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恋は盲目死人に口無し

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 教会。
 そこに一組の男女がいた。
 花婿と花嫁がお互いに抱き合い、愛を誓っている。
「愛しているよ」
「わたしもです」
 花婿が花嫁にむかって囁いているが、どこかおかしい。
 花嫁の表情は陶然と、目も虚ろだ。
 これから結婚する二人だというのに。
 花婿の言うがまま、なすがままについていく。
 二人が教会を出ると、花道の左右に木の柱が連なっていた。
 柱の天辺には人がくくりつけられている。
 男や女、若い者から年老いた者まで。
 木の柱に結び付けられ、左右から二人を見下ろすように並ばされている。
 それは、見ようによってはバージンロードを歩く花嫁たちを祝福してるようにも見えなくない。
 だが人々の口から洩れる言葉は、祝福ではなく懇願だ。
 助けてくれ。
 ここから下ろして。
 むけられた叫びは、花嫁には聞こえていない。
 ただ、花婿の一挙一動に向けられている。
 花婿はそんな花嫁に、にっこりと笑った。
「君のために用意したんだ」
「まあ、すてき」
 二人は腕組みをしてトーチを持つ。それは愛情を示すかのように赤く燃え盛っていた。
 しずしずと花道を歩き、柱の下に積まれた薪と柴草に点火する。
 まるで式のキャンドルサービスのように、次々と火をつけていった。
 左右からの絶叫を背に、花婿花嫁は花道を進んでいく。
 そこには一回り巨大な木の柱があった。
 やはり天辺に人、1人の女性がくくりつけられていたが、他と違う点があった。
 首に『わたしは妻失格です』の木札が下がっている。
 女性は周りで燃え盛る火柱を見て泣き叫んでいた。
 それもそのはず。
 くくりつけられていた人々は、彼女の家族や親類縁者だったからだ。
 二人はその木柱にも当然といったように火をつけ、互いに向き直る。
「君を一生愛すると誓うよ」
「わたしもあなたをあいすることをちかいます」
 新婦の顔を火柱たちが赤々と照らし、まるで紅潮しているかのように見えている。
 そして二人は幸せな口づけを交わし、いつまでも固く抱き合っていた。

「これが、私の見た予知でございます」
 ここはグリモアベース。
 ライラ・カフラマーンは居並ぶ猟兵たちに深々と頭を下げていた。
 その背後に生じている霧には、さきほどの凄惨な光景が幻となって現れている。
 頭を上げると、幻は雲散霧消していき、周りの霧と溶け込んでいく。
「今回、皆さまにお願いするのはヴィジョンに現れていた二人。花嫁と花婿、アリッサさんの保護と、古代貴族シェムハザの撃破です」
 ライラの説明によればシェムハザは魔術の素養がある貴族だったという。
 それが過去よりオブリビオンとなってこの世にあらわれ、災いをなしているそうだ。
「彼の者は気に入った者がいると魅了の術をかけ、妻の一員として召し上げます。しかし、飽きればどうなるかは、先ほどのヴィジョンによってわかったかと思います」
 先ほどのヴィジョンで火刑に処されていた人々。それは元妻とその親類縁者たちだ。
 新しい妻を手に入れたから前は用済み、ついでに余興として始末したのだという。
「シェムハザは一人の妻では満足せず、ハーレムを形成しようと画策しています。つまり生かしておいては多くの方々がこのような目にあうと予想されます」
 しかし、とライラは続ける。
「ヴィジョンにあった花嫁、アリッサさんを保護すれば少なくともこの惨劇の予知は回避することができます。私の調べたところ、今アリッサさんはブラックマーケットに『商品』として囚われているようです」
 ブラックマーケット。
 非合法の数々を扱っている裏の市場。もちろん人身売買もお手の物だ。
「みなさんにはまず、ブラックマーケットにおもむき、アリッサさんを救出してください。顧客情報などからどこに売ろうとしていたのかなど、シェムハザに繋がる手がかりもあるかもしれません」

 ライラが杖の先で地面を軽く叩くと、霧が変化し姿を形どる。
 それはアックス&ウィザーズの世界。
 国家間から離れた治外法権の場所、ブラックマーケットが映っている。
「人を人とも思わぬ下衆には、それ相応の報いがふさわしいと断じます。しかし、それを行うには皆さま方の協力が不可欠。なにとぞシェムハザを倒し、この凶行を止めてくださるようお願いします」
 そう言ってライラは、深々とまた頭を下げた。


妄想筆
 こんにちは、妄想筆です。
 猟兵の皆さんは、アックス&ウィザーズの世界で、救出とオブリビオンの撃破をすることになります。
 一章はブラックマーケットに潜入し、予知で花嫁候補となっていたアリッサさんを救出することになります。
 ブラックマーケットは広く、商材も多種多様に渡っています。
 猟兵のみなさんは手分け、あるいは協力して捜索することになるでしょう。
 OPで見た予知の幻で、猟兵たちはアリッサさんの姿はわかっています。
 設定では10代後半、髪はポニーテールの勝気そうな村娘です。
 皆さんのプレイングお待ちしております。
58




第1章 冒険 『ブラックマーケット潜入』

POW   :    とにかく片っ端からあちこち当たってみる

SPD   :    自分の足で情報などを集め、探す範囲を特定する

WIZ   :    自ら客として交渉などを行い、目標物に近付けるよう試みる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 街道から離れた、うっそうとした林を抜けた先。
 あらゆる物を取り扱うブラックマーケットは、そこにあった。
 開放された市場の前で立つ見張り兵は武器を持っているが、いちいち見知らぬ人物に詰問したりはしない。
 ここでは非合法の物を扱っているし、それを求めて来る者達は脛に傷を持つ者ばかりだからだ。
 いちいち身分を照会していては日が暮れるであろう。
 彼らは、ここで揉め事を起こす者を取り締まるためにいる。
 『客』にはゆっくりと、安心して大金を使って貰いたいからだ。
 禁制の薬品。曰くつきの品。事情があって身売りされた人。
 ここでは全てが合法だ。
 気に入れば商人たちと交渉に入れば良い。無論、それなりの才覚がいるが。
 市場の前にたどり着いた猟兵たちは、それぞれの行動でアリッサを探すことにした。
エウトティア・ナトゥア
故郷でコンコンコンして収穫してきた未来技術の人工宝石(未来での価値はビー玉以下)を沢山持ち込む
狼を沢山呼び出し、巨狼に乗ってパレードを組んで耳目を集める

(見張り兵の足元に宝石を一掴み放り投げ交渉)
これ、そこな雑兵よ。わしの可愛い狼達は若い娘が大好きでの活餌の奴隷を所望じゃ
そこの広場で活きの良い娘たちを見せてくれんかのう?金ならあるのじゃ!
うははははー!今日は気分がよいのう。(と、また宝石を一掴みばら撒く)
シェムハザ並みの下衆ムーブで奴隷商の目を引いて『商品』周辺の人員を手薄にする

上空から大鷲で人の動きを監視
奴隷が運び出されてくる場所を狼に持たせた手紙で他の猟兵にも周知します


フォー・トラン
【WIZ】で挑戦。

ありとあらゆるものが売り買いされるブラックマーケットであれば、情報を専門に扱う商人もいるのでは?

というわけで情報屋に接触して"アリッサさんの特徴(10代後半、髪はポニーテールの勝気そうな村娘)に当てはまる娘を仕入れた人買い"について、知っていることを洗いざらい話してもらう。

あらかじめ手持ちのカネをユーベルコード【偽造魔法】で増やしておいて、交渉相手が情報を出し渋るようなら幾らか握らせる。

交渉中は"こういう商談は慣れっこなので腹の探り合いは無駄である"というアピールのために礼儀正しく振る舞う。
それに挙動不審だと偽金だってバレちゃうかもしれないしな。


オイフェ・アルスター
WIZ
【世界知識】を持って、良さげな顧客を装いますの。
見張り兵には流し目で見た後にウィンクし【誘惑】しておく。

商人やマーケット歴が長そうな御仁を探して話を聞きますわ【情報収集】
「本日、どこぞの店で可愛い娘が入ったと聞きまして、ご存知ありませんの?」

嘘をついたり、目的外の商品を紹介されるなら、逆らってはいけないのだと【存在感】をだし【恐怖を与える】
「お上手ですわ。でも、私にそういうのは不要ですの」

アリッサが居たならば、欲しがっている客として、お話でもしておりましょう。
名前や経緯、得意なこととか。怪我は『生まれながらの光】で癒します。
すでに居なければ、商人に行き先を聞き出しますの。なんとしてでも。


バルディート・ラーガ
【WIZ】
この市場自体にお邪魔すンのは初めてですが、なあに。あっしは元よりこういった後ろ暗ーいトコへの出入りにゃあ慣れた身です。ヒヒヒ。
堂々と踏み入って、目的のお嬢さんを探しましょうぜ。

【這いずる朽縄】を走らして市場の大雑把な内情は把握しつつ、本命は聞き込みの方ですかねえ。こーいうトコでの「コミュ力」は基本カネを見せつつ、ナメられすぎねえよう適度に「恫喝」もチラつかせやしょ。お目当てをめっけたらお仲間への共有は忘れずに。

と、調査を進めつつ。折角こんなトコまで来たンですし、ついでにお買い物と洒落込みやしょう。ダガーに垂らす毒なンか、都市部での流通品とは一線を画すよな強ーいのが並んでますからねエ。


四王天・燦
フード被って何処がどういう区画か見ていく。
貨幣はわりと持っていくぜ

毒物やお酒(※18歳)や宝石類を買ったりしつつ。
「(毒は売るのに未成年飲酒禁止法だけは守るのかよ!)」
内心ツッコミ

商品のない店にも声を掛ける。
契約を先に済ませる奴隷商かもしれねーし、情報屋なら闇市の全体像だけ買って奴隷商を見つけ出そう

本命の奴隷商に当たったら見せてもらう。
アリッサがいたら買うぜ。
売約済みなら「先方と交渉したいが間を取り持ってくれねーか」と銀貨を握らせて頼む。
他の猟兵とタイミングがあったら隙を見て顧客情報を盗み見、もしくはアタシが交渉して隙を作るぜ

可愛い魔物娘が売られていたら性癖も手伝い、情が移って買うのはご愛嬌…



 人が多く行き交うブラックマーケット入口。
 そこが今は騒然としていた。
 狼の群れを連れてきた一団がいたからだ。
 見張り兵が身構えていると、巨狼に乗った少女が、ぽんと小袋を足元に投げつける。
 兵がそれを取り上げてみると、そこには宝石がつまっていた。
 おどろく兵士たちに少女は語りかける。
「そこな兵、生餌を扱っている店はあるかのう?」
「い、生餌ですかい?」
「うむ、わしの家族に喰わせる生餌が欲しくてな。ニンゲンがいいのじゃ」
「可愛い顔してなんて外道!?」
「すげえ! 俺達にできない事を平然と言ってのける!」
 少女の口から出た凄惨な物事に、おののく兵士達。
「あら、駄目ですの?」
 麗しき女性が一歩、前へ出た。
 しなを作って兵士に伺いを立てる。
「駄目っていうか……それは商人次第だと」
「困りましたわねぇ……」
 顔を伏せがちになる女性、それから目だけ動かし尋ねる。
「じゃあ、売ってくれそうな商人の場所を教えてくださる?」
 片目をつぶり、アピールする女性。
 その姿に、女っ気の無い兵士はイカれてしまった。
「ええ、もちろんです。でも……狼たちは置いていってください。なに、御家族さんは我々が見張りに立って守りますので」
 一団は、大量の狼を市場の外へと置き、護衛と思われる数人とブラックマーケットへと入っていったのだ。

 ブラックマーケット。
 その中にある宿の一つ。
 大部屋の一室で、先ほどの一団が話し合っていた。
「ふむ、狼を引き連れるのは失敗かのう」
 少女、エウトティア・ナトゥアが落胆した表情を浮かべる。
「手勢を増やしておきたいところでしたけど、仕方ありませんわね」
 女性、オイフェ・アルスターも相槌を打つ。
「まあまあ、皆さん方。あっしはこれは逆にチャンスだと思いますぜ」
 ドラゴニアン、バルディート・ラーガは舌先をチロチロと出し笑みを浮かべる。
「どういう事さ?」
 妖狐、四王天・燦が訝しげに問いかけた。
「なに、これからどういう事になるかわかりやせんしね。入れ違いにアリッサさんが運ばれるとも限りやせんし、内にあっしら、外に狼の見張りなら都合が良くありませんかい?」
「なるほどねぇ」
 人狼、フォー・トランは腕組みをして頷いた。
「たしかに、最悪荒事になるかもしれねえしな」
「そういうことでさ、まあそれは最後の手段ですがね」
「出来ればしたくはないのですけど……」
 猟兵たちは状況を整理する。
 まずは対象アリッサの救出。そしてそれらに関する情報。
 そして、シェムハザに関する情報を手に入れられればなお良し。
 情報、まずは情報が大事だ。
「それにはまず金だな。こういうところでは金が一番信用できる」
 みんなはいくら持ってきた? とフォーが尋ねる。
 人工宝石が多量。貨幣がわりと。
 フォーが一掴み手に取ると、それをじっと見つめはじめる。
 数分ののち、左手にも同じ物が生成された。
 ヒュウ、と口笛を吹くバルディート。
 目をキラキラと輝かせ燦が尋ねる。
「凄い! それどうやんの!?」
「教えねーよ、お前絶対良くないことに使うだろ。これは人助けだ」
 フォーは次々と宝石貨幣を偽造していく。
「でも、人助けする過程でこの手を汚すのなら何だっていいさ。人を買うにはきっと大量の金が必要なんだろ? アタシは資金源を確保するよ」
 そういうことなら、とバルディートは金の山から一掴み持つと、部屋から立ち去ろうとする。
「蛇の道は蛇、こういうところならあっしの方が怪しまれずに動けると思いますぜ。へへ、吉報を待ってくださいな」
「そういうことならアタシも行くぜ!」
 燦も後について部屋を出る。
「私も情報を集めにいきます、何かあれば戻ってきますね」
 オイフェも部屋を後にする。
 残ったのはエウトティアとフォーだけだ。
「アンタはいかないのかい?」
「いや、行くぞ?」
 エウトティアは窓をあけると空を見上げる。
 何事かを呟くと、空に大鷲が現れた。
 その背に乗ってエウトティアは大空へと駆けていく。
「空から人を監視してみるのじゃ、あとはよろしくのう」
「へっ、頼もしい仲間達だねぇ」
 自分も複製があらかた終わったら情報を洗いに行こう。
 そう思うフォーだった。

 バルディートは市場をうろついていた。
 ふらふらと歩くその炎の腕から、種火がちろちろとしたたり落ちる。
 それは地に落ちると蛇となり、市場のあちこちへと這いずっていった。
 『這いずる朽縄』。
 相手を自動追尾し、自分に知らせるバルディートの手練だ。
 幸いアリッサの顔は覚えられたが、この市場のどこにいるかはまだ知らない。
 蛇海戦術で探してはみるが、他の猟兵との共有も必須だろう。
「まあ、地道に聞きこみといきましょうかね」
 バルディートはそうやって蛇を這わしながら、まずは一件の店へと足を止めた。
 ごめんなすってと、中に入ると店主が出てくる。
「オンナぁ買いたいんですが、良い娘いますかい?」
 懐から金をちらつかせるバルディート。
 その金に警戒を緩めると店主は答えた。
「ウチは春を売る店ですぜぃ、どんな娘をお探しですか?」
「人間、できれば10代後半、髪はポニーテールの勝気そうな子がいいねぇ」
「旦那と同じドラゴニアンならいますが……」
 ポニーテールのドラゴニアン娘。
 依頼任務で来てなかったらお目にしたいところだが、今は状況が許さない。
 ここにはアリッサは居なさそうだ。
「そうかい、邪魔したね」
 踵を返すバルディート。その背に店主が声をかける。
「冷やかしですかい、お客さん」
 その声に止まり、後ろを振り向くバルディート。
 その眼は先ほどとは打って変わって冷徹な眼をしていた。
 思わず息を飲む店主。
 蛇に睨まれた蛙のように動けない店主に、つかつかとバルディートは歩を詰めていく。
「目当ての娘が居なかったから出ていくんですぜ、何か問題が?」
「い、いえ……」
 店主も場数を踏んでいるのだろうが、猟兵とはくぐり抜けた修羅場が違う。
「条件にあった娘が入荷したら知らせてくださいな。買いに来ますんで」
「へ、へい……」
 怯える店主を背に、バルディートは店を後にする。
 まだ一件、見つかるはずもない。
 地道に捜索を続けることにしよう。
 そんなバルディートの目に一件の店がとまった。
 どうやら毒・薬瓶を扱っている店のようだ。
「ちょうど毒を切らしていたところでさぁ。聞きこみのついでに見て回るとしましょうかね」
 バルディートは今度は別の店へと歩をすすめていったのだった。

 燦はフードを被り、市場を探索していた。
 こういう場所はとにかく足をつかって探すに限る。
 ついでに自分の欲しい物も手に入れるとしよう。
「おっちゃん、このドラゴンブレスってお酒ちょうだい!」
「あ、駄目駄目。それ強い酒だから、未成年には売らないよ」
(毒は売るのに未成年飲酒禁止法だけは守るのかよ!)
 そんなツッコミを入れそうなった燦に店主は笑う。
「冗談冗談、ここではみんな合法さ」
「でもお高いんでしょう?」
「まあそこは嬢ちゃん可愛いから。ここはこうしてこうやって、これでどうだい?」
「良し、買った!」
「良し、売った!」
 持ち前の社交力をいかし、燦は店の人間と仲良くなる。
 態度が軟化し始めてきたところで、本題を切り出してみるのだった。
「ところでさぁ、アタシ人をさがしてるんだ」
「へえ、どんな子だい」
「村娘かな。アリッサていうんだけど、心あたりある?」
 うーん、と腕組みをする店主。その顔からは答えは得られ無さそうだ。
「他の品なら取り扱っているんだけどね、あいにく人は売ってないね」
 ならば、その人身を取り扱っている場所はあるかと燦が問うと、もちろんと店主は答えた。
「ここは人身売買も何でもありだからな。通常じゃ扱ってない魔物娘まで、金を積めば買えるぞ」
「へえ、それは凄く興味が出てきたね」
 どこの区画にいけばいいか、と尋ねると店主はメモ書きを渡してくれた。
 そこら辺付近が人身売買の区画らしい。
「ありがと、幾ら?」
「さっきの品のオマケだよ。探し人が見つかるといいね」
 とりあえず、目当ての魔物む……アリッサには一歩近づいたようだった。
 仲間に知らせるべく、燦は宿へと踵を返すのであった。

 一方、フォーは情報屋と接触することに成功していた。
 宿の一室を借りて、一対一で対談する。
 卓の上には上等な酒。そして金貨一束。
 まずは一杯、と薦めたが相手も商売。
 商談が終わってからと酒は断られた。
 フォーが求めるのは人買いの情報。
 アリッサを仕入れた人買いについてだ。
「人買いは知ってますが、それだけではわかりませんぜ」
「10代後半、勝気そうな村娘、ポニーテールと言ったはずです。名はアリッサ」
 普段のフォーとは違う、落ち着いた声。
 フォーが金貨一束の横に金貨一束を加えた。
 それを情報屋は黙って見つめる。
 フォーの『偽造魔法』は対象物があればより精巧になる。
 無から複製した硬貨は、ある意味本物といえた。
 金貨から目を離し、情報屋は答えた。
「アリッサと言う名前に思い出しました。たしか、ええ。確かにそういうのを『仕入れた人買い』はいます」
「その者はどこに?」
「すでに市場を離れました。おそらくは高利貸しの所かと。借金のカタに娘を売る人間なんざ別段珍しくありませんからね」
 人買いは高利貸しから雇われた身。村や町から抵当として人を集め、こうやって売り捌いているのだという。アリッサもそういった一人なのだ。
 さすがに両親の借金理由までは知らないが、アリッサを連れた人買いがこの市場にいたことは事実らしい。
「その人買いが利用している店はどちらかしら?」
「この市場の一角に奴隷市場がありやす。そこで自分の目で確かめればよろしいかと」
 情報屋は卓の上に一枚の羊皮紙を置く。
 それは市場全体の精巧な地図。
 裏道や大通りの道、店の種類や名前までもが記載されている。
 これを頼りに行けということなのだろう。
 それを受け取ると、フォーは尋ねた。
「ありがとう。それともう一つ、シェムハザという人物に心辺りはあるかしら」
 情報屋は何も言わない。
 フォーもそれ以上口にはしない
 金貨を一束追加すると、情報屋はそれを三分の一だけ受け取り、残りをフォーに返した。
「人買いにそのような名前はございやせん。しかし、奴隷を買った中にそのような名前があったと記憶してやす」
 ありがとう、とフォーは酒を相手の盃に注ぎ、自分の盃にも注いで口につける。
 それを見て情報屋も盃を手にし、酒をあおる。
 商談は終わった。
 あとは仲間と一緒に奴隷市場の区画へとむかうことにしよう。

 奴隷市場。
 そこの広場で人の目を惹く光景が繰り広げられていた。
 狼を数頭引き連れたエウトティアが巨狼に跨って闊歩していたからだ。
 狼を全頭引き連れてくるのは拒否された。
 だがオイフェの『交渉』によって数頭くらいならと許可されたのであった。
 集まってくる野次馬たちにむかって小袋を投げつける。
 そこには宝石、やれ大金持ちが来たのかと周囲は騒然となった。
「のう下郎、ワシは端女が欲しくてな。ここで売っておるんじゃろ? はようせい」
「お客様、色々と手続きがありまして……」
 出てきた受付にむかっても小袋を投げつける。
 それを受け取りつつ受付は苦笑いを浮かべる。
 こいつは絶対上客だ。しかも金満、それにカモ。
 怒らせず逃さないようにしないと上役に怒られてしまう。
 そんな受付の心情を理解したのか、二人の女性が前に出る。
 オイフェと燦だ。
「では私が代わりに雑用を。御嬢様はここでお待ちになってくださいな」
「アタシたちがお嬢の好みを連れて来るよ」
「うむ、良きにはからえ」
 金満商人と侍従たち、その役柄でもってエウトティアたちは奴隷市場へと赴いた。
 仲間の情報では、この店にアリッサ、対象者がいることはほぼ確実だった。
 オイフェと燦が中へと潜入し、エウトティアが見張りとなる。
 エウトティアの役目は万が一を考え、警戒を緩めることにあった。
「わはは、今日は気分が良いのう。懐が緩むわい」
 今度は宝石を袋から出し、素のままばら撒く。
 すると砂糖に群がる蟻のごとく、野次馬たちが地面に這いつくばった。
「おう、拾え拾え。下層民に幸運は二度とつかめないのじゃよ」
 次は逆方向へ宝石をばら撒く。群がる群衆たち。
「ギブミー! 別嬪さんギブミー!」
「バクシーシ! バクシーシ!」
 それら群衆にむかってエウトティアは、未来ではビー玉以下のキラキラ光る、更に偽造複製した物をばら撒くのであった。
「よいぞ、よいぞ。気分がよいぞ」

 人間、エルフ、ドワーフにフェアリー。
 ハーピーにドライアド、セイレーン。
 多種多様の『商品』がそこにはあった。
 遠い異国の地の種族である、飛縁魔やモー・ショボーの姿も見かけられる。
 よくもまあここまで揃えたものだ。
 ブラックマーケットの名は伊達ではないといったところか。
 その中の一つの檻の前で、オイフェは足を止めた。
 檻の中には一人の娘。足枷は檻に繋がっており、これから起こる出来事を予期してか、不安そうにうなだれている。
 『人間・19歳非処女 アリッサ』
 身体はやや汚れてはいるが、髪はポニーテール。
 衣服一枚で村娘かどうかはわからないが、予知霧で見せられた姿と一致する。
 どうやらこの人がアリッサで間違いないようだ。
「この娘を買い上げますわ」
「ええ? お客様、こんな野暮ったい奴よりもっと良いのをおススメしますが」
 他の商品を紹介しようとする店員に、オイフェはにっこりと微笑み返す。
「お上手ですわ。でも、私にそういうのは不要ですの」
「えー、でも他にもいい娘いそうだよ」
 横槍を入れてきた燦を、オイフェは横面をはたいて答えとした。
 顔色ひとつ変えず、張り手をお見舞いする。
 それは、そばにいた店員を震え上がらせるのに充分な、有無を言わせない迫力であった。
「交渉は私が任せられています。あなたが口を出す事ではありません、頭を冷やしていらっしゃいな」
「へいへい、わかりましたよ」
 燦が二人のもとを離れ、何処ぞへと冷やしにいった。
 オイフェは同行者の無礼を店員に詫びると、交渉を続けた。
「ごめんなさいね。私の身内が口を挟んでしまって」
「え、ええ。お気になさらずに……」
 アリッサを相場で買う事に承諾し、即金を支払う。
 契約書を交わしすと、オイフェは彼女と話す場を設けたいと願った。
 店員も承諾し、お客様とその所有物に軽食を運ぶのだった。
 ぎこちないアリッサに、オイフェは柔らかく話す。
「そう硬くならなくて結構ですわ。気を楽にしなさって」
「……はい、ご主人様」
 うなだれるアリッサ。オイフェはため息をついた。
「まず、その誤解から解かなければいけませんわね」
 オイフェはアリッサの手を握った。
 すると優しい光がアリッサを包み、彼女は目を丸くする。
 疲労、それに傷が嘘のように薄れ消えていったからだ。
 そんなアリッサにオイフェは優しく微笑む。
「私……いいえ、私達はあなたを救いにきたのですの。村に住んでいたアリッサさんで間違いありませんわね?」
「うん……でもなんで?」
「とりあえず、ここに来た経緯を教えて貰えますの?」
「う、ん……村が不作だったんだ。両親がお金を借りて、でも返せなくて、金貸しが来て……」
 だんだんとうなだれるアリッサ。
 実の両親に売られたのを思い出し、気落ちしたのだろう。
「大丈夫です、神は私を遣わしました」
 だからあなたは救われます、とオイフェは微笑んだ。
 傍にいる店員にも注意を払いながら。
 自分の首尾は上々。彼女は上手くやっているだろうか。

 一方、その頃。
 彼女、燦は奴隷商人の事務所へと潜入していた。
 エウトティアが外の注意を惹きつけ、オイフェが店員を引きつける。
 そして燦の役目は、その隙に手薄となった事務所を家探しすることであった。
 顧客情報の名簿を流し読みしながら、目ぼしい物がないか調べていく。
 その中で、気になる物がいくつか見つかった。
 シェムハザ。
 グリモアベースで聞き覚えのある名前が、売買記録にあったのだ。
 いずれも若い女性。ときどき魔族も購入しているようだ。
 購入した先で何が起こったか。
 今は考えたくないが、情報の先を調べねばなるまい。
 『商品』の送り先は孤島。
 そこに朽ちた貴族の別荘があったのだが、改築されて今は人が住んでいるらしい。
 注文リストには備考欄として食糧、嗜好品、薪や柴草の燃料、その他色々な物を別途購入し、船便に乗せることと記載してある。
「ビンゴ……、これは大金星だよね?」
 シェムハザの居場所もわかった。
 あとはアリッサを無事ここから脱出させるだけだ。
 燦はシェムハザの情報と、手数料として机から銀貨を数枚くすね、事務所をあとにするのだった。

 ブラックマーケット、宿場区画。
 あたりは夕闇に染まっている。
 猟兵たちは宿を変え、高級宿に泊まっていた。
 一人解放するのも大勢解放するのも同じ。
 オイフェがそう仁慈を説き、アリッサと一緒に連れてこられた村娘たち、ついでに非合法で連れてこられた者達も解放したのであった。
「アンタたち、アタシを財布と何か勘違いしてないかい?」
 高級酒をあおるフォー。
 だがその表情は満足げだ。
「ヒヒ、そう言わないでくださいよ。姐さんには感謝していますぜ」
 バルディートも相伴にあずかり、昼間購入した毒瓶の数々を眺めている。
「まあ、狼たちに監視をさせている。心配はなかろうのう」
 ドラゴンヒレステーキをつまみ、巨狼へと食べさせるエウトティア。
 なにしろ解放した奴隷は大勢だ。馬車や旅路の食料も必要になる。
 その手配のため、しばらくこの市場に厄介になりそうだった。
 『商品』たちも宿屋に泊まって疲れを癒してもらっている。
 正式に契約書を交わして購入した上客に対して、その商品をくすねようという不届き者がいないとも限らないのがブラックマーケットの怖いところだ。
「あとは神罰を下すだけですわね」
 オイフェも静かに食を取っている。
 今回の充分過ぎる成果に、彼女も満足げだ。
 燦の姿はここにはない。
「アタシってさ、ほら妖狐でしょ? 親近感が湧くんだぜ」
 だから夜通しお話したい、と魔族の娘を数人連れて部屋へと戻っていった。
 猟兵達の夜は更けていく。
 アリッサ救出は成功した。
 あとは元凶のシェムハザを倒し、猟兵の本懐を為そう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『猟兵一番乗り』

POW   :    自慢の剣技を敵に味合わせてやる! かかってこい!

SPD   :    弓矢や罠を喰らいたい奴はいるかい? 喰らいやがれ!

WIZ   :    私の魔法で目にもの見せてあげましょう。覚悟してください。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 船でしかたどり着けない、大陸から少し離れた孤島。
 そこにシェムハザの棲家である大邸宅はあった。
 雇われの使用人は邸内でシェムハザと婦人たちを甲斐甲斐しく世話をし、雇われのごろつきたちは島内を警戒にあたっている。
 見張りにあたっていたごろつきが、船着き場にむかってくる船を発見した。
 形と旗印に見覚えがある。
 それはいつも来る定期便であった。
 主人が買った『商品』たちと嗜好品。それにおこぼれの酒と肉だ。
 そういえばそろそろだったな、と見張り係だったごろつきは思った。
「見張りは楽だけど……オンナぁ抱きてえよな」
「船の検品時に手ぇ出してみろよ」
「バーカ、殺されっぞ。それとも柱に縛られるのが好みかよ?」
「そんな趣味かよ、ゲハハハハハ!」
「違ーよ、ゲハハハハハ!」
 下非た笑いを交わしながら、ごろつき達は見張りに戻る。
 彼らは知らない。
 船着き場で荷受けにあたった仲間は、すでに殺されていることを。
 積荷はいつもの物資ではなく、引導を渡しにきた猟兵たちであるということを。
 猟兵たちは、シェムハザを倒すために、邸宅へとむかっていることを。
 見つかれば鎧袖一触に彼らもなで斬りにされるということを。

 猟兵たちは、オブリビオンを倒すために島の細道を駆け上がっていった。
オイフェ・アルスター
燦さんがいるなら平手打ちの謝罪をしますの。

「あらあら、下世話な笑い声ですこと。彼らのように静かにしていればいいものを」
大暴れしてはいけませんので、ウィザード・ミサイルで荷受けは処理しておきますの。

あの子達の未来は変わりましたが、新たな犠牲が出ては意味がないのですわ
シャムネコだかシェムハゲだか、覚える気もありませんが、倒させていただきましょう。

【地形の利用】し、見つからないように詰所らしき場所まで向かう
【怪力】で扉をこじ開け、【高速詠唱】で90本ほどの【ウィザード・ミサイル】で一網打尽ですの。
詰所に向かう猟兵がいたら、裏手をお願いしたいですわ。

雇い主は選ぶべきでしたわ。


四王天・燦
オブリビオンでなければ「改心するならこの島に遠投一年で許すぜ」と警告

オブリビオンや向かってくる性根の腐った連中には容赦ねーぞ。
身を引いたと見せかけて木々や柱の間に張り巡らせた鋼糸デストラップに突っ込ませたり、神鳴でバッサリ。
よほど腕の立つ用心棒でも出てきたらアークウィンド抜いてシーブズ・ギャンビットで頚動脈を斬るぜ。
まあ、あまり残酷なことはしたくねーんだ…殺るときは苦痛なく一撃だ

屋敷の使用人がただの雇われや魅了の類を受けているだけなら「黙れ」と殺気で黙らせ、決着まで大人しくしてもらう。嫁さんズも同様。
「黙れ…って言ったけど訂正、シェムハザどこにいるかだけ喋ってくれ」

狂気の島だな。早く帰りたいぜ


フォー・トラン
【SPD】
派手に行くのか静かに行くのか、その辺りの方針は他の猟兵さんに合わせることにして、アタシはサポートを担当しよう。

【精霊召喚魔法】で呼び出した風の精霊に、頭上から周囲を見張ってもらう。
人影を見つけたら教えてくれ。後はアタシ達がやるから。

敵さんにはフック付きワイヤーを投げつけて、たとえ引きずり倒せないとしても味方の殴るチャンスくらいは作ってやる。

もし前衛が足りないようならアタシが前に出て足止めするけど、チャンバラは得意じゃないので出来るかぎりその道のプロに任せたい。



 船着き場。
 そこでオイフェ・アルスターと四王天・燦がごろつきと対峙していた。
 すでに足元には数人、黒焦げの死体となっている。
 荷受けに来た輩を出会いがしらに始末したのだ。
 動揺する彼らにむかって、燦が愛刀『神鳴』を突きつける。
「今までのことを悔い改め、改心するならこの島に遠投一年で許すぜ?」
「な、なめんじゃねーぞ!」
 内心の動揺を押さえつつ、ごろつきどもが襲いかかってくる。
 仲間がやられているのだ。はいそうですなどと従えはしない。
「あらあら、彼らのように静かにしていればいいものを」
 そんな彼らにオイフェは先ほど始末した時と同じように、ウィザード・ミサイルを叩きこんだ。
 火柱が数本立ち上がり、それはもがき、やがて動かなくなった。
 顔を上げると島の奥、小高い丘に邸宅が見え灯りがついてる。
 目的地まで何人と遭遇するのだろうか。
「チャンバラは得意じゃないからな、今の要領で頼むぜ」
 二人から距離を取っていたフォー・トランが掌を上にむける。
 その手の中でクルクルと風が渦巻くと、精霊となって現れ、猟兵が向かう先を
 先導していく。
 馬鹿正直に細道を上がっていく必要も無い。
 なるべく戦闘を避け、見つからないように進もうと決めた矢先、オイフェが声をかけた。
「あの、燦さん?」
「なんだい?」
 振り返る燦。それにむかって頭を下げるオイフェ。
「ブラックマーケットでは失礼しました。芝居とはいえ顔をはたいてしまって」
「ああ、あれ? いいよ気にしなくて」
カラカラと笑う燦。でも、とうつむくオイフェにフォーがフォローする。
「じゃあ、食事の一つでも奢ってやれよ。こんどはアタシを財布代わりにしないでな」
「そいつはいいな。この依頼が終わったら美人と食事か」
屈託なく笑う二人。
その笑顔にオイフェは救われたような気がした。
「ええ、奢らさせていただきますわ。燦さんと、みなさんと」
三人は迂回しながら進み、シェムハザの本拠へと向かうのであった。

 フォーが二人を静止した。
 精霊がこの先に詰所を見つけたらしいのだ。
 無視してもいいのだろうが、見張り巡回と鉢合わせになっても困る。
 三人はこの詰所を攻略することにした。
 まずフォーが詰所前の見張り兵の注意を惹くことにする。

 「……?」
 「おい、どうした?」
 詰所前にいる見張りが別の見張りに尋ねた。
 茂みの先を指差し、首をかしげる。
 「いや……、何か動いたと思って」
 「獣かなんかだろ?」
 「一応確認してくるよ」
 そういって見張りは茂みへとむかって行った。
 「たしかこの辺だと思ったんだけどなぁ……」
 辺りを見回す見張り。しかし何も見つかりはしない。
 気のせいかと思い、引き返そうと思った彼の目に、何かが写った。
 無学な彼にはそれが風の精霊だということは分からなかった。
 そんな彼の足に何かが巻きつけられた。
 それがフック付きワイヤーと理解するより早く、彼は地に倒された。
 「黙れ」
 首筋に冷たい物があたる。
 見れば三人の女性が見張りを見下ろしていた。
「質問に答えて。それ以外の行動をすれば殺す」
 殺意に満ちた目。見張りはなすすべもなく頷いた。
「あの詰所に君らのような奴はいる?」
 頷く。
「この先、詰所はまだある?」
 頷く。
「中に使用人とか、護衛についてない人はいる?」
 頷く。
「その中に奴隷とか、女の人とかいる?」
 頷く。
「ありがと」
 殴られ、見張りは気絶した。
 これで詰所前の見張りは一人。
 中に一般人がいるのなら、詰所ごと焼くのは駄目だ。
 ここは二手に分かれて乗り込もうと、三人は相談し動いた。

「おせえなアイツ……」
 詰所前の、もう一人が呟く。
 ひょっとして糞でもしてんのかと気楽に考えてると、茂みが揺れた。
 おせえぞお前、と悪態をつこうとした口が止まる。
 見張りの前に見目麗しき女性が突っ込んできたからだ。
 あんぐりと口をあげる見張りの首根っこを、オイフェが掴む。
 そのまま身体ごと扉にむかって放り投げた。
 木製の扉はけたたましい音を立てて壊れ、その役目を終えた。
 その先に、腰に武器を帯びたごろつきたちが見える。
 突然の襲撃にたいし、彼らは何の準備も出来ていない。
 ひい、ふう、みぃ――。
「全部で五人、全員男!」
 臨戦態勢が整うより速くオイフェの詠唱が終わり、彼らを炎の矢が襲った。
 彼らは武器を抜く暇もなく断末魔のい叫びをあげ倒れていく。
「雇い主は選ぶべきでしたわ」
 死体を冷ややかに見おろし、オイフェは中へと踏み込んでいく。
 奥が騒がしい。
 穏便にとはいかないようだ。

 裏口から入ったフォーと燦は使用人たちと会話をしていた。
 どうやら彼らは金で雇われていたようだった。
 主人の行状は知ってはいたが、なにぶん孤島の出来事。
 船も手配できない彼らは黙って従うよりなかったのだった。
 そして、ごろつきどものはけ口に奴隷も幾人か。
 身体のところどころにある傷痕が、仕打ちを物語っていた。
「狂気の島だな。早く帰りたいぜ」
「まったくだ」
 うんざりした表情で、彼女たちは質問を続ける。
「シェムハザどこにいるかだけ喋ってくれ」
「主人は……シェ、シェムハザはいつも邸宅にいます」
 ふう、とため息をつく燦。
 そんな燦にどこに潜んでいたのか、物陰からごろつきが奇襲してきた。
 フォーが止めようとするが、敵の動きが早い。
 ワイヤーが逸れ、壁に跳ね返される。
 燦が斬られた、と思った。
 フォーの目に見えたのは崩れ落ちるごろつき。
 首筋から血を吹き出し、倒れていく。
  裏口から入ったフォーと燦は使用人たちと会話をしていた。
 どうやら彼らは金で雇われていたようだった。
 主人の行状は知ってはいたが、なにぶん孤島の出来事。
 船も手配できない彼らは黙って従うよりなかったのだった。
 そして、ごろつきどものはけ口に奴隷も幾人か。
 身体のところどころにある傷痕が、仕打ちを物語っていた。
「狂気の島だな。早く帰りたいぜ」
「まったくだ」
 うんざりした表情で、彼女たちは質問を続ける。
「シェムハザどこにいるかだけ喋ってくれ」
「主人は……シェ、シェムハザはいつも邸宅にいます」
 ふう、とため息をつく燦。
 そんな燦にどこに潜んでいたのか、物陰からごろつきが奇襲してきた。
 フォーが止めようとするが、敵の動きが早い。
 ワイヤーが逸れ、壁に跳ね返される。
 燦が斬られた、と思った。
 フォーの目に見えたのは崩れ落ちるごろつき。
 首筋から血を吹き出し、倒れていく。
 燦の手にはいつのまにか短刀が握られていた。
「今、虫の居所が悪いんでね」
 横をみると、使用人が震えている。
 無理もない、目の前で殺人を見せられたのだ。
「アタシが落ち着かせるよ。他に色々聞きたいこともあるしね。とりあえず、奴隷たちを船に案内しようか」
 頼む、と燦はフォーに後のことを任せた。
 みればずかずかと、オイフェもやってくる。
 どうやら表の始末も終わったようだった。
「ちょうど良い、この人たちを治療してくれ」
 フォーに促され、もちろんですわとうなずくオイフェ。
 三人は詰所での出来事を終えると、更に先を急ぐのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

エウトティア・ナトゥア
他の猟兵と歩調を合わせて、姿を消しながら歩哨や飛び道具持ちを優先して排除します。

シェムハザの棲家はこの道の先かの、皆先に行った様じゃしわしも進むかのう。
(狼の首を撫でつつ)マニトゥ、一駆け頼んでよいか?

さて、今回は裏方に回るのじゃ。
味方と歩調を合わせ、姿を消し足音を殺しながら、喉元への噛み付き攻撃や騎射でのヘッドショットで歩哨や射手を刈り取るのとするかのう。

死体は味方が倒した分も含めて、荷物として透明化しマニトゥに運んでもらい、物陰に入ったら土の精霊にお願いして埋葬し適宜透明化を解除しながら進むのじゃ。

ならず者とは言え野ざらしは不憫じゃからのう。


バルディート・ラーガ
相手サンの出方を見つつ、保護しなきゃならねエ人は保護しやすが……いくらかはあの世に送っちまっても問題ナシ、ってな感じでしょうか。折角なンでさっき買った毒瓶を早速開封しちまいやすかねエ。「毒使い」「マヒ攻撃」で敵サンを無力化しながら進みやしょう。

こンだけ人を雇い入れてる邸宅ってンなら入り口の警備も厳重ですかねエ。
UC【四つ影の蛇使い】で両手の炎を蛇に変えて警戒しやす。皆サンの方針に合わせつつ、表から突っ込むようなら「吹き飛ばし」で扉なり遮蔽物なりブッ飛ばしつつ敵サンを食い散らかし。穏便に行くならUCを応用して「クライミング」「ロープワーク」で外壁から登攀、窓なり煙突なりの侵入口を探しやしょ。



 疾風がシェムハザの邸宅へと続く道を駆け抜けていった。
 その疾風は、辻辻にいる見張りに近づき、音もなく倒していく。
 どさり。
 また一人のごろつきが倒れた。
 すると風は止み、巨狼に跨ったエウトティア・ナトゥアと、一緒に跨っているバルディート・ラーガの姿になる。
「へへ、見えなくなるというのは、実にいいでやんすね」
 辺りを警戒しながら、バルディートは呟いた。
 エウトティアの風精霊のベールは巨狼とともに姿を消す秘儀。
 しかし常に消えていられるわけはなく、こうやって休み休みに進まなければならない。
 エウトティアは土の精霊を呼び出し、先ほど倒したごろつきを土葬に伏すと、故郷の風習にしたがって祈りを捧げた。
「人がいいでやんすねぇ、姉御は」
「ならず者とは言え野ざらしは不憫じゃからのう」
 葬が終わると、二人はまた巨狼へと跨った。
 狼の首を撫で、エウトティアは相棒に声をかける。
「マニトゥ、一駆け頼んでよいか?」
 狼は吠えずに頷き、疾風のようにかけていく。
 その姿が風に包まれ、エウトティア達は再び姿を消していった。

 巨狼に跨れる人数にも限界がある。
 それならばと、エウトティア達は猟兵たちと別れ、別の道から向かう事にしたのだった。
 他のみんなはどうしているだろうか。
 やられはしないだろうが、せめて遅れないようにしよう。
 そう考え、エウトティア達は山道を駆け上っていった。
 姿を消し狙撃し、時には二人と一頭で襲い、着実にシェムハザの屋敷へと近づいていく。
 邸宅はもうそこまで来ていた。
「どうやら……ふう、シェムハザの……はぁ、屋敷にきたようじゃのう」
 エウトティアの息が荒い。
 無理もない、この島内を駆け上っているなか、ずっと力を使ってきたのだ。
 猟兵としてのプライドがあって言わないだけで、疲労は溜まっているに違いない。
 バルディートはひょいと巨狼から降りると、屋敷の周りを見まわした。
ふうふうと息が荒いエウトティアに、バルディートは声をかける。
「姐さんはここで休んでいてください。あっしが中に入って露払いしてきやす」
「何を……わしも、いくのじゃ……」
「なぁに、いずれ皆さんも来るでやんしょ、ちょっと様子を見てきてヤバかったら引き返してきまさな」
 しゅるしゅるとバルディートの炎の腕が分かれる。
 それは左右に二頭、計四匹の蛇の姿となる。
 それを器用に塀の壁、溝に喰いこませ、バルディートはよじ上っていった。
 その姿を巨狼に身体を預けながら、エウトティアはずっと見上げていたのだった。

「さあて、目当てはどこでやんすかね」
 外壁をよじ登り、適当な窓から室内へと潜入したバルディートは、辺りを警戒しながら毒瓶を取り出す。
 ここから先は自分一人、エウトティアの力は借りれない。
 だからバルディートは闇市場で手に入れた毒瓶の力を借りることにしたのだった。
 正門の方角に当たりをつけながら邸内を進んでいくと人の気配がする。
 そっと、物陰に伺うとごろつき同士が会話をしていた。
 あくびをしながらだらけきった表情。
 警戒のけの字も無い。
 どうやら仲間内で一番乗りは自分のようだ。
「あーあ、俺もディナーに加わりたいなぁ」
「ばーか、俺達があずかれっかよ。メシが出るだけましだろ」
 ごろつきの様子だと、シェムハザは今は食事中のようだ。
 奥方……保護する人物がいるのが厄介だが、動いていないだけマシか。
 様子を伺い、各々が逆方向へと動いたとき、闇の中で蛇の影が動いた。
 ナイフを突き刺し、獲物に毒が回るあいだ口を塞ぎ締め付ける。
 完全に毒が回り、麻痺したところで衣装棚へとぶち込む。
 バルディートは邸内を慎重に進んでいった。

 一階へと下り、正門前へと向かっていたつもりだったが、どうやら違っていたようだった。
 バルディートは地下へと下りてしまっていたのだった。
「ふむ、これはあっしとしたことが。いけやせんねぇ」
 周りは石畳の石レンガ、それに鉄の檻と来ている。
 それに数ある檻のなかには先客がいた。
 骨と皮になった女性。拷問を受けたような男性。
 実験材料にされたのか四肢が変形した何か。
 それらを見てしまったバルディートは、ひゅうと口笛を吹いた。
 ともあれここは行き止まり、引き返そうと階段を上がった時、運悪く見張りの巡回に出会ってしまった。
 「なんだ、テメエ!」
 剣を抜き横薙ぎに払ってくるごろつき。
 それを右手の二つ蛇が受けようとする。
 二手にわかれ、上の蛇がダガーの刃を下に、下の蛇がダガーの刃を上に。
 それはまるで蛇が獲物を咥えこむかのように剣を挟み受け止めた。
 そのまま右腕を引っ張り、その反動で左腕を突き出す。
 ごろつきの首筋に、左右からダガーの牙が突き刺さった。
 瞬時に毒が回り、骸と化すごろつき。
 バルディートはまた、ひゅうと口笛をあげた。
「コイツはすげえ。あの店の名ぁ憶えとけばよござんした」
 ダガーの血を拭い、バルディートは己の仕事をこなそうと、また闇へと化していったのだった。

 正門の扉が重々しく開かれる。
 バルディートは門の前にいたエウトティア達に、執事の真似事で挨拶した。
「さあて、あとは親玉退治といきましょうや」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『墜ちた貴族』

POW   :    愛さえあれば
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【自身を慕い戦ってくれる墜ちた婚約者達を杖】から排出する。失敗すると被害は2倍。
SPD   :    婚約破棄
【一方的な婚約破棄宣言と冤罪】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【召喚した領民達による物理的断罪劇】で攻撃する。
WIZ   :    真実の愛
【真実の愛】に覚醒して【対象を花嫁姿に変えると共に自身は花婿姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は花巻・里香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 中庭にある庭園。
 その奥には小さな教会があった。
 その教会へと続く道の左右には大きな柱。
 赤黒い鎖が巻きついている。
 庭園の中央には、一人の男性と多くの女性が会食をしていた。
 ここまで来た猟兵たちは、それが誰なのか良く知っている。
 オブリビオン、古代貴族シェムハザ。
 シェムハザは、猟兵たちをみると席を立ち、慇懃無礼に拍手した。
 つられて『奥方たち』も不恰好に拍手する。
 端正な顔立ちに下衆な笑みをこびりつかせ、シェムハザは恭しくお辞儀した。
「これはこれは! 僕の庭園に客人とは! 茶の一つでも持て成したいところだが、あいにくと貴族用しか持っていなくてね!」
 ははははは。
 おほほほほほほ。
 シェムハザが嗤う。奥方達も追従するかのように感情無く笑う。
 大げさに両手で天を仰ぐと、古代貴族は頭を抱える。
「君たちがここにくるのはわかっていたよ! 島内は僕の領域だからね! どうだい? 愉しかったかい? 正義の味方ごっこは楽しかったかい?」
 あははははは。
 おほほほほほほほ。
「おどろくことは無いよ、道化を雇うのも貴族の嗜みだからね! 君たちは本当に僕を楽しませてくれた、それだけは礼を言うよ!」
 シェムハザが片手をあげると、そこには一振りの剣があらわれる。
 同時に奥方たちにも短刀が持たらされる。
「でもねでもね? 僕はここで死ぬわけにいかないのさぁ! 僕には夢があるからね! 一大ハーレムを築くという男の、貴族の浪漫がね!」
 あっははははは。
 おほほほほほほほほ。
 シェムハザがパチンと指を鳴らすと卓が消え、シェムハザと奥方達が猟兵たちにむきなおる。
「だから君らにはここでご退場と願おうか! だが! 出来るかい! 正義の味方に、この僕の妻たちを攻撃することがさぁ!」
 ははははは!
 あははははは!
 あっははははは!

オブリビオン、古代貴族シェムハザが『奥方たち』と一緒に猟兵へと襲いかかってきた。
エウトティア・ナトゥア
可能なら味方と連携

強い雄が番う事に異存はないがのう。群れの長は誇りを持って群れを守るものじゃ
お主は長の器ではないよ

「鼓舞」使用
直接あの痴れ者に報いをくれてやりたい所じゃが、『奥方たち』が居ると皆戦いづらそうじゃのう
狼を奥方一人に対して10頭程召喚して抑えるとするかの
狼達を死なない程度に奥方の四肢に喰らい付かせて床に縫い付けるのじゃ
非常時じゃ、後で治療してやるゆえ暫くそうしておれ

「援護射撃」「属性攻撃」「誘導弾」使用
マニトゥと大鷲、お主らはシェムハザを抑えよ
わしは後方から矢に暴風を纏わせて援護射撃で彼奴の体勢を崩すとするかの
無駄じゃよ。この矢から逃げる事は能わぬわ


四王天・燦
嫁には悪いけど蹴り飛ばしたり踏み台にしたりする。
「オイフェが後で癒してくれる!…よな?」
跳んでシェムハザを神鳴で唐竹割り…は隙だらけなので残像をフェイントにし、本体は着地して横薙ぎ。電撃属性マヒ攻撃付き

乱戦の中、符術『力場の発生』で頭上まで跳び、スキットルに入れた酒―ドラゴンブレスを頭に掛けてフォックスファイア(or光源の炎)で着火。
髪と顔を焼いて心に見合う醜さにしてやる。
決まれば手鏡を投げ渡しトラウマを植える

「そおら大好きな炎だぜ」
篝火から取った、火のついた薪を投げて牽制し股間狙いの斬り上げ。
「安心しろ、峰打ちだ」
そして電撃属性解放

倒したら使用人の給料と元嫁達の慰謝料分の金目の物貰って帰ろう


フォー・トラン
アタシは取り巻きの『奥方』をどうにかするよ。

【合成魔法】を使い、触れたら痺れる雷の泡をふわふわと浮かべて敵さんを牽制する。
この大事な場面で魔法を暴走させちゃたまんないから、ロッドを握りしめて制御に専念しなくちゃな。

敵さんがアタシを魔法使いだと判断して、アタシを黙らせようと『奥方』が襲いかかってきたならしめたもの。
シェムハザを守る盾が幾らか薄くなっているうちに、あいつを打ちのめしてやってくれ。

もしアタシを放って置くつもりなら『奥方』に雷の泡を直接ぶつけて痺れさせてやる。


バルディート・ラーガ
ようやく出てきやしたねエ、今回の黒幕サンよう。容赦なくブッ飛ばしてやりやしょう。

奥サン方は…フーム、やっこさんに操られている状態に近いですかねえ?いずれにせよ、眠っといて頂いた方が宜しい。また毒ナイフの「マヒ攻撃」で無力化を狙いやしょう。

ここで領民サン方を巻き込むのはちいとばかし寝覚めが悪い。バクチですが、もし【SPD】選択のお方がいらしたらそれに乗っかって【咎めの一手】を叩き込みやすぜ。あちらさんのUCは「視認している対象」が居なけりゃア形無しですンで……例えば、「迷彩」で近寄って、このマントを被せっちまうとか。
もちろん策が不発でしたらしゃあなし、【四つ影の蛇使い】で戦いやしょ。


オイフェ・アルスター
節穴な老害貴族が何を偉そうにしているのでしょうか
救えぬ命ならば、容赦はしませんわ。
でも、一番手っ取り早いのは頭を叩くことですの。
シェムハザに向けて、【高速詠唱】【全力魔法】で【流星の如く聖なる螺旋光】を撃ち降ろしますの。

奥方達の様子を【救助活動】で判断し、【属性攻撃】で気絶させることができるなら、杖で叩きます。
「貴女達が幸せになるためには、こんな小島では寂しすぎますの」

【地形の利用】をして攻撃は回避つつ、シェムハザに【流星の如く聖なる螺旋光】を打ちこみまくりますの。
貴方は熟れ過ぎて腐った果実。
さようなら。ゴミはゴミ箱へ。



「何を偉そうに」
 心底の不快感に美麗を歪ませ、オイフェ・アルスターが魔法をシェムハザに放とうとした。が、操られた『奥方たち』が壁となってむかってくる。
 やむを得ず中断し、杖を構えて迎え撃とうとする。
「アタシが押さえる! みんなはその隙に彼女たちお願い!」
 四王天・燦が飛び出し、奥方の1人を踏み台にし、奥へと突っ込む。
 そのまま振りかぶったままシェムハザの元へと飛びかかった。
「おやおや、仔猫が来たか!」
 シェムハザが剣を構え突き刺してくる。
 燦はそのまま空中で貫かれたかに見えた。
 だが。
「なにぃ!?」
 空中の燦の姿がぶれる。それは実体ではなく残像。
「バーカ」
 いつのまにか後方側面へと回りこんでいた燦が横薙ぎに、雷光の一撃を放つ。
 シェムハザはそれを避けきることが出来ず、礼服が赤く染まった。
 貴族の口から笑みが消え、憤怒へと変わる。
「この……、売女風情が」
「そいつはどーも!」
 援護するかのようにむかってきた奥方たちのダガーをよけ、燦は距離を取らざるを得なくなる。
「やっぱり彼女たちを何とかしないと駄目だな……オイフェが後で癒してくれる!…よな?」
 シェムハザ1人に的を絞りたいが、この状況では難しい。
 燦はつかず離れずでシェムハザと戦うのであった。

「『奥方たち』が居ると戦いづらそうじゃのう」
「奥サン方は…フーム、やっこさんに操られている状態に近いですかねえ?」
「じゃあ、アタシが取り巻きの『奥方』をどうにかするよ」
 フォー・トランがロッドを握りしめ、エウトティア・ナトゥアとバルディート・ラーガに頼む。
「でも、これは制御が難しいんだ。その間無防備になるから……守ってくれねえかな」
 フォーの問いかけにエウトティアとバルディートが笑みで応える。
「なんの、同じ猟兵じゃぞ?」
「あっしは貴族と違いまさぁ、レディくらい守れやすぜ」
 天狼の巫女の名の下に来たれ! とエウトティアが叫ぶと、たちまちその場に狼の群れが召喚された。狼たちは壁となり、奥方の壁へと奔っていく。
 続けてバルディートが左右の腕にダガーを構え、その狼の群れに混ざりながら、ダガーに麻痺毒を滴り落とす。
「ありがてぇ」
 フォーは仲間たちの姿に信頼を置き、両目を閉じて集中し始めたのだった。

 狼たちが奥方たちへ殺到する。
 奥方たちは武器を持ってはいるが、動きは武器を扱うそれではない。
 おそらく、シェムハザの捨て駒とされているのだろう。
 簡単に地にへと倒されていく。
「ごめんなすって」
 バルディートがそんな奥方たちにダガーを刺していく。
 傷が残るが止むを得まい。殺すよりはマシだ。
「私があとで治してさしあげますわ!」
 オイフェも杖を持って奥方たちを気絶させていく。
 集中するフォーを庇うかのようにたちはだかり、強引に抜けてきた奥方を地へと伏せていく。
「貴女達が幸せになるためには、こんな小島では寂しすぎますの」
 これが終わったら船で一緒に脱出しましょう。
 一抹の謝罪を思いながら、オイフェはそう願うのだった。

 シェムハザは目の前の燦と対峙しながら、魔力の発生を感知していた。
 それは自分に放たれる物ではなく、広範囲にわたるもの。
 発生源を感じ取ると、それは遠くフォーから発せられていた。
「まさか大魔法を使える下層民がいるとはね!」
 この目の前にいる女狐もうっとうしいが、何かを発動させられるのもマズイ。
 幸い奴は動け無さそうだ、集中を乱してしまおう。
「断罪の剣!」
 シェムハザが叫ぶと、周りに回転する剣が複数現れた。
「彼の者を処罰へ!」
 そしてその剣はフォーの元へと向かう。
 燦がそれに気づき、1本を叩き落とした。
 だが残りの剣は落とせず、宙を切り裂きフォーへとむかって行く。

 ガキィンッ! ザシュッ!

 フォーに向けられた剣撃に、巨狼が飛び跳ね立ちふさがった。
 己を盾とし、体躯に剣を縫いとめる。そして抜けようとした剣を咥える。
 その巨狼と対になるように大鷲が爪と大羽根で剣をはたき落とす。
 フォーにむけられた悪意の切っ先は、全て止められたのだ。
「なんだとぉ!」
 シェムハザは驚愕した。たかが獣風情にこのような芸当ができるなどと。
 そしてその焦りが、彼に向けられるもうひとつの脅威を見過ごすことになった。
「……お主は長の器ではないよ」
 エウトティアの疾風の矢が、逆にシェムハザの身体へと突き刺さったのだった。

「ありがてぇ……ありがてぇぜ皆!」
 ついにフォーが両目を開いた。
 ロッドを両手で高々とあげる。
 すると空がにわかに掻き曇り、ごろごろと音を立てる。
 雲は渦を巻き、庭園の上をぐるぐるとうねっていく。
 そして、大粒の雨がこの地に降りそそいだ。
 あまりの雨量に敵味方も視界が塞がれる。
 やがて雨が方向性を増した。
 強力な風が滝のような雨を横薙ぎへと変化させる。
 竜巻だ。
 庭園に竜巻が発生し、暴風雨となる。
 猟兵たちも吹き飛ばされないように、近くにある物にしがみつく。
 竜巻は雨を受け止め、撹拌していく。
 その風の皿にむかって、雷雲から稲妻が次々と降り注いでいく。

 ごうっ

 風が止んだ。
 空に浮かんでいた雷の泡は、正確無比に猟兵以外をターゲットにして降り注いだのだった。
 全ての落下物が地に落ちた時、立っている者たちは猟兵とシェムハザのみとなっていた。

「む、ぐ、ぐぅぅぅっ!」
 シェムハザの端正な顔が苦悶に歪む。
 雷の泡は身体に痺れをもたらしていた。
 深刻ではないが、それでも少しの間は動けない。
「良い男が台無しだねぇ、乾かしてやるよ」
 その声に上を見上げると、燦が自分の頭上高く跳躍していた。
 そしてその手からこぼれた何かが、己の身体に降り注ぐ。
 むっとする臭気。アルコール臭。
「……酒?」
「あんたの好みにあうように、高級品さ」
 燦が狐火を灯し、シェムハザへと叩きつけた。
 その炎は髪と顔を焼き、悲鳴を上げさせる。
 手鏡を投げつけ、挑発する。
「良い男になっただろ?」

 シェムハザは水の魔法ですかさず炎を消した。
 燦を憎しみの目で見つめる。
 そして、その顔は笑みへと変わった。
「あは、あははは、あははははは!」
 激昂するかと思った燦は面食らった。
 そして、そんな彼女にシェムハザは囁く。
「今までにないタイプだ……素晴らしい、やっと真実の愛に目覚めたよ!」
 そして跪き、片手を差し伸べる。
「結婚しよう!」
「……は?」
 呆けてしまう燦、その隙をつきシェムハザが魔法を発動させる。
 一瞬の光のあと、燦の服は純白のウェディングドレスへと変えられてしまった。
 シェムハザも合わせて純白のスーツと変貌を遂げている。
 あまりに異様な光景。
 さしもの燦もここが戦いの地であることを忘れてしまった。
「だが、そのおてんばはいけないなぁ……婚約、破棄だ!」
 しゃがんだ姿勢からフェンシングのように突く。
 してやった。
 これは発動条件。決まれば増援を見込める、とっておきの技。

 一瞬、シェムハザの視界を何かが覆った。
 構わずに突く。
 手ごたえあり、それは確かに何かを貫いた。
 勝ち誇り、何かを視界から取り去るシェムハザ。
「……なんだと?」
 突き刺していたのは、花嫁姿の燦ではなく、黒く燃え盛る蛇であった。
「ヒヒヒ、いけませんねえ」
 いつのまにか、そばにバルディートが立っていた。
 彼は豪雨のさなか、その隙に近くまで潜伏していたのだった。
 放り捨てられた何か、マントを着直すと勝ち誇った笑みを浮かべる。
 きさま、と言おうとシェムハザの腕に蛇が絡みつき、牙を突き立てる。
 それは傷口を焼き、冷たい何かが全身を駆け巡り、激痛を走らせる。
「があああああ!」
「まさか、あっしらがオブリビオンに対して無策とでも? 旦那、結構有名人なんですぜ」
 バルディートはこの島に来る前に、シェムハザについて調べていたのだった。
 古代貴族シェムハザ。魔導に長け召喚を扱う。
 そしてその中には、妻を生贄に召喚する魔法もあるということを。
 もちろん、バルディートはそれだけを警戒していたわけではない。
 燦を援護するつもりだったが、異様な光景にもしやと思い、とっさにマントを投げつけたのであった。
「妻でなければその召喚術は発動不可。すいやせんねぇ、あっしは下層民でして、知恵をつけて頑張らねえと、御貴族様に勝てないでやんすよ」
 とっておきの技をシェムハザは隠していたが、バルディートもまた隠していた。
 『咎めの一手』
 対象の技を封じる、バルディートのとっておきである。
 蛇の毒牙が、古代貴族の召喚を見事封じたのであった。

「くっそぉぉぉぉ!」
 片腕を喰われたまま、シェムハザがバルディートに襲い掛かる。
 だが近づいていたのは彼だけではなかった。
 光の渦を浴びて、シェムハザが吹っ飛ばされる。
 障害の無くなったオイフェが螺旋光を放ったのだ。
「貴様ぁ!」
 残る片手で魔法弾を飛ばす。
 それをオイフェは木柱を利用して防ぎ、螺旋光を続けて放つ。
 二つの閃光は、シェムハザの両膝を撃ち抜いた。
 再び放たれる螺旋光。
 また放たれる螺旋光。
「貴方は熟れ過ぎて腐った果実。さようなら。ゴミはゴミ箱へ」
 シェムハザは次々襲い掛かる贖罪の光を避けることなく、水きりの石のように吹っ飛ばされ、木柱に叩きつけられた。

 はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ。
 シェムハザが後ずさる。
 しかし、木の柱が背中を受け止め、逃げる術を塞いだ。
 両膝も撃ち抜かれ、手勢は無く、満身創痍だ。
 貴族の顔に、他人を見下す笑みではなく、懇願する笑みが現れた。
「なぁ……助けてくれよ、もう悪いことはしない、誓う、誓うよ」
「あなた、その『誓い』を守ったことがありまして? 救えませんわ」
 冷たく言い放つオイフェの言葉に、古代貴族はうろたえる。
 松明をもった燦がうなずいた。
「そおら大好きな炎だぜ」
 シェムハザにむかって投げつけ、更に股間へ刀の一撃を加える。
「安心しろ、峰打ちだ」
 急所をやられ苦悶する貴族にせめてもの情けと、燦は止めを刺したのであった。

 木柱が赤々と燃える。
 その炎の中で、シェムハザだったものがゆっくりと崩れ去っていく。
 終わった。
 猟兵たちはオブリビオンを倒したのだった。
 しばらく感慨にふけっていると、その木柱が動いたような気がした。
 やがて傾き、運悪く邸宅の方へと倒れ込む。
 火の粉がちろちろと侵入し、それは火の子となって出火した。
「もしかして、アタシの暴風雨のせいか?」
「いや元々老朽化していたのかもしれんのう」
「あの節穴老害が、きっと使い過ぎていたんですの」
 火はあれよあれよと大きくなり、ついには邸宅を呑みこまんと火柱をあげ始めた。
「やべえ! 逃げるよ!」
「うむ、わしの狼にまたがれ! 操られた犠牲者も一緒に乗せよ!」
「ヒヒヒ、何ともしまらねえでやんすねぇ」
 協力してその場にいる全員を救出し、猟兵たちは脱出する。
 その後ろで、惨劇の館はガラガラと崩れ落ち、燃え広がっていた。

 船の上からでも邸宅、島が赤々と燃えているのがわかる。
 猟兵たちは、海上でその光景を眺めていた。
「ちょいとばかし、ブッ飛ばしすぎたでやんすかねぇ」
「なに言ってんだよ、アタシの一張羅がだいなしだよ」
 純白のウェディングドレス姿の燦が、当然の報いとばかりに頷く。
「でも似合ってますわよ」
「うむ。わしももう少し大人になったら着てみたいものよ」
 お世辞はいいよ、と燦がドレスのスカートを持ち上げると、どさりどさりと袋が落ちる。
 みんなが見つめる中ひろげると、それは金貨の束であった。
「それ、アタシの偽造魔法のあまり?」
「いいや、本物。手数料替わりに頂いてきた」
 にんまりと笑う燦。
「あのどさくさにまぎれて、大したもんじゃのう」
「ヒヒ、まったくでやんすねぇ」
 抜け目のない燦に仲間たちが賞賛を送る。
 これから陸に戻れば、被害者たちのケアに忙しくなるだろう。
 だが、それは着いてから考えればいい。
 猟兵たちは船旅の間、今回の依頼を肴に親交を深めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月11日


挿絵イラスト