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404号室

#UDCアース

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#UDCアース


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●7月某日、寂れた共同住宅の一室にて。

 蝉が鳴いている。
 真夏の空はどこまでも蒼く澄み渡り、ぽつりぽつりと浮かぶ白い雲がその美しさを際立たせる。
 「……五月蝿い」
 ジリジリと鳴く蝉に、もう温くなった缶ビールを呷った私は恨めしそうに呟いて空を見上げる。
 どこまでも続く、美しい空。
 彼を奪ったのは病だ、誰のせいでもないのは分かっている。
 だからこそ世界が憎かった。
 変わらないこの蒼い空が憎かった。
 だから呪おう。
 呪って逝こう。
「人を呪わば穴二つ……」
 ならば、世界を呪えば幾つの穴が必要なのか。
 ふと、そんなくだらない考えが頭を過って苦笑が漏れる。
 さよならだ。
 ボロボロの椅子に立ち、天井から伸びるロープの輪に首を掛ける。
 こんな世界など壊れてしまえ。
 彼の居ない世界などに意味はなく、私は世界を呪い逝く。
「……ごめんね」
 大きくなったお腹を撫でて、愛すべき我が子に謝罪する。
 母は強くはなれなかった。
 あなたを守れるほど、強くなどなれなかったのだ。
 部屋中に貼られた札の中心で、私は足下の椅子を蹴った。

●グリモアベース 作戦会議室。
「快適だなぁ、内勤は……」
 冷房の効いた室内でユウキは言った。
 快適快適と何度も言いながら、まばらに部屋に入って来る猟兵達を眺めている。
 ユウキが新たに持ってきた仕事の現場、UDC日本の今は夏。
 年々暑さの厳しくなる中でも、教団の連中には関係が無いようだ。
 まばらだった猟兵がそこそこ部屋に集まってきたところで、そろそろ仕事の話をしようかと、ユウキは口を開く。
 さて、その口から語られたのは不吉な数字についての話だった。
 “4”それは、日本においてはその読みから死を連想させるとして忌み嫌われる。
「ま、そんなもの気にしない場所も多いがな」
 そして、ユウキが見せたのは1つの写真だった。
 閑静な住宅街……いや、団地と言った方が正しいか。
 所謂集合住宅がいくつか並んだ場所の写真。
 そして、そのうちの1つの棟のアップ写真を隣に貼り出すと、奇妙な質問をした。
「各階層ごと、部屋はいくつある?」
 簡単だ。
 そんなものは扉の数を見れば良い。
 各階層に部屋は7つと答えた猟兵に、ユウキは待っていましたと言わんばかりの笑みを浮かべて念を押す。
「本当に?」
 なにを言っているのだろう?
 何度数えても部屋は7つだ。
 そんなとき、誰かがあっと声を出す。
 何かに気付いたようだった。
「そう、四階だ」
 ユウキの言葉に従い、四階を見た……六室しかない。
 だが、おかしい。
 扉の位置は上下階層と変わらない筈なのに、四階だけ何度数えても六室しかないのだ。
「気味が悪いだろ? だからこそ、諸君の出番という訳だ。警察への通報によれば、“最近旦那を無くした近所の妊婦が居なくなった。彼女の家を訪ねようとしたが、彼女の家が見つからない”だそうだ。まぁ、それが例の部屋って訳さ。組織で調べた所、あの集合住宅からは嫌な気配が漂っている。だから大事になる前に消えた“404号室”を見つけて貰いたい。」
 そう言って開かれるゲート。
「あぁ、そうそう」
 そして思い出したようにユウキは口を開いた。
「派手に暴れるのは控えろよ? おそらくは一部異界化しているとはいえ、あの辺はまだ一般人も暮らしている。バケモノが出てくるまでは一般人として行動することだ」
 念を押してゲートから退くと、激励の言葉を口にした。
「行ってこい、猟兵」
 ただ、その一言を。


ユウキ
 皆様はじめましてこんにちわ。
 (´・ω・)bはじめちわ!
 ユウキです。
 残暑厳しい折、皆様は来月戦争だぜヒャッハー!な事と存じますが、いかがお過ごしでしょうか?
 私は元気で……いや、夏バテ気味ですね。
 皆様は体調管理を気をつけ、冷房機具等を活用して涼しくお過ごし下さいね。
 さて、前置きはこの辺にして依頼についてですね。
 集合住宅から消えた404号室を探して下さい。
 聞き込みや周囲の空き部屋等探してみると何か分かるかも知れません。
 冒頭の女性の行動を追うのが鍵かも知れませんね。
「それでは皆様、良い狩りを……」
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第1章 冒険 『老朽団地(ゴーストタウン)へようこそ』

POW   :    人が住んでそうな部屋を一軒一軒訪ねて根気よく聞き込み

SPD   :    外から人の出入りが不自然に多い棟を探す

WIZ   :    集会所など団地事情に詳しい人がいる場所に目星をつけて情報収集

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 時は夕刻。
 辺りは赤い夕暮れの光に包まれており、遠く鳴くヒグラシの唄が響くその建物は、どこか不気味でありつつも物悲しげな雰囲気を漂わせていた。
 3棟ほど並んだ集合住宅の駐車スペースに停まる車は酷くまばらで、住人がほとんど居ない事を告げている。
 消えた404号室のある建物は、側面にでかでかと“B”の文字が刻まれた棟だ。
 だが、各棟に情報収集に行くのも悪くは無いだろう。
 各棟の101号室には管理人がおり、各住宅の居住状況や空室の鍵を借りられる筈だ。
 ……さて、どこに向かおうか。
 
ジェイ・ランス
【SPD】※アドリブ、連携歓迎
■心情
ふむふむ、無い部屋を探せとか、なかなか面白い話じゃないの?
とりあえず、B棟の404ってどこ~?って人に聞くか?
いや、人の出入りで見てみてもいいな。面白いことわかるかもだし。
ひとまず、数時間張り込んでみるか。
てことで、まずは作戦タイムだな。

■行動
UCを起動しつつ、集合住宅の全棟に"事象観測術式"による【世界知識】から【情報収集】。人の出入りや行動を監視しつつ、空間に不自然な痕跡がないか、妊婦の最近の行動を知る者はいないかなどを聞きこみます(情報収集、言いくるめ)。


化野・花鵺
「ユウキさんおひさ♪今日は私ふ…せぇふく?」
狐、首傾げた

「聞いてた聞いてたぁ!ポリスメンごっこし放題なんでしょぉ!行ってくるぅ♪」
狐、スキップでゲート通り抜けた

「胸よし連絡表よし訪問カードよし、巡回連絡レッツゴー!」
化術で迷子装い1番近い交番確認した狐、UCでちょっと盛った体型の婦人警察官に変化した

「こんにちはー、○○交番でーす。巡回連絡に来ましたー。最近何か困ってることありますかー」
6部屋しかない棟に行き1階から各世帯10分程度誘惑も使用し聞取り
「そう言えば、ここ全部7軒だったと思ってたんですけど6軒しかないみたいでぇ。何か聞いてますぅ?棟長さんとかぁ?」
時間があれば他の棟も行き皆に結果連絡



 張り込みと聞き込み ジェイ・ランス

 集められた猟兵たちが各々散っていく中、さてと一言呟いた。
 消えた部屋を探せとはなかなか面白そうな話ではあったが、それでいてこれ以上なく難儀である。
 ついうっかり置き忘れた鍵を探すのとは訳が違うのだ。
 暫く思案してたどり着いた答えは、結局のところ月並みな物である。
 即ち、張り込みと聞き込みだ。
 まずは張りこみつつ現れた人物に片端から声をかけていこう。
 B棟の202号室は何処か? と。
 怪訝な顔をされるだろうが、他に探しようも無いというのが本音だった。


 失意に満ちた始まり 化野・花鵺

 久方ぶりの男の依頼にルンルン気分で顔をのぞかせたのだが、はっきり言って落胆していると言わざるを得ない。
 少々ムスッ垂れた顔で、先程の会議を思い出していた。
 彼女がこんな顔をしているのはほかでもないグリモア猟兵の衣装についてである。
 いや、確かにこれまでも制服と呼べるのか怪しい事もあったのだが、今日のそれは輪に掛けて酷かったのだ。
「あんなのただの私服だよぉ⋯⋯」
 そう思い出してうなだれる。
 なんてことをしてくれたのだと。
 これまで培ってきた私達の関係を思い出せば、制服姿に見とれている間に気付けば依頼現場というお決まりのパターンが出来ていたというのに。
 今回は彼が何を言っていたのかそれなりに記憶してしまっているではないか。
 これは酷い裏切りだ!! 冒涜だ!!
 ⋯⋯と、これ以上こんな考えを巡らせていても時間の無駄だろう。
 仕方がないので仕事に入ろうかと、そそくさとB棟へと向かっていった。

 
 狐のおまわりさんと観察者 ジェイ・ランス 化野・花鵺

 小さなため息がジェイの口から吐き出された。
 結論から言って、聞き込みはまったくの無駄だったと言わざるを得ない。
 ⋯⋯誰も出入りしないどころか、もの悲しげなヒグラシの声が響くばかりで車すら通る気配が無い。
 少し恨めしそうにB棟を再び眺めると、ちょうど階段から4階へと昇ってきた警官の姿が目に入った。
「⋯⋯ありゃ?」
 間の抜けた疑問の声が口から漏れる。
 いつの間に入ったのだろうと一瞬思案したが、よくよく考えれば途中から何一つ変わらない景色に嫌気がさして、赤い空に浮かぶ雲の形に心奪われていたことを思い出す。
 ⋯⋯サボっていたわけではない。決して。
 あるいは、これだって邪神の罠かもしれない。
 ⋯⋯そんな風に自分に言い訳をしてから、再び先程の景観に目を移す。
「⋯⋯ありゃ?」
 ⋯⋯再び漏れる間の抜けた声。
 その警官は明らかにおかしい。
 ⋯⋯その制服は日本の警察の物ではなかった。
 それもその筈、その警官は猟兵だ。
 ⋯⋯そう、花鵺である。
 いつか手に入れたL.A.P.Dの制服に身を包み、1階から順に聞き込んで回っている途中である。
 まぁ、実際いちいち着替えずとも疑われはしない。
 どちらかと言えばキラキラとしたロス市警のバッジを煌めかせて警邏だと語る方が疑われかねないのだが、それが猟兵というものだ。
 だが、疑われようが疑われまいが各部屋への聞き込みも無駄に終わっている。
 気になる情報というのはあまりない。
 403号室の前で、目の前の部屋を睨みながら思考を纏める。
 404号室に住んでいたのは若い夫婦で、最近夫が病に倒れ妻も塞ぎ込むように誰にも会おうとしなくなった。
 それからしばらくたってからだという。
 404号室に近づけなくなったのは。
 聞いたところによれば、気付くと通り過ぎてしまっているのだそうだ。
 住人たちは特に用がある訳でもなければ、405、6、7号室には住んでいるものは居ない。
 これは402号室の住人から聞いた話だ。
 つい最近、自室に帰ろうとして通り過ぎたとき、本当に一瞬で通り過ぎてしまっていたらしい。
 そして戻るときもまた一瞬。
 不思議な話だが気味が悪いと笑っていた。
「よっし⋯⋯」
 目の前の404の表札に意識を集中し、足を踏み出した。

「ふーん、なるほど」
 遠くから花鵺の様子を眺めていたジェイがにやりと笑う。
 認識阻害ではない。
 これは空間そのものが切り取られているのだ。
 そう確信した。
 404に踏み出した花鵺が一瞬にして405の前に到着した。
 あたふたと慌てている様子が観察できる。
 観測できた事象はこうだ。
 彼女が一歩踏み出した途端、まるで身体を割断されたかのように分割され、405の前に現れた。
 今俯瞰している空間そのものが切り取られているのでなければこんな事は起こらない。
 存在はしている。
 だが、空間はそこにはないのだ。
 つまるところ、その空間は何処かにあるはずだ⋯⋯。
 空間の割断は容易な物ではない。
 それもあの規模を割断するなら大規模な魔術か何かでなくては不可能だ。
 あるいは⋯⋯⋯⋯
「何か関連する場所に上書きしたか⋯⋯かな」
 それも、あの部屋とつながりの深い場所だ。
 それならば簡易的な物で上書きできる。
 もう少し張ってみるべきか。
 あるいは、別の猟兵が持ち帰る情報を待つか⋯⋯。
「果報は寝て待てっていうからなぁ」
 そう呟いて、近くの草むらに寝転ぶ。
 ⋯⋯読んで字のごとく、寝て待つとしよう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

九重・灯
表に出ている人格は「わたし」です。

UDC組織から情報を回してもらいます。404号室の住人について何か分かるかも知れません。

外から『B』の棟を見てみますが、やはり4階は窓やベランダなんかも一部屋分足りないのでしょうか。
次に中から確認。一部屋無くなっているなら、その分403号室と405号室の扉の間に不自然な空間があると思うのですが……?

UC【天眼の導き】。天眼珠を握って壁を透視。
「……失礼しますね」
異界化で空間自体がズレているなら何も見えないかもですが。それなら単純に壁を壊しても404号室にたどり着けないでしょうね。

周りに誰か住んでいるなら、404号室の住人の様子がどうだったのか聞き込みしてみます



 静寂に響く声 九重・灯。

 うーんと403号室の男は唸る。
 先ほど警邏にも話したのだがと渋られたが、暫く食い下がると、渋々ながら語ってくれた。
「まずは、夫婦の様子について教えていただけますか? ⋯⋯⋯⋯旦那さんが無くなる以前の」
 提供された茶を礼と共に一口啜り、そう切り出した。
 そんなに詳しくは知らないがという男は少し悲しそうな目で呟く。
「奥さん臨月だったそうなのに、そんな時期に癌でぽっくり逝っちまうなんてなぁ⋯⋯」
 男の話によれば元々旦那は身体が悪く自宅で働いていたのだが、妻の妊娠を機に仕事量を増やしたらしい。
 それが祟って病状が悪化したのだろうと言った。
 近所との付き合い自体は昨今では珍しいほど良好で、妊娠が分かったときもすぐに挨拶に来たのだという。
 生まれた子供が迷惑を掛けてしまうだろうからと。
 だが、旦那が亡くなってから妻は他者との交流を避けるようになった。
「よほどショックだったんだろうな。ほとんど出掛けなくなっちまったみたいだよ」
 だから、外で何をして居たとかそういうことは一切分からないらしい。
 その後も暫くは話を聞いてみたのだが、それ以上有益な情報は聞けなかった。
 続いて、管理人から借りた鍵で405号室に向かう。
 先ほど建物を俯瞰したときのように、404号室はたしかに存在し、認識できる。
 ⋯⋯認識は出来るが、近づけないし数えられないのだ。
 ならば、部屋は確かに存在している。
 だが、空間が割断されていると見るべきか。
 そして気付いた時には、既に405号室の前に移動しており、振り返れば404号室が確認できた。
 鍵を開けて中へと入ると、空室特有の消毒液の匂いが鼻をくすぐる。
 静かに404号室の壁に耳を当て、息を殺す。
 空間自体は存在し、俯瞰できる。
 まさか壁を破壊して隣室に進入はできないだろうが⋯⋯
 
 ぎぃ⋯⋯ぎぃ⋯⋯

 自分の心音に紛れるほどの微かな音ではあったが、何かの軋む音が等間隔に響いている。
 なんだろう?
 等間隔の音⋯⋯メトロノーム⋯⋯振り子?
 その時だった。
「おかあさん⋯⋯」
「⋯⋯っ!?」
 声だ。
 少女⋯⋯いや、少年? 分からない。
「その子はだぁれ?」
 再び響く声。
 不明瞭な声ほど小さな声が404号室の方から聞こえる。
「誰か⋯⋯いる?」
 そう呟いた時だった。
「あなたはだぁれ?」
 酷くはっきりとした声で、そう尋ねられた。
「ひっ⋯⋯」
 こちらを認識している?
 誰かが404号室に居る。
 子供だ。
 だが、こちらに気付くなど有り得ない。
 再びの静寂。
 不気味なほど静まり返る室内で、早鐘を打つ自身の心臓の音が酷く五月蠅く感じた。
 ⋯⋯少なくとも、情報は得た。
 先ほどの声の主が何者なのか。
 あるいは、善性、悪性のものなのかは分からない。
 だが⋯⋯一刻も早くこの部屋から離れたい。
 そんな思いが、彼女の心を支配していた。
 だが⋯⋯
「⋯⋯失礼します⋯⋯っ!」
 空間が切れていても、この天眼珠の力があれば隣室の様子が見えるかもしれない。
 一部が見える。
 梁だ。
 梁に麻縄のようなものが縛り付けられており、それがゆっくりと揺れている。
 奇妙な音はこれが原因だろう。
 そして梁が軋んで音を鳴らしているのなら、その先には何か重いものがぶら下がっていると言う事は⋯⋯それはつまり⋯⋯。
 ⋯⋯部屋を離れよう。
 情報共有するべきだ。
 ⋯⋯それに、こんな所でたった一人。
 これ以上想像を膨らませるのは⋯⋯理解してしまうのが、恐ろしかった。
 
 

成功 🔵​🔵​🔴​

大神・狼煙
【眼鏡喫茶】

警察官に扮し、近隣住民に聞き込み


失礼、404号室にお住まいの方が行方不明という事でお話をお伺いしたいのですが……

えぇ、何度もすみません

進展がない以上、『何度でも』調べなくてはなりませんから


一見、熱血漢とみせかけ、その実『隠してる事があるなら吐くまで来るぞ』と脅しをかける語り口調

相手が白なら困惑か呆れ顔

黒なら厄介顔か冷や汗くらいは見せるだろう


後は現場に案内しろと、404へ誘導させて

実はありもしないモノを語り、何かを隠してませんか?

と疑念を向ける

何か『不都合な事実』があれば口を割るだろう

それを話さなければ、案内させたそいつが容疑者になるのだから



最後に合流して情報の擦り合わせをしておくか


神樹・桜花
【眼鏡喫茶】
夫に先立たれた、妊娠4、5箇月程の寡婦という設定で立ち回ります

ミカエル(以下ミシェル氏)に大体の質問は任せますが、失踪した妊婦の話はそれとなく突っ込んでいきます
旦那さんを亡くされてからの様子や言動くらいは、近くに住む方ならなんとなくわかるのではないでしょうか

……
大切な伴侶を亡くす、というのは、人間にとって非常に大きなストレスとなるそうですね
年若い夫婦がそんな目に遭えば……自死を選んだとしてもおかしくないかもしれません

皆様と共有はしておきましょう


ミカエル・アレクセイ
【眼鏡喫茶】
アドリブ歓迎

桜花が夫を亡くしたばかりで経済的不安より安部屋を探しているという設定で、各棟の管理人に話を聞いて回る
俺はスーツ姿
福祉の相談員に扮して付き添い役

いきなりB棟には行かず、Aから順番に
各棟の住人や部屋の空き状況を聞きながら、世間話にかこつけて最近起こった不自然な何かを聞き出せれば成果としては上々と言ったところか
仕草や口調、抑揚等のわずかの変化も見落とさないようにしつつ、今回の件に重要と思われる部分を把握

長く生きてくりゃ、数多の不幸を目にしてきたが、結局どれも救いようのない結末だったな
今回も結局そうなんだろう
夢は必要でも、夢なんかありゃしない

狼煙と合流して情報の磨り合わせするか



 幸せの404号室 C棟にて 大神・狼煙

 その男は何といえば良いのか、少々気難しそうな⋯⋯或いはぶっきらぼうとでも言えばよいか。
 少なくとも警官を名乗る訪問者に対して、あまり友好的とは言い難い態度で口を開いた。
「⋯⋯随分仕事熱心なこって」
 皮肉交じりに投げられた言葉に、えぇ、何度もすみませんと頭を下げた。
「進展がない以上、『何度でも』調べなくてはなりませんから」
 そう語った狼煙に対し、小さく鼻を鳴らして男はB棟の失踪者の事件について囀った。
 まぁ、ここまでは想定通りだ。
 出てくる情報はそこまで重要な物ではない。
 続いて、B棟の404号室に案内してくれないかと聞いた時、男は一層不機嫌そうな顔でからかっているのかと語気を強めた。
「だから、近づけねぇんだって言っただろ。案内のしようがねぇ」
 用があるなら自分で行ってみなと吐き捨てるように続ける。
「まったく⋯⋯ただでさえ住人が減っていってたのに、これでもうこの団地もおしまいだよ」
 そういえば。
 この場所は立地自体は悪くない。
 食料品店やコンビニなどは一応徒歩圏内にあるし、少し車で動けば環状道路がある。
 少し離れた場所へのアクセスも申し分ない。
 なのになぜこんなにも寂れているのだろうか。
 その疑問を投げかけると、少し考えた後に、まぁ信じられない話だがと面白い話を教えてくれた。
「この辺は一昔前まで墓場だったんだと。この集合住宅の建設にあたって移転したらしいんだが、最初はそれを気味悪がって誰も入居者が現れないなんて時期もあったそうだ」
 だが、それもある日を境に改善することとなった。
 近くにあった環状道路が開通したことにより、交通の便に優れたこの団地は一躍入居希望者が増えていくこととなる。
「特に、A棟とB棟の404号室はすごい人気だったんだぜ?」
 昔を懐かしむようにそう言った。
 それはなぜなのか。
 そう聞かれた男は、簡単な話だと言う。
「向かい合わせなのさ。4と4が向かい合わせになっている、幸せの404号室ってな」


 幸せの404号室 B棟にて ミカエル・アレクセイ 神樹・桜花

 ミカエルの話を聞いていたB棟の管理人は、分厚い丸メガネをくいと持ち上げて唸る。
「確かに、うちはこの辺じゃ破格の値段だろうけれど⋯⋯ねぇ?」
 失踪の噂と、404号室に近づけないという普通では考えられない異常事態。
 こんな時に新たに入居者が現れたとしても、素直に喜べないのは当然か。
 それでもお願いしたいと食い下がると、希望の部屋はあるかと聞いてきた。
「⋯⋯そういえば」
 ここで、桜花が始めて口を開いた。
 この集合住宅にも若い夫婦が居ると聞いたのですがと。
 それを聞いた管理人は静かに首を振る。
「数か月前に旦那さんは休止、奥さんもついひと月ほど前に失踪してしまいましてね」
 流石に、部屋に近づけないなどという異様な状況については触れなかったか。
「まったく⋯⋯幸せの404号室なんて昔は言ったんですがね、この棟の404号室に住んでらしたんですよ、高木さん」
 彼らも、入居当時には桜花たちのように、可能な限り安い賃料の部屋を探していたのだそうだ。
 そこで、A棟とB棟。
 互いに404号室が向かい合わせになり、幸せの404号室と呼ばれたその部屋を紹介したところ、いたく喜んでくれたと語った。
 だが、旦那は早死にし、妻は失踪。
 こんなことになるなんて、だれが想像できただろうか、と。
「⋯⋯なるほど」
 ミカエルが小さくつぶやく。
 皮肉なものだ。
 だが、数多の不幸をこの目で見てきた。
 そして、須らく訪れる結末は、悲惨なものでしかなかったのだ。
 それと今回の事件⋯⋯恐らく、この物語の結末もそうなのだろう。
「そうだったのですか⋯⋯」
 最愛の伴侶を失う。
 ましてや誰かのせいでもなく、病というどうしようもない事象で。
 それはどれほどの苦痛だろう。
 誰かを恨むことすらできず、責めることもできない。
 やり場のない喪失感に苛まれた若い女が、失踪⋯⋯⋯⋯恐らく、もう彼女は生きてはいないのだろう。
 考える必要もない。
 だが⋯⋯これは一度、情報を纏めるべきだ。
 C棟の方に向かった狼煙も、そろそろ何か情報を手に入れた頃だろうし、ほかの猟兵の話も聞いておきたい。
 後日再び話を聞きに来るとだけ告げて、二人は管理人室を後にした。
 不幸な出来事は悲惨な結果に収束する。
 この物語の結末も、きっとそうなるのだろう。
「⋯⋯悲しい事です」
 そう呟いた桜花に、ミカエルはそうだなと同意する。
 ⋯⋯⋯⋯そして。
「⋯⋯嫌な予感がするんだ」
 そう、何かの気配を感じ取っていた。
 この違和感についても、しっかりとすり合わせておく必要がある。

 
 
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

千崎・環
部屋そのものが見つからないなんて不思議な話だけど、街の平和はこの千崎 環が守る!ファイ、オー!

夏、団地、行方不明者…なんだかホラーっぽい?まあUDCが動いてるなら普通の事件じゃないんだよね。
でも相手が怪異だろうと何だろうと基本は足で稼ぐこと!聞き込みだ!
「こんにちは!捜査にご協力お願いします!」
団地の管理人さんや隣近所の部屋はもちろん、団地に一番近いお店も当たってみるよ!
行方不明者の素性、身辺の情報も集めてみようかな。先ずは何があったかを知らないと。
後はひたすら現場付近を徹底的に見て、歩いて、異変を感じる!団地は1階から順番に歩いてみて、屋上まで上がってみるよ!
「何か引っかかる、ような…」



 死合わせの404号室 千崎・環

 誰かを守れる人間になりたい。
 そんな漠然とした正義感だけを頼りに警察学校の狭き門をくぐったのはいったいいつだっただろう?
 初めて配属された町で、ここが私の守る町と瞳を輝かせたのはいつだった?
 目まぐるしい日常の中で、確かな実感を得たのは?
 その実感が、世界を守るという酷く曖昧な物に戻ってしまったのは⋯⋯
「⋯⋯うっし!」
 ぴしゃりと頬を叩き、無駄な思考を排除した。
 近所の商店街にまで出向いたのは無駄足であったことは否定しないが、各棟での聞き込みとほかの仲間たちが集めた情報を合わせれば、答えはもう目の前だ。
 A棟404号室。
 隣り合うB棟の404号室と向き合う幸せの404号室。
 おそらくここが正解だろう。
 いや。
 ここが正解だ。
 最初から感じていた何かが喉の奥につかえるような感覚が、目の前の部屋を前に実感に変わる。
 ⋯⋯あの時。
 私の正義が曖昧な物に逆戻りしてしまったあの時に私の体を蝕んだ怪物が、呼応の雄叫びを上げている。
 管理人室で受け取った洋白の古ぼけたカギをカギ穴に差し込んで回すと、かちりと小さな音が響く。

 ギィ⋯⋯

 扉を開いて部屋の空気が鼻腔に流れ込んだ瞬間、環は小さく嘔吐いて口元を押さえた。
 チーズの臭いだ。
 それも⋯⋯ものすごく強烈な。
 それは目の前にもう一枚の扉を挟んでいるにもかかわらず漂う強烈な腐臭。
 そして、環の周りをせせら笑うかの様に飛び回る蝿の群れがその扉の奥の惨状を語っている。
 慣れたくは無いものだ。
 そう思いながら、慣れた手つきで口元にハンカチを当てて臭いを遮る。
 その場しのぎのマスクと共に、鬱陶しく笑い続ける蝿を払いながらその扉に手を掛けた。
 小さく軋む扉の音と共に大量の蝿と、さらに強烈な死臭が環に襲い掛かる。
 そして、その目の前の光景を⋯⋯彼女は直視出来なかった。
 仏なら何度も見ているはずなのに。
 室内の異様な空間とその中心でぶら下がっていた、服を纏い半ば蕩けた肉塊。
 そして⋯⋯その下で糞尿に塗れ、麻縄のロープにぶら下がる肉塊からさらに細い紐で繋がっていたあれは⋯⋯⋯⋯。
 警察官という職務に従事してきた彼女であっても、それを見てしまっては普段の明朗快活な姿は鳴りを潜めてしまう。
 それは⋯⋯赤子の成り損ないだった。
 
 

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『狂気の解読』

POW   :    狂気は精神力で克服する

SPD   :    狂気に触れないよう器用にやる

WIZ   :    狂気を思考で受け流す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
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 苦戦🔵🔴🔴
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 呪詛の主 断章

 人間という物は無意識の内に全身の筋肉を収縮させているが、脳がその活動を停止すれば指令が無くなり全て弛緩してしまう。
 そうなればどうなるか?
 答えは簡単だ。
 無意識に体内に留めていたものが、体外に漏れだし始める。
 つまり……だ。
 首吊りという死の選択は、脳の活動停止と共にその身体の内容物を重力に従ってぶち撒けるという事に他ならない。
 人は……綺麗には死ねない。
 ましてや、首を吊れば尚更なのだ。
 猟兵達は、そんな直視したくもない現実の前に集まった。
 部屋中に貼られた意味不明な記号の掛かれた大量の札。
 半ば蕩け、蝿に集られ蛆の湧く母親の遺体。
 そして、そこから地面に放り出された、未完成の水子。
 諸人が卒倒、或いは嘔吐、或いは狂気に呑まれるようなこの空間で、猟兵達はこの事件に終止符を打たねばならない。
 割断され、この場所に移された404号室を、元の場所に戻すのだ。
 その元凶は……必ずこの部屋にある。
ジェイ・ランス
【PSD】※アドリブ、連携歓迎
■心情
……えらいことになってんな!
へー、ニンゲン死んだらこうなるんだなって、それは今はいいや。興味深いけど観察してる暇ないしな。
まったくさ、Not Found(404エラー)なんて現実に作られても困るんだって。
さてどうやって戻すかね。明らかに大量のお札が悪さしてるのは明白だけど、思念とか呪詛とかかかわってそうだけし、うまくやんないとなー…

あーもう、勘弁してくれよな、オレおばけ苦手なんだぜ…?

■行動
【罠使い】の技能を応用しつつ、罠に触れないように【情報収集】し、【瞬間思考力】と"時空制御術式"によるUCの加速で対応し【偵察】します。



 人間の死。 ジェイ・ランス。

 普通の人間であれば、目の前の凄惨な光景に恐怖や嫌悪感のひとつも覚えたのだろう。
 だが、彼にあったのはただの好奇心だった。
「はえ~……」
 まるで初めて見た不思議な光景に感嘆するかのような、極めてこの場に似つかわしくない声が漏れる。
「人間って、死ぬとこうなるんだなぁ」
 バーチャルキャラクターと人間。
 たしかにそれらに等しく死は存在すれど、平等ではない。
 バーチャルキャラクターであるジェイは、言ってしまえばデータだ。
 悠久の時を過ごすが、消失は突然。
 彼を形作るコードが崩れれば一瞬で跡形もなく、崩れ去るだろう。
 ならば人間はどうか。
 短い時を過ごし、ひとたび死に捕らえられれば腐乱しゆっくりと崩れていく。
「おっと……」
 人間の死に関して思いを馳せるのは良いが、それは今やるべき事ではない。
 今は目の前のエラーを片付けるのが先決だ。
 Not Foundなど、ネットの中だけで充分である。
「404エラーだけに」
 …………。
 部屋を軽く見渡すだけでも、怪しい物は数多い。
 まずは、分かりやすい呪符の方を調べてみるとしよう。
 簡単に全ての札に目を通すと、それぞれ意味不明な言語、或いは記号のような物が描かれている。
 スッと札の一枚に手を伸ばし、すぐにそれを引いた。
 ……ダメだ。
 これらが何かしら悪さをしているのは確実なのだが、呪詛に明るくない自分が何も考えずにこれを引き剥がした場合に起こる事についての確証がない。
 そのまま部屋が元に戻れば良いが、下手を打てばそのまま部屋ごと異空間に飛ばされて、二度と帰還出来なくなる可能性も否定出来ない。
「あーもう、勘弁してくれよな……」
 オバケ等という非科学的な物は苦手なのだ。
 勘弁してくれと呟きながら、今は手を出さずに周囲の行動を見守る事にしよう。

成功 🔵​🔵​🔴​

神樹・桜花
【眼鏡喫茶】

【POW】

……尋常な精神の人間が見たら卒倒しそうですね
(ミカエルから渡される物を受け取って、ハンカチで口元を覆う)

呪詛……ねぇ
(やり場のない感情をどこかにぶつけるとしたら……特定の何かにぶつけていない以上、その対象は恐らく、『世界』そのもの)
これだけ札が貼られていると言うことは、やり方は恐らく何かで調べたのでしょうか
旦那さんが在宅で仕事をされていたとのことなので、パソコンの閲覧履歴を探ってみましょう

やり方はどうあれ、邪神を召喚してしまう程に強烈な感情が、その瞬間には有った、ということになるでしょうか
……母を死に至らしめた世界を憎む、赤子……?
(遺体の足元に『居る』赤子を見る)


ミカエル・アレクセイ
【眼鏡喫茶】
【POW】
長年生きてりゃ、いろんな死体も現場も見てきたからまぁ、そんな事だろうと思ったよ
隔離されてりゃ処理できる奴も居なかっただろうし、ここだけ時間が止まってるってことも無いだろうしな
(桜花に雨合羽と長靴渡そうとしつつ)
降ってくるぞ、蛆
あと汚れる
アパートは取り壊しかな、可哀想に(棒)
幸せじゃなくて『死合わせ』だなこれじゃ


呪詛は軽いのから禁呪まで万遍なく『受ける』のには慣れてるんだが『理屈』を識ってる訳じゃねぇんだ
詳しい奴居るか?(視線は自然と狼煙に向く)

惨たらしく狂気を呼ぶ状態が『都合がいい』…?
何やら覚えのある方の愉悦混じりの悪意を感じるんだが、気のせいだと思いたい


大神・狼煙
【眼鏡喫茶】

もはや、見飽きた光景だ

故郷で死骸が転がる様は日常で、それを『作って』食らいもした

それでも、今は……

膝をつき、両手を重ね、黙祷


我等命を弄ぶ外道なれど、尊厳を踏み躙る真似はしない


この手の呪詛なら、怪しいのは子どもだろうか

産まれる前に死んだ母親から零れ落ちたモノ

なればそこには母の抱いた想いが詰められている

それは憎悪かもしれない、親子愛かもしれない、あるいは、母に抱いてもらえなかった無念か

何にせよ、この赤子もどきが呪物の可能性はある

謝罪はしない

ここまで来た時点で、既に救えなかった命だ

水子を踏み躙る

いつもの事だ

新たな呪詛を生み出す前に、ここで終わらせる



 出来損ない。 神樹・桜花 大神・狼煙 ミカエル・アレクセイ

「降ってくるぞ、蛆」
 ミカエルから渡された雨合羽と長靴を着て、酷い悪臭を放つ遺体へと近づいていく。
 確かに尋常な人間なら狂気に囚われてもおかしくはないだろう。
 卒倒して倒れてしまえるのなら、それはそれで幸福と言えるかもしれない。
「こりゃ、アパートは取り壊しだな⋯⋯可哀想に」
 全くそう思っていないのが良くわかる。
 だが、おそらく取り壊しになるのは確実だろう。
 ただでさえ人の減ったアパートでこれほど凄惨な死体だ。
 もう、新たな入居者など現れないだろうし、今住んでいる住人もどれほど残るか⋯⋯
「何かわかるか、桜花?」
 遺体の女性は、事前に手に入れていた情報⋯⋯いや、子を孕んでいたということを考えれば非常に若い女性だったのだろう。
 そんな人間が呪詛を知るなど、普通に考えればあり得ないことだ。
 おそらく⋯⋯
「いったんそちらのパソコンを調べてみます。どこから彼女が呪詛の事を知ったのか、それを調べておくべきかと」

 そう言って、桜花はPCへと向かって行った。
 ⋯⋯何が幸せだ。これでは死合わせじゃあないか。
「長年生きてりゃ、いろんな死体も現場も見てきたからまぁ、そんな事だろうとは思ったよ」
 目の前の腐敗した死体に呟く。
 しかし⋯⋯
 こうなると自分は出来る事があまりない。
 呪詛については軽いのから禁呪まで万遍なく『受ける』のには慣れている
 だが『理屈』を識っている訳ではない。
 もし、呪詛がこのまま解ければ上々。
 戦わずに事件さえ解決するのならそれに越した事は無い。
「だが⋯⋯」
 そう言って周囲を再び見回す。
 狼煙が膝をつき、黙禱を捧げているのが見えた。
 惨たらしく狂気を呼ぶ状態⋯⋯
 あるいはそれが都合の良い状態なのだとすれば⋯⋯。
 だとするならば自分には心当たりがある。
 あの愉悦交じりの悪意。
 出来うることなら気のせいだと思いたいのだが。
 そう思ったときだった。

「おい! 何してるんだ、狼煙!?」
 何をしている?
 ミカエルの驚愕の声の裏で、足元に感じるぬらりとした気味の悪い感覚に少しだけ眉をひそめた。
「この赤子もどきが呪物の可能性は十分に考えられること。なら、早めに片付けるに限ります」
 それに、こんなものでは今更驚きもしない。
 故郷で死骸が転がる様は日常で、わたしはそれを『作って』食らいもしてきた。
 確かに思うところはあったが、それでも呪詛を潰すのが最優先だ。
 もしこの赤子の成りそこないが呪物で無かったとしても、水子というものは呪詛の素材としては最高のものだ。
 残しておいても碌な事は無い。
「だからってなぁ⋯⋯」
 言いたいことは分かる。
 だが、私は事件を解決しに来たのだ。
 その場の感傷に流されて、本分を見失うわけにはいかない。
 それに、ここまで来た時点で既に救えなかった命だ。
 謝罪はしない。
 それが必要な事であるのなら⋯⋯私はどんなことでもやるだろう。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

千崎・環
(POW)両手を合わせてなむあみだぶつ…。
きっと幸せな家庭を夢見てたんだろうな…早くこんな所から出してあげないと。

この部屋が異界化した原因はこの儀式めいた呪いとUDCが絡み合ったから?
だとすればどうすればこの事件の黒幕に辿り着けるのか…んー、ちょっと強引だけど、部屋中に貼ってある普段を剥がして剥がして剥がしまくってみよう!
異界化が解除されて何ごともなければよし!もしUDCが姿を表すならこの千崎 環が成敗してやる!おー!


九重・灯
(「ぷ、くくっ。さっきはマジでビビってたな?」)
わたしの頭の中に、もう一人の自分の声が響く。
(「今更どうした。散々バケモノと戦ってきただろ」)
からかうように笑う。わたしに発破を掛けてくれているのだろう。
「それとは恐さのジャンルが違うじゃないですか」
わたしは一人じゃない。

息を吸い酸素を取り込む。ハエが邪魔。追っ払って結界術で閉め出す
吐き気を飲み込んで、ラムネ菓子を口に含む

空間の割断と移動。「幸せの404号室」の言霊で繋がれた二つの空間の重複させている。同じ場所に二つのものが重なって存在すると…?
『楔』の役割を持つものがB棟の空間をこちらに縫い止めているはず

UC【星を手繰る】。解決の糸口を探ります



 神孕む母体 千崎・環、九重・灯

『ぷ、くくっ。さっきはマジでビビってたな?』
 頭の中で、普段の灯の声とは異なるガサツな声が響いた。
 ⋯⋯否、これも私だ。
 紛れもない私の側面。
 コインの裏側。
 からかうようでいて、何処か嫌味を感じない声音で“もう一人の私”は私を笑う。
 今更あの程度で驚くなよと。
 ⋯⋯良い訳では無いが、直接の危険に対する恐怖と得体の知れないものに対する恐怖は全くもって別のものだ。
 そう反論してから窓の外に顔を出し、少しでも新鮮な空気を肺に取り込もうと口を開けて⋯⋯
「⋯⋯むぅ」
 ぶんぶんと飛び回る蝿を睨めつけると、それを払いながら結界を展開した。
 結界内でせめて新鮮な空気を確保できる空間を。
 だが、結界の中でも吐き気を催す程の腐臭はどうにもならなかったらしい。
 仕方ないと首を振りながら、込み上げる吐き気と共にポケットから出したラムネ菓子を飲み込んだ。
 優しい甘みが喉を通り抜け、ゆっくりと頭がすっきりとしていく感覚を覚える。
 ⋯⋯思考を加速する。
 私にはそれが出来るはずだ。
 割断された空間。
 互いに関連性のある空間同士を繋いでいるのなら⋯⋯なにか『楔』の役割を持つものがあるはずだ⋯⋯
 先程踏み潰された水子が違うなら、或いは札⋯⋯いや、違う。
 あの札はおそらく楔の力を強化する増幅器⋯⋯ならば。

「⋯⋯⋯⋯よし!」
 両手を合わせ、小さく念仏を唱える。
 当初、あまりの凄惨さに正気を失いかけてしまったが、暫く外でゆっくりと深呼吸をして心を落ち着けると、彼女はいつもの調子を取り戻していた。
 きっと、彼女はこれからの幸せな未来を信じていたはずだ。
 だからこそ、この“幸せの404号室”を選んだのだろう。
 だが信じていた未来を理不尽に奪われ、そしてこんな空間に閉じこもる道を自ら選んでしまった。
 そんな結末を、こんな悲しい結末を認めるわけにはいかない。
 せめてこの空間を元の状態へと戻し、親子を彼らの愛した男と埋葬してやるのが私の仕事だ。
 だが、問題はどうすればこの空間の割断を戻せるのか⋯⋯だ。
 まず怪しまれた水子の遺体は、踏み潰され破壊されている。
 もちろん通常許される行いではないが、この異常事態を解決するために行った行為ならば、私には咎めることなどきっとできない。
 ならば私にできることは⋯⋯
「ちょっと強引だけど⋯⋯さっきの人よりはましだよね!!」
 そう声を上げると勢いよく、張られた札を引き剝がしていく。
 それが私にできる事だ。
 ならば、ここは躊躇をするべき時ではない。
 なに、これだけの人数が居るのだ。
 何かあっても何とかなるさ。
 もし、この割断の元凶がUDC⋯⋯あるいは邪神にあるのならば出てくるがいい。
「この千崎・環が成敗してやる!」
 おー! と声を張り上げながら、私は手当たり次第に札を引き剝がしていった。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『終末の嬰児』

POW   :    その嬰児、近づくなかれ
【狂】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【絡みつく黒い触手のかたまり】から、高命中力の【狂気を喰らう触手】を飛ばす。
SPD   :    その嬰児、起こすなかれ
【まるで未来を見ているかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    その嬰児、愛すべし
【泣き声】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミカエル・アレクセイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 終末の嬰児 断章。

 最後の札が剝がされたその時だった。

 ――時は来た――

 室内に響く不気味な声。

 ――時は来た、その眼を開くのだ、そして目覚め給え、――

 天井から吊るされた腐乱死体の腹部がざわざわと動き始める。

 ――起きるのだ、可愛い可愛い狂気の子――

 死体の股から、腐乱した肉が零れ落ちる。

 ――生まれ給え、目覚め給え、産声を上げ給え――

 ずるりと母親の股から何かが落ちる⋯⋯否。

 ――世界に狂気を、母の願いを叶え給え――

 母体は神を孕み、そして時が熟したのだ。

 ――狂気で満たせ、世界を呪え――

 母は、子を産んだ。

 ――終末の嬰児よ――

   終末の嬰児を。
九重・灯
人格が替わる。『オレ』の出番だ。

まったく、やってくれるな。
自分と腹の中のガキを生け贄にして、自分の死体を「門」にしやがった。
(『生前に邪神教団と接触していたと考えるべきでしょう。あとで部屋を徹底調査しないと』)
もう一人の自分の声が頭の中に響く。
仕事熱心なこった。それはアイツを倒してもこの空間が無事だったらな

様子見に詠唱拳銃を撃つが……カスりもしねえ。なら避けられない攻撃をすればいい。

UC【影の森】。生命力をカゲツムギに注ぐ。影が広がり、部屋を覆い尽くす。形成した無数の影の刃で敵を刺し貫き、その場に縫い止める。室内じゃ避けるのにも限度があるだろ
『串刺し8、体勢を崩す5、地形の利用5、範囲攻撃5』



 生まれ落ちた赤子。
 腐肉と死臭より出でた⋯⋯邪神。
『けっ、てめぇの体とガキを贄にして、とんだバケモノを呼び出しやがった!』
 彼女がどういう経緯でこんなことを行えるまでの知識を得たのか。
 ⋯⋯誰がこんなことを彼女に行うよう、謀ったのか。
 脳裏を様々な思考が駆け巡る中、もう一人の私が心の奥底で叫ぶ。
『無駄な考えがしたいなら引っ込め! こっからはオレの仕事だ!!』
 すぅっと意識が遠のく。
 私は渦巻く思考の中、もう一人の私へと主導権を手渡した。
 荒事は⋯⋯そちらの担当だ。
「だがよ、結局この空間をどうにかできなきゃそんな考え無駄になるぜ?」
 表面に出た私が、私を諭すようにそう言った。
『この事態の解決含めて思考します。そちらの相手は任せます!!』
 考えるべくもなく、彼女がいずれかの教団と関わりを持ってしまったのは間違いないだろう。
 事態の終結と同時に、もっとこの部屋で情報を集める必要がある。
「仕事熱心なこったッ!!」
 もう一人のオレが黙り込むと同時に、忍ばせたジャック・ランタンⅡを引き抜いてその引き金を絞った。
 立て続けに四本の銃身から火花が散って、目の前の化け物へと喰らい付く⋯⋯はずだった。
「あァ!?」
 そのガキは、ゆらゆらと不規則な動きで放たれた弾丸を躱していた。
 確かに小型で大した精度の銃でもない、まして的が小さいという事もある。
 が、
「だからこんなオモチャは嫌いなんだ!!」
 流石にこの至近距離で全弾外すという状況は、オレを苛立たせるには充分だった。
 一向に目は覚まさないようだが、まるでおちょくる様に漂うそのガキ。
「だったらいつまで避けられるか試してやんよッ!!」
――影よ⋯⋯――
 両手を広げ、乞い、祈る。
 黒い影が、室内を覆いだす。
――我が力を喰らえ⋯⋯――
 こればかりは何度やっても慣れる事は無いだろう。
 痛みはなくとも、全身から血を吸いだされるような気味の悪い感覚。
 抜き取られた力が、カゲツムギへと注がれていくのが分かる。
 室内を覆い尽くした暗闇に、刃が形成されていくのが見えた。
 闇に紛れる漆黒の刃が。
「くびきから外れ、地を黒く覆い尽くせッ!!!!」
 怒号と共に、刃の形をした猟犬が一斉に嬰児へと喰らい付く。
 ゆらゆらとした不規則な動きで躱そうとしようが、この狭い室内ではそれにだって限度がある。
 放たれた刃が嬰児の身体を掠め、引き裂き、血を流させる。
 影の刃が邪神を傷つけるたびに、勝利への確信が陰っていく。
 何故だ?
 この赤ん坊を起こしてはいけないと、頭の片隅でオレたちに何かが警告していた。
「おねぇちゃん、ダメ」
「ッ!?」
 耳元で囁く声にハッと振り向く。
 隣室で聞こえた声だ。
 ⋯⋯しかし、その主が姿を現す事は無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千崎・環
出た…大物だ。ここで仕留めないと。気合い入れろ!

とにかく細かい事は後回し!今はこのヤバいのを倒さないと。とはいえどうすればいいか…とりあえずM360Jを抜いて照準!ありったけ5発撃ち込むよ!
これで死なない事くらいはわかってるけどね…なら警棒で全力でぶん殴ってやる!一気に近付いて全力で警棒を叩き付けるよ!

敵UCを受けてしまったら発狂しながら突撃!武器もヘルメットも捨てて終末の嬰児に肉薄したら素手で殴り続けてやる。痛いのは慣れてる。早く殺さないと私が殺される!
そのままUCを発動、片腕をクリーチャー化して全力で攻撃するよ。



 出た。
 見た目は赤ん坊。
 頭蓋骨や周辺の皮膚も無く、脳髄が見えている赤ん坊の形をした⋯⋯怪物。
 気合を入れろと心の中で叫んだ。
 ここで怖気づいては何のためにここに来たのか分からなくなる。
 街の平和はこの千崎・環が守る。
 そう誓ったのだ。
 だが、あれを見ていると頭がおかしくなりそうだ。
 アレはいったいなんなんだ?
 人の形を模した、狂気の塊とでも言えばいいのか?
「ッ!!」
 咄嗟に引き抜いた拳銃をダブルアクションで連射する。
 考えるな、思考するな。
 私の脳に⋯⋯何かが入り込んでくる。
 重いトリガープルと速射のせいで銃身はぶれ、目の前に居る敵にはろくに命中しない。
 何故だ。
 発砲音が聞こえない。
 ⋯⋯簡単なことだった。
「あアあぁあアあぁぁあアアあッ!!?!」
 悲鳴とも絶叫とも取れる叫びが、私の口から漏れている。
「私なの?」
 違う、そうじゃない。
「私は叫んでなんていないッ!」
 じゃあ⋯⋯私は何をしている?
「私は⋯⋯ッ!」
 意味と脈絡の消えた叫びと思考。
 どんどんと自分が何をしているのか、自分が何をしようとしていたのかがわからなくなる。
 あるいは、自分が何なのかさえも。
 ⋯⋯邪魔だ。
 頭に何かが乗っている。
 叩き付けたヘルメットが音を立てて転がった。
 早く⋯⋯。
 投げ捨てた拳銃が、腰に繋がった紐に引っ張られて足にぶつかる。
 殺さなイと⋯⋯。
 引き抜いた警棒を振り下ろす勢いで展開しながら、赤子をめちゃくちゃに殴打する。
「は⋯⋯はハ!」
 早くこイつヲ⋯⋯。
 いツの間にか、警棒を握り締めていタはずの腕が蠢く肉塊に変ワり果てていタ。
「アハハ!!」
 知っタ事カ。
 私ハ殺サナクてはナらなイ。
「アハハハハハハッ!!」
 いつもの明るい、近くに居るだけで皆に元気を分け与えるような環の姿はそこになく。
「アハハハハハッ!!! 殺サレル!? 私ガァァァァァァァ!!!!!」
 いつから彼女は狂ったのか。
 それは分からない。
 ただ、
 壊れたスピーカーのように叫び声を上げて地に転がった母体を執拗に殴打する狂人と成り果てた彼女は、血と蛆に塗れながら笑っていた。
 殺さなければ殺される。
 何度もそう繰り返しながら。
 
 

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ミカエル・アレクセイ
戦場において、思考したやつから死んでいく
特に『彼女』に関してはそうだ
善と思えば善、悪と思えば悪だ…何も考えなければ何物でもない
狂化かかっても無なら特段問題もない
予測して動く場合、相手の視線その他が材料になっている…その材料を与えるな

現状はすべて利用しよう
陽動は俺がする、お前らは脊髄反射で合わせろ
懐でグウグウ寝息を立てる子竜を服の上から指で弾く

貴女には幾度となく言ったはずなんですがね…軍神舐めんなクソガキ
まぁ、貴女の行動原理は全て『愉悦』
狂える人類の姿を充分愉しまれましたか
最期はあの時と同じく槍【ろんぎぬす】をお望みでしょう

二人の攻撃を避けた先があるならばそこに子竜が突っ込み、本来の姿の槍で穿つ


神樹・桜花
・・・ざっくり纏めるなら『考えるな、感じろ』ってことですね
(ミカエルの言葉に成程と頷く)
認識・思考した時点でアウトなら、本能(しょうどう)に従うのが最適解でしょう
(其処で真の姿を解放、狐面『封視』を装着)
本能が理性を凌駕するならば、此度の目的は成しえましょう

視界を封じた状態で敵の攻撃を躱し(【見切り、残像、第六感】)、機を見計らって狼煙と共にUCを発動(【鎧無視攻撃】)
避け切れなくても被ダメージは出来るだけ少なく、少しでも嬰児にダメージを重ねる(【受け流し、カウンター、オーラ防御】)

もとより心が壊れてしまっている故、狂気なぞ与えられたところで、壊れた心では狂えやしない
まして識喰ノ鳳という厄災を抱えていては狂っていられる余地もない
(【狂気耐性】)


大神・狼煙
【眼鏡喫茶】

脊髄反射とは無茶を言う……

とはいえ、陽動してもらえるのならこちらは即死の一撃を叩き込むだけでいい

実にシンプルな話……

相手が呪詛だろうが神だろうが関係ない

『斬った』という結果だけを残すこの刃、躱すも防ぐも叶いはしない

緋桜鳳凰を抜くが……桜花なら平気だろ、お前も妖刀だし

ミカエルは……全力で生きて(無責任)


敵のUCには一つ穴がある

それは、狂の感情を与えなければ起動しない事

紅音が……嫁が死んだあの日から、狂気に満たされるこの心に貴様の狂気は届かない

形態からして、目覚めれば周囲を滅ぼす爆弾染みた存在だろう

目覚めの時を迎えぬよう、肉体から脳髄を斬り飛ばす

眠り続けろ、お前に現実は辛すぎる……



 狂気。
 下らない。
 戦場において、思考などするやつが悪いのだ。
 敵を見定め、思考を放棄し、ただ圧殺する。
 ⋯⋯それで十分だ。
「こと、彼女においてはな」
 目の前の赤子を見据えて、ミカエルははっきりとそう言った。
 彼女。
 その赤子が何者であるかなど知っているとばかりに。
 ⋯⋯あぁそうだ。
 俺は知っている。
 そして貴女も知っているはずでしょう?
 幾度となく私は警告した。
「陽動は俺がする、お前らは脊髄反射で合わせろッ!」
 そう言って飛び出すミカエルに、桜花はただ一言答えた。
「委細承知」
 不意に部屋が歪んで拡がる。
 それは悪あがきか、或いはふさわしい場所を用意しようとでもいうのだろうか?
 懐を小さく叩いて飛び出したミカエルに続く。
 彼らしいと言えば彼らしい。
 考えるな感じろと言う事だろう。
 ここで私に求められるのは、理性ではなく本能。
 視覚情報すら紛らわしい。
 只々、全て任せればよいのだから。
 抜き払う刀が桜色に染まる。
 仮面の奥で、その眼が開く。
 後はただ⋯⋯切り裂くのみ。
「無茶を言う……」
 本能で体が動くものか。
 戦いとは本来、高度な思考の下に決定を下すものだ。
 本能で動くだけで勝てるのならあんなガキ一人、犬でも放てば勝手に喰らってくれるだろうさ。
 ⋯⋯とはいえ、二人が陽動を買って出てくれるなら話は早い。
 こちらは致死の一撃を、安全圏から叩き込めばいいだけだ。
 場合によっては⋯⋯桜花は問題なさそうなのだが⋯⋯ミカエルは⋯⋯。
 今まさに、最初の一撃を放たんとするミカエルをちらと見た。
「まぁ、いいか」
 死んだら死んだでアイツの責任だ。
 死にたくなければ本能とやらで勝手に生き残ってくれ。
 ミカエルの最初の一撃が空を切る。
 間髪入れず放たれた桜花の一閃が、その体を掠めた。
 敵は、狂ったように飛び回って攻撃を回避し続ける。
 否、回避し続ける事しかできないのだ。
 狂気。
 この赤子の本質は狂気だ。
 狂気を与える事で、この赤子は他者を攻撃する。
 だが。
 この場には狂気に囚われるようなものが居ない。
 本能に従い、その攻撃の全てを勘に頼っておこなっているミカエル。
 視覚すら断ち、元より壊れた心で目の前の敵を切り伏せる桜花。
 そして、愛する女性を失ったその日から⋯⋯とうの昔から狂い尽くしてしまっている狼煙。
 どこか壊れた者たちには、赤子の狂気など届きはしない。
 目覚める事さえできれば、きっと彼らとまともに戦うこともできるのだろう。
 ⋯⋯だが、足りない。
 不充分なのだ。
 贄の狂気が足りていない。
 不完全な形で生み出されたいま、必死に時間を稼ぐことが精いっぱいなのだ。
 目覚めれば⋯⋯目覚めさえしてしまえば⋯⋯ッ!!
「⋯⋯残念」
 そう、冷淡な狼煙の声が響いた瞬間、むき出しの脳髄が空に浮かんだ。
「あっぶねぇッ!?」
 目に見えぬ斬撃が、ミカエルごと赤子を切り裂いたのだ。
 これで死ねば上々。
 死ななくとも、目を開けることはもう出来まいよ。
 周囲の空間が、元の一室へと戻っていく。
「終わり⋯⋯ですか?」
 桜花の呟きに、ミカエルが首を振る。
 今度こそ、二度と蘇らぬよう徹底的に潰さねばならないと。
 狼煙がそれを踏み潰そうとして、桜花が止めた。
「彼にやらせてあげてください」
 ふと見れば、無感情な瞳でミカエルが切り落とされた脳髄を眺めていた。
 その手に携えた槍を逆手に構え、今にも振り下ろさんとしたまま。
「幾度となく⋯⋯私は警告した」
 そう、警告した。
 だがそれでも、彼女はその行動原理を変えなかった。
 否、変えられなかったのだ。
 その果ての滅びならば、それは必定であろう。
「もう十分すぎるほどに、狂える人類の姿を充分愉しまれましたでしょう⋯⋯今度こそ、最期だ」
 振り下ろした槍が小さな脳を砕き、周囲に霧散して消えていく。
 幾度となく彼女に施した警句。
 それをもって、狂気の宴に幕を閉じよう。
「⋯⋯軍神舐めんな、クソガキ」










 結局のところ、今回の騒動で分かったのは何者かが彼女に儀式を教えたと言う事だけだった。
 PCに残ったデータをサルベージした組織ですら、彼女の空白のページの答えには至らなかった。
 彼女が自筆で残していた日記の中で、怪しげなサイトで見つけたという今回の儀式の事が少々触れられていたことだけが、今回の情報としての収穫というわけだ。
「そういえば⋯⋯結局、水子の遺体は呪術と関係が無かったのですよね?」
 狼煙の経営する喫茶店のカウンターに座る桜花が、ふと思い出したように呟く。
 隣に座るミカエルが、確かにそうだなと話を続けた。
 ⋯⋯からかうように。
「あーあ、知らねぇぞ。なんか憑いて来ちまったんじゃねぇか?」
 だが、何食わぬ顔で狼煙は普段の微笑みを返すだけだった。
 ⋯⋯今更、一人憑いて来た所で大して気にもならないと。
「しかし、追い詰められた母を利用して邪神の復活を謀るなどと⋯⋯どこまでも度し難い物です」
 そしてその様な事を行う集団は、この世界に腐るほど存在しているのだ。
 桜花は薄っすらと目を開けて感慨にふける。
 終わってしまったことで型図蹴ることは出来ない。
 これからも⋯⋯何度でも、同じような事件は起きるのだろう。
 そしてそのたびに犠牲者を生み、決して根本的な解決はしないのだ。
 終わらない悪夢を繰り返すしかない現状を、私達は折り合いをつけて憂う事しかできない。
 ⋯⋯だが、これ以上終わったことを気にしていても仕方がないのかもしれない。
 ゆっくりと狼煙に差し出されたコーヒーを一口啜り、顔をしかめて〆の言葉を呟いた。
「⋯⋯相も変わらず、あなたの出すコーヒーは“絶品”ですね?」
 この最悪なコーヒーと一緒に最悪な日常を飲み込むことしか、今の私達にはできないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月26日
宿敵 『終末の嬰児』 を撃破!


挿絵イラスト