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カクリヨ繚乱★アルトラ・クイズ!

#カクリヨファンタズム #戦後 #バズリトレンディ #バズリトレンディ御殿 #デュエリストブレイド #コミカル #テレビ番組

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●RUMBLES KP ULTRA QUIZ!

「UDCアースでー! 生きたいかーっ!」
「「「生きたーいっ!」」」

 丸耳を生やした女司会者が威勢良く放った呼びかけに応じ、群衆が声を合わせて元気よく返答する。
「OKOK、サンキューガッツ。ロック&ロール! ディープ&パープル、フィッシュ&ボーン! 元気いっぱいのコール&レスポンス、ありがとうやで!」
 女司会者がくるりと回ってポーズを決め、程なくして舞台が暗転。直後、特徴的なシルエットをした司会者の姿がスポットライトで照らし出された。

「えー、本日もこのお時間がやって参りました。毎度おなじみ流浪の番組ワイちゃん倶楽部──では、なくっ! 知識の殿堂にして超暴力の極み! 『カクリヨ繚乱★アルトラ・クイズ!』の時間だコラァーッ!!」

 鼠耳の司会者が再び大声を上げ、聴衆のボルテージは最高潮に達する。
 カクリヨファンタズムの一角、バズリトレンディ御殿。そこでは今まさに、智と暴の大いなる戦いが始まらんとしていた──!

(提供バックの後、CMが流れ出す)

●とある夏の日、グリモアベースにて

 今や時代遅れ感のあるテレビデオで流れていたそんな映像を、ぴっ、とリモコンのボタンを押して一時停止すると、白猫耳の少女──グリモア猟兵の惑草・挧々槞(浮萍・f30734)は、猟兵たちの方へと視線を向けた。

「……何だこれ、みたいな顔をしていらっしゃる方々の為に先んじて説明させていただくけれど。これはカクリヨファンタズムの一角、『バズリトレンディ御殿』にて行われる催しの、リハーサル風景の映像よ」
 リハーサルなのに何でここまできっちり仕上げていらっしゃるんだか、という、彼女のぼやきはひとまず置いておくとして。

 バズリトレンディ御殿とは、バズリトレンディの御殿である──より詳しく言えば、幽世に棲む新しい妖怪と呼ばれる者たちの親分、通称“新し親分”である大妖怪『バズリトレンディ』が、謎のパワーで建立した巨大建築物のことである。
 元々はUDCアースにあり、そして今は何故か幽世にあるこの建物は、大祓百鬼夜行と呼称される戦争が終わって暫し経った現在においてもなお謎が多く残る場所だ……が、御殿の主人が主人なので、その存在については深く考えるだけ色々無駄というものだろう。

 行ったことがある方もいるかも知れないけれど、と前置きし、猫耳の少女は説明を始める。
「あの場所、今は骸魂が集う一種の霊場みたいになってるのよね。誰が言い出したかは知らないけれど、骸魂ホイホイ、って呼ばれているくらいの。それで、あそこに骸魂を集めて一網打尽にする、って催しごとをあの新し親分さんが考案したのよ。そこまでは良かったのだけれど──」

──新し親分、バズリトレンディ曰く。
「『優勝者はUDCアース一生間(否誤字)の旅にご招待!』っちゅー触れ込みで参加者(※)を募集したんやけども、何か集まりまくりまクリスティ。三密! これもワイちゃんの人徳の為せる業(わざ)にして業(ごう)って奴やね、仕方ないね……許してつかぁさい!」
とのこと。
(※編注:参加者とは、ここではこの世に未練のある骸魂のことを指すものとする)

「バズり親分さんだけじゃ対処出来ない可能性が出てきたから、猟兵の方々にもその催しに参加して欲しいそうよ。何でも、今観て貰った通りテレビ番組風の装いだとか。水着コンテストも終わったし、何気に暇なのかしらね」
 軽く息を吐き、彼女は説明を続ける。
「詳しくは親分さんから説明して貰える……とは、思うけれど。大体の想定としては、他の参加者に混じって予選を勝ち抜きつつ骸魂をやっつけて、本戦にて残りの骸魂を討伐。強く当たってあとは流れでお願いします──ですって。まあ、要は単に骸魂をやっつければ良いだけみたいよ?」

 とは言え、場所が場所である。それが危険であるかどうかはさて置くとしても、何がしかの妙な事態に巻き込まれる可能性は高いだろう。

「……まあ、放っておく訳にも行かないのだけれど。あの幽世のことだもの、とんちきな状況であれ世界の危機には違いないわよね。私からもひとつよろしく頼ませて頂くわ」

 ぺこり、と頭を下げ、猫耳の妖怪少女は転送を開始する──

●暫し後、カクリヨファンタズムにて

 ここはカクリヨファンタズムの一角、新し親分『バズリトレンディ』の居城──その名も、バズリトレンディ御殿。

「おっ、今安直でアホみたいなネーミングやなーって考えた奴おりゅ? ……あとで屋上来いよ、前歯全部折ってやる!」
 しゅっしゅっ、と自分の口から風切り音を鳴らしつつシャドーボクシングに勤しみ始めたこの彼女こそ、新しい妖怪たちの親分たるバズリトレンディだ。

 ともあれ、ここはバズリトレンディ御殿の一角。何やらテレビ番組風のセットが組まれているその場所の、セット裏である。

「まあ何や、ワイちゃんちょっとマジモードになるわ。マジマジのマジすぎて真島になるけど引かんといてな?」
 畏まるように咳払いをし、彼女は説明し始めた。
「……もう聞いたかも知らへんが、今ちょーっとばかしマズい状況なんや。当面の問題として、骸魂が集まり過ぎたせいでワイちゃんの冠番組……もとい、ワイちゃん考案の骸魂一斉撃滅イベントが本来のパーフェクトプラン通りに上手く進められへん。そこでピカッとひらめいたんやが──」

 彼女の思いつきを要約すると、つまりこういうことだ。
 集まり過ぎた参加者(※骸魂が取り憑いた妖怪)たちを、予選と称したバトルロイヤルで粗方ぶっ飛ばす。本戦まで残ってくるような骨のある輩がいれば、そいつも後で何やかんや都合をつけてぶっ飛ばす。
 以上である。

 乱暴かつ適当極まりないが、骸魂を倒し、そして骸魂に取り憑かれた妖怪を救う為にはどのみちそうせざるを得ない──それが紛れも無い事実であるのは確かだ。
 ちなみに彼女が言う所の『本来のプラン』とは、①予選のくだりが無く、②彼女自身が番組の演出を交えて骸魂をぶっ飛ばす、というものだったらしい。実際の所新しいプランとの差異はほぼ無いに等しいのだが、それ故の利点もある。急遽設定した予選の方はともかくとして、本戦では彼女も骸魂討伐に助力出来る目があるそうだ。
 ……まあ、お天気屋極まりない彼女の性分からして、ちゃんと手伝ってくれるかどうかは正直定かでは無いのだが。

「──お化けは死なへんって偉い人も言うてたし、まあ結構派手にヤっちゃっても大丈夫なんちゃう? 多分死なないと思う。死なないんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ。それくらいの温度感でシクヨロ!」
 いつもの調子に戻ったらしき彼女は、しゅばっ、と片手を挙げると、続けてステージの方へと視線を投げかけた。
「ワイちゃんはな、今から司会しに行かなあかんねん。全国の良い子悪い子普通の子、妖校生の皆さんがワイちゃんのことを心待ちにしとるんや……んじゃまた後で! バッハハーイ!」
 そう言い残し、ドンドットットドンドット、と謎のリズムを口ずさみながら新し親分は去っていく。

 それとほぼ時を同じくして、場内各所に取り付けられたスピーカーから案内音声が流れ始めた──イベント参加者に向けた、誘導の案内だ。
 カクリヨファンタズムの一角、バズリトレンディ御殿。そこでは今まさに、智と暴の大いなる戦い、その本番が始まらんとしていた──!


生倉かたな
 はじめましての方ははじめまして。そうでない方は滅茶苦茶ご無沙汰しております。生倉かたなと申します。
 オープニングの文章がすごく長くなったので要約の意を込めてここに書きますが、当シナリオは新し親分『バズリトレンディ』さんに関するシナリオとなります。もしご希望であれば親分を登場させるようなプレイングを書いていただいても構いません。(ダイス目等の関係もあるため、登場は確約出来ないかも知れませんが……)

 シナリオ内容については、①予選と称した大乱闘で骸魂を撃滅した後、②本戦と称したクイズ番組風のセット内で骸魂と殴り合いをする……といった内容となります。
 また、①②共に特定条件下でのプレイングボーナスがあります。
 ①はオープニング公開後の断章にて記載するので割愛。
 ②は『バズるような行為をする』および『お金で買えるものをイメージする』とボーナスが付く、という内容です。先日の戦争(大祓百鬼夜行)の時にもあった奴ですね。バズる行為、というのがイメージし辛い方は、当シナリオでは『視聴率が稼げるような行為』という風に認識していただいて構いません。もっと有り体に言えば、②では水着姿で登場するだけでもボーナスを付ける予定です。水着コンテストこそ終了したものの、季節はまだ夏(※夏の間に完結するかどうか未知ではありますが)。お気軽に水着姿でのプレイングをご応募頂ければ幸いです。
(あと、念の為記載しておきますが、お色気的な要素を当シナリオに含めたりする気は余りありません。プレイングで指定された場合のみ、ちょっとだけならそういう感じにするかも、程度の認識でお願いします)

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『ウェスタン・スケアリー・モンスターズ』

POW   :    フランケン『ラース・ヴァイオレンス・アタック』
【気に入らねえ奴らをぶっ潰すという憤怒】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    狼男『ルナティック・ムーン・ライト』
【精神を錯乱させる月の光】を降らせる事で、戦場全体が【満月の夜】と同じ環境に変化する。[満月の夜]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    ドラキュラ男『ブラッディ・ヴァンパイア・バット』
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【獰猛な吸血コウモリの群れ】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は仇死原・アンナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 何故、幽世の何処に放送されるとも解らないこのテレビ番組の体を成した謎のイベントは、ある種異様なまでにきっちりと生放送番組収録の段取りに従って進行しているのか。そして何故、そんな茶番とも言える流れに一切抗う様子もなく、骸魂たちは大人しくしているのか。
 考え始めれば謎は尽きないが、これも親分たる者の持つ霊力か何かの為せる業なのだろう。そういうことにしておこう。

 ともあれ、程なくして番組収録──もとい、新し親分考案の骸魂一斉撃滅イベントが始まった。
 転送前の映像で観たものとほぼ同じような下りが猟兵たちの眼前で繰り広げられた後、何度目かのカウントダウンが行われ始める。どうやら、そろそろ最初のCM枠が終わるらしい。



 ステージ上を目まぐるしく駆け回った後、司会者役のバズリトレンディ親分が1カメへと視線を向けた。
「さあ参加者も多いことやし巻いていこう! ちゃっちゃと予選を始めさせて貰うやで! ……予選があるなんて聞いてなかった? いや、だって君らさあ……幾ら何でも集まり過ぎですやん? これ程の奴らが相手なら、元祖爆笑王スケジュール変更権を使わざるを得ない。皆まで言わせんな恥ずかしい!」
 あくまでも番組の体を保つような調子で彼女がそう告げると、スタッフ風の装いをした一般協力妖怪たちが舞台袖から現れた。彼らはごろごろと台車を押し、参加者たちの傍に布で隠された何かを持ってくる。

「さーて、予選の種目さんはー──(デケデケデケ……デデドン!)──そう! 智と暴の戦い、カード合戦やぁーっ!」
 親分の宣言に合わせて布が取り去られると、台車の上には半透明の小さなケースが山のように積まれていた。目を凝らしてみると、そのケースの中にはどうやら60枚程カードらしきものが入っているようだ。
「ワイちゃん考案のカードゲーム、デュエリストブレイド! こちら、きっちりはっきりしっかりにっこりルールに則って遊んでももちろんお楽しみいただける一品なんですけども、今回は何と!」

 胸元から一枚のカードを取り出し、彼女は再び自身の口からドラムロールを鳴らし始める──突如、彼女は勢いよくそのカードを投げ放ち、参加者待機エリアの最前列にて欠伸をしていたモヒカン頭の妖怪の顔面にそれを面子めいて叩きつけた! よもや血迷ったか!
 直後、カードから色取り取りの魔力弾が発生! 花火めいて広がる弾幕の発生源、その根本にいたモヒカン妖怪の顔面と毛根は爆発四散! サツバツ!

 いつの間にやらステージ上から降りてきていたらしき新し親分が、つんつん、と元モヒカン頭の妖怪の体をつつく。
「大丈夫? 息できる? ……一妖怪(ワングイリー)、生存確認! ヨシ!」
 びしっと人差し指を指すポーズを取った後、彼女は参加者たちの方へと向き直った。
「っちゅー訳で! このカードを使って、今日は皆さんにちょっとシバき合いをして貰いまーす!」

 これまたいつの間にやら手にしていたカードから弾幕を放ち、司会者たる親分はざわつく参加者たちを軽く威圧するようにしてみせる。
「そこにあるデッキケースを手に取り、カードを投げ合って戦えぇー! 戦わないなら帰れぇー! 戦わなければ生き残れへんぞ!」
 わざとらしく作ったダミ声でそう言い終え、すたん、と軽やかな音を立てて宙返りしてステージ上に舞い戻ると、彼女は可愛らしくポーズを取り、そして可愛らしい声を上げた。

「それじゃあ早速ー! ブレイダーバトル、ショウ・ダウンッ!!」

 試合開始を告げる掛け声らしきその台詞が、突然言い放たれてから数秒後。
 参加者たる骸魂たちは一斉に猟兵たち──では無く、台車上のデッキケースの山へと殺到し始める……!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

◆お知らせ◆

●1章のプレイングボーナス:カードの弾幕に対処する。
・それっぽいTCG用語を叫びながらカードを使用するとカードから魔力弾が出ます。敵は通常のユーベルコードに併せて弾幕を放ち攻撃してくるので、PCの方々もカードの弾幕やユーベルコードを用いてそれに対抗してください。
・大量にデッキケースが用意されているため、PCは自分の思い通りの好きなカードデッキ(64枚くらい)を持っているものとします。
・あくまでもプレイングボーナスであるので、カードや弾幕に関する演出等を記載しなくとも構いません。

●プレイング受付開始予定時間
07/26(月) 08:30~
黒木・摩那
人気が出すぎてしまうのも困りものですね。
他ならぬ親分からの頼みとあれば、断れるはずないじゃないですか。
骸魂の数減らしのお手伝いさせていただきます。

まずは予選突破しないとですね。

先手必勝です。
ヨーヨー『エクリプス』を使って【先制攻撃】します。
台車の上のデッキケースを【武器落し】で跳ね飛ばし、自分の分は【念動力】で回収します。そして、カードデッキで弾幕形成。「ミラーイメージ」として、弾幕避けに使います。

さらにカードの一部をUC【乱舞雷花】の発動に使って、まとめて攻撃します。





「おいテメエッ! そのデッキはオレが先に目ェ付けてたんだよ!!」
「知るかボケェ! トロトロしてる方が悪いに決まってンだろォッ!?」

 西洋妖怪風の外見をした骸魂たちが、デッキケースの山に群がりながら殴り合いの大喧嘩を繰り広げ始めた。
 このまま放っておいても勝手に自滅してくれるのでは無かろうかとも思える、サマーバーゲンのワゴンセールを彷彿とさせるようなその光景を眺めながら、黒髪の少女猟兵──黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は小さく息を吐く。

「人気が出すぎてしまうのも困りものですね……」

 色々と思う所はあるものの、今回の一件は新し親分──先日の大祓百鬼夜行の際に虞知らずの技を伝授して貰ったり、一緒に花火(?)で遊んだりもした、あの彼女からの頼み。
 断れるはずないですよね、と心の中で独り言ちつつ、摩那は懐から幾何学模様の描かれたヨーヨーを取り出した。
「何にせよ、まずは予選突破しないとですね。先手必勝です!」



 ドグシャァーッ!

 ぎゅいん、と音を立てながら突然飛来した謎の円盤──摩那の投げ放った超可変ヨーヨー『エクリプス』が、半ば台車にのし掛かるようにしていた数体の骸魂たちごとデッキケースの山を吹き飛ばす。

「てっ……テメェ、よくもやりやがったな!?」
 何とか直撃を避けたらしき厳つい見た目の骸魂が傍らにいた小柄な男の体をむんずと掴み、摩那に向かって投擲せんとする──が、その寸前。先のヨーヨーに付加されていた魔力により小規模な竜巻が発生し、彼らもまた台車に僅か残っていたデッキケースごと盛大にぶっ飛ばされる仕打ちとなった。
 摩那は嵐に吹き飛ばされるデッキ群の姿を赤い眼鏡越しに素早く見定め、そのうちの一つに狙いを付けて念動力を放つ。ひゅん、ぱしり。瞬く間も無く、彼女の手中にデッキケースが収められる! ワザマエ!

 先の嵐の兆候を野生の勘でいち早く感じ取り回避行動を取っていた、いかにも狼男です、といった風貌の男が非難の声をあげた。
「ず、ズリィぞオメーッ!?」
「もたもたしているあなた達が悪いんです!」
 ぴしゃり、と言い返しつつヨーヨーを引き戻し、摩那はケースからカード束を素早く取り出すと共に一番上にあったカードをドローする。

 とても綺麗なイラストが描かれているそれを見、やっぱり投げたりして使うのは何か間違っている気もしますね、等と一瞬考えつつも、彼女はヨーヨーを持っていない方の腕を大きく振りかぶり──

「──速攻魔法発動っ、多相鏡面(ミラー・イメージ)!」

 宣言と共に投げ放たれたそのカードは銀色に輝き出したかと思うと、まるで細胞分裂するかのようにして急速にその数を増やし、そして突如空中で静止してその場で待機するようにぷかぷかと浮かび始めた。

 一体何をされるのか、と警戒するあまり慌てて駆け出した末に無様にすっ転んだ狼男が、近場に転がっていたデッキケースを慌てて手に取り──そして思い直すようにして頭を振る。
 この己の周囲に疎らに浮かぶ鏡共が、何の用も為さない存在であろうはずが無い。下手に弾幕を放ちアレに当たろうものなら、良くても破壊出来るだけ、最悪何かしらの手酷い反撃を受けることになり兼ねない。そう判断し、彼はケースを投げ捨て何やら構えを取り始めた。

「触らぬ紙に祟りなし! 弾幕なんか必要ねェ、直接殴ったらァ! 《ルナティック・ムーン・ライト》!」
 彼がそう吼えると共に、彼、そして摩那の立つ辺りの一角が少し暗くなり、広い室内の高い天井付近に丸い形をした何かが出現した。奇妙な存在感を持つそれから朧げに光が放たれ始めるのとほぼ時を同じくして、狼男が小刻みにステップを踏むようにして浮かぶ紙片を躱しつつ摩那の許へと駆け出す……が、しかし。それを摩那が黙って見ているはずもない。
 彼女は再び念動力を放って浮かぶ鏡面の位置と角度を調整し、先程出現した満月らしきものから降り注ぐ月光めいた光を彼女自身と狼男のどちらにも届かぬよう反射する陣形を取らせた。チッ、と、尚も駆ける狼男が舌打ちする音を聞き流しつつ、摩那はスマートグラスを用いて複雑に計算を続ける。

(励起。昇圧、帯電を確認……)
 直前まで悟られぬよう、彼女は心内でタイミングを見計らい──そして。
「……散開っ! 《乱舞雷花(フルール・イリゼ)》!」
 その掛け声と共に、中空に浮かぶカードの3割程が色とりどりの花びらへとその姿を変えた。

「なっ……!? 一体何を──」

 狼男が素っ頓狂な声を上げた、その瞬間。
 七色に輝く花びらから電流が迸り、周囲に残存していた鏡にそれが衝突。刹那、まるで狼男を取り囲むようにして反射・拡散された高圧電流が一斉に男へと襲い掛かる!
 ……哀れ、狼男は戸惑いの台詞を続けることも無くその場に倒れ伏し、戦闘不能状態に陥った。そして、先の魔力嵐で吹き飛ばされそのまま床に転がっていた骸魂たちも、その猛烈な電撃の余波を受け次々と感電、昏倒していく──

 ──無論それは乱雑に反射が行われた末の偶然等では無く、そうなるように計算して鏡面を配置した摩那の意図通りの結果ではあったのだが、ともあれ数十秒も経たないうちにその場で立つ者は摩那だけと相成った。

「露払いとしては上々でしょうか……」
 小さく呟きつつ、彼女は素早く辺りを見渡す。
 予選は始まったばかり、骸魂たちの残存数もまだまだ多い。だが、この調子なら『本戦』とやらが始まるまでそう時間はかからないかも知れない──そんなことを考えつつ、再び数減らしの手伝いをせんとするべく彼女は別の台車がある方向へと駆け出していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴォルフスブルク・ヴェストファーレン
か、カードが爆発した…てーつぇーげー?というのはこれが初めてですけど恐ろしいものなんですか…?

うーん愉快な人達でいっぱい…彼らを穏健に退治すれば良いんですね?
それにしても月の光が綺麗で…なんだかわかりませんが斬ればいいですね
全員斬ればいいですっ!絶対に逃しません!私は冷静です!!

剣を上段に構えて近づきモンスターズの頭に剣の腹を振り下ろします!翔剣士らしく軽快に飛び回れば弾幕だって避けられます!水着の状態なら装甲はないので更に加速できますね!何人たりとも斬ります!なんで斬られてないですか!
なんですかカードが欲しいんですか!?欲しければあげます!さあ!どうぞ!(一体一体口に64枚分ねじ込みつつ)





 次にヴォルフスブルク・ヴェストファーレン(鉄の狼・f34026)が登場する。彼女は気が狂っていた。

「あは、あはははは! きらっきら光って綺麗ですね!! 世界がこんな輝きに満ち溢れているものだったなんて、私っ! 知らなかったです!!!」

 降り注ぐ魔力弾の射光、そして頭上で揺らめく朧げな光を受け、その弾幕を紙一重で躱し続ける水着姿の彼女の白い肌、そして仄明かりを受けた長い銀の髪が幻想的に煌めく。
 ある種の神々しさすら感じられる──そんな光景ではあったのだが、しかしそれを見て感嘆の声を上げるような者は残念ながらこの場には存在しなかった。ここに存在するのは軽快に飛び回りながら笑い声を上げる彼女と、その付近の床の上にて口に何かを詰め込まれた状態で失神している妖怪たち、そしてその惨状を見て戦慄する妖怪たち──程なくしてその床に転がる同胞とほぼ同じような運命を辿ることになるであろう、骸魂たちだけであった。



 事の起こりは数分前。

「かっ、カードが爆発した……」
 新し親分が説明と見せしめを兼ねてカードを炸裂させたのを見、戦々恐々、といった様子で、水着姿の女猟兵──ヴォルフスブルクは小さく呟く。
「て、てーつぇーげー? ……というのはこれが初めてですけど、恐ろしいものなんですか……?」
 無論このデュエリストブレイドという名のTCGが特別奇怪極まる物体であるというだけの話ではあるのだが、その辺りの事情を彼女が知る由もない。

 戸惑いと焦りの入り混じる彼女の心を置き去りにするかのようにして、司会者たるバズリトレンディが試合開始の号令を発した。数十秒もしないうちに、周囲で怒号が飛び交い始める。骸魂たちがデッキケースの奪い合いをしているのだ。
 どうしようどうしよう、とおろおろしていたヴォルフスブルクだったが、暫くして意を決したように一人頷くと、彼女は剣を握り西洋妖怪然とした骸魂たちの方へと向き直った。
「とっ、とにかく彼らを穏便に退治、しない……と……?」

 そして、彼女は広い室内の高い天井付近に浮かぶ丸い物体──付近で争う狼男のうち一名がユーベルコードを使用したことにより出現した、月の姿を視認する。

「……? 何でしょうかあれ、月? 綺麗な光──」
 当然の結果として、ヴォルフスブルクはその精神を錯乱させる狂気の月光をもろに浴びる羽目になってしまった。突然の目眩と吐き気が彼女を襲う。
「──っ!? ぅう、あっ──」

 彼女の思考は流転する。上手く考えがまとまらない。先にも増して何が何だかよくわからなくなってきた。何か拠り所になるものはないだろうか。
 前後不覚に陥る最中、彼女は自身の手の内に何かが握られていることに気づく。確か、これは──剣。剣だったはずだ。紛うことなき私の剣……そう、剣だ。剣に頼ろう。だって私は翔剣士だし、翔剣士は剣を使うものだから。
 剣を持った私は一体何をすればいい? それはもちろん、斬ることだ。だって剣は斬るものだから。そう決めた。全部わかった。

「──わかりました!」

 近くで大声が上がったのを耳にし、デッキケースの山に群がっていた妖怪たちがその発生源──水着姿の謎の女へと視線を向けた。

「つまり斬ればいいんですね! 全員斬ればいいですっ! 絶対に逃しません!! 私は冷静です!!!」
 そう言うが早いか、ヴォルフスブルクは剣を上段に構えながら台車がある方へと駆け出し、その途中でだん、と大きく踏み込むようにして空中へと跳んだ。
 彼女が用いる《Wolfs Gambit》という名のユーベルコードは、翔剣士にしてガレオノイドである彼女自慢の“脚”を活かして超速の攻撃を見舞う技だ。しかも、諸処の事情により水着が一張羅の状態と化している現在の彼女は過去一番と言っていい程に身軽な状態にあると言える。

 骸魂の群れの真っただ中へと着地した彼女は、そのまま目にも留まらぬ速さでその集団を攪拌するかのようにして駆け回る。すれ違いざまに西洋妖怪たちの頭部目掛けて次々と剣が振り下ろされ、しゅぱん、という風切り音が何度も鳴った。

「ぐあッ! きっ、斬られ……て、ない……?」

 神速の斬撃を受けた骸魂たちの一人が叫び声──と、戸惑いの声をあげた。激しい鈍痛こそ感じたが斬られたような感触はなく、不思議に思った彼は恐る恐る己の頭に手を伸ばす。
 やはりと言うべきか、そこにはたん瘤こそあれども切創の類は認められない。一体何が起こったのか、と、襲撃を受けた西洋妖怪一同は怪訝そうな表情をそのいかつい顔に浮かべた。

 ……先の襲撃者らしき女の手元をよくよく観てみれば、その剣の持ち手の握り方は滅茶苦茶だった。刃筋が立っていないとかそういう次元ですらなく、ただ少し鋭利な部分のある棒を持っているだけに等しいといった状態だ。
 先程何やらよく解らないことを叫んでいたし、月の狂気に侵されているのだろうか──剣の腹で殴られた妖怪たちはそんなことを考えながら、頭を摩りつつも改めて水着姿の女猟兵の姿を眺める。

 そしていつの間にやら走るのを止めて妖怪たちの様子を伺っていたヴォルフスブルクの心にも、途轍もなく大きな疑問と不安の感情が湧き出てきた。
 剣を振って、頭に命中して、でも斬れなかった。相手の頭が頑丈だった? でも私は翔剣士なのに。翔剣士は剣を持っていて、斬るものなのに。こんなこと絶対におかしい。何故?

 何が何やらといった様子で目をぱちくりと瞬かせていた一人の狼男の傍へヴォルフスブルクはつかつかと歩み寄り、そしてぽつりと呟くようにして彼に問いかける。
「……なんで、斬られてないんですか?」
「は? 何でも何も──」
 ばしん。
 そんな持ち方で斬れるはずがないだろう、と言葉を続けようとした男の脳天に、再び衝撃が走った。

「なんで斬られてないんですか……!」
「い、いやちょっ──」
 ばしん。
「なんで斬られてないんですか!!」
「だっ、がっ……!」
 びしん、ばしん。
「なんで斬られてないんですか!!!」
「……っ、ぁ──」
 ばしん、びしん、ばしん。
「なんでっ! 斬られて、ないん、ですかぁっ!! なんでっ!? どうしてっ!!??」
 びしんばしんびしんばしんびしんばしんびしんばしんびしんばしん──

 ──三寸斬り込めば人は死ぬ、とはとある剣術流派に伝わる言葉であるが、別に斬らずとも鉄の塊でがんがん頭をぶん殴るだけで人は普通に死ぬ。
 無論ここに居るのは人ならぬ妖怪、それも骸魂の憑依したものであったので幸い死ぬまでには至らなかったのだが、然りとてその激しい殴打は頑強な身体を持つ妖怪の意識を刈り取るには十分過ぎる程の暴威を誇っていたと言えよう。

 白目を剥いて失神しかけている男の片手から、ぽとり、と床に何かが落ちた。何でしたっけこれ。男の毛むくじゃらの手指が痙攣するようにしてひくひくと震える。この落としたケースを拾おうとしてるのかな。
 尖った棒を振るうのを一旦止め、彼女はケースを拾い上げるとその中身を取り出して眺めた。ああそうだ、確かTCG(テーツェーゲー)とかいうやつだ。さっきこれを使って戦えって言われましたっけ。
 狼男の手が尚も震える。そんなにこのカードを持っていたかったのかな。それならあげよう。使い方よくわかんないし。それに、あげたら大人しくしてくれるかも知れない。

「カードが欲しいんですか? ……欲しければあげます! さあ、どうぞっ!!」

 そう元気良く言い放つと、彼女はまるでポストの投函口に分厚い封筒を無理矢理詰め込むかのようにして男の口の中へとカードを捻り込んだ。デッキ丸ごと、枚数にしておおよそ64枚分を一斉に。
 威力としては先の殴打よりも弱い、しかし結果的にとどめとなったその口腔への攻撃を受け、狼男はそのまま仰向けになって倒れた。

 カードが貰えて“へそ天”になるなんて、このオオカミさんよっぽど嬉しかったんだなあ。
 そんなことを考えながら彼女が辺りを見回すと、丁度そこにはデッキケースの山があった。これをどんどんみんなに配ればみんな喜んでみんな大人しくなってくれる、そうに違いない。
 得心がいった様子で一人頷くと、彼女はぶぅん、と上半身を反らせるような姿勢をとって妖怪たちの方へとその燦然と輝く赤い瞳を向け──



 ──そして、現在に至る。

「あははははは! あなたにもカード、カードをあげますねっ! ほら遠慮なさらずに!!」
「だっ、弾幕! もっと撃て、撃てェッ!」
「それより早くアレ引っこめろやァ! 誰だよあの月出したバカはよォーッ!?」

 水着姿の女が、ひらりひらりと弾幕を躱しながら西洋妖怪たちを襲う。
 宙に浮かぶ月の光が収まるのが先か、それともこの付近にいる骸魂たちが全員くたばるのが先か。どちらが先になるにせよ、彼らに未来はない──

成功 🔵​🔵​🔴​

ヘンペル・トリックボックス(サポート)
「ヘンペルと申します、しがない紳士です。お茶のついでにちょっとしたマジックでも……如何ですかな?」
【設定】
 UC偽身符で作られた、本物そっくりの式神です。
【イメージ】
 のらりくらりと現れる、紳士姿の胡散臭い奇術師です。胡散臭いの延長線上で、符術も使います。
【性格】
 常に礼儀正しい姿勢ではいますが、要所要所でしれっとボケを入れる剽軽モノ。放っておくと延々戯言を垂れ流します。
【行動理念】
 『誰かの笑顔のために』行動します。水面下で老体に鞭打って頑張るタイプです。
【好き/嫌い】
 笑顔、のんびり、甘いもの/作り笑い、不実、紳士的でない行動
【その他】
 ノリは良い方です。感覚で動かしていただいて結構です。


ティモシー・レンツ(サポート)
基本は『ポンコツ占い師』または『本体を偽るヤドリガミ』です。
カミヤドリも魔法のカードも、「Lv依存の枚数」でしか出ません。(基本的に数え間違えて、実際より少なく宣言します)
戦闘についてはそれなりですが、戦闘以外は若干ポンコツ風味です。(本体はLv組で出せない、UCの枚数宣言や集団戦は数え間違える、UCを使わない占いは言わずもがな)

ヤドリガミの「本体が無事なら再生する」特性を忘れて、なるべく負傷を避けつつ戦います。
オブリビオンに止めを刺すためであれば、猟兵としての責任感が勝り、相討ち覚悟で突撃します。
でも負傷やフレンドファイヤ、代償は避けたいお年頃。





 そして別の一角にも、弾幕を躱し続ける一人の猟兵の姿があった。

「く、くそっ! 何で当たらねぇんだよ!?」
 着物姿の彼──ティモシー・レンツ(ヤドリガミのポンコツ占い師・f15854)のその身のこなしは決して遅くは無いものの、先の女猟兵のそれに比べれば幾分かは常識的な速さではあった。しかし、不思議なことに何故か攻撃が当たらないのだ。西洋妖怪たちは半狂乱になりながら弾幕を放ち続けるが、やはり当たらない。

 当然ながらその現象は偶然等ではなく、それは何処か頼りなさげな雰囲気が感じられないこともないこの彼、ティモシーの、計算に基づく行動に依り導き出された事象であった。
 敵の配置、カードが構えられ投げ放たれるまでのタイミング、そしてそのカードから生じる弾幕がどのようなものであるか。それを瞬時に推測した上で、時には距離を取り自身狙いの魔力弾を紙一重で回避し、時には大胆に接近して骸魂の手からカードを叩き落とし、変幻自在とも取れる動きで彼は敵を翻弄する。

(うーん……避けるのは割と簡単だけど、数が多くてちょっと疲れるなぁ……)
 今の相手の調子であれば諸所の推測は容易いものの、自分を狙う敵の数が増えれば苦労するかも知れない──半ば無意識的に計算をしながら頭の片隅でそんなことを考えていたティモシーの視界の端に、狼男の姿が飛び込んでくる。カードを手に持たず、しかし何やら怪しげな様子だ。恐らくユーベルコードを発動せんとしているのだろう。

「それ、さっき見たからね……っ!」
 ティモシーは一旦大きく飛び退ると、近場にあったサーボクレーンカメラのアームを踏み台にして高く飛び上がり、そして何もない空間に向け蹴撃を放つ……否、そこは“何もない空間”等では無かった。彼が脚を突き出す体勢を取ったのとほぼ同時に、そこには月が出現したのだ。
「Achooooo!!」
 怪鳥音と共に放たれた鋭い跳び蹴りにより空中に出現した球体は即座に破壊され、狼男の目論見もろとも灰燼に帰した。勢いをそのままに天井付近まで飛び上がったティモシーは付近の手ごろな配管を素早く掴み、照明設置用の足場の上へと見事に着地を果たす。

「……あれ? これどうやって降りればいいの?」



(おや、あれはもしや──)
 先程からティモシーの俊敏ながらも何処か独特な所のある身のこなしを眺めていた、UDC支部の局長を務める身たる一人の猟兵──ヘンペル・トリックボックス(仰天紳士・f00441)は、とある噂話を思い出した。

 曰く、UDC組織には秘伝の徒手空拳武術が存在している。
 曰く、それは統計学や確率論等の科学的見地に基づく拳技であり、術理を学べば誰でも使用することが出来る。
 曰く、その術理が記された文書は門外不出とされているが、一定以上の階級を持つ者であれば自由にコピーを入手することが出来る……云々。

「──驚いた。与太話の類とばかりに思っていたのですが、まさか実在するとは」
 “UDC神拳”と呼称されているらしきあの矛盾をはらんだ謎の武術を用いる辺り、恐らくあの着物姿の彼はUDC組織に属しているか、あるいは組織に近しい関係の者なのだろう。天井付近のキャットウォークに着地した仲間の姿を見、彼はそう当たりをつける。
「それはさておき、彼にも助力いただきましょうか。おーい、上にいる御方ー!」
 降りる場所を探してきょろきょろ辺りを見回していたティモシーがその呼び掛けに気づき、ヘンペルへと大声を返す。
「……うん? えーっと……それってー、僕のことー?」

「そう、そこのあなた! 恐縮ですが、照明をいくつか落としていただけませんでしょうかー!」
「電源を切ればいいのー? やり方よくわかんないけどー!」
「いえっ、そうではなく! 物理的に、落下させて欲しいんですよー!」
「えっ? でも、そんなことをしたら危ないんじゃ……?」
「大丈夫です、他の方々にも決してご迷惑はおかけしませんからー! 紳士ですのでー!」

 何処となく自信のようなものが感じられるその応答を受け、それならいいか、と、ティモシーは照明が備え付けられた梁の方へと向き直ると拳打を放つべく構えをとった。
「たくさん落ちると思うから、気を付けてねー?」
 そう注意を促し、彼は共振現象を引き起こすパンチを梁に打ち込んだ。神拳を受けた梁はその振動を周囲に伝達し、照明を固定しているボルトが次々と緩み──がたがたがたん、と大きな音を立て、数多の照明が一気に落下していく。

 頭上から鳴り響く騒音を他所に、紳士は小さく呟いた。
「……さて、どの唄を謡いましょうか」



 カードを投げるのを一旦止めて注意深く周囲の様子を観察していた、吸血鬼風の出で立ちをした骸魂がマントを翻した。
「何やら企んでいるご様子ですが……フフ、月が無いなら好都合! いでよ、ミーのしもべたち──《ブラッディ・ヴァンパイア・バット》ッ!」
 天井から照明が落ちてこようとも、幾何学的な軌道で飛ぶ吸血コウモリたちなら避けるのは訳ないはず。そう考えた上での行動であったが、しかしそのドラキュラ男の考えには大きな誤算があった。

 落下してくる照明、そして自身の許へと飛来するコウモリの群れを全く意に介していないかの様子で、舞台上の紳士──ヘンペルは、朗々と童謡を歌い始める。
「“Hey my kitten, my kitten, And hey may kitten, my deary!──”」
 すると、落下してくる照明──金属とガラスにより構成されたそれらが、次々と可愛らしい猫の姿へと変貌していく。

「なっ……!?」
 ヘンペルのユーベルコード《きみに謡う名も無き童話(ワンダーワーズ・マザーグース)》の効果により意志持つ猫へと変化したそれらは華麗に空中で体勢を整えると、ある者はそのまま地面に着地し、またある者は落下の勢いを生かしてコウモリを爪で引き裂き、ヘンペルの周囲に陣を形成する。
 まさか能動的な攻撃を受けるとは夢にも思っていなかったであろう吸血コウモリたちに、その頭上より雨あられと襲い来る哺乳綱食肉目からの襲撃を躱すことなど到底出来ようはずもない。ドラキュラ男の手下共は敢え無く駆逐され、その場に残るはヘンペルとドラキュラ男、そして可愛らしい猫たちのみと相成った。照明が物理的に落ちた薄暗い一角で、数多の猫の目が獰猛に光る。

「“──Here we go up, up, up, And here we go down, down, downy──”」
「やっ、やめ……っ!!」
 紳士がそう歌うのを号令代わりとし、その可愛らしくもしなやかで逞しい体をした猫たちは一斉に吸血鬼へと襲い掛かった。顔を引っかいたり噛みついたり、その一体一体の力こそか弱いものではあるが、何せこの物量だ。如何な骸魂と言えども、多勢に無勢といった所だろう。

「“──And here we go round, round, roundy.”」
 ヘンペルの歌に合わせ、猫たちはその場でくるくると回る。
 丁度それを照らし出すかのようにして、その薄暗い一角がスポットライトで照らし出された。よくよく周りを見回してみれば、数台のカメラもこの一角へと向けられている。バズリトレンディ言うところのこの予選とやらも、恐らくはしっかりと撮影されているのだろう──ならば、と、ヘンペルは恭しくお辞儀をして見せる。

「……それでは引き続き、前座代わりのショウタイムと洒落込みましょう」
 TCGの方はともかくとして、カードマジックなら多少の覚えはある──いつの間にやら手にしていたカード束を手際よくシャッフルして見せ、紳士はカメラに向かって悪戯っぽい笑みを浮かべた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レイチェル・ノースロップ(サポート)
『OK。お姉さん、頑張っちゃう♪』
 人間のスーパーヒーロー×マジックナイト、23歳の女です。
 普段の口調は「エセ外国人な口調(ワタシ、ユー、デス、マス、デショウ、デスカ?)」、真剣な時は「おどけずにシリアス(私、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、かしら?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!





「い、いつ終わるんだよ!? この予選っつーのはいつ終わるんだよーッ!!」
「クソッ、せめてボスだけでも決勝に送り出すぞ! 時間稼げェ!!」

 仲間の西洋妖怪衆──骸魂たる者たちが、明確に狙いを定められた上で“狩られて”いる。よくよく周りを見回して見れば、そこにはちらほらと猟兵の姿。
 カードバトル(物理)に専念するあまり周囲の状況を把握出来ていなかった骸魂たちは漸くその事実に気づき、少なくなりつつある仲間を集め陣を組み始めた。

「What's? Umm……何やら親分めいたエネミーがいるようですけれど、大きい奴らのせいでよく見えないデスネー」
 白黒赤色のバタフライマスクで目元を隠した、いかにも忍者──否、“ニンジャ”然とした衣装に身を包んだ金髪の女猟兵レイチェル・ノースロップ(ニンジャネーム「スワローテイル」・f16433)は、敵群を見やり眉根を寄せた。
(でも、纏まってくれたのは寧ろ好都合かしらね。纏めてぶっ飛ばしてあげましょう!)

 心内でそう独り言ちるも、しかし軽率に突撃するようなことはせず、タイミングを計るようにしてレイチェルは構えを取る。



「そもそも予選がどうだとか知ったことかァー! 全部ぶっ壊してやるぜェーッ!!」
 人造人間めいた風貌の男妖怪が半ばやけくそ気味にそう叫び、その筋肉隆々の体躯をより一層膨らませる。怒りの感情に応じて身体強化が為されるユーベルコードを発動させたらしき彼は直近にあった台車の上に積まれていたデッキケースを鷲掴みにし、それらを纏めて投げ放った。
 投げ放たれたカード束の幾つかは床やら壁やらあるいは障害物に着弾すると共に爆裂し、でたらめに魔力弾の弾幕を発生させる。カードの魔力があの巨漢のユーベルコードに半端ながらも共鳴したりしているのだろうか?
 詳しい原理は不明だが、そもそもからして何故叫びながらカードを投げると魔力弾の弾幕が発生するのかというのもよく解らない辺りはある。今重要なのは、あの調子で暴れられ続けると近づくのが面倒ということだ。

 巨漢が何度目かの投擲を行うべく、ケースをむんずと掴む……と、突如その手元に細長いクナイが飛来! 彼にとっては運悪くも、クナイ・ダートが突き刺さったデッキケースはそのまま爆発四散!
「グワーッ!! ……なっ、何だァッ!?」
 魔力爆発の余波を喰らいつつも何とか軽傷で済んだらしき残りの骸魂たちに、声をかける者の姿があった。レイチェルだ。

「ドーモ、ムクロダマ=サン。スワローテイルです」
 奥ゆかしくオジギを済ませた彼女は改めて敵の様子を見やる。当然というべきか無礼というべきか、骸魂たちはアイサツを返すそぶりを見せていなかった。
 やれやれ、とばかりに態とらしく肩をすくめ、直後その全身に黄金のニンジャオーラを纏った彼女は敵陣へと勢い良く突っ込んでいく。

「何だか知らんがふざけやがって……力比べでもするつもりかァ!?」
 悪態を吐きつつも急いで体勢を立て直した骸魂たちは、件の“ボス”を守るべく肉壁を形成する──が、そんな急ごしらえの策が通じるスワローテイルことレイチェルではない。

 スワローテイルはメンポマフラーを棚引かせつつ一際大きな体躯をした骸魂の足元へと低空タックルをぶちかまし、そのまま相手の両脚を掴むとその場でぐるぐると回転し始める!
「イイイイヤァーーーッ!!!」
「「「アアアアバァーーーッ!!!」」」
 その金色のオーラを纏った猛然たる回転はやがてタツマキとなり、周囲の骸魂たちを巻き込み纏めて吹き飛ばすに至った! ワザマエ!

 どさどさと床に落下していく骸魂たち──が、その中に一体。ひらり、と、空中で体勢を整え、着地する者がいた。
「Oh、なかなかやりますネー。ユーが“ボス”、ってことでOKかしら?」
 金髪碧眼のニンジャガールからそう声を掛けられ、その幽鬼めいた赤黒い影はゆらりと振り返った……



 ……が、ここで突然。
 変なタイミングと言うべきか、あるいは漸くと言うべきか。この御殿の主人にして新し親分たるバズリトレンディの声──予選終了を告げる号令が、場内のスピーカーから響き渡った。

『……ハイ、終了ーッ! 白熱してる所すまんが一旦区切らせて貰うやで! メインイベントはCMの後っ!!』

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『『深紅の死神』プルプルンゼンゼンマン』

POW   :    マサーカー・トーテンシェーデル(虐殺髑髏)
【殺戮への渇望】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    グラオザーム・ヒンリヒトゥング(残忍処刑)
【鏖殺の大鎌】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    トート・シックザール(死の運命)
攻撃が命中した対象に【死を招く呪い】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【様々なバッドステータスが発生する呪い】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠夢幻・天魔です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 何度目かのCMが開け、場内に快活なジングルが流れ始める。
 急ピッチで改装が行われた本戦ステージ上は、さながらクイズ番組といった様相を呈していた。少し奇妙な所があるとすれば、各回答者席の間隔が比較的大きめに取られており、またその並びは横一列ではなく円状に配置されているということくらいだろうか。
 
 回答者席に取り囲まれるような形で存在しているその場ミリテープすら存在しないやけに広々とした空きスペースの中央に立ち、バズリトレンディが手持ちマイクを構えた。
「さあ、本戦のお時間やで! お待たせいたしました、いやお待たせし過ぎたかも知れません! まあ実際お待たせしすぎてそろそろ季節が変わりつつありますからね(実話)。うんじゃ、ま、例のやつやるやでー。UDCアースでー! 生きたいかーっ!」

「い、生きたーい!」
 円形に並ぶ回答者席群の一角、ただ一人本戦に残った骸魂が、戸惑いの色を滲ませながらも大きな声を返す。
 死神めいた容貌を持つ彼の名は『深紅の死神』プルプルンゼンゼンマンというらしい。何故名前が判るのかというと、そんな名前が回答者席のネームプレートに印字されているからだ。

「おっ、見た目からして骨のある子がおるわいな! 二つ名っぽいのがあるなんて格好いいね!」
「え、えーっと……ふ、フハハハハ! 我輩こそが魂の狩人、『深紅の死神(プルプルンゼンゼンマン)』なるぞ!! ……こう、二つ名ではなく。深紅の死神をドイツ語読みして、プルプルンゼンゼンマン、ってことであるぞ、うむ」
 キャラを取り繕うようにしながらそう応じつつも、幽鬼めいた赤黒い姿の骸魂は周囲の様子を注意深く観察していた。何せ、周りは猟兵だらけな上にここは妖怪親分の作り出した摩訶不思議な領域の真っ只中なのだ。
 逃走した所で追撃されるのは必死、ならばまだこの“番組”の進行に従って行動していた方が多少は生き残る望みがあるかも知れない──そんな算段のもと紅衣の死神は回答者席にその身を置き、隙を伺いつつ大人しくしている状態にあった。少なくとも、今はまだ、といった所ではあるが。

 ともあれ。そんな彼の様子に、慈しみ溢れる後方理解者面を浮かべながらしきりに頷きを返してみせるバズリトレンディ。
「ほうほう(梟)。で、プルゼンスキー君。自信の程は如何かしらん?」
「プル──あ、いや。我輩、こう見えても実は結構長寿自慢! 亀の甲より年の功、たかがバラエティ番組のクイズ如きは物の数にも入らんわァ!!」

「うんうんそうだねー。そんじょそこらにあるごく普っ通ぅーのクイズ番組なら軽くあしらわれちゃうんでしょうネ。嗚呼、しかし! そんな貴方の願いは叶わない! だってこれワイちゃんの番組ですしおすし──という訳で、こちらをご覧くださいやで!」
 デデン、とSEが鳴ったのを合図に、吊り下げ式の大きな液晶パネルが数枚ステージ上方から出現した。
「えー、このアルトラ・クイズ。単にクイズの回答をすれば良いだけって訳じゃあござぁせん。ルール説明のお時間やで! 別に聞き流して貰ても構わへんけどな!」

□■□■□■□■□■
・ルールその1:
 この『アルトラ・クイズ』は、クイズと乱闘を交互に行うことによって進められる。最初はクイズのラウンドから始まり、司会者が合図を行う度にクイズと乱闘のラウンドが切り替えられる。
・ルールその2:
 クイズは基本的に早押し形式で出題される(司会者の気分次第で他の形式になることもある)。問題のジャンル分け等は存在せず、出題傾向は無軌道。
 早押し形式クイズの場合、誤答した回答者はその問題への回答権が無くなり、正解するとバズリトレンディ人形が1つ貰える。その他の形式の場合は都度説明が行われる。
・ルールその3:
 司会者がゴングを鳴らした瞬間、即座に乱闘のラウンドが開始される。回答者たちは速やかにクイズの進行を中断し、ステージ上のバトルスペースにて他の回答者たちと戦闘を行う。
 再度ゴングが鳴らされると乱闘のラウンドは終了し、クイズのラウンドとなる。回答者たちは可及的速やかに戦闘を中断して回答者席に戻り、クイズの進行を再開する。
 また、乱闘のラウンドには司会者も参戦する(司会者は気分に応じて任意の回答者に襲い掛かったりする)。回答者は司会者を攻撃することが出来、司会者への攻撃命中回数が一番多かった回答者はその乱闘ラウンド終了時にバズリトレンディ人形が3個貰える(命中数が同じだった回答者が複数いた場合、全員人形が貰える)。
・ルールその4:
 規定の時間が経過した時点で一番多く人形を持っていた回答者が、この『アルトラ・クイズ』の優勝者となる。
・ルールその5:
 頭部を破壊された者は失格となる。いくら人形を持っていようと、乱闘の結果戦闘不能になったり死んだら負け。
□■□■□■□■□■

 液晶パネルに表示されたそんな説明スライドの文章を指差し棒を用いたりして示しつつ、バズリトレンディは説明を続ける。

「みんなは“チェスボクシング”って競技を知っとるけのけ? 大体あんな感じです。まあアレですわ、『この惑星(ほし)は暴力を中心に廻っている 暴力こそ生』……って、ちょっと前に映画化記念で無料公開されてた某漫画にも書いてあったやで」
 司会者にして勝負の立会人たる彼女は恭しくお辞儀をしてみせると、姿勢を正して回答者席群をぐるりと一瞥した。
「あ、もちろん真っ当にクイズに答えて普通にワイちゃん人形集めるだけしてくれてもええんやで? 各々やりたいようにやったらええねん、ノリと勢いで何とかせい! 何はともあれ──長ったらしい説明は終わりにして、そろそろ始めようやないか!」

 鼠耳の女司会者が八重歯を覗かせるようにしてにやりと笑い、ぱちん、と指を鳴らす──と、その直後!
 大きな円形ステージ全体が回答者席ごと数メートル迫り上がり、その周囲を取り囲むようにして古今東西様々な楽器を構えた妖怪の群れが出現した!

「おう、おめェら! いっちょ景気いいのやったれや! ミュージック、カモンッ!!」
 妖怪楽団の演奏による軽快なビッグバンド・ジャズをBGMにし、狂乱と策謀の本戦、その幕が上がる……!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

◆お知らせ◆

●2章のプレイングボーナス:「バズる」ような行動をする。または、「お金で買えるもの」をイメージする。
・バズる(≒視聴率が稼げる)行動をすると、そのバズり度(≒視聴率が稼げそう度)に応じてハートマークが現れ、パワーアップします。
・お金で買えるものをイメージすると、その物品が出現すると共に値段に応じてバブル(泡)に包まれ、パワーアップします。
・あくまでもプレイングボーナスなので、上記に関する演出等を記載しなくとも構いません。
・また、この章では新し親分『バズリトレンディ』に協力を要請することが出来ます。ご希望であればご記載ください。
バルタン・ノーヴェ(サポート)
「ご安心くだサーイ! ワタシが来マシタ!」
ご用命あらば即参上! アドリブ連携歓迎デース!

普段の口調:片言口調で(ワタシ、アナタ、デス、マス、デスネ、デショーカ? デース!)
得意な技能:【一斉発射・焼却・武器受け・残像・カウンター・受け流し】

各種武装の中から、ボスに適切なものを選択して用いてくだサーイ!
刀も銃器も、内蔵兵器や換装式ウェポンも、何でもOKデス!

アタック重視でもディフェンス重視でも対応可能デース!
斬り込み、爆撃、弾幕を張ったり、パリィ盾したり、臨機応変に立ち回りマース!

どのユーベルコードを使用しても問題はありマセーン!
オブリビオンを倒して、ミッションクリアのために力をお貸ししマース!





 本戦たるクイズ+α番組が始まり、暫し経過した頃。

「──続いての問題やで。ラテン語で『我らの父』を意味する言葉に由来して名付けられた、小型の乗用かご──」
「(ピンポーン)“パーテルノステル”!」
「おーう、これまた正解やで。絶好調やねガリガリン勉勉ガー君!」

 連続で正答を返し続けるガリ勉、もといプルプルンゼンゼンマンの姿を見やりつつ、少し離れた場所に位置する回答者席に座っていた緑髪の女猟兵──バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は少し思案するようにして呟いた。
「ンー、シンプルにクイズの腕前が高すぎデスネー。単純な知識問題では分が悪そうデース……」
 とは言え、やってやれないことはない。そもそもからしてこの“番組”は、骸魂を退治する為の一種の罠として開催されているものなのだ。バルタンはバズリトレンディに向け、それとなく合図を送る。

(新し親分殿……! 出題内容の忖度の程、何卒よろしくお願いいたしマース……!)
(了解道中膝栗毛やでバルタンちゃん! 一人勝ち状態じゃオーディエンスも冷めるしな、司会者のバランス感覚見せたるで……!)
 流石は大祓百鬼夜行の際に何度も肉体言語を交えて語らい合った仲とでもいうべきか、バルタンが送ったその軽いジェスチャー混じりの合図にバズリトレンディは即座に気づき、ぱちり、とウインクを返した。

 内通を悟られぬよう死神の方へと視線を向け直し、司会者然とした口調でバズリトレンディは番組進行を再開する。
「いやー、クイズに自信ニキなだけのことはありますな。……じゃ、ここいらでちょっと問題の傾向変えてみよか?」
 そう言うと彼女は悪戯っぽくにやり、と笑い、スタッフに向けてハンドサインを送った。デデン、と短いサウンドが鳴り、次の問題が出題される──

「──『アポカリプスヘル』に関する問題っ!」
「…………は?」
「一定以上の物資が一か所に集積される等の条件により発生する場合もある、破壊したものをオブリビオンに変貌させる暗黒の竜巻のことを何と呼ぶでしょうかっ!」
「いや、一体何を──」
 何のことやら解らない、と戸惑うプルプルンゼンゼンマンを余所に、ピンポン、と、回答ボタンが押された音が場内に響き渡る。
「はいバルタンさん早かった、お答えをどうぞ!」
「それはモチロン、“オブリビオン・ストーム”デース!」

 ピンポンピンポン、と正解を告げるサウンドが鳴り、バルタンはバズリトレンディ人形を一つ獲得した。

「幽世やUDCアース以外の“他の世界”に纏わる問題も出すのかって? そりゃそうよ。ワイちゃん、ワールドワイドな番組作りを心掛けとるからね」
 くるり、と回転するようにしてポーズを取りつつ、カメラ目線で解説するバズリトレンディ。
「いや、それはあまりにも不公平では──」
「おう、何や? ワイちゃんの方針に文句を言ってるのはどこのどいつだーい?」
「だってそれ吾輩たちみたいな骸魂には解るはずが無い……と言うかそもそもここの他にどんな世界があるかすら知らないし──」

 辛うじて“他の世界”が存在することだけは認識していたらしき死神からの不平不満を受け、鼠耳の司会者は半ば逆ギレするかのようにして乱暴な返事を返した。
「あぁー! うっせえうっせえうっせえわぁー! 文句があるなら直接殴りかかってこんかい! ……という訳で、ここらで乱闘のお時間です!!」

 かーん。

 いつの間にかバズリトレンディの右手に握られていた小さなハンマーが振るわれ、同じくいつの間にか左手に保持されていたゴングが小気味のいい音を響かせた。乱闘開始の合図だ!
「OH、そういえばバトルするターンもあったんでしたネ! ……骸式兵装展開、剣の番!」
 自身たちの目前にあった各々の回答台が床下に格納されていったのを皮切りに、先程の“番組”進行に関する説明を思い出したバルタンはバトルスペースへと飛び出すような勢いで──否、一種禍々しくもあるオーラを漂わせ始めた彼女は文字通りの意味で飛び、赤黒い骸魂のいる方向へと一直線に翔けていく。

「なっ……!?」
「ほらほら、プルプル君も早くバトってらっしゃいな! 切り替えが大事やで!」
 バズリトレンディから軽く蹴り出されるようにしてバトルスペースへと躍り出たプルプルンゼンゼンマンは急ぎユーベルコードを発動し、自身の戦闘能力を増大させんとする──が。
 状況の変動に対応しきれてしなかったが為か、あるいはこの半ば気の抜けた展開に油断していたが為か。その効果が十分に発揮されるよりも前に、飛来したバルタンがその勢いを乗せて放った斬撃が彼の装甲の一部を切り飛ばした。

「HAHAHA! 長きに渡り知力と武力を備えてきた輩とて、数多の世界を渡り歩いてきた余の敵ではない、デース!」
 ひらりひらりと身を躍らせつつファルシオンを振るう彼女がその身に纏うは、ここではない世界──グリードオーシャンを嘗て脅かした七大海嘯が一人、『邪剣』ピサロ将軍の残滓。
 霊体をも斬り伏せる剣技を猛然と奮い、しかしその身を侵蝕する悪しき力に飲み込まれぬようあくまでも冷静に。先のクイズに参加していた時の軽いノリからきっかり気持ちを“切り替え”、彼女は乱闘ターンの終了を告げるゴングが鳴るまで容赦無き攻撃を続ける──

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴォルフスブルク・ヴェストファーレン
クイズ…?今からですか?
そこまで得意でもないですけどまあなんとか…

うわぁゴングがなった!?乱闘しないと…
普通に戦闘をすればいいですかね?なら飛空艇に変身ですっ!えっと…プルプルさんとバズリトレンディさんを狙えば良いんですよね?それっぽい人を狙って全速力で突撃します!
あと高速飛行中は狙うのも大変なので機銃や速射砲を適当に乱れ撃ちしますっ!当たればラッキーぐらいですねっ

ええー!?ま、またゴングが!?は、早く席に戻らないと…(飛空艇のまま時速8400kmで回答席に)
ひぃん…うっかりして飛空艇から戻るのを忘れてました…回答席がぐしゃぐしゃです…
ハチャメチャっぷりでバズは稼げた?ええ…?そうですか…





 かーん。

「クイズ再開やでー! 速やかに回答者席に戻ってえなー!」
 バズリトレンディの呼び掛けを受け、回答者たる猟兵たちと骸魂はバトルスペース上からその身を引いていく。

 クイズの進行、そして乱闘が行われるさまをひとまず伺うようにしていたヴォルフスブルク・ヴェストファーレン(鉄の狼・f34026)は床面から再出現した回答台へと駆け戻りつつ、先程他の猟兵から猛攻を受けていた死神めいた骸魂の姿をちらりと見やる。どうやら彼はまだ“番組”の進行に則る気概がある程度あるらしく、そして少し疲弊している様子だ。
「よし、これならなんとかなるかも……?」
 クイズはそこまで得意でもないけれど、折角だから一問くらいは答えたいなあ。そんなことを考えていた彼女の耳に、バズリトレンディの声が響く。

「さーて、大体席に戻ったみたいだしそろそろ出題しよか。それでは、『ブルーアルカディア』に関する問題!」
 その宣言を聞き、ヴォルフスブルクはぴくりと反応し銀色の髪を揺らした。そう言えば、先程司会者たるバズリトレンディは『出題傾向を変える』と言っていた。あからさまに猟兵たちに有利な問題を出し続けるのは大分不公平ではあるのだが……まあ、それはさておき。
(よし、この問題には答えられそう!)
 ガレオノイドたる彼女は小さく息を整えた後、誰よりも早くボタンを押すべく姿勢を正して気合を入れる。

「動物や植物等の姿をした『魔獣』と呼ばれる非人間型の──」

 ピンポーン。
 回答ボタンを押したのは、もちろんヴォルフスブルクだ。
「おっ、まだ読み上げ途中やけど大丈夫かな? ヴォルフスブルクちゃん、お答えをどうぞ!」
「は、はい! えっと、えーと、答えは……」

 少し早まったかな、と焦りつつも、彼女は思惟を巡らせる。
 『動物や植物等の非人間型のオブリビオン』の呼称が問われているのであれば答えは“魔獣”だが、その名は問題文に含まれている。そして、先程出題された別の世界に関する問題から出題傾向を考慮するならば、恐らく『その世界にしか存在しないもの』の名称等が答えとなっているはず。
 それなら、答えはあれしかないだろう。確信を抱き、彼女は口を開いた。

「答えは、て──」
 かーん。
「──えっ?」

 突如鳴らされたゴングの音に、目を白黒させるヴォルフスブルク。

「はい、乱闘開始ー。ハリーハリー!」
「え、ええぇーっ!? 回答の途中でも中断しなくちゃいけないんですかあーっ!?」
 目前の回答台が床下に収納されていくのを見、大層慌てた様子でヴォルフスブルクは叫び声をあげた。

 彼女が声を上げたのとほぼ同時に、先程から全く動きを見せていなかった深紅の死神も怒号を放つ。
「ええい、答えられぬ問題を出すのなら司会者を襲うまでッ! 覚悟ォッ!!」
 この期に及んであくまでもしっかりルールに従っているらしき死神の姿を視界に収め、銀髪の少女は尚慌てつつも戦闘準備に取り掛かった。
「とっ、とにかく私も戦わないとっ……! え、えーいっ!」
 そう叫ぶと共に、彼女はユーベルコードを発動する──

(確かルールでは、司会者に攻撃するとたくさん人形が貰えたはず! それなら、プルプルさんとバズリトレンディさんを狙って……!)

 ──ただ一つ、この場にいる誰しもにとって誤算だったのは。
 この慌て者のガレオノイドの少女、ヴォルフスブルク・ヴェストファーレンが、当“番組”アルトラ・クイズに対して妙に強く参加意欲を抱いていたということだった。

 《Ramschkampf(ラムシュカンプフ)》という名のそれは、飛空艇の姿に変身してそのまま高速突撃を行う、といった技だ。
 場内のバトルスペースは広々としてはいたが、しかし突如巨大飛空艇が出現したとなれば大体何処に立っていたとてその姿形は見える程度の広さであった。

 巨大な死神の鎌をバズリトレンディに向け振り下ろしていたプルプルンゼンゼンマン、そしてその鎌を奇怪な武器を用いて受け止めていたバズリトレンディは、飛空艇の機首が自身たちのいる方向へと向いていることにほぼ同時に気づき、互いの体勢を維持したまま顔を見合わせる。
「と……とんだハリキリガールがやってきたじゃねぇか……!」
「あのー……一時休戦、というか早くゴング鳴らして貰えぬかな司会者殿……?」

 数秒もしないうちに、彼と彼女の許へと超速度の飛空艇が飛来した。



 数分後。

「いやー、ワイちゃんのギャグ補正が無ければ即死やったで……プルゼン君の方は果たしてまだ生きとるんかいな。まあええけど……」
 速攻でゴングを鳴らしたものの敢え無く突撃やら艦砲射撃やらでめちゃくちゃな状態と相成った会場を眺めた後、かつて回答者席だった場所に佇む飛空艇に向けてバズリトレンディがマイクを向ける。

「で、さっき回答の途中やった訳やけども。お答えをどうぞー」
「あ……はい、“天使核”、です……」
「『動物や植物等の姿をした魔獣と呼ばれる非人間型のオブリビオンと人間型のオブリビオンのどちらからでも獲得することが出来る、飛空艇や魔導機械の動力として用いられる物体の名称は何?』という問題、答えは“天使核”。お見事、正解やで!」

 ぱちぱち、と拍手を送り、バズリトレンディはスタッフが持ってきた人形を掲げる。
「さっきの乱闘ラウンド込みでワイちゃん人形四つ進呈……って何処に置けばええかなこれ、回答者席吹っ飛んでもうたし」
「すっ、すみません! 謝って済むことじゃないかもしれませんけど……!」
 ゴングが鳴ったのを聞いて飛空艇の姿のまま回答者席に戻った為、ヴォルフスブルクの座っていた辺りは一際ぐちゃぐちゃになってしまっていた。

「あー……まあええやろ! こういう事故映像ってのはバズるモンやしな!!!!(やけくそ)」
「……そ、そうですか? 本当に大丈夫ですか?」
「悪気あった訳やないんやろ? 構へん構へん。ワイちゃんら妖怪にとってはこれくらい刺激が強い方が楽しいってモンや! まあ、今日の所はもう勘弁して欲しいのは確かやけども……」

 小さく呟くようにして最後に付け足された言葉は、司会者用のピンマイクにすら拾われなかったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
さぁ、いよいよアルトラ・クイズの始まりですね!
パズるなら服装は大事。もう秋間近ですが、水着で参戦です!!
せっかくので、ゴージャスに金の毛皮をつけてもらいましょう!(少し寒いし)

バトルもクイズもヨーヨーでサクッとクリアですよ。

引き続きヨーヨー『エクリプス』で戦います。
プルプルさんをまずヨーヨーに絡めて、UC【獅子剛力】を発動。
プルプルさんを引っこ抜いて、大車輪。
その大車輪でパズトレさんからの攻撃を【敵を盾にする】して、攻防一体を狙います。

クイズに切り替わったら、プルプルさんを放り投げて、ヨーヨーでボタンをタッチ。
回答権は渡しません。





「いやー、こんなことがあるんですよこのクイズ番組は!!」
 まだ生きているカメラに向かって掴みかからんばかりの勢いで、というか実際半ば掴みかかりながら元気よくそう言った後、バズリトレンディはぴしりと衣装の襟を正した。収録続行の構えだ。

 半壊した回答者席に身を置いていた黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)はその様に応じつつ、砲撃やら何やらを受けズタボロになった会場の様子を眺める。
「なかなか盛り上がってきましたね! ……とは言うものの、セットが大分駄目になってしまっている様子ではありますが。このまま収録を続けられるおつもりですか?」
 二つに纏めた長い髪、そして兎耳を軽く揺らしつつそう問いかけた摩那──ちなみに彼女は今現在オレンジ色主体の水着姿であり、そして兎耳のようなカチューシャを付けている──からの呼び掛けを受け、バズリトレンディは踊るようにくるっと回転して摩那の方へと向き直った。
「いい質問ですね! まあ流石にこのまま続行する訳にはいかんよね……でもこの程度の被害じゃ負ける気せぇへん、地元やし!」

 鼠耳の司会者が突如居直るかのようにして威勢の良い声を上げ、指を鳴らす──すると突然、舞台袖の方から大量の札束が湧き出てきた。
「さあみんな、在りし日のクイズ番組の姿を想像するんや! ワイちゃんに想像力を分けてくれーっ!!」
 そしてその会場全体を覆い尽くさんばかりの札束は見る間に“消費”され、代わりに機材やらセットやら何やら先程壊れたものの代わりとなる物品が次々に出現する──バズリトレンディ御殿に纏わる不思議パワーにより、会場はあっという間に復旧を遂げていく。何なら先程よりもより豪華になっている気すらしなくもない。

「なんということでしょう、あんなにボロボロだった会場も巧みに用いられたお金の力で瞬く間に元通り! ね、簡単でしょう?」
 自信満々鼻高々、ドヤ顔Wピースをキメるバズリトレンディ。感心した様子で摩那もぱちぱちと拍手を送る。
「そう言えば、そんなことも出来ましたね。それなら私も欲しいものが……」
 かつての戦争の折にこの御殿に来た時のことを想起しつつ、摩那は“お金で買えるもの”の姿をイメージした。直後、彼女の姿は不思議な泡に包まれ──程なくして泡が消えると、そこにはバブル期っぽいデザインの金色毛皮の羽織に身を包んだ水着姿の摩那の姿があった。今度はバズリトレンディが感心の声を上げる。

「おうおう、なかなかゴイスーな御召し物やな! その所々に青色が配ってあるビキニ姿のままでも映えそうではあったけども、そういうのがあるとまた別の需要も出るやね。結構あったかそうだしギャップ萌え需要もありそうや!」
「ありがとうございます。バズりのために水着姿になったものの、季節柄もあって少し肌寒かったので」
「それは割とマジでごめんやで……! まあワイちゃん謹製の不思議空間ってことで季節やら何やらは曖昧な感じで引き続きシクヨロ!」
 何処かよく分からない方向へと向かってウインクをした後、バズリトレンディは会場の端の方を眺めた。
「まあそれはそれとして、壊れたモンの方は舞台端の方に片づけとかんとな。瓦礫はポイーで」

 先程のハプニングで発生し空中を漂っていた大量のハートを操り、バズリトレンディは舞台上やそれに近い場所に残っていた残骸を小さな嵐に載せて舞台袖へと積み上げていく──と、突然。

「……我輩を無視するなァァァーーーッ!」
 怒りと殺戮の衝動が入り混じった大声を上げ、どばーん、と瓦礫の山を吹き飛ばしながら《マサーカー・トーテンシェーデル(虐殺髑髏)》の効果で巨大化したプルプルンゼンゼンマンが出現した。
「おう、プルプルくん生きとったんかワレ! 何でそんなに大きくなっちゃったんですかー?」
「知るかァーッ! もうこうなったら何もかもぶっ壊して──」
 司会者のそんな軽口に再び怒号を返しつつ、死神はその体躯と共に巨大化した大鎌を振り上げる。その体が今もなお少しずつ大きくなり続けている辺りを見るに、大層ご立腹のご様子だ。

 今にも舞台に向け武器を振り下ろさんとする彼の元に、ぎゅいん、と音を立てながら円盤が飛来した。
「──何だッ!!??」
 円盤は彼の周囲をぐるぐると周り、最終的にはその厳つい頭部に激突する。呻き声を上げ、死神は動きを止めた。
 ……否、動こうにも動くことが出来なかったのだ。よくよく見てみれば、彼の体にはいつの間にかワイヤーのようなものが巻き付いていた。

 そのワイヤーの片端には、先程の円盤──金属製のヨーヨーの姿。もう一方の端にあるのは、勿論と言うべきか摩那の指。
「接地、反転。アンカー作動……力場解放!」
 摩那の呪力が高まり、彼女の身体能力が増大する。気合と共に彼女の腕が振るわれると、巨大なプルプルンゼンゼンマンの体が持ち上がった。
「……ッ!?」
 瓦礫の山から引っこ抜かれた彼は戸惑いの声を上げる間も無くそのままぶんぶんと空中をぶん回されるようにして宙を舞い、そしてかつて彼が座っていた場所──ネームプレートが備え付けられた回答者席の付近に叩き付けられる。

「まだ番組の進行中です、さっさと席に着いてください!」
「せやで! いいタイミングやし進行再開や、クイズのお時間です!」
 何処まで本気か解らない摩那の声を受け、バズリトレンディが番組進行を再開する──

大成功 🔵​🔵​🔵​




 ──そして、クイズのターンが暫く進んだ頃。

「問題。今私たちがいる場所、幽世には、大きく分けて四種類の妖怪たちが棲んでいます。それらのうち、最弱の妖怪親分として知られる『碎輝』が率いる──」
「(ピンポーン)“竜神”、です!」
「摩那ちゃんまたまた正解ー。まあサービス問題って言うか、ほぼほぼ早押し問題やね」

 数個目となる人形を摩那に受け渡すと、バズリトレンディは回答者席群の一角へと視線をやった。
 そこには数m大きくなった体躯をそのままに、再び大人しく回答者の身に甘んじているプルプルンゼンゼンマンの姿があった。体が巨大化した関係で元々用意されていた席にはもう座れなくなってしまったため、床に座っている。何とも物悲しい。
「それにしても究極無敵銀河最強振振全全男くん、ボタン押すことすらしてなかったっぽくない? 仮にも骸魂ならこの辺は答えなきゃいかんでしょ」

「い、いや……頭が痛くて考え辛いわ腕が痛くて細かい動きがし辛いわで……」
 司会者からの挑発めいた呼び掛けを受け、彼は絞り出すかのような声で半ば素の反応を返した。
 そもそも大人しくこの“番組”に参加し続けた所で生存出来る道理は最早無いということは彼にも解ってはいようが、こんな状況でも一応答えようとしていた辺りは何とか一矢報いてやろうという気概が見て取れるといった所だろうか。
「戦うために巨大化したのが悪いんやないか! 策士策に溺れるとはこのことやな!」
 そう言ってバズリトレンディが笑ったのに合わせてラフトラック(録音された笑い声)のサウンドが流れ、だんだんと意識がはっきりしてきた死神はその剥き出しになった歯を軋らせる。

 先に行われた新し親分の説明の通り、実際の所これはチェスボクシングでも発生し得る事象である。
 いくら身体能力に長けていようとも、精神興奮や肉体疲労等の影響を抑えて知的活動を行うための集中を保てなければ勝利することは難しい。これはそういう試合──もとい、番組であった。

「クイズが得意なだけじゃ生き残れないんだぞってことで。それじゃここらで乱闘のお時間、いただきまーす!」
 半ば脈絡なくかーん、とゴングを鳴らしたかと思うと、バズリトレンディは何やら格好いいポーズをとって宣言した。
「やる気勢の方々も多いみたいやし、ワイちゃんもそろそろ容赦なく番組進行させて貰うやで!」
 先程も用いていた奇怪な武器、HPAH(ハンマーパイナッポー&アッポーハンマー)を何処かから取り出しながら一早くバトルスペースへと躍り出した彼女は、両手の棍を振り被るようにしながら摩那の方へと駆け出していく。
 妖怪親分然とした覇気を放ちながら自身の元へと向かってくるその姿に気づいた摩那は急いでヨーヨーを構え──

 ──複数の風切り音が鳴り、激しい衝突音が場内に響き渡った。バズリトレンディの振るったHPAHにより殴打されたのは、摩那でも、しかし床面でも無かった。
 プルプルンゼンゼンマンだ。
「……グ、グワァーーッ!!」
 先程と同様にして摩那のヨーヨーのワイヤーに巻き付かれ、そして振り回され、バズリトレンディと摩那の間に挟まる位置にぐるぐる巻き状態のまま引き寄せられていたプルプルンゼンゼンマンが、突然のことに混乱しながらも一際大きな悲鳴をあげた。

 本人に当たるか避けられるかのどちらかになるとばかり思っていたバズリトレンディも、これには思わずいい声を漏らす。
「ふーん、やるじゃん……!」
「いえいえ、それほどでもっ!」
 ヨーヨーで引き寄せ盾にした巨躯の陰から、不敵な笑みを浮かべた摩那が返答する。強者と強者の戦いといった雰囲気がそこにはあった。

 鼠耳の司会者は大きな盾を壊さんばかりの勢いで乱打を続け、兎耳の参加者はその盾の陰に上手く隠れるようにしながら転機を伺う。
 当事者の一人ながら蚊帳の外といった不思議な立ち位置にあったプルプルンゼンゼンマンは、急激に体を引き寄せられたのと他の原因により再び曖昧になりつつある意識を何とか持ち直し、怒りを滲ませて怨嗟の声を上げた。
「こ……こんなことが許されていいのかッ! こんな、特定の参加者だけが袋叩きにされるような真似がッ……!」

「別に許されるけど? だってこれそういう番組やで?」
「はい、説明の限りでは別に禁止されたりしていませんでしたね。ルールに則って正々堂々戦っているのに文句を言われるだなんて、すごく心外です」
 攻撃を続けながらもあっけらかんとした声音でバズリトレンディが返答し、同じく攻撃に応じ続けながら摩那もわざとらしく頬を膨らせてみせる。
「しかし頑丈やなプルプルくん! まるでガチガチくんや!」
「どういう意味ですか?」
「マジレスされると思わんかったやで。今のは──」
「おっと、隙ありですっ!」
 応答された際に一瞬乱打の勢いが弱まったのを感じ取り、飛びずさるようにして大きく距離をとった摩那はワイヤーを巻き付けた巨躯の死神を再び持ち上げてぶん回すと、そのまま独楽を投げるような要領で勢いをつけて深紅の塊を投げ放った。

「うおっ、これじゃグルグルンゼンゼンマンやんか──って言ってる場合とちゃうなこれ!」
 バズリトレンディは姿勢を正して二本の棍棒を構え直し、回転しながら空を飛び来る赤黒い影を見据える。
「花は桜木、女はバズり!(個人の感想) 悪球打ち上等やでーっ!」
「お、おい止め──!」
 何が起こっているのか解らないまでも何かとてもやばいことをされそうだと感じとった死神の歎願も虚しく、その構えられたハンマーは力強く振るわれ──

 ──グヮラゴワガキーン!
 快音なんだか騒音なんだかよく解らない轟音が鳴ると共にその数mもある巨体はまるで野球のボールのように撃ち返され、そのまま広い会場の天井に激突して激しい破砕音を鳴らし、そして当然の如く落下して地面に激突し再び大きな衝突音を立てるに至った。

 上から降ってくる機材の残骸をハートの嵐で防御して舞台袖に避けつつ、バズリトレンディが声を上げる。
「ひー、危なっ! 腕もしびれたしこれにて乱闘終了、クイズの時間やで!」
 武器をぽい、とその辺に投げ出すが早いか彼女はゴングを鳴らし、そして即座に台詞を続けた。

「問題っ! 『おい地獄さ行ぐんだで!』という書き出し──」

 ピンポーンとサウンドが鳴り、バズリトレンディは回答者席をぐるりと見渡した。回答権が与えらえたのは、摩那の席──しかし、そこには今現在誰も座っていない。
 司会者たる彼女は回答者席のボタンから延びるワイヤー伝いに視線を移し、バトルスペースの一角を見やる。その線の先には、勿論と言うべきか摩那の姿があった。

「……ルール説明では、回答者席から離れた場所で回答ボタンを押してはいけない、等とは書かれていませんでしたよね?」
「おっ、確かに別段そういう制限はしてないやね! 本来なら判断が分かれるトコやと思うけど……クレバーなムーブ、いいでしょう! OK!」
 少し離れた場所に立つ摩那にバズリトレンディはサムズアップを送って見せ、ふと何かに気づいたようにした彼女は言葉を続ける。
「でも回答は回答者席でやるやで! 今そう決めた! 会場をぶっ壊さない程度に焦らず急いで戻ってやー!」

 先のハプニングを受けた司会者のそんな呼び掛けにくすりと微笑みを返しつつ、摩那は急ぎ足で席に駆け戻っていった。
バルタン・ノーヴェ(サポート)
「ご安心くだサーイ! ワタシが来マシタ!」
ご用命あらば即参上! アドリブ連携歓迎デース!

普段の口調:片言口調で(ワタシ、アナタ、デス、マス、デスネ、デショーカ? デース!)
得意な技能:【一斉発射・焼却・武器受け・残像・カウンター・受け流し】

各種武装の中から、ボスに適切なものを選択して用いてくだサーイ!
刀も銃器も、内蔵兵器や換装式ウェポンも、何でもOKデス!

アタック重視でもディフェンス重視でも対応可能デース!
斬り込み、爆撃、弾幕を張ったり、パリィ盾したり、臨機応変に立ち回りマース!

どのユーベルコードを使用しても問題はありマセーン!
オブリビオンを倒して、ミッションクリアのために力をお貸ししマース!


クレア・フォースフェンサー
まぁ、あやつの言うことも分からぬではない
ナウでヤング……いや、バブルでトレンディな頃ならまだしも、今はコンプライアンスが叫ばれる時代じゃ
一人の者をよってたかって攻めることに忌避感を抱く者も多いと聞く
正々堂々と戦ってこそ、視聴者の心も掴めるのかもしれぬな

クイズはバズリトレンディの口の動きを、果てには目に映った文章を読み取り、問題文を先読みしよう
卑怯? この程度、クイズプレイヤーならば当たり前にやっていると聞くがのう
もっとも、新しいことには疎いでな、昭和の問題は逃さぬようにしよう

乱闘の際は、UCで敵のUCを無効化
これで「まさか、飛んでシェー出る」とかいう技も無しじゃ
光剣で敵の頭部を破壊しようぞ





 回答者席にて意識を朦朧とさせながら座る、というよりか半ば力無く佇んでいるだけの状態にあるようにも見える死神の姿をちらりと眺め、ほんの一瞬だけ口角を下げた後、ぱっ、と明るい表情を浮かべ直した鼠耳の司会者はクイズの出題を続ける。

「……ここらで東方妖怪の視聴者サンらも意識しとこか。UDCアースに関する一般知識ジャンルの問題!」
 そういうと彼女は左手に持ったバインダーを開き、問題を読み上げ始める──ちなみに、その番組ロゴが印字された小さなバインダーの中に出題内容を記した用紙等は存在しない。それどころか構成表の類すらも一切挟まっておらず、単に白紙が一枚あるだけの状態だ。推察するに、どうやら司会者っぽさを演出するためだけに誂えたものらしい。
 結果として、仮にそれを覗き見ようともカンニング等の不正は一切出来ない次第となっていた。基本的に参加者は正々堂々クイズに挑む必要があるということだ。

「日本で一番長い時代と言えば昭和ですが、昭和さんs──」

 ピンポーン、という軽快な音が、出題途中のバズリトレンディの声を遮った。
「うおっめっちゃ早い。お手つきではないやんな? えーっと……」
 少し驚いた様子でバズリトレンディは回答者席群を見回し、回答ランプが点灯している席に座っているその金髪金目の女性──クレア・フォースフェンサー(UDCエンフォーサー・f09175)の姿を認める。
「……ボタンを押したんはクレアちゃんやね。では、お答えをどうぞ!」

「“昭和三種の神器”と呼ばれた家電製品は、『テレビ』『洗濯機』『冷蔵庫』じゃ!」
 気合十分、といった様子でクレアは言葉を続ける。
「年代如何ではテレビではなく掃除機とされていた頃もあったが、有名なのはその三つの方じゃろ。どうじゃ? 合っているかの?」

 ふんふん、と興味深げにその回答を聴いていたバズリトレンディが頷きを返した。
「読み上げ予定やった問題文の文脈的にもまあオッケーな感じやね。よくできました、正解者に拍手!」
 自身の姿を模した小さな人形をクレアの回答者席にぽん、と置き、賞賛を促した司会者自身もぱちぱちと拍手を送る。
「ちなみに問題全文も教えとこか。“日本で一番長い時代と言えば昭和ですが、昭和三種の神器と呼称された家電製品は『白黒テレビ』と『洗濯機』、もう一つは何?”という問題やったで」

 回答者席に軽く肘をつくような姿勢を取りつつ、彼女はクレアへと軽い調子で問いかけた。
「それにしてもお早い回答やったな! その迅速さ、誉れ高いで!」
「いやいや、それほどでも。昭和“最初の日”などと続く可能性は潰せていたものの、少し不安もあったでな。うまく読みが当たって一安心じゃ」
 安心半分、満足半分といった調子でクレアはそう返答する。その言葉に一切の偽りは無く、彼女は先の問題文をかなり正確に推測した上で回答を行っていた。それも、一切の不正も無しに、である。

(この程度はそこらのクイズプレイヤーならば当たり前にやっていると聞くしのう。ともあれ、昭和に関する問題ならどんとこいじゃ)

 彼女がやっていたことを端的に表現するなら、それは読唇術に類する技術に基づく代物であった。
 極限まで集中力の高まった競技かるた選手は、読手が発した無声歯茎摩擦音([s]の音)を聴き取り瞬時に字札を取る──そんな話を聞いたことがあるだろうか。口の動きを視認可能な今の状況であれば目視でそれに近いことが行える、という訳だ。
 とは言え、当然ながら練達の士で無ければそのような芸当はとても実現し得ない上、仮に出題内容が推測出来ようともそれに回答出来るだけの知識を持っていなければ無意味というのも確かな事実。ここで新たな疑問となるのは、この年若く見える彼女が如何にしてそれを成し遂げられたのか、ということについてであるのだが……彼女の来歴を考えれば、それも別段不思議なことでは無かったかも知れない。

 この場にいる彼女は当然“生命の埒外”たる存在、すなわち猟兵であり、そしてクレアはその中でも少々特殊とも言える生い立ちを持つ者であった。
 クレア・フォースフェンサーは人造人間なのだ。UDC組織により開発されたそのナノマシンで構成された身体の性能は本来人間が持ち得るそれを遥かに上回り、そしてその可憐な身には武芸を極めた老巧な剣豪の魂が宿っている──ある程度は時の運というのもあるにせよ、回答者への忖度が然程介在しない先の問題に答えられたのは、彼女が備えていたその素質に依るものであったと言えよう。

 それはさておき。次の展開はどうなるのかと身構えつつ、現状を確認する意味を籠めてクレアは会場全体の様子を見やった。当然、最も気になるのはあの死神の状態だが──
「──ふむ」
 何か思うところがある様子でクレアがそう呟いたのとほぼ同じくして、かーん、とバズリトレンディがゴングを鳴らした。

「大乱闘のお時間やで! ワイちゃんちょっと休ませて貰うけど、喧嘩売られたらちゃんと買うたるからな!」
 あーしんど、と少々わざとらしく言いながら小休憩の構えを取る司会者の姿を認め、クレアは先程の流れで比較的自身に近い場所に立っていた彼女の傍へと近づきつつ、声を掛ける。
「……司会者殿、少しいいかのう?」
「何やクレアちゃん、ワイちゃんとのデュエルをご所望かしらん?」
「いや、そういうことでは無くてな。あれの話なんじゃが……」

 乱闘が始まるや否やワイヤーで四肢を巻き取られたり速射砲やら機関砲やらの艦砲射撃を受けたりその他のバリエーション豊かな攻撃だったりを一挙に見舞われ始めた深紅の死神の方を眺めつつ、彼女は金色の眼を少し細めるようにしながら問いを投げかけた。
「昨今はあのように一人の者をよってたかって攻めることに忌避感を抱く者も多いと聞くが、その辺りについてどのようにお考えなのかと思ってのう」
「おお、番組へのご意見・ご要望っちゅー訳や」
「うむ。ナウでヤング──いや、バブルでトレンディな頃ならまだしも、今はコンプライアンスが叫ばれる時代じゃからな」
「あーね、昨今は倫理機構とかうっせぇもんねー。最新の流行は当然の把握、意識をアップデートしないと乗り遅れちゃうゾ★って奴やな!」

 冗談めかしてけらけらと笑った後、鼠耳の司会者はほんの僅かにだけ神妙な面持ちになって返答を続ける。
「でもま、骸魂に操られてるだけの子らをむやみに傷つけるのはどうなんかなーとは常々思っとるけどね? ワイちゃん、みんなの頼れるニューリーダーやし」
 そう言いつつ、新し親分たるバズリトレンディは小さくため息を吐いた。
「ああいう頑丈な輩が相手やとある程度しゃあない辺りもあるんやろうけど。実際問題、悩ましい限りやで」

「ふむ。では、苦しまないよう骸魂だけを斬り祓ってやればいいんじゃな?」
「おっ、何やクレアちゃん。もしかしてそういうの得意だったりするんか?」
「彼奴も疲弊しておる様子じゃしの。やってやれないことは無いじゃろ」
 そう言いつつ、クレアは光剣の柄を握って敵の姿を見定める。
「まずは力の根源を探らねばのう。ただ近づいて観察するだけ、というのは少々難しいかも知れぬが……」 

「それナラバ、ワタシにお任せくだサーイ!」
 ざしゃあ、と音を立てて飛び出してきたのは、バルタン・ノーヴェ──先程プルプルンゼンゼンマンと斬り結んでいた、サイボーグの女猟兵だ。
「こんなこともあろうかと、斬り飛ばした装甲の一部を拾っておいたのデース! カモン、バルタンズ!」
 元気よく彼女がそう言い放つと、バルバルバル、と舞台袖から掛け声のようなものが聞こえ始めた。程なくして、何やら赤黒い塊を持った自立型サポートロボット──ミニ・バルタンの群れが、バルタンたちのいる方へと向かって歩いてくる。

「まあ実際のトコロ、破片だけで何かの役に立つかは定かじゃありまセンが……」
「装備していた、そして元は一つであった物の一部という訳じゃな。呪術的な繋がりから何か感じ取れるやも知れん」
「……うん? なあバルタンちゃん。あのミニバルちゃんらが持ってきとる破片、何かやけに大きないか?」

 ミニ・バルタンズが彼女たちの許へと持ってきたその鎧の破片と思しきものは、小さなロボットたちが数体連れ立って持ってこなければならない程度には大きなサイズの代物であった。
「オヤ、言われてみれば確かにそうデスネ? それほど体が大きくなってはいないタイミングで、ヨロイの尖った先の方だけずんばらりとしたはずデスケレド……」
 首を傾げるバルタンの隣でしゃがみ込み、クレアはそのかつて鎧の破片だったらしき塊を注視した。対オブリビオン用のユーベルコードが搭載された人造人間たる彼女の瞳が、その謎めいた物体の情報を読み取っていく。
「あの巨大化する技──“まさか、飛んでシェー出る”? とかいう名のようじゃが、その効果を受けた影響かも知れぬな。いや、しかしこれは……」

 クレアはそのまま解析を続け、偶然にも何か全員POWに依存する攻撃ばかりしていた関係でこの場ではお披露目されることの無かったユーベルコードに関する事柄等を含めたプルプルンゼンゼンマンの詳細情報を概ね読み取り終わると、得心がいった様子で頷いた。
「……なるほどのう。どうやら彼奴は、“鎧が本体”という奴だったようじゃな」
「なんやて工麗亜! ……いや、マジにどういうことや?」
「つまり、『頑丈な鎧を着込んだ死神』の骸魂ではナク。『死神の体に取り憑いたリビングアーマー』だったというコト、デスカ?」
「そういうことになるかのう。先のルールに則って攻撃し続けておったら、危うく無辜の死神殿の頭部を破壊してしまうところじゃったな」

 何か言いたげな横目で見られ、バズリトレンディは少したじろいだように言葉を返す。
「る、ルール考えた時はまさかこんなことになるとは思わなかったやで……堪忍な!」
 ぴゅー、と逃げるようにして駆け出し、少しだけ距離をとってから彼女は二人の猟兵たちの方へと向き直り大きな声を投げかけた。
「もはやワイちゃんはお呼びで無さそうや! オブリビオン退治のプロフェッショナル・猟兵ちゃんたちの仕事の流儀、しかと見届けさせて貰うで!」

「……とのコトデスシ、そろそろフィニッシュと参りマショー!」
「うむ、過ぎてしまったことは仕方ないしのう。今はオブリビオン退治が先決じゃ!」



 四肢に纏わりつくワイヤーを何とか振り払い、そして大鎌を振るい砲撃をいなすと、プルプルンゼンゼンマンは怨嗟の籠った大声を上げた。
「き、貴様ら……! 寄ってたかってこの我輩を虚仮にしおって……ッ……!!」
 そう叫ぶや否や大鎌を構え直し、もう辛抱ならぬ、とばかりに彼は殺戮への渇望を爆発させんとする──が、しかし。

「六式武装展開、雷の番ッ!」

 会場全体まで届くような威勢の良い声が響いた直後、その身を電撃で纏った女猟兵──バルタンが、バトルスペースの一角から超速度で“射出”された。
 音速を遥かに超越した速さで飛来したその電撃弾は深紅の死神が掲げていた禍々しい大鎌を弾き飛ばし、そしてすれ違いざまに電撃を迸らせて、死神──もとい、死神が身に纏っている物々しい鎧を攻撃する。
「な──」
 武器を取り落としたことと電撃を浴びせられたことに同時に気づき、彼は最早何度目かになるか解らない戸惑いの声を上げようとした。

 その僅かな隙を、クレアが見逃す筈も無い。
 光を纏いながら赤黒き鎧の許へと駆けた彼女は、そのまま自身の体に備わった機能──オブリビオンを滅して骸の海へと還す力、《還送機能(エグザイルコード)》と呼称されるそれを行使し、骸魂が今もなお放ち続けるその悪しき力を封ぜんとする。
「──逃がしはせんっ!」
 弱体化していく呪力の流れを見切り、彼女は眼前に迫る敵の姿を見据えた。その手に握られた光り輝く剣の刀身が瞬間的に伸び……そして、一刹那。

 光と共に音も無く振り抜かれた剣が、呪力の根源──骸魂の核のみを、一刀両断した。

 さしもの骸魂も限界を迎え、赤い鎧が膝をついた。その力の残滓で取り憑いた死神の体を何とか操り、彼は半ば何が起こったのか解らないといった様子で弱々しくも声を上げる。
「ば、馬鹿なッ……!? かつてランツクネヒトと派閥を争い、スリーピー・ホロウの騎士とも何度か飲み会で顔を合わせたことのある、この我輩が……ッ!」
「イヤ、顔ありまセンヨネ? あとそれほぼ知らない相手デハ?」
 そのやけに説明じみた断末魔の台詞に対し、少し離れた場所で着地したバルタンが突っ込みを入れ、そしてクレアはその目鼻立ちの整った顔を顰めて何とも言えない複雑な表情を浮かべた。

「むう、いまいち締まらぬな……ともあれ、過去の者がしでかしたことは、わしのような過去の者が正すのが道理じゃ。骸の海へ還るがよい」

 長い金髪を靡かせながら踵を返した彼女の、その剣豪然とした勇姿は、この光景を何らかの形で視聴していた者たち──特に東方妖怪の視聴者層の心を、大いに熱狂させたという。

●エピローグ

「いやー、とりあえず作戦成功ってトコやね! お疲れちゃーん!」
 変なポーズを取りつつも猟兵たちに激励の言葉を送った後、バズリトレンディ親分はこきこきと首を鳴らした。

「さてと。そんじゃ、結果発表ーっ! ……と、洒落込むつもりやったけども。おーい、スタッフゥー! まだ番組の尺って余っとるかー!?」
 そもそも構成表すら存在しない様子なのに予定やら何やらが事前に決められていたのかどうかすら猟兵たちにとって定かでは無いが、それはともかくスタッフと親分はジェスチャー等を交えて何やらやり取りをし始める。
 そして、程なく後。

「余裕あるみたいだしこのまま続行するやで。ここでリタイヤして貰ってもワイちゃんは別に構へんけど……猟兵ちゃんらにヤる気があるんなら、優勝商品の内容もちょっと変えちゃってあげちゃったりしちゃったりなんかしよっかなー?」
 にへら、と企むような笑いを浮かべた後、司会者にしてこの御殿の総責任者たる新し親分はぽんと手を打つ。
「よっしゃ。優勝した子にはワイちゃんが何でも買ってあげちゃおう!(慢心の権化) なあ、このまま楽しい楽しい収録の続きしようず!! 皆でこのまま夜に駆け出していこうやないか!!(プライムタイム的な意味で)」

 幽世の危機はひとまず去り、世はなべてこともなし。
 骸魂の討滅、そして妖怪たちの救出を果たした猟兵たちがそれぞれその後どうしたのかは、また別の話である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年10月07日


挿絵イラスト