熱帯魚と夏色の宝石箱(作者 夜行薫
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#キマイラフューチャー  #戦後 


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#キマイラフューチャー
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#戦後


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●水泳ぐ夏色の宝石たち
 こぽり、こぽりと。
 生まれ落ちては空を目指して上へ上へと昇っていく、泡沫たち。
 頭上から降り注ぐのは、太陽と見紛ってしまうほどのキラキラとした眩い煌めきで。
 やっとの思いで水面へと辿り着き、外界へ触れられるのも一瞬のこと。水中で生まれ落ちた泡沫たちは、次の瞬間には消えてしまう運命にある。
 掻き消えてしまうその瞬間に恨めしそうな目で睨んでも、自分達の真下を泳ぐ「彼ら」はどこ吹く風だ。きっと、存在すら認識していないに違いない。
 それもそのはず。小さくも大きな水槽の主役は、決して自分たちでは無いのだから。
 ガラスやアクリル越しにこちらを覗く有象無象のお客たちなど、自分たちのことを「主役に酸素を送っているただの泡」としか思っていないに違いない。
 お客たちよ。自分達が目立たないのはこの水槽のレイアウトが悪いだけで、エアーカーテンやオブジェといった機材があれば、「ただの泡」が輝ける環境もあるんだぞ――水槽越しに客を睨み付ける泡たちの慟哭は、果たして誰かに届いたのだろうか。

 長いヒレを優雅に靡かせて泳ぐもの、美しい色彩で人々の視線を釘付けにするもの。珊瑚や水草の間からチロッと顔だけ覗かせているものに、小さいながらも一丸となって群れとしての洗練された動きを見せるもの。
 主役たちが自由気ままに泳ぎ抜けるその片隅で泡たちが人知れず悪態をついてたって、「主役」に夢中なお客の耳には入らなかったに違いない。
 吊るされたスポットライトもかくやの人工照明から零れ落ちる幾重もの光の筋は、主役たちが翻す半透明のカーテンを潜り抜け――そのまま水底に、極彩色の彩を差す。
 珊瑚、熱帯魚、水草にイソギンチャク。夏色の美しいものだけを搔き集めて、ぎゅっと一つの箱に閉じ込めたのだ。夢中にならない訳がない。
 そんな、美しい彩の溢れる水槽を見つめていた誰かが――「まるで、生きている宝石のようだ」と。そう、呟いた。

●熱帯魚と共に揺蕩う一時を
「『アクアリウム』と一口に言っても、海水魚に淡水魚、水草、マリンプランツにボトルアクアに……まあ、数えきれないほどには沢山あるんだよね」
 一口に「アクアリウム」と称されても、その実態は多先に渡る。
 意外と奥が深いアクアリウムの主な分類を指折り数えながら、影杜・梢(月下故蝶・f13905)は一枚のパンフレットを捲っていた。
 梢は猟兵達が集まったことに気付くと、名残惜しそうにしながらも、パンフレットから視線を上げる。
「まずは水着コンテストお疲れ様、かな?
 ……とはいっても、ボクらの夏はまだまだ始まったばかりだ。それで、早速だけど――今日は夏のお誘いをと思って。
 キマイラフューチャーに熱帯魚専門の水族館があるんだけど、良かったら一緒に行かないかい?」
 梢が手にしているパンフレットは、キマイラフューチャーの某所に存在する熱帯魚専門の水族館のものであったらしい。
 その水族館では現在、「観賞魚フェス」が開催されており、普段から色鮮やかな水族館内が、より一層の極彩色で溢れ返っているのだとか。
「熱帯魚と言えば、カクレクマノミやディスカス、グッピー、エンゼルフィッシュ辺りが定番かな? 定番な彼らも勿論、少しマニアックな品種も展示されているみたいだよ。ワクワクするね」
 流木に水草、オブジェ。熟考の上に生み出された水槽のレイアウトと、その水槽内を思いのままに泳ぐ熱帯魚たち。隅々まで計算し尽くされた上で展示される水槽は、それ自体がまるで一つの芸術作品のように美しい。
 熱帯魚以外にも、水草や流木、珊瑚なんかを主役に据えた水槽群もあるらしく――眺めているだけで、あっという間に時間が経ってしまうだろう。
「アクアリウムと言えば、『水換えが面倒』ってよく聞くけど、最近はそうでもないんだよね。水替えが手軽に出来るような製品が色々と安価に買えるようになってきているし」
 この機会に、興味のある人はどう? アクアリウムを始めてみるのも、悪くないんじゃない?
 さらりと仲間に引き入れようとしながらも、梢は猟兵達に水族館のパンフレットを手渡していく。
「でもまあ、これだけ『夏と言えば熱帯魚!』って推していたら、解釈不一致な怪人が乗り込んできそうな気もするのだけど……。その時はその時かな。サクッと倒してしまえば、万事解決だね」
 キマイラフューチャーのお祭りに怪人たちが乗り込んでくるのも、ある意味日常風景? なのだから。
 その時はサクッ倒してしまえば良いから、まずは熱帯魚を楽しもうと。
 とても熱帯魚が待ち遠しいらしい。そう告げる梢の表情は、明るい笑顔に満ちていた。


夜行薫

 お世話になっております。夜行薫です。
 海水水槽には憧れを覚えますが、立ち上げや機材設置、その後の維持やら何やらを考えるとさすがに手が出せないです。
 今回の舞台はキマイラフューチャー。「観賞魚フェス」が開催されている熱帯魚専門の水族館へのお誘いを。
 迫力のある海獣のショーもイワシの泳ぐ巨大水槽もありませんが、小さな宝石箱たちは他の追随を許さないほどに揃っています。

●受付期間について
 オープニング公開後に、MSページとタグでお知らせします。
 各章、断章追加します。
 ※ありがたくも多くの方にご参加いただいた場合は、再送が発生する可能性がございます。

●1章:日常『うみあそび!』
 ・出来ること。
 【1】水族館を楽しむ。
 大きさや形、レイアウトも唯一無二な水槽がずらーっと並んでいるので、自由に水族館内を見て回ることができます。
 「南国っぽい水槽を巡る」「古代魚を見る」等、水槽の傾向や魚の種類をご指定いただくことも勿論可能です。
 一般的に「熱帯魚や観賞魚(と分類される品種)」ならば、海水魚、汽水魚、淡水魚問わず割と何でもいます。(※メダカや金魚、ガーパイク・アロワナ等の古代魚も)
 餌やり体験もできます。

 【2】具現化した観賞魚たちと泳ぐ。
 水着に着替えて、立体映像として具現化した観賞魚たちと、レイアウトの施された大きな水槽(生物は入っていません)で泳ぐことが出来ます。
 立体映像なので、大きさや数もお好みで自由自在に。
 海水魚&淡水魚等、現実世界では無理な組み合わせも可能です。それに触れ合えます。とても羨ましいです。

 【3】カフェでまったり。
 水族館内のアクアリウム・カフェで過ごします。カフェ内にもやっぱり水槽があります。
 熱帯魚や夏をモチーフにした軽食や冷たいドリンクが揃っています。
 ※水族館内全域、水着で出入り可能です。

●第2章:集団戦『夏の思い出トリオ』
 水族館及びフェスを楽しんでいると、怪人たちが唐突に「夏と言えば、熱帯魚じゃなくてオレたちだろ!!?」と、雑に乗り込んでくるので思いのままに戦って倒しちゃってください。
 ※一般ピーポーであるキマイラ等の住民たちはワイワイはしゃいだり動画撮ったりしつつ賑やかに逃げていくので、戦闘に集中するだけで大丈夫です。
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第1章 日常 『うみあそび!』

POWぼうけんだー!素敵なものを探すぞー!
SPDおあそびだー!魚と泳ぐよ!
WIZのーんびり。きれいなところでお喋り!
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●蒼に彩差す
 水の中に宝石の雨を降らせたのなら、きっと、目の前のような光景が広がるのだろう。
 深い蒼に染められた水族館の壁や床を背景に、ずらりと数えきれないほど並べられているのは、色も形も大きさも様々な、唯一無二の宝石箱たちだった。
 深蒼の中でも一等人目を惹くのは、色鮮やかな海水魚が行き交う水槽で。
 リンリンと風鈴の音につられるようにしてふらりと「和」の感じられる一角へと足を運べば、睡蓮鉢や金魚鉢に入った金魚やメダカが出迎えてくれた。浮草の陰に見え隠れする彼らは、「見ーつけた」と告げられるその瞬間を待ち侘びているかのよう。
 流木と葉の大きな水草をたくさん。緑と茶色に染まりきった、亜熱帯を彷彿とさせる水槽を泳いでいくのは、メタリックな輝きをその身に宿した熱帯魚たち。
 水槽の大きさの割に、中には流木が少しだけ。それでも不思議と寂しさを感じないのは、ぬっと大きな古代魚たちが我が物顔で顔を覗かせているからだろう。

 設置されたばかりだという、プールよりも大きな2つの水槽に、本物の魚は1匹も入っていない。
 海水水槽となる一方にはサンゴやイソギンチャクがゆらゆらとその手を揺らめかせているばかりで、淡水水槽となるもう一方にも流木や水草が茂っているだけだ。
 観賞魚が居ない代わりに、電子の海から遊びに来た――立体映像の魚たちが、賑やかに彩りを添えている。次元の壁すらも飛び越えてやってきた彼らと戯れる機会は、今を逃したらもう無いだろう。
 好きなや気に入った子を、好きなだけ。水着姿で一緒に泳ぐことだって可能なのだから。

 歩き疲れたのなら、館内のアクアリウム・カフェで一休み――と、こんなところにまで、熱帯魚たちが遊びに来てしまっている。
 テーブルやカウンターの端に置かれた小型水槽に泳ぐのは、ベタやメダカ、アカヒレといった魚たちだった。
 冷たいフロートやアイスクリーム、パフェにかき氷といったカフェのメニューすら熱帯魚をモチーフにしているのは……気のせいだと思いたい。

 何はともあれ熱帯魚と共に過ごす夏色の一時は始まったばかりだ。
 今年の夏を彩る、色鮮やかな想い出を君と共に。
椚・一叶
【2】
トリス(f27131)と
食べれなくても、どんな味がするのか想像しながら
サカナを見るのも面白い

エンゼルフィッシュ、髭なのかヒレなのか…長いな
どれも鮮やかで、食べる気なくなったが
キイロハギの顔はなんか、気に入った
相手を舐めくさってる感じが良い

儂の人生初水着、どうだ
これでたくさん泳ぎに行ける
トリスの水着、去年とはまた違う雰囲気
深い青と白がよく似合ってる
細かい装飾も、見事
まるで、本当を誤魔化したい言い草
どういう意味かは、分からないが
嫌がらなければ、素早くトリスのフード被せてやる
カカッ、被るとそんな感じか
そういえばフード系の服、多い
貴様はそういうのが趣味か
こんなに楽しいのなら、造りものも悪くない


鳥栖・エンデ
【2】
友人のイチカ君(f14515)と
釣ったり食べるの以外な魚って
興味なさそうかとも思ったけども
せっかく水着だし泳ご〜

熱帯魚ならエンゼルフィッシュが好きかな
矢印みたいにゆく先を指し示すようで
イチカ君の視点も面白いなぁと
群れを横目にのんびり遊泳

そういえば初水着なんだね?
こういうのが趣味なのか〜ふむふむ
風神雷神みたいな波模様とか
シンプル格好いいのが良いよねぇ
ボクのは装飾過多にしがちで
着飾って目を惹かせたら本当のところなんて
誰にもわからなそうじゃない?
猫耳フード被せたらトラじゃなくなるよぅ

ふふ〜なんてね尻尾を揺らしながら
共に泳ぐ派手色な熱帯魚たちも
まぁ、みんな造りものだけど
キミが楽しいなら良いか 



 黄色に橙、赤色に桃色。もし魚にも完熟と言う概念が存在していたのなら、色も大きさも丁度良い目の前の彼らは、きっと「食べ頃」だったに違いない。
それほどまでに「美味しそう」な魚たちが、視界の右端から左端に向かって堂々と横切っていく姿が見えた。
 群れを成して泳いでいるその姿は、水底が微妙に透けて見えていることを除けば本物と見紛ってしまう程で。
 大きな養殖用の生け簀――否、水槽を泳ぐ彼らの味を想像するだけで、自然と涎も生まれてしまう。
 椚・一叶(未熟者・f14515)にとっての「魚」と言えば、釣るか食べるかの二択だ。目の前の魚たちは食べられずとも、どんな味か想像するだけでも十分に面白い。
 じいっと食い入るように水槽を覗き込んでいる一叶の姿を、鳥栖・エンデ(悪喰・f27131)は少々意外そうな視線で見つめていた。
(「釣ったり食べるの以外な魚って、興味なさそうかとも思ったけども」)
 観賞用の魚に対しても、予想外に興味を持っているようで。一叶の様子に、エンデはそっと表情を緩める。
 観賞魚にも思いのほかに興味を示して――いや、食べることへの興味が上限突破したお陰で、食べずとも魚の味を想像できる域に達したと表現するべきなのだろうか。
 観賞魚に夢中なのか、観賞魚の味を想像することに夢中なのか。真実は一叶のみぞ知る。
 こうして眺めるのも一興だが、折角目の前にプール代わりの水槽があるのだ。それに、今は水着姿でもある。
「せっかく水着だし泳ご〜」
「ああ、そうだな」
 泳がなくては勿体ないと、夜空よりも澄んだ青色に染まる水着の裾をはためかせながら、まずはエンデが飛び込んだ。
 エンデに続くような形で一叶も水中へと身体を滑り込ませれば、一叶の水着に描かれた金と黒の波模様が水中に溶け込んでいく。
「熱帯魚ならエンゼルフィッシュが好きかな」
 ふわり。エンデの呟きに、水底に新たな影が差し込んだ。
 「エンジェルフィッシュと言えば」と問われれば、多くの人が思い浮かべるだろう透明感のある涼しげな黒と黄色がかった白い縦縞の模様を持つ個体を始めとして。黒と白のマーブル模様が可愛らしいエンゼルに、天使のような白銀を纏うもの、闇夜が魚の形を保って泳ぎ出したかのような真っ黒なものまで。
 縦に長い特徴的な三角形のシルエットは、道案内をするように一方向に向かって泳ぎ始めた。
 まるで矢印がちょこまかと可愛らしく動き回っているようで。矢印みたいにゆく先を指し示すようなその光景が、エンデは何となく好きだった。
「エンゼルフィッシュ、髭なのかヒレなのか……長いな」
 髭なのか、ヒレなのか。水中に靡くヒラヒラとしたそれが気になって、一叶は誘われるままに手を伸ばすが、指先を掠めたところで逃げられてしまう。
 どうやらヒラヒラはエンゼルフィッシュご自慢のモノのようで、そう簡単に触らせてはくれないらしい。
 自分を取り囲む彩り豊かで小さな存在を前に、いつの間にか食べる気も無くなってしまっていた。
「イチカ君の視点も面白いなぁ」
 自然と人目を引いてしまう、エンゼルフィッシュの長ーいハラビレ。それが髭かヒレなのかなんて考えたことが無かったと、エンデは呟く。
 2人だからこそ見つけられる、新しいものの味方や考え方。
 特徴的なハラビレを自慢するようにグルグルと2人を囲みながら泳ぐエンゼルフィッシュの群れを横目に眺めつつ、また一つ新しい視点が見つけられたことに顔を綻ばせながら、エンデはのんびりと水を掻いて泳いでいく。
「キイロハギの顔はなんか、気に入った」
 相手を舐めくさってる感じが良い。
 水中に沈んだまま声無く笑いを零せば、一叶の口から生まれた泡が幾つか水面を目指して浮かび上がって。
 色鮮やかな魚の中でも一等目を引く原色に近い黄色に、スッと尖った口元が独特の雰囲気を作り出している。
 真正面から自分よりも何十倍も大きい一叶に相対しても、決して引く姿勢をみせない目の前のキイロハギ。
 舐めくさってるような表情に違わぬその度胸に、ますます良いと一叶はキイロハギにそっと顔を近づけた。
「そういえば初水着なんだね?」
「そうだ。儂の人生初水着、どうだ」
 「そういえば」でエンデには気が付くことが一つ。
 一叶は今年が初めての水着であったはずだ。
 気付いたことをエンデがそのまま言葉として零せば、「よくぞ気付いた」と言わんばかりに一叶は胸を張って。
 プライドが刺激されたのか更にずいっと近づいてくるキイロハギに、グルグルと相変わらずハラビレをご自慢中のエンゼルフィッシュのトルネード。
 自己主張の激しい魚たちに囲まれてもなお、自慢の水着を着こんだ一叶の存在が霞むことは少しも無い。
 これでたくさん泳ぎに行けるとご満悦な一叶。水中が得意分野の魚たちにも負けない程、沢山泳ぐことができるだろう。
「こういうのが趣味なのか〜。ふむふむ」
 一叶の身を彩る水着をぐるりと見渡したエンデは、なるほどと首を縦に振る。
「風神雷神みたいな波模様とか、シンプル格好いいのが良いよねぇ」
 シンプルながらも、視線が思わず釘付けになってしまうほど格好良い。落ち着いた深い色もまた、一叶の雰囲気に良く似合っていた。
「トリスの水着、去年とはまた違う雰囲気。深い青と白がよく似合ってる。細かい装飾も、見事」
 エンデの去年の水着――大空駆ける踊り子のような軽やかなイメージが一転、今年の水着は空の青と雲の白を宿した落ち着いた雰囲気で、何処までも飛んでいけそうな様相だ。
「ボクのは装飾過多にしがちで、着飾って目を惹かせたら本当のところなんて、誰にもわからなそうじゃない?」
 一叶の言葉に何か思うことがあったのか、エンデは「そうかな」と少しだけ首を傾げて。
 身に纏う綺麗な装飾品が、エンデの「本当」を隠してしまっている様で。それを彼自身も望んでいるようで。
(「まるで、本当を誤魔化したい言い草。どういう意味かは、分からないが」)
 彼の真意は分からないが、隠してしまいたいのなら隠せば良い。
 嫌がる素振りを見せなかったので、一叶は素早い手つきで上着のフードを掴むと、そのままエンデにフードを被せてしまうのだった。
「カカッ、被るとそんな感じか」
「猫耳フード被せたらトラじゃなくなるよぅ」
 勢い余って、被り過ぎた猫耳フード。フードの下からちらちらと琥珀色の双眸が見え隠れしている。
 「トラじゃなくなる」と冗談めかして言うエンデに、一叶もまた「トラもネコも同じネコ科、そう変わらん」とクツクツと笑みを零した。
「そういえばフード系の服、多い。貴様はそういうのが趣味か」
 エンデと言えば、普段着も冬服もフード系を着いている。そして、水着ですら例外ではなくなくて。
 共通点を見つけてやったとばかりの何処かの得意げな一叶の表情に、ゆるりと揺れるエンデの尻尾。それが答えの代わりだった。
(「こんなに楽しいのなら、造りものも悪くない」)
 楽しそうに笑う2人を囲む、色とりどりの観賞魚たち。食べられはしないけれど、楽しいのならそれで良い。
(「まぁ、みんな造りものだけど――キミが楽しいなら良いか」)
 得意げな表情のまま自分を見つめる一叶につられる様にして、エンデもまた笑みを深めるのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

夜鳥・藍
SPD
【2】具現化した観賞魚たちと泳ぐ。
水族館もカフェも気になるけど、でも水に漂う方が楽しそう。

今年水着は準備できたのでさっそく。さすがにベールは外しておきます。
メダカや金魚といった様々な小さめの魚が泳ぐ水槽?プール?を選んで。
一緒に泳ぐというより水中を漂うようにゆらゆらと。
本物ではないのだから気を使う必要はないかもしれないけど、でも眺める方が好きなの。
手のひらに収まるお魚さん達が、群れなすように泳ぐさまは動く天の川のよう。
……そう思ってしまうのは気のせいかしらね。
でも本物の宙をこうして漂えたらいいわね。



 軽食を楽しむのも良し。水族館を巡るのだってきっと楽しい。
 館内を少し歩いただけで、あちこちから伸びる誘いの手。どれも気になって、そのどれもが抗い難い。伸ばされた手のどれをとろうかなんて、少し考えただけで答えが出る訳では無いのだけれど。
(「水族館もカフェも気になるけど、でも水に漂う方が楽しそう」)
 少し立ち止まってうーんと考え抜いた結果、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)が選んだのは、本物そっくりの立体映像である観賞魚と一緒に水の中を漂う一時だった。
 水族館やカフェを楽しむのは、観賞魚と共に楽しんでからでも遅くはない。水に揺蕩う一時を選んだ藍は、大きな水槽の方へと歩み始める。
 藍が今身に纏っているのは、涼やかな寒色が美しい中華風の水着だ。今年はせっかく素敵な水着の準備ができたのだから、と。
 泳ぐ際に邪魔になってしまう繊細なレースのベールだけを外し、水槽を上から覗き込む。ぐっと顔だけを乗り出すようにして下へと視線を落せば、水中を元気に泳いでいく観賞魚たちの姿が見えた。
 藍が選んだのは、メダカや金魚と言った小さめの観賞魚が泳ぐ一角だ。
 松の葉のような柔らかい浮草の間から、メダカたちがひょこひょこと頭を覗かせたり引っ込めたりしている仕草が愛らしい。
 淡いメタリックブルーの輝きを宿したメダカの群れが泳ぐ姿は、まるで小さな流星群のようで。
 命の無い立体映像とはいえど、恐らく行動は本物に準じているはず。小さな観賞魚たちを驚かせないようにと、藍は音や衝撃を与えないように、そっと水の中にその身体を潜り込ませた。
(「本物ではないのだから気を使う必要はないかもしれないけど、でも眺める方が好きなの」)
 そのままゆっくり身体を水中へと沈めていけば、好奇心旺盛な金魚たちが一匹また一匹と藍の方へと寄ってくる。
 真っ先に藍の傍に辿り着いたのは、シャープな身体のスラリとした金魚たちだった。大きく身体を左右に動かして、元気いっぱいに存在をアピールしている。
 それから少し遅れて、ふわふわとした長いヒレを持つ丸い体型のおっとりとした金魚たちが。
 最後に辿り着いた背びれの無い小番のような身体をした金魚は――止まりきれなかったのか、勢い余ってふわっと藍へと突っ込む形になってしまった。藍はクスリと微笑みながら、おっちょこちょいな金魚を優しく受け止める。
(「手のひらに収まるお魚さん達が、群れなすように泳ぐさまは動く天の川のよう。……そう思ってしまうのは気のせいかしらね」)
 泳ぐというよりは、水の流れに身を任せるようにして、ゆらゆらと。小さな魚たちと一緒になって、こうしてのんびり水中を漂うのも悪くない。
 意外と深さのある水槽、上を見上げてみれば、白に黒、青に黄に――様々な色のメダカたちが数十匹ほどの群れとなり、身体を揺らしながら泳ぎ去っていくのが見えた。
 藍の足元では、悪戯好きな金魚たちが植えてある水草を引っこ抜こうと躍起になっている――立体映像である手前、本物の水草には干渉できなくてすり抜けてしまっているのだけれども。すり抜けてしまってもめげずにリトライしている姿が可愛らしい。
(「でも本物の宙をこうして漂えたらいいわね」)
 上に下に、ぐるりと自分を囲むようにして。思いのままに泳ぐメダカや金魚たちは、一匹一匹が星のように輝いている。
 藍を包み込むふわふわとした水中の感覚も、まるで宙を漂っているかのよう。
 いつか、こんな風に本物の宙を漂える日が来たら良いと。
 近寄ってきたメダカに指先を差し出しながら、藍はふわりと微笑むのだ。
大成功 🔵🔵🔵

ベルンハルト・マッケンゼン
◆【炎桜】
【2】具現化した観賞魚たちと泳ぐ。

恋人の真琴と水着姿で参加。
私はハイフェソブリコン属の群泳を設定。
レッドファントム・ルブラやダイヤモンド・ペレズテトラ辺りを。

水族館も熱帯魚も大好きだが、心を奪われるのは彼女の魅力的すぎる水着姿。
女性らしい豊かな身体と、引き締まった長い手足。俊敏な泳ぎに思わず見とれる。

……あぁ、想い人の艶姿を眺めると火照ってきた、な。クールダウンしよう。
呼吸を整え、赤とピンクに輝く宝石たちの中に潜る。

彼女が泳いできたら、そっと抱き寄せ唇にキス。お互い抱き合ったまま、愛の甘い陶酔に溺れる。

……名残惜しいが、体が冷える前に上がろうか、真琴。貴女の美しい水着姿、大好きだよ。


新海・真琴
◆【炎桜】
【2】具現化した観賞魚たちと泳ぐ。

恋人のベルンハルトと一緒に水着姿で!
ふふふ、水着でデートなんて初めてだね。

ボクはミノカサゴとベタ!現実世界じゃ絶対に無理な組み合わせだし、ミノカサゴは可愛いけど危ないもんね。

(背泳ぎしてみたり、仰向けにそーっと浮いてみたりしつつ)
お魚も可愛いし、泳ぐのって気持ちいいけど……その。
ベルンハルト、その、結構逞しかったんだな、って。
(ミノカサゴと顔を見合わせて、彼が具現化したテトラを指でツンとして)

ボクを待つ彼の元へ飛び込むように泳いで向かうよ。
唇重ねて、抱き合ったまま暫し流れに身を任せて。

そろそろ休憩、かな?
ボクも、君の男らしい姿に惚れ直したかもっ!



 それはまるで、水中に突如として紅玉の雨が降り注ぎ始めたかのような光景だった。
 深い緑色に染まった水草たちは天井の人工照明を一身に浴び、上へ上へと大きくその葉を伸ばしている。
 複雑な線を描いて絡まり合う流木に活着した水生コケからは細かな気泡が生み出され、その上を真っ赤なシュリンプたちが弾むように歩いていた。シュリンプが跳ねるたび、ふわふわとした葉の先端に抱かれていた、真珠のような気泡がふわりと空を目指して昇っていく。
 南米の川を連想させる、深い緑色に染め抜かれた水槽を背景に――緩やかな水の流れに逆らって、悠々とヒレを広げて泳ぐ熱帯魚の群れの姿があった。
 南国の夕陽に染め抜かれた海を思わせるような色彩を持ち、群れの先頭を突っ切って泳いでいるのはレッドファントム・ルブラだ。
 同じ方向に泳ぎつつも、同族に対して多少思うところはあるらしい。時折思い出したかのように、身体を真っ赤に輝かせながらヒレを大きく広げ合って、威嚇しあっている姿が見られた。
 睨み合っている2匹のレッドファントム・ルブラの真横を透き通ったピンクダイヤモンド――ダイヤモンド・ペレズテトラの群れが、素知らぬ顔をして通り過ぎていく。
 宝石のような煌めきを宿す熱帯魚が泳ぐその様は、とても幻想的な光景で。
 2種類の熱帯魚は、どちらも自分が生み出したもの。しかし、ベルンハルト・マッケンゼン(黄昏の傭兵・f01418)の視線は先ほどからずっと、彼が一番美しいと思う存在に釘付けだった。
(「水族館も熱帯魚も大好きだが……」)
 ベルンハルトが何より一番心惹かれるのは、恋人である新海・真琴(銀爛血風・f22438)の水着姿だった。
 女性らしく豊かな身体と、オパールのように滑らかな肌。スラリとした長い手足は引き締まっていて、自然と目が奪われてしまう。唯でさえ魅力的な彼女が、良い感じに水に濡れることによって――それはもう、表現し難いほどの衝撃をベルンハルトに与えているのだ。
「ふふふ、水着でデートなんて初めてだね」
 内心で戦争状態のベルンハルトの心境を知ってか知らずか。頬を薔薇色に染めて恋人との初めての水着デートを無邪気に喜ぶ真琴。
 ふにゃりと溶けきった柔らかな微笑みは、ベルンハルトとの水着デートを心から楽しみにしていたからなのだろう。相手が他でもないベルンハルトだからこそ見せられる表情だった。
「ボクはミノカサゴとベタ! 現実世界じゃ絶対に無理な組み合わせだし、ミノカサゴは可愛いけど危ないもんね」
 美しくも俊敏なフォームで泳ぎを披露する真琴が遊泳のお供に選んだのは、ミノカサゴとベタだ。
 蝶のように広げられた大きなヒレと身体に浮かぶ赤と白のコントラストが美しいミノカサゴに、クラウンやバラの花びらのように広がるヒレを靡かせながら、水中をゆったりと移動し始める何匹かのベタ。
 パシャリと水を跳ねあげつつ真琴がゆるやかな速度で背泳ぎをすれば、ミノカサゴも真琴の横にくっついてのんびりと着いていく。
 ひとしきりミノカサゴとの遊泳を楽しんだところで仰向けになってぷかーっと浮いてみれば、後からベタたちが真琴とミノカサゴに追いついた。
 真琴に近づきたいベタたちだったが、みょんみょん飛び出たミノカサゴの尖ったヒレがどうにも敵に見えるらしく……ヒレをこれでもかという程全開にして、ついでにエラも大きく広げて必死になって威嚇している。
 ベタの行動に苦笑しながらも、真琴はそっとミノカサゴをベタとは反対側へと導いた。せっかくだから、皆仲良く泳ぎたい。
「お魚も可愛いし、泳ぐのって気持ちいいけど……その」
 ミノカサゴもベタも可愛らしいけれど、やはり真琴も、一番気になるのはベルンハルトのこと。
 先程から熱に浮かされたようにずっと自分を見つめている青の瞳。真琴の視線は導かれるように下へ下へと下がっていって、ベルンハルトのがっしりとした肩や、精悍な肉体が目に焼き付いて――。
「ベルンハルト、その、結構逞しかったんだな、って」
 綺麗に割れた腹筋を見つめているうちに、頬に熱いくらいに熱が集まるのを感じてしまったから。
 慌ててベルンハルトの身体から視線を逸らした真琴はミノカサゴと顔を見合わせて、気恥ずかしさを誤魔化すように、彼が具現化させた宝石のようなテトラたちをツンツンと突いてみた。
 近くで見てみると、一層の美しさに惹かれてしまう。テトラとの戯れに、真琴の顔に集中していた熱も漸く引き始めた――ところで、想定外の爆弾が投げ込まれる。
「……あぁ、想い人の艶姿を眺めると火照ってきた、な。クールダウンしよう」
 ミノカサゴやベタと愛らしく戯れていた真琴の姿と言えば、お伽話に出てくる人魚姫のようで。想い人の艶姿も行き過ぎると毒になるのだと、ベルンハルトは身をもって体感してしまった。
 ゆっくりと深呼吸を繰り返すこと数度。どうにかして平静を保つために、過去の思い出したくもない出来事を数えて漸く体の火照りが収まってきた。
 呼吸を整え、自らを囲む赤とピンク色の可愛らしい宝石たちの中に潜ったベルンハルトの視界の端で――他ならぬ彼自身の言葉によって再び意識してしまったらしい。顔を熟れた果実のように真っ赤にさせた真琴が、恨めしそうな視線でベルンハルトの肉体を見つめていた。
「さっきの言葉は色々とズルいんじゃないかな?」
 宝石に抱かれたまま、優しく笑んで真琴を待つベルンハルト。真琴に向かって更ににっこりと笑みを深めれば、それだけで彼女は釣れてしまう。
 一刻も早く、愛しい彼に触れたかったから。自分を待つベルンハルトの胸元へ、真琴は飛び込むように泳いで向かった。
「ほら、捕まえた」
 胸元へ飛び込んだ真琴を逃がさないように、がっしりとした両腕で抱きしめて。真琴もまた、ベルンハルトの腰へと華奢な両腕を絡ませた。
 見つめ合えば、合図のようにそうっと伏せられる長いまつ毛に彩られた彼女の瞼。ベルンハルトがゆっくりと彼女の唇を食めば、唇を通して普段よりも温かい彼女の体温が伝わってくる。
 角度を変えて啄ばみあうこと数度。今この時ばかりは、ふわりと昇っていく泡沫も、周囲を泳ぐ美しい宝石たちの姿も二人の視界には映らない。
 そうしてベルンハルトと真琴は、抱き合ったまま暫しの間ゆっくりと水の流れに身を任せていたのだった。
「そろそろ休憩、かな?」
「そうだな。……名残惜しいが、体が冷える前に上がろうか、真琴。貴女の美しい水着姿、大好きだよ」
「ボクも、君の男らしい姿に惚れ直したかもっ!」
 何時までもこうしていたいが、そろそろ区切りとつけないと水の中なのに逆上せてしまうという不思議な体験をしてしまいそうだったから。
 名残り惜しそうにするりと腕を解いて、真琴とベルンハルトは水槽の端へと泳ぎ出す。
 普段とはまた違った恋人の新しい一面に、惚れ直したとお互いにはにかみ合いながら。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

アリスティア・クラティス
【正義】◆

今年は可愛い水着を用意出来たから、本当にワクワクするわねっ!クロウもとても似合っていてよっ?
目指すは『うぱるぱ』よ! …?『うぱるぱ』は『うぱるぱ』
子供用の絵本で見たわ。それがとても可愛らしく―(ウーパールーパーの水槽前)
「…可愛らしくないではないっ!!」水槽前で膝から打ち崩れるわっ!

魚の餌やりは憧れていたの!でもどうやるのか全く分からない!!(完全ゼロ知識
飼育員さんに教えてもらい食べる姿が見れれば『すげー!』と言わんばかりに全力で感動するわっ!

こうなると一緒に泳いでみたくなる、と立体映像の水槽へ!
色とりどりの綺麗な魚群と一緒に
…ええ、本当に素敵…っ!

最後に一枚、クロウとパシャリっ!


杜鬼・クロウ
【正義】◆
去年の水着着用

アリスティアの水着、ウェディングドレスっぽい水着だよなァ
似合ってるぜ(ウインク
うぱるぱ?
聞いたコトねェな、見るの楽しみ…ってどした!?
アレはアレで…可愛げが(夢が崩れちまったか

落ち込む彼女を宥め
イルカの餌やり体験へ

俺も初めてなンだわ
手食われねェかねェ?

凄ェ、と声ハモらせ
楽しげに飼育員に教わりながら餌やり
イルカの頭撫でる
沢山の水槽見てたら自分も観賞魚と泳ぎたくなる

折角、水着着てるし俺達も泳いでみようぜ!

珊瑚礁がある海をアロワナ等の古代魚と色鮮やかな海水魚達の群れが泳ぐ
幻想的な空間
エイに乗り泳ぐ

ココなら携帯でも写真撮れそうだな
アリスティア、一緒に写ってくれ

思い出がまた一つ



 深海のような水族館の壁に踊るのは、繊細なレースの陰だった。
 持ち主の胸の高鳴りをそのまま映し出したかのように、ふわりふわりと跳ねる幾重にも重ねられた白の波。
「今年は可愛い水着を用意出来たから、本当にワクワクするわねっ! ねえ、クロウ――あら?」
 ふわふわっと真っ白なレースと水着や持ち主自身を彩る花々を躍らせながら、くるりとアリスティア・クラティス(歪な舞台で希望を謳う踊り子・f27405)が後ろを振り向けば――すぐ後ろを歩いていたはずの同行者の姿が、掻き消えてしまっている。
 周囲をくまなく見渡して彼の姿を探せば、かなり後ろを歩いていた。気が付かぬうちに足早になり、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)を置き去りにしてここまで来てしまったらしい。
「アリスティアの水着、ウェディングドレスっぽい水着だよなァ」
 その場で待つこと少しの間。ひらひらを翻しながら一人で足早に歩んでいたアリスティアの姿に苦笑しながら、クロウがアリスティアに追いついた。
 アリスティアが足早になっていることにはかなり早い段階で気づいていたが――揺れたり回転したりと、彼女の行動が面白かったものだから、声をかけずにそのままにさせておいたのだ。
「こんなに距離が開くまで気が付かねェとは思わなかったけどな。その水着、似合ってるぜ」
「クロウもとても似合っていてよっ?」
 バッチリと眩いウインクをアリスティアに送るクロウの姿は、それだけで雑誌の表紙を飾れてしまいそうなほど。
 蒼のような鉄色のような、繊細な色を纏う水着は、膝辺りでひらりと魚の尾ひれのように広がっていて。
 クロウが身体を動かす度にチラリと覗くのは、波色を宿す裏地だった。そして、絶妙に色が映り変わる青で染め抜かれた装飾品。まるで、七つの大海を統べる人魚の王もかくやの風貌だ。
「で、アリスティアは何処を目指しているんだ?」
「目指すは『うぱるぱ』よ!」
「うぱるぱ?」
 アリスティアが目指していたのは「うぱるぱ」こと、「ウーパールーパー」だ。
 淡い桃色の身体に、短い手足。くるんとした大きくてまん丸な瞳。とっても愛らしいその姿を子供用の絵本で見た時から、アリスティアの心はウーパールーパーに奪われていた。
「……? 『うぱるぱ』は『うぱるぱ』なのよ?」
「聞いたコトねェな、見るの楽しみ……」
 ハイ・テンションなアリスティアとは正反対に、クロウはきょとんとした表情のまま、ゆっくりと首を傾げている。「ウーパールーパー」という生物がいるということを、今アリスティアの口から初めて聞いたのだから。
「子供用の絵本で見たわ。それがとても可愛らしく――」
 軽く弾みながら辿り着いた先は、恋い焦がれていたウーパールーパーの水槽だ。
 キラキラとした表情で水中に沈んだ土管を覗き込んだアリスティアは、そのままの体勢で固まって――。
 重なり合う視線と視線。不自然に途切れた言葉。スッと一瞬で消え去る瞳の煌めき。たっぷりの余韻の後、我を取り戻したアリスティアは膝から崩れ落ちる。
「ってどした!?」
「……可愛らしくないではないっ!!」
 いきなり崩れ落ちたアリスティアに、クロウが慌てて駆け寄った。
 気分が悪くなったのかと不安になったが、アリスティアの様子を見るにそうではないらしい。
 彼女の無事にホッと息を吐きつつ……では何が原因かと、アリスティアの指差す方向を見れば、ぼげーっと土管から顔覗かせているウーパールーパー(現実)と目が合った。
 とても小さな黒目に、半開きの口。ぷかーっと水に浮かぶ能天気なアホ面。大きな顔を縁取るのは、ライオンの鬣のようなピンク色のもさもさ。筋肉か何かか、身体には畝のような細かい凹凸が浮かんでいる……。
「アレはアレで……可愛げが、」
 可愛げが――あるとは言いきれない。少なくとも、十人が十人「可愛い!」と言い切るような容姿ではない。
「……」
「餌をやってみたら、可愛いと思えるんじゃないか?」
 物は試しだと、水槽の傍に置かれていた「餌やり体験!」と書かれた引き出しを開け、クロウが水槽の上から餌を与えてみれば――……。
 先ほどまでの平和ボケした姿は何処へやら、餌の匂いに気付くなり、俊敏な動作で土管から顔を出すと、ハエを丸呑みにするカエルの如くそのままバクっと大口を開けて豪快に餌を吸い込んでいく。
「……凄ェ食べっぷり」
「……やっぱり、可愛らしくないではないの!!? とっても!!」
 もっとこう、ゆっくり近づいて少しずつハムハムするかと思っていましたとも。アリスティアの淡い希望も、一瞬にして打ち砕かれた。なんせ、丸呑みなのだ。
(「夢が崩れちまったか」)
 真っ白に燃えつけたアリスティアをどうにか宥めつつ、クロウが案内するのはイルカの水槽だ。
 夢打ち砕かれた彼女が、これで復活すれば良いと考えつつ。
「魚の餌やりは憧れていたの! でもどうやるのか全く分からない!!」
 燃え尽きるのも一瞬であれば、復活も同じくらい早かった。自分よりも小さなコビトイルカに、すっかりメロメロな様である。
「俺も初めてなンだわ。手食われねェかねェ?」
 キュイキュイと鳴きながら身体を左右に揺らしてすり寄ってくるちんまいイルカの頭をそっと撫でれば、「もっと撫でろ」とばかりにクロウの手に頭がグイグイ押し付けられる。
 片手はイルカを撫でつつも、視線はしっかり餌やりの仕方を説明する飼育員の方を向いていた。それに気付いていたのか、「構え」と飛ばされる水飛沫。
「分かったから、ちょっと待ってろ」
 悪戯っ子の身体を軽くペシペシしながら、目の前で披露されるのは、すっかり手馴れた飼育員による餌やりだった。
 魚の切り身が飼育員の手を離れれば、すかさずイルカがそれをキャッチする。
「「すげー!」」
 洗練された無駄のない動きに、ハモる感嘆の声。
 切り身を受け取ってそのまま恐る恐るイルカへと差し出せば、すっと一瞬で無くなる魚の切り身。
 「もっと寄越せ」と水面から頭を突き出すちんまい姿が不思議と憎めなくて、2人はそっとイルカの頭を撫でまわした。
「折角、水着着てるし俺達も泳いでみようぜ!」
 沢山の水槽を見て回れば、自然と色とりどりな魚たちと泳ぎたくなってしまう。
 水着も来ているし、「折角だから」と、軽い足取りで立体映像の水槽へ。
「幻想的な空間だな」
「……ええ、本当に素敵……っ!」
 足元に広がるのは、自由にその骨格を水中に咲かせる色鮮やかなサンゴ礁だった。複雑に発達したサンゴ礁のなかを、小さな海水魚たちが縫うようにして泳いでいる。
 のんびり常夏の海を楽しむクロウとアリスティアにぴったりくっつくようにして泳いでいるのは、古代から姿を変えぬアロワナやガーパイクたちだ。
 と、古代魚たちの群れの中にしれっと交じって泳ぐ淡水エイの姿が目に入る。
 真っ黒な身体に、大小さまざまな白点が星のように瞬いている――それは大きなダイヤモンド・ポルカの姿だった。
 そっとエイへと身体を横づけたクロウはそのまま背に両手を置くと、身体を軽く持ち上げてエイの上へ。
 アリスティアもクロウの様子を見よう見まねで真似をして、恐る恐るエイの背に。
「ココなら携帯でも写真撮れそうだな。アリスティア、一緒に写ってくれ」
「ええ。勿論よろしくてよ!」
 2匹のエイが互いに近づいた瞬間を、クロウは見逃さなかった。素早く携帯を取り出すと、アリスティアに手招きしてポーズをとる。
 鮮やかなサンゴ礁を背に、エイに乗った2人の姿が画面の中に切り取られれば――思い出がまた一つ、増えていく。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ダンテ・ホーンテッド
【彷徨い兄弟】

海水浴の帰りに水着姿で実弟ジークムントと共に水族館のフェスのアクアリウムを鑑賞しに行く

人魚のドールを持つ弟の乗る特製車椅子をゆっくり押して
夏祭りと神社モチーフの
金魚の和風アクアリウム→
マーメイドと貝と珊瑚が綺麗な
海水魚のアクアリウム→
トロピカルな南国モチーフの
色鮮やかな熱帯魚のアクアリウム→
壮大な大きい古代魚のアクアリウム→
宝石箱がテーマのアートや奇抜な水槽が目立つアクアリウムを順に鑑賞した後に館内のカフェへ行く

どこが1番良かったんだ?と弟に聞きながら
2人分の金魚鉢ソーダとマーメイドパフェと
夏祭りをモチーフにしたアフタヌーンティーを注文して仲良くまったりと食べてくつろぐ


ジークムント・ホーンテッド
【彷徨い兄弟】

ショートヘアにマリンで清楚な袖無しの白いセーラーワンピを纏い人魚のドールを持って
実兄のダンテと一緒に水族館のフェスのアクアリウムを鑑賞しに行く

和風な金魚のアクアリウム、
マーメイドな海水魚のアクアリウム、
南国な熱帯魚のアクアリウム、
大きい古代魚のアクアリウム、
アートで奇抜な水槽のあるアクアリウムを
兄に特製車椅子を押してもらいながら目を輝かせ喜びながら鑑賞する

カフェでメニューの熱帯魚モチーフの食事の写真を眺めたり
マーメイドパフェの綺麗な造形を鑑賞した後に食べてたら
兄のダンテに今回どこが良かった?と聞かれて人魚のドールを見せながら海水魚のとこが1番良かった!と答える



 燦々と全てを焼き焦がしてしまいそうなほど明るい太陽光に、寄せては返す青色の波たち。
 足元の砂浜は素足では歩けないくらいに熱く、海辺は海水浴客で賑わいを見せていた。
 海水浴の帰りに立ち寄った水族館は、賑わいを見せていた海水浴場とは反対に、深海のようにシンと静まり返っている。
 フェスが気になったからと、水着姿のまま立ち寄った水族館。
 黒を基調としつつも所々に入った白や黄色のラインが格好良い水着姿のダンテ・ホーンテッド(黒い幻雷と紫水晶・f23827)は、弟の乗る特製車椅子の背を押しながらゆっくりと館内を巡っていた。
「兄さん、色々な水槽があるね!」
 海水浴の名残である未だ少し湿ったままのショートヘアを揺らしながら、ダンテの実弟であるジークムント・ホーンテッド(車椅子の女無天色疾風は吹きすさび・f34164)は、楽しげなはしゃぎ声をあげる。
 ジークムントが身に纏う清楚なノースリーブ・セーラーワンピースには、淡く水族館の照明が映りこんでいた。ワンピース自体が白いこともあってか、青に緑、白――と、ワンピースに映り込む明かりはステンドグラスのように浮かび上がっている。
 くるりくるりと移り行く明かりと同じように、ジークムントの瞳もあちらへこちらへ忙しなく動いていて。万華鏡のように様々な水槽や水槽内で泳ぐ観賞魚たちを映し出しては、また新たな水槽に視線を動かしていく。
「金魚が夏祭りに参加しているようだぞ?」
 ダンテが背を押していた車椅子を、一つの水槽の前で止める。途端、2人の目に飛び込んできたのは、「夏祭りと神社」をモチーフにしたであろう水槽の全景で。
 底に敷かれた砂利の上に並ぶのは、真っ赤な鳥居やお社とった神社のオブジェだった。
 水槽の両脇を揺蕩っている松の葉のような浮草は、夏祭りを楽しむ金魚の「お菓子」になってしまった後なのか、葉っぱが殆ど残っていなかった。
「うん、とっても楽しそう」
 ひらひらと透明感のある赤い尾びれを翻しながら、鳥居を潜り抜けたり、お社の後ろに回り込んだりと夏祭りの一時を謳歌している金魚たち。
「前に出かけた夜市もこんな風に賑やかだったよ」
「あれは楽しかったな」
 人魚のドールをぎゅっと抱きしめながら、ジークムントはダンテとまた行けたら良いと笑い合う。
「お、仲間の人魚がいるみたいだ」
 夏祭りの隣に並んでいたのは、マーメイドが泳ぐ月と珊瑚に彩られた海水水槽だった。
 水面付近を泳ぐマーメイドの眼下には、色も形も唯一無二の珊瑚たちが広がっていて。ひょこひょことイソギンチャクの隙間から、カクレクマノミが身体の一部を覗かせている。
 ジークムントが人魚のドールにそっと水槽内のマーメイドを見せてあげれば、心なしかドールの表情が和らいだような気がした。
 水槽で海水魚と戯れるマーメイドに手を振って別れを告げれば、次にダンテとジークムントを待っていたのはトロピカルな常夏の海だ。
「『トロピカル・フィッシュ』の名前に違いないね」
 南国モチーフということもあってか、水槽のライトも今までの水槽たちを比較すれば、強く光り輝いている。
 水槽の後方に広がるのは、赤みがかった葉が美しい水草たち。小さな流木が幾つか置かれた広い水槽内を、常夏色に染まったディスカスが存在感たっぷりに泳いでいた。
 サンゴ礁の入り江を思わせる鮮やかなブルーに、溶けた夕陽のようなオレンジ。南国フルーツのようなイエローも。
 水中に咲くのは、鮮やかな花もかくやのディスカスの姿。「熱帯魚の王様」という二つ名に相応しい佇まいに、2人は暫しの間南国の水槽に見入っていたのだった。
「さっきまでの水槽とは、随分様子が違うんだ」
「時空を超えてはるばる此処まで遊びにきたみたいだな」
 数えきれないほどに並べられた大小様々な宝石箱たち。そして最後にジークムントとダンテの訪問を待っていたのは、一際大きな水槽だった。
 大きさの割に、水槽内に入れられているものは少ない。2、3の流木が水底に沈んでいるだけだ。
 しかし、その光景に物寂しさを覚えないのは、この水槽の主たちが大々的に存在感を主張させているからだろう。
 まるで自分たちに適う存在が居ないことを知っているのかのような堂々たる振る舞いで、ゆっくりとヒレを動かしているアロワナたち。
「あの鱗、金属みたいだね」
 鈍色に染まる鱗はその一つ一つが金属でできているかのように、鈍い光を反射させている。きょろりとした眼差しは、少し左右に揺れたのち――声の主であるジークムントの方へ、優しく向けられた。
 古代魚と見つめ合って瞳を零れ落ちんばかりに輝かせているジークムントの姿を見、ダンテは一人静かに微笑みを零す。
 この個性的な水槽たちを楽しんでくれたのなら、兄としてこれ以上に嬉しいことはない。
「次はカフェに行かないか?」
「熱帯魚をモチーフにしたメニューがあるんだよね。気になる!」
 水族館の次は、館内のカフェへ。
 いったいどんなものだろうと、まだ見ぬ料理たちにワクワク胸を高鳴らせながら、ダンテはジークムントの特製車椅子を押してカフェへとやってきた。
 静かな水族館のイメージはそのままに、天井からつるされた柔らかな星形のランプたちが2人のことを出迎える。
「どこが1番良かったんだ?」
 仲良く向き合う形でテーブルに着けば、ジークムントの視線はあっという間に手元のメニュー表へと吸い込まれた。
 ダンテもまたダンテで、弟がしっかりと握りしめているメニュー表のデザインや、ページの端に描かれた熱帯魚たちが気になって仕方がない。
 恐らくはお洒落な雰囲気を演出したかったのだろうが、メニュー表のフォントはもう少し見やすいものでも良かっただろう、とか。イラストレーターの性質か、そんなことを頭の片隅で考えながらも、弟に問いかけるのは先ほど巡った水槽のこと。
「海水魚のとこが1番良かった!」
 食事を頼んでそう間を置かずに運ばれてくるのは、金魚鉢ソーダとマーメイドパフェ。
 縦に長い金魚鉢のようなグラスに入ったソーダはシュワシュワと青空のように輝いていて、グラスの底にはゼリーでできた数匹の金魚が泳いでいた。
 マーメイドパフェは、食べてしまうのが勿体ないほどに綺麗で。上の方から青にピンク、紫と映り変わるゼリーに、その上にちょこんと乗っているのはバニラのアイス。マンゴーやキウイといった南国のフルーツが瑞々しい姿を披露していて――でも、それだけじゃない。
 バニラアイスを岩に見立てて、その上にマジパンやマカロンでマーメイドの姿が生み出されていたのだから。
 ひとしきりマーメイドパフェを鑑賞したら、後は実食だ。
 長いスプーンを使って少しずつパフェを口へと運びながら、ダンテの問いにジークムントは満面の笑みで「海水魚!」とそう答える。
 色鮮やかで綺麗だったし、この子にもお友達ができたのだから、と。ジークムントがダンテに人魚のドールを見せてみれば、兄は優しくクスリと微笑んだ。
「夏祭りモチーフのアフタヌーンティーもあるぞ」
 パフェとソーダを完食して少し寂しそうな表情をしていたジークムントにそう告げれば、シュンとしていた表情が一瞬で明るい笑顔に変わった。
 偶にはこうしてのんびりと過ごすのも悪くない。ジークムントとダンテ、兄弟が仲良く過ごすカフェでの時間は、まったりと過ぎていく。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

丸越・梓
【1】へ
菊(f29554)と
アドリブ、マスタリング歓迎


菊の言葉に興味深く耳を傾け
泳ぐ魚たちを眺めつつ
彼と歩く速度をさり気なく合わせ散策を

菊が興味を見せた魚の紹介文を読みつつ
…いや、この子には家の水槽は狭すぎるだろうなと微笑い
メダカはどうだと問うて
彼らしい答えに困ったように瞳細める
お腹が空いたら可哀想だろうと
その流れで菊自身もちゃんとご飯を食べるようにと伝えつつ
菊の普段の食生活を知っているから
お節介だと言われても弁当を作ったりと、出来る限りのことをしてあげたい

…そうだな
独りでは寂しいから
何匹か迎え入れたら
その魚もきっと楽しいと
菊が実際に飼うのなら勿論手伝いたいと思いながら
共に思い描くのは楽しくて


菊・菊
梓(f31127)と一緒に【1】
アドリブ好きよ

俺嫌いじゃねーよ、動物園と水族館なら断然こっち
水槽の音ってなんか落ち着かね?

人混みを避けるように館内を進めば
熱帯魚たちと比べると
地味な色合いの魚が泳ぐ水槽の前

こいつ、かっけえ

自分の顔より大きい魚が泳ぐ水槽に顔を近づけて
なあー、梓 コレ俺でも飼えんの?

は?ちっちぇじゃん、メダカかよ
んー嫌いじゃねーけど
あっちのがデカくてかっけえじゃん

餌?やんねえけど
知らね、梓がやれよ
ッひひ、俺の作るのと変わんねーだろ

水槽買って、なんか草入れてさ
一匹じゃつまんねーから、何匹か一緒に飼うの
水換えとかめんどくせーけどさ
な、意外とワクワクすんじゃん

泳ぐ魚たちすら、笑ってみえた



 季節も夏本番に差し掛かり、自然と涼を求めて人々は外出を始める。
 そして、その「外出先」としてこの水族館も選ばれることが多いのだろう。すれ違う人々の中には、ちらほらと親子連れやローティーンだけのグループが見受けられるのだから。
 静かにしなくてはいけないと思っても、非日常を前に胸の高鳴りは抑えられない。静かな空間であるはずの館内は先ほどから時折思い出したかのように子どもたちのはしゃぎ声が反響しているし、何ならパタパタと軽い足音ですぐ脇を走り抜けていってしまう。
「菊はどうだ。水族館、嫌いじゃないか?」
 彼らが転んでしまわないか、或いは迷子になってしまわないか――心配かと問われれば、即座に肯定してしまうことだろう。自分のすぐ脇を走り抜けた10歳前後の子どもたちが気にならない訳では無いが、それでもしっかりと丸越・梓(零の魔王・f31127)は、隣を歩む菊・菊(Code:pot mum・f29554)の言葉に耳を傾けていた。
「俺嫌いじゃねーよ、動物園と水族館なら断然こっち。水槽の音ってなんか落ち着かね?」
「そうだな。眠たくなりそうだ」
「眠ったら置いて行ってやるからな」
 元気な子どもたちが過ぎ去れば、再び静寂が舞い戻ってくる。
 突然響いてきた子どもたちの大声に驚いて水草や土管の陰に慌てて隠れた熱帯魚たちが、恐る恐る顔を出し始める姿が見えた。
 深い蒼に沈む館内に響くのは、疎らに見える一般客の微かな囁き声とコポコポ……と水の流れる音、空調設備といった機械の稼働する微かな音だけだ。
 確かに落ち着くなと梓は菊の言葉に相槌を打ちながら、さり気なく菊に歩調を合わせることも忘れない。
 菊の歩むままに着いていけば、向かう先は自然と人の少ない――「熱帯魚」と称するには、地味な色合いの魚たちが展示された一角に辿り着く。子どもたちの集団を始めとする人混み自体が存在しないのは、水槽を泳ぐ彼らがパッと見豪華に見えないせいだろうか。
「こいつ、かっけえ」
 小柄で鮮やかな熱帯魚たちとは対照的に、地味な色合いながらも、絶対的な存在感と風格を持って水曜内を泳いでいる魚たち。
 金属色の鈍い輝きを放つ彼らを眺めながらのんびり水槽を巡っていたところで、菊が不意に一つの水槽の前で歩みを止めた。
 平時よりも幾分か高くなった菊の声につられるまま梓が振り返れば、じいっと自分を見つめている茶色の瞳と視線がかち合う。
 流線上のボディラインに角ばったヒレと丸みを帯びた身体のメリハリが、「格好良い」というイメージを強調している。闇よりも深い漆黒のボディの上には、太陽のような、銅のような――複雑な色彩の赤い斑点が浮かんでいた。
「なあー、梓。コレ俺でも飼えんの?」
 アクリル板スレスレまで顔を近づけるその魚は、自らのテリトリーに入ってきた菊と梓が敵かどうか判断している最中のよう。
 菊が自身の顔よりも大きいその魚の泳ぐ水槽に、額がくっつきそうなほど顔を近づければ――瞬間、口を大きく開けて「此処はオレのテリトリーだぞ!」と、臆することなく自らの存在を主張してきた。
 菊が少し移動すれば、魚もそのまま着いてくる。自らのテリトリーに侵入した不届き者を、唯では返さないという考えのようだ。
「……いや、この子には家の水槽は狭すぎるだろうな」
 水槽越しの追いかけっこを繰り広げる菊を視界の端に捉えつつ、梓がその魚の紹介文に目を通せば、まず目に飛び込んできたのは「全長30~40㎝にまで成長する」という一文だった。
 レッドオスカーという名の熱帯魚にすっかり夢中の菊だったが…そこまで大きくなるのならば、残念だが家では飼えない。
 どう考えても水槽に収まらずにはみ出してしまう――水槽に収まらずに頭だけを突っ込む魚の姿を想像して、思わず込み上げてくるのは苦笑交じりの微笑い。
 身動きの取れない水槽では、飼い殺しの状態となってしまう。それは幾らなんでも可哀想だ。
「じゃあ、こいつは? 龍の子どもみてぇ」
 ならば、と菊が次に興味を示したのは、レッドオスカーの隣の水槽だった。
 言葉通り、まるで幼龍のように細長い身体は曇りない白銀色に輝いていて、神秘的な雰囲気を纏っている。
 静かに水槽を泳ぐ白銀の魚の大きさは、10cmを少し超えたところか。小さいながらも、人を惹きつける魅力を持っていた。
「この子なら――っと、ちょっと待て」
 大きさを前に、このくらいのサイズなら家の水槽でも……と考え、つい流れで許可を出しそうになった梓だったが、視界の端を掠めた紹介文を見逃さなかった。
 梓の見間違いではなければ、紹介文にははっきりと「シルバーアロワナ(幼体)」と刻まれていたはずで。
「残念だが、この子はもっと駄目だ」
 最大1mにまで大きくなるシルバーアロワナは、先のレッドオスカーよりも格段に大きな水槽が必要になる。
 それだけでは無い。水槽の重さに床が耐えきれずに最悪抜けてしまう危険性がある以上、床補強工事も必須になる訳で。残念ながら、「龍の子ども」も家で飼うことはできない。
「メダカはどうだ」
「は? ちっちぇじゃん、メダカかよ。かっけぇの、名前だけじゃん」
 梓の示す先には、真っ黒な睡蓮鉢に入ったメダカたちの姿があった。
 プラチナのボディに銀河のような煌めきを宿したもの、尾びれが燕の尾のように長く伸びたもの。
 見た目だけではなく、品種名のインパクトも十二分だ。品種名に「ドラゴン」や「鳳凰」という字が入ったメダカもちらほら見られる。梓からすると十分「格好良い」のだが、菊には物足りないらしい。
 ある意味菊らしい彼の答えに、困ったように梓は瞳を細めた。水槽に泳ぐ、美しい品種のメダカ――それはそれで綺麗だと思うのだが。
「メダカは嫌いか?」
「んー嫌いじゃねーけど。あっちのがデカくてかっけえじゃん」
 菊の指差す「あっち」には、先ほど見てきた中型から大型の格好良い魚たちが泳いでいる。
 余程、先の彼らがお気に召したらしい。格好良いが、しかしさすがに家では飼えないと、梓は本日何度目かの苦笑を浮かべるのだった。
「餌やりは自分でできそうか?」
「え? 餌? やんねえけど」
「あっちのは餌も沢山食べるぞ。お腹が空いたら可哀想だろう。菊自身も、あの子たちみたいにちゃんとご飯を食べるようにな?」
「知らね、梓がやれよ。ッひひ、俺の作るのと変わんねーだろ」
 やはり、十代後半の年頃というべきか。野菜少なめ、肉類多め。食べる時間も不規則ならば、ジャンクフードの類は立派なお友達という、荒れ放題の食生活。
 そんな普段の菊の食生活を知っている梓は、お節介と知りつつも、サラリと流れで三食バランス良く食べるように言い聞かせる。
 鬱陶しがられても良い。弁当を作ったり、アドバイスをしたりと出来る限りのことはしてあげたい梓なののだ。
「水槽買って、なんか草入れてさ。一匹じゃつまんねーから、何匹か一緒に飼うの。水換えとかめんどくせーけどさ」
 めんどくせーと言う割に、語る菊の表情はキラキラと輝いている。
 種類も形も色も様々なメダカたちを眺めているうちに――メダカもいいかもな、と思い始めたのは事実だった。
「……そうだな。独りでは寂しいから。何匹か迎え入れたら、その魚もきっと楽しいだろうな」
「な、意外とワクワクすんじゃん」
 家の水槽に何匹かメダカを入れて。水中に沈めておけば勝手に増えるような、手間の掛からない水草を入れて。
 面倒くさいと思いながらも水換えをして、急かすように水面を突くメダカたちに「少し待て」と言い聞かせつつ餌をあげて。メダカのいる生活を思い描けば、意外とワクワクしてくるから。
 菊が飼うのならば、勿論手伝ってあげたいと告げる梓。
 楽しげに2人で未来を語れば、周りの水槽を泳ぐ魚たちすら笑ってみえた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

臥待・夏報
【🌖⭐】
ふふ、こんなに早く水族館デートの機会が来るとはなあ……なーんて
秘密ってだけでも妙にわくわくするな

熱帯魚、すごい鮮やかな色してるでしょ、これでも映像じゃなくて本物だよ
……本当に見るの初めてなんだね
なんか獲物を狙う時の眼になってない?

(武力担当の別人格……ってくらいだから、それ以外には疎いのかもしれないけど)
(全然違う世界の人みたいなこと言う時があるんだよなあ)
(彼女の……人格の一部っていうよりは――)
……まあいいや
君は君だもの

そんなことより餌やり体験やろうぜ
僕、魚相手におっかなびっくりするホタルくんの姿が見てみたいなあ
こういうのって、魚にかこつけて相手を眺めるものでしょ
よく知らないけど


風見・ケイ
【🌖⭐】
しかもまさか別世界になるとは……どうやって誤魔化すかな
ま、いつも通り騒動が起きればなんとかなるだろ

へぇ……電気屋のテレビで見たヤツだ
ガキの頃のキャンディやグミみたいでちょっと、(「美味そう」をかろうじて飲み込む)
あー……日本の武道家が魚の動きを見るっつってたからさ

(今思えば、日本の菓子の方がよほど美味そうだ)
(熱帯魚みたいな色したキャンディって、絵具でも入ってんのかって)
夏報?
……ああ、そうさ

あの水槽か……はは、狙撃手がそんなことになるかよ
ホホジロザメが来たって問題はない――(……魚は人間の体温で火傷するとか何かで見たような)
……落とすようにすれば、なんとか
おい、夏報も見てないで
ほら



 星降る終末世界の片隅で、いつか交わした約束の続き。
 人生初の水族館が、ゾンビと血に覆われたZ級映画もかくやの廃墟だなんて味気ない。
 水族館に行ったことが無いと語っていた誰かさんに、「それじゃあ、見せてあげよう」と軽いノリで交わした秘密のデートの約束だった。
「ふふ、こんなに早く水族館デートの機会が来るとはなあ……なーんて」
 誰かさんよりも少しだけ先を歩く臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)は、妙に上機嫌な様子だ。
 何て言ったって、今日は漸く「水族館の素晴らしさ」を紹介出来るのだから。
 今にも鼻歌を口ずさみそうな軽い足取りで、夏報がやや後ろを歩く誰かさんの方を振り向けば、初水族館には似つかわしくない思案顔を浮かべている。
「秘密ってだけでも妙にわくわくするな」
「しかもまさか別世界になるとは……どうやって誤魔化すかな」
 「秘密」である以上、バレた時がヤバい。最悪、焼き餅が何個か破裂するかもしれない。
 誰かさんこと風見・ケイ(星屑の夢・f14457)――螢の頭を掠めるのは、別人格である慧のこと。
 同じ終末世界であっても、あちらは生きるか死ぬかのディストピアで、こちらはパーリィーピーポーがその辺に溢れている、食べ物にも困らないユートピアと来た。
 180度どころか、540度くらい違う世界。記憶のアレや秘密の約束のコレやをどうやって誤魔化そうと考えながらも、螢の胸を掠めるのは戦いの予感で。
「ま、いつも通り騒動が起きればなんとかなるだろ」
 そう締め括った螢はそれ以上考えるのを止めて、夏報が案内する大きな水槽の前に立つ。
「熱帯魚、すごい鮮やかな色してるでしょ、これでも映像じゃなくて本物だよ」
 何処か得意げな表情で一足早く水槽前で熱帯魚たちを見つめていた夏報が、螢の方へ視線を向ける。
 夏報の真後ろに広がる大水槽には、紛うことなき「海」が広がっていた。
 まるで自然の海からその一部を切り取って此処まで運んできたような、常夏の色だ。
 底に敷かれたきめの細かい白砂は、降り積もった雪のよう。ブルーライトは静かに水槽内を照らし出し、水槽で育まれる小さな生態系を優しく見守っている。
 仄かに灰色を帯びたサンゴ礁に、原色やそれに近い鮮やかな発色をした熱帯魚たちが、伸び伸びとその身体を穏やかな水流に身を任せていた。
「へぇ……電気屋のテレビで見たヤツだ」
 どれほど画面が美しいか、テレビを販売する際に流す映像としてサンゴ礁と熱帯魚はある意味最適なのだろう。
 中には「とりあえず、色鮮やかであれば売れるだろう」という魂胆が透けて見えているような、悪趣味なほどチカチカと輝いていたテレビもあったが――目の前の水槽に、そのような光と色彩の暴力は存在しなかった。
「……本当に見るの初めてなんだね。なんか獲物を狙う時の眼になってない?」
 小さな海に吸い込まれそうなほど見つめていた螢の様子に、思わず零れたのは夏報の呟き。
 心ここにあらずといった様子になるほど魅入ってくれたのは嬉しいが――手放しで喜ぶには、螢の眼が少しだけ険しいような。
「ああ。ガキの頃のキャンディやグミみたいでちょっと、」
 半ば無意識のうちに夏報の問いに答えていた螢は、そこでふと我に返る。
 此処まで来て、全てを言ってしまえば色々とぶち壊しだ。続きの「美味そう」という言葉は辛うじて飲み込んだ。訝しむような瞳に囚われはしたが、色鮮やかな魚たちを前に何を思ったか、夏報にはバレてはいない……はずである。
「あー……日本の武道家が魚の動きを見るっつってたからさ」
 さすが武力担当というべきか。誤魔化すように口から滑り落ちたのは、日本の武道家のことだった。
 日本では、どう動くか全く想像のつかない魚の動きを見切ってこそ、真の達人と崇められるらしい。
「だから、その……体験だ。日本の武道家はこんな練習をしているんだな」
「……そっかぁー。美味しそうとか、」
「思ってない。これっぽっちも思ってない」
 棒読み口調と共に向けられるジト目に、思わず食い気味で答える。
 子どもの頃は、合成着色料マシマシのお菓子が宝物のように思えていた。しかし、今思い返してみれば。
(「今思えば、日本の菓子の方がよほど美味そうだ」)
 色々と無邪気な子どもだったからこそ喜べた。妙な方向に努力を重ねたテレビよりも更に瞳に悪い、原色と砂糖をふんだんに使ったお菓子の数々は。
(「熱帯魚みたいな色したキャンディって、絵具でも入ってんのかって」)
 熱帯魚たちを見上げ、過去の回想に浸る螢。その姿を、すぐ傍でじっと見つめる影が一つ。
(「武力担当の別人格……ってくらいだから、それ以外には疎いのかもしれないけど」)
 武力以外の殆ど全てに疎いようでいて、今のように時折何かを思い出したかのように呟いたりもして。
 疎いようで、何故か詳しく知っているような素振り。それが、夏報が抱く違和感のようなものに拍車をかけている。
(「全然違う世界の人みたいなこと言う時があるんだよなあ」)
 先のだってきっとそうだ。まるで、慧とは全く違う人生を生きていたかのような瞬間が、ふと顔を覗かせることがあったから。
(「彼女の……人格の一部っていうよりは――」)
 何人かが一人の身体を共有しているような?
 それぞれ、全く別の人生を歩んでいるような?
 「ソレ」を無理やり言葉として表現しようにも、適切な言葉が浮かんでこない。しかし、妙な違和感だけが夏報の胸を掠めているのは事実だ。
 だが、しかし。
「夏報?」
「……まあいいや。君は君だもの」
 黙りこくった夏報を不自然に感じたのか、螢が小さく名前を呼ぶ。それに「何でもないよ」と答えながら。
 3人の正体が何であれ、それで「君」の本質が変わることは無い。
 君が、君であることは変わらない。
 ならばそれで良いと、夏報は堂々巡りに陥りそうな思考に終わりを告げた。
「……ああ、そうさ」
 螢も螢で何か思うところがあったのか、少し間をおいて小さく言葉を発した。
 それきり、2人の間に沈黙が横たわったが――それも長くは続かなかった。
「そんなことより餌やり体験やろうぜ」
 しんみりとした空気を吹き飛ばすのは、夏報の誘い。半ば引っ張るようにして螢を餌やり体験が出来る水槽の前まで引っ張っていく。
「僕、魚相手におっかなびっくりするホタルくんの姿が見てみたいなあ。こういうのって、魚にかこつけて相手を眺めるものでしょ」
 よく知らないけど。
 ニマニマと余裕たっぷりに笑う夏報は、すっかりいつも通りの調子だ。狙い通りに螢がおっかなびっくりしたら最後、おちょくる気満々に違いない。
「はは、狙撃手がそんなことになるかよ。ホホジロザメが来たって問題はない――」
 軽い笑みで夏報の「見てみたい」を追い払いながら、螢は早速餌を手にする。
 小さな粒状の人工飼料を、犬猫と同じように――魚たちに差し出そうとしたところで、あることを思い出した。
(「……魚は人間の体温で火傷するとか何かで見たような」)
 ならば直接餌をやってはいけないと、慌てて水中に突っ込みかけていた手を引き上げた。
「……落とすようにすれば、なんとか?」
 ぎこちない手つきで螢が水面に餌を落とせば、一瞬で群がってくる色鮮やかなキャンディたち。
 案の定、すぐに完食してしまい。「もっとくれ」と、螢を見上げて強請る姿は可愛いと思えなくもない。
「ホタルくんが楽しんでくれたようで何よりだよ」
「おい、夏報も見てないで。ほら」
 ニヤニヤと一部始終を見守っていた夏報に、餌の入った容器を押し付ける。
 あれほど先輩面をしていたのだから、餌やりも余程手馴れているだろう。
 そんな意図を籠めた視線で射抜けば、夏報は「任せなさい」と自信満々に答えるのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ルーシー・ブルーベル
【月光】【2】

ふっふーん
ルーシー、去年から特訓をして少し泳げるの
少し…バタ足、くらい!
だからゆぇパパとお魚さん達と泳いでみたくて

足先からゆっくり水槽へ
むう、上手く潜れないわ
パパに助けてもらっても?と、手を伸ばす
うん!ありがとう

目の前には金魚さんが沢山
朱くて小さくてかわいい
伸ばした手の側をひらりゆくのは、そう!たしかベタ
金魚とベタと一緒にに泳げるなんてフシギ

あっクマノミさん、まって!?
ルーシーの髪はイソギンチャクじゃないの、お家にしないで!?
パパ…ど、どうしよう?
手にそっと置かれたクマノミさんに本当?と聞くも首を傾ぐだけ
…ふふ!かわいい

パパと見る不思議な世界
泳げる様になって良かった
わ、楽しみね!


朧・ユェー
【月光】【2】

おや、特訓したのですか?
それは楽しみですねぇ
えぇ、お魚さんと一緒に泳ぎましょうね

先に水槽に入って、彼女が入ってくるのを見守る
ふふっ、えぇ、大丈夫です。
彼女の手を取り、自分の方へ
僕に掴まって下さいね
と潜っていく

金魚、ベタ。どちらも可愛らしくて
指でツンとする

楽しむのは良いですが危ないですよ
楽しそうにする子にふふっと笑って
おやおや、この子はルーシーちゃんが好きなのですよ
困りましたね、そっとクマノミを取って
彼女の両手にそっと置いて

娘と魚達、どちらも可愛らしいですねぇ
ルーシーちゃんが沢山頑張ったからですよ
ご褒美に帰ったら美味しい海の様なゼリーを作りましょうね



 ――足元を見れば、何処までも澄んだ青色が自分を見上げていることに気が付いた。
 濁り一つない淡いブルーに、ちゃぷりちゃぷりと小さな波の音。水中は一足先に泳ぎ始めた宝石たちで溢れ返っていて、上から見下ろしているだけでもとても賑やかな雰囲気が感じられた。
 だけど、穏やかな見た目に騙されてはいけない。一見すると浅いように見えて、その実それなりに水深があるのだから。
 それでも、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)が去年ほど水を怖がることは無かった。
「ふっふーん。ルーシー、去年から特訓をして少し泳げるの」
 ちょんちょんと片足で水面を突いて水の冷たさを楽しみながら、頬を薄く染めて得意げな笑顔で朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)を見上げれば。
 まるで月光のような、優しく寄り添うような微笑みがルーシーに向けられる。
「おや、特訓したのですか? それは楽しみですねぇ」
「うん。少し……バタ足、くらい! だからゆぇパパとお魚さん達と泳いでみたくて」
 「少し」の成長であっても、ルーシー自身にとっては大きな一歩だったに違いない。零から一へのステップは、何より大変なものなのだから。
 出来ないことを出来るようにする。彼女より幾分か長く生きているその分だけ、ユェーはその大変さを知っていたから。
「えぇ、お魚さんと一緒に泳ぎましょうね」
 向日葵の花弁を掬い取ったかのようなルーシーの淡い金髪を一撫でし、ユェーがエスコートするのは、宝石の詰まった大きな宝箱の中だ。
 水泳の練習を頑張った良い子には、「ご褒美」をあげなくてはならない。
 暴れたりさえしなければ、身体は自然と水に浮く。沈むことは無い。怖くないことを示すようにユェーが先に水中へと身体を滑り込ませて、両手を広げてルーシーを待った。
「ふふっ、えぇ、大丈夫です」
 ぺしぺしと足先で水の温度を確かめるようにして、それからゆっくりとつま先から身体を水に入れ始めたルーシーの姿が可愛らしく、ユェーはそっと笑みを綻ばせた。
 それからユェーのように潜ろうとして――なかなか上手く行かないようだ。
「むう、上手く潜れないわ。パパ、助けてもらっても?」
「僕に掴まって下さいね
「うん! ありがとう」」
 上手くいくと思ったのに。少しだけむすっとした顔で伸ばされた両手、それをユェーは優しく取った。
 せーので息を合わせて潜ってみれば、衝撃で生まれた細かな泡沫がシュワシュワとソーダのように弾けては消えている。
 泡のカーテンを潜り抜けたそこは、透き通った宝石たちが泳ぐ、淡いブルーの世界が広がっていた。
「朱くて小さくてかわいいわ」
 ザブンと潜り込んだルーシーをいち早く出迎えたのは、朱色に輝くドレスを着こんだ小さな金魚の群れだ。
 端の方に行くにつれて、淡い白に染まっていくドレスを揺らしながら――「よく来たね」と、人懐っこく近寄ってくる。
 クルクルと輪になってルーシーの周りを泳ぎ始める朱い子たちの愛らしさときたら!
 クスクスと笑み零せば、不意に何かが手のすぐ傍を通り過ぎた気がして。
「そう! たしかベタ」
 伸ばした先の指先に、絡みつくように戯れているお洒落な子。ラベンダー色に染まる身体に、ヒラヒラとした長い胸ビレ。胸ビレを靡かせて泳ぐその姿は、世界的にも有名な、空を飛ぶ子象のようで。
 名前を当てれば、「正解」と告げるように、ツンとルーシーの指先を擽った。
「金魚とベタと一緒に泳げるなんてフシギ」
「えぇ。どちらもとっても可愛いですねぇ」
 ベタと戯れるルーシーの横で、ユェーも金魚やベタに人差し指をそぅっと差し出せば。
 はもっと食むような動作で、じゃれついて来た。
「パパ、すごいわね」
 指先を思うままに動かせば、それに続いてくる金魚やベタ。金魚たちは好奇心からユェーの人差し指を突いているように見えたし、ベタたちは外敵と思っているのか、じっと警戒するようにユェーの指を見つめている。
「あっ。クマノミさん、まって!? ルーシーの髪はイソギンチャクじゃないの、お家にしないで!?」
 金魚やベタとの遊びに夢中になっていたら、突然ぬもっと髪に何かが突っ込んだような気がして。
 水中で花咲くように、ゆらゆらと揺れているルーシーの淡い金の髪。髪の毛に絡みついた強めの衝撃に慌てて上を見上げれば、自分の髪に身体を預けてすっかり寛いだ様子のカクレクマノミの姿があった。
「楽しむのは良いですが危ないですよ」
 困ったように自分を見つめるルーシーに、ユェーは優しく諭すように言い聞かせた。
 突然の珍客に驚くのも無理はない。けれど、慌てるあまり溺れてしまっては大変だから。
 ふふっと笑いを零しながら、両手でそっとカクレクマノミを迎えにいく。
「パパ……ど、どうしよう?」
「おやおや、この子はルーシーちゃんが好きなのですよ。困りましたね」
 よっぽどルーシーが気に入ってしまったのだろう。水中に広がる髪の毛をかき分けて、ユェーが両手でクマノミを迎えに行っても、なかなか動こうとしない。
 髪の毛に住み着かれてしまっては困る。彼らの本来の住処はイソギンチャクなのだから。
 根気よく手を差し伸ばしていたところ、漸く渋々といった様子でクマノミさんは出て来てくれた。
 両手で掬い取ったクマノミさんを、ユェーはそっとルーシーの両手に置いて。
「……ふふ! かわいい」
 そっと目線をクマノミさんに合わせて「本当? ルーシーのことが好きなの?」問いかけても、こてりとクマノミさんは首を傾げるだけ。
 人の言葉が分からないみたいだったけれど、首を傾げる仕草が可愛くて。ルーシーはまた、そうっと瞳を細めた。
「さて、そろそろ上がりましょうか」
 娘と魚達、どちらも可愛らしいですねぇ。
 魚と遊ぶルーシーの姿をずっと見ていたいユェーだったが、これ以上水に浸かっていては、身体が冷えてしまう。
 ルーシーの髪がすっかりお気に入りになってしまったクマノミさんと、攻防戦を繰り広げたり。サラッとユェーの上着のフードに隠れて一緒に帰ろうとしたベタさんをそっと仲間の元に戻したり。
 楽しい時間が過ぎ去ってしまうのは、本当にあっという間だった。
 夢のような不思議な世界にも、そろそろお別れを告げなくてはいけない。
「泳げる様になって良かった」
「ルーシーちゃんが沢山頑張ったからですよ。ご褒美に帰ったら美味しい海の様なゼリーを作りましょうね」
「わ、楽しみね!」
 熱帯魚たちに手を振ってバイバイを告げれば、別れを惜しむように水面付近まで見送ってくれた。
 始めと同じように、ユェーとルーシーは「せーの」で浮かび上がる。
 水に濡れた身体をタオルで拭きながら、帰宅後の美味しい「ご褒美」に、ルーシーの瞳はキラキラと輝いていた。
 今日泳いだ子たちをイメージした魚さんたちを一緒に閉じ込めてしまえば、食べるのが惜しいほど素敵なゼリーが出来上がるに違いない。
 張り切ってお手伝いに立候補するルーシーに、ユェーはクスリと微笑みを一つ。
 仲良く手を繋いで歩み始める2人の後ろを、こっそり半透明のオレンジ色が追いかけていったとか、いかなかったとか――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

炎獄・くゆり
【獄彩】2!

うっみだ~~~~!!!
プールとか水槽とか聞こえましたけど海水がたくさんあるんだから要は海でしょ海!
ざぶーんと飛び込んじゃえ!

ワッ、おっきいサカナ!
すっご~~~これホログラムなんです?
シャチ?なんだか強そうですねえ
イイですねェ、心躍る技術の海!
あたし達だって負けませんよお!

じゃーん!
お手製の魚型耐水ガジェット~~
名付けてサカナくん!
フィーちゃん特製ペイントが超キュート!
ちゃんと泳ぐんですよ、ほらほら
ちょっと動きがロボっぽいけど
ウフフ、伸び代伸び代!

フィーちゃんの魔法スゴーい!
ホンモノにしか見えなぁい!

個性豊かなおサカナさん達に囲まれて
可愛いお人形さんと遊泳デートと洒落こみますか~~!


フィリーネ・リア
【獄彩】
2.

うふふ、くゆちゃん楽しそう
フィーも人のこと言えないけど

海水が有れば海
むしろくゆちゃんとフィーが海だと思えば海だよ
人形だって泳げるんだからってざぶん

あら、大きなお魚
シャチって言うんだった?
ホログラムなのに触れられるなんて、うふふ
このまま色んな子たちと遊んでも良いけど
フィーたちの子も混ぜて欲しいから

くゆちゃんのも技術結晶
うふふ、フィーも手伝わせて貰えたのうれしかったの
ロボみたいな動きも可愛いよ
きっとまだ泳ぐのに慣れてないんだもの

フィーは魔法を見せるね
お気に入りのインクを一滴、二滴辺りに垂らして散らして
筆で描けば色んな魚さんたちに変身しちゃうの

フィー達の魚も混ぜて貰って
泳ご、くゆちゃん!



 夏といえば、水着に花火に、お祭りに。
 バーベキューやプールも捨てがたいけど、何より海!!
 ハイテンションで見渡したのは良いけれど、目の前に広がるのは――深い蒼色に染まりきった壁や天井と、透き通ったアクアマリンのような水槽だけだ。
 燦々と降り注ぐ眩い太陽光が無いのはお肌に優しいが、同時に物足りなさも感じてしまう。
 砂浜も珊瑚砂もすっかり水中に沈んでしまった後のようで、熱帯魚たちが我が物顔で真白い砂の上を行ったり来たりしている。
 ココヤシは太陽光を求めて絶賛家出中らしく、比較的明るい館内のカフェに行かなければ出逢えないだろう。
 砂浜が無い以上、当然海の家もない。海の家の役割を担っているのは、カフェや水族館に隣接された外の売店ということになり――。
 本物の海と同じ存在は、目の前にたっぷり溜められた海水と、真下に沈むサンゴ礁くらいなものである。
 だが、しかし。
「うっみだ~~~~!!!」
 指3本に入るくらいには館内で大きい水槽なのだろう。そんな新設されたばかりの海水水槽の端っこで、大きな声を上げている少女がひとり。
 元気いっぱいに発せられた大きなはしゃぎ声は、たっぷり5秒程の時間をかけて、水族館一帯に木霊していった。
「プールとか水槽とか聞こえましたけど海水がたくさんあるんだから要は海でしょ海! ざぶーんと飛び込んじゃえ!」
 プールに水槽? だが、目の前に溜まっているのは紛れもない海水だ。人工海水ではない、恐らく何処からか運んできた正真正銘の。海水が本物ならば、何も問題はない。
 普段通り元気良く平常運転中の炎獄・くゆり(不良品・f30662)は、「水槽」だとか、「プール」だとか、都合の悪い言葉はシャットアウト!
 目にも留まらぬ早業で羽織っていた青空みたいなアロハシャツを脱ぎ去ると、黒いビキニ姿となって目の前の小さな海に飛び込んだ。
 勢い良く飛び込んだくゆりに、盛大に上がる水飛沫。
「うふふ、くゆちゃん楽しそう」
 フィリーネ・リア(パンドラの色彩・f31906)がくゆりの飛び込んだ先を覗き込めば、それほど間を置かずに浮かび上がってきた。
 とっても楽しそうなくゆりの姿に、自然とフィリーネも笑みを浮かべる。
 ワクワクしているのは自分も同じなのだから、フィーも人のこと言えないけど。
「海水が有れば海。むしろくゆちゃんとフィーが海だと思えば海だよ」
 ガジェッティアと魔女が手を組んで「黒だ」といえば、白いものも途端に真っ黒になる――いや、2人の場合は「黒くする」という表現の方がぴったりなのかもしれない。
 それと同じで、目の前のこの大きな水溜まりが海だというのなら、きっとそうなるのだろう。
「人形だって泳げるんだから」
 くゆりに負けていられないと、フィリーネも後に続いてざぶんと飛び込んだ。
「ワッ、おっきいサカナ! すっご~~~これホログラムなんです?」
「あら、大きなお魚。シャチって言うんだった?」
「シャチ? なんだか強そうですねえ。イイですねェ、心躍る技術の海!」
 手を繋いで深く海へと潜ってみれば、大きくて真っ黒な何かが丁度2人の目の前を横切っているところだった。
 真っ黒な上半分に、真っ白な下半分。まろ眉のような白い模様の下に、くるりとした可愛らしい瞳が位置している。
 視界に収まりきらないほどの大きな体を持つその正体は、「海のギャング」としても有名なシャチだった。
「ホログラムなのに触れられるなんて、うふふ」
「でもでも、あたし達だって負けませんよお!」
「うん。フィーたちの子も混ぜて欲しいの」
 静かに近づいてその身体に触れれば、返ってくるのはツルツルとした肌触りと、ゴムのような弾力だった。
 なでなでされても、構うことなく泳いでいる海の王。
 それにかこつけて撫でまわしていれば、絶妙な反発が妙に癖になる。ずっと触っていたい感情に囚われそうになるが、此処は折角の海!
 自分たちが創り出した子たちと一緒に泳ぐことが出来たのなら、もっと楽しくなるに違いない。
「じゃーん! お手製の魚型耐水ガジェット~~。名付けてサカナくん! フィーちゃん特製ペイントが超キュート!」
「うふふ、フィーも手伝わせて貰えたのうれしかったの」
 くゆりが何処からともなく取り出したのは、魚の形をしたガジェットだった。
 本物そっくりなフォルムは、今にも泳ぎ出してしまうそうで。身体の一部に描かれたフィリーネのペイントがチャームポイントだ。これも、2人の技術の結晶だろう。
「ちゃんと泳ぐんですよ、ほらほら。ちょっと動きがロボっぽいけど」
「ロボみたいな動きも可愛いよ。きっとまだ泳ぐのに慣れてないんだもの」
「そうですねェ。ウフフ、伸び代伸び代! これから泳ぎが上手くなるハズ!」
 くゆりがパッと手を離せば、少々心伴い動きで泳ぎ始めるサカナくん。
 動きが少しカクカクとしているのは、ご愛嬌! きっと、これから上手に泳ぐようになるハズである。
 突如として現れたサカナくんに、立体映像の観賞魚たちは少々戸惑ったような様子だったが――それも僅かな間の出来事で、次の瞬間には群れの一員として迎え入られたようだった。
「フィーは魔法を見せるね」
 サカナくんが泳ぎ始め出せば、次はフィリーネの番だった。
 2人の色彩であるお気に入りのインクを一滴、二滴水面に垂らしてみれば、あっという間に波紋となって海のあちこちへと散っていく。
 クマノミにスズメダイ、チョウチョウウオ。そのまま筆を走らせば、広がったインクが色々な魚たちに変化して。どんな子を描こうか。全ては魔女のお気に召すままに。
「フィーちゃんの魔法スゴーい! ホンモノにしか見えなぁい!」
 仮初の生命を得て泳ぎ出したインク製の海水魚たちは、本物とそっくりの出来栄えで。
 そのまま立体映像の群れに紛れ込んでしまえば、もう判別がつかなかった。
 興奮そのままにくゆりが泳いでいた魚の群れに向かって突っ込めば、海を割った聖人の如く、壁と化していた魚の群れが真っ二つに割れていく。
「泳ご、くゆちゃん!」
「ウフフ、遊泳デートと洒落こみますか~~!」
 立体映像にガジェットに、インク。個性豊かな魚たちが、2人のことを待っている。
 フィリーネに誘われるまま、魚たちの方へと泳ぎ出すくゆり。
 ウゴウゴと泳ぎが上手になってきたかもしれないサカナくんを追い越して、創り出された魚たちと向かうのはサンゴ礁の一角だ。
 サンゴ礁は複雑に絡まり合っていて、大きな迷路のよう。広くはないこのサンゴ礁も、隅から隅まで探索するにはそれなりに時間がかかるだろう。
 イソギンチャクからこんにちはしているのは有名なクマノミで、砂を巻き上げながら慌てて隠れたのは、何のお魚だろうか。
 サンゴ礁に住む一匹一匹挨拶して回ったのなら、とっても楽しいに違いない。
 サンゴ礁を案内するのは魚の群れ。手を繋いで泳いでいくくゆりとフィリーネに、皆を急いで追いかけるサカナくんが後に続く。
 2人と沢山の冒険譚はまだまだ始まったばかりだ。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

灰神楽・綾
【不死蝶】◆
水族館を楽しんだあとカフェへ
いや~本当に綺麗だったねぇ
水族館って魚ばっかり見ちゃうものだけど
まるでおとぎ話の世界みたいな水槽も魅力的で
俺も小さくなってあの中に住んでみたいな

あっ、着いたようだよ
待ってました~、お楽しみのアクアリウム・カフェ
せっかくだからすぐ真横に水槽がある特等席を確保

可愛くて美味しそうなメニューがずらりと並んでいて悩む
こうなったら気になるものを片っ端から注文……
したら梓に叱られるだろうな、うん
熟考の末に決定したのは熱帯魚モチーフのパフェ
水色ゼリー、色とりどりのフルーツ、アイスや生クリーム
見事な組み合わせはまるで小さなアクアリウムみたい
てっぺんの魚のクッキーも可愛い


乱獅子・梓
【不死蝶】◆
ああ、最初は小さめの魚ばかりの水族館って
そんなに楽しいんだろうか…?と失礼ながら疑っていたんだが
水槽レイアウト含めすっかり見入ってしまった
その感想はなかなか不思議だがな?

おいおい、お前は花(魚)より団子か?
カフェを前にテンション上げる綾を見て苦笑いしつつ
俺の肩に居る仔竜たちも同じような感じだった

俺は白熊がモチーフのミルクかき氷を注文
レーズンで表現されたつぶらな瞳と目が合って小さな笑みが溢れる
さて、魚たちを見ながら食べるか…とふと横を見たら
焔と零が水槽に張り付いて魚をめちゃくちゃガン見してる
さてはこいつら食いたいとか考えていないか??
こら!魚が怖がるからやめなさい!



 仄明るい館内とは異なって、カフェのある方向はある程度の明かりが確保されているようだった。
 抑えられた照明に、ぼんやりと照らし出される水槽の数々が並んでいた水族館よりも幾分か明るい周囲に、深海から浮上してきたかのような感覚が2人を包み込む。
「いや~本当に綺麗だったねぇ」
 始めは確かに手ぶらであったはずなのに、いつの間にか、両手に大量のパンフレットや説明書の類を抱え込んでいる。
 先程水槽で見た魚たちの顔ぶれを思い返すようにパンフレットを捲る灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、すっかり水族館で出会った熱帯魚たちの虜になってしまったようだ。
 あの水槽が特に気になっただの、家でも飼えたら良いのに、だの。隣を歩く乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)に、思いつくままに話し出して。
「ああ、最初は小さめの魚ばかりの水族館って、そんなに楽しいんだろうか……? と失礼ながら疑っていたんだが」
 水槽のレイアウト含めすっかり見入ってしまった、と。
 微苦笑しつつ、 梓もまた先ほど一巡りしてきた水槽たちの様子を思い出す。
 水族館といえば、海獣のショーや巨大水槽が目玉と思っていたが、小さな水槽が並ぶ姿も悪くはなかった。
 瞳をキラキラさせながら、パンフレットをずいっと近づけて想い出を語る綾の様子を、梓は優しく見守っている――なお、「おねだり」っぽい言葉は反応せずに完全スルーを決め込んでいる辺り、綾の聞き役としての対応は完璧だ。
「水族館って魚ばっかり見ちゃうものだけど、まるでおとぎ話の世界みたいな水槽も魅力的で、俺も小さくなってあの中に住んでみたいな」
「その感想はなかなか不思議だがな?」
「んー? そう?」
 神社と夏祭り、竜宮城に、小さな家の佇む大きな草原に。
 モチーフを元にレイアウトされた水槽はどれも物語のワンシーンのようで、あの世界に入ってみたいのは分からなくもない。
 しかし、「入る」と「住む」とはまた随分と違うような? と、綾との感覚の違いに梓はこてりと首を傾げた。
 カフェへと至る通路の壁にまで、等間隔で設置された水槽が目に入る。そして、水槽の中にはじっと餌をねだるようにこちらを見つめている幾つもの視線が――。
(「住むとなると、あいつらが隣人になるのか……」)
 どう考えても、餌と間違えて追いかけ回されそうである。隣人の気質によっては、平穏が得られないに違いない。
 複雑な表情で魚たちを見つめ返す梓の心境など小指の先ほども気にせずに、綾は「あそこも良さそうだね」と呑気に物件選びに勤しんでいるのだった。
「あっ、着いたようだよ。待ってました~、お楽しみのアクアリウム・カフェ」
「席はどこに――って」
「勿論、せっかくだから特等席のここにしなきゃね」
 軽口を交わし合いながら少し歩けば、お目当てのカフェの出入り口が2人を待っていた。
 青い色合いで統一されたソファーやテーブル。天井からつるされた星形の照明が、柔らかな光を宿している。
 店員への挨拶もそこそこに、「お席はご自由にどうぞ」と言われた途端、綾が目にも止まらぬ速さで、真横に大きな水槽が設置されている特等席を確保!
 「ここ俺の席ねー」と両手を使って存分に領土を主張し、そのまま大人げなくニッコリ満足げな表情で梓の到着を待つのだから、「お前は子どもか?」とツッコミそうになった。
「こうなったら気になるものを片っ端から注文……」
「……するのか?」
「――したら梓に叱られるだろうな、うん」
「よくわかってるじゃないか」
 メニュー表を開けば、ページの片隅に描かれた可愛らしい熱帯魚たちのイラストが2人のことを見上げていた。
 ページを捲れば、飛び込んでくるのは可愛らしくも美味しいメニューの数々。その中からどれか一つか、多くても数種類を選ばなければいけないだなんて。
 そんな残酷なことできない、とばかりに気になる物を片っ端から注文しようとした綾だったが、向かいに座る梓が無言で絶対零度の雰囲気を纏い始めたため、慌てて発言を取り消した。
「でも、なやむなぁ」
「おいおい、お前は花(魚)より団子か?」
 真横に並んだ大きな水槽のことなど、いつの間にやらすっかり忘れ去られてしまっている。
 メニュー表と睨めっこする綾の気を引こうと、一か所に集まって絶賛存在主張中の熱帯魚たち。しかし、一向に気付かない綾。
 綺麗なメニューを前にテンションを上げる綾を見て苦笑いしつつ、梓が両肩の仔竜たちの様子を伺えば――。
「それも頼むのか?」
『ガウ!』
『キューキュー!』
 テシテシとメニュー表の上に乗せられる前足。焔と零の4本だけでは足りないらしく、そのうち尻尾まで使って頼む料理を指定してきた。
 綾も仔竜たちも、どちらも似たような感じだ。
「よし、決めた!」
 悩みに悩んで、綾が決定したのは熱帯魚をモチーフにしたパフェだった。
 先程まで見ていた熱帯魚たちを彷彿させて、気になったのだ。
「じゃあ、俺はこれだな」
 一方の梓は、白熊モチーフのミルクかき氷を注文する。
 テーブルの上でそれぞれメニュー表をテシテシしながら「これが良い!」とばかりに鳴き声を上げていた焔と零には、それぞれまんまるクジラのケーキと、ペンギンのパンケーキを。
 注文してから暫し、運ばれてくる4つの料理にテンションは急上昇だ。
「わあ、まるで小さなアクアリウムみたい」
 丸いパフェの容器が目の前に置かれるなり、綾の視線はパフェの中の小さな世界に釘付けになった。
 南国のサンゴ礁を思わせる透き通った水色が美しい。一口サイズに切り分けられたサイダーのゼリーが積み重なっていて、よく目を凝らして探してみれば、ゼリーの熱帯魚たちが泳いでいた。
 ゼリーの海の上には、生クリームの砂浜が乗っかっている。島のように乗せられたバニラと抹茶のアイスに、砂浜で寛ぐのは、色とりどりのフルーツだ。島の天辺には熱帯魚の形をしたクッキーが乗せられていて、それがまた可愛らしかった。
「食べるの勿体ないねぇ」
「だが、食べてしまわないと溶けるぞ? さて、魚たちを見ながら食べるか……」
 梓の視線も、先ほどトレーに乗せて運ばれてきたばかりの白熊さんに注がれている。
 丸く整えられたミルクかき氷に、耳代わりのバニラアイスがちょこんと2つ。
 レーズンで表現された円らな瞳と目があえば、自然と小さな笑みが溢れ出した。
 (「さてはこいつら食いたいとか考えていないか??」)
 ふと、視界の端で何かが揺らめいた気がして――そちらの方を見れば、ケーキそっちのけで顔をガラスに押し当て、水槽の中をめちゃくちゃガン見している焔と零の姿が。
 運ばれてきた大きな魚(のケーキ)は食べられるのだから、小さな魚も勿論――とか、考えていそうである。
「こら! 魚が怖がるからやめなさい!」
 焔と零の首根っこを掴んでガラス板から引き離せば、そろりと水草の陰から怯えていた魚たちが現れる。
「のんびりしてると、クジラもペンギンも俺が食べちゃうよ?」
 綾の言葉が留めになったらしい。食べられては困ると、漸くケーキに向き合い始めた2匹。
 やれやれと頭を振りながら、梓もやっとスプーンで白熊さんを掬うことができた。
 ワイワイ賑やかにカフェを楽しむ2人と2匹の様子を、熱帯魚たちが静かに見守っている――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

筧・清史郎
【憩4人】3◆

涼やかで、鮮やかな世界だな
その上、美味なものが頂けるとはとても良い(わくわく
勿論だ、ちょこ
全メニューで鮮やかに美味しく彩ろう(瞳キラキラ、超絶甘党の健啖家)

…ん?伊織は夏バテか?(嘆く友にきょとり
ふふ、ほら、別嬪たちが寄って来たぞ
水槽に指添わせれば、甘える様に集まる魚さんたちに微笑み
おお、美味しそうなタコさんも来たな(にこにこ

流石、ちょこは紳士だな
(自分は観賞用を美味しそうと言ったこと棚に上げ)
では俺は、海色のパフェを頂こう
何、レア魚さん…それは探さねば(きりっ
一等甘い魚さんだろうか、とわくそわ食べ進め
ああ、菊里、是非獲りにいこう(微笑み

涼やかで美味なひととき
夏の暑さも和らぐな


鈴丸・ちょこ
【憩4人】3◆
此処までの水槽も壮観だったが、食事もまた見事なもんだな
水槽の彩に負けじと、テーブルも鮮やかに――全メニューで一杯にするか、清史郎?
(ぺろり、きらり
魅力的な品々に目を光らせ)
(何でも美味しく食す突然変異猫)

っくこんなに潤う水槽と食事を前に、伊織はまた干からびてやがんのか
清史郎は魚にもモテるとはやるな

あぁ?俺は紳士だ
鑑賞用と食用の違いぐらい心得てるに決まってんだろ、取って食ったりしねぇよ
(煌めく水槽愛でつつ――)そう、俺が手を伸ばすのはこっちだ(睡蓮鉢に泳ぐ魚、を象るゼリー頂き!)
お、そっちのパフェはレア魚が潜んでるぜ、清史郎

食べて良し
愛でて良し
腹も満たされ心も癒され、最高の休暇だな


千家・菊里
【憩4人】3◆
本当に、見渡す限り生きた宝石箱の様ですねぇ
テーブルも色鮮やかに輝くとなれば、つられて更に目も輝くというもの
あの魚達をイメージしたメニューだなんて、逸品揃い間違いなしですね
(わくわく食道楽同盟)

やれやれ
俺はこのジュースで喉も心も潤いますけどねぇ
伊織も熱帯魚達の様に――或いは清史郎さんの様に、もう少し優雅な余裕を身につけては?
あ、本当だ、立派な蛸さんですねぇ(つっこむどころかとても自然に清史郎さんに同意)

(――直後、可愛い蛸さんプリンをさらりと頂きつつ)
ふふ
今はこの目の前の幸を味わい尽くすとして
食用はまた今度獲りに行きましょうねぇ(!)

この夏もまた、宝石の様な思い出で満ち行きそうです


呉羽・伊織
【憩4人】3◆
大水槽は勿論、この小さな世界も良いよな
ってこの夏バテ知らず達っ
お腹壊…す心配も無用か!(笑って)
食事まで凄い宝石揃いになりそーで!

然し魚も食事も華やか&鮮やかなのに、オレ達はまた花無き白一色…
って魚も寧ろ清史郎に全集中してない?魚にまでモテるってどーいうコトなの!
あっ仲睦まじいペア魚達も可愛いネ
ハハハ~(清史郎にも魚にも完敗)
…ん?食欲は甘味に向けなさい~!

コホン
ちょこニャンも水槽のお魚達にまで手を出しちゃ駄目だぞ?
あ、レア魚パフェ可愛いな
この可愛い絵面、食べ辛…って皆相変わらずの食べっぷりー!

楽しい光景と美味しい涼味で
ホント心まで潤う心地だな(何だかんだ水を得て生き返った笑顔)



 変わることを知れば、変わらないことがどれほど虚しいかを思い知らされる。
 変わらないものを知れば、変わることの寂しさを突きつけられる。
 ともすれば、時折議論の火種にもなってしまう「刹那」と「永遠」の優劣。
 しかし、本当に美しいものに優劣はつけられない――直感的にそう感じさせるだけの何かが、此処にはあった。
 少し前に皆で眺めていた宝石箱の数々も美しければ、今、目の前に並べられている食べられる宝石もまた美しい。
 楽しい一時は一瞬で過ぎ去ってしまうけれど、その時過ごした想い出は永遠に残る。来年の夏には、「こんなところに行ったよな」と。そう想い出話をしているかもしれない。
「此処までの水槽も壮観だったが、食事もまた見事なもんだな」
 せずの後悔より、しての後悔!
 アレもコレも美味しそう。一人で食べきれずとも、皆で食べれば――そんなノリと思い付きで注文された料理の数々は、あっという間にテーブルの殆どを覆い尽くしてしまっていた。
 もはや自分がどれを注文したのかすらもあやふやなってしまう程。でもまあ、美味しければそれで良し。
 テーブルにずらっと咲いた夏色の色彩を目の前に、イスにちょこんと乗っかった鈴丸・ちょこ(不惑・f24585)は爛々と金の瞳を輝かせていた。
 にゃんこはにゃんこでも、ちょこは並外れてグルメなにゃんこである。猫としての本能とグルメとしての直感が先ほどからビンビンに告げているのだ――この料理は間違いなく上手い、と。
「本当に、見渡す限り生きた宝石箱の様ですねぇ」
 テーブルが色鮮やかに輝けば、瞳も更に輝いてしまうのも自然なこと。
 ちょこの言葉に千家・菊里(隠逸花・f02716)はうんうんと深く相槌を打つ。
 テーブルにも、水槽にも。色彩豊かな宝石が、見渡す限りあちこちに。
「涼やかで、鮮やかな世界だな。その上、美味なものが頂けるとはとても良い」
 続々と運ばれてくる料理に、わくわく高鳴る一方の期待と気持ち。
 筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)が胸内で大きくなる一方の楽しみままにニコリと微笑み一つ零せば、料理も微笑み返してくれたような気がした。
「水槽の彩に負けじと、テーブルも鮮やかに――全メニューで一杯にするか、清史郎?」
「勿論だ、ちょこ。全メニューで鮮やかに美味しく彩ろう」
 売り言葉に買い言葉。
 キラキラ一等星よりも眩く輝く赤と金が交われば、先ほどまで閉じられていたメニュー表が再び開かれる。
 気になる物を片っ端から、目指すは全メニュー制覇!
 ぺろり、きらりとメニュー表をテシテシと肉球で突きながらちょこは次の注文を考えている。
 一般の犬猫にチョコレートはご法度でも、突然変異猫であるちょこは何でも美味しく食べてしまう。チョコレートも勿論、甘くて美味しいからバッチコーイ! の状態である。
 超絶甘党で健啖家である清史郎も、生クリームたっぷりだの、イチゴの3層クリームだの。甘さマシマシな気になる料理に片っ端から印をつけ――同じものを頼んでしまっても、それはそれで二度美味しいが楽しめる。今まで何を頼んだのか、それはさほど重要視してはいなかった。
「あの魚達をイメージしたメニューだなんて、逸品揃い間違いなしですね」
 気になる料理に肉球スタンプを施していくちょこや甘味を攻める清史郎。2人に負けず劣らずの勢いで、菊里もまた、メニュー表を捲っていた。
 菊里が選んでいるのは、先ほどぐるりと巡ってきた熱帯魚たちをイメージした料理の数々だ。
 熱帯魚たちが浮かんだサイダーや、金魚を閉じ込めたゼリー。そのどれもが逸品に違いない。
「大水槽は勿論、この小さな世界も良いよな――ってこの夏バテ知らず達っ」
 わくわく食道楽同盟の勢いは止まらない。
 いつの間にか、テーブルは料理の置き場が無くなってしまっていたようで。自分達のテーブルだけではなく、その両隣のテーブルにまで3人が注文した品が溢れてしまっている有様だ。
 深海の世界から浮上しても、未だ意識は深蒼に沈む大水槽のなかにあるようで。
 先ほど見た大水槽は美しかったけれど、小さな世界もまた綺麗だと。のほほんとテーブルの端に乗っている小さな水槽を眺めていた呉羽・伊織(翳・f03578)は、ふと目の前に視線を移し――一瞬、真顔に戻った。
 自分が水槽のグッピーたちと戯れている少しの間に、何があった。気が付けば、テーブルを埋め尽くす夏色の暴力。
 誰が犯人なんて、問うまでも無かった。言うまでも無く、目の前のトリオである。
「お腹壊……す心配も無用か! 食事まで凄い宝石揃いになりそーで!」
 後先考えずに、これだけ頼んだら――と思ったのも一瞬、自分達なら余裕で完食してしまうだろうと伊織は顔をほころばせる。
 食べてしまうのが勿体ないほどの宝石たちをぐるりと見渡した伊織は、ふとこの場に足りないモノの存在を思い出して。
 料理に風景に、宝石箱に。それから、賑やかな友の姿。一見すると完璧なまでに全てが揃っているようにも思えるが。
 しかし、この場において圧倒的に不足しているものがあった。
「然し魚も食事も華やか&鮮やかなのに、オレ達はまた花無き白一色……」
 寧ろ紅だけが足りないとか、狙ってやってない?
 さっきオレが見てた水槽のグッピーも、よく見ればオスばっかじゃん……。
 テーブルに突っ伏しようとしてグラスに額をぶつけた伊織の嘆きは、賑やかな周囲の喧騒に吸い込まれて消えていく。
「やれやれ。俺はこのジュースで喉も心も潤いますけどねぇ」
「っくこんなに潤う水槽と食事を前に、伊織はまた干からびてやがんのか」
「彼、いつも干からびているのは気のせいですかね?」
「気のせいじゃねぇな」
 ベシッと容赦なく伊織の後頭部にお見舞いされるちょこの肉球パンチに、菊里の呆れた声が重なった。
 カラカラと涼やかに奏でられる氷の演奏に、立ち上るサイダーの泡を背景にしながら、ジュースの中でペンギンが躍っている。
 菊里はこのペンギンジュースだけで身も心も潤うというのに、伊織はそうではないらしい。
 何を言っても、返ってくるのは亡者のような呻き声ばかり。
「……ん? 伊織は夏バテか?」
 テーブルの端にどうにか額を乗っけつつ、言葉にならない呻き声をあげる伊織に夏色のアイスクリームを突いていた清史郎はきょとりと瞳を瞬かせる。
 口の端に着いていたアイスクリームを拭いながら清史郎が水槽を眺めれば、途端に近寄ってくるのは愛らしい姫ベタたち。
 清史郎が魚たちを驚かせないようにそうっと水槽に指を添わせれば、甘えるように集まってくる。
 身体をゆったりと揺らしながら、ガラス越しにすり寄る仕草はとても可愛らしい。
 するすると指を滑らせて戯れる清史郎の表情にも、自然と微笑みが浮かんでいた。
「ふふ、ほら、別嬪たちが寄って来たぞ」
 夏バテ(?)らしい伊織に少しでも元気になって欲しくて。
 そう声をかければ、ガバリ! と力強く起き上がって――すぐにまたぺしゃっと風船のように萎んでしまった。
「別嬪たちって、魚じゃん……って魚も寧ろ清史郎に全集中してない? 魚にまでモテるってどーいうコトなの!」
「清史郎は魚にもモテるとはやるな」
 伊織が抗議の声を上げても、魚たちはどこ吹く風。彼女たちは、清史郎の爽やかな微笑みしか視界に入っていないらしい。
 伊織を前足でフミフミ、尻尾でペシペシしつつ、ちょこはモテモテの清史郎に賞賛を送る。どうにも清史郎は、種族を問わず何かを引き寄せる魅力を持ち合わせているらしい。
「おお、美味しそうなタコさんも来たな」
「伊織も熱帯魚達の様に――或いは清史郎さんの様に、もう少し優雅な余裕を身につけては? あ、本当だ、立派な蛸さんですねぇ」
 姫ベタの住まう水槽だけではなく、その隣に並べられていた水槽からも、姿を見せた別嬪さんがひとり。
 たこつぼからそっとその姿を覗かせたのは、小さくも色鮮やかな身体を持つ立派な蛸さんだった。
 別嬪さんが魚だと知って再びミイラと化した伊織にやれやれと小さく頭を振った菊里は、突っ込むどころが――とても自然な流れで清史郎に同意を示す。
 だって、とっても美味しそうなんだもの。きっと、仕方がない。
「あっ仲睦まじいペア魚達も可愛いネ。ハハハ~」
 清史郎にも魚にも完敗した伊織は、力なく乾いた笑みを零す。圧倒的な力量差に、試合は始まる前から終わっていた。
「……ん? タコ料理なんて頼んだか?」
 天日干しのあり様だった伊織の耳元を掠めたのは、ぽっと湧いて出た「タコ」というワード。
 内心で首を傾げつつ菊里たちの方を見れば、それはそれは立派なタコ料理――ではなく、恐らく観賞用の、色鮮やかなタコの水槽が目に入った。
「って、食欲は甘味に向けなさい~!」
 清史郎のタコを見る目なんぞ、もはや食材を見極める健啖家の眼であった。じっとタコを射抜いて、あれはどんな料理にすれば美味しいかなんて……そんなことを考えているに違いない。
 そして菊里に至っては、ごく自然な流れで「たこつぼタコさんプリン」なんて名の、可愛らしくディフォルメされたタコさんプリンを食べている……勿論、水槽のタコを眺めながら。
「コホン。ちょこニャンも水槽のお魚達にまで手を出しちゃ駄目だぞ?」
「あぁ? 俺は紳士だ。鑑賞用と食用の違いぐらい心得てるに決まってんだろ、取って食ったりしねぇよ」
 タコに瞳を煌めかせる清史郎と、タコ(プリン)を食べながらタコ(生物)を眺める菊里に、「ちょこニャンもこうなっちゃ駄目だぞ?」と伊織が忠告するが――ちょこは肉球パンチでそれを払い除けた。
 こちとら、ジェントルマンなにゃんこである。観賞用の魚を食べるなんて野暮なこと、するはずがないのである。
 代わりにちょこが狙う獲物といえば。
「そう、俺が手を伸ばすのはこっちだ」
 水槽を愛でつつ、睡蓮鉢に泳ぐ魚モチーフのゼリーを鮮やかな手つきで攫ったちょこ!
 そのまま口に運んで魚ゼリーをはもはもすれば、ふんわり甘い味が口内に広がった。
 ちょこはぺろりと口の周りを舐めながらご満悦な表情だ。睡蓮鉢ゼリーを狙っていた誰かさんの悲鳴なんて、聞こえない振りである。
「流石、ちょこは紳士だな」
「おや? あのタコさんを見て美味しそうと言っていたのは誰でしたかねぇ」
「はて、なんのことだろうか?」
 棚に上げるだけでは飽き足らず、棚の扉までしっかり閉めて。何なら無かったことにして。
 きょとんととぼけ合う、清史郎と菊里。
 片や観賞用を美味しそうと言った誰かさんで、もう片や、タコさん(生物)の前でタコさん(プリン)を食べていた誰かさんである。
 にこにこ微笑み合う2人の誰かさんを見ていたちょこは「どっちもどっちだな」と呟いたとか。
「ふふ。今はこの目の前の幸を味わい尽くすとして、食用はまた今度獲りに行きましょうねぇ」
「ああ、菊里、是非獲りにいこう。折角なら、一等活きの良いものを――では俺は、海色のパフェを頂こう」
 完全に水に流された、先ほどの「美味しそう」発言から始まる一連のやりとり。
 にこにこと微笑み合う2人の脳内で、いったいどんなタコさん料理が登場しているのかは――2人しか知らぬこと。唯一言えることといえば、古今東西の「美味しそう」なタコさん料理が次々に浮かんでは消えていっているだろうことくらいか。
 今日は鑑賞を楽しんで、本物のタコさん(食用)を楽しむのはまたの機会に――そうすれば、約束と楽しみと想い出とが、一辺に増えるだろうから。
「お、そっちのパフェはレア魚が潜んでるぜ、清史郎」
「何、レア魚さん……それは探さねば」
 涼やかな青色の海色パフェの中にかくれんぼしているのは、海水魚をモチーフにしたゼリーたち。
 海色の中にじっと息を潜めて、見つけ出されるその瞬間を今か今かと待ち侘びている。
 メニュー表を眺めるちょこ曰く、滅多に見られないレア魚さんが居るんだとか。
 一早く清史郎のパフェの中にレア魚さんを見つけ出したちょこ。
 ちょこの言葉に「一等甘い魚さんだろうか」とか、そんな期待を抱きつつ。清史郎はきりっとした表情で、さくそわと海色パフェを食べ進める。
「あ、レア魚パフェ可愛いな」
 オレも、と幾つか頼まれていた海色パフェの一つを引き寄せた伊織。果たして、この海色パフェの中にはレア魚さんは潜んでいるのだろうか。
 スプーンで一口分海色を掬えば、ひょこっと顔を覗かせたのは、可愛らしいツノダシで――。
「この可愛い絵面、食べ辛……って皆相変わらずの食べっぷりー!」
 きゅるんと自分を見上げるツノダシのせいで、非常に食べ辛い。ひょこひょことスプーンの先っぽでツノダシの「ツノ」を突きながら、伊織が3人の様子を見てみれば――普通に食べてた。
「食べて良し。愛でて良し。腹も満たされ心も癒され、最高の休暇だな」
 小さな睡蓮鉢を前足で器用に抑えながら、ちょこはあぐあぐと金魚(ゼリー)を食べ進めている。
 食べて良し、愛でても良し。どちらも楽しめるのだから、これ以上に贅沢なことは無い。
「ええ。この夏もまた、宝石の様な思い出で満ち行きそうです」
 タコさんプリンを食べ終えた菊里は、イルカクレープなるものに手を伸ばしている。
 クレープ生地からひょっこり体の上半分だけを覗かせたイルカさんを齧りつつ、想い馳せるのは今年の夏のこと。
 夏はまだまだ本番を迎えたばかり。これからもっと美味しいものや、楽しい出来事が自分達を待っているに違いない。
「夏の暑さも和らぐな」
「ホント心まで潤う心地だな」
 すっかり夏色の涼しげな景色が出来上がってしまったテーブル周辺は、見ているだけで「涼」を感じられた。
 清史郎の呟きに、なんだかんだで生き返った伊織が相槌を打つ。
 涼やかな夏色の甘味たちに、テーブルの端に乗る小さな宝石箱、そして隣には友の姿。とても豪華な夏色のお茶会は、もう暫くの間続きそうだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第2章 集団戦 『夏の思い出トリオ』

POW ●ひまわり怪人・ウェポン
【ひまわり兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD ●かき氷怪人・ジェノサイド
【かき氷攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ ●蚊取り線香怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【蚊取り線香】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



『ひどいっスよ、先輩! 僕を見捨てて逃げるだなんてぇ!』
 穏やかな時間は突如として崩れ去る。
 水族館を楽しんでいた猟兵たちの耳に飛び込んできたのは、警備員の怒鳴り声だ。
 何事かとエントランスの方を向けば、どたどたと騒がしい足音を立ててこちらへと走ってくる、トンチキな被り物? を被った怪しい3人組の姿と、それを追いかける数人の警備員の姿が確認できた。
『あれはお前が悪い! 不可抗力だ! トイレで火を使うバカがいるかっ!?』
『いやぁだってココ――蚊取り線香の『か』の字も無いんですもん。かき氷もヒマワリもあるのに?
 僕だけ爪弾きの出番なし、とんだのけ者じゃないですかぁー。だから、ちょぉーっとトイレで、』
 イマイチ緊張感に欠ける蚊取り線香怪人を、ひまわり怪人が大きく叩く。しかし、それで懲りるような蚊取り線香怪人ではなかった。
『それでとっ捕まったって言ってんだろ!?』
『いやぁ……最近の火災報知器って、ちょー高性能なんですねェー。驚いちゃいました』
『お陰で、裏からこっそり侵入する計画がパアじゃねえかっっ!!』
 『バトルオブフラワーズ』が猟兵たちの勝利に終わって久しいが――時折、こうして怪人の残党が襲い掛かってくることもある。今回も、そのケースなのだろう。
『なにが『夏といえば、熱帯魚!』だ! 烏滸がましいにも程がある!
 クーラーなど不要! 扇風機と蚊帳さえあれば十分だろう! それに夏といえば、向日葵にかき氷、蚊取り線香と決まっている! これぞ、太古の時代より連綿と受け継がれている夏の醍醐味なのだ!』
『……カビた古くっさい価値観の間違いじゃないんですかねぇ。今となっては化石ですよ、化石』
 唐突に演説を始めたかき氷怪人に、水を差す蚊取り線香怪人。茶々を入れた蚊取り線香怪人の頭を、ひまわり怪人が無言でスパァン!! っとすっぱ抜いた。
『歴史の浅い熱帯魚に唆されるなど言語道断の行い。よって、此処は我等『夏の思い出トリオ』が占拠する。熱帯魚たちは無論、人質だ。熱帯魚たちの命が惜しくば、古き夏の良さを今一度――』
『……あれれ? ヒト? 人質? 魚質の間違いじゃないんですかぁ?』
『いいからお前は黙ってろ!!』
 ――妙に締まらない雰囲気ではあるが、彼らは怪人の残党であり、立派なオブリビオンだ。
 それに堂々と水族館の占拠宣言を行った以上、見過ごしておくことはできない。
 彼らは熱帯魚たちを人質ならぬ魚質にするつもりらしく、不必要に傷付けることはしないだろう。キマイラを始めとする一般客たちもきゃあきゃあとはしゃいだり、動画を撮ったりしながら――一応、避難はするつもりのようだ。
 幸い、水族館は戦闘に支障にならないだけの広さはある。骸の海より蘇りし怪人たちには、早急にお帰りいただこう。
【冒頭補足】
 集団戦ですので、イメージとしては、冒頭の3人組が何組も水族館中に居るような感じです。
 トリオを全組倒せば、無事解決です。
夜鳥・藍
キマイラフューチャーの怪人って基本あの被り物や着ぐるみの形態なんですか?
経験は少ないですが、こちらで出会う方々って猟書家以外あの形なんですよね……。
あとお魚の命が惜しくばって事は、こちらのうっかりの流れ弾も体を張ってお魚さんを護ってくださると言う事なのでしょうか?

目立たないようにしてなおかつUCクリスタライズで姿も消します。
蚊取り線香自体に当たらなければ相殺も何もないですし。ただ煙の動きで悟られかねないのでそこは注意します。
少々卑怯ですがそっと近づいて後ろから青月で攻撃を仕掛けます。纏まってくださってるなら切りつけ攻撃ですが、そうでなければ体重か勢いを乗せた刺し攻撃で確実に深手を与えましょう。



 夏場だというのに、被り物(?)らしきものに身を包んだ怪人たち。
 暑くないのだろうか――という問いの答えは、本人達にしか分からぬことなのだろう。
 キマイラフューチャーに出現する怪人たちは何故だか、被り物や着ぐるみ姿の者が多い。彼らなりの美学がそうさせているのだろうか。
「キマイラフューチャーの怪人って基本あの被り物や着ぐるみの形態なんですか?」
 微妙に受けないコントを炸裂させている3人組を前に、夜鳥・藍の疑問が口から滑り落ちていく。
 何故、着ぐるみなのか。何を狙ってそうなっているのか。真相は恐らく、とうの昔に骸の海に放り出されてしまっていることだろう。
(「経験は少ないですが、こちらで出会う方々って猟書家以外あの形なんですよね……」)
 ヤカンや如雨露を被った集団に、動物の着ぐるみを来た面々、頭部だけがアルパカの怪人。キマイラフューチャーでの依頼経験は少ないが……今まで藍が出会ったほとんどの怪人が、珍妙な衣装に身を包んでいた。
 今まで出会った個性の濁流ともいえる面々を思い出し、若干遠い目をしていた藍。しかし、やるべきことは決まっているのだ。
(「あとお魚の命が惜しくばって事は、こちらのうっかりの流れ弾も体を張ってお魚さんを護ってくださると言う事なのでしょうか?」)
 気にはなるが、実際に試す訳にもいかない。しかし、彼らなら期待を裏切りはしないだろう。身を張ったコントでお魚さんたちを護ってくれるに違いない。
(「少々卑怯ですが……」)
 3人組ははしゃぎながら逃げていく一般客に夢中で、藍の行動には気づいていない。
 今がチャンスだと感じた藍はそっと気配を消し――能力を発動させて、その姿をも透明にさせた。
 空調設備のせいか、蚊取り線香の煙の流れはおおむね一定だ。不自然に煙を揺らし、自身の存在を悟られることがないように細心の注意を払いながら、藍は物音一つ立てずに3人の背後に回り込む。
「――ここです!」
 水族館の青交じりの白い照明に、一振りの影が映り込んだ。
 ぼんやりと青白い光を放ちながら深蒼の世界に浮かび上がるのは、藍の愛刀である両刃造の打刀『青月』だ。
 3人組の背中を真っ二つに斬り込むように、勢いのままに一閃を放つ。
 おしゃべりに夢中であった怪人たちは、完全に背後を取られる形となった。
 斬りつけられた鋭利な傷跡が一拍遅れて浮かび上がり――強烈な痛みが怪人たちに襲い掛かる。
『先輩たち、急に倒れてどうしちゃったんです? カフェのかき氷でも盗み食いし過ぎちゃいましたぁ……って、あだだあぁぁっっ!!?』
「……いまいち締まらない光景ですね」
 右へ左へゴロンゴロン。痛みのあまり転げ回っている怪人たちだったが、服装のせいでコントのようにしか思えない。
 しかし、シュールでコミカルな見た目に騙されてはいけない。彼らはれっきとした、「今」を生きる者達を危険に晒す、過去の存在なのだから。
「コントの続きは、どうぞ骸の海で」
 確実に仕留めるために。床でのたうち回っている怪人たちを前に、藍は『青月』を構え直した。
 そのまま1人ずつ体重を乗せて刀で貫けば――一瞬後には何も無かったかのように、トリオの姿はふわりと消える。
 彼らを倒すことは赤子の手をひねるよりも、簡単なことだった。藍の洗練された身のこなしに、逃げるのも忘れて魅入っていた一般客たちから歓声が上がる。
 まずは、1組。順調な滑り出しだ。
 水族館のあちこちに散らばっている他の面々も倒さなくてはと、藍は『青月』を握り占める。
大成功 🔵🔵🔵

ベルンハルト・マッケンゼン
【炎桜】◆WIZ
相思相愛の恋人と共に、水族館デート。
二人で手を繋ぎ、館内を探索。
ひときわ鮮やかな珊瑚の大水槽の前で、彼女と並び立ち止まる。
「インド洋に浮かぶ真珠の首飾り、モルディブの海だな……」

隣の彼女の腰に手を回し、その女性らしい身体をそっと引き寄せる。
「こっちにおいで、真琴。貴女を、もっと感じていたいから……」

素直に身を預けてくれる最愛の想い人が、とても愛おしい。その美しい唇にキスをして……甘美な味に酔いながら、舌を絡め合う。
「愛している……私の一番大切な人。貴女の全てが、何よりも魅力的なんだ。私には……」

蚊取り線香は観賞魚やシュリンプに有害なので倒す。
「甘い時間の邪魔だ。戦術的に…フッ」


新海・真琴
【炎桜】◆WIZ

ベルンハルトと手を繋いで、水族館でデートっ!
水族館、ここまで大掛かりなのはサクラミラージュだとなかなか無いからなぁ……
南海のサンゴ、だね。綺麗だー

腰に手を回されれば、上半身を預けるように少しもたれかかって
「ボクも……ふふっ、なんか、照れくさいな……」

寄りかかった感触は自分よりも堅くて意外と逞しいし、いつもはボクが腕力任せで忘れがちだけど
やっぱり、男の人なんだな、って……
「大好きだよ、ボクも。君の全部が……」

あっ、お前は蚊取り線香怪人!
「ボクらの恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られてなんとやら!だよっ」
(周囲の水槽に影響が無さそうなことを確認した上で、鬼火を投げつける)



 海の中に沈んだ、深い蒼色の世界。
 空調が適度に効いた館内は、少し肌寒さを感じる程だ。
 一般客は如何にも「熱帯魚です」という色鮮やかな水槽に惹かれているようで、全く人気の無い場所もあった。
 そのような水槽が佇むスペースを巡れば、まるで世界に2人きりになったかのよう。
 歩む度にコツコツと硬い靴音の反響するその世界を、2人で一つ一つ巡っていくのだ。
「水族館、ここまで大掛かりなのはサクラミラージュだとなかなか無いからなぁ……」
 物珍しさもあって、惹きつけられてしまう。
 少し涼しすぎるほどの館内で、唯一の温かい――いや、熱いくらいかもしれない存在が、新海・真琴のすぐ隣に存在していた。
 恋人であるベルンハルト・マッケンゼンと解けてしまわない程に絡め合った指先から、熱いくらいの温もりが伝わってきている。
 火傷してしまいそうなほど温かい彼の体温に、ベルンハルトもまた自分と同じように緊張しつつも、この水族館デートを楽しんでいるのだと考えると――それだけで、真琴の胸中はいっぱいになった。
「インド洋に浮かぶ真珠の首飾り、モルディブの海だな……」
 ありとあらゆる地域・地方を、この館内に小さく閉じ込めたような。幾つもの水槽と世界を巡る中で、ベルンハルトが足を止めたのは、とある大水槽の前だった。
 花畑を描いた極彩色の絵画のように。一際色鮮やかで、大きな珊瑚の水槽が2人の目の前に広がっている。
「本当だ。南海のサンゴ、だね。綺麗だー」
 ベルンハルトの言葉通り、モルディブの海をモチーフに作られたのだろう。
 真琴の銀色の双眸に彩差したのは、海の中とは思えない程の色彩の数だった。
 寒色系は少なく、桃色や赤、黄色といった暖色系が目立つ。
 インド洋に浮かぶ青と緑の天国。美しいのは何も、ビーチや自然だけではない。南北に連なる「真珠の首飾り」と呼ばれる島々の真下にまで、楽園のような光景が広がっているのだ。
 海底の砂が見えないくらい咲き誇っているのは、珊瑚という名の花たち。
 そしてその上では海に舞う花吹雪のように、小魚たちが群れを成して、その身体に照明の光を反射させている。
「いつか、一緒に行ってみたいね」
 サンゴ礁の海を見上げたままの真琴はウットリとした表情で呟いた。
 透き通った碧の海で、立体映像ではなく本物の熱帯魚たちと遊泳することが出来たのなら。
 天国のような島とビーチで、2人きり。最愛の恋人と最高の一時を過ごすことができたのなら……。
 きっとそれ以上に幸せなことは、存在しないに違いない。
「ああ。いつか、な……」
 いつかに想いを馳せつつ、共に碧の世界に目を向ける。
 碧の世界に思いを馳せ、それから隣で佇む最愛へと意識が向いて。
 視線と視線が絡み合えば、言葉にせずとも互いが何を望んでいるのか、手に取るように分かった。
「こっちにおいで、真琴。貴女を、もっと感じていたいから……」
 視線を絡ませたまま、ベルンハルトは真琴の腰に手を添えるように回すと――女性らしい、全体的に柔らかさを帯びた真琴の身体をそっと引き寄せる。
 自分を支えるようにして回された手にそっと微笑むと、真琴は上半身を預けるような形でベルンハルトに凭れ掛かった。
「ボクも……ふふっ、なんか、照れくさいな……」
 密着しあうことによって、近かった距離が殆どゼロになる。
 お互いの心臓の鼓動さえ聞こえてしまいそうなほどで。
 真琴がベルンハルトの胸に身体を預けたまま彼のことを見上げれば、優しく自分を見つめる双眸と目が合った。
 感じる機会があるようでその実少なかった、彼に寄りかかった時の感触。
 普段はシャツの下に隠されているせいで意識することはあまりないが、戦士をしているだけあって、ベルンハルトの身体はかなり鍛えられている。
 自分よりも堅くて逞しい体つきに、頼もしさを感じてときめかなかったと言えば嘘になる。
(「いつもはボクが腕力任せで忘れがちだけど。やっぱり、男の人なんだな、って……」)
 改めて恋人の「男らしさ」を実感し、薄暗い水族館内でも一目で分かるほどに顔を薄赤く染めた真琴。
 素直に身を預ける彼女に愛しさを抱いたベルンハルトは、恥ずかしさのあまり下を向いてしまった真琴の顎を、そっと掬い上げるように持ち上げる。
「愛している……私の一番大切な人。貴女の全てが、何よりも魅力的なんだ。私には……」
「大好きだよ、ボクも。君の全部が……」
 お互いにしか聴こえない大きさで愛を囁き合いながら、重なるのは熱を孕んだ柔らかい唇。
 戯れるように互いの下唇を軽く食み合うだけであった口付けは、徐々に深いものへとなっていく。
 真琴がベルンハルトの首筋へと両腕を回して抱き着けば、がっしりとした強い両腕支えてくれる。
 逃れられぬように、離さぬように。ベルンハルトもまた、より強く真琴をかき抱いた。
 零距離で交わる吐息に、瞳には最愛の存在しか映り込まない。息継ぎをする間もなく互いの存在を貪り、暫くの間、甘美な味に酔いしれた。
「ちょっと、ふらふらしちゃったかも……」
 真琴の瞳がトロンとピントを定めなくなったところで、ベルンハルトは名残惜しみながらも、そっと彼女を解放した。
 くったりと脱力したまま身体を預ける真琴の姿に、少々やり過ぎてしまったかと若干の後悔に襲われるが、それもこれも、彼女がとても愛らしいのが悪い。
「そろそろ何処かで休憩するのも良いかもな……」
「そうだね。少し休憩するのも、悪くないかも?」
 まだ見ていない場所は色々とあるが、急いで回る理由も無い。
 お互いの存在を感じ合いながら、このまま2人でのんびりと水族館巡ることが出来れば――。
「あっ、お前は蚊取り線香怪人!」
『……げげっ!? 先輩たちよりも前に、ヒーローに見つかっちゃいましたぁー!?』
 『やだあぁー!!』と館内に木霊するのは、場違いな程に明るい怪人の声だ。
 カフェか、休憩スペースに。移動を始めようとした2人の前に現れたのは、逸れたのか、一人で水族館を彷徨う蚊取り線香怪人の姿で。
 最悪なタイミングで出会ってしまった2人と1人。
 蚊取り線香怪人はまだ何か言いたそうに口を開きかけたが、それよりも早く、恋人との時間に水を差され、むっとした表情の真琴が叫んだ。
「ボクらの恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られてなんとやら! だよっ」
 ムカつきを感じるがままに。蚊取り線香怪人に襲い掛かるのは、真琴が放った銀色の鬼火だ。
「甘い時間の邪魔だ。戦術的に……フッ」
 蚊取り線香は観賞魚やシュリンプに有害である。特に繊細なシュリンプなんかは――真琴の鬼火の陰に隠れるようにして飛び出したベルンハルトは、黄金の銃剣を引き抜いた。
 最愛の時間をぶち壊しにした罪は重い。
 白銀の焔に包まれ『あっちっちいぃ!!?』等と転がりながら叫んでいる蚊取り線香怪人にも容赦なく、黄金の輝きを宿す銃剣で蚊取り線香怪人を貫いた。
「一件落着……だろうか」
「さて。デートの続き、だね?」
 蚊取り線香怪人をちゃっちゃと倒し、仕切り直しとばかりに微笑み合うベルンハルトと真琴。
 次は何処に行こうか、なんて。全てを巡るまで、愛しい想い人のデートは終わらないことだろう。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ルーシー・ブルーベル
【月光】

ルーシー、かき氷もセンコウもキライじゃないわ?
ヒマワリは特にすっごく大好き!

去年の夏にゆぇパパとヒマワリが咲く海に行ってね
パパの目の色とルーシーの髪の色がヒマワリだねってお話したの
大好きなパパとお揃いの色があるって証のお花
だからルーシーにとってすごく大切なの
うん、いっしょに植えたのよね!
かき氷もパパと食べたし
センコウだってお世話になってるわ

そんなヒマワリさん達がクマノミさん達を苛めるのは悲しいの
だから、メッてします

【ふたいろ芥子の怪火】
パパのお力を守護、強化
相殺する間も与えない

ルーシー、ワガママなんだもの
ヒマワリもかき氷も、センコウも、お魚さんも
ぜんぶ楽しみたいわ
パパといっしょに、ね!


朧・ユェー
【月光】

えぇ、かき氷や蚊取線香、向日葵は夏の風物詩ですものねぇ

そうですね。
向日葵はルーシーちゃんとの想い出の花、二人の大切な花ですね
僕とこの子の絆の花ですね
花壇に今向日葵を植えているのですよ
かき氷も皆で色んな味を食べて楽しい想い出ですし
蚊取線香も虫から護る為に必要なものですものね

えぇ、そんな方達が魚達を苛めるのはいけません
お仕置きしないといけませんね

獄導
嫉妬や悲しみ、怒りは地獄へ連れて逝きましょうか?

えぇ、どれも楽しみですね
一緒にまたどれも楽しみましょうねぇ
とルーシーちゃんの頭を優しく撫でて



 夏といえば、向日葵にかき氷に、夏祭り、花火にプールに――。
 キャンプや夜更かしだって、外せない。イベントも多ければ、誘惑の数も多いのが夏という季節。
 だからどれか一つだなんて、絞れない。欲張りだから、その全部を楽しみたい。
 でも、目の前の怪人さんたちにとって、それはちょっと違うみたい。
「ルーシー、かき氷もセンコウもキライじゃないわ?」
 向日葵にかき氷に、線香に。勿論、キャンプや夏祭り、海水浴だって。
 皆仲良く出来れば良いのに。なんで仲良くしないのだろう。
 かき氷は甘くて美味しいし、センコウをのんびりと眺めながら大好きな人達と語らうのだって楽しい。ルーシーは全部好きなのに。
 きょとんと目を瞬かせて、こてりと首を傾げたルーシー・ブルーベルの口から謡うように紡がれるのは、怪人さんたちにとってご褒美とも呼べる言葉の数々。
 何かを欲しいのなら、その辺をコンコンすれば良いし。技術が発達しているのに、わざわざ古い時代に目を向ける存在なんて多くは無いし。
 誘惑が桁違いのキマイラフューチャー。そこで半ば化石と化していた彼ら――何なら、骸の海からも忘れ去られていたかもしれない――にとって、ルーシーの言葉は久しく聞いていなかった誉め言葉だ。
「それにね、ヒマワリは特にすっごく大好き!」
 パパとの想い出の花だから。
 一身に太陽を追いかける向日葵のように花咲くのは、ルーシーの愛らしく無邪気な微笑み。にぱっと明るく微笑みかければ、あまりの尊さにひまわり怪人が崩れ落ちた。
『天使は此処にいたッ……!!』
 ひょっとしたらUDCアース以上かもしれない、キマイラフューチャーでの「いいね」争奪戦。それは、イベントが盛りだくさんな夏に一層苛烈になる。
 「朝顔の自由研究」とか、「グリーンカーテン」とか。「写真映え」で萎れかけた瞬間に刈られる向日葵畑とか。色々と肩身が狭かったひまわり怪人にとって、ルーシーの存在は救世主のように映ったに違いない。
「えぇ、かき氷や蚊取線香、向日葵は夏の風物詩ですものねぇ」
『我等の存在を肯定せし……お主が神か!?』
 ルーシーの言葉に、穏やかに微笑んで相槌を打った朧・ユェー。
 かき氷も蚊取り線香も、向日葵だって。夏といえば、と考えた時に外せない程の風物詩だ。
 天使だけでは無く神も居たと、そんなユェーをざっと拝み始めたかき氷怪人。
 先程までの態度は何処へやら。手のひら返しはあっという間。存外、チョロかった。
「ヒマワリはパパとの想い出の花だもの。去年の夏にゆぇパパとヒマワリが咲く海に行ってね。パパの目の色とルーシーの髪の色がヒマワリだねってお話したの」
「そうですね。向日葵はルーシーちゃんとの想い出の花、二人の大切な花ですね」
 瞳と髪に咲く、太陽の花。今年もヒマワリの季節が来たんだって、そう考えるだけでワクワクするから。
 花々の泳ぐ夏の海。海での冒険は初めてのことばかりで――そこで見つけたパパの瞳の色と、ルーシーの髪の色。
 お揃いだって気が付いたその時から、2人にとってヒマワリは一等特別なお花になったのだ。
「大好きなパパとお揃いの色があるって証のお花。だからルーシーにとってすごく大切なの」
「ええ。僕とこの子の絆の花ですね。花壇に今向日葵を植えているのですよ」
「うん、いっしょに植えたのよね!」
 季節は一周したけれど、去年の魔法の海での出来事は、昨日のことのように鮮やかに思い出せる。
 魔法の海での出来事は、2人だけの物語。これからも、この先もずっと。
 水中に浮かぶ向日葵の美しさは、その目で見ないと分からないだろうから。
 2人だけの秘密と思い出を交わしていけば、自然と口元も綻んでしまう。
 海中の次は陸に咲いた向日葵畑が見たかったから、今度は一緒に向日葵を植えたのだ。
 果ての無い青空を目指してその背を伸ばす向日葵も、海の中に咲いていたものと同じくらい、美しかった。
「それに、かき氷も皆で色んな味を食べて楽しい想い出ですし、蚊取線香も虫から護る為に必要なものですものね」
「そうなの! かき氷もパパと食べたし、センコウだってお世話になってるわ」
 カクリヨファンタズムに生まれた海で食べたかき氷は、種類も味も一風変わったものばかり。
 花火に、ヒンヤリな猫に、それから愛おしい娘の悪戯。それに、蚊に刺されずに浜辺の一時を楽しめたのも、蚊取り線香のお陰だった。
 今年の夏の穏やかな一時を思い出し、ユェーの頬は自然と緩んでいく。
 向日葵の種はチョコでコーティングしても美味しいし、レシピはピザの他にも色々ある――次はどんな食べ方を教えようかと、ユェーの思考は早くも来年の夏へ。
「そんなヒマワリさん達がクマノミさん達を苛めるのは悲しいの」
「えぇ、そんな方達が魚達を苛めるのはいけません。お仕置きしないといけませんね」
 向日葵にかき氷、蚊取り線香。語られる2人の夏の思い出に『忘れ去られてなかった』と、怪人たちは無言でガッツポーズを決めている。
 怪人とて、「夏の風物詩」を司るライバルが年々増加する一方で、肩身が狭いのかもしれない――が。それとこれとは別である。
 悪いことをしようとした怪人さんたちは、めっ! をしなければならない。
『……あれれ? もしかしなくても、これ、お仕置きされちゃう流れです?
 流れ的に、『僕らのことを大切にしてくれる人がいましたぁ! わー! パチパチ!』な、ハッピーエンドで感動的、お涙頂戴の大団円に――』
「残念ながら、見過ごすことはできませんからねぇ」
『そんなあぁぁーー!?』
 それはまるで、澄み渡る夏空のよう。いっそのこと清々しいほどに爽やかな笑顔を浮かべたユェーから紡がれるのは――裁きの宣言だった。
 天国から一転、地獄へと突き落とされた『夏の思い出トリオ』。
 蚊取り線香怪人の悲鳴が館内に木霊するなか、まずはユェーが動いた。
「嫉妬や悲しみ、怒りは地獄へ連れて逝きましょうか?」
 猟兵達も驚きの、トリオの感情構成比率は嫉妬百パーセント。嫉妬以外の喜怒哀楽が占める割合はきっと小数点以下である。夏の風物詩への嫉妬以外、存在していないのかと疑ってしまう程だ。
 ユェーの問いかけのような宣言と共に、怪人たちに伸ばされた暴喰な無数の手は――初めて見るんじゃないかっていうくらい、荒ぶっていた。
 地獄からの使者や門番も、これほど嫉妬深い存在がいるとは思ってもいなかっただろう。
「目覚めて、花開く時よ」
 伸ばされる無数の手からどうにか逃れようと藻掻く怪人たち。
 そこに、ルーシーの援護が放たれる。
 太陽のような花菱草色と、琥珀のような蒼芥子色の2つの色彩に揺れ動く炎は、花のように綻ぶと――瞬間、怪人たちを焼き焦がしていく。
 咲いては散り、散っては咲きを繰り返す花色の焔。焔に囚われた怪人たちは逃げる機会を失い――あっという間に、地獄の門番に捕まった。
『つ、次こそは――!』
 怪人の捨て台詞と共に地獄の使者が去れば、後はすっかり騒動が起きる前の水族館だ。
 怪人さんたちが跡形も無く去った方向へ「今度は皆仲良くね?」と手を振りつつ、ルーシーはユェーの方を振り返る。
「ルーシー、ワガママなんだもの。ヒマワリもかき氷も、センコウも、お魚さんも、ぜんぶ楽しみたいわ」
 パパといっしょに、ね!
 夏はまだ半分くらい残っている。全てを楽しむのは、今からでも遅くないだろうから。
「えぇ、どれも楽しみですね。一緒にまたどれも楽しみましょうねぇ」
 目指すは、夏の風物詩の完全制覇!
 意気込むルーシーの頭を優しく撫でながら、ユェーは柔らかく微笑んだ。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ダンテ・ホーンテッド
【彷徨い兄弟】

何あれB級…いや低予算Z級の特撮か何か?
てかかき氷に向日葵とか優れた題材を持ちながらああも台無しにするとはある意味えげつねーし…

てか俺様達家族団欒の時間を邪魔するんじゃねぇ…いくぞジークムント!!

向日葵もかき氷も蚊取り線香も
扇風機も熱帯魚も
皆違った夏のノスタルジーさがあっていいじゃんか!
でも今時はクーラー無しはきついがな…
と説きつつ
UCで雷神のように黒い電気を纏い右手を黒い宝石で刃のように変形させて
怪人を次々と斬り感電させ倒す

怪人と言えばやっぱこれだよな!
ダンテは特撮ヒーローの如く高いところから黒い雷を纏いながら飛び蹴りをして
瀕死の怪人トリオらに重い一撃をぶちかましトドメをさす


ジークムント・ホーンテッド
【彷徨い兄弟】


かき氷も向日葵も夏の題材として好きだけど
チープ過ぎて台無しじゃないか醜い造形だね…
僕達はお魚さん達を観に来てるから家族団欒を邪魔してほしく無いのに…

(夏祭りアフタヌーンティーの最後の一口を食べた後に)
分かったよ兄さん僕も戦うよ!

風神のように風の精霊を纒めて
UCのチャクラムで援護

ダンテに攻撃が当たらぬようにチャクラムで敵の攻撃を未然に防ぎ快進撃が出来る様に守る

沢山のチャクラムは不規則な模様を描き飛んではダンテを護り
怪人達を容赦なく斬りつけ消耗させる

ダンテの一撃で怪人達を皆仕留めた後は戦闘で荒れた水族館内を
魚の無事を確認し兄とまた巡回する

荒れても風情あるね
お魚さん無事で良かったね



 水族館に木霊した、突然乗り込んできた怪人たちの叫び声。
 何を言っているかまでは聞き取れないが、穏やかな時間をぶち壊すには十分な騒がしさだ――最も、カフェで寛いでいる一般客たちは、「ヒーローショーでも始まったのかな?」と、さほど気にも留めていない様子だったが。
「何あれB級……いや低予算Z級の特撮か何か?」
 テーブルが絶妙な場所に位置していたせいか、丁度良いアングルでカフェの出入り口から通路の方を眺めることが出来た。
 折角の家族団欒の時間を、と心の中でごちながら、ダンテ・ホーンテッドがそっと騒動の起きている方へ視線を向ければ――何ともシュールな3人組が、通路でワイワイと叫んでいる。
 例えるならば、低予算で一ヶ月を乗り越える番組企画のような。「どれだけ低予算で映画を作れるか」というチャレンジでもしているのだろうか。
「てか、かき氷に向日葵とか優れた題材を持ちながら、ああも台無しにするとはある意味えげつねーし……」
 逆にある種の才能を感じてしまうくらいだ。
「かき氷も向日葵も夏の題材として好きだけど、チープ過ぎて台無しじゃないか醜い造形だね……」
 夏祭りのアフタヌーンティーを両手で抱えながら、ジークムント・ホーンテッドもまた、騒々しい3人組を困ったような表情で見つめている。
 ジークムントの膝にちょこんと乗っている人魚のドールも、何処か「迷惑な客」を眺めるような、迷惑そうな表情を浮かべていた。
 酷い造形で、まるで美術への冒涜だ。あれが一般人であるのならば関わりたくはないが、幸か不幸か、その正体は怪人である。
「僕達はお魚さん達を観に来てるから、家族団欒を邪魔してほしく無いのに……」
 哀しそうに俯いたジークムントに、遂にダンテの堪忍袋の緒が切れた。
 家族団欒を邪魔し、その他大勢に迷惑をかけ、弟を悲しませるような奴らが居るのなら――直々に成敗するまでだ。
「ああ。俺様達家族団欒の時間を邪魔するんじゃねぇ……いくぞジークムント!!」
「分かったよ、兄さん。僕も戦うよ!」
 気合十分、とばかりにガタリと大きな音を立てて立ち上がったダンテに、夏祭りアフタヌーンティーの最後の一口を食べ終えたジークムントが続く。
 これ以上、家族団欒の時間を邪魔させられる訳にはいかない。
『――あ? なんだ、お前達は?』
 開始されたばかりの占領計画に、わいわいはしゃぎながらも、一応非常事態であることは理解しているのか、怪人たちから距離を取るように――どちらかというと、「変人に関わりたくない」の一心であるような気もするが――逃げていくキマイラたち。
 そんななか、流れに逆らって近づいてくる2つの影があった――ダンテと、ジークムントだ。
『熱帯魚など、我等は認めぬ!』
「いや、向日葵もかき氷も蚊取り線香も扇風機も熱帯魚も、皆違った夏のノスタルジーさがあっていいじゃんか!」
 先程から絶賛演説中であったかき氷怪人。良い感じに(自分に)酔ってきたかき氷怪人のテンションは最高潮を迎えかけた――というところで、不意に突っ込まれた第三者の声。
 かき氷怪人に引けを取らない大声で堂々とそう説いてみせたのは、ダンテであった。
 向日葵もかき氷も、蚊取り線香も。扇風機や熱帯魚だって。それぞれに違った個性があり、それこそが魅力なのだ。
 だからこそ、何か特定のものや考えばかりを押し付けるのは良くない。なんなら、作り手の在り方としても美しくない。
『敵じゃないですか、敵! 先輩が変な演説してるもんだから、正義の味方が登場しちゃったじゃないですかぁ!!』
 ダンテの反論に、ひまわり怪人が堪らずに不満の声を上げた。
 乗っ取り宣言をしているところに颯爽と登場してみせたダンテとジークムントの姿は、キマイラフューチャーでも人気の「カッコいいヒーロー」そのもので。
 逃げることも忘れたキマイラたちの視線は、2人のヒーローの元へ。少しの間を置いて、周囲から一斉にダンテとジークムントを応援する声が広がり始める。
「でも今時はクーラー無しはきついがな……」
『あー……。まあ、それは、ねぇ?』
 ポツリと。
 『クーラーなど不要!』と迷言してみせたかき氷怪人の声に、零れ落ちたのはダンテの呟き。
 年々暑くなる一方の酷暑をどのように乗り越えろというのだろうか。
 それよりも、かき氷が溶けないか?
 ツッコミは尽きない。
『否! 心頭滅却すれば火もまた涼し!』
『ありゃりゃ。知ってます? それ、唯の瘦せ我慢って言うんスよ?』
「そこまでして、一体何を目指しているのかな……」
 蚊取り線香怪人のツッコミに、ジークムントの呆れたような問いが重ねられる。
 彼らはいったい、何を目指しているのだろうか。ジークムントの目には、迷走をしている様にしか映らなかった。
「ま、戯れは此処までだな。さあ、ヒーローショーの開幕だ!!」
「そうだね。兄さん。僕も続くよ!」
 エンドレスになってしまいそうなやり取りだが、相手をしているだけの時間が惜しい。
 開戦宣言と共に、ダンテの身体を纏うのは黒き電気の流れ。バチバチと爆ぜるような音を絶えず響かせる黒き電流が、ダンテの姿を照らし出す。
「迅雷如き過激な黒き影……これこそが俺様の作風だぜ!!」
 電流が駆ける一瞬きの間に、刃のように変形した右腕。黒曜石のような鋭い輝きを宿す黒き宝石は、威嚇しているかのように、ギラリギラリと怪人たちの姿を乱反射させていた。
「僕のチャクラムと風の精霊達から逃れられる? 援護は任せて!」
 雷神のように駆けるダンテを、後方のジークムントがサポートした。
 ジークムントが怪人たちに投擲するのは、千に近いチャクラムの雨。
 風の精霊の加護を受け、爆発的に速度が増したチャクラムは死に至る雨となり、兄を護る盾と成り――怪人たちに向かって突き進んでいく。
『ちょこまかと、ちょこまかとおぉぉ!?』
 上下左右にのみならず、立体的な動きだって。予測不能な飛翔経路を描いて翔けるチャクラムは、怪人たちにとって邪魔以外の何物でもない。
 飛翔するチャクラムに気を取られれば、電気を纏ったダンテの黒刃に斬り裂かれ、猛攻を重ねるダンテに気を取られれば、チャクラムに斬り刻まれる。
 ダンテの攻撃を弾き返そうも、嵐のように舞い踊るチャクラムがそれを許さない。
「気を取られたのが運の尽きだ!」
 何度目かの攻防戦。チャクラムに注意が逸れた蚊取り線香怪人を、ダンテが薙ぎ払った。
「怪人と言えばやっぱこれだよな!」
 刃とチャクラムの嵐に、瀕死の怪人トリオ。
 これでトドメだと、壁を蹴って飛び上がったダンテは、勢いそのままに飛び降りて――黒い雷を纏わせた重い飛び蹴りを、トリオにお見舞いした。
 命中、暗転。一拍おいて、雷の爆ぜる激しい音と光が周囲を焼き焦がし――煙が晴れた後には床に突っ伏したまま薄れていく怪人たちの姿があった。
「格好良かったよ、兄さん!」
 特撮ヒーローにも引けを取らない必殺技で怪人たちをやっつけたダンテと、ダンテを援護し護り抜いたジークムントに、キマイラたちから惜しみない拍手が送られる。
 それに恥ずかしそうに照れ笑いをしつつジークムントが車椅子を漕いでダンテに近づけば、「ケガは無いか?」と優しい声で尋ねられた。
「僕は大丈夫だよ。でも、お魚さんは?」
「心配か? 無事かどうか確認しようぜ」
 怪人たちとの戦闘のせいで、荒れてしまった水族館。
 2人は先程立ち寄った経路をなぞるようにして再び巡回したが――お魚さんたちは、皆無事であるようだ。
「荒れても風情あるね。お魚さん無事で良かったね」
 天井が焼け焦げてしまったり、壁に切り傷が出来てしまったり。戦闘で多少荒れてしまった館内だが、これはこれで違った風情がある。
 お魚さんが無事で良かったと安堵から表情を柔らかくしたジークムントに、「そうだな」とダンテも優しく微笑んだ。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

灰神楽・綾
【不死蝶】◆
こらこら梓、蚊取り線香怪人をディスっちゃ可哀想だよ
もしかしたら熾烈な思い出トリオ総選挙を勝ち抜いたのかもしれないし

かき氷は今年の夏も何回か食べたよねぇ
ちょうど梓もさっき白熊かき氷食べてたし
今時のかき氷はバリエーション豊かで
どれも美味しかったなぁと思い出が蘇る
あのかき氷怪人は昔ながらのシャリシャリ系かな?
それもまたいいよねー食べられるかな??
それか、家庭用かき氷機でかき氷パーティーなんてのも楽しそうだよね~

あ、俺の話スルーしたね梓??
問題ないよ、実は話しつつもこっそりUC発動しておいたから
水族館内を舞う無数の紅い蝶
それに触れた怪人は次々と眠りに落ちていくだろう


乱獅子・梓
【不死蝶】◆
夏の思い出…かき氷とひまわりはまぁ分かるんだが
蚊取り線香はどうなんだ…?
確かに夏の風物詩ではあるが
3枠しかない思い出という大それたカテゴリに
入れるほどの存在かと言われると(うーん

怪人を食べようとかさらっと恐ろしいこと考えてるなお前??
お腹壊すかもしれないからやめときなさい
あっ、これは「梓がかき氷機を買って、梓の家で
かき氷パーティーさせてくれないかな」っていうおねだりだ
よし、聞かなかったフリして適当に流そう

綾、おしゃべりはここまでだ!
広いとはいえ流石にでかいドラゴンを呼んで戦わせるのは厳しそうだな
それならば、UCでミニドラゴンたちを召喚
手当り次第怪人に体当たりや頭突きを食らわせていく



 風鈴の音が涼やかに鳴り響く縁側に座って、入道雲の広がる夏空を見上げながら、氷菓を食べて。
 向日葵畑で追いかけっこしたり、朝顔の観察日記をつけたり。
 そんな古き良き夏の思い出。向日葵もかき氷も、必ずといっていいほど語られる。夏の思い出の代名詞なのだ。
 ――うん? 蚊取り線香? 線香花火ではなくて、蚊取り線香……?
「夏の思い出……かき氷とひまわりはまぁ分かるんだが、蚊取り線香はどうなんだ……?」
 蚊取り線香。そう言えば、夏の思い出が語られる時に、奴の姿だけ見ないような。それにそもそも、存在すら忘れ去られている気がする。
 好き勝手に主張する『夏の思い出トリオ』を前に、夏の思い出に蚊取り線香ってどうなんだと、真顔で思案するのは乱獅子・梓。
 「お前たちはどう思う?」と問いかけてみても、零は涎を呑み込みながらかき氷をガン見しているし、焔はみょんみょんと良い感じに跳ねている向日葵の花弁が気になるのか、先ほどからずっとひまわり怪人をペシペシして追いかけまわしている。
 つまり、答えが返ってくるはずがない。
「確かに夏の風物詩ではあるが。3枠しかない思い出という大それたカテゴリに、入れるほどの存在かと言われると」
 目の前の蚊取り線香怪人を見つめて、梓は首を右へこてり。左へこてり。
 蚊取り線香を入れるくらいなら、手持ち花火とか、もっと「メジャー」な存在が入っても良いような。
『ぴえぇぇん!! アイツが僕のことを虐めてくるっス!!』
「こらこら梓、蚊取り線香怪人をディスっちゃ可哀想だよ。もしかしたら熾烈な思い出トリオ総選挙を勝ち抜いたのかもしれないし」
『そうっスよ!! 僕らは熾烈なじゃんけんを負け抜いた、選ばれしトリオなんすからぁ!!』
「そうだねぇ。良い子良い子ー」
 わざとらしく泣き着いた蚊取り線香怪人を、これまた大袈裟な動作でよしよしして慰める灰神楽・綾。
 そのまま繰り広げられる、三文芝居以下の即興劇に「何やっているんだ」とツッコミたくなった梓だったが、事の発端は自分の発言にある。何も言えなかった。
(「じゃんけんで決めたのか……。てか、負け抜いたのか?」)
 目の前では「主演:綾&蚊取り線香怪人」による嘘泣きと棒読みの即興劇『梓が僕を虐めるっス!』が繰り広げられ、その背後では焔と零に追われるひまわり怪人とかき氷怪人が演説を中断させ逃げ惑っていた。何処の世紀末かと思いたくなるような光景である。
 とてもじゃないが、怪人たちが選ばれし者とは思えない。
「でも、かき氷は今年の夏も何回か食べたよねぇ。ちょうど梓もさっき白熊かき氷食べてたし」
 『ぴええぇぇん!』と嘘泣きを続けたままの蚊取り線香怪人を、やっぱり大袈裟によしよししたまま綾の視線は――がっちりとかき氷怪人の頭部をロックオンしていた。
 零からの射抜くような視線に、綾による無言の圧力。増えた敵に、かき氷怪人の冷や汗が倍増したのは言うまでもない。
「あのかき氷怪人は昔ながらのシャリシャリ系かな? それもまたいいよねー。食べられるかな??」
『ガウ! ガウガウ!』
「怪人を食べようとかさらっと恐ろしいこと考えてるなお前?? それに、零も。お腹壊すかもしれないからやめときなさい」
『確かにシャリシャリ系っスけど……あれ、底の方がべシャってて美味しくないっスよ。それに、練乳掛けさせてくれねぇんすから!!』
「えー。イチゴと言えば、やっぱり練乳なのに?」
『ガウウー……』
「食ったヤツがいた……!」
 意気投合する若干2名と1体に、綾はがっくりと項垂れた。
 いつの間にかひまわり怪人の頭に乗っかっていた焔は花弁を猫パンチ宜しくペシペシしているし、ひまわり怪人は焔に離れてもらおうと頭をブンブン振っている――焔が楽しそうにはしゃいでいるので、全くの逆効果なのだが。
 よって、やっぱりツッコミ役は梓以外不在である。
『ガウ!』
「そうだねぇ。ふわふわした喫茶店のかき氷も良いよねぇ」
『ナウいのは、ふわっふわの写真映えっすよね!』
 「その会話はそこまでにしておきなさい」とか、『我のシャリシャリと批判するとは若輩者が!!』とか。
 「お店に連れてって」のおねだりを阻止したい梓と密かな自慢であるシャリシャリをサラッとディスられて怒り心頭のかき氷怪人による反論は、2名と1体によって、BGMとしてシャットアウトされてしまっていた。
 考え出したら止まらない。梓の頭をグルグルと走馬灯のように流れては消えていくのは、今まで食べてきたかき氷の数々。
 バリエーション豊かなかき氷に、「どれも美味しかったなぁ」と蘇る想い出。勿論、綾は今まで食べたかき氷の全てをバッチリ記憶している――後で「また食べたいなぁ」って、梓におねだりできるように。
「それか、家庭用かき氷機でかき氷パーティーなんてのも楽しそうだよね~」
(「あっ、これは『梓がかき氷機を買って、梓の家でかき氷パーティーさせてくれないかな』っていうおねだりだ。よし、聞かなかったフリして適当に流そう」)
 上昇補正が掛かっているんじゃないかってくらい、レベルアップをし続けている綾のおねだりスキル。
 何処で覚えてきたのか、最近は遠回しな誘導とか、今のように周りを味方につけるとか。徐々に手口が巧妙になりつつあるのだ。
 敏感に変化球系おねだりをかぎ分けた梓はスッと真顔に戻って、知らぬ存ぜぬを貫き通す。気分はバカ騒ぎに居合わせた一般ピーポーAである。
 ――が、今回ばかりはスルーしたのがいけなかった。
『良いっスねぇ! どうせなら、知人友人呼んで庭でパーッと! 虫除けは僕の得意分野ですから!』
『ガウガウ!』
「大規模にするならかき氷だけじゃなくて、バーベキューとか花火も出来たら面白いよねぇ~」
「綾、おしゃべりはここまでだ!」
 相乗効果怖い。一瞬の間に、想像以上の域まで発展していた「お家でかき氷パーティー計画」に、梓は慌ててストップをかける。
 「梓のお家でかき氷とバーベキューと花火」なんてされた日には、梓自身が地獄を見る。ノリと思い付きで行動する彼らが準備や片付けのことなんて、考えている訳ないのだから!
「あ、俺の話スルーしたね梓??」
「気のせいじゃないか? さ、仕事の時間だ」
「つまんないのー。でも、問題ないよ」
 話しながらも、いつでも戦闘になって良いように、実はこっそり館内に紅い蝶の群れを解き放っていた綾。幾多もの戦場を潜り抜けてきただけあって、抜かりはない。
 先程までのハイテンションが嘘のように爆睡している蚊取り線香怪人に、ひまわり怪人も地面に突っ伏して――あ、焔にあぐあぐ齧られてる。
 かき氷怪人が眠りに落ちたのを良いことに、頭のかき氷を味見しようと抜き足差し足忍び足をしていた零は――梓が慌てて回収した。
「広いとはいえ、流石にでかいドラゴンを呼んで戦わせるのは厳しそうだな」
 それならば、小型で機動力に優れたドラゴンたちを。
 未だにかき氷怪人を諦めていない零を小脇に抱えながら、梓はミニドラゴンたちを召喚した。
 千を超えたミニドラゴンの大群は眠りに落ちた怪人たちへと一目散に駆けると、体当たりや頭突きを食らわせていく。
 ぐっすりと眠りに落ちた怪人たちがドラゴンたちによって骸の海に還されるまで、さほど時間は掛からなかった。
「ねぇ、梓?」
「聞かない。聞こえない。聞きたくない」
「かき氷怪人のかき氷、消えずに残ってるけど食べちゃって良いかな~?」
『ガーウー』
「お腹壊すといけないから、食べちゃいけません!」
 てっきりおねだりだと思って「聞き流しモード」に徹していた梓に、まさかの「味見宣言」が投擲される。
 まだ諦めていなかったのか。かき氷への探求心に、呆れを通り越して心の中で賞賛を送りながらも、慌てて却下の言葉を投げつけた。
「ダメかぁー。じゃあさ、梓が代わりのかき氷作ってよ」
「……気が向いたらな」
 ――こういうの、心理学用語で「ドア・イン・ザ・フェイス」というのだったか?
 「まさかそこまで綾が熟知してる訳ないよな?」と内心冷や汗をかきながら、梓はおねだりをスルーさせた。
 結局、綾の「かき氷食べたいな」が叶えられたかどうかは――本人達だけが知る、夏の思い出だろう。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

臥待・夏報
【🌖⭐】
そういやこの世界って基本こういうノリだったよな……
とはいえ、水槽に何かあったらお魚たちが大変だ
しっかり仕事しておこっか

確かに日本の夏って感じではある
しかし今時アイスも花も一年中出回ってるし、この中で夏限定っていうと蚊取線香くらいだね……あんまり嬉しいものでもないし……
(見回して)
うん、かき氷以外はよく燃えそう

『AといえばB』なんて、所詮お仲間の内でしか通用しない価値観でしょ
生まれた世界さえバラバラの猟兵を――僕らを敵に回したことを後悔するんだな
【2012/8/19】
さあ、燃え盛る写真(暑中お見舞いVer.)を喰らえ!

あっ
えっ
ええーっと
――おはよ、風見くん
いい夢見れた?(渾身のキメ顔)


風見・ケイ
【🌖⭐】
期待どおり騒ぎになったが気が抜ける連中だな
とはいえ熱帯魚を狙うなら放っておけない
そう、これは仕事

いわゆる日本の夏ってやつか
悪いがあまりピンとこないな……向日葵なんてどこにでもあるだろ
それに(見回して)
お前らよく燃えそうだな

銃弾に炎を載せて焼却
かき氷は溶かせるが水となれば炎も消えかねないから
【がらくた集め】
――手持ち扇風機 っておい
温度調節のつまみを捻って電源を入れれば強熱風
氷は溶け炎は強まり煙は吹き飛ぶ

あ、ヤバ、眠気が
すまん、記憶はなんとかしたから、あとは――
(青と赤)
――あれ、夏報さん……おはよう
ここは……水族館?(蚊取線香のにおい?)
よく思い出せないけど、今日は螢の日だったような



 何かに困ればとりあえずその辺りをコンコンすれば、何かが出てくるし、だから衣食住で困ることはない。
 ポップでサイケデリックなネオンやホログラムが昼夜問わず輝いているし、物資に溢れているからわざわざ遅くまで働く必要も無い。
 つまるところ、何かに悩む暇があるのなら、その時間を使ってはしゃごうぜ! な世界なのだ。
 だから、世界自体もノリとその場の勢いで構成されている訳で――……。
「そういやこの世界って基本こういうノリだったよな……」
 此処へ来て、幻想的な熱帯魚のお陰で忘れ去っていた現実が舞い戻ってきた。
 ワイワイと賑やかに支離滅裂な主張を繰り広げているトリオを、臥待・夏報が若干遠い目で見つめている。
 如何にも陽キャです、なノリは近くで聞いているだけでお腹いっぱいだ。これ以上繰り広げられでもしたら、SAN値チェック待ったなしに違いない。
「期待どおり騒ぎになったが気が抜ける連中だな」
 突発的なお祭り騒ぎも、この世界では日常の一部だ。
 やっぱり騒ぎになったかと、風見・ケイこと螢が興味深そうな視線を送る先には、全ての元凶の怪人たち。
 怪人たちのあの被り物(?)どのような構成でああなっているのか。
 撃ち抜いたら血が迸るのか、それとも、被り物(?)が割れて下から本体が出てくるのか。真相はきっと、誰も知らない。恐らく、怪人本人たちでさえ。
「とはいえ、水槽に何かあったらお魚たちが大変だ。しっかり仕事しておこっか。ホタルくんにまだ水族館の良さを全部は教えきれてないしね」
「そう、仕事の時間だ。熱帯魚もありかと思いかけていた頃だしな」
 熱帯魚に手は出さないと明言しているが、あの騒ぎだ。「ウッカリ」が起こらないとは限らない。
 螢が熱帯魚の良さを理解しつつあった頃合いに、丁度コレ。お陰で夏報の「水族館楽しもうぜ! ツアー」も不完全燃焼だ。
 サクッと倒して続きを楽しもうと、2人はトリオに相対する。
「テーマは――いわゆる日本の夏ってやつか」
「確かに日本の夏って感じではある」
 かき氷に、向日葵に蚊取り線香。詳しいテーマとして、古き良き昭和の夏! と称せるところだろうか。
 だが。
「悪いがあまりピンとこないな……向日葵なんてどこにでもあるだろ」
 『夏の思い出』と言っても、後ろに(※日本をよく知る者に限る)と但し書きが入るところだろう。
 あまり馴染みのない螢からしてみれば、ピンとこない。蚊取り線香もかき氷も、それこそ物語の中のような存在だ。
 真顔で「ピンとこない」と言い切る螢、意外と知名度が無いという現実。音もなく崩れ落ちる3人組。彼らにとってはかき氷も蚊取り線香も、ワールドワイドだったに違いない。
「しかし今時アイスも花も一年中出回ってるし、この中で夏限定っていうと蚊取線香くらいだね……。あんまり嬉しいものでもないし……」
 技術の発展によって、アイスや花が通年商品と化して久しい昨今。蚊取り線香は確かに夏限定だが、「虫を寄せ付けない」という面で考えれば――嬉しいものではない。
 夏報によって発せられる真実は、言葉の矢となりトリオにグサリグサリと突き刺さっていく。
「それに、」
 ぐるりと時間をかけて、1人ずつゆっくりと。意味深に怪人を見回した螢は、おもむろに口を開く。
 螢は、彼らに「夏」以外の致命的な共通点を見つけ出していた。寧ろ、日本の夏に馴染みのない螢にとっては、こちらの方がしっくりくるかもしれない。
 螢につられるようにして、夏報の視線もゆっくりと一巡りして――そして、螢の導き出した答えに、「ああ」と納得した。
「お前らよく燃えそうだな」
「うん、かき氷以外はよく燃えそう」
『ひえぇぇっ!! 悪魔が!? 悪魔がココに居るっスよ!?』
 異口同音。同じ考えに辿り着いた螢と夏報によって、『夏の思い出トリオ』改め、『可燃物トリオ』と化した3人組。
 獲物に狙いを定めた肉食獣もかくやな視線でトリオを射抜く螢に、堪らず蚊取り線香怪人が慌てて距離を取った。
「夏報、仮説が立てば?」
「やっぱり、立証に限るよね。夏休みの自由研究も実験あるのみ! なんだし。『AといえばB』なんて、所詮お仲間の内でしか通用しない価値観でしょ」
 理論を展開させる時間は過ぎた。後は、仮説を検証するための時間だ。
「生まれた世界さえバラバラの猟兵を――僕らを敵に回したことを後悔するんだな」
 生まれも世界もバラバラな猟兵を前に、怪人たちの仲間内での価値観など、通用しない。
 思い出でしかない、過去のことなど。未来を生きる糧になっても、未来そのものには成れない。
 過去だけ縋って息をするのは、果たして「生きている」と呼べるのだろうか。
「さあ、燃え盛る写真(暑中お見舞いVer.)を喰らえ!」
 過ぎた時代を誇りに思い、昔に縋って生きていたから、怪人たちは「過去」そのものになってしまったのかもしれない。
 夏報の宣言と共に投げつけられた写真が、火の雨となって怪人たちに降り注いだ。
「かき氷は溶かせるが、水となれば炎も消えかねないな……」
 暑中見舞い(物理)に逃げ惑う怪人たちを逃さぬように、すかさず螢が追撃に動いた。
 炎を纏った銃弾を放ち、怪人たちを焼却させていくが――かき氷だけは水となる。水が蒸発する前に、炎が消されかねない。
 だから。
「――手持ち扇風機 っておい」
 更なる一撃を――と構えたところで手の中の存在が目に留まり、螢は思わず素に戻って突っ込んだ。
 現れた玩具のせいで妙に締まらない、何処かで見たようなこのムーブ。
 色合いがカラフルな、妙にお洒落な手持ち扇風機と最近の流行を抑えているのは、此処がキマイラフューチャーだからだろうか。
「まあ、これもこの世界らしいか」
 出し惜しみはしない。温度調節は一気に「強」へと。
 電源を入れれば、たちまち炎の牙を持つ強熱風が怪人たちを丸呑みにしていく。
 2連の炎に、向日葵も蚊取り線香もよく燃えたし、かき氷は一瞬で蒸発した。
「いやぁー。本当によく燃えたね。仮説は正しかった、かな?」
 若干の灰を残すばかりで、跡形も無く燃え去ってしまった怪人たち。後にはべしゃべしゃした水っぽい何かが残るだけの現場を、清々しい表情を浮かべた夏報が見渡して。
「証明終了だな。夏休みの自由研究は一番の難題なんだろう? だが、これで残りの夏も……あ、ヤバ、眠気が」
 ジョーク交じりに夏報と軽口を交わしていた螢だったが――能力を使ったせいか、途端に猛烈な眠気が襲い掛かってくる。
「すまん、記憶はなんとかしたから、あとは――」
 抵抗できない眠気に呑まれながらも、慧のことがある。
 焼き餅絡みの厄介事に巻き込まれるのは勘弁だと、螢はやっとの思いで記憶を誤魔化し――瞳を閉じた。
 すっと眠りに落ちた瞼が再び開かれれば、夏報も見慣れた青と赤が自分を見つめていて。
「――あれ、夏報さん……おはよう。ここは……水族館?」
「あっ。えっ。ええーっと」
 「今入れ替わるなんて。聞いちゃいないよ、ホタルくん!」と想定外の出来事に固まる夏報には気づかずに、周囲を見渡した慧はこてりと首を傾げた。
「よく思い出せないけど、今日は螢の日だったような」
 それならば何故、自分が出てきたのだろうか。
 それに、何故だか水族館なのに蚊取り線香の匂いもしている。
 寝起きの頭では、考えが纏まらないのだけど。
「――おはよ、風見くん。いい夢見れた?」
 きょとんと瞳を瞬かせた慧を、渾身のキメ顔を浮かべた夏報が出迎える。
 やましいことなんてなーにもしてない。隠し事なんてなーにもない。とりあえず笑顔で時間稼ぎ。
 取り繕うのはそれからでも遅くないと言い訳を急ピッチで建設し始めた夏報だったが、最適な言い訳は丁度バカンスに出かけているようだ。ピッタリな言い訳が見つからない。内心では冷や汗ダラダラだった。
 ――さて。この状況、どうやって乗り越えようか。
 とりあえず、ショップで水生生物のぬいぐるみとかどうだろう? それで誤魔化されてくれるかは、分からないけど。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

アリスティア・クラティス
【正義】◆
遊んでいたら、もっと面白そうなものが!
敵モチーフを目にして、一言
「カトリセンコウ…?今も昔も、もう電気式こそ主流であり王道!良く骸の海にすら忘れられなかったものね!?」

その―古きに碌な敬意を抱かない私も、反省と共に敵側に正座してクロウから温故知新の授業を聞く事にするわ…!
『古いものにも趣が』趣が…(頭がグルグル)

さて―
『魚質』とは非道!
でも―【魚質に屈することなど、出来ない!】と叫んで指定UCを発動、ひまわりに特攻!
身体強化により『こぶしで、ぶん殴る!』

無傷が理想であるけれども、ダメでもクロスカウンターくらいには持ち込みたいわ!難しければ攻撃を受けた後に吹き飛んでドロップキーック!!


杜鬼・クロウ
【正義】◆

…折角アリスティアと一緒に楽しんでたのによ
仕方ねェ、お仕事すっか(スマホ仕舞い

夏といえば海!水着!そして新参者(?)の熱帯魚だろうが(どーん
まァ、向日葵にかき氷、蚊取り線香は大正解だわな
古き伝統も勿論大切だ
でも新しきものに触れて見聞を広めるのも悪くねェと思うぜ(ガチ説教
アリスティアまで…!お前もか!
俺も亡き故郷に居た時は便利なものも少なかったし
お前ら見てっと…懐かしく感じるわ(遠い目

ウワー水族館を占拠されたァ(棒読み
茶番はコレぐらいにして
魚質するンなら遠慮はいらねェな(指バキバキ慣らし恫喝
アリスティア、ヤるぞ

UC使用
炎刀取り出し構えて
花弁を纏わせこんがり焦がす
火事になる前に炎を消去



 面白いもの・楽しいものを探してあっちへふらふら、こっちへパタパタ。
 忙しなく館内を小走りで移動していたアリスティア・クラティスの瞳に、餌やり体験よりももっと面白そうな存在が飛び込んできた。
(「遊んでいたら、もっと面白そうなものが!」)
 特撮ショーでもやっているのだろうか。
 妙に締まらない雰囲気のなか、「お笑い」としては微妙なコントを披露しているトリオの姿がアリスティアの視線を捉えて外さない。
「サインとか貰えるのかしら……!」
 とりあえず、面白そうなものには接触してみるスタンスのアリスティアだ。
 好奇心の赴くままに、トリオに近づいたアリスティアは――興味津々といった様子で、怪人たちの頭部を眺めている。
 恐いもの知らず? ミーハー? 上等! 何でもどんと来いである。
「……折角アリスティアと一緒に楽しんでたのによ。仕方ねェ、お仕事すっか」
 アリスティアとは反対に、面倒臭いという心境を隠そうともせずに、杜鬼・クロウはトリオを一瞥していて。
 水族館を楽しんでいたところに水を差されたのだから、無理もない。
 しかし、面倒臭いとはいえ、相手が怪人である以上、野放しにしておくことはできない。
 のそーっとした緩慢な動作でスマホを仕舞うと、大きな伸びを一つした後、クロウもまたトリオへと接触を試みる。
 相手がドーン! と出ているのだから、こちらはドドーン! くらいの勢いで!
『繰り返す! やはり夏と言えば――「夏といえば海! 水着! そして新参者(?)の熱帯魚だろうが!」
 壊れたレコーダーのように何度目かの「夏と言えば、」の台詞を言いかけたかき氷怪人。しかし、その続きはポッと出のクロウによって奪われてしまった。
 予想外の方向から発せられた宣言に、怪人含めた周囲の視線が一斉にクロウの方向へと向けられる。
 出だしは上々。周囲に大きなインパクトを与えることが出来たのだから。
『我の台詞を奪うとは、お主は何奴か!?』
「見ての通り、夏に海と水着と熱帯魚を推す通りすがりの一般人だぜ? まァ、向日葵にかき氷、蚊取り線香は大正解だわな」
 水着の裾をひらひらと靡かせながら、優雅にポーズをとりつつなんでもないことのように言ってのけるクロウ。こういうのは、言った者勝ちである。
「古き伝統も勿論大切だ。でも新しきものに触れて見聞を広めるのも悪くねェと思うぜ」
 それぞれの価値観は尊重されるべきだとは考えるが、それを理由に不特定多数の存在に迷惑をかけてはいけない。そういうことをする輩には、お説教が必要だ。
 楽しい一時を邪魔されたという感情も相まって、一周回って怖いほどニッコニコな笑顔を浮かべながら――クロウは怪人たちへと、一歩、また一歩と距離を縮める。
 割とマジのトーンでゆっくりと迫るクロウに……怪人たちも無言の圧を感じたのか、ソロリソロリと少しずつ壁の方へと後退していく。
『先輩! 怒らせちゃいけない人、怒らせちゃったじゃないですかぁ!! どう責任取ってくれるんですか!』
『煩い! とりあえず、こういう時はだな――』
 ヒソヒソと怪人たちが「クロウ宥め作戦」を話し合っている光景を眺めながら、アリスティアは瞳を瞬かせる。
 向日葵。これは分かる。夏に咲く大きな花だ。
 かき氷。これも分かる。氷を削ってシロップをかけた甘い氷菓だ。サクサク美味しくて、頭がキーンとなるアレ。
 でも、蚊取り線香……? カトリ、センコウ?
「カトリセンコウ……? 今も昔も、もう電気式こそ主流であり王道! 良く骸の海にすら忘れられなかったものね!?」
 アリスティアの頭を右から左へ通り過ぎていくのは――コンパクトな形の電気式の蚊取り線香や、お洒落なブレスレット式の虫除けなど、近代的なものばかりで。
 緑色でグルグルのあれ? なんか、『昔の道具大全』でチラッとだけ見たことがあるような、ないような?
 アリスティアにとって緑色のグルグルなんて、もはや化石の領域で。本の中だけの存在である。現存していたことすら、信じられないくらいだ。
「アリスティアまで……! お前もか!」
 予想しなかった、まさかの味方からの裏切り発言。
 予想外の死角から飛んできたデッドボールに、今度はクロウが驚く番であった。
 現物にピンと来ていないあまりか、電気式が王道と言いきる現代っ子。骸の海に沈みかけていたことは――多分、否定できないが。
 ここまで世間知らずとは思わなかったと、アリスティアの迷言にクロウは天井を仰ぐ。
「良いか? 歴史ある物にも、核心的な新しい物にも、それぞれ良いところがある! 温故知新の言葉通り、古いものにも趣が――」
「オンコチシン? 温故知新かしら……? 『古いものにも趣』……。赴き、が?」
 土下座したトリオプラスワンを相手に、クロウ先生による特別講義が幕を開ける。
 小難しい単語や怪人たちも知らなかった道具の歴史が語られる中、一早く音を上げたのはアリスティアだった。
 古いものに赴いてどうするのかしら? 古民家カフェでも開くのかしら? と考えだしたアリスティアに、クロウはそっとため息を一つ。
「俺も亡き故郷に居た時は便利なものも少なかったし、お前ら見てっと……懐かしく感じるわ」
 ちょんちょんちょんと一列に正座している怪人たちを前に、クロウが思い起こすのは故郷のこと。
 キマイラフューチャーみたいな便利な家電なんて存在しなかったから、人々は知恵を絞って暑い夏を乗り越えていたのだ。
 それは風鈴の音であったり、金魚を鑑賞して凉を感じることであったり。今は亡き故郷の夏景色を思い浮かべ、そぅっと息を吐く。
『いやもう、お行儀よくお勉強とは訳ワカメっス!! こうなったら、力づくで魚質取って占領させてもいますよぉ!!』
 前言撤回。勉強についていけなかったのは、アリスティアだけじゃなかった。
 雨の如く降り注ぐ小難しい言葉の数々に、アリスティアに次いで音を上げたのは蚊取り線香怪人だ。
「ウワー。誰も話を聞いてくれないィ。オマケに水族館を占拠されたァー」
 棒読みで逃げ惑うフリをしながら、クロウはちゃっかり炎刀を抜刀し、構えを取る。
 相手が実力行使に出るというのなら、茶番はここで終了だ。
「茶番はコレぐらいにして、魚質するンなら遠慮はいらねェな。アリスティア、ヤるぞ」
「ええ! 『魚質』とは非道! でも――魚質に屈することなど、出来ない!」
 一括入魂。頭に居座っていたグルグルや小難しい言葉の数々は威勢の良い叫びと共に吹き飛ばし、アリスティアは気合を入れて――そのまま床を蹴って一直線に距離を詰め、ひまわり怪人に特攻を仕掛ける。
 とりあえず、ぶん殴ればダメージが入るはず。その心理の元に繰り出された右ストレートはひまわり怪人のど真ん中に命中し、その身体を壁まで吹き飛ばす結果となった。
「そして、ドロップキーック!!」
『うわあぁぁ……。重そう……。オーバーキルじゃないですかやだあぁぁー!!』
「――重いって言ったかしら?」
『イイエ、イッテナイデス』
 壁まで一気に吹き飛ばされても、ひまわり怪人は辛うじて立ち上がった。
 反撃にとひまわりの種を銃弾よろしく発射させるが――そんなもので足止めされるアリスティアではなかった。
 ひまわり怪人にドロップキックをお見舞いするついでに、余計なことをいった蚊取り線香怪人も蹴飛ばしておく。
「向日葵って、よく燃えるだろうなァ」
 蛙が潰れたような呻き声を上げ床に突っ伏したひまわり怪人へ、クロウは構えていた炎刀の切っ先を向けた。
 深い蒼を背に、クロウの戦意に呼応するようにして燃え盛るのは、唐菖蒲の花嵐。激しく厳かに燃え盛る唐菖蒲は、全てを消し飛ばす瞬間を、今か今かと伺っているようで。
「さ、茶番も戦いもお終いにしようぜ」
 ふわりと舞うように薙げば、踊る焔の花弁を受けて――こんがり良い感じに焼き上がる。
 焼き残しの無いようにこんがりじっくり焼けば、ひまわりの姿焼きの完成だ。
「んで、次は――」
「どっちにするのかしら」
 魚質を取った罪は重い。得物を片手ににっこり笑顔で迫るクロウとアリスティアの2人に、残されたかき氷怪人と蚊取り線香怪人も出口の方へとニジニジニジ。
 ――逃亡が赦されるはずもなく、怪人たちが倒されたのは、これから僅か数分後のことである。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

丸越・梓
菊(f29554)と
アドリブ、マスタリング歓迎

_

拘りは各々あるだろう
故に彼らを否定するつもりは毛頭なく
考えを受け止める

「熱中症対策にクーラーを取り入れた方が良いのではないか?」
オブリビオンも熱中症になるのかは解らないが、彼らも気をつけてほしい

いつでも菊を庇える位置に居りつつ彼を見遣り
不意に感じた違和
然し彼の領域には入らない

補佐に回るも
オブリビオンとの間に割って入り
菊の刃を制す
彼の視界から向日葵を遮るよう背で庇い
オブリビオンと向き合い
安息の願い込めそっと触れて

以降も菊を気にかけながら応戦し
全てが終わったなら
彼らの安息を祈った後
何も触れず常と同じく瞳細め
メダカを見に行こうか、と


菊・菊
梓(f31127)と
アドリブ大歓迎

うっせぇなあ
早く帰ってメダカ買いに行きてえんだけど
な、梓…いや提案すんのかよ

ぎゃはッ

愉快な奴らにも真面目なのすげーおもろい
指さして笑ってる最中に
目の端を黄色がチラついて

夏を知らせる花がこちらを見ているようだった

「梓ァ、花からやろうぜ。」
問いかけに、ぼんやりと答えて刀を抜く
俺、向日葵って嫌いなんだよな

刃が腕を撫でて、甲高い声が聞こえたら合図だ。
『衝動』

どうせ梓が俺の補佐に回るのは分かり切ってた
クソお人好しの世話焼き野郎だからな

花占いでもしてやろうぜ
すき、きらい、すき、きらい、
何回刻めば、目の前から消えんの

それから、
祈る梓に凭れ掛かって待つ

泳ぐメダカを思い浮かべて



 誰にだって、絶対に譲れない点や拘りのポイントの1つや2つ、必ずと言っていいほどあるはずなのだ。
 場合によっては、その「譲れない点」が当人を当人たらしめていることもある訳で。
 十人十色で、皆違って皆良い。だから、丸越・梓には『夏の思い出トリオ』の主張や考えを否定するつもりは毛頭ない。これっぽっちも存在しない。
 夏と言えば、かき氷や向日葵、蚊取り線香という主張も一理ある――が。そうなのだが。
『心頭滅却すれば火もまた涼し!! クーラーなど不要! 扇風機のみで乗り超えてみせてこそ!!』
「熱中症対策にクーラーを取り入れた方が良いのではないか?」
 登場から一貫して「クーラーなど不要!」と叫んでいるかき氷怪人に、梓は心配そうな視線を向ける。
 「クーラー断固反対!」を掲げているというのに、水族館の空調設備で快適そうに過ごしている辺り、やせ我慢な気がしてならない。
 そもそも、かき氷怪人が「クーラー断固反対!」なだけであって、他2名はそれに引きずられているような。
 そして、この連日の猛暑地獄にクーラー無しでは、頭のかき氷が溶けてしまわないか?
(「オブリビオンも熱中症になるのかは解らないが、彼らも気をつけてほしいからな」)
 怪人たちにも優しい視線を向ける梓。そんな彼を眺める菊・菊の表情は鬱陶しさ半分、面倒臭さ半分だ。
「うっせぇなあ。早く帰ってメダカ買いに行きてえんだけど」
 ぎゃいぎゃいと騒ぐだけ騒いで、五月蠅いことこの上ない。
 子ども以上に騒がしい存在がいたと、菊は思わず顔を顰める。
『否! クーラーを認める訳にはいかぬ!!』
「そうか……。それなら、一工夫加えてみるのはどうだ? 扇風機の後ろに濡れタオルをかけるとか」
「な、梓……いや提案すんのかよ。改善案、大真面目に考えてやるのかよ」
 相手は怪人だというのに、大真面目で「改善案」を提案している梓。
 妙なところで天然な梓本人は気が付いていないようだが、コレ、「クーラー断固反対」に手を貸す形になるのでは?
 これには菊も絶句である。
 だが、それがまた梓という男の常で。
「ぎゃはッ。愉快な奴らにも真面目なのすげーおもろい」
 堪えきれない、といった様子で手を叩きケラケラと笑い転げる一歩手前の菊。
 突然笑い始めた菊に、「大丈夫か?」と梓から問いが投げかけるが――それがまた笑いの発作に拍車をかけることを、梓は知らない。
「ヒトの心配よりも、自分の心配した方が良いんじゃねぇの?」
 考えもぶっ飛んでいれば、主義主張もイカレているトリオ。
 なんせ、奇天烈な怪人相手に大真面目に意見を言ってのけるのだ。何かの拍子で地雷――怪人たちの「譲れない点」をぶち抜いたら最後、フルボッコな未来が待っているに違いない。
 知らぬが何とやら。
 目の前の誰かさんは、地雷原を草原だと思い込み、何も知らぬまま呑気に散歩をしているような状態にいるのだから。
 うっかり地雷をぶち抜いて、釈然としない表情のまま攻撃を受ける梓を想像し――また菊は大げさに手を叩く。
 指を指しケラケラと笑っている菊。そんな彼の視界の端を――不意に、太陽の花がチラついた。
 あれは、あの花は――夏を知らせる花。
 夏に咲く花。お日様の香りを連想させる、太陽の花だ。
 その花が今、菊に笑いかけるようにして――その黄色い色彩を、こっちへと差し伸ばしている。
「――菊?」
 突然押し黙った菊に、訝しげな梓の声も、果たして菊の耳に入っていたのか。
 沈黙を纏い、何かに憑かれたかのように目を見開いて、ひまわり怪人を見つめる菊の姿に――違和感を覚えたのは事実だが。
 然し、今は様子を伺った方が良いのだろう。何が刺激になるか分からない。
 何があっても瞬時に菊を護れる位置をキープしながらも、梓が菊の領域に踏み込むことはなかった。
「梓ァ、花からやろうぜ」
 真っ先に散らしてしまえ。
 梓が自身の名を呼ぶ声にぼんやりと答えながら、上の空とは思えない程迷いのない動作で、菊は刀を抜いた。
「俺、向日葵って嫌いなんだよな」
 刀の刃が腕を滑る。プツリと音もなく斬れた肌に、滲む鮮血。
『きゃはは!』
 甲高い「クソ女」の笑い声が聞こえたのなら。それが、鬼ごっこ開始の合図だ。
「……おい、菊」
 彼の思うがままに。そうさせてやりたいのは山々だが、今の菊は何処か不安定だ。
 補佐に回るつもりであった梓だったが、我を忘れたようにひまわり怪人に向かって刀を振るう菊の間に割って入り――菊の刃を、そっと制す。
 それはまるで、衝動のままに振るわれているような。無茶苦茶な太刀筋で、残酷なまでに一方的で。そして支離滅裂な、鈍色の軌跡。
「花占いでもしてやろうぜ。すき、きらい、すき、きらい、」
 目の前に立ち塞がる、大きな男の影。
 梓はクソお人好しの世話焼き野郎だから、「こう」なることは分かっていた。
「最後に残るのは、すきかきらいか? どっちなんだよ」
 何回刻めば、目の前から消えんの。
 それとも、向き合うまで永遠に消えねぇの?
「……菊、その辺りで止めておけ。な?」
 菊の視界から、向日葵が少しも映らないように。
 背で少年のことを庇いながら、梓は怪人と相対する。
 願うはただ一つ。時代にすら置き去りにされ、忘れ去られる結果となった彼らへの安息の願いだ。
「――残りはいけるな?」
 そっと触れた先から、相手が在るべき場所に還っていくことを感じ取る。
 ひまわり怪人が去れば、残るはかき氷怪人と蚊取り線香怪人だ。
 大丈夫だとは思うが、万一がある。チラリチラリと時折こちらに向けられる視線を感じながら、菊は刃を振るった。
(「メダカ、」)
 全てが終わった、その後で。凭れ掛かりながら菊が思い浮かべるのは、水に泳ぐメダカのこと。
 どうせ飼うなら、かっけぇ奴が良い。
 体の小ささも吹き飛ばしてしまうような、ギラギラカッコよくて、鮮やかな色彩の。
 名前にも「龍」とか、「獅子」とか入っている品種で。
 ご丁寧に怪人たちの安息まで祈る梓をチラとだけ一瞥した菊の脳裏を、先ほど見たメダカたちが泳いでいく。
 そうだ。それで良い。そのまま、視界にチラつく悪趣味な黄色さえも流してしまえ。
「……そっちは?」
「丁度祈り終わったところだ」
「そっか」
「なあ、菊」
「なに?」
「メダカを見に行こうか」
 怪人たちの安息を祈り終えた梓が、そうっと菊に近づいていく。
 先程の様子など、何も見ていないというように。何も知らず、常と同じように、優しく瞳を細め。
 梓は菊に、問いかける。
「メダカだったら良いんだよな? じゃあ、こういうのは?」
「それは――」
 梓は少し前、「メダカはどうだ」と言った。品種の指定はしていなかった。ならば。
 言質は取った、とばかりにニヤリと不敵に微笑む菊。すっかりいつもと変わらぬ少年の様子に、もうこの時点から何処となく嫌な予感がする梓。
 訂正しようにも、もう遅い。菊の指差す先には――五百円玉硬貨よりも大きい、メダカの姿があった。
 どうやら、大きくなりやすいように改良された品種であるらしい。
 ……いったい、どれだけ大きくなるのだろう。
「……本当にメダカなのか?」
「メダカって書いてあるから、メダカだろ」
 男に二言は無い。目の前の男はメダカ、と確かにそう言ったのだ。
 ならば、梓の目の前で「メダカ」と呼ぶには大きめな身体を揺らしている小魚も――メダカなのだろう。だって、説明にそう書いてあるし。
 例え、その大きさに本当にメダカであるのか疑問に思ったとしても。
 数匹飼った場合、家にある大きさの水槽で大丈夫なのかと心配になったとしても。
「どうせなら、学校ができるくらい飼おうぜ」
「ちょっと待て。それは――」
 困ったように苦笑する梓を見、してやったり、と笑む菊の姿は、いつも通りの彼であった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

最終結果:成功

完成日2021年08月16日
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