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熾火は青く昌盛・『︰』

#ブルーアルカディア #『オーデュボン』

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#ブルーアルカディア
#『オーデュボン』


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●此処に
 亜麻色の髪が風になびく。
 黒い瞳は空を見つめ、その向こう側にあるものがなんであるのかを知った。
「ようやくわかったよ。『V(ヴィー)』、君が何を求めていたのか」
 少年『エイル』は青い鎧の巨人『セラフィムV』の肩に立ち、意志のようなものを感じさせる彼のパートナーの装甲に手のひらを合わせる。
 彼にも全てがわかったわけではない。
 けれど、何故、屍人帝国『オーデュボン』が『セラフィムV』を狙うのか理解したのだ。

「君の中にある天使核はたしかに燃料かも知れないけれど、それ以外にもあったんだね。『増幅』する力。だから、あの人達の力を君は模倣し、溜め込む。人の意志を『増幅』させる力。それを欲しがったんだ、『オーデュボン』は」
 そして、『エイル』は知る。
 今まで『セラフィムV』は『オーデュボン』から逃げていたのではない。進もうとしていたのだ。
 何処に、とは問うまでもない。
 屍人帝国『オーデュボン』、一度は雲海に沈み、そして再び浮かび上がってきた大陸に向かっていたのだ。

 けれど、それ以上に求めるものがある。
「そして、君は次の力が欲しい。人の意志を『増幅』させるのなら、次は『繋ぐ』ものが欲しいんだ。それがこの先にあるんだね?」
『エイル』の言葉に『セラフィムV』の瞳が輝く。
 目の前には『竜の巣』と呼ばれる危険な空域が広がっている。『凶鳥の嵐』とも呼ばれる空域は、その名の通り近づく飛空艇だろうが、なんであろうが凶暴な鳥の群れが襲いかかる。

 縄張り意識が強いのだろう。
 凶鳥は己達の身体が傷つくことなどお構いなしに突撃してくる。そのせいで沈んだ飛空艇は数知れず。
「おいおい、本当に行くのかよ」
「ええ、お願いします。僕らはきっとこの先に進まないといけないのだから」
 以前、曳航していったはぐれ飛空艇を借り受けて、『エイル』は『セラフィムV』と共に『龍の巣』、『凶鳥の嵐』とも呼ばれた空域に迫っている。
 どれだけの危険があろうと関係ない。
 自分たちが一箇所にとどまれば『オーデュボン』は襲ってくる。だから、長くとどまることは許されない。
 ならば、進むしかないのだ。

「きっと君が求めるものが、この先にあって……そして、それが皆のためになるのなら」
 少年『エイル』は決意する。
 きっと屍人帝国『オーデュボン』の脅威から浮遊大陸に生きる人々を守らねばならない。
 それが自分の存在意義であろうから。
 何の因果かはわからない。けれど、自分が『セラフィムV』と共にあることには意味があるはずだ。
 それを信じて、彼は危険渦巻く空域へと自ら足をすすめるのだった――。

●玄室に在るモノ
 そこは『龍の巣』と呼ばれ、『凶鳥の嵐』とも呼ばれた空域の中心。
 凶鳥たちに守られるようにして一つの浮島が存在している。そこにあったのは、一つの玄室であった。
 かつての何者かの遺骸を納めるはずの空間は、ただ広いだけではなく、湿っぽさも不衛生さの欠片もなかった。
 ぼわりと柔らかな光が満ちて、玄室の中は暖かささえ感じるものがあったことだろう。
「やはり『セラフィムV』は此処を目指すか。なるほどなるほど。やはり私の見立ては正しかった。あれはやはりただの兵器ではない。自律していることなど些細なことだ。起動した者が如何なる者であったとしても……」

 屍人帝国『オーデュボン』の『帝国魔道士』は玉座型浮遊装置に座し、己の推察が正しかったことを知る。
 この玄室には一つの宝物しかない。
 それは『人の意志を繋ぐ』と呼ばれる宝玉であった。いわば通信装置のようなものなのだろう。
 時間のロスなく、正しく人の意志を他者に伝える宝玉。
 それを何故『セラフィムV』が求めているのかはわからない。けれど、その宝玉が『オーデュボン』の求める『セラフィムV』を引き寄せる餌となるのならば話は別である。

「まるごと捕らえてしまえばいい。何、起動した者など私の魔術で如何様にも洗脳できよう。肝心なのはやはり『セラフィムV』よ」
『帝国魔道士』は玉座の上で笑う。
 あらゆる知識、あらゆる魔導を極めんとした己が、その一端に手を掛けている。
 もしかすると『オーデュボン』を統べる存在すらも出し抜けるのかもしれないと笑うのだ。
「全てが上手くいく。何せここは前人未到の『竜の巣』。例え辿り着けたとしても消耗しているだろうよ――」

●竜の巣
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件はブルーアルカディア。以前より何度か皆さんが接触している少年『エイル』さんと青い鎧の巨人『セラフィムV』が危険な空域である『竜の巣』――通称『凶鳥の嵐』と呼ばれる『空のダンジョン』とも呼ぶべき場所へと向かっているのです」
 そこまでは問題ではない。
 危険な空域では在るが、彼等が踏破できないわけではない。

 ならば、何が問題なのか。
「はい。屍人帝国『オーデュボン』の『帝国魔道士』が目的である『凶鳥の嵐』の中心、その浮島に待ち構え『エイル』さんと『セラフィムV』を捕らえ、『オーデュボン』に連れ帰ろうとしている予知を私は見たのです」
 猟兵が介入しなければ、恐らくそのとおりになってしまうのだろう。
 彼等はすでにもう以前の事件で手に入れたはぐれ飛空艇でもって、『凶鳥の嵐』へと向かっている。

 転移でもって彼等に追いつき、共に『竜の巣』とも呼ばれる危険な空域を踏破し、『帝国魔道士』の魔の手から彼等を守らなければならない。
「少年『エイル』さんと『セラフィムV』の目的は、どうやら中心の浮島、その玄室に納められた宝玉であるようです。これを手に入れるために移動したようですが……」
 ナイアルテは、お宝が目的で彼等が行動するとは思えないようであった。
 彼等はたしかに屍人帝国『オーデュボン』に追われていた。
 逃げるだけなら宝玉が必要であるようには思えないのだ。けれど、彼等が旅立ったことは止められない。
 ならばこそ、彼等を助けることこそが屍人帝国の企みを阻止する一歩になるだろう。

「どうかお願いいたします。道中は危険極まりない空のダンジョンの如き場所。そして、『帝国魔道士』の放ったオブリビオンも存在する空域へと成り果てております」
 これを打倒し、少年『エイル』と『セラフィムV』を助ける。それが今回の事件の為すべきことだ。
 ナイアルテは、嫌な予感に胸をざわめかせながら、猟兵たちを送り出すのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 大空の世界、ブルーアルカディアにおいて危険な空域『竜の巣』、『凶鳥の嵐』とも呼ばれる場所に赴き、屍人帝国『オーデュボン』に狙われる少年『エイル』と『セラフィムV』を助け、彼等の手に宝玉をもたらすためのシナリオになっています。

●第一章
 冒険です。
『竜の巣』とも呼ばれる危険な空域です。『凶鳥の嵐』とも呼ばれ、そこには侵入する者を拒むように凶暴な鳥が飛び交い、己の身体を弾丸のように突撃させ、飛空艇に甚大な被害を与えようとしてきます。
 これらを共にかいくぐり、障害を取り除くなどして突破しましょう。

●第二章
 集団戦です。
 凶鳥の障害を突破した皆さんに襲いかかるのは屍人帝国『オーデュボン』が放った大量のオブリビオンの群れです。
『寄生竜』と呼ばれる小型の竜ですが、(竜種の中では)比較的倒しやすいオブリビオンとして勇士の間では素材などが、それなりの値段で取引されています。
 これを撃破しつつ、空域の中心たる浮島へと向かいましょう。
『セラフィムV』と『エイル』は共に戦ってくれます。皆さんが守らねばならないような事態にはならいでしょう。

●第三章
 ボス戦です。
 玉座型浮遊装置と一体化した『帝国魔道士』との戦いになります。
 浮島の中にある玄室は広く、5mほどの大きさを持つ『セラフィムV』も余裕で入れるほどの空間となっています。
 中は暗くはなく、間接照明のような明るさでもって満たされています。
 この玄室にある宝玉を手に入れるためには、屍人帝国『オーデュボン』の刺客である『帝国魔道士』を打倒しなければなりません。

『帝国魔道士』は如何なる理由からか『セラフィムV』と『エイル』を優先的に狙ってくる可能性があります。
 その目論見を打破するために、言うまでもなく強敵である彼を倒しましょう。

 それでは、ブルーアルカディアにおける一人の少年と一体の巨人をめぐる皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 冒険 『凶鳥乱舞』

POW   :    武器を取り、鳥の群れを追い散らす

SPD   :    攻撃を掻い潜りながら全速力で駆け抜ける

WIZ   :    餌や道具を使い、鳥の群れを大人しくさせる

イラスト:del

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 以前、猟兵達の手によってオブリビオンの罠として使われていたはぐれ飛空艇を貰い受けた少年『エイル』は青い鎧の巨人『セラフィムV』と共に、危険渦巻く空域『竜の巣』――『凶鳥の嵐』と呼ばれる危険な空へと進む。
「坊主! もう『凶鳥の嵐』の中だ! あの鳥野郎共が突っ込んでくるぞ!」
 飛空艇を操縦してくれる勇士たちが叫ぶ。
 今、少年『エイル』は飛空艇の進路を決めなければならない立場に居た。
 進むのか、退くのか。
 けれど、彼は迷っていた。確かに甲板上に立つ青い鎧の巨人『セラフィムV』の装甲であれば『凶鳥の嵐』の中を飛び交う弾丸の如き凶暴な鳥たちなど意に介さないだろう。
「だけど、飛空艇が、みんなが……!」
 
 そう、飛空艇事態が保たなくなってしまう。
 この空域を縄張りとする凶暴な鳥たちが嘴を鏃のようにして飛空艇に突っ込んでくる。その一撃はたやすく甲板を貫くだろう。回避も限界まで来ている。このままでは、重要な箇所に激突されて飛空艇の操作すらおぼつかなくなってしまう。
 彼は考える。自分ならどうするかなんて考え尽くした。進むしかない。わかっている。でも、他人の生命を危険に晒すことが憚られる。
 飛空艇を操縦してくれる勇士たち。
 彼等は皆荒くれ者のようだったけれど、優しかったのだ。
 あの人達を死なせたくない。けれど、自分ではどうしようもないところまで彼は、決断を先送りにしていたのだ。

「僕なら……いや、『あの人達』なら、どうする……!」
 諦めるわけがない。一つの生命も諦めることはしないだろう。
 いつだって自分を助けてくれた『あの人達』――猟兵達の姿を思い出し、少年『エイル』は決断するのだ。
 どんな困難があろうとも、いつだって正しいのは、厳しく険しい道なのだと――。
鈴久名・紡
進むと決めたなら迷うな、エイル

むすびとリアンシィは飛空艇を操舵している勇士を中心に
艇内の勇士達に被害が出ないようにフォローを

エイルの心配も後悔も少ない方が良いからな
俺は突撃してくるあれを退けてくる

竜神飛翔を使用
竜神形態で全ての敵に電撃を先制攻撃で喰らわせる
ダメージや効果が弱くとも、一瞬でも速度を落とせれば良い
俺をまず排除しようと動いてくれればいい

禮火は槍に、葬焔は鞭に形状変化させて敵に放つ
槍には氷の属性攻撃を、鞭には斬撃波を乗せて
そして、どちらにも部位破壊を乗せていく

翼を奪ってしまえば弾丸のようになるまいよ

敵の攻撃は空中機動で回避
回避不能時はオーラ防御で防いで
以降は生命力吸収を攻撃に乗せて対処



 いつだってそうだけれど、正しいのはいつだって厳しく険しい道である。
 けれど、それを選ぶことができる者は少ない。
 誰だって楽な道がいい。傷つかなくていいのならば、傷つかないほうがいいはずなのだ。けれど、得てして何かを為すためには傷を負わねばならぬ時のほうが多い。
 それは人に迷いを生むことだろう。
 自分の傷には頓着せずとも、他者の傷に敏感になる少年『エイル』にとっては、躊躇いへと変わるものであった。

 飛び交う凶鳥。
 凶暴な鳥たちが飛空艇に突撃してくる。その鋭い嘴は鏃のように飛空艇の船体に穴を開けるだろう。
「――……! 来る……!」
 少年『エイル』は未だ迷っていた。
 けれど、それを振り払うように鈴久名・紡(境界・f27962)は転移した直後、飛空艇の甲板上に立ち、彼に言うのだ。
「進むと決めたのなら迷うな、『エイル』」
 紡の言葉に少年『エイル』が目を見張る。自分の迷いを見透かしたかのような言葉。
 それに彼は頷く。

「『むすび』、『リアンシィ』!」
 紡の声に二匹の幻獣が飛空艇を護るように飛び出す。あの二匹ならば凶暴な鳥たちから飛空艇を操作する勇士たちを守ってくれるだろう。
 少年『エイル』を迷わせているのは、勇士たちだ。ならば、その心配事を減らすこともまた紡にとっては、やらねばならぬことであった。
「俺は突撃してくるあれらを退ける。進め、『エイル』」
 彼が信じた道があるのならば、その道に妨げとなる障害を廃するのが己のやるべきことだと紡は思った。

 輝くユーベルコードは瞳に灯火を。
 光の中より現れるのは、完全竜体へと姿を変えた紡であった。竜神飛翔の如く空を駆け抜ける姿に、迷いはなかった。
 一直線に『凶鳥の嵐』と呼ばれる空気を駆け抜けていく。
 凄まじい風が遅い来るが、空を統べる竜にとって、その風はむしろ微風であったことだろう。
 共に在る雷撃が降りしきる中、次々と凶暴な鳥たちが撃ち落とされていく。
 さらに槍と鞭の形に変化した神器でもって、衝撃波を放ち、迫る凶鳥たちを薙ぎ払っていく。
「翼を奪ってしまえば弾丸のようにはなるまいよ」

 雷撃が降りしきる中、紡が天高く飛翔していく。
 どれだけ凶暴な鳥たちが追いすがろうとも、彼の総くどに追いつくことは出来ない。
 翻る巨躯が天より、『凶鳥の嵐』、その空気を睥睨する。
 見下ろす先にあるのは飛空艇を取り囲む鳥たち。
「お前達はただ縄張りを主張したいだけなのかもしれないが……悪いな」
 少年『エイル』が進もうとしている先が、だれかの為に何かをなそうとしていることであるのならば、その道を行かせてやりたいと彼は思ったのだ。

 幼い少年が誰かを思いやる心は純粋なものであったことだろう。
 青い鎧の巨人『セラフィムV』がいたとしても、それでも険しいと思えるだけの道に足を踏み入れたのだ。
 ならば、それを護るために戦うことは誇らしいことだろう。
 道先案内人を気取るわけではないけれど、それでも紡は竜体となった瞳で見据えるのだ。
 未だ道は遠く。
 されど、その先に待つ光はきっと正しいものであると、彼は知るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

髪塚・鍬丸
道は見えてきたみたいだな。
だったらその道、俺達が切り拓いてやる。お前さんは真っ直ぐ行く先を見据えてな。

「天狗火」で【空中浮遊】し鳥の迎撃に向かう。
「忍鎧·天戎」のスラスター噴射を併用した高速の【空中機動】で【空中戦】。
重要なのは鳥どもを倒す事じゃなく、船体に攻撃させない事。【飯綱の術】で「八法手裏剣」を無数に複製、操作する。
仕込んだ鋼糸を伸ばし、手裏剣同士を連結させて鋼の網を紡ぎ【罠使い】【捕縛】。鳥の突進を受け止め、翼をからめとって飛行能力を奪い墜落させていく。
敵を墜とした後の手裏剣は消滅させて回収し、次々に網を放って船を守ろう。
目的の目処が付いたならひたすら進むのみ、だ。邪魔はさせないぜ。



「……ッ! 僕はこんなにも無力なのに……!」
 少年『エイル』は己の選択が過ちであったのかもしれないと思った。
 心の何処かで猟兵たちがまた助けてくれるのではないかと期待していたのだ。現実に猟兵達は彼の窮地を救うために転移してきている。
 けれど、それは正しくない決断をした結果であろうと彼は思っていた。
 思う道を突き進む。
 けれど、いつも進む道が正しいとは限らない。
 今がそれであった。

「なんで、皆こんなに……優しいんだ……!」
「それはお前の道が見えてきたからだ」
 転移してきた髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)がすれ違いざまに少年『エイル』の肩を軽く叩いて空へと飛ぶ。
 彼の両肩についた忍具が赤い炎のような翼を展開し、飛空艇を先導するように飛ぶ。

「だったらその道、俺達が切り開いてやる。お前さんは真っ直ぐ先を見据えてな」
 鍬丸にとって、少年『エイル』の葛藤は尤もであろうと思えただろう。
 自分の決断に責任を持つ。
 幼き少年の身の上でありながら、彼等は己の決断の責任を今まさに負わんとしていた。
 それは誰にでもできることではない。
 間違いは正せばいい。何度でもやり直せる。
「それでも、その先が間違いであったのなら……!」
「なら、その時は取り返せばいいのさ。後戻りしたっていい。生きてこそいれば、拓ける道だってあるだろうさ」
 それは己の活きてきた道でもある。

 何かに活かされ、何かのためにと戦う己であるからこそ、今此処に居る。
 空を舞うようにして鍬丸は迫る『凶鳥の嵐』を縄張りにする凶暴な鳥たちの群れを前に高速の空中軌道でもって空中戦を繰り広げるのだ。
「重要なのは、お前さんが何を為すかだ。だれかのことを思えるのならば、お前さんは君主として持つべきものを持っている。ならば、迷わず進め。障害は全部俺たちが取り除く」
 手にした八法手裏剣が飯綱の術(イヅナノジュツ)によって無数に複製され、鍬丸の周囲に浮かぶ。

「霊……宿……動!」
 印を結んだ瞬間、念動力によって八法手裏剣が空に舞う。
 しかし、それだけではない。仕込んだ鋼糸によって手裏剣同士を連結させ、鋼の網のように凶暴な鳥たちを阻むどころか、受け止め、漏らさず翼を絡め取るようにして一網打尽にしてしまうのだ。
「天網恢恢疎にして漏らさず、とは言うが……!」
 そう、別に全ての鳥を撃ち落とさなくてもいいのだ。
 飛行能力を奪い、失墜させればいい。

 雲海に落ちていく凶鳥たちを見やり、鍬丸は手元に戻る手裏剣を再び放つ。
 ここは『竜の巣』、『凶鳥の嵐』とも呼ばれる危険な空域だ。まだまだ己達の縄張りだと言うように凶鳥たちが迫りくる。
 幾ら振り払っても足りないくらいである。
「目的の目処が付いたなら、ひたすら進むのみ、だ。邪魔はさせないぜ」
 そう、男子が己の道を見つけたのだ。
 ならば、先を征く者として、鍬丸はせめて障害を取り除こう。

 オブリビオンが関与しているのならばなおさらのことだ。
 少年『エイル』の心は尊ぶべきものである。鍬丸自身もそう思うものであったことだろう。
 いつの日にか、彼が成長した時には己の決断が正しかったと思うことだろう。
 彼を助け、彼の道行きを見守りたいと思った己の心の正しさを知るはずだ。
 そう確信させるだけの何かが彼にはあるのだろう。
「だから、征け。後ろも、周りも気にしなくていい。誰かのためにと願うお前さんの心はきっと正しいのだから」
 鍬丸は忍具でもって自在に空を駆け抜けながら、迫る凶鳥の群れを薙ぎ払い、少年『エイル』の道を切り開くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
(いつの間にか飛空艇に転移してきてエイル君に挨拶)
よお、元気にしてたかい?
どうやら目的が定まったみたいだな。
それじゃあ、しばらくご一緒するかね。
まずは――あの鳥どもを片付けるか。

飛空艇甲板に立ち、『闇黒炎雷』を発動。
戦場空域全体に漆黒の炎と雷の嵐を吹き荒ばせます。
それは敵のみを焼き焦がせ消滅させ、一瞬では絶命しなかったものも行動不能の状態異常の為に落下して雲海に消えるでしょう。

まあ、こんなところか。エイル君は次は何が現れると思う?



 誰かのためにと願う者は幸いである。
 けれど、それを無理に維持してはならないことは言うまでもない。
 誰かのためにと願う心は尊いものであるけれど、必ず破綻が訪れる。その時生まれるのは嘘という棘である。
 その棘は鋭く他者を傷つける。
 誰かのためにと願った、その誰かをこそ傷つける棘となるのだ。
「僕はもう誰にも傷ついて欲しいとは思えない。誰も彼もが生きるのに必死なのに……これ以上、『オーデュボン』が人の生活を乱すことが許せない」

 少年『エイル』の言葉は真なるものであったことだろう。
 けれど、それは現状では無理なことであった。屍人帝国『オーデュボン』は『セラフィムV』をおって、戦場を広げていく。
 そのたびに誰かが傷つくのだ。
 それがどうしても嫌だったからこそ少年『エイル』は進むことを決めたのだ。
「よお、元気にしてたかい?」
 進むたびに誰かが傷つくことを厭う『エイル』の肩を叩き、いつの間にか飛空艇に転移してきたアレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)が笑っていた。

「どうしてそんなに軽く笑っていられるんです。何もなんでもないみたいに」
 彼の言葉にアレクサンドルは笑う。
 確かにアレクサンドルは笑っている。それはなぜか。簡単なことなのだ。なんでもないように彼は言う。
「簡単なことさ。『エイル』、お前の目的が定まったからさ」
「そんな、簡単なことで……! 僕の決断一つで誰かが傷つくかもしれない」
「けれど、進まないとならんのだろう? ならとどまるよりも前に進むと決めた自分を信じるんだ――まずは、あの鳥どもを片付けてからでも遅くはないだろう」

 アレクサンドルが飛空艇の甲板上に立つ。
 輝く瞳は、闇黒炎雷(クロイホノオトイカズチ)のユーベルコードにきらめいていた。
 掲げた掌から黒い炎と雷が迸る。
 それは『竜の巣』、『凶鳥の嵐』と呼ばれた空域全体に放たれ、消えぬ炎でもって凶鳥たちを焼滅していく。
 例え、一撃で絶命を免れたとしても、黒い雷が体に絡みつき羽ばたく翼を動かせずに雲海に失墜していくことだろう。

「まあ、こんなところか」
「信じた先で誰かが傷ついてしまったのなら、どうすればいいんです。僕は、だれかの傷を癒すことなんてできやしないというのに」
 あなた達のようにはできないのだと少年『エイル』の伏せた顔をアレクサンドルは見ただろう。
 自信がないのだろう。
 どれだけ卓越した天賦の才能を持っていたとしても、未だ心と体は十代に満たぬ少年のままだ。
 だからこそ、アレクサンドルは頭を振る。

「だれかの傷を癒すことなんて誰でも出来るわけじゃあない。自分でしなければならないものだろう。まだ戦いは終わらない。誰かが傷つくのが嫌だというのなら、自分が前に一歩でなければならない」
 アレクサンドルの瞳はユーベルコードに輝いていた。
 黒い炎と雷が迸り、飛空艇の進路を塞ぐ凶鳥たちを次々と打ち払っていく。凄まじい力であったことだろう。

 それに憧れこそあれど、畏怖のない瞳がアレクサンドルを見上げていた。
「『エイル』君は、次は何が現れると思う?」
 それは凶鳥の後に来る存在であろうか。それとも傷ついても進んだ先にあるものであろうか。
 どちらにせよ、『エイル』少年は頷く。

 自分で決めたことだ。
 猟兵たちが背中を押し、守り、そしてその先を共に見ようとしてくれている。
 だからこそ、もはや後戻りできぬ未来がそこにあるのを彼は感じ、その瞳に惑いと迷いを拭い去った輝きで持って、『凶鳥の嵐』の中心部を見据えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イングリット・ジルニトラ
【心境】
「うむ。ホレたゾその心意気。」
ならばその意思を貫く邪魔者は私達が撃破して見せようではないか。
すゝめその先に。私達が見届けてやる。

【行動】
判定:POW

ガレオンチェンジで飛空艇モードになり、鳥の群れを追い散らしてやろう。
これ以上あの子達の邪魔はさせないぞ。
鳥の群へ船体を向け、群れの中に突入し注意を私に向けよう。
うむ、十分引きつけたな。なら進路変更。こっちにくるがいい。
(使用技能:空中戦、空中機動、ダンス、残像)

よし、少年たちの船からは十分の距離をとった。なら反撃開始だ。
艦載砲全砲門開け。うてぇー。
(使用技能:呪殺弾、砲撃、威嚇射撃)

【その他】
連携やアドリブはOKです。



 少年『エイル』は決断した。
 前に進むと。自分がどれだけ傷つくことがあったのだとしても、己の背後にある者たちを傷つけはさせないと、その純然たる決意と共に瞳を輝かせ、青い鎧の巨人『セラフィムV』と共に『竜の巣』、『凶鳥の嵐』と呼ばれる空域を進む。
「前に進まないと何もつかめないというのなら、僕は傷ついても前に進む。みんなのためになるのなら、ためらってなどいられないのだから。一歩でも竦めば、それだけで、誰かが傷つく可能性が生まれる」
 己ではなく、誰かが傷つくことを厭う少年『エイル』の言葉に青い鎧の巨人『セラフィムV』の瞳が優しげな輝きを放つ。

 それと同時に飛空艇の横に、幽霊船の如き飛空艇が並び、飛ぶ。
「うむ。ホレたゾその心意気」
 イングリット・ジルニトラ(ガレオノイドの翔剣士・f33961)は、ガレオンチェンジによりジルニトラ級陸番艦イングリットへと変身し、凶鳥の群れを追い散らしながら、空を飛ぶ。
 彼女の姿は、まさに嘗ての大空を自由に飛ぶ姿そのものであったことだろう。
 如何に『竜の巣』と呼ばれる危険な空域であったとしても、過去の戦いに比べれば可愛いものである。

 迫る凶暴な鳥たちが弾丸のようにイングリットの船体、その装甲を突き破らんとする。
 されど、イングリットはうろたえることはなかった。
 むしろ自分に鳥たちの注意がひきつけられているのならば好都合であるとさえ言えただろう。
「これ以上、あの子達の邪魔はさせないぞ」
 彼女は十分に鳥たちの注意をひきつけ、進路を変える。
 これながら『エイル』たちが乗る飛空艇に迫る鳥たちの猛攻を肩代わりすることができるだろう。

「そんな! 敵の注意を引きつけるだなんて!」
 無謀だと『エイル』が叫ぶ。
 けれど、イングリットは構うこと無く笑うのだ。そう、些細なことだ。己が望み、鳥たちの注意をひきつけたのだから。
「うむ、こっちに来るがいい。少年よ、君は知るといい。自分以外の誰もが傷ついたとしても、全ての痛みを肩代わりすることなどできない。人間の手は二本しかない。そして、届かぬものは届かないのだ」
 けれど、とイングリットは己の船体に備えられた艦載砲の照準を迫る凶鳥の群れへと向ける。

 引きつける。十二分にひきつけ、艦載砲が火を噴く。
「艦載砲全門開け、うてぇ――!」
 艦載砲から装填された呪殺弾が炸裂し、凶鳥の群れを尽く討滅していく。
『エイル』たちの乗る飛空艇から距離を十分に取ったのは、この砲撃の巻き添えを食わせぬためだ。
 イングリットは一度は沈められた幽霊船であった。
 けれど、彼女は傷つきながらもブルーアルカディアの空に舞い上がった。何もかも喪っても、それでも飛び立つことができることを証明してみせたのだ。

 だからこそ、知る。
 少年『エイル』は理想ばかりであると。今は現実と理想に挟まれてしまってもがいているだけだ。
 けれど、その先にこそ得るものがあるのだと知る時が来る。
 ならばこそ、己が出来ることは一つ。
「君の道行きは私が保証しよう。失敗を恐れずに突き進め、そうすればきっとまた大空は君を迎えるだろうからな――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
『エイル』、自分自身の歩む道が定まったのなら、後は進むだけよ。
急ぐのかゆっくりでいいのかは分からないし、時には誰かと連れ立っていってもいい。
ただ、自分は正しいのか、その自問自答は忘れないように。

さて、まずは黒鴉召喚。飛空艇の全体像を見渡せるよう、配置する。

続けて、「式神使い」で『GPD-331迦利』を飛空艇上に顕現。「レーザー射撃」の「一斉発射」による「弾幕」で、上半分の防御を完璧にしてみせるわ。

飛空艇下面は、あたしが飛鉢法で飛び回って、直接防御。この程度の気流に吹き飛ばされるほどヤワじゃなくてね。
準備出来たら「結界術」「範囲攻撃」「仙術」「道術」で落魂陣展開。凶鳥たちの魂魄を消し飛ばす。



 失敗してもいいのだと猟兵達は言う。
 誰もが失敗はするものだと。けれど、失敗したのだとしても、どうやって立ち上がるかの方が重要であると言った。
 だから、何も心配しなくていいのだ。
 自分を助けるために多くの猟兵たちが転移してきている。
 そして、彼等は一様に優しかったのだ。
「『エイル』、自分自身の歩む道が定まったのなら、後は進むだけよ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、逆三角形の飛翔体である『GPD-331迦利』を飛空艇の直上へと顕現させながら、甲板上でユーベルコードを発現させる。

「急急如律令! 汝は我が目、我が耳なり!」
 黒鴉召喚(コクアショウカン)によってカラスに似た鳥形の式神を四方に配置し、『竜の巣』、『凶鳥の嵐』と呼ばれる空域の本当の恐ろしさである四方八方から襲い来る凶暴な鳥たちを感知させるのだ。
 少年『エイル』は頷く。
 彼にとって答えは得たのだろう。猟兵達の言葉は、心は、意志は、きっと彼に良い影響を与えているだろう。

 彼の瞳を見れば、ゆかりはそれを理解するのだ。
「急ぐのか、ゆっくりでいいのかはわからないし、時には誰かと連れ立っていってもいい」
「はい、あなた達が来てくれたように。一人で傷つかなくてもいいと言ってくれる人達がいるってこと、わかりましたから」
 彼の言葉にゆかりはうなずいて、鉄鉢に飛び乗る。
 ゆかりは、彼が間違えることはもう二度とないだろうと思った。未だ十代に満たぬ少年であれど、心は健やかであることが伺える。

 だからこそ、道行きの先に立つ自分が言えることは唯一つだ。
「ただ、自分は正しいのか。その自問自答は忘れないように」
 いつだって疑問は人生には尽きることはない。
 正しいと思っていたことが、明日には間違いになってしまうことだってある。
 尽きぬ自問自答の果てにこそ、悟りが在るのならば歩みを止めることと自問自答を止めることは在ってはならないのだ。

「わかっています――今日の僕が感じた苦しみも、葛藤も」
 少年『エイル』の言葉にゆかりは頷く。
 上空では『GPD-331迦利』がレーザーの一斉発射により弾幕を張り巡らせ、上空の防御を固める。
 凶暴な鳥と言えど、レーザー射撃にあっては防ぐ手立てもなく雲海に落ちていく。
 それを見やり、ゆかりは鉄鉢と共に飛翔する。
 あの様子では言うまでもなかったかも知れないとゆかりはお節介であったかもしれないと思った。

 けれど、それでいい。
 いつだってお節介なくらいがいいのだ。間違いも正しさも、自分が決めればいい。ただ、心に問いかけることを忘れてほしくない。
 ゆかりは、荒れ狂う気流の中を飛び、放つ仙術と道術でもって凶鳥たちの魂魄を消し飛ばし、ブルーアルカディアの空を飛ぶ。
 数多の世界を見てきた。
 いつだって人は己が正しいと思う。オブリビオンだって同じだ。
 自分だけが正しい存在であると思いこむ。

 だからこそ、他者を傷つける。
 己以外の何者かを否定する。けれど、少年『エイル』は違うだろう。自問自答の果てに誰かのためを願うことができる彼。
 その道行きを阻むものを尽く撃ち落とし、鉄鉢に乗ったゆかりは、飛空艇の進路を切り開くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第三『侵す者』盾&まとめ役武士
一人称:わし 質実剛健古風
武器:灰遠雷

守る役目はわしだからのう。
少年よ、迷うことなくいけ。わしらは、その背を押し守るためにおるのだから。

さて、鳥は撃ち落とすに限る。【四天境地・雷】にて射抜こうぞ。
雷属性攻撃も乗っとるから、動きは止まろう。それはここでは命取りだの?
しかも、陰海月と霹靂も張り切っておるし…。とくに陰海月は懐いておるからの…。


陰海月、空中浮遊しつつ触手パンチ。ぷきゅ!
霹靂、周りを飛んで体当たりで蹴散らす。クエッ!
二匹は友だち。



 少年『エイル』の瞳に迷いがもうないのと同じ様に青い鎧の巨人『セラフィムV』の瞳は優しさが灯っていた。
 起動した者の性質によって、その本質を変容させるという青い鎧の巨人『セラフィムV』は正しき者によって起動されられたのだと確信を馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)――四柱の悪霊たちは確信した。
 誰かを傷つけまいとする思いは、きっといつの日にか誰かを守ろうとする思いに昇華するだろう。

 その時、天賦の才能を持つ彼が己達の手の届かぬ者たちを守ってくれるであろうことを『侵す者』は理解したのだ。
 だからこそ、彼は言う。
「守る役目はわしだからのう。少年よ、迷うこと無くいけ。わしらは、その背を押し守るためにおるのだから」
「やってみせます。いつだって心には疑問はあるけれど。正しさとは何か。間違っているのは何か。どうすればいいのか」
 その言葉に『侵す者』は頷く。

 そこに信念が宿っているように思えたのだ。
 幼き十代に満たぬ少年であったとしても、それらの信念はきっと猟兵達とのふれあいや出会いによってもたらされたものであろう。
 ゆえに、己達の戦いが決して無駄ではないことを知る。
「よかろう。ならばこそ、わしの武もまた振るう甲斐があろうと言うもの」
 手にした強弓が雷の力を湛え、引き絞られる。
 呪詛を籠めることによって漆黒へと色を変える強弓から放たれる雷の矢は、放たれた瞬間、分裂し、迫る凶鳥たちへと迫る。

 空を自由に飛ぶ凶鳥であれど、分裂し追尾する四天境地・雷(シテンキョウチ・カミナリ)の一撃は躱すことはできない。
 悪霊からは逃げられないのと同じ様に。
 そして、影からは『陰海月』が飛び出し、触腕での一撃を飛空艇に迫る凶鳥を叩き落とす。
「ありがとう! でも、無理はしないでね!」
 そんなふうに『エイル』に呼びかけられて、ますます『陰海月』は奮起するように戦う。

 さらに『霹靂』も飛空艇を護るように周囲を飛び、体当たりで凶鳥たちを蹴散らす。
 二匹のコンビネーションは見事なものであり、『侵す者』は彼等の張り切りように笑う。
「とくに『陰海月』は懐いておるからの……わしも負けてはおられぬな」
 引き絞る強弓から雷の矢が放たれ、一射で百を撃ち落とさんばかりの勢いで大空を雷の矢が疾走る。
「ぷきゅ!」
「クエッ!」
 二匹が鳴き声を上げ、『侵す者』の戦果を知らしめる。

 少年『エイル』は知るだろう。
 どれだけ自分が一人であると思っても、彼には共に戦ってくれる存在がいることを。絶えず、己の周りには人が集まってくることを。
 それを今までは喜ぶことはできなかったのだ。
 人を集めるということは、それだけ己の周りで誰かが傷つくことであったから。けれど、共に戦う猟兵達は違う。
 彼等は自分の背中を押してくれる。
「――なら、背中を押されるに値する人間にならないと!」

 そう、誰かのためにこそ戦える者にこそ力が宿るというのであれば、少年はいつの日にか英雄になるだろう。
『侵す者』は己と同じ武の天才たる片鱗を見せ始めた少年『エイル』の背中を見やり、いつの日にか己達の腕の内から飛び立つ日を幻視するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
飛空艇の甲板に立ち凶鳥の群れを見ながら
「これだけの危険がありながら退かないのなら
相応の理由があるんだろう。
なら、俺から言う事は何もないさ。」
その場にいる船員或いはエイルに
「まあ、俺が少しは数を減らしてくる。
だから操船は確り頼むよ。
戻る船がないと流石に困るからね。」
状況が分っているなら態々緊張感を煽る必要もないだろうと
散歩にでも行く位の口調で。

ALL OUTを発動して飛び立ち。
雷属性術の雷撃で凶鳥を攻撃しつつ
同属性の盾を具現化。
飛空艇と自身の周囲に配置し防衛と雷の盾での接触攻撃を行う。
その雷では通常の攻撃と同時に感電による【マヒ攻撃】の
特性も付与し感電した敵を墜落させて戦力を削ぐ。



 ブルーアルカディアは大空の世界である。
 浮遊大陸だけが人々の生活の基盤であり、生存圏である。ならば、それ以外の生物は、必然空飛ぶものばかりになるであろう。
 翼を持つ凶鳥もまたその一つである。
 危険な空域である『龍の巣』の一つ、『凶鳥の嵐』。そこは凶暴な鳥たちが縄張りとし、己達の生存圏を脅かす者に対しては一切の容赦なく、己の嘴を鏃に、肉体を弾丸として排除せんと迫る。

 その『凶鳥の嵐』の中を進む一つの飛空艇の甲板上にフォルク・リア(黄泉への導・f05375)は立ち、空を見上げる。
 凶鳥の乱舞の如き光景。
 凄まじい速度で持って迫りくる凶鳥たちは、一切の言葉を解さぬまでも、その強烈なる縄張り意識を感じさせるには十分であった。
「これだけの危険がありながら退かないのなら相応の理由があるんだろう」
 フォルクは飛空艇の置かれた現状を正しく認識しながら、彼等がこの空域から離脱すること無く進むことを決心したことに頷く。

「何が待ち受けているかわからないけれど、それでも前に進まなければ得られないものがあるのなら。傷つく人は全部僕が守ります」
 少年『エイル』の言葉にフォルクは視線を向ける。
 青い鎧の巨人『セラフィムV』と共に甲板上に立ち、迫りくる凶鳥を振り払う彼の瞳にフォルクは何を感じただろう。
「なら、俺から言うことは何もないさ」
 けれども、敵の数は多すぎる。

 誰もこの空域に近づきたがらないのも頷けるものであった。
「ま、あ俺が少し数を減らしてくる。だから操船は確り頼むよ。戻る船がないと流石に困るからね」
 煽るわけではない。
 だからこそ、フォルクの言葉は軽やかで甲板上を進む足もそうであった。まるでそこらに散歩をしにいくような、そんな雰囲気さえあったのだ。
「この飛空艇は僕が守ります。あなたが戻ってくる船も。必ず。だから」
「ああ、任せておけ」
 フォルクの瞳がユーベルコードに輝く。

 霊力を覚醒させた姿へと変じたフォルクの身体が冥府の気を纏った黒翼を顕現させ飛翔する。
 ALL OUT(オールアウト)とも言うべき、己の体に宿った魔性を全て解き放ち、己の力と為すユーベルコードに寄って雷を手繰る。
 放たれる雷撃は盾のように具現化され、飛空艇の周囲に防衛として残し、フォルク自身も盾を構えて俺の自身を弾丸と化して飛ぶ。
「君たちのお株を奪うようではあるが」
 凶鳥たちがそうであったように己自身を弾丸として飛ぶフォルクの速度は、彼等を遥かに凌ぐものであった。

 回避も防御も間に合わない。
 例え防御できたとしても、その雷で形成された盾に触れてしまえば、感電による麻痺が舞っている。
 この大空の世界ブルーアルカディアにおいて、羽ばたくことをやめるということは、即ち雲海への失墜を意味する。
 同時にそれは生物としての死だ。
 縦横無尽に空を駆け抜ける黒翼は、雷と共に凶鳥たちを振り払い、飛空艇の進路をクリアなものにしていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うーむなんてこった…
焼き鳥の材料が向こうから飛んでくる…
惜しむらくは捕獲する暇も、屋台を出しても買うような一般ピーポーが居ない所…
残念…


転移で飛空艇にお邪魔します…と
魔獣でもなく、凶暴なだけの鳥であるなら羽を焼いてあげればそれでおしまい!
【断章・必滅ノ焔】起動
飛空艇を中心に鳥に対して蒼炎を放出
所謂あれだね、STGのボム的なあれ…
ギリギリまで近付けて…最大スコアが取れるようにドーン!と『吹き飛ばし』て特に念入りに羽を『焼却』して『部位破壊』!
それでも此方に寄ってくる鳥が居るなら、『オーラ防御』でシールドを発生させぶつかって貰おう

ああ…焼き鳥が落ちて行く…
網か何か無い?
ちょっと腹ごしらえしようよ



『凶鳥の嵐』――それは『竜の巣』と呼ばれるブルーアルカディアにおいても危険な空域である。
 そのような場所が数多あることは知られているが、この『凶鳥の嵐』は、この空域を縄張りとする凶暴な鳥たちによって守られていた。
 近づく飛空艇に鋭い嘴を鏃として肉体を弾丸に変えて突撃してくる彼等は、飛空艇の装甲であろうとたやすく突き破り、重要な機関にさえ、打撃を与えて雲海に沈めるのだ。
「うーむなんてこった……」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、飛空艇の甲板上で襲い来る凶鳥たちを見上げ、腕を組んで唸っていた。
 さすがの彼女のこの状況はまずいと思ったのだろう。

 敵の数は無尽蔵。
 飛空艇に搭載された艦載砲であっても弾幕を張り続けることは不可能であり、けれど凶鳥たちはそんなこちらの都合などお構いなしに突撃してくる。
 じりじりと飛空艇は消耗していき、ついには雲海に沈むことだろう。
 そんな現状を玲は理解していたのだろう。
「――焼き鳥の材料が向こうから飛んでくる……惜しむらくは捕獲する暇も、屋台を出して買うような一般ピーポーが居ないところ……」
 違った。
 全然違った。むしろこっちが恥ずかしくなるくらいであった。玲さんの商機逃さぬ慧眼は、この程度ではまったく揺らぐことはなかったのである。

「残念……」
 本当に残念そうに玲は瞳を伏せた。
 ちょこっとテンションというかやる気というか、そういうのが下がった気がしないでもない。コンディション、ローテンションというやつであろうか。いや、まあ、それでもしっかり仕事をしてくれるところが猟兵のすごいところである。
「偽書・焔神起動。断章・必滅ノ焔の閲覧を許可。広域殲滅開始」
 ちょっとおざなりな詠唱な気がしないでもないが、字面であればわかるまい。

 彼女の抜き払った模造神器から蒼炎が放たれ、飛空艇を中心にして放出される。
「断章・必滅ノ焔(フラグメント・バニシングフレア)、まあ、所謂あれだね、シューティングゲームのボム的なあれ……」
 ただし、回数制限なし。
 あれ、とんどバランス崩壊ゲームではないだろうか。
 放たれた蒼炎が飛空艇に迫る凶鳥たちの羽根を焼き、失墜させていく。本格炭火焼きならぬ蒼炎焼き。

 はっ。
 もしかして、これで一山当てることが可能であったのではないだろうかと玲はひらめく。
 炭火焼きなど今日び珍しくもない。
 そこで模造神器より放たれる蒼炎である。物珍しさと火力の高い炎により一気に焼き上げた鶏肉は、きっと香ばしいだろう。
「ああ……焼き鳥が落ちていく……」
 さっきまでシューティングゲームのハイスコア狙っちゃうぜ! とかなんとか意気込んでいた彼女とは思えぬほどに意気消沈した顔。
 あの焼鳥を売れば、どれだけ稼げたであろうか。
 本当に惜しい。

 何か網のようなもので捕獲できないだろうか? 玲は諦めずに船員に聞いてみるが、帰ってきた言葉は彼女の方をがっくりと落とさせるものであった。
「ああ、ダメダメ。あれは食えるところないんだよ。利用できるのは嘴と爪、骨くらいなものだから……」
 そうなの?  と玲は腹拵えしておきたかったお腹を擦る。それを見かねた少年『エイル』がよかったら、と保存食を差し出してくれる。

 その優しさが五臓六腑に染み渡ったかどうかはわからない。
 けれど、焼き焦げ、堕ちていく凶鳥たちを見やり、玲は焼き鳥は塩だれにするか、甘タレにするかに思いを馳せるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【勇者パーティ】

勇気を与え、護るのが勇者のお仕事!
みなさんのことはわたしが護ります!
【ベッソン】で【協奏曲第1番】を演奏して、みなさまを護りつつ、
凶鳥をこちらに寄せ付けないようにしますよ!

急にどうした感満載ですけど、ステラさんの目が怖いんですよ!

あいかわらず『隙のない護衛』をしていて、
こちらに鳥を来させたら許しませんオーラがすごいんですよ。
ステラさん、『エイル』さん絡むと、目の色違いすぎないですか!?

いえいえ、ステラさんも連れ帰っちゃダメですからね?
それもう護衛じゃないと思い……ナンデモナイデス。

あ、はい!
演奏続けます!

師匠、さすがにあれは美味しくなさそうですが……。
いちおう焼いてみます?


フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「ふむ……
どうやら青きゴーレムは、己の力に覚醒しつつあるようだな……」

巨人の体内の天使核……それが熱を発していることを我は見抜き叫ぶのだ。

「そう、その青き装甲を熱くさせる天使核!
ついにお前にも、鉄板としての自覚が出てきたようだな!」

これで鳥を撃ち落として焼き鳥を作る準備も万端よな!
さあ、我の操る【死霊船団】よ!
そして我が従者たるアンデッドたちよ!
襲いくる鳥たちを撃ち落として食材ゲットといこうではないか!

「あっ、こら、ルクスよ、我の鳥を追い払うでない!
え、ステラが怖い?
……うむ、確かに」

ステラは放置しておこう。
あの様子なら、ステラには焼き鳥わけなくてよさそうだしな!


ステラ・タタリクス
【勇者パーティー】
どうして…どうして私ではなかったのですかエイル様!!(嘆き
言ってくだされば、いつでも私がエイル様の飛空艇になりますのに!!
そしてどこまでも飛びましょうエイル様を乗せて…
そうなると私、エイル様に踏まれますね?
…………いえ、ちょっと目覚めかけた何かは押さえまして
隙(物理)の無い護衛に戻りますね(だきゅ

大丈夫です守りは私にお任せください
アクティブ防御はあちらの勇者と魔女がやりますので本当にご安心を
ルクス様、フィア様、何か?(鋭い眼光

しかし数が多いですね
エイル様の行く手を阻む者を許すわけにはいきません
【エールプティオー・プルウィア】発射!

さ、エイル様
終わったら何をします?(だきゅきゅ



 危険な空域『竜の巣』、『凶鳥の嵐』とも呼ばれる空に凶鳥たちが舞い飛ぶ。
 己達の縄張りを侵す者たちに容赦などしないというように少年『エイル』と青い鎧の巨人『セラフィムV』の乗る飛空艇へと襲いかかる。
 しかし、猟兵たちが転移し、その道を切り開くことによって飛空艇への損害は軽微であった。
「これなら……!」
 少年『エイル』は猟兵達の助けによって開かれた道の先を見やる。
 この空域の中心。
 目指すは、その浮島である。そこに『セラフィムV』の求めるものがあるのだ。
「ふむ……どうやら青いゴーレムは、己の力に覚醒しつつあるようだな……」
『セラフィムV』の胸に納められた動力となる天使核、それが熱を発しているのをフィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は見抜いていた。

 力が溢れ、その増幅された力を持って何かをなそうとしている。フィアの魔女としての慧眼はそれを見抜いていたのだ。
 しかし、悲しいかな。
 フィアは、その熱を別のものに利用できると考えていたし、終始、『セラフィムV 』を兵器ではなく――。
「そう、その青き装甲を熱くさせる天使核! ついにお前にも鉄板としての自覚が出てきたようだな!」
 鉄板としてしか見ていなかった。
 ブルーアルカディアにやってきてからこっち、ずっと鉄板として『セラフィムV』を扱ってきたのは彼女だけであったことだろう。
 屍人帝国の目論見など知ったことではない。フィアの溢れる食欲を前に止められるものなど存在しないのだ。

「勇気を与え、護るのが勇者のお仕事! みなさんのことはわたしが護ります!」
 協奏曲第1番(キョウソウキョクイチバン)がユーフォニアムによって奏でられ、柔らかく包み込むような音色が飛空艇を包み込んでいく。
 それは弾丸のように飛空艇を狙う凶鳥たちを寄せ付けず、かつ飛空艇の進路を確保するものであった。
 彼女の力は確かに勇者そのものであったことだろう。
 輝く瞳はユーベルコードの輝きであり、これまで敵を不協和音による凄まじい演奏で撃退してきたとは思えぬほどであった。
 マジで急にどうしたのだと思わざるを得ないほどの演奏っぷりであった。

 本当に勇者なのか……? とこれまでルクスたち勇者一行の活躍というなの珍道中を知る船員たちは訝しんだ。
 割りと本気を出せばあの人すごい人なんじゃないかという視線すら在ったのだ。
 それは師匠であるフィアもどうようである。
「あっ、こら、ルクスよ、我の鳥を追い払うでない!」
 ユーフォニアムの音色が響く中、フィアが死霊船団(アンデッド・フリート)をたぐり、凶鳥を撃ち落としては焼き鳥を作る準備を万端にしていたのに、ルクスのユーベルコードに寄って凶鳥たちが追い払われている事態にご立腹している。

 本来なら師匠の胃袋の方を優先するルクスであったが、頭を振って視線でフィアに促す。
 その先に在ったのは、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の姿であった。
「どうして……どうして私ではなかったのですか『エイル』様!!」
 嘆くステラ。
 此処だけなんか空気が違う。少年『エイル』も戸惑っている。なんでって言われても正直困ってしまう。
「言ってくだされば、いつでも私が『エイル』様の飛空艇になりますのに!! そしてどこまでも飛びましょう『エイル』様を乗せて……そうなると私、『エイル』様に踏まれますね?」
 そうだよ。

「だ、だから、そういうことはできないでしょう? 女性の方を踏みつけるなんて……」
『エイル』がしどろもどろになるのも頷ける。
 というか、ステラの目がマジである。やばい眼光である。
 ちょっと踏まれるのもアリって顔をしているではないか。それをフィアとルクスも見ていた。あれはマジの顔であると。伊達に一緒に旅をしていないのである。
「……いえ、ちょっと目覚めかけた何かは抑えまして。ともあれ、隙のない護衛に戻りますね」
 どういうことなのと思わないでもなかったが、ステラは『エイル』に抱きつきホールドする。
 マジでどういうことだ。

「い、いや、今はそんなことをしている場合じゃ――」
「大丈夫です守りは私にお任せくださいアクティブ防御はあちらの勇者と魔女がやりますから本当にご安心を」
 早口。
 フィアとルクスは、あっ、と察する。
「ステラさん、『エイル』さんが絡むと目の色違いすぎないですか!?」
「……うむ、たしかに」
 ちょっと怖ささえ感じてしまうのは気のせいだろうか。ていうか、それもう護衛じゃないというか。
 むしろ連れ帰る勢いな気がしてしまう。

「ルクス様、フィア様、何か?」
 鋭い眼光である。これはもう確実にやってる目である。
「ナンデモナイデス」
 ルクスはそういうのが精一杯であったし、フィアはステラがあの調子であるのならば放置してよしと判断していた。
 なぜなら、あの様子では自分の焼き鳥パーティの分け前を勘定しなくて良さそうだからだ。
 けれど、残念ながら凶鳥達は食べるところがあまりない。というか、全然ない。ブルーアルカディアの勇士達でさせ、素材以外の使い道がないとしているのだ。

「師匠、流石にあれは美味しくなさそうですが……一応焼いてみます?」
 フィアの食いしん坊精神とルクスの料理番根性が合致し、可食部の少ない凶鳥たちを焼いて食べる姿に勇士たちがドン引きしたとかしないとかは別の話である。
 されど、ステラは自分と『エイル』の蜜月(だと思っている)を邪魔させぬとばかりに、天使核より生成したミサイル、エールプティオー・プルウィアのユーベルコードに寄って、飛空艇に凶鳥たちを寄せ付けない。

 もうどこからが本気で何処までが冗談なのかも『エイル』は判別しきれないでいた。
「さ、『エイル』様、終わったら何をします?」
 隙のない護衛(物理)を続行しつつ、ステラのささやく言葉は、やっぱり年上のお姉さん怖いなぁという感情を『エイル』に植え付けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
「……結界術、展開」
エイルの坊主の乗る飛空艇に降り立ち、結界霊符を貼り結界術で飛空艇の防御力を上げるぜ。

ようエイル、元気してたか?
ん?何か難しい事考えてる顔だな。
……ほら、お前さんお気に入りの『おはぎ』持ってきたぜ。食え食え。
そんな場合じゃない?まあまあ、騙されたと思って先ずは食え。
どうだ、少しはリラックスしたか?前に進むにしても力み過ぎたら上手く進めなくなるぜ。
「……それに糖分補給は脳を活性化させてくれると言いますよ。」

んじゃ、進むエイルの手助けをしてやりますか。
「…式、召喚【飛び鎌鼬】」
船の周りに飛び鎌鼬を放ち、飛んでくる鳥を排除していくぜ。


【技能・結界術、式神使い】
【アドリブ歓迎】



『竜の巣』、『凶鳥の嵐』を往く飛空艇は徐々に空域の中心部へと近づき始めていた。
 けれど、未だ凶鳥たちの襲撃は続き、猟兵たちが駆けつけてくれてはいるものの、数の暴力の前では飛空艇の損傷はかさんでいくばかりであった。
「……結界術、展開」
 飛空艇の甲板上に降り立つ巫女、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)の相棒でもある桜の力によって飛空艇に張り巡らされる結界術が襲い来る凶鳥たちの襲撃を阻む。
 見えない壁に激突しては、鳥たちは失墜していく。
 それは疲弊の見え始めた勇士たちや少年『エイル』にとってはありがたいことであったことだろう。

 桜が結界霊符を張り巡らし、結界の強度を上げていく中、凶津は『エイル』に向き直る。
 赤い鬼面がカタカタとなり、いつもの様子で語りかける姿に『エイル』は束の間、すぐに険しい顔になる。
 少年の顔ではなかった。
 これまで経験してきたことの全てが、彼の成長を促す。
 それは本来であれば十代に満たぬ少年がしていい顔ではなかった。
『よう『エイル』、元気してたか? そんな難しい顔をしちまってよ』
 凶津には、それがどうにも良いことであるようには思えなかったのだ。猟兵たちが駆けつけ、その心に余裕が生まれているのだとしても、張り詰めているとさえ感じた。

 自分の傷は厭わないけれど、他者の傷にばかり気を取られる少年を前に桜が『おはぎ』を差し出す。
『……ほら、お前さんお気に入りの『おはぎ』持ってきたぜ。食え食え』
「でも、そんな場合じゃ……」
『エイル』の顔は厳しいままだった。
 彼が『おはぎ』を食べた時、あの表情は忘れられるものではなかった。少年らしい顔をしていたし、何よりも笑顔になっていた。
 だからこそ、凶津は『おはぎ』を容易してきたのだ。
 張り詰めた糸がたやすく切れてしまうのと同じ様に、心も同じだ。少しばかりたゆみが在ったほうがいい時だってある。

 だから、と桜は『エイル』に『おはぎ』を手渡し微笑むのだ。
「糖分補給は脳を活性化させてくれると思いますよ」
『まあまあ、騙されたと思って先ずは食え。こっから先は長いんだから』
 その言葉に『エイル』は『おはぎ』を頬張る。
 甘い。とても甘い。口の中に広がる甘さ。この甘さを知っているし、嬉しく思った記憶だってある。
 人の優しさに触れるからこそ、『エイル』は他の誰かを助けたいと思う。
 なればこそ、ここで一息入れることも大切だと凶津は説くのだ。

『少しはリラックスしたか? 前に進むにしても力み過ぎたら上手く進めなくなるぜ。んじゃ、進むエイルの手助けをしてやりますか、相棒ッ!』
 その言葉に桜の瞳と凶津の鬼面の瞳に宿るユーベルコードが輝く。
 式神【飛び鎌鼬】(シキガミ・トビカマイタチ)が呼び出され、風をまとった鋼鉄をたやすく切り裂く鎌を手に、飛空艇の外へと飛び立っていく。
 彼等ならば凶鳥に遅れをとることはないだろう。
「……式、召喚【飛び鎌鼬】」
 桜は鼬の式神に号令を出し、彼等の力を持って飛空艇の進路を妨げる凶鳥たちを排除していく。

 自分の『おはぎ』を喜んでくれた少年が自分の背の後ろで涙する気配を彼女は感じただろう。
 やはり張り詰めていたのだ。
 自分が原因で屍人帝国が他者を傷つけることに気を病んでいた。だからこそ、その張り詰めた心を少しでも解きほぐせたのならば、桜は嬉しく思うだろう。
 けれど、今は振り返ることはしてはならないと思った。
 少年とは言え男だ。
 女性に涙は見せたくないだろう。凶津と共に式神をたぐり、その涙の痕が消えるまで二人は背を向け、彼の行く末を切り開くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
セラフィムV、謎の多い機体だよね
ただオブビリオンと戦うつもりのようだし
エイル君も気になるから旅路を手伝うよ

使い魔に頼んで
鉑帝竜には飛空艇から少し離れて飛びながら
鳥達を引き付けて貰おうか
鳥の嘴でどうこうなる機体じゃないしね

任されたのですよー
咆哮で威嚇して
こっちに引き付けますね

僕は飛空艇に跳び移って
ガトリングガンの範囲攻撃で
鳥達を迎撃していこう

エイル君、お久しぶり
また厳しい戦いになってるね
袖すり合うも多生の縁、手助けに来たよ

セラフィムVも久しぶり

鳥達がオブビリオンでないなら
縄張りに入って暴れてるだけみたいなものだから申し訳ないね

…そういえばこの鳥も食べられるのかな
勇士達に余裕があれば聞いてみようか



 青い鎧の巨人『セラフィムV』――その出自は未だ知られることがない。
 意志のようなものを宿し、その胸の内に巨大な天使核を有する存在であり、屍人帝国『オーデュボン』が狙い、追い回している巨人である、ということ以外を猟兵は知らない。
 何故『エイル』と共に行動し、彼の従うのか。
 それは彼が『セラフィムV』を起動させたからということで説明はついているが、未だ多くの謎を残したままである。
 その青い鎧の巨人を見上げ、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は飛空艇の甲板上に降り立つ。

「オブリビオンと戦うつもりのようだし、『エイル』君も気になるから旅路を手伝うんだけれど……鉑帝竜は、少し飛空艇からはなれて飛んでね」
『凶鳥の嵐』と呼ばれる空域の中心に至るまで、この飛空艇を守らなければならない。
 その名の通り、この空域は凶暴な鳥の縄張りである。
 鋭い嘴は鏃のように飛空艇の装甲を貫いてしまうし、無数に突撃してくる姿は、脅威そのものであった。
 だからこそ、凶鳥たちを鉑帝竜にひきつけ、攻撃を集中させるのだ。

 式神武装白金竜複製模造体(ファミリア・アームドワイバーン)とも呼ばれた鉑帝竜は、凶鳥の嘴程度でどうにかなるほど軟な装甲ではない。
 希少金属でもって構成された装甲は、あらゆる攻撃を受け止め、傷一つつけないだろう。
「そっちは任せたよ。できるだけ十分に鳥たちをひきつけておいて」
「任されたのですよー」
 使い魔に操作を任せた鉑帝竜が空を悠々と飛ぶ。

 そこに殺到する凶鳥たちを飛空艇の甲板上から晶はガトリングガンでもって一斉射し、薙ぎ払っていく。
 弾丸がばら撒かれ、ただの鳥である凶鳥達はひとたまりもなく撃ち落とされていく。
 これで少しは飛空艇の進路も明るいものになっただろう。
「『エイル』君、お久しぶり。また厳しい戦いになってるね。袖すり合うも多生の縁、手助けに来たよ。『セラフィムV』も久しぶり」
 甲板上で凶鳥を振り払っていた『セラフィムV』の瞳が輝く。
 それを見て、晶は『エイル』へと向き直る。
 彼はこれまで多くの猟兵たちから背中を押されてきたことだろう。少し涙の痕があるのは、彼もまた十代に満たぬ少年であるからだ。

 彼の心が少しでも和らぐのならばと晶は少し冗談めかして言う。
「あの鳥も食べられるのかな? 後で勇士達に聞いてみるのもいいかもね」
「あ、あれは食べられないって、言ってました。それに、ありがとうございます。助けてくれて。いつも。僕はいつも、助けてもらえるんじゃないかって期待するばかりで」
 だから、気恥ずかしいのだろう。
『エイル』にとって、自分で全てをまかなえたことなど一つもない。
 だからこそ、猟兵の力を頼みにすることに気後れしていたのかおしれない。
 けれど、それでも晶たちは駆けつける。

 それは彼が望んでいるからではない。
 この世界にとって彼が存在するということが、一つの屍人帝国『オーデュボン』への牽制にもつながっている。
「いいんだよ。期待したって。僕たちが駆けつけられないときだってある。どうしたって遅れてしまう時だってある。けれど、そんな時に君が助けてくれたらいいんだ。そう思っていいんだよ」
 晶の言葉に『エイル』が頷く。
 自分一人ではどうしようもないことも、他人がいるからこそどうにかできることもある。

 自分ひとりが世界ではない。
 他者が居るからこそ世界の輪郭が生まれる。それを理解したからこそ、『エイル』は、ハニカミ笑いを浮かべ晶と共に飛空艇の行く先を切り開くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルビィ・フォルティス
そうですわ。迷うことなどありませんことよ。
常に道は前にしかありませんの。
前に障害があるのなら、この剣で切り開いて進むだけですわ。

飛んでくる鳥を落とすこともできなくはありませんけれど、魔獣相手でもありませんし気が進みませんわね。

飛空艇に対して泡沫の剣磨を使用し、纏う気流で摩擦を極限まで減らすことで突撃する鳥たちを滑らせ受け流す
これである程度は大丈夫ですわ。

自前の翼で飛翔し、重要な機関がある場所や、飛空艇の形状的に受け流しづらい場所に突撃してくる鳥のみをアドウェルサを振るい落とす。切った鳥は無駄にしないようできるだけ回収してもらう。
ごめんあそばせ。



 少年『エイル』の心はブルーアルカディアの空と同じであった。
 彼に関わる者の心を映し出す鏡のようであり、その中に縁者たちの意志が紡がれていく。
 それは青い鎧の巨人『セラフィムV』も同様であったことだろう。
 共に戦った猟兵達のユーベルコードや戦い方を吸収するように、その巨人は意志を感じさせる瞳を輝かせ、己達の前に立ちふさがる困難を打ち破っていくのだ。
『竜の巣』、『凶鳥の嵐』とも呼ばれた危険な空域にあってもそれは同様である。
 迫りくる凶鳥たちを飛空艇に近づけさせぬとと、彼等は懸命に前に進んでいた。

「そうですわ。迷うことなどありませんことよ。常に道は目にしかありませんの」
 ルビィ・フォルティス(空の国の家出娘・f33967)は、飛空艇の甲板上へと降り立ち、その刃を振るう。
 縄張りを主張するように飛来する凶鳥たちを切り裂き、されど無闇矢鱈に凶鳥たちを殺すことを厭う彼女は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。

 それは、泡沫の剣磨(ウタカタノケンマ)。
 風の魔力で持って浮遊させ、さらに気流をまとわせることによって飛空艇のもつ摩擦抵抗を極限まで減らす力である。
 これながら突撃してくる凶鳥たちの嘴は装甲に突き立てられることなく、統べるように受け流され、後方へと飛んでいくことだろう。
 下手に雲海に沈めされば、オブリビオンとしてまた復活するかもしれない。
 それを考えれば、ある程度まではこの力でしのげるはずだった。
「はい、わかっています。あなたの言うとおりだ」
 少年『エイル』がルビィの言葉に頷く。

 涙の痕がうっすらと残っているのは、彼自身が惑い、迷っていたからだろう。
 猟兵たちから背中を押されてはいても、心が張り詰めていた。
 けれど、その張り詰めた心さえも解きほぐして、彼は前を向いている。健気であるとも言えるし、勇気があるとも言える。
 それはルビィにとっても同じであった。
 己の目の前に障害があるのならば、手にした剣でもって切り開いて進むだけ。
「わたくしたちの道は、いつも白紙。進むべき道もわからず、道だとわかるのは轍によってのみ。ならば、共に隣に立つこともあるでしょう。交錯することもあるでしょう」

 ルビィの手にした長剣が迫る凶鳥を切り捨てる。
 エンジェルの羽根が羽撃き、その姿を『セラフィムV』が見上げていた。
「僕は感謝している。あなた達に出会えたことを。こうして助けてくれることを。僕はきっとあなた達から学ばなければならないんだ」
 その革新が彼にはあったのだろう。
 ルビィの言葉に『エイル』は頷き、互いにできぬことをカバーしながら空域を進む。
 切り捨てられた凶鳥を掴んでルビィが甲板上に降り立つ。
「ごめんあそばせ」

 長剣でもって、一瞬の内に凶鳥が解体される。
 可食部はないが、嘴や爪、骨などは素材として使えるだろう。生命を奪うのならば、少しの無駄もないように。
 それがこのブルーアルカディアに生きる人々にある共通の考え方であろう。
 そのたくましい生き方に『エイル』は学ぶ。

 どれだけ気品、優雅さがあっても、その根底にあるのは生命の逞しさ、輝きだ。
 それを忘れぬ限り、今後『エイル』がどのような場所にたどり着くのだとしても、彼がくじけることはないだろう。
 ルビィは知れず、己の生き方でもって彼に教える。
「いつだって道は自分の前にしかない」
 互いに目を合わせて微笑む。
 未だ窮地は脱していない。けれど、それでも大丈夫だと笑うことはできる。
 
 楽観的であるかもしれない。
 気楽なものだと笑われるかもしれない。
 けれど、自分たちの立つ足元は、もはや揺るがないのだ。その思いを胸に二人は各々の道をきっと進んでいくことだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スリジエ・シエルリュンヌ
以前、関わった方が…。ええ、背を押すのも探偵の仕事ですから。
文豪探偵、推して参ります!

皆さんが動けなければ、そもそも話にはなりませんから。
ですから、祈りを捧げて【浄魔桜吹雪】にて回復を担当しますね!
これで、多少の負傷は大丈夫になりますから!消耗も抑えられるでしょう。

しかもです。飛空艇には結界張りましたので、突撃されてもはじきますからね。

大丈夫ですよ、私たちがついてますから。必ずたどり着き、目的を果たしましょう?
遠慮なんて要らないんです。私は、私の意思でここにいるのですから。



 危険な空域『竜の巣』は、ブルーアルカディア世界の何処其処にも存在している。
 激しい気流によって阻まれていたり、浮島が無数に存在しては飛空艇の入り込むのを阻んでいたりと様々な形で難所としてあるのだ。
 この『凶鳥の嵐』と呼ばれた空域もその一つである。
 ここは凶暴な鳥たちの縄張りであり、侵入してきた存在を許さないとばかりに、その鋭い嘴を鏃として、弾丸のように飛空艇に突撃し、穴をうがち、重要な機関に損傷を与えてしまう。

 そうなってしまえば、飛空艇は空の藻屑へと成り果てる。
 ゆえにこれまで『凶鳥の嵐』に近づく飛空艇はなく、長らくその中央に浮島があることも知られることはなかったのだ。
「以前、関わった方が……」
 スリジエ・シエルリュンヌ(桜色の文豪探偵・f27365)は、己が以前立ち会った事件で関わりを持った少年『エイル』が、窮地に立たされているとあっては居ても立っても居られないままに駆けつけたのだ。

 転移した甲板上では、青い鎧の巨人『セラフィムV』と少年『エイル』が懸命に凶鳥の襲撃を迎え撃っている。
 傷はないが、恐らく消耗しているのだろう。
 それは飛空艇を操縦する勇士達にも言えることだ。彼等が動いてくれないことには、この飛空艇は空域の中心に至ることもできないだろう。
 ならばこそ、スリジエは己が為すべきことを理解している。
「ここに、癒やすの桜風を」
 小さく呟いたワンフレーズ。
 それは祈りであり、浄化と破魔の桜吹雪を飛空艇の中に発生させる。

 浄魔桜吹雪(エスパス・デュ・トゥルフビヨン・ドゥ・スリズィエ)と呼ばれるスリジエのユーベルコードは、飛空艇を操縦する勇士達の疲れ切った体を癒やし、さらには少年『エイル』の心身も癒やしていくだろう。
 これでしょうもうも抑えられた。
 結界を他の猟兵と協力して二重に張り巡らしたことで、飛空艇は今や鉄壁の防御を誇り、数多の凶鳥達の攻撃を防いでいるのだ。
 少年『エイル』が肩で息をしていたのを落ち着かせ、甲板上にお尻から座り込むのを見たスリジエが彼の肩を抱く。

「大丈夫ですよ、私達がついていますから。必ずたどり着き、目的を果たしましょう?」
 スリジエは背中を押すのも探偵の仕事だからと微笑む。
 少年はこれまで長い旅路の中で誰かに頼る事を忘れてしまったのだろう。
 自分たちが長らく一箇所にとどまれば屍人帝国『オーデュボン』が襲来する。そうすることによって人びとが傷つくことをこそ厭う。

 それは同時に猟兵の到来も意味することだった。
 他人に迷惑をかけているということに、心を圧迫されて余裕がなかった彼も、今は多くの猟兵に励まされて心を解きほぐしている。
「ありがとうございます。でも、あなたたちまで危険な目に合わなくても……」
「遠慮なんて要らないんです。私は、私の意志で此処に居るのですから」
 スリジエの言葉に『エイル』は頷く。
 誰に言われたからではない。
 己の意志で何かをする者の前にこそ道は拓ける。

 それを彼はもう知っていた。
 だからこそ、スリジエの手を握って『エイル』は言う。
 まっすぐに瞳を見て頼るのだ。
「お願いします。この空域の中心、浮島まで僕と、『V(ヴィー)』を連れて行ってください」
 そこに何があるかわからない。
 けれど、そこに向かわなければならない。何かが変わるかもしれないし、変わらないかも知れない。けれど、確実に言えることが一つだけある。

 一歩を踏み出せば、それは轍になる。
 踏み出さなければ、道なき道を進むこともできない。だからこそ、スリジエは微笑んで言うのだ。
「おまかせください。文豪探偵、推して参ります――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『寄生竜』

POW   :    執念深い小型の竜
【噛みつき】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【種族と魔力】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    竜族の端くれ
レベル分の1秒で【火炎玉】を発射できる。
WIZ   :    雑食で魔力も喰らう
技能名「【生命力吸収】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。

イラスト:江戸村 咲貴

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『凶鳥の嵐』と呼ばれる空域の中心部へと飛ぶ飛空艇は、凶暴な鳥たちを振り切って、中心たる浮島へと迫る。
 その姿を認め、猟兵達は其処に『エイル』と『セラフィムV』を送り出せば良いと考えていたが、けれど、浮島を固めるようにして飛ぶ小型の竜『寄生竜』の姿を認めて、考えを改めた。

 あれはオブリビオンである。
 ひと目見ただけでわかるのだ。小型であれど竜。それは、勇士達にとっても比較的倒しやすいとも言えるオブリビオンであったが、それでも尋常な数ではない。
「あれは『寄生竜』……! 大型の魔獣が居ないのに、なんであんなに……!」
 勇士たちが呻くのも無理なからぬことであった。

 本来であれば、巨大な魔獣の前触れとして認識される魔獣なのだ。
 それでもああも数は多くない。
 確実に『寄生竜』を手繰る存在がいることを示す証拠であった。そう、未だ浮島に『エイル』と『セラフィムV』だけを送り届けることはできない。
『寄生竜』を打ち払い、浮島の中、その玄室まで共に向かわねば、万全とは言い難いだろう。

 ゆえに、猟兵達は決意する。
 浮島を護るオブリビオンを全て撃滅し、万難を排して彼等を送り届けるのだと――。
村崎・ゆかり
これは、『オーデュポン』からの刺客なのかしら?
まあいいわ。『エイル』が気にすることじゃない。あんな奴らに傷つけられるほど柔じゃないもの。

生身の鳥の次がオブリビオンなら、生命を奪うとか考えなくていいわね。
飛鉢法で先行するわ。
飛空艇からも距離を取ったところで、出来るだけ竜を引き付けてから、十絶陣構築。

「結界術」「全力魔法」斬撃の「属性攻撃」「範囲攻撃」「衝撃波」「仙術」「道術」で風吼陣!

暴嵐と踊り狂う刃に耐えきれるかしら?
竜の攻撃は、鉄鉢を細かく動かしながら「受け流し」、風吼陣の渦へ叩き返すわ。

この調子でどんどん討滅していきましょう。
飛空艇は巻き込んでないわよね? 一緒に落としたら洒落にならない。



「あれは――やはり『オーデュボン』からの刺客なのかしら?」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、『凶鳥の嵐』の中心である浮島を囲うようにして飛ぶ小型の竜、『寄生竜』の群れを見やり、呟く。
 確かに勇士達の言う通り、不自然な魔獣の発生なのだろう。
 ならばこそ、それは屍人帝国『オーデュボン』の手の者、それを使役する存在を示唆していた。

「恐らくそうなんでしょう。いえ、きっと。僕らがここに来るというのをわかっていたんだ……」
 少年『エイル』は歯噛みするようであった。
 自分たちの行動のすべてが屍人帝国『オーデュボン』の掌の上。
 それはどうしようもないことであったのかもしれない。同時に自分たちの行動を把握しているということは、どこにいてもどこまででも彼等は追いかけてくることを示していたのだ。

「まあいいわ。『エイル』が気にすることじゃない。あんな奴らに傷つけられるほど柔じゃないもの」 
 そう言って、ゆかりは微笑み鉄鉢乗って飛空艇より飛び出す。
『エイル』の心配ももっとなことであったが、まずはあのオブリビオンを片付けることが先決である。
 猟兵達の活躍に寄って飛空艇は二重にも重なる防御が張り巡らされている。そうそうに落とされることはないだろうと考え、それならば先行して叩くことを彼女は選んだのだ。

「生身の鳥の次がオブリビオンなら、生命を奪うとか考えなくていいわね」
 そんな彼女の鉄鉢を敵と認識した『寄生竜』たちが空を舞う。
 十分に引きつけるやり方は、これまで猟兵たちもやってきたことである。けれど、彼女の瞳に輝くユーベルコードは、些か凶悪であった。
 己を追って迫る『寄生竜』の顎。
 その並ぶ歯の鋭さは言うまでもない。けれど、ゆかりは『エイル』に何も心配するなと言ったのだ。
 自分たちは傷つかないと。
 だからこそ、彼女はそれを証明するために、己の力を振るう。

「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。天上までも響き渡る破壊の風よ。その身に宿せし無限の剣刃により触れるもの悉くを裁断せよ。疾!」
 それは無数の刃をはらんだ暴風圏。
 凄まじい風と刃が乱舞する領域に在って、その刃を躱すことも防ぐこともできないだろう。
「暴風と踊り狂う刃に耐えきれるかしら?」
 風吼陣(フウコウジン)は、彼女にとって、敵を囲い込み、その内側で持って撃滅するユーベルコードである。

 飛空艇を巻き込まぬ範囲で走った絶陣は、多くの『寄生竜』たちを取り込み、その内部で刃が舞い踊り、次々と体を切り刻んでいくだろう。
 それはまるで巨大な魔獣が『寄生竜』という小さな存在を飲み込むようなものであった。
 狩りと呼ぶこともできぬ一方的な攻勢。
 その前に浮島を護る『寄生竜』たちの囲いが切り裂かれて霧散していく。
「あ――」
 そこでゆかりは気がついたのだ。
 如何にオブリビオンと言えど、魔獣である。『寄生竜』くらいの魔獣ならば、勇士達の糧になったのかもしれないと。
 飛空艇を巻き込まぬことばかりを考えていて、そこに考えが至らなかった。

「一緒に落としたら洒落にならないって思っていたけど、そこを忘れていたわね」
 だが、幸いにまだ『寄生竜』の数は全て喪われたわけではない。
 幸いと呼べるのかどうか、ゆかりはそんなことを考えながら、鉄鉢と共に『凶鳥の嵐』の中を飛び、絶陣より落ちる『寄生竜』の素材を獲得するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イングリット・ジルニトラ
【心境】
「第一関門突破。なれど次の難敵現る…ってとことかしら。」
もっとも、あの程度の魔獣に怯む私達ではない。
大船に乗ったつもりで安心したまえ。

【行動】
ひきつづき飛空艇の姿で参戦する。
やはり空はいい。
さて、最大船速。敵の火炎玉を回避しつつ、我が主砲の射程に収めよう。
うむ、当たらなければどうということはない。
(使用技能:空中戦、空中機動、ダンス、残像)

それではそろそろ退場を願おう。
主砲並びに航空爆雷をセット。
全弾一斉掃射。魔獣よ堕ちるがいい。あとで解体し有効活用してやろう。
残骸でも残って入ればの話だがな。
(使用技能:呪殺弾、砲撃、威嚇射撃)

少年よ。今のうちに征くがいい。



『凶鳥の嵐』の中心部に存在する浮島を護るようにして展開されたオブリビオンにして魔獣たる『寄生竜』の群れは一斉に、その顎をもたげる。
 口腔より現れるのは火球。
 そう、如何に小型とは言え、竜種の端くれである。
 みるみる間に膨れ上がった火球が飛空艇へと放たれる。けれど、二重に施された結界が少年『エイル』と『セラフィムV』を乗せた飛空艇を火球より護るのだ。
 しかし、何度も守れるわけではない。
 次々と放たれる火球。

 結界が消失してしまうことは時間の問題であったことだろう。
 だが、それをさせぬと大空を舞うようにして飛ぶ飛空艇があった。その名は、ジルニトラ級陸番艦イングリット。
 かつてそう呼ばれた飛空艇であり、イングリット・ジルニトラ(ガレオノイドの翔剣士・f33961)として今は活動する猟兵が変じている。
「第一関門突破。あれど次の難敵現る……ってとこかしら」
 確かに数が多い。
 あの浮島を囲い、防衛戦を張り巡らせた魔獣を突破しなければならないのは骨が折れるだろう。

 けれど、あの程度の魔獣で怯む己達ではない。
「『エイル』少年、大船に乗ったつもりで安心したまえ。敵の攻撃は私が引き受ける」
 イングリットが変じた飛空艇が空を飛び、放たれる火球の尽くを躱し、『寄生竜』たちを翻弄していく。
 火球を躱す姿は、まるで踊るようであったし、優雅なそれであることを『エイル』は見ただろう。
 あれだけ見事に空中を舞うことが出来たのならば、どんなにいいだろうか。そんなふうに思えたのだ。

「やはり空はいい」
 当たらなければ火球とてどうということはない。
 イングリットはそれを示すように飛空艇の体を舞わせる。華麗なる軌道を空に描いて、彼女の飛空艇の体に備えられた艦載砲が煌めく。
 主砲に装填されたのは、三式航空爆雷II型(サンシキコウクウバクライニガタ)。
 それは航空爆雷と呼ぶべきものであり、彼女だからこそ正しく敵味方を判別する能力で持って放たれる切り札である。

「それでは、そろそろ退場願おう。三式航空爆雷装填…敵目視で確認。発射ーッ」
 放たれる爆雷が『寄生竜』たちの遥か頭上より撃ち込まれる。
 爆雷の砲撃は浮島周辺に飛ぶ『寄生竜』たちを尽く撃ち落とし、例え、爆雷の一撃を躱すことができたのだとしても、爆雷の炎でもって周囲を包み込み、戦う力を奪っていく。
「魔獣よ、堕ちるがいい。後で解体し、有効活用してやろう」
 そう、このブルーアルカディアの世界において魔獣とは資源そのものである。

 浮遊大陸だけが人の生存圏であるからこそ、魔獣の血肉、骨片の全てを利用しなければ生きることが難しい。
 その逞しさの果てに生まれたのが飛空艇である。
 己の身を構成するのもまた嘗ての魔獣のいずれか。
 ゆえにイングリットはそう呟いたのだが、彼女の正確無比なる砲撃の前には、それは難しいものであった。

 何故ならば、撃ち落とすということは即ち、雲海に沈むということである。
 そして、此処は『凶鳥の嵐』。
 残骸を回収することは難しいであろう。
「残骸でも残っていればと、思ったが……それも難しいな」
 イングリットはそう呟き、己が『寄生竜』をひきつけている間にと『エイル』たちが乗る飛空艇に促す。

「少年よ。今のうちに征くがいい」
 君の道はこの先にこそある。
 そう告げるイングリットは、甲板上で手をふる少年の姿を見やり、その道行きを阻む者を打倒すべく砲撃の雨を降らせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴久名・紡
明らかに意図的だな
行く手を阻みたいだけなのか……
別の意図があるのか
戦えば判る、だろうか……

むすびとリアンシィには引き続き、勇士達のフォローを任せる
俺も、竜神飛翔を継続して使用し
極力、飛空艇には接近させないように対応

先程と同様に雷を先制攻撃として放ちながら移動し陽動

『噛みつき』を赦さなければどうということない
だから、近寄らせないし噛ませない

禮火も葬焔も槍に変化させて氷の属性攻撃を載せてなぎ払い
部位破壊も乗せて、先と同じように翼を奪おう

にしても数が多いな……
天候操作で暴風を起こして近接距離に持ち込ませない事で対処

敵の攻撃は空中機動と速度で回避

来て欲しいが元気なまま来て欲しくない、という処か……?



 完全なる竜体へと変身した鈴久名・紡(境界・f27962)は『凶鳥の嵐』と呼ばれる空域にあって、その中心たる浮島の周辺に展開した魔獣『寄生竜』の姿に訝しむ。
 確かに数は多い。
 けれど、その浮島を囲い込む光景は、ただ単純に囲い込むだけではなく突出しようとする存在をこそ滅ぼすような動きすらあった。
 だからこそ、猟兵達の動きに過敏に反応し、攻撃を仕掛けてくる。
「明らかに意図的だな。行く手を阻みたいだけなのか……別の意図があるのか」
 その動きを見た紡は答えを早急に出すことはなかった。

 戦えば自ずと分かることであるし、それに急がば回れという言葉もある。
 もし、この『寄生竜』を手繰る存在がただ阻むだけではないことを目的としているのならばこそ、『エイル』と『セラフィムV』を差し向けるわけにはいかなかったのだ。
「『むすび』と『リアンシィ』は引き続き勇士達のフォローを任せる。俺は――」
 紡の瞳が輝く。
 竜神飛翔によって、己の体に雷を纏い、『寄生竜』たちへと飛ぶ。
 
 執念深い牙を持つ『寄生竜』たちにとっては、己の獲物だと先を争わせるようなものであった。
 完全なる竜体へと変じた紡の姿は巨大であったし、敵がなんであれ食いつくのが『寄生竜』の本質であった。
「恐れはないか……ならば」
 槍に変化させた神器が氷の力を宿し、宙に浮かぶ。
 せまる『寄生竜』たちの翼を薙ぎ払うようして振るい、彼等の飛行能力を奪う。そうすることで無理にとどめを刺す必要はなくなる。

 何せ、飛べなくなってしまえば雲海に沈むほか無い。
 ならばこそ、紡は最小の労力で持って最大の戦果を取るのだ。しかし、そでも数は多い。
「全てを打倒するには、まだ足りないか……」
 紡は暴風を引き起こし、己に近づけさせぬように天候を操作し、空を飛ぶ。嵐のような様相を呈するブルーアルカディアの空を縦横無尽に駆け抜け、己の鱗に一度たりとて『寄生竜』の牙を尽きたてさせることはなかった。

 それはまるでこちらを追い込むような戦い方であった。
 倒されることなど意にも介していないかのような仙術。
 如何に使役する存在であろうと、自軍の損害を気にもとめていないような用兵。それに紡は気がつくのだ。
「来てほしいが、元気なままで来て欲しくない、という処か……?」
 きっとそうなのだろう。
 広く囲いを展開していながらも、突出した者に殺到するのは、いたずらに力を消耗させるつもりなのだ。

 なるほど、と紡は敵の意図を汲み上げる。
「目的は『エイル』と『セラフィムV』の消耗。ならば、残念だったな、オブリビオン」
 紡は竜体のまま顎をもたげ、咆哮する。
 びりびりと響く声は、浮島の中、玄室の中にまで届いたことだろう。
 そう、この絵図を描いた元凶の目論見は、すでに打破されている。おのれ達猟兵が在る限り、オブリビオンの行いは結実することはない。
 それを知らしめるようにして紡は雷と氷の力を持つ槍を振う。

「お前の目論見は何一つ叶わない。それどころか、見誤ったな、彼等の力を。この程度の数で、彼等を止めようなど」
 きっと『エイル』と『セラフィムV』だけであっても、消耗させきることはできなかったのかもしれない。
 そう思うのは、多くの猟兵たちが彼の心を解きほぐしたからだ。
 背中を押す者がいる。
 おのれが取りこぼしたものを掬う者がいる。

 ただそれだけで、人は強く在ることができる。
 それを紡は知っている。『むすび』と『リアンシィ』に飛空艇を託したように、おのれもまたその強さを持つのだと知らしめるように、彼は飛翔するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
寄生竜だか何だか知らねえが、とんでもない数だぜ。
エイルは……へっ、どうやら心配は無用みてえだな。
「……なら私達は、彼等の道を切り開くのみです。」
おうよ、行くぜ相棒ッ!

「……破邪・霊光弓。」
式神【ヤタ】を飛空艇の周りに飛ばして索敵して飛空艇に迫る寄生竜を霊光弓で優先的に撃ち落とすぜ。
矢の弾幕砲撃をくらいやがれッ!
寄生竜が火炎玉を放ってきたら結界霊符で防御してカウンターでスナイプしてやるぜ。

ちぃ、次から次へとッ!!
「……ですが負けられません。」


【技能・式神使い、索敵、弾幕、結界術、スナイパー】
【アドリブ歓迎】



 飛空艇が『凶鳥の嵐』たる空域を往く。
 この空域を縄張りにする鳥たちは追い払われたが、中心部たる浮島を護るようにして囲う大量の魔獣、オブリビオン『寄生竜』の姿は未だ絶えることはなかった。
 飛空艇を囲んで飽和攻撃をするのではなく、突出した者に集団で襲いかからんとする彼等の戦法は、『寄生竜』を使役する何者かの思惑が透けて見えるようであった。
 そんな『寄生竜』たちの口腔に煌々と輝くのは、ユーベルコードに寄って生み出された火球であった。

 小型であったとしても竜種であることには変わりない。
 放たれる火球は一斉に飛空艇へと疾走る。
『寄生竜だかなんだか知らねえが、とんでもない数だぜ』
 神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は、すでに少年『エイル』が何の心配もいらないことを理解していた。
 言うまでもないことだとさえ思った。
 心配している気持ちは今も変わらない。けれど、それでも少年は一人の足で立ち、そして同時に一人ではないことを知っている。
 ならば、凶津と相棒の桜は頷くのだ。

『へっ、どうやら心配は無用みてえだな』
「……なら私達は、彼等の道を切り開くのみです」
 桜の放った結界霊符が『寄生竜』より放たれた火球を防ぐ。
 炎が吹き荒れ、結界霊符が消し炭になって消えていく。さすがに小型のオブリビオンと言えど、竜の火球はそう何度も防ぐことはできないようであった。
 けれど、放たれた火球より、凶津たちのユーベルコードが輝く。


「破邪・霊光弓(ハジャ・レイコウキュウ)……」
 それは退魔師の奥義の一つである。
 破魔弓を構えた桜が放つユーベルコードの輝きは、矢となって空を一直線に駆け抜ける。
 一撃でもってカウンターのように『寄生竜』を貫いた光矢。
 その先に桜が冷静に見つめる。数はどれだけ多かろうが、それでもユーベルコードに寄って高められた破魔弓の威力と射程は通常のそれを遥かに越える三倍である。

『式神【ヤタ】の索敵に引っかかったぜッ! 三時、八時、そして、十二時だッ!』
 凶津の言葉に桜が即座に反応する。
 索敵させていた式神からの情報で飛空艇に迫る『寄生竜』を即座に見つけるのだ。瞬時に桜の破魔弓が光矢を討ち放ち、『寄生竜』たちを貫いて撃ち落としていく。
 しかし、数が多い。

 次々に襲いかかる『寄生竜』。けれど、さばききれなくても桜は心配などしていなかった。
 弓を引く自分を狙う『寄生竜』の姿が視界の端に映る。
 そこに滑り込むようにして青い鎧の巨人『セラフィムV』が拳を振るい、『寄生竜』を吹き飛ばす。
「大丈夫ですか!」
 そういって少年『エイル』の声が聞こえる。
 それを受けて、凶津と桜は微笑んだ。もう彼は大丈夫だと。彼はもう庇護されるだけの存在ではないのだと知る。

 もう立派に隣に並び立ち戦う存在であると、彼等は知っただろう。
「……負けられません」
『だなッ! 行くぜ相棒ッ!』
 凶津と桜が再びユーベルコードに輝く。
 その瞳にあったのは、自分たちだけではなく少年『エイル』と『セラフィムV』が切り開く未来であった。

 彼等と共に其処へ征く。
 きっと彼女たちは正しい在り方を『エイル』と『セラフィムV』に見せたことだろう。互いを信頼し、互いを助け合い、支える。
 凶津と桜のように。
 それがきっと遠い未来に正しさに変わると、そう思わせるようであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

髪塚・鍬丸
エイルに目的を果たさせると決めた以上、何が立ち塞がろうと対処するのみ。問題は何も無い。

それなりに稼げる獲物なのかい?ならば、死地に付き合ってくれてる勇士の旦那達への心尽くしになるべく損傷少なく倒してみるか。
上空から迫る竜の群れに【畏笛の術】使用。人の耳には聞こえない咆哮を放つ。
【範囲攻撃】【精神攻撃】【鎧無視攻撃】。肉体を透過し直接脳を揺さぶる咆哮で魂を砕く。
竜のみを倒す様、周波数を調整。
倒しきれず埒が明かないなら「天狗火」で飛び立ち【空中戦】、群を引き付ける。
効果範囲に味方がいなくなるまで誘導したら無差別攻撃。共振による三倍の効果の咆哮でなぎ払うぜ。



 髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は、此処が死地であることを知っている。
 大空の世界ブルーアルカディアにおいて、浮遊大陸こそが人の生存圏である。それ以外は全てが雲海であり、一度沈んでしまえば消滅する他ない。
 即ち、死である。
 そんな雲海を飛ぶ飛空艇に乗り込む者たちが例外なく勇士と呼ばれるのは、道理であろう。
 それが特に危険な空域である『竜の巣』であるのならば、彼等もまた少年『エイル』と『セラフィムV』と同じくらいにお人好しであったのかもしれない。

 誰かを放ってはおけない。
 この生きることすら難しい大空の世界にあって、逞しく生きる彼らを鍬丸は好ましく思っていた。
「『寄生竜』……あの数は厄介だぞ! 小型とは言え、竜なんだからな!」
 おい! と勇士に鍬丸が呼び止められる。
 彼が心配したのは、鍬丸が今まさに甲板上で『寄生竜』の火球が放たれんとしていたのを見上げていたからであろう。

「だが、それなりに稼げる獲物なのだろう? ならば――」
 心配するなと鍬丸は甲板上を素早く駆け抜け、船体の前方に至る。
 彼が見上げる先にあるのは、今まさに飛空艇の上空でもって火球を放とうとしている『寄生竜』たちであった。
 このまま放置しておけば、飛空艇に火球が放たれてしまい、損害は免れないだろう。だからこそ、鍬丸は走った。
 おのれの足ならば間に合う。
 そして、おのれのユーベルコードならば!

「――ッ!!」
 それは可聴域外の方向であった。
 瞳輝くユーベルコードは、彼の咆哮を共振現象を伴う『魂に響く声』を破壊の音に変えて解き放つ。
 それは肉体を透過し、対象の脳を揺さぶり砕く一撃。
 人の耳には聞こえぬ咆哮は、けれど『寄生竜』たちの脳を一撃で持って粉砕し、次々に甲板上に墜落するのだ。
「な、なんだ……何がどうなって……!」
 勇士たちがどよめくのを鍬丸は聞いただろう。無理もないことだ。鍬丸が船首に立ったと思った後に次々と『寄生竜』が絶命して堕ちてきたのだから。

「それは勇士の旦那たちへの心尽くしだ。納めてくれ」
 そう言って鍬丸は炎の翼のような忍具、『天狗火』によって、空へと飛び立つ。
 ここからは、加減はできない。
 何故ならば、おのれたちが為すべきことが定まったからだ。
 少年『エイル』に目的を果たさせる。
 そう決めた以上、何が立ちふさがろうとも対処するのみである。

「問題は何も無い」
 煌めくユーベルコードは鍬丸の意志の輝きであったことだろう。
 彼の空中機動は多くの『寄生竜』たちを引き連れて、飛空艇より引き剥がす。彼の可聴域外の咆哮たる、畏笛の術(イノブエノジュツ)は放ち方によっては、勇士たちも巻き添えにしかねない。
 だからこそ、鍬丸は中心部たる浮島に迫り、『寄生竜』たちが突出してきたものを優先的叩くという戦法を逆手にとって、敵戦力を浮島から引き剥がすのだ。

「御下命如何にしても果たすべし。悪いが、ここで一気に殲滅させていただく――!」
 放たれた咆哮は、目に見えぬ共振現象でもって『寄生竜』たちの脳を一撃のもとに破壊し、次々と雲海に沈める。
 彼にとって、これは前哨戦に過ぎない。
 眼下に見える浮島。
 その中に何が待ち受け、少年『エイル』たちに何を齎すのか。今は、彼等のための道を拓くために、鍬丸は大空舞う翼となって、迫る『寄生竜』の群れを一網打尽の元に叩き落とすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「正に竜の巣と言った様相だけど。
敵の策略と思って良いだろうね。」
「しかしこの数。真面に相手をしていたらキリがない。
少し楽をさせて貰おう。」

呪装銃「カオスエンペラー」による【範囲攻撃】で
多くの敵を攻撃し敵に『殺意』を抱かせる。
敵が攻撃態勢になったら誘いの魔眼を発動
【呪詛】を掛け。ダメージを与えると共に五感を狂わせ
飛行を妨害。
敵の密集を利用し衝突、墜落を誘発。
更にカオスエンペラーで追撃を行い
誘いの魔眼で弱った処にマヒ、幻覚を与えて混乱させ
近くの敵から撃ち落とす。
「この程度の集団なら統制を乱せば堕とすのは難しくない。
戦いは数だけじゃないと言う事さ。」
この件の黒幕がどこかで見て居るかと思いを巡らせ。



 ブルーアルカディアにおいて危険な空域の名を『竜の巣』と呼ぶ。
 猟兵たちが転移した空域は、またの名を『凶鳥の嵐』とも呼ばれていたが、目の前に広がるオブリビオン『寄生竜』の群れを見れば、それが誤りではないかと思うほどであった。
 彼等は空域の中心部である浮島を取り囲むようにして防衛しているようであった。
 けれど、彼等の動きはフォルク・リア(黄泉への導・f05375)から見ても不可解なものであった。
 迫る飛空艇を近づけさせぬとするのならば、『寄生竜』の数を持って取り囲み飽和攻撃をすればいい。

 けれど、『寄生竜』たちが如何なる支持を受けているのかはわからぬが、彼等は突出してきた者だけを取り囲み消耗させるように襲いかかってくるのだ。 
 それは先行した猟兵達の戦いを見てもわかるものである。
「まさに竜の巣と言った様相だけど。敵の策略と思って良いだろうね」
 フォルクの瞳は『寄生竜』たちの動きから、敵の首魁の目的を見抜く。
 彼等はただの消耗品だ。
 この戦法ではいたずらに戦力を消耗するだけで、敵を仕留めるには至らない。ならば、こちらの消耗……少年『エイル』と『セラフィムV』が疲弊しきったところを首魁が襲うことが目的なのだろう。

「敵の目的は、やはり彼等か。しかしこの数。相手をしていたらキリがない。少し楽をさせて貰おう」
 フォルクは数多の資料を顕現させ、呪詛を与える呪装銃を手に取り、込められた力を開放する。
 放たれた弾丸は『寄生竜』たちに幻覚を見せるものでもあった。
 誘いの魔眼(イザナイノマガン)とも呼ばれるフォルクのユーベルコードは、闇に浮かぶ瘴気纏った不気味な無数の赤眼を呼び寄せ、呪詛を放つ。

 赤い眼は、『寄生竜』たちに殺意を抱かせる。
 本来の彼等の感情ではない。呪詛に寄って引き起こされた偽りの感情でもあった。けれど、その呪詛は必ず肉体と精神を蝕む物となって『寄生竜』たちを飲み込んでいく。

「常世を彷徨う数多の怨霊よ。禍々しき力を宿すものよ、その呪詛を解き放ち。混沌の眼に写る魂を混沌の底へと誘い連れ去れ」
 放たれる呪詛は集団を恐慌させ、五感を狂わせる。
 互いの距離もわからず、空中で激突しては雲海に沈んでいく。もはや呪装銃を放つまでもない。
 フォルクの周囲に飛ぶ赤眼が、呪詛でもって『寄生竜』たちを自滅させていくんのだ。
「どうなってる……奴ら勝手に堕ちていくぞ……?」
 飛空艇を操縦する勇士たちが混乱するのも無理なからぬことであった。
 彼等の目の前では、フォルクが何をするでもなく『寄生竜』たちの自滅が起こっているのだ。

 空域の中心に迫るためには好都合であるが、どこか薄ら寒さも感じさせるものであったことだろう。
 それをフォルクはフードの下で苦笑する。
「この程度の集団なら統制を見出せば、落とすのは難しくない。戦いは数だけじゃないということさ」
 フォルクはそう訳ないことであると言いながら、飛空艇の甲板上に立つ。

 彼の瞳はもう浮島にしかない。
 きっとあそこにこの事件の首魁がいる。必ずこちらを確認しているはずだ。浮島、その中にある玄室は広いはずだ。
 敵の目的が『エイル』と『セラフィムV』である以上、彼等だけで玄室に向かうのはあまりに無策。
 ならばこそ、フォルクは赤眼と共に浮島周辺を見やる。
 入り口は一つ。
 ならばこそ、猟兵達は首魁の目論見を打破しなければならない。如何にして首魁が彼等を手に入れようとするのか、フォルクは其処にこそ思いを巡らせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『侵す者』にて

さて、次はあれか。ふむ…陰海月、例の【それは虹のように】を。
さて、少年。それに勇士達。陰海月を見て楽しむがよい。それが勝利への道ぞ。

うむ、敵の動きが鈍くなったな。そういうものなのだ。
わしはわしで、灰遠雷に雷+炎+風属性攻撃を乗せていかけよう。
ちと風で『疾き者』の力を借りとるがな。

はは、この程度でわしらを止められるとは思うなよ…!


陰海月、甲板にて踊ってる。ついでに結界術張ってる。ぷきゅ
霹靂、引き続き体当たりで蹴散らす。お友だちは強い。クエッ!



 飛空艇の進む先に阻むようにして魔獣である『寄生竜』たちが群れをなして、目的である空域の中心である浮島を囲っている。
 それは防衛していると言うよりも、突出してきたものを優先して遅い、消耗させるのが目的であった。
 多くの猟兵たちがそう看破したように、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その一柱である『侵す者』もまた敵の目的に気がついていた。

『寄生竜』たちが本気で飛空艇を排除しようとするのならば、その数に任せて包囲して火球を放つという飽和攻撃で持って仕留めればいい。
 けれど、それをしないということは示す事実が一つしかないことを証明している。
「さて、次はあれか。ふむ……『陰海月』、例のそれは虹のように(ゲーミングカゲクラゲ)を」
『侵す者』の言葉に陰から飛び出ていた『陰海月』が、ぷきゅ! と返事をしてユーベルコードに輝く。

 見たこともないような輝きに包まれる『陰海月』の身体は、ブルーアルカディアの人びとにとって奇異なる輝きであったことだろう。
 虹の色以上の色数で輝く『陰海月』の姿は、その空域に居た者すべての視線を独り占めにするものであった。
 ゆらゆらと輝くダンス。
 それはまさにゲーミングカラー……即ち1680万色。
 気の遠くなるような光の数に勇士も少年『エイル』も目がチカチカするような思いであった。

「さて、少年。それに勇士たち。『陰海月』を見て楽しむがよい。それが勝利への道ぞ」
『侵す者』に沿う言われても、どう楽しんでいいのかわからない。
 あのなめらかに色が変わっていく姿は、ただぼんやり眺めているだけでも心癒されるものであったこだろう。
 海月の姿は水槽でみれば、不思議なリラクゼーション効果があるものだ。
 それがゲーミングカラーに輝くのであれば、それはいわばダンスホールのミラーボールのようなものであったことだろう。
 
「こ、これって……」
 勇士や『エイル』はその光景に見惚れるばかりであった。
 実際にそうであろう。いくらなんでも突拍子がなさすぎるのだ。特にブルーアルカディアの世界にあっては、こんな輝きを放つ明かりはない。
 不可思議なものはあれど、見慣れぬものを見た時、人は方針するのかもしれなかった。
『陰海月』の楽しげな、それでいて不思議な魅力の前に心は沸き立つのだ。
 けれど、『寄生竜』たちは違う。ゲーミングカラーに苛立つように火球を口腔より放とうとして、おのれ達の動きが遅くなっていることに気がつく。
「うむ、敵の動きが鈍くなったな。そういうものなのだ」
 我らの癒やし要員『陰海月』のダンスは未だ終わらず。ゲーミングカラーに輝く戦場になって、『侵す者』が弓引く強弓から放たれる雷と炎、そして風の力を織り交ぜた矢が宙を駆け抜ける。

 四柱の一柱である『疾き者』の力を借り受けて放たれる矢は迅雷のように駆け抜け、次々と『寄生竜』たちを貫いていく。
「ぷきゅ! ぷきゅ!」
『陰海月』が、そんな『侵す者』たちとは裏腹に楽しげにゆらゆらとダンスを続けている。
 ついでに結界を張り巡らせ、『霹靂』もまた動きの鈍った『寄生竜』たちを体当たりで持って蹴散らしていく。
 互いに友達だと思っているからこそのコンビネーションであろう。

「互いの役割を理解し、どのようにして動くかを理解する。それはおのれを知ることにも繋がるであろうよ。自分が何をしようとし、他者が何を得ようとしているのか。相互理解こそが、互いの連携を高める一因」
 なればこそ、『侵す者』はおのれと同じ才を持つ少年におのれ達の戦いを見せることによって、護る者としての役目を果たすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルビィ・フォルティス
わたくしたちのお仕事は終わりかと思いましたけれど、そうはいかないようですわね。
しかもこの竜は……次が本番、ということですわね。

それでは、手早く済ませましてよ。エイル様、準備はよろしくて?
それなりの早さですけれど、わたくしを捉えるにはまだまだ足りませんことよ。
須臾の剣風を使用、寄生竜の火炎玉を発射する反応の早さを上回る速度で飛翔し、アドウェルサと巻き起こすかまいたちで敵を切り裂いていく。
切った敵は飛空艇に近いものは魔力で起こした風で甲板へ運んで回収する。

ふふ、いい感じに体が温まってきましたわ。
さぁ、まだ踊って頂けまして?



 猟兵達の目的は『竜の巣』、『凶鳥の嵐』を突破して空域の中心部である浮島へと少年『エイル』と青い鎧の巨人『セラフィムV』を送り届けることであった。
 ゆえに凶鳥たちが退いた後は、己たちの仕事は終わったものだと思っていた、ルビィ・フォルティス(空の国の家出娘・f33967)は自身の目の前に広がる浮島を囲うようにして防衛している魔獣『寄生竜』の姿に長剣を構える。
「わたくしたちのお仕事は終わりかと思いましたけれど、そうはいかないようですわね」
 それは未だ猟兵としての戦いが終わっていないことを示す。

 魔獣、オブリビオンの首魁が浮島に存在しており、この『寄生竜』たちを手繰るというのであれば、ルビィは手早く済ませようとさえ思ったのだ。
 問題は手早く解決する。
 迅速果断。それがルビィという猟兵を端的に示す言葉であったのかもしれない。
 彼女のエンジェルの翼が羽撃き、飛空艇の甲板上から離れる。
「それでは、手早く済ませましてよ。『エイル』様、準備はよろしくて?」
 己の速度を捉えるには未だ足りないだろう。
 何せ、それ以前に『セラフィムV』は単身で飛ぶ能力を未だ有していない。『セラフィムV』の瞳が輝いているが、何が機能しているのかさえ、猟兵も『エイル』もわからないのだ。

 けれど、確実に『セラフィムV』はルビィの空中での起動を見ている。
「それなりの速さですけれど、わたくしを捉えるにはまだまだ足りませんことよ」
 その瞳に輝くユーベルコードは、ルビィの身体を凄まじい飛翔速度でもって縦横無尽に、それこそ迅雷の如く駆け抜けさせる。
 名付けるのならば、須臾の剣風(シュユノケンプウ)。
 彼女は戦場となった『凶鳥の嵐』の中を飛翔し、羽ばたくたびに『寄生竜』が翼を切り裂かれ、または胴を両断されていく。
 それはすれ違いざまの鎌鼬と剣による斬撃。

 鋭い一撃は、『寄生竜』たちに己が切られたという感覚させ与えぬままに絶命せしめ、さらに斬撃に寄って両断した遺骸は飛空艇の甲板上へと魔力の風でもって送り届けるのだ。
「すごい……」
「いいえ、まだまだこれからですわよ。見えているのならば、『エイル』様も剣を習うべきでしょう」
 流麗ながら鋭い剣撃。
 放たれる剣閃は鋭く。
 肉と骨とを断ち切る一撃は、わずかのズレもない。
 それを見上げる『エイル』の瞳にもまた、その剣術は納められていく。
 武は天賦の才能を持つ少年にとって、ルビィの動きはこれから如何なるものへと昇華していくのだろうか。
 ルビィは見稽古のごとく『エイル』が己の動きを捉えていることに気がついただろう。

 未だ幼き少年であれど、将来が楽しみだと思えるほどであっただろうか。
「ふふ、いい感じに身体が温まってきましたわ」
 だが、それでもルビィの限界は此処ではない。
 いわば今までの攻撃は体を温めるための準備運動にしか過ぎないのだ。これ以上があるとルビィは瞳で『エイル』につげ、どこまで彼が己の動きを模倣できるのかを試したくなるだろう。

 ゆえに彼女は優雅に微笑んで『寄生竜』たちを前に長剣を構えるのだ。
「さぁ、まだ踊って頂けまして?」
 彼女にスタミナ切れという概念があるのかどうか。
 在るとは思えぬほどの戦いぶりで持って、戦場を席巻し、彼女は『寄生竜』の遺骸を山のように飛空艇の上に積み上げていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スリジエ・シエルリュンヌ
ふふ、エイルさんからも正式に依頼を受けましたから。
桜色の文豪探偵、参ります!

私自身は飛空艇で結界を張り続けてますね。
ですから、それに気づかれたとき。きっと私は狙われるでしょうね。

それが狙いなのです。今回は隠してましたが、桜のガンシップはこの飛空艇を追走していたんです…!
ですから、敵にとっては警戒もできないものになった。そんなものから魔砲撃が飛んできたら、避けられませんよね?放てーっ!

時として、探偵自身も囮になることがある。そういうことぇすよ!
…まあ、亡きお養父さまが知ったら、怒られそうですけれど…。



 探偵は時として依頼人を伴うものである。
 不可解な事件を読み解く探偵にとって、必要な登場人物であるし、同時に守らねばならぬ対象でもあるだろう。
 スリジエ・シエルリュンヌ(桜色の文豪探偵・f27365)は少年『エイル』の頼みを聞き入れた。
 それは依頼という形でスリジエがなし得なければならぬ戦いの始まりでも在った。
「桜色の文豪探偵、参ります!」
 気合十分に彼女は飛空艇の甲板上に立ち、船体を結界術で覆う。

 それは猟兵達によって張り巡らされた飛空艇の防御であったが、迫るオブリビオン、魔獣『寄生竜』たちの口腔より放たれる火球を防ぐには未だ不十分であった。
 放たれるユーベルコードの火球は、結界術やそれに類するものであっても、一撃二撃は防げたとしても、周囲から砲撃され続ければ、打ち破られてしまう。
 けれど、それでも幾度も張り巡らされれば『寄生竜』たちも己の火球を防ぐ結界を生み出す者を見つけるだろう。
「やはり気が付きましたね」
 スリジエは、己が結界を張り飛空艇を守っている主でると敵に知られることまで織り込み済みであった。

 迫る『寄生竜』たちが猟兵達の戦う戦列を突破して飛空艇に迫る。
 スリジエさえ打倒してしまえば、飛空艇を護る防御は立ち消えてしまう。ならばこそ、彼等は少年『エイル』や『セラフィムV』を消耗させるために彼女を狙うのだ。
「それが狙いなのです」
 そう、スリジエは策を講じていた。
 今までブルーアルカディアの世界においては相棒のように頼もしい存在、桜のガンシップに乗っていなかった。
 飛空艇の甲板上から常に敵を見据えていた。

 それは何故か。
「このときのために!」
 スリジエの瞳がユーベルコードに輝く。
 桜流雲(レ・ニュアージュ・クール)のように飛空艇の背後から追走させていた桜のガンシップが一気にスリジエへと迫っていた『寄生竜』たちを魔砲撃の一撃で消し飛ばす。

 完全なる不意打ち。
 新たなる手勢を持って『寄生竜』の接近を許さぬスリジエは、彼等が逃げることができないことまで織り込み済みであった。
 これまで桜のガンシップを頑なに使わなかったのは、この時のために。
 彼女はユーベルコードで桜のガンシップを遠隔操作し、見事な操縦でもって魔砲撃を『寄生竜』たちに打ち込んでいく。

「時として、探偵自身も囮になることがある。そういうことですよ!」
 自信たっぷりにスリジエは言う。
 彼女の亡き養父が見ていたのならば、きっと怒ったであろうけれど。
 それでもスリジエは依頼されたのだ。
 文豪探偵として、謎を解き明かす。
 それだけではなく、少年『エイル』の願いに答えたいと思ったのだ。それは探偵であろうとなかろうと、猟兵でなかろうとも。

 護るべきと感じたものを護るためならば、スリジエはどんなことだってするだろう。
 例え、今回のように己の身を囮にし、危険に晒すことがったのだとしても。
 これだけは亡き養父に叱られたtとしてもやめることはない。
 それだけの決意が彼女の胸のうちにはあったのだ。

 そして、彼女の決意は少年『エイル』にも受け継がれることだろう。
 誰かのためにという思いはすでに下地として彼の中にある。ならばこそ、スリジエは彼の心に善性が育つことを望み、己の持てる力で持って、ユーベルコードの輝きを空の世界に齎すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
機械飛竜ロシナンテⅢに騎乗し戦場へ到着

これより合流し、道中の露払いを勤めさせて頂きます
エイル様は飛空艇の防衛に専念を
これより敵陣の一角を崩して参ります

…あの竜は執着心が強い、ですか?
情報提供、感謝いたします!

推力移動で一気に接近しつつ、飛竜口部砲と片手に構えた連射モードに設定したUCの乱れ撃ちで敵群を撃墜しつつ群れの鼻先を掠めるように離脱

やはり追ってきましたね
飛空艇の防衛には有難い限りです

マルチセンサーでの情報収集で周囲の状況を把握
頭を180度回頭し格納銃器の射撃で挑発しながら急上昇し、減速、落下
追いすがり直線状に並んだ敵群目掛け、追跡劇の間にチャージしたUCを射撃
弾道纏う衝撃波で一掃します



 ブルーアルカディアにおける危険な空域『竜の巣』、またの名を『凶鳥の嵐』と呼ばれる凶暴な鳥の縄張りを機械飛竜が飛ぶ。
 鋼鉄の翼の羽撃きは、それだけで加速し、遅れを取り戻すかのようであった。
 先行した猟兵達のお陰で凶暴な鳥たちの活動が収まっていたのもあったけれど、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は遅れを取り戻すように飛空艇へと追いつき、勇士達に告げる。
「これより合流し、道中の露払いを務めさせて頂きます」
「おお、助かる。騎士の旦那!」
 勇士たちが飛空艇の中から機械飛竜『ロシナンテⅢ』に騎乗するトリテレイアに手をふる。

 甲板上には青い鎧の巨人『セラフィムV』と少年『エイル』の姿もあった。
「『エイル』様は、飛空艇の防衛に専念を」
「あなたはどうするつもりなんです。まだ魔獣の数は多い……!」
 少年『エイル』はこれまでの猟兵と魔獣『寄生竜』との戦いを見て、彼等の戦術が突出した者を集中的に叩き、消耗させるところにあることを知っていた。
 それに『寄生竜』は一度目標に定めた存在に対する執着が強いこともある。
「これより敵陣の一角を崩して参ります」
「突出しては駄目なんです。あれらは、突出してきた皆さんを集中してたたきに来る……! 」
 その言葉にトリテレイアはマルチセンサーでもって飛来する『寄生竜』の姿を捉える。

 小型とは言え竜種。
 油断しているわけでもないし、慢心しているわけでもない。
 その情報はありがたいと彼は礼を述べ、機械飛竜と共に大空へと舞い上がる。推力移動で一気に接近し、機械飛竜の口腔より放たれるコアユニット直結供給式対人・対艦兼用電磁投射砲(ダイレクトコネクトレールガン)が『寄生竜』たちを打ち払う。
 それは標的である『寄生竜』の鱗の強度まで計算に入れたチャージ時間によって、速射モードで放たれる。

 例え、一撃で鱗が抜けなくても、二撃三撃と卓越した技量で持って撃ち込まれる弾丸は、『寄生竜』たちを貫き血飛沫を舞い散らせることだろう。
「なるほど。電磁加速によって得られた一撃ならば、鱗を引き剥がす、ないし損害は与えられると……ならば」
 機械飛竜が『寄生竜』たちの一群の鼻先をかすめるようにして飛ぶ。
 それはいわば挑発的な行為であった。
 執着が強いというのならば、敵の群れを自身に引きつけることができる。そうなれば、飛空艇へ向かう『寄生竜』の数を減らせるというものだ。

「やはり追ってきましたね」
 好都合そのものである。トリテレイアは、やはりこの群れが完全に上位存在に寄ってたぐられているわけではないことを理解する。
 彼等はある程度の戦術を与えられているだけで、臨機応変には行動できないのだ。
「一撃で貫く時間は得ました。やはり浅はかであると言わざるを得ないでしょう。将を気取るのならば、戦術を与えるだけではなく」
 トリテレイアは己の頭部を百八十度回頭させ、頭部の格納銃器で『寄生竜』たちを牽制する。

 大空へと舞い上がった機械飛竜が太陽を背に受けて逆行になった瞬間、彼は共に急降下し、己を追って一直線に成った『寄生竜』たちに機械飛竜の口腔より放たれる電磁加速された弾丸でもって一撃のもとに貫くのだ。
「串刺しとまではいきませんが……これで!」
 弾道は周囲の空気を巻き込んで衝撃波と成って迫る『寄生竜』たちを薙ぎ払い、そしてトリテレイアは雲海にふれるギリギリで機械飛竜を再び空へと舞い上がらせる。
 敵の数は未だ多い。

 けれど、それでもトリテレイアは知るだろう。
 空域の中心、浮島の内部、その玄室に潜む敵、この群れの将たる屍人帝国『オーデュボン』のオブリビオン。
 それが将と呼ぶにはあまりにも素人であることを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
鳥の次は竜か。もう、このまま浮遊島まで飛空艇で行こうぜ。
先刻と同様の甲板の上で魔力を解放。(『神魔審判』の発動)
自身を起点に半径100mの魔力の結界を構築。
飛空艇を覆います。

その後は真っすぐに浮遊島に舵を取らせましょう。
近づく竜は結界に触れた瞬間に破壊消滅の魔力が襲います。
また、万が一、滅びながら飛空艇に一太刀いれたところで次の瞬間『再生復元』しています。

さーて、ゴールまでもう少しか。
エイル君、この先の目的地にはこの竜どもを操っている奴……
オーデュボンでもそこそこの地位の奴が待ち構えている。
何か言いたいことがあれば今のうちにまとめとくと良いぜ。
ハハハ、さっさと言わないと俺等が斃しちまうからな。



「鳥の次は竜か」
 そう呟いたのは、アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)であった。
 彼の視線に先にあるのは、この『凶鳥の嵐』の中心部である浮島。
 それを護るように囲っている魔獣『寄生竜』の群れであった。明らかに人為的に操作されているであろう群れ。
 しかし、それは戦術をただ組み込まれただけの存在であり、臨機応変にはあまりにも程遠いものであった。

 まるで敵を消耗させるためだけの捨て駒にしているような『寄生竜』たちの戦い方をみて、アレクサンドルは少々面倒だなとさえ思ったのだ。
「もう、このまま浮遊島まで飛空艇で行こうぜ」
「だが、まだ敵が残っているんだ。あの寄生竜はたしかに小型だけどよ。竜種には違いねぇんだ」
 勇士たちがあれだけの数を前にして、飛空艇が保たぬことをアレクサンドルに告げる。

 アレクサンドル単身であれば、あの程度の敵などわけないことであるが、それでも飛空艇は無事ではすまないだろう。
 そうなると帰り道に困るのは明白である。
 しかたねぇな、とアレクサンドルは己の瞳をユーベルコードに輝かせながら、その魔力を開放させる。
「神魔審判(テキカミカタデオオチガイ)――味方には生を敵には死をってヤツだ」
 そのユーベルコードは己を機転として、強力な再生復元魔力によって、損害を解消していく。

「な、なんだこりゃあ!?」
 勇士たちが驚くのも無理なからぬことであった。
 アレクサンドルの張り巡らせた魔力は船体の損害を再生復元魔力によって回復させ、そして同時に迫る『寄生竜』たちが触れた瞬間、絶大なる破壊消滅魔力によって消し飛ばしていくのだ。
 それはいうなれば、『凶鳥の嵐』で先んじて襲ってきた凶鳥たちのように飛空艇を一つの弾丸のようにしたようなものであった。

「あーあー、大丈夫だから。このまま浮島に進路を真っ直ぐにな」
 アレクサンドルは気にするなというように勇士たちに手を降って甲板上でユーベルコードを維持し続ける。
『寄生竜』の群れはまだいるであろうし、己のユーベルコードの効果が切れるまでは飛空艇の無事は保証されたようなものであった。
 甲板上で戦う者たちにとっては、僅かな間の小休止と言ったところであろう。
「さーて、ゴールまでもう少しか」
 ふむ、とアレクサンドルは少しばかり気にかけている少年『エイル』へと声を掛ける。

 彼にしては珍しいことであったけれど、少年『エイル』はこちらに気がついて首をかしげる。彼が何かを言おうとしていることに気がついたのだろう。
「『エイル』君、この先の目的地には、この竜どもを操ってるヤツ……『オーデュボン』でもそこそこの地位のヤツが待ち構えている」
 アレクサンドルは告げる。
 それはきっとこの戦いの展開を変えるものであるかもしれなし、ただの小者であるかもしれない。
 けれど、一区切りにはなるはずだと直感していた。

「何か言いたいことがあれば今のうちにまとめとくと良いぜ」
「いいたいこと……」
 そう言われてもピンとは来ていないのだろう。いや、言いたいことは沢山あるだろう。けれど、それをこの事件の首魁から答えを得られるとは思っていなかったのかもしれない。
 けれど、アレクサンドルにそう言われて、『エイル』も思うところが在ったのだろう。静かに頷くのを見て、アレクサンドルはまた気楽に笑うのだ。

「ハハハ、さっさと言わないと俺等が斃しちまうからな」
 なんて、冗談じみたことを言いながら、けれど『エイル』はそれがあながち冗談には聞こえないことを知っている。
 これまで猟兵達の戦いを見て、知って、体験してきた彼だからこそ、アレクサンドルに苦笑いを向けることしかできなかった。

 それでも、そんな笑みが生まれることに彼の張り詰めた心が解きほぐされていたことをアレクサンドルはどう思っただろうか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【勇者パーティ】

これは……この数……当分お肉には困らなさそうですね。
竜肉は美味しいですし、これはチャンスではないでしょうか!

問題があるとすれば保存ですけど、
そこは師匠の得意な冷凍保存ならなんとかなりますよね。

ステラさん、いきましょう!

って、あれ? ステラさんは食べないんですか?
さっきの鳥よりは、食べられそうな気がするのですが!
『エイル』さんも竜肉、食べたいですよね!

……なるほど、エイルさんを巻き込めばいいんですね。

師匠、わたしたちも行きましょう。
あ、『セラフィム』さんはここにいてください。鉄板、冷やさないでくださいね。

飛空艇の上空に来た竜を【Canon】で墜として、食材げっとがんばりますよ!


ステラ・タタリクス
【勇者パーティー】
くっ…私とエイル様の蜜月を邪魔するなんて
エイル様から離れるのはとってもとーっても名残惜しいのですが
あなたのメイド、ステラ行って参ります

えールクス様あれはちょっと
エイル様がお腹壊したらどうするのですか
ただ、フィア様に働いてもらう対価としては上々ですね
承知しました
出来る限り傷なく新鮮に仕留めましょう

『アンゲールス・アラース』を装着
空へ飛んで竜の群れに突撃
『ニゲル・プラティヌム』を使った【スクロペトゥム・フォルマ】で接近戦&零距離射撃
程よく叩いて美味しくして差し上げます

フィア様の魔法に巻き込まれる前に離脱しましょう

セラフィムV様が鉄板になっている間に
私はエイル様を頂きますね(抱っこ


フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「今日は竜肉パーティーだな!」(第一声

肉が鉄板に飛び込んでくるとはこのことよ!(そんな格言ありません

「さあ、ルクスよ、料理の準備をするのだ!
我は肉を瞬間冷凍してくれるわ!」

あ、鉄板Vはさがっておれ。
せっかくの鉄板が冷めてしまっては困るからな。

ルクスとステラが落とした竜を【極寒地獄】の魔法で氷漬けにして、飛空艇の船倉に放り込んでいこう。

「うむ、これだけ肉があれば、毎日竜肉パーティーができるな!」

そして、我の鋭い視線は、青きゴーレムの動きを見逃しはしない。
そうか、この先にお前の……鉄板Vの求める究極の肉が眠っておるのだな。
その目的、美少女魔術師であるこの我も協力してやろう(じゅるり



 魔獣『寄生竜』の群れを見て、勇者パーティの面々の反応は三者三様であった。
 いや、二者に関しては完全にやることが一緒であった。
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)とフィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は今晩の食材の決定を喜んでいた。
「今日は竜肉パーティだな!」
 まさに第一声がこれである。
 いつも食欲と直結であるのは、彼女にとっては仕方のないことである。魔術の行使に凄まじいカロリーを消費するのだ。
 となれば、やはり問題は食事である。
 生半可なものでは、彼女の胃袋は膨らまないし、彼女の弟子であり胃袋をがっちり掴んでいるルクスにとっては悩ましいところであった。

 質より先に量が必要になるのだ。
「これは……この数……当分お肉には困らなさそうですね」
 竜肉はたいてい美味しいものであるし、これはビッグチャンスであるとルクスは奮起した。
 問題があるとしたのならば、一つは保存問題がある。
 いつまでも保存しておくことはできない。けれど、こっちには師匠の冷凍魔術ならぬ極寒地獄(コキュートス)があるのだ。
 まあ、なんとでもなるはずだ。たぶん、めいびー。お腹壊しても師匠だけだし、とは思わないのがルクスの良いところである。
「さあ、ルクスよ、料理の準備をするのだ! 肉が鉄板に飛び込んでくるとはこのことよ!」

 なんか格言めいたことを言っているが、そんな格言はないし、彼女の言うところの鉄板とは即ち『セラフィムV』である。
 もう正式名称を覚えるつもりはないな、これと誰もが思ったし、『セラフィムV』は知ってか知らずか、フィアが近くにいると自身の熱量を装甲に伝えればいいんだな、くらいには思っていたのかもしれない。
 飛空艇の甲板上で立ち上がった『セラフィムV』をフィアは手で制した。
「あ、鉄板Vは下がっておれ。せっかくの鉄板が冷めてしまっては困るからな」
 ああ、もう鉄板って言ってる、と少年『エイル』はちょっと肩を落とした。
 もうあの人には訂正しても訂正されることはないんだろうなとさえ思っていたが、今は自分のほうがピンチであった。

 それは――。

「くっ……私と『エイル』様の蜜月を邪魔するなんて。『エイル』様から離れるのはとってもとーっても名残惜しいのですが!」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、ひしっと隙のない護衛(物理)によって少年『エイル』を抱きしめ続けていた。
 ちょっとした隙にいつも『エイル』は背後を取られていた。
 天賦の才能、武の天才とも言われる才能の片鱗を見せる彼であってもステラの謎の技術を前にはかたなしであった。
「――……えっと」
「ですが! あなたのメイド、ステラ行って参ります!」
 気合十分。『エイル』分充填完了とばかりにステラが名残惜しげにチラチラ見てくる。

「い、いってらっしゃい……」
 もうそういうほかない。何がどうなってこんなことになっているのか『エイル』は未だよくわかっていなかったが、ステラの琴線にふれるところがあったのだろう。
「ステラさん、いきましょう!」
 ルクスが共に戦うためにステラの気合十分な姿に、若干引いてはいたが、とても頼りになることには間違いない。
 なので、ルクスは敢えて『エイル』に関しては触れないでいた。下手なことを言うと、こう、あれなことになりそうなのが目に見えていたからだ。

「いえ、ルクス様。あれを食するというのはどうかと。『エイル』様がお腹壊したらどうするのですか」
「あれ? ステラさんは食べないんですか? さっきの鳥よりは、食べられそうな気がするのですが!」
 これは困ったことになる。ステラの戦力がないと師匠のフィアの胃袋を満たすための量が取れない。
 そうなっては困るルクスはひらめいた。
 そうなのである。ルクスやフィアが『エイル』をどうこうしようとするから、ステラがなんかおかしなスイッチを入れてしまうのだ。

 ならば。
「『エイルさんも竜肉食べたいですよね!」
「え、あ、えっと、あっはい」
『エイル』が何か察したようにうなずいたのをステラは見逃さなかった。
 瞬間、ステラが天使核より得られた力を持って飛翔し、超近接の銃撃戦でもって『寄生竜』たちを次々に撃ち落としていくのだ。
 一瞬であった。
 割りとマジで。え、と思った瞬間にはステラが空に舞い上がり、遅れて甲板上に『寄生竜』の遺骸がぼとぼと堕ちてくるのだ。
 正直マジでちょろいなと思わないでもなかったが、ルクスは『なるほど、エイルさんを巻き込めばいいんだな』というのを心に刻む。

 かの少年を出汁に使えば、ステラは容易に釣れる。
 それをルクスは声に出さずに実行しつつ、ルクスはフィアに向かったが、すでに師匠たるフィアはユーベルコードに寄って『寄生竜』の遺骸を氷漬けにする作業に勤しんでいた。
 仕事が速い。速すぎる。
「うむ、これだけの肉があれば、毎日竜肉パーティができるな!」
 フィアのごきげんな顔を見て、ルクスも嬉しくなってしまう。食費のカバーはどうにかなりそうだった。
 鉄板と呼ばれた『セラフィムV』がなんだか所在なげであったけれど、ルクスもまたフィアとおんなじ位の感覚であった。

「あ、『セラフィム』さんは此処に居てください。鉄板、冷やさないでくださいね」
 なんて言いながら、バイオリンによって奏でられる不協和音――じゃない、Canon(カノン)による破壊音波魔法を解き放ち、『寄生竜』たちを次々とたt回落としていく。
 食材ゲットに余念のないルクスは、師匠を喜ばせるために奮起する。ステラはステラで後でいっぱい『エイル』に褒めてもらおうと、戦いの最中チラチラ視線を贈っているのがなんか気になる。

 フィアはフィアでまた別の勘違いをしている。
「ふっ、わかっているぞ、青きゴーレムよ。この先にお前の……鉄板Vの求める今日巨躯の肉が眠っておるのだな。その目的、美少女魔術師であるこの我も協力してやろう」
 じゅるり。
 涎タレてるし、出てるし、溢れてるし、出しすぎだけど。
 けれど、フィアはまだ知らないのだ。この先にある浮島の玄室に座す存在が、肉とは無縁のひょろがり魔道士であることを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
結構な数の群れだね
ガトリングガンで攻撃して
近くのを落としても処理がおいつかないか

一体一体はそこまで強くないみたいだし
こちらも数で対抗しようか

エイル君、道を拓くから進む準備をしておいて

鉑帝竜を呼んで乗り移ろう
金属化の能力を使って
敵を金属に変えて取り込んで
そこそこ大きくなってるね

複製創造で金属を供給しつつ
生命創造で竜型使い魔を創っていこう
指揮は任せたよ

任せて下さいなのですよ
浮島と飛空艇の間に道を作るように
使い魔のみんなに動いて貰いましょう

隊列を抜けてきたのはわたしが相手するのです
噛みついたり尻尾で叩き落としたりするのですよ

僕は飛空艇を狙ってるのを
レールガンで撃ち落したり
神気で動きを止めたりしてるよ



 未だ『凶鳥の嵐』たる空域の中心部である浮島を囲う魔獣『寄生竜』たちの数は、猟兵達によって数を減らされたとしても、飛空艇が無事に浮島に接岸することを拒むようでもあった。
 近づいた瞬間に『寄生竜』は戦いの趨勢が決した後であっても構わず突撃してくる。
 その爪や牙は鋭いものであり、油断すれば即座に取り囲まれて餌食となってしまうだろう。
「結構な数の群れだね」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は飛空艇の甲板上に立ち、迫る『寄生竜』たちをガトリングガンの斉射でもって撃ち落としていく。

 けれど、数でもって圧する魔獣を前にしては、どれだけ近づいた『寄生竜』を片っ端からたたきとしたとしても、処理が追いつかない。
 このままではジリジリと消耗させられるだけであると晶は考え、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「晶さん、何を――」
 少年『エイル』が晶の様子に声をかける。
 晶が何をするのかを彼は理解していなかったのだろう。

「数には数を。こちらもそれで対抗するだけさ。『エイル』君、道を拓くから進む準備をしておいて」
 その言葉とともに呼びつけていた鉑帝竜が神気を纏う。
 それは防護幕とも取れる神気でもって巨竜形態へと変身し、迫る『寄生竜』たちを金属に変えていく。
 敵を打倒するだけではない。
『寄生竜』が変じた金属を持って、己の使い魔として変性させ、内放つのだ。
「うん、そこそこ大きく成っているね。指揮は任せたよ」
「ものどもかかれー、なのですよー」
 使い魔たちが一斉に両手を上げる。

 それは帝竜の軍勢(エアリアル・アーセナル)とも呼ぶべき大量の金属の竜と化した使い魔たちの群れであった。
『寄生竜』たちの数が如何に多かろうが、圧倒的な物量ですりつぶすかのような勢いで飛ぶ使い魔たちを防ぐ手立てはないだろう。
 道を切り開くように浮島へと至る空を使い魔たちが『寄生竜』を排除しながら掃除していく。

 それはあまりにも圧倒的な光景であったことだろう。
『寄生竜』たちは片っ端から金属に変えられ、即座に使い魔として変性される。そのまま弾丸のように次なる『寄生竜』を叩きのめし、また金属に変えていく。
「この隊列を抜けたとしても、わたしが相手するのです」
 巨竜へと変じた鉑帝竜が咆哮し、その牙と尾でもって『寄生竜』たちを薙ぎ払っていく。
 在るものは吹き飛ばされ、浮島の大地に叩きつけられる。在るものは牙によって引き裂かれ、雲海に沈んでいく。

 それは戦術と呼ぶにはあまりにも単純な攻撃しか仕掛けてこない『寄生竜』たちにとっては、蹂躙と呼ぶに相応しいものであったことだろう。
「さあ、行こう。もう目的の場所はすぐ其処だ」
 けれど、油断しては駄目だよ、と晶は『エイル』に呼びかける。

 そう、彼等の目的の場所は浮島の玄室。
 されど、その中には屍人帝国『オーデュボン』の手の者が存在している。それを知るからこそ、晶は『エイル』と『セラフィムV』にもしものことがあってはならぬ警戒しているのだ。
 きっとここを乗り越えることができたのならば、屍人帝国『オーデュボン』との戦いも様相を変えることだろう。

 ならばこそ、一歩を恐れず、されど油断せずに進むことが肝要なのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
ふうん、明らかに異常な数の竜…ね
何が待っているのやら
ま、数が多い方が楽しいし、取り分多くなって良いんだけどね
…でも回収する暇あるかなあ


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
敵が数で来るなら…こっちも数で押す!
【光剣解放】起動
全部で1110本、これだけあれば目を瞑っていても当たる
目標は手当たり次第に、攻撃パターンはまず翼を『串刺し』にして機動力を奪って後は流れでドンと!
ま、これだけ数が居れば天使核だけで十分な儲けかな…
素材の事は気にせずにオートで射出!
私は飛空艇に残って接近する寄生竜に対処
遠距離から『斬撃波』で牽制をかけつつ『吹き飛ばし』て近寄らせないように動こう
稼ぎ場稼ぎ場



『凶鳥の嵐』と呼ばれる空域に存在する中心たる浮島。
 その中にある玄室こそが少年『エイル』と青い鎧の巨人『セラフィムV』の目的の地である。
 ならば、そこを護る魔獣たちの群れが異常な数であるのならば、屍人帝国『オーデュボン』の息がかかっていることは言うまでもないだろう。
「ふうん、明らかに異常な数の竜……ね。何が待っているのやら」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)はきっと、浮島の玄室に何が待っていたとしても、驚くことはないかもしれない。
 むしろ、がっかりだよ、と肩を落とす確率のほうが大きいかもしれない。

 けれど、それでも彼女の商機見逃さぬ瞳は『寄生竜』の異常な数に向いていた。あれは割りとマジでいいお金になりそうである。
 小型であれど、竜種には変わりない。
 倒しやすいとは言っても、それは他の竜種に比べればの話である。本来ならば、こんなにも異常に発生しても全てをまるっと打倒することなどできないのだ。
「なら、あれ結構いい値段で取引できるよね?」
 玲は勇士達に尋ねる。
 これまでも結構な数の『寄生竜』たちが猟兵達によって打倒されてきた。
 もう彼等には理解が及ばない範囲にまで話が広がっているようにさえ思えてならなかった。

「よっしゃ、じゃあがんばろっかな!」
 玲が抜き払った二振りの模造神器の刀身が蒼く煌めく。敵が数で圧するというのならば、己もまた数で圧するのだ。
 彼女はそれができる猟兵である。
 輝くユーベルコードの煌めきと共に、光剣解放(セイバー・リリース)の機能が発露する。
 彼女の周囲に生み出されたのは、千を越える光剣であった。
 複雑に幾何学模様を描き飛翔する光剣の群れは、膨大すぎるの一言に尽きる。

 空を埋め尽くす眩い光剣の輝きは、『寄生竜』たちの目をくらませるには十分であった。
「うおまぶしっ、ってわけじゃあないけれど、これだけあれば目を瞑っていても当たるでしょ」
 けれど、目を瞑っていてもと言いながらでも、玲の光剣の操作は卓越したものであった。
 放たれた光剣が『寄生竜』の翼を串刺しにし、機動力を奪っては手当たりしだいに甲板上に叩き落とし、その頭蓋を光剣が一撃のもとに貫く。

 釣った瞬間にシメているようなものである。
 流れるような作業。ちょっと作業BGMが欲しくなるなと思わないでもなかったが、これだけの天使核が手に入るだけでも十分な設けである。
 玲の頭の中では高速で計算が進んでいる。
 素材もまた計算に入れてもいいのだろうが、まずは何はなくとも天使核である。
「うんうん、こういうボーナスステージは何回やってもいいよね。ハイスコア狙うのなら、効率よく」
 ふんふん、と鼻歌を歌うように玲は甲板上で迫る『寄生竜』たちを牽制を掛けつつ、吹き飛ばし近寄らせない。

 そして、そんな彼女の振るう模造神器を見つめる瞳があった。 
 それは『セラフィムV』であった。その瞳が青く煌めく模造神器の刀身を見つめている。
 何をするでもない。
 これまでのように猟兵達のユーベルコードや動きを観察し、己の中に蓄積してく類ではない。
 ただ、見ている。まるで、それが何であるかを知ろうとしているかのように。
「ん? ま、いいや。稼ぎ場稼ぎ場」
 玲もまた視線に気がついていただろうけれど、それでも今は目の前のボーナスである。
 積み上げた『寄生竜』の遺骸を前に、これならが今月の買いすぎたあれやそれをどうにかできると皮算用しつつ、飛空艇が浮島に接舷するのを見守るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『帝国魔道士』

POW   :    マッドネスメイジ
自身の【知的好奇心と魔道を極めんとする欲望】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    フロストベイン
質問と共に【生命を蝕む魔の吹雪】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
WIZ   :    帝国式魔道弓術
【指を鳴らすこと】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【魔法陣】で囲まれた内部に【巨大な魔法の矢】を落とし、極大ダメージを与える。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『凶鳥の嵐』の中心である浮島に接舷した飛空艇から青い鎧の巨人『セラフィムV』と少年『エイル』が降り立つ。
 浮島の中、玄室と言えど5mほどの大きさを持つ『セラフィムV』が入っても十分なほどにそこは広大であった。
 ぼんやりと光りが灯り、中を照らしている。
 ジメジメとした感触はなく、どちらかと言えば清浄な空気が流れる玄室は、いっそ違和感ばかりであった。

「これはしまったな。来るのは『セラフィムV』と少年ばかりかと思っていたが……思わぬ珍客……いや我らの敵か。まあ、どちらにせよやることは変わるまいよ」
 其処に居たのは、玉座型の富裕層地と一体化した『帝国魔道士』であった。
 彼の身体は天使核の暴走に寄って玉座型浮遊装置とつながっているが、ある程度の自由は聞くのだろう。
 ゆっくりと玉座から立ち上がり、『セラフィムV』と猟兵たちを見比べる。

「……? 君等は『それ』を何故調べていない? 不思議には思わないのか? 何故、こんな代物が在るのか。明らかに異質であろうに。なのに何故、中身を調べない? 割って、解体し、調べてしまえばいいものを。そこにいる少年だってそうだ」
『帝国魔道士』は猟兵たちに敵意はあれど、不可解なものを見るような目で見ている。
 そこにあったのは失望であったのかもしれない。
 彼は真理を求める術者である。
 だからこそ、解体せずにはいられない。つぶさに調べ尽くさねば我慢ならない。他のものも己と同様の欲求を持っているであろうし、そうであるべきだと思っていた。

 真理を求めるからこそ、知識の共有は当たり前のこと。
 だからこそ、猟兵たちが『セラフィムV』や、起動させた少年『エイル』を調べ尽くさぬことに不満を抱いているようであった。
「解せないな。どうしても解せない。なんだ、まさか、人道だとかそういうものを気にしているのか? くだらないな。そんなものを気にしてどうする。生命など替えがきくものだよ」
 彼が見つめているのは『エイル』であった。
『エイル』を調べ尽くせば、必ず『セラフィムV』の中にある真理を得ることができると疑っていない瞳であった。

 猟兵達は何度も見てきただろう。
 過去に歪み、己の中だけにある価値観だけを優先し、それだけが至上のものであると宣うオブリビオンを。
『帝国魔道士』もまた同様である。
「『真理』の前には全てが些細なことだ。生命など価値はない。どうせ全て過去になるのだから」
 彼の瞳に合ったのは真理の探求ではない。
 ただの狂気。

 猟兵たちにとっては取るに足らぬもの。
 されど、『帝国魔道士』にとっては己が己足り得るための狂気。
 ゆえに、互いに知るのだ。
 相容れぬ存在であると。
 滅ぼし、滅ぼされ、最後に立つ者こそが望む者を手に入れることが出来るのだと――。
ルビィ・フォルティス
そこに意味がないからですわ。
わたくしにとってエイル様はエイル様、ヴィー様はヴィー様、それだけですの。
あなたにとっての真理はわたくしにとって枝葉末節にすぎませんことよ。
あなたがわたくしを楽しませてくれるかの方が余程重要ですわ。

自前の翼で飛翔し、アドウェルサから放つかまいたちで空中戦を行う
敵の合図に合わせて熾天の剣姫を使用、三対六翼の翼による飛翔で魔法陣で囲まれた内部から離脱、魔法の矢を回避します。
回避したらそのまま接近、威力が増強されたアドウェルサでの一閃を見舞います。

あなたと同様、わたくしにも道がございますの。
まだ極みには至らぬ身ですけれど……こんなものでは阻めませんことよ。



 浮島の広き玄室の中に座す『帝国魔道士』の背後にあるのは、おそらく青い鎧の巨人『セラフィムV』が求めた宝珠であろう。
 けれど、それを得るためには座す『帝国魔道士』を打倒しなければならない。
 もとより彼はオブリビオンである。
 これを打倒しないという選択肢は猟兵たちにはない。
 どれだけ理性的な言葉を紡ぎ、『真理』を探求しようとしていたのだとしても、その瞳に宿る狂気を見れば、猟兵はまさしく彼がオブリビオンであるところの所以を知るだろう。

「猟兵とは相対して初めて分かるものだな。聞いてはいたが、こんなにも理解に苦しむ存在であったとは。ただ流れに流されるままに漫然と生きているだけに過ぎないのか。何故、『真理』を探求しようとしない? この世界に生まれた以上、それは必要なことのはずだ」
『帝国魔道士』の語る言葉は、どれもルビィ・フォルティス(空の国の家出娘・f33967)の胸に届くことはなかった。
 何故ならば。
「そこに意味がないからですわ。わたくしにとって『エイル』様は『エイル』様、『ヴィー』様は、『ヴィー』様、それだけですの」
 彼女は『帝国魔道士』の言葉を切って捨てる。

 どれだけ『真理』という言葉で着飾ることをしようとも、オブリビオンである彼の行いは全て世界を破滅に導くものである。
 ならばこそ、そこに意味はない。
「愚かだ。そして、同時にあまりにも無意味だ。何故、こんなにも不可解なことをするんだ?」
 このやり取りさえも『帝国魔道士』にとっては布石に過ぎない。
 放たれる魔導の矢がルビィを襲う。

 放たれる魔導の矢は恐らく牽制。
 降りしきる矢を天使の翼を羽ばたかせ、玄室の中を飛び回る。回避事態はできぬわけではない。
 何かを狙っているとルビィは本質的に理解していた。
「あなたにとっての真理はわたくしにとっては枝葉末節にすぎませんことよ。それよりも――」
 そう、それよりも重要なことが彼女にはある。
 手にした長剣を振るい、風がかまいたちとなって『帝国魔道士』が放った魔導の矢を切り裂く。

 容易い。ならばこそ、これが本命ではないことをルビィは感知した。
「あなたがわたくしを楽しませてくれるかの方が余程重要ですわ」
 その微笑みを見た『帝国魔道士』もまた笑った。いや、あざ笑ったのだ。彼女の真理と己の真理が相容れぬことを知り、これ以上の問答など無用であると。
 彼の指が合わさり、打ち鳴らされる。
 瞬間、その合図をもって周囲に点在していた魔法陣が起動する。
 それは玄室という密室空間であれば、避けようのない一撃である。玄室の中で戦う以上、仕掛けられた魔法陣は四隅に配置されている。

 即ち、絶対不可避なる魔導の矢が極大の矢と姿を変えてルビィに襲いかかる。
 ユーベルコードに輝くルビィの瞳と、三対六翼の飛翔速度で持って躱すことのできぬ一撃を彼女は見ただろう。
「――ッ!」
 だが、それを防いだのは青き鎧の巨人だった。
 その胸に『エイル』を乗せ、交差させた腕でもって極大の矢を防ぐのだ。

「ハハハッ! やはり防ぐか! これだけの一撃を!」
『帝国魔道士』が笑う。
 渾身ではないにせよ、放たれた一撃は極大なる一撃であったのだ。それを『セラフィムV』は防いでみせた。
「ルビィさん!」
『エイル』の言葉にルビィの瞳が煌めく。
『セラフィムV』が生み出した一瞬の隙。それは己にとっては未だ極みに至らぬ身であることを示すことであった。
 けれど、彼女は自身を未だ道の半ばであると規定する。

 ゆえに、彼女はためらわない。
 熾天の剣姫(シテンノケンキ)は立ち止まることを是としない。
 神速の踏み込みと共に『帝国魔道士』へと迫るルビィ。それを『帝国魔道士』は見ただろう。
 玉座型浮遊装置から触腕が長剣の一撃を防ごうとして放たれるが、それらを尽く切り裂く長剣『アドウェルサ』の剣閃。

「あなたと同様、わたくしにも道がございますの」
 されど、交錯することはあっても共に進むことはない。なぜなら、過去と未来を見据える違いがあるからだ。
 例え、真理を解明しようとするのだとしても、その真理の先を見ない者に理解はできぬまい。
「こんなものでは、阻めませんことよ」
 ルビィは剣姫としての一撃を『帝国魔道士』にへと叩き込み、血潮を噴出させる。

 彼女は何者にも止められない。阻めない。
 その剣閃の煌めきが在る限り――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

髪塚・鍬丸
狙いはエイル達か。手の内が分からない以上、彼らに近付かせるのは危険だな。
セラフィムと敵の間に立ちはだかる。調べたいなら、俺達を片付けてからにしな。

彼らを庇う様に、あえて吹雪を受け止める。【激痛耐性】で侵食に耐える。
なぜ彼らを調べないのか、と聞いたな。知ろうとしているさ。語り合い、行動を目の当たりにし、共に戦い同行している。それが他人を知るという事だ。

【真·降魔化身法】使用。全身が異形の外骨格で覆われる。
妖怪じみた不死身の再生力でダメージを修復。
外骨格に血を吸われる。強敵だ、構うものか。
実体を持たない幽鬼のごとき【早業】で一瞬で敵の前に転移。悪鬼じみた怪力を込めた刀の一振りで敵を【切断】する。



 放たれた剣姫の一閃が『帝国魔道士』の座す玉座型浮遊装置から放たれた触腕を切り裂き、その身に傷を刻み込む。
 血潮が吹き出し玄室の清浄なる空気に血の臭いが混じっていく。
 それは猟兵とオブリビオンが同じ場にある限り、避けようのないことであったのかもしれない。

 互いに滅ぼし、滅ぼされる間柄。
 どの世界にあっても変わることのない事実である。
『過去』により歪められた存在は己の欲望のみを追求する。そこにかつての清廉さも何も残らない。
 それがオブリビオンの恐ろしさであるというのならば、『帝国魔道士』の求める『真理』とは如何なるものであったことだろうか。
「解せない。やはり猟兵とは解せない。どうして解体しない。身を輪切りにし、つぶさに調べ上げない。わかるはずだ」
 彼にとって、『真理』の探求と人道は合致しないものであった。
 ゆえに、少年の生命も意味をなさないのだ。

「あるのは知識への欲求のみ。それゆえに『エイル』たちを狙うか」
 青い鎧の巨人『セラフィムV』の胸の内に収まった少年『エイル』は猟兵たちと共に戦う。
 放たれた極大の矢ですら『セラフィムV』は受け止めて尚、健在である。
 けれど、相対する『帝国魔道士』が如何にして彼等を引き込もうとしたのかを考えた時、髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は彼等を近づけさせるのは得策ではないと考えたのだ。
「彼等を調べたいと思うのなら、俺たちを片付けてからにしな」
 そう言って鍬丸は『セラフィムV』と『帝国魔道士』の間に割って入る。

「駄目だ、鍬丸さん……あいつの狙いは僕たちなんだ!」
「だからこそだ。問題ない」
 少年『エイル』が気遣っている。それはわかる。けれど、鍬丸はかぶりを振った。彼等を護ると決めた己が為すべきことをなさなければならない。
 そこにあるのは、己が定めた使命だ。
 誰に言われたからではない。自分が決めたことを為すことこそが、今の彼の使命。ゆえに、それは如何にしても果たさなければならないのだ。

『帝国魔道士』より放たれた吹雪が、生命を蝕む魔力と共に放たれる。 
 それはこちらの意図を引き出すかのように『帝国魔道士』の真理の探求をもって根ざすユーベルコードであった。
「なぜ彼等を調べないのか、と聞いたな」
「ああ、そのとおり。意味がわからない。何故、捉え、解体し、中身を全て総ざらいにしない。そうするタイミングはいくらでもあったはずだ。それなのに――!」
 狂気宿る瞳を真正面から鍬丸は捉え、その瞳を否定する。
 痛みが身体を走っていく。
 けれど、関係など無い。痛みなど今の鍬丸には必要のないことだ。

「知ろうとしているさ」
 それは当然のように、それこそ当たり前のことのように気軽な言葉であった。
 偽らざる言葉だった。
 けれど、『帝国魔道士』の得ようとしているものとは違う。決定的に違うのだ。
「語り合い、行動を目の当たりにし、共に戦い同行している。それが――」
 鍬丸の瞳がユーベルコードに輝き、狂気はらむ瞳を真正面から見据える。
 真·降魔化身法(シンゴウマケシンホウ)。
 それは己の身体を妖怪の如き不死身の再生能力で持って、吹雪に寄って刻まれた身体の傷を癒やしていく。
 さらに悪鬼の如き無量金剛力が体中に駆け巡り、勇気の如き神出鬼没なる瞬間転移能力でもって、『帝国魔道士』へと迫る。

 そのユーベルコードの輝きが失せた時、鍬丸の姿は異形の外骨格で覆われていく。
 どれだけ吹雪が彼を襲おうとしても、即座に流れる血すら外骨格に座れていき、傷を塞いでいくのだ。
「なんだ? それは? 知らない。知らないな。面白い。それを教えてくれ。生きていたのなら、いや! 死んで居ても調べさせてくれ! 気になる!」
『帝国魔道士』が笑っていた。
 目の前の鍬丸の異形なる姿に興奮していたと言ってもいい。
 新しい真理が目の前にある。ただそれだけで、もはや彼は己の欲求を覆い隠すことなどできなくなっていた。

「……天魔覆滅」
 鍬丸はもはや応えるつもりはなかった。
 如何に外骨格に代償として血を吸われようとも、構わなかった。
 目の前の敵は強敵そのものならばこそ、一瞬の転移でもって『帝国魔道士』の眼前に至る。
 それは完全に虚を突かれた形になっただろう。
 何せ、今まで距離をとっていた鍬丸の姿が目の前にあるのだから。異形なる外骨格の奥でユーベルコードが煌めく。

 握りしめられた無量金剛力が如き一撃は、刀の一振りとは思えぬほどの衝撃波を伴って『帝国魔道士』を玉座型浮遊装置ごと吹き飛ばし、玄室の壁にめり込ませる。
 凄まじい力であった。
 けれど、その代償もまた凄まじいものである。血を吸われた鍬丸が膝をつく瞬間、彼の前に青い鎧の巨人の掌があった。下がってくれ、というように、その瞳が優しく灯るのを鍬丸は知る。
 そう、真理などなくても知り合うことができるのだと証明したような灯火であった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
ああ、これ話が通じないタイプだわ。研究対象を切り刻むしか能が無いのは、三流って言わないかしら?

「式神使い」で『鎧装豪腕』を顕現。「オーラ防御」をかけて、盾にする。
見るからに自分の体力には自信のなさそうな術師タイプね。
それなら、巫覡載霊の舞で断ち切る。

魔道士の目線の動きから、仕掛けがあるものと判断。
「全力魔法」「ジャミング」「範囲攻撃」で手元に無い魔法細工の操作をできないようにしてあげるわ。

あたしは愚直に、「衝撃波」を纏った薙刀で「なぎ払い」「串刺し」にするだけ。
あなたは戦場より研究室の方が似合うんじゃないの? わざわざ出てきたのが運の尽き。

どうせなら、骸の海で延々と円周率の計算でもしてなさい。



 凄まじい刀の一撃が『帝国魔道士』の座す玉座型浮遊装置ごと、その身体を玄室の壁へとめり込ませる。
 衝撃波が玄室の中を駆け巡り、同時に『帝国魔道士』がめり込んだ壁から身を起こすのと同時に彼の哄笑が響き渡る。
「やはり素晴らしいじゃないか。正体不明の侵略体! 猟兵! 全てに個体差があり、同一のものなどない。規則性も、法則もあるのかすらわからぬもの! ああ、真理だ、目の前に混沌に値する真理がある!」
 彼の哄笑は喜びに満ちていた。
 歓喜そのもの。己が求める『真理』の一端が目の前にあるという事実が、彼の心をときめかせ、猟兵と相対してもなお、己の欲求を満たすことを優先させるのだ。

「ああ、これ話が通じないタイプだわ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、そんな『帝国魔道士』を見やり息を吐き出す。
 研究対象を切り刻み、解明することにしか意義を見いだせない存在。
 そんな存在と猟兵が相容れるわけがない。
 例え、オブリビオンでなかったとしても、共に並び立つことはなかったであろう。
 むしろ、彼女にとって『帝国魔道士』は三流だとしか言えないものであった。

「けれど、見るからに自分の体力には自信なさそうな術士タイプね?」
「そう見えるのなら、そう思ってくれ!」
 笑い、喜びのままに玉座に座す『帝国魔道士』は、その身を天使核の暴走によって融合してしまった玉座型浮遊装置によって強靭なる肉体を手にしている。
 そうでなければ、これまで猟兵たちが刻みつけた斬撃を受けて尚、立ち上がってくるわけがない。

 そして、ゆかりが警戒していたのは、玄室という密室空間に仕掛けられた無数の魔法陣であった。
 その魔法陣を持って発動される極大なる矢は猟兵であっても躱すことが困難なものであった。
「巫覡載霊の舞――!」
 神霊体へと変じたゆかりが、手にした薙刀から衝撃波を放つ。
 その一撃はただ敵を攻撃するためのものではなかった。きっと『帝国魔道士』は己の手元でもって魔法陣を起動させる。
 極大の矢を放つのだとしても、それには準備が必要なのだ。
 だからこそ、彼はこの玄室という密室を戦場に選んだのだ。魔法陣の範囲ならば、速度を生かして逃げることはできない。

 ならばこそ、不可避の矢は、猟兵にとって受けることを前提にしなければならない。
「あなたは戦場より研究室の方が似合うんじゃないの?」
「そうだろうな。けれど、今私は喜びに震えているよ、猟兵! 『セラフィムV』も同じだが、お前達も研究のしがいがある! 楽しみだ。楽しみだ。とてもな。君たちの中に何が内包されているのか、何を持って猟兵と言うのか! その『真理』を私は知りたいと思うのだよ!」
 そして、その指が慣らされようと指の腹が擦り合わさった瞬間、ゆかりは駆け出す。

 あの極大なる矢を放たせてはならない。
 一撃目は『セラフィムV』が守ってくれた。
 けれど、そう何度も受けさせてはならない。ならば、どうする。そう、発動させる準備が必要であり、その起動のキーたる合図があるのならば、それをさせなければいい。
「あっそ。わざわざ出てきたのが運の尽きよ。どうせなら、骸の海で延々と円周率の計算でもしてなさい」
 ゆかりの放つ薙刀の一撃が衝撃波を伴って、『帝国魔道士』の合図たる指鳴らす腕を弾き飛ばす。
 切り裂くことができたら御の字であったが、強靭なる肉体は鋼のように硬かった。
 しかし、衝撃波によって合わせられた指がほどかれ、打ち鳴らされることはなかったのだ。

「そんな面白みのないことなどできるものか! 知りたいという欲求は誰にも止められないだろうに!」
「話通じないって言ったでしょ。語る言葉なんかないわよ」
 迫るゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
 寿命を削るユーベルコードにも限界はある。だからこそ、ゆかりは渾身の力でもって薙刀を突き出し、防御に展開された触腕を串刺しにして引きちぎる。
 猟兵はたしかに個体それぞれであり、真の姿すら規則性はない。
 なればこそ、紡いで戦うのだ。

 単体で凌駕できぬ強敵であっても、繋ぎ、紡ぐからこそ打倒してきた。ゆかりの一撃は触腕を引きちぎり、敵の防御を削り取って勝利の布石となるのだった。
「さっさと骸の海に還りなさい――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴久名・紡
馬鹿だな

思わずそう声になったが、まあいい
実際にそうだと思うから言ったまでのこと

俺がどうしてそう言ったのかも興味はなかろう?
狂人とはそうあるべきだ、魔道士

かりそめの記録使用
弓矢に変形させた葬焔と禮火で先制攻撃
掠るだけだった構わない
とにかく『当てる事』を優先
なぜなら、その先に道がある

以降は天候操作で敵の周辺に暴風を起こし吹雪を阻害
また、敵の吹雪にも介入出来ないか試してみる
当たらなければ、どうということもない

初手の後は念の為
浮遊する盾に変化させた葬焔で
Vとエイルの防御フォロー

敵の攻撃は見切りで回避
回避不能時はオーラ防御で防いで凌ぐ

替えが効くというのであれば、それはお前も同様なのかもな
過去は過去に還れ



「フハハハッ! 愉快だ、実にな! 猟兵を恐れる者たちの理由がわからない。こんなにも千差万別。あらゆる『真理』に満ちている。誰もが正しくて、誰もが同じではない。こんなにも規則性のない混沌そのものな生き物が居るのか!」
『帝国魔道士』の哄笑が浮島の玄室に響き渡る。
 彼にとっての『真理』が如何なるものであるかはわからない。
 けれど、それは過去そのものであるオブリビオンの言葉である。欠片の正しさもない。
 あるのは嘗ての欲求が歪な形となって世界に発露した今を蝕む狂気のみ

「馬鹿だな」
 思わずそう声に出てしまったのは、鈴久名・紡(境界・f27962)であった。
 しまったな、と彼は一瞬お思ったが、実際にそうだと思ったのだから言ったまでのこと。
 別にそう言ったから何の問題があるだろうか。
「俺がどうしてそういったのかも興味はなかろう? 狂人とはそうあるべきだ、魔道士」
 そう告げる紡の言葉に『帝国魔道士』は笑って頭を振った。
「いいや、興味があるとも! 何故そんな言葉を私にぶつけるのか! 何故そう想ったのか! ぜひ! 教えてくれ!」
 放たれる魔性の吹雪。

 それは生命を蝕むものであり、対象に質問をぶつける。
「お前は替えがきくと言った。生命には替えがきくと。だからだ」
 紡にとっては、そうではない。
 替えの効く生命など何一つないのだ。彼はそれを知っている。生命は決して戻らない。
 喪われてしまったが最後、決して戻らないのだ。

「そんなことか!」
『帝国魔道士』の哄笑だけが響く。
 玉座型浮遊装置と融合した『帝国魔道士』の体を見やる。放たれる吹雪は自然現象ではなく、魔力に寄って生み出されたものであれば、紡の天候操作の力では止めることができなかった。
 だが、当たらなければどうということはない。
 弓矢に形を変えた神器が吹雪の中を飛び、『帝国魔道士』の体をかすめる。

「どこを狙っているのだ、猟兵! 今更生命を奪うことに躊躇いをもつわけでもあるまいし!」
 確かのそのとおりであろう。
 けれど、紡はためらったわけではない。ただ『当てる事』だけを優先させただけに過ぎない。
 それはかりそめの記録(カリソメノキロク)である。
 彼の弓矢があたった『帝国魔道士』の攻撃タイミングと威力を覚え、彼に攻撃する際の力を増強するユーベルコード。

 彼にとって初手は布石に過ぎないのだ。
 浮遊する盾となった神器が『セラフィムV』の前に降り立つ。それを『セラフィムV』が掴んでバックルのように付け替えると、紡と共に『帝国魔道士』へと迫る。
「ああ、そのとおりだろうな。替えが効くというのであれば、それはお前も同様なのかもな」
 そう、屍人帝国『オーデュボン』にとって『帝国魔道士』とは代替のある存在でしかないのだろう。
 幹部でもなければ、首魁ですらない。

 けれど、それでも『帝国魔道士』の力は凄まじいものであった。天使核の暴走により融合した玉座型浮遊装置が煌めき、未だに吹雪でもって紡と『セラフィムV』を追い詰める。
 紡の前に『セラフィムV』が盾を構えて吹雪を遮る。
 僅かであったが、それが紡にとってはありがたいことであった。
「過去は過去に還れ」
 付き合ってなど居られない。

 どれだけの狂気を『帝国魔道士』が持っているのだとしても、ここは『現在』だ。
 今を生きる者たちを『過去』が立ち止まらせていい理由など無い。
『セラフィムV』の構えた盾の隙間から紡が放つ神器の姿を返事させた弓矢の一撃が、『帝国魔道士』の玉座型浮遊装置へと撃ち込まれ、その玉座を爆発に包み込む。
 その爆発を見やり、紡は己の感じたままに紡いだ言葉が正しかったことを確信するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
やれやれ、分かっちゃいたが話にならねえな。
下がってろ、エイル。この手の輩は話すだけ無駄だ。
「……彼等には指一本触れさせません。」
エイルに結界霊符を渡しとく。いざとなったらこれで防御しろ。
行くぜ相棒ッ!
「……転身ッ!」

攻撃を軽減する風を纏いながらドリルの如く粉砕する暴風を纏わせた薙刀を手に突貫するぜ。
敵が巨大な魔法の矢を放ってきたら破魔の暴風を纏わせた薙刀でなぎ払い受け流してやる。
相棒、気合いを入れろッ!!

敵のUCを越えて接近したら薙刀の一撃を叩き込んでやるぜッ!
「……『生命など替えがきく』などと言うお前には負けられませんッ!」


【技能・破魔、なぎ払い、受け流し】
【アドリブ歓迎】



『帝国魔道士』の哄笑が浮島の玄室に響き渡る。
 彼にとっての真理こそが、世界において最も大切なことであった。それ以外は何の価値も見いだせぬものであったし、それを為すためには如何なる不条理をも肯定されるものであった。
「いいな、とてもいい。戦術も使うユーベルコードも、種族も、姿形も全てが違う。だというのに、『真理』は混沌の中にある。なんて面白い生き物なのだ、猟兵とは!」
 青い鎧の巨人『セラフィムV』を狙う『帝国魔道士』にとって、相対する猟兵は敵である以上に興味の対象でしかなかった。

「やはり知りたい。切り刻んで内部まで全て調べ上げてしまいたい!」
 これまで猟兵達に刻まれた傷痕など関係ないというように、天使核の暴走した玉座型浮遊装置から供給されるエネルギーで身体が復元されていく。
 繋がり、玉座型浮遊装置から降りることは敵わなくなっていたが、それでも暴走した天使核より流入する力は、彼を強力なオブリビオンへと替えていた。

『やれやれ、わかっちゃいたが話にならねえな』
 神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は赤い鬼面をカタカタゆらしながら、目の前の『帝国魔道士』の言葉に呆れ果てる。
 わかっていたことだが、ここまで言葉の通じない者だとは思わなかったのだろう。
『さがってろ、エイル。この手の輩は話すだけ無駄だ』
「でも……!」
『エイル』は『セラフィム』Vの胸の中に座す。彼等はこれまでも猟兵達と共に『帝国魔道士』と戦っていた。
 未だ消耗はないが、それでも彼等が『帝国魔道士』の手中に落ちることがあれば、猟兵としての戦いは敗北となるだろう。

 だからこそ、凶津は『セラフィムV』の胸から顔を出した『エイル』に結界霊符を渡すのだ。
 いざとなったら、それで身を守れと。
「……彼等には指一本触れさせません」
 桜とともに凶津は瞳をユーベルコードに輝かせる。
『行くぜ相棒ッ!』
「……転身ッ!!」
 それは、風神霊装(ストームフォーム)。二人の力を一つにして顕現する風纏う礼装姿に変身した桜が手にした薙刀をドリルのごとく粉砕する暴風をまとわせ、突貫する。

 その勢いは凄まじいものであり、『帝国魔道士』をして目を白黒させるものであった。
「凄まじいな! どんな体系でもって、それを為すのだろうか! 教えてくれ!」
 放たれる魔導の矢は牽制であった。
 玄室という区切られた空間の四隅に仕掛けられた魔法陣が淡く輝く。
 薙刀で魔導矢を切り払いながら、桜と凶津は一気に『帝国魔道士』へと距離を詰める。
 だが、『帝国魔道士』の指が打ち鳴らされるのが早かった。

 瞬間、膨大な魔力が極大なる矢を形成し、桜と凶津を襲う。
 それを暴風纏う薙刀の一撃で薙ぎ払い、受け流そうと彼等はした。しかし極大なる魔導の矢の一撃は如何に暴風の如きユーベルコードの力であっても受け流すことはできなかった。
 薙刀がきしむ。
 桜の身体が魔導の力で焼けていく。それを凶津は感じただろう。
『相棒、気合を入れろッ!!』
 その言葉に桜が歯を食いしばる。けれど、それでもなお魔導の矢の威力は凄まじい。減ずる力をもってしても、打ち消すことができなかった。

 だが、彼等の身が焼かれることはなかった。
 飛び出したのは、『セラフィムV』の青い鎧の身体であった。魔導の矢を交差させた腕で防ぎ、その装甲が赤く熱せられていくのを見ただろう。
「誰も傷つけさせるものか! 二人だって、優しかったんだ――! なら、僕はその優しさに報いなければならないんだ!」
『エイル』が『セラフィムV』の胸から飛び出し、手渡された結界霊符を手に迫る魔導の矢を防ぐ。

 それは決定的な瞬間であった。
 桜の瞳がユーベルコードに輝く。霊装の殆どが魔導の矢の熱量に負けて崩れた。けれど、未だ残る力を薙刀の一点に集中させ、『セラフィムV』の隣を駆け抜ける。
 疾風のような踏み込みでもって、桜は『帝国魔道士』を見据える。
「……『生命など替えが効く』などと言うお前には負けられませんッ!」
 放たれる一撃は破魔の力を纏って、『帝国魔道士』に振り下ろされ、その強靭在る玉座型浮遊装置と融合果たした肉体を袈裟懸けに切り裂くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
『侵す者』のまま

ああ、相容れぬ話よ。そんなことするかよ。
元より、わしはそういうことに興味はないしの。他三人もそうである、と。

さて、その好奇心を利用する形になるか?
陰海月、怒っておるしのう…【四天境地・『虹』】による攻撃よ。
ちなみに、わし自身も灰遠雷に雷+炎+風属性攻撃を付与して
攻撃援護だの。相変わらず『疾き者』の協力ありだの。

それでの、防御は残り二人が四天霊障を伝っての結界を張ってくれておるから。
まあ、あの言い分だと内部の三人も怒っておるからのう…。


陰海月、ぷんすかと怒ってる。色変化間隔が短い。ぷっきゅ!
霹靂、陰海月と共に怒ってる。クエエッ!



 猟兵の渾身なる一撃が『帝国魔道士』の玉座型浮遊装置」と融合した強靭なる身体を切り裂く。
 血潮が吹き出し、鮮血が玄室の中を染め上げていく。
 けれど、それでもなお『帝国魔道士』は倒れなかった。いや、倒れないどころではない。暴走した天使核の力をもって、その傷を塞いでいくのだ。
 喪われた血液は戻らないかもしれない。消耗を敷いているのは変わらぬが、彼の身体を支え、突き動かしているのは知的好奇心を満たし、魔導を極めんとする感情だけであった。
「まだまだ私は知りたいのだよ。猟兵を、『セラフィムV』を! もっと、もっと! ああ、こんなにもサンプルが大勢いるなんて! 一つの真理を目指すのに、こんなにも混沌が広がっている!」

『帝国魔道士』にとって、猟兵は敵で在る以上に己の知的好奇心を刺激するものであったのだろう。
「ぜひとも刻んで調べたい! 君たちもそうは思わないか!」
 猟兵と一口に言っても千差万別。
 姿かたちだけではない、その真なる姿さえも不定形であり、規則性もない。
 そんな彼の前に現れた馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、四柱の複合型悪霊である。
「ああ、相容れぬ話よ。そんなことするかよ。もとより、わしはそういうことに興味はないしの」
 他の三人も同様であろうと『侵す者』は他の三柱を代表して告げる。

 四柱でもって一つの身体を為す悪霊である彼等は、ひときわ特異なる存在であったことだろう。
 誰も説明することが出来ない。
 悪霊であること、それ以外にどう説明もしようがない。
 玉座型浮遊装置が跳ねるようにして『侵す者』へと襲いかかる。その速度は玉座が移動しているとは思えぬほどの速度であり、その欲望に比例するように、うごめく触腕が彼を捉え、切り刻まんと迫るのだ。
「四天境地・『虹』(ゲーミングカゲクラゲノユウジョウアタック)……『陰海月』よ」
 その言葉と共に『陰海月』の光がゲーミングカラーに輝く。

 それがユーベルコードであり、『陰海月』の感情が波を建てるように激情を発露させる。
 怒っている、と『侵す者』は感じたことだろう。
 これほどまでに怒りを顕にする。それは珍らしいことであったし、己の中にある三人も同様であろう。
 張り巡らせた結界がの強度が何時もよりも強い。 
 さらに強弓に込められた雷と炎、そして風の力が引き絞って放つ矢となって『帝国魔道士』の身体を射抜くのだ。

 けれど、それが本命ではない。
 ゲーミングカラーに輝く光がマークとなって『霹靂』の爪の一撃が『帝国魔道士』を切り裂く。
「ぐっ―――! 見たことのない、生物! ああ、切り刻みたい!」
「ぷっきゅ!」
『帝国魔道士』の言葉を無視するように『陰海月の光が煌めく。色の変化する間隔が短い。
 相当に怒っているのだろう。
 それは『霹靂』も同様であった。放たれる爪の一撃は鋭く、『帝国魔道士』をさらに追い詰めていく。

 彼等にとって友達と呼べる存在であろう『エイル』。彼を傷つけようとする者を許せないという思いは健全なるもの。
 ならばこそ、『侵す者』、そして他の三柱もまた同様であるように、強靭なる『帝国魔道士』を追い詰めるように光と爪、そして矢の乱舞でもって消耗に追いやるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「御高説痛み入る。
同じ魔道士として大変勉強になるよ。」
「反面教師として。
どんな魔術の秘奥も真理も。人の命に勝る事はないし
手段を選ばなくては人としての価値がない。」
敵の気を引く隙にスカイロッドで空気を振動、
言葉を紡ぎエイルに
「術を使う間。俺を守って欲しい
敵の術の後必ず反撃の隙が出来る。」
と伝える。

不浄なる不死王の軍勢を発動。
魔物を攻撃と防御に使い。
密かに死霊に魔法陣を傷付けさせ。
自らの魔導知識によりその傷で出来る
矢の隙を割り出し避難。
庇って貰うと同時に魔物を盾に。
凌いだら不死王に攻撃させる。
「魔力だ。術だとそんなものにかまけているからそうなる。
それより大事なものを骸の海でゆっくり考えるといい。」



 乱舞する光が猟兵達の放つユーベルコードの煌めき。
 オブリビオンと猟兵が相容れぬ存在であるように、『帝国魔道士』は哄笑を玄室に響かせながら、放たれる光と矢から受けた傷を、座した玉座型浮遊装置の暴走した天使核より溢れるエネルギーでもって贖っていた。
「ここまでやってくれるとは! 面白い。やはり猟兵は切り刻んで調べなければならない。我らの敵だが、私にとっては興味深い存在だ! 混沌でありながら、単一。単一にして、千差万別! ああ、切り刻み、割ってみれば、もっと多くのことがわかるであろうに!」
 彼はどうしたって猟兵を調べ上げたいのだろう。
 そのためには『セラフィムV』を己の手の内に納めなければならない。

 玉座型浮遊装置に備えられた触腕が蠢き、『セラフィムV』と猟兵達に迫る。
 放たれる魔導の矢は凄まじく、暴走した天使核がこれほどまでの魔力を捻出することをフォルク・リア(黄泉への導・f05375)は脅威に感じたことだろう。
「御高説痛み入る。同じ魔道士として大変勉強になるよ」
 確かに、割って調べるという考えはそのとおりであろう。
 中身を調べる時、どうにかして外側から調べようとするのは遅々として研究が進まぬことを意味する。

 けれど、フォルクは否定する。
「反面教師として」
「何故だ? 君も魔導を知るものだろう。探求する者だろう! ならば、何故私を否定する? そんなことに意味はないはずだ。研究しよう、君も、君自身を!」
 その言葉にフォルクはフードの奥で如何なる表情をしていたかは、誰にもわからない。
 けれど、彼の胸にある信条が真理を越える。
「どんな魔術の秘奥も真理も。人の命に勝ることはないし、手段を選ばなくては人としての価値がない」
 それは『帝国魔道士』を否定する言葉であった。
 生命に替えが効くと言った彼の言葉は間違っていると。
 そして、そうして得られたものに何の価値も無いのだと斬って捨てたのだ。空気を振動させるスカイロッドが煌めく。

 そこに『セラフィムV』を駆る『エイル』が魔導の矢からフォルクを護る。
「僕が抑えています、その間に!」
「ありがたい。術を使う間、俺を守って欲しい。敵の術の後、必ず反撃の隙が出来る」
 そう、フォルクはもう知っていた。
 この玄室という限定的な場所。その四隅に備えられた魔法陣。
 それを起動することに寄って放たれる極大なる魔導の矢は、此処に限定すれば猟兵が躱すことはできない。

 逃げ場のない場所で使われる極大なる一撃は、凶悪そのものであった。
 けれど、フォルクに勝算はあったのだ。
「偉大なる王の降臨である。抗う事なかれ、仇なす事なかれ。生あるものに等しく齎される死と滅びを粛々と享受せよ」
 彼の詠唱と共に瞳が輝き、不浄なる不死王の軍勢(デスロード)が召喚される。
 無数の死霊とそれを貪り力を増す魔物の群れが玄室に溢れ、『帝国魔道士』へと放たれる。

 四隅の魔法陣を傷つけさせようと疾走らせたが、遅かった。
『帝国魔道士』の指が打ち鳴らされ、極大なる光の矢が放たれる。遅かったと、想ったが、それでもフォルクは魔物たちを壁に使う。
『セラフィムV』も度重なる防御でもって腕の装甲が赤熱するように溶解しかけている。
「くっ――……! 重たい……けど! 『V(ヴィー)』!!」
 少年『エイル』の言葉に応えるように『セラフィムV』の瞳が輝く。フォルクはそれを見ただろう。

 生命などに価値はないと言った『帝国魔道士』の放つ矢を、生命を護るために己の力を降るう者が防ぎきっている。
 フォルクは、ユーベルコードに寄って呼び出された死霊達を魔法陣へと向かわせる。これで駄目ならば、己の目論見は御破算になる。
 しかして、死霊達は『帝国魔道士』の隙を付いて、魔法陣の一部を欠損させるのだ。

「いまだ! 不死王よ!」
 フォルクの言葉と共に立ち上がるのは召喚された死霊、魔物を上回る力を持つ骸骨姿の不死王であった。
「なんだ、この魔力量……! どこからこんな力をひきだしている!? 膨大すぎる……!」
『帝国魔道士』は知らぬ己の力を前に、そして、不死王の振り上げた剣の刀身の煌めきを前にたじろいだ。
 わかるわけがないのだ。そう、フォルクは知っている。

「魔術だ、術だとそんなものにかまけているからそうなる。それより大事なものを」
 フォルクの号令と共に振り下ろされた不死王の一撃が『帝国魔道士』の身体を切り裂く。
 決して言えぬ不死王の一撃の前に『帝国魔道士』が絶叫する。
 過ちと狂気に満ちた彼を前にフォルクは言うのだ。
「骸の海でゆっくり考えるといい――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

スリジエ・シエルリュンヌ
さて、最後ですね。抜かりなくいきましょう。

あなたの考え、私は否定しますね。
刻まなくとも真理にはたどり着けましょう。そうするのが探偵ですしね!

ふふふ、不利な行動をする。それが命取りです!
そうするには、この石榴剣の攻撃を避けることはできませんよね?
強化は無効化しますので…ただ、ダメージをくらって繋がれた、ということになりますね。
これ、お養父さまの技なのです。はまってよかった。

しかも!この状態ならば私から離れられませんよね。
私、バリツ探偵ですから、的ですね!

ええ、エイルさんもセラフィムVさんも、傷つけさせはしませんから!



 危険な空域『竜の巣』、その中心部たる浮島の玄室に眠る宝珠をめぐる戦いは佳境に入っていた。
 猟兵たちと『帝国魔道士』の戦いは激しさを増すばかりである。
 激突するユーベルコード。極大なる魔導の矢を防ぐ『セラフィムV』の交差させた腕は赤くただれている。
 しかし、それでもなお、彼等は戦うことを、護ることをやめないだろう。
 少年『エイル』もまた青い鎧の巨人の胸に乗り、猟兵と共に戦うことを決意した。
「僕だって――!」
 叫ぶ少年の想いに応えるように、スリジエ・シエルリュンヌ(桜色の文豪探偵・f27365)は戦場となった玄室を駆け抜ける。

「フハハハッ! 楽しいな! 真理の探求は! こんなにも私の知らぬことが世界には未だ多く在る! その一端、いや! 混沌の体現者たちが、こんなにも!」
 猟兵とはそれぞれが異なる存在である。
 法則性もなく、真の姿も千差万別。一つの生命として数えていいのかさえも怪しい存在。
 されど、世界の悲鳴に応え、世界を護るという事に関してのみ、共通点として上げられる。
 そんな存在をもって真理を得ようとする『帝国魔道士』の肉体は玉座型浮遊装置と融合したことにより、暴走する天使核のエネルギーを得て、凄まじい強靭さをもって猟兵達に襲いかかるのだ。

 鋭い切っ先を持つ触腕がスリジエに迫る。
「あなたの考え、私は否定しますね。刻まなくとも真理には辿り着けましょう。そうするのが探偵ですしね!」
 そうスリジエは文豪探偵である。
 秘密を、真実を、真理を見つけ出す存在である。そんな彼女に『帝国魔道士』のような切り刻むという行いは必要などないのだ。
 彼女が微笑む。
 きっと彼女はいつだってほほえみながら戦うだろう。真実を手繰り寄せる手はたおやかである。

 けれど、手にした『石榴剣』の鋭さは言うに及ばず。
「あなたはこの『石榴剣』を躱せない。いえ、躱すことができない。なぜならば、この剣をあなたは知らないから。鋭さも、切れ味を、何もかも知らない。知りたいと願うからこそ、それを確かめざるを得ない。そういう人だと私は推理するでしょう」
 スリジエの言葉に『帝国魔道士』はその通りであると身をこわばらせる。
 知りたいという欲求は時として、己に不利になる行動を許容するものである。
 ナンセンスそのものな行動であることはわかっている。

 けれど、止められないのだ。
 放たれた『石榴剣』の一撃が『帝国魔道士』の身を貫く。
「ぐっ……何っ!?」
 そう、ただ『帝国魔道士』は己の不利になる行動をするほどに身体能力を強化される。だからこそ、何の問題もないはずであった。
 けれど、スリジエの瞳にはユーベルコードが輝く。

「護衛とならん…お養父さま…!」
 それは、石榴の鎖(シェーヌ・デ・グルナード)であった。
 放たれた一撃は『帝国魔道士』の身体能力の強化を打ち消し、白いドラゴンオーラの鎖に寄って互いを繋ぐ。
 もはや進むことも退くこともできない。
 これは亡き養父の技である。不退転の決意が在るからこそなせる技。それをスリジエは誇らしく思ったことだろう。

「この状態ならば、私から離れられません。あなたが彼等を、ええ、『エイル』さんも『セラフィムV』さんも傷つけさせはしませんから!」
 スリジエは依頼を受けたのだ。
 彼等を守り、この浮島へとたどり着かせると。それは達成された依頼である。
 けれど、己が猟兵である以上まだ依頼は終わっていない。
 彼等がただ浮島に辿り着ければいいのであれば、彼女はこのまま戻ればいい。それをしなかったということは、己が探偵であることを、養父の意志を己がついでいることを示す行いであった。

「私、バリツ探偵ですから、的ですね!」
「な、何を――! どういうことなんだ! バリツとは!」
「こういうことです!」
 うろたえる『帝国魔道士』を前にスリジエは繋がれた鎖を引き寄せ、彼の身体を宙に舞い上げさせる。
 如何に強化されていても、すでにその強化は白いドラゴンオーラでもってかき消されている。
 ならば、スリジエの膂力でもって『帝国魔道士』は無防備に空を舞うだろう。

 そこへ放たれる『石榴剣』の一撃は痛烈なる一撃となって『帝国魔道士』に突き立てられるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【勇者パーティ】

えーっと……わたしたち置いて行かれてません?

と、『セラフィムV』さんの隣に座って見学モード。

それにしても『セラフィム』さんも大変ですね。
師匠に鉄板にされるもあれですが、なんかこの勢いだと、
『エイル』さんを護ろうとすると、ステラさんがもれなくついてくる感じですよ?

言いながら先ほど焼いた竜肉を渡そうとしますが、
あ、食べられませんね。オイルとかのほうがいいですか?
と、竜肉を焼いたときに使った油をグラスに注いで差し出してみます。

……あ、やっぱり船員さん巻き込まれかけてる。
ちょっと危なそうですし【クラリネット狂詩曲】を使って回復しておきましょう。

ここまで追い出されると困りますからね。


フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「ほう、この魔術師、鉄板Vについて何か知っていると見える……
ならば、こう、肉をいい感じに焼く機能とかついてるのかもしれぬな!」

そして、その鉄板Vの真理のカギが、持ち主の少年(名前覚えてない)だと……!?
ならば、拷問(おやつ抜き)とかしてでも、鉄板Vの秘密を聞き出さねばな!(己の中にある価値観だけを優先する目

「ふっ、ステラよ、どうやらお前との決着を付けるときがきたようだな。
……互いの中にある至上のものを賭けた勝負のときが!」(狂気に満ちた目

ルクスよ、そこでよく見ておくがよい。
これこそ、封印せし我の究極魔術【隕石召喚】の破壊力だ!
(なお、隕石はうっかり敵の方に落ちました)


ステラ・タタリクス
【勇者パーティー】
……?この方は何を言っているのでしょう?異質?不思議?
そうですね、エイル様が世界を滅ぼすというのなら
その時はメイドとして止めましょう

ですが、そうでないのなら
何であろうとその道行きに付き従うのがメイドの務め
エイル様、一言お申し付けください
『いけ』と

ええ、メイドの『本気』をお見せします

【バトラーズ・ブラック】発動
【ガレオンチェンジ】で飛空艇形態に
【エールプティオー・プルウィア】を放ちつつ
【テンペスタース・クリス】で突撃です!

ええ、貴方は敵です
さっさと骸の海へ還ってください

……フィア様、今回ばかりは譲るわけにはいきません
というか、邪魔です本当に
纏めてぶっ飛ばしますよ?



『帝国魔道士』の言葉は、少年『エイル』と青い鎧の巨人『セラフィムV』の異質さを示すものであった。
 けれど、数多の世界、数多の種族を知る猟兵たちにとって、その言葉は真ならざるものであったことだろう。
 どれだけ彼等の存在がブルーアルカディアという世界にあって不可思議なものであったとしても、それはステラ・タタリクス(紫苑・f33899)にとっては関係のないことであった。
 極大なる魔導の矢を受けて炎熱にねせられた『セラフィムV』の腕。
 胸より出て、その様子を確認している少年『エイル』。
 どちらも誰かを慮ることのできる存在だ。それを異質であるという『帝国魔道士』の言葉に彼女は静かなる怒りをたぎらせていたのだろう。

「……? この方は何を言っているのでしょう? 異質? 不思議?」
 ステラの言葉に猟兵からの攻撃を受けて消耗した『帝国魔道士』が笑う。
「そのとおりだろう。猟兵にも勝るとも劣らない異物感を君は感じないかね? 何故こんなものがとは思わないか? 我々オブリビオンが世界に存在し続けるだけで世界を破滅に導くように、彼等もまたそうであるということを否定はできまい」
「そうですね、『エイル』様が世界を滅ぼすというのなら、その時はメイドとして止めましょう」
 大丈夫だろうか。
 なんだか空気が違う。いや、全然違わないのだが、いつもの雰囲気ではない。勇者パーティってもっとこう、ばーって感じでアレな展開になることが多いのだが、ぶっちぎりでプッツンしているステラを前にルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)は、もしかして自分たち置いてかれてるのではないかと思うのだ。

 いやまあ、実際そうかもしれない。
「ですが、そうでないのなら、何であろうとその道行きに付き従うのがメイドの務め」
 いや、ちょっとまってほしい。なんかもう専属メイドの雰囲気出しているが、そうじゃない。そんな事実はないのである。
 けれど、それ以上にまるで空気を読まぬのがルクスの師匠であるフィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)であった。
 彼女は、この浮島の玄室に眠る宝物が特別なお肉的なやつであるとばっかり思っているのだ。
 玄室だよ? お肉の保存って……あ、冷蔵庫的なあれをイメージしていたのなら、それも頷けるかもしれない。いやない。

「ほう、この魔術師、鉄板Vについて何か知っていると見える……ならば、こう、肉をいい感じに焼く機能とか付いてるのかもしれぬな!」
 もう鉄板であることは間違いないと信じて疑わぬフィア。
 いやまあ、いい感じに焼くっていうか、消し炭にするたぐいのやつはついてるかもしれないが。
 けれど、フィアに取って最も重要なことは、そこではない。
「そして、その鉄板Vの真理のカギが、持ち主の少年だと……!?」
 名前覚えてないんだなぁって『エイル』はちょっとしょんぼりしたけど、まあ、それは些細なことである。
 ルクスも、あー師匠人の名前覚えるの苦手ですもんねーと『セラフィムV』と共に座って見学中である。

 しかし、そんなことはつゆ知らずというか、状況は変わっていく。
 ステラと『帝国魔道士』の戦いは苛烈を極めた。如何に猟兵たちが紡ぐ戦いをしたとしても、天使核の暴走した玉座型浮遊装置から得られるエネルギーは膨大である。
 それでもって傷を癒やし、触腕と魔導の矢でもってステラを撃滅せんとする力は、玄室の中を違う勇者パーティみたいな戦闘でもって彩るのだ。
「エイル様。一言お申し付けください。『いけ』と」
 そんな中、ステラの瞳だけが真剣そのものだった。
 相対するものを写す鏡そのものである『エイル』にとって、その瞳は茶化されたものではない。
 いつものハグという名の護衛をしてくる、若干大丈夫かなと思うメイドではなかったのだ。

 だからこそ、彼は頷く。
「ステラさん、いけ! あいつを」
 ぶっ飛ばして。
 その言葉にステラは恭しく一礼し、空を舞う。
「ええ、メイドの『本気』をお見せします」
 そこからは凄まじいユーベルコードの輝きであった。飛空艇の姿に変じ、風を纏うユーベルコードをもってステラは己の船体でもって『帝国魔道士』に激突する。
 その一撃は凄まじい質量を伴って放たれ彼を吹き飛ばすのだ。
「ええ、貴女は敵です。さっさと骸の海へ還ってください」

 そこへフィアの追撃……はなかった。
 いや、追撃しようと思えばできた。けれど、彼女は彼女の中にある価値観だけを優先する。
 だからこそ、彼女の目にはもうお肉しかなかったのだ。
「ふっ、ステラよ。どうやらお前と決着を付けるときが来たようだな……互いの中にある至上のものを賭けた勝負のときが!」
 そんな彼女たちをルクスは見やる。
「それにしても『セラフィム』さんも大変ですね。師匠に鉄板にされるのもあれですが、なんかこの勢いだと『エイル』さんを守ろうとすると、ステラさんがもれなくついてくる感じですよ?」

 それはちょっと想像するだけでも、大変なことである。
 トラブルメイカーにトライブルを引きつける人。物語の中心にいる人ってたいていこんな感じなのかな、とルkスは思わないでもない。
『セラフィムV』の瞳が若干哀愁を漂わせていたのをルクスは感じ取っていた。やっぱり大変な思いをしているのかもしれない。
「あ、お肉は食べられませんよね。オイルとかの方がいいですか?」
 いやどうだろう、ルクスさん。
 それもちょっと違うのではないだろうか。そんなルクスと『セラフィムV』のハートフル(?)な交流を他所にフィアの隕石召喚(メテオストライク)の一撃が玄室の天井をぶち破って『帝国魔道士』に落ちる。

「ぬっ! うっかり狙いが!」
 フィアとステラの攻防は凄まじいものであった。もう『帝国魔道士』は蚊帳の外であったが、フィアの極大魔術によって招来された隕石はステラに当たらず『帝国魔道士』に激突するのだ。
 仲違いしている二人なのに、不思議と息ぴったりだなと思いつつ、ルクスは外に接舷していた飛空艇が巻き込まれるのを見て、んぅんむ、んぅ、んぅんうぃむゃむぃむ! とクラリネット狂詩曲(クラリネットキョウシキョク)を演奏し、彼等を音符で守りながら、喧嘩するほど仲がいいという言葉を思い出すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
あん、異質?
ククク、おいおい、俺達(猟兵)に向かってそれをいうのかい?
異世界人から悪魔に神、ロボットまで何でもアリなのが俺等だぜ?
とまあ、そんなことを言ったところで話が通じる感じでもねえな。
エイル君からは何かあるかい?
ないなら……もう用はねえってことだな。

真っすぐに間合いを詰めて魔力を籠めた拳で打ち抜きます。
(貫通攻撃×属性攻撃×功夫)
なお、放たれようとした巨大な魔法の矢(敵WIZUC)は敵が指を鳴らした瞬間にちらりと魔法陣を見ることで『虚無術式』を発動。掻き消します。



 猟兵と『帝国魔道士』の戦いは、隕石の一撃に寄って浮島の玄室の天井を吹き飛ばした。
 上を見上げれば、そこには青空が広がっている。
 ブルーアルカディアの空は他の世界と違って、近いものであり日常である。
 浮遊する大陸だけが人の生存圏。
 そんな世界にあって『帝国魔道士』は少年『エイル』と青い鎧の巨人『セラフィムV』を異質であると断じた。

 けれど、その言葉は猟兵たちにとって真なるものではなかったことだろう。
 アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)にとってもそうであった。彼等は猟兵である。
 その事実を知るのであれば、世界にあって異質であるということは些細な問題であった。
「あん、異質? ククク、おいおい、俺たちに向かってそれを言うのかい?」
 アレクサンドルはおかしくて仕方ないというように腹を抱えて笑っていた。
 自分たちでさえ、猟兵という存在にたいして規則性を見いだせないでいるというのに、言うに事欠いてオブリビオンが少年『エイル』と『セラフィムV』を異質だと言うことが、あまりにもおかしかったのだ。

「ああ、言うさ。君たちこそ混沌そのものだ。世界に対する侵略生命。そう思わざるを得ないだろう。それ以上に彼等の存在はこの世界にあってはならないとは思わないか?」
『帝国魔道士』は猟兵との戦いによって消耗させられている。
 けれど、未だ暴走する天使核よりエネルギーを融合した玉座型浮遊装置から得て、傷を塞いでいる。
 展開される魔法陣は、尽きることのない魔力を示しているようでも在った。
「異世界人から悪魔に神、ロボットまで何でもありなのが、俺等だぜ?」
 まあ、話が通じるわけもないかとアレクサンドルはひとしきり笑って、少年『エイル』に顔を向ける。

 言いたいことは見つかったか? と視線で問うアレクサンドルを前に『エイル』はかぶりを振る。
 話が通じるわけでもない。
 相互理解ができるわけでもない。
 相対する以上に滅ぼされるか、滅ぼすかの二択しかないのだ。
 ならばこそ、彼は選択するのだ。己の大切に思うものを傷つけるものを放置はしておけない。
 例え、自分が傷つくのだとしても、倒さねばならぬ敵はいるのだとアレクサンドルに伝えるのだ。
「だよな。なら、もう用はねえってことだな」
 アレクサンドルは一つ頷き、彼の決意を尊重する。自分で選ぶことを覚えた少年が、これからどんな道行きをたどるのかはわからない。

 けれど、アレクサンドルは笑っていた。
 いつだって人間は、選択する意志を持つものだ。そういった存在がいつしか神に届く力を得るのだとしたら、『エイル』のような存在をこそアレクサンドルは求めるだろう。
「だからこそだよ! 猟兵は混沌! 真理の隣に在るもの! だから、調べさせてくれ!」
 指が打ち鳴らされ、魔法陣より展開する極大なる魔導の矢。
 それはアレクサンドルを狙っていた。天井が吹き飛んでもなお、この玄室の中は猟兵達の回避行動を阻害する。
 けれど、アレクサンドルはまっすぐに間合いを詰め、魔力を込めた拳を突き出す。

『帝国魔道士』は勝ったと思っただろう。
 だが、それは過ちである。アレクサンドルの瞳に輝くユーベルコードを見誤っていたのだ。
 彼の拳に込められたのは、ただの魔力。
 されど、その魔力の絶大なるを彼は知る。だからこそ、拳で極大なる一撃を打ち消そうとしているのだと思ったのだ。

 けれど、それは違ったのだ。
 彼の瞳から放たれるは、虚無術式(チートハダメヨ)。四隅に仕掛けられた魔法陣を一瞥するだけで無効化する術式は、即座に魔導の矢を霧散させる。
「消える!? 我が魔導の矢が……!? 何故……!」
「そーいうのに頼りすぎると、効かない時に危険だぜ? 今みたいにな」
 迫るアレクサンドルは笑っていた。
 その笑みに『帝国魔道士』は背筋が泡立つのを感じただろう。

 今目の前に相対する存在が何であるのかを失念していたのだ。
 そう、猟兵は数多ある存在を内包した混沌であるというのならば、今目の前に相対するのは『神』である。
 その拳の一撃は天を衝くだろう。
 撃ち込まれた拳の重さは、痛烈なる一撃と成って『帝国魔道士』を打ちのめすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
使い魔と鉑帝竜には外で飛空艇の護衛を頼んでるよ

取り返しのつかないものはあるんだけど
オブビリオンになってしまった相手に言っても
通じはしないんだろうね
たぶん、生前はもう少し違う考えだったんだろうけど

UDC-Pとかなら問答するのも悪くないんだけどね
邪神は…、どうなんだろう
存在が謎に包まれててよくわからないんだよなぁ

とはいえエイル君に危害を及ぼすなら
実力で排除するしかないね

神気で防御しつつ
ガトリングガンで攻撃

危ない時はワイヤーガンを使って回避しよう
可能ならセラフィムVに引っ掛けさせて貰って移動しようか

エイル君やセラフィムVに集中できないように引っ搔き回そう

そういえば身体能力を強化して何をするんだろうね



 浮島の玄室、その天井は激しい猟兵と『帝国魔道士』との戦いによって打ち破られ、空が覗いていた。
 接舷した飛空艇は、その激しい戦いの余波に巻き込まれて大きく船体を揺らしていたが、それを使い魔と鉑帝竜が支える。
「な、中じゃどんな戦いが起こってるっていうんだ……!」
 勇士たちにとっては、規格外なる戦い。
 浮島とは言え、その島の一部を吹き飛ばすほどの戦いは彼等にとって想像を絶するものであったことだろう。
 だからこそ、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、彼等を護衛させていたのだ。

「素晴らしいな! やはり混沌たる存在は! もっと知りたい。知りたいんだよ、私は!」
 玉座型浮遊装置と融合した『帝国魔道士』は暴走する天使核より得られる膨大なエネルギーでもって、その肉体を強靭なものへと変貌させている。
 うごめく触腕が獲物を切り刻みたいと願うように宙を舞う。
 それらをかwしながら、晶は呆れ果てるしかなかった。

「取り返しのつかないものはあるんだけど、オブリビオンになってしまって君に言っても通じはしないんだろうね」
 生前はもう少し違う考え方であったはずなのだろうにと晶は思っていた。
 UDCアースにおける事件で戦ったことのある存在を思い返す。あのような存在であれば、問答することにこそ意義がある。
 自身の身体に内包する邪神だってそうかもしれない。
 いや、どうだろうと自問自答する。存在自体が謎に包まれて、知りたいと願っても煙に巻かれているようにさえ思えてしまう。

「とはいえ、『エイル』君に危害を及ぼすなら実力で排除するしかないね」
 放たれる触腕を神気で停滞させ、防ぐ。
 停滞させてもなお、この速度。凄まじい速度であることは言うに及ばず、『帝国魔道士』が得た天使核のエネルギーの膨大さが知れる。
「触腕が届かない……いや、違うな。時間を送らせている? そんなことが可能なのか? 気になる。とても気になる。君も気になるぞ!」
 切り刻みたいと迫る『帝国魔道士』を前に晶はもううんざりであった。

 自分の身体は確かに以前の自分の身体とは違う。
 自分だって正しく理解はしていないだろう。けれど、切り刻みたいと言われて、はいどうぞとはならないのだ。
 ワイヤーガンでもって己を牽引させ、晶は宙を舞う。
 しかし、そのワイヤーガンのワイヤーを『帝国魔道士』の触腕が遅い、断ち切る。体勢を崩した晶に神気の防御が追いつかぬ速度で触腕が振るわれるが、それを防いだのは青い鎧の巨人『セラフィムV』であった。
 腕は何度も魔導の矢を受け止めたのだろう、赤くただれているが、それでも『セラフィムV』は晶を助けに割って入ったのだ。

「助かった……! ありがとう!」
「まだこっちは動けます! いきましょう!」
『セラフィムV』と『エイル』が共に『帝国魔道士』と戦う。心強い味方を得て、晶はの瞳がユーベルコードに輝く。
 己の意志がユーベルコードを輝かせるというのならば、晶の構えたガトリングガンは、回転式多銃身機関銃全力稼働(スウィーピング・ファイア)でもって応えるであろう。
 ガトリングガンから放たれた一斉射は迫る触腕を尽く打ち抜き、破壊していく。
 どれだけ身体能力を強化しようとしても、それ以上の速度でもって放たれるガトリングガンの弾丸は毎分数千発である。

 これをさばくことができるのは人外なるオブリビオンだけであっただろう。
 けれど、晶のユーベルコードによって強化されたガトリングガンは、さらなる速度を見せる。
 触腕は防戦一方になり受け止めることもできずに貫かれ、砕かれていくのだ。
「アスタ・ラ・ビスタ、ベイビー、ってね」
 晶は負ける気がこれっぽっちもしなかった。
 確かに『帝国魔道士』は単体で己たちよりも強いのだろう。

 けれど、自分たちには戦いを紡ぎ、勝利へと共に戦う味方がいる。
 それを知るからこそ、晶は『セラフィムV』と共に『帝国魔道士』を追い詰め、次に託すのだ。
 きっとそれが、彼等の道行きを切り開くことになるのだと信じている。
 例え、異質であろうと。
 例え、孤独であろうと。
 それでも前を向いて歩くことができるのが、今を生きる生命なのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
エイル様、目的の物の確保を

私もあの機体を調べた事があれど、それは少年やこの世界の人々に危険が無いかどうかの確認の為
英知のみを追い求め、尊きモノを踏み躙る貴方が触れて良いものではありません

猟兵と巨人、二兎を追う者は一兎をも得ずと申します
真理の探究は、まず私達からにして頂きましょう

攻撃は盾と剣で防御
脚部スラスターの推力移動も交え近接攻撃で交戦

分析の為に接近戦を挑むとは、余程その“椅子”に自信が御有りのようで…

マルチセンサーでの情報収集と瞬間思考力で椅子の構造を分析
天使核との接続構造などの重要部位を見切り物資収納Sのスローイングダガーを怪力で投擲
誤作動を起こさせ制御を一時喪失

その隙逃さず電脳剣で一閃



『帝国魔道士』の座し、融合した玉座型浮遊装置に備えられた触腕が砕けていく。
 如何に強大な天使核の暴走というエネルギー源を持つのだとしても、迫る猟兵達のユーベルコードの前には、砕かれ霧散していくのみであった。
「素晴らしい力だ! これだけの力、これだけの技術! 一体どこで学んで、どこで生まれてきたのか!」
 己の知的好奇心を満たさんとする欲求だけが『帝国魔道士』を突き動かすものだった。
 だから、他者の生命を省みることはない。
 自分の欲求だけが正しいものであると信じて疑わない。そのためには何をしてもよいとさえ思っているのだ。

「『エイル』様、目的の物の確保を」
 そんな『帝国魔道士』を尻目にトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は少年『エイル』に告げる。
 彼等がこの浮島の玄室に迫ったのは、この中にある宝珠を手に入れるためだ。
『セラフィムV』が求めたがゆえに起こった事件であるが、それを必要とするのならば、トリテレイアは今こそが好機であると考えていた。
 猟兵と『帝国魔道士』の戦いは苛烈を極める。今も天井が吹き飛ばされているのならば、戦いが終わるまでに浮島が崩壊しないとは言い切れない。

 ゆえに、トリテレイアはそれを優先させるのだ。
「わかりました。ご武運を、トリテレイアさん!」
『セラフィムV』の胸の中に収まり、『エイル』が呼びかける。二手に別れ、トリテレイアは『帝国魔道士』に相対する。
「私もあの機体を調べた事があれど、それは少年やこの世界の人々に危険がないかどうかの確認の為。叡智のみを追い求め、尊きモノを踏みにじる貴方が触れてよものではありません」
 二兎を追う者は一兎をも得ずという言葉もある。
 トリテレイアはまずは己から相手をしてもらおうと『帝国魔道士』の前に立ちふさがるのだ。

「ああ、それは楽しみだ。君もまた異界の存在なのだろう? わかっているとも。あの『セラフィムV』と似たような力を持っている。いや、もたらされていると言えばいいだろうか。君を輪切りにすれば、真理に近づけるかもしれない。いやきっと近づいてみせるさ! だから!」
 だから、君を刻ませてくれと『帝国魔道士』が己の欲求を叶えるためだけに天使核からエネルギーを引き出し、強靭なる肉体と共に襲いかかるのだ。

 それをトリテレイアは真っ向から大盾で受け止める。
「確かに素晴らしい推力。私に力負けしないとは……余程その“椅子”に自信がお有りのようで……」
「わかるかね! これこそが本来『オーデュボン』を栄華に導いた力であるよ! 私は、そのために!」
 真理を得たいのだというように砕かれた触腕が再生し、トリテレイアを襲う。
 その速度は凄まじいものであったが、トリテレイアのマルチセンサーは的確に迫る触腕の切っ先を捉えていた。
 己が機械騎士であるからこそ分かる挙動であったことだろう。

 瞬時に、玉座型浮遊装置の構造を分析する。天使核よりエネルギーを得ているのであれば、下方に備えられたオーブのようなものは玉座型浮遊装置を浮かばせるための推力であろう。
 ならば、と放つのはスローイングダガーであった。
「レプリカとはいえ銀河帝国製が最も機能的に相性が良いのは複雑ですが」
 放たれた銀河帝国特殊工作作業用微細機械(ハックオアブラスト)は正しくその効果を発揮するだろう。
 それは特殊な爆薬と共にナノマシンを流し込み、その玉座型浮遊装置のオーブに誤作動を引き起こすユーベルコード。

 ただ、それは一瞬しか操作することはできなかったが、それでもトリテレイアにとっては十分であった。
「――! 帝国製のナノマシンに耐性……!」
「ああ、これが極小の機械というやつか! 面白い! とてもおもしろい」
 己が追い込まれているというのに、『帝国魔道士』は未だ知らぬ知識を求めて笑っていた。
 誤作動を起こされたオーブは、玉座型浮遊装置の推力を喪わせ、動きを止めさせる。
 手にした電脳剣をトリテレイアは振るう事に躊躇いをもたなかった。
 だが、疑問だけが残る。自身と『セラフィムV』が似ていると言った。それは何故か。
 いや、とトリテレイアは電脳の導き出した答えを振り払う。
 今はその時ではない。目の前の脅威を振り払う。

 それがいずれ答えを出すこともあるだろう。
 放たれた剣閃が一刀の元に『帝国魔道士』の座す玉座型浮遊装置を切り裂き、そのオーブを砕くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イングリット・ジルニトラ
【心境】
「はッ!『セラフィムV』や『エイル』少年。彼らがこれからたどる道こそ、貴様の言う真理ではないか。」
解体だと、異世界に面白い物語があるぞ。金の卵産む鶏を欲望から腹をかき分け全てを失った愚者の話。
貴様ら屍人帝国はまさに目先に囚われた愚者だな。

【行動】
さて、流石にこの玄室の中では飛空艇では入れん(注:100m級)
人型に戻る。

空に比べると狭いが、問題ない。
天空の舞踏で舞い上がると、飛翔しつつ踊るように回避しつつ接近を行う。
質問?ああいいだろう。なんでも答えてやろう(注:罵倒つき)
(使用技能:空中戦、空中機動、残像)
ではさらばだ。
接近と同時にスカイソードで切り刻む
(使用技能:斬撃波。ダンス)



 玉座型浮遊装置の推力となっていたオーブを砕かれた『帝国魔道士』は、しかし玉座を捨てることはできなかった。
 何故ならば、その身体は玉座型浮遊装置と融合を果たしてるからこそ、強靭な肉体を齎していたのだ。
 暴走し続ける天使核のエネルギーがあればこそ、彼はこれまで多くの猟兵たちと戦い、その都度負った傷を復元してきたのだ。
 離れることはできない。捨てることはできない。
 けれど、それ以上に彼を彼足らしめているのは、貪欲な知識欲だけであった。
 真理に近づきたいと願うからこそ、その体は突き動かされ、あらゆるものを犠牲にしてでも到達したいと、あらゆる生命を笑うのだ。

「どうあっても私はたどり着かなければ! そうでなければ、生まれた意味もわからないではないか! そうは思わないか! 真理への到達こそが、人の生命たる目的であると!」
 そう叫ぶ『帝国魔道士』の瞳は狂気しか存在していなかった。
 過去に染まり、歪むオブリビオンとはこういう存在であると知らしめるようにイングリット・ジルニトラ(ガレオノイドの翔剣士・f33961)は感じられたかもしれない。
「はッ! 『セラフィムV』や『エイル』少年。彼等がこれからたどる道こそ、貴様の言う真理ではないか」
 彼女は人の姿でもって浮島の玄室に立つ。
 猟兵達の攻撃で天井は崩れ去り、空が見えているが、彼女の本来の飛空艇としての姿は、この玄室では狭すぎる。
 ゆえに、人の姿で戦場を駆け抜けるのだ。

 それはいわば、天空の舞踏(ダンスオブエーテル)とも言うべき光景であったことだろう。
 放たれる魔性の吹雪など物ともせず、イングリットは華麗に舞う。放たれる斬撃波は吹雪を打ち払い、彼女に届かない。
「空に比べると狭いが、問題など無い。悪いが、私はオブリビオンとのダンスは趣味じゃないんでね。独壇場で行かせてもらう」
 華麗なる舞踏。
 翻るスカイソードの剣閃が、吹雪の中を切り裂いて行く。『セラフィムV』と『エイル』は宝珠の確保に向かっている。

 他の猟兵が促してくれたからだろう。
 ならばこそ、イングリットは心置きなく『帝国魔道士』を罵倒するのだ。
「あの純朴な少年には聞かせられないのでな。好都合だ。どんな質問でもするがいい!」
 罵倒する言葉はイングリットにとって口汚いものであったが、『帝国魔道士』の言葉は以外にも的を得るようなものばかりであった。
「君はもう終わった存在のはずだ。なのに何故、この場にとどまり続けているのだろうか? 君という飛空艇はもう終わったはずなのに。如何なる恩讐があれば、そこまで自分を形作れるのだろうか?」
 それはイングリットという悪霊、幽霊船とも言うべき存在の核となる物語。

 言うまでもなく己を沈めたオブリビオンへの復讐。
 怨念によって自身は悪霊となったのだ。ならば、その身に宿る力は、如何なるものか。猟兵を混沌と『帝国魔道士』は言った。
 己という飛空艇を運用していた勇士たちは共に潰えただろう。いや、もしかしたら、無事に逃げおおせたかもしれない。
 けれど、自分を沈めた存在が今も尚存在しているというのが、彼女にとっては唯一にして最大の理由であったのかもしれない。
「私は沈んでなどいない。私は帰って来たのだから――!」

 さらばだ、とイングリットは『帝国魔道士』に迫る。
 吹雪は彼女に迫ることはなかった。
 どれだけ自分の核心を突く質問であったのだとしても、彼女は違えることをしない。
 なぜなら、これまでもそうであったように。
 ジルニトラ級陸番艦イングリットは不沈艦としての名を取り戻すために戦う。振るわれた剣閃が十字に『帝国魔道士』を切り裂き、鮮血を迸らせる。
 その血の一滴すらもかぶること無く、イングリットは飛空艇であったときと同じ様に宙を舞うのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
中身に興味が無いと言えば嘘になるけど
別に珍妙な物なんて、あの巨人だけでも無いし…
人の物勝手に分解して元に戻せなかった時が面倒だし
研究も大事だけど、人付き合いの面倒事を避けるのも大事
失う物が何も無い君みたいなのには、関係ないだろうけどね


引き続き《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
まずは真っ直ぐ、突っ込んで両剣で『なぎ払い』
悪いけどそっちの間合いで戦う気は無いからね
とはいえ、そっちも近接戦闘の手段は持ってるでしょ?
だからそっちの調子が出る前に…1発食らわさせて貰う
【断章・機神召喚】起動
召喚と同時に左手で敵を『吹き飛ばし』最適の間合に
上方に召喚した腕を重力に任せて落として斬る!



「中身に興味がないと言えば嘘になるけど」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は対峙するオブリビオン『帝国魔道士』が玉座型浮遊装置と共に失墜し、その天使核のエネルギーの大半を喪っている姿を見つめて言った。
 確かに『セラフィムV』は興味ある存在である。
 けれど、特別珍妙なものであるとも思えなかった。彼女は数多の世界を見てきた猟兵である。
 あの『セラフィムV』だけが特別な存在ではないことを知っている。
「ならば、共に解析しよう。研究しよう。そうすれば真理に届くことができる。ああ、いや、君たちを解体するのもいい。君たち自身がもうひとつの混沌そのものなのだから!」

『帝国魔道士』の爛々と輝く瞳は狂気そのものであった。
 それに対して玲はため息を吐き出す。やってられないなと思ったのかもしれない。共同研究を持ちかけるのであれば、どっちが先に名前を記載するかで揉めるし、どっちのアイデアが重要であったかでも揉める。
 言ってしまえば、揉め事の種ばかりが埋まっていて、大抵はどっちかが従える身分になるしかないのだ。
 そういうのは、ホームコメディドラマだけで十分だよ、と玲はため息を言葉にすることもなかった。
「人のもの勝手に分解してもとに戻せなかった時が面倒」
 だから、お断りだと言うように模造神器を抜き払う。

 如何に玉座型浮遊装置が浮遊する力を喪ったとしても、エネルギー源である天使核は未だ生きている。
 ならば、その強靭なる肉体を滅ぼすためにしなければならないことはたった一つだ。
「悪いけど、そっちの間合いで戦う気はないからね――偽書・焔神起動。断章・機神召喚の章の閲覧を許可。術式起動」
 それは、断章・機神召喚(フラグメント・マキナアーム)。
 自身の二倍はあろうかという機械で出来た右腕を召喚せしめる術式。巨大なる機械腕はぶち抜かれた天井、その空に舞い上がる。

「そっちの調子が出る前に、一発食らわせて貰う!」
 放たれた模造神器の青い刀身が煌めく。
 己が研究し、解明し、再現したUDCの力。その煌めきは、彼女にしかできないことであった。
 確かに研究は大事なことだ。
 けれど、それ以上に人付き合いの面倒を避けるのもまた大事なことである。
 それを理解せずに、『真理』という乱暴な言葉のくくりだけで全ての人間が納得できるなどと考えることは、理想論もいいところの、空論に過ぎない。

 玲には失うものが多すぎる。
 抱え込みすぎた気はないけれど、それでも失いたくないものはあるのだ。
「何故だ。何故理解しない。真理は混沌の直ぐ側にあるというのに、混沌の申し子たる君が! 何故、それを!」
『帝国魔道士』は玲に何を見たのだろうか。
 己の振るう模造神器に何を見たのか。真理の一端だろうか。それとも混沌の深淵だろうか。
 
 どちらにせよ、玲がすることは変わらない。
 空より撃ち込まれる機械腕が振るう拳は鉄槌のように『帝国魔道士』を打ちのめす。
 張り巡らされた魔導の力でもっても、機械腕の一撃は防げなかった。いや、それ以上に天使核より供給されるエネルギーが途絶えたのだ。
 これまで多くの猟兵たちが紡いできた戦い。それは天使核のエネルギーを枯渇させるには十分すぎるほどの苛烈な戦いだったのだ。

「失う物がなにもない君みたいなのには、関係ないだろうけどね」
 それでも玲は己の研究をこそ、自身で完結させることに意義を見出す。自分が開発し、再現した疑似邪神の力。
 その行く末を見るのも、弊害を振りかぶるのも、自身だけでいい。

 ゆえに彼女は撃ち込まれた機械腕の掌の中に模造神器が再現されるのを見た。
 あれこそが己の研究の粋。
 それは再誕の為の詩。そして還りつく為の力。
 模造が本物に辿り着けぬと誰が言った。模造が還りつくことのできぬ真理はないのだと玲は言うだろう。

「存外、私は欲張りなのかもしれないね。欲しいものは全部欲しいんだ」
 放たれた模造神器の煌めきは、機械腕の中で極大に居たり、その刀身の一撃でもって『帝国魔道士』の妄執、狂気を一刀の元に切り捨てるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月23日


挿絵イラスト