく分けて三つあった。
 それぞれリーダーは、予知内にてミノタウルスの詰問を受けていたアルバート、ベイガー、チャーリー。つまりA(アルバート)部隊、B(ベイガー)部隊、C(チャーリー)部隊の三つだ。
 猟兵たちは、今度は三つの部隊に対応していくため、自然と分かれていった――。
フィン・スターニス
教官役の魔物ですか?
数も多いですし、確実に削って行きましょう。
乱戦になりそうですから、ひっそりと削るのに丁度良いです。

第三災禍・黄の拒絶を使って接近し、
鎧の隙間を狙い、脇差を刺し込みましょう。
急所を狙い暗殺できれば良いですが、
そこまでは無理でも、刺した箇所がマヒでもすれば、
他の方が仕留めてくれるでしょう。
なので一刺ししたら、再度黄の拒絶で離脱、同時に次の対象へ攻撃しますね。

敵の攻撃は、動きを見切り回避を重視。
視界外からの攻撃等は第六感で
感じれば、黄の拒絶で緊急回避で対応。

可能であれば、奇襲の際は七彩の風衣で透明化。
疲労がある程度溜まれば、七彩の雷針で回復します。

※アドリブ、絡み、共にOKです。


レド・ダークライト
【他の方との絡み歓迎】【アドリブ歓迎】
ほう、少しは骨のありそうな···いや、骨はないか。
ともかく身体は鎧なのだろう?ならばやることは決まっている。

そんなに動きは早くないだろう、「先制攻撃」だ。
「聞き耳」を立て不意打ちを喰らわぬよう注意は怠らない。
防ぐことも難しいであろう「早業」で【殺戮の血煙】を「鎧を砕く」ようにぶち込む!
カウンターが来るかはしっかり「見切って」避けるようにしようか。
さあ、いつ全滅するかな?


アンジェリカ・ヘインズビー
大したダメージではありません、まだまだ戦えます。
[POW]
まず振りかぶったウォーハンマーを相手に投げつけます。
その後は接近して【足技】を、回数重視で何度も当てに行きましょう。
「まだ終わりませんよ」

【アドリブ・絡み歓迎】



●vsアルバート部隊!
 猟兵たちの目の前に現れたるは、三つの騎士団部隊。
 そのどれもがリーダーを抱え、そこそこの数の兵士を率いていた。
「ほう、少しは骨のありそうな……いや、骨はないか」
 騎士たちを見て、レド・ダークライトは声を上げた。
 先ほどの弱小モンスター達よりは、遥かに歯ごたえがありそうな部隊だ。
 彼らは首が無い上、鎧の内側には肉体は見えない。それでも装備は上等であり、見た目だけはしっかりとした騎士団であった。
「どうやら肉体を持っていないみたいですね。どうやって動いているのでしょう」
 レドの言葉を受けて騎士を見て、そう呟くのはフィン・スターニス。
 視界を妨げない不思議な眼帯を通して、騎士団の様子を伺っている。
「ともかく身体は鎧なのだろう? ならばやることは決まっている!」
 そう言うと、レドはアルバート部隊の方へと駆けだした。
「……大したダメージではありません。私もまだまだ戦えます」
 ふとロリータ服についた砂を払いながら、アンジェリカ・ヘインズビーが呟いた。
 彼女は、とんとん、と履いている合金製ブーツの感触を確かめた。見た目では分からないが、相当重い合金で作られているブーツは、地面にあたる度にめり込んだ。
「よし、行けます」
 ブーツの具合を確かめたアンジェリカは、レドを追って走り出した。
 フィンはレドとアンジェリカの向かった方……即ちアルバート部隊の方を見て少し考えた。
「……ふむ、では私もそちらに」
 フィンもまたアルバート部隊の方へと向かった。

●Aは何のA? アホのA?
 レド、アンジェリカ、フィンの三人は、アルバート部隊へと真正面から向かって行った。
 当然騎士たちも木偶ではない。
 猟兵たちの姿を認めて、リーダーのアルバートが号令を出した。
「むっ! 敵が近づいてくるぞ! 構えろ!」
 アルバートの命令に従い、兵士たちがピシッと止まり、武器を構える……。
 が、少々遅すぎた。
「動きが遅い!」
「ぬぁんと!?」
 レドは『鮮血の黒剣』を抜き、騎士たちが構えるよりも遥かに早く突撃していった。
 リーダーのアルバートは辛うじてそれに反応したが、しかし配下の兵士たちはてんで駄目だった。想像以上の速さにてんやわんやだ。
「我が力で敵を断つ! 散れ!」
 レドは轟、と黒剣を一閃する。
 それが命中した騎士たちは……バキン! と甲高い音を立てて砕けてしまった!
 【殺戮の血煙】。斬撃武器が命中した相手を切断する……実にシンプル、それ故に力強い、レドのユーベルコードだ。
「鎧なら砕ければ終わり、だろう?」
「ッ……! 敵ながら見事! しかしこのままでは終わらんぞ! 征け!」
 アルバートが号令をかけると、レドの周囲の騎士たちが必死に死角を取り、攻撃を加えようとする。
 が、何故か何かをする前に倒れていく。
「な、何だ!? 一体何が起こった、お前たちぃ! ハッ!?」
 周りを見渡すアルバートは、瞬間、フィンを見つけた。
 フィンはアルバートと目が合ったが――両目を眼帯で覆った少女と、体のない鎧と目が合うだろうか? しかし目が合ったとしか言いようがないのだ――瞬時に空間を繋げ、別の場所へと瞬間移動した。
(闇討ちをするなら、自分たちも気をつけないといけませんよ。
 一人に意識が向いてると、ひっそりと削るのに丁度良いです)
 フィンのユーベルコード、【第三災禍・黄の拒絶】だ。空間を繋げて別の場所へ瞬間移動を行い、そこから死角から近接武器による不意討ちを行うのだ。なんと瞬間移動で飛べる範囲は484メートル。目で見えている必要はあるが、戦場ならおおよそどこでも飛んでいけると言っても過言ではない。
 フィンは瞬間移動した先で、兵士の鎧の隙間を狙い、脇差を刺し込んだ。
「ぬっ!? っぐっ……!」
 肉体が無い鎧の兵士にしては不思議なのだが、何故か鎧の隙間が急所らしい。
 何回か同じことをやっていると、フィンは一つの事に気付いた。
(……なるほど、鎧の留め金や紐ですか)
 フィンの脇差は、適確に留め金や紐に命中し、内側から鎧を崩していたのだ。
 身体は鎧で出来ている……ならば鎧がバラバラになれば、死んだも同然。
「では、引き続き……」
 シュン、と再びユーベルコードにて、フィンは瞬間移動した。
「ぐう、お前たち、あの少女を止めろ!」
「いいや、こっちを見な!」
 アルバートは兵士たちに命令を出すが、しかしレドを無視してフィンを追う訳にはいかない。
 レドに背を向ければ、ほぼ確実に打ち砕かれてバラバラになってしまうのだ。
 レドもそれを理解しているようで、早業で剣戟を繰り出していく。
「っぐうううううう、アホかお前たちはぁ!」
「……そういう事を言うものではありません」
「ンッ!?」
 ふとアルバートは、すぐそばから飛んできた声に振り向いた。
 そこに立つのはアンジェリカ。手には武骨なウォーハンマー。
 アンジェリカは、おもむろにウォーハンマーを振り上げる。
「ぬおっ!? 対応部隊ッ!!」
 アルバートの言葉と共に、即座に武器対応部隊がやってきた。
 彼らは敵に対して有効な武器を生成して持ってくるという、大変便利な部隊だ。
 ……が、武器は持ち手が理解しなければ効果を発揮しない。
「な、何だお前たちぃ!? これは、縄か!?!? 何故だ!?!?!?」
 アルバートは対応部隊たちが持ってきた物を見て愕然とした。
 縄である。何故縄なのか。
「えいっ」
 愕然とするアルバートへ、アンジェリカがごんとウォーハンマーを投げつけた。
 振りかぶったのだから、そのまま叩きつけられると思っていたアルバートは、回避できずに体で受け止め……いや、もろに命中してしまう。
 ビシビシッとウォーハンマーの物理量に耐え切れず、アルバートの鎧は崩壊していった。
 その後アンジェリカは猛然と敵へ突進していき、合金製ブーツによる蹴りをお見舞いしていった。
「全力です……っ、確実に当てます……っと! まだ終わりませんよ……えいっ!」
 ゴオン! ボゴオン! とまるで鐘でも鳴っているかのような凄い音が響き渡る。
 アンジェリカのユーベルコード、【足技】だ。合金製ブーツによる蹴りで対象を攻撃する、実にシンプルな技だ。
 とはいえ、ブーツは物凄く重く、硬い。という訳で、当然ながら威力は高い。
 砕けて死ぬ寸前のアルバートは、ようやく縄の使い道を理解した。
「なる……ほど……ひっかけて……捕まえる……」
 しかし配下の兵士たちは、誰一人としてその使い方を思いつかず……やがて、三人の猟兵の手によって全滅させられたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
【POW】

力を求めることそのものは否定しません。私もかつて護るために『暗黒』に手を出した。
だがその力で成すことが悪の行いならば…暗黒騎士の名にかけて、お前たちを断罪する。

交戦前に【ブラッドウェポン】で暗黒剣を強化。
【武器受け】で相手の攻撃を受け止め、【怪力】【力溜め】【鎧砕き】で渾身の力でその鎧を粉砕して差し上げましょう。へこむ程度で済むと思わないことだ。

アドリブ・絡みOK


ユーイ・コスモナッツ
モンスターとはいえ、
騎士に挑まれたとあっては、
退くわけにはいきません!
もとよりその気もありませんがっ

そんなわけで、
ユーベルコード「流星の運動方程式」!
正々堂々、正面から迎え撃ちますっ
……だから脳筋じゃないですってば!

反重力シールドを加速させて突進
スピードを乗せに乗せた、突撃槍の一撃!
敵の群れを突き破ったらUターン
再加速してもう一撃!
……や、ですから、何度も言いますように!

アドリブ・絡み、
ともに歓迎です


アニカ・エドフェルト
アドリブOK、絡みは戦闘内ではNG、それ以外はOK

この数が、一気に村になだれ込んで、来ていたら、ひとたまりも、ありません…。
まだまだ、気は抜け、ませんっ

さて、多対多は結構訓練、出来ましたから、今度は一対一、です。
というわけで、そのあたりの適当な中堅モンスターさんに、一騎打ちを、申し込みます。
誰の助けも、得られない…緊張はしますが、頑張り、ますっ

《サウンド・オブ・パワー》を使いつつ、〈グラップル〉を使って、掴み技系の攻撃で戦い、ます。
相手が大きくても、〈怪力〉の力を信じ、ます!
ちょっと上手くいかなくて喰らっちゃうのも、倒れさえしなければ訓練、ですっ

1体倒せたら、次の相手にも同様に一騎打ち、ですっ



●vsベイガー部隊!
 アルバート隊が壊滅したとはいえ、未だ二つの部隊が残っている。
 それぞれベイガー部隊と、チャーリー部隊だ。
 ベイガー部隊のリーダーは、何故か鎧がへこんでおり、リーダーだというのに何だか弱々しいような見た目になっていた。

「モンスターとはいえ、騎士に挑まれたとあっては、退くわけにはいきません!」
 騎士たちを睨みつけそう言うのは、ユーイ・コスモナッツ。
 相手は騎士、ユーイ自身も宇宙騎士だ。
 挑まれたからには戦わねばならぬ。

「元は人を守る騎士だったでしょうね、彼らは……」
 少し複雑そうな顔をして呟くのは、セシリア・サヴェージだ。
 セシリアは今現在も、『暗黒』という闇の力を操る騎士だ。
 彼女には人を護るという使命があるが、しかし敵の騎士団はどうか。
 既に人に仇なす存在に堕してしまっているではないか。

「この数が、一気に村になだれ込んで、来ていたら、ひとたまりも、ありません……」
 辺りを見渡しながらそう言うのは、アニカ・エドフェルト。
 確かにアニカの言う通り、先ほどのモンスター達と騎士を合わせれば、相当な数になる。
 慎ましき小さな村などひとたまりもない。
 どう考えてもオーバーキルだ。

「まだまだ、気は抜け、ませんっ」
「全くです。大事なのは村を護る事、そのためにもここで敵を討たなければ」
 アニカの言葉に、セシリアが頷いた。
「幾ら数を揃えようと、我々猟兵が食い止めます」
「勿論ですっ! 退くわけにはいきません、もとよりその気もありませんがっ!」
 セシリアの言葉に頷きながら、ユーイは『反重力シールド』を起動した。
 ブォン! と音を立て、シールドが宙に浮いた。
「ブースト・オン! 行きますよっ!」
 ユーイはシールドに乗り、目にもとまらぬ速度で飛び出した。
 【流星の運動方程式】。
 反重力シールドに騎乗して移動速度と戦闘力を増強する、ユーイのユーベルコードだ。
「速いですね。私たちも行きましょう」
「はいっ、あっ」
 セシリアとアニカは共に走り出したが、ふとアニカは声を上げた。
「えっと、ちょっと、訓練したいのでっ……一人で、戦いますっ」
「……成程。敵の言葉を使う訳ではありませんが、実戦はかなり有用な訓練となります。
 ですから一人で戦うなら止めはしません。ただ、気をつけて下さいね」
「はいっ、分かり、ましたっ!」
 セシリアの言葉にうなずいて、アニカはそう言った。
 ……そして彼らは、ベイガー部隊と接敵する。

●Bは何のB? Break knights!
 先陣を切ったのは、真っ先に飛んでいったユーイだ。
 敵が真正面に整列していようと関係ない。
 ユーイの速度についてこられる敵なぞ、そうそう居ないのだから。
「正々堂々、正面から迎え撃ちますっ!」
「うおっ!? 速いのが来た、構えろ!」
 騎士ベイガーが号令する。
 しかしユーイの一撃は、騎士たちの反応よりも遥かに早かった。
「宇宙騎士ユーイ、再び見参!」
 スピードを乗せに乗せた、凄まじい速度のユーイが騎士たちに突っ込んでいく!
 それはさながら、音を超えた大質量の兵器。
 いくら騎士が訓練を積んでいようとも、そんなものに対応する術など知るはずがない!
「グアアアアアアア!?」
「速すぎるッ!!」
 騎士たちがあちらこちらに吹っ飛んで、あっという間に戦列はぐちゃぐちゃだ。
 後に残るのは、地面に倒れ伏した騎士たち。
 しかしそれだけでは終わらない!
 ユーイは突っ込んだ後Uターンし、再加速してもう一度突っ込んだ!
「ゴホアアアアアアアア!!」
「誰かアイツを止めろォォォ!!??」
 吹き飛びながら、辛うじて回避しながら、騎士たちは口々に叫んだ。
 鎧が飛び、剣が飛び、籠手が飛び、靴が飛び……色んなモノが宙を飛び交う。
 もはや戦列はしっちゃかめっちゃか。
 シールドの突撃を受けて砕け散った鎧もあった。
「一番槍の戦果としては十分ですね!」
 そう言うと、ユーイはセシリアの方へと合流した。

「中々強引ですね。何というかその……脳筋……」
「脳筋じゃないですってば!」
 Uターンして戻ってきたユーイと合流して、セシリアが思わず呟いた。
 ユーイは反重力シールドを見事に乗りこなし、セシリアに追走する。
「戦列は乱れました、今ですっ!」
「そのようですね……『仇なすものには望み通りの恐怖を…絶望と共に散るがいい』!」
 走りながらセシリアは詠唱し、手を軽く切って血を滴らせ、武器に注ぐ。
 鮮血を与えられた武器は、ぞわぞわと封印が解かれ、暗黒を纏っていく。
 【死を呼ぶ魔剣】。自身の血液を代償に封印を解き、暗黒を纏った魔剣に変化させるのだ。
「うおっ、第二陣が来たッ! 総員構えろぉ! 起き上がれお前らァ!」
 セシリアを見て騎士ベイガーが叫び、騎士たちはよろよろと隊列を整えていく。
 セシリアは、それを意にも介さない。
「力を求めることそのものは否定しません。
 私もかつて護るために『暗黒』に手を出した」
 良く通る声でセシリアは言葉を紡ぐ。
「だがその力で為すことが悪の行いならば……
 暗黒騎士の名にかけて、お前たちを断罪する!」
「知ったような口を利くなッ!! 勝てなきゃ意味がないんだよッ!!」
 騎士ベイガーが腕を振り下ろすと、セシリアの死角を狙い騎士たちが飛び出した。
 しかし彼らの攻撃は届かない。
 ギィン! とセシリアの魔剣が、攻撃を受け止めた。
「ッ!?!? 気付かれ……!!」
「その鎧を粉砕して差し上げましょう……へこむ程度で済むと思わないことだ!」
 轟、と膂力を活かしてセシリアが魔剣を振るった!
 ボゴオン! とおおよそ剣が出すとは思えない音が響き渡る!
 当たった騎士の鎧は、無残にも粉々に砕けてしまった。
「ッ……怯むな、かかれッ! 俺たちの方が数が多いッ!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!」
 騎士ベイガーの言葉に、騎士たちはひたすら攻撃する。
 しかし、誰もセシリアの身体を、鎧すら傷つけられらないのだった。

「っくうううううううう、何故だッ……俺たちは筋肉部隊だというのに!」
 騎士ベイガーは、戦況を見て歯噛みした。
 彼の言う通り、ベイガー部隊は騎士たちの中でも、特に筋肉を鍛え上げてある。
 肉体が無いのに筋肉を鍛えるとは一体? 細かい事を気にしてはいけない。
 とにかく、彼の部隊は膂力に優れているのだ。
「技とか知恵とか関係ねえ、筋肉で捻じ伏せるッ……それが力だろッ!」
 ベイガーは誰に向けてでもなく、叫んだ。
 しかし、思わぬ方向からその言葉に返答が飛んできた。

「いいえっ、違い、ます! 力は、そんなものじゃ、ありません!」
 声の主はアニカだ。
 騎士ベイガーは振り向いて、アニカを睨みつける。
 顔が無いのに、禍々しい視線を感じてアニカは少し震えた。
 が、拳を握って気を持ち直し、相手をじっと見据えた。
「何だァ嬢ちゃん、こんな所に来るもんじゃねえぜ??」
「わたしだって、猟兵、です! 戦え、ます!」
「ハッハッハッハ! そんなちっぽけな身体でか!?」
 アニカの言葉にベイガーが笑う。
 しかしアニカは狼狽えず、びしっと指を突きつけた。
「一対一を、申し込み、ます!」
「ハァ!? 一対一ねぇ……良いだろう」
 アニカの言葉に、ベイガーは顔も無いのに舌なめずりをした。
「俺だって苛立ってんだ! 楽しませてくれよォ!?」
「行きますっ!!」
 ベイガーが一直線に突っ込んできて、アニカは横に回避した。
 そしてそのまま、【サウンド・オブ・パワー】を展開した。
 しっかりとした旋律の鼓舞の歌。身体の内側から力を沸き立たせる、アニカのユーベルコードだ。
 歌とは他人のために歌うだけではない。自分のためにも歌えるのだ。

「歌ってんじゃねェ! ここは戦場だぞ!」
 ベイガーが轟、と剣を振るうが、アニカは歌をブレさせることなく回避する。
 やがて【サウンド・オブ・パワー】が、アニカ自身に力を与えた。
「やっと終わったかァ……ブッコロス!」
「では、行きます!」
 ベイガーが再び剣を振りかぶって突っ込んでくる。
 そこへ、アニカはダッシュして懐へ潜り込んだ!
「何ッ!?」
 そのままアニカは鎧を掴み、ベイガーの突進の勢いを乗せ後ろへと投げ飛ばした!
「ウオオオオオオ!?」
 ドシャア、とベイガーは地面に突っ込んだ。
 ベイガーは頭に血がのぼる余り忘れていた。
 彼ら騎士団はそもそも集団で戦うものだという事を。
 そして一対一はそれほど秀でている訳ではないという事を!
「もう、一、度!」
 アニカはベイガーを掴んだ。
 そのまま小さな体からは想像もつかない怪力で持ち上げ、再び投げ飛ばす!
「ッガハア! い、いてぇ……! 畜生、何だってんだ!」
「わたしの、訓練、です!」
 アニカは再びベイガーを掴み、投げ飛ばした!
 ゴシャッ、と木にぶつかったベイガーは、とうとう鎧に罅が入り、砕け散った。
「……ふぅ、ふぅ……よし、次、です!」
 アニカはそこで休まず、次の騎士へと一騎打ちを申し込みにいった。

 騎士は吹き飛び、剣で砕かれ、投げ飛ばされていく。
 リーダーを喪失したベイガー部隊は、どんどん瓦解していった。
 やがて、三人の猟兵たちの力により、ベイガー部隊は完全に全滅させられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

奈々詩・空
POW
アドリブOK

長時間の維持はきついのでダモクレスは解除
ただ、それで相手に勢いづいてはいけないので実はすぐにでも使えるぜ、みたいな不敵な表情を常に浮かべておこう

相手は首無しの鎧か……
生物……生物だな!
最前線に身を低くしながら駆けつけて、【対武装破壊血風吸血鬼】で相手の武装を破壊・機能停止させよう
伏兵援軍の武器も止められればなおよし
とはいえ武器使えなくなっても全身がそのまま武器みたいな連中みたいだし油断はしない
その後は他の方を闇討ちしようとしているやつに対して対生命体シャベルを身長の低さを生かして下から上へかちあげるように
不意打ちを狙うやつは不意打ちされることを覚悟しなければならぬ


コモフォ・グリード
●グリード
材料がいっぱい揃ったしぃ~キミらの軍勢をわしの眷属にしてあげるよぉ~。
……力が欲しかったんだよね?…ふふっわしが強くしてあげるねぇ~
…最期はみーんな一つになるんだよぉ♪。
●コモフォ
雑兵共の次は脳無しの騎士団共か…
今や奴等の戦力はそのまま我々の力となった訳だ…数でも劣りはしない…
例え我々になったアレを叩き潰そうとも既に奴等は個ではない…
中身を引き摺り出せば分かるさ…それはもう不定形の地雷の様なものだ…飛散し喰らい付く…
グリードはああやって群勢を増やしていくんだ…奴に魅入られると逃れられんよ。
…私の戦法は変わらんさ…野戦なりのやり方がある…派手さはないが…堅実に間引いていく…それだけだ。



●vsチャーリー部隊!
 おお、なんという事であろうか。
 猟兵たちの活躍により、騎士たちはどんどん倒されていく。
 とうとう残るは、一部隊だけとなってしまった。
 こんな事が有り得るだろうか?
 少なくとも、騎士団の常識の中には存在しなかった。
 十に満たない戦士たちに、部隊が壊されて行くなどと……アックス&ウィザーズの冒険者でさえ成し得ない、奇跡と言っていいだろう。
「……まだ私たちが残っている。終わりではない。
 諸君、どうかね、目の前の敵は紛れもなく強者だ!
 我々が求める力を持っている、恐るべき強者だ!」
 チャーリーは振り向いて騎士たちに演説をぶちまける。
「だがしかし、だからこそ、我々は戦うべきではないだろうか!
 何故ならば、強者と交わってこそ、我々はより高みを目指せるのだから!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「パワー、イズ、ジャスティス!!!!」
 チャーリーの言葉によって、配下の兵士たちは口々に叫んだ。

「……相手は首無しの鎧。生物……生物だな!」
 そう言うのは、奈々詩・空。
 長時間の維持はきついので、既にダモクレスは解除されている。
 が、それを気取らせないためか、中々不敵な笑みを浮かべていた。
 対生命体シャベルをしっかりと担ぎ直し、空は敵を見据える。

「雑兵共の次は、脳無しの騎士団共か……」
 厳しい目つきで敵を睨むのは、コモフォ・グリード……そのコモフォの方だ。
「今や奴等の戦力は、そのまま我々の力となった訳だ……数でも劣りはしない」
「その通りぃ~」
 コモフォの身体から、ぬるりと黒いスライムが現れた。
 コモフォに共生する、グリードという名のブラックタールだ。
「ふふっ……最期はみーんな一つになるんだよぉ♪」
 グリードはくすくすと、実に楽しそうに呟いた。

「軍勢を呼び出せるって本当か?」
「ああ……グリードが先ほど呑み込んだ奴等がいる」
 空の問いに、コモフォが答えた。
「いっぱいいるよぉ~」
 それに続いて、グリード自身もそう言った。
「あの騎士団に対抗できそうな数か?」
「アレよりは多いよぉ~、雑兵とは言え沢山だったからねぇ~」
 グリードの言葉を聞くと、ふむ、と空は考えた。
「よし、ならレッツゴーだ。私が最前線で相手を止めよう。
 その間に軍勢を出して進軍してくれ」
「なるほど……戦線の構築か。私も援護しよう」
「案は分かったよぉ~。まあ皆呑み込んじゃうんだけどねぇ~」
「あっ、私は呑み込むなよ! 駄目だからな!」
 グリードの言葉に空が言うと、そのまま走っていった。
「……猟兵ってどんな味がするんだろうなぁ~♪」
「やめておけグリード……流石にそれは駄目だ」
「ちぇ~」
 コモフォ・グリードはそう言い合うと、空の後を走り出した。

●Cは何のC? ChaosのC!?
 対生命体シャベルなる兵器を担いだ空は、チャーリー部隊へと突っ込んでいく。
「むっ、敵が来たぞ。総員構え、迎撃準備!」
 チャーリーが号令をかけると、騎士たちは武器を構えて展開した。
 空を覆うように扇状に広がり、死角を確保しようとする。
 それを待っていたと言わんばかりに、空はユーベルコードを展開した。
「駄目駄目、危ないもんは壊すのが一番でしょうね」
 瞬間、空から周囲に赤黒い風が轟、と吹き荒れた!
「こんな風……むっ!?」
「武器が……剣が!!」
 その風は【対武装破壊血風吸血鬼】によるものだ。
 なんと相手の武装を破壊、もしくは機能停止に陥れる事が出来るスグレモノだ。
 範囲は、空を中心としておおよそ18メートル。
 付近に展開していた騎士たちは、武器を落としていく。
「剣が喪われたか……しかし! 我らが進軍は止まらぬ!
 剣が無ければ拳を握れ! 拳が無ければ足を上げろ!
 足もなければ身体でぶち抜いていくのだ!」
 騎士チャーリーは、部隊全体に響き渡るよう声を張り上げた。
 その言葉を聞いて、騎士たちは気を取り直し、空へと向かってくる。
「先にもう一度。お前たちは生命体で間違いないな?」
「ハ? ッグウ!!??」
 ガツン! と、騎士が下から思い切りシャベルでどつかれた!
 空は騎士よりも大分小さい。
 しかし、逆に言えばそのおかげで、相手の攻撃を掻い潜って攻撃できるのだ。
 そして騎士たちは肉体はなくとも動くもの。生命体に違いない。
「総員かかれかかれ! 一対多数だ、数で押せば倒せる!」
 チャーリーは騎士たちに号令をかける。
 が、突如そこに銃弾が撃ち込まれた。

 銃弾を撃ちこんだのはコモフォだ。
 AKMLを構えて敵を睨みながら、コモフォは呟く。
「……準備は出来たか」
「もちろ~ん」
 ぽよんと現れたのはグリードだ。
「世界の何もかもが融けて一つになるとねぇ……より素晴らしい世界へと変わっていく……わしは知ってるよぉ……キミもわしの一部になるからねぇ……ふふっ」
 誰へ向けたものでもない言葉が紡がれる。
 すると、戦場で倒れているモノたちが、突如として動き始めた。
 ビクン、ビクンと揺れる。
 ずるずると身体を動かす。
 そしてやがて、倒れて傷だらけの身体で出来た、奇妙な軍団が生まれた。
 【融和する世界】。
 戦場で倒れているモノたちを、グリードのスライムに変えて操る、凄まじいユーベルコードだ。
 見た目は元々倒れていたモンスター達だが、しかし中身は違う。
 中身はもう、グリードのスライムで構成されているのだ。
「何と……!? 数が……逆転した……!?」
 チャーリーは現れた軍勢を見て絶句した。
 その数は、どう考えてもチャーリー部隊の数倍はあった。
 それはそうだろう、アルバート部隊、ベイガー部隊、そして先ほど戦った有象無象のモンスター達、それらが全て材料なのだから。
「……力が欲しかったんだよね?」
 グリードは改めてチャーリーに問う。
 身体を持たぬチャーリーは、表情を浮かべる事は出来ない。
 しかし、身体は震え、明らかに恐怖している事が分かる。
「……ふふっ、わしが強くしてあげるねぇ~」
「か、構えろ! 対応しろ、戦え!」
 チャーリーは叫んで武器対応部隊を呼び寄せる。
 だが、その試みは銃弾によって妨げられた。
「……堅実に間引いていく」
 コモフォが銃弾を的確に撃ちこんで、チャーリー部隊は立ち往生する。
 しかも止まっていれば、気を取られている間に空が兵士たちをどつきまわす。
 彼らにもはや逃げ場はない。
 そして勝機もまた、ない。
「ここまで……か……!」
 圧倒的軍勢に呑まれながら、チャーリーは呻いた。
 そしてそのまま、チャーリー部隊は瓦解し壊滅した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ミノタウロス』

POW   :    マキ割りクラッシャー
単純で重い【大斧 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    暴れ牛の咆哮
【強烈な咆哮 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【突進】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    ベジタリアン・テンポラリーヒール
戦闘中に食べた【野菜 】の量と質に応じて【身体に出来た傷が塞がり、気分が高揚し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はクロ・ネコノです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●パワーイズジャスティス!!
「ノオオオオオオオオオオオオオオ!?!?!?!?」
 戦場を遠くから見て叫ぶのは、一匹のミノタウロス。
 彼はモンスター達を訓練するため集め、集落を襲わせた張本人だ。
「何と!? 訓練とかそんな事を言っている場合では無かったか!」
 そう、彼が訓練と称して送り出した部隊は、残らず壊滅したのだ。
 一匹残らず全滅。笑うしかない損害状況である。
 しかしミノタウロスは笑わなかった。

「こんな状況が恐ろしいからこそ、奴らには力が必要だったというのに……。
 だからこそ強化訓練を行ったというのに……!
 それが逆に仇となったとは!!」
 バン! とミノタウロスは大斧を地面に叩きつけた。
 哀れ地面は抉れ砕ける。
 しかし、戦場に広がる無数のクレーターよりは流石に小さい。
「ウオオオオオオオオオオオオ!!!!
 俺は悲しいぞおおおおおおおおおお!!!」
 ミノタウロスは叫んだ。
 鬼教官たる彼は、モンスターの身を案じてこそ、強化訓練を実施したのだ。
 とはいえ。
 その強化訓練が無辜の民を傷つけるものだったからこそ、猟兵たちが討伐にやってきたのだが。
 しかしミノタウロスは、その事実には都合よく思い至らない!
 何故ならば彼の頭を占めるのは『弱肉強食』の四文字だからである!!
 勝てば勝ち! 負ければ服まではぎ取られるのが定め!!
 強化訓練の被害者たる集落は、弱者である事を決定づけられていたはずだった!!

「ン? 待てよ?」
 叫んでいたミノタウロスは、ふと我に返った。
「これほどの部隊を壊滅させたというほどの手練れであれば……。
 俺自身が戦線に出ても何ら問題ないのではないか?
 ……そこには、俺と張り合える程の強者が居るのではないか!!??」
 ミノタウロスは興奮の余りふんふんと鼻息が荒くなった。
 まあこのような訓練を考える奴の事だ。脳筋に違いない。
 そして実際、彼は脳筋だった。しかも筋金入りだ。
 頭のてっぺんから足の先まで、筋肉で出来ていると言っていいだろう。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
 ならば俺は征かねばならぬ!!
 俺より強い奴に会いに行くため、進まねばならぬ!!」
 ミノタウロスは叫び大斧を振り回した。

「力があれば何が出来る? なんでもできる!
 力こそ正義、パワーイズジャスティス!
 故に俺は力を求めるのだ! 強者を求めるのだァ!」
 ミノタウロスは鼻息荒く叫び、戦線へと突っ込んでいく。
「強者よ、俺の前に立ちはだかるがいい!!
 力こそが正義だ! それを知らしめてくれよう!
 パワーイズジャスティスだァァァァアアア!!!」
セシリア・サヴェージ
【POW】

ま、また脳筋…。もう、いいです。諦めました。私も力でねじ伏せる脳筋の仲間入りといたします。
UC【アンリーシュ】で鎧の力を全解放し、戦闘能力の向上及び身体能力の強化を行います。
【怪力】と呼ばれると少々傷つきますが、力には元から自信があります。
――といってもそれは鎧によって齎されるものであって私自身はか弱い乙女なので誤解なさらぬよう――【高速詠唱】
ですがその力がUCにより最大まで高まり、今の私はミノタウロスに負けず劣らずの脳筋と化しています。
さあ、力比べと参りましょう。その大斧の一撃と【力溜め】によって最大まで力を込めた我が暗黒剣の一撃、どちらが勝るか…勝負!


レド・ダークライト
【他の方との絡み歓迎】
ははは、やっと来たか本命が!
力こそ正義という意見は馬鹿馬鹿しいと思うが、お前と同じ舞台で戦ってやろう。

力には力だ。強烈な攻撃で攻める。
破壊された「地形は利用」させてもらい、相手との距離を詰める。
「かかってこいよ。」
「殺気」を放ちながら挑発をし力比べだ!自慢の「怪力」で相手の「武器を受け」、【双撃の血涙】を放つ!
一撃目で相手を「なぎ払い」、そのまま「二撃目」でやつの「傷口を抉る」よう、強烈な攻撃を繰り出し押し切らせてもらおうか。

その後は相手の傷が回復するよりも先に「早業」で切り刻んでいき、血を浴びる。ふははは、だんだん楽しくなってきたなぁ!


フィン・スターニス
元凶が出てきましたか。
彼を倒せば、一先ずこの場は収まりますね。

力こそ正義ですか?
人によって定義は違いますし、
別の正義もあるでしょうが、
とりあえず、ここは力比べに付き合いましょう。

力比べを行うのは、私ではなく、
物理的な現象ですが、問題ないですよね?
と言うことで、第七災禍・紫の崩壊を使用です。
落下してくる大質量の物体と
貴方の力、どちらが上か、
是非試して下さい。
なお、二回攻撃でもう1つ一拍置いてから落とします。

地面は、これだけ穴があいていれば、
1つ2つ位増えても誤差の範囲、ですよね?

その後は、弓での援護射撃を行い、
嫌がりそうな部位を狙撃します。


※アドリブ、絡み、共にOKです。


奈々詩・空
POW
アドリブOK
後はアイツだけか
……強さ的に最初の連中=さっきの連中=アイツ?
あっ絶対強いやつだこいつ

ともかく攻撃は直撃したくないな。下手に距離を取ると逆に当たりやすいかもしれない。
持ってる武器が武器だから懐に入り込んで対生命体シャベルで主に足と腕を狙って削っていこう
武器の握りや動きが鈍くなってくれればなおよし


大振りで振り下ろされた斧には【機撃】を斧の側面に叩きつけてやって向きを変えよう。
後は野菜を食べようとしたら口に含んだ瞬間に喉にスコップの柄に隠してある仕込みコルク抜きで攻撃を狙ってみようか


ユーイ・コスモナッツ
パワーイズジャスティス?
力こそが正義?
……いいえ、それは間違っています
「強いから正しい」のではありません、
「正しいから強くなれる」んです

そのことを教えて差し上げましょう
というわけで
宇宙騎士ユーイ、みたび見参!

上空からミノタウロス目掛けて突撃を敢行します
つかうユーベルコードは「彗星の重力加速度」!

斜め45度で一直線に突っ込み、
直前でシールドから跳びあがります
反重力シールドはそのままの軌道で突撃、
私はミノタウロスの真上をとって剣で攻撃

名づけて彗星唐竹割り、
止めて止まらぬ必殺剣ですっ

アドリブ・絡み、
ともに歓迎です


アンジェリカ・ヘインズビー
もう一息です、頑張りましょう。
[POW]
とりあえず【グラウンドクラッシャー】を放ちます。
その後、可能ならウォーハンマーを構えて【無敵城塞】を使用、相手の攻撃を無効化して隙をつくらせる方向で動きます。
「あなたの好きにはさせません」
【アドリブ・絡み歓迎】


アニカ・エドフェルト
アドリブ絡み全てOK

ふぅ…。
びっくりするほど、いっぱいいましたが、残ったのはあなただけ、です。
この村に目を付けたのが、運の尽き、です。
最後の1人まで、きっちりお仕事、させてもらい、ますっ

…とはいっても、最後くらいは、支援専念して、みます。
《サウンド・オブ・パワー》での強化、《生まれながらの光》での回復、がんばり、ますっ
…さ、さぼっては、いませんっ。
ほら、騒ぎを聞きつけた誰かさんや、敵さんが隙をついて村の方に行っちゃわないように…
あれです、予備戦力、ですっ

終わったら、村の人と少しだけ、お話、したいです。
大丈夫、でしたか? 守れて、よかった、です。
村の中で、歌を披露して、元気づけてみたり、です。


ヨー・リドット
俺は強い奴が好きだ。強い奴と戦い、高めあうことも好きだ。
お前は強いんだろうよミノタウロス。でも俺はお前のこと大嫌いだ。
お前の力には敬意がねえ。称賛がねえ。
許さねえぞミノタウロス! 無抵抗の村を襲って示す力なんざ、俺が挫いてやらぁ!

【POW】使用。
奴の目の前で、真っ向から攻撃を防御し続ける!
自然の力を纏った【オーラ防御】、【武器受け】、各種【耐性】をフル活用して勝負だ!
奴が強烈な攻撃を放ってきたら、こっちもUC【無敵要塞】で体を木の鎧騎士に変えてそれも受け切ってみせる!
もしターゲットが仲間に向いたら、【ダッシュ】で【かばう】ぜ。

奴の力全てを、俺の守りで悉く弾く! それが今回の俺の戦いだ!


コモフォ・グリード
●グリード
キミの所の軍勢をみーんな食べちゃってごめんねぇ~
でも安心して欲しいんだぁ~なんでかっていうとねぇ?
キミが教えた強さをキミ自身が体験出来るから
〔侵食された軍勢達が液状に融けていきグリードの元に呑みこまれて行く様子〕
彼等の強さ…教えてあげるねぇ~。
●コモフォ
遅かったじゃないか…歓迎しよう、盛大にな…
弱肉強食の理は分かっているな?…我々の糧の為に貴様を狩らせてもらおうか。
まずは〔追討ち〕周囲の地形に伏せたスライムの地雷達が行く手を阻むことになるだろう
次に〔返討ち〕周辺に散らばったスライムは奴の部下達の姿を伴って追い縋る
最期に我々が〔闇討ち〕襲撃、それまでに投入した戦力と共闘して撹乱…討つ。



「わ、わ、びっくり、しました……あれっ」
 ちょっと驚いて気を取られていたアニカは、走って行った皆を見た。
「……ちょっと、出遅れちゃいます、けど。
 歌声は、わたしの足よりも、早く、届きますっ」
 アニカはとことこ走りながら、歌を始めた――。

 ――戦場に響き渡るは一つの歌。
 猟兵たちとミノタウロスの騒々しい足音も、歌をかき消す事はない。
 その歌は力は正義……では無く、正しき力の強さを謳うもの。
 故にミノタウロスには届かず、しかし猟兵たちの心には深く共感を呼び起こした。
 共感は体内から力を湧き上がらせ、力を増強する。
 【サウンド・オブ・パワー】。アニカのユーベルコードだ!

●地形ごとブッ壊せ! 
「何だこの歌はッ! 正しき力だと!? 否!
 正しさを決めるのは強者! 故に力こそが正しさを決めるのだッ!!」
 歌を聞いて、ミノタウロスは思わうず憤激した。
 そこに、先陣を切った猟兵が接敵し、ミノタウロスは頭を振った。

 まず辿りついたのはフィンとアンジェリカ、そしてヨーだ。
「力こそ正義。人によって定義は違いますし、別の正義も有るでしょうが……」
「屁理屈をいうな……ん?」
 フィンは上空を指差していた。
 ふと大きな影がミノタウロスを覆い、思わず彼は上空を見上げた。

 なんとそこには……隕石があるではないか!!

「『封印解除。紫色の魔力を糧とし、第七の災い、此処に発現せよ!』
 ――力比べといきましょう。私とではなく、あの隕石と、ですが」
「……なるほど、危ないとはこういう事、ですか」
「うお! スゲえ! 隕石かよ!」
 フィンの召喚した隕石に、アンジェリカとヨーは思わず声を上げた。
 【第七災禍・紫の崩壊】。
 隕石を召喚して叩きつける、単純明快にして強力な、フィンのユーベルコードだ!

「なっ……!? まさか隕石が降ってくるとはなァ!」
 隕石を見てミノタウロスは、竦みはすれど引きはしなかった。
 力比べという単語が、彼の筋肉で作り上げられたプライドを刺激したのだ!
「思っていた以上の力! 規格外の冒険者! これこそ求めていた強者よォ!」
 ミノタウロスは大斧を構え、力を溜める。筋肉が盛り上がり、ムキムキマッチョ度が更に上がる。
 その間も隕石は近づいてきている。
 そして。

「ウオオオオオオオオオラッシャアアアアアアアアア!!!」
 野性味あふれる野太い声と共に、ミノタウロスは大斧を振り上げた!
 大斧が命中した所から隕石に罅が入り、その場で砕け散った!

 ボンボン、ボンと隕石の破片が飛んで来る。
 辺り一面に隕石の破片によるアスレチックが出来て、中々見ごたえのある光景だ。
「……隕石を、壊すなんて」
「猟兵でも早々出来ねえぞ、あんな芸当」
 アンジェリカとヨーは、それを見て思わず声を上げた。
 しかしフィンは狼狽えなかった。
「お見事です。これほどの力があれば、確かに力を至上とするのも納得できます。
 ――しかし、一つとは限りませんよ。
 続けてもう一度。『封印解除。紫色の魔力を糧とし、第七の災い、此処に発現せよ!』」
 再び詠唱を行うと、隕石がもう一度召喚された。

「ッチイ! まだ来るというのか! ならばもう一度……!
 ドリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
 ミノタウロスは狼狽えず、もう一度大斧を振り上げる。
 しかし今度は力の溜めが足りなかったようだ!
 砕けはしたが大きな破片となった隕石が、ミノタウロスに降り注ぐ!
 ドドドドドド、と地形がぐちゃぐちゃに変わる勢いだ!
「ノオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
 これにはミノタウロスも悲鳴を抑えきれない。

「さて、私はこれで終わりですが……」
 フィンはふと空を見上げた。
「ッチイ、流石にもう降らせられんだろう! それはハッタリだな!?」
「ええ。流石に連続はキツイですから、私は終わりです。
 ――私は、ですけどね」
「ッ!?!? 何だ!?」
 ふと小さな影がミノタウロスを覆った。
 隕石ほど大きくはないが、さりとて鳥のような影でもない。
 そして何より、その影はミノタウロスに恐怖を感じさせた。
 思わず彼は空を見上げた。
 そこに居たのは――。

 ――反重力シールドに乗ったユーイだ!
 先行していたユーイは、速度を上げて空を舞っていたのだ。
 アックス&ウィザーズを遊覧飛行するため? 否。
 周囲の様子を確認するため? 否。
 上空からミノタウロスに急降下突撃を敢行するためだ!!

「強いから正しいのではありません!
 正しいから強くなれるのです!」
 二連隕石に続いて急降下突撃を敢行するユーイは、高々とそう謳う。
「傲慢な力には、強さはついて来ないのです! それを教えて差し上げましょう!
 宇宙の誇りのもとに! 宇宙騎士ユーイ、三度見参!」
「は……速ッ……!?」
 先ほどの隕石は大きく鈍かった。
 しかしユーイは逆だ。隕石よりは小さく、そして物凄く速い!
 迎え撃つだけの時間など、元より与えるつもりもない!
 ミノタウロスは辛うじて武器で防御姿勢を取った。

「今です!」
「……!!??」
 なんと、ユーイはシールドから飛びあがった!
 シールドは止まる事は無く、そのままミノタウロスへと突っ込んでいく。
 一方ユーイはどうだ。
 ユーイはミノタウロスの頭上へと躍り出ているではないか。
 手に握られるのは『クレストソード』。騎士の紋章が刻まれた白銀の剣!
「彗星唐竹割り!」
 それは【彗星の重力加速度】と、ユーイ自身のコンビネーション攻撃だ!
 シールドとユーイの同時攻撃が放たれる!

 ボゴォン!
 シールドはミノタウロスへ突っ込み、周辺の地形を抉り取る。
 同時にユーイの剣は、ミノタウロスの頭部へと見事命中。
 剣で角を折り取った!
「ッグウウウウ!! 素晴らしきかな強者たち!」
 普通なら脳震盪を起こすレベルの衝撃を受けたというのに、彼は立っていた。
 何故なら彼こそは脳筋ミノタウロス。
 全身筋肉ムキムキのマッチョな彼は、角が折れた程度でへこたれなかった。

「どれもこれも派手だなあ! パワフルだ!」
 ヨーは敬意と称賛を込めた感嘆の声を上げた。
 その隣でアンジェリカがウォーハンマーを担ぎ直し、ミノタウロスを見据える。
「……さあ、私たちの番ですよ」
「おう! 俺たちの力を見せてやる。
 無抵抗の村を襲って示す力なんざ、挫いてやらぁ!」
 二人は駆け出し、ミノタウロスへと突撃した。
 ミノタウロスは立っているとはいえ、ユーイの攻撃で少々ふらついていた。
「あなたの好きにはさせません」
 そこへアンジェリカは、ウォーハンマーの一撃を叩き込んだ!
 【グラウンドクラッシャー】。地形ごと破壊する一撃だ!
「ッグウウウウウオオオオオオオオオオオ!!」
 ウォーハンマーの一撃は、ミノタウロスの身体に直撃する!
 そして既にしっちゃかめっちゃかの地形が、更に抉れていく!
「喰らってばかりではないぞオオオオオオオオオオ!」
 ミノタウロスは大斧をぶうんと振り回し、アンジェリカへと放つ。

 しかし!

「おっとこっちだぜ!」
 バギィン! とバトルアックスが間に入り、大斧は弾かれた!
 それはヨーのバトルアックスだ。
 ヨーの力によりオーラを纏ったアックスは恐ろしく頑丈だった!
「ぬうん! だが俺もここでは終わらんぞ!」
 ミノタウロスは力を溜めた。筋肉が再び盛り上がり、ムキムキマッチョ度が増大する!
 そう、彼にも単純なる武器の一撃があるのだ。丸ごと地形を破壊するような、とびきり重い一撃が!
「いいぜかかって来い! お前が幾ら強かろうとな、俺には届かねえ!」
 大斧が振り下ろされるまでの僅かな時間で、ヨーはユーベルコードを展開した!
 それは【無敵城塞】。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵となるのだ!
「ドオオオオオオリャアアアアアアアアアアアア!!」
 バギイイン!!
 大斧はヨーに直撃し甲高い音を奏でた。
 だがしかし!
ミノタウロスのマキ割りクラッシャーは、ヨーに傷一つつける事は無かった!
「何ィ!?」
「へっ……その程度かよ!」
 ヨーは辛うじて口を動かし、ミノタウロスを睨みつけた。
 無敵城塞の代償で、今のヨーは身体を殆ど動かせない。
 しかし、ミノタウロスの注目を全身に浴びている今、それは些細な代償だ。
「オオオオオオオオオオオオ!!」
 ミノタウロスは再び大斧を振るう。
 だがどの攻撃も、ヨーにかすり傷すら負わせられない!

 ミノタウロスはその事実に気を取られ過ぎた。
故に、更にやってくる猟兵たちに気付かなかった……!

●パワーイズノットジャスティス!
「暗黒の力を見せてやろう!」
「かかってこいよ!」
「――ッ!!??」
 隕石の破片の影から、二人の猟兵が飛び出した。
 一方は暗黒を全身に纏い、禍々しき闇の化身となったセシリア。
 そして他方は、鮮血の黒剣を構えたレドだ。
 ミノタウロスは瞬時にヨーから視線を上げ、セシリアとレドを見た。
「速いがまだ間に合うッ、ウオリャアアアアアア!!」
 ミノタウロスは大斧を振り回し、二人へと叩き込む。
 しかし、セシリアの暗黒剣とレドの黒剣が、その一撃を受け止めた!
 確かにミノタウロスも膂力に優れている。それは間違いない。
 しかし今のセシリアは暗黒の力で筋力が増しており。
 レドは元々筋力に自信がある猟兵だった。
「――甘いな、ミノタウロス!」
「全くだ、その程度か? 我が双撃を持って散るがいい!」
 二人は大斧を弾きあげ、全力の攻撃を叩き込んだ。
 セシリアからは、力を溜めて暗黒剣の一撃が放たれる。
 黒の化身となった彼女の一撃は、全力のミノタウロスにも勝るとも劣らない威力だ。
 そしてレドは、怪力が乗った黒剣の双撃を放った。
 【双撃の血涙】。初撃が当たった相手に、強烈な連撃を繰り出すユーベルコードだ!
「ッグウウウウウウウウウウウウ!!」
 轟、と風が巻き起こり、ミノタウロスは大きく後ろへと吹き飛ばされた。
 宙には鮮血の花が咲き、ぱたぱたと地面を赤く濡らす。
「お前の力はその程度か?」
「はははっ、楽しくなってきたなぁ!」
 セシリアは冷淡にミノタウロスを見据え。
 レドは血を浴びて高揚していた。
「……まだだッ……まだ終わっちゃいない!」
 鼻息荒く、ミノタウロスは叫ぶ。
 しかし既にボロボロなのは、誰の目にも明らかだった。

「俺にはこんな物もあるッ……!」
 ミノタウロスはどこからともなく野菜を取り出した。
 野菜、である!
 アックス&ウィザーズで取れた、上質な特産品だ!
 それにしても何故、今野菜を取り出したのか。
 なんとミノタウロスは、野菜を喰らう事によって回復が出来るのだ!

「これを食えば仕切り直しだッ……がはっ!?」
 ミノタウロスは野菜を口に放り込もうとした。
 だが破壊された地形の影から現れた空に、野菜が弾き飛ばされた!
「目の前で回復とかさせる訳ないだろ」
 空はスコップの柄の仕込みコルク抜きで、野菜を抉ってポンと弾いたのだ。
 哀れ野菜は空を飛び、そのままぺちゃりと地面に落ちた。破壊された地形の上でドロドロだ。
「ぬうっ、貴様許さんッ!」
 ミノタウロスは激昂し大斧を振り上げ、空へと振り下ろす。
「遅い、撃砕!」
 しかし振り下ろされた斧は、突如として横に逸れ、そばの地面を抉るに留まった。
 突如として巨大な機械の腕が現れ、グーパンチによって斧の軌道を逸らしたのだ!
 空のユーベルコード、【機撃】だ!

「……強いッ、強すぎるッ!」
 これにはミノタウロスも焦りを隠せない。
 回復を当てにした野菜は食べられなくなった。
 大斧は地面にめり込み、中々引っこ抜けない。
 既にボロボロの彼は、今ここでようやく敗北の雰囲気を感じ取った。
 しかし。
「だからといって引くわけにはいかん!」
 脳筋の彼に、敗北の二文字は無かった!

「なら最後に、キミが教えた強さをキミ自身が体験すればいいよぉ~」
「……ようやく仕込みが終わった」
 銃を構えてコモフォが現れる。傍らにはグリードも居る。
「最後だと? ふざけるな、俺はまだ……」
「いや、終わりだ……言っただろう、仕込みが終わったと」
「何……な、なんだ!?」
 周囲に展開されたスライムが、ミノタウロスの部下たちの姿となって追いつめる。
「……もう終わったんだよ」
「ほうら、キミの仲間たちだよぉ~」
「うお……オアアアアアアアアア!!!」
 グリードのスライムが襲い、コモフォの銃弾が撃ち抜いていく。
 やがてミノタウロスはスライムに呑み込まれ……跡形も無く消え去った。

 こうして、集落をサンドバッグとして強化訓練を行おうとした不届き者は消えた。
 このような事が起きる事は、暫くは無いだろう。
 そして猟兵たちは集落の方で様々に歓待をされた。
 無数の感謝感激に包まれ、料理を振る舞われ、軽くお祭り騒ぎだったという。
 アニカの歌で元気いっぱいになった村の住人たちは、猟兵を巻き込んで夜通し騒ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月18日


挿絵イラスト