夏の折り目に花一輪(作者 みろりじ
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#カクリヨファンタズム  #お祭り2021  #夏休み 


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 カクリヨファンタズムは、新し親分の計らいでいつの間にかできていたビーチ。
 さざ波と海風に揺れるヤシの葉、そして夏の暑い日差しが、水着コンテストという一大イベントを大いに盛り上げる舞台として活躍したりもしたものだ。
 しかしいつしか日は暮れて、騒がしさも懐かしむほど、ビーチには落ち着いた潮騒が聞こえてくる程度には静けさが戻りつつあった。
 幽世に海は無い。そう考えていた時期が、俺にもありました。
 しかしながら、カクリヨファンタズムの特徴なのかどうなのか。
 打ち寄せる無数のさざ波と、日が落ちてすっかり冷たく心地よい砂浜を素足で歩いて風に当たれば、どことなく懐かしいという感情が生まれてきそうなものだ。
 肌が焼ける日差しも、水着コンテストの熱狂も、つい先日の事のはずなのに、もう懐かしく思えてしまうほど、この浜辺に湧き上がる郷愁のような気持ちは強いのかもしれない。
 それはそれとして、世間はまだまだ夏真っ盛り。そしてここもまだ夏盛り。
 この夏のイベントを食い尽くすには、まだまだ夏は始まったばかり。
「いやー、すっかり涼しくなりましたけども、周囲は熱気を感じますねー。何故だと思います?」
 水着コンテストに参加した猟兵たちや、親分たちを含めた妖怪たちががやがやとビーチに集まっている中で、疋田菊月は案内役の一人として、楽しげに説明する。
 いつものお団子髪を降ろし、控えめな水着に身を包んでいるとはいえ、基本的にやる事は変わらない。
 猟兵たちを案内し、また給仕としてあちこち出向いたりしつつ、本音はどうあれ笑顔で接客する。
 今回もそんな感じである。
「妖怪親分の皆さんが、今回のイベントに際しまして、特別な花火を用意してくださったんだそうですよ。
 特別大きなとか、特別派手なとか、そういうんじゃなくてですね。
 花火の作る模様の上を歩いたり、また猟兵の皆さん自身を打ち上げたりしてくれるそうです。
 なんと人間の砲弾ですよ。すごいですねー」
 どういう仕組みなのかはわからないが、妖怪の術ならそれくらいできるのだろう。細かい事はこの際、考えなくてもいいはずだ。
 猟兵なんだから、こんなことくらいじゃ何ともならない筈である。
 こんな事ばっかりやってるから、毎回カタストロフの危機なのではないかとも思われるが、まぁ、この際、細かい事は気にするな。
「あ、でもですね。もちろん、普通の花火もご用意してますよ。
 派手派手なアトラクションに身を投じて参加するのもいいですが、それを見て楽しむという方もいらっしゃいますし、静かに素朴にというのも、情緒があって私は好きです」
 空のポリバケツと、そこに突っ込んだ花火セットも取り出しつつ、菊月は諸注意として、万一怪我をした場合のご案内、そして迷子札の案内、それから、ごみは持ち帰る事などの説明を行いつつ、猟兵たちを案内するのであった。


みろりじ
 どうもこんばんは。流浪の文章書き、みろりじと申します。
 季節限定の花火大会のシナリオなので、せっかくだから書いてみようかと思います。
 えー、グリモア持ってるのをいいことに、自キャラの水着を自慢したいだけじゃないのォ?
 ……否定はしない!
 いや、誰かを立たせなきゃいけないんですよ。そして、今回は目玉となる敵がいない!
 じゃあ仕方ねぇな。ということで、菊ちゃんには人柱になってもらいました。
 今回はイベントシナリオ扱いですので、1章のみの編成となっております。
 特別な花火を楽しむべく、御友人や恋人、気になるあの子をお誘いのもと……もちろんソロでのご参加も望むところです。
 また、菊ちゃんが説明してますが、普通の花火も用意しているので、ほのぼの過ごしたいという方はそっちを楽しむようなプレイングでも大丈夫なはずです。
 プレイング受付期間や、断章を設ける予定はないので、お好きなタイミングで投げてきてください。
 い、石は投げないで。
 というわけで、皆さんと一緒に楽しいリプレイを作っていきましょう。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み2021』

POW妖怪花火で空へGO!
SPD妖怪花火の上で空中散歩
WIZ静かに花火を楽しもう
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


天星・零
【星の館/6】
今年は水着に参加してないのでいつも通りの服装

行動
enigmaで夕夜も一緒

『ふふ…今年も賑やかだったみたいですね。あの打ち上げ花火もとても見ていて面白いです。夕夜も参加してくれば?』
「悪ぃけど疲れたわ…今年はゆっくりしてぇ」

管理している霊園の仕事が忙しく参加できなかったが今年もコンテストは賑やかだったのかと思いながら打ち上げ花火を見ている
夕夜はぐでぇと疲れた様にしながら
零は座りながら暁音の用意したシートから見てます

『ありがとう暁音。…と、おやおや打ち上げられてる方も楽しそうですね。』
「千里マジで!?飲みてぇ!飲みてぇ!」

零は暁音と夕夜には普段通りの話し方
それ以外は丁寧に


加藤・光廣
【星の館/6】
おー、なんだアレ!?
めっさ楽しそー!

え、アレ打ち上げてもらえるのか
行く行くー!
急ごーぜ!
七那原さんと栗花落さんを肩に座らせて走ってく
これなら他の奴らより早く列に並べるだろ?

打ち上げられたら悪目立ちするようにポーズを取ってパフォーマンスしてみる
む、栗花落さん余裕じゃねーか
地上の三人に手を振ってるなんてよー
七那原さんもキラキラだし
俺も対抗してって……あ、バランス崩した

いや、俺の身体能力ナメんな
こっからが見どころなんだぜ、ってキザに着地をキメてやる

う”、今気づいたけど今年のこんな可愛い水着じゃサマになんねーじゃんよ
七那原さん気にすんな、栗花落さんと早く三人のとこ行きなよ……(恥)


栗花落・澪
【星の館/6人】

花火だー!

打ち上がる花火を見て目を輝かせ皆に振り返り
僕は折角だし飛びに行くけど
皆はどうするー?

じゃあ加藤さん、望さん、一緒に行こ!
ほえぇー!?加藤さんはやーい!(びっくり

打ち上がったら翼でもバランスを取り
向こうから見えてるかわからないけど
地上の暁音さん達に大きく手を振ってみる
普段から飛び慣れてるからねー

触れるって事は、花火の欠片拾えたりもするのかな
空を歩き、いけそうならそっと両手に輝きをひと掬い
大事に持ってスイっと地上の皆の元へ飛行

見て見てー、欠片取ってきた!
景色も綺麗だよー!
あ、美味しそうなの食べてる
僕にもちょーだい♪

熱くないよ、触ってみる?
いいじゃん加藤さん、似合ってるよー


七那原・望
【星の館/6】
爆音なのです!花火の音なのですー!

わたし飛びたいのですー。
下にいても花火見られないですし、それよりも花火と一緒にひゅるるるしたいのですー。

わわっ、光廣さんありがとうなのですー。なんだか身長がおっきくなった気分なのですー。

わたし、風になるのです!ついでに花火にもなるのです!たまやがかぎやなのですー!

空に打ち上がったら翼をうまく使ってバランスを取りつつ打ち上げた勢いそのままに大きく旋回。花火の周りをくるくる回りながら地上のみんなの所へ着地するのです。

夜の風がとっても気持ち良かったのですー♪

澪さん欠片拾ったのです?熱くないのです?触ってみたいのですー。
あれ?光廣さんどうかしたのです?


天星・暁音
【星の館/6】
ふふ、皆が楽しそうで何より
俺?俺は下からみてるよー
打ち上げて貰うのも楽しそうだけれど、下からの方が全体が見られそうだしね
いってらしゃい。大丈夫だと思うけどは一応は気をつけてね

ふふ、零も夕夜もお疲、一緒にゆっくりしよ
千里さんおかえり、どうぞ
好きに食べてよ

戻って来たら
おかえり。はい。飲み物でもどうぞ

光廣さんもご飯食べにおいでー


服装は今年の水着
下でシートやら飲み物、軽食等を用意して花火を見つつ楽し気な皆を優しく見守り
シートに座ってひらひらと手を振り返しつつ花火の建造物も興味深げに観察します

軽食はおにぎりやサンドイッチ、スティックサラダ等、お肉も手で食べられるようにしてます

ゴミは持ち帰り


六道銭・千里
【星の館/6】
海パンにパーカーを上に羽織った姿で参加

おー流石カクリヨ、常識が通じひんわ…
ほんなら俺も下で見ようか、暗い宵闇空と一緒ってのが好きでな

クーラーボックスにラムネやら飲み物を入れて持ち込みシートへ
夕夜はなんかお疲れやな?ラムネ飲むか?
暁音、こっちの方ちょっともらうで~と軽食をつまみ飲みながら楽しそうに飛んでる打ち上げ組を眺め
おーおー、あっちもはしゃいで楽しそうやなと微笑し手を振り

帰ってきたら、おうお帰り、とりあえず3人もなんか好きなもん食いながら次は下から眺めたらどうや?と暁音の用意した軽食や飲み物を勧める(40文字)


 カクリヨファンタズムにいつの間にか出来上がっていたビーチ。
 それは、水着コンテストをやるぞー! という思い付きから作られたとも、持ってきたとも言われているが、真相は不明である。
 ともあれ、主に猟兵が参加者の水着コンテストは大好評の大盛り上がりのもとに終了、ビーチもその役割を終えて、いつの間にか忘れ去られる……。
 わけではなかった。
 日もとっぷりと暮れて、その日差しの熱を吸って足の裏を焼くようなビーチの砂もすっかり冷めて、打ち寄せる波と海風が心地よく感じるほど涼しくなる頃、幽世の砂浜は昼間とは別の熱気を帯び始めていた。
 水着コンテストを盛り上げようと画策したのは主に新し親分だったのだが、どうせ盛り上げるならばとそのビーチを利用すべく、他の親分たちも手を出し始めたのである。
 それが夜のビーチの部。花火大会である。
 おやおやお祭りですか、という具合に、猟兵に限らず幽世の妖怪たちなどが集まって、時には作る側に、時には見る側に回って、お祭りを盛り上げようと昼間の喧騒を取り戻しつつあった。
 浜辺は広い。多くの猟兵や妖怪たちが花火大会を楽しみに集まっていたが、別段場所取りに喧嘩が……まあ無いわけではないが、それもまた祭りの華として慎ましやかに執り行われつつも、カタストロフが起こらない程度に平和に片を付けている、らしい。大丈夫かほんとに。
 とにかくまぁ、あれこれと騒がしいものもありつつ、猟兵たちは花火大会を楽しむべく集っていたわけである。
 【星の館】の合言葉で集まった一団も、今回の花火大会を楽しみにやってきたようだった。
 その名の下に集まったのは6人。というにはちょっと語弊があるが、それはまぁ置いといて。
 大半の猟兵が水着コンテストから続けざまに参加しているせいか、辺りを見回せば華やかな水着姿の男女が、それはもうキャッキャウフフしているのだが、ここにいる彼らの中にはどうやら不参加だった者も居るようで、あと男性多めということもあって落ち着いた雰囲気であった。
「打ち上げ花火で人も打ち上げ……おー、流石カクリヨ。常識が通じひんわ……」
 大会のパンフレットを斜め読みしつつ、六道銭・千里(あの世への水先案内人・f05038)は、若干引き気味に苦笑する。
 人々に仇なす妖怪などを退治してきた、いわばその道のエキスパートの千里だったが、やることなす事全てを想定しているわけではない。
 害意のない妖怪なら仲良くもできるだろうとは思うものの、これホントに怪我人でないのかなと、不安になる気持ちが無いではない。
 気ままな大学生。しかし、今回集まった中では年長の部類に入る。というか、子供ばっかりだからいざという時は、自分が守る立場になるわけだが、そもそもみんな猟兵だし、責任感は人並み以上にあるわけで……。
 などと、細かい事をぼーっとした様子ながらに考えていたが、それもまぁなんとかなるやろ精神で、ひとまず頭の隅に置いておく。
 それよりも、置いておくと言えば、千里含めて一同は割と荷物を抱えている。
 特に体格のいい男どもはクーラーボックスを両脇に抱えていたりする。
 そろそろ花火も始まってしまうから、レジャーシートを広げてのんびりしたいところではあったのだが、いそいそと準備をしている間に、もう花火が徐々に打ち上がり始めていた。
「わー、花火だー!」
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、思わず設営の手を止めて空に咲く花火の明かりに目を輝かせる。
 トガを思わせる大きめのパレオを緩く前進に纏ったような水着姿は華やかで、細身の体格も手伝ってとても可愛らしい少女のようにも見える。だが、男だ。
 金蓮花の花を髪につけるオラトリオであり、その翼も、緩やかに伸ばした髪もふわふわでどこか甘い雰囲気を感じさせる。だが、男だ。
 とてもかわいい。だが、男だ。
 あんまりこの手の文章を書いているといろいろ言われそうなので控えめにしておくが、本人はあくまでもかわいいものが嗜好品というだけで、女性に間違われるのはほんのちょっぴり不本意だったりするらしい。
「爆音なのです! 花火の音なのですー!」
 澪につられるように作業の手を止めて、目隠しの少女、七那原・望(封印されし果実・f04836)が花火の炸裂する音に反応する。
 ある理由から視覚を封印しているという望は、それ以外の五感で以て日常や戦いにすら支障が出ないほど補っているという。
 楽しい事が大好きな彼女もまた、水着コンテスト参加のままの姿であり、バラ色に近い濃いピンクのワンピースがよく似合っている。
 ちなみにむさくるしくない雰囲気でうっかりすると忘れてしまいそうだが、唯一の女性である。
 逆ハーレムじゃね? とも言われそうなものだが、先述したように平均年齢低めの集まりである他にも、ハーレムとするには9歳の少女には、まだまだ色々なものが認識に追いついていない。
 大人びた言動や知識を持ち合わせるミステリアスな少女だが、愛に生きるというその探求の道のりは、まだまだ始まったばかりの発展途上である。
「お、何だあれ!? めっさ楽しそー!」
 人狼の青年、加藤・光廣(飢狼・f06416)が、なんと人間の砲弾打ち上げ会場を目ざとく発見する。
 彼はこの中では唯一成人しているのだが、他が年齢の割にやたらと落ち着いているせいか、光廣に限っては実年齢よりも子供っぽくも見えてしまう。
 いや、その無邪気さにも感じられるところこそが彼の魅力と言ってしまえばそれまでなのだが、その純真さにつけこまれでもしたのか今回はやたらと可愛らしい水着に身を包んでいる。
 やるときはやるという性格ともすれば、用意された水着はとりあえず着てしまうのか。本人にとっては意外にも、周囲の反応は好意的で暖かかったようだ。
 そんな彼が見つけた砲弾型打ち上げ花火とは、花火と一緒に人間も打ち上げようという、常識はずれなサービスの様だった。
 なんでも、今回の花火は特殊なもので、空中に咲いた花火の文様の幾つかは夜空に固定化され、その上を歩いたりすることもできるようであった。
 ……細かい事を突っ込んではいけない。ここは妖怪の、そして幻想の世界なのである。
 空中で炸裂するものに近づいて大丈夫なのかとか、何で出来てるのとかそんな野暮なことを聞いてはいけない。
 できる、できるのである。
「へーえ、アレ打ち上げてもらえるのか!」
 期待のこもった目を向ける光廣の視線を受けて、一同は顔を見合わせる。
「僕は折角だし飛びに行くけど、皆はどうするー?」
「わたし飛びたいのですー。
 下にいても花火見られないですし、それよりも花火と一緒にひゅるるるしたいのですー」
 光廣の期待を代弁するかのように意見を募る澪の言葉に、望がいち早く反応する。
 楽しそうなことには参加するというスタンスは、この場でも発揮されているようだ。
 同意者を得たことで、当の光廣はこの場の誰よりも子供らしい笑顔を浮かべ、
「いくいくー!」
 と諸手挙げれば、他の仲間たちは、
「ふふ、俺は下からみてるよー」
 楽しげな様子につられるようにして、天星・暁音(貫く想い・f02508)は朗らかに微笑む。
 この場に於いて最年少のはずの暁音ではあるが、余裕のある微笑みはどこか大人っぽく、8歳にして既に親戚をもてなす紳士じみた大人の気遣いを思わせた。
 彼に出会う女性の多くが、将来的にはいっぱい女を泣かせそうと言わしめる幼いながらの美形を誇るが、当の本人はちょっぴり照れ屋である。
「打ち上げて貰うのも楽しそうだけれど、下からの方が全体が見られそうだしね」
 星好きの暁音からすれば、天体観測は地上から行うものであり、別のポイントから観測するというのも魅力ではあったが、いざ打ち上げられたら目の前のことに一生懸命になって星どころではなくなってしまいそうだった。
 それに、本当のところを言えば、まだレジャーシートの上の準備が完全ではなく、クーラーボックスの邪魔にならない配置や、お腹が空いたときに軽食や飲み物を迅速に提供する算段も考えなくてはならない。
 コンテストに参加したままの、若草色のパーカー。そして海パンから覗くまだ性別も分かれていないような幼い足元が周囲のおねーさんの視線を集めてならない少年らしさを遺憾なく発揮する水着姿ではあるのだが、その頭の中は実に少年らしからぬ気遣いで埋まっていた。
 とまぁ、そんな歳に不相応なことをいろいろ考えているんだろうなぁ、というどこか暖かい視線を横目に流しつつ、最後の一人、いや二人がお互いを見る。
『ふふ……この様子だと、今年も賑やかだったみたいですね。あの打ち上げ花火もとても見ていて面白いです。夕夜も参加してくれば?』
「悪ぃけど疲れたわ……今年はゆっくりしてぇ」
 その二人の少年はまるで鏡写しのようにそっくりだが、眼の色や髪の色、その在り方は別人である。
 天星・零(零と夢幻、真実と虚構・f02413)は、一人であり多重である。
 一人の身体で複数の人格を持つ体質のはずの零だが、今は心を入れ替えるトリガーピースを応用した『Enigma』の能力でもうひとりの人格である夕夜も実像と化している。
 この二人は、ねぐらにしている霊園の管理が忙しく、水着コンテストに参加する予定も立てられぬほど立て込んでいたのだが、夜中には予定が空いたので、皆と一緒に夕涼みと洒落込もうという魂胆だった。
 まさか、こんなトンチキな花火が上がるとは思ってもいなかったが、見る分には楽しいし、冷たい砂浜にレジャーシートを敷くと、その上に寝転がるのがなんとも気持ちがいい。
 本音をあまり表に出さない零の反動なのかどうなのか、夕夜は割と奔放である。
 大分年下の暁音と、もう一人の自分である零に笑顔のままじーっと見つめられていても、シート越しの砂の感触が疲れた体に優しく、ぐでーっと溶けそうになっている。
 見かねたらしい千里が、寝転ぶ夕夜をシートの隅っこにまで引っ張っていくと、傍らにクーラーボックスをずぅぅんと置く。
「ふー、ほんなら俺も下で見ようか、暗い宵闇空と一緒ってのが好きでな」
 そういや言ってなかったな。と付け加えるのがいかにもマイペースな千里らしいところだが、実のところは、地上側にもごついのが一人くらいいるべきという、妙なバランス感覚が働かないでもなかった。
 いやほら、見目に明るい子供たちばっかりって、危なっかしいだろう。
 と心中で思いつつも、自分も十代であることを思い出すと共に、若干の老け顔を享受しつつあることに少なからず諦めが混じるのであった。
「よーし、そうと決まりゃあ、急ごーぜ! よいせっと」
 みんなの意見を律儀に聞き終えると、光廣が傍らの少年少女を自らの肩に担ぎ上げる。
「わわっ、光廣さんありがとうなのですー。なんだか身長がおっきくなった気分なのですー」
「よーし、じゃあ加藤さん、望さん、一緒に行こ! ほえぇー!?加藤さんはやーい!」
 望と澪を担いで人狼の身体能力に任せるまま疾風の如く、砲弾会場のほうへと突っ走っていく光廣を、彼よりも年下の面々はなんというかこう、ほっこりと見送る。
「いってらしゃい。大丈夫だと思うけどは一応は気をつけてね」
 シートの上の準備をてきぱきとこなしながら、暁音は軽く手を振って三人を見送る。
 危険はたぶんほぼ無いメイビーだと思うし、そもそも屈強な猟兵がこの程度でどうにかなるとは考えにくい。
 それでも小さな女の子も居るのである。心配しない方がおかしいというものだ。
 さて、なんと人間の砲弾会場では、やはりというか、人間サイズの砲弾が入る様な古式ゆかしいずんぐりした大砲が備え付けられていた。
 なんでも、火薬やバネとかではなく、妖術で空中まで撃ち出す仕組みらしい。
 妖術と名が付けば何でも許されると思ってませんか?
 などと無粋なことを言う者はもはやなく、順番の回ってきた光廣達三人は、仲良く並んで一緒の射出と相成った。
「はーい、撃ちますよー。口を半開きにして耳を塞いでくださいねー」
 なんでそんなところだけ本格的なんだろう。などと思っている瞬間、激しい爆音が胃の腑を震わせるような衝撃と共にはじけて、三人を夜空へと打ち上げた。
「ヒャーッホーウ!」
 拳を突き上げてズームアップするような光の巨人を思わせるポーズで光廣は飛ぶ。
 本来飛ぶ種族ではない彼にとって、空を飛ぶとはヒーローのような憧れがあった。
 落ちる事は微塵も考えていなかったが、ぐんぐんと夜空に広がる花火の文様に近づくにつれ、自身の体重を感じなくなる無重力感を覚える頃になって、あれやばくね? という危機感が背筋を駆ける。
「うわーい! きれー!」
「わたし、風になるのです! ついでに花火にもなるのです! たまやがかぎやなのですー!」
 澪と望は、その翼で以て、思い思いに空に軌跡を描く。
 翼をもつ種族の、そのなんと華やかなことか。気のせいか、妖術による打ち上げによるためか、全身が夜空に目立つように発光してるようにも見えた。
 劣等感が無いではない。だが、今回は空に乗れるのだ。
 コォン、とどこか硬質で透き通った音が、着地した文様から響いた。
 多少の不安はあったものの、空中散歩なんて無茶なことを謳い文句にしているだけあって、本当に花火の模様の上を歩けるようになっていた。
 そんな光廣の様子を見て安心したようで、澪は改めて夜空に固定化された模様の周囲を飛び回り、全体を見る余裕が生まれたためか、地上に居る筈の暁音たちの方へと手を振る。
 さすがに周囲が明るいか、見えているかどうかわからないが、浜辺に陣取っている多くの猟兵などが手を振り返しているのが見えた。
 そういえば視覚が封印されている筈の望にとっては、この空は障害物だらけなのではないかと、その姿を探すが心配の甲斐なく、その飛行は見事なもので、蝙蝠も驚くようなスピードで模様を掻い潜ってくるくると花火の周りをとびまわっているらしかった。
「おーおー、あっちもはしゃいで楽しそうやな」
 地上に居る星の館一同、はやくもシートの設営が終わり、その上でそれぞれくつろぎつつ花火と空中散歩に興じる仲間の姿を楽しんだり手を振り返したりしていた。
 千里が微笑ましげに目を細めつつ、傍らのクーラーボックスに手を伸ばすと、その近くでぐでーっとしている夕夜を圧し潰しそうになるのを慌てて避ける。
「夕夜はなんかお疲れやな? ラムネ飲むか?」
「千里マジで!? 飲みてぇ、飲みてぇ!」
 ついでのように人数分取り出した瓶ラムネを目の前で揺らしてやると、夕夜はがばっと飛び起きてそれを掴む。
「ふふ、零も夕夜もお疲れ、一緒にゆっくりしよ」
『ありがとう暁音。……と、おやおや打ち上げられてる方も楽しそうですね』
「君たちはアレか。おかんか何かか」
 どこか熟年の雰囲気を醸し出す年若い暁音と零の様子に、千里は突っ込まずにはいられなかったようだ。
 そして光廣達はというと。
「む、栗花落さん余裕じゃねーか。
 地上の三人に手を振ってるなんてよー。
 七那原さんもキラキラだし……」
「普段から飛び慣れてるからねー」
「俺も対抗してって……あ」
 きらきらと華やかな二人のオラトリオに対抗心を燃やして、光廣もまた文様の上を駆け回りパフォーマンスに興じるが、それに一生懸命になるあまり、ここが空の上であることを忘れてしまった。
 足元を踏み外しかけて、大きくバランスを崩したところで、咄嗟にユーベルコードを使ってしまう。
 いや、使う必要ないと思うんだが、設定されてたんだもん。
 【シーブズギャンビット】によって向上した身体能力に任せて、空中で何度も宙返りやひねりを加えた芸術的な着地を披露する。
 若干わざとらしくすら見える、Y字に手を掲げるポーズだが、そこまで綺麗に極めておいて、ようやく光廣は自分の水着姿に改めて気づいた。
 可愛らしいフリフリが海風に揺れる。
「う”、今気づいたけど今年のこんな可愛い水着じゃサマになんねーじゃんよ」
 一転してがっくりと肩を落とす光廣のもとに、澪と望の二人のオラトリオも着地し、戻ってくる。
「あれ? 光廣さんどうかしたのです?」
「可愛いのを気にしてるんだよ。いいじゃん加藤さん、似合ってるよー」
「んん?」
 目の見えない望に悪戯っぽい様子で澪は微笑む。
「七那原さん気にすんな、栗花落さんと早く三人のとこ行きなよ……」
 にこにこと笑う澪の様子にいたたまれない光廣だったが、二人に手を引かれて、上着で水着を隠すようにとぼとぼと皆の元へと戻っていく。
 子供っぽい二人に慰められつつ手を引かれる光廣の姿は、なんというか乙女ちっくであった。
 空中散歩をひとしきり楽しんだ花火組を見やり千里が、三人を迎えるように立ち上がって大きく手を扇ぐ。
 長身のため、動作を大きくすると目立つのである。
 顔を真っ赤にして可愛らしいオラトリオ二人に手を引かれてとぼとぼ戻ってくる様子はちょっとシュールなものがあったが、一同はそんな事は気にせず迎える。
「おかえり。はい。飲み物でもどうぞ。
 光廣さんもご飯食べにおいでー」
 子供ながらすでに気遣いの人である暁音は、すっかり準備の整ったシートに三人を迎える。
「おうお帰り、とりあえず3人もなんか好きなもん食いながら次は下から眺めたらどうや?」
「ふふふ、いっぱい用意したよ。皆で食べよう!」
 暁音が用意した軽食は、お手軽に手で取って食べられるよう、サンドイッチや野菜スティック、チキンなどと言ったものがお重に詰めてあった。
「夜の風がとっても気持ち良かったのですー♪ そして、いい匂いなのですー」
「わー、おいしそうなの食べてる。僕にもちょーだい♪」
 好きなだけ飛んでお腹を減らした子供たちを、ほっこりと眺めるひとたち。
 光廣も、いつの間にかいつものテンションを取り戻していた。
「あ、そうだ、見て見てー、欠片取ってきた!
 景色も綺麗だったよー!」
『へぇー、花火の欠片か。俺も行って来ればよかったかな』
 チキン片手に、澪が空の上で拾ってきたという、花火の模様の欠片。
 上に乗れるということは、拾ってもこれると踏んで、飛沫のような欠片を大事そうに手に持ってきたらしかった。
 それを夕夜が興味深そうにラムネを傾けつつ眺めている。
 興味を持ちつつも、一歩もシートから出そうにないのだが。
 そうしてみんな詰まった星の館の面々は、軽い食事とよく冷えた飲み物と、それから夜空に映えるちょっと特別な花火の話にこちらも花を咲かせる。
「ん、なんだか嬉しそうだね暁音」
「ふふ、皆が楽しそうで何より」
 ニコニコと穏やかな笑みを浮かべる暁音に、零もまた穏やかな表情で話しかける。
 おそらくは表情の装うことに長けた二人のそれは、珍しいほどに本音に近い穏やかなひと時だったかもしれない。
 それはもう、手にするゴミ袋に細々とごみを詰めながらでなければ、もっと純粋に味わえたことだろう。
 ただまぁ、それは暁音にこびりついた性分のようなものなのだろう。
 ともあれ、この花火大会が、ひと夏の大切な思い出の一つになった事には、キット変わりないだろう。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

天道・あや
【星】の皆と!

打ち上げ花火を間近で見られるとな!うーん、それはまたデンジャラスな雰囲気や予感もしますが……実にCOOLでエキサイティング!

それじゃ、早速打ち上がりに……と、言いたい所ですが、今日はあたしだけじゃなくて、リコリスとノイン先輩も一緒だし、危険な事は止めときましょっ。でも、打ち上げ花火を上で見るってのはーー

……ほほう!いいね、実にいい!それじゃ、行きましょうか!打ち上がらないけど花火を上から見ましょう!

あ、そうだせっかくだし

UCで花火ぐらいの高さまで跳躍!そして打ち上げ花火を見ながら持ってきた手持ち花火で遊ぶ!勝負!

うーん、花火を見ながら花火。実に最高の夏!来年もやりたいもんですねっ


リコリス・ミトライユ
【星】のみなさんと

どーん、って。あれも火なのですから、あんまり危ないことしないほうがいいんじゃないでしょうか……?
あやさんも、あたしも、ぴょーん、ふわふわって跳べますから、近づくのは出来ると思いますけど。
ノインさんと手を繋いでお空の上まで行って、そこで遊びます?
乗れるハナビもあるみたいですし、ね。

踵をとんとん、【ムーングラヴィティ】でふわりと浮いて。
お空の上まで行ったら、ハナビで遊びましょう。
たしか、ずーっと、長く持ってられたら勝ちなのでしたっけ。
じゃあじゃあ、勝ったひとの好きなかき氷、みんなで食べるとか、どーです?
えへへ、じゃあ、負けませんからね。

来年も、また遊びましょうね。


ノインツィヒ・アリスズナンバー
【星】の皆と☆

打ち上げ花火を見ながらみんなで花火を楽しんじゃう☆
私ちゃんたちマジパリピ☆
え。打ち上げ花火に打ち上げられながら花火すんの?未来行ってんなぁ……

ここは派手に行くのイイけど、少し落ち着いてみたいかな―☆私ちゃんは☆
打ち上げ花火、下から見るか横から見るか?いいえ上から見るのです☆
どうにかして上に良ければいいんじゃない?キャバリア使う?

どうやらあやちゃん後輩がUCで上げてくれるので、それにつかまって移動。
そのまま手持ち花火で楽しんじゃお☆下から上がってくる花火を見ながらこっちでも花火楽しむなんて、滅多にできないじゃん☆
来年もまた来れたらいいよね!


 幽世は夏の情景をそのままどこから引っ張って来たんじゃないかとも言われているビーチサイド。
 水着コンテストも好評のうちに終わりを迎え、じゃあこのビーチどうするの。という流れになって、じゃあせっかくだし夏らしい事をやろうじゃないか。
 というわけで、日も落ちてすっかり涼しくなった浜辺には妖怪や猟兵たちががやがやと集まっていた。
 妖怪親分たちが、この機会に際しお祭りだから仕方ないとばかり、特別な花火を用意してくれたというのだ。
 普通の花火邪芸がない。なんとこの花火は空に咲いたら、それに乗れて歩いたりすることもできるんだとか。
「打ち上げ花火を間近で見られるとな! うーん、それはまたデンジャラスな雰囲気や予感もしますが……実にCOOLでエキサイティング!」
 お祭りと聞いて集まった猟兵の中でも、弾むような声と共にテンション高くなにやらポーズをとってしまうのは天道・あや(目指すぜ!皆の夢未来への道照らす一番星!・f12190)。
 弾ける星を見に行こうぜ! という感じで声をかけた仲間と一緒に、花火大会の会場に足を運んでいるのだった。
 尤も、妖怪はもとより自由で無節操。キマイラフューチャー並に自由人だらけなおかげか、いつ始めますよともいつから花火上げますよとも言わず、よしどんどんやれ! という具合に花火の妖術をドカドカと打ち上げ始めていた。
 そんな無秩序に空に咲く大輪の花々を、行き交う人々が感嘆の声を上げながら鑑賞するのだが、花火を見る観客の一団から少し離れた場所には、どうにも異彩を放つ一角が目に入る。
 そう、特別な花火と共に用意されていたのは、上に乗ることができる花火……に乗っけるための人間打ち上げ花火の砲台である。
「ほっほーう、あれが話に聞く打ち上げ花火。それじゃあさっそくドーンと打ち上がりに……」
 意気揚々と足を向けるあやの歩みを、彼女の呼びかけによって集まった猟兵たちが止めに入る。
「え。打ち上げ花火に打ち上げられながら花火すんの? 未来行ってんなぁ……」
 ノインツィヒ・アリスズナンバー(90番目のアイドル・f29890)は、派手派手にデコった愛され甘カワアイドルのきゃぴるーんっ! という空気すら失って、思わず素で引き気味のツッコミを入れてしまう。
 それを見ないふりしつつ、もう一人の猟兵仲間もまたあやの肩を掴んで引き留める。
「どーん、って。あれも火なのですから、あんまり危ないことしないほうがいいんじゃないでしょうか……?」
 リコリス・ミトライユ(曙光に舞う薔薇・f02296)は、あくまでもアイドルのボディに傷がつかぬようにという心遣いもあったのだが、正直、付き合わさた場合、下手をしたら怪我どころじゃない気がしたのである。
 いやたぶん、安全上の問題は猟兵という点を加味すれば無いのかもしれないが、油断はできない。
 この妖怪の世界は、オブリビオンフォーミュラが倒れた今ですら、そこいら中で年がら年中、カタストロフの危機を迎えるくらいには無茶苦茶なのである。
 そんな無茶苦茶な世界の住人が、安全面に極力気を付けているとは考えにくい。
 向こう見ずなあやの好奇心をどうにかなだめるのに何かいい手はないかと、リコリスは考えをめぐらしつつ、ノインのほうへと救援願の目配せを送る。
「んーとぉ、ここは派手に行くのイイけど、少し落ち着いてみたいかな―☆ 私ちゃんは☆」
 ばちーんとウインクする度に星が散る謎のアイドル力(ちから)を発揮し、あやの無謀を引き留めにかかる。
 この媚びっ媚びのしなだれ攻撃に落ちぬドルヲタはいまい。(当社比)
「ふーむふむ、確かに今日はあたしだけじゃなくて、リコリスとノイン先輩も一緒だし、危険な事は止めときましょっ」
 果たしてノインの説得は効果があったようで、立ち上るようだったアイドル力はスンっと平常値を保っているようだった。
 だが、いつ心変わりがやってくるかわからない。
 伊達に猟兵として数ある危険を乗り越えてはいない。あやは今や、トップアイドル以外は割と何でもできてしまう女なのだ。
 きっと人間大砲も嬉々として参加して、器用にこなしては他の追随を許さぬ人間砲弾になり得るだろう。なって何の意味があるのかは置いといて。
 いやいや違う違う。今日はそんなことをやりに来たのではないのだ。
 あやの気が変わらぬうちに、ノインは更に畳みかける。
「打ち上げ花火、下から見るか横から見るか? いいえ上から見るのです☆」
「ほう? 上から見るっていうのは──?」
 ふっ、食いついたな。有名タイトルを引用したこの話に。
 激チョロアイドルめ。髪モフさせろ。
 などとはおくびにも出さず、ノインは心中でニヤリと笑う。
 アイドルとして眩しく輝くことに余念のないノインだが、彼女もまたアイドルに憧れて業界に飛び込んだクチである。
 身近にアイドルがいるなら、それは素敵で憧れの一人なのさ。そんなことは口が裂けても言えないが。
「うーん、どうにかして上に行けばいいんじゃない? キャバリア使うとかさ」
 そんなことは置いておいて、今度はノインがリコリスにばちーんっと目配せする。
 合わせろ。後輩。
 ハッとワンテンポ遅れはしたものの、リコリスはアイコンタクトを受け取り、話を合わせるよう目論む。
「あやさんも、あたしも、ぴょーん、ふわふわって跳べますから、近づくのは出来ると思いますけど」
「……ほほう! いいね、実にいい! それじゃ、行きましょうか! 打ち上がらないけど花火を上から見ましょう!」
 ナイストス! リコリスがわかりやすく、丁寧な誘導を行うことにより、あやはテンションを上げてしゅびっしゅびっ、と両手をピストルのようにして二人を指さすと、その指先を上に向けるのだった。
 あやは気づいていないが、彼女の見えない位置から、二人がぐっとサムズアップをしていた。
 とはいえ、打ち上げ花火を使わず上に向かう手段は、あやとリコリスならばともかくとして、ごく普通のフラスコ生まれで音楽とスーパーロボットを嗜むアイドルには、単身で空を飛ぶ術はない。
 まさかこのお祭り会場でキャバリアを引っ張り出すのも、その、なんだ、すごい迷惑になりそうだ。
 ゲリラライブは、ちゃんと自治体なりの許可を取らないとダメだゾ。
「では、ノインさんと手を繋いでお空の上まで行って、そこで遊びます?
 乗れるハナビもあるみたいですし、ね」
「そうだね! じゃあお二人とも、手を拝借」
 リコリスの提案で三人で手を繋ぐ。
「きゃっ、手ェ繋いじゃった☆」
「きゃーきゃー」
「……」
 じゃれつくように黄色い声を上げるノインとあやと、そして普通にちょっと照れるリコリス。
 そんな様子にジーっと見つめられて、リコリスはいたたまれなくなったのか、おっほんと大袈裟に咳払いすると、ユーベルコードを使っていく。
「じゃあ、行きますよ。三人なので、軌道修正をお願いしますね」
 とんとん、とブーツの踵を鳴らすと、クリスタルの装飾を施されたブーツがリコリスの身体をふわりと持ち上げる。
 【ムーングラヴィティ】によって性能を強化されたクリスタルブーツの靴底からガラスのスケートが生えると、あやとノインを空へと持ち上げていく。
 空中戦闘もこなせるだけあって、ブーツの浮力はただ浮くだけならもっとたくさんのものを運べるかもしれないが、ゆっくり浮き上がるにしても三人分はちょっと流されてしまいそうになる。
「よっ! ほっ! よいしょお!」
 それを、あやが【スカイステッパー】で空を蹴り、咆哮修正していく。
 傍から見てこの様子がおかしく見えないかという杞憂があるかもしれないが、人間が射出されるような大砲があるのである。これくらいで驚くような奴はもう居ない筈だ。
「よーし、とうちゃーく!」
 やがて、かなりの高度に咲いた花火の文様の上に、三人は着地する。
 硬質ガラスのような透き通った文様はちょっと頼りないが、かなり強く踏みつけても、壊れる気配は無かった。
 それどころか、足先で打つたびに甲高い綺麗な音がする。
 なるほど、これはちょっと楽しいかもしれない。
「あ、そうだせっかくだし!」
 唐突に思いついたように、あやがおもむろにバケツとそれに詰め込まれた手持ち花火を取り出した。
 どこから出したのだろうか。そういえば、案内のグリモア猟兵も、普通の花火もあると言っていた気がする。
「打ち上げ花火を見ながら持ってきた手持ち花火で遊ぶ! 勝負!」
「勝負、ですか、それ」
「いーぢゃん、いーぢゃん☆ 下から上がってくる花火を見下ろしながら普通の花火なんて、滅多にできないじゃん☆」
 ひとまず一本、手持ち花火を手にして足元の文様にかざすと、それがもらい火して、妖術の炎が灯る。
 意外の都合のいい花火のようだ。
「とりあえず、一番長く燃えてた奴が勝ちー☆」
「おお、負けませんぞー!」
 ばちばちっと小さな花を咲かせる花火を手先でくるくるとさせつつ、ノインとあやは新体操のリボンよろしく距離を取って文様の上を駆け回る。
 なんだ、楽しそうにして。
 取り残されたリコリスも、疎外感に苛まれる前に、長ーく燃えそうな大きい手持ち花火を引き抜いて、火を灯す。
「たしか、ずーっと、長く持ってられたら勝ちなのでしたっけ」
「おやぁ、勝ちに来ましたよこの後輩クゥン!」
「あらあらぁん、下剋上だわぁーん☆」
 なんかテンションがおかしなことになってる二人につられるように、リコリスもまた負けじとくらいついていく。
「じゃあじゃあ、勝ったひとの好きなかき氷、みんなで食べるとか、どーです?」
「お、お、お、勝てそうな勝負になったとたん、要求を突き付けてきましたよォ、腹が黒いですなー!」
「えへへ、負けませんからね」
「えぇー☆ もう勝った気でいるんだぁ☆ その程度で優位に立ったと思うなァ巨乳エルフゥ」
 きゃっきゃっと楽しげなテンションに任せて、ついついちょっぴり汚い言葉が出てしまうが、人間、火を持つと興奮してしまうもので、そんなことなど気にならないくらいにみんなしてはしゃぎ回っているため、たぶんすぐ忘れる。
 結局、勝負などとはいっても、収拾がつく筈もなく、三人でそれぞれに好きな味を買ってシェアするという、なんというかよくある感じに落ち着いたようだった。
 というか、あやもノインも、最初から甘いもの好きなリコリスにいっぱい食べさせるつもりだったりするのだが、本人は知らない。
 自分より若い子は、蹴落とすのではなく可愛がる。それがアイドル力。
「つめたっ、いやーすっかり遊んじゃったなー。実に最高の夏っ! 来年もやりたいもんですねっ」
「そだね。来年もまた来れたらいいね」
「はい、来年もまた、遊びましょう」
 三人でかき氷と一緒に撮った写真は、ノインの写真にしては珍しく、ゴテゴテの自撮りではなかったようだが、いつもの媚びた様な星の散る笑顔とはまた違った魅力があったとかなかったとか。
 それは、一緒に映っていた二人と楽しさを共有するものであったからなのかもしれない。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

日野・尚人
あーちゃん(f06524)に合わせて俺は甚平着用で参加。

久し振りってなぁ?
普段からしょっちゅう一緒に出掛けて・・・
(いや?下校途中の買い食いとか夕飯の買い出しばっかりだった気も?)
ま、まあこう改まってってのは久し振りだったかもな?
ともあれ・・・ほら?
へへ♪ダメな訳ないだろ♪
あーちゃんに手を差し出しながらニッといつも通りの笑顔。
ちょっとドキドキしてんのはバレてない、はず?

妖怪花火の上で空中散歩をしつつ、これまたいつも通りの幼馴染な遣り取り・・・
あーちゃん、これ一口やるからそれ一口くれよ♪

ん、でも・・・
(あーちゃんの左手の指輪をチラッと見て)
告白して半年、そろそろキスくらいしたって良い・・・よな?


アイシャ・ソルラフィス
SPDで参加

久しぶりのデート! 尚くん(f01298)とデート!
ステータス画面の浴衣に着替えて、巾着の中に出店の屋台で買ったの入れて、お空へGO!
ちなみに下から覗かれるの防止のため、スパッツ着用だよ!

UC【愛はすべてに打ち勝つ】で飛びながら花火鑑賞したいな~そのまま尚くんと手を繋いだまま花火みたいな~……だめ?(上目遣い)

他愛もないお話をして、この屋台のこれ美味しい、これハズレ、この屋台の美味しかったから帰りにまた買って行こう!なんて話をして……

まあ、その……

不意打ちでキスとかできたらな~って、思う。
せっかく尚くんが勇気を出して告白してくれたんだし、なら今度はボクが勇気を出すの番だよ……ね?


 花火大会は、そろそろしっちゃかめっちゃかの様相を呈し始めていた。
 なにしろ、開催はあのカクリヨファンタズム。
 水着コンテストのために作ったというビーチが、それだけじゃ勿体ないからというかなり場当たり的な理由で、妖怪親分たちが寄ってたかって特別な花火をこさえたというのだから、カクリヨファンタズムに住まう妖怪たちの自由人っぷりが伺い知れるというものである。
 そんな妖怪たちが執り行う花火大会が、まともなまま進行するわけもなく。
 基本的に気はいい奴らだが自分勝手でマイペースな妖怪たちは、すぐに飲めや歌えやの大宴会を開いてしまう。
 このままでは収拾がつかなくなってしまう。もはや、しっちゃかめっちゃかになりつつあった。
 ただ、職人気質な妖怪もまた多く、施設を提供する側、つまり花火職人や出店の店員などは、頑固に真面目に取り組んでいるため、なんやかんやでお祭りは形を保てている。
 なんかもう、雰囲気とかそれでいいのかという感じも出つつあるのであるが……。
 水着コンテストから続けてお祭りも楽しんでいる猟兵たちはというと、そんなどんちゃん騒ぎを起こしている妖怪たちも、しかたねぇなーという感じで流しつつ、それぞれに、思い思いの思い出作りに勤しんでいるようだった。
 騒がしい祭りの雰囲気は、それだけでなんだか楽しくなってしまうものなのだろうか。
 場面は、そんなしっちゃかめっちゃかになりつつあるお祭り会場の喧騒からすこしだけ離れた場所。
 そう、妖怪親分たちが考案したという特別な花火。
 空に留まって模様を残しつつ、その模様に乗って散歩できるという、もはや常識を過去に置き去りにする全く新しいビーチ上空である。
 花火の炯々とした輝きを帯びる模様は、夜空に光の道を作り出していた。
 幾何学的で立体的な模様の上を歩けば、ブリキのような軽く透き通った音が反響する。
 その強度は生半可な力で踏みつけた程度では壊れそうにない。
 できた当初こそ妖怪たちも新しさから散歩に乗り出すものも多かったが、大量の脱落者と、盛大な落とし合いに発展したため、入場制限がかかるようになってからは、妖怪たちも下で宴会をするのに忙しくなってしまった。
 そのため、今は花火の散歩道は比較的空いていた。
「えっへへ、尚くんと久しぶりのデートだ……!」
 椿と波の柄の入った浴衣を着込んだアイシャ・ソルラフィス(隣ん家の尚くんを毎朝起こす当番終身名誉顧問(願望)・f06524)は、からころと下駄を鳴らして上機嫌な様子で幻想的な空中散歩を楽しんでいるようだった。
 そして彼女と同行する当の尚君こと、日野・尚人(あーちゃんの早朝襲撃に断固抵抗する会終身(?)会長・f01298)は、彼女に少し遅れて、ちょっと照れ臭そうに頭を掻く。
「久し振りってなあ……普段からちょっちゅう一緒に出掛けて……」
 実際問題、ながーい二つ名にもある通り、二人は幼馴染であり、それはもう四六時中一緒にいるようなもので、今更デートだなんていってもなぁ。
 と思っていた尚人ではあったが、そういえば下校途中の買い食いや買い出しくらいなもので、幼馴染は彼女だけでもないため、二人っきりで出かけるというのは、実はけっこう貴重なのでは?
「ま、まあこう改まってってのは久し振りだったかもな?」
 そう考えると、途端に声が上ずってしまう。
 もともと距離感の近すぎる関係だった。
 改めてお互いを意識し始めてからは、その距離感にはちょっとだけ変化が訪れたものの、日常ではそれほど意識することもなく、ふとした拍子にお互いの距離の近さを改めて意識して、ドギマギしてしまうということを繰り返していた。
 なんというか、こう、あれだ。もどかしいな。
 空いている空中散歩道を、ぱたぱたとあっちゃこっちゃと歩いていく浴衣姿の愛車と、それをのんびりとした足取りで追いかける甚平姿の尚人。
 その距離感というのは、実に今の関係を示しているように思えないだろうか。
 好き合っているのは間違いない。ただ、元から近すぎた距離感が、二人を時々戸惑わせる。
 気分がよくなってしまった拍子に、なんだか訳がわからない事になって、それで取り返しのつかない事になってしまいそうな、そんな危うさを、どこかで恐れているのかもしれない。
 だから時に、離れた位置に居て見たくもなる。
 今の自分は、その距離に相応しいのか。試してみたくなるのだ。
 それでも好き合っているのは間違いない。
 でも、いいのかな。と、なぜだか思うのだ。
 お互いに全て許してもいいとすら思っているのに、本当にそうなのかと疑ってしまうような。言うなれば、信用しすぎている事が不安になってしまう。
 相手を信じすぎている自分に対して、不安になってしまう。
 これはもう、どうにもならない堂々巡りだった。
 だから最初から無い距離を感じてしまうのだろう。
「そういえばシェイがね──」
「あー、そうだろうな──」
 他愛ない会話を交わし、幻想的な夜空の散歩をする合間にも、胸はいっぱいなのに、どこか焦れる気持ちが残る。
 やがて、長く思えた散歩道も終わりを迎える。
 何か、何か物足りないような。淋しいような。
 いやいやいや、何かすべきだったんだ。いつまでも甘酸っぱい関係のままでなく、一歩くらい進んでもいいじゃないか。
 こんなにいい雰囲気なんだから。
 そういう感じの、もう少しだけという甘酸っぱい沈黙が二人の間に流れる。
「ね、尚くん。もうちょっとだけ。今度は飛びながら、花火鑑賞したいな。
 その、手を繋いだまま……見たいな~。だめ?」
「……へへ♪ ダメなわけないだろ♪」
 アイシャに手を差し出され、尚人はいつも通りを装ってニッと笑ってその手を握り返す。
 【愛はすべてに打ち勝つ】によって空を飛ぶためには、二人の協力が不可欠である。
 お互いの手を取り、その魔力を混ぜ合わせないと使えないというユーベルコードによって、二人は夜空の旅を続ける。
 いつもの同じように笑い、いつもと同じような他愛ないおしゃべり。
 でも、握るその手はお互いちょっと震えていて、緊張しているようだった。
 お互い好き合っているのだ。好きな相手から上目遣いでお願いされたら、そりゃあドキッとする事もある。
 手を握れば心臓が跳ねたりもするものだ。
 その緊張、上擦る気持ちを誤魔化すかのように、出店で買い込んだものを食べつつ、空中散歩を続けながらまた他愛ない話をする。
「お、それ美味そう。あーちゃん、これ一口やるからそれ一口くれよ♪」
「うん、いいよ。そっちは味違うんだね。前のお店の方がよかったかなー」
 この屋台はおいしかったから、帰りに買って帰ろう。などと、いつでもできるような話をしてしまいながらも、声が掠れていくのがわかる。
 いやいやいや、違う違う。もっとこう、ムードのある様な、ね。
 お互いにもぐもぐと顎を動かしながら、お互いを盗み見る。
 アイシャの左手には指輪が付けてある。
 尚人が想いを伝えたときに渡したものだ。婚約指輪ではないのか。いや、それはそのー……な!
 そういえば指輪を渡してからもう半年も経っている。そろそろ前に、進むべきなのでは?
 そしてアイシャはというと、尚人から受けた告白されたことを考えていた。
 勇気を出して告白してくれたことに、自分は応えねばならないのではないのか?
 なにかこう、切っ掛けは……と、気が付けばお互いに視線が交わっていた。
「あ、え、と」
「あう……」
 お互いに言葉が詰まる。こんな時に気の利いたことでも言えたなら、もっと進展は早いのに。
 肝心なところで照れてしまう。いや、でも今度こそ前に進むのだ。
「ね、尚くん。ほっぺにイカ焼きのソースがついてる」
「へ、ま、まじ? えー、どこだよ……」
「待って、拭いてあげるからじっとしててね」
「え、いや、そんなの自分でやるって」
「いいから、い・い・か・ら」
 なんだか強引な調子で頬を拭われる尚人は、なんだか子ども扱いされたみたいな気がして、釈然としなかった。
 好き勝手にごしごししてくれて、どうしてくれよう。文句の一つでも。
 と、手ぬぐいで塞がった視界が晴れると、すぐそばにアイシャの顔があった。それこそ、触れるような近くに。
「え、あーちゃ……」
 二人の影が、花火の打ち上がる音と光で重なって、一つになったように見えた。
 続けざまに打ち上がる花火の明滅の中で、影の一つや二つ、増えたり減ったりしても、それは他の誰かにとっては些細な問題に過ぎなかった。
 こうして、花火大会の夜はあくまでも騒がしいままに更けていく。
 懐かしいような柔らかな感触と、ほんのりソース味とともに。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年08月06日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵