冷やし花火、始めました
●暑いものは暑い
「なんか花火やるやらしいよ?」
「へー、ふーん、あっそう」
「花火かぁ……火かぁ……」
「え、興味無い感じ? 花火だよ花火」
「いやだって……暑いし」
「あー……」
「暑いの苦手なんだよなぁ。もうバテてるし、ぶっちゃけ何も動きたくなさげー」
「まぁわかる。出来るのならば涼しいところでのんびりしていたい」
「ほんそれ。涼をとるとかいっても実際暑いし」
「いっそ涼しくなる花火とかあればいいのにねー」
「あ、それいいねぇ。ウチら暑さに弱い妖怪とか嬉しいんじゃん? 親分だったら勢いで出来ちゃったりしてー」
「あはは、まさかー」
「…………」
「…………」
「「……作れるんじゃね?」」
●と思ったらそうでもなかった
「――ってことで冷やし花火、始めるぞ」
エアコン完備の部屋で待機していた四辻・鏡(ウツセミ・f15406)は、集まってきた猟兵達にそんな雑な一言から説明を開始した。
「とりあえず、水着コンテストお疲れさん。今年も随分盛り上がった様で何よりだ。無事に終えた記念とお礼にってことで、妖怪親分達から差し入れが届いているぜ」
彼らが用意してくれたのは、名前の通りの妖怪花火。会場となったビーチを使って、盛大に打ち上げてくれるらしい。猟兵達も是非一緒に楽しん欲しいとのことだった。
「それでこれ、名前に妖怪って付くぐらいだからさ、勿論この花火は普通のもとは違うんだわ。なんでも氷妖怪の監督監修の元にで作られてて、火をつけると周囲の気温を下げてくれるらしいぜ」
つまり、花火が上がっている間、屋外でありながら涼を取りながら花火を楽しむことが出来るすごい花火なのである。
「私達の中にだって暑さに弱い奴らもいるだろ? そんなやつらには最高の環境だと思うんだよな」
会場には茣蓙が引いてあり、寝転がってのんびりとくつろぎながら涼を取ることができる。肌寒い時のために、ブランケットも用意されているらしい。
また、同種の手もちタイプも用意されている為、それらで遊ぶのも良いだろう。
「ついでに近くに海の家なんかも作ってくれちゃったりして。涼しいところで花火を見ながら暖かい飲み物や食べ物をだしてくれちゃったりもするってよ」
炬燵でアイスならぬ、涼しい部屋でホットココア、もしくは熱々のラーメン。そんなのも乙なのかもしれないと鏡は笑った。
勿論、希望すれば普通にかき氷などの夏らしい冷たいメニューも出してくれるとのことだ。
「暑くなけりゃ夏らしくないって意見もあるけどさ。どうせ楽しむなら快適な方がいいだろう? なかなかお目にかかれない変わった納涼と思って、楽しんでくるといいぜ」
それじゃ適当に宜しくな、と鏡は片手を振り、猟兵達を見送るのであった。
天雨酒
日夜問わず、暑い季節がやってきました。冷房に恋焦がれる毎日の天雨酒です。
花火を楽しみたい、でも暑いのは嫌だ。そんな願望を妖怪花火に託してみました。
●出来る事
①花火を楽しむ。
快適な温度の中で花火の見物と洒落こみましょう。会場には茣蓙が敷いてあり、くつろぎながら見ることができます。寒すぎる場合はブランケットの貸し出しもありますので使用してください。砂浜から見ることも勿論できます。
また、手持ち花火も大量に用意してありますのでそちらで遊ぶこともできます。花火の炎は熱くありませんが、火に触ると凍ってしまうのでやめましょう。
②海の家で楽しむ。
会場の近くには海の家があり、飲食を楽しむことができます。
冷やし花火の影響で海の家も良い感じに冷えています。
その為メニューは暖かいものが多めです。が、普通にアイスやかき氷など冷たいものも置いてあります。涼しい場所で食べるからこそ美味しいものもあるでしょう。
お酒もありますが未成年の飲酒は禁止とさせて頂きます。
「涼しくなる花火の中で遊ぶ」ことがコンセプトなので、勿論上記以外のこともOKです。選択肢に関係なくどうぞご自由にお楽しみください。
また、お声がけがあれば四辻・鏡も同行させて頂きます。無ければ悠々自適と隅でゲームをしています。
●プレイング受付期間について
断章投下後の受付となります。
締め切り日に関してはお手数ですがMSページ、Twitterをご参照下さい。
それでは、快適な夏の一時を過ごしましょう。
第1章 日常
『猟兵達の夏休み2021』
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POW : 妖怪花火で空へGO!
SPD : 妖怪花火の上で空中散歩
WIZ : 静かに花火を楽しもう
👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●そこはある意味天国でした
橙色の夕日が海に沈み、空が藍色へと染まり始める頃合い。
猟兵達が会場に辿り着くと、既に準備は万全だった。
打ち上げ花火こそまだ開始されていなかったが、茣蓙の周りには小さな花火が灯され、明り代りにと設置されている。
それも勿論、今回の企画の主役である冷やし花火である。鮮やかな色の火花からは熱の代わりに冷気が出され、周囲の気温を下げるのに一役買ってくれていた。
「あら、いらっしゃい~」
人の気配に気付き海の家から顔をだしたのは雪女と思われる妖怪だった。
「今日はどうもね~。どうぞゆっくり涼んでいって~」
大きな文字で「納涼」と書かれた暖簾をつけた海の家は、日本家屋を改造したような造りであった。中に入ってみると素朴ながらも広く、大人数でもゆっくりとできそうだ。
仕込み中だったのだろう、食欲を刺激するいい匂いが奥から漂ってきている。
そしてなにより大切なこと。
海の家も、その周辺一帯も、夏真っ盛りとは思えないほどに涼しかった。
例えるならそう、ガンガンとはいかないまでも、冷え冷えくらいにまで冷房を効かせた部屋。暑い中から入ってくると天国で、尚且つ冷えすぎず永遠とそこに居たいと思ってしまう程の、絶妙すぎる快適な温度。いい感じに吹いてくる海風がさらに爽快度を上げている。
それが、海辺の周囲一帯、全部その状態なのである。
ぶっちゃけ自堕落するには最高の環境だった。
存分に涼んでごろごろするもよし、真っ当に花火を楽しむのもよし、海の家での食事に舌鼓を打つのも良し、いっそ冷たいものを食べまくって限界まで冷やしてみるのもまた、良し。
涼を取りまくる猟兵達の花火大会が今、始まるのである――。
フォルター・ユングフラウ
【古城】
何やら、傷付けた事を気にしている様だが…我は、この船を美術品として贈った訳では無いぞ?
戦の誉疵だ、胸を張るべきであろうよ
さて、さて
では特等席から空の旅と洒落込むか、汝の為にあつらえたこの水着でな
…こうしていると思い出すな、ダークセイヴァーの砂浜で花火を楽しんだ日を
あの日は地上からだったが、今度は空の上からだ
随分と、違って見えるものだな
折角だ、ついでに操艦もしてみるか
案ずるな、最低限の操縦くらいは出来る
…これは、何だ?
ふむ、艦砲の操作盤か
ならば盛大に押さねばならぬな?
砲弾では無く花火玉を撃ち出せるのは今だけだ
存分に、空を彩るぞ!
トリテレイア・ゼロナイン
【古城】
UCすら用い妖怪達へ交渉と説得
飛空艇ドゥルシネーア艦載砲の●乱れ打ち砲撃で冷やし花火打ち上げ盛り上げるイベント企画し準備
ハッキング飛空艇操作でワンマンオペレーション
海上を巡航し花火でビーチを湧かせつつ
フォルター様には特等席(甲板)をご用意いたしました
舵輪での操艦や手動砲撃も可能です
贈り物(飛空艇)への返礼、ごゆるりとお楽しみください
…船体の傷はご容赦頂ければ
(依頼 180分、死線を越えよ2章で酷使)
夢中になられて…
飛空艇改装の報告と妖怪の皆様を楽しませる一石二鳥
我ながら名案でした
…いいえ
妖怪達をだしにしたようなものですね…
(花火の音に隠し)
この情景と輝きを、貴女に捧げます
…いえ、何でも
●黒に捧げる光
不可思議な花火を用いて始まる、とっておきの催し物。
どうせやるのならば徹底的に、そして存分に盛り上げてこそが礼儀というものだろう。
物語の理想を追いつつける騎士にとっても、それは同じこと。
「ご協力、感謝致します」
「いいってコトよ甲冑の兄ちゃん! そんな面白ぇことしてくれるんだ、こっちが礼を言いたいってもんさ!」
カラカラと陽気に笑う猫又の妖怪にもう一度頭を下げ、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は己の背後へと視線をやる。
そこで待機していたのは白銀の飛空艇、【ドゥルシネーア】。その甲板にはすでに妖怪達から譲り受けた大量の花火が積み込まれている。
これからトリテレイアはこの船の艦載砲をもって一斉に花火を打ち上げる予定なのだ。
主催側の妖怪達も、異世界の船を使っての企画にすぐに快諾してくれた。途中、彼の持ち得る技術全てがつぎ込まれた交渉と説得の時間が差し込まれたりもするのだが、それはほんの些末なことである。
トリテレイアは船に乗り込むと、船の状態に異常が無いかを確かめる。
何事もないと判断したのなら、己の電子頭脳から飛空艇の操縦機器へと呼びかけた。
回線の接続と同期を開始――完了。
天使核、稼働開始。抜錨、及び船翼、展開。
浮遊開始――船体異常なし。
「それでは、出発です」
多くの冷気と星屑の種を乗せた船は、トリテレイア一人の手により、ゆっくりと海の上を飛び始めるのだった。
上空の、常よりも冷たい海風に、フォルター・ユングフラウ(嗜虐の女帝・f07891)は無言で目を細めた。
風に遊ばせていた長く艶のある黒髪をそっとかきあげる。
こうして、ゆっくりと空を見上げることを知ってからどれくらいたったのだろう。
眼下では、大きな音を立て次々と鮮やかな花が咲いている。目玉は上空からの砲台による乱れ打ちだが、その道中にも盛大に花火を振舞って盛り上げていくと彼は言っていた。
「……懐かしいな」
思い出されるのは、今彼女が乗っている飛空艇の主と過ごした夏の一風景。
こことは違う、ダークセイヴァ―の曇り空の下の砂浜。そこで二人でささやかに花火を楽しんだのだ。
「あの日は地上からだったが、今度は空の上からだ。随分と、違って見えるものだな」
そう思ってしまうのは、本当に場所だけのせいだろうか。空の色、周囲の空気……そもそもの世界の在り方。それらが花火の全く違う一面をみせてくれているのだろうか。
或いは――。
「お待たせしてしまいました、此処より船体は安定高度へと入ります。フォルター様には特等席をご用意しましたので、ご自由におくつろぎ下さい」
操作がひと段落したのだろう。トリテレイアがフォルターへと声をかける。戦隊の周囲には相変わらず断続的に花火が上がっているところを見ると、自動操縦に切り替えたというところだろうか。
「うむ、任せきりですまないな」
「贈り物への返礼ですので。ごゆるりとお楽しみ下さい」
トリテレイアが差す贈り物とは、今二人が乗っているドゥルネーアのこと。この船は元々、、彼のためにフォルターが用意したものであるのだ。
――最も、船には既に補修しても尚残る、戦いの傷跡が刻まれてしまっているのだが。
「……船体の傷はご容赦頂ければ」
「何を戯けたことを言っているのだ」
決まりが悪そうなトリテレイアの言葉をフォルターは即座に否定する。
「何やら船を傷つけたことを気にしている様だが……我はこの船を美術品として贈った訳ではないぞ?」
騎士に贈るものは剣こそが相応しい。
永く共にあれど決して交わる事のない黒と白。その信念に敬意を讃え、女帝は騎士に新たな力を贈ったのだ。
大切に秘されて使われないままでいるより、彼の手の中で振われ、彼の役に立ってくれる方が船としても本望だろう。
「これは戦の誉疵だ。胸を張るべきだろうよ」
それでも何か言い募ろうとするトリテレイアを片手を上げて制し、フォルターは軽く手を打ち鳴らし場の空気を切り替える。
ここに来た目的は謝罪を言われる為ではない。礼を受け取るならば、相応に、十分に楽しまなくてはそれこそ非礼というものだろう。
「さて、さて。では特等席から空の旅と洒落込むか」
ふわりと、水着の上に纏った真白のワンピースを揺らして。フォルターは敢えてトリテレイアの注意を引くように甲板の中央へと歩き出す。普段から黒を纏う事の多い彼女にとって、汚れなき色と可憐な服はさぞかし珍しく映るだろう。
柄でないと言われれば頷くことになるだろうが、それでも今日限りは仕方ない。
何ならこれは、かの騎士の進言により選んだ、彼のための装束。
そして彼と時を共有できる、避暑の機会なのだから。
「操作は全て汝が仕切っているのか?」
「はい。ですが、舵輪での操作や手動砲撃も可能ですよ。ご案内しますか」
「折角だ、ついでに操艦もしてみるか」
心得たと先導するトリテレイアの後を追い、フォルターは操縦席へと移動する。簡単な説明を受けると、早速舵を握ってみた。
心配せずともフォルターとて最低限の操縦の知識は持ち合わせている。無茶な航路をとることもせず、船は安定して海の上を泳ぎ、妖怪達の視線を奪っていった。
「これは……何だ?」
舵をとり、上空からの景色を存分に楽しんで。
そこで、フォルターは舵輪の直ぐ近くに設けられた四角いプレートの存在に気が付いた。プレートにはいくつものスイッチとレバー、ハンドルが取り付けられている。
聞けば、艦砲の操作盤だという。
うずりと湧いた欲求に従って、フォルターの手が操作盤へと伸びる。
これみよがしにこのような装置を置かれては、押してくれと言っているようなものだろう。そして、大砲に装填されているのは火薬ではなく妖怪達が用意した大量の花火であるのは把握済み。砲弾では無く花火玉を撃ちだせるのは、おそらくこの前も後も今この時だけだろう。
大人しく欲を抑える理由はゼロだった。
「ならば、盛大に押さねばならぬな?」
フォルターの細い指が躊躇なくボタンを押した。
同時に響く、どん、という重い音。顔を挙げれば、冷気をともなう色鮮やかな光の花が空中に咲いていた。
高揚した気分のまま、操作盤の上で指が踊る。次々と押される譜面に従い、破裂音と光が溢れていく。
「存分に、空を彩るぞ!」
生み出される音と同じくらい弾んだフォルターの声が響いた。
「夢中になられて……」
楽し気に花火を撃ちだしていく彼女を、少し離れた位置でトリテレイアは見守っていた。
この様子では、トリテレイアの計画は概ね成功と言えるだろう。
飛空艇改装の報告とカクリヨファンタズムに住む妖怪たちを楽しませる一石二鳥のアイデア。我ながら名案だったのではないかと思う。
(……いいえ)
そこまで考えて、流石にそれは言い過ぎだと己への賛辞を否定した。
――結局、彼は妖怪達をだしに使っただけなのだ。
彼の目的はたった一つ。妖怪達にも楽しんでもらうというのは唯の建前に過ぎない。
(私は、唯――)
トリテレイアの視界に映るのは、次々と花火を撃ちだし満足そうに笑う女帝の姿。幾分かはしゃいでいるように感じられるが、それでも気品や威厳を損なわないのはさすがと言うべきか。
一際大きな花火が弾ける。
そんな弾ける音に隠すように。目の前の彼女の背中へ。
「……この情景と輝きを、貴女に捧げます」
そっと、騎士は誓う。
「……なんだ、今なにか言ったか?」
「……いえ、何でも」
美しい情景の時を。願わくばこれからも、共に過ごすことを。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶】◎
わぁ、ここは快適だねぇ
ミストシャワーの強力版みたいな感じかな?
茣蓙の上に寝転がってみればひんやりと気持ちいい
さて、この涼しい空間で何する?海で泳いでみる?
あははー、半分冗談だよ
俺は海の家で何か食べたいな
せっかくだから、真夏には食べにくいような
アッツアツの食べ物を注文して
花火を見ながら食べてゴロゴロを極めたい
じゃあ俺はカツカレーにしようっと
あっ、辛さは最大で宜しくね
ん~っ、カツが揚げたてサクサクで美味しい~
辛さも、ただ辛いだけじゃなくてカレーの美味しさが
しっかりと感じられて絶妙な塩梅
真夏の屋外で食べていたら汗だく必至だけど
この涼しさのおかけでどんどん食べられちゃう
梓、おじさんみたーい
乱獅子・梓
【不死蝶】◎
真夏のビーチにあるまじき涼しさだな
なんというか、妖怪パワーってすごい
仔竜の焔と零は早速茣蓙の上でころころくつろいでいる
うーんかわいい(親ばか
寒中水泳か!我慢大会になるだろそれ!
ゴロゴロを極めたいという言い方はどうなんだと思いつつ
確かに腹も減ってきたし何か食うか
うわぁ、綾がえげつない赤さのカレー頼んでいる…
俺は担々麺を頼む
いやいや、俺のは辛さ普通でいいから!
それとキンキンに冷えたビールも
綾のカレーほどではないが
俺の担々麺も程良い辛さが癖になる、どんどん箸が進む
そして担々麺と一緒に飲むビール…!
くぅ~、至福のひと時だ
この一杯の為に生きているってもんよ…!
●涼しさのスパイス
「おー、やってんなぁ」
盛大な破裂音と共に打ちあがっていく花火を額に手を翳し見上げながら、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は感嘆の声を上げた。
何でも空飛ぶ船から海の上へ、花火を詰めた大砲を撃っているらしい。景気よく撃たれていく花火は美しく、こうして見ているだけでも楽しくなる。それだけでもここに来た甲斐はあるだろう。
が、それ以上の成果があるのが妖怪花火の名がついている所である。
「わぁ、ここは快適だねぇ」
梓と共に会場へ訪れていた灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、道中の外気の差に感心する。
夏の盛りだ。いくら夜で、海辺とはいえ温度は高く、蒸し暑さも残る時間帯の筈。
それが会場に付いた途端、あっという間に周囲は涼しくなり、休むには最適の気温となったのだ。
「ミストシャワーの強力版みたいな感じかな?」
それにしては、気温だけが下がり周囲に湿った様子がない。濡れる心配がないのは炎系の妖怪にとっては有難いだろう。
「なんというか、妖怪パワーってすごいな」
綾が早速と敷かれた茣蓙に寝転がってみる。予想通り茣蓙も時化た様子はなく、それでいてひんやりとして気持ちがいい。転がる度にい草の香りが優しく香るのもまた心地が良かった。
「あんまり転がってると邪魔になるぞ」
「大丈夫だよ、ここ広いんだし」
ごろごろと存分に寛ぐ綾を嗜めながら、梓も隅の方に座り一息を入れる。
ちなみに綾の隣では梓の相棒である二匹の仔竜、焔と零もころころと転がっているが、そちらに関しては一切注意する様子はない。
「うーん……可愛い」
寧ろ、その様を全力で愛でていた。親馬鹿上等だった。
「で、この涼しい空間で何をする?」
茣蓙に寝転んだままの状態で、綾は梓へと問いかける。
このままこうして転がりつつ花火を眺めるのも一つの選択であるが、それだけではやはり少しだけ味気ない気がする。
どうせ楽しむなら存分に。涼しいからこそできる夏の愉しみ方とやらを実践してみるべきだろう。
「いっそ海で泳いでみる?」
「寒中水泳か! 我慢大会になるだろうそれ!」
「あははー、冗談だよ」
即座にキレのあるツッコミを入れる梓にのんびりと返して、それならと上体を起こして綾は一つ提案を上げる。
「俺は海の家で何が食べたいな」
腹が減ってはなんとやら。どれだけ快適に寛げても、腹が満たされていなければ休むものも休まらない。
「せっかくだから、真夏には食べにくいようなアツアツの食べ物を注文して。花火を見ながら食べてゴロゴロを極めようよ」
「ゴロゴロを極めるってなぁ……」
その言い方はどうなんだと返しつつも、梓もその意見には概ね賛成だった。
丁度腹も減ってきた頃合いだ。海の家では彼の望み通り熱いものも食べれると言うし、こんな機会もなかなか無いだろう。
「じゃ、海の家で何か食うか」
そうして綾と梓、そして梓に抱えられた仔竜達は茣蓙から脱出し、海の家へと目指すのだった。
「注文、何にする?」
「じゃあ俺はカツカレーにしようっと。あ、辛さは最大で宜しくね?」
ちらりと壁に貼られたメニューを見て頼んだ綾に、注文をとりに来た妖怪は本当にいいのかと聞き返してくる。
「ウチの最大は妖怪も裸足で逃げ出すヤツだけど……」
「うんいいよ。お願いね」
にっこりとした笑顔で、おまけに楽しみだなぁなんて言葉まで残して頷く綾に、思わず梓の頬が引き攣った。
「また綾がえげつないもん頼んでる……」
「そっちのお兄さんのオーダーは?」
「じゃあ……俺は担々麺。あとキンキンに冷えたビールも」
「担々麺の辛さはやっぱり最大?」
「いやいや、俺のは普通でいいから! 一般的なもんで!」
危うくこちらまで巻き添えを喰らいかけた梓であった。
仔竜達にはこどもの妖怪に人気だとおススメされたお菓子を注文して、オーダーを終えた妖怪は一度奥へと引っ込んでいった。
間もなくして、注文された品々が二人の卓上へと運ばれてくる。
「うわぁ……」
「わぁ」
綾の前に置かれたのは、真っ赤に染まったカレーだった。
もはやカレーとは何だったのか。カレーって元々何色だっけ。そう疑いたくなる驚きの赤さである。トマトジュースを流し込みましたと言われた方がまだ心と胃に優しい気がする。添えられた白米と豚カツが、まるでマグマの中で今にも沈没しそうな小島の様だった。
そんなカレー(仮)を綾は臆することなくスプーンで掬い取り、ついでにカツの一切れを乗せて、ぱくりと頬張る。
「ん~っ、カツが揚げたたてサクサクで美味しい~」
口から出てきたのは火ではなく、素直な称賛の言葉だった。
口に入れた瞬間、灼熱の辛さが一杯に広がる。痛みにも似た感覚が舌を痺れさせるのは見た目からも想定の内。
しかし、流石は花火大会の為だけに作られた特設の海の家の一品というべきか。
辛さの中にもしっかりとした旨味が凝縮されている。一見具が少ないように見えるルーの中にはその実、たくさんの具材が詰められているのだろう。咀嚼すればする程深い味わいが感じられて、絶妙な塩梅に仕上がっていた。
そこにサクサクとした揚げたての衣と、肉汁が詰まったヒレカツが絶妙な連携を決めてくるからまた堪らない。
「真夏の屋外で食べていたら汗だく必至だけど、この涼しさならどんどん食べられちゃうね」
言いながらもうっすらと滲んだ汗を拭い、綾は次々とカツカレーを平らげていく。
「そ、そうか……」
そんな綾の様子をなんとも言えない顔で眺める梓。
言いたいことは一応ある。けれど、本人が美味しいと喜んでいるのだからまぁいいかと気分を切り替え、自分の料理に専念することにした。
梓が頼んだのは、ごくごく一般的な、普通の担々麺。目の前のそれに比べれば可愛いと言える赤みがかったスープを麺を絡め、勢いよく啜った。
「ん、美味いな」
唐辛子と山椒の程よい辛さが癖になる。コシのある麺がスープを十分に引き立てているのも気に入った。
熱さと辛さで火照った躰に吹く冷たい風が心地よい。綾の言葉を借りる訳では無いが、涼しい空間で熱々の麺という組み合わせ自体もなかなか罪深く、どんどん箸が進んでしまいそうだ。
が、梓はここで敢えて次の一口には進まず手を伸ばす。
その先にあるのは、待ってましたという様に霜の降りたジョッキ一杯に注がれた黄金の酒。それを手に取り、勢いよくグラスを傾け一気に煽った。
「くぅ~……この一杯の為に生きているってもんよ……!」
ぷは、と口元についた泡を拭い、心からの叫びを口にする。
冷えた部屋に熱い担々麺、と一緒に飲むビール。
まさに至福の一時。何物にも代えがたい最高の瞬間である。
「梓、おじさんみたーい」
あはは、と真っ赤なカレーを頬張りながら笑う綾をうるさいと小突いて、梓はビールのお代わりを注文する。
仔竜達は仔竜達で卓の上で果実の欠片が入ったシロップを凍らせた棒が気に入ったようで、夢中になって頬張っており。
全員で仲良く食事を楽しむ中、どん、と夜空に花火が上がる。
「納涼、だねぇ」
ぽつりと言った綾の言葉に梓もそうだなと頷く。
「予想より大分涼しい納涼になったけどな」
美味しいものを食べ、涼しい中で花火を鑑賞して。
二人と二匹は光の花が散り切るまで、のんびりと寛ぐのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
◆格好はICの浴衣
火がなんかヒンヤリする、すげー(灯された花火をまじまじ
あ、ユキエ
火傷しないが触るなよ?凍傷に…(相棒に説明しながらつい指が当たり)ひゃっ冷た!氷引っ付いた感じ(興味でまた触る
『ドジね
ユキエはドジしなーい。花火よく見えるとこ行く
「え、ここら一帯全部見えやすいじゃんどこ行くん?そっち海…もー待てよ
海へ飛ぶユキエを追い【軽業】とUCを使い氷上を走る様に波の上を渡る
『人も居ないしこの辺にする
「…人見知りかよ
『デート
「どこで覚えてくんの(額をくすぐり
肩に落ち着いたユキエと一緒に
光り出した星を堪能し
花火の写り込む海中を見たり
花火が上がると火薬の香りと涼しい風
あーウットリしそう…
アドリブ可
●潮と星と、羽音と氷華
「うわー……」
浴衣姿で会場を訪れた鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は会場を運営している妖怪に手渡された花火をまじまじと見た。
トーゴにとって、花火自体は珍しいものではない。これまでも似たような催しは見たことがあるし、そもそもサムライエンパイアだって花火は存在している。
しかし、それが花火が生み出すのが熱ではなく冷気であるのなら話は全く別。逆に、普段見慣れているものだからこそその特異性が際立って感じられるというものだ。
「火がなんかヒンヤリする……すげー」
試しに花火から上がる火花に手を翳してみるが、熱は全く感じられない。まるで氷に手を当てたかのようにヒンヤリとした感触が掌から伝わって来るだけだ。
へー、とか、ほーとか感嘆にならない声を上げていると、そんなトーゴの注意の先が気になったのだろうか。
『トーゴ?』
相棒の白鸚鵡、ユキエが近くまで舞い降り、花火の傍へと寄ってきた。
「あ、ユキエ。火傷はしないけど触るなよ?」
妖怪花火の火は熱を出さない代わりに冷気を生む。少しくらいならば平気だろうが、冷たすぎるのも過ぎれば毒だろう。
「凍傷になったらそれこそ……ひゃっ」
そう説明しながら花火の向きをユキエから逸らそうと動かした拍子に、トーゴの指の方が火に触れてしまった。
指先に走った感触にぱちぱちと瞬きを繰り返す。予想はしていても、実際に感じて見ればその違和感は新鮮だった。
炎なのに熱くない。触れた個所は氷が引っ付いたような感覚が残っており、見れば霜が付着している。
「へぇえ……」
興味本位でもう一度炎を突いてみる。うっかり怪我をしないように注意はしつつ、花火が氷を生み出すさまをまじまじと観察して――。
『ドジね』
そんな様子に何処か拗ねたように、ユキエがトーゴの頭へと停まった。
ずしりとした重みに顔を挙げれば、彼女はあっさりと離れ彼の周囲を跳び回る。
『ユキエはドジしなーい。花火よく見えるとこ行く』
「え、ここら一体全部見えやすいじゃん。どこ行くん?」
トーゴの問いかけにもユキエはつんと嘴を背け、どんどん海辺の方へと飛んでいく。
茣蓙の席を飛びこえ、浜辺を越えて。白い翼は己を縛るものなど無いという様に沖の方へと進んでいく。
「そっち海……もー、待てよ」
トーゴがいくら制止しても、ユキエが戻ってくる様子はない。それどころか、追ってこないのと言うように海の上で旋回し待っているようだった。
仕方ない、という様にトーゴは素早く寄せの術を組み、水上の足場を確保して海上を渡っていった。
白い翼を追いかけて、波の合間をすいすいとトーゴは進んでいく。それはまるで氷の上を滑るかの様で、目的へと追いつくまでにさほど苦労はしなかった。
「どこまで行くんだよ」
気付けば随分沖まで出てしまった。海の家から見える灯は随分遠くになってしまったし、花火のポイントからも外れてしまっただろう。空気を冷やす花火の下だ。自分達以外に海へと出る者などいる筈がなく、辺りには人の気配は全くない。
『人も居ないしこの辺にする』
「……人見知りかよ」
漸く舞い降り肩へと停まってくれたユキエにやれやれと息を突けば、次に彼女の口から飛び出たのはもっと意外な方で。
『デート』
「前から思ってたんだけど、どこで覚えてくんの」
甘える様に頭を押し付けてくるユキエの額をくすぐってやりながら、トーゴは仕方ないと微笑んだ。
折角人気の無いところでも、花火から多少離れてしまっても。だからこそ楽しめる方法というものは存在するものだ。
花火の光が遠い分、澄んだ空は海岸から見るよりも多く星が見えるし、海面に映った花火は距離を置くからこそ空とは違った咲き方を魅せてくれた。
あれが綺麗とか、あの形に似ているとか、ユキエと他愛のない話をしながらゆっくりと時間を過ごしていく。
聞こえるのは、遠くで響く波の音。撃ちあがる花火の破裂音。
そして、ユキエの声と羽ばたきの音。
花火の名残か火薬の匂いが潮に混じって鼻孔をくすぐる。
ひんやりとした海風が心地よく、目を閉じぐっと伸びをして全身でそれを受けた。
「あー……ウットリしそう……」
そうして花火が終わるまで、トーゴとユキエは暫し海面の散歩を楽しんだのであった。
●一時の夏の夢
そうして涼の刻は過ぎていく。
暑さを消し飛ばし、火花のきらめきと涼やかな思い出だけを胸に残して。
熱く、暑い、日常へという明日へと走り出す、猟兵達の背中を押す力となるように。
大成功
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