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彩は白に沈む

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●極寒の世界
 空には、どんよりと灰色の雲が立ち込めていた。
 もとよりダークセイヴァー、陽光とは縁の薄い世界ではあるが、いつからこんな調子だったか。
 ここ数日、ずっとそんな調子だ……と、村の老婆は肩に乗った雪を払いのけながら、空を見上げた。
 降り止まない雪。
 雪を見たことが無いわけではないが、普段なら、降っても年に1,2回程度。
 多少雪化粧が施されたところで、翌日には元通り。その筈だった。
 だが、かれこれもう四日。雪は降り続いている。
 遠くで、子供たちが雪合戦をしてはしゃいでいる声がする。
 楽しげな笑い声。本来なら元気をもらえる筈のその声も、今の老婆の耳には重圧にしかなり得ない。
 この冷え込みで葉野菜には霜が降りるし、暖炉も休みなしで火を焚いているせいで、薪の消費が激しい。
 手入れをするにも、慣れぬ寒さに体調を崩す者も多く、人手はあまりにも足りない。
 そして……食材を取りに行くと言って森へと向かった息子は、二日経っても戻らない。
 何かあったに違いない。
 そう思っても、老いた自分が捜しに行ったところで、何が出来よう。村の事ですら、ままならぬというのに。
 雪が止むのが先か、このまま雪に沈むのが先か……。
 老婆は溜息をつき、悴んだ手に鞭打ちながら、野菜の霜を取っていく。

●暖かい手を、どうか
「あのあたりは温暖な気候だったはずですが……成程、やはりオブリビオンの影響でしたか……」
 グリモアベースの片隅。
 テーブルにダークセイヴァーの地図を広げながら、なにやらうんうん唸っているシャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)の姿があった。
「……っと。すみません、もう集まってましたか。それじゃあブリーフィング、始めますね」
 猟兵が集まってきたことに気付くとシャルは目線を上げて。
「今回、皆様方にはダークセイヴァーの村落へと向かってもらいます。この辺りは本来温暖な気候なのですが、ここ数日、異常な大雪に見舞われているようでして……」
 と言うことで冒頭の様子に繋がるらしい。
 こうして予知にかかった以上、ただの天候不順でなくオブリビオンの影響下にあることは明白だ。
 つまるところ、調査して原因となるオブリビオンを討伐しろ、と言うわけなのだが……。
「調査・討伐に向かう前に、一つやって頂きたいことがあるんです」
 と言いますと。
「村の防寒対策です。なにぶん、そこに住む方々はここまでの大雪に慣れていませんから……皆さんの力を貸していただきたくて。あ、勿論情報収集も並行してやって頂いて構いませんよ」
 オブリビオンの討伐が成ったところで、深く深く降り積もった雪は一朝一夕で溶けて元通りとは行かない。
 慣れない冷え込みで具合を崩している者も多く、人手が必要なことはいくらでもあるだろう。
 温かい料理を振る舞ったり、薪を割ったり、畑の手入れをしたり……ほかにも、具合の悪い村人の看病や、寒さを防ぐための知恵を貸してやってもいいだろう。
 応急的なもので構わない。ひとまず、オブリビオンの影響が抜けるまで耐えられる程度の状況が整えばいいのだ。
 その後、改めて元凶の排除に動くことになる。
「オブリビオンの仕業であることは間違いないと思うのですが……それが何かまでは、予知で見ることはできませんでした……。ヴァンパイアが村を苦しめているのか、異端の神の迷惑な気まぐれか……それか、たまたま魔獣の類が近くに生まれ落ちた可能性もあります」
 真相がいずれにせよ、どうか油断の無いよう。
 シャルはそう締めくくって、転送の準備を始めるのだった。


ふねこ
 スキー行きたい。ふねこです。
 今回はダークセイヴァーをご案内させて頂こうと思います。
 スペワが大変な時期ですが、他の任務も大切に。
 例によって、更新タイミング等の大雑把な目安はマスター自己紹介にも随時書いていこうと思いますので、そちらもよろしければご確認くださいませ。
 以下、補足情報になります。

 (本来は)温暖な気候の、小さな村落です。貧しいには貧しいですが、今のところ目立った圧政も無くそこそこ平和でした。
 近くに森があり、農耕、牧畜、林業あたりで生計を立て、自給自足はほぼ成立しているようです。
 もちろん老婆や子供たち以外にも村人はいます。

 第一章では、村の防寒対策をやって頂きます。
 実際に何か手を加えるでも良し、村人たちを元気づける方向性でも良し。
 情報収集も含め、村のためにと言う気概があればだいたいの事は判定すると思います。
 第二章以降は、章開始時の冒頭文にて追加で描写する予定なので、そちらも良ければご参考に。

 それでは、皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『白に沈む村』

POW   :    雪かきや屋根の雪下ろし、薪割り等の肉体労働を行うなど

SPD   :    狩りで食料を入手する、温かい料理を作るなど

WIZ   :    体調不良の村人を救護する、寒さ対策の情報を啓発するなど

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リーヴァルディ・カーライル
事前に毛布や防寒具等の寒さ対策の道具と、
救助活動に必要な物質、保存食を用意して【常夜の鍵】に入れておく

村人(可能なら村の代表)に礼儀作法に則り挨拶をして、
私達が魔獣や吸血鬼を狩る猟兵という集団である事
この雪が魔獣の仕業かもしれないので調査の為に村に滞在したい事
その見返りとして、村に必要な物を提供する準備がある事を告げ、
防寒具等を見せ信頼を得る

…この世界の人間は疑い深い
単なる善意で助けるより、こう言った方が受け入れやすい

信頼を得られたら、後は元気な村人を集めてもらい【常夜の鍵】から物資を運搬して村の家々に配ってもらう

…気にする必要はない。私達が追い求めている獲物は、
これ以上の価値があるから…。



 底冷えする寒さの中に降り立った猟兵達の目に映ったのは、日を雪が反射して眩しいほどに明るい村の景色であった。
 点在する家屋では火を焚いているのだろう、パチパチと灯が揺らめいている。が、それとは対照的に外を出歩くものは無く、明るさに反して閑散とした印象を抱かせた。
 そんな中を、他の猟兵に先立って、一人の少女が村で最も大きな家を訪れていた。
「……つまり、この大雪の元凶を排除するために、村への滞在を許可してほしいと?」
 豊かな白髭を蓄えた痩せた老人。足腰が弱っているのか、車椅子に乗っているこの者が村長なのであろう。
 彼のその問いに、少女……リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が肯定を返す。
 村長の表情は渋い。
 これも当然の反応だ、とリーヴァルディは思う。
 確かに、村にとってこの大雪は害以外の何物でもない。そしてこれが、単なる災害でなく『何か』の影響であることも承知していることだろう。
 だが、この世界はヴァンパイアの支配下にある。今、仮にこれがヴァンパイアの仕業だったとして、それに仇為すものに協力していることが知れたら?
 そうでなかったとしても、村の者でない者たちへのもてなしをする余裕は、正直言って無いのが現状である。
 困窮した状況は疑心暗鬼を生み、単なる善意をも受け入れ難くする。
 だからこそ。
「もてなす必要はない。ただ、調査と討伐、そしてその為の村への滞在、それを許してもらうだけで構わない」
 その見返りとして、村に必要なものがあれば提供する準備がある。
 そうして、リーヴァルディは自らのユーベルコードによって持ち込んでいた防寒具や毛布等を目の前に広げてみせた。
 ギブ&テイク。
 元凶の排除も村への物資も本来は村の為としての行動であることに間違いないのだが、あえてその片方を『こちら側の都合』として、『取引』とする。
 計算できる利害と言う形に変えることで、受け入れるためのメリットを明確にさせたのだ。
「……わかりました。猟兵……と、言いましたかな。私はあなた方を歓迎致しましょう」
「……気にする必要はない。私達が追い求めている獲物は、これ以上の価値があるから……」
 こうして、猟兵は村に受け入れられたのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユア・アラマート
雪か。私が幼い頃に育ったのもこの世界だったが、こことは逆で冬になると雪に閉ざされてしまう。懐かしい、なんていうと不謹慎だ。けど、その代り温かい料理なら覚えがある
……え、この格好?当然、魔術で温度調整してあるよ。そうでなくちゃ凍え死ぬ

ここには子供もいるようだし、胃にも優しい温かいおやつでも作ろうか
クラフティ、というお菓子があるんだ。卵と粉、ミルクや生クリームを混ぜたものを窯で焼いて作る温かいプリンのようなものなんだが、結構美味しい
何も入れなくてもいいけれど、りんごとか使えそうな果物があれば分けて貰って入れるとより味が楽しめるかな

とりあえずこれを食べておくといい
すぐにこの雪をやませてくるよ


赫・絲
村の人の看病とか畑作業のお手伝いとかならお役に立てるかな
防寒対策はしっかりしていくよ

とりあえず困っていそうなご老人とか子ども達に声をかけてお手伝い
雪に慣れてないって話だし、道で転んで怪我してる人とかもいるかもだよね
そういう人には手を貸して、暖かいところまで連れて行ってあげよう

村の窮状を訊いて近くの村から手伝いにきたって言えば多少は怪しまれないかな
【コミュ力】使ってうまく誤魔化したいところ

人に見られないように気をつけて精霊の力を使えば火は起こせるし、
道の雪だけでも溶かせれば多少はマシになるのかもだけど……
うーん雪崩になったり怪しまれたりしてもいけないし、危険そうならやめておこう



「懐かしい……なんて言うと不謹慎だろうかな」
 窓から外の雪景色を眺めながら、ユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)はひとりごちた。
 彼女は同じくダークセイヴァーの出身であった。
 本来、この村は温暖な気候であると言うが、今目の前に広がっている景色は、故郷の極寒の世界を思い起こさせる。
 もう長く帰っていないが、こうして記憶に触れると懐かしくなるものだと思う。
 そんな彼女が今立っているのは、村の民家の台所だ。
 子供もいるようだし、胃にも優しい温かいおやつでも作ろうか。
 雪国の出身故に、温かい料理には覚えがある……と、ひとつ腕を振るうことになったのである。
 卵に、糖、塩。それから小麦粉に牛乳、生クリーム。
 よくかき混ぜて、生地を作る。
 そして器にその生地と、家で保存してあった(善意で分けてもらった)林檎を切って入れて。
 そして、窯に入れて焼く。
 暖かいカスタードプディングのような、『クラフティ』と言う焼き菓子である。
「さてと、子供たちを呼びに行かなければな……。……ん?」
 一通り工程を済ませ、あとは焼き上がるのを待つだけ。
 そうして改めて外を見やったところで、ユアは外にいる人影の中に見覚えのある人物を見つけた。

 慣れない積雪と言う環境において、最も警戒すべきものとは何か。
 極寒による体調不良?
 違いない。
 霜などによる作物への悪影響?
 それもそうだ。
 だが、もっと直接的な危険がある。
 それは、雪道での転倒だ。
 湿り、滑り、時に凍った雪道は、土を踏みしめて歩くのとはわけが違う。
 特に、踏ん張りの効かない老人や不用心な子供たちであればなおの事。
 それも、ふんわり積もった新雪であれば、それはそれで足を取られて歩きづらさはあるだろうがまだ良い。
 最も危険なのは、人が何度も踏みしめ、固くなった雪。
 つまり、よく人が利用する道であればあるほど、転んでほしくないものほど危険度が増すという、極めて厄介な状況なのである。
 だからこそ、赫・絲(赤い糸・f00433)は真っ先に道の確認に取り掛かった。
 転んで動けない人がいないか、どこかに嵌って取り残された人がいないか。
 一通り見て回ったのち、少しでも道を通りやすくしようと、炎の精霊の力を呼び起こして道の雪を溶かしていた彼女は今……村の子供たちに取り囲まれていた。
「おねえちゃん、すごいすごーい!」
「ねぇねぇ、もう一回やってみせて!」
「……見つからないようにやるつもりだったんだけどなー……」
 はじめこそ、珍しい余所者を警戒して家の中に閉じこもっていた村人達であったが、正式に受け入れられた以上はその内興味が勝ってくるのも仕方がないし、外でやらなければいけない仕事もある。
 そもそも、優先して確保しなければならない道と言うのは、すなわち『人通りの多い道』に他ならない。
 見つかるのは当然の結果だったと言えよう。
 幸いなことに、ユーベルコードを使って支援をしている猟兵もいたために絲一人が奇異の目で見られることは無かったこと、村人たちに魔術への忌避感が大してなかったことで、大事にはならずに済んでいた。
 ……コミュ力を駆使してやり過ごした結果、逆になんでか懐かれてしまっていたけど。
 危ないから下がっててね、と子供たちを後に続かせながら、少しずつ少しずつ道路を進み、雪の下に隠れた地面を露わにしていく。
 その道は細くささやかではあるが、後に改めて雪かきするにしても、指針となる中心があった方が、明確にやりやすいことだろう。
「……おや、イト?なんだ、お前も来てたのか」
 そんなちょっとした行列に頭上から降ろされる声。
 家主に火の番を任せ、子供たちを呼びに来たらしいユアであった。
「あ、ユアさん!……寒くないの、その恰好?」
「当然、魔術で温度調整してあるよ。そうでなくちゃ凍え死ぬ」
 しっかり防寒着を着こんでいる絲と違い、ユアの恰好は腕や胸元、太腿等大胆に露出したいつものコスチューム。聞きたくなるのも無理はない。
 それはともかくとして。
「もうすぐ温かいおやつが出来上がるからな。食べにくると良い。よかったら、イトも一緒にどうだ?」
「え、いいの?」
「構わんさ」
 お前たちも、おねえちゃんと一緒におやつ食べたいよな?と破顔するユアに、食べる食べると大はしゃぎの子供たち。
 雪は相変わらずしんしんと降り続いていたが、この空間には、少しだけ暖かい空気が漂っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

紫洲川・珠璃
「雪は嫌いじゃないけれど、それは結局安全なところから眺めるだけだったから
そう思ったのかもしれないわね」

獣が狩れるかわからないけれど、とりあえず猪でも探して森に入りましょうか
普段は温暖だったということは冬眠しないほかの動物もいるかもしれないわ

短弓をもって、森に入って狩りを行うわ
罠の類はあんまり得意じゃないので弓で直接ね
というか急に気温が下がっているなら倒れてはいなくても動きが鈍っていそうな動物がいそうだから
普段狩りをしない私でもなんとかなりそうだけど・・・無理かしら?

無事獲物が狩れたら、だれかできる人がいれば、その人に任せるけど
居なければ適当に鍋にでもして提供するわ


シュデラ・テノーフォン
確かに寒いね
コートで来て良かった

近くの森で食料狩って来ようか
降り続く雪なら、動物の足跡は近くにいる証拠だね
消えないうちに…そうだ、ハーキマー呼んで彼にも足跡追跡をお願い
弾が届く距離に獲物見つけたら木陰に隠れ
Aschenputtelで急所狙い
血抜き済ませて持ち帰る
ついでに木の根元とか雪払ったら食べられるキノコや野草採れるかな
でももう一つ
明らかに動物のモノではない足跡や痕跡があれば、
ハーキマーに追跡させておく

狩ったの解体して…毛皮は防寒に使えるならどうぞと村の人へ
とったモノで調味料とか借りてポトフにしようか
料理好きなんだ、口に合えば良いけど

後は雪かき手伝いとか雑用喜んで
ハーキマー、何か見つけたかな



 しばし、視点を村の外に移そう。
「雪は嫌いじゃないけれど……それは結局安全なところから眺めるだけだったから、そう思ったのかもしれないわね」
「コートで来て良かったな……」
 村はずれの森の中、分け入っていく二人の猟兵の姿があった。
 紫洲川・珠璃(夜を追う者・f00262)とシュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)。
 ざくざくと、真新しい雪に靴跡を付けながら、それぞれ弓と銃を手にして森に踏み入る。
 目的は、狩りだ。
 この寒い環境下において、充分な栄養の食事は必須。特に、肉のような体力のつくものが良い。
 その為に、食料にちょうどよい獣を求めて村から離れてここに来たわけであるが……何かが、おかしい。
 まず一つ。既に二人は二頭ほど、猪を確保していた。それ自体は別にいい。
 だがそれが、まだほとんど奥に入っていない、森の端も端であるという事。
 食料不足で村まで出てきたのかとも思ったが、そうであれば村に被害の報告があってもよさそうだがそれも無い。
 奥地にだけ食料が無いという可能性も無いわけではないが、中央と端でそこまで環境が変わるだろうか?わざわざ村の近くまでに出てくる理由が今ひとつ考えづらい。
 第二に、風が強い。これまた、それ自体は特に不思議でもないように思えるが、開けた村にいた時よりも、木々が生い茂る森の中の方が風が強いというのはどういうことだろうか?
 そして風上は、森の『奥側』である。
 具体的に何かはわからずとも、『何か』が居る予感をさせるには、十分すぎた。
 そして最後に。シュデラが呼び寄せた有翼狼の幻獣――シュデラはそれをハーキマーと呼んでいる――が、しきりに奥を警戒して唸り声を上げているのだ。
 目を見合わせる二人。
 間違いなく、奥で異変が起こっている。
 だが、どうすべきか?更なる情報を求めに奥へと進んでみるか、それともここで一旦引き返すか。
「!……見て、あれ」
 判断付きかねてもう一度奥を見やった珠璃が、声を絞ってシュデラに告げる。
 彼女が指さした先で、何かが揺れていた。
 風に乗った木々のざわめきではない。もっと寒々しく、虚ろな何か。
「……幽霊……?」
 確証があるわけではない。
 だが、周囲に足跡らしい足跡は無く、ゆらりゆらりと揺れ動くそれは、どことなく人のような姿を思わせた。
 まだ距離はあり、向こうがこちらに気付いた様子は無い。
 だが、それは少しずつ数を増やしているようで……また、何かを探しているようにも見えた。
 まるで、森に踏み入った何かを警戒しているような……。
「……退こう」
「そうね」
 二人だけで対処できる保証はない。
 もとより当初の目的であった肉の確保は成していたのだ。
 欲を掻いてことを仕損じては目も当てられない。
 狩人の判断は早く、そして慎重だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アーレイラ・モンクスフード
準備として他の世界で、栄養ココアの粉買ってどっさりと持って行きましょうか。

ここまで、真っ白だとちょっとテンション上がりますね。
勤めの最中に不謹慎な気もしますが、辛気くさい顔で元気付けるなどできないでしょう。

「さて、広く浅くいろいろとやって行きましょうか」

火と水借りて、村中にココア振る舞いましょう。湯沸かし中に
ユーベルコード発動

星霊召喚、5体一組にわけて道具を借りて、無ければ板で雪かき、雪下ろし開始。

主要施設間メインに道を作れ、手が空いたら斧かりて薪を割らせ、子供の家の前には不格好で良い、雪だるまです。

村中に散って哨戒、何かあったら最寄りの猟兵へ。私はココア配りながらお話や依頼ごと聞いて回ります


花邨・八千代
さ・む・い!!!
なんだ此処やべーよさみーよ、どうなってんだ。
あーダメだ、動いてねーと死ぬわコレ。
おい斧貸せ斧、鉈でも良い。
ありったけの薪作ってやっからよ。

◆行動(POW)
斧、もしくは鉈借りて薪割り開始だ。
もし無いなら南天を大斧に変えてざんざか割ってくぞ。
「怪力」使ってありったけの丸太を薪に変えてやる、力にだけはちっとばかし自信があるんでな。
ある程度薪が出来たら薪が足りてねー家に配達、サービス良いだろ?
それの繰り返ししつつ、薪割りが終わったら雪かきか雪下ろしでも手伝うかね。
お、かまくらでも作るか?作り方教えてやるよ、楽しいぞ。



 猟兵とは、生命の埒外に当たる存在である。
 であるのだが、基本的には『人』であることに違いは無い。
 殴られれば痛いし、焼かれれば熱い。
 そして、外気が冷たければ……。
「さ・む・い!!!」
 のである。
 花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)は雪の中でぶるぶる震えていた。
 寒い。とにかく寒い。震えが止まらない。
「それでも、ここまで真っ白だとちょっとテンション上がりますね」
 その隣で大鍋を焚火にかけているアーレイラ・モンクスフード(真昼の白夜・f02061)だが、彼女の場合テンション上がっているというか上げていないとやってられないだけだと思います。
 だってほら、「動いてねーと死ぬわコレ」とか言って羅刹旋風活性化してるんですよこの人。ぶんぶん斧振り回してますよ。
 アーレイラが火にかけていたココア分けたらちょっと落ち着いたけど。
 とは言え、一時的に温まったとしても、こうしてじっとしていたらまた冷えるのが落ちである。そもそもココアだって本来は村の皆に振る舞うためのものだ。
 その結果、八千代が何を始めたかと言うと……薪割りである。
 こうまで寒いと、何は無くとも必要になってくるのが、火だ。
 当然、村のそこかしこでは暖炉や焚火が焚かれ、相応に薪の消費量も増える。
 薪用の木材と言うのは、基本的に半年ほど乾燥を置く必要があり、一応、不測の事態に備えて多くの丸太が用意されてはあった。
 だが、丸太はあっても、使うには割って薪にする必要があり、その為の人手は不足していた。
 そこで、猟兵の出番と言うわけである。
 切株に丸太を置いては、その怪力を以て斧を振り下ろし、ぱっかん。
 割れた薪をアーレイラの使役する精霊が回収し、また次の丸太を置いて、ぱっかん。
 力に自身のある八千代と、精霊による頭数を確保しているアーレイラ。
 二人の長所が上手くかみ合ったおかげで、スムーズに、次々と新しい薪が生産されていく。
 いつしか、二人の後ろには薪の山が積み上がっていた。
「んじゃ、配達行くとすっか!」
「そうですね、ココアも振る舞いたいですし」
 よいしょ、と鍋を持ち上げるアーレイラに薪を担ぐ八千代。
 当然、薪もココアも作ったところで隅っこに置いておくだけでは意味が無い。
 足りないところ、必要な人の手元にわたってこそ、初めて意味があるのだ。
 精霊が道の雪を脇に退けていく中、村を進んでいく二人。
「雪かきした雪で、後で子供たちに雪だるまでも作ってあげましょうかねぇ」
「お、だったらかまくらでも作るか?作り方教えてやるよ、楽しいぞ」
 勤めの最中に不謹慎だと言う人もいるかもしれない。
 だが、辛気くさい顔でどうして元気づけることが出来ようか。
 村にちょっとした笑い声が広がるのは、もうちょっと後の話。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユナ・アンダーソン
オブリビオンによる異常気象か
村人達を助けてあげなくちゃ!

コミュ力11、救助活動4、医術3で寒さにやられた人たちを治療
特に凍傷とかが酷い人には祈り7、優しさ11、手をつなぐ11、鼓舞12、激痛耐性6、氷結耐性2を用いて傷奪う星痕を使用
あなたの傷を私にちょうだい?

料理2で温かい飲み物でも作ります

アドリブで他の方との絡み歓迎


パーム・アンテルシオ
なるほど、まずは寒さ対策だね。
ふふふ。それなら、私の尻尾で…
…いや、わかってるんだよ?気休めだって。もっといい知恵はあるって。
でも、あんなに寒がってる人たちと見てると…ね?

●WIZ
毛布とか、火とか、使えるものはみんな準備して…
部屋を一つ借りて。そこで皆を集めて、暖を取るよ。
子供やお年寄り。寒さに弱そうな人たちを最優先で。
もちろん、私の尻尾も使ってくれて構わないよ。

さすがにこれだけだと、ほんとに一時的な気休めだからね。
ユーベルコード…茉莉歌。
そうだね…子守唄でも歌おうかな。

凍傷とかならまだしも、病気に効果があるかはわからないけど…
きっと、体は楽になるから。
この雪をなんとかするまで…がんばってね。


リダン・ムグルエギ
えぇ、やる事は決まってるわね
服飾ブランドGOATia出張支店、活動開始よ

羊から糸を紡いで…だと、足りないかも?
まずは応急処置、羊毛の偽物を生み出してふわふわのセーターマフラー手袋を大量に作って配るわ
子供用は動物柄とか見た目も楽し気なものに
ご老人用は縫い目しっかりで雪に触れても水が浸透しない防寒性に優れたものを
そして成人の方には…羊の毛から、この防寒着をどう作るか、可能なら教えてあげたいわ
次に何かあっても自分で対処できるように、ね
あ、アナタがここの支店長になってもいいのよ?

ご飯とか他対策は他猟兵のお世話になるわー
さむーい

アドリブや他の方との絡み大歓迎
台詞はガンガン捏造してもらえると幸いだわ



 その夜、村で最も大きな建物。
 平時では時に集会所としても使われるという村長の家に、村人たちは集まっていた。
 理由はなんてことは無い、単純に、一か所で集まって暖を取った方が効率的、と言うだけの話である。
 あちこちで火を焚いて暖まるよりも、全員で同じ火を囲めば、薪の消費は一か所分で済む。
 病気や仕事、家畜の世話などで離れられない人がいれば致し方ないが、それでも火を焚く絶対数が減れば、その分は節約になるのだ。
 それに、人の温かみと言うものもある。
 見知った顔と囲む暖炉の灯。
 料理上手な猟兵達が腕を振るった、温かい食事。
 そして……ピンク色のモフモフ。
 ――もふもふ、もふもふ。
「……はい、次の人どうぞー」
「はぁーい」
 パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)だった。
 彼女の尻尾を堪能していた村人が夢見心地の顔でふらふら離れて行けば、また別の村人が近づいてくる。
 なんといっても『もふ屋』なる商売が成立するほどのモフみ。具体的には誘惑216のモフみである。
 技能1につき1%にしても200%以上、通常の妖狐の3倍のモフモフ。
 状況が状況だけに、流石に今回はお代はサービス(たぶん依頼報酬に内包されるでしょう)だが、それを差し引いても休む暇が無いほどの大盛況であった。
 とは言え、ただモフモフしているだけでは埒が明かないことはパームとて承知はしている。
 あくまで気休めだ。いくらモフモフが魅力的だとは言え、結局人一人から生えている尻尾では、暖められる人数には物理的に限界があるし、その間パームも身動きが出来なくなるわけで。
 故に、ただここに集まってモフモフしてるだけ、と言うわけでもない。
「……さぁ、あなたの傷を私にちょうだい?」
 部屋の片隅、ここでは凍傷にかかった人や体調を崩した人が集まっている。
 その中心に座り、治療活動を続けているのが、ユナ・アンダーソン(星骸のスティグマテイカ―・f02647)だ。
 持ち前の医療技術でてきぱきと消毒し、包帯を巻き。
 それでも効かないようなひどい状態の者には、自らのユーベルコードも用いて治療を施していく。
 正確には怪我や傷を『癒す』のではなく、『奪い』引き受けているだけであり、その反動はユナの身に降りかかってきているのだが、彼女は決してそれを表に出すことはしない。
 痛みには慣れている。慣れていないものが受けるよりは、慣れている自分が受けた方がよほど楽だろう。
「(村人達を助けてあげなくちゃ……!)」
 自分が我慢するだけで村の人たちが癒されるのであれば、安いものだと彼女は思っていた。
 傷を癒し、心を癒し。
 そして、また別のアプローチで村人たちの力となろうとするものが、もう一人。
「そこで糸を返して……」
「こ、こうですか?」
「そうそう、上手よー」
 キマイラフューチャーの服飾デザイナー、リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)である。
 一角で村の女性たちと一緒に何をやっているかと言うと、毛糸の編み物教室を開いていた。
 セーターに、マフラーに、手袋……どれも、凍える寒さには欠かせない防寒具たちだ。
 今使用しているものこそレプリカクラフトで用意した作りの粗い偽物の毛糸だが、先ほど家畜の羊を見かけた。
 つまり羊毛が採れる。羊毛があれば毛糸を紡げる。
 そしてそこに技術があれば、猟兵が去った後に寒さに見舞われても、ある程度の防寒具の用意が自力でできる、と言うことになる。
 その時を見越して、ただの防寒具でなく『技術』を彼女は提供していた。
「ご老人用には特にだけど、縫い目はしっかりさせてね。雪に触れても水が浸透しないように」
 作り方だけでなく、理屈に基づいたアドバイスも的確に。
 そして時にはデザインに遊びを入れて、子供たちにも楽しめるように。
 自らのブランドを持つデザイナーの面目躍如であった。

 人の交流と言う名のあたたかみを感じさせながら、村の夜は更けていく。
「(この雪をなんとかするまで……がんばってね)」
 パームの子守歌が、大部屋に染み渡っていく。
 雪はまだ降り続いているけれど、どうか今は、少しでも温かみを感じながら休めますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『残影』

POW   :    怨恨の炎
レベル×1個の【復讐に燃える炎の魂】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    同化への意思
【憐憫】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【異形の肉塊】から、高命中力の【絡みつく傷だらけの手】を飛ばす。
WIZ   :    潰えた希望の果て
【悲観に満ちた絶叫】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●白い夜に揺蕩う
 村人たちが寝入った夜遅く。猟兵達は行動を開始した。
 向かう先は、村はずれの森である。
 狩りに出た猟兵達が感じた、あきらかな違和感。
 奥から湧いて出る冷気に、揺蕩う幽霊たち。
 はたしてそれは見間違いでも勘違いでもなく、確かにそこに存在した。
 ふわふわと漂い、ただ生者の気配を求めて襲い掛かる残影は、オブリビオンによって命を落とした犠牲者たちの魂の成れの果てだと言う。
 やはりこの先に、元凶となったオブリビオンが潜んでいるのだろうか?
 しかし、その疑問の答えを知るには、まずはここを突破しなくてはならない。
 猟兵の気配を察知したのか、残影の集う気配が濃くなってくる……。
シュデラ・テノーフォン
白い夜は嫌いじゃないよ
俺白いの多いし、髪とかコートとか
何だか溶け込めるって気がして好きなんだ
…でもアレと一緒になりたくはないなァ

悪いけど同情はしないよ
こんなトコで未練タラタラしてないで、とっとと次行こう
手助けするからさ

炎と絶叫の…衝撃波かな?
それは指輪の盾で防ごうか
おっと、変な動きする炎だな
盾で防ぎきれないのは野生の勘で反応しEllaで斬り裂く
…久しぶりに剣使ったなァ

さてそろそろ12時を越えようか
Cenerentolaに光の精霊弾をセットし複製
眩しくないさ、きっと精霊が調節してくれるよ
君達を導く優しい光にね
一体でも多く仕留めてこう
おやすみと呟きながら

この奥、何が居るかな
面白い獲物だったらいいな


花邨・八千代
おーおー、出るわ出るわ。
仏さんがぞろぞろピクニック気分かァ?
止めとけよ、外で遊ぶにゃちっとばかし寒すぎらァ。
あったまりてぇんなら丁度いい、遊んでやるよ。

◆戦闘(POW)
黒塚を「怪力」で振り回すぜ、「なぎ払い」で一気に巻き込んでくぞ。
「恫喝」で呼び集めつつ「2回攻撃」でぶちのめす。
「第六感」で攻撃避けつつ、手負いの敵がいりゃ「傷口をえぐる」ぜ。
その繰り返しで敵の数減らしつつこっちの傷が酷くなりゃ「捨て身の一撃」だ、出来るだけ多くを巻き込んでやる。

とっとと眠れ、死人ども。
一度死んだヤツが起きちゃあダメだろ。
雪の下の方があったかいぜ、こんな日は特にな。


紫洲川・珠璃
「幽霊の正体見たり枯れ尾花、とは言うけれど今回は枯草じゃなさそうね」


狩りに引き続いて、今回は弓で戦うわ
今回は森の中なので長射程は必要ないし、小型のほうが取り回しやすいはず

味方の援護を中心に射撃
さらに呼び出した炎狐を集約し、戦場を駆けまわらせつつ、それに反応した敵に対して
木立の影から狙いをつけて射撃する
避けたり追い払ったりするならその隙を狙う感じね
無視するようなら炎狐に焼かせるのみ


接近されたら、刀での応戦もするが基本は弓の射撃中心

アドリブ、他者連携希望します



「幽霊の正体見たり枯れ尾花、とは言うけれど今回は枯草じゃなさそうね」
 やれやれと、紫洲川・珠璃(夜を追う者・f00262)が緩く首を振る。
 それがどういったものかは判明したと言え、本当に幽霊だとは。
 しかも、こちらに向ける感情はあまりよろしくないように思える。
「白い夜は何だか溶け込めるって気がして好きなんだ……でもアレと一緒になりたくはないなァ」
 珠璃と共に、先にその光景を見ていたシュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)も同様に。
 ゆらりゆらりと現れてくる残影たちは、私達と一緒になろうと手を伸ばしてくる。
 だが、それは『お友達になろう』で片付く話などでは、決してない。
 望んでこうなったものではないのだろう。道連れだって欲しくもなるだろう。
 だが、同情はしない。してはならない。
「援護するわ」
「OK、じゃあ前に出ようか」
 手にした短弓に矢を番える珠璃に首肯を返し、シュデラが前に歩み出て盾を構える。
 木々の多い森の中、大振りの太刀や薙刀は存分には振るいづらい。
 故に珠璃は取り回しの容易な弓を選び、シュデラもまたそれに合わせて護衛に回る。
 猟兵達の抵抗の意志を感じ取ったのだろう。
 残影たちは甲高い声を上げて襲い掛かる。
 その声は悲嘆に塗れ、その呪詛は衝撃波と言う形で猟兵を襲い、シュデラは珠璃を後ろに立たせてそれを盾で受ける。
 音とは、空気の波だ。受け止めれば、真後ろへの影響は少なく済む。
 続けて放たれてきた不規則な炎は剣で切り落とし、その間に珠璃が呼び出した別の炎――それは、狐の姿をした炎の眷属――が残影たちを追い立て、あるものは弓で射抜かれ、またあるものは……。
「眩しくないさ、きっと精霊が調節してくれるよ」
 君達を導く優しい光にね。
 シュデラが放つ、光弾の雨。次々と撃ち抜かれて、光の中へと消えていく。
 おやすみ。そう呟いたシュデラの声は、彼等に届いているのだろうか。
 だが、それでもなお、残影の姿は多い。
 それほどまでに、この地での犠牲者が多かったのか、それとも……。
 二人が構え直したとき、その後ろから陽気な声がした。
「――おーおー、出るわ出るわ。仏さんがぞろぞろピクニック気分かァ?」
 止めとけよ、外で遊ぶにゃちっとばかし寒すぎらァ。
 声の主は花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)。
 どちらかと言うと物静かな雰囲気を漂わせていた(シュデラの本性はともあれ)先の二人とは違い、見るからに元気の有り余っている彼女に生気を見出したのか、残影たちの視線が八千代に向く。
「ほー?そうかい。あったまりてぇんなら丁度いい、遊んでやるよ!」
 それに臆することも、憐れみを向けることも無く。
 珠璃が地の振りを理由に避けた薙刀を、しかし八千代は構うことすらなく握りしめて、残影たちの中心に躍り出た。
 振るう。
 薙ぎ払う。
 木々が邪魔なら、それすらも巻き添えにして、自身の回避は勘任せ。
 来るなら来い、全部まとめて叩き潰すと言わんばかりに、荒々しく、本能任せにぶちのめす。
 それはある意味、『命』の本質により近いのかもしれない。だからこそ、残影たちも彼女に惹かれ、あるいは妬むのかもしれない。
「とっとと眠れ、死人ども。一度死んだヤツが起きちゃあダメだろ」
 雪の下の方があったかいぜ、こんな日は特にな。
 そう投げかけられた言葉は、直接は見せなかった一抹の優しさの現れだったのだろうか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

赫・絲
ちょっと通してーって言って通してくれる相手じゃないよね、多分
それなら押し通るだけだね
うん、もちろんだよ、ユアさん
還るべきところに、送り還してあげよう

視認できる範囲の敵へ向かって疾駆
木を足場に飛び越えるなり何なりして、敵集団の中心へ
【先制攻撃】で周囲に一息に糸を放ち、絡め取れるだけ絡め取る

断たれた者は、戻らない。生者を羨んでも仕方がない
お還り、そしてお眠り
貴方達がいるべき場所は、もう此処にはない

【全力魔法】で増幅させた雷を糸に這わせて【属性攻撃】
威力は最大、何度も痛みの苦しみを与えるつもりはない
せめて糸が捉えた相手は一撃で落としてみせる

捉えきれなくても焦らない
ユアさんがいるもの、大丈夫


ユア・アラマート
幽霊が出る時は寒気がする、なんて聞いたことはあるが。まさかそれで雪が降ってきたってわけでもないだろう
何にせよ、この先に元凶があって、話が通じる相手じゃないのならやるしかない
少し荒っぽいが弔いだ。イト、手伝ってもらっていいかな

範囲はイトに任せて、私は各個撃破で動くよ
【全力魔法】と【属性攻撃】で風の魔力を強め、【ダッシュ】で速度を強化して敵を翻弄
攻撃の的を絞らせずに、イトの範囲攻撃から逃れた敵を一体ずつ確実に潰し、それが終われば集団に突っ込みイトから自分に注目を移す

憐憫は、勿論多少あるけどね
生きてる人間のためにお前達の苦痛も未練も踏み台にさせてもらう
恨むのはいいけど、そのかわりゆっくり眠ってほしい



「幽霊が出る時は寒気がする、なんて聞いたことはあるが」
 まさかそれで雪が降ってきたってわけでもないだろう、とユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)はボヤく。
 確かに、濃密な死の気配を漂わせる残影たちは、生命の温かさとは対極に位置する、底冷えのする存在だ。
 だが、それはあくまで『気配』の話。
 実際に気温が下がる、などと言うのは考え難い。
「何にせよ、この先に元凶があって、話が通じる相手じゃないのならやるしかないな」
「ちょっと通してーって言って通してくれる相手じゃなさそうだもんね……」
 ユアの隣に立つ赫・絲(赤い糸・f00433)。その視線の先には、いまだ数多く漂う残影たち。
「少し荒っぽいが弔いだ。イト、手伝ってもらっていいかな」
「うん、もちろんだよ、ユアさん」
 還るべきところに、送り還してあげよう。
 彼らを見据える瞳はそのままに、頷きあって。
 憐憫は、勿論少しくらいは、ある。しかし。
「断たれた者は、戻らない。生者を羨んでも仕方がない」
 ふわり。
 軽い動作で駆ける絲が、残影たちの合間を縫っていく。
 集団の中へと飛び込み、そして横切っていく絲を、残影の視線が追い、手が伸びる。だが、それよりも速く。
「お還り……そしてお眠り」
 絲が投げかけたその言葉は、バチリと言う耳障りな音に掻き消された。
 絲の通った道筋に張り巡らされていたのは、視認困難な極細の鋼糸。
 それに、全霊の雷の魔力を走らせたのだ。
 せめて、何度も痛みの苦しみを味わうことの無いように。
 せめて、この糸が捉えた相手くらいは。
 勿論、これで全滅とは易々とは行かない。
 鋼糸の束縛を逃れた残影が、絲の背後へとその腕を伸ばして……。
「恨むのはいいさ。……けど、そのかわりゆっくり眠ってほしい」
 風一陣に、ユアの声が乗る。
 絲が振り返ることすらしなかったのは、彼女がいたからだ。
 消し炭すら残らない。ダガーで斬った手ごたえも無い。
 だが、確かにそれらは、残影を再びの眠りへと誘っていた。
 ――貴方達がいるべき場所は、もう此処にはない。
 ――お前達の苦痛も未練も、踏み台にさせてもらう。
「……今を生きてる人間のために」
 未だ未練を残す魂たちに、二人の刃が再び向けられる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アーレイラ・モンクスフード
さて、化け物退治ですね。
あの村にはこの暗き世界に稀な平穏がありました。
それを失うべきではありません

「試みに問いますが、言い残すことは?」
元凶存在のヒント貰えれば僥倖程度に亡霊に問います

何であれ放置も出来ません
ユーベルコード発動

極光の焔で自身の周り囲み
「おいでなさい、哀れな亡霊達よ。私はここに居ます。」

敵のユーベルコードの発動を誘い、焔の膜で亡者の腕を迎え入れます。

焼いて残った焔を大鎌の先に纏わせ、亡霊達を纏めてなぎ払います。

「どうか安らかに。虹の膜を超えて、天のその先へ。救われてあれ。」

祈り、彼岸での安寧を願いましょう。

呪い、恨みがあれば置いていって下さい。
この身は既に呪われた身です。
存分に。


ユナ・アンダーソン
元凶のオブリビオンはこの先なのかしら?
でもその前にきちんと終われなかった者に正しい終わりを
救ってあげられなくてごめんね

優しさ11、コミュ力11、手をつなぐ11、誘惑6で星の抱擁を使用
可哀想な子達
さぁ、抱きしめてあげる

敵の叫び攻撃には優しさ11、呪詛耐性3、激痛耐性6、気合い1、覚悟1で防御
あなた達の想いは全部、持っていってあげるから
終わりにしましょう

戦闘終了後
祈り7で犠牲者達の冥福を祈ります
―――この魂達に憐れみを

アドリブで他の方との絡み歓迎



「元凶のオブリビオンはこの先なのかしら?」
「えぇ、化け物退治ですね」
 森の中を歩む、二人の少女。
 ユナ・アンダーソン(星骸のスティグマテイカ―・f02647)とアーレイラ・モンクスフード(真昼の白夜・f02061)である。
 あの村には、この暗き世界に稀な平穏があった。
 決して豊かな暮らしではなかっただろうが、それでも、ささやかな幸せは共に在った筈なのだ。
 それが失われることは、あってほしくはない。
 だが、その前にやるべきことがある。
「おいでなさい、哀れな亡霊達よ。私はここに居ます」
「きちんと終われなかった者に、正しい終わりを」
 救ってあげられなくて、ごめんね。
 そんな彼女たちの憐れみが、揺蕩う残影たちの意識に触れた。
 呼び起されたのは、それに対する怒りなのか、はたまた寄り添ってほしいというただの願いだったのか。
 どちらにせよ、残影から伸ばされた手は、生者を冥府に引きずり込む代物である。
 だが、その手を、彼女たちは、ためらいなく取った。
「さぁ、抱きしめてあげる。あなた達の想いは全部、持っていってあげるから……」
 終わりにしましょう、と。
 その手を取ったユナから放たれるのは、優しくも眩い、星の抱擁。
 向けられた敵意や悪意ごと浄化する、救いの光であったのかもしれない。
 手を伸ばした残影が、光の中へと姿を消してゆく。
 そして、アーレイラもまた。
「開け、天界の門。来たれ、日輪の風よ」
 手に灯すのは、極光を思わせる七色の灯。
 自分でもわからないであろう『何か』を求めて手を伸ばしてくる残影たちを焼き、その残り火を鎌に纏わせ。
 首を、刎ねる。
 苦しみの無いよう、一振りの下に。
 いくつもの魂が寄り集まって生まれた残影たちが、何を思っているのかは二人にはわからない。
 だけど、きっと。
 彼らに必要なのは『安息』と言う二文字なのだろう。
 だから彼女たちは祈る。
「どうか安らかに。虹の膜を超えて、天のその先へ。救われてあれ」
「この魂達に憐れみを」
 犠牲者達の冥福を。
 彼岸での安寧を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。残影…ね。彼女達は苦手…。
憐れみを抱かず。同情を示さず。只の敵として屠る必要があるから…。
…そして、それが出来たら苦労しないから…余計にね。

他の猟兵と連携して行動して前衛を任せる。
第六感を頼りに敵の攻撃を見切り回避し、
敵から受けるダメージは呪詛耐性で耐える

…無駄よ。私は既に呪われている。
貴女達の呪いは私には効かない…。

…だけど、その慟哭は聞き届けた。

敵の行動の隙を伺い【限定解放・血の教義】を発動
吸血鬼化した自身の生命力を吸収させて精霊を誘惑する。
死者の呪詛を吸収する“闇属性”の魔力を溜め、
“闇の風”で残影をなぎ払う2回攻撃を行う。

…闇の精霊、死の精霊。
いまだ彷徨う死者の霊魂に安息を…。


パーム・アンテルシオ
幽霊…幽霊かぁ…
いや、ほら、ここはヒトの女の子として、
きゃー!とか叫んで、誰かに縋り付くべき所なのかな、って。
…なんて、考えてる場合じゃなかったね。戦闘、戦闘。

戦場は、森の中かぁ…それなら。
ユーベルコード…金竜火。
周りに燃え移っちゃった分は、消せるように。灰の森にしないように、対策しておかないと。
できるなら、みんなと協力して戦いたい所だよね。
その場合の私の役割は…牽制、後方支援、妨害…ってところかな?

あなたたちが、どこの誰なのか。いつ死んだ人達なのかはわからないけど。
ここで、いつまでも彷徨ってるなんて、嫌だよね。
私が、私たちが。あなた達の眠るべき場所に、還してあげるよ。
だから、おやすみなさい。


宇迦野・兵十
回れ右して、雪でも眺めて酒を一杯といきたいとこだが
苦しんでる相手をほおっておくってのは旨くないね
子守唄ともいかないが、眠らせるとしよう

苦しんで死んだヤツをまた斬るってのは好みじゃない
できるだけ刀を抜かずに終わらせたいもんだ
とはいえ、我が身を守る程度にゃ使うとしよう

[誘惑]を使って敵をひきつけつつ
[折紙呪法]で作った[破魔]の折鶴を複数飛ばして打ちこむ
集まっているようならフォックスファイアで一掃しようか
相手の攻撃は[見切り][残像]で避けて回るとするよ

痛みも未練も悲しみもこれにて仕舞い
行くべきとこと逝くまではこでゆっくりと休みな
元凶は俺達がどうにかするさ

[アドリブ歓迎、諸々お任せいたします]



「きゃー!」
 夜の森の中、少女の(どこか棒読み気味な)悲鳴が響いた。
 残影の絶叫ではない、れっきとした、生者の声。
 声の主は、パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)であった。
 ……が、糖の彼女もすぐに落ち着きを取り戻すと、やれやれとため息をついて。
「……なんて、やってる場合じゃないよね」
「確かに、そんな雰囲気じゃあないなぁ……」
 宇迦野・兵十(きつねさん・f13898)も右に倣えでため息一つ。
 繰り返す形になるが、残影とは死した者の怨念が寄り集まり、形を成した存在。
 そのような由来を知ってなお、冗談を言う気には今一つなれなかった。
 最も、パームが本気でふざけているわけではないのは周囲にも理解できているのか、特にとがめられることも無かったのは幸いだったが。
 それに、気分が滅入って冗談の一つででも気を紛らわしたくなるのも、解らないこともない。
「彼女達は苦手……」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)がぼやく。
 来歴がなんであれ、残影はオブリビオンに他ならない。
 現世に害をなす存在である以上は、憐れみを抱かず、同情を示さず、只の敵として屠る必要がある。
 そして、それは理屈だ。
 頭で分かっていても、感情はそう簡単に割り切ることは難しい。
 そして一番厄介なのは、もしかすると……ここで帰るわけにもいかない、猟兵と言う立場なのかもしれない。
「回れ右して、雪でも眺めて酒を一杯といきたいとこだが……苦しんでる相手をほおっておくってのは旨くないね」
 そう言いながら、兵十が取り出したのは、数個の折り鶴。
 験力を込め、飛ばし……漂う残影たちに打ち込む。
「痛みも未練も悲しみもこれにて仕舞い」
 子守歌とはいかないがね。
 そう呟く兵十の腰の刀は、黙したまま。
 死んで苦しんだものを、また刀で斬るのは、彼の本意ではない。
 せめて、もう一度死ぬ間際くらいは多少なりとも華やかに。彼なりの心遣いなのだろうか。
 そして、その周囲を漂う、桃色の小さな狐火たち。
「私が、私たちが。あなた達の眠るべき場所に、還してあげるよ」
 パームが操るその炎は、決して森の木々を燃やすことは無い。
 彼らがどこの誰で、いつ死んだのかはわからないけれど。
 さまよい続ける彼らを、帰るべき場所へと誘うための炎である。
 鶴と炎が舞い踊り、残影たちを眠らせていく様を眺めるリーヴァルディの瞳は、心なしか眩しげに細められていた。
「下がって、二人とも」
 そう声をかけたのは、残影たちが息を枢要な所作を見せたからだ。
 あの慟哭を聞くのは、自分だけで良い。何故なら、己の身は既に呪われているから。
 代わりに自らにできること、それは。
「その慟哭は、確かに聞き届けた」
 リーヴァルディが、手を掲げる。
 自らの呪われた血を以てして、呼び起こすのは『死』と『闇』の精霊。
 二人のように、優しくは無いかもしれないが。
「いまだ彷徨う死者の霊魂に、安息を……」
 魔力が嵐となって、残影たちの間を吹き抜けていく。
 それは確かに荒々しい凶風に違いなかったが、同時に、彼らを死出の旅に導く追い風となりえただろう。
 気付けば、残影の声はもう聞こえなくなっていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『天魔の幼獣』

POW   :    白の嵐
自身の装備武器を無数の【羽毛を思わせる光属性】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    白の裁き
【視線】を向けた対象に、【天からの雷光】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    天候操作
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 残影の声を失った森には、静けさが戻っていた……と言えたらよかったのだが。
 そんなことは無く、冷たい風が奥からびゅうびゅうと吹き、雪が舞って草木が揺れる。
 改めて奥へと歩を進めた猟兵達が目にしたのは、木々がなぎ倒されたのか、不自然に開けた空間。
 ぽっかりと空いたその場所に、遮るもののなくなった月明かりが差す。
 そして、その中心では……。
「きゅる、きゅるる」
 積もった雪に身体を擦りつけて遊んでいる様子の、一匹の獣であった。
 それだけであれば、心和む、幻想的な光景で済んだのかもしれない。
 だが、獣がその白くふかふかした身体を揺らすたびに、周囲には強風が吹き、冷気が散る。
 ぴょんとその場で飛び跳ねてみれば、そのたびに粉雪が勢い良く舞い上がり、パチパチと稲妻が走る。
 ――天魔の幼獣。
 恐るべき力を秘めた、魔獣の幼体。
 まだ小さな子供であれど、その力は尋常の生物とは一線を画す。
 きっとこの獣にしてみれば、たまたま骸の海からこの場所へと零れ落ちただけ。
 そして、ここで遊んでいるだけなのだろう。
 だが、悪意が無くとも、この個体はオブリビオン。過去から滲み出て、現在を蝕む存在に他ならない。
 いずれ成体となって、より凶悪な力を身に着けてしまえばどうなることか。
「きゅる?」
 猟兵達の存在に気付いたらしい天魔が、顔を上げる。
 本能的に猟兵と言う『天敵』を認識したのか、一つ身体を震わせると、威嚇のように白い毛を逆立てた。
花邨・八千代
へーぇ、ずいぶん可愛いのが暴れてたみたいだなァ。
見た目に反してまたヤンチャみてーだけど、面白ェじゃん。
来いよチビ助、全身全霊で遊んでやるぜ。

◆戦闘(POW)
南天を大鎌に変化させるぜ、【ブラッド・ガイスト】だ。
「怪力」を乗せて全力でぶっ殺しに行くぞ。
「恫喝」で威圧しつつ力任せに「なぎ払い」だ。
返す刃で「2回攻撃」、更に「傷口をえぐる」。
「第六感」で相手からの攻撃を避けながら最後は「捨て身の一撃」だ。
頭の翼、片方だけでも切り落としてやらァ。

はっはっは!ビリビリきやがる!いいねェ、肩凝りにききそうだ!
楽しいかチビ助!俺ァ楽しいぞ!
最後まで派手にいこうじゃねェか!


リーヴァルディ・カーライル
…ん。何だ、吸血鬼じゃ無かったの。
少し残念だけど…やるべき事は変わらない。
この世界の人々の生命を脅かす過去は…すべて私が打ち倒す。

【限定解放・血の教義】を二重発動(2回攻撃)
吸血鬼化した自身の生命力を吸収して精霊を誘惑、
“闇”属性の“過去を世界の外側に排出する力”を溜め、
大鎌の刃に巨大な“闇の結晶”刃を形成する

…力押しだけで、私を倒す事はできない。
それを今から教えてあげる…。

事前に防具を改造して第六感を強化しておき、
攻撃の気配や存在感を感知する呪詛を自身に付与
敵の行動を見切りつつ、大鎌を怪力任せになぎ払い結晶を破壊
過去の存在を傷口を抉るように消滅させる闇を解き放つ

…消えなさい。この世界から…。


紫洲川・珠璃
なんともファンシーな生物が出てきたわね・・・まさかこんなのが元凶だったとは
とはいえ、手を抜いてあたれる相手では無いはず

場所が開けたので弓を投げ捨てて刀を抜く

この手の獣型は素早そうなので、こちらも妖剣解放を使用して機動力を確保
あとは移動力を削ぐために、脚を狙って攻撃する。当たらなくても回避行動をとらせれば
他の猟兵が、致命打をあててくれるはず。
逆にほかの猟兵の攻撃を避けた瞬間は攻撃のチャンスなので逃さず攻撃
牽制の斬衝撃波で相手の態勢を崩して本命の一撃を叩き込む

戦闘は虚鐵一振りで行い
一撃の威力より手数を重視した戦い方をする

アドリブ、他者連携希望します



 猟兵の前に姿を現した『元凶』。
 それは、猟兵達にとっては少々予想外に映ったのかもしれない。
「なんともファンシーな生物が出てきたわね……」
 まさか、こんなのが元凶だったとは。
 紫洲川・珠璃(夜を追う者・f00262)が思わず呟く……が、実際のところ周囲も割と似たような反応だった。
 小さな丸っこい体躯につぶらな瞳、ふかふかの純白の体毛。
 確かに、そんな外見の獣が無邪気に遊んでいただけ……と言ってしまえば、それは『可愛い』と言って差し支えないだろう。
 だが、それで和んで終わり、と言うわけにはいかないのがオブリビオンと言うものだ。
 小さな魔獣はぶるりと身体を震わせる。ただ、それだけで、つむじ風が巻き起こり、一面に積もった雪が舞い上がる。
 その中に紛れているきらきらとした光は、抜け落ちた魔獣の羽毛。
 月明りだけでない光量は、その中に破壊的な魔力を内包している証左であり。
「見た目に反してまたヤンチャみてーだけど……面白ェじゃん!」
 光を周囲に漂わせたまま、猟兵にタックルをかけてくる魔獣を、花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)は手にした大鎌で受け止める。
 大鎌の封印を解いた影響でぽたぽたと血を流す腕に伝わる痺れは、魔獣の纏わせた魔力のせいだけではない。
 質量と速度からすれば異常なほどの、攻撃の重み。尋常の獣とはわけが違うことを嫌でも認識させられる。
「来いよチビ助、全身全霊で遊んでやるぜ!」
 力任せに鎌を振り抜き、魔獣に距離を取らせ、口角を上げて吼える八千代。
 それとは対照的に、やや不満げな表情を見せるのがリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)だ。
「……何だ、吸血鬼じゃ無かったの」
 吸血鬼狩りが何よりも優先される身としては、少々残念では、ある。
 だが、やるべきことは変わらない。
 この世界の人々の生命を脅かす過去。そう言う意味では、目の前の小さな魔獣も同じものなのだから。
 彼女が握るのは、八千代と同じく大鎌。
 更にそこに、ダンピールの魔血により呼び起こした闇の精霊を纏わせて。
 本来の刃の外側にもう一つ。月光も雪明りも吸い込むような、暗い暗い結晶の刃を作り出す。
 それは、闇を以て過去を刈り取るもの。
 きゅるると一鳴きした魔獣から放たれる猛吹雪を一閃し、道を拓けば八千代がそこを突っ切り、大鎌をなぎ払う。
 だが、ただでさえ周囲に溶け込む白く小さい身体に加え、魔獣の能力と知能はそうやすやすと命中を許してはくれない。
 渾身の力で振るわれる大鎌の一撃をひらりひらりと避け、一拍遅れて落とされたリーヴァルディの一撃も、その内側を潜り抜けていく。
「やはり、手を抜いてあたれる相手では無いわね」
 その様子を見ながら、珠璃は呟く。
 その手に握られているのは、先までの弓とは違い、刀。
 場所が開けているなら、振るうのに不都合はないし、点の攻撃である弓矢よりも、線の攻撃が可能な刀の方が当てるのには都合がいい。
 見たところ、今攻撃を仕掛けている二人は、命中打こそ出せてないものの一撃の重みは相当と思える。
 ならば、自分のすべきことは。
「――妖剣、解放」
 刀を握る珠璃の手に力が籠る。
 『虚鐵』の名を冠したそれから流れ込んでくる怨念に身を蝕まれるのを感じながらも、身体は軽い不可思議な感覚。
 珠璃の足が地面を蹴り、くぐもった音とともに雪が舞い上がった。
「きゅい!?」
 その姿は、既に魔獣の眼前。魔獣の驚いたような声も、耳には入らない。
 虚鐵を横薙ぎに一閃させる。身を翻す魔獣を、さらに追う。
 後ろで、何かバチリと言う音がしたのを聞いたが、それも無視。
 返す刀で袈裟に繋ぐ。魔獣の身体能力をもってすれば、それも命中には至らないが、それでも強引な回避だったのか、魔獣が雪面に背中から落ちるのを見た。
 これで良い。
 珠璃が為すべきだったのは、牽制と足止め。手数とスピードを重視した攻めで、相手の体勢を崩すことさえできれば……。
「はっはっは!楽しいかチビ助!俺ァ楽しいぞ!」
「消えなさい。この世界から……」
 致命打を当てるのは、あの二振りの鎌の役目だ。
 転がって体勢を立て直した魔獣に迫る、二筋の斬撃。
 純白の雪景色に、その容姿に見合わぬドス黒い魔獣の血が舞った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

シュデラ・テノーフォン
随分綺麗な原因が出てきたね
でも獲物だ、さァ狩ろう今すぐ狩ろう

氷や炎は多少耐性があるけれど
光と雷か面倒だ
でもそれでこそ、狩は面白い

光る羽毛、全力で盾受けしようじゃないか
雷光も目の動き注視で視線が向けられた瞬間盾を展開
危ないから、防御持ってない子は俺の後ろどうぞ
硝子越しに光るからちょっとだけ目が痛いなァ
あまりに獲物からの攻撃量が多いなら硝子の城壁で防ぎきる

沢山力使って疲れただろう
じゃあ俺からも、とっておきの光線をプレゼントしようか
AschenputtelにAccoladeの魔法を付与、
目覚めの姿を見せてくれるかい?
着飾ったブラスター銃の一撃で仕留めてあげよう
大人になれずに散るんだ、残念だったね!


宇迦野・兵十
今日は良い月だな。お前さんもそう思うだろ?
まぁお前さんも好き好んでここにいる訳じゃないだろうが、
悪いがこのままにさせるって訳にはいかないのさ。

―三狐の剣は人を斬るには非ず、悪を斬る剣なり
 一人の悪を斬りて万人をいかす謀り事なれば―

往くぞ、天敵。
三狐新陰流、宇迦野・兵十。
推して参る。

[見切り]で攻撃を避けつつ、[勇気]をもってこちらの間合いまで踏み込む
間合いに入れば[鎧砕き]と[2回攻撃]で斬りつけ、
[見切り][残像]も組み合わせて相手の隙を伺う
そこで隙が生じれば[剣刃一閃]で斬り捨てる。

今日は死ぬには良い月さ。
おやすみ、天敵。

[アドリブ歓迎、諸々お任せいたします]



 純白の毛皮に、二筋の斬撃痕。
 その身の一部を朱く染めながらも、まだ天魔の幼獣に目立った弱り見受けられない。
 むしろ、今の応酬でより敵対心が刺激されたのか、月明りの下、低く唸り声を上げている。
 その姿は、凶獣に違いなくとも、どこか幻想的だ。
 だが、それもシュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)の狩猟本能を削ぐには至らない。
「随分綺麗な原因が出てきたね……でも、獲物だ」
 その目は、すぐそこに迫った開戦を今か今かと待ち望んでいる。
 その気配も、魔獣も本能で感じ取ったらしい。次の狙いを、彼に定めた。
 甲高い、未発達な声帯を力いっぱいに震わせ、咆哮する。
 その『圧』で雪が舞い上がるのに混ざり、光の粒が魔獣を中心に広がって放たれる。
 ――来た。
 変な小細工など不要。力と力のぶつかり合いこそ本懐だと言わんばかりに、シュデラはその渦中へと飛び込んでいく。
 ガラス細工のような透明度の高い盾を掲げ、衝撃波と光の花弁を真正面から受ける。
 痺れが走る。腕が悲鳴を上げる。
 それでこそだ。
 チカチカする視界の中、シュデラは何とも言えぬ心地よさを感じていた。
 乱れ舞う光の粒と、削れていく盾の欠片が、月明りを乱反射して、戦場を彩っていく。
「……良い月だな」
 宇迦野・兵十(きつねさん・f13898)が、ぽつりとつぶやいた。
 目の前で光を散らす、小さな魔獣。
 好き好んでここにいる訳ではないだろう。ただの偶然だったのだろう。
 ただ此処で月明りと戯れていただけであっただろう魔獣に、思うところは彼とてあるだろうが。
 それでも、このままにさせるわけにはいかない。悪意が無くとも、その存在は、人にとっての天敵たりえてしまうのであれば。
 ――三狐の剣は人を斬るには非ず、悪を斬る剣なり。
 一人の悪を斬りて万人をいかす謀り事なれば――
「三狐新陰流、宇迦野・兵十……推して参る」
 吹き荒れる光の吹雪の中、刀の間合いまで踏み込むのは難しい。
 だが、シュデラが前に立ち、開けてくれた道がある。
「悪いね」
「良いよ良いよ、後ろどうぞ」
 短く言葉を交わして、接近のための距離を稼ぐ。
 後は、乱れ飛ぶ光の密度の薄い場所を見切り、そこに飛び込むだけ。
 ノーダメージとは行かずとも、踏み込むことは……可能だ。
 光の中を突っ切ってくることには、魔獣も予想の範囲外だったのだろう。
 鳴き声が止まり、嵐が止む。
「今日は死ぬには良い月さ」
 振り抜かれた刃の一閃は、掠めるもしかし致命打にはまだ遠い。
 どうする?踏み込むか?
 やろうと思えば行けただろう。だが、視界の端に映った『それ』を見て、兵十はあえて退く。
「俺からも、とっておきをプレゼントしようか」
 それは、シュデラの愛銃。
 硝子の羽根を着飾った、彼のお姫様。
 兵十が生み出した一瞬の隙、狙いを定めるには十分な時間だ。
「大人になれずに散るんだ、残念だったね!」
 宣告と共に放たれる、一条の光。
 それは、吹き荒れていた光の嵐に負けぬほどの眩さを以て、魔獣の身体を貫いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユナ・アンダーソン
わぁ、可愛い!
でも、倒さないといけないんだよね
油断しないようにしなくちゃ

コミュ力13、手をつなぐ12、優しさ12、祈り9、誘惑8、催眠術3を用いて
星の抱擁を使用
さぁ、おいで
抱きしめてあげる

敵の攻撃は第六感7と武器を使って範囲攻撃4でなぎ払い5したり
オーラ防御10、武器受け3、氷結耐性3、電撃耐性3で防御
星者の光を使って目潰し5して攻撃の制御を邪魔したりする
星の光よ
我が身を守りたまえ
激痛耐性8である程度のダメージは無視して行動

戦闘が終了したら幼獣に祈り9
決して悪ではなかった魂に平穏と憐れみを

アドリブで他の方との絡み歓迎


パーム・アンテルシオ
一体どんな悪者が待ってるのかな、なんて思ってたんだけど…
こんなに可愛い厄介者が原因だなんて。完全に予想外だよね。
まぁ、可愛くても、もふもふでも、倒さないといけないのが…私たち、猟兵なんだけど。
…それに…村の皆の。人の為、だからね。

さて…見た目以上に危険な存在みたいだから、暴れられないようにしたい所だけど…
ユーベルコード…山茶火。
押さえ込む。あるいは、足を止める。逆に、攻撃の起点を邪魔する…なんてのもいいかな。
何にしても、私の仕事は、みんなのサポート。
見えない、って事を最大限活かして。有効な一点を見極めよう。

不思議な力を宿した、人外の存在。
生かされるか、殺されるか。その違いは…
ふふふ。なんてね。



 傷つき、きゅるきゅると抗議の鳴き声を上げる魔獣。
 その姿には悪辣さやおぞましさと言うものは、あまり感じられない。
「一体どんな悪者が待ってるのかな、なんて思ってたんだけど……」
 その実態には、パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)も少々予想外だったようで。
「まぁ、可愛くても、もふもふでも、倒さないといけないのが……私たち、猟兵なんだけど」
「……そうね、油断しないようにしなくちゃ」
 繰り返すが、見た目がどうあれオブリビオン。
 村の皆の……人の為であるならば。倒さなければならないと、ユナ・アンダーソン(星骸のスティグマテイカ―・f02647)と頷きあう。
 この幼い魔獣が、見た目に見合わぬ危険さを内包するのは、これまでの戦いぶりから見ても明らかだ。
 気を付けてと、お互い短く注意喚起をしあって。
 再び、魔獣から光が散る。
 だが、今度のそれは、無差別にただ放出されていた――無論、それだけでも十分な脅威なのだが――ものと違い、明確に、猟兵への敵意に満ちた、指向性のあるもの。
 それを、ユナが迎え撃つ。
 自身が宿した、星の光。祝福の光と、過去から滲み出たすべてを飲み込むが如き閃光が、正面からぶつかり合う。
 当然、尋常の生命体とは根本的に違う恐るべき魔獣と、人一人に内包されたエネルギー量は比べるべくもないだろう。
 それでも。
「星の光よ……我が身を守りたまえ……!」
 呑み込まれない。いくら辛くても、いくら痛くても、星の灯は、そう簡単に消えることは無い。
 目を開けているのも辛いほどの、圧倒的な光量が、場を満たす。
 ……だからこそ。
 それは身を潜ませ、魔獣に牙を剥くことができた。
 ――陽の下、火の下。炎の運命を動かそう。
 光の裏には影がある。光が強ければ、なおの事。影とは、そこに確かに『存在する』ことの証左でもある。これもある意味、命の灯と言えようか。
「きゅるっ!?」
 暴力的な光の一方が、消える。
 魔獣の身体に絡みついていたのは、目には見えない炎の腕。
 パームの放ったユーベルコード『山茶火』。
「(不思議な力を宿した、人外の存在……)」
 そう言う意味では、魔獣と妖狐にそこまで大きな違いは無いのかもしれない。
 ならば、生かされるか、殺されるか。その違いは一体何なのであろうか?
 そんな事を考えるパームの表情は、ユナの放つ閃光に隠れて誰にも窺い知ることはできなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユア・アラマート
……かわいい。いや、そうじゃない
運が悪かったのはこの子なのかあの村人達なのか、まあ起きてしまった以上は倒さなければいけないな
それにどうも、この子の起こす力が強いせいか、私の体温調節も鈍ってきたらしい
行こうイト、凍える前に片付けよう

縁結・雷火染で焔と雷の精霊を召喚。あらかじめ【属性攻撃】で二つの属性を強化
二体と一人で接近し、視線を向ける対象をぶれさせて的を絞らせず。かつ精霊を先にいかせることで、自分へ攻撃が向かう可能性を下げる

私自身は【ダッシュ】で速度を上げ、常に移動をしながら距離を詰めていき
幼獣の隙を突く形で、イトとタイミングを合わせて残存している精霊をダガーの斬撃と共にぶつける


赫・絲
うわかっわい……いやその前にさむ、さっっっむい!
このもふもふ自分がもふもふでぬくぬくだからって容赦ないよユアさん!
ほんと凍える前にやっちゃおう。
ちょっぴり可哀想だけど、この子がこのままここで遊び続けたら村の人もみんな凍りついちゃうもんね。

さあお出で、今日の遊び相手はあの子だよ!
狐月で二匹の狐を召喚
幼獣が攻撃の的を絞りにくくなるように、
その視線を翻弄するように動き回りながら攻撃してもらうよ
私も【見切り】でしっかり相手の攻撃は見切りつつ、
隙をついて両手から鋼糸を放ち、幼獣を雁字搦めに

今だよユアさん、みんな、やっちゃって!



 手負いの獣ほど恐ろしい。多くの者は、そのように認識していることだろう。
 だが、それが元から恐ろしい魔獣であれば、どうなるだろうか?
 簡単だ。
 もっと恐ろしくなる。
「うわかっわい……いやその前にさむ、さっっっむい!」
「……確かに、かわいいとか言ってる場合ではなくなってきたな……」
 幾重にも手傷を負い、本格的に生命の危機を感じ取っているのだろう。
 最早なりふり構わなくなってきた魔獣の周囲には、猛吹雪と言ってよいほどの極低温の暴風が吹き荒れている。
「ユアさん!このもふもふ自分がもふもふでぬくぬくだからって容赦ないよ!」
「あぁ……それにどうも、この子の起こす力が強いせいか、私の体温調節も鈍ってきたらしい……!」
 喚かないとやっていられないのか大声を上げる赫・絲(赤い糸・f00433)に対し、ユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)が渋い顔で頷く。
 本格的に交戦に入るまでは、自身の魔力で体温調節も何とかなっていたが、既にそれで賄いきれない域になりつつある。
 このままでは、全員そろって凍死しかねない。あまり時間はかけていられない。
 決して悪意があったわけではないだろう魔獣に、相対するのは少々の心苦しさも無いわけではないが。
「この子がこのままここで遊び続けたら村の人もみんな凍りついちゃうもんね……!」
「運が悪かったのはこの子なのかあの村人達なのか……まあ、起きてしまった以上は倒さなければいけないな!」
 ユアが解き放つのは、焔と雷の精霊達。そして絲が喚び出すのは紫炎の狐。
 まるでお互いの力を入れ替えたかのような様相。事実、良く見知った相手の力だからこそ、その性質は自らの頭に十二分に叩き込まれている。使う分に不備は無い。
 絲の鋼糸の支援を受けて、魔獣へと勇躍する、二体の精霊と二匹の狐火、そしてユア。
 吹雪は相変わらず激しく吹き荒れ接近を阻み、きょろきょろと魔獣は視線を走らせて、目につく動くものへと次々と雷を落としていく。
 狐火の一匹が、落雷の直撃を受けて霧散したのを見て、ユアは小さく舌打ちをした。
 だが、物量で的を絞らせないという策は成っている。一人一人への攻撃密度は、やはり薄くなっている。
「(――そこか)」
 そして、無秩序に暴れる猛吹雪も、圧は均一とは行かない。
 その、『圧が薄い』小さなポイントを、見切る。見切ってみせる。
 炎の精霊と、残った狐火がそのポイントへと体当たりをかける。
 熱量で、冷気の壁が、一瞬……ほんの一瞬だけ途切れるのを、肌で感じた。
「絲っ!」
「うん!今だよユアさん!」
 吹雪の中では暴れ回る鋼糸の軌道も、その間隙であればやってできぬことは無い。
 力の限り吹雪や雷を生み出していた魔獣には、それを回避する余裕は無かった。
 くりくりとした魔獣の瞳に、肉薄するユアが映る。
 響き渡る雷鳴。
 最後の精霊が、自らの雷をぶつけて共に消える様を見た。
「……おやすみなさい。あなた」
 小さく落とされた声は、妖艶さと密やかな優しさを孕んで。
 魔獣の心臓に、ユアのダガーが突き立てられた。

 吹雪が止む。
 月明りが、雪景色を赤く染めた魔獣の遺骸を、ただ音もなく照らし出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月24日


挿絵イラスト