如何にして目を開きしか(作者 魚通河
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#アリスラビリンス  #猟書家の侵攻  #リュカ・トワル  #オウガブラッド  #猟書家 


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「へえ。それじゃ、お友達を探してこんな廃病院まで」
「ええ。大好きな友達なの。たった1人の友達なの」
 話しかけてきたのが紳士然とした風体の狐だったので、上鳥・夕乃(じょうとり・ゆの)は会話につきあうことにしたのだった。
 この何だか解らない世界には、危険な人食い鬼もうろついていると知ってはいたが、話を聞いてくれる相手は貴重だった。
 それにもし人食いの狐だったとしても――自分に憑りついた『これ』の力で捻り潰してしまえばいい。

「ずっと一緒だったのよ。夏休みの間中。だから冬休みも、春休みも、その次の夏休みも、ずっとずっと一緒にいたかったのに」
「それなのに、いなくなってしまった?」
 相槌を打つ狐に、夕乃は滔々と語った。夏休みの終わり。廃病院の肝試し。そこで怪物に出会ったこと。
 友達は夕乃を突き飛ばして逃げたこと。でも怪物は友達の方を追ったこと。

「ほほう、それから?」
「……解らない。何も思い出せない。ああ、ああ、何も覚えていないわ……!」
 どうしてだか、その先のことを考えようとすると頭が真っ白になり、声が上ずり、冷や汗が滲む。
 足下も覚束なくなってきた夕乃に、狐は長椅子を勧めると、自分はパイプを燻らせて、譫言めいた呟きを傾聴する。

「……ただそれきり、あの子はどこにもいなくなってしまった。
 だから探さなきゃ。私は何も怒ってないよって伝える為に。また一緒に海に行く為に。もう次の夏が始まってしまうんだもの。きっとその為に、この不思議な国に呼ばれたのよ。
 ねえあなた、狐さん、あの子を知らない? 見かけていない? 怖がり屋なのに、こういう場所が好きなのよ。あの子がここへ来なかった?」

「ええ、勿論」
 狐はパイプを口から離すと、今朝の天気の話でもするように、夕乃に答えた。
「たくさん知っていますよ。死んだ女の子はね」
「……何ですって?」
「だってそうでしょう。あなたのお話を聞く限り、その子は殺されたに相違ない。でなけりゃあなたも気が狂って、こんな世界に迷い込むもんですか」
 夕乃が叩きつけられた言葉を飲み込む前に、狐は悠々と続ける。
「ですがご安心なさい。死んだからこそより深く繋がれることもある。その子の死体をね、食べてしまえばいいんです。
 そうすれば魂は溶けあい、その子は血肉となって、生涯あなたから離れることはなくなるでしょうよ」

「食べる……? 私があの子を? 逆じゃなくって?」
 自分でも驚いたことに、夕乃はその提案を悍ましいとは思わなかった。
 狐がそういう術を使ったのか。オウガに憑かれた者――オウガブラッドの本能の故か。もともと心の奥底に秘めている願望だったからか。それは誰にも解らない。
 ただ甘美な誘惑として、夕乃の視床下部の辺りへするりと入り込んで来たのだ。

「そうですとも。さあ、ご覧なさい」
 狐が病室の仕切りカーテンを開けると、その向こうに並んでいたのは何床ものベッド。そしてその上に寝かされた、顔の潰された少女の屍体。屍体。屍体。
 思わず立ち上がろうとした夕乃は、しかし狐のパイプから流れ出た煙が手枷足枷のように、自分を長椅子に縛りつけていることに今になって気がついた。
 身動き出来ない夕乃に、狐は続ける。
「顔も名前も失くして誰だか解らなくなったアリスたち。この中に、その子がいないと言えるでしょうか? いいや、きっといる筈だ。この辺の子たちなんて、あなたに年恰好も似ていますよ。
 ……失敬。喋り過ぎて腹ペコなんです。お先にひとり頂きますよ」
 狐は屍をひとつ、人形みたいに抱え上げると、大きな口を開けて光る牙を覗かせた。それから夕乃に背を向け、バリバリと音を立てて頭から、少女の屍を食べ始めたのだ。

 肉に歯を立て、血を啜り、骨を噛み砕く音。少女の身体が徐々に小さくなって、狐の口の中に収まっていく様子。
 それを見ている夕乃の心臓は早鐘を打ち、胃はぎゅるぎゅると収縮して空腹を訴える。
 あれはあの子かも知れないのに。食べられてしまう。私じゃなく誰とも知れない獣に。
 ようよう1人分の屍体を平らげた狐は、膨れた腹をさすりさすり、夕乃の表情を覗き込んだ。
「ふむ。その様子じゃ、目覚めるまでまだ掛かりそうだ。それまでそうしていて貰いますよ」

 言ったきり、狐はふらりとどこかへ去り、夕乃は拘束されたまま日を過ごした。唯一の頼みであったユーベルコードも、煙の拘束具に封じられているらしかった。
 数日おきに、狐は夕乃の元を訪れては、食欲を刺激するべく目の前で屍肉を食らって帰っていく。
 やがて疲労と緊張、飢えと渇きが極限に達し、屍体たちが皆あの子の顔になって話しかけてくる幻覚を見始めた頃、狐がまたやって来た。

 ここ幾日か、夕乃はひとつの屍体――否、ひとりの少女が特に気にかかっていた。
 背格好や髪型、服装のみならず、手足の形や、それを投げ遣りにベッドから放り出した姿まで、あの子にそっくりなのだ。
 あれはあの子なのかも知れない。だってあまりに似ているではないか。
 狐がその少女の腕を乱暴に掴んで引き起こし、唾液の滴る舌を伸ばした時、夕乃は確かに聞いた。
 あの子の顔でこちらを向き、「たすけて」と夕乃を呼ぶ声を。

 ぐにゃり。
 と頭の中身が歪む感覚。それと共に、夕乃の体躯が膨れ上がり、長椅子はひしゃげて手足が自由になった。
 今までの鬱憤を晴らすべく力の限り吼えるが、その声はもう夕乃の声ではない。
「アリスゥゥゥゥゥ!」
「やあ、漸く目覚めたか。強いオウガを揃えるのも楽じゃない……超弩級の闘争の為とはいえ」
 狐は口の端を釣り上げて笑い、薄れつつある夕乃としての意識は理解する。自分に憑りついていたモノが自分と交代したのだと。
 それでもいいか、と思う。この狂った化け物は、どうやら自分と似ているようだ。これと一体になれば永遠に探し続けられるだろう。
 どこかへいってしまったあの子、連雀・亜梨須(れんじゃく・ありす)のことを。

●要点
 グリモアベースにて。眞清水・湧(分界簸却式超人類祖型・f02949)が猟兵に説明した依頼内容は以下の通り。

 猟書家の意志を継ぐオブリビオン『わるい狐さん』が、オウガブラッド『上鳥・夕乃』を捕らえ、衰弱させて人間の意識を薄れさせることでオウガに肉体を乗っ取らせた。
 こうすることで強力なオウガを作り出し、超弩級の闘争に役立てる計画だ。
 だが幸い、まだ夕乃の意識は完全には失われていない。オウガ化した夕乃を倒すことで元の人間に戻し、助けることが出来るだろう。
 夕乃を救出し、狐を倒して邪悪な企みを打ち砕いて欲しい。

 湧は「どうかお願いします」と頭を下げると、猟兵たちをアリスラビリンスの廃病院へ送り出した。


魚通河
 このシナリオはサポートプレイングによって進行する予定です。

●1章
 オウガ化した夕乃と戦います。
 普通に倒しても成功できる他、呼びかけや浄化などの方法で人間の意識を取り戻させ、弱体化させても成功です。

●2章
 狐さんとの戦いです。
 人間に戻った夕乃は、頼まなくてもオウガ・ゴーストで狐さんを攻撃します。気にせず普通に戦ってもいいですし、回復や補助してあげることでも成功できます。
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第1章 ボス戦 『まもれなかったともだち』

POW ●だいじょうぶだよモウゼッタイニハナサナイ!
レベル×1tまでの対象の【髪や手足、対象がアリスなら胴体】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD ●ぼくがまもるよおいてかないでまってマッテマテェ!
対象への質問と共に、【アリスとの思い出】から【在りし日の自分】を召喚する。満足な答えを得るまで、在りし日の自分は対象を【アリスを狙うオウガとみなして、全力】で攻撃する。
WIZ ●ひとりはさびしいよイッショニイテヨアリスゥ!
自身の【持つアリスの鉈】から【アリスと一緒にいたいという願望】を放出し、戦場内全ての【素手以外の抵抗するための力】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠バルタン・ノーヴェです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 転移した先は廃病院。狐のオブリビオンは姿をくらまし、オウガ化した夕乃と猟兵の戦いをどこかから見物する腹積もりらしい。
クリュウ・リヴィエ(サポート)
記憶喪失のダンピールだよ。
名前も年齢も本当かどうか、僕にも判らない。
ま、気にしてないけどね。

自分の過去は判らなくても、色々考えるのは好きだよ。
他人の行動とか状況とかに違和感があると、それに何か意味がないのか考えちゃうよね。
まあ、それで僕が有利になるかどうかは別問題だけど。

あとは食べることも好き。
食わず嫌いはしないし、残さないよ。

戦うときは、突っ込んで力任せに殴り掛かることが多いかな。
一応、剣も魔法も使えるんだけど、結局シンプルなのが性に合うね。



「アリィス! あいたかったヨォ!」
(「自分が何者かも解らず、相手が誰なのかも知らず」)
 目の前の相手をアリスだと思い込む習性らしい。腕を振りかぶるオウガの白い巨体を見上げて、クリュウ・リヴィエ(よろず呑み・f03518)は思考を巡らせる。
「盲目、か」

 自分を捕まえようと降り下ろされる腕を躱しながら、一応は呼びかけてみる。
「落ち着いて思い出してみないか? 僕はアリスじゃないよ。そして、あなたもオウガじゃない」
「アリス! まって! まってヨォ!」
「ま、聞こえてないよね……」
 更に躱そうとして気づく。背後は壁だ。オウガの手がクリュウの腕を掴んだ。
「モウゼッタイハナサナイヨ! アリスぅ!」
 狂喜に上ずった声音で、オウガはクリュウの身体を思い切り振り回し、あちこち叩きつける。
 壁が砕け、床にヒビが入り、そして……オウガの動きがぴたりと止まる。クリュウの反撃がオウガに入ったのだ。

「うん。叩いて正気に戻そう。それが一番確実で手っ取り早い」
 結局、辿り着いたのは単純な結論。
 殺戮捕食形態となったカミ砕きの凶暴な顎が、オウガのマシュマロじみた肉に深々と食い込んでいる。突然の激痛に動きを止めたオウガから生命力を吸い上げ、傷を癒す。

「ウレシイヨぉ、アリス! ボクカラハナレナイデネ!」
「頼まれなくてもそうするよ」
 捕食されて一層喜ぶオウガは更なる怪力を発揮してクリュウを振り回し、クリュウはカミ殺しを幾度も深く突き立てる。
「タノシイネ、タノシイネぇ!」
「ああ、気が済むまでやるといいさ。こっちも、食らった分は食らい返すからね!」
 互いの流血が廃病院の壁を、床を染めてゆく。狂気のぶつけ合いはどちらかの体力が尽きるまで続くしかない。

 そして――先に膝を突き、相手を離したのはオウガの方であった。
成功 🔵🔵🔴

二天堂・たま(サポート)
ワタシは流血を伴わない攻撃手段が主だ。
武器:ケットシーの肉球による“負の感情浄化”や、UC:常識を覆すピヨの波動によるスタミナ奪取を多用する。

直接触れないような相手(体が火や毒で覆われている等)の場合はUC:アルダワ流錬金術を応用した攻撃が主力だ。
(火に覆われているなら水、毒液で覆われているなら砂嵐等)

しかし実際には直接的な戦闘以外の方が得意だな。
ボビンケースの糸を使った即席の罠の用意、料理や情報収集や掃除。
UC:親指チックで呼びだした相棒による偵察と、同UCによる居場所交代(テレポート)で潜入・解錠して味方の手引きとかな。

もふもふが必要ならなでても構わんぞ。UCで呼んだ相棒達(ひよこ)もな。



「アリスぅ、もふもふダぁ!」
 目の前の者をアリスと思い込むオウガ。今度はひよこに乗った二天堂・たま(神速の料理人・f14723)をアリスと思い、捕まえようと殺到する。
「夕乃よ、ワタシはキミの探している者ではない。ワタシの名は……『ケットシー』だ!」
「ぴよ!」
 決め顔のたまを乗せ、ひよこは病院内を飛び跳ねて、迫るオウガの手から逃げ回る。
「アリス、マッテヨぉ!」
「うむ、ワタシの声は届かないか……ならば仕方ない!」
「ぴよ!」
 意を決したたまの声に応じて、ひよこは軌道を変える。――逃げることを止め、オウガに向かって走り出す。

「アリス、ツカマエタぁ!」
「なんの、とうっ!」
 伸びるオウガの腕を、たまはぽよんと踏んで更に跳躍。くるくる回転しつつ、その手でオウガの頭を狙う。
「ぐれいとぉ!」
 ――ぷにっ。マシュマロじみたオウガの頭に、柔らかな肉球が命中してぷにぷにの感触を残す。
「ぴよー!」
 くるくる、ぽふっ。と、たまは落下点で待っていたひよこの羽毛の中に着地した。

「ア……アワワ……」
 肉球の一撃を受けて膝を突き、ぶんぶんと頭を振るオウガ。
「ワタシは爪は立てない。この肉球で、負の感情だけを断つ」
「アリスジャナイ……ネコサン……ああ、ありすはドコなの……」
「むう、まだ正気を取り戻すには至らないか」
 負の感情は和らいだが、全て消し去ることは出来なかったようだ。力無く項垂れるオウガに、たまとひよこは寄り添う。
「ありすぅ……」
「若人よ、悩み迷うのもいいだろう。だが最後にはキミが本当の自分を取り戻せると、ワタシは信じているぞ」
 オウガの中にいる夕乃へ、語りかけるたまの声音は穏やかで優しかった。
成功 🔵🔵🔴

響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです



「アリス! ドコにイッテタの? ズッとサガシテたンダヨ!」
「私が、アリス……ですか」
 狂気のオウガは、今度は響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)を、探しているアリスだと思い込んだらしい。
「……ええ。そうですわね、お久しぶりです」
 そのオウガに話を合わせることにしたのは、リズの優しさ故だった。
(「この子がこうなった原因くらいは、知ってもよいでしょう。ただ倒すだけではあまりに悲しいですから……」)

「あなたと別れ別れになった時、何があったのでしたかしら。覚えていて?」
 リズが話を合わせた為か、オウガはやや大人しい。
「エエト……ボク、オウガからアリスをマモッタんだヨ。でモ……トンネルがクズレて……ソレカラ、ソレカラ……オボエてナイんダ……」
「そう、そうでしたわね」
 オウガの話から、リズには何があったかおおよそ推察できた。
 そのトンネルの崩落で、アリスは亡くなったのだろう。アリスを守る愉快な仲間だったマシュマロマンは狂気に陥り、オウガになったのだ。
「ずいぶん寂しい思いをさせてしまいましたね」
「ウン……サビシカッタよ、アリス!」
 いかに孤独と悲しみの時を過ごしたか、オウガは語り、リズは頷いて耳を傾けた。
 リズの脳裏に、真っ白でふわふわした外見だったであろう、オウガになる前のマシュマロマンの姿が偲ばれる。そして。

「……ねえ、あなた。もう寂しさもなくなったのではありませんか?」
 オウガの狂気が晴れたのではという期待をもって、リズは尋ねたのだが。
「ウン。……デモ、こわいよ。ナニかこわいことをオモイダシソウで、コワいヨォッ! ヒトリニシナイデヨ、アリスゥッッッ!!!」
 まだ狂気を完全に癒すことは出来ないらしい。潮の満ち引きのように、オウガの意識は再び狂気に飲まれ、凶暴な腕をリズに伸ばそうとする。
「そう、ですか……」
 その腕を躱し、リズは戦闘へと意識を向けた。更なる攻撃で狂気を消耗させれば、或いは……。
「皆様に戦神のご加護がありますように……」
 自分と、周囲の猟兵たちに光のオーラを纏わせて、リズはオウガを迎え撃った。
成功 🔵🔵🔴

曽我部・律(サポート)
『この力を得たことは後悔していない……』
『私以外の人間が不幸になるところを見過ごすことはできないんでね』
『こういうのには疎いんだが……ふむ、こんな感じか?』
とある事件で妻子を失い、その復讐の為にUDC研究を続けているUDCエージェントです。ですが、UDCを強引に肉体に融合させた副作用として徐々に生来の人格は失われつつあり、妻子の記憶も彼らの写真によって辛うじて繋ぎ止めています。
多重人格者としての別人格『絶』は凶悪なオブリビオンの存在を察知すると、律に代わって表に出てきて戦います。その際、口調は『おい律……うまそうな匂いがするじゃねぇか。代われよ』みたいな凶悪な感じになります。



「アアっ! オモイダセナイ! コワいヨォッ!!」
 荒れ狂うオウガを、じっと見据える暗い瞳。
「忘却、か」
 我知らず、曽我部・律(UDC喰いの多重人格者・f11298)の手はロケットに伸びる。
「どうした、律。オブリビオンに同情して手が出せないなんて言い出さないだろうな?」
 自分の口から出てくる、自分ではない言葉。獲物の匂いを嗅ぎつけた絶が、意識表層に登って来たのだ。
 交代で自分は沈んでいかねばならない。そうなる前に、律は間借り人に言葉を残す。
「逆だよ。殴ってでも思い出させてやろうと考えていた」
 オウガが忘却した記憶が、例え愛するアリスとの死別でも、思い出せない『無』よりはいくらかマシだ。
「だから頼んだぞ、絶。……ああ、俺のやることはいつでも変わらねえよ」
 一人芝居は酷薄な口調で幕を下ろし、律は完全に絶へと変わった。

「アリスゥゥゥ!」
「こいつは食いでがありそうだ」
 廃病院の朽ちかけた壁に、チリチリと点滅する電灯が映し出す、怪物と怪物のぶつかり合い。
 人間離れした巨体のシルエットが鉈を振り回し、人間であることを辞めつつあるシルエットは触腕を蠢かす。
 鉈が肉に叩きつけられる音と共に、壁には血が飛び散り、刻印が不気味に唸りをあげれば、触腕がオウガの身体を抉る。

 激しい応酬の末に、倒れ伏したのは巨体の方であった。
 傷ついた身体を引きずり、絞り出すような哄笑を響かせて、もう片方の怪物が倒れたオウガに歩み寄る。
 それからの捕食行為は、絶が傷を癒して満足し、オウガの巨体が一回り小さくなるまで続いた。
成功 🔵🔵🔴

ニケ・ブレジニィ(サポート)
慰め24、幸運10、鼓舞9、祈り8、心配り7、勇気6、優しさ4、集団戦術3をフル活用します。

仲間を守りつつサポートし、敵を倒すという戦闘スタイルです。

また、このシナリオ内で戦闘不能になったオブリビオンの肉体と魂を、ユーベルコードの『桜の癒やし』で沈め、転生できるように祈ります。

「…もう鎮まりたまえ、あなたの名を忘れないように私は憶えておいてあげるから…」

リプレイのために、このキャラクターを自由に扱っていただいて、全く問題ありません。


クレア・フォースフェンサー(サポート)
なるほどのう。
おぬしが言わんとすることも分からぬではない。
じゃが、だからと言って、今を生きる者達を虐げてよいことにはなるまい。
過去の者がしでかしたことは過去の者がただすのが道理じゃ。
わしが骸の海に還してやるゆえ、覚悟するがよい。

――とかそんな感じで、相手の主張や立場を一旦は受け止めながらも受け入れはせず、最終的には斬ります。

遠間の際には《光弓》を、それ以外の場合は《光剣》を用います。
敵の攻撃を見切って躱し、また、UCの力を込めた《光剣》で捌きながら間合いを詰め、両断するのが基本的な戦い方です。
遥かに格上の敵と対峙する際には《光紋》を全開にし、完全戦闘形態に変身します。



「アリスが……アリスがいないなんてイヤだよ! アリスいっしょにイテヨぉ!」
 ここまでの戦闘で狂気を消耗し、心を癒されてきたオウガは、対峙する相手がアリスであるという妄執にも確信を失ったようだった。
「ふむ。もう一押しといった所かのう」
 オウガの繰り出す腕に迷いを読み取ったクレア・フォースフェンサー(UDCのエージェント・f09175)は、悠々と攻撃を躱しつつ、そう考えた。
「のう、おぬしもそろそろ思い出しているのではないか? アリスが本当はどうなったのか」
 オウガに、そしてオウガに呑み込まれている夕乃に呼びかける。夕乃とオウガは同じ境遇を持つ故に同調し、一体化しているのであれば、片方が正気に戻ればもう片方もそうなるであろう。
 クレアの声を無視できない程に、狂気は弱まっている。オウガはぴたりと動きを止め、内面の葛藤を示す如く震え始めた。そして。

「アア……嫌だ。ずっと一緒にいたかったのに!」
 現実を受け止めきれないオウガは、最後の狂気を迸らせようと叫ぶ。鉈から願望を放って力を無効化するユーベルコードを、放とうと身構えた。
「ちと厄介じゃな」
 とクレアが零したのは、その技を防げないからではない。一定時間使えば術者の命を奪う類のユーベルコードだからだ。素早く使用を止めなければ、オウガと夕乃は自殺という形になってしまう。
 しかしクレアが対処しようとするより早く、懸念は解決した。
「静まり給え……」
 オウガのユーベルコードより一瞬早く。ニケ・ブレジニィ(桜の精の王子様・f34154)が放つ桜の花吹雪が、オウガを優しく包み込んだのだった。

「う……アリス……」
 齎される眠りに抵抗しようとするオウガに、ニケは穏やかに語りかける。
「もう……いいのです。あなたは十分苦しみました。自分とアリスさんを、解放してあげて」
 桜の仄かな香気に抗いきれず、オウガはころんと横になって、すやすや寝息を立て始める。
「あなたの中で、アリスさんは笑っていてくれる筈です。それを忘れないであげて。笑顔でお別れを言ってあげて下さい……」
 安らかな寝息と共に、オウガの目から涙が零れる。血に染まって傷ついた身体が、真っ白でふわふわのマシュマロマンに戻っていく。
「うう……ごめんね、アリスぅ……」

「夢の中で、アリスと再会できたようじゃな?」
 ニケとクレアは、寝言でアリスと話し続けるオウガの様子を見守っていた。
「そうだとよいのですが……」
「いや、そうであろうよ。狂気がほぼ祓われた。後は簡単じゃ」
 オウガの寝言が落ち着くのを待ってから、クレアが光剣をそっと降り抜いた。マシュマロマンの姿はかき消え、そこには寝息を立てる少女、夕乃の姿。
「監禁されて消耗している筈です。もうしばらく、そっとしておきましょう」
 桜の癒しを続けようとするニケだったが、しかし事態はそれを許さなかった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴


第2章 ボス戦 『わるい狐さん』

POW ●おいしそうだなあ
【恐ろしく尖った爪や牙で 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD ●なにもしないさ
【嘘を吐く 】事で【親切そうな紳士のふりをした姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ ●大人しくしたまえ
【魔法の力を持つ不思議なパイプの煙 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ジャム・ドラドスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「ああ、忌々しい。畜生め」
 降ってわいたような苛立ちの声。出所を探してみれば、狐のオブリビオンがいつの間にか姿を現している。
「あれだけ手をかけて作った強力なオウガが、猟兵と相討ちにすれならんとは」
「忌々しいのはこっちだわ……」
 絞り出すような呻き声と共に、眠っていた夕乃が立ち上がる。頬はこけ、足下は覚束ないが、眼だけはぎらぎらと光らせて。
「オウガの中で、一緒に思い出させて貰ったわ。亜梨須がいつどうして死んだのか……。この世界にあの子がいる筈がない。よくもあの子を利用したわね」
「煩い小娘だ。お前の為にどれだけ俺の寿命を使っちまったか。せめてお前等を食べて寿命に変えなきゃ割に合わねぇ」
 紳士然とした態度を捨て、本性を現した狐が、猟兵たちに襲いかかる!
 
久瀬・了介(サポート)
「オブリビオンは殺す。必ず殺す」

オブリビオンへの復讐の為に甦った不死の怪物。そこにオブリビオンがいるならただ殺すのみ。

生前は職業軍人。デッドマンとして強化された身体能力と、軍隊で身に付けた戦闘術を基本に戦う。

軍人としての矜恃は失われていない為、敵の撃破より民間人の安全と平和を最優先として行動する。復讐鬼ではあるが狂戦士ではない。非戦闘時や交渉時は実直で礼儀正しく他人に接する。

基本戦術は「ハンドキャノン」での射撃。敵の数が多い場合はフルオート射撃での範囲攻撃。
敵の能力に応じて【死点撃ち】【犬神】【連鎖する呪い】で射撃を強化する。
その他、状況に最適なUCを選択して使用。



「俺の姿を捉えられまい!」
 狐は一息に大量のパイプの煙を吐き出し、煙幕の中に姿を隠してしまった。
 しかもユーベルコードの煙は自在に動き、こちらを捕縛して無力化する力を持つ。

「どれほど隠れようと、オブリビオンは必ず殺す」
 久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)は煙の中へ数発、発砲するが、煙の勢いは変わらない。みるみる距離を縮めてくる煙から、跳び退って逃げる他ない。
「ヒヒッ、出来る訳がない!」
「必ずだ」
「口だけは威勢がいいねぇ!」
 狐は後退する一方の了介を嘲笑うが、復讐に憑りつかれた男は意に介さない。軍人らしいきびきびとした動作で仕切りカーテンを剥ぎ取り、空のベッドを立ててバリケードに。そして。
「この場に満ちる復讐の霊よ……来い」
 墓場の主によって召喚した霊を、カーテンに憑りつかせて放った。バタバタと、カーテンは蠢いて、バリケードと共に煙の進行を遅らせる。
「そんな時間稼ぎが何に――!」
 嘲弄を続けようとした狐だったが、しかし空気に混じる殺気を嗅ぎ取って絶句した。

「時間は少しあればよかった。貴様を灼くにはそれで事足りる」
 煙が押しとどめられていた僅かの間に。了介の体内のヴォルテック・エンジンは唸りを上げ、怒りの念を莫大な電流に変換完了していた。
 後はそれを、大気に向けて解き放てばいい。狙いなどつける必要もない。怒りは辺り一帯を灼くだろう。
 火花が走り、空気が焦げる。切れかけの電灯に変わって、青白く輝くスパークが怨霊と化した兵士の顔を浮かび上がらせる。
「や、やめ……」
「――発雷」
 刹那。廃病院の一室は目を開けていられない程の雷光に満たされた。
 迸る電撃の音に混じって、狐の絶叫が響き渡る。
 輝きが収まった後、まだ続く苦悶の呻き声を、了介は何の感慨もなく聞き流した。
成功 🔵🔵🔴

リーヴァルディ・カーライル(サポート)
※【限定解放・血の化身】による分身体

怪力任せな振る舞いは品が無いと感じる
吸血鬼流の礼儀作法に則り行動する高慢な人格

…ふふふ。次はどんな世界かしら?
あの娘の分まで楽しまないとね

はぁ…思いの外、煩わしいものね
太陽の光というのは…

陽光は"影精霊装"の闇に紛れるオーラで防御し、
移動は"血の翼"による空中機動を行い、
魔力を溜めた爪から血の斬撃波を乱れ撃ちつつ、
状況に応じた吸血鬼能力を使用する

・魔力を溜めた両眼で第六感に訴え魅了、暗示を行う魔眼
・無数の蝙蝠や狼等の眷族を操り攻撃する集団戦術
・残像のように存在感を消し攻撃を透過する霧化…等々

あら、もう終わり?意外と脆いのね?

それじゃあ終わりにしましょうか?



「ああ、陰鬱な世界だわ。薄暗い電灯に、壊れかけの品々。薬品と、腐敗と、血の匂い。
 こういう場所は飽きているのよね……賓客がもっと楽しめるように、飾っておくくらいの配慮は無いの? 狐さん」
 物見遊山でそう語るのは、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。その血の変生による分身体だ。
「これから食われる奴に配慮なんか要るかね? 魔力を感じる。旨そうな小娘だ」
 狐は舌なめずりして、鋭く爪を伸ばし、牙を光らせて、リーヴァルディににじり寄る。

「食べるですって? お前が、私を?」
 いい玩具を見つけた。そんな酷薄な微笑を浮かべて、リーヴァルディは自ら狐に歩み寄る。
「一体どうやって食べるというのか、見せて下さるかしら?」
「こうするのさ!」
 狐は思い切り爪を降り下ろしたが、吸血鬼の身体は霧となってその爪を透過してしまった。
「な……この! この!」
 何度も何度も、狐は爪牙を繰り出すが、霧を捕えることは出来ない。
 クスクスと笑うリーヴァルディに、苛立つ狐。

「牙が立たないなら吸い込むまでだ!」
 今度は肺活量にものを言わせて、大きく息を吐き、霧を吸い込もうとする狐だったが。
「ああ、怖い。眷属よ、私を守りなさい」
 リーヴァルディが召喚した蝙蝠の群れが狐の鼻先を塞ぎ、息を吸えなくしてしまった。
「もがが……!」
 狐は必死に蝙蝠を剥がし、やっとの思いで息を吸い込むが、その時には狐の前から吸血鬼は姿を消している。

「おのれ、どこに」
「ここよ」
 上からの声に反射的に目を上げた狐は、血の翼で宙に羽ばたくリーヴァルディと目が合った。
「理解した? 私とお前、どちらが捕食者で、どちらが食糧なのか。言ってみなさい」
 疲弊して冷静さを欠いた精神に、魔眼による暗示を正面から受けて、狐は最早抵抗できない。
「う……ああ……お許しを。私は食われるだけの哀れな狐です。どうかお慈悲を……」
 恐怖に囚われて逃げ出すことも出来ない狐に、リーヴァルディは優しい声音で告げた。
「安心なさい。獣の血なんていらない」
 安堵の表情を浮かべた狐に、グリムリーパーの刃を向ける。
「だから血じゃなくて、お前の命で許してあげる」
「ひっ……」
 過去を刻むものは降り下ろされ、狐の悲鳴が響き渡った。
成功 🔵🔵🔴

ニケ・ブレジニィ(サポート)
技能を、フル活用します。

仲間を守りつつサポートし、敵を倒すという戦闘スタイルです。

また、このシナリオ内で戦闘不能になったオブリビオンの肉体と魂を、ユーベルコードの『桜の癒やし』で鎮め、転生できるように祈ります。

「…もう鎮まりたまえ、あなたの名を忘れないように私は憶えておいてあげるから…」

リプレイのために、このキャラクターを自由に扱っていただいて、全く問題ありません。


忌月・カルタ(サポート)
カルタ
内気で弱気な主人格、みんな大好き
戦闘関連は守る・癒す専門、
全員のストッパーで好意に鈍感(ここ重要)
使用UC ミラーとマリア

ミヅキ
明るく無邪気、カルタ愛してる♡な副人格
カルタが怪我したらミナゴロスイッチON
使用UC エデンとネヴァーとホルダ

ティラム
クーデレ人形、主好き
戦闘の際は武器に変形する
使用UC コードとクラス

メアリ 
ニートドラゴン、カルタ(一生縛り付けたいくらい)好き
普段は影の中で寝てるかゲームしてる
使用UC スクリームとバイト

上記設定を守っていただけたら後はOKです

全世界対応/連携・アドリブ歓迎
細かいところはプロフィール参照お願いします



「くうっ……!」
「ははっ、煙の壁を越えられないねぇ!」
 何度もオウガ・ゴーストで狐を攻撃する夕乃だったが、ゴーストを煙で拘束されて攻撃は届かず、更に追ってくる煙からは逃げて身を隠すしかない状況だ。
「うう……肉が足りない……」
 壁際にへたり込む夕乃。ユーベルコードの代償に何度も1ポンドの肉を支払った為、手足や脇腹が抉れ、病院着にはどんどん血が染みていく。
「あ、あの……私でよければ、治療しましょうか?」
 その見ていられない状態の夕乃に、忌月・カルタ(愛され系ご主人様と過保護な娘達・f30657)は意を決して声をかけたのだった。

「本当……? ありがとう、もしよければ……治して下さい……」
「だ、大丈夫。任せて下さい」
 自分を見上げて息も絶え絶えな夕乃を、安心させるようにカルタは頷く。
「少し、じっとしてて下さいね」
 それから、夕乃を床に寝かせると、その上に屈みこみ。
「……んっ」
 ナイフの姿のティル・クラウ・グラムで、自分の腕に傷をつけて血を流れ出させた。
「聖女の奇跡……ブラッディー・マリア。……この血で、あなたの傷を治しますから」
 じっと目を閉じる夕乃の傷の上に、ぽたり、ぽたりとカルタは血を滴らせていき、その度に夕乃は深い吐息を漏らす。
「ああ……すごい……こんなに早く、よくなってしまうなんて……ありがとうございます。んぅ……本当に……すごいのね……」
「ど、どういたしまして……。すぐ、終わらせますからね」
 反対に自分はどんどん疲弊していくカルタだが、それを悟らせまいと笑顔を作る。しかし同時に、彼女の頭の中では怒れる副人格の声がガンガンに鳴り響いていた。

(「許せないよ! カルタが血を流すなんて!」)
「ご、ごめんね、ミヅキ。あんまり酷い怪我だったから……もう少し我慢して……」
(「だからって、どうしてカルタが傷つくの! あー、もぉ見てられない!」)
「うう……」
 流血と疲労とミヅキの抗議にふらつくカルタ。
「あなたも、そろそろ休んだ方がいいわ。後は私が引き継ぎを……よければ、あなたも一緒に治しましょうか?」
 そこに声をかけてきたニケ・ブレジニィ(桜の精の王子様・f34154)に、カルタはふたつ返事で頷いた。

「ひととき、苦しみを忘れて安らぎたまえ……」
 ふわり。と桜の花びらが舞い飛び、優しい桜色の景色と香気に、辺りは包まれる。ここが陰惨な廃病院であることも、苦しい戦場であることも一時忘れて、カルタと夕乃は眠りに落ちた。
 深く穏やかな寝息と共に、夕乃の傷は塞がっていく。カルタが高速治療した分と合わせて、肉は埋まり、元気な状態に戻るだろう。
 そのカルタも、流血と疲労をゆっくりと癒されていく。もっとも夢の中で、カルタは今度はミヅキの機嫌を直そうと一生懸命なのだが。

「まだ、戦いは終わらないのかしら……」
 2人の治癒の状態を見守る傍ら、ニケは戦闘の推移も気にかけていた。早く狐が倒されなければ、傷が癒えた夕乃はまた戦いを挑んでしまうだろう……。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

クレア・フォースフェンサー
己が心を弄んだあやつが憎いであろうな。
じゃが、あのような輩のためにおぬしが手を血に染める必要はなかろう。
これまでの代償はあやつの魂にしっかり刻んでやるゆえ、わしらに任せてもらえぬか。

それにしても、骸の海から湧き出てきた者が寿命を気にするとはのう。
食事にまで気を配っておるようじゃが、そのような気苦労はもはや不要じゃぞ。

おぬしの命運は今ここで尽きるのじゃからな。

光剣を構えて接近。
敵の間合いに入る前に伸ばした刀身で足首を切り落とすことを狙う。
敵の動きを封じたならば、光剣にUCの力を込め、その魂を切り裂いてゆこう。

これまでにおぬしが喰らった者達の魂、その痛みとともに解放してもらうぞ。



「……やってやるわ」
 傷が完治した夕乃は立ち上がり、狐を睨んだ。また返り討ちにされるかも知れないが、黙っていられないのだ。が。
「――己が心を弄んだあやつが憎いであろうな」
 その言葉に振り返ると、見覚えのある女性の姿。オウガの中に取り込まれていた時、自分を助けてくれたひとりだ。
「じゃが、あのような輩のためにおぬしが手を血に染める必要はなかろう」
 彼女はこちらより少し高い目線から、まっすぐに夕乃の目を見て告げた。
「そんなこと気にしないわ。それにあいつは……」
 夕乃は反論を考える。狐に大切な思い出を利用された怒りと悔しさを思い返すと、涙が滲み、視界が歪んだ。
 と、彼女が夕乃に近づき、視界が晴れる。――涙を拭いてくれたのだ。
「おぬしの気持ちはよく解るよ。おぬしの分まで、これまでの代償はあやつの魂にしっかり刻んでやるゆえ、わしらに任せてもらえぬか」
 夕乃の目を覗き込んで、優しい声音で言う、その雰囲気は何だかお婆ちゃんを思い出させたが。
 夕乃は張り詰めていた力が抜けて、ぺたんと床に座り込んでしまった。
「……お願い、あいつをやっつけて」
 彼女を見上げてそう呟くと、相手はにこりと微笑んで、
「うむ。そこで見ておいで。あのような輩は鎧袖一触よ」
 そう言うと光の剣を抜き、コツコツと廃墟の床に足音を響かせ、狐の方へ向かってゆく。
 その後ろ姿を、夕乃は食い入るようにじっと見つめるのだった。

「(これほど見られていては、万に一つも恥ずかしい戦いは見せられぬな)」
 背後から送られてくる視線を感じ、クレアは内心で苦笑した。もっとも、そんな万一など起こりそうもなかったが。
 狐はこれまでの戦闘で既に気息奄々、逆上して悪態をついていた。
「クソッ、クソッ。何が超弩級の闘争だ。あんな奴の話に乗るんじゃなかった。俺の寿命が、俺の命が……」
「骸の海から湧き出てきた者が、寿命を気にするとはのう。ここで倒されてもまた湧いてくるじゃろうに」
 声をかけて注意をこちらに向けてやる。
「死んでもまた蘇ればいいなんて、狂った奴等と一緒にするな。この俺は死ねばそれきり、次の俺とは違うんだ!」
「ほう。命は一度きり……おぬしのような者から耳の痛いことを聞くとは。じゃが、それなら尚のこと、命を弄ぶことは罪深いと思わぬか?」
「知ったことか、俺以外の命なんぞ!」
 狐は爪を伸ばし、牙を光らせて、クレアに向けて殺到する。
「貴様も旨そうだ。食って寿命に変えてやる!」
「やれやれ。食事には気を配っているようじゃが……そのような気苦労ももはや不要じゃぞ」
 対するクレアはゆっくり歩みながら、光剣で迎えうつ。
「――おぬしの命運は今ここで尽きるのじゃからな」
「舐めるなっ!」

 勝負はあまりにあっけなくついた。
 狐の爪が届く前に、クレアは伸ばした光剣で相手の足を斬り、転ばせた。
 倒れながら狐も爪を更に伸ばして来たが、それはするりと見切って躱す。
「や、やめろぉ……」
 完全に地に伏した狐は恐怖の表情で言うが、クレアは容赦なく光剣を向ける。 
「いいや。これまでにおぬしが喰らった者達の魂、その痛みとともに解放してもらうぞ」
 一撃。二撃。三撃。クレアの剣が狐の魂を切り裂く度に、取り込まれていた少女たちの魂が零れて消えていく。
 やがて完全に魂が滅び、悲鳴も出なくなった狐は、静かに骸の海へ還っていった。

 クレアが振り返って夕乃に目をやると、彼女はほうっ、と感動したように溜息を漏らした。
 オブリビオンは倒され、夕乃の迷妄も払われた以上、少女はそのうち自分の扉を開けて、元の世界へ戻れるだろう。
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年08月28日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴