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想い彩る花火模様

#カクリヨファンタズム #お祭り2021 #夏休み #「手持ち花火」「アート」でネット検索すると楽しい画像いっぱい

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「わぁい、夏だ夏だ!」
「水着コンテストお疲れさまー」
「みずこんおつ!」
 猟兵たちに声を掛けながら駆けていくカクリヨファンタズムの妖怪たち。
 彼らはビーチで広範に花火会場を設置し始めた。
 何をするのか、と尋ねてみたところ――。
「妖怪花火を打ち上げるんだよ!」
「オヤビンたちが用意してくれたんだ~」
 打ち上げ花火玉や手持ち花火を運びながら妖怪たちが言う。
 花火大会か。粋なはからいだなぁと猟兵たちが和み喜んでいると……。
「猟兵さんも打ちあげようか?」
 ???
「ぱーん! って空まで飛んでさ、お疲れさま会やってきなよ」
 ??????
 ……この子たちは、猟兵に一体ナニをさせる気なんだろうか。


「さてさて、夏休みの始まりね! 皆さん、遊びに行く準備はいい?」
 水着コンテストも終わり、本格的な夏の始まりだ。ポノ・エトランゼ(ウルのリコ・f00385)が元気に声を掛けてくる。
「今のカクリヨファンタズムではね、妖怪親分さんが用意した妖怪花火を楽しもう! っていう企画がたっているのだけど……」
 妖怪花火は乗った人を打ち上げてくれるらしい。
「ドウイウコトナノ」
「……ソウイウコトナノ。花火には何らかの作用があるらしくって、打ち上がった花火の模様の上を歩くことも出来るらしいの。空中散歩になるわね」
 そういった作用から、ビーチで打ち上げられる花火はかなり広範囲に渡る。
 屋台で売られている食べ物を手に、空中散歩を楽しむのも良いだろう。
「もちろん普通の花火も上がるし、空の上ってことはそのぶん近いから大迫力だと思うのよ」
 複数の花火玉と一緒に高く打ち上げられれば真下で花火の咲く光景を楽しむこともできる。
「花火を見下ろすの、ちょっと面白そうよね。あとあと、手持ち花火で遊んでみない?」
 手で持って楽しむ花火にも妖怪花火があるらしい。
「予測できないねずみ花火で砂浜に煌々とした花畑を作ったり、手持ち花火で好きな模様を描いたり――そうね、打ち上げられた空でハートや星の形とか描いて皆さんで彩るの」
 たまには童心に帰って遊ぶのも良いだろう。
 だって夏休みだもの。
 楽しんできて! とポノが笑顔で言った。
 きっとこれから色んなことが開催される夏休み。
 幽世の夜空へ遊びに行こう。


ねこあじ
 ねこあじです。
 妖怪花火を使った夏休み、楽しんでいきましょう。
 1章で完結する日常シナリオとなります。

 オープニングの通り、やれることは色々あるかなぁという感じです。

 人数によっては再送のお願いをする時があります。ご了承ください。
 その際のお知らせや、締切はタグやマスターページ、Twitterにて。

 プレイングで呼んで下されば、ねこあじが動かしている猟兵も一緒に遊びます。

 あとは妖怪たちも一緒に遊んでくれるかもです。

 それではよろしくお願いします。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み2021』

POW   :    妖怪花火で空へGO!

SPD   :    妖怪花火の上で空中散歩

WIZ   :    静かに花火を楽しもう

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 夏夜のビーチの香り。
 日中の喧騒は夜闇のヴェールにて密やかに。
 耳をすませば潮騒が渡り、砂浜を歩けば陽の名残を感じ取る。
 夜空は星が輝いていて、打ち上げられた花火が残滓となって滞空している。
 その輝きは鮮やかだったり、仄かだったり。
 輝きは動きのある海にも落ちてちょっとした幻想的な光景に。

 試しにと妖怪たちから手持ち妖怪花火を一本受け取って遊んでみる。
 シュババと噴出した火花で弧を描けば、夜闇に花火色の模様が描かれた。
 散る小さな火花も予測できないものとして。
 しばらく滞空しているそれは輝きだけが鮮やかに残っているのか、触れれば微かに伝わる熱。
 風吹けばゆらりと弧の模様は変化して、くんにゃりと曲がった。

 これはちょっと楽しいかもしれないと思う。
 光の動物園や、ポップな星の天の川。花火で描けば色んなものがその場に現れる。

 さて、どうやって遊ぼうかな。
 わくわくとした表情で、猟兵はもう一本、手持ち妖怪花火を握った。
灰神楽・綾
【不死蝶】
去年の夏休みも花火見に行ったよねぇ
あの時も手持ち花火で絵を描いたり
梓と線香花火勝負もしたりしたなぁと思い出す
そりゃあ全部大切な思い出だもの

しかも今回は空の上で花火が楽しめるなんて
いやいや、何そんなパパみたいなこと言ってるの
梓も一緒に行くに決まってるでしょー
手持ち花火と梓の腕を掴んでお空にどーん

うわぁ、すっごい迫力
すかさずスマホを取り出して周囲の光景を撮影
こんなに近くで花火を撮れる機会なんて無いもんね

周りの花火に負けじと手持ち花火で絵を描く
滞空時間が長いからちょっと手の込んだものも描けそう
ほら、梓もなんか描こうよ

ええと、それは…??
…なんでそんな難易度高いものに挑戦したんだろう…


乱獅子・梓
【不死蝶】
去年あんなに色んな場所に遊びに行ったのに
よくそんな細かいところまで覚えているな、お前

じゃあ俺は下からビールでも飲みながら見といてやるから
お前は存分に楽しんでこい
…えっ? いや、俺はまぁ別に…
ちょ、何勝手に腕掴んで ギャー!?
強制的に綾と共に打ち上げられるはめに…

いざ空へ辿り着いてみれば
至近距離から眺める巨大な花火たちに感動
子供のようにはしゃぐ綾を微笑ましく見つめる

お、おぉ?俺も何か描くのか…
うーんと悩み…そうだ!
赤と青の花火で、シュババッと二種類の何かを描き出す

どうだ!即席にしてはいい具合に描けたぞ!
そりゃあお前、赤と青といえば、焔と零に決まっているだろう!
(※絵はあまり得意じゃない



 大祓百鬼夜行が終わって、妖怪親分が作ってくれたビーチで水着コンテスト、カクリヨファンタズムで猟兵たちが迎える夏。
 潮騒を聴いて、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)がふと思い出したのは去年の夏休みのことだった。
「あの時も花火見に行ったよねぇ」
 覚えてる? そう訊ねた先には乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)。
「手持ち花火で絵を描いたり、梓と線香花火勝負もしたりしたよねぇ」
 勝負に勝ったのは綾で、露店で色々奢ってもらった思い出。
「去年あんなに色んな場所に遊びに行ったのに、よくそんな細かいところまで覚えているな、お前」
「そりゃあ全部大切な思い出だもの――え、梓は覚えてないの?」
「いや覚えてますケド」
 梓の即答に綾はにっこりとした。
「カクリヨファンタズムでの夏休みも楽しみだね。ほら、あれ見て、あれ」
 そう言って綾が指差した先には妖怪花火の打ち上げ場所。
 ただいま妖怪たちが絶賛打ち上がり中のようでテンポよく空へと打ち上げられていく。最早何かの発着場のようでもあるその光景を、梓はじっと見つめた。
 パーン! と盛大な花火が夜空を彩り、すぐに消えるおなじみの花火もあれば、そのまま虚空に留まる花火もある。
 一つ頷き、梓はひらりと手を振った。
「じゃあ俺は下からビールでも飲みながら見といてやるからお前は存分に楽しんでこい」
 センテンス無き言葉に「えぇ?」と綾はまじまじと梓を見る。
「いやいや、何そんなパパみたいなこと言ってるの。梓も一緒に行くに決まってるでしょー」
「……えっ? いや、ビールが俺を呼んでるし……」
「呼んでない呼んでない。ほら、行くよ」
 腕を掴んでぐいぐいと綾が引っ張っていけば、仔竜の焔と零も梓の背を押した。
「猟兵さん、頭ごっつんこしないように気を付けてね~」
 妖怪花火を設置し、更に設置される梓と綾。
 渡された妖怪花火を確り持った後に点火されると、足元でシュバババババ! と火花が散った。
 梓の顔が引きつった瞬間、

 ヒュルルルルル。
 ドーン!!

 打ち上がった勢いの中、重低音が彼らを揺さぶり梓の叫びを掻き消した。
 目前には花火――不思議と熱くない。
「到着~。うわあ、すっごい本当に歩けるね」
 立った場所は赤とオレンジ、仄かな緑が混じった花火の乱舞。光で構築された場所は眩しくて、真下にあるはずの暗い海が見えない。
 時々模様は緩やかに動いて、皆はそれに乗ったりジャンプして次の花火に移ったり。
 放たれた勢いが空での足場を確保しているのだろう。
 火花から一歩先にも、留まる空気の厚みを感じ取った。
 その時、ヒュルルル、と向かってくる音が聞こえたかと思えば直ぐに咲いた夜の花。
 彼岸花のような赤一色で構成された花火たちのなかに青一色。
「うわぁ、すっごい迫力」
 すかさずスマートフォンを取り出して、周囲の花々を撮影する綾。
 花開いた瞬間はオレンジ色なのに、落ちていく火花が虹色を描き始めるもの。
 大迫力の連続花火はススキのような少し厚みのあるもの。
「凄いな」
 至近距離で眺める巨大な花火たちを前に、ぽつりと呟いた梓の声もじんわりとした感動が含まれていて。
「すごいねぇ」
 と、あちこちを撮影しては子供のようにはしゃぐ綾。そんな彼を梓は微笑ましく見つめる。
 最初は梓の肩に抱き着いていた焔と零も、ほわあ、という風に花火に見とれていた。

「この輝きに俺たちも負けていられないね」
「突然どうした」
「輝きは自身の手で作りだしてこそだよねぇ」
 そう言った綾が振るのは手持ち花火。
 点火すればシュバババとススキのように花火が放たれる。
 くるっと手首をひねれば、風を取り込んだ光の穂がゆるりと夜空に留まった。
「ほら、お花ー」
 ポップな花を描いて、緑の光で波線を。ちょっとした光の原っぱに。
 黄色の光で向日葵っぽく大きなものを。
 赤い光はチューリップを。
「もうちょっと手の込んだのも描けそうだね。何にしようかな……ほら、梓もなんか描こうよ」
「お、おぉ? 俺も何か描くのか……」
 何を描こうか、そんな表情で悩む梓は周囲をちらり。
 光の花と原っぱで遊ぶように飛びまわる仔竜たちが目に入る。
「赤と青……お、これか」
 手持ち花火から選んだ色を点火させれば赤の穂が鮮やかに。
 シュババッと火花の勢いに負けじと何かを描く。華麗な動きだった。
 青の花火も同じように。
 仔竜たちがのんびりと飛びながら見つめている。
「――どうだ、綾! 即席にしてはいい具合に描けたぞ!」
 どやぁとした梓の表情ではあったが、対する綾は戸惑った。
「…………? ええと、それは…??」
 綾の言葉に、同感と思ったのか「キュ?」「ガウ?」と焔と零も頭を傾けた。
「そりゃあお前、赤と青といえば、焔と零に決まっているだろう!」
 梓がそう言い放った瞬間、瞳を輝かせた仔竜たちが喜び、描かれた仔竜(?)たちの周囲を飛び回った。
 赤と青の光塊。
(「……なんでそんな難易度高いものに挑戦したんだろう……」)
 赤と青のスライムにしか見えなかった綾はそう思ったのだが、仔竜たちと梓の楽しげな様子に言葉を飲みこんだ。
「じゃ、次は綾を描くぞ!」
「それはそれで見てみたいけど、今はやめよ?」
 少々のガチトーンを含めてしまう綾。何か題材、ああそうだと思いつき。
「恐竜描こうよ、恐竜」
 それで次に描く時はもうちょっと上手に、スライムじゃない小さなドラゴンたちを描けるようになっていれば――まあ梓の絵心が成長すればの話だけれども。

 光の原っぱと花、二人で描く恐竜たちが夜空を楽しく行進していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

赤鉄・倖多
【春招】

空の散歩!にゃはは!
おれもしたいって思ってた!

來晴の食いしん坊は通常運転だから
食べ物をいっぱい持つ姿も微笑ましく見守り
落とさないようにな。ちょっと持つか?
預かればあーんと食べようとするふり
來晴の表情をみれば笑って
冗談!食ったりしないぞ

ああ。さいっこーだな!
天の川。幼い頃七夕の絵本を読んで
悲しむ織姫と彦星に自分がたくさんご飯を届けるなんて言う來晴を思い出し
今も真っすぐで優しいとこは変わっていないなぁ、なんて

來晴…りんご飴半分って…難しくねえ!?
わははっ

おお、猫!おれさま花火!
確かに來晴
赤い服とか結構持ってたっけ

そっか、おれもきはみたいで安心するかも
じゃあ赤は、おれたちにとって大切な色だな


春・來晴
【春招】

こーちゃん、折角ですので
空のお散歩しませんか?

にゃはは、一緒の考えなのは幼馴染故にかしら

手にはフランクフルトと焼き鳥、
りんご飴とチョコバナナをしっかり持って

はい、落とさないように気を付けます
あ、あっ。それはこーちゃんでも許しませんよ
でも、一口だけなら……

――わあ、まるで天の川の上を歩いてるみたいです
このまま歩いて行ったら織姫様と彦星様に会えるのかな
なんてぽつり呟き

…こーちゃん、どうしました?
お腹減ったのでしょうか
それなら、リンゴ飴半分あげますっ

あ、見てください!猫さんの形っ
それに私の大好きな赤色です

元気が出てきますし
なにより、こーちゃんの色のようで安心するんです

はい、大切で大事な色です



 カクリヨファンタズムの夜の海。
 潮騒や妖怪たち、猟兵たちの声。昼間の賑やかさとは違う、静かな賑やかさがそこにはあった。
 上がる花火が海と砂浜に彩りを落とす中、春・來晴(太陽・f27510)は赤鉄・倖多(倖せを招く猫・f23747)を誘う。
「こーちゃん、折角ですので空のお散歩しませんか?」
 彼女の言葉に、ぱっと笑みを浮かべる倖多。
「空の散歩! おれもしたいって思ってた!」
 わくわくと、楽しげな彼の様子に來晴も笑顔になる。
「にゃはは、一緒の考えなのは幼馴染故にかしら?」
 声も、砂浜を行く足も弾ませて輝く空へ。

 妖怪花火とともに打ち上げられれば、虚空で光の乱舞に背を押され、ふわりと空の上へ降り立った。
 立った場所はピンクと黄色、仄かな緑が混じった花火の乱舞。
 皆は花火模様に乗ったり、ジャンプして次の花火に移ったり。
 放たれた勢いが空での足場を構築しているのかもしれない。火花から一歩先にも、留まる空気の厚みを感じ取った。
 この辺りはまるで砂浜にいるような感覚だ。
「わ、光が寄ってきます」
 緩やかに動く模様を見て來晴はちょっとだけ足を上げる。そろっと下ろせば繊細な足先は光に染められ、ひらりと靡くパレオに光の波が映し出された。
 そんな彼女の手には食べ物がいっぱい。
 フランクフルトや焼き鳥、リンゴ飴とチョコバナナ。食べることが大好きな來晴のこれは通常運転なのだ。倖多は微笑ましく見つめるも、光の具合におっかなびっくりしている來晴の様子にいつしか両手を緩やかに構えるフォロー体勢に。
「來晴、落とさないようにな。ちょっと持つか?」
「は、はい、落とさないように気を付けます。でも一つだけ持ってもらってもいいですか?」
「どれ持つ?」
「フランクフルトを――指で持っているので、ちょっとぷるぷるしているのです」
 重量感のあるフランクフルトをするりと來晴の指から抜いて、倖多はくるりと棒を回した。
「イタダキマ~ス」
「あ、あっ。それはこーちゃんでも許しませんよ」
 あーんと開いた倖多の口。來晴は慌てたように言う。
 けれども彼の口は直ぐに笑顔のものへと変わって。
「はは、冗談だって! 食ったりしないぞ」
「あ、でも、一口だけなら……」
 続いた來晴の言葉に、キョトンとした倖多はいいの? と表情で問うた。一口だけならいいのです、と來晴は頷くのだがじいっと見つめてくる。
 遠慮がちに一口だけ食べたフランクフルトはまだ温かかった。

 花火模様が輝く夜空。
 緩やかに落ちていく一筋の光。
 それはゆっくりとした流れ星を見ているようで。
 落ちていく柳の花火がまあるい花火に押されて、流れていく。
「――わあ、まるで天の川の上を歩いてるみたいです。ね、こーちゃん」
「ああ。さいっこーだな!」
 倖多が跳ねるように一歩をゆけば、煌く光の一粒、一粒が弾けた。
 柳の花火とともに行く道は時に紫や、赤、水色が混じって。
「……このまま歩いて行ったら織姫様と彦星様に会えるのかな」
 どこか夢のような、ふわふわとした心地で來晴はぽつりと呟いた。
 彼女の声にふと倖多が思い出したのは、まだ幼かった頃のこと。
 二人で七夕の絵本を読んで、年に一度しか会えなくなって悲しむ織姫と彦星に――來晴は言ったのだ。
 たくさんのご飯を届けるのだと。
 ご飯を食べれば幸せになれるし、離れていても同じご飯を食べていると思えば、やっぱり幸せ。
 彼女の悲しげだった瞳は前を見ているもの。
 毎年の七夕飾りには折り紙で作った食べ物が飾られた。
(「今も真っすぐで優しいとこは変わっていないなぁ――なんて」)
 そう思って來晴を見つめていると、気付いた彼女が彼を見上げる。表情は不思議そうなものになった。
「……こーちゃん、どうしました? お腹が減りました?」
「んん? んー」
 本当に変わっていない。
「お腹が空いたのなら、リンゴ飴半分あげますっ」
 はい、と差し出されたリンゴ飴。
「……來晴……りんご飴半分って……難しくねえ!?」
 挑戦はしてみたが倖多なりの一口がやっとだ。というかこれも結構な重量級で、噛み付けば來晴が持ったままの棒が揺れて逃げる。
「わははっ、これがやっとだって。ごちそうさま」

「妖怪手持ち花火で遊んでみませんか~」
 という妖怪の声掛けに反応した二人は、早速遊んでみることにした。
 点火すれば勢いのよい光の穂。
 くるりと手首を返せば、まるで時の流れが緩やかになったかのように虚空に滞空する火花たち。
 光の穂を動かして描いたのは――。
「こーちゃん、見てください! 猫さんの形ですっ」
「おお、猫! おれさまは――花火だっ!
 色が次々に変わる手持ち花火でくるくる円を描く倖多。
 一匹、猫を描いた來晴は、次に香箱座りをしている猫の輪郭に挑戦してみる。
「赤い猫さん可愛いです。赤の花火、大当たりでした~」
 來晴は赤が好きなのだ。
「そういえば、確かに來晴は赤い服とか結構持ってたっけな」
「はい。元気が出てきますし、なにより、こーちゃんの色のようで安心するんです」
 水着にも赤の差し色はふんだんに。お守りのように身につけて。
 ストライプのリボン――赤と、その間近に彼女の微笑み。倖多もお日様のような笑顔になった。
「そっか、おれもきはみたいで安心するかも。じゃあ赤は、おれたちにとって大切な色だな」
「はい、大切で大事な色です」

 空に咲く花火。
 懐かしい気持ちも、楽しい気持ちも彩るのは二人の笑顔。
 大切な言葉と想いが夜を輝かせる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
セロお兄さんf06061と

どういうことなの…
どういうことなんだろうね…?
俺は最近、考えることを放棄することを学んだよ

ってことで、行く行く、歩く
かき氷片手に

んー
この花火はどこまで足場判定なんだろう…
あ、こっから先が空かな。細かいところ…あ
(お兄さん落ちそう
お兄さん、掴んで掴んで、そこ右斜め上!
そっちじゃない
その花火のばちっと言ってるエリアのあたり
急いで、消え…
あ、…あー…
(かき氷だけ空中でキャッチして迎えに行く
ちょっと惜しかったね
…(目線にちょっと視線をそらした。なんだか楽しそうだったから、とはさすがに言えないけどあれはあれで楽しそうだったんだ
よし、リベンジしよう

お疲れさまでした。かき氷食べる?


セロ・アルコイリス
リュカ(f02586)と

花火ん中に落とされたことはあれど
上歩けんのは初めてですよ
ドウイウコトナノ

折角なんでおれは花火の上歩きてーなって思いますが
リュカはどうします?

かき氷片手に空中散歩
あっ音でけぇ、いやでも綺麗ですね!
調子に乗って歩いて、咲いては散る普通の花火に手を伸ばして
これは掴めやしねーんですかね、なんて軽口のさ中に
──ひにゃっ?!
足踏み外し

リュカの声頼りに手を伸ばすけど
えっまってどこどこ、
足場花火の煌めきが指先に触れて、消えて

海に真っ逆さま

上がる水柱も花火みたいなんて思いつつ水面に顔を出したなら
あ、かき氷(おれを助けてくれたっていいのにって目で見つつ)
食べますし、また空にも行きますよ!



 妖怪花火で打ち上げられて、さらに背を押すように花火が弾ければふわっとした浮遊感とともに降り立つ空の上。
 大きな丸い花火模様。膨れ上がった瞬間を留めるように空に在る花火は、触れてみれば熱もなく。
「どういうことなの……」
 撫でてみれば僅かに空気の圧。
 破裂した瞬間の風が固定されたようなものだろうかと、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)は考えるのだが。
「花火ん中に落とされたことはあれど、上歩けんのは初めてですよ」
 セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)がたしたしと確かめるように足踏みしている。
 裸足で直に感じるのは砂浜にいるような……しかし彼の動きで押されたように花火模様が緩やかに動き、セロは飛び退いた。
「ドウイウコトナノ」
「どういうことなんだろうね……? 俺は最近、考えることを放棄することを学んだよ」
 ありのままを受け入れる。
 こくりと頷いたリュカの表情は悟りを含めたものとなっている。
「えっじゃあおれも考えない」
 セロも思考を放棄した。
 ここは歩ける場所、それでいいじゃない。
「てことで、おれは花火の上歩いてきますが、リュカはどうします?」
「行く行く、歩く。お兄さん、あとあそこ」
 リュカが示した場所にはのぼりが立っていた。よく見るカキ氷ののぼりだ。
「空の上でカキ氷、カキ氷は如何っすか~?」
 氷と氷削り機とを持ちこんだ妖怪が開く臨時カキ氷屋さん。何処か不審者を窺うようにそろりと近付いた二人に、妖怪は笑顔を向けてくる。
「あっ猟兵さん、カキ氷何にしやす?」
「俺、青いの」
「はやっ。んー、おれは……レモンにしましょうか」
 さて、冒険のお供のアイテムは手に入れた。
 二人は夜空へ踏み出す。

 どどん。
 ぱーん!
 打ち上げられた花火が夜空に咲く。
「あっ音でけぇ!」
 身体を揺さぶってくる重低音と衝撃に一瞬身を竦めたセロであったが、目前の豪快な光の乱舞に目を輝かせた。
「いやでも綺麗ですね!」
 花火の勢いでストールの星がちらちらと空に舞い、セロはもうひと巻き。
 足元の花火模様も、新たな花火に一瞬染められて不思議な輝きをセロに見せてくれる。
 次に打ち上がった花火は妖怪花火だったようだ。
 柳の花火。光の一筋がゆっくりと落ちてきて、セロたちが立つ大きな花火とかち合えば押し出されるように流れていく。
 まるで天の川のようだ。
「んー……この花火はどこまで足場判定なんだろう……あ、こっから先が空かな」
 花火を踏み、ぐんにゃりとした虚空を踏み、確かめていた片足が空振ったところでリュカは足をひっこめた。
「まあ光から逸れなければいいか」
 そう呟くと「リュカ」とセロの呼ぶ声。
「見てください! 赤やオレンジ、青の小花がいっぱいですよ! これ、掴めやしねーんですかね???」
 咲いては散る様々な千輪菊。セロは楽しげに軽やかな足取りで近付いていく。
「……あ」
 そこは、とリュカが声を掛ける前に体勢を崩すセロ。
「──ひにゃっ?!」
 足を滑らせたセロは柳の花火の上を流れるように落ちていく。
「ぎにゃー!!」
「お兄さん、掴んで掴んで」
 リュカの声に即反応。がしっと花火模様を掴んだセロの動きが止まる。
 花火から花火、飛び移って若干下方へと降りたリュカが周囲を見回して、更にセロへと声を掛けた。
「お兄さん、カキ氷無事?」
「無事ですけど! 今そこ必要です?!」
「じゃあ誘導するけど、お兄さん、右斜め上に一回……そっちじゃない!」
 そろりそろりと動くセロなのだが焦っているのか、リュカの声は聞こえても言葉の意味が分かっていないらしく、違う方向に移動した。
「えっまってどこどこ」
「その花火の、ばちっといってるエリアのあたり」
 ばちっばちっ。
 音鳴る方を向けば、そこは不規則に動くいわゆる蜂花火。
 あっちに向かうの? マジで? って顔になるセロなのだが、いつも冷静なリュカからの指示だ。行くしかない。
「急いでー、消えるよー……消え……あ」
 リュカが目を眇めた瞬間、セロがぐらりと揺れた。
 セロのカキ氷を持つ手が緩み、こっちを向いていたため表情は驚愕のものに。
「あー……」

 ひにゃああぁぁぁ……。

 ドップラー効果を放ちながらセロは真っ逆さまに夜の海へと落ちていった。
 海面はとても痛かった。
 上がる水柱も花火みたい。なんて思いつつ、セロが水面から顔を出す。
 水飛沫がばしゃばしゃと落下する様は周囲で何かが跳ねているようだ。
 空を見上げれば緩やかに落ちてくる花火模様に乗って、リュカがセロの近くまで来てくれた。
「お兄さん……ちょっと惜しかったね、はい、カキ氷」
 レモン色のカキ氷を差し出され、じっとセロはリュカを見る。
 カキ氷→助けられた。
 セロ→助けられなかった。
 双方、視点は違えど思う事は一緒だったり。
「……」
「…………」
 リュカはちょっとだけ視線を逸らした。
(「お兄さん、なんだか楽しそうだったから、とはさすがに言えないけど」)
 あれはあれで楽しそうだった。
 カキ氷の重みが無くなって、セロを見下ろせば花火模様に上がってくるところで。
「お兄さん、一人だけ崖にいるような感じだったね」
「ぐうっ」
「またリベンジしに行こうよ」
 夜空に上がる花火の光が波たつ海でキラキラ輝く。
 ゆっくりと海に落ちていく光は、海の中で微かに煌いて消えていった。
 満天があるはずなのに、今は彩りある光に溢れている空。

 海上を揺蕩うように天の川。そこを浜に向かって歩きながら、カキ氷をしゃくしゃくと食べて。
「おれ、次はメロンにします」
「じゃあ、俺はいちごにしようかな」
 今度こそ優雅に空の上でカキ氷!
 リベンジに燃えるセロに、一つ、笑みを零すリュカだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
どれも楽しそうで迷いますけれども
打ち上げ花火に乗ってみたいです

模様の上を散歩しながら
次々と上がる花火を眺めます
音も光も凄い迫力ですね~

しばし堪能しましたら
模様に腰かけ
風の魔力で
煙を吹き飛ばしたり
音の伝達を操作して無音状態に

夜のキャンバスに描かれる煌めく色彩を
じっくりと鑑賞しましょう

この瞬間を額縁で切り取りたいくらいです…
いいえ
消えゆく一瞬の光だからこその美しさでしょうか

自分の発する音だけ聞こえるようにして
光のシャワーに合わせて即興の旋律を奏でます
これも今この時だけのものですね

腰かけていた模様が消えましたら
風にのってふわふわと
打ち上がる花火の間を落下します
素敵な夏をありがとうございます!



 夜空を彩る花の煌きが夜の海や砂浜に光を落とす。
「わあ」
 夏の涼しげな、ケットシー用のシャツ。麦わら帽子を被った箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)がカクリヨファンタズムの花火に瞳を輝かせた。
「せっかくですので、お空へと行きましょう♪」
 どこかいそいそと。
 妖怪たちに案内されて妖怪花火に掴まって、仄々が空へと打ち上げられる。
 ドン! とお腹に響く音とともに、光の乱舞が仄々の背を押して、彼はふわりと夜空の花火模様の上へと降り立った。
「わ、すごいです」
 花火の煌きはそのままに滞空している花火模様。光に触れてみれば熱くも冷たくもなく、なぞってみればちょっとした空気の厚みを感じた。
「うにうにしていたり、さらさらしていたり、場所によって違うのですねぇ」
 光からあまりにも逸れると大地へと真っ逆さまだが、きっと妖怪花火の残滓が落下速度を緩めてくれることだろう。臆することなく仄々は歩きはじめた。
 どん! ぱぱん!
 大きな菊花火、光が不規則な動きをする飛遊星、ばちばちっと飛び回る蜂花火。
 黄色やオレンジ、赤や青、緑の火花ひとつひとつが綺麗な花火を構築している。
 時には近く打ち上げられた花火の衝撃に麦わら帽子で風を避けて、ケットシーの毛がボサボサになっても、綺麗な花火に見飽きることは無い。
「ふふ、音も光も凄い迫力ですね~」
 簡単に毛を撫でつけて、ふんわりとした花火模様に腰掛ける仄々。
 柳の妖怪花火は天の川のようにゆっくりと流れていく。
 その流れを邪魔しないように、仄々は緩やかな風を魔力で生み出した。
 厚い風の層を作れば花火の煙や音が散った。
 ほう、と仄々は感嘆の息を零す。彼の目前に広がる光景――それは数多の煌く花火模様。
 夜のキャンバスに描かれる煌めく色彩を彼はじっくりと眺める。
 千輪と花雷を合わせた花火は、まるで花畑にいるようだ。
 小気味よく打ち上げられた花火たちが規模を拡大してくさまに、指先でフレームを作って覗きこんでみる。
「この瞬間を額縁で切り取りたいくらいです……いいえ――消えゆく一瞬の光だからこその美しさでしょうか」
 光の天の川はかち合った緑や水色の光と混ざり合って、時に虹色を描いてはまた元の色に戻る。
 カッツェンリートの弦に触れれば柔らかな琴の音。
 感じるままにポロロン、と弦を撫でれば仄々の心込められた音が奏でられていく。
 低音は夜の静けさを、高温は花火の煌びやかさを。
 花火に合わせて、時にテンポよく、時に儚げな曲を。
 そうすると今度は仄々の音楽で花火が踊っているような光景になる。
 おしまいの曲は今まで腰かけていた柳の花火に贈るもの。
 ゆっくりと光の筋が落ちていき、仄々もまた打ち上がる花火の中へと落ちていく。
「素敵な夏の思い出ができました♪」
 ありがとうと花火や妖怪たちに手を振って。
 風を纏い、仄々はゆっくりと海に向かっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レテイシャ・マグナカルタ
水着姿でポノを誘って打ち上げられる
花火を眺めながら
「そういや去年も一緒に空から見てたんだったな」
と手持ち花火で金魚(のつもり)の絵を描いてニカッと笑う

それはそうと今年のポノの水着は上が白いから、ここだとまるで花火の色を吸ってるみたいに綺麗だな、昼間見たときも良かったがこれはこれで……とカメラを取り出すぜ、適当にポーズ取ったり踊ったりしてもらおう

(その後は一般通過妖怪さんが気を利かせて二人一緒に撮ってくれたり)



「よう、ポノ!」
「お、レテイシャさん~!」
 カクリヨファンタズムの砂浜にて。
 打ち上げられた花火や、空に留まる花火模様。
 昼とはまた違う賑やかな夜の海にて、ポノ・エトランゼを見つけたレテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)は手を振って彼女を呼んだ。
「空に行ってみないか?」
 というレテイシャの誘いに勿論ポノは「行く行くー」と二つ返事だ。

 妖怪花火とともに打ち上げられれば熱くも冷たくもない花火がレテイシャの背を押して、ちょっとした滞空をもたらした。
 ドラゴニアンの翼を動かして、少しだけ尾を振ってバランスを取りながら花火模様の上へと降り立つ。
 燦々と幾つもの光筋がある大きな柳の花火模様と厚みのある蜂の花火模様が連なる空の上。
「レテイシャさん、花火がこっちに来てる」
「お?」
 カメラを取り出したところで、ドン! と花開いたのは大きな牡丹花火。
 びりびりっと衝撃を感じてフォーカスがぶれた。
「……あちゃ、失敗したぜ」
 しかめっ面になってレテイシャが言えば「お腹にすごくドンと来たものね」とポノ。みんな最初の重低音と衝撃にびっくりしている様子。
 しかしそれも次第に慣れてくる。
「気を取り直して遊びましょ」
 と、差し出された手持ち花火を受け取ったレテイシャが早速着火すればシュババッと勢いのいい花火の穂。
 振ってみれば手持ちの妖怪花火は軌跡を描く。
 夜空に輝くのは自ら創りだした花火模様だ。
 赤い色をした光穂で楕円を描いて三角に波線。
「うーん? こんなもんか……なあ、ポノ、これ何に見える?」
「ええー、ちょっと待って――」
「去年一緒に空から見たやつ」
「あ、分かった! 金魚花火! 金魚ね」
「そうそう。当たりー」
 レテイシャがニカッと笑って、次、と手持ち花火を振り出すと。
「じゃあレテイシャさん、こっちは何か分かる?」
「舟?」
 答えれば、当たり、とポノも笑った。

「そういえばレテイシャさんの水着、可愛いーって思ってよく見たらめっちゃセクシーね!」
 火を点けながら放たれたポノの言葉に、レテイシャはむせた。
 惜しみなく身体を魅せるビキニ。
 纏うトップス、スカートは共にフリルのあるボリュームあるもので。けれどもそれはシースルー。青く澄んだ水の如き色がとても綺麗だった。それは爪先にまで表現されていて、一挙一動に涼やかさを伴う。
 一見ポップな、けれども大人の遊び心感のあるチーフを腕に巻いているのが可愛らしい。
「ありがと。……それはそうと、それとして……今年のポノの水着は上が白いから、ここだとまるで花火の色を吸ってるみたいに綺麗だな」
「おお、ほんとだ」
 腕を振って袖をかざしてみるポノ。
「昼間見たときも良かったが、これはこれで――あ、そうだ」
 改めてカメラを取り出すレテイシャ。
「ポノ、ターン」
「えっ!?」
 指先をぐるんと回して見せれば、察したポノがくるっとターン。
 ふわりと舞う袖とその向こうの花火の輝く瞬間を、ぱちっと撮って。
 その一枚にレテイシャは満足したように微笑んだ。
「じゃー私もレテイシャさんのモデル立ちを撮ってあげるね」
「何でだよ……!」
「孤児院の子供たちも喜ぶやつでしょー」
 ヒールサンダルを意識すれば、すらりとした脚が際立つ。
 レテイシャの金の髪は光の乱舞を映してキラキラと輝いていた。

 そうやってポーズしあって遊んで、最後は妖怪さんにカメラを渡し、二人一緒に撮ってもらう。
 ドン! と打ち上がった花火の音。
 背景には万華鏡のような色とりどりの花火。
 また一つ加わった夏の思い出。
 たくさんの切り取った瞬間がレテイシャのカメラと心におさめられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
花火……打ち上がっちゃうのはちょっと怖いけど、
親分たちが用意してくれたんだし、ここはやっぱりチャレンジするしかないよね!

せっかくだから、花火で打ち上がった上で、さらに手持ち花火とかやってみたいな。

どーんと打ち上がって、花火の上をスキップしながら、
両手でしゅぱーって火花の出る花火を持って、くるくるしちゃおう。

花火オン花火!
打ち上がった花火の上で踊れるなんて、貴重な体験だよね!

手持ちの花火でも模様とか描けちゃうのかな?
自分の踊ったあとが模様で残るとか、すっごく嬉しいかも!
(創作才能が壊滅していて、模様がひどいとかはこの際考えない方向で)

あ、でも運動神経が心配かも……目が回ったら助けてね(笑)



 ドン! と音を立てて夜空に咲く光の花。
 ゆっくりと光が落ちていくものもあれば、その場に留まり花火模様を描くものもある。
 空の輝きは海や砂浜にも落ちて幻想的な風景となっていた。
「あれが妖怪花火なんだ……」
 カジュアルな夏のサマードレスを着た菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)が輝きの浜を歩く。
 妖怪花火を扱う場所は一種の発着所みたいにもなっていた。
 そろそろと、打ち上げる妖怪たちの様子を窺う理緒。
「花火……打ち上がっちゃうのはちょっと怖いけど」
 どうしようかな、と悩んでいると、妖怪が近付いてくる。
 羽織物をしたたぬきだ。
「猟兵さん、空行くー? オヤビンの妖怪花火、楽しいよ!」
「そ、そうだね。妖怪親分たちが用意してくれたんだし、ここはやっぱりチャレンジするしかないよね!」
 頑張れ、わたし! と自らを鼓舞して、妖怪花火で打ち上げられることを決意する。
「なぁんにも心配することないよ~。はい、この筒の上に立ってね。はい、これ持って」
 手持ちの妖怪花火を持って――すうはあと深呼吸をした瞬間、理緒にGが掛かった。
「ひえっ!?」
 ぎゅんっと空に打ち上げられる理緒。迫って来る花火模様にぎゅっと目を瞑った時、ドン! と理緒の乗った妖怪花火が破裂して、その衝撃と光の乱舞でぽーんと理緒を押し上げた。
 弧を描いて、思ったより緩やかな降り立ちとなり、理緒の目がキョトンとする。
「わー……びっくりした……」
 そして花火模様の上をおっかなびっくり踏み踏みしたあとに歩いてみる。
 これ、判定はどこまであるんだろう? って花火模様の外側に触れながら確かめてみたり。
「あっ、妖怪花火、手持ちのもやってみよう」
 近くにいた妖怪に火を点けてもらうと、シュバババッと光の穂。
「へえ、わあ、ちゃんと残るんだね」
 手首を翻せば、弧を描く光の穂。
 ドン! バンッ!
 菊や柳、蜂のように飛び回る花火のリズムに合わせて、理緒は軽やかな足取りで花火模様の上を進む。
 くるっとターンして、スキップ。光の舞いが夜を照らす。
 千輪を伝って登ってみたり、柳花火でできた光の川の緩やかな流れに乗ってみたり。
 流れていく光の川に乗せるように、手持ち花火で魚っぽいものを描いてみれば、よりそれっぽくなった。
「すごいー。そうだカニさんも描いちゃおう♪」
 青から黄色へと変わった大きなものは、たぶんクジラ。赤になった穂でカニっぽい光のアート。
 夢中になって描き、ふと我に返って振り返る。
 理緒の旅のお供には光穂の妖怪花火。彼女の歩んできた空に煌きを残してくれていた。
 それは理緒にしか分からないアートの軌跡だ。
 光の川の魚たちにつられて、妖怪たちが新たなアートを追加する。貝やイルカ、舟。
 だんだんと賑やかになっていく様子に理緒は微笑んだ。
「ふう、ちょっと休憩……」
 緩やかに流れていく花火模様に腰掛けて休んでいると、同じく動き流れる模様に乗った妖怪が理緒へと声を掛ける。
「猟兵さん、カキ氷はいかが?」
 家庭用カキ氷と氷塊が妖怪の周囲に広げられていて、『カキ氷』ののぼりがはたはたと動いている。
「んー……辛いカキ氷があれば食べたいかな?」
「あっ、チャモヤーダありますよ♪」
 削った氷にピリ辛のサルサソース、酸味にライムを絞って。はいどうぞ。
「ふふ、いただきまーす」
 夏の夜風にピリリと辛いカキ氷。
 目前で豪快に咲く光の花を眺めながら、理緒は夏の一夜を満喫するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミカ・プレジール
はとり先輩(f25213)と!

やーエキサイティングだね!
楽しかったら一回と言わずーだよ!

わっひゃー高ーい!
テンション高く
えっ先輩すごい!待って待ってー!
慌てて先輩追っかけて
あはは、落っこちたら先輩助けてくれるー?

花火でお絵描きは一番の楽しみ
手持ち花火で描くいるかやくじら
先輩も描こ?
ほら、何描いたっていいんだって
楽しむのが大事!
先輩見て見て、これ先輩!かわいいでしょ
花火で描くからちょっと歪だけど
えっこれミカ!?待って待って今撮るから!永久保存!!
慌ててスマホを取り出して
先輩が描いてくれたミカを連写
やっば、楽しいねせんp……わー!?(落下)

いったーめっちゃお尻打った!
ねぇ先輩もう一回いこ!お願い!


柊・はとり
ミカf26529と

打ち上げ花火って人が打ち上げられる物だったか…?
まあ一回位やってみるか

模様が消える前に次の花火まで
走ったり、飛び移ったり
結構スリルあんな
ミカ落っこちんなよ
助けるけどわざと落ちたりは禁止な

手持ち花火も持ってきたが
こういうのはミカの専門だよな
俺は見て…お、俺もやるのか?
何描いたらいいんだこういうの…
見様見真似で魚の群れを描いたり

それ俺の似顔絵?恥ずかしいけどすげえ
いや上手いし
お返しにミカっぽい狐を描く
撮るなよ…はしゃぎすぎ

でも案外楽しくなってきてたり
…おいミカ!?
だから気をつけろって…
慌てて手を差し伸べ掴む
危なかった…

げ、花火消える
すまん落ちるわ

痛…懲りずに行くのかよ
別にいいけど



 ドン! バラバラッ! と夜空に大きな花火が煌き弾けながら落ちていく。
 大輪の牡丹花火、軽やかな蜂花火、たくさんの花火が空を彩り、時には滞空して花火模様に。
 空の光に照らされて海も砂浜も様々な輝きに染められていた。
 そんな中、軽快なリズムで打ち上がる花火たち。
 妖怪が集まって一種の離陸場となっているような場所――打ち上げられ場。
 打ち上がる瞬間の叫び声が一瞬で空に吸い込まれていく。
「やーエキサイティングだね! はとり先輩、ミカたちも打ち上がっちゃおー」
「……打ち上げ花火って人が打ち上げられる物だったか……?」
 軽やかな足取りのミカ・プレジール(妖狐のゴッドペインター・f26529)とは違い、続く柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)の歩みはどこか先を窺うようなものだ。
「まあ一回位やってみるか」
「楽しかったら一回と言わず、何回もだよ先輩! 上着のボタン留めた?」
 バタバタはためいちゃうよ? とミカ。
「留めた」
 よしよし、と頷きながらミカも羽織っているパーカーを合わせて。
 妖怪たちに案内され、手持ち花火も持って。
 ――3、2、1、いっけぇぇ!
 周囲の掛け声とともにGが掛かった。
 ぐんっと迫る夜空の花火模様。一緒に打ち上がった妖怪花火がバン! と弾けて光の乱舞が更に二人の背を押した。
 ふわっとした滞空を感じれば意外と緩やかな降り立ち。
 気付いた時にはもう花火模様の上だった。
「わっひゃー高ーい!」
 ぴょんぴょんとミカが跳ねれば花火模様もトランポリンみたいに跳ねる。
「うっわ」
 はとりが万華鏡花火の一片へと飛び移った瞬間、結構近い所で打ち上がった花火の衝撃に襲われた。重低音が身体に響き、ミカがそのリズムに喜んだ。
「綺麗ー!」
「そう、だな」
 観覧車のように緩やかに動く一片。はとりが応じながら次の千輪花火模様へ。不規則にたくさんのボールが並んでいるような場所だった。
「結構スリルあんな」
「あれっ先輩めっちゃ遠くに行こうとしてない!? 待って待ってー」
 花火から花火へ、確実に渡れる場所を選んでいくはとりとは対照的に、ミカはショートカットするべくぴょんと跳んだ。
「着地!」
 あっという間に近くまで来たミカを見るはとり。
 ダイナミックな彼女の動きにじとっとした視線になっている。
「ミカ、落っこちんなよ」
「あはは、落っこちたら先輩助けてくれるー?」
「……助けるけど、わざと落ちたりは禁止な」
「はーい」
 はとりの言葉にぴしっと敬礼をして、ミカも次の花火へ。

 数多の光筋を持つ柳花火が、他の花火に押されて光の川となった場所に差し掛かった時。
「先輩見て見て~!」
 ミカが呼ぶので振り向いてみれば、緩やかな川の流れに大きな光の何かがいた。
「先輩、これ何だと思う?」
「クジラか?」
「正解!」
 大きくちょっと台形っぽく円を描いて、跳ねるように尾をちょんとした光のクジラ。
 アートをさせれば、ミカはより活き活きとする。狐の尾が「楽しい!」と揺れていた。
 手持ち花火の穂を振ってイルカやカニを描いていくミカ。
「先輩も描こうよー」
「……お、俺もやるのか?」
 完全な見守り態勢に入っていたはとりがぎくりと動く。
「こういうのはミカの専門だと思うんだが……」
「いやいや、皆で楽しく描いてこその遊びでしょ?」
「そういうもんか……何描いたらいいんだこういうの……」
 はとりは持っていた手持ち花火に火を分けてもらい、シュバババッ! と出てきた光の穂を見つめた。
「ほら、何描いたっていいんだって。楽しむのが大事!」
 わ、わかった。
 ミカの言葉に呟き応えて見様見真似で描く魚の群れ。
 傾いた柳花火の上で七夕のように様々なアートが流れていく。賑やかな天の川のようだった。
「先輩見て見て、これ先輩! かわいいでしょー」
 結構夢中になって描いていたはとりが再びミカの声に振り向き、むせた。
 花火アートで描いたはとりは眼鏡にちょっとムッとした眉と口。しっかりと特徴を捉えている。
「俺か。恥ずかしいけど……すげえな」
「でも花火だと限界あってちょっと歪なんだけどねっ」
「いや充分上手いし」
 そう言ってお返しにとはとりが何かを描き始める。
 大きな耳にふわふわっぽい尻尾。波打つ何かはくるんとしたカールを描いて。
「あっ、ちょっとまって、えっこれミカ!? 待って待って今撮るから! 永久保存!!」
 この瞬間を逃すわけにはいかない。
 ミカは慌ててスマートフォンを取り出すとパシャッと写真を撮る――否、長く連なる音は連射のものだ。
「撮るなよ……はしゃぎすぎ」
「レアだし! 撮るよ!」
 何言ってんのというような勢いで言葉が返ってきて、ふは、とはとりが笑う。
 やっぱりレアだ。とミカが呟いた。さりげなくカメラをはとりに向けて。
「やっば、楽しいねせんp」

 瞬間、ミカががくりと傾いた。

「わーーー!?」
「……おいミカ!?」
 慌ててはとりが駆け寄る。
 柳花火の川から滑り落ちたミカは、すぐ下の牡丹な花火模様の上に仰向けで寝っ転がっていた。
「びびび、びっくりしたぁ」
「だから気をつけろって言っただろ……」
 はしゃぎすぎだ、と視線で注意したはとりが手を差し伸べる。
 ミカがその手を掴んだところで「げ」とはとりが呟いた。
「ここも花火消える」
「へ?」
「すまん落ちるわ」
「ええっ!?」
 不自然な体勢からはとりを引き上げられるわけでもない。
 ミカが叫んだ瞬間には引っ張られて落ちていくところ。
 花火模様の残滓のせいかその速度は遅いものだったが――。

「いったーめっちゃお尻打った!」
 ぱたぱたと尻尾を動かして、砂まみれになったミカが身を起こす。
「痛ってぇ……。はぁ。――うっすい装備だと大変だな……」
「言い方! これ水着だしっ。先輩もそう変わんないじゃん! ねぇ先輩もう一回いこ! リベンジ! お願い!」
「……懲りずに行くのかよ。別にいいけど」 
 そう言いつつもはとりの声は優しいものだ。
 にへらっと笑んだミカは「じゃ行こ!」と先に立って、はとりへと手を差し伸べた。

 空では今も変わらず花火の打ち上がる賑やかな音。
 再び空へと向かえば、新たな煌きの瞬間が出来上がる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジェニファー・リェン
あかりさん(f06738)と

水着!ビーチ!花火!
ジェンの国にはないものばっかりだわ……不思議ねえ
作法も分からないのだ…
(あかりさんを見留めて)あ、そこのアナタ!ご一緒していいかしら?
せっかくだから、空の上に行ってみない?

花火で文字や絵を描くの?
こう…かしら(へにょへにょ)
絵を描くのって難しいのねー。アナタ、できる?(ポノさんに声をかけ)
…むむ。ジェンも頑張るのよー
ね、ふたりでなにか書いてみる?ポノさんも一緒にどう?
うーんと…そうねえ…
こういうのはどうかしら(空中に絵を描いてみせ)
んふふ、何となーく分かってきたのだわ
花火って面白いのねー


上里・あかり
かき氷を食べながら一人で花火を眺めています
とっても綺麗
あの花火、確かお散歩できるんですよね
興味はあるんですが、一人だとちょっと…

ジェニファー(f30007)さんに声を掛けられ渡りに船という事で、一緒に空に行ってみようと思います
私も行こうと思ってたんです。一緒に空へ行きましょ!
ポノさんこんにちは。あの、よければ一緒に空へ行きませんか?
3人で花火の上をお散歩したらきっと楽しいですね

せっかくですし、手持ち花火も楽しみますよ
こうやってお花にお星さま
ジェニファーさんお上手ですね
花火に手持ち花火で綺麗な色どりを加えますよ
あ、せっかくですし記念撮影しましょ
今日はいい一日になりましたね

アドリブ、アレンジ可



 ドン! と腹に響く重低音が鳴り、夜空に大きな花火が現われる。
 菊花火や蜂花火、柳の煌きが落ちていく様。
 黄色や赤、青や緑といった光の花々が夜を彩って海や砂浜に光を届ける。
 鮮やかな花火たちを見上げながら上里・あかり(あかりを照らすもの・f06738)はのんびりとカキ氷を食べていた。
 いちご味に癒されながら花火を眺めて。
「とっても綺麗」
 上がっては消えていく儚げな花火も夜空に留まる花火模様も。
(「……あの花火、確かお散歩できるんでしたよね?」)
 わーきゃーと時折聞こえる声は、妖怪花火で打ち上げられた妖怪や猟兵のものだろう。
 興味はあれど一人で行くのは……と、そう悩んでいると「あっ」と可愛らしい声が聞こえた。
「ね、そこのアナタ」
 ちょっとずつその声は近付いてきているような……不思議に思ったあかりが振り向いてみれば、そこにはキラキラとした向日葵――ではなくジェニファー・リェン(アンサーヒューマンのサイキックキャバリア・f30007)。
 あかりを呼んでいたようだ。目と目が合った。
「ひとり?」
「はっ、はい」
 真っ直ぐに問われ、艶やかなべっこう色の目を丸くしてあかりは戸惑い頷いた。
「ね、ご一緒していいかしら? ジェンの国にはないものばっかりだから……作法も分からなくって」
 詳しく聞けば、水着もビーチも、そして花火もジェニファーは初めての経験らしい。
「爆弾があんなに華やかなものになるなんて、びっくりだわ」
「ば、爆弾……」
 確かに花火は初めてみる者にはびっくりする代物だろう。
 お互いの自己紹介を終えて、花火のことや、水着、ビーチでの遊び方などをあかりが教えていくとジェニファーはふむふむと頷く。そういえば、と、ふと空を見上げた。
「みんな空に行っているみたいなのだけど、せっかくだからジェンたちも空の上に行ってみない?」
「あ、私も行こうと思ってたんです。一緒に空へ行きましょ!」
 渡りに船だ。笑顔であかりが応える。
 ドン! ドン! と、どんどん妖怪花火が打ち上がっていく場所に向かうと、あかりは知った顔を見つけた。
「ポノさん、こんばんは」
「あかりさん! こんばんは」
 ポノ・エトランゼだ。彼女は直ぐにあかりの隣のジェニファーに気付いて再び挨拶。
「こんばんは。ジェンはジェニファーっていうの」
「私はポノ」
 よろしくね。と二人が自己紹介を終えたのを見計らってあかりは声を掛けた。
「あの、ポノさん、よければ一緒に空へ行きませんか?」
「行く行くっ。お誘いありがとう~」
「ふふ。三人で花火の上をお散歩したらきっと楽しいですよ」

 そうと決まれば!
 手持ち花火も持って、ドーン! と妖怪花火で打ち上がった三人は空の上。
 間近にくるとより一層、ドゴンと身体に響く花火の衝撃。
 けれども見晴らしの良さはピカイチだ。
 向きによっては見えづらい型物の花火に、あの形は何だろう? と答えを探るおしゃべりをしたり。
 着ている水着のことでおしゃべりしたり。
 和をベースにしたあかりの青の水着は見た目も涼やかで、差し色となっている薄紫が彼女のしとやかさを表現しているようだ。
 ジェニファーの水着は淡いイエロー。パレオは白から始まるグラデーション。キラキラとした向日葵が裾で踊っている。
 ジェニファーのたくさんの向日葵、あかりの年頃の娘らしいポップな向日葵飾り、三人とも向日葵モチーフが共通しているのが何だか面白い。
 おしゃべりしながら妖怪手持ち花火で向日葵を描いてみるあかり。
 彼女が手首を翻して、光の穂がくるくるキラキラとした軌跡で花弁を多く描く。
 それは舞いのようで。
 ほうっとジェニファーが感嘆の息を零した。
「あかりさん、とても上手ね」
「ありがとうございます。ジェニファーさんもやってみませんか?」
「ジェンも?」
 ほら、お星様とか簡単なものから。
 あかりにそう誘われて、ジェニファーも光の穂でくるくるお星様を描いてみる。
 けれども夜空に残ったのはぽよぽよスライムっぽいもの。もしくはもくもく雲。
「絵を描くのって難しいのねー。アナタ、できる?」
「簡単なヤツならいけそうな気がするわ」
 ジェニファーに声を掛けられて、ポノも挑戦。
 出来上がったのはもくもく雲に棒一本が突き刺さっている。
「ポノさん、これは?」
「棒付き綿菓子!」
 あかりの問いにどやっと答えたポノの絵を見て、ジェニファーも棒の一本線を付け足した。
「同じものが出来たわ」
 にこにこ笑顔でジェニファーが言った。
「ね、次はみんなで一緒になにか描いてみない?」
「いいですね」
 ジェニファーの言葉にあかりとポノが頷くも――お題は何にしよう?
「うーんと……そうねえ……。こういうのはどうかしら」
 なみなみ~っと波線を描いてみるジェニファー。
「あ、じゃあ私、魚描くー」
「では、私はクジラを描いてみましょうか」
 乗ってきた二人に微笑んでジェニファーは波線を足して、上にお月様を描き。
 ポップな海の風景がいろんな色で夜空に漂った。
「んふふ、何となーく分かってきたのだわ。花火って面白いのねー」
 ジェニファーが一つ頷いて、そう言った。
 あまり儚くはない花火模様たち。けれども夜のひとときでしかないのは確か。
「せっかくですし記念撮影しましょ」
「あ、私もこれで撮るわ」
 あかりの提案に、ポノがスマートフォンを取り出して、通りかかった妖怪に撮影を頼む。

 にっこり笑ってー。

 パシャッと撮った写真には向日葵のような笑顔たち。
「今日はいい一日になりましたね」
「楽しかったわ」
 にこやかなあかりの言葉に、ジェニファーがこくんと頷いた。
 夏の一夜と、新しい友達とのおしゃべり。
 のちに思い出す一瞬一瞬はきっと花火のように輝くことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

打ち上げられ花火とか吹っ飛ばされるのと特に変わらないのでは?(と言いつつも手は繋ぐ)
うひゃー!ジェットコースターみたいでスリルある

あ、手持ち花火を持ってきたんだった!
空を散歩しつつ手持ち花火アートしてみません?
アヤネさんはやったことありますか?

まずはススキ花火を手に取り絵を描いてみる
なんにしよ…?
猫でいいかな(描き描き)
すごい!猫の形した光の輪が空を駆け巡る!
でも頭だけだからシュール
アヤネさんは何描きます?
私の似顔絵とかは恥ずかしいのでやめて下さいね
空飛ぶ巨大顔とかホラーですし…
…って
それ書くんですか!?
あー、書いちゃったよ…
体で隠そうとするも相合い傘は飛んでいく
ああああああ(真っ赤)


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
打ち上げられ花火って楽しそうだネ
ソヨゴ一緒に空の散歩に行こう!

はぐれないようにしっかり手を繋いで
レッツゴー!
わあ
足下に花火が見れるなんて初めてだネ

手持ち花火?
僕はやったことないネやり方教えて
なるほどこれは面白い
ソヨゴが花火で描いた絵にかわいいネと微笑み
うーんじゃあ僕は空に大きく落書きを
相合い傘に二人の名前
仕上げに傘の上にピンクに光るハート
得意げに振り返り
どう?先日の依頼で覚えた日本のおまじないだネ

あははそんなに照れなくてもいいのに
そういう様子もかわいいのでぎゅっと抱きしめて
よしもっと先まで
いけるだけ行ってみよう



 ドン! と腹に響く重低音が鳴り、大きな花火が現われた。
 わあっとした歓声が起きて皆が花火を見上げる。
 大きな牡丹花火や軽快なリズムを立てる花雷、柳の煌きが落ちていく夜の空。
 黄色や赤、青や緑といった光の花々が夜を彩って海や砂浜に光を照らす。
「冬青、あっちだ。はやく行こう」
 そう言って砂浜を歩くのはアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)。ハーフアップにした髪を揺らし、振り返る身体は綺麗な青で染まった水着に包まれている。チャイナドレスをモチーフにしたその水着はとても優雅でセクシーなもの。
「はーい。アヤネさん、楽しそうですね」
 同じモチーフでビキニの型だが印象は可愛らしい元気娘。朱色の水着を着る城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)の動きは軽やかなもの。
「ほら、あそこ。打ち上げられ花火って楽しそうだネ。ソヨゴ、一緒に空の散歩に行こう!」
 妖怪が集まって妖怪花火を打ち上げる場所を指差しながらアヤネが冬青を誘う。
 ドン! と空へと放たれる妖怪や猟兵たちの姿を、いいですよーと応える冬青の目が追った。
 妖怪に案内されて、二人も妖怪花火と一緒に打ち上がることに。
「ソヨゴ、はぐれないように手を繋ごう」
「はいっ。……でも打ち上げられ花火って、吹っ飛ばされるのと特に変わらないのでは?」
 言っている間に準備もできたようだ。
 ――3、2、1! いっけぇぇ!
 周囲の掛け声とともに、G。
 ぐんっと迫る夜空の花火模様。
「うひゃー! ジェットコースターみたいでスリルあるー!」
 冬青が爽快な声を上げる。
 一緒に打ち上がった妖怪花火が弾けて、飛び出した光の乱舞が更に二人の背を押した。
 ふわっとした滞空を感じれば意外と緩やかな降り立ちになって。
 気付いた時にはもう花火模様の上だった。
 二人に続いた花火がドン! と夜空に咲いて、その大きさや音に「ひゃあ」と最初は驚いてしまう。
「すっごい迫力です」
「でも見応えがあるネ。見て見てソヨゴ、足下でも花火が見れるなんて初めてだネ」
 上からでも丸いよ、とアヤネ。
「本当ですね」
 何かを発見しては冬青に報告するアヤネの姿。子供のようにはしゃいでいる。
 そんな彼女を微笑ましく思いながら、冬青も周囲の花火たちに見入った。
 二人が立った花火模様は牡丹花火の上。キラキラとした光粒の中で、新たに上がった蜂花火が飛び回る。

 しばらく間近で豪快な花火たちを楽しんでいると「あ」と冬青の声。
「手持ち花火を持ってきたんだった! アヤネさん、空を散歩しつつ手持ち花火アートしてみません?」
「手持ち花火?」
「そうです。アヤネさんはやったことありますか?」
「僕はやったことはないネ。やり方教えてよ」
 冬青に教わりながらの初挑戦。
 勢いよく噴出する花火に、アヤネは驚きながらも楽しそうだ。
「あ、すごい。ススキ花火の光が空中に残りますね」
 大きな円を描いてみた冬青がそのまま残る光を見て言った。
「何か描いてみようかな……なんにしよ……?」
 ちょっとだけ考えて、描いたものは三角を意識しながらまるっと描いたもの。
「猫? かわいいネ」
「当たりです♪ 上手くできましたよ~」
 滞空している花火模様が緩やかに動くなか、猫の花火模様も動いていく。
「はは、頭だけだからシュールだなぁ」
 苦笑する冬青だったが、ぱっとアヤネの方に振り返った。
「アヤネさんは何を描きます?」
「『ソヨゴ』……?」
「いやいや、私の似顔絵とかは恥ずかしいのでやめて下さいね。空飛ぶ巨大顔とかホラーですし……」
「えー。うーん……じゃあ――」
 そう呟いて、アヤネがススキ花火を動かす。
 光の穂は三角を描いたのちに真っ直ぐな一本線。これだけで冬青は察した。
「って、それ書くんですか!?」
 アヤネさん! と声を上げた時には『アヤネ』。
 待ってください~! と止めようとした時には『ソヨゴ』。
「まだまだ。仕上げもあるよ」
「ひえぇぇ」
 傘の上には丁度色変わりを果たしたピンクの穂で光るハート。
 改めてそれを眺めて「よし」と満足気に頷いたアヤネが冬青を振り返る。
「どう? 先日の依頼で覚えた日本のおまじないだネ」
「じょ、上手に書けましたね…………あぁぁ恥ずかしいぃぃぃ」
 冬青の顔は真っ赤になっていた。
 ラブがふんだんなアートを隠せるものはないかと周囲を見回した冬青だがもちろんそんなものは無くて。
 えいっと体で隠そうとするのだが――無情にも、冬青を避けるように緩やかに相合傘は動いた。
「ああああああ。待って行かないで!」
「あはは、そんなに照れなくてもいいのに」
 アヤネは可愛いなぁって言って、手を伸ばしていた冬青をぎゅっと抱きしめる。
「ね、ソヨゴ。夜空の空中遊泳、もっと先までいけるだけ行ってみない?」
 頬を合わせて、少しだけ声を潜めて誘ってみれば、抱きしめた腕に冬青の手がそっと添えられた。
「エスコート、お願いしちゃいますよ」
「はは、任せて! まずはあの観覧車みたいな花火を伝って行こう」
 お願いには張り切った声で応えて。
 手を繋いで万華鏡花火へと向かっていく。

 夜空での空中遊泳。
 二人の行く夜はずっと輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【龍狼師団/7人】

懐かしいねー、折角だから再現するのも面白そう
今度は紫崎君の手も足りるね

晃君の言葉には大きく頷き
うん、もう全然怖くないよ!
ねずみ花火っていうやつは…まだ挑戦する勇気出てないけど…
ふえぇ、さ、最後にね?最後にしてね?
皆傍にいてね…!?

あっ、やるー!海記念!
夏輝君、ちゃんと撮ってね!

3人で一緒にうみきねんの文字を空中に
えへへ、再現できたぁ

勿論、皆でやろ!
この人数で書くならなにがいいかなぁ

はーい、「テ」でいいよ
せーのっ!

描いた文字は大事な記念だから記憶に焼き付けるように見つめ
記念が増えるのは嬉しいし
素直にピース…わあぁびっくりしたぁ!?
怖くはなかった…綺麗…なんだけど
びっくりした…


紫崎・宗田
【龍狼師団】

光が滞空するらしいからな
腕の数より文字の方が多いなんつー暴挙も問題無ェってわけだ

鉄馬の言葉には声を潜めながらも澪を視線で示し
あいつの願いだ
次は皆でやりてぇと

前回は…確か、「うみきねん」だったか
澪にとっては初めての体験だったからな
おいチビ(澪)、鉄馬が協力してくれるらしいがやるか?
海記念

俺と鉄馬が2文字ずつ担当し、3文字を空中に書く
前回よりは楽だったな

鉄馬……何気に俺の方に画数多い方投げんじゃねぇよ
まぁいいが

完成後文字から中々目線を離さない澪の頭を無言でぽんぽん
また付き合ってやる、という意味も込めて

集合写真の案にも渋々乗ってやるが
足元を走ったねずみ花火に気付き境にジト目を向け

お前…


栗花落・深香
【龍狼師団】
ねずみ花火は軌道が読めないものねぇ
やるなら最後の方かしらぁ

試しに両手に花火を持ったままくるくる回転
光に囲まれるのも素敵だわぁ
少しずつ腕を上げたら光の渦が作れそうね

描き終わったら壊さないよう翼で上からそっと抜け出て
その渦に添えるように花や星を描くわ
一種のイルミネーションね

あら、面白いことしてるのねぇ?
私達もご一緒したいわ♪
なら私は「ン」にしようかしら
澪は「テ」ね、隣で一緒に書きたいもの♪

澪の隣でご機嫌で綺麗な文字を書き
背景には打ち上げ花火も海もあって
これは確かに素敵な記念だわ

記念撮影も喜んで♪
けれど突然のねずみ花火に驚いた澪を隣で咄嗟に支え
あらあらぁ、大丈夫?
ふふ、素敵な光の花畑ねぇ


堺・晃
【龍狼師団】

澪君は、花火体験は二年目でしたっけ
もう慣れました?

今回用意していただいたねずみ花火なら大丈夫かもしれませんよ
今のうちにチャレンジしてみるのも手では?

水入りバケツや蝋燭など、必要なものは念のため全て用意
これでも団長ですからね
保護者も兼ねてますから

ほら諒太君、火をつけるのはこっち
何を描くんです?
ふふ、難易度が高そうですね

文字は暫く滞空するんですし
夏輝君も混ざってもいいんじゃないですか?
それなら7人ですし、「コンテスト記念」くらいはいけますよ
でしたら、僕と夏輝君で「ス」と「ト」
それぞれ担当しましょうか

集合写真の流れで
密かにねずみ花火を危なくない距離に投下

失礼、手が滑りまして(いい笑顔


不知火・鉄馬
【龍狼師団】

つーか…俺らまでよかったのかよ
花火アート、お前ら3人の思い出の行事なんだろ?
俺らまで混ざって

…そうか
そういう事なら付き合ってやらねぇとな

つっても、俺と宗田に限って言えば元ヤンあがりの
そのまま傭兵組なわけで
あんまはしゃぐって経験が無いからな…咄嗟に浮かばねぇ

前回はなんて書いたんだよ
折角だし、再現するなら手伝うが

そりゃ小林がカメラ役で抜けんのに
お前と澪の二人で5文字はキツいわな
よくやったわ

俺と宗田で漢字やるわ
俺「念」な
画数なんて誤差だろ、誤差

文字を書いたら集合写真
宗田と共に両端で適当に立っていたが
ねずみ花火の悪戯にすぐに犯人を察し

ほんといい性格してるよな…
ビビらせたいだけだろ(呆れ


小林・夏輝
【龍狼師団】

一昨年だっけな…の夏にも
俺と澪と紫崎でカメラのタイマー使って遊んだけど
そのまんま絵描けるのはスゲーな

あ、今回も俺は撮影係
自信作のカメラは夜間撮影にも対応の優れもの
気持ち澪の事多めにしつつ(絶対可愛い反応するし)
全員を満遍なく撮影

お、懐かしいなー海記念
おっけー、いつでもいいぜ
完成後だけじゃなく描き途中もパシャリと

お、今年バージョンやっちゃう?
いいじゃん、俺も参加していいなら頑張っちゃうよー
一応すぐ撮れるようカメラは首にかけて
せーので担当文字を書く
その後消える前にすぐ写真を撮って

よし、いい感じ
これ現像したらリビングに飾ろうな

最後は全員で記念撮影しようぜ
澪と深香さん真ん中で!


金子・諒太
【龍狼師団】

ねずみ花火、普通のはなー、びっくりするもんな
僕、初めてやった時、ひっくり返ったもん

花火、久しぶりだなー
多分、猟兵になってからは初めてだな
えっとー、火つけるのどっちだっけ

描きたいものいっぱいで、悩むんだよなぁ…
パフェとか、ハンバーガーとか、ステーキとか…
お腹空いてきた…

全員で、メッセージ書くの?
6人だろー? うーん……

こんてすときねん…記念は、漢字?
ハードル高そうだなー
僕「コ」書くー

夏輝と一緒に、撮った写真を覗き込み
うん、いい感じだな
記念撮影、この文字の前でやれば?

全員で集まって、はいチーズ
の瞬間、ねずみ花火に全員驚いたところを
タイマーかけてたカメラがパシャリ
…ある意味、僕達らしい?



「海だー♪」
「海ね~」
 打ち上がる花火景色のビーチで栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が両手を広げてそう言えば、澪の従姉の栗花落・深香(暴走おねーちゃん・f03474)がぽわぽわとした声で歌うように。
 二人の柔らかな翼がはたりと動けば、ふわりとした水着の布地が舞った。澪と深香が並べば月と陽の女神のよう。
 そんな二人を微笑ましく眺めるのは夜空の色に身を包む堺・晃(元龍狼師団師団長・f10769)。
「澪君は、花火体験は二年目でしたっけ。もう慣れました?」
「うん、もう全然怖くないよ! ……ねずみ花火っていうやつは……まだ挑戦する勇気出てないけど……」
 澪の言葉に、わかる、と頷くのは金子・諒太(戦える肉団子・f12789)。水着は小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)と同じように星座をモチーフとしたもの。可愛らしい水着に、白や宇宙モチーフのかっちりとした上着がそれぞれを格好良く締めている。
「ねずみ花火、普通のはなー、びっくりするもんな。僕、初めてやった時、ひっくり返ったもん」
 にこやかな諒太の言葉に晃はどこか思案顔。
「今回用意していただいたねずみ花火なら大丈夫かもしれませんよ。今のうちにチャレンジしてみるのも手では?」
「ねずみ花火は軌道が読めないものねぇ。やるなら最後の方かしらぁ」
 ひっくり返った。軌道が読めない。
 そんな諒太と深香の発言に「ふぇぇ」と澪が震えあがった。
「さ、最後にね? 最後にしてね? そのときは皆ちゃんと傍にいてね……!?」
 澪を励ますように深香がぽんぽんと彼の背を叩き、わいわいとおしゃべりに花を咲かせる面々をカメラにおさめる夏輝。
 たまにポーズを取ってくれる皆が面白い。
 次にレンズを向けたのはひそひそと話し始めた男子二人。

 不知火・鉄馬(戒めの正義・f12794)が紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)を呼ぶ。
「つーか……俺らまでよかったのかよ。花火アート、お前ら三人の思い出の行事なんだろ?」
 俺らまで混ざって、と続き呟く鉄馬の声は本当にいいのか? と窺うもの。
「あいつの願いだ。次は皆でやりてぇって言ってたし」
 声を潜め、澪を視線で示しながら宗田が答えた。
 一瞬きょとんとした鉄馬だったが至極真面目な顔になり「そうか」と頷く。
「そういう事なら付き合ってやらねぇとな」
 少々強めに激励の意味もこめた拳を宗田の肩に送れば、ぺいっと払われた。
「つっても、俺と宗田に限って言えば元ヤンあがりの、そのまま傭兵組なわけだしな」
 あんまはしゃぐって経験が無いからな――そう呟いた鉄馬が『はしゃぐ』を思考するも、なかなか難しいようで。
「咄嗟に浮かばねぇ。前回は何書いたんだ?」
「前回は……確か、『うみきねん』だったか?」
「そうそう」
 さりげなく夏輝がカメラを手に混ざってきて相づちをうっている。
 澪にとっては初めての体験だったから海記念。
 宗田は振り返り、澪へと声を掛けた。
「おいチビ、鉄馬が協力してくれるらしいが『うみきねん』やるか?」
「あっ、やるー! 海記念! 夏輝君、ちゃんと撮ってね!」
「おー、任せろ! 懐かしいなー海記念」
 夏樹はサムズアップしながら楽しげに応じる。
「前やったのは一昨年だっけな――」
 カメラを撫でて懐かしそうに、あの時のことを思い出す。
 夏樹と澪と宗田で、カメラのタイマーを使って遊んだのだ。
 ススキ花火を手にした三人に手を振る。
「おっけー、いつでもいいぜ」
 どこを描くかのわちゃわちゃとした話し合いの様子もカメラにおさめつつ、夜に描かれる花火アート。
 舞う光が文字をなしていく。
『 海 記 念 』
 海を宗田が。
 真ん中の記は澪が。
 念は鉄馬。
「やったー! えへへ、再現できたぁ。ね、文字すごくキレイだね」
 にこにこと笑顔で言う澪に宗田も微笑む。
「字数が少ないぶん、前回よりは楽だったな」
「そりゃ小林がカメラ役で抜けんのにお前と澪の二人で五文字はキツいわな。よくやったわ」
 すんげー感心する。
 若干遠い目になった鉄馬に「つーか」と宗田が顔を向けた。
「鉄馬……何気に俺の方に画数多い方投げんじゃねぇよ」
「画数なんて誤差だろ、誤差」
 完成後のやり取り、そして三人でどやぁとした表情とポーズの海記念撮影。
「うん、いいじゃん。ベテラン感が溢れてる」
 撮った後は夏樹が笑ってやっぱりサムズアップ。

「花火、久しぶりだなー」
 多分、猟兵になってからは初めて。手持ち花火を幾つか手に取って、これにしてみよう、と諒太。
「えっとー、火つけるのどっちだっけ」
「ほら諒太君、火をつけるのはこっち」
 ここは持ち手だっけ? と膨らみの方を持っていた諒太へ教えたのは晃だ。
 手際よく水入りバケツや蝋燭などの必要なものを用意してきた晃は目端が利くのだろう。諒太の様子に直ぐ気が付いた。
「まずはどうするかを決めてから火を点けましょうか。何を描きたいんです?」
「描きたいもの……いっぱいで、悩むんだよなぁ」
 むん、と珍しく難しそうな表情で考える諒太。
「パフェとか、ハンバーガーとか、ステーキとか……」
 好きなものを上げていけば、ぐうっとお腹がへこんだ気がした。
「ふふ、難易度が高そうですね。ああ、でもピザとかは描けそうな気もします」
「お腹空いてきた……」
 今度は気のせいではなくぐうっとお腹が鳴る。
 大きな円(ピザ)の中に四本線でカットされる諒太の花火アート。晃が赤や緑の手持ち花火で描き足せば具材となった。
 パフェアートは好きなものを盛っていくとごちゃっとなってしまったが、描いた本人には見分けがつくのだろう。
 写真に書き込み必須だなーと言いながら夏樹がカメラにおさめていく。

 深香が両手に花火を持ってくるくると回転する。
 くるっとターンすれば細い光のラインが。
 緩やかに回ればふわふわと波打つライン。
 七色に変化するススキ花火は鮮やかな弧を幾重にも描く。
「綺麗……」
 少しずつ腕を上げたら光の渦。
 光に包まれた深香がそっと翼を動かして上へと抜けだした。
 するりと光が昇っていって、添えるように再び描き始める。
 太陽のような向日葵。月のように弧を描いて桔梗の集まりを。散らすように星。
 一種のイルミネーションね、と深香は認識しているのだが――離れて見れば幻想的な光景。
 美しい光の舞いを夏樹が撮っていく。

 それぞれがアートを楽しんでから次のススキ花火を取りに行く。
 ね! と、にこにこ笑顔の澪が皆へと声を掛けた。
「花火アート、皆でやろ!」
「全員で、メッセージ書くの? 六人だろー? うーん……」
 頷いた諒太が考え始めると、待て待て、と夏樹が自身をくいっと指差した。
「いいじゃん、今年バージョン! 俺も参加していいなら頑張っちゃうよー」
「文字は暫く滞空するんですし、夏輝君も混ざってもいいんじゃないですか?」
「じゃ頑張るー」
 晃の言葉に、にかっと笑んだ夏樹がカメラのストラップを首に掛けて、けれども直ぐに撮れるようにと準備をする。
 その間にも澪と諒太はウンウンと考えていて。
「この人数で書くならなにがいいかなぁ。なんでもできそうだよね」
「それなら七人ですし、『コンテスト記念』くらいはいけますよ」
 コンテスト記念! いいね!
 晃の提案に、弾んだ声が【龍狼師団】のあっちこっちから上がった。
 『記』『念』の漢字は、漢字に慣れた(?)ベテラン感(夏樹談)溢れる宗田と鉄馬の担当に自動的になった。
「……いやまあいいけどよ」
「宗田。俺、まだショシンシャだしまた『念』やるわ」
「お前……」
 鉄馬をジトっと見遣る宗田。
「なら私は『ン』にしようかしら。澪は『テ』ね、隣で一緒に書きたいもの♪」
「はーい、『テ』でいいよ」
 深香が軽く挙手し、そのままひらりと澪に向かって手を振った。もちろん澪は良いお返事をする。
 諒太も挙手して「僕『コ』書くー」と良い笑顔で告げた。
「でしたら、僕と夏輝君で『ス』と『ト』をそれぞれ担当しましょうか」
「おう、いいぜ!」
 晃と夏樹が拳をこつんを軽く合わせて笑う。

 『コ』を描いた諒太の文字は緩やかに。
 『ン』の文字は流麗な線に、澪の隣という深香の楽しげな雰囲気が出ている。
 『テ』を描いた澪はちょっぴり勢いがいい。
 『ス』の晃の文字は整っていてスマートだ。
 『ト』は夏樹の明るさが出ていて楽しそう。
 『記』を担当した宗田は字数分、はやめはやめの動きで勇ましいものに。
 『念』は二度目の書き文字となった鉄馬。さっきより綺麗に整っている。

 そんな写真を夏樹に見せてもらって、一緒に覗き込んだ諒太が笑う。
「うん、いい感じだなー」
「これ現像したらリビングに飾ろうな」

 描いた文字は大事な記念だ。澪は記憶に焼き付けるように見つめていた。
 なかなか動かない澪の頭を、宗田はぽんぽんと叩く。
 言葉はないけれども、また付き合ってやる、と意味の込められた優しい手に澪の視界が僅かに滲んだ。

「なあ、最後は全員で記念撮影しようぜ! ええとどこに立つか――」
「記念撮影、この文字の前でやれば?」
 夏樹の声掛けに諒太が文字の前に立ってみる。そしてちょっと屈む。
「そうだな。じゃあ、澪と深香さんは真ん中で!」
 手を振って夏樹が指示を出せば、宗田と鉄馬が一緒に動いて両端に適当に立つ。
「いくぜ~!」
 タイマーを掛けた夏樹が駆け寄ってきて、澪がピース――をした瞬間!
 爆竹の如き音が鳴り、その後はシュバババババッ! と火花が駆け回った。
「わあぁっ!?」
 ぴょんと跳ねる澪。
「お前……」
 宗田がじろっと晃を見れば、にこやか~にそれを流される。
「失礼、手が滑りまして」
 犯人は明らかだ。シュババっと駆け回るねずみ花火を投下したのは晃。
「ほんといい性格してるよな……ビビらせたいだけだろ」
 鉄馬もジト目になって晃に言う。
 跳ねた澪を支えたのは深香だ。
「あらあらぁ、大丈夫?」
「びっくりした……怖くはなかった……綺麗……、なんだけどびっくりしたー」
 ビクッと震えた澪が綺麗と言った。
 深香が目を向ければ、そこは光の乱舞。
「ふふ、素敵な光の花畑ねぇ」

「タイマーの切れた瞬間にちょうどねずみ花火だったんだねー」
 夏樹と一緒に写真を覗きこんでいた諒太が「ほら」と皆に見えるように写真を掲げた。
 そこには激しい光の軌跡を描くねずみ花火と皆がびっくりした瞬間。
「……ある意味、僕達らしい?」


 儚いはずの花火も、今夜は皆と一緒で名残惜しいのか長くそこで光っている。
 それは人と離れたくないという妖怪たちの願いがこもった花火なのかもしれない。

 夏の一夜。今宵の思い出を胸に抱えて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月03日


挿絵イラスト