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怪奇の影は伯林にあり

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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●伯林のとある出版社
 サクラミラージュ、独逸の首都、伯林。
 ゲルダ・アンドロシュはその町にある出版社で、一人の男性と向かい合っていた。男性の手には紙を束ねた原稿がある。
 男性はゲルダの原稿を最後のページまでめくると、それをテーブルに置きながら笑って言った。
「問題ない。今回もありがとう、ゲルダ」
「ホッ……よかったです。こちらこそありがとうございます」
 男性の言葉にゲルダは安堵の息を吐いた。今回も無事、自分の原稿が認められたことにホッとする。
 微笑むゲルダに、男性はにこにこと屈託のない笑みを浮かべながら話した。
「いやあ、助かるよ。さすがは新聞で連載を持っていただけのことはある」
「いえ、そんな……作品を載せていたのは小さな新聞でしたし」
 だが、男性の言葉に一瞬だけ、ゲルダの表情がこわばる。あの新聞社とはもう関わりを絶ったのだ。今更話を蒸し返されるのは困る。
 そんなゲルダの内心に気付くこと無く、男性がゲルダに金の入った封筒を渡す。原稿料だ。
「謙遜することはないさ。ともあれ、今後ともよろしく頼むよ」
「はい」
 その封筒を受け取って、ゲルダは出版社の建物から出た。そこでようやく、彼女は深く息を吐く。
 新聞社の話を持ち出された時はどうしようかと思った。今もまだ、あの新聞社の『記者』が傍で見ているような気がしてならない。
「……」
 ちら、と視線を周囲に向ける。伯林の往来、人の数が多い。その中に見知った顔がいないか、どこかで見かけた顔がいないか確認してから、ゲルダは歩き出す。
「……行こう、次のを書かなくちゃ」
 次の仕事の原稿を書かなくては。そう言って行きつけのカフェーに向かうゲルダの背中を、建物の影から一人の男が見つめていた。

●グリモアベース
「帝都桜學府から、猟兵の皆さんにお仕事の依頼が来ていますよぉ」
 阿瀬川・泰史(酒と杯さえあればよし・f02245)はにこやかな笑みを浮かべて、猟兵たちにそう告げた。
 サクラミラージュの帝都桜學府は、影朧の救済とそれが引き起こす事件への対応を行う集団だ。その活躍の場は帝都だけにとどまらない。こうして超弩級戦力である猟兵たちにも、仕事が回ってくることがあるわけだ。
「學府も必要とあらば、世界のあちこちを巡って影朧に立ち向かっていますからね。今回は皆さんに、伯林……ドイツのベルリンに向かっていただきます。船と列車のチケットは學府が手配してくれていますので、お気になさらず」
 そう言いながら、泰史が制服のポケットから人数分のチケットを取り出す。帝都から漢堡に向かい、そこから伯林までは列車の旅だ。
 そして伯林では、近年影朧による事件が頻発しているとのこと。泰史が眉尻を下げながら話す。
「なんでもですね、影朧を使役して人々を苦しめている、表向きは新聞社の秘密結社があるそうで。その結社の壊滅をお願いされているのですよぉ。まずは、これを見てください」
 その秘密結社こそ、「ヨルダン新聞社」。表向きはただの新聞社だが、その実自分たちで影朧を召喚し、事件を引き起こさせてそれを記事にするという、マッチポンプを行っている悪辣な新聞だ。
 そして泰史が見せたのは、一枚の写真だ。写真には鳶色の髪を長く伸ばした、メガネを掛けた人間の女性が写っている。
「この女性の方はゲルダさんと言って、もともとその結社と関わりのあった作家さんです。ですが今は結社から離反して、至極まっとうに作家業を行っているのですが……結社は彼女を裏切り者として、処断しようとしているらしいですねぇ」
 写真をひらひらやりながら話す泰史に、場がざわついた。自分たちで仕事を依頼しておきながら、その相手が離反したら裏切り者扱いとは。
 猟兵たちに写真を渡しながら、泰史が説明を始める。
「ますはゲルダさんが執筆に使っているカフェーに行って、彼女と接触してください。いい具合に親密になったり、皆さんが味方だと分かれば、彼女は結社について話をしてくれるはずです」
 曰く、ゲルダは執筆活動をする時に決まって訪れるカフェーがあるそうで、猟兵たちが伯林に到着した時もそこで執筆をしているらしい。船旅と列車の旅を終えてから、伯林観光ついでにカフェーに向かうのもいいだろう。
「そしたらどこかしらのタイミングで、ゲルダさんは結社が拠点とする屋敷の場所を話してくれるはず。場所がわかったら乗り込む段階です。結社に乗り込んで、結社員を逮捕してください……ま、もちろんあちらさんも影朧を召喚して抵抗してきますがね」
 そう話しながら泰史は苦笑した。やはりというか、相手の結社の面々は影朧を召喚するすべを心得ているらしい。
 召喚されるのは旧帝都軍突撃隊隊員の怪奇人間に、怨念と化した忍のもの。これらを撃破すれば、無力化された結社員を逮捕できる。そうして逮捕すれば、この仕事はおしまいだ。
 そこまで言うと、泰史はぐい呑みのグリモアを回転させた。開かれたポータルの向こうから、。
「さ、これも立派なお仕事。皆さん、無事に済ませて帰ってきてくださいねぇ」


屋守保英
 こんにちは、屋守保英です。
 サクラミラージュのTPRGルルブが発売されたこともあり、ここらで一つサクミラの依頼と行きましょう。
 舞台はベルリン。どうぞお楽しみください。

●目的
 ・秘密結社「ヨルダン新聞社」の壊滅。

●場面
(第1章)
 サクラミラージュ、伯林のとあるカフェーです。
 ゲルダ・アンドロシュはここでいつも創作をしています。
 ベルリンの町並みやスイーツを堪能しつつ、ゲルダに接触して「ヨルダン新聞社」の情報を得ましょう。

(第2章)
 伯林市内、「ヨルダン新聞社」が拠点にする屋敷です。表向きはただの一般的なお屋敷です。
 結社員が旭日組隊員を召喚して猟兵たちに立ち向かってきます。撃破し、結社員を逮捕しましょう。

(第3章)
 第2章と同じく、「ヨルダン新聞社」の屋敷です。
 新聞社の社長が咎忍『玉梓』を召喚し、戦いを挑んできます。これを撃破し、社長を逮捕すれば依頼は完了です。

 それでは、皆さんの力の籠もったプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『大正浪漫の溢れるカフェーで』

POW   :    甘味や食事を楽しむ

SPD   :    珈琲や紅茶や飲み物を楽しむ

WIZ   :    人々との歓談を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鳴上・冬季
「一人くらい所属が明らかな者がいた方が、Dameも安心することでしょう。見せ餌は双方に有効かと」

「こんにちは、お嬢さん。私、帝都桜學府所属のユーベルコヲド使い、鳴上冬季と申します。ゲルダ・アンドロシュ嬢ですよね…相席させて頂いても?」
所属証拠見せ了承得たら相席
ケーキセット頼み
「ふむ、これはなかなか…失礼、話が先でしたね」
ナプキンで口拭い
「この度私、伯林に潜む影朧事件の解決を命じられまして。超弩級戦力の協力を得ることになっております。ヨルダン新聞社の件、お話を伺っても?」

「これから数名、貴女に超弩級戦力が接触しますがご心配なく。この花籠が数日後に消える前に全て解決します」
UCで薔薇の花籠作り渡す


夜刀神・鏡介
まさか、海を渡る機会が来るとは思ってなかったな
なんとなく浮き足立ちそうな感じはあるが、これも仕事……
折角だし少しくらいは楽しませてもらうにしても、ちゃんと落ち着いていくとしよう

諸々と参考の為に、件の新聞社やゲルダの書いた記事をざっと読んでおこう

カフェでお茶と軽食でも頂きつつ、どうやって接触するかを考えよう
記事を読んで興味が出てきた。とか言ってみるか。あながち嘘でもないしな

その後は下手に嘘をついても仕方なし
話の流れ次第ではあるが、自分の素性や知っている事柄は一通り明かして協力を仰ぐ方向でいこう
彼女自身の安全もそうだが、これ以上罪のない人達が被害あわない為にも
どうかよろしく頼む



●Alles hat ein Ende, nur die Wurst hat zwei.
 伯林の街並み。エレクトロポリスとも綽名されるほど、電気産業の盛んなこの町は、夏の時期に時折雨が降る。しかしこの日はよく晴れて、爽やかな風が街路の幻朧桜の葉を揺らしていた。
 そんな外の道を眺めながら、カフェー「トルートフーン」の窓際席に座った夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は静かに目を細めた。
「まさか、海を渡る機会が来るとは思ってなかったな。折角だし少しくらいは楽しませてもらうにしても、ちゃんと落ち着いていくとしよう」
 そう話して手元の紅茶を飲み干す鏡介に目を向けながら、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)もティーカップを持ち上げた。
「一人くらい所属が明らかな者がいた方が、Dameも安心することでしょう。見せ餌は双方に有効かと」
 淡々と話して、冬季は店内奥側へと視線を向けた。そこでは壁際のボックス席で、鳶色の髪を後頭部でまとめたメガネの女性が一人座って、テーブルに向き合っている。
 彼女こそ、ゲルダ・アンドロシュだ。居場所を確認した冬季が再び視線を自分の正面に戻す。
「それで、鏡介さん。ゲルダ嬢のお書きになられた記事、とやらは既にお手元に?」
「ああ、ここにある。コピー機なんてなかったから、一枚しか無いが」
 言われて、鏡介が取り出したのはヨルダン新聞社の新聞だ。その新聞のページを一つめくり、三枚目のページの左上。そこにはゲルダの書いた小説の一節が記されていた。
 サクラミラージュの伯林を舞台にしたミステリー小説だ。猫を連れた探偵が伯林の商店街に店を構える魚屋が殺された事件について、調査を行っていく様が描かれている。
 その新聞記事に一通り目を通して、冬季は小さく口角を持ち上げた。
「なるほどなるほど。なかなか軽快な文章をお書きになられる」
「新聞に連載する小説、ということらしいな。表向きは、作品の完結に伴う契約解除、ということになっているらしい」
 冬季の言葉に鏡介も頷いた。そして二人はテーブルの上に代金とチップを置き、静かに立ち上がる。
「承知しました。では」
「ああ」
 短く言葉を交わし合って、向かうのはゲルダの座る壁際の席だ。原稿の執筆に集中しているゲルダに、まずは鏡介から声をかける。
「失礼、フラウ。こちらのふた席は空いているでしょうか?」
「えっ? ええ」
 鏡介に呼ばれて、ゲルダははっと顔を上げた。見れば、そこには二人の青年が経っていて、自分を微笑みながら見ている。
 そこに冬季が畳み掛けていった。
「こんにちは、お嬢さん。私、帝都桜學府所属のユーベルコヲド使い、鳴上冬季と申します。ゲルダ・アンドロシュ嬢ですよね」
「え……」
 問いかけられたゲルダが目を見開く。当然だろう、彼女は一切名乗っていない。それなのにどうしてフルネームをピタリと言い当てたのか。
 困惑した様子のゲルダに、鏡介が畳み掛けていく。
「突然お声掛けしてすみません。俺も彼と同じ、帝都桜學府所属のユーベルコヲド使いです。夜刀神鏡介と言います」
「相席させて頂いても?」
「ど、どうぞ……」
 最後のひと押し、とばかりに冬季がニコリと微笑んだ。それが効いたのか、ゲルダは向かい側の席に手を指しのべた。
 その言葉に従い、鏡介と冬季が一緒にボックス席にはいる。そこからは、デザートを食べて休憩タイムだ。
 冬季はケーキセットを頼んでキャロットケーキのセットを、鏡介はベーグルのセットを注文。ゲルダもホットティーのおかわりを頼んだ。
 ケーキを口に運んだ冬季が目を見開く。ニンジンの甘みがケーキにしっかりあるのに、生クリームがそれに勝ちすぎていない。ちゃんとニンジンの味が立っているのだ。
「ふむ、これはなかなか……」
「このベーグルも美味しいな。いい味だ」
「そうですよね、この店のキャロットケーキは特に美味しくて……あっ」
 鏡介がベーグルを齧りながらゲルダに声をかけると、反応したゲルダが声を大きくした。やはりというかオタク気質、好きなものを共有できる人に合うのは嬉しいのだろう。
 だが、話そうとした彼女の口が止まる。頃合いだ。
「失礼、話が先でしたね」
 そこで冬季は水を向けた。ゲルダに静かに、ヨルダン新聞社の新聞を差し出す。
「この度私ども、伯林に潜む影朧事件の解決を命じられまして。超弩級戦力の協力を得ることになっております。ヨルダン新聞社の件、お話を伺っても?」
 新聞を目にしたゲルダが目を大きく見開いた。そこに、鏡介が言葉を重ねていく。
「これ以上罪のない人達が被害に遭わない為にも、どうかよろしく頼む」
 そう告げた二人が、ゲルダの顔を見つめると。観念したかのように、うつむいたゲルダが口を開いた。
「……分かりました」
 そうして彼女が話しだしたのは、ヨルダン新聞社の悪行の数々だ。影朧を召喚して浮浪者を襲わせたり、家や建物を壊させたり。そしてそれを目撃した人を脅すこともしていたとか。
 その話を聞いて、鏡介も冬季も眉間にシワを寄せた。これは思っていたよりも悪辣だ。
「情報ありがとう、助かった」
 話が終わり、鏡介はいくらかの金をテーブルに置きながら立ち上がる。冬季も一緒に席を立つと、右手を強く握ってから開いた。
 開いた手の上に、バラの花籠が現れる。
「これから数名、貴女に超弩級戦力が接触しますがご心配なく。この花籠が数日後に消える前に全て解決します」
「あっ……わ、分かりました」
 目を見開いたゲルダに花籠を渡すと、鏡介と冬季はそのままカフェーを後にした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キング・ノーライフ
さて、敵が張っているのは予知の様子を見るに間違いないか。
話を聞いて離れた後に襲われるかもしれん、話は他のに任せて対処するか。

まず【情報収集】や【動物と話す】でカフェ周辺の怪しい人間を探し、【神は神を呼ぶ】で邪神を呼ぶ。奴にゲルダへの「付けられている。トイレへ行け」と書かれたメモを渡す。我は【化術】と【演技】でゲルダに化けて合流、事情を話して隠れて貰い、我は邪神に手を引かれてカフェを離れて路地へ。

上手く釣れたら邪神の触手で縛り上げ、【誘惑】と【催眠術】で自殺とか防ぎつつ捕らえるか。全員逮捕するならコヤツが死ぬのもまた違うでな。

では邪神に礼としてチョコを渡す、
ベルリンはチョコが名産らしいからな。



●Der Apfel fällt nicht weit vom Stamm.
 他方、カフェー「トルートフーン」の外で、キング・ノーライフ(不死なる物の神・f18503)は視線をあたりに巡らせていた。
「さて、敵が張っているのは予知の様子を見るに間違いないか。話を聞いて離れた後に襲われるかもしれん」
 そうつぶやきながらキングは視線をカフェーの周囲に巡らせる。
 このカフェーがゲルダの行きつけであることは、新聞社の人間にも伝わっているはずだ。そのカフェーの周辺で怪しい動きをする人間は、ゲルダを目当てに行動している、と見て間違いないだろう。
「怪しげな人物は……と。ふむ」
 見回せば、先程から街路に面した窓の横に張り付くように立っている男性がいた。視線はまっすぐ、壁際の席へと向いている。間違いない。
 キングは男の立っている場所から反対側の路地に滑り込むと、化術で瞬時に姿を女性へと変えた。そうしてささやくように声を発する。
「よし。邪神よ」
 声とともに開かれるのは異界の扉だ。そこから滑り出すように、小柄な黒髪の少年が姿を現してキングの顔を見上げる。
「あー?」
「このメモを、ゲルダの……あそこのテーブルの上に落としてこい」
 首をかしげる邪神の少年に、キングは手元の手帳のページに走り書きしたドイツ語を切り取って渡した。キングの意図を汲んだ少年は駆け出して店の中に入っていく。
 キングも少年を追うようにして店内に入っていく中、少年がゲルダのテーブルの上にメモをさりげなく落とした。
「あっ、君……」
 ゲルダが少年に声をかけるも、少年はそのまま立ち去っていく。何気なくメモに目線を落としたゲルダは、その内容を見て目を見開いた。
 すなわち、「つけられている。トイレへ行け」。
「……これは」
 ゲルダは急いでメモを鞄の中に放り込むと、一緒にノートとペンもしまって女子トイレへと向かった。扉を開けると、その中にはキングが待っている。
「メモは問題なく少年から受け取ったようね」
「あなたは……一体?」
 女性らしい演技をして話しかけるキングに、ゲルダが不思議そうな表情をして問いかける。それに対してキングは、ゆるゆると頭を振りながら答えた。
「帝都桜學府のユーベルコヲド使い、とだけ言っておくわ。あのメモに記した通り、あなたはヨルダン新聞社の人間に付け狙われているの」
 そこからキングは、店の外で見かけた男のことをかいつまんで話した。話を聞けば聞くほどゲルダの表情は青ざめていく。
 キングは素早く、化術を以て自身の姿をゲルダに変えた。そうして本物のゲルダをトイレの個室に向かわせる。
「私が追手をまくから、少しの間トイレに隠れていて。いいわね?」
「わ、分かったわ。気をつけて」
 こうなったらゲルダも素直に従うより他にない。個室の扉が閉じられたのを確認して、キングはトイレの外に出た。ちょうど外で待っていた、邪神の少年の手を取る。
「あー」
「ええ、ありがとう」
 少年に微笑みかけたキングは、そのままカフェーを出ていった。男に見せつけるようにゆったり歩き、街路を真っ直ぐ進む。そしてしばらく進んだところで、人気のない路地に入った。
「……」
 男はキングの化術には気付くこともなく、追いかけるように路地へと入ってくる。そうして少し、路地を進んだところで。不意にキングが足を止めて口を開いた。
「あら、どうしましたか?」
「っ……」
 男も足を止めて身構えた。だが、逃げ出すには数瞬遅い。
「いけ」
「あぁぁ!」
 キングの端的な指示を受けて邪神の少年が触手を伸ばす。路地の幅いっぱいに伸ばされた触手は、またたく間に男の体を絡め取った。
「ぐわ……!」
 すぐさまにがんじがらめにされた男が、地面に転がされる。その顔を、そっと歩み寄ったキングが指先で撫でた。
「貴様を見逃すつもりもないが、殺すつもりもないのでな? 悪いがおとなしくしてもらおう」
「あ……」
 柔らかい言葉とともに駆けられた誘惑と催眠術が、男から抵抗しようという気持ちを失わせる。そのまま茫然自失となった男は、キングの手によって警察へと引き渡された。
 男を連れていくパトカーを見送りながら、キングは化術を解いて少年にチョコレートの包みを渡す。
「よし、よくやった。これはお礼だ」
「あぁー」
 ベルリン名物のチョコレート。それを邪神の少年は嬉しそうに受け取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

村崎・ゆかり
夏休みを独逸までの船旅で過ごすのも風情があるわね。
アヤメに羅睺もたっぷり楽しんでおきなさいな。どうせツケは桜學府もちだから。
漢堡から伯林は短い列車の旅ね。

重たいヴルストも、どうせ飲めないビールもワインも用はないわ。目標は、噂に聞くベルリーナー・プファンクーヘン。維納珈琲を添えて。
どう、二人とも? 口に合う? うん、やっぱり揚げパンよね。

観光はここまで。そろそろお仕事しよう。
ゲルダ女史のいるカフェに三人で入って、あたしが「コミュ力」で接触しましょう。
二人はそっと姿を消して、見張りを拘束しておいてね。
グーテンターク、フラウ・ゲルダ。帝都桜學府から来たものよ。安全は保証するから、組織について教えて。



●Die Zeit ist der beste Arzt.
 漢堡から伯林に通る独逸鉄道の車両から降りた村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、式神のアヤメと羅睺を引き連れて伯林の街に降り立った。
「夏休みを独逸までの船旅で過ごすのも風情があるわね」
 学校は夏休み、のんびりと船に揺られ、車窓から見える流れる景色を楽しむ、そんなのんびりとした旅を楽しむのも悪くはない。
「アヤメに羅睺もたっぷり楽しんでおきなさいな。どうせツケは桜學府もちだから」
 ゆかりがそう言って笑えば、アヤメと羅睺も分かっているとばかりに笑った。
 伯林中央駅を出て、街路を歩く。道の両脇にはいくつもの屋台やワゴンが並び、人々が軽食を買い求め、さらにはビールを片手に談笑している。
「船旅からの列車、そして桜の咲く街並み。なんとも風情がありますね」
「なーなー、独逸ってあれだろ、ゔるすとってのが美味いんだろ!? 食いに行こうぜ!」
 アヤメが夏にも咲き誇る幻朧桜に視線を向ければ、羅睺がワクワクしながらゆかりに声をかけた。男性としてはドイツのヴルストは、この上なく魅力的に映るだろう。カリーヴルストを食べながら炭酸飲料などを飲んだらたまらない。
 しかし、ゆかりは素気なく首を振った。
「重たいヴルストも、どうせ飲めないビールもワインも用はないわ」
「えー」
 その言葉に不満そうな表情をする羅睺だったが、主人は意見を変えない。そのまますたすたと歩いて、目的の屋台を目指した。
「目標は、噂に聞くベルリーナー・プファンクーヘン。維納珈琲を添えて、よ」
 そう言って笑うゆかりに、ピンとこなかったであろう羅睺が首をかしげる。
「ういんなーこーひー?」
「ウィーン風コーヒー、コーヒーの上にホイップクリームを乗せたものを言うようですが……どうやらオーストリアではその手のものは『アインシュペナー』と呼ぶようです、ゆかり様」
 羅睺がオウム返しすると、手元の資料をめくりながらアヤメが説明を口にした。曰く、ウインナーコーヒーのスタイルは現地だとアインシュペナーが近いそうで、ドイツで「ヴィーナー・カフェー」と注文しても通じないらしい。
 ともあれ、屋台にてベルリーナー・プファンクーヘンを3つ注文。さらにアイシュペナーを頼めば準備万端だ。
 口に頬張ると、粉砂糖の甘さの下にパン生地の甘さが顔を覗かせる。そこからさらに奥に進めばジャムのフィリングが濃厚な甘さを出してきて、とても美味しい。
 冷たい維納珈琲を片手に、ゆかりが式神の二人に笑みを向ける。
「どう、二人とも? 口に合う?」
「美味しいです。ただ……」
「揚げパンだよなぁ」
 アヤメも羅睺も、なんだか微妙に釈然としない表情だ。その言葉に苦笑しながら、三人がプファンクーヘンを楽しむと。ゆかりは軽く手をたたきながら立ち上がった。
「さあ、観光はここまで。そろそろお仕事しよう」
 そう言って、三人が向かうのはカフェー「トルートフーン」だ。目的のカフェーに入る前に、そっと式神の二人に声をかける。
「二人はそっと姿を消して、見張りを拘束しておいてね」
「承知しました」
「りょーかい。行ってきまーす」
 そう言葉を交わし合って、アヤメと羅睺は入り口から離れていく。そのうち、二人が邪魔者を綺麗に掃除してくれるだろう。
 それを見送ったゆかりは店内に入った。まっすぐ店内を進み、ゲルダの座る壁際のテーブルに向かう。
「グーテンターク、フラウ・ゲルダ。帝都桜學府から来たものよ」
「あっ……あなたも、そうなのね?」
 ゆかりの言葉に、ゲルダはホッとした表情を見せながら言葉を返してきた。先に他の猟兵が話を通しておいてくれたから、流れもスムーズだ。
 頷きながら、ゆかりは席に座る。
「ええ。安全は保証するから、組織について教えて」
「分かったわ……その前に、何か注文なさる?」
 彼女の言葉に、小さく頭を振りながら話の先を促すゆかりだ。先程コーヒーを飲んできたから、飲み物は必要としていない。
 かくして、ゲルダから情報を貰っていくゆかりだ。手帳に次々記入していきながら話を整理していく。
「ふーん、影朧に関する事件を中心に取り上げているけれど、その事件の殆どは自分たちで起こしたものなのね?」
「はい……私も持ち込んだ原稿を拾ってもらったから連載していましたが、やたらと影朧を絡めた作品を書くよう要求されて……」
 ゆかりの言葉に同調しながら、ゲルダが困ったように眉を下げる。意に沿わない作品を何度も書かされて、悶々としていたとのこと。
「影朧に特別な思いでもあるのかしらね」
「どうなんでしょうか……」
 ゆかりの言葉に、ゲルダはますます困った表情で返した。

成功 🔵​🔵​🔴​

インディゴ・クロワッサン
わーい!伯林ーっ♪(テンション高め)
勿論、伯林では私服で行動するよー!
「例の破壊された壁って何処かなー」
帝都による解放の象徴とかになってないかなー?
後は、昔の検問所とかー、門とかー…でっかい公園とか…
「見るとこいっぱいあり過ぎぃ…!」
全然回りきれないよー! …その辺のカフェで休も…
「…疲れちゃった… うーん、何頼もう…」
近くに執筆してるお姉さんしか居ないんだけど…仕方ないよね
「すみませーん、ここのオススメって何ですー?」(礼儀作法)
まぁ、後は流れで色々お話しつつ、UC:集め集う藍薔薇の根 で情報収集だー!
必要そうだったら、読心術/目立たない/誘惑/取引/索敵辺りも使っておくよー



●Die dümmsten Bauern ernten die dicksten Kartoffeln.
 独逸鉄道の列車から降り、伯林中央駅の駅舎から飛び出したインディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は、キラキラした瞳を目いっぱいに広げながら街並みを見た。
「わーい! 伯林ーっ♪ 例の破壊された壁って何処かなー」
 すっかり観光気分丸出しの観光客、という体で、伯林を東西に分けた壁の跡地に向うインディゴだ。壁の残骸は今も残り、観光客の目を楽しませつつ、帝都による解放の象徴として残されている。
 そこから、あちこちの観光名所に足を向けるインディゴだ。
「後は、昔の検問所とかー、門とかー……でっかい公園とか……」
 だが、伯林の街は広い。観光名所もあちこちに点在しているから、移動するとなかなかに疲れるのだ。結果として、体力が先に尽きてへたり込むことになった。
「ふぇぇ、見るとこいっぱいあり過ぎぃ! 全然回りきれないよー!」
 これは一度に周り切るのは無理だ、と諦めの境地だ。傍にあったカフェーに立ち入りテーブルに座る。
「疲れちゃった……うーん、何頼もう……」
 何を頼もうか、しかしどれも美味しそうで悩んでしまう。と、ちょうどインディゴの目に、傍のテーブルに一人座る女性の姿が入った。この女性がゲルダだと、彼は気づいていない。
「すみませーん、ここのオススメって何ですー?」
「えっ? そうね……おすすめはキャロットケーキかしら。あとは紅茶も美味しいわ」
 問いかけられたゲルダは驚いた表情を見せながらも答えてくれた。おすすめされたキャロットケーキと紅茶のセットを注文する。
「じゃあキャロットケーキのセットでー……ところでお姉さん、何か書いてるんだね。作家さん?」
「そんなところかしら。あまり有名な作家ではないけれど……」
 と、ちょうどインディゴの目にゲルダの書いていた原稿用紙が目に入る。作家、という言葉にゲルダが苦笑すると、そこに畳み掛けるようにインディゴが言葉をかけていった。
「すごい! 連載とか持ってるの!?」
「あ……」
 連載、という言葉に反応したのだろう、ゲルダの表情が曇る。その顔を見て、薄っすらと笑みを浮かべるインディゴだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

丑三・勘太郎
【POW】で判定

伯林で情報を聞き出す任務か……
それなら「海外慣れしてない観光客」でもなりすませば、話しやすくはなるかもな。
せっかくだし伯林の名所なんかも聞き出してもいいかもしれねぇ。

ゲルダに接触する際は観光客を装って話しかける。
「伯林には初めて来たんだが、何か上手い甘味を教えてくれないか?」とかな。

伯林の名所やらゲルダの観光の思い出なんかを訊いてから、本題に入るとする。
「ヨルダン新聞社の拠点を知ってるか?」ってな。
警戒されるかもしれないから、「自分は猟兵であり、帝都桜學府からの依頼を受けている」ことは、伝えておくか。

交渉ってのは得意じゃねぇが、あとはその場の勢いでやるだけやってみるぜ



●Deutsche Sprache, schwere Sprache.
 丑三・勘太郎(妖憑依を継ぐもの・f10108)は一人、静かに伯林の街を歩いていた。
「伯林で情報を聞き出す任務か……せっかくだし伯林の名所なんかも聞き出してもいいかもしれねぇな」
 そう呟いてあるきながら、勘太郎はカフェー「トルートフーン」を目指す。そのカフェーに、まだゲルダはいるだろう。周囲に怪しい人影がいないかも確認したが、既に他の猟兵が手を尽くした後だ。問題はない。
「この店か……よし」
 店の中に入って、勘太郎は辺りを見回す。客の姿はまばらだが、いないほどではない。これなら好都合、と勘太郎はゲルダの座るテーブルに歩み寄った。テーブルの天板に手を付きながら話しかける。
「なああんた、伯林には初めて来たんだが、何か上手い甘味を教えてくれないか?」
「えっ、私でいいんですか? そうですね……」
 ゲルダは驚いた様子だが、勘太郎の言葉の意味を汲んですぐに考え始めた。観光客を装う、という彼の作戦はうまく奏功した。
 しばしの間を置いてゲルダが話を始める。
「甘いものがお好きでしたら、プファンクーヘンがおすすめですよ。こうしたカフェよりは、外の屋台のほうが美味しいものを売っていると思いますが……」
「なるほど、屋台グルメも悪くない。それじゃ、この店の甘味でおすすめはあるか?」
 そう言って微笑みながら、もう一度質問を投げる勘太郎だ。屋台グルメは旅行の醍醐味だが、彼が目的とするのはそこではない。しばし考え込んだゲルダが、自分の食べていたキャロットケーキを指し示す。
「でしたら……このキャロットケーキがいいかと思いますよ。紅茶との相性もいいので」
「わかった、あんたの言葉を信じよう」
 彼女の言葉に頷きながら、勘太郎はさり気なくゲルダの座るテーブル席に腰掛けた。
 そうしてからは、勘太郎がさり気なくゲルダから話題を引き出していった。脚など怪我をしていないか、どんな顔で人前に出ているか、などなど。
「伯林には、住んで長いのか」
「ええ、生まれも育ちもここです。色んな人と出会い、話して来ましたわ」
 勘太郎の言葉にゲルダが嬉しそうに微笑む。なるほど、生粋の伯林っ子というわけだ。その話を聞いた勘太郎も嬉しそうに微笑む。
「そうか。ということは観光名所なんかにも詳しいのか?」
「そうですね、そこそこ詳しいのではないかしら。いろいろな場所に、取材も兼ねて行ったから」
 次いで投げられた問いかけには、少々考え込むような視線を向ける。それを勘太郎の目は見逃さない。
「取材か。新聞記者なのか?」
「い、いいえ。ただの作家よ」
 ただの記者。その言葉を聞いた勘太郎は眉間にシワを寄せた。
 名が売れていなくても、作品を後世に残せなくても、医者なのは間違いないのだ。ゲルダの前に、もう一度手をついて口を開く。
「お嬢さん。今更明かすのも何だが、俺は猟兵だ。帝都桜學府からの依頼を受けている」
「えっ……」
 猟兵、という言葉にゲルダは大きく反応した。さすがは超弩級戦力、海の向こうに至ってもその存在感に一点の曇りもない。
 ほんの少しだけ語気を強めながら、勘太郎が告げる。
「単刀直入に聞かせてもらう。ヨルダン新聞社の拠点を知ってるか?」
 その問いかけに、ゲルダはしばらく下を向いたままだ。両者の間に沈黙が流れる。
 数分経って、色々と思惑をいだき始める中。
「……この店を出て、左……3ブロック行った先を右、その次の角を右……」
「ほう?」
 ゲルダが口を開いた。道順を話している。つまりこれは、ヨルダン新聞社のある丘にたどりつくまでのデッドヒートだ。
 意を決したようにゲルダが立ち上がる。
「青い屋根のお屋敷よ。目立つから、行けばすぐに分かるわ」
「そうか」
 その言葉を聞いて、うっすらと笑みを浮かべる勘太郎だ。荷物を手に持ち、さっと笑顔を返してあるき出す。
「ありがとう、お嬢さん。もう安心していいさ」
 そう言い残して、彼は「トルートフーン」の扉をくぐる。ヨルダン新聞社への行き方は分かった。あとは、現地で大暴れだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『旧帝都軍突撃隊・旭日組隊員』

POW   :    怪奇「豹人間」の力
【怪奇「豹人間」の力】に覚醒して【豹の如き外見と俊敏性を持った姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    怪奇「猛毒人間」三重奏
【怪奇「ヘドロ人間」の力】【怪奇「疫病人間」の力】【怪奇「硫酸人間」の力】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    怪奇「砂塵人間」の力
対象の攻撃を軽減する【砂状の肉体】に変身しつつ、【猛烈な砂嵐を伴う衝撃波】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Ein Unglück kommt selten allein.
 ところ変わって、ゲルダから聞き出したヨルダン新聞社の屋敷。その敷地内に踏み込んだ猟兵たちを、新聞社の職員が見咎めて声を上げた。
「待て! 『ヨルダン新聞社』の事務所に、お前たちのようなものが何の用だ!」
 敵意を剥き出しにして声をかけてくる職員。彼らをにらみつけると、職員は訝しむ視線をこちらに向けてきた。
「んん……? お前たち、ただの観光客ではないな? どこかから依頼を受けて探りを入れに来たんだろう!」
 わめきたてながら、職員は真鍮製の懐中時計を取り出す。それを掲げれば、そこから靄のようなものが吐き出された。そこからずるりと姿を表すのは、金髪に白い軍服を身に着けた、少年とも見れそうな兵士だ。
「せっかく事業が軌道に乗ってきたのに、ここで頓挫させるわけにはいかない! 旭日組隊員よ、お前の力を見せつけろ!」
「かしこまりました、閣下」
 召喚された兵士は無表情のままに、猟兵たちに向けてサーベルを抜き放つ。話し合う余地など、最初からなさそうであった。

●特記事項
 ・戦場はヨルダン新聞社の持つ屋敷の中です。室内、屋外はお任せします。
村崎・ゆかり
対話の余地無し、問答無用、と。
それなら、強硬手段に出ても文句を言われる筋合いはないわね。
アヤメ、羅睺、牽制をお願い。
悪の拠点のお屋敷なら、幾ら壊しても問題ないでしょ。

「結界術」「全力魔法」「範囲攻撃」炎の「属性攻撃」「衝撃波」「呪詛」「竜脈使い」「仙術」「道術」で、烈焔陣!

地下から噴き上がり広域を焼く呪詛の炎、耐えきれるかしら?
怪奇人間の力を使ったところで、あたしの炎からは逃げられないわ。

『ヨルダン新聞社』の結社員はどんな具合かしらね。お仕事は影朧の殲滅じゃなく結社員の確保なんだから、巻き込まれても困るんだけど。
そっちはアヤメと羅睺に任せて大丈夫かしら?

ふふ、燃える燃える。悪の最後にぴったり。



●Iss, was gar ist, trink, was klar ist, und sprich, was wahr ist.
 ヨルダン新聞社の屋敷の庭にて。早速敵意を剥き出しにしてくる新聞社の社員と向き合いながら、小さく肩をすくめるのはゆかりだ。
「対話の余地無し、問答無用、と」
 ゆかりをかばうように立ちながら、アヤメと羅睺も戦闘態勢。鋭い視線を前方の社員に向けながら、アヤメが冷静に言い放つ。
「いかがいたしますかゆかり様、容赦は不要と思われますが」
「てゆーかさ、こいつらワルモノなんだろ? ワルモノなんだったらぶっとばしても文句ないよな?」
 羅睺も剣呑に、指を鳴らしながらゆかりに言った。その物言いに苦笑しながら、ゆかりは小さく頭を振る。
「ぶっ飛ばしてもいいけど殺しちゃダメよ。お仕事は影朧の殲滅じゃなく結社員の確保なんだから」
「では、捕縛を優先する形ですね」
「殺さず捕らえろ、ってことか。めんどくさいなあ」
 彼女の言葉に頷くアヤメと、心底から面倒くさそうに首を傾ける羅睺だ。本当に、容赦無く殺してしまえるならどんなに楽なことかしれない。
 カードを取り出しながら、ゆかりは前に立つ二人に声をかけた。
「そうね、アヤメ、羅睺、牽制をお願い。悪の拠点のお屋敷なら、幾ら壊しても問題ないでしょ」
「承知しました」
「あいよー」
 その言葉を受けて、同時に地を蹴るアヤメと羅睺。彼らを迎え撃つように旭日組隊員も前に飛び出した。その後方から社員が声を張り上げる。
「屋敷に侵入するどころか、屋敷を破壊するなどとは言ってくれる! 旭日組隊員、行け! 遠慮はするな!」
「はい、閣下」
 冷たい声色でそう返す旭日組隊員の身体が、みるみる獣毛に覆われていく。怪奇「豹人間」。豹の敏捷性と瞬発力を備えた旭日組隊員が、羅睺とぶつかり合って組み合った。
 羅睺が旭日組隊員を押さえている間に、アヤメはその横をすり抜けていく。そして一気に社員にまで近づくと、後方に回り込んでその身体を抑え込む。
「なっ!?」
「死にたくなければ動かずに」
「ま、動かせすらしないけどね! アヤメ先輩、そのまま!」
 もがく社員を、アヤメは離さないまま引きずっていく。羅睺も羅睺で、あまり旭日組隊員と積極的にぶつかり合いはしない。どころか、一定の距離を保つようにして牽制に終止していた。
 旭日組隊員が獣面にシワを寄せる中、ゆかりが護符を高く掲げる。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。汚濁に染まりし三昧真火よ。天帝の赦しを持って封印より解き放たれ、地上を劫火の海と為せ!」
 その瞬間だ。旭日組隊員の周囲に結界が張られる。身動きが取れなくなった旭日組隊員が、羅睺と分断される形で結界に閉じ込められた。
「な――!?」
 そして旭日組隊員は目を見張った。地面が激しく鳴動している。この庭だけではない、屋敷の建物も含めた、このヨルダン新聞社の屋敷の敷地すべてがだ。
 その、鳴動が一瞬止まった時だ。
「疾!」
 ゆかりがびしりとカードを振り下ろす。次の瞬間、知を割るように無数の火柱が噴き上がった。
 庭の木々が燃え、屋敷の屋根には穴が空いて火の粉が散る。そして、旭日組隊員を閉じ込めた結界の中にも火柱が上がっていた。
「あ、あ、あ……!!」
 爆炎に飲まれた旭日組隊員が、塵も残さずに燃え尽きていく。その有様を、アヤメに捕らえられていた社員は呆然とした表情で見ていた。
「は……っ、ぐ」
「ふう。これで大人しくしてくださるでしょうか」
「意識を刈り取られる直前に見るのは、炎が吹き出して燃え盛る屋敷の庭。まーショックだよねぇ、こいつには」
 羅睺が社員の腹に拳を叩き込んで意識を刈り取る。その隙きに社員の身体を紐で縛りながら嘆息するアヤメに、羅睺は肩をすくめながら答えた。
 彼らにとってはショックだろう。よもやこんな派手に、拠点を破壊されようとは思わなかっただろうから。
「ふふ、燃える燃える。悪の最後にぴったり」
 どんどん燃えていく屋敷の庭を芽にしながら、ゆかりは小さく口角を持ち上げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜刀神・鏡介
先の彼女はともかく、この結社員は自分達が何をやっているか理解してる……って事だよな
流石に殺す気はないが、多少手荒になっても仕方ないよな
だが、まずはこいつら奴らを倒すところからだ

緋色の神気を刀身に纏わせながら、神刀の封印を解除
陸の秘剣【緋洸閃】――力を解放すれば、無数の刃が敵を斬り裂く

此方は神気によって身体能力が強化され、一方で敵の行動力は低下した
これで、囲まれないよう余裕を持って立ち回れる
攻撃を受けないよう捌きつつ、一体ずつ確実に倒していく

万が一毒を食らったなら、精神統一により神気の持つ浄化の力を強めて、毒を弾き飛ばす

邪魔がなくなったら、組織の連中を拘束。抵抗するなら峰打ちで気絶させよう



●Kümmere dich nicht um ungelegte Eier.
 焼かれてもなお、屋敷のロビーはしっかりと形を保っていた。そのロビーに飛び込んだ鏡介を、数人の社員が出迎える。
 社員たちに刀を向けながら、鏡介はそっと目を細めた。
「先の彼女はともかく、この結社員は自分達が何をやっているか理解してる……って事だよな。流石に殺す気はないが、多少手荒になっても仕方ないよな」
 殺しはしないが、容赦はしない。敵意を明確に見せる鏡介に、社員たちも真鍮の懐中時計を次々取り出した。呼び出されてくる旭日組隊員。
「だが、まずは奴らを倒すところからだ」
 次々に剣を抜いてくる旭日組隊員に、鏡介も改めて神刀「無仭」を握る。一人で乗り込んでくるというその無謀にも見える様に、歯噛みした社員が声を上げる。
「おのれ……どこの連中かは知らんが、そう易易と俺たちが捕らえられると思うなよ! いけ、旭日組隊員!」
「はい、閣下」
 返事を返し、鏡介を取り囲むように配置した旭日組隊員の身体が、みるみるうちに粘性を帯びる。表皮がただれ、溶けるようになったその身体から、耐え難い悪臭が漂い始めた。
 毒の三重奏だ。それが複数人、自分を取り囲むように立っている。
「毒にヘドロに硫酸か。なら……こうだ!」
 鏡介はそう呟くと、刀を眼前に掲げるようにしながら立った。そして自身の刀に、自身の意識を送り込んでいく。
「神刀解放。斬り穿て、千の刃――陸の秘剣【緋洸閃】!」
 封印を解かれたその刃が赤く輝いた瞬間だ。無数の紅い刃が戦場に乱れ飛んだ。
 その刃は旭日組隊員の身体だけに次々突き刺さっていく。いかにヘドロの身体と言えども、傷は傷だ。
「なっ……!?」
「神気によって形成した緋色の刀だ。これでお前たちは満足に動けない」
 途端に動きの鈍った彼らを、鏡介は次々に斬り捨てていく。首を、肩を、腹を斬り裂けばぱっくりと割れたその身体から次々に血が噴き出した。社員と違い、召喚されたオブリビオンの彼らには容赦もいらない。
「く、くそっ!」
「なめるなよ、一般人が!」
 そう喚きながら毒の弾丸を飛ばしてくる旭日組隊員。その弾丸を捌いて躱しながら、鏡介はそっと目を細めた。
「一般人……ね」
 猟兵として並々ならぬ経験を積んできた手練である彼をして、一般人とはよく言うものだ。そんな言葉を吐いた旭日組隊員も、鏡介の振るう刃に命を刈り取られ。
 程なくして、血溜まりだけが残された。後は戦うすべのなくなった結社員のみだ。
「ふう。さあ、どうする? まだ出してくるか?」
「な、なんだと……」
 彼らにふっと息を吐きながら言えば、たじろぐ社員たちが足元の絨毯を踏む。彼らにそっと歩み寄りながら、鏡介は神刀「無仭」をきらめかせた。
「抵抗しないのならこれ以上は傷つけない。抵抗するなら……分かるな?」
 その言葉に、社員たちは何も言えない。大人しくお縄に付いた彼らを屋敷の外に連れていった鏡介は、静かに肩をすくめた。

成功 🔵​🔵​🔴​

キング・ノーライフ
過去故にただ信念も覚悟も無く、昔のように我を捨てて守れを言われて守る、か。…一人位は救えるか試してみるか。

【激痛耐性】【毒耐性】で耐えながら隊員に近づく、
疫病?機械の神に病が効くかっ!一応【医術】で対処していくが。
硫酸は【見切る】が隊員には手は出さん。

接近しきったら【王の誘惑】の誘惑で召喚による支配を打ち消し、副作用の代償を【浄化】してやる。「もういいのだ、貴様を雑に扱う者に従う事など…せんでいいのだ」と抱きしめる。

「我の元に来い、今を一緒と生きてみんか?」と【誘惑】。ダメでも転生するかもしれんし、それも救いよ。ちなみに隊員も職員も同じ命、「我よりお前の主のが上か?」と職員も陥落させよう。



●Die Lebensspanne ist dieselbe, ob man sie lachend oder weinend verbringt.
 屋敷の廊下を歩いていたキングは、結社員の姿が見えたことに足を止めた。
「過去故にただ信念も覚悟も無く、昔のように我を捨てて守れを言われて守る、か」
 目を細めながら小さく呟くのは、道中でちらと見かけた旭日組隊員のことだ。何種類ものかいき人間の力を宿させられ、特攻隊として無為に捨てられた短命な隊員たち。ただ過去の行動をなぞるかのように、召喚者を使役する存在。
 そんな彼らを呼び出す一人の結社員が、キングに向かって声を張り上げる。
「屋敷に手を出したかと思えば、今度は一人でのこのこと! 思い知らせてやる、行け!」
「承知しました、閣下」
 閣下、と召喚者を呼んだ旭日組隊員が、その身体から臭気を漂わせる。毒気を発する彼に、キングはますます悲しそうな表情をした。
「閣下、か」
 ああ、その閣下は、お前のことなど気にもかけてくれないだろうに。そう思いながらキングは、毒の弾丸が飛ぶ中を進んでいく。
「疫病? 機械の神に病が効くかっ!」
「く……!」
 機械を司る神故だ。毒には耐性がある。そうしてそのまま、旭日組隊員の眼前まで彼は迫った。
「おのれ、だが――」
「ふっ、そこまでだ」
 毒を放つのでは敵わないか、と腰の剣に手をかける旭日組隊員。しかしキングはその手を抑え込んだ。そのままもう片方の手で抱きしめる。
 予想外の事態に旭日組隊員は目を見開いた。だが、それだけではない。
「え……」
「もういいのだ、貴様を雑に扱う者に従う事など……せんでいいのだ」
 キングの言葉とともに、身体を苛む激痛が和らいでいくのだ。毒気も徐々に収まっていく。そしてキングの言葉が、優しく体に染み渡っていった。
 その瞳に光が宿る。もう彼を縛るものは無い。
「我の元に来い、今を一緒と生きてみんか?」
「え、あ……お、仰せの、ままに」
 キングの優しい言葉に、戸惑いがちに旭日組隊員は答え、跪いた。自分の目の前で召喚対象を奪われた社員が、わなわなと震えている。
「なん、だとっ……!?」
 その震えは、怒りか、それとも屈辱か。愕然としているその社員へと、キングが顎に指を這わせる。
「我よりお前の主のが上か?」
「ひんっ……」
 その言葉に、社員の身体に電撃が走る。もう一人がキングの足元にかしずくまで、時間はかからなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鳴上・冬季
「ここで巨大化させると社屋が吹っ飛びますねえ。チマチマ加減するのはあまり好きではないのですが…出でよ、黄巾力士金行軍!」
「寅は木行、金剋木。さあ、蹂躙せよ」
この地の龍脈から力を吸い上げ継戦能力高め黄巾力士の半分が砲頭から制圧射撃、半分が鎧無視の無差別攻撃で蹂躙する
敵の攻撃はオーラ防御で防ぐ

自分は普段から連れている黄巾力士と空中から睥睨
黄巾力士に制圧射撃させつつ自分への攻撃はオーラ防御で庇わせる
自分は時折雷公鞭振るい雷落としつつ戦場俯瞰

「木行同士で殴り合うのも面倒でしたから。社屋も倒壊しませんでしたし、少しくらい見た目が廃屋のようになるのは許容範囲のうちでしょう」

「さあ、お話を伺いましょうか」



●Auf jeden Regen folgt auch Sonnenschein.
 あちこちに焼け焦げが出来た社屋の屋敷。その壁や柱を見上げながら冬季は口角を持ち上げた。
「ここで巨大化させると社屋が吹っ飛びますねえ。チマチマ加減するのはあまり好きではないのですが……」
 加減するより大火力で制圧するほうが得意だ。そんな風に出来ないのが心苦しい、という様子の冬季に、社員が懐中時計を振りかざしながら喚く。
「な、何を今更! ここまでぶち壊しておいて!」
「他の方のされたことまで、こちらは勘案しませんので」
 次々に旭日組隊員を喚び出す社員を見て、冬季は小さく鼻を鳴らした。実際、他の猟兵がどれだけ猛威を奮ったところで、冬季が気にすることではない。
 た、と冬季が足元の地面を蹴る。そして彼は腕をふるった。
「出でよ、黄巾力士・金行軍! さあ、蹂躙せよ」
 声を張るや、冬季の足元に多数のアンドロイドが出現した。その数まさに102人。人形の自立思考戦車である黄巾力士が、その砲塔から無数の弾丸を発射し始める。
「なっ!?」
「うわっ!?」
 いや、それだけではない。半数は遠方から制圧射撃を行い、もう半数が両腕を縦横無尽に振るいながら暴れまわっているのだ。
 その様子を冬季は空中から見下ろしている。傍には数人、黄巾力士を侍らせて見ている。その佇まいには落ち着きが満ちている。
「木行同士で殴り合うのも面倒でしたから。社屋も倒壊しませんでしたし、少しくらい見た目が廃屋のようになるのは許容範囲のうちでしょう」
 そう話しながらにぃと口角を持ち上げる冬季を、豹人間となった旭日組隊員が牙をむき出しながら見上げている。
「くっ、くそっ!」
「跳びかかれ! 空中にいようが関係ない!」
 そう口々に言いながら、旭日組隊員が地を蹴って冬季に飛びかかってくる。しかしそれは黄巾力士がカバーして防いだ。
「おっと、させませんよ」
 冬季の言葉とともに、攻撃を迎え撃って打ち払った力士が、射撃を加えて攻撃していく。地面に転がった豹人間が次々に、心臓を撃ち抜かれて消えていった。
「あ……」
 すべての旭日組隊員が倒され、愕然とする社員たち。彼らの前に再び降り立ちながら、冬季はくいと顎をしゃくった。
「さあ、お話を伺いましょうか」
 その言葉に呼応して、黄巾力士が次々に社員の腕を拘束していく。話を聞くまでに、そう時間はかからなそうだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

丑三・勘太郎
ゲルダから聞いた通り結社の拠点はあるみたいだな。
結社員は逮捕しないといけないみたいだが、
影朧はぶっ飛ばしていいんだろ?
お互い楽しく喧嘩といこうぜ!

相手が毒人間になって攻撃してくるんなら、
こっちはあえて毒の代償を受ける【妖憑依】を使うとしよう。
てめぇらの毒と俺の代償の毒、どっちが強いか試してやるぜ!

相手が攻撃してきたら、【妖憑依】を使用する。
毒、流血の代償は《気合い》で耐える。
相手を殴れる場所まで近づけたら、
平手打ちを叩き込む!

「吹き飛びな! 丑三流奥義!! 『鬼平手』!!!」

影朧をぶっ飛ばしたら、結社員は『黒縄』を使って《捕縛》しておく



●Gebranntes Kind scheut das Feuer.
 拳を組み、指関節を鳴らしながら勘太郎は廊下を進む。剣呑な表情をしながら居合わせた社員をにらみつける。
「結社員は逮捕しないといけないみたいだが、影朧はぶっ飛ばしていいんだろ? お互い楽しく喧嘩といこうぜ!」
 好戦的な笑みを浮かべる勘太郎に、一歩後ずさりながら社員は懐中時計を手に握った。
「くっ、思う通りになどさせるか! 行け、旭日組隊員」
「はい」
 呼び出された旭日組隊員が、すらりと剣を抜き放ちながら辺りに臭気を漂わせる。毒気が空気に満ちていく中、勘太郎はますます笑みを深くした。
「丑三流の真髄、とくと拝ませてやるぜ! てめぇらの毒と俺の代償の毒、どっちが強いか試してやる!」
 そう言い放ちながら、自身の体に妖怪と悪霊と鬼の力を満たしていく勘太郎。その身体が毒に苛まれる中、彼は旭日組隊員が放ったヘドロの弾を身体で受けた。
「ぐぅっ……!」
「死になさい」
 そこに旭日組隊員がさらに毒の弾丸を叩き込んでいく。さらに勘太郎の身体を毒が苛んでいくが、気合を入れて立ち向かった。
「まだ、まだぁ!」
 両足でしっかと床を踏む。身体を奮い立たせながら立ち続ける。そしてどんどんと距離を詰めた勘太郎の右手が大きく振られた。
「吹き飛びな! 丑三流奥義!! 『鬼平手』!!!」
「うっ……!」
 そして振り抜かれた右手が旭日組隊員の左頬に叩きつけられた。大きく吹っ飛んだ旭日組隊員の身体は、壁に叩きつけられて崩れて消えた。
「な、に……!?」
 あまりの威力の平手に社員が青ざめる。その社員にゆっくり歩み寄りながら、勘太郎は手に黒縄を握った。
「さあ、大人しくしてもらおうか?」
 その縄をちらつかせながらもう一度勘太郎が笑みを浮かべる。もう一歩、社員が後ずさった。

成功 🔵​🔵​🔴​

インディゴ・クロワッサン
POW (別の依頼で出会った彼らを思い出す)
「あー… まともに血啜れないやつかぁ…」
服も私服だし…比較的(本人比)穏便に終わらせますかー
攻撃は可能な限り見切って回避、避けきれない攻撃は鎖付き短剣:Piscesの鎖で武器受け&オーラ防御
「この服、割とお気に入りなんだ」
髪をほどいて真の姿になって二対四翼を広げたら、UC:狩猟者の本能 を発動
「頭が高いよ?」
召喚者と影朧の動きを封じつつ、追加で殺気と威厳と誘惑も乗っけて、堂々と隙が出来た所にPiscesを投擲して、影朧を串刺し(鎧砕き/鎧無視)だー!(無意識の精神攻撃/恐怖を与える
さーて、残りはロープワークで捕縛しないとねー、って
「…あれ?」(首傾げ



●Lust und Liebe zu einem Ding macht alle Mühe und Arbeit gering.
「あー……まともに血啜れないやつかぁ……」
 インディゴはそう言いながら、至極残念そうに旭日組隊員を見た。
 豹人間ならまだしも、毒人間になったところを啜るわけにはいかないし、砂人間になったら物理的に啜ることが出来ない。
 そうでなくても砂である。攻撃するのも思い通りには行かなそうだ。
「服も私服だし……比較的穏便に終わらせますかー」
 なるべくなら穏便に済ませて終わりたい。そうしてPiscesを握りながら言えば、最後に残った社員が目を見開きながらインディゴに喚き立てた。
「穏便にだと!? これを見てもなおそんなことが言えるか!? いけ、旭日組隊員!」
「はい閣下、最大戦力で対応します」
 懐中時計から召喚された旭日組隊員が剣から手を離すと、その身体が一瞬で崩れ去る。そして砂の渦となって竜巻のように立ち上った。
「おっとぉ、そうくる?」
 それを目にしたインディゴが目を見開いた。物理攻撃が通用しない形態だ。これは少々面倒と言えよう。
 だが、インディゴは慌てない。さら、と服の裾を払いながら言った。
「この服、割とお気に入りなんだ」
「何を――」
 砂の渦の中から声が聞こえた瞬間だ。インディゴの背中から三対六枚の翼が生える。
「っ!?」
 社員が言葉に詰まる。真の姿の開放とともに、インディゴのまとう力がますます増したがゆえにだ。そして、くいと顎を持ち上げたインディゴが砂の渦を見下ろす。
「頭が高いよ?」
 次の瞬間、砂の渦が動きを止めた。崩れ落ちるや砂が再び人の形を取る。
「う……」
 その形が、うぞうぞと僅かにうごめく。そこをインディゴは見逃さない。手にしていたPiscesを投げつけた。
「はい、そこ」
「ぐ……っ!」
 Piscesが突き刺さった旭日組隊員が、ぴくりと動くとそのまま動かなくなる。それを見やったインディゴが翼をしまう。
「よし。さーて、残りはロープワークで捕縛しないとねー……って」
 そしていよいよ社員を捕縛しよう、としたのだが。
「……」
「あれ?」
 問題の社員は気を失っていた。おまけに足元が濡れている。これは色々とよろしくない。
 意識を失ってしまっては抵抗もなにもない。気勢を削がれながらインディゴは残る社員の捕縛を開始した。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『咎忍『玉梓』』

POW   :    禁呪『八房』
【巨大な犬】に変形し、自身の【回避能力】を代償に、自身の【牙】を強化する。
SPD   :    禁呪『妙椿』
【鎌鼬を纏った勾玉】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    禁呪『ヨミガエリ』
【黄泉比良坂】から、【腐敗】の術を操る悪魔「【黄泉醜女】」を召喚する。ただし命令に従わせるには、強さに応じた交渉が必要。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は政木・朱鞠です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Hochmut kommt vor dem Fall.
 焼け落ち、倒壊した屋敷。その瓦礫の中から、一人の中年男性が進み出てきた。
「屋敷がいきなり炎に包まれ、荒れ果てたと思ったら……これはどういうことだ」
 体についた砂埃を払いながら進んでくる男性は、忌々しそうな瞳で猟兵たちを見てくる。彼がこのヨルダン新聞社の社長であることは、もはや疑いようもない。
「貴様らの仕業だな。おのれ……よその新聞社の差し金か、それとも何者かが雇ったエージェントか?」
 睨みつけてくる社長が、訝しみながらそう告げる。戦闘は避けられそうにない。
「ここまでなっては新聞社の立て直しにも金がいる。貴様らを殺して然るところに売り捌けば、それなりの金にはなるだろう! 行け、玉梓!」
 そう言いながら社長が取り出してきたのは黄金製の懐中時計。それを取り出して掲げれば、着物を何枚も重ね着した黒髪の女性が現れる。
「ふふ、ここまで荒らされたのになお負けない……好きだわ、その芯の太さ」
 口元に折りたたんだ懐紙を取りながら、咎忍『玉梓』がほくそ笑む。ヨルダン新聞社の社長を捕縛するため、伯林での最後の戦闘が幕を開けた。

●特記事項
 ・屋敷は先の戦闘で荒れ果てて廃墟のようになっています。
村崎・ゆかり
こうなってもまだ抵抗するなんて、諦めの悪い。あなたの最後の切り札も討滅してとっ捕まえてあげるから、待ってなさい。

摩利支天九字護身法で防御を固め、『玉梓』が放つ鎌鼬の勾玉を受け止めましょう。
もっとも、それ以前に薙刀で弾き飛ばせばいいんだけど。
数がいないなら、むしろ楽。
『玉梓』を薙刀で「なぎ払い」、「串刺し」にする。

久々に召喚してみましょうか。偶神兵装『鎧装豪腕』。
「盾受け」しながら、「怪力」で『玉梓』を殴りつけて。両腕と上手く呼吸を合わせて、踊ってみせましょう。

二段構えの防御、あなたに破れるかしら?

アヤメと羅睺は社長の確保をお願いね。ここから逃げそうなら、捕縛。逃げる気無さそうだけど、一応ね。


キング・ノーライフ
真の姿解放(金属の肩当と翼)
この組織の媒介は懐中時計なのか、個性があるな(と【朝陽の懐中時計】を取り出し召喚)。悪いが鹵獲させてもらったぞ。

【読心術】と【見切り】で相手の攻撃を避けつつ朝陽に【だまし討ち】させるか、回避を捨てて攻撃力を得ているという事は当たらなければ良いという事よ。

成功したら【発現する怪奇】発動、見た目アナグマっぽいな。ラーテル?の怪奇人間になったようで、玉梓に噛まれても分厚くだるんとした皮で噛み切れんでほぼ無効化したようだ。これは好機と背に火の【属性攻撃】を叩きこむ。

いかに兵や駒を揃えても頭で容易に返せる。その差を思い知るがいい。
まあ我は従者や朝陽を駒と思った事はないがな。


夜刀神・鏡介
往生際が悪いというか、いっそ清々しいと言うべきか……ま、悪党なんて得てしてそんなものか
だが、そろそろ報いを受ける頃だ

引き続き神刀を抜いたまま油断なく敵を見据える

放たれた鎌鼬を斬撃波で迎撃しようとして、社長が攻撃に巻き込まれそうだったので、そちらの迎撃を優先
組織を潰しに来たのは確かだが、こいつに死んでもらっては困る
だが、これを狙ったかは分からないが、文字通りに無差別とは恐れ入ったというか

……これを何度も狙われると、流石に助けきれるかは分からない
だから、一気に決めに行く――灰色の神気を刀身に纏って一気に踏み込む

敵の攻撃は最低限だけ迎撃して最速で接近、伍の秘剣【灰桜閃】の連撃を叩き込む


鳴上・冬季
「貴方を捕まえた報奨で補填すれば充分足りるでしょう。借主が逮捕されてここまで廃屋同然になったら、地主もここを更地にするでしょう。きっと貴方だけで足りますよ?」
嗤う

UC使用し玉梓と黄泉醜女双方にダメージと火傷と麻痺与える
黄巾力士には自分を庇わせつつ制圧射撃させ敵が消滅するまでUC範囲内に留めおく

「黄泉醜女を喚べるほど竜脈にも近いのでしょう?お陰で私も竜脈を使って黄巾力士の能力を底上げできます。いい場所です」
黄巾力士が壊れないよう竜脈使いと継戦能力で底上げ

敵を倒したら黄巾力士に社長への制圧射撃命じ雷公鞭で絡めとる
「それじゃあお縄についてもらいましょう。式神は隠された秘密文書を残らず持って来なさい」


丑三・勘太郎
とうとう社長のお出ましと来たか。
さすがに骨のありそうな影朧を扱ってるじゃねぇか。
さっそくお手合わせ願おうか!

避ける気のねぇ攻撃をしてくるとは、
なかなか良い根性してるじゃねぇか。
こっちも真正面から相手してやるぜ!

玉梓を見つけた段階で『C.C.proto』を起動し、
血液を代償に魔力を《限界突破》する。
その間に攻撃を喰らっちまっても、《気合い》でなんとか耐える!

自己強化が完了したら、自分の身に纏わせるように【雷獣撃】を使用し、相手の攻撃に合わせて、《捨て身の一撃》である右ストレートをぶちかます!

「てめぇの覚悟と俺の覚悟! どっちが強いか試してやるぜ!丑三流奥義!! 『雷獣撃』!!!」


インディゴ・クロワッサン
お屋敷、ボロボロになっちゃったね(一瞬だけ遠い目)
「ん?売り捌くって、僕らを?」
目をぱちくりさせて尋ねたら、ゆっくりと笑い出してから
「あーっはっは!面白い事言うねー!」
背中の二対四翼で空中浮遊して、早着替えで何時もの服に着替えたら…僕は空中戦だー!
僕は回避を重視して、第六感で攻撃を見切ったりフェイントで攻撃を誘発しながら、鎧なんて無視した威力の投擲でPiscesを投げて串刺しにしてからロープワークで操って回収したり、愛用の黒剣:Vergessenを鎧砕くレベルの怪力で振るって攻撃しちゃったりして!
相手の重そうな一撃は、残像で避けた後にカウンターでUC:悪しき鬼は羅刹の如く をお見舞いするよー!



●Mit solchen Freunden braucht man keine Feinde mehr.
 社長の言葉に、まず反応したのはインディゴだった。屋敷がぼろぼろになったのを遠い目で見ていたのが、目を大きく見開いて尋ねる。
「ん? 売り捌くって、僕らを?」
 彼の言葉に、社長が憎らしそうな目をしてこちらを見てくる。沈黙は肯定のサイン。そしてインディゴはゆっくり、からからと笑い始めた。
「あーっはっは! 面白い事言うねー!」
 心底からおかしそうに笑うインディゴに、目を見開く社長と玉梓。しかし、この場にインディゴを諌めるような者は一人もいない。
 勘太郎がぱしんと拳を打ち鳴らしながら笑う。
「とうとう社長のお出ましと来たか。さすがに骨のありそうな影朧を扱ってるじゃねぇか。さっそくお手合わせ願おうか!」
「往生際が悪いというか、いっそ清々しいと言うべきか……ま、悪党なんて得てしてそんなものか。だが、そろそろ報いを受ける頃だ」
 鏡介も呆れ顔で肩をすくめた。その声色は明らかに、社長をどうにかしようという思いに満ちている。
 ゆかりもアヤメと羅睺を従えながら、社長に向かって顎をしゃくった。
「こうなってもまだ抵抗するなんて、諦めの悪い。あなたの最後の切り札も討滅してとっ捕まえてあげるから、待ってなさい」
 自信満々に言ってのけるゆかりに、社長の眉間のシワがますます深くなる。そしてそこに追い打ちをかけるように、冬季が帽子を直しながら言った。
「貴方を捕まえた報奨で補填すれば充分足りるでしょう。借主が逮捕されてここまで廃屋同然になったら、地主もここを更地にするでしょう。きっと貴方だけで足りますよ?」
「なっ、なんだとっ!」
 捕まえたあとのことまでもつらつら話す冬季に、社長が気色ばむ。とはいえ当然だ。このヨルダン新聞社の屋敷は既に廃墟同然だが、それを取り壊して更地にすることまでをも既定路線のように語ったのだ。
 社長の反応に肩をすくめながら、鏡介が口を開く。
「随分大きな屋敷だったようだ。地代も随分高かっただろう。それに加えてお前の逮捕、かなりの額が動くことは想像に難くない。俺たちをどうこうしなくても、十分じゃないか?」
 その言葉に表情を歪める社長に、今度は羅睺が言葉をかけた。
「そーそー。そもそもさ、悪者が無事に逃げ切れてやり直せるわけ無いじゃん?」
「この点については羅睺に同意します。悪は裁かれる、それが道理です」
 アヤメも涼しい表情で言ってのける。冷や汗を垂らし始めた社長に、ここで今まで黙っていたキングが口を開いた。
「そう、貴様は悪だ。そして屋敷も部下も失った。それに……」
 そう言いながら取り出したのは真鍮製の懐中時計。しゃらと揺らせば軍服に身を包んだ金髪の青年が姿を見せる。
 それを目にした社長は目を大きく見開いた。それもそのはず、自分たちが散々使い倒してきた影朧がそこにいて、自分に嫌悪の表情を向けてくるのだから。
「悪いが、鹵獲させてもらったぞ」
「もう貴方にはついていけません、社長」
「な……!」
 朝陽の言葉に絶句した社長は、両手を握りながら小さく震え始めた。しばらくそのまま地面を睨んでいると、不意に顔を上げて玉梓に唾混じりの声を飛ばす。
「く、き、貴様ら、どこまでも私を虚仮にしおって! 玉梓、容赦はするな! 全員呪い殺せ!」
「ふふ……仕方のない人」
 その言葉に、呆れた表情をしながら玉梓は懐紙を握った。その懐紙が開かれ、呪詛を孕んだ言葉が溢れ出す。静かに、全員が動き出した。

●Unter Blinden ist der Einäugige König.
 開かれた懐紙がはらりと地面に落ちる。地面につくや、そこから呪言が溢れ出した。
「九泉冥道、還り還りて穴の中……さ、お出でなさい。いくら殺してもいいですよ」
「キヒヒ……それはそれは」
 その呪言の渦の中から進み出るのは、薄汚れた衣服を身に着けた醜女だ。醜悪な顔面をますます醜悪に歪めながら、猟兵たちに向かって手を伸ばす。
 その手の内に、どどめ色をした球体が浮かび上がった。
「クハハハ! 貴様らはいい腐り方をしそうだ!」
 球体が手から離れ、冬季に向かって飛んでくる。それを飛び退いて避けた冬季の立っていた地面が、どろりと腐って崩れた。
 腐敗の術。それを固めた弾丸を次々に放ってくる醜女を見ながら、冬季は手を振り上げた。その手の内には雷公鞭。鞭の切っ先が醜女の肌をかすめた瞬間、冬季は声を上げる。
「既に貴様は我が陣の中。野鼠の如く逃げ惑え……八卦天雷陣!」
 刹那、稲妻が迸った。無数の稲妻が降り注ぎ、醜女と玉梓に傷と火傷を負わせていく。
「ぐ!?」
「ギッ!?」
 火傷による痛みと、感電によるしびれ。それが玉梓と醜女を苛んでいく。逃げ出そうにも黄巾力士が展開して周囲を固め、制圧射撃を続けているから逃げられない。
「黄巾力士はそのまま制圧射撃を続けてください」
 力士にそう告げた冬季は、次いで社長に視線を向けた。その表情には余裕が見て取れる。
「黄泉醜女を喚べるほど竜脈にも近いのでしょう? お陰で私も竜脈を使って黄巾力士の能力を底上げできます。いい場所です」
「く、おのれ……!」
 この立地が結果的に冬季を利することになった、という事実に、社長がぎりと奥歯を噛む。そうこうする内に醜女に限界が来た。断末魔の悲鳴を上げて消えていく。
「ガ……!」
「あぁっ……!」
 声を上げる玉梓だが、当然その手は届かない。醜女は消え、彼女の手は空を切った。
「ふっ、他愛もない」
 鼻で笑いながら冬季が言えば、玉梓がうっすらと笑みを浮かべながら猟兵たちを見た。そしてその手の内に翡翠色をした勾玉を浮かべる。
「く、ふふ。野分澎湃、破り破りて血を放つ……!」
 その勾玉を天に向けて放ると、光を放った勾玉が宙に浮かんだ。そこから次々に、鋭い鎌鼬が放たれ始める。
 突風と鋭い風。それを受けてアヤメがゆかりの前に立ちながら声を上げた。
「ゆかり様!」
「大丈夫!」
 ゆかりが指を伸ばすと、その指で空を切った。九字切りを行えば、彼女の身体が光をまとう。
「オンマリシエイソワカ。摩利支天よ、この身に験力降ろし給え」
 身体にオーラの鎧をまとったゆかりが取り出すのは薙刀だ。アヤメの前に体を入れるとそのまま縦横無尽に振るい始める。
「ま、それ以前に薙刀で弾き飛ばせばいいんだけど!」
 薙刀を振るいながらゆかりはどんどん前へと進んでいく。風はさらに強くなり、鎌鼬の威力も増していく。だがそれでも進もうとするゆかりに、玉梓が笑った。
「何を! この嵐の中を如何にして突き進むと!」
 そう言いながら再び玉梓が手を天に翳す。より一層風が強くなったが、その風は四方八方に向かっていくのだ。当然、社長もその風にさらされている。
「うわ……! 玉梓、こちらに飛ばすな!」
「くっ!」
 動き出したのは鏡介だった。鎌鼬に斬撃波をぶつけながら、社長の前に立つ。自分をかばうようにして立つ鏡介の姿に、社長が目を見開いた。
「なん……っ」
「組織を潰しに来たのは確かだが、こいつに死んでもらっては困る」
 その淡々とした言葉を聞いて、ますます目を見開く社長だ。まさか自分を守って、本当に警察に引き渡すつもりとは思っていなかったのだろう。
 しかし風はどんどん強くなる。斬撃波を放ち続け、社長に向かう鎌鼬を消滅させながら鏡介は小さく笑った。
「……だが、これを狙ったかは分からないが、文字通りに無差別とは恐れ入ったというか」
 そう、社長を守るために手を打つ者がいれば、それだけ玉梓に向かう攻撃の手は減る。分かってやっているのならなかなかの策略家だ。
 長期戦は不利と見たか、ゆかりが声を上げつつ両手を掲げる。呼び出されて彼女の周りに浮かぶのは巨大な籠手だ。
「一気に抑えに行きましょう。偶神兵装『鎧装豪腕』!」
「ああ、このまま無差別攻撃させるわけには!」
 このままでは埒が明かない。なんとかしてあの勾玉を破壊しなければ。動き出すゆかりと鏡介に、玉梓も声を上げる。
「させるものですか!」
「二段構えの防御、あなたに破れるかしら?」
 オーラ防御に籠手型の式神。防御面は万全だ。そして鏡介も動き出す。歩法で一気に距離を詰めて、神刀を一閃。
「神刀解放。舞い散るは徒桜――伍の秘剣【灰桜閃】」
 振るわれる刀が、玉梓の身体をとらえた。着物が切れて血が吹き出す。
「う――っ!」
「ほら、こっちがお留守よ?」
 顔を歪める玉梓に、反対方向からゆかりが襲いかかった。その手は玉梓の頭上に浮かぶ、勾玉へと向けられる。
 籠手による一撃を受けた勾玉は、表面にヒビが入ったかと思いきや、粉々に砕け散った。
「あ……っ!」
 玉梓が声を上げた瞬間に、風が止んだ。鎌鼬の力を失って消えていく。ゆかりが小さく息を吐いた。
「ふぅっ」
「これでひとまずは、鎌鼬による攻撃は止まったか」
 鏡介も安心したように息を吐く。舞い上げられていた細かな木片が、地面にバラバラと落ちていた。

●Ohne Fleiß kein Preis.
 気がつけば窮地に立たされていた玉梓。もうこれ以上手加減はしていられない、と気がついたのか、懐から取り出した懐紙を握りつぶした。
「こうなってはなりふり構ってはいられません! 八房猛我、喰らい喰らいて腹の中!」
 次の瞬間、玉梓の身体が膨れ上がった。人間を超える大きさの犬に姿を変えた玉梓が、猟兵たちを見下ろしながら牙をむく。
 それを見上げながら動き出すのはキングだ。召喚した朝陽に声を飛ばす。
「朝陽、いけっ!」
「かしこまりました、ご主人様!」
 朝陽も剣を抜きながら返事を返した。その隣で勘太郎も拳を握る。
「避ける気のねぇ攻撃をしてくるとは、なかなか良い根性してるじゃねぇか!」
「僕は空中戦だー! いっくぞー!」
 インディゴも背中の翼をはためかせる。翼を動かし宙に飛び出せば、玉梓の遥か上まで舞い上がる。それを見上げながら玉梓が歯をむき出した。
「おのれ……! ですが捕まえられればこちらのもの!」
 そう言いながら前足を伸ばす玉梓だが、宙を軽やかに駆けるインディゴを捕まえるには至らない。それどころか、インディゴが投じる短剣が何度も刺さっては鎖を弾かれて引っこ抜かれていた。
「あはは、犬なのに空中を飛ぶやつを捕まえようだなんて、おかしーい!」
 今もまた、深々と突き刺さった短剣を引き抜いている。完全にインディゴが玉梓を手玉に取っていた。
 これは構っていられない、と、玉梓が地上にいる面々に視線を向ける。その正面では勘太郎が構えを作りながら力を高めていた。
「こっちも真正面から相手してやる! いくぜ!」
 両足を地につけながら、玉梓から視線を外さずに構えを造る。その左胸では刻印が輝き、血液を媒介に膨大な魔力が生成されていた。
 だが、動かない彼を見て玉梓が笑う。
「ふ、動かないなんていい的です!」
 地を蹴った玉梓が一気に勘太郎に肉薄した。そのまま勢いよく噛み付けば、勘太郎の身体に牙が深々と突き刺さる。
「ぐ……!」
「勘太郎!」
 声を上げたのは鏡介だったか。キングも勘太郎を助けるべく声を上げた。
「朝陽!」
「彼を離しなさい!」
 朝陽が剣を振るい、玉梓を切りつけていく。だが、玉梓が視線を動かすより先に、勘太郎の手が玉梓の身体を掴んだ。
「まだ、まだぁ!!」
「なっ!?」
 声を張り上げながら玉梓の身体をしっかと掴む勘太郎。その右手が握られ、振りかぶられた。
「てめぇの覚悟と俺の覚悟! どっちが強いか試してやるぜ! 丑三流奥義!! 『雷獣撃』!!!」
「が――!」
 一気に叩き込まれた右手から膨大な電流が迸る。逃げようにも身体を掴まれているから逃げられない。結果、そのまま拳を叩き込まれた玉梓は、勘太郎から口を離して吹き飛ばされることになった。
 そんな玉梓を見ながら、キングが朝陽に声をかける。
「斬ったな?」
「はい……行けます」
 声をかけられた朝陽が剣に残った玉梓の肉を口に入れる。それを食らうと、朝陽の姿が縦陣のような姿に変化した。
 アナグマのような姿に頭頂部から背中にかけて白い姿、ラーテルの怪奇人間と言えよう。
「なっ……お、おのれ!」
 その変化を目の当たりにした玉梓が朝陽を標的にした。一気に飛び出して朝陽に噛み付くも、しかし彼は涼しい顔だ。
「おや、何かしましたか?」
「なに……」
 なんでも無い、という様子の朝陽が、噛みつかれたまま爪を振るう。玉梓も朝陽の身体を噛んでいるのに、その肉を貫けないことに目を見張っていた。
 キングが鼻を鳴らしながら笑う。
「ラーテルだからな。皮は分厚くだるんとしている」
 その言葉に目を見開く玉梓だ。以下に牙が鋭く身体が大きくても、その皮が分厚く肉を貫けないのでは意味がない。
「いかに兵や駒を揃えても頭で容易に返せる。その差を思い知るがいい……まあ我は従者や朝陽を駒と思った事はないがな」
「ぐっ……!」
 キングが自信満々に言いながら社長に視線を向ければ、痛いところを突かれた社長が青ざめた。
 そうこうする間にも玉梓には絶えず攻撃が叩き込まれている。殴られ、斬られ、突き刺され。その大きな体は既に血まみれだ。
「動かなくなったらいい的だよねー! ……あはっ♪」
「う……!」
 インディゴが止めとばかりに大剣を振り下ろす。それを皮切りに猟兵たちは一斉に攻撃を仕掛けていった。
「そろそろ限界じゃない? 降参してもいいのよ?」
「さっさと社長を捕まえないとなりませんからね。早くお眠りなさい」
 ゆかりと冬季が同時に攻め立てれば、玉梓の足がぐらりと揺れる。その巨体が倒れようかというところで、きらめくのは鏡介の刀だ。
「これでおしまいだ、玉梓……沈め!」
 一閃、刀が振り抜かれて玉梓の首を狩る。喉を裂かれた玉梓は、断末魔を上げることも出来ずにそのまま消えていった。
 終わりだ。アヤメと羅睺、黄巾力士によって捕らえられていた社長がその場に崩れ落ちる。
「あ、あ、あ……」
「はい、残念でした。これでお前を守るものは何もないよなー、社長さん?」
「大人しくお縄につくのです。あとは然るべき形で、この国の方が裁くでしょう」
 羅睺とアヤメが社長に声をかける。もはや抵抗する気力など一片も残っていないらしい社長は、何を言うことも出来ない。
 そのまま社長が捕縛されて伯林の警察に引き渡されていく中、冬季は式神を放ちながら指示を出していた。
「式神は隠された秘密文書を残らず持って来なさい。いいですね?」
「もっとも、この瓦礫の山の中から探すのも難儀するだろうな」
 その言葉に鏡介が肩をすくめる。本当に、完全に崩れ落ちた瓦礫の山のような屋敷だ。ここから書類を探し出すのは難儀だろう。
 全員で協力して情報を探していこうというところで、インディゴが朗らかに笑う。
「でもこれで、事件は解決だね!」
「そうだな、これで安心して伯林観光を出来るというものだ」
 その言葉にキングも頷いた。ここで情報を探し終わったら、また伯林を観光しに行こう。
 そんな事を考えながら、猟兵たちは瓦礫から情報を拾い上げるべく動き出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月08日


挿絵イラスト