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#カクリヨファンタズム #お祭り2021 #夏休み #挿絵

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●妖怪花火
 バズるように丹精込めて作られたイカれた花火があるらしい。
 本人曰く、最高傑作(笑)。
 当然、創り出した犯人はトレンドの中のトレンド網羅&熟知しているとニッコリフェイスで語る新し親分"バズリトレンディ"!
 あの顔見たか?と囁くは他の親分たちだ。
 それはもうため息問題が暴発する。
 カメラ連射機能や録画したくなる気持ちが止まらないのはバズリトレンディだけだろう。これが色んな妖怪の総意だ。

●ファイヤーワークス
「色んな花火の話を聞いたか?俺様んトコに持ッてこられた花火の話を聞いてくれ」
 カクリヨファンタズムのビーチは、今すごく夏仕様!
 でも残念なことにビーチの先に続いている海は迷宮化がある場所があるらしい。
 全てを解決したからといって、全部が収まるわけでもないのである。
「場所は水着コンテスト会場、なので。出来れば涼しい格好が良いのではとは、思うよ」
 絶対脱がない精神のヒトもいるだろうからあんまり強く言う気はねェけど、とはフィッダ談。涼しい格好をするに越したことはないだろう。
「――それで、俺様んトコに来た花火は、見た目はいたって普通なんだが……囁くと色が変わるらしい」
 想像する色、好きな色。望んだ色に世界……もとい、花火の色を変えるんだとか。
 打ち上げ花火もあるが、手持ち花火もあるという。
 基本的にはなんでもあるらしい、というのが面白い話だ。
「なんでもお一人様から数人用に、防火対策を施した小舟を準備してるらしくて」
 そこで皆が好きな色を灯してワイワイ出来る花火、らしい。
 ヒトに向けて灯しても、火花の温度は低めと妖怪設計。
 誰かが火傷する心配は、ない。でも妖怪花火以外で危険な事をするのはやめましょう。
「ちなみに、打ち上げ花火宜しく打ち上がりたいヒトは、打ち上げ花火限定だぞ」
 お前、手持ち花火にどう騎乗するのか言ってみろよ。
 お前が花火になる未来しか見えないんだが。
「それでも色を反映する火薬が使われてるらしいから、好きな色でバーンといける」
 猟兵が打ち上げ花火に乗って打ち上げられたり。
 花火の咲いた空中で、火花の中を空中散歩出来たりもする。
 打ち上げ花火、上から見るか中から見るか、お前が花火になるか。

「この妖怪花火最大の特徴は、色を変えた本人と本人が許した人物にしか"色も内容も伝わらない"という所」
 内容。それは、打ち上げ花火に限られるようだが、囁く言葉が色以外であっても良い、という話。
 短文、単語、伝えたい言葉。
 花火が咲いて、そのときの一瞬、見える言葉が良いらしい。
「秘密の会合、その秘匿性はバッチリだぞ、妖怪だからな!認識されなきャ見えねえのさ。そんなところをどうやッて花火に取り込んだのかは、決して模索しないこと」
 ただし花火。言葉を仕込んだのに相手が、仲間がウッカリ見そびれた場合は、自分たちでなんとか解決を模索すること。
「さあ夏に泳ぐだけが過ごし方じゃないだろ?妖怪花火と、おもしろ愉快な時間、過ごそうぜ!」


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 花火といえば爆音!いいやそんなことはしらねえ!!
 このシナリオは、夏休みな遊ぶ系シナリオ(一章)です。
 花火をするのはどんな時間帯なのか、――はい、そういう感じでお願いしますね!
 ファイヤーはワークスするもの。

●概要。
 このシナリオの妖怪花火は、認識されていないと花火の音や色が他の人に漏れない謎の秘匿性を持っています。猟兵は『手持ち花火』か『打ち上げ花火』または任意のオリジナル花火(説明内容はプレイングに必須)のどれかを選べます。
 ビーチから海へお出かけすることが、できます。(花火名称に商標が書かれている場合はそれとなくそれっぽい感じに文字へ変換されます)。

 妖怪花火の特性は、OPに記載した通り。
 想っていたり、認識した色へ色を変える事ができます。妖怪は順応性が高いんだ。
 手持ち花火、打ち上げ花火どちらもできます。
 色を変える場合は、それっぽい内容を記載し忘れないように注意してください。
 私っぽい色にして(or記載がない)ヒトは、タテガミの独断と偏見のあなた色で花火を燃やします。言葉を込める、その色の花火を楽しみながらおしゃべりする、みたいなニュアンス。

 打ち上げ花火の場合は、上記に加えてOPのように言葉を仕込むことが出来ます。
 メッセーシを伝えるのに向いてますね!一緒の小舟の乗船者にしか見えません。
 (花火師妖怪またはグリモア猟兵が協力して花火を空に打ち上げるので、飛ばすのがメインというわけではない奴です。参加する猟兵は、あくまでバーンとなるのを見る側です)。乗船前に仕掛けをする→→一緒に見る、の流れ。

 フラグメント通り一緒に飛ぶ人、花火の内側から楽しみたいヒトは、いい感じにそういう流れなんで!を主張してください。
 (フラグメントをあまり気にしなくてもいいです)。

●水着。
 ある人は今年の去年の一昨年の、(こんなの、とか)一言でいいので教えて下さい。
 私服の人は私服で指定、お願いしたいです。

 シナリオが崩壊するような危ないことは……大抵の場合起こらないと思うので、自由に過ごせるシナリオを想定しています。想像を越えた事をすると採用できないことがありますので、ご注意頂けますと幸いです。このシナリオでは、影でタテガミの配下として活動する4名のグリモア猟兵が暗躍・協賛しています。呼ばれた時のみ、ご一緒致します。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み2021』

POW   :    妖怪花火で空へGO!

SPD   :    妖怪花火の上で空中散歩

WIZ   :    静かに花火を楽しもう

👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

灰神楽・綾
【不死蝶】
黒系のサーフパンツ&パーカー姿

海の上、小舟に揺られながら手持ち妖怪花火を楽しむ
こんな至近距離で花火やってても
全然熱くないだなんて不思議だねぇ

自分の思い思いの色の花火になる…でイイこと思い付いた
見てみてー梓、レインボー花火だよ
7本の花火を扇のように並べて持ってグラデーションに

あ、そうそう、言葉を込められる妖怪花火の話があったじゃん
俺もあれ頼んでおいたんだよね~
多分そろそろかな?

そして空に咲くメッセージ
『お母さん いつもありがとう』

え?もちろん梓のことだよ?
まぁお母さんってのは半分ジョークだけど
感謝してるのは本当だからね
だからこれからも宜しくねー、お母さん


乱獅子・梓
【不死蝶】
モノトーン系のサーフパンツ&パーカー姿

赤と青の花火を咲かせれば
自分と同じ色彩に仔竜たちが寄ってくる
うっかり火に触れてしまっても安心
UDCアースでバカ売れしそうだなこれ

はは、すごいじゃないか
子を見守る父親のような気持ちになる
(俺と少ししか歳違わないはずなんだけどな…

へぇ…どんな言葉にしたんだ?
ここには俺しか居ないからきっと俺宛なんだろうなと
少しの照れくささと期待を抱き
そして空にでかでかと浮かぶ「お母さん」の文字
…えーと、これ誰に宛てたものだ?
って誰がお母さんだ!

…はぁ
俺も、伝えたいことは色々とあったのに
結局上手い言葉が浮かばなくて諦めたというのに
もっとこいつのように気楽になれたらなぁ…



●伝えたいこと

 モノトーン系。特に白の強めなサーフパンツのサイドに黒い色が奔っている。同系統の色合いのパーカーに身を包み満足げな乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)。
 小舟で並ぶ存在は、黒の強めなサーフパンツのサイドに波線の白のライン。控えめに点々とワンポイントの蝶が躍るパーカーを着込んだ灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)。
 二人は今やビーチから離れた海の上。
 波はどこまでも静かで、簡単に小舟がひっくり返るようなことはまず無いだろうとなんとなくだが確信があった。 
 小舟を借り受けた時事前に聞いた話では其処まで深い海では無い様子。
 親分からのお約束、と書かれた紙は船の上に無造作に置いてある。
 "知らない間に"迷宮化"の影響が海の深度にでるかも知れないので親分達の目が届かぬ遠くへは行かないこと"。
 たった一文のみの注意事項だ。
 ライフセーバーとは形ばかりだが、親分達4人と花火の取り扱いを指導する委員会(自称)が目を光らせている。
 約束が守れない子は手加減なしの花火として打ち上げるだからね、という妖怪ジョークがこれでもかと詰められている事が察せよう。猟兵達がそう簡単に、危険な事に巻き込またりするはずはないのだから。
「小舟に揺られながら手持ち花火だよ、よく燃えないよね」
 小舟の素材は恐らく木。すぐ分かることで、引火の恐れがないと分かっていても不思議な心地。
 小柄なバケツは終わった花火の回収用。全く消える気配のない妖怪蝋燭を火種に、綾は手持ちの花火に火を移す。
「それにさ、こんなに至近距離で花火やってても全然熱くないだんて。不思議。うん、どういう不思議パワーを詰めたんだろう」
 ちりちりと燃え始めてすぐにしゅぅううと火を放ち始める色は、夜の海にはとても映えた。
 新し親分"バズリトレンディ"、すぐに変わる七不思議のひとつ"なんでそうなるのかわからない"。
「あれだ、わからないほうが面白い不思議、とかそういう」
 梓の返答に不思議だねえ、とくるくる手元で回しだす綾。
 ――自分の思い思いな色の花火になる、……んだっけ。
 火を前からじゃ何色の花火かは分からないんだし、と火花がぱちぱちっと爆ぜる花火を見て。
「見てみてー梓ー」
「ん?」
「レインボーイリュージョン」
 手持ち花火を全部で七本。右に4、左に3。
 火の色をそれぞれ一色ずつに充てて。扇のように並べて器用に見せる色合いは赤・橙・黃・緑・青・藍・紫の順番。綾からではなくきっちり梓から見て分かるように、意識されたグラデーション。
「はは、すごいじゃないか」
 子を見守る父親のような気持ちとは、こういう時に感じるものなのか。
 ――いや……俺と少ししか歳違わないはずなんだけどな…………。
「じゃあ俺も二つ、一緒に付けて……っと」
 赤と青の花火を咲かせると、大人しく傍らに居た焔と零が自分達に良く似た色合いに興味を示して寄ってくる。
 火花の小雨を浴びるような範囲に入り込む二体の仔竜は喜んでいる様な顔をした。
 わぁい自分達の色~!ぱちぱち~!
 人の言葉翻訳するなら、そんな感じの喜び方である。全身でうっかりどころか全力で火に触ってしまっているが、火傷の恐れは全く無い。
「UDCアースでバカ売れしそうだな、これ」
「小さい子からペット、それから大人まで火花浴び放題って?」
「そのウリ文句だと流行バブルにノって売れる前に通報されそうだからな?常識的に考えて」
 思わずツッコミが飛び出した。
「通報されて会社が機能停止すると困るなあ……」
 妖怪花火という時点で商品化の売り込みが大変そうだというのは二人の会話から溶け落ちている。

「あ、そうそう。言葉を込められる妖怪花火の話があったじゃん?」
「秘匿性バッチリ、とかいう奴な?」
「そうそれ。俺もあれ頼んでおいたんだよね~多分、そろそろかな?」
「へえ、どんな言葉にしたんだ?」
 見たら分かるよ、と教えてくれなかったが悪戯を仕組んだ事ものような無邪気さを出してきた。
 ――ここには俺しかいいないから、きっと俺宛なんだよな。
 見なくても分かる、という気配を出さないように気をつけて。
 もしも仔竜達宛だったら驚く準備を整える梓は空気を読める男である。
 完全に隠しきれない少しの照れくささは、事前準備されていたサプライズへの期待。

 ひゅぅうううう~~。

 ばぁん、と身体を震わす音が鳴り空に咲くMessage。
 それは二人の間でしか、見ることは叶わない。

『お母さん いつもありがとう』。

 空にでかでかと浮かんだ文字を見落とすものか。
 暗めの空に広がったレインボー。さてはさっきのは此処へ至る布石だったのか、いつ策士になった綾!
「……えーとな、うん。これ誰に充てたモノだ?」
 確認しなきゃ死ぬ。俺の期待が死ぬ。
「え?もちろん梓のことだよ?」
 有無を言わさずに突然死んだ俺の期待!
「って誰がお母さんだ!」
 二言目にはツッコミが付いてくる。この時の梓の切れ味は通常より研ぎ澄まされていた。
「まあ、お母さんっていうのは半分ジョークだけど。呼ぶならお父さんが適切だし」
 そういうことじゃないぞ、って気配がでてくるのを静止して。
 次の手持ち花火に手を出して、二人の手元は火を移す。
「まあまあ。感謝しているのは本堂だからね」
「……はぁ」
 一連のツッコミの連続に、気分が少し疲れたような。
「だからこれからも宜しくねー、お母さん」
 わかったわかった、と手をひらり――今日はもうお母さんでいいです。
 ――俺も、伝えたいことは色々とあったのに。
 ――結局うまい言葉が浮かばなくて諦めたというのに。
 もっとこいつのように、気楽に人の心を振り回すようなことが言えたらなら……花火がとても綺麗だし、今年一緒に見る良い色が最高だって褒めるとか?
 いやそれもなにか違う。
 梓の葛藤をそっちのけて、綾はほらみて、あれは他の人の花火だよと手を振って梓を現実に戻しに来る。他所様宛の花火から漏れ出るMessageは見て取れないけれど、花火としては見えるから。
 花火大会を、見ながら花火、なんて不思議なことだって両立できる。
 ――今はまあ、これでもいいか。
 どーん、どーんと大きな音に誤魔化すように言いたいことを呟いておこう。この日、半ば自棄という言葉が梓の胸に渦巻いたことだけは紛れもない事実である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ファン・ティンタン
【WIZ】いろはにほへと
【黒白連理】

火薬は、元を辿れば自身と同じ戦いのための道具
けれど、今、穏やかな時間の為に資している様子を見ると考えさせられる
道具は、持つ者の使いようなのだと

待ち合わせの場所までには道中色んな人の傍を横切る
空を見上げたり、地に視線を投げかけたり、或いは、宙を舞っていたり
花火の内容は分からずとも、彼らの顔を見れば、火薬が齎したモノは、分かる
人の智は、捨てたモノではないね

今日の装いは、鞘替えからくる衣替えではない、魂の変質
常世神は、成程、腐っても神だったと
待ち人を見つければ、その顔は線香花火のよう
花火と違って、鎮めるには時間がかかりそうだ

……ん、バス停のヒトだ
覗き見は、やーよ?


ペイン・フィン
【黒白連理】

花火、花火
火薬を使う物でも、こんなにも、平和で、綺麗な物に仕上がる
うん、とても、心地が良い、ね

待ち合わせ場所へと、向かいながら
道すがら、他の人の花火の様子も、ちらほらと
いろいろな、感情、想い、言葉が込められている
見ることは出来ないけれども、感じる
悪感情しか食べられない自分にとって、それは
お腹が満ちるわけじゃないけど、別の物で、心が、充ちる

一番、感情を向けている、素敵な恋人と、待ち合わせ
線香花火を楽しもうか
花火に込めるのは、沢山の愛情と感謝
それから、水着がとても似合っているという、感想もちょっぴりと

何があったかは2人の秘密
いつまでもこうして、ファンと、花火を楽しみたいな



●いろはにほへと
 色が匂えど――それは、何処にでも咲いた華。
 彩られた形が、"嬉しい"という感情可視化したもの。
 笑顔が花を中心に、そこら中で綻んでいる。
 友人で。親子で。もっと多い人数で。
 どの人々の想いを火花が時に手伝って、加わる色は新しい色を添える。
 穏やかで和みに気配が強い色とりどりの華は無防備だった。
 ファン・ティンタン(天津華・f07547)が目に映した人影はどれもが夏を謳歌していたと思う。
 時に華を擽る火薬は、夏の用途に限っては攻撃要素の欠片もないけれど。
 ――本来の用途は逆。笑顔を傷つけてから、癒やすもの。
 元を辿ればファン自身と同じ。戦いのために用いられるモノ。
 ――けれど、今。此処は戦いの場じゃない。
 穏やかな時間を創り出すのに一役を買っている。
 この事業に大きく資した中心人物、新し親分のお祭り気質が強く影響している部分も見過ごせないが、手持ち花火自体におかしな部分をファンは見通すことはできなかった。現代地球でいつか忘れられてこの地に流れた形が多く、どこか郷愁へ訴えかけてくる形状。
 悪く言えば新し要素が付与されているだけで、少しどこか古臭い。
 ――りめいく。新しい魅せ方をする。
 ああ、確かに新し親分バズリトレンディの好きそうなことだ。
 古くて、でも新しい。

 待ち合わせの場所は待ち人二人で決めた。
 道中にもたくさんの猟兵や一般の妖怪を瞳に映し横切った。
 数人で空を見上げたり、運営側として活動する妖怪へ耳打ちしていたり。
 しゃがみこんで花火が灯る様を、第三者の視点で眺め見た。
 通り過ぎた頃、空に大きな大輪が舞い上がる。どぉん、と大きな音を立てて。
 それから秘匿性の高い言葉と色を込めた者たちが歓喜の声をあげて喜ぶ。
 きれいだ、と思う。隠された言葉を見て取ることも。
 見て欲しがった色も、真実の姿はファンが認識することはできないけれど。
 ――花火の内容は分からずとも、あの顔を見れば、分かることは多い。
 どれもこれも、"火薬"が齎した事象に喜ぶ顔だ。
「人の智は、捨てたモノではないね」

 ゆらり揺らす衣装こそは、常世神。ぴょこんと頭上で気分に沿って揺れる黒が二条もまた証。鞘替えからくる衣装ではない、魂の変質。
 成程、腐っても神だった。ファンでさえ納得の装いだ。
 芋虫が蝶へと至るその間、ゆらりと揺れる裾は幻想的な雰囲気を膨らませる。
 透けた翅を包む緑が外装にも同じ揺れと、朧気さを残した。

●わかよたれそ
 ぱちっと爆ぜる連続音。
 空に大輪を咲かせて、すぅ、と燃え尽きる火薬の匂い。
 人混みと言うほど多すぎることはなく、どの存在からも"この時間を楽しもう"という明るい華がみえるようだった。
 ――花火、花火。
 ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)が見たものは、開いては咲く、刹那の花の数々。
 明るい赤と、青と黄色。
 海上に上がる打ち上げ花火に乗って空に打ち上げられる者があれば。
 言葉を詰め込まれた打ち上げ花火を平和的に見守る者もある。
 大きな翼を広げ、花火を浴びながら空中散歩するものまで、過ごし方は本当に自由。火傷の心配さえない優しい火花が小雨のように降ってきても、誰も気に留めていないようだ。
「火薬を使うモノでも、こんなにも、平和で、綺麗な物に仕上がる……」
 戦闘が起こる場に鼻を焼くような、むせ返る臭い。
 同じ匂いだけれど此処は違う。夜のビーチだというのに雰囲気は全く暗くない。
 誰も傷つかず、雰囲気から明るい。
「――うん、とても、心地が良い、ね」

 待ち合わせ場所へと向かいながら、道すがら他の人の花火の様子を遠巻きに眺める。お喋りしながらわいわいと、勢いよく吹き出す置型花火に戯れる集団。
 ネズミのように動き回る花火にきゃあきゃあとはしゃぐ子供たち。
 蛇のようにもりもりと質量をビーチに残す謎の花火を楽しむの二人組。
 ペインには蛇のようにのたうつ様子しか分からなかったが、恐らくは二人だけに見える言葉が託されていたのだろう。
 ――秘匿された部分を見ることは出来ないけれども、感じる。
 不思議な独自花火を楽しんでいた人たちから、感情や想い、言葉の気配が。
 続くように、込められた親しみの言葉の数々が、うっすらとだけれど想像できるような緩く漂う穏やかな感情が、この会場には広がっている。
 ――悪感情しか食べられない自分にとって、此処は比較的、遠い場所。
 しかし嫌いなわけではないのだ。
 お腹が満ちるわけじゃないけれど。
 ――別の物で、心が、充ちる、感じ。
 胸を押さえてしまうのは、きっと無意識だった。
 ペインもいやなわけではないのだ。このビーチに溢れる優しい雰囲気は。

●けふこえて
「……!」
 人が多い中で、待ち人の事は間違えること無くすぐに見つける。
 頬に朱が差すのが自分でも分かって。自分以外の人からすれば、顔の熱くなる様は線香花火のようにあっという間だった筈だ。
 花火は必要分燃えてしまえば終わるけれど。そう簡単に、鎮めるのは無理そうだ。
 元を辿れば火薬と同じでも、今の身は火薬と近くて遠いから。
 少し冷めるまで、手を団扇代わりにして過ごすしかないようだ――。
「待った?」
 ぱたぱたと顔を仰ぐようなファンに、ペインが尋ねる。
 熱気と花火から発生する熱量もある為、ビーチが凄く涼しいとは言い難かった。
 一番感情を向けている、素敵な恋人の姿をペインの方も確認出来て。
 自然と胸が騒ぐようだった。
 数人で過ごす人々が多かった手前、心持ち早足で来たつもりだったのだが、ファンの到着のほうが早かったようである。
「ん、時間通りだよ」
「そう?」
 本当はふたりとも到着が時間よりだいぶ早い。
 各々雰囲気を確かめるついでに、早く到着していた事は後に二人の雑談の中で判明することだろう。
「二人の花火は今から?」
「……ん、バス停のヒトだ」
 待ち合わせ現場に通り過ぎるように声を掛けてきたのは、顔見知り。
 妖怪花火の提供を、率先して行っていたフィッダである。
 肩掛け鞄に入るくらい無造作に手持ち花火が突っ込んであるという商売人にあるまじきスタイルなのが少々気になるが背中に黒豹のぬいぐるみを背負っていて。
 雑に麦わら帽子を被る水着と合わせた夏仕様。それなりに楽しそうな姿であった。
「覗き見は、やーよ」
「花火売(自称)にそういうコトいう?提供までが仕事なのにさあ。なあ、どの花火にする?」
「線香花火が、いいな」
 ペインが指差して伝えれば、バス停は小声で何かを呟いて妖怪花火を活性化させる。曰く、最後の仕掛けは手入力。
 手のひらくらいの赤い魔法陣が複数展開して、ぱぁと直ぐに消え去った。
 そこそこ魔法を扱えたり、火に馴染みがあるモノが"バズリ"力(りょく)をあげる代物らしい。
「はいどーぞ良い時間を。花火足りなくなッたら呼んでくれよ、ゴミ回収も承ろう」
 ビーチを綺麗に保つのも、危ないことしてるやつを注意するのも仕事のうちだと、ひらりと手を振って直ぐに彼は立ち去った。
「水着の感想?ハハ、そいつをたくさん言うべきは俺様じャねえよ」
 最後に残していったのはその一言。
 ケラケラと笑いながら仕事に従事するようで、耳がいいようなめざといような。
 じぃとファンの視線がペインに刺さる。
 それでどうなの。これはそういう意思表示。
「水着、とても似合っている、よ?」
「……当然。でも、もう一言」
 受け取った線香花火と、小さな蝋燭。
 二人の時間を楽しめるように、花火の色が良く見える小舟を一隻借りて緩やかな海へ漕ぎ出した。
 そっと二人で火を映して、ぱちぱちと小さく爆ぜる色を一番近くで一緒に眺める。
「自分の気持ちは、こういう、感じ」
 ペインが花火に込めた色の変化。
 静かなオレンジ色を中心に灯していた線香花火は、赤と白の白色を爆ぜさせる。
 色合いの強さは白の方が強いだろう、赤は寄り添うように同時に燃えている。
 続けて気持ちを込めると、炎は淡い緑に色を変じさせて。それから白の炎に黒い色が混ざった。
「……成程?」
 沢山の愛情と感謝が籠もったイメージカラーは妖怪花火がよく反映していた。
「じゃあ、こうかな」
 ファンが感情を込めて何色に灯したのか。
 それは二人のみが知る。
 何があったか、話す二人ではないからだ。
 おでこがくっ付くくらいの船の上、いつまでも一緒に花火を眺めていたことだろう。小さな火花を幾つも灯して、穏やかな空気が二人をも包みながら――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月02日


挿絵イラスト