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カクリヨ繚乱★アルトラ・クイズ!(作者 生倉かたな
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●RUMBLES KP ULTRA QUIZ!

「UDCアースでー! 生きたいかーっ!」
「「「生きたーいっ!」」」

 丸耳を生やした女司会者が威勢良く放った呼びかけに応じ、群衆が声を合わせて元気よく返答する。
「OKOK、サンキューガッツ。ロック&ロール! ディープ&パープル、フィッシュ&ボーン! 元気いっぱいのコール&レスポンス、ありがとうやで!」
 女司会者がくるりと回ってポーズを決め、程なくして舞台が暗転。直後、特徴的なシルエットをした司会者の姿がスポットライトで照らし出された。

「えー、本日もこのお時間がやって参りました。毎度おなじみ流浪の番組ワイちゃん倶楽部──では、なくっ! 知識の殿堂にして超暴力の極み! 『カクリヨ繚乱★アルトラ・クイズ!』の時間だコラァーッ!!」

 鼠耳の司会者が再び大声を上げ、聴衆のボルテージは最高潮に達する。
 カクリヨファンタズムの一角、バズリトレンディ御殿。そこでは今まさに、智と暴の大いなる戦いが始まらんとしていた──!

(提供バックの後、CMが流れ出す)

●とある夏の日、グリモアベースにて

 今や時代遅れ感のあるテレビデオで流れていたそんな映像を、ぴっ、とリモコンのボタンを押して一時停止すると、白猫耳の少女──グリモア猟兵の惑草・挧々槞(浮萍・f30734)は、猟兵たちの方へと視線を向けた。

「……何だこれ、みたいな顔をしていらっしゃる方々の為に先んじて説明させていただくけれど。これはカクリヨファンタズムの一角、『バズリトレンディ御殿』にて行われる催しの、リハーサル風景の映像よ」
 リハーサルなのに何でここまできっちり仕上げていらっしゃるんだか、という、彼女のぼやきはひとまず置いておくとして。

 バズリトレンディ御殿とは、バズリトレンディの御殿である──より詳しく言えば、幽世に棲む新しい妖怪と呼ばれる者たちの親分、通称“新し親分”である大妖怪『バズリトレンディ』が、謎のパワーで建立した巨大建築物のことである。
 元々はUDCアースにあり、そして今は何故か幽世にあるこの建物は、大祓百鬼夜行と呼称される戦争が終わって暫し経った現在においてもなお謎が多く残る場所だ……が、御殿の主人が主人なので、その存在については深く考えるだけ色々無駄というものだろう。

 行ったことがある方もいるかも知れないけれど、と前置きし、猫耳の少女は説明を始める。
「あの場所、今は骸魂が集う一種の霊場みたいになってるのよね。誰が言い出したかは知らないけれど、骸魂ホイホイ、って呼ばれているくらいの。それで、あそこに骸魂を集めて一網打尽にする、って催しごとをあの新し親分さんが考案したのよ。そこまでは良かったのだけれど──」

──新し親分、バズリトレンディ曰く。
「『優勝者はUDCアース一生間(否誤字)の旅にご招待!』っちゅー触れ込みで参加者(※)を募集したんやけども、何か集まりまくりまクリスティ。三密! これもワイちゃんの人徳の為せる業(わざ)にして業(ごう)って奴やね、仕方ないね……許してつかぁさい!」
とのこと。
(※編注:参加者とは、ここではこの世に未練のある骸魂のことを指すものとする)

「バズり親分さんだけじゃ対処出来ない可能性が出てきたから、猟兵の方々にもその催しに参加して欲しいそうよ。何でも、今観て貰った通りテレビ番組風の装いだとか。水着コンテストも終わったし、何気に暇なのかしらね」
 軽く息を吐き、彼女は説明を続ける。
「詳しくは親分さんから説明して貰える……とは、思うけれど。大体の想定としては、他の参加者に混じって予選を勝ち抜きつつ骸魂をやっつけて、本戦にて残りの骸魂を討伐。強く当たってあとは流れでお願いします──ですって。まあ、要は単に骸魂をやっつければ良いだけみたいよ?」

 とは言え、場所が場所である。それが危険であるかどうかはさて置くとしても、何がしかの妙な事態に巻き込まれる可能性は高いだろう。

「……まあ、放っておく訳にも行かないのだけれど。あの幽世のことだもの、とんちきな状況であれ世界の危機には違いないわよね。私からもひとつよろしく頼ませて頂くわ」

 ぺこり、と頭を下げ、猫耳の妖怪少女は転送を開始する──

●暫し後、カクリヨファンタズムにて

 ここはカクリヨファンタズムの一角、新し親分『バズリトレンディ』の居城──その名も、バズリトレンディ御殿。

「おっ、今安直でアホみたいなネーミングやなーって考えた奴おりゅ? ……あとで屋上来いよ、前歯全部折ってやる!」
 しゅっしゅっ、と自分の口から風切り音を鳴らしつつシャドーボクシングに勤しみ始めたこの彼女こそ、新しい妖怪たちの親分たるバズリトレンディだ。

 ともあれ、ここはバズリトレンディ御殿の一角。何やらテレビ番組風のセットが組まれているその場所の、セット裏である。

「まあ何や、ワイちゃんちょっとマジモードになるわ。マジマジのマジすぎて真島になるけど引かんといてな?」
 畏まるように咳払いをし、彼女は説明し始めた。
「……もう聞いたかも知らへんが、今ちょーっとばかしマズい状況なんや。当面の問題として、骸魂が集まり過ぎたせいでワイちゃんの冠番組……もとい、ワイちゃん考案の骸魂一斉撃滅イベントが本来のパーフェクトプラン通りに上手く進められへん。そこでピカッとひらめいたんやが──」

 彼女の思いつきを要約すると、つまりこういうことだ。
 集まり過ぎた参加者(※骸魂が取り憑いた妖怪)たちを、予選と称したバトルロイヤルで粗方ぶっ飛ばす。本戦まで残ってくるような骨のある輩がいれば、そいつも後で何やかんや都合をつけてぶっ飛ばす。
 以上である。

 乱暴かつ適当極まりないが、骸魂を倒し、そして骸魂に取り憑かれた妖怪を救う為にはどのみちそうせざるを得ない──それが紛れも無い事実であるのは確かだ。
 ちなみに彼女が言う所の『本来のプラン』とは、①予選のくだりが無く、②彼女自身が番組の演出を交えて骸魂をぶっ飛ばす、というものだったらしい。実際の所新しいプランとの差異はほぼ無いに等しいのだが、それ故の利点もある。急遽設定した予選の方はともかくとして、本戦では彼女も骸魂討伐に助力出来る目があるそうだ。
 ……まあ、お天気屋極まりない彼女の性分からして、ちゃんと手伝ってくれるかどうかは正直定かでは無いのだが。

「──お化けは死なへんって偉い人も言うてたし、まあ結構派手にヤっちゃっても大丈夫なんちゃう? 多分死なないと思う。死なないんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ。それくらいの温度感でシクヨロ!」
 いつもの調子に戻ったらしき彼女は、しゅばっ、と片手を挙げると、続けてステージの方へと視線を投げかけた。
「ワイちゃんはな、今から司会しに行かなあかんねん。全国の良い子悪い子普通の子、妖校生の皆さんがワイちゃんのことを心待ちにしとるんや……んじゃまた後で! バッハハーイ!」
 そう言い残し、ドンドットットドンドット、と謎のリズムを口ずさみながら新し親分は去っていく。

 それとほぼ時を同じくして、場内各所に取り付けられたスピーカーから案内音声が流れ始めた──イベント参加者に向けた、誘導の案内だ。
 カクリヨファンタズムの一角、バズリトレンディ御殿。そこでは今まさに、智と暴の大いなる戦い、その本番が始まらんとしていた──!


生倉かたな
 はじめましての方ははじめまして。そうでない方は滅茶苦茶ご無沙汰しております。生倉かたなと申します。
 オープニングの文章がすごく長くなったので要約の意を込めてここに書きますが、当シナリオは新し親分『バズリトレンディ』さんに関するシナリオとなります。もしご希望であれば親分を登場させるようなプレイングを書いていただいても構いません。(ダイス目等の関係もあるため、登場は確約出来ないかも知れませんが……)

 シナリオ内容については、①予選と称した大乱闘で骸魂を撃滅した後、②本戦と称したクイズ番組風のセット内で骸魂と殴り合いをする……といった内容となります。
 また、①②共に特定条件下でのプレイングボーナスがあります。
 ①はオープニング公開後の断章にて記載するので割愛。
 ②は『バズるような行為をする』および『お金で買えるものをイメージする』とボーナスが付く、という内容です。先日の戦争(大祓百鬼夜行)の時にもあった奴ですね。バズる行為、というのがイメージし辛い方は、当シナリオでは『視聴率が稼げるような行為』という風に認識していただいて構いません。もっと有り体に言えば、②では水着姿で登場するだけでもボーナスを付ける予定です。水着コンテストこそ終了したものの、季節はまだ夏(※夏の間に完結するかどうか未知ではありますが)。お気軽に水着姿でのプレイングをご応募頂ければ幸いです。
(あと、念の為記載しておきますが、お色気的な要素を当シナリオに含めたりする気は余りありません。プレイングで指定された場合のみ、ちょっとだけならそういう感じにするかも、程度の認識でお願いします)

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『ウェスタン・スケアリー・モンスターズ』

POW ●フランケン『ラース・ヴァイオレンス・アタック』
【気に入らねえ奴らをぶっ潰すという憤怒】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD ●狼男『ルナティック・ムーン・ライト』
【精神を錯乱させる月の光】を降らせる事で、戦場全体が【満月の夜】と同じ環境に変化する。[満月の夜]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ ●ドラキュラ男『ブラッディ・ヴァンパイア・バット』
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【獰猛な吸血コウモリの群れ】で包囲攻撃する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は仇死原・アンナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 何故、幽世の何処に放送されるとも解らないこのテレビ番組の体を成した謎のイベントは、ある種異様なまでにきっちりと生放送番組収録の段取りに従って進行しているのか。そして何故、そんな茶番とも言える流れに一切抗う様子もなく、骸魂たちは大人しくしているのか。
 考え始めれば謎は尽きないが、これも親分たる者の持つ霊力か何かの為せる業なのだろう。そういうことにしておこう。

 ともあれ、程なくして番組収録──もとい、新し親分考案の骸魂一斉撃滅イベントが始まった。
 転送前の映像で観たものとほぼ同じような下りが猟兵たちの眼前で繰り広げられた後、何度目かのカウントダウンが行われ始める。どうやら、そろそろ最初のCM枠が終わるらしい。



 ステージ上を目まぐるしく駆け回った後、司会者役のバズリトレンディ親分が1カメへと視線を向けた。
「さあ参加者も多いことやし巻いていこう! ちゃっちゃと予選を始めさせて貰うやで! ……予選があるなんて聞いてなかった? いや、だって君らさあ……幾ら何でも集まり過ぎですやん? これ程の奴らが相手なら、元祖爆笑王スケジュール変更権を使わざるを得ない。皆まで言わせんな恥ずかしい!」
 あくまでも番組の体を保つような調子で彼女がそう告げると、スタッフ風の装いをした一般協力妖怪たちが舞台袖から現れた。彼らはごろごろと台車を押し、参加者たちの傍に布で隠された何かを持ってくる。

「さーて、予選の種目さんはー──(デケデケデケ……デデドン!)──そう! 智と暴の戦い、カード合戦やぁーっ!」
 親分の宣言に合わせて布が取り去られると、台車の上には半透明の小さなケースが山のように積まれていた。目を凝らしてみると、そのケースの中にはどうやら60枚程カードらしきものが入っているようだ。
「ワイちゃん考案のカードゲーム、デュエリストブレイド! こちら、きっちりはっきりしっかりにっこりルールに則って遊んでももちろんお楽しみいただける一品なんですけども、今回は何と!」

 胸元から一枚のカードを取り出し、彼女は再び自身の口からドラムロールを鳴らし始める──突如、彼女は勢いよくそのカードを投げ放ち、参加者待機エリアの最前列にて欠伸をしていたモヒカン頭の妖怪の顔面にそれを面子めいて叩きつけた! よもや血迷ったか!
 直後、カードから色取り取りの魔力弾が発生! 花火めいて広がる弾幕の発生源、その根本にいたモヒカン妖怪の顔面と毛根は爆発四散! サツバツ!

 いつの間にやらステージ上から降りてきていたらしき新し親分が、つんつん、と元モヒカン頭の妖怪の体をつつく。
「大丈夫? 息できる? ……一妖怪(ワングイリー)、生存確認! ヨシ!」
 びしっと人差し指を指すポーズを取った後、彼女は参加者たちの方へと向き直った。
「っちゅー訳で! このカードを使って、今日は皆さんにちょっとシバき合いをして貰いまーす!」

 これまたいつの間にやら手にしていたカードから弾幕を放ち、司会者たる親分はざわつく参加者たちを軽く威圧するようにしてみせる。
「そこにあるデッキケースを手に取り、カードを投げ合って戦えぇー! 戦わないなら帰れぇー! 戦わなければ生き残れへんぞ!」
 わざとらしく作ったダミ声でそう言い終え、すたん、と軽やかな音を立てて宙返りしてステージ上に舞い戻ると、彼女は可愛らしくポーズを取り、そして可愛らしい声を上げた。

「それじゃあ早速ー! ブレイダーバトル、ショウ・ダウンッ!!」

 試合開始を告げる掛け声らしきその台詞が、突然言い放たれてから数秒後。
 参加者たる骸魂たちは一斉に猟兵たち──では無く、台車上のデッキケースの山へと殺到し始める……!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

◆お知らせ◆

●1章のプレイングボーナス:カードの弾幕に対処する。
・それっぽいTCG用語を叫びながらカードを使用するとカードから魔力弾が出ます。敵は通常のユーベルコードに併せて弾幕を放ち攻撃してくるので、PCの方々もカードの弾幕やユーベルコードを用いてそれに対抗してください。
・大量にデッキケースが用意されているため、PCは自分の思い通りの好きなカードデッキ(64枚くらい)を持っているものとします。
・あくまでもプレイングボーナスであるので、カードや弾幕に関する演出等を記載しなくとも構いません。

●プレイング受付開始予定時間
07/26(月) 08:30~
黒木・摩那
人気が出すぎてしまうのも困りものですね。
他ならぬ親分からの頼みとあれば、断れるはずないじゃないですか。
骸魂の数減らしのお手伝いさせていただきます。

まずは予選突破しないとですね。

先手必勝です。
ヨーヨー『エクリプス』を使って【先制攻撃】します。
台車の上のデッキケースを【武器落し】で跳ね飛ばし、自分の分は【念動力】で回収します。そして、カードデッキで弾幕形成。「ミラーイメージ」として、弾幕避けに使います。

さらにカードの一部をUC【乱舞雷花】の発動に使って、まとめて攻撃します。




「おいテメエッ! そのデッキはオレが先に目ェ付けてたんだよ!!」
「知るかボケェ! トロトロしてる方が悪いに決まってンだろォッ!?」

 西洋妖怪風の外見をした骸魂たちが、デッキケースの山に群がりながら殴り合いの大喧嘩を繰り広げ始めた。
 このまま放っておいても勝手に自滅してくれるのでは無かろうかとも思える、サマーバーゲンのワゴンセールを彷彿とさせるようなその光景を眺めながら、黒髪の少女猟兵──黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は小さく息を吐く。

「人気が出すぎてしまうのも困りものですね……」

 色々と思う所はあるものの、今回の一件は新し親分──先日の大祓百鬼夜行の際に虞知らずの技を伝授して貰ったり、一緒に花火(?)で遊んだりもした、あの彼女からの頼み。
 断れるはずないですよね、と心の中で独り言ちつつ、摩那は懐から幾何学模様の描かれたヨーヨーを取り出した。
「何にせよ、まずは予選突破しないとですね。先手必勝です!」



 ドグシャァーッ!

 ぎゅいん、と音を立てながら突然飛来した謎の円盤──摩那の投げ放った超可変ヨーヨー『エクリプス』が、半ば台車にのし掛かるようにしていた数体の骸魂たちごとデッキケースの山を吹き飛ばす。

「てっ……テメェ、よくもやりやがったな!?」
 何とか直撃を避けたらしき厳つい見た目の骸魂が傍らにいた小柄な男の体をむんずと掴み、摩那に向かって投擲せんとする──が、その寸前。先のヨーヨーに付加されていた魔力により小規模な竜巻が発生し、彼らもまた台車に僅か残っていたデッキケースごと盛大にぶっ飛ばされる仕打ちとなった。
 摩那は嵐に吹き飛ばされるデッキ群の姿を赤い眼鏡越しに素早く見定め、そのうちの一つに狙いを付けて念動力を放つ。ひゅん、ぱしり。瞬く間も無く、彼女の手中にデッキケースが収められる! ワザマエ!

 先の嵐の兆候を野生の勘でいち早く感じ取り回避行動を取っていた、いかにも狼男です、といった風貌の男が非難の声をあげた。
「ず、ズリィぞオメーッ!?」
「もたもたしているあなた達が悪いんです!」
 ぴしゃり、と言い返しつつヨーヨーを引き戻し、摩那はケースからカード束を素早く取り出すと共に一番上にあったカードをドローする。

 とても綺麗なイラストが描かれているそれを見、やっぱり投げたりして使うのは何か間違っている気もしますね、等と一瞬考えつつも、彼女はヨーヨーを持っていない方の腕を大きく振りかぶり──

「──速攻魔法発動っ、多相鏡面(ミラー・イメージ)!」

 宣言と共に投げ放たれたそのカードは銀色に輝き出したかと思うと、まるで細胞分裂するかのようにして急速にその数を増やし、そして突如空中で静止してその場で待機するようにぷかぷかと浮かび始めた。

 一体何をされるのか、と警戒するあまり慌てて駆け出した末に無様にすっ転んだ狼男が、近場に転がっていたデッキケースを慌てて手に取り──そして思い直すようにして頭を振る。
 この己の周囲に疎らに浮かぶ鏡共が、何の用も為さない存在であろうはずが無い。下手に弾幕を放ちアレに当たろうものなら、良くても破壊出来るだけ、最悪何かしらの手酷い反撃を受けることになり兼ねない。そう判断し、彼はケースを投げ捨て何やら構えを取り始めた。

「触らぬ紙に祟りなし! 弾幕なんか必要ねェ、直接殴ったらァ! 《ルナティック・ムーン・ライト》!」
 彼がそう吼えると共に、彼、そして摩那の立つ辺りの一角が少し暗くなり、広い室内の高い天井付近に丸い形をした何かが出現した。奇妙な存在感を持つそれから朧げに光が放たれ始めるのとほぼ時を同じくして、狼男が小刻みにステップを踏むようにして浮かぶ紙片を躱しつつ摩那の許へと駆け出す……が、しかし。それを摩那が黙って見ているはずもない。
 彼女は再び念動力を放って浮かぶ鏡面の位置と角度を調整し、先程出現した満月らしきものから降り注ぐ月光めいた光を彼女自身と狼男のどちらにも届かぬよう反射する陣形を取らせた。チッ、と、尚も駆ける狼男が舌打ちする音を聞き流しつつ、摩那はスマートグラスを用いて複雑に計算を続ける。

(励起。昇圧、帯電を確認……)
 直前まで悟られぬよう、彼女は心内でタイミングを見計らい──そして。
「……散開っ! 《乱舞雷花(フルール・イリゼ)》!」
 その掛け声と共に、中空に浮かぶカードの3割程が色とりどりの花びらへとその姿を変えた。

「なっ……!? 一体何を──」

 狼男が素っ頓狂な声を上げた、その瞬間。
 七色に輝く花びらから電流が迸り、周囲に残存していた鏡にそれが衝突。刹那、まるで狼男を取り囲むようにして反射・拡散された高圧電流が一斉に男へと襲い掛かる!
 ……哀れ、狼男は戸惑いの台詞を続けることも無くその場に倒れ伏し、戦闘不能状態に陥った。そして、先の魔力嵐で吹き飛ばされそのまま床に転がっていた骸魂たちも、その猛烈な電撃の余波を受け次々と感電、昏倒していく──

 ──無論それは乱雑に反射が行われた末の偶然等では無く、そうなるように計算して鏡面を配置した摩那の意図通りの結果ではあったのだが、ともあれ数十秒も経たないうちにその場で立つ者は摩那だけと相成った。

「露払いとしては上々でしょうか……」
 小さく呟きつつ、彼女は素早く辺りを見渡す。
 予選は始まったばかり、骸魂たちの残存数もまだまだ多い。だが、この調子なら『本戦』とやらが始まるまでそう時間はかからないかも知れない──そんなことを考えつつ、再び数減らしの手伝いをせんとするべく彼女は別の台車がある方向へと駆け出していった。
大成功 🔵🔵🔵

ヴォルフスブルク・ヴェストファーレン
か、カードが爆発した…てーつぇーげー?というのはこれが初めてですけど恐ろしいものなんですか…?

うーん愉快な人達でいっぱい…彼らを穏健に退治すれば良いんですね?
それにしても月の光が綺麗で…なんだかわかりませんが斬ればいいですね
全員斬ればいいですっ!絶対に逃しません!私は冷静です!!

剣を上段に構えて近づきモンスターズの頭に剣の腹を振り下ろします!翔剣士らしく軽快に飛び回れば弾幕だって避けられます!水着の状態なら装甲はないので更に加速できますね!何人たりとも斬ります!なんで斬られてないですか!
なんですかカードが欲しいんですか!?欲しければあげます!さあ!どうぞ!(一体一体口に64枚分ねじ込みつつ)




 次にヴォルフスブルク・ヴェストファーレン(鉄の狼・f34026)が登場する。彼女は気が狂っていた。

「あは、あはははは! きらっきら光って綺麗ですね!! 世界がこんな輝きに満ち溢れているものだったなんて、私っ! 知らなかったです!!!」

 降り注ぐ魔力弾の射光、そして頭上で揺らめく朧げな光を受け、その弾幕を紙一重で躱し続ける水着姿の彼女の白い肌、そして仄明かりを受けた長い銀の髪が幻想的に煌めく。
 ある種の神々しさすら感じられる──そんな光景ではあったのだが、しかしそれを見て感嘆の声を上げるような者は残念ながらこの場には存在しなかった。ここに存在するのは軽快に飛び回りながら笑い声を上げる彼女と、その付近の床の上にて口に何かを詰め込まれた状態で失神している妖怪たち、そしてその惨状を見て戦慄する妖怪たち──程なくしてその床に転がる同胞とほぼ同じような運命を辿ることになるであろう、骸魂たちだけであった。



 事の起こりは数分前。

「かっ、カードが爆発した……」
 新し親分が説明と見せしめを兼ねてカードを炸裂させたのを見、戦々恐々、といった様子で、水着姿の女猟兵──ヴォルフスブルクは小さく呟く。
「て、てーつぇーげー? ……というのはこれが初めてですけど、恐ろしいものなんですか……?」
 無論このデュエリストブレイドという名のTCGが特別奇怪極まる物体であるというだけの話ではあるのだが、その辺りの事情を彼女が知る由もない。

 戸惑いと焦りの入り混じる彼女の心を置き去りにするかのようにして、司会者たるバズリトレンディが試合開始の号令を発した。数十秒もしないうちに、周囲で怒号が飛び交い始める。骸魂たちがデッキケースの奪い合いをしているのだ。
 どうしようどうしよう、とおろおろしていたヴォルフスブルクだったが、暫くして意を決したように一人頷くと、彼女は剣を握り西洋妖怪然とした骸魂たちの方へと向き直った。
「とっ、とにかく彼らを穏便に退治、しない……と……?」

 そして、彼女は広い室内の高い天井付近に浮かぶ丸い物体──付近で争う狼男のうち一名がユーベルコードを使用したことにより出現した、月の姿を視認する。

「……? 何でしょうかあれ、月? 綺麗な光──」
 当然の結果として、ヴォルフスブルクはその精神を錯乱させる狂気の月光をもろに浴びる羽目になってしまった。突然の目眩と吐き気が彼女を襲う。
「──っ!? ぅう、あっ──」

 彼女の思考は流転する。上手く考えがまとまらない。先にも増して何が何だかよくわからなくなってきた。何か拠り所になるものはないだろうか。
 前後不覚に陥る最中、彼女は自身の手の内に何かが握られていることに気づく。確か、これは──剣。剣だったはずだ。紛うことなき私の剣……そう、剣だ。剣に頼ろう。だって私は翔剣士だし、翔剣士は剣を使うものだから。
 剣を持った私は一体何をすればいい? それはもちろん、斬ることだ。だって剣は斬るものだから。そう決めた。全部わかった。

「──わかりました!」

 近くで大声が上がったのを耳にし、デッキケースの山に群がっていた妖怪たちがその発生源──水着姿の謎の女へと視線を向けた。

「つまり斬ればいいんですね! 全員斬ればいいですっ! 絶対に逃しません!! 私は冷静です!!!」
 そう言うが早いか、ヴォルフスブルクは剣を上段に構えながら台車がある方へと駆け出し、その途中でだん、と大きく踏み込むようにして空中へと跳んだ。
 彼女が用いる《Wolfs Gambit》という名のユーベルコードは、翔剣士にしてガレオノイドである彼女自慢の“脚”を活かして超速の攻撃を見舞う技だ。しかも、諸処の事情により水着が一張羅の状態と化している現在の彼女は過去一番と言っていい程に身軽な状態にあると言える。

 骸魂の群れの真っただ中へと着地した彼女は、そのまま目にも留まらぬ速さでその集団を攪拌するかのようにして駆け回る。すれ違いざまに西洋妖怪たちの頭部目掛けて次々と剣が振り下ろされ、しゅぱん、という風切り音が何度も鳴った。

「ぐあッ! きっ、斬られ……て、ない……?」

 神速の斬撃を受けた骸魂たちの一人が叫び声──と、戸惑いの声をあげた。激しい鈍痛こそ感じたが斬られたような感触はなく、不思議に思った彼は恐る恐る己の頭に手を伸ばす。
 やはりと言うべきか、そこにはたん瘤こそあれども切創の類は認められない。一体何が起こったのか、と、襲撃を受けた西洋妖怪一同は怪訝そうな表情をそのいかつい顔に浮かべた。

 ……先の襲撃者らしき女の手元をよくよく観てみれば、その剣の持ち手の握り方は滅茶苦茶だった。刃筋が立っていないとかそういう次元ですらなく、ただ少し鋭利な部分のある棒を持っているだけに等しいといった状態だ。
 先程何やらよく解らないことを叫んでいたし、月の狂気に侵されているのだろうか──剣の腹で殴られた妖怪たちはそんなことを考えながら、頭を摩りつつも改めて水着姿の女猟兵の姿を眺める。

 そしていつの間にやら走るのを止めて妖怪たちの様子を伺っていたヴォルフスブルクの心にも、途轍もなく大きな疑問と不安の感情が湧き出てきた。
 剣を振って、頭に命中して、でも斬れなかった。相手の頭が頑丈だった? でも私は翔剣士なのに。翔剣士は剣を持っていて、斬るものなのに。こんなこと絶対におかしい。何故?

 何が何やらといった様子で目をぱちくりと瞬かせていた一人の狼男の傍へヴォルフスブルクはつかつかと歩み寄り、そしてぽつりと呟くようにして彼に問いかける。
「……なんで、斬られてないんですか?」
「は? 何でも何も──」
 ばしん。
 そんな持ち方で斬れるはずがないだろう、と言葉を続けようとした男の脳天に、再び衝撃が走った。

「なんで斬られてないんですか……!」
「い、いやちょっ──」
 ばしん。
「なんで斬られてないんですか!!」
「だっ、がっ……!」
 びしん、ばしん。
「なんで斬られてないんですか!!!」
「……っ、ぁ──」
 ばしん、びしん、ばしん。
「なんでっ! 斬られて、ないん、ですかぁっ!! なんでっ!? どうしてっ!!??」
 びしんばしんびしんばしんびしんばしんびしんばしんびしんばしん──

 ──三寸斬り込めば人は死ぬ、とはとある剣術流派に伝わる言葉であるが、別に斬らずとも鉄の塊でがんがん頭をぶん殴るだけで人は普通に死ぬ。
 無論ここに居るのは人ならぬ妖怪、それも骸魂の憑依したものであったので幸い死ぬまでには至らなかったのだが、然りとてその激しい殴打は頑強な身体を持つ妖怪の意識を刈り取るには十分過ぎる程の暴威を誇っていたと言えよう。

 白目を剥いて失神しかけている男の片手から、ぽとり、と床に何かが落ちた。何でしたっけこれ。男の毛むくじゃらの手指が痙攣するようにしてひくひくと震える。この落としたケースを拾おうとしてるのかな。
 尖った棒を振るうのを一旦止め、彼女はケースを拾い上げるとその中身を取り出して眺めた。ああそうだ、確かTCG(テーツェーゲー)とかいうやつだ。さっきこれを使って戦えって言われましたっけ。
 狼男の手が尚も震える。そんなにこのカードを持っていたかったのかな。それならあげよう。使い方よくわかんないし。それに、あげたら大人しくしてくれるかも知れない。

「カードが欲しいんですか? ……欲しければあげます! さあ、どうぞっ!!」

 そう元気良く言い放つと、彼女はまるでポストの投函口に分厚い封筒を無理矢理詰め込むかのようにして男の口の中へとカードを捻り込んだ。デッキ丸ごと、枚数にしておおよそ64枚分を一斉に。
 威力としては先の殴打よりも弱い、しかし結果的にとどめとなったその口腔への攻撃を受け、狼男はそのまま仰向けになって倒れた。

 カードが貰えて“へそ天”になるなんて、このオオカミさんよっぽど嬉しかったんだなあ。
 そんなことを考えながら彼女が辺りを見回すと、丁度そこにはデッキケースの山があった。これをどんどんみんなに配ればみんな喜んでみんな大人しくなってくれる、そうに違いない。
 得心がいった様子で一人頷くと、彼女はぶぅん、と上半身を反らせるような姿勢をとって妖怪たちの方へとその燦然と輝く赤い瞳を向け──



 ──そして、現在に至る。

「あははははは! あなたにもカード、カードをあげますねっ! ほら遠慮なさらずに!!」
「だっ、弾幕! もっと撃て、撃てェッ!」
「それより早くアレ引っこめろやァ! 誰だよあの月出したバカはよォーッ!?」

 水着姿の女が、ひらりひらりと弾幕を躱しながら西洋妖怪たちを襲う。
 宙に浮かぶ月の光が収まるのが先か、それともこの付近にいる骸魂たちが全員くたばるのが先か。どちらが先になるにせよ、彼らに未来はない──
成功 🔵🔵🔴

ヘンペル・トリックボックス(サポート)
「ヘンペルと申します、しがない紳士です。お茶のついでにちょっとしたマジックでも……如何ですかな?」
【設定】
 UC偽身符で作られた、本物そっくりの式神です。
【イメージ】
 のらりくらりと現れる、紳士姿の胡散臭い奇術師です。胡散臭いの延長線上で、符術も使います。
【性格】
 常に礼儀正しい姿勢ではいますが、要所要所でしれっとボケを入れる剽軽モノ。放っておくと延々戯言を垂れ流します。
【行動理念】
 『誰かの笑顔のために』行動します。水面下で老体に鞭打って頑張るタイプです。
【好き/嫌い】
 笑顔、のんびり、甘いもの/作り笑い、不実、紳士的でない行動
【その他】
 ノリは良い方です。感覚で動かしていただいて結構です。


ティモシー・レンツ(サポート)
基本は『ポンコツ占い師』または『本体を偽るヤドリガミ』です。
カミヤドリも魔法のカードも、「Lv依存の枚数」でしか出ません。(基本的に数え間違えて、実際より少なく宣言します)
戦闘についてはそれなりですが、戦闘以外は若干ポンコツ風味です。(本体はLv組で出せない、UCの枚数宣言や集団戦は数え間違える、UCを使わない占いは言わずもがな)

ヤドリガミの「本体が無事なら再生する」特性を忘れて、なるべく負傷を避けつつ戦います。
オブリビオンに止めを刺すためであれば、猟兵としての責任感が勝り、相討ち覚悟で突撃します。
でも負傷やフレンドファイヤ、代償は避けたいお年頃。




 そして別の一角にも、弾幕を躱し続ける一人の猟兵の姿があった。

「く、くそっ! 何で当たらねぇんだよ!?」
 着物姿の彼──ティモシー・レンツ(ヤドリガミのポンコツ占い師・f15854)のその身のこなしは決して遅くは無いものの、先の女猟兵のそれに比べれば幾分かは常識的な速さではあった。しかし、不思議なことに何故か攻撃が当たらないのだ。西洋妖怪たちは半狂乱になりながら弾幕を放ち続けるが、やはり当たらない。

 当然ながらその現象は偶然等ではなく、それは何処か頼りなさげな雰囲気が感じられないこともないこの彼、ティモシーの、計算に基づく行動に依り導き出された事象であった。
 敵の配置、カードが構えられ投げ放たれるまでのタイミング、そしてそのカードから生じる弾幕がどのようなものであるか。それを瞬時に推測した上で、時には距離を取り自身狙いの魔力弾を紙一重で回避し、時には大胆に接近して骸魂の手からカードを叩き落とし、変幻自在とも取れる動きで彼は敵を翻弄する。

(うーん……避けるのは割と簡単だけど、数が多くてちょっと疲れるなぁ……)
 今の相手の調子であれば諸所の推測は容易いものの、自分を狙う敵の数が増えれば苦労するかも知れない──半ば無意識的に計算をしながら頭の片隅でそんなことを考えていたティモシーの視界の端に、狼男の姿が飛び込んでくる。カードを手に持たず、しかし何やら怪しげな様子だ。恐らくユーベルコードを発動せんとしているのだろう。

「それ、さっき見たからね……っ!」
 ティモシーは一旦大きく飛び退ると、近場にあったサーボクレーンカメラのアームを踏み台にして高く飛び上がり、そして何もない空間に向け蹴撃を放つ……否、そこは“何もない空間”等では無かった。彼が脚を突き出す体勢を取ったのとほぼ同時に、そこには月が出現したのだ。
「Achooooo!!」
 怪鳥音と共に放たれた鋭い跳び蹴りにより空中に出現した球体は即座に破壊され、狼男の目論見もろとも灰燼に帰した。勢いをそのままに天井付近まで飛び上がったティモシーは付近の手ごろな配管を素早く掴み、照明設置用の足場の上へと見事に着地を果たす。

「……あれ? これどうやって降りればいいの?」



(おや、あれはもしや──)
 先程からティモシーの俊敏ながらも何処か独特な所のある身のこなしを眺めていた、UDC支部の局長を務める身たる一人の猟兵──ヘンペル・トリックボックス(仰天紳士・f00441)は、とある噂話を思い出した。

 曰く、UDC組織には秘伝の徒手空拳武術が存在している。
 曰く、それは統計学や確率論等の科学的見地に基づく拳技であり、術理を学べば誰でも使用することが出来る。
 曰く、その術理が記された文書は門外不出とされているが、一定以上の階級を持つ者であれば自由にコピーを入手することが出来る……云々。

「──驚いた。与太話の類とばかりに思っていたのですが、まさか実在するとは」
 “UDC神拳”と呼称されているらしきあの矛盾をはらんだ謎の武術を用いる辺り、恐らくあの着物姿の彼はUDC組織に属しているか、あるいは組織に近しい関係の者なのだろう。天井付近のキャットウォークに着地した仲間の姿を見、彼はそう当たりをつける。
「それはさておき、彼にも助力いただきましょうか。おーい、上にいる御方ー!」
 降りる場所を探してきょろきょろ辺りを見回していたティモシーがその呼び掛けに気づき、ヘンペルへと大声を返す。
「……うん? えーっと……それってー、僕のことー?」

「そう、そこのあなた! 恐縮ですが、照明をいくつか落としていただけませんでしょうかー!」
「電源を切ればいいのー? やり方よくわかんないけどー!」
「いえっ、そうではなく! 物理的に、落下させて欲しいんですよー!」
「えっ? でも、そんなことをしたら危ないんじゃ……?」
「大丈夫です、他の方々にも決してご迷惑はおかけしませんからー! 紳士ですのでー!」

 何処となく自信のようなものが感じられるその応答を受け、それならいいか、と、ティモシーは照明が備え付けられた梁の方へと向き直ると拳打を放つべく構えをとった。
「たくさん落ちると思うから、気を付けてねー?」
 そう注意を促し、彼は共振現象を引き起こすパンチを梁に打ち込んだ。神拳を受けた梁はその振動を周囲に伝達し、照明を固定しているボルトが次々と緩み──がたがたがたん、と大きな音を立て、数多の照明が一気に落下していく。

 頭上から鳴り響く騒音を他所に、紳士は小さく呟いた。
「……さて、どの唄を謡いましょうか」



 カードを投げるのを一旦止めて注意深く周囲の様子を観察していた、吸血鬼風の出で立ちをした骸魂がマントを翻した。
「何やら企んでいるご様子ですが……フフ、月が無いなら好都合! いでよ、ミーのしもべたち──《ブラッディ・ヴァンパイア・バット》ッ!」
 天井から照明が落ちてこようとも、幾何学的な軌道で飛ぶ吸血コウモリたちなら避けるのは訳ないはず。そう考えた上での行動であったが、しかしそのドラキュラ男の考えには大きな誤算があった。

 落下してくる照明、そして自身の許へと飛来するコウモリの群れを全く意に介していないかの様子で、舞台上の紳士──ヘンペルは、朗々と童謡を歌い始める。
「“Hey my kitten, my kitten, And hey may kitten, my deary!──”」
 すると、落下してくる照明──金属とガラスにより構成されたそれらが、次々と可愛らしい猫の姿へと変貌していく。

「なっ……!?」
 ヘンペルのユーベルコード《きみに謡う名も無き童話(ワンダーワーズ・マザーグース)》の効果により意志持つ猫へと変化したそれらは華麗に空中で体勢を整えると、ある者はそのまま地面に着地し、またある者は落下の勢いを生かしてコウモリを爪で引き裂き、ヘンペルの周囲に陣を形成する。
 まさか能動的な攻撃を受けるとは夢にも思っていなかったであろう吸血コウモリたちに、その頭上より雨あられと襲い来る哺乳綱食肉目からの襲撃を躱すことなど到底出来ようはずもない。ドラキュラ男の手下共は敢え無く駆逐され、その場に残るはヘンペルとドラキュラ男、そして可愛らしい猫たちのみと相成った。照明が物理的に落ちた薄暗い一角で、数多の猫の目が獰猛に光る。

「“──Here we go up, up, up, And here we go down, down, downy──”」
「やっ、やめ……っ!!」
 紳士がそう歌うのを号令代わりとし、その可愛らしくもしなやかで逞しい体をした猫たちは一斉に吸血鬼へと襲い掛かった。顔を引っかいたり噛みついたり、その一体一体の力こそか弱いものではあるが、何せこの物量だ。如何な骸魂と言えども、多勢に無勢といった所だろう。

「“──And here we go round, round, roundy.”」
 ヘンペルの歌に合わせ、猫たちはその場でくるくると回る。
 丁度それを照らし出すかのようにして、その薄暗い一角がスポットライトで照らし出された。よくよく周りを見回してみれば、数台のカメラもこの一角へと向けられている。バズリトレンディ言うところのこの予選とやらも、恐らくはしっかりと撮影されているのだろう──ならば、と、ヘンペルは恭しくお辞儀をして見せる。

「……それでは引き続き、前座代わりのショウタイムと洒落込みましょう」
 TCGの方はともかくとして、カードマジックなら多少の覚えはある──いつの間にやら手にしていたカード束を手際よくシャッフルして見せ、紳士はカメラに向かって悪戯っぽい笑みを浮かべた。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴