踊るペンギン皇帝
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「YO! ノッてるかいお前ら!」
軽快な音楽とカラフルな光で満たされたダンスフロアに、熱狂する人々の歓声が乗る。
銀河も揺るがす情熱とセンスとスキルの競演。リゾートシップ「ワンダーステップ」で開催中のダンスコンテストは、過去最高の盛り上がりを見せていた。
「オーケイ! 次の出場者は……」
「我である」
「OH!?」
だが、そこに突如として現れたのは予定にない乱入。否、招かれざる客と言うべきか。
ぺったぺったと足音鳴らし、フロアの中心に躍り出たのは――一羽のペンギンだった。
「我は銀河皇帝ペンギン、ペンギアット・ペンギゲイザー。今からこの船は我の物だ」
ばさあっと威風堂々マントを翻し、やたらめったら偉そうな態度で宣言するペンギン。
いや偉そうなのではない、偉いのだ。なぜなら彼はスペースシップワールドを侵略する幹部猟書家の一羽。勢力を拡大しつつある「帝国継承軍」の将なのだから。
「不満がある民はかかってこい。我はどのような挑戦も受けよう」
可愛いペンギンの見た目によらず、その猟書家は不遜な物言いに違わぬ力を持ち――。
かくてダンスコンテスト中だったリゾートシップは、銀河皇帝ペンギンの手に落ちた。
●
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「スペースシップワールドを侵略する猟書家の1人『ペンギアット・ペンギゲイザー』が、とあるリゾートシップに姿を現しました」
銀河帝国の崩壊とワープドライブの普及に伴って、異なる宇宙船の人々の交流も盛んとなり、リゾートを訪れる観光客も増えつつある。だが、それだけ多くの人々が集まる船を「帝国継承軍の誕生」を企む猟書家は見逃さず、制圧のための刺客を送り込んできた。
「今回標的にされたリゾートシップでは、大々的な『ダンスコンテスト』の開催が企画されていました」
これはリゾートシップの一画を丸々利用した広大なダンスフロアに最先端の音響設備、ゲストや審査員には宇宙でも著名なダンサーを招いた大規模なイベントで、多くの参加者や観光客が宇宙中から集まってきている。
「そんなコンテストの舞台に突如現れた猟書家ペンギアットは、船のスタッフや訪れていた観光客ごと、リゾートシップを帝国継承軍のものにしようとしています」
リゾートシップでもコンテストに合わせて警備の強化は行われていたのだが、突然の猟書家の襲撃にまでは対応できず、すでに船内にいた人々の多くが捕まってしまっている。
もしここで猟兵がリゾートシップ奪還のために戦いを挑んでも、敵は捕らえた民間人を人質にしてくるだろう。この状況を打開するにはまず、彼らを解放しなければならない。
「幸い、コンテストを見に来ていた観光客の中には隠密行動を得意とするブラックタールの方々がいました。彼らはその特性を活かして猟書家の眼をうまく逃れ、人質を救出するチャンスを窺っているようです」
猟兵が猟書家の注意を引きつけておけば、その隙にブラックタール達が人質を解放してくれるはず。問題はその方法だが、丁度おあつらえ向けにこの船はコンテストの最中だ。
「猟書家『ペンギアット・ペンギゲイザー』は、銀河皇帝ペンギンを名乗るプライドの高いペンギンです。こちらからダンスコンテストで勝負を挑めば確実に乗ってきます」
このコンテストではダンスのジャンルは問われない。ブレイクダンス、ヒップホップ、ハウス、ロック、バレエ、タップダンス、社交ダンス、ロボットダンス、日本舞踊など、好きな音楽に合わせて踊って、観客と審査員を魅了した者が勝ちだ。
「目的はただダンスで勝つことではなく、敵を勝負に熱中させて人質解放の隙を作ることです。時にはわざと負けて相手をいい気分にさせることも作戦として有効でしょう」
もちろん、ただ手を抜いただけではコンテストも盛り上がらず、プライドの高いペンギアットに手加減がバレるとマズいことになる。時には本気で勝負に臨むのも大事だろう。
「人質さえ解放できれば、あとは敵を倒すだけ……なのですが、ペンギアットはプライドが高いわりに小心者なのか、不利を悟ると全力でリゾートシップからの脱出を図ります」
もしここで取り逃がせば、また別のリゾートシップで同じような事件が起きるだろう。逃げるペンギアットにうまく先回りして、ここで確実にトドメを刺してしまおう。人質の奪還で活躍してくれたブラックタール達の能力は、ここでも役に立ってくれるはずだ。
「普段の戦いとは少し毛色が異なりますが、これもスペースシップワールドの平和のためです。どうかご協力をよろしくお願いします」
説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、リゾートシップへ道を開く。
広い宇宙の命運を賭けた、銀河皇帝ペンギンとの熱いダンスコンテストの幕が開ける。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオはスペースシップワールドにて、リゾートシップを占拠した猟書家『ペンギアット・ペンギゲイザー』を打倒するシナリオになります。
1章では人質奪還の隙を作るため、猟書家にダンスコンテストで勝負を挑みます。
主にストリートやクラブでのダンスバトルをイメージしていますが、ジャンルは不問なので自由に踊って下さい。ペンギアットは勝負を挑まれれば必ず乗ってきます。
あまり早く決着をつけても良くないので、適度に相手をヨイショして、人質を解放するまでの時間を稼いでください。
作戦が成功すれば、2章は「ペンギアット・ペンギゲイザー」との決戦です。
人質がいなくなったのに気付いた時点で、ペンギアットはリゾートシップからの脱出を図ります。逃げられないようにうまく先回りしてとっちめてください。
本シナリオは二章構成となり、全章共通で下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。
プレイングボーナス……ブラックタールと協力する。
観光客として船内にいたブラックタール達は、その隠密能力を活かして人質奪還の機会を窺っています。猟兵達がうまくペンギアットの注意を引けば、作戦成功の可能性も高まるでしょう。
彼らは「解放軍」の中核を担った猟兵のことを知っているので、2章でも協力を求められれば積極的に力になってくれます。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『猟書家とコンテスト!?』
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POW : 肉体的な魅力でコンテスト勝負!
SPD : テクニックでコンテスト勝負!
WIZ : 知恵を活かしてコンテスト勝負!
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オリヴィア・ローゼンタール
ダンスコンテスト……水着コンテストも近いのでウォーミングアップにはちょうどいいですね
【気合い】を入れていきましょう!
ビキニの水着に着替えて参戦
音楽のジャンルにはあまり詳しくないのでお任せします
激しい曲調の方がブラックタールの方々の援護になりますかね(時間稼ぎ)
音楽に合わせた【ダンス】の【パフォーマンス】は楽しくて好きですよ
【ジャンプ】などの大きなアクションや、【挑発】的な【誘惑】を取り入れて【存在感】を示し、【傾城傾国の艶美】で場を盛り上げて(鼓舞)、視線を集める(お誘い)
強力なライバルとして振る舞うことで敵の意識をダンスコンテストに集中させる(おびき寄せ)
「ダンスコンテスト……水着コンテストも近いのでウォーミングアップにはちょうどいいですね」
夏の盛りにふさわしいビキニの水着姿に着替えて、コンテストへの参戦を表明したのはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。こうした催しは嫌いではないし、それを利用した猟書家の悪行を見過ごすわけにもいかない。
「気合いを入れていきましょう!」
「ほう、貴様我に挑むつもりか?」
良い度胸だとつぶらな瞳で睨むは銀河皇帝ペンギン、ペンギアット・ペンギゲイザー。
ずんぐりむっくりとした体型で、意外なほど軽快なステップを踏む身のこなしからは、ダンスに関しても相当な自信とプライドが窺えた。
「音楽のジャンルにはあまり詳しくないのでお任せします」
コンテストのステージに立ったオリヴィアは、選曲を担当するDJにそっと耳打ちする。ダンスにおける音楽の重要性は言うまでもない。彼女の発言はどんな曲にも合わせられるという自信の現れとも取れた。
「激しい曲調の方がブラックタールの方々の援護になりますかね」
「オーケイ、頼むぜ……!」
折角のコンテストを邪魔されて、猟書家への怒りが湧いているのはこの船の皆同じだ。
何をするのかは知らないが、あのヘンテコペンギンをヘコませてくれるなら協力する。一度は音の消えたステージに、再び大音量が鳴り響いた。
「音楽に合わせたダンスのパフォーマンスは楽しくて好きですよ」
リクエスト通りの激しいミュージックに合わせて、その肢体を躍動させるオリヴィア。
要所にジャンプなどの大きなアクションや、誘惑するような挑発的な仕草を取り入れ、存在感を示す。刺激的な姿で舞い跳ねる【傾城傾国の艶美】から、誰も目を放せない。
「いいぞー、姉ちゃん!」
「ヒュウ、イカしてるぅ!」
船を制圧された時は黙りこくっていた観客と審査員も、再びダンスの熱で湧き上がる。会場は元通りの盛り上がりを取り戻し、人々の視線はオリヴィアに釘付けになっていた。
「ほう、やるではないか」
その様子を腕組みして見ているのはペンギアット。皇帝の威厳を保とうと冷静なふりをしているが、よく見ればピクピクと小刻みに体を震わせており、挑戦者の予想以上の実力に動揺しているのは明らかだった。
「いかがですか?」
そんな皇帝ペンギンにオリヴィアは踊りながら流し目を送る。汗の雫をキラキラと宝石のように散らしながら舞う姿は、今この場にいる誰よりも輝いていることは間違いなく。では貴方はどうなのかという言外の挑発が、ペンギンのプライドに火を点けた。
「良いだろう。刮目して見るがいい、皇帝のダンスを!」
パフォーマンスを終えたオリヴィアと入れ替わり、ステージに躍り出るペンギアット。
相手と同じジャンルと音楽で踊るのは皇帝としてのプライド故か。負けじと飛び跳ね、キレッキレのムーブを披露し、民衆の注目を自らに奪い返さんとする。
「なかなかやりますね」
「吠え面かかせてくれるわ!」
今度はオリヴィアが腕組みしてダンスを見守る番だった。ただしその態度は本心からの余裕をもって。そのすまし顔を驚きに染めてやろうと、敵のダンスはますます熱を増す。
強力なライバルとして振る舞うことで敵の意識をダンスコンテストに集中させようという彼女の狙いは見事にあたっており、その裏では人質救出作戦が着々と進みつつあった。
大成功
🔵🔵🔵
榊・ポポ
あんだって?なんでも褒めてくれる肯定ペンギンがどうしたって?
違う?褒めてくれないプライドと文句はイッチョマエのクソガキペンギン??なんでぇ...
とりあえず目立てばオールオッケーね!
今回お立ち台で踊るのはポポちゃんでーす
頭グルングルン回すネットミームと化したカカポダンスやりまーす
はーいここにゲーミングドリンクがありまーす
これで七色に発光して☆気合いと☆継戦戦力で持久力つけてーの
ダンシングナイトはミニポポちゃんズの☆団体行動☆ダンスで☆時間稼ぎのチェケラッチョよぉ
「あんだって? なんでも褒めてくれる肯定ペンギンがどうしたって?」
「肯定ではない、皇帝である」
第1ラウンドが終了し、次なる挑戦者は榊・ポポ(デキる事務員(鳥)・f29942)。
流暢に人語をしゃべるカカポ(フクロウオウム)が、でかい皇帝ペンギンとステージで対峙する。ダンスコンテストの2ラウンド目は、まさかの鳥類同士の対決となった。
「違う? 褒めてくれないプライドと文句はイッチョマエのクソガキペンギン?? なんでぇ……」
「ほう、舌だけは達者に回るオウムだな。その悪口はいったい誰から習ったのだ?」
やれやれと大げさに首を振りながら相手をディスるポポに、ピキッとこめかみを引きつらせつつも言い返すペンギアット。こうしたムーブ前の挑発合戦もよくあることである。
「とりあえず目立てばオールオッケーね!」
先手を取ったのはポポ。ペンギアットもそうだったが、人間とは違うその身体でどんなダンスを見せてくれるのかと、観客や審査員の注目はいやがうえにも集まることとなる。
「今回お立ち台で踊るのはポポちゃんでーす。頭グルングルン回すネットミームと化したカカポダンスやりまーす」
ポポはそんな人々の期待の斜め上をいく。音響設備から爆音のクラブ音楽が鳴り響き、スクリーンにサイケな映像が映し出される。DJとVJとパリピがいるなら、ここはもう彼女のステージ。終わらない【ポポちゃんダンシングナイト】の幕が開ける。
「はーいここにゲーミングドリンクがありまーす」
俗に魔剤とか言われるドリンクをぐびっと飲み干すと、ポポの体が七色に光りだした。
空き缶をゴミ箱にシュートしてお立ち台の真ん中にすっくと立ち。ぐりんぐりんぐりんぐりん――と、音楽に合わせて頭を回しだす。
「チェケダーン!!」
「な、なんだこれは……?!」
今まで見た事もない奇っ怪なダンスに、さしものペンギアットも困惑を隠せなかった。
気付けばポポのお立ち台の周りには、本人より小型の量産型半自律式カカポロボ、通称ミニポポちゃんズがバックダンサーとしてずらりと並び、ポポと一緒になって踊り回る。全員が一糸乱れぬ動きで頭を回しながら七色に発光する様は、実に奇妙な光景であった。
「なんだろうなあのダンス……」
「でもなんか中毒性があるというか……」
この宇宙にはまだカカポダンスは広まっていないのか、かなり前衛的すぎるポポの踊りに皆も戸惑っていた。が、洗脳的な魅力のある音楽と映像とダンスの組み合わせにより、徐々にそれは受け容れられていく。
「ヘイチェケラッチョ!」
「「HOOOOO!」」
「な、なんだと……?!」
いつの間にかすっかり会場はゲーミングな雰囲気に乗せられており、ポポは煽るように激しく頭を回す。ドリンクの力で先借りした元気と気合と持久力はまだ有り余っていた。
独特の雰囲気に包まれたステージで、ただひとりノれない皇帝はぽつんと立ち尽くし。彼が我に返るまでのしばらくの間は、人質救出の時間稼ぎとして十分なものだった。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
「陛下、私と踊ってくれませんか?」
お手を拝借。
足元をふらつかせるペンギンを抱きとめる。
「陛下、見てください。この銀河に煌々と燃え盛るように輝く星々。筝曲を奏で、人々が歌う――こんな舞台は滅多にありません」
「面白い」
ペンギンは細くしなやかな手を静かにとった。
「我のダンスに合わせられるのか?」
「感じるままに。私がどんなステップにでも合わせて見せましょう」
カビパンはイケメンだった。
――だが
「見ろよアレ。あの二人」
「ぷっ」
「何だありゃ。ペンギンのくせに舞踏タコの舞か?」
「あはは」
(こ、こやつ!?あれだけのイケメン力で大口を叩いたくせに全く踊れないではないか!)
二人は酔っ払いのようなタコ踊りを披露した。
「くっ……やるではないか、挑戦者よ……」
思いの外キレッキレなダンスを披露する猟兵達との勝負で、ペンギアットは急速に神経と体力をすり減らしていた。動揺からよろっと足元をふらつかせた彼を、後ろから軍服に身を包んだ女性が抱きとめる。
「陛下、私と踊ってくれませんか?」
「貴様は……?」
凛々しい出で立ちに淑女の笑みでペンギンに手を差し出す、その女性の名はカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。彼女も今回のダンスコンテストに参加する猟兵の1人である。
「陛下、見てください。この銀河に煌々と燃え盛るように輝く星々。筝曲を奏で、人々が歌う――こんな舞台は滅多にありません」
すっとステージを見渡して詩を紡ぐように語るカビパンに合わせ、音響もムードのよい曲を流しはじめる。このような素晴らしい場で一夜、皇帝と共に踊り明かす栄誉を頂けはしないかと、臣下のごとく恭しく振る舞う彼女にペンギアットも気を良くする。
「面白い」
ペンギンは細くしなやかな手を静かにとった。音楽に合わせ身体を揺らし、ステップを踏む。誘いに応じられたカビパンはにこやかに微笑んで、ともにステップを踏み鳴らす。
「我のダンスに合わせられるのか?」
「感じるままに。私がどんなステップにでも合わせて見せましょう」
自信にあふれた物言いと、貴族的な気品ある態度。今日のカビパンはイケメンだった。
自分以外の者を基本的に民草として扱うペンギアットにとって、この対応はとても快いものだったらしく、思う存分に我がダンスを披露しようとする――だが。
「見ろよアレ。あの二人」
「ぷっ」
「何だありゃ。ペンギンのくせに舞踏タコの舞か?」
「あはは」
二人のダンスを見る観客からは笑い声。審査員も肩を震わせ吹き出すのを堪えている。
ぐにゃぐにゃした軟体動物のようなステップ。酒でも入っていそうな覚束ない足取り。ステージをふらふらと蛇行するそれは、端的に言えばドヘタクソであった。
(こ、こやつ!? あれだけのイケメン力で大口を叩いたくせに全く踊れないではないか!)
この【ハリセンで叩かずにはいられない女】には、ダンスの心得がまったく無かった。
本来ならそれなり以上に踊れるはずのペンギアットも、逆にカビパンのヘタさに引きずられてしまう。これなら1人で踊ったほうがはるかにマシだったと後悔してももう遅い。
「いかがですか、陛下?」
「く、屈辱だ……!」
酔っ払いのようなタコ踊りを披露した二人は、観客の爆笑を誘ってステージを終えた。
公衆の面前でこれだけの恥をかかされて、ペンギアットが黙っていられるはずもない。カビパンの手を振りほどき「もう一度だ!」と叫ぶ彼は、当初の目的を忘れつつあった。
大成功
🔵🔵🔵
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【WIZ】
※アドリブ絡み連携大歓迎、ダンス勝敗不問
※マーチング・ワスプの外見はUC挿絵準拠、眼鏡なし
とにかく歌って踊って惹き付けろ、と?
ならオペ76番【スターリィ・スカイ】開始っ
「「「イェーイッ♪」」」
『P・E・N・G・U・I・N♡』
【マーチング・ワスプ】の美女型を複数体連れて
銀髪女子集団によるチアリーディングをヤるよ
アンドロイドたる彼女らの『曲技機動』に合わせ
小柄なアタシがセンターとして飛んだり♪
『これ、どーぉー?』
演技にBGMは同じく【マーチング・ワスプ】の
SD(ゆるキャラ)型がDJに接触してチョイスするけど
その時に手近なブラックタールへ人質解放依頼のメモを…♪
「熱狂の内に、観客の帰宅を」
「とにかく歌って踊って惹き付けろ、と? ならオペ76番【スターリィ・スカイ】開始っ」
人質救出のために課されたオーダーに対し、リーゼロッテ・ローデンヴァルト(リリー先生って呼んでよ・f30386)は小悪魔めいた笑みで応じた。音響設備からトランス風の楽曲が流れだし、本人に似た銀髪の美女型ドローン部隊が何処からともなく現れる。
「「「イェーイッ♪」」」
『P・E・N・G・U・I・N♡』
リーゼロッテを中心に並んだ銀髪女子集団は、ピタリと揃った動きで歌って踊りだす。
元気いっぱいの掛け声に、組体操やアクロバティックな動きも交えた躍動的なダンス。それは応援団などで披露されるチアリーディングのパフォーマンスだった。
「イェア! 次の出場者は『マーチング・ワスプ』!」
BGMを担当するDJが、リーゼロッテとドローン達をチームとして観客に紹介する。その横には彼に楽曲のチョイスを頼んだ、ゆるキャラのような見た目のドローンがいた。これも『マーチング・ワスプ』の一員であり、作戦遂行の為の手配は万全というわけだ。
『♪辛くたって、忘れないわ。キラキラした、星空を♪』
ステージ上にいる銀髪美女達は、機械だからこそできる華麗な曲技機動を披露しつつ、淡く幻想的な歌を奏でる。それに合わせてメンバーの中で小柄なリーゼロッテがセンターとして飛ぶと、観客席からわあっと大きな歓声が湧き上がった。
『これ、どーぉー?』
「むむ。美技であるな」
会心の小悪魔スマイルを見せつつ、マーチング・ワスプと共に歌い踊るリーゼロッテ。
その華麗で躍動的なパフォーマンスには、ペンギアットの視線も釘付けになっていた。皇帝として美しきチアへの称賛と、コンテストを競う敵への対抗心が燃え上がってくる。
「我も負けてはおれぬ……!」
だが仲間を連れていないペンギアットには、リーゼロッテ達のようなチアリーディングを披露するのは難しい。ずんぐりした身体から延びる手足を1羽でぱたぱた動かしても、美女達のしなやかな動きほどの魅せ場にはならない。観客の声援が向かう先は明らかだ。
「まだまだイクよ♪」
「「おおーーっ!」」
すっかりステージの空気をものにしたリーゼロッテのウィンクに、観客がわっと湧く。
誰も彼も取り込んで熱狂の渦に包まれるコンテスト会場。その裏では物陰に身を潜めたブラックタール達が人質解放のために暗躍している。
「『熱狂の内に、観客の帰宅を』……ですね。わかりました」
彼らの手にはSD型のドローンに渡されたメモがある。リーゼロッテの手配した通り、猟書家さえもチアに夢中になっている隙に、捕らわれた人質の救出は順調に進んでいた。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
真っ当な勝負好む気性は“皇帝”に相応しい精神性とも言えますが
…遊びにしか見えないのは少々気の毒ではあります
(交戦経験アリ)
人々の解放の為、容赦はいたしませんが
ペンギアット様、恐れながら申し上げます
このコンテスト…非効率ではありませんか?
勝負の度にダンスや論評で互いの貴重な時間と体力が消費されること説明
対策としてプロモーションビデオ作成提案
貴方は実力を誇示することで挑戦者の足切りが可能
こちらも挑戦者の底上げの目標を得ることが出来ます
妖精バックダンサーにPV撮影開始
BGMのこの部分の振り付けはこれで良いのですか?
成程、次のポーズを強調する為に緩急を…
なら照明を動かして…
照明操作等でBタール達を援護
「真っ当な勝負好む気性は“皇帝”に相応しい精神性とも言えますが……遊びにしか見えないのは少々気の毒ではあります」
以前にも別の依頼でペンギアットとの交戦経験のあるトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)。あの時は料理コンテストだったか――どんな勝負内容でも受けて立つのは見事だが、ステージでぴょんぴょん飛び跳ねる皇帝ペンギンを見ていると、つい同情的な目線になってしまう。
「人々の解放の為、容赦はいたしませんが」
どんなに絵面がコミカルでも、それが宇宙の民を支配せんとする猟書家には違いない。
音楽とダンスが一段落したタイミングで、彼はすっとペンギアットの前に進み出ると、騎士が目上の者に対するように恭しく跪いた。
「ペンギアット様、恐れながら申し上げます。このコンテスト……非効率ではありませんか?」
「なんだと?」
次なる挑戦者かと思いきや、このコンテスト自体に異議を申し立てるウォーマシンに、ペンギアットは怪訝そうに首をかしげる。プライドの高い彼をヘタに刺激しないように、トリテレイアは恭しい態度のまま私見を述べ立てる。
「現状のままでは勝負の度に、ダンスや論評で互いの貴重な時間と体力が消費されます。対策としてプロモーションビデオを作成するのはいかがでしょう」
「ほう、プロモーションとな?」
皇帝の会心のダンスを一度ビデオとして撮り収め、会場でそれを上映すれば、たびたび踊らずとも皇帝の威光を知らしめることができる。皇帝に叛意を持つ者も身の程を知り、おいそれと勝負を挑んでは来くなるだろう――というのが機械騎士の意見であった。
「貴方は実力を誇示することで挑戦者の足切りが可能。こちらも挑戦者の底上げの目標を得ることが出来ます」
「ふむ……悪くはないな。よかろう、では貴様に我のPV撮影の任を与える!」
騎士の忠言にうまく乗せられて、ペンギアットはすっかりPV製作に乗り気になった。
彼の気が変わらない内にと、トリテレイアは【自律式妖精型ロボ 格納・コントロールユニット】からバックダンサーとして妖精型ロボを発進させ、直ちに撮影を開始する。
「BGMのこの部分の振り付けはこれで良いのですか?」
「うむ。この緩やかな振りこそが肝なのだ」
ひらりと舞う鈍色の妖精を従え、華麗なペンギンダンスを披露する皇帝。トリテレイアは彼の動きを様々なアングルから撮影し、編集や演出を加えてプロモーションビデオに仕立てていく。全ては人質救出のためとはいえ、作業自体に手抜きは一切なかった。
「成程、次のポーズを強調する為に緩急を……なら照明を動かして……」
皇帝の意図を汲んで、それに合わせて機材を操作し、最もダンスが映えるような趣向と提案を行うトリテレイア。実に有能な裏方としての働きぶりと、皇帝を褒めそやす恭しい振る舞いに、ペンギアットはすっかりご満悦である。
「うむうむ、貴様はなかなか見どころがあるな。我が側近に取り立ててやっても良いぞ」
「勿体ないお言葉です」
ペンギアットはまだ気付いていない。騎士が照明を操作したのはPV撮影のためだけではなく、船内に明暗を作り出してブラックタール達の暗躍を援護するためだということに。
皇帝が己が威信を知らしめんと夢中になっている間にも、人質解放は進められていた。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
あら、随分自信満々なペンギン皇帝ね。
ごきげんよう、皇帝陛下♪
それなら、一曲お相手頂けるかしら。
これでも歌と踊りには自信があるのよ♪
普段より豪奢なドレス姿で優雅に挨拶しつつ登場。
特技である【歌唱とダンス】により【プリンツェス・シェーン】を披露。
敵も含めた観る者全てを魅了し、虜にして自身に視線と意識を釘付けにして、ブラックタール達が人質を救出する時間を稼ぐわ。
観客からのアンコールに応えたり、ペンギンのプライドを煽って焚きつけたりもして(そして格の差を見せつけて徹底的に敗北を味わわせて)、少しでも長く時間を稼がないとね♪
全てに魅せつけて魅了してあげるわ♪
「あら、随分自信満々なペンギン皇帝ね」
ぬいぐるみのような可愛らしい見た目に反して、尊大でプライドの高い態度を隠そうともしない猟書家ペンギアット。その自信がただの慢心かそうでないかを確かめるように、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)がステージに進み出る。
「ごきげんよう、皇帝陛下♪ それなら、一曲お相手頂けるかしら」
普段よりも豪奢なドレス姿で衆目の前に現れた彼女の佇まいには、夜の貴族たる吸血姫に相応しい気品があった。口元からは淑女らしく優雅な微笑みを浮かべ、惹きつけるような眼差しと共に挨拶すれば、誰も無視できようはずがない。
「ほう……余程自信があるようだな。ならば見せてみるがよい」
フレミアからの挑戦に、ペンギアットは皇帝らしく鷹揚な態度で応じる。だが内心では彼女が登場した瞬間から観客の注目がそちらに持っていかれたのに不満な様子が窺えた。
「これでも歌と踊りには自信があるのよ♪」
そんな敵の心象を見透かしつつ、フレミアは【プリンツェス・シェーン】を披露する。
華奢な肢体が音楽に合わせて華麗に踊り、豪奢なドレスの裾と袖がふんわりと広がる。その唇から紡がれる歌声は天上の調べを思わせるほどに美しく、聴く者の心を震わせる。
「ここは一時、わたしのステージ……至福の一時をお見せしましょう♪」
特技である歌唱とダンスを存分に見せつけ、敵も含めた観客全てを魅了するフレミア。
虜になった人々の視線と意識は彼女に釘付けとなり、会場が震えるほどの喝采を送る。一時的なものとはいえ、今の彼らはフレミアの熱狂的な信者と言って良かった。
「や、やるではないか……ぐぬぬ……」
それを見てただ1人――いや、ただ1羽喜んでいないのは、ペンギアット皇帝だけだ。シターンッと床を踏み鳴らして不満を現しながらも、自らもフレミアのステージから目を離せずにいる事実が、なおのこと彼を苛立たせている。
「「アンコール! アンコール!」」
観客はフレミアに惜しみない声援を送り、フレミアもそれに応え最高のパフォーマンスを披露する。存分にステージを沸かせながら、彼女はペンギアットに挑発するような視線を送り、皇帝のプライドを煽って焚きつけることも忘れない。
「貴方はそこで見ているだけなのかしら?」
「―――ッ! 馬鹿にするでないッ!」
挑発に乗る形でステージの中心に躍り出たペンギアットだが、いくら彼のダンスの腕前がそこそこでも、ユーベルコードまで披露したフレミアの実力には及ばない。注目を奪い返そうと焦るほどに踊りは荒削りとなり、すぐに会場の主役の座を奪い返されてしまう。
「全てに魅せつけて魅了してあげるわ♪」
今この場の主役は紛れもなく自分だと、高らかに美しくその存在を示す真紅の吸血姫。
もはやペンギン皇帝との格の差は歴然。敵に徹底的に敗北を味わわせた上で、人質救出が完了するまでここに惹きつけておくことが彼女の狙いだった。
(少しでも長く時間を稼がないとね♪)
がくりとステージに項垂れ「お、おのれ……」と呻く敵を見下ろしてフレミアは笑う。
この勝負の軍配がどちらに上がるかなど、もはや満場一致で明らかなことであった。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
「ペンギン!」
「偉そう!」
「でもモフモフ!」
確かに、モフモフ…。ペンギンに毛があるって事はまだ子供なのかな…?
…とてもそうは見えないけど…。
「ダンス!」
「お嬢様!」
「必須!」
踊り…。わたし、あんまりダンスとか踊った事ない…。
ん…祭事とかで踊ってた神楽や魔剣達を使った剣舞なら…。
あんまりそういうので参加する人いないだろうし、意外と珍しがられていける、かも…?
とりあえず、審査員や観客に見て貰って乗り切るよ…。
「ペンギン!」「偉そう!」「でもモフモフ!」
ダンスステージで一喜一憂の挙動を見せるペンギアットを指差して、メイド服に身を包んだ人形の少女達らわいわい騒いでいる。彼女らの主人である雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は、自身もふかふかの羽毛に包まれた皇帝ペンギンを見てこくりと頷いた。
「確かに、モフモフ……。ペンギンに毛があるって事はまだ子供なのかな……? ……とてもそうは見えないけど……」
あのふわふわの毛並みは確かに子ペンギンぽいが、居丈高な態度から子供らしさは微塵も感じられない。そもそも"過去"たるオブリビオンの年齢を推し量る事は困難だろう。
「むっ! 貴様も挑戦者か! ステージが上がって来るが良い! 勝負だ!」
そんな風にまじまじと見ていたのが目をつけられたのか、ペンギアットがびしっと羽で璃奈を指名する。このステージで行われる勝負とは、勿論ダンスコンテスト以外にない。
「ダンス!」「お嬢様!」「必須!」
「踊り……。わたし、あんまりダンスとか踊った事ない……」
目を輝かせるメイド人形達とは対照的に、あまり自信なさそうに視線を泳がせる璃奈。
しかし捕らわれた人質の救出が完了するまで、もう暫く時間を稼ぐ必要がある。メイド達から押し出される格好で、彼女はコンテストのステージに上がった。
「ん……祭事とかで踊ってた神楽や魔剣達を使った剣舞なら……」
頭を捻ったすえに自分が踊れそうなダンスを思いついた璃奈は、すらりと慣れた所作で魔剣を抜いて舞い始める。彼女の故郷はサムライエンパイア――魔剣や妖刀の類を祀り、鎮める役目を担ってきた彼女の一族には、神楽舞の様式も伝わっている。
「へえ、見たことない音楽に踊りね」
「初めて観たけど、すごく奇麗……」
時には水や風のように流麗に、時には炎のように激しく、時には大地のように悠然と。
魔剣と共に舞う巫女の姿には神秘的な美しさがあり、これまでコンテストで披露されたダンスとは趣きが違っていた。だからこそ、彼女の舞は人々の興味を引きつける。
(あんまりそういうので参加する人いないだろうし、意外と珍しがられていける、かも……?)
観客や審査員の反応を見て、好感触を掴んだ璃奈はより熱を込めて神楽の剣舞を舞う。
内容が静粛な祭事の踊りなだけに、これまでのような大きな歓声や拍手は起こらない。だが釘付けになった人々の視線をみれば、評価のほどは明らかだった。
「む、むむ、なかなかやる……こうか?」
ペンギアットも負けじと踊るのだが、ジャンルを相手に合わせようという拘りゆえに、独特のリズムと振りをうまく真似できずにいた。そもそも神楽とは"形"だけ真似しても、想いや信心が伴わなければ意味をなさない――この土俵で璃奈に勝てる理由は皆無だ。
「……見て貰ってありがとう……」
神楽剣舞を終えた璃奈は、始めた時と同じ滑らかな所作で魔剣を鞘に収め、一礼する。
途端に周囲からはわっと惜しみない拍手が彼女に送られる。一方でぽつんとステージの端で無視される形となったペンギアットは、ぐぬぬと地団駄を踏むのであった。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フォーサイス
ダンスバトルか。あまり詳しくないんだよな。そうか、じゃあ、ペンギアットくんの完コピで挑発するよ。単純なバトルとしては評価されないだろうけど、勝つことが目的じゃないしね。
ペンギアットくんのダンスを情報解析。体系の違いを考慮に入れて、完全にコピーするよ。挑発すればどんどん難易度の高い技を出してくるはず。それも瞬時に完コピしてみせるよ。声には出さず。ポーズで挑発。やっぱりこれがダンスバトルっぽいよね。
事前に狙いを協力者のブラックタールに伝えておき、注意を引いてる間に救出を進めてもらうよ。
「ダンスバトルか。あまり詳しくないんだよな」
猟兵と猟書家によるコンテストの模様を、じっと眺めるアリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)。様々な世界で物語を収集してきた彼女だが、ダンスバトルに関する知識にはあまり自信がないらしい。
(そうか、じゃあ、ペンギアットくんの完コピで挑発するよ)
だが、暫くステージの様子を見ているうちに彼女は思いついた。目の前には多種多彩なダンスに精通した、この上ない"お手本"がいることに。どうやら敵はダンスの腕前に自信もある様子。自分のダンスをまるまるコピーされればきっと黙ってはいられないはずだ。
「そうと決まれば……」
アリスは仲間の猟兵がペンギアットに挑戦する所を観察し、敵のダンスを【情報解析】にかける。魔法ともプログラミングともつかない彼女の高度な情報操作能力にかかれば、この程度のモーションを把握するのは造作もない。
「それ、理解したよ」
「なにっ?」
解析を終えてぴょんとステージに立ったアリスは、直前までペンギアットが踊っていたダンスをそのまま披露する。体型の違いを考慮に入れて完全にコピーされたそれを見て、皇帝ペンギンの目が丸くなった。
「我の踊りを盗んだだと……?!」
本人の目から見ても、アリスのダンスは寸分の狂いなく同じ物だった。独創性が大きな評価点となるこの手のコンテストでは異端だが、その技術力の高さは驚嘆する他にない。
(単純なバトルとしては評価されないだろうけど、勝つことが目的じゃないしね)
一曲踊ればすぐに次の曲へ、これまでペンギアットが見せたダンスを次々に再現する。
こうも露骨に挑発されれば相手も黙ってはおれまい。だむんだむんと地団駄を踏んで、負けじと皇帝がステージに飛び出してきた。
「しょせんは猿真似よ……これなら真似できまい!」
小癪なコピーキャラの鼻を明かそうと、難易度の高い技を次々繰り出すペンギアット。
だがアリスはそれも瞬時に完コピしてみせ、余裕の笑みを浮かべつつポーズを決める。声には出さないが、全身でのムーブの全てが対戦者への挑発になっていた。
(やっぱりこれがダンスバトルっぽいよね)
ダンスバトルの基本は自分だけの表現やスタイルを互いに見せつけあうことだ。それを「そのくらい、自分にもできるよ」とでも言わんばかりに再現されるのは最大級の挑発となる。スキル面での圧倒的な実力格差を見せつけられているも同然だからだ。
「ぐぬぬぬぬぬ……!」
どんな技も涼しい顔でコピってしまうアリスに、敵はムキになって勝負を挑み続ける。
傲慢な皇帝ペンギンの注意が引かれている間に、アリスの狙いを事前に伝えられていたブラックタールの協力者達が、捕らわれた人質の救出を進めていく。
(そろそろかな)
視界の端で暗躍する黒い影を捉え、情報妖精の少女は踊りながら満足げな笑みを見せ。
結果的には例年以上に多くの観客を沸かせたこのコンテストも、終幕に向かっていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ペンギアット・ペンギゲイザー』
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POW : そこのお前、アレを使って我と勝負するのだ
【銀河皇帝ペンギン直々の指名】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD : この船の施設を制する者は、この戦いを制す者である
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【敵味方問わず技能】の威力と攻撃回数が3倍になる。
WIZ : 我はのちにこの船を統べることになる者ぞ
敵より【遊びに来ていた観客の人気が高い】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
イラスト:key-chang
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠幻武・極」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「むむむ……まだだ、まだもうひと勝負……!」
猟兵達の見事なダンスの技に翻弄され、気付けばダンスコンテストに夢中になっていた銀河皇帝ペンギン、ペンギアット・ペンギゲイザー。人質の事などすっかり忘れて踊っていると、彼にとっては予想外の、猟兵にとっては待ち望んでいた報告が飛び込んでくる。
「猟兵の皆さん! 人質の救出と避難、全て完了しました!」
ぬるりと宇宙船の隙間から姿を現したのは1人のブラックタール。猟兵がコンテストに敵を引きつけている隙に、捕らわれた人質の奪還にあたっていた協力者達の1人である。
ペンギアットがこれまで何やかんやと余裕の態度でいられたのも、人質という切り札を持っていたからだ。それが失われた今、状況は一変する。
「なに、人質が?! まさか我は謀られたというのか?!」
逃げられないようにしていたはずの人質がいつの間にかいなくなっているのに気付き、ペンギン皇帝は大いに慌てふためい――たかと思うと、くるりと踵を返して走り出した。
「これはいかん。一時撤退である!」
それまでの不遜さはどこへやら。人質を失った彼は迷うことなく逃走を決断したのだ。
皇帝を自称するくせに情けない様だが、戦略的な判断としては間違っていない。ここで逃げられればペンギアットはいずれ戦力を整えなおしてこの船に戻ってくるか、あるいは別の宇宙船が新たな標的になるだろう。
「逃がすかー!」
「待てー!」
これまで協力してくれたブラックタール達が、壁や天井を伝って敵を追いかけていく。
人質救出に携わった彼らは、この宇宙船内の構造にも詳しい。彼らと協力すれば逃げるペンギアットに先回りする事もできるだろう。奴にはここで確実にトドメを刺すべきだ。
華やかなダンスコンテストの時間は終わった。ここからは戦いの舞踏を披露する時だ。
榊・ポポ
まだコンテストは終わってないぞッ☆逃げるなッ☆
ドタキャンする子はお仕置きだべ~
このヱアボーで追い回してやるッ☆
ん?なんかこのヱアボー常にガタガタ揺れてね?
操作誤ったらすっ飛んできそうだね!
なのでブラックタールのみなさん!ナビゲートヨロピク!
出来るだけ広そうな通路に肯定ペンギンが逃げ込むようにしてちょ☆
ヱアボーを☆気合いで☆操縦して、☆サーフィン走行が追い回すぞッ
接近したら☆ダッシュで一気に距離を詰めてポポちゃんの超☆スケボーテクニックみせちゃる!
くお~ぶつかる!ここでトリック!ポポちゃんを右――ブギョアァア!!(断末魔)
※トリックと言い張る荒ぶる挙動のUC☆捨て身の一撃でペンギアットに突撃
「まだコンテストは終わってないぞッ☆逃げるなッ☆」
脱兎のごとく(ペンギンのくせに)遁走するペンギアットを、翼をパタパタさせながら追いかけるポポ。先程は華麗なカカポダンスを披露して皇帝を困惑させていた彼女だが、あの程度ではまだまだ決着をつけた気にはなれないらしい。
「ドタキャンする子はお仕置きだべ~。このヱアボーで追い回してやるッ☆」
「ええい、追ってくるでない!」
飛ぶわけでも走るわけでもなく、器用にホバーボードに乗って宇宙船内を翔けるポポ。
対するペンギアットは、ふっくらした体型には見合わぬ素早さでバタバタと逃げ回る。
「ん? なんかこのヱアボー常にガタガタ揺れてね? 操作誤ったらすっ飛んできそうだね!」
逃げる皇帝を追いかけているうちに、ポポはポンコツホバーボードの挙動のおかしさに気付く。ただ走らせるだけなら何とかなりそうではあるが、複雑な機動やトリックを決めようとすれば十中八九荒ぶりそうだ。
「なのでブラックタールのみなさん! ナビゲートヨロピク!」
「「はーい!」」
彼女が頼りとするのは人質救出で働いてくれたブラックタール達。船内の構造に詳しい彼らは、このリゾートシップの平和を取り戻すためならどんな協力も引き受ける覚悟だ。
「出来るだけ広そうな通路に肯定ペンギンが逃げ込むようにしてちょ☆」
「了解! あっ、この先の通路は左に曲がってね!」
不定形の彼らにしか通れない裏道を使って、敵の進路に先回りするブラックタール達。
ポポは彼らを見送ると、ガタガタわめくヱアボーの操縦に専念する。こういうポンコツを乗りこなすコツとは気合いである。突然挙動が荒ぶりだしても慌てず騒がず抑え込み、まるで荒波の上を滑るサーフィンのような走法で、逃げるペンギアットを追いかけ回す。
「ええい、しつこい鳥め……!」
「お前も鳥だろがっ☆ ポポちゃんの超☆スケボーテクニックみせちゃる!」
徒歩とヱアボーの速度の差は埋めがたく、じりじりと距離を詰められるペンギアット。
ブラックタール達が誘導してくれたおかげで、いい感じに通路の幅も広くなっている。
チャンスとみたポポはスピードを上げ、猛ダッシュで一気に接近を図る――の、だが。
「くお~ぶつかる! ここでトリック! ポポちゃんを右――ブギョアァア!!」
「な、なにをやっておるのだお前! こっちに来るでない――グギョアァア!?」
超加速で敵の間合いに踏み込んだヱアボーはこれまでに無いほどの荒ぶる挙動をみせ、乗り手にも操縦不能となり激突。ポポとペンギアット、二羽分の断末魔が仲良く響いた。
本人はそれを【ポポちゃん超☆スケボートリック】と言い張るが、どう見ても捨て身の突撃である――まあ、だからこそペンギアットに与えたダメージも大きかったのだが。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
不利を覚れば瞬時に引き際を見極めるとは……見た目や言動に反して、将として優秀ですね
であればこそ、ここで確実に討ち取ります
ブラックタールの方の上に乗せていただき運んでもらう
予想される遭遇時間をDJの方に伝えておく
よろしくお願いします
……ひんやりしていますね
先回りに成功すれば立ちはだかる
さぁ、第二ラウンドです!
DJによる艦内放送を合図に、【ダンス】【パフォーマンス】の勝負を仕掛ける(誘惑・傾城傾国の艶美)
どうしました、リベンジの機会をみすみす逃すのですか?
それとも……同じ相手に二回負けるのが怖いのですか?(挑発)
先の勝負より激しくテンポを上げて熱戦を繰り広げる
ライブ映像による人気勝負で打ち負かす
「不利を覚れば瞬時に引き際を見極めるとは……見た目や言動に反して、将として優秀ですね」
プライドが邪魔をして引き際を見誤る輩も珍しくない中で、躊躇なく撤退に踏み切ったペンギアットの行動をオリヴィアは高く評価していた。将たるもの一時の恥を忍んででも生き延びねばならぬ時がある。あの幹部猟書家はそれを理解しているようだ。
「であればこそ、ここで確実に討ち取ります」
再び同じような事件が宇宙のどこかで起こされる前に、油断も慢心も一切なく、使える手立ては全て駆使してあの皇帝ペンギンを追い詰める――そんな決意が彼女にはあった。
「よろしくお願いします」
「はい、お任せあれ!」
オリヴィアの移動手段は協力してくれるブラックタール。黒くて滑らかな背中(?)に乗って運んでもらう。この船の地理に明るい彼らに頼った方が、1人で行くよりも追跡はずっと捗るだろう。
「……ひんやりしていますね」
「きもちいーですか?」
ぷるぷると潰れたスライム状になって、オリヴィアを運ぶブラックタール。敵の行方はすでに掴んでいるらしく、移動する方角に迷いはない。ほどなく彼女らの視線の先には、ペタペタと足音を鳴らして遁走するペンギアットの姿が見えた。
「さぁ、第二ラウンドです!」
「ぬぅっ、お前は?!」
先回りに成功したオリヴィアは敵の前に立ちはだかり、白いビキニで堂々と宣言する。
同時に、予め予想される遭遇時間を伝えられていたDJが、館内放送を通じてBGMを流し始める。曲は先程のダンスコンテストで彼女らが戦ったのと同じものだ。
「むむ、この我と決着をつけようというのか。だが、しかし……!」
「どうしました、リベンジの機会をみすみす逃すのですか?」
ダンスにおけるこの二者の戦いは白熱していた。これが自分を逃さないための策略だと分かっていても、再戦を望む気持ちはペンギアットにもある。彼の気持ちが揺れているのは誰の目にも明らかで、それを承知のうえでオリヴィアは挑発を仕掛ける。
「それとも……同じ相手に二回負けるのが怖いのですか?」
「くっ……舐めるでないわ! そこまで言うなら、我の本気を見せてくれる!」
そうまであからさまに挑発されてしまっては、もはや皇帝として退くことはできない。
己のプライドに敗北したペンギアットと、すでに戦略的勝利を得たオリヴィアによる、ダンスコンテストの第二幕が上がった。
「我はのちにこの船を統べることになる者ぞ!」
「いいえ、その野望は挫かせていただきます!」
先の勝負よりも激しくテンポを上げて熱戦を繰り広げる二人。その模様はリアルタイムで船内に中継され、住民と観光客は息を飲むのも忘れて演技に夢中となる。此度の勝敗を決めるのは審査員だけではなく、リゾートに遊びにきていた全ての観客たちである。
『結果が出ました。勝者は――オリヴィア嬢!』
数分間の熾烈なバトルの末、人気投票による勝利をもぎ取ったのはオリヴィアだった。
ペンギアットもよく奮戦したが、人のみならず無機物すら魅了する【傾城傾国の艶美】を行使する彼女には敵わなかったようだ。
「また負けた……だと……」
文句のつけようがない形式で完璧に打ち負かされ、がっくりと項垂れるペンギアット。
物理的には傷ひとつ負っていないが、彼がプライドに負った負傷は深刻なものだった。精神的なショックと勝負に費やした時間は、今後彼の首を徐々に締めていくだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フォーサイス
まだまだダンスは終わってないよ。
逃げる方向にちびアリスを大量に召喚。退路を邪魔するよ。ぼく自身は後ろから追走だ。
「あそぼー。」
「まだまだおどりたりないです?」
方向転換して逃げるだろうけど、当然、そちらにも召喚だよ。100体以上、召喚できるしね。そうそうつきないよ。正面突破しようとしたら、1体を自爆させて、ひるませるよ。そしてその隙に高速詠唱で火の矢をとばして攻撃だ。焼き鳥になっちゃうね。
追走中、置かれている物品を武器にしようとしたら、とる前に火の矢で燃やして、妨害するよ。
「くっ。時間を食ってしまった。早く脱出せねば……」
敗北のショックからなんとか立ち上がり、再び宇宙船からの逃走を図るペンギアット。
だが、彼が逃げようとした方向からわちゃわちゃと小さな妖精のような生き物が現れ、道を塞ぐ。それと反対方向からやって来るのは、情報妖精のアリスだ。
「まだまだダンスは終わってないよ」
「くっ! もう次の追手が来たか!」
ペンギアットは即座に方向転換するが、アリスはそちらにも【アリスの世界】で自身の分身「ちびアリス」を召喚して邪魔をする。1体1体の戦闘力はそこまで高くはないが、数を多く呼べるため、こうした妨害にはもってこいのユーベルコードである。
「あそぼー」
「まだまだおどりたりないです?」
「ええい、今はそれどころではないのだ!」
幼い子供のような無邪気な喋り方と仕草で、ペンギアットにじゃれつくちびアリス達。
傍目には大きなペンギンのぬいぐるみで子供が遊んでいるようにも見えるが、遊ばれるほうは溜まったものではない。こうしている間にも猟兵の追手は近付いているのだ。
「100体以上、召喚できるしね。そうそうつきないよ」
分身に絡まれながら逃げまわる敵を、アリスは後ろから追走しつつルートを見て新しい分身を喚ぶ。情報操作に長けた彼女は当然、船内の詳細な構造も頭に入っているだろう。どこに分身を出せば退路を潰せるか、全てお見通しのようだ。
「ええい、こうなれば力ずくで―――!」
「きゃっかー」
業を煮やしたペンギアットは正面突破を図るが、その途端に道を塞いでいたちびアリスの1体が自爆する。威力はさほどでも無いが突然の至近距離での爆発は「うおっ?!」と敵を怯ませるのに十分な効果がある。
「残念、逃がさないよ」
「うぎゃっ!! あ、熱いっ?!」
その隙をついてアリスは素早く詠唱を行い、ペンギアットの背中から火の矢を飛ばす。
真っ赤に燃える矢を受けた敵は悲鳴を上げ、羽毛に燃え移った火を消そうと必死に床を転げ回る。たっぷりと温かそうな毛と脂肪を蓄えているぶん、どうも熱には弱いらしい。
「焼き鳥になっちゃうね」
「お、おのれぇぇ……!」
毛並みが焦げてしまったペンギアットはわなわなと震えながら、何か武器になる物品はないかと辺りを見回す。【この船の施設を制する者は、この戦いを制す者である】とは、彼の掲げる持論のひとつである。
「そうはさせないよ」
だがアリスは敵が武器を取る前に火の矢でそれを燃やす。コミカルな印象があるが相手は幹部猟書家である、反撃に転じられるとどうなるかは分からない。相手のやりたい事を徹底的に妨害するのは戦いの基本でもある。
「ほら、一緒に踊ろうよ」
「くっ、火遊びは良くないと親に教わらんかったのか……!」
ひゅんひゅんと次々と火の矢を飛ばすアリスに、踊らされるように逃げ回るペンギン。
避けそこねた矢にじりじりと焦がされ、ペンギアットの表情からは余裕が消えていく。このままでは不味い――そう思いながらも、船外への脱出口はまだ遠く先であった。
大成功
🔵🔵🔵
火土金水・明
「中々、広いリゾートシップでしたね。迷ってしまいました。(2章からの途中参加の理由です。)」「その分、しっかり戦わせてもらいます。」(ブラックタールさん達に先回りできるよう誘導してもらいます。)
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【高速詠唱】で【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【沈黙の騎士と聖なる騎士】で、『ペンギアット・ペンギゲイザー』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。
「中々、広いリゾートシップでしたね。迷ってしまいました」
軽快なダンス曲と戦闘音が同時に鳴り響く船内を、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は歩きまわっていた。会場に辿り着けずコンテストには間に合わなかったが、どうやら敵に逃げられる前に味方と合流することはできたらしい。
「その分、しっかり戦わせてもらいます」
「「はい、頼りにしてます!」」
応じるのは協力者のブラックタール達。船内の構造には詳しいものの、戦闘能力は低い彼らはあくまで道案内などのサポートしかできない。猟書家との戦いに決着をつけられるのは、猟兵をおいて他にいないのだ。
「先回りできるよう誘導してもらえますか?」
「もちろん! 任せてください!」
明の要望に応えて、ブラックタール達は不定形のボディを活かして逃げるペンギアットを追い回す。どんなに小さな隙間からでも移動できる彼らの追跡を振り切るのは難しい。
「くっ、厄介な奴らめ……っ、誰だお前は!」
「お初にお目にかかりますね。勝負です」
相手が右往左往している間に、明は敵の退路を先回りして正面に。帽子のつばを抑えて一礼すると、七色に輝く不思議な杖を掲げ【沈黙の騎士と聖なる騎士】の呪文を唱える。
「静けさと聖なる光に包まれて消えなさい」
放つのは沈黙と聖なる光の属性を宿した魔力の矢。一射目はフェイントで回避を誘い、避けた先に全力の二射目を放つ。撤退がうまくいかず焦れていた敵は、まんまとその策に引っ掛かった。
「こんなもの……ぐおっ!!?」
ペンギアットの腹にぶすりと突き刺さった矢は、そのまま聖なる光で継続的なダメージを与え続ける。内蔵を直に灼かれるような痛みに彼は悶えるが、腐っても猟書家の1人、これしきで戦意を喪失することは無いようだ。
「ぐぬぬぬ……そこを退けいっ!」
この状況では観客人気による強化も望めず、ペンギアットが頼れるのは己の武力のみ。
見た目より素早い身のこなしで距離を詰め、翼のビンタをお見舞いしようとするが――振るった一撃はスカッと空を切る。
「残念、それは残像です」
「なんだと……?!」
いつの間にか明はペンギンの背後に回っており、二度目の呪文の詠唱も完了している。
再び放たれた魔力の矢は数百発の光の豪雨となって、無防備な敵の背に突き刺さった。
(少しでもダメージを与えて次の方に)
華麗な立ち回りで敵を翻弄しつつも、明はここで仕留めきろうと無理な攻めはしない。
もしここで逃げられたとしても、魔力の矢による継続ダメージは残る。逃走においても戦闘においても、それは大きな負担となってのしかかるだろう。
「うぐぐ……不味い……」
現にペンギアットの表情は優れない。すでに相当の数の魔力矢を受けてしまっており、ダメージも蓄積されている。このまま戦い続けても勝算が無いことは、彼自身が一番よく理解しているはずだ――されど逃がす気はないと、猟兵達の追撃は激しさを増していく。
大成功
🔵🔵🔵
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【SPD】
※アドリブ絡み連携大歓迎
引き際の判断は、戦士や指揮官の条件だと思うよ
…でもモフペン様、前線苦手で部下もいないよね?
OK、ココからはチア傭兵部隊として華麗にヤるよっ
「「「イェーイッ♪」」」
『マーチング・ワスプ』の控え(総勢110体)を呼んだら
【サイレント・ブリゲード】で一斉強化さっ
チアの美女型80体がプラズマライフルで追跡
ゆるキャラ型30体がビームガトリングで待ち伏せ
1100分(約18時間)動ければ上等っ
そしてアタシはBタール達の情報を元に
『マトリクス・メモリ』で【防災訓練の発生源】構築
各所の防火ハッチで逃げ場を塞いだら…皆ヤッちゃえ♪
「「「オール、ファイア、ゴー♪」」」
『いくぞ~♪』
「引き際の判断は、戦士や指揮官の条件だと思うよ」
プライドを優先して戦いを優先することが無かった点は評価しながら、リーゼロッテはペンギアットを追う。ピンチとみればすぐ逃げ出す準備と心構えもできていたのだろう、あのモコモコした見た目でやたら逃げ足が速い。
「……でもモフペン様、前線苦手で部下もいないよね? OK、ココからはチア傭兵部隊として華麗にヤるよっ」
「「「イェーイッ♪」」」
そこで彼女が呼ぶのは『マーチング・ワスプ』の控え、総勢110体。コンテストではバックダンサーとして活躍した彼女らだが、本来は戦闘から看護まであらゆる事をこなす便利な仲間たちである。
「そんじゃ、各機戦闘用データのインストール後に出撃。ちゃんと帰投時間はバッテリー残量逆算の上、厳守してねー」
リーゼロッテは【Op.NULL:SILENT BRIGADE】でドローン部隊の一斉強化を行い、逃走する敵の追撃を命じる。骸魂型疑似情報をインストールすることで一時的にオブリビオン化した『マーチング・ワスプ』は、一糸乱れぬ動きで行動を開始する。
「1100分動ければ上等っ」
このモードのマーチング・ワスプには稼動限界があるが、内蔵火器用バッテリーの充填はバッチリ。約18時間分の電源が尽きる前に標的を追い詰め、仕留めれば良いだけだ。
「む、あれは先程の踊り子共……なんだその人数は?!」
まずはチア姿の美女型ドローン80体が、プラズマライフルを装備して敵を追跡する。
同じような顔をした美女達が光線銃を手に追いかけてくる絵面は若干のホラーだろう。ペンギアットもぎょっと顔色を変えてバタバタと逃げ回る。
「「「ヤッホー♪」」」
「ぬおうっ!?」
だが美女達に追い回された先でペンギアットを待っていたのは、ゆるキャラ型ドローン30体だった。事前に逃走経路を予想して待ち伏せしていた彼女らは、標的がやって来たのを見るなりビームガトリングによる攻撃を仕掛ける。
「くっ、この道はダメか……!」
敵は慌てて進路を変えようとするが、その行く手を阻むように船内の防火ハッチが降りていく。ブラックタール達から船内の情報を教えてもらったリーゼロッテが、可変式記録媒体「マトリクス・メモリ」を用いて、船内のシステムの一部に干渉したのだ。
『【防災訓練の発生源】構築っと……皆ヤッちゃえ♪』
リーゼロッテの流した偽情報に従って、各所のハッチが次々に閉じていく。言うまでもなくそのポイントは、ペンギアットの逃げ場をピンポイントに塞ぐような場所ばかりだ。
そして退路を失った敵の元に、110体のマーチング・ワスプがぞろぞろと集結して。
「「「オール、ファイア、ゴー♪」」」
『いくぞ~♪』
小悪魔チックで楽しげな号令と共に、ビームの一斉攻撃がペンギアットに襲いかかる。
目も眩むほどの光の豪雨に打たれた皇帝ペンギンは「ぐおぉっ!?」と悲鳴を上げて、閉じた防火ハッチの向こう側まで吹き飛ばされていった。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
【虜の軍勢】で雪花、ハーベスター、ジョーカー、エビルウィッチ、異国の少女剣士、『雪女』雪華、狐魅命婦、黒い薔薇の娘たち、閉幕のアリス、万能派遣ヴィラン隊(多数)を召喚。
ブラックタール一名につき、眷属二名程(ヴィラン隊は多数いるので各隊に分散)が戦力として同行。
通信機で連絡を取り合い、発見次第各自UC(【とにかくふぶいてみる、ファイアー・ボール、氷柱散華、フォックスファイアフィーバー、ハートボム(射撃武器運用)、瞬時の首狩り、ブラックレディ、縮地法、クイーンの嘆き】)で攻撃。
自身もブラックタール一名と雪花と共に、各隊と連携してあの皇帝を追い詰めるわ。
さぁ、皇帝陛下。チェックメイトよ
「わたしの可愛い僕達……さぁ、いらっしゃい♪」
船内を逃げ回る敵を追い詰める上で、最もシンプルなのは人海戦術。フレミアは異空間にある居城から自身の眷属である【虜の軍勢】を呼び寄せ、共同での作戦を組み立てる。
「ブラックタール一名につき、眷属二名程が同行しなさい」
「「かしこまりました、フレミア様」」
雪女見習いの雪花、ハーベスター、ジョーカー、エビルウィッチ、異国の少女剣士、『雪女』雪華、狐魅命婦、黒い薔薇の娘たち、閉幕のアリス、万能派遣ヴィラン隊多数。個性豊かな多数の眷属達が現れ、ブラックタール達と共同戦線を張る。宇宙船の道案内役と、戦力となる眷属の組み合わせだ。
「こちらA班、ペンギン発見です」
「むぅっ、見つかったか!」
班ごとに分散して船内を捜索させると、ほどなくして一班がペンギアットと遭遇する。
目標を発見した雪華は通信機で他の班に連絡を取りながら【氷柱散華】で攻撃を開始。宇宙船では見られない季節外れの氷雪の嵐が、皇帝ペンギンに襲い掛かった。
「舐めるなよ! 我は銀河皇帝ペンギン、これしきの寒さなどなんともないわ!」
降りしきる氷柱に耐えながら、わたわたと別の通路に逃げ込むペンギアット。だが連絡を受けた他の眷属部隊も続々と迫ってきており、彼の逃げ場は着実に狭まりつつあった。
「B班は敵の進路に回り込んで。C班はそのまままっすぐ」
フレミアも雪花とブラックタール一名を連れて、各隊に指示を出しながら皇帝の追跡にあたっている。彼女の指揮と通信機のおかげで、眷属達は離れていても連携を取り合い、ひとつの生き物のように行軍することができた。
「発見しました!」
「攻撃開始です!」
「ぐ、こやつら……あちっ!」
船内のどこへ逃げてもペンギアットの前には眷属が現れ、次々に攻撃を仕掛けてくる。
エビルウィッチのファイアー・ボールと、黒狐に変身した狐魅命婦の狐火が敵を焼く。
熱さに怯めば大鎌使いの眷属2人と、縮地法を会得した少女剣士が迫り、白兵戦を嫌い間合いを取ろうとすれば、【ハートボム】と【クイーンの嘆き】の射撃に撃ち抜かれる。
「ぐおおぉぉっ!!?」
ふっとばされたペンギアットが転がっていった先には、ブラックタールと雪花を連れたフレミアがいた。各隊との連携によって見事にかの皇帝を追い詰めた彼女は、にっこりと微笑みながら魔槍「ドラグ・グングニル」を突きつける。
「さぁ、皇帝陛下。チェックメイトよ」
「ま、まだだ、まだ我は負けておらぬ……ッ!!」
往生際の悪い敵はなおも抵抗しようとするが、眷属による包囲網も完成しつつある今、打開の策はないも同然だった。真紅の魔槍が閃き、ふくよかなペンギアットの腹を貫く。
「ごふぁっ……お、おのれ……!」
腹からぼたぼたと血を流し、よろめきながら後退していくペンギアット。眷属達は床に残された血痕を辿ってすぐさま追撃に移り、ブラックタール達が彼女らの道案内をする。
どこまで逃げようとも逃がしはしない。チェックメイトを告げたフレミアの言葉通り、皇帝はもはや詰みに陥っていたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
ブラックタールのみんなや艦の船員たちと連携…。
ブラックタール達には隠密能力で敵の居場所を逐次通信機か何かで報告して貰いつつ、船員達には確実に逃がさない様、コントロール室から逃げ込んだフロアの隔壁を閉鎖したり、扉をロックしたりしてエリアを封鎖…。
その隙にわたしはミラ達に協力して貰い、【影竜進化】で影に潜航し、敵が逃げ切ったと思って油断してる(実際は逃げ場失って封鎖されてる)トコに影からミラ達やラン達と一緒に一斉攻撃で奇襲…。
影のブレスや暗器、【unlimitedΩ】を叩き込んであげるよ…。
もふもふは残念だけど、逃がすわけにはいかない…
「逃げ足が速いね……でも、必ず追い詰めるよ……」
「私達も協力します!」
「僕らにできる事なら何でも言って下さい!」
平和な宇宙に騒乱を巻き起こす幹部猟書家を逃がすわけにはいかない。その思いは猟兵だけではなく、リゾートシップにいたブラックタールのみんなや船員たちも同じだった。
璃奈は彼らと連携することで、逃走するペンギアットの追跡計画を立てる。協力するのは船員だけではなく、屋敷から連れてきた3匹の仔竜、そしてメイド人形たちも一緒だ。
「ブラックタールのみんなには敵の居場所を逐次通信機か何かで報告して貰えるかな……」
「お安い御用!」
人質救出の時と同じように、ブラックタール達は隠密能力を活かして船内を這い回る。戦闘能力には乏しいが、どこにでも潜伏できる彼らの追跡を振り切るのは難しいだろう。
「船員のみんなは隔壁や扉の操作を……確実に逃さない様に……」
「わかりました」
船の設備に明るい者はコントロール室に向かい、いつでも操作可能なよう準備を行う。
そして指示を出し終えた璃奈は3匹の仔竜を連れ、追い込んだ敵を仕留める待ち伏せ役として潜伏する。
「我が家族たる竜達……闇の衣を纏いて仮初の進化を得よ……。お願いみんな、わたしに力を貸して……」
璃奈の【呪法・影竜進化】によって仔竜達は急成長を遂げ、影を自在に操り同化・潜航する力を得る。この力を用いて彼女らは影に潜航し、とあるエリアの一室で息を潜めた。
『ターゲットはそっちに移動中。予定通りだね』
懐に入れた通信機からブラックタール達の連絡が入る。どうやら上手く敵に気付かれないまま追跡できているようだ。猟兵達に追い回され、ほうほうの体で逃げるペンギアットがどこへ行くのかリアルタイムで報告をくれる。
『ターゲットがフロアに入ったよー』
『よし、封鎖するぞ!』
コントロール室では船員達が同じ報告を受け、敵の逃げ込んだフロアの隔壁を閉鎖し、扉をロックする。他のエリアや船外に繋がる道を全て塞いでしまえば、そこはもう檻だ。
「はあ……はあ……なんとか振り切ったか……」
誰もいないエリアに逃げ込んだペンギアットは、追ってくる気配がないのを確認して、ほっと胸をなでおろす。逃げ切ったと思っているのだろうが、実際は逃げ場を失って封鎖されていることに、彼はまだ気付いていない。
「待っていたよ……」
「な、ッ?!!」
ペンギアットが油断しきったその瞬間、影の中から3体の影竜とメイド達、そして璃奈が一斉攻撃を仕掛ける。まるで予想だにしなかった奇襲に、相手は身構える暇すらない。
「もふもふは残念だけど、逃がすわけにはいかない……」
「ペンギン!」「モフモフ!」「でも悪いやつ!」「きゅい!」
メイド達の暗器がもふもふの羽毛に突き刺さり、竜達の影のブレスが敵を吹き飛ばす。
そして潜航中に展開されていた呪われし剣達――極限まで呪力を強化した【Unlimited curse blades Ω】が、ペンギアットの全身を貫いた。
「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……!」
「ぐおおぉぉぉぉぉっ!!!?」
影と暗器と魔剣の同時攻撃を受けたペンギアットは、閉鎖された隔壁に叩き付けられ、悲鳴を上げる。逃げども逃げども猟兵の追撃は彼を追い詰め、命脈を絶たんとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
ペンギンは一人の女と対峙していた。
「私だ。猟書家カビパン。自称癒し系コンテスト準優勝、ダメ人間連盟名誉会員。そして3回連続『命乞い大会』優勝。演技だけで命乞いしているわけではありませんよ。心の底からです」
退路を塞ぎ、突然よく分からない自慢話を語る。
「ペンギアットよ、よもや私に勝ったなどと思ってはいないだろうな?」
(な、なにを言っているのだこやつは!?)
「情けなさでは私の方が上だ!見るがいい」
(こ、こやつ情けなさで我に勝つつもりか!)
意地でもこの場を立ち去りたいペンギンと意地でもいかせまいとマントの裾をしっかりと握っているカビパン。
スッ
(ここにSAN値チェックレベルの情けない命乞いは入ります)
「ようやくまた会えましたね、陛下」
「くっ……またお前か。一体お前は何者なのだ!」
猟兵達の追撃を受けながら逃げ続けた先で、皇帝ペンギンは一人の女と対峙していた。
瀟洒な軍服を着こなし、気品と風格に満ちた佇まいの凛々しい女性。相変わらず外面に関しては文句の付けようのない彼女は、コンテストではできなかった名乗りを上げる。
「私だ。猟書家カビパン。自称癒し系コンテスト準優勝、ダメ人間連盟名誉会員。そして3回連続『命乞い大会』優勝。演技だけで命乞いしているわけではありませんよ。心の底からです」
退路を塞いで何をするかと思えば、突然よく分からない自慢話を語る。と言うよりも、それは本当に自慢して良いものなのだろうか。まるでダメ人間であることを誇るかのようなカビパンの態度に、ペンギアットの頭上にはハテナマークが浮かんだ。
「ペンギアットよ、よもや私に勝ったなどと思ってはいないだろうな?」
(な、なにを言っているのだこやつは!?)
ダンスコンテスト中の臣下らしい態度はどこへやら、居丈高な態度でカビパンは言う。
彼女とペンギアットのダンスは二人揃って観客の物笑いになった痛み分けだと思うが。まさかアレの決着をつけるつもりなのか。今はそんな事をやっているヒマはないのに。
「情けなさでは私の方が上だ! 見るがいい」
(こ、こやつ情けなさで我に勝つつもりか!)
が、カビパンが口にした決着のつけ方は、彼の想像のはるか斜め上をいくものだった。
客観的に見れば確かに、人質を救出されるなり逃げ出したペンギアットは情けないかもしれない。だがそれと情けなさで競い合って何の意味があるのか。絶望的に不毛である。
「いや、そんな事はどうでもよい! 我は再起を期しての撤退の最中なのだ!」
「まあまあまあまあ、そう言わず」
此奴の相手をしていればロクな事にならないと悟ったか、意地でもこの場を立ち去りたいペンギアットと、意地でもいかせまいとマントの裾をしっかりと握っているカビパン。すでに満身創痍のペンギンには、残念なことにその手を振りほどく力すら残っていない。
「さあ見るがいい」
「な、何をするつもりだ……!」
ゴゴゴゴゴと妙な気迫を放ちながら、カビパンはスッと床に膝と片手を付き。もう片手で縋る様にマントを握ったまま、【どうかお助け下さい!】と渾身の土下座を披露した。
「他の人はどうなってもいい! 私だけは助けて!!」
恥も外聞も風評もプライドも捨てた全身全霊での命乞い。自分が助かるためなら親でも妹でも好きにして良いと、靴でも何でも舐めますと、見苦しい発言がぽんぽん飛び出す。
「この船が転覆しても構わないんで、どうか私だけは!」
「な……なんというヤツ……!」
此奴はこの船を守るためにやって来た猟兵では無かったのか。敵である自分に命乞いをして情けなくはならないのか。軽蔑すらも通り越して、汚い人間の深淵に触れてしまったペンギアットの心は恐怖と戦慄に襲われた。
「は、離すのだ! 見苦しい!」
聞くだけで正気が下がりそうなカビパン渾身の命乞いを見てしまったペンギアットは、半狂乱になってカビパンの手を振りほどく。ただの生き汚さが精神攻撃にまで昇華されるとは、まさにドン引きである。
「どうかお許しをぉぉぉ~」
「ええい、来るでないわぁーっ!」
かくしてダンスコンテストに続いての情けなさ勝負は満場一致でカビパンの完全勝利。ギャグの世界に取り込まれたペンギンが正気に戻るまでには暫くの時がかかったという。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
船内監視システムをハッキングし隔壁等で逃走経路封鎖
お忘れ物です、ペンギアット様
…PVのマスターデータです
(UC投げ渡し)
フォースナイト流の決闘はご存知ですね
これは模造品ですが…こんな機能も御座います
(自身のUCの刃を鞭の如くしならせ剣に戻し、爪先からUC伸ばし)
貴方が勝てばデータは譲渡
私が勝てば恒星へ射出します(宇宙葬)
いざ、尋常に…勝負!
短躯補う踊るような剣戟と変幻自在の刃を瞬間思考力で見切り
脚の刃で圧を掛けつつ、武器受けと盾で応戦
同じジャンルのダンス対決といい…貴方は矜持が高すぎるのです
光刃で受けると見せかけ刀身消失
盾持つ腕の切断代償に敵の思惑外し反撃一閃
ですが…私には好ましい在り方でした
「ぐ……あと少し……あと少しだ……」
撤退を阻む猟兵の妨害を受けて満身創痍になりながらも、ペンギアットは宇宙船の出口に近付いていた。この窮地さえ脱すれば宇宙のどこかで傷を癒やし、計画を再開する事もできるだろう。敗北の泥と血に塗れようとも、皇帝ペンギンは往生際が悪かった。
「見ておれ猟兵よ……我は必ずまた舞い戻って……っ?!」
だが。逃げ切りに手をかけた彼の目前で、外へと繋がる通路が突如隔壁で閉鎖される。
誰かが船内監視システムをハッキングし、逃走経路を封鎖したのだ。こんな事ができる技術を持つ者は、猟兵の中でも限られている。
「お忘れ物です、ペンギアット様……PVのマスターデータです」
「お前は……!」
退路を封鎖されたペンギアットの前に姿を現したのは、白鎧の機械騎士トリテレイア。
彼は瞠目する皇帝ペンギンに【大出力可変式擬似フォースセイバー】の一振りを投げ渡し、構えるように身振りで示す。
「フォースナイト流の決闘はご存知ですね。これは模造品ですが……こんな機能も御座います」
自分の手元にあるもう一振りの光剣を鞭のごとくしならせてまた剣に戻してみせたり、爪先からも仕込んである光刃を伸ばしてみせたり。武器の使い方をレクチャーする彼を、ペンギアットは驚きの表情で見る。
「我と決闘を所望する……ということか」
「貴方が勝てばデータは譲渡。私が勝てば恒星へ射出します」
決闘の報酬はコンテスト中に撮影した、皇帝の威光を記録するプロモーションビデオ。
苦心して作り上げた折角の映像が宇宙に葬られてしまうのは勿体ないと、ペンギアットは思うだろう。だが、この危機的状況において撤退よりも優先すべき事かと言えば――。
「……良かろう。皇帝として、汝の挑戦を受けて立つ」
対価と釣り合わないリスクを承知で、ペンギアットは疑似フォースセイバーを構えた。
"騎士"が"皇帝"に、正式な流儀での決闘を挑まれたのだ。受けなければ名誉が傷つく。生命に対する天秤にかけられたのは、ただのデータだけではなく、皇帝の誇りであった。
「いざ、尋常に……」
「「勝負!」」
疑似フォースセイバーを互いに掲げ、機械騎士と皇帝ペンギンは真っ向から切り結ぶ。
初めて扱う武器ながら、ペンギアットは既にその用途を理解していた。短躯を補う踊るような剣戟と変幻自在に形を変える刃を、トリテレイアは思考力をフル回転して見切る。
「同じジャンルのダンス対決といい……貴方は矜持が高すぎるのです」
「今さら何を言うか。我は皇帝であるぞ」
脚の仕込み刃で圧を掛け、剣と盾で応戦しつつ呟くと、敵は微かに笑ったようだった。
負けるつもりが毛頭ないのは気迫から窺える。傲慢なまでに誇り高く、矜持を優先して愚かな選択を取る――その信条がこのペンギンをここまで追い詰めたのは間違いない。
「ですが……私には好ましい在り方でした」
「フン、なにを……!」
ペンギアットが光剣を振り下ろした瞬間、トリテレイアは光刃で受けると見せかけて、急に剣の電源をオフにして刀身を消失させた。鍔迫り合いをすかされた皇帝ペンギンは、機械騎士が盾を持つ左腕を切り落としたものの、勢い余って体勢を崩してしまう。
「お覚悟を」
片腕の切断を代償に敵の思惑を外す。この"決闘"に並々ならぬ覚悟で挑んでいたのは、トリテレイアも同じだった。直後に疑似フォースセイバーを再起動させ、反撃一閃――。
「……口惜しや……だが、見事なり!」
斬り伏せられた皇帝ペンギンは、最期に猟兵達の武勇を讃え、ばったりと倒れ伏した。
高き野望を抱いた猟書家ペンギアット・ペンギゲイザーの計画は、ここに挫けたのだ。
かくしてリゾートシップには平和が戻り、ダンスコンテストはつつがなく幕を閉じた。
船の平和を守ってくれただけでなく、今回のコンテストで華麗な演技を披露してくれた猟兵達には、船員からの感謝をこめて、満場一致で特別賞が授与されたのであった――。
大成功
🔵🔵🔵