せつな、少女幻想は花ひらき(作者 オーガ
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#カクリヨファンタズム  #お祭り2021  #夏休み 


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「……特に、言うことはないとは無いような気もするが、そうだな」
 あまり『夏』という季節にはそぐわない服装をしながらに、表情を変えない夜柄守・白袖(怪奇人間の學徒兵・f32220)は、言葉を思案するように猟兵達に相対した。
「妖怪親分達が、妖怪花火を用意してくれたらしい」
 それ自体も普通の花火ではないのだが、それに引きずられたか、不思議な現象が起こることもあるらしい。
 例えば、あるはずのない思い出が去来する、とか。
「まあ、不思議なことではあるが……、いや、不思議なことではないのか」
 そんな事があったような気がする――夢か現かも分からないそんな朧気な想像。咲いては消える花火の如き幻影。
 そんなものは、意外と日常に溢れているのかもしれない。
「まあ、何があろうと害のあるものではないだろう。寛容に、楽しんでくれるといい」
 白袖は、幾分湿気の少ない風に満足気に頷いた。


 空に花火が開く。
 潮騒響くひまわり畑の只中に麦わら帽子が揺れる。強い日射しと花火が白いワンピースに跳ね返る。
 空に花火が開く。
 暗い白波を細い足の甲が掬い上げる。月明りと花火が少女の横顔を照らした。
 空に花火が開く。
 海沿い、屋台の並ぶ通りにひぐらしが雨を降らせている。紅を背景に開く花火に日照り雨。
 水着コンテストの一日。
 その中であった、出会った少女との思い出――無かったはずの時間、現実味を帯びて現れた影。空に花火が開いた瞬間に、その火弁が消える残滓に見えた幻。
「私ね。一度、こうして遊んでみたかったの」
 爛漫に咲く笑顔。炎色に彩られた影が、コロコロとその表情を変えた。
 そんな気がする。


オーガ
 少女との思い出を捏造する話です。
 本当にあったような、でもそんな時間は無かったみたいな記憶。
 キャラクターが、少女に振り回されたり一緒に楽しんだりしたような気がするシナリオです。

 どうやって出会ったか、どうやって別れたかも定かではないです。
 半ばお祭り会場になっている妖怪花火の打ち上がる海辺で過ごしています。

 プレイングから場面とか時間とか考えます。

 好きに書きます。
 よろしくおねがいします。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み2021』

POW妖怪花火で空へGO!
SPD妖怪花火の上で空中散歩
WIZ静かに花火を楽しもう
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


追記、ソロ参加の想定のシナリオです
巫代居・門
夕方くらい

…はあ、疲れた。これだけ連れ回されるとは思わなかった。

なんだよ、体力無いとか言うなよ。子どもの体力が異常なんだ。
少し休ませてくれよ。

なんでこんなことしてんだっけ?なんだっけ、分かんないな。
いや、楽しくなかったかって言われてもな。答えにくいよ、あんた。

まあ、嫌じゃないけどさ。

夕方で花火が綺麗に見えるってのも、おかしな話だよな。

振り回すだけ振り回してどっか行ったなあの子。
結局誰だったんだ?

(水着はシャチモチーフラッシュガードにショートボクサー。似合ってるかは自分ではよくわかってない)

アドリブ歓迎


「ちょ、……まっ、そろそろさあ……!」
「……? どうしたの? 私まだ行きたいところあるんだけど」
 両膝に手を突いて、巫代居・門(ふとっちょ根暗マンサー・f20963)は、ようやく止まってくれた少女に感謝すら覚えながら息を整える。
「こんだけ振り回されるとは思わなかった……疲れる……」
 ショートボクサーだけでは心もとない。あんまり肌を晒したくなくてピッタリと閉ざしていたシャチを模したラッシュガードの前は、もう全開に開いている。夕暮れに少し涼しいとはいっても、流石に倒れてしまうだろう。
 少女が振り返りってゆっくりと歩み寄ると、苦しそうな門の顔を覗き見て呆れたように目を細める。
「もう疲れたの? 体力ないのね」
「……子どもの体力が異常なんだ」
「ふうん」
 まるまるとした体を引きずるようにして、近くにあったベンチに腰掛ける。視線が空に向かって紅の空に花火が次々と咲いていく。途中で買った紙カップに入った安っぽいサイダーで喉を潤していく。砕氷が半ば程溶け切っていて、炭酸はほとんど抜けきっている微妙に甘いだけの水。それでも、この熱した体を冷やすには十分だ。
 少女が、隣に座る。彼女もサイダーを飲みながら、散っては咲く花火を見上げていた。
 一緒に見上げていると、ふと少女が口を開いて門に問いかけた。
「楽しくない?」
「……その聞き方は答えにくいよ、あんた」
 楽しい、だなんて言えない。これだけ振り回されて、休暇だというのにしんどい思いをして。それを楽しいと明るく言ってのけるような快活な性格をしてはいない。
 素直にはなれない。
 少女の目が門を覗う。青い空のように澄んだ黒い瞳が、何かを待ち望んでいるかのように門を見つめる。
 何を言えというのか。葛藤が門の中で渦巻く。
 何を言えというのか、なんて分かりきってはいる。それでも、素直になれない――ならないと決めた門に、その決まり事を破る勇気はない。
「まあ」
 だが、彼女の目はそれを許さない。いっそのこと彼女との一時をこけ下ろしてしまえれば楽なのかもしれない。
 だが、その後彼女がどう嘆くのか。それを押し付けたのが誰か。それを考えるだけで自己嫌悪を延々と浮かべてしまうのが門だ。
 そして、それを嫌って逃げ出してしまうのも、また門だった。
「嫌じゃないけどさ」
「そう、良かった」
 誤魔化すように返した答えに、しかし、少女は嬉しそうにしていた。
「……夕方で花火が綺麗に見えるってのも、おかしな話だよな」
 話題を変えようとそう独り言ちた。
 だが、返事は帰ってこない。
「なあ、……て」
 そこに少女はいない。紙カップから滴り落ちたはずの水滴一つ残さず。
 いや、そんなことはないはずだ。
「……なんでココにいるんだったけな?」
 一緒にいたような気がする少女は、しかし出会った記憶もなく。
「なんだっけ、分かんないな……でも、まあ」
 ズズ、と軽くなったカップの中身を最後まで吸い上げる。いつの間にか暑かった体も冷え、門はベンチを立ち上がった。
「……楽しかったよ」
 呟き、門は気恥ずかしさに襲われてその場をさっさと去っていった。
 細氷が揺れるような明るい笑い声が聞こえたような気がした。
大成功 🔵🔵🔵

ミリアリア・アーデルハイム
いつの間にか自分も空色のワンピースと麦わら帽子姿になっている

元気一杯の少女について向日葵畑に行き、腕いっぱいの向日葵を摘んだ
どうしてかわからないけれど、その笑顔を見ていると胸が詰まる

貴女は何処に行くというの?

花束を置いて屋台で買ったホットドッグを食べ、ジュースを交換して味見した
暖かい雨が虹を呼んでいる
私たちは何故だか全く濡れていない

再び花束を抱えると、波打ち際に行き花火を見上げた
笑いあいながら両手を広げれば向日葵が空へと落ちていく

私たちは手を繋いでそれを見送っていた・・・はずだった

花火の音が途切れ、話しかけようと隣に目をやれば彼女の姿は無く
唯、足元に1本の向日葵が落ちているのだった


 花火がきらめく青空の下で、黄色の満天を開かせる。
 2つの麦わら帽子が揺れている。
 向日葵畑に埋もれるようにして、緑の合間に白と青のワンピースの切れ端がなびいていく。
 遠くの光景。そこに何があるのか。それをよく見ようとしたミリアリア・アーデルハイム(永劫炉の使徒・f32606)は、瞬きをしたその時に、その片割れが自分自身で合ったことに気付いた。
「ねえ。どうしたの?」
 少女は、ミリアリアに首を傾げた。
 白いワンピースを着た少女。
「見て。この向日葵、とてもキレイな色をしてるの」
「本当ね、でも、私が摘んだ……ほらこれ、これもきれいでしょう?」
「ふふっ、それじゃあ、おあいこね」
 微笑んだ少女は向日葵の木立をかき分けて、その姿を隠していってしまう。ミリアリアはそれを見失わないように駆け出した。抱えた向日葵の花束を溢さないように。眩しい日の光と花火の極光。それに目が眩まないよう、ひたすら少女の背中を見つめて。
 どうして、貴女は笑うのだろう。
 どうして、貴女の笑顔が気になるのだろう。
 どうして、貴女の笑顔に胸が痛くなるのだろう。
 頬が濡れた。
 一瞬、胸の痛みに涙を零したのかと思ったミリアリアに、しかし水滴は次々と跳ねていく。雨粒が空から降り注いでいた。空に打ち上がった花火が朽ち逝かず、そのまま大地に降り注いでいるような温かな雨が。
 雨音のしない雨が世界を煙らせる。
 見えなくなってしまう。少女の姿が、向日葵と雨の帳の向こうへと消えていってしまう。
「ねえ。どうしたの?」
 少女は、ミリアリアに首を傾げた。
 その頭上に虹と花火が、闇に暮れ逝く空に広がっている。
「はい、美味しいよ」
 先に一口かじっている少女は、もう一つのホットドッグを差し出してきた。それを受け取ってミリアリアは、その香ばしさに思わず口を開いた。
 そういえば、雨が降っていたのに私達は濡れていない。マスタードとケチャップ、ソーセージとキャベツ、胡椒が香る。柔らかいパンと程よい弾力のソーセージの皮を破る。
 そうだ。それから、その後は。ジュースを買って、お互い飲み比べたりして。
「え?」
 まるで思い出すかのように、これからの事を思い浮かべて。
「ねえ。どうしたの?」
 少女は、ミリアリアに首を傾げた。
 夜の海辺は騒がしい。空では花火が開いている。波の音と花が咲く音がまるでせめぎ合うように響き渡っている。
「ううん、なんでもないですよ」
「そう? それじゃあ、いっせーの、でね」
「うん、それじゃあ――」
 いっせーの。そう声を合わせて、二人は抱えた花束を空へと投げ放った。空に花が開く。瞬くように色鮮やかな光が空へと打ち上がっていく。向日葵の花弁が光となって、超新星爆発を引き起こしているような。
 放物線を描く花が、ゆっくりとその軌跡を辿っていく。もう少しだけ、と願うように。時が遅く過ぎていくように。
 花火の音が、雨粒が跳ねる音を引き伸ばしているように響く。
「ねえ」
 ミリアリアは、つないだ手に問いかけた。
「貴女は何処に行くというの?」
 ほんの少し、つないだ手に力が入った。
「私はどこにいくのかな」
 空を見上げる。少女の顔は見えない。それでも、その口が動くのが分かった。この口が動いているかのように。少女の声が言う。
「大丈夫だよ」
 音が過ぎ去っていった。空の花が全て降り注ぐような、時間と時間の狭間に全てが過ぎていくような。
 手の中、柔らかい感触が消えている。
 花火の音が止んだ。
 驚かない。少女の姿がないことに。問いかけようとした言葉も何処かへ消えていった。
 何を言おうとしていたかも思い出せない。だから口をついて出た言葉は、何に対してかも分からない。
「うん、そうだね」
 ミリアリアが足元に手を伸ばし、細い茎をつまみ上げた。
 いつか散った向日葵がそこに咲いていた。
大成功 🔵🔵🔵

ニノマエ・アラタ
そも、夏まつりに参加するつもりはなかった。
……はずだ。
名前を呼ばれたような、気がした。
暑い。
少女の誘いを、手を、断る理由はなかった。
さりとて、手を取る理由もなかった。
……ただ、害意はない。
敵意がない。
それだけだった。
そんな存在に声をかけられ、どうして良いのかわからなかった。
というのが、一番の理由かもしれなかった。
好意があるのかも、わからなかったけれど。
手を引かれるままに、屋台を巡った。
安っぽい装飾品、雑貨、でもそれらはこの場にあって
やけに祭の雰囲気にとけこんでいて。
請われるままに、少女の気に入るものを買った。
冷たいかき氷を手に、花火が綺麗に見える場所へ案内され。
……空を彩る花火を見上げた。


 滴る汗を拭った。
「ほら、行きましょ?」
 無造作に下ろしていた手を、掴もうと動く手が見えていた。
 それを拒む事は容易いだろう。声を無視して目を閉ざす事も出来ただろう。それでもニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)は、触れる温度を受け入れていた。
 そうしなければいけない理由はない。ただ、拒絶する理由もまた、そこには存在していなかった。
 害意のないままに、少女がアラタの手を引き歩き出す。
 拭った汗は、再び沸きだして頬を流れていく。それをもう一度拭う事もなく、アラタは促されるままに歩く。
「ねえ、これ似合うかしら?」
 露店の一つに立ち止まり、少女が手に取ったのは、小さな髪飾り。造りは荒く、素人の作だというのは、そういったものに疎いアラタにもよく分かった。
 正直同じようなものは屋台を見回せば、幾らでも見つかる。似合うも、似合わないもあるものか。
 どれを選ぼうと少女自身の美醜は変わらない。
「ああ」
 曖昧な肯定をして、アラタは懐から代金を支払った。
「ありがとう、優しいのね」
「いや、……優しいわけがない」
「そう」
 少女は麦わら帽子を手に、髪飾りを着けた髪を靡かせてアラタに振り向いた。
「じゃあ、ひどい人ね」
「……」
「火はすぐに消えちゃうわ」
 少女は、アラタの手を再び引いた。花火がはぜる音が、体の芯を震わせる。遠くのようで近くのように轟く音色を肺の中で反響させながら、アラタは開けた場所へと辿り着いていた。
 海が見える。波の音は聞こえない。夏草が先端を焼いて地面に積み重なっている。空が燃えている。見つめれば、瞼を閉じるように空が暗く落ちていく。
 開く花火。
「はい、貴方の分」
「ああ」
 受け取ったのはかき氷だった。はて、彼女の声はそんな声だったか。思う瞬間に空に花が咲いては消えていく。
「……」
 氷の粒を、熱した舌に転がし歯で砕く。吸う息が僅かに凍えている。アラタは空を見上げる。
 少女がアラタを抱く。
 背から腕を伸ばした少女が囁いた。敵意も害意も友情も慈愛もなく。触れた感触すらなく。間近なはずの遠くで。聞こえない言葉を告げる。
「そうだな」
 アラタは、消えた幻に返す。
「ここにいる、それは変えようがない」
 かき氷を持つ手が僅かに冷えている。
 空に咲く花を見上げていた。
大成功 🔵🔵🔵

ロク・ザイオン
(夏の海で、己は「休む」と決めていた
……だからきっと、一緒に行動したのは「気が向いたから」だけれど)
(己が少女を邪険にするなど、出来るはずがないのだ)
空でも。海でも。雨でも。
……いいよ。
キミのしたいことに、付き合う。
(無邪気でわがままな願いでも出来る限り叶えようとすら、するのだろう)
嫌じゃないよ。
おれが、そうしたかっただけ。

おれと一緒で、よかったのかい。
……声はみにくいし、あまり喋らない。
……そう。
それなら、いい。

(【野生の勘】が、離別を告げるなら)
……お別れの前に、キミの名前を聞かせてくれないかい。

(ああ。あの方ではない
それが嬉しくて、かなしい)


 木漏れ日の中で欠伸をする。
 砂浜の風を浴びながら、ロク・ザイオン(変遷の灯・f01377)は何をするでもなく、浜に腰を下ろしていた。
「良い音ね」
「――」
 見上げた。
 雨粒が降る空は、雲ひとつなく。百輪を越える花火が舞っている。一日中駆けずり回って、小さな子を絶えず目で追って。
 休むと決めていたはずが、気が向いたからと少女に付き合って、疲れているような、ないようなそんな心地で座り込んでいる。
「疲れた? 振り回しちゃったものね」
「気にしなくて良い。おれが、そうしたかっただけ」
 気遣う声に頭を振る。そして当然のように、ロクは少女へと問いかけていた。
「おれと一緒で、よかったのかい」
 声はみにくいし、あまり喋らない。ロクは相応しくないのでは。そう問い掛ければ少女は、一つ頷いて。
「よくないわ、当然じゃない!」
 否定した。
「美しい声で喋り倒されちゃ、私ノイローゼになっちゃうわ」
 納得しかけたロクは続いた言葉に、首を捻る。話の方向が分からず、見守ってみることにした。
「だから、ちゃんと『お気に召しましたか、お嬢様』って聞いてくれないとよくないわ」
 たどり着いた結論の脈絡のなさに、ロクは思考停止に陥る。
「……お気に召しましたか、お嬢様……?」
「ええ、とっても」
 思わずしかめっ面で反芻した言葉に、しかし少女は満足げに頷いた。その笑みにロクは、この瞬間が消える瞬きを感じ取る。
 考えるより早く、しこりのような言葉を吐いた。
「……お別れの前に、キミの名前を聞かせてくれないかい」
「それなら先に、あなたの名前を教えてくれないかしら?」
 ……ズルいな。ロクは口を開き、短く言葉を発する為の息を吸い込みながら、そう思っていた。
「ロク」
 聞き慣れた音を真似て吐き出す。
 少女は、ひとつゆっくりとまばたきをした。
「――ロク」
 少女の声が意味を紡いだ。
「そう、ロクっていうのね」
 ロクは少女の言葉ひとつ、表情ひとつを逃さぬよう、彼女を見つめた。
 その言葉は、ロクのどの行いに対してか。
 遊んだこと、ではないのだろうとは思う。そのタイミングで言うならば。
「ありがとう、ロク」
 欠伸で吸い込んだ息を吐き出した。
 波音がさざめいている。木陰に覗く花火の光が瞬いている。
「そう、かい」
 名も知らない少女の幻想に言う。聞くだけ聞いて、言わずじまいだ。対等に不平等。
 膝の上で組んだ腕に頬を埋める。
 あの方ではなかった。ロクの名を呼ぶ感情の感触は。
 少し冷えた腕の温度が額に心地良い。
「ああ、うん……違ったね」
 それが嬉しいような、かなしいような。
 ロクは、少し耳朶を引っ掻く。
 手の中で跳ねる雑音が、葉擦れのように響いていた。
 
大成功 🔵🔵🔵

ヴィクトル・サリヴァン
ふむ、妖怪花火。
夏の風情があっていいよね。
不思議な事が起こるのも幽世だしね。

水着コン…あの日はライフセーバーやってたっけ。
こう、海の仲間たちとしては安全楽しい海の想い出を、的な?
その中に人っぽい子もいたような…えらく無茶して何度止めにかかった事か。
背に乗せて泳いだり溺れない程度の深さで潜ったり。
いやー全力で泳いでもはしゃいでくれる感じで中々ガッツあるなーと思ったね。
来年とか考えず今年の一日全力で過ごすって感じで泳いで潜ってたっぷりと楽しんだ記憶がぱっと思い出されて。
しかし幽世に居るって事は何かの妖怪だったんだろうけど何だったんだろ?
…まあ花火綺麗だし、どうでもいっか。

※アドリブ絡み捏造等お任せ


「私もやってみたいな」
「……私も?」
 ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は声のした方を振り向いた。白いワンピースの女の子がヴィクトルの水着を掴んでいる。
 いつからと、思うヴィクトルは、しかし、まずは自分に対しての言葉を明確にしようと考えた。
「んーっと……何がしてみたいって?」
「あれ」
 指差す先には、イルカ的な海獣妖怪が水中から加速し飛び出し、空中で三回捻り宙返りをして見事に着水していく様子があった。
「あれ、やってみたいの……だめ?」
「なるほどね、出来るかな」
 ヴィクトルは少女をみる。別に手足にヒレがある訳でも首にエラがあるわけでもない。普通の人間。
 ふと思い出す。
 溺れていた少女を助けた。
 ライフセーバーをしていたヴィクトルは、いつからか射ち上がり始めていた妖怪花火が舞う空の下。んばっちゃ、んばっちゃと水面を叩いている少女を見つけたのだ。
「遊んでたの、でもあんまり上手く動けないのね。それに苦しかったわ」
「それ溺れてたって言うんだよねえ」
 びしょ濡れになった麦わら帽子を被りなおす少女に脱力したのを覚えていたはずだ。
 そんな少女だ。
 イルカジャンプを再現する程の馬力と調整が生み出せるのかな? と悩むヴィクトルに少女はこう言った。
「やってみるね!」
 たた、と駆け出した少女に慌てて回り込んで止める。
「ちょちょ、ちょっと待ってねキミ――」
 ヴィクトルは色々と聞きたいことがありながらも、何故か確信を持って否と言える事を念のため、確認する。
「泳いだ経験ある?」
「無いわ!」
「Oh……」
 胸を張って返事が返ってきた。
 ヴィクトルは、大事故に繋がる前に一肌脱ぐことを決めたのだった。
「まあ、これ以上脱いだら怒られちゃうんだけど」
「そうなのー!?」
「そうだよ、大丈夫だと思うんだけどなあ……」
 ヴィクトルは、少女を背に乗っけて波を切り裂くように泳いでいた。
 思いっきり風を切り、時折海に潜って軽く飛び上がれば、悲鳴か歓声か分からない黄色い声が背中から響いてくるのが、中々に面白い。泳ぐ勢いで出る音の変わる玩具のような。
「ねえ、もっと深く潜れない?」
「出来るけど、ちゃんと息我慢するんだよ?」
「――!」
 息を大きく吸い、口を閉じた少女がサムズアップする。
「うん。じゃあ、いくよっ」
 水面を潜り、ヴィクトルは一気に水面を尾で撫でた。音が細かな泡音に消え、暗い海の闇が辺りを包む。そして、上空で跳ねる色とりどりの火が波に揺れては閉じていく。弾ける音は、水の帳に遠く、別の場所で開いているようでもある。
 背で少女が身じろぎする。プカリと泡が浮かんだ。
 流れる水音に幼い声。
「波の向こうの花火が見てみたかったの」
 それは、水中だというのに何故かはっきりと聞こえた。
「綺麗」
 パチンと泡が弾けるような。花が咲いた。
 一人。
 ヴィクトルは、水面を通して揺れる花火を見つめて思い出す。
 それは、一瞬前まで一緒にいたような、それでも、遠く昔にあった出来事のような。
 尾で水を掻く。
 そういえば、あの子は。どうしたんだろう。
 何かの妖怪だったんだろうけど。そうして想起した楽しくもとことんに疲れたような記憶に耽りながら、ヴィクトルはまた一つ咲いた花火に、泡を一つ吹く。
「……まあ花火綺麗だし、どうでもいっか」
 拡散する光が煌めく泡は、眩しく見えた。
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年08月11日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵