如何見れば紫(作者 八月一日正午
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#カクリヨファンタズム  #お祭り2021  #夏休み 


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●実録! モテない奴のテンプレ言動!
「まあ花火ったって、要はただの炎色反応だもんな。中学校の理科の実験でやったやつだよ」
 グリモアベースの片隅で、臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)は今時なかなか聞かないような台詞をのたまっていた。
 とはいえ、お集まりの猟兵の皆様の中には花火自体が初めてという方もいらっしゃるだろう。中学校というものをご存じない方だっているかもしれない。何にせよ、こんなことを言う大人になってはダメだぞ。
「――しかし、カクリヨファンタズムの花火は一味違う。珍しいものは楽しんでおこうか。いろいろと見聞を広めるのも、僕ら猟兵の仕事みたいなものさ」
 どうしてか戦争のない夏休み。
 遊べるときは、遊んでおくに限る。

「幽世の妖怪花火はなんせ妖怪の花火だから、花火と一緒に打ちあがったり、模様の上を散歩したり、夢の中みたいなことが実際にできる。その中でも、ちょっと変わったやつを紹介しようかな」
 安っぽいライターを取り出して、夏報は線香花火に炎を灯す。足下にちゃんとバケツの用意があるのでご安心を。
 ぱちぱち、色鮮やかな光が散って。
「……何色に見える?」
 誰かが答えを口にするより先に種明かし。
「レトロウィザード特製の、不思議な火薬でね。――人によって見える色が違うんだって。種族も、年齢も、性格も、その日の気分も関係なく、その一人にはその一色しか見えない」
 赤、青、黄色、あるいはその中間。君には何色が見えただろうか。
「名付けて『同衾異夢』、だそうだ。洒落てるでしょ」
 その洒落た名のついた火薬を、職人気質の妖怪たちが花火に仕立てたらしい。
「これをねえ、スターマインみたいに大量に打ち上げる。当然、夜空は一色に染まる」
 そして、その場に居る誰もが、たとえ談笑しながら隣を歩いていたとしても、――全く違う一色を見るのだ。
「全部同じ色の花火大会……ってだけでも結構珍しいでしょ。会場は水着コンテストと同じだから、海辺、舞台、縁日の出店、お祭りっぽいものは大体あるよ」
 楽しみ方も、またそれぞれ。

「ちなみに、見える色には本当に何の法則性もないみたい」
 怒りっぽいから赤だとか、青が出たら大吉だとか、そういう意味や理由は一切無いとされているらしい。
「自分なりに見出してみるのも面白いかもしれないけどね。――さあ、君の炎は何色かな」


八月一日正午
 どうも! はちがつついたちしょーごです。
 地元では毎年この日に花火大会のはずなんですが、今年はどうなんでしょうかね。
 というわけで、今夜は夜空が一色に染まる花火大会です。おまかせも可能ですが、ぜひあなたの色を教えてください。

 受付期間は【8/1(日)OP公開〜翌朝8:29】。プレイング数が完結に満たなかった場合はのちのち追加募集を告知する予定です。
 ご同行人数は【3人】まで。お声かけくださればグリモア猟兵も同行します(グリモア猟兵込みの3人まででお願いしますね)。
 他、細かい点はマスターページをご参照くだされば!
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み2021』

POW妖怪花火で空へGO!
SPD妖怪花火の上で空中散歩
WIZ静かに花火を楽しもう
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


アン・カルド
夜刀神君(f28122)と。

…夜刀神君、これ何色に見えるかい?
そう言って線香花火を持ち上げて。

銀色か、銀色は僕の色。
…ってわけじゃあないけれども。
僕は、僕自身はきっと銀色を見るだろうと思ってた、法則なんてないのにね。

…話が逸れた、僕が見た色は橙色。
なんだか不思議な気持ちだ、この色は僕の中にあるものなんだろうか…それとも別の誰かか。
でも、いやじゃあないよ…だってこの色は暖かいもの。

夢や星に己を見出すのが人間だからね。
そう言うと橙色の玉がぽとりと地面に落ちて、時間が来たのが分かった。

さ、花火が打ちあがる。
一色だけのシンプルなものかもしれないが…この色なら、夜刀神君と一緒ならきっと楽しめるだろう。


夜刀神・鏡介
アン(f25409)と
見る人によって色が変わる花火とは……

俺には銀色に見えるが、アンはどうだ?
ああ、アンは髪も羽根も銀だしな
法則はないって話だから、俺が銀色を見るのも偶然……だが少し気になるなアンを見て
ま、単純に刀を思わせるだけかもしれないが……でも、刀より暖かい色だ

アンは橙色か
どうだろう、アンが自分をどう思っているかによると思うけど
暖かいと感じるのは、良いことだろう
……って、意味や理由がないと言われてるのにな。見出したくなるのは人のサガか

おっと、そろそろ本番か。一色だけの花火ってのは寂しんじゃないかと思っていたが、案外悪くない
同じ色を見る事ができなくても、同じ思いを通わせる事は出来るだろう


●僕の観測、君の解釈
 宵の口ほどの波打ち際は静かだった。
 出店屋台の喧噪が、背中のほうから遠く聴こえる。
 ――花火大会が本格的に始まれば、この浜辺も猟兵たちと妖怪たちで満杯になるだろう。しかし、祭の本番まではもう少し時間があった。見物客は飲食物の確保に忙しく、職人たちは打ち上げ装置の最終確認に集中している。
 そんな穴場に、ふたり並んで。
 気になることがあるとすれば、ぺったりと地面に伏せた翼に砂が絡まることくらい。
 それも、まあ、海らしくっていいのかな――なんて思いながら、アン・カルド(銀の魔術師、或いは銀枠の魔術師・f25409)は傍らの横顔に目をやった。
「見る人によって色が変わる花火とは……」
 むむ、と真面目な表情をして、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は線香花火の先を覗き込んでいた。全く同じものをひとつずつ買って火を点けたのに、なぜか、自分ではなくアンが持っている花火の先を見ている。
「……夜刀神君、これ何色に見えるかい?」
 ちょっと持ち上げてみると、ぽたり、光の雫がひとつ落ちた。
「俺には銀色に見えるが、アンはどうだ?」
 そう尋ね返す鏡介はどこか訝しげである。……見る人によって色が変わる花火だと言われても、一人で見ているぶんにはただ一色の花火なのだ。不思議なようで、不思議ではない。どうにも腑に落ちない感覚があった。
「銀色か、銀色は僕の色」
 アンは嬉しそうに呟いて、ぼんやりと宙を見て、しばらくしてから左右に首を振る。
「……ってわけじゃあないけれども。ほら」
「ああ、アンは髪も羽根も銀だしな」
「うん。僕は、僕自身は、――きっと銀色を見るだろうと思ってた」
 長い髪にも、重い羽根にも、人一倍の愛着がある。
 それは手入れに掛けた時間の積み重ねであり、それ以外を他者に認められなかった経験の裏返しでもあり、アンにとっては織り上げられた自我の一部だ。
 けれども『同衾異夢』の魔法は、そんな思い入れすら軽々と無視するらしい。
「法則なんてないのにね」
 まあ、最初からそう説明を受けてはいるのだけれど、いざ予想を裏切られると戸惑いがあるようだ。そんなアンの様子を見て、鏡介もこの花火の『不思議』を初めて実感する。
「なら、俺が銀色を見るのも偶然……」
 鏡介の視線は自然と花火を離れて、銀の髪をなぞって、羽根へと留まる。……さすがに美味しそうだとはもう思わないけれど、どうにも、少し気になりはして。
「ま、単純に刀を思わせるだけかもしれないが」
 なんて、納得した風を装ってみる。
「……でも、刀より暖かい色だ」
「暖かい、ね」
 血色の悪い彼女の頬が、染まって見えるくらいには。

「……話が逸れた、僕が見た色は橙色」
「橙色か」
 質問した本人すらも忘れるほどの間を空けて、アンは突然ばつが悪そうに話題を戻した。彼女と会話をしていると、こういうズレは割とよくある。鏡介も今更深く気にしない。
「なんだか不思議な気持ちだ、この色は、僕の中にあるものなんだろうか」
「どうだろう、アンが自分をどう思っているかによると思うけど」
 彼女の炎の橙色は、瑞々しく鮮やかな蜜柑色なのか。淡く霞んだ夕焼け色なのか。あれこれ想像を巡らせることはできても、鏡介の目には銀の光しか映らない。
「……それとも、別の誰かか」
 なんてね、と誤魔化して、アンは下手な笑顔を作った。
「でも、いやじゃあないよ……だってこの色は暖かいもの」
「暖かいと感じるのは、良いことだろう」
 その別の誰かとやらを、どう思っているかにもよるけれど。
 ――そう思いながら返した笑顔も、彼女と同じくらい下手だったかもしれない。

「……って、意味や理由がないと言われてるのにな。見出したくなるのは人のサガか」
「夢や星に己を見出すのが人間だからね」
 銀色の、橙色の、互いの炎が燃え尽きる。光の玉がぽとりと地面に落ちて、静かな時間の終わりを告げる。
 ……こうして話をしているあいだ、ずっと世界にふたりきりのようなつもりでいたけれど。
 全く気付かないうちに――祭の準備が終わった夜の砂浜は、すっかり見物客で賑わっていた。
「さ、花火が打ちあがる」
「おっと、そろそろ本番か」
 線香花火を捨てたバケツの水面に、最初の一花が映り込む。

 一色だけの、シンプルな花火だ。
 夜空を埋め尽くす色彩には意味も理由もない。星だってばらばらに光っているだけだし、夢なんて眠りの中で見る幻にすぎない。髪の色も、姿かたちも、こうして隣に居ることすら、きっと単なる偶然でしかない。
 けれど、寂しいなんてことはなかった。
「……この色なら、」
「案外、悪くない」
 君と一緒なら楽しめる。
 同じ色を見る事ができなくても、同じ思いを通わせる事は出来るのだから。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

鳶沢・成美
アドリブ・絡み・可
余裕あれば臥待さんと絡みたいです

はあ、炎色反応……
そういえば水戸〇門で、炎色反応を独自に発見した花火師を
黄門様御一行が助けるってストーリーあった気がする
橙色の花火の中でその花火師のだけ緑色の花火があがった
みたいな、めでたしめでたし(うろ覚え)
なぜか唐突にそれを思い出しました。

そして僕が見るにこの花火は……ぐ、群青色? ってやつでしょうか
暗視できるから見えると言えば見えるけど、やっぱりよく見えないんですがこれは

まあ、打ち上げ花火は音も大事
ドーンと腹に響く音は会場でないと体感できないし
これはこれで音をより感じやすくなると考えれば……アリかなあ?


●ギリギリを攻めるんじゃありません!
 花火の打ち上げを待つお祭り会場は、徐々に賑わいを増していた。
 串焼き、たこ焼き、かき氷。ヨーヨー釣りに金魚すくい。立ち並ぶ定番の屋台のなかに、一際長い行列がある。今回の目玉商品のひとつ――『同衾異夢』の線香花火を売る店だ。
「ごめんねえ、前のお客さんので最後だよ」
「あー、さすがにもう売り切れですか」
 スターマインの前に自分の炎の色とやらを確認しようと思ったけれど――ま、いいや。鳶沢・成美(探索者の陰陽師・f03142)は切り替えの早さが持ち味の少年だ。
 持参したバケツは、ゴミ拾いにでも使おうか。こういう場に来るとどうせ清掃ボランティアとしての性が出てしまう。動きやすい支給品の水着、黄色いTシャツという成美の出で立ちは、見物客というよりは運営委員といった風情である。
 地味な服だが、地味ゆえに少々目立つのかもしれない。……散り散りになっていく行列の向こうから、知り合いらしき姿がこちらに気付いて顔をあげた。
「花火買えなかったの? グリモアベースで見せたやつの残りあるけど、あげよっか」
「お気遣いなく。花火なら前にも頂きましたし」
 案内役こと臥待・夏報。こちらはしっかり白地に花柄の浴衣を着込み、祭りの雰囲気に溶け込んでいる。炎色反応がどうとか散々言っておいて、それなりに浮かれているらしい。
「ああ、炎色反応といえば」
 ふと浮かんだ連想を、世間話がてら口にする。
「いつだったかテレビで見た、水戸――」
「待った」
 すっ、と差し伸べられた手のひらがこちらの話を遮った。夏報は真剣な顔で、ふるふると首を振って。
「具体的な作品名はまずい。なんかまずいような気がする」
「そうですか。まあアレですよ」
「アレね。家光公の末裔が大活躍する、勧善懲悪の代名詞、ぱーらぱー、ぱらーぱぱー、ぱーらーぱーぱぱー♪ のアレね」
「今の作品名よりまずいんじゃ?」
 それはさておき。
「テレビで見たんですよ。炎色反応を独自に発見した花火師を、御一行が助けるってストーリー」
 現代でこそ中学校で習う知識でも、江戸の世では珍しいものだろう。それこそ不思議な魔法のように見えた筈だ。陰謀だとか策略だとか、色々な事件が起きていたような記憶がある。
「最後は、橙色の花火の中で、ひとつだけ緑色の花火があがった――みたいな感じで、めでたしめでたし」
 真ん中あたりの内容はうろ覚えだけど、そのラストシーンは結構印象に残っていた。
「なぜか唐突にそれを思い出しました」
「終わり良ければ全て良し、って話だね」
「多分」
 線香花火は買い損ねたし、行列に時間を取られたせいで食べ物も飲み物もないけれど。
 会場に響くサイレンが、メインイベントの開始を告げる。

 夜空を埋め尽くす光。
 人によって異なるという不思議な色。
 予想通りというの者もいれば、意外に思う者もいるだろう。そして、成美が見るに、この花火はが示す己の色は――。
「……ぐ、群青色? ってやつでしょうか」
 なんというか、光にしては暗すぎる。照らし出された夜空と絶妙に融け合ってしまって、いまいち境界の判別がつかない。
 暗視に集中すればなんとか、見えると言えば見えるのだが――暗視が必要となる光ははたして光なのだろうか。哲学的な問題だ。
「いや、やっぱりよく見えないんですがこれは」
「そ、そういうこともあるよ……ほら……」
 なにごとかフォローを入れようとした夏報の声を、とどろく音が掻き消した。
 ――スターマインの第二波だ。相変わらず光はよく見えないけれど、腹まで響く振動が打ち上げ花火の存在を成美に伝えてくる。そういえば、江戸時代の花火は、光よりも音を楽しむものだったとか雑学本で読んだような。

 今日び、色鮮やかな花火の映像なんていつだって手に入る。
 けれどこの感覚だけは、会場でないと体感できない醍醐味だ。

「これはこれで、音をより感じやすくなると考えれば……」
 終わりよければ、全て良し。
「……かなあ?」
大成功 🔵🔵🔵

ヴァシリッサ・フロレスク
夏報の説明をマジメに聴き入り

ンじゃアタシもリン酸とか飲ンだらカッコいい感じになンのかい?フフッ。
指先から焔をチラつかせ

Hm?所謂『逆転クオリア』ッてヤツみたいな?
そうそう、アタシにゃ夏報チャンが前から金ピカに見えててねェ?
くだらない冗談を吐く

邪魔にならなければ、夏報のほど近くで
先客がいれば、遠巻きに
花火を眺める

その色は、黒

無であり、全

終であり、始

寂であり、騒

全てを突き放し、全てを抱擁する

慣れた色

キライじゃない

ミンナ、よくみえるからね

何色かと問われれば

シキソクゼクー、ッてね♪
細かいこたァイイッてモンさ
あァ、綺麗だよ?
夏報チャンもネ♥

あァ
ミンナの光
見失ッたりするもンかよ

だって

フフッ、なンでも無いサ


●色すなわち空
「チューガッコーで習うのかい? 炎色反応ッて」
 火薬を扱う都合上、その手の知識を独学でかじったことはある。
 しかし、それを学校で習うというのは――ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)にとって遠い世界の出来事だ。故郷のダークセイヴァーを一旦離れ、UDCアースへと移り住んでからまだ数年。そこそこ馴染んできたけれど、むしろ馴染んできたからこそ、日本文化に対する興味は尽きることがない。いわゆる花魁風に気崩した浴衣の大胆なデザインは、そんな彼女の象徴のようでもあった。
 それに対して、シンプルな浴衣をそつなく着込んだグリモア猟兵――臥待・夏報はといえば、正真正銘日本生まれの日本育ちである。中学校での記憶なんて、彼女にとっては大して特別なものでもない。
「理屈抜きで暗記させられるんだよねえ。リアカーとストロベリー無き路頭のK村、とかいって」
 夏報の説明をマジメに聞き入りつつ、金属の名前をいくつか頭に浮かべるヴァシリッサ。……どちらかといえば、その授業を受ける彼女の姿のほうが気になった。呪文みたいな語呂合わせを唱えて難しい顔をする、セーラー服の少女を思い描いて、それがどうにも可笑しくて。
 まあ、お勉強はそこそこにしておこう。
 今日は、トモダチと一緒の楽しいお祭りなんだから。
「ンじゃアタシも、リン酸とか飲ンだらカッコいい感じになンのかい?」
 フフッ、と冗談で混ぜっ返して、指先に赫い焔をチラつかせる。……すると、夏報は真剣な顔でしばらく考え込んで。
「骨とか歯にはリン酸カルシウムが含まれてるはずだから、そのへんを燃やせば、あるいは……」
「夏報チャン……、そういうトコだよ?」
「冗談だって。ほんとにやっちゃダメだからね?」
 気の抜けたように、笑い合う。
 なんとなく会話が途切れると、出店屋台の喧噪と祭囃子がふたりを包んで――打ち上げ花火の爆音が、それをまるごと掻き消した。
 ――『同衾異夢』のスターマインは、数回に分けて行われる。
 これは二度目か、三度目くらい。ヴァシリッサも、夏報も、とっくに己の炎の色を知っていた。だから何に驚くでもなく、しみじみと同じ空を見上げる。
「この場の全員が、違う色を見てる……、自分で説明しといてなんだけど、あんまり実感わかないな」
「Hm? 所謂『逆転クオリア』ッてヤツみたいな?」
 ……誰だって、一度は考えたことがあるだろう。自分に見えている世界は、他人に見えている世界とは根本的に異なるのではないか、と。
 自分が赤だと思っている色が、他人にとっての緑であるかもしれない。肉が、林檎が、燃える炎が、全部『緑』に見えていたとしても――その色をずっと『赤』と呼んでいたのなら、周囲との会話が矛盾することもない。
 言ってしまえば、証明不可能な懐疑論だ。
「この花火だったら、お互い話せば色の違いがわかるけど……」
「ンー、でも、嘘吐いたってバレないンだろ?」
「……確かに、そうだね」
 極端な話、自分以外の全員が嘘吐きならば――見る人によって色が違う花火ですらも嘘かもしれない。そこまで他人を疑う思考実験を、好ましいものだとは思わないけれど。
「じゃ、たとえば夏報さんが、この花火が金ピカに見えているなんて言っても――」
 なんとはなしに、目が合って。
「そうそう、アタシにゃ夏報チャンが前から金ピカに見えててねェ?」
「どんな種族だよ」
 また、くだらない冗談を吐く。

 しばし無言で、花火を眺めてみるとする。語ろうと、語るまいと、この風景は結局自分にしか見えていない。
 その色は、黒。
 無であり、全。
 終であり、始。
 寂であり、騒。
 ほんのり蒼い夜空より、ずうっと昏い、闇のような光。
 全てを突き放し、全てを包容する――慣れた、故郷の空の色だ。

「――ま、キライじゃないさ」
 あの空を知っているからこそ、この世界の祭の楽しさが、今ここにいる皆の姿が、よく見える。
「マスター、なんかめちゃくちゃ目つき悪いけど」
「アー、そりゃ生まれつきってヤツさ」
「そう……? 何色が見えてる?」
「……ま、シキソクゼクー、ッてね♪」
 細かいこたァイイッてモンさ、と受け流すと、夏報は怪訝そうに眉をひそめた。どうにも誤魔化しと受け取られたらしい。当たらずとも遠からず、といったところではあるけれど。
「もしかして……あんまり色が見えてない? そういう人もいるみたいでさ」
「あァ、気にしない気にしない。――花火、綺麗だよ? 勿論、夏報チャンもネ」
「あはは、……それって、金ピカだから?」
 苦笑いで肩をすくめて、彼女はそれ以上を尋ねようとはしなかった。

 たとえ、互いの色が見えなくたって、言葉で全てを伝えることができなくたって、そこにある光を見失ったりするものか。
「だって――」
「だって?」
 花火の光は、零れたらあっという間に消えていく。
「――フフッ、なンでも無いサ」
大成功 🔵🔵🔵

ロニ・グィー
アドリブ・絡み歓迎!

せっくだから今年の水着で行こうっと!
花火の色:金色
きらきら光ってきれいで派手だから!

●つきあって夏報お姉ちゃん!
一人だと飽きるから!
ひとり残った寂しいこどもと組むのは先生のやくめでしょ!
って前も言ったような気がするー
わーい浴衣きれいだよ!ちょっと歳取…育った?かわいい!

●夏祭りをついでに楽しもう
ふふん、たくさん遊んだからここらのお祭りには詳しくなったよ!
ホラ、ドワーフ人形焼きだって!おっきい!再現度高い!ちょっと買ってくるー!
ほら、夏報お姉ちゃんのぶん!

●盆踊りで〆
最後は盆踊りで〆るんだよね!知ってる知ってる
あ、そうだ夏報お姉ちゃんは何色に見えてるの?ペンタブラック?


●これはもしかしてモテてるのでは?
 神様にしてお子様、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は言わば永遠の美少年である。
 せっかくだからと用意してきた今年の水着は、素材の良さを最大限に活かすスタイルだ。シンプルなハーフパンツに、ビーチサンダル。一見子供っぽい組み合わせ――その上に羽織ったカモフラージュ柄のパーカーが、危うい色気を演出する小粋なアクセントになっていて。
「つきあって夏報お姉ちゃん!」
 そんな殺し文句を吐こうものなら、間違いに走ってしまうご婦人も居そうなものではあるのだが。
「またー?」
 ダメだった。花火を見て炎色反応の話をする女が相手ですからね。今回も健全なリプレイをお届けしていきます。
「だってひとりだと飽きるから! ひとり残った寂しいこどもと組むのは先生のやくめでしょ!」
「そもそも夏報さんは別に先生じゃないような」
「そういうこと言う人はモテない! ……って、これも前に言ったような気がするー」
 失礼すれすれの言動だって子供の特権。
 それに夏報お姉さんは、なんだかんだと文句を言いつつ――子供の面倒はちゃんと見るタイプだ。あの洞窟の冒険も、妖怪商店街のどんちゃん騒ぎもそうだった。今だって、お酒の入ったビニール袋をわざわざ片手に持ち替えて。
「仕方ないなー。ほら」
 こうやって、繋ぐための手を用意してくれる。
「わーい! 浴衣きれいだよ! ちょっと歳取……」
「としと……?」
「と、しと……」
 あ、今のはちょっと流石に駄目だったかもしれない。なんだかこの流れにも既視感あるし。
 越えてはいけない一線を越えていくのがロニの持ち味ではあるのだが、こと女の子……女の、子? とりあえず異性については鋭い第六感がはたらくのだった。そこは倫理や良識ではなく、本能の領分なので。
「……育っ……身長伸びた? かわいい!」
「ほんと!?」
 たぶん誤魔化せた。ちょろい。
「うれしいなー。タオルで補正してるからかな」
「あぁー、普段はもっと猫背だもんね」
「一言多い……」
 そんなふうに騒いでいると、歳の離れた姉弟に見えないこともない。

 ――並んで歩き始めたふたりを、『同衾異夢』の光の雨が出迎える。
「あ、そうだ。夏報お姉ちゃんはこれ何色に見えてるの? ペンタブラック?」
「夏報さんを何だと思ってるんだ……。そんなこと言う子には教えてあげないぞ」
「ボクはね、金色!」
 それと同じ色の瞳を、めいっぱいに輝かせて。
「きらきら光って、きれいで、派手だから!」
「理由や意味はないって言われてるんだけど……」
 まあ、きみは神様だからな。そう言って夏報は苦笑を返す。

 そのうちにスターマインが途絶えても、今日は楽しい夏祭り。見物客を一瞬たりと退屈させることはない。
 花火のついでに――いや、人によってはこちらがメインと言うべきか。ライトアップされたいくつもの屋台が、夜空の賑わいに華を添えている。
「ふふん、たくさん遊んだからここらのお祭りには詳しくなったよ!」
 どこぞの妖怪商店街で楽しく学んだ甲斐あって、カクリヨのお祭りに関する予習は万全である。その気になれば料理を出す側に回ることだってできるけど、今日はお客様としてお店を冷やかしたい気分。
「へいらっしゃい! 焼きたて喰いねぇ!」
「なんか聞き覚えのある呼び込みだな……」
「ホラ! ドワーフ人形焼きだって!」
「そしてこれもどっかで見たような北欧雑貨だな……」
 花壇の飾りによくあるような、三角帽子にヒゲの妖精を象った人形焼きがこの店の目玉商品らしい。
 顔に刻まれたシワまで見てとれるような造形美。両手で抱えるほどの実物大、そのひとつひとつが、透明なビニール袋にくるまれてずらりと並んでいる。……大人になってしまった夏報は、思わずその体積からカロリーを計算してしまいそうになるが。
「おっきい! 再現度高い! ちょっと買ってくるー!」
「あっ、……もう」
 ロニは何の計算もなく、行列の尾へ駆けていく。

 ……こうなってしまえば、夏報もロニの帰りを待つしかなかった。目立つ場所に立っていないと向こうが迷子になりかねない。行列にちらちら覗く桃色の髪を目で追いつつ、手持ち無沙汰にビールの缶を開けたりして。
「ほら、夏報お姉ちゃんのぶん! えだまめ味!」
「微妙に気が利くな……、いや、ううん。ありがとう」
 柔らかい笑顔に切り替えて、夏報が人形焼きを受け取ったのとほぼ同時。
 ――どおん、と、次の花火が上がる。それに続いて、アップテンポの音楽に乗せたアナウンスが響く。
『皆さんお待ちかね! ダンス大会の時間です! ステージにて――飛び入り参加も大歓迎――』
「あ、最後は盆踊りで〆るんだよね! 知ってる知ってる」
「待って待って! 夏報さん踊り方わかんないし、今ちょうど人形焼きで手が塞がって」
「大丈夫!」
 強引に手を引っ張って、神様は鷹揚に笑う。
「芸術はね、フィーリング! 十人十色! ――ちょっとくらい普通と違ったって、一緒に踊れば楽しいよ」
大成功 🔵🔵🔵

鵜飼・章
空気を読まず普段着
どれが普段着なんだろう

見聞を広めるのも仕事と言われると
急にやる気なくなるな…嘘嘘
珍しい花火を見に来たよ
臥待さんが喜びそうな物も露店で買った
はい、カクリヨご当地クソ瓶ラムネ
油揚げ味と酢イカ味だって…どっちが良い?

集中できなくなりそうだから
飲むのは花火の後にしよう
…え、あれが?
どうもこうも見事な灰色だよ
しかも綺麗な灰じゃない
絵具のついた筆を筆バケツで洗って
洗い続けたなれの果ての色だ…
泥水色とも言える

こんな汚い花火初めて見たけど
加法混色では生まれないその色は
何故かしっくり来てしまう
臥待さんは何色に見えた?
とか言って僕もきみも本当は
全然違う色が見えてたりして

ラムネ…開けようか
うわ酷い


●水と油と
 花火大会の見物客は、もちろん猟兵だけじゃない。
 主役はむしろ、カクリヨファンタズムに棲む妖怪たちの百鬼夜行だ。人間に近い容姿をしている者も、していない者も、どことなく変わった格好が多かった。
 だから――スタイリッシュな白衣の裏地に、怪しい色の試験管をずらりと仕込んだ不審人物だって、そこそこ景色に馴染んで……いない。日本らしさも夏祭り感も絶対零度だ。
「何なのその服……。初めて見るけど」
「普段着だよ」
「初めて見るのに!?」
 これも某友人作のコスプレ衣装だ。本日朝十五時半、たまたま部屋から発掘された。
 敵か味方かわからない、都合よく強化アイテムをくれるマッドサイエンティスト……みたいな設定だった気がする。森の洋館の殺人鬼ほどにはピンと来なかったので、細かいところは忘れてしまった。試験管、ちょっと投擲しづらいし。あやかしメダルに差し替えてくれば良かったな。
 空気は読めない、読めたとしてもその労力を真っ当な手段で支払わない。――それが鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)と呼ばれる生物だ。

「君は何着ても似合うけど、君が世界観に似合ってないんだよな……」
 しれっと酷いセリフを言うことにかけては、臥待さんだってなかなかのもの。……しかし彼女は、空気を読んで浴衣を着ることができるタイプの人間だ。この言動も、気安い友人として接してくれている証だろう。
「で、見聞、広めに来たの?」
「それも仕事と言われると、急にやる気なくなるな……」
「まあまあ。そういうことにしとくと経費で落ちるんだよ」
 経費、なかなか縁のない概念だな。
 気まぐれを『絵本の取材』と言い張るたびに、出版社から経費が落ちていたりはしないと思う。そんなことすら気にしていない僕の思考が、仕事なんて言葉に大した影響を受けるわけもなく。
「……嘘嘘、珍しい花火を見に来たよ」
 絵本に描くかもしれないし、結局描かないかもしれない。そんなのは後から決めるくらいがちょうどいい。

 メインイベントの打ち上げ花火は、数回に分けて行われるそうだ。スマホを持っている臥待さんが代わりに時刻を調べてくれた。
「次の回は……もうすぐだな。飲み物とか買う時間ないかも」
「ああ、そうだ、臥待さんが喜びそうな物も露店で買ってきた」
「えっ」
 臥待さんは息を飲み、人を喜ばせようとする鵜飼章を見るような目をこちらに向ける。
 ……そんなに珍しいだろうか。僕にだって、立てた仮説を実証しようという意識くらいは存在する。棄却されたら帰無仮説だったことにする。そういう訳で、彼女が喜ぶ贈り物といえば。
「はい、カクリヨご当地クソ瓶ラムネ」
「そんなこったろうとは思ったよ!!!」
「油揚げ味と酢イカ味だって。……どっちが良い?」
 みりん醤油を思わせる茶褐色の小瓶が、二本。試験管みたいに掲げると、臥待さんの虚無の表情がガラスに映り込む。
「……酢イカにする。炭酸に油は鬼門だ。後から鼻に抜けてきつい。酢ならまだ……リンゴ酢ソーダとかあるし……なんとか……」
 経験を感じさせる含蓄だった。普段よりちょっと声が高いし、瞳孔も開いているし、喜んでもらえたという結論にしておこう。

『――――』
 スターマインの開始を告げる、ぼやけたアナウンスが響く。
「飲むのは花火の後にしようか」
「集中できなくなりそうだもんね……」
 さて、僕の炎は何色だろう。
 もしかすると、ごく普通の赤色なんかが見えるかもしれない。子供の頃に見かけたヒーロー番組の主人公みたいな、ありふれた少年の色が。そうしたら――特に、どうってことはないか。意味や理由が存在しないのなんて、僕にとってはいつものことだ。
 重低音を合図にして、僕らは同時に顔を上げる。
「……え、あれが?」
「どうだった?」
「どうもこうも、見事な灰色だよ」
 しかも――白黒つけられるような、綺麗な無彩色じゃあなくて。
「臥待さん、絵具って使ったことある?」
「あるよ。それこそ図画工作で習うじゃない」
「言われてみればそうだな……だったら見たことあるでしょう。筆を水バケツで洗って、洗い続けた、なれの果ての色」
 泥水色、とも言える。
 こんな汚い花火は初めて見た。夜空がまるで排水溝だ。血と臓物が飛び散る世紀末のほうがいくらか美しい。
 それでも――加法混色ではけして生まれない、光という言葉から最も遠いその色には、何故かしっくり来るものがあった。科学者の白衣が白いのなんてヒーロー番組の中だけで、本来の使い方をすればあっという間に汚れてしまう。
「臥待さんは、何色に見えた?」
「まあ、その、清く正しい夏報さんだからね、それは綺麗な白色とかが――あいたたた!」
 喚ばれたと思ったのだろうか。一羽の白い鴉が空から舞い降りて、彼女のつむじのあたりを突っつきはじめる。『長老』は嘘つきに厳しい。
「白色じゃないことは確定だ。消去法だと時間がかかるね」
「サイコパスか!?」
 とか言って、誰かの魂を暴き立てる趣味はそこまでないけれど。
 僕も、きみも、本当は、人とは全然違う色が見えていたりして。

「ラムネ……開けようか」
「もったいないしな……」
 飲み口を塞ぐビー玉を茶色い小瓶に押し込めて、雑に乾杯の真似をする。炭酸が少しこぼれて、白衣の袖に染みを作った。
 まずは一口。
「うっ、……ぐ」
「うわ酷い」
 概ねさっきの解説通り、胡麻油の香りが鼻へと抜けていく。味覚と嗅覚がちぐはぐに刺激される感じは斬新な経験だ。一方、経験豊富なはずの臥待さんはといえば。
「だめ、これ、思ったより……イカが……強い」
「なるほど……?」
 このご時世、回し飲みをする訳にもいかないし――そのクオリアを僕が知る日も、永遠に来ないのかもしれない。
大成功 🔵🔵🔵

風見・ケイ
――『紫』、か
(あの日見た星の色に似ている気がする)
螢なら『赤』で、荊なら『青』だったのかな
(赤と青が混ざれば紫になるな)
罅割れから溢れる光とおんなじで
(ろくに使えやしないのに)
『同衾異夢』……夜をともにしても違う夢を見る、とのことだし
ね、夏報さんはどうだった?
……見てみたいなあ

(あれは、本当に私の色なのか)

紫色の花火が輝く夜空は、満天の星空にも似ている
夏の花火大会ならビール、となりそうだけど……
お、あの店なんかどうかな
好きな色のカクテルを作ってくれるってさ

(花火のように咲き乱れていた思考は静まって、そこには月だけが浮かんでいる)
ふふ……子どもの頃よりもずっと夏休みを楽しんでいるかもしれないな


●それでも、ゆめであえたなら
「――『紫』、か」
 夜空を埋め尽くす炎は、あの日見た星の色に似ている気がした。やっぱり、触れたら熱いんだろうか。
 ……普通の花火大会だったら、それは叶わぬ感傷なのだろうけど。
 ここは常識の通用しないカクリヨファンタズム、妖怪たちの暮らす狭間の世界。花火の光に触れるどころか、その上を歩いたりすることもできるらしい。
 でも、どうしてか、そこまではしゃぐような気分にはなれなかった。
 一人だからかな、なんて思って、一人じゃないか、と思い直す。風見・ケイ(星屑の夢・f14457)の体には三つの心が住んでいる。
「螢なら『赤』で、荊なら『青』だったのかな」
 人によって異なる色が見える不思議な火薬の花火。選ばれる色には意味も理由もないと言われたけれど――『紫』なんかが見えてしまったら、そんな連想をしてしまう。
 彼女と彼女を象徴する、夕焼けと、真昼の空の色。
 赤、青、と並んだら次は黄色じゃないのかな、なんて、今更なことを考えてみる。小学校の教科書ではそうなっていた。ここにいる『慧』の瞳の色は、まるで分け与えられたみたいにその両方を半分ずつ。混ざると、結局、紫になるな。
 視線を落として、指先を見た。綿菓子を食べ終わってしまって、空っぽの割り箸だけを握りしめた、右手。浴衣の袖は緩いから、肘の上までしっかりと隠せる手袋が必要だった。
 あの花火の示した明暗境界線は、罅割れから溢れる光とおんなじで――それが自分の炎の色だと言われたって、ろくに使えやしないのに。願うたび迷惑を掛けるだけなのに――。
「風見くん?」
 取り留めもない思考が途切れる。ぷつん、と、線香花火が消えるみたいに。
「こんな隅っこに居たの? 結構探したんだから」
 ……無意識に、あの色から逃げていたのか。気付けばお祭り会場の端あたりまで来ていたらしい。駆け寄ってくる友達は、ビール缶だのラムネ瓶だの、よくわからない人形焼きだのをいっぱいに抱えている。
「最後の打ち上げ、間に合ったな。――どうだった? 『同衾異夢』の花火は」
 その名前と似たような言葉を聞いたことがある。夜をともにしても見る夢は違う、とのことだしーーどんなに近くに居たところで、この星の光は君には見えない。
「ちゃんと見えたよ、私の色。ね、夏報さんはどうだった?」
 なんとなく、藍色や灰色を想像した。穏やかで深い海のような。柔らかい曇りの日のような。
「……ごく普通の、赤」
「ごく普通の?」
「ちょっとオレンジ色っぽく……見えなくも……いや……赤としか言いようがないな。『あか』って書いてあるクレヨンみたいな……」
 困ったように、肩をすくめて。
「なんか……あんまりに普通で、逆に話題にしづらくてさあ……」
「ふふ」
 変なところで見栄を張るのが、ちょっとかわいい。
「……見てみたいなあ」
「だから本当にただの赤なんだって」
 そうだとしても、君の色なら見てみたい。私の色は――あれは、本当に私の色なんだろうか。
 螢や荊に何色が見えるか確かめてもらうことだってできる。瞬きひとつすればいい。けれど、それでもし同じ『紫』が見えてしまったら。心じゃなくて、体で色が決まっていたら。この、体は。
「深く考えることないよ」
 そうやって笑い飛ばして、君はいつものようにしれっと手を繋ぐ。
「意味はないって言ったじゃない。僕なんてさあ、どこにも赤の要素ないでしょ」
 並んで見上げた夜空は、満天の星空にも似ていて。花火に負けないくらいの月も輝いていて。
 ――こうして見ると、素直に、綺麗だ。

「夏の花火大会ならビール、となりそうだけど……」
「んー、僕はそろそろ度数が欲しい」
 夏報さんったら、定番の『とりあえず生』はとっくに済ませてしまったらしい。そんな彼女のリクエストを念頭に起きつつ、屋台を眺めてみる。
 お祭りの中心を離れたからか、変わったところが多い気がした。アルカリイオン水風船だとか、アカピッピミシミシガメすくいだとか、明らかに怪しい店をいくつか通り過ぎて。
「お、あの店なんかどうかな」
 小洒落たネオン看板に目が留まる。組み立て式のワインセラーや、業務用シロップの瓶がずらりと並んで、ちょっとした理科室みたいな雰囲気だ。
「好きな色のカクテルを作ってくれるってさ」
「この会場で、それは……商売が上手いな」
 ああ、確かに。花火で見えた色をそのまま頼んで、友達と見せ合ったりしたら盛り上がるんだろう。……私が逡巡している間に、夏報さんはさらりとメニューを読み終えて。
「でもなあ、赤って気分じゃないし――こないだの宝石のリベンジしよっかな。ワインと、ブルーハワイで、紫にしてもらって」
「あ……、」
 先を越されたというか、それは、なんというか。
「私は」
「風見くんは?」
「夏報さんと、同じことを考えてたよ」
 たとえ、一瞬の錯覚だとしても――そういうことに、しておきたかった。

「ちょっとだけレモン入れようよ、口の中さっぱりするし」
「いいね、シロップ多めに作って、かき氷に掛けてもらうこともできるって」
「わ、絶対美味しいやつ」
 くだらない話で笑いあううちに、いつの間にか花火は終わっていたけれど。
 それでも、全然気にならなかった。咲き乱れていた思考は静まって、そこには月だけが浮かんでいる。手を伸ばしたら、触れられそうな。
「よし、それにしよう。大人のかき氷」
「ふふ、……子どもの頃よりもずっと、夏休みを楽しんでいるかもしれないな」
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年08月17日
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