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着ぐるみでサメと戦え! 真夏の水中戦!

#ヒーローズアース #猟書家の侵攻 #クリティアス #ミュータントヒーロー #ヒーローチーム #アトランティス #猟書家 #8/3シナリオ公開

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#8/3シナリオ公開


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●アトランティスの危機
 太平洋の海底に沈む大陸アトランティス。
 ここはその中でも有数の海洋都市である。
 石づくりの直方体の建物がひしめく古めかしい街並み。
 縦横に石畳の街路が走り、碁盤の目のように整然とした街区。
 その中でもひときわ目立つのが半円形の劇場だ。
 劇場は街中に点在し、半月型の舞台を見下ろすように設置された観客席は、連日、観劇に訪れる人々でぎっしりと埋まる。
 そう、ここは数多のスターを輩出する演劇の都『メンブリック』。現在では地上からも観光客が訪れるという、人気の観光スポットである。

 そんな演劇の都の中心にある最も大きな劇場に、猟書家幹部があらわれる。
 その姿は巨大な亀のようでもあり、全然別の怪物のようにも見えた。

 そして、海底都市を警備するヒーローチームが出動した。
 彼らは迅速に避難誘導を行い、さらに精鋭部隊が正義の鉄槌を下そうと、敵を取り囲む。
「観念しろ! お前は我らが正義の名の下に成敗する!」
 だが、不敵な笑みを浮かべ、ヒーローチームを睥睨する猟書家幹部。
「クククッ、深海で生きられぬ脆弱な下等生物どもよ。海洋の怒りを思い知れ!」
 侮蔑の声とともに邪悪なユーベルコードが発動され、瘴気を具現化させたような黒い粒が次第に広がっていき、やがて海水に溶けていく。
 すると、突然、前衛で戦っていたヒーローの一人が胸を押さえて苦しみ出した。
 息が出来ない。水圧に押し潰されそうだ。声は出せなくとも表情から如実にうかがえる命の危機。
 慌てて後方のヒーローがフック付きロープを銃から射出して仲間を引き寄せ、蘇生措置を施す。
「お、おい、大丈夫か! しっかりしろ!」
「……急に、海中に投げ出されたように……」
「まさか……適応光線の力が打ち消されているのか? 隊長、これはマズいですよ」
 そして、ヒーローチームの隊長は撤退命令を下す。
「皆、すぐに撤退だ! この力が街全体に広がる前に避難を終わらせろ! 被害を最小限に食い止めるんだ!」
 リーダーの命令を受け、ヒーローチームは散開していく。
 適応光線のない環境では自分たちは無力だ。
 ヒーローたちは己の不甲斐なさを噛み締めながら、撤退するのだった。

●グリモアベース
「今日も暑いなぁ……こういう日にはお魚さんのように水の中に一日中いられたらいいのになぁ……鰓呼吸できるお魚さんが羨ましいかも……」
 グリモア猟兵の紡木原・慄(f32493)は虚ろな目でなにやらつぶやいていたが、小声過ぎて招集に応じた猟兵たちも全く気づいていないようだった。気を取り直し、今回の依頼について話を切り出す。

「猟書家幹部の活動が確認されたの。皆さんにはこれから、ヒーローズアースの海底都市に向かっていただきます」

 ヒーローズ・アースでは、ミストレス・バンダースナッチが目論む「超生物スナークの創造」を実現すべく、猟書家たちが暗躍している。
 今回活動が確認された猟書家幹部は、アトランティスをまるごと汚染し、超生物スナークを生み出す「スナークトライアングル」を顕現させようとしているという。

「その手始めに選ばれたのが、海底都市メンブリック。観光客も数多く訪れる演劇の街ね。猟書家幹部は街の中心部にある最大の屋外劇場を占拠し、周囲1kmの範囲に『適応光線無力化フィールド』を形成した。だから今回の戦闘では適応光線の恩恵は受けられない。苦戦が強いられそうね」

 アトランティスでは適応光線を浴びれば深海でも地上と変わらぬ生活を営むことができ、戦闘でも行動の制約を受けずに戦うことができる。
 海底都市の警備を担うヒーローの多くは深海での活動を適応光線に依存していたため、敵前での撤退を余儀なくされた。
 現時点で敵と戦えるのは、頭部をタコに変化させ、頭部から分泌される特殊な粘液で自分の体に撥水・防水・耐水加工を施すことができるミュータントヒーローチーム『オクトパス・ダイバーズ』だけだという。
 しかし、彼らの戦闘力はそれほど高くはない。後方支援を担ってもらうのが妥当だろう。

「彼らに頼めば粘液で車両や機体をコーティングしてもらうこともできるわ。でも生身の体に塗るのは絶対にやめたほうがいいと思う。粘液が毛穴から侵入し、窒息状態になるそうだから……」
 慄は眉をひそめ手帖に視線を落とすと代案を提示する。
「生身で戦うのが得意な人は、『お魚スーツ』を着て戦うのがおすすめよ」
 お魚スーツ。それは『ヒーロー嫌いの偏屈おじさん』とご近所で評判のヘンドリックス博士が発明した潜水服だ。
 お魚スーツを着用すれば鰓呼吸のように水中の酸素を取り込んで呼吸でき、高い水圧にも耐えられる。水の抵抗なども軽減してくれるため、戦闘での制約もほとんどなくなるが……。
「お魚スーツ……見た目は完全に着ぐるみね。デザインは……ゆるふわキャラっぽくてすっごく可愛いよ! 乗物で参戦する人も念のため着ておいてもいいかも!」
 慄はなぜか満面の笑顔で言い切る。口調もなんだか素に近いようだった。
 ちなみに、お魚スーツには、着用者の思念を読み取って形状を変化させる超技術が組み込まれている。
 好きな魚の姿で戦うことが可能だが、ベースはゆるふわキャラっぽい着ぐるみだということは気に留めておくといいだろう。

「ヘンドリックス博士は街外れにある研究所に住んでいるわ。彼を訪問し、『合言葉』を伝えれば『お魚スーツ』を貸してもらえるはずよ」
 秘密結社スナークの者です。それが合言葉だという。
 猟兵たちがスナークを騙り人助けをすることは、敵がスナークの名の元に恐怖を集める企みを妨害することにつながる。合言葉には重要な意味も込められていた。
「ということで、今回の依頼は猟書家幹部を速やかに排除し、海底都市を解放すること。まずは海洋汚染を進めている手下をすべて倒し、その後で大劇場に赴いて幹部に決戦を挑みましょう」
 幹部は手下を吸収してパワーアップする能力も持っている。幹部を速やかに倒すためには、手下を確実に殲滅することが求められる。
「手下は水中戦仕様に変化しています。くれぐれも油断しないでくださいね」
 慄は注意事項を言い添えると、猟兵たちを海底都市へと送り出すのだった。


刈井留羽
 こんにちは。刈井留羽です。暑い中、お越し下さりありがとうございます。今回のシナリオは、真夏の暑さを吹き飛ばす猟書家幹部シナリオの水中戦です。

 舞台となるのは古めかしい街並みを残す演劇の都。住民や観光客は既に避難を終えているので、劇場が点在する無人の街での戦闘となります。

 第一章はホホジロザメと合体した戦闘員たちとの戦闘です。数が多くて泳ぎも速いので逃げられないように確実に殲滅するのがポイントです。
 プレイングボーナスは「秘密結社スナークの一員だと名乗る」、「ミュータントヒーローと共闘する」のいずれかです。両方でもOKです。
 共闘する『オクトパス・ダイバーズ』は、頭部から伸びる吸盤つき触手による捕縛、スミを噴霧することによる煙幕など後方支援向きの能力を持っています。
 雑用も快く引き受けてくれるので、自由に指示を出してあげてください。

 なお、海洋都市の中央にある大劇場で猟書家幹部が「適応光線無効化フィールド」を展開しているので、猟兵たちは「適応光線」の恩恵を受けられません。
 元々、水中戦が得意な方以外は、何らかの対策をとる必要があるかもしれません。
 ちなみに、オープニングでは以下の二つの対策が提示されています。

 ①ミュータントヒーローに頼んで粘液コーティングを施し、乗物を水中戦仕様に改造する。
 ②秘密結社スナークの一員を名乗り、ヘンドリックス博士に『お魚スーツ(潜水服)』を借りる。
 ※『お魚スーツ(潜水服)』はお好みの魚の形に変化する着ぐるみですが、指定がなければ「チョウチンアンコウ型」のデザインになります。

 補足は以上です。
 第一章の断章の公開後、プレイング受付開始。
 第二章も断章公開までお待ちください。プレイング受付状況はタグをご参照願います。それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしています!!
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第1章 集団戦 『戦闘員』

POW   :    戦闘員アタック!
【全速力の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他の戦闘員】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    逃がさねえ!
【沢山の戦闘員への呼び掛け】から【沢山の戦闘員と共に敵に向かって体当たり】を放ち、【たくさんの戦闘員による拘束】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    仲間を呼ぶ
【甲高い声で叫ぶと近くのもう一人の戦闘員】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。

イラスト:柴一子

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●シャーク戦闘員
 ヒーローたちが撤退した後の大劇場には猟書家幹部と手下の戦闘員たちが集まっていた。
 戦闘員たちは猟書家幹部の力でホホジロザメとの融合体となり、『シャーク戦闘員』と化している。
「行け! まずは手始めにこの街を汚染してくるのだ!」
「シャーク!」
 猟書家幹部が命令を下し、シャーク戦闘員たちは街に放たれる。
 シャーク戦闘員は一様にサメの胸部から顔を出し、着ぐるみ然とした容貌をしているが、リアルガチな人食いザメだった。
 外皮は硬質で、口内にはノコギリ状の歯、背中には巨大な出刃包丁のような背びれがついている。
 噛みつかれても、体当たりされても、背びれに接触されても、ただでは済まないだろう。
もちろん、戦闘員なので腹部から四肢がニョキニョキと生えていて、一応パンチやキックもできる。
「シャークパンチ! シャークキック!」
 ヒーローの必殺技ように繰り出せばちょっとカッコいい。
 だが、四肢があるせいで遊泳速度がガタ落ちだった。それでも人型の体裁を保つことが彼らのアイデンティティなのだろう。
「敵を見つけたぞ! 根こそぎ食い散らかすぞ!」 
「うぉおおお! 生肉食わせろぉおおお!」
 戦闘員たちは人食いザメと融合したことで凶暴性が増していた。
 普段は絶対に口にしないような物騒な言葉を撒き散らしながら、彼らは侵入者に向かって突撃していく。

 そんなわけで、ちょっとコミカルだが、ガチンコで戦ったらそれなりに強いシャーク戦闘員たちとの戦いの火蓋が切られるのだった。
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎

ん~…、キャバリア等も持っているけれど、生身での戦いの方が得意かなぁ…
という事でお魚スーツをお借りして参戦する事にしよう
特に指定はないかな?
見た目はちょっとコミカルだけど、その性能は…現地で体験する事になるんだろうな

お魚スーツを着ているとはいえ、相手の方との機動性の差は現地で確認するしかない

オクトパス・ダイバーズに協力を仰いで、まずは相手の視界をスミで遮ってもらって、その間に敵の集団の周囲を囲むように【結界術】を張ろう
相手が逃走できないようにしつつ【破魔】付与の護符と刀で攻撃だ!
攻撃が命中した敵へUC『聖者の裁き』で追加ダメージ
一度でも攻撃の当たった相手は確実に倒していこう!



 海底都市メンブリック。大通りの石畳の上を『お魚スーツ』を着用した鳳凰院・ひりょ(f27864)が一人歩いていた。
 通りの左右には街灯が等間隔で設置されているが、今は点灯されていない。
 街の南の端にそびえ立つ高い尖塔の最上部に掲げられた光源は、太陽と見間違うほど明るく、石造りの建物が整然と立ち並ぶ古風な街を照らしている。どうやら海洋都市は「昼」のようだった。

 ひりょは手を握ったり開いたりしてお魚スーツの着心地を確かめながら、軽く飛び跳ねてみる。
 すると、垂直に上昇した体は重力に従って下降し、通りの石畳の上に違和感なく着地できた。
 水の抵抗もほとんど感じない。お魚スーツには浮力や水圧を相殺するような「謎の力」が働いているようだった。
 気密性が高いのに蒸れずに着心地も悪くはない。しかも関節部は伸縮性の高い素材でできているらしい。
 鈍重そうな着ぐるみでも動きを妨げることはなく、機敏な動きも可能なようだ。
(このスーツ、コミカルな見た目なのに高性能だな……)
 水中にいる感覚は鮮明なのに、地上にいるような錯覚を覚えるほどだった。
 しかし、今自分がいるのは紛れもなく「深海」だ。それに敵はすぐそばまで迫っている。
 ひりょは気を引き締め直し、頭上を見上げる。
 視線の先には「オクトパス・ダイバーズ」の精鋭たちが頭部の触手をうねらせながら、優雅に泳いでいた。
 周囲には色鮮やかな魚の群れが泳いでいる。それはアクアリウムの水槽の底にいるかのような幻想的な光景だった。敵はこの海を汚染しようとしているのだ。
(この美しい海を汚させはしない!)
 決意を新たにするひりょ。そして、スーツの無線機から切迫した声が聞こえてくる。

――仲間の先遣隊がサメ型の戦闘員の集団を発見。私たちがご案内しますので、迎撃お願いします!
 
 頭上で泳ぐオクトパス・ダイバーズがにわかに慌ただしくなり、彼らはひりょを先導して建物の間の細い路地に入っていく。建物で光が遮られ、路地は薄暗かった。すると唐突に、チョウチンアンコウ型のお魚スーツの頭部の突起が発光し、足元を照らした。
 ひりょは思わぬ「隠し機能」に面食らいながら路地を走ると、複数の路地が合流する明るい広場に出た。
 すると、別の路地から仲間の別部隊が飛び出してくる。その背後から追いかけてくるのは、シャーク戦闘員の一団。
「待ちやがれぇぇええ!」
「うおぉぉおお! ニク食わせろ!!」
 獰猛な人食いザメと融合し凶暴性を増した戦闘員たちは広場に躍り出ると、体を起こして血走った目を獲物に向ける。
「煙幕、お願いします!」
 ひりょの指示を受け、オクトパス・ダイバーズが一斉にスミを吐き出す。海水に黒い靄が瞬時に広がり、視界を奪われて立ち往生するシャーク戦闘員。ひりょはその間に素早く結界を展開し、広場を包囲する。
「ぶわっ、何だこれは!」
「なんも見えんぞ!」
「ニクゥ、ニクゥゥゥゥ!」
 業を煮やし、煙幕の中から三体の戦闘員が飛び出してくる。
「うおっ、ヤベッ!」
 後方に下がるのが遅れた味方のタコ男が声を上げると、ひりょは即座に動く。
「そうはさせないよ!」
 ひりょのユーベルコードが発動し、三体のホホジロザメに向かって飛翔する破魔の護符。
「ギャァアア!」
 シャーク戦闘員たちの白い腹部に護符が突き刺さり悲鳴が上がるも、致命打には至らない。
 だが、ひりょの攻撃もまだ終わってはいなかった。
――かの者に鉄槌を下す!
ユーベルコード・聖者の裁き。ひりょが聖者の力を開放すると、護符が命中した箇所が聖痕に変化し、まばゆい光が溢れ出す。それは邪悪な者を蝕む聖なる光だった。
「今です! 下がってください!」
 敵が怯んだ隙にタコ男が後退すると、ひりょは煙幕から出てくる増援の戦闘員たちに破魔の護符を乱れ撃つ。護符は敵に次々に命中し、聖痕から溢れる聖なる光が敵を足止めする。
「全身が焼けるように痛え……くそっ、撤退するぞ……ぐがっ、なんだこの壁は!」
 劣勢に立たされた戦闘員たちは慌てて逃げようとするも、パントマイムのように見えない壁に衝突してしまう。
「逃さない! お前たちにはここで還ってもらう!」 
 ひりょは、激痛に耐えきれずに落下してくる戦闘員に狙いを定めると、仕込み杖から破魔刀を抜き放ち、地面を強く蹴った。
 だが、そのとき予想外の出来事が起こる。突然、足裏から水流が噴射され、ロケットのように加速したのだ。
(うわわっ、こんな機能、聞いてないぞ!)
 お魚スーツの想定外の機能に焦るが、それでもひりょは敵から目を離さなかった。
 今はとりあえず目前の敵に集中。制御不可能な速度ではない。ひりょは敵との間合いをはかり、迷いなく斬撃を放つ。
 ザンッ。サメの胴体が真っ二つに切断され、さらに勢いに乗って後方の敵も一閃する。
 二体を危なげなく両断するも、ひりょの眼前には広場に面した建物の壁が迫っていた。
 だが、彼は落ち着いていた。軽業の要領で体を素早く反転させ、壁をキック。すると再び足裏から水流が噴出し、今度は他の戦闘員に向かって突進していく。
(なんか空中戦みたいだな……)
 水中での空中戦。そのひらめき通りにひりょは空中戦や空中機動の技能を活かし、壁蹴りを繰り返して弾丸のように飛び回り、軌道上のシャーク戦闘員を破魔刀で次々に薙ぎ払っていく。
 そして、すべての敵を骸の海に還したひりょは、オクトパス・ダイバーズとともに次なる戦いに赴くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


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●お魚スーツの機能(補足)
 先行した猟兵からの通信により、お魚スーツの機能についての詳細情報がもたらされた。
 お魚スーツ。それは海底の苛酷な環境下でも、ほぼ陸上戦と同等の動きで戦えるという高性能な潜水服だった。
 アトランティスの超技術により浮力も軽減され、海底でジャンプしたり、ダッシュしたりも難なくできる。
 武器を振り回すときには多少の水の抵抗を感じるものの、猟兵たちにとっては苦になるほどではないだろう。

 そして、地面を強く蹴ることで作動する「隠し機能」もついていた。スーツの足裏に内蔵された推進機である。
 圧縮した空気の圧力で大量の水を勢い良く噴出させて水中での推進力を得る。
 要するにペットボトルロケット的な原理で機動力を強化できる機能だった。
 さらに、陸上戦と同等の動きができる「通常モード」から「遊泳モード」に切り替えることで浮力を元に戻し、水中をスイスイ泳ぐことも可能だという。
 通常モードと遊泳モードは思念による操作で切り替えが可能なので、特殊な操作を覚える必要はない。
 つまり、任意のタイミングでモードを切り替え、水陸両方の戦い方ができるということである。

――ワシのお魚スーツは適応光線の恩恵を受けられない苛酷な環境下での戦闘を円滑にする偉大な大発明なのじゃ。ガハハハハッ!

 ヘンドリックス博士は延々と自分の発明品を自慢していたが、肝心なことを伝え忘れていた。
 完全なるポカである。彼はうっかりミスが多い残念な博士だったのだ
 ともあれ、お魚スーツの情報が周知されたことで、猟兵たちも随分戦いやすくなったようだ。
 そんなわけで、サポートでやってきた猟兵たちも加わり、敵勢力を駆逐するための戦いが始まったのである。

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●マスターより
 お魚スーツの機能について大分説明不足でした……申し訳ありません😓
 断章で少し補足させていただきました。
 現在(8/9)、サポートをお借りしてリプレイ執筆中ですが、プレイングも受付中です。途中参加も大歓迎ですので、よろしければどうぞ!
城田・紗希(サポート)
基本的には考えるより行動するタイプ。
でもウィザードミサイルや斬撃の軌跡ぐらいは考える。…脳筋じゃナイデスヨ?
暗器は隠しすぎたので、UC発動時にどこから何が出てくるか、術者も把握していない。

戦闘は確実性やオーバーキルより迎撃数を優先するので、全力魔法と範囲攻撃で少し広めに撃ってから時間差で仕留める。
もしくは単体攻撃にカウンターや鎧破壊攻撃を乗せつつ、連続して使って、一撃必殺を繰り返す。
「ここから先は行かせないよ、キリッ」
…ところで、なんでオブリビオン居るの?(前後の説明忘れた)

……防御?なんかこう、勘で!(第六感)
耐性……は、なんか色々!(覚えてない)


クリュウ・リヴィエ(サポート)
記憶喪失のダンピールだよ。
名前も年齢も本当かどうか、僕にも判らない。
ま、気にしてないけどね。

自分の過去は判らなくても、色々考えるのは好きだよ。
他人の行動とか状況とかに違和感があると、それに何か意味がないのか考えちゃうよね。
まあ、それで僕が有利になるかどうかは別問題だけど。

あとは食べることも好き。
食わず嫌いはしないし、残さないよ。

戦うときは、突っ込んで力任せに殴り掛かることが多いかな。
一応、剣も魔法も使えるんだけど、結局シンプルなのが性に合うね。


桜雨・カイ(サポート)
【日常】
口調は年齢立場変わらず丁寧語です
自分は人形なので、人のそばにいて力になりたいと思っています。
怒ったり、他人を悪く言う事はしません。どんな恰好や行動もその人の個性ですから
まだまだ知らない事が多いので…言われた事は素直に信じてしまう性格です。

【戦闘】
UCは状況に応じて使い分けます
【錬成カミヤドリ】は防御と攻撃に分ける事が多いです
【エレメンタルー】は精霊にお願いすると手を貸してくれます(炎が多いです)【念糸】で敵の動きを封じる時も。
基本は人を守ろうと動きます。
…でも、どうしても避けられない時は…手を下す側にまわります。
どんなに辛くても……大丈夫です、自分で決めた事ですから。


富井・亮平(サポート)
【解説】
オブリビオンと戦うという設定のヒーローマスク。
マスクを被るとボディの人格が変わるような感じ。

謎のオブリビオン文明の話とか、地球侵略を狙うオブリビオン星人の話とか、適当な事を言いながら頑張る。
関係なくてもオブリビオンのせいにして行動する。

行動そのものはマトモ。

【行動】
ヒーローっぽい行動であれば何でもします。
戦闘は主に魔法剣士スタイルですが、機械も扱えます。
ガジェット形状は固定していません、必要に応じ自由に変なメカを使わせて下さい。

UCを使うと「黒幕が出てきて敵を改造する」「謎のお助けキャラが登場する」などのヒーローっぽいイベントも発生させられます。

「このイェーガーレッドに任せておけッ!」



●駆逐作戦
 ホホジロザメと同化した「シャーク戦闘員」は予想以上に数が多く、広い範囲に散らばっているようだった。
 先行した猟兵たちの活躍で数はかなり減っているものの、完全に駆逐するまでかなりの時間を要するようだった。
 そこで立案されたのが人海戦術での駆逐作戦だ。
 作戦会議の席上で、桜雨・カイ(f05712)は海底都市メンブリックの地図を広げ、ため息をつく。
「この街は、高い建物の間に細い路地が迷路のように入り組んでいるようです……これでは倒し損ねて逃げられると追跡するのが大変ですね」
「この街には野外劇場がたくさんあるんだね」
 カイの隣席に座るクリュウ・リヴィエ(f03518)は、同じ地図をじっと見つめながら思案顔でつぶやく。
「ここは演劇の街なので、街の至るところに劇場が点在しています。屋外劇場は常時開放されているので、出入りが自由ですが、そのせいで中央にある大劇場が占拠されたようですね」
 カイが説明すると、クリュウは地図の東側にある劇場の一つを指差す。
「それでは、ここに敵を追い込んで戦うというのはどうかな?」
「……屋外劇場でということでしょうか?」
「うん。住人と観光客の皆さんの避難は終わってるんだよね?」
 会議に参加しているオクトパス・ダイバーズのリーダーに念のため確認を取ると肯定の返事が返ってくる。
「劇場に誘い込めば敵の退路を塞いで戦うことができるよね。それにここなら破壊力のある攻撃でも気兼ねなく放てるし、街への被害も最小限にできると思う」
「そうですね。全員で力を合わせれば、作戦遂行も難しくはないでしょう。皆さん、この作戦に異論がある方はいらっしゃいますか?」
 異論を挟むものはいなかった。賛成多数で作戦が決定し、敵を誘導するルートの選定と役割分担が行われることとなった。

●仕込みは念入りに
 カイは地図を片手に海底都市の路地を駆け回っていた。敵の逃亡を阻止する結界を脇道に張るためだ。
 結界に用いるのは、普段は人形を操るために使用している念糸。それは彼の意志で自由自在に動き、術式を用いる際の媒体としても使用できる特殊な糸だった。 
 カイは目的のポイントに到着すると、まず脇道の入り口に念糸を張り巡らせ、念糸で編んだ護符「糸編符」をくくりつけ、その上から結界術を施す。
 糸編符は受けたダメージを術・物理に関わらず相殺する力を持つため、結界をより強固なものにできる。
(こうしておけば簡単に突破されることはないでしょう。脇道の封鎖は計画の要ですから、念には念をいれないと……)
 カイは自分の受け持ちの場所すべてに結界を施し、無線で仲間が無事に仕事を終えたことを確認すると、安堵のため息をつく。
「これで準備は万端です。後は誘導係にまかせて劇場での迎撃に加わりましょう」

●元気少女の誘導作業
「おい、タコ野郎、待てコラァアア!」
「おい、逃げんじゃねぇ。ニク喰わせろや!」
「助けてぇええ!」
 海底都市の細い路地に響き渡る怒声と悲鳴。
 悲鳴を上げているのは路地を逃げ惑うオクトパスダイバーズ。
 そして、それを追いかけているのは巨大なホホジロザメ――シャーク戦闘員――である。
 シャーク戦闘員たちは興奮した様子で高速遊泳で追跡するも、土地勘のあるタコ頭のヒーローたちは何度も路地を曲がり、追いつかせない。
 そして、オクトパス・ダイバーズが敵を引き連れて飛び込んだのは複数の路地が合流する広場だった。

「ご苦労さま。あとは私に任せて!」
 辛くも逃げ切ったタコのおじさんたちにねぎらいの言葉をかけ、敵の前に歩み出たのはお魚スーツを着た城田・紗希(f01927)だった。その視線の先には続々と広場に集まってくるホホジロザメの一団。
「私が相手だよ! ここからは行かせないよっ、キリッ!」
 腰に手を当て胸を張る紗希。その表情は自信に満ちあふれている。
 だが、戦闘員たちは紗希に侮蔑的な視線を向けてきた。
「ほう、オレたちを止めるというのか。面白い冗談を言う奴だな!」
「こいつ、女だぜ。タコ野郎どもよりウマそうだ!」
「野郎ども、タコ野郎は後回しにして、コイツをすり潰すぞ!」
 場の空気が瞬時に緊張し、シャーク戦闘員たちは臨戦態勢を整える。
 すると、紗希は即座にウィザードロッドに魔力を集中させ、高速詠唱でユーベルコードを発動させる。
「今日はゆっくり相手してる暇はないんだ。ごめんね!」
 周囲に発せられる魔法の光。そして、約500本の炎の矢が虚空に出現する。
 水中で炎の矢。魔法の炎は水中で消えることはなかったが、威力は減衰し、水の抵抗で矢の速度は遅くなっていた。
 当然、矢は戦闘員たちにあっさりと躱されてしまう。だが、魔法の炎は周囲の水を急速に熱し、海水温を急上昇させる。
「あちっ、あっちい!」
「やべっ、周りがお湯になってるぞ! 早く逃げねーと火傷しちまう!」
「こいつ、狙ってやがったのか! 恐るべき知略家だ!」
 熱水による想定外のダメージを受け、大混乱のホホジロザメ軍団。魚類は熱に弱いのだ。
 しかし、紗希は首をかしげ、キョトンとした顔をしていた。
(本当は炎の矢でドカーンとやるつもりだったんだけどね!)
 想定外の状況だが、結果オーライだ。敵を混乱の渦に陥れた紗希は、戦闘員たちが入ってきた路地の前までさり気なく移動し、退路を塞ぐ。
「早く逃げないと茹でサメになっちゃうよ。おじさんたち、そっちの道なら逃げられるよ……これは親切心ナンデスヨ。ゼンゼン、ナニモ、タクランデ、マセンカラ!」
 嘘つくの下手過ぎかよ。思わずツッコミを入れたくなるほどのぎこちない台詞だったが、パニック状態のシャーク戦闘員にとっては渡りに船。彼らは熱水から逃れるべく、紗希が指差す通路に向かって雪崩込んでいく。
 通路の先は「一本道」だった。脇道を結界で塞いでいるため、劇場までの道をまっすぐ進むしかない。劇場の前には数人の猟兵が配置され、牽制の攻撃を放つ計画になっていた。
 結局、戦闘員たちの逃げ場は猟兵たちが待ち受ける劇場しかないのである。
 
 敵が全員逃げ出し、閑散とする広場。すると、再びオクトパス・ダイバーズとシャーク戦闘員の追いかけっ子の声が聞こえてくる。もうすぐ広場にやってくるだろう。
「助けてぇえ!」
「おいコラ、待ちやがれ!」
「よーし! 私がどんどん誘導してあげるよ!」
 紗希は敵の第二陣の到着を前に、気を引き締める。
 こうして誘導作業はつつがなく進み、劇場での戦いが始まるのだった。

●劇場での大乱闘
「くそっ、まんまと誘い込まれるとはな……オレたちは袋の鼠ってわけか!」
 シャーク戦闘員のリーダーは、歯噛みするようにホホジロザメの歯をガチガチと鳴らし、劇場で待ち構えていた猟兵たちとオクトパス・ダイバーズをにらみつける。
 だが、彼らとてオブリビオン。罠にかかった程度では戦意を喪失したりはしない。すぐに気を取り直し、天敵の猟兵への憎悪の炎を燃え上がらせる。
「クククッ、オレたちは海の頂点捕食者! 野郎ども、コイツら全員食い散らかすぞ!」
――グルルウゥゥゥゥ……グゥゥゥゥゥウ!
 怒りの権化となったシャーク戦闘員たちは獰猛なうなり声を上げ、敵に狙いを定める。
 水中を魚雷のように飛翔するホホジロザメの群れ。その突進力は凄まじかった。
「ひぃぃっ!」
 出刃包丁のような背びれを立てて猛然と襲い来る巨大なサメ軍団に、オクトパス・ダイバーズは悲鳴を上げて後退する。
 そんな彼らを守るように立ち塞がる一つの影。それは赤いお魚スーツ(キンメダイ型)を着た、富井・亮平(f12712)こと「イェーガーレッド」だった。
「海を汚染し、世界征服を画策する『悪の帝国アトランティス』の戦闘員どもよ! 私が相手だ!」
 それはヒーローとしての本能か。それとも激しい妄想のなせる技か。戦闘員に対峙したイェーガーレッドの気合は烈火の如く燃え上がり、全身から熱気が立ち昇っていた。
「サンダー・ソード!」
 ジャキン。派手な効果音とともに雷属性のルーンソードを構えると、レッドは地面を強く蹴り、お魚スーツの推進機を利用して敵の群れに単身で突っ込んでいく。
 そして、敵を目前にして横薙ぎに払われた雷の刃は、先陣を切って突っ込んできた二体のホホジロザメを両断する。
 断末魔の悲鳴。黒い粒子を撒き散らして消滅する二体を尻目に、レッドは向かってくる敵を次々に薙ぎ払っていく。
 それはまるでヒーローショーを見ているような見事な戦いぶり。だが、多勢に無勢。単身で戦うレッドは次第に敵の猛攻に押され始め、前方の敵を斬り捨てている間に、背後から密かに接近したサメの牙が迫る。
 その刹那、後方から放たれた黒き蛇がサメの腹部を貫く。それはクリュウの放った蛇腹剣の刺突だ。
 さらにクリュウはレッドの背後の敵の群れを蛇腹剣を振り回して蹴散らすと、レッドの背中を守るようにして立つ。
「少し数が多いね。僕も少し本気を出そうかな」
 クリュウは蛇腹剣を納めて拳を握ると、ユーベルコード「トリニティ・エンハンス」が発動する。
 炎、氷、風。三種のエレメントが包み込み、クリュウの肉体を強化する。今回は主に腕力を高めた攻撃特化の術式だ。
 短期決戦で敵を一網打尽にする。クリュウの意志を象徴するかのように黄金の瞳が煌めく。
 対するシャーク戦闘員たちは敵の力が増したことに全く気づいてはいなかった。
 納剣したクリュウを見て好機と判断した一体のシャーク戦闘員が突進してくる。
 しかし、クリュウは全く動じない。眼前の敵を睨み「殺気」を放つと、矢に射抜かれたように動きを止めるホホジロザメ。それは一瞬のためらいに過ぎなかった。だが、拳の一撃を放つには十分な時間だった。
 ドゴッ。最小限の動作で放たれた痛烈な拳打がサメの眉間を捉え、死の絶叫を撒き散らしながら後方に弾き飛ばされたシャーク戦闘員。浅はかな敵はそのまま観客席に激突し、黒い粒子を放出しながら骸の海へと還っていく。
 圧倒的な破壊力を持つ拳撃。シンプルながらも派手な攻撃を目の当たりにした戦闘員たちはすっかり腰が引けていた。クリュウは嘲笑的な笑みを浮かべる。
「ふふっ、僕に牙を剥く覚悟もないようだね。かかってこないのならこちらから行くよ!」
 次なる敵に狙いを定めたクリュウは地面を蹴り、シャーク戦闘員たちを拳一つで屠っていく。

 一方、少し遅れて到着したカイは敵に囲まれていた。
――グゥゥゥウウ……グウゥゥゥゥウ
 飢えた獣のような唸り声。カイの反撃を警戒し、すぐには襲ってこないが、少しでも隙を見せれば一斉に襲ってくるのだろう。そんな緊迫した状況下でも、カイは落ち着いていた。
「あなたたちはどうしてこんなにも美しい海を汚染し、人々を悲しませるのですか?」
 それは素朴な問いかけだった。当然、シャーク戦闘員たちは問いに応じることはなかった。こいつ戦闘中に何言ってるんだ。そんな反応である。
「やはり話が通じる相手ではないようですね。それならば仕方ありません……」
 ユーベルコード「援の腕」は既に発動していた。
 優しい光で満たされるカイの両手。それはゆっくりと正面に掲げられ、掌から溢れ出す浄化の光は敵の群れを包み込み拘束していく。
「な、なんだこの光は……力が抜けていく……」
 シャーク戦闘員は、女神の腕に抱かれているような温かな光の中で、今にも寝てしまいそうに穏やかな顔をしている。既に勝敗は決していた。戦意を失い、その場に静止したまま彼らは黒い粒子を水の中に飛散させ、骸の海へと還っていった。

●トドメの砲撃
 劇場での戦いも大詰め。クリュウが拳を振るい、カイが浄化の光で邪悪を払い除け、後から合流した紗希が縦横無尽に刀を振るう。劇場で一騎当千の活躍を見せる猟兵たちの活躍で敵戦力はみるみるうちに減っていき、劇場の戦闘員は残り僅かとなった。
 そして、イェーガーレッドはオクトパス・ダイバーズから選抜した5人とともに、トドメとばかりにユーベルコードを発動させる。
「いくぞ、みんなッ! イェーガーバズーカ発動だッ!」
「「「おうッ!!!」」」
 レッドが持つ大筒型のガジェットがまばゆい光を放ち、それに呼応するようにオクトパス・ダイバーズそれぞれが持つ銃型の武器が輝き始める。
 キラーン。ジャキン。ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ。ガッシーン。
 激しい効果音とともに虹色の光が発せられ、「イェーガーバズーカ」が完成した。
 それは一人では持てないほど重くて複雑な形状をしていたが、今のイェーガーレッドはひとりではない。仲間たちがいるのだ。5人のオクトパスダイバーズが支えるバズーカの背後に立ったレッドは、敵陣の中央に照準を合わせる。
「照準セット! イェーガーバズーカ発射!!」
 レッドが号令をかけ、仲間たちが一斉にトリガーを引くと、砲口に集束した光の束が放たれる。
 それは敵陣の中央で炸裂し、拡散した光の帯が、戦闘員たちを次々と飲み込んでいく。
「「「ぐわああああ!」」」
 海底の街に響き渡る断末魔。そして、光が消えたときには、シャーク戦闘員たちの巨体は跡形もなく消え去っていた。

「これで作戦完了かな」
「私たちの大勝利だね!」
「お疲れ様です。これでほとんどの敵は倒せたでしょう。後はボスを倒すだけですね」
「正義は必ず勝つ! 次は悪の帝国アトランティスの野望を打ち砕こう!」
 野外劇場の敵を殲滅したクリュウ、紗希、カイ、イェーガーレッドはそれぞれの思いを口にすると、次なる戦いに赴くのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

禍神塚・鏡吾
技能:変装、演技、情報収集、おびき寄せ、だまし討ち、衝撃波、水中機動、逃げ足

「秘密結社スナークの方から来ました」
ホホジロザメ形のお魚スーツをお願いします
ゆるふわなままでは細部が曖昧なので、電脳魔術を使った幻でリアルガチな見た目に変装します

戦闘員の一人を装って「侵入者を見つけた」と適当な集団に呼び掛け、狭い所におびき出します
おびき出す場所を選ぶ時は、オクトパス・ダイバーズの皆さんの知識と経験をお借りしましょう

数の有利を生かせない状況で各個撃破し、倒せるだけ倒したら「偽物が私だけだと思うか?」とハッタリかまして逃げます

疑心暗鬼に陥れば、連携も難しくなるでしょう
ヒーローらしくない?
いいえ私は猟兵です



●変装
「このスーツは着用者の思念を読み取って形を変える……しかし、このスーツで変装するには少しリアルさが足りませんね……」
 禍神塚・鏡吾(f04789)はお魚スーツの性能を確かめながら、海底都市の街角にたむろするシャーク戦闘員を物陰から観察し、思考を巡らせる。
 そして、彼は自らの計画を実行するために、ホホジロザメに変化させたスーツに電脳魔術による幻でリアルガチな装飾を施すと、オクトパス・ダイバーズに借りた街の地図の印を確認し、動き出すのだった。

●欺瞞
「骨の髄まで食い尽くせ♪ オレたち頂点捕食者だー♪ シャク、シャク、シャーク♪ シャク、シャク、シャーク♪」
 調子外れのオリジナルソングが海底都市の大通りに響き渡る。
 街を我が者顔で闊歩するシャーク戦闘員の小隊は、汚染物質をひたすら撒き散らしていた。彼らのところには今まで邪魔が一切入らず、平和そのもの。すっかり気が緩みきっているようだった。
「誰かぁああ! 助けてくれ!」
 突然、耳を劈くような悲鳴が上がり、脇道から飛び出してくる戦闘員の男。
 戦闘員の小隊が何事かと駆け寄ると、男はすがるような目で彼らを見た。
「侵入者を見つけて……それで仲間が……冷酷な目をした男に……男に、殺られて!」
 よほど恐ろしい相手に遭遇したのか、男の声は上ずり、しどろもどろに窮状を訴える。
「なんだ敵は一人なのか? とにかく、案内しろ!」
 よっしゃ、オレたちの力を見せてやるぜ。シャーク戦闘員の小隊はそんな軽いノリで男の先導に従い、侵入者の排除に向かうのだった。

●暗殺
 男が案内したのは、街に点在する公衆浴場の一つ。そこは住民の憩いの場として常時開放されており、緊急時でも鍵をかけられることはなかった。
「ここだな。踏み込むぞ! 野郎ども!」
 リーダーの号令を受け、戦闘員たちは浴場へとなだれ込んでいく。
 だが、敵の姿を求めて探し回るも、そこには誰もいなかった。
「どこにも敵はいねえぞ!」
「もう逃げられたんじゃね?」
「なんだ、無駄足か……」
 恐ろしい侵入者がいないとわかり、安堵の吐息が漏れる。
 そして、踵を返し公衆浴場を後にしようとしたとき、彼らは異変に気づく。
 入り口を塞ぐように地に足をつけて立ち、両手を広げている戦闘員の男。うつむいている男の表情はうかがえない。ブツブツと何かをつぶやいているようだった。
「……お前、なんでそんなところに突っ立ってんだよ!」
「おい、なんとか言えよ! お前、様子がおかしいぞ!」
「そもそも敵、いねぇじゃねーか。無駄足踏ませるんじゃねぇよ!」
 戦闘員の小隊の面々は不安を振り払うかのように、次々に罵声を浴びせる。
「うるさいですね……敵ならここにいますよ」
 ようやく顔を上げた男は「冷酷な目」をしていた。
 ゾクリ。戦闘員たちは全身を硬直させる。
 騙された。気づいたときには既に遅かった。
 咎人封じ。戦闘員に扮した鏡吾のユーベルコードが発動し、虚空に出現した拘束具が戦闘員たちを捕縛していく。
 罵声を浴びせようにも、口を塞がれモゴモゴとした音しか出せない。
 猿轡を解こうにも手枷をガッチリはめられて手を動かすこともできない。
 ホホジロザメの牙で噛み付こうにもロープでグルグル巻きにされ、動くことすらできなかった。
「5匹ですか。最初にしては上出来です……さてと、急所はどこでしょうか? すぐに楽にして差し上げましょう」
 鏡吾は不変の笑みを浮かべながら、戦闘員たちを屠っていく――。

●発覚
 その後も、鏡吾は同じ手口で敵を人目がつかない場所におびき出しては次々と屠っていった。
 だが、異変を察知したシャーク戦闘員たちは原因を突き止めるために巡回を開始し、警戒が呼びかけられる。
 そして、ついに鏡吾の正体が露見することとなる。
「お前ら、そこで何をしている!」
「オレらは、こいつに頼まれて侵入者退治の応援に行くところだぜ」
「侵入者? こちらには敵はいなかったはずだが……さてはお前、偽物だな!」
(潮時ですね……)
 鏡吾は牽制に衝撃波を放ちながら敵の一団から距離を取ると、開き直った犯人の如く高笑いをした。
「な、何がおかしいんだ!」
「あんたはまさか偽物が一人だと思っているのか?」
「な、何だと!」
 偽物を見破った戦闘員の顔に、動揺の色がありありと浮かぶ。
 すると、鏡吾は畳みかけるように敵の一団を次々に指差しながら、長広舌でまくしたてる。
「ここにも、そこにも、あそこにも! あんたらの中に偽物が紛れ込んでいるぞ! ほら、後ろの男があんたを狙っているぞ! 隣の男を見てみろ。あんたを食い殺す隙を虎視眈々とうかがっているぞ! 既に手遅れだ。あんたらは数十人の偽物に内部から滅ぼされるのだ!」
 当然ハッタリなのだが、鏡吾の迫真の演技に騙され、戦闘員たちは疑心暗鬼に陥ってしまう。
 お前が偽物じゃないのか。お前こそ偽物だろ。お前ら俺に近づくんじゃねぇよ。俺は本物だ、そんな目で見るんじゃねぇ。そんな声が上がるまで時間はかからなかった。 
 敵軍が大混乱に陥る最中、悠々と逃亡する鏡吾。彼は敵軍が仲間割れを始めたことを無線で報告すると、暗い路地へと消えていく。
 そして、報告を受けた猟兵たちは一気に攻勢をかけ、残りの戦闘員たちを殲滅していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『クリティアス』

POW   :    深海激怒ティマイオス
【海を汚染した地上文明に対する怒り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    海洋憤懣ヘルモクラテス
自身の【頑健な甲羅】から【大津波と共に汚染に蝕まれた海洋生物たち】を放出し、戦場内全ての【敵を海に沈め、海洋生物以外の水中活動能力】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
WIZ   :    侵略蔵書「ガベッジ・オーシャン」
【猛毒と化した汚染水を垂れ流す姿】に変身する。変身の度に自身の【体から溢れる汚染廃棄物】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。

イラスト:須田デジタル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はマローネ・ティーフゼーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 演劇の都の中央に位置する野外大劇場。猟書家幹部クリティアスは半月型の舞台に一人で鎮座していた。
「帰還せぬか……あやつらにはちと荷が重かったのじゃろうな。これも海の神様の導き、宿命なのじゃろうて」
 クリティアスは手下が一人も帰還しない事態にも鷹揚な態度を崩さなかった。
 己の力への絶対的な自信。そして自らの境遇への諦観がそうさせているのだろう。
 
 クリティアスが背負う甲羅は、まるで地上文明への憤怒の炎が凝固したような形をしていた。
 急峻な山々が幾つも隆起し、カルデラのような火口からは汚染物質が絶えず零れ落ちる。
 汚水を垂れ流し、数多の海洋生物とともに我が命を奪った地上文明。この怒りは絶対に忘れてはならない。
 クリティアスは侵略者の時代、地上に侵攻した海神の眷属の成れの果てだ。
 海神を信奉する誇り高き眷属は、地上文明による絶え間なき海洋汚染ですべてを失い、地上文明への怒りとともにオブリビオンとして蘇ったのである。

 そして、ついに猟兵たちが大劇場に押し寄せてくる。
 クリティアスは鈍重な体を持ち上げると、背中の火山から汚染物質を吹き出させ、齢を重ねた低い声で名乗りを上げる。
「我が名はクリティアス。地上文明が無尽蔵に垂れ流した毒物で数多の同胞が死に絶えた。これを大量虐殺と呼ばずして何と呼ぶのか。我は地上文明に報復する。邪魔をする者どもは海の藻屑となるがいい!」

 海洋汚染の報復のために、自らが海洋汚染に手を染める。
 そんな自己矛盾を抱えながらも、地上文明への復讐心に囚われるクリティアスは自らを律することができなくなっていた。もう彼が正気を取り戻すことはない。猟兵たちが憐れな大亀にしてやれるのは、骸の海へと還し、ひとときの安寧を与えてやることだけだった。


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●補足情報
 第二章は猟書家幹部「クリティアス」との決戦です。
 第一章での猟兵たちの活躍により手下の戦闘員たちは殲滅され、素の状態のクリティアスと戦うこととなりましたが、それでも手強い相手だと思います。

 バトルフィールドは海底都市の野外大劇場。
 舞台を取り囲むような観客席がある円形闘技場を半分に割ったような半円形の劇場です。
 野球場くらいの広さで屋根はありません。大劇場は強固な造りなので大暴れしても大丈夫です。


◆お魚スーツの性能(補足)
・お魚スーツは海底の苛酷な環境下でも、ほぼ陸上戦と同等の動きで戦える高性能な潜水服です。
・アトランティスの超技術により浮力を相殺しているので、海底をジャンプしたり、ダッシュしたりも難なくできます。
・武器を振り回すときには多少の水の抵抗を感じるものの、猟兵たちにとっては苦になるほどではありません。
・足裏に推進機が内蔵されており、地面を強く蹴ることで大量の水を勢いよく噴射させ、高い機動力を得られます。
・陸上戦と同等の動きができる「通常モード」から「遊泳モード」に切り替えることで、浮力を元に戻して水中をスイスイ泳ぐこともできます。思念操作により誰でも任意のタイミングで切り替えられるので、水陸両方の戦い方が可能です。

◎補足は以上です。第二章もよろしくお願いします!

※満月まで期限が迫っているので早期の完結を目指します。
 途中参加も大歓迎ですので、ご協力お願い致します。
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ

お魚スーツ、この高性能具合に振り回されないように気を付けなきゃな(苦笑
さて、軽口はこのくらいにして…
相手は汚染水を垂れ流してくるようだ
あまり周囲へこの汚染水は広げたくない所だな…
先程と同様にオクトパス・ダイバーズの皆さんには煙幕を張ってもらった後に素早く周囲へ結界を【結界術】で形成して、必要以上の汚染水の流出を防ぐよう試み

煙幕の効果があるうちに敵に向けて複数の護符を【乱れ撃ち】で投擲!
【破魔】の効果を付与した遠距離攻撃で攻撃しつつ、敵の四方へもさりげなく護符を展開

劇場は屋根がないとの事、ちょうどいい!
風の力で渦潮を発生させてぶつけてやる!
切り刻め!エレメンタル・バースト!



「山だ……山が泳いでいる……」
 鳳凰院・ひりょ(f27864)とともに海底都市の大劇場にやってきたオクトパス・ダイバーズの一人が驚愕の声を上げる。それは言い得て妙だった。山脈を想起させる巨大な甲羅を背負い、岩肌のようにゴツゴツした巨腕を豪快に動かし、熊のような手で力強く水を掻いて推進する大亀。舞台の上を優雅に遊泳するその様は、海の王者の風格すら感じられた。
 だが、背中の山々の火口からは、深緑色の流動性の液体が脈動とともにドボドボと流れ出し、清澄な水を濁らせていく。敵は呼吸するように海洋汚染を続けているのだ。
(あの汚染水……あまり周囲には広げたくないな)
 ひりょは周囲のオクトパス・ダイバーズの面々を見渡すと、クリティアスを指差し、その手を開く。
 すると、素早く散開したタコ頭のミュータント・ヒーローたちが目標に向かって一斉にスミを噴霧し、敵の周囲に真っ黒なスミの膜が何重にも展開していく。
 そして、煙幕が敵を完全包囲すると、彼らはすぐに後方に下がり、戦いの邪魔にならないように待機する。
 ハンドサインによる連携。軍隊のような統率の取れた動き。それはひりょとダイバーズの精鋭たちが、戦闘員との市街戦の中で培ったものだった。
「ひりょさん、後は頼みます!」
 後方に下がった男たちから声が飛ぶ。その言葉にはひりょへの敬意と親愛の情が込められていた。
(ありがとうございます。あと少しです。一緒にがんばりましょう!)
 そんな思いを込めてひりょは仲間たちに力強くうなずくと、汚染水を飛散させないように周囲に防護結界を展開。
 さらに地面を蹴ってお魚スーツの足裏の推進機を作動させ、高く飛び上がりながら護符を乱れ撃つ。その半分は煙幕の中央に向かって飛んでいき、残りは煙幕の周囲に散らばる。
「ふぐっ!」
 数瞬遅れて、煙幕の中から呻き声が聞こえてくる。破魔の護符が突き刺さったのだ。
 だが、クリティアスは怯まなかった。
 左右の腕を激しく振り回して水流を発生させ、煙幕を吹き飛ばす。
 姿を表した大亀は破魔の護符で傷だらけだったが、その頑健な体はびくともしていない。
「愚かな地上人よ。己の罪を死んで悔いるがいい!」
 海の底から響くような低い声で断罪の言葉が紡がれると、クリティアスの甲羅の山々が筒状に変貌を遂げ、その基部が脈打ち、明滅を始める。砲弾の装填。猛毒の汚染水を体内で濃縮し、噴射する準備をしているのだ。
(そうはさせない!)
 異変を察知したひりょは即座に頭上に手を振り上げ、虚空を斬るように振り下ろす。
 すると、クリティアスの周囲に散らばった『精霊の護符』が一斉に光輝を放ち、風の疑似精霊たちが瞬時に召喚される。疑似精霊に包囲されたクリティアスはその顔に焦りの色を浮かべる。反撃しようにも汚染水の充填は終わっていない。
――切り刻め! エレメンタル・バースト!
 ひりょの言霊とともに、疑似精霊が四方八方から風の刃を放ち、クリティアスへと降り注ぐ!
 そして、水中を直進した無数の鋭利な刃は、大亀の甲羅に次々に突き刺さり、汚染水の砲塔を切り刻んでいく。
 さらに、無数の風が通過した余波で水中で「乱気流」が引き起こされ、複雑な海流を成し、やがて海流は渦を巻き、渦潮を形成する。それはまるで水中に発生した竜巻。クリティアスは渦を巻く水柱へとあっけなく呑み込まれ、なす術なく体の制御を奪われてしまう。
 旋風に巻き上げられる塵のように、潮の中を舞い踊る大亀。身動きが取れず滅茶苦茶に撹拌され、さらに水の壁を切り裂くように飛んでくる風刃の襲撃を受ける。
 これはまずい。早く渦の外に出なければ。大亀は咄嗟に激しく四肢をばたつかせるも、海水の拘束から抜け出すことはできない。
(なんと! 母なる海が我と敵対することになろうとは! 海の神よ、我のしていることが間違いだとおっしゃるのか!)
 クリティアスは熱心に信奉していた海神に問いかける。
 だが、海神の眷属としての矜持を失った憐れな大亀に神は何も答えてはくれない。
 猛烈な海流に巻き込まれ、風刃に切り刻まれながら、クリティアスは永劫に続くとも思える責苦を瞑目し、耐え忍ぶ。
(だが、我が命はまだまだ燃え尽きぬ。我がここから解放されるのか。それとも我が滅びるのか……我が命運を神の裁きに委ねるのもよかろう)
 クリティアスはただ渦に身を任せ、諦観していた。ひりょは結界の檻の中で汚染水を撒き散らしながら命を削っていく憐れな大亀の行く末を見届けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星川・杏梨(サポート)
『この剣に、私の誓いを込めて』
 人間のスーパーヒーロー×剣豪、女の子です。
 普段の口調は「聖なる剣士(私、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
 時々「落ち着いた感じ(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格はクールで凛とした雰囲気です。
常に冷静さを念頭に置く様に努めており、
取り乱さない様に気を付けています。
戦闘は、剣・銃・魔法と一通りこなせます。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


北条・優希斗(サポート)
『敵か』
『アンタの言う事は理う解できる。だから俺は、殺してでも、アンタを止めるよ』
『遅いな』
左手に『蒼月』、右手に『月下美人』と言う二刀流を好んで戦う剣士です。
自らの過去を夢に見ることがあり、それを自身の罪の証と考えているため、過去に拘りと敬意を持っております。その為オブリビオンに思想や理想があればそれを聞き、自分なりの回答をしてから斬ります。
又、『夕顔』と呼ばれる糸で敵の同士討ちを誘ったり『月桂樹』による騙し討ちを行なったりと絡め手も使います。
一人称は『俺』、口調は年上には『敬語』、それ以外は『男性口調』です。
見切り、残像、ダッシュ等の機動性重視の回避型の戦い方をします。


エリカ・グランドール(サポート)
 サイボーグのシャーマン×電脳魔術士のエリカ・グランドールです。
 戦闘はあまり得意ではありませんが、周囲の状況を観察して違和感のある箇所を発見したり、敵の弱点を推測して隙を作り出すといった行動で皆さんをサポートしたいです。

※セリフ例
「今、何か光りました。ここに何かあるのでは……」
「あの敵の動きには規則性があるわ。うまく狙う事が出来れば……」

 冷静沈着と言う程ではありませんが、ビックリする事はあまりありません。
 あと、笑いのツボが良くわかっておらず「今の、どこがおもしろかったのでしょうか?」と、真面目に聞き返す事もあるようです。

 ユーベルコードは、エレクトロレギオンを好んで使います。


アメリア・イアハッター(サポート)
【サポート】
他の猟兵の行動が成功するようにサポートに徹し、下記のような行動をとります。
・機動力が必要であれば宇宙バイク「エアハート」に仲間を乗せる。
・仲間の攻撃が当たるように、敵の行動をUC「風の友」で読んだり、氷系のUCを使って敵の機動力を封じる。
・仲間の攻撃を強化するために支援系UCを使ったり、鼓舞をする。
・敵の注意を逸らすため、宇宙バイク騎乗や空中にて囮となる。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●溢れ出す海洋生物
 海底都市の野外大劇場。クリティアスの体には大小幾つもの傷が刻まれ、巨大な火山のような甲羅にはヒビが入っていた。それでも我は滅びない。お前たちの攻撃は効いていないのだ。
 そう自らを鼓舞し、クリティアスは頑健な肉体を誇示するように優雅に遊泳しながら、猟兵たちを睥睨する。
「なぜ、お主らは我の邪魔をする? 地上文明は報いを受けるべきなのだ。そんなこともわからんのか!」
 海に毒物を垂れ流し、同胞たる海洋生物たちの命を奪った地上文明への怒り。そして、その報復には地上文明の壊滅こそが必要であると、揺るがぬ意志を再び口にする。
 しかし、今のクリティアスがしているのは、かつての地上文明と同じ、ただの海洋汚染である。
「アンタの言う事は理解できる。しかし、今のアンタにあるのは『怒り』だけだ。その思いが強すぎるが故に、たとえ道が間違っていても止まることができないのだろう……だから俺は、殺してでも、アンタを止めるよ」
 破綻した論理を振りかざすオブリビオンは殺さなければ止められない。
 北条・優希斗(f02283)はクリティアスの思いに真摯に耳を傾け、その上で斬ることを選ぶ。
「……それならお主たちには海洋生物たちの怒りを味わってもらうことにしよう!」
 クリティアスはひび割れた甲羅の隙間から大津波のような水の波動を放ち、フィールドを自らの有利な空間へと塗り替えていく。
「おわっ、急に体の自由が……利かなくなった!?」
 遊泳していたオクトパスダイバーズたちが浮力を失ったように、水底へと次々に落下していく。
 異変はそれだけではなかった。クリティアスの甲羅の隙間から零れ落ちる無数の泡。それは急速に膨張し、海洋生物の形へと変わっていく。
 シンカイザメ、カジキ、ダイオウイカ、マンタ……汚染物質に蝕まれた大型の海洋生物たちが続々と誕生し、敵対者たちに襲いかかる。

「とりあえず味方の安全確保が最優先だな……」
 苦々しげにつぶやきながら、優希斗は左手に『蒼月』、右手に『月下美人』を携え、臨戦態勢を整える。
 まずはタコ頭のミュータントヒーローたちの安全を確保しつつ、反撃の機会をうかがう。優希斗は状況判断を的確に行い、周囲を見渡す。
 すると、シンカイザメの群れに襲われ、地上を逃げ惑うダイバーズたちが視界に入ってくる。
(そこか!)
 群れを牽制するように斬撃波を放つ優希斗。敵はこっちだぞ。そのメッセージは瞬時に伝わり、矛先を一斉に変えて魚雷のように突っ込んでくるシンカイザメ。
 対する優希斗は敵を迎撃すべく地面を強く蹴った。すると、お魚スーツの推進機が作動し、足裏から噴出する水流の後押しを受けて真上に跳躍。そのまま体を捻りながら渾身の斬撃を放つ。
 ザシュッ。旋風のような剣閃が煌めき、バラバラになったサメの遺骸が海中に舞い踊り、瞬時に蒸発する。
(脆いな)
 普通の魚を斬ったかのような感触だった。敵の海洋生物は俊敏さや凶暴性は増しているが耐久力は低い。
 一体一体を倒すのは難しくはないが、問題はその数だった。クリティアスは甲羅のヒビから卵のような泡を噴出させ、次々に海洋生物を産み落としている。放っておけば大劇場が海洋生物で埋め尽くされるだろう。
(多勢に無勢か……なんとかして元を断たないと……)
 優希斗は思案しながら再び地面を蹴り、オクトパスダイバーズの救援に向かうのだった。

●水中兵器
「水の波動のせいで浮力が低減されているようね。海洋生物を産み落とす能力も脅威……でもあれは生命力を消費するタイプの技……持続時間は十分、長くても十五分程度でしょう。それまでなんとか持ち堪えられれば……」
 後方支援を担当していたエリカ・グランドール(f02103)は、眼球に装着した「サイバーアイ」で敵を観察・分析していた。
 敵の能力はだいたいわかったが、いずれにしても、現状を打破するには敵の数を減らす必要がある。
 そう結論づけたエリカは、ユーベルコード『エレクトロレギオン』を発動させる。
 空間が歪み、彼女の周囲に電脳空間が発生し、唐突にトビウオのような形をした小型潜水艦が召喚された。
 それはエリカの体の半分程度の大きさの機械だが、その数は400を超える。
 単純な構造で魚雷のように体当たり攻撃しかできず、一撃で消滅してしまうほど脆いが、気密性も機動性も高い「空飛ぶ潜水艦」だった。
「まずは敵の撹乱……次は味方の援護、それから海洋生物の迎撃ね……」
 エリカは潜水艦の数をできるだけ減らさずに効率的に戦えるように優先順位をつけ、「トビウオ潜水艦」の艦隊を操作する。
 海洋生物の群れに突っ込ませて群れを分断し、苦戦する味方がいれば盾になってかばい、必要に応じて体当たり攻撃で海洋生物を撃破する。エリカはまるで熟練の司令官のように艦隊を指揮し、最小限の犠牲で最大限の戦果を上げていくのだった。

●タンデム
 クリティアスが産み落とす海洋生物たちの猛攻はまだまだ続く。
 大劇場に集まった猟兵たちは対処に追われ、手が空いている者は少なくなっていた。そんな中、オクトパスダイバーズに所属する一人の男が海洋生物の群れに追われていた。
「うわっ、誰か助けてくれ!」
 ブォン。小気味良い排気音が響き渡り、大劇場の観客席の通路を疾走してきた一台のバイクが飛翔し、海洋生物の群れに突撃していく。
 そのまま海洋生物たちを蹴散らし、華麗に着地したバイクを運転しているのは、スターライダーのアメリア・イアハッター(f01896)だった。バイクはもちろん、宇宙バイクの「エアハート」だ。
「遅れてごめんね。エアハートを水中仕様にするのに時間がかかっちゃって。でも遅れた分はちゃんと取り戻すから!」
 エアハートは宇宙バイクなので気密性が高かかったが、ヘンドリックス博士の研究所で海底でも長時間活動できるように念入りにコーティングを施していた。
 海底都市の街路を快走し、その性能は確認済み。大劇場での決戦に満を持して駆けつけたというわけだ。
 アメリアは命拾いをしたタコ頭の男の無事を確かめるとエアハートのグリップを握り、急加速する。
 すると、バイクの駆動音につられるように、錐のような上顎を突き出した巨大カジキ軍団が頭上から降ってくる。
「ここは私に任せて!」
 エアハートのタンデムシートから声が上がり、ライフル銃が流星のような光を放ち、銃口から飛び出した光の束が目前のカジキの眉間を貫き、貫通した光が後方のカジキの胴体を射抜く。
 ライフル銃を構える狙撃手は星川・杏梨(f17737)だった。彼女の持つ『シューティングスター』は、水中でも撃てる光線銃。銃弾の変わりに放たれる光線は水の抵抗をものともせずに直進し、迫りくるカジキの群れを次々に穿ち、蒸発させていく。
 そして、周囲のカジキを消滅させ終えると、杏梨は安堵のため息をついた。
「ふぅ、窮屈な潜水服にも慣れてきたし、水中での射撃も問題ないようね……」
 潜水服(お魚スーツ)を着用し、水中を走行する宇宙バイクの後部座席での戦闘。滅多に経験しないようなカオスな状況だが、杏梨は物事に動じない冷静さで早くも順応していた。
 バイクを運転するアメリアは彼女を少し心配していたが、何事もなく敵の群れを殲滅できたことに安堵する。
「ナイスショット! 杏梨ちゃん、かっこよかったよ♪」
「あ、ありがとう……アメリアさんこそ、狙撃しやすいように動いてくれて……撃ちやすかったわ」
 初対面の相手でもフレンドリーに話しかけるアメリア。人見知りの杏梨は少し口調がぎこちないが、これでも打ち解けているほうだった。ともあれ、二人は互いを称え合うと、正面に迫る海洋生物の群れを見据える。
「この調子でどんどん行こう! 私と杏梨ちゃんの最強コンビで旋風を巻き起こすよ!」
 アメリアが朗らかに言うと杏梨はうなずき、ライフル銃を構える。
 次の敵は巨大カジキとシンカイザメの混成部隊。アメリアの宇宙バイクは群れには突っ込まずに大劇場の外周の壁を派手に駆け抜ける。すると、群れから好戦的なシンカイザメだけが離脱し、追いかけてくる。
 垂直の壁を荒々しく爆走する宇宙バイク。執拗に追跡するシンカイザメの群れ。激しいチェイスの最中でも杏梨は冷静に上半身をひねって背後を振り返り、ライフル銃で光線を放ち敵を撃ち抜いていく。
 海底都市での苛酷な戦闘。攻撃方法も機動力も制限される中で二人は出会った。
 二人は生まれも育ちも全く異なる凸凹コンビだが、その個性は絶妙なバランスで噛み合い、戦場に旋風を巻き起こしていく。

●連携
 猟兵たちの活躍で溢れんばかりに増殖していた海洋生物たちも半分以下に減少し、クリティアスが海洋生物を産み落とす勢いも落ちていた。
 オクトパスダイバーズのほとんどを大劇場から避難させ、攻勢に出る余裕もできていた。
 水の波動を放つ頻度も低下し、フィールドには浮力も大分戻ってきていた。能力の発動限界時間が近づいているのだろう。
 バイクから降りたアメリアと杏梨、さらにアメリアに声をかけられたエリカと優希斗は頭上で遊泳するクリティアスに対処するために集結していた。
「私たちで大亀を撃ち落とそう!」
「……はい、ということで、私が作戦について説明するわね」
 アメリアが音頭を取り、杏梨が初対面の二人を前に緊張の面持ちで作戦を説明する。
 そして、作戦の説明と役割分担が決まると、いよいよ決行となる。

「まずは私だね!」
 アメリアが一歩前に出てユーベルコード『Ice Ice Blitz』を発動。風と氷の魔力が発散され、彼女の周囲に無数の氷の矢が出現する。
「ブリッツ! シュート!」
 威勢のいい声とともに氷の矢は頭上を泳ぐ海洋生物たちへと一斉に射出され、次々に撃ち抜いていく。
 氷の矢が刺さった対象は内部から氷結し、その動きを止める。
 すると、間髪入れずにエリカのトビウオ潜水艦が氷結した敵に次々に突進を開始し、海洋生物の群れを破砕していく。
「射線が通りました。杏梨さん!」
 エリカの合図の前に、既に杏梨はユーベルコード『シューティング・パレード』を発動していた。
 高い集中力を以て放たれたライフル銃の光の帯が大亀の甲羅を穿つと、追撃で雷属性の遠距離魔法が襲いかかる。
――グギギィィィイイイ!
 高電流が全身を襲い、悶え苦しむクリティアス。同時にユーベルコードが解除され、海洋生物の射出も、水中機動を阻む水の波動も止まった。
 作戦が成功し、無防備状態となった大亀に向かっていくのは、エリカのトビウオ潜水艦に跨って移動する優希斗だった。
――剣王よ、我が体を依り代としてその力を彼の地に顕現させよ!
 敵の頭上に移動しながら、優希斗はユーベルコード『神技・剣王憑依』を発動し、自らの体に剣王の魂を降臨させる。
「ぐはっ!」
 超強化の代償に出血し、激痛が走る。それでも優希斗は集中を切らさずに敵だけを見据え、トビウオ潜水艦から飛び降りる。
「この斬撃でアンタを止める!」
 激痛を堪えながら落下とともに放たれたのは敵の首筋を狙った十字斬り。ガッ。クリティアスは咄嗟に前肢で水を掻いて直撃を避け、甲羅の破片が弾け飛ぶ。しかし、そのダメージは決して小さくはなかった。
――グギャァアア!
 絶叫が響き、月下美人の斬撃がかすめた首筋から噴き出す鮮血。そして、クリティアスは汚染水を煙幕代わりに撒き散らしながら大劇場の舞台へと落下していくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

禍神塚・鏡吾
技能:毒耐性、挑発、逃げ足、水中機動、捨て身の一撃

「地上文明への報復として世界を汚染したところで、清浄な海は戻りません
復讐を果たした後貴方に何が残るというんです?」
スーツを遊泳モードにして、クリティアスの顔の周囲をぐるぐる回って苛立たせます

(巨大化する事は一見有利ですが、そこから生まれる弱点もあります)
サイズを増大させた彼が此方に噛みつこうとするタイミングを狙って、UCを使用して鏡盾に変化し、口の中にダイブします
鏡盾になると自分では動けないので、足の推進機を使用して勢いをつけてから変化し、慣性でダイブしますよ

多少噛まれても鏡盾状態なら大方大丈夫
体内で変化を解いて、甲羅のない内側から攻撃します



●巨大化するクリティアス
 海底都市を汚染し尽くし、地上文明への復讐を果たさんとするクリティアス。
 誇り高き海神の眷属だった彼はもうここにはいない。いるのは地上文明への憎悪に取り憑かれた憐れなオブリビオンだった。既に全身にヒビが入り、背中の山は猟兵たちに切り刻まれ、なだらかな丘になりつつあった。
 全身から血のように流れ、海水に霧散する液体は汚染水である。満身創痍の躰。そう形容するのがふさわしいのだろう。
 しかし、クリティアスの憎悪は苦痛をも凌駕していた。
「まだだ! まだ我の躰は滅びんぞ! 海洋に毒物を垂れ流し、海の生命を大量虐殺した地上文明への怒り。我は決して忘れはせん! 地上文明への報復は終わらんのだ!」
 地響きのような怒号を響かせるクリティアス。
「地上文明への報復として世界を汚染したところで、清浄な海は戻りません。復讐を果たした後に、貴方に何が残るというんです?」
 禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)は不変の笑みを仮面で隠したまま、静かに問いかける。
 たとえ復讐のために地上文明を滅ぼしたとしても、汚染され尽くした世界が残るだけなのだろう。復讐の果てに残るのは虚しさのみなのだ。
「……我には最初から何も残っておらん! 同胞と暮らした美しい海も、喪われた同胞の命も、決して戻ってこない。罪の意識があるのなら命を差し出せ! 毒物に世界が汚染され、同胞が死に絶える様を見て絶望しろ! それが本当の償いじゃろうが!」
 クリティアスはひび割れた全身を怒りで震わせながら、地上文明への怒りを爆発させる。その感情はユーベルコードの燃料となり、満身創痍の大亀の躰を急速に膨張、伸長させていく。
 そして、元の大きさの数倍になったところで巨大化が止まる。

――ギィィィィイイイ、グギィィィイイイ! 

 それは数千枚もの磨りガラスを一斉に引っ掻いたような不快な鳴き声だった。
 顎も巨大化し、ノコギリのような牙が生えている。その容姿のままに凶暴化したクリティアスは最早正気を失っているようだった。それは怒りの権化。野獣と化した大亀は四肢をバタバタと振り回し、牙の生えた口をバクバクと開閉させながら本能のままに大暴れを始める。
 その動きをしばらく観察し、鏡吾は一つの策を思いつく。
(巨大化する事は一見して有利ですが、そこから生まれる弱点もあります)
 そして、鏡吾は地面を強く蹴り、お魚スーツの推進機を作動させて跳躍すると、そのまま「遊泳モード」に切り替え、大亀との距離を詰めていく。
 すると、目前に迫る敵に本能的に前肢を突き出すクリティアス。鏡吾は素早く方向転換して躱すと、そのまま敵の鼻先まで一気に接近する。
(たとえば、このように一度懐に入ってしまえば、巨大化がかえって仇となるのです)
 鼻先まで接近すれば、巨大化したクリティアスにとって鏡吾は眼前を飛ぶ蚊や小バエの如く煩わしい存在となる。
 前肢を激しく振ったり、首を上下左右に振り回したりして払いのけようとするも、鏡吾は流れに逆らわずに死角に移動して躱していく。
 危ないときには敵の体を蹴ってお魚スーツの推進機を作動させれば、離脱することも簡単だった。
 鏡吾はお魚スーツの機能を存分に使いこなし、危なげなく敵の攻撃をいなしていく。
 そして、大亀の攻撃は次第に荒々しくなり、苛立たしげに口の開閉を繰り返すようになる。
(そろそろですね……)
 ここが好機と見た鏡吾は一旦お魚スーツを「通常モード」に戻し、浮力を相殺して敵の腕の上に急落下する。
 すると、頭上からクリティアスの殺気が降り注ぐ!
――ギギィィィ、ガギギィィィ!
 咆哮を上げ首を伸ばして威嚇の声を上げながら、獲物に噛み付こうとする大亀。対する鏡吾は即座に敵の腕を蹴り、足裏の推進機を作動させつつ、ユーベルコード『ペルセウスの鏡盾』を発動させた。
 あらゆる攻撃を防ぐ鏡盾に変化した鏡吾はそのまま慣性の力で敵の口へと身を投じ、異界の門のような口内をくぐり、周囲の水とともにクリティアスの体内へと吸い込まれていく。

●体内
(ふぅ、なんとか成功しましたね……)
 クリティアスの体内に侵入し、元の姿に戻った鏡吾は周囲に広がる異様な光景に目を奪われていた。
 大亀の体内は淡い赤色の光を放っており、天井にある鍾乳石のような突起から消化液が滴り落ちる。
 足元にも水が貯まっているが、水と消化液が混ざったものなのだろう。
 一見して洞窟のようだが、床、天井、壁はうねるように蠢き、異物を消化し排除しようとしているのがわかる。
(……なんだか奇妙なところですが、長居はしてられませんね……)
 鏡吾はさっそく行動を開始する。目指すは敵のコア。激しく脈動する心臓部だ。
 しばらく探索すると心臓部はすぐに見つかった。目的地にたどり着いた鏡吾は安堵のため息をつく。
「それでは暴れさせていただきましょうか……」
 鏡吾は脈動する巨大な肉の塊をひたすら破壊していく。
 それはまるでハンバーグの「下ごしらえ」をしているような作業だった。
 下ごしらえがさらに進むと体内の振動が激しくなり、さらに下ごしらえを続けると振動が少しずつ弱まっていく。
(私の仕事はこれで終わりのようですね……崩壊に巻き込まれる前に外に出ましょう)
 外では動きが鈍くなったクリティアスに対し、猟兵たちによる総攻撃が始まっていた。
 一仕事終え、心臓部を後にした鏡吾は外への道を急ぐ。
 そして、彼がようやく外に出られたときには、すべてが終わっていた。憐れなオブリビオンが黒い粒子となり、母なる海へと還っていく様を鏡吾は静かに見つめるのだった。

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●活気が戻る演劇の都
 猟兵たちの活躍によって大亀クリティアスは骸の海に還り、海底都市メンブリックの危機は去った。
 それから数週間後、演劇の街はすっかり活気を取り戻し、大劇場では新しい演目が行われていた。
 演目は『水中演劇・お魚になった私〜お魚の王子様を探して〜』。
 
 お魚スーツを着た猟兵たちの活躍は思わぬ反響を呼び、新たな演目の礎となった。
 ちなみに件の舞台では役者たちがお魚スーツを着てそれぞれの役柄を演じ、オクトパス・ダイバーズの面々もエキストラで出演した意欲作だったという。

――私の王子様はどこ? ホホジロザメ、キンメダイ、それともチョウチンアンコウ? もう誰でもいいから結婚して!!

 お魚スーツを着た舞台上の女優が大げさな演技で台詞を言うと、観客席からどっと笑いが漏れる。
 どんな演劇なのかはご想像にお任せするとして……観客席で一人ほくそ笑む男がいた。ヒーロー嫌いの偏屈おじさんである。
 実はヘンドリックス博士は大の演劇好き。研究の合間に演劇を見るために、メンブリックの近くまで引っ越してきたという彼は、自らの発明を世に浸透させるだけでなく、ご贔屓の女優にも感謝されてホクホク顔なのだった。
 やったぜ。ありがとう、秘密結社スナークの戦士たちよ。ワシは君たちのことを子々孫々、末代まで語り継ぐとしよう。
 博士、あんた独身でしょ。その前に結婚しないとね。ああ、そうだった、まずは婚活だな。
 その前にその偏屈な性格を直したほうがいいよ。あんた黙ってれば結構いい男なんだからさ。
 ご近所のおばさんとそんな会話がなされ、ヘンドリックス博士の婚活の日々が始まるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月19日


挿絵イラスト