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廃病院に澱む夢

#UDCアース

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#UDCアース


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●とある怪談
 ねえ、知ってる? あの病院の噂。
 夜中の0時、誰も入れないはずの病室の窓から、誰かが手を振るんだって。
 こっちへおいでって、呼んでるみたいなんだって。
 でも、行ったりしちゃだめだよ。
 そうしてあの病院に入った人は、誰ひとり帰ってこないんだから。

●悪夢の廃病院
「――っていう感じの噂が、UDCアースで流れてんだって」

 アザレア・シエヴェール(羽衣人のスカイダンサー・f32749)は、己のグリモアを指先で弄びながらそう言った。

「場所はずいぶん前に閉鎖された病院なんだけど、こんな噂が流れ出したせいか、肝試しスポットとしてじわじわ有名になっちまってさ。実際、夜中に病院に入って行方不明になった人もいるんだ」

 その事件の背後には、やはりオブリビオンが絡んでいる。
 かつてこの廃病院では、邪悪な召喚の儀式が行われたことがあった。儀式は失敗に終わったものの、不完全な形の召喚は別のオブリビオンを呼び寄せ、それはまだ病院内に残っている。
 病院に自分の領域を作り出して、人を招き寄せては喰らい、力を蓄えているのだ。

「どうも、夢に関する力を持ったヤツで……自分の周囲に、夢の中みたいな空間を作り出すらしい。夢っつっても、そこで起きることは現実にも影響するから、ほっとくわけにもいかない。みんなはそいつを見つけ出して、やっつけちまってほしいんだ」

 そいつがどこにいるのか、正確な場所まではわからない。まずは病院内の探索が必要になってくるだろう。

「閉鎖された病院だから、多少なら物を動かしたり壊したりしても大丈夫だと思うぜ。……ただ、そいつの力に惹かれてかなんだか知らんけど、どうも『居る』っぽいんだよな」

 何が? と問われれば、これ、と両手を胸の前でだらりと下げてみせるアザレア。由緒正しいオバケジェスチャーだ。

「中には襲ってきたりするのも居るかもしれない。召喚されたヤツさえ倒せば、そいつらもそのうち消えちまうと思うから、うまいことやってくれ。よろしく!」

 そう言って、アザレアはぐっと親指を立てた。


posso
 初めまして。possoと申します。
 スタンダードな探索・戦闘系シナリオです。
 章と章の間で、少し受付期間が空いてしまうことがあるかもしれません。ご了承いただけますと幸いです。

 複数人でいらっしゃる場合には、全員がそうとわかるような共通の記載をお願いいたします。
 失効日も揃えていただけますと、よりありがたく存じます。

 第一章は廃病院の内部の探索を行い、召喚の儀式が行われた場所の手がかりを探します。
 戦闘は発生しませんが、病院内には様々なオバケが潜んでいます。猟兵たちを脅かしてくることもあれば、無関心に突っ立っていることもあるでしょう。
 彼らへの対処をしながら探索をしてください。
 必要であれば、オバケの描写は自由に考えてくださって構いません。指定がなければ黒い影として描写します。

 第二章は集団戦です。儀式場に近づくにつれ、明確な敵意を持って猟兵を追跡する者達が現れます。
 彼らを倒し、振り切って、ボスのもとへと向かってください。

 第三章はボス戦です。夢を現実に侵蝕させていく能力を持ち、廃病院を悪夢のような場所へと変えた張本人です。
 ボスの見せる夢に抗い、格好良く打ち倒してください。

 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『オバケが出ると噂の廃病院』

POW   :    オバケなんて怖くない、正面切って堂々と探索をする。

SPD   :    オバケに見つからないように、何かに隠れながら探索をする。

WIZ   :    実は帰りたい気持ちを我慢しつつ、慎重に探索をする。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 『立ち入り禁止』の柵に守られた夜の病院は、漏れる明かりのひとつもなく、ひっそりと静まりかえっている――はずだった。
 破れた窓から注ぐ月の光の中、揺らめく黒い影がある。声なき声のざわめきが、そこかしこで聞こえてくる。
 そこに居るのは、誰だ?
神代・凶津
ここが肝試しスポットになっちまった噂の廃病院か。行方不明者も出ちまってるって話だぜ、相棒。
「・・・これ以上の被害は見過ごせません。行きますよ、凶津。」
あいよ、張り切って魑魅魍魎祓いといきますかッ!

「・・・式、召喚【捜し鼠】」
式神を放って儀式が行われた場所の手がかりを捜しながら病院内を探索するぜ。

そういや、ここにはオブリビオン以外にも『居る』って話だったな。まあ、俺達はその手の輩には専門家だがなッ!
「遭遇した幽霊は退魔の鈴を鳴らして魂を慰め、除霊します。」
まあ、それでも襲ってくる血の気の多い幽霊は霊鋼の薙刀でズンバラリと強制除霊させるがなッ!


【技能・式神使い、破魔、慰め、除霊】
【アドリブ歓迎】



「ここが肝試しスポットになっちまった噂の廃病院か」

 暗闇に包まれる病院の入口に、佇む人影がひとつ。赤い鬼の面を手にした巫女装束の女性――神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)と、その相棒の桜である。

「行方不明者も出ちまってるって話だぜ、相棒」
「……これ以上の被害は見過ごせません。行きますよ、凶津」
「あいよ、張り切って魑魅魍魎祓いといきますかッ!」

 賑やかな凶津とは正反対の桜は、彼を持ったまま無言で病院内へと突入する。
 内部に漂う重苦しい空気を感じ取れば、彼女は僅かに片眉を上げたが、臆することもなく式神術を展開した。

「……式、召喚【捜し鼠】」

 声と共に、暗い廊下に現れた無数の鼠が、小さな鼻をひくつかせながら辺りを見回す。それは四方八方へと散らばり、怪しいものの存在を感知しては二人へと伝えてきた。

「……そちらですか」

 扉の壊れた病室を通り過ぎ、長く伸びる廊下の先へ。桜の足音だけが響く中、凶津が思い出したように言った。

「そういや、ここにはオブリビオン以外にも『居る』って話だったな?」

 その手の輩には専門家だが、と続ける彼の言葉が終わるより先に、二人の目は捉えた。進行方向に、小さな黒い影がうずくまっている姿を。
 除霊道具を確認すると、彼らはゆっくりと近寄っていく。

『痛い……痛いよう、ママ……』

 その影はうずくまったまま、か細い声でそれだけを繰り返していた。こちらへの害意は感じられず、まるで、泣き続ける幼子のように。
 否、事実、そうなのかもしれなかった。彷徨える霊を引き寄せる領域に捕らわれただけの、哀れな霊。
 桜は、影の傍らに屈み込む。子どもと視線を合わせるように。

「もう大丈夫ですよ」
『え……?』
「もう、痛いことも苦しいこともありません。……どうか泣かないで、おやすみなさい」

 彼女の手にした退魔の鈴が、清らかな音色を鳴らす。迷い嘆く魂を慰めるその音が響く度に、黒い影の周囲に、淡い輝きの輪が生まれた。

『あ……ありがとう……』

 影の向こうに、幼い少女の笑い顔が、一瞬だけ見えたような気がして。
 それは、光と共に姿を消した。

「……自分の意思とは無関係に、捕らわれている霊も居るようですね。こうして穏便に済めばいいのですが……」
「なに、血の気の多い幽霊が出たら、霊鋼の薙刀でズンバラリ! と強制除霊させちまやいい」
「それはそうなのですけど」
「そう難しく考えるもんじゃないぜッ! 派手にいこうや、ひゃっはっはっ!!」
「うるさい」

 反響する仮面の笑い声を響かせながら、巫女は先へと進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
心情)ひ、ひ、ひ…よくあるハナシだねェ。ヒトは"ダメだ"ッつわれると、喜び勇んで飛び込むのさ。面白い習性だよ…。それがあったからこそ繁栄を掴んだンだろうが、いまは管理する側からすりゃア困りモンだろうよ。
行動)サテ・どンなタマシイがいるか。おやおやァ…こりゃア大量だ。病室の錆びたベッドにゃ"患者"が寝てる。カラカラ車椅子を押してる"看護師"。ずゥっとカルテを探してる"医者"。迷い続けてる"見舞客"。その呪縛を解いてやろう。さァさ、彷徨えるタマシイたちよ。終わりが来た。かみさまが来たよ。眠りの時間だ。医者看護師は就業時間、患者は見舞客と退院だ。彼岸に帰ろう。サ・おやすみ。



 ゆらり、ゆらり。廃病院の中を歩む男が一人。

「ひ、ひ、ひ……よくあるハナシだねェ。ヒトは"ダメだ"ッつわれると、喜び勇んで飛び込むのさ。面白い習性だよ……管理する側からすりゃア困りモンだろうがね……」

 人の持ち得る、時に貪欲なまでの好奇心。しかしそれがあったからこそ、人はこうも繁栄を続けてきたのだろう。人の上に在るものが、それをどう思うかに関わらず。
 朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は、人ならぬものの視点で、そう思った。
 窓の破れた病室、壊れた椅子の転がる診察室、呼び出しランプの破片が散らばるナースステーション……かつては多くの人が行き交っただろう場所を覗き込みながら、逢真は笑った。

「おやおやァ…こりゃア大量だ」

 錆にまみれたベッドの上で、"患者"が弱々しく呻いている。持ち手の折れた、空っぽの車椅子をカラカラ押すのは"看護師"だ。診察室の中では、ありもしないカルテを探す"医者"が歩き回っていて、廊下には見舞う相手を見つけられない"見舞客"の姿もある。
 みな一様に、ぼんやりとした黒い影を纏い。その奥にほんのわずか、生前の面影を覗かせて。もう戻らない日々を繰り返していた。
 彼ら彼女らを眺めやり、逢真は軽く腕を広げる。

「さァさ、彷徨えるタマシイたちよ。終わりが来た。かみさまが来たよ」

 もう仕事の時間は終わり。病に苦しむ時間も、それを見守る時間も終わり。やってくるのは、深い深い眠りの時間。

「彼岸に帰ろう」

 唄うように言う彼の周囲に、神なる気配が渦巻いた。未練や呪詛を食らう神威が、周囲の影を飲み込もうと広がっていく。
 ある者は恐怖の悲鳴を上げ、ある者はただ呆然と立ち尽くし。ある者は安堵に微笑んで。またある者は、ただほろほろと涙を流す。
 それら全て、平等に、分け隔てなく、飲み込んで。輪廻の道へと戻していく。

「サ、おやすみ」

 ひとつ、静かな風が過ぎ去った後。もはや誰も居なくなったその場所に、慈しみを込めた呟きが落ちた。
 そうしてその『かみさま』は、闇に包まれた病院の奥へ、再び歩き出すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林

言うなれば、我らと同族なんですよね。
ですが、ここに縛られているとなると…。ええ、私だけが使える破魔でその縛るものを祓いましょう。白雪林による鳴弦ですよ。
長くいれば、己の形を忘れる者もいるでしょう。幼ければとくに。
分け隔てなく。ただただ、破魔を。

…陰海月は陰海月なりに心砕いているのですね。それはそれでいいことです。


陰海月(生者)、ぷかぷか浮いてる。幽霊は怖くない(義透が悪霊だと知ってるため)。
気づいたら子供の幽霊と遊んでる。見送りはバイバイ、と手を振る。



「言うなれば、我らと同族なんですよね」

 白い弓を携え、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)――『静かなる者』は、呟いた。
 彼は、ひとつの身体に四人の魂を宿した複合型の悪霊である。ゆえに、この病院内に漂う霊魂たちにも、多少の親近感のようなものを覚えてもいた。

「ですが、ここに縛られているとなると……」

 『静かなる者』は、周囲を見回す。せわしなく動き回るもの、ただひとところに留まるもの。それら全て、この病院に縫い止められていた。
 彼になら、その縛るものを祓うことができる。
 手にした白い弓、白雪林を構え、『静かなる者』は、矢をつがえぬままその弦を弾く。

「呪詛は、我らが引き受けましょう」

 影たちをこの場所に留める呪詛のみを消し去る、鳴弦の音。その身に宿る四人のうち、『静かなる者』のみが操る破魔の力。それは暗闇を揺らし、水面に広がる波紋のように、澱んだ空気に溶けていく。
 黒影がゆらりと顔を上げた。ただただ院内を徘徊するだけの亡者と化していた彼らに、かすかに生前の面影が差す。
 破魔の弦が響く度、その顔からは徐々に迷いが晴れていく。ゆっくりと歩み始めた彼らの姿が、元いた場所を離れ、消えていく。
 それを見送り、彼は小さく溜息をついて――ふと、周囲を見回した。

「陰海月?」

 病室の隅に、ぽわりと浮かぶ半透明の姿がある。陰海月、と呼ばれたジャイアントくらげは、ぷきゅ、と一声鳴いて返した。
 そのくらげの足下に、小さな影がひとつある。子どものものと思しきそれは、垂れ下がる陰海月の足を摘まんで振って、遊んでいるようだった。
 悪霊と行動を共にするゆえか、陰海月は幽霊を怖がらない。大きいが心優しいこのくらげは、寂しげな子どもの霊を見かけ、遊んでやっていたのだろう。
 それは結果的に、彼の未練を解くことにもなったらしい。その姿を薄れさせた小さな影は、大くらげと手を振り合うと、ふつりと宙に姿を消した。

「……陰海月は陰海月なりに心砕いているのですね。それはそれでいいことです」

 隣へ戻ってきたくらげの頭を撫でてやり、『静かなる者』は笑った。
 ――だが、しかし。この場所に彼らを縛り付けていた元凶は、未だこの病院のどこかに居る。
 どこかで嘲笑うような気配に、老武士は表情を引き締めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
広い病院の中で召喚の儀式が行われた場所を探すのは少々骨が折れそう
同業者達と手分けしてもまだ探す場所は広いなあ
堅実に一部屋ずつ見ていこう

歩いていると感じる思念
俺は魂を喰らう黒騎士だからそういうものには鋭いんだ
…存在から強い恨みを感じる
キミは理不尽に死んでしまったヒトかな
俺は「悪意」と呼ぶ巨大な怨念の塊のような魂を内包しているから、恨みや苦しみなどの念には慣れている(狂気・呪詛耐性が高いのはそれを表現するため)
思いを存分に俺にぶつけてごらん
全部受け止めてあげる
それでキミの気持ちが晴れるなら消耗してもいいんだ
行く当てのない気持ちは苦しいよね、わかるよ
だからいくらでも受け止める

さあ、探索の続きをしよう



 この広さでは少々骨が折れそうだ、と。サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、院内を見回しながら思った。
 ここへ訪れているであろう同業者たちと手分けをしても、まだ確認すべき場所は多い。堅実に調べていく他はないかと、彼は病室を一部屋一部屋覗いて回った。
 真っ暗な廊下に、軽い靴音が反響する。次の階へと向かう階段前で立ち止まったサンディは、背後からもうひとつ、足音が聞こえてくるのに気がついていた。

「……出ておいでよ」

 周囲に漂う恨みの思念。魂を喰らう黒騎士であるゆえ、彼はその気配に敏感であった。振り向いて見据えた闇の奥から、陽炎のように揺らめく黒い人影が現れる。

「キミは……理不尽に死んでしまったヒトかな」

 目の前の影から感じるのは、己の運命に対する呪詛。失ってしまった生への嘆き。そして――生きている者に対する、憎しみ。
 自分は死んでしまったのに、どうしておまえは生きているのか。
 その憎悪が、単なる八つ当たりに過ぎないと。切って捨てることは簡単だろう。
 しかし。サンディは腰の剣を抜くこともなく、両腕を広げる。

「その思いを、存分に俺にぶつけてごらん」

 一見して穏やかな彼は、その身に『悪意』と呼ぶ巨大な怨念の塊のような魂を内包している。
 だからこそ。恨み、苦しみ、狂気、呪詛――それら負の感情に慣れた自分であれば、その憎悪を受け止められると。
 静かに語る少年へ、影が怨嗟に満ちた叫びをぶつける。左右に揺れながら近づくそれは、真っ黒な腕をサンディへと伸ばし、その首を絞め上げようとする。
 だが、それでも彼は動かない。

「それでキミの気持ちが晴れるなら」

 微笑むサンディの首にかかる手は、かすかに震えているようだった。
 いや、その手だけではない。彼と向き合う影の全身が、小さな震えに包まれている。
 まるで、泣いているかのように。

「行く当てのない気持ちは苦しいよね、わかるよ」

 柔らかな声で、慰めるようにサンディは言う。
 きっと、誰にもわかってもらえなかったのだろう。顧みてもらえなかったのだろう。死ぬ前も、あるいは死んだ後ですら。
 今、初めて他者と向き合うことの叶った魂は、徐々にその姿を薄れさせ――やがて、消えた。
 あれで彼は救われたのだろうか。サンディにはわからない。

「……さあ、探索の続きをしよう」

 だからこそ、今は自分のすべきことをするしかないのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿村・トーゴ
肝試しね、確かに妙な雰囲気あるよな
重苦しーとゆーかじっとりとゆーか
【暗視/視力/忍び足】活用
UCと【軽業】も併用
床が崩れて進み難い箇所も天井、壁問わず進む

(鳥目な相棒の鸚鵡ユキエをフードの中に入れてやり)
どーお?ユキエなんか感じる?
『ユキエ、見えないものはわかんない』
そーですか
ってもオレもあんまりなあ…
『霊感あるんでしょ』
うーん
今のオレには足音程度でなアテに出来る程でも、…?
病院て病気の人来るとこだよな
死んだ人は勿論だけど死人の家族なんかも来ちゃうのかねえ…
親しい人が死んだ場所に強い念は残るよな
…オレも、そうだからねぇ
大丈夫、身内に看取られて本人はちゃんと上に逝ったさ
『人間は難儀ね』

アドリブ可



「肝試しね、確かに妙な雰囲気あるよな。重苦しーとゆーかじっとりとゆーか……」

 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、足音もなく歩みながら、抑えた声で呟いた。
 明かりひとつない暗がりも、経年に荒れた足下も、忍びたる彼にとっては何の障害にもならない。
 時に散らばる瓦礫を飛び越え、傾いたドアの隙間を潜り。どうしても通れない箇所が存在すれば、無事な壁や天井を、平地のごとく軽々と渡って。彼は奥へ奥へと進む。

「どーお? ユキエなんか感じる?」
『ユキエ、見えないものはわかんない』

 病室の中を探りながら、そっとフードの中へと問いかければ、そこに隠れた白鸚鵡が流暢な人語を返した。

「そーですか。ってもオレもあんまりなあ……」
『霊感あるんでしょ』

 ユキエの言葉に、トーゴはうーんと唸って辺りを見やる。

「今のオレには足音程度でな。アテに出来る程でも、……?」

 ふと、トーゴは言葉を切った。気配を殺して跳び上がり、天井近い壁にぴたりと取り付く。油断なく闇を見据えるその瞳は、病室の扉近くにわだかまる、ひとつの黒影を捉えていた。
 その影はゆっくりと、這いずるように病室に入ってきた。そのまま部屋の一番奥の、窓際に置かれたベッドまで歩み寄れば、錆びついたそれをじっと見つめて動きを止める。
 長い、長い、溜息のような音が、かすかにトーゴの耳に届いた気がした。

「……病院て病気の人来るとこだよな」
『そうね』
「死んだ人は勿論だけど、死人の家族なんかも来ちゃうのかねえ……」

 実体を持たぬはずの魂が、確かな形を為すほどに、強い未練を持つのだろうか。彼、あるいは彼女は、囁き合うトーゴたちにも気づかずに、ただベッドの傍らに佇んでいた。
 親しい誰かが、この部屋で死んでいったのだろう。それを悲しみ、悔やんで、それが強い念となり、今もここに残っている。
 ――自分と同じようなものだと、トーゴは思った。
 かつて亡くした大切なもの。時は経っても、生きる場所が変わっても、思いはずっとあの場所と――己の中に、残り続けている。
 再び汚れた床に降り立ち、彼は病室の出口へと向かう。

「大丈夫、身内に看取られて本人はちゃんと上に逝ったさ」

 扉を潜る直前、俯く影の背中へと、そんな言葉だけを呟いて。
 影は何も応えなかった。トーゴを振り返ることすらなく、ずっとその場を動かなかった。

『人間は難儀ね』

 白鸚鵡の声が、ぽつりと重い空気を揺らす。
 トーゴは、困ったように少し笑った。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『暗闇の追跡者』

POW   :    燃エ広ガル狂気
【崩れた輪郭から溢れ出る闇】が命中した対象を燃やす。放たれた【狂気を齎す漆黒の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    膨レ上ガル呪詛
【膨張しながら不定形に拡がり続ける闇】に変形し、自身の【輪郭や自己同一性】を代償に、自身の【攻撃範囲】と、技能【精神攻撃】【呪詛】を強化する。
WIZ   :    揺レ浮カブ恐怖
レベル分の1秒で【対象の背後に出現し、対象を絞め殺す腕】を発射できる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 廃病院を上から下まで探索した猟兵たちは、崩れかけた壁の奥に、隠し扉を発見した。
 扉の先には深い階段が伸びていて、病院の地下に繋がっている。地下には大きな空洞が広がっており、そこがかつて邪教のアジトであったことを示す痕跡も残されていた。
 召喚の儀が行われた場所は、この先にある。
 猟兵たちがそう確信したとき、ざわり、と周囲の空気が騒いだ。

 ――それは、院内でも見かけた黒い人影によく似ていた。
 しかしこれまで出会ってきた彼らよりも、はるかに深い恨みと狂気を纏っている。
 猟兵たちを、この先へ行かせまいとするかのように。彼らは、次々と暗闇から這い出してきた。

【解説】
 集団戦となります。
 猟兵たちを追い払おうとする『暗闇の追跡者』を蹴散らし、かつて召喚の儀式が行われた場所を目指してください。
 この断章の提出後から、プレイングを受け付けております。
馬県・義透
引き続き『静かなる者』

さて、この先に行かなければなりませんが…。ええ、陰海月はお休みを。

指定UCにて技能強化しつつ。
鳴弦により、相手を閉じ込める結界を構築。
その中に、四天霊障に封じた私対応の厄災『大雪』の封印解除。ええ、天候操作で強化されてますし。破魔もついてますよ。

輪郭がぼけ、どれだけ広がろうと、結界という限られた中ですしね。しかも、生命力吸収もしていますから、長くは保たないでしょう。
恨みも何もかも、『我ら』が継いでいきますから。私…我らは悪霊なり。

それでも足りないのなら、霊力による矢を射かけますよ。


陰海月、危険を察知して義透の影に引っ込む。



「さて、この先に行かなければなりませんが……」

 じりじりと迫る影たちを見て、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は弓を構える。傍らで不安げにとぷきゅりと鳴いたジャイアントくらげには、安心させるような微笑みを向けた。

「ええ、陰海月はお休みを」

 身体の主導権は、今も『静かなる者』が握っている。陰海月を己の影へと退避させた彼は、白雪林の弦を爪弾いた。 
 四悪霊・『界』。悪霊たる彼の力は、敵を閉じ込める結界をこの場へと構築する。
 目の前で膨張する闇の群れは、結界にそれを阻まれた。出口を探すように尚も拡がるそれらへと、ちらり、触れる白銀がある。
 それは、結界内部に降る雪だった。彼ら四人の無念を封じた霊障から解き放たれたそれは、『静かなる者』に対応する災厄――すなわち『大雪』。
 天候操作により強化され、破魔の力をも宿したその雪は、不定形に揺らめく漆黒に落ちる度、それを溶かすように消滅させる。
 深い闇が、怨嗟の叫びを上げた。どろどろと広がり、隣の影との境界さえ曖昧にしながらも、『静かなる者』に掴みかかろうと黒い腕を伸ばす。しかし、異空間さえ形成する悪霊の力で強化された結界は、多少の攻撃にはびくともしない。

「私……我らは悪霊なり」

 ――憎い、憎い。
 生あるものを恨む呪詛を孕んだ思念に晒されながら、彼は呟いた。

「恨みも何もかも、『我ら』が継いでいきますから」

 消えゆく闇を見守る『静かなる者』の目には、決然とした意志の光が灯っていた。『悪霊』として、ある種、彼らの同族として。彼らの意志を阻むことの責を、そうして負っていく。
 それに、抗うかのように。影のひとつが、降りしきる雪にその身を浸食されながらも、渾身の力で全身を結界に叩きつけた。ぴしりと結界にほころびが生まれ、そこから滲むような黒が這い出してくる。

「まだ、足りないのなら――」

 弓が強く引き絞られる。伸び上がり、ひたすらに呪詛をばらまきながら迫り来る、歪みねじれた人型へ、『静かなる者』は狙いを定めた。
 黒い恨みを込めた一撃が、彼の身体に届く寸前。放たれた霊力の矢が、影の中心部を貫いた。
 そして、ようやく。周囲を満たしていた影は祓われる。一息ついた彼はしかし、ざわめく気配が完全には消えていないことにも気づいていた。

「急いだ方が良さそうですね」

 全ての元凶は、この先に居る。暗く長い地下の道を、『静かなる者』は駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

サンディ・ノックス
キミは…この病院をさまよっていたヒト達と同じように未練があるヒト?
それともただのUDC怪物?
見た目じゃ区別つかないからキミの思念も受け止めてあげる

放たれる炎
身体がちりちりと焼かれるような感覚
これは熱じゃなくて精神汚染だな…
俺の中の「悪意」の魂が、人々への憎悪と不信を叫んで俺を食い破ろうとする
「悪意」の機嫌が悪い時によくあることだから焦らないけどね
落ち着いて俺の大切なヒト達を思い出して狂気に抗う

これはUDC怪物だろうな
万が一未練があるヒトだとしても他者に害ある存在だから全力で排除させてもらおう

真の姿を開放
金眼の赤き竜人と化し、攻撃力を重視したUC解放・宵を発動して襲ってくる全てを切り刻んでいく



 地下へと下り、そこに居並ぶ影と対峙したサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、武器を取る前に、目の前の影へと向けて語りかけた。

「キミは……この病院をさまよっていたヒト達と同じように未練があるヒト? それともただのUDC怪物?」

 彼らは応えない。ただ低いうめき声を上げ、ゆっくりとその包囲を縮めてくる。
 見た目では区別がつかない、と、サンディは思う。確かな敵意こそ感じるものの、先ほど病院内で彼に襲いかかろうとした魂も、本質は孤独を抱いたヒトであった。それだけでは判断できない。
 ならば、あのときと同じように。目の前の存在の持つ思いも、この身で受け止めてみるしかない。
 そう心を決めたサンディへと、闇がその腕を伸ばした。空気を裂いて放たれる漆黒の炎が、彼の胸へと命中する。

「――!」

 全身が焼かれるような感覚に、サンディは数歩よろめいた。狂気をもたらす熱のような何かが心臓へと忍び込み、彼の中の『悪意』をざわめかせる。精神汚染の一種だと、サンディは理解した。
 ――殺せ、壊せ。全てを平らげてしまえ。こんな世界、守ってやる必要がどこにある。
 彼の中に宿る『悪意』が、そう叫び続けている。鈍い頭痛のような感覚がサンディの意識を揺らがせるも、深呼吸をして踏みとどまった。
 今までにも幾度も、こんな衝動に襲われてきた。その度に、彼にとって大切な人々、共に生きたいと思える人々を思い出しては、狂気に抗い続けてきた。そう、今も。
 サンディの身体が、赤い光に包まれる。青い瞳の少年から、真の姿――金眼の赤き竜人の姿へとその形を変え、その鋭い眼光で目の前の『敵』を睨み据えた。
 万が一、これが強い未練を残しただけのヒトだったとしても。この力は、見過ごせる範囲を超えている。そう結論を出したサンディは、彼らを全力で排除するために、己の黒い剣を構えた。

「さぁ、宴の時間だよ」

 襲い来る闇のただ中へ、彼は飛び込む。四方八方から吹き付けられる黒い炎を、疾風のような斬撃が両断していった。
 舞い踊るがごとく振るわれる刃は、彼を捉えようと伸びる影も次々と斬り裂いていく。ヒトの形をした影の腕が、足が、首が跳ね飛ばされ、澱む空気に霧散する。
 『敵』と見なしたものに、彼は容赦はしない。取り囲む闇を一欠片も残さず屠ったサンディは、そこでようやく剣を下ろした。
 彼の前には、今は何の姿もない。暗闇に続く道だけが、長く長く伸びていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

神代・凶津
おっと、血の気の多い幽霊がお出ましになったようだな。
こんな空気が淀んだ地下空洞にいるからそんな辛気くさい顔してんだよ。
いっちょ、俺達が換気してやるよッ!いくぜ、相棒ッ!風神霊装だッ!
「・・・転身ッ!」

オラオラオラアアッ!暴風を纏わせた薙刀をぶんまわして纏めてなぎ祓ってやるぜッ!
この破魔の風をたっぷり浴びて強制除霊しちまいなッ!

敵が対象を絞め殺す腕を発射するタイミングを見切り、カウンターで腕を叩き斬ってやるぜッ!

さあ、この調子でドンドンぶち抜いて目的地にたどり着いてやるぜッ!


【技能・破魔、なぎ払い、除霊、見切り、カウンター】
【アドリブ歓迎】



「おっと、血の気の多い幽霊がお出ましになったようだな」

 気づけば自分たちを取り囲んでいた黒影を眺め、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)はどこか楽しそうに言った。

「こんな空気が淀んだ地下空洞にいるから、そんな辛気くさい顔してんだよ」

 挑発するような彼の言葉に、追跡者たちは何も返さない。ただ恨みと憎しみの籠もった視線で、凶津と桜をじっとりと見つめ続けている。
 その様子に、凶津は鼻で笑った。

「いっちょ、俺達が換気してやるよッ! いくぜ、相棒ッ! 風神霊装だッ!」
「……転身ッ!」

 高らかな声と共に、二人の力が一つに合わさる。
 凶津を面として被った桜の周囲に、風を纏う霊装――風神霊装が展開される。彼女の手にした霊鋼の薙刀もまた、荒れ狂う暴風を纏い輝いていた。

「オラオラオラアアッ! 覚悟しなッ!!」

 破魔の風に後押しされ、二人は跳んだ。竜巻のように振り回される薙刀が近づいてくる影を斬り裂き、刃が届かなかったものも、ドリルのごとき風が打ち伏せ粉砕する。
 大降りで無軌道に見えながら、決して敵を逃すことはない。凶津と桜、二人の性質が合わさったかのような、二心一体の戦舞。
 それは嵐のような猛攻だった。しかし、薙刀と暴風をかいくぐり、何とか二人の背後へと回った影のひとつが、桜を絞め殺すべくその黒い腕を伸ばす。

「甘いんだよッ!!」

 だが、二人は既に這い寄る気配を見切っていた。巫女の首を狙う腕に、振り向きざまのカウンターがお見舞いされる。伸ばした腕ごと縦に一刀両断された影は、ふたつに割れて闇へと消えた。
 風は止まない。暴風域に踏み込むことを躊躇う影もまた、翻る白銀に斬って捨てられる。

「さあ、この調子でドンドンぶち抜いて目的地にたどり着いてやるぜッ! なあ相棒ッ!」
「わかっています」

 前を塞ぐ影も、後を追う影も、等しく破魔の刃でなぎ払い。地下道には、凶津の高笑いが反響する。
 突風のごとく駆ける二人は、ただひたすらに突き進んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

朱酉・逢真
心情)オヤ残念。この坊やらはおとなしく来ちゃくれンらしい。だが死者が此岸にとどまり生者を害するのンは、世の理として許されんのさ。むりくりでも来てもらうぜェ。
行動)お行き、俺の眷属(*仔)ら。恨みと狂気を食らってやりたいが、それでも聞かん坊というなら仕様もねェ。毒と病に再び沈み、此岸の未練を超える苦痛を感じな。素直に死んだほうがマシってなモンさ。…オヤ・俺を絞め殺す気かえ? 残念。俺の《宿(*からだ)》は病毒のカタマリ、邪神すら触れれば腐り落ちる。絞めるどころか、ひひ。触った感覚すらなかろォよ。ほら、腕が落ちた。



 どうやら、この坊やらはおとなしく来ちゃくれンらしい。敵意にまみれた幾つもの視線をその身に受けながら、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は残念そうに首を振った。

「だが死者が此岸にとどまり生者を害するのンは、世の理として許されんのさ。むりくりでも来てもらうぜェ」

 彼の胸にあるのは遍く慈愛に変わりはないが、領分を超える者を捨て置くわけにもいかぬ。逢真は手にした烟管をすぅと吸った。
 敵対者を前にしたそれは、悠長で挑発的な行為に見えたのだろう。揺らめく影の敵意が弾ける。
 しかし彼は慌てることもなく、次は吸った煙を吐き出す。

「お行き、俺の眷属(*仔)ら」

 逢真が囁くように言った瞬間だった。宙に舞った紫煙から、雲霞のごとき大量の虫どもが、湧き出すように現れた。それらは目の前にある影に取り付き、食いつき、その内側へ潜り込む。
 虫は、毒や病を媒介する。それは一度は死した者が相手であっても変わりはなかった。
 命あった頃のような、否、それをも超える病の苦痛。影の身体がぼろぼろと腐り落ちるように地べたに倒れ、不明瞭な呻き声がそこかしこから聞こえてきた。

「毒と病に再び沈み、此岸の未練を超える苦痛を感じな」

 素直に死んだほうがマシってなモンさ。癇癪を起こす子を宥めるような声音で言い、逢真は再び紫煙をくゆらせた。
 だが。身を溶かすほどの苦しみの中にあって尚、抗う気概を持つ者は存在するらしい。逢真の背後の空間が揺らぎ、ずるりと這い出してきた影のひとつが、逢真の首へと両腕を伸ばした。
 オヤ、と振り向く彼は、避ける気配も見せない。その首に黒い十の指が絡みつく。

「俺を絞め殺す気かえ?」

 言われるまでもなく。黒影が彼の首をねじ切ろうとしたそのとき。
 ぼとり。
 腕が、落ちた。何かに斬られたわけでも、食いちぎられたわけでもなく。ただ、崩れて落ちた。何が起きたのか理解できないように、影が呆然とそれを見おろしている間にも、その崩壊は残る身体にまでも伝っていく。

「俺の《宿(*からだ)》は病毒のカタマリ、邪神すら触れれば腐り落ちる」

 残念だねェと笑う逢真に見つめられながら、もがくそれは塵となって消え失せた。
 そして周囲から、全ての音が途絶えたとき。
 逢真以外、動くものをなくしたそこには、崩れて消えた影の痕跡さえも残らなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿村・トーゴ
相棒鸚鵡ユキエは戦線離脱
相手は見境無しだろーし…外で待っててな?

邪神に心酔したあげくこんな姿になっても門番か
UDCの怖いとこだね

>敵UCの炎
【野生の勘と暗視/聞き耳】で触れないよう躱す
被弾したらクナイで腕か腿を刺し痛みで狂気に抵抗
躱しながら手裏剣複数を【念動力】用い命中を狙い【投擲】→UCに繋ぐ
トドメさせそうな個体には接近しクナイで斬り【傷口をえぐる】で裂く

アンタら…神様に死後まで捧げるなんて見上げたもんだよ
忍びとしちゃ手本にするべきかねぇ
忠誠が隷属かは知らねーが後悔してない?
ま、聞く耳持たないだろうがオレらはアンタらの神様を支持出来ねーんだ
解り合う間はない
この巣窟狩らせて貰うよ

アドリブ可



 暗闇へと続く下り階段を見おろすと、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)はフードの下の白鸚鵡を外へと出した。

「相手は見境無しだろーし……外で待っててな?」
『わかった、気をつけなさいよ』

 ユキエは翼を羽ばたかせ、割れた病院の窓から飛び出していく。それを見送ると、トーゴは表情を引き締め、足音を殺して階段を下りた。
 ――地下へと続く長い階段を、歩み続けるそのうちに。自らの背後を、ひたひたとついてくる気配があることに、トーゴは気がついた。
 素知らぬふりで進んでも、見逃す気はないらしい。辿り着いた地下道で、その気配は黒影の群れとなって彼の前に立ちふさがった。

「邪神に心酔したあげくこんな姿になっても門番か。UDCの怖いとこだね」

 この場に染みのように残る思念たる彼らは、かつてはこの地下道をアジトにしていた邪教徒たちだったのだろう。死してすら――あるいは、志半ばで死したゆえにこそだろうか、なお邪神にその魂を捧ぐ彼らへ、トーゴはある種の感嘆を送る。

「アンタら……神様に死後まで捧げるなんて見上げたもんだよ。忍びとしちゃ手本にするべきかねぇ」

 後悔はしてない? などと問うても、返事はなかった。きっと、していないのだろう。

「何にせよ、オレらはアンタらの神様を支持出来ねーんだ」

 トーゴがクナイを構えると同時に、影が動いた。次第に崩れていく人の輪郭から、じわりと漆黒の炎が燃える。呪わしい咆哮が地下空洞に響くと共に、それは次々とトーゴへ向けて放たれた。
 彼は己の勘を極限まで張り詰めさせる。闇夜を映す目を見開き、風切り音に耳を澄ませ、飛び来る炎をかわしながら、懐から取り出した手裏剣を影へと投げた。
 念動力にて不規則に起動を変えるそれらは、蠢く影を的確に射貫く。穿たれた身体を引きずりながら、影は尚も彼に迫るが――。

「“降りて隠形呼ぶ細声の糸を辿れや爪月の”……追って貫け隠形鬼」

 低い詠唱が、彼の口からこぼれた。毒を纏う幽鬼を降ろした毒針が、先ほど手裏剣を命中させた傷跡へ、吸い込まれるように突き刺さる。
 呪詛をも込められた毒は、死者の魂にさえ巡り、その身の自由を奪い去った。

「解り合う間はない。この巣窟狩らせて貰うよ」

 ずるすると地面に伏した彼らに、手にしたクナイでとどめを刺して回りながら、トーゴは地下道を駆けていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

グロリア・グルッグ(サポート)
おおっと戦闘案件ですか。いいですよ、受けて立ちます。
死と隣り合わせな星の海で鍛えられた騎兵の強さを教育して差し上げましょう。
覚悟しろよおまえら~?

電脳魔術仕様の量産型キャバリア改で戦闘です。
騎兵が機体の操縦に長けているのは確定的に明らか。
ガン積みした戦車ミサイルランチャーから一斉発射で大量のミサイルをぶっぱします。
ミサイルには電脳魔術でハッキングを仕掛け、超高精度かつ常識外れの誘導弾にして敵にぶつけましょう。
弾切れになっても問題ありません。
天使の抱擁でミサイルを補充しつつ、さらに火力を高めたミサイルを敵にぶっぱなしましょう。
戦場における絶対正義……それは超火力……。
火力こそパワーなんですよ。



 地下へと続く階段を下りたグロリア・グルッグ(電脳ハッカー・f00603)は、現れた影の群れを前に不敵に笑った。

「おおっと戦闘案件ですか。いいですよ、受けて立ちます」

 身につけた電脳ゴーグル・ラプラスを起動し、己の改造キャバリアへと乗り込めば、そこへ積まれた無数のミサイルランチャーが照準を定める。

「死と隣り合わせな星の海で鍛えられた騎兵の強さを教育して差し上げましょう。覚悟しろよおまえら~?」

 どこか茶目っ気のある声と共に、爆音を上げてミサイルが発射される。電脳魔術によるハッキングで誘導弾と化したそれらは、グロリアへと向かい来る闇を弾き飛ばし、影へと着弾した。
 狂気を齎す漆黒の炎が、物理的な炎に焼き尽くされる。それでも尚伸びる影の腕も、彼女の纏うキャバリアに、さしたるダメージは与えられない。
 地下空洞の壁を、爆発の振動がびりびりと揺らした。直撃を受けて四散した影の破片を踏み越えながらも、グロリアはミサイルの発射ボタンから指を離さない。

「戦場における絶対正義……それは超火力……」

 いつ終わるともしれぬミサイルの雨。魂すらも吹き飛ばす、火力。

「火力こそパワーなんですよ」

 彼女の言葉に応えるかのように、爆炎が暗闇を照らし出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

葉隠・翠(サポート)
『ニンニン!忍者りょくきゃ…緑影でござる!』
 人間の化身忍者×シーフ、16歳の女です。
 普段の口調は「古風(拙者、~どの、ござる、ござろう、~でござろう?)」、時々「普通(わたし、あなた、呼び捨て、だ、だね、だろう、だよね?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 地下道を駆ける緑の影がひとつ。
 忍者の身体能力を駆使し、奥へ奥へと向かっていた葉隠・翠(緑影・f22215)だったが、己を囲む追跡者の姿にいよいよその足を止めた。

「むむむ、面妖な……」

 闇の中、ぽかりと空いた虚ろの瞳を爛々と光らせながら、黒い人影が翠に近づいてくる。しかし、彼女とてただ無力な獲物ではない。

「あくまで邪魔をするのであれば、容赦はせぬ! 忍者りょくきゃ……緑影、参る!」

 噛んだ名乗り上げはさらりとなかったことにして、翠は素早く両手で印を結んだ。
 呪いを詠唱することにより、彼女の身体が光に包まれ、変化していく。葉隠忍法・忍神変化。詠唱が終われば、そこに立っていたのは――緑の光を纏う、巨大な女神。身の丈4mを超える長身となった彼女は、女神へと刃向かう魂たちを見おろすと、両手から生える刃をゆるりと構えた。
 黒い影の輪郭が崩れ、溢れ出る闇が女神へと殺到する。右手の刃でそれを斬り裂いた翠は、返す刀で近くの敵を両断した。
 緑と黒の影がぶつかり合う。放たれる炎が時折彼女の身を焼くが、多少の怪我に構う翠ではない。時に頭を跳ね飛ばし、時にその巨体で踏みつぶし、次々と影を屠っていく。
 彼女の進撃の先にあるのは、この地下空洞の最深部だ。
 忌まわしい儀式の跡地は、近づいていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『夢の現』

POW   :    夢喰み
【対象の精神を喰らうこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【戦意の喪失】で攻撃する。
SPD   :    魂攫い
【深層の欲望を見抜く視線】を向けた対象に、【欲を満たし心を奪う空間を創り出すこと】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    心砕き
いま戦っている対象に有効な【対象が最も苦手とする存在】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はルメリー・マレフィカールムです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 長い地下道のその奥に。乾き掠れた血で描かれた、ひとつの魔法陣があった。
 これこそが、邪神をこの世に呼び出すための鍵であり――それが失敗した後に、新たな怪異を呼び寄せた、門であった。

 禍々しく大きな気配が、すぐそこに在る。
 周囲に広がる空間が、じわりと揺らぎ、歪んでいく。
 数多の夢を喰らった夢魔が、気づけばそこに佇んでいた。

 夢を現に。叶わぬ思いを現実に。
 かつて生きたいと願った誰か。もう一度会いたいと願った誰か。ただ救いをと願った誰か。
 歪んで書き替えられた望みは、寄る辺のない魂たちを、この病院へと縛り付けた。
 さあ、終止符を打たねばならない。

【解説】
 ボス戦です。『夢の現』との戦闘となります。
 純戦ではありますが、ボスの能力の性質上、プレイング内容次第では心情寄りのリプレイとなる可能性もございます。
 この断章の提出後から、プレイングを受け付けております。
神代・凶津
漸く目的地にご到着って訳か。この魔法陣が怪異を呼び寄せる門の役割を果たしちまってるようだな。
「…早く封じてしまいましょう。」
おっと、相棒。そう簡単にはいかねえようだぜ。敵さんのお出ましだ。
「…倒してこの怪異を終わらせます。」
おうよ、相棒ッ!雷神霊装でいくぜッ!
「…転身ッ!」

どうやら視線を向けられたら厄介そうだし、フェイントを交えながら引き上げたスピードと反応速度で縦横無尽に戦場を駆けまわるぜ。敵の顔の動きを見切り、視界に入らないようにな。
そして、隙をみて破魔の雷撃を纏った妖刀でぶった斬ってやるッ!

「…その悪夢ごと祓います。」
さあ、覚悟しろやッ!


【技能・フェイント、見切り、破魔】
【アドリブ歓迎】



 最深部に広がる、夢とも現とも言えぬ空間の中、音もなく浮かび上がる夢魔。
 その姿に不吉なものを覚えながらも、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)を纏った桜は武器を構えた。

「この魔法陣が怪異を呼び寄せる門の役割を果たしちまってるようだな」
「……早く封じてしまいましょう」

 普段通りの会話をしながらも、目の前の敵が油断ならぬ相手であることは、二人とも理解をしていた。しかし、退くなどという選択肢は端から彼らの内にはない。

「……あれを倒して、この怪異を終わらせます」
「おうよ、相棒ッ! 雷神霊装でいくぜッ!」
「……転身ッ!」」

 二人の声と共に、暗闇を雷が照らし出す。
 雷神霊装――雷撃の力を宿し、紫電の如き反応速度とスピードで戦う高機動型の霊装だ。

「あいつの視線、嫌な気配がプンプンするぜ! なるべく視界に入るなよ!」

 凶津の言葉に頷くことで応えると、桜は霊装の機動力をもって、夢の現の周囲を縦横無尽に駆け巡る。
 欲望を見抜く視線の動きを、引き上げられた反応速度で常に追い、その死角へと潜り込む。接近の気配を察知したのか、身を守るように伸ばされた赤い触手も、振り下ろされた刃が斬って捨てた。
 身体の一部を切り取られた夢魔はしかし、まるでそれ自身が夢幻であるかのような軽い手応えを残し、ふわりふわりと宙に浮いている。

「まったく気味の悪いヤツだな!」

 凶津の軽口の傍ら、桜は実体さえ定かではない敵へ、舞うように斬撃を繰り出した。触手を落とし、ぼろ切れのようなマントを引き裂き、一所に留まることのない連続攻撃。
 だが、大きく刀を振り切った一瞬を狙い、夢魔の視線が彼女を捉える。心の奥底が具現するかのように、空間がざわめきを始め――。

「今だぜッ!!」
「かかりましたね」

 その瞬間を、彼らは待っていた。
 本命ではない一撃で、敢えて晒した隙。桜に狙いを定めた瞳へと向けて、振り切られたはずの刃が閃く。フェイントの勢いすら乗せた回転斬りが、山羊にも似た不気味な頭蓋骨を叩き割った。
 空間のざわめきが止み、夢魔の傷と呼応するかのように、周囲を浸食していた歪みが欠けて落ちていく。
 やはりこのオブリビオンを倒せば、この病院の闇も共に消えるのだろう。

「……その悪夢ごと祓います」
「さあ、覚悟しろやッ!」

 刀身に破魔の雷撃を宿し、彼らは再び戦場を駆けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

朱酉・逢真
心情)ひ、ひ。ようやくのお出ましかえ。夢魔の坊やか。俺の欲を見抜くってェ? いいぜ、ご覧。見抜けるものなら見抜いてご覧な。深層も真相もありゃアしないさ。俺は夜。俺は暗がり。ヒトみてェな"こころ"はどこにもない…。お前さんみてェなお若いちびさんじゃア、宇宙の暗がりは見透かせやすまいて。
行動)手の平から湧き上がる泡を軽ゥく吹けば、戦場いっぱいに広がるだろう。ぱちんぱちんと割れるたび、お前さんの体も溶けるだろうて。マ・本命はそっちじゃない…魔法陣だよ。溶かして壊せば門は閉じる。素直にお帰り。泡となって消えるが望みなら、それでもいいがね。



「ひ、ひ。ようやくのお出ましかえ。夢魔の坊やか」

 空中に浮かぶ朧気なその姿を見上げながら、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は、悪童に語りかけるかのように言った。
 そんな彼を、夢魔の虚ろな両眼が見おろす。心の深層に根付く欲望を見抜く、魂攫いの視線が、赤い瞳とぶつかり合う。

「いいぜ、ご覧」

 逢真は目を細めた。見抜けるものなら見抜いてご覧とばかりに、その場から動きもせずに、夢魔を見守る。
 空間が騒ぐ。人の欲を、精神を求め、赤い触手を揺らしながら、目の前の男の深層を探るように近づいてきたその怪異が――不意に、たじろぐように後ずさった。
 深層。あるいは真相。秘められた真実。
 ただ偶然に呼び寄せられたに過ぎない夢魔には、『かみさま』のそれは、掴みきれない。"こころ"など存在せず、どこまでも続く夜のような彼の内側を満たすには、人の夢程度では足りない。

「俺は夜。俺は暗がり。お前さんみてェなお若いちびさんじゃア、宇宙の暗がりは見透かせやすまいて」

 ごぼり、と。水の音がした。
 椀のように上に向けられた逢真の手のひらから、《海》が湧き上がってくる。そこから浮かぶ細かな泡を、彼はふぅと吹いて宙へ飛ばした。
 しゃぼん玉遊びのように空間を満たしていくそれらが、夢魔の身体へも触れる。脆く透明な泡が割れると同時、そのかすかな飛沫を受けた触手が、水を浴びた泥のごとく融け始めた。

「痛みはないよ。安心おし」

 ぱちん、ぱちん。無数の泡が砕ける度に、夢魔の身体がその形を失っていく。長い触手でそれを払えど、払った場所から融解が始まるために意味を成さない。
 だが、逢真の狙いはそこではなかった。溶けゆく夢魔の足下、描かれた古い魔法陣。泡はその上にも降り積もり、刻まれた血と、忌まわしい記憶を融かし洗い流していく。
 魔法陣が壊れれば、現世に開いた門も閉じるだろう。

「素直にお帰り。……マ、泡となって消えるが望みなら、それでもいいがね」

 好きなほうをお選びよ、と。変わらぬ博愛の眼差しを、目の前の『坊や』へと向けながら、逢真は笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『静かなる者』にて

姿かたちが同じ、髪色が銀灰色なあなた(『疾き者』)。
当たり前ですよ。今の外見にしたのは私(外枠決定者)で、姿の基本は『疾き者』なんですから。

ただただ、あなたを独占したいという欲があって。
私はそれを自覚していなくて。
だからこそ、今、それを明らかにされて。

私にもそのような欲があって、だからこそ鬼に至れると。
厄災『大雪』の封印を解除しつつ、真の姿へ(ver.2『雪解鬼』21/1/3納品分)

感謝しますよ。ええ、知らなかったことを知れたのですから。
破魔つきの霊力矢を射かけましょう。
逃れられぬよう、強化した結界術で囲っていますし、生命力吸収もしていますので。

私も人だったのですよ。



 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)――『静かなる者』は、己と同じ姿かたちを持つ、銀灰色の髪の男と向き合っていた。
 『疾き者』。彼と身体を同じくするうちの一人であり、『馬県・義透』の外見の元ともなった存在。
 そうすることを選んだのは、他でもない、『静かなる者』本人であった。
 『疾き者』が、こちらを見ている。穏やかで優しい微笑みを浮かべ、全てを受け入れようとするかのように。
 今、この手を、伸ばしてしまえば。

(……ああ。これが、私の)

 『静かなる者』は、無意識に伸ばしかけた手を、強く握りしめた。
 それに応じたかのように、ちらり、と、空から白い雪が舞い落ちて。
 ゆっくりと降り積もっていくそれを、『疾き者』は、無言のままで見つめている。
 今、目の前に立つ彼が、己の思い描いた幻想に過ぎないと。『静かなる者』は、もはや理解していた。
 ただただ、彼を独占したいという欲。自覚はなくとも、それはずっと己の内に在った。
 それを今、明らかにされて。この心の底に、このような欲があると、突きつけられて。
 ――だからこそ、鬼に至れると。
 一際冷たい風が吹いた。降りしきる雪は激しさを増し、吹雪となって荒れ狂う。それは偽りの想い人の姿をも白く覆い隠し、やがてはこの空間さえも。

 彼の欲望を映し出したはずの空間を、彼自身に破られて。何故、と問うかのように、夢魔は『静かなる者』を見つめた。
 雪が降る。解き放たれた大雪の厄災は、夢も現も分け隔てなく、全てを白く染め上げていく。
 その白の中、一人の鬼が立っていた。
 長い白髪を凍える風に揺らし、額からは氷の角を生やしたそれは、『雪解鬼』。『静かなる者』の、真の姿。

「感謝しますよ。ええ、知らなかったことを知れたのですから」

 彼は、白い弓を構える。破魔の力を込めた霊力矢の先を、夢の現へと向けながら。
 夢を見る時間は終わった。心に燻る欲の存在を確かに認め、しかし、それに屈することはない。焦がれ続けた胸の奥底は、あんな幻では埋められない。
 強化した結界術の内側に吹き荒れるのは、生命を吸い取る雪だ。決して逃しはしないというように、冷気が夢魔を追い詰める。
 そして音もなく放たれた白い矢は、黒いマントを突き破り、夢魔の胸に深々と突き刺さった。
 ――彼は鬼。彼は悪霊。されど。

「……私も人だったのですよ」

 こぼれ落ちた呟きは、真白の中に溶けて消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
真の姿開放
金眼の赤き竜人と化す
黒剣はロングソードサイズに変形させる

UC青風装甲を発動し加速して敵に襲い掛かる
戦場の広さにもよるけど、基本ヒットアンドアウェイで距離を取ってから加速により攻撃力を高めて敵を撃つ
狭い場合は一方的に攻撃するための早い移動のために使用

敵のUCで精神を削られて不快感
魂喰いのこの俺に干渉するというのか…!
削られる戦意に伴ってUCの力も低下する
負けるものか
お前も食ってやる
オブリビオンなどの前で膝を折ってなどやるものか
……これ以上、この病院に縛られる魂を増やしちゃいけない
(悪意の魂による悪の思考で頭がいっぱいになっているが、追い詰められて生来の思考が働く)



 瑠璃色の旋風が地下空洞を翔る。真の姿、赤き竜人と化したサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、青い風を纏う斬撃を夢の現へと浴びせていた。
 猟兵たちとの戦闘により、夢魔の身体も傷つき、周囲に展開された夢の空間にもほころびが目立ち始めている。今を攻めどきと見たサンディは、ロングソードサイズへと変形させた黒剣を手に、果敢に敵に挑みかかった。
 青い風による飛翔で、ヒットアンドアウェイを仕掛ける。迎え撃とうとする触手の群れは、彼の反応速度には届かなかったが――不意にくらりとしためまいを覚え、サンディは急いで夢魔から距離を取った。

「魂喰いのこの俺に干渉するというのか……!」

 己の精神を蝕まれる不快感に、サンディは苦々しげに呟く。
 喰らわれた戦意に比例して、彼の纏う風が弱まり、目に見えてスピードが落ちてくる。重くなる身体を叱咤し、サンディは尚も剣を振り上げた。

「負けるものか……! おまえも喰ってやる!」

 サンディは――否、今やその魂に眠る『悪意』の意識に満たされた彼は、怒りに満ちた声で叫ぶ。
 オブリビオンなどの前で、膝を折ってなどやるものか。敵への悪意を、殺意を、己が力へと変えて、彼は走った。
 サンディの魂に潜む闇が、オブリビオンを殺せ、と荒れ狂う。ただ目の前の敵を倒すためだけに、自分はここに居るのだと言うように。
 けれど。
 邪悪の満ちた心に過ぎる、記憶。あの病院をさまよっていた人々の影。死してなお現世に留められ、無念と未練に嘆き続ける幾つもの魂たち。

「……これ以上、この病院に縛られる魂を増やしちゃいけない」

 悪意の闇の底、ちらりと輝くかすかな望みは、確かな『サンディ』の意志。
 黒剣を握り、彼は飛翔した。追い風の加速を纏い、宙に浮かぶ夢魔を目掛けて、真っ向から突き進む。精神を喰らわれる痛みにも、もはやその切っ先が揺らぐことはない。
 この悲しみに、早く終わりを。夢魔を貫く剣に込められていたものは、ただ純粋な願いであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿村・トーゴ
血を使って呼び出されるナニかなんて…大抵ロクでもない奴だろーな
こいつの所為か?病院の悲しそうな黒い影も邪魔してきたイカレた黒い影も
こっちの精神おかしくしてくる手合いかね
気を付けないと

UCで強化
代償の毒は気付けと自分を追い込む為に敢えて解毒しないまま
クナイを手に【忍び足/追跡】で敵背後を狙い接近、出来れば初撃不意打ちを入れたい【暗殺/串刺し】

>敵UC
ずっと燻る欲求は好き合った人間の娘と何事もなく過ごし所帯を持って暮らしたかった事
でもオレがミサキを殺した…せめて一緒に死ねたら…
…!
毒の痛みで正気に返れば反撃へ
娘にしたように首と胸を刺突
【聞き耳/野生の勘】を頼り敵の視線から逃れるよう留意

アドリブ可



 血を使って呼び出されるナニかなんて、大抵ロクでもない奴に違いない。描かれた魔法陣を見おろし、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は心の中で吐き捨てた。
 廃病院で見た悲しそうな影も、先ほど戦った狂える影も。全ては、目の前の夢魔の所為で生まれたものだろう。

「こっちの精神おかしくしてくる手合いかね……」

 注意深い視線を敵へと向けながら、トーゴは己のユーベルコードを解き放った。血筋に憑き代償を喰らう化生をその身に降し、自身の肉体を強化する。
 強化した身体能力で地を蹴り、壁を蹴り、敵の背後へと回り込めば、ゆらゆらと浮遊するその背中目掛けて、勢いをつけた一撃を見舞った。
 刃は、深々と夢魔の背に突き刺さる。黒いマントの隙間から、千切れた赤い触手が落ち――しかし、とどめにはまだ至らない。
 クナイを引いたトーゴが夢魔から離れるより僅かに早く、骨の頭が彼の方を向いた。

 ――気づけば、トーゴは見覚えのある部屋の中に立っていた。
 懐かしい故郷の匂いがする。かつて穏やかな過去を過ごした、自分の家だ。
 名を、呼ぶ声がした。振り返れば、そこに立つのは一人の娘。トーゴの記憶よりも歳を重ねたように見える、彼女は。

「ミサキ……」

 トーゴの呟きに、ミサキは嬉しそうに笑った。
 小さくも温かい、二人の家。変化のない日々は少し退屈で、それでも何事もなく過ぎ去る。隣で微笑む大切な人と、ずっと一緒に。
 それは、望んでいたささやかな幸福。

(――でもオレがミサキを殺した)

 どれほど過去を思っても、ミサキが帰ることはない。ならばせめて、彼女と一緒に死ねたなら。
 この手を取れば、その望みだけでも叶うのだろうか。
 甘く優しい死の香りに、トーゴが一歩を踏み出しかけた瞬間だった。
 心臓を焼くような熱が、胸に走る。降魔化身法の代償に、彼の身体を蝕む毒が、痛みとなって駆け巡る。
 同時に、全ての幻が、晴れた。

「……!」

 一度、大きく首を振ったトーゴは、クナイを手に夢魔へと走った。
 もうその視線に惑わされることはない。目の前の敵の首へ、胸へ、手にした刃を突き入れる。
 己が殺した娘のことを、改めてその記憶に刻むかのように、そのときと同じ方法で。

「もう……終わってんだ、よ……!!」

 強い意志を湛えた言葉と共に、クナイを更に深く押し込めば。
 その傷跡が、ひび割れるようにゆっくりと広がり。夢魔の身体は崩れ落ちていった。

成功 🔵​🔵​🔴​


 かくして――廃病院に澱んだ悪夢は、祓われた。
 未練を残した魂たちも、オブリビオンの呪縛より放たれ、いくべきところへ去っていく。
 いずれは噂も忘れ去られ、役目をなくしたこの場所は、静かに眠りにつくのだろう。
 ゆらり、ゆらり、揺らめく影が。またひとつ、夜に薄れて消えていった。

最終結果:成功

完成日:2021年08月02日


挿絵イラスト