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優劣なんてつけられないのに

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 其処は、とっても立派な遊園地。
 回転木馬、に観覧車、ゴーカートまで。およそこの世界には似合わないものが揃っていて。子どもたちはほら、楽しそうに遊んでいる。
 大切な人と遊べるって、偉い人がいったから。子どもたちは大切な人を選んだよ。

「このっ、このっ……! 速く壊れろよ!」
「痛いよ、やめておくれ、おばあちゃんの負けだから、負けで良いから」

 ゴーカートを蹴りつける子ども。
 とても楽しそうに遊んでいるね。
 こちらのペアはどうやら、生死の為に絆を棄てたようだ。

「やだあ、お母さん、死んじゃやだよお……!」
「泣かないで……私の負けでいいの、もうこの身体じゃまともには……」

 ――回転木馬の継ぎ目から、枯れ木のように肉を削がれた手が伸びて。乗ったまま泣いている子どもの涙を手探りで拭おうとする。
 けれど無茶な姿勢で“詰め込まれた”手は、悲しくも届かない。

「おいッ! 負けたらわしらが死ぬんだぞ! さっさと振り落とせ!」
「やだあ、やだあ……!」
「ああ! やめて下さい! お願いです、やめて……!」

 おやおや、回転木馬の中身が喧嘩を始めましたね。
 子どもを振り落とそうとする背中、其れを必死に抑えようとする誰か。
 こちらは絆の為に必死だ。

 此処は遊園地。楽しい遊園地。
 絆は生死を越えるのか? 其れとも生の為に絆を捨てるのか?
 此処は遊園地。悲しき実験場。


●グリモアベースにて
「……という、とても胸糞悪い依頼な訳だ」
 ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)はこめかみを押さえながら言う。

 話はとあるオブリビオンの研究癖から始まる。彼はオブリビオンには珍しく無害な方だった。何故なら只管研究にのめりこんでいたからだ。居城にこもり、日々研究にいそしむ。麓の村の人々は、其の日が来るまで自分たちが支配されている事すら知らなかっただろう。――だが。

 “人の絆とは、いかほどのものか”。

 其れを知りたくなった彼は、壮大な実験場を作り始めた。
 作っている間はいつも以上に大人しかった。統治されている村の人々も、何も知らず安穏として過ごしていた。――或いは、彼らの成長さえ計算の内だったのかもしれない。
 そうして完成してしまった、絆を試す実験場。
 其の日は来てしまったのだ。吸血鬼――オブリビオンは従者を麓の村へ放ち、余さず全員を実験場に連れてきた。村の全員は、連れて来られて呆然とした。
 其処は陶器で出来た遊園地だった。大きな回転木馬がとても目立つが、他にも小さな観覧車や、車の玩具が並んでいた。
 楽しそうだけれど、どうして此処に連れてこられたのか? 何が始まるのかと怯える村人――其の大人たちを選び取り、オブリビオンの従者は回転木馬に、観覧車に、そのパーツに“ねじ込み始めた”のである。
 悲鳴すらなかった。彼らは痛みを感じさせずに人間を収納する術に長けていた。必要ない場所を切り取り、必要のある個所を残す。ねじり上げ、ひねり、曲げ、そうして中身の入った回転木馬は完成してしまった。
 其処に残された子どもたちは乗れと言われる。己の大切な人を選んで、乗れと言われる。そして出された課題。

「言ったのさ。“負けた方は皆殺しにする”ってね」

 例えば回転木馬から墜ちたら負け。例えばゴーカートで2位なら負け。例えば観覧車が力尽きたら負け――。
「生きるために相手を蹴落とす者もいる。生かすために死ぬ者もいる。……それらを悪いとは言えまいよ。命というものは自他ともに一つしかない。だからこそ人は必死に生きる。……其れをオブリビオンは笑ってみているのかと思うとむかっ腹が立つ。ので」

 一撃入れてきてくれ。一撃に限らず、何度でも。

 グリモアが開かれる。今ならまだ、村人が連れていかれる途中に間に合うという。
 ただし、と青く長い爪を揺らめかして魔女は一つだけ述べた。今回のオブリビオンは用心深い。遊園地が出来上がり、無力な子どもたちだけになるまで姿を現さないだろう。
 ならばこっそりと――生贄となった哀れな大人を助け出し、遊園地を破壊すれば良い。そうして敵オブリビオンをお出迎えしてやれ。楽しい楽しい遊園地にな。
 と、彼女は笑った。


key
 こんにちは、keyです。
 今回はダークセイヴァーです。えっぐ…って自分でも思いましたが思いついちゃったものは仕方ないよね…!!!

●目的
「施設を破壊し、オブリビオンを撃破せよ」

●プレイング受付
 タグ・マスターページにてお知らせ致します。

●このシナリオについて
 「村人との交渉・救出」
 「施設の破壊、中身にされた人々の救出」
 「ボスであるオブリビオンとの決戦」

 となります。
 第一章では出来るだけ遊園地のパーツになる村人を減らす事が目的となります。入れ替わるのが一番簡単でしょう。此処では戦闘は出来ません。従者を倒す事は出来ませんのでご注意下さい。
 第二章では遊園地で、村人たちが遊具の中身にされていきます。回転木馬に詰め込まれ、観覧車を飾るパーツとなります。ここで猟兵は抜け出して、施設の破壊や人々の救出を行う事が出来ます。村人たちの救出もOKです。ただしまだ敵ボスは警戒しておりますので、出来るだけ隠密に行う必要があります。
 第三章では敵ボスとの対峙となります。是非ともぼっこぼこにしましょう。

●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
 迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。
 また、今回は隠密系シナリオが続きます。単独行動希望の方は冒頭に「✨」を付けて下さい。(他マークについてはマスターページをご覧ください)


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『夜の花嫁』

POW   :    生贄を気絶させ、入れ替わる

SPD   :    自らの美しさで生贄となる

WIZ   :    言葉巧みに説得し、入れ替わる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●死出の旅路か
 村人たちが重い足取りで山道を行く。
 逃げようとタイミングをうかがう子どももいたが、少しでも離れようとすれば母親が引き寄せてたしなめた。
 いるかいないかも判らなかった“領主様”の命令だと従者たちは言った。ならば逆らえないと。
 山道は狭く、左右は森に囲まれていて地形も読めない。ただ登っている事だけしか判らない。

 ――猟兵たちにとっては其れは好都合だった。
 森の中にひそめば見つかる可能性は少ない。猟兵の技量をすれば密やかに混じり入る事も、自分と誰かを取り換える事も可能だろう。
 だが、グリモア猟兵の言った通り領主らしき姿はない。従者の男は帯刀しており、前を行くものが2人、後ろに付いている者が3人いた。
 人質を取られやすい陣形だ。戦いをしかけるのは得策ではない。
 さて、どうするべきか。
ゼイル・パックルード
絆を試すねぇ。そういうのを見たいっていうのならまだ理解できるけど、上から色々やって試すってのは気に入らないね。

列にいる適当なヤツをの腹とか殴って気絶させて、分身に回収させるとしますか。向かっている村人たちがどういう列になってるのかは知らないけど、あんまり騒がれてバレても面倒だから、前後のヤツがガタガタ言うようなら殴って分身に回収させる。自分も抜け出したいってんなら、そいつの分も分身作って抜け出させてもいいけど。あんま減っても不自然だから、領主の狙いと後できちんと助けるとは伝えとくか静かにしなきゃ殺すとか脅すことになるかねぇ。
別の猟兵がいるならそいつに交渉は任せてもいいけどね。


サンディ・ノックス
※ダークセイヴァーでの仕事着である黒い衣に身を包む

まずは森の中に潜み、村人の行列が来たところでそこに入り込む
支配している相手をわざわざ判別しないだろうから従者は村人の区別がつかないだろうし、村人は俺が知らぬ顔だとわかるよね
小さく暗い声色で話せば、従者には連れて行かれる者の不安の声だろうと気にされないだろう

詳しいことは話さない
時間もないし、子供たちは敵の手元まで連れて行かなきゃいけないんだ、命が奪われると聞いたらただでさえ離れたがらない親が離れなくなる
領主から解放しに来たこと、その作戦のために大人と入れ替わりたいことを簡潔に伝える
UCで物音を立て従者の気を逸らし、その隙に村人には列を抜けてもらう


賀茂・絆
極限状態でも人は絆を信じられるのかって考えとか、極限状態で外道を働いた人間を指差して「ほら見ろ!人間という生き物の本性はこうも醜いのだ!」って賢しらに結論づけるヤツとかマジで嫌いなんデスヨネ。極限状態ならどんな生き物でも自己の保全が第一で、人間もそうなってしまうというのは歴史が証明していマス。だからこそ、人間は豊かさを求めマシタシ、その豊かさが心にゆとりと優しさを生んだんデス。極限状態に追い込んで人間の本性を見たいなんて言うヤツは歴史に学べてない愚者デス。インテリぶってるけどただの馬鹿デスヨ。くっだらねえ話デス。

あっ、このいきなり語りだした怪しい女を信じちゃった人はちょっと交代お願いしマス。




「極限状態でも人は絆を信じられるのかって考えとか」

 賀茂・絆(キズナさん・f34084)は語りだす。
 村人たちが森の中腹に差し掛かったとき、黒い衣に身を包んだサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)、そしてゼイル・パックルード(囚焔・f02162)は狭い道を選んで左右から村人の波に混じり入る。

「極限状態で外道を働いた人間を指差して、“ほら見ろ! ニンゲンという生き物の本性はこうも醜いのだ!”って賢しらに結論付けるヤツとか、ワタシほんとマジで嫌いなんデスヨネ」

 絆は語り続ける。
 サンディは驚いた村人に静かに、と人差し指を立て、絆の演説に紛れてそっと囁く。
「俺たちは猟兵だ、君たちを助けに来た。俺たちは作戦の為に君と入れ替わらなきゃいけない。突然こんな事を言われて驚いてると思うけど、……俺たちを信じてくれる?」
「……でも、私には子どもが……」
 サンディに眉を下げる男は横を振り向く。妻らしき女と5歳程度の男児が不安そうに見ていた。
 ――兎に角、歩みを止めないで。サンディはそっと囁く。

「極限状態ってのはどんな生き物でも自己の保全が第一で、人間もそうなってしまうというのは歴史が証明していマス」

「めんどくせぇ、無理矢理にでも入れ替わりゃ良いじゃねえか」
 ゼイルは絆の演説に紛れながら、男の腹を殴って気絶させ……其れを炎で造られた分身体が素早く横合いの森へと“回収”する。狭い山道が暫く続くのは織り込み済みで、其の間にサンディとゼイル、絆は事を終わらせるつもりだった。
「ひっ……」
「静かに。出来るだけ声は抑えて」
 ゼイルに怯える女に、サンディが素早く指示を投げる。こくこくと頷く女に、其れで良いんだとゼイルは頷いた。
「俺が実働、お前は説得と実働。あの嬢ちゃんは引き付け。其れで良いだろ」
「まあ、良いけど」
「……子どもと妻を先に逃がす事は出来ませんか……」
 サンディと話していた男が提案する。サンディは静かに頭を振って。
「悪いけど、子どもたちには上に行ってもらわなきゃならない。でも必ず助ける。…まあ、奥さんなら…適任が今話しているから、彼女に入れ替わって貰う事が出来ると思うけど」

「だからこそ人間は豊かさを求めマシタシ、その豊かさが心にゆとりと優しさを生んだんデス。極限状態に追い込んで人間の本性を見たいなんて言う奴は歴史に学べていない愚者デス。インテリぶってるけどただの……おっと。ま、くっだらねえ話デスヨ」

 絆が口元を押さえる。オブリビオンの従者である男たちは其れが聞こえていたのだろう、ぎろりと後ろを振り返るが何も言わない。さっさと上に連れて行ってしまえばあとは詰め込んで終わり、そう考えているのだろう。まさか猟兵が混じっているとも思わずに。
「こっち、こっち」
「ハイハイ。……という訳で、交代お願いしマス」
 サンディが手招きした絆に、村人たちは自然と信頼を寄せていた。あれだけ言ってのける彼女なら、この暗鬱とした状況をなんとかしてくれるかもしれない。其れだけの自信がきっとあるのだと。
「俺とこの子が貴方達と入れ替わる。子どもは……」
「……判りました。貴方がたに預けます。私の可愛い坊や、大丈夫だね?」
「お父さん、……うん、僕、頑張るよ」
 男児は戸惑うような仕草の後、目元を腕で拭って頷いた。母親のスカートから手を離し、絆と手を繋ぐ。
「良い子デスネ。ワタシの事をお母さんと呼んでも良いデスヨ?」
「……お姉ちゃん、変な喋り方だね」
「前言撤回。良い子ではアリマセン」
「はは。……もうすぐ道が広がる。今のうちに、早く!」
 サンディに促され、若い夫婦が森に飛び込む。ゼイルが分身と一緒にわざと足音を立てて、茂みに人が潜る音を殺した。
「……今のお前の演説」
「思った事を言っただけデスが」
「ああ。だが……俺もそういう手合いは嫌いでね」
 気が合うじゃねえか、とゼイルは絆に笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル


…こんな悪趣味な催し、わざわざ成就させる必要は無いわね

UCを発動し"魔動鎧、地縛鎖、誘惑、闇夜、迷彩、変装"の呪詛を付与
●闇に紛れ村人のふりをして列に紛れ込み逃げるよう●誘惑
説得に成功したら村人の衣服に●迷彩の●防具改造を施し、
監視の隙を見切り●地形(山道)の利用して離脱させ、
"写し身の呪詛"を武器改造して残像に村人の●変装をさせ発覚を防ぐ

…静かに。そのまま黙って歩きながら聞いて
私達はこの地の領主を討ち貴方達を助けに来た者よ

…領主は貴方達の生命を使って実験をするつもり
この先に進めば貴方達の命の保証はできない

…今なら安全に逃がす事ができる
貴方達の幻影を置いておくから、合図をしたら森に逃げなさい




 するり、と村人の列に黒い影が紛れ込む。其れは小柄で、暗い森の影に紛れて現れた。何事かと横を向く村人に、フードを下ろして貌を見せたのはリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。
「……静かに」
 囁くような声で、彼女は紡ぐ。
「黙って歩きながら聞いて。顔は前に」
「は、はい」
 ざ、ざざ、ざ。
 乱れた村人たちの足音は、巧い具合にリーヴァルディと村人達の会話を殺してくれる。
「私達はこの地の領主を討ち、貴方達を助けに来た者よ。既にもう何人かがこの列に入り込んでいるわ。……領主はこの先で、貴方達の生命を使って実験をするつもり。この先に進めば命の保証は出来ない」
「……そうでしょうな」
 老人が悲し気に呟いた。朝のこないこの地には、希望の光が差す事などないのでしょうと。せめて薄暮の中で穏やかで過ごして居たかったと。
「まだ諦めないで。今なら安全に逃がすことが出来る。3人が限界だけど、…貴方達の幻影を置いておく。合図をしたら森に逃げなさい」
「……」
 一つの問題が現れる。“誰が逃げるか”という事だ。若者と老人は沈黙を落としたが、口を開いたのは老人だった。
「お前たち、行きなさい。ワシは彼女の作戦が失敗したところで痛手にはならん。だがお前たちは違う。これからの生がある」
「でも」
「静かに」
 リーヴァルディは鋭く言いながらも待つ。同じ村で育ってきた者たちだ、互いを庇う気持ちは判らないでもないから。でも、老人の言葉はこの事態では正しいのだとも、思いながら。
「……判った。じゃあ、俺たちが」
「いや、お前たちが行ってくれ。俺は女性を一人連れて来る。男手がいる場面が出て来るかも知れない」
「アンシェン、お前……!」
「たまにはかっこつけさせてくれ」
「……。判ったわ。時間がない、急いで」
 リーヴァルディは普段は己の残像に使う“写し身の呪詛”を改造して村人の姿に仕立て上げる。やがて連れてこられた妙齢の女性と男性2人の衣服に迷彩を付与し、緩い崖と木々が連なる小径に差し掛かったところで彼らを離脱させる。
「……痛い思いをするかもしれないわよ」
 彼らが去るのを見届けた後、男と老人を見てリーヴァルディはいう。
「其れでも、其の時の為に貴方が助けに来て下さったのでしょう?」
 ……老人の言葉に、リーヴァルディはぐう、と何も言えずに黙り込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シホ・エーデルワイス
聖痕が疼く
覚悟の眼差し


【守霊】に光学迷彩の結界をかけ目立たなくし
数名は『聖笄』で透明になった私と忍び足で一緒に村人へ接近

もう十数名の守霊を陽動で森の中に潜ませ
必要に応じて物音を立て従者の気を引く

残りは『聖鞄』内で待機


念動力の念話で
村人をコミュ力と礼儀作法で優しく慰め落ち着かせつつ
救助活動方法を伝える

守霊を村人に化術で変身させ
従者の視界を遮っている間に
村人を『聖鞄』へ匿い
中の待機組守霊と入れ替えていく

焦らず慎重に

私も『聖鎧』で村人へ変身し
従者の動向を第六感と聞き耳による読心術で警戒
必要に応じ催眠術によるマインドハッキングで注意力をジャミング


遊園地に着いたら守霊も含めて激痛耐性で遊具に詰め込まれる




 聖痕が疼く。其れは助けよという命令ゆえか。
 シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は覚悟を秘めた眼差しで、森の中から呼び出した守霊たちと共に村人を見ていた。
「……今ですね」
 シホは数名の守霊に光学迷彩の結界をかける。ふうわりと風に融けるように見えなくなった守霊。残った数名は森の中に潜ませ、更に残ったものは聖鞄へと収納した。

 ――ざわざわざわ!

 残った陽動用の守霊が木々を鳴らす。
 男たちが刃を抜き、きゃあ、と村人たちが頭を押さえて縮こまった。
「何だ!?」
「人か!? 人影はいないか、後衛! 探せ!」
 シホはしゃがんだ村人の中に、そろそろと潜り込む。
 最初に其れを見た小さな子どもが、びっくりした顔をした。
「“静かに。気付かれてしまいます”」
 シホは念話で子どもに、周囲の村人たちに話しかける。驚いたように村人たちが顔を上げた。
 男たちは森の中を念入りに捜索している。逃げた者を探している故か、人が入り込んだかもしれないという考えには至っていないようだ。
「“私はシホ・エーデルワイス。猟兵をしています。貴方達が危ない目にあうという予知を受けて、助けに来ました。どうか喋らないで、私の話を聞いて下さい”」
「“……おねえちゃん、喋ってないのに喋れるの?”」
「“ええ。心の中から貴方達に話しかけています。貴方達の声も聞こえます。……これから貴方達が連れていかれるのは、私達の敵が作った実験場です”」
「“矢張り……”」
「“ああ……”」
 シホの言葉に、失意の言葉が心中に満ち溢れる。心を痛めながら、其れではいけないとシホは自らを奮い立たせる。
「“安心して下さい、其の為にいま私が、私達がいます。私が呼び出した霊に貴方がたの真似をさせ、皆さんには安全な場所に逃げて頂きます”」

「……誰も逃げていねえな?」
「風か? まったく、嫌な天気だぜ……」

 男たちが戻って来る。さあ立て、と村人たちに刃で促す。
 なんて野蛮な、と目を伏せながら、シホはこれからの事を伝える。自らの守霊と入れ替わって貰う事。鞄の中に入って貰う事。鞄の中は広大な空間になっているため安全である事。
 村人は恐々ながらも、猟兵の噂は聞いていると頷いてくれた。シホは村人たちが立ち上がるタイミングを利用して、女性を優先して守霊と入れ替えて行く。子どもを入れ替える事も考えたが、リスクが高い。予知では子どもたちには危害は及ばない――少なくとも勝ち負けが決められるまでは。なら、詰め込まれてしまう大人たちを優先的に守霊と交代させるべきだろう。時間はないが、焦ってはならない。救える数を、慎重に救っていく。
 そうして数名を入れ替えた後、自分は衣服『聖鎧』によって最後に入れ替えた女性の姿に変じる。従者たちと共に、村人のふりをして俯き歩く。
 ――正直に言えば、怖い。折り畳まれるなどと、おぞましい。けれど、誰かを守るためなら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
絆の脆さしか見てない実験だ
絆が齎す強さを思い知らせてやる
つーわけで愛しのシホを追うぜ

シホを見つけても今は村人と入れ替わることが重要だ、歯を食いしばって私情を殺す…キツイぜ

電光石火の早業で連行される村人を茂みへと拐かすよ
狙うは体の弱い娘だね
救いたい女の子はもっといるがアタシの体は一つしかない
まったく独りじゃ半人前以下だ

騒ぐな、救える者が救えなくなる
アンタにも失えない者がいるのかもしれねえ
だがアタシに代われ、行く権利を寄越せ、信じろ、アタシは強い
アタシにも譲れない絆があるんだ
稲荷巫女のお説教で説得する

上着を借りて成り代わるよ
目立つ武器は持たずに連行の列に加わる
シーフにとっちゃ関節外しくらい朝飯前さ




 ――村人と共にゆく良く知った顔を、悔し気に眺めている者があった、四王天・燦(月夜の翼・f04448)である。
 愛しいシホを追ってやってきた燦だったが、全てがシホが事を追え、村人たちが歩き始めた後。運よく再び狭い道に入り込んだは良いが、シホを見付けても何も出来ない。彼女の想定外の事態が起これば入れ替わった守霊が消え失せ、村人が減った事を従者たちに気付かれてしまうかもしれないからだ。もどかしさで唇を噛むが、今はやれることをやるしかない。
 燦は音もなく茂みを抜けて近付くと、端をえっちらおっちら歩いていた身体の弱そうな娘を素早く森の中へ拐かす。悲鳴を上げる暇もない早業だった。
「騒ぐな」
「……? ……!」
「落ち着けったら」
 何が起こったのか判っていなかった娘だが、横合いから連れ込まれたと知れば抵抗を始める。其れを強く抱きしめる事で押さえると、燦はそっと囁いた。
「いいかい、アタシはアンタと入れ替わりに来た。皆を助けるためだ。アンタには喪えない者はいるか? アタシにはいる。アンタたちもそうさ。だからアタシに此処から先にいかせとくれ。代わって、行く権利を寄越せ。信じろ、アタシは強い」
「……」
 暴漢の類でないと知った娘は、きょとん、と燦を見上げる。
 苦しかろうと口元に当てていた手をそっと外せば、燦は続ける。譲れない絆があるのだと。其れを大人しく聞いている娘は、ユーベルコードのお陰か燦自身の真摯さに心打たれたのか、じっと話を聞いていた。
「……上着を貸してくれ。アンタならアタシとサイズが合うから」
「……貴方は、怖くないのですか」
「怖くないさ。いったろ? 譲れない絆があるんだって」
 ウィンクすると、上着を脱いで差し出した娘は一言“ご武運を”と告げた。

「クソ、狭い道が続くな」
「お前ら、逃げるんじゃないぞ。逃げたら領主様の手で村を無かったことにするからな」
 男たちの脅しは陳腐だが、実際、遊園地を作れるような領主には村を一つ消す事など造作もないのかもしれない。
 するりと村人の群れに混じり入る燦は、心中で唾を吐きかけてやった。

 其れを森の中で見送る娘が一人いた。
 どうかあの人たちが無事でありますようにと、娘は心中で祈った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レオンハルト・アウストラリス
辰巳(f05619)と参戦。実働の役割

顔を隠す効果を持ったマントを着て目立たぬ格好に。
辰巳の陽動で[闇に紛れる]で、静かに集団に紛れこみ、注意が逸れる方向にいる小さい子供がいる親に耳打ちする。

[優しさ]で安心させ[救助活動]
大丈夫、俺は味方です。
先に進めば死より酷いことが待ってる…だから今からあなた達を逃がします。
騒がないようお子さんは気絶させるので、俺の合図でその子を抱えて隠れて下さい。
マントのフードを脱ぐ、それが合図。

(ラーベくんの鳴き声!辰巳さん頼みます…!)
作戦開始に合わせ子供の首に当身し[気絶攻撃]、[地形の利用]で親子を木の裏に隠す。

ほら、辰巳さん!心配いらなかったですよね?フフン


瀬河・辰巳
POW
レオン(f20419)と。気をそらす係

念のため素朴な村人に扮し、森の中で身を隠しながら動物へ指示。

判断するために周囲の様子は烏や蛇に偵察をお願いしておく。

接触用に気を引くため、自分達の反対側の森で烏達に騒いでもらう。デカい枝とか派手に落としてもらうかな。

レオンの合図を見たら、ラーベくんの鳴き声で鹿数頭へ合図。烏達とは少し場所をずらして鹿達に音を立てさせ注意を向けさせる。気を引いたら姿を現してもらい、回れ右して帰ってもらう。

何か心配だな…フォロー出来るように、隙を見て暗殺の要領で「従者の視界にあまり入っていなかった影が薄そうな大人」を木の裏に転がし、俺も入れ替わるか。もちろん殺さないけど。




 鴉が舞っている。其れはダークセイヴァーの日常である。
 森の中を鹿がゆく。其れもまた、ダークセイヴァーの日常である。
 だが、今回ばかりはそうではなかった。瀬河・辰巳(宵闇に還る者・f05619)が心通わせた動物たちが、周囲を注意深く偵察しているのだ。森の影に隠れ、辰巳は合図を送る。
 ぢりぢりぢりっ、と鳥たちがざわめく。男たちが目を向け、村人たちが怯えて身を屈めた其の一瞬、列に合流するフードの人影。
「すみません」
「え?」
 幼い子を庇う女性に声がかかる。フードの影から赤い瞳がのぞく。レオンハルト・アウストラリス(魔剣の勇者・f20419)は努めて冷静に、ざわめきの中で女性に囁いた。
「どうか静かにお願いします。大丈夫、俺は味方です。貴方がたの救出任務で来ました。……此処から先に進めば、死より酷い事が待ってる。……だから、今から貴方達を逃がします」
「逃がすって、……どうやって……」
「大丈夫です、任せて下さい。ただ、騒がれては困るのでお子さんは眠らせます。抱えられますか?」
 “眠らせる”の言葉に反射的に庇うような動きをした母親だったが、レオンハルトの真摯な眼差しに、こくりと頷く。この子はまだ3歳くらい。確かに騒げば他の村人に被害が及ぶかもしれないし、まだ抱えて走る事は出来る。
「走らなくても大丈夫です、ただ、俺たちが貴方達を運んだらじっとしていてください。列が見えなくなるまで」
 ――そう言うと、レオンハルトはフードを脱いで金髪を露にした。其れが辰巳への“交渉完了”の合図だ。

「合図だ。皆、頼むぞ」

 ガア、と大きく鴉が鳴いた。辰巳の友“ラーベくん”だ。其の鳴き声は鹿へと伝わり、鳥たちが静まる代わりに鹿たちが角をぶつけ合う。
「なんだ? 今日はやけに動物が騒ぐな……」
「領主様の気配を感じておられるのだろう。お前らには何もしないから安心しろよ!」
 従者たちはいつもの事、と気にもしない。其の間にレオンハルトは宣言通り子どもの首をトンと一撃、母親に其の身体を預け、母親ごと2人を抱えると素早く森の木の裏に隠した。己はまだやる事があるので、親子と一緒に逃げる訳にはいかない。村人の列の中に戻ると、いつの間にか傍にいた辰巳に嬉しそうに話しかけた。
「ほら、辰巳さん。心配いらなかったですよね? ふふん」
「俺の援護があったからこそだろ。自分の力を過信するなよ」
「ていうか、誰かと入れ替わったんですか?」
「ああ……まあな」

「……あら?」
 子を抱えた母親は、列が山頂へと行くのを見届けると動き出し……足元に誰かが転がっているのに気付いた。
 其れは男であった。同じ村人だというのに、顔をぼんやりとしか一致させられない、影の薄いと評判の男であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ブラミエ・トゥカーズ
人を遊具にするとは、人間らしい領主であるな

霧化し後ろから正面へ
前の従者に声を掛け人型へ
従者、村人含め吸血鬼であることは隠さない
催し物を聞きつけて見物に来た他所の領主と語る
隔離世に小さな領地はあるので嘘ではない
村人も物色
向ける視線は食欲6割憐み3割期待1割
領主や催し物等雑談に興じる
従者の意識を自身に向ける

S
霧化し列を縦断したことにより従者を病で侵し
村人は常にいるという幻覚を見せる
自身への意識誘導と村人への認識阻害中に自身の従者が村人救出
自身は目的地まで同道
到着後、変化し姿を消す
気付けば誰もいない、驚いてくれるだろうか
妖怪は化かす事が好き
輸送失敗した彼等の言い訳が楽しみ
そうして妖怪は広まるのだから


馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

悪趣味ですねぇ。
さてー、では密かに混じって入れ替わりましょうかー。
念のため、年の近そうな方でー。

欺瞞結界で身を包みましてー、目的の方の横へ。静かに結界を解いて、その方と入れ替わるように話しましてー。
ああ、他の方も、あとで必ず助けますからー。

そうして、その方へ欺瞞結界を張って、左右どちらか…近い方の森の中へ。
大丈夫ですよ、その欺瞞結界、簡単には解けませんから。『元の住んでる場所に戻ったら』解けるのでー。

ふふ、『私たち』は猟兵ですからねー。




「ほう?」
 霧が森の下から湧き上がってくる。まるで其れは生き物のように、煙る風のように従者と村人の背中を凍えさせて、一団の前に一人の人の姿となって結実する。
「な、だ、誰だ!」
「何、ただの領主だ。面白い催し物をすると聞いたのでな? 見物客の一人でもいなければ退屈だろうと見に来た次第よ」
 ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)はそう言って笑う。長すぎる犬歯がルビーの唇の端から覗き、村人たちも――従者でさえも、驚きに歩を止めざるを得なかった。
「……ふうン……催しには若い者が良いが、年寄りも使うのか」
 村人を物色する瞳に慈愛はない。食欲と、憐れみと、期待。それらが混じり入った冷たい視線が村人たちを舐める。母は子を護るように背へ隠し、其れを庇うように父が前に出た。老人はあきらめの溜息を吐き、従者は其れでもと虚勢を張る。
「そ、其れは遠路はるばるお越し頂き光栄であります。公からは何も言われなかったもので、少々驚きました。“催し”は山頂にて行いますッ」
「知っている。あれだけ大仰なものを作るとは、貴公らの主は几帳面であるな。其れに――何でも今回は血が流れぬとか」
「はッ、はいッ! 今回はあくまで……村人に……楽しんで頂くための」
 催しの内容を知られぬように、だろう。しどろもどろになりながら従者はブラミエに答える。此処で“村人が遊具になります”なんて言おうものなら、パニックを起こす。其の考えが酷く幼稚で愛おしくて、ブラミエはくすくすと笑った。
「そう硬くなるでない。貴公が主にする通り、余に敬意を払えばそれで良い」
「はッ。お名前をお伺いしても……」
「余のか? では貴公の名は?」
「わ、私に名はありません。従者として作られた身ですので」
「そうか。では余も名乗らぬ。どうせ客は来ておらぬのだろう? ならば客人と貴公が呼べば其れは余である」
「は、はいッ……」
 わななく従者は気付いていない。
 彼は病に侵されている。
 “村人は常に後ろにいて、逃げる者など一人もいない”。そういう病に侵されている。これで他の猟兵が入り込みやすくもなるだろう、とブラミエは他愛ないお喋りの合間に村人を見る。其れは何気ない眼差しだが、今を好機と入れ替わりにかかる猟兵たちへの合図、そして己の従者への合図でもあった。

「はいはい、こんにちはー」
「え?」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)――其の一角、“疾き者”は其の好機を見逃さない。素早く村人の横へ寄ると、欺瞞結界を解く。
「猟兵です。あなた方を助けに来ましたー。ああ、慌てないで、慌てないでー。一人ずつちゃんと助けますからねえ。怖い人が前で話している間にー」
「た、助けるったって、あの吸血鬼もいるってのにどうやって」
「簡単ですー。“吸血鬼さんも私たちの味方”だからですー。いま私たちが来たのと同じ方法で、貴方がたには帰って頂きますー。大丈夫です、少しくらい音を立ててもあの様子なら手下は気付かないでしょうー」
 確かに、後ろに構えている従者も前で話している従者も何処か様子がおかしいのが見て取れる。ブラミエの病の影響である。村人も様子がおかしい事には気付いたのか、“疾き者”の言葉をすんなりと信じて頷く。
「では森の中に入って、一目散に降りて下さいねー。結界は簡単に解けませんから。『元の住んでる場所に戻ったら』解けるのでー」

 己の従者が、忍び込んだ猟兵が何人連れて行けるかは判らない。
 だが、遊園地に着くのがオブリビオンと従者、そして猟兵だけになったなら……目の前でおべんちゃらを吐くこの従者はどんな言い訳をするのであろうな?
 ブラミエは村人を逃がしていく“疾き者”を見ながら口端を上げた。そうした“不思議な出来事”こそが、妖怪を妖怪たらしめるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サフィリア・ラズワルド
WIZを選択
【狐と竜】で参加

精霊竜様を召喚して幻覚で私達が見えないようにしてもらってから村人さん達と話します、内容はできるだけ伏せて

酷い勝負を無理矢理受けることになる、私達は助けに来たとだけ伝えて私は離脱を……

朧ちゃん?どうして私の手を?この親子と私達が入れ替わる?確かに恐い思いをする人は少ない方がいい、わかった、私がこの子のフリをするね!精霊竜様!私の姿をこの子に見える様にお願いします!

おっと、それっぽく演技しないと……!

『恐いよ、お母さん……』

アドリブ協力歓迎です。


葉隠・朧
※アドリブ連携OK

【狐と竜】で参加

こんなに人を動かして、オブリビオンの吸血鬼とやらはさぞかし気分が良いだろうね
けれども、順調なのはここまでだ、くふふ…

ボクらは村人の誰かに化けて紛れ込もうと思う
目の色と声までは変えられないから、演技しやすい女性がいいな
ほら、そこにいる、子どもを連れた母親が丁度良さそうだ

30代ほどの女性の姿に変身する。

耳と尻尾を隠して、よし、完璧だ

隙を見て、入れ替わる。
子ども(サフィリア)の手を握り、余裕の笑みで声を掛ける。

大丈夫よ、お母さんがついてるわ




 見物客を迎え、再び動き出した村人達。
 其の山中に瑠璃色の精霊竜が吼える。咆哮は透明に、しかし高らかに響き渡り――サフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)の姿を透明へとしてみせる。
「ありがとうございますっ、精霊竜様! ――村人の皆さん、聞いて下さい!」
 サフィリアはこれから起きることを、出来る限り伏せて伝える。酷い勝負を受ける事になる、そんな事をさせない為に自分たちは来た。
 凛とした声を聴きながら、葉隠・朧(白妙の妖狐・f33723)はするりと霧のように村人たちの間に入り込む。果たしてこのうちの幾つが幻影で、幾人が猟兵なのやら。はてさてと息を吐きながら、子どもを連れた年の近そうな母親を選び、声をかける。
「貴方は猟兵? 村人?」
「え? ……む、村人ですが……」
「ああ、じゃあ良かった。ボクたちと入れ替わらない? ボクもあの子と同じで、キミ達を助けに来た猟兵なんだ。多分既に前後の従者さんはまともじゃないから、普通に横合いの森へ飛び込めば大丈夫だよ。其処からは道は判るよね?」
「は、はい……!」

「私達は、貴方がたを必ず助けます……!」
 そう言って離脱しようとしたサフィリアの手を、朧がそっと握る。正確には既に先程の女性に変化しているので人相は違うが、まだ消えていない耳と尻尾、そしていつもの笑顔で判ってくれるだろう。
「あ、あれ? 朧ちゃん? どうして……」
「このまま離脱するのも良いけど、どうせならもっと勇気を出してみない? 丁度キミならこの女性が連れてた子どもと歳が近いし」
「親子と入れ替わるの? ……。うん、判った。私がこの子のフリをするね!」
 ――精霊竜様!
 サフィリアは願う。己の姿を、どうか村人の子どもに見えるように変えて下さいと。そうして精霊竜は応える。サフィリアの容姿は、今逃げ出そうとしていた親に手を引かれる子にそっくりになっていた。
「うん、上出来上出来。後は演技だね」
 ぱっぱと尻尾と耳を消した朧が囁く。

 ――大丈夫よ、お母さんがついてるわ

 サフィリアはうん、と頷いて、子どもの気持ちになった。きっと怖かったろう。きっと怖いだろう。

 ――怖いよ、お母さん

 其の演技は堂に入っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『私の為に花は咲く』

POW   :    研究施設の破壊など

SPD   :    囚われた人をこっそり救出するなど

WIZ   :    侵入ルート、避難経路の割り出しなど

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「さあさあ皆さま、いらっしゃいませ!」
「領主様の作られた素晴らしい遊園地へ!」

 さて、大体半分の村人が幻影・もしくは猟兵な訳だが――そんな事も知らぬ従者たちは、山頂につくと笑顔で振り返った。
 ぎぎい、と鉄柵の門を開き、村人たちを迎え入れる。ええ、それはもうニッコリ笑顔で、其れこそまさに遊園地の案内係のように。
 薄暗い空の下、陶器で出来た遊園地があった。これを作るなどとはとんでもない暇人に違いないと誰もが確信を得た。暇人でなければ、余程に狂気的だ。
 大きな回転木馬は今は止まっているが、馬に馬車、良く判らない造形の乗り物など様々ある。
 観覧車は小さいが、頂上に至れば山頂から麓を見下ろす事が出来るだろう。車の玩具は何処で知識を仕入れたのか近代的な形をしていて、――そう。前部後部にはちょうど“詰め込みやすそう”だった。

「領主様は貴方がたにお望みです! 絆の強さを見せて頂きたいと!」
「或いは絆の果てを見せて頂きたいと!」
「なので……さあ、子どもさんはこちらへ。少し水分補給をしましょう!」

 従者たちはそう言って、子どもたちを村人から引き離していく。男2人が子どもたちを水飲み場へ連れて行くと、残り3人は顔を見合わせ、醜悪に笑った。

「アンタたちにはお仕事がある」
「領主様は絆の強さを試してみたいと仰せだ。アンタらの仕事はたった一つ」
「遊園地の遊具になる事だ」
「そして子どもを落とせ。もう遊びたくない帰りたいと言わせて見せろ」
「そうじゃあなきゃあ」


「アンタ達の首が落ちる!」


 そういうと、最前列にいた老人を男はむんずと掴み――ぽきり、と其の首を真横に折り曲げた。

「ひょ」

 老人が奇妙な息を吐く。まだ生きている証左。そのまま男はぱきぽきぱりぽり……とあっという間に老人を縮小して、大人が抱えられるくらいの肉塊にしてしまうと……回転木馬の馬に歩みより、入り口らしき陶器の板を開けて、其の中に ごろん と転がし入れた。

「さあて、次は誰にしようか」


***
猟兵の奮戦により、本物の村人はおよそ3分の1程度にまで減りました。
従者に偽物の村人だと知られないように工夫して行動して下さい。偽物が混じっていると知った従者は、子どもを連れている従者の元へ走る事でしょう。
最も安全な方法は敢えて詰め込まれ、従者が移動した隙に脱出してこっそりと設備を破壊して回る事です。
ある程度荒っぽい方法でこの状況を打開するのも良いでしょう。ですが子どもたちを護る事、領主様(オブリビオン)はまだ警戒中である事も考慮する必要があります。

(なお、抜け出す際に特殊な技能は必要ありません。村人たちは弱って抵抗する気力がないだけで、畳まれた後に元の形に戻ろうと思えば戻れます)
サンディ・ノックス
折りたたまれる様子を目にすると
これから俺もああなるのか、嫌だなあと思う
嫌だけど畳まれて詰め込まれるよ
「怯えた顔して後ずさりするけど抵抗できない村人」の演技をしようか

従者の姿が見えなくなったら脱出
まずは自分が閉じ込められていた設備にUC解放・夜陰を放ち、黒水晶に食わせて同化させる
同様に村人が閉じ込められている設備も食わせてから水晶を散開させることで彼らを開放し、逃げるよう指示
外に出されて逃げろと言われたら、気力が足りなくても本能で元の状態に戻ろうとするはず
…だめだよ水晶、村人は食べちゃいけない

早く子供達も助けに行きたいけど慎重に
設備を全て壊して、オブリビオンが出てくるのを待つ




 村人が折り紙か何かのように折りたたまれていく。
 ――俺もああなるのか、嫌だなぁ。
 サンディは心の中で毒づいた。けれど、潜入するにはある程度相手の計画を成功させる必要がある。此処で暴れだせば村人に危害が及ぶ。我慢するしかない。
「じゃあ次は、お前。来い」
 そうしてサンディが指差された。思わず足が後ろに下がる。恐怖ではなく、純粋な嫌悪であったが……其れを怯えだとおもったのだろう。ハハハと笑いながら従者はサンディの腕をつかむと、ぽきんと折り曲げた。
 ――あ、本当に痛みはないんだ。
 サンディはそんな事を思いながら、身体を折り曲げられ、一つの塊にされる嫌悪感に抵抗する。

 彼は手足は動くように折りたたまれて、ゴーカートの中身として詰められた。成る程、この手足で走るという事らしい。いよいよもって悪趣味な事である。
 従者の足音が遠ざかるのを確認すると、サンディは集中する。黒い水晶が、偽りの遊具を侵食する様を想像する。――解放、夜陰。
 ばきり、と音がして、黒い結晶が現れる。其れはばきばきと増殖しながらサンディと村人たちが入ったゴーカートを侵食して、やがてぱきりと割れ、皆を解放した。
「な、何……?」
「眩しい……何が起こったんだ……?」
 戸惑う村人たちの声を聞きながら、サンディは立ち上がる。戻してみると体のあちこちがじんわりと痛む。同じ姿勢を続けていたからか、無理な姿勢にさせられていたからなのかは判らない。
 黒い水晶は砕け散っても尚、とりついた施設の各所を侵食していた。同化を渇望する悪意。其れがこの黒い結晶の源泉だ。其の内の一つが村人に向かっているのを見ると、駄目だよ、とサンディは冷たく言う。
「村人は食べちゃいけない」
 ……僅かな沈黙の後、水晶は止まる。成る程、いう事を聞く程度には制御できるようだ。村人の身体を支え、あるべき部位をあるべき場所に直していく。この後には設備を破壊して、――嗚呼、子どもたちはどうしたら良いかな。
 絶え間なく思考する無口な救世主に村人は半ば恐怖を、半ば安堵を覚えながら、次々と助けられていった。
「きっと他の猟兵が、君たちを匿う術を持ってる。だから其れまで物陰に隠れていて。いいね?」
「は、はい……貴方は?」
「俺は、まだ壊すものがあるから」
 ――君たちの領主様とかね。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル


…心配しないで。前言を翻すつもりはない。誰一人、犠牲にする気はないから

UCを再発動し"演算、御使い、土竜、破壊魔、操縦、道化師、闇夜、迷彩、変装"の呪詛を付与
自身や村人達の姿に●変装した"写し身の呪詛"の残像達の表面を●オーラで防御し、
従者の行動にあわせて●瞬間思考力で●操縦して実体があるかのように●演技させる

…今のうちよ。貴方達はこの穴の中に隠れて

分身達が詰め込まれている隙に自身や他の村人は再度、分身と入れ替わり、
●闇に紛れて●迷彩を施した●トンネルを掘り地中に隠れ潜み、
密かに詰め込まれた分身達を自爆させて設備を破壊する●破壊工作を行うわ

…もうこんな悪趣味な代物は必要無いわね




「ひい……」
 目の前で老人が折り曲げられて畳まれて、村人たちは悲鳴を上げる事も出来なかった。恐ろしさが喉を凍らせ、ひきつったような声ばかりが響く。
 リーヴァルディは彼を知っている。彼の言葉が蘇る。

 “其れでも、其の時の為に貴方が助けに来て下さったのでしょう?”

 老人の言葉が蘇る。そう、私はこの時の為に来た。
 誰一人死なせはしない。前言を翻すつもりはない。子どもたちも大人も全員、私達が救ってみせる。
 再びユーベルコードを発動する。衣服に込められた様々な権能が活性化する。
 丁度その時、男たちの手が、リーヴァルディの傍にいた男――“写し身の呪詛”へと向けられた。
「次はお前だ」
「若いのは曲げ甲斐があるからなあ」
 下卑た笑いを浮かべる従者が触れていると思っているのは幻だ。表面はオーラ防御の要領で質感があるように構築し、従者が曲げる方向を計算して幻影を操縦、ぱきぱきと曲げられているように見せかける。
 決して楽な作業ではない。脳の神経が焼ききれそうになるけれど、リーヴァルディは其れでも村人を救いたかった。いや――吸血鬼を殺したかった。そう言う方が、彼女の想いを表現するには的確かもしれない。

 今のうちに。リーヴァルディは後方にそっと下がり、穴を掘る。浅い穴で良い。地中にトンネルを造れるくらいの浅さがあれば良い。村人たちにそっくりな写し身を作り出し、後ろにいる者からひっそりと入れ替えていく。子どもたちが連れていかれたのは痛手だが、ならば大人たちの救出に手を割いている暇はないだろう。
「此処なら大丈夫。大丈夫だから、隠れて」
 男たちが曲芸のように分身たちを折り曲げて行く。頭痛がする。作業をしながら彼らの手元にも注意を払わなければならない。リーヴァルディは涼しい顔を崩さない。苦し気な様子を見せれば村人に不安が広がる。
「良い? 何があっても、どんな音がしても、此処から出ては駄目よ」
 後方にいた数名を無事にトンネルに保護すると、リーヴァルディはしっかりと言い含めて外に出た。
 あとは分身の操縦に集中すればいい。そうして詰め込まれた分身を爆破させて、領主を誘き出す。こんな悪趣味な施設は一刻も早く破壊すべきなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ブラミエ・トゥカーズ
追い詰められたヒトの悍ましさは知っている
自身もそれを起こす側だったのだから
追い詰められた人間の強さだって知っている
自分はそうして負け尽くしたのだから

POW
見物だけは飽きると伝え、遊具で遊ぼうとする

その遊具の動力になっている人に囁く
玩具のままで、憐れなままで良いのかと

偶然や力加減を誤った振りをして遊具の一部を破壊する
観覧車の柱を折って自由に転がれるように
カートの柵を壊して見物人を轢けるように
回転木馬がまっすぐに走れるように

切欠はやろう。
抗うも従うも逃げることも貴公等の自由である。

偶然や戯れを装って重症にならない程度に人は守る
自身に向かってくるのも歓迎
期待に応えた人間の攻撃は避けない

アドアレ絡歓


ゼイル・パックルード
わずかでも可能性を見せたほうが絆とか強さを見るにはいいと思うんだけどねぇ。あるいはこういう場面でも折れない絆ってやつを見たいのかもしれないけど。やはりやり方の趣味が合わねぇな、ガキ殺すのも趣味じゃないし。

大人しくして適当に詰め込まれて、UCの狭いところに入る能力で中からいじくるとするか。人間を部品にするといえど、大元の機械はあるだろうしな。歯車だのなんだのを無理やり止めたりして動かしたりして、機械の不調に見せかける。従者の注意もこっちの機械に向くだろ。
その隙に他の猟兵が設備を壊すでも村人を助けるでもすればいいさ。

それに従者どもが気が付いて、気を取られた瞬間後ろから殺させてもらうがね。




「ふむ」
 次々と村人(と猟兵、そして彼らが呼び出したもの)が折られ曲げられ遊具に詰め込まれていくのを、ブラミエは見ていた。そうしてそのうち、白い髪の男と目が合った。
 あれは猟兵であろうな。直感が告げる。
 そうして男たちは塊になった大人たちを遊具に放り込み、ブラミエへと下卑た笑顔を向ける。
「子どもたちがもう少ししたら戻って来るでしょう。そうしたら実験の始まりです」
「成る程。貴公らの主はヒトの絆を試そうと考えているのか」
「はい! 其れはもう。一度「気になる」と言えば、夜も眠れなくなる程考え始められる方なので」
「……狩られたことがない吸血鬼か」
「はい?」
 氷のような表情のまま、ブラミエは言う。繰り返す。貴公らの主はヒトに狩り立てられたことがないのだなと。
「追い詰められたヒトは悍ましく、強い。余は其れを知っている。貴公らの主は知らないのだな、ある意味幸福であろう」
「は、はあ……」
 今一つ想像がつかない、と従者の顔に書いてある。ブラミエは其れを笑った。これから知るであろうよ、と胸中で呟いて。
「では、お客人様はどうされますか? 領主様は今少しすれば降りて来られますが」
「この遊具を観察し、遊んでみたい。中身が声を上げるか試してみたいのだが、構わぬか?」
「ああ、ええ、勿論! ただ、“中身”は丁寧に扱って下さい。本番は子どもたちを連れてきてからなので」
「承知の上だ」
 ――勿論、承知しているとも。中身は大事にしよう。
 ブラミエは雄弁に語り、回転木馬の一つに歩み寄る。そうして屈むと、陶器の継ぎ目を確かめるふりをしながら語り掛けた。
「いるか」
「いるぜ」
 答えたのは男――ゼイルだった。彼は木馬の中で己を実体のある影に変容させ、木馬を内側から弄っている最中であった。
「此処の領主はやり方が下手だな。つーか合わねぇ。俺はガキを殺すのは趣味じゃねぇし、僅かな可能性を見せてこそヒトは奮起するもんだと思うがな」
「其の為の“負けた方を皆殺し”であろう。まあ、この調子では大人たちの負けが濃厚なのは余にも判る。外側から木馬を壊す。貴公に助けはいるか?」
「いいや。他の遊具をどうにかしてやってくれや」
「承知した」
 ゼイルは木馬の内側から、歯車やら何やらを適当に止めたり動かしたりする。
「ちょっと揺れるが我慢してくれよ」
「は、はい……」
 村人の声は弱弱しい。無理もない、丸められて押し込められて、元に戻らないと思っているのだろう。こればかりはこいつらの気持ちの問題だな、とゼイルは心中で溜息を吐いた。村人に覇気がないのは、ダークセイヴァーではままある事だけれど。

 ――がこん、がこ、がこん。

「……ん? 何の音だ?」
 オブリビオンの従者は不審な音に周囲を見回す。すると、一つだけ不自然に上下している木馬が目に入った。中身が暴れて揺れているのではなく、明らかにおかしな挙動をしている。
「何だ、故障か……? おい、大人しくしろ! まだもう片方が……」
「ああっ!? お客人様、其れは困ります!」
「!? 何だ、どうした!」
 子どもたちの準備をしている組が帰ってくるまでに仕事を終わらせておかなければならないのに! 男が声を上げると、お客人様が、と仲間が困ったように駆けてきた。
「主の仲間ってのは皆そうなのか!? お客人様が観覧車の柱をへし折っちまって」
「何ィ!? そりゃ大変だ、だが直せるのは主しか」
 ふと視界が暗くなって、男二人は顔を見合わせた。常に薄暗いこの世界で、なお暗く――
「遅ェよ」
「ひょ」
 男たちの其の首を、ゼイルの“魔裂”が一息に飛ばした。
 男たちの最期の吐息は、奇しくも中身にされた老人たちに似ていた。

「よう、あんたか。ハジメマシテ」
「ああ」
 そうしてゼイルとブラミエは対面する。ブラミエは判りづらい程度に遊具を壊して回り、村人たちと猟兵の配置を把握した後だった。
「これからどうする? あと一人いるはずだが」
「捨て置け。領主を呼びに行く役が要るし、全員いなくなるのは不自然だ。余は客人として此処にいるゆえ、まだ残る。貴公は村人たちを園の外へ。出来るか?」
「出来るぜ。だが、俺の手は生憎2本しかなくてね。あとは他の猟兵に任せるしかねぇな」
 二人は頷き合い、それぞれの役割に戻る。ブラミエは最後の男に勘付かれないよう立ち回るため。ゼイルは共に遊具に詰め込まれていた村人たちの“修復”のために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
《華組》

一章で預かった上着をアピってりゃお子さんなり来るかな
上着の主に会いたいなら生き残れ、それと楽しめと言ってやる
殺意も罪悪感も覚えて欲しくねえんだ

だらだらと時間稼ぎ
従者が他所に行ったら脱出して関節を入れ直しながら事情を話すぜ

シホと合流して子供は預ける
ばか…どこも痛くない?
ごめんはナシだぜ、アタシの我儘だもん

闇に紛れながら遊園地を移動する
斥候しシホを手招きするよ

排除を要する従者がいれば暗殺だ
隠し持った鋼糸・デストラップを真威解放で操作し絞殺する

救出においては心のケアを重視
諍いは命の危機故の仕方のないことだと慰める
禍根にしてはならない、お互いにごめんなさいで済ませようよ
許し合うのも絆だぜ


シホ・エーデルワイス
《華組》

極力
全遊具に猟兵や【守霊】等の味方が1人以上詰め込まれる様
従者を催眠術で誘導

味方の病で容易な筈


一緒に詰め込まれた人を
コミュ力で優しく落ち着かせる

もう少し耐えて下さい


従者が詰め込み終えたら隙を見て
光学迷彩のオーラ結界で中の様子を目立たなくし
念動力で『聖鞄』を動かし村人を匿う

隙が無ければ陽動役の守霊に気を引かせる


空間ができたら体を戻し
結界の範囲を広げて脱出し乗っている子を聖鞄へ


『聖笄』で透明になり忍び足で猟兵が居ない遊具優先で
同様に救助活動


遊具内の守霊も村人を鼓舞し
救助を手伝う


途中で燦と逢い協力

心配させてごめん…


急ぐ状況になれば
聖鞄内の守霊も出し
一人に三体以上救助と護衛に向かわせ集め聖鞄へ




 ギイ、バタン。
 木馬に中身がたっぷりと詰められて、扉が閉められる。
「皆さん、大丈夫です。もう少し耐えて下さい」
 中身の一つとして詰め込まれたシホが口を開く。応える声はない。
 微かに折りたたまれ、詰め込まれる音がする。おぞましい音だ。悲鳴を上げる者がいないのは、味方が多いからなのか、其れとも抵抗する気力もないからなのか……出来れば前者だと信じたい。確か客人扱いされていた猟兵もいた筈だ。
 男の足音がする。シホは声を潜め、大丈夫です、と村人に囁く。返事はない。……。

 ……男の足音が遠ざかったのを聞き届けると、シホは動き始める。オーラ結界に光学迷彩を付与して展開すると、外側からこの木馬の様子は見えづらくなる。はずだ。
 事は一刻を争う。村人が逃げるだけの体力を消耗する前に、救出しなければならない。シホは念動力で聖鞄を動かし、触れて下さい、と告げる。中は広大な空間であり安全である事、時間をかけて身体を戻して欲しい事を告げる。
「……元に戻るんですか? この身体が?」
 弱々しく女が言う。勿論です、とシホは応えた。此処で曖昧な答えをしてはいけない。
「戻ろうと思えば戻れます。私を信じて下さい。貴方達を必ず助けて、村へと皆で帰るんです」
「……はい……!」
 女の声は途絶えた。聖鞄の中へ入ってくれたのだろう。自由になる手を使って、聖鞄に村人をかくまいながらシホは入り口を目指す。自分は鞄の中に匿われる存在ではないから。
 キイ、と陶器の扉を開き、飛び込むように身体を投げ出してどさりと落ちる。駆けてくる足音に一瞬肌が粟立つ。気付かれたか?

「――シホ!」

 聞こえたのは、愛しい人の声だった。

 一方、時刻は子どもたちが引き離される直前に戻る。
 一つの塊となって呆然と遊園地を見ていた中で、村人の上着を着た燦に近付いてくる子どもがいた。
「お姉ちゃん……」
 不安になったところに見知った上着を見付けたのだろう。近付いてきた子どもは上着から視線を上に動かすと、別人であることに驚いたように目を見開く。燦は咄嗟にその口を塞ぎ、しい、と人差し指を己の口元に添えた。
「……この上着を知ってるんだね?」
 こくこく、と子どもは頷く。良い子だ、と燦は子どもの口から手を離す。
「お姉ちゃんは大丈夫、此処に来る途中で一団から抜け出したんだ。アタシは皆を助けにきたんだ。勿論お前の事もな」
「…僕ら、助かるの?」
「勿論だ。でも其の為には、生き残らなきゃいけない。多分あいつらはお前らを丁重に扱うだろう。けれど油断はするな。相手は吸血鬼だからな」
「……」
 子どもが不安そうにする。大丈夫だ、とくしゃくしゃ頭を撫でて。
「姉ちゃんが何とかしてやるよ」

 そうしてどれほどの時間が経っただろう。嫌だ怖いとか弱い女のふりをしながら、こういう手合いが好みそうなだらだらとした抵抗の末、燦は観覧車の飾りとして丸められ、村人と一緒に連ねられている。痛みを感じないというのは不思議だ。もしかすると此処の吸血鬼はヒトの体に詳しいのかもしれない。
 だが、従者が木馬の方に行ってしまえばもう用はない。飛び降りて関節を戻し、観覧車の人々には合流して必ず助けると一言言い置いて、まずは仲間を――愛しい人を探す。
 直ぐに見付けた。何か結界を張っているのだろう、僅かに見えづらいがあの姿は確かにシホだ。

「――シホ!」
「……! 燦……!」
「ばか、……大丈夫か? 何処も痛くない?」
「心配かけてごめん……でも大丈夫。村人たちは鞄に匿ってあるわ」
「流石アタシのシホだ。じゃあ、村人を助けて回るとしますか」
 薄暗い雲が立ち込める其の下で、シホは斥候を務める。男は既に3人から1人に減っているのだが、其れを2人は知らない。何より、警戒して悪い事など何もない。下手をうてば子どもたちに危害が及ぶからだ。
「まずは観覧車に行こう。動き出せば助けられなくなる」
「うん」
 そうして大人たちを助けなければ。其の体だけではなく、心も。
 きっと子どもたちを振り落とそうと考えた者もいるだろう。でもそれは罪ではないのだ。生きたいと願う気持ちに大人も子どももない、人間として当然の事なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

瀬河・辰巳
レオン(f20419)と

この世界じゃこれが当たり前。今は耐えるんだ。

さて、敵の考えは悪趣味だが利用するか。

「絆?人間なんて信用できるかよ!」
申し訳ないと思いつつ、錯乱した村人の演技でレオンを回転木馬へ突っ込もうとする。もちろん自分も詰め込まれる。
ダンピールとバレないよう、口の開き具合は気を付けようかな。

従者が離れたのを鴉に教えてもらうと、抜け出してレオンを出す。

「毛玉に村人を回収して、離れた場所で出す。途中で君を入れるから、ラーベくんが来たら村人を出してくれ」

自分は回転木馬等の蓋を開け、折畳まれた村人を回収しては蓋を閉めるを繰り返す。回収したら離れた所で出し、ラーベくんで安全な場所へ誘導する。


レオンハルト・アウストラリス
辰巳(f05619)と行動

ふざけた真似を…!
飛び出したら水の泡…耐えるしかないのか…!

な…!?辰巳さん…!?
やめてくれ!俺たちの絆は…!と従者が喜びそうな演技をし、辰巳を信じて回転木馬に詰め込まれる。
従者の嘲笑に耐えつつも従者が去ったら[天与の躯体]で無理矢理に元の形に

これで全員です!辰巳さん、後は頼みます!
辰巳と共に村人を解放しUCの空間へ収納する[救助活動]
中で絆に亀裂が入りそうな村人を安心させアフターケアしつつ[勇気]を与える
大丈夫、絆は壊れやしないさ。
迎えに来たラーベくんを撫でて労う。

(あれは演技…だったんですよね…?)
辰巳の「人間なんて信用できるかよ」あれは本当に嘘だったんだろうか。




「絆?」
 村人の一人……辰巳が声を上げた。老人をごろんと男が木馬に転がし入れた直後の事であった。
「人間なんて信用できるかよ! 直ぐに裏切って、甘い言葉吐いて! 俺は……!」
「な……!? 辰巳さん!?」
 辰巳はレオンハルトの胸倉を掴み上げると、丸めもしないまま木馬まで引きずっていって、押し込もうとする。
「なあ、これで俺が押し込めたらアンタたちの仲間にしてくれよ! 俺は……」
「ああ。だがやり方がなってないな」
 男たちが嘲笑う。村人同士のいざこざは大歓迎だと言うように。辰巳から容易くレオンハルトを奪うと、ぱきぽきと丸めてごろん。木馬の中に転がし入れる。
「そう、やり方がなってないからなァ~~。仲間には出来ないが、面白いものを見せてくれたお礼に良い所に入れてやるよ」
「い、良い所?」
「そう。“こいつと同じ場所”にな! お互いに恨み言を言い合うが良いさ!」

 ――ぱきっ。ぺきぽき、ぱきん。

「……」
「……行きました?」
「行ったな」
 結局レオンハルトと同じ木馬に詰め込まれた辰巳だったが、寧ろ好都合でもあった。ツーマンセルで行動するなら位置は近い方が良いからだ。
「……」
「……レオン? どうかしたか」
「あ、い、いえ。何でもないです。この後はどうします?」
「そうだな。毛玉に村人を回収して、離れた場所で出す。此処は戦場になるからな……途中で君も入れる。ラーベくんが合図だ、彼が来たら村人を出してやってくれ、安全な場所のはずだ」
「判りました! じゃあ途中までお手伝いしますね!」
 2人は転がり落ちるように木馬から抜け出す。レオンハルトは天性の身体能力で一気に、辰巳は慎重に体を元に戻し、具合を確認する。
「……医者、かもしれないな」
「医者? 誰がです?」
「相手の首魁だ。此処まで痛みを感じさせずに人を変形させる技を、あいつらが独学で覚えたとは考えにくい。とすると、領主に教えて貰った可能性が高い訳で――」
「成る程。領主が医者で、身体の扱い方を心得ているという訳ですね?」
「そうだ。あくまで予想だけどな」
 言いながらも2人は木馬に入れられていた人々を助け出し始める。のだが……

「貴様! 同じ村人を売ろうとした奴じゃねえか……!」
「あ、お、落ち着いて下さい……! あれは演技です、俺はこの通り元気で」

「……村人を売って仲間にしてくれだなんて」
「すまない。だがあのやり方をすれば敵の考えを利用できると思ったんだ」

「生き残りたい気持ちは判らんでもない。だが、誰かの犠牲の上に生きようとはワシは思わんよ」
「え、えっと、さっきのは演技で……」
「……」

 この通り、辰巳は散々な言われようであった。
 思いっきり村人たちの前で同じ村人(に扮したレオンハルト)を木馬に入れようとしたのだ、ある程度の糾弾は覚悟していたが。
 村人たちを何とか説得し、辰巳の毛玉に匿っていく。そろそろレオンハルトを入れる頃か、と辰巳が思っていると、落ち込んでいるレオンハルトが目に入った。
「……どうした?」
「どうした? って……辰巳さんは傷付かないんですか?」
「傷付くもなにも、事実だからな」
「えっ!? 事実!?」
「事実だろう。君を木馬に押し込もうとした」
「あ、ああ……そっちが……でも、……辰巳さんだって、村人を助けに来た一人なのに」
「……気にするなよ」
 其れより、君を危ない目にあわせてすまなかった。
 ぽん、と肩を叩く辰巳に、レオンハルトは両の拳を握った。
「さあ、君の番だ。あとはラーベくんと君の役目だ、頼んだぞ」

 ――ねえ、辰巳さん。

 “人間なんて信用できるかよ!”

 ――あれは、本当に演技だったんですか? 本当は辰巳さんは、……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

賀茂・絆
まず、念の為こっそりと脱魂恍惚剤を服用しておきマス。
そして大人しく詰め込まれてしまいマショウ。

あ~れ~!デス!

そして従者たちが移動したら身体を魂で無理やり動かして速やかに脱出!
UCで人手を増やして(1体だけですが)村人の救出デス!
助けた村人は逃げたことを従者たちに悟られるのを防ぐためにワタシのトランクの中に隠れてもらいマス。
中は【結界術】の応用でかなり広いので村人を一時的に匿うぐらいのスペースはあるのデス。

皆さんは一旦ここに隠れていてください!ぶっちゃけいられると足手纏いデス!でも、皆さんの子どもたちは必ず助けマスから!

あ、中の薬は自由に使っていいデスヨ!代金は領主から徴収しマスので!


馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

本当に悪趣味ですねぇ。まあ、そうだから『四人総意(依頼を受けるときの基本)』でここにいるんですがー。

敢えて詰め込まれましょう。従者が去ったかどうかは、気配でわかりますし。
去ったら、素早く脱出しましてー。
陰海月、手伝ってくださいな。

強化した結界術と呪詛で自分と陰海月に透明化を施しましてー。
そして、私は四天霊障にて設備破壊しますねー。四天霊障も見えませんから、ちょうどいいかとー。

助け出した人々には、即座に欺瞞結界を施しましょう。ええ、これも『元の住んでる場所に戻ったら』解けるやつですー。


陰海月、今回はこっそりなので、ぷきゅと鳴かずに触手パンチしてる。



 本当に悪趣味ですねぇ、と義透――“疾き者”は心中で呟く。吸血鬼って、みんなこんなに悪趣味なんでしょうかねぇ。
 けれど、だからこそ四人の総意で――依頼を受ける時の基本だ。全員が同意しなければ彼らは依頼を受けない――此処にいるんですけどねー。
 他に誰かいるかな、と周囲を見回すと、村人に紛れて何やら瓶の中身を煽る女が見えた。あれは確か、村から森への道で演説をしていた不思議な人ではないでしょうかー? 何を飲んだんでしょう、薬でしょうか。

「あ~れ~! デス!」
 其の答えは案外早く判ることになる。義透と女――絆は同じゴーカートの中に放り込まれたからだ。
「あらー。詰め込まれちゃいましたね」
「あれ? あなたももしかしてもしかすると、村人じゃ無かったりしマス?」
「そうですねー。此処で隠す事でもないでしょうー。猟兵の馬県と申しますー」
「あらら、ダブルブッキング。ま、こういう事もありマスよね!」
 そういう間に男の足音が遠ざかっていく。絆は畳まれているとは思えぬ身体の動かし方で、軽く陶器の扉を開けると周囲を確認し、ごろんと落ちて伸びをする。ぱきぱきと関節がはまっていく音がして、絆は立ち上がった。中を覗き込み、助けは必要デスか? と義透に問う。
「いいえー。大丈夫ですー。ちょっと待ってくださいねー」
 よいしょ、と義透もまた外へ。関節外しは忍者の得意分野だ。素早く義透が陰海月を呼び出すと同時に、絆もまた古代戦士の英霊を召喚した。
「ところでー、さっき。何か飲んでませんでしたー?」
 義透が問うと、ああ、と絆が頷く。
「あれは脱魂恍惚剤といってデスね、身体が傷を負っても魂で身体を動かせるという素晴らしいおクスリなのデス。今のワタシの動きは其の薬があってこそなのデス。どうですか? 今なら格安でお譲りしマスよ?」
「うーん……便利そうですねー。考えておきますー」
 自分以外の人格は心中で「薬物反対」の旗を掲げている気がしたが、効き目と反作用の有無を目で見ている“疾き者”はちょっと真剣に購入を検討した。
 指示を待つように海月が軽く義透に触手パンチする。其れに2人ははっとして、村人を助けようと頷き合った。
「助けた村人はワタシのトランクに入れマス。大丈夫デス、中は広めの空間になっているので、一時的に誰かを匿うくらいのスペースはありマス!」
「頼もしいですねー。念のため欺瞞結界も施しましょうー。『元の住んでいる場所に戻ったら』解ける代物なのでー、トランクを開けて村人に逃げて貰っても大丈夫なようにー」
「いいデスね! 村人を助けたらどうします? コレ」
「勿論破壊しますー。極力音がしないようにー。貴方は村人の救出を優先して貰ってもいいですかー?」
「ハイデス! 其の為に来たようなもんデスからネ!」
 頷く絆に笑うと、義透は己と陰海月に透明化の術を施し、文字通りどろんと消えた。微かにも足音をさせずに遊具へと向かう。
「透明化のお薬……ウーン、ネタとしてはありカモ」
 言いながら、絆は村人の救出作業にはいる。そして助けた村人にかならずこう告げた。

 ――中の薬は自由にお使いください。代金は……領主から徴収しマスので!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葉隠・朧
※アドリブ連携OK
【狐と竜】で参加

ああ、何てこと…
お願いします!せめて、あの子には手を出さないで……!

弱々しく説得を試みるが、詰め込まれる。

へぇ、ほんとに痛みは無いんだね
中々面白い体験だったな
従者はもういないみたいだし、そろそろ出てもいい頃かな?

脱出後、元の姿に戻る。

さて、村人の救助に向かいたいところだけれど、子どもたちの様子も気になるな
サフィがいるなら大丈夫だろうけど、念の為小狐たちに見てきてもらおう
ついでに施設の情報収集もよろしくね


サフィリア・ラズワルド
WIZを選択
【狐と竜】で参加

……行ったかな?子供達を宥めながら逃がす準備をします、大人達は変な術をかけられて子供に酷いことをする様になるはずだったけど私達がそれをなんとかしたと言っておきます、これで何かゴタゴタがあっても術の影響だと思ってくれるはず

あ、朧ちゃん……じゃなくて朧ちゃんのUCか、子供達は精霊竜様に幻影を残して置いてもらってから逃がします、此方は大丈夫です、そっちは?……そうですか、皆さん、大人達は大丈夫みたいです、さあ急いで!

大丈夫、こんな所すぐに無くなるから、領主ごとね。

アドリブ協力歓迎です。




「嗚呼、何が起こるのでしょう……? これは……?」
 村の女性――のふりをした朧が、戸惑ったような様子で子ども……サフィリアをかたく抱き締めて周囲を見回す。
「大丈夫、ちょっとした子どもたちへのサプライズですよ! さあ、子どもさんはこっちに!」
 男がにこやかに近寄ってきて、サフィリアと朧を引き離そうとする。
「お母さん、怖いよ……!」
 サフィリアがしがみついてくる。演技としては上等。男は其れでもにこやかに、大丈夫だよとサフィリアに視線を合わせる。
「領主様はね、いつも頑張っているお嬢ちゃんたちに楽しい事を教えてあげたいって仰っているんだ」
 何が“楽しい事”だ。
 朧は心中で呟き、おや、口汚い。と己を諫めた。
「だから、さあ、大丈夫だよ?」
「……そ、そうね。あの領主様なら……」
 大人側なら兎も角も、子ども側に猟兵が何人いるか判らない。サフィリアが行って損はないだろう。其れに、これ以上駄々をこねては不興を買ってしまうかも知れない。朧は了承したふりをして、いっておいでなさい、とサフィリアの背を押した。
「お……お母さん」
「大丈夫よ、お母さんは此処にいますからね」
 そうして娘を見送ると……さて、と朧は覚悟する。男たちの笑みが変わって、老人が曲げられ、詰め込まれて。
 そうして朧も呆気なく、ぱきぱきと折りたたまれて木馬に放り込まれた。

「お母さん……お父さん……」
「みんな、大丈夫だよ! ちょっと身体を綺麗にして、楽しい遊具で遊ぼうねえ!」
 子どもたちは泣くもの、戸惑うもの、緊張で震えているもの、様々だった。サフィリアは周囲に猟兵らしき影がないのを確認する。誰かいれば協力して救出できたのだろうが……山頂への道程で救出された者もいるだろう、きっと。
「大丈夫だよ、落ち着いて」
 近くの子どもたちから、サフィリアは其の手を取って励ます。そうして小さな声で、私は猟兵だから、と呟く。
「りょへ?」
「静かに。……貴方達を助けに来たの。あのね、此処からは秘密の話だよ」
 そうしてサフィリアは語る。
 大人たちはこれから変な術をかけられて、子どもたちに酷い事をするように操られてしまう。けれど、自分や其の仲間たちがどうにかしてくれているはずだ、と。
 万が一大人たちを助け損ねて、領主の絆の実験が行われてしまっても大丈夫なように、サフィリアは少しだけ嘘を交えて話した。こうしておけば何かもめ事があっても術の影響だと思ってくれる筈だから。
「……お姉ちゃんが助けてくれるの?」
「勿論だよ。村の人全員を助けるよ」
「ほんと?」
「ほんとのほんと!」

「さ、て……」
 本当に痛くないんだねえ。逆さになった(しかし暗いので何もわからない)視界で、朧は考えていた。まだ足音がするので、動くわけにはいかないのだ。
 子どもたちの方にはサフィリア――サフィがいったけれど大丈夫だろうか。念のため斥候を後で飛ばしておこう。ついでに施設の情報収集もしておこう。村人がいない施設を探し回るのは骨折り損のくたびれ儲けだからね。
 従者の足音が遠ざかり、やがて消える。後ろからよいしょ、と自由な指で押してみれば、案外あっさりと陶器の扉は開いた。村人たちは動けないもの、という前提で作られたのが伺える。
 ごろんと転がるように外に出て、伸びをするように元の姿に戻る。村人への変化も解いて、ふうと息を吐いた。
 取り敢えずはサフィの方へ斥候の子狐を数匹放つ。後は村人を助けながら、サフィ達が戻って来るのを待てばいいだろう。
 朧は手始めに、自分と一緒に詰め込まれた村人から助け始めた。
「大丈夫、ボクは猟兵だ。君たちを助けに来たんだ。さあ、いま外に出してあげるね」

「あ! 朧ちゃ……じゃなかった」
 見知った気配を感じて、サフィリアは振り返る。小さな狐がコンコン、とサフィリアの足元にいた。他の子どもたちは物珍し気に其れを見ている。
「この子たちが来てるって事は、あっちは大丈夫みたいだね」
 きっと大人側に猟兵が集中していたのだろう。ならこっちもがんばらなきゃ、とサフィリアは子どもたちが来た側の門を開く。
「あ、危ないよ! そんな事したら領主様が……」
「大丈夫だよ。私には……私達には精霊竜さまがついていてくれるから! さあ、此処から急いで逃げて! 大人たちは後から合流するから、皆、園の外へ逃げて!」
 幸い、従者は道中で“村人たちは問題なく此処にいる”という幻影の病に侵されている。精霊竜によって生み出された子どもたちの幻影があれば盤石だろう。子どもたちはおっかなびっくりしながら、或いは上の子が下の子の手を引きながら、逃げられると判ったらわっと入口へ向かった。
「これで大丈夫だよね、朧ちゃん」
 サフィリアは朧の斥候が踏まれないように抱き上げて、小さく呟いた。子狐はケン、と鳴いた。彼女には其れで充分な答えだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『叡智卿ヴェイン』

POW   :    ご機嫌いかがかな、諸君
対象への質問と共に、【自身の影】から【嘗て被験体にされた亡者たち】を召喚する。満足な答えを得るまで、嘗て被験体にされた亡者たちは対象を【怨嗟の声や呪詛】で攻撃する。
SPD   :    耐えられぬなら泣き叫べ
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【スカルペル】で包囲攻撃する。
WIZ   :    もっと、よく見せてくれ
【敵を掴んで観察する為の拳】【手脚を縫い付ける為の縫合絲】【身体を切り刻む為のスカルペル】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠神埜・常盤です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 爆音が響く。猟兵の一人が仕込んだ幻影の爆弾が弾けて、施設が破壊されていく音だ。
 其の中で、痩躯の男と従者が向かい合っていた。従者は震えている――勇気を出して口を開いた瞬間だった。

「もうしわ きぇ」

 男の首が飛んだ。ごろん、ごろん、ごろん。転がって止まる。
「“申し訳ない”で私の実験がやり直せるなら何度でも聞こう。だが、もう実験は失敗だ。数年かけて作ったフラスコもビーカーも台無しだ。君は死んでも償えないが、私のストレスを緩和するために死んでくれ」
 白髪に赤い目、白衣を纏った男は従者の死体に目もくれず、施設を見て回る。
 観覧車は根元のパイプがひしゃげて折れてしまっていた。回転木馬の屋根にぶつかって、双方とも酷く損傷している。
 木馬の扉は開いている。
「そうか、ネズミが入り込んだか」
 なら、ネズミで実験でもしてみよう。

 Q.猟兵(ネズミ)諸君、君たちは村人とは初対面のはずだ。なのにどうして其処まで親身になれる? 此処まで来たという事は君たちも木馬の中身として詰め込まれた筈だ。何故其処までして他人の為に動ける? 何か特別な褒章でもあるのか?

「――答えてくれないか?」

 振り返った。彼は叡智卿。名はヴェイン。「無価値」の名を関する彼は、まるで価値を追い求めるように猟兵を振り返ったのだった。

***
(村人たちは猟兵の活躍で全員避難終了しています! しかし従者はまだ2人(子どもたちを世話していた方です)残っており、ヴェインは盾として“有効活用”するつもりでいるようです。彼らの動きにも留意して戦う必要があるでしょう)
ゼイル・パックルード
生憎俺はそんな親身になってここにきたってわけじゃない、仕事っていうのもあるが……あんたとは趣味は合わないし趣向は違うが、同じ穴の貉ではあるからね。

俺は生きた人間の生き様とか心の強さを見たい、こんなつまらないやり方で潰されるのは勿体ないと思っただけさ

それと、お前らオブリビオン……ゴキブリ共か大嫌いでね。
何事にも価値を見いだせないつまらないヤツの思い通りになるのは我慢ならないね。

満足いく答えかどうかは知らないが、亡者の声や呪詛など避けられるものでもなし、気にせず先手を狙う、刀で近づいて攻撃。

従者を盾にするというのなら、領主ごと炎で包み燃やしつつ目くらまし。追撃を狙う




「生憎俺はそんな親身になってここに来たって訳じゃ無い」
 ゼイルは肩を竦める。ヒトダスケなんて言葉は己には似合わないと。
「あんたとは趣味は合わないし趣向も違うが、……まあ、同じ穴の貉って言えばそうだ」
 けど、と息を継いで、ゼイルは大太刀「魔裂」を構えた。
「俺は生きた人間の生きざまとか心の強さを見たい。こんなつまらないやり方で潰されるのは勿体無いと思っただけさ」
 ――あとは、お前らオブリビオンが大嫌いでね。
 言葉ながらの袈裟懸けを、ヴェインは数歩下がる事で回避する。其れはまるで、切っ先のミリ単位まで測ったかのような。
「不思議だ。私もヒトの生きざま、心の強さを見たかった。其れはきっと絆に繋がるものだからだ」
 ぞわり、とヴェインの影から真白い手が伸びる。ずるりと顔を出すのは呪詛をたっぷり纏った亡者。ゼイルの足元に絡み付くように手を伸ばす。
 ゼイルは其れを敢えて受けた。斬れるものではないだろうと思ったからだ。しかし続けて飛来物の気配がしたので半身に脚を下げると、顔のすぐそばを何かが飛んで行った。何かは判らない。ただ、其れを投擲したのが目の前の叡智卿である事だけは判る。
「やり方が悪かったか?」
「そうだな、最悪だ」
「再検討が必要だ。君が私の想いに同調してくれるなら、是非助言役にと思ったのだが」
 ヴェインは淡々と述べる。
 部下を失い、殺した事すらもう忘れているのかもしれない。不要だからと。
 ゼイルは更に踏み込んで呪詛を受けながら、ヴェインに斬りつける。ヴェインは其れをかわし、時に手に持ったスカルペルで受け流しながら(半ば押される形ではあったが)、淡々と斬り合う。
 ――不気味だ、とゼイルは思う。
 斬り合っているのに、相手からは戦意が感じられない。あくまで問答をしているような、そんな感覚。本当に、こいつは、実験にしか興味がないのだと――そう思わせる不気味さがあった。
 けれどだからこそ、ゼイルも冷静になれる。静かに広がる炎のように、必要な事だけを取捨出来る。
 スカルペルと刀が触れ合った瞬間、ゼイルは手をくるりと捻った。かちん、とスカルペルが弾かれて宙に舞い、続けて血飛沫が舞う。
 袈裟懸けに斬られたヴェインは数歩大きく後退し、不思議そうに己の血を見る。
「……成る程。痛みとはこういうものか」
「そんな事も忘れる程研究してたのか? 熱心だな」
「いや……今まで私を傷付けようとする輩がいなかっただけだ」
 少し、楽しくなってきたよ。
 眼鏡を血に濡れた手で上げながら、ヴェインは矢張り淡々と言うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ブラミエ・トゥカーズ
人が築いた恐怖と歓喜の楽園はもっと頑丈であったぞ。
これでは余の知るネズミの王国には全く届かぬな。

A.
貴公の蹂躙具合が好みでない故に余の好みに変えただけである。
余達、吸血鬼は人に愛され、恐れられ、そして退治されるのがお約束であろう?
※猟兵は対象外

死した貴公等は既に余と同じ蹂躙者である。
犠牲者の呪詛は無視
浄化属性の二刀にて亡者を祓う

子供を盾にする従者はUCで襲う
従者をおどろかせ恐怖、幻覚、喘息、貧血にて弱体化
自身の従者が武器を渡し子供達が従者に反抗できるよう仕組む
調子乗って危険な事をする子供はちょっとおどろかせる

危険な事はまだ早いぞ。もう少し大きくなってからにすると良い。お姉さんとの約束であるぞ。




「人が築いた恐怖と歓喜の楽園はもっと頑丈であったぞ? これでは余の知るネズミの王国には全く届かぬな」
「……おや? 君は……そうか。君が報告にあった“客人”か」
 興味深そうにヴェインがブラミエを見る。
「君も私の実験に反証する者か」
「そうだ。貴公の蹂躙具合は余の好みでない。ゆえ、余の好みに変えさせて貰った。余たち吸血鬼は人に愛され、恐れられ、そして最後には白杭で退治されるのがお約束であろう?」
「君は滅びの事まで考えているのか。成る程。私は余り考えた事がない」
 影から亡者が出でる。其れは誰によって殺された者なのか、其れともただ死しただけなのか、ブラミエにもヴェインにも判りはしなかったが、だが、呪詛を振りまく亡者である。其れだけで充分であった。
「君は亡びを是とするのか? 自らが消えてしまうのに?」
「余は長きを生きるが、其れとて永遠とは言い切れまい。いつか霧のように消えてしまうのだろうかと思う夜もあった」
 魔女を祓うと偽られた剣。
 病を封印した剣。
 浄化の二刀をもって亡者を薙ぎ払い道を拓くブラミエ。霧へと身体を変じ、一気に叡智卿への距離を詰める。
 後ろへ跳ぼうがもう遅い。霧は叡智卿を包み込み、ぐるりと巡ってふうわりと再び麗人の姿をとる。
「これは……病か?」
「そうだ。病もまた余である。そして病もまた、人によって淘汰されるべきだ」
「……面白い。君はあくまで君のスタンスで、誰かに接するのか。今回は結果的に助けただけ」
「……さあ、どうであろうな」
 真意を隠すように目を伏せるブラミエに。叡智卿は興味がない。
 興味があるのは彼女が返した答えだけ。彼が考えているのはたった一つ。猟兵と村民たちが僅かな時間の間に築いた絆についてだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
領主のやり口が嫌いだった
でも彼の問いを聞いて少し考えが変わった
そういえば彼は好奇心から迷惑な事をはじめたんだっけ
彼を潰すのは変わらないけど問いには本心を答えよう

意外と善意を起点にして物事を考えるんだね
俺は村人のために嫌悪する姿になったんじゃない
お前を潰したいから手段を選ばなかっただけ
…がっかりした?

好奇心を持つという俺との共通点はあるけど
それ以上に平気で人々を巻き込む身勝手さへの嫌悪感があるので
全力で切り刻もうと思う
指定UCを発動し、魔力により肉体を武器に変異させて放出

困ったね、亡者の声が聞こえる
普段なら彼らを受け入れてあげるんだけど変異中はその余裕が無い
聞き流しながら戦闘を継続するしかないや




「意外と善意を起点にして物事を考えるんだね?」
 そう述べるサンディは、叡智卿への印象を少し変えていた。最初は嫌いだった。人を遊具にして実験にするなど、唾棄すべき所業であると。
 けれど彼は、好奇心で全てを始めただけなのだと、サンディは気付いた。人の絆を知りたい、研究したいと思わなければ、村民はいつまでも平穏を得られていただろう。
 決して無害だというつもりはないし、戦意にも変わりはない。だが、偽りを答える必要もないだろうとサンディは判断した。

「俺は村人の為に嫌悪する姿になったんじゃない。お前を潰したいから手段を択ばなかっただけ」
「……何故私を潰したいと?」
「身勝手だからだよ」

 お前は身勝手だ。
 お前の好奇心で、何人の人が死ぬような思いをしたと思っているんだ?
 お前の好奇心は其れでも満たされないのか? 村人の心と尊厳を踏みにじってなお、お前は知りたい知りたいと叫ぶのか?

 サンディの身体が変異する。指先から漆黒のチャクラムが生まれ、放たれる。叡智卿は研究者とは思えない素早さで初撃を回避するが、サンディのチャクラムは尚もヴェインを狙って飛ぶ。
「お前みたいにさ、自分の都合に他人を巻き込むやつって嫌いなんだ。凄く嫌い」
「嫌い、……どういう感情だ、其れは?」
「お前がさっき従者の首を刎ね飛ばした時のような気持ちの事だよ」
「あれはあくまでストレス緩和の為だ。……いや? 成る程……」
 ヴェインが急に立ち止まる。考えるように彼は首を傾げ――影から亡者を無限に生み出しながら、チャクラムに次々と胴を穿たれた。其れでも身動ぎひとつしないのは、吸血鬼ゆえの頑健さか。其れでも血は多量に大地に落ち、ダメージは入っている。
「……あのストレス行動自体が、私の“嫌い”……そうか……」
 ああ、亡者の声が聞こえる。
 普段なら受け入れてあげられるのに、今は其の余裕がない。速く倒して浄化してあげなくては。
 サンディは情をかけるつもりはない。更にチャクラムを己の身から生み出して、ヴェインに放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

まあ、たしかに?でもね、『私たち』は生きている者たちを助けるという誓いがありますからねー。
満足しなくても結構。悪霊たる『私たち』に、怨嗟も呪詛も効かぬと知りなさい。

いきなり陰海月が輝いて、影にて待機していた霹靂が、子どもを避けて攻撃して…。
ところで、陰海月…それに霹靂。いつの間にこのUC作ったんですー?

まあいいです。私が知らなかったのなら、相手が読み取れるはずもなし。
四天結縄にある私対応の厄災『大風』解放して惑わして。その隙に子どもたちにも結界、施しますかー。


陰海月「ぷきゅっ」
霹靂「クエッ」
二匹は友達。指定UCは四人に秘密で作っていた。




「私たちには、誓いがあるのでー」
「誓い?」
 ええ、と義透は頷いた。
「生きている者たちを助けるという誓いですー。だから今回は、其の誓いを破らぬよう行動したにすぎませんー」
「……どうして其の誓いを立てたのか聞いても?」
「其れは秘密……という事にしておきましょうー。貴方を満足させる趣味はないので」
 ヴェインの影から亡者が現れる。教えて欲しい、というヴェインの欲求に反応するように、寄越せ寄越せと義透に迫る。けれど彼は動じない。何故なら彼は悪霊だから。この身が既に呪いのようなものなれば、呪詛などおそるるに足らず。
 と、思っていたら。義透の影からぽん、と二つの何かが飛び出してきた。海月とヒポグリフ――陰海月と霹靂である。おや? と主である義透さえ不思議に思っていると、いやまあびっくり。陰海月が多彩な色に輝きだしたではないか!
「ぷっきゅ!」
「クエッ!」
 其の色数は1680万に及ぶ。いや其れだけ多彩に光ってどうするんだ。興味深そうに見ているヴェインに其の光は見事命中した。そうして霹靂が飛ぶ。其の爪がヴェインの肩を裂き、初めて彼ははっとしたように意識を取り戻した。
 ……。眼鏡をくいっとする叡智卿。
「……今のは?」
「……さあ、何なんでしょうー? 陰海月、霹靂、いつの間にそんな技をー?」
「ぷっきゅぷきゅ」
「くえっくえ」
 二匹は得意げにするだけで、答えは判らない。が、命中したので良いとしましょう、と義透は肩を竦めた。
「興味深い」
「あらー」
「ちょっと解剖させてくれないか?」
「駄目ですー。大事な子たちなのでー」

大成功 🔵​🔵​🔵​

サフィリア・ラズワルド
POWを選択
【狐と竜】で参加

朧ちゃん何かするの?わかった、合わせるから合図をお願いね!
朧ちゃんが行動にでてから行動します。

どうしてって言われても、貴方が実験をしたいからこんなことしたっていうのと同じ理由、かな?
助けたいから助けた、ただそれだけ、したいことが人道的だったってだけ

【白銀竜の解放】で四つ足の飛竜になります、こんな歪んだ場所村人にはいりませんから壊しますね、行くよ朧ちゃん!落ちないでね!
さあ、暴れますよ!!

アドリブ協力歓迎です。


葉隠・朧
※アドリブ連携OK
【狐と竜】で参加

サフィ、無事で何よりだよ
敵が他の猟兵に気を取られている間に、ボクらは従者に化けて不意打ちを狙ってみないかい?
本物の従者には術で眠っていてもらってね

相手が“使えるモノ”は側に置いておきたいと考えるなら、接近する機会はいくらでもあるはずだ
ボクが爪でスパッとやるから、怯んだ隙にキミが畳み掛けてほしい

右手のみ狐の手に変化させ切りつける。

随分と頭が切れるようだけど身近な敵意には気づかないんだね、お間抜けさん

キミの質問の答えは実に単純だ
人を助けて精を…いや、感謝されると気分が良くなるからさ、くふふ

変身解除後はサフィに乗せてもらいつつ【狐火】による援護に回る。




「お前たち」
 ヴェインに呼ばれた従者たちは、これ以上ないほどに怯え震えていた。
「……罰を恐れているのか?」
 主人の問いに、はい、と小さく声を上げる従者の男。……ヴェインは品定めするように其れを見た後、ふ、と息を吐いた。

「……身長が0.2ミリ足りない。君は誰かな」

 ――閃光が走った。
 身を逸らしたヴェインの喉首を軽く切り裂いて過ぎて行くのは、従者が持ちえぬ獣の爪。ち、と舌打ちしたのは従者から変化を解く朧。
「従者の身長をミリ単位で覚えているのかい? ちょっとそこまでくると気持ち悪いよ……!」
「私が作ったものだ。私が徹底管理しなければならないだろう? 身長も過ぎると服がきつくなる。……本物は何処へ?」
「二人とも遠くでおねんねしてますよッ! 朧ちゃん、掴まって!」
 同じく変化の解けたサフィリアが身を変じる。白銀の鱗、長い首、鋭い牙に、強い四肢。竜となったサフィリアに朧は素早く飛び乗り、空へと戦場を変える。
 其れを見上げると、ヴェインは糸とスカルペルを二人へと投擲した。サフィリアが羽搏いて加速、其れ等を巧くかわして見せる。
「……私は、貴方が実験をしたいからこんな事したっていうのと同じ理由で人を助けたよ」
 サフィリアが呟く。
 助けたいから助けた、ただ其れだけ。其処に褒章だとか名誉だとか、そんなものはないのだと。たまたまやりたかった事が人道的だっただけだと。
 何て少女らしい答えだろう。朧は思わず笑う。
「くふふ、そうだね。私も答えよう。人を助けて精を――いや。感謝されると気分が良くなるんだよ。知ってるかな?」
「いや。私は嫌悪されこそすれ、感謝されたことはない」
 朧の狐火によって焼かれ落ちる糸。弾かれるスカルペル。朧は更に狐火をヴェインに浴びせかける。空から降り落ちる炎の雨に白衣が焼け焦げるが、ヴェインは走り周り逃げる事をしない。
「……成る程、これが焼かれるという感覚」
 指先の炎を払い、寧ろ興味深そうにしているのだから、不気味というものだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
《華組》

A.
シホと村娘の笑顔が見られます
絆の充足、女の子の幸せはアタシにとって褒章だ

意味不明かい?
アタシ達が絆の実験に意味を感じないのと同じだよ

突き詰めれば優劣はないかもしれない
ただ譲れない価値観を通す為に戦うんだ



シホが怖い目に遭わされた怒りはある
だが同時に性(さが)に振り回された可哀想な吸血鬼とも感じている
敬意を持って戦うぜ

拳はカウンターで殴り返す
逆手のアークウィンドでスカルぺルを武器受け
糸は風属性攻撃の衝撃波で吹き散らす

シホの誘導弾に合わせてフォックスファイア・伍式で葬るぜ



事後、村人達が今回の件を禍根にせず赦し合うよう説得に回る
姉ちゃんには代わってくれたこと感謝だ
大切な人に追い付けたよ


シホ・エーデルワイス
《華組》

相変わらずね叡智卿
失礼
貴方にとって私達は初対面でしたね



私の理由は幾つかありますが
一番は…単純に助けを求められたら応じずにはいられないから

理解不能?

でしょうね

本能的な行動は上手く説明できそうにありません
ただ…
私は猟兵になった時
記憶を失いました

帰る場所も頼れる人も無く
最初は周囲に流されるまま戦った
けど
人々の助けを求める声を聞いた時
純粋に<助けたい>と思い
力が溢れました

それがこの力です!


聖鞄に攻撃が当たらない様注意しつつ
【盾娘】で強化した
呪詛耐性のオーラ結界で防御しながら
破魔の祈りを籠めた浄化の誘導弾を
聖銃で楽器演奏の様に撃ち亡者達ごと範囲攻撃


戦後

村人を村へ送り届け
怪我があれば医術で手当て




「相変わらずね叡智卿」
 シホは思わずつぶやき、……いえ、と言葉を濁した。
「貴方にとって私たちは初対面でしたね。……でも、貴方はいつもそうして探求している。私はいつだって、敬意をもって答えます」
「そうだね。相手をバカにして勝ち取る勝利ってのは微妙に寝ざめが悪い」
 燦はそう言って頷く。其の真摯さこそ愛しのシホらしいと笑みを零して。
「アタシの理由はね、簡単。シホと村娘の笑顔が見られるからだよ。絆の充足、女の子の幸せはアタシにとって褒章なんだ」
「……他者の幸せが?」
「理解出来ないって顔してるね。いいんだよ。アタシ達が今回の絆の実験に意味を感じないのと同じさ。アンタとアタシは判り合えない、そんな気がしてたからね」
「そうだね、……理解に苦しむ」
「なら、私の理由も理解出来ないでしょうか」
 シホが答えを述べる。
 単純に、助けを求められたら応じずにはいられないから。其れだけだと。
「……其れだけ」
「ええ。褒章だとか、そういう事ではないのです。かといって本能的なものかというと違う気もします。巧く言えませんが……私はこの力を得た時、記憶を失いました」
 燦が痛まし気に目を伏せる。一方でヴェインは興味深そうに話を聞いていた。
「帰る場所も頼れる場所も失って、最初は流されるままに戦いました。けれど、人々の助けを聞いた時、純粋に助けたいと思ったんです。そうしたら、力が溢れました」
「……成る程。君たち二人は似た価値観を持っているようだ」
「そうだね。だってアタシとシホの仲だよ?」
「だが、どちらも私には真に理解は出来ない。君たちを切り開いてみれば判るだろうか」
 一歩、ヴェインが前に出る。やる気だ。
「やっぱこうなっちゃうよね。シホ、大丈夫かい?」
「ええ。いこう、燦!」
 ヴェインの腕がシホに伸びる。其れをすかさず殴り返すのは燦の拳。
「……受けなさいッ!」
 シホは村人を匿った鞄を“敢えて”身体の後ろに回す。己を亡者の呪詛から護る結界を張りながら、「ピア」と「トリップ」の引鉄を引く。十字の発射炎を輝かせながら浄化の弾がヴェインを狙う。ヴェインはもう片手に持っていたスカルペルですぱり、と其の弾を切り裂き、更に縫合糸と持っていたスカルペルを放つ。
「させるかよ!」
 其れを庇うのはやはり燦だ。スカルペルを短剣「アークウィンド」で斬り散らすと硬質な音が静寂の中に跳ねた。
 更にアークウィンドが持つ風の力で、糸の軌道を吹き散らかす。
「私は守ります……何があっても! 貴方の非道な実験にこの人たちを利用しないで!」
 シホが誘導弾を放つ。ヴェインは両手にスカルペルを取り出し、腕を交差させて浄化の弾を防いだ。
「……そして、そんなシホを護るのがアタシの役目さ。最初に言ったろ? 女の子の幸せが一番の褒章だって。其の為に、アタシは護るんだ」
 アークウィンドをホルダーに収め、燦は構える。――弓のように引き、放つは無数の炎の矢。即ち、“フォックスファイア・伍式”なり。
 勿体ぶる必要はない。一息に解き放ち、叡智卿を串刺しにする。性に振り回された悲しき吸血鬼ならば、せめて痛みなく過去へ還れ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

瀬河・辰巳
レオン(f20419)と。

助けた理由は『仕事だから』で。下手に言ってつつかれるのも面倒だし。

隠れて移動しつつ戦闘補助。彼の精神衛生上、まずは亡者対応かな。

「亡きモノ同士で遊んておいで」

亡者には『当たると声を封じる』呪詛付きでオトモダチを放ち、近くのは切り伏せる。亡者の声は慣れてないとキツイからね。まあオトモダチは全てにおいて可愛いけど。

彼が真正面からの突っ込もうとした際にUC発動。敵の片腕を爆破する。とりあえず発動直前に幻影がバレないように&彼の防御壁として影も突撃させる。
彼が突っ込んだ後、追撃防止で自分も死角から切り込もう。

……信じるのは自由だが、無謀なことはやめてくれ、とだけ言っとくよ。


レオンハルト・アウストラリス
辰巳(f05619)と

亡者達には痛みと呪いしか残ってないかもしれない…後は俺たちが決着をつけます。
回転木馬に[第2の魔剣]を突き刺し、弔いの炎とばかりに亡者ごと燃やす。
そして心からの言葉で答えてやるさ。
褒章?そんなこと1度だって考えたことなんてあるかよ!

絆は…誰かと笑い合って、愛し合って、分かち合って…そうやって生まれるんだ!
あんたが欲しい答えは、絶対に手に入れられない。
あんたは…最初から間違ってたんだ。
辰巳を信じて真正面から防御も無しで突っ込み、盾は辰巳に任せ無視。
叡智卿を[属性攻撃]で[切断]する

辰巳さんが俺を信じてくれてるか分からないけど…
辰巳さんは俺を助けてくれるって信じてましたから!




「褒章? そんなこと――」

 ―― 一度だって考えた事あるかよ!

 怒りに似たレオンハルトの叫びが雲立ち込める空に響き渡る。
 ヴェインが回転木馬の影から放った亡者が燃えて行く。弔いの炎だとばかりに燃え盛る其れは寧ろ、レオンハルトの決意の炎のようにも見えた。
「絆ってのは、誰かと笑いあって! 愛し合って、分かち合って! そうやって生まれるんだ! だから、あんたが欲しい答えは絶対に手に入れられない。 あんたは最初から間違ってたんだ!」
「……ふむ。興味深い答えだ。けれど君、村人とあの短時間で笑いあい、愛し合い、分かち合ったのかい?」
 走り出したレオンハルトは、しかし其の問いの答えに窮する。自分は村人を信じた。村人も自分を信じてくれたからこそ、入れ替わってくれた筈だ。……でも、
 思わずちらり伺ったのは、相棒である辰巳の方だった。レオンハルトは自分に嘘をつけない。彼が絶対に自分を信じてくれているって、まだ、言い切れない。
「ああ、其れが隙だよ」
 ヴェインは其れを見逃さない。レオンハルトの首筋に手を伸ばして――
「……ッ、莫迦!!」
「ッ!!!」
 どん、と爆音がして、血飛沫が噴いた。
 肉塊が宙を舞って、どさりと落ちた。

 ――其れは、ヴェインの片腕だった。

「……おや?」
「間に合った……!」
 辰巳のユーベルコードだった。動物の怨念でもって、ヴェインの片腕を爆発のように食い千切ったのだ。
「たつみ、さん」
「――俺を信じるのは自由だが、無謀な事はやめてくれ……俺がもたないだろ」
「……ッ、はい!」
 レオンハルトは嬉しかった。この人は心配してくれているんだと感じたから。
 やっぱり辰巳さんは辰巳さんで、何だかんだ言いながら俺を心配して構ってくれる(世話をかけてしまうのは申し訳ないけれど)人だ!

 一方でヴェインは不思議そうに己の腕を見て、首を傾げた。ゆっくりと移動を始める彼に二人は警戒をしたが、まるで二人とは別方向に歩いていく。
 腕があるところだった。彼は腕を拾い上げると、しゅるると縫合糸を用いて縫い合わせる。
「っな、縫い合わせた……!?」
 驚くレオンハルトに、いいや、と頭を振る。
「もう使い物にはならないよ。あくまで重さのバランスをとるために縫い合わせたに過ぎない」
「……。お前、死が怖くないのか」
 辰巳の問いに、ふむ、とヴェインは一度唸った。少し考える間があった。
「怖くはない。ただ、研究が出来なくなるのが怖い」
 ――理解出来ない。
 其れはお互い様だった。ヴェインは興味深いと思ってもレオンハルトの感情を、辰巳の感情も理解出来なかっただろうし、二人もきっとヴェインの心境は理解出来なかっただろう。
 ……いや? 辰巳はどうだろう。
 死した動物さえ友として、人を信じきれないところのある彼なら、或いはヴェインの心情を理解出来る可能性はあるかもしれない。
 理解できたところで、互いに敵だという事に変わりはないが。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…生憎だけどお前達を喜ばす言葉を語る舌は持たないの
何一つ求めたものを得られないまま消えなさい叡智卿。その名の通り…無価値にね

隠し持っていた銃に「呪宝珠弾」を装填して亡者達を乱れ撃ち、
彼らの殺気を反転させて同士討ちを引き起こし集団戦術が乱れた隙を突いて闇に紛れ、
今までの戦闘知識から敵の索敵を逃れて死角から切り込みUCを発動

残された全ての魔力を、ここで解放する…!

両手を繋ぎ吸血鬼のみを浄化する光の魔力を溜めた残像の光剣をなぎ払い、
陽光のオーラで防御や肉盾を無視して敵を切断する光属性攻撃の斬擊波を放つ

…この光剣は吸血鬼だけを灼き尽くす太陽の刃
お前のような卑劣な策を弄する者を狩るにはちょうど良い御業よ




「生憎だけど、お前たちを喜ばす言葉を語る舌は持たないの」
 リーヴァルディは敵意をむき出しに、無価値(ヴェイン)へと告げる。
「何一つ求めたものを得られないまま消えなさい、叡智卿。――其の名の通り、無価値にね」
「残念だ。だが、其れも一つの答えだ、お嬢さん。アンケートでいうなら“無回答”かな」
 もしくは、私のような存在が本当に嫌いだという情報。
 其の言葉をヴェインが告げ終わる前に、リーヴァルディは隠し持っていた銃を構えた。ヴェインが亡者を召喚した直後の事である。亡者に向けて容赦なく弾丸を放ちながらリーヴァルディは後退し、夕闇と遊具の影に紛れる。
「……?」
 違和感に気付いた叡智卿が見下ろすと、亡者が食い合いを始めている。興味深い、と傷だらけの身体で屈み、亡者の傷を観察し始める。
 本当に研究しか頭にないのだろうか。いっそ寒気がした。しかし――隙だらけだ。今ならば。
 リーヴァルディは相手の背後に回り込み、一気に前方へ加速する。残された全ての魔力を両手に込めて、光の剣を振りかざす――!
 は、と吸血鬼が振り返ったときにはもう遅い。リーヴァルディの光の刃が迫っていた。盾にする配下はもういない。あの光はいけない。あれを受けたら、次の研究が――

 ……閃光。

 リーヴァルディは刃を振り切った姿のまま、青黒い灰へと変じて行くヴェインを見ていた。
「……この剣は、吸血鬼だけを焼き尽くす太陽の刃」
 お前のような、仲間さえ盾にするような卑劣な者を狩るには、丁度良い御業よ。
 リーヴァルディはフードを被り直すと、背を向けた。
 もう村人は領主の気紛れに付き合う必要はない。吸血鬼の苦難は去ったのだ。だが、其れを知らせるのは別の誰かで良いだろう。自分は闇から闇へ、密やかに飛ぶだけで良い。
 少女の瞳は、既に次の敵を見据えていた。



 斯くしてとある領主の実験は失敗に終わった。
 残ったのは遊園地のような何かの残骸だけ。青黒い灰すら、風に吹かれて散っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月16日


挿絵イラスト