フー・ダルティフィスの玻璃の揺籃
●睡らずの花と星と玻璃
――さやさやと、やさしい夜風わたる白砂から空を見上げれば。
やがて、花火が次々と打ちあがり煌めく大輪の花咲かせてくれることだろう。
玻璃のちいさな舟を浮かべてともにドカンと打ち上がるもよし、
ゆったりふんわり漕ぎ出すもまたよし。
それは空中だろうが海中だろうが火中だろうが思いのまま、
快適な花火見物へと誘ってくれる不思議な小舟なのだから。
小舟よりも更にちいさな、掌に納まるほどの玻璃の器で涼を感じてみる……なんて手もある。
ビーチの一角にひっそり現れるという屋台妖怪の得意メニューは冷たいソルベ。
レモンや桃やサクランボetc……フレッシュな果汁をふんだんに使った氷果はきっと夏の夜にいっそうの彩添えてくれるに違いない。
「アハハー、今年も大いに盛り上がったねー水着コンテスト。おつかれサマ!
といいたいところなんだけど~妖怪サン達はまだまだ騒ぎ足らないみたいだねー」
カクリヨの妖怪達に混じって裏方としてあれこれしていたらしい巳六・荊(枯涙骨・f14646)は未だ水着姿のまま。
彼女から伝え聞いた話によれば、普通に有能な妖怪親分ズは猟兵達のためならばえんやこらとばかりまるっとビーチを創りあげた余勢をかってまたまたナニかを準備してくれていたらしい。
「その名もズバリ妖怪花火!
ビーチの夜空に花火玉とついでにボクたち猟兵も打ち上げちゃうんだ」
不思議なチカラで守られた妖怪花火なのでもちろん身の安全はバッチリ保証されているし、もっとゆったり過ごしたい派の猟兵には小舟やビーチ屋台なども用意されているので心配は無用だとグリモア猟兵は笑い、そして、手招く。
さあ――煌き揺らめく夏の夜へようこそと。
銀條彦
カクリヨファンタズムのビーチで、花火(フー・ダルティフィス)と氷菓(ソルベ)にゆるりとご案内なのです。
日常シナリオ全1章でお送りさせていただきます。
まず何処から花火を楽しむかを1箇所のみご指定ください。
空中・海上・海中・砂浜などですね。
玻璃の小舟の要る要らないも明記していただけると助かりますが、プレイング冒頭に『○』『×』のみ表記でもOKです。
お連れ様がいる場合もそれと判別できるようしていただければ幸いです。
ちなみに小舟1隻につき最大で3名ほどの定員を想定しておりますが種族や体格等も加味しつつそのへんはゆるゆるっとなのです。
みなさまのご参加、心よりお待ちしておりますね。
第1章 日常
『猟兵達の夏休み2021』
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POW : 妖怪花火で空へGO!
SPD : 妖怪花火の上で空中散歩
WIZ : 静かに花火を楽しもう
👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)。
●白基調。琉金柄の浴衣。帯は青色。下駄。
舟を一隻借り露と海上で静かにのんびりと花火をみることにする。
昼間と違い夜は陽に照らされることも無い。暑いこともあるまい。
「…暑いからくっつくな、露」
幾ら涼しい海風が優しくそよいでも露がくっつくと暑い。
いつも注意しているが直すつもりはないらしい。…まあいいんだが。
花火の打ち上げを待つ時間で星々が綺麗でそれだけで私は満足だ。
去年から2度目の体験だが…やはり破裂した振動で身体に響くな。
露は心地がいいと言っているが私は慣れん。慣れない。
空気の振動と内面から揺さぶられている感じがどうも慣れない。
露や他の面々はこの振動をよく心地よくかんじるな。
神坂・露
レーちゃんと(f14377)。
●群青が基調。白帯の無地浴衣。ぽっくり。
舟着き場で待ち合わせ。可能ならレーちゃんと二人がいいわ。
えぇー。レーちゃんは二人っきりじゃなくてもいいの?むぅ。
まあ。海上から花火見るのって人気そうだからしかたがないけど…。
レーちゃんも浴衣だろうからあたしも浴衣着てみたわ♪えへへ♪
二人とも別のお仕事で着た浴衣だけどやっぱり似合ってるわ~。
花火が打ち始まるまでレーちゃんに抱き着いて夜空見てる。
「綺麗よね。どの星もキラキラしてて素敵」
花火が始まったらワクワクして夜空に咲く花みてるけど…。
あれ?レーちゃんはなんだかむず痒い表情して花火みてる?
え?空気を震わす振動が苦手?可愛い~。
熱帯びた藍を溶かして深まる夏の夜空へ打ち上げられた三寸玉。
それは、瞬く間、はじまり告げる段雷となってきらめく星達へと向けて轟いた。
黒衣から染抜いた琉金柄の泳ぐ白地の浴衣へと着替えて青の帯を締める着付けももはやすっかり手馴れたもの。
シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)を見かけるなり神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は弾けるように飛びついた。
「やっぱり似合ってるわ~」
「……だから、暑い。くっつくな、露」
露自身も同じ時に着ていた浴衣で再びおめかししての夕涼みスタイル。
しっとりとした群青の仕立ては今宵の夜風を想わせ……等と一瞬は考えたシビラだったが、やれやれと小さく息を吐いた後はすっかりといつもの2人のやりとりに。
「レーちゃんも浴衣だろうからあたしも浴衣着てみたわ♪ えへへ♪」
幼い2人は待ち合わせた砂浜から海を目指して玻璃の小舟へと乗り込んでゆく。
まるでグラスを弾いたようにカランと下駄の歯が乾いて鳴れば、
それを追うぽっくりも応えてコロンとかろやかに響いて。
「のんびり静かに花火見物するのならやはり海上だな」
「えぇー、海の上は先客がもういっぱいみたいよ。レーちゃんは二人っきりじゃなくてもいいの? むぅ~」
2人きりと呼ぶにはビーチも海も賑やか過ぎることだけが不服だった露だったけれど。
波間に揺れる玻璃の内、ぴったりとふたり身を寄せればすぐさまいつもの通り。
夜空に花火にそしてかたわらのシビラへと、まるで向日葵みたいにくるくる明るい笑顔を咲かせてゆく。
「綺麗よね。どの星もキラキラしてて素敵。 ……あ、また打ち上がったわ~」
「…………」
ぽぽんとひときわ大きく花火が咲いた、その真下。
最初の内こそ白絹張りの団扇をぱたぱた夜風にそよがせたりついついくっついてしまいがちな露にぺちんと制止を入れたりしつつ、星空や水飛沫を堪能していたシビラだったのだが――いつのまにか全くの無反応。
「どうしたの? 船酔いじゃないわよね??」
顔色こそ普段と少しも変わりがない様子、なのだけれど。
彼女のただならぬ異変にすぐさま気づいた露は不思議そうに首を傾げる。
「この振動が……」
「え~?」
夜空へと打ち上がり、満天を染め上げる妖怪花火。
されど、どれほど美しく華やいでいてもそれらの本質は妖怪親分という強大な存在から放たれた大規模術式なのだとシビラの体は冷徹に切り捨ててしまう。
そこに宿る善意も趣向も芸術性も、感覚器は解してなどくれない。
(静寂を破る――破裂。去年から二度目ならばとも思ったが……)
心地良さげにはしゃぐ露を慮って堪え続けたシビラだったが。
外気から伝わる振動とまるで臓腑の奥底から揺すぶられるかのような不快な衝撃。
(嗚呼。やはり慣れん。慣れない)
耐え難きそれらから逃れるようにシビラの白い指が無意識に求めてぎゅっと掴んだのはかたわらの、群青。
強く袖引かれたままぱちくりと露はしろがねの瞳を瞬かせる。
どうやらシビラが怖がっているのは打ち上げ花火に対してでまちがいないらしい。
(あのレーちゃんが?)
もっとスゴい悪者なんかも全然へっちゃらでもっともっとスゴい魔術でばったばったとなぎ倒してきた、あのレーちゃんが、である。
「可愛い~v」
「……黙れ。私にしてみれば露や他の面々の方こそよくぞ平気でいられるなとしか思えぬのだが」
またひとつ、煌いた天を仰ぎ見れば透きとおる舟も少女ふたりも夏の光に包まれて。
まるでそれはゆらりゆらめく、海の上のちいさな星。
いつしか……琉金の尾びれの震えは笑顔を前にすこしずつ和らいでゆくようだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
コッペリウス・ソムヌス
海上から玻璃の小舟に揺られて
花火を楽しむとしようか
カクリヨで出会った蝙蝠のライラも連れて
この世界の夜は星とか月とか
大人しそうな印象があったけれど
光の花咲く景色も良いものだねぇ
花火って命の輝く様に似ているようで
好ましかったんだけど
色んな誰かが頑張ったから…
今の景色があるのだと思うと
燃え尽きるよりも輝いて
太陽とも星とも違うような……
其れはそれで好ましい光だなって
新たな発見かもしれないね
ひっそりと購入していたソルベも取り出して
夏らしく色んな果実が乗ってるなぁ
ライラも食べるかい?お疲れさま、と
また次の季節もよろしくね
のどかなカクリヨの星月夜を炙らんばかりに明るくにぎやかに。
ひゅるると打ち上がった花火が、真夏の夜を真昼の輝きにと染める。
「光の花咲く景色も良いものだねぇ」
ぷかぷかと漕ぎ出したまま波まかせに浮かぶ小舟はうってつけの玻璃桟敷。
すっかりと寛ぐコッペリウス・ソムヌス(Sandmann・f30787)が語り掛けた相手は一匹の愛らしい蝙蝠。カクリヨで出会った聖獣のライラだ。
艶やかな夜闇色の翼もすっかり今は畳まれて、
まるで空高くで繰り広げられる光と音の狂騒を心から楽しんでいるかのようだ。
夜往くモノたちは、のんびりと、醒めたまま見る夢のようなうつつの一夜を謳歌する。
(花火はもともと好ましかったんだけど……もっと好きになりそうだかも)
熱く、鮮明で、一瞬で――それはまるで命が輝く様に似ているから。
(けど、それだけじゃない)
そこにある美しさは刹那に燃え尽きるが故ばかりではなかった。
かといって太陽や星のような永遠がある訳でもない。
それでも。
色んな誰かが頑張って……そして今、こうやってライラや妖怪達や他の猟兵達と季節にうつろうカクリヨの景色を確かに楽しんでいられる。
「其れはそれで好ましい光だなって思えたのは、新たな発見かもしれないね」
柔らかにほほえみながら感慨に耽る青年の砂色の髪先を、ふわり、いたずらな蝙蝠羽が不意のひと揺らし。まるで、何かを催促するような――。
「ああ、そうだ。ソルベを忘れちゃだめだったね」
急かされるように。
玻璃の器に盛られた氷菓をシャリリとひと掬い。
舟に乗り込む前の砂浜でひっそり出逢った妖怪屋台の主が差し出したのは巨峰と白桃の二色ソルベ。
無口な西洋妖怪らしき主は何も言い添えなかったがおそらくはコッペリウスとライラのふたり分なのだろう。快い冷たさ、幸せな甘さに思わず頬も綻んで。
「色んな果実もいっしょに乗ってて夏らしいなぁ」
ライラも食べるよねと差し出した匙の上で、キラキラと、まるで宝石のようなソルベや果実を小さな口が啄ばみ始める。
思わず眼を細め、お疲れさまと互いを労わりながら。
「……また次の季節もよろしくね」
降るような星と花火の下で囁かれたことばにちいさなひと鳴きが応じるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
リュカ・エンキアンサス
倫太郎f07291お兄さんと
○で空中に漕ぎ出そう
このうちあげられる感覚はなんだか嫌いじゃない
落ちるのも嫌いじゃないけど…こっちは落ちないんだね
折角だからソルベを持ち込んでゆっくりしよう
この時季は桃とか、いいと思う
ん……なに。なぜ素直に分けて欲しいと言わないの
まあ、いいんだけど
その子も食べるの?お腹壊さない?
壊さないならいい。はい、どうぞ
…
ああ。そういう意図で連れてるんだ(ちょっと納得したような顔してた
確かに、お金持ち感があることに間違いはないと思う
たまにはいいんじゃないかな。あんまり続くと落ち着かない感じがするけれど、たまになら
うん、花火もきれいだし…
…いやたまになら、かな。続くとだらけそう
篝・倫太郎
リュカ(f02586)と
〇で空中
ソルベ仕入れてから、舟で空へ
あ、俺達も打ち上げられんのね
てっきり妖怪親分の不思議なパゥワーで
上昇すんのかと思ってたわ
はは、判らなくもねぇや……
つか、リュカはジェットコースターとか好きそう
リュカのソルベ
俺のサクランボと違う味だから隙を見て一口強奪しちゃれ
ん-……んま!
え?こういう強奪も楽しいんだって!
はいはい、しょこらもな?
(一緒にきた兎幻獣にもソルベお裾分けしつつ)
は!こいつは別に非常食とかじゃないからな?
ちーがーいーまーすぅー
ガラスの小舟で花火鑑賞とか
セレブな感じで庶民にゃ縁遠い感じだよなぁ
確かにたまにだから楽しいよな
夜空に咲く花を眺め、他愛のない話をして笑う
まず瞬いた華は赤緑牡丹、つづいて金色かさなり枝垂れるかむろ菊が咲き乱れ……。
カクリヨのビーチから連発で咲き上がる妖怪花火の光景はまさに圧巻。
そして、千輪菊と呼ばれる花火を花開かせる為の小割玉とともに。
「あ、俺達も打ち上げられんのね」
篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)たちを乗せた玻璃の小舟はすでに妖怪大筒の中へと詰められていた。
「てっきり妖怪親分の不思議なパゥワーで上昇すんのかと思ってたわ」
倫太郎の予想通りの手法でだって頼めばたぶん可能なのだろうが……その際は火の粉の代わりに真っ赤なハートを振り撒きながら飛び立たされるような気がしないでもない。
ドドンと衝撃が走ると同時、まるで銀河を思わせる無数の火の粉とともに天に向かって射出されるというレアな体験を、彼は今リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)と共に全身で体感中である。
「この感覚はなんだか嫌いじゃない」
「はは、判らなくもねぇや……。つか、リュカはジェットコースターとか好きそう」
このまま2人でドボンと海に落ちていったってそれはそれでやぶさかではないのだが。
ロケットならぬ不思議なカクリヨの舟はそのまま満天を色とりどり染めあげる千の小花の上に、ふわりふわりと、浮いたまま。
とはいえビーチ屋台から確保して持ち込んだ季節の味の無事の為にもフリーなフォールの方はまたのお楽しみとしておく方が良いのだろう。
「折角のソルベだしゆっくりしよう」
並んだふたつの器に盛られた氷菓はともに淡やかな薄紅色だがそれぞれの味はまったく別々のもの。
倫太郎が選んだソルベはサクランボ。
風味豊かなその甘さとほどよい酸味は間違いなく盛夏にピッタリの味だ。
爽やかな見た目どおりの口どけとあえて残された果肉感とのコントラストを、彼の舌は充分に堪能する。
そう、充分。充分な満足。それなのに――嗚呼、欲望に果てなど無く。
「リュカのはモモかぁ……うりゃっと!」
サクランボ味を羅刹の口へと運び続ける小さな匙が、突如。
豪快にすべり込んだ先はリュカの玻璃鉢。
「ん~~……んま!」
この時期ならばとコレと少年が選んだ桃のソルベは見た目には倫太郎のソルベと同系色ではあるが、旬の白桃黄桃そして紅桃すべてを凍らせぶちこんであるらしい。
三種の桃が織りなす大胆にして繊細たる風味たるや、まさに彩色千輪菊。
「なぜ素直に分けて欲しいと言わないの」
「え? こういう強奪も楽しいんだって!」
年上のいたずら坊主を咎める視線は明らかに、まあいいんだけど、と物語っており。
ニッと笑いながら、倫太郎の玻璃鉢がリュカの前にほらと差し出された。
このさくらんぼソルベを買い求めた際、オススメされた桜桃酒を回しかけるトッピングを倫太郎お兄さんが断っていたのを、リュカは知っている。
「な! こっちもうまいだろ?」
「ん……。そうだね」
かくして取りかえっことなった2つのソルベに誘われてぴょぴょーんと飛び出したのは黒い小さな影。
倫太郎のお供としてくっついてきた黒ウサギさんである。
「はいはい、しょこらもな?」
興味しんしんな様子で鼻先を寄せてぴすぴすと鳴らすそのさまに、ついさっき強奪の味を楽しんだばかりの羅刹もあっさり笑って降参だ。
正確には歴とした幻獣なのだが、今のしょこらはご自慢の翼もひっこめて、すっかりとカワイイ小動物モード。
お裾分けをシャリシャリといかにも美味しそうなしょこらの見事な食べっぷりにリュカからも「はい、どうぞ」と桃のソルベを匙にこんもりと一掬い。
その直前に、その子も食べるのか、おなかは壊さないのかと生真面目な伺いが倫太郎に立てられており、大丈夫だとの返答を彼から得た上である。
「……は! こいつは別に非常食とかじゃないからな?」
「――?」
何かに思い当たりあわてた様子でいきなり弁解めいた力説を始めた倫太郎お兄さんが何を言い出したのか最初はさっぱりだったリュカだったが。
先の遣り取りを思い返した彼はようやく「その子も食べるのか」という問いはもう1つ別の解釈も出来てしまうのだと考え至り――納得、しちゃった。
「……。ああ。そういう意図で連れてるんだ。だからその名前」
「ちーがーいーまーすぅー」
そんな他愛なくのどかな(?)会話があれやこれやと交わされて。
「にしても、ガラスの小舟で花火鑑賞とかセレブな感じで庶民にゃ縁遠い感じだよなぁ」
「お金持ち感に落ち着けないのは、なんとなくわかるかも。
でも、たまにはいいんじゃないかな。うん。花火もきれいだし」
ゆるやかな潮風は涼しく吹きつけるのに、至近で炸裂し続ける炎や熱は一片たりとも寄せ付けないというこれはこれで結構にチートなパゥワーに包まれながら。
「……いやたまになら、かな。続くとだらけそう」
「確かにたまにだから楽しいよな!」
猟兵たちの貴重な休日の為にとありったけ、
今宵、煌く光の花々は絶えることなく咲き続ける。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
花降・かなた
○
【風祈】
エグゼさん、ルクルさん、いっくわよー!!
ソルベはね、あれもこれもそれも…え、一つだけ?そんなあ
でもお腹壊すのは悪いものね。じゃあ私は葡萄にする!あとで分けてね
そうしていざ、空船の旅へ!
いいのよ。怖ければこの私の胸に飛び込んできて、いいのよ…
とかテンション高くはしゃぎ倒します。
空から見る花火の景色には、「たーまや―!!」とか叫びながらぶんぶん手を振ったりして
…ふふふ、楽しいわね?
そして二人とも楽しそうね。何だかそれだけで、私も嬉しいわ
ソルベもいただいて、おしゃべりしながらゆっくり楽しみましょうか
宜しければお二人の分も少し、分けてくださる?(精一杯優雅な台詞を吐きつつ言うことが庶民
エグゼ・シナバーローズ
○【風祈】
選んだ桃のソルベを手に玻璃の小舟に乗る
目指すは空中!
花火と同じ空間で見ることができるなんて、なかなかできる体験じゃねーしな
花火も興味深いが舟にも興味があるんだぜ
ゆったり動く綺麗な舟だぞ?
空に浮くときには「おー!」と思わず声を上げちまう
そっか、飛んだことねーやつもいるよな
かなたはどうだ?
(やべえ、怖がってるルクル可愛いって言ったらぶっ飛ばされるやつだ…)内心で思う
なーに、落ちたら俺が二人まとめて抱えてやるよ
ソルベの交換?いいぜ!
こうすりゃいろんな味が楽しめて得だよな
花火を眺める二人の横顔を見ながら
つい、花火より二人が気になっちまう
いつも賑やかに話しているけど見つめる姿は雰囲気違うなって
ルクル・クルルク
【風祈】
○
かなたちゃんとエグゼくんと一緒に
花火のお供のソルベは、あれもこれも頂きたい気持ちをぐっと我慢してさくらんぼに
ところでルクル、空を飛ぶのは初めてなのですが…落ちない、ですよね?
怖くてかなたちゃんの胸に飛び込んでぷるぷる震えつつ
いざと言う時にはエグゼくんがヒーローの如く助けてくれると信じてますから
でも、花火が上がれば大はしゃぎ
わぁ……!すごいです、すごいです!
きらきらの花火も、花火が照らす皆の顔もきらきらしていて、とっても素敵ですよ
ソルベの交換はぜひ!
どっちも気になっていた味だったので嬉しいです
…空に上がる前は怖かったですが
今はもう少しだけ、おふたりと一緒にこのきらきらな空に居たいのです
夜更けてなお熱帯びるカクリヨのビーチで喜び勇む3人をまず待ち受けていたもの。
――それはまさに、地上の楽園。あるいは凍れる花園の迷宮であった。
「ふわぁああ……ソルベはね、あれもこれもそれも……え、一つだけ? そんなあ」
「かなたちゃん、後のお客さまの分も残してあげないとですもの。
……あれもこれも頂きたいのはルクルだってやまやまなのですが……」
「そうよね、それにお腹壊すのは悪いものね。 ……でもでも~」
ソルベ屋台の前で(ついこの前防がれたばかりの)この世の終わりもかくやという絶望とともにガックリと肩を落とした花降・かなた(雨上がりに見た幻・f12235)を宥めるルクル・クルルク(時計ウサギの死霊術士・f31003)だったが彼女だって想いは同じ。
花より団子(ソルベ)……とまでは言わないがこの悩ましき戦いに決着がつけられない限りとてもではないが花火見物に集中できそうにも無い。
「こーいうのは直感だ直感。これってひとつに絞った方がぜってーおいしいって!」
不思議な説得力を持つエグゼ・シナバーローズ(4色使いの転校生・f10628)の鶴の一声が無かったら……もしかしたら彼女達はそのまま迷い続けながら一晩を過ごしていたかもしれない。
こうしてそれぞれの手にそれぞれの夏色を映す玻璃を携えれば今度こそ、準備は万端。
「エグゼさん、ルクルさん、いっくわよー!!」
「ヨーソローだぜ! 目指すはもちろん、あの空だ!!」
かなたが発した出発進行の合図に、弾けるように応えたエグゼが透明の舳先を天高くに向ける。風花舞う地より訪れた者たち乗せた小舟は、ふわり、隔世の夜を翔けてゆく。
「おー、ほんとに飛んでる」
妖怪花火にもワクワクするけれど今のエグゼはすっかり玻璃の小舟に夢中である。
なにせ舵も櫂も見当たらないのに自分達の思うがままに花火を掻き分け風に乗って空を往き、望めば海の中でだってへっちゃらだというのだから。
アルダワっ子としての少年の興味が、この不思議な乗り物に対して掻き立てられない筈が無かった。
「綺麗な舟だなー、星の光を浴びてぴっかぴかだぞ……ん?」
「ルクルさん……?」
振り返るエグゼも、すっかり空船の旅に興奮していたかなたも、ここに来てようやく。
ビーチから飛び立った辺りからずっと、ルクルが一言たりとも言葉を発していないという異変に気がついたのだった。
「…………ル、ルクル……空を飛ぶのは、初めて、なのですが……。
お、落ちない。ですよね……」
玻璃の小舟の真ん中で、
ぷるぷる震えてちっちゃくちっちゃく縮こまるピンクのうさぎ耳。
透けた舟底越しにグングンと遠ざかってゆく砂浜も海もいっそう恐怖を煽るらしく、
赤い瞳はきゅうと固く瞑ったままだ。
「ルクルさん、いいのよ」
時計ウサギの少女の頭を優しく撫ぜた後、
バーチャルキャラクターの少女の両腕がぱかぱーんと大きく広げられる。
「怖ければこの私の胸に飛び込んできて、いいのよ……っ!」
「か、かなたちゃ~~~~ん!!!」
内なる癒しのヒロインAI魂が花火よりも熱く燃え滾りだしたかなたの胸へと、
堪えきれず、どどーんと全力でルクルは抱きついた。
恐怖がすぐさま収まった訳ではなかったが、それでも、愛情こめてだきゅりとされた事にほっと安堵を覚えたルクルは、少しずつ落ち着きを取り戻していった様だった。
「そっか、飛んだことねーやつもいるよな」
自身、生まれつき翼を持つオラトリオの少年はすっかり失念していたと反省した。
そして、かなたも無理していたのではないか、大丈夫なのかと確認しようかとも考えたが先からの彼女のはしゃぎようは絶対に演技や強がりなどではなかったと思い直し……。
さしあたって彼もどうにかルクルが空旅を楽しめるようにと励まし続けた。
「なーに、落ちたら俺が二人まとめて抱えてやるよ」
頼もしい台詞とともにばっさばっさと白翼をはばたかせたエグゼの笑顔は、今のルクルにとってはまさに救いのヒーローそのもの。
「……エグゼくん……。いざと言う時は、信じてますから……」
ようやく顔をあげ、縋るようにうるうると自分を見上げるルクルの様子を、
(やべえ、すごく可愛い)などと思ってしまったエグゼだったがそのまま言葉にする事はもちろん自重した。
口にしていたら、たぶんきっと、彼はぶっとばされてた。
こうして、かなたとエグゼにすっかりと勇気づけられたルクル。
「わぁ……! すごいです、すごいです!」
花火が天に上がった頃にはもう恐さなど忘れたどころか舟から身を乗り出さんばかりに目を輝かせていた。
なかよしの皆といっしょの光のお花畑。楽しまないなんて、もったいない!
「うん、すげーや。
花火と同じ空間で花火を見るなんて、なかなかできる体験じゃねーしもんな!」
ルクルの隣に並んだエグゼもいつもとは違う空の景色にすっかりとはしゃぎ始め、
「たーまや―!!
……ふふふ、楽しいわね?」
定番の掛け声でかなたは場をさらに盛りあげる。
美しい花火の風景以上に、
こうしてふたりが心から楽しそうにしていることが彼女にとって嬉しくって。
そして、興奮さめやらぬ中で魅惑のソルベ時間、到来である。
「宜しければお二人の分も少し、分けてくださる?」
ふふっと、まるで窓辺に佇む姫君の如きほほえみと共にかなたの指が匙を踊らせた。
せいっぱい優雅を演出しているが言ってることはとりかえっこプリーズ。
庶民の夏である。おいしさ3倍のこの提案はもちろん満場一致で即実行へと移される。
「ぜひぜひ!」
「ソルベの交換? いいぜ!
こうすりゃいろんな味が楽しめて得だよな」
かなたの葡萄ソルベもエグゼの黄桃ソルベもとっても気になっていたルクルは真っ先に、彼女のさくらんぼ味の玻璃椀をぴょこんと差し出していた。
エグゼもとりかえっこ出来ればいいなとは考えていたので、桃の誘惑を堪えてペロリと平らげるのを我慢しており……。
その甲斐あって、今みっつの器に華やかな夏の三色ソルベが完成なのである。
おいしいとみっつの声が揃うと同時、舟の外でも鮮やかに咲いた夏色に満開な大輪。
(……でも、花火よりもつい、ふたりが気になっちまう。
なーんかいつもと雰囲気違ってるというか……)
夏の夜の少女達の横顔に内心でちょっとドキドキのエグゼはいつも以上に賑やかで。
きらきらな花火とソルベと、そしてみんなの顔。
空に上がる前はあんなにも恐かったルクルだったのに。
(あと少し、もう少しだけ……。
おふたりとこのまま一緒にこのきらきらな空に居たいのです……)
玻璃の小舟の真ん中で、
いっそ光の夜空がそのまま迷宮にでもなれば帰らずにすむのにと、
彼女はつい願ってしまいそうになるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
アン(f25409)と
水着姿で小舟に乗り込み、ゆっくりと漕ぎ出そう
夏真っ盛りとはいえ、夜の水辺だと結構涼しいな
デートって……確かにこれはそういう形になるのか
別にそういうつもりじゃなかったんだが……あれ、じゃあ、アンはデートのつもりで来たと?
思わずそんな事を言った所で、色々と誤魔化すように氷果に手を出しつつ花火の方に視線を向ける
……うん、これは美味いな
しかし、周囲に人のいない海上での花火ってのはちょっと非日常的というか……
おっと、そういえばこいつは浮くんだったか
なに、もしアンが落ちても引っ張り上げてみせるさ
視線を落とした所で、銀翼が花火を映しているのを見て静かに笑う
本当に綺麗だよな、その羽根
アン・カルド
夜刀神君(f28122)と。
へぇ…玻璃の小舟なんて随分洒落てるね、乗り心地は…なかなかどうして悪くない。
それにしても…夜刀神君からデートのお誘いなんてなぁ、なかなかやるじゃあないか…やっぱりちゃんと男の子なんだねぇ。
…とかなんとかからかいつつ、僕も結構ドギマギしてるな。
と、とりあえず氷果でも楽しみながら花火でも見よう。
…急いで食べたから頭痛が、でも爽やか美味しい。
お、始まったみたいだ。
そうだねぇ、夜刀神君…僕らだけ別の世界に来たみたいだ。
そろそろ僕らの船も準備が出来たようだ、落ちないように気を付けないよ夜刀神君。
…ってそういうのを気を付けるべきなのは僕か。
羽根に何か…?
綺麗だなんて、嬉しいよ。
銀彩の翼は鈍く月光を弾き、ざざり、刷くように気儘な夜風を引き連れて。
黒フリルで縁取られたクラシカルなワンピースの水着姿は紅を差し色にいっそう優雅な佇まい。髪花と揃いにあしらわれた黒睡蓮がつば広帽子の黒き水面にと揺れる。
アン・カルド(銀の魔術師、或いは銀枠の魔術師・f25409)の白い肌も、常から貼りついた不健康さすらも、幽世の夜の風情にはいかにも涼しげで似つかわしい。
「へぇ……玻璃の小舟なんて随分洒落てるね」
見た目だけではなく乗り心地の方もなかなかどうして悪くないと、ニタリ。
すっかりと上機嫌に今宵の船出のエスコート役である夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)に笑いかける。
「結構、涼しいな」
見慣れた黒軍服の上着と制帽だけはそのままに、彼もまたビーチに合わせて無駄のない精悍な水着姿にサンダル履きである。
黒き水辺の装いの男女乗せた舟は、ゆるゆると、透きとおる波飛沫あげて漕ぎ出す。
「それにしても……ふふ、夜刀神君からデートのお誘いなんてなぁ、なかなかやるじゃあないか……。やっぱりちゃんと男の子なんだねぇ」
「デートって……確かにこれはそういう形になるのか」
戯れとばかりすっかりからかう口調の女魔術師に返された青年の黒瞳はぱちくりと虚を衝かれたといった様子。
――夏真っ盛りの夕涼み、ふたり一緒に水辺へ繰り出すのはさぞ心地好いだろう。
鏡介はそれぐらいの気分で誘ったのだが、言われてみれば確かにこのシチュエーションはいかにも夏の夜の逢引で。
「あれ、じゃあ、アンはデートのつもりで来たと?」
「……!」
不意に問われた側ばかりでなくふとそう問うた方にすら、直後、ハッと降った沈黙。
無言のままぶつかった視線は互いになにやらむず痒く。
まるで誤魔化すかのようにふいっとかたわらの玻璃の器へと移されて。
「……とりあえず……ソルベを頂くとしないかい? すぐに花火も始まるだろう」
「……そう、だな。せっかくの氷菓だ。俺は藍苺味を選んでみたよ」
朝摘みのブルーベリーをふんだんに詰め込んだ薄紫は、甘酸っぱい。
アンの器にこんもり盛られた鮮やかな赤の小山はあちこちに黒茶色のカカオニブを種に見立ててトッピング。
誰の眼から見ても異論の出よう筈もない、西瓜西瓜しいスイカのソルベである。
ビジュアルだけでなく、カリッとローストされた食感や独特の苦味が程良く甘いソルベを引き立てており絶妙なアクセントだ。
「爽やか美味し……っ痛た……」
シャクシャクと思いっきり匙で掻っ込むようなペースで食すアンがこめかみを押えた。
喉を過ぎる甘露が、少しずつ、沁みるようにふたりを冷ましてゆく頃には、
妖怪花火も最高潮。
「……うん、これは美味しい」
鏡介が少年のように相好を崩せば、
まるでそれを合図に、花火の輝きに惹かれたようにふわふわと。
それまでゆるりと海の上を進んでいた小舟が、星天めざして上昇を始める。
「おっと、そういえばこいつは浮くんだったか」
「船からころがり落ちないように気を付けないよ夜刀神君。 ……ってそういうのを気を付けるべきなのは僕か」
ハハと笑うアンに、
なに、もし落ちても引っ張りあげてみせるさと鏡介も、ほほ笑み返して。
そして。
己の羽を見た青年の端正な笑みがよりいっそう淡やかで深いものにと変わった事に、
アンが怪訝と首を傾げる。
「何か?」
「本当に綺麗だよな、その羽根」
天に咲いては消えてを繰り返す花火の色を映しながら、
アンの背の銀翼もまた次々にその色を変えて、煌めいて。
眼が離せないと青年の双眸は真っ直ぐに。
「綺麗だなんて、嬉しいよ」
今度こそ、視線はけっして反らさずに。
夏夜空を焦がしてうつろう花火にと照らされたかれらを乗せて。
はかなく、されど、かたくとじこめて。
フー・ダルティフィスの夜にたゆたう玻璃の揺りかごは、
どこまでもいつまでも――ゆらゆらと。
大成功
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