ごきげんよう、勇士の皆様。
この度、当家の伝手でとある地図を手に入れましたの。
なんでも、かつて浮遊大陸間での宝や物資の輸送を担っていた大型飛空艇が墜落した場所を示すものなのだとか。
もしそれが本当でしたら、そこから得られるモノは我々の街をより富ませることは間違いありませんわ。
ですので、勇あり、志ある皆様にその真偽を確かめて貰えたらと依頼を出させてもらいましたの。
我こそはと思う者があれば、是非とも依頼をお願い致しますわ!
「――と、まあ、こんな感じの依頼がですねぇ、出ているのですよぅ」
紙をヒラヒラ、兎耳をゆらりゆらり。猟兵達の前にて紙に書かれていた内容を読み上げたのは、ハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)。
それは新たに発見された世界、ブルーアルカディアのとある浮遊大陸、とある都市にて出されていた依頼。それを写し取ったものだ。
そこには依頼文だけでなく、報酬のことやらなんやらと書いてあるが、それ自体は問題ではない。
「問題があるとすればですねぇ、ここにオブリビオンが関わってくることですよぅ」
猟兵達にまで依頼の話が来るとなれば、その想像も難くはなかったことだろう。
では、どの時点においてそれが関わってくるのか、だ。
「既にぃ、この依頼を受けていらっしゃる勇士の方々がいますがぁ、その方々は目的地に辿り着くことも出来ずに撃沈されてしまいますぅ」
件の依頼に手を挙げたというのは、まだ結成して間もない五人組の飛空艇団。一旗揚げようとしたのか、はたまた、冒険に心躍らせたのか。
だが、その飛空艇団は都市を、浮遊大陸を出発して間もなく、不幸にもブルーアルカディアに蘇った帝国の一つと遭遇。ハーバニーの言う通り、目的地へと辿り着くより前に撃沈されてしまうのである。
「冒険には危険が付き物とは言いますがぁ、オブリビオンが関わってくるなら話は別。皆さんにはですねぇ、彼らの飛行艇に助っ人として乗り込みぃ、それが撃沈されるのを防ぐと共にぃ、可能であればお宝の真偽を確かめるまで守ってあげて欲しいのですよぅ」
それが今回の依頼の内容。ただし、おまけがもう一つ。
「それとですねぇ、もし、お宝の有無はさておきとしてぇ、依頼が成功すればですねぇ、帝国から得た物資やお宝があればそれもと持ち帰った皆さんはぁ、都市にとっての英雄ともなりますぅ」
つまり、歓迎のお祭りなりが開かれるであろうということ。
そうなれば武勇伝をせがまれることもあれば、宴に招かれて料理に舌鼓を打つなり、催しの舞台に誘われるなりもあるだろう。
「帰還には時間がありますのでぇ、宴に参加するのも良いかと思いますよぅ」
勿論、そこへ至るには依頼の成功が必要であるけれど、ハーバニーはそうなることを疑ってなどいない。
猟兵達の力であれば、撃沈させられる勇士を救い、その後の結果を持ち帰ることが可能であろうと信じている。
「宝の真偽。そして、皆さんの武勇伝が聞けること、楽しみにしていますよ」
それでは、いってらっしゃいませ。
虚空に翳された銀の鍵が回されれば、カチャリと音立て扉が開く。
さあ、空の世界はもうその向こう。
今、冒険の始まりを告げる第一歩が刻まれる。
ゆうそう
オープニングへ目を通して頂き、ありがとうございます。
ゆうそうと申します。
●一章
遭遇した帝国との交戦。
飛空艇に乗り込んで来ようとするため、それを迎撃するもよし、逆に乗り込んで叩くも構いません。
オブリビオンであっても名前すらない雑魚が大半ですので、バッタバッタとなぎ払ってください。
なお、勇士五人も指示があれば多少の戦力にはなります。
●二章
ボス戦です。
●三章
得た物資なり、お宝なりを都市に持ち帰った後となります。
お祭り騒ぎに歓迎ムード一色ですので、自由にお過ごしください。
また、ハーバニーも居ますので、1人での参加はちょっと……という方はお気軽にご利用ください。
今回の依頼は、以上の三章からなります。
以下、簡単な補足。
●帝国
帝国としての名称は不明。
前線に出てくるのは人間や召喚獣が主体。エンジェルの姿も後方へ僅かに見られます。
●勇士
カルロ:リーダー格の男性。飛空艇の操舵手。銃で武装しています。
ゼノ:杖を持った男性。堅物でアクシデントに弱い。回復の術を扱えます。
ラプラ:弓を持った女性。お調子者。腕前はさておき、目は良いです。
ユグ:剣と盾を持った男性。腕っぷしはいいですが、猪突猛進がち。
ナト:槍を持った女性。寡黙。仲間の穴を埋めるように動きますが、単体では非力です。
全員、人間。
ゼノのみがリベリオンウインド相当のユーベルコードを用います。
皆さんが意識しない限り、戦場の片隅で死なない程度に戦っていることでしょう。
彼らの生死は依頼の成否には関わりません。
以上となります。
それでは、皆さんの活躍、プレイングを心よりお待ちしております。
第1章 冒険
『飛空艇上の戦い』
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POW : パワー全開で大暴れする
SPD : 隙を見て敵を船外に蹴り落とす
WIZ : 魔法で敵群を惑わせる
イラスト:fossil
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
飄々と風が鳴る。
空の青を突っ切って、飛び行く艇は飛空艇。
「いやぁ~、まさか、俺らの五人以外が艇に乗ることになるとはなぁ。こいつは安全運転を心掛けねぇとだ」
「何を言っているんですか、リーダー。安全運転は常に心掛けて下さい」
「いいじゃないの、ゼノ。スリルも冒険のスパイスってヤツよ」
「しかし、ラプラ。今回は報酬の一環で最終的には船体の整備費も出るとは言え、普段からそうである訳ではないのですから……」
「硬い。硬いわねぇ~! もっと冒険を楽しみなさいよ」
「お、なんだ。何か硬いもんでもあんのか? 儂が叩き切ってやろうか?」
「……ユグ、違う」
「なんだ、違うのか。進路を邪魔する空賊の一つ、石ころの一つでもあったのかと思ったんだが」
「ははっ、すまねぇな。此処はいつもこんなんでな。……ま、こうして今回一緒になったのも何かの縁、仲間として歓迎するぜ。小さい艇じゃあるが、目的地までのんびりしててくれよ」
猟兵という助っ人を受け入れた彼らこそ、この依頼を本来なら単独でこなすことになっていた勇士達。そして、猟兵が撃沈を防ぐべき艇の持ち主だ。そのリーダー格であるカルロが操舵輪を繰りながら、猟兵達へ苦笑滲ませつつと歓迎の意を示す。
きゃいきゃい、わいわい。
緊張感がない訳ではないだろうけれど、まだ穏やかな旅路に彼らの賑やかさが響く。
そこにこれから先で起こるだろう嵐の前触れはない。いや、この静けさこそが嵐の前を示すものであったと言うべきか。
「……ん?」
それに気付いたのはラプラ。
目を細め、自らが見たものを確かめるように目を細め――。
「――敵襲!!」
警告の声と同時、ドンと艇の傍で火炎が咲いて艇が揺れた。
直撃ではない。
だが、僅かと速度が落ちて、その原因たる嵐が艇を呑み込まんと遂に姿を見せるのだ。
「選べ。自ら艇を放棄するか。それとも、その艇を棺桶とするか。好きな方を選ぶがいい」
瞬く間にと勇士達の艇に追いついたそれこそ、予知されていた襲撃。この旅路における嵐。帝国の艇群。
代表するように天使の一人が厳かにと告げる。
「な、ふざけんな! 誰が、はいそうですか。って頷くかよ!」
そして、それへ対する勇士達からの返答は決まっている。それぞれが得物を構え、抗戦の意思を示すもの。
仮に艇を放棄したところで、何もない空に身一つで放り投げられればどうなるかなど分かり切っているからこそ。
「そうか。ならば、死ぬがいい」
故に、問答自体に意味はなかったのだろう。天使はさしたる感慨もなく、感情の動きもなく、するりと後ろへ下がっていく。代わりに掛けられるのは数多の艇からの鉤縄。時間も立たず、敵が雲霞の如くと襲い掛かってくることだろう。
「すまねぇ。のんびりとした旅路にするつもりだったんだが、そうもいかなくなっちまったみたいだ」
既に銃を引き抜いていたカルロが申し訳なさそうに猟兵達へと告げる。
そう。猟兵達へと、だ。
これが猟兵達の介入なきであれば、きっと彼らは抵抗の末にここで終わりを告げられ、艇も失われていたことだろう。だが、ここには猟兵達が居るのだ。その未来を否定するためにこそ。
押し寄せ始める敵の一気呵成、雄叫びが空の世界を戦場へと変えていく。
セラフィナ・セレスティ
オブリビオンはボクたちに任せて
冒険はボクだって心躍るから
お宝を見つけて、共に喜びを分かち合おうね
勇士のみんなは飛空艇の操舵手のカルロくんを守って
彼が倒れると飛空艇が墜ちてしまう……!
攻撃よりも守りを固めることに集中してほしいな
攻撃はボクたちがするからさ
回復も忘れないでねー
スカイソードを掲げて喚ぶは白の嵐
これはキミたちオブリビオンにだけ効く氷雪の嵐
凍結による麻痺でまとめて動けなくなっちゃえ
その隙に魔導砲の用意
ふふ、この魔導砲使うの楽しみだったんだよね
『爽』くん、今だよ魔導砲発射ー!
冒険への旅路を彩る風の鳴き声は、今はもう戦火報せる雄叫びの中に。
勇士たるカルロ達も各々の得物を構え、それに呑み込まれまいと抵抗の意思を示す。
だが、そこに宿る力みは明白。強く、硬くと自らの相棒を握りしめた手は、血色を失う程のものであることが見て取れた。
彼らも腕自慢ではあっただろう。賊の一つや二つであれば返り討ちにする自信はあっただろう。それでも、帝国という存在に数多取り囲まれれば、平静でなどいられなかったのだ。
「冒険にはさ、ボクだって心躍っていたんだ」
「……え?」
「お宝を見付けて、それが本物でも偽物でも、共に喜びを分かち合うのも」
その硬さを解すかのように、青空へ宵闇の色を靡かせてセラフィナ・セレスティ(blue hour・f33925)は彼らへ穏やかに語り掛ける。
戦いの火蓋は切って落とされ、艇と艇とを繋ぐ鉤縄からは帝国の尖兵が乗り込まんとしているというのに、そのマイペースぶりは勇士達が気負いを思わずと忘れさせるほどの。
――にこり。
笑みを一つばかりと浮かべ、まるで何も心配要らないのだと言うかのように。そして、掲げるは空の色を透かし映す、青の刃。そこに秘められた力がゆるりと風を巻き起こし、そよ風に揺れる花のようにとセラフィナのワンピースをはためかせた。
戦火の気配とは程遠い光景に勇士達は目を奪われ、それに集中した意識は嘘のようにとざわめきを鎮める。
「ちょっとは気持ちが落ち着いたかな?」
「ええ、お陰様で。そうよね、お宝を見付ける楽しみはまだ味わってないんだから、こんなところで躓いてなんていられないわ!」
「儂としたことが数に気圧されちまってたなんてな。いよっし! いっちょ、やってやる――」
「ううん、みんなは操舵手のカルロくんを守って。彼が倒れると飛空艇が墜ちてしまうから、彼の守りを固めることに集中してほしいな」
「――っと、うむむ、そうかい?」
「そうだよ」
「だが、守ってばかりじゃ、それこそ数に呑み込まれちまわないか?」
守りを固めることも重要だろうけれど、攻めてくる根本の原因を断たねばどうしようもない。
そう言わんとするユグの言葉にセラフィナはとんと自らの胸を叩く。その顔に浮かべた笑みは変わらず。
「大丈夫、攻撃はボクたちがするからさ。オブリビオンは任せて」
言って、応の言葉が返るよりも早く、セラフィナはトトンと床を蹴り、手すりを乗り越え、その身を空の上へと投げ出す。
翼なきその身。末路は空の底への落下でしかない蛮行に、最も近くでそれを見ていたユグの眼がまん丸になるのをセラフィナは見ていた。
――だが、それは身投げでもなければ、投身自殺でもない。
「回復も忘れないでねー!」
思わずと手すりに駆け寄ったユグ達の眼前、ブーツから白翼を生じさせ、宙に身を躍らせるセラフィナがふわり。
啞然とする彼らの見送りを受け、ひらり手を振ってからセラフィナは一人悠々と空を往く。もう、勇士達が無茶をしてまで追い付いてくることはないだろう。
残された彼らの事は、きっと他の猟兵達が上手くやってくれるに違いない。セラフィナ自身は彼らが耐えている間に有言実行をするのみだ。
「遠慮は無用だよね」
宙に躍り出たセラフィナを狙うかのように、帝国艇の甲板から矢や銃口が向けられ、備え付けの砲塔もまた。
見られている。見られている。見られている。
感じるは敵意と害意と殺意。
青色宝石の少女を捉え、その身を食い破らんとしての。
そして、それはその目的を果たすためにと解き放たれる。
「――舞い踊れ、白の嵐」
先んじて動いたは帝国兵であったけれど、それよりもなお早くと広がったは氷雪の嵐。
それこそはセラフィナの十八番。先を取らせてなお、さらにその先を行く魔法の高速発動。
番えられた矢の放たれるより早く、銃口が火を噴くより早く、砲口が轟きを響かせるより早く、その全てを凍てつかせるのだ。
掲げていた空の剣をセラフィナが氷雪の名残と共に振り払えば、後に残るは凍り付き、混乱へと叩き落とされた帝国艇の姿。
「うんうん、混乱しているね。じゃあ、もう一つプレゼントだよ」
突如として身動きを封じられた帝国兵達に、セラフィナの妨げは行えない。だから、彼女は悠々とソレを取り出すのである。
「……ふふ、この子を使うの楽しみだったんだよね」
宙に浮かぶは青の軌跡を描き出す球体。
何であるか。と問われれば、こう答えよう。
「さあ、『爽』くん、準備はいいね? 発射ー!!」
セラフィナの高速魔法をもってしても僅かと生じた充填期間。それを置いて、吐き出されるは魔力による極大の砲撃。
――そう、『爽』くんと呼ばれたこれこそは魔導砲。夢と浪漫とが詰まった魔導砲なのである!
帝国兵達が平静であればそれへの対処も出来たであろうけれど、先んじて氷雪により身動き封じられた彼らに出来ることなどない。魔力の砲撃は狙い違わずと帝国艇をその身に呑み込んで、通り過ぎた後に残骸を空の底へと零すのみ。
「よーしよし。見事だよ、『爽』くん! でも、まだまだ的はいっぱいあるからね。どんどん撃っていこー!」
いや、帝国艇が動けたとしても、出来る事などなかったのかもしれない。砲撃がまた一つ、二つと解き放たれれば、その先にある艇は次々にと呑み込まれて、セラフィナの撃墜スコアが増えていくばかりなのだから。
空には上機嫌なセラフィナの声とそれに応える魔導砲の咆哮が響き渡っていた。
大成功
🔵🔵🔵
テイラー・フィードラ
安心せよ、これもよくある事よ。
さて、私も加勢させて頂こうか。
背について来る霊馬へと乗り込み、問い掛けん。
我が生涯の友たるフォルティよ!此度は空ぞ!見果てぬ旅路は未だ続いた!しかして敵は此処にもおるぞ!いざ翔け抜けよ!
友に幻想の翼を生やし、空中戦へと挑まん。
地を駆ける生物がどうすると?戯けた事を抜かす敵だ、己自身に翼を生やし挑んだ事等幾らでもある。
なにより、我が友は此れしきの事など容易く応える。
抜剣し敵を切り伏せよう。脚と回避はフォルティに任せ、己は攻勢と指示に集中。
敵は多し、戦艇も多し。ならばこそ敵として上等!
宙を飛ぶ敵を斬り払い殴り飛ばす。機を見、戦艇へと乗り込み友の蹄にて砕け落とさん!
シャルロット・クリスティア
冒険に心躍るのは同意ですが……こういうスリルはさっさとお引き取りいただきたいところですね。やれやれ。
閉所で密集するのはよくないでしょう。飛べる者は飛んで戦った方がよさそうです。……行きますよ、レン。
翼竜に騎乗し、遊撃に当たります。
直接飛空艇を叩く。
動力源である天使核そのものは難しくとも、そこからエネルギーを供給される『推進機』や『浮遊装置』といったパーツであれば話は別の筈。そこを直接抜きます……!
もっとも、つられて墜とされてはたまらないので、ワイヤーも切らせていただきますが。
天使は飛べるかもしれませんが、留まり木も無ければいずれ墜ちるだけでしょうよ!
「一番槍は逃したか」
「そのようですね。ですが、エースの称号を得られる程度にはまだまだ敵も残っているようです」
「そうか。では、それに乗り遅れぬよう、私も加勢させて頂こうか」
「ええ、こういうスリルはさっさとお引き取り頂きたいところですからね」
勇士達の艇へと乗り込んできた敵兵をその愛剣にてばさりと斬り捨て、テイラー・フィードラ(未だ戴冠されぬ者・f23928)。そして、その死角を補うように射抜くはシャルロット・クリスティア(弾痕・f00330)。
そこには多勢に無勢を強いられることへの気負いも無ければ、力みもない。あるのはただ、他の猟兵の手によって墜落していく艇を前にした軽口のみ。
「……あなた達も、行く?」
「無論。だが、安心せよ。これも私達にとってはよくある事よ」
「こういう経験が豊富というのも、やれやれな話なのですけれどね」
「仕方あるまい。猟兵というものは、そういう星の下にあるのだろうからな」
「それとも、そういう星の巡りにあるからこそ、猟兵なのかもしれません」
テイラーも、シャルロットも、互いに数奇なる運命を歩んでいる。
片や、国を滅ぼされ、敗残を越えて狡猾なる竜/仇を討ち滅ぼした者。
片や、村を滅ぼされ、死した果てになおと抵抗の灯火を胸に点し続ける者。
どちらも自らの過去をひけらかすことはない。だけれど、その根底に抱く運命の数奇は、言葉にせずとも互いに何かを感じさせていた。
――思わずと零れたのは苦笑か。
貴殿/あなた もなのだろうな。という想いと共に。
だが、その苦笑も数瞬後には跡形もなく。残ったのは、凪のように静かなる。
一歩、二歩――勇士達を背において、二人は帝国兵薙ぎ倒しながら艇の手すりへと近づいていく。
「……気を、つけて」
「不要な心配だ。だが、貴殿の心遣いには礼を言おう」
「ありがとうございます、ナトさん。そちらこそ、どうかご無事で」
三歩、四歩――もう、その先に道はなく、踏み出せば空の底へと落ちるのみ。
――いいや、違う。道は確かにそこへあるのだ。
「我が生涯の友たるフォルティよ! 此度は空ぞ! 見果てぬ旅路は未だ続いた! しかして敵は此処にもおるぞ!」
「……行きますよ、レン」
踏み出した五歩目。一瞬の浮遊感が二人を包み、すぐさま消え去る。代わり、二人に伝わるはその身を支える確かな感触。
それはテイラーの愛馬にして、自らを幻想へ変じさせてなおと傍にある友。
それは出会いこそ偶然であったけれど、そこから重ねてきた二年にも及ぶ月日がより絆育んだシャルロットの翼竜。
青空に翼羽ばたかせ、自らの主を支えて、その存在感を敵味方に示していた。
「行くぞ、フォルティ! 我等が空の底に落ちるしかないと侮った者達に目に物を見せてやろう!」
「これより遊撃に当たります。私達の眼から逃れられるとは思わないことです」
苦笑の後に残っていたのは凪の静けさなどではない。その内に宿した熱を解き放つべき時のため、静かに燃やしていただけに過ぎなかったのだ。そして、今こそがそれを解き放つべき時として。
――嘶きは彼方まで響き、羽ばたきはより一層と強く。
「いざ翔け抜けよ!」
「レン、思う存分飛びなさい」
青の景色は加速して、二人の視界を流れ去る。帝国の飛空艇を叩くために。
「矢弾を持ってきなさい! 空にあるのは私達だけでいい! あれを今すぐ撃ち落とすのです!」
加速、旋回。帝国の飛空艇の合間を縫うようにと駆け抜ければ、その動きにデッキの上が騒然とするを二人は見た。
――矢が飛ぶ、銃弾が跳ねる、炎の渦が熱をばら撒く。
「熱烈な歓迎ですね。キリがない」
「それだけ私達が目障りなのだろう」
「これでは遊撃というより囮ですね」
「だが、そう言いつつもしっかりと敵を、鉤縄をと撃ち抜いているではないか」
「見え見えの侵攻経路を放置していて、良い事はありません。あなたも理解して斬り捨てているのでしょう?」
「当然だ」
火砲の雨を潜りぬけながら艇と艇との間を行きかえば、勇士達と帝国との艇を繋ぐ鉤縄も嫌が応にも目に入る。
そこを渡りつつある帝国兵は格好の的に他ならず、行きがけの駄賃とばかりに二人は鉤縄ごとと斬り捨て、撃ち抜いていたのである。だからこそ、余計に敵の注目を集めてしまっているとも言えたけれど。
だが、敵兵を倒しても倒しても尽きる様子はない。まるで、艇から直接と生じているかのよう。実際にはそうではないのだろうけれど、一体、どれほどの数を搭載しているのか。
「……艇ごと叩くか」
「その方が早そうですね」
言うが早いか、テイラーが狙い定めるは眼前の一隻。
フォルティの蹄が力強くと宙を踏みしめ、流星の如くと甲板に落ちる。
「数を頼みとするならば、纏めて相手をしてやろう! この剣の錆となりたい者から掛かってくるがいい!」
着地の折に下敷きとした帝国兵を踏みつぶしながら、テイラーは猛る。
そこは敵陣のド真ん中。だと言うのに、テイラーを中心にして生じた輪は縮まらない。気圧されているのだ。数の利を得ている筈の帝国兵達が。テイラーの、戦場を支配せんとする王の威風に。
「来ないのか! であれば、こちらから行かせてもらおう!」
甲板を踏み砕く勢いでフォルティが翔ける。
まばらと槍が付き出され、剣が振るわれるけれど、腰の引けたそれに臆するテイラーではない。
踏み潰し、斬り飛ばし、殴り砕く。
振るわれる凶器事と帝国兵にそれを成しながら、テイラーの身は帝国艇の奥深くへ。
「いやはやなんとも、大暴れですね」
シャルロットが直上から見たように、帝国兵の目の数多がテイラーの動向に向いている。だが、それは逆を言えば、シャルロットが敵の目から外れることを意味する。それを証明するように、弾幕の圧が明らかにと減っていた。
自由の空。思う存分にと翼を広げ、レンがぐるりと艇の周囲を飛ぶ。まるで、その全容をシャルロットへと見せつけるかのように。
「ありがとう、レン。もう十分ですよ」
撫でれば、ガーと期待するような声。魚を寄越せというのだろうか。いや、きっとそうだろう。
変わらぬレンの食い意地に、また後で。とお預けしつつ、シャルロットは艇の情報を咀嚼する。
船首、船体、船尾。
艇というものの構造は空であれ、水上であれ、形としてそうである以上、大きく変わることはないだろう。ならば、どこに何が配置されているかも、ある程度予想が付くというもの。
アルダワで学んだ知識。これまでの経験で得てきた知識。それらを総動員し、シャルロットはソレを見抜くのだ。
「ただ、射ち貫く……それだけです!」
無数の矢弾を想像し、創造し、何物をも撃ち貫く自らの矜持を此処に。
シャルロットが無数の中から手にしたのはたった一発の銃弾。
弾倉に込め、狙い定めれば、全ての音が消えていく。極限に至った集中力が、無駄な情報を全てこそぎ落とす。
――カチリ。
その音だけが自らの耳に届けば、放たれた銃弾は吸い込まれるように狙い定めた艇の部位へと穴を穿つ。
生じたのはたった一発の銃痕。巨大な艇からすれば、蟻の穴のように小さな小さな穴にしか過ぎないそれ。だが、その一穴こそが巨大なるの崩壊を招くのだ。
撃ち抜いたのは船尾に格納されていた空を浮くための装置。
銃痕が刻まれ、僅かに遅れること数瞬。ボンと破裂の音を響かせて、帝国艇の一つが黒煙と共に空の底へと沈んでいく。
「!? 何故だ。何故、艇から黒煙が!」
「船尾の浮遊システムが破損! 高度を保てません!」
「そんなことは分かっている! 何故、そうなったかを聞いている!」
「申し訳ありません!」
突如として墜落を始めた艇の中、混乱のただ中にあるは艇の頭脳部とも言える場所。
勇士達に開戦を告げた天使とはまた別の個体。それが周囲に現状の報告を求めるが、不明の返事しかないことに苛立ちを吐き出していた。
「……そうか。あの者が成したか」
「誰だ!」
「事ここに至って誰何の声とはな」
攻められていると理解すれば、誰が刃突きつけに来たかを理解できよう。それをすら理解せずに誰何の声あげた天使に、敵陣を突き抜けてきたテイラーは憤怒を浮かべる。
「だが、最早構わん。艇と共に砕け、墜ちるがいい」
「げ、げいげ……」
「全てが遅い」
天使が迎撃の命令を出さんとした時には、既にテイラーはフォルティと共に目前。
――斬。と、天使の羽が散って、その玉の緒もまた断ち切られた。
「天使は飛べるかもしれませんが、留まり木も無ければいずれ墜ちるだけでしょう」
いや、それとも――。
「ふん。そもそも飛ばさせなどせん」
「でしょうね」
沈む艇を見守るシャルロットの視界、そこから飛び上がったテイラーの姿。
無事か。などと互いに確認するまでもない。両者が互いの姿を視界に納め合っていることこそ、なによりの。
「今回は共同撃破ということで?」
「そうだな。だが、あの分であれば、次は私だけでも十分だ」
「では、援護が必要であれば言ってください。それまでは私も私で、出来ることをしていましょう」
沈む艇。一隻を見事と墜とした二人であったが、その手応えに次は互いに一人でも十分と理解する。
「それではお先に失礼します」
「ああ。手早く終わらせるとしよう」
羽ばたきの音が二つ、別々の道へと分かれていく。これより先、二人で一隻ずつではなく、一人が一隻ずつと墜としていき、帝国艇殲滅の速度は加速していくことになるのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フィーナ・ステラガーデン
オリヴィアと参加
まいあがーれー!ブルーのアールカーディーアー!ってなもんで新世界よ!
一面空しか無いっていうのもすごい光景ね!
んで私達は防衛に回るわ!勇士な5人と一緒に乗り込んできた帝国な奴らにお帰り願うわよ!敵の船は潰すけど!!!
白兵戦は勇士の人とオリヴィアに任せるとするわ!
私は横付けしたか、上にいるかわかんないけれど乗り込んでくる奴らの船に対してマグロをガンガン打ちつけるわ!ガンガンよ!!
マグロが船の側面を突き破ったらカルロとラプラに銃でむき出しになったエンジン部分を打ち抜くように指示するわ!
見えにくくてもラプラが見て、ラプラがカルロに場所を伝える感じね!
(アレンジアドリブ大歓迎!)
オリヴィア・ローゼンタール
フィーナさん(f03500)と参加
海ばかりのグリードオーシャンも壮観でしたが、こちらもまたすごい世界ですね
海と空の違いはあれど船上戦もそれなりに経験しています
【足場習熟】【環境耐性】で揺れる船の上でも十全に戦闘可能
こちらの艇へ乗り込んできた敵を、ユグさんナトさんと共に【なぎ払う】
フィーナさんの詠唱を邪魔されないよう【拠点防衛】
このチームには砲撃手――大砲・魔法問わず――がいらっしゃらないようですね
こういった敵と戦うことも考えれば、今後雇うのも手かと
その場合、詠唱中に護るのが私たちの仕事になります、ほったらかして突っ込んで行ってはダメですよ?
敵艦へ向けて【紅炎灼滅砲】を放って弾幕牽制(属性攻撃)
一面に広がる青の世界。
勇士達の船上からも見えるそのキャンバスにポンポンと花咲かせるは、猟兵達の大暴れの証。
「うんうん、あっちもあっちで派手にやってるわね!」
「今まで景色も海ばかりなグリードオーシャンの景色と違った壮観さでしたが、この光景もある意味で壮観です」
「賑やかなものだわ!」
「賑やか……ええ、まあ、賑やかではありますね」
打ちかかってくる敵を槍術の巧みで流し、払うはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。そのまま上体の浮いた敵を船外へ突き飛ばすに、淀みも遠慮もなし。
「突き落とすなんて、ある意味でえぐいわね」
「船上に積み上げ続けるでは、我々の動きの邪魔ともなりませんから」
切った張ったが始まり、もう既に幾許かの時間が経過していた。それを示すように、倒れ伏す者達――帝国兵ばかりであるけれど――も、船上に数多。
まだ身動き取るに支障はないけれど、次々とキリなく攻め込んでくる相手を思えば、オリヴィアの言わんとすることもフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)にも理解が出来る。
それになにより、攻めかかる者達はオブリビオン。空の底へ墜ちたところで、骸の海へと戻るだけであればこそ。これが普通の人間相手であれば、また違った対応をするのであろうけれど。だから――。
「ま、仕方がないわよね!」
あっさりと納得を示す。そして、杖を指揮棒の如くと振るえば、巻き起こす火炎は船上を舐める。それは質量さえもった炎の壁。未だ迫りくる者達を、床に転がる死に体の者達を、船外へと押しやり、吹き飛ばしていくのだ。
――僅かな空白が生まれた。
「アンタ達は無事……そうね。なによりだわ!」
「ユグさんも、ナトさんも、よく付いてきてくれていますね。ありがとうございます」
その空白の時間を用いてフィーナとオリヴィアは改めてと周囲の状況をぐるり。
そこには彼女らと共に轡を並べていた――正確には彼女らが合わせていたと言うべきか――勇士五人の姿。未だ余力あるフィーナとオリヴィアに比べ、肩で息するようにしているのは単純に力量の差だろう。
「はは、もう何発撃ったやら。赤字にならねぇといいけどな!」
「私も何本射ったかなんて覚えてないわ。でも、後ろに居た私達より前の二人が大変そうね」
「儂、付いていくで、やっと」
「……ぜぇ、ぜぇ」
「フィーナさんが時間を稼いでくれました。その間に呼吸を整えて下さい」
「ゼノって言ったかしら? ほら、今のうちに回復してあげて頂戴!」
「え、あ、はいっ」
フィーナとオリヴィアとでフォローはするけれど、それでも全てを受け止め切れる訳ではない。僅かとはいえ、勇士達の方にも敵は流れていた。
その結果として、肩で息する彼ら――特に、前線を支えるユグとナト――の身には細かな傷も幾つかと。
傷は痛みを引き起こし、痛みは集中の妨げとなる。放っておいて一利もない。だからこそ、唯一と回復の術を持つゼノの背中を喝入れるようにフィーナは叩き、それを促すのだ。
慌ててゼノが癒しの風を吹きわたらせれば、勇士達誰もの顔に生気が戻る。
「上出来! ちゃんと動けるじゃない」
「戦いの最中、癒しの術があるかないかでは随分と違いますからね。助かります」
「っ、そうですね。しっかり、しないと」
「肩に力を入れすぎるのも良くないから、適度によ?」
「その点においてはフィーナさんを見習うといいかもしれませんね」
「あら、私が適当だって言いたいのかしら!?」
「いえいえ、そこまでは言いませんよ。破天荒な時があるかもしれないとは思いますが」
「言ってくれるようになったわね」
「中々に長く、互いを観てきていますからね」
交わし合う軽口は、勇士達の気持ちを解す為にか。しかし、その気負わぬ姿は間違いなくと勇士達に余裕を取り戻させる。
「いよっし! 儂はもういけるぞ!}
「こんな修羅場、さっさとおさらばして、お宝を見付けに行かないとね!」
「頑張る」
「回復は、任せて下さい」
「おいおい、力み過ぎんなって今言われたろ?」
各々が得物を握る手に力が蘇る。疲労の全てが取れた訳ではないだろうけれど、瞳に力が宿っていた。
そんな彼ら彼女らの向こうでは、再びと鉤縄を渡って迫りくる帝国兵達がぞろりぞろり。
「艇を落とされて、多少は数も減ってるみたいだけれど、キリがないわね!」
「防衛に回るだけでは後手ということですか。カルロさん、この艇に砲撃装備は?」
「大砲が何門かあるが、見ての通りにこの人員だ。乗り込まれちまったら扱う余裕もありゃしない」
「そうですか。今後のことを思えば、そういう方を雇うのも手かと」
「考えとくよ!」
「ま、安心なさい。今回は私がぶち抜いてあげるから!」
「よろしくお願いします、フィーナさん。私も余力があれば、合わせますので」
「まっかせなさい! そっちはそっちで頼むわよ!」
「心得ました。では、ユグさん、ナトさん、もうひと頑張りです!」
「よっしゃ! 兵隊だか何だか知らんが、ぶちのめしてやろう!」
「……むん!」
帝国兵の雄叫びが近付いてくる。だけれど、それに負けぬ気焔がここに。
「会敵! 一気呵成に吹き飛ばしましょう!」
駆け来る敵へとぶつかるように、オリヴィアもまた船上を駆ける。空の上、気流の揺れなど物ともせずに。
踏み込み、その剛腕でオリヴィアが槍を薙げば防御と構えた帝国兵の得物ごと砕き、その身を宙に舞わさせる。
敵がその損害を無視してなおとオリヴィアの懐に踏み込めば、まるで流水のようにしなやかと体躯は踊り、返す刃が絡みつくように反撃の目すらをも穿つ。
――柔よく剛を制す、剛よく柔を断つ。
柔剛一体の体現がそこにはあった。
「おぉ、すごいものだ! 儂も――」
「いえ、これ以上に前へ出てはいけません。詠唱中の仲間を護ることも私達の仕事。ほったらかして突っ込んで行ってはダメですよ?」
「――ぬぅ!」
「悪癖。治すべき」
「ナトまでか!」
「ユグさんは、まず自らの役割をしっかりと認識することからですね」
戦いであるというのに、まるで教導のよう。
そんな思いに、オリヴィアの顔にも我知らずと微笑が浮かぶ。そして、まだ殻の付いたヒヨコをこのようなところで失わせる訳にもいかぬと。
握る聖槍に力が籠もり、黄金の輝きが描く軌跡はより一層の鋭さを増すのである。
「――待たせたわね!」
そして、その時は訪れるのだ。
オリヴィア達が作り出した時間たっぷりを使い、紡ぐはフィーナの特製魔法。
「出番よ! こいつでも喰らいなさい!」
宙に描くは魔法陣。艇の大きさ比肩しうる大きさのそれは、そこから何が呼び出されるのかと敵味方に固唾を飲ませる。
――そして、『ソレ』は魔法陣の彼方より現れ、悠々と空を往く姿を見せつけるのだ。
「グロロォ」
オドロオドロしき叫びは、その声を聞く者の心を蝕む。滑らかなる銀の体躯は、視た者の心を自失させる。
敵味方――フィーナとオリヴィアを除いて――を問わず、誰もがその姿に目を奪われて戦いの手を止めていた。
「な、なあ、俺達は夢でも見てんのか?」
「い、いえ、誰もが同じモノ見ている以上、これは夢ではない筈……です。たぶん」
「あっはっはっ、すっごいわねぇ! あんなのって呼び出せるものなのね! 世界は広いわ!」
その体躯の流線形。水中を、空中すらをも高速で泳ぐに適したその姿は、マグロの姿に酷似した元邪神であったのだ。
「ふっふーん! すごいでしょう? でも、すごいのは見てくれだけじゃないわ! さあ、ガンガンいきなさい! ガンガンよ、ガンガン!」
「マグロォ!」
あ、やっぱりマグロなんだ。なんて、思いが浮かんだのは誰のものであったか。
だが、その思考を掻き消すかのように、銀の体躯が流星の如くと帝国艇へと一直線。激しい激突音を響かせて、船体を軋ませる音が響く。
一度、二度、三度……激突を繰り返す音が響いて、ようようと誰もが自らを思い出す。
「な、なんだかよく分からんが迎撃! あんなものに落とされたでは、我らが帝国の名に傷がつく! なんとしてでも打ち落とせ!」
今更のように、帝国艇からマグロへの抵抗の音が響き始めるが――。
「その思いも理解できぬではありませんが、そうはさせません!」
――弾幕を掻き消すかのように奔るは極大の火線。
太陽の迸りにも似たそれが、マグロへと放たれた数多の砲撃を、魔法を、呑み込んで到達させはしない。
誰が成したのか。決まっている。
「オリヴィア、ありがと!」
「いえ、お安い御用です。さて、いいですか? こういうことも私達前衛の役目であり――」
「すっかり指導役ねぇ。……ま、いいわ! さあ、邪魔な装甲なんて、ぶち抜きいてやんなさい!」
トドメの一撃とばかり、フィーナはマグロへと送り込む魔力を一段と上げ、その加速を手助けする。そして、それを受けたマグロの吶喊は――。
「横っ腹が見え見えね! ラプラ! 重要そうな機関は見えるかしら!?」
見事と帝国艇の装甲を引き剥がし、その奥に隠されていた様々なモノを白日の下に。
「見える見える。見え過ぎて困るわね! 浮遊装置に推進装置、艇の心臓までまるまるよ!」
「なら、その中で重要そうなところにありったけを叩きこんでやりなさい! でっかい花火を打ち上げんのよ! カルロも!」
「ああ、破天荒って意味が分かった気がしたぜ」
「口だけじゃなくて、手も動かす!」
「りょーかい!」
銃口が、弓の鏃が、それぞれに狙いを定めて解き放たれる。
装甲を剥がされ、最早遮るものなき空であれば、その艇にそれらを防ぐ術はない。
矢が帝国艇の推進装置に幾本も突き刺さり、銃弾が船の心臓を幾度も抉る。
――盛大な花火が、青空にまた一つと花を咲かせた瞬間であった。
「よっし、この調子でまだまだいくわよ!」
「片方がだけではなく、互いが互いの位置をしっかりと把握して立ち回るのです。さあ、まだまだ実戦は続きますよ!」
フィーナとオリヴィアの快進撃は、まだまだ止まることを知らない。
さて、彼女らが止まるまでにあと幾つの艇が墜ち、帝国兵が空を舞うことになるのであろうか。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
桐生・零那
いつき(f04568)と参加
新しく見つかった世界から、さっそくの依頼か。
飛空艇とやらを用いた空中戦……新しい戦場を確認しておくのも悪くない、か。
待ちの戦いは苦手なんでな。こちらから攻めさせてもらうとしよう。
なに、足場はそれなりにあるし……いざという時は頼っていいのだろう、いつき?
こちらの飛空艇を強く【踏みつけ】、大きく【ジャンプ】。敵飛空艇へと乗り込んでいく。
近くの敵を携える二刀で【切断】。遠くの敵や、空中から仕掛けてくる敵もいるだろう。そういった輩には、
≪零ノ太刀(ヌカズノヤイバ)≫
得物が刀だけだと思ったか?残念だったな。私に斬られたくなければ、視界に入らないことだ。
ふ、まぁ今更遅いが。
雨宮・いつき
零那さん(f30545)と
悠々と空を飛ぶ船に、まだ見ぬお宝…心躍らせてくれますね
…なんて、ふふ。勿論浮かれてばかりではありません
先手必勝、早速仕掛けていきましょう
…ええ、当然。零那さんの力、憂いなく存分に発揮して下さい
白虎に騎乗して流体金属で足場を作り、彼女の後に続きます
死角から零那さんに仕掛けようとする敵を雷の【属性攻撃】で足止めしたり、遠間から放たれた飛び道具を【結界術】で防いだりと援護しましょう
落ちそうになっても、僕が拾い上げてあげますからね!
今の術、視界に入ってさえすれば良いんですね?
ならばお任せあれ
鏡のように磨き上げた流体金属を操って、周辺の敵の姿が全て零那さんの前に映るようにします
「新しく見つかった世界から、さっそくの依頼か。宝探しとはどんなものかと思っていたが」
「そうですね。悠々と空を飛ぶ船に、まだ見ぬお宝。冒険は心を躍らせてくれますね」
「思ったより、性に合っているかもしれん」
「……ただ、あの、大変伝えにくいのですが、これは冒険ではあるかもしれもしれませんが、宝探しとは少し趣が異なりますね」
「……そうか。やはり、そうだったか」
聖なる哉と鍛え上げられた霊刀。血と怨みで鍛え上げられた小太刀。その二刀でもって、桐生・零那(魔を以て魔を祓う者・f30545)は迫りくる敵を屠るばかり。
道理で、零那にとって性にも合おうというもの。これが宝探しではなく、オブリビオン殲滅のための戦いであるというのなら。
潜入任務の適性をあげるため、常識を知るためにと世界へと歩み出た彼女であったけれど、まだまだ得るべき知見は多いようだ。
しかし、落胆を示すかのような言葉とは裏腹、零那の表情にはその色はない。いや、彼女を良く知る者が見たのなら、もしかしたらそこに僅かでも思っていたものと違うことへ残念がるような感情の色も見て取れたのかもしれないが。
「――だが、まあ、飛空艇とやらを用いた空中戦……新しい戦場を確認しておけると思えば悪くもない、か」
「そうですね、浮かれてばかりもいられません。これもまた新たなる糧としていきましょう」
その僅かな色――どんな想いを滲ませていたかは二人のみが知る所であるが――を汲み取れる友人、雨宮・いつき(憶の守り人・f04568)は、零那がその思考を切り替えたことを理解する。
彼の身は既に呼び出していた白虎の背の上。会話の最中も、磁力と流体金属とを繰るかの霊獣の力にて帝国兵の武器を無力化し、空の底へと送り出し続ける。
「だが、こうも攻め込まれるばかりというのは、中々に焦れるな」
「侵入経路を落としても、落としても、懲りることもなく次から次へですからね」
「ああ。だから、私もそろそろ皆に倣おうかと思う」
「こちらから仕掛けますか?」
「足場はそれなりにあるようだしな。攻めさせてもらうとしよう。それに――」
「それに?」
「――いざという時は頼っていいのだろう、いつき?」
「……ええ、当然。零那さんの力、憂いなく存分に発揮して下さい」
零那はいつきの援護を疑ってはいない。いつきは零那の要請に応えぬつもりなどない。
交わし合う視線。そこには確かなる友情と信頼の絆が宿っていた。
「それでは、一足先に行ってくる。ゆっくりと追い付いて来るといい」
「はは、そういう訳にもいきませんよ。すぐに追いつきます」
言うが早いか、零那は自らの足場――艇の甲板――を踏みしめて、その身躍らせるは空の中へと。
翼なき身であるというのに、その身は高く高くと舞い上がる。そして、一度振り切った重力が再びと零那の身を絡めとり、自由落下へと導く。さて、着地はどこへ。そんなもの決まっている。
――着地の先は敵の飛空艇の真っ只中。
着地の衝撃を高所から飛び降りる猫の如くといなし、その勢いすらも利用して――。
「やあやあ、我こそは……と、名乗りの一つでもあげるべきだったか?」
――既に二刀は振るわれていた。
ころり転がり、零那は流れるように立ち上がる。その背後には、立ち上がる零那の代わりにと床に寝そべる帝国兵の姿。
じわりと、倒れ伏す者達から広がるは赤の水溜まり。
それはもう彼らが二度と動かぬことを言外に伝えるもの。
「ひの、ふの、みの……うん、数え切れないぐらいいるな。道理で斬っても斬っても尽きない訳だ」
だが、その分、斬り応えもあろう。斬れば斬る程に、神の救済がこの世界に齎されるのだから。
獲物を前にしての舌なめずり――は、しない。そんなことをする暇があれば、ほら、もう身体は無意識にでも動いているのだから。
「取り囲め! 取り囲んでしまえば、如何な勇士と言えども捌き切れない筈!」
「ああ、そうだな。その通りだ。私の手はどうしたって二本しかない。だがな――」
「はいはい、先に行くのはいいのですけれどね! 敵陣のド真ん中というのはどうかと思いますよ!」
「――乗り込んだのが私だけとは言った覚えはない」
帝国兵が築き上げた零那への包囲網。それが縮まらんとした瞬間、その一角が雷撃と共に弾け飛ぶ。そこから姿見せたのは、白虎に騎乗するいつきの姿。
急いで駆けてきたのだろう。風の影響か、いつきの艶やかな黒髪は僅かに乱れていた。
「新手」
「ですよ!」
白虎から解き放たれた流体金属が、その質量でもって周囲を跳びはね、その軌道上にある帝国兵の包囲網を撥ね飛ばしていく。
そして、零那もまた、足並み乱された包囲網を食い破るなど造作もないこととばかり、その二刀の間合いに入った者から斬り飛ばしていた。
「ありがとう。やはり、頼りになるな」
「いえ、援護すると言いましたから。ええ、言いましたけどね!」
「勿論、信じていたとも」
「先にも言いましたが、敵陣のド真ん中はどうかと」
「そこが一番奇襲をかけるに効果的そうだったものだからな。それに、いつきなら例えそんな場所であっても間に合うだろう? 実際、間に合っているから、私の見立ては間違いなかった」
いつきが駆けつけるは当然のことと信じて疑わぬ声音が、そこにはあった。
「~っ! ……もう、仕方ありませんね」
そうまで言い切られては、いつきとしてもそれ以上を言及など出来よう筈もない。ひとまずと矛を収め、改めてと現実/戦闘に向き合う他なかったのである。
そして、帝国兵達の不幸はここから始まる。
ただでさえ、零那一人でも圧倒的な武力の差があるというのに、その背中を護るようにといつきがあれば、それはもう鬼に金棒でしかない。
包囲網を築こうにも輪は縮められず、死角を突こうにも補い合う二人に死角はなし。ならば――。
「矢を、魔法を放て! 多少、味方を巻き込んでも構いはしない!」
近づかず、周囲から弾の雨を降らせればとするは当然。
近づいて来ないならばと逆に歩み寄って斬り進む零那を奥に通さじと耐え、いつきの雷撃に身を焼かれながらも射手を庇う。
その甲斐あって、帝国兵達はその準備を整えるにと至った。
――これで、多少でも痛手を与えられれば。
僅かな期待が帝国兵達の胸に芽生える。
「――え、あ?」
ズルリ。
崩れ落ちるは、魔力の迸りをその手に宿していた帝国兵。
本来なら視えぬ筈の自らの下半身を下から見上げ、その意識は暴走した自らの魔力の迸りに呑み込まれて消えた。
何が。何が。何が。
誰も倒れ伏した者に触れてなどいない。零那も勿論のこと、いつきもだ。だというのに、何故、損害が。
暴走した魔力の余波に幾人かも倒れ、混乱ばかりが場を支配する。
ただ、この場において混乱をしていないのは――。
「得物が刀だけだと思ったか? 残念だったな」
「やはり、零那さんの仕業でしたか」
――零那といつきの二人ばかり。
そう。それこそは零那の携える三本目の刃――零ノ太刀/ヌカズノヤイバ。斬るという殺意の視線を刃と変えて、その視界にあるモノを断つ刃。
そうと知っていなければ、突如として牙を剥くその刃に対応するは困難。そして、帝国兵達のように混乱を起こすは必定。
抵抗が乱れ、また深く、帝国兵達の壁が零那といつきに抉られる。
「今の術、絡繰りは視界に納めることと思いますが、視界に入ってさえすれば良いのですか?」
「そうだな。ガラス越しでも出来るんだ。どんな形であれ、視界に入っていれば出来ると言える」
「ならば、お任せあれ」
「いつき、何を……っと、これは鏡? そうか」
「ええ、磨き上げた流体金属であれば、鏡の如くと周辺の敵全てを零那さんの前に映し出すも可能です」
「ふっ、いつきも随分と凶悪なことを」
「いつまでも時間を掛けてはいられませんからね」
「だが、いいだろう。その策に乗らせてもらう」
混乱の最中、それへ追討ちを掛けるように広がる流体金属。
如何なる攻撃かと身構える者もあれば、僅かでも逃げようと試みる者もある。
だが、全てが遅きに失した。
「――散りなさい」
視るは一瞥。されど、そこから巻き起こされるは無数の刃による饗宴。
人間も、召喚獣も、天使も、その場にある帝国兵の誰も彼もを差別することなく、零那の太刀/視線が切り裂いたのである。
混乱の喧騒が、一瞬にして静寂へと塗り替えられる。
「ひとまず、甲板は制圧完了ですね。あとは内部も制圧すれば、この艇の無力化は出来るでしょう」
「そうか。まだ中に残っているのか。やれやれ、後手に回るよりはマシだが、虱潰しも中々に骨が折れるな」
遠くに他の猟兵達の交戦の音を聞きながら、二人は船の内部へと足を運んでいく。二人の乗り込んだ艇が完全なる沈黙に口噤むまで、あともう少し。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
祝聖嬢・ティファーナ
勇士5人に「サポートも攻撃も支援や回復は手伝うから頑張ろうね♪」と言って『クリスタライズ』で姿を隠して『フェアリーランド』の壺の中から風精霊,聖霊,月霊,戦乙女,天使,英霊を呼び出して“七色こんぺいとう”を配り『エレメンタル・ピクシィーズ』で属性攻撃をして『神罰の聖矢』で聖攻撃をします☆
猟兵や勇士に『祝聖嬢なる光輝精』で怪我を治し『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒します♪
機会を見て『月世界の英霊』で敵の攻撃を空間飛翔して避けて、敵のUCを『月霊覚醒』で封印/弱体化させつつ『精聖月天飛翔』でWIZを強化して『叡智富める精霊』+『神聖天罰刺突』で苛烈な猛攻を仕掛けます☆ミ
敵味方、どちらの艇上でも激戦は続く。
己の艇を墜とされぬように。しかして、相手方の艇は墜とさんとして。
抱く思いは皮肉にも同じ。
だが、生き残るのはどちらか片方でしかない。故に、猟兵へ率いられた勇士達もまた必死であった。
「ったく! 次から次へと、底なしってかぁ!?」
「猟兵の人達のお蔭で負担は少なくて済んでるけれど、それでも私達の矢弾が先に尽きないといいけどね!」
「その前に、体力がもつかどうかもあるかねぇ!」
剣戟の音。砲撃の轟音。沈みゆく帝国艇達の悲鳴。
様々な音が奏で合う戦場。その中で自らも掻き消されぬようにと声張り上げながら、勇士達もまた力を揮う。
しかし、生者であれば致し方のない事であるが、力を揮えば揮う程に、消耗していくモノがあるのは当然のこと。
ふぅふぅと僅かな隙間に息整えながら、彼らもまた奮戦していた。
――その時である。
「……歌?」
「なんだ。なんだってこんな時にそんなもんが……」
「まだ何かが起こるというのですか!?」
「いや、違う。これは……」
がなり合う戦場の声。その最中と響いたは澄んだ歌声。
「歌唱う、精霊/聖霊よ♪ 癒し、治し、生命の灯火を再び与えたまえ……☆」
清水のように透明な、春の日差しのように暖かなそれは、耳にした者の心を賦活する。傷が、疲労が、癒えていく。
「皆、無事かな☆」
「え、ふぇ、ふぇありー?」
「そう♪ 祝福と聖音の花と実の音と共に生まれたフェアリィだよ☆」
ふわりと空に浮かんだ小さき姿。ぶいっとサインを二つ作り、微笑み浮かべるは祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)。戦場響いた歌声は、彼女のそれであったのだ。
「キミ達、皆お疲れみたいだね。サポートも攻撃も、支援や回復だって手伝うから、ちょっと休んでて♪」
あ、これ、休んでる間に食べてみてね。甘いから元気出るよ。なんて、配り回るは七色の金平糖。
勇士達も思わず受け取ったけれど、ティファーナと掌の金平糖とを行ったり来たり。
困惑か。それとも、少しの間でも任せて大丈夫なのか。という心配だろうか。
「大丈夫だよ☆ キミ達が休んでいる間は、ボク達が頑張るから♪」
ふわり、ふわり、ふわり。
いつの間にやら、ティファーナの周囲を取り巻く色とりどり。
それは風の精霊であり、聖霊であり、月霊であり、戦乙女であり、天使であり、英霊である者達。
他の猟兵達が戦う間にティファーナがフェアリーランドの中で彼らを招き、この時のためにと準備していたのだ。
「じゃあ、皆、手筈通りにね!」
返事の声はない。だけれど、確かに応の意思がティファーナに届き、数多の精霊達が戦場支えんと飛び交っていく。
思わずと力抜け、船上に腰落したのは誰であったか。
「すまんな。ちょっとだけ、休ませてもらおう」
「うんうん♪ 無理は禁物だからね☆」
「あ、これ、本当に美味しい……」
一人崩れ落ちれば、二人、三人と続くは必然。勇士達も、ギリギリであったのだ。
そして、くぅとなったお腹に金平糖を口にしてみれば、柔らかな甘さが口に広がり、身心に溶け広がっていく。
それを見守って、ティファーナは意識を勇士達から戦場へと切り替える。
「それじゃあ、精霊、聖霊、英霊、月霊よ、叡智と膂力を示せ!☆ 今を懸命に生きるヒトをいじめる者達に、神罰なる天罰の刺突を!☆彡」
彼らがまた武器を持つまでの間、そこには何人たりとも踏みこませはしない。
数多の精霊達が声なき声を挙げ、帝国兵達へ雲霞の如くと手に手に神聖なる槍や鉾、弓矢をもって攻め込んでいく。だが、それだけではない。突き刺さったそれらを基点として、いっそ苛烈とも言い表せるほどの光の奔流が帝国兵を呑み込んでいくのだ。
「さあさ、まだまだいっくよ~!☆」
ティファーナの指差す先に降り注ぐは天罰の矢。
着弾し、着弾し、着弾し、その衝撃でもって帝国兵達を薙ぎ払っていく。
それがあちらこちらで巻き起こるのだから、攻めかかる帝国兵達にとっては堪ったものではなかっただろう。その攻めかかる勢いが弱まるを見せるは、当然の帰結であると言えた。
「ふふ~♪ これで皆もしっかり休めるね☆」
次々と光が広がる中、上機嫌なティファーナの鼻歌――敵にとっては不吉を示し、味方にとっては吉兆を示すそれが響き渡っていた。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
勇士には敬語で話す
どちらも選ばない、お前達を乗り越えて先に進ませてもらう
冒険に危険は付き物でしょう、お気遣いなく。俺は戦闘が本分なので任せてください
SPDで判定
まずは【挑発】で敵を【おびき寄せ】艇の縁まで誘導
そこで銀腕を【武器改造】で槌の形状にし、敵の攻撃を【見切り】で回避したり風の【結界術】や【受け流し】で防ぐ
攻撃後の隙を狙って敵の足を攻撃し【体勢を崩】させた後【怪力】【吹き飛ばし】を使い艇外へ落とす【地形の利用】
飛べる敵なら【怪力】【鎧無視攻撃】で攻撃し倒す
いざとなれば孔雀輪で【空中浮遊】【空中機動】を使って【空中戦】を行うし、【救助活動】もする
アリス・ナゴ
*アドリブ、連携など歓迎なのです*
ミミミ…お空の上は綺麗ですけど怖いのですね…。
【CODE*1】を使ってぬいぐるみ型のからくり人形を10個複製して操るのです。
バディペットのイライザちゃんと連携して敵さんがわたし達のお舟に乗り込んでくる場所を把握して、
わたし達のお舟に敵さん達が入ってこないように押し返すのです!
敵さんに近づかれてしまったら、えっと、えっと…ミミミ…大きなハサミさんでチョッキンですっ。
帝国の天使は勇士達に船の放棄か。はたまた、それを棺桶とするかの選択肢を迫っていた。
だが、勇士達の返事はそれに対する否定の意思。
多くの猟兵達がその意思を肯定するように彼らの背中を押し、また、刃の代わりとなって前面に立っている。
そして、この戦場に立つルイス・グリッド(生者の盾・f26203)もまた、勇士達の意思を後押しすべくと迫りくる敵へ立ち塞がるのだ。
「どちらも選ぶ必要はない。三つ目の選択肢があることを教えてやろう」
構えた右腕の銀は、既にその形を腕から槌へと変じている。既に幾度かと奮戦したのであろう、その銀色に暗赤色の沁みを僅かと付着させて。
そんな彼がどこに陣取っているかと言えば、勇士達の傍――ではない。敵が乗り込みくる最前線にして、空/死と隣り合わせな船の縁。
「お、おい。あんまり無茶すんじゃねぇぜ? 俺達の言えたことじゃねぇが、もう少しこっちによって息を入れたらどうだ!?」
「お気遣いなく。俺は戦闘が本分なので、お任せください」
「俺らには計り知れねぇもんを持ってるってのは他の人達からも分かるが、あぶねぇと思ったら、すぐ引くんだぜ!」
「ええ、ありがとうございます。その時はすぐに」
だが、その時は来ないだろうというのは、誰よりもルイスが知っていた。声掛けたカルロもまた、薄々と。
――不退転。
友に託されたメガリスがあればこそ、ルイスはここにあれるのだ。ならば、それに恥じぬと彼は退かない。新たなる右腕は守り、差し伸べるためにあるのだから。
ルイスに、他の猟兵にと外された鉤縄がまた縁に掛かり、揺れ、新たなる敵の攻勢を報せる。
それが到着するより早く、ルイスもまた鉤縄を外さんと試みていた。だが、帝国兵達もそれを予期し、せめてそれを妨げんと矢弾惜しまずと放り込んでくるのだ。
直撃を貰うような下手は打たないが、数が多ければそれを捌くに手を取られ、流石のルイスと云えどそこまで手が回らなかった。
――そう、今迄は。
「みんな~、出番なのです!」
響いた声は物陰から。応じて物陰から飛び出てきたは、ウェルシュコーギーと10体のぬいぐるみ達。
ぬいぐるみ達は手に手に大きなはさみをもって、ジョッキンジョッキンと空を切り、音を奏でる。
新たなる敵なのか。いいや、それは違う。敵というには、その集団はあまりに敵意がない。そう、それこそは――。
「ひゃあ、流れ弾なのです! ミミミ……お空の上は綺麗ですけど、怖いのですね……」
「……大丈夫か?」
「ミミミミ!? だ、大丈夫なのですっ! でも、ありがとうなのです!」
物陰のすぐ傍、トンと突き立った矢の物音に跳びはね、転がり出てきたはアリス・ナゴ(アリスを探さないで・f02303)。彼女こそ、コーギーとぬいぐるみ達の主であったのだ。
だが、見た目通りの儚き少女は、ともすれば勇士達よりもか弱い可能性がある。思わずとルイスもその眼前にて立ち塞がり、それ以上の流れ弾が来ないように自らをアリスの盾へと。
果たして、そんな彼女がどうしてこのような鉄火場に居るのかとも言えば、それこそぬいぐるみ達に理由があった。
「ミ、ミミ、敵さんが来てしまう前にイライザちゃん達、わたしたちのお舟に敵さんが入ってこないようにお願いするのです!」
――バウワウ、シャキン!
改めてのお願いに、応えて進むコーギー軍団。
そう。彼らの役割こそは帝国兵が進行してくる鉤縄の除去。ぬいぐるみの身体であるところのからくり人形達であれば、多少と矢が突き刺さろうと痛痒感じさせずにその役割を果たせるからこそ。
ゆらゆら揺れていた鉤縄がジョッキン! ゆらゆら揺れた鉤縄をもう一つ、ジョッキン! 更にとジョッキン! まだまだジョッキン!
哀れ、その向こうで勇士と猟兵達の艇へ乗り込まんとしていた帝国兵達が、鋏の音奏でられる度にと空の底。
アリスの手によって動く十のぬいぐるみ達の大躍進。その時、間違いなく彼女の活躍で敵の進行が一時停止させられていた。
「見事な手際だな」
「あなたが前に立っていて下さったから、落ち着いて出来たのです」
「そうか。少しでも役に立ったなら何よりだ」
「少しどころではないのですよ!」
仮にアリス一人であったら、飛来する矢弾におっかなびっくり。役割を果たせぬではないだろうけれど、それでも、帝国兵の進行を大きく妨げるまでとはいかなかったことだろう。ルイスがそこに居たからこそ、というのもまた大きな一因であったのだ。
このまま順調であれば、帝国兵からの脅威を脱せる可能性もそこにはあった。だけれど――。
「なるほど。渡れないとなれば、飛んでくるか。ある意味で道理だな」
「ミミミ!? 危ないのです!?」
彼方より飛来するは、荒ぶる風の刃。
ルイスの銀腕が怪力と共に振るわれれば、不可視のそれとぶつかり、風の刃を吹き抜けるだけのそれへと砕いた。
見上げれば、掲げた掌を二人に向ける天使と召喚獣の姿。翼持つ者達だけで構成されたそれは、進まぬ制圧に焦れ、自らと打って出てきた帝国側の尖兵なのだろう。
「俺は上がるが、ここはもう任せても大丈夫か?」
「ミミミ……だ、大丈夫ではないかもですけれど、大丈夫なのですっ!」
「どっちだ……いや、そうだな。その意気にここを託そう」
「託されましたです! いざとなれば、えっと、えっと……ミミミ……大きなハサミさんで近付いてきた敵さんもチョッキンですっ」
「ああ、頼んだ」
ルイスの声へ押されるように、怖くて震えそうになる足をアリスは叱咤して立ち上がる。そして、彼女は物陰へと転ぶこともなく一目散。
逃げたのか? いいや、違う。
例え、ぽんこつの中身だったとしても、アリスにはアリスの意地がある。少しでも、ルイスの邪魔とならないように。少しでも、ぬいぐるみ達を動かし続けるために。彼女は彼女なりの最善を選んだのだ。
「なら、俺も俺で役割を果たそう」
アリスがアリスの役割を果たさんとするのであれば、ルイスもまた空からの脅威を退けんとして。
二度目の敵意が空で渦巻くがルイスには見て取れた。向かう先はルイスでなく、物陰を動き回るアリス。
――だが、それはもうさせない。
風を繰るは何も帝国兵だけの十八番ではない。ルイスもまた孔雀輪の力を繰り、その身を空へと舞い上げる。
まさか、翼なき身が空へと昇るとは思っていなかったのだろう。
天使たちの目が一瞬と丸くなり、すぐさまに敵意に染まる。力の矛先が、明らかにルイスへと変えられていた。
「翼なき者が空に上がるなど、あるまじきと知れ!」
「お前達の考えなど知らん。思想を語りたいのであれば、机の上でやっていたらいい」
そんなものを押し付けるなと。放たれる風を先刻の焼き直しとばかりに吹き散らし、天使たちの言葉をも断つ。
一つ、二つ、三つ――押し寄せる脅威を物ともせず、その腕吹き散らしながら、体捌きで躱しながら、ルイスは空を翔ける。
眼下に広がる勇士の艇を見れば、やはり、手が足らなくなりつつあるのだろう。遂にと再び乗り込み始めた帝国兵が、アリスへと向かいつつある姿を見た。
――フォローにいくべきか。いや……。
ルイスが思わずとその身体の向きを変えかけた瞬間、眼下では慌てふためきながらも大きなハサミで有言実行するアリスの姿。
帝国兵が油断したか。それとも、あれでアリスが案外に強かであったかは分からない。だけれど、少なくともすぐにどうこうなる様子はなかった。
ならば――。
「一刻も早く、お前達を討つ」
「な、動きが急に!?」
軌道を変えて、駆動を変えて、加速したルイスの身が瞬く間と天使達との距離を埋める。
「お前達を乗り越えて、先に進ませてもらう」
踏み込み、手の届く間合いはもうルイスの領域。
銀腕が閃いたならば、そこに残されるオブリビオンの命などありはしない。
天使の、召喚獣の羽が舞い散って、その命の終わりに彩を添えていた。
艇上では引き続きとアリスが敵の侵入経路を減らさんと奮闘を続けている、
空の脅威が、勇士と猟兵達の艇にとっての脅威が、また一つ、また一つと確かに減っていく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シキ・ジルモント
これが飛空艇か、なかなか快適な船旅だ
海を進む船とはまた違った趣だな
…しかし、どうやらゆっくり旅を楽しんでいる場合ではなくなってしまったようだ
勇士の中で、特にゼノの様子を気にしておこう
アクシデントで慌てる様子なら、落ち着くように声をかけてみる
回復の術が使える者が冷静に状況を判断できなければ、仲間の壊滅につながる可能性もある
ゼノの近くで行動、敵の接近を警戒し、銃の射程を利用して接近される前に撃ち落としたい
戦場は遮る物の無い空だ、視界も良いし音もよく聞こえる、索敵には困らない
周囲に敵が集まってきたらユーベルコードを発動、範囲攻撃で対処する
敵は近付けさせない、戦況把握と支援に徹しろとゼノには伝えておく
艇は艇でも、空の旅路は海のそれとはまた違った味わい。ただし――。
「こんな状況でなければもう少しゆっくりと旅を楽しむなり、違いを堪能をできるのだがな」
快適な船旅は既に過去のモノ。今は風の鳴き声に代わり、戦場の騒音がシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)の耳朶を打つ。
会敵より時間の経過こそあれ、戦いの時は続いていた。そして、そんな状況だからこそ、彼にとっては懸念が一つ。
「っ、敵の動きは、まだ切れませんか……!」
それこそが、ゼノの視線の先で奮闘するゼノの姿。
確かに、回復の術を行使できるのはゼノだけなのであろうけれど、明らかに肩へと力が入っている。負傷の度合いに比べ、過度に癒しの力を注いでいるのはその最たるものだろう。
過度の力の行使。それは戦いが長引けば長引く程に自らの首を絞め、息苦しくしていくのである。
シキはゼノがアクシデントに弱い性質というのは聞き知っていた。だが、今はそれに加えて他の勇士達が猟兵に率いられ、戦果を挙げているからこその焦りも原因の一端であろう。
――遮るものなき空の世界で、ある筈のない影が差した。
天を仰げば、そこには帝国艇の姿。そして、そこから飛び降りる帝国兵の。
鉤縄を外され、侵入経路を潰され、ならばと直上からの降下へと彼らはその手段を変えたのであろう。
「な、正気ですか!? いったい、何を考えて……!?」
だが、翼なき者が行うそれは着地の位置を間違えば空の藻屑にもなり得ることでもあり、よしんば艇の上へ着地したとて無事であれるとも限らない蛮行でもある。
勇士達――特に、ゼノ――の思考が、驚愕に止まった。
その間にも帝国兵は次々と着地し、不時着し、空の藻屑ともなっていく。
幸いと言うべきか、ゼノ以外の勇士達には近くでフォローする猟兵があったからこそ、そこから広がる被害はない。だが、ゼノ自身はと言えば――。
「掛かれ! 掛かれ!!」
「う、うわあああああ!?」
「――動くな。止まっていろ」
「……ぇ?」
孤立していたゼノのすぐ傍を通り抜けていく一陣の風。
足引き摺りながらもゼノ目掛けて斧を振り上げていた帝国兵。それがその目的を果たせずにバタリと倒れ込む。
「おい、無事か?」
「ぁ……あ、う……」
「いい、無理に言葉を紡ぐな。まずは深呼吸からだ」
一陣の風の正体は銃弾。それを撃ち放ち、帝国兵を射抜いたのは誰あろうシキであった。ゼノの様子を気に掛けていた彼であればこそ、その窮地に救いの手を伸ばせたのである。
言われるまま、ひゅうひゅうとか細くながらも深呼吸を繰り返すゼノ。次第に、その呼吸が落ち着きを取り戻していく。
「落ち着いたか?」
「はい、御見苦しいところをお見せして……」
「構わない。旅の道連れ、仲間と協力し合うのも仕事の内だ」
「仲間……」
「そうだ。互いに足らない部分を補い合い、助け合うものだな」
「私は、私は……補えていません。助け合えても。余計な力が入るばかりで……」
「知っている。今回のような不意の出来事に弱く、そうなると視野が狭い。過度の力の行使も、随分と目に付いた」
「……ぅ」
「だが――」
「ぇ?」
「――この面子の中で、回復という生命線が扱えるのは、その点を補い、仲間を助けられるのはあんただけなんだ」
「私、だけ……?」
「ああ。だから、今すぐでなくていい、まずは冷静になれ。何があっても状況を判断できるように」
そうしなければ、いつか仲間の壊滅を目にするか、諸共に運命を共にするかでしかない。
落ち着いたゼノに、シキは淡々と事実を突きつける。その間も、近づかんとする帝国兵をその愛銃で撃ち抜きながら。
「今すぐでなくて、いいのですか?」
「一朝一夕で出来るものではない。だが、今回を糧にすることは出来るだろう」
「……はい」
「今は戦況把握と支援に徹しろ。自分で言うのもではあるが、こんなに恵まれた実戦の地などそうはない」
猟兵という助け舟がある今であれば、リカバリーはある程度利くのだ。現に、シキがいなければ、猟兵がいなければ、ゼノはもう幾度と命を落としていたことだろう。
真正面から指摘されたことで、自らの足らぬをゼノは改めてと理解する。そして、その指摘とフォローこそがシキの気遣いなのであると理解もする。そこまで理解が及んで、ようようとその全身から過度な力が抜けていった。
「出来るか?」
「はい!」
「良い返事だ」
シキの視線の中、ゼノの瞳にはもう焦りの色はない。
――もう、大丈夫だろう。
心の内で零しながら、シキは愛銃の弾倉を入れ替える。
さて、随分と弾丸を撃ったけれど、まだまだ敵の数は多そうだ。
「で、現在の戦況をあんたならどう見る?」
「……敵が追い詰められつつある、でしょうか」
「どうしてそう思った」
「鉤縄による渡りを封じられつつあるために降下などという博打に打って出たのもそうですし、冷静に見てみれば、最初に比べて敵の数も、圧も、弱くなっています。きっと、打って出た方々が艇を減らし続けているからでしょう」
「なら、どうする?」
「こちらの戦力が減じていない以上、このまま戦えば相手が先に磨り潰されるでしょう。私は皆さんを回復で支え、皆さんが敵を討ち続けられれば、ですが」
「そうか。ならば、そうなるように励むとしよう」
銃声が高らかと鳴り響き、その数だけ再びと乗り込んできていた帝国兵が倒れ伏す。
「……まあ、今回は私の支援はあまり必要ないかもしれませんが」
「そんなことはないだろうよ」
硝煙を燻らせて帝国兵を薙ぎ倒すシキの姿に、ゼノは苦笑を浮かべてそう零す。それに薄くと笑みを返しながら、青の瞳がまた多くの帝国兵を射抜いていた。
着実に、確実に、猟兵と勇士は勝利へと近付いていく。
大成功
🔵🔵🔵
月凪・ハルマ
まぁ……冒険に危険は付きものではあるけども。
オブリビオン絡みじゃそりゃほっとけないもんな
それじゃ、お仕事しましょうか
◆SPD
まず【迷彩】で周囲の景色に紛れて姿を隠し、
【獣戯】で銀翼の梟に変身して帝国の艇に接近
そのまま【目立たない】様に乗り込む
その後は姿は隠したまま、変身を一時解除
【武器改造】で手裏剣に爆破機能を付与した後
翼や機関部、(あれば)操縦室、あるいは操縦に関する箇所を
破壊して回り、敵飛空艇を撃墜、または行動不能にする
一通り破壊活動を終えたなら、上記の爆破手裏剣を周囲にばら撒き
その爆発に紛れ脱出。再度【獣戯】で梟に変身して味方の元に帰還
その後も戦い続くなら防衛に専念
※アドリブ・連携歓迎
爆炎が咲く。破片が彩る。悲鳴が響く。
戦いへ染まった空のさらなる上、それを眺めるようにして一羽の梟が飛んでいた。
ひゅるり、ひゅるり、ひゅるり。
広げた銀翼で風を捉え、梟は戦場の上を旋回し続ける。
「まぁ……冒険に危険は付きものではあるけども」
どこからか聞こえる男性の声。
しかし、そこにあるのは梟の姿だけで、どこにもヒトらしき姿はない。いや――。
「オブリビオン絡みじゃ、そりゃほっとけないもんな」
――声の主こそが、その梟なのだ。
それもその筈であろう。種明かしをするならば、その梟の真の姿とは月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)。本来――と言うのも、ヤドリガミである彼からすれば少し違うかもしれないが――の帽子被った男性の姿でないのは、自らの姿を忍術で騙ったが故にであったのだ。
そんな彼の瞳が戦場を高みから俯瞰する。そして――。
「それじゃ、お仕事しましょうか」
ハルマは自らの身体の舵を切った。言葉の通り、猟兵としての仕事をするために。
ばさりと羽ばたく音もなく、銀翼の梟がまだ戦火及ばぬ帝国艇の一つへとその身を導いていく。
「弾薬の運び込み、急げ! 猟兵共を艇ごと撃ち落とすのだ!」
「はっ! しかし、それでは兵達も……」
「構わん。翼持たぬ者達は我等翼ある者達のためにあるのだ。猟兵を討つための礎となれれば、あの者達も誉れであろうよ」
「……はっ!」
マストの上に舞い降りたハルマの眼下、バタバタと船上を動き回る帝国兵達の姿。そして、それに次々と指示出す鳥人型の召喚獣の姿。
恐らくではあるが、船内に消えていった鳥人がこの場の指揮官なのであろうことは口ぶりから容易くと想像も出来た。
「ふぅ、ん……穏やかな話じゃないね。翼持たない身としては」
あの鳥人だけの考えなのか。それとも、帝国全体の考えなのか。それはまだ分からないが、仲間をすら巻き込んだ砲撃を仕掛けんとする姿に、ハルマは梟のまま器用に眉を顰める。勇士達の艇に攻め込む帝国兵もまたオブリビオンではあるから同情はしないけれど、それでもと。
「……でも、とりあえず、俺達の艇を砲撃されては困るしね」
同士討ちをさせないためではない。あくまでも、勇士を、仲間の猟兵を護る為に。敵の事情は敵の事情でしかない。今はそう割り切って。
――ぬるりと梟の影が動き、気付けばそれは人の姿に。
「さてと、砲撃が始まる前にあちこち細工をさせてもらおうか」
帝国が帝国の戦い方をするのであれば、ハルマもハルマなりの戦い方をさせてもらうだけ。
手の中で弄ぶ手裏剣が出番を期待するように、金属音の擦れる音を小さく発していた。
――マストにも勿論、置き土産。そして、翼、弾薬庫、機関部。次々と。
本気で潜んだハルマを、帝国兵の名も無き雑兵程度が見抜ける筈もない。
数多と帝国兵が行きかう中であったも、まるで無人の野を行くが如くとハルマは様々な場所へ仕掛けを施していく。
そして、辿り着いた――というより、敢えて最後にしていた操舵室。かの鳥人が入っていった一室。
「ん? 誰だ。貴様は見かけない顔だが……何か至急の用か」
「はっ! 失礼致します! 船内で怪しいものを見付けましたので、そのご報告に」
「怪しいもの?」
「はい。あちらこちらに、このような鉄製の小物が落ちていたと」
「ふむ……見せて見ろ」
「どうぞ」
「ふ、む。確かに見かけぬものではあるが、これが何か心当たりは……おい、今の奴はどこへ消えた?」
「え? あれ? 今までそこに居た筈なのに……!?」
「っ!! いかん!」
「――細工は流々。あとは仕上げを御覧じろ」
爆破機能を付与した手裏剣が鳥人達の手に渡り、その意識がそれへ集中した瞬間にはハルマの姿は音もなくもう部屋の外。
改めて問い質そうとした鳥人がハルマの姿なきに気付き、不吉な予感に身を震わせると同時、爆炎が彼らを部屋ごと呑み込んでいた。
そして、それを基点とするかのようにして、次々と艇のあちらこちらが火を噴いていく。マスト、翼、弾薬庫、機関部、次々と。
「さ、沈む船からは早々に撤収しないとだ」
混乱に沈む艇の中、悠々たる足取りでハルマは甲板へとあがる。
あちこちから火を噴き、ゆるゆると高度を下げていく艇。沈没の運命を避けられないことは、誰の目にも明らかであった。
混乱を鎮める指揮官があれば兵達の動きもまた違ったかもしれない。だが、その姿はもうどこにもなく、頭を失った烏合の衆があるだけ。
ぼん、ぼん、ぼん。
弾薬に引火したのだろう。また新たなる爆発の衝撃が艇全体へ伝わる。
紅蓮が巻き起こり、ハルマの姿をヴェールのその向こうに包み隠す。だが、それも一瞬のこと。紅蓮が再びと形を変え、ヴェールが剝げ落ちる。
――もう、そこには誰も居ない。
ただ、銀翼の梟が一羽、紅蓮が形を変える刹那に艇から飛び去っていく姿があっただけ。
成功
🔵🔵🔴
トリテレイア・ゼロナイン
飛空艇上で勇士達と共に剣盾振るいつつ
敵の規模も中々の物
私達も同乗出来て幸いでした
そろそろ迎撃から積極的攻勢に移る頃合い
援護を願えますか?
艇にかけられた鉤縄を格納銃器で撃ち抜き
●ハッキング遠隔操縦空中戦で航空戦力へ対処させていたロシナンテⅢ呼び寄せ騎乗し空中へ
(銀河)帝国との戦闘も、(宇宙海)賊の取り締まりも故郷で慣れた物
UC突撃で敵大型艇船腹に大穴ぶち抜き内部侵入
艇内を地形破壊しつつ勇士達の艇の構造参考に中枢へ
そして重要部品(コアマシン)巡る攻防は…
故郷の戦の肝でもありましたから、ね!
怪力で天使核強奪
沈みゆく飛空艇から飛び降り飛竜で己を回収
味方甲板に天使核落とし
さて、次はどの艇を狙いましょうか
カイム・クローバー
そりゃ当然、帝国側に乗り込むだろ。帝国側がお宝を持ってる可能性もあるんだ。向こう側が親切に運んでくれたんだから、頂かなきゃ悪いだろ?
帝国側は全部オブリビオンなのか?邪魔する過去の化物共は蹴散らして進むが、万一、普通の人間を発見した場合は気絶程度に留めておくぜ。――人殺しは趣味じゃねぇからな。
貴重な宝があるとしたら、その前には召喚獣やらエンジェルやらが居るんじゃねぇか?なら、こう告げようか。
自ら宝を寄越すか、この艇を棺桶とするか好きな方を選びなってよ?
退かねぇなら。二丁銃で【クイックドロウ】と紫雷の【属性攻撃】の銃弾。
終わればお楽しみタイムだ。
さーて、何が入ってるか…期待させて貰おうじゃねぇか。
さて、もう幾つの波濤を蹴散らしたことだろうか。
「十は軽く超えてるかね? 途中から数えるのも飽きたんで、正確なところは知らないが」
「そうですね。私の計測が間違っていなければ、数えて十三回は波を乗り越えているでしょう」
「はは。あんたが数え間違ってたら、そりゃ大事だ」
「その時はメンテナンスが不可避ですね」
倒れ伏す帝国兵の中、からからと笑うはカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)。そして、その傍で共に轡を並べていたのはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)であった。
「――しかし、敵の規模も中々の物。私達も同乗出来て幸いでした」
トリテレイアの緑輝く灯りが、共に戦い続けた勇士達を見る。そこにある彼らの姿は戦いの始まりに比べ、幾分か成長の兆しを思わせるもの。だけれど、戦いを経た相応の消耗もまた。
「俺達が居なければ、磨り潰されてたのも納得ではあるな」
「そうですね。ですが、その未来は随分と遠ざかりました。そして、これから違う未来へと変えてしまいましょう」
「お、何かするつもりなのか」
「ええ、既に幾人かは迎撃に動いて下さっていますが、私達も積極的攻勢へ移っても良い頃合いかと」
「……つまり、帝国側に乗り込むってことだな?」
「そのつもりです。天使核という重要部品の一つでも奪えば、無力化も容易いことでしょうから」
「面白そうだ。俺にも一枚、噛ませてくれよ」
「ありがたい申し出ですね。では、援護を願えますか?」
「あんたに援護が必要とも思えねぇが……なぁに、大事なもんを運びだすってんなら、俺に任せな。宝だろうが何だろうが、根こそぎ持っていってやるぜ」
帝国の兵力も随分とすり減らされ、攻めかかる圧も最初に比べて格段に落ちていた。ならば、反攻の狼煙をあげるには今をおいて他にはなし。トリテレイアも、カイムも、その機を逃すつもりなど毛頭ない。
チカリチカリとトリテレイアの緑が瞬けば、艇と艇の狭間、空渡る風を裂いてソレは飛来する。
「――ロシナンテⅢです。どうぞ、御搭乗下さい」
「は、こいつはご機嫌だ」
大出力の推進機構を搭載したそれは機械型の飛竜。今迄はトリテレイアによる遠隔操作で帝国艇や空中戦力への対応を行っていたが、此度、反攻を掛けるためにと呼び戻されたのだ。
トレイテレイア一人を乗せてもビクともしないだけあり、そこにカイムが加わっても、ロシナンテⅢは少しも揺るぎはしない。
「では、参りましょう。帝国との戦闘も、賊の取り締まりも、故郷で慣れた物です」
「なんだか昔を思い出すが……ま、向こう側が親切に運んでくれてんだ。根こそぎ頂かなきゃ、悪いってもんさ」
飛び立つ先は一つ。勇士達へと選択を突き付けた天使。それの帰った艇を目指して。
轟と風を巻き、大出力の嘶きと共に機械飛竜は空を翔ける。
「なんて出発するもんだからよ。もうちょい、スマートに侵入すんのかと思ってたぜ」
「いえいえ、これもまたスマートな方法というものです」
「艇の横っ腹に大穴ぶち抜くのがねぇ?」
「内部侵入の手間も省け、更には奇襲にもなる。一挙両得です。お嫌いでしたか?」
「いや、嫌いじゃないぜ」
二人を乗せて飛翔した機械飛竜は、その口内に搭載した単装砲を目標とした帝国艇の横腹にこれでもかと浴びせかけたのだ。そして、脆くなったそこを、その身体でぶち抜いたのである。
その結果が二人の会話。降り立った先――帝国艇内でのそれであった。
「て、敵襲ー!!」
「猟兵に乗り込まれたぞー!!」
「あまり破損部に近付き過ぎるな! 外に放り出されるぞ!」
破損部位の修繕に駆け付けた者。偶然居合わせた者。報告のためにと駆けださんとする者。様々な帝国兵でその場がごった返す。
「全部、オブリビオンみたいだな」
「はい、反応からしてそうでない方はいらっしゃらないようです」
「そりゃよかった」
帝国兵の姿は人間や獣人など様々であるが、そのどれもが過去の存在であった。そのことに、カイムはそろりと息を吐く。過去の化け物であれば蹴散らし進めるが、そうでない者まで殺めるのは後味が悪い。そも、人殺しは彼の趣味ではないからこそ。
「――それじゃ、一気に突っ切るか。貴重な宝の一つでもあるかねぇ?」
「どうでしょう? ですが、あるとすれば奥でしょうね」
「へぇ、分かるもんなのか?」
「いえ、重要部品を巡る攻防は、故郷の戦の肝でもありましたからね」
「昔取った杵柄ってやつか」
「それを言うなら、カイム様もでは?」
「ん? なんでだ?」
「私が道案内を始めるより早く、既に歩き出されておりますので。何かしらのこういう経験がおありなのかと」
「おっと。ま、それこそってやつさ」
薙ぎ倒し、斬り倒し、突き崩し。混乱の最中を人海割って、二人は進む。時に抵抗もあるけれど、十把一絡げの雑兵に止められる足なぞ、それこそ二人は持ってなどいない。
廊下を進み、階段を下り、護りを蹴破り、重厚な扉を前にして、その足はようやくと止まるのだ。
「ビンゴって感じな気配だな」
「勇士の皆様の艇を参考とさせてもらった地図ではありますが、ここが機関室……天使核の安置されている場所で間違いないかと」
「それ以外にも、なんだかお宝がありそうな気配もするぜ」
「……分かるものなのですか?」
「いや、そんな気がするだけさ」
「ふむ。経験を基にした勘というモノなのでしょうね」
――蹴破るが早いか。それとも、紅蓮が二人を呑み込むが先か。
扉を開けようとしていた二人。その行動が結実するより早く、扉の内側より紅蓮が咲いていた。
吹き荒れた紅蓮が掻き消え、名残の煙が辺りを覆う。
「やったか?」
「我等が力を合わせたのだ、跡形もあるまい」
「そうだな。そうでなければ困るという物だ。これ以上先に進まれては――」
「進まれては?」
「――宝示す指針まで奪われて……何?」
「っ! まさか!?」
もくりもくりの煙が晴れて、そこに広がる傘状の膜。その奥には健在なる――。
「聞いたか? 言った通りだったろ」
「そのようですね。そして、こちらは私の予想通り、天使核もある様子」
「なら、どっちも大当たりってこった」
――カイムとトリテレイアの姿。
紅蓮が彼らを呑み込むより早く、熱源の出現を感知したトリテレイアが槍の穂先よりバリアを展開していたのだ。
そのバリアの向こう、煤一つも塗れぬ二人の姿を認めた天使二人が表情を凍らせていた。
「よう、いい顔をするじゃねぇか。お化けでも見たか?」
「オブリビオンという存在がお化けのようなものですが」
「それもそうだ。……っと、そんなことより、だ。そう言えばお前達はさっきこう聞いてたよな?」
――選べ。自ら艇を放棄するか。それとも、その艇を棺桶とするか。好きな方を選ぶがいい。
一字一句を違えずに、カイムはその言葉を諳んじる。そして、ヒトの悪い笑みを浮かべて言うのだ。
「今度はこっちが聞く番だ。自ら宝を寄越すか、この艇を棺桶とするか好きな方を選びな」
帝国兵の中において上位に位置する天使達ではあるが、あくまでもそれはその中での話。オブリビオンとして語るに及ばぬ帝国兵の雑兵の中で上位にあったとて、それはカイムとトリテレイアから見れば五十歩百歩に過ぎない。
唯一と力量の差を覆せる機会があるとすれば、それこそ先程の不意打ち以外にはなかったのだ。だが、その機会とて最早逸している以上、天使達に逆転の目はない。ないけれど――。
「誇り高き我等、アハウラム帝国が貴様ら翼も持たぬ者共如きに!」
諦めるということを彼らもまた選べない。無駄と心の奥底で分かってはいても、それを見ぬ振りして再びと紅蓮を紡ぐのだ。
「そうかい。お前らは棺桶を選ぶって訳だ!」
「カイム様、私はこのまま突撃を敢行します。炎は通しませんので――」
「――任せとけ! とっておきのShow Timeだ!ド派手にくれてやるよ!」
紅蓮遮るように、前へと飛び出たトリテレイアの突撃。ランスから展開されるバリアは健在であり、紅蓮などものともしない。そして、バリアにぶつかり、弾けた紅蓮を裂いて軌跡描くはカイムの協奏曲。二丁の銃が奏で合う弾丸の咆哮が、天使に避けるという選択肢すら与えない。
「ぅ、がぁっ……!?」
「失礼。このまま天使核も頂いていきます」
倒れ伏す天使を越え、トリテレイアが目指すは初めから艇の心臓――天使核のみ。突撃の勢いもそのまま、天使核に組み付いた彼はその身に秘めた怪力で強引に艇とそれとの接続を引き剥がすのだ。
金属音の不協和音が響き渡り、まるで艇そのものが断末魔をあげるかのよう。
事実、外からその艇を見る者があれば、次第に高度を下げていく帝国艇が見えていたことだろう。
「こちら、回収終わりました」
「おう、お楽しみタイムにはちょっとばかり短かったが、目ぼしいもんは回収させてもらったぜ!」
「では、脱出を」
「来た道を戻るか?」
「いえ、そんな時間はないでしょう」
「なら、どうする……って、聞くのも野暮か」
「ええ、最初と同じように」
まるで自分の位置を示すかのように、緑の光がチカリチカリ。そして、艇体をぶち抜く大きな揺れが奔ったのである。
「おい、敵が退いてく……」
「ようやく、ようやく終わったのね?」
「……ぷしゅう」
「ナト、こんなとこで寝るもんじゃないぞ」
「いえ、心配は不要のようですよ。彼らも、戻ってきています」
トリテレイアとカイムが帝国艇を墜として暫く、全ての攻勢は止み、帝国は逃げるようにと宙域を去っていく。
猟兵の中にはそれに追い打ちかける者もあれば、油断なくと不意打ちに備える者もある。その中に、艇へと帰還した二人の姿も勿論あった。
「皆様、ご無事の様ですね。安心しました」
――ドスン。
勇士達の艇上に響いた音は大収穫の音。帝国艇に使われていた天使核を持ち帰ったトリテレイアが、それを置いた音。そして――。
「よう、お宝は本当にあるみたいだぜ?」
「え?」
「あいつらが漏らしてたが、この指針がお宝の位置を示すらしい」
――もう一つ、カイムが持ち帰ったスカイコンパス。あの艇に乗っていた天使の言っていた指針。確かに、それはどの方向を向いても一定の方角のみを指し示し続けている。
「ええと、ふむ……私達が目指す地図の方角とそれとが重なっているのは本当のようです」
ゼノが見比べる指針と地図。
その情報に宝の存在が俄然として真実味を増し、勇士達の目が期待に輝いていた。
生き残ったという事実。一つの勝利。そして、そこに加わった今後への期待。それらがない交ぜになった勇士達の歓声が、猟兵の見守る中で空へと響き渡るのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ガレオンドラゴン』
|
POW : 属性変換
【ドラゴンの牙】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【部位を持つ『属性ドラゴン』】に変身する。
SPD : ガレオンブレス
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【口】から【ブレス砲撃】を放つ。
WIZ : 飛竜式艦載砲
【飛空艇部分の艦載砲】を向けた対象に、【砲撃】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:来賀晴一
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
依頼人から貸し出された宝の地図。帝国から奪い取った指針の導き。
二つを重ね合わせて進むは空の旅。冒険の旅路。
戦いに疲弊した身体を休ませながら、それでも時折見舞われるトラブルに奔走しながら。
「いやしかし……ただでさえどこぞの帝国との一戦で艇も負担掛かってたってのに、浮遊岩の密集地域やら気流の壁やらで船体が傷だらけになっちまったなぁ」
「応急処置に応急処置を重ねて、もう張りぼてもいいとこだわ。でも、私的にはエンジンが止まりかけたのが一番肝を冷やしたわね」
「ほぼ不時着」
「無理させてましたから、致し方ありません。ですが、猟兵の方が帝国の艇から天使核やら資材やらを持ち出してくれていたお蔭で助かりましたね」
「ま、なんだかんだ飛んで、今は目的地に着いたんだ。良しとしようじゃねえか」
辿り着いたのは荒野広がる浮遊大陸。いや、大陸というには些か規模が小さく、徒歩で外周をぐるり回ったとしても一日要すか要さないかという程度。
だからだろう、規模の小ささに視界遮るものが少ない荒野であるというのも手伝って、上陸して間もなくに目的のモノはすぐにと見つかった。
「……なあ、儂の目にはアレがお宝には見えんのだが」
「でも、指針は間違いなくアレを指してるみたいだぜ?」
そこにあったのは荒野のただ中で鎮座する艇。確かにそれは依頼人の話通りであったのだけれど――。
「ある意味、お宝」
「剥ぎ取るなり、中身を検めるなり出来れば、そうでしょうね」
「ま、お宝がすんなり手に入るってのも、そうそうある話じゃないものね!」
――まさか、竜の形を得ているなんて。勇士と猟兵達の前、鎮座する艇/竜が寝息を立てていた。
しかし、ヒトの気配に反応したのか。それとも、偶然タイミングが重なってしまったのか。ぐぅぐぅと響いていた寝息がピタリと止まる。
ごくりと唾を飲んだのは勇士の誰であっただろう。
夢から目覚めた竜の瞳が薄っすらと開き、そして、自らの前にある者達を目に留める。そして、むくりと身を持ち上げれば――。
「あー、友好とか、そんな気配じゃねぇな?」
――自らの縄張りに侵入してきた不届き者へ、威嚇の咆哮を轟かせるのであった。
その竜も元は確かに輸送艇であったのだろう。しかし、墜落が原因か、はたまた他の何かが原因か。今は搭載した天使核の暴走により竜へと変じたその艇の姿。
艇としての機能は既に失われている。修理して乗って帰るなど不可能であろうことは明白。だけれど、輸送艇であった頃の名残――その腹に溜め込んだ財宝や物資は間違いなくそこにあるだろう。また、魔獣としての形を得ているが故に、打倒すればその皮や肉を得ることも出来るだろう。
「……っ。あ~、もう! 折角とここまで辿り着いたんです。アレを倒して、全部持って帰りますよ!」
「なぁに? 慌てるんじゃなくて随分と図太いこと言えるようになったじゃない」
「はは、成長だな。成長! 誰ぞに喝でも入れてもらったか!」
「茶化さない。戦闘準備」
これが最後の試練。あの寝起きの悪い竜を倒し、その腹で未だに眠っているお宝を得るのだ。
「猟兵さん方、もう少し力を貸してくれ!」
勇士が、猟兵が、それぞれの得物を構える。戦いの火蓋が切って落とされた。
祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定
*アドリブ歓迎
『フェアリーランド』の壺の中から風精霊,聖霊,月霊,戦乙女,天使,英霊を呼んで“七色金平糖”を配って『エレメンタル・ピクシィーズ』で属性攻撃をして『神罰の聖矢』で聖攻撃をして、『月世界の英霊』で敵の攻撃を空間飛翔して避けて、敵のUCを『月霊覚醒』で封印/弱体化させます♪
味方の怪我人を『祝聖嬢なる光輝精』で治し『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒します☆
機会を見て『聖精月天飛翔』でWIZを強化して『叡智富める精霊』+『神聖天罰刺突』で苛烈な猛攻で攻撃します!
状況を見て『クリスタライズ』で姿を隠して動き回ってコソコソ精霊たちろも話しながら状況を注視します♪
眠れる宝。それそのものにして、番人たる竜の咆哮が轟いた。
ビリビリと空気が震え、物理的な衝撃が勇士の、猟兵の身体を叩いて通り過ていく。
「虎の尾を踏むってのはこういうことでもあるんだろうなぁ」
「今回の相手は竜ですけれどね」
「例えだよ、例え!」
「知ってますよ」
刃を交えるまでもない。それだけでも竜が十分な脅威であると勇士達は理解する。それこそ軽口でも回さなければ、戦う覚悟を決めてもなお、口の中がカラカラになってしまいそうな緊張感を感じる程に。
「キミ達☆ もしも戦うことが怖いのなら、ここに安全な妖精の国があるよ?☆」
そんな勇士達に、戦いも何もない妖精の国への、異界への誘いを語るは祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)。悪戯仕掛ける妖精のような、見守る慈母のような、複雑な綾の如き微笑みと共に。
それはきっと甘い誘惑。これ以上、無理に戦わなくともよいのだという。
宝は本当にあった。その事実を持ち帰るだけでも、カルロ達にとっては確かに依頼を果たせたと言えるだろう。彼らが受けた依頼は、あくまでもその真偽を見定めるものであったのだから。ここでカルロ達が退いたとしても、何の問題もない。後々、今回の情報を基に、もっと腕に覚えのある勇士が派遣されるだけのこと。全ては命あっての物種だから。
だけれど、だけれど、だ。
「気遣い、感謝」
「でも。虎の尾を踏んででも進まないと得られるものはないのよね!」
そんなことで良い筈がない。これは勇士達の、そして、猟兵達にとっての冒険なのだから!
ティファーナ/妖精の甘い誘惑を断つように、勇士達は前を向く。竜/脅威と相対する道を選ぶ。
「歌唱う、精霊・聖霊よ♪ 癒し、治し、生命の灯火を再び与えたまえ…☆」
その決意を、背中を押すように、輝きは降り注ぐ。
誰もの勇気を謳い、ティファーナの歌声が響き渡る。それは身体の傷を塞ぐだけではない。耳傾ける者の心を鼓舞し、祝福するもの。
「うん♪ ボクはキミ達の決意を祝福するよ!☆」
ティファーナから放たれる光輝。そして、彼女によって呼び出された数多の精霊達の乱舞。
勇士達の目を奪うそれは、彼らの心から過度な緊張を拭い去っていく。
「それと、これもあげるね☆ また、疲れたなら食べて♪」
「はは、すまんな!」
ころり転がす金平糖。ティファーナが甘い誘惑の代わりに差し出したのは、先の戦いでも勇士達の疲れを癒したそれ。
ティファーナが勇士達にとっての逃げ道を用意していたのは本当のこと。妖精の国への招待は勿論、姿隠しの術だって彼女にはあるのだから。でも、それらはきっともう必要ないだろう。手渡された金平糖の甘さ。それを思い出し、誰もの顔に綻んだ笑みを見れば。
――咆哮が、艦載砲の駆動が、響く。
それはまるでティファーナの歌声を掻き消さんとするかのように。勇士達の心を折らんとするかのように。
竜の瞳、艦載砲の銃口が、ティファーナと勇士達を睨む。
「そんなに見つめたって怖くないよ☆ あ、それとも……キミも金平糖が欲しかったのかな?」
だけれど、そんなものに掻き消されるティファーナではない。
艦載砲の駆動音は段々と音を高め、その砲撃の開始が秒読み段階に入っていることを告げる。そして、間も置かず、轟音が響く。
――空気を裂き、音を裂き、飛来するは砲弾の雨霰。
だが、勇士達の誰もが前へと向けて駆けだしていた。
「月は眼醒めた……其の総ては庇護と加護と祝福を絶たれる……☆」
砲撃の雨を受け止めるように、彼らの前へ展開された月の満ち欠け。
満月から半月へ。半月から三日月へ。そして、三日月から新月へ。
宙に浮かぶ黒点となった月が、砲撃をその黒の中に呑み込んでいく。
「さあ、次は光の道を示すよ☆! 行って☆!」
そして、砲撃を呑み込んだ黒が再びと光に満ち、砲撃の雨の中へ一条の光を指し示すのだ。
それは神罰の光。砲撃の雨を裂き、その向こうにある竜をも呑み込んで。
――道は此処に拓けた。
勇士達が、猟兵達が、その道を辿って竜へと肉薄していく。
ティファーナは光と共にそれを照らし続けるのであった。
成功
🔵🔵🔴
セラフィナ・セレスティ
お宝にドラゴン!最高にワクワクするね!
そうそう、アイツをぶっ飛ばしてぜーんぶ持って帰るよ
ふふ、人の成長はほんと早いよね
よーし、ボクも一緒にがんばろー!
魔力解放、法陣多重展開……!
あらゆる攻撃を受け流す風の盾たる防御魔法陣をカルロくん達に展開
これでカルロくん達が狙われても魔法陣が代わりに被弾してくれる
靴の翼はそのままに、ボクは持ち前の身軽さで砲撃をひとつひとつ回避していくよ
風の加護を宿したボクを、キミにだって止められやしないんだ
いくよ、『翼』……!
破壊の風よ、敵を殲滅せよ
ボクの魔力が尽きるまで、何度でもキミを墜としてあげる
竜と言えばその牙、その爪、その鱗。どれとも言わず、全身が一級品の素材になり得る。
それは武器防具としてでもあり――魔道具としても、だ。
「最高にワクワクするね!」
ならば、セラフィナ・セレスティ(celestial blue・f33925)の瞳が、その本体のようにきらきらと輝かない筈もない。
まして、かの竜は素材としての活用方法だけではなく、腹の内にもお宝を抱えているというのだ。実際は調べてみないと分からないけれど、魔道具の類が眠っている可能性も充分。期待するのも致し方のない事。
「お宝は本当にあったんだ。なら、今度は喜びを分かち合うために」
「あれを全部持って帰れたら、今回の赤字なんてきっと一発で吹っ飛ぶ! 皮算用なんかじゃねぇ。それをホントにしてやろうぜ!」
「そうそう、ゼノくんも言ってたけど、アイツをぶっ飛ばしてぜーんぶ持って帰るよ」
「うっ。あまり、あの発言を突っつかないで下さい。ちょっと、気を張っただけなんです」
「照れない照れない。慌てふためいて冷静さを失うより、ずっといいんじゃない?」
「……ですか?」
「ふふ、ごめんごめん。でも、人の成長はほんと早いよね。よーし、ボクも置いていかれないように一緒にがんばろー!」
共にと駆け抜んとするは栄光への道。足取り軽やかと。
だが、当然ながら竜もその道をただ容易くと駆け抜けさせるほどに優しくはない。
身を軋ませ、砲塔を動かし、セラフィナと勇士達が近付くを防がんと。
「銃と砲とじゃあ比べ物にもならねぇな!」
「大丈夫。ボクに任せて」
――魔力開放。法陣多重展開。
蒼穹の輝きに翠緑の色が混ざり込み、セラフィナを中心として魔法陣が幾つも幾つもと重なっていく。
――砲撃音が轟くのとその完成はほぼ同時。
もくりもくりと爆発の名残が煙と棚引き、竜とセラフィナ達を隔てる。竜からはセラフィナ達の様子を見ることは叶わない。叶わないけれど――。
「はは、俺達無事だぜ? やっぱり、すげぇや」
「どぉぉぉりゃあぁ!!」
――あの程度で倒れる相手ではないと、本能が気付いていた。
煙を割って飛び出るはカルロの銃弾。そして、ユグの肉薄。それを身を捩り躱せば、隙だらけの彼らに再び砲撃の洗礼を浴びせかける。
だけれど、それは彼らを包む風の盾に逸らされ、弾かれ、明後日の方角に着弾するを繰り返すばかり。
それもその筈、自身の、彼らの身を護るためにセラフィナが防御用の魔法陣を敷いていたのだから。
「疾風の加護はキミ達にも。風はもうボクらの味方だよ」
――その声は誰もの頭上。
竜が見上げた先、そこへはセラフィナの姿。煙を隠れ蓑に靴生やした翼で空へ駆けあがっていたのだ。そして――。
「これはボクのとっておき! いくよ、『翼』……!」
周囲の風が逆巻き、集まり、圧縮していく様子。
それは竜にとって明らかなる脅威の気配であり、まだ艇であった頃の名残が嵐の到来の予感に慄きを伝え来るもの。
砲塔が無意識に動き、セラフィナへとその照準を定める。
「そうだね。ボクを排除しようとするのは正解。でも、残念。翼の加護を宿したボクを、キミにだって止めらやしないんだ」
砲撃の音が何重にも響き、その数だけの弾幕がセラフィナを襲う。
しかし、彼女の宿す風の加護が、空を自由に翔けるための翼が、その身捉えさせはしない。
「時間、稼ぐ」
「無視なんてさせないわよ!」
それだけではない。セラフィナによって風の加護を与えられた勇士達も、果敢に竜へと攻めかかっている。
彼らの力はセラフィナに比べて弱い。それでも無視出来る程ではないが故に、彼らが攻めかかる度、竜も砲撃の一部を向けざるを得なかったのだ。
力が割かれれば、必然としてセラフィナへの弾幕もその分薄くなる。身軽さに自信のある彼女が、回避出来ない筈も無かった。
「さあ、準備は万端。ボクの魔力が尽きるまで、何度でもキミを墜としてあげる」
――破壊の風よ、敵を殲滅せよ。
吹き荒れるは嵐。ただの嵐ではない。セラフィナの魔力を核として生み出されたそれは、彼女の魔力続く限りと荒れ狂い続けるのだ。
轟々と戦場の空気が押し流され、竜の身もまた同様に押し流されていく。バランスを取ろうにも、艇を素体とした竜の身体はあまりにもアンバランス。風の煽りをもろにと受けて、幾度も幾度もと竜は地に叩きつけられる他ない。
セラフィナの宣言通り、墜落の経験を何度も味合わされる竜。その悲鳴が荒野に響いていた。
成功
🔵🔵🔴
テイラー・フィードラ
ふむ、竜種であるが混ざり物というより船が転じた物であるか……やれるだけやってみよう。
具現化したフォルティに騎乗し駆けさせ、己は凶月之杖を構え呪言の高速詠唱を実行。
奴が何か行動をする前に呼び出せればよい、が……早く姿を表せ。疾うに顕現は済んでおるのだろう?
一度目の砲撃に対しては砲の向きから予測し盾を投げつけ衝撃を緩和し、フォルティに回避させよう。多少揺れるは我慢せよ。
とはいえ数も多い砲であるな。直にまた放たれるのだろうがな、悪魔よ。その秘術を以て防げ……やれと言ったのだ、やれ。
さ、私への砲撃は奴が防いでくれるというのだ、フォルティよ更に駆けよ。
竜の背をも登らせ、奴の砲に機構を壊していかん。
「ふむ、竜種であるが混ざり物というより艇が転じた物であるか……」
テイラー・フィードラ(未だ戴冠されぬ者・f23928)の眼前にて唸りをあげる竜。それは、彼の言う通り生来からのものではない。この世界独自というべきか。天使核を搭載した艇が何の因果かそれを暴走させた結果に生じたものであった。
竜という存在について思考を巡らせた時、テイラーの脳裏を掠めるのは狡猾なる竜の存在。それは彼の記憶に刻まれた傷痕のようなもの。例え、自らの手で討ち滅ぼした後であろうと、切欠のある度、テイラーの記憶に浮かび上がるであろう。
「……フン」
心弱き者であれば、それはある種のトラウマとも言えるのであろう。だけれど、自らを王足らんとするするテイラーであれば、その精神力であれば、そんなものはトラウマにはなり得ない。現に、今もまた浮かび上がったそれを容易くと心の外へと追い出せていた。いや、むしろ――。
「やれるだけやってみようではないか」
今生、幾度目かの竜退治に臨む戦意へと繋げていた。
目前の竜が今すぐに国を荒らす竜へとなる訳ではない。だけれど、いつまでもそうであるとは限らない。ヒトを前にした気性を思えば、そうなる可能性は十分にあるだろう。
愛馬の嘶きは頼もしく、手にした杖はズシリと重い。
「枷囚われし懐旧の記憶抱くモノよ。未だ消えぬ事なき知を以て打ち消せ」
そして、テイラーもまた呪言と共に砲撃の雨の中へとその身を躍らせるのである。
――砲弾が弾ける。土が舞う。空気が焦げる。
ヒト同士が切り結ぶ戦いとはまた違う、戦場の様相。
舞い散る土砂に愛馬の蹴り上げるそれを混ぜながら、テイラーは一心にと竜の体躯を目指す。
他の猟兵の手によって圧されながらも、竜は決して砲撃の手を休めない。それが自らの身を護り、同時、敵の手を妨げると本能で知っているから。
「……疾うに顕現は済んでいるだろうに」
舌打ちの一つもしたくなる。
紡いだ呪言葉は既に結び、その力をこの世に示している――筈なのに、ソレはいつまで経っても姿を現さないではないか。
ソレがなくとも、テイラーの身は弾幕の中を潜り抜け、僅かずつと進んではいる。進んではいるけれど、まだまだ肉薄には遠い。
――盾を投げうち、愛馬に爆風を躱させ僅かずつ、僅かずつ。
「人力であれば途切れ目もあったのだろうが……」
数多の砲塔が息つかせず、砲弾を吐き出し続けている。
これがヒトの手によるものであったなら、テイラーの言う通り、弾込めや照準に手間を取られ、それがより大きな隙となっていたことだろう。だけれど、あれはヒトならざる超常の。その隙は期待できそうになかった。
だからこそ――。
「いい加減に姿を見せろ。いつまで傍観の愉悦に浸っているつもりだ」
既にこの世界へ顕現果たしている筈のソレに、今度こそ契約の強制力をもって呼びつけるのである。
闇が羽根と舞い散って、宙より堕ち来るは誰そ彼時の悪魔。陽の差す下にあってなお、その顔は薄闇に包まれて判別出来ぬ。ただ、明星の如き瞳だけが爛々と。
薄闇に見えぬ顔でるというのに、テイラーにはその悪魔が悪びれもせずに笑み浮かべていることへ気付いていた。
「悪魔よ。今一度いう。その秘術を以って、かの砲撃を防げ」
戦いが始まって既に幾時。その間に放たれ続ける砲撃なぞ、飽きるほどに見ていることだろう。だけれど、悪魔はまるでまだ観たりないとばかりに動きを見せない。
「お前が観たりないのは、人間の抗う姿だろう」
――その通り。
悪魔は嗤う。
性根の悪さはテイラーも知っている。そうでなければ、悪魔を使うことなど出来はしない。だけれど、契約の強制力に抗ってまでそう宣うかの存在に、思わずと眉間に皺寄るは致し方ないことであった。
「……やれと言ったのだ、やれ」
だから、次はないとばかりに。それでようよう、悪魔は仕方ないとばかりにその力を行使するのだ。いや、もしすれば、テイラーのその反応をすら悪魔は愉しんでいたのかもしれないけれど。
悪魔が手を翳せば、羽根と散る闇が鎖となり、竜の砲塔に絡みつていく。
「最初から出来ただろうに。……まあ、いい」
悪魔がどんな条理で動くにせよ、最終的に役立つのであれば構いはしない。
絡みつく鎖が砲塔の動きを制限し、砲撃の弾幕に切れ目を生み出していた。
「フォルティよ、更に駆けよ! 竜の背をも登り、砲陣を蹂躙する時だ!」
テイラーが吼える。愛馬が応える。
悪魔から伸びる鎖をすら足場としての一騎掛け。
砲塔封じられ、他への対処にも手を取られる竜にそれを防ぐ術はない。
「――踏み潰せ!」
無人の野を往き、竜の背へと辿り着いたテイラー達。その蹂躙劇は、ひしゃげ、砕けいく砲塔の姿をもって大暴れの証と誰もの目に見せつけていた。
成功
🔵🔵🔴
オリヴィア・ローゼンタール
フィーナさん(f03500)と参加
あれの相手は私たちが務めます
皆さんは船を護ることに集中してください
白き翼の姿に変身し、飛翔(空中戦)
翼に黄金の炎を纏い(属性攻撃)、放出を推進力に変え、聖槍を構えて吶喊(ランスチャージ・烈煌天翔翼)
風穴を開けます!
激突し質量差を覆して拮抗するも、放出する炎を取り込まれる
弱点である水属性化されて、押し返され――しかし、背後に感じる猛き炎
援護、感謝します!
フィーナさんの魔力の火の粉を吸収して再燃、再行動
【気合い】と【根性】で【限界突破】
【全力魔法】の【烈煌天翔翼】で【串刺し】【貫通攻撃】!
穿ち抜く――!
フィーナ・ステラガーデン
オリヴィアと参加
んー・・っていうかあれ食べれるの?なんで船と合体しちゃったのかしら!食べれる部分が減るじゃない!私聞いたわよ!この世界の魔獣っぽいオブリビオンは心置きなく食べれるって!
まあいいわ!竜退治としゃれこむわよ!たぶん分解すれば食べれる部分がいっぱいあるわ!あの大きさだもの!というわけで準備は良いかしら?
オリヴィアに近接戦は任せて私は船の上でUCの為に魔力溜めを行うわ!
やばそうなら船を一気に近づけるように指示して
オリヴィアをUCの射程圏内に入れるわよ!なんなら船ごとぶつけてもいいわ!根性見せなさい!!
後はUCを使用よ!オリヴィア!いけえええええ!!
(アレンジアドリブ大歓迎!)
「ねぇ?」
「はい?」
「あれ、食べれると思う?」
「……どうでしょうか」
「私、聞いたわよ! この世界の魔獣っぽいオブリビオンは心置きなく食べれるって!」
「私も、そのように聞いていますよ」
「なら! どうして! なんで! 艇と合体しちゃったのかしら! 食べれる部分が減るじゃない!」
「こほん。皆さん、いいですか? あれの相手は私たちが務めます。皆さんは護りに集中してください」
「な、なあ、あっちのお嬢ちゃん無視してていいのかい?」
「大丈夫です。きっと、いつもの持病の癪/ハラペコでしょうから」
「聞こえてる! 聞こえてるからね!?」
「それは重畳。互いの言葉を聞き、きちんと会話できるのは良い事です」
「雑! 対応が雑よ、オリヴィア! 前はもう少しリアクションがあった気がするの!」
「あの、私達が分けてもらったものですが……金平糖、食べます?」
「なんだか複雑な気遣われ方をした気もするけれど、貰っとくわ! ありがと!」
「……まあ、もう一度言いますが、中々に長い付き合いですからね。私も鍛えられたということです」
「オリヴィアも私のお蔭で成長したのね。我が子の成長を見るようで感無量だわ! 私に子供はいないけどね!」
「それは少し、想定外の発想でした」
「ふふん! 自信を付けた頃が危ういのよ。まだまだね!」
フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)が勝ち誇ったように。
慣れた慣れたと思えども、破天荒に予想は付かず。オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の顔には苦笑のような、微笑のような、複雑な笑みが浮かんでいた。
「っと、いつまでもじゃれ合ってる場合でもないわね!」
「そうですね。勇士の皆さん、先程お伝えした通り、私達が前に出ます。皆さんにはその援護を」
「了解。適材適所」
「さあ、準備は良いかしら? 竜退治と洒落込むわよ!」
「応とも!」
掛け声に応じる声は気炎万丈。戦いの渦中へ身を躍らせるには充分の。
そんな勇士の戦意を受け、オリヴィアの表情が笑みの形から引き締まる。
――バサリ。
その背に顕現するは純白なる翼。黄金の炎を羽根の代わりと散らして、オリヴィアがその真なる姿を開帳したのだ。
「あんた、天使だったの!?」
「厳密には違うかと思いますが、主の僕たらんとは」
「そうなの……」
「オリヴィアがなんであろうとオリヴィアであることに変わりはないわよ」
「ありがとうございます。それでは――」
「ええ、いってらっしゃい!」
「――いってきます!」
聖槍携えた戦乙女が、砲撃の弾幕鳴り響く戦場の空へと翔けていく。黄金の軌跡を描き、竜の身体に風穴開けんと砲弾の如くに。
「さ、私の方も気合入れないとね! あの大きさ、例え艇と合わさっていたとしても、きっと食いでがあること間違いないもの!」
巨大であるということは、単純にそれだけ頑丈であるということ。ならば、それを倒せるだけのものを練り上げるために。
オリヴィアとフィーナ、互いに必勝を思い描き、そのための力を高めていくのだ。
風裂く音が耳朶を打つ。
それはすぐ間近を飛んでいった砲撃の音であり、自らが進む音。
真白き翼から黄金の炎を零し、オリヴィアは空を翔け続ける。
――羽ばたき、身を捻り、時に愚直なまでの加速。
翼を得たオリヴィアの速度は音をすら置き去りにせんとして、瞬く間に彼女と竜との距離を埋めていく
激突の時は間近。――否、既に。
槍の穂先がその身守るように翳された竜の掌と拮抗する。
それは不思議な光景であった。
艇の変じた竜が巨大なるは当然であり、その質量はオリヴィアと比べ物にならないもの。だと言うのに、受け止められてなお、黄金の軌跡は決して後ろには下がらない。むしろ、ジリジリと圧してさえいたのだ。
「風穴をこじ開けます!」
裂帛の気合は更なる加速を生み出し、オリヴィアの身体を後押しする力となる。
だけれど――。
「これは……水? くっ、だからといって!!」
舞い散る黄金の炎を喰らった竜の身体が、掌が、水の滴りを零す。それはオリヴィアそのものを包み込むように形を変え、その勢いを、熱を掻き消さんとするのである。
――気合も、魔力の放出も、変わらず。だけれど、相性の差がオリヴィア優位を覆していく。
明らかなる速度の減衰。今度はそれを後押しするように、水の膜がオリヴィアを完全に包み込んだ。
速度が殺される。炎が絶える。光が呑まれる。
それでも心は未だ死なず、抵抗を諦めるつもりなどオリヴィアにはない。
「――ヴィア! ……かり……のよ!」
その背を押すように、くぐもり、掠れた声が水の膜の向こうから聴こえた気がした。
時はオリヴィアが水の膜に包まれつつある状況まで遡る。
オリヴィアが竜の身に肉薄し、その掌を圧し始めた時には喝采すらあがっていた。しかし、今はそうではない。力関係を覆された彼女の身を如何に援護するかと慌ただしく。
「艇ごとぶつけんのよ!」
「そりゃ無茶だって!? 取りに戻るにも時間がねぇ!」
それが出来ればしていたであろうけれど、竜との交戦を始めた中で再びに艇を再起動させるには時間がなかったのだ。
ならば、如何にして彼我の距離を埋めるか。如何にして――。
「私をぶん投げなさい!」
「投げることは出来るが、儂でもあそこまで届かんぞ!?」
「構わないわよ! 足りない分は私でなんとかするわ!」
「そこまで言うなら、よっしゃ!!」
「手加減なんていらないわ! 根性見せなさい!!」
「思いっきり、いくぞぉぉおお!!」
それがフィーナの出した答え。腕っぷしが自慢のユグの力を借りて、その身を空へと投げうったのだ。
だが、ユグが自己申告した通り、如何に彼が力自慢であろうとも竜との距離全てを埋めるは叶わない。
「――ぶっ飛べぇぇぇ!!」
だから、残る推力は自前で補う。
愛杖を後方に向け、フィーナが放つは火炎の爆裂。遠方にではない。自爆スレスレ、己の間近でだ。
一回、二回、三回――爆裂の度、フィーナの身体が黒煙をあげながらぐんと加速する。
――オリヴィアを包んだ水の膜は、もう間近。
「オリヴィア! しっかりすんのよ!」
そして、水の膜をその身体でぶち抜いて、フィーナは遂にとオリヴィアの下へ。
「え、フィーナ、さん!?」
「説明は後! いや、あんたならこれで分かるでしょ!」
「……! これは……!」
水の膜の中、パシンと乾いた音が響く。それはオリヴィアの背中を叩いたフィーナの掌が発した音。
火の粉が舞う。熱さが伝わる。想いが重なる。
「――オリヴィア! いっけえええええ!!」
光が、炎が蘇る。フィーナから譲渡された魔力が、気力がオリヴィアに宿り、その翼の炎を再燃させたのだ。
フィーナが何を、何を求めているのか。最早、言葉にせずとも全てを理解出来ていた。
「穿ち抜く――!」
ならば、感謝の言葉は無用。それを紡ぐ暇あれば、行動にてそれを示すのみ。
立ち塞がる属性の相性など知った事か。背を押すその熱に応えずして、何が聖槍のクルースニクか!
魔力と気合が速度を生み出し、それらが相乗効果でもって水の膜を、竜の掌をぶち抜く力に変わる。
「天翔ける祝福の翼よ! 不滅の炎を纏い、邪悪を焼き尽くせ!」
限界を超え、臨界を越え、そして――。
「ふふん! 当然よね!」
「ええ、私達であれば」
掌を、その向こうの身すらを容易くと穿ち抜き、二人が浮かぶは竜から僅かと離れた彼方の空。
彼女らが振り向けば、その先では自らの戦果――苦悶に身を捩る竜の姿――が、それぞれの瞳に映し出されていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
戦闘はメガリス:孔雀輪を使用し【空中機動】【空中浮遊】で【空中戦】
勇士には敬語
これに乗れなくても部品で飛空艇を補強して帰ることは出来るだろう、倒さない選択肢はないな
宝を守るのはドラゴンっていうのはどこの世界でも共通か
WIZで判定
【暗視】【視力】【聞き耳】で敵の【情報収集】
【挑発】で俺に狙いを【おびき寄せ】
攻撃は【戦闘知識】【見切り】での回避や風の【結界術】で防御
攻撃が止んだ時に【ダッシュ】【早業】で接近しUCを発動
必要なら【救助活動】を行う
出来れば宝も見てみたい、この世界の武器とかもあるかもしれない
砲撃の音が聞こえる。地を捲る音が聞こえる。竜の咆哮が聞こえる。
「乗るのは無理でも、飛空艇を補強する資材ぐらいは残るだろ」
ポツリと零れた声は空中から。
勇士達が見上げたそこには風を纏い、宙に浮かぶルイス・グリッド(生者の盾・f26203)の姿。
「そう言えばそうよね。私達の艇、オンボロちゃんになってたけれど、そういう手もあるわね」
「帰り道、安全向上」
「依頼品に手を付けることになっちまうが、まあ、状況が状況だ。多少は仕方ねぇだろ」
弓で、弾で、各々の刃で、竜の牽制に参加し続けていた勇士達。それがルイズの独り言に、ポンと手を打つ。
竜との戦いに忘れていたが、乗ってきた艇は応急処置に応急処置を重ねた姿。帰り道を思えば確かに不安もあった。それを解消するに、そういう手段もありかと。
依頼外のことである帝国との一戦で得た物と事情は違うが、生きて帰っての物種だ。事情を離せば依頼人も理解を示すことだろう。いや、手を付けた以上の戦果を持って帰れば、そもそも意見自体を封殺できることは間違いない。
勇士達が竜を倒さなければならない理由が、また一つ増えた。
「ですが、それは宝を守るドラゴンを倒してこそ。どこの世界でも共通するドラゴン退治の物語。見事と成し遂げましょう」
ポツリと零した言葉ではなく、今度は確かに眼下んの勇士達の目をルイスは見ながら。
それに勇士達も破顔して、しっかりとルイスの目を見返す。
――思いは重なり、目指すは一つ。ドラゴンを倒す。それだけ。
「さて、俺もそろそろ動こうか」
ルイスが空に浮かび続けていたのは、ただ戦いを傍観していたのではない。彼はその片目で他の猟兵達と竜との交戦の様子をつぶさに観察し続けていたのである。
砲撃の癖を、猟兵に対する竜の挙動を、軋む体躯の間隙を。その目で、耳で、肌で、一つとして逃さぬように。
情報はもう十二分に収集出来た。ならば、それを宝の持ち腐れとしているつもりはない。情報は活かしてこそであるのだから。
――風を器用に十字と斬れば、生まれいずるは鎌鼬。
真空の刃が戦域を渡り、砲撃を潜り、パンッと音立て竜の身体に一筋を刻む。それは派手に血液を噴出させるようなものでもなければ、その身体の部位を失わせる程のものでもない傷痕。しかし、身体動かす度に生じるチクリチクリとした痛み。鬱陶しく、集中を欠かせるかのような痛みであった。
下手人は誰かと竜がぐるり戦場を見渡し、宙にポツンと浮かぶルイスを確かに視た。
「そうだ。こっちだ。俺を視ろ」
銀の一つ目と竜の白眼が絡み合う。
ガバリと竜の口が開き、同時、音が物理的な衝撃となって戦場を駆けた。
ルイスに叩きつけられる音の響き。そこから感じられるのは怒りであり、苛立ちである。
――来い。
――言われるまでもない。
言葉介さずとも、意思が互いの眼差しを介して通じ合う。
砲塔が動き、鈍い輝きとその口をルイスを向いた。遅れて、腹に響く重低音。数多の砲塔からルイスを目掛けての弾幕が放たれたのだ。
「砲撃に間断がねぇのは知っている。だが、だからといって躱せない訳でも、反撃が出来ない訳でもねぇ」
視続けたルイスであればこそ、それをよく知っている。
まして、今や彼は風を纏う者。風の触覚が砲弾の動きすらをもルイスに伝えていた。
砲弾の雨を潜り、結界の傘で受け止め、幾度もと十字を切る。
――パンッ、パンッ、パンッ!
二筋、三筋、四筋――威力の割りに大きな音を立てて、ルイスは竜の身体に刻み付けていく。
怒りが、苛立ちが竜の中に募っていくことを、ルイスは感じていた。
それを証明するように砲撃は密度を増す一方。しかし、それはルイスの動きを追うに始終するばかりであり、先読みをし、そこに追い込むというような繊細さはない。ただ荒々しくと大地を耕すのみ。
だから、そこから先の結末は全てルイスの掌の上。
「――我を忘れればどうなるか。身を以て知るといい」
粗い行動に隙を見出し、その一点に本命を打ち込むのみ。
ルイスが掌を掲げ、広げれば、幾度と竜の身体に刻んだ傷が呼応する。そこに残した風の欠片を基点とし、は強大なる風の牢獄が展開されたのだ。
突如として動きを結界に阻まれた竜は身を捩るが、強固な結界術がそれを許さない。そして――。
「出来れば、その内の宝も見てみたいものだな。この世界の武器とかもあるのだろうか」
掌をぐっと握れば、それに応じて結界もその境界を乱す。ただし、ただ乱れるではない。その刻んだ傷痕を掻き乱し、傷口広げるような衝撃波と共に。
鱗が裂け、皮膚が裂け、名残と残る艇の部品も裂け、広がる。
竜が痛みにあげる雄叫びとともに、その傷口の奥、宝物の輝きがチラリと顔を覗かせていた。
成功
🔵🔵🔴
桐生・零那
いつき(f04568)と参加
ほぉ、これはまた巨大な竜が出てきたものだ。
宝に興味があるわけではないが……この世界の強者とやり合えるのいい機会か。
しかしあの図体、切り結びに行くのも一苦労か。
どうしたものか……何、いつきにいい手があると?ふむ、なら任せるとしよう。
まさか巨大武者とは驚いた。だが、確かにこれなら。
肩に乗り込んで空へ。揺れるか、ならいつきの肩を掴ませてもらおう。
敵の攻撃を捌くのは、いつきと巨大武者に任せる。
目を閉じ精神集中。この刃が敵へと届く、その一瞬にすべてを賭けよう。
いつきが敵をひるませたのを耳で捉え、開眼。宙に身を放り出す。
≪篠突ク雨≫
その図体の尽くを斬り刻んでやろうじゃないか。
雨宮・いつき
零那さん(f30545)と
わ、でっかい竜…お宝というには、少しやんちゃが過ぎますね
ええ、あれもオブリビオンならば討ち果たすまで
…寝てる所を起こしちゃったのは、少し申し訳ないですけどね
大物には大物をぶつけます
参りませ、天津丸!
二人で天津丸の肩に乗り、放射する焔を推進力に飛翔、空飛ぶ竜に向かって突っ込みます
少し揺れますから、しっかり掴まってて下さいね!
…あ、その、僕にじゃなくて…いえ、いいです
飛んでくる砲撃は斬城刀で斬り捨てたり、横に向けた刀で受け止めたりして防ぎましょう
最接近したら、斬城刀の鎚の部分で竜に一撃叩き込んで怯ませ、零那さんが飛び移る隙を作ります
思いっきりやっちゃって下さい、零那さん!
艇はヒトを乗せるものだ。ならば、それがヒトより小さいということなどあろう筈もない。まして、それが財宝や物資を運ぶ輸送艇であったというのなら、その大きさは殊更にであったことだろう。
「ほぉ、これはまた巨大な竜が出てきたものだ」
「わ、でっかい竜……」
故に、桐生・零那(魔を以て魔を祓う者・f30545)と雨宮・いつき(憶の守り人・f04568)が見上げる先にある竜――件の輸送艇を下地として生まれたそれ――が、巨大なるも宜なるかな。
だが、だからといって二人が気圧されたのかと言えば、そんなことはない。むしろ、珍しいものを見るかのような気楽ささえそこにはあった。
「私は宝に興味があるわけではないが……この世界の強者とやり合えるのにいい機会か」
「お宝というには、少しやんちゃが過ぎますしね。ただ、そうですね。あれもオブリビオンというのならば討ち果たすまで」
「はは、いつきも随分と好戦的なことを言う」
「誰かに影響されたのかもしれませんね」
「おや、そうなのか。いったい、誰なのだろうな?」
「誰なのでしょうねぇ?」
それもそうだろう。零那にしても、いつきにしても、程度はさておき、自らより巨大である相手との交戦ならば既に経験済み。今更とそのような相手と相見えたとして、何の気後れをしようというのか。それに、その見た目が全てではないことを、二人は互いに知っている。
「――でも、それはさておき、寝てる所を起こしちゃったのは申し訳なかったでしょうか」
「構わないだろう。寝ていようが、起きていようが、どちらにしても討たねばならないのはいつきの言った通りだ。……いや、寝ていた方が試し斬りはしやすかったか?」
「あはは、少しばかりあの竜に同情してしまいます」
「いやいや、大事なことだ。あの図体、切り結びに行くのも一苦労だろうからな」
二人はかの竜に過度な脅威は覚えていない。だけれど、それが脅威皆無であるということを意味しない。
彼我の体格差が大きければ大きい程、相手の一撃は速く、重くなる。そして、こちらの一撃は浅く、軽くなってしまうから。
「さて、どうしたものか」
それをひっくり返せるだけの術が零那にもないではないけれど、そのためには些かの時間を要する。暴れ回る竜を相手取りながらでは、骨も折れようというもの。ただし、だ――。
「僕にお任せいただけますか?」
「……何、いつきにいい手があると?」
「その通りです」
それはあくまでも零那一人であったならば。今、帝国との一戦に引き続き、彼女は一人ではない。頼もしき友が、いつきが傍らにあるのだから。
「ふむ、なら任せるよしよう」
「内容は聞かなくても?」
「それこそ構わない。いつきであれば、どうにかしてくれるだろう? あの艇での時のように」
「……はは。そうですね。ええ、勿論です」
ならば、その信頼に応えよう。
何の気負いもなく、さも当たり前にと言う零那。いつきの口元が一瞬綻び、すぐに引き締まった。
「――大物には大物をぶつけます。参りませ、鉄攻武神・天津丸!」
大地に五行相克の陣を敷く。淡く輝くその中央――いつきと零那の足元――より、現れ出でるは武者鎧。ただし、それは竜の体躯に勝るとも劣らぬ大具足であった。
「おぉ、まさか巨大武者とは驚いた。だが、確かにこれなら」
「行けますとも。いえ、辿り着かせて見せます!」
いざ、発進の声も高らかに。
いつきと零那をその肩に乗せた天津丸が轟音と共に動き出す。その大質量を後押しする焔に背中を押され、竜の懐へと潜り込まんとして。
だが、それだけ自身に比肩するだけの巨大なるが現れれば、竜とてその存在に嫌が応でも気付こう。そして、気付いたからには弾幕の洗礼でもって、その侵攻を妨げんとするは当然のこと。
――砲塔がその向きを変え、砲撃の瞬きが幾つも、幾つも。
「回避行動に移ります! 少し揺れますから、しっかり掴まってて下さいね!」
「揺れるか、ならいつきの肩を掴ませてもらおう」
「……あ、その、僕にじゃなくて」
「ん?」
「……い、いえ、いいです。とにかく、落ちないように!」
「ああ、目でも瞑って精神集中でもしていよう」
天津丸であれば数発程度、直撃を耐えきることも出来るだろう。だが、直撃は貰わないに越したことはない。
時には噴射する焔の角度を変え、推進の力を変える。時にはその手に携えた斬城刀にて、砲撃の雨を文字通り斬り拓く。
絡繰り操作も巧みにと、いつきは弾幕の中を突っ切っていくのだ。その肩に触れ続ける熱が離れぬように、その肩に掛かった信頼を落とさぬように。
そして、遂に――。
「……っ! 弾幕、抜けます!」
「やはり頼りになるな、いつきは」
砲撃弾ける煙を裂いた向こうに見えるは竜の姿。間近で見るその姿、その色ががより鮮明にと。
最早、この距離では竜も弾幕を張ることは出来ない。すれば、その衝撃は自らにも返ってきかねないからこそ。
「こいつは重畳。叩き斬り甲斐もあるというものだ」
――それじゃあ、いってくる。
ぱちりと目を開いた零那。その精神はこの上なく研ぎ澄まされ、まるでヒトの姿をした刀がそこにあるかのよう。
いつきの肩から熱が離れ、零那の身が宙に踊る。
これに成さんとするは斬鉄ならぬ斬竜の業。
影無と神威。二刀の鯉口を切る音が僅かと響く。
――迎え撃つように竜の顎が動いた。その奥に高熱量の光を宿して。
それは艦載砲ではない。竜が自らの口を介して吐き出さんとした吐息。ヒトなぞ呑み込まれれば容易く融かされるであろうそれ。
だが、飛び出した零那の身体はもう止まらない。慣性のままに竜の顎に身を晒したまま。だけれど――。
「させ、ませんっ!!」
いつきが天津丸の槌でもって竜の顎をカチ上げる。
竜の顎より解き放たれた眩い光が空を裂き、雲を散らし、天へと駆け上がっていく。
――誰より零那が知っていた。止まる必要など欠片もないのだと。
輝きに零那の目が白く染まる。だが、問題はない。刃たる己に目など要らぬ。そこにあるをただ斬るのみ。
「竜は目の前です! 思いっきりやっちゃって下さい、零那さん!」
真白の世界の中、耳に届いた導きの声は友のそれ。
「――篠突ク雨」
解き放たれた白刃が謳う。
本来であれば一振りで複数の敵を刻むその業。それを今はたった一匹の竜のためだけに。
零那の身体が大地へと降り立つ頃には、焼かれた瞳も彩を僅かずつ取り戻していた。
「なかなかに斬り応えはあったな」
納刀の音が鳴り響けば、その音でようようと竜の身体が斬られたことを思い出す。無数の刃が刻んだ軌跡、その証から生命の滴を零しながら。
いつきに回収される零那の背後、竜の悲鳴がその背に届いていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
ゼノがひどく慌てる事はもう無いだろうが、サポートは行おう
今度は一方的なサポートではなく、共闘を考えている
体の大きな相手でも、牙の届く範囲なら予想がつく筈だ
攻撃範囲から退避させ、安全を確保した上で支援と敵の情報収集を頼みたい
この世界のものであれば勇士たちの方が詳しいだろう
効果的にダメージを与えられる箇所が分かればそこを攻撃したい
戦況を冷静に判断する、先と同じ事だ
弱点が分かったとしてもドラゴンの体や輸送艇の名残は頑丈、こちらもそれなりの威力が必要か
敵の頭の動きから牙の軌道を予想し回避、カウンターでユーベルコードで攻撃を仕掛ける
特注弾だが遠慮なく撃ち込み、破壊する
…アレを倒して全部持ち帰る、だろう?
目的の宝がよもやの竜化。更にはこうして敵対行動を取ってくるなど、それはとびきりのアクシデントであったと言えよう。
だけれど――。
「ふむ。今回は大丈夫そうだな」
「ええ、ええ! 一瞬、目の前が真っ白になりかけましたけれどね!」
「一瞬で我に返れたのであれば、まずはいいだろう」
「ありがとうございますっ!」
念のためとゼノの傍に控えていたシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)が彼を見れば、今回は導く必要性が薄そうだ。
しいて言うのであれば、その忘我の一瞬も本来であれば命取りになり得るが、それよりもその程度で済ませたことをシキは褒める。今、それを指摘して士気を下げる必要性もない。反省会をするにしても、まずはここを生きて帰ることが第一。その後でなら幾らでもだ。
「これなら、あんたに背中を預けられそうだ」
「はいっ! ……え?」
「仲間だろう? 一緒に戦ってくれ」
「……分かりました。私で良ければ」
「あんたでいいんだ」
今度は一方的なサポートをするためにではない。共に戦う相手として。
その言葉にゼノの顔が少し歪み、ふるりと頭が振われる。動きが止まった時には、引き締まった顔がそこにはあった。
「それじゃあ、あんたは後ろ。見た情報、気付いた情報を俺に、皆に伝えてくれ」
「了解です」
相手は巨大なる竜。しかし、その基となったモノは艇であり、それはきっとこの世界に生きるゼノ達の方が構造等をよく知っている筈。そのための依頼。
では、シキは何をするのかと言えば――。
「ドラゴン退治か。……何、経験がない訳ではない。やれるようにやるだけだ」
決まっている。他の猟兵達と同様、前に出て、竜と相対するだけ。それが一番危険な役割ではあるけれど、そこに気負いはない。
――接近は影の如く、音もなく、気配もなく。
艦載砲の弾幕が他の猟兵達へ向いている隙、シキは戦場を駆ける。
時に直線、時に迂回。竜の正面、側面、背面、四方八方を駆け、跳び、竜の弾幕に負けず劣らずの弾丸を浴びせ続けていた。
「どうだ?」
「駄目ではありませんが、効果は薄いとしか」
「そうか。やはり通常弾ではな」
「すいません。装甲の継ぎ目を狙ってもらったというのに……」
「いい。通じないということが分かったのなら、それで」
しかし、竜の鱗であり、艇としての装甲は通常弾では貫ききるに足らない様子。想定内と言えばその通り。芳しくない結果の情報が集まるのであれば、それはそれで成果であるとも言えた。
そう。通常弾で足りないという結果があるのなら、その上を用意すればよいだけなのだから。
「――これなら、どうだ?」
通常弾とは異なる色の弾倉は、それが特注であることの証。
カチリとトリガーを引けば、その反動はシキをしてその手を痺れさせるもの。
――着弾。破裂。悲鳴。
通常弾であればあり得なかった結果がそこに。
「効果あり! 装甲下の皮膚が露出しています!」
「そうか。こいつなら充分なようだな」
一拍の間をおいて続けざまに放てば、装甲の破れ目は広がり、竜の皮膚がより抉れていく。そこでようやく、竜もシキが自らの脅威であるという認識を持つに至る。
ギョロリと目が荒野を見回し、痺れる手で弾倉代えるシキの姿を竜は捉えた。
――あれを再びと放たせてはならない。
自らの皮膚を焼いた痛みを思い出し、竜の身体が、首が、その先の頭部が動く。
「噛みつき、来ます!」
「ああ、見えている」
経験という知識がシキの中で総動員され、その到達地点を彼は予測する。
――ガチン。
シキが跳び退いた場所で火花が散って、その奥から零れ出る生温かい息が酷くシキの鼻をついた。
「臭い吐息だ。こいつで口の中を――」
「いけません! 砲塔が動いています!」
「――チッ!」
吐息のお礼に火薬の歯磨き粉をプレゼントしようとすれば、竜の体躯の影で砲塔がシキを撃たんと動いていた。
それに気付けたのは、ゼノがシキの動きだけでなく、竜の全身をも観察し続けていたから。
だが、跳び退り、まだ宙にあるシキはそれ以上の回避行動を取れない。いや――。
「癒しの風よ、かの身を巻き上げなさい!」
――ゼノが放った癒しの風。それがシキの身を更に宙へと押し上げて、砲塔の睨みから外したのだ。
それは本来の癒しの風の使い方ではないだろう。だけれど、自らの手札で何が出来るかを咄嗟に考え、実行したゼノの成したことであった。
戦況を冷静に判断する。シキから受けた薫陶が、ゼノの中で確かに息づいていた証拠がここに。
「助かる」
「いえ!」
押し上げられた宙。眼下に竜を見据えて、シキの銃口が改めてとかの身を睨む。
残留していた手の痺れもない。癒しの風が本来の効果で吹き払ってくれたから。
「……アレを倒して全部持ち帰る、だったな?」
「っあ゛ー! 皆さんしてそれを言うんですから!」
「ふっ、いいじゃないか。成長の証だそうだぞ」
強烈な反動がシキの手を駆け巡り、即座に癒しの力がそれを抑え込む。
―― 一発、二発、三発。
常であれば一発ずつ、間をおいて放たねばシキの手が悲鳴をあげかねない銃弾。だが、今は癒しの風の後押しを受けての連発。
着弾。着弾。着弾。
装甲を砕き、皮膚を焦がし、身体の内を焼いていく。
牙での反撃も、艦載砲での牽制も出来ず、竜はただその衝撃に身を転ばせることしか出来なかったのである。
成功
🔵🔵🔴
月凪・ハルマ
ドラゴンか。冒険、財宝とくればある意味鉄板だな
◆SPD
速攻で【天津太刀風】使用
敵の攻撃を【見切り】【第六感】で回避しつつ、
敵全体を視界に収められる位置まで移動した後、風の刃を放ち攻撃
敵のUCのブレスの事もある。頭部がこちらを向いたら
即座にブレスの射線から外れる様に移動
勇士の5人にもその辺は注意するように伝えておく
ところで……注意を促しておいてアレなんですが、
少しだけあの龍の気を引いてもらえません?
いや、見た感じ上手くやれば乗り込めそうなんで
外より中の方が確実に脆いはずですし
【迷彩】で姿を隠し、【目立たない】様に敵の体(艇?)内に潜入
【武器改造】で爆破機能を付与した手裏剣で荒らし回ってやる
冒険の果て、財宝の山を前にしてそれを守る竜と対峙する。それはどの世界でもよく聞くお話。
「まぁ、ある意味鉄板だな。こうして対峙する側にならなければ」
月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)の周囲には次々と竜の放つ砲撃が雨と降り注ぎ、着弾の衝撃が生む風にハルマの羽織がはたはたと揺れていた。
だけれど、ハルマの頭上にだけはまるで嵐の目か、はたまた、傘差したかのような空白。
それは竜の躍動を見るにつけすぐさまと展開した天津風。天高くと吹き抜ける風の刃で、ハルマは自らに降り注ぐ砲撃を見極め、捌いていたのだ。
「しかし、なんとまぁ、濃い密度だな」
いい加減、腕も疲れてくる。なんて、冗談にもつかぬ独り言。
だが、そうも言いたくなるほどの雨霰。途切れ目を見せぬそれに、ハルマとて思わず辟易もしよう。
現状、その場に留まり続けることは不可能ではない。しかし、それ以上に前へ進むとなると、更なる弾幕の密度の中で傘を差し続けられるかと言えば――。
「少し、厳しい……かな?」
砲撃に息継ぎでもあればそうではないだろうけれど、捌き続けた時間が、ハルマの第六感が、その期待は出来ないと告げていた。
なら、どうするか。
「近付けないなら、今はまだ近付かない」
逆転の発想である。
ハルマの思いとすれば、艇でもある竜の身体に今すぐでも乗り込んでみたくもあったが、そうは出来ない。であるなら、それが出来るように下拵えをするべきだ、と。
――じり、じりと下がれば、それに伴って弾幕の圧も弱まっていく。
竜の全身を視界に収められる程度へ下がった頃には、大雨も小雨程度。これであれば、傘はもう必要あるまい。そして、傘が必要ないということは攻撃へと転じられるということ。
「――吹き祓え、風刃……!」
砲撃の隙間、縫うようにして奔るは不可視の風刃。矢のように翔け、矢よりも自在に翔け巡る。
――斬。
文字の如くと、竜の鱗/艇の装甲に亀裂が走る。
その傷痕から飛び散ったのは血液か。はたまた、木片の類であったのか。
「すっご、この距離であれだけの威力って出せるものなのね」
「俺らじゃ、柔らかいところを狙うのが精々だな」
それを目に留めた勇士が正しく目を丸くする。
彼らの矢も銃弾も、装甲を射抜く程の威力はない。装甲そのものに覆われていない部分を狙うしかなかったのだ。
そして、得てして装甲に覆われていない場所は重要でない箇所が多く、そうでなかったとしても竜とてそれを理解するが故に守りは固い。
勇士達――その中でも取り分け遠距離を担うカルロとラプラ――が、装甲を容易くと超えたハルマに感嘆を覚えるのも致し方ないことだろう。
「いえ、威力があるのも良し悪し。ほら、こっちを見てます」
突如として奔った痛みの原因。その方向を竜の眼差しが敵意をもって睨みつける。その視線は、確かにハルマを捉えていた。
唐突にハルマの脳裏へ、そういえば。が思い浮かぶ。
財宝を守る竜のお話はある意味で鉄板。ならば、竜の生態として鉄板であるのは――。
「あ、あー、皆さん。竜の顔、正面から急いで逃げて下さい。今すぐに」
「え、は? どうしたってんだ?」
「……ブレス、あるかもしれません」
――竜と言えば火を吹いたり、その宿す属性に応じた吐息。あれがそれを持たないとも限らない。
砲撃が一瞬と止まった後、その予感を立証するようにガパリと竜の顎が開かれる。中には、チロチロと燃える炎。
ああ、あれは火属性であったか。なんて、愚にもつかぬ思考が誰かの脳裏を過る。
「回避ー!!」
叫んだ声は勇士達の中で最も目の良いラプラ。その声へ弾かれるように、勇士達が飛び退き、ハルマも同様に。
ブレスが直線を薙ぎ払えば、大地にその軌跡が刻み込まれる。耳を澄まさなくとも、シュウシュウと熱せられる音が辺りに響いていた。
「無事ですか?」
「なんとか」
「注意があったお蔭でな」
追撃される様子はない。煙が隠れ蓑となったか。はたまた、あれで排除出来たと竜が思ったか。それとも、連続で放てないのか。
だが、どんな理由であれ、その時間をこれ幸いとハルマは勇士達の無事を確認する。
その返事はすぐに。舞い上がった砂塵や小石がぶつかり、小さな傷は負っているようだが、問題はなさそうだ。
「……皆さん、お願いがあります」
「どうした。かしこまって」
「今のブレスを見た上で言うのもアレなんですが、少しだけ、あの竜の気を引いて貰えません?」
「……ふむ」
「さっき、ブレスを吐く直前に弾幕が鳴りやんだんです。見た感じ、上手くやれば乗り込めそうなんですよ」
それはブレスが吐かれる直前の光景。竜が顎開いた瞬間、確かに砲撃の音が鳴りやんでいた。つまり、その瞬間を狙えば、ハルマが当初考えていた竜の内部へ乗り込むことも不可能ではない。
ただ、それには勇士達の協力が不可欠であって――。
「いいわよ」
「ああ、俺らがここで千日手するよりよっぽどな勝ち筋ってもんだ」
「言った俺が言うのもですが、そんなアッサリ……いいんですか?」
「カルロの言う通りだし、あなた達ばかりにいい格好はさせないわよ! なんてのはさておき、私達だってあいつに一泡吹かせてやりたいの」
彼らにも彼らなりの矜持がある。猟兵達にばかり頼るでは、何が勇士か、冒険者か。
「そうですか……なら、頼みます」
「あ、でも、一つお願いがあるの」
「俺で叶えられることでしたら」
「あなたのその羽織、貸して頂戴」
それが勇士達の出した条件であった。
――ブレスが迫る。
「どぉわっ!?」
「カルロ、無事!? こんの!!」
ハルマの羽織を纏ったカルロ。その背中を追いかけて。
飛び込むように躱せば、今度はあがる煙に隠れてラプラがその羽織を引き継ぎ、駆ける。
竜の視線がそれを追いかけ、またガパリと顎が開いての繰り返し。
そう。ヒトが竜や獣の見分けをすぐに付けられないように、この竜もまたヒトの見分けなど大雑把にしか行えない。その点を突いて、勇士達はハルマの羽織纏うことで自分達を囮と変えたのだ。竜であれば、自らを傷つけたハルマのその特徴を追いかけるであろうと踏んで。
そして、その考えは見事に嵌った。今や、竜は砲撃の手を休めて勇士達をブレスで追いかけまわすことへ始終している。ブレスを放てば放つ程、本当の脅威が迫るなど知りもせず。
「うーん、一寸法師の気分ってこんなのだったんだろうか?」
竜にとっての本当の脅威――ハルマは既に艇/竜の中。
自身が、他の猟兵達が刻んだ傷から内部へと入り込み、肉と輸送艇の素材とが入り組む体内を進んでいた。
時折と粘液を引く肉片から距離取りつつ、ある程度進んだ先で取り出すは針の刀――ならぬ、爆薬付きの手裏剣。
「それじゃ、のたうち回る鬼の気分をドラゴンの方には味わってもらおう」
一二の三と掛け声要らず、えいやとぉの掛け声も出さず、無慈悲に手裏剣をばらまいて――ドカン! 装甲に比べて格段に柔らかい内部をハルマは荒らしていく。
外では突如として竜がブレスを止め、痙攣するようにのたうち回り始めていた。まさしく、一寸法師を呑み込んだ鬼のように。
「やってくれたっぽいかしら?」
「だろうな」
ようようと足止め、息継ぎながら勇士達はそれを見守る。そして――。
「危ない危ない。胃の中に入り込むところだった」
他の猟兵達の攻撃によって刻まれた竜の勝手口から、ハルマがのそりと飛び出してくる。
「財宝積んだ艇であったってのは本当みたいだね。さぁ、あと一押しして冒険を大団円で終わらせよう」
その両手に黄金の輝き幾つか、ちゃっかりと納めながら。
戦いが終幕に向けて加速していく。
大成功
🔵🔵🔵
カイム・クローバー
おいおい。ご機嫌ナナメじゃねぇか。気持ち良い睡眠の邪魔しちまった事に大層ご立腹な様子で。それとも昼食がまだだから拗ねてんのか?…餌は此処だぜ、来いよ。(腰を落として手を叩いて犬を呼ぶように)
ドラゴンと接触する前に勇士達には離れるようには言っておく。ま、アレの腹の中で金銀財宝と戯れたいってんなら、止めやしねぇが。
ドラゴンの牙を顔を蹴って跳躍して躱し、頭の上に乗るか。ドラゴンの上から空を眺める。……そーいや、中華世界でも酒臭い息の龍に乗ったっけな、と思い出し、苦笑。
二丁銃をガンスピン。頭蓋にUCの【クイックドロウ】を叩き込んで、頭を蹴って離れるぜ。
――風と空と財宝か。ハハッ、良いね、ノッて来たぜ。
竜の雄叫びは大地を幾度も揺らす。
「おいおい。ご機嫌ナナメじゃねぇか」
ビリビリと響くそれはカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)が感じた通り、怒りに満ちていた。
さて、それは睡眠の邪魔をされたことにか。それとも、腹を空かせてしまっているからか。もしくは、傷つけられた痛みがあるからか。
「あんたらはちょっと離れてた方がいいぜ。手負いの獣にしても、腹空かせた獣にしても、そういうのは相手するにも手を焼くからな」
言葉は決して良くはないが、それは戦い続きの中で動き鈍り始めた勇士達を一時的にせよ遠ざける文言。
「……すまんな」
「なんのことだか。俺は別に止めてる訳じゃないぜ? このまま無理して、アレの腹の中で金銀財宝と戯れたいってんなら止めやしねぇしな」
悪し様は止まらないが、それでも勇士達には確かに伝わっていた。一人、二人と後退し、回復の術に傷と疲労の癒しを代わる代わる。
――それでいい。
これから行う無茶に、カイムは勇士達を巻き込むつもりなどないのだから。
――鋼で補強されたブーツが砂利を噛む。
向かうは砂煙の先。先程まで、痛みにのたうっていた竜の在り処。
ざりざりと大地を踏んで進む足はどこまでもマイペース。走るでもなく、止まるでもなく。
また、咆哮が砂煙の向こうから聞こえてきた。
「……餌は此処だぜ、来いよ」
互いを隠す砂煙の壁。だけれど、カイムは竜が自らを捉えていると理解している。大地揺るがす咆哮が明らかに、カイムへと向けて収束し始めていたから。
それを理解した上で、彼は敢えてとその腰を落す。まるで、小さな犬を呼びつけるかのように。あやすように手まで叩いて。
――巨体の影に土煙が割れた。
だが、そこから飛び出てくるのが子犬などという可愛らしいものではないことは、カイムとて百も承知。
「はっ、涎撒き散らして飛び掛かってくる程に嬉しかったかよ」
牙剥き出し、その口内で噛砕かんと迫るは竜の顎。優雅に空を翔けてではなく、地を這いずりながら新たな砂煙を巻き上げて。
本能剥き出しに迫りくるそれを一笑に付しながら、カイムは正面から見据え返す。
まだ抜かない。まだ動かない。そして、竜の顎がカイムへと到達する。その刹那――。
「それこそ、お前の腹の中で金銀財宝と戯れる気はないんでね」
――竜の視界からカイムの姿が掻き消えた。
顎は虚しく空気を噛み、擦れた歯がその勢いに火花を散らすのみ。竜が期待する味は口内のどこにもありはしない。
突如として消えたカイムの行方を捜すように、竜は頭を持ち上げて砂煙の向こう側をギョロリギョロリ。
どこにもいない。遠目に見えるのは勇士達の姿だけ。いや、それでも構わないか。
姿なき目標を捜すは諦め、勇士達をその標的にせんと。
「……そーいや、中華世界でも龍の頭に乗ったっけな。あっちは随分と酒臭かった。こっちは野性臭いけどな」
――竜の耳にカイムの声が確かに届いた。
どこから。頭上から。
カイムの姿は消えたのではない。噛みつかれる刹那に跳躍し、その身を竜の頭上に移していたのだ。
それを理解した竜が頭を振り、カイムを叩き落とさんとする。
「やってくることも同じときたもんだ! なら、同じもんを味合わせてやるよ!」
上下左右に振られる頭。その動きを利用し、カイムはより高く、高くへと。
――風と空と財宝か。ハハッ、良いね! ノッて来たぜ!
引き抜く時は今こそ。撃ち抜く時は今こそ。
カイムの手の内でくるくると回る双頭の魔犬――その名を冠した二丁銃。主の機嫌を示すように、その動きは滑らか。
――ピタリ。
止まれば、その銃口が睨む先は一つ。
「Jack pot!」
再びと噛みつきに動かんとしていた竜の頭。
どちらの攻撃が先に相手へ到達するか。そんなもの、決まっている。
紫電纏う銀の弾丸が竜の鱗を抉り、深々と突き立つ。割れた鱗の先から血液を吹き零しながら、竜の体躯が重い地響きを奏でた。
大地に立つは一人。着地の風にトレンチコートの裾を黒翼の如くと広げながら、カイムが不敵な笑みと共に。
成功
🔵🔵🔴
シャルロット・クリスティア
(浮遊大陸の地面を確かめるように踏みしめつつ)
ん……空の旅も嫌いではないですが。やはり、地に足がついているほうが落ち着きますね。
さて……これが今回の獲物ですか。家探しは気がひけますが、竜殺しであれば望むところです。
しかし……全身、しかも核まで利用価値があるとなると、うかつな攻撃で傷つけたくないですね……となると、脳を一撃、しかないですか。
しばらくは飛空艇の物陰に隠れさせてもらいましょう。
気配を消し、存在を消し、何もいないと思わせて。
そうして、射線が決定的に開いたその一瞬をじっと待ち、打ち抜く。
狙いは眼球。頭部で最も脆いそこを抜き、脳天を抜く。
言うほど簡単ではないですが……素材のためです!
トリテレイア・ゼロナイン
※ロシナンテⅢ騎乗
財宝貯め込む竜は兎も角、財宝が竜と化すとは聞いたことも…
(世界知識、検索)
UDCEの北欧
呪われた黄金護る小人が変じた竜…
成程、天使核とは呪物と表裏一体の宝でしたか
勇士達を噛み付きからかばう為、急降下から大盾で口を殴打
…敵の体躯が熱風を帯びた?
こちらの耐熱温度を悟られましたか
電気であれば対処の仕様があったのですが…
(最近防磁処理済み※電撃耐性)
地上に火炎吐かせぬ為
囮となり躱しつつ空中戦
大盾を投擲し目潰し
本命は…こちらです
UCの鉄球操り顎下強打、炎を上に吐かせ
そのまま鉤爪と怪力で地上へ叩き付け
ゼノ様、熱風吹き飛ばす癒しの嵐を!
皆で一息に叩きます!
急降下の勢いのせ馬上槍を投擲
抉り、焼かれ、斬られ、様々な傷を負った竜。弱れども退かぬは野性の本能か。
だが、空飛ぶ翼は健在なれど、大地に何度となく墜とされ、土と血に塗れた姿は空の支配者足りえぬ姿。
それを空より眼下に収める者達があった。
「ん……空の旅も嫌いではない。嫌いではないのですよ?」
「戦闘起動中ですので少々運転が荒々しくはなるかもしれませんが、決して落としはしませんので、ご心配なく」
「いえ、そういう心配ではなく、やはり、地に足が付いていた方が落ち着いたなぁ、と今更ながらに」
「……ふむ。私の世界は無重力に親しんでいますので、その辺りで感性が異なるのかもしれませんね」
それはロシナンテⅢに搭乗したトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。そして、そのサブアームを居所としたシャルロット・クリスティア(弾痕・f00330)。
サブアームの支えは万端で、その掌より自ら零れ落ちぬ限りシャルロットが大地に真っ逆さまとなることはない。だけれど、それはそれとして、やはり自ら大地に立つとはまた違った感触があろうというものであった。決して、自らの関与できぬ飛行が怖いわけではない。ええ、決して。
「こほん。……気を取り直していきましょう。あれが今回の獲物ですか」
「そのようですね。あれだけ傷付いてなおまだ動くとは、竜種の頑丈さが窺い知れます。それとも、艇との融合がダメージコントロールを可能にしているのでしょうか?」
「それは分かりません。ですが、ここで止めを刺さなければならないことだけは確かなことでしょう」
そうでなければ、怒り狂った竜がどのような行動に出るかは分からない。ともすれば、猟兵と勇士達が来た道を辿り、ヒトのある浮遊大陸まで到達する可能性も十二分にある。そうなった時、そこで繰り広げられるであろう阿鼻叫喚は決して起こしてはならないことだ。
「竜殺し、望むところです」
「ええ、必ずや」
それを経験しているシャルロットであればこそ、今を生きる者達の盾たらんとするトリテレイアであればこそ、その決意は固い。
「――ところで、シャルロット様は財宝が竜と化すお話というものを御存知ですか?」
「……? いえ、竜は宝を貯めこむものというのが定説でしょう。あの竜のように、それは中には例外もあるでしょうけれど」
「そうですね。中には、UDCアースへ伝わる伝説に語られるものとして、黄金に魅入られた小人が竜に変じたというものもあるようです」
「へぇ、そうなのですか?」
「はい。ここでいう黄金とは、まさしく天使核のことなのではないでしょうか?」
「……ふむ」
「天使核という呪物……財宝が核となり、あのようなドラゴンを生んだのであれば……」
「それを撃ち抜けば、帝国の艇のようにその機能を停止させることも出来る。それは天使核を失うことにはなっても、他の部分を利用するにはもってこいですね」
「はい、私はそのように考えます。そして、その在り処は……」
「心臓部か。はたまた、脳にか」
「そうなるかと。そして、その答えが丁度出たようです」
眼下では他の猟兵の手によって、その頭部が割られる瞬間が繰り広げられていた。そして、溢れ出す生命の滴の奥、砕けた頭部の鱗の隙間から見えた物こそ――。
「お誂え向き。ありがたい話ですね」
――二人が狙うべき、最後の場所。天使核の在り処。
「シートベルト……はないので、ロープでその身をしっかりとお閉め下さい」
「ええ、振り落とされては一大事ですからね。では、よろしくお願いします!」
最後の戦いへの幕があがる。
それを告げるかのように、ロシナンテⅢはその眼下へ向けて急降下していくのであった。
――大質量が風を裂く音に、竜が頭上を仰ぎ見る。
その視界に映ったは、当然の如くとロシナンテⅢ。自身目掛けて矢のように突き進むを見て、竜は新たなる脅威の出現と認識する。
しかし、竜にとっての幸いか。気付けたということは、それの迎撃する機を得たという事。
顎がメキリと音立て開き、その奥に熱量の光源を点す。
――轟。
間を置かず放たれたそれ。急降下するロシナンテⅢと同様に風を裂き、空登る光の柱へと。
「そう来ると思っていました」
センサーを圧する光。ヒトであれば直視すれば目も潰れようが、トリテレイアであれば問題ない。冷静にと大楯を構え、ぶつかり合うそれが空に幾筋もの光の軌跡を描いていた。
重力と高所からの運動エネルギー、そこに加わった推力。光が押し返され、その身はじりじりと確実に竜の居場所へと二人を導いていく。
――警報。
順調と思われた矢先のそれ。
「自爆覚悟ですか……!」
大楯に食い込んだは、吐息吐き出しながら空へと舞い上がった竜の牙。光の柱は目隠しで、そちらこそが本命であったのだ。
だが、その代償は竜にもあった。自爆覚悟とトリテレイアが零したように、吐息を吐きながらのそれは自らの身体も僅かとはいえ焼いていた。
食い込んだ牙の鋭さに大楯が悲鳴をあげる。いや、それだけではない。
「高温検知。熱を得たのですね」
食い込んだ牙を基点として、大楯の装甲が赤熱を帯びる。ドロリ、ドロリ、ドロリ、と。
いつまでも食いつかれていては不利。その判断は早く、食いつかれた大楯ごとトリテレイアは竜の顎を殴り飛ばす。
融解した大楯の一部を道連れに、竜の身体がロシナンテⅢから離れた。恐らく、次に来る吐息はもう大楯では防げまい。
いや、接近戦すらどうなるか。牙だけでなく、竜の身体自体が熱をおびているのだろう。殴り飛ばしたロシナンテⅢの拳もまた僅かに。
近づくも危うく、かと言って遠距離でも吐息を受け止める術が最早ない。
「……出ますか?」
「いえ、まだいけます。それより、シャルロット様こそ、ご無事でしょうか?」
「少し蒸し暑くもありますが、ええ、まだこちらも問題ありません」
シャルロットを覆い包んだサブアームは未だ健在。最悪、そこが無事でさえあれば問題はない。
そう判断した後の行動は早かった。
殴り飛ばされた竜が空中で態勢を立て直すより早く、その機能そ欠損させた大楯を投擲したのだ。
破れかぶれにも見える行動に、竜は落ち着いて吐息を吐く。
―― 一瞬の拮抗。僅かな時間をおいて、大楯はじゅわりと融けた。
最早、遮るものなき吐息はその先にあるロシナンテⅢを呑み込まんと――。
「先程のパターンを模倣させてもらいました。勿論、こちらは自爆など覚悟をしてはいませんが」
――して、何もない空間を薙ぐだけ。
当然だ。防げないであろう攻撃を棒立ちで受けるものなどいない。
元より大楯の投擲は攻撃を試みてのものではなかった。迎撃させることによる目晦まし。それこそが役割。本命はまた別にあるのだから。
――空に弧を描いて影が奔る。
それはワイヤーで繋がれた鉄球。ロシナンテひいてはトリテレイアの怪力に加え、遠心力を持たされた鉄球。それが竜の帯びる熱に融かされるより早く、その身を砕いたのだ。
「些か蛮族染みてはいますが、重火器よりは騎士として格好がつくでしょうか」
炸裂した鉄球がその身より鉤爪を竜の身に食い込ませ、両者を繋ぐ。
「シャルロット様! これより、竜を大地に叩きつけます! 任せましたよ!」
「心得ました」
ぐんと竜の大質量を機械騎士がその怪力で振り回し、浮遊大陸の大地へと解き放つ。
地震にも似た振動が大地を揺らし、その衝撃の強さを物語っていた。
今まで繭のようにシャルロットを包んでいたサブアームが開いていく。まるで、とっておきの伏せ札を開帳するかのように。
シャルロットの視界にはを大地がまるで垂直の壁のようにも見える。ロープでその身を括っていればこそ、大地に垂直であろうともその身が落ちることはない。もしも落ちたとすれば、その身は衝撃に跡形も残らないだろう。
そんな高さから墜とされたと言うのに、竜は再びと傷だらけの身を起こし、怒りを、熱をぶちまけんとしているではないか。
「勇士の皆さんは、まだ無事のようですね」
その無事は如何なるか。
視線を走らせれば、ゼノがその癒しの風を壁として熱の入り込むを防いでいる。
だが、そう長くはもつまい。いや、そう長くを掛けるつもりなど毛頭ない。
――頭部の亀裂。その奥に秘された天使核のみを撃ち抜く。
「言うほど簡単ではないですが……」
数多の猟兵と勇士達が積み重ね、削ってきた竜の身体。そして、その体力。それを引継ぎ、此処で引導を渡すのは他でもない。このシャルロット・クリスティアなのだ。
簡単でなかろうとも、その重責を放棄する選択肢など、シャルロットには存在しない。そのために、ここまで伏してきたのだから。
スコープの先を覗く。重力が身を引き続けるが、銃身はピクリとも揺れない。
シャルロット自身が調整しているのもあるが、トリテレイアもまた風吹く空の中で巧みにと大地の代わりを務め続けてくれているからだろう。
もしかしたら、最初の会話――地に足を付けた方が落ち着く――を気にしているのかもしれない。なんて、思考がシャルロットの頭を過る。
――ありがとうございます。
少し会話しただけだけれど、この生真面目な機械騎士であれば、多分、きっと。
でも、相手が口に出した訳ではないから、シャルロットもまた口に出さず、心の中だけで礼を述べる。
風の声が耳元で聞こえる。時に厳しく立ち塞がり、時に背中を押してくれるその存在。スナイパーとして長い長い付き合いをしてきた彼らを、シャルロットは良く知っている。
――視界良好。風速、問題なし。足場、問題なし。オールクリア。
「最早、外す道理はない……」
カチリとトリガーの引かれる音が響き、弾丸が音をすら置き去りにして飛び出していく。
空を翔け、風に乗り、そして、吸い込まれるように竜の、亀裂の、その最奥へと。
熱を撒き散らさんとしていた竜の身体が一度跳ね、その瞳がぐるりと裏返る。
大質量の倒れ伏す土煙があがり、風に消えれば、もうそこには敵対を示す竜はいない。あるのは、誰もが夢見た宝の山だけ。
猟兵達の、勇士達の勝利がそこには確かにあったのだ。
静寂を取り戻した浮遊大陸の空に、帝国戦から続く二度目の歓声が響いていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『勇士の凱旋』
|
POW : せがまれるままに武勇伝や冒険譚を語る
SPD : 人々と乾杯し、交流を深める
WIZ : ステージに招かれ、スピーチや挨拶を行う
イラスト:Hachi
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
町が特需という名のお祭り騒ぎに湧いている。
そうれもそうだろう。勇士の一団が財宝、物資の数々を、それこそ艇に満載して町に帰ってきたのだから。
それは金銀財宝の山。それは捨てるところなど一つとしてない、竜/魔獣の亡骸という名の資材。
依頼人を通して町に卸された数々が、市民の懐を、腹を、温めていく。
「なぁ、アンタは知ってるかい?」
「ちょっと、話聞いたかい?」
「お前、まだ知らねぇのか?」
町のあちらこちらで囁きが聞こえてくる。
依頼を成し遂げた者達の名前を叫ぶ声が。その者達に感謝する乾杯の声が。我がことのように又聞きした武勇伝を語る声が。
そうやって名前が広まり、顔が広まり、噂が広まり、今やアナタ達が町を歩けば誰もが声を掛けてくることだろう。
せがまれるままに武勇伝を語るも良し。自分達が持ち込んだ竜の肉へ舌鼓を打つも良し。名家や商人と言った上流階級の宴席に参加し、顔を繋ぐことだって良いだろう。
勿論、顔を隠す工夫さえあれば、町の中でも気付かれずに行動することだって出来る。
賑やかな場所で過ごすを良しとしないのであれば、人気の少ない場所で過ごすのも良いかもしれない。
都市郊外の川縁ならお祭り騒ぎの今はヒトも寄り付かず、船渠や鍛冶場といった職人の領域であれば関係者以外は少ないだろう。
帰還までの時間をどのように過ごすかはアナタ達次第だ。
※追記※
カルロ:上流階級の宴席に招待され、参加しています。
ゼノ :船渠で艇の修理や改修について、職人と打ち合わせしています。
ラプラ:酒場の盛り上がりに飛び入り参加しています。
ユグ :ラプラと同様、酒盛りに飛び入り参加しています。
ナト :郊外の川辺でのんびりしています。
勇士達はそれぞれに上記のような別行動をしていますが、猟兵の皆さんが声を掛ければ連れ出して一緒に行動することも可能です。
また、もしも同じ場所に居たとしても、基本的には皆さんが意識しない限り、その場所で予定通りに行動するのみで関わってくることはありません。
セラフィナ・セレスティ
この空気、帰ってきたって感じがするね!
戦果は上上、今回の冒険も楽しかったなー
途中危険もあったけど、冒険だもん危険は付き物だよね
んふふ、ボク好みの魔道具も見つけちゃったし、今のボクはご機嫌さ
さて、どうしようかな~
普段お酒は控えてるけど、今日は飲んじゃおっかな
わーい、ラプラちゃんとユグくんもいたー!
ボクもまーぜーてー!
それじゃ、かんぱーい!
やっぱり冒険の後のお酒は最高だね
ボクはお酒は甘いのが大好きなんだ
この果実酒おいしー!
んん?飲める年だから大丈夫だよー
なんたって百年生きてるからね
おつまみもどれも美味しそうだなー
あ、この酒場のおすすめくださーい!
セラフィナ・セレスティ(celestial blue・f33925)の耳に届くはヒトビトの声。あっちから飛び、こっちから飛び。
空の上では決して聞こえぬそれに、セラフィナはその青の目を細める。
「この空気、帰ってきたって感じがするね!」
機嫌は上々。見知らぬ誰かが呼ぶ、自らの名前に手を振り返してみたりなんかもして。
このセラフィナの機嫌の良さには勿論、理由がある。
「んふふ、ボク好みの魔道具も見付けちゃったしね。戦果は上々さ」
冒険に挑んだ。危険を乗り越えた。そして、その果てに宝物/魔道具も得ることが出来た。その結果として、冒険を楽しめたと感じられた。嗚呼、それだけの理由があれば、機嫌も良くなろうと言うもの。特に、魔道具収集を趣味とする彼女だ。魔道具を得られた部分が一番大きな理由であったのかもしれない。
「これはあれだね。普段はお酒を控えてるけど、今日は飲んじゃおっかな?」
どうしようかな。なんて、考える内にあちらこちらから、うちの店に寄っていかないか。と誘いの声。
セラフィナは姿形だけなら十五程度。流石に、一杯どうだ。という声はなかったけれど、ご機嫌な彼女は自らお酒の味を思い出して舌をぺろり。
――どこにしようかな。
指先が宙をなぞり、店の看板をなぞり、ピタリと止まる。
「あっはは! 店で一番いいお酒ってのは、やっぱり味も良いものね!」
「うむ。こっちの燻製肉もいい塩梅で、酒によく合うぞ」
「え? ほんと~? なら、一口頂戴よ……って、もうないじゃない」
「当り前だ。儂が頼んだ分だからな。欲しかったら自分で頼め」
「けち~」
指でなぞり、一度は通り過ぎた看板の先から聞き知った声。これはもしや――。
「わーい、ラプラちゃんとユグくんもいたー!」
扉開けてからのいらっしゃいませを聞き流し、セラフィナが足踏み入れた酒場には予想通りの見知った顔。ラプラとユグが大テーブルで酒ジョッキと空き皿に囲まれ、そこに居た。
空席に案内しようと近付いてきた店員に断りを入れ、セラフィナは彼らの傍へと歩を進める。
「あら~、セラフィナちゃんじゃない」
「お、なんだお主も何か食いに来たのか?」
「酒場で御飯以外に何の用があるってのよぉ」
「うるっさいわ、酔っ払いが」
既にある程度出来上がっているのだろう。二人の顔は薄っすらと赤ら顔。
「うん! ボクもまーぜーてー! ってね」
「いいわよ、いいわよ! 一緒に楽しみましょ!」
「おう、お主は何か食いたいもんでもあるか? 奢ってやろう」
「なによ、私の時は一口もくれなかったのにぃ」
「当り前だ。セラフィナ達のお蔭で今があると言ってもおかしくはないだろ」
「ま、それもそうね」
「そんなことはないんだけれど……折角だし、その言葉には甘えさせてもらおうかな! あ、店員さん、果実酒くださーい! あと、こっちの男性が頼んでいたのと同じお肉の燻製を」
空の皿を押し退けて、セラフィナもテーブルに自分の席を確保。
空席に案内しようとしてくれた店員が様子を窺ってくれていたのだろう。声を掛ければ即座の対応。ついでに握手も求められたりしたけれど、まあ、チップ代わりと思えば安いものだ。
「……おん? そういえば、お主、酒が飲めるのか?」
セラフィナを知らねば、その疑問も最もというもの。酒場探しの際でもあったけれど、彼女の姿形はあくまでも十五歳相当のものでしかないから。
「んん? 飲める年だから大丈夫だよー」
「へぇ、人は見かけによらないって言うけれど、本当ね」
「そうそう。なんたって、百年生きてるからね」
爆弾投下。
ピシリとラプラとユグが、三人の会話に耳欹てていた者達が、その顔を固める。
「そうかそうか。……なんて?」
「百年だよ。ひゃ、く、ね、ん」
「……聞き間違いではなかったか。というか、儂より長生き」
「……人は見かけによらないのねぇ。ちゃんとか呼んだら駄目だったかしら」
「いいよいいよ、そんな構えることじゃないからさ」
赤ら顔も思わず素面。それへ鷹揚にとセラフィナが対応すれば、固まった空気が少しずつ解凍されていく。そして、セラフィナの注文した果実酒と燻製肉が届く頃には、すっかりと喧騒が戻っていた。
「それじゃ、改めて……かんぱーい!」
「乾杯」
「かんぱ~い!」
ガツンとジョッキが音立て、揺れた中身が飛沫をあげる。
お酒に喉が鳴っている間は、誰しもが口を開かない。開けない。
「この果実酒、おいしー!」
「甘いの好きなの?」
「うん、ボクは甘口派かなぁ。お酒は甘いのが大好きなんだ」
「私はどっちも派ね。お酒ならなんでも大好き! 冒険の後でならなおのこと!」
「あ、ちょっと分かるかも。冒険の後のお酒は最高だものね」
「儂は辛党だが、その点には同意するところだな」
お酒を片手に思い出すのは今回の冒険の記憶。
辛いこともあった。危険もあった。でも、こうして生きて帰れた。しかも、宝物まで持ち帰って。ならば、その全てを酒の肴とするが良い。
思い出話というにはまだそこまで時間も経ってはいないけれど、それでも、お酒の味は舌の動きも滑らかとさせていた。
雑談に花咲き、冒険の話に花咲き、冒険話を聞こうといつの間にやら人だかりも。酒の席にヒトが集まり、ヒトがまたヒトを呼ぶ。気付けば、大宴会の様相に。
「あはは、随分と賑やかになっちゃったね」
「私達を口実にして、お酒を飲みたいだけなんじゃない?」
「こら、お主らはお主らで頼め! 儂のツケにするな!?」
セラフィナが帰還する時までまだ暫く、まだまだ彼女らの酒盛りは終わりそうにない。
空の上とはまた違う、賑やかで騒々しい声が酒場にいつまでも響いていた。
大成功
🔵🔵🔵
テイラー・フィードラ
ふむ、宴である、か。彼らの戦功を考えればそれも当然であろう。
しかし……今回は少々一人で突っ走りすぎたか、勇士たる彼等とはそう話せておらぬ。
そんな中で老骨が出しゃばっても、なぁ……
して、キーテセラ殿よ。そなたの方はどのように過ごすつもりであるか?と人気の少ない酒場で語り掛けられるならば願おう。
かのような新世界、今までの世界の中でも旅や冒険としてはまた色濃くある世界であろう。その中でも此度の祭りはまた盛大なものである。よく味わい、よく騒ぎ、よく楽しんできて欲しいと勝手ながら願っている。
私は。
一つ嗜んでからまた向かおう。戦場は此処だけに非ず、旅はまだ続いた。
外套を羽織り、人目に触れず立ち去ろう。
遠くに、やんややんやの声がする。
「ふむ、あちらの宴は盛況のようだな」
テイラー・フィードラ(未だ戴冠されぬ者・f23928)がその手にしたグラスを傾けつつ、その音に耳を澄ます。
ここは路地裏に程近い酒場。表通りのそれとは違い、人気も少ない。それをうら寂しいと取るか、落ち着いて飲めると取るかは、人それぞれであろう。だが、テイラーにとっては後者であった。
最初の一口はその口内を湿らせるため。
酒の提供と共に差し出されていたコースターの上へグラスを返せば、カラリとその中で氷が鳴った。
「まあ、彼らの戦功を考えれば、それも当然であろうが」
「そのようですねぇ。テイラーさんはぁ、参加されなくても宜しかったのでぇ? この街で噂されるぅ、勇士の一員になってますがぁ」
「……いや、今回は少々一人で突っ走りすぎた。人数に入っていたとしても、彼ら自身とはそう話せておらぬのでな。それに――」
「それにぃ?」
「老骨が出しゃばっても、なぁ……」
相席には、用事がないのであれば。と、テイラー自らが誘ったハーバニーの姿。それへと向けて浮かべたテイラーの顔には苦笑にも似た。
さて、自らが駆け抜けてきた年月に思うことがあったか。それとも、口にした酒が思ったより苦かったか。
「あらぁ、テイラーさんもまだお若いのではぁ? ……ちなみにぃ、お幾つか聞いてもぉ?」
「今年で五十六。気付けば、だ」
「……なんと。三十、四十とばかり。若作りであらせられる?」
「そのように見られていたか。だが、この歳だ。年相応と見られていなかったことに喜ぶべきか、怒るべきか、難しいところだな」
「うふふ~。怒られるのも困りますのでぇ、喜んで頂けると助かりますよぅ」
「口が達者であるな」
「いえいえ。ですが、老骨と仰られていましたがぁ、そうは見えないのは確かですよぅ。恐らくぅ、気が引き締まっているからなのではぁ?」
「どうなのであろうな?」
思い出されるのは最早一年前ともなる記憶。自らの故郷を滅ぼした竜を討ち果たしたこと。
テイラーからすれば、それは旅の目的の一つを達したということでもある。そこで一つの区切りを付けることだって出来ただろう。だと言うのに、彼は未だ猟兵として戦場にあり続けていた。それは何故か――。
「この新世界は……」
思考を一度切り替えるように、乾き始めた舌を再び濡らすように、テイラーはまたグラスから一口。
「……この新世界は、今迄の世界の中でも旅や冒険がまた色濃くある世界のようだ」
「ええ、皆さんのお話を聞くにぃ、そのようですねぇ」
竜退治に財宝探索、今回のテイラーが体験してきたことに限らず、きっと他にも様々とあることだろう。そして、それは冒険の話だけではない。
「祭りについても、そうなのだろう。此度の祭りも、冒険に紐づけられた盛大なものである」
外から聞こえる通りだ。なんて、少しだけ諧謔を加えながら。
「――よく味わい、よく騒ぎ、よく楽しんできて欲しい。老骨の身として、勝手ながら願っている」
湿らせた舌で言葉を紡ぎ終えれば、テイラーの視界には目をぱちくりとさせるハーバニーの姿。
テイラーが重ねた年月は、復讐の刃研ぎ澄ます研鑽に費やされていたことだろう。その若きに祭りがどこまで縁があったことだろうか。だからこそ、年若いが折角の祭りに用事もないでは勿体ない。という想いがあったのかもしれない。
さて、お説教染みてしまったか。などとテイラーの脳裏で思考が廻る。
「……ああ、やっぱりテイラーさんは年相応の方なのですね」
だが、若人を案じる先人の言葉は幾許かでも確かに伝わったらしい。少しだけ地の見えるはにかみが、兎耳の少女の顔に浮かんでいた。
「さて、ではいつまでも私がキーテセラ殿を引き留めていては、楽しむことも出来まいな」
「そうですねぇ。では、折角ですからぁ、ちょっとばかり外を歩いてみましょうかぁ」
「ああ、ここの支払いはしておこう。行ってくるといい」
「……テイラーさんは、どうするのですかぁ?」
「私か? 私は……」
テイラーはカロリと手の中で氷入りのグラスを弄ぶ。まだ、僅かと酒は残っているようだ。
「――私は、もう暫くこれを嗜んでいく。それから向かおう」
「そうですかぁ。であれば、一足お先にぃ。御馳走様でしたぁ」
「ああ」
「あ、そうそう」
「ん?」
「テイラーさんの良き旅路も、祈っていますよ?」
「感謝しよう」
ハーバニーが酒場の扉を潜って外の世界へと歩き出していく。扉が閉まれば、もうその姿は見えない。
テイラーは一人となり、グラスに残った酒を一息に呷る。
「……私の旅はまだ続いていた」
それは切り替えるの思考の答え。何故、まだ彼が猟兵として戦場に立ち続けているのかという。
――己のような弱者でも安心して暮らせる国を作り出すために。
竜を討ち果たしたとて、その願いは未だその胸で色褪せることなくあるからこそ。一つの目標が終わってなお、そのための路がまだ彼の前に続いているからこそ。
飲みほしたグラスを置き、代価をテーブルに並べてテイラーは席を立つ。
ありがとうございましたの声に背中を押され、外へ出れば変わらぬ喧騒がそこにはあった。
その音を打ち消すようにばさりと外套がはためけば、テイラーは自らの身をそれで覆う。
「戦場は此処だけに非ず」
目指すべき場所は遠い。されど、その前には確かに道が続いていた。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・クリスティア
SPD
(港に出向いて飛空艇や素材の流通を眺めている)
(外套やフードで隠してはいるが、本腰入れて隠れているわけでもないのでどうしても声はかけられる)
もうお肉が並んでる。
それに、あっちは骨に……革や甲殻、ガレオン船の木材も並んでるのか。
……っと。
余所者臭さはどうしても抜けませんか。あまり目立ちたくないんです、見逃してくださいよ。
トドメと言ったって、美味しいところ貰っただけなんですから。ほかの人ほど大したことはしていません。
まったく……。
まぁ、活気があるのはいいことですか。
たくましいですね、ここの人々は。
(なんだかんだ押し付けられた竜肉の串焼きを食べ歩きしながら、市場の奥へと消えていく)
そこに潮騒の声はない。
「やはり、空に繋がっているのですね」
港へ足を運んだシャルロット・クリスティア(弾痕・f00330)であったが、そこに広がる光景は見慣れたようで見慣れぬもの。波間ではなく、空に浮かぶ艇達の光景。ただ変わらないのは、そこで仕事をするヒトビトの姿だ。
勿論、ここがそうであるというだけで、内陸部の水辺などであればまた見知った港の姿もあるのかもしれない。此処がこの浮遊大陸の外縁部。幾つかある玄関口だからこその光景でもあるのだろう。
様々な艇が並び、それぞれの艇にヒトが出入りを繰り返している。その中で、一番ヒトの行き来が多いのは――。
「既に幾らか降ろしていましたが、まだまだ時間が掛かりそうですね」
シャルロット達の乗っていた艇であろう。
出ては入り、出ては入り、作業員の行き来の度に箱詰めされた宝や物資が外へと運び出されていく。時には箱の中へ入り切らぬものも。
既に幾らかは積み荷を降ろしていた筈なのに、まだまだ全てを降ろすには時間を要しそうだ。船渠での本格的な修理ともなれば、その後になるだろう。
「でも、もうお肉とかが並んでる辺り、流通の早いことです」
港の傍にはそれを卸売りする市場も並ぶ。ヒト集まれば、商いの機会や場が出来るのも当然のことであろう。
世界が変わっても、そこは変わらないのですね。なんて、シャルロットは独り言ちてみたり。
――てくり、てくり、てくり。
港のヒトビトの仕事ぶりから視線を移し、市場の中を歩き回る。
シャルロットが目深に外套を被っているからか。時に奇異な視線を寄越す者もあるけれど、今のところ、それで彼女がこの町に噂される有名人の一人であるということはバレていないようだ。
そんな彼女が芝r飼うと歩いてみれば、見覚えのある素材があちらこちら。
「あっちは骨に……皮や甲殻、ガレオン船の木材も並んでるのか」
かの竜と戦った記憶はまだ新しく、魔獣がこの世界における大切な資源であり宝なのだと実感する。
足を止めれば、波のさざめきのようにヒトビトの売り込みの声。
「たくましいというか、なんというか……」
「お、そこのアンタ! どうだい! 入ったばかりの竜肉の串焼き、食ってかないか! 一本より二本。二本より三本。買えば買うほどに勉強させてもらうぜ?」
シャルロットが並ぶ素材に目を遊ばせ、市場の賑わいに耳傾けていれば、野太い声が響き渡る。
「聞こえてないかい? そこの外套纏ったアンタさ!」
「……あ、私でしたか」
「ん? なんだい、ちっちゃいとは思ってたけれど、お嬢ちゃんだったか!」
「……はは」
始めは誰に声を掛けたのかと思えば、どうやらシャルロットのようにであった。
素材を見、喧騒に耳傾けて彼女が足止めたのを、男は店の商品を買おうか迷っていると勘違いしたのだろう。外套で外から視線が見難いことの弊害であった。――いや、そうでなかったとしても、男は商売のために道行くヒトの誰かには声を掛けたのであろうけれど。
ちっちゃいは余計だ。と心の中で零しつつ、声を掛けられたのなら無視は出来ない礼儀正しさ。フード越しに愛想笑いを浮かべながら、ひとまずと近付いては見る。
「近くで見ればやっぱり細っこいな! ちゃんと飯を食ってるか?」
「栄養ならきちんと取っていますけれど」
「だめだめ! 栄養だなんだじゃなくて、肉を喰わないと! うちのカーちゃん位にふっくらしろとは言わねぇが、もちっとだな! ……しっかたねぇ。ほら、一本はサービスだ! 持ってきな!」
「え、わ……っと、ありがとうございます」
男は一人で盛り上がり、それに目を白黒とさせていたシャルロットへ竜肉の串焼きを一本。
それこそ件のカーチャンとやらに大目玉を食うのでは。なんて、思いつつも、シャルロットは勢いに圧され、ついついと。
「なんでも、この竜にとどめをくれてやったのがシャルロットって言う、金髪の嬢ちゃんらしくてだな。大したもんだよ」
「……トドメと言っても、美味しいところを貰っただけで、他の人ほと大したことはしてないんですけれどね」
「ん? なんか言ったかい? って、まだ食ってないじゃねぇか! あったかい内に腹に入れちまいな」
目の前のお嬢ちゃんこそが当人であると気づかずに、男は自らの聞いた武勇伝を語る。どうやら、竜肉の串焼きを販売する際の売り文句としているようであった。
それにどう反応したやらと、串焼きを受け取った時とはまた違う理由でシャルロットも百面相。気恥ずかしいやら、シャルロット当人として思うには過度な評価に身を縮こませるやらだ。
――とりあえず、目の前の肉を平らげて此処を離れるが吉。
そう判断したシャルロットはフードを僅かとずらして竜肉をはむり。齧り付けば塩胡椒の旨味と肉汁がじゅわり口の中に広がり、存外に悪くはない。
美味しいです。シャルロットがそう伝えようとして男の方を向いた瞬間、フードの隙間から金髪がちらり。青目がばっちり。
「あ」
「……ん? ……あ、あー!?」
港で外との玄関口な場所とは言え、そこで長く商売をしていれば見慣れぬヒトはすぐに分かる。男も、そうであったのだろう。
見慣れぬ外套で姿を隠す。その奥には金髪でお嬢ちゃん。噂の情報との合致。
その頭の中で情報が駆け巡り、正解を導き出したからこその。
「あまり目立ちたくないんです、見逃してくださいよ」
「お、おう」
それ以上、男が騒ぐ前に先手を打ったのはシャルロット。口元に指立て、お願いをする。
デリカシーが足りないけれど、男が悪人ではなさそうなのはシャルロットも気付いていたところ。ならばと期待をもっての依頼であったが、それはなんとかと成功したようだ。
「な、なんかすまんな」
「いえ、あまり気遣われますと、こちらとしても……」
その後に流れるのは、当人を前にして我が事のようにその武勇伝を語った者とそれを受けた者の気まずい空気。
「……そうだ。串、もう一本貰えますか? 美味しかったので」
「ああ、タダで構わねぇ……」
「いえ、そういう訳にはいきません。奥さんに怒られてしまうのでは? それに、美味しいからこそ代価を払ってしっかりと味わいたいのです」
「そうか? そういうなら……」
その空気を払拭するようにシャルロットが提案すれば、男もそれに乗っかって。
ほいと串焼きが渡されれば、はいと代価が返される。
もう、この場に留まる理由はないだろう。そして、引き留める理由も。
「それじゃあ、失礼しますね。ありがとうございました」
「いや、それはこっちの台詞だ。……あ、アンタがここを離れた後で、有名人が寄った店って宣伝に使ってもいいか?」
離れいく外套の背中に男の声。それへシャルロットは手を振り、どちらでもと応えるのみ。
なんだかんだで男も商売人だったということだろう。ちゃっかりしている。
「……やっぱり、たくましいです」
一本目を食べ終わり、購入したての二本目を齧りながら市場をゆるりと食べ歩く。
フードの奥に隠されたシャルロットの顔には感心とも呆れともつかぬ色。
市場の活気に背を押されながら、シャルロットはその奥へと消えていく。きっと、また幾つかのお店で声を掛けられることであろう。その度に何かしらが起こったかどうかは、彼女のみぞ知るところである。
大成功
🔵🔵🔵
祝聖嬢・ティファーナ
*アドリブ歓迎
人々の輪の中に居ると『フェアリーランド』の壺の中から各種精霊,聖霊,月霊,戦乙女,天使,英霊を呼び出して“七色こんぺいとう”を配っていると『グレムリン・ブラウニー・ルーナ』が壺の中から出ようとしているので「なに?なに?どうしたの?」とミンナを出して上げると周囲の賑やかな雰囲気に楽しそうにしているから「イタズラは無しでならいいよ♪」と開放してあげて、ティファーナはステージの上でクルクル舞ったり歌唱したりしながら周囲に“祝福”を祈り/歌唱/鼓舞/勇気/優しさを使って周囲の猟兵や皆様にも“七色こんぺいとう”を配って交流を深めたり談笑したりしながら色々と倒し見ながら笑顔を振り撒きます☆彡
広場には人だかり。それは町全体が賑わいの場であるからというだけではない。
「妖精さーん!」
「いいよいいよ!☆ キミも一緒に踊ろう!☆」
そこで繰り広げられるは妖精の輪ならぬ祭りの輪。人間も、ガレオノイドも、エンジェルも、召喚獣も、誰彼構わず集まった祭りの輪。
それは祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)を中心として出来上がった、歌え踊れの即興舞台であった。
最初はそんなもの、姿形もなかったのだ。あったのは、賑わう町を見物しようと現れたティファーナ。そして、今や町の有名人となった彼女に興味本位で近付いたヒトビトだけ。
しかし、それも気付けばいつの間にかのヒトだかり。
「盛り上がってるかな~♪」
即興のステージからティファーナがオーディエンスに向けて。
それに応える声は野太いやら黄色いやら、幼いやらしゃがれたやら。
誰もが好き勝手に踊り、歌い、笑顔でいる光景。それにティファーナのテンションもまたあがっていく。
この賑わいの始まりの時もそうであったけれど、自然、その口をついて歌声が響くのも当然と言えば当然であったのかもしれない。
――そう。始まりの時もまた、彼女が集ったヒト達の前で一曲を披露したから。
祝福の想いを込めた歌声は、妖精の国から彼女のお友達も招き寄せる。精霊が、戦乙女が、英霊が、様々なる者達が飛び出、遊び、場を彩ったのだ。
普段目にしない光景に、衆目も当然とどよめきを帯びる。だが、そこに敵意なきと分かっていれば、それは一種のパフォーマンスでしかない。眼に楽しみ、耳に楽しみ、気付けば誰もの身体が自然とリズムを取っていた。それこそが全ての始まり。
そして、今もまた盛り上がりにテンションあげたティファーナの歌声で、場のボルテージは上がる一方というもの。
「雨は雨でも、こんな雨なら大歓迎だ!」
「なにこれ、あま~い!」
「これが噂の、勇士達で食べ合ったって言う!」
「たくさんあるからね☆ 遠慮なくどうぞだよ♪」
宙を舞い踊り、歌いながら笑顔を、七色金平糖を振りまいて。
金平糖は雨粒のように地面で跳ねることはなく、精霊達がキャッチして宙にふよふよ。老若男女。誰もが取りやすいように。
そんな賑やかに、テイファーナの妖精の国へと続く壺がまたカタカタと揺れた。
「なに? なに? どうしたの?☆」
見れば、壺の出入り口で顔覗かせて様子を窺う三妖精――グレムリン、ブラウニー、ルーナ達。まるで、自分達も出てはダメかしら。なんて言うかのよう。
折角とこんなお祭り騒ぎなのだ。狭い入口でお預けだなんて、流石に、流石に。
「イタズラは無しでならいいよ♪」
だから、ティファーナも自ら壺の蓋を開け、三妖精達にも舞台の上へ出て貰うのだ。
ポンと音立て、飛び出る彼ら。宙からくるくると回転して、無事舞台の上に着地を決めれば、見物していた衆目から拍手喝采。掴みは良好。
「きゃ、私のお人形が!?」
「あはは、一緒に踊れるなんて!」
「……ん~、イタズラって雰囲気じゃないならいっか☆」
子供達の持っていた人形や玩具が三妖精の力で動き出す。それは一緒に踊ったり、傍でそっと寄り添ったりと、まるで持ち主の性格に合わせるかのよう。
悪戯禁止と言ったけれど、まあ、場を盛り上げるならお目こぼし。
新たにと広がった笑顔の輪に、ティファーナもそっと微笑むに留めるのみ。
――くるり、くるり、くるり。
ティファーナが踊り歌えば、皆も一様に踊り歌う。
ヒトも、妖精も、精霊も、無機物さえもが笑顔浮かべる空間がそこにはあった。
祈りを、祝福を、幸運を。ヒトビトの良きを願うティファーナの歌声と盛り上がるヒトビトの宴はまだまだ続くことだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
市民や勇士には敬語
艇は大丈夫そうか。ボロボロだったから気になる
俺自身は操船技術はあるが、こういう大きな船を動かすのは大変だろうな
そういえば、依頼人から何か言われたりしませんでした?艇の補強に使ったんですよね?(ゼノに尋ねる)
SPDで判定
外套を被って【迷彩】を使い、見つからないように船渠へ向かう
酒やら料理とか多少拝借して勇士や職人へ差し入れする
俺は騒ぎを見るのは好きだが、その中に入って武勇伝を話すとかできそうにない
酒は飲めないからジュースやらを飲みながら作業を眺めているし、必要なら怪力や銀腕を【武器改造】で変化させて手伝う
月凪・ハルマ
いやはや、見事なまでにお祭り騒ぎだなこりゃ
(【迷彩】で姿を隠し、船渠を目指す)
お、ゼノさんだ。どうもどうも
あ、俺ですか?まぁ賑やかなのは嫌いじゃないんですけど、
変に顔が売れると面倒な絡み方してくる人もそれなりに多くて
だもんで、人気の少ないにここに
それと飛空艇にも興味があったんで
ああ、一応技術者でもあるんです俺
(魔導蒸気式旋棍を取り出し、変形させたりいろいろする)
この世界のとはまた違う技術ですけどね
それで、なんですけど。できれば飛空艇の修理とか改修の現場を
見学させてもらえないかなー、とか思って
いやぁ、やっぱこの世界独自の技術は気になるんですよ
どういう仕組みなのかとか、色々と
※アドリブ・連携歓迎
シキ・ジルモント
酒盛りも程々に、散策がてら町の中心を離れ、人気の少ない場所を求めて船渠に様子を見に行く
かなりダメージがあったようだが、飛空艇は無事に直るだろうかと気にもなっていた
ゼノを見かけたら声をかけてみるか
姿が見えないと思っていたがまだ仕事が残っていたか、大変だな
…宴への参加を勧められたら、逃げてきたと正直に話す
賑やかな場所も嫌いではないが、どこに行っても顔が知られているというのはどうにも慣れず落ち着かない
先の戦いでは助かったと、改めて礼を伝える
癒やしの風にあんな使い方があったとはな
俺が付き合えるのはひとまずここまでだが、この先も旅の無事を祈っている
またどこかで会った時には、あんた達の武勇伝を聞かせてくれ
乗船していた時間はそれぞれの過ごしてきた時間に比べれば、随分と短いものであったことだろう。
でも、それでも――。
「……ん?」
「奇遇だな。……いや、そういう訳でもないか」
「ああ。ということは、アンタも」
「考えることは、誰もそう変わらないという訳だ」
片や、外套を纏い、人気を避けるようにして船渠へと訪れたルイス・グリッド(生者の盾・f26203)。片や、酒盛りからの一息がてら、船渠にまで足を伸ばしてみたシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)。
しかし、足の運び方こそ違っても、その二人の目的は同じ。冒険の間とはいえ、乗り続けてきた艇の様子というのはやはり気になるもの。今回の冒険の最中、随分と船体に傷を負ってしまった飛空艇の様子を気にしての。
金槌や鋸などの大工道具が奏でる音。船大工達の胴間声。船渠の中は街の騒々しさとはまた違う音に溢れていた。
「いやはや、こっちはこっちでもある意味ではお祭り騒ぎだな、こりゃ」
響いた声の第三者。二人がその大元に向けて振り返ってみれば、そこには月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)の姿。勇士達から返却された羽織を風に靡かせて。
「向こうから寄ってくる人間が少ないだけ、随分と違うんじゃないか?」
「それはそうで。それに、賑やかさなこと自体は嫌いじゃないんだ。変に顔が売れたみたいで、それに付随する面倒な絡み方をしてくる人があれなだけで」
「まあ、そうだな。無礼講と羽目を外し過ぎる人間もいないではなかったからな」
「それを避けた結果か離れてきた結果が、男三人寄った光景ってところか」
「花のないことだ」
「肴はあるがな。差し入れがてらの」
「あ、手土産か。やっぱり見学させてもらうならあった方が良かったかな」
前情報の通り、職人達の領域でもある船渠で直接と彼らを意識する者はいない。それぞれがそれぞれの仕事に励んでいるから。
そんなこの場所が静かかどうかについては既に触れた通りだが、それでも、三人が顔を晒し合い、姿隠すことなく穏やかに会話出来るだけ、街中とは随分と違う。街中であれば、ハルマやルイスが懸念する通り、武勇伝の一つも聞こうと絡んでくる人もあったことだろう。いや、シキ辺りは既に経験済みなのかもしれないが。
「あれ? 皆さん、どうしてこのようなところに? 休まれていたのでは?」
「おぅ、ゼノ! このような所で悪かったな!」
「いや、言葉の綾というやつですよ! 分かって言ってるでしょう!?」
「はは、そりゃあな!」
船渠の中を興味深げに眺めつつ、ぽつりぽつりと会話していた三人。それを見付けた声は聞き知った声。
タッタッと足音立て、駆け寄ってくるはゼノ。途中、知り合いの船大工なのだろうか。それに揶揄われながらも。
「お、ゼノさんだ。どうもどうも」
「こんにちは」
「ふむ、まだ仕事か」
「どうもどうも。こういった仕事は仲間内での私の領分ですので」
各々の声に返すゼノの手には書類の束。もしかしたら、先程まで船大工と修繕やらの話をしていたのかもしれない。
「そうか。姿が見えないと思っていたが……大変だな」
「はは、リーダーはリーダーでやることがありますし、他の人達に任せるにしてもですしね。ところで、先程も聞きましたが、皆さんは何故こちらに?」
「街の賑やかさも嫌いじゃないんですけど、俺の方は飛空艇にも興味があったんで。一応、技術者でもあるんですよ、俺」
「変形したりなんだり、不思議な道具……ですね?」
「この世界のとはまた違う技術ですからね」
ハルマが愛用のトンファー型ガジェットを駆動させてみれば、ゼノは目を丸くしてそれを見る。
それを見て、ハルマは思うのだ。そう言えば、先の冒険ではあまりこれを使っていなかったな、と。
「それで、なんですけど……できれば、飛空艇の修理とか改修の現場を見学させてもらえないかなー、とか思ってたりですね」
トンファーを仕舞いつつ、どうでしょう。なんて、恐る恐る。たぶん、駄目と言われることはないだろうとは思っているけれど、それでもやっぱり。
「ええ、大丈夫だと思いますよ。ハルマさんも立派なうちの関係者。後で奥へ行けるようにパスを貰っておきます」
「本当ですか? いやぁ、やっぱこの世界独自の技術は気になるんですよ。どういう仕組みなのかとか、色々と」
「あ、でも、基本的にはうちの艇のところだけになるかと思いますので、そこはご了承を」
「勿論、勿論。他の艇は持ち主が違ったり、守秘義務やらがありそうですしね」
「ええ、理解頂けて幸いです」
喜びに小躍りするような性格のハルマではないけれど、それでもやっぱり嬉しいは嬉しいに変わらない。帽子の下の瞳を僅かと細め、その喜びが滲んでいた。
ゼノの顔にも笑み。受けた恩に比べれば僅かと言えど、その恩返しができたことへと。
「ということは、ルイスさんとシキさんも一緒に飛空艇の見学へ?」
「まあ、そうと言えばそうだな」
「俺達は艇の方が心配で。随分とボロボロ……無茶をさせてしまっていた気もしますし」
「仮にも仕事を共にとした艇だ。それが無事に直るのかどうか気になっていたんだ」
「なるほど! 心配して下さって……うちの艇も冥利に尽きますよ。なら、ハルマさんと同じくパスをご用意させてもらいましょう。近くでみてあげて下さい」
「すまないな」
「ありがとうございます」
「いえ、こちらこそうちの艇のために、ありがとうございます!」
それでは、待っていてくださいね。と、駆けだすゼノ。暫くの後、猟兵三人の首に見学者用の入場証が首からぶら下がったのは言うまでもないことだろう。
――金槌、鋸の音はより大きく。やり取りの声はまるで喧嘩越しのように。
「はぁ~、なるほど。船体に装甲代わりの竜鱗を」
「ええ、帰り道やらの応急処置では本当に張り合わせただけに近く、きっちりとまで出来ませんでしたからね。ついでに奮発しての竜鱗仕様に」
「応急処置と言えば、依頼人から何か言われたりしませんでした? 依頼の素材、艇の補強に使いましたよね?」
「ええ、それは勿論」
「……大丈夫だったんですか? いえ、こうして改修されているということは、大丈夫だったんだと思いますが」
「そこは、ほら、リーダーの口八丁で」
「丸め込んだんですか?」
「いえ、丸め込まれてました」
「それはまた……」
「今後の課題のだな」
「ええ、本当に」
艇の修繕費は依頼人持ちという話にはなっていた。だけれど、緊急時とはいえ素材の無断使用については、流石にチクリと言われはしたようだ。だだ、それ以上に持ち帰った素材やらが豊富であったため、その手柄である程度免除してくれたようでもあるが。
ルイスの言葉でその時のことを思い出したのだろう。ゼノが若干遠い眼をしていた。
「なんにせよ、こうして無事な姿を見れてよかった」
「そうだな」
「あ、中とかって見ることは可能ですか?」
「危ないところ以外でしたら……って、ハルマさんに言うのも無用な心配でしたね。個々人の部屋以外でしたら、自由にどうぞ」
「ありがとうございます」
外装部だけでなく、折角なら中までと。許可を得た時には、既にハルマの姿は声だけを残して消えていた。その速きこと風の如し。
ハルマを見送った三人に暫しの沈黙が流れ、トンテンカンと槌の音だけがその間で木霊する。
「……あ、渡し忘れてましたけれど、これを」
そこでハタと思い出したかのように、ルイスが取り出したそれ。
「これは……料理ですか?」
「ええ、まだまだありますので、よければ職人さん達と」
彼が言っていた肴。手土産を今此処で。
酒やら料理やら、今の街であれば比較的簡単に揃えることが出来る。勿論、ルイスがルイスと分かるようには買わなかったけれど。
「なら、もう暫くしたら休憩時間にもなるでしょうから……その時に声を掛けてみましょう」
「その頃にはあいつもきっと戻ってきているだろう」
今暫く、艇の上で見知った顔だけでの他愛ない時を。
――そう思ってた時間がありました。
「魔導蒸気ねぇ。うちの技術とはまた違う……面白れぇもんだ」
「こちらからすれば天使核ですか? あの技術も中々に……」
「つっても、天使核は昔からあるもんだからな。俺らの技術かと言われちまえば、ちっと違うかもだ」
「ですが、それを利用するシステムは独自のものでしょう。それに艇作りの技術もまた違うようで、面白いです」
「ほう、艇作りの技術ね。よし、話して貰おうか」
「と言っても、俺が知ってるのは宇宙を行く船とか飛行機とかの話になるですけれど……」
「ウチュウ? 空じゃなくてか?」
「……ああ、そういう概念的な部分からとかも違う可能性があるのか」
すっかり意気投合の技術屋さんチーム。ルイスの持ち込んだ差し入れでワイワイガヤガヤと盛り上がりを見せていた。
「武勇伝を話すとかはできそうにないし、ある意味で助かるな」
「外での酒盛りに参加するよりは、個人的にこちらの方がまだいい」
「おぅい、こっち来てあんちゃん達も食ってきな。特に、そっちのフードの。あんたが持ってきたんんだ。遠慮なんかすんなよぉ」
「……ええ、では、ご相伴に預かりましょうか」
ちらり、ルイスがシキを見る。あんたも行くか? とその瞳が語っていた。それにシキも後でいく。とだけ視線で返すのみ。
視線を切ったルイスが盛り上がりの輪の中に入っていく。
ルイスはルイスでメガリスなどを持つ身だ。きっと、その辺りの事を聞かれたりするのも時間の問題であろう。
そして、見送ったシキに近付く影。シキが待っていた影。
「シキさんは外の方にも参加していたのですか?」
「ああ、だが、どこへ行っても顔が知られれているというのは、どうにも慣れずに落ち着かなくてな……逃げてきた」
「ははっ、シキさんにも苦手がありましたか」
「それはあるさ。個人で完璧な存在など、そうはない」
「そうですよね。……ええ、そうなんですよね」
「そうだとも。だから、先の戦いでは助かった」
「え?」
「癒しの風にあんな使い方があったとはな」
「……いえ、もう夢中でしたので。それに、あなた達が居たからこそ出来たことですから」
そうか。と、シキが言えば沈黙が二人の間を通り過ぎる。まるで、その先の言葉を口にすることが名残惜しいかのように。
「……俺が付き合えるのはひとまずここまでだ。だが、この先の度の無事を祈っている」
「そう、ですよね。皆さんとはずっと一緒にいる訳では、ないのでしたね」
しんみりとゼノがシキを、輪の中のハルマとルイスを見遣る。
あくまでも、猟兵達はゼノ達の冒険におけるスポット参戦者でしかないのだ。これからは猟兵達には猟兵達の、ゼノ達にはゼノ達の道に行かなければならない。もしかすれば、その先でその道が交わることもあるかもしれないけれど、今は暫しの――。
「……またどこかで会った時には、あんた達の武勇伝を聞かせてくれ」
「ええ、とっておきのを用意していますから、楽しみにしていてください」
別れの時。
ゼノが手を差し出して、シキもそれへと応じるのだ。
繋がれた手が離れ、しかし、まだ本格的な別れには時間がある。その残された時間を楽しむために、二人もまた喧騒の輪の中へと入っていくのであった。
猟兵と勇士、その冒険の終わりがまた一つ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィーナ・ステラガーデン
オリヴィアと勇士達と酒場で飲み参加
それにしてもさすが私達ね!
ほらほら勇士諸君私達を尊敬し崇め奉ればいいわ!
あ、お酒頼むわ!店員さーん!
(当たり前のようにオリヴィアの前に置かれるお酒)
間違えたのかしらね?
(勇士達に未成年は飲んではいけないと注意される)
・・・あぁ?
いやいや!どう見ても私の方がお姉さんじゃない!4歳も年上よ!?
だいたいオリヴィアが悪いのよ!何なのそのおっぱい!神に祈ってそんなに育つのなら私だって毎日祈るわよ!その手の神に!
それにこの前きてたバニーなによあれ!?こぼれんばかりじゃない!!
(などと胸の話をきっかけに二人でわちゃわちゃ言い合いしつつ徐々にレベルの低い口喧嘩へシフト)
オリヴィア・ローゼンタール
フィーナさん(f03500)とご一緒に
ラプラさんとユグさんの盛り上がっているところにご相伴
戦利品のガレオンドラゴンの過食部位を調理してもらって乾杯っ!
まぁ、私はジュースをいただいていますが
(お酒を勧められて)いえ、私はまだ未成年なので……あ(フィーナさんに取られる)
エキサイトするフィーナさんを宥めようとするも
む、胸は関係ないでしょう!?
というかお祈りしているのは世界の奪還でありそういうことでは――
(バニーの姿に変身)これはあくまで死の呪力を扱うに適した形であって――
等々、お酒のテンションに呑まれたたのか、話の噛み合わない低次元の争いに
勇士の方々に宥められたりしながら、賑やかに夜が更けていく
賑わう街の一角。飲食店がずらりと並び、その賑わいは他の区画よりもまた一段と。
その賑やかさの中には、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)とオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の姿もまたあった。
「しっかし、どこ行っても握手とか求められるなんて、これも有名税ってやつなのかしら?」
「感謝の心を頂けるのは良いのですが、流石に行く道行く道ではですね。戦利品を調理してもらうつもりが、到着までに随分と時間が掛かってしまいました」
目指すべきはこの町では評判の良い酒場。竜の肉を報酬として受け取った二人がそれを調理してもらうべくと予約をしていた場所。声掛け来るヒトを捌きながら、ようようとその目前へと至ったのである。
――両開きの扉を開けば、カロンと来客のベルが鳴る。
いらっしゃいませ。その声が響くより先に、割れんばかりの大歓声が。
「なに? 私達が入っただけでこんな歓声だなんて、さっすが私達ね! 尊敬し、崇め奉ることは止めないわよ? でも、悪いわね! これ以上、私の御飯の邪魔だけは――」
「あ、いえ、フィーナさん。どうやら違うようですよ?」
「――って、えぇ? ……いや、こほん。知ってるわ。対応への練習よ、練習!」
「……そうですか」
その練習はもっと先にしておくべきだったのでは。オリヴィアはその言葉を呑み込んで、アルカイックスマイルを浮かべるのみ。
勘違いへの羞恥が三割。理不尽な怒りが一割。残りは平静を装わとしての。でも、僅かな顔の赤みが誤魔化せていないフィーナへの追撃をするなんて、そんなそんな。
ひとまず、その歓声の大本へと二人顔を向けてみれば、そこには――。
「あーっはっははっ! 弱っちぃわね! 飲んでも呑まれちゃ駄目よぉ?」
「お主が一番場の空気に呑まれてないか」
「なぁにぃ? なんか言ったかしら?」
「いんや、なんも。おぅ、こいつに水の一杯でもぶっかけてやれ」
「あら、冷酒? ジョッキ一杯だなんて気が利くじゃない」
ラプラとユグ。そして、先の依頼で見かけたような猟兵の姿。今やその周囲には人だかり。勇士達だけの飲みではなく、それも巻き込んでの騒ぎとなっていたようだ。歓声はその一端。飲み比べ勝負に決着がついてのものらしかった。
「どうやら、ラプラさんとユグさん達がいらっしゃるようですね」
「ラプラの方は随分と出来上がってる感じかしら」
「御挨拶に伺っておきましょうか」
「いや、折角なら相席とかさせてもらいましょう! これも何かの縁ってやつだわ!」
知らぬ仲でもなし。許可が下りればそれも良いだろう。と、オリヴィア。しかし、フィーナの視線はどちらかと言うと、既に卓の上に並んでいる燻製肉――竜肉のそれ――へ釘付けとなっているような。
仕方がない。色々なヒトの相手をしていたのだ。お腹が空いていたって、仕方がないのだ。
一人は二度目の優しさでそっと呑み込みつつ、もう一人は唾を飲み込みつつ、二人は勇士達の席へと近付いていく。
「こんにちは、お二人とも」
「盛り上がってるようね!」
「あら、今日は千客万来ね! いいことだわ~」
「お主らも来てたのか。どうだ。こっちで一緒にやらないか? 若干、五月蠅いのがいるが」
「なぁにが五月蠅いの、よ。普段はユグの方がよっぽどでしょうに」
「まあまあ。ですが、渡りに船でした。丁度、ご挨拶と共に相席をお願いできたらと思っていましたので」
「そのお肉、美味しそうね!」
「おう、うまいぞ。お主も食うか?」
「貰うわ!」
即答。既に口の中。
「塩胡椒だけだから、お肉の味がより引き立っていいわね!」
「だろう? 儂らの成果でもあるから尚更にうまい」
「すいません」
「なに、気にすんな。他のにも言ったが、あんたらには世話になったからな。これぐらいじゃ返せんよ」
「そうよそうよ。ユグの支払いなんだから、遠慮せずに食べちゃいなさい」
「お主とかそこらで飲み食いしてる奴らの分まで払うとは言ってないからな!?」
「あ、あなた達、何飲むぅ?」
聞いてないし。というユグの悲哀は喧騒の中に溶け消える。
それはさておき、ラプラに促されてフィーナもオリヴィアもひとまず喉潤すものをと。
店員を呼んで注文すれば、時間を置かずに卓上へお待ちどおさま。
フィーナの前にはジュースが一つ。オリヴィアの前にはジョッキが一つ。
―― 一瞬の沈黙。
「……間違えたのかしらね?」
「かもしれません」
「えぇ? フィーナちゃんも背伸びしたいお年頃? でも、駄目よ。オリヴィアさんのお酒を取ろうとしちゃ」
「いえ、あの、私はまだ未成年で……」
「あぁ? ……あ、いやいや! どう見ても私の方がお姉さんじゃない! オリヴィアより四歳も年上よ!?」
嗚呼、悲しきかな姿形。
身長からして140cm台のフィーナと160cm台のオリヴィア。その『きょうい』の格差社会が歴然でもあったが故に。
オリヴィアの控えめな主張とフィーナの大爆発に、一瞬の沈黙は再び。そして、ラプラとユグは本日二度目の見た目詐欺に固まるわ、咽るわであったのだ。
「……ゲホッ、ゴホッ。お、お主らもか」
前例は十五歳の姿形な百歳であったから、今回はユグ達にとってまだ理解も及ぶ範囲内ではあるけれど。
フィーナはそれを尻目、オリヴィアの眼前から奪い取ったジョッキを怒りと共に胃の腑へと流し込む。まるでそれは、火の中にガソリンを投げ込むようにも。
ドン。と置かれた空ジョッキ音。その音に注意が集まれば、誰もがソレを目にする。
――フィーナの目が、完全に据わっていた。
「ふぃ、フィーナ、さん?」
「だいたい……」
「え?」
「だいたい、オリヴィアが悪いのよ。何なのそのおっぱい!」
「お、おっぱ!?」
始まりは静かに。そして、次第にクレシェンド。途中、宥めようとしたオリヴィアを見て、Heat in You! フィーナの熱は最高潮に。
――貴様は聞いたことがあるか。とある買い物の最中、店内に響いたボタンの悲鳴を。私にはある。だが、それを発したのは同盟に属する私ではなかった。目の前のオリヴィアのような富める者の……。
「ねぇ、神に祈ってそんなに育つなら私だって毎日、それこそ毎日祈るわよ! その手の神に!」
聞いた者の魂を震わせる慟哭がそこに。
見渡すまでもない。幾人かの衆目/同盟員がそれへ理解示すように頷いていた。
思わぬ慟哭、衆目からの同意に虚を突かれたオリヴィアではあったけれど、流石に神の名を出されては沽券にかかわる。
「そ、それは流石に不敬ですよ!? というか、む、胸は関係ないでしょう!? お祈りも個人的な願いのためではなく、世界の奪還のためであり、そういうことでは……!」
「いいえ! きっと豊穣の願いの結果よ! その証拠にこの前着てたバニー、なによあれ!? 兎って豊穣・繁栄のシンボルじゃない! まだ欲しがるっての!? もうこぼれんばかりだってのに!」
理不尽。言いがかりにも程がある。だけれど、この場の空気にというか、捲し立てるフィーナに呑まれたというか、オリヴィアも張り合ってしまう。ある意味で、この状況を加速させる方向に。
――そう。よりにもよって、件のバニー衣装をその場で披露してしまったのだ。
美女の変身に周囲も沸くが、虫を前にした時並みにテンパったオリヴィアには聞こえていない。
「ちーがーいーまーすー! これはあくまでも死の呪力を扱うに適した形なのであって、そんな不純なものではありません!」
「死の呪力だなんて! ……はっ、まさか、私達の可能性を刈り取ろうってのね!?」
「あ、さては既に酔ってますね!? 空きっ腹にお酒なんて大量に飲むから!?」
エキサイトはエキサイトを呼び、きゃんきゃんと互いを噛み合う言葉の戦い。ただ、微妙に話は噛み合っていないのがなんともはや。
周囲――フィーナに深い同意を示す者達を除いた――も最初こそ目が点になっていたけれど、ゴシップ好きはどの世界も共通か。それとも、火事と喧嘩はなんとやらか。突如として始まったフィーナとオリヴィアのそれに、周囲もやんややんやの大喝采。
いいぞ、やれやれ。やら、どっちが言いかつと思う。なんて、無責任にもほどがある。実際、彼らは傍観者で責任がないのだから、これまた始末に負えない。
「止めるべきか?」
「いいわよ! ぶつかりあって本音を晒し合う。これも青春よね!」
「酒の席でなければ青春かもだがなぁ。いや、酒の席だからこそこうなったのかもしれんが」
とりあえず、二人を止めるだけの力がラプラとユグにはないのは確か。
魔法使いとバニーガールが口喧嘩するという不思議な光景。だが、それもまた町の賑やかさの一つとして時は過ぎていく。
このこともまた、いつかどこかで二人が過去を振り返った時に、いい思い出だ。と言えるものになる……のかも、しれない。なるといいなあ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
さて、私の宝探しと参りましょうか
冒険譚や異界の物語語ると喧伝
人集め
(体験譚終え)
さて、次は異界の物語を…
雰囲気の要望は御座いますか?(UC使用条件)
歌唱、アーム状の複数本アンカーでのピアノ演奏
弾き語りの題材は私物の一篇
これは鉄騎闊歩す世界の真偽定かならぬ古代の物語…
(世界観→クロキャバ→サイキックキャバリア)
愛機と共に騎士は八面六臂の大活躍
されど快く思わぬ者が…
…数多の陰謀、そして黒幕暴き
辿り着くは御前試合
果たして騎士の運命は…
ご清聴に感謝を
さて、吟遊詩人の皆様
この本には他にも多数の御話がございます
物語一つと皆様の御話一つ
交換いたしませんか?
ロケットナイトの珍しき逸話なら、とっておきのご用意が
世にあるは、何も金銀財宝ばかりが宝ではない。
「今度は私の宝探しと参りましょうか」
市井に眠る物語もまた、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)にとっては金銀財宝と同等の。
街中に突如として出現したトリテレイアの姿。それはヒトビトに姿形での違和感を与えずとも、それだけでも存在感から衆目を集めるに十分。
なんだなんだと視線集めるそんな彼の背後には幟旗。
――冒険譚や異界の伝承、物語ります。
そう。彼が行おうとしているのは、読売にも似た。ただし、その代価はお金などではなく、彼にとっての宝物――この世界における御伽噺の類。
トリテレイアは騎士道物語や御伽噺を蒐集している。これまでに集め、綴ったそれは既に電話帳サイズを超えかねない程に。だけれど、まだ見知らぬ物語というのはあるものだ。だからこそ、今回の行動なのである。
大丈夫。興行の許可は得てやっている。衛兵などが来る心配はない。
最初こそ度肝を抜かれ、物珍しさに視線を向けていたヒトビトであったけれど、それがトリテレイア――噂の有名人――であることに気付き始めれば、後はあっという間。今回の冒険譚を聞こうと、子供も大人も花に集まる蜜蜂の如くと。
「……ふむ。娯楽の少なさというのもあるのかもしれませんね」
少なくとも、この都市にはUDCアースなどのように娯楽が氾濫している訳ではなさそうだ。だから、ヒトビトは勇士の冒険譚に心躍らせ、その活躍に喝采を送るのであろう。勿論、そこには持ち帰った資材による、今回のようなお祭り騒ぎが起こることへの期待もあるのだろうけれど。
「ねぇ、はやくはやくー! 冒険のお話してよー!」
「これ! 準備とかもあるんだろうから、大人しくしてなさい! すいませんね」
「いえいえ。大丈夫ですよ、奥様。これから始めようとしていたところですから」
脱線し始めた思考の走りを親子連れの声が止め、トリテレイアは改めてと群衆に向き直る。
「さあ、これより語るは空の彼方のお話。竜と変じた財宝を、見事と討伐せしめた勇気ある者達のお話です」
恐らく、まず群衆が求めているものはコレであろう。最も身近で、最も新しい物語を。
勇士達との出会いと空の旅。目的の途上で遭遇したアハウラム帝国との一戦。一難去ってのまた一難。浮遊岩や気流の壁という自然の妨害、エンジントラブルによる墜落の危機を勇気と知恵で乗り越える。そして、遂に――。
「宝の地図と指針に導かれ、私達はとある浮遊大陸に辿り着いたのです。そこで出会ったものこそが……」
「竜になった財宝!」
「そう、その通りです。数多の砲が私達を睨み、その牙は鋼をすら容易く貫く。そして、吐き出す熱線は私達を焦がさんと」
猟兵達の活躍。勇士達の活躍。その果てに竜は見事と討伐と相成る。彼らは財宝を見事とその手に収めたのだ。
固唾を飲んでトリテレイアの話に耳を傾けていた聴衆が、話の括りにトリテレイアへ喝采を送る。
「いやぁ、何度聞いても面白ぇが、当人から直接聞けるとはなぁ」
「吟遊詩人の唄で聞いた時は脚色も入ってるんでしょとかって思ってたけれど、案外そうでもないのね!」
「満足いただけたようで何よりです。では、次は異界の物語など如何でしょうか?」
「お、そうか。異界の伝承とやらもあるんだったっけか」
「ええ、雰囲気の要望などあれば対応させて頂きますよ」
「なんか格好いいのがいいー!」
「ふ、む。では、そのように」
今迄は朗読をメインとしていた。だが、吟遊詩人という言葉が耳に入ったトリテレイアはそれを真似てみんとばかりに、いずこからかピアノを路上に。
ポロン。と、武骨な指がそれに似合わず鍵盤を滑らかに行き交う。
調整は問題ない。ピアノも、自分自身も。全ては、要望通りへするために。
「これは鉄騎闊歩す世界の真偽定かならぬ古代の物語」
物悲しくも勇壮なるが奏でられ、トリテレイアの声は朗々と響く。
「荒涼なる大地。資源には乏しく、戦える者にも乏しき国。故に、未熟なるであろうとも、その力あれば兵卒として取り上げられる国。そこに一人の若く、未熟なる騎士あり」
鉄騎扱う技能はあれど、闘争の右も左も分からぬ騎士。
それは本来であればただの偵察任務でしかなかった。だと言うのに、不幸にもその騎士の部隊は過去より染み出す怪物の軍勢と鉢合わせしてしまったのだ。
指揮者が倒れ、同僚が倒れ、生き残ったのは彼一人。いや、彼も既に乗騎を失い、廃棄されたプラントに逃げ込むしかなかった。
「そこで、かの騎士は運命と出会う。後に代えがたき友にして、最良の相棒となる愛機と」
廃棄プラントに鎮座するは、搭乗者に資格を求める鉄騎。
ここまで不幸続きの騎士であったが、幸いにも彼はその機体を動かすだけの力を有していたのだ。
「結果だけを語るのであれば、彼らは窮地を脱したのです。一騎当千。その力でもって」
きっと、未熟なる騎士からすれば懸命で、何が何か分からぬままにと抗っただけであったのだろうけれど。それでも、その功績は輝かしきものであり、彼は栄達の道を歩むのである。
「しかし、世には妬み嫉みの悪事は絶えぬもの。騎士もまた、その標的にとなるのです」
転戦させられる最前線。救国の士として、英雄として、彼は死線を幾度も幾度も。
その度、彼と鉄騎との結びつきは強くなり、その鋭さに磨きが掛けられていったのは黒幕にすれば皮肉であったのだろうけれど。
「そして、騎士は戦いの度に相棒との絆を強く、そして、かけがえのない仲間達を作っていくのです」
その絆が騎士を、鉄騎を亡き者にせんと、国に潜んでいた巨悪を暴く。
そう。かの国が脅威に晒されて荒廃していたのも、資源の乏しきに喘いでいたのも原因があったのだ。
それこそがかの騎士に妬み嫉みを向けていた者。騎士達の棟梁にして、その最上に位置する者。かの者こそが敵と通じ、騎士の存在の不都合を思う者であったのだ。
「かの悪事を暴くには如何とするか。騎士は悩み、友と語り、そして一つの解を得るのです」
御前試合。国を治める者を前に披露する力比べの儀。かの時であれば、騎士の棟梁とも立ち会う機会が、罪を暴く機会がある、と。
そして、騎士はそれをしてのける。愛機と共に勝ち進み、騎士の棟梁を打ち負かし、黒幕を白日の下にと晒すことで真の救国の士となったのである。
「――ご清聴をありがとうございました」
ポロンと最後の括りと音色が響けば、再びの拍手喝采がトリテレイアを包む。
さて、掴みは上々。これからがトリテレイアにとっての大事なところ。
「さて、皆様。特に、耳傾けて下さった吟遊詩人の皆様。私が持つこの本には他にも多数のお話がございます。どうでしょう? これよりは物語一つと皆様のお話一つを交換致しませんか?」
それは代価のかきいれ時。
彼がここまで饒舌にと物語りを披露したのは、彼にとってのお宝を集めるためだったのだから。
物語を餌にこの世界の物語を良く知る者達を集める。海老で鯛を釣らんとしたのである。
そして、その思惑は見事と合致するのだ。
「しからば、このロバーロがその舞台に登らせて頂こう」
一人、二人――と手が上がり、順番にと自らの内に刻んだ物語を。
後に物語合戦として語られることになるこの一連の賑わい。これもまたヒトビトの口から口へと伝わり、また新たな物語としてこの町に刻まれていくのである。
「ふむふむ。ロケットナイトの珍しき逸話ですね。なるほど、ならばこちらもとっておきの御用意が」
だけれど、まだその物語は生まれたばかり。人伝に広がっていくにはまだまだ時間を要することだろう。
それを知らぬは当事者ばかりで、その話の種もまだ尽きそうにもなかった。
大成功
🔵🔵🔵
桐生・零那
いつき(f04568)と参加
飛空艇と竜、両方の性質を持つ相手というのはなかなか興味深かったな。
しかし、デカブツ相手の戦い方、もう少し考える必要があるか。いつもいつきに頼れるわけではないし。
っと、せっかくのにぎやかな雰囲気だ。こんなことを考えているのも無粋というものか。
さて、何やら竜の肉が食えると聞いたのだが?いや、別にこれが目的で敵を討ったわけではないのだが。
……竜の肉は美味いと聞くからな。食べられるものなら、食べてみようかと思ってな。
竜の肉に、勢いよくかぶりつく。外大口を開けて。
溢れる肉汁に満足気に舌鼓を打ち、堪能。
……っと、いつきに見られてるの気づき。慌てて口の周りを拭ったり。
雨宮・いつき
零那さん(f30545)と
大物を狩った後なだけあって、町も活気で溢れてますね
…こうして皆さんが喜んでいる姿を見ていると、一仕事終えたんだなって気持ちになります
零那さんも本当にお疲れさまでした
ふふ、いえ、勤勉なのは良い事です
でも…そうですね、今は少し、この賑やかな雰囲気に身を任せてしまいましょう
それじゃあ僕は…お肉はちょっと遠慮して、飲み物などを楽しませて頂きますね
言葉には出しませんけど、龍神様のお力を借りることもある身なのでちょっと気が引けるというかなんというか
…ふふ、美味しそうに食べますね、零那さん
見ているこっちまでお腹いっぱいになりそう
ああ、お気になさらず。楽しんでいる姿を見ていたいんです
耳に届き続ける喧騒の声は戦場のそれとは対極。
戦場の声が死と隣り合わせの声であるとすれば、今、この町に響く声は生命に溢れたそれであればこそ。
「飛空艇と竜。両方の性質を持つ相手というのはなかなか興味深かった」
だが、その中で未だ戦場の残り香を纏うは桐生・零那(魔を以て魔を祓う者・f30545)。いや、残りがを纏うというよりは常在戦場が沁みついていると言うべきか。
町に戻り、その刃を鞘に戻してなお、彼女の思考は戦闘のそれをぐるぐると回していた。
「……デカブツ相手の戦い方、もう少し考える必要があるか。いつもいつきに頼れるわけではないし」
今回の経験を基に、零那の脳裏で対巨大敵性対とのトライ&エラーが繰り返される。
「――なさん。零那さん?」
「……ん? ああ、すまない。少し、考え事をな」
自らの名前を呼ぶ声に、零那の意識が脳内の仮想現実から引き戻される。
焦点が改めてと現実に結べば、目の前には誰かの掌。それがするりと引き戻されれば、そこには雨宮・いつき(憶の守り人・f04568)の姿があった。
「ふふ、いえ、勤勉なのは良いことです」
「そうか。……いや、折角の賑やかな雰囲気だ。そればかりを考えているのも無粋というものだったな」
いつきの顔には嫋やかな――男性であるいつきにその表現はとも思うがそうとしか言えぬ――笑み。ようようと鞘から手が離れたかのような零那を見守るように。
「本当に、お疲れ様でした」
「いや、それはいつきもだろう」
「では、互いに」
「ああ、互いに」
竜という大物を狩り終えたことへの充足感。その成果によって活気が満ちる街並みを背景に、二人は改めてと互いを労う。
「こうして皆さんが喜んでいる姿を見ていると、一仕事終えたんだなって気持ちになります」
「ああ、改めてと認識してみれば、存外に悪くはない空気だ」
「では、どうでしょう? 今は少し、この賑やかな雰囲気に身を任せてしまうというのは?」
「それも悪くない提案だ。だが、私一人ではな。いつきも一緒に来てくれるのだろう?」
「勿論、御一緒させてもらいますよ」
ここまで一緒に行動しているのだ。今更と別行動は味気ない。それに、こういうお祭り騒ぎは一人より二人。共にと過ごす相手がいれば、なおのこと良いものであればこそ。
じゃあ、どこへ行きましょうか。と、いつきが言えば、よく分からないので任せる。と、零那の声。
さて、これは責任重大だ。いつきの明晰な頭脳が幾つかの案を脳裏に提出し、暫しの思案。
――その時である。
「竜肉の串焼き。竜肉の串焼きはどうだい!? あの有名な勇士の一団からも旨いと太鼓判を貰った串焼きだぜ!」
そんな売り文句が二人の耳に届いた。
見れば、その視線の先には屋台。じゅうじゅうと焼ける肉の湯気がメインのようだが、他にも果物のジュースや酒類も扱っているようだ。
顔見合わせる。互いの顔を見ればなるほど、悪くない案だと。
「それでは、あちらでどうでしょう?」
「そうだな。私達は知らないが、他の者が太鼓判を押したのであれば食べてみるのも一興か」
「見たところ串焼き以外も扱っているようですし」
「なんだ、いつきは食べないのか?」
「ええ、竜肉の味見は零那さんにお任せして、僕は飲み物に挑戦してみようかと」
「ああ、それも良いだろうな」
――連れ出ち、歩いて、あっという間。
「すまない、串を一つ。」
「へい、らっしゃい! 串焼き一つだな! ちょっと待ってな! そっちの坊ちゃんは頼まなくていいのかい?」
「あ、僕はこちらのジュースの方を一つ」
「あいよ! 坊ちゃん、いい目の付け所だぜ。こっちはこっちで森の方にある希少な果実を使ったジュースでな――」
話し好きでもあるのだろう。店主のマシンガンなトークを聞き流しながら、二人は品物の提供を待つばかり。
しかし、待つ間も次々と焼ける串焼きの匂いは香ばしく、食欲を誘い続けている。そして――。
「おまちどう! 」
零那の手にはアツアツの。いつきの手にはキンキンの。それぞれの手に渡れば、期待に口の中へと自然と唾液。
「うめぇぜ。なんてったって、太鼓判付のだし、とっておきのだからな!」
「ああ、確かに美味しそうだ」
「では、零那さん、あちらで頂きましょうか」
提供を受け、此処で食べるも良いがヒトの邪魔になってはいけないだろう。二人は屋台の前を離れ、人気少なき場所へと。
その背中、はてと店主の声が届く。
「……そういや、あんたらの顔もどっかで。あ、あー!?」
商売に懸命すぎて、今更ながらに零那といつきが噂の有名人であると気付いたのだろう。新たな商売繁盛の機を逃した悲鳴が響いていた。
二匹目のドジョウはなし。店主の逃した魚は大きかったのだ。
――そんな悲鳴も素知らぬまま、二人はようようと路地裏で腰を落ち着ける。
「ふむ。良い焼き具合だ。腕は確かだったようだな」
零那が紙袋から取り出した串焼きは、まだホカホカと湯気を放つ。タレはなく、塩胡椒だけで味付けされたと思しきそれの匂いもまた広がっていた。
「そのようですね。美味しそうです」
「……一口要るか?」
「いえ、僕はジュースだけあれば」
竜と龍。細かな種は違っても同じリュウだ。龍神の力を拝借するいつきがそれを口にするのは、ほんの少し気が引けていたのだ。勿論、それを言って零那の気分に水を差すつもりは毛頭ない。
零那が先んじて串焼きに口へと付けるよりも早く、いつきは自身のジュースを付属のストローで啜る。
「ん、程よい酸味が……なんだか苺に味が似てますね」
「森にある希少な果実がどうとか言っていたな」
「その真実は分かりませんが、こちらもなかなかに美味しいですよ」
こくり、こくり。いつきの白い咽喉が上下して、ジュースを飲み下していく。
「では、私の方も……」
竜の肉は美味いと聞く。しかも、焼きは十分な様子だ。期待も持てよう。
がぷり。
一息齧って見れば、口の中で広がる香ばしさと肉汁の旨味。確かにこれは――。
「……美味いな」
別段、零那も竜から得られるモノが目当てでそれを討った訳ではない。だけれど、ほんの少し、この世界における魔獣の素材が財宝にも劣らぬ価値を持つことの意味を知った気がした。
はぐり、はぐり、はぐり。
口が止まらぬ。舌鼓を打つが止まらぬ。気付けば、あっという間に一本ぺろり。
そこではたと気付く。
「……ふふ。美味しそうに食べますね、零那さん」
いつきがそこに居た事へ。
いつから見ていたのだろうか。ジュースを飲む口を休め、いつきが微笑ましそうに零那を見ていた。
「あ、いや、これは……」
他の誰に見られようとも気にするところではなかったのかもしれない。だが、いつきに見られるのは何だか気恥ずかしい気がしたのだ。
――慌て、口元を拭えばそこには美味しく串焼きを頂いた証が。
零那は自身の顔に朱が走ったことを自覚する。
「ああ、お気になさらず。良い食べっぷりで、見ているこちらも同じ気分になれましたから。零那さんの楽しんでいる姿を見ていたいんです」
「……その言い方は少し狡いな」
「はは、戦場での意趣返しも多少は出来たでしょうか?」
帝国や竜との戦いの中、零那の言動に狼狽えさせられたのはいつき。だから、今度はいつきの方が零那を。
勿論、そこに悪意なんてものは存在しない。友として、信頼できる相手として、平穏だからこそ出来る軽口がそこにはあったのである。
冒険は確かにその幕を下ろした。だけれど、猟兵達の、零那といつきの日常はまだ確かに続いていく。
共に過ごす時間を楽しむ二人の声もまた、穏やかに喧騒の中へと溶け込んでいくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵