熾火は青く昌盛・休
●勇士
「なんでこんなことをするのかって? いやまあ、生きるためさ。魔獣の天使核は飛空艇を飛ばすのにも、様々な道具を扱うにも必要であるし」
「それに魔獣の肉は種類によっては高値で取引される。外殻は加工すれば鎧にも使えるし、骨は住居を構える際には支柱にも使えることもある」
「衣食住の全てを満たしてくれるものが魔獣ってわけであるから、生きるためにはそりゃあ、狩るさ」
そんなふうに語る勇士たちを前に少年『エイル』は頷く。
生きるために必要なこと。
衣食住が揃うことで人は人足りえるのか。
そもそもこのブルーアルカディアという世界にあって浮遊大陸は限られている。
浮遊大陸を浮かぶための動力は天使核である。これの力が尽きれば、雲海に沈み消滅する他ない。
「だから、魔獣を狩る……今更『V(ヴィー)』を載せてもらっていて言うのもなんだけれど……別の場所にはしようとは思わない? なんだか嫌な予感がするんだ」
『エイル』は魔獣狩りの勇士達が乗る飛空艇に相乗りさせて貰う形で『セラフィムV』と呼ばれる青い鎧の巨人のようなゴーレムと共に乗り込んでいた。
しかし、どうにも不安が払拭できない。
彼等を追う屍人帝国『オーデュボン』は先立っての戦いで、今は追手を退けた状態である。すぐにまた追手がかかることであろうが、今はまだその気配はない。
けれど、どうしても不安が募るのだ。
「魔獣が怖いってのはわかるんだけれどよ。ときには恐れも踏み越えていかにゃならんのよ、生きるためにはな」
「おっと、おしゃべりはそこまでにしておこうぜ。どうやら指定のポイントみたいだ」
「ああ、はぐれ飛空艇が出るっていうポイントな」
勇士たちが慌ただしく準備を始める。
彼等は最近この領域で見かけるドラゴンのような魔獣を求めて、飛空艇を飛ばしている。浮島と浮遊大陸を行き来する間であるが、常にこうして魔獣の影を追い求めなければ、人々の生活もままならないのだ。
「あれは……飛空艇。でも、本当に誰もいないんだ」
『エイル』が見たのは乗り手のいない飛空艇であった。大きさは中型程度のものであるが、乗り手の存在が見当たらない。
最近この領域でよく見かけられるのだ。はぐれ飛空艇をそのままにしておく理由は一つもない。
「中を調査して、牽引していこうぜ。坊主、悪いな。この大きさのものだと、また後帰らなきゃならん」
「いえ、それは別に構わないけど――……ッ!? あれは!」
勇士たちの言葉に『エイル』がつぶやいた瞬間、その巨大なる影がはぐれ飛空艇の遥か上空より舞い降り、勇士達の乗る飛空艇を引き裂くのであった――。
●はぐれ飛空艇
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件もまたブルーアルカディア……なのですが、屍人帝国とは関係がないようです。とある『勇士の飛空艇』がオブリビオンに撃墜される予知を私は見たのです」
ナイアルテの言葉に猟兵達は頷く。
この大空の世界ブルーアルカディアにおいて雲海に沈むということは即ち消滅である。
それをオブリビオンが為したというのであれば、予知した未来を防ぐのは当然であったことだろう。
「どうやら、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、屍人帝国『オーデュボン』に追われていた青い鎧の巨人『セラフィムV』と少年『エイル』さんも勇士の方々の飛空艇に乗り合わせていたようなのです」
彼等もまた事件に巻き込まれてしまうというのだ。
そうでなくても勇士たちは正義のためばかりではないが、オブリビオンを倒し天使核や魔獣の爪牙、肉をもたらす希望の存在である。
彼等を失うことは避けなければならない。
「今回は勇士の飛空艇に皆さんが乗り込む、または直接転移し、彼等が追っているドラゴンのようなオブリビオンを打倒しなければなりません」
どうやら最近、彼等が狙っているオブリビオンが出現する領域では『はぐれ飛空艇』と呼ばれる乗り手だけが喪失したまま浮かんでいる飛空艇が頻出しているのだという。
猟兵達は、その勇士たちや少年『エイル』と共にはぐれ飛空艇の内部を調査し、オブリビオンにつながるものを探さなければならないのだ。
「これがオブリビオンの仕業によるものなのだとすれば、なんらかの手がかりが、はぐれ飛空艇の中にあるはずなのです」
彼女の言葉通りであれば、オブリビオンが来襲するタイミングをはかることもできるだろう。
来襲するオブリビオンを迎え撃ち、『エイル』と勇士たちを救わねばならない。
「どうにかこれを撃退できたのならば、元の浮遊大陸……『アジール王国』へと戻ることになります。その途中の浮島で戦いの疲れを癒すキャンプでもって一晩を過ごすことになります。幸いにオブリビオンの存在は確認できていませんので、楽しんいただけたらと思います」
ナイアルテは再び頭を下げる。
はぐれ飛空艇という不可解な事件とオブリビオンが密接に関連していることは間違いない。
雲海に落ちれば消滅するしかないという状況の中、勇士達や『エイル』と共に戦うのは大空を自由に駆けるオブリビオンとの戦いにおいて非常に困難なものとなるだろう。
けれど、彼女は信じている。
勇士たちの逞しさを、そして猟兵たちの実力を。
「どうかお願いたします。皆さんの力を貸してください――」
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
大空の世界、ブルーアルカディアにおいて頻出する無人の『はぐれ飛空艇』の調査と、現れるオブリビオンの撃退、そしてわずかな時間であれど休息を得るシナリオとなります。
●第一章
冒険です。
皆さんは『勇士の飛空艇』に乗り込んだところか、もしくは直接転移することができます。
皆さんほどの実力があれば、必ず歓迎されます。
彼等と協力し『はぐれ飛空艇』の中に残留するであろうオブリビオンの残滓、そして不可解な『はぐれ飛空艇』が生まれる理由を探ることになります。
飛空艇の勇士たちや少年『エイル』との交流をしながらでも構いません。
●第二章
ボス戦です。
オブリビオンが皆さんを蹴撃してきます。
戦いの足場は勇士の飛空艇と『はぐれ飛空艇』が用意されていますが、それ以外は空を飛ぶ手段、乗り物などがないと雲海に落ちることになるので、それ相応の準備が必要となるでしょう。
また勇士達や『エイル』を抱く『セラフィムV』は猟兵ほどではありませんが、的確な指示と連携を行えば、なかなか役に立つでしょう。
●第三章
日常です。
戦いを終えた皆さんは、浮遊大陸に戻る中継点の浮島で一晩を過ごすことになります。
前章で倒したオブリビオンの肉を使って勇士たちが調理してくれたり、もしくは自分で調理したりして、一晩のキャンプを楽しみましょう。
もしよかったら、オリジナルの魔獣料理レシピを披露しても良いかもしれません。
それでは、ブルーアルカディアにおける魔獣と人々の生きるための戦いへと身を投じる皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『はぐれ船との遭遇』
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POW : はぐれ飛空艇内部を歩き回り、探索する
SPD : はぐれ飛空艇の周囲を警戒する
WIZ : はぐれ飛空艇の操縦室を調べてみる
イラスト:fossil
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
勇士の飛空艇は大型の飛空艇であった。
頻出する無人の『はぐれ飛空艇』を発見すれば、これを牽引しなければならないし、また青い鎧の巨人『セラフィムV』が乗ることのできる飛空艇は、おおよそこれだけであったからだ。
これだけ大型であれば、勇士の人数も必要になる。
どれだけ人手があっても足りないのだ。
それに『はぐれ飛空艇』は中型であっても、内部にどんなオブリビオンの残滓があるかわからない。
とすれば、やはり人手はって困るものではない。
猟兵達が搭乗を願い出でれば、二つ返事で了承されるだろう。
「見えたぞ、あれか。今回のは中型の飛空艇みたいだが……やはり、人がいないな」
無人の『はぐれ飛空艇』――どうしてこのようなことになったのか。
頻出しても、未だ全容を解明できていない。
「ま、だから、こっちも調査するってわけなんだが。アンカー頼む!」
『はぐれ飛空艇』に接舷する勇士の飛空艇。
次々に甲板上へと飛び込んでいく勇士達。オブリビオンと一体どのような関係があるのだろうか。
グリモア猟兵の予知では、さらに上空から襲い来る存在であるようだが……――。
鈴久名・紡
むすびも飛空艇に興味があるようだし
故郷も戦争が終わって落ち着いている事だし
同乗させて貰おう
なんて、色々言い訳を重ねたところで結局は
エイルとVの行く末が気掛かりなんだけれど
それは言う必要はあるまい?
判ってるんだよ?と言いたげなむすびの様子に
しーっと黙っておいてくれるように告げて
はぐれ飛空艇の探索に参加
むすびを肩に乗せて
聞き耳と偵察でゆっくりと一部屋ずつ丹念に調べていく
怪しい場所があるようなら距離を置いて
念動力で扉を開けるなどもしつつ探索
気になるものや不審なものがある場合は
近くの勇士や猟兵に声を掛けてから確認
単独での探索は出来るだけ避け
必要であれば結界術を施して対処
さて、何が出てくるのやら……
鈴久名・紡(境界・f27962)にとって大空の世界ブルーアルカディアは興味深い世界であるようだった。
彼の近くに寄り添う羽付き兎の幻獣『むすび』もまた飛空艇に興味を持っているようでもあった。それに故郷である世界の骸魂との戦いも終わって落ち着いている。
ならば、他世界を見て回るのも良いだろう。
そんなふうに彼は考えていたけれど、それは結局の所言い訳を重ねた程度のものでしかないことを彼に従う『むすび』は理解していた。
まるで『判ってるんだよ?』とばかりの表情に紡は人差し指を立てて沈黙を守る。
そういうのは黙っておくことが華である。
それに単純に照れくさいというのもあるのだ。
なぜなら、彼は『セラフィムV』と少年『エイル』の行く末が気がかりであるからだ。
別にそれを告げた所で、誰も咎めることはないだろうし、少年『エイル』は気にかけてくれたことをありがたくも思うだろう。
「それとこれとは別だ」
そんなふうに紡は、乗り込んだ勇士の飛空艇で出会った『エイル』に軽く手をふる。
『エイル』もまた何か紡の雰囲気を悟ったのだろう、わずかに笑顔で手を振り返す。
「さて、何が出てくるのやら……」
紡は接舷した『はぐれ飛空艇』へと飛び乗る。
特に争った痕はない……と言え、それは船員同士でという意味であろう。
『むすび』を肩に載せてゆっくりと船室の扉を開ける。
そこにあったのは、まるで天地がひっくり返ったような船室の有様であった。
あらゆるものが、上下を入れ替えたみたいにひっくり返されている。
ベッドや調度品、日常品などあらゆるものが、一回転してまた床に落ちたような……。
「ひっくり返されたような状態だな。甲板上には争った形跡がないとすれば、やはり外部から何者かの接触があったのか?」
乗り手の居ない『はぐれ飛空艇』は、ただこの空域に漂っていただけだ。
船体にも外傷があるかもしれない。
「すまないが、この部屋を頼む。おそらく、この飛空艇の船員たちの部屋であろうが……」
紡は近くにいた勇士に声を掛けて甲板上に上がっていく。
どこかに傷痕がないだろうか。
他の飛空艇との接触であれば船体が大きく傷が付いているはずだ。
けれど、そのような接触の痕はない。
「……飛空艇事態を傷つけるつもりはなく、けれど、船員たちは排除したかった……」
ならば、オブリビオンか魔獣の仕業以外には考えられない。
「甲板上が綺麗すぎる」
紡は気がつく。
そうなのだ。甲板上は接舷に必要なロープや、それに類するものが置かれているはずだ。
けれど、甲板上にそれらはまったく見受けられない。
あの部屋の惨状と合わせて考えるのならば、一回転させられ乗員たちは雲海に振り落とされてしまったのではないか。
そう考えるのが妥当であった。
「問題は、それを如何にして為した、か……」
紡は考える。己の推理は未だピースの揃わぬ状態。けれど、確実にこの飛空艇が『はぐれ飛空艇』になった原因へと近づいている。
未だ見えぬ魔獣、オブリビオンの気配。
されど、その時が刻一刻と近づいてきているのを紡は直感的に気がついていたのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
髪塚・鍬丸
調査探索は昔ちょっとかじった事があるんでね。任せてくれ。
忍び時代の技術知識を活かして船内を探索する。鍛え上げた【視力】を凝らし【情報収集】。僅かな違和感を見逃さない様に。
船とは言え、そもそもどうやって飛んでいるのかも知らない異文化だ。なるべく勇士やエイル君達と共に行動し、自分の知識にない事柄は質問して確かめていく。
自分一人なら多少危険な事態が起きても対処出来るが、同行者がいるなら庇うなり事前に危険を排除するなり気をつけよう。
船の機能や、乗員達の残した記録等からこの船の目的を探れるだろうか。無人化した理由が単なる不幸なのか何者かの意思なのか。
予知された襲撃まで時間がない。迅速に調査を進めよう。
謎の無人飛空艇、それが『はぐれ飛空艇』である。
この空域につい最近、頻出するようになった存在であり、船員たちは皆姿を消して、ほぼ無傷の飛空艇だけが空に浮かんでいる。
ブルーアルカディアの世界にあって雲海に沈むということは即ち消滅でである。
だからこそ、浮遊大陸と浮島を行き来するためには飛空艇や幻獣といった飛行を可能とする手段が必要なのだ。
「しかし、どうしたってこの『はぐれ飛空艇』は、こんなところを漂っていたんだ……?」
勇士たちは皆首をひねっている。
飛空艇だけで空を飛ぶことなど、ガレオノイドといった特殊な存在でなければないはずだ。
だからこそ、髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は任せておけと、その瞳をユーベルコードに輝かせるのだ。
「御下命如何にしても果たすべし」
忍の極意(シノビノゴクイ)たる能力、技量の全てが強化されていく。
集中しているからこそ成せる技である。
彼にとって忍び時代の技術知識の応用でしかないが、ことこのような調査をするにあたっては重宝されるものだ。
「ふむ……争った形跡はない。となれば、身内同士の諍いの末に、ということではないようだな」
船室はぐちゃぐちゃにひっくり返ってはいるが、これが争った痕、というにはあまりにも無根拠すぎるのだ。
さらに船内を勇士や『エイル』と共に探っていく。
「じゃあ、船員の人達はどうしていなくなったんだろう」
「さあな。しかし、この飛空艇が未だ空に浮かんでいるということは、少なくとも動力である天使核は未だ健在だということだ」
鍬丸は『エイル』や勇士たちと共に飛空艇の動力部へと向かう。
なにか危険が有れば、即座に庇えるようにと鍬丸は気を配っていたが、どうやら、この飛空艇の中に危険な存在はいないようである。
「何はともあれ、飛空艇だ。ならば、航空記録のようなものが残されているはず。この飛空艇の目的を探ることから始めるのもいいだろう」
鍬丸は共に動力室へと向かう。
扉を開ければ、そこにあったのは未だ動力を供給し続ける天使核があった。
「なにか、動力の推移を見られるパラメーターのようなものがあればいいんだが……」
「それならこっちだ」
勇士が鍬丸につげ、動力のメーターを示す。
それはどんな乗り物であれ、動力を吸い上げる量は常に一定ではないはずで、鍬丸は、動力が安定しない記録を探るのだ。
「……どうなっている。いや、違うな。これは、一度安定した後に、一瞬だけ不安定になっている」
けれど、今『はぐれ飛空艇』は現に安定して飛行し漂い続けている。
ならば、この一瞬だけ不安定になった時に何らかの事件、もしくは事故が起こったのだろう。
「機関が不安定になれば、安定させようとする機能が働く……しかし、これ以上の長いは無理だな」
無人化した理由が単なる不幸ではないことを鍬丸は理解する。
けれど、グリモアにより予知された襲撃まで時間はそう多くはない。
この『はぐれ飛空艇』よりも上空からの襲撃があったということは、船内に留まっていては、対応が遅れてしまう。ならば、鍬丸がすべきことは一つ。
「敵が来る……みんなにも伝えてくれ。敵は、やはり魔獣のたぐいだ」
己の直感を詳しく説明する時間はない。
危機が迫っているという事実のみで鍬丸は『エイル』や勇士たちを急がせるのだ。
誰一人として犠牲にはさせぬ。
その使命を全うするために鍬丸は甲板上へと飛び出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
オーガスト・メルト
ドラゴンのような魔獣か…さて、この世界の竜はどんな素材をくれるのかねぇ?
『うきゅー?』『うにゃー』
あぁ、分かってるさ、デイズ、ナイツ。
調査は真面目にやるし、油断もしない。
【SPD】連携・アドリブ歓迎
デイズ、ナイツ、UC【トライリンクモード】で索敵をしながら調査をするぞ。
些細な異常や魔力の残滓も見逃さないようにしないとな。
そして、グロームは船体の隙間などがあったら中へ入って調べてくれ。
『チチッ』
…まぁ、正直なところ、この船を見た時から嫌な予感はしているんだよな。
いつでも脱出できるように気は抜かないでおこうか。
勇士達の言葉によれば、『はぐれ飛空艇』が頻出するようになったタイミングでドラゴンのような魔獣の存在が確認されているのだという。
『はぐれ飛空艇』、無人の飛空艇が空に浮かぶ事件となにか関係が在るのかも知れない。
それ以上にオーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)にとって興味をそそられたのは……。
「ドラゴンのような魔獣か……さて、この世界の竜はどんな素材をくれるのかねぇ?」
彼は祖先の倒した竜の遺物を様々な武具に加工する技術を持つ猟兵である。
なればこそ、ブルーアルカディアという世界において人びとが魔獣を倒し、その血肉、爪牙でもって生活しているというのは、馴染むものであったことだろう。
『うきゅー?』
『うにゃー』
だが白と黒の饅頭と大福を足して二で割ったようなデイズ、とナイツの鳴き声にオーガストは頷く。
「あぁ、わかってるさ、デイズ、ナイツ。調査は真面目にやるし、油断もしない――だから、お前達の目と耳を借りるぞ」
その瞳がユーベルコードに輝く。
三竜一体の極意(トライリンクモード)。それは二匹の竜の感覚と同調することに寄って、『はぐれ飛空艇』の中を調査するのに役立つユーベルコードであった。
船内にはなにか残留物が残っているかも知れないとくまなく捜していく。
けれど、船内には何もみうけられない。
あるとすれば、天使核くらいなもので、それは動力として使われているのだから、異常らしいものは見つけられないのだ。
「動力は問題なく活きている……グローム、船体の隙間などがあったら中へ入って調べてくれ。
『チチッ』
手のひらサイズの蜘蛛竜たる『グローム』が船内に走っていく。
「船内に異常らしい魔力の残滓はなし。なら、外はどうだ?」
無人の飛空艇。
それはどう考えて不自然な存在だ。人が操らなければ飛空艇は空に飛び立つことはないし、人の操舵がなければ安定した高度まで上がることも出来ないだろう。
それこそガレオノイドのような特別な存在でないと無人で飛ぶなどありえないことだ。
けれど、この『はぐれ飛空艇』は違う。
確実に此処までは人の手に寄って飛んできたのだ。
「なら、外的な要因。『グローム』、外の装甲を見てきてくれ」
オーガストは内部ではなく外に目を向ける。
「……まあ、正直なところ、この船を見た時から嫌な予感はしているんだよな」
それは猟兵としての勘であったのかもしれない。
グリモアの予知が在ったからも在るが、どう考えてもt系の襲来を予見させる。
『グローム』が鳴く声が聞こえて意識を集中させる。
それは船体を掴んだような魔力の痕であった。
巨大な何かが、おもちゃの船をひっくり返すようにしたような痕が魔力の残滓として残っているのだ。
「やっぱりな!」
ドラゴンのような魔獣。
そして飛空艇は傷つけずに、船内の人間だけを如何なる手段にしてか排除した存在がいる。
ならば、それは『はぐれ飛空艇』と同様に空を飛ぶ存在である。
「本命か!」
いつでも脱出できるようにと気を抜かなかったオーガストは三匹の竜たちと共に外に飛び出す。
そして、見たのだ。
その巨大なる影を――。
大成功
🔵🔵🔵
アドナ・セファルワイド
少年、久しい…でもないか
そう言って帝国騎士達と転移してきてエイルに語りかけていくぞ
勇士達は楽にすると良い。今ははぐれ飛空艇を調査する勇士同士
何、余はなかなかに役に立つぞ
しかし、はぐれ飛空艇か…
余も浮遊大陸に座していた時に帝国騎士からそのような報告があったが…今回はオーデュボンとの関わりがあると見て良いな
そう心中で呟き、エイルや勇士たちに護衛をつけるよう帝国騎士を分配していき、調査していく
一回転させて船員を振り落とした、か。
そのような所業が可能なオブリビオンを調査するか
帝国総史書を用いて、オブリビオンの正体を特定してみるとするか
勇士の飛空艇が『はぐれ飛空艇』に接舷し、内部の調査を行い始めた頃、時を同じくして船内に転移してくる者たちがいた。
それは、アドナ・セファルワイド(セファルワイド初代にして最後の皇帝・f33942)と彼女に共するセファルワイド帝国騎士たちであった。
帝の名の元集え殺竜たる偉業を成す我が騎士達よ(ゲオルギウスナイト・ザ・セファルワイド)と謳われた騎士たちに囲まれたアドナがゆっくりと足を進める。
「少年、久しい……でもないか」
そんなふうに少年『エイル』に語りかけたアドナの姿に彼は驚きの声を発する。
どうして此処に、と思わないでもなかったが、彼女たち猟兵が次々と飛空艇に転移してくるということ事態が、この事件の大きさを物語っている。
「勇士たちは楽にするが良い。今は『はぐれ飛空艇』を調査する勇士同士。何、余はなかなかに役立つぞ」
「た、たしかにアンタほどの実力があるのなら、言うまでもないかもしれんが……」
しかし、それでも居並ぶ帝国騎士たちの姿は威圧感があるのだろう。
「それでも威圧感はすごい」
『エイル』の言う通りであった。
勇士たちとて魔獣と戦う勇気ある者たちである。しかし、個人で帝竜と渡り合える実力を持った帝国騎士たちを前に重圧を感じないわけがないのだ
「ふむ、確かに。だが、貴様たちの身を守るためでもある。彼等は護衛だと思えばよい」
そんなふうにアドナは言うけれど、どうしたって縮こまってしまうのは仕方のないことであった。
『はぐれ飛空艇』。
それはアドナも報告を受けていたようであった。この事件がどのようにして屍人帝国『オーデュボン』と関係しているのかは未だわからない。
けれど、アドナはこの事件もまた屍人帝国が関連しているのであろうと考えていた。
言葉に出せば、少年『エイル』は動揺するだろう。
何せ彼は『オーデュボン』より追われてきているのだ。その道程において浮島を三つ沈められている。
今回の事件もその前触れだと知れば、彼の心は傷つくかも知れない。
「……敢えて言うまいよ」
アドナは余計な重荷を少年に課す必要はないと判断し、調査していく。
その過程でどうやら『はぐれ飛空艇』は一回転させられているということが浮かび上がってきている。
船員たちの姿がないのも、飛空艇の外壁に魔力の痕跡が残っているのも、それらを可能とする巨大な魔獣……オブリビオンの存在があるからだ。
ならばこそ、アドナは帝国総史書を紐解けば、類似する事件もあるかもしれない。
彼女が詳らかにするのは、魔獣の正体である。
ドラゴンのような魔獣が目撃され、飛空艇そのものを傷つず、内部の者だけを抹殺する知能が在る存在。
それが今、この空域に存在しており、こちらを襲撃しようとしている。
「……なるほどな」
アドナは深く頷く。
この魔獣ならばあるいはと思ったのだろう。ドラゴンのような、飛空艇に関連した魔獣。
天使核の暴走に寄って存在を変異せしめた魔獣。
その存在を帝国総史書は明らかにするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
『エイル』さん、こないだぶり! 『セラフィム』さんも元気かな?
またややこしそうなことに巻き込まれてるみたいだね。
人の乗っていない『はぐれ飛空艇』とかかなり興味があるし、わたしも協力させてもらっていいかな。
『はぐれ飛空挺』に乗り込んだら【E.C.O.M.S】を発動させて調査するね。
550機全部……はさすがに渋滞しそうだから、5機編成の10部隊でいいかな。
【LVTP-X3rd-van】と情報リンクさせたら挺内に放って、隅々まで調査していこう。
オブリビオンの反応や、天使核の反応は最優先項目。
あと、挺長? 船長? や、船員さんのお部屋とかも要チェックだね。
日誌とか記録があったらげっとしておきたいな。
猟兵たちが次々と『はぐれ飛空艇』や勇士の飛空艇に転移してくる姿を見て、少年『エイル』はすでに、この事件が簡単なものではないことを悟っていた。
『はぐれ飛空艇』……その調査のついでにと、浮遊大陸を後にして『セラフィムV』が示す先へと向かおうとしていたのだ。
けれど、この事件に猟兵たちがやってくるというのならば、話は別だ。
「……まさか、本当に屍人帝国の……」
懸念が現実に変わる瞬間であった。
少年『エイル』にとって屍人帝国『オーデュボン』は己たちを追いたて、人びとを巻き込むことも厭わぬ存在である。
また自分たちの存在のせいで無辜の人びとが傷つくのではと彼は考えただろう。
しかし、そんな自責の念を振り払うように菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は明るい声で『エイル』に呼びかけるのだ。
「『エイル』さん、こないだぶり!『セラフィムV』さんも元気かな?」
またややこしそうなことに巻き込まれているみたいだね、と理緒は呼びかける。
そんな彼女の言葉に『エイル』は頭を振る。
「違うんです、きっと僕らのほうが彼等を巻き込んでいる」
「どっちでも変わらないよ。どっちにしたって、この事件を解決しなければならないんだから。わたしも協力させてもらっていいかな」
その言葉に『エイル』は頷く。
確かに今はまだ一人では何も解決できないだろう。けれど、理緒や他の猟兵たちが駆け付けてくれたことは、心強いのだ。
「それじゃ、作戦行動、開始」
理緒の瞳がユーベルコードに輝き、E.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)によって喚び出されたユニットたちが一気に『はぐれ飛空艇』の中を調査していく。
その数五百を超える。
十編隊でもって、理緒のコンバチーブルタイプのタブレットで操作し、情報を集めていく。
飛空艇のなかのあらゆる場所を探索し、違和感を探し出していくのだ。
データの中にあるのは、この『はぐれ飛空艇』が無人になってから、そう日が立っていないということだ。
一日、二日前にはまだこの飛空艇は『はぐれ飛空艇』ではなかったのだ。
飛空艇の中にある痕跡を探せばわかる。
突如として無人になってしまったからこそ、『はぐれ飛空艇』は無人のままに空に浮かんでいたのだ。
何かトラブルがあったのならば、争った痕もあるだろう。
「けれど、それがない」
「うん、だから妙なんだよね。オブリビオンの反応や天使核には異常はないみたいだし……船内には、何も異常がないっていうのなら」
それはなんらかのユーベルコードや力が使われたということではないのだろう。
「あ、艇長? 船長? この場合なんて言ったらいいのかな。そういうところには記録があるはずだよね」
「キャプテンでいいんじゃない?」
そんなふうに理緒と『エイル』はユニットたちがもたらすデータを見ていく。
どうやら一つのユニットが見つけたのは、『はぐれ飛空艇』の航空記録であったようだ。
やはり二日前には順調に飛んでいたようであるし、特に不審なものはない。
まるで突如として襲われ、船員たちが残らず船外に排除されたようである。天使核の動力が生み出した力の流れも同様であった。
「なら、やっぱり……これは魔獣の仕業。一回転させられた痕、魔力の痕が外装にあったっていうんなら……」
理緒は気がつく。
この飛空艇よりも巨大なオブリビオン、魔獣が関与している。
そして、魔獣が飛空艇を狙うというのならば。
「――接舷している勇士の飛空艇が」
「危ないっ!」
そう、今まさに魔獣に狙われるのは、接舷して無防備な『勇士の飛空艇』である。
そして、理緒は見たのだ。
遥か上空より飛来する巨大な影を――。
大成功
🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
連携OK
【SPD】
エイルとヴィーはまた会ったね、今回もよろしくね!
今回は船内調査だね、オッケー!
……魔獣の襲撃もあるって聞いたから、新発明の天使核反応電探作ってみたけど、うまく動くかな?フロヲトバイの紅路夢はいつでも動かせるように準備しておいて、ぼくも調査隊に加わろう!
でも、やっぱり天使核ってすごいね。
ぼくの世界の航空機なら、こんな事態になったらすぐに墜落しちゃうけど、ちゃんとこうして浮かんでられるんだもんね。
色々考えたんだけど、船が墜落するならともかく、船を放棄するってあるのかな?襲撃や嵐なら逃げる間もないかもしれないけど、天使核に何かあったのなら?船の天使核を調査してみようか?
猟兵たちが『はぐれ飛空艇』の船内を調査している過程で、国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)は船内に見知った顔があるのを見つけて、手を振って見せた。
「『エイル』と『V(ヴィー)』はまた会ったね、今回もよろしくね!」
そんなふうに明るく声をかける鈴鹿に『エイル』もまた硬かった笑顔を柔らかくして頭を下げる。
「猟兵のみんなが来てくれたこと、とても心強いよ」
彼の表情を見ればわかる。
どうやらこの事件もまた『オーデュボン』に関連しているようなのだ。ならばこそ、彼等を追いたてた屍人帝国の影は、彼の心に一際闇を落とすだろう。
けれど、鈴鹿は何も心配することはないというように、彼の肩を叩くのだ。
「船内調査だよね、任せておいてよ」
鈴鹿はグリモア猟兵の予知から魔獣の襲来があると伝え聞いていた。
だからこそ、新発明の天使核反応電探を、鈴鹿のテクノロジヰの粋を結集して作り上げてきたのだ。
これこそ、超高精度近未来観測機構・甲(コンナコトモアロウカト)である。
「うまく動くかな? フロフォトバイの準備もオッケー……と、でもやっぱり天使核ってすごいね」
鈴鹿は改めて飛空艇の内部を調査しながら舌を巻く。
彼女の居た世界であれば、航空機は、この『はぐれ飛空艇』と同じ事態になったのならば、即座に墜落してしまうものだ。
けれど、現にこの『はぐれ飛空艇』は無人と成った今でもなお、空に浮かんでいるのだ。
「やっぱり世界が変われば技術も変わる……」
そう、世俗も風習も変わるものである。
自分たちが居た世界とは異なる法則や、やり方でもって発展してきたのならば、それも当然である。
鈴鹿は考えるのだ。
飛空艇が墜落するならともかく、飛空艇を放棄することなどありえるのだろうか?
襲撃や嵐から逃げる間もないのかもしれないが、天使核に何か異常があったのかもしれない。
鈴鹿は天使核反応電探でもって船内をあちこち歩き回る。
けれど、未だ飛空艇を飛ばし続けている天使核の動力としての役割はつつがなく行われているようだ。
ならば、船員たちが残らずいないのはどういうことか。
「他の人達の調査の結果だと、飛空艇が一回、一回転させられている……ってことは、一回転させた何者かがいる……」
鈴鹿の持つ天使核反応電探がけたたましい音を立てて反応を見せる。
「……距離はまだ遠い……って違う、これ真上!?」
鈴鹿が空を見上げる。
そこにあったのは、豆粒のような影であった。一番早く気がつけたのは、彼女が電探を持っていたからであろう。
一瞬で彼女は理解したのだ。
あれが、この『はぐれ飛空艇』を、無人にせしめた存在であると。
船内に残留していた天使核のちからの残滓の固有波形が電探に映し出され、そしてそれが頭上より舞い降りる影とまったく同じであったのだ。
「あれが、事件の張本人! いや、張本魔獣?」
鈴鹿は見た。
巨大な翼を広げ、はぐれ飛空艇と勇士の飛空艇をあわせてもなお、足りぬほどの巨大な、魔獣の影を――。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・シノノメ
ふんふん、なるほどー無人で飛行してるはぐれ飛空艇かー。
不気味だねぇ、人間だけを狙って、飛空艇そのものには被害を与えないような器用なオブリビオンがいたりするのかな?もしくは神隠し?
エイルくんや勇士さんたちにも話を聞いて、職業柄なんか引っかかる部分がないか訊いてみるね。
じゃー早速内部を調査開始!散らかってるものとかあったら『怪力』でぽいぽいって感じで横に積み上げながら進んでいくよ!
やーそれにしても、飛空艇って色々未知の部分が多くってわくわくしちゃうね!……後で設計図とかもらえないかな?なんてね!
オブリビオンにつながる痕跡ないかどんどん確認、襲撃が来るっていうし、ある程度準備はしておかないと!
「ふんふん、なるほどー無人で飛行している『はぐれ飛空艇』かー」
不気味だねぇ、とキリカ・シノノメ(底無し在庫・f29373)はしきりに頷いていた。
大空の世界、ブルーアルカディアにおいて、空は一種の密室である。
だからこそ、飛空艇に船員が一人残らず存在していないというのはミステリーのようなものであった。
人間だけを狙って、飛空艇そのものに被害を与えないような器用なオブリビオン、もしくは魔獣が存在しているというのだ。
もしくは神隠しとでも言うべきか。
「けど、他の人達の話を聞く限りだと……」
そう、これまで転移してきた猟兵や少年『エイル』、勇士たちの話を聞く限りでは、どうやら飛空艇は一回転させられ、この『はぐれ飛空艇』に乗っていた船員たちが抵抗らしい抵抗もできずに振り落とされたであろうという荒唐無稽な事実ばかりが上がってくるのだ。
勇士たちにとっても、魔獣と戦った経験と照らし合わせてみても飛空艇を傷つけないようにする魔獣など聞いたことがないだろう。
「だって、魔獣は飛空艇を大事にする理由なんてないはずだから」
「だよね。人を襲いたいんなら、飛空艇もごと破壊するなりしてしまえばいいんだし」
そんなふうに勇士たちとキリカは意見を交わす。
魔獣の仕業だとしても不可解な行動だと癒えるのだろう。キリカは意見交換した後で船内を見て回る。
やはり一回転させられたというのは事実であった。
目の前には船内の調度品や荷物といったものが、散乱している。それはまさに天と地がひっくり返ったような有様であった。
「あーもー、本当にこれだけ散らかっていると掃除するのも大変だよー」
だが、キリカは力持ちである。
有り余る膂力でもって通路を塞ぐ障害物を押しのけ、ずんずんと奥に進んでいくのだ。
それを見た勇士達は驚愕しきりである。自分たちよりも線の細い少女が次々と自分の身の丈以上の障害物を取り除いていくのだから。
「あの人だけは絶対に怒らせないようにしよう」
「本当だな。いや、マジで。怒らせたら、俺たちなんてひとたまりもないぞ……」
そんなふうに勇士たちが戦々恐々しているとはつゆ知らず、キリカは次々と障害物を横に押し倒して船内の調査がしやすいようにと取り除いていくのだ。
「やーそれにしても、飛空艇って色々未知の部分が多くってわくわくしちゃうね!」
ブルーアルカディアの人びとにとっては、馴染みのものであろうが、他世界より渡ってきた猟兵である彼女にとってはそうではない。
空を飛ぶ舟。
その言葉だけで十分浪漫を感じられるというものである。後で設計図とかもらえないかな、と思ってしまうほどである。
「やっぱり船内にはオブリビオンにつながる痕跡はないみたいだね……なら、敵の襲撃ってやっぱりこのタイミングだよね!」
キリカは船内から甲板上へと飛び出す。
そこで見たのは、『はぐれ飛空艇』と勇士の飛空艇をあわせたよりも巨大な影であった。
翼を広げ、中型である『はぐれ飛空艇』すらも物ともしない尋常ならざる巨大さ。
「あれかー! でかい!」
キリカは改めてブルーアルカディアという世界が大空の世界であることを知り、そして、飛空艇が、天使核が未知なるものであることを再認識する。
そう、天使核とはあのような魔獣すらも生み出してしまうのかと、その威容を見て、彼女は迎撃の準備をしていたとは言え、口を広げて見上げてしまうのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
イングリット・ジルニトラ
はぐれ飛空艇…か。
まさか同族かもしれんな。
「もしも~し。返事してもらえない?」
…ふむ、間違われないように友軍マークを用意しておこう。
(注:船員いない幽霊船が本性なガレオノイド)
判定:SPD
飛空艇モードの装甲でもあるガレオンアーマーに乗って、はぐれのを外から観察してみるか。
(使用技能:空中浮遊、空中機動)
はぐれの外観や装備、などから色々考察してみる。
おや、これってひょっとして
一通り見終わったら、勇士たちの元へ戻り報告を行う。
この船の流されている航路に不自然なところがないか、本当に流されてるのか気になるな。あと装備から元の所属が分かるかもしれん。私は知らんがな(最近まで80年以上遭難してた飛空艇)
「『はぐれ飛空艇』……か。まさか同族かもしれんな」
そんなふうに思ったのは、イングリット・ジルニトラ(ガレオノイドの翔剣士・f33961)であった。
かつては、ジルニトラ級陸番艦イングリットと呼ばれていた飛空艇である。
そんな彼女は80年以上前に撃墜され、雲海に沈むギリギリのところに浮遊していた浮島に着陸して幽霊船へと姿を変えたガレオノイドである。
そんな彼女にとって『はぐれ飛空艇』とは、どこか己と似通った境遇を重ね、シンパシーを感じるには十分なものであった。
「もしも~し。返事してもらえない?」
彼女はだめ元で声を掛けてみるが、どうにも反応がない。
やはり、ガレオノイドではないようである。しかし、イングリットは船員が居ない幽霊船のガレオノイドである。
もしも、間違えられては元も子もないと飛空艇の装甲にも変形するガレオンアーマーに友軍マークを記し、勇士達と連携することに決めたのだ。
多くの猟兵達は『はぐれ飛空艇』の船内の調査をしている。
ならば、イングリットは外側から『はぐれ飛空艇』の様子を観察しようというのだ。
「ふむ……この『はぐれ飛空艇』の装備は私の知識にないな……」
比較的近年に製造された飛空艇であることだけはわかる。
何せ、イングリットは80年以上遭難していて、つい最近に猟兵として目覚めたのだから。逆に自分が知らない、ということはこれが雲海に沈んで再び浮かび上がってきた飛空艇ではないことを示している。
「装備も標準的なもの。中型。甲板上があまりにも殺風景なのは、何故だ?」
イングリットにとって甲板上は様々な魔獣に対する装備などが設置されるべきスペースであった。
けれど、『はぐれ飛空艇』には、それがまったくない。
貨物を載せて運ぶ飛空艇であった、と言われたらそれで終いであるが、その貨物すらも甲板上に乗っていないということは、あまりにも不自然だ。
「……振り落とされた、のか?」
そのとおりであった。
他の猟兵たちの調査では、巨大な何かが飛空艇を掴んで一回転させて、船員たちや甲板上のものを雲海に振り落としたのではないかと言う結論が出ていた。
ならば、それを可能とする存在が、未だこの空域に存在していることになる。
「それにこの飛空艇が流されている、というのまた気がかりだな。本当に流されているのか……それとも」
目的の場所まで流れていっているのか。
もしくは、この飛空艇事態が、釣りで言うところの浮きのような役割を果たしているのではないか。
接舷した勇士の飛空艇。
恐らく、『はぐれ飛空艇』を餌に新たなる獲物をおびき寄せようとする罠。
そして、この『はぐれ飛空艇』を無人にせしめた何者が、何処かで見ているのならば。
「――上か!」
イングリットは即座に見上げる。
はるか上空から急降下でもって落ちてくる……いや、巨大な翼を広げ、まるでイングリットを威嚇するように、それはイングリットへと攻撃を繰り出そうとしていた。
「あれか……! なるほどな。飛空艇を傷つけず、人間だけを排除しようとする。ならば、そのような姿であろうよ!」
イングリットは確信する。
目の前に落ちてくる巨大な影、それこそが、この事件の源であると――。
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「へぇ、これがこの世界の飛空艇ってやつなんだ。まだしっかり中を見たことがなかったから丁度良いや。」
所で、ここの中は煙草吸っても大丈夫なのかな?爆発とかしない?
うん、煙草を吸うのはそこらにいる勇士の人に聞いてからにしよう。
さて、どうしようかな?
んー、蝙蝠達に船内の小さい隙間とかも含めて、全てを偵察でもしてもらうかね。
「ということで蝙蝠達、なんか見つけたら教えてー。」
僕はゆっくり中を見て回っとくんで。
「はぐれの船自体が僕らを誘う餌っぽい気もするけど、まあ良いや。」
なんかそっちの方が楽しそうだし。
数多の世界を知る猟兵であったとしても、全てを知る者がいないように、新たなる世界ブルーアルカディアの世俗を全て知り得ているわけではない。
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)もまたその一人である。
見上げた勇士の飛空艇は彼にとって物珍しいものであった。
「へぇ、これがこの世界の飛空艇ってやつなんだ。まだしっかり中を見たことがなかったから丁度良いや」
天使核と呼ばれるオブリビオンの心臓を動力として空を飛ぶ舟。
それが飛空艇である。とあれば、やはり彼が気になるのは、火気厳禁であるかどうかだけである。
「ところで、ここの中は煙草吸っても大丈夫なのかな? 爆発とかしない?」
「甲板上なら問題はねえよ。流石に船内は遠慮してもらえると助かるぜ」
そんなふうに甲板上で莉亜と勇士は煙草の火を介したやりとでもって、コミュニケーションを得ていく。
こういう世界であっても煙草は良いものである。
他人と他人が同じ飛空艇に乗り込む時点で間のとり方とは大切なものだ。
「さて、どうしようかな?」
莉亜はわずかに伸びをして、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
眷属召喚【血狂い蝙蝠】(ケンゾクショウカン・チグルイコウモリ)によって召喚された小型の吸血蝙蝠たちが一斉に『はぐれ飛空艇』の船内を飛び回る。
小さな隙間をも逃さぬように一斉に翔び、『はぐれ飛空艇』にある違和感を探っていく。
「殆どは他の猟兵さんたちが見つけてくれたことと同じか」
蝙蝠たちから伝えられる情報に目新しいものはなかった。船体に傷はほとんどついてない。けれど、船内は飛空艇を一回転させたかのような有様であったし、天使核の動作も良好。
ならば、この惨状を引き起こしたオブリビオンの狙いはなんなのだろうか。
莉亜はゆっくりと船内を見て回る。
乱雑に積み上げられた荷物や調度品などは、飛空艇が一回転した時のものであり、それらを他の猟兵が片付けてくれたからこそ、大分見て回るのが楽になっていた。
しかし、それでも違和感が拭えないのだ。
喉にひっかかりを覚えている。
まるで人だけが飛空艇の遺物であるかのように振り落とされたような気さえする。
「敵さんの目的は飛空艇だけ……となれば、この『はぐれ飛空艇』事態が目的であり、同時に敵さんの……」
拭えなかった違和感。
そう、これ事態が自分たち猟兵をおびき寄せる餌なのではないだろうか。
となれば、自分たちは敵の術中に嵌っている。
しかし、莉亜は笑っていた。
だってそうだ。
「なんかそっちの方が楽しそうだしね」
不敵に笑っていた。
こんな状況であっても、オブリビオンが、敵が、如何なる策でもって自分を楽しませてくれるのかを想像してしまう。
甲板上で紫煙をくゆらせ、空を見上げる。
自分たちが今立っている『はぐれ飛空艇』の遥か頭上に影が見える。
「ああ、やっぱり」
これは自分たちをおびき寄せる撒き餌だ。
『はぐれ飛空艇』が頻出するという事件を受ければ、必ず人は飛空艇で持って出てくる。
敵の狙いはやはり飛空艇そのもの。
「それが何になるのかはわからないけど」
どちらにせよ、自分を楽しませてくれるのだろう、と莉亜は笑顔を向けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
『エイル』にひらひらと手を振って挨拶してから、はぐれ飛空艇に飛鉢法で移動しましょう。
あたしは黒鴉の式を大量に打って、鉄鉢を操りはぐれ飛空艇の全体をくまなく精査するわ。
アヤメは忍びの目で気になる箇所を見ていってちょうだい。
外部のどこかに新しい傷があれば手がかりになる。
先に調査した人から、この飛空艇が一回転したことが示唆されている。何故そんな挙動があったのか?
この飛空艇自体がオブリビオンになったわけじゃない。猟兵とオブリビオンは互いに一目で分かる。
この飛空艇に一般的な飛空艇と異なる特殊な部分は?
乗員を振り落として飛空艇だけ手に入れる意味。いや、誰かの手に入ったならはぐれとして飛んでいるわけがない。
無数の黒鴉の式神が『はぐれ飛空艇』の周囲を飛ぶ。
その光景は勇士たちと言えど、たじろぐものであったことだろう。大空の世界ブルーアルカディアにおいて、空を飛ぶ動物は珍しいものではなかったが、こんなにも群れ為して行動するものは珍しかったのではないだろうか。
「あれは……!」
少年『エイル』はまだ冷静であった。
彼の視線の先には、鉄鉢に乗って飛翔する村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)の姿があった。
彼女はひらりと手を振って挨拶をするようにしてから、操作する黒鴉の式神たちの瞳から『はぐれ飛空艇』の全容をくまなく精査していく。
「急急如律令! 我が愛しき虜よ、主命に応え姿を現せ! ――アヤメ、忍びの目から見て気になるところを言ってちょうだいね」
「かしこまりました……とは言え、飛空艇というものを見るのも初めてなんですが……船員が全員いなくなっているっていうのに、こんなにも船体が無事なのはどういうことなのでしょうね」
ユーベルコードに寄って召喚された式神のアヤメが訝しむ。
この大空の世界であれば、魔獣であれ、他の飛空艇を駆るオブリビオンであれ、多少なりと飛空艇同士に争った傷痕が生まれるはずだ。
それ以前にオブリビオンであるというのならば、飛空艇そのものを雲海に沈めてしまえばいいのだ。
それだけこの世界では消滅につながる。
「ある意味回りくどいことしているって感じがしますね」
アヤメの言葉も尤もである。
「先に調査した人から、この飛空艇が一回転したことが示唆されてる。何故そんな挙動があったのか?」
ゆかりは考える。
この飛空艇自体がオブリビオンになったわけじゃない。
猟兵である自分たちであれば、仮に『はぐれ飛空艇』がオブリビオンになっているのならば、ひと目でわかるはずだ。
けれど、目の前の『はぐれ飛空艇』はまさしくただの飛空艇にすぎない。
ならば、この飛空艇と一般的な飛空艇と異なる特殊な部分があるというのだろうか?
「でも、それもないってことは……」
勇士の飛空艇と比べて見ても、特に目立つ部分はない。
船員だけを振り落として、飛空艇だけを手に入れる意味を考える。いや、そうではない。
「誰かの手に入ったなら、はぐれとして飛んでいるわけがない」
ゆかりは気がつく。
これは疑似餌のようなものだ。
自分たちという存在をおびき寄せるための撒き餌。この『はぐれ飛空艇』は釣りで言えば、浮きのようなものだ。
この『はぐれ飛空艇』に接触した存在を感知して、再び飛空艇を無人にしてしまう何者か仕掛けた罠。
「なら、次に来るのは上ですよ!」
アヤメが叫んだ瞬間、ゆかりは見た。
遥か頭上より来襲する巨大な翼を広げた影を――。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
(無人の飛空艇の甲板で辺りを見回しながら)
乗員はどこに行ったのでしょうか?
この世界において飛空艇は簡単に乗り捨てられるほど価値の低い代物ではないことは
この世界に初めてきた私でもわかります。
何かが起きようとしているのは間違いありません
対処するためにも何があったのか、もしくは何が起きるのか
情報を早急に集めなくてはいけません・・・
(目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすと{絢爛の旋律}で『ダンス』を始める)
このリズムは蒼天に輝く太陽のリズム
隠れた真実さえ陽光によって白日の下に晒されることでしょう
(UC【蠱の一念】を発動し、踊るのを止めた後ゆっくりと目を開く)
さぁ調査開始です
無人のままブルーアルカディアの空を飛ぶ『はぐれ飛空艇』の甲板上に降り立った播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)は、軽く周辺を見回す。
「乗員たちはどこに行ったのでしょうか?」
彼女はもうすでにブルーアルカディアという世界において飛空艇は簡単に乗り捨てることができるほど価値の低い代物ではないことを理解している。
雲海に沈めば消滅し、過去に成り果てる。
だからこそ、この世界の人びとにとって空を飛ぶ手段は生きる上では切っても切り離せない事柄である。
それなのに、この『はぐれ飛空艇』には誰ひとりとして乗員が残っていないのだ。
「この世界に初めて来た私でもわかります。何かが起きようとしているのは、間違いありません」
クロリアはそれゆえに早急に情報を集め、来襲するであろう敵に対して方策を講じなければならないと考えていた。
瞳を閉じる。
ゆっくりと手を真横にピンと伸ばすと、本能の赴くままに想いを込めて、蒼天に輝く太陽と陽光に照らされて輝く大地を表現した栄華のリズムを刻み込むダンスを踊り始める。
彼女のダンスは勇士たちにとっては物珍しいものであったことだろう。
それこそが彼女のユーベルコードであり、蠱の一念(コノイチネン)であることを理解できたのは猟兵達だけであったことだろう。
「隠された真実さえ、陽光に寄って白日の下に晒されることでしょう」
輝くユーベルコードと、刻み込まれるリズムは彼女の瞳に宿るのだ。
それはあらゆる推理を含めた彼女の行い全ての成功率を上げることと同義であった。
「船体が一回転させられている。天使核は無事。この『はぐれ飛空艇』自体が罠である可能性が高い……」
クロリアは考える。
自然と湧き上がってくるものがある。それこそが、彼女のダンスによって得られた力であろう。
陽光はあらゆるものを白日の下にさらけ出させるというのならば、クロリアの瞳にはかつて在ったであろう光景が再現されていくようであった。
巨大な魔獣。
翼を持って飛来する存在。
この『はぐれ飛空艇』もまた別の『はぐれ飛空艇』を見つけ、調査に乗り出した矢先に、襲われたのだ。
「この『はぐれ飛空艇』自体が撒き餌。浮き。敵、魔獣が私達の乗ってきた飛空艇を新たな『はぐれ飛空艇』にするための方策……知能ではない。知識でもない」
これは本能的な行動なのだ。
飛空艇を使った狩りそのもの。
今や自分たちは魔獣に狩られる存在になったのだ。この『はぐれ飛空艇』に乗り込んだ瞬間から……。
「敵はこちらを見ている」
気が付かれたと思った瞬間には飛び出しているはずだ。
「やはり、そういうことですか」
見上げた先にあったのは巨大な翼を広げた魔獣の影であった。
二つの中型の飛空艇をつなぎ合わせても全長に至らぬであろうほどに巨大な魔獣。
その姿をクロリアは陽光の下に引きずり出し、そして、これより行われる空戦が熾烈を極めるものになるだろうことを予感するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
レティシア・ルステミス
主無きはぐれ飛空艇
『何か』がなければこんな有り様ではなかったでしょうに
『エイル』くんだっけ?
初めまして、わたしはレティシア
本名はレティシア・シフィ・ルステミスっていうの、よろしくね
『エイル』くんが今無事でいることに感謝するよ
さてさて、はぐれ飛空艇の調査だね
これの出番かな?
わたしのD.Dはペンデュラム
ペンデュラムで重要な手がかりを探してみるね
内部を注意深く観察しながら思考を重ねてみる
これまでに判明した情報と同行者の考察と照らし合わせてみよう
答えの出ない謎はきっと無いよ
……肌がピリッとする
風の魔力を宿す靴と風を操る指揮杖をスタンバイ
臨戦体勢を整えておこうね
飛空艇は人が乗ってこそである。
大空の世界ブルーアルカディアにおいて、空を飛ぶという行いは当たり前のことである。
何せ、人びとが暮らす浮遊大陸でさえ天使核による動力でもって雲海よりも上に浮かんでいるのだ。
雲海に沈めば、あらゆるものが消滅する。
それは避けようのない現実である。だからこそ、勇士たちは強大な天使核や魔獣の血肉を求めて飛空艇を駆って、オブリビオンに立ち向かうのだ。
勇気だけではない打算と欲望があるのだとしても、この世界にあっては、それがなければ生きて行くことさえままならぬのだ。
主なき『はぐれ飛空艇』の中に転移してきたレティシア・ルステミス(天空の魔術師・f34080)は哀愁漂う表情で周囲を見回す。
調度品や荷物の類は散乱しており、『何か』が起こったことを明白にしていた。
「『何か』がなければこんな有様ではなかったことでしょうに」
それを惜しむ気持ちがある。
けれど、どんなに惜しんだ所で時は逆巻くことはない。ならば、今此処に存在している生命が取り返しのつかぬことになっていないのが彼女にとっての幸いであったことだろう。
突如として『はぐれ飛空艇』の船内に現れたレティシアの姿に、少年『エイル』は驚くことはなかった。
すでに多くの猟兵たちが転移してきているし、彼自身も猟兵という存在に救われている。だからこそ、戸惑うことは一瞬であっても、彼女が敵ではないことをりかいしているのだ。
「『エイル』くんだっけ? はじめまして、わたしはレティシア。本名はレティシア・シフィ・ルステミスっていうの、よろしくね。『エイル』くんが今無事でいることに感謝するよ」
そういってレティシアは『エイル』に微笑む。
「ありがとう、レティシア。見ての通り、今は『はぐれ飛空艇』の中だけれど……調査がまだ終わってないんだ」
完全とは言い難い調査の状況。
けれど刻一刻と敵の存在が近づいている。グリモアの予知によって、敵が襲来することは理解しているが、それが如何なる存在であるかを未だ猟兵知り得ていないのだ。
「これの出番かな? わたしのディバイン・デバイスはペンデュラム。揺れる振り子が示すものが重要な手がかりであるはずなんだ」
レティシアは集中する。
これまで判明した情報は多い。
『はぐれ飛空艇』は一日、もしくは二日以内で、『はぐれ飛空艇』となった。
それはこの空域に頻出する『はぐれ飛空艇』の頻度と一致するであろう。
飛空艇自体に傷はほとんどなく、船員ないし、甲板上の積荷や装備のみが消失している。
「……答えの出ない謎はきっとないよ」
「猟兵さんが言うには、この飛空艇は一回転させられているって……」
『エイル』の言葉にレティシアは頷く。
巨大な何か。
この中型の飛空艇である『はぐれ飛空艇』でさえも用意に一回転させるだけの巨大な何かが存在しているのだ。
「大きな飛空艇クラスの何かなんだろうけれど……やはり魔獣。それも人をおびき寄せるための方策を実行できるだけの知能を持った存在がいると考えたほうがいいね」
そう告げたレティシアの持つペンデュラムがしびれるように揺れ始める。
「――……ッ! 肌がピリッとする」
レティシアの履いた風の魔力を宿す靴と、風を操る指揮杖が力を発露する。
すでにレティシアは臨戦態勢である。
ペンデュラムの動きを見ればわかる。すぐそこに脅威が迫っていることを。
「みんな、甲板上に出た方がいい。狙いは――」
『はぐれ飛空艇』から飛び出したレティシアが見たのは、勇士の飛空艇であった。
敵はきっと『はぐれ飛空艇』を撒き餌にして、勇士の飛空艇を狙っているのだ。これまでの『はぐれ飛空艇』が生まれたのもまた同じ方法だったのだろう。
見上げた先は遥か上空。
巨大な影が、蒼天を覆い隠した――。
大成功
🔵🔵🔵
クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎
WIZ
乗組員は誰もおらへんのに
でもまだ動く船……
んんん、ホラーはごめん被るんで
エイル君や勇士達、他の猟兵と一緒に行動
情報・意見交換
情報収集で残された内部記録を収集、分析
航海記録や航路、母港や乗組員員、積み荷、装備、航行目的等々も
それらを相互比較し矛盾が出ないかも確認
座席の裏とか照明の周りも細かく見てみる
怪しい箇所があれば結界術・オーラ防御で対処も
ん?オブリビオン自体がある意味ホラー?
でもあれは、どつくことできるやん?
無人の飛空艇が空に浮かぶ。
周りは雲海だけが広がる空中密室。本来であれば人の手を借りねば空に浮かぶこともできぬはずの飛空艇が、如何にして無人へと成り果てたのか。
ある意味でそれはブルーアルカディアにおける怪談話のようなものであったのかもしれない。
「乗組員は誰もおらへんのに、でもまだ動く船……んんん、ホラーはごめん被るんで」
クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)は珍しく調査には乗り気ではなかった。
確かに彼女の言う通りである。
言わば、これは怪談話じみた事件であるからだ。
けれど、オブリビオンがそこに絡んでいるのならば、猟兵として調査しないわけにはいかず。
板挟みのような状態に陥った彼女は、少年『エイル』や勇士たちと共に常に行動していた。
「内部記録なんか、どんなもんがあるん?」
「天使核の動力の流れであるとか、航路とか……そういうのもあるみたい」
『エイル』と勇士たちが話し合っている状況でクルルは恐る恐るというふうに情報を交換していく。
「積荷だとか装備、航行目的なんかわからへんの? この『はぐれ飛空艇』の取ったルートや本来の目的なものとズレてたり……」
クルルの言葉に勇士たちが記録を遡っていく。
どうやら『アジール王国』と周辺に浮かぶ浮島をつなぐ定期便的な飛空艇であったようだ。
航路自体は、外れてはいないが積荷や装備が甲板上に設置されていたこともあって、ほとんどが失われているようであった。
「他の猟兵さんたちが調査した感じやと、飛空艇が一回転點せられているって話やったけど……そんなら」
クルルは座席の裏や照明の周りを細かく見ていく。
特に変わったものがないが、やはり照明の殆どが割れている。飛空艇が一度一回転した時にほとんどが割れて壊れてしまっているのだろう。
「こういう時に灯りがないっていうのは、ホラーでは定番やんな……」
クルルは未だにホラー話めいた事件に首を突っ込んだことを少し後悔しているようであった。
『エイル』はその様子に猟兵でも怖いものがあったりするんだな、と感じていたし、そういう弱さを持っているのもまた然りであろうと理解していた。
「でも、オブリビオン自体もある意味ホラーだよね」
「でもあれは、どつくことができるやん?」
え、と互いの認識の齟齬に二人は顔を見合わせる。
確かにそうだけれど、それはそれでどうなのかと『エイル』は思ったが、口をつぐんだ。
クルルの顔がもう色々限界であったからだ。
下手にこじらせてしまうよりも、オブリビオンに対処する胆力のようなものがあるのならば、そのままにしておいた方が良さそうであった。
「実体があるのなら、どつけば解決や。それがオブリビオン事件ってもんなんやから」
しゅっしゅ、と拳が空を切る。
どれだけ手強い相手でも殴れば倒せるというのであれば、猟兵に出会ったのがオブリビオンの運の尽きであろう。
クルルは至極真面目であったけれど、勇士たちの間に流れる空気だけは今たしかに良いものへと変わっていったのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
飛空艇に直接転移。勇士たちやエイル君に挨拶して同道。
エイルには「よお、また会ったな。ハハ、俺達が来たってことはこの後、碌でもねーことが起こるってことだ。でも、結果的には何とかなるってことでもある。まあ、気楽にな」といった感じに気安く話しかけた後にはぐれ飛空艇の調査に。
無人の船か。何かそんな都市伝説なかったっけ。しかし、調査系のノウハウはねーんだよな。
基本的にあるがままに見て、違和感を感じたことに関して思考を深めるスタンス。ある程度、時間が過ぎたら「そろそろかな」と甲板に出てオブリビオンを迎え撃つ態勢に入ります。
アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は『はぐれ飛空艇』へと直接転移した猟兵であった。
調査するためのノウハウを持たぬ身としては直感に頼らざるを得ないがゆえに、事細かい段階を踏むよりも己の目で見て、耳で聞いた方が良いと判断したのだろう。
そして再びの邂逅を果たした少年『エイル』にアレクサンドルは朗らかに笑っていうのだ。
「よお、また会ったな。ハハ、俺達が来たってことはこの後、碌でもねーことが起こるってことだ」
すまんな、とアレクサンドルがまた笑うものだから、『エイル』は苦笑いを浮かべるのでやっとであった。
「あなた達が来てくれたということは、確かにろくでもないことが起こるのかも知れないけれど、きっとなんとかなるってことでしょう?」
だから、何も心配していないし、厄介に思うこともないのだと彼は言う。
それに、猟兵たちが来たからこそ失われぬ生命だって在るのだと彼は理解していたのだ。
「けれど、それにおんぶに抱っこされているばかりではないよ」
自分たちには二本の足と腕があるのだ。
確かに猟兵の力は素晴らしいものだ。けれど、それを頼りにしてばかりもいられないと彼は幼いながらに直感しているのだ。
「まあ、気楽にな」
肩の力が入りすぎているとアレクサンドルは感じたのだろう。
彼の肩を優しく叩いて、『はぐれ飛空艇』の船内へと歩いていく。
これから彼の道程が如何なるものになるのだとしても、なんとかなると思える程度の力があればいい。
どうしようもなければ、それこそ。
「俺達の出番てわけだ」
船内を見て回ったアレクサンドルは確信する。
自分では、船内の異常や違和感を感じと取れないと。
あるがままに見た上では他の猟兵達以上の情報を得ることはできないだろう。だからこそ、野生の勘とでも言うべき直感に従って甲板上に上がるのだ。
「グリモアの予知があるっていうなら、当然来るよな」
見上げる先には青空しかない。
雲海は真下に。
そして、敵が襲撃してくるのならば、この『はぐれ飛空艇』よりも遥か上空からであろう。
アレクサンドルは理解していたのだ。
「これが別の飛空艇をおびき寄せるための方策だってんなら、調査に時間を取られて船内にいるであろう勇士たちを一網打尽に……それこそ、体勢が整わぬうちに叩くのが面倒がなくっていい……」
ならば、このタイミングだ。
他の猟兵たちだって気がついているだろう。
調査の結果であったり、己の直感であったり。その感じ方は様々であったとしても、共通していることがある。
見上げた先にある黒い影。
「この距離でもあの大きさってことは……」
アレクサンドルの顔に笑みが浮かぶ。
不敵な笑み。強大なる存在がこちらに敵意を向けていることを知るからこそ、笑ってしまうのだ。
「そろそろだろうよ」
その鋭き眼光が黄金に輝く。
もうわかっているのだ。どうしたって戦わねばならぬことを。その巨大な翼を広げた存在を睨めつけ、アレクサンドルは獰猛な笑みを浮かべるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
西院鬼・織久
海には歌声で人を惑わし船乗りを喰らう怪物がいるとか
空にも似たような話があるでしょうか
先ずは勇士の方々に情報集を兼ねて接触します
【行動】POW
勇士と接触しはぐれ飛空艇に同行したい旨を告げ、はぐれ飛空艇について判明している話を聞く
可能なら飛空艇と似た型の飛空艇の情報を仕入れ探索ルートを組む
また勇士の間や付近の空域でよく話に上る魔物等の情報を集め、この世界と勇士の間で交わされる情報を蓄積
はぐれ飛空艇内部で五感と第六感+野生の勘を働かせ、呪詛+殺意に馴染みが強く勘も働く事を利用し戦闘や血が流れた気配などないか辿る
人が入れない場所や裏から鍵がかかっている場所は影面を潜り込ませ、鍵や壁などを切断して探索
無人の飛空艇『はぐれ飛空艇』……それは他世界であっても似たような事例があることを西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は知っている。
「例えば、海には歌声で人を惑わし船乗りを喰らう怪物がいるとか」
ならば、空にも似たような話があるのだろうと、彼は考えていた。
この雲海が広がる世界、ブルーアルカディアにおいて海は存在しない。あるのはどこまでも続くかわからぬ雲と青空を浮遊大陸が分かつ光景だけである
「どうかご同行を許可していただきたい」
「そんなかしこまらなくたって大丈夫だよ。飛空艇には、魔獣を狩ろうって奴を拒否することはない。宛にしているぜ」
そんなふうに勇士たちは織久を迎え入れてくれる。
この世界にあって勇士とは全てが正義のために働く者ではない。私利私欲のためであれ、魔獣を狩ろうとするのであれば、等しく勇士と呼ばれる。
浮遊大陸という限られた立地では、生産性が乏しいのだ。
だからこそ、魔獣の血肉や骨牙といったものが貴重な物資となるのだ。希望たる存在と呼ぶに相応しいだろう。
「『はぐれ飛空艇』についてなにか今のところわかっていることはあるのですか」
織久はできるだけ情報を集めようと勇士に声をかける。
だが、どれもが判然としないものばかりであった。頻出する『はぐれ飛空艇』は、ほとんどが他の浮島との定期的なやり取りをするものばかりである。
今まさに接舷している『はぐれ飛空艇』だって、その一つなのだという。
「勇士の皆さんの間で話題にあがる魔獣の情報などはありませんか。最近、目当てにしている魔獣などは……」
「ああ、それならあれだよ。やっぱりドラゴンのような魔獣ってやつだな。大型の飛空艇よりも全長がデカイって話だ。そんなのを狩れた日には、どんな浮遊大陸だってお祭り騒ぎだろうよ」
それだけ実入りの良い魔獣であることは伺える。
しかし、それが今回の事件を起こしている魔獣なのか、もしくはそれに類する存在なのかを未だ勇士たちはつかめていないのだ。
「……ドラゴンのような魔獣。そして、『はぐれ飛空艇』……それほど強大な魔獣であれば、一息に飛空艇を破壊するほうが速い……」
だというのに、それをしないというのは些か不可解だ。
いや、その不可解な部分にこそ、事件の真相があるのかもしれない。織久は『はぐれ飛空艇』の船内で己が親しんだ呪詛や殺意がどこかに残留していないかを調べ始める。
船員同士が争ったのであれば、そのたぐいの感情にまみれていることだろう。
けれど、それがない。
となれば、外部からの接触や何らかの方法で船員たちが飛空艇の外に放り出されたと思うべきだろう。
「血の流れた痕がない……別段船内に何かを隠しているわけでもない……」
ならば、やはり獣の仕業であると直感する。
船体に極力傷をつけぬようにとした知能をわずかに織久は感じる。船内にいる人間だけを排除し、『はぐれ飛空艇』として、次なる犠牲者たちをおびき寄せる方策。
それを織久は直感的に理解する。
知能あれど、それは悪辣なる手段。
「ならば、この探索の時間こそがオブリビオンの術策のうち……」
織久は甲板上に駆け上がっていく。
そこに見たのは、巨大な翼を広げる影。
二つの中型飛空艇を合わせてもなお有り余る全長を誇る、その獣の姿を見て、織久はその胸に殺意と怨念を燃え上がらせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルビィ・フォルティス
POW
ごきげんよう。ご縁がありますわね。
エイルたちにぺこりと優雅に挨拶し探索を始める
ここでは魔獣を狩って生きるのは当然のことなのですけれど、それも記憶にないというのは……もしかしたらエイル様たちはもっと遠いところからいらしたのかもしれませんわね。
船内を探索、難しい顔で目に映るものを手に取ってはひとしきり調べてその場に戻すを繰り返す
こういうのは専門外でしてよ。実家のお兄様を連れてくるべきですわ。
お兄様は剣はまるでお話になりませんけれど、調べ物は得意ですのよ。
船から何かを奪うのに船員が邪魔だったにしてはこの船がこのままな理由がわかりませんわ。
もしかして襲撃者の目的は船ではなく船員の方ですの……?
一度邂逅した者は縁がつながるものである。
それは猟兵達であっても変わらぬことであり、大空の世界ブルーアルカディアにおいて縁結んだルビィ・フォルティス(空の国の家出娘・f33967)と少年『エイル』もまた同様であったことだろう。
あ、と少年『エイル』の瞳が煌めくのを彼女は見た。
知り合いを見つけて、駆け寄ってくるようなそんな子犬めいた仕草は未だ歳の頃10になったばかり少年らしいものであったことだろう。
「ごきげんよう。ご縁がありますわね」
ルビィはぺこりと優雅な一礼をしてみせて、互いの健在を喜んだ。
『はぐれ飛空艇』の中を探索するのは、そう難しいことではなかった。
「それでもすごいことだよね。魔獣を狩るって大変だ」
少年『エイル』は、どことなく他人事のように言う。
彼がもしも、この世界で生まれ育ったのならば、何故魔獣を狩るのかという疑問すら抱くことはなかったことだろう。
「ここでは魔獣を狩って生きるのは当然のことなのですけれど、それも記憶にないというのは……」
ルビィは考える。
少年『エイル』は記憶を失っている。
けれど、こうして言葉は通じるし、一般的な常識はあるようだ。
なのに、ブルーアルカディアという世界において人びとの生活の根幹に関わる魔獣を狩るという行為に対する造詣は心もとないものであった。
「もしかしたら『エイル』様たちはもっと遠いところからいらしたのかもしれませんわね」
その言葉を『エイル』は理解できていないようであった。
数多の世界を知る猟兵であればこそ、その可能性に至ることもあったのだろう。
「ふむ……それにしても、こういうのは専門外でしちえよ。実家のお兄様を連れてくるべきでしたわ」
ルビィは散乱した『はぐれ飛空艇』の船内を見て回り、目に映るものを片っ端から手にとって難しい顔をして下に戻す、ということを繰り返していた。
自分ではこういうものは得意ではないという自覚がある。
けれど、彼女の兄ならば違うのだ。
剣の腕前はまるで話にならないが、こういう調べ物は得意であったのだ。
こういう時に傍に居ないというのは、歯がゆいものがある。
けれど、一つ彼女にも気がつくことが在る。
もしも、この飛空艇を襲うにあたって襲撃者が何を必要としていたのかだ。
何かを奪うのに船員が邪魔だったにしては、この飛空艇がそのままな理由がわからない。
「もしかして襲撃者の目的は飛空艇ではなく船員の方ですの……?」
そう、頻出する『はぐれ飛空艇』。
もれなくほぼ無傷の飛空艇が空に浮かんでいるという。なのに、船員は誰も戻らない。
ならば、この襲撃者の目的は、確かに飛空艇を傷つけることを厭いながら、船員たちを雲海に沈める。もしくは……。
「船員だけを雲海に放り出すことを目的としていた……飛空艇は、ただの囮?」
ルビィは駆け出す。
甲板上に飛び出せば、そこは青空を陰るほどの巨大な翼を広げた影が落ちる。それは中型の飛空艇を合わせてもなお有り余るほどの巨大な影。
「あれが――!」
そう、ルビィが見た巨大な影こそが、この事件の襲撃者。
『はぐれ飛空艇』を餌に新たなる犠牲者を呼び寄せる悪辣なる手段を持ったオブリビオンなのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
『勇士の飛空艇』に乗り込んで目的地の『はぐれ飛空艇』まで行くぜ。
目的地に到着するまでエイルの坊主と話でもするか。
よう、久しぶりってほどでもないが元気してたか?
そうだ、お前さんが気に入った『おはぎ』をまた持ってきてやったぜ。
「・・・この仕事が終わったら皆で食べましょう。」
「・・・式、召喚【捜し鼠】」
『はぐれ飛空艇』の中に式神を放ってオブリビオンの残滓を見つけ出すぜ。
さらに第六感を研ぎ澄まして怪しい所を見つけて中を調査だ。
『はぐれ飛空艇』、随分と不可思議な場所だぜ。
【技能・式神使い、第六感】
【アドリブ歓迎】
勇士の飛空艇が空を飛ぶ。
雲海を真下に見下ろす光景は、大空の世界ブルーアルカディアにおいては日常の光景である。
しかし、一度雲海に沈めば、消滅してしまう死と隣合わせの世界でもあるのだ。
そんな世界にあって飛空艇に乗り込み、魔獣を狩る勇士たちは、希望の象徴として存在している。
「魔獣を狩るのならば、遠慮はいらねえ。あんたらほどの実力者ならば、いつだって歓迎するぜ」
勇士の飛空艇は、猟兵たちほどの実力があるのならば、拒むことなどない。むしろ、大歓迎なのだ。
鬼面のヒーローマスク、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は勇士たちの歓迎ムードにカタカタ愉快そうに面を鳴らしながら、先立っての戦いで知り合った少年『エイル』の姿を見つける。
『よう、久しぶりってほどでもないが、元気してたか?』
「ああっ! あの時の……本当、久しぶりってほどじゃないね。それでも会えて嬉しいよ」
そんなふうに『エイル』が駆け寄ってくる。
未だ『はぐれ飛空艇』が頻出する空域ではないが、道すがらこうやって話をするのもよいだろうと考えたのだ。
『そうだ、お前さんが気に入った、おはぎをまた持ってきてやったぜ』
「……この仕事が終わったらみんなで食べましょう」
相棒である桜がまた『おはぎ』を作ってきてくれたことに『エイル』は少年らしい笑顔を浮かべて、ぴょんと飛び跳ねた。
以前彼に振る舞った『おはぎ』が彼の中では一番好物と呼ぶものになったのは、彼女たちにとっても喜ばしいことであった。
「ありがとう、でもとても嫌な予感がするんだ……気をつけてね」
『エイル』もまた戦いの予感を感じているのだろう。
ゆっくりと『はぐれ飛空艇』に勇士の飛空艇が接舷し、凶津と桜が甲板上に飛び乗っていく。
「……式、召喚【捜し鼠】(シキガミ・サガシネズミ)」
桜の放った式神の鼠たちが一斉に船内に走っていく。
それは船内にあるかもしれないオブリビオンの残留物を捜して駆け回っていく。
『はぐれ飛空艇、随分と不可思議な場所だぜ』
凶津も桜も、ブルーアルカディアの世界に慣れてきてはいるものの、未だ知らぬ事が多い世界である。
天使核と呼ばれるオブリビオンの心臓を動力とする技術。
それなくば大地は雲海に沈み、全て消滅してしまう。雲海に沈んだものは、再び浮かび上がってきた時、オブリビオンとなって現れるのだ。
そうして戦火が広がり、戦いに明け暮れることによってオブリビオンは世界を滅ぼそうとしているのだ。
「……船内にオブリビオンが入り込んだ形跡ははない……」
桜は式神の鼠たちから受けた情報を統合してそう判断する。
やはり他の猟兵たちが得た情報の通り、外的な要因によって船員たちは船外へと放り出されてしまったのだろう。
だとすれば、それを可能にしたのは強大な存在。
この『はぐれ飛空艇』は中型の飛空艇だ。
これよりも大きな魔獣ともなれば、勇士の飛空艇、『はぐれ飛空艇』を足場にしても空戦で戦うのは至難の技となるだろう。
『まだ沈まないっていう保証があるのが救いだなッ!』
結局の所、これは罠でしかないのだ。
オブリビオンが新たなる犠牲者を求めて、張り巡らせた罠。
『はぐれ飛空艇』という目立つ浮きに寄ってきた飛空艇を襲い、また再び『はぐれ飛空艇』を生み出すための方策。
それによって、猟兵達をも釣り上げることになるとはオブリビオンも思ってもいないだろう。
『なら、話は簡単だな。この罠を仕掛けたやつが必ずこっちを見ているはずだ……ッ!』
凶津と桜が甲板上に上がった瞬間、巨大な影が『はぐれ飛空艇』の上に落ちる。
見上げた先にあったは、巨大なる魔獣の姿。
その威容を見て怯むことはないだろう。
なぜなら、猟兵達はかの敵を打ち倒すために転移してきたのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
まあ、少年のことが気になっていたのは事実ですからねー。
ふふ、私と会うのは初めてでしょうけれど。ええ、私はずっと見ていましたよ。
さて、探索ですか。その方面だと、適任は私ですからねー。
本当に突然無人になったようで。予兆もなにもなかったんでしょうねー…。
ですが、これだけ人の痕跡がないとねー。難しい面もありますか。
いえ、無さすぎる気がするんですよー。だって、いくらいきなりとはいえ、そう簡単にはいかないでしょう?
警戒は常にしているでしょうしー。
※
陰海月もぷきゅぷきゅお手伝い。義透には伝わる。
無人の『はぐれ飛空艇』の中に転移した馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は複合型悪霊である。
四柱の悪霊によって成り立つ彼等は、『疾き者』を表層に現出させつつ、船内を探索していく。
「探索ですか。その方面だと、適任は私ですからねー」
周囲を見回す。
そこはあらゆるものが散乱した痕であった。
争ったものとは違う、何かちゃぶ台をひっくり返したような、そんな乱雑な有様であった。
「本当に突然無人になってようで。予兆も何もなかったんでしょうねー……」
『疾き者』は訝しむ。
これだけ人の痕跡がないというのは、あまりにも不自然だ。
オブリビオンが人型ではなく魔獣の類であったとは言え、飛空艇に傷をつけないということがあるのだろうか。
魔獣であればこそ、飛空艇ごと雲海に沈めてしまえばいいと考えるだろう。
けれど、わざわざ無人の『はぐれ飛空艇』にする意味は魔獣にはあまりないように思えたのだ。
「いえ、無さすぎるんんですよー。だって、いくらいきなりとは言え、そう簡単には行かないでしょう?」
飛空艇であればこそ、警戒を密にするものだ。
だというのに、ひとり残らず船員たちが消えている。他の猟兵たちの情報を得れば、甲板上にあった積荷や装備の類も一切合切失われているのだという。
「飛空艇が一回転させられて、振り落とされたんじゃないかって話だよ」
そんなふうに少年『エイル』が共に調査をしてきたのだろう。『疾き者』に告げる。
ああ、と『疾き者』もまた彼のことを気にかけていた。
複合型悪霊とは言え、現出している存在しか認知できないであろうと思っていたが、少年『エイル』には見えているのだろう。
「はじめまして、という感じがしないけれど」
「ええ、私はずっと見ていましたよ」
複合型であるがゆえの見え方であるのだろう。
『エイル』にとって、それはあまり不自然であるとは思っていないのだろう。自分の見え方がおかしいとは思っていない。
目の前の事象をあるがままに受け入れるだけの度量がそこにはあったように思えたのだ。
「ぷきゅぷきゅ」
つかの間の邂逅であったが、調査を手伝っていた『陰海月』が『疾き者』の影から飛び出して、空を指差す。
何が、と思う間もなかったことだろう。
『疾き者』は理解したのだ。この飛空艇がオブリビオン、魔獣にとっては、浮きのようなものであると。
己の獲物をおびき寄せるための方策。
罠にはめられたのは、勇士達であったのだ。何故飛空艇が無傷なのか。沈めるのではなく、浮かばせているだけなのか。
「なるほど。敵はすでに頭上よりこちらを見ていたと……策士とまではいいませんが、狩りをする側に回った魔獣というわけですかー」
甲板上に飛び出した『疾き者』が見たのは、強大な影。
大型の飛空艇よりも巨大な翼を広げた姿は、まさにドラゴンのような威容を誇っていた。
あれがこの『はぐれ飛空艇』を生み出したのだ。巨体であれば、飛空艇を一回転させ、力技で船員たちを振り落とすこともできるだろう。
「下手に知能をつけたのは確かに悪辣でしょうが……」
だが、それゆえに猟兵を呼んだのだ。
その報いを受けさせるために、『疾き者』は大空に舞う魔獣をねめつけるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
機械飛竜ロシナンテⅢを甲板に待機
妖精ロボ操作し調査や探索
同時並行でエイル様と会話
…事故で船員が吸い出された故郷の船を思い出します
せめて遺品を遺族に還すことが出来れば良いのですが
さて、今回の下手人は他の猟兵の方々の手により粗方目星がつき始めておりますね
船とは貴重な物
私の故郷の銀河帝国もそうでしたが、大抵は拿捕し再利用するもの
そうする知性が無い、若しくはする必要が無かったのでしょう
ただ、飛空艇狙い乗り込んでくるオブリビオンもこの世界に存在します
勇士の皆様に立ち回りのコツなどを聞くのも良いかもしれませんね
貴方の旅路で艇内での戦闘が起きぬとも限りません
ご一緒いたしませんか?
…
…妖精が何か捉えたようです
機械飛竜『ロシナンテⅢ』が『はぐれ飛空艇』の甲板上に降り立つ。
羽を休めるようにして降り立った機械飛竜から飛び降りたのは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)であった。
「……事故で船員が吸い出された故郷の船を思い出します。せめて遺品を遺族に返すことができれば良いのですが」
トリテレイアの電脳の中には無数のデータが残っている。
その中には、宇宙空間であった事故のことも残っているのだ。それと今回の事件は類似している。
雲海に放り出されれば空を飛ぶ手段がなければ、沈み消滅するしかない。
それが大空の世界ブルーアルカディアの理である。
だからこそ、『はぐれ飛空艇』が未だ雲海に沈んでいないことは、喜ぶべきことであった。
「さて、今回の下手人は他の猟兵の方々の手により粗方目星がつき始めておりますね」
トリテレイアは考える。
飛空艇は、このブルーアルカディアにおいて貴重なものである。生活の術として使われるものであるが、飛空艇がなくば浮島との行き来もできない。
ならばこそ、屍人帝国がこれを雲海に沈めるでもなく、拿捕するでもなくそのままにしておく理由がない。
「私の故郷の銀河帝国もそうでしたが、大抵は拿捕し再利用するもの。そうする知性がない、もしくはする必要がなかったのでしょう」
トリテレイアは、この下手人が如何なる者か目星がついていた。
ただ、飛空艇を狙って乗り込んでくるオブリビオンもまたこの世界には存在している。
けれど、船内は調度品などが散乱していても、争った痕はなかったのだ。
「ふむ……皆様は船内での立ち回りなど気を配っておられるので?」
トリテレイアは周囲で調査している勇士たちに声をかける。
彼等は少し考えているようだった。
「殆どが空戦ばかりだからな。小型の飛空艇で飛ぶ場合は個人になるし……飛空艇の中で戦うことはないだろう」
そう、ブルーアルカディアにおいて戦う場合は空戦ばかりである。
飛空艇は足場であり、同時に勇士たちを運ぶ足でもあるのだ。そこに直接乗り込んで戦うということは、魔獣相手にはないだろう。
「ならばこそ、今回のような事態を招いたのやもしれません。警戒していても、外に飛び出してしまえば、今回の下手人の手にかかり、雲海に沈められる……」
トリテレイアは自律式妖精型ロボ 格納・コントロールユニット(スティールフェアリーズ・ネスト)によって並行して調査を行っていた。
妖精型ロボたちは、皆トリテレイアの指示通りに『はぐれ飛空艇』の周囲を翔び、飛来する何かがないかを見張っていたのだ。
「……妖精が何か捉えたようです」
トリテレイアは妖精ロボから伝わる情報、その光景を精査する。
巨大な何かが『はぐれ飛空艇』の遥か頭上より落ちてくる……いや、来襲してくるのだ。
「やはり……! 皆さん、どうかお気をつけになってください。直ちに戦闘準備を」
トリテレイアは勇士たちに呼びかける。
勇士達は未だ敵の襲来を感知してないのだろう。だからこそ、その一手がどうしようもない遅れとなって、これまでも『はぐれ飛空艇』となった飛空艇の船員たちを襲ったのだろう。
その巨大な影。
ドラゴンとも取れるような、あまりにも巨大な大型飛空艇をも超える全長の魔獣が、今トリテレイアたちを襲わんと凄まじい咆哮を響き渡らせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
何が起きたんだろうね
皆と協力して調査を行うよ
使い魔を呼び出し
鉑帝竜で飛空艇の周囲を警戒しておいて貰おう
何か異常があれば咆哮で知らせて貰えるし
使い魔だけでも邪神の権能や創造能力を使わないなら
戦闘は可能だから少しは時間を稼げると思うよ
まかされたのですよー
こちらは船内を調査しよう
私も同行しますの
勇士やエイル様には双子の姉妹だと伝えておきますの
もちろん私が姉ですの
もう色々諦めて調査に集中しよう
床だけではなく壁や天井にも痕跡が残ってないか見てみよう
今は少しでも手掛りが欲しいからね
後は動力の天使核や機関等に何か変化が無いか調べてみようか
エイルか勇士か天使核を用いた機械の技術に詳しい人がいると助かるんだけど
『はぐれ飛空艇』――それは最近この空域に頻出する無人の飛空艇である。
元は浮遊大陸と浮島を定期的に行き来するための飛空艇ばかりであったようだが、何故か船員たちの姿はなく、ただ空に浮かんでいるだけであったという。
そんな話を聞きつけた佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は一体何が起きたのだろうかと想像をふくらませる。
しかし、実際に現場を見るのとそうでないのとでは、問題が変わってくる。
勇士の飛空艇と接舷した『はぐれ飛空艇』の船内は調度品などが散乱しており、まさに天と地がひっくり返ったような有様であった。
「そっちは任せたよ」
晶は式神武装白金竜複製模造体(ファミリア・アームドワイバーン)の使い魔たちを呼び出し、船内をくまなく調査させる。
何か異常があれば、咆哮でもって知らせてもらえるし、使い魔だけでも邪神の権能や創造能力を使わないならば、戦闘は可能である。
これでよしんばオブリビオン、魔獣が襲いかかってきたとしても、対応することはできるだろう。
「まかされたのですよー」
ちょっと気が抜けるような言葉の響きであったが、それでも頼もしいことには代わりはない。
船内を晶と邪神の分霊である『アキラ』もまた調査をしていく。
途中、少年『エイル』とかち合った時は、説明するのに難儀をしたが、双子の姉妹であるということで納得してもらっていた。
けれど、少年『エイル』にとって邪神の分霊はやはり不可解な存在であるのだろう。しきりに首をかしげていた。
「もちろん私が姉ですの」
そんな風に何故か言い張る邪神の分霊を他所に晶はため息を吐き出す。
「もう色々諦めて調査に集中しよう」
使い魔たちから送られてくる情報と、他の猟兵たちが調査した結果を顧みて晶は壁や天井などに痕跡が残っていないか調査を始める。
「うーん……少しでも手がかりが欲しいとおもったけれど、他の人達が感じた違和感とほぼ一緒か。目新しい情報なあんまりないなぁ……となれば」
そう、残るは天使核である。
この飛空艇が動力に天使核を用いいたものであるというのならば、なんらかの機関トラブルがあるかもしれない。
そう思って機関部へと向かう晶。
けれど、特に変化がないようであった。
「あ、『エイル』、ちょうどよいところに。天使核を用いた機械の技術に詳しい人がいると助かるんだけど……」
「僕はちょっとわからないんですけど、勇士の飛空艇の機関長が調べてくれてますよ」
そう言って『エイル』が晶を案内してくれる。
機関長が言うには、特に天使核には問題はないようだ。動力のゆらぎも記録を見る限り、一度だけ大きな変化があっただけだ。
それはこの『はぐれ飛空艇』が何者かに寄って一回転させられ、船員たちを振り落とした時に発生したゆらぎであるようだった。
「……中型の飛空艇をどうこうできる暗い大きな何か……」
ともなれば、それがこの飛空艇をまた狙っていることになる。
使い魔たちが操作する『鉑帝竜』の咆哮と、その咆哮が重なったのは偶然であったことだろう。
「――ッ! 外か!」
晶が覗き窓から外を見やる。
そこにあったのは巨大な影であった。
翼を広げたような、大型の飛空艇よりも巨大な何かが、雲海に影を落としているのだ。
あれがこの事件の主謀者。
いや、魔獣だ――!
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【勇者パーティ】
あ、エイルさんだって、また捕獲されてます!?
あー、えっと、ステラさん?
なんというか、せめて護衛のフリくらいはですね?
いえ、何でもありません。マム!
あ、そういえば、今回はBBQの準備ちゃんとできてますよ。
調査の前にごはんとか……。
え? 師匠まで『エイル』さんを抱えてなにを?
うわ……さすが師匠……やってることが悪の女魔術師……。
でもわたしたち調査とか苦手ですもんね。全フリはいい作戦かもです。
ステラさん、いまなら『エイル』さんに、「あーん」する権利もつけちゃいますよ!
他の猟兵さんたちに調査スピードで勝てたらですが!
……え?
『エイル』さんの意見? 師匠がそう言ってるのでだいじょぶです!
ステラ・タタリクス
【勇者パーティー】
なるほど、はぐれ飛空艇ですか
目的なき空はとても悲しいものです
ですが
空にはどんな危険があるかわかりません
エイル様は決して私から離れぬよう
ルクス様?捕獲ではなく
何人たりとも介入する隙を与えない抱っこです
何の問題が?(真剣
さあエイル様、膝枕などいかがですか?
って何をしましたかフィア様は?!
ちっ(本気の舌打ち)
ならばお見せしましょう
ステラ史上、最速にして最高の成果を!
【バトラーズ・ブラック】発動です!
さて
ガレオノイドの私を含めこの世界は
天使核が基本にあります
何かがあったのならまず天使核を疑うべきですが
嫌な予感がします
ええ、あり得ないことが起こっているような
何かを食らってたかのような
フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「腹減った!」(第一声
ルクスよ!
さっそくBBQで腹ごしらえだ!
戦闘中に魔力切れで落ちたら困るからな!
ステラ……は今回は人型だから、『勇士の飛空艇』の甲板でBBQとしよう!
はぐれ飛空艇か……
我の魔法で一息に破壊を……
え、ダメ?
「壊してしまえば簡単でいいものを……仕方ない。
調査程度、天才美少女魔術士たる我が行けば即座に解決だが、我はBBQを食べるのに忙しい!
ステラよ、はぐれ飛空艇を調査してくるのだ!」
ステラが抱えている小僧(エイル)は預かった。
ククク、小僧が我とルクスによってBBQで餌付けされてしまう前に、急いではぐれ飛空艇を調査してくるのだ!
(UCでエイルを強引にあーんさせる)
「なるほど、『はぐれ飛空艇』ですか。目的無き空はとても悲しいものです」
そうアンニュイにつぶやいたのは、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)であった。
彼女は物憂げな瞳で『はぐれ飛空艇』を見つめ、その主なき道行きに同情していたのだ。ともすれば、それはガレオノイドである彼女にとって同胞を慮る感情によって発露した言葉であったことだろう。
誰が彼女の想いを咎めることができるだろうか。
しかし――。
「あ、『エイル』さん。また捕獲されてます!?」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)は、アンニュイな表情のまま、少年『エイル』を確保しているステラに若干退いていた。
「ルクス様? 捕獲ではなく何人たりとも介入する隙を与えない抱っこです。何の問題が?」
キリっとしているせいで正論のように聞こえるが、大丈夫かこのメイド。えぇ……とルクスはまたもやドン引きしていた。
ていうか、なんでそんなに? となるルクスである。
「あー、えっとステラさん? なんというか、せめて護衛のフリくらいはですね?」
「何か?」
食い気味であった。
あ、これは触ってはだめなやつだと理解したルクスの背後でフィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)の声ならぬ、鳴き声が聞こえる。
「腹減った!」
まさに第一声がそれである。
もう我慢ならんとばかりに勇士の飛空艇の上でフィアはお腹を空かせて、足踏みしているのだ。
「ルクスよ! さっそくBBQで腹ごしらえだ! 戦闘中に魔力切れで落ちたら困るからな!」
今回ガレオノイドであるステラは人型で少年『エイル』を抱えたままである。
少年は、ちょっと刺激が強いなぁっていう感じでもだもだしているが、がっしりホールドしているステラに抵抗が最早無意味であることを悟っているのだろう。
緊急時でなければいいか、くらいの達観した瞳をしているのだ。
「あ、そういえば今回はBBQの準備ちゃんとできてますよ。調査の前にご飯とか……」
やることやってから食事じゃないです、普通? とルクスは思うのだが、これもまた師匠の言葉である。
ていうか、BBQ好きだな師匠。
「ほんとは我の魔法で一発なんだが……仕方ない。調査程度、天才美少女魔術士たる我が行けば即座に解決だが、我はBBQに忙しい! ステラよ、『はぐれ飛空艇』を調査してくるのだ!」
せいっ!
とフィアのユーベルコードが輝く。なんで?
にゅ、と音がするようにして少年『エイル』の頭に角が映える。
「え!?」
そう、それこそがデビルズ・ディールである。角をはやした対象を自在に操作できるのだ。
強化された少年の腕力はステラのホールドを振り払って、フィアの腕へと収まるのだ。
「なんで!?」
「ふっ、ステラよ。我が抱えている小僧は預かった」
「って何をしましたフィア様は!? 今は膝枕の時間ですよ! 私はメイドなのですよ!」
やばい。存在しない奉仕の記憶がステラの脳内に溢れそうに成っている。
それをみやり、フィアは不敵に笑った。
「ククク、小僧が我とルクスによってBBQで餌付けされてしまう前に、急いで『はぐれ飛空艇』を調査してくるのだ!」
はい、あーん、とフィアは『エイル』を操り、無理やり口を開けさせている。
「うわ……流石師匠……やってることが悪の女魔術士……」
でも、ルクスは黙った。
だって調査とか苦手であるから。こういうときこそ助け合いである。できる人に全フリ作戦、あると思います! とルクスはステラにダメ押しする。
「ステラさん、今なら『エイル』さんに、『あーん』する権利も付けちゃいますよ! 他の猟兵さん達に調査スピードで勝てたらですが!」
煽りよる。
少年の意見は割とマジで無視されている感がある。
だが、ルクスにとって師匠の意見がもっとも大切な言葉なのである。だから、大丈夫なのだ。いや、大丈夫ではないだろ。
「ちっ」
短く聞こえた本気の舌打ち。
フィアとルクスは敵に回してはならぬものを回してしまったのかもしれない。
「ならばおみせしましょう。ステラ史上、最速にして最高の結果を!」
輝く瞳がユーベルコードに煌めく。
マジで大人げないと言うか、本気である。言葉のあやじゃないんだってなるほどの本気の調査スピードをステラは見せていた。
『はぐれ飛空艇』に飛び込み、あらゆる場所を精査し、外壁や天使核などを調査しまくっていた。
途中、他の猟兵達の得た情報をも統合し、彼女は『はぐれ飛空艇』の船首に立つ。
「……この世界では天使核が物事の中心……しかし、この『はぐれ飛空艇』の天使核には異常は見られなかった。ならば、ええ、あり得ない事が起こっているような。何かを食らってたかのような」
いや、それはもうBBQの匂いなんじゃないかなって思わないでもない。
ステラが涎垂らしそうに成っているのは、果たして本当にBBQの匂いのせいだろうか。ちょっと怖い。
「ええ、嫌な予感がしますとも」
ステラが見上げたのは遥か上空。
しかし、彼女のガレオノイドとしての直感が告げているのだ。
「って、何してますかー!?」
「はい、あーん」
「はい、あーん」
フィアとルクスに挟まれて少年『エイル』は逃げ出そうにも逃げ出せずに、ステラがやりたかったこと全部をやっている光景であった。
そのためにステラは若干反応が遅れた。
自分たちの在る『はぐれ飛空艇』と勇士の飛空艇を覆い隠すほどの巨大な影。
その魔獣の存在が今、彼女たちの頭上に降り立とうとしていた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ガレオンドラゴン』
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POW : 属性変換
【ドラゴンの牙】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【部位を持つ『属性ドラゴン』】に変身する。
SPD : ガレオンブレス
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【口】から【ブレス砲撃】を放つ。
WIZ : 飛竜式艦載砲
【飛空艇部分の艦載砲】を向けた対象に、【砲撃】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:来賀晴一
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
凄まじい咆哮が『はぐれ飛空艇』と勇士の飛空艇に響きわたる。
そう、そこに在ったのは遥か上空より飛来した『ガレオンドラゴン』の威容であった。
中型の飛空艇である二つの飛空艇を合わせたよりも巨大な飛空艇がドラゴンの形になったような凄まじき姿。
天使核の暴走に寄って姿を変容させた魔獣。
飛空艇に擬態することも叶わず、さりとて飛空艇の火力とドラゴンの飛翔能力を持つ魔獣としての存在は勇士たちをして始めて見る存在であったことだろう。
「で、デカすぎるだろ……!」
『ガレオンドラゴン』のような存在は、今までも確認されていた。
けれど、これだけの巨大な『ガレオンドラゴン』は、そう類を見ない。
「――接舷している飛空艇を切り離して! 固まっていたら沈められる!」
少年『エイル』が叫び、間に合わぬと判断したのだろう、接舷していた二つの飛空艇をつなぐロープを青い鎧の巨人『セラフィムV』が引きちぎって離すのだ。
「空戦の用意を! あれが『はぐれ飛空艇』を生み出していた魔獣なんだよ!」
『エイル』の叫びを受けた『セラフィムV』と勇士たちが次々と空へと舞い上がっていく。
未だ混乱が続く戦場であるが、それでも『ガレオンドラゴン』の巨大なる姿は、圧倒的であった。
咆哮が轟き、艦載砲が火を噴く。
今まさにここに、大捕物が如き決戦が幕を上げるのだった――。
レティシア・ルステミス
あいつが原因……!
大きいけど、対処出来ないってことはないよ
風を宿す靴の力で空中に移動
風を操る指揮杖で風の壁を展開しよう
命中率の高い砲撃だなんて厄介なことこの上ないけど、風の壁で軌道を反らすよ
風の壁はわたしだけでなく、『エイル』くんや勇士達にも広範囲に展開
風よ、みんなを護って!
風を隠れ蓑にして避雷針を敵の周辺にばら蒔くよ
ペンデュラム、お願いね
裁きの雷を此処に
巨大なる威容を誇る『ガレオンドラゴン』が悠々と空を飛ぶ。
その瞳に映るのは『ガレオンドラゴン』が忌み嫌う勇士たちの姿である。己と同じ姿をした飛空艇。それを我が物顔で操り続ける姿は、『ガレオンドラゴン』にとって不倶戴天の敵と同じであった。
自分の体に纏う飛空艇の装甲こそが、飛空艇と己を同一視せしめる共通点であった。
「ガァ――!!」
咆哮が飛空艇を揺らす。
少年『エイル』の働きによって、『はぐれ飛空艇』と勇士の飛空艇は分かたれ、空の足場として機能するであろう。
だが、空中を自由に旋回し、背に負った艦載砲の砲撃は鳴り止むことなかった。
無尽蔵にも思える砲弾。
しかも、その狙いは性格と来ている。いつまでも飛空艇が保つことはないだろう。
ゆえに猟兵達は『ガレオンドラゴン』に空戦を挑むのだ。
「あいつが原因……! 大きいけど、対処出来ないってことはないよ」
レティシア・ルステミス(天空の魔術師・f34080)は風を宿す靴の力でもって、空へと舞い上がる。
風によって足場を確保した彼女にとって、空は最早庭のようなものであった。
手繰る風は、指揮杖によって壁となった砲弾を防ぐのだ。
爆風が吹き荒れ、レティシアの腕が軋む。
「命中率が高い砲撃だなんて、厄介なことこの上ないけど……!」
けれど、狙いが正確であるというのならば、レティシアには如何様にも処理できることと同義であった。
「風の壁なら軌道をそらすことだって!」
『はぐれ飛空艇』や勇士の飛空艇を狙う砲撃をレティシアは指揮杖を振るって生み出した風の壁でもって軌道をそらす。
受け止めきれるほどの強度があるわけではないが、致命打を受けるよりはマシである。そらした砲弾が雲海に沈み、没していく様を尻目にレティシアは空を舞う。
「風よ、みんなを護って!」
次々と放たれる砲撃の雨の中をレティシアは飛ぶ。
自分に注意を惹きつけつつ、勇士たちや少年『エイル』に攻撃が向かぬようにしているのだ。
「グォォォ――!」
苛立つように周囲を飛ぶレティシアめがけて『ガレオンドラゴン』は砲撃を叩き込み続ける。
爆風が吹き荒れ、レティシアの体を熱で持って吹き飛ばす。
けれど、レティシアの瞳にはユーベルコードが輝く。
「ペンデュラム、お願いね」
輝くユーベルコードは彼女のディバイン・デバイス、その振り子のペンデュラムが揺らめく動きを持って『ガレオンドラゴン』を取り囲む幾つもの避雷針と共鳴する。
いつの間にと、『ガレオンドラゴン』は戦いただろう。
そう、レティシアはただ闇雲に空を飛んでいただけではないのだ。
彼女は砲撃から勇士や『エイル』を護るように翔びながら、避雷針を『ガレオンドラゴン』の周囲に設置し続けていたのだ。
「裁きの雷を此処に」
告げることばはペンデュラムのゆらめきが振るわせる。
蒼天より降り注ぐは、極大なる裁きの雷。
人を滅ぼし、悪辣なる罠でもって新たなる犠牲者を生み出そうとした『ガレオンドラゴン』。その頭上に振り下ろされる鉄槌の如き雷は、その巨躯すらも焼き焦がすほどの威力で持って、飛空艇の装甲を焼き切っていく。
「もう二度と犠牲者は出させないよ。勇士のみんなも、誰一人としてね」
レティシアは己がこの世界に呼ばれた意味を考えている。
それもはるか昔のことであるが、それでもこの世界が気に入っているのだ。だからこそ、この世界を滅ぼそうとするオブリビオンを赦しはしない。
その裁きの雷でもってレティシアは『ガレオンドラゴン』を討つのだ。
放たれた雷が轟音と突風を生み出し、その白い髪が風に遊ぶ。けれど、その宝石のような青い瞳は見ていた。
「人の何が憎いのか。わからないでもないよ。君は飛空艇を自分の仲間だと思って、そして人から飛空艇を解放しようとしていたんだね」
けれど、それは間違っているのだ。
飛空艇は道具だ。
手段でもある。ガレオノイドになれば話は別であろうが、それでも『ガレオンドラゴン』が人びとの生命を奪っていい理由にはならないのだ。
そういうように再び振り下ろされる鉄槌の雷が『ガレオンドラゴン』を強かに打ち据えるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
これがガレオンドラゴンか。標準的な個体よりまだ巨大?
はぐれ飛空艇を用意して、何が狙いだったのかしら? 単なる撒き餌にしては手が込んでるけど。
「空中戦」なら、これはどうかしら?
「結界術」「全力魔法」風の「属性攻撃」「範囲攻撃」「仙術」「道術」の風吼陣!
勇士達の飛空艇が離れてから、鉄鉢の上で発動。
アヤメ、墜ちないよう気をつけてね。
魔獣が近寄ることは許さない。無数の刃に切り刻まれて墜ちるといいわ。
いくら属性ブレスを吐いても、この暴嵐の中では吹き散らせるだけよ。
あなたにとっては相手が悪かった。
やり過ぎを後悔しながら、その骸を私達に渡しなさい。あなたの骨肉心臓、全て有効に活用してあげる。それが世界の為。
極大なる雷が『ガレオンドラゴン』へと振り落とされ、その体を焼き焦がしていく。
凄まじいユーベルコードによる一撃は、確かに『ガレオンドラゴン』を弱めては居たが、未だ決定打に至らぬのは、その巨躯ゆえであろう。
これほどまでに巨大な魔獣であれば、猟兵たちが推理したことも可能であろう。
けれど、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は理解し難いものが未だ一つあったのだ。
「『はぐれ飛空艇』を用意して、何が狙いだったのかしら? 単なる撒き餌にしては手が込んでいるけど」
彼女は『ガレオンドラゴン』を見るのも始めてであれば、これが標準的な大きさであるかどうかもわからなかった。
標準的な個体よりもまだ巨大であることは、勇士たちの反応を見ればわかる。けれど、何故、こんな手の込んだ真似をしたのか。
ゆかりは鉄鉢に乗って、勇士の飛空艇から離れて飛ぶ。
式神のアヤメも同乗しているが、振り落とされぬようにと叫ぶのだ。
「アヤメ、振り落とされないようにね!」
鉄鉢で飛ぶゆかりとアヤメを狙って『ガレオンドラゴン』がその巨大な顎を広げる。
あれだけの巨躯だ。
ゆかりたちなどひとのみで飲み込まれてしまうだろう。けれど、ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
「魔獣ごときが近寄ることは許さない――古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。天上までも響き渡る破壊の風よ。その身に宿せし無限の剣刃により触れるもの悉くを裁断せよ。疾!」
彼女のユーベルコードによって、彼女を中心に風吼陣(フウコウジン)が展開される。
それは無数の刃を孕んだ暴風圏を生み出し、己たちを飲み込もうとしていた『ガレオンドラゴン』の口腔を切り刻むのだ。
どれだけ強靭な飛空艇の装甲と鱗を持っていたのだとしても、その口腔は何にも覆われていない無防備なる部位だ。
「いくらブレスがあるからと言っても、攻撃しようとするのならば、その馬鹿みたいに大きな口を広げるしかないでしょう。初動がそれだけならね――!」
相手が悪かったのだとゆかりは鉄鉢の上で告げる。
生み出されたユーベルコードによる刃を含んだ暴風が『ガレオンドラゴン』の口腔を切り刻み、地を噴出させる。
「あなたにとっては相手が悪かった」
そう、確かにこれまでは『ガレオンドラゴン』はうまくやってきていたのだ。
『はぐれ飛空艇』を生み出し、新たなる飛空艇、獲物をおびき寄せまた船員たちを雲海に沈める。
そうすることで『ガレオンドラゴン』は己の欲求……即ち、己の同胞であると認識している飛空艇を人の手から解放させてきていたのだ。
けれど、それは手前勝手な理屈に過ぎない。
「飛空艇を同種だと思っていたのね。天使核の変容に寄って、己と同じ存在になるのではないかと……そう考えると」
ゆかりはなんと考えただろうか。
虚しいと考えただろうか。悲しいと考えただろうか。
けれど、敵が魔獣、オブリビオンである以上、ゆかりに容赦という選択肢は一つもなかったのだ。
「やりすぎを後悔しながら、その骸を私達に渡しなさい。あなたの骨肉心臓、全て有効に活用してあげる」
それがこの大空の世界、ブルーアルカディアのためであると吹き荒れる無数の刃の中に『ガレオンドラゴン』を包み込み、切り刻む。
怨嗟の咆哮が鳴り響き、それでもあれだけの巨躯であれば一つの大陸の生産を上回る血肉や骨牙をもたらしてくれるだろう。
それが豊かさに代わり、そして、また新たな飛空艇の材料と為る。
飛空艇を己の同種であると勘違いしたのならば、その思いのままに新たなる姿に変えてやることこそが、散っていった船員たちへの手向けとなるであろう。
それを思いながらゆかりは、吹き荒れる防風の彼方に『ガレオンドラゴン』の影を見たのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・シノノメ
うわー!すごい…すごい…お金になりそうー!!
…はっ!いけないいけない。やー珍しい素材取れそうだよね!天使核はともかくとして、翼とか鱗とかあとで剥ぎ取ってもバレないかな?
相手は大空を飛び回る竜だし、私のハンマーの火薬で突撃したら尻尾でぺいってされそう。
というわけで……ガトリング砲~!(四次元ポシェットから)
UC発動!どんな向きでも、どんな場所でも、物質を透過して敵を捉える魔法の弾幕食らっちゃうといいよ!(範囲攻撃・鎧砕き・弾幕)
あ、飛空艇に接触しそうになったら撃ち込んだ箇所を操って当たらないようにしよう!防御は…任せる!
そしてどっかーんと爆破!すっごく思い鋼の大棘で動きも鈍っちゃうかもね!
極大なる雷に討たれ、刃の暴風に包まれた『ガレオンドラゴン』の巨躯は凄まじいものであった。
翼を広げ、暴風を振り払った『ガレオンドラゴン』が憤怒の咆哮をほとばしらせる。
「グァァァグ――!!」
ギラギラとした瞳が輝き、口腔を傷つけられたことにより血潮を撒き散らしながらも咆哮する姿は勇士たちを立ち竦召させるには十分な迫力を持っていた。
けれど、キリカ・シノノメ(底無し在庫・f29373)は違う。
「うわー! すごい……すごい……」
瞳をキラキラさせながら、息荒く『ガレオンドラゴン』の巨躯を見上げていた。
爛々とした瞳は興奮しきりで瞳孔が開きっぱなしである。
「お金になりそうー!!」
思わず叫んでいた。
確かにそのとおりである。大型飛空艇よりも巨大な『ガレオンドラゴン』。その血肉は言うまでもなく、骨や爪、牙、鱗、あらゆる場所が素材として一級品として市場に出回ることだろう。
「……はっ! いけないいけない。やー珍しい素材取れそうだよね! 天使核はともかくとして、翼や鱗とか後で剥ぎ取ってもバレないかな?」
垂涎の的である。
正直言って、一枚二枚を拝借してもバレないだろう。
けれど、勇士たちがただ漏れの欲望にツッコミを入れるのだ。
「言ってる場合か!? それもこれもアイツを狩って生き残ってからだろ!?」
確かにそのとおりだとキリカは頷く。
手にしたハンマーを暫し飛空艇の甲板上に置いて考える。
もしも、ハンマーの火薬で突撃しても『ガレオンドラゴン』のあの巨躯である。しっぽの打撃で撃ち落とされてしまうだろう。
ならばどうするか。
「というわけで……ガトリング砲~!」
四次元ポシェットから取り出したガトリング砲を携え、キリカの瞳がユーベルコードに輝く。
一体どこから出したんだ!? という声が聞こえてきそうであるが、勇士たちも自分たちの身を護るのに精一杯だ。
「レイスの霊力と、鋼竜の素材をかけ合わせた特別性の銃弾だよー!」
装填されてるのは、鋼竜の魔弾(ソウル・ガトリング)である。
遮蔽物を透過するガトリング砲の弾幕の前には、如何なる防御も無駄である。迫る血まみれの牙をむき出しにした『ガレオンドラゴン』の顎がキリカをひとのみにせんとしている。
けれど、キリカは何も慌てていなかった。
「その硬い鱗を想定していたけど、大口開けてこっちに突っ込んでくるっていうのなら、魔法の弾幕、食らっちゃうといいよ!」
放たれた弾丸が『ガレオンドラゴン』の口腔を打ち抜き、その巨躯を空中でのたうち回らせる。
しかし、そののたうちが長い尾を振り乱し、勇士たちの飛空艇を打ち据えようとする。
「おっと、それはさせないよ! 防御はまかせるよ!」
放った弾丸が超重量の鋼の大棘に代わり、その尻尾を操って空振りにさせるのだ。
「あ、あぶねぇ?!」
「よそ見してたらだめだよ。ちゃんとかわさないと!」
キリカは再び弾幕を張って『ガレオンドラゴン』を飛空艇に近づけさせない。弾丸によって『ガレオンドラゴン』を操作することはできるが、あちらも抵抗してくる上に、1分弱しか操ることができない。
「ふふん、操るだけの弾丸だって思っているのなら!」
再び打ち込んだ弾丸が鋼の大棘となって『ガレオンドラゴン』の体にまとわりつく。
しかし、キリカの瞳がユーベルコードに輝いていた。操るのではなく、その大棘を持って『ガレオンドラゴン』に痛手を与えるべく、輝きが最大限に達した瞬間、その大棘が凄まじい爆発となって、『ガレオンドラゴン』の硬い外殻の如き飛空艇の装甲を弾けさせるのだ。
「どっかーん! すっごく重いでしょ! これが鋼竜の血の力だよー!」
見たか! とキリカがガッツポーズする中、『ガレオンドラゴン』が再び咆哮をほとばしらせる。
凄まじい爆破で弱っていることは確かだ。
キリカは飛空艇の勇士や『エイル』たちを護るために次々と鋼竜の素材をかけ合わせた特別性の弾丸を惜しみなく弾幕として撃ち放ち続ける。
まるで底なしの在庫を保つかのように、大盤振る舞いでもってキリカは大空に爆風の華を咲かせるのであった――。
大成功
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イングリット・ジルニトラ
ヤレヤレ。これは巨大だな。骨が折れそうだが、飛空艇の空を征く自由を奪う権利は魔獣にもオブビリオンにも無いということを教えてやる。
飛空艇の甲板から飛び降りたら、元の姿へ戻る。
やはり空を征くのは自身の翼と帆に限る。
艦載砲から砲撃を行いつつ、威嚇しガレオンドラゴンの注意を私に引き付け勇士たちの飛空艇の立て直しの時間を稼ぐ。今のうちだ
(使用技能:呪殺弾、砲撃、威嚇射撃)
さて、私を狙っているようだが、簡単に私は沈まないぞ。
航空爆雷をばら撒きつつ、得意のマニューバで空を踊るように敵の背面を奪い攻撃を回避。この空は貴様の居場所はもうないことを知れ!
(使用技能:空中戦、空中機動、ダンス、残像)
凄まじい弾幕と弾丸が爆破する爆風に煽られながら『ガレオンドラゴン』は空中で身を捩った。
その堅牢なる飛空艇の装甲は雷によって焼け焦げているし、ブレスを解き放つ口腔は刃によってずたずたに引き裂かれている。
けれど、その強靭なる巨躯は未だ空を舞うようにして翼を羽ばたかせている。
「ガァァ――!」
咆哮一閃、放たれるブレスがブルーアルカディアの空を染め上げていく。
強烈なる炎は勇士たちの肌を焼き、青い鎧の巨人『セラフィムV』も腕部でもって防ぐほどに痛烈なる一撃であった。
「広範囲のブレス……! 厄介すぎる!」
少年『エイル』が青い鎧の巨人『セラフィムV』の胸に抱かれながら、その脅威を知る。けれど、その瞳に恐怖は不思議となかった。
なぜならば、この場には猟兵がいる。
「ヤレヤレ。これは巨大だな。骨が折れそうだが、飛空艇の空を征く自由を奪う権利は魔獣にもオブリビオンにも無いということを教えてやる」
そうつぶやいたのは、飛空艇の甲板上に立つイングリット・ジルニトラ(ガレオノイドの翔剣士・f33961)であった。
彼女の瞳が真正面に『ガレオンドラゴン』を見据えた瞬間、彼女は空へと飛び降りる。
本来彼女は飛空艇である。
ガレオノイドである彼女にとって、飛空艇の姿こそが本当の姿であろう。
巨大な幽霊船の如き飛空艇へと姿をへんじたイングリットは、今やジルニトラ級陸番艦イングリットそのものである。
「やはり空を征くのは自身の翼と帆に限る」
大空へと舞い上がる巨大な幽霊船。
その姿はかつての壮麗さはなかったのかもしれない。けれど『ガレオンドラゴン』にとっては違う。
己と同じ存在だと思っているのだろう。
だからこそ、人の姿から変じたことに理解が及んでいない。それが隙であった。
「動揺したな。それが戦場に在っては命取りであると知れ」
放たれる艦載砲から放たれるのは呪詛の弾丸である。
相手がオブリビオンである以上、彼女にとっては仇も同然である。己を撃墜したオブリビオンではないにせよ、これを討つことにためらいなどあるはずもないのだ。
放たれる呪詛の弾丸が『ガレオンドラゴン』へと打ち込まれ、巨大なドラゴンと飛空艇が輪舞曲を踊るようにブルーアルカディアの空に舞う。
「さて、私を狙っているようだが、簡単には沈まないぞ」
二度と己は沈むことはない。
そう、沈むのは一度きりでいいのだ。口腔爆雷をばらまきつつ、追従する『ガレオンドラゴン』とブレスを躱し、変幻自在なるマニューバでもってどこまでも続く青空を駆け抜ける。
ぐるりと飛空艇が一回転し、『ガレオンドラゴン』の猛追を振り切るようにして背面を捉えるのだ。
「三式航空爆雷II型(サンシキコウクウバクライニガタ)……ッ! その身に受けてみろ!」
輝くはユーベルコード。
主砲に装填された航空爆雷が『ガレオンドラゴン』の背に放たれる。
それは『ガレオンドラゴン』の飛空艇の装甲を易易と貫通し、その天使核によって変異したドラゴンとしてに肉体にまでダメージを届かせるのだ。
「この空に貴様の居場所はもうないとことを知れ!」
残像を残すほどの速度で持って『ガレオンドラゴン』を翻弄しつづけるイングリット。
彼女の放つユーベルコードによる爆雷は『ガレオンドラゴン』が彼女を追従することを拒むようであった。
「グォォォ――!!」
咆哮が轟く。
けれど、どんなに咆哮を響かせようとも、『ガレオンドラゴン』は此処で朽ち果てる運命にある。
なぜならば。
「私が大空に還ってきたのだからな――」
大成功
🔵🔵🔵
オーガスト・メルト
大物だな。うん、実に良いことだ。
素材を山分けする時に揉めにくくなるからな。
じゃあ、出てきて早々で悪いが討伐させてもらおうか。
【SPD】連携・アドリブ歓迎
デイズをランス形態に、ナイツを万能バイク形態に変身させて【騎乗】し、【空中戦】を仕掛ける。
敵の攻撃を【見切り】、【ランスチャージ】と【ダッシュ】でヒット&アウェイで戦おう。
なるべく仲間の飛空艇に攻撃を向けないようにこちらに注意が向かうようにしたいな。
敵の動きを封じる為にUC【雷鋼の支配者】は早めに当てておきたいが…
いけるか、ナイツ?『うーにゃーにゃー!』
よし、なら頼むぞ。
航空爆雷による攻撃が『ガレオンドラゴン』の巨躯を大空において傾がせる。
猟兵を追って舞い上がった空であったが、すでに『ガレオンドラゴン』は己の頭上を抑える猟兵の機動についていくことさえ困難になっていた。
その巨大なる体であれだけの速度を出せているのは脅威的であった。
それゆえに『はぐれ飛空艇』となった飛空艇は、接近に気がつくことも遅れ、船員たちを失うことになったのだろう。
「大物だな。うん、実に良いことだ」
『ガレオンドラゴン』は大型の飛空艇よりも巨大な存在である。
だからこそ、仮に『ガレオンドラゴン』を打倒した後、その素材を山分けにする際に揉め事が起こりにくい。
何せ、素材の量はごまんとあるのだ。分け前が少なくなることなどあり得ない。
ゆえに、オーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)は笑ったのだ。
「じゃあ、出てきて早々で悪いが討伐させてもらおうか」
彼と共にある竜、『デイズ』と『ナイツ』の姿を変じさせる。片やランスに。片や万能バイク形態へと変身させ、彼等の力を十全に発揮させるように戦場となった大空へと駆け出すのだ。
「月黒竜帝が支配するは大地の鋼と天空の雷!ナイツ、雷鋼武装群をセット、射出しろ!」
『うにゃー!』
雷鋼の支配者(ロード・オブ・サンダーアーム)たる万能バイクへと姿を変えた『ナイツ』が鳴く。
その嘶きの如き鳴き声一つでもって、激しく帯電した様々な鋼の武器の群れが射出される。
それは紫電を帯びながら、青空を引き裂かんばかりの勢いで轟音を轟かせながら『ガレオンドラゴン』の巨躯へと突き立てられていく。
「グガァァ――!!」
咆哮が轟き、『ガレオンドラゴン』のブレスが鋼の武器を振り払おうと放たれるが、その程度のブレスで放たれた鋼の武器が止まるわけがない。
「いけるか、ナイツ?」
『うーにゃーにゃー!』
まるで任せておけとでも言うようにナイツが鳴く。それに合わせるようにランスへと姿を変えた『デイズ』もまた凄まじい勢いで『ガレオンドラゴン』の装甲を引き剥がすように鋭き切っ先で貫いていくのだ。
「よし、なら頼むぞ」
オーガストが告げた瞬間、『ナイツ』の瞳が輝く。
それは鋼の武器が突き立てられた傷口から増殖する水晶であった。
一瞬何が起こったのかわからなかったのだろう。『ガレオンドラゴン』の瞳が驚愕に見開かられる。
傷口から侵食するように増えていく水晶が、『ガレオンドラゴン』の動きを阻害していくのだ。
まるで楔のように打ち込まれた鋼の剣が傷口を広げ、『ガレオンドラゴン』の飛翔能力を阻むのだ。
「――ッ!?」
それはこれまで『ガレオンドラゴン』にとって経験し得ない不足の自体であったことだろう。
自分こそが空の支配者であるというような尊大なる振る舞い。
そのツケが今まさに支払われようとしているのだ。
「動きが鈍っているな……これだけの巨体だ、狙いをつけるまでもない」
一気にオーガストは『ナイツ』と共に大空を駆け抜け、『デイズ』が変じたランスの一撃を『ガレオンドラゴン』の胴へと突き立てる。
血潮が吹き出し、本来であれば旋回して躱すこともできたであろう『ガレオンドラゴン』は水晶によって動きを阻害され躱すこともできずに打ちのめされる。
オーガストは『ガレオンドラゴン』の頭上に座し、己のこそが雷鋼の支配者であると知らしめるように放電し、轟音を響かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルビィ・フォルティス
中型の飛空艇二隻分以上。それだけ大きいのでしたらさぞ天使核も強力なのでしょうね。
沈みそうな大陸を救うとはいかずとも、沈むのを遅らせられるくらいには。
これだけ人数がいれば競争率も高そうですけれど……その核、頂きましてよ。
熾天の剣姫を使用、三対六翼で飛翔し空中戦を挑む
艦載砲の狙いがいかに良くとも、追尾機能等はない以上、発射された後に移動しても避けれる速さがあれば問題はない
485km/hの速度を活かし、遠距離から敵の艦載砲を避けつつアドウェルサによって引き起こすかまいたちで飛空艇部分を攻撃
隙を見つけて砲撃をかいくぐり接近し、ドラゴンの部位に威力が増強されたアドウェルサによる一閃
ルビィ・フォルティス(空の国の家出娘・f33967)が続ける放浪の旅とは、即ち己の故郷、小国が座す大陸を浮かび上がらせている天使核の代わりとなる強力な天使核を求める旅である。
彼女の故郷は未だ雲海に沈まず。
けれど、それは時間の問題であることを知る。だからこそ、強力な天使核が必要なのだ。
「中型の飛空艇二隻分以上。それだけ大きいのでしたら、さぞ天使核も強力なのでしょうね」
見定めるは獲物としての『ガレオンドラゴン』である。
その巨大さは言うまでもない。同じ種類の『ガレオンドラゴン』の中でも相当な大きさを誇る個体である。
だからこそ、彼女の求める強力な天使核を有している可能性はある。
しかし、沈みゆく浮遊大陸を救うほどには至らないかもしれない。
「けれど、沈むのを遅らせるくらいには」
「そういうことも可能なのかも知れないって。それを信じられるのなら」
少年『エイル』の声が聞こえる。
ルビィが望むものがなんであるのかを彼は知ったのだろう。
剣の道を希求しながら、求めるは天使核。
故郷を思う心は、人の心を打つものであった。だからこそ、少年『エイル』は青い鎧の巨人と共に立ち上がるのだ。
「ええ、そうでしょう。けれど、これだけの人数がいれば競争率も高そうなもの。ですが、その核、頂きましてよ」
ルビィは譲らない。
熾天の剣姫(シテンノケンキ)たる彼女の目の前に広がっているのは、道ならぬ道である。
誰もが通り抜けた道ではなく、己自身のための道である。
そこを征くことになんのためらいもないだろう。
放たれる『ガレオンドラゴン』からの艦載砲の砲撃。それを青い鎧の巨人『セラフィムV』が腕でガードするように受け止めている。
「狙いは正確なら、防ぐことだって!」
「追尾機能はないと見ました……ならば、わたくし、容赦しませんことよ」
輝くユーベルコード。
三対六枚の純白の翼を生やした姿となったルビィが長剣『アドウェルサ』を振るい、凄まじい速度で『ガレオンドラゴン』へと踏み込む。
放たれる砲撃など物ともせず、狙いをツケさせる暇すら無く。
神速の勢いで踏み込んだ彼女の放つ剣戟の一撃はかまいたちを伴った真空の刃となって『ガレオンドラゴン』の飛空艇の装甲を一瞬で切り裂く。
「みんなの攻撃で装甲がもろくなっているんだ! 狙うべきは――!」
『エイル』の言葉にルビィは頷く。
そう、すでに見えている。
極大なる雷に打たれ、鋼の武器が突き立てられた箇所からは水晶が生えて動きを阻害している。
航空爆雷が『ガレオンドラゴン』の上昇高度を阻害し、自由に空を飛ばすことはない。
ならばこそ、ルビィの瞳はユーベルコードの輝きを湛えたまま一閃を振るう。
まさに豪雷の如き一撃。
研ぎ澄まされた一撃は、一条の熾烈なる輝きとなって放たれ、『ガレオンドラゴン』の前足の片方を一刀の元に切り捨てるのだ。
「ガァァァ――!?」
それはありえぬ光景であったことあろう。
ただの人の姿をしたルビィの長剣の一撃が巨躯たる『ガレオンドラゴン』の片腕を切り落としたのだ。
切断された片腕が『はぐれ飛空艇』の甲板上に重たい音を立てて落ちる。
勇士たちは見ただろう。
ルビィの輝く三対六枚の翼を。
剣姫たる証として、その長剣を輝かせ大空を舞うようにして剣閃をほとばしらせる姿を持って、彼女を勇士たちは讃えるように声を上げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
連携OK!
【超力陽子加速砲】
紅路夢を待機させておいて正解だったよ。
でもね、ぼくはすごく怒ってるよ。メアリーセレスト号みたいに謎めいた事件かと思ったら、単なる釣り餌だったなんてちっともロマンを感じないね!
(でも幽霊が出てこなくて良かったかも……)
操縦して、各種防禦装置を作動、天候操作で、気流をうまくこっちに引きつけて、追い風を拾おう。
相手の隙を突くように太陽の光を味方にして目眩し、風を味方につけて姿勢制御、あとは渾身のユーベルコヲド・天火明をお見舞いしてやろう!
滅多に使えるユーベルコヲドじゃないからね、今のぼくの気分にピッタリだよ。
百弐拾伍式・紅路夢と呼ばれるフロヲトバイの赤銅のボディーが蒼天に煌めく。
国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)は戦いの気配に備えて、紅路夢を待機させていて正解であったとつぶやいた。
「でもね、ぼくはすごく怒ってるよ」
彼女の瞳はオブリビオンである魔獣『ガレオンドラゴン』に向けられていた。
そう、『はぐれ飛空艇』という無人の飛空艇が頻出するという事件に、かつて他の世界であったであろう事件を重ねていたのだ。
乗組員が消えるという船。
その船のような謎めいた事件であると彼女は思っていたし、そこに浪漫を感じていたのだ。
けれど、その期待は裏切られてしまった。
『はぐれ飛空艇』は『ガレオンドラゴン』による単なる釣り餌じみた行為であったのだ。
「(でもでも幽霊が出てこなくて良かったかも……)」
それは口には出せない。
もしも、そんなことになっていたのならば、鈴鹿はどうなっていただろう。
「だから、今のぼくの気分を思い知るといいのさ!」
鈴鹿が大空を紅路と共に大空を駆ける。
備えられた各種防御装置を作動させながら、『ガレオンドラゴン』が大口を開けて己を飲み込もうとするのを躱す。
雷や爆雷、鋼の武器などによって貫かれて動きに精彩を欠く『ガレオンドラゴン』の挙動は読みやすいものであった。
どれだけ巨大であっても、鈴鹿を追うのならば紅路夢の速度を上回らなければならない。
そして、『ガレオンドラゴン』の巨躯とは裏腹に、鈴鹿の立ち回りは機敏であり、小回りが効くのだ。
追いつこうと思っても追いつけるものではない。
空高く舞い上がり、鈴鹿の姿が太陽の逆光に紛れる。『ガレオンドラゴン』にとって、それは避けるべきであったが、輝く鈴鹿のユーベルコードがそれを許さないだろう。
「ぼくの超決戦機械!驚天動地の一撃を見せてあげる!」
それは、超力陽子加速砲・天火明(ポジトロンキヤノン・アメノホアカリ)。
超決戦機械から放たれる超弩級の一撃は凄まじい輝きと共に『ガレオンドラゴン』の直上から、その巨躯を狙う。
いや、狙いを付けるまでもなかったことだろう。
「その大きさが仇となったよね! めったに使えるユーベルコヲドじゃないけれど! 今の僕の気分にはピッタリだよ」
浪漫を求めて鈴鹿はやってきたのだ。
浪漫がないのならば、それは事件ともミステリーとも言えない。幽霊がでなくてよかったとは思ったけれど、それとこれとは話は別だ。
収束された超力陽子加速砲の一撃は凄まじい火力を伴った一撃は大型飛空艇以上の大きさを誇る『ガレオンドラゴン』の翼の一部を消滅させる。
過剰火力であったが、その余波で勇士の飛空艇や『はぐれ飛空艇』が大いに揺れる。
それほどまでの威力であったのだ。
「グォォ――!?」
『ガレオンドラゴン』が片翼を失うほどの一撃。
その一撃でもって鈴鹿は己の胸のうちにあるフラストレーションを晴らす。いや、もしかしたら、未だ晴れていないのかも知れない。
けれど、なんだっていいのだ。
今の自分の気分。それを表現できるユーベルコヲドがある。その解き放った一撃は、確かにこれまで犠牲になった船員たちの無念を払うものであったのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
ああ、空からのドラゴンですかー。
相性悪いんですよねー。でも、打てる手はありますから。
陰海月、飛空艇護衛任せましたー。
さて、【それは雷のように】使用。飛翔できますから、空中戦できますねー。牙も避けますよー。
雷に撃たれなさいな。ええ、弱いですけれどね…?
ふふ、ここは私だけではないのですー。そう、勇士たちもエイル殿もセラフィムVもいますしねー?
陰海月もぷかぷか浮けますからねー。ちょっとだけ攻撃してるかもですねー。
※
陰海月、預かってる四天流星にて錯誤呪詛発動。飛空艇の位置を誤認させる。ぷきゅぷきゅ。
隙あれば浮いて攻撃する。ぷきゅー。
火線の一撃が巨大な『ガレオンドラゴン』の片翼を抉るようにして消滅させていた。
片腕は失われ、それでもなお巨躯は威容を誇っていた。
大空の覇者たる姿は見る者を圧倒するものであった。
「ああ、空からのドラゴンですかー。相性悪いんですよねー」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の四柱の中の一柱である『疾き者』はどうしたものかと見上げていた。
しかし、相性が悪いからと言って退いている暇などない。
一歩退けば、オブリビオンは一歩を進んでくる。
その一歩の間に失われる生命がどれほどのものであるかを『疾き者』は知っているからこそ、一歩も引けぬのだ。
「『陰海月』、飛空艇護衛任せましたー」
『ぷきゅー』
『疾き者』は勇士の飛空艇や『はぐれ飛空艇』の護衛を任せて、その瞳をユーベルコードでもって輝かせる。
戦場にあふれるのはおびただしい数の雷であった。
翼の生えた虎へと変貌した『疾き者』が戦場と成った空を駆け抜ける。凄まじい速度で飛翔しながら、その速度で持って『ガレオンドラゴン』を圧倒するのだ。
迫る大顎は、翼の生えた虎である『疾き者』を食い殺さんとしている。
だが、周囲に巻き起こる雷撃が『ガレオンドラゴン』を打ち抜き続けるのだ。
「グォッ――!」
煩わしいというように咆哮する『ガレオンドラゴン』を尻目に『疾き者』は駆け抜けるのだ。
「雷に撃たれなさいな。ええ、弱いですけれどね……?」
確かに『疾き者』のユーベルコードは常に弱い雷ばかりであった。
けれど、そんなことは関係ないのだ。
「ふふ、ここは私だけではないのですー」
そう、勇士たちが飛空艇の艦載砲の狙いを付け、『ガレオンドラゴン』に放っていく。
砲撃にさらされた『ガレオンドラゴン』の身体が傾き、けれど、艦載砲を放つ勇士の飛空艇めがけて飛ぶのだ。
そこに『陰海月』の鋲の一撃が『ガレオンドラゴン』の認識を錯誤させる。
それが呪詛である。
飛空艇の位置を錯誤させ、あらぬところを飛ばさせるのだ。
「そう、勇士たちも、エイル殿もセラフィムVもいますしねー?」
甲板上に立った青い鎧の巨人『セラフィムV』が、飛空艇の位置を錯誤した『ガレオンドラゴン』の頭部を、すれ違いざまにこぶしで持って叩きつける。
凄まじい一撃に『ガレオンドラゴン』が空中で目をむくようにひっくり返る。
「お見事ですよー」
「これで!」
ぐるりと『セラフィムV』の拳の一撃を受けて、『ガレオンドラゴン』の身体が腹側を向けるように仰向けに為る。
そこに飛び込むのは、それは雷のように(ウゴクコトライテイノゴトク)圧倒的な速度で持って空を疾走る『疾き者』であった。
翼ある虎へと変じた『疾き者』の一撃が『ガレオンドラゴン』の腹部をしたたかに打ち据え、纏った雷撃をありったけ打ち込む。
「我らの怒りを」
生命を奪われた全ての飛空艇の船員たちの無念を晴らすように。
その一撃に『疾き者』は込めるのだ。
速度と重さ、そして雷撃を纏った虎の爪の一撃でもって、『ガレオンドラゴン』を叩き伏せ、『疾き者』は勇士たちとの連携を『ガレオンドラゴン』が打ち破れぬのことを示したのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
(『勇士の飛空艇』から勢い良く飛び降りながら)
いくぜ、相棒ッ!
「・・・転身ッ!」
炎神霊装を纏って飛翔しながらオブリビオンを見るぜ。
ひゅー、とんだ大物じゃねえか。『はぐれ飛空艇』を撒き餌にして獲物を狩ってきたんだろうが、次はてめえが獲物になる番だぜッ!
炎翼を羽撃たかせて派手に立ち回るぜ。そうして俺達が囮になりゃ、勇士達も戦いやすくなるってもんだろ。
敵も中々のスピードだ。このまま高速空中戦と洒落こむぜッ!
敵のブレス砲撃を見切って回避しながらお返しに炎刃を放って攻撃しながら隙をみて急接近して炎刀で焼き斬ってやるぜッ!
【技能・空中戦、見切り】
【アドリブ歓迎】
猟兵の変じた雷纏う一撃が『ガレオンドラゴン』の腹部を強かに打ち据えた。
片翼を失い、片腕をも失った『ガレオンドラゴン』にとって、それは痛烈なる一撃であったのだろう。
「ゴ、ア――ッ!!?」
呻くような咆哮が響きわたる。
しかし、膨れ上がる大顎から吹き荒れるは、口腔から放たれるブレスの一撃であった。
近寄るなと言わんばかりの攻撃である。
確実に巨大な『ガレオンドラゴン』は弱り始めている。傷口から侵食する水晶や飛翔高度を制限するような爆雷が、『ガレオンドラゴン』の自由を奪い続けているのだ。
『いくぜ、相棒ッ!』
その声を少年『エイル』は青い鎧の巨人の胸の中で聞いた。
飛空艇から勢いよく飛び立つ一人の少女の姿を。いや、違う。『エイル』は知っている。
彼等は二人で一人なのだ。
「……転身ッ!」
神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)と相棒の桜が勢いよく飛び出さい、その身を炎神霊装(ブレイズフォーム)へと変じさせる。
心を燃やす霊装を纏った凶津と桜を止められるものなどいない。
何せ二人の力を一つにして顕現させた炎の翼である。
勢いよく飛翔し、見下ろす『ガレオンドラゴン』の威容は未だ健在であれど、数多の猟兵たちの攻撃に寄って弱っているのは明白であった。
『ひゅー、とんだ大物じゃねえか。はぐれ飛空艇を撒き餌にして獲物を狩ってきたんだろうが、次はてめえが獲物になる番だぜッ!』
炎の翼を羽ばたかせ、二人は派手に『ガレオンドラゴン』の注意をひきつけ、ブレスを一手に受けるのだ。
しかし、炎の翼をまとう霊装の前にはブレスの攻撃は届かない。
『そら、こっちだッ!』
凶津が挑発すれば、すでに手傷を追って冷静さを欠いた『ガレオンドラゴン』は、それが注意を凶津たちに惹きつけるためのことであることさえわからなかった。
「ゴァアァァ――ッ!!」
吹き荒れるブレスの一撃は防げても数回だ。
即ち、何度も受けきれるものではない。しかし、すでに何度もブレスによる攻撃を凶津たちに見せすぎていた。
「……見切りました」
桜がつぶやくのを聞いた凶津は頷く。
ならば、ここから反撃である。如何に巨躯であろうと、この炎の霊装を纏った自分たちに用意に追いつけることはない。
凄まじい速度で炎の翼を羽ばたかせながら凶津たちは炎刀を形成し、振るい上げる。
『なかなかの速度だが――ッ!』
放たれるブレスを急旋回でもって躱しながら、凶津たちは『ガレオンドラゴン』の懐に入り込む。
強靭な肉体。
頑強な鱗。それを飛空艇の素材が覆っている。言わば鎧のようなものだろう。
けれど関係ない。
「……そう、関係ない。私達二人なら」
桜の裂帛の気合と共に振り上げられた炎刀が振り下ろされる。
その一撃は『ガレオンドラゴン』の鎧の如き飛空艇の装甲を溶断し、その内側なの肉を焼き焦がす。
凄まじい痛みに震える空。
しかし、それは因果応報である。『ガレオンドラゴン』が奪った生命に対する報いだ。
振り抜いた一撃を持って凶津たちは空へと舞い上がり、その炎翼を広げる。
『思い知ったかよ。獲物になるっていう恐ろしさがッ!』
そう、これまでは狩る側であったことだろう。
けれど、此度は違う。
凶津たちは告げる。
『ガレオンドラゴン』は今度こそ狩られる側になり、これより先には一歩も進めぬことを――。
大成功
🔵🔵🔵
髪塚・鍬丸
飛空艇を狙われるとまずいな。飛行忍具「天狗火」使用。炎の様な翼を広げ【空中戦】を挑む。翼の生む斥力場による【空中浮遊】にスラスターの噴射を組み合わせた【早業】の【空中機動】で攻撃を回避。奴の気を引き付けよう。
さて、この巨大な敵にどう挑む。刀や手裏剣では針で刺す様なもの。ならば術で攻める。
忍法【影法師】の術。雲海に落ちた奴自身の巨大な影から、無数の黒い触手が伸び襲い掛かる。
如何な高速で逃げようと無駄だ。付き従う影から逃れる事は不可能。
【捕縛】【グラップル】。実体化した影が奴を締め上げる。自身の影から生まれた影法師。貴様の力が数倍の【カウンター】となって貴様を握り潰す。
今だ勇士達!攻撃を叩き込め!
片翼、片腕を失った『ガレオンドラゴン』が炎刀の一撃で持って飛空艇の装甲を溶断し、その内側の肉さえも引き裂くように焼き斬った。
凄まじき斬撃とユーベルコードの輝き。
しかし、それでもなお『ガレオンドラゴン』の巨躯は、その力の強大さを示すように咆哮で持って、怨嗟の声を上げる。
「ガ、アアアア――!!」
まだ失墜などするものかというように『ガレオンドラゴン』の瞳が輝く。
それは口腔より吐き出される猛烈なるブレスの一撃であった。
「まずいな――」
その言葉と共に髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は両肩に付ける忍具である『天狗火』を噴出させ、翼のように広げながら『ガレオンドラゴン』の眼前に踊り出た。
それは自殺行為であった。
敵のブレス攻撃の範囲は広い。その巨躯から放たれるがゆえに、広範囲に渡って光熱のブレスが浴びせかけられるのだ。
躱せるわけがないと少年『エイル』が叫んだ。
無理だ、と。
けれど、鍬丸は違う。己の装備と己の鍛錬、そして技術を信じている。
「やってやれないことなどないはずだ」
鍬丸の広げた炎の翼が生む斥力場による浮遊とスラスターの噴射を組み合わせた早業の如き変幻為る空中機動がブレスの広範囲から逃げおおせるのだ。
まさに神がかった機動であった。
それを『エイル』は見ていた。人型であれば、このようなこともできるのだと知らしめるような動き。
それを彼は見たのだ。
「鍬丸さん! でも、それじゃあ!」
鍬丸が手にした刀や手裏剣では、針で巨象を刺すようなものである。
ならばこそ、術で攻めるべきだ。
彼は猟兵だ。なればこそ、ユーベルコードが輝く。
「忍法・影法師(カゲボウシ)!」
それは雲海に落ちた『ガレオンドラゴン』の巨大な影から無数の黒い触手が伸び、その巨躯を縛り付けるのだ。
「――ッ!?」
驚愕に『ガレオンドラゴン』が震える。それもそのはずであろう。己の影が己に牙を剥いたのだから。
しかし、それは鍬丸のユーベルコードである。
「如何に高速で羽ばたこうとしても無駄だ。付き従う影から逃れることは不可能。お前自身の巨躯が仇となったな」
もしも、操った影が鍬丸自身の影であったのならば、巨大な質量に負けて拘束をほどかれただろう。
けれど、『ガレオンドラゴン』の巨躯による影であれば話は別だ。
強度、数、大きさともにまるで問題がない。
ぎりぎりと影法師の影が『ガレオンドラゴン』の巨躯を締め上げていく。
「貴様の力の数倍のカウンターとなって影法師の影は締め付けるだろうよ。握りつぶすことができないまでも――今だ勇士達! 攻撃を叩き込め!」
鍬丸の合図と共に飛空艇の艦載砲が火を噴き、砲弾を『ガレオンドラゴン』に叩き込む。
小型の飛空艇が飛び立ち、勇士達の攻撃が次々と『ガレオンドラゴン』の巨躯へと打ち込まれる。
「狙う必要なんて無いな、これは!」
勇士たちと共に鍬丸は、影の拘束を緩めない。集中していなければ、振りほどかれそうでもあったからだ。
けれど、その僅かな時間であっても勇士たちの攻撃が『ガレオンドラゴン』を追い込んでいく。
影の腕を踏みしめ、『ガレオンドラゴン』へと駆け抜けていく青い鎧の巨人『セラフィムV』が勢いよく拳を叩き込み、再び『ガレオンドラゴン』を吹き飛ばす。
鍬丸はその光景を見下ろし、巨大であることが即ち脅威になるわけではないことを示すのだ。
力とは常に使い方次第である。
鍬丸の戦い方は、まさしく知恵ある者の、人間の戦いであることを示すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
鈴久名・紡
なるほど、大きい……
しかし、逃がす訳にもいかな……
いや、つもりはない、というべきか
むすびは勇士達の飛空艇に残し
竜神飛翔で空へ
大きければ一撃の威力は強いだろうが
でも、逆に、死角が多いという事でもあるだろう
槍に形状変化させた禮火に
氷結系の属性攻撃を乗せた斬撃波で先制攻撃
振り抜いたら即時
牙を回避するために即座に顔を向けられない死角に回り込む
牙が当たらなければ脅威ではない
念の為、葬焔は盾状に変化させて防御に用いる
敵の攻撃は見切りと空中機動で回避し
天候操作で暴風を起こして敵の挙動をかく乱し制圧
回避不能時は葬焔とオーラ防御で防いで凌ぐ
西洋竜と東洋龍ではあり方が異なるそうだが
これと俺ともあり方は異なるか……
巨躯なる『ガレオンドラゴン』が咆哮する。
ブレスの一撃をかわされ、いなされつづけ、黒い影によって拘束されている『ガレオンドラゴン』は苛立たしげに咆哮し続けていた。
「グォォ――!」
勇士たちの砲撃が続き、その身体を追い込んでいく。
しかし、拘束が解けてしまえば彼等の安全は保証できない。そこまで織り込み済みで戦うからこそ勇士であるというのであろうが、それでも鈴久名・紡(境界・f27962)はそういう者たちこそ護るべき存在であるというように、勇士の飛空艇に『むすび』を残し、その身をユーベルコードの輝きにきらめかせる。
――竜神飛翔。
完全竜体へと変じた紡は、飛翔しながら雷撃を解き放ちながら『ガレオンドラゴン』へと迫るのだ。
「なるほど、大きい……しかし、逃す訳にもいかな……いや、つもりはない、と言うべきか」
まともに組み合っては『ガレオンドラゴン』の大顎の餌食に成ってしまうだろう。
ならばこそ、神器を槍へと変化させ、氷雪の力を込めた衝撃波でもって打ちのめす。しかし、巨躯であるがゆえであろう、『ガレオンドラゴン』が戦意に満ちた瞳で 紡をみやり、その牙でもって彼を食い破らんとしているのだ。
「大きければ一撃の威力は強いだろうが、逆に死角が多いということでもあるだろう」
紡は牙の一撃を躱し、完全なる竜体となった体躯を翻す。
迫る牙の一撃を鬼棍棒を盾へと変貌させ、防ぎながら空へと舞い上がる。天候操作と雷撃でもって敵の動きを挙動を制御しながら、真綿で締め付けるような攻撃を咥えていくのだ。
影の拘束はすでにほどかれているが、其処へ飛び込んできたのは『セラフィムV』であった。
多くの猟兵がユーベルコードで持って飛翔する姿を見て、その器に溜め込んだ力でもって飛翔しているのだろう。
「手伝うよ!」
少年『エイル』の声が聞こえる。今もまだ青い鎧の巨人、『セラフィムV』の胸に抱かれているのだろう。
けれど、その言葉は戦う決意に満ちていた。
放たれた巨人の拳が再び『ガレオンドラゴン』を打ち据え、その外殻を砕くのだ。
「西洋竜と東洋竜では在り方が異なるそうだが……」
紡は『セラフィムV』を援護するように雷撃を放ちながら、飛翔する力を失った『セラフィムV』を掴み上げて、飛空艇の甲板上に戻す。
紡は見ただろう。
確かに同じ竜種である『ガレオンドラゴン』と己。
しかし、決定的に異なるものがある。
「あれがあなたと同じであるわけがない」
その言葉は『エイル』から告げられたものだ。
「あれは災いそのものだ。あなたは違う。災いを押し止める竜だ」
だから、違うのだと言う。
その言葉に紡は何を思っただろう。けれど、それは決して悪い意味ではない。紡の背中を押す言葉だろう。
紡は天高く飛翔し、再び雷撃でもって『ガレオンドラゴン』を包囲し、その巨躯を持ってこれ以上の被害など出させぬと大空を駆け抜けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
(はぐれ飛空艇の甲板で肩幅ほどに足を開き、深く息を吐きながら全身の力を抜いた後{霹靂の旋律}で『ダンス』を始める)
罠というものは敵の油断を誘い、必勝の状況を作り上げるためのものです。
開戦前から警戒されるようなものは罠とは呼べません。
これは挑戦状と呼ぶのが相応しいと思います。
(ダンスを止め、UC【蠱の翅】を発動すると甲板から飛び立ち、{霹靂の旋律}で生み出した雷のオーラで『オーラ防御』を行いながら『衝撃波』を推進力にして、敵の翼に向けて雷『属性攻撃』と突進による『貫通攻撃』を仕掛ける)
その挑戦、受けて立ちましょう!
『ガレオンドラゴン』とは異なる猟兵の変じた竜が蒼天に舞い、雷撃を打ち込み、そして青い鎧の巨人が拳の一撃を打ち込む。
勇士たちと猟兵たちが『ガレオンドラゴン』を追い込む姿を見上げ、播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)は、『はぐれ飛空艇』の甲板の上で肩幅ほどに足を開き、深く息を吐き出す。
完全なる脱力。
彼女がこれから何を行おうとしているのかを理解していたのは、彼女自身だけであった。
その呼吸、息遣い。心拍の音でさえも瞬く間に広がる雷光と心を怯ませる轟音を表現した刹那と畏怖のリズムが世界に刻まれていく。
それこそが霹靂の旋律によって生み出された彼女のダンスそのものであった。
旋律のオーラがクロリアの身体を包み込んでいく。
「虫ですからね。飛べますよ。準備は必要ですが」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
背に追うように蠱の翅(コノハネ)。
それはオーラとなって噴出して彼女を空へと舞い上がらせる。圧倒的な速度は霹靂の如く。
閃光となって空を走り抜ける彼女を『ガレオンドラゴン』は捉えることなどできなかった。
「罠というものは敵の油断を誘い、必勝の状況を作り上げるためのものです。開戦前から警戒されるようなものを罠とは呼べません」
クロリアにとって、『はぐれ飛空艇』という撒き餌はそういうものであった。
猟兵として正しく対処できたのならば、あの程度のことなど、罠のうちにさえ入らぬとクロリアの瞳は言っている。
「むしろ、これは挑戦状と呼ぶのが相応しいと思います」
甲板上から飛び立った彼女は雷のオーラでもって、空を一直線に駆け抜け、『ガレオンドラゴン』へと矢のように飛ぶのだ。
雷の矢となったクロリアの一撃は、『ガレオンドラゴン』の残った片翼すらも一撃の元に貫く。
「ゴァァァッ――!?」
何が起こったのかさえわからぬほどの神速の一撃。
霹靂の旋律によって溜め込まれたオーラの力は、強靭な『ガレオンドラゴン』の飛膜すらも貫くのだ。
クロリアは貫いた先で『ガレオンドラゴン』を睥睨し告げるのだ。
「その挑戦、受けて立ちましょう!」
身を覆う雷のオーラはユーベルコードに輝く。
如何なる障害も意味を成さぬと言わんばかりの彼女の攻撃の一撃は、それでもなお『ガレオンドラゴン』の戦意を喪失させるものではなかった。
けれど、圧倒的な速度と溜め込まれた旋律のオーラを前にして『ガレオンドラゴン』ができることなど、そう多くはなかったのだ。
次々と矢のように放たれるクロリアのオーラを纏った身体は、『ガレオンドラゴン』の装甲や龍鱗を尽く踏み割るようにして砕いていく。
「この程度ではないでしょう。もっとやれるはずです。貴方の、貴方だけの『色』と『リズム』があるはずです。それを――」
教えて下さい、とクロリアは再び、『ガレオンドラゴン』へと蹴撃を放ち、その鱗を散々に打ち砕くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎
よっしゃ、殴れるオブリビオンや!
廃墟の罅割れた壁の隙間から覗く無数のうつろな目とかやのうて良かった!
怪獣大決戦なら受けて立つ!
はぐれ飛行艇に損傷なかったんは
自分の仲間やと思うて解放しとるつもりやったんか
今まで何度も色んな船に呼び掛けたりしたんやろか?
…決して応えることないと知ったとき、どうしたんやろうか
キャバリア搭乗
限界突破で先制攻撃
UCにて敵UCを封じ重力波で押し潰しつつ
スナイパー・部位破壊で艦載砲を破壊していく
空中戦・空中機動駆使し
敵死角に回り込みつつマヒ攻撃・破魔で攻撃
敵攻撃は見切り・武器受け・盾受け・かばうにて対処
犠牲になった人達が浮かばれるよう素材になってもらわななあ
打ち砕かれた『ガレオンドラゴン』の鱗の破片が蒼天に舞う。
蹴撃の一撃を以て、打ち込まれる痛烈なる痛みは『ガレオンドラゴン』を絶叫させる。
「ガァァァ――!!」
しかし、その背に負った飛空艇の艦載砲が砲撃を放つ。
狙いは正確。そして威力も十二分であるというのならば、勇士の飛空艇もまたひとたまりもないものであった。
飛来する砲弾。
それは確かに勇士の飛空艇と青い鎧の巨人『セラフィムV』を狙っていた。
しかし、その砲弾は超重力の鎖によって雲海に失墜する。
「直撃コースだったはず……何が……!」
少年『エイル』が砲弾が自分たちに降り注がぬことを訝しむ。その正体はクルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)のユーベルコードの輝きであった。
「よっしゃ、殴れるオブリビオンや!」
そう異形の機神の中でクルルはガッツポーズを取っていた。
いや本当に良かったと彼女は胸をなでおろす。廃墟のひび割れた壁の隙間から覗く無数の虚ろな目とかそういうのはなかったのである。
本当に良かった。
そういうのだったら、クルルは恐らく動けなかったかも知れない。
けれど、目の前のオブリビオンは『ガレオンドラゴン』である。実体があって、殴ることができるのならば、それはクルルにとって恐れるものではなかったのだ。
Gleipnir(グレイプニール)により、虚空より湧き出た超重力波を纏う無数の鎖が『ガレオンドラゴン』の巨躯を封じ込めるように捕縛し、その動きを止める。
「怪獣大決戦なら受けて立つ!」
機神と共にクルルは大盾を構えて突進する。
確かに『ガレオンドラゴン』に同情する気持ちがないわけではない。
『はぐれ飛空艇』に損傷がなかったのは、自分の仲間だと思って人から解放しているつもりであったのだろう。
それをクルルは思う。
何度も飛空艇に呼び掛けたりしたのかもしれない。
憐憫の情さえある。けれど、それが人を害するものであるのならば、人のものさしで測った時、罪である。
「……決して応えることないと知った時、どうしたんやろうか」
答えは出ている。
その場から放たれたのだ。
応答がないということは、そのまま雲海に沈みゆく姿を見守ることしかできないと判断したのだろう。
「だけどな――」
それはやはり、『ガレオンドラゴン』のものさしだ。
人と魔獣が相容れぬように、猟兵とオブリビオンが相容れぬように。互いの線が交わるのだとしても、共に進んでいくことなどできないのだ。
機神の大盾が『ガレオンドラゴン』の艦載砲に叩きつけられ、凄まじい衝撃でもって潰すのだ。
「犠牲になった人達が浮かばれるよう、素材になってもらわななぁ!」
魔獣とは、この大空の世界にあって生きるための糧だ。
それは魔獣にとっても変わらぬことだろう。ならばこそ、それを理解しようとするなど同じ立場でなければ、おこがましいものだ。
決して相容れぬ者が隣り合うからこそ、争いが生まれるというのならば。
「縛り戒め虜囚となさん、時の涯まで、終の戦の果つるまで――」
輝くユーベルコードと共に超重力波を纏った無数の鎖が『ガレオンドラゴン』をがんじがらめに捕縛し、その動きを止める。
放たれた最後の一撃は、切ない。
クルルは艦載砲の一部を完全に粉砕し、その咆哮を聞くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
これは予想以上かも。
わたしも【セレステ】に乗って空中戦かな。
あの巨体だし攻撃は一撃受けたらアウトっぽいから、
【モーフィング換装】で、速度5倍、装甲を半分にして躱していくのがいいよね。
持ってる各ユニットのプロセッサを全開にして、
わたしの操縦の危うさはしっかりサポートしてもらうことにしよう。
スピードで『ガレオンドラゴン』を翻弄しつつ、【D.U.S.S】と【M.P.M.S】で攻撃していこう。
【D.U.S.S】は頭を狙って目潰しとバランス崩し。
【M.P.M.S】は反応弾でしっかり当てていきたいな。
翼……帆かな? を狙ってさらにバランスとスピードを削って、こっちの飛空挺に近づけないように戦うね!
巨大なる体を持つ『ガレオンドラゴン』は大型飛空艇を凌ぐほどであった。
通常の『ガレオンドラゴン』と呼ばれる個体よりもさらに巨大なる存在は、猟兵たちにとっても予想外な大きさであったことだろう。
これが『はぐれ飛空艇』を生み出していた原因なのだ。
「これは予想以上かも」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、ガンシップである『リオ・セレステ』と共に空を翔びながら、その巨躯を見下ろす。
猟兵たちの攻撃に寄って片翼片腕を損失し、龍鱗を砕かれ、飛空艇の装甲すらも焼き焦がしている。
その消耗の度合いは凄まじいものであったが、それでもなお『ガレオンドラゴン』は咆哮するのだ。
「グォァァァ――!!」
人に対する殺意と怒り。
ただそれだけが込められた咆哮に理緒は、あの怒り任せに放たれた巨体の一撃を受ければ、ガンシップとは言えどバラバラにされてしまうと判断し、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「モーフィング換装(モーフィングカンソウ)――今回はこれでいこう!」
『リオ・セレステ』の装甲が排され、その機体の速度が上がる。
圧倒的な速度で持って蒼天を駆け抜ける『リオ・セレステ』はまさに流星のようでも在った。
「ユニットプロセッサ全開……! しっかりサポートよろしくね!」
速度が上がれば、それだけ操縦も困難なものになるだろう。
それでなくても装甲を排しているのだ。これでもう一撃も受けることはできないし、かすめることもできなくなっている。
けれど、今の状況においてこれが最適な仕様なのだ。
迫りくる『ガレオンドラゴン』の大顎を躱しながら、理緒は超音波とミサイルランチャーによって、猟兵が破壊した艦載砲の痕に追撃する。
「もう二度と飛空艇には近づけないと思ってよね」
超音波が『ガレオンドラゴン』の頭部へと叩きつけられ、捉えられぬ速度で持って翻弄する。
反応弾を放ったミサイルランチャーは、その動きを阻害している水晶や刻まれた傷痕へと叩き込まれる。
そして、理緒は帆であっただろう部位に向かって攻撃を叩き込み続ける。
「グォァァァ――!!」
「そんなに大げさに叫んだって!」
怖くなど無いのだと言うように理緒は蒼天の下を駆け抜ける。
『ガレオンドラゴン』がこれまで襲った飛空艇の船員たちもまた、今の『ガレオンドラゴン』と同じ気持ちであったことだろう。
不意に襲われ、わけも分からずに雲海に沈む。
その恐怖を思えばこそ、船員たちが浮かばれない。如何なる理由があれ、なんであれ、人を傷つけることはよくないことだと魔獣に説く気はない。
それはあまりにも無意味だからだ。
「だから、ここできっちり沈めるよ」
勇士の飛空艇には近づけさせない。バランスとスピードを削れるだけ削り取って、立ち回る。
理緒は、そのためだけに己のユーベルコードの輝きを瞳に灯すのだ。
無念を晴らす。
ただ、その一点においてのみ、理緒は凄まじい加速を耐え抜くのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「やっと来たねぇ。うん、なかなか噛みごたえがありそうな敵さんじゃないか。」
あれだけデカいと吸いごたえもありそうだ。
UCを発動し自身を霧へと変えて敵さんの血を奪う。
霧で捕らえた敵さんの血を奪って弱らせながら、奇剣を持たせた悪魔の見えざる手に装甲のない場所を狙ってガンガン切り刻んでもらうことにしよう。
砲弾で吹っ飛んでった霧は敵さんの血を奪って得た生命力で補完。無理なら砲弾が飛んで来た瞬間に、攻撃をかわすように霧の一部に穴を開けての回避。
一応、霧の濃さは薄めにして他の勇士達が攻撃しやすいようにもしとこうかな?
「あ、青鎧の少年じゃん。元気してた?」
僕は今めっちゃ楽しく食事中って感じ。
「やっと来たねぇ。うん、なかなか噛みごたえがありそうな敵さんじゃないか」
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は『ガレオンドラゴン』の巨躯を見て、そうつぶやいた。
あれだけデカイと吸いごたえもありそうだと思っていたのは、恐らく彼だけであったことだろう。
『ガレオンドラゴン』の巨躯こそが、『はぐれ飛空艇』を生み出した原因である。
あれだけの巨躯で飛空艇を回転させれば、飛空艇の船員たちは抵抗らしい抵抗もすることはできなかったことだろう。
しかし、莉亜にとっては、それは些細なことであった。
「僕のお腹の中に御招待ーってね」
瞳がユーベルコードに輝き、その姿が霧へと変わっていく。
それは、暴食領域(グラトニー・ミスト)とも呼ぶべき姿であった。『ガレオンドラゴン』から放たれる艦載砲の砲撃も実体を持たぬ霧には通じない。
どれだけ狙いが正確であったとしても、霧に打ち込んだ砲弾が敵に打撃を与えることなどないのだ。
「無駄無駄。そんな無駄弾使ったところで」
莉亜は霧へと姿を変えたまま、『ガレオンドラゴン』を霧の内部へと引きずり込んでいく。
悪魔の見えざる手が『ガレオンドラゴン』を掴み、離さないのだ。あれだけの巨躯であろうとも、ユーベルコードに寄って強化された腕を振り払うことなどできようはずもない。
「グォォォ――!?」
さらに見えぬ悪魔の手が握りしめた奇剣の斬撃が『ガレオンドラゴン』の身体を切り刻んで血潮を噴出させる。
例え、やぶれかぶれで砲撃を行って霧を晴らそうとしても、噴出した血を啜り、すぐさまに霧が補填していく。
「だから無駄だって言ったよね?」
次なる砲撃が霧を吹き飛ばそうとした瞬間、まるで生き物のように霧が一部穴を開けるようにして形を変える。
この霧は莉亜そのものだ。
あらゆる部分を変幻自在に変えることなど造作もない。
ゆえに穴を開けた霧へと味方を招き入れることも簡単なのだ。
「あ、青鎧の少年じゃん。元気してた?」
莉亜が見たのは、自身が開けた霧の穴から飛空艇の甲板を蹴って『ガレオンドラゴン』に飛びかかる青い鎧の巨人『セラフィムV』の姿であった。
「げ、元気というか、この状況でそれを言うかな!?」
その胸に抱かれた少年『エイル』が余裕なく叫ぶ。
けれど、これは戦いですらないのだ。莉亜にとってこれは楽しい食事の最中なのだから。
青い鎧の巨人の拳が『ガレオンドラゴン』の顔面を捉え、殴りつける。脚部が『ガレオンドラゴン』の飛空艇の装甲を蹴って、飛び上がり、再び勇士の飛空艇の甲板へと降り立つのだ。
なかなかにやるねぇ、なんて莉亜は楽しげに笑いながら、なおも『ガレオンドラゴン』の血潮を吸い上げ続ける。
ごくりと喉がなるほどの甘やかな味。
年代物のワインを飲んだような芳醇な香りと、時を経たであろう酸味。
フルーティと呼ぶには、あまりにも熟れた味わいに莉亜は笑うのだ。食事というよりは、アルコールを楽しむような、そんな味わい。
これだけの巨躯に至るまでの道程を感じさせるような味わいに莉亜は酔いしれながら『ガレオンドラゴン』を包囲する霧でもって、その巨躯を締め付けていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【勇者パーティ】
そういえばわたし、空を飛べなかったです。
はっ、これではいざというとき取り立てから逃げられません!
と、とりあえず飛ぶことはあとで考えるとして、
いまはえっと『エイル』さん、『セラフィムV』に乗せてもらってもいいですか?
っ!?
ステラさん! いまのわりと本気でしたね!?
狭いですけど、わたしはホールドしてませんので!
……ちょっとユーベルコード使うので、変身してるだけです。
大丈夫です、当ててません。当たってるだけ……。
冗談ですから竜! 竜狙ってください! 師匠も囓りにいってますから!
生食は危険なので、焼けると嬉しいのですけど、
【師匠の専属料理人】で『セラフィム』さん用の焼き道具だせるかな?
フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「ククク、来おったな、ドラゴン肉よ!
その肉でBBQの続きを繰り広げてくれるわ!」
敵が空を飛ぶ船であるならば、我も同じく空飛ぶ船で対抗するとしよう。
「さあ、来るがよい。死霊術師たる我の操る死霊船団よ!」
え、普通の船は空飛ばない?
ええい、そこは気合と我の魔力でなんとかするのだ!
ゆけい、アンデッド軍団よ!
あのドラゴンを倒し、肉をゲットだ!
「って、なんかあのドラゴン、火を吹く形態に変化しおった!?
我が喚び出したアンデッドも幽霊船も、火には弱いのだ!」
おのれ!
ルクス、ステラ、早く我の援護を……
って、あの二人は何を遊んでいるのだ!?
ええい、死霊船団よ、ステラの突撃に合わせてこちらも突貫だ!
ステラ・タタリクス
【勇者パーティー】
(人型&アンゲールス・アラース装備)
(ニゲル・プラティヌムから銃声)
ちっ(本気の舌打ち
セラフィムV様
エイル様に悪い虫がついています
外に出してください
こちらで処理します(笑顔
エイル様が危険に晒されるからダメ?
くっ確かにエイル様の安全が第一
ならばメイドとして敵を排除しましょう
(ショタ好きスイッチオフ、戦闘モードオン)
相手が巨大であろうとも
空駆けることで我らガレオノイドが
遅れを取ろうはずもありません!
【ガレオンチェンジ】!
飛空艇形態になったら防御と対衝撃対策に
ウェントス・スクートゥムを最大展開
突撃します!【テンペスタース・クリス】!!
皆様!今です!
このまま押し返します!!
青い鎧の巨人の拳が『ガレオンドラゴン』の頭部を殴りつけ、霧へと変じた猟兵のユーベルコードが、その血潮を奪い力を減退させていく。
勇士の飛空艇の甲板上に再び降り立った青い鎧の巨人『セラフィムV』が膝をつく。
「まだ墜ちない……! あれだけの攻撃を受けているのに」
その胸に抱かれた少年『エイル』が呻く。
ここまで強大な敵を前にした経験がないのだろう。
巨躯を誇り、人に対する憎悪を募らせる魔獣。その悪意を前にわずかに後ずさりしそうになるが、それを止めたのはルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)であった。
「そういえば、わたし空を飛べなかったです。なので、ちょっと『エイル』さん、『セラフィムV』に載せてもらってもいいですか?」
「甲板上にいるよりはマシだと思うけど……早く!」
膝をついた『セラフィムV』の掌に乗ってルクスは胸の中に入り込む。
――瞬間、銃声が響き渡った。
これにはさすがの『エイル』もルクスも驚愕する。
なんで? と思っただろう。その銃声の主は、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)であった。
本気の舌打ちが聞こえる。
「っ!? ステラさん! いまのわりと本気でしたよね!? 狭いですけど、わたしはホールドしてませんので!」
ルクスが慌てて言葉を告げるが、ステラは聞いていなかった。
「『セラフィムV』様『エイル』様に悪い虫がついています外に出してくださいこちらで処理します」
ものすごい笑顔で、ものすごい早口でまくしたてるステラ。
目がマジである。
いくら『セラフィムV』の胸の中が狭いからと言っても限度がある。いや、限度があるとか言ってるのはステラだけであるのだが、彼女にとっては由々しき問題であった。
「……ちょっとユーベルコードを使うので、変身してるだけです。大丈夫です、当てててません。あたってるだけ……」
ルクスもちょっとおもしろくなってきているのではないかと思うほどに、ステラを刺激する。
「『セラフィムV』様!」
ステラが、がなるように『セラフィムV』にルクスを排出するように告げるのだが、青い鎧の巨人は黙して語らぬ。
『エイル』が危険に晒されてしまうからであるかもしれないとステラは理解して歯噛みする。
確かにそれはまずいことである。『エイル』の安全第一。それが今のステラの原動力となっているのは、どうしてなんだぜ? となるところであるが、それもまたメイドの努めである。そうかなー?
「ていうか、ルクス、ステラ、早く我の援護を……って、あの二人は何を遊んでいるのだ!?」
フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は『ガレオンドラゴン』の放つブレスに晒されながら、シッチャカメッチャカになりながら戦線を維持していた。
少し時を巻き戻すことができたのならば、フィアの孤軍奮闘が忍ばれるであろう。
――時は数刻前。
「ククク、来おったな、ドラゴン肉よ! その肉でBBQの続きを繰り広げてくれるわ!」
フィアは上機嫌であった。
BBQが中断されたことは悲しいことであったが、新たな肉が向こう側からやってくるというのならば話は別である。
敵が空を飛ぶ魔獣であるというのならば、己もまた空飛ぶ船で対抗しようと、その瞳をユーベルコードに輝かせ、死霊船団(アンデッド・フリート)を召喚せしめるのだ。
「さあ、来るがよい。死霊魔術士たる我の操る死霊船団よ!」
しかし、召喚した死霊船団はちょっと戸惑っていた。
喚び出されたかと思えば、まさかの空の上である。いやー流石に姐さんこれはきついっすわ。海の上っすよ、普通。とアンデッド軍団が合図を送っている。
普通の船なのだ。まあ、幽霊船であるけど。
「ええい、そこは気合と我の魔力でなんとかするのだ! ゆけい、アンデッド軍団よ! あのドラゴンを倒し、肉をゲットだ!」
勇猛果敢にアンデッド軍団がフィアの魔力を根こそぎ持っていきながら、強引に空を飛ぶ。
『ガレオンドラゴン』は、その目障りな幽霊船を打ち破らんと凄まじい勢いで炎のブレスを噴出させる。
その威力は凄まじく、あらゆるものをもやし突くさんとするような勢いで幽霊船を炎に包み込んでいくのだ。
「って、なんかあのドラゴン、火を噴く形態に変化しおった!? 我が喚び出したアンデッドも幽霊船も、火には弱いのだ! おのれ……! ルクス、ステラ――」
というわけである。
「冗談ですから竜! 竜狙ってください! 師匠も齧りにいっちゃいますから!」
ルクスが慌てたようにユーベルコードを発現させ、師匠の専属料理人(エヅケ・マスター)たる矜持を示すのだ。
オーダーを受けたことにより、その調理器具は『セラフィムV』の手の中に齎される。
肉切り包丁である。
5m級の巨人が持っていても遜色ないほどの大鉈のような武装を手にした『セラフィムV』が甲板を蹴って『ガレオンドラゴン』へと一撃を振りかぶり、飛空艇の装甲を切断せしめるのだ。
「焼き道具がほしかったんですけど!」
「仕方ないよ! だってまだ、調理前なんだから、ぶつ切りにしなきゃってことなんでしょう!?」
青い鎧の巨人の胸の中でルクスと『エイル』がもみくちゃになっている時、二度目の本気の舌打ちが聞こえた気がした。
「空を駆ける事で、他に後れを取るわけにはいきません!」
ステラの瞳がショタ好きスイッチオフし、戦闘モードにオンする。
最初からそうしてれば、よかったんじゃないかなぁって思わないでもなかったガレオノイドであるステラは飛空艇へと姿を変え、その胸に抱いた天使核から展開される風の盾を艦首に集中させる。
纏った風は『ガレオンドラゴン』の巨躯に遅れを取ることはない。
「ええい、死霊船団よ、ステラの突撃に合わせてこちらも突貫だ! ゆけー!」
フィアの号令と共に彼女の魔力を満載した死霊船団が『ガレオンドラゴン』へと突貫し、その血路を開く。
爆散する魔力がほとばしり、爆風に煽られながら『セラフィムV』が勇士の飛空艇の甲板に降り立ったのを見届けたステラは告げるのだ。
「空を駆けることで我等がガレオノイドが遅れを取ろうはずもありません! 突撃します!」
テンペスタース・クリス。
それは風の盾を纏うことに寄って、衝角のように艦首を為し、天使核より得られる動力を持って突撃するユーベルコードである。
「皆様! 今です! このまま押し返します!!」
放たれた衝角の一撃が『ガレオンドラゴン』へと尽きさり、その横っ腹を強かに打ち据え、吹き飛ばす。
それはまさに疾風そのものであり、暴風、嵐の如き一撃となって『ガレオンドラゴン』を失墜することも許さぬのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
なかなかカッケーな。ガレオンドラゴンか。従順ならこの世界の足に使っても良いが、まあそういうたまじゃねえわな。
『魔力解放』を発動。はぐれ飛空艇の甲板から空中へ。
敵POWUC、ドラゴンの牙、大口開けたソレをひょいひょいと飛翔して避けてながら魔力を練り上げて、いいタイミングで開けた口の中目掛けて特大の魔力弾を放ちます。(属性攻撃×範囲攻撃×貫通攻撃×衝撃波)
その後は超音速×怪力で魔力を宿した拳を眉間に叩き込みましょう。
ハハハ、仲間が欲しかったか?
まあ、話し相手もいないんじゃ暇だわな。
ちょっとカワイソーな気もするが、予知されたのが運の尽きだ。
諦めな。
猟兵たちの突撃に寄って片翼片腕の『ガレオンドラゴン』が宙に舞い上げられる。
その痛烈なる打撃の一撃でもってしてもなお、巨躯を誇る『ガレオンドラゴン』が息絶えることはなかった。
確実に消耗させていることは確かであったが、無事な箇所など何一つ内にせよ、それでもなお『ガレオンドラゴン』は咆哮を轟かせるのだ。
「グオォォォ――!」
その咆哮は人に対する怨嗟と憎しみ、そして何よりも己を滅ぼさんとしている猟兵達に対する怒りがあった。
その怒りの咆哮を真っ向から受け止めていたのは、アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)であった。
「なかなかカッケーな。『ガレオンドラゴン』か。従順ならこの世界の足に使ってやっても酔いが、まあそういうたまじゃねえわな」
少し惜しい気もするが、どれだけ叩きのめしても『ガレオンドラゴン』が屈服しないことをアレクサンドルは知っている。
だからこそ、彼の瞳はユーベルコードに輝く。
「魔力解放(スーパーパワー)――」
全身を黄金に輝く魔力で多い、絶大なる魔力の本流でもってほとばしらせる。『はぐれ飛空艇』の甲板から空中へと舞い上がり、凄まじい速度で飛翔し、己へと襲いかかる『ガレオンドラゴン』の大顎の牙を躱す。
「グォォォ――!!!」
牙と牙がかち合う音が蒼天に響きわたる。
あの一撃を受ければ、如何なる装甲も紙切れに等しいだろう。アレクサンドルは魔力を練り上げながら、『ガレオンドラゴン』の敵意を真っ向から受け止め続けるのだ。
「ハハハ、仲間がほしかったか? まあ、話し相手もいないんじゃ、暇だわな」
牙の一撃をアレクサンドルは黄金を纏った腕で受け止める。凄まじい顎の力であったが、絶大なる魔力を誇るアレクサンドルを貫くには値しない。
「ちょっとカワイソーな気もするが、予知されたのが運の尽きだ。諦めな」
どれだけの事情があろうとも、どれだけの悲運や悲歎があろうとも、オブリビオンが人々を害し、世界を破滅に導こうとするのならば、猟兵達は駆けつける。
そういうものなのだ。
予知されたということは、即ち彼等の欲望、目的が達せられぬということと同義である。
ならばこそ、その憤怒も憎悪も意味のないものである。
「いいタイミングだ。ちょうど練り上がったもんでな――」
特大の魔力弾がアレクサンドルの突き出した拳から放たれる。
その一撃は大口を上げた『ガレオンドラゴン』の口腔から内部へと放たれ、内臓を焼き切らんほどの熱量で持って爆発を引き起こす。
牙から手を離したアレクサンドルは不敵に笑う。
あの特大の魔力弾で内蔵を焼かれてもなお、『ガレオンドラゴン』の瞳には憎悪と戦意が満ちていた。
だからこそ、アレクサンドルは笑ったのだ。
「それだけ暴れてもたりねーっていうんならよ!」
黄金の魔力を纏った拳が唸りを上げる。
アレクサンドルは超音速によって空気の壁をぶち抜く拳を『ガレオンドラゴン』の眉間へと叩き込むのだ。
轟音が鳴り響き、『ガレオンドラゴン』の眉間を砕く拳。
その一撃で持ってアレクサンドルは、『ガレオンドラゴン』との一時の遊戯を終えるように、失墜する巨躯を見下ろすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
鉑帝竜の乗り込んで戦おう
敵は巨大だからこちらは速度で対抗
周囲を飛び回りながら
レールガンの射撃で攻撃するよ
牙で噛まれないように
距離を取って戦おう
勇士達とお互いに援護射撃して
相手に的を絞らせないように立ち回ろう
Vに遠距離攻撃手段はあるのかな?
ブレスや砲弾は回避したり
機体を覆う神気で攻撃の時間を停めて防御したりしながら
翼への攻撃を重ねて相手の機動力を削っていこう
相手の動きが鈍ってきたら兵器創造を使用
鉑帝竜を構成する超硬装甲を元に
無敵斬艦刀サイズの絶対超硬剣を生成
装甲を半分に攻撃力を5倍にしよう
生成した剣を鉑帝竜が咥えて突撃
接近し首のふりで斬撃を放つよ
クロムキャバリアでは出来なかった斬艦に挑戦しようか
試製竜騎『鉑帝竜』に乗り込んだ佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)が見たのは、猟兵の一撃により雲海に失墜する『ガレオンドラゴン』の巨躯であった。
すでに数多の猟兵たちの攻撃により、その身は満身創痍。
しかし、その瞳には戦意は失われて居らず、人に対する憎しみと怒りだけが爛々と輝くようでもあった。
それはこれまで引き起こしてきた無人の『はぐれ飛空艇』の事件の下手人として相応しい妄執にとりつかれた瞳であったことだろう。
どうあっても理解できない。
相容れることのできない存在同士が、この蒼天のブルーアルカディアにおいて激突する運命を避けられぬように。
猟兵とオブリビオンもまた、戦うことを避けられない。
その『ガレオンドラゴン」が雲海に沈むかに思われた次の瞬間、片翼を失った翼が羽撃き、空へと舞い上がる。
「ガアアアアア――!」
凄まじい咆哮と共に大顎が開かれ、晶の駆る『鉑帝竜』を飲み込まんと迫るのだ。
どれだけ傷つけられたとしても、消滅しない限り、その咆哮は人を害し、恐怖に陥れることをやめられないのだ。
「距離を取るって思った矢先にこれか……!」
レールガンを打ち込みながら、『鉑帝竜』と共に晶は回避行動を取る。
あの牙に因われては超硬金属で構成されている機体と言えど、逃れることはこんなんだろう。
あの巨躯でこの速度。
それは脅威にほかならない。捕まると思った瞬間、勇士の飛空艇から放たれた艦載砲の砲弾が『ガレオンドラゴン』の横っ面を叩き、既の所で晶は逃げおおせることができたのだ。
「ありがとう、助かったよ。相手に的を絞らせないように立ち回るの、できるよね?」
晶は勇士たちと連携しながら、『セラフィムV』もまた戦いに参加することを認めていた。
あの青い鎧の巨人には遠距離攻撃の術はないようであったが、飛空艇の艦載砲の一部を抱えてライフルのように扱っているようだった。
「器用だな、まったく」
けれど、晶は不思議と頼もしさを感じていた。
あの調子ならば『ガレオンドラゴン』に沈められることはないだろう。晶は何の気兼ねもなく『鉑帝竜』と共に空を駆け抜け、『ガレオンドラゴン』を翻弄し続ければいいのだ。
「みんなが削っていて置いてくれたおかげで、敵の動きが鈍っているのなら――さぁて、でかいの一発いってみようか!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
『鉑帝竜』の瞳が輝き、その機体を構成する超硬装甲を元に、兵装創造(オルタナティブ・ウェポン)されるは無敵斬艦刀。
そのサイズはキャバリア兵器そのものであった。
巨大なる剣、その絶対超硬剣が生み出されるも、その強度は諸刃であった。一撃放てば、必ず折れてしまうだろう。
けれど、その一撃の絶大さは言うまでもない。
「咥えろ、『鉑帝竜』!」
咆哮するように『鉑帝竜』が超硬剣の柄を咥えて飛翔する。
その速度と超硬装甲の強度、ユーベルコードによって鍛えられた刃の鋭さが乗り、『ガレオンドラゴン』が逃げるのを追う。
「――逃がすか!」
放たれた『セラフィムV』が抱える艦載砲の一撃が、『ガレオンドラゴン』の巨体に当たり、その速度を失墜させた瞬間、『鉑帝竜』が追いつくのだ。
「これで――!」
放たれる首振りの一撃で持って超硬剣が振り下ろされる。
その尾翼とも言うべき尾を一撃のもとに切断し、巨大なる尾をはぐれ飛空艇の甲板の上へと叩き落とすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
西院鬼・織久
これほどの巨体で飛行艇にほぼ傷を付けず乗組員だけを喰らったのでしょうか
気になる所ですが、戦えば分かるでしょう
血肉の染み付いた身であれば、我等が怨念もさぞ滾るだろうよ
【行動】PWO
五感+第六感+野生の勘を活かし敵味方の動きを把握、戦闘知識+瞬間思考力を活かし常に行動を読む
先制攻撃+UCで飛空艇から離れる
変幻自在な空中機動による残像+フェイントを囮に接近
既に受けている傷を狙い怨念の炎を乗せたなぎ払い+切断で蝕む
接近後は牙やブレスをフェイントで誘発し、カウンター+串刺し
口腔内を怨念の炎で焼き牙を脆く、ブレスの際にも影響が出るよう狙う
切断された『ガレオンドラゴン』の尾が風を切るようにして『はぐれ飛空艇』の甲板の上へと落ちた。
それは猟兵たちが成さしめた戦いの痕であり、『ガレオンドラゴン』が消耗し続けていることの証左であもった。
尾翼とも言うべき肉体の一部を失った『ガレオンドラゴン』の動きは精彩を欠くものであったが、その巨躯から放たれる一撃は今だ脅威であったし、何よりもその瞳に輝く人への憎悪と怒りは鎮まるどころか、むしろ傷つけられてなお一層燃え盛るようでもあった。
「ガアアアア――!!!」
その怨嗟の如き咆哮を受け止めても、西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)はたじろぐことを一切しなかった。
その身に宿る怨念は、『ガレオンドラゴン』の保つ憤怒を容易に超えるものであったし、犠牲になった船員たちおんことを思えば、その怒りはさらなる怨念でもって燃え盛るように広がっていくのだ。
「これほどの巨躯で飛空艇にほぼ傷を付けず、乗組員だえを喰らったのでしょうか……」
恐らくそうなのであろう。
人を捕食し、飛空艇だけを無事に返す。
似通った姿故に傷つけることはせず、されど似通っているからと言って同種でもない存在。
それを前にして撒き餌のように扱う悪辣さ。
「血肉の染み付いた身であれば、我等が怨念もさぞ滾るだろうよ――我等が血に潜む竜よ、天地を遍く狩る竜翼と化せ」
ほとばしる竜の力が発露し、その身に宿していたユーベルコードが輝くのだ。
その力を底上げするのは、自身の殺意と怨念の強さである。
赦しがたし。
その言葉が織久の心の中で反芻する。
如何なる理由、如何なる矜持があろうとも、オブリビオンは己の怨敵である。
滅ぼさなければならない。
怨竜顕現(エンリュウケゲン)たる姿は、凄まじい速度で持って『ガレオンドラゴン』へと迫るのだ。
「――その程度の怨嗟が、我等に届くとでも」
放たれる大顎の一撃を、その牙を蹴り砕くことによって躱しながら、残像を残すほどの速度で持って飛翔する織久。
その速度を『ガレオンドラゴン』は捉えることはできないだろう。
傷口から侵食するように生える水晶を砕きながら、怨念の炎による薙ぎ払う一撃が『ガレオンドラゴン』の傷口を焼き切っていく。
「グアアアア――!!」
その咆哮は痛みによる絶叫であったことだろう。
けれど、織久は傷口をえぐり、貫くことを止めない。その痛みにあえぐ絶叫こそが、犠牲になった乗組員たちへの手向けである。
これだけの攻撃を受けてなお、『ガレオンドラゴン』は目の前の猟兵を噛み砕かんと迫る。
「西院鬼の吸血鬼の力を侮るな」
放たれるは怨念の炎。
それはこちらを飲み込まんとした『ガレオンドラゴン』の口腔内を再び炎で焼き、内側から傷つけるのだ。
そして、彼は見ただろう。
口腔の中にある火打ち石のような器官を。
それが『ガレオンドラゴン』のブレスを解き放つ器官なのだ。それを認めた瞬間、織久は怨念の炎と共に、口腔へと飛び込み、その器官を叩き潰す。
「これで最早ブレスは吹けまい――」
凄まじい怨念の炎とブレスを放つ器官が燃え盛る中、織久は口腔より飛び出して、飛空艇の甲板に降り立つ。
その怨念輝く瞳は、今だ消えることはなく。
あるのは、怨敵たるオブリビオンがのたうち、絶叫する姿に募る怨念が晴れるどころか強くなっていく感覚だけであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
“疑似餌”を使う生物もいる以上、あのドラゴンの行動は理に適っていましたが、まさか同胞を求める手段でもあったとは…!
ロシナンテⅢに騎乗し空中戦
飛空艇をかばう手段はなにも防御だけではありません
UC起動
強化された推力移動で鼻先を頻繁にかすめ攻撃対象を此方に誘導
牙や体躯の攻撃を瞬間思考力で見切って躱しながら飛竜口部砲を乱れ撃ち
…故郷の同型機は全機オブリビオン
身につまされる話ではあります
…天使核の露出は後続の攻勢の足掛かり
エイル様、セラフィムVの攻撃準備を!
狙うは飛空艇中枢心臓部の天使核の直上
そこへ突撃を敢行し防備を破壊
ですが、己と異なるモノと共存を図れぬモノに
…残念ながら居場所は無いのです
猟兵の一人が『ガレオンドラゴン』の口腔へと飛び込み、その内部に存在していたブレスを発生させる器官を叩き潰したことにより、『ガレオンドラゴン』は広範囲に渡る攻撃手段を失っていた。
しかし、その瞳にあるのは諦めでも失意でもなかった。
あったのは憎悪と戦意のみ。
魔獣は獣である。
だからこそ、聡い部分もあるだろう。けれど『ガレオンドラゴン』は違う。ただただ、闇雲に人と襲う。
「『疑似餌』を使う生物がいる以上、あのドラゴンの行動は理に適っていましたが、まさか――」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、憐憫にも似た感情を電脳からはじき出していた。
そう、あの行動は『ガレオンドラゴン』にとって同胞を求めるものであり、人の手から飛空艇を開放するような行いであったのだろう。
けれど、それが許される道理は人の世にはないのだ。
人を守る騎士であればこそ、トリテレイアは、それを断じて許す訳には行かないのだ。
機械飛竜『ロシナンテⅢ』と共に空を掛け、スラスターを突撃モードへと変形させる。
それは『ガレオンドラゴン』にとって目を引くものであったことだろう。
「飛空艇をかばう手段は何も防御だけではありません――私が先行します! 後は頼みましたよ」
機械騎士の突撃(マシンナイツ・チャージ)は、その姿でもって『ガレオンドラゴン』の注意を惹きつけるのだ。
強化された推力移動は、『ガレオンドラゴン』にとって煩わしいことこの上ないものであったことだろう。
大顎が広げられ、空を舞う羽根虫が如きトリテレイアを噛み砕かんと襲いかかる。
けれど、これまでの猟兵たちの攻撃に寄って精彩を欠く『ガレオンドラゴン』が彼を捉えることはない。
「……故郷の同型機は全機オブリビオン……身につまされる離しではあります」
トリテレイアにとっても、『ガレオンドラゴン』の行動は、どこか類似するものがあったのだろう。
ただ、立場が違うだけだ。
あちらはオブリビオンであり、己は猟兵である。
そこに分かたれているのは、最も深き溝だけである。乗り越えることも、行き来することも許されぬ断崖。
故に、トリテレイアは機械飛竜から放つ砲撃でもって突破口を開くのだ。
「……天使核の露出は後続の攻勢への足がかり。『エイル』様、『セラフィムV』の攻撃準備を!」
トリテレイアは叫ぶ。
この言葉の意味を『エイル』は理解してくれるだろう。
「トリテレイアさんは! 無茶ばかりをする!」
瞬時にこちらの意図を読み取ったのだろう。『エイル』が叫んでいるが、トリテレイアは突撃を敢行する。
人の身であれば、無謀極まりない行いであったことだろう。
けれど、己の身はウォーマシンである。
ならばこそ、開ける血路もあるというものだ。
あらゆる飛空艇の装甲を貫きながら機械飛竜と共にトリテレイアは、飛空艇の中枢心臓部とも癒える天使核の直上へと舞い上がり、その突撃槍の一撃を投げ放つ。
その一撃は装甲を砕き、天使核を露出させる。
オブリビオンの心臓たる天使核。
その巨躯に見合うほどの巨大な天使核が明滅している。
「己と異なるモノと共存を図れぬモノに……残念がなら居場所は無いのです」
その言葉を告げた瞬間、艦載砲を構えた『セラフィムV』が狙い過たずに、天使核へと砲撃を加える。
まさに寸分違わずの射撃精度。
その一撃を持って、天使核に日々が入るのをトリテレイアは機械飛竜と共に『ガレオンドラゴン』の背を蹴って離脱しながら見下ろす。
そう、もはや『ガレオンドラゴン』に、この大空のどこにも居場所はない。
同胞を願っても、その存在が許されることはない。
その憐憫を持ってトリテレイアは振り払うように飛竜口部砲から砲弾を放ち、『ガレオンドラゴン』を打ちのめすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アドナ・セファルワイド
竜、竜ときたか
なら、余とは最悪の相性を誇るな
この殺竜武器を手にし、竜殺しの属性を帯びた我がセファルワイド帝国騎士に対してはな!
そう叫んで【サマエル・モルトゥス】を呼び出し殺竜オブリビオンマシンに変換。空中戦を披露していくぞ
ああ、確かに妾もあれ…キャバリアとやらを始めて見た時は巨大すぎるロケットナイトだと思ったな
そうつぶやきながら皇帝天鎧を変形させて余自身も空中戦を披露。
帝国騎士に指示を出してガレオンドラゴンに攻撃を加えていくぞ
唯の、帝竜でもない竜等妾の前ではトカゲと同等よ
我がセファルワイドの威光に焼かれる事を誉れと思うのだな
露出した天使核に罅が走る。
その一撃は猟兵と『セラフィムV』によって成さしめられた一撃であり、その致命的な一撃を持って『ガレオンドラゴン』は今まで猛り狂うようであった咆哮を弱々しいものへと変えていた。
あらゆる飛空艇の装甲は焼き焦げ、砕かれ、切り裂かれている。
その竜の肉体も同様である。
鱗は砕かれ、肉は裂かれ。
そして、片翼片腕、尾翼の如き尾さえも失っていた。
けれど、その瞳にある憎悪と人への殺意だけは今だ爛々と輝く。
ここまで打ちのめされてもなお、その憎しみを捨てきれぬ『ガレオンドラゴン』を止めることは、もはや猟兵にしかできぬことであった。
「竜、竜と来たか。なら、余とは最悪の相性を誇るな」
アドナ・セファルワイド(セファルワイド初代にして最後の皇帝・f33942)は宣言する。
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
遍く竜全てに滅びをもたらす殺竜武器で武装したセファルワイド帝国騎士が召喚せしめられる。
「この殺竜武器を手にし、竜殺しの属性を帯びたセファルワイド帝国騎士に対してはな!」
此処に輝くユーベルコード。
その名をアドナは告げる。
「帝の名の元集え殺竜たる偉業を成す我が騎士達よ(ゲオルギウスナイト・ザ・セファルワイド)。皇帝の名の元に宣言する。我が騎士は竜殺しの偉業を成し、帝国の大地無くとも皇帝の威光を照らし続けるのだと」
その瞬間、アドナは『サマエル・モルトゥス』を喚び出す。
その機体は蒼天の空を一直線に飛ぶのだ。
目指す先は『ガレオンドラゴン』の素っ首のみ。
確かにキャバリアという存在をアドナが見た時は、巨大すぎるロケットナイトであると思ったものである。
それもまた懐かしい思い出でもあるのだ。
皇帝天鎧を身にまとったアドナの瞳に映るのは、哀れなる『ガレオンドラゴン』だけであった。
滅びをもたらし、己もまた滅びに瀕している。
ならばこそ、そこにためらいはない。必ず栄華を極めたものは滅びるのだ。今だ滅びぬのだとしても、終わらぬものがないように。
「故に」
アドナは叫ぶ。
帝国騎士、オブリビオンマシンである『サマエル・モルトゥス』と共に大空を駆け抜け、『ガレオンドラゴン』を浮島へと誘導するように攻撃を加えていく。
「唯の、帝竜でもない竜等、妾の前ではトカゲと同等よ。我がセファルワイドの威光に焼かれることを誉と思うのだな」
放たれる殺竜武器の刃の一撃が、巨躯なる『ガレオンドラゴン』の首を叩き落とす。
その一撃を持って戦いは終わりを告げる。
浮島の一つに落ちた『ガレオンドラゴン』の遺骸はきっと、これより回収されるだろう。
アドナはセファルワイド帝国の威光を示すように、殺竜武器の切っ先を天に向け、浮島へと向かってくる勇士の飛空艇に勝利を宣言するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『浮遊島でキャンプを』
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POW : 魔獣や屍人帝国を警戒し、寝ずの番をする
SPD : 火を起こし、手早く食事を作る
WIZ : 安全に寝られる場所を確保し、休息する
イラスト:Hachi
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵による最後の一撃を受けた『ガレオンドラゴン』の巨躯は、一つの浮島の上へとついに失墜した。
首をはねられた『ガレオンドラゴン』の遺骸は、勇士たちにとっては宝の山である。
すでに片腕片翼、そして切断された尾は『はぐれ飛空艇』に固定されている。
牽引する勇士の飛空艇が浮島に降り立った時、勇士たちは興奮しながらも告げるのだ。
「これは、流石に一日じゃ無理だな。まずは、ばらして分け前を分配して……ああ、もうとにかくだ」
勇士は告げる。
仕方のないことであるし、予定が予定通りではなかったのも事実。
けれど、ここに魔獣の恵みが齎されたことを喜びつつ、祝勝会へと様変わりしたことを宣言するのだ。
「おあつらえ向きに、肉はたくさんある。腐らせてしまうより、ここで処理した方がいいだろう。保存できる部位は保存して、足の早い部分はみんなで食っちまおうぜ」
勇士たちの指示の下、倒された『ガレオンドラゴン』が解体されていく。
飛空艇の装甲部分は再利用もできるであろうし、竜の生体部分は爪や牙、鱗や翼、瞳に内蔵までもが武装や装備に加工することが望める。
巨大な天使核がどうなるかはわからないが、恐らく揉め事の種となることを危惧されて、換金されて、この戦いに参じた勇士たちに再分配されるだろう。
ともかく、日も暮れていく。
激戦の後の僅かな憩いの時間であるが、それでも猟兵たちにはかけがえのない時間となるだろう。
思い思いに過ごし、そしてまた次なる戦いに備える。
戦いの連続こそが、このブルーアルカディアという世界にあっては日常であり、生活の一部なのだ。
たくましき勇士たちと共に一夜をともに過ごす。
どんちゃん騒ぎに興じたっていい。魔獣料理の新たなるレシピを開拓したっていいのだ――。
イングリット・ジルニトラ
判定:SPD
ヤレヤレ、しかしあのガレオンドラゴン…。
どこからやってきたのやら。
この空域が縄張りだったのか、どこから流れてきたのか。
まあ、他にもいるなら何匹であっても討つだけの話でもあるのだがな。
浮島の枯れ木やら枯れ草など、焚火の材料集めを手伝うとするか。
ふむ、魔獣の糞もよく燃えるらしいが…あ、乾燥してないと駄目だな。
素直にとってくるか。
しかし、魔獣料理…か。
私がただの飛空艇だった時は備え付けのキッチンで船員が作っていたが、その私がこうして料理をいただくことになるのは何とも不思議だ。
よし、すこし挑戦してみよう
(注:はじめての料理&怨霊纏ってるから嫌な予感がするため全力で止められている図)
日が暮れ始めている浮島の上で横たわる魔獣『ガレオンドラゴン』の遺骸の解体が始まっていた。
勇士の飛空艇には『はぐれ飛空艇』が牽引されており、猟兵たちの攻撃に寄って切断された尾や腕、翼などがくくりつけられていた。
しかし、二隻の中型飛空艇の甲板をフルに使っても『ガレオンドラゴン』の遺骸を全て持ち帰ることはできないであろう。
それほどまでの巨躯なのだ。
「ヤレヤレ、しかしのあの『ガレオンドラゴン』……どこかあらやってきたのやら」
イングリット・ジルニトラ(ガレオノイドの翔剣士・f33961)は人の姿に変じ、浮島に降り立つ。
彼女の懸念も尤もであった。
あれだけの巨大な個体が、今の今までこの空域で見受けられなかったということは、どこかの空域から流れ着いたのかも知れない。
少なくとも、この空域があの『ガレオンドラゴン』の縄張りであった可能性は少ないものであった。
「まあ、他にもいるなら何匹であっても討つだけの離しでもあるのだがな」
ふぅ、と息を吐き出してイングリットは『ガレオンドラゴン』の肉を解体している勇士たちを見やる。
どうやら、此処で一晩キャンプというの名の祝勝会に振る舞われるのだろう。
そのためには火が必要だ。
勇士達は解体に大忙しであるし、自分にできることと言えば枯れ木や枯れ草を集めることであった。
焚き火はキャンプには欠かせない。
篝火にもなるし、なにより食材を加熱するために必要だ。
「ふむ、魔獣の糞もよく燃えるらしいが……あ、乾燥していないとだめだな」
素直に取ってくるかと、イングリットは枯れ木などを集めては、浮島中から焚き火の燃料になるものを重ねていく。
勇士たちが解体した『ガレオンドラゴン』の肉を切り分け、何やら料理を始めようとしているを見て、彼女は、ジルニトラ級陸番艦イングリット……かつての己の姿、その中のキッチンで船員たちが料理を行っていたことを懐かしむ。
遠き日の出来事であるが、今もこうして思い出すことができる。
ただの飛空艇であった彼女であるが、今はガレオノイドである。人型となって、彼等の作った料理を頂くことができるのは、なんとも不思議な感覚なのだ。
「……どうしたの?」
少年『エイル』がイングリットを見やる。
懐かしむような表情が何処か寂しげであったからかもしれない。なんでもないよというようにイングリットは立ち上がる。
「よし、少し挑戦してみよう」
思い立ったが吉日である。行動力があるのは彼女がガレオノイドであるからだろうか。
しかし、彼女はガレオノイドであるが悪霊でもある。
あふれる怨霊を燃料として突き動かされる彼女にとって、料理は初めての挑戦であった。
人型になれたのも最近のことであるし、何より何か良くない予感が『エイル』にはしたのだ。
彼女の手を見れば、何やら怨念めいたものが溢れている。
「え、えっと……イングリット、さん? ほ、ほら、あっちのほうに飛空艇の素材があるみたいなんだ! 僕は飛空艇ってよくわからないからさ! イングリット、さんに教えてもらえるとありがたいんだけど!」
そんなふうに『エイル』が引き止める。
「……ん? そうか? 仕方ないな。それならば、飛空艇のなんたるか。イロハをしっかり教えてやろう」
イングリットに教えてほしいと願う『エイル』の殊勝な心がけにイングリットは頷く。
こうして、イングリットの怨念によって、魔獣の肉が呪詛まみれの何か別のモノに変わってしまうという悲劇は阻止された。
けれど、イングリットの飛空艇講座は、とても興味深く、そして、とても難解であった。
イングリットは自分が料理するという最悪の事態を全力で止められているとはつゆ知らず、けれど、熱心に聞いてくれる『エイル』に飛空艇の魅力を熱弁して、穏やかなキャンプの時間を楽しむのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
オーガスト・メルト
あー、ドラゴン料理か…そいつは流石にパスだ。
俺はともかく、こいつらに共食いはさせられないんでな。
『うきゅー』『うにゃー』『チチッ』
【WIZ】連携・アドリブ歓迎
適当に竜肉以外の料理を確保したらガレオンドラゴンの所へ行くとしよう。
あ、酒もいらないぞ。俺はアルコールの味が知覚できないからな。
さて、このドラゴンの素材はどんな武器に加工したものか…
『うきゅー!』『うにゃーにゃー!』『チチッ』
分かった分かった。ちゃんと料理も食べるさ。
お前達の分も貰ってきたから食べるとしよう。
…ナイツ、戦闘中にヤツが落とした鱗や血は【宝物庫】に確保したか?
『うにゃーん♪』
なら良し。今回の戦果は上出来だな。
魔獣『ガレオンドラゴン』が失墜した浮島は今や飛空艇より降りた勇士たちでごった返していた。
倒された『ガレオンドラゴン』の遺骸は、勇士たちによって次々と解体されていく。
鱗や牙、骨や角、血肉に内蔵に至るまで全てが利用することができるがために捨てるところがほぼ無いのだ。
だからこそ、この巨大さが惜しくもあるのだ。
「この大きさだ。肉だけで一つの街を一ヶ月は食わせることができるのにな……」
勇士の飛空艇は中型である。
大型の飛空艇以上の大きさを誇る『ガレオンドラゴン』の骨や牙などを運搬するだけで肉は捨て置かなければならない。
保存が効くようにできればいいのだが、それも難しいとなれば、この浮島で消費していくのが魔獣を狩る者たちの流儀であり、矜持であろう。
「そういうわけだ。あんたもどうだい。あんたたちは一等長く戦ってくれていただろう。良い部位を食わせてやるぜ?」
勇士たちが肉を解体しながら、オーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)に告げる。
しかし、オーガストはそれを丁寧に断っていた。
「あー、ドラゴン料理か……そいつは流石にパスだ。俺はともかく、こいつらに共食いはさせられないんでな」
オーガストに付き従う白と黒、そして蜘蛛のような竜たちがそれぞれ鳴く。
竜であるから共食いをさせられないのだ。
しかし、オーガストはそれ以外の料理ならばと勇士の飛空艇に残っていた食料をもらいながら、今もなお解体が続く『ガレオンドラゴン』へと向かう。
「おー! 酒はどうだ! せっかくの祝勝会だからな! いいのを開けてるぜ!」
いや、それも結構とオーガストは断りながら歩く。
ちょっと歩くと猟兵は勇士たちに呼び掛けられてしまう。
『ガレオンドラゴン』との戦いを彼等は見ていたし、猟兵の実力を高く評価しているからこそ、少しでも声を掛けたく為るのだろう。
「悪いな。俺はアルコールの味が知覚できないからな」
オーガストにとって、それらはあまり意味のないものである。彼にとって意味があるものとは……それは言うまでもなくドラゴンの素材である。
血肉も酒も興味がないとすれば、やはり鱗や牙、骨や角であろう。
『うきゅー!』
『うにゃーにゃー!』
『チチッ』
オーガストの頭上で三匹が小言のように料理を食べろとせっつくのだ。
彼等も働いてくれたことであるし、小腹が減っているのだろう。
仕方ないとオーガストは手に入れてきた料理を三匹に分けながら、かじる。あまりお世辞にも美味いものであるとは言えないが、それでも贅沢は言えない。
見上げる『ガレオンドラゴン』の巨躯。
もちろん、戦いに置いて多くの戦果を残したオーガストにも素材を報酬として受け取る権利はあるだろう。
けれど、オーガストにはさらにそれ以外の戦利品の当てがあったのだ。
「……ナイツ、戦闘中にヤツが落とした鱗や血は竜帝の宝物庫(ドラゴンズ・ヴォールト)に確保したか?」
『うにゃーん♪』
大福のようなナイツが頷くように鳴く。
それは彼らのユーベルコードであり、竜の宝物庫へと戦いの最中に『ガレオンドラゴン』の砕かれた鱗や噴出した血潮を溜め込んでいたのだ。
「なら良し。今回の戦果は上出来だな」
それらに加えて、新たに権利を主張すれば『ガレオンドラゴン』の部位を譲り受けることもできるだろう。
オーガストは、食事の味にはとやかく言わないが、手に入れた竜の素材には頬をほころばせ、篝火が弾く音を聞き、一夜を明かすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
やれやれ、大物食いをしても全部を持ち帰られるわけじゃないのね。
この世界、天使核動力の冷凍庫は――無いんだろうなぁ。仕方ない、肉の消費を手伝いますか。
アヤメ、羅睺、出番よ。
羅睺なら、新作料理の一つや二つ思いつくでしょ。グリードオーシャンでクジラ料理するのとそんなに変わらないって。
アヤメは羅睺の指示を聞いて、素材を切っていって。
食器とか足りるのかな、これ?
――うん、上出来。
はい、みんな。お料理が出来たからいっぱい食べてちょうだい。
って言う側から料理が消えていくわねぇ。みんな、どこへ食べたものが入ってることやら。
用意した料理はなくなったか。
じゃあアヤメと羅睺を連れて、人目のないところへ移動しましょ。
「やれやれ、大物喰いをしても全部を持ち帰れるわけじゃないのね」
そう言って短く嘆息したのは村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)であった。
彼女は浮島に失墜した『ガレオンドラゴン』を次々と手際よく解体していく勇士たちの姿を認め、彼等が言うように巨体全てを余さず持ち帰ることが難しいことを実感していた。
これだけの巨躯であれば、その肉は一つの街を一ヶ月消費してもお釣りが来るほどであった。
だからこそ、今回勇士の飛空艇が中型であったことが惜しい。
『はぐれ飛空艇』を使ったとしても、肉の大半は置いていかなければならない。
「そうなるとこの世界、天使核動力の冷凍庫は――無いんだろうなぁ。仕方ない肉の消費を手伝いますか」
ゆかりは嘆息ついでに、ユーベルコードに寄って式神のアヤメと羅睺を召喚し、告げるのだ。
「アヤメ、羅睺、出番よ。新作料理の一つや二つ思いつくでしょ。グリードオーシャンでクジラ料理するのとそんなに変わらないって」
「クジラとドラゴンでは、かなり違うでしょうに」
「それに解体の方法も違うし……」
二人はあまり自信がなさそうであった。
それとは裏腹に勇士たちは手慣れたものであった。あっという間に『ガレオンドラゴン』の翼を引き剥がすように解体してくのだ。
鱗を、皮を、飛空艇の装甲をはがして筋繊維を露出させていく。
「ほら、もうあんなに解体されてる。がんばって」
そんなふうに言われては主人の言葉に従うほか無い。ドラゴンの肉を料理するというのは初めてであったし、血抜きや筋、そういったものを如何にしてきりわけていくのかを二人は次々とこなしていく。
火を起こし、鉄板が肉を焼く良い匂いを周囲に漂わせていく。
鍋には酒類や調味料でもって味付けされた硬い肉がホロホロに為るまで煮込まれていく。
かと思えば、ゆかりは食器が足りるだろうかと勇士たちと相談しつつ、解体の片手間に食事ができるように準備をしていくのだ。
「――うん、上出来」
そんなふうに過ごしているうちに二人が出来上がったドラゴン肉の煮込みを作って持ってくる。
ステーキサンドや、スープ。
まあ、有り体に言えば作業の片手間に食事が取りやすいものにしたのだろう。食器が足りなくなってしまうのではと考えていたゆかりにとって、その料理は非常に助かるものであった。
「はい、みんな。お料理ができたからいっぱい食べてちょうだい」
ゆかりの言葉に勇士たちが群がる。
あれだけあったスープやらサンドがあっという間に消えていくのだ。このペースならば、消費しきれるだろうかという心配も杞憂に終るだろう。
「まったく、みんな食べたものが何処に入っていることやら」
ゆかりは苦笑しつつ、料理したものが全て売り切れになったことを、誇らしく思う。
なぜなら、それらを調理したのは自分の式神たちなのだ。
二人がご褒美をしっかりと求めてくるだろうことを見越して、ゆかりは微笑み二人の頭をなで、夜のキャンプをしっとりと楽しむのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
(どんちゃん騒ぎに混じりながら勇士達に魔獣料理のレシピを教えてもらい料理する巫女とその周りを浮遊しながら魔獣料理を食う鬼面)
中々うめえじゃねえか、魔獣料理ッ!あのデカいガレオンドラゴンもこうなっちゃ形無しだな。はっはっはっ!
後は酒があれば完璧なんだがな。
エイルの坊主を見つけたら声をかけるか。
ようエイル、食ってるか? こういうどんちゃん騒ぎは楽しんだもの勝ちだぜッ!
ほら、相棒の作った魔獣料理だ。食ってみろよ。旨いし、あの勇士達をビビらせた魔獣がこんな姿になっちまったのは笑える話ってなもんだッ!
勿論、『おはぎ』も沢山あるぜ。せっかくだから周りの勇士達にも振る舞うとするか、相棒ッ!
【アドリブ歓迎】
次々と勇士たちは『ガレオンドラゴン』の遺骸を解体していく。
骨や牙は素材として使えることはもちろんであるが、皮なども革鎧などの装備品や日用品にも転ずる事ができる。
血肉だってそうだ。
とりわけて、肉に至っては、この巨体である。
一つの街の一ヶ月分を賄うこともできるであろう。しかし、あまりに巨大であるが故に、全てを持ち帰ることはできない。
素材などを優先した場合、どうしたって足の早い肉は痛み、無駄になってしまうのだ。
ならばどうするか。
答えは簡単である。そう、消費してしまえばいい。
「宴だー! 野郎ども! 解体も大事だが、肉も余さず頂くんだぜ!」
浮島で広がるどんちゃん騒ぎ。
それは神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)たちにとっては、祝勝会であった。
戦いに疲れてもブルーアルカディアに生きる人々にとっては、明日につなぐための戦いがまた続くのだ。
一時の憩いと言えど、生活に直結する。
「……これはどう処理をすれば」
相棒である桜は勇士たちに魔獣料理のレシピを教えてもらいながら、ドラゴンの肉を調理してく。
その周囲に浮遊しながら凶津はガツガツと鬼面を揺らしながら、勇士たちが用意した男らしい魔獣料理を平らげていくのだ。
『中々うめえじゃねえか、魔獣料理ッ! あのデカイ『ガレオンドラゴン』もこうなっちゃ形無しだな。はっはっはっ!』
豪快に笑う鬼面。
後はお酒があれば完璧であったのにとぶちぶち言っていると、勇士の一人がにっかり笑いながら、酒瓶を手に持っている。
『おっ! 気が利くじゃねーか! やろうぜ!』
凶津は勇士たちとどんちゃん騒ぎに興じている。それを横目で呆れたように見ながら桜は魔獣料理を作っていく。
そんなふうに浮島の日は暮れていく。
そこに一人の少年『エイル』が物珍しげに『ガレオンドラゴン』の解体の様子を眺めているのを凶津は見つけた。
『よう、エイル、食ってるか? こういうどんちゃん騒ぎは楽しんだもの勝ちだぜッ!』
「あ……そうだね。ただ、珍しくって。こうやってみんな素材にして生きる糧にしていくんだなって、そう思ったらすごいなって思ったんだ」
彼にとっては記憶を失っているせいもあって、ブルーアルカディアの人びとがこうして魔獣の肉や骨を逞しく利用して生きている光景が珍しく思えるのだろう。
そうこうしていると桜が教わった魔獣料理を持ってやってくる。
「……ありあわせみたいだけれど、よかった」
微笑む姿に『エイル』も笑みを浮かべて料理を口に運ぶ。
桜も味見をしていたが、悪くない味付けであったようだ。彼女の生活にはなかった味付けであるから、新たな発見もあったことだろう。
「うん、美味しい。凶津も食べてみてよ。桜は料理上手なんだね」
『あたぼーよ! 相棒の料理の腕は大したもんなんだぜッ! それにしても、あの勇士達をビビらせた魔獣がこんな姿になっちまったのは笑える話ってなもんだぜッ!』
そんなふうに凶津が笑うものだから、あちらこちらから、勇士たちがそれは言わないでくれと笑い声と共に言葉が飛び交うのだ。
「あの、そういえば……」
「……?」
『エイル』がどこか言いにくそうにもじもじしているのを凶津は見て悟るのだ。
『ああ、勿論、おはぎもたくさんあるぜ。せっかくだから周りの勇士たちにも振る舞うとするか、相棒ッ!』
その言葉に『エイル』も勇士たちも湧き上がる。
桜の持ってきた『おはぎ』は勇士たちにも大好評であったようだった。『エイル』も共に頬張りながら、口元にあんこを付けながら笑っている。
少しは気持ちもほぐれただろうかと、二人は思いながらも子供らしい笑顔を浮かべる『エイル』と共に浮島のどんちゃん騒ぎに興じていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
そういえばー…魔獣料理があるんでしたね、ここ。
時期も時期ですし、まあ肉貰いましょうかー。
私、四人の中では料理当番ですしー。
すみません、骨のついた部位ってあります?ええ、でないと陰海月が食べられなくてー。
ふふ、その骨はあとで洗って…素材にしますかー。この世界流ってところですねー。
火起こしして、焼きましてー。
一つは陰海月へ。もう一つは私たちでー。
…焼いただけでも、結構いけますねー?いえ、一番肉好きな『侵す者』(生前:狼獣人)が喜んでましてー。
※
陰海月、持ち手がある焼いた骨付き肉もぐもぐぷきゅぷきゅしている。おいしい。
ちなみに、頑張ったので適正体重にはなった。
勇士たちが浮島に失墜した『ガレオンドラゴン』の遺骸を次々と解体してく様子を見た馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その一柱である『疾き者』は意外なものを見たような表情をしていた。
これまでオブリビオンを打倒すれば、その肉体は霧散したり、時にはその場に残ったりしていたものである。
けれど、ブルーアルカディアにおいて勇士たち、それに一般人たちもまた魔獣を狩る恩恵によって生活を維持しているのだ。
とりわけて、オブリビオンの心臓である天使核は飛空艇や浮遊大陸を浮かばせるのにも必要なものである。
「そういえばー……魔獣料理があるんでしたね、ここ。時期も時期ですし、まあ肉貰いましょうかー」
全ての血肉を持ち帰ることが不可能であるからこそ、解体していく中で足の早い肉をこの場で消費してしまおうと言うのだ。
もはやどんちゃん騒ぎになっている浮島キャンプは、そこかしこで篝火がたかれ、勇士達は解体しながら肉料理に舌鼓を打っているのだ。
何せ、『ガレオンドラゴン』の巨躯である。
この巨大な一体だけで一つの街の一ヶ月分をまかなえるだけの量があるのだ。
「すみません、骨の付いた部位ってあります?」
「いや、骨からほとんど削いでしまわないといけないんだ。骨だって素材になるからな」
『疾き者』は、『陰海月』のためにと骨付きの部位を所望していたのだが、狩った魔獣の全てを残さず利用する勇士たちにとっては、骨の一片さえも無駄にはできないのだ。
「そうですかー……」
これは困ったことなったと『疾き者』は思ったが、そこに勇士の一人が声をかける。
「ひとかけらでいいのなら、用意するぜ。あんたたちが居なかったら、この大物を狩ることだってできなかったんだ。それくらい主張したって、誰も文句は言わねえよ」
そう言って、勇士の一人が骨付き肉をそのまま手渡してくれる。
彼らは猟兵たちが『ガレオンドラゴン』との戦いに置いて、重要な役割を果たしたことを知っている。
だからこそ、本来であればできないことも融通を利かしてくれたのだ。
「ふふ、その骨は後で洗って……素材にしますかー。無駄にはしないと誓いますよー」
『疾き者』は礼を告げて、篝火から火を狩りて肉を焼いていく。
ドラゴンの肉と聞くから、身構えてしまうが牛でも豚でもなく、勿論鳥でもないのだが、これまで口にした動物の肉の特徴を良いとこ取りしたような味わいになっていくらしい。
らしい、というのは勇士たちの言葉であるし、彼等の食する魔獣たちの肉の良いとこ取りであるからだ。
勿論、『疾き者』たちが魔獣を食したことはないから、恐る恐るとばかりに焼き上がった肉に手を付ける。
その横で『陰海月』はためらうことなく、ぷきゅぷきゅ言いながら美味しそうにドラゴンの骨付き肉を頬張っていく。
『ぷきゅー!』
美味しそうな鳴き声が聞こえて、『疾き者』も口に運ぶ。
ほろりと解けるような肉の感触。だけど噛めば噛むほどに味わいが広がっていく。脂はあれどあっさりしているようであって、なるほどと勇士たちの言っていた言葉を理解するのだ。
「……焼いただけでも、結構いけますねー?」
身体の中で四柱の中の一柱である『侵す者』が喜んでいるのがわかる。肉が一番好きな彼にとっては、この上ない美味であったことだろう。
思いがけず、肉にありつけた喜びと『陰海月』の嬉しそうな鳴き声を聞きながら、『疾き者』は篝火の炎を見つめる。
激戦の後ではあったけれど。
それでも、勇士の彼らにとっては日常の延長線上。だからこそ、彼らの逞しさ、この世界の流儀を肌で感じ、恵みたる肉の味と、ブルーアルカディアの夜空をきっと忘れないであろう――。
大成功
🔵🔵🔵
西院鬼・織久
我等が血肉を喰らうのは戦いにおいての殺し合い。実際に食糧として食べる事はなかなかありません
それにしても手際が良い。この機会に学ばせていただきます
【行動】
体に満ちる怨念の影響で継戦能力が備わっているため普通の空腹や眠気を感じず、食事は保存食と薬が基本
今回もUCで雑菌が発生する余地のない保存食を作る分を買い取るが、勇士達の解体技術と知識を今後の戦闘に役立てる事が優先
五感と第六感+野生の勘で警戒をしつつ知識と技術を学習
魔獣の解体方法、追跡方法や狩猟法、偵察や警戒のコツを始め、この世界に来て必要性を感じている飛行手段を考えるために幻獣や飛空艇の事など情報収集を行う
ついに魔獣『ガレオンドラゴン』の首は落とされ、その巨躯は浮島の一つに失墜した。
巨大なる個体。
それは言うまでもなく、巨大であればあるほどに勇士たちの分け前は多くなる。骨に牙、角や鱗、血肉の一片に至るまで利用することができる。
その価値はまさに一攫千金と呼ぶに相応しいものであったことだろう。
けれど、悲しいかな。
勇士の飛空艇は中型であり、牽引してきた『はぐれ飛空艇』をあわせても大型の飛空艇を超える巨躯であった『ガレオンドラゴン』の血肉をあわせた全ての素材を持ち帰ることは難しかった。
ならばこそ、足の早い血肉を此処で消費しようと、浮島にキャンプが開かれる。
篝火がたかれ、解体してく端から肉を調理し振る舞われていく。
その様子を西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は興味深そうに見つめていた。
彼らにとって、血肉を喰らうのは、戦いにおいての殺し合いである。実際に食料として食べる機会というのは、そうそうあるものではなかった。
「それにしても、手際が良い」
織久が見つめる先には、『ガレオンドラゴン』の内蔵を取り出し次々と肉と皮、そして血抜きをしている光景であった。
血の一滴もまた素材に為るのだろう、次々とタンクに詰め込まれていくのだ。
「この機会に学ばせて頂きます」
彼には体に満ちる怨念の影響でもって戦い続ける能力に長けている。空腹や眠気を感じることなく、食事は基本が保存食や薬ばかりである。
織久のユーベルコードであれば、『ガレオンドラゴン』の分けてもらった肉も雑菌が発生する余地がないほどに完璧に滅菌処理した保存食が出来上がる。
最初は買い取ると言っていたのだが、勇士たちは猟兵たちの戦いぶりを見ていた。
「あんたたちから金を取ったんじゃ、俺たちだって金は受け取れねえよ。だから、そいつは分け前だと思って、遠慮なく持っていってくれよ」
そういって織久に『ガレオンドラゴン』の肉を押し付けたのだ。
「ならば、これを機会に解体技術や知識を教えてもらえないです。今後の戦いに役立つはずです」
魔獣と言えど生物である。
ならばこそ、急所や傷つけてはならぬ内臓の部位などもわかるはずだ。そうすることによって怨敵と言えど、敵を知ることは、さらなる技術の向上にもつながるはずだ。
「それなら、じっくり見ていってくれよ。そこらじゅうで解体しているからよ」
勇士たちは豪華に笑いながら、解体を続けていく。
それを織久はつぶさに観察していく。
解体方法だけではない。魔獣の追跡方法や狩猟方法、あらゆることを学んでいく。
「やっぱり魔獣は俺達よりも強いし、デカイからな。こっちが待ち伏せていたりすることを勘付かれるともうダメだ。息を潜めて、じっくりと待つことも時には必要だったりするもんさ」
「なるほど……」
織久はこの世界に来て飛行手段の必要性を強く感じていた。
だからこそ、幻獣や飛空艇の情報もまた欲しがっていた。聞けば勇士たちは何でも答えてくれた。
だが、それ以上に織久に勇士達は絡みたがっていた。
やれ、肉を食えだ、酒を呑めだと解体作業中であれど、次々と寄ってくるのだ。
それを織久はどう思っただろうか。
にぎやかな騒ぎが浮島のキャンプに響きわたる。日が暮れてとっぷり暗くなった夜空に星々が明滅している。
大騒ぎも忘れるような美しい光景を見上げながら、織久は己の体に蓄積されていく尽きることのない怨念と共に、また新たなる戦いへと一歩を踏み出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「いやぁ美味しかったねぇ、あの敵さん。やっぱり竜は美味いね。」
さてさて、一仕事したし今度はお酒でも飲んでのんびりするかな?
丁度いいツマミもあることだしね。
異空間収納のすゝめから赤ワインを取り出してっと。
先ずは敵さんの肉を生で食べてみよう(お腹を壊さないようにUCで一応回復)
「やっぱり食べるならレバーだよねぇ。血の滴ってる感じのが特に良き。」
ということで、早速酒盛りを開始しようか。
他の勇士達もお酒が欲しそうなら僕のお酒の一部を分けてあげよう。ここはビールとかかな?
少年にはジュースで。もうちっと大きくなったらお酒を奢ってあげるよ。
「その為にもこの先も生き残らないとね。お互いに。」
戦いの後の一服ほど、彼――須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)にとって至福の時間であることはなかったことだろう。
激戦とも言える魔獣『ガレオンドラゴン』との戦いを終えた莉亜は、その血潮を吸い上げながら味わいの記憶を反芻する。
「いやぁ、美味しかったねぇ、あの敵さん。やっぱり竜は美味いね」
彼にとって敵、即ちオブリビオンこそが己の吸血衝動を開放し、癒やしてくれる存在である。
戦いの最中に味見とばかりに血潮を吸い上げていたからこそ、ほろ酔いと言っても状態であったのかもしれない。
「さてさて、一仕事したし今度はお酒でも飲んでのんびりするかな? 丁度いいツマミもあることだしね」
そういって莉亜は異空間から赤ワインを取り出し、手に入れた『ガレオンドラゴン』の肉を生で食べようとする。
それを勇士は即座に止めようとしたが、莉亜のフォークが口に運ばれるのが早かった。
生というか刺し身で、ドラゴンの肉を食べるのは確かにあることはある。しかし、強烈な滋味が体を襲い、ひとかけらであっても十分すぎるほどの効力を発揮する。
過ぎた力は体を破壊するように莉亜の身体が弾けるような感覚を伝えてくる。
「……やっぱり食べるならレバーだよねぇ。血の滴ってる感じが特に良き」
にっこり笑顔である。
万能血液(オールブラッド)によって、彼にはドラゴンの血肉であっても、生食を可能にするのだ。
勇士たちは、その光景に空いた口が塞がらなくなっていた。
「すげぇな……どういう胃袋しているんだ」
竜の肉を生食した莉亜の身を案じないわけではなかったが、莉亜自身が気にした様子もなくぺろりと食べていくのだ。
これが猟兵であると言わんばかりである。
「そういう人なんだよ、きっと。心配なんて無用って感じだ。すごいけれど」
そんなふうに少年『エイル』がつぶやく。
真似しようとしてできるものではないと理解しているのだろう。そんな視線の先で莉亜は勇士たちと酒盛りを開始する。
自身の亜空間から取り出したお酒の一部を分けて飲み交わしながら、どんちゃん騒ぎである。
「少年にはジュースで。もうちっと大きくなったらお酒を奢ってあげるよ」
「そんなにお酒って良いもの? 僕にはまだよくわからないけれど……」
『エイル』はジュースを受け取りながら、莉亜と勇士たちの騒ぐ姿を見つめている。
楽しそうなのは認めるけれど、そんなになるまでのことなのだろうかと今だ理解が及んでいない。
後十年もすればわかるよ、と勇士と莉亜たちが笑う。
「でも、その約束は覚えておくよ。きっとだよ」
「そのためにもこの先も生き残らないとね。お互いに」
莉亜のグラスと『エイル』のグラスが軽く触れ合って音を立てる。その約束が果たされる日が来るのかはわからない。
けれど、この日の経験がきっと彼を一つ大人にするだろう。
それを思えば、莉亜は先行きが楽しみになる。良いツマミは良い酒を呼んでくるように、良い酒は良いツマミ……少年『エイル』の未来をきっと呼んでくるのだと莉亜は信じるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
『ガレオンドラゴン』も素材になるんだ。さすがに逞しいね!
とはいえ、メカニックとしては祝勝会も楽しみではあるんだけど、
どうしても『ガレオンドラゴン』や『はぐれ飛空挺』に目がいっちゃうね。
解体しながらなら、いろいろ調べてみてもいいかな?
どういうシステムで動いているのか解れば、整備とかしやすくなりそうだしね。
天使核からのエネルギー抽出法とか、それを利用したフライトシステムとか、すっごく興味ある!
生身はちょっと専門外だけど、それでも参考にはなるだろうしね。
あ、せっかくだから食べる分はしっかり確保しておくよ。お肉チャンスも大事だからね!
特製の辛味スパイスに漬け込んでおいて、あとで焼いてもらいたいなー♪
浮島に沈んだ『ガレオンドラゴン』へと勇士たちは次々に取り付いて、解体を始めていく。
その手際の良さは目をみはる物があった。
何せ、竜の肉は足が早い。手早く処理していかねば、腐ってしまう。
魔獣を狩って生活するブルーアルカディアの人びとにとって、狩った魔獣の素材を無駄にすることは特に忌避されるべきことであっただろう。
それこそが、彼らの流儀であり生きる力である。
「『ガレオンドラゴン』も素材になるんだ。さすがにたくましいね!」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はそんな光景を見つめながら、その逞しさに感心していた。
とは言え、彼女はメカニックである。
祝勝会として竜の肉を振る舞ってもらえるのは、とても楽しみである。けれど、どうしたって彼女の興味は『ガレオンドラゴン』の飛空艇の装甲や、『はぐれ飛空艇』に目が言ってしまうのだ。
「ね、ちょっと解体しながらなら、色々調べてもいいかな?」
自ら理緒は手伝いを勇士たちに申し出る。
人手はあるにこしたことはないのだ。拒否されることなく理緒は解体ついでに『ガレオンドラゴン』の飛空艇の装甲を調べていく。
飛空艇の殆どが天使核……即ち、オブリビオンの心臓を動力として抽出することによって空を飛ぶことを可能としている。
動力源の仕組みは未だ解明できなが、純粋なエネルギーの塊なのかもしれない。
それから動力に変換していくシステムに理緒はとても興味を持っていたのだ。
「……生体は専門外だけど、これだけ装甲と癒着しているってことは、元は飛空艇だたのかな……?」
天使核の異常暴走によって竜の姿へと内側から変容したというのであれば、この癒着の具合も理解できる。
巨大な天使核であれば、あるほどに制御が難しいのかも知れない。
ならばこそ、やはり天使核を動力として用いいた文明は危ういものがあるのかもしれない。
暴走の危険性を持ちながら、しかし、そうしなければ雲海に沈んでしまう。
「難しいなー……でも、あの『セラフィムV』も天使核で動いているんだよね……」
『ガレオンドラゴン』と同様の暴走も起こってしまうかもしれない。
それは考えたくない可能性であったが、それを捨てきることは難しい。
調査を一段落させて、理緒は本日のメインである魔獣料理にフォークを伸ばす。
「ま、せっかくだしね! お肉チャンスも大事だよね。あ、そうだお肉後で分けてもらえないかな?」
彼女の希望はきっと通るだろう。
猟兵たちの戦いぶりがなければ、この大物を狩ることだってできなかったのだから。快く分けられた肉を受け取り理緒はどうやって調理しようかなと頭を巡らせる。
「たっぷりスパイス……うん、辛味スパイスで付けこんで置いて、後で焼いてもらうのもいいかも!」
理緒は勇士たちの味付けでは辛味が足りないと思ったのだろう。
彼女特性の辛味スパイスを効かせた肉は、翌朝振るわ回れることのなるのだが、理緒以外のものは激辛に舌が痺れて、のたうち回る結果となる。
当人である理緒はこんなに美味しいのに、と一人でぺろりと食べきってしまったことから、勇士たちの間で彼女は激辛女王の名でもって噂されるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
甲板の上もいいですが、力強いステップが踏める土の上の方も好きですね
(浮島に降り立ちピョンピョンと飛び跳ねる)
料理や解体のお手伝いはできそうにないので
ここは戦勝祝いのダンスを踊って盛り上げるとしましょう
さて、どんなダンスが良いかな・・・
(少し考えた後、肩幅ほどに足を開き、両手で太ももをなぞりながらゆっくりと上体を起こした後{紅焔の旋律}で『ダンス』を始める)
この勝利は、勇士の皆様の欲、故郷や仲間たちの希望の未来を欲する心の炎がもたらしたものです。
その美しく燃え上がる炎を表現するには、この{紅焔の旋律}がふさわしいでしょう。
え?料理ができあがった?
...ちょっと休憩させていただきます
巨大な魔獣である『ガレオンドラゴン』を打倒した祝勝会が行われている浮島では、未だに続く『ガレオンドラゴン』の解体と並行して篝火がたかれ、魔獣料理が振る舞われ続けている。
だが、こういう祝勝会に出し物というのは必須であったことだろう。
播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)は、それを買って出ていた。
「甲板の上もいいですが、力強いステップを踏める土の上の方も好きですね」
飛空艇から浮島に降り立った彼女は、大地の上でぴょんぴょんと飛び跳ねて、確かな土の感触に頬をほころばせていた。
すっかり浮島は『ガレオンドラゴン』の解体と素材の選別、飛空艇に運び込む勇士たちでごった返していた。
祝勝会と言っても、簡単なものであったし、持ち帰ることの難しい『ガレオンドラゴン』の肉を消費するために浮島のあちこちで食事が振る舞われている。
勇士達は誰も彼もが忙しそうであったが、それは嬉しい悲鳴というものであったことだろう。
だからこそ、こんな時には娯楽が必要である。
クロリアは戦勝祝いのダンスを踊って盛り上げようと、思案する。
どんなダンスが相応しいかと頭を捻っていたが、少しの時間の後彼女は肩ほどに足を開き両手で太ももをなぞりながら、ゆっくりと状態を起こした後、篝火に負けぬほどに天を衝かんと燃え上がり、鎮まることなく燃え広がる炎を表現した情熱と欲望のリズムを刻み始める。
「おっ、いいぞ!」
そんなふうにクロリアの刻むリズムに勇士たちが喝采を投げかける。
「この勝利は、勇士の皆様の欲、故郷や仲間たちの希望の未来を欲する心の炎がもたらしたものです」
クロリアの言葉に勇士達は頷く。
確かに彼等は私利私欲で動く者が多い。けれど、それは全て浮遊大陸に生きる人びとの生活に直結するものである。
危険であれど、その戦いの全ては生きるためのものだ。
戦果を得るために危険へと敢えて飛び込まねばならぬ時もあるだろう。
恐ろしい魔獣の爪や牙へと立ち向かわねばならぬ時だってあるだろう。
いくつもの試練をくぐり抜けてきたからこそ、今日の勝利が在るのだ。だからこそ、クロリアは刻む。
紅焔の旋律でもって、彼等の欲を彩るのだ。
欲望を肯定する。生きたい、明日を見たい、その欲望なくば、彼等はとっくの昔に滅びていたことだろう。
けれど、クロリアが表現する炎が、相応しき旋律と共に魅せるダンスでもって、彼等の戦いを讃えるのだ。
ダンスの終焉には拍手喝采が飛び、クロリアは照れくさそうにお辞儀を一つする。
汗が噴出して、身体がエネルギーを求めているのだ。
「え? 料理が出来上がった?」
ちょうどよかったと、勇士たちが持ってきた料理をクロリアは頬張る。
ダンスで消費したエネルギーを補填するように竜の肉は彼女の体に滋味と活力を再び与えることだろう。
みなぎる力と共にクロリアは、より一層燃え上るように、情熱的なダンスでもって祝勝会を彩るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
髪塚・鍬丸
魔獣解体の様子を興味深く眺める。よくこんな奴に勝てたもんだ。
「手伝いたいとこだが素人じゃ邪魔になりそうだ、すまんな」
軽口を叩くが、実際は限界を超えた空中機動で身体中にガタがきて立ってるのもやっとだ。
速いだけじゃ駄目だ。更に研鑽しないと…等と竜の翼や骨等を見ながら思案する。
その土地の事を知るにはその土地の飯を食う事だ。酒と飲み仲間がいれば申し分ない。
宴会に加わり、共に戦ったエイル君や勇士達と宴会を楽しもう。お互い酒の肴になりそうな冒険譚の一つ二つはあるだろう。話を聞かせてくれないか。
こちらからは、そうだな。大洋のど真ん中で巨大な水竜と戦った話でもしようか。
戦の後の醍醐味だ。夜を徹して語り合おう。
異世界からの来訪者である猟兵にとって、ブルーアルカディアという世界はオブリビオンありきの世界である。
浮遊大陸の動力となっているのはオブリビオンの心臓、天使核だ。
それを得るためには魔獣を狩らねばならず、時としてそれは生命を掛けなければならないものだ。
だからこそ、魔獣を狩るために飛空艇に乗り込む者たちを人々は、称賛をもって勇士と呼ぶ。
「よくこんなやつに勝てたもんだ」
浮島に失墜した魔獣『ガレオンドラゴン』の遺骸を見つめ、髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)はしみじみとつぶやいていた。
これだけの巨躯である。
肉は街一つを一ヶ月賄うだけの量があるのだという。けれど、勇士の飛空艇は中型だ。
牽引してきた『はぐれ飛空艇』を用いたとしても、角や牙、骨といった素材を運ぶので手一杯である。
ならば、狩った者の義務として一つも余さず再利用するのが彼等の流儀故に、ここで消費指定校と言うのだ。
勇士たちが次々と『ガレオンドラゴン』の巨躯を解体していく。
「よお、あんたもやっていかないか? 人手があると助かるんだが」
「いや、手伝いたいとこだが、素人じゃ邪魔になりそうだ。すまんな」
そう言って鍬丸は勇士の言葉に頭を振る。
軽口を叩いたように見えていたのならば、鍬丸の忍びとしての技量も確かなものであった。
実際には限界を超えた空中機動で体中にガタがきているのだ。立っているのもやっとな状況で解体の手伝いをするのは、流石に鍬丸と言えど辛いところであろう。
「速いだけじゃ駄目だ。更に研鑽しないと……」
その鍬丸の瞳の先にあるのは、『ガレオンドラゴン』の翼や骨である。
どうにかして己の速度に力を加えなければならない。研鑽の余地があるということは成長できるということだ。
「あ、いたいた。鍬丸さん」
そういって『エイル』が見上げていた解体現場にやってくる。
どうしたのだろうと思っていると、彼から食事に誘われるのだ。持ち帰ることのできない肉をこの場で消費していかなければならず、その功労者である鍬丸を呼びに来てくれたのだ。
「それはありがたい。その土地のことを知るには、その土地の飯を食うことだ。酒と飲み仲間がいれば申し分ない」
鍬丸は誘いを受けて宴会の席にお呼ばれする。
ほとんどの勇士たちは交代制で解体と宴会を行ったり来たりしている。ブルーアルカディアにおける祝勝会とはそういうものなのだろう。
「お互い、酒の肴になりそうな冒険譚の一つや二つもあるだろう。話を聞かせてくれないか」
「お、聞いちゃうか? ふふん、あれはな――」
「ああ、おいおい。おっちゃんの話長くなるんだよなぁ」
などと勇士たちそれぞれに冒険譚があるのだろう。鍬丸はそれを興味深く聞いていく。
浮遊する大陸の冒険。魔獣との死闘。
様々な冒険を聞いていくうちに、勇士たちも鍬丸の話が聞いてみたいと言い始めるのだ。
「そうだな。大洋のど真ん中で巨大な水竜と戦った話でもしようか」
勇士たちは大洋というものが如何なるものかわからないようであったが、それでも雲海のようなものだと伝えれば伝わるだろう。
鍬丸は、その話を続けながら、夜を徹して戦の後の醍醐味を勇士たちと共に味わうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鈴久名・紡
祝勝会という名の解体作業や豪快な料理を
むすびを肩に乗せて眺めて巡る
途中、エイルに逢ったなら
先ほど掛けてくれた言葉への礼を
ありがとうな
自分でも『違う』と思ってはいても
誰かにそう言って貰えるのは嬉しいものだから
肩の上のむすびがエイルに興味を示して
耳をひこりと揺らす
なんだ、気になるのか?
そう声を掛けてやるとコクコク頷いて
ぱたぱたと自分からエイルの元へと飛んでいこうとする
あぁ、むすびという
縁を紡ぐ、の『つむぐ』が俺で
縁を結ぶ、の『むすび』がこいつ
名を尋ねられたらそう応え
ふと思う
エイルとVの出逢いがどんなものだったのか
目的地に辿り着いた時
居合わせる事が叶ったら、聞いてみるのも悪くないな
さて、何か食べよう
浮島に失墜した魔獣『ガレオンドラゴン』の遺骸を解体する中、すでに祝勝会という名のどんちゃん騒ぎが始まっていた。
それもそのはずであろう。
これだけの巨躯を誇る魔獣を討ち取ったとあれば、勇士の誇りである。
ただ、惜しむらくは『ガレオンドラゴン』があまりに巨躯であったがために、肉の大半を浮島に遺棄していかなければならないということであった。
しかし、彼等は勇士である。
狩った者の矜持、そして誇りにかけて。また礼儀として感謝を込めながら魔獣の肉をその場で持ち帰れぬ分を消費していこうと言うのだ。
「だからこれか……」
鈴久名・紡(境界・f27962)は翼付きの兎型幻獣である『むすび』と共に、解体作業や豪快な料理を眺めて巡っていた。
そのどれもが興味を引くものばかりであったことだろう。
解体する手順や無駄のない素材の扱い方、肉の料理は殆どが豪快な男の料理というものばかりであったが、ドラゴンの肉というのであれあ、凝った料理よりも案外その方が本来の肉の旨味が引き出されるのだろう。
「あ……」
そうしていると途中、少年『エイル』と出会う。
彼は少し気恥ずかしそうにしていた。なぜなら、戦いの最中に告げた言葉が、知ったような口をきいてしまったからだ。
「ありがとうな。自分でも『違う』と思ってはいても、誰かにそう言ってもらえるのは嬉しいものだから」
紡は『エイル』の思いとは裏腹に逆に礼を告げる。
それに驚いたように手を慌ててふりつつ『エイル』はやめてください、と困ったような顔をするのだ。
「僕は、そう感じたままを言ったまでだから。ただ、どうしたって僕には同じに見えなかっただけで」
それが正しい瞳を持っているからだろうと紡は思っただろう。
肩で『むすび』が『エイル』に興味深kげに耳をひこりと揺らしているのに気が付き、紡は頷く。
「なんだ、気になるのか?」
なら行っておいでというように促すと『エイル』へと『むすび』が飛んでいく。『エイル』は驚いたように受け止めて見上げる。
「あぁ、『むすび』と言う。縁を紡ぐ、の『つむぐ』が俺で、縁を結ぶ、の『むすび』がこいつ」
「なるほど……不思議な名前の響きだなって思ってたんだ。そんな意味があるんだ……」
不思議だな、と『エイル』はしみじみと二人の名を呼ぶ。
そこで紡は思うのだ。自分と『むすび』の出会いがあったように『エイル』と『セラフィムV』の出逢いもどんなものであったのか。
尋ねれば、至極あっさりしたものであった。
記憶を失って、『セラフィムV』の前に立っていたと。
それ以前の記憶はなく、そこから先は屍人帝国に追われる記憶しかない。けれど、少しだけ彼は笑っていうのだ。
「でも、おかげであなた達と知り合うことができた。きっとこれが僕の財産なんだってそう思えるんだ」
それを聞いて紡は微笑む。
出会いが何かを形作るように、自分の名が何かを紡いでいくこともあるのだろう。
「さて、何か食べに行こうか」
ぐぅ、と腹の音がなった気がして紡は『むすび』と共に何かを食べようと振る舞われる豪快な料理の元へと足をすすめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・シノノメ
わー!お宝そのもの!剥ぎ取りも採取も捗りそうだね!
うんうん、じゃあお肉を焼いちゃおっか!ドラゴンの肉って火が通りにくそうだし、目には目を、歯には歯を、ドラゴンにはドラゴンを、だよね!
『火竜の戦斧』を振り回そう!金の炎で一気に焼き上げちゃうよー!
はいはい、どんどんお肉持ってきてね!んーたくさんありそうだねぇ、『怪力』と『運搬』でお肉を一箇所に集めて焼き上げるよ!
あ、それとちょっとでも良いから商談でもしない?私ってば珍しい素材にメがなくってさ!代わりに良さそうな素材を『四次元ポシェット』から取り出して勇士たちの皆に提供できたら良いかなー!
むふふ、新天地での商売も良いものだよね!
(アドリブ等歓迎)
「わー! お宝そのもの! 剥ぎ取りも採取も捗りそうだね!」
浮島に失墜した魔獣『ガレオンドラゴン』の巨躯を見上げ、キリカ・シノノメ(底無し在庫・f29373)は興奮したように叫んでいた。
それは勇士たちも同様であろう。
これほどまでに巨大な魔獣を狩ることができたのは、凄まじい戦果である。
猟兵たちの協力がなければ、勇士達は『はぐれ飛空艇』と同じ運命を辿っていたであろう。
「まったくだな! これで暫くは金に困らねぇな! よぉし! さっさとやっちまうか!」
勇士たちは早速『ガレオンドラゴン』の解体に入る。
彼等にかかれれば、これだけの巨躯であってもすぐに皮や牙、骨や翼といった素材に分けられていくことだろう。
けれど、肉だけはどうしようもない。
生モノであるし、これだけの量であれば一つの街の一ヶ月分を賄ってもお釣りがくるほどの量だ。
惜しいのは、勇士たちの飛空艇が中型のものであること。牽引してきた『はぐれ飛空艇』を使っても肉は全て持ち帰ることができない。
ならばどうするか。
答えは簡単である。
「なら、解体しながら消費しちまえばいいんだよ!」
「うんうん、じゃあお肉焼いちゃおうっか! ドラゴンの肉って火が通りにくそうだし、目には目を、歯に歯を、ドラゴンにはドラゴンを、だよね!」
キリカが手にしていたのは火竜の炎によって鍛え上げられた熱を発する戦斧であった。
彼女が一度それを震えば、金色の火炎が迸り、篝火のように浮島に輝くのだ。
「はいはい、どんどんお肉持ってきてね! んーたくさんありそうだねぇ……なら、一気に焼き上げちゃおう!」
ステーキに必要なのは火力である。
ドラゴンの肉は言うまでもなくレアな食材だ。様々な動物の肉の特徴を備えたような味わいは、やはり簡単な味付けのほうがシンプルで味を引き出すものである。
キリカの放つ黄金の炎がこんがり綺麗に焼けましたとばかりに次々と勇士達の手元に渡っていく。
解体作業中のお供に。
宴会のお供に。あらゆる勇士たちに行き渡るほどにキリカの豪快な黄金火炎のドラゴンステーキは振る舞われていく。
「こんなものかな? んー、いい匂いしてる。我ながら良い火加減だったよね!」
キリカはそうだ、とまた思いつく。
『ガレオンドラゴン』の素材は余さず使うことができる。
ならば、少し商談をしたっていいだろう。何せ、キリカは『ガレオンドラゴン』との戦いの功労者だ。
望めば、天使核以外の部分の素材を手に入れることだってできるだろう。
「私ってば珍しい素材にメがなくってさ! 交換ってわけじゃないけど、こっちにも提供できるものがあるかもしれないよ!」
「ほう、珍しい素材ね。まあ、あんたはよく戦ってくれたし、交換どころか、好きな部位を持っていく権利くらいはあるさ」
勇士はどれがいい? と言うように飛空艇の甲板に載せられた『ガレオンドラゴン』の素材を示す。
牙や爪、瞳に皮、鱗などなどあらゆる部位が揃っている。
「太っ腹だね! むふふ、新天地での商売も良いものだよね!」
最初は交換でどうにかできるものかと思っていたが、ここはブルーアルカディアである。
魔獣の存在で持って浮遊大陸が維持されているからこそ、それらを狩る勇士たちには特権が与えられている。
雄々しく戦ったものには、それだけの報酬があるものだ。
キリカは新たな素材を手に入れてホクホク顔になりながら、ふたたびご機嫌で戦斧を振るい、黄金の火炎を立ち上らせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
さあて、一仕事終えたことだし、肉食って帰るか。
A&Wのドラゴンステーキはうまかったがコイツはどうかね。
(『無限収納』から塩、胡椒は勿論、様々なソースを出して試してみる。勿論、勇士たちやエイルが望むなら気前よく分け与える)
しかし、この世界のオブリビオン、特に魔獣は良いね。
害だけ及ぼして倒したら消える奴が多い他世界のオブリビオンに比べて役に立ってる。つーか、天使核のことを考えたらオブリビオンがいないとこの世界成り立たねえんじゃねえか。
などとたわいないことを考えながら肉を食って勇士たちと交流して帰還します。
戦いの後は祝勝会である。
言うまでもなく魔獣『ガレオンドラゴン』の巨躯は凄まじい物量だ。
鱗や牙などは言うに及ばず。
その骨や体内の内蔵でさせ、飛空艇を作り上げるには必要な素材と成り得るだろう。それに身にまとっていた飛空艇の装甲だって使いみちはあるのだ。
それ以上に肉である。
これだけの巨躯であれば一つの街の一ヶ月分を賄ってもお釣りが来るほどである。
だが、勇士の飛空艇は中型であり、牽引してきた『はぐれ飛空艇』を使っても、やはり肉だけは全て持ち帰ることができない。
ならば、どうするかと言われれば、此処からこそがブルーアルカディア流とでも言うべきか。
浮島で行われる解体作業と平行した祝勝会という名のドラゴンステーキの大盤振る舞いである。
街で食べようとすれば、相当な値段がつくのだが、こればかりは戦った勇士たちの特権である。
あちこちで解体しながら『ガレオンドラゴン』の肉が焼ける匂いが香ってくるのだ。
「さあて、一仕事終えたことだし、肉食って帰るか」
アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は下唇を舐めて、如何なる味かを想像する。
他世界でも彼は竜の肉を食べた経験があった。
あれはうまかったなと、思い出して『ガレオンドラゴン』の遺骸を見つめる。
「四次元魔法陣~ってな」
アレクサンドルは無限収納(ナンデモハイル)より、引っ張り出した様々なソースを並べる。
やはりステーキと言えばソースである。
塩コショウといった素材の味を引き出すものでもいいが、それはあくまで下味をつけるものだ。
「量を食うならやっぱりソースで味を変えていかねーとな」
よっ、と軽くアレクサンドルの前に置かれた盛大な量のステーキ。
勇士たちでもたじろぐ量であるがアレクサンドルは動じない。ステーキにナイフを入れ、切り分けて口に運ぶ。
まずはそのままで……。
「おっ、これはイけるな。魔獣って聞くからもっと粗野な味かと思っていたが、滋味のあるいい味じゃねえか」
次はソースを、とアレクサンドルが楽しんでいると『エイル』が通りがかった。
彼はあまりの肉の量にちょっとびっくりしていたが、アレクサンドルは笑って手を振る。
「す、すごいね……これは?」
そう言ってソースの瓶を物珍しげに手に取っている。他の勇士達だってそうだ。それに気がついたアレクサンドルは気前よくそれらを彼等に提供し、共に食事を楽しんでいく。
たらふく食べた後は腹ごなしというように息を吐きだし、アレクサンドルは伸びをする。
「しかし、この世界のオブリビオン、特に魔獣は良いね。害だけ及ぼして倒したら消えるやつが多い他世界のオブリビオンに比べて役に立ってる。つーか」
そう、天使核のことを考えたら、オブリビオンがいないとブルーアルカディアという世界は成り立たないだろう。
宙に大陸を浮かばせるだけの動力が捻出できるのはオブリビオンの心臓たる天使核だけなのだから。
けれどまあ、そんなに心配することもないだろうとアレクサンドルは心の中だけでそれを押し止める。
「まあ、何はともあれ。生きてるってことは良いことだよな。よし、じゃんじゃん食おーぜ、少年!」
ばしばしと少年『エイル』はもう入らない……とあっぷあっぷしながらアレクサンドルや勇士と共に楽しげな食事を楽しむのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
祝宴は楽しまれておりますか、エイル様?
ドラゴン肉…鮮度の高い物は勇士以外では中々口に出来ぬ食材だそうです
私は飛空艇の内部構造の学習がてら解体作業のお手伝いがひと段落した所です
(同胞求めるドラゴンの姿が電脳よぎり)
……“寂しい”と
そう思った事は御座いませんか
セラフィムVが貴方に付いておられますし
そう思う暇も無い程に今は忙しないかもしれませんね
ですがもし道中、不安に囚われそうになった時は
牧場やこの一時での私達との思い出を杖としてお進みください
説教臭くていけませんね
話題を変えましょう
エイル様はお野菜も食べましたか?
成長に大事なこの時期、肉ばかりでは栄養に偏りが…
(鬱陶しいレベルで過保護過ぎる戦機)
浮島に失墜した『ガレオンドラゴン』の解体はつつがなく進んでいるようであった。
多くの勇士達は後退で肉を削ぎ、骨を落とし、皮や鱗、牙などと言った気性な部位を梱包しては飛空艇に納めていく。
魔獣の遺骸は言うまでもなく宝の山である。
心臓たる天使核は最重要部位であるがゆえに、それが強大であればあるほどに希少価値は跳ね上がっていく。
大抵の場合は、それを換金してから分配するやり方がもっとも諍いのないやり方なのだろう。
今回もそれに倣っているようであるが、問題が一つあった。
そう、肉である。
魔獣はその肉体の一片までも無駄になる部分がないものである。この世界、ブルーアルカディアにおいては特に狩り人たる勇士たちは、それを矜持として持っている。
あまりにも巨大であったがゆえに持ち帰れぬ肉は遺棄するしかなく。
けれど、彼等の矜持がそれを許さぬのだ。
「ドラゴン肉……鮮度の高いものは勇士以外では中々に口にできない食材というのもうなずけますね……」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は解体作業を見つつ、消費されていく肉が振る舞われる光景に頷く。
足が早いこともあるし、これだけ巨大であること事態が稀である。
それに倒すことも難しい。
となれば、必然希少になるわけである。そんなことを少年『エイル』と話をしていたのだが、『エイル』は猟兵たちと祝宴を楽しんできたのだろう。すでにお肉は満杯だというよう満足げな顔をしていた。
「そちらも作業お疲れ様。得るものはあった?」
『エイル』の言葉にトリテレイアは今まで自分が解体作業を飛空艇の内部構造をしる一貫として手伝っていたことを思い出す。
いや、思い出すというよりも、バックグラウンドで思考続ける同法を求める『ガレオンドラゴン』の姿がよぎり続けていたのだ。
あれは同胞を求めていただけに過ぎなかったのかも知れない。
その行いが人を傷つけ、害するものであったことが不幸だったのだ。
「……“寂しい”と思ったことは御座いませんか」
その言葉は『エイル』に向けられた言葉であった。
ただ一人記憶を失い、『セラフィムV』と共に屍人帝国に追われる日々。それを感じる暇おないのかもしれないが、心の何処かに、その寂しさという感情が棘のように去っているのではないかと思ったのだ。
「……そうだね。寂しいと思うこともあるかもしれない。『セラフィムV』もいるけれど」
それでも大勢の中でこそ孤独を感じてしまうのかもしれなかった。
自分の異質さを彼は感づいている。
「ならば、もし道中、不安に因われそうに成った時は牧場やこのひとときでの私達との思いでを杖としてお進みください」
それはきっと彼の支えになるであろうから。
いつだって人の足を進めるのは、思い出だ。
思いが力に為るように記憶だって力になる。それをトリテレイアは知るからこそ、『エイル』に伝えたかったのだ。
「ありがとう。優しいね。でも大丈夫だよ。なにか理由があって僕は此処にいる。此処で何かをするのか、もしかしたら、此処ではない何処かで何かをするのかもしれない。その道程なのかもしれないけれど」
けれど、あなた達がいるから大丈夫だと己の胸を示すのだ。
隣にいなくても姿がみえなくても、残るものはるのだと。
トリテレイアは己が説教臭いことをしたと恥じたが、それでも彼の心には暖かなものが残ったことだろう。
話題を帰るようにトリテレイアはやれ、野菜も、栄養バランスをと過保護じみたことをいい始める。
けれど、別に『エイル』はそれを鬱陶しいとは思っていないようだった。
ただ、一言だけ言うのだ。
「もう、お腹も胸もいっぱいだよ、トリテレイア」
大丈夫だからと笑う少年は、トリテレイアに如何なるものとして映ったことだろう。
祝宴は楽しげな雰囲気のまま、夜を通して行われていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
まずは無事に終わって良かったよ
野営道具からテントやタープを出して設営しよう
肉体作業は任せて私はお肉を分けて貰いにいきますの
どこのお肉が良いかエイル様に相談してみますの
いや、魔獣の料理の仕方なんて知らないんだけど
とはいえ何が何でも止めないといけない類のものでもないし
いいんだけどさ
器具や火の準備をしておこうか
肉はシンプルにグリルで焼いてみよう
どんな味がするのかな
十分に堪能したら余った肉は邪神の聖域に保管しておこうか
…だから冷蔵庫ではありませんの
散々利用されてる訳だから
これくらいの有効活用は許されてもいいんじゃないかなぁ
適当に聞き流しつつ星を眺めに行こう
この世界で見られる夜空はどんな感じなんだろうね
無事に戦いが終わったことに安堵しながら、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は浮島に野営道具からテントやタープを取り出し設営しはじめていた。
何せ、これから行われるのは祝宴という名の魔獣『ガレオンドラゴン』の解体作業と、その肉の消費である。
戦いは終わってもブルーアルカディアの人々の生活は終わらない。
今日が明日に続くように、魔獣の素材や天使核でもって生活を維持するための戦いが紡がれていくのだ。
「テントはこんなものかな……さて、あいつはどうしているかな」
晶が心配していたのは邪神の分霊である。
肉体作業は晶に任せっきりでどこをほっつき歩いているのか。そんなふうに思っていると邪神の分霊と少年『エイル』が共にお肉を持ってやってくる。
すでに解体された部位を分けてもらってきていたのだろう。
「あ、これ勇士のみんなが晶にって」
そういって『エイル』がドラゴンの肉をひとかたまり晶に手渡してくる。
邪神の分霊とどの部位がいいかと話をしていたようだが、『エイル』は記憶がないゆえにいまいちわからなかったのだろう。
結局二人でどれがいいのかなどと勇士たちに質問しながら功労者である晶のために持ってきたのだった。
「いや、魔獣の料理の仕方なんて知らないんだけど……」
これには晶も困ってしまっていた。とは言え、何が何でも邪神の分霊を止めなければならないという類のものではないようであるから心配はしていないのだが。
「とりあえず、火を通して食べるのは必須みたい。生食はオススメできないって」
『エイル』がそう言うので、晶はなるほどと器具と火の準備を始める。
こういうアウトドアはやり成れているのだろう。
篝火から火をもらってくるまでもなく、ささっと準備を終えてグリルでいいよね、と肉を切り分けていく。
「どんな味がするのかな……やっぱりシンプルなのが一番か」
「さっき食べてきたんだけど、塩とコショウで下味付けただけでもかなり美味しかったよ」
『エイル』はすでに他の猟兵たちと食べてきたのだろう、美味しかったと笑う顔は少年らしさがにじみ出ていて、晶は幾ばくかホッとしたのだ。
「でも流石に全部は食べられないから……と、余ったのは邪神の聖域(トランキル・サンクチュアリ)に保存しておこう。まあ、冷蔵庫かわりにしか使えないから、こういう時に有効活用しないとね」
「……だから冷蔵庫ではありませんの」
邪神の分霊がジト目でみてくるが、構わなかった。
だってそうだろう。
自分だって散々に利用されているのだから、これくらいの有効活用は許されたっていいはずだ。
そんなやり取りを二人はしつつ、『エイル』が苦笑いしている。
どちらにも言い分があるだろうし、どちらを味方しても大変な思いをしそうだな、と彼は直感的に理解していたのだろう。
「でも、仲良しみたいでよかった」
なんて、余計なことを言うものだから、また晶と邪神の分霊の言い合いがはじまってしまう。
余計なことを言ったなぁと思いつつも『エイル』は晶たちともとに空を見上げる。
ブルーアルカディアの空は雲ひとつ無い空だ。
見上げれば地上よりも高い場所にあるおかげで、星々の輝きが強いように思える。
まるで高い山に登ってみるような天体観測に晶は、その瞳を見開きながら、新たなる世界の夜空を堪能し、篝火の元、一夜を明けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【勇者パーティ】
えっと、ステラさん?
エネルギー切れって……ホールド、いつもより強力で……。
いえ、なんでもありません!
ドラゴン肉ですね。今持ってきます!(ホールドアップ)
これ、ノリでわたしが口に放り込んだら命ないんだろうなー……。
ここは素直に『エイル』さんに渡しておこう。いのちだいじに!
そいえば師匠は、今回もBBQでいいんです?
同じメニューが続いてますけど、飽きたりしてません?
では今回はお肉を焼くだけでなくて、
カリカリ皮とか羽せんべいとかも作っちゃいましょう。
……油だいじょぶだよね。
もちろん師匠にはわたしが「あーん」します。
さ、、さすがに『隙のない護衛』はしないですよ!?
してほしいんですか……?
フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「腹減った」(第一声
うむ、やはり幽霊船団を飛ばすのは魔力消費が激しくて腹が減るな!
「さあ、ルクスよ、BBQを持てい!」
新鮮なドラゴン肉のBBQは良いものだ。
そう、我が不老不死となった頃も、よく野生のドラゴンを魔術で丸焼きにして食っていたものだ。
やはりBBQこそ、素材の味を活かすシンプルながらも至高の調理法!
「というわけで、我と同じ天使(ルビ:セラフィム)の名を冠するゴーレムよ。
BBQ用の鉄板となるのだ!」(炎魔術
さて、我は鉄板を熱するので忙しい上に、魔力消費でどんどん腹が減ってきている。
ルクスよ、我が餓死する前に肉をよこせ肉を。(あーん
ん、我、ステラとそっくり?
そうかなー?
ステラ・タタリクス
【勇者パーティー】
エイル様お疲れ様です
お怪我はありませんでしたか?
エイル様の勇姿、とても嬉しく思います
(隙(物理)の無い護衛態勢にて)
しかし大変ですエイル様
私、エネルギーが切れてしまいました
つまりエイル様から離れられなくなりました
ええ、離れたら死にます私死んでしまいます!!
ですからエイル様の手ずから
エネルギー補給などいただければ、と(嬉しそうな笑顔
もはや動くのは口のみ
あーん、と開けていますのでエネルギーになりそうなものを
ええ、肉でも天使核でもエイル様の指でも
何でも構いませんので!!
戦いが終わり、魔獣『ガレオンドラゴン』が浮島に失墜する。
これから行われるのは魔獣の解体作業と祝宴を兼ねた一夜のキャンプであり、持ち帰れぬ『ガレオンドラゴン』の肉をもって行われるBBQパーティの始まりでもあった。
「腹減った」
まさに第一声がそれである。
フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は今回盛大に魔術を行使して幽霊船団を強引に飛ばせたり、なんやかんやとしたおかげで魔力の消費が凄まじかったのだ。
魔力が減るとお腹が空く。
それがフィアの弱点でも在ったし、同時に愛嬌でも在ったのだろう。
師匠の専属料理人(エヅケ・マスター)たるルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)はそんな師匠のためにBBQを実施しようと勇士たちから道具や肉を分けてもらってきていたのだが、間の前で行われている光景に暫し唖然としていた。
いや、予想通りであったとも言えるであろう。
「えっと、ステラさん?」
彼女が見つめる先にあったのは、少年『エイル』を確保というなの『隙’物理)の無い護衛体勢』にてがっつりホールドしているステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の姿であった。
まあ、そうだろうなとも思っていたのだが、思っていた上に重症である。
「『エイル』様、お疲れさまです。お怪我はありませんでしたか?『エイル』様の勇姿、とてもうれしく思います」
そんな感じで何故か少年『エイル』への好感度がカンストしている感のあるメイドがべったりしていて離れないのだ。
「え、えっと……僕より、みんなのほうががんばってくれたから……」
そこまで自分は何もしていないし、大丈夫だからと離れようとするも凄まじいホールド力で離れないステラ。
「しかし大変です『エイル』様。私、エネルギーが切れてしまいました。つまり『エイル』様から離れられなく成りました。ええ、離れたら死にます私死んでしまいます!!」
ものすごい早口である。
「エネルギーぎれって……ホールド、いつもより強力で……」
ルクスが思わずツッコミそうになるが、ステラの眼光が鋭かった。今ならBBQの肉を刺す串みたいな鋭さであった。
それに肩をすくめながらルクスはホールドアップする。
「いえ、なんでもありません! ドラゴン肉ですね。今用意しますから!」
「そんな……!」
唯一の頼みの綱であったルクスが、そさくさと準備に取り掛かるのは少年『エイル』は捨てられた子犬みたな顔をしていたが、駄目なものは駄目である。
「ですから『エイル』様の手ずからエネルギー補給などいただければと!」
ステラはもうキラッキラしている。
本当にエネルギーぎれなんでござるか~? となる笑顔である。『エイル』はフィアならば助けてくれるかもと、期待したがそんなことはなかった。
「さあ、ルクスよ、BBQをもてい!」
新鮮なドラゴン肉を久方ぶりに食す機会に恵まれたフィアはそれどころではなかった。
っていうか、最初から助けるつもりもなければ『エイル』に特に興味はなかった。
興味があるのはドラゴン肉のみ。肉! そう、NIKUのみである。
一にお肉、二にお肉。三四がなくて五もお肉である。
「というわけで、我と同じ天使(ルビでセラフィム)の名を冠するゴーレムよ。BBQ用の鉄板となるのだ!」
またぁ? という感じで青い鎧のゴーレム『セラフィムV』が横たわる。
慣れたもんである。此処だけの話であるが、フィアの炎魔術によって異常に装甲に炎への耐性が付きすぎている。
なんでこんなことになったというより、こんなことで成長するのかと思うほどの炎への耐性を得た『セラフィムV』は、鉄板のように熱せられながらドラゴン肉をこんがりと焼き上げていく。
「そういえば、師匠は今回もBBQでいいんですね。同じメニューで飽きたりしてません?」
「ふっ、ルクスよ。BBQこそ、素材の味を活かすシンプルながらも至高の調理方法よ! それよりもルクスよ。我、魔力消費でどんどん腹が減ってきている。我が餓死する前に肉をよこせ、肉を」
あーんと口を開けて餌をねだるような姿は、ルクスにとって如何なる光景であったことだろうか。
胸がキュンキュンしただろうか。
はいあーんと食べさせているうちに、ルクスは飽きぬ用意と皮をカリカリと焼き上げたせんべいを用意したりと趣向を凝らしていたのだが、ルクスの手ずから食べさせてもらうという行為にフィア自身が満足しているので、あまり意味はなかった。
けれども、それでもルクスは思うのだ。
「さ、さすがに『隙のない護衛』はしないですよ!?」
ステラさんそっくりになってしまいますからね! とルクスはステラと『エイル』を見ていた。
「あーん」
「……あーん」
少年『エイル』はなんだこれと思いつつも、ステラにがっつりホールドされつつ、焼かれたお肉を手ずから食べさせていた。
ステラは至福の表情である。それでいいのかなぁって思わないでもなかったが、幸せそうなメイドの顔を見ていたらもうなんていうか真面目に考えるのが馬鹿らしくなる勢いであった。
「ええ、肉でも天使核でも『エイル』様の指でも何でも構いませんので!!」
ものすごい剣幕であった。
まじで指まで口にしそうな勢いのステラをみやりつつフィアは首をかしげる。
「ん、我、ステラとそっくり? そうかなー?」
いやそうでもないだろ、とフィアは、ほれ次というように肉をルクスに催促する。
してほしいのかな、とルクスはなけなしの勇気を出したかどうかは、勇者パーティだけが知る真実。
こうして師匠と弟子。そしてメイドと少年のどんちゃん騒ぎは周囲を巻き込んでいくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎
怪獣大決戦終結!
お疲れ様でした!
繊細さとかが必要な作業は手伝われへんけど
ドーンといけるやつなら、キャバリアで手伝うで?
解体作業とかで手伝えること終えたら
次はご飯や!
正確にはご飯作成手伝い見習いで。
食べるんは得意やけど
きちんと作るんは……うん、ほら、餅は餅屋ゆうし!
レシピメモりながら切ったり剥いたり簡単なこと手伝うで
あと、勇士さん達におすすめの酒を聞いてまわり、これもメモメモ。
エイル君にはまだわからんかも知れへんけど
度を越さなければ酒はイイでー
あ、飲んだら(キャバリアに)乗るな、は徹底しますとも
「怪獣大決戦終結! おつかれ様でした!」
クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)は浮島に沈んだ魔獣『ガレオンドラゴン』の遺骸を見上げて、勇士たちと共に勝鬨を上げていた。
大いに盛り上がった勇士たちは、勝鬨もそこそこに『ガレオンドラゴン』の解体作業に移っていく。
ここからは速度が肝心なのである。
足の早いドラゴンの肉は早々に血抜きをしないといけないし、その血でさえも素材として扱うことができるから、一つも無駄にはならないのだ。
「は~……なるほどなぁ。こんなふうにしてこの世界の人らは生活しとるんや」
クルルはキャバリアに乗りながら、なにか手伝えることはないかと解体作業を見つめていた。
皮や鱗、骨に牙、角や爪などあらゆる部位が貴重な素材なのだろう。
あっというまに解体され肉と取り分けられていく。
となると繊細な作業はどうにも苦手な彼女にとってできることは一つである。そう、力仕事である。
本人はそうでもないが、キャバリアは5m級の戦術兵器である。それにかかれば、飛空艇に素材を運び込むことなど朝飯前であろう。
「うん、やっぱりこうドーンといけるやつなら、簡単やね」
飛空艇を行き来しながら浮島から次々と『ガレオンドラゴン』の素材を運び込んでいく。
「あー、こっちこっち。それだとおもすぎて傾いてしまうから! そうそう!」
勇士たちの指示のもとクルルは、このあとはお酒に肉やらの大宴会を楽しみに作業を続ける。
作るのは苦手である。
というか、正確にはご飯作成手伝い見習い程度である。食べるのは逆に得意なのだ。
「きとんと作るんは……うん、ほら餅は餅屋ゆうし!」
自分をそう納得させる。
女子としてそれはいかがなものかと思わないでもなかったが、まあ、レシピを見ながら斬ったり剥いだりな簡単な作業がこなせるのだから、それで十分だ。
「そういえば、お酒なんかオススメの銘柄とかあるん?」
「あー、そうだな。アジール王国に行けば手に入るんだが……そう言えば船長の部屋に確か……」
「おい馬鹿やめろ、なに言ってやがる。あれは出さねえぞ!」
勇士たちと共に笑い合いながらクルルは酒談義に華を咲かす。
良い料理には良い酒がつきものである。
結局船長はクルルと勇士たちの説得に応じる形で年代物のワインを持ち出すハメになり、盛大な宴会はまさに飲兵衛たちの屍が累々と重なるの見比べへと発展していくのだ。
「ふぃ~……良いお酒やなぁ」
そんな中、クルルだけが倒れ伏す勇士達の中で未だ飲み続けていた。
それを見た『エイル』の顔が若干引きつっている。何がどうなってこんなことになるのか、未だ10歳の歳の頃である彼にとっては理解できないものであったことだろう。
「な、なんか……すごい匂いがする……大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。『エイル』君はまだわからんかも知れへんけど、度を越さなければ酒はイイでー」
ほんとに度を越していないって今言えるのだろうかと『エイル』は思った。
けれど、口に出してしまうほど大人でもなかったのだ。
息を吐き出しながら、見上げたキャバリアを彼は眩しそうに見つめる。篝火に照らされた装甲。
何か、感じるところがあったのかもしれない。
「あ、飲んだら乗るな、は徹底しますとも!」
クルルの言葉にやはり『エイル』は苦笑いするしかなく、けれど、戦いの後の美酒に酔いしれるクルルの楽しげな笑みをもって、彼は笑うのだった――。
大成功
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ルビィ・フォルティス
無事に飛空艇の上に落とせてよかったですわ。
雲海の下に落ちてしまえば回収は不可能ですもの。
自身が切り落としたガレオンドラゴンの腕を見上げる
天使核は残念ですけれど、妥当な扱いですし仕方ありませんわ。
大陸を浮かせられるレベルの天使核は貴重ですしお金で買うのは難しいですけれど、それより劣るものでも延命はできますし無駄にはなりませんのよ。
もらった報酬の大部分は天使核購入資金として実家に送る予定
さ、それよりせっかく会えたのですしエイル様のお話を聞かせてくださいませ。
そろそろこの世界には慣れまして?
表面を軽く焼いたドラゴン肉のスライスを食べながらエイル様とお話する
ルビィ・フォルティス(空の国の家出娘・f33967)は己が剣でもって切り落とした腕が無事に飛空艇の甲板上へと落ちたことを心底安堵していた。
「無事に飛空艇の上に落とせてよかったですわ」
雲海に落ちてしまっていたら、回収は不可能である。そうなれば、それだけ魔獣の狩りは損失を被ることだろう。
それを避けられたことを彼女は安堵していたのだ。
見上げた魔獣『ガレオンドラゴン』の腕は巨大である。
爪や翼、飛空艇の装甲なども十分に利用できるものだ。問題は天使核である。ルビィとしては、これだけの巨大なオブリビオンの心臓であれば、故郷が徐々に沈んでいっている問題を解決できるのではないかと考えていたが、流石に大きすぎる。
「……打倒な扱いですわ」
結局、天使核は換金してから、戦いに参加した勇士たちに再分配されることになるようだった。
大きすぎる財産は、必ず諍いの種火となるだろう。
それを避けるためには仕方のないことであったし、彼女もまたそれをわきまえていた。
大陸を浮かせられるだけの天使核は貴重であったし、金銭で解決できる問題ではない。
しかし、それに劣るものであっても延命することは可能である。
「報酬はアジール王国についてからでも構わないよな?」
「ええ、それで構いません。ああ、でもあの『ガレオンドラゴン』の腕を切り落として、飛空艇の甲板上に落としたことは加味してほしいものですわ」
そんなふうににっこり微笑んで、ルビィは勇士の飛空艇の船長と交渉を続ける。
彼女にとって金銭とは必要不可欠なものである。
生きるために、そして何よりも故郷の大陸を沈下から救うために必要なのだ。
だからこそ、ここで妥協はできない。
「そこは勿論だ。あんたが居なかったら、あれを狩ることはできなかっただろうさ。腕一本分は必ず金で追加するからよ」
まずは、肉を楽しんでくれと船長は気持ちよく笑っていた。
そう、あまりに巨大すぎて肉の全てを持ち帰ることは難しいようだった。
だからこそ、この浮島で消費して帰ろうというのだ。
「ならば、ご相伴に預からせていただきますわ」
優雅に一礼してルビィは『ガレオンドラゴン』の肉の塊を受け取る。しかし、これだけの肉を自分一人で消費するのは心許ない。
そうしていると少年『エイル』が歩いているのが目に入る。
「あ、お疲れ様。もう交渉は大丈夫なの?」
『エイル』も気がついたのだろう、ルビィへと近寄ってくる。
せっかくだからと二人は篝火の近くでドラゴン肉をスライスしたものを焼きながら話し込む。
「せっかくですし、『エイル』様のお話を聞かせてくださいませ」
「え、僕の? そんなに話すことはないんだけれど……でも、そうだね。前に助けてもらってから、この飛空艇に乗り込んで……」
『エイル』のあれからの話をルビィは聞きながら、篝火に照らされる少年の横顔を見ていた。
記憶を失っていても、逞しく生きる姿。
それはルビィと似通ったところがあったのかもしれない。
彼女だって身一つでブルーアルカディアの空を駆け抜けている。
己の故郷を救うために、あらゆる金策に翻弄し、抜本的な解決を求めている。それが果てしなく続く道程であるとしってもなお、足を止めるつもりはないのだ。
それは『エイル』も同じであろう。
彼がこれからどんな道程を歩んでいくのか。それはまだ誰にもわからない。
けれど、ルビィは思うのだ。
またいつか『エイル』と自分の道が交わる時があるのだと。
それがすぐまた訪れるものであるのか、それともずっと先のことであるのかはわからない。
「けれど、またあえてよかったよ。助けてくれてありがとう。君が困った時、僕もまた助けてあげられたら嬉しい」
そんなふうにお互いがお互いを助け合って生きていけるのならば、雲海に沈む大陸を救うことだってできるだろう。
新しい約束と希望を抱いて、魔獣との戦いを祝す宴会の夜は徐々に朝焼けに白くなっていく水平線を見つめるのであった――。
大成功
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