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ああ、残酷!恐怖の暴走三輪車

#UDCアース

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#UDCアース


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 とある町で、ちょっとしたイベントが行われていた。
 そこは、町中の一角にある。川沿いに位置し、普段は草野球を行うのに使われる場所でもあった。先述のスポーツを行うべく草むしりした場所が黄土色の土を露出させており、その周辺には若草色の雑草が少しだけ伸びている。
 そこでは、三輪車に乗った子供達が楽しそうに遊んでいた。親達は、子供達に付き添ったり、遠くから微笑ましそうに見つめている。牧歌的とも言える、何とも平和な光景であった。その証拠に、ここに居る人々は皆、太陽のように眩しい笑顔を見せている。
 このイベントは町が主催している。イベント名は、『三輪車で遊ぼう!』という。この町では三輪車の製造が盛んなのがだが、それを活用して地域を盛り上げようと思案した結果、このようなイベントが誕生した。今回が初の試みではあったが、どうやら成功したようだ。参加者は少ないものの、その光景を見ていると、人数の数など、どうでも良いように思えてくる。
 だが、その平和は一瞬にして崩れ去る。
 突然、川が水しぶきを上げた!何事かと目を見張る親と子供達。そして、川から陸へ上がって来た存在があった。それは、体が骨と化した異形の集団だった。しかも、彼らは三輪車に乗っている。一体、どういう事なんだ。作者である私自身にも分からない!
「ふはははは!このイベントは、大神霊尊敬教会の祭事にしてくれるわ!」
 集団の一人が叫ぶや否や、親や子供達へと突っ込んできた。現場は阿鼻叫喚、正に地獄絵図であった。異形の乗り回す三輪車に追い回され、逃げ惑う人々。子供達は三輪車で逃げようとするが、異形の乗る三輪車に追い回される。その三輪車はトゲトゲの装飾があり、まるで怪物が迫ってくるようだった。子供達は恐怖に顔を歪ませ、涙を流しながら、必死に逃げようとする。親は子供を抱えて逃走を図る。だが、プロペラを付けた三輪車に乗った異形が親に追いつき、車体を勢いよく肩にぶつけた。子供を抱える故に受け身が取れず、そのまま転倒。頭を固い地面に強打し、血を流したまま動かなくなる。子供は「お母さん!」と悲痛な声を上げた。
 そうして逃げ惑う人々が居る中、勇敢にも立ち向かう親も居た。彼は三輪車に乗った異形に立ちふさがり、「ここからは行かせんぞ!」と、震える声で叫ぶ。それに対し、クックッと笑う異形。
「ならば、私のカスタムをお見せしましょう」
 刹那、三輪車に取り付けられたブースターが青白い炎を吹き出し、弾道ミサイルの如く突進!立ちふさがっていた親は骨や内臓をグチャグチャにされ、肉片を四散させる。
 澄みわたった青空の下で、人々の悲鳴が響き渡った。
 ああ、残酷!

 場所は変わってグリモアベース。ここに、和服を着た一人の女性が居た。名は、竹城・落葉(一般的な剣客……の筈だった・f00809)。グリモア猟兵である。
 彼女は三輪車を見た事が無かった為、一体どういうものか気になって試しに乗ってみた。しかし、たまたま通りかかったガキんちょ共に「あっ、あの女の人、大人のくせして、まだ三輪車の乗っている~」と指を指されて笑われた。
 だが、そんな事はどうでもいい。
 なんやかんやあって集まった猟兵達に、予知した内容を話していく。
「――と、以上が我の見た予知の内容だ。三輪車で遊ぶイベントが行われている中、三輪車に乗ったオブリビオンが人々を襲撃するという内容だ。諸君には、この馬鹿げた事をして人々を恐怖のどん底に陥れようするオブリビオンの企みを阻止した上で、倒してきて欲しい」
 その為には、何をすれば良いのか。竹城は、それを説明していく。
「まず、オブリビオンを倒す前に、あの三輪車をどうにかしなければならない。しかも、その三輪車は、どうやら普通ではないようだ。恐怖を煽る為にトゲトゲの装飾をしたものや、上空から急襲する為にプロペラが付いたものがある。中には、殺傷を目的としているのだろう、勢いよく突進する為に、ブースターを取り付けているものもある。さて、どうすれば良いのかについて、話を戻そう。まずは、この三輪車を止める必要がある。もしくは、三輪車をどうこうするのではなく、人々を避難させてるのも良いかもしれない。やり方は、諸君に一任しよう。ただ、丸投げされても困る、という方がいるかもしれないから、我が例を挙げるとしよう。例えば……。(1)力に自信のあるなら、ブースターで加速しようが何だろうが、力任せに止める。(2)素早さに自信のあるなら、素早く運転席――まぁ、サドルの部分だろうな――に乗り込んで操縦権を奪って停止させる。(3)賢さに自信のある方は、人々を上手く誘導するなりして避難させる。……といったところだろうか」
 ここまで話した後、今度は、現場の状況について語り始める。
「さて、作戦を立てるにしても、まずは現場の状況を知らなければ立てづらいだろう。なので、現場について、改めて説明する。場所は町の一角にある川沿いだ。そこは草野球を行う場所として整備されていたから、それなりの広さを持っている。また、一方には幅の広い川がある。集まっている人々は、主に親や子供で、人数は少ない。周辺には民家などは無い為、何か争いごとが起きても気付かないし、戦闘の流れ弾で被害が出る事も無い」
 そこで、竹城は言葉を一旦止める。
「敵はどうやら、今回のイベントで別のオブリビオンを召喚するようだ。そのオブリビオンの力を借りて、更なる悪事を働こうという算段らしい。今回の騒動は儀式の一環で、イベント会場を恐怖に包み込む事で召喚しようとするものとみられる。残念ながら召喚は阻止できないが、イベント会場で人々を助ける事ができれば、恐怖の喚起は十分に果たせず、召喚されるオブリビオンの力は弱まるだろう」
 そして、最後に竹城はグリモアを出しつつ、猟兵達に言葉を掛ける。
「では、これから諸君を現地へと送り届ける。結果として、到着するのは、川からオブリビオン達が登場して、人々を襲おうと追いかけ回したところからとなる。楽しいイベントが阿鼻叫喚の渦に巻き込まれるのを、見過ごす訳にはいかない。どうか、敵の企みを打ち砕き、人々を守ってくれ」


フライドポテト
 お目に留めて頂き、有難う御座います。
 この度、MSになりました、フライドポテトと申します。今回が初めてのシナリオとなりますが、誠心誠意やっていきたいと思います。何卒、宜しくお願い致します。
 さて、最初は三輪車に乗った敵を止める、または人々を避難させる事から始まります。どのように行動するかは自由です。皆さんの熱いプレイングを、お待ちしております。

 最後に、ご連絡を。以前のマスターページには、翌朝九時にプレイングを締め切り、一気にまとめて執筆する、という旨を記していました。しかし、思案し直したところ、試行錯誤をしたいと考えたので、明言する事を取りやめています。急に変更してしまい、申し訳ありません。

 *このシナリオはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません
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第1章 冒険 『激突!』

POW   :    正面から力づくで車を止める。

SPD   :    運転席に乗り込んで車を止める。

WIZ   :    車の進路上にいる人を避難させる。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルリ・アイカワ
POWで対抗

「安全運転は出来ない物か」
正面に立ち、自身への衝突時間を算出する
短時間ではあるが停止までのシュミレートを完了させ。受け止める体制に入る
接触後もリアルタイムでシュミレートし続けよう
持ち上げる、横転させる、機関部?の破壊など
安全策を選びながら最適な結果に近づけてみる

まぁ高度に柔軟に素早く思考していても、はたから見れば力任せに受け止めているように見えるんだろうな


木目・一葉
なんで三輪車に拘る?
あとブースターつけたら三輪車である意味ない!
「僕も子供の頃やってみたかった」
と、つっこんでる場合ではない
三輪車を、悲劇を止めねば!

【POW】
要するに転がせばよい
事前に住民に丁寧な【礼儀作法】と【コミュ力】で接し、町の地図を入手
この際、避難する事も伝える
敵が現れたら【目立たない】よう脇道で待ち伏せ
集団の先頭の三輪車が大通りを通りかかったら、脇道からフック付ワイヤーを飛ばして引っ掛け、それを横転させる
これで後続も事故を恐れて停止するだろう
そこに『グラウンドクラッシャー』を仕掛ける
この地形破壊で三輪車も走りにくくなる
「ブースター三輪車をよこs――じゃない!
とにかく降りてもらうぞ」


月見・桜
【WIZ】を選択

【心境】
小さな子ども達に恐怖を植え付けようと言うのですか…
そんなの許せません!
必ず阻止します!

【行動】
とにかく住民の方々を誘導して避難させます!
向かってきた敵は《巻キ付ク大蛇ノ霊》を発動して、動きを封じます!
それでも突破してきた敵には〈盾受け〉を発動して受け止めます!

霊式火縄銃で〈スナイパー/援護射撃/視力/見切り〉を発動してタイヤを攻撃して動けなくする方法もありますね!

アドリブ・共闘歓迎です!


ニトロ・トリニィ
【WIZ】を選択

【心境】
何だか、世紀末感がする敵だね…
平和な人々を恐怖に陥れるなんて、随分と趣味が悪いようだ。
今回の敵は、心置き無く倒せそうだよ。

【行動】
僕は、人々の避難を担当しようかな。
他の仲間と連携しながら、〈鼓舞〉で勇気付けながら安全な場所に導くよ!
この混乱だし、迷子が出る可能性もあるね…
もし見かけたら〈優しさ/手をつなぐ〉を使って一緒に親を探しても良いかもね。
向かってきた敵は《念動力》を発動して進路を変えて、事故を起こさせるなんて良さそうだね!
〈救助活動/医術〉もどこかで使えるかも?


アドリブ歓迎です!


リリィ・オディビエント
奇怪なオブリビオンだな。だが、所業は残虐非道。子供とそれを守る母を狙うなど到底許せることではない。騎士の名の元に、必ず守り抜いて見せよう!

まずは同じ土俵に立たせなければ話にならないようだな。
子供たち一般人を【かばう】で守るのが最優先だ。
その後、私を狙うようなら盾や剣を用いた【盾受け】や【剣受け】でまずはその動きを止める。そこからはPOW、すなわち力技で強引に引きずり落とす算段だ。

UCは危機的状況や不利な状態になったら使用して強化するよ。まぁこの段階ではまだ不要かも知れないが。

アドリブ、協力、コメディもろもろ歓迎だ。ちなみに三輪車や自転車などは足の都合で下手っぴだよ!


シン・ドレッドノート
SPDを活かして阻止します。連携、アドリブ可。

三輪車と言うのが…まぁ、まともに考えると正気度が下がりそうなので、阻止することだけ考えるとしますか。

「三輪車にスピードで負けるわけには…」
スペースバイク『ノーブル・スカーレット』に騎乗、【天翔ける紅彗星】を発動し、リアウィングの間から推進器を露出して高機動形態で三輪車を追走します。

「暴走は危険ですよ?…ほら、ぶつかった。」
追いついたら敵の手をスナイパーのように狙って『フック付きワイヤーガン』を発射。操縦ができないようにしつつ、ワイヤーをロープワークで操ってハンドルをきらせ、人々から離れる方向に誘導。可能であれば他の三輪車に衝突させて動きを止めます。



 イベントを行っていた会場は、地獄絵図と化した。
 突然現れた謎の異形が、三輪車の乗ったまま人々を追い回す。字面だけを見れば滑稽に思えるかもしれないが、現実は全く違う。その三輪車は、触れると怪我をしてしまいそうな突起物が付いていたり、上空から追いかけ回せるようにプロペラを付けていたり、勢いよくぶつかる事で体を吹き飛ばすようなブースターを付けていたりする。それはもはや、三輪車ではなく、一つの凶器であった。しかも、それを操縦するのが、骨だけの謎めいた生命体となれば、人々の恐怖は計り知れない。
 平和な町中に、人々の悲鳴が木霊する。必死の形相で逃げ惑う状況は、まさしくテロが起きたのと大差が無い。皆、蜘蛛の子を散らすかのように四方へ逃げていく。子供の中には三輪車で逃げようとする者もいた。親の中には子供を抱きかかえて守ろうとする者もいた。ただ、この場で起きた異様な状況から身を守りたい一心だった。
 だが、この事件を引き起こしたのは、オブリビオン。三輪車で人々を蹂躙しているとはいえ、町の人々が対抗できる相手では無い。それは、武装をした戦闘のプロに対し、普段から運動をしない人が立ち向かうようなものだ。だから、人々は逃げ惑う。そして、まるで蟻を踏みつぶしてカタルシスを得るが如く、骨の異形は人々を追いかけ回す。正に、この世の地獄と言った有様である。

●戦巫女の攻防
 そんな中、イベント会場にて、避難誘導をしていた人物が居た。
「皆さん、落ち着いて非難して下さい!押さないで、慌てないで!」
 その少女の名は、月見・桜(妖狐の聖者・f10127)と言う。月見は、毅然とした声を響かせ、的確に誘導していく。その為に人々は我先にと争わず、何とかイベント会場から離れる事ができていた。もしも彼女の声掛けが無ければ、パニックのあまりに人々が押し合うように逃げ、二次災害、三次災害が起きていた可能性もある。
 そうして避難誘導をしていたのだが、ふとイベント会場がどうなっているのか気になり、そちらへ視線をやる。すると、恐ろしい光景を目にした。一人の男の子が三輪車に乗ったまま、必死にオブリビオンから逃げている。その三輪車にはトゲトゲの装飾が付いており、それがぶつかれば、軽いけがでは済まない。やがて、男の子はバランスを崩して倒れてしまう。そこへ、オブリビオンの三輪車が迫った――。
「大蛇さん…お願いします!敵の動きを封じてください!」
 …………。
 だが、三輪車がぶつかる感触が無い。男の子は、恐る恐る目を開けた。
 大蛇が居た。その大蛇が、あの三輪車に巻き付き、上へ持ち上げていたのだった。月見の『巻キ付ク大蛇ノ霊(マキツクダイジャノレイ)』が、間一髪間に合った。
 「くっ、は、離せーーー!」
 そうして、三輪車の上でジタバタもがく骨の異形。しかし、そんな言葉に耳を貸さず、更に三輪車を締め上げる。ミシ、ミシ……。その軋む音は、三輪車の悲鳴にさえ聞こえた。それを見た男の子は、思った。……綺麗、と。その大蛇は正に、悪逆の限りを尽くす魔物から、人々を守る神様のようにさえ思った。事実、この大蛇は守護霊である。その事を、無垢な少女は確かに感じ取っていたのだった。
「ま、間に合った……」
 その男の子の元へ、月見が駆け寄る。だが、まだ敵襲は終わった訳ではない。邪魔をされた事に気付いたオブリビオンの内、何体かが、月見と男の子の元へ三輪車を走らせてきた。
 その時、イベント会場に銃声が鳴り響く。迫り来る三輪車の内一台が、フラフラと左右に揺れた後、そのまま横転する。男の子は一瞬、何が起きたのか分からなかった。しかし、隣を見ると、その答えが分かった。月見が霊式火縄銃を構えていたのである。霊力を弾丸にしており、今のところは弾切れを心配する事は無い。そのまま、スナイパーのように、1台1台を確実に狙撃していく。年頃の男の子は月見を見て、カッコいい、と思わずにはいられなかった。
 だが、全てのオブリビオンを捌ききれた訳ではない。その銃撃を潜り抜けた強者のオブリビオンが一体、男の子を轢き殺さんとばかりに迫って来た!
 しかし、すぐさま月見が盾となり、それを阻止する。必死に持ち応える月見、それを凝視する男の子……。
「早く逃げて!」
 月見が声を張り上げるや否や、男の子は我に返り、イベント会場から走って逃げていく。
 それを確認した後、月見も負けないとばかりに、思いっきり力を籠める。すると、三輪車が徐々に横へ傾き始めた。そして――。
「う、うわあっ!?」
 オブリビオンはサドルから転げ落ち、三輪車の下敷きになった。
 月見は一息つき、すぐさま、避難誘導をすべく、行動を再開したのだった。

●避難誘導中、迷子と遭遇
 避難誘導をしていた猟兵は、他にも居た。
「何だか、世紀末感がする敵だね…」
思わずそう呟いてしまったのは、ニトロ・トリニィ(楽観的な旅人・f07375)である。彼もまた、人々を安全な場所へ避難させようと動いていた。だが、足がすくんで動けなくなっている方も居た。人間は、極度の恐怖に陥ると、体が動かなくなる事がある。寧ろ、その方が正常な反応と言えるのかもしれない。そうした方々に、彼は歩み寄った。
「大丈夫ですか?」
 ニトロは優しく声掛けをして、恐怖に陥った人を鼓舞していく。恐怖を取り除く際、語り掛ける人物の態度は重要な意味を持つ。そして、彼のマイペースで楽観的な性格は、その恐怖を取り除くのに役立った。声を掛けられた人々は、一時的にとはいえ恐怖から解放され、足が動くようになっていた。そして、そのまま現場から何とか去って行った。
 そうしたマイペースな言動を取っているが、内心では、今回の事件を起こしたオブリビオンに対して、嫌な思いを抱いていた。今回のイベントは、町が主催して、人々に幸せな時間を過ごして貰う為に企画されたものだ。そして、親子が楽しく過ごしていた。そうした平和を壊し、人々を恐怖に陥れる……。随分と趣味が悪い奴らだ、そう感じずにはいられない。
「うわーん!!」
 そう考えつつ避難誘導をしていると、ふと、子供の泣き声が聞こえてきた。一体何事かと思い、その場所へ駆けつける。そこには、一人の女の子が、地べたに転んだまま、泣き叫んでいた。膝を擦りむいており、赤い血が滲んでいる。
「大丈夫かい?」
 そう優しく声を掛けると、子供は安心したのか、泣くのを止めた。そしてニトロは、怪我をした箇所を医術によって治療していく。出血は止まり、これ以上酷くなる事はないだろう。
「あぁ、もう大丈夫だよ。立てるかい?」
 そう言い、女の子の目線まで屈んだ後、黒い手を差し伸べる。女の子はその手を取り、ゆっくり立ち上がる。
「ところで、お父さんやお母さんはどうしたんだい?」
「あのね、わたし、まいごになっちゃったの」
「そうなんだ……。じゃあ、一緒にお父さんとお母さんを探そうか」
 そうして、女の子の両親を探しに行こうとした時である。突如、爆音が響いた。振り返ると、すぐそこに、暴走族さながらの三輪車が走ってきているではないか!
 ニトロは咄嗟に、『念動力(サイコキネシス)』を使う!
「う…動けぇ!」
 刹那、三輪車は軌道を変え、まるで二人を避けるかのように走行を続けた。乗っていたオブリビオンは、一体何が起きたのか分からず、焦っている。操縦不能になった三輪車は暴走を続けている。ふと前方を見ると、そこにはコンクリートでできたブロック塀があった。オブリビオンは悲鳴を上げる。そして、止まる事もできないまま激突し、意識を失った。ニトロは思わず、安堵のため息をついた。悪趣味な敵であったからこそ、心置き無く力を発揮できたというものだ。
「うわぁ、おにいちゃん、すごいんだね!」
 そこへ、二人の男女が駆け寄って来た。女の子は「あっ、おとうさん、おかあさん」と声を上げ、二人の元へ飛び込んでいった。二人は、「娘を助けて頂き、有難う御座います」と、何度も何度も頭を下げた後、この場所を後にした。
 ニトロは、迷子が親の元へ戻ったのを笑顔で見送った。そして再び、避難誘導を再開したのであった。

●騎士道を貫く者

 リリィ・オディビエント(パラディンナイト・f03512)は、怒りに満ちていた。外見は骨という奇怪なオブリビオンだが、やっている事は悪逆非道だ。騎士道を重んじているリリィにとって、それは絶対に許してはならぬ蛮行であった。だからこそ、騎士の名において、親子を守り抜かねばならない。だが、此方は地上に立ち、オブリビオンは三輪車とはいえ乗り物に乗っている。それを何とかしなければ。
 イベント会場に到着するなり、視界に親子が映った。親は子供を抱え、うずくまっている。そこへ、一体のオビリビオンが突進してきた。すかさず間に割って入り、剣と盾を構えて対峙する。迫る三輪車と一人の少女。その光景は、勇敢なる者を喰らわんとする邪竜と、それを打ち取らんと構える勇者のようにさえ思われた。
 カキィン!!
 鋭い金属音がイベント会場に響き渡った。
「なぁっ!?」
 三輪車は砂ぼこりを上げて停止した。そのトゲトゲしい車体は、黒く禍々しい剣によって止められていた。そして、狼の手が骨の異形の腕を掴む。
「ヒィッ!」
 そのまま力任せに地面へ引きずり落とす。受け身をまともに取れず、そのまま固い地面に体を強く打ち伸びてしまう。
 親子は、恐る恐る目を開ける。そこに立っていたのは、一人の少女だった。耳、腕、尻尾、そのどれもが狼という姿であるが、親子にとってはどうでも良かった。その姿は、まるで騎士のように感じられたという。
「もう大丈夫だよ。怪我はしていない?」
「ええ、怪我はありません。有難――」
 瞬間、親子の表情が凍り付く。リリィも視線の先を見る。その前方100m先にブースターが付いた三輪車が佇んでいたのである。
「お前らは、俺が殺してやるー!」
 親子は恐怖で足がすくみ、動けない。
「ああ、せめて貴方だけもお逃げ下さい!」
 だが、リリィは逃げるどころか、その場で構えを取る。今なら進路上から逃げる事ができるのに、あえてそうした行動を取らない。刹那、三輪車が火を噴き、猛烈な勢いで突進した!
「私は誓おう。騎士とは弱きを守り、決して挫けぬ黄金の精神を持つ者だと!!」
 リリィがそう叫び終えるのと、三輪車が激突するのとは、ほぼ同時であった。土ぼこりが舞い、視界が遮られる。それが晴れ渡った時、親子の目に映っていたのは、信じられない光景であった。何と、リリィが三輪車を受け止めているではないか。
 親子を守る為に、自らの体を盾にする。騎士としての誓いや誇りの為にとった行動が、『騎士の誇り(ナイト・オルゴーリョ)』の力を発揮させたのだ。今のリリィは身体能力が向上し、例え弾道ミサイルが飛んできても受け止めきれる程の力を有しているかもしれない。
 そして、リリィはオブリビオンの手首を掴んだ。
「ひぃぃぃ」
 すぐさま、相手を地面へ引きずり落とした。オブリビオンは、この三輪車が効かないと知るや否や、耐え難い恐怖に包まれ、気絶した。操縦者が居なくなった三輪車は、自動的にエンジンがOFFになり、ブースターの火力が無くなっていく。
 それを見届けた親子は、安堵したからか、体が動くようになった。親は「有難う御座います」と何度も頭を下げ、その場を後にした。最後に、子供は笑顔でこう言った。
「ありがとう、おおかみのおねえちゃん!いつか、さんりんしゃであそぼうね」
 その言葉を笑顔で聞きながら、親子を見送った。けど、もし再会できても三輪車で一緒に遊ぶのは難しいかも、と思いつつ、苦笑した。何故なら、彼女はキマイラ。足の都合もあり、そうした乗り物の運転は下手っぴなのであったからだ。

●戦闘傭兵VS兵器と化した三輪車
 そのイベント会場では、三輪車を止めるべく、多くの猟兵が行動を開始している。その一方、猟兵が介入した事を認識オブリビオンは、人々を襲う前に、まずは猟兵を倒す事にした。そうして存在する猟兵の中で、一際目立つ女性が居た。彼女の名は、ルリ・アイカワ(ウォーマシンのバーバリアン・f05097)と言う。その女性は、身長が230cmと、とにかく高身長である。それだけでも威圧的であるのだが、それ故に、闘争心が刺激されたのだろう。
「俺があの女を討ち取ってやるぜえええ!」
 そう言って、一体のオブリビオンが啖呵を切った。この骨の異形が乗る三輪車は、尋常ならぬ熱意を持ってカスタムしたものだ。新幹線の構造を利用し、三輪車の先端を丸くしている。更に、全ての材料を軽量且つ頑丈な素材にした為、より速く走れるようになった。結果、漕ぎ出した時には、時速100kmを超えていた。そして、0.87秒が経過した時、三輪車はルリに衝突し、その体を粉々にする!
 ――筈だった。
 しかし、三輪車は動きを止められていた。ルリは、その超高速の三輪車を受け止めていたのである。一体、何が起きたのか、オブリビオンにも分からなかった。そして、ルリは三輪車を持ち上げると、外野が野球ボールを投手へ投げ渡すかのように、遠くへ放り投げた。オブリビオンは悲鳴を上げながら地面へ激突し、同じく飛ばされた三輪車の下敷きになる。グシャリ、という音がした。
「な、何て馬鹿力なんだ……」
 それを見た他のオブリビオンは恐怖に包まれる。しかし、彼らは一つ、大きな勘違いをしていた。ルリは、単に力任せに受け止め、放り投げたのではない。三輪車を漕ぎ出す直前、その三輪車や乗っているオブリビオンを観察し、どの位の速さで何秒後に衝突するかを計算していたのだった。だからこそ構えを取り、受け止める事ができたのである。そうでなければ、0.87秒もの間に構えを取る事すらできないであろう。大抵の人は、その速さに驚くあまり、構えを取る事すら忘れてしまう。投げ飛ばしたのも、受け止めた後でどうすべきかを考えた結果、投げ飛ばすのが最適だと判断して行動しただけだ。もし、三輪車があまりにも重ければ、投げ飛ばす事で無駄な労力を掛けないであろう。しかし、そうした計算に想像が及ばないオブリビオン達は、パニックに陥り、力の側面にしか焦点を当てる事しかできなかった。
(まぁ高度に柔軟に素早く思考していても、はたから見れば力任せに受け止めているように見えるんだろうな)
 そうして、ただ冷静沈着に構えるルリの姿を見て、オブリビオン達はようやく、この女性が戦闘のプロである事を認識した。しかし、パニックに陥っているオブリビオン達がやる事は、ただ一つ。ひたすら突撃するだけであった!幾多もの、そして多種多様な三輪車が、一斉にルリへ向かって遅い掛かる!
 ルリはそれら全ての三輪車を見て、瞬時に分析し、どう行動するかを計算する。

 重い金属の塊を装着した三輪車は、エンジン部を破壊して動きを止める。
 空を飛んで襲い来る三輪車は、機体を傾けて墜落させる。
 素早く突進してくる三輪車は、軽量なのを利用して横転させる。
 2台も同時に突っ込んできた三輪車は、お互いの装飾を絡ませて走行不能にする。
 ハンドルが粗末な三輪車は、ハンドルを壊して操縦不能にする。

 全ての三輪車を的確に受け止め、最も効果的な方法で操縦不能にしていく。
 その様子は、まるで戦場のようであった。一人の人物が、迫り来る数多もの兵器を破壊し、ただひたすら任務を全うするかのようにさえ感じられる。そうして、自身へ向かってきた最後の一台を横転させ、現時点での任務を終えた。そこには、まるでガラクタの山のように三輪車が転がっており、多くのオブリビオンが、負傷兵さながらに呻き声を上げ、倒れていた。三輪車から立ち上る黒煙が青空へと昇って行く。ひと段落したルリは、三輪車を見ながら、こう呟いた。
「安全運転は出来ない物か」

●三輪車を追い詰めろ

 時は遡り、近隣の公園にて。この公園は、近所に住む老人達にとって、貴重な休憩場所であった。しかし最近、ガラの悪い不良がたむろするようになっており、顔をしかめている。
 今日も、老人達が公園のベンチでのんびり過ごしていた。そこへ、一人の少女が歩いてくる。木目・一葉(生真面目すぎる平凡な戦士・f04853)である。木目は近くに居た老人の方へ歩み寄る。
「すまない、ちょっといいだろうか」
 急に声を掛けられた老人は、木目の方を見る。その少女は礼儀作法がしっかりしており、たむろしているヤンキーよりは信頼できそうだ。
「おやおや、どうかしたのかね?」
「実は、この町には始めてくるのだが、どうも地理が分からなくて困っている。なので、もし地図を持っていれば、譲って欲しいのだが」
 木目はコミュ力を発揮し、老人から地図を貰えないか試みる。すると、老人は首を傾げて思案する。暫くすると……。
「ええよ。数年前の地図帳になるが、良いかの?」
 老人が鞄から取り出した地図を、木目は有難く受け取った。早速、地図を広げて、この町の地理を確認する。
 現在居る公園は、イベント会場の北側に位置している。距離にして、およそ1km。公園とイベント会場の間には大通りが伸びており、途中には何本か脇道がある。公園より北側には住宅街があるが、イベント会場と公園を結ぶ大通りの周囲に、民家らしきものは無い。
 その事を確認し終え、脇道の場所やイベント会場との距離感を頭に叩き込む。それは、後に行う作戦で重要な役割を果たす事になる。だが、その前にやっておく事があった。
「えっと、すまないのだが……」
「おや、どうしたのかね」
「実は、これから、この場所は危険になる。なので、すみやかに避難してほしい」
 普通であれば、その言葉に耳を傾けようという気にはならないであろう。だが、礼儀作法がしっかりしており、コミュ力のある木目の言葉は、真実のように思われた。
 老人達は、一体何が起こるのか不安になりつつも、公園を後にしたのだった。

 時は戻り、イベント会場。そこで、オブリビオン達は猟兵達によって妨害が行われていた。結果として、人々には逃げられ、代わりにボコボコにされる始末。半ば兵器と化した三輪車は無残なガラクタと化し、オブリビオンの内何体かは気絶してしまっている。このままでは全滅してしまう。そう判断したのか、まだ残っていたオブリビオン達は、三輪車に乗ったまま逃走を図る。加え、三輪車が壊れたオブリビオンも、逃走を図るオブリビオンの三輪車へ捕まり、同様に逃走を図った。何台もの三輪車が、イベント会場から出て行った。
「三輪車と言うのが…まぁ、まともに考えると正気度が下がりそうなので、阻止することだけ考えるとしますか」
 その光景を見ていた、シン・ドレッドノート(真紅の奇術師・f05130)は、何とも形容し難い気分になった。やっている事は非道そのものだが、その手段が、三輪車で人々を襲うというものだ。どういう事なのか、頭を抱えたくもなる。しかし、深く考えない事にした。真剣に考えても、得られるものなど無い。
 シンは、自身のスペースバイク『ノーブル・スカーレット』に騎乗する。
「エアロモード、チェンジ!」
 そう叫び、『天翔ける紅彗星(ヘブンズ・スカーレット)』を発動した。刹那、リアウィングの間から推進器を露出して高機動形態になる。
「三輪車にスピードで負けるわけには…」
 幾ら相手がブースター付きの乗り物に乗っているからといって、三輪車は三輪車である。その三輪車に追いつけないなどという事は、考えたくもない。そして、イベント会場を飛び出し、オブリビオンの追跡を開始した。

 オブリビオン達は複数の三輪車にそれぞれ乗りながら逃走を図る。その方向は、公園とは少し進行方向がずれている。このまま行けば、人々が密集する地帯へ突入しかねない。
「くっ、猟兵め!今度会ったら、タダじゃおかないぞ!」
「おい、何か後ろから、何かが追いかけてきていないか!?」
「何だって!?」
「しかも、どうやら女性のようだぜ。まさか、追手か!?」
 振り向くと、スペースバイクに跨って追ってくるシンの姿が見えた!その容姿故に女性と間違われやすいシンは、やがて、オブリビオン達の三輪車と並走する形になった。だが、よく見ると、その手にはフック付きワイヤーガンが握られている。アレで何をしようというのか。刹那、オブリビオン達は、その道具の使い道に気付いた。だが、もう遅い。フック付きワイヤーガンが発射され、ハンドルに絡みついた!
「し、しまった!?」
 くいっ。ワイヤーをロープワークで操り、ハンドルが動かされる。刹那、すぐ近くに居た別の三輪車にぶつかる。オブリビオン達は恐怖に顔を歪ませる。
「暴走は危険ですよ?…ほら、ぶつかった」
 ただでさえ人数オーバーである三輪車が互いにぶつかる事で、蛇行運転になり、安定した走行は不可能となった。やがて、そのまま道路の両脇にあるガードレールへ勢いよく衝突する。乗っていたオブリビオン達は悲鳴を上げながら、慣性の法則によって固いアスファルトの上へ投げ出され気絶した。
 しかし、まだ逃走を図っている三輪車は残っている。しかし、シンの行動に脅威を感じた為、何とか撒こうと進路を変更する。向かう先は、あの公園だ!
 と、ここでシンは速度を落とし、徐々に離れていく。今度は何をするつもりだ?サドルに座っていたオブリビオンも、三輪車に掴まっていたオブリビオンも、後ろを見ながら訝しむ。今度は、一体何をしようというのか?

 丁度、オブリビオン達が走っている道路の先、その途中にある脇道に木目は居た。木目は目立たないように佇み、オブリビオン達が来るのを待ち構えていた。
 ……が、ちょっと面食らった。ちょっと想像してみて欲しい。オブリビオンが三輪車に乗り、凄い速度で走行している場面を。そんな摩訶不思議な光景を見た木目の頭に、様々な疑問が浮かんだ。何故、三輪車に拘る必要があるのか。そもそも、三輪車にブースターを付けたら意味が無いのではないか。けれど、ブースターの付いた三輪車というのは、ロマンなのかもしれない。その為に……。
「僕も子供の頃やってみたかった」
 映画やアニメの軍人やハードボイルドに憧れる木目は、思わず共感してしまったのか、つい、そんな言葉が迸ってしまった。だが、すぐにやるべき事を思い出す。
先頭の三輪車が通り過ぎる瞬間、脇道からフック付きワイヤーガンを飛ばし、三輪車の車輪へ引っ掛ける。
「何だ!?」
 そして、車輪にフックが巻き込まれた事により、勢いよく横転した!それに伴い、後続の三輪車が急停止する。だが、それは大きな隙を作った事を意味する。
 木目は脇道から勢いよく飛び出し、グリューアンクルという巨大戦斧を大通りに叩きつけた!ユーベルコード『グランドクラッシャー』である。それにより、アスファルトが大きくひび割れ、一切の車両が走行できない状態と化した。勿論、三輪車も例外ではない。
 木目は慌てふためくオブリビオンに対し、こう宣告した!
「ブースター三輪車をよこs――じゃない!とにかく降りてもらうぞ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『シャーマンズゴースト・ボーン・リボーン』

POW   :    クロウボーン・ライダー
自身の身長の2倍の【白骨化した馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD   :    サイキックボーン・パレード
【念力で操った自分自身の骨】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    ストーンエイジ
【杖の先端に嵌った宝玉】から【物体を石化させる光線】を放ち、【石化】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「くっそおおお、よくもやりやがったな!」
 三輪車に乗り、人々を恐怖のどん底へ突き落そうとしたオブリビオン、シャーマンズゴースト・ボーン・リボーンは、吐き捨てるように叫んだ。既にオブリビオン側は満身創痍。しかし、まだ骸の海へ帰る程の傷は負っていないようだ。
「あのイベントを恐怖と混乱で満たす事によって、召喚するオブリビオンの力を増そうとしたというのに!そして、我ら大神霊尊敬教会にとって有益になるよう働きかけるつもりだったというのに!それを貴様らが邪魔したのだ!召喚はそもそも確実だが、それを不完全な状態にされてしまったとなれば、我らも黙ってはいられない。この恨み、貴様らの命で償ってくれるわ!」
 どうやら、このオブリビオンを徹底的に叩きのめさなければ、事態は解決しないようだ。さぁ、猟兵諸君!この自己中心的で身勝手な思想により、何の罪も無い親子を苦しめた事に対する報いを与えようではないか!
シン・ドレッドノート
SPDで勝負です。
アドリブ、連携OK。

数は多いようですが、片っ端から撃ちぬいていきますよ。
「さぁ、どこからでもかかってきなさい」
右手に真紅銃、左手に精霊石の銃を持って、無造作に敵集団に向かっていきます。

敵が攻撃姿勢に入ったら、カウンターで【雷光閃く刹那の弾丸】を発動。
瞬く間に【乱舞する弾丸の嵐】で両手の2対の銃を複製・周囲に展開、敵が攻撃を開始する前に一斉発射で撃ちぬきます。

その後は銃をコントロールしながら一か所に留まらないよう高速移動。
敵の行動を阻害するなど、味方の援護射撃をしつつ、敵を1体ずつ撃ちぬいていきますね。
「この後、本命が待ってますので。いつまでも貴方たちの相手はしてられませんよ」


月見・桜
【心境】
まだ諦めないのですね…
何の罪も無い人々を苦しめた報いは受けてもらいます!
皆様!油断せずに行きましょう!

【行動】
今回は皆様の援護を担当します!
最初に《巻キ付ク大蛇ノ霊》を発動して敵の動きを封じます!
次に〈スナイパー/援護射撃/見切り/視力/鎧無視攻撃〉を発動した霊式火縄銃で攻撃を行います!
敵の物理攻撃は霊盾の〈盾受け〉で防ぎます!
敵の名前にシャーマンとあるので、何らかの特殊な攻撃をしてくるかも知れません。そんな時は〈呪詛耐性〉を使って防ぎます!

アドリブ・共闘歓迎です!


ニトロ・トリニィ
【心境】
趣味が悪いだけじゃなくてしぶといなんて…最悪だね。
子供達の笑顔の為にも、奴らを倒さないといけないね!

【行動】
僕は前に出てひたすら戦おうかな。
援護は任せたよ!
最初に〈地形の利用〉を発動して戦闘に向かうよ! どんな戦いでも、地の利を上手く利用すれば効率が良いからね。
向かってきた敵は《蒼炎ノ一撃》で攻撃するよ! 骨には炎だよね。
この攻撃を抜けてきた敵には〈鎧砕き/2回攻撃/範囲攻撃〉を発動した武器で応戦するよ!
敵の攻撃は〈盾受け/激痛耐性/カウンター〉で防御するよ!
〈目潰し〉を発動して、地面にある砂をかけるのも良いかもね。

アドリブ・共闘歓迎です!


木目・一葉
「それで、何故に三輪車……」
聞かずにはいられない
とはいえ、こんなことをしていても相手はオブビリオンだ
念入りに始末し、ブースター三りn――住民を守らなくては

・戦闘
相手のUCは厄介だ
それに馬なんか呼ばれては長期戦になる
でも馬いるなら最初からそれに乗ってればよかったのでは……
兎も角、自分は中衛に立つ
距離を保ちつつ、敵の念力で操った骨に対しては『妖刀解放』の衝撃波で迎撃する
その迎撃をしながら密かに『影の追跡者の召喚』を敵一体に放っておこう
影の追跡者が敵に接触したら【影人の縫い針】でUC封印を狙う
この行動を繰り返し、敵を一体ずつ無力化していこう
万が一の近接攻撃に対しては斧で【武器受け】して凌ごう


ルリ・アイカワ
POWにて対抗

けん制をしつつ攻撃を加えよう
未知数の相手にどうしたものか
「恐怖も混乱もしないうちは・・・対象にならないだろうか」
まぁ骨なら叩き折ればいいたけだろうが

1体のようだが、目標が増えるようなら不利になるかもしれない
シャーマンという位だから亡霊やら死霊とか有り得そうだ
劣勢ならユーズベルトコードの発動も視野に入れておこう
【鎧破壊3】なら骨相手に有効に作用してくれるだろう
射撃戦よりは接近戦に持ち込めればいいか


リリィ・オディビエント
ふっ、悪知恵の働くやつのようだが、やり口が幼稚と言わざるを得ん。

だが所業は断じて許せん、首謀者としてその首で責任を取ってもらうぞ!

仲間を【かばう】でカバーしながら、【剣受け】や【盾受け】でがっしりとガードを固める。
近づいたあとは、剣の一撃を浴びせる。状況が不利だったり傷を負っていれば、UCによる強化を行うことでより強い一撃を与えられるだろう。

……しかし、なぜ三輪車に乗っているのだろうか?気になるから余裕があれば聞きだしてやろう。

※アドリブ、絡み歓迎。
出すのが遅くなりました。書き終わりが近ければ構わず流してくださっても構いません。



●オブリビオンとの激戦
 オブリビオン達は満身創痍になりながらも、猟兵達に向き直る。しかし、その骨だけの顔は、どこか不適な笑みを浮かべているように見えた。
「貴様らは俺達を倒そうと三輪車から引きずり落としたりしていたようだが、それが仇となったな!」
 そう叫ぶや否や、彼らは念力で自身の骨を宙に浮かび上がらせる。だが、三輪車から勢いよく転倒した為に、骨折していた箇所もある。そう、即ち、浮かび上がらせた骨は折れた事で鋭い切っ先が生じてしまったのだ。鋭い刃物と化した骨が、猟兵達に襲い掛かる!
 しかし、シン・ドレッドノート(真紅の奇術師・f05130)はどこか余裕そうに見える。右手に持つは、紅白に紅いラインの入った粒子砲。左手に持つは、純白に金の縁取りの入った、銃身の長い銃。彩り豊かな二つの異なる銃を両手に持ち、悠然と構える。これから戦闘が始まるのにも関わらず、紳士的な態度は崩さない。そして、殺気立つオブリビオン達を見回す。そして、不適にも思われる笑みを浮かべて一言。
「さぁ、どこからでもかかってきなさい」
 丁寧ながらも相手を挑発するかのような宣言。しかし、その言葉が、これから行われる闘いの合図となった。猛る様子の無いシンの様子に、オブリビオン達は息を飲む。一体、相手は何を企んでいるのか。何故、仕掛けてこないのか。それが不気味すら感じられ、怯みそうになる。だが、相手はスペースバイクに乗って三輪車を横転させた強者。その態度に惑わされてはいけない。
 すると、シンはオブリビオンの方へ、ゆっくりと歩いて行く。その動作はまるで、朝の散歩を優雅に楽しむかのようであった。それは正に、無造作、と形容しても良いかもしれない。これから命を懸けた戦闘をするとは思えないような挙動に、オブリビオンは更に困惑する。一体、何が狙いなのか。しかし、直ぐにやるべき事を思い出し、自身の骨をシンへ向けて飛ばそうと、予備動作を取る。
 だが、その一瞬の動作が命取りとなった。
「遅いですね」
 シンは批評を述べ、行動を起こす。
 ――それは、一瞬の出来事であった。
 自身の持つ二対の銃が瞬く間に複製されていき、次々に宙へと浮かんでいく。その数は二十や三十といった数ではない。膨大な数の銃は、意志を持つかのように動き、四方へ展開していく。それは正に、得物を仕留めんとする蜂の大群のようである。その無数の銃が、数多ものオブリビオン1体1体へ照準を合わせた……。
「ターゲット、マルチロック…目標を乱れ撃つ!」
 刹那、オブリビオンの集団へ、弾丸の雨が降り注ぐ。否、それは嵐と形容しても良いだろう。幾多もの銃から25分の1秒という速さで弾丸が射出され、オブリビオン達を射抜いていく。それは、1秒間に25発の弾丸を打ち込まれる事を意味している。その猛攻に、オブリビオンは動きを止めざるを得ない。
 『乱舞する弾丸の嵐(ハンドレット・ガンズ)』からの『雷光閃く刹那の弾丸(ライトニング・バレット)』、その合わせ技は、正に絶妙と言えるものだった。
 だが中には、猛攻に耐えながら、何とか骨を動かし、一矢報いんとする者も居た。
 しかし、シンもただじっとその場で攻撃を続ける訳では無かった。銃をコントロールしつつ、高速で移動を続ける事で、狙われないよう工夫している。その為に、攻撃を受け続けているオブリビオン達は、シンへ正確に狙いを定める事ができずにいた。
 だが、それでもオブリビオンは負けてはいられない。一際大きく鋭い骨を宙に浮かばせ、シンの喉元へ向けて勢いよく飛ばした!
 ――しかし、骨ははじかれたかのように宙を舞い、やがてアスファルトへ落ちていく。一瞬、オブリビオン達は、何が起きたのか分からなかった。その理由は、暫くすると分かった。中衛に居た木目・一葉(生真面目すぎる平凡な戦士・f04853)が妖の小太刀を手に、妖刀解放による衝撃波を用いて骨を迎撃したのである。オブリビオンが必死に骨を飛ばしていくが、当たりそうになる骨は悉く、妖刀解放による衝撃波によって撃ち落とされていく。
「くっ、ここは一旦引くぞ!」
 形勢不利。そう判断したオブリビオンの1体が叫ぶな否や、何体かが戦線離脱を図ろうとする。しかし、三輪車を放置するのは忍び無かったのだろうか。そのまま三輪車を骨だけの腕で抱えて逃走する。
 しかし、何故、三輪車を抱えて逃げていくのか。木目は、その行動原理がよく分からなかった。しかし、それでも相手はオブリビオン。
(念入りに始末し、ブースター三りn――住民を守らなくては)
 ちょっと雑念が入るものの、すぐに思考を元に戻す。
戦線から逃げていくオブリビオン達を見ながら、木目は、『影の追跡者の召喚』を発動した。すると影の追跡者(シャドウチェイサー)を召喚され、尾行を開始する。オブリビオン達は三輪車を抱えながら必死に逃げている為、その存在に気付いていない。
「くそっ、こうなったら馬に乗って逃げるしかねぇ!」
 そう叫び、白骨化した馬を召喚しようとした時だった。
「影よ、仇なす業を縫いつけよ」
 そう、木目が呟き、先程のユーベルコードに続き、『影人の縫い針(カゲビトノヌイバリ)』を発動する。刹那、影の追跡者がオブリビオンを捕縛する!一体何が起きたのか分からず、焦った様子でもがく。しかし、影の追跡者はオブリビオンを離そうとしない。そうして白骨化した馬を召喚して逃げる事もできないまま、シンが放つ無数の銃弾の餌食となる。抵抗する相手には1mm単位で急所を当てるのは難しいかもしれない。だが、全く身動きの取れなくなった相手ならば、当たれば即死する箇所も容易く狙える!
「ひ、ひぃぃぃぃ!」
 新たな脅威に怯えつつ、まだ影の追跡者に囚われていないオブリビオン達は、離脱を試みる。しかし、1体、また1体と、放たれていく影の追跡者に捉えられ、逃げる事も叶わないまま、攻撃を受けて絶命する。彼らは先程まで親子を三輪車で追い回し、恐怖に陥らせていた。だが、今や立場は逆転した。現在、オブリビオン達は木目が放つ影の追跡者によって狙われているのだった。それに、白骨化した馬を召喚されてしまえば、長期戦になる事は否めない。その為、召喚する事を事前に防ぐという事は、猟兵達にとって有利になる事を意味していた。
 木目の使う技の数々は、使えば使う程、自身の寿命を縮めるというものだった。しかし、そんな事はお構いなしに、仲間を守るべく、ただひたすら行動を開始する。寿命が縮むという事については考えない。ただ、他の事が気になっていた。
(でも馬いるなら最初からそれに乗ってればよかったのでは……)
 何故、三輪車に乗って人々を襲っただろうか。ここに、新たな疑問が浮かんでしまったのである……。
 だが、その時だ。オブリビオンの内の1体が、突如、木目に向かって突進してきた!彼は三輪車を振りかざすと、それで殴打せんとばかりに振り下ろす。木目は咄嗟に、巨大戦斧で自身の身を守る。刹那、鈍い音が響く。しかし、何とか三輪車で殴られずに済んだ。大通りを破壊する程の力を有する木目は、そのまま力強く押し返す。相手はよろめきながら後退するが、すぐさま殴り殺そうと歩み寄ってくる。
 その時である。
「ぐ、ぐわあああ!?」
 突如、オブリビオンの体が蒼色の炎に包まれた。必死に手で払って消そうとするが、一向に消えない。アスファルトの上を何度も転がる事で消そうと試みるが、全く鎮火する気配が無い。この炎、只の炎では無かった。
「いやあ、間に合って良かったよ…」
 そこへ駆けつけたのは、ニトロ・トリニィ(楽観的な旅人・f07375)である。彼の手からは蒼い炎が噴出している。『蒼炎ノ一撃(ソウエンノイチゲキ)』だ。これが、あのオブリビオンを燃やしているのだ。やがて、炎に包まれたオブリビオンは成す術も無いまま、灰と化した。骨には炎が効く。それは、火葬で死者を遺灰にしてしまう事からも伺える。
「助かった、感謝する」
 木目の礼を受けた後、ニトロはそのまま、前線へ進んでいく。炎を操る相手となれば、体が骨であるオブリビオン達にとって脅威に映るのは必然かもしれない。その為、彼らは標的をニトロへ集中させる事にしたのだった!シンが放つ銃弾の嵐を強引に潜り抜け、ニトロに接敵しようとした。
 だが、脅威に感じるあまり、オブリビオン達は“ある事”を失念していた。だが、ニトロは地の利を生かし、その“ある事”を逆手に取る事にした。彼はそこから一歩も動かない。これはチャンスとばかりにオブリビオンは突進していく。
 だが……
「ぐふぅ!?」
 ニトロばかりを見ていた為に、足元に注意を払っていなかった。そう、この場所は先程、木目が壊したばかりである。つまり、アスファルトはひび割れており、隙間が無数に張り巡らされているのだった。骨の体であるオブリビオン達はその隙間に足を挟み込んでしまい、まるでコントのようにずっこけてしまう。それは、大きな隙が生まれた事を意味していた。
「僕の炎は、一味も二味も違うよ…味わってみるかな?」
 マイペースとも楽観的ともとれる口調で、手や触手から再び蒼い炎を出し、倒れているオブリビオンを次々に炎で包んでいく。隙間に足を挟んで動けなくなったオブリビオン達は、そのまま炎に包まれて絶命していく。
 だが、執念で言えばオブリビオン達も負けてはいない。複数体ものオブリビオンが念力で足の骨を外す事で隙間から脱出し、そのままニトロへ吶喊していく!そして、近くに転がっていた三輪車を手に取って殴りかかった!
(趣味が悪いだけじゃなくてしぶといなんて…最悪だね)
 三輪車を手に取ってしてなお襲い掛かるオブリビオンを見て、そう感じずにはいられなかった。
(だからこそ、子供達の笑顔の為にも、奴らを倒さないといけないね!)
 そして、三輪車が振り下ろされる!
 だが、ニトロはただ炎を出すだけではない。
 ガツン!鈍い音が響く。だが、三輪車を持って複数体で殴ったにも関わらず、ニトロはひるんでいない!激痛に耐性を持っていたのもあるが、装備していたナノマシンアーマーが皮膚を硬化させたのも一因だ。驚くオブリビオン。そして、そのまま地面に散らばっているアスファルトの破片や砂を蹴り、オブリビオンの目に掛ける。
「ぐっ!?」
 突然の不意打ちに目の部分を覆い、三輪車を手放してしまう。刹那、未知の合金でできたクランク状の大剣を取り出すな否や、大きく振りかぶり、オブリビオンに叩き込む!その強烈な打撃に、骨に大きな亀裂が走る。驚く間も与えず、更にもう一振りする。三輪車がアスファルトの上に落ちる頃には、オブリビオンは粉々に砕けて散っていたのである。
 砕け散ったオブリビオンを超え、相手へ向かって突き進んでいく。
「ま、まだ負けた訳じゃねえぞ!」
 そう叫ぶな否や、更に何体ものオブリビオンが突撃してくる。だが……。
「援護は任せたよ!」
「はい!援護は任せてください!」
 ニトロの声に呼応するかのように、少女の声が響く。同じく駆けつけた、月見・桜(妖狐の聖者・f10127)だ。後方に位置する彼女は手両掌をかざし、声高々に叫ぶ。
「大蛇さん…お願いします!敵の動きを封じてください!」
 『巻キ付ク大蛇ノ霊(マキツクダイジャノレイ)』により、再び現れた大蛇が、ニトロに襲い掛かろうとするオブリビオン達に巻き付いて締め上げる。彼らは身動きが取れなくなる。そこへ、月見が取り出したのは霊式火縄銃だ。彼女は構え、的確にオブリビオンを打ち抜いていく。手首や足首といった、体を動かす為の部位。果ては、頭や心臓部などの急所に至るまで、正確無比に射撃を行う。銃声が轟く度に、敵の戦力は次々に削られていく。
「月見さんも、なかなかやりますね」
 その様子を見たシンが、思わず声を掛ける。そして、シンも他の猟兵が戦いやすくなりよう、銃撃の仕方を工夫していく。シンの銃撃が多くの軍勢を一網打尽にするものなら、月見の銃撃は適確に敵の戦力を削いでいくものであろう。この戦場において、二種類の異なる銃撃がそれぞれの役割を果たし、相手を倒さんとしている。
 そうして、動けないままに体を損壊させられたオブリビオンに対し、近付いたニトロが大剣を振りかざしていく。
「僕も負けていられませんね」
 木目も、その様子を見て呟く。それに負けじと影の追跡者を召喚し、同じくオブリビオンを拘束する。二つの拘束する存在に、オブリビオンは更なる脅威を感じ、震えあがる。そうして士気が下がり、どこか動きに覇気が無くなったようにさえ感じる。
 だが、ここで月見は異変に気付く。適確に狙撃するだけの技量を持つ彼女は、当然と言ってよいが、目が良い。その為、拘束されていたオブリビオンがふと、手に何かを握っている事に気付く。先端の宝玉のはまった杖のようだ。どうやら、三輪車か自身の体内にかは分からないが、隠し持っていたらしい。
 瞬間、聖者でもある月見は感じ取る。その杖に、何か強大な魔力のようなものが詰まっている事を。オブリビオンの名前に“シャーマン”と付いていた事から、何か呪術的な攻撃を仕掛けてくるのではないかと危惧していた。その予想は当たったようだ。そして、オブリビオンは骨だけの顔で笑うと、そのまま杖を一振りする。
刹那、杖から禍々しい光線が月見へ放たれる。この光線に当たった者は石化してしまうという、シャーマンらしさ全開のおぞましい攻撃であった。月見は、その光線に包み込まれてしまう。オブリビオンは、してやったり、という顔をする。
 だが、その表情はすぐに崩れた。
 月見は石化していなかった。一体、どういう事なのか。杖に何か問題が生じたのか。その事が分からないまま、ニトロの大剣で粉々にされてしまう。
オブリビオンは、光線を当てる月見を甘く見ていた。先述の通り、彼女は聖者である。その経験で培った呪詛体制が、光線の効果を無効化したのだった。
 そうこうしている内に、オブリビオンとの戦闘は佳境に入って来た。数は大分減ったものの、まだ闘いは続いている。敵もやぶれかぶれになっているのか、特攻するかのように迫ってくる。
(まだ諦めないのですね…)
 その執念に、月見は呆れや嫌悪の入り混じった感情を抱く。
(けれど、何の罪も無い人々を苦しめた報いは受けてもらいます!)
 彼女は、その決意を更に固め、照準を合わせて銃撃する。
 だがここで、ふと気になるものを見かけた。この大通りには脇道があるのだが、その近くは戦いによって生じた粉塵が散らばっている。その上に、うっすらとだが、足跡が残っていたのである。しかも、どうやらオブリビオンのもののようだ。そして、それが意味するものは……。
 月見の顔が青ざめた。
 そして、その脇道では、月見の予想通り、オブリビオンが息を潜めていた。
(くくく……。闘いに集中して、俺が逃げた事に気付いていないようだな。今から仲間を大勢呼び、背後から不意を突いて一気に襲う!これで憎き猟兵どもは全滅よ)
 脇道から、猟兵達が戦っている様子を見てほくそ笑む。そして、この事件に関与していない、他のシャーマンズゴースト・ボーン・リボーンを呼びに行こうとして振り返った瞬間――。
「一体、どこに行くつもりだ?」
 そこには、あの巨大な女性が佇んでいた。ルリ・アイカワ(ウォーマシンのバーバリアン・f05097)だ。彼女も駆けつけたところ、仲間を呼びに行こうとしたオブリビオンと鉢合わせる形となった。そして、一人だけ戦線離脱した様子を見て、戦闘傭兵として長く活動していた経験から、仲間を呼ぼうとしている事に気付く。
「残念だが、そこをどいてもらおうか」
 そして、アスファルトから何かが現れた。ああ、何と、白骨化した馬である。高さは3~4mはあり、ルリよりも一回りも二回りも大きい。ピョーンとオブリビオンは跳躍して、白馬の王子様よろしく跨る。首を上に向けて見上げるルリに対し、オブリビオンは首を下へ向けてルリを見る。
「そんじゃあ、あばよ!」
 そうして、ルリの方向へ突進する。ルリを避けて通る、などと気遣いをするような相手ではない。握りこぶし大の蹄で踏みつけて通ろうとしているのだ。
 ダダダダダと地響きを鳴らし、ルリに接近する。そして、衝突になった瞬間。
 ボキリ!
 何かが折れるような音がした後、白骨化した馬はバランスを崩して倒れる。乗っていたオブリビオンは投げ出されて倒れる。何が起きたのか見ると、馬の脚が、まるでバットのようにボッキリと折れていたのであった。
(まぁ骨なら叩き折ればいいたけだろうが)
 ルリは、そう考えていた。自身よりも遥かに大きい生物が迫り来る中でも冷静さを失わず分析し、骨を折るという選択をしたのである。折れた脚は一本だけであったが、それで十分だった。三本足では、走ることなどできない。つまり、逃走の手段は断たれた事になる。最小限の動作と最小限の力を持ってして、オブリビオンを的確に追い詰めていく。それは、幾多もの戦場で培った能力と形容できるかもしれない。
 さて、けん制にはなったものの、相手はまだノックダウンした訳ではない。憎悪の表情を浮かべながら、ゆっくりと立ち上がる。ルリの本能が、このオブリビオンは手強い事を警告する。だが、一体何をしてくるのか
(今は1体のようだが、目標が増えるようなら不利になるかもしれない。それに、シャーマンという位だから亡霊やら死霊とか有り得そうだ。さて、未知数の相手にどうしたものか)
 素早く、思考を巡らせ、最適解を見出そうと試みる。
 二人は見つめ合ったまま、動かなかった。
 そして、戦いは1秒の間に起きた。
 オブリビオンは骨を予備動作無しで飛ばし、ルリの隙を突こうとする。0.17秒。
 それを見たルリが相手へ突進し、射撃戦から近接戦へ持ち込もうとする。0.18秒。
 突撃する際、体を捻って回避する。0.35秒。
 そのまま、オブリビオンとの距離50cmまで接近する。0.52秒。
 速力を落とさないまま突撃しつつ、握り拳を後ろに引いて構える。0.78秒。
 そして、鎧すら砕く程の力で握り拳を相手へ叩き込む。0.91秒。
 オブリビオンは拳を受け、一気に亀裂が走り、粉々に砕け散る。0.98秒。
 突撃を止め、拳を打ち込んだままの姿勢で停止する。1.00秒。
 ……近くで戦闘音が響く中、その場所では暫しの静寂が訪れた。
 しかし、まだ戦闘は終わっていない。ルリは、仲間達と合流すべく、そのまま脇道を出て、大通りへ足を進めたのだった。その姿を見た月見は、ルリが逃走したオブリビオンを倒した事を察し、安堵のため息をついた。
 だが、戦場では油断は禁物だ。ルリの姿を見るや否や、近くに居たオブリビオンが反射的に振り返る。危機に瀕した為に何らかの本能が働いたのか、狙いは他の猟兵達からルリへ向いた。そして、全てのオブリビオンが、残っている骨を勢いよく飛ばす。ルリの頭にある単語が浮かぶ。“手榴弾”。手榴弾とは、爆発の際に破片を勢いよく飛ばす事で、相手を殺傷する道具である。だから、テロリストが自家製の爆弾を作る際、殺傷力を増す為に釘やパチンコ玉を混ぜ込むのである。戦場で飽きる程目にした凶器が、無数の破片が、四方八方からルリに向かって飛んで来ていた!
「私は誓おう。騎士とは弱きを守り、決して挫けぬ黄金の精神を持つ者だと!!」
 その時、高貴なる声が聞こえてきた。その声が響くや否や、脇道から飛び出した一つの影。リリィ・オディビエント(パラディンナイト・f03512)だ。リリィはルリの前方に立ち、バスターソードと白銀の大盾を構えて対峙する。下段ガードと呼ばれる防御手段によって、より完璧な守りを形成する。だが、それでも相手の攻撃は苛烈極まるものであった。鋭い破片が防御の姿勢を取るリリィに降り注ぐ様は、機関銃で城壁を打ち破ろうとしているかのような光景にさえ思えた。
 猟兵達は、目を丸くし、息を飲む。
 誰かが、止めに入ろうとする。しかし、リリィはその方を見て、首を横に振る。自らが、全ての攻撃を受け止め、皆を守ろうと言うのだ。この手の届く全てを守る。その信念、または騎士道を貫くべく、あえて不利な状況でも、じっと耐える。
 その猛攻は、時間にして1分も掛かっていなかった。だが、この場に居た全ての者――猟兵、オブリビオンの双方――にとって、それは、10分もの時間に感じられたのである。
 そして、全ての破片が撃ち終わり、アスファルトの道路へ音を立てて落ちる。だが、オブリビオンは追い打ちを掛けるかのように、すぐそばに落ちていた三輪車をリリィへ投げつける。トゲトゲの装飾やプロペラなどの突起が付いたソレは、もはや凶器である。戦闘で散々やられた為か、もはや、戦闘開始直後のような気高さは微塵も無かった。白銀の大盾に何度もぶつけ、ガン、ガン、と、大きな鈍い音を響かせる。
 やがて、オブリビオンの猛攻は終了した。ゼェゼェと息を荒げるオブリビオンの集団。やったか?……だが。
「ふっ、悪知恵の働くやつのようだが、やり口が幼稚と言わざるを得ん」
 リリィは顔を上げ、思わずニヤリと笑った。
 ひぃぃぃ!と、声を上げるオブリビオン。あれだけの攻撃を受けてなお立っているリリィに、ただただ恐怖するしかなかった。リリィがオブリビオンに近付くと、三輪車の残骸を拾い、盾にしようとする。それは金属で装飾を施した一品。――しかし。
「だが所業は断じて許せん、首謀者としてその首で責任を取ってもらうぞ!」
 そのまま手に持っていたバスターソードを天高く掲げ、そのまま勢いよく振り下ろす。刹那、オブリビオンは三輪車ごと真っ二つに切り伏せられた!『騎士の誇り(ナイト・オルゴーリョ)』により身体能力が上がったリリィにとって、固い三輪車など、もはや紙きれ同然であった。
 そうしてオブリビオンが唖然とした表情でリリィを見ている時である。
「おや、よそ見をしてはいけませんよ」
 シンは紳士的な態度で、わざわざオブリビオン達に警告した。しかし、かなり長い事戦っている気がしないでもない。もしかすると、少し消耗しつつあるのかもしれない。ふと、そんな思いが頭をよぎった。
「この後、本命が待ってますので。いつまでも貴方たちの相手はしてられませんよ」
 その言葉を皮切りに、猟兵達は再び戦闘態勢を取る。その後の戦いは、正に激戦と称しても差し支えなかった。影の追跡者と大蛇がオブリビオンを拘束し、シンと月見が銃撃する。そして、ニトロとルリとリリィが各個撃破に移る。
 その連携は、長年一緒に行動をしてきたチームのようにさえ思えた。
 不適切かもしれないが、その戦い振りは、芸術的にさえ感じられた……。

 数分後、戦いは収束した。大通りだった場所は、アスファルトが割れ、ガラクタを貸した三輪車が無数に転がり、数多のオブリビオン達が倒れ伏していた。青かった空は、いつの間にかオレンジ色に染まっている。
 ルリは、その光景を眺めつつ、ユーベルコードを使わずに済んだ事に対して、思いを馳せていた。シンと月見とニトロは、大量のオブリビオンを何とか倒せた事に、安堵を覚えていた。
「く、くそっ……」
 悔しそうに呻くオブリビオンが1体居た。予知にて、勇敢に立ち向かった親をブースターで加速して突撃して殺していた、あのオブリビオンである。
 そこへ、歩いてくる二つの影。リリィと木目だ。
「くっ……、殺せ」
 だが、まだ殺す事はしない。最後に、気になる点があったからだ。それを聞かない事には、後味が悪くなる。
 リリィが口を開く。
「ところで、どうして三輪車で親子を襲おうとしたのだ?」
「それで、何故に三輪車……」
 リリィの問いに、思わず木目も質問していた。この謎は二人とも気になっていたのだった。いや、もしかすると、ここに居る猟兵達も、気になっていたかもしれない。
 それを聞いたオブリビオンは、最後の遺言とばかりに、その理由を述べ始めた。

 風評被害と呼ばれる現象がある。
 読者諸君も、ニュースや新聞、またはネットなどにより、何度も目や耳にしているだろう。ここでは、風評被害の言葉が世間に定着した経緯や、その詳しい意味については述べないでおく。只、その風評被害を利用して、何を企んでいたのかを記そう。
 グリモア猟兵が予知した通り、この町は三輪車の製造が盛んである。即ち、それが町の資源になっているという事だ。そんな中、その三輪車を使ったイベントにおいて、三輪車に関係のある出来事で甚大な被害が出た場合、どうなるか。それを正確に述べていくと、次のような事になる。なお、これは、ほんの一例に過ぎない。
 まず、その事件がニュースや新聞で連日報道される事になる。すると、人々は、その三輪車が町で製造された物とは関係無いにも関わらず、それと関係のあるものとして思い込む。
 その結果、三輪車の売買が滞る。消費者も、関係あるものと思い込んでいる為に、購入したいとは思わない。売れない以上、売り手も仕入れようとは思わない。また、消費者はその町で作られた三輪車が売り場に置かれているというだけで、売り手にクレームを付ける。その為に、ますます仕入れようとは思わなくなる。例え、何の問題が無いと主張したとしても、消費者は「何か隠しているのでは」と疑い、信用しようとはしない。のみならず、「三輪車で被害に合われた方の事を考えて、三輪車に乗るのは自粛しよう」という考えが出てくる事で、更に三輪車は乗らなくなってくる。
 こうした事実が連日連夜、報道される事により、人々は更に不安を煽られ、長期間に渡って、三輪車が売れない日々が続いていく。
 こうした現象を利用し、イベント会場の人々のみならず、町全体を恐怖に包み込もうとしたのである。

「これが、俺達の目的だ……」
「そうか――」
 その理由を聞き終えると、リリィは手に持ったバスターソードで、最後の1体を介錯したのであった……。

●降臨
 だが、まだ事件は終わった訳では無かった。
 突如、澄みわたっていた空が、突如として灰色の雲に覆われる。そして、雷がゴロゴロと鳴り響き、不穏な雰囲気を醸し出していた。刹那、猟兵達の背筋が氷でえぐられたような、そんな不快な感覚に襲われる。これは、只の異常気象ではない。
 風が強く吹き始め、大通りに転がっていた三輪車がゆっくりと、引きずるように移動する。空気を切る音が町全体に響き、猟兵達の髪が掻き上げられる。
 ……闘いは、最終局面を迎えようとしている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『灼紅の女王・ブラッドクィーン』

POW   :    敵から護る赤黒くおぞましきモノ
【敵対 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【絡みつく赤黒き触手の群れ】から、高命中力の【高粘着性の強酸溶液】を飛ばす。
SPD   :    解放されてはならない狂気の姿
【世界に隠匿された真の邪神の身姿 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    死しても逃さぬ邪悪なる降霊
【 自身に挑んで返り討ちにあい支配された敵】の霊を召喚する。これは【生前に使用したユーベルコード】や【得意としていた武器】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアイリス・スノーキャッスルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 その時、灰色の空が光ったかと思うと、雷が猟兵達の眼前に落ちてきた。周囲は閃光に包まれ、思わず目を閉じてしまうかもしれない。
 だが、瞼を開けた際、そこに居た存在を目にする。
 全身を血液のような深紅のドレスで包んだ、一人の貴婦人らしき女性。長い金髪は腰まで伸びており、麗しい人物に見えてしまうかもしれない。だが、頭部から伸びた黒い角と、黒目に赤い瞳孔を持つ瞳を見れば、その女性に当てはまる言葉は、麗しい、ではなく、邪悪、である事を察するあろう。
 そもそも、ドレスの裾から伸びている”モノ”を見れば、その女性が人間でない事は人目で分かる筈だ。正常な人間なら、例え頭が悪くても、気付く筈である。ドレスの裾から伸びているのは、無数の赤黒く、ブヨブヨとした触手の群れなのだから。それは意志を持つかのように蠢き、まるでヒルのようだった。
 そうして彼女、否、灼紅の女王・ブラッドクィーンは、猟兵達を蟻でも見るかのような目つきで眺めた。
「ふふ……。どうやら、私を降臨させようとしたオブリビオン達は、上手く儀式を行えなかったようね。お陰で、私は不完全な状態で現れる事になったわ……」
 そういった直後、彼女は触手で、近くにあった三輪車を掴んだ。その三輪車は、トゲトゲの装飾やプロペラ、果てにはブースターが付いている。このカスタムをするのに、長い時間を要した事を思わせる一品だ。しかも、金属でコーティングしている為に、とても頑丈である。
「……ハッ!」
 吐き捨てるように笑うと、そのまま三輪車を、ティッシュペーパーのように潰した。グシャリと音を立てて丸まり、遠くへ放り投げる。まるで、学習机に座った子供が、丸めたティッシュペーパーをゴミ箱へ投げ捨てるかのように……。
「何が三輪車よ。全く、実に馬鹿げているわ。邪神を降臨させる~何て言っているけど、結局、自分達の利益の為に活動してただけじゃない。その結果、こうして降臨は不完全……。やっている事が、幼稚よ。ばっかみたい」
 その言葉は、人間の悪意を凝縮させたものだった。
「ん、私の言葉に、怒りを感じるかもしれないわね?けど、貴方達に、私の事をとやかく言う資格なんてあるかしら?グリモア猟兵の予知を聞いた際、貴方達は何と思ったか、胸に手を当てて、よ~く思い出しなさい?きっと、『ははは、三輪車で人を襲うなんて、面白過ぎるだろう!』『え~、三輪車で人を襲うなんて、このオブリビpン、ちょっとおかしいんじゃないの?』……。そんな事を考えたんじゃないかしら?だから、貴方達に、私の言動に対して怒る権利なんか無いのよ」
 そう、独白にも似た呟きを漏らした後、猟兵達を睨む。その眼光は矢のように鋭く、普通の人間なら、心筋梗塞を起こしそうな怒気を孕んでいる。
「さて、せっかく降臨できたのに、それを憎い猟兵達に邪魔されてしまっては、たまったもんじゃないわ」
 ――だから、貴方達を、殺してあげる。

 最終決戦の火蓋が、切って落とされた。
ルリ・アイカワ
POWにて対抗

このオブビリオンの言う通り怒る権利は無いだろう
ついさっきまでは
追加報酬として要求をしようとした改造三輪車のスクラップを一つ潰してくれた
文字通りスクラップではあるが、うちから見れば武器や防具で宝の山々でもあった
これは適切な武力を持ってして報復をする理由となるだろう
「さてどうしてくれようか」

とはいう物の近接戦は危険なのは明白
機動力が無いうちでは宝の山の一部になりかねない
徹底して射撃戦を挑むことにしよう
【2回攻撃5】【誘導弾2】【援護射撃4】【範囲攻撃2】【一斉発射2】を惜しまず使って行く事にする

この手の相手が機械のうちが算出する攻撃プログラムをどう感じ取るか未だに謎のままだ


月見・桜
【心境】
やはり召喚されてしまいましたね…
凄い殺気を放っていますが、怯んではいけません!
平和を取り戻す為に最善を尽くしましょう!

【行動】
わたしは、後方で皆様を援護を担当します!
理由は分かりませんが、敵の周囲に邪悪な感情の霊が集まっています。どうやら敵も、霊を使った攻撃を行う事が出来るようです!
なので、あの霊達はわたしに任せてください!
霊式火縄銃で〈スナイパー/援護射撃/見切り〉を合わせた攻撃を敵の霊に行いつつ、〈盾受け/呪詛耐性/残像〉で攻撃を防ぎます!
〈祈り〉を乗せた攻撃も有効かもしれませんね!
《穿つ砲竜の霊》はボスを狙って砲撃してもらいます!


アドリブ・共闘歓迎です!


ニトロ・トリニィ
【心境】
ん?…うわぁ!なんか変なのがいる…
雷に驚いて目を閉じた瞬間に現れのか…
凄い邪悪な念を纏っているし、あれがボスみたいだね。

【行動】
今回も仲間を援護するよ!
大技はみんなに任せた!
〈地形の利用/目潰し〉《念動力》の合わせ技で敵の行動を制限するよ!
風を操って砂の竜巻を起こし、敵の視界を遮るとかかな?
あの触手は何となく危険な気がするよ… 〈盾受け/激痛耐性/かばう〉で防ぎつつ、絡まったら体の形を変えてなんとか脱出するよ!
〈毒耐性〉とかも発動した方がいい気がする…
攻撃は〈2回攻撃/鎧砕き/なぎ払い〉を使って攻撃するよ!
「来たばかりで悪いけど、骸の海に帰ってもらうよ!」

アドリブ・共闘歓迎です!


木目・一葉
格が違う
不完全?十分すぎる脅威だ
「そんなに不本意ならご退場願いたい」
震えそうになる脚、でも引き下がれない

・戦闘
相手のUCは全て厄介だ
だが利用できるものがある
それは邪神の身姿への変化
相手がこれを使用したら自分は『妖剣解放』による高速移動で【おびき寄せ】を行って囮となりつつ、衝撃波で触手の群れの迎撃に努める
だが高命中率を誇る触手に対し衝撃波だけでは心許ない
【地形の利用】で、敵の乗ってた三輪車や周辺の瓦礫や障害物も盾代わりにし、またそれらが砕かれる瞬間のどさくさに紛れ『影の追跡者の召喚』を放っておこう
それが接触したら相手の隙を見計らって『影人の縫い針』を放つ
この囮行為とUCで仲間が有利になればよいが


シン・ドレッドノート
いや、まぁ。特に独白に対して怒りはかんじませんが。
どんな手段であれ、邪神の召喚は許しませんし、邪神は滅するだけです。

先ほど【乱舞する弾丸の嵐】で複製した銃を引き続き制御。
「魔を祓う力を…」
『“永遠の輝き放つ星”エバーグリーン・スター』の清冽な破魔の力を引き出して銃に宿し、距離をとって触手の根本を狙い【異次元の狙撃手】で狙撃します。

一か所に留まらないよう『閃光の魔盾』で防御しながら移動しつつ、敵の行動を阻害し、味方を支援するように援護射撃に徹します。

射撃しながら、地面に銃弾の跡で破魔の五芒星を描きつつ、敵が弱ってきたところに額を狙ってとどめの一射を。
「永劫の闇へと還れ、ブラッド・クィーン!」


リリィ・オディビエント
・心情
そうだな。確かに思ったことだ。だが、しかし。
自身を想い焦がれた者を小馬鹿にする言い草、それを口に出すか否かは軽くはないぞ。
例えそれがやつらにとって本意であろうと、私はお前を許しはしない!

・戦闘
悪辣なこの女王にやることはただ一つ。
  P O W で 殴 る
『真っすぐいってぶった斬る!!』

真の姿の一部を解放。UCによって黒い風を纏いながら、強靭な兎人の足はその脚力と風で素早く動き、人狼の強大な腕で剣を振るう。

事前準備として鎧の装備を纏い、武器を黒剣に持ち変える。特注のこの剣は真の姿に呼応して、禍々しいオーラと力を解放する。

信念のあった、先ほどの奴らの方がよっぽど気高かったよ

協力・アドリブ歓迎



●決戦前の一時
 木目・一葉(生真面目すぎる平凡な戦士・f04853)は、眼前に居るオブリビオンを見つめ、息を飲む。否、見つめているのでは無い。目を反らす事ができないのだ。もし、目を反らしてしまえば、その瞬間、その威圧感によって、精神が打ち砕かれてしまう……。そう感じさせる程に、相手の存在感は強大だった。
 ――格が違う。
 頭の中で、その言葉を、はっきりと、思い浮かべる。それは、何度も、何度も、リピートされていく。録音したカセットテープの音源を繰り返し聞くように、その単語が度々出てきてしまう。
 ――不完全?充分すぎる脅威だ。
 グリモア猟兵の予知によれば、先程のオブリビオンを倒せば、召喚されるオブリビオンは力を十分に発揮する事ができない旨を述べていた。だが、そんな事は無かった。不適な笑みを浮かべるソレは、脅威以外の何物でもない。一体、人間の悪意を凝縮した邪悪な笑みを浮かべ、ドレスの裾から無数に伸びる巨大な触手を前にして、脅威でないなどと、誰が言えるだろう。
 普通の人であれば、その存在に恐怖し、全身を震わせ、そのまま気絶してしまう事だろう。木目も、そうした人々と同じく、恐怖していた。脚が震えそうになる。立っているのも辛い状態だ。だが、恐怖に侵されつつある自分を、強く保とうとする。
 ――ここで引き下がる訳にはいかない。
 それは、猟兵としての覚悟であった。本当は分かっている。自身が、自信が無く、気の弱い人物であるという事を。だからこそ、ボーイッシュに振舞っているのだと言う事を。……だが、彼女は、自身の理想とする姿に向かって背伸びしてきた。もし、映画やアニメに登場する格好良い人々なら、絶対に震えたりはしない。その事が、今、木目が立ち向かう力になっていたのだ。
 
 ニトロ・トリニィ(楽観的な旅人・f07375)は、この状況においても、マイペースかつ楽観的に思える態度を崩さなかった。
 ――ん?…うわぁ!なんか変なのがいる…。
 それが、眼前の邪悪なオブリビオンを目にした時、最初に思った事だった。確かに、その姿は異形と言っても差し支えなかった。頭から生える二つの黒い角、黒目に赤い瞳孔、ドレスの裾から伸びる巨大な赤い触手……。その姿は、正に邪神と形容して余りある外見であった。
 ――雷に驚いて目を閉じた瞬間に現れのか…。
 オブリビオンが降臨する際、一際大きな雷が落ちた。それは閃光弾のように輝き、辺りを白く染め上げていた。その光は強烈であり、後日、ここから二つ隣にある町で、その光を見たという者が現れる程だ。それ程の光が急に発生したのだ、ここに居る猟兵は恐らく、反射的に目を閉じてしまっただろう。その直後に、この邪神が現れた。まるで神話のワンシーンのように思える光景に、思わずそう考えてしまったのである。
 ――凄い邪悪な念を纏っているし、あれがボスみたいだね。
 その神話の主要人物となるオブリビオンは、黒目に赤い瞳孔をした眼で猟兵達を睨みつつ、不適な笑みを浮かべている。それは正に、邪悪の権化と形容して差し支えなかった。ニトロには、その邪悪さが念として見えるような気がした。その姿を見ている内に、心の中に、更なる緊張感が生じる。まるで、胸を切開して心臓を露出したような……、そんな気分になってくる。口を一文字に結び、目の前の敵を見据える。
 
 ルリ・アイカワ(ウォーマシンのバーバリアン・f05097)は、オブリビオンの言う言葉について、冷静に思案していた。
 ――このオブビリオンの言う通り怒る権利は無いだろう。
 確かに、相手は暴言を吐き捨てたとはいえ、主張には一理ある。予知を聞いた時、三輪車に乗って人々を蹂躙するオブリビオンが居ると聞き、何と思ったか。にも関わらず、掌を返してこの女王に目くじらを立てるのは間違っているのではないか。ルリ自身も、三輪車に乗ったオブリビオン達に対して、幾らか思うところはあった。だから、その事を否定しないし、眼前の相手を否定しない。……筈だった。
 ――ついさっきまでは。
 チラ、と、横目で大通りの奥を見る。瞳に移ったのは、まるで0点の答案用紙を丸めてゴミ箱に入れたかのような形になった、三輪車であった。それは、吹き付ける強風によって、ガラン、ゴロン、と、鈍く大きな金属音を響かせて転がっていく。
 ルリは、この依頼が終わったら、追加報酬として、その改造三輪車を要求しようと思っていた。これらの三輪車は、猟兵達の戦闘によって、多少の損壊を被っていた。しかし、ルリからしてみれば、ブースターや重金属の装飾といった武器や防具など、貴重な物が数多く装着された宝の山であった。戦場では使えるありとあらゆる物を活用してきたルリにとって、そうした戦利品は貴重な代物だった。だが、その内の一つが、まるで貴重な歴史資料を古びた書物として燃やすかの如く、グシャグシャに潰してしまった。これは適切な武力を持ってして報復をする理由となるだろう
 「さてどうしてくれようか」
 目の前に居るオブリビオンを睨みながら、そう呟かずにはいられなかった。

 月見・桜(妖狐の聖者・f10127)の心には、戸惑いに似た感情が沸き上がっていた。
 ――やはり召喚されてしまいましたね…。
 その事は、グリモア猟兵の言葉で、既に知っていた筈だった。しかし、いざ直面してみると、そう思ってしまう。それ程までに、相手の存在感が大きかった。まるで、この世の頂点に君臨する者だと言わんばかりの態度は、人間の傲慢さを詰め込んだようにも思われる。そうして嘲るように睨む異形の瞳は、まるで小動物を捕食する蛇のように狡猾だ。歪んだ口元は、相手への軽蔑を如実に示している。口から吐く白い息すらも、猟兵達と同じ空気を吸うのを拒むかのように、口元を覆うかのように吐き出されていく。恐らく、オブリビオンは、そうした態度を取る事で、猟兵達に耐えがたい恐怖を植え付け、戦意を削ごうとしているのだろう。
 だが。
 ――凄い殺気を放っていますが、怯んではいけません!
 月見は、自身を鼓舞して、オブリビオンが放つ殺気に負けないよう、気を強く持とうとする。彼女は妖狐の聖者にして戦巫女。人々に恐怖を与え苦しめる敵を、決して許さない。その身を持ってして人々を守って来た月見にとって、相手は倒すべき存在。故に、相手の殺気に負ける訳にはいかない。
 だから、月見は毅然と、悪逆非道なるオブリビオンを見据える。相手は、お前達に何ができる、と言わんばかりの顔のまま、悠然と宙に浮いている。呪術の心得がある事もあり、相手が相当手強い存在である事を、強く痛感している。だからこそ……。
 ――平和を取り戻す為に最善を尽くしましょう!
 決意を新たに、対峙するのだった。

 シン・ドレッドノート(真紅の奇術師・f05130)は、相手を冷静に眺めていた。その姿は、正に紳士のような雰囲気を思わせる。しかし、目の前に居るは、凶悪なオブリビオン。ソレの身に纏うは、この世の邪悪を凝縮させたような、息苦しくなる程の狂気。二つの相反する雰囲気が、火花を散らすように対峙する。しかし、オブリビオンの存在そのものが人々を震え上がらせかねないのに対し、シンは悠然と構えている。しかし、相手が強敵である事を察しているのか、緊張が体中に張り巡らされていた。
 ――いや、まぁ。特に独白に対して怒りはかんじませんが。
 そんな状態でも、淡々と、独白に対する考えを頭に浮かべる。何故、急にあのような独白をしだしたのかは定かではない。何か深い意味があるのだろうか。しかし、そんな事はシンにとって、どうでも良かった。少し面食らったところもあるが、深くは気にしないでおこうと思った。シンが思うのは、ただ一つのシンプルな事だった。
 ――どんな手段であれ、邪神の召喚は許しませんし、邪神は滅するだけです。
 邪神は、人々に恐怖と混乱を与え、平和を破壊する存在。だからこそ、それをこの世に呼び出す事は禁じられるし、顕現しようものなら討ち取られる。遥か古代より神話として語り継がれている事を、オブリビオンを猟兵が討ち取るという形で再現するだけだ。悪人相手に、狙った獲物は必ず入手する盗賊稼業。ならば、今回は邪を相手にしてみるのも、悪くないかもしれない。
 シンは、目の前にいるオブリビオンを、ジッと見つめた。

 リリィ・オディビエント(パラディンナイト・f03512)は、眼前の敵を見据えた。不適な笑みを浮かべつつ、宙に浮く異形に無数の巨大な触手。膨らんだ風船のように存在するソレは、邪悪そのものであった。相手は、軽蔑した眼差しで猟兵達を見回している。
 リリィの中で、敵が言った事が、何度も頭の中で繰り返される。三輪車に乗ったオブリビオン達に対して、猟兵達は何と思ったか。そして、そう思った猟兵達に、自分のこうした態度を非難する筋合いは無いのだ、と。
 ――そうだな。確かに思ったことだ。だが、しかし。
 彼女は、キッと宙に浮かぶ強大な相手を見据える。その眼差しは鋭く、邪悪なる者を討ち取らんとする、誇り高い騎士を思わせた。否、それはまさしく、騎士そのものだった。自身の胸の内に、熱い思いが煮えたぎる。
 ――自身を想い焦がれた者を小馬鹿にする言い草、それを口に出すか否かは軽くはないぞ。
 降臨させる為に、事件を起こしたオブリビオン達。荒唐無稽だが、降臨に掛けるだけの想いがあった。だが、この異形はその想いを小馬鹿にし、尚且つ、猟兵達が考えていたかもしれない思考を逆手にとって自己弁護を図っている。相手を馬鹿にする権利があると言う口振りには、人としての思いやりが全く無い。まさしく、悪であった。勿論、これだけの邪悪さを兼ね備えた存在を降臨させる事こそ、死んだオブリビオン達の本懐かもしれない。……しかし。
 ――例えそれがやつらにとって本意であろうと、私はお前を許しはしない!
 騎士道に反する、否、人の道に反する外道を、絶対に許す訳にはいかない。だから、倒す決意を固め、相手へ鋭い眼差しで睨んだ。その目は、狼のように険しかった。

 それぞれが想いを抱き、目の前の邪悪な存在を見据える。
 灰色の雲に覆われた空は地平線の彼方まで広がり、地上を暗く染め上げている。
 雷の轟く音と、風が強く空を切る音が、町に響き渡っている。
 冬の寒さも、風の冷たさも、雷の音も感じさせない程の緊張が、場を包み込む
 そして、再び大きな雷が大通りへ落ちた時。
 闘いの火蓋が、切って落とされる――。

●決戦~開幕~
 だが、女王は無言で遥か遠くの前方を見つめている。そこに居たのは、リリィである。闘いの前に、レベランアーマーを装着し、バスターソードからナイトメアソードへと持ち替えていた。その体は黒い風で覆われ、狼の腕に付いた体毛がカミソリのように鋭く尖り、プロボクサーのような筋肉が浮かび上がる。『黒風鎧装』だ。その姿は、悪しき女王を討ち取らんとする騎士そのものであった。その姿に呼応するかのように、ナイトメアソードからオーラが迸る、それは名称の通りに禍々しく、見ているだけで悪夢へ誘われそうであった。ピンチに陥る事が殆ど無かった為に、『黒風鎧装』の力は十全に発揮されず、真の姿からは程遠い。だが、相手を討ち取るには充分すぎる程の装備だろう。
 刹那、その姿を見た女王の中に、一抹の不安がよぎる。だが、その感情を抱いた事に驚き、すぐさま考えを振り払い、自嘲気味に笑う。きっと、気の迷いだろう。
 そうして、互いに睨み合う事数秒……。
 リリィがアスファルトを力強く蹴って狼の如く突進した!
「来たか……」
 相手はニヤリと笑い、迫り来るリリィを見つめたまま動かない。
 リリィは兎特有の強靭な脚力を持ってして、風を切るように突っ込んでいく。
「私は後方で援護をします!」
「大技はみんなに任せた!」
 月見とニトロは張り裂けんばかりに叫び、シンが悠然と構える。
「魔を祓う力を…」
 刹那、先程『乱舞する弾丸の嵐(ハンドレット・ガンズ)』で複製した無数の銃を相手に向けて照準を合わせる。
リリィが背を向けて突進する中、全ての銃口が相手へ照準を合わせた。
「自分の使う道具のメンテナンスは大切ですよ?」
 シンの指にはめた指輪――“永遠の輝き放つ星”エバーグリーン・スター――についた大粒のエメラルドから清冽な破魔の力が引き出され、宙に浮いた銃が心なしか、鈍い光沢を放った気がする。それは錯覚か、否、違う。それはガソリンを満タンにしたスポーツカーのように、激しく動く為のエネルギーが装填されたのだ。
 そして、取り出したるは怪盗の単眼鏡。怪盗として活動する際の必需品ともいえるそれを、ティーカップを持つかの如く指先で掴み、優雅に装着する。
 謎の動作に眉を潜めつつ、相手はユラリと、太い触手の群れを花びらのように広げた。ガードのつもりだろうか。否、違う。赤黒い触手から放たれたるは、高粘着性の強酸性液。ホースで庭に水を撒くが如く、リリィに降り注ごうとする!
「ターゲット・ロック…目標を狙い撃つ!」
 刹那、『異次元の狙撃手(ディメンジョン・スナイパー)』が発動され、幾多もの銃口が火を噴く。リリィの頭上を無数の弾丸が駆け抜け、リリィへ降り注ごうとした液体を打ち抜いて霧散させ、そのまま触手へと一直線へ飛んでいく。触手の群れへ機関銃の如く銃弾が浴びせられ、オレンジ色の火花が迸る。単眼鏡のレンズ越しに見えるは、背を向けて走り続けるリリィと、巨大な赤い影、そして数多もの銃弾と触手に打ち付けられて発せられる閃光であった。
「ぐっ……」
 相手が呻くと同時、ブチ、ブチ、と気味の悪い音が木霊する。そして、何かがちぎれた音がした後、巨大な触手の一本が、アスファルトへ鈍い音を立てて落ちた。それはトカゲのようにピクピクとのたうっていたが、やがて動かなくなる。
 それでも尚、銃撃は止みはしない。
「おのれ!」
 それはシンが放つ無数の銃撃に対してか、それとも触手の根本を集中的に狙う作戦に対してか。ただ、憎悪を込めた視線を、触手越しに向けていた。
 その間にも、リリィは勢いを緩める事が無いまま向かってくる。何としても、到着される前に潰しておきたい。シンの放つ銃撃に眉を潜めつつも、まだ残っている触手をめったやたらに振り回そうとする。
 あの触手は危険な気がする……。ニトロは、その触手を見ながら危機感を抱いた。触手から放たれるのは鉄をも溶かす液体である。それに、丸太のような触手で殴打されれば、ひとたまりも無いだろう。
 それに気づいたルリは、女王が正面に来るように仁王立ちし、クイックファイヤシステムType-Cを作動させ小型拳銃による射撃を行った。軽い銃声音が戦場に反響する。
 触手は、その衝撃に思わず動きを止める。シンが撃ち続けている銃撃とは、違う弾だ。その感触を与えた主を探そうと、触手の隙間から五人の方を見る。すると、大柄の女性の姿が見えた。
 成程、あいつが撃ったのか。しかし、その小さな拳銃で私の触手を止められると――。
 しかし、女王は気付いていなかった。それが、けん制である事に。すぐさま、ルリはマルチウェポンシステムを取り出して構える。そこに、多種多様の火器が収められているのが見えた。
 拳銃、ライフル、アサルトライフル、スナイパーライフル、マシンガン、サブマシンガン、ショットガン……等々。
 その謎めいた銃器を見て、本能的に察する。不味い――と。
 刹那、新たなる銃撃の嵐が戦場を駆け巡る。内蔵された多種多様の火器が一斉に火を噴き、ガス爆発のような音を轟かせて場に響き渡る。閃光が雷のように輝き、戦場を白く染め上げる。それは怒涛の猛攻、次々に繰り出される弾丸に、ただ触手で防御の姿勢を取ることしかできない。光り輝く戦場で、ルリは射撃の構えを取ったまま、冷然と目の前にいるターゲットに狙いを定めたまま打ち続ける。
 その猛攻は、暫くの間続いた……、……。
 すると、銃撃が一瞬だけ止んだ。今だ!一瞬の好機を逃さんとばかりに防御の姿勢を解除し、高粘着性の強酸性液を振り撒こうと触手を振り上げる。
 だが、その時視界に入ったのは、ルリが携帯していたソレを装備して女王に向ける姿だった。バズーガ?いや、そんな生易しいものじゃない。
 ルリが取り出したのは、艦載用ニードルミサイル携行型だ。本来なら戦艦に乗せる誘導質量弾を、携行用にした物である。運動エネルギーを活用して対象を破壊するというその兵器は、先程の火器を遥かに凌ぐ威力を有する。繰り返すが、この誘導質量弾は、戦車に乗せるものでもなければ、軍用機に乗せるものでもない。戦艦である――。
 ルリは、引き金を引いた。
 遥か遠くの町にまで響く爆音を轟かせて誘導質量弾が発射される。それは一瞬で女王の体へ接近、女王は目を丸くして、自身のすぐ傍にまで接近した誘導質量弾を見た。その脅威故か、一瞬、時が止まったかのような錯覚さえ覚えた。
轟く爆音、舞い上がる砂ぼこり。天に舞い上がって霰のように落ちるアスファルトの破片。
 ……だが、まだ女王は倒れていなかった。自慢の紅色をしたドレスはボロボロに破け、触手の半分が焼け落ちてしまっている。間一髪、触手を犠牲にして身を守ったものの、そのダメージは計り知れない。ズキリ、と内臓が傷む。女王は、臓器が損傷した事を察した。
 そもそも、触手を振り回す相手に接近戦を挑むのは危険が大きい。機動力が無い事を自覚している為、あの三輪車のようにスクラップと化してしまう事は想像に難くない。だからこそ、徹底的に射撃戦を行ったまでである。
(この手の相手が機械のうちが算出する攻撃プログラムをどう感じ取るか未だに謎のままだ)
 女王の憎しみに満ちた表情を見て、ルリはそっけなく、そんな事を考えた。
 突然、女王の眼前、その上空に小さな影が現れる。何事かと、目を丸くして上を見る。
 リリィだ。
 接敵した彼女は兎特有の脚力で飛び上がり、相手の顔を見据える。
 この悪辣な女王にやる事は、ただ一つ。
「真っすぐいってぶった斬る!!」
 怒気を孕んだ険しい顔で叫び、手に持ったナイトメアソードで一閃。人狼の強靭な腕から繰り出される一撃が女王を襲う。咄嗟に後ろへ体を反らし、腕を組んで身を守ろうとした。
 ――刹那、赤黒い飛沫が迸る。リリィがアスファルトの上へ着地して数秒後、何かがリリィのすぐ後ろへ、鈍い音と立てて落ちた。
「わ、私の腕が……、私の右腕があぁぁぁぁ!!」
 左腕の肘から先が無くなり、傷口から血が滝のように流れ落ちる。腕を切り落とされるだけでなく、その覇気に思わず防御の姿勢と取ってしまった。この事は、女王として君臨していた唯我独尊の女王にとって、屈辱の極みであった。
「絶対に、お前は許さ――!」
 その時、ふと左手で頭を押さえる。そして顔を上げた時、目の前に居たのは、高さ10mはあろうかという三輪車の大群だ。そこに乗っているのは、あの骨の異形であるオブリビオンだ。
「よくも俺達を小馬鹿にしたな。三輪車を粗末に壊してくれたな!」
彼らは女王を轢き殺さんと迫ってくる。女王は脇に逸れて避けようとするが、金縛りにあったかのように動く事ができない。そのまま、まるで回転ノコギリのような巨大な車輪が迫ってくる。10m、5m、2m……。女王は恐怖に耐えかね、悲鳴を上げた……。
 その時、ハッと我に返る。そこには、三輪車の姿はどこにもない、ひび割れたアスファルトに幾人もの猟兵達……。先程の光景は一体。その時、リリィが握っていた剣が目に映る。ナイトメアソードだ。どうやら、あの剣の効果により、悪夢を見せられていたらしい。それによって、衆人環視の中で、女王らしからぬ悲鳴を上げてしまった……。
 怒りに身を震わせ、リリィを蛇のように睨みつける。
「ええい、何て奴らだ!しかして銃撃も邪魔だ!」
 刹那、女性の姿をしていた上半身がみるみるうちに膨らんでいく。ダイオウイカを思わせる程の巨体と化し、その巨大な触腕とも思える触手をリリィへ振り下ろそうとする。その数は一本や二本では無い、まるでモップのような束と化した触手が勢いよく振り下ろされようとする――。
 刹那、飛び出したのは木目だ。手に持った妖の小太刀から放出される怨念を身に纏い、そのまま女王の元へ突っ込む。『妖刀解放』だ。寿命を代償に身体能力を向上させた木目の動きは、正に急降下する鷹さながらであった。その様子は、脚が震えそうになっていたとは思えない程に俊敏である。
 突然、勢いよく突撃してくる木目を視認した女王は、新たなる脅威を感じ、思わず標的を変更してしまう。女王とて、亡霊を使役する事のできるオブリビオン。故に、木目の体に纏わりつく強大な怨念に激しく危惧を抱いてしまう。ならば、このキマイラを倒す前に、危険因子を排除しなければならない。狙うは、自身の元へ向かう一人の少女。高粘着性の強酸性液を滲ませつつ、数多の触手を上空に掲げ、勢いよく振り下ろす!
 だが、木目は妖の小太刀を構えつつ、更に加速する。とはいえ、あれだけの巨大な触手を全て捌ききれる自信は無い。もし捌く事ができなければ、あの液体によって体をドロドロに溶かされてしまうだろう。だが、接近する最中、道路の端に何かが見えた。歪な丸い形をした金属の塊。そして、そこから突き出る、穴の開いた長く太い金属棒には、見覚えがあった。針金を折り曲げたかのようにクネクネと曲がってしまったそれは、自分がロマンを感じて止まなかったものに違いない。
 あれは、もしや――。
「まずはお前からだ!」
 刹那、木目は妖の小太刀を振った。そこから衝撃波を出し、その金属の塊を、サッカーボールを蹴るかのように吹っ飛ばした。そのまま、突撃を続ける。
 金属の塊は、ゴールへ飛ばされたサッカーボールよろしく、触手の前へ飛んで来た。女王は、ソレの正体が直ぐに分かった。巨大なスクラップ。先程、くだらぬ物と一笑に付して潰した、三輪車だった。しかし、三輪車をスクラップにした自身の腕力を持ってすれば、こんなもの、けん制にもなりはしない。薄ら笑いを浮かべつつ、蚊を叩くかのように打撃を加え、逆に木目へとぶつけようとする。
 ――刹那、三輪車が爆発する。
「なっ――」
 三輪車には、木目が憧れを抱いていたブースターが付いていた。機能を果たさなくなったソレは、憧れを抱いてくれた恩に報いると言わんばかりに、赤い炎を上げて爆発四散する。まばゆい炎が視界を照らし、何個もの巨大な金属の破片が女王へ、隕石のように降り注ぐ。
 その赤い光に思わず目を閉じ、残った左腕と触手で金属の破片を叩き落す。
 その一瞬を付き、木目は『影の追跡者の召喚』を発動、召喚された影の追跡者(シャドウチェイサー)は、相手に気付かれる事無く、スルスルと女王の元へ突き進んでいく。
 そして、女王が大勢を取り戻した瞬間、木目が女王の元へ到達、触手を次々に切断していく!悲鳴を上げ、そのままバランスを崩しつつ後退する。
「助かったよ、ありがとう」
「大したことはない。…だが、まだこれからだ」
 女王は、目の前に居る二人を睨む。その瞳には、立て続けに攻撃される事への怒りで満ち溢れていた。その間もやまぬ銃撃に、怒りや恨みといった感情を抱く。並の人間なら、その気配に息を飲み、恐怖に震えてしまうだろう。
 月見はその様子を見て、何かを感じた。彼女も聖者や戦巫女として活動してきた経験から、そうした呪術関係には精通している。だからこそ、相手の雰囲気が単なる負の感情では無い事を直感した。
「どうした?」
「いえ……。理由は分かりませんが、敵の周囲に邪悪な感情の霊が集まっています。どうやら敵も、霊を使った攻撃を行う事が出来るようです!」
 ルリの問いかけに、月見が叫ぶ。最後の言葉は、半ば、猟兵としての本能が叫ばせたようなものだった。事実、月見は危険を察知しており、その読みは正しかった。
 突如、リリィと木目、月見とニトロとルリとシンの間に、何かが現れようとしていた。人魂のような、紺色のオーラが次々に浮かび上がったかと思うと、それは人の姿を形作る。そうして現れたのは、半ば白骨化した、腐乱死体のような人間達であった。亡霊だ。その光景に、多少の差はあるかもしれないが、動揺を感じずにはいられないだろう。
「さぁ、やってしまえ!」
 その号令と共に、亡霊達は四人へ向かって突撃していく。すぐさま、月見は霊式火縄銃を構え、照準を合わせる。
「あの霊達はわたしに任せてください!」
 叫ぶや否や、相手へ銃撃を行う。1体、また1体と、正確に狙いを定めて打ち抜いていく。その卓越した射撃の技量を用いて、まだ遠くにいる敵を確実に仕留めていく。数は減りつつあるが、亡霊の数が多い!もしかすると、先程戦った骨の異形と同じか、それ以上の数かもしれない――。
 迫り来る亡霊が、月見の前まで走って来て、巨大な斧が振り下ろす。直前、霊盾を構える。間一髪、月見の守護霊が現れて攻撃を封じる。しかし、他の亡霊が斧を月見へ振り下ろす。だが、そこに居た筈の月見はおらず、背後から打ち抜かれて絶命する。残像を作り出して死角へ廻ったのだ。その時、ふと気付く。相手が亡霊なら、祈りを込めて銃撃をすれば効くのではないか、と。
 試しに、祈りを込めながら照準を合わせて銃撃する。刹那、攻撃が当たった亡霊は、聖なる祈りの籠った弾丸に苦痛の表情を浮かべ、霧散して消えた。どうやら、この攻撃は効くらしい。月見は祈りを込めながら、次々に迫り来る亡霊を討ち取っていく。
 しかし、召喚されてから、その場から動いていない亡霊も居る。一体、何故なのだろうか。ルリは、その事が気になった。だが、その亡霊が構えた物を見て、思わず息を飲む。それは、黒い銃身の巨大な銃だった。そして、それが幾多もの戦場で多用されている自動小銃である事に思い至った。それは毎分600発発射するというその自動小銃が数十もあり、その全てが自分達の方へ向けられている。例え猟兵であっても、ミンチにされてしまうのは確実だ。
 引き金が引かれそうになった、瞬間――。
「う…動けぇ!」
 ビュオオオオオオオ!!
 突如、今まで以上に強い風が吹き抜ける。それはアスファルトの上に散らばった砂を巻き上げ、巨大な竜巻、否、砂嵐と化す。天高くまで回転しながら伸びる風の柱は、幅が数十メートル以上もあり、その迫力は大自然の驚異とさえ形容して余りあるものだった。
 それに巻き込まれた亡霊達は、もう銃を撃つどころではない。目には大量の砂が入り、瞼を開けていられなくなる。眼球にくっついた無数の砂の粒がジャリジャリしており、痛さで涙が出てきて、赤く染まっていく。口を開ければ砂の味を存分に噛み締める事になり、もはやあらゆる活動を制限されたのに等しかった。
 ニトロが、『念動力(サイコキネシス)』を発動させたのである。ニトロが操れるのは、何も三輪車などの固体だけではない。時には気体を自在に操り、竜巻を起こす事さえ可能なのである。
「ふん、使えないな!」
 亡霊達に任したのが間違いだと言わんばかりに、女王は残っている触手群をゴムのように伸縮させ、四人の元へ勢いよく伸ばした。
 刹那、砂嵐の壁を突破し、触手がニトロへ向かって伸びてきた!そして、ニトロに衝突する!三輪車をスクラップにする程の力を有している触手が、全力で打突を行ったのであった。
 しかして。
「痛た…」
 ニトロは、何とか無事だった。「痛た…」と言っているが、体内組織は損壊していないようである。触手が激突する瞬間、ナノマシンアーマーで皮膚を高質化させた上、そのまま受け身を取る事でダメージをカバーしたのであった。その光景を見て、女王は憤る。自身は内臓を損傷したというのに、何故あいつは、これだけの衝撃を受けながら無事なのか。それが、女王の嫉妬に火を点けた。ならば、触手でグチャグチャに潰せないなら、溶かしてしまえばいい。
 瞬間、触手がニトロの体に巻き付く。ニトロの顔が青ざめる。この触手は、謎の液体を出していた。それが今、触手から滲み出てしまったら……。
女王は愉悦に浸った。もう逃げる事はできない。さて、後は消化液であいつを溶かしていくとしよう。そう、ハエトリグサが、捕らえた蝿をじっくり消化するように――。
「ふぅ…、何とかなってよかったよ…」
 ニトロは脱出していた。
 女王は愕然とした。
 ニトロの種族はブラックタール。姿形を自由自在に変化させる事のできる存在だ。それを活かして脱出したのである。実際、ハエトリグサがしっかり捕らえたとしても、その得物が軟体生物であれば、スルリと逃げられてしまうという。女王の比喩は、正に現実のものとなった。
だが、ニトロは肝を冷やした。僅かに残っていた液体が付着し、服が少し溶けてしまっていた。毒に耐性が無ければ、今頃はドロドロに溶かされていただろう。
 女王が愕然としている間に、ニトロはクランクソードで触手を斬りつける。我に返った女王は歯ぎしりをする。
 ――こうなれば、誰でもいい。一人でも多く、触手で潰してくれるわ!
 刹那、ニトロに絡みついていた触手がパッと広がり、四方へと伸びていく。それらが、シン、ルリ、月見、ニトロへと襲い掛かる。
 しかし、女王は相手の実力を見誤っていた。というより、降臨した当初から、鼻持ちならない態度をする彼女に、相手の実力を推し量る事などできる筈も無い。
「来たばかりで悪いけど、骸の海に帰ってもらうよ!」
ニトロは叫びながら、月見とルリに迫る触手を薙ぎ払うように、クランクソードで切り伏せようとする。一度では切れぬ程に太い触手であったが、すかさず更に一撃を加える事で、完全に切断する。硬い筈の触手であったが、鎧すら砕く程の力を持ってすれば何という事は無い。触手は弾かれるように道路の上へ落ちていく。
 シンも、一か所に留まらずに立ち回る事で、触手の攻撃を次々に避けていた。怪盗らしい素早い動きに、触手も追いつききれていない。それでも、何本かの触手がシンへ衝突しそうなる。が、十字の星を重ねた形状の腕輪が8方向に光のフィールドを形成し、それらを次々に防いでいく。避けて、防御して、撃つ。その華麗なる身のこなしから繰り広げられていく一連の動作が、触手の群れを次々に戦闘不能へ追い詰めていく。
 そうしてニトロとシンが触手の群れを迎撃している間に、ルリと月見は亡霊の群れを銃撃していく。マルチウェポンシステムと霊式火縄銃、二種類の火器が次々に敵を殲滅していく。
 やがて、四人を襲った触手が全て動きを止めた時、亡霊の群れは跡形も無く消え去っていた……。
「お、おのれ……、猟兵――イェーガー――どもめ!!」
 女王は、憎悪に満ちた叫び声を上げる。女王としての尊厳は徹底的に打ち砕かれ、ただ討ち滅ぼされる邪悪な存在らしく、ボロボロの状態になっていた。今、この場には風を切る音と、女王の荒い息遣いしか聞こえない。この戦いで唯一重傷を負っている女王は、幾多もの傷口から、血を滴らせていた。
 ……長い戦いが、終わりを迎えようとしている。
 その時、月見がゆっくりと、前へ進み出た。
その姿は聖者や巫女の如く、神聖なる行いをする者である事を思わせる程に、清らかな動きであった。そして、切なる願いを込め、その口を開く。
「偉大なる竜よ…お願いします! 力を貸してください!」
 月見は、声高々に叫ぶ。それに呼応するかのように、灰色の空は雷の轟く音を響かせる。すると、シン、ルリ、ニトロの三人は、背後に何か神々しい雰囲気を感じた。思わず、背後へと振り返った。……そこには、竜が居た。四足の足を大地に付け、背中から戦車の砲塔が生えている。『穿つ砲竜の霊(ウガツホウリュウノレイ)』。少女の声に呼ばれ、この場に召喚されたのであった。
 そして、竜は目の前に居る邪悪な存在を滅すべく、その砲塔を女王へ照準を合わせようとする。そこから放たれるのは、女王を瀕死に追い込むであろう、強大な射撃、否、砲撃である。
「くっ、まずい!」
 思わず叫び、更なる霊を召喚しようとする。あの竜は、ピンク色の髪をした少女が呼びだしたもの。なら、あいつを殺してしまえば――。
「影よ、仇なす業を縫いつけよ」
 刹那、地面から影の追跡者が女王へ向かって伸び、そのまま体をがんじがらめに拘束する!
「なっ!?」
 木目は呟いた後に、眼前の相手を見据えた。布石として発動していた『影人の縫い針(カゲビトノヌイバリ)』が発動したのである。女王は今、自身の放った影の追跡者に縛られ、動けなくなっている。寿命が削れようが、そんな事は関係無い。
 その間も、女王は異変に気付く。亡霊を召喚しようと何度も試みているのだが、現れる気配が無い。まさか、こいつが何かしたのか!?
 刹那、竜は照準を合わせ終えた。
 ――そして。
「そんなに不本意ならご退場願いたい」
 木目が呟くのと同時、竜の砲塔から一斉射撃が放たれた。
 砲塔と機関銃という強力な火器の攻撃の破壊力は、想像を絶していた。
 銃撃が行われ続けている間、頭が割れんばかりの音が轟いた。
 一直線に飛んでいく弾の数々が、残像を残しながら飛んでいく。
 弾が一つ当たる度、爆発して、触手を落としていく。
 女王は、その攻撃を防げないまま、更なる重傷を負っていく。
 その様子は、戦場であった。
 猟兵達は、ただただ、その様子を見ているばかりだった。
 そして、弾が尽き、銃撃は終わった。
 しばしの静寂が場を包み込む。邪悪な女王は、全ての触手がちぎれ、体はボロボロになり、血を流している。美しい金髪は赤く染まり、黒い角は折れ、紅のドレスは無残に破れている。しかし、血反吐を吐き、女王は顔を上げる。同情しそうになりそうな陰惨な姿であったが、最後の言葉が、やはりこの女王は邪悪な存在である事を改めて思い知らせるだろう。
 ――あのオブリビオンどもがまともな作戦を立てないから、私の力が不完全になってしまったんだ。三輪車などという乗り物に跨っていたとは、馬鹿な奴らだ。本当の私は、もっともっと強んだよッ!!!!
 オブリビオンは血反吐を出す為に、再度地面を見る。その時、ふと、地面に何かが描かれている事に気付いた。何かで擦ったかのような線で描かれているソレは、破魔の五芒星だった。それが意味するものを察知し、顔を上げる。
 シンが、女王を見つめていた。手には、純白に金の縁取りの入った銃身の長い銃が握られている。そして、理解する。あの乱れ撃っていた際の銃弾で、気付かれないよう、地面に破魔の五芒星を描いていたのか――。一体、どれほどの鍛錬を積めば、そんな芸当が可能なんだ……。だが、今は逃げなければ……。
 しかし、ただでさえ満身創痍の体である上、破魔の五芒星の力によって、逃げる事はおろか、動く事もできない。
 只、シンが女王の額へ銃口を向け、照準を合わせ終えるのを見つめる事しかできなかった。
 ――そして。
「永劫の闇へと還れ、ブラッド・クィーン!」
 ……銃声が、轟いた。
 女王の額に穴が開き、赤黒い血液が噴水のように飛ぶ。そのまま、糸の切れたマリオネットのように腕を下へダランと下ろし、そのままアスファルトの上へ落ちていく。ドスン、という鈍い音と共に、体を横たえ、動かなくなった……。
 女王の最期であった。
 最後まで悪態をついていた女王の終焉を見届けたリリィは、物言わぬ骸を見下ろしつつ、小さな声で呟いた。
「信念のあった、先ほどの奴らの方がよっぽど気高かったよ」

●決戦~閉幕~……そして、後日談
 女王の死と共に、灰色の空は晴れていく。もう太陽が地平線の彼方へ沈む時間であり、空には満天の星々が浮かんでいた。無数の白く小さな点は明るく輝いていて、猟兵達を祝福しているかのようだった。穏やかになった冷たい風は、激戦で疲労した猟兵達を労わるかのようである。そうした中で白い月が、大通りを優しく照らしている。ひび割れたアスファルトに、スクラップと化した三輪車の山。まるで、ここだけ嵐が発生したのではないかとさえ思える惨状だ。
 しかし、考え方を変えれば、それは良い事のように思えてくる。この惨状は、元々、何の罪も無い親子に対して向けられる筈のものだったのだから。道路の修復に莫大な税金と人材が投入される事になるだろうが、オブリビオンの恐るべき魔の手から人々が救われたと考えるなら、安い出費と言っても良いかもしれない。
 それを食い止める際、戦闘音や目撃証言などの痕跡が残ってしまっただろう。しかし、それは人類防衛組織『UDC(アンダーグラウンド・ディフェンス・コープ)』が何とかしてくれる筈だ。
 だから、今だけは、恐るべき闘いに終止符を打った事に対する余韻に浸るのも、悪くないかもしれない……。
 そして、迎えに来たグリモア猟兵と共に、この世界を去って行った――。

 後日、この町で、再びイベントが開かれる事になった。そう、『三輪車で遊ぼう!』だ。今回のイベントは、前回に比べると、多くの人々が集まった。その数は、実に数百人。参加しているのは親子達で、それぞれが楽しい一時を過ごしていた。普段は忙しくて子供達と遊べない親も、この日だけは、深い絆を結ぶ事ができた。子供達も、満面の笑みを浮かべながら、三輪車を漕いでいる。
 青空に親子の楽しそうな声が響きながら、平和な一日が過ぎて行った……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月11日


挿絵イラスト