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海風に生命舞って

#クロムキャバリア #プレイング受付は8/9から

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●疾風の反攻作戦
 リュテス第五民主共和国と聖ガディル王国の間で繰り広げられたこの戦争の主導権を握る側が明確に逆転したとされるのは、諸説あれどその日こそ最も相応しいだろう。
 聖王国第四騎士団艦隊の電撃的な海上封鎖によって奪われた制海権の奪還を企図したマリーゴールド作戦における大勝により、東部海上の優勢を確保したリュテス共和国防海軍は、海戦を強力に支援した多国籍軍艦隊とともに東部全域において同時強襲上陸作戦"ラファール作戦"を発動。海軍総司令部を要する一大拠点トゥリオン軍港をすら囮とし、聖王国主力部隊によるトゥリオン攻略の開始に合わせて僅かな戦力を残し主力部隊を海上に脱出させ、トゥリオン軍港に敵主力を引き込み拘束すると主力による逆上陸でこれを包囲するように周辺の拠点を一気に解放せんとしたのである。
 主要港湾都市奪還を共和国防海軍および陸軍海兵隊が担う一方、経済連合軍を中核とする多国籍軍も共和国の主攻を支援するべく大規模な陽動および聖王国戦力の漸減を目的として各地で上陸作戦を開始した。
 その殆どが成功し、トゥリオン軍港攻略に主力を割き僅かな予備兵力で防衛線を維持する聖王国第八騎士団は多国籍軍迎撃のため更に分散した結果次々に突破され、共和国軍は目標を達成してゆく。
 だがその一方で、精強にして異端の騎士団たる第八騎士団もただ蹂躙されるばかりではない。この反攻作戦に対応できた一部の部隊は、総司令官を欠いた状態でも反撃を試み、共和国軍と多国籍軍に痛烈な一撃を加えるべく待ち受けていた。
 そしてそんな戦場の一つであるヒェイル半島へと、トゥリオン包囲網を完成させるべく多国籍軍の強襲上陸が開始される。
 そこは、オブリビオンマシンの支配する戦場であった。

●多国籍軍上陸す
「出撃準備だ」
 もはや何度目の介入だろうか、終戦の気配見えぬ泥沼のリュテス第五民主共和国。相当数のオブリビオンマシンを討ったはずだが、まだ出番があるということはかの戦争に関わるオブリビオンマシンはまだまだ多いようである。
 一体どれほどの機体が関与しているのか。また、多数のオブリビオンマシンに軍事力を侵食された聖ガディル王国は仮に終戦したとして、その後も国家としての体裁を維持できるのか。
 猟兵の与り知るところではないが、しかしそうした不安をいだいてしまう者も現れかねない程度には彼の国の戦いに関わった者も多い。
 ――さておき、出撃である。いつもながら無愛想なユーレアが淡々と要諦だけを告げるところによると、共和国と友好関係にある諸国が多国籍軍を派兵。この多国籍軍の協力で共和国はようやく正式な大反攻を発動し、聖王国騎士団に対して逆撃を加えることに成功したらしい。
 続く追撃で東部を制圧する敵の殲滅を実施する。そのための作戦は概ね順調に推移しているが、しかし一箇所、多国籍軍が苦戦する――グリモアの予知いわく、多国籍軍のキャバリア隊は壊滅し、反攻作戦そのもののスケジュールに乱れが生じた結果決戦の局面にて第八騎士団の強力なオブリビオンマシンを取り逃がすことになる――戦場がある。
 その戦場の名はヒェイル半島。名の通り半島状に突出した地形は、美しいビーチと切り立った崖、独特の生態系を有するかつてのリゾート地であったという。
「敵は既に多国籍軍迎撃の準備を始めつつある。おまえたちは先行して多国籍軍の上陸を支援してほしい」
 如何に精鋭部隊であろうと上陸の瞬間は無防備なのだ。そこを突かれるのはマズい。
「多国籍軍の戦力は今の共和国防軍にとって必要なもの。おまえたちの力で守ってやるといい」
 ユーレアに送り出され、猟兵たちは碧の海と豊かな自然を有する戦場へと身を投じるのだった。


紅星ざーりゃ
 おはようございます、紅星ざーりゃです。
 夏だ! 水着だ! 海だ!!
 というわけで強襲揚陸作戦です。こんなトコ水着で行ったら危ない? そうだね。

 リゾート地だった戦場への上陸からが本作戦の開始時の状況となります。
 猟兵と少数の多国籍軍先行部隊が上陸し、敵の迎撃を排除した後多国籍軍主力が上陸する手筈となっています。
 猟兵の目的としては敵オブリビオンマシンの排除、加えて副次的な目標として多国籍軍の戦力温存となるでしょう。前者は必達ですが、後者はもしヒェイル半島方面の多国籍軍が全滅してもその分猟兵が頑張ればどうにかフォローできると思われます。
 とはいえ主義信条に反しない範囲で多国籍軍をサポートして頂けると猟兵の仕事が楽になるでしょう。
 それでは皆様のご武運をお祈りしております。
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第1章 冒険 『共同戦線』

POW   :    先制攻撃を加え橋頭保を確保する

SPD   :    偵察活動を行い情報を共有する

WIZ   :    攻略作戦に向けて罠を仕掛ける

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちが降り立ったのは、洋上を航行する巨大な空母の甲板であった。
 多国籍軍ヒェイル攻略艦隊の旗艦。女王州連盟海軍(クイーンズネイビー)が誇るキャバリア母艦クイーン・オブ・マティルダこそ、彼らの立つ場所である。
 ともに転送されたキャバリアは女王州海軍のスタッフによってカタパルトに、或いは舷側エレベーターより直接海面に展開できるよう即応準備が進められ、その奥では女王州連盟軍だけでなく経済連合軍の傭兵部隊や東方同盟戦線の機体、或いは見慣れぬ国の兵士たちがせわしなく行き交っている。
 さらにその向こう側に目を遣れば揚陸艦を中心に大小様々、多種多様な戦闘艦が碧色に透き通るヒェイル沖の海に陣列を組んで進みゆく。
 この規模の艦隊が投入されたことに多国籍軍を構成する各国が聖王国の暴挙に対して抱く感情を猟兵たちも感じて取れることだろう。
 聖王国は今や、国際社会の安定を乱す悪なのだ。ましてオブリビオンマシンを大量投入していることは既に猟兵との交戦記録から明らかであり、それも第五共和国政府は声高に批判している故に多国籍軍でその事実を知らぬ者は少ない。
 共和国にとってのみならず、世界にとって害悪となりつつある狂信の国家を誅するべく集ったこの艦隊の戦意は高い。皆、共和国が敗北した次は自国が戦場となることを予感し、その事態を避けるべく何としても共和国内で決着を付けたいのだろう。
 身勝手な思惑だが、それも善意と国家間の友情で包まれれば何よりも頼もしい援軍となるのだ。
「やぁやぁ猟兵の皆さんお揃いで。いやはや多国籍軍の面々に加えて猟兵も参戦となれば実に頼もしいものですね」
 ぱちぱちと手を打ちながら甲板に硬質な足音が響いた。金髪をオールバックに撫で付けたスーツ姿の男が義足の右足を僅かに引き摺りながら猟兵たちを出迎える。
「御機嫌よう、今回経済連合軍のオブザーバーとして参加させていただく経済連合アドバンスド・オーダー社外交三課長フィリップ・ジェンキンスです。こんな脚じゃなければ私も前線に出たんですがねぇ」
 かつて東の島国を巡る陰謀で猟兵と銃火を交えたジェンキンス課長は、朗らかな笑みに蛇のように油断ならない眼光を隠して今回のヒェイル半島攻略作戦に参加する有力な部隊の指揮官たちを手招きして猟兵に紹介する。
「こちらは東方同盟戦線から第三教導団アードラー大隊、指揮官のアイリーン・ファーレンヒルト少佐」
 艷やかな黒髪を束ね、猛禽のような印象を与える細身の肉体を耐Gスーツに包んだ女性士官は、生真面目な敬礼を猟兵に送った。
「東方同盟戦線陸軍、第三教導団大隊長のファーレンヒルトよ。今時作戦では上陸部隊主力の指揮を預かることになるわ。貴方たち猟兵が橋頭堡を確保してくれればそれだけ私達が安心して戦場に向かえる。そこを期待していいのよね?」
 もちろん、と猟兵の誰かが頷けばファーレンヒルト少佐はくすりと笑って挨拶は済んだとばかりに同盟軍機が駐機するほうへと身を翻す。
「貴方たちの仕事ぶりは身を持って知っているわ。信頼しています」
「やれやれ、同僚同士のコミュニケーションはもう少し取ったほうがいいと思うんですよねぇ私は。同盟人は仕事が好きすぎて困ったものです」
 態とらしくため息を吐いて天を仰ぐジェンキンスは、続いて水陸両用型キャバリアを舷側エレベーターに搬出していた士官を招く。
「女王州連盟海軍特殊潜航機動部隊の――」
「セオドア・フランクリン大尉。猟兵とは上陸前段階の強行偵察を協働する。あんたたちの精強さは聞いているが、戦場では作戦と指揮系統が重要だ。あまり好き勝手はせんでくれよ」
 いかにも職人気質といったふうの気難しそうな士官は、ジェンキンスの言葉を遮り自己紹介を終えるとぶつくさとぼやきながら自分の仕事に戻っていく。漏れ聞こえるのは出撃前の忙しいときに、だの素人混じりで本当にアテにできるのか、だのと猟兵に対してあまり好意的でない言葉だった。
「クイーンズの軍人はまぁあんな連中ばかりですよ。あまり気を悪くしないでくださいね、あれで仕事はちゃんとやる人種ですから」

 さておき、とジェンキンスは猟兵に向き直りポケットから畳んだヒェイル半島の地図を取り出して胸の前に広げた。
「かんたんに作戦のおさらいをしましょう。多国籍軍一同は耳に……なんでしたっけ、スクイッド? ああ違いますね、そうだオクトパス。タコができるほど聞いていますが皆さんはそうじゃない。でしょう?」
 ――作戦は大きく三段階。強行偵察、強襲揚陸、そして残敵掃討である。
 まず猟兵と女王州連盟特殊部隊が艦隊より出撃、半島北岸の断崖を登坂して上陸。
 東西に長く、南北は狭い半島を縦断して偵察を行い、聖王国軍の防御陣地の陣容や迎撃兵器のマーク、及び強襲上陸に際して脅威となる戦力の秘密裏の排除を実施。同時に艦隊は半島東側を迂回して南方に抜け、南側のビーチに向けて陣形を整える。
 先行部隊より偵察終了の合図があり次第、東方同盟戦線と経済連合を主力とする多国籍軍本隊が揚陸艇および空母より発艦したキャバリア戦力を以てビーチより上陸を開始。艦隊は艦砲射撃によってこれを支援。
 先行上陸部隊は主力を迎撃する敵の後背を突く、あるいは艦砲に対して弾着観測支援を行うことになる。
 これにより多国籍軍がヒェイル半島に橋頭堡を確保したならば、全戦力で敵残存部隊を掃討。半島を制圧することで、続く敵第八騎士団との決戦における後方の憂いを断ち切るのだ。
「とまぁ、皆さんは先んじて上陸して主力にとってマズそうなものを砲撃で潰せるよう場所を覚えておくとか、或いはステルスキルしながら主力の上陸を待ってください。流石に上陸前に存在に気づかれるようじゃ困りますが、工作員より強かな皆さんはそういうヘマなんてしないでしょう?」
 出なきゃ困ります、と肩を竦めたジェンキンス。ほぼ同じくして、作戦開始を告げるブザーがクイーン・オブ・マティルダの甲板に響き渡った。
 舷側から次々と海中に投下されていく女王州海軍潜航部隊の水陸両用キャバリアに続くべく、猟兵たちも自らの機体に、或いはその身を海に投じるべく駆け出す。
四季乃・瑠璃
瑠璃「何でいるの?皇洲連邦軍が捕縛して裁いたハズだよね?」
緋瑪「あの時とは状況が違うから抑えるけど…変な真似をすれば今度こそ殺すよ?」
一応、他の軍関係者に聞こえない様に小声で接触。同時に小型の発信機と盗聴器を付けて、最後に強烈な【殺気】を一瞬だけ叩きつけて脅しておいたり


持参した武装や艦で調達した装備を【クリエイト】で対潜水中用装備(超音速魚雷発射ランチャー、対地・対空ミサイルポッド、水中用スラスター、フォノンメーザー砲)と対潜ステルス装備に変換。

探知術式【高速詠唱、情報収集】で海中から情報を収集しつつ、上陸支援の為、海中及び沿岸で孤立している敵を狙い、通信を遮断する等してステルスキルするよ




「なんで……?」
 クイーン・オブ・マティルダの甲板上。にこやかな微笑みを絶やさない金髪の男に、瑠璃は疑念と敵意の籠もった視線を向けた。
猟兵に対して好意的に振る舞っていても、その裏に潜む狡猾な陰謀屋の顔を隠せていない――いや、敢えて隠すのをやめたのか。
 かつて皇州連邦を傀儡にせんと手を伸ばし、結果として軍事クーデターを誘発して大きな犠牲を生み出した経済連合軍の工作員だった男が瑠璃の前に立っている。
「あなたの事、皇州連邦が捕縛して裁いたハズだよね?」
 あのときこの男はオブリビオンマシンに冒されていたわけではない。故にオブリビオンマシンとの交戦の最中、わざと攻撃に巻き込み乗機を無力化し、連邦軍に後を任せてあったのだ。それが今、片足を痛々しくも義足としながらも平然と以前と同じ肩書を名乗って此処に居る。
「それはもちろん、私は善良なサラリーマンですからね。拘束される謂れはありませんよ。尤もあの国には暫く立ち寄れませんが」
 残念です、という言葉通りに表情を変えて、男――ジェンキンスは瑠璃と、そして緋瑪に手を振った。
「そんな剣呑な目で見ないでくださいよ。私だって会社に従うしか無いしがない中間管理職なんです。仕事をして恨みを買うのは多少は仕方がありませんが、それで殺されちゃ堪らない」
「まあ、いいけど。あのときとは状況も違うし、今は抑えておいてあげる。でも……」
 緋瑪がずいと前に出て、ジェンキンスの視界いっぱいに殺意の籠もったその顔が近づく。ささやくような声で緋瑪が変な真似をするな、と釘を刺せば、困り顔でジェンキンスは首を縦に振る。
「それ、嘘だったら今度こそ殺すよ?」
「仕事の場で嘘は吐きませんよ。会社の信用に関わります」
 そんなもの無いでしょ、と吐き捨てて踵を返す緋瑪は、先んじて機体へと向かっていた瑠璃を小走りで追いかける。
「どう?」
「うん、緋瑪が気を引いてくれたから」
 緋瑪が前に出た一瞬で、瑠璃は気配を消しジェンキンスのスーツに発信器と盗聴器を仕掛けておいたのだという。
 経済連合は油断ならない相手だ。自国の利となるならば、それこそ多国籍軍を背中から撃って聖王国に売り渡すような真似さえするかもしれない。
 だから警戒してしすぎるということはないのだと、二人の少女はこれまでの経験から学んでいた。

 ――そうしてジェンキンスへの牽制を終えた二人を待っていたのは、あんまりにもあんまりな愛機の姿であった。
 せっかく水中戦用に多数の武装を装備したのだ。超音速魚雷を装填したランチャーに、対地/対空ミサイルポッド。フォノンメーザー砲に水中用のアクアジェット式スラスター……その半分が女王州連盟軍の整備クルーの手で外されようとしていた。
「ちょっと! 勝手に何してるの!」
「そうだよ、これから出撃なんだけど?」
 殺すよ、と言いかけた緋瑪を抑えつつ、瑠璃も不満を露わに整備クルーに詰め寄る。
 詰め寄られたクルーは可哀想なほど狼狽えて、ですが……と助けを求めるように視線を泳がせる。その先に立っていたのは、二人に負けず劣らず不機嫌そうな顔のフランクリン大尉であった。
「勝手な事をするなってのはこっちのセリフだ。偵察に花火背負っていくヤツがあるか。あんなもん撃てばすぐに聖王国の連中が押し寄せてくるぞ」
「別にその時は皆殺しにすればいいじゃない!」
「お前らがフカシてるのか、それとも本気でやればできるのかは知ったこっちゃないがこれは軍事作戦行動だぞ。スタンドプレーは慎め、言うことが聞けないなら揚陸部隊の方に行け。いいな、指揮官命令だぞ」
「私達は軍属じゃないよ。あなたの命令に従う義務はないでしょ」
「だったら尚更お家に帰りな」
 取り付く島もなく会話を切り上げ自機のコックピットに向かうフランクリン大尉の背中に緋瑪が舌を出す。
「ほんと、ジェンキンスといいあいつといいむかつく……!」
 苛立ちを露わに、勝手に解除された武装をユーベルコードを用いて機体に再度積み込んでいくふたりの殺人姫。
 そうしている間に女王州連盟軍のキャバリアが次々に発艦していく。瑠璃と緋瑪も遅れじと、フランクリン大尉に目にものを見せてやるのだとその後に続いた。

 ヒェイルの海はまさにリゾートに相応しい美しさだった。
 頭上を陽光がきらきらと輝き、網目状に差した光が白い砂の海底を照らす。その上に沈む黒々とした岩の隙間を海藻がゆらゆらと揺れ、それらを縫うように色とりどりの魚達が泳いでいる――それを追い散らすように、水流を噴射して二機のジェミニオンがゆく。
 ダイビングの名所でもあるヒェイルの海の景色は、軍人たちとの衝突でささくれだった二人の心を僅かなりとも癒せただろうか。それとも探知術式で敵の警戒網を伺う二人には、その美しさに目を奪われる余裕はなかったかもしれない。
「狙うのは孤立している敵だよ、緋瑪」
「わかってるって、瑠璃。……見つけた」
 共和国海軍大反攻の報せを受けて急遽展開したのか、応急の水密処理だけを施されたセレナイトが海中に立って哨戒を行っているのが見えた。
 あちらは水中用のセンサーを持っていない。先んじて存在に気づけたのは重畳と、魚雷ランチャーを構えるジェミニオン。
 が、その引き金に指を掛けた瞬間ぬうっとセレナイトの背後から現れた、黒ずくめのダイバーめいた機体が白騎士に組み付いた。
 女王州連盟軍の機体だ。おそらく隊長機、つまりフランクリン大尉の機体であろう。
 それは手際よくダイビングナイフをセレナイトのコックピットハッチに滑り込ませると、てこの要領で無理矢理にハッチをこじ開け中の騎士をつまみ出す。
 操縦士を失い動きを止めたセレナイトを放置して、マニピュレーターで捕らえた騎士が溺れて気を失ったのを確認すると、無造作に浮かべて岸の方へと向かっていく。
 その機体が背を向ける間際に、カメラアイが確かにジェミニオンを見た。
「あいつ……!」
「緋瑪。負けてられないよ。私達もあの大尉よりスマートに上陸しよう」
 それが闘志に火を付けた。殺人姫を名乗っているのだ。殺し方で戦争屋に負けるわけにはいかない。
 フランクリン大尉とは別のルートに転進しつつ、瑠璃と緋瑪は魚雷やミサイルのような目立つ武装を使うことなく瑠璃が通信妨害で水中用セレナイトの声を封じ、悲鳴を上げて敵の存在を報せることすら許さず肉薄した緋瑪がフォノンメーザーでコックピットを破壊してゆく。
 誘爆させれば地上の敵に気づかれる可能性がある。いっそそれを上等で派手に上陸して囮になるための重火器だったが、使えないならば徹底してステルスするまでだ。そしてそれを為せるだけの技量が二人にあったのが、聖王国の海中哨戒部隊の悪夢であった。
 特殊部隊と凄腕の殺し屋、双方に狙われた哨戒部隊が壊滅的な被害を被り、それを地上の味方に伝えることもできぬまま警戒網を穴だらけにされるまでそう時間は掛からなかった。
「これだけやれば他の皆もすぐに来れるよね」
「うん、あとは地上の敵を仕留めていこう」
 岸壁をよじ登り上陸を果たしたジェミニオンの前に、女王州連盟軍のキャバリア――例によってフランクリン大尉機が現れた。
 また嫌味の一つでも投げられるのか、と渋面を作る二人だが、送られた光信号通信はシンプルな五文字であった。
 ――見事だった。
 その信号が誤読でないことを確かめるように二人の機体は顔を見合わせ、そして更に見事な技を見せてやると戦意を高めて半島の奥へと歩を進めていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒谷・ひかる
ファーレンヒルト少佐……ああ、あの時の。
あれから色々と大変だったと思いますが、こうしてコクピットの外でお話できて光栄です。
ええ、オブリビオンマシンの排除という件に於いて、わたし達との利害は一致しています。お任せください。

ステラに搭乗し【光の精霊さん】発動
機体を光学迷彩で不可視状態にし、先行してこっそり上陸します
物音や熱は消せませんが、闇の精霊さんの重力制御で浮遊し風の精霊さんの風に乗って動くこの子なら、そう見つからない筈
無事に上陸出来たら、上陸に気づかれない範囲での破壊工作(通信線の寸断、爆発物の設置等)&情報収集
その後タイミングを見て敵陣奥側から攻撃を仕掛け陽動、味方の上陸を支援します




「ファーレンヒルト少佐……東方同盟戦線、といえばあぁ、あの時の」
 何処かで聞いた名前に記憶を手繰ること数秒、ひかるは彼女を思い出した。
 とはいえ、その時は敵味方。機体の装甲越しの出会いだったが。
 クロムキャバリアに猟兵が進出して間もない頃、彼女とその指揮下にあった第三教導団が起こした武装蜂起の鎮圧にひかるも参戦していた。
 あの時はオブリビオンマシンの性能もさることながら、教導団というトップエリートらしい圧倒的技量に苦しめられたものだ。
 猟兵により撃墜された後、罪を償っていたと聞いていたが――
「無事復帰されたんですね。あれから色々と大変だったと思いますが、こうして対面でお話できて光栄です」
 手を差し伸べたひかるに、ファーレンヒルト少佐は同じく手を差し出し握手を交わす。
「ええ、その節は貴方たちにも迷惑を掛けたわね。あの時の借りを返せるよう、我が隊は全力を尽くすわ」
「はい。オブリビオンマシンの脅威を知るあなた達が味方なのを心強く思います。オブリビオンマシンを排除するという目的でにおいて、わたし達との利害は一致している、と」
「そう考えてもらって間違いないわ。先行上陸、危険な任務だけれど頼んだわよ」
 握手を解き、敬礼を投げかける少佐にひかるはこくりと頷く。
 お任せください、と力強く応えた少女の顔は、オブリビオンに立ち向かう"猟兵"のそれであった。

 ――かくて洋上を南下するステラの機内に身を収め、ひかるは近づくヒェイル北岸の崖を見上げた。
 様々な自然現象に宿る精霊をその駆動の源とするステラであるから、自然豊かなヒェイル半島の環境は大変な好条件といって問題はないだろう。
 緒戦で敵の超長距離戦術レーザー砲によって陸軍戦力が壊滅的打撃を受けた東部は、これに対してレーザーを拡散させるための重金属雲を展開する余力すら残っていなかった、というのが皮肉にもひかるにとって僥倖であった。
 もし再びあの兵器が東部を睨めば甚大な被害を避けることはできないが、代わりに重金属汚染著しい西部南方の山岳地帯のように精霊が不在ということはない。
 その証左に光の精霊の加護で機体ごと透明化したひかるは、次々に闇の精霊の重力制御と風の精霊の推進力付与を駆使して静かに岸壁を登りきり、ヒェイル半島に上陸することができた。
 先行した猟兵と女王州連盟の特殊部隊が海中の哨戒機を始末しておいてくれたおかげで、上陸を阻むものもなく順調そのものだが、本番はここからである。油断禁物と気合を入れ直したひかるは、だが飛び込んできた光景にしばし目を奪われてしまった。
「と。リゾートと言うから予想はしてましたけど、これは……」
 色とりどりの花。リュテス共和国領でも南東に近い位置にあるヒェイル半島は温暖な気候故か、熱帯風の草木が生い茂り鮮やかな花があちこちで咲き誇っている。
 一見して自然な熱帯林のようで、しかし草木の精霊とも疎通できるひかるはそれらが外国から輸入され、綿密な計算の上で植えられたものだとわかる。
 そして彼らがヒェイルのリゾートを管理する人々からどれだけの愛情を受け、この地を訪れた人々に感動を与えたのかすらもひかるは感じ取ることができた。
「早くここも解放して、また以前のようにたくさんの人に愛される日々を取り戻してあげますから、少しだけ待っていてくださいね」
 絶対に聖王国から奪還してみせる、と改めて決意したひかるに、まるで草木が応えるように道を開ける。彼女でなければ気付かないような、獣道じみた秘密の抜け道を進めば、聖王国の警戒網をすり抜けて一つの施設に接近することに成功した。
 ホテルなのだろう。四階建ての大きな母屋と、それに付随する幾つかのコテージからなる施設は、聖王国騎士団に占領され臨時の駐屯地として運用されているようであった。
 コテージは入り口に数名の従士が立つばかりで手薄と言えば手薄だが、母屋は仮設司令部であろうか。数機のセレナイトが警戒を厳に歩哨に立ち、従士たちが多国籍軍迎撃の準備のために駆け回る姿が見える。
「ここを攻撃されたら少しは混乱を生めるでしょうか。やってみる価値はありますね」
 とはいえステラに機乗したまま接近するのは危険だ。光学的に隠されていても、熱源や駆動音までは消えない。セレナイトのセンサーは決して強力ではないが、至近まで接近したキャバリアに気付けないほど低性能でもないだろう。
「光の精霊さん、わたしとステラ、どちらも隠してくれますか?」
 さて、とコックピットから手だけを出してみれば、きちんと透けていることにひとまず安堵して機体を降りたひかる。
 母屋に侵入して迎撃計画の情報を――というのはいくらなんでも危険に過ぎるだろう。欲張らず通信線の寸断と後は周辺への爆薬の設置くらいにとどめておくべきか――と母屋から伸びる太い通信ケーブルを辿り、見つけたアンテナ設備に借りてきたプラスチック爆弾を仕掛け炎の精霊をエンチャントしてまわるひかる。
 ――その最中、ふと視線をコテージの窓に向けた彼女は見た。ホテルの従業員だったのだろう民間人らしき人々が拘束され、狭い部屋に押し込められているのを。
「……戦闘が始まってから人質にされては困りますけど、でも今助けると気付かれてしまうかもしれませんから……」
 助けるべきか、僅かな迷い。だが迷ってしまったことすら恥とばかりに、ひかるは風の精霊を操り窓の鍵を開けるとコテージに忍び込み、一人に耳元で囁いた。
「静かに、落ち着いて聞いてください。わたしは共和国の味方です。もうすぐ爆発が起きて、南の海岸から軍が上陸します。戦闘が始まったらそれに乗じて北の林に向かって脱出してください。拘束は――」
 風の精霊が生み出した真空の刃が、従業員たちを縛る樹脂のバンドに切り込みを入れた。
「すぐに外せるはずです。でも、いざというときまで外さないで。助けは必ず来ますから、もう少しだけ待っていてください」
 姿なき少女に救出を仄めかされた従業員は、信じられないというように周囲を見渡した後自身を縛るバンドの破損に気づいて深く頷いた。
 このコテージに押し込められた人々はこちらの行動に合わせて脱出を試みるだろう。
「……他のコテージにも囚われている人がいるかもしれませんね」
 そう、コテージは一つではないのだ。攻撃開始までにすべてを回って囚われた民間人が居ないか確かめ、居れば脱出の手引をする。中々骨の折れる仕事だがひかるにしかできないことだ。
「もしかしたら此処に導いてくれた精霊さん達が助けてあげて欲しいってお願いしていたのかもしれませんし、ね」
 もしそうならば、尚更に見捨てるわけにはいくまいとひかるは息を殺して敵の拠点内を駆け回る。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

元リゾート地かぁ、
こんな絶景なのに勿体ないねぇ。
せっかくだからアタシは先に少し堪能させてもらうよー、
何をするのかって?陽動だよ陽動。
Overedは亜空間にお留守番、
カブを水上バイク形態に変形させて水着姿に『早着替え』。
うまく波に『騎乗』り、空母からの発艦を隠してビーチ付近へ
サーフィンの穴場を探しに来たバカな民間人を装って接近するよ。

可能な限り、連合軍との繋がりを示す認識証や装備の類は身に着けない。
じゃあどうやって『情報収集』した成果を連絡するかって?
ちゃんと【超感覚探知】のテレパスをフランクリン大尉に繋いでおくからね。
リアルタイムで情報更新していこうじゃないのさ。




 海面を疾走する水上バイクの背に跨って、多喜は半島を迂回し南側に回り込んでいた。
 本来多国籍軍が提示した猟兵の任務は北岸からの先行上陸および偵察であるが、多喜は見つからぬよう事を為す仲間たちを支援するため"わざと見つかる"べく堂々とビーチに近づいてゆく。
「元リゾート地かぁ、言うだけあって絶景じゃないか」
 碧色に煌めく海を切り裂いて、白波を立てて走るバイク。キラキラと飛び散る水飛沫がひやりと冷たく、陽光に暖められた肌を心地よく湿らせる。
 多喜の格好は派手に素肌を露出した水着であった。機能性に優れたウェットスーツではなく、完全に行楽のみを考慮したそれは、傍目にはリゾートに浮かれた観光客にしか見えまい。
 その分武器の持ち込みは制限されるが、もとより亜空間より機体を呼び出せる多喜には丸腰かどうかなど些細な問題である。
「……せっかくならオフで来たかったね」
 水着で、丸腰で、海なのだ。少し早いが例年の海水浴イベントに先駆けて楽しんだってバチは当たるまいが、しかし軍事作戦の前哨という意識が真面目な多喜に枷となって伸し掛かる。
「ま、いいさ。上っ面だけでも浮かれたバカのフリして情報を頂いていくとしよう」

 ――白い砂が帯のように広がるビーチ。往時には多くの海水浴客で賑わい、パラソルが乱立しシートが敷き詰められていただろう其処に今存在するのは、鋼材を星型に組み合わせた対戦車障害物の群れだ。
 聖王国軍が機甲部隊の揚陸に備えて設置したのだろうそれらの後方にはビーチにアクセスする道路に沿って戦車や自走砲が並び、彼らを守るように盾を抱えたセレナイトが駐機しているのが見える。
(と、いうわけさ。やっぱり聖王国もビーチからの上陸を警戒してるみたいだね)
 存在に気付かれたか、セレナイト隊の一機が立ち上がりスラスターを噴かしながらビーチに降り立ったのを見て、多喜は不審に見られないよう口を動かすことなくテレパスで上陸しているはずのフランクリン大尉に一方的に情報を送りつけた。
 片道のテレパス故に相手もサイキッカーでなければはっきりと返事を送ることはできまいが、多喜は大尉が不機嫌になったのを感じ取った。有用な通信手段とはいえ頭の中に直接情報を送りつけられるのが気に食わない、といった感情を受け取って、苦笑しそうになる頬を接近したセレナイトに驚く表情が崩れないように引き締める。
『そこの! ジェットバイク、何をやっているか! ここは聖王国第八騎士団の作戦区域である!』
「えぇっ、そうだったのかい!? でも見た感じ兵隊さんたちも海を見てただけじゃないか。ちょっとくらい泳いでも良いでしょ?」
 止まれと促すセレナイトには従って、だが我儘を言う。状況を理解していない愚かな一般人と思われればなお良い。侮ってくれればそれだけ出し抜く隙が増えるのだから。
『駄目だ! そもそも貴様何処から入ってきた。海岸線は封鎖されていたはずだぞ』
「そんな事言われても、いつもの場所から海に出ただけさ。おっと、教えろったってダメだよ、あそこはあたしの見つけた穴場なんだから」
 軍人相手にも怯むことなく、聞き分けのないことを言う多喜に騎士は苛立つ。話に聞く第八騎士団の傍若無人ぶりからして、考えられるこの先の行動は大きく二つ。
 ひとつはこの場で多喜を斬り捨てて何もなかったことにする。立入禁止区域とは言え非武装の民間人を襲うというのは度胸のいる行為だが、それを厭うようなら"鏖の第八騎士団"などという汚名を戴きはすまい。
 もしそうなればすぐさまOveredの出番だ。陽動と偵察は失敗するだろうが、沿岸の防衛線を引っ掻き回すことはできる。
 もうひとつは多喜を疑い、拘束して尋問に掛ける――此方であれば大当たりだ。少なくとも沿岸の防衛線から何人かの兵が護送のために抜けるだろうし、連れて行かれた先で聖王国の拠点を発見できる可能性が高い。
 さて……と騎士の出方を伺う多喜に対して、セレナイトは誘導に従いビーチから上陸するよう促す。
『状況が状況だ。貴様が共和主義者のスパイである可能性もある。疑いが晴れるまで拘束させてもらうぞ』
「そりゃ困るよ、せっかく今日はいい波が来そうだってのに。なあ兵隊さん、少しだけ、1時間だけでいいから泳がせてくれないかい?」
 来た、と内心でガッツポーズしながらもごねる多喜。ここで聞き分けが良くなれば疑念を招く。演技をするからには最後まで、多喜は騎士に文句を言い、あるいはあの手この手で解放を強請りながらも武器を向けられれば怯えたふうに従順に半島に上陸し、防衛設備の種類や数、布陣をはじめとして見たものすべてをフランクリン大尉に伝えながら聖王国軍の指揮所へと連行されていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
久方ぶりです、ファーレンヒルト少佐!
此度の共闘、喜ばしい限りです

…宜しくお願いします、ジェンキンス様
(戦機として手腕“は”評価)
実は商談がありまして

大枠で結構
聖王国の現状と世論の差のデータ
(死体袋脳裏に浮かび)
第八でなく第五騎士団と"バルトアンデルス"
かの国のレプリカントとロボットヘッドの待遇の情報を所望します

対価は強襲揚陸作戦中、Oマシン遭遇まで貴方の指示する部隊の専属護衛
払う遺族年金と保険金の減額です
…背を撃っても構いませんよ

此度の作戦では確実に
未来にとっても無意味な知識かもしれません

ですが“芽生えぬ種”も多いのは“仕事柄”ご存知でしょう?

水中用装備とUC用い沿岸部へ
地形や防備を情報収集




 飛行甲板上に直立し、潮風を浴びて出撃の時を待つキャバリア隊。
 肩に双頭の鷲を抱いたオブシディアンの先頭に立つセラフィム・リッパー型は、かつて猟兵を苦しめた国家最強格のエースが駆るそれだ。
 双頭の鷲、そしてⅢ-01の機体番号。東方同盟戦線首都教導団第三大隊、トリテレイアにとってたった一度剣を交えただけの――しかしその一度で忘れ得ぬ、この戦乱の世界における強者の力を見せつけた鷲の女王に対して、騎士は彼女の祖国の作法で敬礼を送る。
 かの教導団の力量はこの場の誰よりも猟兵が知っている。ならば、それが今度は味方であるということは作戦の成功に寄与する喜ばしいことだ。
 ――尤も、そこにこの男という不確定要素が絡んでいることがトリテレイアにとってひとつの不安でもあるわけだが。
「……作戦指揮の程、宜しくお願いします、ジェンキンス様」
「えぇ、お任せくださいミスターゼロナイン。あー、サー・ゼロナインとお呼びしたほうが良かったですかねぇ」
 ミスターで結構です、と断るトリテレイア。あの日皇洲連邦の戦場に居た猟兵は皆、フィリップ・ジェンキンスという男への拭いきれない不信感を抱えている。
 同時に彼の商人、そして工作員としての手腕だけは評価に値するだろうというのもトリテレイアにとって否定できない事実だった。
 ごく少数の工作員を使い、クーデター軍の降伏をひっくり返し泥沼の戦いを生み出し――そしてそれを自身の直属の部下にさえ悟らせなかった。猟兵とて事前に経済連合が暗躍していると報されていなければ踊らされていたかもしれない。そんな男が堂々と味方の面をして立っている。
 表情などない鋼鉄の騎士が、露骨に苦い仕草をすることにジェンキンスは悲しいじゃないですかなどと嘯きながら義足をコツコツと甲板に打ち付ける。
「この脚じゃご心配のような真似は出来ませんよ。いやはや高い勉強料を払わされたものです」
「ではやはり、その負傷はあの時の……詫びはしませんよ」
 それで結構、と商人の顔で笑うジェンキンス。
「それで、忌々しい私とわざわざ足を止めて会話しているんです。商売の話があるんじゃないですか?」
 今の第五共和国との契約に障らない内容ならば聞きましょう、というジェンキンスに、こと策謀の部類に関してはこの男に学ぶこと頼ることがあるとトリテレイアは改めて認識する。それは騎士であるがゆえに彼にとって不十分な領域なのだ。
 トリテレイアは念の為に盗聴を阻害するジャミングを掛けながら、ジェンキンスに一歩近寄った。
「やはりジェンキンス様、貴方のその商人としての手腕は私ではとても及びませんね。――我々の敵、聖王国についていくつか聞きたいことがあります」
 傭兵隊長の皮を被った工作員、諜報員であるジェンキンスならばより深い知見を持っているのではないか。そう思っての問いに対して、男は金髪を撫で付け良いでしょう、と頷いた。
「とはいえ、あの国の防諜は思いの外手強いものでしてね。時代錯誤な宗教国家の癖によくやるものです。いや、狂信がそうさせるのですかねぇ」
 厄介で困りますね、と肩を竦めるジェンキンスの言葉に過るのは、討たざるを得なかった一人の騎士の末路。彼女を収めた無機質な死体袋がトリテレイアの脳裏に浮かぶ。
「……第五騎士団の」
「ご存知でしたか。そう、あの"バルトアンデルス"には我々もほとほと手を焼いていましてね。群体の諜報員など、我々生身の人間には荷が重すぎるんですよ」
「――彼女のことを、そして聖王国におけるレプリカントとロボットヘッド……非人間種族の待遇について情報をお持ちですか」
 ええ、ある程度ですが。ジェンキンスは頷くと、しかし楽しい話ではありませんよ、と前置きをする。
「まずは聖王国の人口ですが。大多数が人間、軍に少数のアンサーヒューマンが存在するのみ、というのがあの国の公式な見解です」
 公式見解というならば実情は違うのか、と問えばその通りです、とジェンキンスは声を潜める。
「まず公式見解の正しい点として、ロボットヘッドは生産されていません。知性のある機械をあの国の教義は認めませんからね、作るだけでも重罪だそうで」
 彼ら、あれで結構頼れるんですけどねえ勿体ない。そんなぼやきを流して続きを促す。
「レプリカントは……ええ、人口としてはゼロです。なにせあの国はレプリカントを人間として数えませんから。この時代に奴隷労働さながらの待遇ですよ。サイエンスフィクション小説はお読みになります? 少し前に流行った、人間そっくりだけれど人権のないアンドロイド。あれが形容として誇張抜きに適切なんです」
 それは、とトリテレイアが声を上げる。
「それは……あまりにも……!」
「人でないから劣悪な環境で労働に従事させられる。人でないから壊れたら使い捨てても心が傷まない。人でないから口に出すには憚られる衝動を向けても罪に問われない……我々の調べ得た彼らの待遇は凄惨極まるものでしてね」
 だが、かつて行われた経済連合の"非営利人道団体"によるレプリカント解放の試みは失敗に終わった。同じレプリカントであり、例外的に軍籍にある第五騎士団、諜報統括"バルトアンデルス"らの妨害によって。
「我々の介入はそれきりです。得た学びはあの国ではあの惨状が常態であるがゆえに、彼らは救われるということが理解できないこと、そして"バルトアンデルス"がこの上なく厄介な相手であるということくらいでしてね……」
「…………ありがとうございました」
 彼女らはかつて帝国に属した同胞、ウォーマシンやドロイドたちと同じだ。従属することしか知らず、自由を夢見ることすら許されず、救いの手を未知のものと恐れて自ら振り払う。
 そしてそのレプリカントの有り様を生み出した聖王国という国家の歪な精神性への怒りがふつふつと煮えたぎるのを、トリテレイアは理性で以て飲み込んだ。
「ですが何故今第五騎士団やレプリカントについて聞くんですか? 第八騎士団の戦力情報だってお売りできますよ?」
「確かに此度の作戦でこの情報は無意味でしょう。ですがいつかの未来で――いえ、その時が来ても私には活かせぬ情報かもしれません」
 ですが、と。
「いつか花が咲くかも――と種を撒いても、芽生えないことが多いのは仕事柄ご存知でしょう?」
 苦笑して、ジェンキンスは本職のことをあまり言いふらさないで頂けると助かります、と唇の前で指を立てる。
「承知しました。それから、情報の対価は上陸作戦における貴隊の護衛。貴方の会社が支払う遺族年金と保険金の大幅減額をお約束する――というので如何でしょう」
「それはいい! この場で札束を積まれるより嬉しい対価ですねぇ。期待していますよ、ミスターゼロナイン!」
 愉快そうに笑うジェンキンスの声と遠ざかる義足の足音を背に、トリテレイアも上陸作戦に備え愛機の出撃準備を進めてゆく。

成功 🔵​🔵​🔴​

アンネリース・メスナー
アドリブ歓迎

わたくしに潜入作戦など出来るはずがないでしょう!
愛機のアマランサス・ラピートを見て分からないのですか、この親衛隊仕様機を!
総統閣下の権威と士気向上、そして式典を意識した装飾がされた目立つことを目的とした機体で偵察や工作任務など馬鹿げてますわ!
そういうのはアマランサス・マリーネを使うどこぞの戦犯の仕事ですわ!

そういうことですので任務とは外れますが甲板で待機しますわ
サボってはいませんわ、わたくしのラピートに搭載されたサイコセンサーを活かして、此方への敵意を察知しているのです
敵意の出処には敵がいますし、なんなら未来予知染みた超直感で此方への攻撃をロングビームライフルでの狙撃で迎撃しますわ




「わたくしに潜入作戦など出来るはずがないでしょう!!」
クイーン・オブ・マティルダの甲板に若い娘の声が響く。何事かと女王州連盟軍の兵たちが視線を彷徨わせれば、その主は飛行甲板の先端に膝をつく白い機体の足元で声の主はデッキクルー相手に語気を荒げていた。
 多国籍軍に参戦した国家は大きく四カ国。半数以上を占める経済連合軍に、歴史的な因縁から第五共和国支援を表明した女王州連盟軍。そして経済連合の同盟国として教導部隊を三個大隊派兵した東方同盟戦線と、この部隊には参加していないようだが宗教的対立から聖王国と交戦状態にある――敵の敵は味方という理屈で多国籍軍に加わった、強力な陸軍戦力を有する十約信仰同盟軍。
 彼らが主要な戦力を占めているとはいえ、彼らだけが多国籍軍を構成しているわけではない。
 様々な思惑を秘めて小規模部隊を送り込んだ小国は少なくなく、そしてその中に"亡国"が紛れ込んでいてもその事に気付けるものは多くはない。
 彼女こと多国籍軍、"ズィガ帝国親衛隊派遣将校"たるアンネリース・メスナーもそんな多国籍軍に参加した猟兵であり、同時にもはや地上に存在しない祖国の旗を掲げてこの大規模軍事作戦行動に従事する士官であった。
「困りますメスナー殿。作戦計画に従っていただきませんと……」
 女王州連盟軍の将校がなんとか宥め賺して出撃を頷かせようとするが、皇族にして軍における名門出身のプライドを持つアンネリースを御すことができるとすれば彼女の祖国のより位の高い人物か、女王州連盟の各女王達くらいであろうか。
 とはいえアンネリースもただ自身の感情、好き嫌いで任務不参加を主張するような、家柄だけの愚かな娘ではない。
 彼女は自身の愛機を振り返り、連盟の将校にこれを見よと示す。
 白と紫を基調とした、陶器のような上品さを醸し出す装甲。金のエングレービングや翼を広げた鳥を模した鶏冠は、儀礼用の機体であろうことをキャバリア軍事に詳しくないものでさえ理解できるほどにわかりやすく示している。
「このアマランサス・ラピートは親衛隊仕様機なのですよ! 総統閣下の権威を示し、将兵の士気を高めるべく装飾された儀典機を偵察や秘密工作に投入しようなどと、あなた達は本当に軍事の常道を理解していらっしゃるのかしら!?」
 言い方こそ高圧的だが、アンネリースの物言いはなんら間違いではないのだ。徹底して目立つためにカスタマイズされた機体を目立ってはならない任務に投入すれば、その瞬間に作戦は瓦解するだろう。
 だが、その態度が良くなかった。此処はズィガ帝国ではなく、そしてかの帝国の在りし日の威光を知るものも少ない異国の海なのだ。
 アンネリースに怯むことなく、連盟の将校はならば、と艦の格納庫に繋がるエレベーターを指して言い返す。
「それならば連盟海軍のマリーネ型をお貸ししますので出撃していただけますか! 同じアマランサスタイプなのですから、出来ないとはおっしゃるまい!」
「お断りしますわ! せめて正規軍仕様のラピートならば我慢も出来ますけれど、マリーネ型だなんて! 誇り高きズィガ帝国軍人であんな機体を使うのはどこぞの戦犯くらいですわ!」
 ああ言えばこう言う……! と将校のこめかみに青筋が立ちかけたその時、アンネリースに思わぬ助け舟が入る。
「そなたの愛国の志と機体への愛情に我々クイーンズの人間が口出しをするのは道理が通るまい。中尉、控えよ」
 亜麻色の髪を制帽に押し込みながら取り巻きをぞろぞろと引き連れて現れた上級将校らしい人物に、先程まで言い合っていた連盟の中尉は背筋が反り返るほどピンと直立して口を噤み敬礼の姿勢を取る。
 アンネリースは知っている。この雰囲気は、皇族が軍を査察する時のそれだ。自身もそうされる側だったが故に覚えのある空気に、亡国の皇女は自国式の敬礼で以て対応する。
 敬礼を送りつつ、不躾にならぬ程度に這わせた視線が確認した階級章は将官のそれ。少将の位を持つ上級将校は、どちらかと言えば軍人の役を演じる女優のようにも見える。
「少将閣下、お初にお目にかかりますわ。わたくしはズィガ帝国の……」
「うむ、存じておるよ。アンネリース・メスナー嬢。そなたの祖国の件は残念に思うが、そなたが此処で武勲を立てればズィガ帝国未だ死せずを世に知らしめることもできよう。――名乗りが遅れたな。私は女王州連盟マティルダ女王州が王、マティルダⅢ世である」
 まさか王族どころか連盟女王の一人が前線に出てきたとは、という驚きをおくびにも出さず、アンネリースはズィガ帝国の代表として堂々とマティルダⅢ世女王に相対する。
「無躾なお願いであること、任務を外れることは承知の上で、女王陛下に申し上げますわ。この近衛仕様のアマランサス・ラピートはわたくしの、我が国の誇り。わたくしにとってこの機体以外で戦う選択肢はありませんわ。ですから……」
「よい、私が認めるとも。いや、認める必要すらありはすまい。我々がそなたに何かを強要する道理はありはしないのだから。ズィガ帝国軍はズィガ帝国軍の流儀で我らが友人たる第五共和国の人々を助けてやってほしい」
 寛容に、自身の艦上でのアンネリースの行いの全てに許しを出して艦橋へと去っていくマティルダⅢ世女王。
 かくてアンネリースは祖国の誇りたる機体で作戦参加することを認められると、ようやく乗り込めた愛機のコックピットで意識を研ぎ澄ます。
 静かに、瞑想するように目を閉じれば――機体のサイコセンサーを通じて半島に存在する人々の意識が朧気ながらに感じ取れる。
 緊張、高揚、恐怖、敵意、怒り。
 戦時下の、これから戦場になる場所だけあってあまり愉快な感情を抱く人物は居ないようだが、その圧に負けることなく艦隊を向く敵意に絞って探知する。
「…………これは、まさか!」
 その中に感じられる、ひときわに巨大な敵意。否、これはもはや殺意に等しい。
 艦隊の揚陸作戦における脅威となるであろうその存在にアンネリースが気付けたことは幸運であったのだろう。
 上陸部隊にそれが潜む座標を送りつつ、艦橋にも警戒するべき存在があると警報を発するアンネリース。
 彼女は母艦の甲板上で愛機にライフルを構えさせ、射程内に入ればすぐさまにこれを狙い撃てる姿勢でその"何か"の出現に身構える。

成功 🔵​🔵​🔴​

貴司・忍
SPDで挑戦
アドリブ絡み歓迎

【都市国家立花】所属特殊攻撃隊【開天組】隊長兼特記戦力【猟兵】
貴司忍少佐。
これより多国籍軍の要請に基づき傭兵として合流する

…よその国のドンパチにかこつけて捻じ込んだから、宣伝ついでにオブリビオンマシンの情報分捕って来いとかうちのトップも無茶言うぜ…

これでも隊長機だし、通信設備にゃいいもの積んでる
…何より、水際での防衛戦と強襲についてはあたしもプロだ
攻める側で、守る側でもあった
傭兵やってようが国守ってたプライドは捨てちゃいねぇ
上陸後、頭部探査ブレードで敵通信の傍受
敵哨戒ルート及び敵迎撃設備の攻撃範囲を割り出しにかかる
被害は少しでも減らさなきゃならねぇ
読み切って見せるさ


ヴィクター・ホリディ
女王に抱かれてリゾートへ
さぁ諸君、派手な歓迎に備えようか
(クイーンズに経連、そして同盟…やれやれ面倒な事になりそうだ)

■方針
上陸地点近くまでは機動部隊に引率頂こう
こっちの機体じゃ近づく前に気付かれてしまうからね
上陸地点までくれば後はこちらの出番、強襲機の戦い方を見せるとしようか

UCを発動させ海中から一気に上陸地点を強襲
ミサイル、ショットガンの近遠での制圧/貫通射撃
同時に情報収集を開始
情報を戦場知識、瞬間思考力でまとめて敵陣地の通信、もしくは砲兵部隊を見つけ出し優先的に排除する

「厄介なものは先に潰して、ゲストの安全を確保する。
 後はゲストにお任せってね」




「第二次先行上陸部隊は出撃位置へ。舷側エレベーター降ろせ!」
「キャバリア隊出撃後艦隊は速力上げ! 攻撃開始位置へ!」
「護衛艦隊は陣形を乱すな! 沿岸からの砲撃を警戒しキャバリア母艦の盾になれ! 揚陸艦および艦載機甲部隊は突入に備え!」
 ひときわに慌ただしくなってきた母艦の舷側エレベーターから水面に二機のキャバリアが飛び降りた。
 プレケスと六号開天である。かたや歴戦の古参兵、かたや学徒の特攻隊長。だが共通するのは彼らの機体が指揮官機仕様であり、パイロットたちもその機体に相応しい能力を持つという点だ。
「女王陛下に抱かれて優雅なリゾートクルージングも此処までだ。聖王国連中の歓迎パーティに飛び入り参加する覚悟はどうだい」
「問題ねぇよ。……都市国家立花所属、特殊攻撃隊開天組隊長兼特記戦力猟兵――貴司忍少佐、これより多国籍軍先行上陸部隊と合流する」
 勇ましく名乗りを上げ、海上をゆく開天の背を見遣ってヴィクターはひゅうと口笛を吹く。
「あのトシで俺より階級が上ときた。若者の成長ってのは凄いもんだ、こいつは楽をさせて貰えるかもしれんね」
 へらりと軽薄な笑みを浮かべて咥え煙草に火を点ければ、紫煙がコックピットの閉鎖空間に満ちる。
 エアコンの小さなフィルターがフル稼働で煙とヤニを排出しようと唸りを上げ、プレケスもまた海上に進出する。
「――第二次先行上陸部隊、全機発艦よろし! 舷側エレベーター上げ!」
「続いて主力本隊各機はカタパルトへ機体固定開始せよ」
「第三教導団一番機より順次出撃用意!」
 母艦が多国籍軍本隊の発艦準備に入りつつ舵をきり、作戦開始位置へと移動を開始する。
 こうなればヴィクターらも引き返せない。ヒェイル半島に展開する聖王国第八騎士団を打破せしめねば、再び艦隊と合流することは出来まい。
「しかし――」
 女王州連盟の特殊部隊と猟兵の手で掃除された海中警戒網を難なく突破しながら、ヴィクターは艦隊を構成する錚々たる面子を思い返す。
 女王州連盟は連盟議会における発言力こそ低いものの、一国に等しいマティルダ女王州海軍の旗艦を動員した。いや――見間違いでなければ、あの母艦の司令はマティルダ女王州の女王陛下その人であったように思える。
 同盟国の支援とはいえ女王本人の親征は気合を入れすぎている。それに経済連合が猟兵が共和国を支援していると知りながら因縁浅からぬアドバンスド・オーダー社のジェンキンス隊を派遣し、他国に戦力を送り出す余裕などないであろう東方同盟戦線までもが最精鋭戦力を派兵している。あげく亡国のズィガ帝国残党に専守防衛の都市国家立花までもが自国の看板を掲げて鼻っ面を突っ込んできたのだ。
「やれやれ、面倒なことになりそうだ……」
 世界に渦巻く戦乱の機運を嗅ぎ取って、歴戦の古参兵は苦い顔で煙草を携帯灰皿に捩じ込んだ。

「やれやれ、面倒な仕事を押し付けやがって。うちのトップも無茶言うぜ……」
 開天のコックピットで忍も溜息を吐いていた。聖王国進攻の報は立花でも小さくない扱いで紙面を飾った。件の宗教国家が歴史的因縁のある第五共和国に侵攻したことそれ自体はいつか訪れるべくして訪れた事態であるというのが大多数の見解であり、奇襲効果で緒戦こそ優位に展開できようと地力に勝る共和国がただちに反撃を開始すれば聖王国軍は国境線まで容易く押し戻されるというのが識者の予想であった。
 が、そうはならなかった。南部軍を奇襲で失い、そして東部軍の殆ども正体不明の戦術級兵器による攻撃で一瞬のうちに壊滅した。共和国は半身を失い、多国籍軍が参戦する今このときまで敗退を重ねてきたのだ。
 それを齎したもの、その正体を探らねばならない。
 それがいつか立花に向いた時、被害を最小限に抑えるためにも。
「友好国への支援にかこつけて敵戦力の調査、ついでに開天の宣伝か。やることが多すぎやしねぇかね……」
 前者はともかく後者に関してはこれだけの国々が注目している戦場だ。普段どおり最高のパフォーマンスを発揮すれば食い付くという自信がある。惜しむらくは機体特性的には続く強襲揚陸作戦の方が向いていたであろうことか。
「ま、作戦に文句言っても始まらねえしな。水際作戦には一日の長ってもんがある。やられて嫌なこと、ってのも多少は読めるつもりさ」
 だから――と、開天の高性能ブレードアンテナで索敵を厳に、プレケスを先導して警戒網の隙間を――それも敵が此処を通るとは思っていないであろうごく狭い間隙を縫って上陸を果たす。
「よし、迎撃兵器の配置と種類を割り出しにかかるぞ」
「だな。狙いは前線指揮所と砲兵隊の陣地だ。少佐殿、そっちの機体はウチのより耳が良さそうだ。ひそひそおしゃべりしてる連中の聞き耳は任せるぜ」
 忍が敵の通信をもとに迎撃陣地の姿をじわじわと、しかし正確にあぶり出していくならば、ヴィクターは古参兵の経験を元に機体を走らせ敵の潜む陣地を探す。
 セオリー通りに伏せている正規の防衛陣地は当然存在するだろうが、戦争屋の第八騎士団がそんなお行儀の良い格好で多国籍軍をただ待っているわけがないという確信がある。
 そして、セオリーを無視しつつ上陸する多国籍軍に痛烈な一打を加えることが可能で、そしてそれを実現するだけの戦力を伏せておける場所はそう多くはない。
 そうして絞り込んだ幾つかの候補のうち、最後には勘で選んだひとつ。そこに果たして迎撃陣地はあった。巧妙にカモフラージュされてはいるが、ネットを被った塹壕に自走砲が伏せてある。
「作戦開始まであと少し、軽く小突いて声を出させてみようかね。厄介なものは先に全部見つけてゲストの安全を確保する。その後の楽しいことはゲストにの皆様におまかせ、ってね」
 プレケスがショットガンの照準を自走砲の車体に向け――

「うおっ、いきなり通信量が増えやがった……おっさんめ、なんかやりやがったな……!」
 ヴィクターが先行してしばらく、慌ただしく通信が飛び交い始めた聖王国の各陣地。その中にはいままで存在を掴めなかったような部隊まで紛れ込んでいる。
 黙り込み、息を潜めていた連中まで騒ぎ出した。それは猟兵と女王州海軍特殊部隊の存在が敵に感づかれたことと同義――だが。
「だったらこっちもおっぱじめるぞ。戦域に展開中の友軍部隊へ暗号文で打電、敵防衛部隊の陣容を送れ! あとはアタシと開天が艦隊に届けてやる!」
 次々に飛び込む味方の偵察情報を中継して艦隊に叩きつける忍。やれるだけのことはやった、ならば後は艦隊の仕事であろう。
 ――頭上を轟音とともに砲弾が飛び越えてゆく。
 南からの絶え間ない砲撃音。強襲揚陸作戦に先駆けた直接打撃艦隊による突撃準備砲撃が始まったのだ。
 ラファール作戦最後の戦場において、戦闘は次のフェーズへと移行する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『機動殲龍『戦火』』

POW   :    ジェノサイドストーム
自身に【戦場の闘気】をまとい、高速移動と【口から防御を貫く長距離レーザーを全方位へ】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    エクスターミネイター
自身の【命】が輝く間、【遠近問わず猟兵へ】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    オーバーキルマシン
【全武装】で攻撃する。[全武装]に施された【生存者が居なくなるまで続く無尽殺戮】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 第一次、第二次先行上陸部隊のヒェイル半島上陸より5400秒後。
 先行上陸部隊による聖王国部隊への偵察および警戒網の排除は成ったとして、半島南側の洋上に移動した多国籍軍艦隊による強襲上陸作戦が開始された。
 これが第五共和国東岸一帯を聖王国の勢力下より奪還する乾坤一擲の大反攻、ラファール作戦の成功に向けた最後の一手となるであろうことに多国籍軍将兵の士気は高まり、また猟兵の参戦により戦勝を疑うものは居ない。
 艦隊総司令官に女王州連盟マティルダ州女王マティルダⅢ世を、それを補佐するオブザーバーとして経済連合でも海外での軍事作戦行動の経験豊富なフィリップ・ジェンキンス課長を迎え、前線指揮官に東方同盟戦線でも指折りのトップエースであるアイリーン・ファーレンヒルト少佐を据えた多国籍軍全体を見ても錚々たる面子を抱える艦隊は、規模・練度ともに共和国東部に存在する共和国側部隊における主幹戦力であるといえよう。
 その艦隊を構成する直接打撃艦隊――経済連合のミサイル駆逐艦や快速の巡洋艦、果てはクイーンズネイビーが誇る大型の戦艦まで――が一斉にヒェイル半島の陸地に向けて砲撃を開始した。
「本作線は盟友たる共和国の国土を奪還し、この地に散った多くの共和国将兵の悲願を達成するものである。共和の、民主主義の灯火を守る戦士たちよ、諸君らの勇戦に期待する」
 マティルダ州女王の鼓舞を受け、艦隊の士気は最高潮に達した。艦隊の保有するすべての火力が沿岸に展開する聖王国の迎撃部隊に向けられ、容赦なくその威力を降り注ぐ。
「目標、ホワイト・ビーチ一帯! 全砲門撃ちー方始め!」
「艦対地ミサイル一番から八番斉射! 内陸の敵砲兵を片端から潰せ!」
「艦隊に接近する敵キャバリアは駆逐艦隊で掃討せよ! 繰り返す、艦隊に接近する敵キャバリアは駆逐艦隊にて掃討せよ!」
 それは抗い難い鋼鉄の暴威であった。大小あらゆる口径の砲が榴弾の雨を送り込み、徹底的な面制圧で海岸線に展開した聖王国の機甲部隊を叩きのめす。
 あるいは内陸から反撃を試みた砲兵部隊は、先行上陸部隊の得た情報を元に打ち込まれた精密誘導弾にてその役割を果たす前に粉砕された。
 だが、砲撃に対して強い耐性を持つのが聖王国の主力量産機たるセレナイトだ。
 海岸の機甲部隊に配備された僅かな機体のうちいくらかがその盾で艦砲射撃を耐え、海上に飛び出しホバー機動で艦隊に迫る。
 駆逐艦隊がCIWSや両用速射砲で迎撃を試みるが、敵も最精鋭である。互いに死角をカバーしあい、迎撃を受け流して艦隊に肉薄せしめた。
『これ以上仲間を撃たせはせん! ――獲った!』
 跳躍し、敵艦に跳び乗り剣の一撃で砲を粉砕せしめる。それが地上の友軍の被害を抑える術であると理解して、騎士はそれを果たすべく動く――が。
「接近した敵機を駆逐し半島への強襲上陸を開始する! 前菜で落とされるな――大隊続け!!」
 各母艦より発艦した東方同盟戦線アードラー大隊各機が行きがけの駄賃とばかりに接近した敵機を迎え撃ち、高い練度による盾の死角を付いた連携攻撃を受けてセレナイトはその目的を果たすことなく海中に没した。
 僚機のためにセレナイトの盾を引きつけたビットをハンガーに格納し、大隊長機たるセラフィム・リッパーがオブシディアンの群れを引き連れ海上を飛ぶ。
「東方同盟戦線派遣部隊、ホワイト・ビーチより上陸を開始。続いて経済連合軍各隊は順次発艦、トゥルエ・ビーチより上陸を開始せよ」
「女王州連盟海軍キャバリア隊はシエージュ湾より上陸、橋頭堡を確保せよ。なお、猟兵より周辺に有力な敵戦力の存在が示唆されている。各機はこれに留意し十分に警戒せよ」
 続けてキャバリア隊が続々と母艦より出撃して揚陸艦が突入するための橋頭堡を築くべく突撃を開始した。
 戦車や歩兵を満載した揚陸艦隊を沈められるわけにはいかない。これを守るのは軽快な機動力を持ち、ピンポイントで火力を投射して迎撃を排除できるキャバリアの役目である。
 ――斯くて作戦は順調に進行していくかに見えた。

 地上の聖王国陣地は混乱の極みにあった。
 多国籍軍の入念な準備砲撃を塹壕とセレナイト隊の盾で耐え、揚陸艦を砲兵の狙撃で殲滅するという迎撃計画は伏せていた砲兵が先んじてミサイルによる爆撃を受けたことで瓦解し、それ代替するプランのうちいずれを実行するか判断を下すべき司令部からの通信も途絶えたためだ。
 猟兵の仕掛けた爆弾によって通信設備とそれを稼働させる発電機を吹き飛ばされた司令部は、辛うじて抗戦の指示を下したきり沈黙した。
 リゾートホテルを接収し、共和国の民間人を勾留していた司令部施設だ。多国籍軍の攻撃で吹き飛んだ――などということはない。猟兵の報せを受け、むしろ多国籍軍は司令部周辺への砲爆撃を厳禁としている。
 で、あるならば司令部が黙したのは何故か。
『……報復だ』
 司令部のすぐ側、観光用に整えられた湖に浅黒い肌の男の姿がある。
 戦闘開始の混乱に乗じて逃げる人質には興味を示さず、また彼らを止めるべき第八騎士団の騎士たちはすべて彼の手の者によって戦闘開始直前に排除された。
『受けた損害は倍にして返す。奪われた以上に奪い返す……』
 聖王国正騎士長の装束と鎧に身を包んだ異国風の男は、湖にて作業中の従士たちに歩み寄る。
『ハルバリ卿!? ここは危険です、司令部にお戻りください!』
『グェラ一番機の自沈急げよ! 多国籍軍に奪われるくらいなら壊してしまえ! 二番機、三番機の作業進捗どうか!』
 湖にその上体を浮かべる異形の機動兵器、どうやら従士たちはそれを多国籍軍に鹵獲される前に沈めて破壊しようとしているらしい。
 ――その作業を急ぐ従士の背に、ハルバリ卿と呼ばれた騎士の銃口が向けられた。
『自沈だと? 馬鹿を言うな! これ以上俺の投資を無駄にされてなるものか! お前たちの装備も! お前たちの飯も! すべて俺の金で誂えた俺のものだ! それが俺のために戦い俺の役に立つことをしないなら……!』
 銃声。撃ち抜かれた従士が倒れ、周囲の従士たちが正騎士長の乱心に騒然とする。
『ハルバリ卿なにを!? ご乱心召されたか!』
『黙れ! この戦域の指揮権はこの俺が、第四騎士団長ドゥルセ・ハルバリが掌握する。グェラの自沈作業は中止だ。これで多国籍軍を叩く……!』
『ですがこの機体は未完成ですよ! 敵味方識別装置に異常だって出ている、とても実戦に耐える機体では…………』
 再び銃声。異論を唱えた従士の頭蓋が貫かれ、死体がひとつ湖に波を立てた。
『すでに司令部は壊滅している。お前たち第八騎士団の指揮官は不在だ。その場合、階級の最高位であるこの俺がお前たちの指揮を執ることが軍規だろう?』
 司令部警護のセレナイトたちが湖に集い、巨大機動兵器を引き上げる。彼らを操るパイロットも既に第八騎士団の騎士ではなく、ドゥルセ・ハルバリに付き従う第四騎士団の敗残兵に成り代わっていた。本来のパイロットたちは今頃司令部の地下で生ゴミにまみれ冷たくなっていよう。
 狂気だ、と従士は理解した。この狂える第四騎士団長とその配下にはもはや道理も言葉も通用しない。従うか殺されるかの二択であり、ここで自分たちが死ねば前線で多国籍軍を押し止めるため命を掛ける戦友にこの内なる脅威を伝えるものすら居なくなってしまう。
『…………くっ。ドゥルセ・ハルバリ閣下の指揮権継承を確認しました。グェラ一番機の自沈作業やめ!』
『それでいい。出撃準備だ! 実弾積み込みいそげ! 燃料、推進剤もだ! 俺がこいつで多国籍軍の忌々しい連中をブチ殺してやる……!』
『了解、グェラ出撃準備作業始め……!』

「作戦は実に順調ですねえ。猟兵のおかげでもありますが流石に女王州連盟も東方同盟戦線も練度が高い。精鋭を送ってよこすなんて、ああ麗しきかな国家間の友情! というヤツですかね?」
「そんなものが存在し得ないことは貴国が何処よりも理解しておられよう。私達は自国の国益のために戦争を共和国領内で終わらせねばならないのだ。むしろ共和国には申し訳無さすら覚えるものよ」
 ははあ、とマティルダⅢ世の呟きに大仰に頷くジェンキンス。聖王国が共和国を完全制圧すれば、次は自国が戦場に成るかもしれないのだ。そうなる前に戦争を終らせる。そのためならば共和国の国土がどれほど荒れようと、共和国市民が帰る場所を失うことになろうとこれ以上の戦線拡大を阻止せねばならない。
 で、あるならば莫大な鉄量による制圧と精鋭部隊を惜しみなく投じることによる短期決戦思想は誤りではない。これによって聖王国を早々に駆逐できるならば、第五共和国政府は文句を言うどころか窮地を救ってくれたと感謝せねばならないだろう。
 そして経済連合は恩を売ることで戦後復興が生む利益を自国が専有することに、東方同盟戦線は小国に過ぎない自国が傷を受けてなお大国の威厳を保つであろう第五共和国のより強力な後ろ盾を求めて、という辺りが狙いだろうか。
「――キャバリア部隊各隊の上陸完了。損耗率6パーセント」
「ホワイト・ビーチの橋頭堡確保に成功。トゥルエ・ビーチは現在交戦中、シエージュ湾はまもなく制圧完了とのこと」
 次々に舞い込む報告は優勢そのもの。故に、艦隊司令部に詰める彼らは戦後を語ることができる。その余裕がある。
 だが、続く報告がそれを一気に叩き壊した。
「――内陸部に強力な熱源反応、数……三! 戦術マップに反映します!」
「この位置、ズィガの娘が申していた"殺意"とやらか! 全艦警戒を厳にせよ! いつでも回避運動を…………」
 女王が声を上げた瞬間であった。窓ガラス越しにも感じる焦熱が艦隊を掠め、外郭にて砲撃を続行していた打撃艦隊のいくらかが海上から消えた。
「く……駆逐艦トレントン、モンマス、キャムデンおよび巡洋艦ゼナ、レーダーより消滅……!? いえ、ご、轟沈……轟沈です! 強力なレーザー照射を受けた模様!!」
「女王州連盟海軍第71強襲機甲大隊の信号ロスト! シエージュ湾上陸部隊との通信途絶!」
「トゥルエ・ビーチの経済連合軍部隊より入電――大型の機動兵器の出現を確認! 同タイプの機体が二機、艦隊とシエージュ湾上陸部隊を攻撃したのも同様の兵器と思われます!」
 優勢を告げる報告が一気に覆った。オペレーター達の声は余裕を失い、悲鳴じみて艦橋に響く。
「多数の戦闘艦を一撃で沈める兵器ですか……いや、厄介なものを繰り出してきましたねぇ。ひとまず揚陸艦隊を退避させましょうか」
「うむ、そのように。艦隊は火力を敵巨大兵器に集中! ホワイト・ビーチに進出しつつある正面の機体から撃破せよ! アードラー大隊はトゥルエ・ビーチの経済連合軍の救援に。シエージュ湾方面の機体は先行上陸部隊に対処させよ!」
「り……了解!」
 ジェンキンスの判断とそれを追認する女王の一喝で統率を取り戻した艦隊が、あの巨大な兵器にとって的以上の存在になりえない強襲揚陸艦を撤退させ火力を集中投射する。
 ――如何に巨大兵器と言えど艦隊の全力砲撃を浴びればタダでは済むまい。だが、その予想は大きく裏切られる。
 巨大兵器の全身に搭載された大量の火器兵装による砲弾迎撃――これはまだいい。だが、その射線上に臆することなく飛び込み盾で艦砲射撃を受け止めるセレナイト部隊が直撃弾を許さない。
『グェラをやらせるな! 騎士団長と生きて帰れば家族の生活も約束される!』
『元異教徒の我らは挺身で以て信仰を示すしか無い……! 命を捨てるのは此処だぞ!』
 高速で飛来する砲弾が相手だ。すべてのそれを的確に迎撃することは困難だが、受け止め損ねた僚機が爆散しようと怯まず盾になるセレナイトはまさに狂信としか呼べぬ執念を感じさせる。
 だが、一方で艦隊の全力砲撃は一機を完全に拘束せしめた。再び高出力レーザーを照射しようとすればセレナイト隊は誤射を避けるため退避せざるを得ず、そうなれば残存艦の艦砲射撃が敵機を仕留めるだろう。
 三つの戦区のうち、ホワイト・ビーチの巨大兵器は犠牲を無視すれば破壊できる。
 トゥルエ・ビーチの機体は最精鋭たる第三教導団アードラー大隊と、艦隊でも最大規模を誇る経済連合軍の傭兵キャバリア師団が迎撃を開始し――残るは司令部を置くホテルより出撃し、シエージュ湾の女王州連盟軍を殲滅した一機のみ。
 転進しこれを迎撃せんとする猟兵および先行上陸した女王州連盟の特殊部隊キャバリア各機は、鬱蒼と茂る原生林を駆け抜けそれと接敵した。
 恐竜……否、怪獣であろうか。二足歩行する竜を模した巨大な機動兵器が、焼けて赤熱した湾の岩場を踏みしめ女王州連盟のキャバリアを踏み潰し、搭載した火器で残敵を薙ぎ払う。
 戦意を失い後退しようとした機体も逃がすことなく、一切を殲滅する強大な敵――直掩だろうか、聖王国のキャバリア隊もその圧倒的な暴力に気圧されているように見えた。
『なぜグェラが此処に……処分するはずではなかったのか!?』
『ですが隊長、あれのおかげで助かったのは事実です。多少やりすぎのきらいはありますが……反撃の好機は作ってくれました!』
 聖王国の直掩キャバリアが動き出し、猟兵達の前に立ちふさがる。
「猟兵、俺達の装備でデカブツを狩るのは難しい。ヤツをヤるのはお前たちの仕事だ。代わりに直掩の相手は俺たち女王州海軍が引き受ける」
 騎士団とフランクリン大尉率いる特殊部隊が激突し、剣とナイフが鎬を削り盾にハープーンガンの撃ち出した銛が突き刺さる。
 戦力は互角。フランクリン大尉たちが直掩機を抑えている間ならば猟兵はあの機竜の相手に専念できる。
『ハ……ッ! ハハハ、クイーンズの惰弱な兵隊など一撃だ! 機動殲龍タイプの性能はやはり想定通り、いやそれ以上だぞ!!』
 漆黒の装甲を纏う龍は上陸部隊をあらかた掃討すると、海上に進出し湾の中央でその下半身を海水に浸して機体を強制的に冷却しながら絶え間なく立ち上る蒸気に身を包んでいる。
『そうだ、俺の艦隊を潰し! 俺の投資を海に沈めた忌々しい連中には血で贖ってもらう! この戦果で俺は損失以上のものを買い戻す!! そうだとも! 俺は第四騎士団長ドゥルセ・ハルバリだぞ! 黄金艦隊の! 聖王国の海軍戦力を統べる男だ!!』
 外部スピーカーから垂れ流される声は狂っていた。第四騎士団長を名乗る男の狂気は、それが艦隊決戦の敗北によってプライドを折られたためか、あるいはオブリビオンマシンに魅入られてのものか。もしかしたら両方かもしれない。
 しかし現実に、狂人の手に戦術級の破壊力を持つ機体が渡っているのだ。止めねば機動部隊だけでなく艦隊にもさらなる損害が出てしまうだろう。
 一刻も早くこの巨大な悪竜を阻止するべく、猟兵は敵機に挑みかかる。
トリテレイア・ゼロナイン
※ロシナンテⅣ搭乗

ジェンキンス様、これより貴隊の護衛より一旦離れます
私達が矢面に立たねばならぬ敵手のようです

攻撃を回避しても射線上の友軍が巻き込まれば本末転倒…位置取りを考えねば
マルチセンサーでの情報収集で戦域の状況把握しながら接近
瞬間思考力で射線を見切り、低空推力移動と空中での機体重心移動操作による回避運動操縦で回避

あの蒸気…かなり熱を帯びているようですね
故郷のセンサー系に積み替えたⅣの“目”なら…

熱帯びた箇所を情報収集
サブアームのライフル乱れ撃ちスナイパーでUC撃ち込み急速冷却

味方を積極的に撃つなど…何が騎士団長ですか
頭を冷やしなさい!

膨張と収縮で脆くなった装甲や武装破壊
懐飛び込み剣で解体




 ヒェイルの海を灼いた三つの閃光。
 一つは多国籍軍艦隊を掠め、それだけで駆逐艦三隻と巡洋艦一隻を消し去った。
 一つは女王州連盟軍の上陸部隊主力を薙ぎ払い、多数のキャバリアを蒸発させた。
 そしてもう一つは――
「各機は射線上からただちに退避してください…………っ!!」
 焦熱が盾を焦がす。耐レーザー塗膜が一瞬で融解したかと思えば流れ落ちる間もなく蒸発し、銀河帝国主力戦艦の主砲に匹敵する熱量がロシナンテⅣを襲う。
 経済連合軍の大部隊を狙った一射の射線に割り込んだ騎士は、文字通りその身を盾にして数百の将兵の命を脅かす聖王国の狂気に立ち向かったのだ。
 このまま踏みとどまれば数秒と保たず盾は消滅し、むき出しとなったロシナンテはおろかそのコックピットで超高温が生み出す暴力的な乱気流に吹き飛ばされぬよう決死の覚悟で機体を制御するトリテレイアをも塵へと変えてしまうだろう。
「ですが……私は約束したのです……!」
 それ自体は本当の誓いを果たす手段としての取引であっても。いつか何処かで役に立つ"かもしれない"程度の情報を得るために支払った対価であっても、経済連合軍主力を死なせないという約束を果たさぬまま逃げるなどありえない。
 機体がけたたましくアラートを鳴らすが、しかしこれほどの熱量を吐き出す例の機竜とていつまでもこれを撃ち続けることは出来ないだろう。
 敵機が排熱の限界を迎えるのが先か、ロシナンテが影すら残さず消え去るのが先か。分の悪い根比べだとは思うが、だからと諦められればこんな所に居はしないのだ。
 一歩も下がらず、踏みとどまることだけに全霊を傾ける。何秒そうしていただろうか。いよいよ機体が悲鳴を上げ始めたところで、敵機の横っ面を巨剣が殴りつけた。
 次いで飛来する多数の砲弾。閃光の射線は大きく逸れ、レーザー照射から解放されたロシナンテが溶融した盾を投棄して機体を強制排熱させる。
「間に合って……くださいましたか!」
「よく持ちこたえてくれたわね。あとは我々アードラー大隊が引き継ぐわ。全機、教導隊の恐ろしさを連中に見せつけてやれ!」
 トリテレイアが決死で耐えた時間は無駄ではなかった。第三教導団アードラー大隊の来援は間に合い、彼らが矢面に立って火力を誘引してくれるおかげで経済連合軍主力は比較的安全に敵機へと火力投射を行うことができる。
「此処は我々だけで問題ない、行ってくれ猟兵! 友軍を頼む!」
「シエラ・ナインは右翼側から回り込め! リマ・トゥエルブはありったけの誘導弾をぶちかましてやれ! ズールー・スリー、付いてこい! イースタンどもにばかり良い格好をさせるな、猟兵が往く花道は我々で舗装するぞ!」
 あの超高出力レーザーはアードラー大隊がうまく封じてくれたことで、経済連合軍も行動を開始する。
「……ありがとうございます、皆様ご無事で!」
 彼らとて守られるばかりの素人ではない。軍隊としての組織的戦闘が開始されたことで、揚陸間際の水際迎撃からの護衛という任を果たしたトリテレイアは、彼らに送り出されてシエージュ湾の戦場に向かう。
「しかし――あの機体……」
 戦場に出現した三機がまったく同一機種であるならば、その放熱機構に見て取った問題も共有されている可能性が高い。
 水冷式なのだろうか、絶え間なく放出されていた高熱の蒸気。それ自体を機外に排出するダクトは明確な弱点であるが故に装甲の隙間に沿って配置することでそれをうまく隠していたようだが――そのために排出された熱で装甲が異常に熱されるという不具合があるように見えた。
 これもスペースシップワールド製の高機能センサーに積み替えたおかげであるといえよう。
 少しでも得られる情報を増やそうと積み込んだ宇宙の眼が、こんなところで役に立つとは。
 出撃前の己が判断は誤りではなかったのだと微かに誇らしげな彼が見たのは、シエージュ湾攻略部隊を蹂躙する二機目の――ホワイト・ビーチで艦隊と砲撃戦を繰り広げる機体も移動中に遠目に見えていたのだから、それも入れれば三機目の――機竜であった。
 すぐさまライフルを構え、精密狙撃モードで機体を降着させるトリテレイア。
 優れた眼が排熱障害によって高温となった装甲を見抜き、込められたマガジンに装填された特殊弾頭弾が銃口の奥で竜を睨む。
「あれほどの高温なのです、強制的に急速冷却されればどんな金属であろうと破壊されるはず」
 射撃された一発は、今まさに女王州連盟の機体を襲わんとする敵機に直撃し、弾頭に封入された薬剤が飛び散り付着した装甲を無理矢理に冷ましていく。
 通常であれば瞬時に凍結するほどのそれが、敵機の熱と拮抗し凍結にまでは至らない。だがそれでも温度が瞬く間に下がっていくのが分かる。
 機体が身じろぎした拍子に装甲の一部が薄く剥がれ落ちたのが見えた。トリテレイアの企みは成功したと言っていいだろう。
 が――続く光景は目を疑うものであった。
 反撃を試みる敵機。それはいい。だが射線上にまだ聖王国のセレナイトが――トリテレイアの狙撃に気付き、あの機体を守ろうと防御隊形を組んだそれら――がいるままに閃光を放とうと、
「貴方は……! 自分が何をしているか分かっているのですかッ!」
 瞬間、トリテレイアは飛び出した。ロシナンテが木々を掠めながら低空を飛翔し、セレナイトを押しのけ竜に剣を突き立てる。
 脆化した装甲が砕け、その下の放熱ダクトに剣が突き刺さり――そこまでだ。
 急速冷却で脆くなったのは装甲まで。だがダクトの一つを潰せたならばそれは大戦果だ。あの高出力レーザーの照射時間は間違いなく削り取られたのだから。
『こいつらは俺の金で戦争をしているんだぞ! なら生かすも殺すも俺に権利がある!』
「だからといって味方の背を撃つなど……それが騎士団長のやることですか! 頭を冷やしなさい!」
 トリテレイアの叱責に対して、竜は回転鋸の唸る尾を以て返答とした。
 狂った男の駆る狂った竜、討つにはいま一歩届かず。しかしその攻略の糸口をトリテレイアは掴み取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒谷・ひかる
あんなものが、司令部の近くにあったなんて……!
行きましょう、精霊さん達。
あの暴威、どんな手を使ってでも止めなくては!

引き続きステラに搭乗
重力制御と風に乗る変幻自在の機動を活かし、周囲を飛びまわり攪乱
可能な限り至近距離に詰め、火器のロックを即座に切れるように
攻撃は二丁拳銃で弾幕を張りつつ、時折センサーやミサイル発射管、動力パイプ等弱い所をピンポイントで狙っていく
そうして飛び回りつつ【風と雷の災厄結界】発動
動きながら配置した精霊さん達に祈り、その場で竜巻を発生させ拘束
そのまま離脱しつつ535発の雷を落とし、中のパイロットごと粉砕するつもりで攻撃

そんな強力な機体相手に、手加減なんてできませんからっ!


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

あンの金の亡者が……!
キャバリアにゃ素人のアタシでも分かる、
ありゃちょっとでも手を出しちゃいけないタイプのヤバい奴じゃねぇか!
幸か不幸か見張りも減ってくれたみたいだし、
ホテルから戦場が見える場所を確保してタイミングを窺うよ!
狙いは、奴がシエージュ湾上陸部隊をさらに殲滅せんとした時だ!

戦場の上空へ【心機一体】でOveredに『騎乗』した状態で転移し、
『咄嗟の一撃』で『鎧砕き』しつつの『貫通攻撃』で『マヒ攻撃』を叩き込む!
さすがに荷電粒子の吸入口はないだろうけどさ、
そもそも放熱に難があると見た!
動きを止めてるこの間に熱系攻撃の飽和火力でオーバーヒートさせちまえッ!




 敢えて堂々と正面から聖王国軍に拘束されることで、自らを司令部に連行させ敵の陣容を味方に流した多喜であったが、果たして到着したホテル――聖王国軍が占拠し、その指揮中枢を置いた――は、一軍の司令部施設としては異様なほど静まり返っていた。
通信設備だろうか、何かの機械と其処から伸びるアンテナやケーブルが未だに黒煙をもうもうと吐き出しているところから見るに、なにがしかの戦闘かそれに類する出来事はあったのだろうが、その消火作業に当たる兵の姿も、攻撃に対処する兵の姿も見えはしない。
 これには多喜を拘束した騎士もただ事ではないと多喜をゲート前に残してセレナイトをホテルの敷地に進入させ司令部の状況を把握しようと試みるが、次の瞬間であった。
 地響きとともに出現した機械巨竜が、その口腔から凄まじい威力のレーザーを吐き出したのは。
 それなりに距離が離れていても皮膚が焼け爛れそうな熱気が吹き寄せる。いいや、それは決して比喩ではなく、生身の人間が浴びれば重度の熱傷を避け得ない強烈な熱波であった。
 ならば何故多喜が無事なのか。彼女が猟兵であり、優れたサイキッカーであるからというのもあるだろう。が、それ以上に"ホテルとその周囲の人工林のみに突然降り始めた"スコールが急激にその熱を相殺したのが大きい。
「こんなに都合よくスコールが降ってくれた? 何にせよ助かったってことでいいのかね」
 額を流れ落ちる生暖かな雨水を手で拭い、一息吐く多喜の前に一機のサイキックキャバリアが姿を現した。文字通り虚空から虚像が実体を得るように出現したのは、ひかるが駆るステラだ。
「あんなものが司令部の近くにあったなんて……! と、ふたりとも無事ですか?」
「この雨、ひかるさんのおかげかい。助かったよ、にしても……何だいありゃあ」
 なるほど、精霊使いであるひかるであれば、風や水の精霊に頼んでスコールを呼び込むこともできよう。それだけで人が死にかねないあの砲撃の余波をとっさに相殺するなら良い判断だ。
「ええ、あれのパイロットとその仲間が同士討ちを始めたのを見て、マズいと思って見張ってましたから。間に合ってよかった……」
 ほっ、と愛機のコックピットで胸をなでおろすひかる。そこに多喜を連行したセレナイトが身構えつつ向かい合った。流石に剣を抜きはしないが、敵意と疑念の間を揺れるような感情を多喜は感じ取る。
 あの熱波がそのまま吹き寄せれば、司令部に詰めていただろう人員もタダでは済まなかったはずだ。……いや、待て。先程この少女は同士討ちと言わなかっただろうか。
『貴様がやはりスパイの類で、その機体と通じていたことはもはやどうでもいい。機体のパイロット、何を見た。何故グェラ……あの欠陥兵器が起動している?』
「そうでした。わたしの見たものをお話します。信じてください、というのも敵味方では難しいでしょうが、できればあの機体の近くにいる聖王国軍の皆さんに逃げるよう伝えてください」
 ひかるが見たのは凄惨な光景だった。第八騎士団に保護され、共同で多国籍軍迎撃の用意を進めているように見えた第四騎士団の残党。
 彼らは多国籍軍艦隊の砲撃開始と、ひかるによる司令部通信機能の破壊による混乱を好機として裏切った――指揮権の乗っ取りか、あるいは軍集団からの離脱を目的とし、司令部を破壊せしめたのだ。
 背後から撃たれ、斬られた第八騎士団の司令部将校たち。キャバリアを奪われ、そしてあの巨竜を独断で起動させ……廃棄作業に従事していた整備士たちも出撃させよという第四騎士団長に従わないものは撃ち殺された。
 あまりに迅速に、最初から計画されていたように進んだ蜂起に対してひかるにできたのは、その暴挙を目の当たりにして生き残りつつ、第四騎士団の支配下にあることを良しとしない兵たちを逃し、守ることだけだった。
『ドゥルセ・ハルバリ、あの男が……』
「信じられないかもしれませんけど、わたしはこの目で見ました」
『いや、信じるとも。あの男の性根は我らが騎士団長と近い。ならば確実にやる。貴様、このパイロットと共に離脱しろ。私は友軍にことの次第を伝えねばならん。好き勝手に工作員に走り回られるわけにはいかんが、捕まえておく余裕がない。此処以外の何処へなりと逃げろ』
「ハッ。お断りだね。あんなモンが、キャバリアにゃ素人のアタシでも分かるヤバい奴が敵も味方もなく暴れるってんなら――」
 止めるのが猟兵の役目だ。多喜の戦意に応えて、Overedが顕現する。
「達者でな、騎士さん。死ぬんじゃないよ。ひかるさん掴まりな、バケモンの真上までトバしていくよ!!」
「……はい、多喜さん! お願いします!」
 Overedの肩にステラがその手を載せた。二機は身構え、あの巨大な悪竜を追う。
「絶対座標チェック、空間クリア、サイキックロード接続……いくぜ、振り落とされるんじゃないよ!」
 ――跳んだ。

『はっははははは! いいぞ、死ね! お前たちが死ねば俺の金になる! 傭兵稼業というものは殺せば殺すだけ儲かるからな!!』
 排熱口をひとつ破壊され、吐き出せず上昇する内部熱量を海水に身を浸すことで無理矢理に冷却しながら機関砲にミサイル、あらゆる搭載火器を撒き散らして女王州連盟軍の生き残りを追い立てる悪竜。
 ドゥルセ・ハルバリの身勝手な悪意が竜を動かすのか、それとも竜の悪意があの傭兵提督のエゴを歪めて膨らましたのか。何にせよ――
「あの暴威、どんな手を使っても止めなくては! 唸れ疾風、轟け雷光!」
敵機直上に転移したOveredから離れ、ステラが風に乗り加速しながら敵機に急降下する。
 近寄るだけでコックピットの内部温度が数度は跳ね上がる超高熱。炎の精霊の加護を受けてこれなのだ。あの悪竜自体のコックピットがどのような状態になっているのか、想像もしたくない。
 二丁拳銃で背面の迎撃火器を銃撃しながら弱点を探るステラは陽動に過ぎない。本命は大規模な環境攻撃を準備する精霊で、それを誘導する多喜のアナライズが完了するまでの時間稼ぎだ。
 ミサイルランチャーや何かしらの動力を伝達するパイプを撃ってみても、ハンドガン程度ではやはり大ダメージにはならないらしい。
「嫌になるくらい堅い装甲ですね……!」
『小蝿が俺の金になりに来たか! いいぞ殺してやる、お前は幾らだ!!』
 ぶん、と振り抜かれた尾の先には火花を散らす回転鋸。殴り合いを想定した前衛戦闘型ではないステラの装甲で食らえば真っ二つになってしまうだろうそれを間一髪で回避し、再び通じぬ射撃を浴びせ撃つ。
 時間の余裕はない。弾幕を掻い潜り、必殺のテールスイングにまで意識を回しながら精霊術を行使する負荷は、ひかるの精神力を容赦なく削り取っていく。
「あンの金の亡者、好き放題やりやがる……! ああいう恐竜型は背中に荷電粒子の吸入ファンでもあるもんだけど……」
 あの高出力砲撃は荷電粒子ビームではなく純粋なレーザー兵器であったと言うし、フィクションのお約束に則った見え見えの弱点は流石にないか。
 だが、多喜は見た。先発した猟兵が破壊した排熱ダクトのひとつを。そして理解する。構造上存在する、排熱機構の欠陥を。
「ひかるさん、排熱口だ!」
 ステラを追い越し急降下、敵機に取り付き排熱口を覆う装甲にクローを引っ掛け無理矢理に引き剥がす。むき出しになったダクトから尋常でない熱がOveredに噴き付け、多喜は体中の水分が汗腺から溢れて蒸発するような錯覚を覚えるほどの暑さに息を呑む。
「ここを狙えばコイツはじきにオーバーヒートする! 結果が止まるだけか、それともドカンかはわからねぇけど……!」
「わかりました! そこを離れてください! 手加減なしの全力でお願いっっ!」
 ステラを飛ばす風が、邪竜を拘束するように渦を巻く。
 突然の竜巻によって身動きを封じられ――しかし刻一刻と吐き出された高熱が生む上昇気流が竜巻を揺らがせていく――自由を奪った僅かな、狙撃を為せる貴重な一瞬を逃すことなく。
「この地を人を愛する精霊の怒りを、受けなさい!」
 天の裁きの如く、稲妻が多喜の指定したダクトに向けて降り注いだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

四季乃・瑠璃
S~M
緋瑪「時間を掛ける程被害が増すね。どうする?」
瑠璃「短期決戦で仕留めよう。アレも騎士団長機みたいだし、頭を潰せば一気に終わらせられるかも」

UCで二機を合体。
操縦:緋瑪、管制:瑠璃

衛星に引っかからない高度~地表・海上スレスレを高速飛行して戦闘。
フィールドバリアを展開し、敵の攻撃を【見切り、第六感】で回避しながらソードライフル・ビームモードとミサイルポッドで牽制。
その間に瑠璃が敵の【情報収集】を行い、コクピットやコア、装甲の薄い箇所を割り出し、緋瑪に伝達。
全ミサイルを放出後ポッドをパージし、バリア全開で突貫。
オメガ・パイルの全力の一撃を急所に叩き込み、貫通した内部へ【零距離射撃】を撃ち込むよ


ライ・ガブリエル
他の猟兵と共闘

ハッ!珍しいタイプのキャバリアじゃねェか!
ユイ(YUI)、アイツの【情報収集】だ。
その間は【弾幕】で【時間稼ぎ】で持ちこたえる。

だが、あの大火力、放っておけねェな…ぶっ放されるだけで艦隊への被害がデカ過ぎんな。

仕方ねェ、とっておきだ!
ミサイルから特殊ナノマシンを戦闘域に散布して【アンチ・エナジーフィールド】を展開だ。
これでテメェのご自慢の大火力レーザーは使えねェ!

まぁ、コッチも光学兵器の類は使えねぇし、実弾兵器は残っちまうが…艦隊を一掃する手を潰しちまえば、総火力でこっちのが上なんだよ!

ユイ!【リミッター解除】!
マイクロミサイルとリニアライフルの【一斉射撃】、全弾持っていけや!




「時間を掛けるほど被害が増すね、どうする?」
 緋瑪のジェミニオンが放つビームライフルが巨大機竜の装甲を焼くが、反撃とばかりに降り注ぐミサイルの雨がさらなる追撃を許さない。
 もはや壊滅状態の女王州連盟軍主力本隊の撤退を支えるべく二機で孤軍奮闘する殺人姫たちの機体は、その機動性と攻撃性でもって潰走する友軍へ向けられるはずの火力を十分に惹き付けていた。
 だが、それもいつまで保つか。ふたりを相手取っては埒が明かぬと逃げる味方に砲火が向かえば、今度こそ女王州連盟軍は戦力の殆どを喪失するだろう。
「短期決戦で仕留めよう。アレも騎士団長機みたいだし、潰せば一気に終わらせられる……かも」
 瑠璃の言葉にはいまひとつの自信が欠ける。彼女は感じ取っているのだ、聖王国軍もまた混乱の渦中にあると。思えば機竜のパイロットは第四騎士団長を名乗ったが、本来作戦ブリーフィングで聞いた敵は第八騎士団だったはずだ。
「まぁ……何にせよ放っておいたら味方がマズいことになるよ。合体して火力を強化しよう、緋瑪」
「オーケー、パターンD.U.S起動!」
「ジェミニオン、真の姿を現せ!」
 この敵にあっては出し惜しみが作戦失敗に直結する。そう判断した二人は機体を合体させることで、その火力、装甲、機動性のすべてを強化した形態へと移行させる。
 直後に襲いかかった機関砲の集中射撃をフィールドバリアで凌ぎ、海面を滑走するように駆け抜けミサイルで反撃する。
『破壊だ! 破壊こそ消費、消費こそ経済! お前も死んで俺の金になれ!』
「死ぬのはお前だよ! ふたりでひとりの殺人姫が引導を渡してあげる!」
 ミサイルの半数以上を撃ち落とした機竜は、迎撃しきれなかったそれらの着弾による衝撃に機体を震わせながらも健在。
 さらに肩越しに前方へ向けた背部のリニアガンがジェミニオンを捉え、通電による火花が砲口から飛び散った。
「マズいよ、あれはバリアじゃ防ぎきれない!」
「なら避けてみせるよ、瑠璃!」
 ミサイル斉射後の重量変化による機体バランスの乱れ。それをミサイルポッドを強制排除することで無理やり補正してジェミニオンが回避機動を取ろうとするが、
『このグェラの火砲、そこらの安物と一緒にしてくれるんじゃあない!』
「な……っ!」
 掃射であった。機関砲もかくやという速度で吐き出される火線は、海を切り裂き海底の砂を散らし珊瑚を粉砕しながらジェミニオンを追う。
「おっと! 合体型のレアキャバリアだ、壊させねぇよ!」
 その横っ面を殴りつけるように、多数のミサイルが巨竜の側面を吹き飛ばした。
 全くの奇襲攻撃にたたらを踏んでよろめく聖王国軍のグェラ。流石に装弾数重視の小型弾頭では装甲を破壊するまでの威力は出せなかったが、しかしおかげでリニアガンによる掃射は中断させられた。
「合体機に非人型機、珍しいタイプのキャバリアじゃねぇか! おまけに聖王国に女王州連盟、経済連合に東方同盟戦線! まるでキャバリアの見本市だぜ」
 横槍を入れたクロムキャバリアのコックピットで、パイロットであるライは各国の主力機が一同に会して交戦するこの第五共和国の戦場を楽しむように笑う。
「ユイ、シュテル・リッターの最大火力でヤツをブチ抜くには何処を狙えばいい?」
 少女を模した補助AIが情報不足と言うならば、ライはそれを時間と試行で埋めると言い切りリニアライフルを構える。
「そっちの合体機のパイロット! 俺がヤツの弱点を解析する、時間稼ぎを手伝え!」
 射撃。流石に陸上戦艦めいた火力の権化、装甲もそれなり以上らしい。貫徹力に長けたリニアライフルの徹甲弾すら装甲が多少削れて凹む程度なのは、当たりどころが悪かったせいだと思いたい。
「どうあれあの大火力、放っておけば雑にぶっ放されるだけで艦隊が吹っ飛びかねねぇ!」
 続けざまに連射。装甲を砲弾が叩く小気味良い命中音。だが被害は軽微で、反撃がシュテル・リッターを捕捉する。
「そっちはやらせないよ!」
『お前の相手は後だ!!』
 シュテル・リッターを狙う攻撃をジェミニオンが妨害し、ジェミニオンへの攻撃をシュテル・リッターが牽制する。
 機関砲もリニアガンも、ミサイルでさえも二機の波状攻撃で抑え込まれれば、残る攻撃手段は最強にして最悪のあの兵器しかない。
『もう一度だ! もう一度ですべて焼き尽くす! やらせるものか、俺の! 俺を!!』
 がぱりと開いた巨竜の顎。その奥でレーザー発振器が閃光を――
「やらせるかってのは俺のセリフだ! テメェご自慢の大火力レーザー、対策無しでノコノコ出てくるかよ!」
 シュテル・リッターから放たれたミサイルがグェラの迎撃で撃ち落とされ、弾頭に封入されたナノマシンが戦場に撒き散らされた。
『無駄だ! 俺の稼ぎとなって死ね!』
 放たれたレーザー。膨大な熱量を帯びた光は、しかし散布されたナノマシンによってエネルギーを吸収されその威力を大幅に減衰する。
「よし、こいつであのレーザーも抑え込める! 合体機、ビームは駄目だ実弾を使え!」
 威力の削がれたレーザーを耐えしのぎ、砲撃直後の排熱で隙を晒す巨竜をリニアライフルで狙い撃ちにするシュテル・リッター。ちょうどユイの解析が完了し、敵機の弱点がモニターに表示される。
 猟兵の攻撃で二箇所の排熱ダクトを破壊されたグェラは、もともと抱えていた排熱のトラブルをさらに加速していた。排熱できる箇所が減ったことで一箇所あたりの放熱量が増大し、それは装甲に負荷を与えていたのだ。
 熱されて脆くなった装甲にライの精密射撃が突き刺さる――ダメージは与えたが貫徹に至らず。
「ユイ! リミッター解除、砲身が吹っ飛んでも構わねぇ、奴が動き出す前に弾倉の中身を撃ち尽くす! 今の総火力ならこっちのが上なんだよ!!」
 機体の電力が落ちるのもお構いなし、全力でジェネレーターを回し、それでも賄えないほどの高速かつ高出力のリニアライフル連射。
 それが寸分狂わず同一箇所に着弾し、機竜の装甲を打ち砕く。
「今だ、やれ!!」
「だって、緋瑪!」「わかってる、瑠璃!」
 ジェミニオンがライフルを投棄し、シュテル・リッターの砲撃で破壊された装甲の下で溜め込んだ膨大な熱量を吐き出す排気ダクトに向かって突撃する。
 多少の迎撃はフィールドバリアで弾き――E兵器を減衰させるナノマシンによって薄くなったバリアを貫通した砲弾が装甲を削るが構うものか――肉薄、その突撃によって生じた加速、運動エネルギーのままにダクトにオメガ・パイルバンカーを激突させた。
「お前みたいな奴は此処で殺す……!」
 射出、貫通、そして破砕。ダクトを貫き内部機構にも損傷を与え、続けてその破孔を狙ってシュテル・リッターが精密照準射撃を叩き込む。
『クズが、金も持たない有象無象が俺の機体によくも! よくもッ!!』
 不十分なまま排熱を終えたグェラが荒れ狂う。あらゆる兵器による蹂躙を掻い潜り、二機を操る三人は狂える竜の殺意から離脱した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アンネリース・メスナー
アドリブ歓迎

っ!このままでは上陸前に艦ごと沈められそうですわねっ、ゾーリを出しなさい!
SFSゾーリに乗って低空を飛行していきますわ

あれが殺意の源ですか
過去に拘るとは愚かな。とは、わたくしに言えたものではありませんか
傀儡国家になったズィガ共和国ではなくズィガ帝国の親衛隊に拘り続けるわたくしには
とはいえ、敵は敵ですわ
わたくしの敵となった不幸を呪いなさい!

SFSゾーリとラピートのスラスターによる機動力とサイキッカーの超直感で翻弄しますわ
時にゾーリで飛び回り、時にゾーリから飛び出してラピートで動き回り
口部レーザー砲に避けつつロングビームライフルで攻撃し、最後はギリギリで飛び降りてゾーリをぶつけますわ




 艦隊の頭上より降り注ぐ地対艦ミサイルの雨。
 駆逐艦やイージス艦の近接防御システムがフル稼働して直撃コースのそれらを撃ち落とすが、至近の海面に着弾した弾頭の爆発によって生じた波が艦を大きく揺らす。
「っ! このままでは上陸前に艦ごと沈められそうですわねっ……!」
 狙撃仕様のロングビームライフルで敵の巨大兵器を護衛するキャバリアを狙い撃ちして艦隊の全力砲撃を阻むものを減らすことに専念していたアンネリースは、遠からず敵の砲撃が迎撃能力を飽和するであろうことを予感して渋面を作る。
 果たして自分はこのまま此処にとどまり艦隊を支援するべきか。或いは多国籍軍艦隊との心中を避け、先行した猟兵部隊に合流するべきか。
 今艦隊を離れるのは、沈む船からいの一番に逃げ出すようで信義に悖るようである。国家の象徴たる親衛隊仕様のラピートでそれを為すはズィガ帝国の恥だとも思う。
 だが、ズィガ帝国の正当なる後継者である自身が、他国のための戦いで生命を危険に晒すこともまた亡国復興を掲げる上では誤りだろう。
「……こんなときまで過去に拘るとは、わたくしも愚かですわね」
 トリガーを引く。盾を構えて砲弾に向かうセレナイトの足が撃ち抜かれ、バランスを崩して墜落する。その穴を艦砲射撃がすり抜け、機竜に多少なりの損害を与える。
「わたくしが此処で踏みとどまれば、あの機体は落とせますわね」
「――いいや、その必要はない」
 危険を承知で旗艦クイーン・オブ・マティルダ艦上での支援射撃に徹することを選ぼうとしたアンネリースに、その旗艦艦橋からの通信が否を突きつけた。
「女王州連盟軍の代表として今一度依頼するぞ。猟兵はシエージュ湾方面の支援に向かえ」
 マティルダ女王の言葉に、しかしと異を唱えようとする。が、それは王族特有の圧を受けて喉で詰まる。
「地上戦であれば不利とならば退く道もあろう。万に一つの不幸が起きて私が死のうと我が国は揺らがぬが、貴国はそうではあるまい」
 真摯な表情で、今は亡き――そしてアンネリースの記憶が定かであるなら、国交すらなかったはずのズィガ帝国を慮る女王。
 それはきっと、帝国が何かの形で蘇った時彼女たちにとって有利なカードを手に入れるための布石であるのだろう。為政者とはそういう強かさをもつものだ。
 だが、それでも。
「クイーンズネイビーはそう簡単に負けはせぬ。あの程度の邪竜の一匹、我らに調伏出来ぬと侮るでないよ」
 その自信に満ちた在り方に、皇族として敬意を示すのもまた尊き者の振る舞いであろう。
「承知いたしましたわ。甲板員にゾーリの用意を。直ちに発艦いたしますわよ!」
 もはや隠密もなにもない。敵機を飛び越え戦うべき場所に赴くならば、空を使うのが最善である。
 用意された機体にアマランサスを乗せ、飛行甲板のカタパルトから空に舞い上がる。
 歴史ある女王州連盟海軍のキャバリア母艦、それも艦歴の長いものはかつて航空機母艦だったものも少なくない。マティルダもその一隻であった。
 使われなくなって久しい航空機用カタパルトを稼働させアンネリースを送り出した母艦は、護衛艦隊とともに未だ死地にある。
 だがアンネリースは彼女らを信頼して己の戦場に飛翔する。

「あれが殺意の源ですか……愚かな」
 三機の機竜のうち、最も濃密で不快な殺意を纏う機体。あれが指揮官機で間違いないだろう。
 猟兵による攻撃を幾度か受け、装甲がところどころ破壊され排気口のようなパーツが潰されているあたり、あれがこの機体の弱点なのだろうか。
『俺の栄光に! 俺の艦隊に幾らかかったか! それを簡単にブチ壊しやがった戦争屋ども、死んで俺の金になって贖うが良い!』
 狂乱する機竜から対空防御めいて機関砲が斉射される。ハリネズミのような分厚い防御を、アンネリースはサイキッカーの予知めいた勘でくぐり抜ける。そこを跳躍した護衛のセレナイトが斬りかかるが、ゾーリから発射されたミサイルやアマランサスの腕部ビームガンでそれらを追い払う。
「わたくしに言えたものではありませんけれど、過去に拘り続けるのは愚かな振る舞いでしてよ!」
『黙れ! いや待て、その機体ズィガの皇女だろう! ハハッ、いいぞ! いいぞ!! その首は金になる! 運良く生き残れば妾として言い値で買い取ってやろう、お前の権威を俺に寄越せ!』
 ビームライフルの丁寧な射撃で機関砲を潰して回るアンネリース。このままやれば敵の迎撃能力を半壊させられる、というところまで攻め立てた。
 だが、敵も狂人ではあるが愚者ではなかった。ゾーリは航空機なのだ。で、あるならば気流を乱せば機動性が著しく損なわれる――口腔のレーザー砲が放たれる。
「――ッ!!」
 間一髪の回避。しかし無警告で放たれたその一撃は、アマランサスの接近を阻止しようと迎撃に上がった聖王国軍のセレナイトを巻き込み蒸発させた。
「味方もろとも……! あなたとわたくし、同じ過去に拘る愚か者と思っていましたが……断じて違うようですわね! わたくしを侮辱し敵となった不幸を、わたくしの眼前でこのような蛮行を行った己を呪いなさい!」
 砲撃直後の強制排熱を開始した機竜の頭部にビームライフルの集中射撃を浴びせ、排熱速度が追いつかないほどの過熱状態に持ち込んだそこへ――
「こういうのは趣味ではありませんが、あなたを屠る為ならば手段を選んではいられませんわ!」
 アマランサスが飛び降りたそのままのコースで、ゾーリが敵機の頭部に突入する。
 サブフライトシステムによるカミカゼ。その直撃を受け、機竜が大きく揺らぐ。
 だが、推力を手放し自由落下するアマランサスにそのテールチェーンソーが迫る。
 自在に撓る尾を、アマランサス本体のスラスターだけで回避するは至難。盾を構えてあとは耐えられることを祈るのみ――
『――全機、ヤツの尾を狙え! 第四騎士団長ドゥルセ・ハルバリは乱心した、手加減はいらんぞ!』
 直後、尾が弾き飛ばされるようにコースを変えて地面に突き刺さる。回転鋸が土をえぐり撒き散らし、草木が粉々に破砕された。
「多国籍軍の増援ですの!? いえ、この反応は……」
『此方は聖王国第八騎士団所属、フィガロ隊だ! アレを始末するまでの一時休戦を提案する!!』
『我々の戦争に横から割り込んだ挙げ句、敵味方の区別もつかなくなった狂人を放ってはおけませんからな!』
 アンネリースの親衛隊仕様ラピートの離脱を支援するように、ロングビームライフルを射撃しミサイルをバラ撒きながら巨竜に挑むのは、
「アマランサス・ラピート……!」
 通常型とはいえ、彼女の機体と同じそれ。
 パイロットは聖王国の兵であろう。巨竜を討った後は敵味方に戻る間柄でもある。
 だが、今この瞬間だけは、ラピート同士の共闘……在りし日の帝国を思い出す情景がアンネリースの眼前に広がっていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

チトセ・シロガネ
LiNK:AGEとシンクロ確認。
機体の適合、オールグリーン。

同時にドラゴンの頭部へレーザー射撃を一発、こちらに意識を向かせる。
そこには狐面のキャバリアが一機。

オッケー、新型ボディの調子は上々みたいダネ。
それじゃあ、ドラゴン退治と行こうか!

へい、抜きな。どっちの命が強いか勝負ネ。
UC【アークスラッシャー】の起動を確認。
BXグリントをウェポンラックから抜いて、構える。

ドラゴンから放たれる光に真っ向から挑む。
圧縮された光刃の斬撃波で切断、五光に分かたれ弾き飛ばす。

最後の一撃を第六感で見極め、刃にオーラ防御を纏い、コックピットめがけて跳ね返す。
寿命なんて関係ない、ユーの命運はここで尽きるネ!




 経済連合軍の強襲揚陸艦、その舳先に立つひとつの影がある。
 クルーのすべてが退艦した船を遠隔で操舵し、半自動航行で艦隊を離脱したその艦は進路をシエージュ湾への突入ルートに変えて突き進む。
 向かう先では三機出現した機竜のうちの一機が排熱異常で赤熱しながら猟兵と交戦していた。しかしその攻撃対象に友軍であるはずの聖王国軍機を含んでいることに気づいたその影は、驚いたように目を丸くして――その貌を狐面を模したセンサー付き装甲で覆い隠す。
「LiNK:AGEとシンクロ確認。機体との適合、オールグリーン。オッケー、新型ボディの調子は上々みたいダネ」
 それは――軽装の姫武者を模したクロムキャバリアであった。
 パイロットに似せたのか兵器でありながら女性的なスタイルの機体。その手に握る銃と剣を合わせたような複合武器を、内陸部から出現し竜に攻撃を加える聖王国の赤いキャバリア部隊に火砲を撃ち下ろす竜の後頭部に向ける。
「それじゃあ、ドラゴン退治といこうカ!」
 発砲。ビームが大気を焼き竜の頭部に着弾する。
『性懲りもなくまた湧いて出るか! 貴様ら猟兵もこうも数が多いと値がつかんだろうが!』
 振り向きざまに放たれた頭部ビームガンの射撃が揚陸艦の艦橋を貫通して機関室をも吹き飛ばす。
 船底にまで穴が空いた艦が次第に傾斜して沈んでゆく。その舳先が没する寸前で、青い閃光が跳び立った。
「へい、ドラゴン! アタシが相手するヨ、抜きな!」
 チトセ操るオービタル・テイルズがビームガンの速射をビームソードで切り払い、空中で狐の尾めいたスラスターを噴かして続く機関砲の掃射を回避しながら彼我の距離を詰める。
 振り払われたビームソードの力場と干渉した頭部ビームガンの光が幾条ものリボンのごとく解けて空に散った。
『舐めるなァ! 単騎のキャバリアごときでこのグェラに、この俺が資産を注ぎ込んで強化させた殲滅兵器に敵うかッ!』
 砲撃の密度が加速度的に増し、機竜の機体温度が著しく上昇していく。
『猟兵、援護する! 味方殺しのイカれ野郎に一発ブチ込んでくれ!』
 その殺意を散らし、チトセを支援するように集中攻撃を仕掛ける聖王国のキャバリア部隊。彼らの攻撃は機竜の重厚な装甲を貫通できない――だが、異常過熱で装甲を保持するハードポイントが急激に劣化した機体はその被弾の衝撃で次々に機体を守る装甲板を脱落させ、海面に落としていく。
「オーケー、任せなヨ! 一曲披露してやるネ!」
『ふざけるな! ふざけるなよ貴様ら! この俺を、この俺が! 貴様らごときに……!』
 すでにコックピット内部も人間の生存可能域ギリギリの高温になっているだろうに、闘志を……否、妄執を捨てられぬドゥルセ・ハルバリの咆哮とともに、幾度も猟兵の攻撃を阻んできたテールチェーンソーが唸る。
「そのまま放っといてもユーは死ぬヨ、でもそんなのは関係ナイ――」
 こと此処に至れば被害を抑えることを第一に遅滞戦闘に徹するだけで、オーバーヒートを起こした機竜は機能を停止し、パイロットもコックピットで蒸し焼きになって死ぬだろう。
 だが、それを待ってやる謂れはない!
「ユーの命運は此処で尽きるネ!!」
 一閃。ビームを弾いた直後、返す刀で振り抜かれた光刃がチェーンソーの鋸刃と激突する。凄まじい勢いで火花を散らす二つの刃、そしてわずかに勢いを削がれたテールチェーンソーへとチトセの、必殺の連撃が放たれる。
 ビームを散らすための分厚い刃から、装甲を切り裂くための圧縮された細い刃へ。それが二十を超えるほど竜の尾を切りつけ、最後に狐面の姫武者がチェーンソーの基部を蹴りつける。
 みしりと音を立てて尾から鋸が脱落し、更に重ねられた蹴脚で機竜の腹に抱えられたコックピットを守る装甲目掛けて吹き飛ばされる。
 ぎゃりぎゃりと振動しながら装甲に刃を食い込ませて機能停止するチェーンソー。
 そして装甲こそ破れなかったものの、その鋼板に喰らいついたそれは自重で装甲を引き下ろし、機竜の腹から引き剥がす。
 斯くて機竜は心臓を、或いは逆鱗を曝け出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

貴司・忍
デカ物が相手か…にしても、護国の盾たる戦士達があの様かい、怖いねぇ戦争ってのは

本当に、前も後ろも怖いったら…せいぜいビビらせてやっか!

敵の手数を何とかしねぇと死ねるな
柘榴に積んだありったけのミサイルで【弾幕】を張りそれを囮にコード発動
噴進装置最大出力【推力移動】でかっとぶぜ
山ほど火器積んで、冷水までしてるってこたぁ無茶させりゃガタの一つも出るだろなぁ!
持っててよかった突撃ランス!
敵の攻撃の合間を縫い、特攻しながら烈華の弾頭を発射
それが命中した箇所に追い打ちの体当たりからの集中砲火、あたしらの十八番戦法だ
…こんなもんの有用性が実証されちゃ、うちの国にも迷惑なのさ
とっとと捻じ伏せられろやこらぁ!!


ヴィクター・ホリディ
アドリブ連携歓迎・L

海の黄金はオブリビオンとなり悪龍となった
…それはお前の神様が望んだことなのかい?

■方針
戦地で獲得したライフルを片手にUCを発動、戦火の情報収集を開始
可能であれば他猟兵のセンサーや情報も使わせてもらう
情報収集中はミサイルの制圧射撃/弾幕で牽制
周囲の情報と戦闘知識を瞬間思考力でまとめ、戦火を狙撃するポイントを見極める

情報収集完了にあわせて狙撃ポイントに推力移動で一気に移動

狙われるのも攻撃されるのも解っている
今必要なのものは覚悟だけ
ライフルを構え、スナイパーとして集中力を限界突破させ狙い
弾丸で装甲を貫通、部位破壊し弱点を撃つ

願わくば、堕ちた黄金に海の慈悲があらん事を




『クソが、ハルバリの野郎流石にしぶとい……ッ!』
『戦って戦場に骨を埋めるのは誉れですがね、あいつの手にかかって死んだんじゃ恥ですぜ!』
 満身創痍の機竜を相手に遅滞戦闘を展開するのは、今や撤退を完了しつつある女王州連盟軍ではなく聖王国のフィガロ隊だ。
 否、護衛機を突破したフランクリン大尉率いる女王州連盟軍の特殊部隊も戦線に復帰し、多数のキャバリアが巨大な竜に集中砲火を浴びせている。
「聖王国のアマランサスタイプは今の所敵じゃあない。今は一つでも手が欲しい、奴らに向く火線をこっちで半分引き受けるぞ」
 聖王国軍と多国籍軍の共闘という光景。本来ならばありえざるそれは、一人の男の狂気によって齎された奇跡なのかもしれない。
『多国籍軍を殲滅すれば金になる! その金で俺は艦隊を再建する! その邪魔をするヤツは誰だろうとブッ殺してやるぞ、殺してやる!!』
 狂乱する機竜が相当数を失ってなお戦艦めいた火力を保つ全身の火器兵装を展開し、そのそれぞれで個別に群がるキャバリアたちを捕捉する。
 陸戦主力機としてある程度の装甲を持つ聖王国のアマランサスと違い、浅い海を静かに潜航して秘密裏に上陸作戦を行うために設計された女王州連盟軍の機体はその一発でも貰えば致命傷となる。
 だから忍はその砲口の真正面に開天を突っ込ませた。
「させっかよ畜生ォォォ!」
 重装甲で機関砲弾を浴び、リニアガンを巨大な拳で殴りつける。装甲が凄まじい勢いで凹み削れて、無理やり照準をずらされ虚空を撃ち抜いたリニアガンの発射衝撃だけで開天が弾き飛ばされる。
「くっそ……がぁッ!」
 それを機体背面の噴進システムの最大出力で無理矢理に姿勢制御し、続けて取り出した大型ガトリング砲で応射。
「開天組を舐めんじゃねぇ! 戦争に溺れて護国の誇り忘れてんじゃねぇぞ!」
 発射された小型の誘導弾が開天を捕捉する各砲の照準システムを逆探知して火砲を潰す。
『護国など知ったことか! 俺は俺が儲かる戦争にしか興味なんぞない!!』
 六号開天と機竜グェラの激しい砲撃戦。艦隊戦にも等しい鉄量のぶつけ合いの凄まじさは、機竜に抵抗する両軍将兵の動きを一瞬硬直させる。
「ぼさっとしてんな! 聖王国……はいい、連盟軍連中はデータリンク寄越せ、お嬢ちゃん一人にタイマン張らせてどうするよ」
 彼らを我に返らせたのはヴィクターの叱咤である。如何に勇猛であれ開天を操る忍は成人もまだの少女だ。そんな彼女にたった一人で怪物の相手をさせてなるものか、とキャバリア隊の集中砲火が開天を狙う砲を破壊していく。
「さて、と……奴さんイカれちまっちゃいるが……騎士団長の椅子は金で買ったわけじゃなさそうだな」
 女王州連盟軍の戦術データリンクにプレケスを接続し、上陸本隊の機体が遺していった大口径のバトルライフルを拾い上げる。一歩引いた立ち位置から見れば、第四騎士団長は狂乱しているが損傷した尾を盾にし、機体を傾けて露出したコックピットブロック付近への直撃弾をギリギリで避けている。
 戦術的思考を見失う狂気に冒されていながら、それでいて戦闘に関しては冷静さを保っている。一番厄介な手合だとヴィクターは舌打ちせざるを得ない。
 この手の相手との長期戦はお互い無駄に疲弊するものだ。そしてこちらの得るものは恐ろしく乏しい。
「やるしかないか。嬢ちゃん、ヤツの尻尾をどうにかできるか。フランクリン大尉は支援してくれ、狙撃姿勢に入る」
 地に伏せ、回避を投げ出して伏射姿勢を取るプレケス。バトルライフルの照準は機竜のコックピットを捉えている。
「ちっ、猟兵も正気じゃないな……! 全機、友軍機の狙撃を邪魔させるな。機体を盾にしてでもアレを守れ!」
『多国籍軍の狙いは狙撃か! フィガロ隊総員続け、我々は陽動に徹する!』
 戦場のすべてが一体となって場を作り上げる。砲火が機竜の殺意を誘引し、息を殺してセンサーの観測情報に集中するヴィクターを隠す。
 多数のキャバリアが敢えて危険な敵の射線上に飛び出すことで、忍を脅かす火力を削ぎ落とす。
「こうもお膳立てされちゃ失敗できねえ! あたしらの十八番戦法でやってやるさ!」
 残弾数ゼロとなったガトリングガンを投げ捨て、六号開天が突撃槍を構えて突進する。
「こんなモンの有用性が実証されちゃ、ウチの国にも迷惑なのさ! とっとと潰れろやこらァ!!」
 迎撃兵器は支援部隊の火力投射が相殺する。ならば、道を阻むものはなし。コックピットを狙うただ一筋の突撃は、予想通り割って入った機竜の尾に阻まれた。
 尾の関節部に槍の穂先がめり込む。そして、そこで開天の突撃は止まった。
『残念だったな猟兵! お前の捨て身は届かん!』
「いんや届いたさ! あたしらは恐れ知らずの開天組だぜ!」
 槍が、その穂先に内蔵された炸薬が激しい爆炎と化す。機竜だけでなく開天さえ損傷する、至近距離での大爆発。その炎を切り裂いて、大きく抉れた尾部に膝の衝角を叩き込む。
 金属が砕ける悲鳴とともに、悪竜の尾が落ちる――
「上出来だ、これで……届く!」
 そして間髪入れずに放たれたヴィクターの狙撃。
 放たれた徹甲弾が一直線に、コックピットの真上に存在する機竜最大の火力たる口部レーザー砲専用のジェネレーターを貫いた。
「さっさと脱出しな騎士団長。お前の神様は本当にお前が悪竜に成り果てるのを望んでるのかい?」
『くく……ははは、はっははははははひひっ! 神! 神などどうでもいい! 俺は俺と俺の金だけを信じる! 神など金を集める道具に過ぎん!! 神を信じて何が得られる! 誰が救われる! 何もない! だが金は違う!!』
 破損したジェネレーターが禍々しい赤紫の火花を散らし、プラズマめいた炎を噴き出す。顎門を大きく開いた竜の姿は、あの強力なレーザー兵器の発射姿勢に他ならない。
「馬鹿野郎よせ! テメェが吹っ飛ぶぞ!」
 狂気に墜ちた男が忍の制止を聞くことはない。
「チッ……全機散開しろ! 射線上から退避、敵機からも距離を取れ!」
 ヴィクターは自身が逃げ切れぬことも、その照射と同時に機竜が自壊して吹き飛ぶことも予測して一人でも多くの味方に逃げるよう叫ぶ。
 そして――
『ひひっ、金だ! 俺は、金で人になった! ならもっと金を集めれば神にだってなれる! お前たちを殺して得る金で、俺は――』
 閃光が瞬く。ただしそれは口部のレーザー砲からではなく、機竜の全身あらゆる箇所の排気ダクトからだ。
 オーバーヒートが限界に達し、それでもレーザーの発射を強行したことで機体が崩壊しつつあるのだ。
「脱出しろ! 死ぬぞ!」
 こちらの呼びかけに応える声はない。忍も、ヴィクターも、コックピットブロックがもはや人間の生きられる温度ではなくなってしまったのを、そしてその内側から紅蓮の炎が噴き出したのを見た。
 ドゥルセ・ハルバリは自らの狂気のままに、自身の機体の炎で自滅する道を選んだのだろう。
「くっ……全員爆発に備えろッ!!」
 凄まじい衝撃波と熱が一同を襲う。弾け飛んだ竜の残骸が装甲を叩き、まるで至近距離で巨大な戦術級爆弾が炸裂したかのような錯覚にとらわれる。
 そうしてそれらが過ぎ去った後、シエージュの海には海面からわずかに突き出した機竜の両脚だけが残されていた。
「…………クソッタレ、死んじまったら金もクソもないだろうが」
「だが、これでもう妄執に取り憑かれることもないだろうさ。願わくば堕ちた黄金に海の慈悲があらんことを……」
 ヴィクターの祈りを受け、竜の両脚が白波を立ててゆっくりと海中に沈んでいく――

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『アマランサス・ラピート』

POW   :    BSロングビームライフル
【一瞬の隙も見逃さない正確な狙いの銃口】を向けた対象に、【高出力高収束のロングビームライフル】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    BXビームソード
【スラスターを全開に吹かすこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【高速機動で間合いを詰めてビームソード】で攻撃する。
WIZ   :    RS-Sマイクロミサイルポッド
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【肩部マイクロミサイルポッド】から【正確にロックオンされたマイクロミサイル】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はルイン・トゥーガンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「艦対地ミサイル最終弾発射!」
「艦対地ミサイル最終弾、発射! 弾着まで4、3、2……弾着今!」
「敵の迎撃は確認できず! 全弾命中!」
「攻撃効果を確認せよ!」
 洋上に展開する多国籍軍艦隊は、その数こそあの機竜が出現した時からそう減ってはいないものの内情は満身創痍に近かった。
 なにせ半島全域でのキャバリア戦を支援しうるだけの砲弾のほとんど全てを撃ち尽くしていたのである。
 捨て身で砲撃を受け止めた第四騎士団のキャバリア隊とその攻撃力を砲弾迎撃に投じた機竜の防空能力は艦隊の火力投射と拮抗していたのだ。これはあくまでキャバリアと戦車機甲部隊からなる地上戦力を中核とし、海上戦力はあくまで強固な防塁を粉砕するためのピンポイント攻撃にのみ用いるという多国籍軍の予定していた戦術が裏目に出たと言ったところだろうか。
 艦隊の過半が揚陸艦とキャバリア母艦で編成されていた為に、機竜の防御力を突破するのに手間取ってしまったのだ。
 しかし苛烈な撃ち合いの末に敵の支援機は壊滅し、機竜の足元に焦げた残骸を晒し、機竜も機関砲やリニアガンの残弾が尽きたか迎撃能力にも陰りが見えつつあった。そこへ最後に温存されていたミサイルの一斉射が突き刺さった。
「敵機大破を視認! 反撃の兆候確認できず、目標の撃破を認む!」
「やれやれ。ま、思ったより沈みませんでしたね。このまま次の戦場へは行けませんが、あとは地上部隊に期待しましょう」
 旗艦マティルダの艦橋でほうと息を吐いて簡易な座席に腰を沈めるジェンキンス。艦隊司令の椅子に掛けるマティルダⅢ世女王も制帽を脱ぐと、軍服の襟元を緩めて詰まっていた息を吐き出す。
「そうは言うが決して軽微な損害ではない。他国の戦場でこう犠牲が出ては本国では厭戦気運が高まるだろうな。撤兵論が大きくなれば共和国にとって逆風となる。……ここから首都奪還まで、我々が彼らを手伝える時間は大きく縮んでしまったと見るべきであろう」
 聖王国は国際常識の通用しない狂犬であり、歴史的に見て第五共和国が陥ちた次は遠からず女王州連盟にも彼らの剣が向けられる――だからその前に、戦場の拡大が共和国領内で押し留められるうちに多国籍軍として兵を送り込み聖王国の力を削ぐ――本国の描いた絵図は、しかし聖王国の思わぬ反撃によって揺らぎつつある。時代遅れの経典と騎士道を重んじる国だったはずの聖王国が、あのような大型の戦術機動兵器を多数投じてこようとは。
「何、問題ありませんよ女王陛下。第四騎士団のドゥルセ・ハルバリと第八騎士団のフェリペ・サンドーサ、この二人が戦争における改革主導派と目されていますが……ハルバリはここで死に、サンドーサもトゥリオンでの決戦で仕留められるでしょう。この二人を欠けば聖王国は昔ながらの老いた巨人に戻ります」
「で、あればよいのだがな。――揚陸艦を再度前進させよ! 機甲部隊を上陸させる!」
 陸に上がることの出来ぬまま、揚陸艦とともに沈んだ兵も少なくはない。彼らの無念と本国からの責任追及を思えば浮かない顔のまま女王は作戦の進行を命ずる。
 その名の通り白い砂浜へと次々に乗り付ける揚陸艦と、其処から出撃していく戦車や歩兵の姿を見送り、ジェンキンスはそれでも勝ち筋は残っているとほくそ笑むのだった。

 猟兵が参加しなかった本来の戦況であれば、アードラー大隊はシエージュ湾方面の増援に回され経済連合軍は単独で一体の機龍を相手取らねばならなかった。
 だが猟兵の参戦で初撃を防いだ上、本来他方面に向かうはずであった強力なエース部隊の参戦したトゥルエ・ビーチでは、経済連合軍壊滅でも、アードラー大隊の半壊でもない殆ど無傷での勝利を得ていた。
「各中隊、損害報告!」
「第二中隊、小破2! 戦闘継続問題なし!」
「第三中隊、08が中破。母艦に帰投させます。ほかは損傷、残弾ともに問題なし。もう一戦やれます」
「よろしい。第一中隊も全機問題なしよ。アードラー大隊は引き続き地上の敵部隊の掃討を行う!」
 天使に引き連れられた黒鷲の群れは、機竜との激しい機動戦による消耗などおくびにも出さず次なる戦場へと飛翔していく。
「とんでもない部隊だぜ。イースタン・フロントの教導団ってのはバケモノかよ」
「あいつらが心底味方で良かったよ俺は。あと母艦でナンパを思いとどまったのも英断だった」
「なんだシエラ・ナイン、お前あの隊長みたいなのが好みなのか?」
「馬鹿言えよ、あんな女傑、もし口説けても尻の下ですり潰されちまうぜ」
 わはは、と笑い合う経済連合軍の傭兵たち。
 彼らもまた生き残った強者である。とはいえ、ほとんどアードラー大隊の陰で砲弾を撃ちまくっていただけだったが。
「よし、切り替えていこう。猟兵と艦隊も今頃はあのバケモノの親戚を潰してる頃だろう。幸いこちらは損害も少ない、俺達がこの後の主力本隊を担うつもりで行動するぞ」
「了解、しかし……あのバケモノトカゲ以外の敵機が出ませんね。連中切り札を潰されたん慌てて逃げ出したんでしょうか」
「だと仕事が楽でいいんだがな。ズールー・スリー、希望を持つと外したときしんどいぞ」
 経済連合軍部隊も内陸に向けて進撃を開始する。だが、まさかズールー・スリーの希望的観測に基づいたつぶやきが真実に近いとは誰も予想だにしなかっただろう。
 上陸した機甲部隊も、東方同盟戦線第三教導団も、経済連合軍傭兵部隊も、いずれも殆ど敵と遭遇することなく半島内の要所を制圧していったのである。

『協力に感謝する……というのは変か、ヤツはもともとそちらの敵だったんだからな』
 第四騎士団長ドゥルセ・ハルバリ駆る機動殲龍"戦火"――聖王国の呼ぶところのグェラを撃破した猟兵は、その戦いで消耗した装備弾薬を女王州連盟の特殊部隊から融通されて補給を受けながら聖王国の、彼らの自称によれば第八騎士団フィガロ隊というらしい部隊のキャバリアとは一定の距離を取り、いつでも交戦できる状態で向かい合っていた。
 自身の装備から弾薬や推進剤を猟兵に預けた女王州連盟の機体は海中を経由して撤収するらしい。他方面に現れた機竜が墜ち、主力部隊が上陸した以上先遣隊が踏みとどまる必要もないということだろう。
 殿を務めるフランクリン大尉機が敬礼を残して水中に消えるまで、彼らを庇うように猟兵はフィガロ隊との間に陣取っている。
『何にせよ、ハルバリ卿のおかげでこちらの指揮系統はズタボロだ。どうにか司令部にたどり着いた騎士には撤退命令を出させた。おおかたトゥリオンもまずい戦況だろうからな、メルヴィン方面まで長い撤退戦になるが――』
 そちらもトゥリオン軍港を攻めるうちの主力を潰したいはずだ、追撃する余裕はないだろう? という部隊長機からの問いに沈黙する猟兵。
『ま、情報を漏らしてはくれんよな。さて――猟兵、ひとつ頼みがある』
 銃を構え、剣を抜き、エンジンに再び火を入れるフィガロ隊のアマランサス。共闘した者同士のある種の連帯が緊張感に断ち切られ、猟兵たちも己の武器に手を伸ばす。
『第四騎士団に掻き回されちまった俺達の戦争を、お前たちの手でもう一度見せてくれ!』
『そうとも、俺達は戦争狂だからな! やはり敵と戦わずしては収まらん!』
『死ぬなら戦場で、敵の手で! それこそ戦士の本懐だなあ! こればかりは団長にも分からんよ!』
 ははは、とまるで酒を飲みに街に繰り出すような気楽さで殺し合いを求めるフィガロ隊の騎士たち。
 始めから死ぬ覚悟でヒェイル半島防衛に志願した男たちは、その覚悟を、その晴れ舞台たる戦場を台無しにした龍が消えた今再び最初の願いを叶えてくれる相手として猟兵を認めたのだ。
 戦って、戦って、戦って死ぬ。ベッドの上で家族に手を握られながら死ぬことなど、老いさらばえて静かに逝くことも、病に冒されのたうちながら死ぬことも、断固拒否して戦場で死ぬ。
 その最後を飾る相手に猟兵こそが相応しいと、フィガロ隊のアマランサスたちは決闘を望むのだ。
 ならば、猟兵の答えは――
ライ・ガブリエル
こっちは傭兵なんで報酬にならねェ戦闘はしねェんだが…だが、良いぜ、テメェ等まとめて相手してやる。
キャバリア乗りなら死ぬのはコイツん中ってのは理解できるからな!
その代わり、さっきも言ったが俺は傭兵だ。報酬(敵機体やパーツ)はしっかり頂かせて貰うぜ

ユイ、敵機全機の【情報収集】して行動予測だ。
逐次情報寄越せ!【瞬間思考力】で敵の動きを読む!

マイクロミサイルとリニアライフル(連射モード)で【弾幕】張って牽制!
敵の機動予測から出力全開【限界突破】の【オーバーブースト】で機動力で上回り、敵の死角に回り込んでの全武装攻撃やスラスターやコクピットをライフル(単車モード)で狙って各個撃破して撃ち落としてやるよ!




「こっちは傭兵なんで金にならねェ戦闘はしねェんだが……」
 眼前にて武器を構えるアマランサスを前に、仕事は済んだとばかりに首を振るライ。
 もはやヒェイル半島での戦闘は多国籍軍勝利で決着しただろう。聖王国騎士団は半島より撤退し、これによってトゥリオン軍港を攻める聖王国第八騎士団主力部隊の逆包囲は完成する。
 ライがこれ以上リスクを冒さずとも、経済連合なり東方同盟戦線なりの部隊に後事を任せてそれで終わる戦場だ。
 だが。
「テメェ等の、死ぬならキャバリアの中って想いは理解できるからな! 良いぜ、相手してやる。来いよ!」
『はっは! だよなぁ、お前も理解るか! 一度乗っちまえばコイツ以外の棺桶は考えられんよな!』
 アマランサスとシュテル・リッター、二機が弾かれたように同時にスラスターを噴射して機動する。
 シュテル・リッターが連射するリニアライフルを巧みなステップで回避し、照準を惑わせながらビームライフルを撃ち返すアマランサス。ライは足元の砂を蹴飛ばし、スラスターの熱風で巻き上げた壁でその光条を減衰させ、装甲表面をわずかに炙られながらも致命傷を避ける。
『機転が利くパイロットだ! 良いぞぉ、教本通りの軍人では楽しめんからな!』
「言ってろ! ユイ、敵機の情報を収集して行動予測!」
 対象は、と問うAIに、ライは一瞬レーダーに映る複数の光点に視線を遣ってから苦々しく吐く。
「目の前の一機! 全部と言いたいが欲を掻ける相手じゃねぇ! 解析でき次第逐次情報寄越せ、精査はいらん!」
 了解、との返答とともにAIが機体制御の補助から敵機の情報解析に全力を傾ける。無茶を押し通すときにユイのサポートは必要だが、それを以てして眼前のパイロットを圧倒するには一手足りない。
 今は防戦に徹し、ユイにいち早く敵機の機動特性、パイロットの癖を解析させ、その情報をもとに戦術を組み立てる――そうでなければ歴戦のエースを前に、下手をすれば墜とされる可能性すらある。
『どうした、動きが悪くなったぞ! さっきのはマグレか?』
「うるせぇ……! 年寄りがはしゃぐな!」
 シュテル・リッターが斉射したマイクロミサイルが熱源探知でアマランサスを追う。近接信管で炸裂する弾頭だ、多少回避されたとてダメージを徹すことは可能――であるはずのそれを、アマランサスはビームライフルを連続照射モードに切り替え薙ぎ払うように放った光線で次々に撃ち落とす。
 近接信管で周囲に被害を及ぼす弾頭は、その攻撃範囲が故に次々に誘爆して数を大きく減じて残った僅かなミサイルは大型シールドに阻まれてしまった。
「手動で撃ち落としやがるかよ! くそッ……」
 そうして花開いたミサイルの爆炎を突破して肉薄したアマランサスのシールドバッシュ。装甲と装甲の衝突が金属の破砕音を伴った衝撃をライに叩きつける。
 シートベルトがなければコックピットでミキサーに掛けられていただろう衝撃。辛うじてたたらを踏むように体勢を維持し、転倒だけは避けたが眼前にはビームソードを抜刀したアマランサスが立ちふさがる。
『キャバリア戦の華はやはり白兵戦よ! どうせ死に花を咲かすならばこれでないとな!』
「こっちにゃ白兵戦用装備なんざねェんだよ!」
『なんと! いい機体が勿体ないぞ!』
 振るわれるビームソードを辛うじて回避しながら、ライは解析結果を今か今かと待ちわびる。この距離で下手にライフルを構えるなら、砲身を斬り落とされて手詰まりだ。
 そうならないためにも敵機の機動データを習得し、絶対必中を狙える隙を見いださねば――
『なんだどうした、俺をコイツの中で死なせてくれるのはお前じゃないのか? なら死に際の戦果にお前の首級をもらっていくぞ!』
「その言葉、そのまま返してやるよ! 首級はいらねェからその機体のパーツを貰っていくがな!」
 後退し回避に徹する機動から反転、急激に加速して体当たり。シールドバッシュの意趣返しはアマランサスを弾き飛ばすが、有り余る推力で地表を滑るようにホバーする敵機はそれを受け流す。
 だが距離は取り戻せた。これを敵機が詰める数瞬、それだけあれば――
「解析完了、これでテメェの動きは読めるんだよ!」
『何ッ!? なるほど、これを待っていたのか!』
 振り抜かれた光刃が空を切る。紙一重で斬撃を回避し、最小にして最大効率の動きで敵機の背後に回り込むシュテル・リッター。
 振り返ろうとする機体がどちら回りで旋回するか、またそのときにどれほど機体が移動するかもライにはもはや我が事のように分かる。
 それにぴったりと張り付くように死角に機体を保ちながら、リニアライフルを単射モードに切り替えアマランサスの背に押し当てる。
「あばよ、報酬は貰っていくぜ」
『応、コイツはまだまだ戦える機体だ。何処を持っていっても役に立つぞ――』
 リニアライフルが一度吼え、胸に大穴を開けたアマランサスが停止する。
 握りしめたビームソードの刃が掻き消え、マニピュレーターからずるりと落ちて地に転がった。
 一人の騎士が本懐を遂げ、その生涯を燃やし尽くしたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

四季乃・瑠璃
緋瑪「仕方ないなぁ」
瑠璃「最後の一花なら、付き合ってあげるよ」

UCで機体を強襲仕様に換装。
瑠璃がミサイルとソードライフル・ビームモードの連射で緋瑪を援護し、同時にヴェスバーの【エネルギー充填】。
緋瑪は強襲仕様の追加スラスターも全開にして、ソードライフル連射して一気に接近。
懐に飛び込んだらソードライフルで敵の防御を跳ね上げ、もう片方のパイルバンカーをコクピット(または動力)に叩き込んで沈め、スラスター全開でジャンプして待避。
そこへチャージ完了した瑠璃のヴェスバーで敵部隊を薙ぎ払う様に発射。
緋瑪も空中からミサイルとジェノサイドボムによる感知式ボム【爆撃、蹂躙、範囲攻撃】とライフルで連携・殲滅するよ




『せぁぁぁッ!!』
 二機で死角をカバーし合うジェミニオン。その一角を突き崩すべく捩じ込まれたビームソードの光刃を、ソードライフルの刃が一瞬霧散させる。
 緋瑪の援護で辛くも被弾を免れた瑠璃がビームライフルを連射すれば、驚くほど素直にアマランサスは離脱する。
「死にたがりかと思ったけど、引き際は良いんだね」
『死ぬなら戦場でとは言ったが無抵抗に屠殺されたいとは言ってないんでね』
 緋瑪の問いかけに騎士は応える。なるほど道理であった。戦士として戦い戦い戦い抜いた先、己の全てを出し尽くして死ぬことこそ本懐。戦場で棒立ちになってさあ殺してくれなどと、それは戦士の死に方ではない。
 四季乃の双姫は戦士ではないが、死を生業とする者として彼のその信念は尊重するべきだと頷き合う。
「仕方ないなぁ」
 緋瑪がやれやれと肩をすくめて操縦桿を握りしめ、
「最後の一花なら、付き合ってあげるよ」
 瑠璃もまた、愛機の火器管制システムがリアルタイムで訴える情報の渦に意識を傾けた。
『ありがたい。出来るお嬢さん達に看取られて逝けるんなら今日まで生き延びた甲斐があるってものだよ。そうでないなら今日はまだ死ぬべき日では無いということだね……ッ!』
 瞬間、緋瑪のジェミニオンとアマランサスが唸りを上げて加速、ビームソードがジェミニオンの装甲を炙り、ソードライフルの銃剣がアマランサスの装甲を削る。
『ああ、いいぞ! 共和国の腰抜けとは違う!』
「それはどうも。褒められたってことでいいのかな?」
 連鎖する斬撃。実体を持つソードライフルとかち合えば、ビームの刃は霧散してしまう。逆にソードライフルの刀身も、何度もビームソードを打ち払えば蓄積した熱でいつか断裂してしまうだろう。
 故に両者は示し合わせた演武のように、互いの斬撃の軌跡が重ならぬよう剣を振るい、そして相手の斬撃が致命傷とならぬよう機体を踊らせる。
 その流麗な交錯は、エース級の腕前を持つパイロット同士によってのみ生じる戦場の芸術であった。
「緋瑪、援護するよ」
『それは無粋じゃないか。いや、その機体は二機で一組か。なら構わない、御しきれないなら死ぬだけのこと!』
 そこに割って入る瑠璃の援護射撃。ビームの速射を一つは剣戟の間に機体を傾けすり抜けると、一つはシールドで受け流し、一つはビームソードで緋瑪に斬り込んだその勢いのままに切り払う。一瞬のうちに放たれたビームの渦を、騎士は難なく切り抜けてみせた。
「でも、構わない」
 本命は背負った大型ビームライフルのそれだ。ソードライフルの射撃は牽制で目くらましにすぎない。
 そのエネルギー充填完了まで瑠璃の機体が本命を隠していることを悟らせないために、緋瑪が前衛に立ち瑠璃は牽制射撃を加え続けるのだ。
「だけど瑠璃、なるべく急いでね! こいつ、思った以上に手強いよ!」
 互いに致命傷は無し。だが2対1でもそれを苦にしない騎士の剣には、短くない時を戦場で生きてきた重みがある。
 殺人姫の振るう刃がもつそれとは全く別種の、人を殺すのではなく敵を滅ぼすことに特化した剣。これを捌き切るのは、如何に緋瑪といえど至難である。
 だが――
「わたしじゃ殺しきれない、悔しいけどそれは認めるよ。でもわたしたちは二人で一人の殺人姫なんだ!」
「そうだよ緋瑪。――お願い!」
 緋瑪の剣では騎士には届かない。だが、騎士の繰る変幻自在の剣の護りを崩す事はできる。
 ソードライフルがビームソードの柄を引っ掛けるように掠め、マニピュレーターが衝撃で剣を取り落とす。
『なんの! これしきのことで!』
 すぐさま予備のビームソードを抜刀するアマランサスだが、その一瞬の隙に叩きつけられたパイルバンカーが機体の脇腹を刳り抜き、強烈な衝撃でアマランサスの体勢を崩す。
「瑠璃、今だよ!!」
 跳躍、後方に離脱した緋瑪機。射線が開くと同時に騎士の視界に飛び込んできたのは、チャージを完了した瑠璃機から放たれた強大なビームの閃光。
『はは! 派手な葬式だ! 楽しかったよ、お嬢さんたち!!』
 ビームを阻もうとしたシールドが、緋瑪の残した置き土産――ミサイルと爆雷の雨で弾き飛ばされ、全くの無防備となったアマランサスを閃光が呑み込んだ。
「「――さようなら」」
 強烈な熱量で上半身を蒸発させたアマランサスは、しかし一人の戦士がここで最期まで戦い生き抜いたのだと示すようにその両脚でいつまでも地を踏みしめていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

貴司・忍
アドリブ絡み歓迎
X

死ぬなら戦場ね
…はぁ、しゃーねぇなこりゃ

こっそり、戦闘領域の端の端に潜ませてたうちの国の艦に連絡
「あ、副長?悪いんだけど…動けるの全員寄こせ。物見遊山じゃ気がすまんだろ、そっちも」

艦から六号に搭乗した開天組を戦場に発進させる
事後処理は後で考えるとして
「特殊攻撃隊開天組一番隊、戦闘準備!戦争しようぜ、狂人共」

こっからがあたしの、ほんとの集団戦術だ
隙を狙うならあたしにその視線を誘導するる
敵が構えたライフルに向け彼岸花を射出
その間に真正面から飛びかかり、劣華とチェンソーで襲い掛かる
そのあたしを囮に敵陣の中央まで部隊と共に突っ込んで衝突させる
オールウェポンズフリー、暴れろ野郎ども!!




「死ぬなら戦場ね……」
 困ったように息を吐く忍とて護国の特攻隊長、開天組の長なのだ。
 彼女らとて、戦場で華々しく散ることに美学を感じないわけではない。だが、それで大暴れされれば困る。ヒェイル半島における戦闘はほぼ決着したといえ、ラファール作戦は未だ中盤。この先に控える、第八騎士団主力本隊の逆包囲撃滅戦を前に戦力の消耗は避けねばならない。
 まして、第四騎士団ドゥルセ・ハルバリ提督の襲撃で忍自身もボロボロだった。装甲はズタズタ、ガトリングガンは撃ち尽くし、必殺の槍もすでに射耗している。
「美学に生きるってのはカッコいいけどよ、この状態であんたらみたいなベテランの相手させられる側の身にもなってみやがれってんだ」
『悪いとは思うさ。だけどお前さんならわかるんだろう? 俺たちの魂が、死に場所はここだって叫んでるのがよ!』
「癪だけどそうなんだよなぁ……はぁ、しゃーねぇなこりゃ」
 殆ど唯一残った武器である、左腕の大型ナックルを握りしめてアマランサスと相対する六号開天。その動きに合わせて、アマランサスもビームライフルにエネルギーパックを装填する。
「始める前に一個だけ聞いてもいいか?」
『ああ、だが流石に軍機に触れる内容は無しで頼むぜ』
 もちろん、と忍は頷く。
「こいつは決闘か? それとも戦争か?」
『――戦争だろうさ! 今更お行儀よく騎士の礼儀に則ってだなんて言うものかい!』
 ああ――だったらこちらも遺憾なく戦える。
「……そうかい、じゃあどうあっても恨みっこなしだぜ」
『無論だとも!』
ならば。これも戦場の常と笑って許してくれるがいい。
「だそうだ、副長! 動ける連中は全員寄越したんだろうな!」
「――当然です、隊長! こんな所まで遠征して、物見遊山で帰国じゃ物足りません!」
 四方八方からアマランサスに降り注ぐ暴力的なまでの砲弾の嵐。次々に姿を現した標準量産型仕様の六号開天の群れが、その身に積んだ弾薬を全て吐ききる勢いで弾幕を展開する。
『なんとも豪勢な号砲じゃないか! ええ!?』
「お気に召したなら用意した甲斐があったってもんよ! 特殊攻撃隊開天組一番隊、戦闘開始! 戦争しようぜ、戦争狂さんよ!」
 瞬く間に削り取られてゆくアマランサスの大型シールド。強固な盾を数秒と経たずに屑鉄に作り変えるほどの鉄量に晒されながら、騎士は笑っていた。
 これぞ戦争。これこそが戦場。これだけの火力が自分一人を殺すためだけに向けられている。
『最高だなァ! 戦士の冥利に尽きるってもんだぜッ!』
 機体を隠すには用を成さなくなったシールドの成れの果てを勢いよく投げ捨てれば、開天の一機がそれをもろに食らって転倒する。
 包囲網が緩んだ隙を逃すことなくその穴に喰らいつき突破するアマランサスは、行きがけの駄賃とばかりに起き上がろうとする開天の上半身にミサイルを浴びせて行った。
「クソが! 四番機、生きてるか!?」
「機体は駄目ですが死んじゃいません! お構いなく!」
 突撃機たる開天の正面装甲の分厚さに救われたか。肩部が関節から吹き飛んだ機体は戦闘どころか起き上がることも出来ないが、中の戦友は幸い軽傷のようである。
「しかしあの包囲網を突破しやがるとは本物のエースじゃねぇかよ。副長、指揮を預ける! いつもどおりアタシが囮だ、喰い付いたところを狙え!」
「了解です! それならコイツを持っていってください!」
 副長機から投げ渡されたランスを大型のマニピュレーターで掴み取り、抜け出した敵機を猟犬のように追う忍の開天。
『いーィ練度だ! 出来た部隊だな! 結構な場数を踏んだんだろう、自分で考える頭も度胸もある! 戦士とはこうでなくちゃあな!』
 追尾する開天を振り向きざまの速射で狙撃するアマランサス。ビームは的確に機龍戦で損傷した装甲の脆弱部を狙い撃つが、それで鳴り響くアラートを無視して強引に敵機に詰め寄る。
「うちの部隊は優秀なんだぜ! おらよっと!」
 ナックルアームでアマランサスのライフルを跳ね上げる。そのまま体勢を崩せば儲けたもの――と思ったが、敵機は打撃の瞬間に銃を手放した。
 くるくると回転しながら天高く舞い上がったライフルがアマランサスの左腕に収まり、その銃口が開天の胸部に突きつけられる。
 閃光がモニターを焼き、ビームが直撃したことで装甲越しにも肌を焦がすような熱量が忍を襲う。
 が、同時に忍の槍もアマランサスの脚部を貫き、地に縫い留めていた。
「副長、みんな! アタシごとやれ!」
「――了解、直撃はなるべく避けますが恨みっこ無しでお願いします!」
 忍が派手に動き回り、意識を引きつける間に再構築された包囲網。再びの弾幕が忍の開天もろとも身動きの取れぬアマランサスを呑み込んだ。
『ふざけた装甲だぜ、まったく……相討ちにでもなりゃ格好良かったんだが……』
 開天が持ち前の装甲で耐える一方で、ズタズタに引き裂かれてゆくアマランサス。だが漏れ聞こえた騎士の声は、どこか満足げであった。
 紅の機体が断末魔に噴き上げた爆炎をも耐え抜いて、忍の開天は斃れることなく仲間たちと共に此処にある。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒谷・ひかる
こういう相手、本当はわたしの領分じゃないんですけれど……仕方ありませんね。
満足頂けるかはわかりませんが、お相手いたしましょう。

【闇の精霊さん】発動し、ミサイルを悉く吸い込んでいきましょう
ロックオンが正確であるならば、ステラという「点」に収束するはずですから軌道も読みやすいはず
並行して、回避機動を取るように見せかけて空中をゆっくりふわふわ上昇しつつ二丁拳銃で応戦
あくまで牽制なので命中には拘りません
本命は高度上昇と、敵機の高速機動による「殲禍炎剣」の発動による撃墜
殲禍炎剣がわたしも狙ってくるようなら【闇の精霊さん】で吸い込んで防御しつつ離脱します

半ば騙し討ちですが……これがわたしの戦い方です。




「こういう相手、本当はわたしの領分じゃないんですけれど……仕方ありませんね」
 眼前のアマランサスを駆る騎士は戦闘狂だ。戦場でなければ死ねない人種だ。
 だが、悪人ではない。精霊を――自然環境をいたずらに破壊するような戦い方をするわけではないし、むしろそんななりふり構わぬ戦い方で美しかったであろうシエージュ湾の地形を破壊し尽くしたハルバリ提督を共に討った戦友でさえある。
 ひかるには彼に対して怒る理由がない。彼を討たねばならない理由がない。
 だが、彼の騎士はひかるに、猟兵に討たれて散ることを望んでいる。それが戦士への礼儀であるならば、ひかるは彼らの尽力への感謝として銃を取る。
「わたしで満足頂けるかはわかりませんが、お相手いたしましょう」
『恩に着る。猟兵と戦って死ねるならば本望だ。……いくぞ!』
 刹那、狙いすましたビームライフルの閃光がひかるの駆るステラを狙い撃つ。ここは戦場、油断なく身構えていたひかるもそれをくるりと旋回して回避しながら二丁のハンドガンで応射。
 ここまでは互いに牽制。ビームライフルと二挺拳銃、どちらも相手の動きを抑え込む目的での撃ち合い。違いがあるとすれば、アマランサスの放つビームはもし直撃したならステラの装甲を容易く貫通するだけの威力があるであろうことか。
「ですが、パイロットの腕がいいからこそ予測もできます……これならわたしでも!」
 ひかるはその戦闘スタイルと本職ゆえに、純粋なパイロットとしての技量では一歩譲る。機体性能もまた、精霊術による特異な機動特性で互角に持ち込んではいるが戦闘兵器としてのスペックだけならばアマランサスの方が数段上であろう。
 これほどの力の差をしてひかるが勝利するならば、それは猟兵として多くの世界で戦ってきた経験とそれに基づく戦闘センス、そして彼ら聖王国騎士にとって馴染みのない精霊術という切り札を適切に扱わねばならぬ。
 その逆境にあっても、ひかるは冷静であった。敵は歴戦の軍人。それも理性的な戦闘狂だ。こと戦闘という事象において最適化された人種。故に読める。あの敵の攻撃には無駄がない。無駄がないということは、自分にとって最も嫌な場所にビームが飛んでくるということ。
 ならばそれを意識して強引に回避機動を取ればよい。風の精霊には無理を聞いてもらうことになるが、それで対応は出来る。
『どういう機体なんだ。見たこともない……だが、面白い!』
 幾条も天に伸びる光をすり抜けるステラ。しかし彼我の距離がじわじわと離れるにつれて、砲身の長さが齎す射程距離の差がゆっくりとひかるを追い込んでゆく。
 中~長距離狙撃戦にも対応したアマランサスのライフルは未だに必殺の威力を保ち、しかしステラのハンドガンは今やアマランサスに直撃しても装甲をわずかに凹ませるばかり。
『逃げてばかりではないんだろう? 私を満足させてくれるのではないのか!』
「ええ、そのつもりに変わりはありません」
 アマランサスが肩部ランチャーから小型の誘導弾を連続発射する。花が開くように一度大きく膨らんだ軌跡は、上空のステラをめがけて収束する。回避機動を取ろうとすれば地上からの狙撃がそれを阻み、ミサイルを撃ち落とすにもその数はあまりにも多く、そして速い。
「迎撃も回避もできない……これを狙っていたんですね。でも、わたしを撃ち落とすためのものなら必ず此処に来ます」
 追い込まれた――ひかるは悟る。今までの射撃戦はすべてこの瞬間のための布石であったのだと。
 しかし同時に、ひかるもまた布石を打ち終えたのだ。
「お願い、闇の精霊さん!」
 ステラの足元で空が歪む。重力の渦が、下方から昇るミサイルを巻き取り押しつぶす。爆発。炎とともに吹き寄せる熱風に乗って、更に上昇――
「もう一度! これで決めますっ!」
『その高度では殲禍炎剣に撃ち落とされるぞ! すぐに高度を下げろ、いや……君は一体何をするつもりだ?』
 天空に昼の星が輝く。世界から空を奪った衛星兵器が、ステラを狙い必殺必中の神罰を下す。
 それを――
「闇の精霊さん、全力で頑張って…………っ!!」
 今度はステラの頭上で再び空がレンズのように湾曲する。重力偏向によって生じた歪曲空間に、宇宙よりの閃光が落ち――収束して、捻じ曲がり、アマランサスへと矛先を変えて。
『まさか、殲禍炎剣を利用するとは……! 面白い相手だ、先に逝った戦友にいい土産話が――』
 殲禍炎剣は何人たりとも宇宙に上がることを許さない。たとえそれが重装甲の航空艦であろうと、耐熱性に優れた往還機であろうと。まして、陸戦兵器に過ぎないキャバリアがその裁きに耐えられるはずもない。
「ごめんなさい。わたしの力であなたを倒したことにはなりません。半ば騙し討ちになってしまいましたが……でも、これがわたしの戦い方です」
 ふわりと降りるステラの眼差しの先、大破し燃え上がるアマランサスの主は、果たして殲禍炎剣の邪魔を受けることなく彼の信じる天上の国へ辿り着けるだろうか。
 ひかるは穏やかになった空を見上げて、一人の戦士の死を悼む。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
こちらこそ、共闘に心からの感謝を

Ⅳの武装に接続したUC起動
ビームを剣盾で防御し反射攻撃

最後の敵手に選ばれるとは光栄ですね

接近戦の間合いに詰め…

この…愚か者がッ!

Ⅳから飛び出し敵機殴り倒し(怪力推力移動騙し討ち)
ハッチ破壊
搭乗員引き摺り出し

多国籍軍が祖国へ侵攻している時に
友軍撤退や講和条件引き出す為の抗戦で無い等と…!

(長く戦いに身を置いて
彼らの方が正常で、己こそ“異常”なのか
されど)

貴方が乗り回した機体
その双肩に戦う力無き人々の想いと命運がどれ程乗っているか!

己の意地のみで戦う者に、道具など!

パイスー引き裂き下着一丁に
殴り倒し

私と対峙した不運を呪って頂きます

持ち上げ目を見据え頭突き
気絶させ確保




「始める前に一つだけ伝えたいことがあります」
 手に剣を、そして友軍機から借り受けた予備の盾を。お伽噺の騎士さながらのロシナンテⅣに戦闘準備を整えさせながら、トリテレイアはまっすぐに眼前のアマランサスのカメラアイを、その奥に宿る聖王国騎士の魂を見つめる。
「先程の共闘に心からの感謝を。貴方たちの助勢があればこそ、かの邪竜を討ち果たすことが出来ました」
『身内の恥を雪いだだけのこと。それに、我らが焦がれる闘争にあの男は不要だったからな』
「それでも、です。そして……最後の敵手に私を選んでくださったこと、光栄に思います」
『こちらこそ、だ。噂に名高い猟兵の手で果てるならばこれ以上の名誉はない。これだけはサンドーサ騎士団長に感謝せねばならないな』
「では……」
 ロシナンテが身を屈め、アマランサスの脚部スラスターが足元の砂を巻き上げる。
『……いざ!』
 力強い踏み込みで一直線にアマランサスを追うロシナンテ。対してアマランサスは蛇行しながら後退し、ロシナンテを振り回す。
『聞けば第7騎士団マゴーニ団長の負傷も君たちの戦功と聞いたが、果たして本当なのかね』
 地を踏みしめて前方へ跳躍しようとすれば、足元を薙ぎ払うビームライフルの照射がそれを先んじて牽制する。近寄れない……これほどの優秀な戦士が、経験を積んだ兵が自ら死を厭わぬ戦いに身を投じるなど。
「さて、私は共和国軍の公式発表以上のことは存じ上げませんよ」
 それもそうかと得心したように呟く騎士は、何処までこちらの言葉を信じただろうか。むしろこちらを強者と認めて一層苛烈になる攻め手にじりじりと打開の糸口を潰されるプレッシャーの中で、トリテレイアは思う。
 あれは歴戦の兵だ。長い戦いに身を置いて、それ故にあの形に歪んだのか。あの形に歪んでいたからこそ、今日まで生きて戦場に在り続けられたのか……それは神のみぞ知るところだが、少なくともあの精神性こそがこの果てしなき鉄と闘争の世界における正常な思考なのではないか。
 宇宙より来たりて騎士道を説く自分の方が異常な存在、世界にとっての異物なのではないか。そんなことをふと考えてしまったのだ。
 その思考にトリテレイアのリソースが僅かに割かれ、それがロシナンテにほんの少しの反応の遅れとなって映し出される。
 僅かにズレた踏み込み。その足先をビームが掠める。緊急回避、かろうじて脚を持っていかれることはなかったが、姿勢を崩したロシナンテは無防備だ。
「しまった……!」
 トリテレイアは次なる衝撃に、ビームライフルが自機を貫くそれに備えて盾を構えるが、間に合わない。
 ――だが、追撃は来ない。
『立ちたまえ。私はまだ満足していないぞ! 心此処に在らずの敵を撃ち落としたとて、何の誇りにもならん!』
 アマランサスは銃口を天に向け、ロシナンテが立ち上がるのを待っている。
 トリテレイアはそのとき本当の意味であの騎士の精神を理解したのかもしれない。
 あれは、兵士ではなく、戦士でさえもない。
 己の美学を貫き、自己満足の中で死ぬことしか頭にないものだ。
 ふつふつと思考回路が過熱する感覚。トリテレイアは久しく心底から怒る。
「この……愚か者がッ!!」
 スラスターの最大出力噴射。本来ならば無重力空間で行うような、推力任せの姿勢制御で機体を引き起こし、そのままの勢いでアマランサスに突撃する。
『それは今更の罵りだよ!』
 アマランサスもひるまず応射する。ビームが盾を焼き焦がし、赤熱した鉄板は数秒と経たずに溶断されてちぎれ飛ぶだろう。
 それよりもロシナンテのほうが速い。灼けたシールドでアマランサスの鼻っ面を殴りつけ、引き倒して馬乗りになる。
『ぐおおおッ! だが、まだだ! ここで死んでは友に会わせる顔がない!』
 抵抗しようと銃を持ち上げる素振りを見せればその手首を剣で落とし、ミサイルランチャーがハッチを開けば機銃で覗いた弾頭を破壊する。最後の足掻きに取り出そうとしたビームソードも、それを掴む前にロシナンテのサブアームによって腕が圧し折られた。
 抵抗の余力を失ったアマランサスを押さえつけ、ロシナンテはコックピットハッチを開く。降りてきたトリテレイアの人外の――巨体の甲冑騎士の様相に、聖王国騎士は息を呑む。
「一矢報いて講和条件を引き出すためでもなければ、撤退する友軍の背を護るための殿軍ですらない。ただ自分の欲を満たすためだけに抗戦して死にたいなどと……」
 トリテレイアが自身の剣をアマランサスの歪んだフレームに突き刺し、そのコックピットを抉じ開ける。
 甲冑めいたパイロットスーツに身を包んだ聖王国騎士をウォーマシンの膂力で引きずり出せば、渾身の力でその頬を張り倒した。
「貴方が自分の為だけの棺桶と定めて乗り回したこの機体! これとてその双肩に戦う力なき人々の想いと命運がどれほど乗っているか!」
 よろめいた騎士はしかし倒れることを許されない。トリテレイアの大きな掌が彼の顔面を掴んだからだ。これで反論しようにも彼は口を開くことすら出来ぬ。
「貴方たちの凱旋を信じて送り出した聖王国の国民、貴方たちならば敵を倒してくれると願って全力を尽くした整備兵、他にも多くの人々に支えられておきながら、己の意地とつまらぬ美学のみで戦う者に、こんな大層な道具など!」
 常人の1.5倍はあるトリテレイアが持ち上げれば、成人男性であっても宙吊りになる。その状態で騎士の生身の目を見詰めて、トリテレイアは彼にとって最も残酷な処遇を言い渡す。
「貴方にはより良い形で戦争が終われるよう、協力……いえ、道具になっていただきましょう。どうせここで死ぬはずだった命です、文句はありませんね? いえ、何かあったとしてもそれは私と対峙した不運を呪って頂きましょう」
 万にひとつも自決などされぬよう、パイロットスーツをひん剥いて武装解除を施した騎士を頭突き一発で沈めて、ロシナンテのサブアームで捕縛する。
 腐っても経験豊富な兵だ。捕虜としての価値は決して安くないだろう。
 だから、この先共和国と聖王国が交渉のテーブルに就く時を見越して彼を捕虜とする。それが誇り高き自己満足の死を望んだ彼への最大の意趣返しと、そして彼を送り出した力なき人々がこれ以上傷つかぬ為の鍵となるだろうから。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィクター・ホリディ
アドリブ連携歓迎・L

戦士としての幕引き。解るさ、その気持ちはな。

だが断る。
俺はヤブ医者でね、死にたがりの患者のお願いは聞かない事にしてるんだよ。

■方針
ミサイルとライフルをパージ、武装を減らして身軽に
UC発動、お前らが倒れるまで付き合ってやるさ

推進移動/継戦能力/戦闘知識を駆使し攻撃を回避・ダインスレイフで防ぎながら敵を制圧射撃/弾幕で牽制、味方の攻撃にも援護射撃を実施
隙のあれば重量/貫通攻撃/部位破壊を使い、敵機の戦闘不能を目指す

「お前らの最後の戦場はここじゃない、戦後の聖王国だ。
 荒れた国を立て直すって途方も無い戦場が残ってる。
 それまで精々生き恥さらして生き残れ、戦争狂ども」




「気持ちは解るさ」
 プレケスのライフルとミサイルランチャーを投棄しながら、ヴィクターは困ったようにつぶやいた。
「自分なりの誇りを持って戦場に立ったからには、戦士としての幕引きを迎えたい、ってとこだろ? 解るよ、俺もな」
 だが――と、拳を握り固めた機体にファイティングポーズを取らせながら、ヴィクターは首を横に振るのだ。
 己は軍人である。故に彼らの想いは理解できる。しかしそれ以前に、彼らが戦士として戦場に立つならば、ヴィクターは医者として戦場に立つという違いがある。
 殺しの果てに死ぬのが彼らの望みであるならば、死ぬまで救い続けるのがヴィクターの望み。
 その願いの根本のところで彼らと己は違うのだ。
「こう見えて俺の本業はヤブ医者でね。死にたがりの患者のお願いは聞かないことにしてるんだよ」
『それは困った。神というのが実在するのなら、中々思うようにはしてくれないものだな。最後に掛かるのが自称ヤブとは』
 ビームライフルを構えるアマランサス。拳を構えるプレケス。普通ならば銃に素手で挑んで勝てる道理はない。だが、ヴィクターはすでに機体を犠牲にしてでも騎士の生命を救う――本人がそれを望んでいないとしても――覚悟を決めている。
「いくぜ死にたがり。お前さんが倒れるまで付き合ってやる」
『そこは"死ぬまで"だと嬉しいのだがね。貴殿との殺し合いは実に胸踊りそうなのだから残念だ』
 ビームが大気を灼いて奔る。収束された高密度の狙撃用ビームは、攻撃範囲こそ狭いが直撃すればそう長く耐えられるものではない。
 当たればただでは済まない一撃、プレケスは滑るようなホバー機動でこれを回避。だが敵も歴戦兵、必殺の狙撃が回避されるのを見越して次々に偏差射撃を送り込む。
 回避した先にはすでに敵の射線が通っている。なるほど一対一でやるには手強い相手だ。普段であれば味方と連携して数で圧殺するのが有効だろう。
 が、それでは駄目だ。味方もまた、それぞれにエース級の敵と相対しているというのもある。この状況では何処にもヴィクターと連携しうる余剰戦力などありはしない。
 それ以上に、ここで複数機で掛かればそれは戦争になってしまう。そうなればあの騎士を満足させてしまうだろう。
「お前さんには悪いが、不満を抱いたまま決闘で倒されてもらうぜ」
 死ぬべき時を得られないまま生きて帰す。そうでなければ、死に損なったという後悔が騎士を死に縛り付けるだろう。
 それでは困るのだ。
「お前らには戦後の戦場ってやつが待ってるんだ。最後ってのは此処じゃない」
『我々は腐っても第八騎士団、殺し合いにしか居場所などないよ。戦後のことならばもっと相応しい者が居るはずだ』
 ビームを避けた先にはすでに放たれた次なるビーム。躱そうにも無理な回避機動の連続でプレケスの関節が悲鳴を上げている。此処を凌いだとして、次は無理だろう。
 ならば、と防御フィールドで覆われた前腕を動かしビームをそれで受け流す。
 殴り払うような所作でビームに拳を叩きつければ、愛機はヴィクターのとっさの賭けに応えて破壊的な熱量を霧散させる。
『なんと! 近接兵装で狙撃を受け流すか、益々殺しに掛かってこないことが口惜しい腕だな!』
「煽てたって死なせやしないぜ。お前に出す薬はもう決めてあるんだ」
 二射、三射。続く狙撃を打ち払い、しかしフィールドを展開するジェネレーターに過負荷がかかっていることを、機体のAIが辛辣な罵倒混じりで訴える。
「うるさいぞヘンリー。あと一発分保ちゃあいいんだよ」
 距離は詰まった。最後の一撃を躱す――ついに機体フレームが限界を迎えて、金属が破裂する音とともに左脚部の膝から下が脱落する。
 しかし片足があれば十分。此処までに得た速度と慣性のまま敵機に突っ込み、コックピットの下部、アンダーフレームとの接合部を狙ってフィールドを纏った鉄拳を叩き込む。
『うおおおおおッ!! まさか、拳一つで私を圧倒するとは……!』
 プレケスの拳が装甲を破砕し、アマランサスの機体が上下に無理やり分断される。同時に二機はもつれ合ったままに倒れ込んだ。
「こんなカッコじゃ格好付かないが言っとくぞ。この戦争の後、お前らの国は、戦後の聖王国は間違いなく荒れる。その時にお前らの武力ってやつも必要になるだろう。その必要なときが来るまで、精々生き恥晒して生き残れよ戦争狂」
 国を喪った、戦後すら迎えられなかった男からの助言。
『…………負けた身の上で否とは言わんよ。見事だった、猟兵』
 それはきっと、死を美徳とした騎士にも届いたであろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……そうかい。
アンタら、機体は違うけどあのセレナイトのパイロットと同じ……
アイツは、逃げきれたかい?
いや、なんでもないさ。

しかしまぁ、自覚してる狂人共ってのは一番たちが悪いね。
そのもの死兵じゃないか。
けれどアタシだってOveredの『操縦』型式にゃ慣れているんでね、
思い通りにさせるかってんだ!

奴等のライフルがビームなのは有難いね。
マルチプルブラスターのモードを重力波に切り替え、
射撃に『カウンター』で『弾幕』を張ってビームの軌道を歪ませる!
その上でeinherjarの力場で『盾受け』し、
往なして『貫通攻撃』をぶち込む!
コクピットは狙わない、敢えて生き恥を晒しやがれ!




「……そうかい」
 多喜の心を覆うのは、やるせなさだった。
 彼女が見てきた聖王国騎士は、誰も彼も相互理解というものを拒む頑なな連中ばかりであった。
 自らの信仰こそが絶対であると信じて疑わぬ者。他者を踏みつけにしても自身の欲望を満たすことを優先するもの。そんな騎士であったならば、あの凶悪な邪龍が敵味方の区別なく戦場を蹂躙したとて、多国籍軍と――猟兵と共闘するなどという選択肢を選ぶことはなかっただろう。
 だが、彼らは違う。理想の戦場を乱されたという、至極自分勝手な理由はあれど……彼らは猟兵を理解しようとし、その上で共闘することを選ぶだけの柔軟さを持つ人々だ。
 そして、そういう騎士は決して眼前のフィガロ隊の騎士だけではないことを多喜は知っている。
「なぁ、アイツは……司令部に戻ったセレナイトの騎士は、逃げ切れたかい? ……いや、なんでもないさ。戦う前に聞くことじゃないね」
 脳裏に浮かんだのは、潜入を試みた多喜を拘束し、連行したセレナイトのパイロット。明らかに敵であった彼女を逃し、一人でも多くの将兵を生き残らせるために奔走した顔も知らない一人の騎士の声色だ。
『そうだな。死ぬ前に独り言を呟くが……やつは残存部隊を見事に纏めて撤退したとも。この分遣隊で最も練度、装備共に充実した我らにハルバリ討伐を依頼したのもやつだ。仮にサンドーサ正騎士長が戦死でもしてあれが正騎士長になれば、第八騎士団も多少はマトモな部隊になるだろうな』
 相対するアマランサスの騎士がしみじみと"独り言"を語って聞かせれば、多喜の懸念が一つ晴れた。
 話の通じる、価値観の近い騎士が無事に生き延びた。そしてその言葉から察するに、比較的高位の将校……オブリビオンマシンの影響を受けた好戦派が一掃されれば、指揮官としてのポストも望める立場にあったのだ。
 聖王国は決して常識の通用しない、滅ぼす他に道のない国家ではない。あの国が国際社会に復帰するだけの理性を取り戻す日はそう遠くはないのだと分かれば、多喜の憂いは一つ晴れる。
「ありがとよ。しかしまぁあんたみたいな自覚ある狂人ってのは一番たちが悪いね。そのもの死兵のつもりかい?」
『いかにもそのとおり。それこそ貴君の気にする残存部隊を逃がすための肉の壁になれば本望。多国籍軍は半島の占領を優先するだろう。となれば遊軍の貴君らこそ、追撃部隊となる可能性が最も高い。その足止めをして、その戦場で死ねるならばこれ以上無い誉れではないか』
 多喜はもう一度そうかいと呟いて、Overedのスロットルを回す。
「饒舌に語ってくれたところ悪いけどね、思い通りにさせるかってんだ!」
 それが会話の終わりだと、両者は同時に認識して同時に銃を抜き撃った。
 両者の射線が交錯し、そしてアマランサスのビームだけがOveredの射線を中心に渦を巻くようにうねって逸れる。
『重力波ビームか! 実用化されていようとはな、厄介なことだが死ぬ前にこの目で見られたことは喜ばしい! 冥土の土産話になる!』
「ご明察! だけどね、そいつは冥土の土産じゃない、ただの土産話にさせてもらうよ!」
 すぐさまカラクリを見抜き、そして射角と出力の繊細な調整で対応を試みるアマランサス。強かで手強い相手だと多喜は舌を巻きながら、捻じ曲げられてなおOveredを捉えるビームをシールドビットで受け止める。
「撃ち合いなら装備の差でアタシが有利みたいだけど、まだ続けるかい?」
『生憎私は剣がからきしでね。銃のほうは隊でも一、二を争う腕だと自負していたのだがそれが届かないか、困ったものだ……だが、最も得意な戦場で力及ばず敗れるならばそれもまた死に様として一興!』
 撃てど撃てどもビームは逸らされ、どうにか徹しても浮遊する盾に阻まれる。一方でこちらの射撃などお構いなしに撃ち込まれる射撃には一方的に回避を強いられ、次の攻撃の精度を高める隙を中々与えてもらえない。
 それでも盾を一枚は撃ち落としたが、それまでだった。騎士は苦笑し、しかし諦念することなく最後まで抵抗し続ける。
「だけど悪いね。思い通りにはさせないって言ったろ。あんたみたいな腕のいい馬鹿野郎は、生き恥晒してアイツみたいな騎士の支えになってやれよ」
 永遠にも思える射撃戦の末、ついにOveredの射撃がアマランサスを捉え、両の腕を吹き飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔴​

チトセ・シロガネ
……ユーたち、戦いというお酒に酔っているみたいネ。

青い機体は両手に刃、両足にも刃を構え、尻尾にもある刃を震わせ、迫る騎士の前に立ちはだかる。

すこし、酔い覚ましが必要みたいダネ💛
高機動で間合いを詰める赤い機体に真っ向から刃で受け止め、オーラ防御と軽業で受け流す。バランスを崩したら早業と瞬間思考力で見極め、尻尾の刃で武器を持つ腕部を切断。

そしてUC【オービタル・ダンサー】を発動。
くるりと回り、すべての四肢を駆使し、ダンスの如く相手の四肢を切断するコンビネーションを繰り出す。

こんなところで死ぬなんてもったいないネ。
アタシよりエキサイトな相手はまだいるヨ。
自分らを苛む悪魔がいる空を見上げる。




「ユーたちは酔っ払いサ」
 やれやれと肩を竦め、首を振るチトセ。その四肢に刃が輝く。
「戦いってお酒に酔ったしょうもない酔っぱらいには、すこし酔い醒ましが必要みたいダネ」
『ははは、好き好んで戦争なんてやってる俺達のような奴は、酔っぱらいかイカれ野郎のどちらかよ。願うのは醒めない酔狂のままに輝かしく果てる事のみ! ってな』
 四肢の――否、テールユニットからも展開した刃を構え、チトセは騎士を挑発的に手招きする。
 かかってこい、その酔狂を真っ向から叩き潰してこちらの我を通させてもらう。言外の宣戦布告に、騎士は獰猛な笑みを浮かべてビームソードを抜き放つ。
『せっかくなんだ、一献付き合ってくれや。お行儀のいい騎士の剣を期待してるんなら申し訳ないがなァ!』
 下段に剣を構え、地表面滑走による縮地。瞬時に彼我の距離はゼロに、斬り上げられたビーム刃をチトセは腕の刃で真っ向受け止め、その剣圧に吹き飛ばされるように跳躍する。空中で身を捻り、逆立ちで着地するとバック転。そこを追撃の刃が掠めていけば、反撃とばかりに脚と尾の光刃がアマランサスを襲う。
「ふふ、見惚れちゃだめダヨ!」
『器用なこって! こりゃ片手じゃちょっと足りねえな!』
 投擲されたシールド。それを一刀にて両断して見せれば、切り裂かれた盾の向こうから肉薄するアマランサス――盾持ちの左腕にも予備のビームソードを構えた二刀流の騎士機が機体を旋回させながら渦巻くような斬撃を放つ。
『そらそら! 剣が多けりゃ強いってもんでも無いんだぜ!』
「おっトト、流石に二刀流は捌き切るの難しいネ!」
 熟練騎士の、機体特性を知り尽くした操縦から繰り出される、敵機を破壊するための無駄のない連撃。迎え撃つは一見して無駄の多い、魅せるための演舞のようでありながら生来の手数の多さで的確に要所は押さえたチトセの流麗な剣舞。
 二機の光刃が風を斬り、ビームの粒子を散らし、激突して閃光を瞬かせる。
 赤と青、相反するキャバリアの攻防は息を飲むほどに美しくも壮絶であった。赤が荒々しく攻め込めばするりするりと青は逃げ、青が滑るように反撃に転じれば、赤はその尽くを正面から捻じ伏せる。
「アハッ! 楽しいネ、アタシは今とっても楽しいんダ! ユーはどう!?」
『そいつは奇遇、俺もこんなに血が滾るパイロットとまみえたのは久々だ!』
 幾度目かの交錯。剣と剣が激突し、そして剣戟を重ねた後に僅かに距離を空ける。
 チトセがアマランサスとの距離を取り、構え直したその瞬間である。アマランサスの肩部ランチャーから不意打ちに斉射されたミサイルが眼前いっぱいに飛び込んできた。
「うわっト、剣で勝負じゃないのかナ!?」
 間一髪、飛び退り追尾してきた弾頭を尾で切り払う。爆風に煽られ吹き飛ぶチトセのオービタル・テイルズ――違う、爆風をも推進力として跳んだ彼女は、そのまま空中を蹴って意表を突く三次元機動――突き出された尾がアマランサスの肩を貫通し、片腕を削ぎ落とす。
『おいおいおい、不意打ちにカウンター入れてきやがるかよ!』
「これくらい出来なきゃダメダメヨ。でなきゃ――」
 着地。からの刈り取るような超下段の回し蹴りがアマランサスの足首を破砕する。手をついて、バネで弾けるように上体を跳ね上げると同時に身を捻り、再び刃尾で無事なもう片腕を肘から斬り落とす。
 瞬時の連撃で手足を喪ったアマランサスの胴体がついに地に堕ちた。天を仰ぐその視界で、チトセは騎士にも促すように顎をしゃくって空を見上げる。
「アタシよりエキサイトな相手はきっと、あの向こうにまだまだ居るヨ。そう思うとこんなところで死ぬなんてもったいないでショ?」
『は、ははは。人類が空を失ってどれだけ経ったと思ってるんだ。だが確かにあの向こうにもっとヤバい敵が居るってんなら、拝まないで死ぬのは勿体ないかもしれんなぁ……そいつが大ボラにならないように祈ってるぜ』

成功 🔵​🔵​🔴​

アンネリース・メスナー
これ程のアマランサスに隊長機のラピート、コピー機が何処まで出回って!
いいですわ。ズィガ帝国を代表して、わたくしが貴方達がアマランサスに相応しいかお相手して差し上げますわ
戦争狂では、答えは決まり切ってますがねぇ!

わたくしを血筋の七光りだと思ってもらっては困りますわ
実力もなしに親衛隊になれはしませんわ!
そして、わたくしのラピートもただ飾り付けただけの儀典機だと侮るようだと後悔しますわよ!
サイコセンサーが戦場に満ちる思念を取り込みオーバーロードし、思念のオーラが機体から吹き上がるわ
オーラがバリアとなり、そして思念のオーラで強化されライフルは砲口が溶けるほどのビームを放ち、ビームソードは巨大化するわ




 アマランサスとは、すなわち帝国の威容、その象徴であった、
 帝国軍はアマランサスとともに在り、帝国の覇道はアマランサスによって築かれたと言ってもいいだろう。
 それが、その機体が、いまや第三国に流れている。ズィガの誇りを解さぬ者によって、我が物顔で運用されている。
 アンネリースにとってそれは怒るに十二分の光景であった。まして己と同じ、選ばれた指揮官にのみ預けられる栄誉あるラピートタイプさえもがズィガ帝国ならぬ者によって駆られているのだ。
 アンネリースとて、帝国が一度滅び去ったことを理解できぬ愚かな娘ではない。敗軍の常として、接収された機体がある程度他者の手に渡る可能性があることは承知している。しかし、それが相応しからぬ者の許にあるならば取り戻さねばならぬ。取り戻せぬならば、ズィガ皇族の誇りを以て破壊せねばならぬ。
「あなたが隊長機ですわね? 貴方がその機体に相応しいパイロットかどうか、わたくしがお相手して見極めて差し上げますわ」
『これはこれは。見たところ同型機、それも徹底的にカスタムされているようだ。その口振りからして、コイツのオリジナルに縁があるのかな、お嬢さん?』
 いかにも、とアンネリースは息を吸い込む。名乗るならば堂々と朗々と。皇帝の血に連なる者として恥じることなきように。
「わたくしこそズィガ帝国親衛隊中将、アンネリース・メスナー! その機体を駆るものとして、ズィガの名を知らぬとは言わせませんわ!」
 これは驚いた、という呟き。眼前の騎士は、その機体は膝を折り、傅いて頭を垂れる。
『ズィガのことは存じておりますとも、中将閣下……いえ、親衛隊のメスナー閣下であれば皇女殿下とお呼びしたほうがよろしいか』
 恭しく敬意に満ちた回答は、ある意味でアンネリースにとって想定外のもの。知らぬと鼻で嗤われるか、亡国の残党と嘲られるか――そのどちらでもない回答に、アンネリースは眼前の騎士を計りきれぬ。
「わたくしの素性を知っている? あなたは何者なのですか」
 あるいは同じ亡国の生き残りであるのか。その問いに、騎士は否と答えた。
『私は生憎ズィガの人間ではありません。が、以前武者修行の一環であの国を訪れたことがある。ズィガで得た経験が私の、我がフィガロ隊の根本にあるのですから、ある意味では故郷に等しいとも言えましょう』
「なるほど、理解しましたわ。ならば尚の事、あなたには言わねばならぬことがあります」
 アンネリースのラピートへと、彼女の、そして戦場に満ちる数多の戦士たちの思いが収束する。機体が一回りも大きく見える錯覚。思念は物理現象にも干渉し、生半な攻撃を弾き返す障壁を生み、武装の威力は数倍以上に跳ね上がる。
「戦場での死は確かに誉れ。ですが自らそれを望むなど、ズィガのアマランサスを駆るには不適格ですのよ!」
『……やはりズィガ帝国は気づきをくれる。叶うならば聖王国に並ぶ第二の祖国と呼びたい程に。あの国も理想郷ではありませんでしたが、私のような武辺者にはいい国だった。皇女殿下、貴女もまたズィガの血を確かに引いておられるように感じる』
 だからこそ。立ち上がったアマランサスは、盾を捨て右手にライフルを、左手にビームソードを持ちアンネリースに対峙する。
『"祖国"のために"祖国"と戦い散る、これもまた末路としてこれ以上無い誉れ!』
 放たれた連続のビームはオーラバリアによって弾かれ、これが通用せぬと見るやライフルを投げ捨て接近するフィガロのアマランサス。
 彼が投げ捨てたライフルを、地面ごと抉り取るようなアンネリースの射撃が呑み込み焼き尽くす。外した――否、躱された。砲身が過熱し、銃口が溶け落ちたライフルを投棄――機関部が爆発。そのまま盾に据え付けられたラックから豪奢な儀礼用ビームソードを抜けば、大剣の如き刃が抜き放たれフィガロ機の斬撃を極厚の刃が受け止める。
 鍔迫り合い――不利と見るやフィガロ機は剣で大剣を塞げている間にとアンネリース機の脇腹めがけて蹴脚を叩き込む。だが、それを見越して鍔迫り合いを切り上げたアンネリース機はそれを回避し、盾の打突でフィガロ機の剣を持つ手首を強かに打つ。
 マニピュレーターが衝撃で緩み、ビームソードが取り落とされた。
「わたくしの地位を血筋だけの七光りと思ってもらっては困りますわ! 親衛隊中将の座は実力あってこそ勝ち取ったもの!」
『侮ったつもりはありませんが、なるほど想像以上に手強いお方だ……!』
 武器を喪ったフィガロ機が最後の抵抗にと斉射したミサイルがアンネリースの機体に迫る。その一切を回避すらせず威風堂々の正面突破で耐え抜いた白紫の優美な儀典機は、まるで祈るように剣を掲げ、祖国の威を知る異国の騎士の機体へとそれを振り下ろす。






 ヒェイル半島を巡る一連の攻防は、聖王国第四騎士団残存部隊の壊滅、及び駐留軍の主力を構成していた第八騎士団分遣隊の撤退によって多国籍軍の勝利に終わった。
 この戦いで聖王国八人の将軍の一人、第四騎士団長"黄金艦隊"ドゥルセ・ハルバリ提督が戦死。聖王国海軍はトップの死によって名実ともに壊滅し、作戦能力を完全に喪失した。
 また、東海岸における一大拠点の一つであるヒェイル半島の奪還によって、東部における共和国軍支配領域は一気に取り戻される事となった。
 共和国軍を中核とする多国籍軍は、打破した第八騎士団の分遣隊を各個に掃討しつつ決戦の地となるであろう孤立した海軍総司令部、トゥリオン軍港を目指し進撃する。
 トゥリオン攻略を掲げ集結した第八騎士団主力本隊との激突は近い――

 そして、ヒェイル半島からの友軍脱出を支援し、殿軍を努めたフィガロ隊の"生き残ってしまった"者たちは、捕虜として潔く多国籍軍の軍門に降った。
 その彼らが簡易の捕虜収容所となった輸送艦に収容される直前、猟兵に告げたのだ。
『この戦争はおそらく、どちらかが滅ぶまで終わらない。少なくとも聖王国側に妥協できる落とし所を探す意志はない。猟兵がもし、それでも聖王国が国民全てを道連れに滅ぶ結末を良しとしないのであれば――』
 第一騎士団長、ウィルフレド・カステリオ卿こそ猟兵の望む道に至る手がかりとなるだろう、と。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年08月22日


挿絵イラスト