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華、天地に満ちる

#カクリヨファンタズム #お祭り2021 #夏休み

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●満ちる想い、あたたかな華
 その日グリモアベースで待っていたリグ・アシュリーズは、あなた達を見るなり笑顔でこう切り出した。
「ね、カクリヨの空に上がる花火、見たくはないかしら。楽しいお祭りはまだまだ終わっちゃいないわ!」
 聞けば、粋な妖怪たちが特別製の花火を用意してくれたのだという。
 謹製の妖怪花火は人を乗せて打ち上げるほどの馬力があり、夜空で空中散歩を楽しんだ後に一反木綿に出迎えてもらう、なんて楽しみ方もできるらしい。
「大がかりすぎて恐れ入っちゃうけど、きっと世界を救った皆にお礼がしたいんだと思うわ! だからね、好意は素直に受け入れた方が、彼らもきっと喜ぶと思うの!」
 手招きするリグの声は、いつも以上に弾んでいた。
 現地へ向かうのを待ちきれぬように、持っていく物を何にしようかと算段を立てている。

 新し親分の用意したビーチは思いのほか広い。
 地形も様々な上、多少騒いでも他の猟兵たちに迷惑がかかる事はないだろう。
「それともう一つね、妖怪さんたちが企画した事があって……あっ」
 何かを言いかけたリグは、慌てて飲み込むように口を噤む。
 どうやら口止めされていたらしく、知っている素振りの彼女はぺろっと舌を出しながら代わりにこんな事を伝える。
「詳しくはまだ言えないんだけど。もしあちらで夜を過ごすなら、誰か親しい人を連れて行くのもいいと思うわ!」
 きっと素敵な思い出になるはずよ! と。
 曖昧な言葉で背中を押され、あなた達は首をかしげながら出立の準備に移る。

 ――そして。

   ◇    ◇    ◇

 再びカクリヨのビーチを訪れたあなた達を、無数の色が出迎える。
 花火だ。それは聞いていた。
 だが空だけでなく大地の上、ビーチの白砂の上に映し出される華模様は一体何だろう。

 遠く、浜辺の方から照らす光。
 現代UDCアースの技術を聞き、妖怪たちが再現したもの。
 プロジェクションマッピング――レトロな映写機と色付きフィルムを用いて生み出された華模様は、大都会で見るそれらよりも素朴で、けれど温かみがあった。

 ひゅぅぅぅ……ばん、ばららら。
 天に、花。光が咲き、遅れて音の波。
 心地よい、喜びに胸をかき立てる振動のさざ波が、あなたの鼓動を揺らす。
 地に、花。白砂を跳ねるように照らし、舞い踊る。
 ステンドグラスのように色豊かで、切り絵のように不揃いな華模様は、
 手動で動いてあなた達の歩む先を照らす。

 このような温かな歓待を受けた事が、どれほどあるだろう。
 けれどこれもまた、彼らの望みなのだ。
 驚き、笑い、時には泣いて、物思いに耽り。
 ここで生まれる数々の想いを少しだけ食んで、妖怪たちは日々を生きていく。
 だから遠慮なく、甘えてしまえばいい。

 そうしてやがて花咲く笑顔を、彼らは何よりも望むだろうから。


晴海悠
 お世話になっております、晴海悠です。
 猟兵達の夏休み、今年もやって参りました!
 ビーチで思い思いのひと時をお過ごし頂くシナリオをお届けします。

 空に、地に、花が咲く時。
 あなたならどんな表情を咲かせるのでしょう。
 ぜひ、教えてくださいね。

『シナリオについて』
 日常シーン一章のみのシナリオとなります。
 グループでの参加は今回、5名様までは頑張ってみようと思います。
 迷子防止のため、送信する日・合言葉などを決めてご参加頂けると助かります。

『プレイングの受付期間』
 7/26(月)8:31~29(木)23:00
 上記期間中に頂いたプレイングを採用させて頂きたいと思います。
 普段は再送なしで執筆しているのですが、参加者多数だった場合に限り、タグとマスターページにて再送のお願いをするかもしれません(個別のお手紙は差し控えます)。
 当方の都合で申し訳ないのですが、お気持ちが変わらなければご協力下さい。

『注意事項・その他』
 カップルさんのご参加は大歓迎ですが、小さなお子様が目にできないような描写はマスタリング対象となります。またそれ以外の公共の場で相応しくない行動も不採用とする場合があります(仲間内で軽く騒ぐ程度はOK)。
 安心してお読み頂けるリプレイをお届けしたいので、ご協力をお願いします。

 グリモア猟兵はリグ・アシュリーズ(f10093)が同席しますが、特別強い要望がない限りは登場させず、皆様のお話として描きたく思います。一人で参加したいけど話し相手がほしい! という場合は、遠慮なくご指名下さい。面識の有無を気にしない子なので、その点もお気兼ねなく。

 それではどうぞ、素敵な夜を! 晴海悠でした。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み2021』

POW   :    妖怪花火で空へGO!

SPD   :    妖怪花火の上で空中散歩

WIZ   :    静かに花火を楽しもう

👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

大宝寺・風蘭
【大宝寺姉妹】で参加。
※百合姉妹ではなく、ごく普通の姉妹です。

新調した水着(ワンショルダーのフリル付きビキニ)の上にパーカーといういでたちになり、姉と一緒になってビーチを歩く。
天地を彩る『花』の光に感嘆の声をもらしつつ、横を歩く姉にふと目線をやる。
「お姉、こういうロマンチックなイベントに一緒してくれるようなイイ人っていないわけ?」
身内のひいき目を抜きにしたとして、アイドルなんぞやるだけあって見目はそうまずくないと思うのだが、妹以外に誘うべき誰かっていないもんだろうか……などと、お節介な思案を巡らす。
「いや、まあ、確かにブーメランだけどさぁ」
浮いた話がないのは自分も同様。肩をすくめてそっぽ向く。


大宝寺・朱毘
【大宝寺姉妹】で参加。
※百合姉妹ではなく、ごく普通の姉妹です。

装いは、迷彩柄のハイネックビキニの上にラッシュガード。妹を誘ってビーチへと赴く。
花火と、砂地に広がる万華鏡めいた光のアートを眺めやり、目を見張る。
「こりゃ、大したモンだなぁ」
浸っているところに妹に問いかけられ、一瞬面食らいつつも反論。
「これでも現役アイドルだぞ? スキャンダル厳禁に決まってんだろ」
強がりつつも、
(アイドルって枷がなけりゃ色っぽい話と縁ができそうかって言われると、そんなこともないよなぁ)
と遠い目になる。
「そう言うお前はどうなんだよ。イイ人に誘われる予定とかなかったのか?」
水を向けてみるものの、その態度から色々と察知。



 遠く、光を飲み込む夜の海は、空との境も判らぬ暗さで黒々と広がる。
 夕凪も終わり、いまは陸風が背に吹きつける時刻。
 花火の上がる前、姉よりは気持ち長めの黒髪を夜風に揺らし、大宝寺・風蘭(狂拳猫・f19776)は浜辺にサンダルの擦る音を響かせていた。
 コンテストの余韻も冷めやらぬこの日、風蘭が身に纏うのは新調したばかりのフリルビキニ。冷えぬよう上からパーカーを羽織ってはいるが、ボーダーの白地、ワンショルダーならではの晒した地肌が月明かりを帯びて輝く。

 空と海の境に、どん、と小さな発射音が響いた。ひゅるると音のみで上がる尺玉ひとつ、空にはじまりの華を描き出す。
「お、はじまったか」
 姉の大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)は夜闇に慣れた目で眩しそうに光華を見上げ、瞬きをすまいとはじめの一発を見届けた。
 一発目が上がるのを合図に、次々と鳴る打ち上げの音。すぐに姉妹の足元へも別の花、映写機で描く万華鏡の光が現れ、天と地が華で彩られる。
「こりゃ、大したモンだなぁ」
 光に照らされる朱毘の水着姿は、妹のものよりも活動的で本人の性格を色濃く表す。光のもとには眩く陽光を照らし、月下には溶け込む紺の迷彩。ハイネックのビキニの上からラッシュガードを羽織る、媚びないロッカーならではのスタイルには多くのものが目を奪われたろう。

 光のアートに見入り、姉妹はしばし足を止める。近頃では珍しくなった音楽のない花火は、弾ける音の合間に心地よい潮騒の音を胸へと運ぶ。
 天地を彩る、数々の花。感嘆の声をもらしていた風蘭はふと、隣を歩く姉に抱いていた疑問を投げかけた。
「ところでお姉、アタシとでよかったの? こういうロマンチックなイベントに一緒してくれるイイ人っていないわけ?」
 ぐ、と詰まりむせ返る声が聞こえた。妹から見て、アイドル活動を続ける姉の朱毘は身内の贔屓目を抜いても溌溂とした美人の部類だ。妹の自分以外に誘うべき相手はいなかったのか――そんなお節介な思考を内に留められるほど、風蘭は寡黙でも遠慮がちでもなかった。
「これでも現役アイドルだぞ? 恋愛はおろか噂も仕事の邪魔だ、スキャンダル厳禁に決まってんだろ」
「あー……まあ、そっか」
 納得したようなしてないような妹の声。強がりを言って黙らせようとする朱毘だが、実際のところはどうなのか。
(「アイドルって枷がなけりゃ縁ができそうかって言われると……そんなこともないよなぁ」)
 現実から目を逸らすよう、遠く水平線を眺め。そのまま返す刀で、妹にバトンを投げ返す。
「そういうお前はどうなんだよ。イイ人に誘われる予定とかなかったのか?」
「いや、まあ……アタシのことはいーじゃん、今回は非番なんだよ」
 はぐらかす態度から浮き彫りになる妹の事情。恐らくはブーメランが手元に戻ったのだろう、押し黙ってそっぽを向く妹に朱毘は軽くため息をつく。
(「やっぱりか」)
 大宝寺姉妹はどうも、色恋事とは縁遠くなりがちな星の元に生まれたらしい。
「……あのさ、お姉――」
 風蘭の言葉の続きを、続け様の花火の音が呑んだ。

 遠く海の上、まばらだった花火はいつの間にか連発花火となり、空に大輪、海上にススキを生み出しては風に流れて消えていく。花火の残した白煙がまぶたの裏にまだ残る輪郭と重なり、幾重にも空を白く染め上げていく。
 胸に轟く音。打ち続ける夜空の鼓動に触れては止めどない考えも寸断され、長くは続かない。
「ん……ああ、悪ぃ。どうした?」
 ふと、問われて風蘭は姉の顔を見る。
 胸をときめかす王子様には、二人してまだ出会えていない。だがこんな風にさりげなく気遣ってくれる家族――誰よりも自然体で過ごせる相手は、どんな『イイ人』にもきっと務まらない。
「……綺麗だな、って。それだけだよ」
 だから、風蘭はあえて気のない返事を返す。常日頃と、同じように。
「ああ。違いねぇな」
 妹ほどオープンでない朱毘が何を考えているかなど、分かりはしなかったが。
 夜空の華映す虎眼石のような瞳を、風蘭はもう少しだけ見ていたい、と願った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エリシャ・パルティエル
リグー!
一緒に遊びましょう
今年の水着で海と花火を満喫するわね

去年もカクリヨで花火をしたの
でもそれは手持ち花火メインで…
こうしてのんびり花火を見られるのも
平和になった証拠よね

リグはどんな花火が好き?
あたしは線香花火が好き
儚いけどとっても綺麗よね

ね、下から見るのもいいけど
せっかくだから打ち上げられてみましょうよ
空から見る地上の光景も綺麗に違いないわ

原理はよくわからないけど
すごいわね!
星も近くに見えるみたい
ほら、砂浜に映し出された模様も綺麗に見えるわ

心躍る光景に
妖怪さんたちも満たされたかしら

あたしたちはこれ!
作ってきた姫りんご飴をリグにも手渡して
お祭りと言えばこれな気がして
気に入ったから作っちゃった


冬原・イロハ
アドリブ歓迎

はわ、夜空の花火が綺麗ですね……!
それに砂浜もとっても綺麗

荷物、ここに置いてちょっとお散歩しましょう

どん、ばん、とお腹に響く音、煌きが空に
ふふ、大地の方はまるで万華鏡みたいです
歩くのも楽しくなっちゃいますね
と、さくさくっと軽快に歩いたり、スキップしたり、立ち止まっては砂をすくってみたり

妖怪さんたちは凄いですね
楽しい時間をありがとうございます
お礼にかき氷を作ります~
(荷物から家庭用カキ氷機や氷を取り出して)
しゃこしゃこ氷を削って、定番のシロップではいどうぞ

あ、リグさん~(手を振り)
リグさんが光に照らされて砂浜を歩く姿はとってもお綺麗
カキ氷、いかがですか?(しゃこしゃこ)



 暮れて間もない砂浜の、太陽の熱を吐き切らぬあたたかさ。
 ぽてぽてとサンダルの足跡を残しながら、冬原・イロハ(戦場の掃除ねこ・f10327)は浜辺を散策する。
「はわ、夜空の花火が綺麗ですね……!」
 打ちあがる花火を眺め、足元にも目を向ければきめの細かい白砂の中、時折ちいさな貝殻が眠っているのが見えた。
「荷物、ここなら置いてても波に濡れないでしょうか」
 愛用の鞄を砂浜に置き、しばし周囲をそぞろ歩く事にしたイロハは、次にあがるのはどの辺りかと期待に満ちた目で夜空を仰ぐ。
 花火がまた一つ打ちあがり、遠くの空いっぱいに花開く。
 どん、ばばん。どん、ばららら。
 お腹に響く音と共に、ガラス玉のような瞳いっぱいに光の華が映し出される。
 花が咲き終え煙になるまでを見届ければ、次に目を向けるのは地上の華。
「ふふ、まるで万華鏡みたいです」
 イロハに気付いた妖怪が映写機を動かし、足元にポンポン跳ねる華模様を描き出す。
「こんな風だと、歩くのも楽しくなっちゃいますね」
 光に照らされる中をスキップしたり、ランウェイみたいに気取って歩いたり。手に白砂を掬い上げて形の綺麗な貝を探すのに飽きれば、また違う方へと当て所なく歩く。
 映写機の調整に専念していた妖怪はふと、浜辺の華模様が猫型の影に遮られたのに気付いた。
「こんばんは~」
「あれれぇ、こっちに来ちゃったの?」
 まさか黒子の自分が声をかけられると思っても見ず、一反木綿は拍子の抜けた声を出した。
「楽しい時間をありがとうございますって、ひとつお礼を言いたくて」
「ううん~、オイラ達も好きでやってるから~」
 体と同じく間延びした、ユラユラ揺れる一反木綿の声。
「お礼にかき氷でもいかがでしょう~」
 微妙にしゃべり方が似てきたイロハの取り出したカキ氷機に、よく鞄に入ったねと妖怪たちは目を丸くさせる。
「ちょうどいいや、皆呼んできて休憩にしよっか~」
 程なくして妖怪たちはイロハの元に集まり、夕涼み会が催される事となった。

 波打ち際にて足をあそばせていたリグは、名を呼ぶ声にエリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)が歩いてくるのに気付く。
「リグー! 一緒に遊びましょう!」
「エリシャさん!」
 彼女の装いは今年新調した水着。アラビアを思わせる金の装飾のもと、砂漠の夜空のような深青のパレオには無数の星が散りばめられている。
 挨拶を交わした二人の次の話題は、やっぱり花火の話。
「実はね、去年もカクリヨで花火をしたの。その時は手持ち花火メインだったけど……」
 言葉の途中、空に打ちあがりひらく華。しばし行く末に見とれた後で、エリシャの言葉は続く。
「こうしてのんびり眺められるのも、平和になった証拠よね」
「まだカタストロフだらけだけどね!」
 リグの冗談交じりな返しに、それもそっか、と納得したような頷きを見せ。
「ねえ、リグはどんな花火が好き?」
「私? うーん、そうね……線香花火かしら?」
「ホント!? じゃ、一緒ね!」
 両手を打ち合わせて喜ぶエリシャは、儚いながらも綺麗な所が好きだと言い。
「ね、下から見るのもいいけど、せっかくだから打ち上げられてみましょうよ」
「え、今から!? あ、うん、いいけどっ」
 まだ心の準備ができていない様子のリグの手を引き、エリシャは地上に設けられた花火の発射台へと向かう。
 妖怪たちの摩訶不思議な技術で作られた花火は、夜空に人を打ち上げても平気だと言うけれど。
「……ちょっと待って。その部品、よく分かんないけど外しちゃダメなやつよね?」
 何かに勘付いたリグの指摘に、悪戯好きの妖怪はしぶしぶと謎の部品をはめ直した。

 空中散歩を満喫したエリシャは、こちらへ向けて手を振る白い人影に気付く。
「あ、リグさん~。それにあなたは確かっ」
「エリシャよ! さっきそこでリグと会ったの」
 互いに挨拶をかわした後、リグがふとイロハの手にしているものに目を落とす。
「イロハさん、それもしかしてカキ氷?」
「そうです~、おひとついかがですか?」
 しゃこしゃこと手回しで削る、小気味のいい音。妖怪たちも今は一息入れてるようで、ブルーハワイにメロン、それぞれお好みのシロップをかけ舌鼓を打っている。
「エリシャさんもよかったらどうぞ~」
「いいの? ありがとう! じゃ、あたしからはこれ、あげるわ!」
 エリシャの差し出したのは、自宅で作ってきたというりんご飴。紅の濃い姫りんごにたっぷり絡めた飴は、暑気の最中でもぱりぱりとして香ばしい。
「お祭りといえばこれな気がして、気に入ったから作っちゃった!」
 妖怪も交えて話に花を咲かせる三人の上空、ひと際高く花火の上がる音がして。
「……また、来たいわね」
 空仰ぐエリシャの琥珀色の瞳の中、大輪の華が鮮やかに咲いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
リグさんとご一緒できれば

空にも地上にも、光を反射した海面にも
たくさんの華に溢れた世界がとっても綺麗
えへへ、僕もオラトリオだから
お花、お揃い

頭に咲く金蓮花を指差し
はにかむような微笑みを
それから水着の裾を揺らすようにくるくると
映し出される花の上を舞うように歩く

僕ね、夏って大好きなんだ
どの季節も好きだけど…初めてがいっぱいだったから

花火も、海も、蝉の鳴き声も、お祭りの喧騒も
檻の中にいた頃は知らなかった

ねぇねぇ、もう一つだけ追加してみてもいいかな
ふわりと空に舞い★花園を発動
優雅に舞い降るフラワーシャワーを

僕の魔力が切れるまで、だけど
三つの華に花の雨
素敵な時間をくれたリグさんや皆への
僕なりのお礼…かな



 先の二人と別れて浜辺を歩くリグに、再びかかる声。
「リグさん」
 振りむいた先に立つ栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、心なしか照れた顔でドレス状の水着に包まれていた。
「澪さん! ひさしぶりね、急流すべり……ううん、不思議の国にご案内して以来かしら?」
 しばらくぶりに会うというリグは、昨年を思い出しながら今の澪の装いに目を奪われる。
「水着、素敵ね! 絵画に出てくるヴィーナスみたい。それと、左手の……もしかしておめでとう、かしら?」
 思った事を包み隠さず伝えるのが、彼女の流儀らしく。不意に寄せられた言の葉に、澪の白い頬は瞬く間に染まった。

 空に咲く、花。大玉の連射は一旦止み、代わりに今は小手毬のような細やかな模様の花火が散発的に打ち上がる。
 地面にも、花。水面にも空の花火が映り、さざ波と合わさって生ける花模様を作りだす。
 陸、海、空。たくさんの華に溢れた浜辺の情景を瞳に映し、澪は自身の口元にも笑みの花を咲かせた。
「えへへ、僕もオラトリオだから」
 琥珀色の髪に咲く紅の金蓮花、折しも初夏が咲き初めの季節となる自身の花を指差して、はにかんだ微笑みを浮かべ。
「お花、お揃い」
 嬉しそうに告げる澪の真上で、また一つ花火が音を轟かせた。
 夜風はようやく冷たさを取り戻し、素足を優しく撫でて過ぎていく。水着の裾を風に揺らし、澪の足先が花に彩られた砂の上をくるくると舞いながら踏みしめる。
 真上から眺める者がいれば、もう一輪白花が咲いたと見間違えた事だろう。
「僕ね、夏って大好きなんだ」
 風に遊ばれる裾を手で抑え、目を閉じ翼を優しく揺らす。
「どの季節も好きだけど……初めてがいっぱいだったから」
 思い返す記憶はどれも、青年に外へ連れ出されてからのものだ。
 はじめて見る夜空の華、水平線の横たわる蒼海の情景。夏の到来を告げまわる蝉の鳴き声も、移り住んだ土地で教わりはじめて知った。
 行き交う人で賑わう、祭りの喧騒さえも――檻の中に囚われたままでは、一生見る事の叶わぬものばかりだ。
「ねぇねぇ、もう一つだけ追加してみてもいいかな」
「え、なになにー?」
 期待に満ちたリグの眼差しを受ければオラトリオの翼で宙に舞い上がり、澪は組んだ両の手に魔力と祈りを籠める。
 宙にぱっと開いたのは、無数の花。魔力の花は開花を早めたように咲き誇り、優雅で緩慢で慈しみに満ちた遅さでゆっくり地上へと舞い降りる。
 白鳥の羽根を思わすフラワーシャワーに居合わせた誰もが、妖怪たちまでもが手を止め心を奪われる。
(「この花を見せられるのは、僕の魔力が切れるまで、だけど」)
 元ある三つの華に添え、自身の花の雨を降らした意図は、澪なりの返し歌。
(「素敵な時間をくれたリグさんや皆へ、僕なりにお礼がしたいんだ」)
 見る者を虜にする花雨の後。好奇心に溢れた妖怪たちが、このまま綺麗に終わるなどと許してくれるはずもなく。
「ねえねえねえ、今のどうやったの!?」
「神通力? それともお花に化けてたのかしら!?」
 質問攻めに遭った澪が解放されるのはしばらく後になってのこと。けれど囲まれる彼の元には、満ち足りた笑顔の華がいつまでも咲き続けていたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月04日


挿絵イラスト