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大怪盗はここにいる!

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●始まりの予告状
 爛漫咲いた桜の花弁は今日もサクラミラージュの大地へ降り積もる。ひらひらと見る者の視界を埋め尽くすピンク色、その中から突如として現れる一匹の巨大イカ。否、否、あれこそは大怪盗の用意した絡繰り仕掛けの大気球。ぶしゅう、ぶしゅうと黒煙を吐き出して巨大なイカが帝都の空に現れる。あまりの巨大さに干されていた洗濯物は引っかかり、屋根で寝ていた猫は驚いて滑り落ち、桜の木は揺さぶられて無残にも花は散らされる。
 黒煙の晴れた後に残されたのは巨大なイカ気球によって砕けた壁のガレキと散々な有様になった人びとのざわめきが散らばる道路。ぽかんと気球を見送った彼らの頭上から、桜の花弁の代わりにひらひらと一枚のカードが飛び込んでくる。
 それこそは平穏な帝都を騒がす大怪人、狙われた物は数知れず、被害の大きさは計り知れない大怪盗からの予告状!
『今宵、あなたの最も大切にしているものをいただきます。……大怪盗×××より』
 インクが滲んでいて名前までは読み取れなかったが、確かにそう書かれている。予告状一枚でこの大騒ぎを引き起こした怪盗発生の報告を受け、天下を騒がす一大事であると重く受け止めた帝都桜學府は影朧事件のエキスパートたちを呼び寄せることを決めたのだった。
 では、予告状一枚にもこの大騒ぎを引き起こした大怪盗とは何者なのか。名称不明の存在ながら、いったい誰が呼びはじめたか『大怪盗D』と呼ばれてる怪盗は(本人がそう名乗ったことはないが)都の治安を守る者達の間では『D案件』の主として大いに知られていた。とにかく派手な犯行と被害額、怪盗に狙われて無事だったものはほぼ存在しないと言ってもいいだろう。デストロイのDだとか、デンジャーのDだとか、いやいや大迷惑のDだとか。いろいろ尾ヒレもついているが要は取扱い注意案件というわけだ。
 相手は過去に幾度も帝都を騒がせた大怪盗。何が起きるか、何が盗まれるか、誰にとっても未知の事件。だが彼奴が関わっている以上、帝都未曾有の緊急事態が予想されるので各自の全力をもって対応すべし。
 集められた古今東西の探偵たちはその言葉の重々しさに背筋を正し、帝都の闇に潜む大怪盗の追跡を始めるのだった……!

●事件です、猟兵さん!
 帝都桜學府から貰った台本を手に、真秀・八尋(Empty Shell・f18930)がこれまでの経緯を語る。
「でー、見事名探偵な探偵たちは怪盗を捕まえたんだって。すっげーよー、メイタンテー! 俺も無くしちゃった家のカギとか見つけてくんないかなー?」
「それだけ?ってそれだけだっけ……あっそうだわ、また忘れてた!」
 やっちゃったねー、と笑いながら八尋は台本をクルクルと丸めて筒状にしてまた戻して、読み上げる為に広げられた台本の表紙には、「魂鎮メ歌劇ノ儀執リ行イニツイテ」と仰々しい書体で書かれていた。
 「魂鎮メ歌劇ノ儀」。それは帝都桜學府が影朧のために行う儀式魔術だ。影朧たちの過去の悲劇になぞらえた歌劇を演じながら戦うことで、より彼らの心を鎮めて癒すことが出来るのだという。
 照明などの舞台演出は帝都桜學府がすべて担当してくれるので、猟兵たちに求められているのはその歌劇における「キャスト」としての役割だ。影朧の過去に関係する「誰か」を演じ、彼らが影朧になってしまった原因を突き止める。戦闘行為もその一環、この歌劇において演技力はそこまで重要ではないし、与えられた役を演じず自分の心から出た言葉を用いても構わない。つまり演技が苦手な猟兵でも、今回の場合は自分の思う「探偵らしさ」を大怪盗に向かってぶつけられれば十分に儀式の効果は発揮される。
 儀式の解説を大まかに終えたところで、今回の演目についての話を進めよう。
 今回猟兵たちに演じてもらう歌劇のあらすじはかつて大怪盗と呼ばれた彼もしくは彼女がどんな大怪盗であったのか、過去一番の大騒動となった「イカ気球帝都大破壊未遂事件」をなぞりながら物理的にも追いかけるというものだ。どうやらこの大怪盗、よっぽどのお騒がせな存在であったにも関わらず何故かあまり公的な記録が残っていない。帝都に甚大な被害を与えかけた存在であるのは確かなようだが、けして猟奇的で残虐な方向で騒がれた悪党でも無かったようだ。影朧になった今は探偵との対決に非常に乗り気で、ばらまかれる予告状は探偵を誘い出すためのものでもあるらしい。
 第一幕は大怪盗の登場とそれを追いかける探偵たちの追走編。第二幕、大怪盗を追い詰める探偵たちの追及編。フィナーレの第三幕は大怪盗の未練を解く解答編。以上の三編に台本は分けられている。この劇における猟兵たちの役どころは「大怪盗を追う実力者の探偵」といったところだろう。
 大怪盗はイカ型蒸気機関兵を配下とし、その煙に紛れて獲物を狙う。なのでまずは周囲に被害を及ぼす配下を一掃してからでないと大怪盗本体へは近づけない。いかにしてイカ蒸気機関兵を排除しつつ、探偵らしさのアピールを成功させるかが重要だ。
 盛り上がる場面音楽、背景美術、舞台裏のことは全て帝都桜學府の技術班が請け負ってくれているので演出面での要望があれば頼んでみるのもいいだろう。ちょっとやそっとの無理に思えるお願いも総力をあげて可能な限り実現してくれる。
「大事なのは大怪盗、オマエを捕まえてやるーって気合い! アッチアチに燃えちゃう探偵魂! 未来の大大大名探偵センセー、ヨ、ロ、シ、ク、ねっ!」
 愉快そうに八尋がイヒヒと笑い、丸めた台本をメガホンみたくつきつける。
 探偵と大怪盗、運命の追いかけっこのはじまり、始まり!


本居凪
 祝・探偵ジョブ追加のお祝いです。(やりたくて抱えてたネタと丁度良く合うジョブが増えたので)お祝いです。
 OPにある通り、「探偵らしさ」を純粋に前面へ押し出してください。探偵らしい探偵も探偵らしくない探偵もどんな探偵がいてもいいのが探偵業界なので、今回だけは探偵ですってな感じに探偵ジョブでない方の参加も大歓迎してます。
 基本的には鬼ごっこです。影朧の操るイカ型配下をなんとかして影朧本人と対決してください。第一幕以外はボスの都合上、シリアスがちょっとサボリがちです。あなたの抱えるシリアスな雰囲気も大きく減少する可能性が高いので不安ある場合は幕間の描写など参考にしてください。
 執筆は最初にいただいたプレイングから二日経過の夜あたりからの予定です。早め速めを心掛けます。具体的には残り人数成功一人とかであればさくっとサポートで〆ます。
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第1章 集団戦 『黒煙蒸気機関兵ハイカラクリ』

POW   :    いかナケレバ
非戦闘行為に没頭している間、自身の【せわしなく動く吸盤付きの10本足】が【何度も再生し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD   :    ケいかクゾッコウ
非戦闘行為に没頭している間、自身の【排気筒】が【大量の黒煙を吐き出し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ   :    ニンムサいかイ
非戦闘行為に没頭している間、自身の【姿】が【保護色能力で見えなくなり】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

バルタン・ノーヴェ(サポート)
「バトルの時間デース!」
雇われメイド、バルタン! 参上デース!
アドリブ連携歓迎デース!

普段の口調:片言口調で(ワタシ、アナタ、デス、マス、デスネ、デショーカ? デース!)
得意な技能:【一斉発射・焼却・武器受け・残像・カウンター・受け流し】デスネ!

遠距離ならば、銃火器類の一斉発射や各種UCによる攻撃が有効デスネー!
近距離戦闘なら、ファルシオンで白兵戦を挑みマース!
敵の数が多いor護衛対象がいるならば、バルタンズをお勧めしマース! 数の有利は得られるデショー!

状況に応じて行動して、他の猟兵のサポートに回っても大丈夫デス!
迎撃、防衛、襲撃、撤退戦、どのような戦場でも参戦してOKデース!

頑張りマース!



●第一幕~探偵、怪盗を追跡す
 開幕を告げるラッパの音は高らかに。勇ましく響く太鼓の拍に背中を押されて魂鎮めの儀は始まった。
 帝都の街中、真昼の路上に現れた巨大なイカ、もとい彼ら怪盗の配下である蒸気機関兵軍団は無関係の民衆に向かって真っ黒な煙を吐き出しては彼らの視界と呼吸を奪っていた。彼らの煙で咳き込む人々の足元をぐねぐねうにうにとしたイカ型蒸気機関兵の足が蛇の如くに絡んでいくものだから、足を取られて転倒するわ滑っていくわで危険も過ぎる。
 その癖一般人の懐やら店先から何かを盗っていくような動きも無い、強いて言うなら真っ黒な排気煙を浴びせた上でこれまた真っ黒になってしまった封筒を顔にバシンだのベシンだの、子どものメンコ遊びみたくに叩きつけていくだけで、まるで意図が掴めない。
 最もそんな風に扱われていては、残された怪盗への手掛りといえるその封筒もイカ型蒸気機関兵の剛力で握りしめられていたのもあって、最早ただただくっしゃくしゃに歪められた紙でしかなく、当然一文字も読めなくなっている始末。

「ああ本当に、この怪盗は一体何が目的なのだろう?」

 謎の行動を繰り返す蒸気機関兵たちを見ていれば、追いかける猟兵たちの心にはそんな疑念も浮かんでくる。とはいえ配下の先頭に立っているはずの怪盗を追うにしても、黒煙立ち込めたこの状況では前にも後ろにも進むのは難しいと足踏みをする猟兵たち。気配を探ればこの混乱の大元たる大怪盗の高笑いがどこからか聞こえてくるが視界不良の煙に巻かれている現場では、配下に囲まれているだろうその姿を視認するるのも一苦労。イカ型の蒸気機関兵も姿を隠す機能でもあるのか、巨大なイカの姿が見当たらず、被害者の声ばかりが聞こえてくる。
 しかしこのままお互いの顔も見えないほどの煙に加えて周囲への被害が積もり積もっていくのを見過ごしている猟兵ではない。
 バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)もその一人。敵とこちらを遮断する煙をじっと見つめる彼女の電脳回路が最適解を弾きだす。兵士の思考は冷静かつ的確に、不可視の相手の座標を特定した。
 「では参りマス!」とバルタンは黒煙の向こうを示し、その身に帯びた銃火器の一斉射によってその煙ごと蒸気機関兵を吹き飛ばす。
 弾幕を浴びせられたイカ型蒸気機関兵は彼女の予想通りに憤り、続々と保護色迷彩を解除して敵を排除しようとする。戦闘中でなければいかなる攻撃も遮断する彼らの装甲も、戦いが始まればただの硬いだけの皮。バルタンの不意打ちに近い一斉射撃は傷こそ与えられなかったが、隠れ潜んでいた蒸気機関兵に対する威嚇としては申し分のない一撃だった。彼らは自分たちの邪魔をするバルタンに対して一斉にその十本足を振り上げる。鉄も曲げる一撃が、彼女ひとりに降り注ぐ。

「ノー! パワー任せの手当たり次第じゃ、当たりマセーン!」
「ミニバルタンズ、ファイアデース! イカ焼きにしてやりマスヨ!」「バル、バルー!」

 文字通りの多脚戦車級、鋼の足は路上のレンガも砕く剛力。だがバルタンも自身とよく似た小型ロボット、バルタンズを展開して迎え撃つ。うねり猛る巨大蒸気機関イカ対ミニバルタンズの攻防が繰り広げられるも、再生機能を持つイカの足はなかなか削りきれず、イカ本体への攻撃も阻まれてしまう。

「モー……継戦能力、高すぎデス! 」

 目を離せばすぐに煙に隠れ、足を再生されてしまう。戦闘に持ち込めば回復も隠れも出来ないが、なにせ単純に数が多い。ミニバルタンズの協力で煙を飛ばして視界はクリアになってはいるが、バラバラに飛んでくる十本の足が二つ、三つと重なってはバルタンの手にもやや余る。ファルシオン風サムライソードでイカの足をぶった斬り、勢いはそのままに次のイカへと向かっていったバルタンは剣に己の力を込める。強くつよく握りしめ、自分の全ての力を手にした剣へ収束させる。

「まとめて終わりにしてあげマース! 六式武装展開、光の番!」

 目を開けていられない程に激しい光、全身の力が抜けていく感覚。バルタンの放った強大な【光芒一閃】がイカ型蒸気機関兵たちの鋼の体を吹き飛ばし、光の斬撃が生み出す衝撃は厚く垂れ込めた黒煙を切り裂いていく。
 ガシャガシャと崩れていく蒸気機関兵の巨体に潰されないよう、技の反動で動かない体をミニバルタンズに支えられて退避するバルタンは、遠くにこちらの様子を伺う人影を見る。声が届くかは分からなかった。だがバルタンは黒煙に見えなくなっていくその影に向かって、勇気に満ちた声でもって告げる。

「今に追いつきマスからネ、精々首を長くして待つといいデース!」

 怪盗と探偵(猟兵たち)、相容れぬ両者の戦いが如何なる結末へ導かれるのか。その謎の答えはまだ誰にも分からない。

成功 🔵​🔵​🔴​

天星・雲雀
大怪盗有るところに名探偵あり!演出を外注するなど言語道断!名探偵なら己の人脈(?)でなんとかするものです。
ホームズだってワトソン医師に頼ってましたし。良い探偵には良い身内が自然と揃うものです。

というわけで、オトモ!じゃんじゃん盛り上げちゃってください!楽器演奏と綺羅びやかなライトアップで演出です!荘厳かつシリアスに、この先あるワクワク感を忘れずに!

UC使いまくって、帝都全土を舞台に、大怪盗に切迫しうる名探偵の開幕です!

待っていなさい怪盗さん!自分が帝都にいる限りどこまでだって追いかけますよ!

ひとまず予告状の内容が気になりますね、第六感と義眼の赤外線サーモグラフィー機能でおおよその動きを予測して、[真球鍋]を予測地点にぽいっと投げて空中で分裂。大量分身された[真球鍋]をイカさんに降り注がせます。しっかり熱を通しましょう。蒸気機関兵だって、食べられる所くらいありますよ。だってイカさんなんですから!

予告状にはなんて書いてありますかね?ホカホカに成った予告状から怪盗さんの狙いを探りましょう。



●狐は歌い、烏賊は茹でられ
 イカの黒煙が空覆い、人びとは恐れ慌てふためいて見えない煙の中を手探るばかり。五里霧中の状況において一人の妖狐、天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)が目を開く。右は金色に左は赤色に、違いの双眸にはこの暗闇を見通す星が輝いている。
 出でよ、と雲雀が声を発した、その隣へポンポンと狐火のオトモたちがそれぞれの手に楽器を持って召喚される。片手どころか両手でも足りない、立派なオーケストラにも匹敵する数の、『オトモおーけすとら楽団』を率いて雲雀はふふふと胸を張る。黒い狐耳とふさふさの尾の先っぽにまでやる気が満ちに満ち溢れていた。

「大怪盗有るところに名探偵あり!」

 探偵らしく指突き付けポーズを決めた名探偵・雲雀が曰く。

「演出を外注するなど言語道断! 名探偵なら己の人脈(?)でなんとかするものです」

 彼の名探偵も己の相棒である医師に頼っていたと、彼女自慢の楽団をバックに語る雲雀。「準備が出来次第、一曲頼む」と声を掛けられたオトモたちによるチューニングがはじまり、ぷあー、ぽーん、と聞こえてくる音も実に多彩だ。

「良い探偵には良い身内が自然と揃うもの、というわけで、オトモ! じゃんじゃん盛り上げちゃってください!」

 心得たとオトモは主の意を組んで、雲雀の周囲をくるくる回り、赤と青、二色の狐火が照明係として煌びやかな光を提供する。時として少女の顔に闇を落とし、あるいは明るく照らす狐火。荘厳な曲調、けれどやや駆け足に走る楽器の一音一音が重なって生み出された、冒険の予感を感じさせる演奏が聞こえてくる。

「待っていなさい怪盗さん! 自分が帝都にいる限りどこまでだって追いかけますよ!」

 雲雀の眼がきらりと光る。遥か遠くの怪盗に向けての宣戦布告だ。真っ黒の排煙で曇った空も見通せそうな程に強い意思が込められている。
 その純粋な輝きを見つけたのか、オトモ楽団の響かせる音に釣られたのか。雲雀のいる場所へと蒸気機関兵のイカたちがぼうぼうと黒煙を吐きながら騒々しく触椀をうねらせ近寄ってくる。

「来ましたね、怪盗の手下! その予告状、いただきましょうか」

 ぐねぐねと伸び縮みするイカの腕にまだ予告状があるのを確認して、雲雀は転がるように横へ回避する。雲雀が予測した通り、彼女が最前までいた場所へ突進する鋼の巨体が雪崩れ込み、何本もの腕が狐火のライトに照らされ浮かんだ雲雀の影を縫いとめるようと地面へ突き立てられた。

「次は……こちらっ! そして、こちらです!」

 最小限の動きで蒸気機関兵を翻弄する雲雀。排気筒から噴き出す高熱の煙が彼女の頭ぎりぎりをかすめ、噛み付こうとしたイカは正面から蹴りつけられて仰け反る。蹴った勢いでイカたちとの距離を取った雲雀の、赤い瞳に搭載されたサーモグラフィーが、暗闇の中でも身を寄せ合い団子になった敵の姿を熱源として映し出す。密集度はやや高め、ギリギリこちらの射程圏内。今が仕掛け時と見たオトモ楽団も太鼓を打ち鳴らして戦場のムードを盛り上げる。
 雲雀はえいやと真球鍋を投擲すると空中でぶるっと震えた鍋は一瞬にして分裂し、イカの頭上にごろごろと降り注ぐ。これがただの物理攻撃であるなら、白くつるっと滑らかな鋼の表皮にデコボコとぶつかった後が残るくらいだっただろう。保護色を纏って黒煙の中に逃れれば傷ひとつすら付きはしない。
 だが残念、この鍋というのは調理器具なのだ。そして鋼といえど彼らはイカ。鍋で熱された彼らの腕はだんだんとくるくる巻き上がり、排煙筒はくにゃりと歪んで下を向く。茹でられのぼせたイカたちを「そーぉれっ」とばかりに転がして、黒煙蒸気機関兵ハイカラクリの丸茹で一丁上がり!

「さて、怪盗さんの予告状をご拝見!ですね。果たして何を盗むつもりだったのでしょう?」

 活動停止した蒸気機関兵の吸盤に張りついていた予告状を回収した雲雀。おかしなところはないかと他のイカからも手紙を拾い上げ、ほかほかとぬくもりが残る手紙を慎重に広げた。
 しかし予告状を見比べて雲雀はおや?と首を捻る。

「この予告状、末文の文章だけはインクじゃなくて、炙り出しになっ……!?」

 一見すればごく普通の予告状。だがインクで書かれた文字の更に下へ記された一文は焦げたような色合いで柑橘の匂いをほのかに感じる。雲雀はその一文に目を通し、読んだと同時に予告状を急いで放り投げる。異常の無かった筈の予告状は空中でカッと強い光を放ち……小さな爆発を引き起こした。

『この予告状は開封後、一定時間で消滅します☆ ――追伸、スパイ小説に深く感銘を受けました』

 多くの目に触れてこその予告状になぜそんな機能をつけたのか、思いつきで実行したとしか思えない。これでは何が狙われたのか、開封した第一発見者しか分からない。では予告状は重要ではないのかと雲雀は考えて、彼女の第六感が違うと告げる。ひとまず証拠のひとつとして覚えておこう、そして雲雀は再び怪盗を追いかけはじめる。
 遠く聞こえてくる怪盗の哄笑と配下による破壊音、深まる謎の真相に少しずつだが近づきはじめた探偵。オトモおーけすとら楽団の演奏する楽器の音色が、雲雀を鼓舞するように鳴り響いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

東・よるは
わたくしなら。
よるはたち【旅の者】なら、こうするの。

探偵は謎を追いかけるもの。
なら姉様と一緒に追いかけてあげる。
演出は帝都桜學府にお任せ。同じ所属のよるはが動いていると知ったなら尚更協力は惜しまないでしょうから!

ダッシュで姉様を連れて走る。
宙舞うように戦うの。黒煙はUCで切断よ。よるはたちの視界を開けるように。
衝撃波が残るから、彼らの動きも阻害出来る。遮断させないわ。
…姉様、口紅を塗ってる暇があったらさっさと動く!
姉様のUC発動後、再度よるはも慰めを込めてUCで敵を攻撃。

予告状、追いかけっこ。
小説で影響を受けた結果がそれなのだとしたら…ただ怪盗ごっこがしたいだけなのかもね、あの愉快犯。


江波・景光
わらわは。
【旅の者】は、こうしよう。
探偵とは謎解きを楽しむもの。
わらわは楽しいことが大好きだ。
だからよるはの誘いも喜んで受けようぞ。

よるはに連れられ、共に大怪盗を追いかけよう。
黒煙で視界を遮られようと、晴れるまでは黒煙を闇に喩え、闇に紛れる。
一瞬暇を持て余すので、口紅でも塗っていようか。
これは或ル日と言ってな…
よるはに怒られるかの? まあまあ、旅は道連れとお前さんもよく言うだろう?

黒煙が晴れたならUC発動。
情念の獣が虎となり敵を貪り喰らうであろうよ。
ああ、お前さんたちも大怪盗も、何故このようなことをする?
慰めと浄化の言霊を以て質問しよう。

あの怪盗も楽しさを求めるのなら。
ああ、愉快愉快。



●脅威!黒煙に消える白き鋼を撃破せよ
 帝都を混乱に陥れんと配下を使い予告状をばら撒く大怪盗。巨大なイカの形状をした黒煙蒸気機関兵ハイカラクリが暴れに暴れて、帝都の一般市民に恐怖と混乱をばらまいている。
 ぎいぎい、がたがたと軋むような音がするのは蒸気機関の駆動音。周囲はあの大きなイカの吐いた煙で真っ暗、壁のように立ちはだかった蒸気機関兵が街灯をミニチュアの模型みたいに易々と引っこ抜いてしまったので暗闇のなかで灯される明かりもここには無い。
 いや、明かりはある。遠くより桜學府の照明係が差し向けたスポット・ライトの光が伸びる。黒煙に浮かぶ丸い白光は前方を照らす導きの光。それを辿る東・よるは(風なるよるは・f36266)は怪盗に追いつかんと走る足に力を込める。三日月型の衝撃波が彼女の視界を開き、煙に隠れたハイカラクリの姿を露わにしていく。
 あのハイカラクリの頭に生えた砲塔が吐き出す排煙は周辺を黒く染め、ヤツらの姿を隠すらしい。この黒い煙幕の向こうにいるのが一匹くらいなら、煙もすぐに風に流されて薄れていただろう、だが壁になるように並んでいるハイカラクリは複数体、今も進行形でばすばすと墨を吐くかのように煙は排出され続けている。一斉に吹き飛ばしも出来そうなものだが、ハイカラクリの装甲は並みの攻撃では貫けない。よるはも何度か攻撃を試してみたものの、あのハイカラクリが煙の中で沈黙している間はこちらの攻撃は弾かれてしまうようだ。

「ほら、ほら。顰め面はよくない、よるは。今のわらわ達は探偵だ」
「……姉様は逆にもう少々警戒をしては?」
 よるはと共に怪盗を追いかけ暗煙の中を進む江波・景光(日々綴る変の影・f22564)が、藍色の双眸をよるはに向けて笑っている。周囲の黒煙に溶け込み、黒いマントを纏うようかのように身を隠しては現れる彼女は愉快そうに妹分へと語りかける。

「探偵とは謎を解き楽しむものだ。しかし、あまり必死になって余裕の無くしては折角の謎も楽しめなくなってしまうと思わないか」
 だから余裕を持つのも大事なのだ、と走りながら口紅を取り出し唇を装う鮮やかな手並み、景光の一挙一動は人の目を引きつける術を知っている。
「楽しんでるのは姉様です。よるはは探偵ってね、謎を追いかけるものだと思うわ。追いかけて追いついて、自分の目で答えを確かめるのよ」
 最も今現在、景光に一番近い人の目と言ったらすぐ隣のよるはの厳しい目。旅程同じくする者同士、姉と慕っていてもそれはそれ、この状況で片手とはいえ潰せる暇をお持ちのようで?

「……姉様、口紅を塗ってる暇があったらさっさと動く!」
「これは或ル日と言ってな……まあまあ、旅は道連れとお前さんもよく言うだろう?」
「はぁ……。仕方ないわね、遅れたりなんてしないでしょ?」
「ふふ、それは勿論」

 視線交わして探偵ふたりは再び怪盗を追いかけ走る。軽々と身を浮かせたよるはは宙を舞い、視界を埋める黒煙の幕を蹴り払い、ハイカラクリたちは消えない衝撃波に動きを阻まれる。跳ねる少女に合わせて管楽器の音色も跳ねる、その間隙に連なるように重なって、異なる音の流れがはじまる。

「それでは問おう――さあ、その謎をわらわに解かせてくれ」
「ああ、お前さんたちも大怪盗も、何故このようなことをする?」

 黒煙晴れたその場所へ堂々と進んだ景光が疑問を口にする。彼女の持つ本から流れ出た影はだんだんと四つ足の獣の姿を形成し、それは声すら獲得する。
 何故に何故にと唸る声、低く響く重低音。
 獰猛な虎が謎の答えを求めて喰らう。鋼の体を押し倒し、貪るように深く牙を突き立てる。景光が言霊として虎に込めた慰めと浄化の力も働いて、ハイカラクリは押し退ける動きすらも満足に出来ていない。明後日の空を向いた砲塔に極超音速で落下する光が映り込む。

「これでっ! 倒れなさい!」

 少女に生来備わる力を映したように光り輝く、暗闇を拒絶する桜色のクレセントムーン。崩れ落ちたハイカラクリへと向かって跳躍したよるはが上空からの蹴撃をくらわせる。衝撃波が直撃した巨体はベキベキと凹んで真っ二つ、倒れ消えていく蒸気機関兵たちに目もくれず虎は次なる獲物へ答えを求めて飛び掛かっていった。
 
(予告状、追いかけっこ)
「……小説で影響を受けた結果がそれなのだとしたら……ただ怪盗ごっこがしたいだけなのかもね、あの愉快犯」
 大怪盗の影はもう目前、その先端くらいは掴めそうなところまで近づけた。けれどよるはは未だ届かない答えに辿り付こうと推理を続ける。あの怪盗は何を望んでいたのだろうか、例えばと前置いて語られたよるはの考察にほうと声を挙げる景光。物が目当てでなく、行為が目当てとは。それならあの配下が予告状を持っての破壊活動しか行わないのも説明がつくだろうか、怪盗というのに予告状を配ってばかり、盗まないのもおかしな話だし。

「とはいえあの怪盗も楽しさを求めるのなら。ああ、愉快愉快」

 正解も不正解も、景光にとっては変わらない。予想が当たれば楽しいし、外れたならそうきたかと膝を叩くも面白い。これが景光の書く本の題材に使えそうならいっそう良い。如何なる答えが聞けるものかと景光は期待に唇を歪ませる。
 謎を抱えた煙が晴れて、追いかけてきた謎の尻尾がようやく見えてきたところ。
 彼女たちの心を鼓舞する桜學府の笛の音は鋭く速く、凛と響いて追い風になる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルイズ・ペレンナ(サポート)
『お代は結構ですわよ。けれど懐には注意なさいませね?』
ブラックタールのシーフ × スターライダー
特徴 金目の物が好き 錠前マニア グルメ 快楽主義者 実は恋をしていた
口調 貴婦人(わたくし、あなた、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)
敵には 高慢(わたくし、あなた、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)

・金目の物をお宝と認識し獲得するのが行動理念
 直接の機会でなくても獲得出来るかも知れないと思えば動きます

・愛情や人助けのような金銭にならない価値は興味ないですが
 それを大事にする人を貶めもしません。趣味の相違

・利害が一致すれば他人との共闘やサポートはむしろ積極的です


虚偽・うつろぎ(サポート)
世界問わず大歓迎
世界を超えて自爆活動さ
アドリブ連携等ご自由に

登場即自爆
自爆できれば台詞も活躍もいらぬ!
速攻で自爆することが最優先
1歩も動かず即自爆
そう、自爆だ
僕に自爆をさせるんだ!
僕もろとも鏖殺だ
これぞ鏖殺領域なり

ただ自爆するためだけに現れる存在
何かいきなり自爆する怪奇現象
もはや災害である

技能:捨て身の一撃を用いての
メッサツモードによる高威力な広範囲無差別自爆

射程範囲内に敵が1体でもいれば速攻で自爆
自爆することが最重要
なので敵がいなくても自爆するよ
大事なのは自爆までのスピード
有無言わせぬスピードで自爆する
これ最重要だね

捨て身の一撃なので自爆は1回のみ
1回限りの大爆発
自爆後は爆発四散して戦闘不能



●猟兵探偵、ついに怪盗の影を踏む
 帝都を騒がせるはた迷惑な探偵の追跡を続けながら市民を救う活躍を見せてきた探偵たち。疲労はあれど彼らは着実に進み、この大騒動の最前線に迫っていた。
 わっしょいわっしょいと諸手を挙げて蒸気機関兵ハイカラクリがぐるりと周囲を取り囲む。探偵の妨害を受けようと計画に変更は無し、任務遂行するべしと互いの腕を繋いで排煙筒からぼうぼうと黒い煙を吐き出しては視界の隅まで真っ黒に。
 巻き込まれた虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)も元から真っ黒なブラックタール。「魂鎮メ歌劇ノ儀」を手伝っている桜學府の黒子たちが黒に沈みきってしまった彼の姿を見失うのも無理はない。
 見失う――それは、本当に?あの誰もが驚く殺人技芸の前には決して、そんなことは起こらない。
 黒く奇怪なその四文字が煙に包まれて、だからそれは誰にも見えてはいなかった。う・つ・ろ・ぎ、の平仮名四文字が宙を舞い、一瞬で取り囲んだハイカラクリ軍団の顔面に黒い手が手が、いくつも伸びては掴もうと殺到していた。
 任務行動の為の単純なシステムしか持たないハイカラクリが得体のしれなさに底知れない恐怖を感じて振り払おうとしたほどに、その黒い不定形生物の動きは速かった。数秒遅れてようやく、虚偽の出現地点、そこに視線も意識も向いた時には。
 ――虚偽・うつろぎの自爆は既に完了していた。

「……今ここに、誰かなにか、いたような気がしたのは気のせいですわね」

 ルイズ・ペレンナ(怪盗淑女・f06141)は突如として吹いた爆風に乱れる髪を整え言った。銀河のハイウェイで後ろからスピード違反の流れ星にでも追い抜かれたということにしよう。深く考えても何も得られないと怪盗としての勘が告げている。
 なぜか起こった大爆発によって煙も晴れたので、改めて周辺に目を向ける。散り散りになった真っ黒い何か、それとひっくり返って気絶しているハイカラクリ軍団。深刻なダメージを受けてはいるようだが警戒は怠らず、ルイズは艶のある黒髪を揺蕩わせながらイカの形をした絡繰り機械に近付く。

「あら、怪盗に使われていた、と聞きましたのに何も持ってはいませんの?」

 戦利品の名目でハイカラクリから何か獲れるものはないかと思い探ってみたものの、奪った金品を溜め込んでいたりはしていなかったようで、特に価値あるものは見つけられなかった。予告状を押し付けようと暴れることは出来るのに、そこまでの命令は受けていないか命令外の行動は出来ないといったところかとルイズは考える。

「盗みの技も人によって違うものですけれど、こちらの計画を考えた方とわたくしは考えが少々異なるようですわね。盗みとはもっとスマートに行うもの……そうは思わないかしら?」

 精査を終えたルイズが振り向く。そこには先程の爆発にギリギリ耐えきり、グラグラと左右に揺れながらも立ち上がるハイカラクリ。爆発の衝撃で腕も数本欠けてはいたが、元から十本はあるものが減ったところで問題は無いとばかりに立ちはだかる巨鋼のイカ。しかしルイズの顔に焦りは無い。
 微笑たたえる彼女の足元、寄り添うように現れる黒と青の宇宙バイク。流体のようにするりとした動きで彼女は相棒に跨って、ハンドルに黒く細い指を添える。

「疾風の如く駆け、迅雷の如く破る。追うも逃げるも戦うも盗むも自在な怪盗のvision、貴方の目に映るかしら?」

 爛々光る黄色の四ツ目は敵を睨んで醜く歪む。しかし僅かな腕と任務遂行しか頭にない、戦闘能力が残されていないハイカラクリでは最早ルイズの駆る『JET-WIDOW』のスピードに追いつくことは不可能に等しく。

「ほんの少しの時間でしたけれど――アデュー。」

 すれ違う視線、すり抜けていく黒真珠。
 振り返ろうとももう遅い、振り返る力も最早無い、ハイカラクリが残せたものは、宇宙バイクで走り行くルイズを後方から照らす光と爆風だけだった。

 やがて彼ら彼女らはついに最前線へと到着し。
 魂鎮メ歌劇ノ儀、その対象たる影朧と相対す。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『帝都を騒がす大怪盗』

POW   :    私は人を殺さない! …そのシリアスさだけを殺す!
【怪盗としてありったけの浪漫と非殺の決意】を籠めた【愛用のステッキ】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【シリアスな空気と戦う意思】のみを攻撃する。
SPD   :    毎回ピンチに陥って見せるのも怪盗の醍醐味ですよ!
【あえてピンチな状況に追い込まれた】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
WIZ   :    怪盗といえばやっぱり予告状ですね!
【辺り一面に舞い散る予告状】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠村雨・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第二章~探偵、怪盗と相対す
 街を荒らすハイカラクリを撃退し、怪盗を追いかけてきた探偵たち。彼らの追跡はついに実を結び、この事件の首謀者である怪盗に追いついたのであった!
 カッと光るハイカラクリの目、を模したスポットライトが一際大きな黒いハイカラクリの頭頂部に向けられる。

「やあ! ついに辿り着きましたか探偵め!」
 指先すら計算された角度で決めポーズ。シルクハットに燕尾の衣装、予告状を持ち黒く塗られたハイカラクリの頭の上に立つ大怪盗は胸を張って高らかに宣言する。

「そう、私こそが大、怪、盗、なん、です! 人呼んで――怪盗Dと!」
「フフハハハハハ、ハーーッハッハ、ようやく、ようやくです……!」
 探偵(猟兵)たちの見つけた大怪盗は高笑いしたかと思えば感極まったようにぐっと拳を握って身を震わせる。銀色の長い髪を束ねたおさげもわさわさ揺れて、彼女がいかに歓喜しているかを教えてくれているようだ。怪盗は意気揚々と指の間に挟んだ予告状を見せびらかしながら砲塔の先端に向かって歩き出す。

「予告状配布の催しは気に入っていただけたましたか、探偵の皆さアッ」

 その瞬間、周辺に漂っていた緊迫した空気は鮮やかに切り裂かれた。見ていた全員が何故と思う暇も無く朗々と語っていた大怪盗は足を踏み外し、更にどうやったらそうなるのか、黒いハイカラクリを巻き添えに猟兵たちの目の前に落下する。

「フ、探偵諸君はさぞ驚いているようですが…………私もまさか落ちると思ってなかったのでやり直させていただいてもよろしいでしょうかっ!」

 嫌な予感がしたそこの君、申し訳ないが覚悟してほしい。この先、どんなに頑張ろうとも覆せないものがあるのだと分かってくれると嬉しい。
 刺々しさも丸くやすりがけられてしまうような、シリアスなムードだとか緊迫感というものがほぼ瀕死になったとしても、きっと乗り越えられると信じている。

「改めて名乗っておきましょう、私こそは怪盗D、帝都に恐怖をばらまいた大怪盗……今ばらまいたのイカ気球って言ったの誰です!? ばらまいてませんよ、ちょっと私が乗り込む前に強風に流されちゃっただけですー!」

 小さなうっかりとうっかりが融合しあい、時には連鎖し巨大化し、怪盗向いてないよと諭されること幾度となく。見よ、あの怪盗の頭上には天然ドジっこの星が燦然と輝いている。
 影朧になってなお怪盗が逃げきれなかったこの強烈な天運。実は「魂鎮メ歌劇ノ儀」の儀式魔術と干渉しあい、この空間においては怪盗本人のみならず周囲にも強く影響を与えるほどに強化されてしまった。
 彼女にとって探偵と怪盗の対決とはエンタテインメント。ならば対峙する存在も探偵らしくあればあるほど場は盛り上がり、影朧の魂を癒すことだろう。しかしこの自称大怪盗はスペクタクルをコメディにする天性の才能を有し、因縁の対決だの宿縁だのを演出しようとも長続きせず、むしろ怪盗自ら盛大に打ち砕きにくる。
 シリアスがほぼ封じられた状態でいかに場面を盛り上げつつ、怪盗に負けを認めさせるか。何よりの難題だがきっと探偵たちなら解決に導けるだろう。

「さてさて、おしゃべりはここまでです。――探偵諸君よ覚悟したまえ、この私が現れたからには世にも珍しい財宝とか金塊とかごぉーじゃすな衣装とか、なんかそういう価値あるお宝を頂きましょう!」

 なんてったって、怪盗ですから!

「……だというのにあの探偵は、私の事件は治療費で赤字になるから依頼受けないとか舐めてんですかあんにゃろー!」

 キメ顔から一瞬で噴火している大怪盗。皆の頭には前途多難の言葉がよぎっていったのだった。
火土金水・明
明「探偵さんは治療費で赤字になる事を理解しているという事は、何回かは依頼を受けたという事ですか。以外と、脈があるかもしれませんよ。」クロ「(落下を見て)大・怪・盗改め大・転・倒と改名した方がいいにゃ。」
【POW】で攻撃です。
攻撃は、【鎧無視攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【ねこねこ・ロックンロール】で、『帝都を騒がす大怪盗』を攻撃します。相手の攻撃には【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。(黒猫の姿は使い魔のクロにそっくりです。)
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の方に繋げる事です。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



●大怪盗よ立ち上がれ
 登場即大転倒。立ち上がった怪盗は何事もなかったかのように予告状を構えたまま不敵に笑っているが、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は隣の黒猫と顔を合わせてこそこそ話。あの怪盗、万事が万事あの調子だったならお騒がせと呼ばれるにふさわしい。

「あれが帝都を騒がせたという大怪盗ですか」
「大・怪・盗改め大・転・倒と改名した方がいいにゃ」
「聞こえますよ、クロ」

 怪盗の様子を伺う明とクロ。律儀なことに二人の会話する間も怪盗は同じ位置で止まってくれているようだ。

「はーっ、くしゃっ! フ、私が脅威とどっかの有能な探偵がウワサでもしてるんでしょうか、大怪盗もつらいですね!」
「……。あの様子なら大丈夫そうにゃ。過去とはいえ、探偵もよく相手したものだにゃ」
「探偵さんは治療費で赤字になる事を理解しているという事は、何回かは依頼を受けたという事ですか。以外と、脈があるかもしれませんよ」

 そうかなー、という目をしているクロだが明には自信があるようだ。まあまあ、と笑う明にしょーがない、と黒猫は尻尾を振って待ちぼうけの怪盗に目を向ける。

「そろそろ作戦会議も終わりですか、ではいざ勝負といきましょう!」

 戦う用意が整った空気を感じて怪盗はステッキを二人に突きつけた。その手にしていた予告状を高く天へと投げたのは、彼女なりの開幕の合図に違いない。

「いったぁーーー!!」
「やっぱり怪盗やめて改名した方がいいにゃー」

 違いないのだが、そこで間違えて投げたのが逆の手で持っていたステッキで。くるくるくると回りながら落ちてきたステッキを取り損ねて見事に頭に当たるのも、彼女らしいと言えばらしいのだった。

「では、いきますよ」
 魔法使いのような黒い三角帽子を揺らして、明は両手をぽんと叩いた。彼女の前に光が集まり、それは次第に大きくなって、見覚えのある形に変わる。

「猫の子仔猫 獅子の子仔獅子!」
「な、にゃ、にゃー! なんですかそのでっかいのは! そんなのいたら陽動に使い放題の犯行計画中ふとした瞬間癒され放題、うらやまずるくないですか?!」

 ねこねこ・ロックンロール――クロと似た黒猫、ただし彼よりもよっぽど巨大な黒猫だ。にゃーおと鳴いた黒猫は明の動きに合わせて片手を振り上げる。
 怪盗を狙ったそれはまさしく巨猫の一撃だろう、しかし怪盗は驚きつつも余裕の笑みは崩さない。ちょっと蒼褪めて引きつってはいても本人の申告では余裕の笑顔ったら笑顔なのである。

「ですが私にただの攻撃は通じませんよ! このステッキがある限り!」

 繰り出される巨大な猫パンチ、怪盗は自分と戦おうとする明の意思を砕こうとステッキに力を込める。どんなに大きな体でも、心への直接攻撃に耐性のあるものはそうそういないだろう。事件解決へ意欲満々の探偵たちの心をあれやこれやのどうしてそうなったと言いたくなる顛末でへし折ってきた経験から来る確信が彼女に立ち向かう力を与え、二度三度と襲い来る猫パンチを涙目になりつつも掻い潜り、怪盗は大黒猫に反撃する。

「安心してください、人体には影響のない安心安全なパワーです! ……おやあ?」
「ええ、それは安心ですね。ですが残念、それは残像です」

 ステッキは確かに当たったはず、というのにピンと来ない感触。首を傾げる怪盗に明は応える。その言葉通り、召喚された黒猫の体がブレて、怪盗のステッキは無情にも空を切った。なんと、と声を出す暇も無く。気付けばああ、真上には猫の肉球がくっきりと見えて。

「にゃーーーーん!」

 ――その日、怪盗はついに知る。猫にじゃれつかれるおもちゃの気分とは、こんな感じなのかしら、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

イサリビ・ホムラ(サポート)
うわぁ…自分に出来ることあるやろか?まぁ、呼ばれたからには仕事させてもらいますわぁ

・しょーみ、少しでも役に立てれば御の字ですわ。両手で太刀を払って、どこでもえーんで叩きつけます。腕先、足元、武器、相手さんの脅威を少しでも削れればえーねんけどなぁ…
見てのとーりの図体ですよって、味方さんの盾んなったり、敵の態勢を崩したり。活路をこじ開ける初太刀として動かしてもらいますわぁ


無気力な言動のヤドリガミです
エセ関西弁
巨躯でも戦いは苦手。面倒事は嫌いでも大好きなお酒を飲むためならちょっとは頑張れる
味方の戦闘を援護。
負傷や失敗などのアドリブも大歓迎!好きに動かしていただきたく思います
エッチな展開のみNG



●その怪盗は闇夜に忍ばず
 怪盗へのイメージを問われて頭に浮かぶもの。スタイリッシュにシークレット。緻密な計画をプロの手際で難なくこなすイメージからはそんな言葉が出るだろう。しかしこの怪盗はといえば、デンジャーにしてディザスター。トラブルの種を蒔くのが仕事なのかと聞きたくもなる怪盗としての仕事ぶり。本人の意欲とは裏腹に引き起こされた建築物の倒壊に貴重品の破損、果ては人的被害まで。誰もが怖れたのは怪盗としての手際ではなく、彼女の起こす騒動による甚大な被害のほうであったのだ。
 イサリビ・ホムラ(燻る漁火・f34679)も宴席に騒ぐ酔漢を遠目に見た覚えはあれど、泥酔した酩酊者の狼藉よりも荒れた戦場を見ては二日酔いにも負けない頭痛も起きようというもの。

「いやあ、なんやろね。どーしてこないなことになっとるん?」
「私も疑問なんですが、なんでか大体こうなるんですよ不思議ですねぇ!」
「はぁ、そーなん? そーなんかなぁ……」
 思わずぼやいてしまうイサリビだが、そうなってしまうのも仕方はなかろう。彼のとっておき、秘蔵の酒を代償に呼び出したる赤提灯の友たちとなぜか始まってしまった宴会で先ほどまで戦おうとしていた相手と酒を飲み交わすという特異にも程のある状況は流石のイサリビといえど飲みながら首を傾げてしまう。
 なぜこうなったかといえば、まあ単純に怪盗の操る技が原因ではある。シリアスをブレイクする、ステッキに込められたふわっふわの概念パワーで集まってきた酔っ払いどもをポカポカとやれば、あら不思議。戦う意志を封じられたらそこにいるのは単純に酒目当てに集まってきた酔っ払いたちである。
 もう既に出来上がっている彼らに守る秩序などは無い。酔っ払いが徒党を組めば、敵うシラフもそうはいまい。イサリビたちもあれやあれやと巻き込まれ、報酬のはずの酒一合も見事に開けられてしまった。

「いちお自分、お仕事しに来てんけどなぁ」
「私の力の前にー、ひれふしましたかー!」
「ひれふさんけど、あー、絡み酒するタイプなんやねぇ」
「そう! 私に拳を向けた瞬間、倒れるのはあなたのほうなのです!」
「いやそれ言うとる相手、自分とちゃうんやけどな?」
「わっはっはっはっはーーー!」
 酒癖の意外と悪かった怪盗が立ち上がってはあっちこっちの酔っ払いへ絡んでいく。概念といったって酔っ払いというのはエスカレートのしやすいものだ。売り言葉に買い言葉、気付けば何故やら怪盗を中心に出来上がってる酔っ払いの包囲網。

「同じ杯で酒を酌み交わした仲でしょう、なぜに?!!」
 必死の怪盗の呼びかけにも、そう言われても俺達もともとイサリビを手伝うって約束だったしなあ、と少し酒から覚めていた者の正論が返される。
「まあ、しゃーないしゃーない、恨まんといてやぁ」
 酒と見せかけ水を飲んでいたイサリビはこれが終わったらちゃんと飲み直そう、そんな決意を胸に、手にした太刀を大きく振るうのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

北条・優希斗(サポート)
『敵か』
『アンタの言う事は理う解できる。だから俺は、殺してでも、アンタを止めるよ』
『遅いな』
左手に『蒼月』、右手に『月下美人』と言う二刀流を好んで戦う剣士です。
自らの過去を夢に見ることがあり、それを自身の罪の証と考えているため、過去に拘りと敬意を持っております。その為オブリビオンに思想や理想があればそれを聞き、自分なりの回答をしてから斬ります。
又、『夕顔』と呼ばれる糸で敵の同士討ちを誘ったり『月桂樹』による騙し討ちを行なったりと絡め手も使います。
一人称は『俺』、口調は年上には『敬語』、それ以外は『男性口調』です。
見切り、残像、ダッシュ等の機動性重視の回避型の戦い方をします。


月夜・玲(サポート)
『さてと、I.S.T起動。お仕事お仕事。』
口調 元気(私、~君、だね、だよ、だよね、なのかな? )


お仕事ついでに研究も出来るんだから、この仕事良いよねぇ
さあ、私の研究成果の実験台になってもらうよ

模造神器という独自の兵器開発を生き甲斐とする研究者
誰にでも気さくに砕けた口調で話しかける
戦いは全て研究の為、楽しみながら戦闘を行う
全ては研究の為、研究と戦闘を楽しめる猟兵生活は結構気に入っている
戦闘スタイルは4本の模造神器から2本を選び、二刀流で敵と戦う形です
UCで遠距離戦闘にも対応したSF剣士

日常ではのんびりと景色を楽しんだり風情を楽しんだり
冒険では考察しながらじっくり進む

あとはお任せ!


七星・天華(サポート)
 羅刹のガンナーで元気娘。
 仲良しな人には優しく楽しく。

『一般人に過度な期待はしないでよね。』
自分は才能など無い平凡な存在だと思っているが実は天才。
二丁拳銃「白雷」と「黒雷」をメインにナイフ系も扱える。
二丁拳銃を使った近接戦闘もできる。
遠近両方の距離でも戦闘を成立させる。
装備の影響で帯電しているが自由自在に扱える。
世界を放浪して手に入れたアイテムで出来る事の幅が広い。
少々過酷程度の環境は即座に対応適応するサバイバル能力。
左肩に生まれつき痕がある。
美人な元気娘だが暗殺もするデンジャラスな一面も。
家族のみんなが好きだが特に姉が大好きで姉の一番のファン。
自分にもファンが居るとは微塵にも思っていない。



●他が為の予告状
 怪盗。それは誰もが目を奪われる存在にして、誰もの目を騙してこその存在。予告状とは己の存在を知らしめるもの、そしてターゲットになったお宝の価値を高めるもの。怪盗に狙われたのならばそのお宝とは素晴らしいものであるに違いない。堅牢な金庫に守られて、あるいは番犬に見張りに守られている、それほどまでに価値あるものを盗み出せたのならば、その怪盗とはなんと優れた者なのだろう。
 古今東西の物語を紐解けば、優れた怪盗とは時に、探偵にとっての生涯の好敵手。一生をかけて相対し、生命をかけて対決する。そこには浪漫が溢れている。
 ならば探偵に追われる怪盗とはつまり、盗むお宝の価値すら関係なしに、それだけで優れた怪盗と言っても過言でないのでは?

 そんな想像をかつてした怪盗がいるらしい。いえいえ、私とは限りませんよ。
「怪盗にとって己の存在理由をどこに求めるかは不変の命題。お宝を求めるか、人に悟られず盗み出す技術を極めるか、探偵に追われるスリルにときめくか。そのどれもを、あるいはすべてを得ようと思った時から私は怪盗なのでしょう。ええ、はじまりなどこれっぽちも覚えてはいませんが」
「そうか、理解は……難しいが、アンタにも何かを求める心があるのは理解した」
 怪盗の言葉を聞いた北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は左右の手にした刀、『蒼月』と『月下美人』を構えたままに静かに頷く。例え過去の存在だとしても、何も聞かずに斬ることはしないというのが彼の信条だ。そんな彼の過去はいまだ届かない場所、遥か夢の向こうにある。
「でもだからって、あんな大騒ぎをしていいってわけじゃないよ」
 帯電する二丁の拳銃、『白雷』に『黒雷』の照準を怪盗へ合わせて七星・天華(自覚無き天才・f36513)が指摘する。赤茶色の瞳が瞬きし、些細な動きも見逃すまいとする視線が怪盗を捉えている。
「盗むまではしていなかったようだけど、配下を使って散布していた予告状。大半が未読どころか読解不可能なレベルの手紙とも呼べないモノなんだよね」
 その辺り、ばらまいた当人としてはどう考えてるのかなと月夜・玲(頂の探究者・f01605)に尋ねられた怪盗は思いっきり首を傾げていた。

「――ハテ。読めなかった、ですと? 全ハイカラクリくんの全触手を借りてまであちこちに出しまくった予告状がです?」
「そう聞いているね、中にはトラップみたく爆発したものもあったそうだよ」
「ああ、密偵ものの銀幕やらを参考にしたものですね、あれは緊急時の罠として作……つく、って」
 何かを間違えたことに気付いたのかもしれない、怪盗の顔色が悪くなっていく。玲と優希斗、そして天華の顔を順々に見渡して、怪盗はついに一つの真実に辿り着く。

「お尋ねしますが私の丹精込めて書いた予告状、ほぼ読まれてませんね?」
「あなたにとっては残念かもしれないけど、そうね」
「な、なんですってーーー!!」
 ガーン、という音が聞こえるくらいにショックを受けた様子の怪盗。彼女の想像ではここにいる猟兵たちは怪盗の予告状を見て犯行を止める為に追いかけてきた、ということだったのだろう。あまりの驚愕具合に優希斗も疑問を口にしてしまう。

「予告状を読んでいるかどうか、そこまで重要か?」
「重要ですよ! 怪盗が犯行予告も気付かれないで現行犯でお縄だなんて、行き当たりばったりの盗人じゃないんですからそんな浪漫もないこと!」
「いや、名前は変わっても盗みをしてるのは同じだろう」
「そうですが、いえそうではなく……いいえ。これは再びのチャンスとみましたよ」
 優希斗から指摘されて頭を抱えていた怪盗だが、カッと目を見開いた。ルビーのように赤い瞳は己のひらめきに輝いて、にんまりとした笑みによって細まる。
「ふっふっふ、今度はちゃんと皆さまにも受け取ってもらいましょうか!」
 両手を顔の前で交差する怪盗。くっ、と握られた拳が開き、彼女の手中には白い封筒が現れる。しっかり封蝋までされている上質そうな封筒だった。

「受け取りなさい、怪盗からの予告状を!」
「わっ、何あの枚数!」
「さてと、I.S.T起動。お仕事お仕事」
 黒髪を風になびかせ、玲は愛用する模造神器二振りを手にする。黒い刀身は最奥から発光し、青い光が玲を照らす。
「さあ、私の研究成果の実験台になってもらうよ」
「実験台とはおそろしい、ですがその余裕という顔もいつまで続くでしょうね?」
 パチン、と指を鳴らす怪盗。彼女が宙にばらまいた予告状がひらひらと不規則に揺れ、猟兵たちの視界で舞う。

「……ふ、」
 意思を持っているかのように動く予告状を見ていた天華は僅かな眠気を覚え、落ちそうになった瞼を気力で開く。天華は霞がかった頭を自分の体に帯電している電流で無理矢理起こし、元凶である視界で舞う予告状へと弾丸を撃ちこんだ。周囲を見れば二人もまた、己の獲物で手紙を斬り捨てている。
「この眠気、これのせいね!」
「バレましたか、けれど遅い! 私の予告状でぐっすりと眠りなさい!」
「眠くなる予告状、ってもうそれ読ませるつもりもないんじゃ……?」
「いいえ、この際もう予告状が現場に残りさえすればいいんですっ、いわば事後予告状とでも呼びましょうか」
「事後で予告って、また奇妙な言い回しを。とはいえこのまま好きにはさせないよ、偽書・焔神起動。断章・焔ノ杖閲覧。システム起動――」
 怪盗の行動へ割り込むように声を挙げた玲が詠唱を始めれば神器から発せられる青い光はより輝きを増していく。

「――深層領域閲覧。血は焔、焔は命。其は全てを包む真理の絆」
 蒼炎が奔る。玲と怪盗とを繋ごうとする炎は散らばり舞う予告状を燃やしながら走っていく。回避の動きを見せた怪盗に逃がしはしないと天華も接近し、怪盗に向けた指から走る電流がその肉体を麻痺させる。
「ば、バッチバチのビリビリ……!」
「動けないでしょ?」
「はい、捕らえたよ。これで逃げられない」
「いーいーえー! こうして毎回ピンチに陥って見せるのも怪盗の醍醐味ですよ、このくらいはまだ余裕、余裕です!」
 体は痺れ、片腕は炎に包まれてもまだ怪盗は諦めない。ここまでのダメージなんて想定内だと言い張って強かに反撃の機会を狙う。
「この程度のシビれなんて、シビレキノコを食べた時に比べれ、れば……!」
「悪いが、遅い。この刃は、全ての罪と闇、そして……人々の意志を刈り取る死神の息吹」
 優希斗の所持する刀四振、『蒼月・零式』、『月下美人』、『月桂樹・五月雨』、『鏡花水月・真打』。これら四振が巨大化し、鋭き刃が彼の敵へと振り下ろされる。
「み、みみみ、みじん切りはいーーやーー……!」
 そしてそれを必死に回避しようとする怪盗の情けない声が、戦場に木霊するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ティモシー・レンツ(サポート)
基本は『ポンコツ占い師』または『本体を偽るヤドリガミ』です。
カミヤドリも魔法のカードも、「Lv依存の枚数」でしか出ません。(基本的に数え間違えて、実際より少なく宣言します)
戦闘についてはそれなりですが、戦闘以外は若干ポンコツ風味です。(本体はLv組で出せない、UCの枚数宣言や集団戦は数え間違える、UCを使わない占いは言わずもがな)

ヤドリガミの「本体が無事なら再生する」特性を忘れて、なるべく負傷を避けつつ戦います。
オブリビオンに止めを刺すためであれば、猟兵としての責任感が勝り、相討ち覚悟で突撃します。
でも負傷やフレンドファイヤ、代償は避けたいお年頃。



●謎を晴らす名推理(物理)
 もはや怪盗の気力体力も風前の灯火、虫の息。けれど怪盗は立ち上がる。元から怪我はいつものこと、骨折り損の儲けすら無し、数多の宝を狙いに狙い、破損に紛失数えきれずの大厄ネタと呼ばれてきた彼女にすればまだまだここは底ではないし、心まで折れてはいない。

「それでも痛いは痛いですけどね!?」
「痛いならもうおしまいでいいんじゃないかな、怪盗さん」
「いえ、ここまできたのに自分から捕まりにいくのは違う気がしますし」
「えぇ……」
 ティモシー・レンツ(ヤドリガミのポンコツ占い師・f15854)からのやんわりとした提案も満身創痍の怪盗は頑固にノーと首を振る。ここまでさんざんやられていても捕まり方にすら浪漫を求めている怪盗を早くなんとかしなければ。ティモシーは痛みへの怖さもこらえて顔を上げる。
「と、とにかく、あなたは僕が倒します!」
 水晶玉を掲げて宣言するティモシーにボロボロながらも輝きを残した赤い瞳で応える怪盗は、シルクハットを被り直して姿勢を正す。
「追い詰められた怪盗が咄嗟の機転で掴む逆転というのを教えてあげましょう! その暁にはそうだ、その水晶玉を頂くのも良いですね?」
「えっ、だ、ダメだよ! それにそんなに貴重なものじゃな、……ええと、じゃなくって、僕の大事な本体だし!」
 ティモシーは水晶玉を隠すように手で覆う。本体と偽ってはいても怪盗を名乗る人物に渡せるようなものでもない。
「渡せないものの為に戦う二人、戦いの果てに立っているのはどちらかひとり……ふふ、このようなシチュエーションもまた、浪漫!」
 その場で大きく回転した怪盗の手に白い予告状が現れる。それは目にした者に眠りを与える予告状。つまりはティモシーを眠らせて、その隙に水晶玉を盗んで逃げだすつもりなのか。
「私からの予告状、受け取ってもらいましょうか!」
「逃げたりはしない、僕だって、戦えるんだ……!」
 空から予告状が舞って降る。ティモシーはタロットカードを手にして、怪盗へと絵札を向ける。彼の引いた札に描かれた歯車のぐる、ぐると回ってカチリと嵌る音。連鎖する呪いは彼女の運命を破滅に向かって歪めていく。運命の歯車が普段よりもよっぽど滑らかに動いたのは、怪盗自身の天運も大いに味方していたかもしれない。
 まず始まり、ティモシーがカードを切った拍子になぜか水晶玉も飛び出した。それは綺麗な放物線でぽかんと見つめる怪盗のおでこに向かって、真っ直ぐに落ちていく。当たった時の音はごつんと鈍く、衝撃は彼女の頭を揺らして動きを止める。
 効果を失い地面に散らばる予告状を踏んで足を滑らせた怪盗は、おでこを襲う痛みに苦悩の声をあげるしかない。今だとばかりに近付くティモシー、怪盗はおでこを押さえたまま、悔しそうな顔で彼の攻撃を受け止めるのであった。

 すなわち怪盗、ここに敗れたり!

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『影鬼遊ビ』

POW   :    追って追って、走り続けて影を縫い止める。

SPD   :    疾く疾く、駆け抜けて影をさらう。

WIZ   :    先読み先回り、待ち伏せして影を捕まえる。

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●あなたは私の名探偵
 影朧、怪盗D。猟兵たちとの一戦を終えた彼女は不本意ながら捕まっていた。だが縄でグルグル巻きになっていてもまだ成仏する気はないらしい。
「この状況から逃げ出す、というのも実に浪漫では?」
 彼女の求める怪盗と探偵の決着にはまだ何かが足りないようだ。だがここまで続けてきた魂鎮メ歌劇ノ儀、そのフィナーレも確かに近いはず。

「おっと、気付かれてしまいましたね」
 いつの間に縄を解かれてしまったようだ。自由の身となった怪盗Dはステッキでシルクハットを押し上げてくすくすと楽しそうに笑っている。
「私は逃げます、どこまでも!」
「だからどうぞ、探偵さん。追いかけてくださいね、どこまでも!」
 さあ、これが最後の追いかけっこ。逃げるあの影、捕まえようか。
シフィル・エルドラド(サポート)
『皆に元気を分け与えにやって来たよ!』 

ハイカラさんの勇者×国民的スタアの女の子。
 普段の口調:明るい(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)
 嬉しい時の口調:ハイテンション(あたし、あなた、~さん、ね、わ、~よ、~の?)

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

元気一杯で天真爛漫な性格をしていて、ポジティブな思考の持ち主。
困っている人や危機に陥っている人は放ってはおけず
積極的に助ける主義です。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


琳谷・花咲音(サポート)
自身とよく似た姿の影(背格好は同じ、性別とロングヘアが違う)悪魔【影(エイ)】を召喚するガジェッティア。

柔らかな口調と行動で男女どちらともとれないジェンダーレスな雰囲気。
女の子になりたい訳じゃない、男女の垣根はなく自分は自分。
友人(感情を結んでいる人)以外には『僕』。
友人には『私』。

戦闘時にはガジェットを臨機応変に変化させて戦う。
火力はないので手数で押す…又は牽制などサポートの立ち位置にいる事が多い。

【影】は本人と鏡合わせのような行動をとる事が多い。


日下・彼方(サポート)
人間のUDCエージェント × 月のエアライダーの女です

戦闘での役割はレガリアスシューズを使っての空中戦、
影の狼を使役して斥候・偵察ができます
武器は通常大型ナイフを使用しますが
強敵には太刀・槍を持ち出す事もあります

普段は(私、君、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?)
機嫌が悪いと (私、~様、です、ます、でしょう、ですか?)

性格は受けた仕事はキッチリこなす仕事人のような感じです
仕事から抜けると一転惚けた風になります

ユーベルコードは必要に応じて、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●天下を騒がせ大怪盗!
 かつては天下騒がせし大怪盗、今となっては影朧。魂鎮メ歌劇ノ儀を通して荒ぶる力に満ちていた肉体は鎮められ、配下を操り暴れ倒すほどのエネルギーはもうひと欠片だって残っていない。
 しかしその心はまだまだ鎮まらず、むしろ彼女の心は弾んでいる。なぜならまだ彼女を追う者がいる。追われるならば逃げるのみ、捕まるつもりは少しもない。
 怪盗は振り返って背後を伺う。青い瞳に正義の光をいっぱいに、金の髪を揺らして走る『勇者探偵』シフィル・エルドラド(ハイカラさんの勇者・f32945)の存在はここからでもよく見える。おそらくは彼女の懸命さが普段より持つ彼女の光に更なる輝きを与えているのだろう。眩しくて、けれど目を離すには惜しく思える光に怪盗は目を細めた。
「失敗はしていたでしょうが、あんなお宝を一度は盗んでみたかったものですねー」
「余所見注意よ、怪盗さん!」
「え、わっ、あわわわわ、意外と足速いんですよあなた方!」

 怪盗の影まで飛んで一足の距離まで近づき、シフィルがジャンプする。助走をつけてスピードが増した状態で、影だけでなく怪盗本体まで捕まえようとする勢いだ。怪盗も避けようとするのだが、
「残念だけど、私には手に取る様に分かっているよ!」
「ほぁあ!?」
 シフィルの推理、もとい『勇者の勘』にはお見通し。急ブレーキをかけてシフィルの狙いを外そうとした怪盗は輝き増した彼女のオーラを間近に直視し、文字通り目が眩む。チャンスと怪盗の影を踏まんとするシフィルだが、これですんなり捕まってくれるとは、この怪盗がなる訳もない。己も巻き込む災厄級の悪運は常に彼女にまとわりついて離れはしないのだ。

 ガランゴロン、遠くから転がってくるものがある。目撃者はなんたることかと目を疑う、言葉を失う。だってあそこにあるのは、なんだって、こんなところに……大きなダルマ?
「えーっと、あれもあなた?」
「アレは私じゃないですよ?!! 冤罪、えんざーい!」
 まあ確かに、冤罪といえば冤罪だった。帝都桜學府の舞台演出大道具班が使わないだろうけど一応用意だけはしていた大物が、結局使わなかったねと仕舞われる直前に起きてしまったまさかの珍事、大脱走もさながらに誰も止められず路上舞台のここまで転がってきてしまったと、二人は知らぬ裏事情であった。
 突然の闖入者はぴったり二人に狙い澄ましてゴロゴロと転がり寄って来る。逃げ足だけは一級品の怪盗は、シフィルの意識がほんの少し逸れた瞬間に加速する。
「あっ! 逃がさないよ、待てー!」
「イヤでーすー! はーはっはっは!」

 ああ、なんて楽しい。この手にはどんなに価値ある宝も持ってはいないのに、心は歓喜で満ちていく。見よ、見よ。天下往来を駆ける怪盗と探偵の追走劇を!

 もちろん猟兵側も遅れは取らない。『影狼探偵』日下・彼方(舞う灰の追跡者・f14654)は道端に置かれた看板や荷物の影から『影狼影向(カゲロウヨウゴウ)』で呼び寄せ潜ませていた影の狼たちをけし掛ける。怪盗の影を狙って突進する狼たちの群れ、彼方はその先頭に立ち、黒く長い髪を尾のように揺らし、月追う狼の名を持つ飛翔の靴にふさわしき空飛ぶような疾走を逃走者へと見せつける。
「先頭は私だ。皆は後から続け」
「私もかつて数多の番犬に追いかけられてはきましたが、狼に追いかけられるのは初めてですよ……っ! しかし、逃げ切ってみせましょう!」
 強がる怪盗だが、影の狼たちは流石の追跡能力である。怪盗の左右と後方、三面に分かれて彼女を追いかける。彼方の指示に従い、怪盗の予想しない角度から迫る狼たちの助力もあって、徐々に二者の距離は詰められていく。
 
「ち、近い近いちーかーーいーー! のに、噛み付いてこないのも怖いんですが!」
「彼らに任せてもどうせ、捕まるなら探偵の手じゃないと意味がないと言うだろう。なら、追いつくまで逃がさないようにするだけだ」
「見抜かれてますかぁ……!」
 じりじりと迫っては離れての繰り返し、戦闘能力も既に失いつつある怪盗に残ったわずかな体力まで削るような追跡に、やっぱり探偵にも怪盗にもタフさは重要だと怪盗は痛感する。この灰色の目を鋭く光らせる追跡者はかつての現場でちょっと勢いよく獅子舞の変装で突入したら驚いて腰ぬかしたようなヤワな探偵とは違う。デキる奴ですオーラがあってつまりは逃げるスキが見当たらない、困ったなあ!
 先ほどまでの余裕もすっ飛んで、怪盗はひたすらに包囲から抜け出す道を探す。

「なにかなにか、何でもいいからなにかーー!」
「ハイ、ナニか、だよ」
「へひゃっ?!」
 自分の独り言に対して壁に映る影が返事をしたように見えて、怪盗は顔を横へ向ける。太陽は上にある、そこに影は出来ない筈なのに、どうして壁に影がある。
 疑問の答えはすぐに分かった。『多影探偵』琳谷・花咲音(気ままな異邦人・f35905)が隠し扉の要領で怪盗が見ている方とは反対側の壁からくるりと舞台に現れる。
 その手には発射済みのフリントロック式の銃。茶目っ気のある金の瞳は片方閉じられ、口元には笑みが浮かんでいる。壁に浮かんでいるのはロングヘアで女性的な影なのに、花咲音の髪は短くて、本人の影ではないのは明らかだ。
 ただでさえ影の狼に囲まれて、そのうえにまた影である。自分の影を足元から切り取って、てんでばらばらに逃げだしたい、怪盗は鏡合わせに同じ動きをする二人にそんな感想を抱くのだった。
「さあお仕事をしようか、影」
 花咲音は彼の召した悪魔の影(えい)と息を合わせて、怪盗の進路に躍り出た。更に狭い逃げ場を塞ぐタッグダンスの影が踊る。影を踏まれてなるものか、怪盗の抵抗もむなしくその背後に狼が来る。

「……影っ、踏んだ!」

 逃げ続けるのもこれでお終い、大怪盗と探偵たちの追いかけっこの決着に、終わりの鐘が鳴っている。影を踏まれた怪盗はさぞ悔しそうな顔をするかと思いきや。
「ああ、とうとう。捕まってしまいましたね、ハハ、アハハハハ!」
 痛快だと、愉快だと、これ以上はないくらい、お天気の空よりもっと晴れ晴れとした顔で笑っていたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​


●大怪盗/名探偵
 怪盗は求めていた。自分の力を発揮するに相応しい、難攻不落の大金庫。隠された財宝、華麗な手腕に驚きと称賛の声を上げる人々。そして架空に劣らない、ライバルとなる探偵を。けれどどれもを得るにはあまりにも、彼女も周囲も抗えない天運に振り回されていた。
 大言壮語、恰好だけの大怪盗。でたらめのような事件ばかりを起こすのに、盗めたものは些細で僅か、むしろ形を保てているだけ良いほうで、大半はがらくたに姿を変える。いくら警備しようとも得られるのは文字通りの骨折り損、得した者は怪盗含めて誰もいない、関われば大損失間違いなしのトラブルメーカー。
 誰の目にも明らかなダメダメすぎる怪盗は、それでも手を変え品を変え、失敗ばかりになろうとも怪盗を名乗り続けた。その結果として、最後は逃走に使うつもりの気球が飛ばずにそのままお縄と、半ば事故めいた結末になってしまった。最後の事件のつもりでいたのに、消化不良になっても仕方ないとは思いませんか。

 影朧に宝の価値は関係ない。なんでもありの力で謎を解いたとして、人を傷つけたとして、得られるものは何がある。だったら残る未練は一つだけ。
 我こそは大怪盗なりと大声あげて、名探偵よ来たれと叫ぶ。すべては自分の信じた通りだと納得する為に。怪盗は探偵よりも強くて、恰好良くて、そして。

「私の名前を呼んで、影すらも捕らえて。探偵と戦うというのはこんなにも楽しいことだと、私の信じた通りでしたね」
 大怪盗はそう言って、笑った。

 解けた未練は光に変わり、桜の花びらと共に風に舞う。
 怪盗の傷もいつかは癒えて再び世界を巡る命に変わるだろうか。
 その謎の答えは、桜だけが知っている。

最終結果:成功

完成日:2022年05月07日


挿絵イラスト